1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月二十二日(金曜日)
午前十一時二十三分開議
出席委員
委員長 木村 武雄君
理事 伊能繁次郎君 理事 岩動 道行君
理事 辻 寛一君 理事 長谷川四郎君
理事 田口 誠治君 理事 山内 広君
臼井 莊一君 加藤 高藏君
纐纈 彌三君 野呂 恭一君
藤尾 正行君 保科善四郎君
堀内 一雄君 茜ケ久保重光君
村山 喜一君 楢崎弥之助君
米内山義一郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 矢倉 一郎君
委員外の出席者
専 門 員 茨木 純一君
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四月二十二日
防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法
律案(内閣提出第三七号)
国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一二六号)(参議院送付)
同月二十一日
国立大学教官の待遇改善に関する請願(赤城宗
徳君紹介)(第三一七九号)
同(加藤常太郎君紹介)(第三一八〇号)
同(坂田道太君紹介)(第三一八一号)
同(長谷川四郎君紹介)(第三一八二号)
同外十七件(長谷川峻君紹介)(第三一八三
号)
同(八木徹雄君紹介)(第三一八四号)
同外四件(橋本龍太郎君紹介)(第三二七一
号)
同(横山利秋君紹介)(第三二七二号)
同(小川平二君紹介)(第三三〇九号)
同(唐澤俊樹君紹介)(第三三一〇号)
同外四件(田中伊三次君紹介)(第三三一一
号)
旧軍人恩給に関する請願(大久保武雄君紹介)
(第三一八五号)
靖国神社の国家護持に関する請願外三件(逢澤
寛君紹介)(第三一八六号)
傷病恩給等の不均衡是正に関する請願(羽田武
嗣郎君紹介)(第三一八七号)
同(保科善四郎君紹介)(第三一八八号)
同(増田甲子七君紹介)(第三一八九号)
同(和爾俊二郎君紹介)(第三二七三号)
同(小川半次君紹介)(第三二七四号)
同(遠藤三郎君紹介)(第三三二〇号)
同(砂原格君紹介)(第三三二一号)
同(田澤吉郎君紹介)(第三三二二号)
同(高瀬傳君紹介)(第三三二三号)
同(中馬辰猪君紹介)(第三三二四号)
引揚者在外私有財産補償促進に関する請願外十
二件(川野芳滿君紹介)(第三二七〇号)
同(堀川恭平君紹介)(第三三一五号)
元南満州鉄道株式会社職員であった公務員等の
恩給等通算に関する請願(受田新吉君紹介)(
第三三一二号)
同外三件(田中龍夫君紹介)(第三三一三号)
同外二件(濱田幸雄君紹介)(第三三一四号)
少年の非行対策に関する請願外五件(春日一幸
君紹介)(第三三一六号)
同外九件(西尾末廣君紹介)(第三三一七号)
同外八件(本島百合子君紹介)(第三三一八
号)
同外一件(吉田賢一君紹介)(第三三一九号)
建国記念日制定に関する請願外八件(小笠公韶
君紹介)(第三三二五号)
建国記念日制定反対に関する請願(山中吾郎君
紹介)(第三三二六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
八〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/0
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001・木村武雄
○木村委員長 これより会議を開きます。
恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。田口君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/1
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002・田口誠治
○田口(誠)委員 先日保留いたしておりました点についてのみ質問を申し上げ、あとで村山委員のほうから質問をしていただくことにいたしたいと思います。
〔委員長退席、辻委員長代理着席〕
そこで、先日保留をいたしておきましたことは、四十八回国会の恩給法の改正のときに、三項目の附帯決議をつけた。これは与野党が完全に一致をして強く要望をする附帯決議であるわけです。したがって、今度の恩給法の改正のときには、それが相当金額的にも具体化されて出てくるのではないかという期待をいたしておりましたけれども、そのことがなくて、非常に遺憾に思っております。そこで、私が保留をしておる一つの問題は、附帯決議の中の第二項に「生活水準の向上、物価の上昇並びに現職公務員の給与に即応して、恩給・年金を引き上げ得るよう措置すること。」こういう附帯決議がなされておるわけです。したがって、このことは、非常に戦後物価の上昇によって生活が困難をきわめておる、したがって、労働者の賃金もいまだに能率給というものがあまり加味されずに、大半が生活給になっておるのだ、こういうことから、公務員給与とそれから恩給のベースとの比較を申し上げて、いろいろと質問をいたしたわけでございますが、局長のほうからきわめて理論的に答弁がなされたわけなんです。ただ、ここで特に確認をいたしたいし、社会党としても問題になっておりますことは、大蔵委員会あるいは社労のほうでも関連をいたしておりますけれども、附帯決議の第二項に基づいてのことを明確にいたしたいということが一つあるわけなんです。それで、政府のほうとしてはその点を取り上げて、文章としては、提案説明の内容を申し上げますれば、「恩給扶助料の年額は、国民の生活水準、国家公務員の給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案し、すみやかに改定の措置を講ずるものとする旨の調整規定を設けようとするものであります。」こういう文章になっておるわけなんです。これはもちろん提案説明の内容でございますけれども……。
そこで、私のほうからは、これはいわゆるスライド制であるのか、こういう質問をいたしましたら、恩給局長のほうからは、公務員の給与との比較の問題については、恩給というものの制度からいって、若干問題があるので、特にいま当局として考えておることは、老齢者、病弱者、あるいは夫を失った人に対する扶助料、こういう問題に重点を置いて引き上げていきたいという答弁があったわけであります。したがって、そのことについては、私どももまことにその考え方は妥当であると思いましたけれども、しかし、その考え方からいきますれば、当然、現行の生活保護基準と傷病恩給との比較をいたしてみますと、傷病恩給のほうが、非常に低い待遇を受けておるので、考えておられること、また、答弁されることと実際とに相違があるから、この辺の解消もしてもらいたいということを申し上げたわけであります。
結論的にきょうお聞きをいたしたいと思いますが、あまり歯に衣を着せないように答弁をしていただきたいと思います。それと申しますのは、大体附帯決議に基づいてこの法律案を出していただいたときには、いわゆるスライド制に関連のあるこの文章は、相当大蔵省のほうにも抵抗があったようでございます。したがって、このことをきめることは、次に大蔵省との折衝が有利にいくということは、私どもも考えておるし、そうして総理府のほうでもそういう配慮と期待を持っておられると思うのです。したがって、今度の改正の提案説明に書いてある文章の内容は、いわゆるスライド制のワンステップというような考え方の上に立って、この法案の改正を行なうのか、また、提案説明に羅列してある文句が書かれておるのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/2
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003・矢倉一郎
○矢倉政府委員 先生の御質問に対しまして、前回いろいろ本調整規定の内容につきまして御説明申し上げたわけでございますが、先生いま御指摘のいわゆるスライド制のワンステップということばがあったわけでございますが、本規定の内容として考えておりますのは、しばしば申し上げますように、調整規定ということばで表現いたしておりますように、実は国民の生活水準、あるいは物価、公務員の給与、こういった諸事情が恩給に与える影響というものをわれわれはいろいろ勘案をすることの必要が、つまり恩給の額を実質価値として見直しますときに、いろいろな条件が直接的に勘案さるべき問題として出てまいります。そこで、この規定の考え方としては、これらの諸事情を総合勘案ということばで呼びましたように、そういった諸事情の勘案による具体的なあり方というものを、この調整規定に求めていこうといたしたわけでございます。したがって、公務員給与が上がればそれが直ちに結びつくという考え方は、この規定の中からは得られないであろうということを前回にも申し上げたわけでございます。したがって、この調整規定は、いわゆる厚生年金法の規定にその一つのよりどころを求めておりますので、その運用のしかたも、したがって厚生年金のそれとあまりに懸隔があるということも、この運用のしかたとしてはいかがであろうか、かようなことを考えるわけでございます。したがって、この内容の具現化につきましては、確かに恩給受給者に直接的に強い影響を与えますし、またそれなりにこの規定の運用のしかたに対する期待も大きかろうと存ずるわけでございます。したがって、これらの運用のしかたというものを、政府側としても十分にその内容に即するような運用のしかたをしてまいるということが必要だと考えます。それだけに、これまでいわゆるそういう調整をいたしますときの基準になる規定がなかったことからいたしますと、この規定の設置ということは非常な意味を持ってくると考えるわけでございます。したがって、昨年の内閣委員会の附帯決議の中身にもこれは沿った内容になっているのではなかろうか、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/3
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004・田口誠治
