1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月十九日(火曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 天野 公義君
理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君
理事 河本 敏夫君 理事 始関 伊平君
理事 田中 榮一君 理事 板川 正吾君
理事 田中 武夫君 理事 中村 重光君
稻村左近四郎君 内田 常雄君
小笠 公韶君 海部 俊樹君
黒金 泰美君 小宮山重四郎君
佐々木秀世君 田中 六助君
三原 朝雄君 早稻田柳右エ門君
沢田 政治君 麻生 良方君
佐々木良作君
出席政府委員
通商産業政務次
官 進藤 一馬君
通商産業事務官
(大臣官房長) 大慈彌嘉久君
通商産業事務官
(重工業局長) 川出 千速君
委員外の出席者
参 考 人
(日本機械工業
連合会副会長) 橘 弘作君
参 考 人
(日本ねじ工業
協会会長) 遠山 四郎君
参 考 人
(職業訓練大学
校長) 成瀬 政男君
参 考 人
(自動車部品工
業会理事) 信元 安貞君
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四月十六日
委員栗山礼行君辞任につき、その補欠として佐
々木良作君が議長の指名で委員に選任された。
同月十九日
委員佐々木良作君辞任につき、その補欠として
栗山礼行君が議長の指名で委員に選任された。
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四月十六日
官公需についての中小企業者の受注の確保に関
する法律案(内閣提出第一四二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一一八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/0
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001・天野公義
○天野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、機械工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
本日は、本案審査のため、参考人として、日本機械工業連合会副会長橘弘作君、日本ねじ工業協会会長遠山四郎君、職業訓練大学校長成瀬政男君、自動車部品工業会理事信元安貞君、以上四名の方が出席されております。
参考人の皆さまにおかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございました。会議を進める順序といたしまして、最初に、各参考人にそれぞれのお立場から大体十分程度の御意見をお述べいただき、次に、委員のほらから質疑がありますので、これに対しまして、忌揮のないお答えをお願いしたいと存じます。
それでは、まず橘参考人からお願いいたします。橘参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/1
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002・橘弘作
○橘参考人 機械工業振興臨時措置法は、三十一年から今年の六月まで、その間五年ずつ十年の経過を経ておるのでございます。総括的に申し上げまして、第一次の当振興臨時措置法の時代は、日本の機械工業をどうにかもっと力づけたい、育成をしていきたいという観点から、本法律ができたのでございまして、その間におきましては、基礎機械とかあるいは輸出に関する部品等につきましてのいろいろな育成、手当てをいただいたのであります。その後三十六年に内容が、相当に業界等の情勢を加味されまして改正を見て、今年まで五年間、この第二次の臨時措置法が続いておるのでございます。概しまして、第二次の場合は自由化が非常に浸透してまいりまして、御承知のように、現在、機械は九五%ぐらいの自由化率に達しておるのであります。機械業界も、この自由化に対する、一つはショックがどのようにあらわれるか、一つは自由化に対してどのような機械工業が力をつけられつつ、あるいはみずからもつけて対処していくかというような時代でございました。この十年間を通じまして、主として、第一次、第二次の法律のもとにおきましては、やはり機械の合理化に伴う設備の近代化ということに大いに役立ったのでございまして、その間、特定機種機械工業に対しては、政府としても約六百四十億円くらい融資をごあっせん願ったわけでございます。
ところが現在におきましては、資本の自由化もだんだん進んでまいる情勢にあります。かつまた、機械だけではありませんが、開放体制の経済に移行いたしますのに、従来のような育成を主として、ただ機械工業の内容を強化するだけでは済まない時代に追い込まれたのでございます。これは先刻御承知と存じます。したがって今後は、自由化も大かた済みましたので、自由化の根本は、外国から入ってくるものを特に拒むことも特殊のもの以外はできないのでございまして、日本から大いにりっぱな機械類を海外に輸出するというところに今度は大馬力を要請されておるのでございます。
御承知のように、機械は世界的に非常に需要の多いものでございまして、国連の統計によりますと、一九六四年には三百四十五億ドルの機械が工業国から世界の市場に輸出されておるのでございます。そしてそのうち日本の、この世界の機械の需要に対する地位と申しますか、シェアと申しますか、これは年々おかげさまで伸びてきておりますが、六四年におきまして、日本は三百四十五億ドルのうちで五・七のシェアを占めたのでございまして、世界第五位になったのでございます。しかしながら、先進国と申しますか、アメリカ、西独、イギリス、この三カ国で約六四%のシェアを占めておるのでございますから、金額で見まして、三百四十五億ドルのうち約二百二十億ドルがこの三カ国で占められておるのであります。日本は、一九六四年には、五・七のシェアに対して、約二十億ドルの輸出のシェアを世界で占めたのでございます。このように考えまして、今後開放経済体制下におきまして、やはり何といっても内需は消長がありますけれども、輸出はひたすら一本向きにこれを伸ばしていくということが国家のため必要であり、また日本の輸出構造から見ましても、機械の輸出を伸ばすには国の経済成長において非常に大事な中核体をなす産業でございます。このような観点から申し上げまして、第二次の機械工業振興臨時措置法には第一次に見られない国家が機械工業に加えることの施策が多く織り込まれてあるのでございますが、そのうち機械の更新についてはある程度の進みを見ましたが、開放経済体制下におきましてまだまだなすべきことが法律に盛られてあるのでございますが、従来はその一部よりほかに運用されておらないようなかっこうのものがございます。たとえば、今後の生産体制あるいは構造というものを大きく強く変化させていく上において共同行為の点、あるいはまた、さらに日本の機械工業の規模その他から見て合併あるいは共同出資の場合の税法上の特例というようなものの面において、その例はないわけではありませんが、まことに全機械産業から見れば少なき例にとどまっておるのでございまして、これらの法の特典は今後強く実現を期して、そして日本の機械工業を技術的にもまた生産体制的にも強化して、輸出の最も中核となさしめる上において非常な努力が要るものと思うのでございます。したがって、われわれ機械産業といたしましては、今年六月をもって第二次が限時法でありますから切れるのでございますけれども、業界としては、政府に強くさらにこれを延長していただいて、しかもなお技術の開発等を今後は重要なる新しい基本方針として運用できるようになすべきであろうということを主張してまいったのでございます。
大体機械の日本産業における従来の経過並びに今後の重大使命につきまして、与えられました時間で以上だけ申し述べさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/2
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003・天野公義
○天野委員長 次に遠山参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/3
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004・遠山四郎
○遠山参考人 私、日本ねじ工業協会の遠山でございます。
ネジ企業という角度から一言皆さまにお話を申し上げたいと存ずるわけでございます。
はなはだ我田引水でございますが、ネジと申しますとあるいは御理解がどうかと思いますが、機械工業はもちろんのこと、小さいものではテレビ、ラジオ、大きいものでは自動車、さらに航空機、こういうものに単体といたしまして非常に多量に使われているのがわれわれのネジでございます。俗にネジを巻けと申しますが、非常に表面に立たない、いわゆる陰の形にはなっておりまするけれども、その重要性はひとしく御認識を仰ぎたいと存ずるわけでございます。
われわれの業者は、いわゆる日本の歴史的所産でございましょうか中小企業の代表的な業種でございまして、今日現在三千社というような多数の業者によって構成されているのが現状でございます。幸いにいたしまして、問題は多々内蔵しているわけでございますが、ここ数年間におきまして機振法のおかげをもちまして着実な発展を遂げつつございます。
一例を申し上げますと、昭和三十三年度におきましては、ネジの生産量は三百三十億でございましたのが、昨年におきましては倍以上の七百五十億。また、その輸出を見ますると、昭和三十三年度におきましてはわずかに三十六億でございましたものが、今日は四倍強、約五倍に近い百五十億の輸出の実績をかちとることができたわけでございます。これははっきりと申し上げますると、いわゆる中小企業の中におきまして今日まで第二回の実施を見ました機振法によるところが多々あろうと信ずるわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、輸出におきましては、今日では日本の代表輸出産業の一つでございまする時計をはるかにこえるような実績をかちとってはまいりましたのでございますけれども、しかし、いよいよ今後開放経済のきびしい国際競争裏ということを考えてみますると非常に多くの問題を内蔵しているわけでございます。その一例と申しますと、いわゆる耐用年数をこえております機械を五〇%以上をも設備として温存しておる、こういう事実がございます。これは、いわゆるわれわれの生産体制の上におきまして、またコストの面におきまして、非常に新旧機械のアンバランスというこの事実が生産上の大きな障害になっているのでございます。こういうような形のもとにおきまして、今後われわれといたしましては、国内の需要により優秀なネジを供給するばかりでなしに、先ほど実例を申し上げましたとおり、ここ数年非常に伸長度を示しております輸出の面を考えてみますると、先ほど数字を申し上げました八百億に近い輸出の八五%を占めておりますアメリカ市場、このアメリカ市場におきましては、アメリカが諸外国から輸入をしている総数の五〇%を日本が占めているわけでございます。端的に申し上げますると、欧州その他の輸入を断然押えまして日本が五〇%以上のアメリカの輸入量のシェアを保持しているわけでございます。なお、この八五%の日本側の輸出をアメリカの総生産量に比較してみますると、まだそれでもわずかに一・五%にすぎないのでございます。このような洋々たる市場の開拓余地を持っておりまするわれわれのネジ業界といたしましては、国策の線のみならず宿命的な日本の貿易伸長という点をつぶさに考えてみましても、まだまだこの点に、やりよういかんによりましては寄与する点が非常に多いという確信を実は持っておるわけでございます。しかしながら、先ほどもちょっと触れましたとおり、きょう現在におきまする生産上のアンバランスの機械設備の古さ、また、アメリカに輸出をいたしまする上におきましては量産体制という前提条件が一つございます。そういうような設備にいたしましても、中小企業の市中から得られまするいわゆる市中銀行からの融資のみにおきましては、とうていこれをまかなえるような額ということは、実際上は不可能に近いのが現状でございます。どういたしましても、そういう優秀な機械を買い入れます、あるいはまた設備をいたしますには膨大な投資、融資というものが絶対必要でございます。その意味におきまして、われわれといたしましてはかねがね通産当局の方々にも実情を訴えまして、今日非常に順調に伸びつつある輸出の一つの大きい眼目の達成のためにぜひより以上のいろいろな御支援をお願いしたい、かように意見具申をしているわけでございます。しかしながら、われわれ自身といたしましても、先ほども実情をお話しいたしましたとおり、他企業と同様に非常に同一企業の業種が多い、こういう点を特に重要視いたしまして、われわれ自身のみずからの体制の整備という点にもあわせて努力をしつつあるわけでございまするが、それにいたしましても、これは、いろいろ先ほど申し上げましたような実情がございまするので、強力な御援助によりまして初めてわれわれの希望いたします輸出伸長の体制もできまするし、また、国内の業界におきまする体制整備も可能なわけでございます。この意味におきまして、それが達成いたされましたならば、いわゆるわれわれ自身の単体としての輸出、あるいはネジ企業の発展のみならず、それを多く御使用を願いまする機械産業、機械工業界にも非常な大きな御貢献をいたすことができるのではなかろうかと信ずるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、相願わくば御審議にもぜひ御配慮を願いたい、かように考えるわけでございます。
