1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年六月二日(木曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 田中 正巳君
理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君
理事 伊藤よし子君 理事 河野 正君
理事 吉村 吉雄君
伊東 正義君 大坪 保雄君
大橋 武夫君 亀山 孝一君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
西村 英一君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 松山千惠子君
粟山 秀君 淡谷 悠藏君
石橋 政嗣君 大原 亨君
滝井 義高君 辻原 弘市君
八木 一男君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
出席政府委員
厚生政務次官 佐々木義武君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(援護局長) 実本 博次君
委員外の出席者
外務事務官
(アジア局外務
参事官) 吉良 秀通君
専 門 員 安中 忠雄君
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六月一日
委員淡谷悠藏君辞任につき、その補欠として山
本幸一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員山本幸一君辞任につき、その補欠として淡
谷悠藏君が議長の指名で委員に選任された。
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六月一日
下肢障害者に補装具として軽自動車交付に関す
る請願外八件(稲富稜人君紹介)(第五一二七
号)
同外十一件(小平忠君紹介)(第五一二八号)
同外十件(竹谷源太郎君紹介)(第五一二九
号)
同外二十九件(中村時雄君紹介)(第五一三〇
号)
同(西尾末廣君紹介)(第五一三一号)
同外五件(山下榮二君紹介)(第五一三二号)
同外一件(吉田賢一君紹介)(第五一三三号)
同外一件(吉田賢一君紹介)(第五一九五号)
療術の新規開業制度に関する請願(伊藤卯四郎
君紹介)(第五一三四号)
同(大倉三郎君紹介)(第五一三五号)
同(栗山礼行君紹介)(第五二六一号)
栄養士法第五条の二改正に関する請願外一件
(四宮久吉君紹介)(第五一三六号)
同外六件(毛利松平君紹介)(第五一三七号)
同外一件(谷垣專一君紹介)(第五一九七号)
同(纐纈彌三君紹介)(第五一九八号)
同外二件(村山達雄君紹介)(第五一九九号)
同(小山長規君紹介)(第五二一九号)
同外二件(早稻田柳右エ門君紹介)(第五二二
〇号)
同(小金義照君紹介)(第五二六二号)
同(齋藤邦吉君紹介)(第五二六三号)
同(谷川和穗君紹介)(第五二六四号)
同(床次徳二君紹介)(第五二六五号)
同(中曽根康弘君紹介)(第五二六六号)
同外一件(山村新治郎君紹介)(第五二六七
号)
同(小川平二君紹介)(第五二九七号)
同(藏内修治君紹介)(第五二九八号)
環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律
の一部改正に関する請願(佐伯宗義君紹介)
(第五一三八号)
同(原健三郎君紹介)(第五一三九号)
同(砂田重民君紹介)(第五二〇〇号)
同(内藤隆君紹介)(第五二〇一号)
同外三件(南好雄君紹介)(第五二〇二号)
同(鍛冶良作君紹介)(第五二二一号)
同(渡辺栄一君紹介)(第五二二二号)
同(受田新吉君紹介)(第五二二三号)
同(渡海元三郎君紹介)(第五二六八号)
同(森田重次郎君紹介)(第五三〇一号)
戦傷病者等の妻に対する特別給付金の不均衡是
正に関する請願(増田甲子七君紹介)(第五一
四〇号)
戦没者父母の処遇に関する請願(谷垣專一君紹
介)(第五一九六号)
老後の生活保障のため年金制度改革に関する請
願(八田貞義君紹介)(第五二〇三号)
同外二件(湊徹郎君紹介)(第五二三五号)
ソ連長期抑留者の補償に関する請願(保科善四
郎君紹介)(第五二〇四号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(村
山達雄君紹介)(第五二〇五号)
臨時医療保険審議会法案反対に関する請願(大
柴滋夫君紹介)(第五二六九号)
同外五十八件(門司亮君紹介)(第五二七〇
号)
同(淡谷悠藏君紹介)(第五二九六号)
海外長期抑留者の補償に関する請願(湯山勇君
紹介)(第五二七一号)
農業者に対する国民年金の付加年金制度実現に
関する請願(池田清志君紹介)(第五二八二
号)
引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願
(地崎宇三郎君紹介)(第五二九九号)
製菓師法制定に関する請願(床次徳二君紹介)
(第五三〇〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第九五号)
戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法案
