1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月二十六日(木曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 中川 俊思君
理事 大石 武一君 理事 倉成 正君
理事 小枝 一雄君 理事 田口長次郎君
理事 舘林三喜男君 理事 本名 武君
理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君
理事 芳賀 貢君
池田 清志君 宇野 宗佑君
坂村 吉正君 笹山茂太郎君
白浜 仁吉君 田邉 國男君
高見 三郎君 綱島 正興君
中川 一郎君 丹羽 兵助君
野原 正勝君 野呂 恭一君
長谷川四郎君 藤田 義光君
湊 徹郎君 森田重次郎君
兒玉 末男君 西宮 弘君
松浦 定義君 森 義視君
湯山 勇君 玉置 一徳君
中村 時雄君 林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 坂田 英一君
出席政府委員
農林事務官
(農政局長) 和田 正明君
農林事務官
(農地局長) 大和田啓気君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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五月二十六日
委員金子岩三君辞任につき、その補欠として湊
徹郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員湊徹郎君辞任につき、その補欠として金子
岩三君が議長の指名で委員に選任された。
同日
理事小枝一雄君同日理事辞任につき、その補欠
として田口長治郎君が理事に当選した。
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五月二十五日
農林漁業団体職員共済組合法の改正に関する請
願(受田新吉君紹介)(第四九四〇号)
昭和四十一年産なたねの基準価格引上げに関す
る請願外二件(森田重次郎君紹介)(第五〇二四
号)
同外一件(森田重次郎君紹介)(第五一〇四号)
同外一件(田澤吉郎君紹介)(第五一〇五号)
林業構造改善事業費基準額引上げに関する請願
(川野芳滿君紹介)(第五一〇二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
委員派遣承認申請に関する件
農地管理事業団法案(内閣拠出第三六号)
農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一三八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/0
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001・中川俊思
○中川委員長 これより会議を開きます。
農地管理事業団法案を議題といたします。
別に質疑の申し出もありませんので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/1
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002・中川俊思
○中川委員長 この際、舘林三喜男君外一名から、自由民主党、民主社会党共同提案にかかる本案に対する修正案が提出されております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/2
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003・中川俊思
○中川委員長 提出者から趣旨の説明を求めます。舘林三喜男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/3
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004・舘林三喜男
○舘林委員 農地管理事業団法案の修正案につきまして、自由民主党及び民主社会党両党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
修正案は、お手元に配付してありますので、朗読を省略いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
農地管理事業団法案附則第十五条に規定されておりまする農地管理事業団のあっせん等による土地の取得に対する不動産取得税の課税標準の特例につきましては、すでに今国会において成立、施行されております地方税法の一部を改正する法律の附則において条文の整理がなされておるのでありまして、これを削除するとともに、本案附則によってこれと同じ内容の条文整理を行なうことが必要であると認めまして、本修正案を提出した次第であります。
何とぞ御賛同を賜わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/4
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005・中川俊思
○中川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/5
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006・中川俊思
○中川委員長 本修正案に対する質疑の申し出もないようでありますので、これより原案及び修正案について討論に入ります。
討論の通告がありますので、順次これを許可いたします。松浦定義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/6
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007・松浦定義
○松浦(定)委員 私は、ただいま議題になっております農地管理事業団法案の内容につきまして、反対の意思を表明し、さらに数点にわたってその理由を申し上げておきたいと思うのであります。
本法案の審議につきましては、御承知のとおりに、昨年の国会におきましても審議を続け、さらにまた今回の再提出にあたっては、ある程度の改正をされましたけれども、その内容については依然として変わらないものと私は思っておるのであります。しかも日本社会党が指摘をいたしておりまするこの内容は、従来わが国における農業の発展がどのような形でこれが阻害されてきたか、私どもは、この点について、少なくとも農業基本法が制定されまして、その一環として構造改善を行なう、さらにまた、その構造改善を中心として、今回またこの農地管理事業団を成立せしめて、それでこの内容を充実させたいという趣意でありますけれども、遺憾ながら、この構造改善にいたしましても、今日全国においては、その目的を達成したと称するものはほんの一部であって、全体から見れば、この構造改善は失敗である。すでに農林省当局でもこの点を暗に認めておると言っても差しつかえないと私は思うのであります。特に農業基本法が制定されまして、選択的拡大だと称して、畜産、果樹あるいはまた園芸等々、こうした広範な問題について集中的に施策をすると言いながら、それらについては、今日どれを取り上げても農民の納得するものではない。畜産におきましては、たとえば乳牛を飼えば、乳製品は外国からどんどんと安いものを入れて、日本の生産に対しては非常な圧迫を及ぼしておる。あるいは豚等を飼えば、飼育のときには、非常に高い飼料で高い経費をかけて飼っておるけれども、いよいよ肉を売るようになれば、外国からその肉を入れて、日本の農家に対して非常な損害を与えておる。鶏に対してもそのとおり、卵の下落。あるいはまた野菜にいたしましても、今日一部の都市においては相当値上がりするとはいいながら、国全体から見るならば、野菜においても、生産、出荷する場合にはこれを買いたたかれる。ことごとくがそういうような政策である。今回のこの農地管理事業団が制定をされても、これを補う内容にはならないと私は思うのであります。しかも今日、経営の合理化とか、あるいは近代化とか、こういうことを言っておりましても、現在の段階では、大資本、商社への奉仕と言っても私は過言でないと思うし、あるいはまた農薬使用量等が増大いたしまして、農民の負担は非常に多くなっておる。特に独占資本の意のままになっておる輸入飼料によって飼っておる畜産事業等につきましては、非常な圧迫を受けておると言っても、今日だれもこれを否定する者はないと私は思うのであります。これはなぜこういうことになるかというならば、現在日本の政府ずなわち、自由民主党が持っておられるこの政府が、この食糧総合政策に対しては何ら基本的なものを持っておられぬのじゃないか、こういうことを私は前回の質疑の内容においても申し上げておるのであります。これは私だけが申し上げるのではなくして、与党の諸君の中にも、心ある人はこの点については非常に心配をされておる。国家的見地に立って私は当然であろうと思うのであります。したがって、この事業団の内容について、いかに政府が弁解いたしましても、結果においては十分ではないという点を明らかにしておきたいと思うのであります。
