1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十一年二月十八日(金曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君
理事 谷川 和穗君 理事 八木 徹雄君
理事 川崎 寛治君 理事 長谷川正三君
大石 八治君 熊谷 義雄君
坂田 道太君 櫻内 義雄君
床次 徳二君 中村庸一郎君
松田竹千代君 松山千惠子君
落合 寛茂君 高橋 重信君
横路 節雄君 鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
文部事務官
(大臣官房長) 安嶋 彌君
文部事務官
(大臣官房会計
課長) 岩間英太郎君
文部事務官
(大学学術局
長) 杉江 清君
文部事務官
(管理局長) 天城 勲君
文部事務官
(文化財保護委
員会事務局長) 村山 松雄君
委員外の出席者
専 門 員 田中 彰君
―――――――――――――
二月十七日
委員大石八治君辞任につき、その補欠として古
井喜實君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員古井喜實君辞任につき、その補欠として大
石八治君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
二月十六日
公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数
の標準等に関する法律の附則第五項及び第六項
撤廃に関する陳情書
(第八号)
渋川王子ケ嶽に国立青年の家設置に関する陳情
書(第九号)
私立学校教育研修センター補助金確保に関する
陳情書
(第一
〇号)
司書教諭及び学校司書の配置等に関する陳情書
(第一一号)
学校図書館育成に関する陳情書
(第一二号)
学校警備員の設置に関する陳情書外一件
(第一三号)
美術行政に関する陳情書
(第三一号)
義務教育諸学校施設等に対する財政措置等に関
する陳情書
(第四八号)
へき地教育振興のためへき地指定による暫定一
級地並びに属地の既得権確立に関する陳情書
(第四九号)
は本委員会に参考送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第二二号)
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四五号)
義務教育諸学校施設費国庫負担法の一部を改正
する法律案(内閣提出第四六号)
国立劇場法案(内閣提出第五七号)
文教行政の基本施策に関する件
文教行政の基本施策に関する件(早稲田大学に
関する問題)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/0
-
001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
文教行政の基本施策に関し、文部大臣より発言を求められておりますので、これを許します。中村文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/1
-
002・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 第五十一国会におきまして、文教各般の問題について御審議をいただくにあたりまして、文教行政に関する所信の一端をまず申し述べたいと存じます。
国家、民族の興隆のために教育が最も重要な要素でありますことは申すまでもございません。したがって、発展途上の国はもとより高度の発達を遂げた先進国におきましても非常な熱意を持って、教育の改善充実が行なわれておりますことは御承知のとおりであります。わが国においても、二十一世紀に連なる新しい世代が、日々成長しつつあることを考えますときに、広く未来を展望し、輝かしい理想を求めて、教育の振興につとめなければならないものと考えます。もっとも、文教の施策は、長期的な視野に立って着実に推進すべきものでありますから、ことさらに新しきを求めず年来の施策を地道に発展させつつ、国民の期待と要望にこたえたいと存じております。
第一に、教育の振興と普及の問題について触れてみたいと思います。
教育の問題は、学校教育と社会教育の問題に分かれますが、義務教育及び後期中等教育に関しましては、小・中学校の教育課程の充実改善に重点を置きますとともに、教育の格差是正に意を注いでまいりたいと思います。そのため、道徳教育、理科教育、産業教育の充実、体育の振興、学校給食の普及充実を行ない、知育徳育体育の調和をとりつつ、健全な青少年の育成を期してまいりますとともに、僻地教育の振興、特殊教育の振興、勤労青少年教育の充実等に努力してまいりたいと存じます。後期中等教育の拡充整備につきましては、すべての青少年に能力進路に応じた教育の機会を与え、また社会的要請にもこたえる目的のもとに、目下、中央教育審議会の審議検討を願っておりますが、その答申をまって具体化につとめたいと存じております。また幼児教育についても、家庭教育と並んでその充実発展につとめたいと考えております。
高等教育に関しましては、大学志願者が急増しているという客観的事実の中で、社会的需要の趨勢と大学教育の質の向上を念頭に置いて、地方大学の充実に力点を置きつつその質量両面にわたる充実をはかるべきものと考えます。なお、育英奨学の充実にも一そう意を用いる所存であります。また、私立学校が特に高等教育の領域において占めている重要性にもかんがみまして、私学振興方策を確立いたしますため臨時私立学校振興方策調査会において調査審議をわずらわしておりますことは、御承知のとおりであります。
社会教育については、青少年教育の充実、スポーツの普及、家庭教育、婦人教育の振興が重要なことと存じます。また青少年向け優良映画の製作の奨励普及や留守家庭の児童の健全化対策にも努力いたしたいと考えております。
なお教育問題全般を通じて、施設設備の充実、並びに教職員または指導者の資質の向上、数の充実及びその待遇の改善について特に留意するつもりであります。
第二に、学術の振興について申し述べたいと思います。
最近における科学技術の進歩は、まことに目ざましいものがあり、その成果いかんが国家社会の発展にきわめて大きな影響を持つことにかんがみまして、大学及び研究所の整備充実をはかりますとともに重要基礎研究の推進等学術の振興に格段の努力をいたしたいと考えております。
第三に、文化の振興と普及について申し述べます。
教育・学術と並んで文化の振興と普及をはかることは文教施策の要点であります。
文化行政は、歴史と伝統を尊重しつつ、その創造を援助し、さらにその普及をはかることが本来の仕事であると存じます。この面では、従前に引き続き、すぐれた文化財を保存、活用するとともに、文化の振興と普及をはかり、特にその国際的交流に努力し、国民の資質の向上につとめ、かつ、国際親善のために貢献したいと思います。文部省といたしましては文化局を設け、また特殊法人国立劇場を新設いたしますのも、このような趣旨に基づくものであります。
最後に申すまでもないことでありますが、文教施策の推進は、ひとり文教行政当局だけでよくなし得るものではなく、国民全体の理解と協力にまつところがきわめて大きいものと考えます。したがいまして皆さまの一そうの御協力をこの機会に切にお願いを申し上げる次第であります。
続いて昭和四十一年度文部省所管の予算案につきましてその概要を御説明申し上げます。
まず、文部省所管の一般会計予算額は、五千八十七億六千七百十八万八千円、国立学校特別会計の予算額は千九百五十三億六千四百三十八万九千円でありまして、その純計は、五千四百二十六億五千百七十八万六千円となっております。
この純計額を前年度当初予算と比較いたしますと、およそ六百二十六億円の増額となり、その増加率は一三パーセントになるわけでありますが、義務教育費国庫負担金の給与費を除いた一般会計予算額の増加率は一七・五パーセントとなっております。
以下、昭和四十一年度の予算案におきまして、特に重点として取り上げました施策について御説明申し上げたいと思います。
まず第一は、初等中等教育の改善充実であります。
初等中等教育の改善充実につきましては、かねてから努力を重ねてまいったところでありますが、来年度は特に恵まれない境遇にある児童生徒の教育対策に留意し、僻地教育及び特殊教育の振興、要保護・準要保護児童生徒の就学援助につとめましたほか、引き続き教科書の無償給与を推進し、学校給食の普及充実をはかり、また、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数を改善し、施設設備を整備する等の施策を進めることといたした次第であります。