非常に簡単でございますが、一言意見を申し述べさせていただきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/4
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005・天野公義
○天野委員長 次に成瀬参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/5
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006・成瀬政男
○成瀬参考人 ただいまのネジのお話を伺いまして非常に心打たれた次第でありますが、私は多年歯車に関係を持っておりまして、歯車の理論だとかあるいは歯車をつくるというふうなことに関係を持っておるものでございますけれども、このネジがかくのごとき成果をあげておるにかかわらず、歯車はまことに弱いのでございます。なかなかこれは輸出もできておりませんし、のみならず歯車をつくる機械というものが、これはもうたいへんな大きな核になっておると思いますが、アメリカの一つの会社のグリーソン、こういう会社がありまして、これが皆さんのお乗りになります自動車のおすわりになる下に必ず一つずつある歯車でございますが、これをつくるというふうなことがもうグリーソンに独占されております。これが一台二千万円でございます。平均そうだと思います。これが一つの会社で——大きい会社は一千台ぐらい要るかと思います。その自動車がいまかくのごとく道にあふれておる、こういうことでございます。ひるがえって、昨日ユネスコのローズマンさんという方が私のととろをおたずねいただきまして、日本の第一印象を話してくれました。何というすばらしい国であるか。何ですかと言いましたところが、どうも実に皆さんの着物がきれいだ、だれでも着ているものがすばらしいものを着ていらっしゃる、これは世界一であろう、それから交通が悪いということを聞いていたところが、どうしてどうして、すばらしい交通の整備を示しておる、この二つが何とも言えない日本の一番初めのすばらしい印象である。こう申しましたが、私はそれを聞きながら、確かに日本の繊維産業というものは、織ることもよくできております。織る機械もすばらしいと思っております。ところが交通のほうの、たとえば自動車はどうやら世界のトップのところに頭を出していると思いますが、それをつくる機械というものは、いま申しましたようによそからの輸入にまつ、こういうふうな状態でありまして、実はよそからの輸入にまつというふうなことを考えますと、根本の機械、日本の根本の機械は大体外国からちょうだいをしていると考えても差しつかえない。その上に立っているところの日本の工業がかくのごときすばらしい成果をあらわしている、こういうふうに考えたほうが、これはほんとうじゃないか。のみならず私は頭というもの、技術提携というもの、そういうふうなものは通産省からお伺いしますと、テーブルをちょうだいいたしましたが、これを驚くべきたくさんの金でもってわれわれは買っております。今年ののは出ておりますが、昨年のたしか十月か十一月のものまで出ているようでありますが、私はいままで四百五十億くらいだろうと思いましたところが、どうも五百五、六十億くらいの金でもって外国の技術提携を買っておる、そうして日本からは三十六、七億しか出していない、こういうふうなことでありまして、この上に乗っているところの工業が日本のユネスコを驚かしたすばらしい工業、こういうことですから、実はこれは手を放して喜ぶことはできない、こういうふうに私は考えておるのであります。そこで、私は時限立法を三度延長するというふうな法案が出ておりますが、これをお願いしたいと思っておるのが一つであります。
それから今回の改正には、もう一つつけ加えて研究をしよう、試作をしよう、こういうことが織り込まれております。私の申し述べたいことはそこなんであります。これは何とかしてひとつ皆さまの御支援をいただいて、日本から四百五十億か五百五十億出るのをなくする方策をとっていただきたい、こういうことなんであります。そうしますと、このことはひとり通産行政でなくなるわけで、この商工委員会でもって申し上げることはどうかと思っておりますが、どうかひとつ国全体をよくする方々に対して訴える次第でありますが、これは工場オンリーではできません、研究開発とか試作開発は。そこに頭というものが要ります。これは文部省あるいは科学技術庁、こういうふうなところの所管であるかと思っております。
それからもう一つ、私は五十ばかり歯車に関する発明をしました。これがなかなか足をおろさないのです。これは物をつくるという技能といいましょうか、技術じゃありません、物をつくるという技能、つまり工員の持っているわざです。これが日本ではたいへん低調であります。ですからこの技能につきましてとくとお考えをいただく。これは労働省が持っておるものであります。この技能こそは日本はすばらしいものを実は持っておって、五百何十億の技術を導入しておって、技能でもってそれをつくって向こうのほうに売っている、こういう姿が日本の工業の姿であると私は思っておりますから、ここに目をつけまして科学と技術と技能と三者一体になって、今度の法案の試作であるとか研究、ここをお考えいただくと、今度こそはこれは本ものになる、こういう次第であります。
これでもって与えられた時間になりましたから失礼いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/6
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007・天野公義
○天野委員長 次に、信元参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/7
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008・信元安貞
○信元参考人 部品工業会の理事をやっております信元でございます。三人の先輩の方々から十分にお話がございました。部品の立場から見まして機械工業振興臨時措置法がどうして生まれ、何をし、今日何が残っておるかということを簡単に申し上げたいと思います。
機振法が私どもに与えました影響、これは、今日日本の自動車が世界の各国にたくさん出ておるということ、そしてそれが一つの発火点となりまして、われわれ部品にまで海外からの引き合いが現在非常に活発にきておるということ、これによって立証されるのではないかと思います。ただ、なるほどそれは機振法だけではない。ちょうど過去この十年間が発展的に見て自動車の躍進時期であった、それとぴったりと合ったのではないかというお話もあるかもしれませんが、もしそうであったとしても、そうであるならばなおさら、この機振法がちょうどこの自動車の躍進期にぶつかって、その躍進の時期におくれをとらずに十分についていってここまで自動車工業を発展させた、一つの大きな原動力となった、その意味でも時宜を得た非常にいい立法であったと私どもは思っております。
顧みますと、昭和三十一年ごろは自動車部品工業は非常に貧弱なものでございました。そのころ、ちょうどこの機振法ができ上がる前に、通産省重工業局において編成をいたしました実態調査の委員会ができ上がりまして、自動車部品の実態調査を徹底的に行なった経験がございますが、そのときに、まだ日本の自動車というものが非常に揺籃期にあったということ、それからどうしても自動車メーカーさんだけではマスプロの効果が実現ができない。したがって、部品のサイドからできるだけマスプロの効果を高めていく必要があるというようなこと、あるいは非常に脆弱であったために、自動車メーカーさんの資本力からする合理化のテンポと部品工業の持っておる合理化のテンポの間にはかなり大きな開きがある。そうしてこれはこのまま放置をしては、ひいては自動車工業の発展にそむくものである。こういう見地から何がしかのいわゆる部品企業の育成措置が必要であったというふうに思い出すわけでございます。自来、私どもその委員会で主張いたしたことでございますけれども、もし市中金利九分の金が六分で借りられるならば、百の資金は百五十借りられる。そうして同じ負担の金利によって規模の大きな金を借りることができれば、これによって合理化のテンポを幾らかでも早めることができるのではないかというようなことで、機振法の一番大きな成果の一つとして、開銀資金による合理化というものがあげられると思います。そのほか機振法によりまして私どもは規格化を進め、あるいはユニット化を進める、こういう機振法に盛られた措置が、今日新聞紙上でいろいろと報道されておりますように自動車部品企業の業務提携あるいは合併というものにつながって、自動車部品工業の体質改善に大いに役に立っておると思われます。いま申し上げました規格化、ユニット化あるいは開銀資金の投入による生産技術の改善は、当然部品のコスト低下、それから品質の向上というものにつながってまいりまして、今日世界に出しても恥ずかしくないような自動車が生産をされるに至ったものと思っております。
ただ、この十年間というものはどちらかと申しますと私どももかなりカー・メーカーの皆さま方にささえられた、あるいは助けられたということが言えると思います。私どもは部品企業があるいは部品メーカーが、自動車メーカーと対等にならなければいけないというようなことをよく言われます。対等でないために一昨年の末に十二項目のお願い状を出したというようないきさつもございますが、この自動車工業会に対するお願いにいたしましても、もともとは対等な地位に立つに至っておらないからそういうことになるわけでございます。対等の地位ということは決して大きさではございません。私どもが最も必要といたしますことは、その専門技術において自動車メーカーと対等な地位に立つということでございます。したがって私どもは今後なおさらに専門的な分野において生産技術あるいは開発能力を十分につけていく必要がある。そうしてちょうどいままさに世界市場に出ようとしつつある部品企業にとって、もう一つ底力をつけるために開発能力あるいは生産技術の培養に一そうつとめなければならない、こういうふうに私どもは自覚をしております。したがいまして延長されますこれからの機振法についてはそういうことを十分盛り込んでいただいておると信じておりますが、この延長されます機振法は、そういう意味で過去二回の立法に引き続いて私どもにとって非常に有意義なものではないかというふうに存じております。
さらにお願いその他若干ございますが、後ほどにさせていただきたいと思います。
非常に簡単でございますが、一応部品の立場からの説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/8
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009・天野公義
○天野委員長 以上で各参考人からの一応の御意見の聴取は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/9
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010・天野公義
○天野委員長 次に参考人並びに政府当局に対する質疑の申し出がありますのでこれを許します。板川正吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/10
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011・板川正吾
○板川委員 参考人に順次伺いたいと思います。
橘さんに伺いますが、まあ機械が九五%自由化した、こう言われております。しかし自由化されたが、まだ日本の輸出力というものは非常に低い。ですから自由化されたが、まだ競争力は十分でない、こういう結論だろうと思います。この五年間延長してさらに技術の開発等をやった場合に競争力がどういう程度になるだろうか、これをひとつ機械工業全般の立場から伺いたいと思います。
それから次に遠山さんに伺いますが、ネジの関係で日本全国で三千社あるそうであります。これは私どもしろうとから言うと、ネジというのは構造にそんなに変化があるものじゃないし、規格の統一化が非常にしやすい品種だ、こう思うのです。こういうような規格の統一などによって性能を高め能率を高めるということが、どういう程度に進んでおるだろうか、その点をひとつ伺いたいと思います。
それから成瀬先生に伺いますが、成瀬先生は、東北大におりまして、歯車の研究をされ、その理論は、機械の国であるドイツやスイスあるいはアメリカを回ってこられましても、成瀬先生の歯車の理論というものは認められて、そういう意味では、日本のギアの理論というものは、理論的には世界の水準に達しておると思うのです。しかし工業の面で若干立ちおくれがあるんじゃないかという先生のお話もあったように思うのですが、理論が二十年も前にすでに開発されておるのに、日本の歯車工業が外国より劣っておるというのはどういう理由だろうか、どこにその原因があるのだろうかという点であります。
