1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月二日(水曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君
理事 谷川 和穗君 理事 南 好雄君
理事 川崎 寛治君 理事 二宮 武夫君
大石 八治君 熊谷 義雄君
坂田 道太君 櫻内 義雄君
床次 徳二君 中村庸一郎君
松山千惠子君 落合 寛茂君
河野 密君 鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
文部事務官
(大臣官房長) 安嶋 彌君
文部事務官
(大学学術局
長) 杉江 清君
委員外の出席者
議 員 川崎 寛治君
専 門 員 田中 彰君
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本日の会議に付した案件
公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準
に関する法律案(川崎寛治君外九名提出、衆法
第一五号)
国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第二二号)
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
去る二月二十二日、本委員会に付託になりました川崎寛治君外九名提出の公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案を議題とします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/1
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002・八田貞義
○八田委員長 提出者から提案理由の説明を聴取いたします。川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/2
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003・川崎寛治
○川崎(寛)議員 公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案の提案理由を御説明いたしたいと思います。
ただいま議題となりました公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
後期中等教育の拡充、整備の問題は、世界各国におきまして、最も重要な教育課題であり、年限の延長拡大とともに、完全なる後期中等教育を目ざして、質的充実発展につとめていることは御承知のとおりであります。
わが国におきましても、近く中央教育審議会より答申が予定されています後期中等教育の拡充、整備に関する答申案を契機に、政府、文部省は、この問題に関する抜本的方針を検討するということを伺っています。その機を逸しますと、はかり知れぬ害毒を青少年に与えることになります。高校教育条件の整備は、緊急の課題であります。
政府施策の貧困により荒廃状況におとしいれられた高校教育の現状をそのままにして、抜本改善の方針を、答申案を待って検討するがごときは、国際的にも後期中等教育の水準において、ひとりわが国のみ大きく立ちおくれた結果となります。
すし詰め学級の全面的増大と、教職員定数の不足は、生徒指導を困難にし、施設、設備の貧困と相まって、高校教育の質的内容を低下させています。
すなわち、文部省は、三十八年度から、四十年度の高校進学率を、それぞれ六一・八%、六三・五%、六五・四%で足りるとし、毎年百五十五万人の収容設備を用意しました。しかもこの百五十五万人は、高校定数法附則第五項により、一割のすし詰めを見込んだものであります。
本則どおり五十名学級として考えれば百四十万人の設備であり、三年間に四百二十万人の収容設備であります。しかるに、この三年間現実に入学した生徒総数は、三十八年度六七%、百六十九万人、三十九年度七〇・三%百七十一万人であり、四十年度七二%、百七十一万人でした。実に五百十一万人の生徒を、四百二十万人の収容設備に詰め込むのであり、九十万名が、五十名定員をオーバーして、詰め込まれました。さらに四十一年度は七四%、百五十八万人以上の高校生が新たに収容されようとしています。
この結果あらわれた高校教育の現状は、まことに憂慮すべきものであります。私学においては、一クラス七十名、八十名の教室もあり、公立においても普通高校で六十名、工業高校で五十五三等があらわれます。
この異常な現象が高校生徒にどのような悪い影響を及ぼしているかについて、東京大学教育学部環境衛生教室は、一九六四年二月、七月の二回にわたり、東京都立立川高校において調査しました。多岐にわたる調査中、炭酸ガス量についてのみ申し上げましても、五十五名学級においては文部省が許容値として発表した〇・一五%をはるかに上回る〇・四%を四時限においては記録しました。まさに満員電車並みでありまして、青少年の肉体がこのすし詰め学級において、いかにむしばまれ、正常な教育が、いかに妨害されるかということを雄弁に物語っています。この調査において、好ましい学級編制人員は、二十五名であるという結論を出していますことをつけ加えたいと思います。
教育指導上の点については、広島大教育学部の調査報告は、すし詰めの学級においては、個性が埋没し、全体の学力低下が生ずることを明らかにしています。
さらに教職者の労働過重の問題があります。現行定数法は附則第六項により、教職員算定の基礎になる生徒数を九%削減し、その上に立って、教職員を算定することを許しています。劣悪な施設にすし詰めにされた生徒に対し、手不足の教員が労働過重に苦しんでいます。
