1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月十八日(木曜日)
午前十時三十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 山下 春江君
理 事
久保 勘一君
二木 謙吾君
吉江 勝保君
小林 武君
委 員
笹森 順造君
中野 文門君
秋山 長造君
千葉千代世君
米田 勲君
柏原 ヤス君
国務大臣
文 部 大 臣 愛知 揆一君
政府委員
文部政務次官 押谷 富三君
文部大臣官房長 西田 剛君
文部大臣官房会
計課長 岩間英太郎君
文部省初等中等
教育局長 福田 繁君
文部省社会教育
局長 蒲生 芳郎君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
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本日の会議に付した案件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○教育、文化及び学術に関する調査
(昭和四十年度文部省の施策及び予算に関する
件)
(義務教育費国庫負担法に関する件)
○日本育英会法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/0
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001・山下春江
○委員長(山下春江君) では、ただいまより文教委員会を開会いたします。
著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、文部大臣から提案理由の説明を聴取いたします。愛知文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/1
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002・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 今回、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
現行の著作権法は、明治三十二年に制定されまして以来、数回の部分改正を経て今日に至っておりますが、基本的な体系は立法当時のままであり、現在の複雑多岐な著作物の利用状況にかんがみますると、再検討を必要とする多くの問題点が生じております。そこで、去る昭和三十七年四月、著作権制度の全面的改正について審議するため、文部省に著作権制度審議会が設置されることとなったのでありますが、その際、著作権制度の全面的改正の実施までの間に著作権保護期間の終了する著作権者を救済する趣旨をもって、議員の御提案により著作権法の一部が改正され、当時、著作者の死後三十年を原則といたしておりました著作権の保護期間を暫定的に三年間延長する措置がとられたのであります。
著作権制度審議会は、同年五月発足以来、今日まで鋭意審議を重ねてきたのでありますが、事の重要性と問題の複雑性のため成案を得ますまでには、なお若干の日時を要する現状にあります。よって、当初の暫定措置の趣旨にかんがみ、著作権制度の全面的改正の実施されますまでの期間を考えまして、さらに保護期間を暫定的に延長する必要があると考えられます。
本案の内容は、以上の理由により、現行著作権法第五十二条により三年間暫定的に著作権の保護期間が延長されている著作物に関し、その著作権の保護期間をさらに二年間再延長し、当分の間三十五年とするものであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/2
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003・山下春江
○委員長(山下春江君) 以上で、本法案についての提案理由説明聴取は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/3
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004・山下春江
○委員長(山下春江君) 教育、文化及び学術に関する調査中、昭和四十年度文部省の施策及び予算に関する件を議題といたします。
質疑の申し出でがありますので、これを許します。小林委員。
なお、政府側から愛知文部大臣、押谷文部政務次官、西田文部大臣官房長、岩間会計課長、福田初等中等教育局長、蒲生社会教育局長が出席いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/4
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005・小林武
○小林武君 僻地勤務教員の優遇措置について、いろいろと努力のあとが見られますことは、僻地教育振興の立場からいって喜ばしいことだと思うのであります。この問題の一部の特別昇給の問題について文部大臣にお尋ねをいたしたいわけでありますが、これは半額国庫負担であるということでありますが、この点は先ほど申し上げたように、僻地教員の優遇の点から見てたいへんけっこうだと思いますが、県の財政と、それから県の中にたくさん僻地の教員をかかえているというような事情等によって、実施が平等に行なわれないというようなことが相当私は憂慮される問題だと思うわけでありますが、それをそういう事態に至らせないためには、何といっても財政的な措置をどうするかということが一番の大事な処理のしかただと思うわけでありますが、これについては、一体、自治省とか、あるいは大蔵省に対して、文部省としてはどのような手当をなさっておるのか、お伺いしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/5
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006・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 四十年度の僻地教育の対策の中で、ただいま御指摘のように、特別昇給を新規に行なうことにいたしましたので、僻地教員の三分の一について一号特別昇給を行なうことにいたしたわけでございます。三年間に一回特別昇給というかっこうになると思います。その額一億九千二百万円、これの予算を四十年度に計上いたしたわけであります。ただいま、これが各現地でどういうふうになるかというお尋ねでございましたが、大体、一県当たりにいたしますと五百万円くらいの程度になろうかと思いますので、特にこれがために地方財政計画において、何と申しましょうか、特別の措置というものはやらないでできるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/6
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007・小林武
○小林武君 大体、文部大臣の御理解としては、一県五百万円見当のあれをやっておるから、県の段階ではあまり問題はない。大体三分の一ずつやられて、三年間で全体の教員が昇給するというようなことになるといういまのお話でございましたが、岩手県の例を見ますと、こういうようなことになっているのですね。私のところにきた情報によりますというと、三級以上が三年、二級が四年、一級が五年で一号アップするという、こういう決定をしたというのです。これはきわめて短かい文章で、どういうふうに理解していいのか内容が十分でないような気がいたすけれども、一級のところだというと、五年たたなければ上がらない。というと、私は岩手県のことを考えますと、あそこは僻地をたくさんかかえた県だから容易でないので、こういうことになったのかと実は心配しているのです。私と関係の深い北海道を見ましても相当この数が多いわけですよ。教員数として五千八百七十三人、これが小学校ですね。中学校が三千五百六十二人、計、僻地校勤務教員というのは九千四百三十五人いるわけですね。こういうことになると、これは北海道というのは僻地が多いところだと思いますけれども、何かちょっと不安なような気がするわけです。県がなかなか気前よく出すというところまでいかないのじゃないか、やはり何らかの財政的な措置というものが文部省から手当されないと工合が悪いと思うのですが、これはどんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/7
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008・福田繁
○政府委員(福田繁君) ただいまのお話の中にございました岩手県のケースでございますが、これはまだ私ども詳細に内容を伺っておりませんので、何とも申し上げかねますけれども、全国的に今度の特昇の問題につきまして、各都道府県の教育委員会で具体的な計画を立てて、五月までに私どものほうに連絡をいただきたい、そういう通達を出しております。五月末になれば各県の具体的な実情というものがはっきりいたすと思いますが、その上で十分考えたいと思います。ただ、この国庫負担金のほうは、御案内のように二分の一負担するわけでございますから、御質問の趣旨は、そのあとの裏側の二分の一の問題であろうと思いますが、北海道などは確かに僻地教員の数は多いのでございます。しかしながら、道の予算全般からいたしますと、特昇分の予算というものは、二分の一にいたしましてもそう多額のものではなかろう、したがって、それらの財政措置について、今後、北海道あるいは各県も同じかもわかりませんが、そういう府県の処置、そのものを十分見きわめた上で、私どもとしては今後やっていきたいと考えております。平均いたしますと、いま大臣からおっしゃいましたように、五百万円以下のものでございますので、特に交付税その他によって直ちにそれを裏づけるということも、最初でございますので困難かと思います。具体的な事情が出てまいりますれば、それに基づいて私どもとしては考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/8
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009・小林武
○小林武君 もう一つ、やはり問題なのは高等学校だと思うのですがね。高等学校の僻地校の勤務教員というのはどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/9
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010・福田繁
○政府委員(福田繁君) 高等学校のほうは私どもとしては特に僻地の問題は考えておりません。これはまあ府県におきまして僻地手当などに準じた手当をつけておるところもございますが、これはごく一部でございます。高等学校については今度の特昇の問題は考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/10
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011・小林武
○小林武君 まあ一つ北海道の例を申し上げますと、教員数が二百三十二人、学級数にして百十学級、二十一校くらいがあるわけですが、これらのものは私は僻地に勤務しておるという点では同じだと思うのですがね。こういう点については特別の何というか、指導は行なわないわけですか。文部省としては、今回の場合は義務教育、小学校だけの問題であって、高等学校についてはそういう点の配慮をするという、こういうあれはやらないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/11
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012・福田繁
○政府委員(福田繁君) 先ほども申し上げましたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/12
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013・小林武
○小林武君 高等学校の点を一つ申し上げますと、やはりこれは僻地学校に勤務する教員ということになりますと、高校もそれから義務制の学校も私は同じに取り扱うべきだと思うのですよ。特に高校の場合だというと、僻地にある学校などというのは、いわゆる勤労青少年というか、農村の青少年の教育に携わることになっておるわけでありますので、そういう点で差別されるということは、これはきわめてやはり教育上問題があるのではないか、こう考えるのですが、文部大臣としては、この点については初中局長の答えのように、ことしはまあやむを得ないのだというような程度でこれを考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/13
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014・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 私はかねがね申しておりますように、僻地教育ということの振興については、ほんとうにできるだけの努力を払っていきたいと思っておるのでありますけれども、何ぶんにも四十年度予算におきましても、こういったような不十分な点にしか落ちつかなかった点を残念に思っております。そのくらいでございますから、今後、高校等についても十分考えてまいりたいと思います。何はともあれ、義務教育の中小学校の僻地の教育について、もっと充実した手を次次に打っていくことがまずまっ先の問題じゃないか、こういう認識を私としては持っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/14
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015・小林武
○小林武君 それでもう一つお尋ねをしたいのですが、四十年の一月二十六日に初中局から通達が出ておるわけですが、その中で、「特別昇給は都道府県ごとに義務教育諸学校教職員総数の10分の1の範囲内において行なうべきこと。」、これは実際上どういう意味を持っておるのですか。三分の一ずつ昇給さしていくということとこれとはどういう関連になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/15
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016・福田繁
○政府委員(福田繁君) この十分の一のワクというものは、これは一般の公務員についてもあるわけでございます。したがって、まあそのワクを一応守りまして、その範囲内で三年に一回は全部の者に特別昇給ができるようにしていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/16
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017・小林武
○小林武君 まあどこが一番僻地の教員があるかわかりませんけれども、北海道あたりが一番多いのじゃないかと思ったのだけれども、北海道の場合はこれは確かに十分の一を上回るなんということは起きないようですがね、で、まあ四十六都道府県のことを考えた場合に、必ずしも心配すべきことではないにいたしましても、なぜこういうものが必要なのか、必要の意味がわからないのですが、特昇というものに対してのそういう何かほかの特昇の場合、こういうやり方をやっているということを聞いておりますけれども、これはあれですか、特に僻地の勤務教員に対してやらなければならぬという理由は特段にないわけですね。実際問題として具体的には特に問題が起きないわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/17
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018・福田繁
○政府委員(福田繁君) これはおっしゃるように、一般の場合もこういう範囲を一応きめておりますので、それを踏襲したまででございます。ただ、現実の問題として十分の一にひっかかるような県があるかということを考えてみますと、現在のところないと私は思っております。したがって、北海道などは僻地の先生が非常に多いわけであります。北海道でもこの方針によって二分の一ずつ十分やれるという計算を私どもは一応いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/18
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019・小林武
○小林武君 そこで、三分の一にもう一度戻るわけでありますけれども、先ほどちょっと私が申し上げた岩手県の問題を見ると、これはやっぱり三分の一ずつというようなわけにはなってないように思うんです。で、一級のものだというと、これは五年に一ぺんということにしかならない。そうするというと、そこへ赴任して五年間たたないで転勤しちゃったら、何の恩恵も受けないでぽいとほかに行かなければならないということにもなるように考えられるわけです。ですからこういう点はやっぱり、何といいますか、もっと文部省、政府なりが僻地教員を優遇するという立場に帰りまして、必ず三年たったら全部が上がるんだというような、そういう行き方をもっと明確に出すような通達がなければならぬと思うんですが、どういうことになりますか。五月になってからいろいろやり方について報告がくるからということをおっしゃいましたが、五月になってやったらどういうことになりますか。ことしの場合には、文部省が考えているようなやり方でいかない県がたくさん出てくるということになりませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/19
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020・福田繁
○政府委員(福田繁君) この趣旨は、十分、都道府県の担当の課長会議などでよく説明してございます。したがって、四月になりますと各都道府県できめるだろう、その結果を私どもは御連絡願いたい、それによって国庫負担の何を考える、こういう順序になっておりますので、その間に早くきまるところもあるかもしれませんが、できる限り三年に一ぺんはできるように、私どもとしては各県と相談をしてやっていきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/20
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021・小林武
○小林武君 それじゃこういうふうに確認してよろしいですか。あなたのほうで、ことし一年間の問題になりますというと——とにかく指導の限界というのは出ておるのですか。とにかくことしは各県でもっていろいろな教員組合とか、あるいは教育委員会の間で話し合いが行なわれて、そしてことしはこれでいく、岩手の場合では、これはそれが両者の間で合意に達したということになりますと、四十六都道府県の中には、文部省が言っている三分の一ずつ上げていくのだというやり方がくずれていく、こういう結果が出るということが予想されますね。これは財政上の問題もありますし、それから僻地の教育というものに、さほど何というか、関心を持たないと言ったら悪いけれども、さほど関心を持たないような理事者があるとすれば、そういうことは起こり得る。そうしますと、ことしは少なくともあれですな、何というか、あなたたちが考えておられるような優遇策というのは、四十六都道府県全般にわたって行なわれないという結果が出る、これもやむを得ない、こう文部省で考えているというふうに理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/21