それから今度は、技能開発、試験研究、試作、これを含めて指定機種にいたしております。そういう面で、機械工業振興法が、いままでよりも研究の面に、技術開発の面に力を入れることになると思います。日本のこの機械工業は、一体西欧諸国から見て、ほんとうのところどの程度だろうか、先ほど先生は——それは技術提携の資料で大体十対一、一割くらいしか日本は輸出をしておりません。しかし最近はやや伸びておるのです。この三十九年、四十年伸びてきております。これは一体五年後にどのくらいに技術提携の面で輸出と輸入が割合を占めるだろうか、こういう質問をしておるのですが、通産省でははっきり答弁しておりません。まあ近い将来に少なくとも半々くらいにはいかなければならぬ、こう思うのですが、これらに対する先生の御所見がありましたら、伺っておきたいと思います。
それから信元参考人に伺いますが、部品の引き合いが海外から非常に多くなった。けさの新聞によりますと、ジェトロの米国自動車部品センターというセンターに、アメリカの来訪者が非常に急激にふえておるので、日本の部品をアメリカでつくろう、こういう動きがあるということをきょうの新聞で報道しております。それによると、将来日本にノックダウンでまず進出をしよう、そのノックダウンで進出する場合には、一応日本の部品工業の水準というものを知っておかなければいけないということで、これも一つの理由のようであります。それから日本の部品の品質が非常に高くなってきた。だからいままでは安かろう悪かろうだったんだが、水準が高くなったから、アメリカの高いものよりもある部分については日本のものを使ったほうが安上がりにできる、こういうような理由等で、自動車部品の引き合いが非常にふえておるということも報道しておりますが、率直に言って、自動車部品のいまの水準、しかも五年間これを延長した場合にどの程度の競争力というのですか、それも輸入がたいしてふえなくなったから競争力がついたというよりも、日本の部品の輸出がどの程度木場のアメリカ、西欧等に出るかということにあるだろうと思うのですが、一体五年間のうちに日本の自動車部品の水準というのがどういう程度上がるだろうかということを聞きたいのであります。
それから、機械工業振興法の資金の利子ですが、これは七分五厘ですね。中小企業近代化促進法が七分九厘、これがきまった当時は日本は金利が高い時代でありましたが、いまは低金利時代に入っております。こういうときに中小企業近代化促進法も含めて七分九厘というのは若干割り高な感じがしないでもないと思いますが、これに対する注文なり要望なりありましたら伺っておきたいと思います。これは安いほうがいいことにはきまっておりますが、一体どういう程度の受け取り方をしておるだろうか、その点を伺いたいと思います。
信元さんについて第三点ですが、自動車の日産、プリンスが合併しまして、合併したためにプリンスの下請工場等が三百社のうちに二百三十社もおそらく首を切られてやめざるを得ないんだというような話を聞いておるのです。この間関係者に集まってもらって意見をいろいろ聞きますと、結局部品業界というのは、みずからの技術を持ってカー・メーカーから独立していないと、系列に入りっぱなしですと、将来合併した場合に、おまえのところは要らぬ、あるいは運がよければ大量の注文がふえますが、運が悪ければ大半のところは要らぬ、一カ所に集中注文を発する、こういうことになって、雇用の面においても社会政策の面においても問題がある、だからどうしても部品業界というのはカー・メーカーから技術的に独立をして、そして対等な立場から取引をするという状態を持たないと、将来企業合併等が行なわれた場合に非常に立場を失うんだという話等がございました。先ほどその点に触れられましたが、その後部品業界とカー・メーカーの間の、お願いでなくて対等の話し合いによる生産秩序というものがなくちゃならぬし、生産秩序を持つことは部品業界の技術の独立、こういうことに通じなくちゃいけない、こう思うのです。このような点について、将来の方向なり見通しなりというものについて、もう一度ひとつふえんをしていただきたい。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/11
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012・橘弘作
○橘参考人 ただいま御質問の点で、五年間機振法を延ばしたら、輸出面等を主体としてどのような日本の機械工業の伸展があるかという点につきまして、お答え申し上げたいと思うのでありますが、この五年間延長されるといたしますと、この五年間こそ日本のいままで行ない得なかった諸案件を片づけなければならぬ一つのワクにはめられておる、つまり開放経済体制ということでございますが、今後の五年間こそ日本の機械産業を一番力づける総体的の施策が必要な時期を迎えるであろうということを冒頭に申し上げておきたいと思います。
それで、今後の五年間に、たとえば技術の開発、あるいは企業の体質の脆弱性を是正する、あるいは生産体制の整備のおくれを取り戻すということがさらに行なわれなければ、力がつかないのでございます。技術の開発につきましては、もはや従来のように、日本は技術の導入だけで機械の開発をするという時代は去りつつあるのでございまして、開放体制下におきましては、先進国もそう安易に日本に技術を売るということは、おそらく今後は減っていくことが明らかでございます。よしんばまた技術の導入をいたしましても、大体産業の、あるいは製造工業の低開発国の地域等は許しても、先進国の市場に進出するということは牽制されるというような形になお一そう強くなりますので、技術開発をみずからの力で行なうことでなければ、先進国に対する輸出品の生産というものもあり得ないような状況を迎えるのでございまして、最も大事な技術開発ということがこの期間に行なわれなければならないのでございます。先進国の機械輸出の機種構成を見ますれば、御存じのように、先進国は自動車——乗用車を主体にして自動車とか産業機械、工作機械もこれに含めまして、それから事務機械とかというようなもの、あるいは産業用の電子機器、つまりコンピューター等も含めまして、こういうような機種構成になっておるのですが、日本は現在は船舶とかあるいはラジオとかというもの、通信機械と称しておるものが主体になって、トップになっておりますが、まずこの機種の構成を変えるということが日本として最も大きな力をつけなければならぬことと思うのであります。こういうような機種の構造変化に対しましても、この五年間というものが一番大事な時代だろうと私は思うのであります。これに加えまして、輸出力を一そう強化する意味におきましては、日本の産業の体質の脆弱性を機振法によって直し、また生産体制のおくれもこの期間において取り戻す、つまり企業それ自体が非常に小さな規模でございますのを合併あるいは共同出資等によってこれを直していく。体質の改善のほうは、また日本の機械産業の資本構成というような点の各先進国に比べての非常な見劣り、これも大いに改善をしていかなければならぬ。これも私はこの五年間に残された大きな宿題の一つと思うのでございます。このようにして日本の機械産業の機種構成を輸出という観点あるいは世界の需要という観点から強化し、そしてまた内にあっては生産体制の整備を強力に行ない、そうして企業の体質改善、それから技術の開発というようなものを並行的に行なうことによって、先進国に対する日本の機械の市場を広げるものであるということを私は確信しておるのでございまして、ぜひ五年間で、私はまだ少ないんじゃないかというふうに機械産業全体としては考えておりますが、とりあえず五年間延長されますれば、その期間において、もう産業面においてもあるいは行政面においても、従来の数倍の努力を結集して、将来の機械産業が経済の中核体となるようにやるべき時間である、最も大事なものであって、私はこの五年間にこれだけのことを真剣にやれば、非常な強力な——輸出面においても技術面において日本の機械産業というものは世界の先進国にある程度肩を並べられるというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/12
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013・板川正吾
○板川委員 率直に言いまして、機械工業がその水準が上がったか上がらないかということは、機械工業の総合的な製品である自動車が、世界水準と比較してどの程度の性能を持ち競争力を持つかということに、結果的には尽きるだろうと思うのです、簡単に言えば。一番わかりやすい比較だと思うのですが、鉄鋼の場合なんかは、日本はもう最近製鉄の技術というのは、ドイツもオーストリアもアメリカも飛び越えて、技術的にいえば日本が世界一だという話だそうですね。自動車の技術水準は機械の総合的な結果として、ドイツ、アメリカが一級とすれば、イギリス、フランスにそれが次いでいると思うのです。このイギリス、フランスの級に五年後には大体行くということでしょうか、見当としてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/13
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014・橘弘作
○橘参考人 それには前提がございまして、先ほどたびたび申し上げましたように、生産体制、それから自動車はわりあいに企業の資本構成等もいいほうでございます。ですから要するに、生産体制をいかに思い切ってやるかという点にかかっておるんじゃないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/14
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015・遠山四郎
○遠山参考人 規格統一の件につきましてお答え申し上げます。
実はこの問題は、分けまして二つに大きく考えられると思うのでございます。と申しますことは、世界的に考えてみましてメートルネジあるいはまたインチネジとわれわれは申しておりますが、この統一がまだ残念ながら画然として世界的に一本化しておらないのが実情でございます。また国内的に考えてみますると、われわれのところでは需要家さんの要求に応じてというのが前提でございます。非常に私どもこの点につきましては、業界といたしましても今後の重要課題の一つといたしまして、技術庁あるいは日本規格協会、こういうところを母体にいたしまして、われわれ協会内におきましても、規格統一委員会という特別の委員会を設けまして、目下具体的にこの問題と取り組んでおるわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたとおりに、需要家さんの要求に応ずるという一つの前提条件がございまして、こちらにいかにも規格が多過ぎる。今後新しい製品を生み出しますと、またその製品の規格を追加する、こういうような現状では、とうていマスプロという段階に到達しない。何とかして統一するような考え方をお持ち願いたいということを、口をすっぱくして今日お願いをし続けてまいっております。少しそういう点を御理解をいただきまして、きょう現在では、少しずつではございますけれども、少なくなりつつある、こういうのが現状でございます。私といたしましては、今後この問題につきましては、ユーザーさんの御理解あるいはまた強力な世界的な視野に立ちましての整理と申しますか、ぜひこれを断行いたしまして、マスプロに乗せたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/15
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016・板川正吾
○板川委員 遠山さん、規格の統一は品質をあげたり能率をあげたり重要なことだと思うんですが、ネジの場合にはどういう相手方、ユーザーはどういう機種、業種が多いんですか。やはり自動車が第一ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/16
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017・遠山四郎
○遠山参考人 お答え申し上げます。いまのところ、シェアといたしまして、われわれの分野の中で一番比重を占めておりますのは、まず第一に機械でございます。その次は自動車でございます。三番目に参りますのが軽電機関係でございます。先ほどちょっと申しましたカラーテレビ、ラジオというような軽電機械、こういう順序になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/17
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018・板川正吾
○板川委員 自動車部品のほうでも、さっき信元参考人からそういう話がありましたように、やはりネジ製造業界と機械なり自動車なり軽電機なりのそういうユーザー側の団体とお互いに話し合って、団体規格というものをつくっていく必要があるんじゃないか、われわれは多年そう主張しておるのですが、そういうような努力はしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/18
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019・遠山四郎