さらには事務職員などが欠員を生じた場合政府、地方自治体の欠員不補充の方針により、欠員すら埋められず、ために事務量が過大となり、これの影響は教育上にも甚大なしわ寄せとなってあらわれています。
このような憂慮すべき状況をつくり出している根源は現行の高校定数法にあります。したがって現在、高校教育関係者、同関係諸団体及び都道府県教育委員会諸団体などからも早急にその抜本的改正を要望する声が強まっています。
今回、政府は当五十一国会に対して、高校定数法の一部改正案を上提されました。しかるにその内容は、従来、われわれが主張してきた改正意見や、右の関係者などが、要望する方向とはおおよそほど遠く、わずかに同法附則第五、六項にかかわって一部手直しをするにすぎないものであります。これは政府みずからが、従来すし詰め教室は急増期間中であるからやむを得ないものとしていた主張をここに否定し、その弊害のあることを認めたことであり、また政府が樹立したいわゆる急増対策なるものの見通しの甘さと計画のずさんさを暴露したものと断ぜざるを得ません。
しかも今回の改正案は、現実には一部の府県にのみ適用されるものであり、他の大部分の都道府県では、依然として従来どおりのすし詰め教室が存続し、その弊害はそのまま放置されるものであります。
後期中等教育を、拡充、整備し、国家百年の大計をはかる好機はまさにいまであります。
高校進学者の絶対数の減少期を迎えたこの機会に、学級編制定員、教職員配当基準を抜本的に改善し、ヨーロッパ先進国の基準に接近する方向を指向することは、緊急の課題であります。
ひるがえって、我国の後期中等教育史を顧みますと、遠く明治の初年にさかのぼって、学級編制基準が示され、五十名を最高限とすることが、明らかにされています。この間、実に約百年、文物制度の改善はめざましいものがあるのに、ひとり後期中等教育の基本をなす学級編制基準のみ、改善のあとを示さず、逆に低下しているということは、まことに理解に苦しむところであります。新制高校の発足にあたり制定された高等学校設置基準が公布されて以来、実に二十年も経た現在、この基準を下回る貧困な設備、学級編制、教職員配当が行なわれているところに、問題があります。この機会に高等学校設置基準を最低の線として、条件を整備することは、政府、文部省の責務であります。
以上の趣旨に立脚し公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案を上程し、もって高等教育の充実発展を期することは、きわめて適切な処置と考える次第であります。以下法案内容の骨子について説明申し上げます。
第一に法律案の内容は、校長、教諭、養護教諭等、事務職員、実習助手、技術職員、用務員の定数について規定してあります。警備員、栄養士、給食従業員、司書教諭、司書、司書補については、それぞれ関係法において、御審議をお願いしたいと思うものであります。
第二に本法は、現行法と、その体系を異にし、学級編制及び教職員定数についてのみ規定しました。その理由として、設置者については都道府県を主体とするも、必要と条件と能力のある市町村であるなら、あえて、それを拒否する理由はないと考えたからであります。
適正配置につきましては、小学区制を原則とするという新制高校発足の精神に立脚しておりますゆえ、あえて法文化の必要なしと考えたのであります。規模については、教育の機会均等の原則から、小規模校も充実、発展されるべきものであるという精神に立脚しているゆえに、規定しなかったのであります。
第三に、一学級の生徒数は、全日制は、普通科、家庭科、商業科を四十名とし、農業科、工業科、水産科を三十名といたしております。定時制は、昼間授業の場合は全日制と同じとし、夜間授業の場合は、その特殊性にかんがみ、普通科、三十名、農業、水産、工業科は二十名以下といたしました。
第四は教諭等の数でありますが、全日制は週当たり授業時数十五時間、定時制は昼間定時制十二時間、夜間十時間とします。教諭数は、高校設置基準(文部省令一号)に定められた方式により、学年別生徒数に、生徒の週当たり授業時数を乗じて得た数を、一学級の生徒の数に教諭等の週当たりの授業時数を乗じて得た数で除して得た数を合計した数としております。
第五に、農業、水産、工業、商業、家庭に関する学科にかかわる教員については、実習実験等を伴なう特殊性から、その実状を勘案し、必要最少限度の定員増を認めその定数を規定しました。
第六に現行では小規模校、定時制夜間課程に、養護教諭の配置が困難であるとの実情にかんがみ、それぞれに養護教諭を配置し得るよう定数を規定してあります。
第七に、その他実習助手、事務職員、技術職員、用務員など、必要教職員の定数を定めました。
以上、この法律改正によって、高等学校の教育効果と水準の向上をはかるとともに、教職員の労働条件の改善をはかろうとするものでありますが、この法律の成立により、昭和四十一年度において、昭和四十年度の実員と比較して約十二万人の教職員増を必要とし、その必要経費は、交付税交付金の中に見積もられることとなります。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/3
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004・八田貞義
○八田委員長 以上で、提案理由の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/4
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005・八田貞義