そのうち、僻地教育の振興につきましては、まず、小規模学校の教員の充実とその待遇の改善を行ない、教員宿舎を整備する等僻地勤務教員の優遇措置について配慮いたしますとともに、僻地の教育環境の改善のため、引き続き、各種の施設、設備の充実をはかりましたほか、学校ぶろ、ジープの設置、薬剤師の派遣、高度僻地学校の児童生徒に対するパン、ミルク給食の全額補助等の新しい試みを加えて総合的、かつ重点的に施策を推進することといたしたわけであります。
次に、特殊教育につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の改善のため必要な経費を増額いたしますとともに、社会生活への適応性を一そう助長するため職業教育の充実をはかり、また、教育効果の向上に資するために新たに視聴覚教材の利用、研究指定校の設置等を行なうことといたしております。
次に、要保護・準要保護児童生徒の就学援助につきましては、学用品の単価の級地差の解消をはじめ、それぞれの品目について補助単価の改定を行なうことといたしております。
次に、父兄負担の軽減をはかる趣旨から、小規模小学校の教材の充実を含めて教材費の増額をはかりますとともに、国、公、私立学校を通じて、中学校及び特殊教育諸学校の中学部の第一学年までの児童、生徒に対して教科書の無償給与の措置を拡大することにいたした次第であります。
次に、学級編制及び教職員定数の充足につきましては、学級編制の基準を、原則として、小・中学校いずれも最高四十七人に改めるとともに、単級、四・五学年複式学級への教職員定数の増、特殊学級の増設、充て指導主事の充実等のための増員をはかり、また、給与の改善につきましては、多学年学級担当手当、旅費の増額等を行なうことにいたしました。
なお、教職員に関係のある事項といたしましては、その勤務の実態等に関する調査に必要な経費を計上いたしまして、四十一年度にその実態調査を行ないたいと思います。
次に、公立文教施設につきましては、引き続き既定計画の線に沿ってその整備を進めてまいりたいと考えまして、公立文教施設整備費二百五十億円を計上いたしておる次第であります。そのうち、木造建物を中心とする建築単価の引き上げ及び構造比率の改善は、地方団体の超過負担の解消という観点から特に配慮を加えた点でございます。また、屋内運動場につきましては基準の改定を行ないまして体育の円滑な実施に支障のないように配慮を進めてまいりたいと思います。
このほか、前年度に引き続き、教育課程の改善、道徳教育及び生徒指導の充実並びに教職員の研修及び研究活動の推進に必要な諸経費を計上いたしております。
また、幼児教育の重要性にかんがみまして、父兄の要望にこたえて、引き続き幼稚園の普及整備のために必要な助成を前進いたしますとともに、所要の教員を確保するため、公、私立大学及び短期大学の教員養成課程に対する設備の補助を行なうことといたしております。
第二は、大学教育の拡充であります。
国立学校特別会計予算につきましては、前年度の当初予算額と比較して二百七十八億円の増額を行ない、約千九百五十四億円を計上いたしました。その歳入予定額は、一般会計からの繰り入れ千六百十五億円、借り入れ金二十億円、付属病院収入二百二十億円、授業料及び検定料五十二億円、学校財産処分収入二十二億円、その他雑収入二十三億円であります。歳出予定額の内訳は、国立学校運営費千五百二十二億円、施設整備費四百二十億円などと相なっております。
国立大学の拡充整備につきましては、まず、大学入学志願者の急激な増加を予想いたしまして、大学及び短期大学の入学定員の増加をはかり、後述の小学校教員養成課程の増募三百八十人を別にしてなお四千五百九十二人の増募を行なうことにいたした次第であります。このため、大学について一大学の創設、公立一農科大学の国立移管を含む二学部の開設、四文理学部の改組、二十五学科の新設及び二十四学科の拡充を行ない、短期大学について六学科を新設することにいたしました。
また、教員養成学部の整備につきましては、教育職員養成審議会の建議に基づき、その教員組織の整備を行ないますとともに、養護教諭養成所及び養護学校教員養成課程、幼稚園教員養成課程等の新設、一部小学校教員養成課程の学生増募など当面必要な教員の養成に力を注ぐことにいたしております。
このほか、中堅技術者の育成のため十二の工業高等専門学校に学科を新設する予定であります。
次に、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等各大学共通の基準的経費につきましても、引き続きその増額をはかっておりますが、とりわけ設備の充実に留意し、指定図書購入費、理工系学部設備費、工学部第二部設備費等の新規の予算を計上いたしております。
また、新制大学における大学院修士課程の拡充、付属病院、付置研究所の整備につきましても特段の配慮をいたしております。
次に、施設の整備につきましては、財政投融資資金及び不用財産の処分収入を財源の一部に含めて予算額を大幅に増額いたし、一段とその整備の促進をはかることといたしておりますが、なお、施設整備の円滑な実施をはかるため、後年度分について百八十八億円の国庫債務負担行為を行なうことができるようにいたしております。
次に、育英奨学につきましては、大学院奨学生及び教育特別奨学生の増員を中心として引き続き事業の拡充につとめ、また、日本育英会につきましても奨学金の返還業務の促進等に要する経費を補助する等により、全体で約十六億円を増額いたしております。
第三は、私学振興の拡大であります。
私立学校の振興は、今後の文教政策の重要な課題であり、その基本的な助成方策につきましては、なお慎重に検討中でありますが、現下の状況等にかんがみまして、明年度の予算案におきましても特に重点として取り上げたことの一つであります。
まず、私立学校振興会に対する政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきましては、合わせて二百二億円といたしまして、大体前年度の二倍に拡大し、私学全般の施設の改善充実等に充てることといたした次第であります。また、私立大学等理科特別助成費及び私立大学研究設備助成費につきましても合わせて三十七億円を計上し、その他、私立学校教職員共済組合に対する補助金の増額、私立大学幼稚園教員養成課程に対する設備費の補助の新設等の施策を講じております。
第四は、学術研究及び科学技術教育の振興について申し上げます。
わが国の学問及び科学技術の水準を高め、ひいては国民生活の向上に寄与いたしますため、学術研究及び科学技術教育の振興につきましては、引き続き努力を続けておるところであります。
明年度の予算につきましては、まず、学術研究について、科学研究費の拡充を行ない、特にガン特別研究費を別項目として、その増額をはかっておりますほか、引き続き研究所の新設、整備を行ない、また、ロケット観測、南極地域観測及び巨大加速器の基礎研究等につきましても、それぞれ、目的に応じて必要な経費を計上いたしました。
なお、在外研究員の派遣のための経費は、一般会計から国立学校特別会計に組みかえて、増額計上いたしております。
次に、初等中等教育の分野におきましては、理科教育設備及び産業教育の施設設備の充実につきまして、あらためて、新基準による計画的な改善充実を行なうことといたしましたほか、引き続き自営者養成のための農業高等学校の整備をはかり、また、新たに高等学校の衛生看護科教育に対し設備費の補助を行なうことといたしております。
第五は、青少年の健全育成であります。
青少年の教育問題は、近時ますますその重要性を加えており、これに対処するためには、学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。
まず、家庭教育、婦人教育につきましては、引き続き家庭教育学級、婦人学級等の充実発展をはかってまいりますとともに、家庭的環境に恵まれない留守家庭の児童に対する対策として、新たに、留守家庭児童会の育成事業のための補助を行なうことにいたしたわけであります。
また、勤労青少年の教育のため、学校教育の面におきましては引き続き新基準により定時制高等学校の設備の充実につとめますとともに、通信教育用学習書の給与につきましてその対象となる生徒の範囲を拡大し、また、夜間定時制高等学校につきまして、夜食費補助及び運動場照明施設整備費補助等を増額計上いたしております。
次に、社会教育の面におきましては、勤労青少年に宿泊による研修、訓練の場を与えるために、国立第五青年の家を新設いたしますとともに、公立青年の家につきましても、弾力的にその整備を進めることといたしております。さらに、青年学級及び勤労青年学校の内容の充実、新就職者の研修の実施のほか、新たに青年教室の委嘱も行なうことといたしました。また、青少年の団体活動を一そう促進するため、青少年団体等の育成もはかりたいと考えております。
このほか、青少年に対する映画の影響力にかんがみ、積極的に優良映画の普及をはかるとともにその製作の奨励を促進する措置を講ずることといたしました。