(内閣提出第九六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/0
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001・田中正巳
○田中委員長 これより会議を開きます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法案の両案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/1
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002・河野正
○河野(正)委員 ただいま議題となっております戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部改正並びに戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法、これらの法案についてお尋ねを申し上げるわけでございますが、私は、まずもってこの法案の審議に入るに先立ちまして、われわれの立場というものを明らかにしておきたいと思うのでございます。
それは、いま提案をされております援護関係法というものは、御承知のように、毎年毎年の国会で、次々とその処遇の範囲や適用の拡大等の改善が実施されてまいっておるのでございます。そのことは、ことばをかえて申し上げますと、私どもが毎国会ごとにその不備、欠陥というものを指摘してまいったわけでございますが、そういう私どもが指摘してまいりました法の中身におきます法の欠陥、あるいは不備の点をこの際改めていこうというのが、今回の法改正の趣旨でもあるわけでございます。そこで、いま私が指摘いたしましたように、私どもは国会ごとに、これらの援護関係法につきましてはさらによりよい、また前進をした、いい法律をつくっていこう、そうして少しでも遺族、あるいはまた遺族関係者等に御満足をいただいてまいろう、こういう立場で今日まで審議を行なってまいったところでございます。こういった党の立場なり私どもの立場というものを前提として、政府の援護対策に対します基本方針についての腹がまえというものをひとつ承りたいと思うのでございます。
御案内のように、今日、戦後二十数年の歳月をけみしたわけでございますが、にもかかわりませず、いま私が指摘いたしましたように、なおこの援護関係法の中におきましては、対象面においていろいろの制限があったり、あるいは適用上の制約、制限というものがあるということは御承知のとおりでございます。もちろん今日まで、私ども委員会の席上を通じていろいろ要望をし、要求をしてまいりましたが、それらの点が若干取り入れられて改善は行なわれてまいったのでございますし、また、今回の改正におきましても、なるほど一部の改正が行なわれる手はずになっておるのではございますが、しかしながら、戦後二十年の歳月をけみした今日でございますから、したがって、従来私どもが具体的にいろいろ指摘してまいりました諸懸案の問題点というものは、もう毎年毎年改正するというよりも——たとえば給付額の問題等につきましては、物価の変動等もございましょうし、社会情勢、経済情勢も違ってくるわけでございますから、そういう点はさておくとしても、制度上の問題は、戦後二十年をけみした今日でございますから、一挙に解決をすべき段階がきておるのではなかろうか。具体的には後ほどいろいろ御指摘を申し上げて、それらの点については御所見を承りたいと思いますけれども、基本的には、いま申し上げますように、もうこの段階におきましては、一切の諸懸案の問題というものを解決する段階がきておるのではなかろうか、こういうことを私どもは強く考えておるわけでございます。
そこで、いま申し上げますように具体的な諸点につきましては後ほどお尋ねするとして、まず大臣から、援護諸問題に対します基本的な腹づもりと申しますか、方針というものについてひとつ率直な御見解をお聞かせいただきたい、かように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/2
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003・鈴木善幸
○鈴木国務大臣 戦傷病者、戦没者遺族の援護につきましては、いま河野さんからもお話がありましたように、政府といたしましても逐年その改善に努力してまいったところでございます。今回また遺族援護法等を改正いたしますと同時に、準軍属の処遇の改善、遺族範囲の拡大、遺族年金等のベースアップの繰り上げ実施、特別弔慰金の支給範囲の拡大等の措置を講じますと同時に、特別に今回立法措置を講じまして、そして戦傷病者の妻等に対しまして特別給付金を交付をする、こういうような措置も講じようといたしておるのであります。私どもは、今回の改正によりまして長年の懸案事項が解決し、大幅に前進するものである、このように確信をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/3
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004・河野正
