1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月二十七日(金曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 中川 俊思君
理事 倉成 正君 理事 田口長治郎君
理事 赤路 友藏君 理事 芳賀 貢君
池田 清志君 宇野 宗佑君
小枝 一雄君 坂村 吉正君
笹山茂太郎君 高見 三郎君
中川 一郎君 丹羽 兵助君
野呂 恭一君 藤田 義光君
森田重次郎君 江田 三郎君
兒玉 末男君 西宮 弘君
松浦 定義君 森 義視君
湯山 勇君 中村 時雄君
林 百郎君
委員外の出席者
農林事務官
(林野庁林政部
長) 木戸 四夫君
農林事務官
(林野庁林政部
調査課長) 高須 儼明君
自治事務官
(大臣官房参事
官) 降矢 敬義君
専 門 員 松任谷健太郎君
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五月二十七日
委員湯山勇君辞任につき、その補欠として和田
博雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員和田博雄君辞任につき、その補欠として湯
山勇君が議長の指名で委員に選任された。
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五月二十七日
畜産物の価格安定等に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第一一五号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関
する法律案(内閣提出第一一一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/0
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001・中川俊思
○中川委員長 これより会議を開きます。
入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。森義視君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/1
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002・森義視
○森(義)委員 前回の当委員会で、法案の具体的な審議の入り口に入ったわけですが、入り会い林野の整備に関する申請の段階まで質問を大体終わったわけであります。
そこで、第三条の規定に基づきまして、入り会い林野の整備の認可の申請が知事に出されて、知事が第六条によって審査して、これを公告するわけです。第六条では、出されました入り会い林野の整備計画について、詳細な審査を行なって、その適否を知事が決定する、こういうふうになっておるわけですが、どういうふうな審査をやるのか、整備計画の提出の段階でかなり指導が行なわれているわけですが、それに基づいて準備を進められて、整備計画が出され、認可の申請がされる、その段階で知事が詳細な審査を行なう、その基準をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/2
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003・木戸四夫
○木戸説明員 ただいま御指摘のありました知事の審査につきましては、先生から申されましたように、第六条におきましては、審査の基準といたしまして、四つの事項が書いてあるわけでございます。一つは、法律上の手続に違反するかどうかという点が第一点でございます。それからその整備計画にかかる土地が、農林業上の利用増進をすることが確実であるかどうかという点が第二点でございます。第三点につきましては、従来の入り会い権等に比較いたしまして、新しい権利関係が一部の者に集中するおそれがあるかどうかという点でございます。それから第四番目におきましては、農地とか採草放牧地にかかる権利につきましては、農地法に抵触するかどうかということで、抽象的な基準を定めておるわけでございますが、その具体的な審査の方法につきましては、この前参考資料として指導の方針をお配りしたわけでございますが、その十八ページのところに書いてあるわけでございます。
それで、その手続の審査につきましては、書類が添付されているかどうかというようなことと、それから手続が法令に違反しているかどうかという点が第一点でございます。それから第二点につきましては、入り会い権者全員による規約の定めがないなど、整備計画の決定の手続で法令等に違反していないかどうか。それから第三番目には、所定の事項以外の事項を定めているかどうかというようなことが、手続に関する審査の基準になっておるわけでございます。
それから第二番目の農林業上の利用の増進がはかられることが確実であるかどうかという点につきましては、次の点に留意して審査をすることになっております。
一つは、林業または農業の利用に供されるものであるかどうか。この場合、地質、地味、傾斜度、降雨量等の自然条件、現在の利用目的、通作距離、輸送手段、市場条件等の経済的条件等を総合的に勘案しまして、これらの条件に適合した利用がはかられるかどうかという点が審査の基準になるわけでございます。