また、社会教育の施設につきまして、公民館、図書館、博物館等の施設、設備の整備を一そう推進いたしますとともに、引き続き適切な指導者の養成に意を用いてまいりたいと思います。
次に、スポーツの普及につきましては、広く青少年一般にスポーツを普及奨励し、その体力の向上をはかってまいりますために、水泳プール、体育館、運動場及び公立高等学校の柔剣道場等の整備を促進し、また、スポーツテストの普及、スポーツ教室等の実施、スポーツ団体・行事の助成、指導者養成等について、引き続き必要な経費を計上いたしております。
このほか、国立登山センターおよびオリンピック記念青少年センターについて建物の整備を行ない、明年行なわれる予定のユニバーシアード東京大会についてその準備を進め、さらに、都市の勤労青少年のスポーツ施設の不足を補なうために学校体育施設の開放を行なうなど、それぞれ、必要な予算を新たに計上いたしております。
次に、学校給食の普及充実につきましては、完全給食の実施を目途として、引き続き単独校及び共同調理場の給食施設、設備の充実をはかり、また、栄養職員の設置を共同調理場のみならず単独校にも広げる等の施策を行なっております。また、小麦粉につきましては、従来のとおり補助を継続することにいたしますとともに、ミルク給食につきましても、国内産牛乳の使用をさらに増加することとして、所要の補助金を計上いたしております。
なお、前述いたしました高度避地学校児童生徒のパン・ミルク給食費補助のほか、高度の避地及び産炭地の財政力の弱い市町村に対しましては、引き続き予算措置について特別の配慮を加えることといたしております。
第六は、芸術文化の振興であります。すぐれた芸術を広く国民に普及し、また、わが国の伝統的な文化財を保存いたしますことは、国民生活の向上の上からもきわめて必要なことであります。
まず、国立近代美術館につきましては、その移転整備を行なうために必要な予算を計上いたしました。芸術団体に対する助成のほか、歌舞伎、文楽等のすぐれたわが国の伝統芸術の保存とその振興をはかるため国立劇場の設立を行ない、さらに国立博物館の整備を進めることといたしております。
次に、文化財保存事業につきましては、文化財の修理、防災施設の整備等を一そう充実いたしますとともに、最近国土開発の急速な進展に伴ってその必要性を痛感されております史跡、埋蔵文化財の保護につきましては、特段の配慮を加えており、また、平城宮趾の買い上げ及び発堀調査、無形文化財の保存活用等につきましても、引き続き必要な予算を計上いたしました。
第七は、教育、学術、文化の国際交流の推進であります。
まず、外国人留学生教育につきましては、国費外国人留学生の人員を増加いたしますとともに、その受け入れ体制の強化を図り、また、国際学術文化の交流を促進するため、引き続き教授、研究者の交流を推進いたしますとともに、教育、学術、文化、スポーツ等の各種の国際会議への積極的な参加を行なうことといたしました。なお、最近、特にアジア、アフリカ諸国に対する教育協力の要請が高まってまいりましたおりから、新たに教育指導者の招致、教育指導者研修コースの開設、理科設備の供与及び指導者の派遣等を行なうため新しい試みとしての経費を計上いたしております。
さらに、ユネスコ国際協力につきましては、発足二十周年を迎えて、国際理解促進のための特別事業の実施、国際大学院コースの継続等一段とその事業の推進をはかることといたしました。
以上のほか、文部省の機構につきましては、調査局を廃止し、新たに文化行政の一体的推進のため文化局を設置することといたしました。
その他、沖縄の教育に対する協力援助費につきましては、これを画期的に拡充し、別途総理府所管として計上いたしております。
以上、文部省所管予算案につきましてその概要をご説明申し上げた次第でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/2
-
003・八田貞義
○八田委員長 内閣提出の国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案、国立学校設置法の一部を改正する法律案、義務教育諸学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案及び国立劇場法案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/3
-
004・八田貞義
○八田委員長 順次提案理由の説明を聴取することといたします。中村文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/4
-
005・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 それでは順次説明させていただきます。
このたび政府から提出いたしました国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/5
-
006・八田貞義
○八田委員長 順次提案理由の説明を聴取することといたします。中村文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/6
-
007・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 それでは順次説明させていただきます。
このたび政府から提出いたしました国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/7
-
008・八田貞義
○八田委員長 順次提案理由の説明を聴取することといたします。中村文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/8
-
009・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 それでは順次説明させていただきます。
このたび政府から提出いたしました国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
この法案は、昭和四十一年度における国立養護教諭養成所の増設について定めようとするものであります。
かねてから、文部省におきましては、公立の小学校及び中学校の養護教諭の確保をはかるため鋭意努力をいたしております。すなわち、大学、短期大学及び文部大臣の指定する養護教諭養成機関の卒業者の採用等により逐次その充実をはかっておりますほか、昭和四十年度は国立養護教諭養成所を二カ所創設し、また、公立学校に養護職員として勤務する者に対して昭和四十年度から資格付与講習会を開催して正規の資格を付与し、これを採用する道を開く等、各般の措置を講じております。
さらに養護教諭の供給を確保するため、昨年度に引き続き、昭和四十一年度において、弘前大学、大阪学芸大学及び熊本大学に養護教諭養成所の増設をはかることといたした次第であります。
この法律は、昭和四十一年四月一日から施行することといたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容でございます。
次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして申し上げたいと思います。
このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、昭和四十一年度における国立大学、国立大学の学部、大学院及び付置研究所の新設、国立の学芸大学及び学芸学部をそれぞれ教育大学及び教育学部に名称を改めること並びに短期大学の廃止等について規定しているものであります。
まず第一は、北見工業大学の新設につきまして御説明いたします。
現在、北海道には中堅技術者の養成機関として四つの工業高専が設置されておりますが、四年制の工業関係大学は国立二大学すなわち北海道大学、室蘭工業大学のみであります。近年北海道総合開発の進展に伴いまして高度の工業技術者の必要が高まり、その養成が望まれております。このような事情から、まだ四年制大学のない道東地区に、地元の強い要望もありますので、北見工業短期大学を昇格させて、新たに四年制工業大学を創設するものであります。
第二は、国立大学の学部の新設についてであります。
信州大学に、文理学部を改組して人文学部及び理学部を、佐賀大学に、文理学部を改組して経済学部及び理工学部をそれぞれ設置するものであります。これは大学入学志願者の急増に対処する国立大学の拡充計画の一環をなすものでありますとともに、昨年から始まった文理学部を改組し、その教育研究体制を整備充実する措置の一環であります。
第三は、国立大学の大学院の新設についてであります。
