1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年五月十一日(火曜日)
午前十一時二十八分開会
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委員の異動
五月七日
辞任 補欠選任
日高 広為君 館 哲二君
五月八日
辞任 補欠選任
増原 恵吉君 鳥畠徳次郎沿
館 哲二君 日高 広為君
五月十日
辞任 補欠選任
佐野 芳雄君 大和 与一君
五月十一日
辞任 補欠選任
大和 与一君 佐野 芳雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 西田 信一君
理 事
佐野 廣君
西川甚五郎君
成瀬 幡治君
中尾 辰義君
田畑 金光君
委 員
大竹平八郎君
栗原 祐幸君
津島 壽一君
林屋亀次郎君
日高 広為君
堀 末治君
村松 久義君
野溝 勝君
鈴木 市藏君
委員以外の議員
発 議 者 平島 敏夫君
国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
政府委員
大蔵政務次官 鍋島 直紹君
大蔵省証券局長 松井 直行君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
大蔵省証券局証
券業務課長 安川 七郎君
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本日の会議に付した案件
○閉鎖機関令等の規定によつてされた信託の処理
に関する法律案(平島敏夫君外一名発議)
○証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/0
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001・西田信一
○委員長(西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る五月七日鳥畠徳次郎君及び日高広為君が辞任され、その補欠として増原恵吉君及び館哲二君が選任せられました。八日増原恵吉君及び館哲二君が辞任され、その補欠として鳥畠徳次郎君及び日高広為君が選任せられました。十日佐野芳雄君が辞任せられ、その補欠として大和与一君が選任せられました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/1
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002・西田信一
○委員長(西田信一君) 閉鎖機関令等の規定によってされた信託の処理に関する法律案を議題といたします。
本案は、去る七日平島敏夫君外一名から発議され、同日当委員会に付託せられました。
それでは、まず発議者から提案理由の説明を聞くことにいたします。平島敏夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/2
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003・平島敏夫
○委員以外の議員(平島敏夫君) ただいま議題となりました閉鎖機関令等の規定によってされた信託の処理に関する法律案につきまして、提案の理由を発議者として御説明申し上げます。
終戦に伴い、閉鎖機関令により、その本邦内における業務を停止し、また、その本邦内にある財産の清算をすべきものとして指定された閉鎖機関につきましては、最初は閉鎖機関整理委員会、その後は特殊清算人より清算が進められてきたのでありますが、債権者の所在不明等の理由で、いつまでも特殊清算を結了できないでいる閉鎖機関につきましては、昭和二十九年五月の閉鎖機関令の一部改正により特殊清算人が債権者のために弁済すべき財産を信託することによって、その債務を免れる道が開かれたのであり、この信託をすることによって、その後は、その信託の受託者から、債権者に対する支払いの事務が続行されて来たのであります。これらの債務のうち、役職員の給与、賞与、強制貯蓄金、積み立て金、退職手当等に関しましては、昭和三十八年に至り戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正及び戦傷病者特別援護法の制定により一定の条件下で満鉄等の職員が軍人軍属としてこれらの法律の適用対象とされ、また、恩給法等の一部改正により満鉄その他の外国特殊法人における一定の在職期間が恩給及び公務員関係共済年金各法による年金の基礎としての期間に算入されることとなり、これに伴い、これらの法律適用上の経歴確認を機として従来不明であった役職員の所在も次第に判明してきているのであります。ところが、信託契約では、当該信託行為の定めるところにより、その存続期間の満了の近いものがあり、残余の短時日では、現に判明している債権者に対しても、また今後判明してくる見込みの債権者に対しても、弁済を完了することは手続的に不可能なことが予想されるのであります。
一例をあげますと、満鉄関係で現在所在のはっきりしておりますところの退職手当の支払いを受ける権利のある者でまだ未払いの者が二万五千人ばかりあるわけであります。
他方、これらの信託契約におきましては、その存続期剛の満了の際に債権者に対する支払いができないため残っている財産は国庫に帰属する旨を定めており、国もその利益享受の意思表示をして権利は発生しているのでありますが、この権利は本来積極的な理由により国に発生したものではありませんので、前に述べました事情と考え合わせますと、信託の受託者においてその意向がある限りは、なおしばらくは引き続き信託事務を行なわせ、それでも支払いを終わらなかったものについて国庫に帰属させることとするのが適当だと思われます。また、閉鎖機関令による信託のうちには右に述べました給与等以外の債権のものもありますが、これを形式上区分することは困難であるほか、終戦に伴う混乱のために弁済を受けることができないでいる債権者を特に除外するのも一不適当と考えるので、同様の扱いとし、さらに旧日本占領地域に本店を有する会社の本邦内にある財産の整理に関する政令の規定による信託に関しても、同様の事情があるので、同様とするのを相当と考えます。ところが、この措置を講ずるには、財政法第八条の規定により、法律を必要としますので、ここにこの法律案を提出することとなった次第であります。
以上がこの法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/3
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004・西田信一
○委員長(西田信一君) 以上で提案理由の説明は終わりました。
それでは、これより本案の質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言願います。——別に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/4
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005・西田信一
○委員長(西田信一君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したのもと認めます。
それでは、これより採決に入ります。閉鎖機関令等の規定によってされた信託の処理に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/5
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006・西田信一
○委員長(西田信一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/6
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007・西田信一
○委員長(西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/7
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008・西田信一
○委員長(西田信一君) 次に、証券取引法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き本案に対する質疑を続行いたします。
御質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/8
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009・田畑金光
○田畑金光君 それでは、証券取引法の一部改正について若干お尋ねしますが、今回の改正は、証券業が国民経済的にも、また社会的にもきわめて公共性が高いので、大蔵大臣の監督権限を強化して、証券会社の信用の向上、投資者保護を一そう促進するためにこの法改正がとられたわけでありますが、この法律改正によって現在著しく不振あるいは低迷をきわめておる証券市場対策にどういう寄与をするのか、証券市場対策としてこの法律改正がどんな面に積極的な意義を持つのか、これをひとつ承りたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/9
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010・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 証券問題につきましては、ただに証券の問題だけではなく、日本の産業資金調達の場である資本市場の育成強化ということを基本的な目標にいたしておるわけでございます。その目的を達成する一つの手段といたしましては、まず証券業者自体の体質改善も必要でございますし、証券業者そのものが証券市場のにない手として国民から信頼をつなぐに足るような状態をつくってまいるということは望ましいことでもありますし、必要なことでございます。でありますので、いままでは届け出制度になっておりましたものを免許制度に切りかえて、証券業者の体質改善促進をはかるとともに内容の充実もはかってまいりたいと、こういうことを考えておりますので、免許制度になるということ自体も、証券業者の体質改善にもなりますし、また究極の目的を達成できるということで、証券取引法の改正をお願いをいたした、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/10
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011・田畑金光
○田畑金光君 私のお尋ねしておることは、いまお話しのように、証券業者あるいは証券会社の体質改善、これが投資者の保護になり、また今日の不振をきわめておる、あるいは低迷を続けておる株式市場対策として積極的な意義を持つのかどうか、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/11
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012・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) いま株式市場が低迷をいたしておりますから、これが対策として証券取引法の改正をはかったのでありません。これは明らかに迷う問題でございますから、これはひとつはっきりと申し上げておきます。
日本の資本市場の育成強化をはからなければならないということは、まあ長いこと当委員会でも問題になっておりますし、また証券市場の育成強化という問題に対しても議論が非常に多かったのでありまして、本質的には、証券業そのものの地位の向上をはかってまいるということが、結論的には国民の信頼もつなぎ、新しい体制に即応する証券業者ができるということになるわけであります。その結果、現に沈滞をしておる証券業、証券界というものに与える影響もいい影響があるということは言い得るわけでありますが、ただいまの市場にてこ入れをするとか、そういうことの目標のために証券取引法の改正をしたものではないということは、ひとつ御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/12
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013・田畑金光
○田畑金光君 まあ私は、いまの大臣の答弁、今回のこの法改正は現在の低迷をきわめておる証券市場対策として何ら関係ないと当初おっしゃったが、何ら関係ないんじゃなくして、直接的な関係はないとしても、間接的にやはり証券市場安定に大きく寄与する、そういう意味でこの法律改正がなされたものだと、こう理解しておるわけです。
それから、今度免許制に切りかえるわけでありますが、これは民間の企業を見ますと、銀行とか信託、保険、あるいはたばこや塩の販売など、あるいは公衆衛生事業その他等に免許制というものがとられておるわけです。ことに、今回のこの法律改正を見ますと、証券業を規制するのが、免許制をはじめその他役員のいろいろな禁止規定その他を見ましても、銀行法にならって非常にきびしい規制をやっておるわけですね。これは一体、証券業というものと銀行業というものとは非常に、広い意味の金融市場の主役という意味では、密接不可分の関係でありますけれども、証券業というものと銀行業というものは、やはり考えてみると本質的に異なる面があると、こう思うのですが、そういう点から見ました場合に、銀行業に対するいろいろな監督規定をそのまま証券業にもってきたという面について、われわれとしてはいささか納得のできない事情があるのですが、この点はどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/13
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014・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 銀行法における制限規定をそのまま移したというのじゃありません。今度の証券取引法の改正によりまして、証券業者は少なくとも免許制になると、こういうことでありますから、免許をするに必要な条件を法律で具備した、こういうふうに解釈をしていただきたいと思います。
ただ、具体的な問題としましては、証券業者そのものが、いままでは登録制でありますから、できるのも非常にできるけれども、ばたばたとつぶれていくということでありましたが、今度は少なくとも免許制でありますから、免許をした者に対しては政府も一半の責任を食わなければならぬわけであります。でありますから、当然免許企業に対してそのていさいを、またその組織に必要な条件は整備させるということは必要だと思います。ただ、端的に銀行と同じような組織をつくる、こういう考え方ではありませんが、まあ社会から少なくとも銀行が信用されておるという程度には証券会社も信用を得るという状態まで育成をしてまいりたいという考えは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/14
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015・田畑金光