○田口(誠)委員 どうもぴったりきませんが、そこで、まあスライド制という表現は使わなくとも、これは調整規定という表現でも、私はそのことにこだわりはいたしませんけれども、しかし、国民生活の水準云々ということについては、これは現に規定された線に沿ってそれぞれ政治の上において行なっていくということは当然のことだから、この一項は当然入ると思うのです。ところが、国家公務員の給与の引き上げ、また物価その他の諸事情の総合判断ということは、これは当然総合判断をされてもいいと思う。判断をされてもいいと思うが、ただこの文章だけでほんとうによりどころが明確でないというのは、それでは物価が何%以上上がったときには恩給のベースの引き上げを行なうんだとか、あるいは公務員の給与は、人事院規則で五%ということははっきりしておりますので、公務員の給与も改定された、そうして物価も何%上がった、こういうときには、そうした総合的な判断に立って改正案を出すんだ。すなわち改正案というのは、ベースの引き上げの改正案を出すんだ、こういうことなら、まあまあわかるわけなんです。わかるんだが、全然そのよりどころが明確でないから、気休めになるのじゃないかと思われまするし、そうして先日大出委員が新聞記事を引用して関連質問しておりましたように、閣議で決定されたというように新聞にでかでかと出ておりましたし、そうしてこういう法律案が通ったということになりますると、どうしても議員等が慰霊祭等へ行って弔辞をやる場合には、やはり立場をアピールしたいという気持ちが動くものだから、もうこれでスライド制をとりましたとか、なりましたとかいうようなことを、もうやっておるのだから、そうなりますると、遺族の方々にうそを言うということになる。だますことになるんだから、私は、少なくとも曲がりなりにも政治家がそうした遺族に対してうそを言ったり、だまかしたりすることのないようにするには、もうちょっとこの内容を明確にしてもらっておけばいいのではないか。そうでないと、せっかく四十八回国会でつけた附帯決議を生かしてもらうこの法律案が、どうもすっきりしないということになります。そこまで答弁を求めるということは、無理なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/4
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005・矢倉一郎
○矢倉政府委員 確かに先生御指摘のように、国家公務員の給与については、五%以上改善を要するときというふうな一つの明確なパーセンテージをあげておりますので、この調整規定を設けますときに、実は私たちは事務的にもいろいろな論議をかわしまして、こういった調整規定を設けるときに、公務員給与の改善勧告の一つの基準を与えられているああいう問題の取り上げ方がいかがであろうかという考え方の討議もいたしましたわけでございますが、片方先生も御承知のように、いわゆる労災法では、二〇%賃金の上げ下げのある場合に改定措置を考えるような規定がございまして、旧来の規定の先例によりますと、いま申し上げましたような五%なり二〇%というふうな点が出ておるわけでございます。実はこの恩給の関係を考えますときに、そういった規定のしかたをすることが一体いかがであろうかということで、実はむしろこの規定のよりどころをいわゆる厚生年金法のそれによるという考え方を立てまして、その立て方をしてまいりますと、必然的に国民の生活水準、物価というふうな、これらの事情が出てまいるわけでございますが、恩給そのものは御承知のように退職公務員の問題でございますので、したがって、現職公務員の給与というものも必然的に課題になるであろうから国家公務員の給与というもう一つの条件をこの恩給の特質に沿うように入れてまいりましたわけでございまして、したがって、この規定の運用のしかたは、やや厚生年金のそれに近いような考え方になろうかと思いますが、ただ恩給そのものの与える影響の重要さということを考えますところから、私たちは、それらの内容についてもいかに普遍化していくかということは、実は、かような規定の運用のしかたそのもののあり方が、一つの私たちなりの政治的な配慮あるいは事務的な配慮、そういう諸般の条件があろうかと思いますが、一方、公正な審議会等によるこれらの運用のしかたのあり方というものを解くことが一つの考え方でもあろうと存じますので、そこでこれの普遍化については、さらに新たに設けられる審議会等においても十分御検討わずらわしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/5
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006・田口誠治
○田口(誠)委員 いま答弁のありました労災の二〇%、そのとおりでございますが、御存じのとおり、保険数理というのは、厚生年金等でも五年目、五年目にたなおろしをして、そして給付金をどれだけ引き上げるか、あるいは掛け金をどれだけ引き上げるかというようなことをやるのであって、公務員の給与の五%ということと、それから五年目、五年目にやる保険制度のたなおろしと、四、五、二十というようなところでいきますと、大体こういうようなものは一貫されておるわけなんです。ぼくらは、現在の現行の基準というものは不満ですけれども、一貫されておるわけです。したがって、私は、せっかく今度お出しになったこのものを、大体厚生年金の線に沿っていくとかどうということになりますと、これはそれを拡大して引用いたしますと、国家公務員の賃金の引き上げ等というものも考慮に入れなければならないということに、これは数字的にもなるわけなので、こういうような点から、私の申し上げておることも何も無理なことじゃございませんし、この点をやはり明確にいたしたいし、また、共済年金等との関連もあるので、現在、社会党の大蔵委員会のほうでは、いま現在では申し入ればしておりませんけれども、おそらくきょうじゅうに内閣委員長にお申し入れがあろうと思いますが、連合審査というような形で行ないたいということも言っておりますので、ポイントはそこにあるわけなんです。だから、先日来、局長のほうからの答弁は、私はきわめて親切に理を説いて答弁はいただいておりますけれども、重要なところの確認が私どもができないということと、このぼやけたものが確実に次のときにははっきりしたことで出てくるということならばいいですけれども、そうでなしにこのまましておくということになりますと、いやしくも国会議員が、遺族の前に立ってうそぶいたことを弔辞の中に入れなければならない、現在も入れておるというような現実を考えたときに、もう少し明確にしてもらう必要があろうと思いますので、どうしてもこれ以上の答弁ができぬということならば、何回繰り返しておってもいけませんが、ポイントがそこにあるのですから、その点をもう一度答弁をしていただき、こういう大切な内容のものですから、これは大臣お聞きになっておそらくお考えだろうと思いますが、閣議決定が発表され、それからは慰霊祭に対する遺族の前での弔辞の中では、堂々とスライド制をとりました、こういうような弔辞さえも言っておるんだから、私は、この段階でこういう問題をあまりにも一あとであれはうそだったとか、全く根も葉もないことを言ったんだというような、そういうことを政治家が言われるようなことがあってはいけないから、この際明確にしておきたいと思うので、きょう私の申し上げたことができないということなら、私は質問を村山君にこれから譲ってやってもらいます。そういうものですから、考え方の誠意あるところをひとつ大臣のほうから答弁をいただいて、私の質問は村山君に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/6
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007・安井謙
○安井国務大臣 田口君の御質問の御趣旨はごもっともだと思うのでありまして、この調整規定を入れましたのは、お話しのとおり、前国会での附帯決議があって、こういうふうな形で入れろという御決議もありましたので、今度の予算編成の際、それをそのまま入れたというふうな趣旨でございます。しかし、入れた限りは、機械的にスライドしていく性質のもの、あるいは何%を標準にしてといったような取りきめがしてあるはずのものであろうという御質問に対しましては、いま局長からも再三お答えいたしましたように、従来、恩給につきましても、たびたび全体の物価の変動あるいは公務員の給与の変動があって、それが相当大きな開きを見せてきたという場合には、従来もこれは改定をいたしてきたわけでございますが、それをいわば訓示規定のようにして、今後は十分に法律にも盛ってやらなければいかぬという精神をここで明らかにしようというのが、今度出しております趣旨でございます。そのために、内容的には、幾ら幾らまでならばどうするのだということまで、心づもりをこの際まだきめておるわけではございません。しかし、精神として、今後そういう変動があった場合には改定をしなければいかぬので、こういう精神を法律の上にも明確にいたし、従来適当にやっておったことをもう少し明確に進めたいというのが、私どもの気持ちでございます。なお、ではこれはどういう具体的な方法でやるのだということになりますと、はっきり申しまして、その方法はいま政府自身が持っておるわけではございません。そういう精神で今後運営をしていこうということであります。したがって、今度できます恩給審議会等におきましても、当然この問題は審議されることであろうと思います。私どもどちらかといえば、そういった審議を待ちまして、それにより明確な規定をつけようというふうに考えておるというのが、偽らざる事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/7
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008・田口誠治
○田口(誠)委員 それでは要望を申し上げて、私の質問を終わります。
