1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月二十四日(火曜日)
午前十一時十八分開議
出席委員
委員長 中川 俊思君
理事 大石 武一君 理事 倉成 正君
理事 小枝 一雄君 理事 舘林三喜男君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 東海林 稔君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
宇野 宗佑君 金子 岩三君
坂村 吉正君 笹山茂太郎君
田口長治郎君 田邉 國男君
高見 三郎君 綱島 正興君
中川 一郎君 丹羽 兵助君
野呂 恭一君 藤田 義光君
松田 鐵藏君 森田重次郎君
卜部 政巳君 兒玉 末男君
千葉 七郎君 松浦 定義君
森 義視君 玉置 一徳君
林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 坂田 英一君
労 働 大 臣 小平 久雄君
出席政府委員
農林政務次官 仮谷 忠男君
農林事務官
(農政局長) 和田 正明君
農林事務官
(農地局長) 大和田啓気君
農林事務官
(園芸局長) 小林 誠一君
委員外の出席者
労働事務官
(職業安定局審
議官) 住 栄作君
専 門 員 松任谷健太郎君
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五月十八日
委員玉置一徳君辞任につき、その補欠として稲
富稜人君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として玉
置一徳君が議長の指名で委員に選任された。
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五月十六日
農林漁業団体職員共済組合法の改正に関する請
願(稻村隆一君紹介)(第四四八八号)
同(原茂君紹介)(第四四八九号)
同(井出一太郎君紹介)(第四五五四号)
同(田中龍夫君紹介)(第四五五五号)
同(受田新吉君紹介)(第四六二一号)
国有林の保安林整備計画に関する請願(池田清
志君紹介)(第四四九〇号)
豚肉の安定基準価格等に関する請願(井出一太
郎君紹介)(第四四九六号)
低毒性有機燐製剤の価格引下げに関する請願
(井出一太郎君紹介)(第四四九七号)
長野県小海町の杉尾用水改修等に関する請願
(井出一太郎君紹介)(第四五〇一号)
八王子市板当国有林の採石反対に関する請願
(福田篤泰君紹介)(第四五五六号)
同月二十日
鳥取県峰越林道建設に関する請願(足鹿覺君紹
介)(第四七五〇号)
農林漁業団体職員共済組合法の改正に関する請
願(稻村隆一君紹介)(第四七五一号)
同外三件(大村邦夫君紹介)(第四八二三号)
畜産会職員の農林年金加入に関する請願(池田
清志君紹介)(第四八三八号)
農業後継者育成資金の融資及び償還に関する請
願(池田清志君紹介)(第四八三九号)
放魚祭に関する請願(田村元君紹介)(第四八
九一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
野菜生産出荷安定法案(内閣提出第一三一号)
農地管理事業団法案(内閣提出第三六号)
農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する
法律案(湯山勇君外十二名提出、衆法第一二
号)
農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一三八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/0
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001・中川一郎
○中川委員長 これより会議を開きます。
野菜生産出荷安定法案を議題といたします。
本案について政府委員より補足説明を聴取いたします。小林園芸局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/1
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002・小林誠一
○小林(誠)政府委員 野菜生産出荷安定法案につきまして、補足して御説明申し上げます。
この法律案を提案する理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、ここでは省略することといたし、以下この法律案の主要な内容を御説明申し上げます。
この法律案の構成につきましては、全六章及び附則からなっておりまして、以下章を追って御説明申し上げます。
まず第一章におきましては、この法律案の目的とこの法律における用語の定義を定めております。
この法律案の目的につきましては、主要な野菜の生産及び出荷の安定をはかることにより、野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資することを目的としまして、その主要な野菜について、一定の生産地域における生産と出荷の近代化を計画的に推進するための措置を定めるとともに、一定の消費地域におけるその価格の著しい低落が、その生産地域におけるその生産者の経営に及ぼす影響に対処するための出荷者の自主的な組織である野菜生産出荷安定資金協会の制度を確立することとしております。
この法律案における用語の定義につきましては、需要の見通し、野菜指定産地の指定等の対象となる消費地域及び主要な野菜について所要の定義を定めております。
第二章におきましては、農林大臣は、関係都道府県知事の意見を聞いて指定消費地域における指定野菜の需要の見通しを立て、これを公表することを定めております。
第三章におきましては、野菜指定産地の指定及び生産出荷近代化計画の作成について定めております。
この法律案に定める措置の中核は、人口の集中の著しい大都市及びその周辺の地域に対して主要な野菜の安定的な出荷が行なわれる集団産地を育成することにありまして、この章におきましては、このような集団産地の形成のための要件を備えた生産地域を野菜指定産地として指定するとともに、そこにおける生産及び出荷の近代化を計画的に推進するための措置を定めております。
農林大臣は、都道府県知事の意見を聞いて、指定野菜の指定消費地域に対する出荷が行なわれる一定の生産地域のうち、作付面積、そこへの出荷数量、出荷条件等が指定野菜の集団産地の形成に必要な一定の要件に適合する地域を、指定野菜の種別ごとに野菜指定産地として指定することとしており、その指定は、需要の見通し等から推定される指定消費地域におけるその指定野菜の需要の動向に即するように行なうこととしております。
野菜指定産地の指定に関連して、都道府県知事からの指定の申し出、区域の変更等について、所要の規定を設けております。
野菜指定産地の区域を管轄する都道府県知事は、野菜指定産地ごとに、関係市町村、農業団体等の意見を聞いて、その指定野菜の生産及び出荷の近代化をはかるための生産出荷近代化計画を立て、これを農林大臣に提出するとともに、その概要を公表しなければならないものとしております。
生産出荷近代化計画の作成に関連して、その変更について所要の規定を設けております。
第四章におきましては、野菜生産出荷安定資金協会の制度について定めております。
野菜につきましては、その特殊な性格により大きな価格の変動の繰り返しが見られ、特に著しい価格の低落がその安定的な生産及び出荷を阻害していることにかんがみまして、野菜指定産地から出荷される指定野菜について、指定消費地域における指定野菜の価格の著しい低落がその生産者の経営に及ぼす影響に対処するための出荷者の自主的な組織である野菜生産出荷安定資金協会の制度を確立することとしております。
野菜生産出荷安定資金協会は、会員から徴収する負担金等をもって、指定消費地域における指定野菜の価格の著しい低落があった場合における会員を通ずる生産者補給金の交付の業務を行なうことを目的としております。
以下、本協会の組織等の概要を御説明申し上げます。
その第一は、野菜生産産出荷安定資金協会の設立及び会員に関する事項であります。
協会は、会員たる資格を有する法人七以上が発起人となり、創立総会を開く等協会設立のための事務を行ない、農林大臣による設立の認可、設立の登記等所定の手続を経て成立することといたしております。
協会の会員たる資格を有する者は、農業協同組合連合会野菜指定産地から一定の指定野菜を一定の指定消費地域に出荷する団体とし、その加入及び脱退は、任意といたしております。
その第二は、協会の業務に関する事項であります。
協会の業務は、会員から徴収する負担金等により造成する資金をもちまして、一定の指定消費地域における一定の指定野菜の価格の著しい低落があった場合に、その低落が野菜指定産地内のその生産者の経営に及ぼす影響を緩和するための生産者補給金をその生産者に交付するため、会員に対し、生産者補給交付金を交付することであります。
その三は、協会の管理に関する事項であります。
協会の業務の実施につきましては、その公正な運営をはかるため、定款、業務方法書、規約等により明確な基準を設けて行なうこととしておりますが、このような重要事項は、創立総会及び総会の議決事項としております。
協会の役員も、定款で定めるところにより、総会において選任することといたしておりますが、資金の適正な管理及び業務の公正な運営を確保するため、農林大臣が必要な監督を行なうこととしております。
第五章は、雑則に関する規定であります。
農林大臣または都道府県知事は、野菜指定産地からの指定消費地域に対する指定野菜の出荷の安定をはかるため必要があるときは、その出荷者に対し、合理的かつ計画的な出荷に関し必要な勧告をすることができるものとしております。
また農林大臣は、この法律を施行するため必要があるときは、指定野菜の生産もしくは出荷の事業を行なう者またはこれらの者の組織する団体から、これらの事業にかかる業務に関して、必要な報告を徴することができることといたしております。
第六章は、罰則に関する規定であります。
附則におきましては、民法によって設立されておりますタマネギについての財団法人青果物生産安定資金協会及びカンランについての財団法人野菜指定産地生産安定資金協会から本協会への権利義務の引き継ぎについて定めるほか、協会の業務の健全な運営を確保する観点から、昭和四十一年度において協会が設立された場合には、政府は、その設立に際し、予算の範囲内において、協会に対し、事務費の財源に充てるため、交付金を交付することを定めております。
その他協会に農林中央金庫の所属団体たる資格を与えるほか、登録税、地方税、所得税及び法人税につきまして、税制上の優遇措置を講ずる等所要の規定を設けることといたしております。
以上をもちまして本法律案についての補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/2
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003・中川一郎
○中川委員長 以上で補足説明を終わりました。
十二時三十分より再開することとし、これにて暫時休憩いたします。
午前十一時二十六分休憩
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午後零時四十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/3
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004・中川一郎
○中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
農地管理事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。松浦定義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/4
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005・松浦定義
○松浦(定)委員 農地管理事業団法案が昨年廃案になった最も中心的な理由の一つとしては、農地を手放す者に対する生活の保障、すなわち、離農者対案というものが全然見られないというところに実は問題がありまして、今回の再提出にあたりましても、政府は、その内容を十分考慮するきょうは労働大臣へのお尋ねでありますけれども、昨年の審議の過程においては、農林大臣はその点を何らかの形において考慮するということを誓っておるわけなのです。にもかかわらず、その片りんも見えていない。
先般の本会議の質問は、非常に時間がない関係から、大要だけ申し上げ、それに対する労働大臣の御答弁がございましたが、そうした経過の中において、労働大臣として、これから——農業ばかりではないと私は思うのですが、一般労働者の対策として、すでに日本における労働政策というものは必ずしも十分でない。なかんずくその上に、いろいろ非常に不十分な内容を持った農民が労働者の中へ流れ込んでいく。そうしますと、一般の労働者に対してもこれらが非常に悪い影響を及ぼすのではないか。その対策がなお混乱してくるむずかしい状態になってくる。でありますから、われわれとしては、少しでも農業者の中からそうした失業者を出さない、したがって、この法案の内容についても、できるだけ離農しないで、農業をやりたい者には、共同化あるいは協業化をもって対処したい、こういうようなことをずいぶん誠意を持って昨年も申し上げ、今回の再提出にあたりましても、相当長期間議論してまいったところであります。国会が延長されまして、なおこの法案の内容をきわめなければならぬところのものは、単に私どもは法案に反対であるから引き延ばしをするというのでなくして、日本の労働界における今日の対策が、長い間日本の食糧行政に貢献してきたそういう人が離農する場合において、同じような中に送り込むということは、日本には労働政策はないのだと言っても過言でないと思う。でありますから、農業を体験する者の一人として、これらの誤りのないように何とか法の実施について努力する必要がある、こういうことで私は質問をしたつもりであります。しかるに労働大臣は、この法案はきわめて重要ではあるけれども、現在やっておる労働政策で間に合うのだ、だから特別質問者の言うようなものをこの法案の中へ入れる必要はない、こういうことをはっきりおっしゃっておるのです。
でありますから、きょうは時間の関係もございますけれども、それでは現行法によってどれだけそういう離農者が救われるのか。現段階においてはその数は少ないとしても、今後この法案の実施にあたって、これは私どもとしてはきわめて不十分であります。もしこれが通った場合には、これは毎回国会においてその体験から、私は改正改正が行なわれると思うのであります。そのたびに問題になるのはこの点だろうと思うのであります。でありますから、改正の場合においてはこれを法律の中には入れるけれども、現行法では入れないといったようなことでは、所管大臣として、この法案の内容に非常に誠意がないのだというふうに私は実は考えるわけです。でありますから、先般の質問に対する御答弁の中にも、非常にこの点は重要であるが、現在職業安定協力員とか、あるいは市町村当局、農業委員会と十分連絡をとって、職業相談、指導訓練といったようなことをやっている、こういうことなんです。そういうようなことでこれから離農される農民が救われるかどうか、そういう点について、私は具体的にお聞きをしたいわけであります。
したがって、いまお考えになっておる職業安定協力員というものは、市町村にどのくらいおって、どういう仕事をやっているのか、それからまたどういう法律に基づいてそれをおやりになっておるのか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/5
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006・小平久雄
○小平国務大臣 協力員でございますが、これは本年の二月五日現在で全国で千九百六十五人おります。これは別段法律に基づいたものではございませんが、労働省において委嘱をいたして、職業安定のために文字どおり御協力をいただいておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/6
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007・松浦定義
○松浦(定)委員 市町村の協力をいただいてやっているということだけで、この協力員というものは、そういう仕事の相談に乗るという程度のものであって、その者がこういうふうにするのだという主体的なものはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/7
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008・住栄作
○住説明員 職業安定協力員は、主として農村地域等に配置しているわけでございます。現在全国に安定所が四百七十ばかりございますけれども、必ずしも農村地域におきまして安定所の配置が十分であるとは申せないのでございまして、近年農村から他の産業に働く場合に、安定所の十分な職業指導なり職業あっせんが行なわれない、こういうような観点から、特に農村地区におきまして、そういう面に活躍していただける方を協力員に御委嘱申し上げまして、身近に離農者の希望なりあるいは条件というものをお伺いした上で、安定所と連絡しながら、希望の職業にあっせんしていく、こういう趣旨で置いているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/8
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009・松浦定義
○松浦(定)委員 私は、この協力員とかあるいはそれに関連するような名称の中では、これは主体的なものができるとは思っていない。ですから、私の質問は、この程度のものでできないことはわかっておるけれども、やれるんだとおっしゃる政府側の答弁が納得いかない、こう思うのです。だから具体的に、たとえば私がどうしても離農したいといった場合に、家族が五人ある。その窓口をたたいて、どうしてくれると言ったときに、直ちにそれが職業訓練なりあるいは職業指導なりをしてもらって、完全に他の労働者と同じような生活ができるかといったら、私はそうはいかないと思うのです。それが今日までは町村に一つか二つ、あるいはどこかの地域に限られた人であるからいいけれども、この法案がこの段階ではあまりたいしたことはないけれども、ほんとうに農民がよくわかり、なるほどこうしなければならぬということで、拡大した場合には、相当数の離農者が出ると思うのです。すでに前回も申し上げましたように、北海道の私のおるところでは、昨年でも八千六百町歩も土地を売っておるのです。何百人といった人が離農をしておるわけなんですよ。おそらくそれはお世話になっていないでやっておったのかもしれぬけれども、これは年がたつに従って何千人、何万人となれば、それではできないことになるわけですね。そういう場合に、こういう安易な協力員とか連絡員といった程度のものではだめだということを申し上げている。それに対して、これでやれるとおっしゃるから、私はお聞きしておるのだが、これはこの程度でいいと思うのです。これではできないことが明らかでありますから、それでいいと思います。