○河野(正)委員 いま大臣からお答えを願ったわけですが、私どもも、この戦傷病者あるいは戦没者遺族援護法、あるいはまた、戦傷病者の妻に対する特別給付金の法案というものが、前進した前向きの法案であるということについて否定するものではございません。しかし、ただ、いま一点私どもが承服できないのは、大臣のおことばにありました大幅な改善をされた、こういうことばがあったわけでございますけれども、そういう心がまえでは困るのであって、私どもは前進したことを全面的に否定するのではございませんけれども、しかし、なおそれぞれ軍人軍属——たとえば一例をあげれば、軍人軍属と準軍属との間に格差がある、こういう問題があるわけです。それからなお、適用になっておらぬ範囲の問題等も残っておるわけですから、私は、戦後二十数年をけみしたわけでございますから、そこでそういう一切の問題をこの際一挙に解決をして、この戦争のつめあとについて整理をしてもらう、こういう段階にぼつぼつ到達してまいっておる、こういうふうに私は感じておるのでございますが、そういう私どもの感じ方に対して、大臣が大幅な改善をされたと言うようなことは、これは承服できぬと思う。いろいろな事情のもとに、大幅改善を企図したが、しかしながら、今回はこの程度で終わったということならば、私は将来に期待すべき点があると思うけれども、この段階で大幅な改善をしたと言うような心がまえでは、私どもはこれは納得するわけにはまいりません。特に、いま大臣も御指摘されましたように、なるほど今回の改正によって、たとえば給付金の増額であるとか、あるいは葬祭料の増額であるとか、あるいはまた、一例でございますけれども、旧満州の動員学徒に対しまする障害年金を新しく支給するとか、こういう支給範囲の拡大があるということは、私どもも前進として一応認めます。しかし、それだからといって、大幅な改善をしたということにはならぬと思う。たくさんの諸懸案の問題が残っておるわけです。それと同時に、私どもがこの際御指摘申し上げておかなければならぬと思いまする点は、今日、公共料金をはじめとして、諸物価がどんどん高騰してきた。したがって、そういう物価のつり上がりと申しますか、高騰と申しますか、そういうような経済情勢あるいは社会情勢のもとに、遺族の方々あるいは遺族関係者の方々が、かなり生活上の苦しみというものを体験されておる。そういうことになりますと、私はやはり、今日の経済情勢、社会情勢に対応した改善、充実が当然行なわれなければならぬ。私はそういういまの日本の経済情勢なり社会情勢を背景として考えた場合に、先ほどからしばしば指摘いたしますように、それで大幅な改善をしたと言うようなことでは困るので、私は、今日のこの援護問題につきましては、遺族あるいは遺族関係者の方々の切実な要望にこたえ、そういう方々が満足していただける援護法の根本的改正が当然行なわれるべき段階ではないかということを考えて指摘いたしておるのでございまして、そういう私の考え方に対して、大幅ということばにこだわりますけれども、そういう腹がまえというものが次の改善に非常に大きな影響を与えるという点において私はこだわるわけです。それは、今度の改正はやや前進だったと言う場合と大幅に改善したと言う場合とは、次の改正に及ぼす影響がかなりあると私は思います。そういう意味で私は御指摘を申し上げたのでありますから、したがって大臣としても、いまの大幅という見解は改めていただいて、この程度になって申しわけなかった、そこで次の機会においては、さらに今度は文字どおり大幅な改善を行なうのだ、こういう御見解をぜひお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/4
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005・鈴木善幸
○鈴木国務大臣 私が申し上げた趣旨は、いろいろの懸案事項を今回取り上げまして改善をしよう、こういう点と、もう一つは、特に準軍属に関しましては軍人軍属の、従来十分の五を今回十分の七に引き上げたという点、それから款症程度の傷病に対しまして障害年金を給付するようにした、それから準軍属の範囲を、満州の学徒等をも加えまして拡大をした、こういうぐあいに、準軍属に対しましては、従来から問題になっておりました点を今回の改正によりまして大きく前進をした、私はこういうぐあいに申し上げておるわけでございます。今後におきましても、さらに総動員法等に基づいて戦争当時いろいろ障害を受けた方方等の問題もあるわけでございますが、こういう点につきましては軍人軍属とはまた異なった立場にございまして、一般の戦争の犠牲者等との関係等も十分比較検討しなければならぬデリケートな問題もございますので、そういう問題は今後の課題として私どもは引き続き検討を進めたい、こう思うのでありますけれども、従来から問題になっておりました準軍属に対しますところの処遇につきましては、今回は大きく前進をした、こういう趣旨で申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/5
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006・河野正