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022・福田繁
○政府委員(福田繁君) これは御承知のとおりに都道府県の教育委員会がきめることでございます。したがって、私どもとしては一応のこういう基準をお示ししているわけでございますから、それに多少違っておりましても、大体近い線でやはり各都道府県にやっていただくことを期待しているわけであります。したがって、各都道府県ではいろいろな各県の事情もございましょうから、それぞれの事情に基づいて適切なやり方を考えていただくというのが趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/22
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023・小林武
○小林武君 もう少しどうですか、あなたのほうで、指導のほうは相当強力にやる面は相当強力にやる、この点については、ちょうどいま各県がそれぞれ教員組合なんかと話し合いをやっている段階ですよね。岩手なんというのはわりに早くきまったと思うのです。一番いま交渉になって、ことしのやり方をどうするか、特昇の問題できまる時期です。そういう時期にもう少し強力な文部省の意思というもの、しかも予算があがったら金があるのですから、これを実施させるような手だては講じませんか。とにかく報告があるまでじっと待っておって、報告が来たらそれについてあなたたちは検討して、来年度の問題についてはひとつ強力にしようというようなことを考えておるとすれば、ちょっとぼくは、せっかくのいい考えをやっても、さっぱり効果のないことになると思うのですが、そういうあれをやる気ありませんか、強力に指導をやるという。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/23
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024・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私どもとしては通達のほかに、都道府県の主管課長会議を開きまして、このことを十分趣旨の徹底をはかったわけでございます。同時に、これは知事、部局のほうにも一十分御協力をいただく必要がありますので、総務部長会議におきましてもその点を十分説明をいたしまして、協力をお願いしたわけであります。それ以上には現在のところは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/24
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025・小林武
○小林武君 まあ仏つくって魂入れずというようなことになることを私はおそれているわけであります。この特昇問題について私が一番考えたのは、県でもって非常に開きのあるあれが出るのじゃないか、特に開きの出るところは、結局、県財政のあまり豊かでないところとか、あるいはこの僻地教員というものを非常に多数にかかえた県とか、そういう県に起こるのじゃないかと、こう思ったのです。そういう点のやはり配慮というのをもう少し強力になされることを私は要望いたします。どうぞひとつ、あまり報告を待ってやるなんという気の長いことを言わずに、ひとつ適切な指導をして、そうしてこの特昇が文部省が当初考えていたようなところまであがるように、ひとつ努力をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/25
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026・秋山長造
○秋山長造君 ちょっといまのに関連して。いまの特昇の問題ですが、小林さんの御質問のようなおそれも多分にあると思うのですけれども、反面、またすでにこういうことをやっている県も若干あるのじゃないかと思うのですがね、その県でどういうことをやっておるかというようなことはわかりますか。どこの県でどういうことをやっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/26
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027・福田繁
○政府委員(福田繁君) 実はその詳しい資料は持って来ておりませんが、大体聞いておりますのは、僻地に赴任をします場合に一号アップして優遇の意味でやるという県がかなりございます。しかしながら、僻地にずっと勤務している先生に対して、その間に特別に期間を短縮してやるようなところはほとんどないようでございます。したがって、私どもとしては、三年以上少なくとも僻地に勤務している先生については特別昇給さしてほしい、こういう措置を講じたわけでございます。まだ全国的に見ますと、ごく一部しかそういう点は実施していないというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/27
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028・秋山長造
○秋山長造君 すでに県でこういうことをやっている、まあ僻地へ赴任するときに一号俸上げるというようなことをやっているところ、そういうところに対して、今度この文部省の措置が出ますと、いままで県がやっているものへさらにこれを上積みしていってくれれば一そういいと思うのだけれども、逆に、地方財政の苦しいときだから、いままでやっておったのをやめて、これに肩がわりしてしまうというようなおそれはないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/28
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029・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私どもはやはりそういうことはないだろうと思っております。まあ地方財政も非常に苦しいとはいっておりますけれども、この程度のことができないことはないだろうと、財源的に申しまして、そう考えておりますので、できる限り教育委員会あるいは関係者がこういう趣旨でやっていただきたいということを要望しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/29
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030・秋山長造
○秋山長造君 いや、金額から言えばね、これ肩がわりしてこれへ逃げ込んでしまって、いままでやりかけていたのをやめてしまうということはあり得ぬことだけれども、しかし、なかなかそういうことをやるのですよ、府県としてはね。やっぱりわずかな金でも、できればほかのほうへ持っていきたいという意欲もあることはこれは否定できないのでね。それではかえって、せっかく文部省がこれだけでも踏み切られたのが、ある意味では打ち消されてしまうようなことになるのですからね。ですから、その点の指導はよくやっていただいて、いままで府県なんかで僻地教育の問題について相当熱意を持ってやっている県では、何らかの形で、特昇に限らず、あるいは勤務地手当をふやすとか、僻地手当をふやすとかね、何らかの面でそれぞれやっていると思うのですよ。そういうものを、たまたま文部省がこういうことをやることになったので全部これへ逃げ込んでしまうというようなことにしないように、あくまで、いままでやっているものはそのままやった上にこれを上積みしていくということでなければ、ほんとうの趣旨が生きてこないと思うので、その点の御注意を特に私喚起しておきたいと思うのです。
それからもう一つは、これはいま資料がないとおっしゃっているのですから、またこの次でもいいですがね、それぞれの県教委で僻地教員の優遇策について県独自でいろいろやっているところがあると思うのです。そういうものを何か一覧表のようなものをひとつつくっておいていただくと非常に助かると思うのです。お願いできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/30
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031・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私のほうにも若干の資料がございますので、御要望に沿いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/31
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032・山下春江
○委員長(山下春江君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/32
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033・山下春江
○委員長(山下春江君) 教育、文化及び学術に関する調査中、義務教育費国庫負担法に関する件を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。米田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/33
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034・米田勲
○米田勲君 久方ぶりで発言の機会を与えられましたので、懸案の限度政令問題について、私の質問を続行いたします。
この限度政令の問題は、ここにおすわりの自由民主党の文教部会のメンバーも、裏面はとにかくとして、少なくもわれわれと同じような立場におかれてその経過があるわけです。しかも、自民党の文教部会の首脳部とわれわれとの何回かの会談の最終会談においても、社会党とこの問題について約束をしたことについては、社会党側の言い分に間違いはない、したがって、わが党のほうでも、関係者にはその事実を明確に理解をしてもらって、共通の立場でこの問題に対処できるような責任をとる配慮をいたしてまいりたい、こういうことを稲葉部会長からわれわれに約束されているのであります。しかも、私はこの際に、自民党の文教部会はわれわれとこの問題について確たる約束をしたということは、いまここに確認をしても、現在の時点においてはその責任を負えなくなったということを、はっきり言う必要はないかということを確めたときに、部会長初め自民党の文教の首脳部は、異口同音に、そういう無責任な態度をいまここで表明することはできない。われわれはあくまで責任がある、その責任に向かって対処したいということを述べておられるのであります。そういういきさつはあるのでありますが、この問題は依然として宙に浮いたまま解決を見ていない状態に置かれているのであります。私は相当長い期間にわたっておるこの問題を、今日の段階において、この文教委員会で引き続き問題にし、これを究明しなければならない。というのは、いろいろな理由がありますけれども、私は国会の運営上、これを重視するのであります。政府与党と、野党の社会党初め他の会派もありますが、政府与党と社会党との間で、法案の取り扱いや、その審査、その結論等について話し合いが行なわれ、いろいろな約束がかわされ、お互いに立場の相違はあろうとも、その話し合ったこと、約束をしたこと、それらを誠意を持って実行をし、約束を果たしていくというところに、初めて双方の信頼が深まっていくものだと、こう思うのであります。その信頼がなくては、どんなにりっぱなことを申し述べても、国会の運営というものは正しい進み方はしない、こういうふうに私は確信を持っておるのであります。今度の限度政令問題は、そういう立場から考えて、私はこれを軽々に、だいぶ期間が経過したことだから、まあいいではないかという意見には加担ができないのであります。
私は、以下、文部大臣にいろいろな角度からいまから質問をいたしますが、あなたは文部大臣になって、一番先に手がけてくれたのは、この限度政令を出すことを強行してくれたことであります。私は端的に、文部大臣にまずお聞きしますが、財政的な問題、いろいろな問題は抜きにして、この限度政令を出すことによって、義務教育関係の学校における条件の維持向上のために、この政令がプラスになるという考えをお持ちであるかどうかをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/34
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035・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) これは長年の懸案申しますか、標準法の改正以来の問題で、政府としての一貫した方針でございますから、その方針に従うということが義務教育全般の施策についての前進である、かように理解をいたすわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/35
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036・米田勲
○米田勲君 私のお聞きしたのは、義務教育学校における教育の条件の改善、維持向上にこの限度政令はプラスすることができるかということを聞いている、一般的な教育全体の話を聞いているのではなく。質問の趣旨がおわかりでないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/36
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037・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 要するに、この問題は児童生徒数が激減をする、そのままほっておけば相当のいわゆる過員が出る、そういうことをやることは適当でない。そうして教職員の資質の向上といいましょうか、教育内容の整備という点からいって、こういう措置をやって、そして同時に国庫として負担すべきものを確定しておくということが私はプラスになる、こういう考え方が前々からございましたので、それを踏襲したわけでありますからプラスになると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/37
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038・米田勲
○米田勲君 これは文部大臣はどういうことを御研究になっておられるのかわかりませんが、今日、四十六都道府県で各県ごとに教育予算の問題が教育委員会と知事側で話し合いが行なわれ、あるいは教育関係の諸団体との間にも話が行なわれているが、非常にむずかしい状態にそれぞれなっております。私はその理由の大きな一つに、一律にこのような限度政令をおっかぶせて、義務教育諸学校における各県ごとの努力をしてきた教育の条件の維持改善にぴしゃっと押えをした結果になっておる。したがって、文部大臣の見解とは私は大きく違いがあるのであります。この問題はまた後に一そう具体的に見解をただしたいと思います。
次に質問をいたしたいのは、文部省で七月かないしは八月ではないかと思うのですが、この限度政令を出すということを省議できめられた。こういうふうに聞いておりますが、それは何月何日の省議であったでしょうか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/38
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039・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 省議というのは再々やっておりますから、特にこの問題について何月何日に省議をやったかどうかということは、あるいは私はそこに出席したかどうか、そういうことはいま資料を持っておりませんからお答えできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/39
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040・米田勲
○米田勲君 これは局長のほうではわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/40
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041・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私もちょっと省議にかけました日を覚えておりません。もちろん調べればわかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/41
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042・米田勲
○米田勲君 何月何日ということはいま記憶されておらないようですが、これは八月中ではなかったですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/42
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043・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私の記憶では八月末だったと記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/43
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044・米田勲
○米田勲君 大臣は記憶しておらぬというのですが、局長どうですか、この省議には文部大臣は出席しておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/44
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045・福田繁
○政府委員(福田繁君) 省議には普通の場合、大臣は御出席になりませんので、そのときは出席してなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/45
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046・米田勲
○米田勲君 私は文部省の慣行はわからないのですが、省議で決定したものを、後刻、大臣に報告、承認を求めるというような形式をとるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/46
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047・福田繁
○政府委員(福田繁君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/47