それからもう一つは、職業転換給付制度というものがあるということをおっしゃっておった。これは、いま私が申し上げましたような形で離農をしたいからということで相談に行き、協力員が相談に乗った場合には、この転換給付制度というものはどの程度の実効があがるような内容のものであるか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/9
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010・小平久雄
○小平国務大臣 職業転換の際に給付する制度でございますが、これは従来は、実は例の雇用促進事業団の関係で所管しておるものとか、労働省が直接やっておるもの、いろいろなやり方があったわけですが、そういうことでどうも複雑であり、一般にも理解しにくい、こういうきらいもございましたことと、また、今後の職業転換の必要性というものが、離農者をはじめ、また必ずしも離農者でなくて、一般の工業等に従事しておる者についても、そういう必要がますますふえてくるであろう、こういったような現実の要求にも合わせますために、今回御提案申し上げております雇用対策法の中に、今度はっきり職業転換給付金の制度を全部取り入れまして、また、従来やっておったもののほかにも、新たなる給付金も増加いたしまして、今後はこの給付金制度を大いに活用いたしていく、こういうことにいたしたわけでございます。離農者につきましても、離農者のうちで、中高年齢層失業者等の就職促進措置、これは三十五歳以上の者でございますが、そういう三十五歳以上のような方につきましては、たとえば就職の指導手当であるとか訓練の諸手当であるとか、これは従来やったものですが、今度は特定職種訓練受講奨励金とか、あるいは広域求職活動費であるとか、あるいは就職移転資金とか、あるいは訓練のために移転を必要とする場合の訓練移転資金であるとか、あるいは帰省旅費、こういう給付金制度を新たに設けることにいたしたわけであります。そのほか、職場適応訓練費、これは事業主のほうに助成するわけでございますが、こういうものもやって、転職者が就職しやすいように助成をいたしていこう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/10
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011・松浦定義
○松浦(定)委員 いまおっしゃった中高年齢層の失業対策とか、広域職業紹介とか、あるいは訓練とか、そうしたものについては、従来から多少ずつは改善されておると私は思うのです。先ほどから言いますように、この法案を実施する段階において、ほんとうに効果をあげるとすれば、そのような程度のものでは、予算上からいってもいろいろな面からいっても、私は不十分だと思うのです。たとえば都市における職業安定所へ殺到するような人を見ましても、従来からそういうことになれたような人、そういう人は多くありますけれども、農業をやめてそういうところに入っていったら、おそらく満足に働けるというようなことはないような体質を持っておる人もあると思う。そういう人にはそれぞれの立場の訓練なり何なりが要ると思うので、このためには、特にこの法案に入れなければならぬ、あるいは入れなくともいいというなら、さらに強化をするような考え方をしていただかなければならぬ、こう思うのです。答弁の中にありましたように、市場センターの業務の問題等については、そういう点は離農者等がある程度殺到した場合には、その市場センターとの関係はどんなようになるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/11
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012・小平久雄
○小平国務大臣 労働市場の関係でございますが、これは先生も御承知と思いますが、都下の石神井に労働市場センターというものをつくりまして、全国の安定所あるいは県庁、これらと求人求職の関係を全部、極端に言えば、即座に電送装置で集中連絡ができるという施設も今年度で完成いたします。すでに一部使っておりますが、ここで市場の情報というものを、求人者側にとっても求職者側にとっても、すみやかに収集して、これをまた提供する、こういうことでございますから、離農者の方につきましても、このシステム等を十分活用して、できるだけ詳しい情報を提供いたしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/12
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013・松浦定義
○松浦(定)委員 そういう場合には、住宅の関係は、集中的なところにおる者は非常に有利であるけれども、ばらばらになっておる者については連絡その他が十分にいかないと私は思うのです。都市周辺の非常に仕事の多いところで、住宅がある程度密集しておるようなところで生活をする労働者の場合はいいと思うのですが、農村から行った者は、住宅の問題、いろいろな関係でばらばらにしか各地区に入れないような状態があるだろうと思うのです。そういう場合には、そういうような恩恵が受けられないという気がしますから、お聞きするのですが、そういう場合においても十分な考慮を払うというようないまのお話ですが、そういう点はさらに強化をする 先般のお話ですと、市場センター等についても整備強化をするといろお話ですが、本年度の予算から見ましても、一挙にそれが整備強化されるような状態であるかどうか、その点を明確にしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/13
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014・小平久雄
○小平国務大臣 まず住宅の問題でございますが、これも先生御存じのところと存じますけれども、雇用促進事業団で毎年一万戸程度——四十一年度も昨年度も一万戸ずつでございますが、需要地、求人の多いところを主といたしまして、全国的に移転就職者用のアパートを建設いたしております。したがって、かりに農村を離れる人が集団的にどこかに就職をするというような場合でもあれば、それに応じてこの種のアパート等も十分配慮いたしていきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/14
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015・松浦定義
○松浦(定)委員 集団の場合はそういうような処置がとられると思うのですが、たとえば離農するような人は山村僻地に多いわけです。都市周辺のところはこの事業団の対象にならないわけですから、どうしても山村僻地に多いわけですね。そうしますと、そういうところから出ていく者は、同じ都市といっても小さな町の近くである。そうしますと、まず第一に、やめたとたんに一番必要なのは住宅なのです。やめたいけれども、出ていって住むところがないというので、やめられないというのがたくさんあるわけですね。それで、どうしても職業のあっせんをすると同時にというか、その前に、ともかく住むところをきめなければいけないということになるわけです。これは農業でありますから、土地は人に渡すけれども、家だけはそこに住んでおりなさい、家が見つかったらそこで出ていくんだ、しかし、車でもって働きにはどこかへ行けるんだということもできないわけではありませんけれども、そういう不安定なことではこの指導はできないと思う。土地を渡すと同時に、やはり自分が職業につく前には住宅をまず第一に確保しなければならぬ。今日その住宅については、この場合に特にお伺いしておきますが、離農者に対しては、たとえば小さな町であっても、現在はそういう割り当て、離農者に対する住宅の割り当てといいますか、そういうものはないけれども、これに対しては五戸なり十戸なり離農者対策用の住宅の建設というものを配慮されておるのかおらないのか。どうしてもこれは配慮されないということでは、いま労働大臣が言われたそれぞれの職業訓練なりをされましても、住むところがないというのでは、私はどうにもならないと思う。そういう点はどうなんですか。おそらく本年度の予算でも、一部そういうふうに転換するような措置ができないわけではないと私は思うのです。一般の住宅を離農者用として転換する、あるいはまたそれには新しい予算があるから考慮する、こういうような点についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/15
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016・小平久雄
○小平国務大臣 この住宅の問題につきましては、先ほど申しましたように、雇用促進事業団で毎年一万戸ほどアパートをつくっておるわけですが、どの地域で離農者がたくさん出て、あるいはどの方面に就職を希望しておられるのか、こういう点よく農林省とも打ち合わせまして、そのアパートの建設地等も十分考慮していきたい、私はかように考えておるわけです。また、集団でなく、ばらばらでいくという場合も、もちろん先生御指摘のとおりあると思います。そういう都市においては、雇う側において住宅等も用意するということでありますならば、その住宅のための融資ということも、これは労働省の関係におきましても、やはり雇用促進事業団であるとかあるいは例の中小企業等の退職金共済事業団、こういうところで労働者の福祉厚生のための融資、その一種類としての住宅建設の融資というものをやっておりますから、こういう点にも十分意を配ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/16
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017・松浦定義
○松浦(定)委員 私は、かりに今度これを実施されますと、市町村長なり農業委員会なり府県知事は、この点が一番頭を痛めるところだと思うのです。離農者対策がないから、そういうものが出てこないのだと思うのです。離農者対策は現行法でおやりになるというのですが、だとすれば、現行法をさらに拡大して、いまおっしゃったように、まず第一に住むところを与える。そのことによって安心して離農するということも私はあり得ると思うのです。この点は労働省だけの所管ではないと思いますけれども、特に離農者とつながる問題であり、労働省にも関係する問題ですから、ひとつこの点を十分配慮すべきである、こういうふうに考える次第であります。
時間がまいりましたから、結論だけ申し上げますが、実は毎回申し上げますけれども、この法案を赤城農林大臣が構想されたときには、予算においては少なくとも十四億三千万円という離農者対策資金を要求されておったわけです。それが今度一銭もないのですね。十四億三千万円が必要であると考えておった現在の政府が、二転、三転して、いまおっしゃったように、現行法でしかどうにもならない、しかも住宅については、これから何らか考えたいし、努力するという程度のことしか御答弁ができないわけであります。時間がありませんから、くどくど申し上げませんけれども、十四億三千万円という内容は、離農者に対する融資が最高二百万円、あるいは職業資金が五十万、生活資金が五十万、あるいは十五万の移転資金、四十万の住宅資金、そうしたようなものをいろいろ積み重ねて十四億三千万円という案を出されたのです。それが大蔵省で一蹴されてしまったのです。そういう経過からして、与党の諸君も、この法案がこういう形で出てきたことに対して、これはりっぱな法案だ、早く通せと、こうおっしゃるところがわからぬのです。しかし、通るか通らぬかはここしばらくでわかると思いますけれども、通った後において必ず問題になると思うのです。でありますから、そういう点を現政府がすでに十分考えておったにもかかわらず、今日池田内閣から佐藤内閣にかわり、あるいは労働大臣がかわり、農林大臣がかわってこういう形になるということは、私は、一つの法案をつくる場合の前提として、これは一貫性がないと思って、くどくど申し上げておるわけです。
どうぞいまの労働大臣の意見がほんとうに政府を動かして、そうして法案の中に盛られなくてもやれるというなら、私がいまここでどうせよと申し上げましてもどうにもならぬと思いますから、労働大臣の今後の誠意に期待をいたしまして、私どもはあくまでこの法案に対する反対は反対として、将来の問題としてこれを残しておきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
以上で、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/17
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018・中川一郎
○中川委員長 芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/18
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019・芳賀貢
○芳賀委員 農地管理事業団法について、先般の委員会において質問の残っておった点について、若干お尋ねしたいと思います。
まず第一の点は、事業団法の法案とも関係を持っておるのですが、今後現行の農地法の検討あるいは改正について具体的にどのような作業を進める方針を持っておられるか、この点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/19
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020・坂田英一
○坂田国務大臣 農地法ないし農地制度につきましては、これを現状のまま固定することは、申されたとおり、日本農業の発展をはかる上から問題であり、若干部分についてはすでに手直しすべき段階に来ておるのではないかと思うのでございます。しかし、農地制度は農業問題の基礎であり、きわめて重要な問題でありますので、鋭意検討を進めておりますが、なお各方面、またいろいろな立場の人々の御意見も十分伺って、慎重に取り計らってまいりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/20
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021・芳賀貢
○芳賀委員 先日も農地局長から若干の説明があったわけですが、この際、農地法全体に対して政府としてどういう取り組みをするかという点について、できるだけ詳細に、これは局長からでいいですが、答えておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/21
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022・大和田啓気
○大和田政府委員 先日も申し上げましたけれども、農地法につきまして基本的な検討をするために——昭和三十七年の七月に農地法と農業協同組合法の改正をいたしたわけでございますけれども、それだけで農地法の問題が解決されるということではございませんので、三十七年の九月に農地制度研究会を設けて、東畑四郎さんを会長に据えて、相当回数をかけて現在まで議論を深めてまいったわけでございます。そこで議論いたしましたことの二、三といいますか中心を申し上げます。
一つは小作制度の問題でございます。この小作制度の問題は、小作料の統制あるいは耕作権の確立等、実は大正以来長い間のいろいろの人たちの蓄積の結果でございますから、これを軽々に動かすわけにはまいらない事情もありますけれども、現在の時点に立ってこの問題を考えますと、小作制度がやや硬直化しているのではないか。小作制度が硬直化しているということの内容は、一つは、小作料の統制の水準が、昭和三十年にきめられましてから以降動かされていないために、非常に低過ぎる水準にあるということでございます。それからもう一つは、耕作者の経営の安定ということから、耕作権の確立ということを戦後非常に強く法律的にも規制をいたしたわけで、私は、そのこと自体は、歴史的意味がもちろん大きいわけでございますけれども、いまの時点に立って考えると、やや弾力性を失っているというふうにも思うわけでございます。一つの問題をお示しいたしますと、現在、この委員会でも議論がございましたように、第二種兼業農家が全体の農家の四割二分を占めている。その耕す農地が全体の耕地の二割二分に及んでいる状況で、しかも二種兼業農家の生産力が非常に落ちているということが、現在の農業生産力の停滞の一つの原因ではないかというふうにも思われる節がございます。そこで、二種兼業農家にもいろいろなタイプがございますけれども、主人公が工場なりあるいは役所勤めで、月給も相当上がって、現在五反歩耕しているけれども、五反歩までは耕す必要はあるまい、しかし、いま若干でも飯米がほしいということで、せいぜい二反歩程度耕したいという場合でも、実はその五反歩のうちの三反歩の処理について非常に苦労があるわけでございます。これを正常な小作地にいたしまして、賃貸借の契約をいたしますと、小作料が中田で反当たり千百円でありますから、それが安いことは忍ぶといたしましても、耕作権が強いために、小作人が返しますというふうにならない限りは、なかなか小作地が戻らないのが現実でございますから、そこで、現在五反歩を耕していて、五反歩のうち三反歩くらいは人に貸してもいいというふうに思っている人でも、自分のところで荒らしづくりをして生産力を非常に落とすか、あるいはいわゆる請負耕作という形で請け負わせるわけでございます。請け負わせた場合は、請負耕作ということからいいますと、これも前に御議論がありましたけれども、たとえば農協なり農事組合法人なりを中心にして、事実上共同耕作的なものになる場合もありますけれども、いわゆる請負耕作として相対で貸し借りされるものの大部分はやみ小作に近いものでありまして、小作料は一万円ないし一万五千円で、しかも来年はまた土地が耕せるかどうかわからぬという状況であります。したがって、小作料を非常に安くきめて、それを厳重に守るということ、それから耕作権を法律上強くして、絶対に耕作者、小作人が承知しなければ土地が戻らないという状態にしておきますことは、耕作者の経営の安定という面では確かにプラスになってまいりましたけれども、実際土地の流動化を阻害してはいないかという問題になりますと、私は現在すでに問題は相当深刻になっておると思います。