それから組合等による協業経営とする場合には、当該組合等が次の観点から見て適当なものであるかどうか。一つは、造林、草地改良等経営を適正に遂行するための財政的裏づけがあるかどうか。それから二番目には、組合員等に農林業を営む意欲があり、かつ、一定数以上の組合員等がその組合等の業務に常時従事し得る見込みがあるかどうか。それから第三番目には、業務の執行及び会計の経理が適正に行なわれる見込みがあるかどうか。こういう点について審査をするわけでございます。
それから個別経営の対象とする場合には、次の観点から見て、その者の健全な経営がはかられる見込みがあるかどうかということで、一つは、権利取得者が現に保有する森林、農地等の面積にその取得することとなる権利を加えることにより、当該権利取得者の経営規模が適正なものとなるかどうかという点、それから二番目には、権利取得者が土地利用計画に従い造林等の事業を行なう場合に、当該者の農林業経営の状況等から見て、財政的負担能力、技術的能力を有するかどうか。それから三番目には、権利取得者に農林業を営む意欲があるかどうかという点が審査の対象になるわけでございます。
それからその権利を取得した後におきまして、農業構造改善事業だとかあるいは林業構造改善事業、草地改良事業等の諸事業が関連している場合には、これらとの関連がうまくいっておるかどうかという点が審査の対象になるわけでございます。
それから三番目の、一部の者への権利の集中その他の不当な利益をもたらすものでないかどうかについては、次の点について審査をする、こういうことになっております。
一つは、所有名義人が所有の実を有していない場合、これは入り会い権者が取得することとなる権利が、地上権、賃借権などの所有権以外の権利であったり、または所有権を取得する場合でも、それが入り会い林野の一部にすぎないようなことがないかどうかという点が第一点。
次には、所有名義人が所有の実を有している場合には、入り会い権者が権利を取得することとされている土地が、入り会い林野の過半に至らなかったり、また取得することとされている権利の種類、内容が、従前の入り会い権の内容より劣弱であると認められるものでないかどうかという点です。
それから、入り会い権者が取得することとされている権利と従前の入り会い権の内容とを比較して、他の権利者の場合に比べ著しく差異があると認められるものでないかどうか。
それから、入り会い林野整備による権利の取得を放棄した入り会い権者がある場合に、その放棄は適正になされたものかどうか、また当該入り会い権者に適正な対価が支払われることとされているかどうかという点が審査の基準になります。
あとは、農地法に規定されてありますので、その法律の条文に照合して審査をする、こういうことになっておるわけでございます。
それと同時に、その次には、権利関係が近代化した後におきましては、できるだけ森林組合なりあるいは農業生産法人なり、協業経営を促進していきたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/3
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004・森義視
○森(義)委員 いま部長から答弁のあった内容は、きょういただきましたこの資料の中に詳しく書いてあるわけですが、ここで第二項の農林業上の利用を増進することが確実であると認められるものであるかということ、これは実際問題として、この内容は、ここに書いてある指導方針の内容だけでは確実につかみにくいと思うのですが、たとえば十九ページの(イ)、ここで協業経営とする場合には云々というのが、一項、二項、三項に分かれて書いてあります。いま部長読まれたとおりですが、そこで、造林、草地改良等経営を適正に遂行するための財政的裏づけがあるかどうか、あるいは業務に常時従事し得る見込みがあるかどうか、こういうことになりますと、今日まで繰り返して長官から答弁をいただいております。入り会い林野の近代化で個別私権が明らかになって、直ちにそれを協業化の方向に指導する、そういう基本方針を出しておられるのですが、こういう条項を当てはめていきますと、その協業化への指導の方針の裏づけがなかなかたいへんになってくると思うが、その点について、従来の答弁で出ております協業化への指導方針は、この内容からいうと、たいへんむずかしくなるように思うのですが、その点どういうふうに指導していくのか、さらに御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/4
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005・木戸四夫
○木戸説明員 この点につきましては、しばしば長官からもお答えしたと思いますが、協業化を進めていくにつきましては、できるだけ森林組合なりあるいは農業生産法人なりに移行するのがスムーズにいくように、と申しますのは、入り会い林の近代化の整備計画をだんだんと進めていくわけでございますが、それと並行いたしまして、生産森林組合の設立等を指導してまいるわけでございます。そうして、その間にできるだけギャップのないようにしていきたいという考えでおるわけでございます。それと同時に、財政的な裏づけにつきましては、既存のたとえば造林補助金だとか、あるいは造林の金融だとか、あるいは草地改良事業なら草地改良事業等の関連を十分府県の段階において考えていただいて、それがうまくできていくようにやっていきたい、そうすることによりまして、できるだけ財政的裏づけをしていく、こういうぐあいに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/5