○遠山参考人 お答え申し上げます。自動車部品工業会の中にわれわれが加盟しておりまして、その中に特に技術委員会という会が設けてございます。これはユーザーさんとわれわれメーカーとの同一な会合でございまして、この問題を真剣に検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/19
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020・成瀬政男
○成瀬参考人 私、先ほどの御質問に対して私見を申し上げます。
理論は世界の水準にもう二十年前に達しているのではないか、なぜ日本の歯車が立ちおくれているのであるか、この御質問からお答えいたします。
私が歯車の理論を出しましたのは、昭和九年でありますから、いまから三十何年前であります。来る学会も来る学会も私は歯車オンリーでもって講演をいたしておりました。日本の学会はそのときには、また成瀬が歯車をやる、もうこれについてはたいした興味はなかった、こういう状態でありますが、大学というものはありがたいもので、それを英文にして世界の学会に発表できるという一つの特典をもたらしていただいております。私は一つは本を書きました。その序文にも書いてありますが、本を書きましたそのまん中ごろから、急に三十何歳の私が命が惜しくなったのです。この私の論文は、日本では現世においてはだれも使ってくれないでしょう。けれども、きっと死んだ後においては使ってくれるときが来る。だからこれを書き上げよう、それまで命を長らえさせてもらいたいと祈りながら、私は書いた経験がございます。それが日本では別に問題になりません。またやるのか。英文にして世界の学会に出しますと、これは私は知りませんでしたが、ある有名な将軍がドイツのフリードリッヒスハーフェンという世界第一の歯車工場に言いましたところが、私の論文でもってものをつくっておる。こういう事実を私はある朝新聞——どの新聞もどの新聞も全部私の名前が出ておりました。それから私は方々に呼ばれたことがありますが、この事実が、私は一つは日本の工業の立ちおくれをしていると思います。ということは、私が早く出したから、それをどうこうということじゃないのです。さっき言いました私の理論は空にかかっているにじのようなものであります。にじの橋です。これが地面におりるかおりないか、つまり工業になるかならぬか、ここに理論と工業とは違うのであります。これをよく間違います。私は単に歯車の一般的法則というものを出したわけなんです。ところが歯車をつくり得る能力を持っておるフリードリッヒスハーフェンにおきましては、これを使うことができるわけです。その能力がないというところ、あるいはそれを批判する能力が学者にないときには、これは来る年も来る年もまた成瀬が論文を出すのか、こういうことになると思います。ですから、これは日本全体のレベルが高くならなければならぬ。この間、はしなくもこういう大きな厚い本をちょうだいいたしました。これはさっきのフリードリッヒスハーフェンの歯車工業会が、こういうふうなすばらしい会社になりましたよ、これは二世ゾーデン伯爵という伯爵です。非常に丁重な手紙とともに、これはドイツのオール歯車を全部つくっておる。ですから群小の歯車はないのです。ほとんど全部の小歯車はここに集まって、この大きい会社をつくっている。全部の歯車の学者がここに集まっている。そしてすばらしいのがすべてここにおりまして、歯車の一番偉い人がここでもって技師長になれる。重役になれる。日本はどういうことになるかというと、自動車のわきにちょっと歯車がある。工作機械にちょっとある。ここに私は、申し上げていいと思いますが、ある自動車会社が歯車がこわれた、歯車をつくる技術者をつくってくれ。ただし少々素質のいい人をちょうだいと言いますと、困ります、素質のいい人を歯車に入れてしまったら、私のほうは、その人は重役までしなければならぬ。それを歯車にその人を置いてしまったら固定してしまう。この人がなければ歯車ができない、いつまでも課長だけにしておるんだから、これは困ります。ここにも日本の歯車工業界が低調なことがありますから、これはこの法案と別に、もうちょっと大きな次元なんです。どういうことかというと、さっき言いました、ものをつくるのは科学が要りますよ。つまり理論が要ります。それから設計が要ります。そのほかにもう一つ、ものをつくり得る技能というのが要るのです。モデルを持ってきました。皆さんよく御承知の三角形、四角形、四角形をつくってください、立方体、これはだれでも知っておる。ところが正四方形をつくってくれと言ったら、これはなかなかできません。私のところの学生に卒業論文に与えた。これはみごとにつくりました。正多角形をつくれ、これは宝石のように——きのうユネスコの連中が来まして、これは宝石だと言って、お前の学生がこれをつくるのか、こう言っておる。これなんです。これはだれでも知っておる。すっすっすっと書けば、理論じゃすっとわかるのです。理論じゃわかるけれども、これをつくる能力を——これはピラミッドです。どの線を見ても、ぴちっと正しいのです。これは技能といいます。これは理論じゃない。わかり切っていることだけれども、これが日本にない。それですから、正しいものをつくろう、ほんとうに正確な歯をつくろう、成瀬の理論どおりに歯をつくろうといったって、これはできません。その技能者がすばらしいのにどうするかというと、この技能者は一生涯工員として、どこにいるかというと、工場の一番最下層におる。たった一つ重役になる会社がある。これはトヨタ自動車会社です。オールトヨタで私が今度数え上げたら十指に満つる工員が重役になっている。行ってごらんなさい。あなたどうです。運転手まで、いや、私たちの工員は重役になれるんですよと言う。その重役さんはえらいのです。技術者や工員が来て、これはできませんと言ったら、ちょっと来たまえと言って自分でつくって、さあ、こういうふうにしてやりなさい。日本の会社にはこれがない。それがあるのはドイツ、スイスです。私は本をたくさん持ってきました。スイスやドイツへ行きまして、たくさんの書物を書きました。数冊持ってきました。これはみな行くたびに書くんです。それは、日本のそういうことを直接言いませんで、間接に言うんです。こうなっていますよ、こうなっている。これをやらなかったら永久に日本は基礎工業の輸入国です。ですから、今度のはすばらしい。だけれども、ここに目を向けなかったら、五年たっても無理だ、私はこう思います。ここに目を向けたら、五年たたないうちにできます。だから目を向けるのはどこかという方向を、ひとつまっすぐにしていただきたい。技能です。技能が足らないんです。ないんじゃないんです。人間はたっとばれるところにすばらしいものができる。職工をたっとんで、おまえたちはすばらしいものをつくっているのだ、さあ、一番えらい人は重役にするぞと言ったら、トヨタ自動織機ができて、世界の織機の上に位している。こういうことだと思います。
あんまりざっぱくなことですけれども、板川先生、こんなところでいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/20
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021・板川正吾
○板川委員 それから諸外国では、学校で研究しておる教授が技術工場の技師長になったり、技師長であるのが、あるとき専門の担当大学に教える、こういうような交流が非常に多い。だから理論と実際とが結びつく習慣がある。日本にはそれがあまりないで、先生は先生、工場は工場という形にある。そういう点が日本の機械工業をおくらしている原因の一つでもあるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/21
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022・成瀬政男
○成瀬参考人 どうもここへ来まして、私の申し上げたいことを何だか引っぱり出されるようで、まことにありがたくなっちゃうのですが、私の言いたいことは、そこにもう一つ残っておったのです。私は幾つかの会社の顧問をしております。アメリカの教育使節団が来ましたときに、大学の教授は顧問をしてはいけないという派と、顧問をすべきだという派が東北大学で起こりました。そして私が当時二十年若かったものですから、幹事役でアメリカの人たちとこういうディスカッションをした。そのときにアメリカの人は、その質問についてあきれ返って、これは自明の理じゃないか。大学の教授が工場を指導することができなくて、一体工科大学の教授はどうしてごはんをちょうだいしていられるのだ、こんなことを日本がディスカッションすることはあきれ返ったことだ。ごらんなさい。医学部でもって、町でお医者さんが手をあげてしまった患者がおる。どうするか、ここに連れていらっしゃい。全部専門家がメスで腹を割って、こうしてなおすのですよ、これは普通のことじゃないか。よそでもってこれがどうしてもできない。さあ私の大学にいらっしゃい。専門家も全部いらっしゃい。そこでもってプロフェッサーがつくってみせなくて一体工科大学のプロフェッサーは何をしているのだ。歯車は、一台二千万とか三千万というのが二、三十台なければできませんでしょう。国家がどんなに東北大学の工学部にお金をやってもやり切れません。どうするかというと、現場に行くわけです。現場に行ってさあ私がやります——私がやっております歯車ではそうしてやります。私はあっちこっちやりますが、ほんとは——ここは私の友だちのヘル・ウィンターというドクターがやっております。技師長です。これはミュンヘン大学の助教授からいったのです。そしてその、ミュンヘン大学の教授はこの間参りましたニーマンという教授。このニーマンさんは私よりか四、五歳上で、やがて引退します。引退しますとこのドクター・ニーマンがあとにすわることになっています。これをつくった技師長がプロフェッサーです。そこのところへたくさんのドクトラント——ドクトルアルバイトをしたい人が来ます。その交流が日本にないのです。日本は理論をたっとしとするのですから、ちょうどこれは山の上の仙人です。仙人ですからこれはえらいです。けれども下界との交流がないというところにこれは大きなギャップがある。ですから私は言いました。雲のかけ橋でこれはえらいです。えらいけれども、下界との交流がない、こういうところに大きなものがありますから結局この問題は奥は深いです。もしこれを解決していただいたら——それから商工委員会が日本の工業をひとつ背負って立つというふうにお考えいただいて——ぜひひとつお考えをいただけませんか。そうしませんと、これをやらなかったら、永久に中小企業は成り立たないと思います。その材料を箱一ぱい持ってきまして、これを見ろ、これを見ろ、どうだというようなものもありますけれども、時間がありませんし、あまり私一人しゃべってはいけませんから、この辺で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/22
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023・信元安貞
○信元参考人 三つの御質問にお答えをいたします。
御承知のように、また先生おっしゃったように、シカゴに私ども部品センターというものを出しました。これを出すについては、かなりどうなるだろうというような冒険的な気持ちもあったわけでございますが、一応出した結果は、ちょうど日本の自動車が海外で名を上げておるまつ最中であり、それにつけられた部品の品質もかなりよさそうであるというようなことで、シカゴ進出というものが一挙に注目を浴びた一つの動機になっておるということでありまして、これは先生のおっしゃったとおりでございます。ただ、ただいま殺到しておる中には、じっくり調査をして日本の現在の水準を知り、あるいは底力を知って、そして日本の部品を使っていこうという堅実な気持ちを持った方と、それからやはりかなりもうけ主義的な考え方で接触をしておるところがございます。これは部品屋にとって、第三の質問とあわせまして、やはり部品企業自身の自立的な精神というものが非常に肝要かと存じます。
それから五年後に競争力は一体どうであろうかという御質問でございますが、率直に申し上げて、ここ数カ月、あるいは一年来と言ってよいかと思いますが、外国と日本の部品企業の接触を通じまして、われわれが確実な根拠を持って申し上げられることは、もう一息というところだと思います。かなりいいところまで来ておるし、またものによっては十分競争もできるものもございますが、総合的に見て、生産技術あるいは開発能力という面から見て、先ほど申し上げましたように、いま一息というところでございますので、この五年間にもたらされる効果というものはまことに大きいかと存じます。
第二の、開銀の利子が高いと思わないかという御質問ですが、これはどうしても思いたくなるわけでございます。そういう御質問だと、思うといったほうがいいかと存じます。また現実に、当初は六分五厘で出発をいたしましたが、途中で公聴会がございまして、——公聴会は私どもも出て、利子の引き上げということについて意見が問われたわけでございますが、これは結果的に見ますと、上げるための公聴会であったわけで、現在ではたしか返済期限をまつ二つに割って、その平均利息が七分何厘というようなところにあるかと存じます。基幹産業その他重要産業はそのまま、前のままで据え置かれておると思いますが、これはなるほど低いほうがいいわけですけれども、公平に見て、やはり一般市中銀行というものは、たとえていいますると、お天気の日にしかかさをささない、あるいは、雨の日でもかさはさすけれども、ぬらさないでくれというような態度でございます。開銀資金はそういったものとは若干性質が変わると思いますので、率直に申し上げて、たとえば最初の五年間は低利であって、それをこえたものについては幾ぶん金利を上げるとか、返済期限も五年以上という——おまえのほうは返済能力があるから短くていいのじゃないかというのでは、先ほどの、雨の日にはかさをささないというのと同じ理屈になりますので、この点、御質問のような御趣旨が運営上、実現していただけるとたいへんありがたいと思います。