御承知のとおりに、経営規模の拡大は、小農や前業農も含めた共同化でなければならぬということは、農業基本法制定のときに、わが党が強く指摘をいたした点であります。基盤整備とかあるいは経営技術指導など国の行なう多くの事業につきましては、さらにまた社会保障の拡充あるいは最低賃金確立等をはかって、産業の雇用の適正な配置を計画的に進めなければならぬ。この点が私は今日非常に欠けておる点であると指摘をいたしたいのであります。
さらにまた、この法案の内容に示しておりますように、実施地域の問題につきましては、昨年は百カ町村であったが、今回は四百カ町村にした、こういうふうにたとえば大蔵大臣等が非常に誇大に宣伝をしておりますけれども、しからば実施をするところの町村の行なう取り扱い反別等につきましては、今年一カ年でわずか二、三千町歩である。そういうような点等から考えてまいりますと、今回の改正案では未墾地を含めたと言っておりますけれども、この未墾地なるものから農業地を造成する場合にはばく大な金がかかる。今日いろいろの意味で金のかかるところだけしか残っていないのであります。そういうところをただ名目的に含めたといっても、それらに対する費用等については、おそらくこれは農家の負担になるのであろうと思うのであります。そういう点、国の全責任において大規模化を進めるというような、そういう内容を明確にしてないところに問題がある、私はかように考えておるのであります。
さらにまた、農業基本法では自立農家育成というので、一戸平均二町五反を百万戸つくる、これは私は前にも指摘をいたしましたが、その農地を移動するには、約九十万町歩という膨大な農地の移動がなければ目的は果たせないのであります。だといたしますならば、今日この法案の実施によって、年間二、三千町歩というのでありますから、九十万町歩というものを実際軌道に乗せるという考え方に立つならば、これはおそらく何百年もかかると思うのであります。そういうような見えすいた問題があるにかかわらず、この法案を通せば、いかにも農民が楽になり、経営規模が拡大される、全部の農家に該当するかのような宣伝をされておるところに、今日この内容が私どもにどうしても納得のできない点があるわけであります。
さらにまた、資金の面につきましても、買い受けた農家については三分、三十年という、他の金融の中に見られないような、いわば恩典に浴するのでありますけれども、それでは従来から農業に携わって何十年、何百年、一反の土地でも買いたい、あるいは一町の土地でも取得したいといって、今日まで取得資金の少ない中で配分をしてやっておる、ほんとうに努力しておる農家と、これからそういう法律によって恩恵を受ける者との間のアンバランスをどうするか、これは私は問題であろうと思うのであります。こういう問題をやるならば、一年間にわずか二、三千町歩動かすものについて三分、三十年というのはおかしい。それよりもっと今日まで非常に困っておる農家には、やはり同じように三分、三十年にすべきである。それとは全然別だ、こういうような考え方で終始しておるというところに、私は、いまの政府の農業に対する関心が非常に低いのでないかということを指摘をいたしたいと思います。
さらにまた、たとえば兼業農家の耕地はすでに七一%に達しておる。いかに取得をされましても、それは兼業である。今日兼業でなければやれないような農業にしておるところに問題があると思いますけれども、この兼業農家育成にいたしましても、やはりこの市町村の中において不平等にならないような処置をせなければならないと私は思うのであります。この点が、今度の法案の内容の実施については、とうていこれは目的を達するようなことにはならないと私は思うのであります。
さらにまた、農地法の改正と関係がある。これは農林大臣もすでに言っておりますように、この農地管理事業団の立法と同時に、農地法の改正とかあるいは小作料の改定をするのでないか、こういうふうに指摘いたしましたところ、そういう考えはない、こういうことを明らかにしておる。しかし、この法案の一番最初に、赤城農林大臣が、たとえば二分、四十年、そうした状態を大蔵省と交渉したときに、そういうような金をかけるよりも、むしろ農地法を撤廃したらいいのでないか、そうすれば、力のある者、努力する者は幾らでも土地が取得できる、農地法があることによって、これらの目的を果たせないのだ、そこで、当時の赤城農林大臣の意見は抹殺されたのであります。でありますから、そのときに、農地法の改正については検討するということは暗に残されておる。そのことを今日農林大臣は伏せておって、そういうことはいたしません、いろいろ御指摘の点についてはわかるけれどもといったような、そういう回答をされておる。おそらくこの法案がかりに多数の力によって通ったといたしますならば、必ず来年度のこの法案の審議の場合に、農地法の改正、小作料の改定は今日よりもっともっと問題になる。そういう内容の討議がなされるような、そういう危険性があるということをいまから指摘しておかなければならないと思うのであります。
さらにまた、この法案の最大の欠陥は、われわれ社会党が前回も今回も口をすっぱくして言っておる艦艇者対策であります。特に私どもは、これは言うまでもなく、今回の法案では、あまりにも与党の皆さんや農林省当局がこれに対して誠意が認められないのです。参考人等の意見を聞こうとしないのであります。昨年は参考人の意見を聞きました。そのどの参考人の意見を聞いても、この離農者対策がないということは間違いである、こういうように指摘をしておる。だから私は、今度の場合には、昨年の参考人の意見をもし聞いておるとするならば、この離農者対策についてはもっともっと明確なものが出てこなければならぬと思います。ところが、先般本会議の質問と、あわせて労働大臣に質問をここでいたしましたところ、現行法によってこれをまかない得るんだ、この農地管理事業団は離農者対策についてはやらなくてもいい、こういうことを言っておるのであります。これは私どもが言っておりますように、離農者が出ないと農地管理事業団のこの目的というものは果たせないのであります。買う人があれば、売る人がある。売る人は全部離農するのであります。名前はどうあろうとも、離農するのである。そういうものに対しては、単なるそのときの土地の移動に対する税の減免等でごまかそうとしておる。そういうことだけでは、将来の生活を裏づける何ものもないと思うのであります。ですから、私は先般労働大臣にも強く指摘をいたしておりますが、もし現行法でできるとするならば、私は、今後一年の間にどのような結果があらわれるかやってみられればいいと思います。たとえば住宅問題一つにいたしましても、おそらくやめて出るとすれば、一番最初に必要なのは住宅であります。今日どこへ行っても、いまからやめる人に住宅を建てて待っているところはありません。何十年も前から要求しておっても入れないじゃないですか。私は先般テレビで見ましたが、東京では四畳半に六人、八人と今日まだ住まいをしておる人がたくさんあるといっておるのであります。それでは公団住宅あるいは都営住宅に申し込んでおらないのかといえば、八十回も申し込んでおる。八十回も申し込んで、そして数人以上の人が四畳半に住んでおる。そういう現実の中でこの法案を通して、現行法の中で離農者に対しては優先的に家を与えるということは、私はこれはできないと思うのであります。それをやると言っておるのであります。労働大臣は、やります、こう言っておるのであります。ことばだけで、口先だけでそう言っておっても、現実の問題となったらたいへんなことである。こういうようなものをやると同店に、さらにまた、赤城農林大臣の最初の案では、この離農者対策には十四億三千万円という、そういういろいろな考え方をしておったのですが、今度の原案で、坂田農林大臣は、こういう点については一銭も予算の中から見ているということを説明できないじゃないですか。十四億三千万円の原々案がなぜなくなったか。私どもは、やはり農地を売っていきたいという人がある、買いたいという人がある、そのことだけ考えれば、この法案の内容は、やはりやる気があれば成功すると思うのです。しかし、こういうような形で、そういう誠意のないやり方で、法案さえ通せばあとはこれで何とかやっていける、また新しい法案を考える、こういうような考え方の内容を持つ事業団では、とうてい承認することができないということを強く私は申し上げておるのであります。