○田畑金光君 今回の法改正で、先ほど申し上げたように、銀行法に準じて免許制をはじめその他いろいろな制限規定がとられておるわけです。あるいはまた、証券会社の経営的な基盤強化のためにいろいろな特別措置等もとられておるわけですね。これもやはり銀行業と似通った方向でそういう強化措置がとられておるわけです。そこで、この法律改正のねらいというのは投資者保護ということでありますが、その投資者保護というものは、投資というのは一体銀行の預金と同じなのかどうか、預金者保護というような意味における投資者保護、この関係が一体どう理解してよろしいのかということですね。投資というのは大なり小なり、従来の観念からいうと、ある意味においては投機的な要素というものが入っておるわけです。しかし、もちろん証券会社と投資者との間には深い信任関係というのはありますけれども、しかし、やはりいわゆる預金と投資という面はそこに、ニュアンスといっちゃ何でありますが、ある程度相違があると、こう思うのです。ところが、今回の場合は、この法改正の趣旨を見ると、投資者保護、それが即銀行預金の保護と同じような趣旨で、したがって銀行法にならって証券取引法の改正が進められておる、こういう解釈も成り立つと思うのですが、この投資というものと預金というものとはどう違うのか、また、それはかりに違いがあるとすれば、どういう思想で、どういう画でこの法改正の中にどの分野にあらわれているのか、その点をひとつ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/15
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016・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 在来の観念では、貯金と証券投資ということに対しては確実に区分されて議論をされておりました。しかし、私は、将来の問題を考えるときには、在来のような考え方だけで証券市場に対処していってはならないというふうに考えます。貯蓄は国民の貯蓄であります。そしてその国民が貯蓄した金は産業資金その他として投資をせられます。証券投資も国民の貯蓄であります。これも産業資金として使われるわけです。理論の上では、前者は間接資本といわれ、後者は直接資本といわれておる。まあ右と左ということでありまして、これからは間接資本と直接資本のバランスをどうとるべきかということを十分考えながら、この二つの調和のとれた状態をつくっていくということは好ましいことでありますし、必要なことであります。必要というよりも、絶体的に必要なものであります。ですから、預金者保護が唱えられたように、証券投資を行なった国民の投資者保護も考えられなければならぬ。あたりまえのことであります。何も変わらない。政府が銀行法によって銀行を監督をし、預金者保護を旨としなければならないと同じように、証券取引法によって一般投資者の保護をはかる。何ら変わりません。
ただ、実体において郵便貯金というものと証券投資というものはどう違うかと、こういうと、郵便貯金や銀行預金よりも証券投資のほうが変動の幅があります、こうお答えをすれば十分おわかりになると思います。ですから、証券投資というものが全く昔の観念のように投機の場である、こういう観念は非常に古い観念であって、私は間違った観念だと思います。証券投資というものが昔のように全く一部の者が投資をしたというようなことではなく、これがわれわれの生活をささえ、日本の国際競争力や輸出をささえる産業資金として使われるのでありますから、これといままでの貯金というものを別にしたというのは、われわれの在米の観念、教育を受けておった考え方から、銀行や損金というものに対しては保護しなければならぬが、証券というものは競馬や競輪に近いものだ、こういう考えは昔流の考えであって、近代的な資本論という面から考えると問題にならない議論だ。
私は、やはりこれからの日本は、直接資本と間接資本をどうするか、どの程度にするか、戦前は六一%は証券投資、いわゆる直接資本によってまかなわれておったわけでありますが、現在は二三、二二、二〇ですから、銀行預金にだけ片寄っておる。ですから、銀行からうまく借りられるようにすればいいんだということで、粉飾決算をしたりいろいろなことがあったわけでありますが、だから、これからの産業資金を考えるときには、面接資本と間接資本のバランスを十分考えながらいかなければならないという立場で申し上げると、証券市場の育成強化は絶対必要である、また大蔵省としましては投資者の保護は十分はからなければならない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/16
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017・田畑金光
○田畑金光君 わかったようでもありますけれども、なかなかちょっとのみ込めないのですが、企業の立場からいうと、資本を株式、社債等を通じて調達していくということが自巳資本をふやし、また直接資本を充実していくということになるわけです。それに対して銀行から借り入れるということであれば、他人資本を持ってくるということだから、間接資本によって資本を調達する、こういうことになるわけですが、今度は預金する立場、投資者の立場から見た場合、銀行でもよし、あるいは郵便貯金でもいいが、預金者というものと投資者というものは、いま大臣のお話しのように、何らもう変わりがないものと見ていいのかどうか、この辺がなかなかどうも理解しにくいのですが、どう理解したらよろしいのか。特にいま大臣のお話しのように、昔の投機的な考え方に基づく株式市場という考え方はわれわれもとっておりませんし、また今日のように証券といりものが大衆化してくると、いわゆる証券民主化というものが進んできますると、そういう考え方はそもそも間違っておるわけですが、だからといって、投資と貯蓄というもの、預金というものが全く同一かというと、これもまた判り切れない問題があると思うのです。その点、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/17
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018・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) どうも議論のための議論というものにもなるかとも思いますが、申し上げると、それは事実は貯金というものと証券投資というものを比べますときに、証券投資のほうが変動が多い。これは何倍にもなると同時に、配当がなくなるときもある。マイナスの場合もある。貯金は、金利が吹くとも、三分五厘であれば三分五厘の金利はつくのです。四分であれば四分の金利はつく。そういう意味で現実的な実体というものは 相違はあります。これは私が申し上げなくても、皆さんが知っておられることであります。あえて言うことはない。
第二の問題は、あなたが、証券取引法を出して銀行と同じような状態で大蔵省は考えておるが、預金者保護と比較して投資者保護を考えないでいいのかと言うから、それは当然両方とも必要なことであって、考えるのです。投資者保護を考えるためにこの法律を出しておるのです。こういうことでありますから、実体が変動が多いとか、そういった政府が投資者保護を必要とするということとはおのずから別なことでありますから、混淆しないで、ひとつ実体はこうだ、しかし政府は貯金に対して預金者保護を考えると同時に、証券に対しては投資者保護を考えなければならない、こういう立場に立っておることは私は明確に申し上げておりますから、そう理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/18
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019・田畑金光
○田畑金光君 まあその辺のことはその程度にとどめまして、そこで、いま大臣お話しのように、この本法の改正も期するところは投資者保護という点に一番大きな重点を置いておるわけですが、そのために証券会社役員の思惑取引を厳重に取り締まったり、証券会社の資産内容の充実強化をはかっておるわけです。しかし、これだけは十分かどうかという問題ですね。たとえば外務員を今度登録制にしたわけです。外務員の行為を即証券会社の責任という形で取り締まっておるわけですが、ところが、問題は、今日証券市場に上場している上場会社の資料、あるいは会社の業績などの報告書、こういう問題が私は一番大事な問題になってくると思うのです。いわゆる粉飾決算とか粉飾された資料のもとで投資者保護というものがはかれるのかどうかという問題ですね。外務員は上場会社なら上場会社の資料に基づいて顧客と相談をする、顧客の相談を受ける、あるいは注文を受けて委託業務をやる、こういうことを考えてみますと、山陽特殊製鋼の判例がはっきり物語っているように、ああいう粉飾決算、粉飾経理、そうしてそれが上場会社で大手を振って通っておる。昭和三十六年以来美質は赤字であったが、表面的には黒字ということで、一割ないし一割二分の配当をしている。そういう会社の資料に基づいて外務員が顧客の相手方となって相談をする、注文を受けて委託業務をやる。こういうことを考えてみますと、今度の法律改正を見ますと、外務員を登録制にもっていくとか、あるいは外務員の行為を証券会社の責任にするとかいっても、もっと問題は根本的なところに私はあると思うのですね。
だから、投資者を保護するということを強く大臣は主張されておりますが、この法律によってはたして投資者の保護といりものが、幾らかはできるが、根本的な問題は私は残されておると思うのです。当然私は立法政策として、この上場会社なんかの公表する資料の適正化をどうはかるか、こういう問題が一番大事な問題だと、こう思うのですが、この点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/19
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020・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) それはあなたの言われるとおり、証券取引法の今回の改正だけでもってすべてが解決できるなどとは考えておりません。しかし、現在よりも相当よくなる、こういう前向きのものであることははっきりいたしておるわけであります。
これはもちろん、証券市場をよくする、拡大強化していくというためにはどうするかといえば、粉飾決算等をさせちゃいかぬ、とにかく少なくとも表に出される数字というものは国民が納得できる、そのまま信用して、信用に足る数字が出るということでなければならないということはあたりまえであります。ですから、証券市場は証券取引法だけでよくなるわけじゃありませんで、日本の企業がよくなるということが一つの前提でございますし、また、それを取り扱う業者がしっかりしていなきゃいかぬということも当然のことでございます。
しかし、いまの法制の中で、粉飾決算などをやっていいというふうになっておるかというと、なっていないのです。これは商法の違反でもってびしびしやられるわけです。刑法の適用があるわけですから、これはいまでも十分できることになっております。いまでもできることになっているんですが、これは実際の面から見ますと、いろいろ粉飾決算をやっておったと、こういうことでありますから、粉飾決算をやらないようにということをひとつやらなきゃなりません。それをいま商法だけではなくて、別法であるところの証券取引法の中に一体取り入れたらいいかどうかという議論はあります。
ですから、それは証券取引法の中で問題になるのは、大蔵大臣の検査権というのを——大蔵大臣が届け出たものに対して検査をしたら、千何百社というようなものを大蔵大臣が全部ずっとこまかいものをみんな検査をして、そうして大蔵大臣がよろしい、こう言ったものは国民が絶対に信用できるというふうに、いわゆるこの法律の中の大蔵大臣の検査権というものをどこまで活動できるのか、非常にむずかしい問題なんです、書いてはありますけれども。たから、大蔵大臣の検査権、企業に対する検査権というものをどうするか。
もう一つは、上場基準をきめて、上場するときに取引所が検査をするものを一体どうするか、取引所がこの企業の内容に対して、明らかにされる決算に対してどう責任を負えるか、この法律に基づく公認会計士というものの職能をどうするか、こういう問題たくさんあるのです。
ですから、こういう問題に全部終止符を打ちたいとは考えておりますが、とてもそれは一朝一夕にできるものではございません。ですから、まず第一番目は、証券業者をよくしよう、そこに重点を置こう。第二には、取引所の機能、責任権限、こういうものをよくしよう。だんだんと第二、第三段の改正を考えております。ですから、そうしなければよくならないわけでありますので、この間の事情はひとつ御了承願いたいと思います。これはいまの銀行でも、何も三年や五年でできたわけではない、明治から百年の歴史を持ってですね、銀行に対しては非常に強い保護政策、助長政策、こういうものをとっていたから、今日の日本の金融制度があるわけでありますから、おそまきながら、私はもっと早くなぜ証券というものをやらなかったか。証券法、証券取引所法、証券事業法、こういうものを分けてなぜやらなかったか。所得倍増政策をやるときに、私はその前にやるべきであったと、私は十分責任を感じている。ですから、おそまきながら、これをやろうということを考えたわけでございます。この点は、この間の事情を御了承賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/20
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021・田畑金光
○田畑金光君 いまの大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、ますます私は疑問が深まってくるのですが、それはあなたのお話のように、証券会社をよくするとか、あるいは外務員制度を登録制にもっていくとかいうようなことも、証券市場を立て直す一つの道であることは否定しませんが、枝葉の問題だろうと思うのです。ことに、いま大臣の答弁の中にありましたように、粉飾決算とか粉飾経理というのは、商法の規定でもはっきり禁止しておる。証券取引法の中にもはっきり禁止の条項があるわけですね。現行法でこういうようなことはやってはならぬということははっきりうたわれているわけですね。粉飾決算、粉飾経理というのは、企業の公共性、社会性から見て、最大の罪悪だと思うのです。ところが、現実に今日の証券上場会社は、ほとんど全会社といわれるほど、あるいは金融対策の面から、あるいは税金対策の面から、あるいは株価操作の面から、全部粉飾経理をやっておるということはもう常識になっておるわけですね。これは常識ですよ。そういうように一番大事な根本的な問題の処理がはかれないで、証券会社をどうするとか、外務員制度をどうするとかといっても、これは株式市場の健全な将来の発展育成、こういう面からいうと、木によって魚を求めるようなものだ、私はそういうように考えておるわけですが、この点についてもっと——これはですよ、山陽特殊製鋼のあの事件が起きたときに、大蔵大臣も衆議院の大蔵委員会などでは強いことを発言されておるようですが、もっとこういう問題について、並行的にどうするかという方針くらい出されないと、この法律改正だけでは意味がないと考えておりますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/21