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006・森義視
○森(義)委員 そうすると、財政的裏づけが明確でない、あるいは業務に従事し得る見込みがない、こういう場合には、協業化へのあれは、この認可の基準から申し上げますならば認めないことになるわけですね。いまの答弁としてはそうですよ。協業化への指導が、いまのような三項目に当てはまらなかった場合においては、これを促進しない結果になると思うのです。その点は、従来の協業化へ積極的な指導を行なっていくという考え方と相反すると思うのですが、財政的裏づけというのは、具体的にはどういうことですか。いわゆる生産森林組合をつくる場合に、その財政的裏づけがどういう場合には、それを生産森林組合をつくり得るというように判断するのかどうか。これは知事が判断するのでしょう。その財政的裏づけというのは、具体的にどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/6
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007・高須儼明
○高須説明員 ただいまの基準の中にございました、生産森林組合等の協業化への設立の基準にあたりまして、財政的裏づけはどのような意味であるかという御質問でございますが、この点につきましては、たとえばすでにある程度入り会い林野の中におきまして一部森林地がある、そうしてやや法正林的な経営が可能であるというような状態の場合には、これはそのままの状態でも、それを回転することによりまして、経営を継続いたしていくことができるわけでございます。また、そのような森林がないというような状態であれば、あるいは各種公庫資金とか、いろいろな資金援助、あるいは県単事業におかれましても種々の施策を講じておられるところでございますが、そういったようなものの適用の可能性がどの程度あるであろうか、そういったことをすべて総合的に勘案いたしまして、財政的裏づけというものを判断してまいりたいと思うわけでございますが、全くそのような可能性のない場合、単なる名義の書きかえに終わる、実質上効果のないような場合には、むしろ、現在組合をつくりましても、その組合は休眠組合を成立させるだけでございますので、そのような場合には、各種の施策を考えてもなおかつそのような見込みがない、可能性がないというような状態の場合には、やはりそういった組合をつくってまいるということと申しますか、このような計画によってやってまいるということが、なかなか困難ではなかろうか。むしろ、こういったような基準を設けまして、この裏から積極的に財政的裏づけをしていくように考えて指導してもらいたい、かような意味合いの基準でございます。
なお、これにつきましては、表現のあいまいな点は、現地あるいは専門家の御意見などを徴しまして、もっと的確な表現に改めたい、かように考えておる次第でございます。現在考えておりますのは、そのような意味合いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/7
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008・森義視
○森(義)委員 そうすると、この財政的裏づけというのは、現在、個人個人がそれぞれの持ち分を出資する、そこに伐期を迎えた森林があるというような場合においては、これは財政的裏づけがあるというふうに考えていい、こういうことに理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/8
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009・高須儼明
○高須説明員 ただいまおっしゃったとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/9
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010・森義視
○森(義)委員 それでは次の三号の「一部の者に対し権利の集中その他の不当な利益をもたらすものであると認められるとき。」これは事実問題として申請が出されてきた段階では、知事の認可が明らかになった場合には、直ちにそれが地上権あるいは賃借権として発動するわけですね。認可さえとれば、あとは個人の私権化されるのですから、自由に売買ができると思うのです。そういうものを擬装して申請されるという場合が間々あり得ると思うのです。たとえば、現在自分の持っておる持ち分が明確になれば、それを売って離村したい、こういう方々が山村僻地の中にはかなりあるわけです。したがって、この入り会い権の整備の中で、知事が認可して私権化した。それは協業化へ出資するという形でなくて、直ちにそれを売り払って、どこか都会に出ていきたい、息子はすでに都会で働いておる、こういうような山村の今日の状態なんです。そういう場合に、これだけの規定で、一部の者に権利の集中その他の不当な利益をもたらすというものをチェックし得るのかどうか。知事は書類上の審査をやるわけですね。もちろん実情を調べますけれども、それは個人個人の入り会い権者の現状を十分把握した形でそういうものは十分確認できないと思うわけです。これだけの規定で——今日までわが党以外の方々の質問の中にも出ておりましたが、一部の人々に集中するおそれが多分にあると思うのですが、これだけでその点を防ぎ得ると考えたのかどうか。その点さらに念を押してお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/10
