1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十年四月十三日(火曜日)
午後零時五分開会
—————————————
委員の異動
四月九日
辞任 補欠選任
松本 賢一君 秋山 長造君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 山下 春江君
理 事
久保 勘一君
二木 謙吾君
吉江 勝保君
小林 武君
委 員
木村篤太郎君
近藤 鶴代君
笹森 順造君
中野 文門君
野本 品吉君
政府委員
文部政務次官 押谷 富三君
文部大臣官房長 西田 剛君
文部省大学学術
局長 杉江 清君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
参考人
日本育英会理事
長 緒方 信一君
—————————————
本日の会議に付した案件
○日本育英会法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/0
-
001・山下春江
○委員長(山下春江君) ただいまより文教委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。去る四月九日、松本賢一君が辞任され、その補欠として秋山長造君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/1
-
002・山下春江
○委員長(山下春江君) 日本育英会法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続きこれより質疑に入ります。
御質疑のある方は順次御発言を願います。
なお、政府側より柳谷文部政務次官、西田官房長、また、参考人として日本育英会理事長緒方信一君が出席されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/2
-
003・小林武
○小林武君 緒方理事長にお尋ねいたしますが、この育英会法の第十一条に書かれてあります理解長とその会長との職務についてはどういう違いがあるのですか。具体的にどういう違いがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/3
-
004・緒方信一
○参考人(緒方信一君) お答え申し上げます前に、育英会のことにつきまして、きょう参考人として出席を求められましてお聞き取りいただきますことに対しまして、感謝を申し上げたいと思います。
次に、いまの御質問でございますが、会長と理事長の職務権限は、いまお話のように育英会法にもございますが、それを受けましてさらに定款がきまっております。この定款によりますと、会長はまず会を総括的に代表いたしまして、そうして業務を総括をいたします。理事長はそれに対しまして、会長の定めるところによって、その会長の職務権限の一部の委任を受けております。そうして内部的に規程がきまっておりまして、重要事項につきましては、直接、会長の決裁によって事を決するのでございますが、理事長はこれを補佐し、それから会長の委任を受けて事務を決裁いたすという区分をいたしております。これはその規定がございまして、こまかくはそれに規定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/4
-
005・小林武
○小林武君 会長の定めるということでありますけれども、これはあれですか、会長の定めるというのは、会長が一切の職務を、業務を掌理するわけでありますから、形式的にはそういうことになると思いますけれども、実際上は、会長の定めるというのは、何かの会議によって、役員会の決定とか、何とかということによってきまるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/5
-
006・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これは会長が定めます場合に、包括的に定められているのが一つございます。これは決裁規程というのがございます。それによって一般的にはきまっております。これは重要事項は会長自身の決裁でございますけれども、事務的な問題につきましては、大部分、理事長の決裁で事を運ぶ、こういうことになっております。それからまた、そのつどこれは理事長の職務としてやるということをきめることもございます。そういう場合にはもちろん理事会等にかけて決定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/6
-
007・小林武
○小林武君 たとえば育英会の目的を変更するといいますか、目的にかかわるような問題について会長が独断で——独断でと言うと何ですが、その会長の権限でこの方向を変えるとか何とかいうことはできるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/7
-
008・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ちょっと御質問の御趣意がどの程度のことなんでございますか、よくわかりませんけれども、一応申し上げますと、育英会の目的というのは、これは御承知のように、育英会法第一条に規定されておりまして、これに基づいて業務を執行しておるわけでございます。で、育英会法第一条によりますと、これは規定の文句を離れて申し上げますと、能力のある成績優秀な学生であって、しかも、その人が家庭が困難であって修学が困難な場合に奨学金を貸与する、そうしてそれによって国家有用な人材を育成する、また、これに関連する事業をやる、付帯する事業をやる、こういうふうに規定されております。まあそれをいかような方向でこれを実施するかということにつきましては、必ずしも明確に規定してございません。そこで、その目的そのものを変更するということは、これはもちろん法律のきめているところでございますから、法律の改正に持たなければならぬと思います。国会の審議を経て、あるいは国会でそういうふうにおきめになって改正をするということだろうと思います。ただ、まあ予算を——これは国の予算でやっておるわけでございます。それをどういうふうに実施していくかということにつきましては、これはやはり会の意見を政府に提出いたしまして、政府によって文教政策の一環としてこれがきめられるということであろうと思います。一応お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/8
-
009・小林武
○小林武君 そうすると、私の質問しましたのは、第一条の目的ですね、この第一条の目的を、たとえば変更すると言ったらあれですけれども、この目的をまあ実施上の面といいますか、いまの目的はどうも育英会の仕事の性質として適当でないというようなそういう意見ですね、私はこれは目的の変更を意図した意見だと思うんです。そういう意見を会長が述べられたとした場合、これはあなたたちがそれについていろいろと御相談の結果、役員会というような会議でおきめになるのか、あるいはそういう場合は全く育英会長として自由に、個人的と言ったら悪いですけれども、会長としての立場から自由にそういうことについては発言をし、あるいはそういう方向に運営を持っていくということが可能なのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/9
-
010・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ちょっとよく事実がわかりませんけれども、会長が、育英会法に規定する目的外のことを育英会がやる、こういうことを意見として、それはプライベートに述べられるということは、これはあり得るかもしれませんけれども、私は現実の問題としてないんじゃないかと思いますけれども。でございますから、ちょっとそういう場合にどうだとおっしゃってもお答えがむずかしいのでございますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/10
-
011・小林武
○小林武君 私もいいかげんに言っているんではなくて、それから全く私的な発言ということでもないように考えますからいまのような質問をしているんですけれども、たとえば「育英時報」、「育英」という機関紙、この二つに、森戸辰男さんが本会会長の立場で述べておられる。その事実に従っていまのような質問をしているわけなんです。と申しますのは、育英会のいまの目的、この目的はやはり変更されるべきだというような意向がこの文章の中にあると私は考えております。「敗戦窮乏による事業の変化」というその項目の中に、戦事中に生まれたりっぱな制度が変えられてきた。その第一は何かというと、初め発足した当時は、育英ということが中心の目標であった。それが今度は、現存は機会均等的な援助という方向に重点を置くようになって、いわゆる育英というような考え方を、「育英」というこれによりますと、育英主義の後退を意味している。こういうふうに書いておりますね、ということは、私はまあここに書いてあるのは、発足当時のことだ、と思うのです。「育英会の前身である「大日本育英会」は、その設立の趣旨を「優秀ナル素質ト才能トヲ有シ乍ラ、経済上ノ理由ニヨリ進学ノ機会二恵マレザル多数ノ学徒ニ対シ学資ノ貸与等ヲ行ヒ、以テ指導的人材ノ育成ニ努メ」ることにある、と考えた。」ということを解いているのですね。「「父兄その他の援助なしで修学できる金額」を貸与することにした。」ということが驚いてある。これがいわゆる育英の当初の考え方であった。これが戦後において変えられた、育英主義というやつが後退したという、こういう意見です。これは「育英時報」、「育英」というどっちのほうにも書いておられる。そうして、そのことがやがて変えられなければならぬ、こういう考え方は、一体、育英会法の第一条の目的というものを変更しようという意図だと私は思うのですがね、どんなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/11