○八田委員長 次に、国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案及び国立学校設置法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますのでこれを許します。谷川和穗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/5
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006・谷川和穗
○谷川委員 最近、新聞紙上をにぎわしております早稲田大学の騒動なんかを見ておりますと、つくづく教育についていろいろと考えさせられるのであります。日本の国の教育は世界的水準にあることはだれしも認めるところだと思いますが、しかし一面、なお解決さるべき課題もまことに多く残っておると思います。特に、量の面での普及度というような点から見たらば、これは世界的であると思うのでありますけれども、しかし教育の質という問題になりますと、やはりわれわれは相当この際いろいろ検討をしなければならないというふうに考えております。もちろんこのためには、施設設備の整備をはかったり、あるいは教職員の適正な配置を考えたり、あるいはその他待遇改善を行なってりっぱな先生を一人でも多く確保するということはもちろんのことでありますが、同時に教育課程の刷新、充実をはかったり、教職員の資質の向上につとめることがきわめて大事な時期に来ておるんじゃないか、私はこう考えております。したがって教職員の資質の問題とその基礎ともいうべき資格の問題、この教職員の資格の問題は今日まことに重大な問題だと思うのであります。わが国の現在の教育制度では、教職員となる、教職員の資格をとるのには、まことにいろいろな教員養成機関から教員が出てくるような形になっているのでありますが、私は、本日、政府が今国会に提案をいたしております国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案をまず問題にいたしまして、この教員養成という問題について文部省にお尋ねをいたしたいのであります。
教職員の中でも養護教諭となりますと、まことにその教員資格を取得するのに各種の機関から出てきておるようであります。今回のこの法律改正で、文部省としては国立の養護教員養成所をさらに三カ所確保して全国五カ所とする見込みのようでありますが、今後政府はこの養護教諭の養成についてどのような計画をお持ちであるか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/6
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007・杉江清
○杉江政府委員 養護教諭は学校教育法において、たてまえとしてはすべての学校に置くことになっておるわけであります。しかし、にわかにこれを全部の学校に置くことはできませんので、順次その整備をはかってまいりたいと考えておりますが、現在のところ四十三年度までに約五千名の養護教諭をふやしたいと考えております。しかしてそういう計画のもとに養護教諭の養成を考えるわけでありますが、従来、ただいまお話にありましたように、いろいろな機関でこの養護教諭の養成が行なわれております。たとえば国立大学の一年の課程で、看護婦の資格のある者を収容して養護教諭をつくるということ、あるいは公立指定の学校で養護教諭を養成する、または保健婦の資格を得させると同時に養護教諭の資格をも付与する、そのような養成機関もあるわけであります。こういうふうないろいろな養成機関がありましたけれども、国立の教育機関としてこれが養成にまっ正面から取り組んだ機関がなかったのであります。そこで昨年から国立大学の教員養成学部にこの養護教諭養成所の三年の課程の養成機関を設けまして、ここを養護教諭の本格的な養成をする養成施設といたしたのであります。この需給状況を考えまして、先ほど申し上げましたように四十三年までに五千名を養成する、この計画に沿いまして国立の養護教諭養成所を大体八カ所つくるというのが当初の計画でありました。昨年度二カ所つくり、ことし三カ所つくり、なお残りは次年度以降において設置いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/7
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008・谷川和穗
○谷川委員 中学校保健計画実施要領というのを取り寄せてみましたが、その中に健康についての定義がございました。「健康は単に病気でないという状態だけでなく、生活を営むことのできる心身ともに完全な状態をいう。」、まことにりっぱな定義だと思うのであります。やはり教育を議論する場合には、私は心身ともに完全な状態を理想として教育は行なわれるべきだと思うのであります。そういう意味からいいますると、養護教諭が学校の中でしております仕事はまことに重大な仕事である、こういうふうに考えます。しかしどうも養護教諭の配置から見ますと、地域的にいろいろ薄いところもあるようでありますし、あるいはさらに養成の問題からいいますと、なかなか養成が間に合わないというようなのが現状じゃないかと思うのであります。ひとつ文部省はこの点には特に注意をして、今後大いに養護教諭の養成については努力をしていただきたいと思うのでありまするが、一方学校保健法にいうところの保健主事というものの役割りについてでありますが、これは義務教育の中でも特に中学校の場合でいいますると、保健教師というのは主として体育と家庭を教えております。しかし学校の生徒全体の健康管理だとかあるいは先ほどの話でありますが、生徒をめぐる心身ともの管理、たとえば精神衛生、こういったものまでなかなか手が届かないというような現状であろうと思うのであります。しかも校長もほんとうは管理職として最高の責任があって、児童の心身の健全をはかるという努力をしないといかぬと思うのでありますが、なかなかそれまで手が回りかねているというのが現状ではないかと思うのであります。こういう心身ともに児童の健全な発育、発達を願うというのが教育の根本であるとするならば、この際校長を含めて現場の先生方を、さらにこの方面について注意を喚起するといいますか、そういう意味で再教育をされるような意思は文部省のほうにおありになるかどうか、私はここでちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/8