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022・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) それは確かに、商法はございますから、商法違反をやってはならぬ、こういうことであります。それで、これは商法のほうが証券取引法よりももとの法律でございますし、証券取引法の第二百条によりまして、虚偽の書類を提出した場合には罰則が設けてある、こういうことであります。ですから、これはお互い事業者が他人から金を、大衆からオープンマーケットでもって金を集めるのですから、虚偽の書類を出したり虚偽の報告書を出したりすると罰せられるのは当然です。ですが、こういうものは、これはただ一つの、一片の法律だけで解決できるものではありません。これは会社をやっておる人たちがみずから自戒自粛をして、そういう虚偽の報告をしたり粉飾決算をしたりしてはならぬ、こういうことにだんだんと指導していくという以外にはないわけであります。それが先だからといって、ほかの、証券業者を強化するというようなことはたいしたことじゃない、こういう考えはどうかと思うのです。銀行や保険会社やその他の信託会社は一体どうやるか、まず国民に貯蓄させるような法律を先につくっておいて、しかる後に考えればいいという議論と同じことであります。
ちょいちょいそういう帳面があります、予算委員会でも。国民は貯蓄するような力がないのだ、まず減税して貯蓄ができるようにすれば、ほおっておいても貯蓄はできます、こういう御議論はありますが、しかし、銀行をつくる場合には、銀行法でもって銀行に対していまと同じような姿勢で、銀行が社会から信頼を受けるようなそういう行政指導を行ない、そういう法律の体系で今日まで銀行をつくり、保険会社をつくり、信託会社をつくり、地方銀行をつくり、相互銀行をつくり、信用金庫をつくってきたわけでございますから、同じ方法で、まず手始めに証券業者をよくしよう。銀行をよくしようと同じ考えできておるわけでありまして、これだけで足ると言っておるのじゃない、先ほども育ったように。証券会社もよくし、証券取引所に対しても次の段階に改正を考えますと、また大蔵省の検査権というものに対しても十分検討いたしますと、こう申し上げておるのですから、まあいまよりも非常に曲向きだということはいえると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/22
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023・田畑金光
○田畑金光君 まあ私は、この法律のねらっている目的を達成する意味において全然価値がないとか意味がないとか言っておるわけじゃないので、もっと根本的な問題にメスを入れなければ、この法律が究極にねらっている目的の達成はできないと、私はこう考えたわけです。
で、私いま大臣の御答弁の中で疑問に思うのは、証券取引法の二百五条によれば、こうこういう場合には罰則の規定が加えられると、こうなっておりますね。あるいはまた、証券取引法の二十六条によれば、大蔵大臣の検査権などが規定されておるわけですね。検査権の規定もあるし、また虚偽の財務状況の発表などに対しては罰則の規定も法律として現存するのであって、罰則規定の発動なんということが一体並行的に投資者の保護の立場から進められてきたのかどうか、こういう点に深く疑問を感ずるわけですよ。今後、この法律改正を第一歩にして、あるいはお話のように取引所の問題とかあるいは証券業強化の問題などいろいろな問題に改革改善を加えられていくでしょう。法律を直していくでしょう。しかし、幾ら法律を直しても、現行の法律に現在の時点でいろいろ問題のある証券市場の取引のために明確な規定があるにかかわらず、それが実行されていない、守られていない、こういうことになれば、幾ら法律を改正し制度を改めるといっても、私は意味がないと、こう思うのです。この点を先ほど来強く大臣に、ひとつどういう気持ちでおられるのか、これを伺っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/23
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024・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 商法にはもちろん虚偽の決算などをしてはならないという罪は明確になっております。それを受けて、証券取引法にも虚偽な申請書は出してはならない、出した場合には罰則がありますし、特にその二十六条の検査権、それから百九十四条の二により地方支分部局をして仕事をせしめられると、こういうことから考えまして、確かに、まずそのいろいろなことを要求する前に、この法律の規定に基づいて大蔵大臣はとにかく全部のその企業の決算書、公表される決算雷を検査をして大蔵大臣が責任負えと、こう言われれば一言もないのですよ、実際において。この法律はそういうたてまえです。ところが、そんなことは、実際現実的にできるか、こういったら、これは何百万件というものを全部やれと、やるだけでなくて、それは非常に強い権限になります。それは大蔵大臣が全部たなおろしをして検査して、必要なければ、その自信がなければ増資を許さぬ、こういうことになれば、実際上はできないのです。できないような規定をなぜ一体書いてあるか、まあ非常にこう問題がございます。
問題はございますが、私もこの証券業者をまず育成する、育成強化する前に、大蔵大臣の権限、大蔵大臣の義務、こういうものと一体商法の条文とをどう調和せしむべきかということを十分考えてみました。考えてみましたが、これをいますぐすべての結論を出す、合理的な結論を出すということは、これはむずかしい。ですから、まずひとつ銀行やいろいろなものを育成強化してまいったように、証券業者をまず国民の信頼にたえるような、また証券のにない手としてりっぱなものになるようなひとつ方向でやる、その次にいまの大蔵大臣の検査権、それから商法によるその法務大臣の権限、もう一つは証券取引所の権能、こういうものの三つをどこで一体うまく調和させるか、こういうことがいま一日や一年でできる話じゃない。まあ一年でできないとは言いませんが、ちょっとこうできない。この法律の改正案を出すまでに結論を出すわけにはまいらなかったということで、これだけでもってうまくいきませんが、この次にはまず証券取引所の機能というものの強化を考えます、最終的には商法とこの証券取引法に基づく大蔵大臣の検査権というものとの調和を十分考えて、改正案ができれば御審議を願いますと、こう申し上げておるんですから、まあ大蔵省の考えておる考え方に対しては御理解がいただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/24
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025・田畑金光
○田畑金光君 大蔵大臣が全部の会社の財務内容について一々検査するということは、事実上それはできないということになるかもしれぬが、しかし、法律がある以上は、この法律のたてまえをどう生かすかということもまた技術的な面として考慮しなきゃならぬと思うんですね。今度の法律の改正の中でも証券会社に対する監督規定の強化をはかっておりますが、たとえばその中で支払い不能となるおそれがある場合の営業停止の規定などがあるわけですね。これはもちろん投資者の損害を防止するためというわけで営業停止の規定などはありますが、これなんかもやっぱり個々の会社の実態というものをどう把握するかと、これが大事なことだと思うんですね。こういう実態の把握ができなければ、幾ら法律をつくっても何にもならぬということなんですよ。同じことなんです。今度のこの限られた法律改正の中でも、いろいろ会社の実態を調査把握しなければ——実際これはあぶない、この会社を存続さしたんでは投資者保護にならぬ、こういうことになれば、一々の会社についての実態を調査し検査しなければ、これは投資者保護というものはできないわけでしょう。同じことだと思うんですね。証券取引法に現実に大蔵大臣がやらねばならぬことが載っているわけですから、それが事実上だめだだめだといってやられないということになれば、何のために法律をつくったかということになる。
また、先ほど大蔵大臣のお話の中にありました公認会計士制度の問題でありますが、証券取引法の二十四条によれば、とにかく上場会社の毎期決算については公認会計士が報告を出すことになっておりますね。ところが、その報告についても虚偽な報告がなされた。現に山陽特殊鋼なんかの場合は公認会計士自体もその職責を全うしなかった、こういうことでしょう。そういう間違った公認会計士の監査報告をもとにして外務員がお客さんと話をするならば、いかに善意でもって外務員がやっておっても、結果においては非常な迷惑あるいは損失を投資者にかけるわけですね。だから、大事なことは、この投資者保護をあくまでも徹底するためには、公認会計士の制度などについても、これは早急に検討して改むべき面は改めなきゃならぬ、こう考えておりますが、いつぞや大蔵大臣はあの問題、山陽特殊鋼などの問題が起きたときには、公認会計士制度の問題についてはもうすみやかに試案を得て改正するなんて言っていたが、ほとぼりがさめると、いつの間にかこういう問題はどっかに置き忘れたような形になっているわけですね。どうなんですか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/25
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026・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 置き忘れてなんかおりません。これはもう非常に重要な問題で、こういうことを正さなければ、日本の資本市場というものは正せないんです。私はそういう意味で非常に真剣な考え方を持っております。
ただ、この証券取引法の改正をお願いしておりますが、この中で一ぺんに公認会計士の制度上の問題、これは普通からいいますと、すぐ罰則を強化する。罰則を強化するだけでどうにもなるわけじゃない。これは公認会計士が真に、膨大化しつつある数の多い日本の企業に対して、しかも複雑多岐になっておる経理を解明できるような組織をつくるには一体どうするかという問題もあります。しかも、個人が委託によってやるということではなく、共同責任ということで、共同の力でもって監査できるというふうにしてはどうかという問題もありますので、これはすぐいま結論が出るわけじゃないのであります。
ですから、公認会計士の権能の問題とか、責任の問題とか、同じように証券取引所の権能の問題、責任の問題、第三番目に大蔵大臣の権能の問題と責任の問題——これはすく責任の問題ではあるのです。検査をすることはできる、虚偽の報告をしてはならない、虚偽かどうかただすために検査をすることができる、検査をして虚偽だったという場合には、これを告発しなければならぬ、こういう制度も持っているが、いま非常に研究はしている。研究はしているが、なかなかむずかしい問題でありまして、まあ慎重かつすみやかに成案を得たいということでありまして、第二、第三段の改正ということを考えて、まず一番目の前進的な案をお願いしたわけでありますので、ほとぼりがさめるとすぐやめちまうと、こんなことでは全然なく、そうでないからこれはぜひ早く通してくださいと、こう言っておりますので、どうぞひとつその間の事情は御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/26
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027・田畑金光
○田畑金光君 昨年の八月以降、株式相場というものが非常に低迷を続けているというよりも、株が一つと下がってきたわけですね。まあ一時政府としてはダウ千二百円をあくまでも維持しなければならぬ、維持せぬとたいへんなことになる、こういうわけで共同証券をつくったり、あるいは日本証券保有組合をつくったり、かれこれ四千億近く株式のたな上げをした、こういうわけですね。ところが、幸いなことには国際収支も非常によくなってきた。あるいはまた一月、四月にそれぞれ公定歩合を引き下げて、金融の緩和措置もとられた。また、この間の税制では配当所得に対する源泉課税の選択制度等もとられた。四千億近くたな上げた。それでもなおかつ株の下落というものは続いておって、本年の三月さらに千二百円台を割った。こういう現象はなかなかわれわれとしては理解しがたいわけですが、こういう最近の株の動きをめぐる低迷状態、景気の動向、不況、こういう問題について大蔵大臣としてはどのようにお考えになっておるんですか。あるいは、今後これはどうすればよろしいのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/27
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028・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 証券市場が低迷状況を続けておるということは御指摘のとおりでございまして、はなはだ遺憾でございます。しかし、株式市場というものは、需要供給の結果そこに値が立つわけでありますので、これを人為的にどうするということは非常にむずかしいわけであります。まあ共同証券や証券保有組合等の行為によりまして、とにかく安定的な様相を呈しておるということだけはいえると思います。これはいままで日本の基礎産業であるようなそういうものが、額面を割っておったというようなものは額面を回復して、だんだんと正当な価格を形成しつつあるし、親会社が額面を割っているにもかかわらず子会社だけは何百円としていたといったような、小さなものが多少値を下げておる。でありますから、ダウ千二百円が千百七十円になり千百八十円になったからといって、総体的に株式市場が不振になっていると、こういう考え方ではなく、三百円のものが三分の下がれば百円下がるわけであります。そういう意味で、株式の内容というものは落ちつきつつあるということを申し上げていいのではないかと思います。
それから、これからの景気を一体どう見るかということでありますが、これは私は、ただ目先のことだけを考えないで、現在の経済状態は、長い間量的拡大ということを目標にしてきた日本の経済機構、そういうものがいわゆる量から質への転換を要請をされました状態であって、第二の飛躍に対してやっぱり再整備の必要な段階に立っておる、このように見て間違いはないと思います。ただ、大局的に見ますと、国際的に、設備投資がうんと行なわれましたために、輸出も伸びておりますし、国際競争力も培養されております。でありますから、いまの状態から、まあいわれておりますような表現を使えば、マクロ的に見れば、非常に将来十分伸びていけるという態勢でございますが、企業個々の問題を見ますときには、再整備といいますか、整備の段階であって、第二のスタート、第二の拡大に対する整備の段階でありますので、いま急に景気に浮揚力をつけるというようなことは非常にむずかしいことでもありますし、またそうすべきではないというように経済全体に対しては認識をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/28
