1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月十三日(水曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 中川 俊思君
理事 大石 武一君 理事 倉成 正君
理事 舘林三喜男君 理事 本名 武君
理事 赤路 友藏君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
宇野 宗佑君 金子 岩三君
坂村 吉正君 白浜 仁吉君
田邉 國男君 綱島 正興君
中川 一郎君 丹羽 兵助君
野原 正勝君 野呂 恭一君
藤田 義光君 森田重次郎君
江田 三郎君 兒玉 末男君
千葉 七郎君 西宮 弘君
松浦 定義君 森 義視君
湯山 勇君 林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 坂田 英一君
出席政府委員
農林政務次官 仮谷 忠男君
林野庁長官 田中 重五君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 中橋敬次郎君
農林事務官
(林野庁林政部
調査課長) 高須 儼明君
自治事務官
(大臣官房参事
官) 降矢 敬義君
自治事務官
(大臣官房参事
官) 鎌田 要人君
専 門 員 松任谷健太郎君
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四月十三日
委員西宮弘君辞任につき、その補欠として日野
吉夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員日野吉夫君辞任につき、その補欠として西
宮弘君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関
する法律案(内閣提出第一一一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/0
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001・中川俊思
○中川委員長 これより会議を開きます。
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。森田重次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/1
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002・森田重次郎
○森田委員 ただいま上程されております入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案につきまして、二、三の問題を質問いたしたいと思います。
まず第一にお伺いしたいことは、この第二条の一項に「入会権」の定義というものが掲げられておりますが、まあこれは法律条文としての形を整える意味において、きわめて形式的な概念の並べ方のようであります。そこで、これは具体的に言えば、どういうような場合を対象としてさしているのか、こういうことをまずお伺いしておきたいと思うのであります。たとえば、平素部落有などといわれる共同権利者による関係のものとなると、内容がきわめてわれわれの日常経験にぴったりするようになるので、一応この点を確かめておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/2
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003・田中重五
○田中(重)政府委員 入り会い林野を具体的に言えばどういうものかという御質問だと思います。入り会い林野と申しますと、民法で「共有ノ性質ヲ有スル入会権」とか、あるいは「共有ノ性質ヲ有セサル入会権」とかいっておりますが、要するに、一定地域の住民が、一定の林野に対して慣行によって共同して使用収益している林野、そのことを入り会い林野というふうに解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/3
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004・森田重次郎
○森田委員 わかりました。
そこで、第二問でございますが、この第二条の三項を見ますと、「旧慣使用権」というものの定義をいたしております。これなども、先ほど申しましたように、きわめて抽象的な概念規定をいたしておるのでありますが、しかし、第十九条等で説明している点などを見ますと、具体的には、大体われわれが平素取り扱う財産区というようなものを具体的な対象として取り扱うように考えるのですが、そういうふうに解釈していいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/4
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005・田中重五
○田中(重)政府委員 旧慣使用林野と申しますと、いまお話しのような入り会い林野と、その発生の過程においては同じものであるというふうに解釈していいと思います。ただ、明治の初めの地租改正から始まるところの土地の官民有区分に伴いまして、市制、町村制等によって公有財産として組み込まれたもの、そういうものについては、これも先生が御承知のとおりに、地方自治法で、旧慣によってその市町村の住民が公有財産を使用する場合には、旧来の慣行によるというふうになっておりまして、この分については、公有財産をその市町村の住民が使用収益することを認められているものであるというふうに理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/5
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006・森田重次郎
○森田委員 たとえば大字有と旧来いわれているもの、またこれははっきりと財産区とうたわれていないもの、そういうものが具体的対象になるのだ、こういうことになるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/6
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007・田中重五
○田中(重)政府委員 その財産が市町村の財産として登記をされているもの、そういうものについては公有財産というふうに解釈すべきであろう、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/7
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008・森田重次郎
○森田委員 いや、私の聞いているのは、この概念規定は私にもわからないことはないのです。わかるのですよ。ただ、これだけだと、一体どういうものが具体的な対象になっておるだろうかということが、国民の一般にわからないのです。ですから、この第十九条をちょっとのぞいてみても、先ほど申し上げました財産区とかいうようなものが代表的に出ているようでありますから、旧来大字有、こう称せられているもの、あるいは財産区、こう規定されているものが、この具体的内容になるのですかということを聞いているのですから、簡単に答えていただいていいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/8
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009・高須儼明
○高須説明員 ただいまの御質問は、財産区をどのように考えるかという御趣旨であろうかと思いますが、財産区は、はっきりと条例等をもちまして設けられております場合は明確でございます。それ以外の場合におきましても、その財産の管理処分につきまして、市町村長あるいは市町村の議会が管理処分権を持っておりますようなものも、一応財産区として今日取り扱われておるわけでございます。そこで、登記名義が大字となっている場合はどちらに入るかという問題でございますが、この場合には、実体が財産区であるかどうかということを地元にまいりまして調べまして、財産区と解される場合には、やはり公有財産というふうになるわけでございます。登記名義から直ちに判定することは非常にむずかしかろうかと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/9
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010・森田重次郎
○森田委員 つまり、私の聞いているのは、旧来大字有というが、必ずしも具体的に明確な法律上の性格が明示されていない。財産区と称されても、明確に条例などで取り扱う規定があるのと、そうでないのと実際はある。そういうようなものを整備するというのがこの法律の目的になっているのではないかと考えるものですから、そういうものが具体的な内容になりますかと聞いていますので、なるとかならぬとかいうふうに簡単に答えていただいていいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/10
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011・高須儼明
○高須説明員 さようなものを対象にいたす予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/11
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012・森田重次郎
○森田委員 そこで、第三問でありますが、この第二条の二項を見ますと、ここに「入会林野整備」と称するものが定義になって、この方法で入り会い権を消滅させるのだ、こういうような規定になっておるようであります。また第三条、第四条の各号によりましても、やはり入り会い権を消滅させるというような規定になっているようであります。この点から見ますと、この法律の目的は、やはり入り会い権を消滅させて、そしてほかの権利に移行させるのだ、これがこの立法の目的のようにも考えられるのですが、そう解釈してよろしいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/12
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013・田中重五
○田中(重)政府委員 仰せのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/13
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014・森田重次郎
○森田委員 そこで第四問、同じような質問でございますが、第二条の四項によりますと、「旧慣使用林野整備」と、こう称する定義を掲げて、その方法によって、先ほど来議論の対象になりました、いわゆる旧慣使用権の対象である財産区というようなものを消滅させるというようなことを規定しているようであります。また第十九条の規定、第二十条の四項によって、第四条第一項、第三項、第四項の援用等をいたしておるようでありまして、これらを見ましても、この法律の目的は、旧慣使用権を消滅させて他の権利にするのだ、したがって、これらがどんな権利に変わるかというと、所有権、地上権または賃借権等に移行するのだ、こんなふうな規定のようでありますが、これもそういうふうに解釈してよろしいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/14
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015・田中重五
○田中(重)政府委員 仰せのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/15
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016・森田重次郎
○森田委員 そうすると、次の質問でございますが、以上を要約いたしますと、まず部落有等の共同的総有性格を持った入り会い権、それからこれと共通する法類と見られる財産区、これらを解消いたしまして、それにかわる権利として創設されるものは個人の権利——この際、私は、共有もまた一つの個人的所有権の性格を持つものだ、こう解釈するのでありますが、これを共同体だとは私解釈していないのです。つまり、共同体というのは、一つの総有的性格を持つものだ、こういうふうに解釈します。そういうようなことでありますから、もう一ぺん申し上げると、この部落有あるいは財産区、こういうようなものを解消して、個人的な権利を創設するというのが、本法制定の目的のように結論していいように思うのです。そう見ていいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/16
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017・田中重五
○田中(重)政府委員 仰せのとおりでございます。
それで、いまも私から申し上げましたように、この発生の過程におきましては、入り会い林野、つまり、民法にいっております入り会い権、それからその入り会い権に基づいて使用収益される入り会い林野、それから地方自治法にいわれております旧慣使用林野、これは歴史的には同じものであるというふうに考えて差しつかえないと思います。そこで、それらの使用収益の形が、いま先生のお話しのような総有的なものであるとか、いろいろ学説はございます。いずれにいたしましても、旧来の慣行によってそのおきてがありまして、そのおきてに拘束された使用収益の形が、現在もなお広範に残っている。それをいずれも近代的な権利に置きかえていかないことには、土地の高度利用の面からいいましても、地域社会の経済の発展の面からいいましても、隘路になっているから、これを解消させよう、そうしてそこに近代的な権利を設定することによって、いま申し上げましたような農業あるいは林業上の発展に資しようというのがこの法律の目的でございます。そこで、たまたま現在では、民法における扱い方と地方自治法における扱い方とがございますから、それぞれの扱い方に応じて、その旧来の慣行を解消し、新しい権利をここに設定させようということになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/17
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018・森田重次郎