それからNP合併と称しております問題でございますが、これは私どもも一つ思い出すことがございます。これは、機械工業振興臨時措置法が昭和三十一年に発足いたしますときに、これは組みつけ部品メーカーのみを優遇する措置ではないか、補修部品メーカーはほったらかしになるのではないか、こういうような意見がございました。私どもはそれに対して、どのメーカー、どのメーカーということでなくて、自動車部品全体をどうやって伸ばしていくかというときに、やはり根本になるのは、自動車工業をどう伸ばすか、自動車工業の生産販売というものをどう伸ばしていくか、あるいはそれによって日本の保有台数、あるいは海外まで含めた保有台数を飛躍的に増加させて、それによって部品全体が潤えば、どこがどうというようなことは、ほんの近視眼的な、一時の問題ではないかというふうに考え、また主張してまいったものでございますが、ちょうど、こういったNP合併というものにまつわる問題も一時の問題であって、長期的には非常にいいことだろうと存じます。なぜならば、これは私の持論でございますが、自動車工業というものはその性格からいって、多車種多量生産であるべきだというふうに考えております。決して少車種多量とかということでなくて、多車種多量である。したがって、多車種のメーカーが二つ集まれば多車種少量が幾ぶん是正されるということはもう間違いのないことでございます。そういった意味で、長期的にはこれが部品工業にとっても必ずいい結果をもたらすであろう。
それから、話し合いによるところの生産秩序の維持というものが必要ではないかという御質問でございますが、これについては御説のとおりでございまして、私ども、徐々に実力を引き上げるために大いに努力をしておりますが、その間にも、自動車メーカーさんと部品メーカーの話し合いの場というものは、今後もまた必要であると存じます。幸い、この点については、重工業局自動車課でも大いに意を用いておられまして、私ども部品工業会にも政策委員会というものができておりますが、自動車工業会側でもこの政策委員会を重視をされまして、今後もまた話し合いの場は持たれていくものと存じます。
以上、お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/23
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024・板川正吾
○板川委員 信元さん、ひとつ誤解のないように。私は、生産の秩序というよりも、取引の秩序というものに力点を置いたわけです。このカー・メーカーと部品業界の取引の秩序、それは対等独立の上に立ったあり方というものが必要じゃないか、そういうことですから誤解のないようにお願いいたします。
それから、これはどなたでもけっこうなんですが、機械工業の研究投資に対して、アメリカでは四%から一〇%までで、イギリスでは二%から一二%までであり、日本は一%から最近やや上がって一・八%、約二%である。機械工業に対する研究投資というものが日本は非常に少ないのです。そういうところに機械工業がまだまだ立ちおくれている一つの原因があるだろうと思う。しかし、従来は、機械工業の水準を上げるために研究投資をするよりも、外国から技術導入したほうが手っとり早い、こういうことでもあったかと思うのです。だから、結局日本は、研究投資をしないで外国の技術を買って今日ある段階まで達した。だから、技術導入の支払い料等を含めて、これを研究投資としたならば、外国の研究投資の実態とあわせてどういう程度の水準を持っているのだろうか。これはどなたかおわかりになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/24
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025・成瀬政男
○成瀬参考人 こちらにおいでになる方々と私の立場が違いまして、私はまことに低姿勢でもって恐縮しながらこれを申し上げる次第でありますが、工科大学の教師の部分に限りましょう。いま申し上げましたように、まことに実力が足りないものですから、世の中はこれを外国の技術に依存するのだろう、こういうふうに考えるのが私たちの立場じゃないかと思う。ですから、私たちのこの研究力、技術力を高めたならば、そうして成果をあげてみたならば、きっと世の中のほうは私たちのほうに研究の投資をなさってくださるのであろう、こういうふうに思っておる次第であります。さて、そこで、私はしばしば外国へ行きまして、いろいろの人たちと相談をいたし、話を聞きますと、ドイツでは、あの敗戦のさなかにおきまして、売った金の三%を研究投資にしまして、これを国家に一まとめにする、それを大学その他の研究者に分けて研究をする、こういうことなんですが、その研究をする姿が私はなるほどすばらしいと思うのです。さっきちょっと申しましたように、ある会社がこれをつくりたい、すると、この問題を持ってプロフェッサーのところへ行くわけです。そうして国家に差し上げた三%も、おそらくこれでもって研究するのであります。研究をし終えたならば、その人は博士になり得るのです。大学は博士を与えるところの力を持っておる。だれでも一生懸命になって博士になりたいのですから、これは一生涯博士なんですから、そこに何とも言えない人間性を加味したところがあるわけです。そうしてそのプロフェッサーはこの問題に対しては絶対秘密を守る。そういう秘密を守りつつ、プロフェッサーのところに、たくさんのあるものをやって、一緒に研究して、これが世界の水準以上に達したならば、これを持って帰る。同時にそれを研究した人は博士になり得る。こういう人間の名誉欲と言っては失礼だと思いますが、そういうものとタイアップしたところにおもしろみがある。もし今度いたされるようなことがありましたらば、その辺のところも加味していただいて、人間の情愛にマッチしたようなこういうことをやりますと三%は生きてくることになります。それから大学の教師あるいは研究所の人たち、そういう人たちが世の中の期待に沿うことのできるような業績をあげ得る、こういうふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/25
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026・橘弘作
○橘参考人 板川先生の、研究に投入する資本の問題に対して、私は一般機械の立場からお答えを申し上げてみたいと思います。
やはり日本の機械産業の資本構成の貧弱から来るものが相当影響力が大きいのが一つであります。したがって、日本の現在といたしましては、やはり国家の国としての研究に対する投資が、現状においてはもっと積極的に必要ではないかというふうに考えるわけでございます。
もう一つは、民間におきまする研究助長のために何らか金融、税制上の助成策をやはりもっと強化していく必要があるのではないか。今年度も実は機械産業といたしましては研究開発準備金制度というようなものも要望いたしましたが、これは取り上げにならなかったのでございます。かたがた重機械開発のほうには、御承知のように資金面で試作に対する補助政策がありますけれども、これは金額としては非常に少ないのでございます。現状の産業の資本構成その他から見まして研究意欲は非常に大きいのでありますけれども、研究費に回すだけの力というものは非常に貧弱である。この時期におきましては、国家の研究資金というものの多額な裏づけをなさるべきではないか、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/26
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027・信元安貞
○信元参考人 先ほど流通の秩序というようなことで私誤解をいたしましたので、ちょっと補足をいたしますが、流通の秩序ということにつきましては、私の最初のお話でちょっと申し上げました自動車工業界に対する十二項目のお願いということ、これはお願いじゃなく対等の立場にならなければいけないということでございますが、その後もお話し合いをしております。また幸い日本社会党から関係各大臣に出されました自動車産業特別対策委員会の提案にも援護射撃がなされております。今後もこれは十分に続けていく態勢にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/27
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028・板川正吾
○板川委員 機械工業振興法ができて十年間、六百四十億の投資があった。政府はいままで、振興法をつくって振興すると言ったり、法律もありますし、いろいろなことをやっています。しかし大体それは空中から目薬を振りまく程度のことであって、末端にはあまり行かないので、ただ何かのときに政府はこうしておりますということを言い得るための言いわけの材料につくっているようなものが非常に多いのです。しかしその中でこの機械工業振興法は投資も六百四十億という、まあこれでも不十分でしょうが、投資をされて運営されておる比較的効果のある法律であったと思うのです。われわれはこれでもって十分というわけにいきませんが、今後、機械工業の振興ということは日本の工業水準の向上に通ずるわけでありますから、われわれも努力をいたしたいと思います。
私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/28
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029・天野公義
○天野委員長 中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/29
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030・中村重光
○中村(重)委員 いま参考人の方からお話を伺って感じましたことでお尋ねしてみたいと思いますが、板川委員からお話がありましたように、この機械工業振興臨時措置法は業界からも非常に歓迎をされ、比較的によく働いている法律だろう、こう思っております。参考人の方もその点強調された。ところが、期間の延長それ自体が必要であるということはよくわかります。私たちもこれは延長を認めていこうという考え方を実は持っております。伺いたいのは、この内容についてもっと積極的な御意見を聞かしていただきたいものだと思うのです。期間の延長ということだけでよろしいのか、五年、そして一回延長して十年の歴史の法律を持ったわけですが、先ほど信元参考人から板川委員の質問に対して、金利はもっと安いほうが好ましいのだという意見がありました。融資の額の問題にしても、さらにまた金利の問題にいたしましても、その他融資の条件、そういうものが現状のとおりでいいのかという点、あるいはまた昭和三十七年以降今日まで融資が横ばいになっているわけですね。四十年なんかはむしろ減額されている。それは機種が限定をされた点もあるのだろうと思うのです。機種は今度三十九機種を考えているようですが、そういったことでよろしいのかどうか、そうした内容に対しての、皆さん方の十年間の経験の上からいろいろと御意見を伺ってみたい、こう思うわけです。特に指摘をいたしませんから、その点に対してのお答えは各参考人の方から伺っておきたいと思います。
なお、先ほど橘参考人から五年じゃなくてもっと長いほうがよろしい、こういう御意見があったわけです。これは時限立法でなくて恒久立法ということが好ましいとお考えになっていらっしゃいますか、その点もお聞かせ願いたい。
なお、合理化カルテルが認められておりますが、それに基づいてアウトサイダーの規制命令が出されることになっております。しかし実績としてはアウトサイダーの規制命令はあまり出ているということではないようです。これは業界として通産省にアウトサイダーの規制命令を出してもらいたいということを要求されたことはなかったのか。要求はしたけれども、競争力とか、過当競争であるとかなんとかといういろいろな実績、これを出すことについての制約というものがありますから、そういう点から実は規制命令が発動しなかったのではないか、それらの点についてもお聞かせ願いたいと思います。
なお、この合理化カルテルの品種であるとか、その他規格なんかについてのカルテルが行なわれることになっているのでありますが、この成果というものはどういうことであったのか、その点も伺ってみたいと思います。
なお、生産技術基準の公表が実はなされることになっていますが、この点も比較的実績が技術革新が急速に行なわれておる現状において、生産技術基準の公表というのが現実的であるのかどうか、むしろすぐ時代おくれになるというようなことではないのか、それらの点についてのお考え方もひとつお聞かせ願いたいと思います。
それからこれは橘、遠山両参考人からお聞かせ願ってけっこうだと思うのですが、この法律の対象になる機種、それが中小企業近代化促進法であるとかその他の助成法とダブった形においての助成が行なわれているという事実はないのか。