さらにまた、最後に、私は、日本のこの農政は非常に間違っておると思うのであります。たとえば北海道から九州までの長い地域にあるわが国であります。それを九州と北海道と、そうしたものを一つの法律の中で運営しようとするところに、農業だけはなかなか発展も向上もないと私は思うのであります。ほかの産業であれば、北海道のビルの中におっても、電話一本で九州の仕事もできるわけなんであります。東京におれば、全国どこへでも電話一本で仕事ができる。農業はそういうわけにいきません。鹿児島あたりでやっていることと北海道でやっていることと違っているくらいのことは、農林省だって、それぞれの地方事務局があるからおわかりのとおりだと思う。府県知事だって、市町村長だって、予算の時期になれば、そのことだけでどんどん陳情に来る。予算が終わってもまたまた陳情に来る。それは何ですか。それはそういう問題を実際的にやっているから、そういう仕事を代表して来るわけであります。ですから、北海道なら北海道らしい、九州なら九州らしい、あるいは四国なら四国らしい、そういう法律をつくるべきである。たとえば、そういう場合には積雪寒冷地帯のあれがある、こういうお話があります。ところが、積雪の問題にしましても、北海道から東北、新潟くらいまであったのが、これがどんどんと雪の降らないところまでそういう問題が発展してしまう、そういうことでは、日本の農業というものは私は発展しないと思うのであります。たとえばこの法案が実施されたらどうなりますか。これは全国で八百カ町村とかあるいは一千カ町村というものがある、ことしは四百カ町村だ、こう言っておりますけれども、三反や五反つくっておる兼業農家が一反やあるいは二反歩を移動するのに、三分、三十年の安い金利を借りればいいのでしょう。金のある人でも借りられるわけですからね。そして自分の持っている金は一割も一割五分もで貸し付ける、そういうことができる。それは兼業農家のことだからできるけれども、たとえば北海道のような山の中で何十町もつくっておる農家はそういうことはできません。でありますから、そういうような地帯と同じような形では、私はこの法案の実施にあたっても効果はないと思う。効果がないどころか、先ほど申し上げましたように、その地域におけるそれに該当しないものとの問題が、非常に私は議論の中心になろうかと思うわけであります。そういう意味合いで、この法案は特にそういう目的があるならば、やはり年間七万、八万といいますけれども、その中のほんとうにこれが必要な自立農家、そういうものに焦点を合わせてやらなければ効果があがらないということを、私は質疑の段階においても指摘をいたしておったのであります。特に日本における農政の欠陥というものは、そういう一律的なものの中にありますから、目的が果たせないのであります。重点、重点で、少なくとも日本を二つないし三つくらいに割って、そうして法律をつくる場合には、全体の法律がこれこれである、地域的な法律はこれこれであるというふうに、そういうふうにしないと、たとえば米価のように全国一律に問題の解決つくところはいいけれども、いままた問題になりまするバレイショ、カンショのでん粉問題は、九州と北海道と関東は違うわけであります。そういうようなものを一つの法律の中でやろうとするから、問題が解決できない。だから、農民はいつまでたっても生活が安定にならない。こういうような仕組みの中におけるわが国の農政のいき方は、私は非常に問題であろうかと思うのであります。
したがって、今回のこの法案が、われわれ社会党が指摘をいたしますような、そういう内容であるならば、少なくとも農民の立場に立つならば、私どもは賛成はしたい。けれども、私どもが指摘をいたしておるような問題は、質疑の中でも十分な回答を得られなかったし、あるいは今後実施段階に至っては、特にこの問題は非常に大きな問題をもたらすと思うのであります。
特に農業委員会が末端の事務を扱うということになりますと、これはたいへんなことになる。時間の関係もあるから、ここで詳しく申し上げませんが、とにかくこれらの土地の取得とか金の貸し借りということになりますと、人間的な、個人的な、感情的なそういうものが非常に入ってくる。農協が信連を通じてこの融資の対象になりますけれども、今日の段階において、私は末端の単協の一理事でございますけれども、必ずしも農業団体のいき方というものには農民は満足していない。その満足していない中心は何かというと、こういうような問題の取り扱いについて、ほんとうに農民の立場に立つか立たぬかという、こういう誠意が見られないからであります。農業をやらないで、農協の青テーブルにすわる、さらにまたそれがだんだんと上部段階にいくに従って政治的な圧力が加わる、そういうものに抗しかねて、一つの法律をのんでしまう。のんだとたんに農民は困る。何とかせねばならぬ。極端にいいますならば、やはり農民が農政に対して非常な関心を持っておるのは、いま農林省がやっておるようなそういう内容については、これは納得できないから、何とか政治的に解決しようとしても、中心になる人がそういう問題についてうのみにするといったような例がしばしばある。そういうことが、こうした金を扱う団体の中にも、それを解決せよという政治的な立場に立つ、あるいは経済的な立場に立つ語団体の中でも問題になるわけであります。ですから、私は、農業委員会がほんとうに農民の立場に立ってやってもらわなければならぬと思いますけれども、はたしてやれるかどうか、そういう点はこの法案ばかりでなく、十分ひとつ考えてもらう必要がある、かように考えます。
さらにまた、この事業団の性格の問題でありますが、おそらく何十という事業団、公団というものがあります。私は、この理事の問題についてあまり詳しく質問はしなかったが、おそらくこの事業団ができますと、どういう人が中心になるか、これはこの事業団ばかりじゃございません。いままであらゆる事業団、公団をつくる場合には、そういうことを言っております。この国会の一番最初の総理大臣の本会議におけるところのあいさつの中に、事業団とかあるいは公団というものは、原則としてつくらない、こう言っておる。私は当然だと思う。ただし、必要なものについてはと、こう言っておる。ところが、いままであるのはみんな必要だという、その後者のことばによって、こういうことを明らかにしておる。そこで、事業団というものでこういうものをやらなければできないのか、それほど日本の政府あるいは当該農林省は、そういうことをするだけの力がないのかどうか。やはりこういうものは事業団でやってもらわなければならない、そういうふうに何でもかんでも大事なところで逃げるといったようなそういう農林省では、農民は支持しないと私は思います。ですから、こういうものは政府の責任においてやるんだ——半民半官的なものでやって責任を糊塗する、あるいは受けたほうではまるで政府の代表のような立場に立って、農民に対してはある程度強制を加える、他面また、これは事業団だから、われわれは農民の代表としてやっておるのだといったような、そういうような意見もまた口にしておる。いずれにいたしましても、今後これは数多くあると思いますけれども、こういう問題については、農林省はもっと自主性を持ってもらいたいと私は思うのであります。
それで、一番最初申し上げましたように、やはり総合的な政策の樹立というものが必要である。いまの農政がなぜこういうことになったか、農民や漁民や、これがなぜこんなに苦しんでおるかといえば、やはり政府のとっております貿易の自由化であります。この貿易の自由化によって、何でもかんでも日本の農政というものは曲げられてしまう。これは農林省は反対をしておるかもしれませんけれども、やはり実質的に施行されておる中においては、これはなかなか、現在ある法律の中あるいはこれからつくろうとする農林省の考え方だけでは、この貿易の自由化の中ではどうにもならないと私は思うのであります。でありますから、私どもは、あくまでこの貿易の自由化政策を即時中止をしなければこれらの問題は解決できない、こういうふうに実は考えて、この法案の内容については反対であるということを表明いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/7
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008・中川俊思
○中川委員長 坂村吉正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/8
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009・坂村吉正
○坂村委員 ただいま議題になっております農地管理事業団法案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、賛成の討論をいたすものであります。
