1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年三月二十六日(金曜日)
午前十時二十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 天坊 裕彦君
理 事
竹中 恒夫君
林 虎雄君
委 員
井川 伊平君
大野木秀次郎君
中野 文門君
日高 広為君
前田 久吉君
松本 賢一君
二宮 文造君
市川 房枝君
政府委員
自治省税務局長 細郷 道一君
事務局側
常任委員会専門
員 鈴木 武君
参考人
東京大学教授 遠藤 湘吉君
東京都立大学助
教授 柴田 徳衛君
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本日の会議に付した案件
○地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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001・天坊裕彦
○委員長(天坊裕彦君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は、初めに、本案について参考人の御両人から御意見をお伺いいたしたいと存じます。
参考人お二方におかれましては、非常に御多忙中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございました。これよりさっそく御意見をお伺いいたしたいと存じますが、御自由にお話していただきたいと思います。なお、時間の関係上、お一人二十分程度にお願いいたしたいと存じます。また、委員の方々に申し上げますが、参考人の方々に対する質疑は、参考人の方々のお話が全部終わりましてからお願いいたすように運びたいと思いますので、御了承願いたいと存じます。それでは初めに遠藤湘吉参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/1
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002・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) ただいま御指名いただきました遠藤でございます。私は、税制調査会で提出いたしましたいわゆる長期税制に関する答申と呼ばれております、正式には「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」という答申の一部をなしておりますところの「地方税のあり方」という部分のあらましの考え方について申し上げてみて、それと、さらに現在国会に提出されておりますところの地方税法の一部改正という案との関連などについて申し上げたいと思います。御承知のように、私、税制調査会の委員会の末席を汚しておりまして、なるべくは委員会としての考え方を申し上げるつもりでおりますが、ときには一委員遠藤としての考え方がまじるかもしれませんが、その点はあらかじめお許しをいただきたいと思います。
この答申案全体は、申すまでもなく中央・地方を通じる税制の基本的な考え方というものを問題にしておるわけでありまして、その基本的な税制のあり方に即応して国税、地方税のそれぞれについての考え方というものもまた出てきているわけであります。したがいまして、その全体、つまり中央・地方を通じての考え方というものをまず申し上げることが順序かと思いますけれども、それをやっておりますと、たいへん時間が長くかかりまして、本委員会の本来の目的から多少はみ出すかと思いますので、それを割愛させていただくことにしたいと思います。ただ簡単に申しますならば、なるべく中央・地方を通じて、このシャウプ勧告以来すでに十五年の月日がたち、その間にいろいろな手直しが行なわれ、税制に多少の混乱もしくは混乱とまでいきませんでも適合、調和のとれていない点が出てきている。それをできるだけ直していこう、そうしてその直す場合にあたっては、今後数年間の経済、財政の動きに、できるだけ即応したものであらしめようと、そういう考え方でつくられておるわけです。
一応簡単にそういう前提を申し上げまして、地方税のあり方に入りたいと思いますが、地方税のあり方を考える場合におきましては、根本的には国と地方の間の事務の配分でありますとか、あるいは単に地方税制のみならず交付税のあり方、あるいは補助金制度のあり方、そういったものまですべて検討してみなければならないわけでございますが、そしてそういう問題については、調査会においても若干の議論はなされておったわけでありますけれども、何ぶんこれらのいま申しましたような問題につきましては、それぞれ専門の委員会も設けられておるところでありまして、それらの結論なども考えなければ、税制調査会だけで単独に何らかの方向を打ち出すことはできないだろうというようなこともございまして、いまのような総括的な、あるいは根本的な問題という点では、若干そのままに触れないで過ごされたという面があったのはまことに遺憾でありますけれども、現行の審議会あるいは委員会の制度からいって、やむを得ない点ではなかったかというように思っております。
それからいま一つの点でありますが、それは地方財政というものの明治以来のあり方というものを考えます場合には、やはり地方財政の窮乏あるいは地方税収入の、何といいますか、弾力性のない状態という現実がありますので、そういう点も無視することはできない。したがいまして、理論的にかりに筋を通そうとしても、そういう現実を無視するということは、やはり税制というものは生きた制度である以上不可能である。その点も考えまして、理屈から申しますと若干完全ではない、こういうようなこともありますけれども、いまのような現実を無視しないために、その点は多少妥協的な結論を出さざるを得なかったというような面もございます。そういった点で地方税のあり方が考えられておったわけですが、その内容といたしましては、やはり現在の地方財政というものを直視した場合に、何といっても財源が不足している。で、将来にわたって地方団体の財源を強化するということがどうしても必要ではないか。これが一つの根本的な考え方の柱になってきております。
それからその上に、さらに最近では政治、経済、いろいろな情勢の変化に伴いまして、地方団体の財政需要というものは非常に増加している。それからまた、その財政需要の増加の度合いにおきましても、各団体間でかなりの不均等と申しますか、そういうものが発生してきておる。ですから単に財源を強化する、一般的に財源を強化するというだけではなしに、そういった線も踏まえて、そうした情勢に適合するような形の財源強化というものがやはり考えられなければならない。これが第二の点になっております。
それからいま一つは、これはもうこの二、三年来すでに行なわれてきた点であります。一部分的には行なわれてきた点でありますが、国税の改正その他が直ちに地方税制にはね返る、いわゆる国税追随的な傾向というものを改めていかなければならない。いま申しましたように、この点に対する反省というのは、税制調査会でもすでに二、三年来出てきておるわけでありますが、それをさらにもう少し徹底させる必要があるんではないか、こういうことが第三の考え方になっております。