-
012・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いまお述べになりました会長が書かれたというものでございますけれども、私はこれは先ほど申し上げました日本育英会法第一条に規定します目的の範囲において、その業務の実施の方向をどう考えているか、この問題じゃなかろうかと考えます。で、いまもお話のありましたように、会長が述べておられますのは、今日まで育英会の事務が、事実上沿革的にどういう経過をたどってきたか、発足当時は今お話のように、これは各個人に対しまする貸与金額も相当多額でございました。たとえば大学在学の者に九十円以下という規定がございます。九十円の奨学金が出た。九十円と申しますと、当時の大学を卒業した初任給よりもむしろ多い金額でございます。考え方としましては、やはりそれはお話になりましたように、学生の生活費全般を含めた学費を十分に貸与をしまして、後顧の憂いなく勉強させる、こういうことであったかと存じます。そのことを会長は言っておると思います。ただ、それが戦後になりまして、まあ経済の全般的な変動がございまして、そうして子弟に高等教育を受けさせるということは全般的に非常に困難である、したがいまして、必然、その実情に沿って広く援助の手を伸ばすという必要が起こってまいりました。ところが、一面これは政府資金で行なっている事業でございますので、やはり国家資金としては一定のワクがございますので、そのワクの中で広くということになると、勢い各個人に対しまする金額は小額にならざるを得ない、そういう事態になったと思うのでございます。しかし、それにいたしましても、戦後のあの窮乏の時期に、これは放置すれば学業を放てきしなければならなかったかもしれない学生、高等学校の生徒に対しまして相当な援助をした、これがあったために学業を続けることができたというような歴史があると思う。そのことを私は会長は言っておられると思います。だんだんこれが経過いたしまして、これは昭和三十三年でございますけれども、特別貸与奨学生という制度が昭和三十三年に新設されております。この趣旨は、いまの一般的には広く、金額は小額ということにならざるを得なかったその実態に対しまして、それを若干是正と申しますか、補強すると申しますか、特に優秀であり、特にまた経済的には困難度の高いこういう学生を選んで、その学生に対しましては特別に高額の奨学金を貸与してやる、こういう制度がいまの特別貸与制度でございます。それがもう昭和三十三年にできた。その考え方は、育英会の当初発足しましたときの考え方がそこでまた復活をしたと申しましょうか、取り入れられたと申しましょうか、そういうことで、その新しい制度ができた。現状は御承知のとおり、いま申しました特別貸与制度と、それから一般貸与制度と前のやつを申しておりますから、この三本立てで進んでおるわけでございます。その経過をずっとそこに述べてあるので、そして今後の問題としては、その特別貸与奨学制度のほうが、事実の問題としまして、も必要度が高いのであるということを森戸会長としてはここに述べておられると私は解釈いたします。
なおそれと別の問題でございますけれども、たとえば大学院の学生に対しまする奨学金の問題があるのでございまして、これは非常に緊要でありまする学者、研究者の後継者の養成、いわば人材養成という面と非常に強いわけでございまして、これに対しましては特別に多額の奨学金を貸与していくという必要がある、これらの今日まで育英会が歩いてまいりました事業の沿革、さらに将来に対しまする見通し、それらを会長がここに述べておられると私は考えております。これはいずれも当初一番最初に申し上げましたように、育英会法第一条の目的のワクのうちで、事業を、どういうその時代時代に即応してどの点に重点を置くか、この考え方であろうと思っております。これはもちろん会長自身がプライベートにお話しになるということもあるかもしれませんけれども、これはやはり政府もそれを認められ、それから育英会自身におきましても、全体の考え方として今後においてもそういう方向をたどっていくであろうということはみんな了承しておる問題でございまして、会長が自分自身でお述べになったこれは、育英会の第一条を変更するという問題とはだいぶ違うんじゃないかというふうに私は解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/12
-
013・小林武
○小林武君 ただいま詳細に御説明をいただきましたが、ちょっと納得のいかない場所がありますので、その点を重ねてお伺いいたしますが、ここで述べられておる「育英主義の後退」ということは、そうしますというと、親から、あるいは他から援助を受けることなしに修学できる金額を与えることができなくなったということが育英仁義の後退ということを意味するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/13
-
014・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 失礼でございますが、どの何行目でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/14
-
015・小林武
○小林武君 「育英主義の後退」というのは二段目の五行から六行にかけて書いてありますね。「育英主義の後退をも意味したのである。」、そこで、「育英主義の後退」ということは、あなたのお説だというと、大体十分に金を貸与されれば、その金で一切修学していくのに心配のないような額、これを与えれば前と同じになるわけでありますけれども、いまは与えられないわけでありますから、育英主義の後退と会長の言っているのは、そういうことにあなたはおとりになっているのかどうか、金が非常に少なくなったということ、部分的にしか、とにかくそれをまかなうだけの金しか貸与されない、そういうことを意味しているのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/15
-
016・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 先ほど申しましたことをもう少しそれじゃ、詳しく申し上げますと、育英会が発足いたしましたのは昭和十八年でございますから、戦中でございましたけれども、まだ戦後の様子とは非常に違っていたわけでございまして、そのとき考えられましたのは、やはり先ほど申し上げたとおりでございますけれども、金額的には相当多額を貸す、そのためには特別に成績の優秀な者を撰ぶ、それからその選び方としましては予約の方法をとる、上の大学生であれば、大学に入る前の段階におきまして予約でこれを選ぶ、そうして、それが進学しました暁には十分な金額を貸与することを約束をしておくということでございまして、そのためには相当成績に重点を置いて選んだという事実がございます。そういう歴史がございます。それがいまおっしゃったように、戦後になりましてはなかなかそういかなくなった。予約採用ということも戦後にはとれなくなった。それは、大学に入ってきました者が現実にみんなが困るということでございましたので、先ほど申しましたように、広く援助の手を伸ばさざるを得ないということになった、そのことが会長は育英主義の後退というふうに、そこにあるとしますれば、私ちょっと見つかりませんけれども、そういうことを意味しておられると私は解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/16
-
017・小林武