先日、自民党の岩動先生もこの点を明確にしようとして質問をされたわけです。私もやったわけです。いずれにいたしましても、四十八回国会で附帯決議をつけたときには、いままで私が質問を申し上げた内容のことをふえんしていただくことを強い要望としての附帯決議でございますので、審議会等で審議してもらうときには、国会の審議の過程で与野党ともにこうした強い要望があったということを、総理府のほうからひとっことばを入れていただくことを要望して、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/8
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009・安井謙
○安井国務大臣 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/9
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010・辻寛一
○辻委員長代理 村山喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/10
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011・村山喜一
○村山(喜)委員 せっかく大臣も見えておりますから、大体一時間程度御質問申し上げたいと思います。
今回恩給法の改正案が提案をされておるわけでありますが、内容をお聞きいたしまして、若干の進歩を見たものである、私たちはそういうふうに見るのでございます。しかしながら、いまも田口君のほうから質問がなされましたように、いわゆる調整規定の今後の運用の問題、これがやはり問題になろうかと思うのでございますが、先ほど長官から説明を承りますと、今後できる恩給審議会で、この前局長のほうからは十名程度の学識経験者でやるんだということですから、これは今後おつくりになるのですか。現在の審議会との関係はどういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/11
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012・矢倉一郎
○矢倉政府委員 今回設置しようとしております審議会は、御承知のように、総理府設置法が三月末で通過いたしまして、それに基づく政令が公布になりまして、現在それに伴う委嘱する委員の人選中でございます。したがって、先生御指摘のいまの審議会というおことばは、おそらく恩給審査会という私のほうで設けておりますもう一つの機関のことかと存じます。この恩給審査会は、御承知かと存じますが、異議の申し立てあるいは訴願の提起のありました分についての審査をする機関でございます。したがって、今回設けられますこの審議会は、むしろ恩給法のいろいろな基本的な課題、あるいは当面している問題の審議をお願いするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/12
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013・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしまするならば、恩給法が今日改正をされて、それに国家公務員の長期給付の共済組合、あるいは地方公務員あるいは三公社関係のそういうような共済組合制度との関運が、恩給法の改正に伴って改正をされるという仕組みになっているわけであります。ところが、これからも質問をしてまいりますけれども、恩給法上の取り扱いと共済組合の取り扱いとの差というものもあるわけです。そこで、いま日本の恩給制度、共済制度というものが、いろいろな力関係によりまして非常にゆがめられたり、あるいは正しい姿ではないと思われるものがこの中に入り乱れているように私は見受けるのでございますが、そういうふうな意味における交通整理、これの役割り、いわゆる調整の任務を果たす機関というのは、この恩給審議会に委任をされて、そこでおやりになるつもりなのか、それとも内閣の総理府長官がそういうようなものを調整をされる、内閣のプロパーの機関として、機能としてそれをやられるつもりなのか。その共済制度は、それは大蔵省関係にある、あるいは自治省関係にあるということになりますると、非常に各省庁にまたがっておるわけです。これについては、私は、それぞれの根拠というものはあるにいたしましても、やはり今日の段階においてそういうような調整をやらなければならない時期にきているのではないかと思うのですが、それについてはどういうふうにおやりになるのか。これは安井長官のほうからお答えをいただいておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/13
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014・安井謙
○安井国務大臣 お話しのとおり、共済年金は大蔵省がやっておりますし、公務員の給与は総理府が担当しておる、また恩給も総理府が担当しておるといったようなことで、それぞれいろいろな調整が必要じゃないかというお話でございまして、まことにそのとおりでございます。いま公務員の年金関係につきましては、年金制度協議会を総理府が中心になりまして持って、全体の調整に当たっておるというようなことでございまして、今度できまする審議会におきましても、恩給部門とこの年金関係というのは、どうしても密接な関係がありましょうから、そういう関連部門については、やはり関連した検討もいただくことになる部門もできてこようかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/14
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015・村山喜一
○村山(喜)委員 この公務員の年金制度協議会、これは総理府のどこで所管するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/15
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016・矢倉一郎
○矢倉政府委員 この協議会は、総理府総務副長官が委員長になりまして、人事院、大蔵省あるいは恩給局といった、そういう年金関係の所掌のところが委員となって、ここで協議をいたすことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/16
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017・村山喜一
○村山(喜)委員 私がいま申し上げましたような意味の交通整理、調整の作業というものを、もうやっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/17
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018・矢倉一郎
○矢倉政府委員 この協議会は、いわゆる法的な機関ではございませんので、つまりここで決定しましたことの拘束力は、実は直接に働くというよりも、それぞれの関係機関が年金の制度を樹立してまいりますときの基本的な方針の打ち合わせあるいはそれの実施というふうなことで、事実上の機関としてやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/18
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019・村山喜一
○村山(喜)委員 とすれば、やはりいままでこの恩給関係の団体等の政治的な陳情、そういうようなもの等によりまして相当大きくゆり動かされてきたことは、私は、事務当局の恩給局あたりとしてはそういうふうに痛感をしておられると思うのです。これはやはりそのほかの団体の関係からも同じようなことが言えると思うのですが、やはりそこにはその筋論というのか、たてまえが貫かれていかなければ、この問題については木に竹をついだようなものが随所随所に見られてくるようになってまいりますると、非常に大きな問題になるのではないかと私は思うのです。その具体的な内容についてはこれから申し上げますが、そういうような立場から、各省庁の担当者が集まって、法的にそういう拘束力のないような協議をととのえて一応の方針というものをつくってみても、それをどこかやはり強力に調整をして推進をしていくところの柱がなければならない。それはやはりその各省庁に対する総合調整の立場にある総理府がまさしくその任に当たるべきであるし、安井長官が率先しておやりになるのがたてまえではなかろうかと思うのですが、いままでいろいろ部分的なものが次から次に出てきて、これをやりなさい、これをやりなさい、やってみた結果、全体的に見ると穴があいたり飛び出してみたり、私はそういうふうな形態にいまなっていると思うのですが、安井長官は、そういうようなものをやはり改めるべきは改めて、恩給制度、共済制度というものを前進をさしていくんだという方向でひとつ取り組んでみようという意欲はどういうふうにお持ちになるのか、長官の決意をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/19
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020・安井謙
○安井国務大臣 お話しのように、給与に限りませんで、各方面の施策で、それぞれ所管省庁がこれを分掌いたしております。また、その事情に応じて、専門の省庁が持っておったほうが非常に都合がいいというものがたくさんあるのでありますが、それがそれぞればらばらに行なわれるために、全体の総合調整といったような意味で欠けておる面があるじゃないかという御指摘は、私、非常にそういう部門が多かろうと思うのであります。これは給与関係だけじゃありません。その他の問題にもございます。そういう意味で、そういう場合に、これは総理府が中心になりまして全体の総合調整をはかる機関、必要に応じては機構を設ける、必要に応じては審議会をつくる、あるいは協議会を置くといったような形でこれはやっておるわけでございます。また、ことに恩給等、年金あるいは一般給与、そういう関係においての総合的な調整は、必ずしも十分じゃなかろうかと思います。そういう点につきまして、今後もひとつ何らか総合調整の実をあげる方法も検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/20