そのほかこまかく申しますといろいろございますが、それはこまかい点は別といたしまして、大体おもな考え方としてはそういった点がございまして、その上で個々の税目についての案というものが出されてきたわけであります。個々の税目について申しますと、すべての税目をことごとく十分に申し上げることは時間的に不十分でございますので、これはもう簡単に申し上げることを許していただきたいのでございますが、住民税でありますけれども、これはいろいろと問題がある点でありますが、一応の考え方としては住民税の負担の不均衡を是正するということと、それからいま一つ、この課税最低限の点について、これももちろん国税と全く無関係にそういうものをきめるということは筋の通らないわけでありますが、しかしながら一応、何と申しますか、国税の課税最低限というものをある程度上に上げていって、そしてその上げた、いわば残ると申しますか、その点について市町村民税、住民税の対象にする。従来は国税を課した上にさらにそこに市町村民税がかかってくるというようなやり方であったわけですが、将来は、所得の一定の部分については市町村民税を課し、それをこえた部分についてはその市町村民税の課税される部分をこえた段々において国税を課するというようなことが考えられるのではないかといったことを言っております。これが長期税制の住民税の考え方の特徴であろうかと思います。
それからその次は事業税でありますが、事業税につきましては、従来のように所得あるいは利益というものに、国税、地方税がいわば累積的に競合的に課せられるということは、必ずしも妥当ではないのではないか。それからまた、地方団体とその地域に立地しております企業等の関連から考えますならば、利益が出なければ課税をしないというような現在の事業税のあり方というものは、はたしてどうであろうかというようなことが問題になりまして、多少今後はその課税標準に付加価値的なものを入れていくということが妥当ではないか、その考え方、そういうやり方をすることのほうが実際にはかえって公平な課税、負担の公平という結果を得られるのではないかというふうに考えております。ただ、これを具体的にどういうふうに課していくかということになりますと、いろいろ技術的にむずかしい問題がありまして、その点については、この答申はまだ十分に考えておりませんし、ある程度は行政当局におまかせするという考え方をとっております。
それから固定資産税でありますが、固定資産税は、先般新しい評価をいたしまして、この評価額を尊重するというふうな考え方に変わってきたわけでありますけれども、このいままでのやり方というものは、まだその考え方に十分徹し切っておらない。二割という限界を設けておりまして、非常にその点は不十分であります。現実に固定資産のこの、時価の急激な上昇というものがある場合に、それを十分税額に反映せしめないということは、はたしていかがなものであるか。そしてその結果、先ほど申しましたように、いろいろ現在では不徹底な点があるのみならず、負担の不公平という事実も存在しているのでありまして、その点では、今後なるべくその点を現状を反映するような方向にいくべきであるというような考え方を出しております。
それからその次に電気ガス税でありますが、電気ガス税につきましては、いろいろ悪税であるというようなことで問題がある点でありまして、税制調査会でも、電気ガス税というものは、積極的に好ましい税であるという意見は必ずしも支配的ではなかったのでありますけれども、しかし、町村、ことに有力な財源というものを求められない町村については、この税はにわかに廃止することはできない。また、将来とも廃止するということは見通しが立たないということから、現状を承認した上で、ある程度軽減合理化の措置を講じて存続せしめるというような考え方を述べております。
それから、なお、道路財源といたしまして、新しい道路五カ年計画が示されまして、これが非常に膨大な計画で、今後相当長期間にわたって地方団体にかなりの財政負担をしいることになるであろうということを予想いたしまして、道路関連の財源を強化するということを考えて、液化ガス、いわゆるプロパンガスの課税というようなことを提案しておるわけであります。
なお、もう少しさらに進みまして、長期税制のあり方についてのいろいろな問題点といいますか、突っ込んだ問題については、別に柴田参考人がお述べになるはずでありますので、私はそれ以上申し上げないことにいたします。
で、そういった提案から考えます場合に、今回の地方税法の一部を改正する法律案というのは、ほぼ大体税制調査会の答申に沿った方向にあるというふうに、私どもは了解いたしております。したがいまして、国税の場合は、税制調査会の答申といったものは、かなり政府によって認められない部分があったわけでありますが、地方税の場合は、その点はそうではなかったというふうに考えておるわけであります。なお、税制調査会の答申案に盛られておりませんような若干の点が、この税法の改正にあげられております。たとえば償却資産の課税限度額の引き上げでありますとか、その他二、三の点があげられておりますが、これも大体において経済の趨勢なり、あるいはいまの財政状態の変動という現実に立脚したものであって、調査会の考え方というものと決して矛盾するものではないし、また、当然こういう措置はあってもよろしかろうというふうに考えておりますので、全体といたしまして、税法の改正案についてはほぼ妥当なものというふうに私は考えております。
たいへん単簡でございますが、私の申し上げる意見というのは以上のごとくでありますので、なおあとは御質問でもございますればいろいろ申し上げさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/2
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003・天坊裕彦
○委員長(天坊裕彦君) ありがとうございました。
次に、柴田徳衛参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/3
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004・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) ただいま遠藤参考人から大体の趣旨の御説明がございまして、私、まことにすべて同じ意見と申しますか、と思いますので、これからさらに話しましても蛇足を加えるのみという気がいたします。ただ私が税制調査会の基礎問題小委員会、当面のこまかいいろいろの税率とかその金額とか申しますより、むしろ今後の地方税をどう考えていったらいいだろうかというような問題に関しましていろいろ勉強さしていただき、そこの論議をいろいろ教えていただきましたその過程で、まあこんなことを私が感じたということをこの機会に言わさしていただきたいと思います。ほとんど大部分は、ただいまの遠藤参考人の意見の繰り返しになるかもしれませんけれども、まあ私がこんなことを感じたということを言わしていただきたいと思います。
