1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年三月九日(火曜日)
午後七時四十分開会
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委員の異動
三月四日
辞任 赤松 常子君
三月九日
辞任 補欠選任
北畠 教真君 栗原 祐幸君
中上川アキ君 大谷藤之助君
木村篤太郎君 塩見 俊二君
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出席者は左のとおり。
委員長 山下 春江君
理 事
久保 勘一君
二木 謙吾君
吉江 勝保君
小林 武君
委 員
大谷藤之助君
栗原 祐幸君
塩見 俊二君
野本 品吉君
豊瀬 禎一君
発 議 者 豊瀬 禎一君
発 議 者 小林 武君
国務大臣
文 部 大 臣 愛知 揆一君
政府委員
文部大臣官房長 西田 剛君
文部省初等中等
教育局長 福田 繁君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
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本日の会議に付した案件
○産炭地域における公立の小学校及び中学校の学
級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関
する法律案(豊瀬禎一君外四名発議)
○へき地教育振興法の一部を改正する法律案(豊
瀬禎一君外四名発議)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/0
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001・山下春江
○委員長(山下春江君) ただいまより文教委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について報告いたします。
去る三月四日、赤松常子君が辞任されました。また本日、木村篤太郎君、北畠教真君、中上川アキ君が辞任され、その補欠として塩見俊二君、栗原祐幸君、大谷藤之助君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/1
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002・山下春江
○委員長(山下春江君) 産炭地域における公立の小学校及び中学校の学級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関する法律案を議題といたします。
まず、発議者から提案理由の説明を願います。豊瀬委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/2
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003・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 ただいま議題となりました産炭地域における公立の小学校及び中学校の学級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関する法律案につきまして、その提案の理由と内容の概略を御説明申し上げます。
主として世界的なエネルギー革命に基因する石炭鉱業の構造的不況は、石炭鉱業の急激な合理化整備を伴い、多数の炭鉱の休廃止、関連産業の倒産、炭鉱離職者の大量の発生等を招来いたしましたことは御承知のとおりであります。この事態に対して、従来から石炭企業の合理化対策、離職者対策、産炭地域振興対策等が行なわれてまいりましたが、離職者の生活環境、年齢構成、技能程度等の諸条件から、他産業への再就職にはおのずからきびしい限界と険路があり、また炭炭地域に新しい産業を導入し、多角的産業地帯を早急に造成することも立地条件その他により容易なことではなく、このため、若年労働者、技術者等の地域外流出が著しい反面、数多くの離職者すなわち老齢者、病弱者、労働障害者、災害未亡人等が雇用機会がないまま産炭地域に残され、鉱害その他の産炭地域特有の事情と相まって極端な経済的貧困と社会不安をもたらし、いまやはなはだしきは死の町さながらの様相をさえ示しております。さらに、産炭地域の経済は、全町的に石炭鉱業に依存しているものが多いため、同地域の地方財政も極度に窮迫している現状であります。