○小林武君 私もいまのあなたのような解釈をしたわけです。会長の言われる気持ちの中には、「育英主義の後退」というのは、いわゆるいまのようなやり方ではほんとうに優秀な者に金を貸与するというような、こういう制度になっておらない、いわゆる会長自身の意見の中に述べられている総花主義、まあほんとうのことを言うと、あまり優秀でないような学生諸君にも金を貸しておるというようなところに、ごく砕いて言えばそんなような気持ちを会長は持っておられる、こういうふうに理解しているのです。そうすると、そのことが正しいかどうかということになるのですよ、そういう御解釈が。あなたもそういう御解釈をお持ちかどうかわかりませんけれども、あなたのお書きになったものの中に、たしか当初一万人くらいの人間を対象にしてやられた、いまは二十六万とか七万とかいうことになっている。二万人と二十六万人と比較して、二十六万人になったから質的に下がったと、こういうふうにお考えになることが一体どうなのか。もう一つは、二十六万人のそういう人間にとにかく貸与して、そうしていわゆるわれわれからいえば広く教育を受ける機会を与えてやるというやり方が、いわゆる育英という仕事の中に入らないのか、退歩と見るのか、一体進歩と見るのか、私は退歩とは見たくないのです、これは。当時の昭和十八年の時期と、それから現在の時点とを比較して見た場合に、二万が二十六万にふえた、さらにそればかりでなく、あなたも御存じのように、新聞を見ると、さらにこの育英会以外にも私設のものもたくさんあるわけなんですね。それにしても、まだいわゆる秀才で優秀な学生になり得る素質を持った者が教育を受けないで相当いると私は思うのです。そういうことからいえば、会長の育英という考え方はちょっとやはりぼくは間違いであると思う。いわゆる育英会法の第一条に書かれてあるこの目的に沿うたお話とはちょっと考えられない。「国家有用ノ人材ヲ育成スルコトヲ目的トス」ということなんだが、会長はいまの育英会のやっている国家有用の人材を育成するというところから若干後退したと、こういう解釈になるので、これはあなたの先ほど説明なさった中にも、そういう意味が私は含まれていると思っております。そうなると、私はこれはなかなか重大な問題だと思うのです。明らかに育英事業そのものに対する方向の転換であり、一体何を選ぼうとするのか、もっと数を減らそうというのかどうかということの心配も出てくるわけですが、そういう点についてどうでしょうか、私の考えは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/17
-
018・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 私はいまお述べになりました教育の機会均等の面で育英事業の果たす役割りは非常に重大であるということは、そういうことだと思いますが、こういうことは私も全く同感だと思います。これは育英といい、あるいは教育の機会均等と申しますか、広くやっていくという、これはことばの問題であります。昭和十八年に育英制度ができましたときにも、まさに教育の機会均等を実現するということで成立いたしております。これはそのときの永井柳太郎先生が初代の育英会会長でございますけれども、衆議院議員として、育英会というのは議員の方々の非常な熱意によって国会の中に国民教育振興議員連盟というのができまして、そこの働きによってそれが誕生いたしたわけであります。永井先生は会長でございます。この決議案があり、決議案の趣旨を御説明になって非常に雄渾な演説の記録がいまも残っております。それを拝見いたしますと、全くいまわれわれが考えている教育の機会均等の理念がそこに出ております。ただ、やる方法といたしましては、その当時は経済的にはいまのような状態で私はなかったと思う。これは教育制度も進んでおると思います。ですから、その事態に即応しましては、発足のときにとられたような、いわば育英主義というもの、そういう意味で会長はおっしゃっておられたと思いますけれども、そういう方向でとられたわけでございますが、戦後は、これは日本の経済の基盤も変わりましたし、それから教育制度も変わってまいった。それに対応するような方向に育英事業のあり方が変わっていくのは私は当然だと思います。その際に、いまのように人数がふえている、進学率もそのときといまとは今昔の感がございまして、当時は大学の学生は二万人くらいだったと思います。中等学校は五%くらいではなかったかと私は記憶しておりますけれども、いまはそれが御承知のとおりの大幅な進学になっておりますので、それに対応しまして、必然、育英事業のやり方が変わってこなければならないと思います。会長も、いまやっております一般貸与奨学制度、それから特別貸与奨学制度、そのほかの、先ほど申しましたような大学院の奨学制度、そういうものを並列して育英会を進めていくということには何ら反対の御意向はない、むしろこれを認めた上での御議論でございます。従来の経過をちょっと述べられまして、そうして戦後においては、いまのようなお話がございましたけれども、広くやらざるを得ない、それを総花主義というようなことばが出ておるようでございますけれども、いわばそういうことでございます。その中で、それだけではいかぬというので、今度特に成績のほうに比較的重きを置く制度を、先ほど申しました育英制度として、特別貸与奨学制度として設立したわけでございます。いまは二本立てでやっている。一般貸与のほうが広くというほうに当たるといたしますならば、何もそれを縮めようとする意向は一つもございません。むしろ私どもといたしましては、これもうんと採用すべきだと考えております。二十八万人という学生を対象といたしまして、昭和四十年度にはいろいろ事業を行なおうとしておりますが、私はいろいろもっと拡大すべき問題じゃないかと考えております。いずれにいたしましても、日本の育英制度というものは、決して育英と申しましても成績だけで選ぶということはございません。成績は優秀であるけれども、家計が苦しい、経済条件が困難だという、経済条件を常に加味して実施しておる。この制度もそうでございます。ただ、大学院の奨学制度になりますと若干違いますけれども、これはむしろ研究のほうに重きを置きますけれども、大学学部、高等学校の育英奨学制に対しましては両方を重視しておるということでございます。先ほどもお話がございましたけれども、小林さんから詳しくございましたけれども、現在の大学院の成績の基準というのは、大体、水準以上の成績のものを基準とする、一般の奨学制のほうはそれに該当するものに出しておる。ただ、特別貸与のほうはそれをもっと重く見ておる。しかも学力の選衡のためには全国一斉テストを行なって、それで選ぶという厳重な方法をとっておる。そこに若干の育英主義かあるいは総花主義ということばは適当じゃございませんが、総花主義といえば両方に差が出て軽いと思いますけれども、いずれにしましても、両者とも両方の条件を満たすものを採用していくという点から申しまして、育英の、教育の機会均等を実現する方法の違いであると思います。御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/18
-
019・小林武
○小林武君 理事長から非常に詳細にわたって、しかも親切に御答弁をいただいたので、そのあれについては全く満足いたしますけれども、ただ、理事長としてはそう言わなければならぬと私は思うのです。会長の言うことを否定するようなこともなかなかおっしゃりにくいだろうと私は思うのです。これはしかし、このことは立場はよく認めますけれども、私は森戸会長の考え方の中には、やはりいまの育英会制度について、育英主義の後退、優秀な素質と才能を育成しようとする育英主義の後退ということが頭の中にあられたと思います。これは森戸さんがいわゆる秀才であったから、そういうことを考えられたのかもしれませんけれども、しかし、これはやはり私は考え方としてはきわめて危険なところに落ち込んでいくおそれが判ると思うのです。教育の機会均等と育英ということが、二つの相反発する、矛盾するような考え方をもし森戸会長がお持ちであるならば……これは全文の中にそういうあれが出ておると思いますが、これは育英会長としては適当な考え方だとは思わない。ほんとうに日本の人材というものを開発しようとするならば、オリンピックの話じゃありませんけれども、これは日本の中の何人かの人間を探してきて、そうしてそれにうんと金をかけるというような考え方よりも、やはり学問をする層をずっと広くして、その中からさらにすぐれたものをつくっていく、自然にその中から生まれてくるものだと思います。スポーツでも学問でも私は同じだと思います。そういうやり方をよその国でもとっておる。やはりこの現実を見落として、どうもつまらぬやつに金をやっておるとは言っておらぬけれども、あまり才能のないやつに金をやっておると言わぬばかりの言い方です。もしもこの中から森戸会長の書かれたものを見て、関係者がそういう考えを持つということになったらたいへんだろうと思う。私は育英何とかという通信の中に、ある学校の先生が書いておるのを見てがっかりしたのです、実は。森戸さんと同じことを書いておる。これはどこか関東地方の高校の先生ですがね。一体、高校の先生までそういうことを言うようになったら私はたいへんだと思う。よく、もっと教育というものを国家の立場で考えても、民族の立場で考えてもけっこうですが、やはり教育を高めるということになったらもっとおおらかにならなければならぬ。育英主義の後退だなんという考え方は、やはり幾ら会長でもおっしゃらないようにしていただきたいという気持ちなんで、まあ緒方理事長はいろいろな点を配慮されてたいへんりっぱな御答弁をなさって、意図するところはよくわかりました。しかしまた、緒方理事長のおっしゃることの中には、私も全く同調していいというようなことがわりあいに多いのです。しかし、森戸さんの考え方とあなたの考え方においては根本においてやはり開きがあるというふうに考えますけれども、それをまた答弁してくれなんということになると……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/19