まず、ここで地方税の今後どういうあり方が妥当であろうかというテーマを中心としましていろいろ考え、勉強したわけでございますが、結局、これは国税とかなり性格が変わって、地方財政の一環として国の財政とどういうからみ合いでこの地方税というものがあるべきか。あるいは地方のいろいろの仕事をどれだけすべきであり、その財源を地方税でどれだけ調達し、また補助金、起債等々でどれだけの比重を調達すべきかというような、全体の大きな関連なしには、地方税そのものの合理的な解決というものがなかなか困難ではないだろうか、こういうことを私感じました。言いかえますと、日本経済全体における地方団体、地方自治体というものがどういう地位を占めるべきか、どういう意味を持つべきか、そういうところがすっきりしないと、地方税というものもすっきりしないのではないか、こういう問題にいろいろ当面させられたわけでございます。やや誇張した言い方をしますれば、地方税制のワク内でこの地方税の問題を考えている限り、なかなか地方税のうまい解決は困難ではないだろうか、こういうことを感じたわけでございます。そういうわけで、現在の地方自治のあり方というような問題をおのずから考えざるを得ず、また、そこから初めて地方税のあり方というものが考えられるのではないだろうかという気がいたしたわけでございますけれども、現在の地方自治というもののあり方を考えてみますと、名前はたいへんりっぱになり、憲法でも一つの章を立てて、いろいろこれがうたってあるわけでありますが、実態を、いろいろ現地の市町村、府県というところに行って見ますと、なかなか地方をみずから治める、こういう実が伴わないのではないだろうか。いわゆるみずから治められる範囲というものが、実際は非常に限られているのではないだろうか。そうして地方団体の多くの仕事は、みずからを治めるという名前にはなっておりますが、大部分は補助金あるいは交付税というところで事業の大きなワク、あるいは大きな線路というものがきめられておりまして、地方団体自身で、あるいは地域の住民でもってきめられる範囲というものが非常に限られているのではないだろうか。言いかえますならば、いっその事業を、たとえばどの場所でどの業者に行なわせるかとか、あるいはその支払いをいつするかというようなことは、これは地方団体の自由があるかもしれませんけれども、そもそもそういう事業をどうすべきかどうかという問題になりますと、これは地方団体自身できめる範囲というものは、非常に限られているのではないだろうか。そこから地域の住民というものは、自分たちの地域のことに関しても、自治体というものに対する関心が薄くなって、どうしても国のほうといいましょうか、中央のほうに目がいってしまう。自分たちで選び出した地方議員あるいは自分たちで選び出した地方の知事、市長というものでありますけれども、そこに関心あるいは興味というものがとかく薄れて、どうしても中央のほうへ目がいきがちではないだろうか。そういう関心が薄いというところから、地方の住民の地方自治体に対するコントロールというものもとかく薄くなる。そこから、現在いろいろ不幸な事件が続いて起こっておりますところの汚職でありますとか、浪費とか、こういうふうな不幸な現象も出てくるのではないだろうか、こういう点で、戦後の大きな民主化あるいは地方自治体の強化という歴史から考えますと、現在ここでいま一度実の伴った地方自治というものを、もう一回ここで考え直し、それを注視し直す、こういう段階にあるのではないだろうか。そこで初めて民主主義というものも花が咲くのではないだろうか、こういう気がするわけであります。それをいろいろ制度面でもありましょうが、財政面からいえば、それを裏づけるための自主財源の強化というものがやはり非常にこの段階で必要になってくるのではないだろうか。そういう意味で、現在の地方財政における地方税という位置を考えてみますと、三割ないし四割、相当の大きな団体に行きましてもやっと五割をこえる程度、こんな形になっているわけであります。あとの大きな部分は補助金ないし交付税に依存しているわけであります。したがいまして、現在ただいま私が申しましたような地方自治という場合に、これの意義を強めるためには、いわゆる自主財源の中心でありますところの地方税というものの比重を大きくして、そうして他の財源というものの比重を相対的に減らすべきではないだろうか。そうして、それだけに事務なり権限を自治体に持たせて、そうして地方自治というものに実を与えて、かわりにそれだけその地域に責任を持たすといいますか、それだけにその地域にいろいろの浪費とか汚職とか不幸な事件が起きたときに厳しい住民の批判といいますか、あるいはその責任を持たす、こういう方向に持っていくべきではないだろうか。したがいまして、言えかえれば目安として現在の地方財政の中における地方税の比重というものを半分以上に持っていきたい、いかねばならぬではないか、こういう気がいたしたわけでございます。そうして、もちろんこのことは、ただ現在の地方税だけを現在以上に増額せよという意味ではなしに、国税、地方税全体を通じての再配分あるいは地方財政における補助金の比重というものをなるべく減らして、それだけ地方税をふやす、こういう方向をたどるべきではないだろうか、こう私は思っております。
そういう基本的な観点から現在の地方税のあり方をここにまた考えていきたいというわけであります。そういう観点で現在の地方税ないし地方財政のあり方を見ておりますと、明治以来昭和三十年あたりまでの地方財政あるいは地方税のあり方といいますものは、地方の仕事というものが、大体施設の維持保全といいますか、地域住民の戸籍であるとか、何か固有のことを毎年繰り返し行なわれておりますところの事業の維持をしていく、こういうような前提でもってなされているのではないだろうか。ところが、現在の昭和三十年あたりからの日本経済の大きな動きを見ておりますと、いわゆる高度成長の段階といいますか、極度に財政需要というものが急増してきているのではないだろうか。もっとも、それが大都市とか、あるいはいわゆる指定都市というところに集中的にあらわれてきて、世界の諸国を見ても、あるいは日本の長い歴史を見ても、これほど短期間に、これほど地方の地域の行政あるいは経済の動きというものに大きな変化が起こった例は少ないのではなかろうかと思われますし、それから、いままで農村と考えられていた地域でも、いわゆる都市化の現象が非常に進んでおります。そこに財源の需要というものが現在急速に進んでいるのではなかろうか。言いかえますと、巨額な新規の資本的な投資というものがこういった地域に現在集中的に起こっているのではないだろうか。欧米の諸都市が大体百年——十九世紀の中ごろから今日までかかって施設してまいりました下水道であるとかあるいは道路の舗装であるとか、あるいは都市計画の諸事業というものが、日本ではここ五年とか十年の間にそういうことをしなければならない。そうしなければ、ほんとうの地域の人々の生活なりの豊かさを保障することはできない、こういうような事態、あるいはそれが手おくれになれば、今後どうにもならない手おくれというものが起こってくる、こういう事態が起こっていると思われます。したがいまして、そういう観点から地方税あるいは地方財政における財政需要の調達、特に地方税でそれを調達するという意味で、この経済発展に相伴う税収入、地方税収入というものを、何らかの意味で考えなければ追いつかないんではないだろうか。ところが現在の税制を見ておりますと、国税が一番弾力的になっておりまして、経済成長のそれをさらにこえた税収入、所得税、法人税というようなものを中心に税収がはかられる。ところが県さらに市町村というものは、とかくそれにおくれがちで税収が入っていく。住民税などはもう国税にリンクして、所得税、法人税にリンクして入ってまいりますけれども、固定資産税であるとか、あるいはその他の地方税というものはかなり現在のところ手おくれになっているのではないだろうか。そして経済発展が行なわれ、税収が伸びて非常にふえるたびに、いわゆる減税措置というものが国では毎年行なわれていく。これは当然行なわれるべきであり、それだけ国民の期待にも合うわけでありますけれども、地方税の場合には、事業量そのものは国からの委任とか、あるいは先ほど申しました経済の事情の急激な変化というところで、非常に事業量そのものに必要な財源というものは急膨張していくのに対して、地方税の収入というものが常におくれがちできている。そして先ほど申しましたような国の減税措置というものが、とかくいままではそのまま地方団体に響いてまいりまして、特に先ほど申しましたような大都市を中心にして、その種の税収源というものはかなり右へならえという形で行なわれていく。この辺も、いろいろここに問題があるのではないだろうか、こういうわけでございます。