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011・木戸四夫
○木戸説明員 これにつきましては、先ほど御説明したとおりでございますけれども、整備計画の段階で、権利移動の関係がどうなるかということの計画の段階でチェックをするわけです。それと同時に、自後の指導につきましては、できるだけ協業化の形態に進めたい、かように考えておりまして、全部が全部そういうぐあいになるとは限らないと思いますけれども、たとえば分割利用しておるというようなところは、ある程度個別私権化ということも予想されるわけでございます。そういうところでないところ、それから分割利用しておるところでも、できるだけ協業経営を進めたい、そういうことで、協業経営のあり方と、それから整備計画にしるされた権利移動の関係と総合的に判断をして、できるだけないようにしていきたい、かように考えておるわけでございます。ただ、先生のおっしゃるような事例もないとは言えないと思います。それは生産組合なりなんなりに移行しても、その問題も起こるかと思いますけれども、どうしてもそういうことになるという点につきましては、遺憾ながらこの法律で規制ということにはまいらないと思いますが、できるだけ従来利用してきた入り会い権者が、その土地に残っておる限りにおきましては、協業経営の中に入っていただきたい、こういうことで指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/11
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012・森義視
○森(義)委員 協業化への方向は、これは行政指導であって、何ら法的権限を持たないわけなんです。現地で整備計画をつくる場合においては、入り会い権者の代表者を選ぶわけです。代表者を選ぶというのは、いわゆる地方のボスなのです。だから、そういう人たちは、地域におけるほかのあらゆる日常生活の社会における支配権を持っておるわけです。その人たちの言いなりに入り会い権者がめくら判を押すわけです。そういう形で押したやつをあとで買い取る、こういう形式に流れるおそれが、山村の現在の社会状態から考えると多分にあるわけなんです。だから、行政指導で協業化への方向とおっしゃいますけれども、それは事実問題として、こんな程度ではとうてい一部への集中を排除することはできないと思うのです。したがって、これは個別私権化の問題が協業化へのいわゆる瞬間タッチ方式で考えられるならば、それはいいだろう。しかし、それが期間をあけまして行政指導の対象として考えていく、こういうことになりますと、これだけのチェックのしかたでは、とうていそういう今日の零細な山村農民の実情を知っておる限りにおいてはむずかしいと思うのです。その点、そういう自信があるかどうか、もう一回念を押してお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/12
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013・木戸四夫
○木戸説明員 第一段目には、法律的に言いますと、全員の同意を必要とする、こういうことになっておりますので、この入り会い林野の整備をやるにあたりましては、十分こういう法律の趣旨なりやり方なりをPRいたしまして、この法律の趣旨どおりに進めるように指導したいと考えておるわけでございます。それから生産法人に移る際には、両方とも都道府県知事が認可するわけでございますので、整備計画も都道府県知事の認可でございますし、それから生産森林組合の設立の認可も都道府県知事でございますので、整備計画の進行状況をにらみながら、それと時間的なズレがないように生産森林組合の設立の指導をやっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/13
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014・森義視
○森(義)委員 私は現状を知っておるだけに、林野庁のほうで考えておられるような形にはそうスムーズにいかないのじゃないか。だから、全員の同意という形になっておるけれども、同意というのはめくら判である。大体山村へ行きますと、そこの旧家というのは、ずいぶん先祖代々地方のボスにつかえておるという形式がかなりまだ残っておるわけなんです。したがって、それらが自主的な発言をし得るような、今日の都会における、あるいは平たん地における民主性というのですか、そういうものが発育をしていないわけですね。そういう地域における問題ですから、全員同意ということが全科玉条で、みなが自由な意思で、その点について意思表示をできるんだというふうにもし考えられるとするならば、それは山村の現状をあまり詳しく知っておられない机上の空論じゃないかと思うのです。この点は知事の認可段階においてもかなりきびしくやってもらわないと、そういう心配があとに残るのではないか。