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048・米田勲
○米田勲君 そうすると、この省議の主催の責任者は、そのつど違うものかどうか。このときの限度政令を出すということをきめた省議の会議の主催者というか、責任者はどなたであったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/48
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049・福田繁
○政府委員(福田繁君) 事務次官でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/49
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050・米田勲
○米田勲君 私は詳しいことはお聞きする必要はないのですが、この省議で限度政令問題について、どの程度の話し合いをした上で出すということを決定されたか、ごくかいつまんで話をしていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/50
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051・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私の記憶では、これはもちろん政令の案でございますから、政令案について説明をし、それに対する省議の決定をいただいたわけでございます。あらたまって特別なことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/51
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052・米田勲
○米田勲君 そうすると、この省議は政令案について説明をし、決定をしたというお答えですが、初中局長はもちろんこの会議に出席しておられましたでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/52
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053・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私はその省議の日にもちろん出るべきでありますけれども、他の所用のために不在でございまして、代理の者が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/53
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054・米田勲
○米田勲君 私は特にあなたを名ざししてお尋ねしておるのは、あなたは臨時国会のさなか、まだ標準定数法案も、教科書の無償措置法案も提案できるというような段階になかった。そういう情勢の中で、野党のわれわれと自民党の文教部会の首脳部と話し合いをした初めから、この委員会で最終的に附帯決議、大臣の御答弁等が行なわれ、その内容の取りきめに至るまで、事務当局のメンバーとしては初中局長が一番このことについては経過を知っておられる立場の人であると私は理解をしておるのですが、あなたのお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/54
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055・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私は担当の局長でございますので、その間の事情は承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/55
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056・米田勲
○米田勲君 私はおそらく、この省議の際にあなたが出席できなかったために代理を出したといわれておりますが、何月何日の省議で限度政令問題について出すという結論をきめるということについては、もちろん前もってあなたは知っておられたのではないかと、こういうことを予想した上の私の質問でありますが、この問題は、あなたもよく知っておられるように複雑怪奇な経過をたどっておるわけです。政治的にもいろいろな面から見ても、通り一ぺんのものではないのであります。そういう複雑な問題が国会の中であったことを相当程度詳しく知っておられる局長が、その省議で限度政令を出すということをきめることを知りつつ、政令を出すとしても、この問題についてはかくかくの複雑な経過がある、問題は簡単ではないものであるということを、私は少なくともこの省議で一応話し合われるのが当然ではないか。特に法案の問題だとか、各省関係の問題では、関係の与党の部会等には、平素の場合には相当緊密な連絡をとっておるはずであります。これは部会長からも聞いたことでありますが、自民党の文教部会に対しても、省議で決定したものは秘密にしていたかどうかは別にして、全然報告も連絡もとられないまま、相当期間経過をしておった事実は明らかであります。私はこのような今日の段階に立ち至ったことも、事務当局の事情からいって、当面の責任者である福田局長は問題の全貌について省議で十分話し合われなかった、ごく単純に政令案の内容のみを話し合う程度のものにこの省議をしたというところに誤りの第一歩が生じたのではないかと、こう思いますが、局長の端的な反省はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/56
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057・福田繁
○政府委員(福田繁君) この問題がいろいろ複雑な経過をたどっておりましたことは、私も承知いたしております。しかしながら、政府としては閣議でこれを改正するという方針を決定いたしておりますので、したがって、その省議の席には私はおりませんでしたけれども、その以前におきまして、十分関係の者にはこれを理解をしていただいて、文部省としては決定したような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/57
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058・米田勲
○米田勲君 いまの局長の発言の中には非常に大事なことがありますけれども、質問の順序からいって、いま直ちにそのことに移ることを保留して、後ほど十分に見解をただしたいと思います。
そこで、次の私の質問は、いま閣議の決定が先にあったのでこの政令を出す省議をきめたということですが、大蔵省側からは、この八月の省議できめる以前には早く政令をなぜ出さないのかというような何か話し合いが、公式、非公式を問わず文部省側にあったのかどうか、そういう事実はなかったかどうか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/58
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059・福田繁
○政府委員(福田繁君) 大蔵省といたしましては、この標準法を改正するときからの問題でございますので、きまっている方針に従って早く出してもらいたいという御要望はございました。また、自治省におきましても、八月以後になりますと、交付税の計算上非常に支障を生ずるというような問題がありましたので、私どもとしては既定方針どおり、八月中にはこれはきめなければならぬような状態に立ち至ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/59
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060・米田勲
○米田勲君 いまの御答弁についても後ほど、同じような疑義がありますので、一括お尋ねをすることにして、大臣にお尋ねをいたします。文部省で、省議で政令を出すということを決定したあと、事務次官から、おそらく大臣に対してそういう報告かあるいは決裁を求めるか、何らかの事務的な措置がとられたと思うのであるが、これは前の質疑の中でも大臣の答弁で明らかになっているように、事のいきさつは大臣も承知しているわけであります。政調会の副会長時代からこのことは知っておられたと言われているのですから、事の成り行きは知っておられる。しかも、この政令をあなたの手で出す直前に、自民党の文教部会からは、それは出されては困るということを強く話しをされた事実もあなたは認めているのでありますが、そういう事実があっても、この政令を出すという結論にあなた自身が立たれた理由をここでもう一度端的にお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/60
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061・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほども局長が申しましたように、この問題については、三十八年五月二十八日の閣議決定があるわけであります。それからいろいろと標準法成立の際に与野党の間でお話し合いがあったことも私はいま御指摘のとおり承知もいたしております。しかし、その間に立って、文部省としてはいかになすべきであるかということについて、私も本来ならば、七月の十八日に就任したわけでございますから、その直後にこれは手続をしなければならない問題であったかもしれませんが、なお自分としてもとくと勉強する必要もございましたので、ぎりぎりの、ただいまお話が出ておりますように、自治省その他の関係省の立場もございますから、ぎりぎりのところまで検討を続けまして、九月に入ってから閣議決定をいたすことにいたしたわけであります。その間、与野党に対して、いよいよ出しますよということの御連絡の方法その他については、私のとりました手続や態度に遺憾な点がございましたということは、初めからこの点については私もざっくばらんにお話しを申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/61
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062・米田勲
○米田勲君 それでは質問の角度を変えて、今度は限度政令を、私は結論的に、出したことは、この政令を出したことは義務教育費国庫負担法に違反するという立場で、これから質問を続けます。
第一の問題は、元来、この国庫負担法は、法文の第一条にもきちっとうたわれておりますように、教育の機会均等と教育の水準の維持向上をはかるために実員実額主義を原則として、例外的な措置としてのみ限度政令を認めている法律なのであります。すなわち、定員定額制、この考え方を排除して、実員実額をもって国庫負担の基礎とするのがこの法のたてまえであります。しかるに、今回の限度政令のように、標準定数法の線をそのまま最高限度として採用することは、例外をもって、原則に転化するものでありまして、これは明らかに義務教育費国庫負担法に違反をすると私は考えるのであります。文部大臣の見解を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/62
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063・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 私は違反しているとは考えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/63
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064・米田勲
○米田勲君 そういう、私は考えませんというよりは、あなたはもう少し親切に答弁をしていただけませんか。どういうわけで私はそう思いませんということを答えられないのですか。私もこれは違反するぞとだけは言っていない。ただ違反すると質問したら違反しないと答弁してけっこうであります。私は理由を言っている。これこれの立場から違反だと言っている。あなたも違反しないというからには少なくもその立場を明らかにしてください。そうでないときわめてあなたの答弁は不親切であります。私はそう思いこんでいるんだからあなたに質問をしておるのです。そんなことではないということだけでは私はわかりません。いくらでもしつっこく私はわかるまで繰り返しあなたにお尋ねせざるを得ない。だから、あなたのどうして違反しないという見解に立っていられるのかお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/64
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065・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 義務教育費国庫負担法に違反をしておるという御断定でございますから、私はそういう御断定に対しては意見が違いますと申し上げたわけでございます。それならば、どうして違反しているのでありましょうか、私はその点についていろいろ御質問いただきまして、それにお答えすることにいたしたいと思います。しかし私が、こういう点を違反と言われるような根拠にされておるのであろうかということを想像しながらお答えしてもよろしければ、私の見解を少し長くなりますけれども申し上げてみたいと思います。米田さんの根拠となさっておる中には、たとえば都道府県に置かれている教職員の総数が、標準法で定める、標準で算定した教職員の定数を越える場合は国庫負担法のたとえば第二条のただし書きとどういうような関係を想定して違反か違反でないかというふうな点を含んでおられるかと思いますし、この点が一つの問題点と思いますので、私どもの見解を申し上げたいと思います。この第三条にただし書きに言っておる「特別の事情があるとき」というのをどう解釈するかということは、いま申しましたように一つの点であると思いますけれども、これは私どもは各都道府県の教職員給与費の実支出額の二分の一を国が負担することがこの法律の目的に照らして不適当である場合というふうに解すべきではなかろうかと、私はかように考えておるのでございます。すなわちこの法律は原則として義務教育の妥当な規模と内容を保障するためには、国が各都道府県の教職員給与費の実支出額の二分の一を負担することが必要であるとこうしていることは、いまさら申し上げるまでもございません。したがって、本法の目的に照らして不適当である場合というのは、国が想定しております義務教育の妥当な規模と内容を越える規模と内容を実現しようとする場合、あるいはまたこれを実現するに十分な財政力を有している場合とこの二つが想定されるのではなかろうかと思います。そうしてこの義務教育の妥当な規模と内容を充足し得る限りにおいて、それを越えて国が想定しておる一般的な標準を越えてその上に定数等をきめるような場合は、その必要とする金をだれが負担をするか、そのおさいふは国のおさいふで自動的にみるべきか、あるいは都道府県がその分は自分のおさいふでみてもらうかというような点につきまして必要な規定をすることは、この特別な事情がある場合に該当するのではないか、こういうふうに考えますから、私は義務教育費国庫負担法の違反にはならないと、かように理解をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/65
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066・米田勲
○米田勲君 文部大臣の御説明を聞きしましたが、私はここで問題にしなけりゃならぬのは、この義務教育費国庫負担法という法律は、そこの第一条の法律の目的にもありますように、大上段に振りかぶっている考え方は、「義務教育無償の原則に則り、」という非常に高い理想を振りかざしておるのであります。したがって、文部大臣が先ほど言ったような、これは具体的ではありませんから、どの程度のことをさすかはいろいろ変化を起こすとしても、妥当な規模と内容を保障するのであって、それを越えて条件がよくなるという状態になれば、国が二分の一を支出をすることはすでに不適当だと、こういう判断だから、「特別の事情」というものを発動して最高限度を押える、こういう考えですが、私はこの負担法は、負担法自体は何か一定の水準、教育の妥当な規模や内容の一定水準を規定していない、この法律自体は。そしてこの冒頭にまっこうからかざしているのは、義務教育無償の、原則にのっとり、すべての国民に対してその妥当な規模と内容を保障するため、国が必要な経費を負担して教育の機会均等とその水準の維持向上とをはかることを目的としている。こう言っているのです。私に言わすと、あなたの見解は、この法律の第一条に対する見解は、ある一定限度までこの規模と内容の水準が上がれば、そこでこの法律自体は停止をするというものの考え方をしている。私はそれはそうではない。これはあくまでも教育の機会均等、そういうものを目ざしながら教育の水準の維持ばかりでなく、一定限度の水準を維持するばかりでなく、常に向上をはかっていくという考え方がこの国庫負担法の考え方であります。そしてこの国庫負担法は実支出額の二分の一を国が負担をするというのがこの法律の原則であります。その原則があなた方の言う妥当な規模と内容に達した、これ以上越えて条件をよくする必要はむしろ不適当であるというような判断をすることは、この法律自体からみて精神に違反しているのではないか。この法律自体は、あくまでも義務教育の改善、維持向上を常にねらって国の実支出額を二分の一出させるということをきめておる法律である。こういうふうに私たちは理解をしておるわけです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/66