したがいまして、ただいままで申し上げましたことをもう一回繰り返して申しますと、現在の地方自治というものをほんとうに民主主義の基礎にするために、地方税、いわゆる自主財源というものを強化する必要があるのではないだろうか。ただし、それは地方税を現在のまま増強せよというのではなしに、事務の再配分あるいは国税ないし補助金というものを相対的に減らして地方税というものをふやす必要があるのではないか。そして特に経済発展というものが、現在の日本で、ここ十年あるいは五年の間に驚くべき勢いで起こっており、それがそのまま地方財政の需要というところに反映しておりますので、地方税というものもそれにかなりリンクする、といいましょうか、そういう形で考えられるべきではないだろうか。それから国の減税措置あるいは非課税、免税措置というものはいろいろありますが、地方税にそれをそのまま右へならえするという問題は、いろいろ問題があるのではないだろうか、こういうところでございます。こういうところから、先ほど遠藤参考人がおっしゃいましたけれども、住民税あるいは固定資産税その他今回の個々の当面の地方税制の改革の方向と申しますものは、私が述べたところが一挙に実現されるにはまだかなり遠いような気がいたしますけれども、これからだんだんその方向に動いていこうとしているんではないかという気がいたすわけでございます。
で、個々の税のそれぞれの率とか、あるいはそれぞれのきめ方といいますものは、私自身基礎問題小委員会に属しておりまして、税制調査会の地方税制部会そのものの審議というものには直接タッチしておらなかったものでございますけれども、時間もまいりましたので、もし御質問でもありましたならば、私のわかる限りは、個人的な意見になるかもしれませんけれども、申せるだけは申したいと思います。大体時間がまいりましたので、右のような三点をこの場で特に申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/4
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005・天坊裕彦
○委員長(天坊裕彦君) ありがとうございました。参考人の方々の御意見陳述は、これにて一応終了いたしました。
参考人の方々に御質疑のある方はどうぞ御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/5
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006・竹中恒夫
○竹中恒夫君 遠藤先生あるいは柴田先生、どちらでもけっこうですがお答え願いたいと思います。いまたいへん適切な御公述を賜わって、われわれ国政に反映させるのに非常にありがたく思っておるわけでございます。主として御公述なさったのは長期税制に関する答申書に基づいてなさったように思いますが、その中で一、二お聞きしたいのですが、地方税のあり方の中で、この答申の5でありまする都市に対しまして、あるいは特に指定都市について、事務の配分と関連して、税制、財源その他について特別の措置を講ずることを検討すべきであると、こういう御答申をいただいているわけですね。私どももかねがねそういうことは痛切に感じておるわけです。今回の地方税の改正にあたっても、そういう意味合いのことを強く国会に意思表示をするために附帯決議か何か、そういうものをつけてみたいと思うのですが、さてそこで当惑いたしますることは、そういう特別の財源強化についての措置が——大体この答申は大綱を具体的に御検討をしていただいておりますので、さてそういうことになると、どういう方法でやれば比較的抵抗が少なくて、あるいは他の税制との競合関係もございますから、摩擦を避けて、あるいは合理性を求めてやるのには、しかも実施をするのにどういう方向で進めば一番いいかということについては、考え方はわれわれも実は当惑しておるわけなんですが、もしそういう点について、もとより同じ指定都市といいましても、その指定都市の地方事情もあるのでございまするから、一がいには言えませんけれども、何かもう少し具体的にお考えがあればお話を願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/6
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007・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) ただいまの御質問でございますが、個々の問題になりますと、ただいまおっしゃられましたように、その地域によっていろいろ事情も異なると思いますし、それからもう一つは、府県とそこの地元の市でございますか、そこの関係がございますわけで、こまかいそれぞれの税目に関しては、いろいろさらにこれからまた検討を続けていただければ幸いだと私も思うわけでございますけれども、一番最初に私自身が感じましたことは、現在の交付税計算でございます。これはもう一回検討の要があるのではないだろうか。言いかえますと、ただいまの特に都市化に伴って起こってきますところのいろいろな財政需要というものが、いままでの交付税計算というものに、特にその基準財政需要というものの算出にかなりまだ落ちている面があるんではないだろうか。それからその算定の基準、これは交付税全般の問題でございますけれど、この算定の基準が普通交付税の基礎単価と申しますか、それによっている。そうしますと、いわゆる道路一平方メーター当たり幾らとか、児童一人当たり幾らというような、いろいろの金額から積み上げられていくと思いますが、その算定の基準というものは、かなり架空のと申しますか、になっているのではないか。非常にわずかな額、実際にそんな費用で絶対に建物も建たなければ事業もできないというような、非常に安い額でこれが計算されているといっていいんではないだろうか。それから三番目に、現在の特に都市計画的な諸事業、これは農村でも同じと思うのでありますけれども、都市の財政を見てみますと、非常に資金を食っているのが土地代でございますね、用地費。たとえばオリンピック道路などになりますと、八割以上が用地費で流れていく。われわれの目の前で見ておりますコンクリートのりっぱな道路が実際はその予算の一割何ぼしかいっていない。あとの八割は目に見えないわけで、用地買収費というところで消えていく。これはたいへんな費用で、あるいはこれは都市の事業にとっては、これは農村も同じでありますけれども、いま大きな比重を占めているわけでありますけれども、これが交付税計算に、私の理解ではほとんど算入されていないんではないだろうか、こういうようなところで、基準財政需要といいますものは、原則として、いままでの非常に静かな、年々歳々同じ地域のある町とか市とかいうものを想定すれば、これでよろしいのかもしれませんけれども、今日のような毎年たいへんな勢いで特に経済事情が変わっているところ、あるいは昼間人口というものが非常に多くて、夜間になるともうほんのわずかの守衛さんと非常にわずかな人しかいないという、こういう現象というものが交付税には算定されてこないんではないだろうか。したがいまして、そこで計算されて、現在不交付団体、あるいは財政収入が財政需要をはるかにこえているという形がそろばんの上で出てまいりまして、そこから、補助金とか起債とか、いろいろなところで、一つの財政力の強い団体という表現が使われているわけでありますけれども、この辺をもう一回洗い直していいんじゃないだろうか。そして現実の実情に近づけてまいりますと、そこから現在ある制度というものもかなり違ったものになるのではないだろうか、これが第一点でございます。