認可した直後、数カ月あるいは一年、こういう期間では、そう特定の個人に集中されるというようなことは起きないかもわかりません。それは最初に認可申請をしたときの県側からの行政指導なり、あるいはその地域における話し合いなり、そういう問題がありますから、遠慮しておる。しかし、それはもう現実の問題は、印鑑を預けた形になってしまうのです。これは子供の学校の教育費まで全部その地方のボスに負担させられている。奥さんもおやじも下男と下女というような形で、歴代そこのあらゆる行事に奉仕しておる。こういうふうな山村の生活環境の実態からいうならば、これは入り会い林野というものを整備されると、またたく間にいままで持っておった権利まで喪失してしまう、そしてわずかな捨てぶちで失ってしまう、そういう心配と、あるいはそれを売ってしまって出ていくという二つの心配が、どうしてもつきまとうということがあるわけです。したがって、その地域におけるボスの所有面積を広げる結果にしかならない。そういう地域がかなり山村僻地の間には将来出てくる危険性がある。そういう点をぜひ十分に注意をしていただいて、そういう形にならないように、いろいろな角度から行政指導をやっていただきたいと思うのです。私は、これは本来いうならば、もっと強力な規制を設ける必要があるのではないか、こういうふうに思うわけですが、この点について、実は旧慣使用林野の場合には、一部の者に不当な利益集中をもたらすことを排除する規定がないわけです。これは自治省の降矢参事官もお見えになっているのですが、旧慣使用林野の場合には、市町村議会の決定によって、そうして旧慣使用権者の意見を聞く、簡単に申し上げますならば、こういう形だけでどうにもできるわけですね。そこで、旧慣使用林野の場合に、旧慣使用権者の意見を聞く。具体的にはどういう形で意見が聞かれるのか。現地ではもう入り会い権と同じ権利をもって山村農民は考えているわけです。ところが、法制上いわゆる民法と地方自治法に分かれて、こういう形になっておるだけで、山で働いておる現地の住民というのは、そんな法制上の権利区分というようなものは明確に意識していないわけです。ところが、いわゆる入り会い林野の整備計画では、明らかに民法と地方自治法上の権利の区分を明確にして、片方においては全員の同意、片方においては意見を聴取する、こういう形だけにしかなっていないわけです。その点、なぜ入り会い権の場合においては全員の同意を必要とし、旧慣使用権の場合においては権利者が単に意見を聞かれるだけであるという形に法制上区分をされたのか、その経緯とその理由をひとつお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/14
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015・降矢敬義
○降矢説明員 旧慣使用林野におきましては、その権利は、地方自治法によりますと、市制町村制の規定以来ずっと今日まで続いているわけでございますが、市町村あるいは財産区の公有財産というものにつきまして、従来の市制町村制施行以前からの旧慣に基づいて使用する権利がある場合に、これを旧慣使用権というふうにいたしたわけでございます。つまり、公有財産でございますので、たてまえは広く住民一般の福祉に用いるべき性質のものであることは言うまでもないわけでございますが、市制町村制の制定理由の中にも書いてありますとおり、そういうものでありますけれども、当時旧慣によって使用する権利を有するという事実を尊重し、それを法律の権利として市制町村制の中に規定をし、それが今日に至っているわけでございます。したがいまして、あるいは先生御指摘のように、使用収益の実態においては入り会いと類似するものがありましても、公有財産における住民たる資格に基づく権利という点からいたしまして、その管理処分については、市町村の議会がこれを決定して行なう、こういうことにしてあるわけでございます。したがいまして、この旧慣使用林野の整備の場合におきましても、その手続と同じ手続に従いまして、議会の議決によって処理をするわけでございますが、もとより御案内のとおり、法律には、旧慣使用林野の整備を行なうかどうかということについてのまず議会の議決があり、次に計画を樹立する場合に、議会の議決のほかに、さらに当該林野が旧慣使用の対象になっておって、その他の権利の対象になっていないかどうか、主として入り会い権かどうかということの確認をいたします。そういうことの一環として、同時に議会の議決で本来済むわけでございますけれども、さらに旧慣使用権者の意見を徴す、こういうかっこうにいたしまして、林野整備計画に旧慣使用権者の意見を十分に反映するというたてまえにしたわけでございます。
なお、後段、どういうかっこうで意見を聞くのか、こういうことでございますが、これは市町村の議会における公聴会という制度が一つあるわけでございますが、また旧慣使用権者に当たって意見を聞く方法もございますし、それからたとえば一つの整備計画の素案というものを旧慣使用権者に提示して、それに対して意見を申し出るという機会を積極的につくるという方法もあると考えております。いずれにいたしましても、意見を聞く方法は、いま頭にある二、三の例示を申し上げたわけでございますが、そういうかっこうで意見を聞くという方法を現実的にとれはせぬか。もとより旧慣の内容によりまして、そういう管理処分について、旧慣使用権者と市町村との間に、旧慣に従って処理をするというふうなことがありますれば、当然その旧慣に従うべきものというふうに考えておるわけでございます。