これまで大学院を置いていなかった国立大学のうち、充実した学部を持つ七大学に修士課程を設置し、もってその大学の学術水準を高めますとともに、研究能力の高い職業人の養成に資するものであります。すなわち、新たに大学院を置きます大学は、宇都宮大学、東京外国語大学、東京学芸大学、岐阜大学、三重大学、和歌山大学及び山口大学であります。
第四は、国立大学の付置研究所の新設及び名称変更についてであります。
最近ますます発展しております経済学について、数理経済学的方法により研究を推進するために、社会経済研究所を大阪大学に設置いたしますとともに、東京医科歯科大学に附置されております歯科材料研究所の名称を医用器材研究所と改め、これに伴いその研究目的を医用器材全般に拡大するものであります。
第五は、北海道、愛知、京都、奈良、福岡の五学芸大学をそれぞれ教育大学に、北海道学芸大学の学芸学部ほか二十二国立大学の学芸学部をそれぞれ教育学部に改めるものであります。
国立大学の学芸学部は、現在教員養成を行なっておりますが、中央教育審議会の答申等において、これらの学部の目的、性格を明らかにし、一そうの整備充実をはかること、名称も教育大学、教育学部と改めることが要望されております。この趣旨に沿いまして、大学の意向をも尊重して、上記の大学、学部の名称を変更するものであります。今後教員養成を目的とする大学、学部の教官組織、施設設備等の整備に十分努力してまいりたいと考えております。
第六は、国立の工業短期大学の廃止についてであります。
昭和三十七年に設置いたしました長岡、宇部及び昭和三十九年に設置いたしました久留米の各国立工業高等専門学校の新設に伴いまして、経過的に存置してきた長岡、宇部及び久留米の国立短期大学並びに昭和三十九年に室蘭工業大学工学部第二部の設置に伴い経過的に存置してきた室蘭工業大学短期大学部を廃止するものであります。
以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要でございます。
次に、今回、政府から提出いたしました義務教育諸学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
現行の義務教育諸学校施設費国庫負担法は、昭和三十三年に制定され、公立の義務教育諸学校の施設の整備に要する経費について国がその一部を負担する制度を確立したのであります。
以来、政府は、この制度のもとに、公立文教施設整備の長期計画を立て、鋭意学校施設の整備につとめてまいったのであります。特に昭和三十九年に、本法の一部が改正され、小学校及び中学校の建物に関し、国の負担の範囲を広げ、また校舎の工事費の算定方法を改めたことに伴い、その整備は一段と進展を見ることになったのであります。今回は、さらに小学校及び中学校の屋内運動場の工事費の算定方法に関する現行制度を改善し、これによりその整備を一そう促進し、かつ、学校体育の進展に寄与するために、この法律案を提出した次第でございます。
この法律案の内容は、小学校及び中学校の屋内運動場の新、増築または改築に要する経費にかかる国庫負担金について、現行は、児童・生徒一人当たりの面積を基準として算定することにいたしておるのに対し、これを学級数に応ずる所要面積をもって算定することに改めようとするものであります。
なお、この法律の施行期日は、本年四月一日からとし、昭和四十年度以前の予算にかかる国庫負担金につきましては、従前の例によることといたしました。
以上が、この法律案を提出いたしました理由及び内容の概要でございます。
次に、このたび提出をいたしました国立劇場法案につきまして、提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
わが国古来の伝統的芸能は、歴史的にも、芸術的にもまことにすぐれた価値を有するもので、世界の芸能史上において独自の位置を占める貴重な文化遺産の一つに数えられるべきものであります。
しかしながら、これら伝統芸能の保存のための諸条件は、近時急速に悪化してきており、この貴重な文化遺産が内容的にも次第に正しい姿を失いつつあることは、きわめて憂慮すべき事態であります。
したがいまして、現段階において抜本的措置を講じ、その保存と振興をはかりますことは、文化国家としての重要な責務であると考えます。
国立劇場は、右の趣旨から、この伝統的芸能を公開して、一般国民の鑑賞に供するとともに、伝承者の養成、調査研究等を総合的に実施する中心機関として設置するものでありまして、広く各界の協力を受けて具体的構想を練り、一昨年八月東京都千代田区隼町において起工いたしましてから、現在まで順調に工事も進捗いたし、本年九月末完成を目途に鋭意建設を進めております。
国立劇場の運営につきましては、その業務の特殊性にかんがみまして、特殊法人国立劇場を設立し、これに国が建設した施設及び土地を出資いたしますとともに、運営費につきましても一部国庫補助を行ない、もって、円滑適切な運営を期したいと思うのであります。
この法律案は、特殊法人国立劇場設立の目的を定めますとともに、その資本金、組織、業務、財務、会計、監督等に関し、所要の規定を設けたものであります。
すなわち、第一に、国立劇場は法人といたしますとともに、この法人の資本金は、政府が施設完成後すみやかに出資した財産の価格の合計額に相当する金額といたしております。
なお政府は必要があると認めますときは、この法人に追加して出資することができることといたしております。
第二は、この法人の業務についてでありますが、第一は、劇場施設を設置し、法人みずから伝統芸能の公開を行なうことであります。第二は、その設置する施設において伝統芸能の伝承者を養成することであります。第三は、伝統芸能に関して調査研究を行ない、並びにその資料を収集し、及び利用に供することであります。第四は、劇場施設を伝統芸能の保存または振興を目的とする事業の利用に供することであります。
なお、この法人は、これらの業務を行なうほか、この法人の目的達成に支障のない限り、劇場施設を一般の利用に供することができることといたしております。
第三は、この法人の役員としては、会長一人、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くこととし、これらの役員は文部大臣が任命することといたしております。
次に、この法人には、その運営の円滑を期するため、会長の諮問機関として、評議員会を置くこととし、また、専門の事項について調査審議をさせるため、専門委員を置くことができることといたしました。
第四に、この法人は、文部大臣の監督を受けるのでありますが、この法律案に規定する文部大臣の権限のうち政令で定めるものは、文化財保護法の趣旨にのっとり、文化財保護委員会に行なわせるものといたした次第であります。
第五に、この法人の設立のための所定の準備手続について規定いたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要でございます。
何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/9
-
010・八田貞義
○八田委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
次に、国立劇場法案について提案理由の補足説明を聴取いたします。村山文化財保護委員会事務局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/10
-
011・村山松雄
○村山政府委員 ただいま文部大臣から国立劇場法案提案理由の御説明がございましたので、若干補足して、御説明申し上げます。
わが国には古来からすぐれた無形文化財が伝承されておりますが、その保存の重要性にかんがみ、昭和二十五年からこれらが文化財保護の対象とされることになりまして、昭和二十九年度には、重要無形文化財の指定制度が設けられ、伝統的な演劇、音楽、工芸技術等の歴史上または芸術上価値の高い無形文化財を指定し、その伝承者の養成とわざの公開等の保存措置を講じてまいりました。
特に、雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、邦楽、邦舞及び民俗芸能等の伝統芸能につきましては、文部大臣の提案理由にありましたように、社会的経済的諸事情の変遷により、これらが一般に興行的に成り立ちがたくなっていること等から、内容的にも次第に正しい姿を失いつつあるとともに、伝承者の不足と技術水準の低下も免れがたい状況に立ち至りつつあったのであります。そこでその公開をはじめとして、伝承者の養成、調査研究、記録の作成、資料の収集保存展示等の事業を総合的に実施する施設としての国立劇場の設置につきまして、関係各界から強く要望が出てまいりました。