-
020・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 参考人でございますから、十分納得をいただいておかないとお役目を果たさぬことになりますから。
私はこの森戸先生のお書きになったものを拝見しまして、私はいま小林さんのおっしゃったような解釈は出てこないのじゃないかと思うのでございます。ことばの使い方等につきましては、それは育英主義といい、あるいは総花主義、こういうことばを使ってあることは、これは必ずしも会長のおことばではないと思いますけれども、私ども会長とはしょっちゅうお話をしているわけでございます。会長の気持ちというものは十分存じております。そこで、ただこういうことは私ども常に心しなきゃならぬと思っております。間々、世間に批判がございます。必要じゃない者に貸しているのじゃないが、選考が適正じゃないのじゃないかということがございます。しかし、大事な育英資金が、その学生の修学費じゃなく、そのほかの費用にむだに使われているのじゃないか、こういう批判がございますので、私は選考につきましては、最も適正を期するという心がまえを私ども常に持たなきゃならぬと思っております。これは選考は選考基準というのを具体的にきめております。で、二十八万人にも及ぶ人を育英会がわれわれの上手元だけで選ぶということはとうていできることではございません。大学生であれば大学当局の選考推選に待って、その推選に基づいて育英会がこれを決定するということにならざるを得ないわけでございますけれども、その推選につきましては、大学がよるべき基準というものをきめております。これを学力と経済条件と両者からそれをきめておるわけでございますけれども、この適用の問題の場合に、やはり間々それは間違いがないとは言い切れないだろうと思います。これは私どもは、この育英事業というものは国民の皆さん方のお金をお預かりして、そしてこれを最も有効に使うという責任は私どもに委託されておるというふうに考えております。でございますから、いまのような、何といいますか、総花主義的に、育英は教育の機会均等から総花主義的になって、ほんとうにそれに値する人でない者にまでやっているようなことであってはならぬ、これは厳につつしまなきゃならぬ、これが私どもの常に戒心をいたしている点でございまして、こういう気持がここに出ているのじゃないか、適性なものを選考しなければならぬというような気持が強く出ておるのだということが一つあろうと思います。
それからやはり国の大事なお金でございますから、国民の皆さんからお頂かりして実施するからには、これはもっと育英会法第一条に照らして、そのときどきの時代時代に即応して、最も時代の要求する方向にこれを近づける、こういうこともわれわれ常に心しなきゃならぬ問題じゃないかと思います。そういうふうな沿革的な気持ち、それからまた実施する上においての心がまえ、そういうものがここに出ているのじゃないか。特に「育英時報」と申しますのは、これは実際に学校において選考に当たられる高等学校とか大学の担当者の方々に読んでいただくために出しておるものでございますが、そういうことを強調しておられる点は私は十分わかるのでございますけれども、繰り返して申し上げますけれども、決して私は、ただ育英会の立場と申しますか、会長の立場をここで弁護するという、そういう気持だけで申し上げているわけじゃございません。常に会長とお話ししておりますし、気持ちを通じ合って仕事をしておりますから、会長の気持ちは十分わかっておりますから、そのことを御理解をいただきたいと思いまして、再度申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/20
-
021・小林武
○小林武君 話がそうなると、私は問題は重大だと思うのです。育英主義の後退ということが一体、貸与学生を選考するときに、あるいは経済的な立場から、あるいは学力の立場からというような判断が誤ったところから育英主義の後退というものがあらわれるということは、何をしておったかということになる。二十六万人もいる人間のうちに、それが全部が全部神様がやる仕事ではありませんから、多少それは誤りもある。あるいは学校差なんかもありますから、これも全国的に見て必ずしも妥当である、どれを比べてみても全く同じものが選ばれておるということはあり得ないと思う。そういうことは育英会が責めを負うべき問題では私はないと思う。一生懸命努力してやって、あるいはそういう制度上の問題から起こってくることを一々神経衰弱みたいにわれわれの責めだというふうにお考えになる必要はない。そういうことは抜きにして考えて、あなたが、会長が言っていることの育英主義の後退ということは、その選考上の大きな誤りがあるというようなことに触れているということであるならば、これは私は重大だと思うのですよ。そういうことなら育英会の業務はいいかげんにやっているということになりませんか。これは沿革的なということを言っても、沿革的なことからだって同じですよ。沿革的なことを言って、そうして会長は言っているのです。沿革的なことから言って変わってきた、こう言っている。私は立論の仕方としては会長の意図ははっきり出ていると思う。前は、いわゆるきわめて優秀な、いわゆる英才に対してやっている。しかし、このごろは総花主義になっている。英才でない者に対しても広がって、約二十六万に広がった。これはもう一ぺん総花主義から厳選主義に返さなければいかぬ、これが現在育英会に課せられた課題だ、こう言っている。こういう立論のしかたなんですから、これは沿革の上から出ている、そういう立論です。私はそういうことについて若干やはり森戸さんはお考えが違うのじゃないかということを先ほど述べたのです。そればあなたが一体選考七の問題、適正でないというようなことについて会長が述べられたとしたならば、私はこれは重大なことだと思う。もしそういう事実がないということになると、育英会関係者全体に対する侮辱でもあるということになる。もし事実があるとすれば、これは重大な問題だと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/21
-
022・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 私ちょっとお話のしかたが悪かったかと思いますが、私、二つのことを申し上げた。初め育英主義の後退ということを会長が述べておるのは、これは沿革的なことを説明されておる。ただ、育英主義の後退がそれが悪いということじゃ私はないだろうということを申し上げたわけであります。それからあとのほうで申し上げましたのは、必ずしもここにこういうように響いてあるかどうか何ですけれども、ただ選考を適正にする、これは常にわれわれが心がまえとして持っていなければならぬ。これはいまお話のように、これは万々ないように心がけておりますけれども、間々、世間の批判等がありますから、これは強く戒める、二つのことを申し上げたわけでございまして、申し上げ方の悪かったところは御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/22
-
023・小林武
○小林武君 どう考えても、やはりこれの解釈については理事長さんとしてはいろいろ御遠慮もあると思いますから、この問題についてはあまり申し上げませんけれども、しかし、育英会の仕事というものを、現在の二十六万人の学生生徒、そういうものをさらに拡大して、そうしてりっぱな人材をひとつつくっていくということには全く賛成でありますから、そういう努力を私はしていただきたいと思います、その数を減らすということの立場に立っていまの制度が総花主義であるとか、その総花主義から特選主義に変わらなければならぬ、あるいは厳選主義に変わらなければならぬというような、こういうお考えは育英事業の私は発展でなくて後退であると思う、このように考えますので、いろいろとひとつこの問題をお取り上げになって御討論を部内の中でしていただきたいと思うわけです。
次の問題でありますが、私はまあこのことについてはちょっと森戸先生のお考えにびっくりしたのでありますが、これは二段目のところに、「科学技術時代の要請としての人的能力の開発」というそういう項目の中に書かれておる。「周く知られているように、国際的危機をはらむ科学技術時代には指導的社会主義国家においても、指導的自由主義国家においても、軍事的・経済的競争という緊切な国家目的から、人的能力の開発・活用が国家計画の重要課題としてとりあげられ、強力に推進される事態となった。すなわち、すぐれた人間能力を発見し、適切な教育によってこれを育成し、かようにして開発された能力を適当な職場で充分に活用しようとするのである。」、これはいわゆる軍事的、経済的目的に向かって、社会主義国家やあるいは自由主義国家の指導的な立場の国がやっている、こういうのです。それはかってだと思う。そういう事実もあると思う。しかしです。「この時代の趨勢に添うて、最近わが国においても「人間能力の開発」が重要な国民的課題としてとりあげられるようになった。」、いわゆるこの日本の育英事業というのは、この文章の進め方からいくというと、軍事的、経済的競争に呼応して、日本の育英事業がやられていかなければならぬというふうに読み取れる。私ははなはだ穏当でない、このような時代の趨勢に伴って、わが国においてもと、こうなっておる。一体その軍事的、経済的なことはまあけっこうな部面もあると思いますけれども、軍事的な面は一体どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/23