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029・田畑金光
○田畑金光君 昨年の八月ごろからことしの初めにかけては、ダウ千二百円を維持するためにいろいろな政府は措置を講じたのですね。あるいは講じさせたわけです。証券会社自体としてまたいろいろな手を政府に頼み、日銀に頼み、都市銀行に頼みやってきたわけです。ところが、今度は千二百円を割っても、これはいまじっとしているわけですが、これが本来の姿じゃないかと思うわけですね。千二百円維持という点から申しますと、割ったんだから当然今度は共同証券あたりが買い出動なんということも考えていいはずだが、それは今度は考えない。これは、その辺はどう理解すればよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/29
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030・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 千二百円を維持するために共同証券に買わしたのじゃありません。共同証券が買った結果、結論として千二百円が維持された、こういうふうにお考えになっていただきたい。ですから、いま千二百円を割ったから共同証券が買い出動する必要があるというふうには考えておりません。共同証券が買ったり、証券保有組合がたな上げをしたという当時は、そのような必要があって、またその結果千二百円が維持された、現在は千二百円を割っておっても共同証券が買い出動に出なければならないという状態ではないと、私はそう認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/30
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031・田畑金光
○田畑金光君 この証券市場の発展を期するためには金融市場の正常化がどうしても必要だ、これは当然のことだと思います。長期資本というものは証券市場から、短期資本は金融市場から調達する、こういう原則の確立がなければ、絶対に証券市場の発展というものは確保できない。この間この参議院の大蔵委員会で参考人を呼んでいろいろな意見を聞きましたが、慶応大学の小竹教授などははっきりその点を指摘されておるわけですね。たとえばこういうことを言われておるのです。短期手形の継続、更新、切りかえでもって長期投資をしているところに金融市場の混乱が起きておる、有力な大会社でも十年、二十年の機械設備をやるのに短期手形の切りかえ切りかえでいっておる、こういうようなところが一番問題があるのである、したがって今後の証券市場の発展を期するためにはどうしても金融市場の正常化が前提だと、こういうことを言っておりますね。これはもっともなことだと思うし、そういう面から見た場合、公社債市場の育成などということが一番当面大事な問題であり、こういう問題を並行的に取り上げなければ証券市場の発展というものは期待できないと考えておるわけですが、こういう点等についてやっぱり何らかのいろいろな具体的な政策が示されぬと、本法の改正の趣旨というものが生きてこないと思うのです。この点、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/31
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032・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) それは、ごもっともです。すべての金融、すべての投資、当然長期資本でもってまかなわれなければならないものまで金融でもってつないできたというところに問題があるわけであります。ですから、金融は——まあ金融にも二つございます。設備投資をする場合の興長銀のようなこういうものもありますが、大体は都市銀行から短期資金を借りて金繰りをつける、こういうことが主でございます。それが都市銀行の短期の資金を借りた形式で、実際は設備投資に使う、そしてそれを毎月毎月切りかえていく、こういうことは不正常な状態であるということは当然なことであります。でありますから、先ほどから申し上げておりますように、長期投資というものはできれば自分で増資をして自己資本でもってまかなう、まかなえなければ社債を発行して長期資金は優良な資金をもって充てる、あたりまえのことなんです。ところが、これができない。
日本の状態においては、証券市場は不振である、それから公社債市場は動いておらぬ、やむを得ず、投資をしないわけにいかぬから、銀行から借りよう。あした返すようなことを言っちゃ借りては、貸すほうも、借りるほうも返すことはないだろうと思いながら貸すということが、今日のオーバーローンの現実をつくり上げたわけですから、これを直さなければいかぬと私は前から言っているのです。ですから、税制改正のときも、さんざんおしかりを受けましたが、こうしなければ直らないのです、こういうことを申し上げたわけであります。また、こういうことを直すために必要な万やむを得ざる政策としてお願いしておるのですということを申し上げたわけでありますから、これから証券市場を拡大していく、もちろん公社債市場を育成強化していく、そういうことで直接間接両資本市場のアンバランスを是正する、この法律もその一つの具体的な目標、具体的な施策としてここでお願いしておるのだということを、ひとつ御理解いただきたい。それじゃ、具体的に公社債市場をどうするのか、発行条件を一体緩和するのか、金利を上げるのかというような御質問があとに続くと思いますが、そういう問題は慎重に検討しております、こうお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/32
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033・田畑金光
○田畑金光君 質問したいところまで答えましたので、それは省略しますが、ただ、その大臣の答弁を聞いておりますと、私は時間の関係もありますからあれこれ議論はいたしませんけれども、結局こういうような問題が起きてきたのも、池田・田中財政の私はやはり落とし子だと思うのですよ。銀行のオーバーローンにしても、それを監督して預貸率は大蔵省の通達の範囲内でおさめるという行政指導をやるのは一体だれなのか、これは大蔵大臣をおいてほかにはないじゃないですか。どうも自分の責任はたなに上げて、そっちだそっちだというようなことばかりあなたの御答弁を聞いておると感じられますが、私はこういう経済構造のひずみを生み出したのは田中大蔵財政の長年にわたる放漫的な措置の落とし子である、こう私は申し上げたいのです。
それはその程度にしまして、最後に私は時間の関係ありますからお尋ねしますがね、最近政府部内で、あるいは産業界や金融界の中でも、景気論というものが非常ににぎやかにかわされておるわけで、新聞の伝えるところによると、特に佐藤総理は財政支出の繰り上げ措置を要望しておられる、こういうことも言っておるわけです。中期経済計画の再検討も、すでに去る七日の日に経済企画庁に佐藤総理じきじきに要請した、こういうことを伝えておるわけですね。この景気政策について、大蔵省と日銀は慎重論だ、今度通産省と経企庁とは積極論だ、なかなかどうもにぎやかに議論が展開されておるようですが、一体これはどういう景気動向の観測からそういう議論が出ているのか。特に不可解にたえないのは、参議院選挙を目の前にして幾らかでも経済を明るくしなければ選挙をやりにくいというそういう党利党略的な考え方で景気を刺激するとかどうとか、こういう議論が繰り返されますと、これはやはりいまの日本の経済が構造的な矛盾をあらゆる面にはらんでいるというのは、池田内閣時代における先ほど申し上げたような施策や選挙目当てのいろいろなから人気をあおるやり方が積もり積もって、私は今日の経済のむずかしさを生み出しておるのではないか、こういう判断を持っておるわけです。
したがって、そこでお尋ねしたいことは、いまいわれておる景気の刺激論について大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるのか、これが一つ。さらに、中期経済計画の再検討ということについてどのように考えておられるのか、またこの計画再検討のねらいは那辺にあるのか、その辺をひとつ教えてもらいたいと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/33
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034・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 景気に対する観測は、とにかく十分事態を把握して適切な施策をきめこまかくとらなければならない、こういう基本的な姿勢であります。通産省や日銀でもわれわれでも、選挙のために景気刺激をする、こんなことは絶対ありません。こういうことは考えてみたこともありませんし、考えてもおりません。
しかし、一つ申し上げておきますと、ただ、事業をやっておる人たちは相当強い不況感というものを感ずるわけであります。それはどういうことかというと、下請産業が倒産の状態にある、また金繰りも非常に苦しいというような面から、どうしても不況感がひしひしと感じられます。ただ、去年七・五%の成長率を予想いたしましたが、年間を通じて九・四%であります。それから、世界各国の輸出の伸びは対前年度比一〇%か二%に去年は伸びたわけでございますが、日本は二六%も輸出が伸びておる、こういうことであります。ですから、その七・、五%の成長率を考えたときに九・四%実質的に伸びておっても、何か不況感——それは一六%、二〇%伸びたときに比べれば半分でありますから、それは非常に苦しいし、こういう意味であるなら、簡単に景気刺激ということには応じられない。これはフランス自体が二・七%であり、イギリスが刺激しても三%であり、アメリカが三・五%、EEC自体が去年の平均成長率四・六%、ことしは四%です。こういう状態をずっと比べますと、日本はやはり七%、七・五%、九%でも非常に高い成長率であります。九・四%はちょうど昨年のEECの成長率であります。輸出はそれほどに伸びている。ですから、二〇%の成長をしたときに比べて苦しいというならば、それは苦しいのが安定成長ですから、そういうことに切りかえるということができるかできないかによって、日本の安定成長が確保できるかできないかということになるわけです。
ただ、少なくとも九・四%の成長をしておった時代においても倒産というような、山陽特殊鋼のような例があるのですから、こういう問題に対しては多少の金を出してもきめこまかく施策を行なう必要がある。そのために七%の成長率を企図した。四十年が七・五%になってもやむを得ない。しかし、一〇%に上げるようなことは絶対やってはいけない。こういう考え方はこれは当然な考え方でありますから、景気に対して、景気を刺激しなければならない。全くしないでもいいという立場に立って政府は検討しておるわけではありません。こまかい事態を十分考えながら政府が企図した安定成長、物価の安定、輸出というものが伸びていくという本質的な安定成長経済にもっていこうとしておるのでありますから、いま新聞に出ているほど意見が対立しておるというようなものではない。事実に対応した施策をとっておるということでございます。
第二は、中期経済計画の問題でありますが、これは新聞に、中期経済計画の改定を総理大臣が命じたと報じられておりますが、この中期経済計画というものは、試算を出してくれという政府のお願いに対して、昭和四十三年度にこうなる場合にはこうなりますと、こういう試算の累積を中期経済計画の名において答申されておるわけであります。政府も大体のめどにしようということを考えておるのであります。平均八・一%の成長率を今年度は七%に想定しておるわけでありますから、中期経済計画を変える計画経済をやって、これに年次計画をつけてやっておるわけではありませんので、総理がどういう気持ちで言われたかわかりませんが、中期経済計画を変えて八・一%を一〇%にするとか、八・一%を七%平均にするとか、こういうようなことで中期経済計画の改定を考えておることではないと思います。中期経済計画を閣議で了承しましたから、これを割り返してみると、大体五年同の平均がこのくらいになる、そうすると、ことしの予算とことしの経済の伸び方とどのくらいの開きがあるだろう、こういうことは一つの指標として比較はできますし、どうしなければならぬかということはできますが、中期経済計画そのものが仮定の目標を立てて、そうして逆算をして集積をすればこういうものでございますというものでありますから、これを変更するというなら指標を変えるということになるわけでありまして、一部報道されておるように、中期経済計画そのものを変えるという考え方で論議をしておるわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/34
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035・西田信一
○委員長(西田信一君) ちょっと、予定時間が十二時半までということで、衆議院の関係もありますので、予定時間も過ぎておりますので、なるべく御質問はそのおつもりで簡潔に願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/35
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036・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それじゃ、大臣、時間もないようでありますから、またその他の質問については大臣以外の政府委員から伺いますが、確認をしておきたいことが一つあります。
それは、七日の本委員会で運用預かりについて質問いたしましたところ、松井局長から、大蔵省としては規制の方針でこれを規制する、運用預かりを規制する方針で進むつもりであり、いますぐにこれを廃止するということはいろいろな問題があるからむずかしいと思うけれども、不健全な要因を包んでおるのでこれを規制する方針でいくのだという御答弁をなさっておられるわけです。この運用預かりの問題は、意外にその後、私の知っておる範囲においても証券界、あるいはまた新聞等においても相当敏感な反応を示しておるように考えられますが、この運用預かり自体について当局の責任者としての大臣はどういうお考えなのか、これを確認という意味で、先ほどの松井局長の言明の確認という意味を含めて、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/36
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037・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 詳しくは松井証券局長から申し述べておると思いますが、基本的な考え方といたしましては、証券業者の正常金融の立場からは運用預かりというようなものは漸次整理していくという方向が正しいという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/37