第二点は、経済発展の強い場所というところで、最も税収が上がってまいりますのは、何といっても、所得税、法人税なわけでございますから、これを何らかの形で、その地域に戻すということでございます。市なりの税収は確かに所得税、法人税を中心にふえている。現在のところ、それがその地域への戻りというものがかなり少ないのではないかと思いますけれども、それはその地域に戻す、こういうことが考えられるわけであります。
前にちょっと戻しますが、農村でも同じことが言えるのではないかと思います。日本の現在の農村は非常な勢いで変わっておりますが、これに事情を合わせることは、都市、農村を通じての大きな課題ではないだろうか。ただ、交付税になりますと、税制調査会の範囲に入るかどうか私わからないのでありますけれども、いまの御質問に対してそういうことを考えます。地方税としては、現在の弾力性のある税収というものを、そこの地域に戻す、こういう方向が考えられるのではないか、こう思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/7
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008・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) いま柴田参考人が言われましたことについて、調査会の審議に即して補足をさせていただきます。
基本的な方向というのはいろいろありまして、いま柴田さんの言われたようなことも、もちろん有力な考え方だと思いますが、先ほどもちょっと申しましたように、調査会の場合は、いろいろな管轄といいますか、所管といいますか、そういうものからいって、必ずしもいま柴田参考人が指摘されたようなところに十分な意見が出たというわけでもございませんで、むしろ税制そのものに、現行の税制を踏まえての議論がわりあい多かったと思うのでありますが、その場合に、御質問の点で関連する議論としては、交付税等の問題ももちろんでございますが、先ほど申しましたように、やはり住民税をかなり根本的に変えていくということは考えられるのではないか。ただ、答申で申しておりますように、現在は、御承知のように、例の課税方式の統一が進行中でございますが、それが一段落つかないことには、そして一段落ついて負担の帰属がどうなるか、地方団体の税収入の状況がどうなるかということを見きわめた上でないと、答申に出ておるようなことを、どう具体的に制度化していくのかということが、にわかに結論がつきませんので、方向としてはそういうものが考えられるけれども、具体案としては、いまだちょっと出せない。こういうようなことを申したわけであります。
その次に、もう一つは、いまのような形で住民税収入をあげていくということのほかに、固定資産税、特に大都市においては固定資産税の時価と現在の課税標準の特例というものがあまりにギャップがあり過ぎる。これをできるだけ現実を反映させるような方向において調整していく、そうなれば、大都市等におきましては、相当固定資産税の増収というものが期待できるのではないか、こういうことを申しておりますが、これもさて具体的にどうするかということになりますと、やはり大幅な負担の変動を急激に生ぜしめるようなことは避けなければならないというような要請が一方から出てまいりますもので、それならば、そうしないで、徐々に一定の期間をおいてそういう方向に持っていくには技術的にどうすればいいかということにつきまして、やはり十分な意見というものが出尽くさないままにただそういう方向を指摘するだけで終わってしまう。実際の審議並びに答申に即して申しますと不十分でありますけれども、いまのようなことをとりあえずの方向として考えている。こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/8
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009・竹中恒夫
○竹中恒夫君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/9
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010・松本賢一
○松本賢一君 遠藤先生にお伺いしたいのは、これは非常に根本問題になると思うのですが、先ほど冒頭におっしゃいました地方税のあり方を考えるのには、国税だとか交付税だとかいろいろのものを考え合わせなければ根本的には考えられない。しかし、現在の制度上、まあたといえば税制調査会で何もかもやるというわけにもまいらぬといったようなことがございましたのですが、これも始終われわれのほうでも問題になることなんで、国会で質問をしましても、答弁の中からそういう不便さというものが出てくるわけなんで、これは税制調査会の意見とかなんとかということじゃなくて、遠藤先生でも柴田先生でも、それぞれそういうことについての御自身のお考え方があるだろうと思うのでございます。これをどういう制度をつくって、そしてこれを根本的に検討するのが一番いいかということについて何かお考えがございましたら教えていただきたいと思うのです。われわれ参考にしたいと思うのです。これも税制調査会としての考え方とかなんとかということでなく、先生方のお考え方を伺わしていただきたいと思うのです。まず、それを伺わしていただいて、それから次に少しばかりまた質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/10
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011・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) 最初にちょっといまおっしゃったことについて質問さしていただきたいと思うのですが、審議会等でもっと根本的なことを考えるにはどういう制度にしたらよいかというおことばでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/11
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012・松本賢一