-
024・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これは全く森戸さんのおっしゃったように、世界の趨勢を前段において申されまして、そうしてこの趨勢に沿うてわが国においても云々、わが国は軍事的な競争はもちろんございませんから、経済的な競争が国際的にある、その趨勢に沿って、こう読むのが順当だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/24
-
025・小林武
○小林武君 その趨勢に従って日本は何をやろうというのですか、このあれでいうと。この文章はどう読みますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/25
-
026・緒方信一
○参考人(緒方信一君) この人的能力の開発に力を入れ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/26
-
027・小林武
○小林武君 どういう人的能力の開発ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/27
-
028・緒方信一
○参考人(緒方信一君) それは社会経済の発展の推進に役立つような人的能力の開発、こういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/28
-
029・小林武
○小林武君 その説明がないのです。この時代の趨勢に沿うて、わが国は人間能力の開発が重要な国民的課題となった、こういうのです。この時代の趨勢に沿うてどういう一体人間能力の開発をやるのか、この説明がないじゃありませんか。どう説明するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/29
-
030・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ここにも書いてありますように、「経済審議会は人的能力部会を設けて、」やっており、あるいは産業計画会議では「科学技術における創造的英才育成の問題を研究した。」、こう書いてあります。説明はちゃんとしてあると思いますが、経済的な面において、産業的な面において努力するという、それが推進になる、他面では人材養成のためにこういう計画であると書いてあると思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/30
-
031・小林武
○小林武君 あなた、ほんとに書いてあると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/31
-
032・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いや、ここに書いてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/32
-
033・小林武
○小林武君 まあそれはしかし、ここでそのことについての大議論はやりません。やりませんが、あなたはやはりすなおな読み方をしてもらいたいと思います。こういう「時代の趨勢に添うて、」——時代の趨勢に沿うのですよ。明治維新というようなことを考えると、その当時の時代の趨勢、国際的な趨勢というものに沿うて日本はどうするかということになる。世の中はとにかくいまや軍事的、経済的な競争時代、この時代の趨勢に沿うて、経済と軍事、そういうものが経済審議会の名前をかりてやれないこともないでしょう、まあいろいろあなたとそういう議論をやってもいいですけれども、どういうことになりますか。このことは、そういうことがその時代の趨勢に沿うというのは経済のほうだけ沿うということですか。軍事的、その競争時代ということは皆さんも御存じなんです。べトナムの問題がどうこじれてどういうことになるかということについては、日本人といえども相当心配しなければならないような状態にある。兵器の問題についてもそうである。日本の国の中でもこの間国会の中でいろいろ議論された、そういうことをいまここで蒸し返す必要もないから、日本の間だっていろいろある、軍事的に。これは時代の趨勢でありませんか。この時代の趨勢が日本だけなかなか孤立させておかないような情勢がたくさんある。だからわれわれも、ずいぶん平和の問題についても考慮をしなければならぬ現状におかれておるわけであります。そういうことをずばりとおっしゃっておるのではありませんか。そういうことを森戸会長がこれに沿うてやるとずばりとおっしゃっておる。軍事がこの中に含まれておるということになりませんか。こういう趨勢、情勢の中でありますから、わが国はどうこうしなければならぬと、軍事の問題についてはどうだということを書いておるのではないでしょうか。このとおりに読んでよろしいとあなたはおっしゃるならば、これからひとつ十分わが党のほうでも検討しまして、森戸さんの御意向が一体どこにあるか明らかにしなければならぬと思いますが、あなたのお考えは一つもそういうことが心配がないというふうにお読み取りになるのですか、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/33
-
034・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これはもちろん文章の解釈でございますので、私の解釈で申し上げたわけでございまして、私はこう読んでおりますけれども、現在、人的能力の開発という点、つまりこれはひいて教育の発展拡大ということでありますが、これは世界的に教育競争といわれるように、人的能力の開発に各国が力を入れている。これは国際的な趨勢が今日ある。その原因は軍事的な競争あるいは経済的な競争であるかもしれません。しかし、それはそういう結果、こういう能力開発の競争といったような客観的な事実が世界的な趨勢としてある、そのあとの趨勢でございますが、その教育の拡大、あるいは人的能力の拡大、これは各国競ってやっておりますから、この趨勢に沿ってわが国でもやるのだと、こういうふうに言っておられると私は読むわけでございます。これは私の解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/34
-
035・小林武
○小林武君 「時代の趨勢に添うて、」ということはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/35
-
036・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いま申し上げましたように、教育を各国競って、競争的にやっている、人的能力開発を競ってやっておる、この趨勢でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/36
-
037・小林武
○小林武君 人的能力の開発をどういうふうにやるのですか。時代の趨勢に沿うということは、いまあなたのおっしゃったようだと、経済の問題だけに限ってやると、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/37
-
038・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 各国はやはり各国の行き方があると思います、私はわかりませんけれども。各国はいろいろその国々によって行き方があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/38
-
039・小林武
○小林武君 日本の国においてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/39
-
040・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 日本の国においては軍事的趨勢というものはここからは読まれないと思います。軍事的競争ということは一つも私は読みとれないと思います。産業的な社会的発展といいますか、そういう意味においての人的能力の開発と、こういうふうに私はすなおに読めると、こう解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/40
-
041・小林武
○小林武君 ちょっとお尋ねしますが、日本の自衛隊、日本の国防に対する自民党、政府の国防に対する考え方、要請、そういうようなものをあなたはどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/41