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038・鈴木市藏
○鈴木市藏君 現在の瞬間における質問でありますから、漸次というのは一体いつごろを想定しておるのか、あるいはそれを想定しておるとすれば、具体的にそういう措置をとり得るような条件というのは一体どういうことなのか、こういうことについて、いま少し実の入った御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/38
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039・松井直行
○政府委員(松井直行君) いま御帯磁願っております証券取引法によりまして、三年先には免許制ということに相なります。この関門を通過した業者だけが残るということに相なるわけでございますが、そのときに、いまおっしゃった課題は証券業者の本来の正常な業者金融というものはどうあるべきかということの基本に関する問題でありますので、そのときには業者の普通の商いがどんなふうにして行なわれるかということとあわせまして、どんな金融のルート、どんな規模の金融を考えておるのかということも業務方法書等に厳格に書かせた上で免許が行なわれることに相なろうかと思います。そのときまでに一応のめどをつけるべく、われわれいまからでも業者に対しましては、運用の趣旨に反した方法でもって金融が行なわれることを漸次整理してまいるとともに、そのときまでに、発行者側の事情もございますので、興銀等を中心にいたしまして金融債の発行自体あるいは発行の条件自体とも関連して、そのときまでにはある程度の見通しをつける必要がある、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/39
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040・鈴木市藏
○鈴木市藏君 かなり具体的な答弁をいただいたわけですが、この今度出されたあなた方の法改正の免許に関する三つの条件ですね、この三つの条件のうちの第一の条件と第二の条件に該当するような証券会社というのは、いまありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/40
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041・松井直行
○政府委員(松井直行君) お答えを申し上げます。
第一が財産状況であります。第二が人的構成の問題であります。
第一の問題につきましては、すでにこの前ここでもお話し申し上げましたし、それから鈴木委員から特に要求資料がございましたので本委員に資料としてお出ししてありますとおり、三年の不況が続いてまいりましたから、決算状況の苦しいことは御存じのとおりだろうと存じますが、過去におきまして蓄積もございます関係上、現有におきましても相当程度自己資本を持っているという業者もございます。全部が全部いま財産状況がオーケーかと申しますと、まだまだ弱い業者もおるわけでございますが、いま鋭意経常収支が合うようにというふうに努力いたしておりますので、経営の基本方針を切りかえ、ぜい肉を切り、正常な経営をやろうとしておる業者につきましては、大いに期待が持てるというふうに考えております。
それから、人的構成におきましては、漸次、営業状態が悪い、あるいは営業のしっぷりが悪いというものにつきましては問題を現に起こしておるわけでございまして、そのつど経営者の交代というものもあるわけでございまして、また一世から二世への世代の変更ということもございまして、漸次、昔のいわゆる株屋的センスを持った古い経営者というものは排除されつつあるというふうに私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/41
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042・西田信一
○委員長(西田信一君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/42
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043・西田信一
○委員長(西田信一君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/43
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044・鈴木市藏
○鈴木市藏君 そこで、いま松井局長のほうから話がありました資料に基づいて二、三お伺いしますけれども、三月の仮決算がわれわれの手元には来ていないのだけれども、大蔵省の手元に来ていると思いますが、九月期決算に比べて実態は良好の方向に向いているとは、これは大体推測はできないと思うのです、ぼくらも。したがって、いま手元に来ていないので、あるのは九月期営業決算ですから、九月期の決算に基づいて質問をいたしますけれども、この九月期の決算、特に衆議院の同僚議員の資料要求によって出された四大証券の九月期決算の内容というものは、これは非常に悪い。特に一般的に悪いということを言っているだけではなくて、証券取引法の第三十四条の一項に該当するようなそういう性格を持った悪さというものが感じられるが、これについて大蔵当局としてはどういう一体考えあるいは処置をとろうとしたのか、いままでとったとすれば、とったのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/44
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045・松井直行
○政府委員(松井直行君) お示しのとおり、昨年一ぱいの不況に続きまして、今年に入りましてから、一月あるいは二月の中ごろまでは幾分、東京の市場の一日の出来高をごらんになりましても、一部復活といいますか、ある程度活気が盛り返したかに見えましたですが、三月、四月は依然として一日の出来高が大体七千万株前後ということでございますので、一千四年、五年、六年、証券界が過剰投資をいたしまして、店舗なり人員なりが非常にふくれ上がったという状態から見ますときには、なかなか経常収支さえ合いにくいということはごらんのとおり、だろうと思います。幸いにして、去年一年間に急速に合理化が進められつつあります。人員、それから店舗の縮小等につきましての数字もお上げしてあるとおりでございまして、経常収入の中の手数料収入と、それから経常の経費ですが、一般の営業経費をまかなっております経常経費と、手数料を中心にいたしました経常収入とを比べてまいりますと、去年一年とことしに入りまして企業の合理化が相当進んでおりますので、いずれもこの状態は改善されてきております。ただ、一般の企業と全く同様に苦しんでおりますのは、非常に借金が多い。この金利の支払いに追われるということでございますが、これにつきましても保有有価証券の縮小なりあるいは店舗の縮小、不動産のぜい肉の切り落としということでもって、金利負担の軽減にいま専心いたしておるわけでございまして、いまおっしゃいました三十四条によります営業用純資本額の負債倍率二十倍をこえておる業者は何件あるかということでございますが、われわれのいま手元に持っております四十年二月末の現在で申し上げますと、会員、非会員合計いたしまして四百八十二社のうち、二十倍をオーバーしておりますのは七件、いま持っております資料ではそういうことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/45
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046・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それについて、三十四条の一項に該当するのが出ると、当然大蔵省は四十条の一項によってそれにしかるべき措置をとらなければならないということは、法的に規制されているわけですね。やりましたか、それを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/46
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047・松井直行
○政府委員(松井直行君) 負債倍率を超過しました業者に対する処分につきましては、いまお示しのとおり、四十条に規定がございまして、営業停止等を命じその期間中に是正をさすという措置をとる必要上、必ずその前に検査に入っております。一ぺんに、ただ瞬間的にこえたからといって、これを全部発動して登録取り消しということまでいくのが不適当なときには、この四十条の精神にのっとりまして、営業停止期間中に善後策を講じさせ、もう一ぺん検査をして確認をした上で、必要がないときには営業停止を撤回するという措置をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/47
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048・鈴木市藏
○鈴木市藏君 その四十条一項の規定を発動して、大蔵省としては検査を行なったと、こう了承してよろしいのですね。
それで、その検査を行なった中で、特にこれではいかぬと、どうしても営業停止のところまでいかざるを得ないというふうに見れる会社、あるいは是正の処置を講ずることによって、それはいま少し時期を待つならば立ち直るであろうと見込まれるもの、こういったものの、そのあなた方が行なった検査の結果を、これは明らかにしてもらいたい。これは特定の某々会社という名前をあげる必要はないと思います。しかし、その検査の結果がどうであったのか、これを明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/48
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049・松井直行
○政府委員(松井直行君) いまここに持ち合わせておりませんが、いつからいつまでの検査について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/49
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050・鈴木市藏
○鈴木市藏君 いつからいつまでではない。四十条の一項に基づいて発動した検査。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/50
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051・松井直行
○政府委員(松井直行君) ですから、それは三十九年度から現在に至るまでか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/51
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052・鈴木市藏
○鈴木市藏君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/52
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053・松井直行
○政府委員(松井直行君) その範囲を確認させていただきまして、必要な資料をつくってここへお出ししたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/53
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054・鈴木市藏
○鈴木市藏君 委員長、まだ質問ありますけれども、残っていますけれども、どうしますか。これお昼からやりますか。——私は質問を続行中ですけれども、昼から委員会やると、そういうことですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/54
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055・西田信一
○委員長(西田信一君) それでは、午前はこの程度にし、午後二時再開いたします。
暫時休憩いたします。
午後零時五十二分休憩
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午後二時二十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/55
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056・西田信一
○委員長(西田信一君) 委員会を再開いたします。
午前に引き続き、証券取引法の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を続行いたします。
御質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/56
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057・鈴木市藏
○鈴木市藏君 午前に引き続き、本法案に関して質問をいたすわけですが、先ほど松井局長のほうから、三十四条一項に規定されている事項に抵触するようなものが四百八十二社のうち七件あるという答弁がありましたですね。この七件というのは七社と解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/57
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058・松井直行
○政府委員(松井直行君) 仰せのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/58
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059・鈴木市藏
○鈴木市藏君 したがって、これは当然四十条の一項が発動されて、大蔵省としてもしかるべく係官を派遣するなりなんなりして調査を行なった、そういうふうに理解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/59
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060・松井直行
○政府委員(松井直行君) おっしゃるとおりでございます。
ちょっと発言させてもらってよろしゅうございますか。先ほど資料を調製して御返事を申し上げると申しました四十条の負債額関係を中心とした検査及び処分の状況でございますが、事務局で資料を集めまして口頭で御返事できることになっておりますので、安川課長から御返答させてもらいたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/60
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061・西田信一