さらに信元参考人に伺ってみたいと思いますが、自動車部品メーカーは、この前特定産業振興法が提案されておりました際、ぜひこの法律案をひとつ通過をさして法の制定をやってもらいたいという強い御要請があった。しかしついに廃案ということになったのでありますが、この特振法というものをつくってもらいたいということは、それは金融であるとか税制であるとかそういう優遇措置というようなものに対する期待もあったでしょうが、やはり部品メーカーというものが専門メーカー化していくということですね。もっと積極的には企業合同、合併というようなものに対する期待というものがあったのではないかと私ども思っておるのでありますけれども、どうもそういうきざしがわりとないということですね。先ほどあなたの御意見の中にございましたように、自動車メーカーと対等の立場、そういう立場に立つということについてはもっとあなたのほうが強くならなければいけない。そういう意味においての体制整備というものは私は積極的に行なわれなければならないと思うのでありますけれども、その点に対するところのお考え方はどうであるかということを伺ってみたいと思います。
なお、橘参考人、それから遠山参考人からも、この法律を五年間延長してもらいたい。いままでなし遂げ得なかったことをこれからなし遂げることになるのだからと、こういうことでありますが、その中に量産体制を進めていかなければならない、構造の高度化が必要であるのだ、こういう点を強調されました。具体的には共同行為であるとかあるいは合併であるとか共同出資というものが必要であるとおっしゃったのでありますが、こういうことは今日までも税制、金融面の優遇措置が行なわれてきた、当然積極的にこれは今日、十年間には推進されなければならなかったにもかかわらず、実績としてはそういうことが、先ほどの橘さんの御意見の中にもございましたように、比較的少ないわけです。これはもっと積極的に推進すべきではなかったのか。それがどうしてなされなかったのか、問題点はどこらにあるのかということを伺ってみたいと思います。
なお、遠山参考人からアメリカに対する輸出の伸びというものをお聞かせいただいたのでありますが、アメリカ以外の輸出市場の状況はどういうことであろうか。しかしアメリカに対しても伸びてはおるけれども、なおかつ一・五%という数字にすぎないが、将来は非常な希望が持てるということでありましたが、まあその希望の達成も簡単ではないが、この一・五%というのを三%あるいは五%と伸ばしていくということについていろいろと政府の施策に期待しなければならない面も多々あるであろう。したがって、それらの点に対しての御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
なお、西欧諸国を押えてアメリカに輸出するシェアに占める比率は五〇%である、こうおっしゃいましたが、西欧諸国を押えておるのは、その競争力というものは、まずその中心は何か。いわゆる技術であるとかあるいは価格の面であるとかという点があるであろうと思うのでありますが、その点はどういうことであろうか。盛りだくさんお尋ねをいたしましたが、お答えによりましては重ねてお尋ねもしたいと思いますが、一応以上の点についてそれぞれひとつお答えを願いたいと思います。
それから時間の関係がありますから続いて成瀬先生に一点お尋ねをしたいと思うのでございますが、今度新たにこの法律に加えられたのが生産技術の試験研究を促進するための機種を選定をする、こういうことがあるわけです。先ほど来研究投資ということが強く強調された。これはひとり通産省関係だけではなく、文部省であるとかその他各省にわたって積極的な研究が進められなければならない、そのとおりだと私も思います。そういう点から生産技術の試験研究を促進するというための機種をここで指定をする、これは私はこの法律では不十分であろう、もっと別な法的措置というものが行なわれなければならないのではなかろうか、こう思います。その点に対する御意見をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/30
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031・橘弘作
○橘参考人 ただいま中村先生からの御質問の中で私がお答えできる点だけを申し上げますが、私は五年間延長してもなお足りないのではないか、もっと長く要るのではないかということを先ほど申し上げましたが、それは機械産業というものは、技術の革新がもういっときとしてやまない宿命といいますか、そういうような業種になっておりまして、一般機械から電子工業に移り、さらにまた宇宙開発の機械の工業にまで飛んでいく、さらにその他日進月歩、機械の分野が広がってまいりますので、実はわれわれ機械業界の連合会をつくっておりますが、連合会では、かつて機械産業基本法をきめていただいて、その基本法によって各必要なものをそのときによってタイミングをはずすことなく誘導してもらうのが本筋でないかということを唱えた時代があるのでございます。しかしながら、それはとても大きな問題でありまして、機振法が第二次の五カ年の延長もできまして、内容も改善されましたので、こういうものを土台にしてやっていこうじゃないか、将来また必要な時期あるいは必要な情勢においては、また延ばしてもらいましてその内容を改善していこうじゃないか、現状はそういうふうになっておるのでありますが、宿命的に考えますと、やはり今度の五年ですべてを解決できるかというと、ある点は解決はできますが、将来またそのときの時点においてまたどのような世界的の動向が現われるかわからないという点を察して申し上げたわけでございます。それから従来生産体制——やはり合併その他の問題が機振法にありながらちっとも進まないじゃないか。業界関係から見まして、私ども必ずしも合併それ自体はいいというわけじゃありませんが、生産体制を改善することによって、合併も一つの方法でございますが、だいぶ業界間で話は出るのでございますけれども、なかなか——大企業のほうは合併は多少時間がかかっても、それぞれ研究者がいてやりますからできるのでありますけれども、中小企業面においてはきわめてむずかしいのでございます。というのは一国一城のあるじになられる、城主になられるまで、みずからの手で切り開いてきた一つの企業の主でございますから、だれとだれが合併するとかあるいはだれとだれは同機種だから、こういうふうにいっておっても、一応関心は示してあるいはそれを理解はするのですけれども、事実合併ということになると実際はなかなかできないのですね。それで私どもは一昨年、合併ができなければ、政府並びに業界で相談して指定する機種について、その機種だけでも生産体制をまとめるために連合法人というものを法律によってつくって、そしてその連合法人というものに、指定された機種をみんなで出し合って、そして税制、金融面で突っかい棒をしてもらって発達さして、輸入防遏並びに輸出増にしたらどうか、これはだいぶ研究したわけでありますが、これもいまだでき上がっておりません。これは中小企業専門部品関係でも非常に興味の持たれた問題でございますが、なかなかできません。それで最近はグループ化というものが始まりまして、あるいは協業化というものが始まりまして、協業化法人とかなんとかいうのはどうだという話が出ておりますけれども、きざしは動いてはおりますけれども、先生の御質問のように、これはほんとうにやってみても遅々として進めないのではなくて、進まない問題の部類じゃなかろうか。しかしこれだけで満足しちゃいかぬということはよく存じております。
それから対象機種はもっとないのか。これは、連合会にはもう各機種別工業会全部集まって始終相談しておるのですが、いまの三十九業種の指定ぐらいで、なお政令によって追加も必要なところには出てまいりますけれども、いま、さして特に法改正にあたって対象機種を著しくふやすというような点もそう多くは見当たらないのでございまして、必要な場合には担当省と相談しながら政令によって加えてもらうという程度で、相当スムーズに進んでおるように考えられます。
大体、私のほうはその点だけちょっとお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/31
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032・遠山四郎
○遠山参考人 特に御指名のございましたものにつきまして、お答え申し上げたいと存じます。
最初に、中小企業の法律と機振法とがダブっておるのではないかという御質問でございますが、私のほうの業界におきましては、これはダブっておらないのが実情でございます。と申しますことは、条件がございまして、五千万円の資本金以上とか従業員数というものの条件がございます。特に三千有余社という数多い中で、五千万円以上の資本金を持っております会社は非常に少数でございまして、数十社にすぎないのでございます。ただ、その生産量から見ますと、全体の三、四〇%を占めているのが実情でございます。したがいまして中小企業の法律によりますものは五、六〇%だけでございまして、あとの三、四〇%と申しますのはこのたびの機振法の恩恵を受けておるというのが実情でございます。
それから先ほどお話し申し上げました輸出の伸びにつきまして、特に欧州市場を制圧してという問題でございますが、これは大きく原因を考えまして、三つあると思います。と申しますことは、技術の点でも一つございます。それから大きくは価格の点でございます。それからあとは受注体制の問題でございます。実は私、六年ほど前にねじ協会を代表いたしまして、団体をもちまして、欧米のネジ市場の視察をいたしたのでございますが、その当時におきましては、残念ながら日本のものはあまり認識を深めておりません。値段につきましても欧州のものが二倍ぐらい日本のものよりも高く輸入されておりましたのが現状でございます。ところが最近に至りまして、機振法のおかげをもちまして日本の生産量の規模が非常に増大してまいりました。御承知のとおり、アメリカの発注単位と申しますのは、日本と比較にならないような、非常に量をまとめての注文の引き合いが多いわけでございます。御承知のとおり、欧州は日本とやや似ておりまして、マスプロの方式というよりも、やや小型な生産体制が大勢でございまして、その点は日本と、五、六年前は同じでございましたが、日本も御承知のとおり今日現在におきましては、おかげさまをもちまして、量産体制を消化し得るという体制ができまして、この三つの条件が、欧州のものに比較いたしまして、有利に展開してまいりました、こういうように考える次第でございます。
それからアメリカの輸出市場は、非常に前途洋洋たる実態を持っているということにつきましてお話し申し上げますが、私らのいま考えておりますことは、アメリカの全生産量の約一〇%ぐらいまでは安心をして伸びるものではあるまいか、そういう段階になりまして、初めて保護貿易とか、あるいはまた対抗策というものがとられるのではあるまいか、かような見通しを持っておるわけでございます。しかしながらその輸出の内容をいろいろ検討してみますと、今日におきましては、いわゆる標準品という表現をわれわれは使っておるのでございますが、どちらかと申しますと、特殊な高級品ということでございませんで、普通、市場に一般に流れておる、こういうような標準のものが輸出の大部分を占めているわけでございます。われわれといたしましては、今後は、そういうものでなしに、より一段技術的に優秀な、高い特殊な技術を要する高級品を主にねらいまして、その一〇%近くまで輸出を持っていきたいというのが一つの方針でございます。ただ、これをいろいろ研究してみますと、やはりそれにはそれなりに非常に優秀な自動的な機械、こういうものが必要なわけでございます。機械ばかりではございませんで、それ相応な非常に高級な工具等を考えてみますと、われわれ中小企業自体だけの資本力、あるいは融資力ではとうてい足元にも及ばぬというような非常に高価な投資額になるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、この機振法によりまして、そういう面を十分活用させていただきたい。そういたしますれば、いま申し上げましたように、アメリカにつきましても十分の進出の余地は残っておる、こういうふうに考えるわけでございます。それから、それ以外の東南アジアの問題につきましては、これはいろいろといま話題の中心になっておるわけでございまして、現にわれわれの仲間の一部は、タイにも進出をいたしましたし、台湾にも進出をしつつございます。ただいかんぜんこれは機械工業全般から見られますとおり、低開発国という一つの特殊な条件が内在をしておりますので、はたして積極的に投資をし、積極的な輸出をもくろみましても、なかなか今日現在では、思うような軌道に乗っておりませんけれども、アメリカのように、年々二〇%、三〇%という伸長は見込めませんけれども、三%から七%ぐらいは輸出の増強は実現しつつあるのが現状でございます。したがいまして、われわれといたしましては、いわゆる東南アジアにつきましても非常な関心を払いつつ、努力最中でございます。
それからもう一つ、量産体制についてのいろいろな政府の施策に対する希望というような御質問と存じますが、これは端的に申しますと、先ほど来実情をお訴えしておりますように、中小企業の力の弱さと申しますか、脆弱性というところに基盤があろうと思います。