-
042・緒方信一
○参考人(緒方信一君) はなはだ恐縮でございますけれども、私、きょうは育英会の理事長として参考人として出席いたしておりますので、育英会の業務に関連しての御質問にひとつ限ってお願いいたしたいと思います。ちょっとはみ出しましてやっかいなことになるといけませんので、それをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/42
-
043・小林武
○小林武君 多分そうおっしゃるだろうと思っておりましたが、ただし、あなたの責任は、この文章の解釈に関しては、やはりはっきりしなければならぬ。その場合に、軍事は抜きですとどこに書いてありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/43
-
044・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 私はこう申し上げておるわけでございまして、人的能力開発というその世界的な趨勢に沿ってわが国もやっていこうと、すなおに読めるのじゃないかと、こう思っておるわけでございます。世界的にその人的能力の開発を進めなければならぬという要請は、軍事的な要請もあるかもわかりませんが、わが国にはそれはないじゃないか。それからこれをずっと読めば、私の申し上げておるような意図で森戸先生もお書きになったに相違ないと思いますが、私はそう確信いたしますのでそう申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/44
-
045・小林武
○小林武君 私はあなた以上にすなおに読んでおります。世界の情勢というのは、指導的な、ここにあげられておるような社会主義、自由主義両方とも軍事的、経済的競争をやっています。その他、文化的な競争もやっているでしょう。非常な激しい競争、しかし、われわれに非常に関連の深い、関連というよりかも関心の深い、非常に憂慮すべき角度から関心を深めているのは軍事的な競争らくる問題である。そういうことをちゃんとここにあげておる。そうしてその時代の趨勢に沿うてわが国はということになったら、幾らすなおに、読めば読むほど、これはわが国の教育の場合は、一体、どういう行き方をしなければならぬかということを意味している。こういうことになりませんか。しかし、あなたとこのことのやりとりをいつまでもやるわけにはいかないし、あなたの立場からいろいろ言いにくいこともあるだろうから、これはいまやりません。やりませんが、ひとつ森戸会長にあなたから、ここの意味は、あなたのおっしゃるように軍事的なという意味がなかったとかあるとかいうことの、ひとつお答えをいただきたいということをお伝え願いたい。これを、先ほどあなたがおっしゃっておるように、育英会の仕事に携わっている人たちがみんな読むわけですから、どうぞ。その点はあとに譲りましょう。
次に、お尋ねいたしたいと思いますのは、育英会の仕事につきまして、非常な御努力をいただいておる。たいへんこの点については私も感謝をいたしておるわけであります。この仕事がここまで発展したということには、これはもうやはり役員といわず、それからまた、ここにつとめておられる方々といわず、みんなが非常に努力なさった、さらにまた一そうの努力をなさって、問題になっておるような、たとえば返還のことがうまくいかないとか何とかいうことについても、やはり御努力をいただかなければならぬと、このように考えておりますから、そういう点については高く評価をして、一そうの御勉強をお願いしたいわけでありますが、そこで、そういう立場から育英会の問題について考えますというと、皆さんの非常なこれからの御努力をお願いするわけでありますが、そういうことで、今度の法律の中にも、監査の監事のことが出ておるわけでありますが、この点からも強化したいというお気持ちもよくわかるわけであります。それで、実は文部省のほうに尋ねてみたのですけれども、監事という仕事に携わっている役員の方ですね、この方々は、一体、毎年その監査した点を文書をもって報告するとか、口頭をもって報告するとかいうことを、いままでなさっていらっしゃったのでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/45
-
046・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これはやっております。毎年一回、定期監査をやります。大体六月ごろやることにしておりますけれども、監事さんが監査をいたしまして、本部、支所、支部でございますけれども、できるだけ広く監査をいたしまして、それを文書をもって監査結果を会長に報告いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/46
-
047・小林武
○小林武君 で、その結果、具体的に仕事をこれからよくするために出されたことは 一つには三十四年の返還体制確立五カ年計画というものではないかと思うのですけれども、その五カ年計画というのは、一体、大体概括的にいえばどういう内容であるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/47
-
048・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ちょっと三十四年の事実を、実は私、育英会におりませんので詳しく存じませんけれども、これ農事の監査の結果だったかどうか、これもはっきりいたしませんが、返還五カ年計画というものを掲げてあります。これも文部省とも相談をして掲げた問題であります。一口に申しますと、集金制度を中に取り入れるということが中心になっておりまして、全国をブロックに分けまして、そこに支所をつくって、その支所に外務員を置きまして、それが訪問によって返還金の回収に当たる、これを中心とするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/48
-
049・小林武
○小林武君 三十四年というと、その次の年からとっても、三十八年か九年までというと、大体いまごろまで、昨年あたりまでその計画をやられているわけですが、それが三十七年に産業能率研究所に事務診断を依頼したということになっておるのでありますが、その際の返還体制五カ年計画が思わしくなかったから、これはあれですか、事務診断を求めたわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/49
-
050・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 五カ年計画必ずしも思わしくないから事務診断を求めた、そういう因果関係はございません。ちょっと申し上げますと、お尋ねの私意味がわかりましたから、先回りして悪いかもしれませんが、五カ年計画というのは、昭和三十六年度からでございまして、五年間でございますと、四十年で完結ということになります。それで支所をいま三カ所つくっております。東京、大阪、名古屋、そのほかあと三カ所ほどつくろうという計画でございました。ところが、その途中で事務診断をやったのは事実でございまして、事務診断の結果、結果といってもよろしゅうございますけれども、一部、事務を機械化をする、いままで手作業でやっておった、非常に量の多い事務でございますから、機械化をするという専務診断の結果の勧告も出ておりまして、それも参考にいたしまして機械化に取りかかっております。今年度から実施をいたします機械は確保をしていきたいと思っております。そうなりますと、五カ年計画で支所をつくっていくという仕事と機械化と、どっちを先にやるかという問題でございまして、私は事務機械化のほうを先にやるべしという、こういう結論を先に出したわけであります。これは理事会できめたわけであります。そうしてその結果、両方一緒にやることは、これはかなり骨が折れますので、実際問題として、支所の設置の五カ年計画というのは昭和三十八年からでございますが、一時ストップしまして、それは見送っておる状態でございまして、そのことは事務診断の中に入っておったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/50
-
051・小林武
○小林武君 機械化されましたら、その機械化は時代の一つの趨勢でもありますので、その能率を進めるために私はけっこうなことだと思うわけでありますが、こうなりますというと、一番問題になるのは、どこでも機械化された場合に起こる問題として、育英会の中に働いておる人ですね、いわゆる職員の問題になるわけですが、この機械化に伴って職員側の要求というようなものは別段ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/51
-