○委員長(西田信一君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/61
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062・安川七郎
○説明員(安川七郎君) 御説明申し上げます。
三十九年度中に証券業者を検査いたしました検数が四百四十一件でございます。そのうち内容によりまして審問をいたしましたものは五十件、審問の結果、内容が改善いたしましたために処分をしないで済みましたものが二十二件。そこで、残りの二十八件は行政上のいろいろの処分をいたしたわけであります。二十八件の内訳といたしましては、登録の取り消しをせざるを得なかったものが十四件、それから営業の停止の処分をいたしましたものが十四件。以上のように相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/62
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063・鈴木市藏
○鈴木市藏君 二十八件の行政上の処分はそういう形でやった。で、五十件のうちの残りの二十二件、この内容の調査を行なったその結果については、大蔵省としては確信を持っているわけだな。行政上の処分をしないという確信を持っているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/63
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064・安川七郎
○説明員(安川七郎君) 審問をいたしました五十件の内容は、ほとんどにつきまして資力の薄弱という点があります。そして二十二件の処分いたしませんで済みましたものは、資力の薄弱の点が解消いたしたということで処分をしないで済んだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/64
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065・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それはあれですか、九月期決算の実情を見てそういう判断をされたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/65
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066・安川七郎
○説明員(安川七郎君) これは会社の九月期の決算ということではございませんで、三十九年度中に現実の臨検検査をいたしました四百四十一件の中から、臨検検査の結果拾い上げられました五十件でございます。したがいまして、すべて実体的な検査に基づいておるわけであります。そういたしまして、審問をいたしまして内容が改善したかどうかということは再度検査いたしまして、確認の上いろいろの処分の処置をするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/66
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067・鈴木市藏
○鈴木市藏君 この五十件の内訳について、これはなかなかあれでしょうな、各社ごと名前をあげて云々というわけにはいきませんか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/67
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068・安川七郎
○説明員(安川七郎君) これは元の会社の個別の検査でございますので、個々の会社の内容は差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/68
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069・鈴木市藏
○鈴木市藏君 法律の条文で明示されている事柄ですから、これについてある種の手心とか社会的事情によってこれを他の方法でとかいったようなことでなしに、三十四条及び四十条は明記されている明文ですから、これに基づいてやはり厳正な態度をとるということが投資家保護及び証券民主化の趣旨に沿っていくことじゃないかというふうに考えられるので、こういう点について今後、つまり是正保全の処置を講ずるにあたってどういう方針あるいは態度で臨むのか、大蔵省の考え方を聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/69
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070・松井直行
○政府委員(松井直行君) 御存じのように、現在は登録制でございまして、要件に当たれば証券業の営業ができる。そのかわり法的要件を欠除すれば登録取り消し等の処分を受けまして営業ができないということに相なっております関係上、いまおっしゃいましたように、要件違反者というものは厳正に整理される、あるいは処分されるというのが法のたてまえであろうと思います。そういう趣旨にのっとりまして行政処分をいたすことには間違いはないところでございますが、実際検査をいたしまして審問しなければならない対象物件につきましては、もうその段階で、それ以上存続さすことによって投資家に一そう迷惑がかかるものかどうか、あるいは短期間に新しい資本主をさがしてきて元入れするとかあるいは合理化が行なわれるとかの方法によりまして、短期間に是正される見込みがあるものかどうかという判定に重点を置きまして、御存じのとおり非常にうしろあるいはまわりにおります投資家が多うございますから、再起の見込みが、しかもそれが短期間に入るというものについてまでばさっと処分することによって、債権の確保がある程度待てばできる投資家にまで不測の損害を与えるということはあまりひどい場合もございますので、その辺のけじめは十分考えまして投資家保護に資してまいりたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/70
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071・鈴木市藏
○鈴木市藏君 松井局長、非常に抽象的な答弁で、それではだめなんです。具体的にどういうような行政指導を行なっているのか、また行なおうとしているのかですね、あるいはこの問題については、再度、つまり共同証券なり保有組合なりをつくったああいうような形のものまで必要とするようなことも考えているのかどうなのか、あるいはもっと個別的な、たとえば会社において更生の道を個別的に指示というか、サゼッションしているというような、そういう具体的な点についての考え方を聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/71
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072・松井直行
○政府委員(松井直行君) 共同証券というお話がございましたが、この問題につきましては、先般大臣からもお答えがありましたように、昨年一ぱい続きました流通市場の機能麻痺を緊急に救うという意味におきましてとってまいりました非常手段でございますが、結果としてはどこまでも自由な市場の形成という観点から見まして好ましくないということと、それから非常に好ましくない、株式の供給者として非常に大きな重荷になっておりました技資信託というものの株式の肩がわりによりまして、これが市場への株の売り込みという要素も減ってまいってきておりますことが一つ、また金融の緩和的基調によりまして、従来法人筋が売ってきておりましたのが、こういう法人筋の売りによる圧迫というものもなくなってまいった現状におきましては、これは企業の収益力というものに関係があります株式の価値自体がいま問題になっておるわけでありますので、流通市場の機能回復という意味におきます一般的な昨年とられたようなああいう措置は、いまとる必要もないとわれわれ考えております。
ここで問題になりますのは、個別の証券業者の経営の内容の充実ということでございまして、三十五、六、七とほかの企業と同じように過剰投資してまいりました証券界におきましては、できるだけこのぜい肉を切ると、最後の指標といたしましては、たとえ昨今のように東京市場一日の出来高が減っておるというような状況でありましても、なお経常収支が黒で維持できるという段階にまでこれを推し進めるということを基準にいたしまして、証券業者の体質の改憲、経営の合理化を目標といたしまして、いま指導しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/72
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073・鈴木市藏
○鈴木市藏君 どうも具体的でないのですが、つまりかなり荒っぽい更生というか、それを考えておるらしい面がある。証券会社の一部では、かなり、これはまあ町のうわさに類する部分かもしれないんだけれども、この際思い切って半額減資と、それから金利はたな上げしてでもこの際更生をしなければならないといった事態にまできているということが、相当これは公然の町のうわさになっているような状況だが、一体大蔵省としては、こういう思い切った荒療治がいまとられるかもしれないという時期に際して、どういう考え方で個別指導に臨んでいるか、これを聞きたかった。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/73
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074・松井直行
○政府委員(松井直行君) 何ぶん三年間続きました不況でございますので、一般の企業並み、あるいはそれ以上に苦しい決算を続けざるを得なかったというのが、一般の証券界の実情でございます。特にその中でも早く合理化に着手いたしましたところはいち早く回復のきざしを見せてはおりますが、合理化の出発がおくれたところにつきましては、いま鋭意おくれを取り戻すべく努力しているところでございます。先ほども申し上げましたように、当面の経常収支をまず黒字にもっていくということに主眼を置いておるわけでございまして、このためには従業員一人当たりの手数料のかせぎ高を上げるということに集中し、かつ一人当たりの人件費、諸経費、一人当たりの営業経費の切り詰めをやるということに専念いたしておりまして、店舗数といい、従業員の数といい、すでにお示ししてあるとおりの非常に速いスピードで合理化が行なわれておる関係上、営業収支は非常な改善を見てきております。しかるに、一方、非常にたくさんの借金をかかえております。この金利負担をいかにして解消するかということは証券業の一番大きな問題でございまして、日本の企業全般も同じような苦しみに悩んでおるところでありますが、幸いにして、証券界におきましては店舗等の過剰投資が行なわれてきたという関係もございますので、不採算の店舗の整理あるいは持っております有価証券の圧縮等を通じまして、できるだけ金融収支におきます金利負担の軽減をはからすということが第二段の措置でありまして、いま鋭意この第二段の措置につきまして各証券業者も努力いたしておりますし、われわれの指導要領もここを中心にして行なっているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/74
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075・鈴木市藏
○鈴木市藏君 松井さん、だめだよ、あなたのいまの答弁では。つまり私はこの危機を切り抜けるために半額減資、金利のたな上げといったような、そういう荒っぽいことまでして切り抜けていかなければもたないと、そういう状態にまで来ているのではないかという事実について、大蔵省は一体どういう指導をしようとしているのかということを聞いているわけだ。あなたの言っている、つまり合理化、だとか店舗数だとか人数だとか、それはもう私は質問しないだって、資料から出ているからわかりますよ。つまりそういうような形の、いま言ったようなそういう形でなければ切り抜けられないというような事態、そういうふうな内容について、大蔵省もこれはつかんでいるはずだと思いますが、どういう処置をとろうとしているのかと。これは具体的に銘柄を一々あげて聞けば非常にわかると思いますけれども、それは先ほどちょっと一々名前をあげることはまあはばかりたいという答弁があったから、それはそれとしても、しかし、そういうふうなところまで来ているという事態に対してどうするのかと。いままでは登録だったが今度はそれを免許にすると、こういう法改正になっているわけだ。免許にして、免許を許すような銘柄の会社にもしこういうような事態が起きたとしたら、一体これはだれが責任をとるのか。これはぼくは免許に該当しないと思うんですよ。もしこういうことをやろうとする会社があるとすれば、またやらざるを得ない会社があるとすれば、当然そうだと思うんです。だから、そういう場合に対する当局の考え方を聞いているのであって、もっと具体的に腹を割った答弁をしなければ、これはだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/75
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076・松井直行
○政府委員(松井直行君) 先ほども申し上げましたとおり、三年先には免許という大きな関門がございます。現存の証券業者も、できるだけ条件に達するように一生懸命につとめておるところでございますが、間々少数の証券業者等につきましては、いまおっしゃったように相当思い切った処置をすることによって過去の赤字の穴埋めをするということも必要になってくるかもしれない業者もあろうかと思います。しかしながら、この際われわれといたしまして気をつけなければいけないのは、現有勢力を動員いたしまして、あるいは経営者がかわりまして、再起の見込みといいますか、回復の見込みが十分あるものと、それからないもの、ないものにつきましては、これ以上投資家に損害をかけるようなおそれのある状態のままで放置しないほうがいいものと、両方あると思います。後者のものにつきましては、会員等に関係しましては、現に東証等におきまして一億何千万かの廃業手当をあとに残った業者が負担するという方法で支給することによって平穏無事に廃業するという道も開かれておるわけでありまして、現にこういう道で廃業もし投資家に迷惑をかけずに消えていった業者もあろうと思いますし、今後もあろうと思います。十分再起の見込みがあるものにつきましては、あるかどうかは現状のこの少ない取引下におきまして、なお少なくとも経常収支について十分合っておるかどうか、あるいは近々に合わせ得る見込みがあるかどうかということに重点を置いて判定するわけでございます。そういうものにつきましてある程度の見込みが立ち、証券市場に対する一切の不安もなくなり、市場が正常化いたします機会に、いまおっしゃったような特別な措置をとることによって新しい資本を導入するという形で更生をするという会社もなきにしもあらずとわれわれは考えております。そういうところにつきましては、たいがい経営者の交替がございます。したがいまして、にわかに決定的なことはなかなかとりにくいということのほかに、やっぱり証券業というものは信用を重んずる機関でございます。それから、多数の従業員もかかえておるところでございます。市況全般につきまして、そうした思い切った措置というものが行なわれてもいささかの不安もないという時期をつかむ必要のあることは、これは経営者の責任として最も慎重に考えるところであろうと思いますので、そういう時期に参りますならば、おそらくそうした思い切った措置をとることによって一挙に過去の埋め合わせをするという企業も起こってくるのじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/76