申すまでもなく諸外国においても多くの国立劇場が設置され、国が相当の援助を行なって、当該芸能の保護に非常な努力を払っているのでありまして、政府といたしましても、右の要望の趣旨にのっとり、国立劇場を設立し、わが国伝統芸能の保護、助成に努力をいたすこととなりました。昭和三十一年四月に国立劇場設立準備協議会が閣議決定により設けられ、以後広く各界の意見を徴しながら、国立劇場の施設の規模、敷地の選定等について、審議検討してまいりました。昭和三十二年六月には、国立劇場設立促進国会議員連盟が結成され、国立劇場の設立について促進に当たられ、また、同年七月十日衆議院文教委員会において、国立劇場の早期実現について決議されました。次いで、三十三年十一月には、現在の東京都千代田区隼町に敷地が決定いたしまして、以来、幾多の曲折を経ながら建設規模等実施要綱の概要を決定し、建築設計案の公募等を行ない、三十九年八月に、現在工事中の施設を着工いたしてまいったものであります。
なお、この施設は本年九月末竣工、十一月開場を目途に準備を進めておりますが、この施設を適切かつ円滑に運営させるため、特殊法人国立劇場を設立することといたしまして、この法律案を提出いたした次第でございます。
建物の概要につきましては、敷地面積が九千八十九坪、建物延べ面積が約八千坪で、地上三階、地下二階となっておりまして、公開施設として、大劇場千七百四十六席、小劇場六百三十席が設けられ、伝承者養成施設のほか、伝統芸能に関する調査研究を行なうとともに、資料の収集、保存及び展示等を行なう諸施設がございます。なお、劇場施設は伝統芸能の上演、観賞等にもできるだけふさわしいものとするよう専門家の意見を徴し、種々の改良を加えております。建設工事費は設備費を含めて総額約三十七億円でございます。
国立劇場におきましては、伝統芸能の正しい姿での保存に資するため、伝統芸能を十分な調査研究に基づいて自主的に企画制作し、公演することを大きな特色としておりまして、この自主公演の範囲といたしまして、歌舞伎、文楽、邦楽、邦舞、雅楽及び民俗芸能等を計画し、さしあたり、初年度は大劇場百二十三日、小劇場七十五日を公演日数に当て、残余は一般に貸与する予定であります。
また、公演事業のほか、伝承者の養成、調査研究等をも行ない、これについては今後漸次拡充いたしまして、もって、伝統芸能の公演の事業と相並んでわが国の伝統芸能の保存と振興をはかり、文化の向上に資したいと考えている次第でございます。
なお、特殊法人国立劇場の初年度事業費は約四億二千万円、これに対し約一億一千万円の国庫補助を予算案に計上いたしておる次第でございます。
以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/11
-
012・八田貞義
○八田委員長 以上で補足説明は終わりました。
各案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/12
-
013・八田貞義
○八田委員長 次に、先ほどの大臣の発言に関連いたしまして、昭和四十一年度文部省関係予算の詳細につき、会計課長より説明を聴取いたします。岩間会計課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/13
-
014・岩間英太郎
○岩間政府委員 お手元にお配りしてございます事項別表に従いまして、大臣の説明を補助して御説明申し上げます。
まず、初等、中等教育の改善、充実でございますが、その第一は、僻地教育の振興でございます。大臣から御説明いたしましたように、比較的きめのこまかい改善をはかっております。すなわち、多学年学級担当手当の大幅な増額、単級・四・五学年複式学級の教員定数の増員を行なっておりますほか、設備につきましては、新たにジープ五台を加えまして、スクールバス、ボート四台、シート式磁気録音機二百六十六台の増加をはかっております。
また、寄宿舎居住費につきましては、冬季等季節的に開かれる寄宿舎を対象に加え、教員宿舎の建築につきましては百戸を増加し、また、僻地の健康管理のため、新たに百校分の学校ふろを設置するとともに、二千校に薬剤師を派遣することにいたしております。さらに、三級地以上の高度の僻地に所在する学校の十四万人の児童生徒に対しまして、パン・ミルクの給食を全員に供与するため、国が市町村にパン及びミルクの給食費の全額補助を行なうことにいたしました。このような全額補助の制度は、文部省としては、初めてのことでございます。その他、高校寄宿舎の建築、僻地集合室等の新、増築につきましても補助金の増額をはかっております。
次は、特殊教育の振興でございます。まず、既定計画に従いまして、養護学校十六校及び特殊学級一千学級の増設をはかっておりますほか、新たに重複障害児のための設備を補助することとし、また、特殊教育諸学校を卒業した者ができる限り順調に社会生活にとけ込むことができますように、職業教育の設備に対する補助を大幅に増額いたしました。さらに、就学奨励費につきましては、その内容の充実をはかるとともに、新たに高等部専攻科の寄宿舎居住費をその対象に加えております。その他、新しい試みといたしましては、視聴覚教材の製作、研究指定校の設置等を行なうことといたしております。
次は、就学援助の強化であります。まず、要保護、準要保護児童生徒の就学援助につきましては、その対象はそれぞれ全児童生徒の三%及び七%と変わりませんが、児童生徒数の減少等により若干金額の下回っているものもございます。しかし、内容につきましては、学用品費の級地差撤廃、修学旅行費の単価増などの改善が行なわれております。また、夜間の定時制高校の就学援助につきましては、引き続き給食施設の整備と夜食費の単価の引き上げを行なっております。
次は、父兄負担の軽減の関係でございます。まず、教材費につきましては、一〇%の単価の引き上げを行ないましたほか、小学校の小規模学校について単価の補正増をいたしております。また、高等学校の視聴覚教材の整備につきましては、一千万円を増額いたしております。
次に、教科書無償につきましては、約三十一億円増の九十一億円を計上いたしておりますが、これは、昭和四十一年度の小学校一年から六年までの児童の後期用及び転学用の教科書と昭和四十二年度の小学校一年から中学校一年までの児童生徒の前期用教科書の清算分を除いた購入費並びに教科書購入価格の昭和四十一年度分からの引き上げに必要な経費などであります。
次の教職員の研修の充実につきましては、特に御説明することはありません。
次は、学級規模の適正化と教職員の充足の推進でございます。来年度は、約五十七万人の児童生徒数の減少が見込まれておりますので、学級編制の基準を最高四十七人に引き下げる等標準法の実施のための増員を見込みましてもなおかつ三千五百五十一人の減が見込まれるのでありますが、反面、特殊学級一千学級の増設に伴う千三百二十六人の教員増、養護教諭及び事務職員千三百八十九人の増、充て指導主事二百人の増、単級・四・五学年複式学級の定員増その他の六百十六人の増員を差し引いて計算いたしますと、全体で二十人の減となるわけであります。また、給与の改善につきましては、給与改訂、昇給のほか、旅費の単価を一般県千円、政令県二百円引き上げますとともに、多学年学級担当手当を五〇%引き上げております。
次の教育課程及び教科書の改善につきましては、教育課程研究指定校、教科書内容の研究推進校の指定、教師用指導書の内容改善等について予算の増額を行ないました。また、道徳教育及び生徒指導の推進につきましては、おおむね前年度の方針に基づいて予算を計上いたしておりますが、生徒指導につきましては、府県の講習会の開催に必要な経費を新たに計上いたしました。
次は、幼稚園教育の推進でありますが、引き続き計画的に幼稚園の新増設をはかるため、百二十園の新設と七十六学級の学級増に必要な施設設備費の補助を行なうことといたしましたほか、公、私立の幼稚園教員養成課程の設備費に対する補助を行ない、あわせて教員養成の充実をはかることといたしました。
次は、公立文教施設の整備でございます。来年度は、第二次五カ年計画の第三年次目に当たるわけでございますので、基本的には既定計画に従って整備が進められるわけでありますが、改善を加えましたおもな点を申し上げますと、まず、事業量について平均一〇%の改善を行ない、また、建築単価について鉄筋四・一%、鉄骨四・五%、木造一〇%の引き上げを行ない、構造比率についても平均五%の改善を行なって、地方団体の超過負担の解消に資することといたしております。なお、屋内運動場につきましては、従来の児童生徒数単位から学級数単位に基準を改め、平均四〇%程度の事業量の拡大をはかることといたしております。
次の教育研究団体の助成等はほぼ前年どおりでありますが、その次の教職員の勤務に関する実態調査及び公立学校の勤務時間外における管理状況等の実態調査は、従来から懸案のものを実施するものであります。