○河野(正)委員 部分的にということでございますならば、私どもも了承するにやぶさかでございません。しかし、今回、私どもはもう戦後二十年余の歳月を経たのでございますから、したがって、この援護問題についてはもう根本的に解決してもらいたい、こういう切なる願いがございます。戦争のつめあとというものは、もうこの段階で払拭をするということも当然必要な点であろうと思うのでございます。そういうことで、私どもも、この大幅ということは、援護関係法全般についての大幅改正というものが当然考えられなければならぬ、こういう意味で御指摘を申し上げたわけですから、したがって、大臣としてもそういう腹づもりで、具体的に後ほども申し上げますが、善処を願いたい、こういうふうに考えます。
それから適用範囲の拡大の問題であるとか、あるいはまた、今日まで処理されておらない懸案の問題等もございます。ですから、それらの問題はさておくとして、いま日本の経済清勢、たとえば物価の高騰の問題とか、あるいはいろいろの社会情勢の問題そういう問題を背景として給付金等の問題については改善をはかってもらわなければならぬ、こういうことを実は切に感じてまいっておるのでございます。
そこで、この大幅論議はさておくとして、将来この給付金等の処遇等については、日本の今日の経済情勢なり社会情勢に応じた立場で改善が行なわれるべきである、こういうふうに考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか、率直にひとつお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/6
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007・鈴木善幸
○鈴木国務大臣 従来から、政府といたしましても、恩給等がベースアップをいたしました際におきましては、それに準じて遺族等の公務扶助料の改善等を措置してまいったのでございますが、恩給法の中に、先般の改正によりまして経済情勢に応じたスライド制を取り入れた、こういう面からいたしまして、遺家族の援護法等におきましても、そういう制度を取り入れたらどうか、こういう面もいろいろ検討いたしておるのでありますが、私は、いましばらくこの問題は情勢の推移を見ながら法的な改正をするかどうかということを慎重に検討いたしたいと思うのでありますが、実質的には恩給等のベースアップと均衡を失しないように、これが処遇の改善等につきましては今後とも政府として努力をしてまいりたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/7
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008・河野正
○河野(正)委員 この問題は、問題点が非常に多いので一つにこだわりますとなかなか前進いたしませんので、いずれいまの点については、後ほど具体的の事例を出してお尋ねを申し上げてみたいと考えております。
そこで、基本的態度としては、やはり今日の日本の経済情勢、社会情勢に見合うと申しますか、そういう情勢に対応する形での改善というものをやっていただきたい。このことについては若干大臣からもそういう意味での御見解がございましたから、さらに話を進めてまいりたいと思います。一応政府の遺家族援護対策に対します基本的な腹づもりというものをいまお尋ねしたので、そういう立場に立って、いまから具体的な点について若干質問を重ねてまいりたい、と同時に、私どもの要望というものもつけ加えてまいりたい、こういうふうに考えますので、政府としても誠意ある御見解をお聞かせいただきたいと考えます。
そこでまず、終戦処理の中にはいろいろな問題点があるわけでありますが、その中で最初にお尋ねを申し上げておきたい点は、引き揚げ援護の問題でございます。戦後、今日二十年余を経過いたしたのでございまするが、ところがまだ外地にあってその生死が明らかとされない人々、あるいはまた、望郷の念にかられながら故国に帰ることのできない人々の問題もあるわけでございますが、この問題がいまなお取り残されて未解決の状態にございますることは、私どもほんとうに残念に思うのでございます。なるほど戦後外地から復員いたしましたり、あるいはまた、帰国いたしましたりした人々は六百三十万人に及んでおるといわれておるのでございます。ところが、なるほど六百三十万という方々が復員をしたり帰国をされたりしたのでございますけれども、戦後二十年を経過した今日において、なおかなりの人々が生死不明のままに取り残され、あるいは望郷の念にかられながら故国に帰ることができない、こういう状態に置かれておるのでございます。なるほど、たとえば中国のように実際に国の外交折衝によって解決できぬ、あるいは消息を知ることができぬというような事情がございますことも、私どもは否定するものではございません。しかし、まあそれはそれなりに民間外交によって話を進める、あるいはまた、民間の力によってこの問題の処理を推進するというような方法もあると思います。たとえば中国の墓参の問題等につきましても、私ども五年余り努力をいたしました。そして最終的には、中国紅十字会の好意によってこの墓参の問題が一応実施をされた。これは全く私どもは民間の力でやったというように理解をいたしておるわけですが、そういう手段もあったのでございます。
そこで、終戦処理の中でいろいろな問題もございますが、こういう引き揚げ援護の問題について政府がどのようにお考えになっておるのか、この際ひとつ御見解をお聞かせいただきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/8