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077・鈴木市藏
○鈴木市藏君 私は、投資家保護の立場からという観点から見れば、実態を明らかに示して投資家に選択の自由というか、それを与える機会を保障するということが最大の保護だと思うんですよ。めくらにしておいて口車に乗せてということはよくないですから、だから、そういう立場で私はかなり大蔵省としても思い切った、つまり実態を明らかにする、そしてこれに対する是非の判断は投資家の自由な判断にまかせるという立場に立つようにすべきではないかという観点から、いま言ったような問題を質問しているわけです。
それで、大蔵省のほうが出してきたこの資料で見ますと、これは三月の仮の営業報告はまだ手元に来ていないとさっき言っていましたね。これを、手元に来たら資料として出してくれますか。これが一つと、それから九月期の営業報告は来ていますわね、これ。特に個別にかなり明細にわたって来ているのは四大証券ですよ。四大証券のものは来ている。この四大証券の来ている中から見ても、この資料から推して考える点は、先ほどちょっと引き合いに出しました三十四条の一項に抵触していると考えられるようなものが、あなたのほうから出されてきた資料の中からうかがえるのだけれども、これ自身に対しては一体どういう考え方を持っておられるのか。これはいわゆる中小といわれるものとわけが違うのですからね。相当この四大証券の独占率は高いのですから、したがってその波及するところも非常に大きいと思うのです。これがつまり三十四条の一項に抵触すると。九月がすでにそうだったと。三月がこれ以上好転しているということは、おそらく考えられない。いま具体的な数字はありませんけれども、考えられない。これは一致した常識だと。言うならば、九月、三月と、こういう時期において、三十四条の一項に抵触するようなものが公然とした資料として、委員会に提出されているという時点において、一体大蔵省はどういう法的な立場でこれを考えようとしているのか、どういう処置をとろうとしているのか。この辺のところをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/77
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078・松井直行
○政府委員(松井直行君) 大きな証券業者は取引しておりますお客層が非常に広うございますので、証券業者の存立、存廃ということが非常に大きな影響を持ってくるということは、お示しのとおりでございます。しかし、大きいから、あるいは小さいからといいまして、この証取法の規制について差があってはならないのが当然でございまして、われわれといたしましても、そういう面で不公平な行政をやっておるつもりもございません。また、やるつもりもございません。
それから、三十四条の営業用純資本の額と負債の倍率の問題でございますが、三十九年九月期の営業報告書によりますときには、いずれもこの大きな証券業者で負債倍率を超過したものはございません。ただ、その後の情勢についてどうなっているかという御質問であろうかと思いますが、実はこの三十四条というのは流動資産と流動負債とを比べてみまして、流動資産が流動負債を超過する部分ですね、これは営業用純資本と言っていますが、この営業用純資本の二十倍をこえて流動負債を持ってはならないというのが、規定でございます。一種の短期資産と短期負債を比べてみまして、支払い能力に十分な担保をとろうということでございますが、実は、これをまあ今回の証券取引法の改正で一部この扱い方を変えておりますのは、短期の負債でありましても、それを取引銀行、あるいはまあ銀行その他相手方と十分話がつきまして、適正な担保がつき、短期の負債を長期の負債に振りかえてもらえるということに相なりますと、三十四条の規定が改憲され、状況が改善されるということに相なっておりまして、現行法による負債倍率が超過するという証券業者にありましては、みずからの力で鋭意金の貸し主と交渉いたしまして、短期の借金あるいは短期の有価証券の借り入れを長期の借り入れに切りかえるということでもって、法違反の状態が起こらないようにしているものと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/78
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079・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それは一つの考え方だよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/79
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080・松井直行
○政府委員(松井直行君) しかしながら、そういう方法によることだけでもってわれわれ安全とは見ておりませんので、今度の証取法の改正につきましては、この条文を受けました同じ項目でございますが、正味資産に対する総負債ということでもって規制のしかたを変えようと、こう言っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/80
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081・鈴木市藏
○鈴木市藏君 あなたは、ないと、そう言う。つまり法に抵触するのは大会社の経理内容から見てないということを断言しましたけれどもね、まあこれは私は非常にあなた、思い切ったことばだと思いますよ。そうして、大体いままでの状況から見て、そういうふうなものに抵触しないように、数字上の二、三の、そういったと思われるような二、三の操作が行なわれてはいないかという懸念がずいぶんあるんですよ、これは。私は大蔵当局としても、かなりそういう点については実情を、あるいは四十条に基づかなくとも、それとなく知っておるはずだと思うのですがね。答えられなければ、これはまた他に質問を変えていかなければしょうがないですけれどもね。そういうことであるだけに、より大きな破綻を来たさないうちにやらなきゃだめですよ。山陽特殊鋼のようになってしまってからではもうおそいんだから、まあそういうことを厳重にひとつこの問題については警告をしておいて、次の質問に移りたいのです。
共同証券について一、二だけお聞きしたいと思うけれども、ちょうど昨年、いわめる共同証券、保有組合が株式の買いに出動した当時、IMFの会議を開いていたはずだと思う。そのIMFの会議で、公式の議題になったとは私も記憶してはおりませんけれども、つまり日銀が、中央銀行が、こういう形でこうこうで株式に貸し出しを行なう、ストレートの資金で行なうということは、中央銀行の使命から見てどうであろうかという意見、疑問が出された。そのことのために、当局としても、こういう共同証券というふうなものにいまのような形の資金をいまのような形で出すということは国際信用上も思わしくないということで、一時これはシャッターをおろすということに至った一つの理由になっているということを聞いておりまするが、この事実ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/81
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082・松井直行
○政府委員(松井直行君) 私の知る限りのことについて御返答申し上げたいと思いますが、昨年秋に行なわれましたIMFの日本の大会の席上で、公式に、日本の市場を救済するためにこうした特殊な措置をとっておることにつきまして論議あるいは話題になったことはないと思います。
ただ、外国の経済両者等が相当日本に入っておりまして、ロンドン、ニューヨーク等に電報を打ちまして、日本の証券市場の機能回復のために非常に特殊な措置が行なわれているというふうに電報した事実はあります。そのときには、日銀からの直接融資というより、むしろ国家的な資金と申しますか、国家的な手でささえておるという意味にとって、電報をそれぞれの本国に打ったようにわれわれは考えております。
一方、日本政府の大どころにおきまして、せっかく外国の政府筋の経済担当者が集まっているときでもありますし、あるいは外債を相当発行いたしておるときでもありまして、日本の市場が非常に悪いということはひいては外国で発行しておる証券の値下がり、あるいはひいては追って外国で新規に政府保証債以下あるいは民間債を発行しますときにも大いに影響があるという配慮でもって、日本の資本市場というものが外国の経済人が大ぜい日本におる間に非常に不安な状態に陥らないように特殊な考慮を払う必要があるというふうにお考えになった事実はあろうかと思います。現に日本共同証券等が夏以来活発に活動を開始しておったのも、一部にはそういう配慮が行なわれておったんじゃないかと私は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/82
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083・鈴木市藏
○鈴木市藏君 こういう事実がないというお説ですけれども、必ずしもそうとばかりは覆えないんじゃないかと思います。まあロンドン・エコノミストもそういうことを育っておりますが、最近伝えられる情報によりますと、まあOECDの部会でもこの問題について日本の実情の調査というようなことが伝えられているようなありさまですから。
そこで、共同証券等に対する、つまりいまの凍結された約四千億に近い株に対して、株主権の一体発動というものが考えられるではないか。一体これはどういう——もしこの株主権の発動ということになれば、おそらくこれは筆頭株主だろうと想像できるわけですね。一体これはどういうことになるであろうか。で、この点について、これはそのときの規約、約款というか、そういうものによって株主権の発動はしないのだと規定をしてあっても、現実に山陽特殊鋼なんかの場合はやはりある程度の株主権の行使を考えざるを得ないといったような事実も伝えられるところを見ると、この凍結した株はどういう権利性というものを持ってくるのか、この辺についての考え方を聞いておきたと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/83
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084・松井直行
○政府委員(松井直行君) 日本共同証券の性格につきましては、その設立の趣旨あるいは業務運営の基準等に関しましてここで何べんも御説明申し上げましたとおり、有力な企業、まあ投資採算に合うものを中心に持っておりますが、投資採算に合う日本の有力企業の株を持つということによってその企業を支配しよう、一種のホールディング・カンパニーとしての性格を持とうということは全然考えていないところでございます。したがいまして、この定款にきめる以外に、業務運営の方法として業務運営基準というものをこの会社内部でつくっておりまして、その第六項に、保有株式の議決権の行使という項目がございますが、ここにこう明示されております。保有株式の議決権の行使は、証券投資信託の受託会社が現に実施している方式に準拠するということでございまして、原則として発行会社に白紙委任をする、みずから株主権の行使は行なわないというのを、原則にいたしております。
ところが、いま特定の投資先の企業の名前があがりましたが、その企業の財産処分なりあるいは収益分配等につきまして、株主間におきましてあるいは協定ができるとか、あるいは財産処分の基準が行なわれるとかというときには、やはり投資した証券の価値の保全という観点から、場合によっては一株主として発言することもあろうかと思います。きょうの新聞報道によりますと、日本共同証券におきまして、そうした——日本共同証券でございましたかあるいは保有組合でございましたか、正確には覚えておりませんが、本来株主権の行使はやらないんだけれども、場合によってはやらざるを得ない場合もあるという記事が出ておった所でもありますが、われわれも詳しい事実はまだ承知いたしておりません。性格としては、いま申し上げたとおり、投資信託受託会社と同じ運営をやるということが原則に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/84
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085・鈴木市藏
○鈴木市藏君 まあ実情においてそういうことが行なわれる、要するに株主権の行使が行なわれるということは、この株主権の行使をしないということを明示した定款との間に一体どう関係になってくるのか。もしそういう事態が今後も起きるとするならば、この定款があるにもかかわらず、やはり実際上においてはそうせざるを得ないのじゃないか。そういう場合における大蔵省のひとつ考え方を聞きたい。これが一つ。
それから、もう一つは、いまのような状態で凍結を続けていくとするならば、やはり先例と言っちゃおかしいけれども、イタリアにおけるイリみたいな形で、結局国家が株主になっていかざるを得なくなるのじゃないか、こういうふうなことも当然予想される事態の中で無理からぬ方向として大体考えられるのだが、そういうものとして理解しておいていいのかどうか。今後の共同証券の改組の見通しを含めて、この二点についてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/85
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086・松井直行
○政府委員(松井直行君) 第一点でございますが、日本共同証券につきましては、株主権行使は業務運営基準に書いてございます。それから、保有組合につきましては、約款にはございませんが、理事会で、日本共同証券と同じ運用をするということを決定いたしおるようでございます。したがいまして、例外的にどういう場合に株主権の行使をする必要があるのかどうか、具体的にわれわれとよく協議をさしてもらう機会をつくりまして、株主権の行使は必要やむを得ない場合、つまり自己の投資物件の保全をはかるに必要にして十分な限度に制限すべきものとわれわれ考えておりますので、ケース・バイ・ケースによってわれわれ相談に乗ってもみたいというふうに考えております。