〔委員長退席、舘林委員長代理着席〕
小作料をどうするかとか、あるいは耕作権の内容をどうするかということは、先ほども大臣から言われましたように、農業の基本に触れる重大な問題でございますし、小作料の水準はまた米価とも関係するわけでございますから、私どもこれは慎重に検討しなければなりませんけれども、問題としては現在すでに相当深刻な問題になっていて、それは言わしていただけば、勇気を持って解決すべき問題の一つではないかというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、農地制度研究会の検討項目の最大のものは、この小作制度をどうするかということでございます。私が申し上げましたような問題がございますから、別に右、左に議論を振り分けたわけではございませんけれども、いずれの側に立つにしろ、相当こまかい議論が現在までのところ行なわれておるわけでございます。
それから第二の問題は、農地の移動の統制の問題。農地の移動の統制で、現在自立経営農家といいますか、相当大きな農家が、家族経営である限り土地をふやすことは農地法上認められておるわけでございますが、それが三十七年の農地法改正の一つの内容であったわけですが、非常に小さな農家でも三反歩が下限でございまして、三反歩の農家であれば土地取得のいわば資格があるわけであります。内地三反歩、北海道一町歩ということでございますが、終戦後のいわゆる飯米百姓ということは別といたしまして、いまの時点で考えれば、内地三反歩、北海道一町歩ということの意味は一体いかなるものか。もしも農地の有効利用、あるいは自立経営といわなくても、農業に相当関心を持っている人たちの手に農地が渡ることを望むならば、三反歩あるいは一町歩という水準は非常に低きに過ぎないか、もう少し高くしたらどうかという議論が研究会でも出ておるわけでございます。また農地の転用につきましても、何か地帯を分けて、農地として保存すべき地帯とそうでない地帯とを分けて、保存すべき地帯では相当厳重に転用の統制をやるし、そうでない地帯はもう少しゆるめたらどうかという議論もあるわけでございます。
なお、第一の小作制度の問題にも関連いたしますし、また農地の移動統制の問題にも関連いたしますけれども、現在は農地法というのは、完全にいわば行政官庁の系統で統制いたしておるわけでございますが、これからの考え方としては、むしろ民主的といいますか、現地の農民を含めた委員会制度でそれを動かすことがいいではないかという意見がございます。これは実はむずかしい小作料水準の改定の問題にも関連をいたしまして、全国一律の小作料の水準というものはなかなかきめがたいけれども、その村、その部落で適正小作料は幾らというふうにきめることは、土地を貸す人と土地を借りる人と一般の農民とを含めた一種の土地管理組合というふうに言う方もございますけれども、そういうシステムできめることはどうだろう、そのことは、ただ小作料の水準をきめるばかりではなしに、農地の移動の統制についてもそういうシステムを用いることはどうだろう、あるいはまたこの考え方といいますか、いわば行政官庁的な農地の統制の方針に反して、たとえば耕作権の問題でも、現在は行政庁が許可をするという形になっておりますけれども、むしろ裁判所の手にそれをゆだねて、十年あるいは二十年という期間で農地を貸し借りして、それで、問題があれば裁判所に持っていくというふうにするほうがいいではないかというふうな意見も出ておるわけでございます。私ども行政官庁が農地の統制をするということは、これもまた小作調停以来の長い歴史を持っておるわけでございますから、たとえば耕作権の処理の問題を裁判所にゆだねることがはたしてほんとうにいいかどうか、日本で根づく制度であるかどうかということについても問題がございますから、簡単に結論は出せないわけでございますけれども、農地法の改正をめぐって、いわば思想的な問題として私どもが大きな問題と考えておりますことは、大体以上のとおりであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/22
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023・芳賀貢
○芳賀委員 ただいまの問題点については、またいずれ別の機会に論議したいと思いますが、ここで小作料の制度の検討の問題について、現在は、昭和三十年にきめた統制小作料が普通田が一反歩千百円ということになっておるわけです。この点は、農林大臣としていまの時点にこれを照らした場合に、これはあくまでも千百円を中心にした統制小作料というものは妥当と考えて進められるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/23
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024・坂田英一
○坂田国務大臣 いまの芳賀委員の言われる小作料は、現在は確かに私も安いように思います。しかし、その小作料をいまどう変えるかという問題になりますと、これはまた非常にいろいろの問題がございますので、これらの問題については、またその改定については、慎重に考えてまいりたいと存じます。せっかくいま検討を加えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/24
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025・芳賀貢
○芳賀委員 農林省から出した資料によっても、たとえば水田の現在の時価にいたしましても、普通田で一反歩当たり二十万円ということになるわけです。もちろん、小作料、いわゆる地代と土地資本に対する利回りというものは、これは同一の性格のものでないということは、われわれも基本的に考えておりますが、とにかく農地の経営規模の拡大をやるというような場合は、当然反当二十万とか三十万の資金を投入して土地を獲得して、それに基づいて農業生産を拡大するということになるわけですから、いわゆる生産手段として投下された資本に対して、それは小作料というものが投下された土地資本に対する利回りとわれわれは考えておるわけでもないが、しかし、小作料というものが、いわゆる土地に対する地代としてこれが適正に支払われるということになれば、いつまでも一反歩千百円を基礎にするという考え方は誤りでないかとも思うわけです。ですから、今回のこの事業団法との関連において、一体統制小作料というものをどうするか。むずかしいから手をつけるわけにいかぬということにはならぬと思うのです。特に米価算定の場合においても、小作料というものはやはりその価格上の要素になるわけですから、低米価でいくという考えの上に政府が立つ場合は、なるたけ小作料も形式的に上げないということが、米価を抑制する上から言えば一つの方法かもしれぬが、しかし、農業生産の拡大ということから見れば、これをやはり速急に検討して適正に是正する。少なくとも米価問題が具体的に取り上げられる事前にやるくらいの勇気が農林大臣になければ、ことしの米価問題というものはなかなか前向きに進めることはできないのじゃないかと思うのですよ。それらの関連に立って、一体統制小作料というものをどう処理するか、これを明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/25
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026・坂田英一
○坂田国務大臣 確かにいま小作料問題については、これは先ほどお答え申しましたように、十分検討を加えていかなければならぬかと思います。しかし、これが現在の米価にすぐ間に合うとか合わぬとか、現実の問題に合わして小作料をどう見るかという問題になりますと、これはなかなかめんどうなことでございまして、これらの点については、米価の決定等については従来の生産費及び所得補償方式によって進めてまいるわけでございますが、先ほど申しましたように、小作料そのものの問題としては、昭和三十年の定めというもの、これは私も非常に安いと思っておるのでございます。これらの点については十分検討をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/26
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027・芳賀貢
○芳賀委員 この点は、局長が説明した中にも、たとえば兼業農家の自作農地についても、自家飯米程度の面積を二種兼業農家が耕作することは当然であるとしても、その余剰分についてはこれを小作地として貸し出しするとか、あるいは請負耕作契約にするというような場合においても、とにかく一反歩千百円とか千五百円ということでは、これは問題にならないと思うのですよ。ですから、そういう兼業農家の土地の高度利用というものが、一方においては専業的な農家の経営規模の拡大につながりを持つ、寄与できるということであれば、これらの点は事前に解決しなければ——これはむしろ管理事業団を国会に出すよりも先に、この農地法上の二つの問題については、順序としてはこれをまず解決するということでなければ進まないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/27
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028・坂田英一
○坂田国務大臣 もちろん、これは非常に重要な問題でございますので、小作料の問題という点を特に考えてまいりたいと思うのでございます。ただ、農地管理事業団の業務に関しましては、先ほど局長からも申しましたように、権利移動の許可、あるいは小作地の所有制限、あるいは賃貸借の解除の問題ということと関連しまして、これらの点についての農地法の特例を設けることとしておりますので、当面農地法を改正しなくても農地管理事業団の事業は行ない得る、こう思っております。しかし、何としても、これは農地法全般についてでありましょうけれども、特にその小作料問題は、いまお話のとおり、改定の点について、十分検討を加えていくことは申すまでもないことでありまして、御趣旨のとおり進めたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/28
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029・芳賀貢
○芳賀委員 自立農家の経営規模を拡大する場合、方法としては、その農家の所有地を取得によって拡大するという道もあるが、それだけがすべてではないと思うのです。基本的には耕作権というものが確立されて、たとえばそれ以外の拡大農地の場合においても、それは小作農地であってもいいと思うのです。兼業農家が、土地は財産保持のたてまえからなかなか手放すわけにはいかぬ。しかし、労力の不足とか経済上の理由もあって、余裕のある面積についてはこれを貸し出したいという希望も、意識調査の中には出てきておるわけなんです。その場合、いわゆる適正な小作料というものが国の行政の中で認められて支払われる、そして所有権の点についてもそれほどの不安がないということになれば、そこで初めて従来の農協法によるところの信託事業にしても、あるいは今回の事業団法にある信託事業等を活用すれば、相当これは効果があがるとも思われるわけです。農協のいわゆる貸し付け信託が全然進まないというのは、やはり問題の中には、この小作料が不当に安過ぎる、こういう点が横たわっておるわけですからして、この際、どうしても小作料問題というのは、農地制度の中の一つの当面の重要問題として解決しなければいけないと思うのです。これを回避して、遠回りして、これに触れないで問題の処理とか前進はあり得ないと思うわけなんです。ですから、もう一度この点については大臣から、自信がおありでなければ局長からでもいいですから、ただその場限りで検討しますとか同感でありますということではなくて、やはりこれは解決するならするということで、明らかにしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/29
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030・坂田英一
○坂田国務大臣 先ほども申しましたとおり、小作料の点については十分検討いたしておりまして、回避していこうという考えではありません。ただ、小作料の改定という問題になりますと、いろいろの問題がございますので、簡単にいきません。いろいろ各方面の意見も聞き、また先ほど農地局長からも申しましたように、研究会その他いろいろこれらの問題についての検討を加えておる次第でございますから、その点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/30
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031・芳賀貢
○芳賀委員 次に、農地価格に対する国としての調整といいますか、行政的な取り扱いというか、この点はどういうふうに考えておられるのですか。政府から出した資料に基づいても、特に農地を売りたい希望の者、それから購入したい希望の者、これは立場が違うわけですから、売りたい場合にはなるたけ高いほうがいいし、買い手のほうは安いにこしたことはないが、しかし、その調査の中に顕著にあらわれている点は、兼業農家の場合、特に二種兼業農家の場合には、農地を売る希望はあっても、特に価格が高価でなければならぬ、大体三十万円以上でなければ売りたくない、こういう希望が調査上に出ておるわけです。購入したい側の希望は、たとえば平均二十万円の水田価格にしても、そういう高価な地価では、購入してそれを農業の用に供してやる場合においては、経営上からも収益の上から見ても、これは無理がある、できるだけ国の配慮で安い価格で購入するような措置が必要である、こういう売り手、買い手の両者からの意識が表面に出ておるわけです。ですから、国家がこれをどういうふうに調整するかということは、政策上も大事な点だと思うのです。この点、農地管理事業団としては一体どう考えるわけですか。事業団法の農地価格に対する配慮というものは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/31
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032・大和田啓気
○大和田政府委員 農地価格の問題は、御指摘のように、私は非常にむずかしい問題だと思います。それで、意識調査で出ておりますように、買いたい者と売りたい者と、ほとんど二倍に近い幅があれでは出ておるわけでございますけれども、現実に土地が七、八万町歩動いている中で、また特に私たちが農地管理事業団の仕事を進めようと思う純農村地帯では、私はそれほど大きな開きはないのではないかというふうに思います。それで、最近の農地価格の動きにつきましては、お手元に資料が差し上げてございますけれども、この二、三年宅地は相当上がりながら、純農村のいわば純農地、転用含みでない農地の値段は多少強含みでございますけれども、大体横ばい、地帯によっては多少下がっておるところもあるようでございます。そこで、農地価格の統制は一般的には私どもやらないというたてまえで、時価で成立する価格で取引を待つということでございますが、そこのところの政府としての介入のしかたといたしましては、租税関係の減免でありますとか、あるいは三分、三十年の長期低利の融資でありますとか、そういうことで大体やっていけるのではないか。ただ、都市近郊地帯では、いろいろな調査によりましても、反当百万円とか二百万円とかいうものが調査にも載っかってまいっておりますが、そういう地帯では農地管理事業団は動かないし、また動かす必要もないのではないかというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/32
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033・芳賀貢
○芳賀委員 結局売買価格というものは、事業団が買った価格でまた希望者に売り渡すということになれば、これは土地のあっせん人と何も変わりがないということになるわけですね。その場合には、政策は介入しておらぬということになると思うのです。積極的にやるとすれば、零細な第二種兼業等の農地を手放したいという農家の所有地は、これは普通よりも高い価格で国が買い取る、そして経営規模拡大の熱意を持っておる農家に適正な価格を設定して売り渡す、その場合には厳重な買い戻し制度というものを付して、農業に専念してその農地が十分効率的に活用されておらない場合、あるいは農業経営の意欲を喪失したような場合には、直ちにその値段で国が買い戻すというようなことにするか、あるいは資金の貸し付け条件等についても、三分、三十年なんというものは、特別の配慮によるものとはわれわれは考えられない。農地なんというものは、せがれあるいは孫に継承されていく財産である。これは国土の一部ですから、どこへも消えていくというような不安は何もないわけです。だから、高価に買い入れて安く売り渡すことがどうしてもできないという場合、これはやればやれるのですが、いまの政府としてできないという場合には、金利については無利子に近い——無利子に近いということになれば、少なくとも二分以内でなければいかぬと思うのですよ。それから償還年限等についても、二十五年、三十年というのは、これは中期的なものですから、少なくとも五十年とか七十年のそういう年限を付して、金融措置を講ずるということになれば、相当政策的な効果というものはあらわれてくると思われるが、いまのような事業団の内容では、実現してみてもたいした期待も持てぬし、成果もあがらぬと思うのです。そう思わないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/33
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034・坂田英一