○森田委員 それで大体目的ははっきりしましたが、しかし、いま申し上げました部落総有の形の入り会い権であるとか、あるいは財産区、大字有等のものも、みなこれはそれぞれの伝統を持って、必要性があってできた一つの社会秩序だと思うのです。われわれはこの権利の形態について必ずしも悲観していない。これはそれぞれの一つの特徴を持っておるものだと実は考えるのです。にもかかわらず、今日こういう法律案が提案されたということは、つまり、その特徴をも生かしきれないという観点に立ってのことだろうと思うのです。それなら、こういう権利の実情というものは、ほんとうにほかの方法では救われないのだ、つまり、あなた方が立法なさろうという方法でなければいけないのだという何か大きい欠点、また、この方法が最もいい方法だと思われる理由ですね。なぜこういう立法をしなければならないのかというその事情を、単なる抽象理論でなく、具体的に、こういうような事情があるからこういうような立法を必要とするのだということを、この点は個別的に詳細にひとつ御説明願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/18
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019・田中重五
○田中(重)政府委員 いまも申し上げましたように、旧慣使用権といい、あるいは入り会い権といい、これは先生のお話のように、一つの秩序として受け継がれてきたものであるということはお説のとおりでございます。それで、これはやはりその地域の農民がその自給的な農業をささえ、あるいはみずからの生活を維持していくために、それに必要な農業の再生産のためになる肥料の材料を取るとか、あるいは燃料を取るとか、その他の用途に一定の地域を限って入り会う、入り会うために、それぞれ慣行によって定められたおきてに従って使用収益をしてきたという限りにおいては、それは一つの秩序であったわけであります。ところが、社会、経済情勢の進化によりまして、その自給経済から商品経済に移行していくという経済の発展の段階がございます。それから一方において、農業の再生産のための肥料等がたとえば金肥に変わってまいるとか、まぐさが牧草あるいは混合飼料に変わっていくというふうに、その使用、収益の対象となっておるその林野では、それらの必要性が漸次希薄になってくるということが、明治以後漸次始まってきたわけでございます。そこで、その経済情勢の変化に伴いながら、そのおきてについても、やはりこれに従って変化せざるを得ないということになってまいりました。最初は、先ほど先生もお話がございましたし、私も申し上げましたが、純粋の意味の共同利用の形態からスタートしていく、そうして社会、経済的変遷に応じて直轄利用の形態というようなものに移行してまいります。それからこの土地の所有という観念が、これは先生も御承知のとおり、明治以降入ってくるわけでございますから、そこで、その土地の所有名義というものについて何らの意識を必要としなかった時代から、それを確定しなければならないというようなことになってまいりますと、そこにその土地の名義人というものが発生をしてまいります。その名義人はそのときの事情でいろいろに変わって設定をされる。そのうちの一つが、いまも先生が問題提起をされました市町村であるという場合もあると思います。それから社寺であるという場合もあると思います。そういうことで、土地の所有の名義人と実際に使用、収益する権利を持っている人たちとが違うというような形があり、あるいはその使用、収益の必要性が変わってくる。自給のかわりに商品を生産しよう、それで、造林が入るというようなことになってまいりますと、使用収益する内容もそれぞれそれに応じて変革を遂げていく。要するに、やはり生産力の発展の段階に応じまして、その入り会い権者あるいは旧慣使用権者がこうしたいと考えましても、いまも申し上げましたような土地の所有の名義人の問題があるとか、あるいはそのおきてがあるとかいうことで、その入り会い権者が考えているような方向に土地の高度利用をはかることが困難であるという実態が現実にあるわけでございます。そういう点に問題をかかえている面積は、全国で二百万町歩をこえる程度に存在する。そうして民有林全体の面積の一三%にも及ぶということでございますから、その土地の今後における高度利用の方法については農林業に限って、その入り会い権者あるいは旧慣使用権者にまかせるといたしまして、そういう高度利用の障害となっている非近代的な所有の関係、旧慣の状態、それを解消していきたい、農民の新しい意欲にこたえたいというのがこの法律の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/19
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020・森田重次郎
○森田委員 少しそのお答えが抽象的過ぎるように私は考えるのです。そのとおりだと思うのですが、しかし、もう少し、この立法を必要とするものは、こういうような問題が随所に起こったのだという、必ず必要な問題が起こっているはずなんです。その問題をあまり御説明は要りませんから、こういう問題があるのだ、だからこういう立法を必要とするのだというふうに、具体的なお答えを課長さんからお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/20
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021・高須儼明
○高須説明員 具体的な事例を申し上げますと、たとえば北陸のほうのある県でございます。明治時代の名義になっておりますので、その一つを消そうと、現在の権利者の名義に書きかえようというようなことをいたしました場合、明治時代の一人の子孫をたどってまいりますと、四十八名もいた。四十八名のある者は外国に行っておるというようなことで、それらの一つ一つの相続の経緯あるいは転売の経緯等をいろいろだどってまいりまして、その順番に登記を進めてまいりまして、最後に現在の権利者の氏名に書きかえる、こういうような一人の名前を消すためにも、ばく大な経費と時間を必要といたすわけなんでございます。したがいまして、こういうような現在の権利者の正確な所有名義に切りかえなければ、融資の道も閉ざされている、あるいはいろいろな資金を導入する、政府も補助を行なってまいるというようなこともできかねておる次第でございます。たとえば公団造林などを及ぼそうといたしましても、名義がはっきりいたさない、だれの所有物であるかはっきりしない、そこで担保にもとれない。地上権設定ができない。こういうようなことで、政府がたとえ補助の手を差し伸べよう、あるいは融資をいたそうと思いましても、対象になってまいらない。勢い、すべてのものがそこから逃げて、置き去りにしていこう、こういう結果に相なっておるわけでございます。二百万ヘクタール以上のところでは、今日必要な飼料畑の造成であるとか、草地造成、いろいろな必要性があるわけでございますが、具体的にそれが動かないというのが現実の問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/21
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022・森田重次郎
○森田委員 一応その点をお伺いしておきまして、そこで、次の問題でありますが、いまのようにいろいろの問題が起こって、これを解決しなければ新時代に適応ができない、こういう考えで個人権利化するのだ、これが近代的要請だという御見解のもとにこの案を出したと考えられるのですが、一体個人の権利にしてしまえば、どんな特徴があるのか、どういう利点があるのか、それもあまりめんどうでなくて、抽象的でなく、具体的にお答えを願えれば幸いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/22
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023・田中重五
○田中(重)政府委員 まずその土地を高度利用していこうという場合に、それが確実に自分のものである、自分の権利のもとにある土地であり、あるいは持ち分であるということで、初めてその意欲もわいてくるというものであろうと思います。それからその次は、そういうふうに権利が所有権なり地上権なりに明確になりましてこそ、いまも調査課長からお答えを申し上げましたように、これを補助の対象とする場合にいたしましても、融資の対象とするにいたしましても、初めて可能になってくるということが言えるかと思います。それで、その旧慣使用権あるいは入り会い権が解消をして、そして新しい権利が個人のものになった後に、それが法人その他のものに出資をされていくという過程を経るにいたしましても、いずれにしても、一たんは近代的な市民法の考えている権利、そういうものに改変をされる必要があるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/23
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024・森田重次郎
○森田委員 そこで、次の問題をお伺いしたいのですが、なるほど個人的権利に移行させると、個人の創造意欲と結びついて、林産業も能率化するだろうというような前提のもとにやられた。しかし、それと同時に、この土地の兼併が行なわれるという弊害が必ず起こると思う。いま共同化の総有的な権利としてめんどうなことになっているから、また過去のものとして共同生活の経済上の基盤として温存されているのです。これをいまこの法律で個人的にやられると、山の中のほんとうの部落などでも、必ず金を持っている者にその個人的権利というものが集中していく。このままの権利ならば、不十分であってもとにかく共同生活の経済基盤があったのだ。ところが、今度いよいよ個人的なものになっちゃって、だれか一人にそれが集中してしまうと、そこから脱落した方々はおそらく永遠にその権利にあずかることができないという現象が必ず起こってくるということを私は憂えるのです。こういうものは防ぎようがないように思うのですが、これに対しては何かお考えがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/24
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025・田中重五
○田中(重)政府委員 それはごもっともな御意見だと思います。それで、まず、入り会い林野整備計画あるいは旧慣使用林野整備計画を都道府県知事の権限で審査をして、そして認可を与えるという手続になっておりますけれども、その計画を知事が認可をする段階で、この新しい権利が不当に一部の者に集中しないように十分に配慮を加えるということをまず明確に規定をいたしております。なお、その計画の内容におきましても、その土地の利用計画の上においていろいろ具体的に盛られてくることになると思いますが、そういう点でもやはり知事の審査がそこで行なわれるということになりますから、そこで、そういう意味からいいますと、まず審査の段階で、先生の御心配になる点を十分に防ぎ得るのではないかという考えがございますが、一たんその計画が認可をされて、そうして新しい権利が設定されました場合には、政府といたしまして、できるだけ生産森林組合あるいは農業の場合には農業生産法人等、そういう法人にその新しい権利を持ち分として出資をさせて、そうして権利の零細分散化あるいはまた一部の者への兼併、それを防ぐように行政指導で持ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/25
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026・森田重次郎
○森田委員 そういうお答えがあるのではないかと思って、実は少し調べてみたのです。ところが、いまのお答えでは、とてもそれはうまくいきそうがないと私は思う。第一に、いまあなたがお答えになったのは、六条の二項の三でお答えになっている。ところが、六条の二項の三というのは、これは認可を与えるときに集中させないようにしようというだけの話なんです。問題は、そうじゃやない。一ぺん認可して、権利が分割されて個人に行き渡った後に、長い時間の間に必ず兼併が起こる、こういうことなんです。私はそれを心配しているのです。それを防ぐ方法は、いまのあなたのお答えでは、これはとても防ぎ切れません。これは第六条の二項の三の規定の運用のことをいま私はお話し申し上げているのですが、これであなたとても救えるわけがないのです、認可のときだけですから。
そこで、もう一つ、いまのお答えの中にあるのは、森林組合もしくは農業生産法人等にこれをなるべく移行させたい、そうすると、一つの共同化になるのじゃないかという御意見のようにお伺いしたのですが、たぶんそうだろうと思います。これはそこの七十八条に規定されておりまして、これも調べてみました。ところが、これはただきわめて何か特殊な利益を与えることによって、たとえば登記の場合の利益を与えるとか、何かそういうようなことで、なるべく共同化していこうじゃないかというふうにお考えになっておるようでありますが、これはいくかもしれないけれども、おそらくは大部分のものはそこへいかないだろうと考えられる。もしあなたがそういうふうにお考えなさるなら、この立法の中で、いまの人格転換が行なわれるのですから、人格転換が行なわれるときに、近代化、つまり、近代的な新たな装いで登場させる切りかえの場合に、もう少しうまい立法をしていただいて、そこへすぐ大部分のものが切りかわっていくような方法でこれを立法してもらわなければ、これはやはり漫然と切りかえられて、個人の権利になって、そしてその後長い年月の間には必ず兼併が行なわれて、せっかく山の中などで小さな部落などが一応共同体としての森林経営で平和を保たれていたのが、そうでない場面に到来する危険性があると私は考える。だから、こういう点にこの立法の非常に反省しなければならない点があるように私は考えるのですが、この点に対しても一応御意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/26
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027・田中重五
○田中(重)政府委員 そのお考えはごもっともだと存じます。それで、この法律の立案にあたりましても、いま申し上げましたような趣旨を盛り込むと同時に、権利取得後の扱いについては、できるだけ集中あるいは分散を避けるように行政指導をしたいということを申し上げたわけでございます。また、それぞれの具体的な入り会い林野の所在する町村におきましては、そういうような趣旨でのコンサルタントその他を設置をいたしまして、そういう趣旨で将来計画を進めるような指導もあわせ行なってまいりたい、こう考えている次第でございます。いずれにいたしましても、この法律のいっておりますところは、旧来の慣行による権利を近代的な私権に切りかえるという点にねらいがございますので、その私権の行使について法律の面で強制的に制度を考えるということにつきましては、これを政府の考え方としてはとらなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/27