まず、この農地管理事業団法案に対しましては、私ども自由民主党といたしましては、全面的に賛成でございます。先ほど社会党の松浦委員の反対の討論を伺っておりますと、まっ先に、数年前から始めました農業構造改善あるいは農業の近代化、そういうようなものが、政府のやっておることは失敗に帰しておるというふうなお話があるのでございますが、私は完全に成功だとは言いません。所期の目的を達成するような姿で十分な動きをしておるということは、率直に言って言えないのじゃないかと思うのでございます。その一番の根本は何かといえば、構造改善事業を進めていきます場合におきましても、やはり農地の移動というものが円滑に進まなければ、なかなか経営規模の拡大、自立農家の育成、そういう問題も進んでまいらないことは当然なことでございまして、その点におきまして、いままでの構造改善事業の進め方に一つ大きな欠くるところがあったのじゃないか、こういう考えを持っておるのでございます。その意味において、今度の農地管理事業団法案は、その一番欠けるところの問題を穴埋めをした、まことに画竜点睛の政策であるというふうに私は言っていいのじゃないかと思うのでございます。いままで十分な効果をあげ得なかった構造改善事業もこの農地管理事業団法の成立によって、私は、初めて活発な動きをし、所期の目的を完全に達成する方向に向かって転換をされていくと考えていいのではないかというふうに考えておるのであります。(「この程度の金で何になる」と呼ぶ者あり)金が少ないではないかというやじもございますが、その農地移動についての新しい道を開いたと同時に、農地の取得の金については、先ほど松浦委員も討論の中に言っておりましたように、いままでの農業金融では思いもよらなかったような、非常にりっぱな低利長期の三分、三十年という、そういう金融の道を開いたということも、あわせてこの円滑な農地移動に非常に大きな貢献をするのではあるまいかというふうに考えておるのでございます。反対の討論をしながら、松浦委員も、りっぱな金融制度である、こういうことを言っておるのでございます。(「ごく一部だよ、そんなものは」と呼ぶ者あり)一部であるという意見もございましたが、もちろん、この三分、三十年という金利を全面的に農業金融に広げることは、現状ではむずかしいかもしれません。金融の種類によっていろいろ金融についての条件も変わっていいのでございますから、そういう意味で、こういうような構造改善の基本的なものになるような制度につきましては、思い切った低利長期の金融をし、しかもそのほかの農業金融についても、逐次農家が満足するような金融制度をだんだんと整備してまいる必要が私はあろうと思います。その意味におきましては、農林漁業金融公庫の資金につきましても、十分な手当てをいたしておりますし、また最近近代化資金助成法の改正案も提案いたされまして、可決がされておるのでございますが、これらとあわせて、農業全体の金融が円満円滑に進んでまいることを私どもは期待いたしておるのでございます。
さらにもう一点は、農地管理事業団という制度をつくって、非常に農地の移動が硬直化するのではないか、その間に事業団といういわば一種の官僚機構のようなものが入って硬直化するのではないか、むしろ農地法を全面的に撤廃すべきじゃないか、こういう議論や考え方もあるのでございます。と同時に、先ほど松浦委員の討論の中にもあったのでございますけれども、農地法の全面撤廃とか全面的、基本的な改正という問題になってまいりますと、これはあらゆる意味においてきわめて大きな問題でございます。それを待って、いまの構造改善事業の歩みにいささかでも支障を与えるようなことがあってはいかぬ、そういう意味におきまして、管理事業団というものをつくって、管理事業団に関する限り、農地法の制限の大幅な緩和をするというところに踏み切りましたことは、将来の農地法をどういうぐあいにしていくかという上におきましても、きわめて大きな第一歩を踏み出したものではないかというふうに考えておるのでございます。と同時に、政府におきましても、いろいろ質疑を通じてはっきりいたしましたように、農地法の問題については、真剣にもう技術的に事務的にも取り組んでおる、こういうことでございますので、この点は今後の政府の努力に期待を申し上げたいというふうに考えておる次第でございます。
もう一点、いままで未墾地の問題については、昨年の法案におきましてはこれは全然触れておりません。しかし、いろいろ審議の過程で、未墾地の取得のあっせん等についても事業団がこれは関与すべきではないか、こういう意見が非常に強くあったのでございますが、その点も十分に国会の審議の過程の意見を取り入れまして、そうして今度の法案においては、未墾地の取得のあっせん、融資、そういうようなものを取り扱うということになったことは、全体に錦上花を添えるような気がするのでございまして、私どもも一応満足をいたしておるというふうに申し上げていいのじゃないかと思うわけでございます。
さらに、農地管理事業団という組織で農地の移動について関与してまいる、こういうことは、いままではきわめて。パイロット的にこれを考えておった。しかし、全体の情勢は、こういうものをきわめて小さな範囲でパイロット的に考えていく情勢ではない。できれば全国に広げて、大幅にひとつこれはやっていくべきだ、こういう考え方を持っておったのでございますが、この点も全面的に全国を通じてというわけには直ちにはまいらぬと思いますけれども、この点を十分に考えた上で、もう計画的に全国的に進められるような体制をこの法案はつくった。四十一年度の実施計画もそういう方向に向いて組まれておる。こういうことに対しましても、私ども非常な敬意を表していいのではないかというふうに考えておるものでございます。もちろん、こういう新しい画期的な制度でございますから、運用をしてまいります場合においてはいろいろの問題があろうと思います。松浦委員がいろいろ御指摘のように、考えなければならない、あるいは討論の中に述べられた問題についても、私は傾聴しなければならない点が非常にあるのじゃないかと思います。こういう新しい制度を実施いたします場合には、ぜひその少数意見もひとつ実行の過程においては十分組み入れまして、そうして実行上において国会の審議の過程におけるいろいろな意見を反映させることができますように、政府当局にこの点は特に御要望を申し上げる次第でございます。
以上申し上げまして、いよいよ構造改善事業が本格的な画竜点睛の姿をもって本年から出発することができますことを私は心から喜んでおるのでございまして、その喜びをもって賛成の討論にかえる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/9
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010・中川俊思
○中川委員長 林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/10
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011・林百郎
○林委員 私は、日本共産党を代表して、本法案に反対いたします。
その理由は、第一に、この法案は、かねて日本の資本家団体が一貫して要求しておりますし、また自民党政府が一貫して強行しようとしておるいわゆる農業近代化、この名により、農民の七割を農業を放棄させる、そして三割の農民についてはそれを富農化していく、そして農業の資本主義的な大経営化をはかる、こういう歴代の自民党政府の一貫した方針に基づいてつくられた法案であることは言うまでもありません。政府は、この法案によって農業経営の規模の拡大とか農地の集団化を促進する、そして農業構造の改善に寄与する、こう言っております。また、事業団の業務執行の方針は、自立経営を育成するとも言っています。ところが、私が質問したところによって明らかでありますけれども、これは坂田農林大臣は、なかなか必死になって逃げおわせておりましたけれども、すでにこの前の通常国会のときに、政府答弁ではっきりしておりますが、北海道を除いて、大体この法案がねらっておる自立経営の農家というのは、平均で二・五ヘクタール程度の自立経営農家を目標に考えているということは、農林省がすでに政府答弁で言っておるところであります。ところが、御承知のとおり、北海道を除いて、現在日本の農家の平均耕作反別は、一ヘクタール以下でありますから、これを二・五ヘクタールに拡大集中するということになれば、中農以下の農民の七割が農業を放棄し、その放棄した土地を集約していくという方針より——自民党としてはその方法をとるよりほかしかたがない、こういう考えであります。しかも、政府はひた隠しに隠しておりますけれども、すなわち、強権を行使するのじゃないかという点については、非常に神経質である。ひた隠しに隠し、逃げている。しかし、これはこの事業団の内容を見ますと、農業委員会を巻き込み、市町村を巻き込み、農業会議を巻き込み、都道府県をかかえ込んでおります。そして中央は自民党政府が旗を振って、そして権力をもって土地の集中化を強行しようとしておる。このことは、いかに逃げようとしても、法案の中で隠すことのできない明文化がなされておるのであります。すなわち、事業団の業務実施地域において、土地の移動はすべて事業団に届け出させる、そして事業団が売買、交換のあっせんから資金の貸し付けを行なう、こうなっております。これは明らかに土地の集約化を権力をもって行ない、資金までも裏づけとして動員する、そして強権的に土地を取り上げ、集約化していく、これへ介入してくるということは明らかなのであります。これは坂田農林大臣と私と基本的に違うところは、坂田農林大臣は、土地を手放すのは自然だ、土地を手放していくのは当然なんで、これをどう集約化していくか。ところが、土地を手放させるような政策をやっているわけなんです。問題は、土地を手放さなくても、農業はどう経営していくかということが農業の基本じゃないか。農林大臣が、農民が土地を手放すことはあたりまえで、これはしかたがないのだ、だから手放した土地を集約化して、手放した者の雇用対策を考える、そんな農林大臣がどこの国にありますか。(「日本にある」と呼ぶ者あり)日本にあるだけだ。これが農業政策の基本的な対立点なんです。ここが問題なんだ。この手放した農地を、しかも権力的に取り上げて集約していく、これはとうていわれわれは賛成することができない。