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009・実本博次
○実本政府委員 いま河野先生からのお話のまず第一点は、終戦後二十年をこしまして、今日まだ未帰還者としてその生死がわからないという状態になっている人の状況からまず申し上げたいと思いますが、最近の四十一年の四月一日現在におきまして、われわれのほうで未帰還者として把握いたしております方々は全部で五千二百八十七名の数に達しております。その地域別に見てまいりますと、ソ連地区で四百八十五名、これは樺太、千島を含んでおります。それから北鮮地区におきまして百六十六名、それから中共地域におきまして四千二百十二名、それから南方諸地域におきまして四百二十四名という方々が、それぞれの地域で未帰還者としての数に上がっております。こういった方々に対しまして、たとえば過去七年以内に生存しているという資料のあるものがこの中で約二千二百名、また、過去七年以内の生存資料はございませんが、しかし、現地の状況及び諸般の事情を勘案すると、現に生存していると推測できるものがそのほかに約一千名というふうになっておりますが、残りの二千名ばかりにつきましては非常に悲観的な状態である、こういうかっこうでございます。
こういうふうに、それぞれの地域におきまして相当な方々がまだ情報不明のままで、留守家族の方々も非常に困っておられるわけでございますが、この調査究明につきましては、現在国内的には、もちろん帰還者を対象といたしましていろいろ通信調査を続けておりますが、そのほか国外的には、在多公館あるいは赤十字ルートを通じまして、それぞれいま申し上げました地域の相手国に対しまする交渉を進めてまいっておるわけでございます。国交のありますところにつきましては、そういうこちらからの調査究明の依頼につきましてある程度の回答がまいっておりますが、国交がまだ開けておりません地域、特に中共地域につきましては、そういったこちらからの調査依頼に対しまして主として民間ルートでやっておるわけでございますが、いまだに的確な回答がないままで推移してまいっておるわけでございます。特に最近ソ連側からの回答がまいっておりまして、ソ連につきまして申し上げますと、昭和三十年に約一万二千名、それから昭和三十八年に二千九百七十四名の状況不明の未帰還者の消息調査の依頼をしたわけでございますが、これに対しまして前者の回答としては、九百八名の死亡者及び十九カ所の墓地の所在地並びに同墓地の埋葬者三千三百二十九名につきまして、また、後者に対しまして二千七百七十九名の消息につきまして回答があったわけでございますが、現にソ連邦内に生存していることが判明いたしました三十四名及び死亡が確認された者が十三名でございまして、それ以外は依然としてその消息ははっきりした回答がまいっておらぬわけでございます。
なお、その後わがほうの調査によりますと、ソ連邦内の状況不明者の大部分はすでに死亡している公算が大きいわけでございまして、昨年日赤の社長が訪ソした際に百名以上の日本人の死亡者が判明したというソ連側の情報が伝わってまいりましたが、その後昨年の十月、本年に入りまして四月及び五月の三回にわたりましてソ連側の通報がありましたが、そのうち二百八名の死亡者があるというふうに回答がまいっております。このようにソ連との関係におきましての調査依頼につきましては、最近特にその回答が続々まいっております。それに伴いましてわれわれのほうではしかるべく援護措置を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/9
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010・河野正
○河野(正)委員 いま四十一年四月一日現在の未帰還者の実情についての御報告があった。私どもがいただいております厚生白書によりまする資料というものは、この未帰還者の総数というものは六千百四十五名でございます。そこで、この一、二年になろうと思いますが、この間に八百五十八名の方々の整理ができた、こういうことになると思うのです。そこで、そういう八百五十八名の中身がどういう状態であるのか、それをひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/10
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011・実本博次
○実本政府委員 いまの厚生白書の数字の六千百四十五名につきましては四十年の十二月一日現在での数字でございまして、その後、おっしゃいますように八百五十八名につきましては大部分戦時死亡宣告をいたしました。その後、先ほど申し上げましたような情報の回答をもとにいたしまして、そういう死亡宣告その他の処置をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/11
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012・河野正