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028・森田重次郎
○森田委員 大臣が時間の制約があるそうでございますから、少し論を飛ばして大臣の御意見をお伺いしておきたい。
それは要するに、この法律の目的とされるものは、旧来の入り会い権なりあるいは財産区なり、そういうような総有的な性質を持っているものの権利を消滅させて、新しく個人的な権利にこれを移行させるというのが本法の目的だというのであります。まさに個人主義の頂点に達した現代ローマ法のおもむくところ、やむを得ない立場に立たされたように実は私は思うのです。しかし、今日の姿を大臣ごらんください。この都会のどこに一体平和がある。つまり、権利権利といってお互い権利の争いばかりしておって、外へ出たったって安心が一つもできないようなかっこうになっているのでありまして、文明だ文明だと言いますけれども、何が一体文明なのか。毎日人殺しが行なわれている。こういう時代、これはやはり権利権利という個人主義中心の時代だから、こうなったものであって、これはローマ法の欠点が如実に実現されている時代なんだと私は解釈するのです。ところが、これとちょうど対照的になっている問題は、いまの入り会い権です。これはなるほどいま数は非常に少なくなっておりますけれども、日本のこの山の中に百戸以下の部落がたくさんございます。いまこの入り会い権の存在を統計によって見ますと、大体百戸以下の部落の入り会い権というのは八五%を占めているはずであります。この存在ということは、日本の山村農民生活にとってきわめて重要な共同生活の経済上の基礎を与えているのです。なるほどいろいろの欠陥がありましょう。先ほど御指摘になられたとおり、私もそれを認めます。しかし、その欠陥はその欠陥として是正できるはずなんです。たとえば人の権利の関係が混乱していて、形式上の仮装した名義が今日実態に合わない、こういう欠陥があることは、私も承知いたしております。承知いたしておりますが、それはその面で是正できるはずなんです。たとえば、いまこの売り上げ高がどういう形で使用されているかなどということを統計によって見ましても、こうなっております。山林収入の使途別比率というものの調査によりますと、一九五五年二月から一九六〇年の一月までの五カ年間の平均になっているようであり、一九六〇年のセンサスによるものなのでありますが、それによりますと、部落費、部落公共事業等に使用するものが六一・九%になっておる。それから造林事業に使用されるものが二一・六%、市町村の費用に支出されるものが三・二%、権利者に分配するものが二六・五%、その他一二・一%となっている。これは非常に重大な統計だと実は私は思うのであります。それはなぜかというと、部落費、部落公共事業に使用するものが六一%を占めているということ、約六二%になりますが、こういうことはたいへんなことなんです。何に使うか。たとえば消防、公会堂、お祭りの費用あるいは部落レクリェーションの費用、そういうものが共同生活の基盤になっているわけなのであります。これが私は日本の農村の実生活の上から見ても、非常に価値があると見るべきだと思うのです。何も映画を見るばかりが能ではない。やはり部落の中にいて、郷土芸術を中心にみんなが楽しめる、その経済上の基礎を与えていたものがこの入り会い権なんです。それをどうして廃止して個人に分配しなければならないのか、これは非常に大きい政治問題でもあるし、社会問題でもあると実は私は思うのであります。今日、入り会い権がなくたってめいめい金を出し出しすればいいじゃないかという議論も立ちましょう。しかし、大臣はこの辺は一番よく御存じのはずなんです。金持ちはよけい出した、貧乏人はさっぱり出せない、お祭りの酒もすみのほうで小さくなって飲んでいなければならない、こういうようなコンプレックスを感じさせることがなく、一年に一度や二度のお祭りだけは、みんな何らの隔たりがなく平等の立場で、しかも先祖伝来から伝わってきた郷土芸術なりお祭りの雰囲気に浸っている、これが農村にとってのただ一つの生活価値なんです。ところが、これがいまなくなろうということなんです。それで、これを個人に分配してしまおうというところが、私は実はおかしいと思う。だから大臣、どう考えても、この共同体というものはこのままやはり持続していくという体制も、私は一本考えてもらいたい。なるほど都会に接近してしまって、近代生活と非常に接触が激しくて、とてもそういう共同体を維持できないような場所は、これはこの立法のとおり個人化していったらいいでしょう。しかし、日本の山村なんというものは、そういうところにばかりあるわけではない。先ほど申し上げましたように、この統計を見ましても、事業構成といたしましては、百戸以下の部落というようなものが八五%を占めている。こういうのでありますから、相当部分やはり分解しないでそのまま残しておいたほうがいいのじゃないかと私は思う節がある。したがって、そういう共同体生活、つまり、ゲルマン法の最もいい法が日本の中にも温存されておるのですから、これを時代おくれだといってすぐ否定するというようなことでなく、どうやったならばそれを温存しつつ近代生活に順応ができるかという立場をとって、そして立法していったらそれでいいのだ、こういうふうに一方的にローマ法化していくということは、私は、近代化でも何でもない、実はこう考えるのです。大臣、どうでしょう、何もしいてこれを全部個人化する必要がないのだから、やはりそういうものはそういうものとして、近代的な形になれるような法改正というものも今後十分検討に値する、また政府のほうでも、そういう形の方向に、つまり二本立てで進んでいくことが、きわめて必要な政治態度ではないか、私はこんなふうに考えるのでありますが、この点に対して大臣の御高見をお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/28
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029・坂田英一
○坂田国務大臣 森田委員の申された論点については、私も共鳴の点があるのでございます。しこうして、それは現在よりももっと以前においては、特別にそういう思想が強かったことは、私も申し上げることができると思います。しかし、現在のように、だんだんかような情勢に相なってまいりますと——もちろん、今度のこの法律も、いかなるところも必ずやるという思想ではございませんので、いわば手続方法になるわけでございます。つまり、この入り会い権を現代的に近代化して、そしてそこらの権利関係をはっきりさせて、そして土地の利用を十分ならしめつつ、その部落の発展をはかろうということについて、そういう場合において、どうしてもこの際は現在の入り会い権を解消して近代的な形に持ってくることが、その地帯としてきわめて重要である、そういう地帯にこれらの実行を行なっていこう。したがって、これを法律でことごとく強制するというのではなしに、ただ、それをやる場合においては、普通の権利義務の関係を整備していくということであっては、これはとても困難でございます。これはもう森田委員もよく御存じのとおりに、全部の権利者がそろっていろいろやりまする際にも非常に困難な問題がございますので、今度のような法律を制定いたしまして、それらのことを便宜に行ない得る、こういうことを考えたわけでありますし、その際における登録税その他の税制の問題とかいったようなものに便宜を与えよう、こういう趣旨でありますし、またその計画を立てる際においても、知事が中心になり、あるいは農林省等においても十分それらの行き方を審査いたしまして、そうして実行に移していこう、こういうことに相なるわけでございます。したがって、現在の行政からいきますと、いま森田委員の言われたような部落も、それは非常に少なくなってきておるように私は思う。したがって、それらの問題のあるところにおいては、これは強制するわけではもちろんございませんので、これらの問題はいわゆる行政指導によって進めていく、こういう行き方でいきたい、こう考えておるわけでございます。
それからでき上がったものにつきましても、先ほど申しましたように、単なる個人関係に移すというのではなしに、また一人当たりにすると、非常に小さいものからかなり大きなものというふうに、地方の実態に応じていろいろの姿があるわけでございますので、それらに即応して、そして単なる個人経営といったようなことでなしに、先ほど申しましたように、できるだけ協業的な形をとるなり、あるいは共同的な形をとるなりして、それらの経営を進めていくように、このでき上がったものについても、そういう指導を進めてまいりたい、かように考えておるというふうに御了承を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/29
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030・田中重五
○田中(重)政府委員 ただいまの大臣のお答えに補足して申し上げたいと思いますが、森田先生のお考えはよくわかります。ただ、いま例としておあげになりました、入り会い林野からあがった収入がこのように使われているというような実態につきましては、これはたとえば、その入り会い林野の古典的な形態としての共同利用形態から、直轄利用形態というものに移った。そういう入り会い林野で造林がなされたものの収穫についての使い方が、共同体的な使い方で行なわれているではないか、これをぶっこわすのかというようなことになるかと思います。そこで、直轄利用形態等でそういう造林が済んだことの過程については別といたしまして、そういう造林は多くの場合、労務の賦役といいますか、無償の労力、あるいは報酬があったとしてもきわめて低い対価しか与えられないような、そういう労働条件のもとでこの造林が行なわれたということが、現在の入り会い林野の造林地の多くの実態でございます。したがって、そういうような伐採あと地の再造林が、これからそういう条件で可能かどうかという点もございます。ことに個人の権利意識が相当に変わってきておるということがあります。また、山村から労働力が流出もしていくというようなことがございますと、こういうような財産の造成が今後このままで可能かどうかということについては、相当疑問があるのではないか、こういう考え方がございますのが一点。
それからその次は、こういうような収入がその入り会い集団にあったといたしましても、その金で学校ができたり、あるいは橋がかかったりということはけっこうではございますけれども、その部落だけでそのような公共費を負担すべきものかどうかということについての反省も必要ではないかという考え方も出てくるわけでございます。やはりその当該市町村の財政の健全化といいますか、充実によって、その市町村の及ぶ範囲のすみずみまで、その市町村住民、あるいはその県、あるいは国の負担において、そのような社会環境、生活環境の改善が行なわれるべきではないかというような考え方もいたすわけでございます。したがって、そのような山村の改善、今度の山村振興法等が考えておりますようなことにつきましても、やはり国なり県なり市町村なり、そういうところから改善の手が差し伸べられていくということが順序ではなかろうか。その部落だけでその部落の範囲の公共費を負担したということは、やはり過去のそういった実態がしからしめたものであり、これは部落の貧困がしからしめたものである、町村の財政の貧困がしからしめたものであろうという考え方があるわけでございます。
それから一方、この法律が考えておりますような個別私権化が行なわれた、その上で、それが法人の形であるなり何なりの形で土地利用の高度化が行なわれるというときには、やはりそれによって固定資産税等、つまり近代的な財政収入というものがその町村の財政を豊かにしてまいるということに相なるのではないかというような考え方も、この法律の根底に横たわっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/30
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031・森田重次郎
○森田委員 詳細な御答弁をいただきましたが、学校の問題であるとか、労働力供出の問題であるとか、なるほど、そういう現象的な面をつかまえれば、若干理由がないわけじゃないと思います。しかし、そういうことじゃないのです。そういうことは、なるほど村が出すべきものは村で出せばいい。町が出すべきものは町が出せばいい。県が出すべきものは県で出せばいい。国が出すべきものは国が出せばいい。ただ、純粋な形における入り会い権というものの価値をわれわれは認めている。だから、それから起こる弊害をあなた方が全然救済しようとしていない、そっちは野放しにしておいて、そうして権利を個人化することのみが近代化だという考え方におかしい点があると、私はこう申し上げている。なるほど、大臣のお答えのように、第三条を見ますと、入り会い権者全員の合意を必要とすると、こう書いて、いかにも民主主義的で、強制しないんだといっておる。また第十九条においても、市町村にある財産区を消す場合などでも、市町村長は議会の議決を経ることが必要だとか、あるいは旧慣使用者の意見を聞くべきだなどといって、いかにも了解を得ているので、強制しないように大臣はいま答弁しましたけれども、この立法の第一条、第二条をごらんください。もう率直に表明しているんですよ。入り会い権を消滅させると、こう書いてある。それから、旧慣使用権を消滅させる、それを消滅させるのが近代化だ、それが第一条の権利の近代化だ、こううたっているのがこの法律なんです。だから、大臣、あなた、ここでそういう答弁をすれば一時責任が免れるなどとお考えになられるんじゃ、この法律の根本趣旨と合わない答弁になると私は思うのです。そうじゃない。この法律は、もう一ぺん繰り返せば、入り会い権なりあるいは財産区なり消滅させるということが目的なんです。そしていろいろのえさでもってこれをつって、県知事に計画を立てさせるようにやらせて、その告示をすると、即刻個人の権利に移行して、そこで入り会い権が消滅するという、非常に厳格な法律なのです。そういう点に私は非常に疑問を持つわけなのです。でありますから、ここで私が大臣、あなたに聞きたいことは、法律じゃないのです。私は、あなたに法律論を聞く気持ちは毛頭ございません。そうじゃなくて、この法律の目的は、入り会い権なりあるいはその旧慣使用権を消滅させるということを明確に旗立ててうたっている法律なのです。それじゃどうもおかしいじゃないか。何も消滅させなくたって、いいところを近代的な世界に適応するように一応これを助長するような立法も考えられたらどうかと、こういうことなのです。だから、幸い任意にやらせるというのでありますから、幾らか残るでしょう。残るならば、それを別な立法の方向にひとつ検討してもらえないかということを大臣に質問しているのです。これは政治家の立場からひとつ御答弁を願いたいのです。何のために全部ローマ法的な個人化をしてしまって、ゲルマン法的ないいところまで消してしまわなければならないのか、そこに私の疑点があるので、残っている部分について別な立法をするだけの幅を持った検討の余地が私はあると思うから、大臣にひとつその点に対する御答弁を願いたい、こういうことなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/31