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009・杉江清
○杉江政府委員 学校教育において保健のことはきわめて重要な意味を持っておると思います。広義における保健につきましては、学校全体がその教育計画の重要な一部としてその充実をはからなければならぬと思います。しかし具体的に保健のことに関係いたしますのはまず体育の先生、それからまた家庭の先生等が主としてその方面の教育を担当しているわけでございます。しかし単に体育の先生または家庭の先生あるいはいま問題になっております養護教諭、これらの方々でのみ教育の中の重要な一部分である保健を全部背負うことはできません。そこで学校教育においては学校全体の教育計画の中で保健計画を重視し、これを相協力して実施いたします組織をつくるように指導しておるのであります。その中心になりますのが保健主事でありまして、保健主事が中心になりましていろいろの計画をつくり、そしてまたそれが実施についての態勢を整えておるのが現状であります。保健主事にだれがなるかは当該学校において最も適当な人がなるのでありまして、必ずしも体育の先生のみに限りませんし、いろいろな場合があるのでありますが、大きなねらいは学校全体としてそれに協力をしていくという態勢を固めるということであります。そして学校教育における保健の面の重視、またその担当教官の資質の向上については、主として体育局が現在行なっております各種の講習会等においてこの問題を取り上げて、多くの先生方の参加を得ていろいろ討議し、その資質の向上につとめておりますが、今後ともそういった努力が一そう払われることと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/9
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010・谷川和穗
○谷川委員 最近私は高等学校の現場の先生がやられました調査をちょっと目を通して非常におもしろい問題点を発見をしたわけであります。というのは、ちょうど高等学校に進学したぐらいの年ごろになりますと、子供が肉体的に発育するのと精神的に発育するのに、どうもその間にバランスがくずれることがある。こういうようなバランスがくずれた子供たらをいろいろ指導をしていく教師というものがやはり学校の中に必要になってくる。ところが一面、そういう精神的なバランスがくずれたばかりじゃなくて、健康管理と精神的なバランスというものの間に一つの相関関係があるのじゃなかろうか、こういうようなレポートがありまして、非常に興味深く見たのです。一例を申しますと、学校に来てから精神状態の非常に不安定な子供たちがおる。これは高等学校ですが、そういう生徒がおる。そしてなかなか社会に適応しない。自分一人の世界に常に沈みがちであるというような子供たちを調べてみたら、その子供たちの中で鼻の悪いのが四〇%おった。あるいは非常に消極的で何を言っても乗ってこず、性格的にいうと内攻型の子供たちには後天的な弱視、目が悪くなる。めがねをかけないで自分の目が悪いということがわからないのが一〇%近くあった。あるいは耳鼻科関係の系統からくる病気が精神不安定のもとになっている事例がなかなか多いとか、こういうことが報告されておるわけであります。
私はこんなことを考えますると、いまは高等学校の例を申し上げたのですが、これがたとえば中学校あるいは小学校というふうな義務教育の面においても、児童の健康と児童の心の働き、情緒、こういった関係はどこかに非常に深い関係があるんじゃなかろうか。そういうことを考えてまいりますと、いま局長は保健というような点に特に重点を置いて議論をされましたが、私は養護という考え方と保健という考え方は、少し概念的に養護のほうが幅が広いような感じがいたします。すなわち養護というものは、病気になっている者を健康なからだに戻してやるという保健的な面が一面にある。それはもちろんのことだと思う。あるいは小学校ですからよくあることでありまするけれども、たとえば伝染病の指定になっておりますようなトラホームだとかはしか、猩紅熱、こういうものが発生したときにそれを隔離する、ほかの者にうつさないというこういう考え方はこれはやっぱり保健だと思う。と同時に、養護という考え方の中にもう一面きわめて積極的な面があると思うのであります。それはどういうことかといいますると、これは言い古された、また世界いつの時代においても、いかなる国においても真理であろうと思うのでありまするが、健康な精神は健全なる肉体に宿る、この健全なる肉体を育て上げていくという、発育過程にある子供たちの肉体をさらに一そう健全な方向へ指導して発育させるという、こういう積極的な面があると思うのであります。すなわち養護というものの考え方にはきわめて積極的な、児童の心身の健全なる発育、発達を望むという面と、それから病気その他の問題から子供を守るという問題と、この二面があると思うのです。そういうことを考えますると、私は、養護という考え方は、学校教育の中ではまことに重大なものであって、しかるがゆえに昭和十七年にああした法律までできて養護というものを大いに取り上げよう、こういうことになったのだと思うのであります。