○河野(正)委員 そこで、戦時死亡宣告ということになりますと、これは遺家族が承認されたということであって、その消息が明らかになったということではないと思うのです。必ずしもそうではないと思うのです。だから、そういう形での整理というのは、私どももちょっと納得できないと思うのです。実際調査を依頼した、その結果死亡いたしました、その結果どうでした、こういうことで八百五十八名が整理されたというなら、私どもも了承するにやぶさかでございません。ところが、戦時死亡宣告だけで八百五十八名整理をしたというような資料では困るので、私どもは、そういうことではあるいは厚生省の指導によってこれは全部なくなってしまう、そういうことになりますと、今後誠意を持ってそういうような未帰還者の整理が行なわれ、また、事情の調査が行なわれるということについて、そういうことでは若干疑問を持たざるを得ぬのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/12
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013・実本博次
○実本政府委員 先ほど申し上げました八百五十八名につきまして、全部戦時死亡宣告で処理したというふうに申し上げましたのは私の言い違いでございまして、そのうちで戦時死亡宣告を行ないましたもの、また、遺族のほうの御希望なりその他のお申し出もお聞きして、そのまま停止になっておるものの数もその中に含まれておるわけでございます。また一方、戦時死亡宣告を行ないましたものにつきましても、なおこれは、どこでいつどういったかっこうでなくなられたかという、その実態の究明は、遺族の御要望も強うございますし、やはり未帰還者調査と同じように、最後までその点を究明していくつもりで調査態勢を進めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/13
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014・河野正
○河野(正)委員 こちらがお尋ねしますと、非常にきれいなことばでお答えになるわけですけれども、私がなぜこういう点をいろいろ追及するかといいますと、今日まで実際の戦死である、戦病死であるというふうな報告を受けておりながら、実際には実態の調査というものは全然行なわれぬのですよ。私の肉身にもおるのです。私と同じ戦地に行って、同じところで頭部貫通銃創で死んだという、戦死の公報が出ておる。それならば一体実態というのはどうだということで厚生省で調べてもらったけれども、わからないのです。現在戦死なら戦死、戦病死なら戦病死という公報をもらっておっても、そういう実態というものが必ずしも克明に調査されておらぬ。ですから、この未帰還者においても、そういう一方的な整理がなされておりはせぬだろうかというふうな心配をするがゆえに、私はそういう点を重ねてお尋ねをしておるわけです。やはりこれは人命の問題ですから、軽々に扱ってもらっては困る。これは自分の肉親のとこを考えてもらえばよくわかる。そう軽々しく扱ってもらっては困る。これが人さまならいいですけれども、ほんとうに自分の肉親ということを考えた場合には、切々たる気持ちがあると思うのです。ところがいまのようなことでは、私どもこの問題を処理してもらっては困るというふうにひとつ御指摘を申し上げておきたいと思います。
そこで、この点は大臣にお尋ねをしたいと思うのでございますが、なるほど未帰還者については、未帰還者留守家族等援護法によります手当が支給され、それが今度若干給付額が上げられておる、それはけっこうですけれども、しかし、遺族の立場からすると、そういう手当の問題ではないわけですね。やはり死んだら死んだ、生きているなら生きている、こういう生死の別というものは、はっきり調査されるということを遺族は期待していると思うのです。そういう手当を上げてもらうことについてはけっこうですけれども、もちろん遺族の立場としては、気持ちとしては、むしろそういう手当よりも、ほんとうに自分のむすこなり、自分のきょうだいなり、自分の親というものがどういう状態であったろうか、そういう真相が明らかにされるこれを私は期待していると思うのです。そういう意味で、私は、やはりこの五千二百八十七名については今後具体的に対策を立てて、その消息というものを明らかにしていただかなければならぬ。そこで、やりますやりますでは困るので、戦後二十年余をたった今日ですから、もうこの段階では、この五千二百八十七名についてはこうやってみたいと思います。というふうな具体的な対策というものを示していただく必要があろう、こういうふうに思うわけでございますが、その点大臣から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/14
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015・鈴木善幸