もう一つ、先生の御質問の中で、一部の者の権利集中の問題がございましたが、形式的には旧慣使用権の審査基準の中には入れてございません。その理由は、われわれといたしまして、公有財産でございますので、本来住民一般の利用に供すべきものがたてまえであるけれども、しかし、反面旧慣による使用の事実というものを法律で尊重しております。したがいまして、単に旧慣を持っておるからこの林野整備あるいは権利の近代化ということをやるのじゃなしに、それにプラスして、しばしば当委員会で御答弁のございましたように、構造改善事業あるいは土地改良事業というようなものを積極的に行なって、いわばその地域の開発に当該土地の利用が寄与するという、もう一つきついワクをはめて、この整備計画を振興するということにいたしたのでございます。したがいまして、旧慣使用林野の場合におきましては、そういう農林の構造改善事業あるいは土地改良事業における計画というもの、それが前提あるいはそれと一体となって進められるべきものでございますので、計画そのものの中で、すでに御指摘のようなことは現在農林省のほうで指導あるいは県が認可をするという際には、全然考慮されておらないわけでございますので、手続上のこととそういう実態上のことを加味して、この規定をあえて設けなかった、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/15
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016・森義視
○森(義)委員 いまの自治省の降矢参事官の答弁で林野庁はいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/16
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017・木戸四夫
○木戸説明員 旧慣使用権につきまして、全員の同意を必要とせずに意見を聞くということにつきましては、いま自治省から御意見がありましたように、入り会い林野の場合は、民法の規定によりまして、全員の同意がなければ処分はできない、そういうことになっておりますので、その点につきましては、全員の同意としたわけです。そしてそのほうがむしろ合理的ではないか、かように考えたわけでございます。ただ、旧慣使用権につきましては、地方自治法に規定がございまして、先ほど自治省の参事官から御説明がありましたように、所有者が市町村あるいは財産区、こういうことになっておりますので、地方自治法の規定によりますと、市町村長が議会の議決を経て処分できる、こういうことに一般にはなっておるわけでございます。ただ、旧慣使用権で住民が従来その市町村の財産を利用してきたということになりますと、それを全然無視していろいろなことをやるわけにはいかぬじゃないか。だから、できるだけその従来利用してきた人の意見を十分に尊重して、旧慣使用権の整備をするのが適当だということで、農林省といたしましては、意見を聞くということになっておりますけれども、具体的な方法につきましては、自治省とこれから御相談しなければいけないと思いますけれども、やはり聞き方としては、従来利用してきた人々の意見を十分聞いた上でやっていきたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/17
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018・森義視
○森(義)委員 その考え方が、市町村の公有財産を従来利用してきた旧慣使用権者というものはそういうものだという認識の上に立っているから、間違いが起きる。これは御承知のように、明治政府の市制町村制の施行に伴って、市町村財政の確保のために、従来の入り会い権者に対して、そういうふうに市町村の公有財産にして、そうしていわゆる旧慣使用権という形で従来の権利を認めた。旧慣使用権者のほうの権利が先にあるのでしょう。市町村が持っておる財産を使わしてもらっているのじゃないのですね。だから、私は出発点において間違いがあると思う。だから現地では、旧慣使用権者であろうと、入り会い権者であろうと、現実にはもう同じ意識で管理しているわけです。それをたまたまそういう明治政府の市制町村制施行に伴う施策によって取り上げられた。しかし、そこには入り会い権を持っておるという意識を自分たちは持っておるわけなんですね。だから、使わしてもらっているのではなくて、公有財産を一部利用さしてもらっておるのではなくて、自分たちのものなんだ、こういう認識があるわけです。そこらあたりの出発点が違ってくるから、この法案の中に入り会い権と旧慣使用権の取り扱いが大きく違ってくるわけです。それは法律的にも議論の分かれるところのようですけれども、現地はそういう感覚を持ってないと思う。特に私は降矢参事官にお聞きしたいのですけれども、意見を聞く方法について、たとえば公聴会を開くとか、あるいは個人を呼んで聞くとか、あるいは整備計画を提示して公告によってやるとか、非常にばく然たるお話なんですが、大衆に対する意見の聞き方についてはいろいろ聞き方があると思うのです。これを旧慣使用権という名前で呼ばれておるけれども、本来歴史的に入り会い権を持っておる、そういう認識に立つならば、そういう形式的な意見の聞き方というものは、私は間違っておると思う。少なくとも私権論から言うならば、これは個人の権利なんです。