第二の点は、この法案は、経営規模一ヘクタール前後の中農層、中階層の農民、この土地に対する要求を押えている。農林大臣は、一町歩以下ぐらいの農民はかってに土地を手放していると思っているかもしれない。しかし、実際いま土地をほんとうにほしがっているのは、一町歩前後の農民、一ヘクタール前後の農民が土地をほしがっているわけですね。今日土地の移動は、毎年七万から八万ヘクタールありますけれども、その六割程度が、一ヘクタール以下の農民の間で譲渡をしたり、譲り受けをされておるわけなんです。土地の移動の六割は、一ヘクタール以下の農民の間で行なわれている。ということは、やむを得ず手放す農民もあるかもしれないけれども、同時に、土地がほしいという農民も、一ヘクタール前後の農家にあるわけなんです。ところが、この一ヘクタール以下の中農層の土地に対する要求が非常に強いにもかかわらず、この法案によっては、この中農層以下の農民の土地を手に入れたいという要望を押えている。これが反対の第二の理由です。
第三の理由は、本法による事業団の事業実施地域においては、土地の取得資金は、本法による資金に一本化されている。自作農維持資金中の土地取得制度は廃止されている。先ほどから金額が多い少ないという論議がなされています。これも一つの論点でありますけれども、問題は、金額の多い少ないではなくて、本法で規定されている資金がどういう本質を持っているかということだと思います。この資金を借り受けて土地を取得した者は、経営農地を一定の規模で維持していなければならない。もし本法によって借りた金で土地を取得した者が経営規模が一定土地以下に下がった場合には、貸し付け金の一時償還ができる。これは要するに、おまえの経営規模は最初考えたより少なくなったから、貸した金を全部よこせ、土地も全部返せ、こういう本質を持っている。資金まで動員して土地の集約化をやろうとしている。ここにわれわれは、単に資金が多い少ないという問題ではなくて、本法で規定されている資金が、土地の集約化の大きなてこになっているということを見のがすわけにいかないと思うのであります。すなわち、貸し付け金の一時償還の請求を受けたり、せっかく入手した土地を買い戻しを強行することができる、こういうように規定されておるのであります。すなわち、一たん本事業団から資金を借りた以上、農業経営の生殺与奪の権を完全に事業団に握られてしまう。そして、いつでも資金の全額償還と土地取り上げが事業団の認定によって行なわれる。すなわち、資金の面からも土地の取り上げが行なわれるようになっている。これが私が本法案に反対する第三の理由であります。
第四の理由は、これも私と大臣との間の質問応答でたいへん食い違っていた点でありますけれども、日本農家の約八割以上が、御承知のとおり圧倒的に第二種兼業であり、それから第一種兼業であります。ところが、本法でいう自立経営農家とは何か、こういう質問に対して、農林大臣の答弁は、本法によって育成される自立経営農家とは、一家の主人である男子またはその後継者たる男子が農業経営の担当者である、これが自立経営農家の基本的な条件だということを言っている。こうなると、一家の主人またはその家を継ぐ後継者である男子が農業経営の担当者だということになると、日本農家の八割を占めている第二種兼業、第一種兼業は、これははずされることになる。この点は、大臣は逃げておりました。いや、かりに一ヘクタール前後の兼業農家であっても、一生懸命にやろうと思う者は——非常に精神主義的な要因を入れてきて答弁しておりましたけれども、しかし、そんなことはない。幾ら農業をやろうという意欲があろうと、主人や家を継ぐ男子が農業を担当していなければ、この法案の保護、育成からはずされる、このことは明らかだと思います。こうなれば、今日日本農業の実態である八割以上に達する、第二種兼業農家はもちろんのこと、第一種兼業農家も、この法律によって保護、育成されることからはずされることになる。結局、政府と農林省が考えているのは、三割程度の農民だけを育成していく、あとの農家は切り捨てる、近代化のためにはしかたがない、これが資本主義の鉄則である、こういうことが頭の中にちゃんと入っている。この委員会ではごまかしているけれども……。全く自民党の農業政策というのは冷酷なものです。これが第四の反対の理由です。
第五は、本法によって農地法がなしくずしに廃止されてくるということです。これは松浦さんも述べておりましたけれども、農業委員会は、土地集中化のための事業団の下請機関に繰り込まれてきている。そして、本来土地の流動化を抑制し、生産農民のために土地を保護する機能を持つ農業委員会が、この土地集約化の下請機関の中に巻き込まれてきている。そういう機能を持つに至っている。市町村農業委員会や都道府県農業会議が完全に本来の機能を奪われることになります。これは法文の中にありますけれども、本事業団によって行なわれた土地移動は、すべて農地法による許可を得たものとみなされる。すなわち、本事業団に関する限り、農地法はないも同然である、こういうことになっておるのであります。
これを要約しますと、この法案の本質は、経済団体がかねてから要求し、また政府が忠実に実行しておる次のねらいを持っているといわざるを得ない。第一は、貿易の自由化はますます行なっていく。アメリカの余剰農産物が一そう日本に入ってくるという将来の見通しを持たなければならぬ。これの基盤づくりを日本の農業政策の中へ入れなければならないということが第一のねらい。第二は、貿易の自由化が避けられない日本の農業の中で、残り得る農業はどういう規模の農業であろうか、こういうことを政府は考えて、資本主義的に成り立つ大規模経営の農業を育成していく。その中へ大型機械を入れ、農業労働者を雇用し、利潤を生み出すという形態の、一部の富農の農業を育成していく。これが第二のねらい。第三は、圧倒的な多数の農民から土地を奪って、積極的に離農させる、これを農村から流出させる、そして資本家団体が要望している低賃金労働者に仕立てる。一方では、現在ですら低賃金で苦しんでいる日本の労働者に対して、さらに賃金引き下げの圧力をつくり、農村出身の産業予備軍をつくっている。どんな仕事でもいいからやらしてくれ、どんな賃金でもいいからやらしてくれ、どんな重労働でもいいからやらしてくれ、いまさら村にいるわけにいかない、こういう農民を何十万と農村から流出させていく、意識的にこれをやらしている。このようにアメリカと日本の独占資本に奉仕する政府・自民党の農業政策をより権力的に強行しようとしている。いままでの農業構造改善事業でなくて、もっと権力的にやろうとしている。これが本法案のねらいだと思います。
これをさらにまとめてみますと、私が農林大臣に対する質問で明らかにしたように、農民から農業経営の根本である生産手段、土地を奪い、それによって零細農民を農業から追い出す。独占資本に最大限の利潤を保証する。雇用農業労働者を含めて、低賃金労働者をつくり出す。アメリカの余剰農産物の自由化を促進する。これに見合うような日本農業を再編成していく。自民党の諸君は笑っていますけれども、農業構造改善がいまどういう状態になっているかということを見ればわかるはずです。ほとんど抵抗を受けて思うようにいっていない。実際に農村へ行ってみれば、農業構造改善をさらに強権的にやるこの事業団法を笑ってこの委員会を通せるものであるかどうか、わかると思うのですよ。たとえばアメリカの余剰農産物の輸入につきましても、政府は、すでに日本の国の麦の生産は選択的に縮小さしていく、裏作が二百七十万町歩も放棄されている。これはアメリカに依存する、米も価格支持を必要としないようにする、これも食管制度は漸次廃止の方向にいく、さらに果樹やなま牛乳については、選択的にこれを拡大していく、そういう方向に徹底的に農業を合理化する、こういうのが政府の日本の農業に対する基本的なねらいである。これの裏づけのための農業構造改善政策であり、農業構造改善政策をもっと権力的に強力に施行しようとするのがこの法案である。このことは、自民党の先ほどの委員の討論の中にもちゃんと言われている。そういう農村をつくって、その中で、大型の機械や農薬や肥料等の安定した市場を一応確保しようとしている。このようなアメリカと日本の大きな資本に奉仕するための政府・自民党の従来の構造改善政策を、農民の抵抗を権力的に排除してますます大規模に、しかも国家権力を動員して強行しようとしているのが本法案のねらいであると思います。
一方、農民がほんとうに要求している、またわが党もこれを支持しておるのでありますけれども、その農民の真の安定の道は、それじゃどこにあるだろうか。
第一は、農業の価格制度。二重価格制によって農民の生産費と所得を補償する、現在の規模の経営でも、農業を放棄したり農地を手放さなくてもいい農業をまず基本的に考えてやる必要があります。
第二は、低利長期の資金をもっと簡単な手続で各階層の生産農民が手軽に借りられるような制度をつくってやること。
第三は、土地改良や開拓によって農民がしょい込んでいるばく大な借金、これをできるだけ緩和し、場合によっては免除する方向も考えてやること。
第四は、国の大規模な開墾開拓事業を行なって、生産農民に土地を与えてやること。手放させるんじゃなく、土地をもっと与えてやること。一ヘクタール前後の農民にも土地を与えてやること。