実は、本年度も、アメリカでは、米国ファースナー展といういわゆるネジあるいはまたそれに関連をいたしました一連の展覧会を、政府補助のもとにおきまして堂々と半月間にわたりまして日本に発表してPRをしているわけでございます。この実情を私いろいろ伺ってみますると、これは、出品した会社はほんの出張員だけの費用でこと済みまして、あとその他の大々的な費用は全部政府の補助だそうでございます。したがいまして、われわれといたしましても、これだけの輸出力を持っております。また実績を持っておりますることを考えますと、こいねがわくば、微力でございまするので、共同展示場とか、あるいはまた共同資料研究所と申しますか、あるいはまた共同倉庫と申しますか、そういうようなものを有力な輸出市場に政府みずからがお考えを願えますれば、十分われわれはそれに努力を注ぎたい、かように考えるわけでございます。
大体、御指名の御質問は以上だと存じまするが、簡単でございますけれどもお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/32
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033・成瀬政男
○成瀬参考人 簡単にお答えをいたします。
特に私のお名ざしをちょうだいいたしまして、私は生産技術に関する試験研究というこの新法の項目についてどういうふうに考えるかという仰せでありますが、私はたびたび申しておりますように——私にもこういうアンダーラインがしてあるのです。これは、これだけではない、きっとほかのほうにもつとたくさんお考えがあることに違いない、なければここは十分にもっとエクスパンドして考えていただきたい、こういうふうなことを私も考えておるのであります。
たとえば、実際に、また歯車しかできませんから歯車に例をとりますが、ある農業機械のメーカーが参りまして、この歯車は非常にいいと思います、使いたい、けれどもわが社では使った実績がなければ絶対に使わせません、これをどこかで使いましたか、こう申しますと、これはやっぱり学校の研究室しかだれも使ってくれません。そうすると、これはもう使えないのです。こういうのが実情であります。その反対が一つあります。私も関係いたしましたが、ここにさっきのグリーソンがモノポールしているというところがありました。あのうち一つ二つは実は大宮にできておるのです。この一つ二つ……。
〔成瀬参考人、部品を示す〕
なぜできたかというと、これが初めできたときにすぐ使ってくだすった会社があるのです。自動車は新しいのができますと皆さんが幸いにして使ってくださいます。ところがあれは一年のあとが命取りなんです。そのときにもろもろのまずさが出てまいります。機械というのはそういう性質を持っておる。これをお使いくださって実際にやってみますと、一年間くらいの間にいろいろのトラブルが出てくる。すぐにクレームがきますから、それを会社が直すのです。この交流です。この交流がないところに絶対に新しい機械はできないのです。というのは、ここによくわかります。
〔成瀬参考人、部品を示す〕
これは、実はなぜこう飛びついたかというと、普通はこれは四分間かかります。現在のどんなに最優秀のものでもこれをつくるのに四分間。これは四秒です。四秒でできる。これは二つ一緒になりますから二秒でできる。そうすると、二秒と四分とは二、六、百二十分の一の差がある。そうすると、生産技術の一つのタームは時間が短いということです。百二十分の一でできたら、全部これはまいってしまう。そういうものでもこれはだめなんです。何でだというと、使ってくれないから。ということは、工場は危険をおかしたくないのです。あぶないですから。というのは、日本の学者は信用がないですから。こういうところに私は頭を下げなければならぬ。これはお笑いになると思いますけれども。ですからどうするかというと、政府にお願いしたいことがあるのです。試作をしたら、そこにたとえ金をやらなくても、買ってくれた向こうのほうの会社に、おれのほうはひとつ失敗したら何とかしてやるからこれをおまえ使え、そう言ってそれの使ったデータを全部これに与える。そうしてぐるぐるぐるぐる回していきますとこれはできます。これはもうすでにグリーソンよりか上だと私は思います。これは四千万円ぐらいする。これは二千万円ぐらいする。どうです。これはきのう実情を見に私行ってきました。もし皆さんから御質問があるとお答えしなければいかぬと思って。そうしますと、まだこれは実際千分の一ミリ足らない。その千分の一ミリが技能です。これは学問じゃない。人間の腕なんです。ところが日本の技能者はアメリカよりか上ですよ。スイスよりか、ドイツよりか上なんです。ここに、生産技術に関する試験研究はよくやれば必ず成果をあげます。それには使わせることです。使わせるには、工場は危険があります。そこで国民全体からしてそこに応援団が要る。これが第一問の御質問にお答えしたことになるかと思っております。
もう一つ、しばしば出ましたが、少し申し上げますと、これは二秒でできますが、何とかして歯車をつくるのに秒を割りたいと思いました。そうしますと、これが秒を割ったのです。秒を割ってこの歯車ができます。とにかく一秒の何百分の一でできます。しかしこれだってできるだけなんですよ。ところがこれは使ってくれるところがあります。いまこれは回しております。自動車に使います。ですから日本には安いものができる。そしてこれは精度は悪い。この中に合成樹脂が入っている。音がない。音はみんな合成樹脂で吸収してしまう。ハイウエーをこれでもって走る日がきたらば、日本は全部自動車の輸出国ですな。なるべく外国の方は空を仰いでください。地上のものは全部私たち日本がお引き受けする。その上に何があるか。その上にこういうものがある。これは非常に軽いのです。お嬢さんのここにボタンがありました。ボタンの中に合成樹脂がありまして、ボタンがメッキがしてある。合成樹脂にメッキができる。歯車をつくりましてその合成樹脂の歯車にメッキした。非常に軽い。音がない。そしてじょうぶなんです。これが技術革新というものです。技術革新は今後できます。できますけれども、すぐ使ってくれるところがなければならぬから、これをここにおいでになります政府の方々それから国民の代表に、使ってくれるところに有利な法案をつくってくださったならば、日本の学者と日本の技術者と日本の技能者、職工——これを忘れてはいかぬ、日本の職工と一緒になったら、これは大体日本にかなうところはない。船をごらんください。ラジオをごらんください。テレビをごらんください。やがて日本の製品で世界は全部埋まる日がくる。私は初めにだいぶんさびしいことばで申し上げましたが、私は心底は、日本の工業は洋々たるものがある、こういうふうな確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/33
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034・信元安貞
○信元参考人 お答えをいたします。
部品メーカーがカー・メーカーと対等の立場に立たなければいかぬ、それには強くなるのだ、それには体制整備も必要ではないかというようなお話がございました。なるほど体制整備も必要かと思います。ただ、部品メーカーにとって最も大事なことは、強い立場で取引をするために、また生産を合理化をしていくために、一言で言えば自分のものを売ることが肝心だと思います。自分のものを売るということは、一言でたいへん簡単なことでございますが、これが非常に問題だと思います。そして自分のものを売れる体制、これはその専門の分野で人がまねをできない技術水準に達するということでございます。このために新法が働く、またこれからも働くであろうと思います。
それから自分のものを売る体制ができて相手側に私のものを買ってもらう体制、これを促進すること、これが今日までの新法がやってくださったことだ、こういうふうに思います。
それから、なお少し運用面で希望はないかという御質問もあったかと存じますので、若干蛇足にはなるかと思いますが、私どもの新法の改定の前の重工業局で編成されました研究会では、たとえば値下げ競争が非常に激しい、そしてそれとはうらはらにたとえば支払いの条件が悪くなるということがあれば、それに対して何らかの勧告をする、あるいは既存の企業というものを著しく圧迫するようなニューカマーがあった場合にはこれを規制するというようなことまで希望としては出ましたが、もちろんこれは法的な表現から見て入れるべきものではなく、むしろ私どもとしては運用ということもさることながら、こういった問題を自動車工業会との対等のお話し合いで解決をしていくということ、これこそまたもう一つ違った面でわれわれが対等の立場に立つ一つの具体的なあらわれではないかと思います。こういう点についての努力を続けていきたいと存じます。
また中小企業の問題とは別に中堅企業の問題というものが一つあるかと存じます。それはちょうど私どものサイズくらいになりますが、かりに上からの支払いが非常に悪くても、私どもが今度再下請に支払うときにはかなりいい条件で払わないと、再下請というのは立ってまいりません。勢い私どもがむしろ悪いお支払いを受けていいお支払いをするといった意味で、金融的な役割りを果たす——果たしておるということは大げさでございますが、やらざるを得ないというような立場に立たされることがございます。こういった意味で、それの埋め合わせというような観点から、たとえば開銀資金の運用範囲を生産設備に限らず、直接生産に最も関連の深い寮であるとか社宅であるとか——これはなぜ関連が深いかと申し上げますと、現在われわれはもう完全二部制をしいております。日本の現在の交通機関その他の状況から見ますと、完全二交代をするためには、どうしても寮なり社宅の設備というものは直接生産につながってまいります。したがって、そういった融資範囲を広げるとかいうようなことも運用としてやっていただければたいへん幸いだと存じます。
またもう一つ、片方の法律で非常に優遇されたようでありながら、片方の違った法律でその優遇の権利を剥奪されるというような、申し上げていいかどうかわかりませんが、通産と大蔵の立場の差というようなもので、いまの権利が片方で与えられ、片方で剥奪されるというようなこともございますが、そういうことのないような運営をひとつしていただきたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/34
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035・中村重光
○中村(重)委員 中小企業の企業の合併というのはなかなかむずかしいということはよくわかるのですが、乗り切れるものはやはり乗り切っていく必要もある、こう思う。その前段的なことで、共同施設というものは積極的に活用されていかなければならないのじゃなかろうか、こう思うのですが、それについての実績であるとかあるいは計画等があればお聞かせ願いたいと思います。
なお、先ほどお尋ねしましたアウトサイダーの規制命令、それから生産技術基準の公表、これは現実的にあるのかどうか、ここらあたりはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/35
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036・遠山四郎
○遠山参考人 ただいまの共同研究という問題につきまして、ネジ業界といたしまして今日現在実施中でございますので、ちょっと御説明申し上げたいと存じます。
先ほどもいろいろ課題に出てまいりましたが、中小企業の脆弱性から、個々ではとうていなし得ないこういう課題が技術開発の上に出てまいりますので、われわれ業界といたしましては共同技術一開発委員会というのを昨年から発足させまして、三つばかり解決をいたしてございます。ただし、この費用はわれわれ業界から共同拠出という形をとりまして、一部、ほんのわずかでございますが、研究費という名目で政府補助をいただいております。しかしそれの十倍以上のものをわれわれは投下しております。しかもこれは公開性という立場に立ってやっておるわけでございます。端的に申しますと、各社とも重要な技術開発の研究につきましてはとかく秘密主義になりがちなのが、これが偽らざる実情でございます。しかしながらそれでは今後の共同発展という点では負けるというようなキャッチフレーズを掲げまして、われわれの業界といたしましては、すでに一年間の効果といたしましては、三つほどの技術の共同開発を実現に移しまして効果をあらわしておるのが実情でございます。簡単でございますが、お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/36
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037・中村重光
○中村(重)委員 さっきの質問に答えられませんか。アウトサイダーの問題と生産技術の技術基準の公表……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/37
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038・遠山四郎