それを公有財産という形で一部線を引いてしまった。これは地方議会でそういう議決をしても、入り会い権の確認の訴訟を提起すれば、十分勝ち得る、法的には争い得る課題になるわけですね。そうなってまいりますと、この意見の聞き方は、ほんとうに同意見に匹敵するような聞き方をされないと、途中で問題が起きる公算が非常に強いわけです。だから、これは自治省と林野庁との話し合いの中で、法律的な解釈から地方自治法上の系統と民法上の規定との違いをいま説明されたわけですが、本来はそういう内容というものは同一のものであったわけですし、現実にも利用しておる農山村民の意識の度合いは、同じように考えているわけです。そういう場合に、法律的な知識を持っておる者だけがそういう法律をたてにとって、そういう権利はないんだというふうに一方的に考えて、法制上も同意見と、それから意見を聞くというふうに分けられてしまうと、かえって問題があるのではないか。だから、法律的にはそういう規定をせざるを得ないということであるならば、現実に林野庁のほうはそれの指導にあたっては、やはり入り会い権者と同様に同意見を旧慣使用権者についても得るような指導をする、そういう方針の答弁がなければ、これは同じ姿勢で一この法案をつくる過程において、自治省と話し合って意見が一致したのは、自治省に合わしておかぬとぐあいが悪いというようなことでは困る。だから、現実の問題と歴史的な経過、こういうものを兼ね備えて勘案するならば、そういう言い方は、私は少なくともこの法案全体を流れておる考え方と違うと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/18
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019・木戸四夫
○木戸説明員 この意見の聞き方につきましては、具体的なはっきりした方針は、いずれ自治省とも相談してみたいと思いますけれども、先生のおっしゃるような趣旨に基づいて意見を聞きたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/19
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020・森義視
○森(義)委員 その点、自治省にもう一回お尋ねいたしますけれども、あなたのところの意見を聞くということは、先ほど申しましたような、大体三つの非常に常識的な答弁をされたわけですが、ほんとうはもう意見を聞く意思がないのじゃないですか。それは市町村議会の議員というものは、地方においてはかなり権力を持っておる。あるいは財産区の議員というものはかなり力を持っておるわけですね。そういう人たちが、これは意見を聞くも聞かないもないですよ。とにかく市町村議会で議決されたから、あるいは財産区の議会の中で議決されたから、こういう形で押しつけていく公算が強いわけです。これは同意見くらいな強力なものを設けてあっても、なおかつ旧慣使用権者の権利というものが非常に忘れられがちな地方の実態だと思うわけです。入り会い権の場合においては代表者をお互いに選ぶわけで、それぞれ一応その地方におけるところのボス的な人が選ばれると思うのですが、この旧慣使用権の場合には、もうはつきりした地方議会の議員あるいは財産区の議員が意思決定をするわけですね。こういうことになりますと、全く同じ出発点にあり、同じ意識であるところの入り会い権者が、そういう国の方針で、法的に線を引かれたことだけで、全く権利の行使というものは違ってくるわけですね。そういう点、自治省のこれからの指導の方針として、もう少し明確にその点についての配慮をお尋ねしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/20
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021・降矢敬義
○降矢説明員 先生の前段の、意見を無視するといいますか、聞かないで事を処理するというようなことは、法律に書いてある条文そのものに違反することでありますので、われわれといたしまして、そういうことはもとよりないものと考えますけれども、当然十分注意すべきことでありまして、意見を聞かないというようなことは考えられない、こういうふうに考えております。当然この法律の条文に従い意見を聞き、また、それが旧慣使用林野以外の権利の目的としていないということをそれらの者について当たって、それからでないと、整備計画、あるいは整備を行なうかどうか、あるいは整備計画そのものが進行しないというのが、われわれの間でいろいろ話し合ってきめたことでございまして、当然議会の行動あるいは市町村長がとるべき態度というものについては、先生の御指摘のようなことのないように留意すべきことはもとよりでございます。
第二に、意見の聞き方でございますが、「意見をきく」ということでありまして、私も、その具体的な方法については、まだ農林省と打ち合わしたわけでございませんけれども、通常は議会における公聴会、あるいは計画案そのものについてそういうものを公示して意見を聞く。もとよりこれらの権利につきましては、それらの旧慣使用権者に当たって、その権利が旧慣使用権以外の権利の目的としていないということをひとつ確認しなければならないということも、法律二十条に書いてございますので、聞き方の方法は農林省とも今後打ち合わせをいたさなければならぬと思いますが、十分に意見を聞いてこの手続を進めていく、こういうふうにわれわれとしては当然留意すべきであり、市町村にもかように指導したい考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/21