第二は、国立学校の拡充整備であります。まず、国立学校につきましては、特別会計制度が設けられておりますが、その歳入予算の内訳はただいま大臣からお話のあったとおりでございまして、付属病院収入の伸びを実態に合わせて縮小したこと、入学検定料を引き上げたこと、授業料は据え置きとしたことなどが目立った点でございます。
次に、歳出につきましては、学生当たり積算校費について大学院二〇%、その他一〇%の増額を行ない、教官当たり積算校費につきましては一〇%の増額をはかっております。
次に、学生入学定員の増加は、大学で四千二百七十二人、短大で三百二十人、合計四千五百九十二人でありますが、このほか、養護教諭養成所の新設により百二十人、社会増の多い地域の大学の小学校教員養成課程の増員が三百八十人でございます。具体的な内容といたしましては、北見工業大学の創設、神戸農科大学の移管による農学部の設置、長崎大学工学部の新設、信州、島根、山口、佐賀の各大学の文理学部の改組及び二十五学科の新設、二十四学科の拡充改組、千百八十七人の学生増募、夜間の六短大の学科新設等があります。
次に、大学院につきましては、引き続き理学、工学、農学の分野につきまして修士課程を設けますとともに、新たに経済学、外国語学、教員養成等の分野で充実された学部を選んで修士課程を設けております。
次に、大学付属病院につきましては、引き続き十四診療科の新設、五百五十二ベッドの増設のほか、診療要員の不足を補うため五十二人の助手の充実をはかっております。また、付置研究所につきましては、医科歯科大学に医用器機研究所を、大阪大学に社会経済研究所を新設いたしましたほか、宇宙科学、原子力、防災科学、海洋研究等の推進のため研究所の整備充実をはかっております。なお、この中には、科学衛星の試作のための経費を含めてロケット観測経費について二十七億円、海洋研究のための研究船建造費の二年次分として約六億五千万円、高エネルギー原子核研究のための巨大加速器の基礎研究費三億円が含まれることになっております。その他、中堅技術者の養成のため、三十七年度設置された工業高等専門学校につきましては、十二学科を増設いたしております。
次に、国立学校の施設整備につきましては、不動産購入費二十七億円を含めて約四百二十億円が計上され、本年度より約五十五億円の増額となっております。これは、国立学校の全体の予算の二〇%以上に当たり、数年前と比較いたしますと十倍以上の伸びを示しております。また、このほか、国庫債務負担行為限度額が二百二十二億円認められており、そのうち四十二年度分は百八十八億円であります。
次は、公立大学及び短期大学の助成でありますが、引き続き理科設備の助成を一千万円増額いたしましたほか、新たに公立大学の研究設備に対しましても三千万円の補助を行なうことといたしました。
次は、育英奨学事業の拡充でございます。育英会への貸し付け金は、約九十六億五千万円でありますが、このほか、返還金からの充当が三十三億七千万円ほど見込まれますので、事業量の総額は約百三十五億円となるわけでございます。その内容について備考に内訳がございますが、特に重点を置きました点は、一般貸与につきましては大学院修士課程の奨学生の増員、特別貸与につきましては一般の特別奨学生のほか、特に教育特別奨学生の採用を大幅に引き上げたことであります。なお、日本育英会及び学徒援護会に対しましては、引き続き給与改訂、事務能率の向上等をはかるため補助金を増額いたしております。
また、能力開発研究所に対しましては、前年同額の調査研究費と新たに建物の建設のための経費を補助することにいたしております。
次は、私学振興の拡大であります。
まず、私立学校振興会に対する政府出資金は二億円増の十二億円でありますが、このほか、財政投融資資金からの融資が九十億円増の百九十億円、自己調達資金が四十億円見込まれており、貸し付け資金の総額は、二百四十二億円となっております。これによって明年度予定されております約二万六千三百人の学生の増募に伴う施設の拡充及び既設大学等の施設整備などにも遺憾なきを期しております。
次に、私立大学等理科特別助成及び私立大学研究設備助成につきましては、合計約六億円を増額し、理科設備及び研究設備の充実をはかることといたしました。
次の私立学校教職員共済組合補助につきましては、長期給付に要する費用について従来は百分の十五に相当する額を補助いたしておりましたものを百分の十六に引き上げております。
次に、本年度建物の補助をしております私立学校教育研修センターに対しましては、新たに研究事業及び理科設備に対する補助を行なうことにいたしました。
また、幼稚園教員の確保とその質的向上をはかるため、新たに私立の大学及び短期大学の幼稚園教員養成課程の設備の充実に必要な補助金を計上いたしました。
なお、臨時私立学校振興方策調査会につきましても、引き続きその運営に必要な経費を計上いたしております。
次は、学術研究及び科学技術教育の振興であります。
まず、日本学術振興会に対する管理費及び日米科学協力研究事業費の補助につきましては、事業の円滑な実施に資するための管理費の補助を増額いたしましたほかは前年どおりであります。
次に、科学研究費の拡充につきましては、ガン特別研究費を別に項目を立てて二二%増額いたしましたほか、科学研究費及び科学試験研究費を一〇%、研究成果刊行費を一九%増額いたしております。
次は、重要基礎研究の推進でありますが、先ほど御説明いたしました大学付置研究所の新設及び整備のほかに、国立教育研究所について新たに二室の拡充を行ない、また、建物を増築することにいたしております。また、ロケット観測及び巨大加速器の基礎研究につきましては先ほど御説明いたしたとおりでございますが、南極地域観測事業につきましては、第八次南極地域観測のための諸経費約六億円を計上いたしております。
なお、在外研究員派遣のための経費は、二十人分を増額して国立学校特別会計へ組みかえております。
次は、理科教育、産業教育の充実であります。
まず、理科教育設備費の補助につきましては、あらためて理科教育審議会の答申を得て設備基準を改訂し、年次計画により整備するため初年度分として約十一億五千万円を計上いたしました。
次に、産業教育関係の施設設備の負担金及び補助金は、金額的には前年度と大差はございませんが、内容的には、かなりの変更がございます。すなわち、中堅技術者の増員計画及び農業近代化の促進計画がいずれも終了いたしました関係で、新設学科施設設備費及び高等学校農業近代化促進費補助金が大幅に減少し、その反面、新しい基準に基づいて施設設備を計画的に充実するため、一般設備費について五億円増の二十三億円を計上し、また、一般施設について約十億円増の十五億円を計上いたしております。さらに、農業自営者の養成につきましては、府県の希望等を勘案して、従来のA類型を七校から四校にいたしますとともに、新たにB類型三校を補助対象に加えました。なお、中学校の技術・家庭科の設備に対する補助を年次計画により引き続き増額計上いたしております。また、家庭科の設備につきましては、五百万円を増額して別途計上いたしました。
次は、青少年の健全育成であります。
まず、家庭教育の振興につきましては、新たにいわゆるかぎっ子対策の一環として三百カ所の留守家庭児童会を設けることとし、これに対する補助金を計上いたしました。また、家庭教育学級につきましては、学級数を一万学級に増加いたしております。さらに、婦人教育の振興につきましては、婦人学級委嘱の単価を引き上げる等引き続き内容の改善につとめております。
次は、勤労青少年教育の推進充実でございますが、まず、定時制通信教育の振興につきましては、新しい基準により二千万円を増額して定時制高校の設備の充実を行ない、また、夜間定時制高校の運動場照明施設の補助対象を七十五校から八十四校に引き上げ、給食施設を引き続き整備し、夜食費の単価を引き上げておりますほか、通信教育の振興のため、教科書、学習書の給与の範囲を三年次二十八単位以上の修得者から、二年次十八単位以上の修得者にも拡大いたしました。
次に、社会教育関係につきましては、まず、青年の家について、第五青年の家を広島県江田島に新設するとともに、公立青年の家については、新たに中型青年の家二カ所のほか、都市の勤労青少年のための青年教育センターを含め、十三カ所の青年の家の整備を行なうことといたしました。また、引き続き青年学級、勤労青年学校の運営、新就職者研修等について補助いたしますとともに、新たに小規模の学習グループを育成するため青年教室の委嘱を行なうことといたしました。さらに、青少年団体の育成につきましては、特に子供会等の少年団体の育成に力を入れております。
次に、青少年向け優良映画等の制作奨励及び普及につきましては、従来の教育映画、録音教材の配付、早朝興業の実施のほか、新たにすぐれた教育映画の一般映画館上映に必要な経費を計上し、また、優良映画の製作を奨励するため、最高一千万円の奨励金を交付することにいたしました。