052・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これは労働組合がございまして、労働組合からいろんな意見が出ております。これはちょっと簡単に申し上げますと、機械化によって事務の内容が非常に変わってきました。そのために極端な場合には首切りが起きやしないか、人員整理が起きやしないか、機械でやれば能率が上がるために人が要らなくなる、その点をどういうふうにするかという、これが一つ。もう一つは、機械化で、機械を中心としますと、たとえば機械が入ってまいりますと、それの影響がほかの事務に一体どう及ぶか、こういうような問題につきましていろいろ意見が出、あるいは心配もしているというような実情であります。これにつきましては、私は第一の合理化と申しますか、機械化に伴って人員整理はしない、これはできません。私どもの機械化の内容を少し申し上げなければおわかりにくいかと思いますが、いままで手書きでやっておる請求書、督促状を機械化でやる。それから入ってまいりました返還金の収納事務を機械にやらせる、こういうことでございまして、この部分だけは機械化になりますけれども、手作業に残る部分が相当ある。これはやはり奨学生の数がどんどんふえまして、また返還をしなければならない人の数も年々非常にふえております。いまは七十万程度でございますけれども、これは数年ならずして百万をこえます。でありますから、どうしても事務増量というものはほうっておけば非常にたくさんになります。機械化によりまして増員を抑制するという役目は果たすことができます。しかし、そのために人を減らすということは、これはとうていできるものではありません。いままで相当やるべき仕事をやらないでおるという状況でありますから、機械化によってかりに浮いた人員がありますならば、相当念を入れた仕事をしていく。こういう計画をやっておりまして、したがって、労働組合に対しまして、文書をもって、機械化によって人員整理をしないという約束をいたしております。これは人員整理はできません。あとの問題は、これはいろいろ見方の問題でございまして、これは非常にむずかしい問題でありますから、ここで一口に申し上げられません。お尋ねがあれば申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/52
-
053・小林武
○小林武君 先ほど述べましたけれども、結局、育英会の仕事をやる人たちは職員といい、役員といい、非常な努力をしなければなりませんが、この職員の方の問題に限ってひとつ考えますというと、やはりこの人たちが育英会の仕事に対して、何といいますか、熱意をもって当たるといいますか、そういうことが私は必要だと思うのです。しかし、考えてみますというと、同じに大学を出て、何高校を出て就職をするといたしましても、これは文部省に入ったのと育英会へ入ったのとでは、私はやはり気持ちの上ではだいぶ開きがあると思うのです。ほんとうはあってはならないのですが、そういう気持ちがやはり出てくるような状態にあるといったら——まあ、ないという方もあるかもしれませんけれども、私はあると思うのです。外郭団体には外郭団体としてのそういう一つの気分があると思う。やはりそういう気分をなくするということのためには、私はそこに働いている人たちの意見というものを、仕事の上にも、賃金の上にも、労働条件の上にもこれを反映して、そうして意欲的になってもらうよりほかにやはり私は道がないと思うのですが、育英会の人たちの中には、この自主的ないろいろな仕事というものはなかなかできがたい状況にあるという気持ちがあるという傾向ではないかと思うのです。何といっても、文部省というところでいろいろな大どころをつかんでおるわけでありますから、こういうことは見のがしがたい。それから役員にしても、育英会の中に育ったそういう人たちが役員になるというようなこともあまり数が多くないだろうし、等々を考えますと、やはり幾多の問題点がある。そういう問題については、私は今後運営の上において大いに配慮さるべきだと思う。育英会出身の役員がたくさん出れば問題全部が解決するとは思いませんし、そんななまやさしい問題とも思いませんけれども、やはりそういう問題について考慮することが必要ではないかと思うのであります。そういうこと以外に、これは労働組合との関係の問題ですが、これについては首切りをやらない、絶対やらない、そういう理事長のお話はたいへんけっこうだと思います。これはぜひそうしてもらいたいと思います。ただこの機械化に伴いまして、仕事の中における機械と人間とのつながりと申しますか、これはやはり労働条件として、相当働いている人たちの意見というものを取り入れられたらどうか。労働組合である限りにおいては、それを交渉の中において十分検討する必要があるのではないか。われわれは直接機械を見ておりませんから、どういうことになっているかわかりませんけれども、たとえば、いま非常に能率的な機械が入った、その機械から出てきたものを今度は人間が手で仕事をやる、そういう仕事というものは、事務的に処理する仕事ということになりますために、機械と人間ということによって機械に追いまくられる、こういうことは、一般の職場におけることを考えますと想像できるわけです。いわゆる労働強化といいますか、労働の密度がきわめて高くなって、そうして労働者が非常に苦労するというようなこともあると思いますから、そういう点においては、ひとつ十分その交渉の条件としてお話し合いを願いたいと思うのですが、この点は一体どうなのかということが一つ。
もう一つは、賃金の問題ですけれども、文部省の外郭団体の中では、育英会が一番悪いということではなくて、ある程度いいのじゃないかと思うのですが、この外郭団体の中で一番問題になるのは、やはり当事者能力の問題だと思うのです。幾ら労働組合があって交渉してみてもどうにもならない。経営者側を代表される理事長さんにしてみても、問題点はいろいろあるといい、考えてはいても、現在ではそれがなかなか実行できないということにぶつかっているのではないか、こう私は思うのです。しかし、これはひとり文部省の外郭団体だけの問題ではなくて、これは公共企業体にも実際あるわけなんですが、そういう点について、一体どういうことを将来努力しなければならないとお考えになっておるかということ、まずこの二点についてひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/53
-
054・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 前段の機械化に関連する労働組合との関係の問題でございますが、機械化を決定をしてそれを進めていく、これはやはり会の責任においてきめるべきものであると私は思います。その中身において、労働条件と申しますのは賃金と労働時間でございますが、これに変更がある場合には、そのものについては労働組合と団体交渉をしてきめていく、こう思います。これは現にやって、おります。ただ、今度の私のほうの機械化の問題は、先ほど申しますように、比較的単純でございます。機械化に移す部分は単純、あるいはそのあとの部分は、いまおっしゃったように、機械化との関係は出てまいりますけれども、私はそれによってそう変わってくるとは思いません。でありますから、私は機械化の計画そのものを労働組合と団体交渉をして、そこで決定すべき問題とは考えておりません。ただ、内容において労働条件に関係してくれば、それは団体交渉を十分にやる。しかし、いろいろ関係がございますから、一応、計画をつくりました場合には、私は今日までも二度ほどその計画を労働組合示しておりますそうして十分説明しております。
それから、次の第二段の問題でございますけれども、これはなかなかむずかしい問題でございまして、幸いにして監督官庁の文部省が、非常な力を尽くしていただいておりますから、まあ文部省にお願いしまして、さらにその改善をはかっていくという方針でまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/54
-
055・小林武
○小林武君 ここの組合は労働法による組合ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/55
-
056・緒方信一
○参考人(緒方信一君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/56
-
057・小林武
○小林武君 そうすると、いわゆる労働組合、労働者としての団体交渉権や労働基本権というものは全く完全に持っているということです。その場合に当事者能力がないということは、何というか、労働組合としては権利は持たされたけれども、実際の面においては全く持たないのと同じくらいになってしまう。たまたまいまお話が出ましたけれども、文部省の格段の御配慮によってと言われたが、御配慮にばかりよったのではたまらぬと思います。政務次官、これはどういうことになりますか、当事者能力の問題ですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/57
-