今回この法律の一部改正をやりまして、昨年からスタートをいたしましたこの制度にさらに拍車をかけて学校教育の中の養護というものを大きく取り上げていこうという文部省の熱意には敬意を表しておるわけでありまするが、今回この法律改正にあたって二、三具体的にお伺いをいたしたいと思うのであります。養護教諭の養成所はさらに増設をしていかれるおつもりかどうか。先ほど全国八カ所というようなおことばもちょっとあったので、さらに詳しく御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/10
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011・杉江清
○杉江政府委員 先ほど申し上げましたようになお今後増設する予定でございます。一応計画といたしましては八カ所まで早急に整備したい、こういう考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/11
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012・谷川和穗
○谷川委員 ただいまわれわれの一番重大な問題であるところの予算審議が国会でなされておりまするが、四十一年度予算において養護関係の予算はどうなっておるか、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/12
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013・杉江清
○杉江政府委員 二カ所の養護教諭養成所設置に必要な予算は、経常費といたしまして千六百三十八万三千円、臨時費といたしまして二千二百四十万七千円、合計三千八百七十九万円でございます。教職員の定員を申し上げますと、一養成所当たり七人ということになっております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/13
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014・谷川和穗
○谷川委員 今年度、昭和四十年度に二つ設置されたわけでありますが、この昭和四十年度に設置されました国立養護教諭養成所の施設などの整備は順調に進んでおるか、あるいはその養成所の入学状態はどうなっているかということについてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/14
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015・杉江清
○杉江政府委員 すでに設置いたしました二養護教諭養成所の状況を申し上げますと、北海道学芸大学においては応募者が百四名ありまして、入学者が四十名でございます。岡山大学におきましては応募者は百六十八名ありまして、入学者は四十三名でございます。
それから施設整備の状況を申し上げますと、初年度は養成所が付置されます大学の施設を利用いたしますが、次年度から一養成所当たり五百坪程度の校舎と、それから在学生の七割程度を収容できる寄宿舎を新営することにいたしております。二大学についてはそれらの施設設備が現在進捗しておるわけであります。設備費につきましては、図書購入費として一養成所当り三十七万円、一般教育設備費として四十六万円、専門教育設備費として六百万円、計六百八十三万円の予算計画でその充実をはかっております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/15
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016・谷川和穗
○谷川委員 予算に関係することでありますので、なかなか一挙にはいかないと思うのでありまするが、いまお伺いをいたしておりましても、せいぜいこれで三年先に国立の養護教諭養成所を出てくる養護教諭の数というのは百人をこえないわけでありまして、まことに微々たるものだ、こう言わざるを得ない。しかも法律の基本の精神から言うならば、先ほどのようなことから、学校教育の中における養護というものは非常に重大な意味があるのだというのがたてまえである。それが法律立法の精神であるということになりますると、この養護教諭の定数という問題は予算と大いに関係があることでありますが、まことに大切な意味を持っておると思うのであります。この養護教諭の定数は年々増加をいたしておりましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/16
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017・杉江清
○杉江政府委員 年々増加いたしております。四十三年度末に五千名をふやす、こういう目標を立ててその整備につとめているわけでありますが、その五千名増の積算の基礎といたしましては、公立小学校については児童千人に一人、公立中学校については生徒千二百人に一人、こういう割合で置くことを当面の目標といたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/17
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018・谷川和穗