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032・坂田英一
○坂田国務大臣 森田委員の申されたことについて、本質的には私もさような考え方をずっと持っておったのです。もっと徹底的に申しますと、これは永小作権の消滅問題があったときに、私は存続を主張して大問題を起こしたこともあるくらいでございまして、法律上便宜であるとか、法律上はっきりしないものだからそういうものは消滅すべきであるということについて、私は反対なのです。やはり実情に即応して、ほんとうに社会をよくする、こういう意味から、むずかしい法律でも存続させる必要のあるものは存続さすべきものであるという点について、私は終始一貫しております。その点は、森田委員が大体その気持ちで言われておるのであろうと私も考えます。私はそういうわけでございますが、現在のこの入り会い権の問題について考えましたときに、いろいろ見ましても、最近は草刈り場としての効果をなくしていたり、あってもそれが個人的の共同的なものに変わっていたり、それから今度林野にそれを育成する場合においても、非常に困難性を認める。いわゆる権利者がよそへ行っておってわからなくなって非常に困るという場合が起こってみたり、これは詳細な点はなんでございまするが、最近のいろいろの実態を見ると、やはりこれはやむを得ず永小作権の消滅のように、いわゆる近代化して、はっきり権利関係ができるものならば——できないものはやむを得ないが、できるものならば、また全体がそこに合意するものであるならば、でき得る限りの範囲においてそういう方向に進むがよかろうというふうに考えておるわけでございます。そういう点から見て、現在の入り会い権は大勢的に見まして、とにかく方法を講じてこれらの消滅をはかっていくということが、現在としては必要ではないか。しかし、これはいま申しましたように、法律によって全部を失わしめるとか、そういうことではなしに、手続法によってそういう方向に進むことがいいのではないか、かように考えたようなわけであります。したがいまして、現在の実情においても存続しておく必要のあるということ、これは総合的に比較考慮すべきことであって、どちらがどうということを絶対的に言えないわけでございます。しかし、大勢論としては、これはやはり消滅して近代化するほうが適当である、こういうふうに判断したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/32
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033・森田重次郎
○森田委員 大臣お急ぎのようでありますから、結論だけちょっと。つまり、こういうことなのです。この法律に私は反対しているわけじゃないのです。やはりこの方面の近代化は必要だが、しかし、入り会い権というものの特徴があるのですから、この法律で全部消えるのじゃないのです。やはり残る。残ったものは野放しにしておかれては困る、こういうことなのです。それを助けるような立法の方向をひとつきめてもらえないか、それを検討してもらえないかということを大臣の答弁をお伺いしておきたいということなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/33
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034・坂田英一
○坂田国務大臣 私もそれは同感でございます。現在の情勢から申しますと、非常にわずかな部分であろうと思うのです。以前は、以前というのは、だいぶんこれは年代的ですけれども、永小作権が存続しておったあの当時においては、私は絶対これを存続する主張を唱えたものです。これらの問題についても、永小作権並びに入り会い権についても、同様の主張を唱えた一人でございますが、現在の情勢はやはり大勢としては、これを消滅させて、そうして近代化していきたいという気持ちでございます。それはやはり経済情勢の変化によるものである、時代の変遷であると思うのでございます。そういうことでございますが、しかし、いま仰せられたように、手続的には、まだ存続しておく段階のものもあろうと思います。確かにそういうことであろうと思いますから、そういう点については研究を加えていきたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/34
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035・森田重次郎
○森田委員 そこで、これは少し質問が前後いたしましたが、長官にお尋ねいたしたい。
これは事務的なことになりますが、一体本法を施行するにあたって、どういうような特典が与えられているか、これを項目別に、あまり詳しくなくていいが、こういう特典があるんだということを列挙していただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/35
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036・田中重五
○田中(重)政府委員 特典につきまして申し上げますと、まず登記でございます。登記につきましては、権利を取得した者にかわりまして、都道府県知事が一括して登記の申請を行なうように、登記の手続の簡素化をまずはかったということが一点でございます。
その次は、税制の面におきまして、所得税、登録税、それから不動産取得税でございますが、これについての特例の措置を講じております。まず、入り会い林野整備等によりましてその権利が個人に移ります、そこに経済的な利益として考えられるものが生ずることがある、しかし、それにつきましては租税を課さない、それが第一点。その次が登録税についてでございますが、入り会い林野整備等によりまして取得いたしました所有権その他の権利についての登記については、登録税を課さない、非課税にするということでございます。それから先ほどお話の出ました、そういう権利を生産森林組合あるいは農業生産法人等に出資をしたというような場合に、出資を受けた場合のその権利の登記につきましては、これは土地の価格の千分の六にするということでございます。その次は、不動産取得税についてでございます。それの課税標準の算定につきましては、固定資産税評価額に、通常の売買価額に対する土地の取得にかかる支払い額の割り会いを乗じた額によるというふうにいたしております。
登記の手続、それから税制上の恩典、以上のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/36
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037・森田重次郎
○森田委員 それじゃ最後に、もう一点お伺いしておきたいのですが、それは官有地に入り会い権というものが存在するのかどうかという問題、この点について、ひとつ林野庁の見解をお伺いいたしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/37
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038・田中重五
○田中(重)政府委員 そのお尋ねの点につきましては、学説としてはいろいろございますけれども、農林省としてとっております考えといたしましては、結論を申し上げますと、やはり大審院の判例のように、国有林野には入り会い権はないという考え方でございます。もちろん、明治の初めの土地官民有区分のあの時期に、入り会い林野等に準じたもの、その他官有地となったものがあるかと思います。その中には、すでにそういうものについては払い下げを行なったもの、あるいはまた国有林野法に基づきまして、共用林野あるいは部分林その他の契約関係に切りかえたものということになっているというふうに理解をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/38
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039・森田重次郎
○森田委員 これに関連して、大審院の判例が大正四年の三月に出ているようでございます。これは御承知だろうと思いますが、これを見ますと、大審院においては、官有地には従来の入り会い権はないという判例が出されて、それから以後は官有地についての入り会い権が否定されている、こういうふうに聞いている。これは最も権威ある判例でございます。この判例が出て以来、林野庁のほうの見解もまた、国家の最高の裁判所の意思表示でありますから、このとおり行政庁では考えて、官有地には入り会いがないのだという見解で一貫してきているわけでございますか、その点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/39
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040・田中重五
○田中(重)政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/40
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041・森田重次郎
○森田委員 以上で私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/41
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042・中川俊思
○中川委員長 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
午前十一時五十四分休憩
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午後一時三十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/42
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043・中川俊思
○中川委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。
午前に引き続き質疑を行ないます。森義視君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/43
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044・森義視
○森(義)委員 この法案は、当初林業基本法の関連法として、林業基本法の提案と同時期に提出する予定であったところが、関係各省、特に自治、法務、大蔵との折衝が非常に難渋をきわめてきょうになった、こういうふうに承っておるわけでございますが、特に関係各省との折衝の中で問題点になったところ、どういう点が問題点になって二国会も経過したか、その点について最初に承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/44
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045・田中重五
○田中(重)政府委員 この法案は、林業基本法の趣旨に沿いまして、具体化施策の一環として考えたわけでございます。それから林業基本法の十二条にも、小規模林業経営の規模の拡大ということで、特に入り会い林野という名をあげて規定もいたしているということで、その提案を急いだわけでございましたが、御承知のとおり、入り会い慣行が行なわれている実態に、民法にいうところの入り会い権に対して、地方自治法にいうところの、慣行により公有財産を使用するという形の使用収益の型がございます。それで、それぞれを一つの方式にまとめて近代化の手続を進めていくということには難点がございまして、やはり民法あるいは地方自治法のそれぞれの規定に従ってその近代化の手続を進めていくということに、自治省との話し合いを進めていく過程におきまして、いろいろ論議があったということが一点。
それからそのほか、この入り会い権の消滅と近代的私権の設定という過程において、税法上、手続上の恩典を与えることにつきましての大蔵省あるいは法務省等との折衝に、相当に論議を重ねる必要がございましたので、今日ようやく提案する運びになったのでございますが、相当な時日を要した、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/45
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046・森義視
○森(義)委員 いまのお話で、自治省とは、自治法上の旧慣使用権の問題あるいは民法の入り会い権の問題を同一法律で律することはむずかしいという問題で、議論があった。特に大蔵省、自治省とは税法での恩典の問題があった。それだけの問題で二年ほど折衝に日を要した、こういうことですか。それなら、当初農林省から出されましたこの法案の基本的な考え方が、その折衝をめぐってどこか修正された、あるいは曲げられた、こういうことはございませんか。当初の農林省の計画どおりに大蔵省やあるいは法務省、自治省を説得し得た、こういうふうにお考えなのですか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/46
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047・田中重五
○田中(重)政府委員 その点につきましては、説得をしたということはちょっと語弊がございますけれども、相互の意見の交換を通じて意思統一をはかるのに必要な時間を要したということでございまして、当初の考え方が変わったというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/47
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048・森義視
○森(義)委員 自治省からお見えになっておりますが、その点、いま林野庁長官から答弁があったとおりなんですか。特に自治省からこの法案の作成の過程で問題点がなかったのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/48
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049・降矢敬義
○降矢説明員 自治省といたしましては、ただいま長官から御説明がございました旧慣による使用権の問題につきまして、自治法にある手続を前提にしてこの法律を特に考えてもらうという点と、旧慣による使用権の場合においては、公有財産の使用でございますので、その面で行政目的を明確にした上でこういう権利の近代化をすべきじゃないかという御意見を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/49