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021・村山喜一
○村山(喜)委員 公務員の人事管理を一元的に把握していくということで、人事局も設けられたわけですね。そういうような立場から言うならば、やはり公務員に関連する恩給制度なりあるいは共済制度というものも、そういうような立場で考えてもらわなければ、いろいろなところから、たとえば恩給通算のそういうような役所等にしても、電電公社関係のもの等についても有利に見られたり、農林省関係の特殊指定団体等については見られなかったりするようなものがあるようです。そういうようなものをやはり考えてもらわなければならないと思いますので、ひとつこういう機会にそのような構想で推進方を長官のほうに要望申し上げておきたいと思います。
そこで、先ほどの田口君の質問ですが、「著シキ変動が生ジタル場合」、これを解釈するのは、今後恩給審議会で定義づけをやるわけですか。それとも政府のほうで定義づけをやるのですか。有権解釈はどこがやりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/21
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022・矢倉一郎
○矢倉政府委員 ただいま先生御指摘の調整規定の解釈、運用は、政府が行なうことになります。その解釈、運用をいたしますにつきまして、こういった審議会が設けられて、非常に民主的な機関として設置されるものでありますので、したがって、そこから出されてくる一つの結論というものをできるだけ政府が尊重していくのが当然かと考えますので、そこでそういう審議会を設置されまして、その審議会のいろいろ御答申いただく点にできるだけ沿いつつ運用していくという考えになろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/22
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023・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、私はいつも考えるのですが、三公社五現業の場合には、賃金、給与については御承知のように調停制度、仲裁制度というものがある。それによって仲裁はこのごろ完全に守られる。一方、国家公務員等については、これは人事院の勧告というものがなされる。しかし、この勧告は実施時期まで含めまして、なかなか尊重するということは、口に言われるけれども、完全に実現を見たことはない。こういうのがどこから生まれてくるかといえば、それは財政上の理由からだ。といたしますと、この年金なり恩給というものを、そういうような財政事情というものに左右されやすい——私は、公務員の賃金よりももっと財政事情に左右されると思う。そうするならば、生活水準、国家公務員の給与、物価その他の事情に著しき変動があった場合に、総合勘案して改定の措置を講ずるとしても、事実上の問題として国家財政というものに影響されるのではなかろうかと思うのですが、それは影響されないというたてまえでこの改正法案を出されたのですか。そういうようなものは影響させるべきでないという考え方のもとにおつくりになったのか。そこら辺が、やはりこの法律を認める場合においてはっきり論議しておきませんと、将来問題に残ると思いますので、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/23
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024・安井謙
○安井国務大臣 御承知のとおり、恩給は国からの給付でございますから、国の財源というものを無視して実施するわけにはまいるまい。したがいまして、こういう精神でやりますが、同時に、それはやはり国の財源という問題とも当然関連はしてくる。これはやむを得ないことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/24
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025・村山喜一
○村山(喜)委員 それであるならば、財政上の事情を勘案して云々というのをなぜ入れてないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/25
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026・安井謙
○安井国務大臣 これは当然起こってくる問題だと思いますので、「其ノ他ノ諸事情……ヲ総合勘案シ」という中へそういった趣旨のものは含まれておると、私ども心得ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/26
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027・村山喜一
○村山(喜)委員 「変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ」、その中に入っているというわけですね。ところが、この変動が生じた場合には、これは文章の関係はどうなるのですか。その変動が生じなければ、そういうような「変動後ノ諸事情」というものもまた生じないわけです。私は、法文解釈から言うならば、いまの財政事情がその中に入ってくるとはどうも条文上解釈できないわけですが、その点はどうなんですか。それは入るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/27
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028・安井謙
○安井国務大臣 私ども、これは国の給付金であります限り、当然のこととしてこの財政事情というものは関連をしてくるというふうに考えております。しかし、しいてこの文章のどういうところでそういう趣旨があらわれるかということになりますれば、そういう諸事情の変動した場合、変動後の諸事情をさらに総合的に勘案をして考えるというところへ、これはそういう本来当然のことである、財政的な影響というものを勘案するという趣旨も含まれておるというふうにとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/28
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029・村山喜一
○村山(喜)委員 これは立案をしてまいりました長官がそういうような説明をされるわけですから、事務当局としてはそういうような財政事情の変化というようなものは、別の対応する要素として別にあるというふうに考えて出されたのではなかろうかと、私はこの文章から見ると受け取るのですが、この法文の中に財政事情の云々というものまで入っているという提案の趣旨でおつくりになったものか。どうもそこら辺がはっきりしませんので事務当局のほうから一応説明をしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/29
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030・矢倉一郎
○矢倉政府委員 実はこの文章としまして成文化いたしますときに、ここに「総合勘案」ということばは、実は内容的にはある程度の意味が持たせられておりますので、こういうところに、実は諸事情の変動ということと、これは直接的には国家公務員の給与あるいは物価、生活水準というのが支配的な要因ではありますが、同時に総合勘案の中で財政事情も考慮さるべきものである、かような考え方で立案いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/30
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031・村山喜一
○村山(喜)委員 新聞等が伝えるところでは、もうスライド制が方向がきめられた、こういうふうに伝えております。ところが、岩動さんの質問でも、そういうふうなのに対しては、そういう一段階が開かれたのであって、にわかにそういうふうにはならないんだという意味の答弁がなされたと私は思うのですが、受恩給者等が非常に期待をしているものと政府が考えているその慎重な態度との間には、大きなズレがあるのではなかろうかという点を感じ取るのですが、これについては、その方向づけがこの法文によって明示されたんだ、それの実施についてはもっと審議会等で十分検討すると同時に、財政事情等があるのだから云々ということになりますと、この条文があろうがなかろうが、私は政府の運用、解釈によるならば、ねじ曲げられるというんですか、期待をするものを裏切る方向に発展をする可能性も否定できないと思いますが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/31
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032・矢倉一郎