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067・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) いま非常に重大な点にお触れになりましたが、私はこの義務教育の無償あるいは機会均等ということは非常にこれは大切な問題であると思いますけれども、これはいまどういうふうにこれを考えていくべきかいとうことにつきましては、当面の問題からはちょっと離れて、より基本的な問題であると思いますから、この点はしばらくおくといたしまして、私はこの限度政令の問題というのは、標準法との関係においてより一そう理解を深めていかなければならない問題かと考えておるわけでございます。標準法はいまさら申し上げるまでもないことで恐縮でございますけれども、要するに、義務教育諸学校の一学級あたりの児童生徒数と都道府県ごとの教職員の定数のきめ方の標準を定めておるものと私は理解いたします。一方、限度政令のほうは、教職員の給与費等の国庫負担をどうするか、これを通俗的に言えば、そのお金のお蔵をどこに求めるかということを規定しているものであると思います。そして私はいわゆる実支出額の二分一を負担するということは、この標準法の線に基づいて考えられることであって、そして今度のこの限度政令においては実支出額の二分の一を負担しないというものではない。実支出額の二分の一はもちろん負担をいたすということに何らこれは触れているものではないと思います。そして限度政令において、限度額を算出する場合において、標準法の標準で算定した理論的な学級数、教員定数を基礎にしておる点が標準法と限度政令との関係であると思います。それは国が給与費等を負担する場合に、法律が標準としておる学級編制と教員定数の線まで国が二分の一を負担するのである、その限りにおいては義務教育の妥当な規模と内容が保障される、こう私は理解すべきであると思います。そしてさらに、しかし戦後の教育制度のあり方、そしてまた私はそれは適当なあり方だと思いますけれども、それ以上にさらに定数をふやす、標準法に基づく定数以上に定数をきめるとういような場合におきましては、これは各都道府県におきまして、教育に熱心であり、そしてそういうふうなやり方をほかの予算を削ってまでもやろうという場合におきましては、もちろんそれは都道府県の自主性にまかしてしかるべきものであると思います。私は要するに、ですから標準法に始まる各種の制度におきまして、そこで支出された額の二分の一を各県が、それこそ機会均等といいますか、一律の基準をもって、その限度におきましては国のおさいふがこれを保障いたしましょうということが、私は限度政令でありますから、いまいろいろの点からお話がございましたけれども、私は米田さんのお考えの根本に触れて、私は限度政令というものを出したことがそのお考えの基本に触れたり、抵触したり、あるいは御心配になっておるような点の御心配はない、こういうふうに私は基本的に理解いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/67
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068・米田勲
○米田勲君 いろいろ御答弁をいただきましたが、私はやはりまだ納得ができません。文部大臣の見解の中には、国庫負担法の実支出額の二分の一は決して変更しておらないと、こう一方で言っているわけです。一方では、標準法で一つの基準がきまっていると、こう言われているわけです。それでは法律上どういうことになるのですか。義務教育費国庫負担法は、定数標準法と何らか法律上関連があるのですか。私はこの二つの法律は全く無関係なものだと思っています。政治的、行政的には関連があります。しかし、法律の上では、この二つの法律はそれぞれ独立しているはずであります。ですから、一方の標準法の線を最高限度として採用をして、そして義務教育費国庫負担法のただし書きを使ってこれを押えるということは、他の法律を持ってきて、この義務教育費国庫負担法の本体であり原則であるものをおかしていることになりはせぬか。だから、実支出額の二分の一というものは変化しておらないということは、それは形式的な話であって、私は明らかにこういう関連をつけて、二つの法律を関連づけて文部大臣のような説明を聞くと、明らかにこれは国庫負担法に抵触する限度政令の出し方であるというふうに考えるわけであります。私は、こういう例外的な——あくまでも、私は第二条後段ただし書き以降は例外的な措置だと主張するわけです。一般的な措置ではないはずであります。例外的な措置で限度政令を出すことを認めているものでありましょう、法律は。ところが、政府は先ほどのことばをもって見れば、妥当な規模と内容に達しておるという、そういう事実か、もしくは現象を独断して、これこそまさに法のいう特別の事情であると言って、今度の行政措置をとっておるわけです。これでは法律のただし書きにうたわれた例外的な措置を許しているものをもって、法律全体のねらっている原則といいますか、本体というものを明らかに死文化してしまっている、空文化さしてしまっておる。こういうことは他の法律にも私は例を見ることができないのではないか。特別の、例外的な措置を発動することによって、法律全体、その法律の本体を全部空文化さしてしまうというような、そういう運用の例はあまり聞いておらないのであります。そういう立場からも、私は今度の限度政令をこのただし書きに足場を置いて出したことは国庫負担法に違反するのではないか、こういう見解を持つわけです。もし、いや、そうではない、米田が言っているのは見解が狭いのだ、他の法律ではそういう例外的な措置、そういうものによって措置をされても、法律全体が空文化してしまっても、一向差しつかえないという例は多々あるということであれば、私はお聞きしたいのであります。それはたくさん聞くわけにはもちろんいきませんが一、二の例をお聞きしたいのです。私はそういう例はあまりないのじゃないか、こういうふうな疑問がありますので、特にまた文部大臣の答弁に納得ができないわけです。やはりこれは法に違反する、こういうふうに思い込んでいるわけです。この点ひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/68
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069・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) そういったような点につきましては十分御論議を尽くしていただきたいと思いますので、答弁が冗長になるかもしれませんが、お許しいただきたいと思いますが、私の理解では、やはりおっしゃるように、法律としては別個のものでありますけれども、先ほどお話になりましたように、これは別個であるとは私は思いませんけれども、かりに別個な体系であるといたしましても、少なくとも行政的には密接なうらはらになる法の体系であると考えざるを得ないと思います。そこで一体、いわゆる標準法というものはどういうふうな経過をたどってきたであろうかということをまず考えてみますと、いわゆる戦後のすし詰め教室というものがしばらく続いた。そのすし詰め学級の解消を目的として改正前の旧標準法というものが制定されたものであると思うのであります。したがって、旧法によるところの標準というものは、当時の児童生徒の増加傾向や学校施設の状況などからして、かなり不満足なものであったと言わざるを得ないと思います。したがって、その当時におきましては、各都道府県で標準を上回った府県がありましても、その府県の負担するものに抑制を加えることは適当ではなかった。つまり、国庫がその状況のも一とにおいて二分の一を負担するということは適当ではあった。これが標準法改正前の状況であったと私は思います。ところが標準法が、その後非常にいろいろの状況から判定をいたしまして改正をすることになりました。そうして現在の改正標準法、いわゆる四十五人を最高にする学級編制ということが改正標準法ででき上がったことが、わが国の現状としては満足すべきものだと私は考えております。一方において学級編制の実態や教職員定数の充足も一著しく改善される傾向になってまいりました。このような事実を前提として考えます場合に、今度の改正標準法を上回った府県の負担金にある程度これは抑制を加えて、そうして全国が足並みをそろえて一つの標準を持ち、かつ、その標準の二分の一は国がいつまでも負担をいたしますということをやっておくことが、今日においては適当な措置ではなかろうかというのが私ども一の考え方でございます。そういう点から申しまして、限度政令というものが、冒頭からの質問がございましたけれども、現状をもってすれば、これによってプラスになる、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。しかしながら、観念的にはいろいろと、こういう場合はどうだ、こういう場合はどうだということが考えられますので、これは前大臣の当時におきまして、この限度政令に触れて、そうして各都道府県の定めるものについては、できるだけこれを尊重する、そして人事行政に混乱を来たさないようにするということをはっきり政府としてその当時も言明いたしました。そこで、実際の運用上その他において、各都道府県ごとにずっと当たってみまして、あるいはまた全国全体を一つのますで見るとすれば、一部にはこれによって一万数千人、あるいは四十年度においては六千人の首が飛ぶというようなことを言っておられる方もあるけれども、少なくとも全国を一体として見た場合には絶対にさようなことはない。たとえば大蔵省で出しております今回の四十年度の予算の説明などを見ますと、この関係に触れておりますけれども、百四十人のかえって定員が増すんだという——百余人でございましたか、増すんだという説明も出ているくらいでございます。これは私どもから言えば、またほかの見方もできるわけでございますが、六千人が首になる、解任になるというようなことは絶対にございません。それから、したがって、四十年度につきましては、まだ各都道府県の教育委員会等が中心になりましていろいろと人事の配置その他をお考えになっておるようでございます。ちょうどいまその時期のようでございますけれども、各都道府県別に当たってみましても、限度政令によって血が出るというようなことは、私はもう万々ないと、こういう私は確信を持っております。したがって、先ほど来申しておりますような標準法改正前からの経緯を考え、あるいは現在の改正された標準法のたてまえから申し、そうしてさらに実際の状況からいって、私は標準法その他において規定されております義務教育の妥当な規模及び内容について、政府としてもこれで十分保障ができたと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/69
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070・米田勲
○米田勲君 いま、るる文部大臣から説明がありましたが、私はいま私の質問を進めておる立場というのは、学校教育の実態論という、首切りが起こるとか起こらぬとか、そういう問題は全く抜きにしての話なのであります。これは今度の限度政令を出したことは義務教育費国庫負担法に違反するという結論に立って疑義がありますのでただしているわけです。私は行政的か政治的かにこの二つの法案が関連があるとしても、法律としては独立をしているんではないか、その見解は。これは何と文部大臣が言っても私は正しいと思う。義務教育費国庫負担法は義務教育費国庫負担法、標準定数法は標準定数法、明らかに両方とも独立をした法律であります。そこで、いま私質問をしたうちの一つを答弁していただけないんですが、こういう例外的な措置、ただし書きに許された例外的な措置で法律全体がねらっていることが空文化するような運用の例が他にあるかどうかということが、私も法律の専門的な知識はありませんけれども、いろいろ調べてみてもそういう例はあまり見当たらない。そうなると、この場合だけ、そういう例外的な措置を発動して国庫負担法全体がねらっている本体をまず当分の間というか、相当恒久的に死文化さしてしまうということは、国庫負担法の立場からいえば、これは違法だということが、やはり言えるんでないかという疑問があるんですよ。ですから、そうではないと、他にこういう法律の運用例があるぞということであれば、私の見解はまた変わるわけですが、そういう例があまりない、だからこの場合は無理だというふうに判断をしたのであります。その点をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/70
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071・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) この点は非常に、故意にお答えをはずしたわけじゃございませんで、私は基本的にたいへんどうも恐縮ですけれども、法律に違反しているという御認識に立っておられるものですから、たとえばある種の政令によって法律の例外として定めたことを政令で定めて、そして他の法律に違反するような、もしくは他の法律を空文化するような例があるかというお尋ねなんでありますけれども、私はこれは他の法律を空文化したり、いわんや違法になるような措置をやろうとしておるものではないと、こういう前提に立っておりますものですから、ほかの例を探せとおっしゃっても私には探すことはできない。これは結局根本の、何と申しますか、根本のお考えが私とどうも残念ながらすれ違っているものですから、私は違反していない、そして空文化したようなことではないと、私はこういう気持ちでございますから、気持ちというか、そういう考え方を持っておりますから、どうも空文化したような他の例を探せとおっしゃっても、これは私におっしゃっても無理だと思うんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/71
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072・米田勲
○米田勲君 それではその点は了解しました。しかし、この点はそれでは文部大臣はいかがですか。この義務教育費国庫負担法は各都道府県ごとに必要な経費を計上してくれば、私に言わせると、自動的に実支出額の二分の一を国で負担するときめている。その都道府県ごとに計算をして出してくるものに対して、あらかじめだれかが一定のワクをはめてこれを抑えつけて、その押えつけてできてきた結論に対して実支出額の二分の一を出すという法律ではない。都道府県ごとに自主的に算出をしてきたものに対して国は自動的にその半額を国庫負担するというのがこの法律のたてまえなんです。これには私はだれも異論はないのではないか。そのあとに、ただし、特別の事情がある場合にはという例外的な措置でもって限度政令を出すことができるようになっている。政府はそれを基本にして、それを足場にして限度政令を出したと、こういう考え、そういう例外的な、そしてこの法律の本体であるべきものを完全に押え込んでいることは事実じゃないですか。もはや各都道府県ごとに出てくる。算出される総額に対する実支出額ではなくて、一定のワクをはめられた各都道府県ごとの経費に対して二分の一というんですから、この法律の本体はそこで変化を起こしている。決して文部大臣の言うように同じである、この法律の運用には限度政令を出した前もあとも同じであるということは私は理解できない。すでに正体が変わっている。変わっていることはけしからぬというのが私の立場です。これは限度政令を出したことによってそういう事態を招いたことは無理があるか、妥当でないか。私に言わせると、これは法律違反だなというふうに判断をしたのです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/72
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073・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) そのお尋ねになりますと、最初に私申しましたように、ただし書きが許される対象はどういうものであるかということの理解の問題にまた戻るわけでございます。私はこのただし書きに言われていることを援用して限度政令を出すということは違反ではない。すなわちただし書きを援用し得るものである、こういう認識に立っております。そして、それはお話のように、もし、ただし書きに予想されているもの以外を限度政令できめたんだとすれば、まずそこに違法の問題が起こる。私は違法でないと思う。適法であると思うから、この標準になる定数に一定のワクをつけて差しつかえない。そしてその法律に認められた例外のワクを基準にして、そうして実支出額の二分の一を国庫が負担をいたしますと、こういうのが私は妥当であると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/73
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074・米田勲
○米田勲君 ここのところだけで回っていると、どうもお互いに同じところを回りはじめましたので、私は別な角度からそれではお尋ねしますが、先ほど文部大臣は、標準法の制定前後のずっと経過について説明がございました。私はこの国庫負担法の国会審議の経過をこの際もう一度ここで明らかにする必要があるのじゃないか。法律というのは、もちろん成立をしますと条文に現われたことば自体がその法律の全部であります。しかし、その法律の運用を誤らないようにするためには、その法律案が立法府において審議せられた際にどういうことを配慮して審議せられていたかということを、これは十分に知った上で運用をされるべきことは、これはまた法律の運用上大事なことだと思うわけです。そこで、私は当時の事情を調べてみますと、衆議院から、議員提案でしたが、この法律案が提案されて、そして議決になって、参議院に送付されてきたのである。その送付されてきた法律案は、第二条の部分は、第一項には現在の国庫負担法と同じように実績の二分の一を国で負担するということをきめ、同時に第二条の第二項に並列して最高限度を定める限度政令を出すことを規定しているのであります、衆議院送付の原案は。このような原案の場合、このまま議決せられたものであれば、第一項にある二分の一の実績負担と最高限度をきめる政令を出すことは同一比重でありますから、そのいずれをとるかは行政府の裁量に自由にまかされていいという私は判断に立つわけです。ところが、そのことが問題になりました。これでは第一項と第二項の比重が同じであって、行政府に一切がっさいその裁量をまかせるような結果になってしまう。これではわれわれが国庫負担法をいま制定しようとする精神からははずれる結果になるということが、いろいろ論議された結果、策二条の第二項は削除したのであります。つまり第二条には第一項しか残さなかった。そして比重を落として、ただし書きにこの限度政令を出せる条件をつけたわけであります。しかも、この当時の論議を調べてみますと、その修正を政府与野党間で話し合われたときに、特別の事情ある場合、限度政令を発動するのは富裕府県に対して発動をするのである。富裕府県にまで同一に他の府県と同じように国庫負担を二分の一、実績の半額国庫負担をやる必要はないのじゃないか。ですから、そういう富裕府県については特別の措置を講ずる必要があるということで、わざわざこのことの質疑応答を行なって、会議録に、その解釈を誤らないようにとどめる措置を、修正の話し合いをまとめる際に同時に行なっているわけです。こういう経過を経て、この衆議院送付の原案が修正されて今日の義務教育費国庫負担法になっているわけです。ですから、この国庫負担法ができてから以後、今日あなたが限度政令を出すまでは、そのときに議決された、話し合われた趣旨そのままに運用されてきているのです。それを今度あなたが限度政令を出したことによって、富裕府県のみならず、一律に全部の都道府県に対してワクをはめておるということは、当時の法の審議の経過からいっても、修正をした理由からいっても妥当ではないのではないか。特に私はあなたに見解をお聞きしたいのですが、私の判断では、衆議院送付のように、第二条に並列して第一項と第二項がある場合と、参議院で修正して第二項の部分を削除して、ただし、特別の事情ある限りとした場合では法律の運用が変わってこなければならないのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。文部大臣のような見解であれば、衆議院送付の原案のとおりの立場で二分の一の国庫負担をやるのだが、場合によっては第二項を発動してもかまわないのだ、それは政府の自由裁量なんだという衆議院送付の、原案の立場をとっておられるのじゃないか、そこに私は非常に大きな疑問を持つわけです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/74