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050・森義視
○森(義)委員 この法案を読みますと、確かに直接には旧慣使用権の問題で自治省としては問題があると思うのですが、入り会い権の今度の整備は、具体的に法案が成立しますと、各地方自治体で知事が認可をするわけですね。実際の行政指導は、おそらく入り会い山のある市町村が扱うことになると思うのです。そういう点について、地方自治体の公有林であるところの、いわゆる旧慣使用権の問題だけをこの法案の中で論議をされた。そうすると、入り会い権をこれから実際に運営されていく過程の作業を担当する自治省として、その点について問題点はなかったのか。あるいはあとでも議論をしたいと思いますけれども、現在入り会い林がそれぞれの貧しい山村部落の大きな固有財産になって、いろいろと活用されておる。そういう問題についても意見がなかったのか、あわせて答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/50
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051・降矢敬義
○降矢説明員 ただいま、前段申し上げた公有財産という観点を主として、農林省との折衝では意見を申し上げた次第でございますが、なお、市町村における入り会い山について、いま御指摘のありました財政問題については、特に入り会い権者の意思を主体にしてこの権利の近代化を進めるべきであるという主張はいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/51
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052・森義視
○森(義)委員 そういう形式的に表立ったあれではなくて、実際にやるのですよ。この法案ができますと、各地方自治体がこの法案に基づいていろいろと作業をしなければならないわけなんです。そういう問題で、たとえば知勇が入り会い林の整備計画を出されて、それを公告して、異議がなければこれを認可する、あるいは異議の申し立てがあれば、それを調停する、こういう形で、たいへんな事務量がふえてくるわけなんです。特に入り会い林の問題は、長い歴史を通じてもう複雑な紛争過程を経過してきたことは御承知だと思うのです。そういう問題を処理する場合に、いまの公選知事、できるだけそういうトラブルに巻き込まれたくないと言っている公選知事が、これをやらなくちゃならない形になるわけなんだ。官選知事と違うわけですね。しかし、そういう複雑な業務を地方自治体が負担をする場合に、この法律では事務費の二分の一国庫負担になっているわけですね。実際にこの法案が成立になった後において、地方自治体が負担するそういう業務の問題について検討せずに、この旧慣使用権の問題がいわゆる地方自治法上の精神を逸脱しない範囲で行なわれるならばいいとか、あるいは入り会い権がこの法案の目的に利用されるならばいいとか、そういう形式的なことで、きょうまで二年間の林野庁との折衝でそんな話しかしてこなかったのか。実際にこの法案が施行されたらどうなるんだということは、少なくとも自治省としては十分検討されたと思うのですが、その点どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/52
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053・降矢敬義
○降矢説明員 ただいま御指摘の、この法案成立後の事務の問題につきましては、自治省といたしまして、林野庁と話したところは、一緒になって府県並びに市町村についても指導をやる、林野庁におきましては、先ほどの御答弁もございましたように、たとえば林野庁の林業のコンサルタントというようなものを通じて、この仕事についての援助、指導というものをやっていくのだということでございました。
なお、事務費の負担につきましては、その点については、われわれも申し上げましたが、農林省といたしましては、現在法案に規定されてあるような考え方で十分だ、こういうことでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/53
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054・森義視
○森(義)委員 農林省が十分だと言われたから、それでけっこうです、まあこういうことなんですが、あなたはその交渉、折衝の当事者として参加をしておられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/54
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055・降矢敬義
○降矢説明員 途中からかわりましたので、直接参加しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/55
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056・森義視
○森(義)委員 林野庁長官、いま自治省の降矢参事官から自治省としての答弁があったわけなんですが、長官はこの問題で各省折衝に直接参加されたと思うのですが、主として自治省との間に、特にこの法案をめぐって今日まで難渋をきわめた問題というのはあったと思うのです。その点について具体的に、参加された長官のほうから、もっと詳しい内容についてお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/56
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057・田中重五
○田中(重)政府委員 その経過として申し上げますと、最初のこの法案の立て方といたしまして、地方自治法にいうところの旧慣使用林野、これに
つきましても、民法にいうところの入り会い権と同じような扱いでこれを考えていくという構想が当初あったわけでございます。しかし、それはよく研究をいたしますと、すでに先生の御承知のとおり、その使用収益の実態は、沿革的に同じようなものであっても、それが公有財産である場合には、市町村の住民が公有財産を使用する場合には、その旧慣による、そうして、その旧慣を変更または廃止する場合には、市町村議会の議決を経なければならないというようなことになっております。そこで、この旧慣使用権の廃止でございますが、やはりその点については、地方自治法の規定によることが妥当であろうということが一点。
それからもう一つは、この法律にございますように、先生も御承知のわけでございますが、旧慣使用林野整備の場合には、「その農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進するため、」云々というふうにございます。こういうような考え方は、やはりそれが使用収益の実態が入り会い林野と似たようなものであっても、公有財産の問題であるという観点から、特にこの十九条にこの趣旨が明らかにされたわけでございまして、そういうことが自治省との折衝の過程で順次具体的に、論点と申しますか、問題点として出てまいったということが一点。
〔委員長退席、舘林委員長代理着席〕
その次は、先ほども御質問にございました、この手続を進めていく場合に、県として必要な経費の二分の一、この点につきましては、自治省との間に十分に話がつき、また大蔵省との間も十分に話がついた、見解の一致した問題でございます。しかし、これもここにくるまでにはいろいろ議論がございましたけれども、こういうことに落ちついたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/57
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058・森義視
○森(義)委員 実際の事務費が二分の一でやれるというような問題については、まあ自治省のほうがそれで了解をされておるならば、あるいは大蔵省と農林省との間で了解がついておるならば、あえて申し上げませんけれども、私は、この法案を実際林野庁から説明される場合に、折衝相手である大蔵省あるいは自治省が、入り会い林の問題について詳しく御存じないのじゃないか、少なくとも入り会い林を今度こういうように近代化するということは、どういう地域に経済的、制度的変革を及ぼすかということについて、おそらく御存じないのじゃないか。したがって、地方自治法の旧慣使用権の問題が、いわゆる権利が明らかになるという林野庁の説明で、近代化されて、もっと合理的な、能率的な経営に変わっていくのだという説明だけをそのままに受けた形で、自治省は了解をされたのじゃないか、こういうように実は思うわけなんです。いわば相手が内容を知らないことにつけ込んで、林野庁がうまく言って、持っていかされたのじゃないか。というのは、実際これは法案が成立した後の自治省が負担する、特に地方自治体が負担するものはたいへんなことなんです。私は、そのことがいまから想定され、予想されるだけに、おそらくこの折衝に参加された自治省の方は内応を知らないうちにこういう形になってしまったのじゃないか、そういうふうな危惧を抱くわけなんです。
そこで、もう一つ、法案の内容に入る前にお伺いしておきたいわけですが、御承知のように、この入り会い林の問題は、長い歴史を通じていろいろな形で変遷を遂げてきた。また法律的にも問題の多い問題である。今日各地方において、その利用形態においてもずいぶんといろいろな変遷を遂げて、複雑にいろいろな形に分かれておるわけなんです。そこで、この法案を提案するにあたって、林野庁としては、そういう複雑な、しかも歴史的な慣行で今日まで長い間継続されてきた秩序を変えようとする場合に、入り会い権者あるいは入り会い集団の意見をどういうふうにして聞かれたのか、またその聞いた意見をこの法案の中へどういうふうに反映されたのか、もし聞かないとするならば、なぜ聞かなかったのか、聞く場合にどういう具体的なアンケートをとられたのか、こういうことについて特にお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/58
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059・田中重五
○田中(重)政府委員 その点につきましては、入り会い林野の実態を明らかにするために、昭和二十八年からの山村経済実態調査、さらには農林漁業調査研究、そういう国の経費を持ち込みまして、その実態の把握につとめたわけでございます。さらにその農山村を取り巻くところの社会的あるいは経済的な諸条件の変化に即応して、林業経営、さらには農業経営をいかに近代化していくかというようなことにつきましても、都道府県を通じまして、さらにはじかに入り会い集団からの聞き取り調査、そのほか学識経験者、それから公有林野協議会あるいは町村会がございますが、そういうところにつきましても、入り会い林野制度について、その意見と実態についてでき得る限りの調査はしたわけでございます。その内容が必要でございましたならば、調査課長から申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/59
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060・森義視
○森(義)委員 入り会い林それ自体を通じて意見を聞かれたとはいまの答弁では承れないわけですが、いわゆる入り会い林野を取り巻く農山村の経済実態調査を通じて、入り会い林の置かれておる現状、あるいはそれを保有している入り会い権者の大体意見を聞いた、こういうことだと思うのですが、分類すれば、入り会い権者あるいは入り会い集団の意見が、林野庁の調査によってどういうふうにあらわれておるか。たとえば現在の入り会い状態が、経営が非常に粗放で困っておる、したがってこの権利関係を明らかにしてくれ、こういうことが出てきておるから、こういう法律が出てきたと思うのですが、それ以外に、入り会い権の近代化の問題については、そういう個別分割するということが近代化ではない、こういう方法にしてほしいという意見がたくさん出てきておると思うのです。それぞれの地域によって意見の出方が違うと思うのです。現在、古典的な共同利用状態にある地域、あるいは割り山方式にある地域、あるいはとめ山方式が多い地域、こういう地域によって意見の出方が違うと思うわけです。そういう意見の出方をどういうふうに集録され、整理され、そしてこの法案に生かされてきたのか、そういう点について、いまわかれば御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/60
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061・田中重五
○田中(重)政府委員 ごもっともな御意見だと思いますが、それで、地域地域によるところの入り会い集団の意見につきましては、その事例につきましてあとで申し上げたいと思いますけれども、やはり総括して言えることは、先ほど来申し上げておりますように、やはり入り会い権者の個人的権利意識の目ざめといいますか、そういう自覚が高まっているということ、そうしてその意識に基づいて、土地の利用の高度化をはかりたいという意欲に燃えているということ、それにもかかわらず、この入り会いの慣習に伴うもろもろの拘束があるということ、その拘束があるために、土地の高度利用ができないということ、もし入り会い林野の場合を例にとりますと、そういうような考え方で、かりに入り会い権者の全員の合意のもとにそういう方向へ持っていこうといたしましても、きわめて繁雑な手続と非常に多額の経費を必要とするという現段階では、それもきわめて困難だというような実態が、おおむね全国的な傾向であるということが言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/61
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062・森義視
○森(義)委員 現在、資料にもありますように、入り会い集団は大小取りまぜて十万以上あるわけですね。それに関係しておる権利者が大体七百万といわれておりますが、大体調査をされたのは、その十万の入り会い集団の中で、どの程度の意見が調査をされたのか。あるいはそれを地域別に分けてどういうふうに調査をされたのか。それぞれ各地方によって違うわけなんです。一カ所だけを調査しましても、これは全く違った意見が出てくると思うわけです。その調査の内容について、おそらく回答は各地域によって違ってきておる、私はそう思うわけです。それで、いま長官の御答弁のように、とにかく権利意識が高まって、いわゆるいまの高度利用に障害になる権利関係を明確化してほしいという意見が大かたであった、こういう御答弁でございますけれども、これはそういうふうに粗放な経営が行なわれておる、いわゆる古典的な共同利用の状態にあるところからは、あるいはそういう意見が出てくるかもわかりません。しかし、すでに割り山方式で完全に私権化されたと同じような収益をあげておる地域からは、そんな意見は出てこないと思う。そういう点について、それぞれの地域、あるいは地域で分けることがぐあいが悪ければ、利用形態によって出てくる意見が違うと思うのですが、その意見をどういうふうに聴取され、調査されておるのか、長官が詳しく御存じなかったら、課長でもけっこうですから、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/62