058・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 私から。これはお説のとおりでございまして、労働組合は労働関係三法の完全な適用を受ける労働組合として存立をする。ただ、そういうことになっているわけです。そこに私はちょっとどうだろうかと思う点もございますけれども、そうなっております。それから育英会のほうは、これは法律でちゃんときまっております。育英会は補助金によって運営されております。補助金は予算の範囲内において補助金を出すと、こうきまっています。ですから、いまの完全な労働組合と申しましても、それは労働組合のほうもこれはしんどい。私のほうもこれはなかなか対等の労使の交渉はできない。でございますから、ワクをかぶった範囲内においていま努力していく、これよりほかないと思うのです。これは私のほうの団体だけではなしに、いまお話のございましたように、政府機関全部そうなんです。これはひとつ国会においても、これはむしろ私のほうの問題というよりも、制度として御検討願うべき問題じゃないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/58
-
059・小林武
○小林武君 わかったのは、あなたもお困りだということだけはわかりました。しかし、労働者もたまらないということは、これはほんとうです。これはたまらないですよ。労働基本権は持っているのだけれども何の役にも立たない。こういう状態で、そしてやっぱり問題なのは、政府機閥のうちでも文部省関係の外郭団体というものは、待遇がいいかというと悪いほうですよ。これはほかの外郭団体に比較すればの話で、特に悪いものもありますわね。たとえば学徒援護会などというものはぼくは特に悪いと思う。しかし、そういう問題について、私はこれはぐあいが悪いから労働者の権利のほうをひとつ何とか文句言わぬようにしてやろうというそのやり方ではなく、やはりあなたのほうが当時者能力を持つようなこれは仕組みに、あなたのおっしゃるとおり、国会の中できめなければならぬことだと思うのだけれども、やっぱりあなたのほうも努力しなければならぬことだと思うのですよ。そうでないというと、比較的じみな、どっちかというと比較的じみで、いろんな面で役人とは言えないだろうけれども、ややそういう役所的な性格の問題ながら、非常に何というか、恵まれない状態に置かれやすい。しかも、仕事はきわめて意義のある仕事をやっているということからいって、これは十分にお互いの考慮しなければならない問題だと思うのです。私は、ひとつ一日も早く当事者能力を持つように、努力を理事者側としてはお持ちになるべきだと思うのでそれからもう一つ、何か今度あなたのほうに労働組合の折衝に当たる係ができたという話ですが、そういう係があるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/59
-
060・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 従来、人事課というのがございませんでしたのを、人事課を設置したということ、その中で労働問題については研究する、それから人事課が窓口になる、労働組合の折衝は。そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/60
-
061・小林武
○小林武君 人事課の中の職員係というのですか、これができてからこういうことを聞いているのですが。第二融合をつくるような動きをこの人事係がやっているというようなことを聞くのです。何かそういうやり方をやって、労働組合側から文句を言われて、はなはだすまんかったというようなことを言った。これはすむとかすまんかったという問題ではない。第二組合をつくるというような、そういう動きが事実あったのですか。ただ単なるうわさですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/61
-
062・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 私はうわさもないと思います。どこからお聞きになったか知りませんけれども、そういう第二組合をつくるという動きは一つもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/62
-
063・小林武
○小林武君 私はそこらに行ってとんでもないうわさを聞いてきたのではないのです。かなり正確なもので、そういう事実があるということになると重大なことですから、これはひとり育英会というようなところにつとめている人たちの問題ではなく、労働瀞の組織を切りくずしてやろうというようなけちな根性、そういう愚劣なやり方を一つの係が仕事としてやるというようなことは、人事対策としてそれが主なる目的であるということは、これは許しておけないということを考えましたので、そのことについては相当調べたのです。しかし、まあここで証拠を出してどうこうするというようなことまでやるほどのことでもないし、いまここでそういうことをあなたとあれする必要もないことですから申し上げませんけれども、かりにもそういうことがないようにひとつしていただきたいと思うのです。ただ、理事長さんがそういうことは絶対ございませんというようなことをおっしゃった確信に満ちた御答弁は、私はさぞやそういうことが起こった場合には、理事長としては断固としてそういうあやまったことをやらせないといういわゆる信念の上に立つ、おっしゃったことだと思いますので、その態度は了とします。そういうことのないように、ひとつ特に要望申し上げておきます。
それから、あれですか、機械とか、その他そういうような問題を入れられて、それらのものが何というのですか、請負制度のような形をとっている部分があるわけですか。これはどういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/63
-
064・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 去年の秋に新しい庁舎をつくりました。その管理のために、清掃の一部、それから電気、空調、これはビル管理として常態でございますけれども、この一部を会社に契約をして委託をした。そのことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/64
-
065・小林武
○小林武君 その問題について、一体いわゆる労働組合側ではどんな態度をとっているわけですか、歓迎しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/65
-
066・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 労働組合としては、そういうビルの管理の業務も管理の職員を持ってやったほうがいいという意見がございました。私はしかし全然これは反対の意見を持っております。現在の近代的なそういう経営の常識からいって、そういう電気の調節とか、空調——空気調整の問題、これは大体そういう専門的な会社がございますから、そのほうに頼んだほうが安全であり、確実にいくと、こういう観点から、私は全面的にほんとはやりたかったのでございますが、労働組合の意見がありましたから、若干両方で話し合いまして、そしていま申しましたように一部残して契約をしたと、こういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/66
-
067・小林武
○小林武君 なお、先ほどのお話の中に、いろいろな計画について労働組合と話し合うべき事柄と話す必要のない事柄があると、こういうお話がございました。いわゆる労働組合との交渉の対象になる問題とならない問題とあるというような、そういうことの御意見がございましたが、私の聞いておるところでは、そういう問題で労働組合側といわゆる理事者側との間には意見の一致しない点があるように聞いておるわけであります。この点につきましては、私はやはり具体的な問題にぶつかって、こうこうこういうことだということにならないとここでなかなか議論できませんけれども、まあそういう点について幾つかは大体知っておりますけれども、ここで時間もあまりかかりますから申し上げませんが、これはやっぱり一方的な見方で、文部省と日教組みたいなものでね、交渉の対象になるとかならぬとか言う議論をしだすと、これは両方に言い分があるのですよ、まあそういう議論もたいへんけっこうだと思いますけれども、私はやはり労働組合として、自分たちの労働の条件にいろいろな影響を及ぼし、作用を及ぼすような問題については、むしろ理事者側は積極的にそれを受けて交渉の対象にし、その交渉をすることによって、かえって能率的に日ごろの運営ができるような態度にするのが近代的経営者のやり方だと私は思うのであります。そういう点についてはひとつ十分両方でお話し合いを願いたい。私は特にこの育英会の仕事が重大でありますから、この点を御要望申し上げる次第であります。どうも、きょうはたいへん長時間にわたりまして御丁寧な御答弁をいただいて、たいへん感謝いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/67
-
068・山下春江
○委員長(山下春江君) 他に御発言がなければ、本、案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104815077X01419650413/68
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。