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075・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) そのときの衆議院送付の案についての修正の経過その他につきましては、私も経過として調べてみたわけでございますけれども、やはりそのときの状況を的確に私が米田さんの御理解と同じようには実は考えておりませんわけで、たとえば特別の場合というようなことを例外といいますか、それで措置することを政令に譲るということの御議論がいろいろあったときに、当時の政府側の説明や答弁の中には、たとえば国の基準を、具体的な給与につきましてもあまりに高く定めた場合にも、これは自動的に負担しなければならないかどうかというような問題も生じますので、そういう場合におきましても特別の場合として政令にそういう場合の措置は譲ってもいいのじゃないか、こういう議論も一方政府側からは出ておるわけであります。そういうような点につきましては、やはり当時からいろいろの見方があろうかと思いますけれども、私は現在並びに今後、前向きの考えで見た場合に、前大臣が、問題の前々国会でございますか、そのときに附帯決議に対して御答弁申し上げましたように、府県が決定した定数をできるだけ尊重するようにいたしますというようなことで、なるべく実情に即したやり方でやっていきたい、それによって限度政令の運用を円滑にしてまいりたい、かように考えておりますことは繰り返し申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/75
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076・山下春江
○委員長(山下春江君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/76
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077・山下春江
○委員長(山下春江君) 速記を始めて。午前中の委員会はこの程度にして、午後一時三十分から再開いたします。
休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時五十六分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/77
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078・山下春江
○委員長(山下春江君) これより委員会を再開いたします。
午前に引き続き教育、文化及び学術に関する調査中、義務教育費国庫負担法に関する件を議題とし、質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/78
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079・米田勲
○米田勲君 午前中の質問に続いてお尋ねいたしますが、義務教育費国庫負担法案が国会の衆参両院で審議された経過を調べた上で、私としては先ほど申し述べたような主張に立っているわけです。もう一度さっきと重複をするのですが、文部大臣の見解をいま一度確めたいわけです。それは衆議院のほうから回ってきた原案、つまり第二条の第一項、第二項と並列をして法律案ができている場合と、参議院で修正した第二条の第二項を削除して、これをただし書き以下の「特別の事情」という形ではめ込んだ場合と法律の運用に違いがありますかどうか。違いがないという判断ですか、運用には違いがあるのか、その点をひとつお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/79
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080・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほども申しましたように、私も一応調べたのでございますが、当時おりませんでしたから、正確を期する意味で政府委員から答弁いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/80
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081・福田繁
○政府委員(福田繁君) 御指摘になりましたように、この一項と二項という形においてできておりますのと、ただし書きの規定を入れました場合との解釈上でございますが、私は実質上は同じだと思います。思いますが、ただ法文のていさいその他から考えまして、二項に、一項を起こすというほうが少し大きな感じがいたすわけであります。これは立法技術上の問題であろうと思いますが、そういうことで、ただその内容としては、特別の事情ということ自体はなるべくあまり広くしないで、ほんとうに特別な事情がある場合に限定していこうというような趣旨であったと思います。私どもとしてはそういう解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/81
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082・米田勲
○米田勲君 私は法律のしろうとですから、そういうふうに断定されれば、そういう考え方もあるかなと思いますが、私は第二条に第一項、第二項と並列して二つのことがうたわれている場合と、第二項が削除されてしまって第一項のただし書きに持ってこられた場合とは運用上違いがある。これはぼくは法律運用上の常識だと思うのです。それはどういう点に違いがあるかというと、「特別の事情」というものを運用するときのワクに違いがある、限界がごくしぼられるべきだ。並列してある場合は、これは政府の職務権限でどちらの方向を選んでも、これは私は問題ないと思います。第一項を選ぼうが、この時期では第二項を選ぼうが、自由裁量でいける。そこには問題がない。しかし、修正されて現行法のようなことになった場合には、その場合と同じですよ、運用が。これは私は少し独善過ぎるのではないか、そういう判断は。やはり運用上違いがあるという見方が正直なんではないかと思いますが、大臣いかがですか。私の見解と、局長の見解は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/82
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083・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) その当時の経緯はともかくといたしまして、これはやはり特定された第何項ということに書かれた場合と、ただし書きにこれを規定した場合とは、おっしゃるように運用上違いが私はあると思います、立法論といたしまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/83
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084・米田勲
○米田勲君 そこで、私はこの立法府の、特に参議院の段階で原案を修正した際に、この「特別の事情」というのは、富裕府県に対しては実額の国庫負担を自動的にやるというのは問題があるということから、これに制限を加えるべきだという論がはっきり立てられて、そしてただし書以下をきちっと載せたという経過を私は理解しておるわけです。その後、標準法ができてから改正になるまでの間、この間に国庫負担法のただし書きが発動されたのは、富裕府県に対する場合のみに限って発動されておったと私は判断するのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/84
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085・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 経過はそうであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/85
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086・米田勲
○米田勲君 この事実は、現在の法文からいえば、いろいろな論はあるとしても、やはり当時の法制定の経過でお互いが考え合ったこと、話し合ったことを、行政上私は今日まで守ってきたものだ、改正になるまでは。こういうことを考える。だから、今度のような措置で、富裕府県も何も一律にこれを、ものさしを当てて限度政令でもって押え込むというやり方は、国庫負担法成立の当時の経過から見ても少しも妥当な運用ではない。私はここでは違法だということばを使わないとしても、妥当な運営ではないということをまず指摘するわけです。それが一点と、もう一つ、大臣のその答弁の中に出てきているし、局長の答弁の中にも出てきているのですが、標準定数法の改正ができ上がった。だからこの法律案がさきの閣議——これは三十八年のいつですか、春ですか、この閣議で、この法律案を国会に出すという意思決定をしたときに、限度政令を出すという申し合わせが同時に閣議で行なわれておる。これはわれわれも承知している。だから、さきの通常国会にはこれを廃案に追い込んだのですよ、限度政令を出されたのではどうにもならぬということで反対をして廃案にしてしまった、そこで、文部大臣にお考えをいただきたいのは、政府の部内で法律案をつくり上げて、それを閣議にかけて国会に提出をするまでの間に自由に何かを話をすることは、私は話し合ったり、きめたりすることは政府の立場で自由だと思うのですよ。しかし、一たび法律案が立法府に出てきた場合には、これは立法府の権限に移るべきものであって、政府は提案者としての立場しかないはずであります。こういうことを私は判断するわけです。法案が立法府の手に移ってしまっている。ですから、政府の法案の提案の趣旨説明の中には、この限度政令が関連して出されるということは一つも書いてないわけです。そういうことについては全く書いてない。したがって、立法府としては限度政令については関知していないというのがわれわれの立場です。そんなものが、定数標準法が出たから限度政令が出るのだというようなことを立法府としては関知すべきことでない。政府もまた法案の審査にそういうことは申しておらない。これは当然だと思うのですが、さて、この標準定数法案はその後提案されて立法府の手に移ってからどういう経過を経たかり私は政府の手を離れてからは変貌した、質的に。結論をいいますと変化をした。原案が変化をした。これはまず第一に、法文の上からいうと、勧告——文部大臣の勧告権が切り落とされているわけです。これは非常に強いものであったわけです。それを従前の文部大臣の指導、助言という普通の権限に修正されてしまっている。そのことが変貌をしたと私が指摘をする第一です。それから、これは与野党、政務次官、前の文部大臣が参加して云々したということを抜きにして、そんな話は全然抜きにして、いま第二の問題を申し上げますと、附帯決議というものをきめました。この附帯決議は与野党の文教委員できめたのではない。これは文部大臣も一参加しているはずです。われわれの判断はそうです。これは、しかも参議院だけではない。衆議院の双方の文教委員もこれに参加をしている。つまり政府、与野党の文教関係のものが全体で合意に達したのがこの棟準定数法案の附帯決議なんです。ところが、この附帯決議は読んでいただけばわかりますが、なかなかもって頭のいいものでもわからない、内容が。「四十五人を適当とする定数標準法の改正に伴う国庫負担金制度については、政府は、改正法の趣旨にしたがい運用すべきである。」このことばは都合のいいほうに立って解釈すれば、政府側の、いま文部大臣が言っている側の立場でも主張できる非常に妙な表現なのであります。しかし、どうしてこういう妙な表現のものにお互いが合意に達したかというと、これはいろいろその場合の複雑な事情があって、文章はかくのとおりあいまいで、表現はあいまいであるけれども、限度政令を出さないということについては、たとえこの附帯決議がどう書かれようともわれわれは責任を持つものである、大臣に対してわれわれは責任を持つ、これは吉江さんもはっきり言った。これは衆議院の人もみな大臣に対して出させないことに責任を持つのだから、これ以上の表現を社会党は要求するなと、こういうことがあって、この附帯決議は、これでそれではよろしい、わかったと。ところが、その次の大臣の答弁は、これは相当はっきりしているのです。普通であれば、この附帯決議の委員会決定に基づいて大臣は自由な立場で答弁をするのです。ところが、このときの前灘尾大臣の答弁は、彼の自由意思ではなかったのであります。これは与野党の文教委員、文部大臣も加わり、この附帯決議の全文については練りに練ってきめたのであります。これを答弁としてしない限りは文教委員会を再開できないということで、もみにもんだ上でこの答弁はでき上がり、文部大臣ものみますとなった。それが、「本標準法並びに附帯決議の趣旨に沿って、各都道府県に適切な指導を行い、その上に立って、各都道府県が決定した定数をできるだけ尊重するよう努力いたします。」、こういうふうな答弁になったわけです。この答弁をきめる際にも、「できるだけ尊重するよう努力いたします。」ということばは、これまた逃げ道のあることばなんです。これをめぐっても、もっとすっきりしたものにしたい、お互いの約束がそうなんだからもっとすっきりしたことを言わせるべきでないかという話もわれわれのほうから強く主張したのであるが、与党側の強い意見もあって、こういうことばを使っても、絶対にわれわれの果たすべき、限度政令を出さないというこの約束は必ず守るから、いろいろな政治的な考慮も払って、ぜひこの「できるだけ尊重するよう努力いたします。」ということばで納得してくれぬかと、こういうふうにきめられたので、われわれは譲歩をしてこの大臣答弁に合意したのである。で、この大臣答弁を、文章をごらんになればわかりますように、これは限度政令を文部大臣が出して各都道府県の定数の決定に一つのワクをはめる。これはもう明らかです。ワクをはめる。そういうやり方とこの大臣答弁とは明らかに逆であります。逆の方向であります。強さ弱さは別にしても、限度政令を出して一つのワクで各都道府県の定数を押えるという思想とこの大臣答弁は明らかに逆の方向にある。すなわち、各都道府県が決定した定数を尊重して国庫負担をするんだ。それは附帯決議のほうと合わせる、「趣旨に沿って」とありますから、そういうふうにするんだということを答弁をしておるのであります。ですから、われわれ野党の立場からすれば、これだけお互いが確認をして、この法案をそれぞれ修正、附帯決議、大臣答弁と、こう三つの形をとりながらきめた。そこで上がった法律案、この委員会で上がった法律案は、政府の原案とは少なくも質を異にしている。変貌している。質を異にしているという極端な青い方が無理であるとするならば、変貌している、少なくとも原案は。われわれは根本的に立場が変わってきているんだと言いたいんですが、変わってきている。それが立法府の意思である。この標準定数法案の立法府の意思である。そういう経過を経ているにかかわらず、みずから政府が、さきに、原案を策定した当時に限度政令を出すべきだという意思決定をしたからと称して、立法府の審議経過をして変貌している後に至っても、なおかつその当時の閣議決定を守って文部大臣が政令を出さなければならないという行政義務はない。行政上の義務はないはずである。それに拘束されるものではない。もしそれに拘束されるとすれば、それは政府の部内はそれでおさまるかもしれないが、この法案を審査した立法府の立場が軽視されることになると私は思うのでありますが、そういうことを考えても、この限度政令を出したことは法案審査の経過から見て不当であるというふうに考えるわけです。文部大臣の見解をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/86
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087・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) これは米田委員のお立場から言えばそういうお説であるということは私も理解できます。しかし、私のまた理解なり態度は、それと遺憾ながら違うわけであります。いまの御質問は四点ほどにわたっていると思いますが、まず第一は、法律のただし書きの問題、これはもう今朝来申し上げておる点でありますけれども、なるほどあの当時、法案は参議院において修正された。そして、本文からただし書きになったという経過は私も理解できますし、それに対する考え方は私もわかることはさっき申し上げたとおりであります。しかし同時に、そのただし書きの規定、特別の必要ということは、私は富裕府県だけを別扱いにするということのみではないと思うのでありまして、もしそうでございますならば、いわゆる不交付団体は別であるというふうな書き方もできたではなかろうか、そうしないで、特別の事情あるいは特別の必要ということになりましたのは、それ以外にも特別の必要が起こり得るということを予想したものであって、その限りにおいては、先ほど局長から御答弁申し上げましたとおりに私は理解して正しいのではないかと思います。
それから第二の御質問の、法案の審議の過程において、提案されたものの審議というものについては、立法府が絶対的な権限を持って審議に当たる、これはもうごもっとも、そのとおりと思います。で、勧告というようなことが修正されたということにも、その当時の御意図が私にも理解できるように思います。
しかし、今度はこの附帯決議の問題でございますが、そこで、附帯決議はいま読み上げられたとおり、「四十五人を適当とする定数標準法の改正に伴う国庫負担金制度については、政府は、改正法の趣旨にしたがい運用すべきである。」、かように附帯決議には書いてございます。この意味は、私といたしましては、十分運用に留意すべきである、あるいはもっと俗なことばで言えば、なまにぎくしゃくとして適用するというか、そういうことはできるだけ避けたまえという御注意であると思います。また、同時に、経過措置等について十分の配慮をせよと、こういう立法府の御意図であると私は理解いたしております。そして、それに対する灘尾前文部大臣の附帯決議に際する、何と申しますか、所信表明は、これまたただいまお読み上げになりましたとおり、「府県が決定した定数をできるだけ尊重するよう努力いたします。」、この発言をいたしておるわけでございます。それは、なるべく実情に即したいろいろの措置をくふうする必要がありますということを申し上げたものと理解いたすわけでございます。
そこで、第四点になりまして、私はさっき、三十八年五月八日の閣議決定のことに触れましたけれども、政府としてはそういう考え方でその当時からありましたということを申し上げたのであって、立法府の御意図が那辺にありやということについては触れない、また触れるべきではないと思います。しかし、いま申しましたような関係でございますから、私はこの昨年の附帯決議、これを灘尾さんの言われたとおり忠実に実行していこうと現在もいたしておるわけでございまして、いま申しましたように、ぎくしゃくした措置をやるとか何とかいうことはなさないように、先ほど申しましたように、そういう御意図も私なりに理解できますから、私としては七月の中旬から八月一ぱいまで、私なりにもこの限度政令なるものの研究は十分いたしまして、そして灘尾さんの言われたとおりの趣旨で立法府の御意図もくんで私としてはやりましたつもりであります。しかし、くどいようでありますけれども、そのやり方、政令を閣議決定します場合にもう一度念を押して、事前に与野党の御心配いただいた方々に御連絡をして御了解をとるべきであった、この点について私の手落ちがありましたことは、去る九月以来、この委員会において、ほかの委員会におきましても私は率直に私の至らざりしことをおわびを申し上げておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/87