次に、社会教育施設の整備につきましては、引き続き公民館、図書館、博物館、児童文化施設、同和地区集会所等の整備をはかっております。また、社会教育指導者の養成、社会教育団体の補助につきましても、引き続き必要な経費を計上いたしました。
次は、スポーツの振興でございます。まず、スポーツ施設の整備につきましては、水泳プールの設置に対する補助を四百七十カ所から五百四十二カ所に拡充いたしましたほか、体育館、運動場、高等学校の柔剣道場等の整備を進めることにしております。
このほか、国立競技場の整備、国立登山センターの建物の新営、冬期オリンピック施設の調査費等についても必要な予算を計上いたしました。
また、青少年を中心として広く国民の体力の向上をはかるため、スポーツテストを普及奨励いたします。ほか、新たにモデルとなる学校の体育施設の開放を助成して、都市の勤労青少年の体力の向上に資することといたしました。
次に、青少年の組織的なスポーツ活動を普及奨励するため、まず、国民体育大会に対する補助を一千万円増額いたしましたほか、新たに教員養成大学の学生スポーツ大会に補助を行ない、全国青年大会の経費等を増額いたしております。また、国際スポーツ交歓等につきましては、日本とドイツ等の青少年の交歓に対する補助のほか、新たにアジア競技大会派遣費補助、ユニバーシアード東京大会のための補助及び体育指導者の海外派遣に必要な補助金を計上いたしました。スポーツ団体の助成につきましては、引き続き日本体育協会、日本武道館等に対する助成を行なうことにいたしております。その他指導者の養成及びスポーツ教室等についても引き続き所要の措置を進めることとしております。なお、オリンピック記念青少年総合センターについては、青少年会館の新営費及び運営費等の補助のために必要な予算を計上いたしております。
次に、青少年の安全保健につきましては、安全会の掛け金を三十六円から五十八円に引き上げるために必要な経費を含めて日本学校安全会に対する補助金を増額し、また、引き続き教員の健康診断、学校環境衛生設備の整備に対する補助を継続いたしております。
次は、学校給食の普及充実でございます。
まず、準要保護児童生徒に対する給食費の補助につきましては、単価の引き上げのほか、引き続き僻地及び産炭地市町村に対する財政上の特別措置を行なっております。次に、給食施設設備につきましては、まず、従来とかく議論のありました施設の単価を大幅に改善し、また、共同調理場を百七十カ所増設することにいたしましたほか、生乳殺菌設備の充実をはかり、僻地貧困市町村に対しても財政上の特別措置を続けております。
次に、学校栄養職員の設置のための補助につきましては、新たに単独校にも栄養士を設置することとし、共同調理場分と合わせて三百二十人を増員することといたしました。その他、脱脂粉乳につきましても引き続き百グラム四円六十銭の補助を行ない、また、小麦粉の一円補助も継続することにいたしております。なお、生乳の使用につきましては、これを七十万石から百万石に増加することとして必要な経費を農林省予算に計上しております。
次の同和教育の振興につきましては、かねて要望されておりました高等学校への就学を奨励いたしますための月額千五百円の二分の一の補助を開始いたしましたほか、集会所の設置や事業費の補助も増額いたしました。
次は、芸術文化の振興でございます。
まず、近代美術館の移転につきましては、本年度は調査費が認められておりますので、引き続き来年度は新築移転のための設計委託費等について三千万円を計上しております。また、芸術団体の助成は、日本近代文学館に対する建築費の補助一億円が減少いたしておりますので、全体の金額は減っておりますが、実質的には二千五百万円の増額となっております。次に、国立劇場の設立につきましては、本年度工事の大部分を完成いたしましたので、十一月の開場を目ざして建設工事の仕上げ及び内部設備のための経費を計上いたしますとともに、本年四月発足予定の特殊法人国立劇場に対しましても、その運営費を補助することにいたしております。さらに、引き続き国立博物館等の整備を進めますため、必要な予算を計上いたしました。
次は、文化財の保護でございます。
まず、文化財の保存修理、防災施設の充実につきましては、引き続きこれらに必要な経費の増額をはかっておりますが、なかんずく史跡の買い上げと環境整備に重点を置いて合計約一億八千万円の補助金を計上いたしました。次に、平城宮址の買い上げにつきましては、買収計画の大部分を終了いたしましたので、来年度は予算が減少いたしますが、引き続き買収をとり進めることとしております。また、発堀調査のほうは前年どうり一万七千五百坪を対象に調査を実施することにいたしております。なお、無形文化財の保存活用につきましても、引き続き伝承者の養成、記録の作成、資料の買い上げ等を継続することにいたしました。
次は、教育、学術、文化の国際交流の推進であります。
まず、国費外国人留学生の招致につきましては、新規の受け入れ人員を二十人増員し、また、修士課程への留学を希望する者に対しましては留学期間の延長を認めることといたしました。なお、日本国際教育協会に対する補助金のうちには関西留学生会館の建設のための経費が含まれております。
次に、国際学術文化交流の促進につきましては、新たにアジア・アフリカ諸国への教育協力を取り上げ、そのうち五カ国から教育指導者を招致し、また、理科設備、視聴覚教材を供与するとともに理科教育の指導者を派遣してモデルスクールを開設することにいたしております。このほか、引き続き教授、研究者の交流を行ない、国際会議等へ出席いたしますため、必要な経費も計上いたしております。
次は、ユネスコ国際協力の推進でありますが、来年はユネスコ創立二十周年、わが国の加盟十五周年を迎えますので、ユネスコ関係団体に対する助成を強化し、引き続き国際会議の開催および参加を行ない、また、国際大学院コースを継続いたしておりますほか、新たにユネスコの使命とわが国の役割りについて国民一般の理解を深めるための特別事業を推進し、また、アジア地域の教育発展への協力のため教育内容及び教育方法の改善に関する研修コースを開催することにいたしたのであります。
最後は、文部省機構の整備でございますが、この点につきましては大臣からご説明申し上げましたとおりでございます。
以上で補足説明を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/14
-
015・八田貞義
○八田委員長 文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、早稲田大学に関する問題について、文部省当局より説明を聴取いたします。杉江大学学術局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/15
-
016・杉江清
○杉江政府委員 早稲田大学の事件につきまして事件の概要を申し上げます。大要につきましては新聞に報道されておりますし、ただいま申し上げますことも大体新聞に報道されておりますことと大差はございませんが、まとめて申し上げたいと思います。
まず事件の発端は、昨年の十二月、学生会館の管理運営権の獲得を目ざしまして学生約一千名が教職員を軟禁したために、大学当局が警官隊を導入してこれを排除するという事件が起きたのであります。その後、大学当局が四十一年度入学者の学費値上げを決定したために、その問題と前の学生会館の管理運営権獲得の動きとが一致しまして、学生はその二つに反対して連日、集会、構内デモ等を行なったのであります。当時における参加学生は三百名ないし五百名の程度にとどまっておりました。この四十一年度の値上げの程度については大体皆さん御承知だと思います。授業料について言いますならば、法文系は五万円を八万円に引き上げる、理工系につきましては八万円を十二万円に引き上げる、こういうものでございます。その他入学金も引き上げております。このような状況におきまして、一月十八日に第一法学部、教育学部の学生が授業放棄をいたしております。それから一月二十日には理工学部を除く全学部の授業が、学生のピケ、机等により入り口を封鎖することによりまして、実施不能になったのであります。この当時におきます学生のおもなる要求といたしましては、授業料等の値上げを白紙撤回するということと、学生会館の管理運営権を学生によこせということ、それからもう一つ総長の退陣、こういう三つの要求が含まれております。一月二十一日には理工学部も授業放棄に入りまして、全学部の授業が実施不能になりました。一月二十四日には、泊まり込み中の学生が各校舎の入り口を机などでふさぎましてピケを張って、一月二十四日からの予定されておりました学年末試験は全部実施不能となったのであります。一月三十一日には、この日に行なわれる予定の試験につきまして大学当局は実施不能と見まして、といいますのは、学生約三千名がこれを阻止するという態勢を示したのであります。そこで試験をレポート提出に切りかえる意思を表示したのでありますが、学生はこれに対してレポートを一括管理することを決定したのであります。そしてさらに全学集会に総長や理事の出席を要求いたしました。しかしこのときの出席は拒否しております。試験拒否もまた大学院にまで及びました。二月十日に理事と学生代表との話し合いが行なわれたのでありますが、それがもの別れになりまして、その結果、学生は会見を打ち切り、約三百名が本部を占拠いたしまして、要求がいれられるまで泊まり込みを続けることになったのであります。