このような現状は、当然、雄炭地域における教育の面にも強い影響を及ぼしております。すなわち、老齢者、病弱者等の離職者と子供たちが、朽ちていく炭鉱住宅で生活保護を受けながら、それだけでは生活できないため、職さがし、出かせぎ、日雇いあるいは内職等にきゅうきゅうとして、あすの日に何の希望も期待もなくかろうじて暮らしており、親子離ればなれの生活や家出、夫婦別れ等は日常茶飯事となっている現状であります。このような社会環境、家庭環境の悪化のもとでは、子供に対する家庭教育は完全に放置されております。したがいまして、学校がすべての教育活動を一手に引き受けなければならない状態の中で、教職員の不断の努力にもかかわらず、欠食児童、長欠、不就学の児童、生徒や非行少年が年々著しく増加しておるばかりでなく、一般に児童、生徒は学習意欲に欠ける、生活に活気がない、根気に乏しい、注意力散漫で落ちつきがない、道徳意識が低い、学力の低下が著しい等々、教育の危機的状況を示しているのであります。ちなみに、福岡県における産炭地域の在籍児童、生徒数に対する長期欠席児童、生徒数の割合は、産炭地域外に対して二倍近い数を示しております。また、北海道の一産炭地における昭和三十八年度調査によれば、非行青少年の八六%が小、中、高等学校の在学青少年で、その七二%は中学生であり、非行少年の数は、昭和三十二年度に対して昭和三十八年度は四五%の増加を来たしております。
また、産炭地域の児童、生徒数の減少、これに伴う学級数の減少及び教職員の減員も著しいものがあります。たとえば、福岡県の産炭地域における昭和三十九年度小学校児童数は、昭和三十四年度に比してその四三%九万一千人が減少し、はなはだしい小学校にあっては児童数が三分の一以下に減少しており、教職員数についても定員において一八%八百五十八名、実員において一六%七百四十名が減員となっており、また、北海道の一産炭地でも学級数が昭和三十八、九年度の二年間だけで三〇%も減少した例がみられております。反面、経済的貧困のため炭炭地域における要保護、準要保護児童、生徒数は年々著しく増加して、窮迫した地方財政を圧迫してきております。たとえば、福岡県における全児童、生徒数に対する要保護、準要保護児童、生徒数の割合は、産炭地域外の一三%に対して産炭地域は二八%の高率を示し、ある小学校のごときは六〇%を占める現状さえあります。
さらに、産炭地の特殊条件や生活環境から派生している特殊児童、生徒に対する特殊学級の増設の必要性もきわめて強いものがあります。たとえば、福岡県の産炭地域において特殊教育を行なう必要のある児童生徒数は、全児童、生徒数の一五%を占めておりますが、そのうちわずかに三・五%が特殊学級に収容されているにすぎない状況にあります。また、産炭地域における児童、生徒の疾病の増加も著しいものがあり、福岡県のごときは産炭地域において医療費の補助を受ける昭和三十九年度準要保護児童、生徒数は、昭和三十七年度に比べて五〇%増加する見込みであります。
以上、申し述べましたように、産炭地域における教育はきわめて深刻な状況にあり、このまま推移すれば教育の危機的段階への転落を避け得ない事態が、予想されるのであります。したがいまして、かような教育環境のもとにある最も抵抗力の弱い児童、生徒に対して十分な教職員を配置して学校教育の維持向上を期し、また激増した要保護、準要保護児童、生徒の教育に必要な補助をなし得るよう、疲弊した地方公共団体に対し、国が援助策を講ずることが緊急不可欠のことと考え、この法律案を提案いたした次第であります。
この法律案の内容は、石炭鉱業の不況による疲弊の著しい地域及びこれに隣接し、当該不況による影響の著しい地域で、別に政令で定める産炭地域公立の小、中学校について、次の特別措置を講じようするものであります。
まず、第一に、学級編制の基準について、同学年の児童または生徒で編制する学級は四十人以内とする等の特例を定めることによって、不安な教育環境のもとに置かれている児童、生徒の教育水準の維持をはかろうとするものであります。
第二には、もっぱら児童、生徒の生活指導をつかさどる教員を置かなければならないものとし、就学の奨励、非行の補導等十分な指導をはかろうとするものであります。
第三には、養護教諭を必置することとし、貧困家庭の急増等により児童、生徒の健康管理がきわめて重要となっている事態に対処しようとするものであります。
第四には、事務職員を必置することとし、要保護、準町保護児童、生徒の急増に伴い、扶助費、補助金等の支給事務が激増し、生活指導はもちろん、日々の授業にも支障を来たしている現状を打開しようとするものであります。
第五には、義務教育諸学校における教育の教材に要する経費並びに要保護、準要保護児童、生徒にかかる教科書費、学用品費、通学費、修学旅行費、給食費、日本学校安全会掛け金及び医療費に関する国庫補助金の補助率を十分の八に引き上げることとし、これによって、窮迫した財政のもとで、合理化整備に関連して派生する諸般の財政需要や、せっかく措置された特別交付税も、一般財源のゆえに就学援助費等に優先充当することの困難な実情など、援助指貫が徹底を欠いている事態の解決をはかろうとするものであります。
また、長期欠席児童、生徒の中には、通学用品を購入し得ないため、欠席する者が相当多数あり、一部市町村においては窮迫した財政のもとで必要やむを得ずこれを支給している実情にかんがみ、これら児童、生徒に対する就学奨励措置として、生活保護法による教育扶助費と同様に通学用品費を加え、国がその十分の八を補助することとしております。
なお、附則において、本法の施行期日を昭和四十年四月一日とし、昭和四十三年三月三十一日限り効力を失うものとしております。