○松本賢一君 これはいろいろそれについても考え方があうと思うのですが、たとえば現在の税制調査会とか地方制度調査会とか行政調査会とか、いろいろある調査会を打って一丸となしたような範囲の問題を論議する調査会とか審議会とかというようなものをつくるという考え方も、始終われわれもそういうことが常識的に浮かんでくるわけなんで、そういうことを国会で質問をしてみるときもあるのですけれども、それに対してはあいまいな答弁しかいつも得られないわけなんで、そういう点についてひとつお考えを聞かしていただいたらと思うのですが、これは地方の現在の地方自治全体の問題、あるいは地方の財政、税制の問題等も非常に大きな問題だと私どもは感じているわけなんで、このままにしておいてはいつまでたってもこそくなその場、場当たりの改正を少しずつあっちでやりこっちでやり、こう薬ばりのことしかできないと思うのですが、そういう点についてのお考えを聞かしていただいたらと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/12
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013・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) 実は私も調査会におりましてそういう感じをしばしば持つのでございますけれども、実際問題としてどういうものをつくったらいいのかというとことになりますと、実は全く案がございません。と申しますのは、理想的には非常に強い、何といいますか、力を持っていろいろなことが包括的にやれるような委員会が設けられるということを期待しておりますけれども、具体的にそういうものができた場合にどういうことになるかと申しますと、たとえば臨時行政調査会のごとく非常に強力であればあるだけそういうものに対する風当たりが強くなって、かえってそれが結果としては困ったことになるというような感じもいたしますので、現在の日本のいろいろな制度、仕組みの上では、なかなかこうしていただきたいということを言う自信がございません。まあときには、たとえば、イギリス等でやっておりますような国会の任命にかかわる委員会、これは比較的少数の専門家をもって構成している委員会がございます。あるいは政府の直接の任命にかかわる委員会というようなものがございまして、これなどはかなり大きな調査の権限を与えられて活動しておりまして、そういうようなものがかりに日本でできるならばということを考えてみることもございますけれども、しかし、いま言いましたような事情で、今度はそういうものができたらできたではたしてどういう結果になるかということになりますと、また、いろいろな事態も逆に反作用として起きてくると思いますので、せっかくのお尋ねでございますが、そのはっきりしたことを申し上げることができなくてたいへん残念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/13
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014・松本賢一
○松本賢一君 それは東大の教授とかその税制調査会の委員とかというような責任のあるお立場の方ですから、非常におっしゃりにくい面もあるのではないかと思いますから、一評論家として御発言いただきたいと実は私は思うのですが、柴田先生いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/14
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015・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) それではつけ加えさせていただきますと、町の一住人あるいは町の一個人と申しますか、そういう立場で言わせていただきますと、私自身内部でいろいろ議論して、さてという肝心のところへいきますと、それは税制調査会の範囲内、いやそれは地方制度調査会の関係しておりますので、というふうに、肝心のところへいきますとそういうことです。あるいはそれは臨時行政調査会の範囲内ということで、何か三すくみ、四すくみという形になっているのではないでしょうか。そういうところで考えてみますというと、いま言いましたそれらの公約数といいますか、共通の何か連合委員会等でも、それぞれの共通の連合委員会というようなものができれば、その問題はかなり解決できるのではないかというふうに思いますけれども、今後そういう動きが起こってくるんじゃないかと思いますけれども、その際にもしそういう動きが出てくるとしましたならば、その場合にぜひお願いしたいというのは、先ほども遠藤参考人からもおっしゃいましたけれども、議会がかなりイニシアチブを持つといいますか、人選でございますね、たとえば税制調査会などで議論をいろいろ見ておりましても、いらっしゃることはいらっしゃるのですけれども、たとえばこの地域の家庭の主婦といいましょうか、こういう方々などは、ずいぶん台所などを通して一番身近な地方自治体の不満とか、いろいろな問題を持っていらっしゃるのではないかと思いますが、その発言といいますか、その人の数というのは、かなり少ないんじゃないかという気がいたします。そういう意味でぜひ幅広く国民の特に一番生活に直結した部面のいろいろな人々の声というものが、そういう今後拡大された委員会ができていけば、なるべく大ぜいそういう人々の声が反映するようなこういうシステムといいましょうか、そういうものをつくっていただきたいという気がするのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/15
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016・松本賢一
○松本賢一君 先ほど遠藤先生がおっしゃった英国にあるというのをもう一度ちょっとおっしゃっていただけませんか、どういうふうなものがあるのですか、国会で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/16
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017・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) 税制に関してはそのときどき必要に応じて国会あるいは政府の任命する委員会というものがございまして、いままで何度かそういう委員会の結論に基づいた税制改正が行なわれております。最近でもイギリスの地方税制ですが、これは主として一般の国の交付金でございますけれども、そういう制度を大幅に取り入れるというときも、やはりそうした委員会が設けられておりまして、それから一九二九年ころにも、やはりかなり強力な委員会が設けられて不況期を克服するような税制をどうするかというような答申が出ておりまして、それに基づいてやはり税制改正が行なわれたというふうに承知しております。で、この委員会は御存じのことと思いますが、学識経験者——と申しましても私などもそうでございますけれども、とかく学識不経験者が多いんでございまして、あるいは自分の業界に関しては非常にこまかく御存じだというような場合が往々にして多いんでありますが、イギリスの場合はやはりほんとうの専門家——まあ税理士でありますとか、税理士といってもかなり権威のある税理士の方とか、それから古く税務行政に携わった経験のある方とかあるいは税法の専門家でありますとか、財政学者なども一、二入っておりますが、大体十名から十五名ぐらいの間で構成されておりまして、調査の権限などもかなり強い権限を持っております。したがいまして、専門のその事務局のようなものはたいして強力なものは持っていないようでありますけれども、所管庁に対していろんな資料を要求する場合に相当強力に要求ができる。そしてその答申についてはある程度政府が実施するという道義的責任を持つというようなことが、別に法律の上ではありませんけれども、不文律のような形で守られるというふうになっていると聞いております。あまりそれ以上詳しいことは存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/17