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063・高須儼明
○高須説明員 ただいまの御質問に対しまして、実際行ないました調査の一つ、二つを申し上げたいと思います。
入り会い集団を事業体別にすべてを把握できましたのは、一九六〇年センサスの際でございまして、この際には、全国の各地域残らず悉皆調査をいたしておりまして、そうして初めて名寄せということが行なわれまして、十一万事業体というのを把握いたしたわけであります。こうしたものを母集団にいたしまして、その後実態調査あるいはサンプル調査などをいろいろ繰り返してまいったわけでございますが、最も新しい調査は、昭和三十九年度に行ないました「入会林野整備促進調査」という調査でございます。これは御提出申し上げております資料の六ページにその調査結果を掲げておるわけでございます。この調査でやりましたのは、全国三十六府県、百十カ町村、各町村につきまして大体二、三集落をとりまして、合計三百三十七集落を抽出いたしておるわけでございます。したがいまして、全国で十一万事業体でございます中からこれだけでございますので、はたして代表性を持つかどうかは若干問題があると思います。三百三十七集落を選出いたしますのも、ランダムではなしに、有意抽出をいたしております関係上、全般的な代表性があるとまでは申し上げるわけにまいらないわけでございますが、この調査によりますと、お配りいたしております資料の第六表のように利用形態別で分けてまいりますと、古典的な共同利用形態が二二・五%、それから部落等の入り会い集団の直轄で利用いたしておりますのが五〇・四%、それから先ほどおっしゃっておりました割り山形態が一八・九%、そのほか契約利用形態などがあるわけでございます。
そこで、先ほど長官から集約して申し上げましたように、これらの事業体、各入り会い集団の意識でございますが、総括的に申し上げますれば、先ほど長官が申し上げたとおりでございます。やはり所により、地域により、あるいは同じ場所でございましても、奥山地帯にあるものあるいは里山地帯にあるもの、そういった部落の実際の生活環境等の影響を受けまして、それぞれ違っておるわけでございます。大観いたしますと、一体に西日本のほうは権利意識が非常に進んでおりまして、分割を望む声が強いわけでございます。それから東日本、北日本のほうにつきましては、いまだ権利意識が非常に弱いものがございまして、むしろ古典的な共同利用形態が比較的多く、しかも分割しようという声は非常に少ないわけでございます。そういうようなことはございます。また、利用形態につきましても、割り山の形態をとっておりますところは、すでに長い間個人の労力あるいは資本を投じ、ある程度の造林地等がつくられておるところでございまして、こういったところは今後の権利を保全する、明確化するというような意味合いで、ある程度権利を個々に分割するという気持ちが強いようでございますが、東北地帯等の共同的利用あるいは直轄的な利用は、生産森林組合への移行を強く希望しておるようでございます。このように地域あるいは経済の発展段階等に応じまして、若干のニュアンスの相違はあることでございますが、いずれにいたしましても、従来不明確な、あいまいな権利状態を明確な権利関係に切りかえるということには強く希望を表明いたしておるようでございます。
以上、簡単でございますが、要約いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/63
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064・森義視
○森(義)委員 あとで、いま説明があった地方の利用形態別あるいは地域別の入り会い権者、集団の意見を、ひとつ資料として整理して提出していただきたいと思います。
それでは、この法律が制定される理由についてお伺いしたいのですが、政府は、広大な面積を占める入り会い林野及び旧慣使用林野の開発が進展しないのは、これらの土地についている古い権利関係が障害となっている、したがって、これを近代化して農林業上の利用を増大するため、こういうふうに提案理由で述べておられるわけですが、ここでいう開発というのはどういう意味なのか、また具体的に古い権利関係がどういう点で開発の障害になっているのか、それからさらに農林業上の利用の増進のために今日までどのような具体的な施策を講じてこられたのか、またその施策が実を結ばなかったのは、どういう点で障害になって実を結ばなかったのか、こういうことについてお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/64
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065・田中重五
○田中(重)政府委員 まず、開発の問題でございます。先生も御承知のとおりに、この入り会い林野の使用収益の形態は、まず共同利用から始まって、御承知の直轄利用形態あるいは分割利用形態等に発展を遂げてきたわけでございますが、この全体を通じまして、これを林業的利用という面から見ましても、入り会い林野全体につきまして、その人工林率といいますか、人工林化の程度をもって、たとえば開発しているとかしていないとかいうものさしといたしますと、一般の民有林に比べて、その人工林化はおくれているということが言えるかと思います。そこで、そのように林業的な角度から見て開発がおくれている、その障害は何かということになるわけでございますが、その点につきましては、やはり入り会い権者がたとえば造林をしたい、しかしながら、それは全員のく合意がおきてとして必要であるというような慣習がまずあると思います。それからさらには、たまたまその入り会い権者の都合で離村しなければならないというような場合には、やはりその慣習といたしまして、離村した場合にはその入り会い権を失うという慣行が、大体いろいろな慣行の中で八割を占めている。ですから、やはりこの入り会い権を入り会い権者が維持し続けるための要件として、その部落というか、一定地域の住民であるということが、あくまでもその資格要件になっているような制約、これもやはり造林の角度でいいました場合には、この意欲を押えていく制約になっているのではないかというふうに、これは一つの例でございますけれども、そういうことが言えると思います。そういう点で、この障害とは何かという場合に、具体的な例として一つ申し上げたわけでございます。
その次は、この利用の増進が具体的にどのようにしてなされたかという最後の点でございます。これはやはり少しさかのぼって申し上げることになると思いますけれども、まず明治の初めに、土地改革といいますか、官民有区分が行なわれた。その場合、官有と民有になって、その民有がさらに村受け公有地、それから民有第一種というふうに分かれたわけでございます。その村受け公有地がさらに官有地とそれから民有第二種、そしてその民有第二種が市町村有あるいは部落有に分解をしていったという過程がございます。その後、市制町村制、これがしかれて以来、そういう市町村有になった。公有財産であって、実態としては従来の入り会い慣行が認められたままで推移してきたという部分が相当広範にある。それに対する土地利用の面から見ました政策といたしましては、でき得る限り森林資源の維持、培養、その市町村の基本財産の造成、そういう角度で、さらにはこれとうらはらの関係としての国土の保全、そういう面から造林が相当強力に進められた。それは公有林野整理統一事業というようなものに受け継がれて、強化をされていくわけですが、そういう点の具体的な施策は何かということになりますと、そういうことであろうというふうに言えますし、さらにその一環としての公有林野官行造林事業というものも、やはりその一端をになうものであろうというふうに考えられるわけでございます。それはそれなりに、いわゆる入り会い林野の土地の高度利用としての一つの方向として、所有の関係は市町村有というものに踏み込まれながら進められた点はあるにしろ、それなりの効果はあったというふうに考えているわけでございます。それに対して、今回の入り会い林野の権利の近代化の法案といたしましては、その地域住民の創意くふうに根ざした観点から土地利用の高度化をはかっていこうということが、その基底になっているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/65
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066・森義視
○森(義)委員 入り会い林野あるいは旧慣使用林野は、開発がおくれている。開発がおくれておるというのは、たとえば人工林率はどうか、こういうことが一つのものさしになる。私は、いわゆる高度的に利用できる、有効利用のできる体制にあるかどうかということが、その地域が開発されておるか、されてないかのものさしだと思うのです。もちろん、人工林の率も一つのファクターにはなるでしょう。あるいは林道の問題もあるでしょう。あるいはその地域の経済的ないろいろな発展の大勢に応じられるかどうか、こういう問題もあるでしょう。いろいろと高度的な有効利用をし得る体制にあるか。そういう点から見るならば、いまの入り会い林野がそういう点では不十分である、こういうことはわかるわけなんです。そこで、開発がおくれておる。そういう観点に立って、開発がおくれておるという責任がいわゆる古い権利関係だけにある、こういうふうに考えるのは、私は間違いじゃないかと思うのです。確かに、古い権利関係が開発をおくれさしておる一つの理由にはなっておるかもわかりませんが、しかし、他にいろいろと林業政策上のいわゆる欠陥、そういう問題も、入り会い林野、旧慣使用林野の開発をおくれさせておる一つの大きな要因になっておると思うのです。その要因は、これは政策上排除できる要因なんですね。そういう要因を排除するためにとられた手段というものが、すべて古い権利関係が障害となって実現できないんだというふうな形でものを集約して、古い権利関係だけが近代化されるならば、入り会い林野、旧慣使用林野の開発が可能になり、農林業上の利用が増進する、そういうふうに結びつけたところに、この法案の大体一貫した考え方の流れがあるわけなんです。そういうふうに問題を整理してしまうことは大きな欠陥があるんじゃないか。現在の入り会い林野のいわゆる集団的にある土地ですね、こういう問題をどういうふうに有効的に活用するかということは、これは政策上いろいろな方法があると思うわけなんです。現在農業や林業が近代化がおくれておるその最大の原因というのは、障害になっておるのは、これは規模の零細性ということが常に指摘されているわけです。林業基本法にしましても、農業基本法にしましても、いわゆる規模の零細性が近代化をはばんでおる最大の原因として、これをどう規模を拡大していくか、こういうことに力点を置いて政策が立てられておるわけです。特に林業基本法の十二条は、この日本の林野が持つ、いわゆる近代化をはばんでおる最大の原因である零細性を克服して、規模を拡大するために、入り会い林野をどう活用するか、こういう形で十二条は書かれているわけですね。そういう観点から申し上げますと、いまたまたま経営が粗放であるけれども、集団した一つの山としてあるわけです。これを今度の法案が考えておるような権利関係の近代化、ことばをかえて言うならば、個別私権化を明確にする、いわゆる入り会い権を消滅させて分割させてしまう、こういう形でものを処理しようという考え方は、私は、いわゆる日本の農林業が持っておる規模の零細性という致命的な欠陥を克服する方策、方針と逆行するんじゃないか、こういうふうに考えるわけなんです。したがって、この法案が、入り会い林野あるいは旧慣使用林野が権利関係が障害になって、新しい開発がおくれておるのだという形だけで問題をとらまえて、その権利関係だけを明確にするというような考え方は間違っておるんじゃないか。もっと日本農林業全体の、いまの最大の欠陥である規模の零細性を克服するためにどうするかという観点から問題をとらまえますと、むしろ、あるべき現在の姿を政策的に協業化の方向で有効的に活用できるような方向に指導するのが最も適切な方法である。今度出されております農地管理事業団法だって、いわゆる農地の集団化という、自立経営農家の達成のための必要な対策として、政府が考えられておる一つの法案でございます。そういう方向に日本の農林行政が一貫して向いておるときに、入り会い権だけはまとまっていない。分割するんだ、こういう考え方は、私は、農林業上の利用の増大に結びつかない、こういうふうに考えるわけです。むしろ、そういう形になりますと、午前中に森田委員からも質問があったように、特定の人に買い占められて、農林業上の利用じゃなくて、他の目的にいわゆる土地代として売られていく、こういう傾向になる公算のほうが強い。一たん分割してしまったものを何らかの形でまとめるということは、たいへんむずかしい話です。森林法が改正になって、いわゆる生産森林組合方式がとられても、なかなかそれが進まないというのは、出資する個人の山がばらばらにある。これを出資したところで、それはいわゆる協業的な特徴を発揮できないわけですね。たとえばチェーンソーやあるいは架線を引いての近代化、集運材の伐採の近代化をはかろうとしても、山が零細なものがぽつぽつあった形では、何ら効果をあらわさない。入り会い権というものは、そういうばらばらにあるのじゃなくて、地域で固まった形であるわけです。したがって、この固まった形をどう近代化するかということは、どう有効に活用するかという点から問題を考えていかないと、いまの林野庁の考えておられる方針というのは、全く農林行政全体の方向と逆行する、こういう危険性を私は感ずるわけですが、その点についてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/66
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067・田中重五