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088・小林武
○小林武君 関連。いろいろ大臣からの御答弁がありましたが、ひとつ簡略に整理して考えてみますと、こういうことになりませんか。定数法が出る、それはしかし限度政令を出すという一つの前提があって、それがすでに閣議で決定されておる、こういう形で提案されておる。ところが、それに対して両党が話し合いをして附帯決議をし、さらに大臣がそれに関する所信表明をやったということ、少なくともその限度政令を出すということについて待ったをかける、そういうことがとにかく両党の話し合いができたということになるとあれでないですか、限度政令を出したということは少なくとも参議院におけるところの法律案のきまった段階のあれからそれているのじゃないですか。何も限度政令を出すということを閣議できまったとおりやるというならば、何のためにあれほどの話し合いをやるかということになるわけです。ぼくらは、あなたにも申し上げたとおり、直接当時はそのことには関係しなかった。しかし、報告を聞いたときには、附帯決議も出し、大臣の所信表明もその際に述べて、いわゆる限度政令を出すというようなことは完全にとまった。そういうことが両党の間において、国会の中ではっきりきめられた、こういうことであったから賛成したわけですが、どうもいままでの大臣の話を聞くというと、附帯決議も大臣の所信表明も限度政令を出すことには何の差しさわりもないんだという、こういうお考えのようで、どうもぼくは常識的にわからないですね。
それから、あなたは手続の点でたいへんどうも申しわけなかったということをおっしゃるけれども、これはぼくはそんな軽いことであるならば何も大臣を責めないですよ。自民党の皆さんも、ぼくが参加していながらまことに申しわけない。君らと約束したことを守らないんだから、まことに申しわけないと思う。しかし、文部大臣のほうで出す出すというものだから困り切ってしまった。これは稲葉さんのことばですが、困り切ってしまって、もうそういうことをやるんだったら、わしらも社会党へ行って、とにかく限度政令を出すのを認めてくれろなんということはとても言えないから、文部大臣自体が社会党を説得してくれるなら出してもいいけれども、困ると言っている。私は手続のことについて手落ちがあったとか何とかという問題じゃないと思う。少なくとも両者の話し合いの中から、とにかく限度政令を出さないという一つの線がこの国会の場できまったと、そういうふうにぼくは理解しているのですが、あなたのおっしゃるのは、どうも幾らうまく説明してみても、その点のあれは理解できないですね。附帯決議や大臣の所信表明では限度政令を出すということには何の差しさわりもない、むしろその意思を体してやっているというに至っては、これは詭弁もはなはだしいじゃないか。これは法律の問題だからそれでいいというかもしらぬけれども、これは世間の貸し借りの問題だとたいへんな話だと思う。そんな常識はずれの活をここへ持ち出してきていいのかどうか。
それから、運用に留意してぎくしゃくしないようにという。具体的にはそのぎくしゃくというのはどういうことなんです。ぎくしゃくしないようにするというのはどういうことなんですか。六千人がどうしたとか何とかということを先ほどおっしゃっておったけれども、各県でいろいろの問題がいま起きていることは御承知のとおり、福井県でも起きていれば北海道でも起きている。あるいはどこの県でも、四十六都道府県みんな起こっている。困り切っている。ぎくしゃくしないというのは、そういう児に対してどうしようというのか。そういう具体的なことを何か心の中にお持ちになって運用に留意する、限度政令を出したことによって起こったものをぎくしゃくしないようにやるということはどういうことなのか、その点をぼくは具体的に説明してもらいたいと思うが、その前に、とにかくぼくは理屈に合わない。限度政令を出すということの限りにおいては、賛成できないという社会党を説得させて、そして説得して話し合いでやったということになりますが、そういうことによってとにかくそれじゃひとつ話し合いをつけてやろうかといったので、限度政令を出さないという条件がなかったら、何で社会党が納得するか。その条件なるものは何かというと、附帯決議であり、大臣の所信表明なんですよ。これをどう考えられているのかよくわからないのです、あなたのおっしゃることが。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/88
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089・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 私は先ほど申し上げたとおりで、それにつけ加えて申し上げることはございませんけれども、私は限度政令は出しませんというお約束がこの場においてできているものとは私は理解していないわけです。限度政令というものの扱い方を慎重にしなければならないというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/89
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090・米田勲
○米田勲君 これは委員長に申し上げますが、新しく委員長はこの文教委員長になられたので、何でいま大臣と社会党がこんな問題を言い合っているのかということの疑問を持たれていると思うのですよ。で、この委員会をさばかれるのに、その点を若干でも理解してもらわないと、社会党の言っていることは、もっとやはり言わせてみるべきだというふうな判断が委員長に出てこないと困るので申し上げますが、当時、定数標準法案と教科得の無償措置法案とが前の国会で廃案になったきり、提案しても通らない情勢にあった。だから、政府は提案しないで持っておった、臨時国会で提案してこない。そのときに与党の文教部会の百脳が社会党に話し合いをせぬかと言い出した。それでわれわれも衆参両院四人、私も出ましたが、話し合いを始めた。その中に、与党の文教部会の首脳に前の政務次官も参加している、別室では前文部大臣の灘尾さんが休憩して相談に応ずる態勢をとって、この会談が行なわれたのです。そうして、そこでいろいろな政治的なかたい取りきめを行ない、先ほどから私が言っているような附帯決議あるいは大臣答弁等がぴしっと組み合わされて、そうして話がついたので、われわれは一瀉千里に提案をしなさい、そうして話がついて、ばたばたとこれは一両日で衆参両院を通ったのです。つまり、社会党の立場から言わせると、通れないような非常にむずかしい段階にあったのに、限度政令を出さないという約束を政府も与党も責任をもってしてくれるということが前提でこの話し合いに応じて法案が国会を通過することに協力したのであります。それを、法案が協力して通過してしまったら、まだ幾らもたたない時期に、その約束を破って、政府は限度政令を出したのである。これは与党の文教部会のメンバーがいずれもそれを出してもらっては困るといって政府に迫っている段階で無理にこの政令が出た。われわれに言わせるとぺてんにかかった。悪いことばで言えば。だから私は政治的に許しがたい、このことは。国会運営上許しがたい。文部大臣が手続上まずかったとか、もう少し手を尽くすべきだったと行われるが政治家としてお互いが約束したことを守らなかったという場合に、おれのやったことはまずかったということだけで、野党のわれわれを説得できるものかどうか。われわれが代表としてこの会談に臨んで、四人が自分の党に持ち帰って、そこで即決したことを納得させるのに非常に長い時間をかけ、社会党の中で大もめになって論議があった。それを限度政令を出さないというこれだけのかたい約束をしているから、万間違いがない、だから信頼してくれといって社会党を納得さしてこの法案の提案に応ずる態勢になった。だから、今日相当期間を経ても、この問題に決着をつけなければならない、重大な政治的背信行為に決済をつけなければならない。それを、前にはそのことをやり、きょうは法律上からも、実際、法案の審議の上からもこのことをいろいろ話をして、文部大臣の答弁をただしておるわけです。そういうわけでありますから、よろしく途中で、いいかげんに納得がいかないままにこれをおさめるべきでないという理解に立ってさばいていただきたい。これは希望であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/90
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091・山下春江
○委員長(山下春江君) よくわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/91
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092・米田勲
○米田勲君 それで、大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどから大臣が言われていることは、非常に冷ややかな答弁であります。大臣は冒頭、私がこの問題を持ち出したときには、灘尾前文部大臣から、文部大臣としてのすべての責任と権限を受け継ぎました、引き継ぎました、こう言っているのである。ですから、灘尾文部大臣当時に野党と約束をし、話し合いをしたことは、当然、愛知文部大臣を拘束している、政治的に拘束している、こういう判断に立っているのであります。ですから、その当時のことを私は繰り返し繰り返し言っているんですが、愛知さんの立場は非常に冷酷であります。この附帯決議の文章表現上のことだけを取り上げ、そしてまた、私がこのもののまとまるまでの与野党、大臣を含めて練りに練っている経過を話しても、依然として文章表現上のことだけ言われているわけであります。非常に冷酷であって、われわれが政治的にぺてんにかけられたというふんまんを持っている立場などはほとんど理解をしない答弁であります。私はそういうものが政治家であるならまた何をか言わんやであります。われわれは野党といえども、政府や与党と約束したことは命かけても守る決意で話し合いに乗る、従来乗ってきたし、そのことを守ってきたはずです。それを今日そういう冷ややかなことを言って、事実はそうであったのかと、私としてはその当時の大臣や与野党間のその話については理解ができておらなかったということでも答えるならまだしも、何か全然別な、空に浮いたような、自由に何でもできるような立場に立って、ただこの文章だけをたてにとって、限度政令を出したと、何にもそんな政治的な配慮や経過にも拘束されないじゃないか、私のやったことは手続上若干の無理はあったが何でもないんだと、こういう立場を固執せられますが、あなたは相当まあ自民党の中でもベテランの政治家であります。その政治家がそういうことを言って野党のこの問題に関する話を巧みにそらして、いくことが正しいのかどうか、私は深く愛知さんにもう一度考え直していただきたい。
もう一度お尋ねをしますが、大臣答弁のこのことは限度政令を出さないというお互いの約束とは何ら無関係なものであって、愛知さんが限度政令を出したことは自由であると、政府の自由裁量でやったんであって、その約束とは何ら拘束されるものでないという判断なのですか、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/92
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093・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 結局これは私は、客観的に問題を見る立場をお許しいただければ、限度政令を出しませんということを政府が公式にお約束をしていたかどうかという間問題だと思いますが、私の理解いたしておりますところでは、限度政令を出しませんということをお約束したものと私は理解しておらないわけでございまして、その点おまえの理解が悪いのだとおっしゃられれば、どうも私としてはそれで引き下がるより仕方がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/93
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094・米田勲
○米田勲君 そこが決定的な違いなんです。それであなたがあくまでもがんばるのであれば、当時のこの両部会の代表者、前の政務次官、前の文部大臣、すべての人をこの委員会に招いて、ほんとうに愛知文部大臣が言っているような理解がこの法案の問題をめぐって話し合ったことの正しい姿なのかどうか、これを私たちは主張せざるを得なくなるんです。そうでなければすがるところがない。私はそんなことは知らぬと。実際にはしかしそういうことはぴしっと約束されている。文部大臣がそこにすわって、別室ですが、六時間この委員会を開かないで話し合いをしたんですよ。そのときに、ここで大臣自身が限度政令を出さないという明確な話をしたのではいろいろ政治的に問題があるので待ってくれぬか、しかし、与野党の文教部の首脳がこれだけ苦労をして限度政令を出さないと約束をしている事実は私も了解をいたします、はっきりそう言っている。これは吉江さんもそばにおって聞いてるから、その点は間違いない。ですから、限度政令を出さないと灘尾さんは最後まで言いませんでしたよ。しかし、そういう子供だましのような、私はあのとき限度政令を出さぬと言ったか言わぬか、そのことばを使ったか使わぬかでこの問題をすりかえられてしまうのであれば、私は政治家同士の話というのは一体何だと言いたくなる。そういう詭弁が平気でまかり通る相手であれば、私は法案の審査も何もできない。私はそんなことを言った覚えはないと、あとで全く手のひらを返して言われるかもしれないという危惧を持つ相手に向かって、法案の質問も、一般行政の質問もできない、こういうことになりゃしませんか。そういう詭弁を使って、私はこの問題の釈明に当たるべきでないと思うのです。私は何も愛知さんを追い込むのが能じゃない、お互いが政治家としてあるべき姿をここに取り戻す必要があるのではないか。それにはあなたの言うようなやり方では、あまりにも一方的ではないでしょうか。事実を無視しているのではないか。愛知文部大臣というのは、そういう政治家なのだというのなら、あなた、はっきりここで言ってもらいたい、私はこういう政治家なんだと。ということを言えば、もうあなたに対する人格なり政治的な識見なりについて、私は一つの概念を固めてしまうから。それはもう相手にできない人だということになる。しかし、私は愛知さんはそういう人じゃない、私はかりにあなたがいま窮地に立ったとしても、放流象として述べるべきことは一つしかないと思う。詭弁でここを渡るべきでない。どうですか、大臣の答弁は依然として、あなた、そういうことを約束したものではないいう一点ばりでここを押し通しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/94
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095・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 私は私の理解として、限度政令を当時政府が出さないということをお約束したものではないということを私が理解をいたしているということを申し上げたわけでございまして、これを詭弁で取りつくろってどうこうというのではございません。私はそういう理解をしておりますということを申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/95
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096・小林武
○小林武君 関連。先ほどの大臣の答弁に、客観的に見てと、こういう話が出ましたけれども、その客観的に見るということは、その速記録とか、あるいは文章上にあらわれた表現から見て判断されたということに理解してよろしいのですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/96
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097・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) それももちろん入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/97
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098・小林武
○小林武君 私は、やはりそれは実際、愛知さんという方は、自民党の中のこの話が出たときには政策の面で有力な立場にあったし、政党人だ、そういう人が一体この政党間の話し合いというものをどうお考えになるか、ここに疑問を感ずるのです。政党でどういう約束をしようが話し合いをしようが、そんなことは知ったことではない。速記録を見て自分が判断するというようなことでは、これは私は、どうかと思うのですよ。それからもう一つ、やはり問題になるのは、政府が一体そういう約束をしたことではないと思うというような、それも一体その速記録を見てお考えになったとすれば、これは私は重大だと思うのですよ。この問題でいろいろこの前もあれですね、この質問が続けられて、一応その質問を打ち切って、党と党との話し合いはどうだろうかという問題に立ち戻ったときに、私は八木さんと一緒に、これはわが党からと向こうからの話し合いのときに、八木さんに、君は一体政府の代表なのか、それとも一代議士として言うのかというような話が出た。そうしたら、そのとき八木さん、何と言ったか。そんな子供くさいことを言われるな、おれが政務次官としての八木として出たとか、一代議士としての八木が出てきたとか、そんなばかなこと言うな。おれはやはり政務次官の八木として出てきていると、こうはっきり言っている。そんな子供くさいことを言って逃げようとは思わぬと、こう言っている。それなら政務次官というものは、一体何なのか。盲腸みたいなものですけれども、盲腸かどうか知らぬが、たとえそういう役目かどうか知らぬけれども、少なくとも政務次官が代表してきたからには、私は政府の代表だと思う。そういう政府の代表の約束とか、政党の約束とか、あるいは速記録にあらわれたその当時の附帯決議とか、あるいは大臣の所信表明とかを総合的に判定することが、私は客観的なものの判定の仕方だと思う。あなたは一体そういうことについて、きわめてもう一部面の、何か評論家か学者が、起こった事件をあとでもって文章か何かを通して理解されるような形で論じられるということは、いま米田委員も言われたけれども、はなはだもって政治家としてどうかと思うのです。というのは、そういう心情を抱くのはあたりまえじゃありませんか。なお私は言いますけれども、わが党だってずいぶんそれから譲歩したのですよ。あなたのほうでもここまできたからには容易じゃないだろう、容易じゃないから、わが党としても二歩後退して、そうして愛知さんと話し合いをして、ある程度政治的に、政治的というよりも政府の手のうちで、いわゆるあなたが先ほどおっしゃった運用の面で何とかぎくしゃくしないで解決するような方法があったら、山中君とぼくと二人行って、そうしてある程度わが党の人たちにも納得してもらうような方策も講じましょうというような、一歩も二歩も十歩も後退したようなものの言い方をしたことがある。そういうことをわれわれとしては非常に幅の広い考え方をしているのに、あなたは政府のとった態度、政治家としての愛知さんのとった態度をどこまでもいまのようなものの言い方をもって言いのがれをしようというのは、愛知さんは頭脳明晰であるだけに一そう私はこれはけしからぬと思うのです。もっと率直に言ってくださいよ。そういう約束はあったのだけれども、とにかくもう万やむを得ずやったならやった、約束を破りましたなら破りましたで言ってもらいたい。これを見るというと、限度政令を出すななどということはどこにもないから、これは客観的に判断してやりましたというようなことは、これはぼくは評論家か何かが言うならともかく、文部大臣であり、それから自民党の中の有力幹部であるあなたのおっしゃるということについては承服できない。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/98