○鈴木国務大臣 未帰還者の調査、究明につきましては、ただいま河野さんがおっしゃるとおり、留守家族の方々のお気持ちに十分私ども思いをいたしまして、具体的な調査を今後もねばり強く実施をしていかなければいけない、このように考えておるわけであります。国内的には、帰還をされてこられましたところの方々から、未帰還者のその同僚の方の消息を十分お聞きをし、それに基づいてずっとトレースをして、その後におけるところの足取り等を十分把握できますように努力をいたしておるわけでありますが、何ぶんにも戦後二十年もたっておりまする関係から、そういう点が途中でとだえ、的確な足取りを最後まで追及しかねるというような場合が非常に多いわけでございます。また、国外の問題につきましては、国交の回復しておりますところのソ連等につきましては、外交ルートを通じましていろいろ未帰還者名簿を向こうに手交いたしまして、それに基づいて調査を依頼し、またその回答を求める、あるいは回交の回復しておりません中共等に対しましても、あるいは赤十字社の関係、あるいはまたその他のあとう限りの民間等のベースによりましても調査を進めておる、こういうことでありまして、決して政府は、この問題をもう過去の問題としてなおざりにいたしておるということではございません。あらゆる努力を今後も続けたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/15
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016・河野正
○河野(正)委員 ねばり強くあらゆる努力もけっこうですけれども、もう二十年余をたった今日ですから、具体的にこの問題をどうするかという方針というものをお持ち願いたいと思うのです。単に民間や赤十字という問題もありますけれども、これは今日までやってきたのですね。しかし、私どもは今日までやってきましたけれども、なかなか赤十字も他の仕事が多いかどうか知らぬけれども、そう熱意があるというふうには正直言って考えておらぬのです。そういう経緯等もございますから、ひとつこの際は政府の責任において、今後どうするのだという具体的な方策をきちっと確立していただきたい、こういうふうに強く要望申し上げておきたいと思います。
それから、それに関連してお尋ねをしておきたたいと思うのでございますが、これは昨年もそうでしたが、グァム島ならグァム島で日本の旧軍人が出てきたというような話も出てまいりました。これは厚生省からも現地に、もとの伊藤軍曹を派遣して、捜査したというような事例もございます。そういう新聞紙上をにぎわした事例もあるわけでございますが、しかし、先ほど厚生省が示された五千二百八十七名というものが的確な数字であるかどうか、このほかにも、やはりこぼれた数字があるのではなかろうかというふうな感じを私、持っておるわけです。これは後ほど具体的に示しますけれども、そこで、この五千二百八十七名が未帰還者としての最終的な数字であるというふうに御判断になっておるのか、あるいは一応調査その他検討をやったが、この程度だというふうにお考えになっておるのか。これは人命ですから、一つの数字でも軽々に考えてもらっては困るのです。これは生きておれば、とうとい人命ですから。そういう意味で、いまの数字というものが的確な数字であるのか、あるいはいろいろ努力した結果がその程度の数字であると考えておられるのか、その点の事情についてひとつ御見解をお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/16
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017・実本博次
○実本政府委員 若干の未届けがありますが、それにつきましてはいま鋭意調査を続けておりますが、五千二百八十七名というのは、大体われわれのほうでいままで確定いたしました数字といたしまして、この数を中心に仕事を進めてまいっておるわけでございます。若干の未届けの者が含まれておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/17
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018・河野正
○河野(正)委員 そこで、こういう事例、これは特に予算委員会で私もちょっと提起をしておるわけですが、たとえばアメリカの、もと太平洋信託統治の高等弁務官であったホセ・A・ペニテスという人が、太平洋の島々にはグアム島のほかたくさんの生き残りの日本兵がいるということを信ずる、こういう発表をしております。特にパラオ諸島の中のヤップ島には多数の生き残り兵がいるとも言っておるのでございます。これが真偽のほどはわかりませんけれども、少なくともこういうことが新聞で報道されておりますが、これらの報道について外務省でどういう処置をなさっているのか、また、厚生省としてはこういう報道についてどういうふうに御判断なさっているのか、これはそれぞれからひとつ御見解をお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/18
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019・実本博次
○実本政府委員 このグァム島のいま先生のお話というのは、私、二月二十四日の予算委員会でも先生から外務大臣に対しての御質問の際に承ったわけですが、われわれのほうの側では、この問題につきましては、もっぱら外務省のほうからの確定を待ちまして動こうということで、いまの御質問の件につきましては、外務省のはっきりした態度を待ってきめたいと思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/19