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022・森義視
○森(義)委員 法律で「意見をきく」という書き方をしておりますと、これはもう聞いたんや、どんな方法でも——方法が書いてないわけですね。全員の意見を聞くとは書いてないわけです。そうでしょう。だから、代表者の意見を聞いたからといって、これは意見を聞いたことになるわけですね。もし旧慣使用権者の半数以上の反対がある場合にはこれを実施しないとか、何かそれに歯どめがあればいいのですが、ただ「意見をきく」ですから、一人でも二人でも、あるいは意見のある者は持ってこいと公示をしただけで意見を聞いたことになる。こういう形になりますと、全く形式的になってしまって、旧慣使用権者というものは無力にひとしい状態に置かれる、こういうように思うわけです。したがって、ここでは旧慣使用権者の少なくとも半数以上の意見を聞くとか、あるいはそれに対して半数以上の反対があった場合にはこの計画を実施できないとか、何かそういう旧慣使用権者の側に立った権利確保の規定がなければ、これはもう市町村議会の思うようになってしまいますし、財産区議会の議員の思うようになってしまうと思うのです。その点皆さんが行政的に指導するとおっしゃいましても、その点は何か歯どめをつくって、たとえば全員でもって——半数でもいいのですから、意見を聞いて、その半数以上の反対がある場合にはこれを実施しないとか、法的に規定しておかないと、それは全然空文になってしまいますよ。その点、林野庁どうですか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/22
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023・高須儼明
○高須説明員 ただいま「旧慣使用権者の意見をきく」ということに対して、半数とかあるいはすべてのと書いてはないわけでございますが、これについてどのように考えるかという御質問と承ったわけでございます。これに関しましては、法制局段階の審議の際におきまする了解といたしましては、旧慣使用権者の意見を聞くと同時に、旧慣使用権以外の権利の目的としていないことの確認を得るということで、自動的にすべての旧慣使用権者、かように理解いたしておるわけでございます。したがいまして、私どもの作成いたしましたお手元の資料の二二ページにおきましても、旧慣使用林野整備を行なう場合には、「入会権者の全員合意方式の場合に準じて、旧慣使用権者の意思を確実に把握するようにしなければならない。」かようにいたしておるわけでございます。確かに先生のおっしゃいましたように、「意見をきく」ということだけでございますと、その点がやや不明確に相なるかと思うわけでございますが、「旧慣使用権以外の権利の目的としていないことの確認」というところに非常に意味を置いておるわけでございます。したがいまして、この二つの行為をあわせて実質的な全員合意方式に準ずるような方法が具体的に行なわれますように実際には指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/23
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024・森義視
○森(義)委員 その点、自治省の参事官、いま調査課長から説明のあったように、まだ細密に打ち合わせがしてないということのようですが、全員の合意にひとしい形で意見を聞くというあれを考えたい、こういうことでございますが、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/24
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025・降矢敬義
○降矢説明員 いま調査課長から御説明がありましたように、われわれも議論したとき、意見を聞く限り、旧慣使用権者一人一人について、その当該権利以外の目的としていないことの確認をするのだということになっておりますので、いま調査課長が答弁したごとく了解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/25
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026・森義視
○森(義)委員 きょうは長官も大臣も出席しておりませんので、まだあと聞きたいことがあるわけですが、時間を十二時という予定にしておりますので、質問を保留いたしまして、次会に質問を続行したい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/26
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027・中川俊思
○中川委員長 次会は来たる三十一日開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105007X04119660527/27
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