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099・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) それは私はもう繰り返して申し上げますだけで、これはまあ人それぞれに発想法なり、考え方なり、勉強のやり方もあろうかと思いますので、そのやり方についてのいろいろの御批評は御批評として承っておきますけれども、私はこの限度政令を出さないというお約束を政府がしたとは思っておりません。さように私は理解いたしておりますということを繰り返し申し上げておるわけでございます。いまほかのことにもお触れになりましたけれども、いまのお尋ねはその点にしぼられているように思いますから、それだけ繰り返してお答えを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/99
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100・米田勲
○米田勲君 委員長に私は要求があります。いまの段階でこの問題で文部大臣と話している限りは、お聞きのとおり、一方はそんなことは思っていなかった、一方はこういう経過があるのじゃないか、それを裏切ったのは政治的裏切り行為じゃないか。まるきり違う立場を主張しているのですね。しかし、われわれがこの主張をするからには、たくさんのそれに立ち会った証人がいるわけです。ですから、私はこのことを明らかにするために、前文部大臣、前政務次官、それから八木、稲葉部会長、久野当時の文教委員長、長谷川峻代議士等、それからこちらのほうの関係は何人おりますか、北畠教真さん、古江さんとか、あるいは野本さん、参議院の関係はよろしいですけれども、衆議院と政府の関係のメンバーをできるだけ早い機会にこの委員会にお呼びして、皆さんの前で私に尋ねさしていただきたいのです。そうすれば愛知さんの言っておられることは、それは愛知さん個人の主観であり判断であって、客観的には何ら事実と合致しているものでない、社会党の言っておることが正しいということが立証されるわけです。そういう手続をとっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/100
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101・山下春江
○委員長(山下春江君) 私はこういう委員会についてはなれませんので、そういう審議の進め方があるかどうかを私は心得ておりませんので、次の理事会であなたのお申し出を議題として、理事会の申し合わせでそれを決定いたしたいと思いますから、本日はその点は理事会におまかせを願って質疑をお進め願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/101
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102・米田勲
○米田勲君 次の理事会で私の希望が達成できるようにしていただかなければいつまでたっても愛知さんと私どもの間には理解の成り立つすべがないわけです。何者が歩み寄る方法がないのですよ。この不信感のまま、この問題がいつまでも平行線で論議が続くことになるので、私は少なくとも文部大臣の提案した諸法案をこの委員会で審議するためには、少なくも愛知さんという人の政治家としての認識、人柄をもう一度私の現在の認識から変えなくては質問をする気にならないのであります。そういうためにも社会党の立場をはっきりさせていただく立場からも、その方法が一番手っとり早くいいと思いますので、ぜひそのことを運んでいただきたい希望であります。
それでは質問を続行いたします。ちょっと法案の審議の具体的な問題に入り過ぎまして、わき道にそれましたが、法律上の見解、解釈の問題で、いま少しく文部大臣の見解をただしたいのであります。これは文部大臣が出席をしておられないで、政務次官と初中局長がおられた際に質問をした一番最後に、特別の事情というのは、この法律でうたっている特別の事情というものを足場にして限度政令を出したのであるが、その特別の薄情とは具体的に、言えばどういうことかという質問をした際の答弁をもらっておるわけであります。これは会議録に載っておる。それからきょうも文部大臣からそれに類似の答弁が出ております。妥当な規模と内容を保障するのであって、その妥当な規模と内容をこえる、つまりその水準に達すれば、それ以上は国庫負担を二分の一支出することは不適当である。そういうことが特別の事情という解釈だというふうに答えられたと思うのであります。それから初中局長の答弁は以前の状態よりも非常に改善をされたので、相当高い程度まで改善をされたと判断をしたので、特別の事情というものは前と違ってよくなったという、特別の事情が起こってきたので、この国庫負担法の後段を発動できる根拠と考えた。こういうふうに答弁をされたと要約して覚えておるんですが、これはまず初中局長から、それで間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/102
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103・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私もそういう表現を使ったように記憶いたしておりますが、定数法の改正によりまして、従来よりも学級編制の改善を大幅に実施をしたとか、あるいはまた教員配置の充実をはかったとか、そういうような改善をかなり大幅にいたしましたので、したがって、そのこと自体は先ほど大臣からも申し上げましたように、義務教育の妥当な規模と内容を保障するに足るものである。こういうように考えるものでありまして、したがって、その妥当な規模と内容を保障するために、この負担法そのものがあるわけでございますから、本法の旨的に照らして、それ以上のものは不適当だという考え方に基づくわけでございまして、したがって、その義務教育の妥当な規模と内容をこえる規模の内容を実現しようという場合には、これは国庫負担法の対象にしない。言いかえますと、特別な事情がある場合、こういうように解釈してさしつかえないというような意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/103
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104・米田勲
○米田勲君 初中局長のいまの答弁で、大臣の答弁をあわせて見解がわかりましたが、教職員の配置がわれわれの立場からいえば、若干改善をされ、ある程度の水準が維持できるようになったことをもって、国庫負担法の策二条ただし書きに言う特別の事情に該当するという見解は多くの私は疑義があるのであります。その疑義の第一はこういうことであります。特別の事情とは、教職員の配置の実情が現実にある程度改善をされたという、そういう現実の事象をとらえて言っておるのか、あるいはまた、適正と思われる内容を傭えた標準定数法がともかく法定されたから、つまり法律制度がよくなったということをとらえて言っているのか、そのいずれかが明らかでないわけであります。これはどういうことでしょうか。まず第一にその点に疑点があるわけであります。これは初中局長にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/104
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105・福田繁
○政府委員(福田繁君) これはすでに御承知のように、標準法の改正によりまして、まず学級編制の改善を行なったわけでございまして 従来、小中学校とも一般の学級につきましては最高五十人という学級編制でございましたのを、五年間に四十五人にこれを改善していくというようなこと、あるいは複式等につきましては二十五人に一挙に下げる、あるいはまた単式の場合でも十五人にこれを下げる、こういうような改善をはかってまいります。それからまた、学級規模に応じた教職員の配置にいたしましても、小学校について申し上げるならば、一学級から五学級までの学校につきましては、教員の配置を率から申しますと大体二五%程度アップしております。それからまた中学校につきましても、九学級以下のものにつきまして、平均いたしますと一五%ぐらいのアップをいたしております。それから、そのほか小学校の十二学級以上につきましても四%、それから中学校の十五学級以上につきましても、大体平均いたしますと八%ぐらいの教員配置基準の引き上げをいたしております。そういうような充実をはかりました。そのはかりました内容そのものは、義務教育の水準を一応維持し得るものというように私どもは考えるわけでございます。そういう点から申しますならば、学級編制なり、あるいは教員一人当たりの児童、生徒数にいたしましても、大体、欧米諸国の学級編制なり教員一人当たりの児童、生徒数と匹敵する程度の改善になるわけであります。したがいまして、そういう内容からいたしまして、残務教育を全国的に水準を維持するという点においては相当な改善だというように私どもは考えているわけであります。そういった内容を申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/105
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106・米田勲
○米田勲君 いま相当詳しく説明になりましたが、法律制度が改善をされたから特別の事情を発動すべき段階がきたと、端的に言うとそういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/106
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107・福田繁
○政府委員(福田繁君) 法律制度並びにその内容でございます。私は主としてその内容について、妥当な規模と内容というものに該当する程度の改善がはかられた、こういうことを申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/107
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108・米田勲
○米田勲君 これは局長、私はこういうことを言っているのですよ。法律制度がよくなったから特別の事情というものが発生した。だから出したのだ、こういうのですかと言った意味は、昨年、限度政令が出ているのです。昨年の時点で考えると四十五名にはなっていないでしょう。だから私の立場で言うと、現実に改善をされたということではない。あなたの、言っているのは、それは法律制度が改善をされて四十五名云々というような内容のものになったから特別の事情が発生した、こういうことじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/108
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109・福田繁
○政府委員(福田繁君) これは両方でございまして、法律制度が改正されて、その法律制度のもとにおいて内容が逐次改善される、こういうことでございますから、ただ法律制度だけというようなことばでございますと若干疑問があろうかと思います。したがって、私は内容を御説明申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/109
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110・米田勲
○米田勲君 それでは、私はさらに疑義があるのでただしますが、この義務教育の学校における条件が改善をされた、それはまあ実態からいっても法律上からいっても改善をされたというふうにひとつまあ皆さんの立場を肯定したとします。しかし、そのこと自体、改善されたこと自体は、国庫負担法の立場からいえば何も特別の事情ではないという私の見解であります。標準定数法は確かに改善になりました。しかし、国旗負担法の立場は、大体が全体をよくしようとしている法律です。維持向上をはかる、相当——まあ私たちの立場からいえば、相当高い理想を掲げながら条件を維持向上しようという法律であります。だから、全体的に前よりよくなったということは決して特別の事情でなくて、国庫負担法がねらっている一般的な事情であります。その一般的によくなったことがなぜこの国庫負担法にいう特別の事情と言えるのか。標準定数法の立場でいえば、前のやつよりも今度のやつはよくなった、その法律の限りでは言えるのです。しかし、国庫負担法の法律の立場からいうと、全体がよくなるのは初めからねらっているところであります。この法のたてまえから全体がよくなる。だから、特別の事情が発生した、限度政令を出したということはどういうことになるのですか。私はそこに重大な疑義がある。この二法律を巧みにからませて、都合のいいときはこっちを利用し、都合のいいときはこっちを利用しようとしているところにいまのような答弁が出てくるのじゃないか。国庫負担法にいう特別の事情は発生してきておらない。全体的に一般的に改善をされたという事情が出てきている。それは法本来のねらっているものである、こういう解釈であります。それをなぜこの国庫負担法による特別の事情というふうに当てはめたのですか。その点が重大な疑義があるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/110
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111・福田繁
○政府委員(福田繁君) けさほど来の御議論の中に、この国庫負担法と標準定数法の法律は別のものだ、こういうような御議論があったようでございますが、まさに形式上はこれは別の法律でございます。しかしながら、教職員の定数なり、学級編制をきめました標準法そのものに基づいて算定されました教職員の数、そういうものに対して、この国庫負担法というものは国庫負担を二分の一にするといううらはらのものでございますから、無関係ではございません。したがって、国庫負担法の特別な事情というものの中には、将来なお別の特別な事情が発生する場合もあるかと思いますけれども、これはこの法律そのものが目ざしておりますように、これは財政保障の法律でございます。したがって、その財政保障の限界をどこに求めるかということになりますと、これはやはり標準定数法から出てまいりましたそれを一応の限界として考えるということは不都合なことではない、これはやはり特別な事情の中に入り得るというように私どもは考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/111
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112・米田勲
○米田勲君 私はそういう説明では納得ができないのであります。あなたは標準定数法と国庫負担法はうらはらの関係にあると言いますが、限度政令は国庫負担法第二条のただし書きに基づいて出たものであります。その点ははっきりしてもらわなければならぬ。しかも、学校におけるいろいろな条件が改善をされたというのは標準定数法のほうなんです。いいですか。このことは、何も国庫負担法にいう特別の事情を発動すべき理由とは違うでしょう。別な法律が条件がよくなったということなんですから、国庫負担法は各州のきめる額について実支出額の半額を自動的に国庫負担していくという、これは実員実額制をきめているにすぎないのです。だから、私は特別の事情ということは、この法律、国庫負担法による特別の事情は発生していない。よくなったということは一般的な事情であって、それはもともと国庫負担法がねらっておったものである、初めから。そうではないか。国庫負担法のねらいというのはそういうことできめられたのでしょう。だから、国が半分づつ自動的に出してきておったものです。それを特別の事情だという、こっちのほうの標準定数法がよくなったから国庫負担法にいう特別の事情が発生したのだということにはならないのじゃないか。別な法律なんだから、うらはらだ、うらはらだと言っても別な法律なんです。独立しているのだ。こういう解釈ですので、あなたの言っていることは理解できないのですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/112
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113・福田繁
○政府委員(福田繁君) もうちょっと御説明申し上げれば御理解いただけると思います。私は先ほど標準法の内容改善のことを数字をあげて申し上げたわけでございますが、それがこの義務教育の水準を維持するのに必要な学級編制なり、あるいはまた定数の配置、そういうものになっているわけでございますが、もちろん負担法の政令、いわゆる限度政令というものは直接にはそれに関係はございません。と申しますのは、特別な事情のある場合に限度を設ける。限度以上は国庫負担をしないという主義でありますから、したがって、先ほど申し上げましたように、内容を充実して、その上に標準法を上回る定員については、それは国庫負担をしないというわけでありますから、そこが特別の事情になるわけであります。したがって、標準法を上回って、府県がさらにその上に定員を積んでいきたいという場合は、これは当然に限度政令にかかる問題でございます。したがって、この関係がないというようには必ずしも申し上げ得られないのでありまして、それがいわゆる国庫負担法の場合の特別の事情に該当するケースでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/113
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114・米田勲