○遠山参考人 実は私のほうで一番いま苦しんでおりますのが、このアウトサイダーの問題でございます。私は、アウトサイダーに対しまする一応の対策と申しますかそういうものは、ぜひとも政府自身がみずから前向きの姿勢で御処置を願いたい、こうお願いを申し上げる次第でございます。と申しますことは、輸出にいたしましてもあるいはまた国内の需要の調整にいたしましても、一番ガンになっておりますのはこのアウトサイダーでございます。ただいかんせんこのアウトサイダーの実態と申しますものが、われわれネジ業界におきましては、十人前後の従業員というまことに企業とみなし得ないような姿が実情でございまして、よく新聞紙上にも簡単に出ておるかと思いますが、じいちゃん、ばあちゃん、とうちゃんというような、いわゆる片手間仕事の企業のあり方がこのアウトサイダーの実態でございまして、それの調整等をいろいろやっておりますのでございますが、非常に把握に苦しむわけでございます。われわれといたしましては、せっかく輸出体制を価格面でも、あるいはまた共同受注という立場からも、ぜひ強力に進めてまいりたいのでございまするが、そのガンとなっておりまするのがこのアウトサイダーの一群なのでございます。したがいまして、これはどういたしましてもわれわれの業界の話し合いとかあるいは協調とか、こういうような自主的な体制では非常な時間と努力を必要といたしまするので、この際強力に政府の対策というような点でお指図願えれば非常にありがたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/38
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039・中村重光
○中村(重)委員 橘さん、生産技術の基準の公表の問題どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/39
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040・橘弘作
○橘参考人 これは私も詳細のことは存じませんけれども、通産の報告を見ますと、いままでやはり公表されている生産技術基準として、おもに中小企業関係を主体としてやっておられるのですが、生産設備、検査設備に関する設備基準、それから第二は、使用いたします原材料の基準、それから生産方法、検査方法、生産管理に関する作業基準、それから四番目には、生産に従事する者の技術的能力基準等については、従来定められてあるという報告を始終聞いておるのでございますが、その他についてはいまのところまだ広範なこれの運用について存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/40
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041・天野公義
○天野委員長 始関伊平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/41
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042・始関伊平
○始関委員 だんだんおそくなって恐縮ですが、せっかくの機会でございますので、二、三の問題について簡単にお尋ねをしたいと思います。
最初に成瀬さんにお尋ねいたしますが、あなたは、先ほど来の発言を通じて、技能というもの、それから技能者を優遇するということの重要性を非常に強調されました。技能者はそのままでは大学の教授にはなれないでしょうけれども、逆に、大学教授はみずから技能を持つべきであるというお話もあったと思います。それから、技能者が、たとえばトヨタ自動車などでは重役になっておるというような、たいへん興味深いお話を伺ったのでございますが、私も技能者を優遇して希望を持たせるということは非常に大事だと思っております。ただ、重役というのは事業の管理とか、あるいは総合的な企画とか、あるいはさっきお話しになった設計とか、技術とか、こういうのを担当するのが重役だと思うのでございまして、技能者を一般の工員を優遇をするいわゆるシンボルとして重役にする。またその立場で技能の元締めとして技能者を指導したり監督したりするということはよくわかりますが、それだけで重役というものに値するのかどうか。技能者が重役になった場合には、要するにその役割りというものは一体どんなものなのか、またどうあるべきかということについてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/42
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043・成瀬政男
○成瀬参考人 ただいまの御質問にお答えします。
技能というものは、物をつくるということが技能でございますので、ここにごらんをいただきますように、技能というものが技術革新というふうな脚光を浴びてまいりますと、技能の拡大ということが起こってまいります。そして単に腕でもってつくっておってはできない。ここにありますように、あるときは電気でつくり、あるときは爆発でつくり、あるときはネジでつくり、あるときはいろいろなものでつくるというふうなことで、技能が拡散をしております。そしてその技能を通じて科学というものと技術というものが技能の中に入ってまいらないと、その工業は全く低調でございます。そうしますと、技能者といいますけれども、ほんとうの技能者は同時に技術者であります。同時に科学者でなかったら物ができないわけです。ただボタンを押しておって、流れ作業でできるという、それも技能者であります。ところが、流れ作業が一ぺんぴたっととまったときに、それが一体どこをどうやったら直るかというのも技能者であります。それは深い知識と広範な経験がなければできないわけであります。そうしますと、これは技術者にプラス技能なんです。技術者プラス技能でなければ現代の技能はもう生きてはいけないわけです。そうしますと、技術者がなっておるところに技能者がなっていてもいいではないか、こんなふうに私は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/43
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044・始関伊平
○始関委員 いまのお話はよくわかりますが、そうしますと、いわゆるたたき上げの技能者ですね。たくさんおりますね。そういう中から選ばれるのではなくて、やはり相当の学歴なり何なりある者が、技術者と区別のつかないような技能者が重役になる、こういう意味でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/44
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045・成瀬政男
○成瀬参考人 はい。やはり学問をおさめ、技術をおさめ、そうして物をつくる、こういうふうな人でなければ、たとえばごらんのようなあの正立方体ですな。その他のここに持ってきた各種のモデルのようなものはできないことであります。平面の精度、各辺の長さ、各角度の大きさ、このようなものは光学その他の学問を使って測定しなければならないものであります。その測定の技術も知らなければ自分のやった腕がいいかどうかわかりません。そういうふうなことを技能と言っているわけですね。これはそういうふうなものですから、先生と技能のニュアンスがちょっと違っておるかもしれませんが、とにかく私は物をつくり得る能力を技術と言って、その技能を持っている人を技能人、こう言うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/45
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046・始関伊平
○始関委員 成瀬先生は職業訓練所の元締めの訓練大学校長でありますから、一般の技能者の待遇の問題、優遇の問題なんかもお尋ねしたいのですけれども、おそくなっておりますからそれは省略いたしまして、先ほど歯車を例にあげられて、たとえば自動車会社でつくる場合にはつけたりの部門といいますか、その会社としては比較的重要性を置かれにくい部門になる。それではあなたのおっしゃるいい技能者も集まりませんし、技術の革新といいますか進歩はむずかしいのだ、こういうお話でございましたが、これは要するに企業というものがどこまで一貫体制でやり、どこまでを分業でやったほうがいいかということになると思いますが、たとえば時計で言えば、スイスの時計は概して分業体制、精工舎なんかは一貫体制、それぞれ利害得失があって、かりに歯車のようなものは重要なものだから、それだけ独立の企業でやらせろという意見があっても、実情はなかなか簡単にいかないと思いますが、先生の御主張は、たとえば歯車のような重要なものは各工場でつけたり的につくるのではなくて、これを独立の企業としてやって、これのほうに吸収したらいいという御主張ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/46
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047・成瀬政男
○成瀬参考人 私は二つあっていいと思っております。一つは歯車のそれ自身についておるところの歯車の工場、もう一つは全体にわたるところの歯車工場、その全体にわたる歯車工業は、たとえば日本を例にとりますと、いろいろの歯車のタイプがあります。たとえば自動車にしても十数種の歯車をつくりまして、それを大量に流しておる。新しく自動車を設計する人たちは、これらの流れ作業でつくられておる歯車を採用して自分の自動車を設計をしてもいいのではないか。たとえばアメリカでは自分の会社でもって歯車のブランチがございますね。その会社が非常に大きいから、ブランチそれ自身の規模が大きいのであります。ドイツでは二種類ございます。たとえばフォルクスワーゲンその他の大工場では自分のところに歯車のブランチを持っておる。と同時に、ただいま申しましたフリードリッヒスハーフェン歯車工場があります。ここは各種の自動車工場の歯車を全部一まとめにして大量生産しております。たとえば、ミッションギアといって、運転手のすぐわきにあります歯車装置ですが、たしかドイツでは十三種類かと思いましたが、各社の必要なミッションの装置をこの十三種類にまとめて、これをずっと流しまして大量生産をするわけです。大量生産してどこの自動車会社でもお使いください。そうすると設計者は、その十三種類のうちから、おれはAを使おう、Bを使おう、それで車を設計するわけです。こういうふうな二通りあります。膨大なアメリカ的な企業になったならば、歯車工場が会社の中にあっても、大きくなりますから、ここにも優遇すべき人物が出ると思います。ほんの小さいところではなかなかむずかしいと思いますので、中小企業に相当するものを全部集めて、そうして、こういうふうにしますと、そこではえらい人ができる、こういうふうな気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/47
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048・始関伊平
○始関委員 ありがとうございました。
それから橘さんにちょっとお伺いいたしますが、いわゆる多品種少量生産というのが日本の機械工業全般の一番大きな弱点であり、問題点であるといわれておりますが、この法律の運用によって何か品種を整理して、一品種についての比較的大量生産といいますか、そういうことがある程度実現してきたのか、あるいは今後この法律を存続することによってそういう点がうまくいきそうであるのか、あるいはその点について問題があれば、どういう点かということをお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/48
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049・橘弘作
○橘参考人 多品種少量生産の問題は、機械工業の現在も持っておる弱点でございます。この問題は、本来ならば企業人が経済の点から考えてそのような形にまとまるのが一番望ましい姿でございます。ところがこれがなかなかむずかしい点は、いま中村先生の御質問にお答えしたような状態でございまして、やはり主として行政指導と相まってまとめていく、その場合に、機振法によるいろいろな恩典をそこに導入してあげて、喜ばれるような形にまとめていくということになるのが現状だろうと思うのであります。この点は今後の非常に大きな問題でございまして、従来は大体機械の更新とか、それから共同行為ができても品種の調整というような点に主として使われておったのでありまして、今後五年間この機振法がいよいよまた第三次として存続されるようになったら、一番大事な問題としてわれわれも期待するものが、今後のこの五カ年間にあるような状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/49
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050・天野公義
○天野委員長 ほかに御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれをもって終了することといたします。
参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、ありがとうございました。
次会は、明二十日水曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104461X02819660419/50
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