○田中(重)政府委員 いまの入り会い林野の土地利用の非近代性は、権利関係の非近代性だけにあるというふうには考えていないのでございまして、この点は先生の御説のとおりだと存じます。したがって、その権利関係の近代化がはかられると同時に、もろもろの土地利用の高度化のための施策がとられなければならないというふうに私は考えているわけでございますけれども、ただ、土地の利用の非常に大きな障害となっているのが、非近代的な権利関係である、そういう意識に立ってこの法案を考えているわけでございます。そういう意味合いからいいまして、近代化される権利、そういうものに基づく新しい権利者が土地の利用をはかっていくという場合には、これを助長する国の積極的な施策が伴わなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。そこで、その土地の零細分散化、あるいは一部への兼併、そういうものは排除していくという考え方が、この法案にも出ているわけでございまして、県知事がこの整備計画を審査する段階で、十分にその点を考慮して審査をするということとともに、一方、近代化された権利、近代化されたその入り会い林野についての土地利用については、生産森林組合その他法人の経営にまかせるような方向で、できる限りその分散化を防ぐ方向で行政指導をしてまいるように考えております。基本法の趣旨にでき得る限り沿い得るように考えてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/67
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068・森義視
○森(義)委員 私が先ほど御質問いたしましたわが国の農林業の基本的な方向、いわゆる規模の零細性を克服するという大方針にこのことがマッチするかという点については、私は疑問を持っておる、こういうふうに実は質問の中で申し上げたわけでありますが、その点についてのいまの答弁ではたいへんもの足らないと思うわけです。いわゆる入り会い林野の整備計画がされて、それを認可されたあとで共同利用されるような、いわゆるばらばらにならないような配慮をするというけれども、それはこの法案の中には、たとえば協業化が前提なんだ、それがなければ認可しないのだという条項はどこにもない。むしろこの何では、私権化されたあとで、あとの活用方向としてそういうふうに行政指導する、いわば、それは願望なんです。行政指導の一つの目標なんですね。そういう形は、私は、いま考えておるせっかく集団化された山というもの、そういうものを個別私権化してしまったらだめだ、いまのままどう有効に活用するかという考え方のほうが、いま日本のとっておる農林業の基本方針に合致するのではないか、そういう考え方で問題を提起したわけです。いまの長官の答弁では、午前中に森田さんからその点についてたいへん心配な質問をしておられましたが、私も同じように感じるわけなんです。おそらく、零細地域における入り会い集団の中でも、特に零細規模のものが多いわけですね。そういうようなものを個別私権化するなんというのは、これは全く話にならないわけです。それは権利者が百名くらいで、五百町歩以上の入り会い林野を持っておるという地域における個別私権化の問題、これは若干検討する価値があると思う。ところが、零細規模の入り会い集団が分散してしまうと、個人当たり一反歩くらいのものになってしまう危険性すらある。そういうものを個別私権化がまず前提になって、その後協業化に入っていく、こういう形のやり方は、実情に合わないのじゃないか。むしろ、せっかくいまある、いわゆる入り会い山としてまとまっておる、こういう地域を有効に活用することを考えなくちゃならない。現地に行きますと、いわゆる零細規模の山林家が自分の山を切って自動車道路のところまで出すまでの架線の権利でずいぶんもめておるわけです。ひとの山の上を架線が通らなくちゃならないわけですね。その交渉だけでずいぶんもめて、せっかく短い架線で済むものが、遠回りして来ぬと道路まで来られない。よその山の上を通るだけでそこに何らかの金を払わなくちゃならない。こういう問題で、零細規模で分散しておる山の形態というものは、非常な経営上の支障になっておるわけです。それがたまたま入り会い林野は地域部落でまとまっておるわけです。こういうものをなぜ分散するのか。これは日本の農林業の基本方針と、何回も繰り返しますけれども、全く逆行する。したがって、将来のいわゆる行政指導として、協業化の方向でという考え方は、これはいいことなんですが、それまでに現在の状態の中で有効利用を考えられないだろうか。そのためには、林道の問題や、あるいは補助や融資の問題でこれを近代化し、機械化していく、そういう方向で国が施策を講ずることが必要であって、権利を分断化してしまうということは、全く間違った方向じゃないか、こういうふうに考えるわけなんですが、その点について、もう一回長官から答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/68
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069・田中重五
○田中(重)政府委員 その点につきましては、林業基本法の趣旨からいいましても、零細分散させることは私どもも本意ではないわけでございまして、でき得る限り経営規模の拡大をはかっていくということを考えなければならないというふうに考えております。そこで、県知事が整備計画を審査する場合でも、権利の一部への集中のみならず、その土地の利用についての計画も、その整備計画に計上されるわけでございますから、そこで、その最も有効な土地の利用計画が計上されるような指導、それぞれの関係の県にコンサルタント等を設置する、そういう予算の措置も講じておりますので、その段階で十分に指導をいたしまして、合理的な計画が作成されるように持ってまいりたい。したがって、その計画作成の段階で相当チェックを加えることはできるかというふうに考えております。一方、行政指導の面で、そういう方向ででき得る限り指導をしていくという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/69
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070・森義視
○森(義)委員 この点については大臣の御所見を承りたいと思うわけですが、現在の日本の農林業が近代化されない最大の障害になっておるのは規模の零細性にある、こういうようにいわれておるわけですから、それは大臣も御承知だと思います。林業基本法も農業基本法も、この致命的な、近代化をはばんでおる規模の零細性をどう拡大していくかというところに、近代化の一つの大きな方針があるわけなんです。ところが、今度の入り会い林野の問題は、いまかたまっておるものを個人個人に零細な規模に分割しようとしておるわけです。もちろん、行政指導として協業化の方向に指導する、あるいは知事が認可する場合に、零細規模で個々ばらばらにならないようにチェックするとかいういまの長官の答弁なんですが、私は、農林業の行政を考える場合に、いわゆる規模の拡大ということが至上課題である以上は、現在において入り会い林というものはかたまったところにある。これはもう何ものにもかえがたい近代化の一つの立地的条件になっておるわけですね。これをどう活用していくか、こういう観点でものを考えますと、いまの個別私権化するという方向は、農林業の大方針と逆行する危険性がある、こういうように思うのですが、その点、大臣どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/70
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071・坂田英一
○坂田国務大臣 現在のその問題につきましては、一方においては、権利関係はやはり明確にしていくことが非常に重要だという、そういう要請があるわけです。もっとも、午前中も申したのですが、地域によってはまだそこまで進まないものもあると存じますが、さような関係で権利関係を明確にするという一方の要請がある。しかし、それを個人個人に分割して小さくしてしまったのでは、ところによってはそれでいい場合もありましょうけれども、多くの場合は、かえって利用性が減るということもあろう、そういう関係がありますので、一方、この権利関係を明確にしていく、つまり、権利関係を近代化していくというふうに見てもよかろうと思うが、そういうふうに進めていくことのほかに、それと同時に、それらのものが分散したり細分されたりして目的を達せられないということがあってはなりませんので、行政的にそれらの関係も十分チェックいたしまして、そして協業の方法でいくなり、あるいは森林組合の手段によってその利用を進めていくなり、さようなことで利用そのものが細分されるということでないように進めていきたい、かように存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/71
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072・森義視
○森(義)委員 細分されてしまうということについて、それをチェックする方法としての保証は、いまのこの法律の内容からは非常に弱いわけなんです。したがって、これは農林業上の利用の増進という大目的があるわけです。今度の権利関係の近代化は、農林業上の利用の増進ということがその大前提になっておるわけです。そうすると、農林業上の利用というものが、規模の拡大方向で利用するということが方針なんです。これはたとえば土地の高度利用というな形で、もう住宅になっても何になってもいいのだ、いわゆる分散されて、売られて宅地になっても何になってもいいから、とにかく入り会い林野をもっと有効にいろいろな面で土地の総合利用に供するのだという形で考えておられるならば、私はあえてそういうことは言わないわけです。農林業上の利用の増進ということになれば、農林業上の利用を増進するためには、どうしても規模を拡大しなければならぬという大前提があるわけだ。そういう前提に立ちながら、これを個別私権化して分散してしまう、こういうことは、長官あるいは大臣の答弁のように行政指導をいかに行なったところで、もう一たん個別私権化されたものは、協業化される公算というものは非常に少なくなってくる、そういう危険性があると思うのです。その点について、いわゆるそういう零細私権化されない、分散されないという保証が、法案の中にはどこにも見当たらないわけです。ただ単なる行政指導という面だけで考えておられるわけですが、そういうことでいいのですか。林業基本法の十二条にもっとはっきり書いておるのです。林業基本法の十二条には「小規模林業経営の規模の拡大に資する方策として、」「入会権に係る林野についての権利関係の近代化等必要な施策を講ずる」、だから、この権利の近代化の問題も、いわば零細規模の林業形態をもっと大きくするという前提があるわけなのです。そこで、一歩譲りまして、権利関係の近代化が必要なんだ、いわゆる規模を拡大するということも必要だけれども、権利関係の近代化が必要だ、こういうならば、規模を拡大することが大前提で、いわゆる近代化というものはそのための一つの手段だ。したがって、これはいわゆる瞬間タッチ方式で、帳簿上だけの形にする、こういう形ならばわかるわけなのです。ところが、権利関係を近代化するということ、いわゆる分化することが先に立って、あとで行政指導が規模の拡大になっているわけなのです。私は、少なくとも大前提を零細性の規模の拡大というところに置き、そのために近代化が障害になるとするならば、近代化というものは、あくまでも規模の拡大のための手段なんだ、したがって、それは瞬間タッチ方式でいい、こういうふうに考えるのです。それならばまた理解できるわけなのですが、その点どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/72
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073・坂田英一
○坂田国務大臣 私申したことは、権利関係を明確にするということとあわせて、経営が細分されたりそういうことでなしに進めていくということでありますから、できることならば協業化を進めるということで、もちろんそれは行政指導が主でありましょうけれども、そういう方向に力を注いでまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/73
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074・森義視
○森(義)委員 同じ答弁を繰り返しておられるわけですが、ここが今度のこの法案の非常にポイントだと私は思うのです。したがって、あえて繰り返して聞くわけなのですが、権利関係が近代化される、具体的には、いままでの入り会い林野、入り会い集団の中の入り会い権者が、個々に自分の土地を所有権を持つわけなのですが、そうすると、入り会い山というものは個人の所有に分割されるわけなのです。そうでしょう。これを協業化の方向へ指導するというけれども、それにはそうなくちゃならぬという前提は何もないわけなのです。保証はないわけです。したがって、指導するけれども、指導に従わなくてもいいわけですね。そうすると、それは個人が売っても買ってもいいわけでしょう。売ろうと自由でしょう。そうなってしまうと、これは農林業上の利用の拡大、いわゆる規模の拡大にならないわけなのですよ。そこらあたりに、近代化が現在の入り会い山を解体してしまって、零細規模に転落さしてしまう、こういうおそれのある方向で、農林業上の利用の増進にならない。したがって、農林業上の利用の増進というのは、あくまでも規模の拡大を維持したままで、そこで権利の近代化がなければ障害があるのだというならば、それは瞬間タッチ方式で、それだけをいわゆる個人の権利に期してしまうまでに瞬間タッチ方式で取り扱う。あくまでも協業化あるいは共同利用というのが前提になる。こういう方式を出さない限り、これは日本の農林業の基本方針に反すると思うのです。その点、繰り返してくどいようですけれども、もう一回大臣から確信ある答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/74
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075・坂田英一
○坂田国務大臣 申しておることは、別に変わったことではないのでございますが、要するに、いまの権利関係を明確にしておかないと、非常に弊害が出てきておる。地方によってはそうでないものもありましょうけれども、そういうことが大勢であります。そこで、いま申しましたように、権利関係を明確にしてまいる。そのかわり、それらについてそういうものが分散するということのないようにするために、いま一般的にも小さい経営については協業等を奨励いたしておりますように、そういう協業の奨励をいたしてまいる。したがって、こういう場合において、整備計画の認可と同時に、生産森林組合に出資するようにするとかいう方法等によって、その経営が非常に小さく細分されることのないように努力を払ってまいろう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/75
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076・森義視