二月十二日、泊まり込んで本部を占拠しておりました学生約三百名と本部の占拠を不当といたします同大学の運動部関係の学生二百名が、二回にわたり乱闘状態になり、器物破壊、また負傷者を出す、こういう不祥事件を生じております。その後依然としてこの本部占拠は続けられており、事態は改善を見ておりません。ただその間いろいろな動きがあることは新聞紙上報道されたとおりであります。
この事件を通じまして大学当局の立場は一貫して、学費値上げの白紙還元ということに対しては、これは学生の容喙すべきことではない、こういう基本的な態度のもとにそれを拒否しております。また学生の動きには、学校経営に対する参加というような基本的な主張を含んでおるという点も考えまして、強い態度をとっておるわけであります。ただこの一両日、この事態を何とか解決しようということで、その基本的な態度は曲げられないけれども、何とか話し合いの機会をつくり、この事態の円満解決をはかろうとする動きが、大学及び学生両方に見えてきている。これはけさほどの新聞にも報道されたところであります。
以上が事件の概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/16
-
017・天城勲
○天城政府委員 私から早稲田大学のこのたびの授業料値上げに至りました理由につきまして、経費的な面からの事情を御報告申し上げたいと思います。
これは大学の御当局から伺っている数字でございまして、私たちあらためて監査をしたとかいうようなものではございません。大体の傾向を申し上げたいと思っておりますが、早稲田の三十七年以来四年間の経営費の動きを見てまいりますと、大体年間四億前後の膨張をしておりまして、ちょうど四十年度までに十五億ほど経営費の膨張を見ているわけであります。この間に早稲田大学といたしましては、教育研究の充実、それから学生増に伴う施設の拡充等でかなりの建設事業を行なってまいりまして、そのために必要な経常費というものが、明年度以降かなり多く見込まれるという状況でございます。これらの点を大学側として大体計算されて、現在の状況でいくと今後毎年やはり四億ぐらいの膨張になるのじゃないかという見込みでございます。
それで、いま申し上げましたように、従来の規模で施設拡充を行なってまいりましたそれに伴う経常費、そのほかさらに大学当局としては教員の給与改定の問題も十分組まなければならない、また教育の充実をはかるために教官の定数増加も考えておられる、さらに教官の研究費あるいは在外研究費等の充実もはからなければならないということで、今後これらの経常費を全部含みますと、先ほども申したように年間四億くらいの増加がどうしても見込まれる。早稲田は三十七年に授業料を改定いたしまして、その後改定をしておらなかったわけでございますが、ちょうど学年進行も四年間で終わった形で、経常的にも将来こういう拡充が見込まれるということで、このたび将来を見通して授業料の値上げをされたわけでございます。
早稲田大学の全体の経理状況は非常に複雑でございますけれども、一言で申しますと、多額の高利の負債を借りているというような状況はございませんで、非常に印象的なことばで申して恐縮なんですが、非常に健全な経営をしている大学とわれわれ思っているわけでございます。なお将来の学生の厚生設備の拡充や研究施設の拡充等についての建設費も見込んでおられるようでございますが、これらについては従来早稲田大学はかなり堅実な資金集め、あるいは振興会の資金を利用するというようなことも計画されておりますようでございまして、早稲田の今回の授業料値上げは、一応収支のバランスからいくと、現在の学校財政のあり方を前提といたしますと、一応やむを得ない数字として受け取れるのでございます。これに対しまして早稲田大学といたしまして、今日当面これ以外の方法は特に考えておられませんで、この線で大学の充実をはかっていきたい。ただ将来の問題といたしましては、現行制度によります国の助成方策、たとえば理科教育の設備の助成金あるいは研究設備の助成金、あるいは振興会の貸し付け等についてはかなり期待をかけておりますし、また臨時私学振興方策調査会の設定によります調査会の審議の結果については非常に期待を持っておられるわけでございますが、私たち学校から伺っております経理状況の概要の現状は以上のとおりでございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/17
-
018・八田貞義
○八田委員長 次に質疑を行ないます。
質疑の通告がありますのでこれを許します。落合寛茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/18
-
019・落合寛茂
○落合委員 ただいまの局長さんの御説明についてでありますが、実は昨年私学振興の協議会で私学振興の役員の方がみな集まりまして協議をしたときに、国庫の助成をもっとふやしてくれるような会合が何回も持たれたのですが、そのとき私もその中に入っておりまして、一体私学がどれだけの金が収入になって、いわゆるその年度の経常費その他の収支決算、それをはっきりしてもらいたいというふうな説が出たのであります。ところがそのときの私学のそういう役員たちのあれで、どうしても発表にならなかった。たとえてみますと、六大学は野球の収入とかいろいろな収入があるのですが、そういうものが発表にならなかった。とうとう明るみにそれが出なかったのですが、先ほどの局長さんのお話を伺っておりますと、四億円程度ふくらんだというやはり御説明なんですが、ただいま申し上げましたようなそれに対する年度の経常費、すべてのそういう会計報告というものは別に国のほうに報告になるとか、今回はそういう問題がどういうふうに処理されているのですか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/19
-
020・天城勲
○天城政府委員 私学の個々の大学の財政状況につきまして、報告義務と申しますか、大学から毎年出すようになっておりませんものですから、私のほうで最近別の形で、調査という形で各大学の実情の把握につとめているわけでございます。それに御協力いただきまして出てきた数字はございますが、この細部の分析等につきましてはなお十分できておりませんが、全体の概略というものはつかめているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/20
-
021・落合寛茂
○落合委員 やはりこういうふうな問題が起きてまいりますと、学生間においても、父兄その他についても、相当に収入があるのではないか、だからしてそういう内面はどうなっておるのだというふうな疑問があの問題を解決する上で一つの指標になっておるようにも実情として見受けられるのです。したがって、国としてもそういう方面をはっきりさせるような方法を私はとっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/21
-
022・川崎寛治
○川崎(寛)委員 関連して。けさの理事会でこの問題は次の機会にもっと徹底的に審議をしよう、こういうことになっておりますが、つきましては、先ほどの管理局長のきわめて大ざっぱな数字では十分実情も把握できませんので、文部省のほうが把握をしておる数字の詳しいものを、経理内容等その他値上げの理由として大学当局がいっておりますそういう数字について、こまかい資料を出してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/22
-
023・天城勲
○天城政府委員 先ほど申し上げましたように、私たち大学から把握しておりますのは詳細でございませんけれども、現在把握している限りのものでひとつごかんべん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/23
-
024・八田貞義
○八田委員長 次会は来たる二月二十三日水曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後、零時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00319660218/24
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。