○矢倉政府委員 御承知のように、恩給は、恩給受給者の立場というものが、やはり一般の現職の公務員が給与を考えると同じように非常に関心の高い問題でございます。したがって、恩給給与のあり方というものをどのように考えるか、これは必然的にわれわれの考え方の態度は、恩給そのものの年金の額というものが、いわゆる実質価値の保持という考え方で運用されていくべき筋のものであるというふうに考えられるわけでございます。そこで、実質価値の保持ということを考えるわけでございますが、それがいかなる要件で考えらるべきかというふうな点が、ここにあらわれておりますような生活水準なり、公務員の給与なり、物価というふうなこと、そういった諸事情の変動をこの総合勘案の中で具現化していく。したがって、かような点からいきますと、本来的には恩給法運用の基本的態度は、確かに先生御指摘のとおりかもしれませんが、しかし、これが明文化されているということは、かなりそれによる拘束力というものが出てこようかと思います。したがって、私たちは再々、この規定の持つ意味はかなり前進した規定になってくるのではなかろうか、かように申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/32
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033・村山喜一
○村山(喜)委員 恩給の意義として、恩恵説なり、あるいは貯金説、保険金説、方便説、報酬説、減損能力補てん説、あるいは賃金の後払い説、いろいろな説があるわけですが、いま恩給局長から説明を承りますと、実質価値の保持というものを目途にしなければならないということになってまいりますと、物価の上昇等によって実質手取り額が少なくなるのを防ぐということは、一応範疇に入ると思います。ところが、国民の生活水準の上昇という恩恵は、実質価値の保持という上から見た場合には入るのか、入らないのかという問題が出てまいります。今度は、国全体の財政状況の向上が、所得の増加、生産の増加等に伴いましてなされて、国家公務員の給与というものも逐次改善をされる。それとの対応、比較の上において論議する問題も、これは実質価値の保持の範疇外に出るのではないか。そういうような問題をとらえてまいりますと、この中で一番大きなウエートとして置かれているのは、物価その他の問題ということに中心があるような印象を受けるわけです。政府の提案者としての腹づもりといいますか、方向づけというものは、ここには国民の生活水準や公務員の給与というものがわざわざ書いてある点から考えますと、実質価値の保持というものの解釈がもっと幅広いものである、もっと恩給受給者に対する退職後の賃金後払いという考え方に基づくようなものが、前のほうには出されていると思うんです。そういうようなものまで含めて解釈をすべきなのか、あるいはいまおっしゃるように、実質価値の保持という意味を厳密に解釈をして、そこにウエートを置いていかれるつもりなのか。今後あなた方、提案をされるにあたってのたてまえ、その諮問事項というものの中身が違ってくると私は思います。この立場を説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/33
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034・矢倉一郎
○矢倉政府委員 私がいま公務員恩給につきましての実質価値の保持ということばで表現いたしました点は、御承知のように、実は恩給というのは退職時の俸給ということが基本に相なります。そういたしますと、退職時俸給というのは、現在の恩給受給者の中には、実は日露戦争に参加されたような方もおられますし、またつい近いところは昭和三十年ごろの退職者もおられます。そういたしますと、たとえば当時の俸給年額が二千円というふうなところでございますと、その二千円を基礎の俸給として恩給を計算いたしますと、これは実質価値がまるきりないということになります。そこで、当時の二千円というものをどのように考えるかということが、一つの基本的な考え方に相なりまして、したがって、当時の二千円は、今日ではたとえば二十万の価値を持つものというふうな形で、実質価値の保持ができるように実は改定をいたしてきておるわけでございます。したがって、それらの考え方の基礎に一つおあげいただきました物価の問題、あるいは国民の生活水準というものも、これは物価そのものがある程度直接的にはね返りますし、公務員の給与もまた、御承知のように生計費というものの算定をいたしておりますので、またこれも物価が一つのはね返りとして出てまいります。したがって、ここにあげました条件というものは相互にからみ合っているわけでございますが、そのからみ合っている問題をいかように考えて実質価値の保持をしていくかということが、恩給の年額を考えるときの基本になる考えではなかろうかと存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/34
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035・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、実質価値の保持という意味は、私は物価を一つの例として取り上げましたが、本質はやはり今日三百六十倍という貨幣価値の下落になってあらわれている。消費者物価については、それよりもまだ上がっているわけです。そういうような点から考えていくならば、退職時の俸給が基礎になる、それはやはり貨幣価値の交換指数に基づいて引き直す、それが基礎になって、その上に公務員の給与あるいは物価、国民生活水準の上昇、そういうようなものをプラスしていく、こういう方向なんだ、こういうふうに受け取っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/35
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036・矢倉一郎
○矢倉政府委員 私が申し上げましたのは、物価を基準にして、それにプラスしていくものという意味合いで申し上げたのではございませんで、やはり物価も一つの考え方の基本になりますので、たとえば消費者物価の動向というようなものが、昨年からことしにかけてどういうふうに動いているだろう、あるいはそれが国民の生活水準、あるいは消費水準と申していいかもしれませんが、その消費水準の中にどういうふうに位置づけされているだろうというふうな、消費水準の中における物価の位置、それから消費水準自体の問題、それから公務員給与という点につきましても、御承知のように、生計費の中で考える考え方として、人事院はマーケット・バスケットを組んでおりますので、したがって、そのマーケット・バスケット、いわゆるマバ法に基づく物価の問題が必然的に生計費の中に一つの要素として加えられておりますので、かような点は、物価だけに限らない、つまり公務員の給与としては、生計費だけできめられているものではございませんで、御承知のように、いわゆる民間の給与の動向等も必然的に加味されておりますので、そこでさような事情が総合されてくるところに恩給の年額の問題の考え方の一つのねらいが出てこようか、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/36
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037・村山喜一
○村山(喜)委員 全体的な、総合的な説明はそれでいいのですよ。しかし、そこにはやはり実質価値の保持というものが基礎になる。それは退職時における俸給が基礎なんだとするならば、貨幣価値というものがそこには基礎的なものになって、その上に物価とかそういうような生活水準の上昇とかいうものが総合勘案されるということにならなければ、私はやはり仮定号俸制度というものを設けた意味がないと思うのですよ。今日であるならばこの程度の給与体系であるべきなんだ、そういうようないわゆる算定の基礎というものが、そこに求められなければおかしいことになるのじゃありませんか。その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/37
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038・矢倉一郎
○矢倉政府委員 確かに先生の御指摘のように、物価の占める位置というのは、最近のような状態でございますと、かなり大きゅうございますので、これまで私たちがいろいろ恩給額の改定をしてまいりました過程から考えてみますと、確かに物価の占める要因というものが高いということが、実は数字的にもある程度明らかになるわけでございます。たとえば、昭和二十六年ごろの消費者物価というものを一〇〇としてまいりますと、三十九年ごろはほぼ一五九・六ぐらいになっております。そして恩給自体もまた、当時を一〇〇といたしますと、ほぼ一五八ぐらいの指数になっておりますので、先生の御指摘のような物価の持つ意味というのは、非常に重要だと思います。ただ、これからの調整をいかにするかという点になりますと、物価だけに限っていいのだろうか、ここに必然的に実は公務員給与というふうな、現職の公務員とのいわゆる関係づけが考慮されてよくはなかろうか。さような意味で、調整規定の中に明確に国家公務員の給与というものを入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/38
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039・村山喜一
○村山(喜)委員 なかなか私が言うのに乗っておいでにならないわけなんだが、私は、物価というものも重視しなければならないけれども、いわゆる為替レートの貨幣価値というものを、どういうふうに日本の円というものの位置づけをやるか、いわゆる戦前の円の価値というものと今日の円の価値というものが、その交換レートの上においても、一ドル一円だったものが三百六十円ということになっているわけでしょう。そういうようなものが基礎になって、そして消費者物価はまだそれよりも上向いているものが多いわけですから、そういうようなものを積み上げ、さらに公務員の給与制度の改善に伴うものも積み上げて、そして正当な、妥当な恩給額というものはこういうようなものであろうということでやるのが、たてまえじゃないかということを言っているわけです。物価にだけ重点を置いて改善をすべきだということを言っているわけじゃありません。その点は私の考え方は間違いかどうかを、あなたは物価の問題だけをとらえて答弁をされておるから、お答えになっていないので、その点を重ねてお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/39