○谷川委員 現場の養護教諭の先生方とお会いしてお話しておりますと、非常におもしろい問題点を指摘されるわけであります。というのは、先ほどの話でございますが、子供の健康管理、精神衛生も含めて、いろいろと家庭の奥さん方と接触をしておって一つ感じることは、子供が学校から帰って家に居つけば、それから先はその子供の健康その他についてはこれは厚生省の領域に入る、しかし学校の中では、養護教諭がいる以上は文部省の管轄なんだが、そのおかあさん方と話をしていておもしろいことは、保健所の保健婦さんが出かけていって説明するよりも、私ども学校の先生の資格を持っておる養護教諭が子供の健康管理その他についておかあさん方と相談したほうが、おかあさんが真剣に聞かれるという、これは私は人情だと思うのであります。しかも日本全国に小学校というのがあって、先ほど最初に私が触れましたように、日本の教育というものはその量において世界で一、二を争うようなところまできておるということになりますと、日本全国にありまする小学校に通学をしておる子供を、養護教諭がおかあさん方、家庭と一緒になって見ていくということは、日本の国の将来にとって非常に重大な意味がある、こういうふうに考えております。ひとつそういう意味で、今後養護教諭の問題についてはさらに一そう文部省の側といたしましても努力をしていただきたいと思うのであります。
ところが、養護教諭の養成の問題でありまするが、先ほど局長はお触れにはならなかったけれども、私はさようにそんたくをいたすのでありまするが、四十三年までに五千名という数字は、おそらく何も国立の養護教諭養成所を出てきた人ばかりではない、いろいろな種類の養成所から出てくる方々のことを頭に置いての数字だと思うのであります。その中に一点だけちょっと触れておきたいことは、奨学資金のないことであります。日本育英会奨学資金制度によりますと、国立の養護教諭養成課程におる人々は奨学資金が受けられる。ところが私立その他の養成課程には出ておらないようでありまするが、どうして出ておらないのか。また将来こういう養成所におる人々にも育英資金が回るように文部省の側でもお考えであるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/18
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019・杉江清
○杉江政府委員 養護教諭養成所以外の養護教諭の資格の与えられる養成施設に在学する者に対しても、養護教諭養成所の学生と同じように育英奨学の対象とすべきではないか、こういう御意見は前からあり、私どもも、何とかしてその具体的な方法を検討し、その実現をはかりたいといろいろ検討をしたのであります。その一部の実現をはかるために、本年度四十一年度の予算要求に対しても、その一部の実現をはかる要求をいたしたのでありますけれども、ついに実現いたしませんでした。それは、はっきりしたそういった養成機関以外の分野にまで及ぼすときには、その限界が非常にむずかしくなって、ひいていろんな面に波及する。たとえば保健婦養成と養護教諭養成とが一緒に行なわれている場合、それをも対象にするかどうかというような非常にデリケートな問題もあるわけでありまして、やはり現段階においては、育英奨学の根本趣旨をゆがめることのないようにというような考え方が強くなりまして、実現いたしませんでした。しかし、養護教諭養成機関、国立のものでないそういった機関の中にも、内容をしさいに検討いたしまして、やはり何とか奨学の対象にしたいと思われる面も私ども考えられますので、そういうような点はなお今後検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/19
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020・谷川和穗
○谷川委員 養護教諭養成関係については、最後に一つ要望を申し添えて、次に移させていただきたいと思います。
その要望というのは、いま国立養護教諭養成所で考えられております養護教諭の養成というのは、私はまだ必らずしも十分でない、量の面ばかりではない、質の面においてもまだ十分でないと思いますし、養成所を出られた方々が学校へ奉職をされたときのことを考えますと、実を申しますとこれは私は要請でございますから、文部省は聞いておいていただけばけっこうなんですが、先ほど私は児童生徒の健康管理の話をいたしましたけれども、やはり学校である以上は、生徒に直接接触しておられるのは学校の先生なんであって、学校の先生方も、ひとつ大いに先生方御自分の心身ともの健康管理というものは考えていただきたいというように思う。だから、養護教諭の役割りというのは、将来はそういったものまで含めて大いにその分野を広げていただきたい、こう思っておるのであります。そういう意味から言いますと、現在文部省が考えられております国立養護教諭養成所を出た養護教諭、これが四年制の大学を出てこられた先生と、免許の面では同じ一級免許をとられるかもしれないけれども、その養成所をせっかく出てこられた、一種の特殊技能を持った方々だと思うのですが、一般大学を出てこられた学校の先生に対して、ほんとうの意味で学校全体の健康管理とかその他の面について、もし思い切った指導助言ができないような立場だと、これはせっかくの制度が身を結ばないと思います。したがって、将来は、ひとつ四年制の大学の教員養成の課程の中にも養護教諭の養成を考えるとか、あるいは、欧米などでは、養護教育というのは特殊な技能として見られるほど社会的地位も高いのでありますから、ひとつその人々を集めて大学院程度までできるというような御努力を頭に置いて、さらに一そうの御検討をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/20
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021・上村千一郎
○上村委員 関連して。国立養護教諭養成所設置法の一部改正の法律案につきまして、谷川委員から種々御質問をされたわけでありますが、次に国立学校設置法の一部改正案についての御質疑が進められるに際しまして、国立養護教諭養成所設置法の一部改正について、私から一、二質問を申し上げたいと思います。