○米田勲君 これはどうも食い違いがあるのですよ。私は国庫負担法はもともと義務教育関係の学校の諸条件を改善をしていく、維持向上をしていくためにこの法律ができた。一方の標準定数法は、これはそれとは別に条件をよくしていくわけなんです。しかし、国庫負担法の特別の事情に該当する条件の発生は、他の法律の条件ではないのじゃないですか。この法律にいう特別の事情でなくてはならないのではないですか。国庫負担法にいう特別の事情が発生したときに限り特別の事情を発動できるのじゃないですか。他の法律に何か特別の事情が発生したからといって、国庫負担法のただし書きを発動するという理由にはならないのじゃないですか。私はそこを言っている。行政上関連はあるけれども、国庫負担法の特別の事情を発動する場合には、他の法律に起こった特別の事情ではだめなんじゃないかという点であります。この点わかりますか。それともう一つは、国庫負担法にいう、かりに一歩も二歩も譲っても、国庫負担法は全体の改善、維持向上をねらっているものだから、前よりよくなった、改善をされた、よほどりっぱなものになったと言っていることは、この法律のねらう一般的な事情であって、そのことが特別の事情とは言えない。したがって、実員実額制をくずすただし書きを発動する理由にはならない、こういうことであります。私の主張はその二点についてひとつわかるように話していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/114
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115・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私が無関係でないと申し上げましたのは、標準法の中身を相当大幅に改正をいたしまして、その改正をしたものがものさしになるわけであります。したがって、そのものさしを越えるもの、以上のものが限度政令にかかって、それは国庫負担の対象にしないというだけでございまして、その本体のほうの関係を見なくして、上のひっかかるところだけを考えるというのは非常におかしいと思います。したがって、この関係がないということは申し上げられませんと言ったのはそこのところでございます。これがものさしになって、それを上回って置かれた定員については、これは負担法の特別の事情に該当することとして、国庫負担の対象にしない、こういう趣旨のものでございます。したがって、いままで富裕団体等につきましても、これが財政力が豊かである。したがって、国が国庫負担を一定限度に押える、こういう趣旨も天体同じ考え方でございまして、それはこの政令の対象として、富裕団体と、それからいま申し上げました特別に標準法を上回った定員というものについて考えるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/115
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116・小林武
○小林武君 関連。初中局長に伺いますが、今度の定数標準法はものさし、こういうわけですね、これをものさしとして特別の事情というものをおっしゃられたわけですね。その定数標準法、今度改められたやつでなく、その前のものさしは何ですか。私はそのものさしの使い方の問題だと思うのですけれども、あなたがおっしゃるのは、今度はすばらしい、いわゆる教育上これ以上ないというような理想の型のものが標準法として出たものだから、それを上回るというのはぜいたくの部類に入る——ぜいたくと言うかどうか知らぬけれども、そのくらいの言い方だと思う。だから、それについてはひとつ押えるのだ、こういう見方だと思う、私はそういうふうに聞こえるのです。一体、今度の定数標準法というものが、絶対これ以上の標準法がどきてはいけないというようなあなたの考え方があるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/116
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117・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私は現行の標準法以上のものができて悪いということは考えておりません。従来の標準法の内容に比較して非常な改善をはかったということを申し上げておるわけです。したがって、この従来のものさしは何かとお尋ねでございますが、定員についてのものさしをつくりましたのは今回が初めてでございます。したがって、標準法で算定をしましたその定数自体が、国庫負担をやめるか、国庫負担の対象になる範囲のものかという点についてのものさしになる、こういう意味に申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/117
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118・米田勲
○米田勲君 ちょっとその局長の言っていることに私は納得できないことがあるのです。国庫負担法のどこを見ても、ものさしを越えると制限を加えるということを書いてあるところがどこかありますか、国庫負担法のどこかに。ものさしをこえると制限を加えるのだということはないはずですよ。それは自分らの主観でないのですか。この法律に対するものさしを越えるようになったら制限を加えてもいいという条文はどこをさすのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/118
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119・福田繁
○政府委員(福田繁君) わかりやすく言えというお話でございましたので、例をとって申し上げたわけでございます。国庫負担法は、特別の事情がある場合に国庫負担の最高限度をきめることができると、こう書いてございます。その特別の事情についての説明を、そう私が申し上げたわけでございます。ものさしというのが適当でなければ、そうお考えいただかなくてもけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/119
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120・米田勲
○米田勲君 その特別の事情に対する認識が違っているわけです。われわれは、この法にいう特別の事情というものは発生しておらぬ、したがって、限度政令を発動すべき根拠がないと言っているのです。ところが、あなた方の説明によると、国庫負担法は、一定のワクを越えてよくなった場合には発動してもいいのだ、特別の事情を発動してもいいのだときめてあると言うが、一定のワクを越えたらそういうことをしていいとこの国庫負担法自体に書いてありますか。私はないと思っている。特に理屈になりますけれども、この国庫負担法の第一条に「維持」ということだけ書いて、「向上」ということがない場合には、あるところまでいけば、それを維持していけばいいのだという理解が成り立つ。しかし、この国庫負担法は、維持しながら向上していくという、二つをねらっているのです。維持向上ということをねらっている。ですから、私は軽々に、一つの水準に達したら、もうこれは限度を越えている、標準を越えている、だから、制限を加えるべき特別の事情が発生したという判断は、この国庫負担法にいう「特別の事情」ではない。一つの言い方は、それは全体がよくなったのだから、一般的な事情であって、この法律にいうことばを適用することにはならぬ。しかも、標準法のほうの、よくなったことを持ってきて、そしてこの法律の定めている実質実額制の根本をくずす理由にはならない。そういう法的根拠を持ち出すことはむちゃだ、こういう主張であります。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/120
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121・福田繁
○政府委員(福田繁君) 各府県の定数の問題でございますが、これは棟準法にきめられました国の標準まで置く県もあるいはあるかもしれませんが、それ以上に、A県は百人、B県は三百人、C県は五百人というように、上回って置かれました場合には、それはやはり各県のいろいろな事情によって自主的に置かれるわけでござまして、それを何も抑制するわけではございませんが、それに対しては、府県間の不均衡という問題もありますので、国庫負担を標準法の線までにとめよう、こういうのが趣旨でありますから、それが特別の理由になるわけであります。したがって、それは第二条の「特別な事情」というものに、私どもは十分に該当する理由があると考えておりますが、いまお尋ねの実員実額方式をくずすのじゃないかというようなお尋ねでございますが、私どもとしては、標準法による定数のきめ方いかんによって相当内容的には実員実額方式が十分維持できるというように考えておるわけでございます。例を申し上げますと、標準法自体は、本則においては一学級の編制、あるいはその学級の規模に応じた定員の配置をきめておりますが、従来から、御承知のように、各府県には過員というものが、ことばは悪いのですが、過員というものが存在しております。三千数百名の過員がございましたが、それもこの定数法においては、五年間は一定数ずつこれを暫定定数の中に組み込んで、国庫負担の対象にもし、また交付税の対象にもするという方式をとっております。あるいは、また将来、三十九年度以降に起こるべき過員につきましても、これも生徒、児童が急激に減ったために起こるわけであります。これらについても十分経過信貴として国庫負担の対象にもし、交付税の対象にもする、こういうような非常に幅広い弾力的な運用をいたしますのと、それから、定数自体というものがある一定の時期に押えられて、ぴしゃり変わらない、固定のもの、だという考えではないわけでございまして、この定数法の運用の中には、社会増によって人口がふえる、そこに学校がふえる、あるいはまた学級がふえるというような場合には、当然にその教職員の定数というものが自動的に組み込まれるようになっております。また、冬季分校などで季節的に置かれる定数につきましても、これを暫定定数の中に組み込むというようになっておりますので、それらの措置を通じますと、ほとんど実員実額方式というものが、運用によってある程度とられておるわけでございます。したがって、私どもはこの標準法の運用自体によって、相当、ここ数年間はうまくいくのではないかというように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/121
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122・米田勲
○米田勲君 初中局長の答弁していること自体はある程度わかるのですよ。しかし、私がいま問題にしているのは、そういう実体論や運用論じゃないのです。あなたは法律の根拠がないのに国庫負担法の特別の事情をとらえて限度政令を出したのが不当だ、こういうことを私は質問しているのであります。ところで、あなたいまいろいろなことを、実体論、運用論など言っておりますが、結局、限度政令は国庫負担法にいう実員実額制をくずししたということは事実でしょう。これは実体論としてはそうならないなんという逃げ道をつくったってだめですよ。明らかにこれは国庫負担法にきわめてある実員実額制はくずれてしまっているんですよ。これはほとんどとか何とかいういろいろな形容詞を使っていますが、厳密に言って間違いないでしょう。それをわれわれは一つには問題にしているんです。しかし、いまはあくまでも特別の事情を発動すべき条件はないのに、特別の事情を発動したのではないか、こう言っている。二つです。もう一ぺん答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/122
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123・福田繁
○政府委員(福田繁君) 特別の事情ということについては、先ほど来御説明申し上げたとおりでございます。先ほど御説明しました実際の運用につきましては、これは申し上げないとおわかりいただけないと思ったので申し上げたわけでございますが、ただいまの御質問が実員実額方式をくずしたのではないかというお話でございますが、そうでなくて定員実額方式でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/123
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124・米田勲
○米田勲君 変わったでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/124
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125・福田繁
○政府委員(福田繁君) 定員実額方式でございます。実員実額をくずしたというのじゃなくて、定員側に変えたということでございます。実額はこれはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/125
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126・米田勲
○米田勲君 そういう初中局長ここで詭弁を弄してもだめですよ。便宜上、実員実額制ということばをとっておりますが、法律上のことばで一々言うのがめんどうだから私が言っただけであって、実員実額制でも定員実額制でも同じような話をしたってだめですよ。それは根本的に迷うじゃありませんか。そうじゃないのですか。これは根本的に違いますよ。国庫負担法は決して定員実額制を本体としてきめておりません。実員実額制を本体としているものです。それを限度政令によってこの性格を変えているじゃありませんか。あなたの言うように定員実額制に変えているじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/126
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127・福田繁
○政府委員(福田繁君) 私どもがこの実額方式ということばを用いますのは、給与について定額制をしけない、いわゆる給与についての実際に支払われた額を二分の一負担するという場合のことをさしております。定員について申しますと、実員とか、定員とか申しておりますが、従来は定員実額方式でございます。今回は給与については定額制をとっておりませんから、定員実額制でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/127
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128・米田勲
○米田勲君 国庫負担法は、何度も繰り返しますが、員数につきましても、給与につきましても、県で必要と見積もった額の半額を国庫負担する、自動的に国庫負担をするという方式なんですよ。そうでしょう。これはだれが考えたってはっきりしているでしょう。それが政令によって変わったということを認めざるを得ないでしょう。その給与の実額は変わらぬのだ、変わらぬのだと強調したって、それはいまの論拠はおかしい。性格は変えられたでしょう。変えられているから、その特別の自情と称しているものは、実は国庫負担法にいう特別の事情ではないのだ。先ほどから言っているんですよ。その特別の事情というのは、標準定数法の立場で見れば、特別の事情になっているかもしれない。しかし、国庫負担法の立場からいえば一般的な事情であります。これがわからぬのですか、だから、私は特別の事情というのはまだ発動すべき段階にきておらない。それを出している。時間がないのですが、これは同じ答弁ですか、文部大臣どうですか、いま繰り返し局長に聞いているんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/128
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129・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 私は局長の答弁で御理解いただけるものと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/129
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130・山下春江
○委員長(山下春江君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/130
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131・山下春江
○委員長(山下春江君) 速記を起こしてくださ
本件に対する本日の質疑は、この程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/131
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132・山下春江
○委員長(山下春江君) 日本育英会法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、文部大臣から提案理由の説明を聴取いたします。愛知文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/132
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133・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) このたび政府から提出いたしました日本育英会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。昭和十九年、日本育英会法施行以来、日本育英会は、年々堅実な発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受け、その勉学を続けることができた学徒は、きわめて多数にのぼり、国家的な育英事業として多大の成果をおさめてまいりました。日本育英会から学資の貸与を受けた者は、修業後一定の期限内にその貸与金を返還する義務をしておりますが、特例として、それらの者が小学校、中学校、高等学校、高等専門学校もしくは大学の教員または高度の学術研究者となった場合に、その貸与金の返還を免除できる制度を設けております。これは、学校教育が、人材育成の根幹となるものであるところから、これらの分野に有為の人材を誘致することを目的とするも一のでありますが、近年、幼稚園教育の振興、養護教諭の充実が学校教育の当面の課題となり、幼稚園教員及び養護教諭の人材確保の必要が強く認識されることとなりましたので、これに応ずる所要の措置を講ずる必要がございます。なお、この際、日本育英会の監事の機能をより有効にするため、その職務権限に関する規定を整備することが適切と存じます。
以上の観点から、現行法の一部に必要な改正を加えることが適当であると考え、この法律を提出するものであります。
改正の第一点は、日本育英会の監事の職務権限を明らかにすることであります。
改正の第二点は、大学在学中に受けた貸与金の返還を卒業後免除される職のうちに、幼稚園の教育の職を加えることであります。
改正の第三点は、今国会で別途その設置について御審議願っております国立養護教諭養成所で学資の貸与を受けた者についても、大学の場合に準じて返還免除の措置を講ずることであります。
以上が、この法案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/133
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134・山下春江
○委員長(山下春江君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00419650218/134
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