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040・矢倉一郎
○矢倉政府委員 確かに貨幣価値の問題というものが、いま先生の御指摘のごとく、たとえば当時二千円のものが現在一体幾らの額が相応かというものを考えるときに、必然的に貨幣価値の問題が出てくるわけでございますし、また、それがいろいろ私たちが恩給の年額を考えるときに、当時のいわゆる基本の俸給になっております点を、私たちの呼び名で申しますと、仮定俸給は幾らにすべきだというふうな考え方で扱っているわけでございます。もちろん、その仮定俸給の中には、いま申し上げましたような仮定俸給の考え方の基礎に、物価あるいはその他の要素が入っておるわけでございまして、純粋に貨幣価値の変動だけが、そのままに実は判断された形で入っておるわけではございませんので、さような点を実は先ほど来申し上げていたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/40
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041・村山喜一
○村山(喜)委員 この仮定俸給年額の押え方は、やはり下のほうは六号アップをしたというような事例に見られるように、この前から説明がされているように、社会保障的な性格のものがこの中に入ってきているわけです。そういうような意味において、貨幣価値の交換レートの問題から説明されるべき筋合いのものじゃないと私は思う。しかし、どのように戦前のものを引き直すべきかという意味においては、そういうふうなものの解釈も成り立ち得るだろうと思うのですが、まあそれはそれとしておいておきまして、次に問題を提起したいと思うのです。
一つは、日本赤十字社の看護婦の婦長の恩給法上の通算、これは、一般の看護婦については、恩給法上の対象外だということになり、共済組合法上の対象として取り上げられる。ところが、婦長の場合には、これは資格の上においても、実質の上においても、恩給法上の優遇措置を受けるわけですね。ところが、一般の婦長でない看護婦については、これはいわゆる国家公務員共済組合法の長期給付の資格はとり得るわけです。しかし、その五年なら五年という間在職しておったものは、資格計算にはなるけれども、給与の実質上の計算の基礎にはならないのですね。そうでしょう。とするならば、これは明らかに、そういうような婦長という判任官以上の待遇を受ける者とそうでない者との間には、差別ができますね。そういうような不均衡な方針をおとりになったのはなぜですか。これはやはり私は総合調整の立場から一あなたは恩給局長だから、恩給法上の問題としておとりになっておるのだろうと思う。恩給法上は優遇したのだとおっしゃればそれでいいが、やはりこれは長官が総合調整の任にあるのだから、引き続いて、恩給局長の事務的な説明があったあとにおいては、政治的な判断でそういうふうにされたのだったら、安井長官のほうからお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/41
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042・矢倉一郎
○矢倉政府委員 実は先生のいま御指摘の日赤の看護婦長、これは恩給としていわゆる戦時勤務についての通算をいたすことにいたしておりますが、実はこれにつきましても、いわゆる資格を認めるという意味合いにおいて今度の改正措置が講ぜられましたので、そこで、実はこの点につきましては、その他のいろいろな、たとえば外国政府等の職員の恩給通算におきましても、そういうふうな同じ趣旨の措置をとっておりまして、御承知のように、看護婦長というふうな、判任といいましょうか、恩給公務員相当の者でない人の措置をもしいたしますと、実は旧来の恩給の一つの立て方を根本的にくずしてしまうことになるわけでございます。確かに、この間御指摘のございましたように、実はいまさらそういった判任とかあるいは雇用人という区分をする必要はないではないかということはございましょうけれども、恩給は、御承知のように、一つの過去のそれぞれの実在職者の扱いの問題でございますので、したがって、そのときの考え方がそのまま現在まで生きてくるということに相なりますので、その点は、日赤の場合におきましての救済措置も、いわゆる判任相当、つまり恩給公務員相当の看護婦さんあるいは医師というふうな人たちに限っていくような措置をとらざるを得なかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/42
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043・安井謙
○安井国務大臣 大体いま局長の申し上げました趣旨と同じような意味でこれは扱ったわけでございまして、したがって、その資格のなかった人がさらに内地で勤務するといったような状況があれば、これは共済組合法のほうで吸収をされるもの、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/43
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044・村山喜一
○村山(喜)委員 私が言うのは、ここに説明がありますように、その期間を恩給公務員期間に通算をする。普通恩給の所要最短年限の者に相当する恩給扶助料を、この看護婦の婦長さんには支給するのでしょう。片一方のほうは支給しないのですよ。資格を与えるだけですよ。だから、そういうような片手落ちなことをなぜおやりになるのかということを聞いておる。これは長官に聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/44
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045・安井謙
○安井国務大臣 いま局長が御答弁申し上げましたと同じような意味で、恩給資格者であった当時の看護婦長そのものには、当然その資格が認められるような、いわゆる判任官と申しますか、そういう連中に対する特権を認めたということでございまして、これはたとえば外地勤務をやっておりました人の通算を認めた場合にも、いまおっしゃるような不均衡はほかにも若干出てきたであろうかと思います。しかし、これはそういうふうに与えられてもいいじゃないかというような人を少しでも多く取り入れたということでありまして、そういった意味での村山さんの御指摘の不均衡というものは、若干出てくることに相なろうかと思います。どうもそのほうは、十分とはいきませんが、いまの共済組合法等である程度までは吸収されるのじゃないか。しかし、確かに不均衡があることは認めざるを得ないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/45
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046・矢倉一郎
○矢倉政府委員 補足的に。実は、いまの先生のお話でございますが、たとえば四年勤務しまして、そして一応この期間がかりに加わりますと、ちょうど恩給の受給資格が認められるという意味合いにおいて、このあとの部分はいわゆる資格を認める期間だ。恩給の実額は実際に勤務された期間に相応する額になりますので、実は、先生の御指摘の資格期間前という形にこの改正も相なるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/46
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047・村山喜一
○村山(喜)委員 これは私、ひとつこういうふうな事例をあげてみたいと思いますが、戦地に五年行った婦長がその後国家公務員になった。そして恩給法上の公務員として処遇される。その五年はもちろんまるまる通算をされると思う。私がお尋ねしているのは、ずっと従軍看護婦として行った。そして日赤の職員ですから、いままで国家公務員法上の職員でなかったわけですね。それが今度婦長については判任相当であるということで、シナ事変から今度の太平洋戦争に至るまで、そういうような経験がある人がおったとした場合に、その人が恩給受給年限の最低年限を満たした場合においては、この人については最低年限の恩給額というものを有資格者として支給するということなんでしょう。ということは、その期間はいわゆる国庫に対する恩給納付金というものを納めていなくても、この者については支給をいたします。こういうことになるのでしょう。ところが一方、一般看護婦の場合、これはたとえ十年おりましても、引き続いて何らかの共済組合の組合員たるの資格をとり、継続をした場合には、その期間は通算をされるけれども、たとえば二十年で共済長期給付の年金がつきますが、その実質上の支給額として計算をする場合には、残りの十年について計算をして支給をしますということになるのでしょう。それは違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/47
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048・矢倉一郎
○矢倉政府委員 御承知のように、実は旧文官についての恩給は、十七年で恩給の資格がつきます。そこで、たとえば看護婦さんが日赤の従軍看護婦として戦地に五年おいでになった。なおお帰りになって、厚生省の国立病院等へ十二年勤務なさったという場合には、十七年ということで、いままででございますと、この規定がございませんと、戦地の五年というものは全く意味をなさないわけでございます。そこで、この規定によりまして戦地の五年が生きてまいりますので、そこで十七年の恩給受給の資格が得られる。一般のたとえば婦長でない看護婦さん、こういう方々は、いわゆる雇用人と目されると思うのです。そこで、雇用人相当の看護婦期間は一応資格として先生の御指摘のとおり認められますが、年額として受給できないという点は、先生の御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/48