また、本法施行に要する経費は、昭利四十年度において教職員の給与費、教材費、就学奨励費等合わせて約十二億七百万円を要する見込みでありますが、そのうち四千五百万円は昭和四十年度予算に計上済みであります。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/3
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004・山下春江
○委員長(山下春江君) 次に、へき地教育振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者から提案理由の説明を願います。豊瀬委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/4
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005・豊瀬禎一
○豊瀬禎一君 ただいま議題となりましたへき地教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由と内容の概略を御説明申し上げます。
へき地教育振興法は、教育の機会均等の趣旨に基づき、かつ、僻地における教育の特殊事情にかんがみ、国及び地方公共団体が僻地における教育を振興するために実施しなければならない諸施策を明らかにし、もって僻地における教育水準の向上をはかることを目的とし、去る昭和二十九年の第十九回国会において制定されたものであります。その後、第二十八回国会において、僻地の実情に即した同法の一部改正が行なわれ、僻地教育の改善充実に一そうの拍車がかけられましたが、いまだその実態は諸調査によっても都市に比し著しく低位であり、こうした状態に甘んじなければならない現状であります。
このような結果は、僻地における児童、生徒の栄養、健康状態が不十分であり、通学条件に恵まれず、しかも施設、設備が整わず、単級、複式学級など条件の悪い教育環境のためであると申せましょう。しかしながら、僻地教育においては、教育の根幹ともいうべき教員が、経済的、文化的諸条件に恵まれないために有能な人材を確保することが困難であるということも、僻地教育の振興のために大きな障害となっております。
以上の理由により、今回、僻地学校に勤務する教員及び職員の僻地手当の支給割合の引き上げ、調整額の支給措置を講ずるとともに、国の補助率の割合を引き上げる措置を講じて、僻地における教育の振興をはかるために、ここに改正案を提案いたしました次第であります。
次に、改正案の内容の主要点について申し上げます。まず第一点は、市町村の任務たる「へき地学校の児童及び生徒の通学を容易にするため必要な措置を講ずること。」に、新たに「寄宿舎の設置」の字句を特に掲げてこれを強調したことであります。現在、通学を容易にするための対策としての寄宿舎については、二分の一の国庫補助がありますけれども、その予算はきわめて限られており、ごく一部にその設置をみるにすぎない現状でありますので、冬季間における山間地、離島、積雪寒冷地帯、急傾斜地帯等の自然的悪条件のもとでは、児童生徒は著しく通学に困難を感じており、学校の作法室、集会室または公民館等の公共施設や保護者以外の住宅に寄宿を余儀なくされております。これでは安定した授業ができないのであります。それゆえにここに寄宿舎設置についての市町村の任務を明らかにし、寄宿舎が完備されますことによって、僻地分校の解消、小規模学校の統合等も促進され、教育水準の向上に寄与することの効果を期待するもので、設置の計画としては、僻地の四、五級地の最も条件の劣悪なところから年次計画をもって設置すべきものと考えております。
第二点は、僻地に勤務する教員及び職員に対して、僻地手当の支給割合を最低二%から最高五%引き上げるとともに、新たに一、二級地に千円、三、四級地及び五級地については二千円の定額制の調整額をそれぞれ支給することによって、教員及び職員の待遇改善を行ない、人事異動を円滑にし、有能な教職員を配置したいと考えております。
第三点として、市町村が行なう事務に要する経費のうち、国の補助率を現行の二分の一から三分の二に引き上げております。僻地の市町村はその財政力が貧弱であり、僻地教育振興のための諸施策を積極的に促進する意欲に乏しく、したがって国の二分の一の補助をもってしては実効をあげていない現状でありますので、補助率を引き上げて僻地における教育の充実向上をはかりたいと考えております。
なお、本法の施行期日は昭和四十年四月一日といたしてあります。
以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概略でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X00519650309/5
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006・山下春江
○委員長(山下春江君) 以上で両案についての提案理由の説明聴取は終わりました。
本日はこれにて散会いたします。
午後七時五十八分散会
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