第五は、農民が自主的に要求する大規模な土地改良や農業諸施設に対しては国が全面的に援助してやること。
第六には、アメリカの押しつけの余剰農産物輸入の自由化をやめて、日本農業を保護する自主的な興業関係の貿易の制度に切りかえていく。これは御承知のとおり、EECでもどこでもやっておることで、これこそが日本農業真の発展の道であり、農民の要求するところであると思います。
いま農民は必死になって、自民党政府の農業破壊政策、たとえば土地改良事業とか、あるいはそのほか土地取り上げのいろいろな政策に抵抗しております。私のところなども、たとえば高速道路だとかバイパスだとか、あるいは鉄道のための農地の取り上げだとか、あるいはインターチェンジのために三万坪も土地をとられるというようなことに対して、ほんとうに戦っておる。一ヘクタール前後の農民は、これをとられたのでは農業経営ができないんだということで、必死になって抵抗しているのであります。この法案は、そういう農民を保護する面は何一つ見られていないわけです。そういう必死になって農民が抵抗しておるにもかかわらず、政府は毎年七万から八万ヘクタールの土地を農民から手放させ、そうして七十万人から八十万人の農民を農村から流出さして、日本の農業の圧倒的部分を婦人や老人を中心とした兼業の農家に追いやろうとしておるこの法案は、農業の破壊、土地取り上げをさらに強権的に促進させるものであって、わが党は断じてこれに反対するものであります。
以上が私の本法案に反対の理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/11
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012・中川俊思
○中川委員長 玉置一徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/12
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013・玉置一徳
○玉置委員 私は、民社党を代表いたしまして、政府提案にかかる農地管理事業団法案並びに自民党、民社党共同提案にかかる修正法案に対する賛成討論をいたしたいと思います。
農業基本法ができましてから六年を経過いたしますが、日本の農業の現状は全く深憂のほかはないのであります。私たちは、政府の農業施策に全国の農民とともに非常に不満を持っております。この日本の農業の危機の打開と日本農業の再建のためには、政府だけにまかしておくのではなく、朝野の関係者があげて取りかからなければならない喫緊の問題だと思います。この法律案の内容にも幾多の不満を持つものでありますけれども、世界の現状を見ましても、欧米の先進国あるいは共産党の中国、ソビエトにおきましても、土地国有のそういうところにおきましても、なかなか悩みの種であるのが農業政策であります。かような意味におきまして、政府に果敢な改革案を断行していただくとともに、その改善を積み重ねてやっていくしか方法がない、かように存じまして、本法案に附帯条件を付して賛成をしたかったのでございますけれども、都合によりまして、賛成討論の中にその要望を繰り入れてやっていきたいと思います。
さて、ここ数年来、年間約七、八万町歩の農地の権利移動がございますが、しかも今後の傾向としても、農業就業人口の減少、世代交代の機会の増大等を考えますとき、さらに農地の移動量は年々拡大するものと考えられるのであります。しかるに、これらの農地の移動は、必ずしも経営規模の拡大に役立つ方向に向かっていないことは、周知のとおりであります。
こうした現状にかんがみまして、農地等にかかる権利の取得が、農業経営規模の拡大、農地の集団化、その他農地の保有の合理化に資するよう、その促進に必要な業務を行なう機関として、政府は農地管理事業団法案を提出されたのであります。しかしながら、まず、当初の構想より事業団の事業規模が縮小されましたほかに、その構想がかなり退歩していることが目につくことであります。二番目に、事業団の農地等の売買価格がいずれも時価方式をとっております。三番目に、事業団の業務と農地の集団化、構造改善事業など他の事業との関連において、有機的に結合しておりません。四番目に、事業団に先買い権が付与されておりません。五番目に、兼業農家を含めた日本農業振興の具体的プランが同時に政府から示されておらない。六番目に、特に事業団の業務の円滑なる進展の前提条件ともいうべき離農対策が具体的に打ち出されていないなど、問題点が少なくなく、はたして所期の目的を達成し得るや懸念される向きのあることもいなめない事実であります。
よって、政府は、本事業団法施行にあたりましては、左記各項に留意すべきであると思います。
一番目に、政府提案は、当初の農林省構想よりはるかに縮小されたものとなっておりますが、日本農業の抜本的な構造改革には、この程度の資金量、融資条件では十分でありません。よって、事業の進展に応じて、必要にして十分な資金を用意することはもちろん、融資条件もすみやかに当初の構想どおり年二分、四十年に改めるべきだと思います。なお、二重価格制度を実施しない限り、事業の急速な進展はむずかしいと思われますにつきましては、これが実施についても直ちに検討を進めるべきであると思います。
二番目に、分散した農地を集団化していくことが、日本農業の経営規模拡大の必須条件だと信じます。したがって、大土地改良が先行しない限り、事業団の業務の円滑なる進展も困難と思われますにつきましては、政府は、大土地改良、農地の集団化など、基盤整備をさらに一そう積極的に推進するとともに、事業団の事業と関連してこれらの業務が遂行されるよう、政府施策を集中的に実施することに留意されたい。なお、将来は圃場整備、開拓、干拓等の事業を事業団があわせて実施し得るように改正すべきであると思います。
三番目に、今回の法案には、未墾地の売買及び交換のあっせんとその融資が新たにつけ加えられたのでありますが、未墾地の売買、交換、貸借等は除外されております。政府は、事業団をして未墾地の売買はもとより、これらの開発をも積極的に行ない、農家の経営規模の拡大と国内農用地の増大に資するよう改めるべきだと思います。
なお、先買い権を漸次事業団に付与し、構造改革の効率を高めるよう配慮する必要があると思います。
四番目に、政府は、事業団の事業実施にあたっては、離農しようとする農業従事者に対して、離農者年金制度の早期創設、離農手当の支給、離農者負債の整理、離農者の税の特別措置、住宅の供給、職業訓練等、総合的な施策を早急に講ずべきであります。
なお、昭和三十九年十一月、農林省の考案によります離農者援護資金融通制度を整備拡充して、すみやかにその実現を見るように努力されたいのであります。
なお、日本農業の兼業増加の実態にかんがみまして、政府は、本法施行と同時に、兼業農家を含めた日本農業の近代化と所得の向上策をあわせて示すべきでありましょう。
また、本法実施にあたっては、法のたてまえをよく農家に周知せしめ、いやしくも上からの画一的な強佃にならないよう、あくまで下からの盛り上がりによって円滑に事業の遂行が期せられるように配慮することが肝要だと思います。いわんや、兼業農家の離農を強制するがごとき印象を与えることは厳に慎むべきだと思います。
以上述べましたとおり、本法案は必ずしも十分でありませんが、政府の一枚看板である構造改善事業もすでに壁に突き当たっている今日、全国各地の市町村長、農業委員会、農協等、農業関係機関の本事業団法の成立に寄せられる期待も少なくないのであります。
私たち民社党は、自立農家百万戸の育成が日本農業の構造改善の目標であるとする自民党政府の農業政策とは、見解を異にするものでありますが、農地の権利移転がいずれにしても広義の経営規模拡大に資する方向に利用されることを反対するものではありません。価格政策や社会保障制度が並行されなければ、近代日本農業の確立はもとより望むべくもありませんが、この農地管理事業団法をいわば日本農政前進の橋頭堡として、大土地改良を推進し、日本農業の近代化と構造改革を実現する方向に活用したいと考えるものであります。
政府は、本事業団法案が成立し、一応実施された上、各方面の意見を率直に聞きへ改正すべき点は改正して、真に全農家のために役立つものとなりますことを期待しつつ、以上の条件を付して、賛成の意を表するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/13
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014・中川俊思
○中川委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず、舘林三喜男君外一名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/14
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015・中川俊思
○中川委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/15