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049・村山喜一
○村山(喜)委員 だから、長官、いまお聞きになったとおりなんです。恩給というのは、身分制度に基づいて行なわれた旧官吏の優遇措置である。したがって、それは恩給納付金というものも一つの財源になりますが、多くは国家財政の中から支払って、老後の保障その他に当たっているわけです。ところが、共済制度というものは、保険システムをとっておる。そこに一つの問題があり、そういうような差があらわれてくるのは、その両制度の特質からあらわれてくる問題だと私たちも見るのです。ところが、実際、今度はもらうほうの側、国民の側から考えますと、恩給法上は、なるほど判任相当以上の人は、そういうふうに待遇をされてけっこうだ。ところが、われわれは、雇用人以下の者は、そういうような資格は与えられたけれども、実質は自分が組合員となって保険を支払った期間だけしかもらえないのではないか。こういうたてまえからまいりますと、そこに社会的に非常にアンバランスが出てくるわけです。そういうようなことから、私たちの手元にもたくさんの陳情書が来ております。ここに私はとじて持ってきておりますが、こういうような社会的な不合理といいますか、不平というもものが高じてまいりますと、私は、これは政治の上にとっては望ましい姿ではないと思う。私が総務長官に要望として、あるいはどういう見解をお持ちになっているのかということをお尋ねいたしたい点は、共済組合の制度の中において、やはりそういうようなものはただ資格年数を与えるだけでなくて、それに基づいた事実上の給付をこの恩給法と同じような立場において与えてもらいたいということなんです。そのためには、現在の共済の運営は、組合員の掛け金によって運営がなされておる。そうすれば、古い人たちのそういうような恩恵的な措置を現在の公務員にしわ寄せするということは、間違いである。だから、そこにはやはり国が、そういうような恩恵的な制度を平等になさろうとするのであるならば、国庫の共済負担金に対する増額というものが、必然的に生まれてこなければならない。片一方においては、国は恩給法に基づくものだけは国のほうで財源措置をし、片一方共済制度に基づくものはこれを放置しているというのでは、これでは政治の公平ということにならないのではないか、私はそういうように考えるわけですが、そういうような方向に向かって努力をされる御意思があるのかないのか。これはやはり総務長官が内閣の総合調整の立場に立っておやりになる仕事として、一番大事なことじゃないかと私は思う。これについて、大臣の誠意ある答弁をひとつお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/49
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050・安井謙
○安井国務大臣 先ほども申し上げたように、御指摘のとおりの不均衡が若干生じておるということは、私認めざるを得ないだろうと思います。これは看護婦長だけでありませんで、その他につきましても、たとえば外地に勤務した満鉄社員といったようなものの扱いも、同じような扱いでございますが、その場合にもやはりこれは起きてきているのじゃないかというふうに考えております。しかし、いま私が、公務員共済は御承知のとおり大蔵省の所管であるし、総理府は全体のそういったものを総合調整するための協議会といったようなものを設けて総合調整をやってはおりますが、いま所管そのものじゃありませんので、ここでこうしましょうという御答弁は、ちょっといたしかねるのでございます。いま御指摘のような事情があることを私も認めざるを得ない。今後いまのような御趣旨の問題について、私ども全体を見ていくという立場から、さらに検討をいたしていきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/50
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051・村山喜一
○村山(喜)委員 検討をするということにとどまったが、あなたは閣僚の一員、しかも総理府の長官として、そういうような総合調整の任に当たられる一番のかなめのところにおられるわけですから、あなたが推進をしてくれなければ、これはやはり片手落ちになると私は思うのです。そういう点において安井長官に期待するところきわめて大きいのですが、どうですか。もう少し前向きの姿勢で答弁できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/51
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052・安井謙
○安井国務大臣 アンバランスがあるという事態を認めた上での検討をいたそうということでございまするから、私としてはこれは前向きに検討をしたい、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/52
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053・村山喜一
○村山(喜)委員 まあそれでいいでしょう。
そこで、安井長官も満鉄の出身で、引き揚げておいてになった方ですから——同じような具体的な事例として問題が提起されている陳情書が出ておる。これは満鉄じゃありませんが、こういうような問題であります。昭和十六年に国鉄当局の命令によりまして外地派遣になった。南方軍の指揮下に入って、開戦と同時に仏印からタイ、マレー、ビルマ、日本軍の進むところに従って従軍をし、それと同時に鉄道業務の管理に励んで、そしてタイ、ビルマの鉄道工事の主力になって働いた人たちがおる。しかし、戦い利あらずして、敗戦と同時に抑留をされ、あるいは戦犯容疑としてつかまりながら、かろうじて帰ってきた。ところが、三十三年の法律百二十四号、恩給法の改正による新しい適用によって、当時任官をしておった者が一カ年が三カ年の戦地加算を受けるに至った。ところが、いま申しました多数の鉄道手とか雇員とかというのは、何ら恩恵も受けることなくして、六〇%はすでに退職をしておる。結果は任官者は恩給法によって救済をされ、雇員は共済制度に従うだけで、戦地加算がない、こういうような問題が出てきておる。そこで、軍人恩給は全面的に復活をした。私はここで一つの問題を提起したいと思うのですが、軍隊の場合、下士官というのは判任官待遇といいますか、将校が奏任官でしたから、判任官であろうと思うのです。ところが、上等兵、一等兵、二等兵、この兵の位にあるのは、私は判任官ではないと思う。そういうような点から考えると、兵の位にあった者も判任官として待遇をされておる。ところが、その鉄道手であるとか雇員だとかいうのは、取り残されておるわけです。恩給法上は戦地加算が一年が三年になり、共済組合法ではそういうようなのは認められない、こういうようなのも、私は間違いだと思うのですが、これはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/53
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054・矢倉一郎
○矢倉政府委員 ただいま先生御指摘の、いわゆる国鉄の職員、当時鉄道手と言ったかと思いますが、この人たちは、御指摘のように判任官ではなかった。身分的には雇用人身分だったかと思いますが、この方々が戦時中にそういった南方に出ていかれたという事情も承知いたしておりますし、お話の向きも私は伺っておるわけでございます。この人たちの措置につきまして、実はいろいろな問題の取り上げ方を考えてみたわけでございますが、現在の段階では、やはり共済組合年金等で考慮する以外に措置の方法がなかろうかと考えておるわけでございます。御指摘のとおり、判任あるいは判任相当の人たちは、一つの恩給上の公務員としての扱いを受けることがたてまえであり、当時雇用人身分であった人あるいはいわゆる市町村職員等でそういうような公務員としての恩給対象でない人たちは、かなりの数に上っておられるわけですが、恩給は御承知のように旧来からの積み上げ規定でございまして、さようなところから、その積み上げの中で解決されていくということでございますので、したがって、御指摘の点については、公共企業体職員等共済組合法によって、いわゆる実在職の期間を認めるという措置によってはかられ、いわゆる戦地加算の点については、そういう措置がとられない限りはこの加算年が生きてこない、かようなことに相なっておるわけでございます。
ところで、兵の場合を御指摘になったわけでありますが、いわゆる軍人恩給につきましては、これは旧来は一つの別建てのような動きをいたしておりまして、したがって、判任相当があるいは御指摘のとおり下士官ということに相なろうかと存じますが、一応扱いといたしましては、そういうふうな点に必ずしも目を向けないで軍人恩給等の措置がなされてまいっておるわけでございます。そういうふうな旧来の一つの恩給の伝統的な扱い方に従って措置がとられておりますので、兵の場合があるからということで、直ちに雇用人身分の人たちに現在の時点において恩給関係の当然の適用を考えていくということは、いろいろな問題もこの中に含まれますので、現時点においては、雇用人という身分的な扱いというものを、少なくとも文官恩給を考える場合には考えてまいらざるを得ないのではなかろうかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/54
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055・村山喜一