○坂田国務大臣 これは別に価格をどうするというわけじゃありませんけれども、事業団、農村におきましては農業団体、それから市町村、その他いろいろ精農家等もありまして、平生から価格の問題、土地の移動その他については十分見ておりますし、調査もしておりますし、またそういうふうにしなければなりません。また、売買ということになりましても、事業団が介在するということになりますと、非常に信用も出てまいります。したがって、その間についてのいろいろのあっせん料とか、そういうものももちろんあげませんし、いろいろな点で非常に便宜を得られるということ、また税金の問題にしても軽減を受けるというようなことでございますので、その点から申しまして、非常な便宜を得るし、また信用を得るという点で、一般の売買にまかしておる場合から見ると、違うだけの効果があろう、こう考えております。また、利息の点については、いま申されたとおり、もちろんそれは安ければ安いほうがいいわけでございます。できれば私どもも御趣旨に沿うように、将来とも努力をして進めてまいりたいと思うのでございますが、一応三分、三十年ということになりますと、そう高いというわけでもございませんでしょうし、こういう点から見ても、かなり効果があろう、こう思っておるわけでございます。さようなことで、それはいろいろの点、利息等についてももっと安ければなおいいという問題も考えられるでありましょう。しかし、この程度ならば、私は相当いけるのではないかと思うのです。また一つは、ずっと以前にも、自作農創設の問題をやったことがありますが、三分、三十年賦でもってその土地を取得した場合に経済関係はどうなるかといったような点からも、やはり事業団が十分調査もし、介入もするということになろうかと思う。これはいろいろな点で考えなければならぬのでありますが、そうまずいものでもなかろう、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/34
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035・芳賀貢
○芳賀委員 問題は、一年間に八万町歩程度の農地が流動しておるという現実があるわけです。それは専業的な農家の所有の移動じゃないのです。特に零細農家相互間における移動というのが大部分を占めておるからして、これは農業生産を拡大する意欲のもとに農地を取得するという、そういう取引形態じゃないので、多分に財産保有的な考えが基礎になって、そうして土地が売買されておるということになれば、国が期待するような方向に決して移動していないわけですね。現象的には八万町歩あるいは将来十万町歩の農地が流動しても、決して国の期待する一定の方向にこれは移動しているのではないということになれば、その移動の方向というものを一つの大目標として進めていくという政策の基本がなければいけないと思いますが、その場合に、農地管理事業団がその方向に向かってこれを促進させる力というものは、われわれが見た場合に全然ないと思うのです。そうしたいということであれば、この事業団法の性格を再検討する必要もあるし、もう少し強力な国の政策実行という面について、躍進的なものを打ち出す必要があるのではないかと思うわけです。その方法としては、先ほど言ったとおり、とにかく第二種兼業農家等を中心にして、みずからの意思で農地を手放したい、売りたいというものについては、国が時価よりむしろ高い価格で積極的に買い入れを行なって、それを自立農家あるいは生産法人に対して最も有利な条件で売り渡しをする、あるいは耕作させるということでなければ解決できないと思うのです。効果的な方法としては、これはだれが考えてもそれしかないと思うのです。せっかくお出しになるのであれば、そのくらいのことを内容とした法案であったら、その場合には何も社会党が反対するというわけはない。あまりに内容が空疎であって、効果がないということが最初からわかっておるので、これはだめだと言っておるわけです。もう一度大臣から確信のある答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/35
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036・坂田英一
○坂田国務大臣 私は、これはこれでなかなか効果をあらわすと思っておるのです。もっとも、高く買って安く売るということができるとすれば、そのことだけから考えれば、それは非常に効果があるとは思いますが、私どもはそうじゃなしに、現在すでに七万五千町歩程度の売買がありますから、それをいわゆる経営の拡大の方向に持っていきたいということ、そのためには、税金の問題なりその他を、先ほど申しましたようないろいろな便宜を与えるということでございます。また、ほかのいろいろな不信用な土地売買の関係に入らなくてもよろしいのでございますし、非常に信用があって、安心して売買もできるということもあります。その間にあって何らの経費もかからないわけでございます。いろいろな点からいえば、非常に進んだということは言えなくても、相当の効果をあげ得るというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/36
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037・芳賀貢
○芳賀委員 そこで、あくまでも政府が手出しをしない、金融制度でいくということであれば、これは条件を根本的に改善する必要があると思うのです。
もう一点大臣にお尋ねしておきたいのは、先般農地局長にはただしたわけでありますが、今後の農地金融というものを一体体系的にどうするかということも非常に大事な点であります。この点について、これは特に今後の問題でありますので、農地金融について基本的にはどう進めるか。これは御承知のとおり、農林漁業金融公庫によるいわゆる取得資金の制度、あるいは今回の管理事業団も多分に金融機関的な性格を持っておるわけです。あるいはまた農協の原資によるところの近代化資金等についても、これは制度金融の一翼をになっておるわけですから、これらのものを総合して、今後のわが国の農地金融の体系というものをどうするか、これもやはり統一的な態度が必要であると思うわけですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/37
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038・坂田英一
○坂田国務大臣 現在は、いま御質問のとおりに、農林漁業金融公庫の場合は三分五厘、この場合は三分、こういうわけで違っておるわけです。それからまた近代化資金、いろいろあるわけでございます。もちろん、これらの点について、少なくとも農地に関係しては、しからばどうするかという御質問だろうと思いますので、そういう点については、いま直ちにそれが実現はできない段階にはありますけれども、いわゆるこの方面に向かっての土地取得の資金という問題に関する限りは、いわゆる農地事業団による三分、三十年というところに漸次これをひとつ持ってまいりたいということを考えております。現在は直ちにはそれができないという実情にあることは御了承願えるであろうかと思います。そういう方向に向って努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/38
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039・芳賀貢
○芳賀委員 いまのお話は、いま直ちには実行ができないが、十分内容を検討して、近い将来に、たとえば公庫による取得資金等についても、これを統一の方向に持っていく、そういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/39
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040・坂田英一
○坂田国務大臣 現在のところ、いますぐそういう方向へいきませんが、その方向に向かって努力をしていきたいということをいま申し上げたのでありますが、さらに申し上げますならば、事業団の事業が拡大していきますときには、事業団の事業のほうにそれらの問題が吸収されるということで、また資金も増額をする方向にいくということで、統一をはかっていけるんじゃないかと思っておるわけでございますが、いま直ちにそれができないのでございますが、その点を少し強調申し上げましたので、誤解があるかもしれませんが、方向はそういう方向に努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/40
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041・芳賀貢
○芳賀委員 この事業団法案に対する非難の最大のものは、やはり農地資金としての条件の相違にあるのですね。たとえば事業団資金を借り受けできるものは、一定の基準に基づいて限定された農家なんですね。たとえば専業農家というものを対象にするとなれば、全国の農家の二割以内ということに当然なるわけです。この二割以内の農家のうちのまた一定の条件を具備したものということになるわけですから、そうなれば、全農家の一割以内の農家がこの事業団による取り扱いを受けることができるということになるわけですね。そうすると、残る八割、九割の日本の農業者も、やはり農業の生産の面においてはそれぞれ悪条件の中で最大の貢献を国に対してもいたしているわけです。その農家は除外するということにたてまえ上これは当然なるわけですね。もちろん、われわれとしても、専業的な農家、あるいは自立農家、あるいは農業に専念する目的を持った農業生産法人がやはり国の農業の最大の柱であるということについては、いまの政府や自民党よりもわれわれのほうが熱意を持っておるわけです。そういうものが大事なものであり、大切なものであるから、いまの農政の二倍、三倍、この中心になる農家に対する政策を実行しなければならぬことは、これは言うまでもないことなんです。しかし、それと同時に、あとの八割、九割の大部分の農家に対してどうするか、これは放置するということにはならぬと思うのですよ。結局は、大部分を占めるいわゆる兼業的な農家に対して、構造改善とか農地の拡大をしようとする場合には、必然的に現在の公庫の取得資金を活用する以外に道がないということになるわけですね。ですから、経営規模の狭い、経営力の弱い農家に対しては、最高限度は八十万しか貸さぬ、条件についても三分五厘、二十五年である。専業的な農家についてはこれは三分、三十年、金は無制限。局長、無制限と言ったが、これは一人が一億円ほしいという場合に、それだけ貸せるかどうか疑問ですが、しかし、そういう制限を付さないというところに一つの特色があるわけですから、比較論的にいえば、同じ農地の取得資金や拡大資金において差別がある、平等性がないというところに、小農切り捨て論の大きな攻撃の根拠があるわけですから、これを農林大臣としてやはり十分解明しなければならぬと思うのです。そういう責任があると思うのです。したがって、この点について、農地金融というものを今後統一的にどう進めるかという点をもう少し具体的に明らかにしておいてもらいたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/41
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042・坂田英一
○坂田国務大臣 その問題はやはり二つの面からいくわけでございまして、もちろん経営を専門的に大きくやるというところへ進むわけでございますが、それは地帯によっても違うでしょうけれども、やはり勤勉によく農業をつとめていくというその本体をよく見なければならぬので、もちろん、現在非常に小さい経営者がそこへいくということは、現実問題としてはそれは困難でありましょうけれども、面積が非常に小さいから、小農であるから、この拡大の方向に採用されないということは、私はどうかと思うのです。これはどうしても地方地方においてそれぞれよくその人自体を吟味して、そしてこの人ならば中心として非常にりっぱにやっていけるという人柄というもの、またその人の能力というもの、それからいままでの実力というもの、そういうところに重点を置いて、その村々、その地帯地帯においてよく選択していただける、こう考えておるのでございます。特別面積が大きいからそこへまた土地をひっつけていくんだという考え方は、これはとるべきではない、こう思っております。そういうので、いわゆる農家の選択というものが非常に大切でありまして、その地帯地帯でよく吟味していただくことになることは、以前からも申し述べておるとおりでございます。しかし、その場合に申し上げたいのは、やはりそこはよくおわかりであろうと思うが、そんなに小さい人々がここへ入ってこないことは、これはもうそのとおりであろうかと思いますので、現実問題としては、非常に小さい人々の問題はこれで解決はできないということになろうかと思うのであります。そのほうの問題の解決ということについては、別途にひとつ考えていきたい、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/42
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043・芳賀貢
○芳賀委員 現実の問題としては、内地においては三反歩以上の農地の所有者は規模拡大ができるわけですね。いわゆる農地を取得する資格を持っているわけです。北海道の場合には二町歩以上です。三反歩とか五反歩あるいは北海道で三町歩、そういう農家は、拡大の意思があっても、事業団法案から見ればその農家は対象にならないのですよ。したがって、農地局長も、現在の保有限度、農地取得のできる下限といいますか、三反歩あるいは北海道二町歩というものは、再検討の必要があるということを言われましたが、これも法律を改正しない限りどうすることもできないわけですね。だから、あくまでも専業的な農業という方向に農地の所有制度を持っていくということになれば、この下限を引き上げるということも、政策上これは必要になると思うわけなんです。しかし、なかなかこれは一律にできないですからね。そうなると、結局所有地を拡大する資格を法律上持っている農家の場合に、土地取得をしたい、相対売買でこれを買えるというような話が整った場合においても、たとえば有利な事業団資金は使うわけにはいかぬ、結局現在の公庫資金の三分五厘、二十五年、最高八十万以内の金しか使えぬということになると、そこに差別が生じてくるわけですからして、これがまた地域においては怨嗟の的にもなるということにもなるのです。一部の農家だけが有利な条件で金を借りて農地の拡大をやっておるじゃないか、われわれ中農、小農は一体どうするんだということが、この地域の農民の感情としてこれは無視できないものがいまから予見されるわけです。そこに大きな欠点があるのですよ、この事業団法というものは。大臣、兼業対策、兼業農家に対する対策というものが並行して講じられていないという点と、あるいは離農対策というものが全然考えられておらない。あるいは経営規模の近代化あるいは拡大にしても、この家族的な自立農業の面においては相当重点を向けておるが、最も期待しなければならない生産法人、共同体に対する強力な育成対策というものが講ぜられていないわけなんですよ。こういう点が事業団法の中における幾つかの欠点になっておるわけですからして、これを十分国民の前に解明できなければ、この法案は通す自信を政府としては持てないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/43
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044・坂田英一
○坂田国務大臣 それはごもっともな何でございますが、いま私が申しましたのは、個人的に見ましても、私は現在耕作しておる面積の大小でなしに、その人の能力とその人の技術、その人のいわゆる自立経営としての精神、力、そういうものに主眼を置いていきたいというのが私の信念でございます。しかし、現実の問題としては、それはやはり現在小さい関係の人はなかなかこれに入りにくい場合が多かろうという現実問題はあろうと思います。そこで、私は先ほど申しましたように、共同経営化、協業化ということによって、共同してそれらの問題を解決していきたいということで、同じような利益を獲得して、いわゆる経営を拡大しながら、しかし、それは協業による、共同によるという方向によってそれを満たすということができるというのが一つの手段であろうか。それから、そうしてもなおかつ困難なという問題につきましては、それは別途にこの問題は考えて政策をいろいろとやっていくのでございまして、これらの問題についても、現在離農問題とかいろいろ問題がございますが、そういう点については、過去において分村計画をやっておるというような問題もございますし、それはどこの村にもこれを行なうということは、それは必要もないことでもあるし、かえって弊害を起こす、また誤解を起こすいろいろな問題が出てまいりますので、これはかってやりましたときにおいても、その村々を見てやりました。特に開拓地帯においては、これはやはり分村計画は特に必要な地帯が相当ございます。これが現在いわゆる離農対策として行なわれておるゆえんのものでございます。それがどこにもここにも普遍的にこれを行なうというわけにいきませんし、またその必要もないし、かえって誤解を起こし、弊害がございますので、この問題については、その実態をよく調査して進めたいというので、調査費をとって今年からそれをやって、そういうことを考えてまいりましょう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/44
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045・芳賀貢
○芳賀委員 だから、これらの問題は、私の指摘した点を大臣としても否定する何ものもないわけですね。問題は、ただやっていないということなんですよ。考え方には同意しておるようですが、同時並行的にこれらの対策を進めなければいけないじゃないかということを繰り返し言っておるわけです。
それで、最後の質問になりますが、今後の農業従事者に対する社会保障政策というものをどういうように進めるかということについて、一つの問題としては、今後の農民に対する年金制度等について、しばしば国会において私ども論議を進めておるわけですが、政府としてどの程度まで検討が進んだか、それを集約した場合には、どういう具体的な方法というものが可能になっておるか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/45
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046・坂田英一
○坂田国務大臣 年金制度等については農政局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/46
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047・和田正明