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016・中川俊思
○中川委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/16
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017・中川俊思
○中川委員長 次に、内閣提出、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
別に質疑の申し出もありませんので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/17
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018・中川俊思
○中川委員長 この際、倉成正君外二名から、自由民主党、日本社会党、民主社会党三派共同提案にかかる本案に対する修正案が提出されております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/18
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019・中川俊思
○中川委員長 提出者から趣旨の説明を求めます。倉成正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/19
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020・倉成正
○倉成委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、内閣提出にかかる農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対し、修正の動議を提出いたします。
修正案はお手元に配付したとおりであります。朗読を省略して、以下修正の趣旨を簡単に御説明申し上げます。
修正の内容は二点であります。すなわち、その第一は、改正案では、既裁定の障害年金について、二十年以上の組合員期間のある者に限り六万円を保障することとしておりますが、障害年金については、在職期間の長短によって差をつけるべきではないという観点に立って、この際、二十年以上の制限を削除することにいたしました。
第二の修正点は、農林漁業団体職員共済組合の組合員の標準給与は極端に低いにもかかわらず、その掛け金率が他の組合に比し高いという特殊性などにかんがみ、国は毎年の給付に要する費用の一六%を国庫補助するとともに、さらに財源調整のため必要があるときは、毎年度予算の範囲内において、これに要する費用の一部を補助することができる道を開いた次第であります。
簡単ではございますが、修正案の趣旨について申し上げました。何とぞ全員の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/20
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021・中川俊思
○中川委員長 以上で趣旨の説明は終了いたしました。
本修正案について別に質疑もないようであります。
この際、本修正案につきまして、国会法第五十七条の三の規定により、内閣に対し意見を述べる機会を与えます。坂田農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/21
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022・坂田英一
○坂田国務大臣 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としてはやむを得ないものと考えます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/22
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023・中川俊思
○中川委員長 これより原案及び修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。
まず、倉成正君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/23
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024・中川俊思
○中川委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま議決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/24
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025・中川俊思
○中川委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/25
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026・中川俊思
○中川委員長 この際、本案に対し、芳賀貢君外二名より、自由民主党、日本社会党、民主社会党三派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。趣旨の説明を求めます。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/26
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027・芳賀貢
○芳賀委員 ただいま修正可決されました農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、附帯決議を付するの動議を提出いたします。
まず、案文の朗読をいたします。
農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
農林漁業団体職員共済組合の組合員の標準給与は、著しく低位で、しかもその掛金率が他の共済組合に比して高い現状にかんがみ、政府は、本制度について他の年金制度との均衡をも考慮しつつすみやかに左記事項の実現を期すべきである。
記
一、旧法の組合員期間の給付については、新法の給付を適用する等の改善措置を講ずること。
二、いわゆる年金スライド原則規定の発動基準を早期に明確化するとともに、これに伴い既裁定年金の給付額を実情に即応して改善すること。
三、本改正案に対する社会保障制度審議会の答申中「整理賞源の確保に欠くるところがあるので、他の年金制度との均衡を考慮しつつ、国庫負担の増額を今後ともはかっていく必要がある」旨の主旨を尊重して措置すること。
四、農林漁業団体職員の給与が著しく低位で、給与水準に不均衡が認められる実情にかんがみ、給与の改善、給与体系の整備等のため、適切な指導を行なうこと。
右決議する。
以上について、その主要なる点の説明を行ないます。
まず第一は、新法の給付を旧法組合員期間に適用することについてであります。すなわち、去る第四十六国会において本法の改正が行なわれた結果、昭和三十九年十月一日以降を新法組合員期間と称し、それ以前の分を旧法組合員期間と称するのであります。この新法期間、旧法期間の相違点は、まず年金給付の基礎をなす平均標準給与の算定について新法期間については退職時から過去三年間の平均給与をとり、旧法期間については退職時から過去五年の平均給与をとることに定められているのを、今回の改正により、新法期間同様に過去三年の平均給与と改善されたのであります。
次に、年金の給付率については、いわゆる新法期間は平均標準給与額の百分の四十であるのに対し、旧法期間は平均標準給与額の百分の三十三・三であり、ここに制度上の不合理があるのであります。一例をあげれば、平均標準給与の月額五万円の組合員の場合、新法期間の給付率によれば百分の四十で、年金の月額は二万円となり、旧法期間の給付率によると百分の三十三・三で、一万六千七百円となり、月額で三千三百円の格差が、組合員たる本人はもちろん、遺族年金にまで及ぶことになるのであります。社会党提出の改正案によれば、旧法期間の給付率を新法期間同様百分の四十に改めることになっておりますが、政府においても、本法の適正な運用上からも、現行の旧法組合員期間につき新法給付の完全適用を行なうため、すみやかに所要の措置を講ずべきであります。
第二は、年金スライド原則規定の発動についてであります。この点については、内閣提出にかかわる昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案が現在審議中でありますが、この法案の中に、農林年金法をはじめ他の公的年金法にそれぞれ年金額の改定についての原則規定が明記されております。すなわち、この法律による年金たる給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならないとあります。しかし、この条文はあくまでも原則規定であり、スライド原則の発動こそ最も重要な点であります。社会党の法案によれば、経済変動率が五%を上回った場合には、年金額の改定を行なう旨が明らかにされてありますが、政府としても、年金スライド原則の発動基準をすみやかに整備して、特に既裁定年金の給付額を実情に即応して改善するよう措置すべきであります。