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020・吉良秀通
○吉良説明員 ただいま御質問のありました太平洋地域の信託統治領の問題でございますが、所管が違いまして、現在どういうふうになっておりますか私存じませんので、あとで調べまして御報告したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/20
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021・河野正
○河野(正)委員 所管が違うと言うけれども、私どもは、この問題についてこの委員会の質疑の中で明らかにしていきたいということを通告しておるわけですから、そういう答弁では納得できませんよ。それは私ども、全然予告もせぬで唐突として出したのなら、所管が違うからわからぬということであるかもわからぬけれども……。しかもそれは、もう二月の予算委員会においても御指摘を申し上げたわけですから、その後の経過がどうなったかということも実は私は知りたかったわけです。ですから、そういう誠意のないことならこの委員会の審議は続行するわけにはまいりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/21
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022・田中正巳
○田中委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/22
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023・田中正巳
○田中委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/23
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024・河野正
○河野(正)委員 それなら、今度は厚生省のほうにお尋ねしたいのですが、二月の予算委員会で指摘を受けて、これは椎名外務大臣にお尋ねしたわけですから、したがって所管が違おうが違うまいが、これは外務省の最高責任者である大臣にお尋ねしたわけですから、そこで当然、外務省としてもこの新聞報道に対する処置というものをなさっておろうと思うのです。厚生省のほうが、そういう外務省の態度待ちだということなら、その後一体どうなりましたかということぐらいは、当然外務省に御連絡なさらなければならぬと思うのです。ところが、外務省から何も言ってこないから放置しておるというのじゃ、そういう誠意のないことでは審議を続行できませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/24
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025・実本博次
○実本政府委員 私はこの前先生から御質問のあったあと、この話を援護局のほうから外務省のほうにも連絡をしたわけでございますが、これは何もそういう情報は入ってないということで、それでは情報の入り次第連絡をいただきたいということでそのままになっておるわけでございます。このヤップ島のいまのお話につきましては、その当時連絡をいたしまして、先ほど御答弁申し上げましたような意味で向こうの回答を待って処理したい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/25
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026・河野正
○河野(正)委員 この太平洋信託統治における生存者の問題は、情報が入るとか入らぬとかいう問題じゃないわけです。そういう情報が新聞紙上に報道されたということなんですよ。だから、国民、特に遺族関係者というものは、はたして真相というのはどうだろうか、こういうふうに非常に重大な関心を持っていると思うのです。ですから、私は、アメリカの高等弁務官の報道というものの真偽がどうであるかこうであるかということは別として、やはり真偽のほどを明らかにすることが、国民にこたえる、遺族の方々にこたえる道だと思うのです。それを今日まで、そういう情報が正しいか正しくないかは別として、ほっておくという手はないと思うのです。そういう点について、私はどうも政府の誠意というものを疑うわけです。ですから、私は、ここできちっと御答弁願わなければ委員会を続行するわけにはまいりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/26
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027・田中正巳
○田中委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十一時四十二分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X04219660602/27
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