○和田(正)政府委員 農民年金といいます場合に、いろいろ考え方ができると思いますが、たとえば老齢者の老後の保障をすることによって、世代の交代を促進して、農業の近代化を進めていくというようなことも考えられますし、また、構造政策というような面から社会保障制度のような仕組みを利用するというようなことも考えられると思いますが、現在一つの考え方として、御承知のように、この国会にも国民年金法の一部改正法案が提出をされておりまして、いろいろ御審議をいただいておるようでございます。その国民年金制度が、今回の改正では月額一人頭五千円という定額になっておりますが、それに付加年金的なものを付加していきますことによって、一つの農民年金的な効果を発揮するということも考えられます。そういうようなことを頭に置きつつ、厚生省等とも現在具体的な法案、方策について検討を進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/47
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048・芳賀貢
○芳賀委員 そのくらいのことは、新聞にときどき出ておる程度ですね。だから、政府としてどういうように真剣にこれを検討して、実行論としてはどういうような道があって、具体的にはどうすればこうなるということを聞いておるわけですよ。たまたま新聞の端にちょっと載っているようなことを何も国会で答弁してもらう必要はないですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/48
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049・和田正明
○和田(正)政府委員 おしかりをいただいたわけでございますけれども、私どもとしては、一応たとえば農業共済連なんかとも打ち合わせをいたしまして、いろいろ具体的な設計等を詰めておるわけであります。御承知のように、厚生省とも打ち合わせをしなければならぬし、また大蔵省等との関係もございますので、具体的にいつからこうするというふうには申し上げる段階にはございませんが、私としては、今回の国民年金法の改正が実現しました上では、できるだけ早くそういう付加年金制度のようなものを国民年金制度の中に持ち込む方向で努力をしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/49
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050・芳賀貢
○芳賀委員 大臣にお尋ねいたしますが、この国民年金の場合、夫婦で月一万円という構想は、これは閣議でも決定されたと思うわけですが、農民の場合は夫婦で一人前という考えで一万円にするわけですか。厚生年金の場合には一人一万円、農民の場合はじいさんばあさん合わせて一万円、そういう構想のようですが、農民は人格的に見て二人で一人前ということにいまの政府は考えておるかどうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/50
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051・坂田英一
○坂田国務大臣 国民年金の場合は、一人当たり五千円でありますが、夫婦一万円と申すのは、結局夫婦で一万円ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/51
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052・芳賀貢
○芳賀委員 それはどういう意味かということを聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/52
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053・坂田英一
○坂田国務大臣 実は農村のほうといたしましては、早く世代を交代していくということが重要だと思うのです。それについては、若い人がすぐ実際の農業に従事するという必要があります。そういう意味から、フランスのごときは農業専門の年金制度を立てておるわけでございますが、それは確かに一つの大きな転換であり、また重要なことであろうと思います。それで、日本でもできることならば独立してさように進めてまいりたいとは思うのでございますが、現在国民年金がすでに一人当たり五千円に増額するということに相なっておりますし、また、いま申しましたような事柄を現在の国民年金に付加して——これらの問題について独立して別につくらなくても、付加してこれらの目的を到達できる方向に努力を払ってまいりたい、こう私どもも考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/53
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054・芳賀貢
○芳賀委員 いまお尋ねしているのは、厚生年金の場合は、昨年から制度改正になって最低が月額一万円ということになったのです。ところが、国民年金の主体をなしておる農業者の場合は、これは五千円、夫婦一万円というのは、これは夫婦合わせて——人格としては国民の二人で夫婦になっておるわけだから、その夫婦に対して一万円ということになれば、厚生年金のちょうど半分ということになるわけでしょう。結局農民の場合は二人で一人前の年金でたくさんだというのがいまの政府の考え方のようにしか受け取れないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/54
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055・坂田英一
○坂田国務大臣 厚生年金のほうは一人について一万円ということになっておる。国民年金のほうは本人ごとに一人五千円ですから、夫婦合わせて一万円、こういうことになる。この均衡の問題がどうかという御質問かと思いますが、こういう国民年金の場合と厚生年金の場合ですが、これは差があることは当然であると思うのです。しかし、夫婦一万円というところへ参りましたこと自身も、これは相当の事態の進歩である、こう考えておるわけであります。なお、私どもとしては、将来の大きな問題として、これらの問題をとらえて世代転換を促進するという問題に十分力を加えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/55
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056・芳賀貢
○芳賀委員 厚生年金の場合は、幾ら賃金が安くても、最低の保障が月額一万円ですからね。厚生年金に加入している勤労者の場合には、国の最低保障が月額一万円。農民の場合には、まだこれは始まったのじゃないですよ。これから二十五年たたなければ五千円にならぬわけです。二十五年の将来になってやっと五千円ですからね。いま大臣は、差があるのがあたりまえだというようなお話でありましたが、それはどういう意味なんですか。差があるから、これは改善しなければならぬというのであれば、これは話がわかるのです。差があるのがあたりまえだというのは、理論的に何かあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/56
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057・坂田英一
○坂田国務大臣 厚生年金では、これは妻のほうがない。これは御存じのとおり、勤労者本人のみで一万円ということになっておるのであります。それから国民年金の場合は、夫婦で一万円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/57
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058・芳賀貢
○芳賀委員 これは真剣なことを聞いておるのですよ。茶飲み話で漫談をやっておるわけではないですからね。農業従事者の夫婦というものは、男でも女でも、年金を受ける年齢までの間、少なくとも三十年あるいは三十五年営々として農業に従事した経験者をいうわけですよ。農家で嫁さんをもらって、男だけが働いて、三十年も四十年も健康な細君を働かさないで養っておるというような場合はないのです。そうなるのはあたりまえだが、残念だが、現在の農業の事情というものは、四十歳以上の年齢者が農業従事者の六〇%を占めておるのですよ。それは兼業の激化によって、農村に残っておる年寄りは死ぬまで働くということに当然なるのですよ。男女の割合にしても、五五%が女子の従業者ということになるわけですから、当然国民年金を受給する場合は、健康であれば男も女も全部、これは三十年、四十年農業をやってきておる。婦人の場合はなおそうなんですよ。農業の従事者の割合が多くなっておるわけだが、それが厚生年金の場合には一人一万円、農業従事者の夫婦の場合には二人で一万円というのは、これはおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/58
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059・坂田英一
○坂田国務大臣 現在の制度と、それからいままでの努力の結果としてかように相なったということを申したのでございまして、一人五千円で適当であるとは私も思いません。したがいまして、今後これらの増額については、もちろん努力はしてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/59
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060・芳賀貢
○芳賀委員 ですから、厚生年金の最低保障が一万円であれば、同じ農業を通じて国に貢献しておる農業者に対しても、やはり年金の場合には同様に最低一万円を保障する、これはあたりまえじゃないですか。それが二十五年先にいってやっと五千円。差があるのがあたりまえというのは、これは一国の農林大臣としてまことにわれわれとしては了承のできない御発言だと思うわけです。そう思わぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/60
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061・坂田英一
○坂田国務大臣 私がいま申しましたことは、一人五千円で適当ということではないので、この問題については相当の努力を払った結果であることを申し上げておったわけです。しからばこれで十分かという問題になりますと、私も先ほど申しましたように、フランスは独立してこれをやっておる。こういうことで、世代の交代という問題もあわせて考えてまいる必要もありますので、さらにこれらの増額に努力する必要があるということを申し上げておったわけでございます。
なお、農政局長から申し添えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/61
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062・芳賀貢
○芳賀委員 私の言っているのは、最低保障のことを言っているのですが、ここに問題があるのですよ。国民年金というのは、現在までは三十歳までは月額百円、三十を越えた者は月額百五十円ですから、掛け金についても、これは他の年金加入者の掛け金より非常に低廉であるというところに一つの問題はあるが、しかし、最低保障ということになると、いま審議中の農林年金の場合においても、二十年勤続して退職したその最低年金受給者についても、今回の改正の場合には、退職給付を年六万円、これは最低保障ということになるわけです。これはちょうど月額五千円ということになるのですが、すでにもう退職して、農林年金の受給が行なわれておる者に対しても最低保障六万円、これは非常に低いですが、そういうことになっておるわけですから、やはり最低保障ということになれば、現在農業を行なっておる者、現在勤労を通じていろいろな職場に勤務しておる者に対する国としての社会制度の中における最低保障、年金制度を通じての最低保障というのは、これは同様でなければならぬと思うのです。最高は、これは給与額や何かによって掛け金もふえるわけですからして、上があったり差があることは当然ですが、国の制度を通じてささえる最低保障ということになれば、厚生年金であっても国民年金であっても、あるいは公的年金の場合においても、最低の保障額というものは同一でなければならぬと思うのですけれども、そうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/62
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063・和田正明
○和田(正)政府委員 厚生年金の場合の一万円というのは、芳賀委員御承知のように、平均の標準報酬が月に二万五千円の人について一万円ということになるわけでございまして、その一万円は、たとえば私なら私がどこか会社に勤めておるといたしますれば、老後の夫婦として一万円、夫婦の世帯が一万円の厚生年金を受け取るわけでありますが、国民年金の場合には、そういういわゆる勤め人という形ではなくて、いわゆる自由業の場合でございますから、本人と妻とが別々に国民年金の掛け金をかけて、一人五千円ずつで両方足して一万円になるという意味においては、一応の二万五千円の標準報酬をもらっておる勤め人の夫婦の世帯と、それから勤めてはおらないけれども、自由業として働いておる夫婦の世帯における一万円と見合うような形に今度改正をいたそう、こういうことでございますので、いま先生おっしゃるように、最低保障が月一万円になることが適当であるというふうに、国民年金の場合にも必ずしも言い切れないとは思いますけれども、先ほど来大臣お答えになっておりますとおり、社会保障制度そのものは、給付内容がよりょくなるということは当然でございますし、他の制度との間の均衡ということも当然必要でございますので、先ほど農民年金制度というようなことでお答えをいたしましたときも、農家の収入に応じた付加年金的なものがさらに上乗せられることが一つの方法として考えられ、検討しておることを申し上げたわけでございますが、そういうような方向とあわせて、今後とも厚生省等とも打ち合わせをしながら、最低額が上がっていくと申しますか、給付内容がよくなるような方向ということについては、大臣の御答弁のように努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/63
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064・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、付加年金の考え方を持っておるということの局長のお話がありましたが、具体的に第一の点は、付加年金というのは、国民年金に対する付加制度でしょう。その場合に問題になるのは、最低保障の線というものを国の責任でどこまで上げるかという点と、その上に付加年金というものをどういう形で実行するかということになるが、その点を説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/64
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065・和田正明
○和田(正)政府委員 先ほども申し上げましたように、まだ政府全体としての考え方ではございませんで、私どもが内部で検討しておる段階なので、そういうものとしてお聞き取りいただきたいと思いますが、最低保障につきましては、国民年金制度がとりあえず月額五千円というふうに、今回の法案が通過すれば改正になるという前提で、とりあえずはそこにまず行きました上で、付加年金ということで、たとえば現在一口で五千円ということになっているわけですが、三口程度までの間を本人の選択によって掛け金をかける場合に、厚生年金でもそういう制度がございますように、個々の掛け金に対する補助は、根っこの部分に同じような補助を与えながら、そういう範囲の上乗せをして、給付金がもらえるような仕組みというものが考えられないであろうか、それをたとえば農協がやっております共済事業などと関連をさせながら、実施していくことができないであろうかということで、内部で検討しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/65
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066・芳賀貢
○芳賀委員 その三口ということになれぽ、かりに最低を現在五千円と見た場合、それでは一万五千円で押えるという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/66
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067・和田正明
○和田(正)政府委員 たとえば三口というふうに申し上げますれば、本人及び妻がそれぞれ三口かければ、それぞれ一万五千円で三万円ということになりますが、押えるという意味ではなくて、根っこでございます五千円の給付に同じように国の補助をするとすれば、やはりどこかに限界があるであろうということの意味において、三口という一つの例を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/67
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068・芳賀貢
○芳賀委員 その程度の説得では、われわれとしてはわかりかねるのですよ。もう少し具体的に、何も秘密主義でやる必要はないじゃないですか。それ以上の説明ができないでは、これは全然やっていないならいないでもいいのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/68
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069・和田正明
○和田(正)政府委員 御承知のように、現在厚生年金制度でも、もとになります給付のほかに、所得に比例をいたしまして、国が根元の金額と同じ程度の補助をして乗せていく制度がございます。報酬比例。そのほかに、国の補助がございませんが、企業独自で個々の企業ごとに積み重ねていく制度がございます。いま私が申し上げましたのは、企業独自で積み重ねていく部分ということではなくて、厚生年金におきましても、所得に比例をして給付内容が増加されます部分のことについて申し上げたわけでございますが、そういう制度を国民年金制度の中に取り込んでくるということが考えられるのではないか。つまり、五千円についての掛け金と同額の掛け金をさらに上乗せしてかける。その場合に、掛け金についても、五千円の掛け金の場合に国が補助しているのと同じような補助を与えていく、そういう形のものを考えられないか。さらにその上にもし上乗せするとすれば、それは農業関係者が独自の職域年金的なものを上乗せをしていくことになりまして、その部分にまで補助を出すということは、厚生年金とのバランス上限界があるのではないだろうかということが考えられるわけでございます。所得比例部分をどの程度のものと考えるかということになりますと、現在たしか標準報酬が最高十一万でストップしておりますわけで、厚生年金でも国家公務員の共済でもそうでございます。そういうようなこととのバランスを前提にして考える必要があるのではないだろうかというふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/69