○村山(喜)委員 まあ局長の答弁としては、事務的にはそれ以上に出るわけにはまいらないと思います。それはやはり現在の法律に基づいてやっておられる。その仕事をやっていただかなければならない人たちなんです。しかし、これは安井長官のような国務大臣としては、やはり総合的に考えてもらわなければならない立場にある政治家なんですから、そういう点から私は質問申しているわけであります。いま恩給法上は戦地加算がある。ところが、共済組合法上はそういうのはない、こういうのが、私がいま事例として申し上げた一つの事実であります。やはりここら辺も考えてもらわなければならない不合理ではないかと、私は思うのです。片一方において認めるとするなら、片一方においても認める。そういうのは認める筋合いじゃないとおっしゃれば、これは戦地加算そのものを認めたことがおかしくなってくる、私はそう考えるのです。したがって、これらの問題についても、先ほどの問題と同じようにひとつ御検討を願いたいのでありますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/55
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056・安井謙
○安井国務大臣 いま局長からも御答弁申し上げまして、いまの制度上からちょっといかんともしがたいということはやむを得ないと思いますが、そういったような問題次へ次へ私どもはやはり今後も検討していって、できるだけ合理的なものにしたい。しかし、これがいまおっしゃるような趣旨のものに直ちにすぐできるかどうかということになりますと、いろいろなたてまえや法制上の問題もあろうかと思います。私ども十分検討をやらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/56
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057・村山喜一
○村山(喜)委員 それからこれは満州の例です。満鉄の場合、日満日の場合には通算がされる。それから日満のケースの場合も通算される。ところがいわゆる満日のケースの場合については、完全に通算がされない。同じ満鉄の職員であった者がそういうふうに差別をされることはおかしいじゃないかというのが、満鉄関係者の意見です。これは満鉄の例です。今度は外国政府の場合、満州国という国があった。それが国際法上認められた国家であったかどうかということについては、問題があります。しかし、外国政府であるということで、日本の場合にはこれを恩給期間についてはもちろん完全に通算をしているわけです。じゃその満鉄というのは一法人にすぎないのかといえば、私はその設立の由来から見ましても、あるいは本質から見ましても、その権限内容、任務、そういうものから見ても、満州国の官吏であった者と満鉄の職員であった者との間にどのような区別をするか。片一方は外国政府である。その間には形式上の差しかないのじゃないか、こういうふうに受け取っている人たちが多いわけです。私も満鉄の本質をずっと調べてまいりますと、確かにそういうふうに受け取らざるを得ないような内容のものがある。とするならば、恩給法というものは、法律の形式を中心に考えるのか、実質、内容を考えるのかという問題が、私は問題として出てくると思うのですが、こういうようなものは、安井長官は特に満鉄におられた方ですから、関係者の御一人でもありますので、どのような所見をお持ちになっておいでになるか、今後どういうように対処しようとお考えになっておるか、ひとつお答えを願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/57
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058・安井謙
○安井国務大臣 満鉄におった者、あるいは満州国政府におった者が、恩給通算の場合にいまの日満日あるいは日満ということでなくて、満日の場合が一番問題になっておるだろうと思いますが、いま御指摘のような満鉄は一種の国策会社であり、国策的な仕事をやっておりました。満州国は、そういう国際法上は多少根拠はあやふやなところはありますけれども、とにかく政府機関であったというような意味から、満州国及び満鉄社員に対しては、いまの通算規定においては同じような扱いを受けておる。ただ、その場合に、いま一部で議論になっておりますのは、満鉄あるいは満州国の在任期間をフルに見ないか、こういう御要望であると思います。これは確かに考える余地がある問題だとは思いますけれども、その他のいろいろな事例から申しまして、やはり恩給の最短年限に達するまでを見るということが、目下のところ扱いとしては妥当でなかろうかと私は思っておるわけでございます。しかし、この問題は確かに議論のある問題でございますので、将来恩給審議会等でも一応議題にして、またいろいろ御検討を願いたいものの一つに考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/58
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059・村山喜一
○村山(喜)委員 もう時間もありませんので一問だけ。
特例扶助料、私たちもいろいろなケースに突き当たるのでありますが、現在の規定では非常にやかましい。営内に居住すべき者で、その在職年限が十六年十二無八日から二十年十一月三十日まで、そういうふうにきちっときめられて、本邦あるいは政令で定める地域を指定する、こういうような問題が出てきますと、たとえば海軍の旧軍人で将校であった。それが戦争に参加したのだけれども、肺結核によって戦病死をした。ところが、本来営内に居住すべき者でない、あるいは直接戦闘で負傷によって死んだのでもない、こういうようなことで、業務上の疾病と認められるかいなかということをめぐりまして、非常にむずかしいケースがあるわけであります。今回の改正によりますと、特例扶助料はその基準を緩和する。そしてそれらによりまして、たとえば軍務が非常にきびしくて、そういうような病気になって一定の療養を終戦後になってもやったが、なくなった、そういうような者についてこれを救済しようという筋合いのものだと私は思うのですが、そのとおりであるのか、その場合にはどの程度まで救済の対象としてなり得るのか、これを説明願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/59
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060・矢倉一郎
○矢倉政府委員 特例扶助料というこのことばのとおり、実は公務に基づいて恩給公務員がなくなられたような場合には、御承知のように公務扶助料という形で厚い保護がなされておりますが、一方、そこまでまいらない、たとえば内地におられた配属将校のような場合、つまり営内居住をしなければならぬとかいう条件、三つの条件を書いて一つの制限を加えておったわけでございますが、この条件を緩和することによって大半の方々が救済されることになろうかと考えております。したがって、こういう条件のためにいわゆる扶助料をもらえなかった人々も、この規定改正によって、旧来そういうことでふるい落とされておった方々が浮かび上がってまいりますので、かような点からすれば、いわゆる特例扶助料の点については大きな改善措置になろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/60
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061・村山喜一
○村山(喜)委員 もう一つ忘れていましたが、倍率の問題で、この旧軍人と文官とのいわゆる扶助料の倍率が違うというのはおかしいじゃないか。平病死の場合でも違いますし、いろいろ差があるのだが、これを仮定俸給の一本化をやる場合において、今後の問題として考えるべきではないかということをこの前の国会のときに質疑をし、そういうようなのは漸次解消していかなければならぬという答弁をいただいたのですが、このたびの仮定号俸の制定等にあたりましては、そういうようなものを勘案されたのかどうか、これは事務当局のほうから説明を願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/61
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062・矢倉一郎
○矢倉政府委員 実は今回の恩給法改正につきましては、非常に多数の問題点が要望なりあるいは御指摘の形で私たちの前に提起されておりますので、さような点についてどのようなところまで改善をしてまいればよろしいかということで、諸種の検討をいたしましたわけでございますが、先生の御指摘の点については、今回の改善措置では取り上げることができませんでございました。まことに申しわけなく存じておりますが、いろいろな点からこの改善については考えてまいらねばならない点がございますし、問題の指摘も非常に多数ございますので、いま先生の御指摘の点は、ある意味では実は公務性の問題について、軍人、文官等についての基本的な課題にもなろうかと考えられますので、新たに設置されます審議会等では、かような問題についても十分な御審議をわずらわしたい、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/62
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063・村山喜一
○村山(喜)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/63
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064・辻寛一
○辻委員長代理 本日は、この程度にとどめ、次会は、来たる二十六日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104889X02919660422/64
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