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018・松本賢一
○松本賢一君 どうもありがとうございました。それじゃ、先ほどのお話に対して二、三御質問申し上げたいんですが、一つは遠藤先生のおっしゃいました地方住民税と国税との配分のしかたといいますか、ある程度以上のところから国税は取ってそれ以下はもう地方税だけで取っていくというようなことを非常におもしろいといっちゃ何ですが、考え方だと思うんです。もっと具体的に言いますと、現在の日本では大まかに言ってどういうような御構想になるのでしょうか。もしそういうことをやるとしたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/18
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019・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) こういまのように物価をしょっちゅう変動しておりますと、具体的な数字をなかなか申し上げることは困難でございますけれども、たとえば国税の課税最低限というのをかりに標準世帯で七十万なら七十万ぐらいまで上げると、そしてあとはこれは零細所得者を全部何もかも市町村民税で課税しろというのではございませんで、もちろんそこで一定の限度をつくるわけでありますけれども、たとえば四十五万とか五十万ぐらいから七十万ぐらいの間の所得というものは地方税の対象とするとか、そういったようなことが考えられるんではないかということでございます。これは長期税制の答申にはそこまで具体的には書いてございませんですが、まあ議論の過程でそういう考え方が出てきて、ある程度これはその議論の中でそういう考え方も今後考慮できるだろうというふうな暗黙の賛成がかなりあったんではないかというふうに考えましたので、紹介申し上げたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/19
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020・松本賢一
○松本賢一君 それからですね。結局地方の財源不足というものを強化するためにつまりいろいろ地方税というものが考えられておるんですけれども、私どもから言いますと、どうも地方税の中には大衆課税といいますか、比較的弱い人たちから取る税金が多いんです。なるべくこういう税金は少ないほうがいいと考えるわけなんですが、そうすると、それに対する財源というものはどこから求めるか、われわれの常識じゃ国から求める以外にない。国から求めるというということは結局国税の中から分けてもらう。いまの交付税のようなことが考えられるわけなんで、そういう意味から交付税というものもできておるわけなんですけれども、こういう点を、私どもはいまの税法というものをそのまま使っていまの状態を是正するのには、やっぱり国税の分け前である交付税というものをもっと大きくして、そうして地方税の中の大衆課税的なものをもっと少なくするという考え方しか私どもいまの税制の範囲内では考えられないわけなんですが、そういう点についてもっと別な考え方があるんでしょうかどうか、お聞かせいただいたらと思うのですが……。たとえば先ほど柴田先生がおっしゃいましたと思うのですが、いまの交付税や補助金等によって地方自治体の自主性のそこなわれる面が大きいと、そういうことでもっと独立財源というものを、自主財源というものを強化しなければならぬということなんですが、そうなるとますます地方で大衆課税的なものがたくさん出てくるんじゃないかというようなことが考えられるのが一つと、それからもう一つは団体間の不均衡の是正ですね。弱小団体というものを助ける道が断たれて、そうして強いところへ財源が固まって、片寄っていくのじゃないかというようなおそれもあるわけなんです。これはいまの大都市が困っているということとまた逆なあれにもなるわけですけれども、そういう点について私どもも常に非常に判断に苦しんでいるわけなんで、ひとつ判断のよすがにそういう点についてのお考え方をお聞かせいただけたらと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/20
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021・林虎雄
○林虎雄君 ちょっとそれに関連して、いま松本さんから御質問申し上げたわけですが、地方の独立財源を強化するということについては、長期答申でも地方独立税の充実をすることが適当であるということになっているようでございますし、自治省のほうでも二千八百億円の地方税の増強を提案されているというふうに聞いておりますけれども、地方独立税を充実するということについて、いまの独立財源と関連があると思いますが、具体的にどういうことを考えておいでなのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/21
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022・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) これのこまかい計数的な詰めというものは——まあ、いろいろこまかい計算というまでは基礎問題小委員会の段階では行なっておりませんけれども、しかし、こういう方向というのは当面あるのじゃないだろうか。もちろん、国税・地方税の根本的な再編成というものを徹底的に考えれば、また次の段階、別かもしれませんけれども、当面の大まかな税制を前提としても、地域間のアンバランスを助長せずに自主財源を強化するという方向の考え方として私はいま遠藤参考人からお話しありました住民税の強化と申しますか、すなわち、現在の所得税というのは累進課税の形をとっておるわけでございますけれども、その累進の非常に金持ちの高まる累進というところはこれは国税がするとして、その底辺の部分と申しますか、底辺のたとえば七十万円までの部分というようなところを地方税のほうに持っていく。そういたしますればいわゆる地域間の偏在というものはそれほど——絶無とは申しませんけれども——それほどなしで済む。かつ経済発展にある程度弾力性をもって入り得るんじゃないかと、同じく法人税に関しても同じ住民税の法人税割りといいますか、そのほうでももう少しこの率を高めて地方税のほうに持っていくということ、まあ一つの仮の計算では住民税所得割り、ちょうど二千八百億というものの半額というような試算が一つ出されておりますけれども……。それから五百億円の住民税の法人税割り、こういうのはいま申しました団体間の不均衡というものを助長するという形ではなしに、自主財源の強化というものは現在あるのじゃないか。それからもう一つは、たとえばたばこ消費税というのがございますけれども、これも大体人口の割合に比例して、そう地域間の偏在というものは比較的少ないのじゃないかと思いますけれども、これなどの増徴、増加ということもできるのではないだろうかという気がいたします。そういう形で、できるだけ大衆課税のそちらのほうはさわらずに、自主財源の強化というものをはかり、かつ団体間の不均衡というものもそれほど激化させずに済むのではないか、こういう一つの試算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/22