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070・芳賀貢
○芳賀委員 いまの局長の説明は、まず国民年金の中で付加年金という構想を生かして、それが二口とか三口まで許容されるということになれば、それに対する国の負担とか給付というものは、同一条件でこれはやっていく、あとは、いまある農協法でやっているところの共済事業を、共済組合の行なっておる保険事業の中でこれを国民年金付加年金と併用した形でさらに活用する、そういう意味ですか。ですから、国民年金の基礎になる分に、付加年金を活用して、そのほかに農協あるいは漁協の行なっておる共済制度、共済事業の中でこれも並行的に進める、そういう考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/70
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071・和田正明
○和田(正)政府委員 現在やっております共済の制度では、年金的な共済をやっておりませんで、死亡の場合とかあるいは一定年限に達した場合に、契約金を一時に支払うような共済をやっておるわけでございます。いま芳賀委員からお話のございましたように、国民年金制度の中で付加年金的なものを加味することを考えました場合に、やはり現在の共済の制度ではなくて、現在各種の企業がやっておりますような企業年金的なものを国民年金制度の付加年金制度のさらにその上へ積むことを、共済事業としても考える余地があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/71
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072・芳賀貢
○芳賀委員 もちろん、農協の共済事業は、これは共済規程にあるとおり、年金的な事業はいまやっていないことは、もうすべて承知のことですが、いま言われたような諸点は、これは単に和田構想的なものじゃだめですから、政府として、まず農林省として方針をまとめて、そして関係各省の間においてもこれは協議が必要と思いますが、これは熱意を持って短時日に方針をきめるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/72
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073・和田正明
○和田(正)政府委員 もちろん、私個人の構想では困るわけでございますし、またいまの段階では、まだ政府の考え方として固まってはおりませんけれども、ある程度、昨年来厚生省の担当者等とも若干の打ち合わせなどもいたしておりますので、私としては、できるだけ早い機会にそういう方向に持っていくように努力していきたいということで、せっかく厚生省との打ち合わせを進めておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/73
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074・芳賀貢
○芳賀委員 では大臣にお尋ねしますが、いま農政局長の説明の内容の程度は、大臣としてもこれは了承されておるわけですね。あるいは大臣が指示してそこまで構想が進んでおるのか、その点はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/74
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075・坂田英一
○坂田国務大臣 具体的にその方法等は指示しておりませんけれども、そういう趣旨に沿ってこの問題をどうするかという点については、農政局長ともよく話をし、またそういう方向に進むべく研究を命じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/75
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076・芳賀貢
○芳賀委員 研究の結果がここまできたわけですから、あとはこの方法で大体やれるというめどがつけば、これは当然農林省が主体になって政府の方針をきめるわけですから、単に和田構想とか坂田構想なんというものじゃ長続きしないですからね。農林大臣として農政局長に指示をして、研究作業がここまで進みました、今後は大体めどがついたのでこれを農林省の正式な方針として、そして速急に政府の案を取りまとめて実現に向かって努力する、そういうふうな解釈でいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/76
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077・坂田英一
○坂田国務大臣 その研究を命じた点については、先ほど申し上げたとおりでございますが、いま農政局長からお答えいたしました点について、さらに検討を加えて進めてまいりたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/77
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078・芳賀貢
○芳賀委員 以上で管理事業団法案に対する大まかな質問は終わったわけですが、先ほども申し上げたとおり、この法案には同時並行的に行なうべき施策の用意というものが一方においてなされていない。その諸点をあげれば、第一に、兼業農業に対する対策というものが講じられていないことと。離農者に対する受け入れ態勢というか、その対策というものが全く放置されておる。第三としては、今後重要な期待をになうところの農業の共同化、共同体に対する育成助長対策というものが熱意を持って行なわれていない。さらにいま論議しました農業従事者に対する社会保障制度というものが、他の産業従事者等に比べて非常におくれておる。こういう点が、新しい農地制度との関係を持った事業団法の中においては片りんもうかがうことができないわけです。こういうところに社会党として同調できない点があるということをつけ加えて指摘しまして、管理事業団法案に対する質問を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/78
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079・舘林三喜男
○舘林委員長代理 次に、湯山勇君外十二名提出、農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案及び内閣提出、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/79
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080・芳賀貢
○芳賀委員 農林年金法に対して農林大臣にお尋ねしますが、第一の点は、社会党提案と政府提案の両法案の基本的な相違点にも関連するわけですが、今日まで審議の経過においてまだ未解決な点といたしましては、法律上年金の給付に関する、いわゆる旧法期間と新法期間との給付の完全通算の問題について、これが明快を欠いておるわけです。それで、政府としては、一体旧法期間に対する給付率というものを新法期間同様百分の四十に完全通算すべきであると考えておるかどうか。これは大臣から明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/80
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081・坂田英一
○坂田国務大臣 今回の改正案によりまして、旧法組合員期間にかかる平均標準給与の取り扱いは、完全にこれは新法並みとなることとなるわけでございます。給付率につきましては、新法並みとすることは、他の共済組合制度との均衡上、今回はとらなかったわけです。しかし、関係者の要望も強いので、今後とも他の共済制度との均衡を勘案しつつ検討してまいりたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/81
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082・芳賀貢
○芳賀委員 そこで、基本的には新旧期間を完全に新法の四〇%で適用すべきであるという考えを持っておられるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/82
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083・坂田英一
○坂田国務大臣 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/83
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084・芳賀貢
○芳賀委員 問題は、これはいつから実現したいと思っているかという点なんですね。今後十年も十五年もたてば、それは長生きをしておる旧法期間適用の退職者の場合にはいいが、しかし、十年も二十年もたってということになれば、全部これは新法期間の適用者ということになってしまうわけです。ですから——そういう考えを持っていなければ別ですよ。いまの答弁からいうと、当然これはやらなければならぬと考えておるという御意思でありますからして、その実現の時期ですね。もちろんすみやかでなければなりませんけれども、大臣としてはどの程度の期間内に完全通算ができるようにしたいと思っておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/84
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085・坂田英一
○坂田国務大臣 なるべく早くやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/85
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086・芳賀貢
○芳賀委員 この点は、与党並びに社会党の理事間においてもいろいろ話し合いをした点ですが、完全通算ができなし場合には、次善の策として、他の公務員年金等が行なっておるように、旧法期間については最終給与ということでこれは計算すべきでないか、との点は、実は当委員会の理事間の話し合いでは、せめてそのくらいにはすべきであるという申し合わせができたわけですが、なかなかいまの政府並びに自民党の首脳部——といっては、それ以外の者が劣っているように見えますが、そういう人々の同意が得られないということで、まだ全面的な次善策についても解決ができていないわけですが、あくまでも基本的には、ごく近い将来にこの問題は完全な処理ができなければならぬとわれわれは考えておるわけです。そこで、繰り返して尋ねるわけですが、農林大臣から責任ある答弁をしていただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/86
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087・坂田英一
○坂田国務大臣 いまの点につきましても、可及的に早く到達するように努力いたしたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/87
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088・芳賀貢
○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、農林年金の特徴的な問題として、組合員の掛け金負担が非常に高いという点ですね。もう一つは、農林年金の組合員の給与水準が極端に低い。これが農林年金を通じての組合員の背負っておる一つのマイナスの特徴なわけです。給料が非常に安い、掛け金率が非常に高い。これが逆だといいわけですね。給料が高くて、掛け金率が低いということであれば、これはいいわけですが、そうでなくて、給料が非常に安くて、これは公務員の給与水準に比べると、大体月額にして平均一万円低いわけですね。重大な問題だと思うわけです。しかし、給与に関しては、直接政府や農林大臣の責任とは言いがたいわけですが、制度としてこの掛け金率が非常に高いという点に対しての改善策をどう考えるかという点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/88
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089・坂田英一
○坂田国務大臣 この審議会の答申の趣旨もあるので、他の年金制度との均衡を考慮し、国庫補助の増額について今後とも十分努力し、これらの問題を解決していくように努力したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/89
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090・芳賀貢
○芳賀委員 掛け金負担の中で一つの問題は、他の公的年金に比べて、組合員と事業主の掛け金割合が同様であるという点であります。つまり、法律でこれは折半の負担ということになっておるわけですからして、これを組合員である農林漁業団体の職員の掛け金を軽減させて、事業主のほうにある程度負担させるというようなことが妥当であるという場合には、どうしても法律の内容の改正をしなければならぬと思うわけです。他の公的年金の場合には、国家公務員関係はもちろんでありますが、いずれも組合員側の掛け金の負担がある程度低率で、事業主側の負担が高率であるという、こういう負担区分になっておるわけです。この点はやはり早晩解決しなければならない問題であると思いますが、政府としてはどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/90
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091・坂田英一
○坂田国務大臣 農林年金の雇い主側五〇%、本人も五〇%、一方の社会党さんの案は五五%、四五%という問題があるので、この点は今後十分検討してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/91
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092・芳賀貢
○芳賀委員 この点はまことに明瞭な点で、検討の余地はないのですよ。五分五分でいくか、あるいは組合員側が四五の場合には事業主側が五五ということになるわけでして、公務員年金のような場合は、大体そのような負担区分にこれはなっておるわけです。ですから、これはたとえば委員会で修正してくれればそれでいいというのであれば、これを上げる場合に負担区分をちょっと手直しすればいいということになる。そういうことについては同意されるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/92
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093・坂田英一
○坂田国務大臣 この問題、農政局長から詳しく申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/93
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094・和田正明
○和田(正)政府委員 負担区分を現在の半々でなしに、事業者側にさらに負担をさせて、組合員側の負担を軽減したらどうかという御意見は、まことにごもっともな点もあるわけでございます。ただ、事業者でございます農業団体側の負担能力という問題もございますので、いま直ちにそういう方向をとることもいろいろな問題があるかと思いますが、先ほど大臣がお答えを申し上げました整理資源の問題とからんで、国庫補助を今後増額してまいりますような方向とあわせて、そういう機会に改善の方向についても検討してまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/94
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095・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、次の改正の時点においてはこの折半負担というのを是正する、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/95
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096・和田正明
○和田(正)政府委員 次の改正の機会というのが、どういう改正内容になるか、まだ予測を許しませんので、その機会にということを申し上げてよいのかどうかは必ずしも自信がございませんが、先ほど農林大臣からも、内閣の社会保障制度審議会の答申の趣旨にも照らして、今後掛け金負担が引き下げられるように、いろいろな面で国庫補助の増額等について十分努力をしたいということを御答弁になったわけでございます。そういう形で掛け金負担の軽減等が行なわれます機会に、負担区分の問題もあわせて検討してまいりたい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/96
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097・芳賀貢