○森(義)委員 これ以上その問題で議論をしておっても結論が出ないようでございますから、それに関連をして、それでは、生産森林組合方式に協業化の方向へ行政指導されるとおっしゃいますけれども、これは二十六年の森林法の全面改正のとき、施設森林組合と並んで、生産森林組合という協業形態が入り会い林野制度に取り上げられるということになったわけですね。ところが、その後の生産森林組合は、それではどういうふうに協業化が進み、成果をあげておるのかというと、てんでないのです。その原因がどこにあると思っておられますか。いわゆる生産森林組合化をすれば、協業体制がとられて、林業としての高度活用ができるのだというふうにお考えになっておるようです。いわゆる分散しない、こういう行政指導をやったら心配されることは防げるのだ、こういうふうにおっしゃっていますが、生産森林組合が現在どういう状態になって、どういうふうに林業高度利用にこれが発展をしておるのか、こういうことについて、大臣のほうから御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/76
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077・田中重五
○田中(重)政府委員 いま生産森林組合が必ずしも法律の趣旨に沿って活動していないことも御指摘のとおりでございます。昭和二十六年に生産森林組合が森林法の改正でできました当時、この生産森林組合の成立過程が、入り会い慣行といいますか、入り会い権を今度の法律で考えているような形に明確化して、そうして生産森林組合に移行したということでは必ずしもないという面がございます。そういう点にはやはり組合活動として活発でないというふうに考えられる面もございますので、その点は今度は是正されるというふうに考えております。ただ、生産森林組合になりましたために、そのなる前に比較をいたしまして、やはり造林につきましては促進されたということは、種々の面から言えるのではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/77
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078・森義視
○森(義)委員 入り会い林が個別私権化が明確になって、そして個人が生産森林組合に出資する、そういう形態になれば、生産森林組合は有効に稼動する、こういうふうに考えていいのですか。私は、現在の生産森林組合が行き詰まっておる理由がどこにあるかといえば、これは御承知のように税制の問題です。現在はいわゆる単年度会計で、いわゆる稼働した労賃とか賃金というのは、その年間あげた利潤があれば、そこから損失として落とされますけれども、林業のように五年に一回しか収益がないという場合に、その年の稼働した賃金や労賃というのは、それだけは少なくとも損失として落とされても、あとの問題は、これはいわゆる利子配当と同じ形で税金がかかってくるわけです。ですから、毎年同じようにきまった所得のある産業ならば、これはいいのですけれども、林業のように五年に一回あるいは十年に一回しか所得がない、そこへ入ってきた所得というものが、配当所得のように税金がかけられる、こういうところに問題点があるわけです。だから、今後この生産森林組合方式に協業化の方向を行政指導されるという場合には、税制の問題を根本的に考えなければ、いまのままの形で権利関係だけが明らかになって、そして出資組合に出資したということだけで、生産森林組合がうまく運営されるとは考えないのですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/78
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079・田中重五
○田中(重)政府委員 その点につきましては、生産森林組合は、法人税等の面で恩典は現在与えられてはいるわけでございますけれども、また一方、先生のお話の従事分量配当等について確かに問題点はございます。それで、その点につきましては、入り会い林野の権利関係の近代化後の土地の利用の高度化という面で、国の積極的な施策を考えていく、その一環といたしまして、この生産森林組合制度の改善については十分に検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/79
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080・森義視
○森(義)委員 大蔵省の中橋税制第一課長お見えになっておるわけですね。いま生産森林組合がふるわない一つの原因として、いわゆる税制の問題が一つ障害になっているわけです。林業は御承知のように、毎年きまった利潤があがるものじゃないわけです。そこで、十年に一回とか五年に一回、切ったときに利潤があがる。そういう場合に、投下した労賃あるいは支払った労務賃金というものは損失として落とされるわけですが、その他の利益は、これは配当利潤としてくるわけです。それに対する税金が非常に大きいわけです。こういうことで、いわゆる生産森林組合が事業をやれば、大きな税金をとられる、こういう形で問題点があるわけです。そういう点について、税制上、林野庁長官のほうでは生産森林組合法人化の行政指導の過程で十分考えるとおっしゃっているのですが、大蔵省の税制課長としてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/80
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081・中橋敬次郎
○中橋説明員 生産森林組合に対します課税につきましては、これはまた非常にむずかしい問題がございます。と申しますのは、現在の税法のたてまえからまず申しますと、こういう生産事業をやっておりますものの一番右と申しますか、左と申しますか、極端な形態といたしましては、一個の法人の形態として、一つの企業として、事業をやっておる場合がございます。これに対しましては、普通の商売をやっておる人を想定されればおわかりのように、税率に差こそございますけれども、留保に対しましては一定の税率、あるいはそれを配当しました場合には配当に対する軽課税率がかかる。それと全く対照的な地位にありますのが協同組合でございます。協同組合等に対する税金といたしましては、これはまさに協同組合が、その組合員であります個々の事業と、それからその個々の事業としてあります組合員のために行ないます協同組合の協同事業、そういうものにまず着目をいたしまして、それに対しましては、先ほど申しましたような一個の法人の企業として利潤をあげました場合に課税する税率よりは、はるかに低い税金でもって留保分に課税され、あるいは出資配当に対して課税されております。さらにその場合、協同組合が、組合員の事業分配金あるいは従事分配金につきましてはこれを組合員に分配いたしましたものは、通常の協同組合でございますれば、その段階では損金として落とすことになっております。それはもちろん今度個々の事業者のほうの受け取りました側で課税される、こういうシステムになっております。
ところで、そういう二つの形態がございます間に、生産森林組合も含めまして生産組合という形があるわけでございます。現在の税制におきましては、この生産森林組合で例をとって申し上げれば、先ほど申しましたように、一個の企業として生産事業をやっておるという色合いの非常に強いものと、それから協同組合的に運営されておるという色合いが強いものと、二つに分けております。その分ける基準といたしましては、給与を払っているか払っていないかという点で分別いたしております。概括的に申し上げれば、給与を払っております生産森林組合は、これは第一に申しましたように、全く一個の企業体としての実態を備えておるという考え方から、普通、通常の有限会社あるいは小さな株式会社と同様の課税をいたしております。ところで、給与を払ってない、むしろ組合員であります方々の事業と、それからその組合員のために行なう協同事業とが未分化と申しますか、あるいはむしろ分かれておると言ったほうがいいのかもしれませんが、そういう形態をとっておるものにつきましては、先ほど第二類型として申しました協同組合の課税方式が適用されまして、生産森林組合で組合員の事業に従事しました分量に応ずる分配金は損金に落としまして、それはむしろ受け取る側でもって課税されるという方式をとっております。ここに一つ生産組合一般についての課税方式の問題があるわけでございます。
さらにその次には、ただいま御指摘の、そういう方式でもって課税されます生産森林組合において、事業従事いたしました分量に応ずる分配金につきましては、現在の建て方で申せば、確かにその事業年度中におきますところの事業従事分量に応ずる分配金は損金に落とすたてまえになっております。そこで、この生産森林組合について考えますれば、まさに御指摘のように、そこで生じます利潤といいますものは、主といたしまして長年の労力とそれから賃金で形成されております立木の価格——立木の生長が化体したものであろうと思います。そこで、そういう長年かかって出ました利潤に対しまして、その事業年度中にその事業に従事しました分量に応じて分配するものを生産森林組合の段階で損金にするというのが徹底していないではないかという御指摘の点があったと思います。実はこれはそういう点はあるわけでございますけれども、それではかりに生産森林組合におきましてその長年にわたって発生いたしましたところの利益を分配いたします場合に、その発生期間中におきますところの、個々の組合員の事業従事分量を長年にわたりまして克明につけまして、それに対応して分配金を分配する方法がはたして簡便にあるかどうかでございます。おそらく組合員の方々のこの事業に従事する分量というものは、脱退でございますとかあるいは死亡というような特別の事態がなければ、大体毎年同じような相対的な関係におきまして事業に従事せられておるものと思われます。そういたしますと、その事業年度中に事業に従事しました分量に応じて分配する分配金としてとりましても、先ほど言いましたように、脱退者あるいは死亡者というものについての問題以外は、そんなに出てこないのではないかというふうに私どもは考えております。したがいまして、以上、課税方式の一つの基本的な問題、これは単に生産森林組合のみに限りませず、企業組合から生産漁業組合あるいは農事組合、そういうようなものも含めましたところの課税方式の問題として、非常に基本的にむずかしい問題が入っております。
第二の問題といたしましては、先ほど言いました事業年度中の事業従事分量というものと、長年にわたりますところの事業従事分量というものとにどれだけの差異があり、また実際上その長い期間についての従事分量というものをどういうふうに把握するかという問題がございまして、私どもは、両点につきましては、これは非常に慎重に検討するに値する問題だと思いますけれども、先ほど来申し上げましたように非常に、またむずかしい問題があるということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/81
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082・森義視
○森(義)委員 そうすると、事業年度中のものはこれは損金として落とせますけれども、長い年限のそういう事業分量に応じて収益が上がったときに、それは損金として勘定できる、いまのお話ではそういう説明でした。たとえば、ことしはこういう事業をやった、その中でどれだけの労力を投下したか、それに対するいわゆる従事割り分配金ですか、これは損金として落とされます。ところで、毎年事業をやらなかった、全然事業をやらなかった、ずっと三年間木を切らなかった、四年目に木を切った、そういう場合に、一ぺんにたくさんの収入が入ってきます。その場合に、その三年間分の従事割り分配金というのは、計算されて、その収益から損金として落とされるのですか。いまの説明だとそういうことになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/82
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083・中橋敬次郎
○中橋説明員 私が先ほど申しましたように、森林生産組合におきまして給与を払っていないものにつきまして、そういう課税が行なわれるということを前提にして申し上げたいと思います。
そうしますと、その次には、法人税は事業年度課税でございますから、とっております事業年度において発生します利益があれば、そこでまず課税問題が起こってまいりますので、全然木を切らないで、ずっと経費ばかりかかっておるときには、法人税はまだかかっておりません。それからいざ木を切りまして、そこに利益が出てまいります。そのときに、その出ました利益をどういう基準でもって分配されるか、全額これを分配するというふうに想定いたしまして、どういうふうに分配されるかというときに、現在の方式としましては、その切りました事業年度のその事業に従事しました分量に応じて分配される分は、損金に落とせるわけでございます。しかし、三年間なら三年間あるいは二十年間、事業分量に応じて分配するというふうにおっしゃれば、これは確かに損金に落とせない分が出てまいります。そういうことを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/83
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084・森義視
○森(義)委員 だから、問題はそこなんですよ。林業というのは、毎年きまった事業をやるのではなくして、何年間かに一回しかできません。事業をやった年のこれは損金として落とせますね。ところが、その他の問題は落とせないとすれば、結局収益の中からその事業年度の損金として落とした残りに税金がかかってくるわけでしょう。そこらあたりに問題があると思うのです。これは当然生産森林組合法人として今後協業化の方向を指導するとするならば、隘路がどこにあるかということをはっきりとつかんで、そういう問題について、十分大蔵省との間で折衝をしていただいて、そういう方向を打ち出してもらわなければいかぬと思います。
それで、大体三時から部会で、ちょっと皆さん出なければいかぬので、質問はちょうど入り口に入ったままで進んでおりませんが、御承知のように、この法案はずいぶんと古い歴史を持ち、現在非常に複雑な状態にある法案でございますので、私どもは慎重に審議をいたしたい。この法案の趣旨が、地域入り会い権者の意図しておる方向にまず進むのかどうか、あるいはこの法案が日本の農林業上の利用増進に非常に大きな役割りを果たすのかどうか、そういう問題について、十分現地調査等をやって、慎重に審議していきたい、こういうように思います。
したがって、きょうはこれで質問を保留いたしまして、引き続いてまた次の機会に質問さしていただくということで、終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/84
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085・舘林三喜男
○舘林委員長代理 次会は明十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X02619660413/85
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