公立の小中学校における養護教諭の養成につきましてきわめて必要であるということは、谷川委員が先ほど御質問を申し上げたとおりであります。私もこの養成につきましては、非常に必要なものだというふうに感じているわけでございます。それで文部省は、昭和三十九年度以降四十三年度に至る五カ年で約五千二百名ぐらいの増員をはかられる計画であるとお聞きしておるわけでございますが、今回の法案の改正におきましては三養成所の設置ということに相なっておると存じますが、この程度で、所期の五カ年計画による五千二百名の増員ということがなし遂げられるのか、そのお見通しにつきまして質問をいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/21
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022・杉江清
○杉江政府委員 四十三年度までに五千名の増員計画につきましては、国立大学の養成課程終了者を約二百四十名見込んでおりました。しかし、これの整備が、国立学校や国立の養成所の設置が当初計画どおりいきませんから、国立学校での養成者は当初計画を下回ります。その点において、当初計画の充実がやや不確実になることはおおえないと思いますけれども、そのほかの機関におきます養成も行なわれており、なお養護職員、すなわち養護教諭という免許状は持っておりませんけれども、事実上そのような仕事をいたしております養護職員が、現在相当多数学校に配置されておるわけであります。そういう者に資格を付与いたしまして、その資質を向上するとともに正規の身分を与える、そういうふうな措置を一方で推進いたしております。こういうような諸般の計画を今後一そう進めることによって、できるだけ当初計画の実現に努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/22
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023・上村千一郎
○上村委員 文部省が四十一年度においてこの養成所を六カ所くらい設置するというふうに考えておられたかどうか。今回三カ所程度に終わったという理由は那辺にあるか。三カ所でも五カ年計画において所期の目的を達するだけのお見通しがあって、三カ所にいたしておるのかどうか、この点をお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/23
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024・杉江清
○杉江政府委員 率直に申しまして、六養成所の要求に対して三カ所に削減され、私どももそれを了承せざるを得なかったのは、格別にこれという論拠があるわけじゃございません。予算査定の全般的な情勢の中でまあやむを得ないと、こう判断いたしたわけであります。今後早急にこの増設については努力しなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/24
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025・上村千一郎
○上村委員 最後に、一点だけ大臣に御質問を申し上げておきたいと思いますが、実はこの養護教諭養成所設置法の昨年の審議の過程におきまして、本委員会において養成所の設置についてはすみやかにその実現に努力するという附帯決議がなされておると思うのであります。実は、養護教諭の増員という問題につきましては、昨年の審議の過程におきましても、必要の度合いというものについてはきわめて強調されたわけでございます。また本委員会におきましてもその意思が表現をされておるわけでございますので、この点につきまして、先ほどの局長さんからの御答弁の中にも、非常に文部省も重点を置いておるし、努力もいたしておるありさまがよくわかるわけでございますが、今後の五カ年計画の実現の見通しということもございましょうし、この際最後でございますが、文部大臣の御意見を承っておきたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/25
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026・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 この養成所の増設及び養護教諭の養成は、その本来の使命にかんがみまして非常に重要なことでございますから、今年は御承知のとおり六カ所概算要求いたしましたが、結果的に三カ所ということになりまして満足の域に達しませんが、今後ともこれを促進することに最善を尽くしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/26
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027・上村千一郎
○上村委員 私の質問は、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/27
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028・谷川和穗
○谷川委員 それでは、続きまして国立学校設置法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたしたいと思います。
この法律案の提案理由を拝見いたしますと、大体大きく分けて五つないし六つ、なかなかこまかい事柄が並んでおりまするが、これが提案の理由であるようであります。