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023・松本賢一
○松本賢一君 大体お考え方がわかってきたように思うのでございますが、そうすると、いまのお話の中の一番大きな点は住民税の強化ということにあると思うのですが、先ほどお話しのように、国税と住民税をそういうふうな分けた考え方をして、住民税は比較的収入が少ないところから取っていく、国税はその上の大きいところから取るということになると、地方の不均衡というものが相当是正されていくということにもなると大まかにわかるのですが、そうすると、そうすることによって現在の交付税というものとの関係というものがどういうふうになってくるかでございますがね、なおその上に不均衡是正の目的で交付税というものは必要だということになるのですか。それとも、そういうことになればもう交付税というものは非常に影の薄いものになって差しつかえないのだというようなお考え方なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/23
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024・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) つけ加えさしていただきますけれども、交付税はやはり相当重要な地位を占めると思います。かりにこうなったとしても交付税の影が薄くなるのではなしに、相当重要な地位を占めるべきではないか。で、これは私の私見でございますけれども、影が薄くなる方向に行くべきものは補助金でございますね。これができるだけ、これは一回国税で取って、そして地方にいくわけでございますけれども、もちろん補助金をゼロにすることはできないにしても、現在のところこれが日本経済全体にとってどれだけほんとうにプラスになっているかということは、かなり私は疑問に感ずるのでございますけれども、その部分をできるだけ減らす、そして自主財源をふやす。それから交付税は大体漸増されれば理想でございましょうし、現在と同じような同じ重要な地位を占める、こういう一つの体制が考えられるのではないか。そして、補助金が減りますればそれだけいわゆる地方自治の実が強まるのではないか、こういう体系を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/24
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025・松本賢一
○松本賢一君 大体わかりました。そうすると、これは私の頭を整理するためにもう一ぺんお尋ねするのですけれども、いまの住民税その他地方税を不均衡にならぬように考えながら強化していくということが一つと、それによってなおその上に交付税というものは考えなければならぬということと、それから補助金をうんと整理することによって地方の独立性を固めていく、大体そういう考え方の方針でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/25
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026・柴田徳衛
○参考人(柴田徳衛君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/26
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027・松本賢一
○松本賢一君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/27
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028・林虎雄
○林虎雄君 もうちょっとお聞きしたいのは、住民税の所得割りの最低課税限度額ですね。これは所得税の場合に比べまして低いわけですね。二十万円ほど開きがありますが、住民税の所得控除額等は低過ぎるから、私どもはこれは当然引き上げるべきだというふうに考えておりますけれども、調査会のほうでは現行の各種控除を整理して、何か住民控除というものを設けるというようにお考えになっているように聞いておりますけれども、住民控除というものはどういうふうな考え方になっておりますか。具体的にその点はお聞きしたいし、そしてもう一つ、いまの課税最低額との関係が出てくると思いますけれども、その点承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/28
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029・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) 住民控除というものを控除して、雑多な控除を統一整理すべきだというふうに答申はしておりますけれども、具体的な数字ということになりますと、ほんの試案程度の数字しか出ておりませんので、必ずしも具体的に幾らというふうに申し上げるところまでまだ至っていないというふうに申し上げたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/29
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030・林虎雄
○林虎雄君 結局、いろいろの控除を整理して一本化すという、そういう考え方でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/30
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031・遠藤湘吉
○参考人(遠藤湘吉君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/31
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032・天坊裕彦
○委員長(天坊裕彦君) ほかに参考人の方に対する御質疑はございませんか。——それでは、これにて参考人の方に対する質疑は終了いたしたものと認めます。
参考人のお二方に、一言私からごあいさつを申し上げます。
本日は長時間にわたりましてきわめて貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会の審査のためにきわめて有益な御意見を伺いましたことを心から厚く御礼を申し上げます。
では本日の審査はこの程度にいたしたいと存じます。次回は、三月三十日火曜日の予定でございます。本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814720X01819650326/32
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