○芳賀委員 この点は法律改正をしなければ是正できないわけですね。政府としてはどう考えておるかわからぬが、たとえば国の負担についても、現行法においては百分の十五ということが明定されておっても、いや、それは法律を改正しないで行政的にやれるというような主張をしたが、国会の中ではそれは通らない理屈ということで、ついに法律改正をするということになった経緯もあるわけですからして、これを農林年金だけ改正しないという考えでおっても、他の各省所管の年金のほうがやはり時代に適応した改正をやるということは、これはもう毎年行なわれておるわけですから、農林大臣だけがんばって、いや、うちの農林年金はもう直す必要がないというわけにはいかぬと思うのですよ。ですから、次の機会というのは必ず通常国会であるわけですからして、その機会には、負担区分についてもそれまでに十分な検討をしてもらって、他の公的年金と比較して、妥当な負担区分にこれを是正するという——当然なことでありますが、この点を農林大臣から明らかにしておいてもらいたい。
〔舘林委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/97
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098・坂田英一
○坂田国務大臣 負担区分を改めることは、いろいろ問題がありますので、今後十分検討していきたい、かように存じております。これは前向きに検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/98
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099・芳賀貢
○芳賀委員 そこで、次の点は、掛け金の負担総体を軽減する必要が当然あるわけでありまして、現在農林年金の掛け金率は千分の九十六、それを両者で千分の四十八ずつ負担をしておるが、これは他の公的年金の場合には、そういう高率な負担の事例が実はないわけです。法律においても今度は百分の十六を国が毎年の年金の給付額に対して負担するということになるわけですが、その程度では負担軽減というところまではいかないわけです。したがって、これを社会党の法案のごとく、たとえば百分の二十まで国が負担するとか、あるいはそれができなければ他の方法として、整理資源分が農林年金の場合には非常に高率になっておって、現在千分の二十三程度が整理資源になっておるわけですからして、これを政府がやはり熱意を持って解決するということでなければ、負担全体の軽減は講ずるわけにはいかないわけです。したがって、この整理資源分に対して、特に政府としてはどうしたらいいかという点を大臣から答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/99
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100・坂田英一
○坂田国務大臣 お説のとおり、農林年金が千分の九十六、公務員が千分の八十八、私学年金は千分の七十六、こういうことでございます。これらの均衡を先ほど申しましたように考慮する。主として国庫補助の増額ということでいかなければならぬ。今後ともこれについては、お答えを申したように十分努力をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/100
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101・芳賀貢
○芳賀委員 この点は非常に大事なわけなんですよ。問題は、いま国としては、新しい法案においては、給付額に対して百分の十六を負担するということに是正されるわけです。その十六については、いま私が指摘しました整理資源分についても、実態を解剖すると、やはり千分の十六を国が補助している形になっているわけですね。つまり、政府の百分の十六がない場合には、整理資源分が千分の二十七程度ということになるわけです。百分の十六の国の補助があることによって、実際の整理資源分の負担は千分の二十三程度ということになっておるわけです。ですから、現行法の六十二条第一項の規定によって、微少ではあるけれども、整理資源分に対しても国は一応の負担をしておるという理由は成り立っておるわけです。ですから、さらに整理資源分に対して国が積極的な負担を行なって、あるいは助成を行なって、年金の掛け金率の低減をはかるということになれば、その行なうべき根拠というものをやはり法律上明らかにしておく必要があると思うわけなんです。この点は、むしろ農林大臣の側から具体的な熱意のある答弁をしておいてもらわないと、法律が通ったあとの運用上の問題として、また禍根を残すようなことになるわけですからして、この点は十分なお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/101
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102・坂田英一
○坂田国務大臣 この点につきましては、整理資源国庫補助の増額に努力をしてまいる、こういうことで進みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/102
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103・芳賀貢
○芳賀委員 いまの御答弁は、政府案の百分の十六は当然疑問はないが、そのほかにもう一つの国の負担方法として、整理資源分を対象にした国の負担を行なう、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/103
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104・坂田英一
○坂田国務大臣 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/104
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105・芳賀貢
○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、先ほども申し上げましたとおり、農林漁業団体の職員全体の給与水準が非常に低いわけです。公務員の給与に比べて、月額で一万円低い。これはたいへんなことだと思うのです。これは重ねて言うようですが、農林大臣が農協や漁業協同組合の職員の給与を押上えておるということにはなっていないのですよ。しかし、農業政策の欠陥上そうなっておることは事実だから、間接的な責任はあるのですよ。しかし、直接的には農協とかあるいは漁業協同組合においてきめるわけですが、とにかく、他の勤労者に比して非常に給与水準が低いという点が一つと、もう一つは、農業協同組合のたとえば中央段階、あるいは都道府県段階、あるいは末端の農協、他の団体もそうですか、同じ系統内において段階が違うことによって、あるいは単位組合の間において、給与の格差が非常にはなはだしいという点も、これは公務員の給与等に比べて非常な欠点があるわけです。ですから、全体の給与水準を上げる方途と、もう一つは、同じ系統内において均衡を欠いておる給与のでこぼこというものをやはり是正しなければ、この基礎をなすところの給与体系というものが整備されて確立しない限り、年金法の内容だけよくしても、これは十分な恩恵を受けるととは当然できないわけです。ですから、この点について、農林漁業団体の指導機関である農林省として、また農林大臣として、どういうような具体的な方策をお持ちであるかという点を明示してもらいたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/105
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106・坂田英一
○坂田国務大臣 確かに、資質の高い職員を十分確保して、いい職員によっていい仕事をしてまいるということを私どもも大いに期待するものでございます。そのためには、言うまでもなく、給与の改善、給与体系の整備等が必要でありますので、今後の農林漁業団体に対する指導にあたりましては、この点について特に留意してまいりたい、かように存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/106
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107・芳賀貢
○芳賀委員 農林大臣としては、農業協同組合のことはよく知っておられるわけですが、同じ農協の仕事をやっておるのに、中央における連合会の職員の給与、あるいは都道府県段階における各連合会の職員の給与、それから末端の直接業務を行なっておる単協の職員の給与水準というものは、非常に差異があるわけです。差異があっても、協同組合の業務を行なうことについては差異がないのですね。それが例外なしに非常な格差があるという点については、これは農林省としても、直接行政指導あるいは監察を通じて十分実態を把握しておられると思うわけです。これが全然是正されておらないという原因が一体どこにあるか、この点を参考までに聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/107
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108・和田正明
○和田(正)政府委員 おっしゃるように、単協と県連あるいは全国連との間に相当程度給与の差がございます。そのことの原因は何かというふうにおっしゃられますと、必ずしも端的にこれとこれとこれというふうにずばり申し上げるほどの分析もなかなかできにくいのでございますが、一つには、何と申しましても、単協の場合と県連あるいは中央段階の場合とでは、事業の量と申しますか、規模と申しますか、そういうものに御承知のように差がございますので、すでに御承知のように、単協段階につきましても、農協の合併等を進めまして、大規模経営による経営の合理化というようなことを進めてまいっておるわけですが、こういう合併による経営の合理化が今後軌道に乗りますならば、先ほど来御指摘のような点にも相当程度貢献をするかと思います。また、昨年の秋でございましたか、全国の農協中央会が、内部として自主的に総合審議会というものを設けまして、いろいろ農協のあり方についても検討をいたしました中に、物別には、現在の三段階制を二段にするとか、あるいは一般にするとかいうようなことを、今後団体内部で詰めて検討するというようなことを言っておるわけでございますが、そういう段階の合理化というものが、今後農協内部の自主的な検討の結果、物別に詰められてまいりますれば、現在のようなマージンを積み重ねていくような問題がある程度省けるというようなことによって、単協の経営の合理化もできるかと思います。そういうような点も十分加味しながら、大臣御答弁のございましたような方向で、給与の改善なり給与体系の整備の努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/108
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109・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、私の指摘した二点については、行政的な指導については今後積極的に行なう、そういうふうな方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/109
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110・坂田英一
○坂田国務大臣 御意見のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/110
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111・芳賀貢
○芳賀委員 第四点としてお尋ねしたい点は、社会党の法案には、この年金のいわゆるスライド制が具体的に明示されておるわけですが、政府提案の法案にはこれはないわけです。ただ、いま大蔵委員会に付託されておる昭和四十年の旧令共済年金の改正法案の中に、一部農林年金に対してもいわゆるスライド制の原則規定というものが示されておるわけです。だから、四十年の旧令共済関係の法案が成立すれば、それが農林年金についても法律の規定として原則がうたわれることになるわけですが、これは法文の内容を見ても、あくまでも原則です。社会党のほうは、経済変動率が五%以上の場合においては、すみやかに政府が行政的に年金の給付内容を改定しなければならぬ、そういうことになっておるから、これは法律が通れば、行政府に対して法律通りやらせることができるわけですが、政府案のようにスライドの原則だけをうたった場合は、これは発動するかしないかわからぬということになるわけです。この点が非常に不安があるわけですからして、このスライドの原則規定の法案が通った場合の具体的な実施方針について、この際、政府から明確にしてもらいたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/111
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112・坂田英一
○坂田国務大臣 今回設けられることになっておりますいわゆる年金スライド原則の規定の具体的な実施基準につきましては、その規定が厚生年金、国家公務員共済あるいは私学共済等と同様の規定であることでもありますので、関係各省と十分連絡して、でき得る限りすみやかに成案をまとめるようにいたしたい、かように存じているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/112
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113・芳賀貢
○芳賀委員 もう少し具体的に、これは局長からでもいいですが、とにかく法律を政府が出す場合は、実施する場合に必要な政令とか実施基準とかいうものは、当然法案に付随して用意しておかなければならぬわけです。だから、スライドの原則規定の場合も、法律が成立した暁に研究するという程度ではないと思うのですよ。だから、われわれは、大蔵委員会での審議に参加しておらぬから、どういう審議内容かまだ明確じゃありませんが、少なくとも旧令共済の改正の中に農林年金の原則規定が出ておるわけですからして、これが成立した場合、発動の基準とか時期等については一体どうするという用意の内容については、この際、年金法の通る前に明らかにすべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/113
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114・和田正明
○和田(正)政府委員 年金を経済事情の変動に対応してスライドをさせるべきであるという原則の規定につきましては、この農林年金ばかりでなしに、国家公務員共済、厚生年金その他各種の年金制度にも同種の規定が入っておりまして、前からすでに設けられておるものもございますし、また、この国会に御審議をいただいておる法案の中に盛られておるのもあるわけでございます。それで、実は先般来関係各省の間で連絡会議等も設けまして、厚生省が中心になりまして、外国における法令なども調査をいたしながら、各省共通の基準で処理をいたすことで検討を進めておるわけでございますが、現段階では、政府側として、たとえば物価が何%上がったからどうするというようなことをこの席でお答えを申し上げる段階まで、政府全体としての意思統一がまだできておりませんので、できるだけ早急に関係各省との協議を詰めまして、基準をきめ、それに合わせて所要の措置を講じてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/114
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115・芳賀貢
○芳賀委員 これは現行の恩給法の場合はしばしば引き上げをやっているわけですね。その根拠は、やはり経済変動というものが理由になって、恩給受給者の最低の保障をするということで、スライドをやっておるわけですからして、たとえば恩給法によるスライドの発動された場合の基礎条件というものは、農林年金にも今後適用されると思うのですね。だから、その点から考えれば、当然どういうような経済変化の場合においてはこれは発動されるとか、その基準はどうであるということになると思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/115
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116・和田正明
○和田(正)政府委員 旧恩給法におきましては、先生御指摘のように、数回の改正が行なわれたわけでございます。その改正では、経済事情の変化ももちろんあるかもしれませんが、主として国家公務員の給与ベースの改定という事態をとらまえて、それとのバランスで行なっておりまして、たしか現在の段階で昭和三十六年の国家公務員の給与ベースの改定に近づける方向で行なわれておるかと思います。そういう意味では、物価がどうであるとか生活水準がどうであるとかいうような基準ではなくて、国家公務員の給与ベースそのものの改定をとらまえまして、それに合わせていく。その合わせ方もまだ昭和三十六年のベースというようなことでございますので、今回設けようとしております経済事情の変化に対応するスライド原則ということと、必ずしも一つにはあるいは結びつかないのではないかと思いますが、先ほど申しましたように、国家公務員法における改正の動き等ももちろん十分考慮しながら、この規定に基づきます実施基準を各省間で早急につくりたいということで、現在作業をいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/116
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117・芳賀貢
○芳賀委員 旧令共済の改正案の中に、農林年金の条項については、「この法律による年金たる給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」こういう表現を用いておるわけです。ですから、発動するということになれば、当然発動せらるべき基準というものが政府に用意されなければならぬわけです。一例を申せば、人事院制度の中で、最近は毎年、国家公務員に対して給与改定の勧告が行なわれておるわけです。これは皆さん御承知のとおりであります。その場合も、やはり経済変動五%以上というのが最大の基礎をなしておるわけでありますからして、給与をどうしても改定しなければならぬという経済変動の基礎、あるいは民間産業との賃金の格差というものは、やはり五%ということに基準を置くとすれば、年金受給者に対しても、当然経済変動の裁定の根拠は五%なら五%ということに置いて差しつかえないと思います。その点は社会党の法案の中には実に明確になっておるわけでありますから、政府は、原則規定だけをうたって、それで発動しないで逃げるというわけにはいかないわけであります。法律提案と同時に、その基準というものはやはり用意しておいて、国会に対しても明確な説明ができる態勢でなければいけないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/117