第三は、いわゆる整理資源に対する国庫負担の増額についてであります。ただいま三党共同修正を行なった中で、新たに第六十二条二項を規定したのであります。すなわち、その条文は「国は、前項に規定するもののほか、財源調整のため必要があるときは、毎年度、予算の範囲内において、これに要する費用の一部を補助することができる。」としてありますがこの条文の目的は、千分の二十三といわれる整理資源率がそのまま組合員の掛け金負担の重圧となっておる、実情にかんがみ、整理資源分に対する国庫負担の道を開いたことであります。
なお、本改正案に対する社会保障制度審議会の答申とは、昭和四十一年三月三十一日に坂田農林大臣に対して答申が行なわれたものであり、その答申の明記しておる点は、「厚生年金保険の給付に対する国庫負担率は、昨年の法改正によって百分の十五から二十に引上げられた。この制度は厚生年金保険制度から分れたものであるし、この点についても考慮を払う必要があるが、給付内容等の点において厚生年金保険とは異なるものがあることを忘れてはならない。それにしても、この組合口の標準給与が極端に低いこと等の理由により、掛金率が他の組合に比して高いにかかわらず、整理資源の確保に欠くるところがあるので、他の年金制度との均衡を考慮しつつ、国庫負担の増額を今後ともはかっていく必要がある。」この二点を援用いたしましても、政府におきましては、今回の政府案修正を機会にいたしまして、昭和四十二年度以降十分なる整理資源の負担に任ずべきであると思うのであります。
最後に、第四点といたしまして、農林漁業団体職員の給与改善をこの際政府の行政責任において進めるべきであると思うのであります。現在の全国の農林漁業団体の職員の給与水準は、民間産業の賃金においても最も低いといわれておるわけであります。たとえば公的年金の中において、各年金間の給与の平均額を比較した場合に、農林年金においては、その給与は四十年三月末において平均月額二万一千四百七十八円となっておるのであります。これに対して公務員共済の平均本俸につきましては、月額にして三万二千六十四円でありますので、同じ年金の基礎をなすところの、一方は若干の手当等を含めた農林年金の給与、一方は純然たる基本給だけの本俸を比較した場合においても、月額平均で実に一万円以上の格差があるということが明らかになっておるわけであります。したがって、今後農林漁業団体が国民経済的な期待にこたえて、十分農業の面において、林業の面において、あるいは漁業の面において、その期待にこたえた力を発揮するためには、どうしても今後従事する職員の身分の安定をはかり、社会保障を確保するということは、これは前提条件として一番大事なことであるというふうに考えるわけであります。しかもまた、農林漁業団体それぞれの系統内部におきましても、たとえば中央の団体、あるいは都道府県段階の団体、あるいは末端の単位協同組合団体における系統内部の職員の給与に著しい不均衡があるということも特徴であります。したがいまして、政府としては、このような実情を十分調査いたしまして、すみやかに行政的な措置を講じて、まず全国的に低水準に置かれておる団体職員の給与の改善をはかるとともに、給与体系全体の整備等についても一そう適切な指導を行なうべきであると思うのであります。
以上が本法案に対する附帯決議の内容であります。特に第一の点については、去る四十六国会におきましても、本法改正が行なわれた際に、旧法期間の分については当然新法の給付を適用すべきであるとの附帯決議を付しておったわけでありますが、いまだにこれが政府の責任において実現されておらないことを特に指摘いたしまして、附帯決議提案の説明にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/27
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028・中川俊思
○中川委員長 おはかりいたします。
芳賀貢君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/28
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029・中川俊思
○中川委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議について、政府の所信を求めます。坂田農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/29
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030・坂田英一
○坂田国務大臣 ただいまの御決議を尊重いたしまして、検討の上、善処いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/30
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031・中川俊思
○中川委員長 なお、ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/31
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032・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/32
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033・中川俊思
○中川委員長 この際、委員派遣承認申請の件についておはかりいたします。
内閣提出、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案の審査のため、各地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、衆議院規則第五十五条により、議長に承認を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/33
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034・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
なお、派遣委員の氏名、人数、派遣期間、派遣地及びその承認手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/34
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035・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
なお、航空機利用の必要があります場合には、あわせて承認を求めたいと存じますが、これにつきましても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/35
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036・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/36
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037・中川俊思
○中川委員長 次に、理事辞任の件についておはかりいたします。
理事小枝一雄君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/37
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038・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認めます。よって、小枝一雄君の理事辞件を許可するに決しました。
次に、理事補欠選任の件についておはかりいたします。
ただいまの小枝一雄君理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/38
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039・中川俊思
○中川委員長 御異議なしと認めます。よって、理事に田口長治郎君を指名いたします。
次会は明二十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04019660526/39
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