それから、日本共同証券を将来一体どうするのかというお話でございますが、これも先般ここで申し上げたところでございますが、なかなかむずかしい問題でございまして、おそらくここ二年、三年、ちょうど保有組合が三年間の存続期限を一応約款できめておりますとおり、日本の流通市場というものが完全に正常化いたしまして、共同証券なり保有組合が持っております株式が真実の意味における投資家の手に分散されて消化されるという時期がそう容易に来るとは思われませんので、そのときまではまだ存続の必要があろうかと思いますが、最も普通の場合を想定いたしますと、資本市場の機能回復、それから投資家の投資資力の充実という時期を待ちまして、そうした一般投資大衆の手に消化されるか、あるいは生保、損保、投資信託その他の機関投資家の手に、これもそうした機関投資家の手に消化されてしまうかという形で発展的解消をするということが考えられるのじゃないかと思います。巻間いろいろな学者がいろいろ説をなしておりまして、そうした全く自由な市場に返えれない、まだ特殊な要請が別にある場合には、いろいろな形に脱皮することが考えられるとされておりまして、その一例といたしましては、現在の投資信託がすでに魅力を失っておるということとも関連をいたしまして、新しい形の投資信託として脱皮する方法はないかという案もございますし、あるいは中央銀行の金融調節の一つのエージェンシーといいますか、機関といたしましてこれを使って、たとえば社債のオペレーションをやるというようなことも将来必要になるとすればこういう機関を使うということも二つ考えられるのじゃないかというような仮定の論議も行なわれております。
それから、最後におっしゃいましたイタリーのイリ的なものになるかならぬかということでございますが、これは日本経済の運営についての基本的な姿勢といいますか、一体国家管理での企業でいくのか、自由企業主義でいくのか、非常に大きな観点からも分かれるところでありまして、御存じのとおりイタリーは非常に民間の資本蓄積というものが少のうございます。しかし、基幹産業は何としても国家的な援助で長期の資金を調達する必要があるというわけで、電信電話、それから造船、製鉄、機械等につきましてイリという国の息のかかりました株式の保有会社がありますが、これはイタリーの経済あるいは風土の特殊事情によってこういうものができておるのではないかと考えております。日本におきましてはたしてこういうものが必要かどうか、これは日本経済の運営についての基本的なものの考え方によって分かれるところではないかと思います。少なくとも自由主義経済を標榜する以上は、堅実な個人投資家と機関投資家に日本の企業の株式を中心といたします長期資本はになってもらうというのが原則ではなかろうかといま考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/86
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087・鈴木市藏
○鈴木市藏君 この問題については今後そのあれを見つめていきたいと思うのですけれども、ちょっと午前中の質問に戻るようですけれども、運用預かりについて二、三聞きたい点があります。
この運用預かりの、実態についてあなたのほうから出された資料を見ますと、数字的にはつじつまが合っているわけですね。あなたが先週答弁なさったところを見ると、七五%は運用に充て、それから二五%は留保に充てるというような形で御説明をなされましたけれども、この数字はそういうものとして何かつじつまが合っているようには見えますよ、確かに数字は。しかし、これは実態に基づいての調査の結果出された数字なのか、それとも言うならば運用十九社の数字上の報告に基づいてここに書いたものか、私はおそらく後者じゃないかと思いますけれども、これについての実態の調査というのはやったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/87
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088・松井直行
○政府委員(松井直行君) 先週御説明申し上げました数字は、四十年二月末の業者からとった資料でございます。これは運用十九社の実態を把握いたします際の、より金融力をつけるというルートとしても非常に重要なポイントでありますので、定時的に報告をとっておるところであります。これは業者が自発的に報告してきた数字でありますが、証券業者を検査いたしますときには、現場に臨検いたしまして帳面をひっくり返し、あるいは金庫を見るというわけでございますが、特に運用預かりの状況、売却処分という不当な方法をとっていないかどうか、あるいは二〇%以上という支払い準備が厳格にあるかどうかということにつきましては最も注意して厳重に調べておるところでありますので、この報告には間違いはないものとわれわれは信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/88
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089・鈴木市藏
○鈴木市藏君 あなた、そうおっしゃいますけれども、あなた自身の答弁があり、きょう大蔵大臣がそれをさらに確認したような答弁において、運用預かりというこれは早晩漸次的に整理すべきものだという御答弁をなさっておる事実から見て、やはりこれは好ましくないものだ。したがって、あなたの先週の答弁の中には、不健全な要因もあるということを言われておるが、実態調査に基づいて、運用預かりの不健全なといわれるものの具体的な例ですね、おそらく調査をなさっておるはずですから、具体的な例はあるはずだと思うので、それをひとつ示してもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/89
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090・松井直行
○政府委員(松井直行君) 不健全な例とおっしゃいますが、先ほど私は最近はこれを売却処分をしている例はないと申し上げたのでございますが、過去には実は担保に差し入れするというよりも、むしろ売却したという例もございました。御存じのように、運用預かりは一種の消費寄託契約でありまして、お客さんから預かった同一のものをそのまま返す必要はない、同一の性質の、主として、これは金融債でございます、金融債を返せばいいというわけで、非常に証券業者が困ったような場合には、昔売ったような例もございましたが、現在はそういう例は検査の結果に基づきましてもほとんど皆無に近い状態に相なっております。
しかし、これが不健全だと申しますのは、本質的にこういう点についてわれわれ言っているわけでございます。金融債をお客さんに消化しますときに、お客さんがそういう金融債の券面を見ずにそのまま証券業者が預かっちゃうという場合もあります。つまり、無担保で有価証券を借りる。しかも、その有価証券の性質たるや、いつでも現金にかえられる、むろん担保としては非常に有利な担保として使えるというものを、無制限に無担保でお客さんから信用供与を受けるということでございまして、市場がわいておるときに、証券業者が自己売買を盛んにするために必要な資金源というものを、こういう方法でもって不当に自分の企業に投入するということでもって、不健全な経営をやるというおそれが多分にあるわけでございます。結局リミット内といいますが、リミット内ということばは不適当でございますが、わりあいに簡単に資金が集められ、それが証券業者の不健全な商いに使われるおそれのある一種の金融方法である。要するに、そういう本質から、制度としてわれわれこういうものは証券業者の健全金融のあり方から見てよほど考えなければならぬ問題だということを申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/90
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091・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それはあんた、おかしいよ。あんた、それは自然発生的にできたものじゃなくて、大蔵省の認可事項なんです。あんたが言っているように不当なものであり、そういうおそれがあるということを言われるならば、認可事項だから、これは大蔵省の責任じゃないですか。ものの道理からしてそうなっておる。しかし、これが今日このような状態に発展してきた諸経過を見れば、既成事実を大蔵省が認可したということにもなるでしょうけれども、当然今日この問題が取り上げられなければならなくなってきたということには、それだけの事実が背景にあって、そうして初めて大蔵省としても、長年の慣行としてこれを認可していたにもかかわらず、不健全だからひとつ整理の方向に向かうということになったんではないかという、大体それが論理のつじつまに合っているはずです。したがって、おそれがあるというような一般的な概念でいうならば、初めから認可しなければいい。だから、私はあなたが先週に答弁をしたことがほんとうであって、事実において売却の例はないと言われているが、そうではなくて、ほんとうのことをいったら大部分は食ってしまって、からになっているのじゃないか。そうさえ疑られるようなことにまでなりかねないような、あなた自身の発言から必ずしもそうだというふうに言うわけではないけれども、そういうことのおそれは、むしろ制度として、本質的なおそれではなくて、現にそういうことをされているということの裏づけのあるあなたの発言だというふうに、どうしたってとれる。で、その辺のところで売却した例は最近においてはないということは、これはちょっと私は納得しかねる答弁だというふうに思うわけです。
そこで、聞きますけれども、これは無担保で、しかも無記名で、金券にひとしいようなものですから、これを預ける人の保護ですね、預け人の保護をどのような形でやられるのか、あるいは現在考えているのか。これをひとつ、三つの項目に分けますから、答えてもらいたい。
第一は、行政指導上どういうことを考えておられるのか。第二ですが、もしこの金融債について、何も預けている人は現物をもらわなくったっていいのですから、解約というふうな形でこれが現金に変わって手に入ってくればいいのですから、おそらくそういう形になるだろうと思いますけれども、そういうことが一斉に行なわれた場合に、それはおそらくいまの状態では応じ得ないと考えられるが、そういった場合の一体金融上の処置についてどう考えるか。第三番目は、そういう好ましくないものを、なぜ一体今回の法改正の中でこれを規制するんだという方向に向かって明示しなかったのか。以上の三つの点をひとつ答えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/91
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092・松井直行
○政府委員(松井直行君) 当面の行政指導上は、現在よりもこの形における量をふやさないことが一点、それから、もっぱら担保の差し入れにしか使えないというのが二点、それから、いつでもお客さんの支払要求に応ぜられますように、支払い準備として二〇%以上保有するという三つの条件をつけておりまして、検査の際にもこの点に厳重な注意をして調べておるところでございます。
それから、第二は、これは仮定の場合で、もし引き出したら、どうかということでございますが、証券業者が、あるいは証券界が正常な運営をいたしております場合には、やはりある程度の相互の信用供与というものが行なわれておるわけでありまして、ちょうど預金が一斉に引き出されるおそれがないということと同様に、一般的な信用という秩序が維持されている以上は、必要な限度の支払い準備があればそれでいいのではないか。もし不安が市場全体に起これば、これはもうたいへんなことに相なることは申すまでもございませんし、一社につきましてもそういう不安が起こるというになりました場合には、これもたいへんなことでございますから、そういうことが起こらないよりに厳に注意をいたしていきたいと考えております。
それから、第三番目に、不健全な方法だからということで、法律ないし今回の政令についてどうして、明定しなかったかといりお話ではございますが、証券業者金融のあり方といたしましていろいろな方法、がございます。しかも取引の形態等によって、あるいは経済の変動等により、非常に流動的なものとも考えられるわけでございまして、証券業者の金融のルート自身を固定的にいまここで規定してしまうことは不適当であると。で、長年つちかわれてきましたとりとい経験の上に立って、証券業者の経営の健全性というものはこうあるべきだという一つの規範というものを積み重ねによってつくり出すという形におきまして、各証券業者にこれは徹底されるようにしたいという指導の方針をとりたいと思います。と同時に、最終的にはいろんな形における金融の道、借金の方法があるわけでもありますが、最後は総負債というものの限度を正味資産の何倍というふうに限定するという形で、すでに一般の企業についてこういうことが必要じゃないかということが論議されておる非常に重要なポイントでありますが、証券業者につきましては、そこに最終的な歯どめを置こうともいたしておりますので、それが最終的な担保になるものとわれわれ考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/92
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093・鈴木市藏
○鈴木市藏君 あと一つの質問で私は終わりますけれども、では、一体この刷り増し金融債の発行残高ですね、これといまのこの運用預かりとの比率について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/93
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094・松井直行
○政府委員(松井直行君) 資料を調べますから、ちょっと時間をおかしいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/94
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095・鈴木市藏
○鈴木市藏君 委員長、あとで調べてもらえばいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/95
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096・松井直行
○政府委員(松井直行君) 四十年の二月末で申し上げますと、主としてこれは割引金融債でございますので、それを中心に発行残高が六千二百六十三億でございます。それに対して運用預かりの残が二千六百三十億でございますから、大体四二%は運用預かりになっておるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/96
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097・西田信一
○委員長(西田信一君) 他に御発言もないようですから、本案につきましては、本日はこの程度にとどめます。
これにて散会いたします。
午後三時三十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X02619650511/97
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