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118・和田正明
○和田(正)政府委員 おっしゃいますように、法案を提出する段階で、そういう基準についても明確に確定していくことが理想であったかと思いますが、先ほど申し上げましたように、いろいろ各種の年金制度にこの規定がございますこと等の関連で、まだ政府として統一した規定ができておらないわけであります。もちろん、私どももこの原則の規定を入れただけで事足れりというわけではございませんので、今後早急に関係各省との間の協議を詰めまして、基準を設定し、それに対応して既裁定の人たちの年金を改めていくという方向については、せっかく努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/118
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119・芳賀貢
○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、既裁定年金者に対する最低保障の問題ですが、この点は、政府においても、退職年金については六万円、遺族については三万円、障害年金についても同様な規定の改正を出しておるわけですが、この問題は、最低保障の六万円というものが他の年金制度に比べて妥当かどうかという点にあります。もちろん、他の年金においても六万円、三万円というものをそろえてはおるが、しかし、公的年金の中における実際の年金の平均の給付額の比較をした場合には非常な差異があるわけです。ですから、そういうことを考慮した場合においては、どうしても今後農林年金の最低保障の水準というものを大幅に上げるという努力をしないと、他の公的年金との均衡がとれないという点が一つ出てくるわけであります。ですから、この点については、今後どういうような方法で既裁定年金に対して最低保障の引き上げを行なうか、この点をお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/119
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120・和田正明
○和田(正)政府委員 今回提案をいたしました政府の案では、ただいま芳賀委員がおっしゃいますように、退職年金、障害年金には最低六万円、遺族年金は三万円ということにいたしてございます。これらの金額あるいは年金の種類ごとの金額につきましては、ただいまお話もございましたように、この国会に提案をしております他の年金制度との均衡上、このような数字にいたしてありまして、ほかも同様六万、三万という金額になっておるわけでございます。ただ、これで十分であるかどうかということにつきましては、それぞれの年金の実態等によりましてもいろいろ事情もございましょうが、私どもとしては、できる限り今後ともこれらの点につきましても、他の年金とのバランスも一応政府としては考慮に入れなければなりませんけれども、今後とも十分検討を加えまして、よりよき給付内容になるように努力をいたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/120
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121・芳賀貢
○芳賀委員 次に年金加入団体の拡大の問題ですが、これは法律上団体を明示している関係もあって、政府の一方的な判断だけで加入団体を増加させることもできがたい難点もあるが、しかし、現行制度の中においても、法律の運用によっては若干拡大できる点もあるではないかと考えられるわけです。一例をあげれば、農業災害補償法に基づく共済組合の中央団体というものはないわけでして、それにかわる組織として農業共済協会というものがあるわけですが、これは構成メンバーは漏れなく農業災害補償法に基づく下部団体の連合的な機関ということにも当然解釈できるわけですからして、こういうものは、加入の希望のないものを無理に入れる必要もないが、法律上の解釈としては、加入団体の資格を付与することは必ずしも至難ではないと思うわけです。一つの実例ですが、こういう点はどう考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/121
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122・和田正明
○和田(正)政府委員 芳賀委員御承知のように、現在農林年金の法律では、限定列挙的に法律をずっと掲げまして、その法律に基づき設立された法人ということにいたしておりますので、一例としておあげになりました協会は、当該法律によって設立された団体ではないので、ちょっと運用によって直ちに入れるということにはなりませんで、やはり入れるとすれば、法律改正が必要なのではないかというふうに思うわけでございます。また、その場合に、法律改正をいたすとすれば、やはりその協会ばかりではなしに、実は私どもの手元へは地方の団体、中央の団体を通しまして、相当多数の団体から、この共済組合に入れてほしいという要望が提出されておるのであります。もしあまりフリーに入れるということになりますと、やはり厚生年金との関係から問題も出てまいりましょうし、また、きわめて職員の数が少ないとか、しょっちゅう職員がかわっておるような団体という場合には、年金の事務当局としては、掛け金徴収等についてもいろいろ問題も出てまいりますし、限定的に考えるというこの法の基本的考え方をくずすわけにはまいらないと思いますので、そういう意味におきまして、その限定された範囲でどのような基準で加入を認めていくかということについては、前々からいろいろと検討をしてまいったのでございます。すかっと納得のできるような基準をまだ私どもとしては考えついておらないのでございまして、そういう点をなお今後とも検討いたした上で、処理をいたしてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/122
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123・芳賀貢
○芳賀委員 私の言うのは、希望があるものをみんな入れたらいいじゃないかというのじゃないのですよ。農業とか漁業とか林業という名前だけつけば何でも入れるというような、そういう権威のないことを言っておるのじゃないのです。これは法律で規定された団体ということにはもちろんなっていますね。その法律規定の団体だけが構成員になっているようなそういう団体の場合は、これは法律上の解釈によっても絶対不可能というものではないかと思うのですよ。それに異質のものが加わっておれば、これは問題はあるが。ですから、これは共済組合も一つの事例としてあげたわけです。それを入れるということになれば、地方に共済組合の連合団体というものが農災法上必要かどうかということにもなるのですよ。いまの農災制度から見れば、それまでにする必要もないでしょう。だから、希望全部を受け付けるということになれば、それを全部法律に載せるというわけになかなかいかないでしょう。ですから、解釈によって、あるいは運用上一応認められるという限度のものは、これは行政的な運用によって措置できないものでもないのじゃないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/123
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124・和田正明
○和田(正)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、法律の第一条がきわめて制限列挙的に、法律によってまたはその法律の規定に基づいて設立された法人というものに限定列挙的に書かれております関係で、いま芳賀委員の御意見のように、この法律の解釈あるいは運用で若干でも幅を持たしていくということは、一例としておあげになりました農業災害補償の協会でございますか、その協会の場合でも、法律解釈としてはどうも困難であるというふうに私どもは考えておりまして、限定的に入れるにいたしましても、やはり何らかの形での法律改正が必要であろうというのが私どもの法律上の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/124
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125・芳賀貢
○芳賀委員 これに関連して、農林中金の場合には当然加入団体としての資格を持っておるわけですが、これが現行法では農林年金に入っていないでしょう。これは農林省としては一体どう考えておるのですか。もちろん、強制加入ではないことはわかるが、これは農林中央金庫法によってできておる機関ですが、これが現在まで法制化されていないというのは奇異な感を受けるのです。これは農林省としてどう判断しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/125
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126・和田正明
○和田(正)政府委員 御承知のように、現在、農林中央金庫とかあるいは農林漁業金融公庫とかいうのは、この法律としての組合員の対象にいたしておらないわけでございます。それで、現在までのこの法律の整理としては、法律に基づく特殊法人と申しますか、一般の民法法人ではない形での組織なり設立なりが行なわれる、いわゆる法律に基づく法人であって、その設立自体が本来の団体側の任意に基づくもの、任意の設立の団体に限るという考え方で、この第一条というのが整理されておるわけでございます。したがいまして、さらにその考え方を推し進めていけば、特別の法律に根拠を置いて任意設立をされる団体ではなくして、民法に基づいて任意設立される社団法人や財団法人をこの中へ取り込むかどうかという問題になるわけで、先ほど芳賀委員が御指摘になりました農業共済協会も、そういうものの一つということになるわけでございます。そこで、そういうものも含めて、先ほど来申し上げておりますように、法律解釈としては、第一条を直さない限り組合員の対象範囲は広げられないわけでございますので、全体として何か基準をきめるための検討をする必要があろうかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/126
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127・芳賀貢
○芳賀委員 私の言った農林中金の場合は、これは三十三年に法律をつくる当初から中金は希望していないのですね。希望していないということは、これはそう利益にならぬと考えていると思うのです。ですから、そういう点について、いつまでも農林省が中金が希望しないから何にもこれを取り入れる必要はないというふうな考え方ではいけないと思うのです。そしてその企業意識だけに立って、これが放任されるとすれば、問題があると思うのですよ。これは中金の理事長でも呼んで真意を確かめる必要があるかもしれませんが、しかし、農林省としては、他の団体の加盟とあわせて、こういう問題にもけじめをつけておく必要があるんじゃないですか。公庫は、これは国の機関だから別として、農林中金というのは、国の機関じゃないでしょう。この点をこの際農林大臣から明確にしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/127
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128・坂田英一
○坂田国務大臣 現在の農林年金のほうに加盟しておりますのは、大体任意設立のものでやっておる。つまり、農林中金のように当然組織されておるそういうものについては、この中に入っていないということに相なっておるというのが、従来の行き方で進んできておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/128
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129・芳賀貢
○芳賀委員 これは最初に年金法ができるときに、三十三年の国会審議のあの当時は、公庫は明らかに国の機関ですから別ですが、中金については、当然年金の加盟団体になるという政府の見解や方針を持っておったのですよ。これが中金側の意思によって明示されていないのですね。だから、そういう政治的な意図とか企業本位の考え方に立って、希望しないから法律にはうたってないなんという取り扱いは、これは間違いなわけなんですよ。うたうものはうたって、入らないものはやむを得ないのですが、それが今日に至るまで解決されていないわけですからして、他の団体加盟の問題等についても再検討を迫られておる時期であるし、その結論は速急に行なうということを局長もしばしば質疑の中で言明しておるわけですからして、これも含めて結論を出すということでなければいけないと思うのです。農林中金というのは、農林漁業団体と異質のものでないでしょう。それが年金制度だけについては全く他と違う、これは仲間でないというような考え方の上に立って行動をしておるということはけしからぬと思うのですよ。そういう考えが歴代の理事長なんかにあるとすれば、理事長は農林大臣が同意しなければきまらぬのですから、そういう者は同意しないということにすればいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/129
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130・坂田英一
○坂田国務大臣 この団体全体について申し上げまするならば、農林年金は、繰り返して申しますと、被用者年金制度の一般法でありまする厚生年金保険制度から分離独立しておるものでありまする以上、それにふさわしい対象団体の等質性が要求される。また、強制加入というたてまえ上、対象団体の範囲が明確かつ安定しておる必要があるなど、検討を要する事項が多いのであります。
なお、先ほど問題になっておりまする農林中金の問題もございますが、これらを包含いたしまして、本年度中にいずれかの結論を出したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/130
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131・芳賀貢
○芳賀委員 次にお尋ねしておきたいのは、退職一時金と通算退職年金との選択の問題ですね。これは猶予期間が法律にも示されておるわけですが、この取り扱いについて、なお数年慎重を期してこれを延長すべきであるという論もあるわけですね。だから、これに対して農林当局としてどういう取り扱いをなさるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/131
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132・和田正明
○和田(正)政府委員 これは芳賀委員も御承知のように、たしか本年の十月三十一日までの任意選択が認められておったと思います。団体側の一部の職員からは、それをさらに延期をしてほしいという意向もあるわけでございますが、この点も一いつもバランス論ばかり申し上げて恐縮でございますが、これも他の制度との関連等も考えまして、現段階においてはこのままにしておきたいというふうにいまは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/132
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133・芳賀貢
○芳賀委員 以上、社会党法案との比較論も含めて、最終的な質問をしたわけですが、特に最後に、第一の点で申し上げた新旧期間の給付率の完全通算の問題については、大臣も手軽に答弁されておったようですけれども、これは政府としてもなかなかそう簡単にいかぬ問題だと思うのです。しかし、これは長い年月の後に実現するということでは意味がないわけですからして、この点は農林委員会の意思というものは、完全通算ができなし場合は次善の方策として、旧法期間については農林年金法でうたわれておる最終の給与ということで行なうべきでないか、そういうことで結論を出したわけですが、これがなかなか全面的に実行できないような事情にある。何も政府とか自民党の首脳部の意見を顧慮する必要はないのだが、しかし、与党の理事の諸君としては、なかなかその壁を突き破るだけの力が足らぬ——と言ってはこれはあまり端的な表現になりますが、そういうことで、われわれとしては遺憾の点が非常に多いわけなんです。だから、それにかわるべき点は、これは当然、附帯決議とか、農林大臣の政府を代表した直接の答弁ということで、一応けじめをつけておかなければならぬ問題ですから、重ねての質問になりますが、給付の改善の問題については、ぜひ四十二年以降において、すみやかにこれは新旧の完全通算ということで解決すべきであるというふうにわれわれ考えておるわけでして、この点を再度政府の見解として明らかな答弁を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/133
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134・坂田英一
○坂田国務大臣 委員会の御審議の経過も十分考慮いたしまして、新旧期間の給付の改善につきましては、極力前向きで努力いたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/134
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135・中川一郎
○中川委員長 次会は明二十五日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X03819660524/135
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