まず第一に北見工業大学を新設するということ、それから二番目に信州大学及び佐賀大学の学部を改組するということ、三番目に七つの国立大学に新しく大学院を設けるということ、それから四番目に大阪大学に社会経済研究所を付置し、さらに東京医科歯科大学の歯科材料研究所の名称及びその目的を改めるということ、それから五つ目に北海道学芸大学ほか四つの学芸大学の名称を改め、二十二の国立大学の学芸学部を教育学部という名前にこれも改める、こういうふうにあるように思います。
この一つ一つの事柄はそれぞれ簡単なことが多いことと思いますが、そうした具体的な問題をお尋ねする前に、ちょっとお伺いをいたしておきたいと思うのでありますが、入学試験に関係をした問題でございます。
この法律の施行期日は四月一日となっておりまするが、いますでに入学試験の関係については、これは親として見れば、子供の入学試験というのは一番気になることだと思うのでありますけれども、この設置法の一部改正の中には入学試験に関係をした部門が幾つかあるかどうか、こういう問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/28
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029・杉江清
○杉江政府委員 新設されます大学については、これは法律が通ってから試験をいたします。
それから文理学部の改組等につきましては、これは実は文理学部として募集いたしておるのでありますけれども、このような法律が通ることを予定いたしまして、この法律が通った場合に新しくできる学部に行き得る者も予定して、しかしたてまえとしては文理学部で募集をし、試験をいたしております。
新設大学につきましても、試験は法律が通ってからいたしますけれども、諸般の準備をいたしておるのでありまして、この法律がこの三月一ぱいに通るというたてまえでいろいろ準備をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/29
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030・谷川和穗
○谷川委員 それでは一つ一つお伺いをいたします。簡単なことでございますので簡単に御答弁をいただけばけっこうでございます。
まず最初の北見工業大学の新設でございます。これは私の理解しておるところでは、北見短大が四年制大学になるのだというふうに理解をいたしておるのでありまするが、これはやはり北海道の地域的な理由というのもだいぶ加味されてこういう措置をなさったのだろと思うのですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/30
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031・杉江清
○杉江政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/31
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032・谷川和穗
○谷川委員 それでは信州大学並びに佐賀大学の文理学部についてでありまするが、一体この文理学部というのは、私はよくわからないわけでありまするが、文理学部という名前を持った学部を持っておる国立大学というのは現在幾つあって、そしてどんなことを教えておるのかということをまずお聞きをいたしたいと思います。文理学部というものの中には、はっきりと自然科学と人文科学を分けて教育をしておるのか、そういうような制度的なことについてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/32
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033・杉江清
○杉江政府委員 文理学部は全国の十四大学に設けられておりまして、このうち四大学は四十年度に改組をいたしました。この文理学部の目的は、人文科学、社会科学、自然科学の各分野にわたる総合的な教授及び研究に重きを置き、広い基盤に立つ専門教育を与える、こういうふうになっております。実際の教育においては文科、理科の二つの学科ないしそのほか二つないし三つの学科を設けておりますが、おおむね文科、理科二つに分かれて実際の教授は行なわれておるという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/33
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034・谷川和穗
○谷川委員 実際には文科と理科関係、そういう呼び名がいまあるかどうか存じませんが、に分かれて教育が行なわれておるのであれば、やはりこの文理学部という名前はなるたけ早く整理をして、いまここの法律に出てきておるような、信州大学の人文学部、理学部それから佐賀大学の経済学部及び理工学部、こういうふうにはっきりしたほうがいいと思います。先ほど局長の御答弁の中には、全国に十四あったのだけれども、その中の大半は済んだというようなお話でありました。将来この十四の文理学部というような、きわめてまぎらわしい呼称を持った学部については、そういう方向へ改組するお考えであるかをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/34
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035・杉江清
○杉江政府委員 このように中身がいろいろな学問分野にわたっておる場合、これを複合学部と普通言っております。この複合学部について教育上もなかなかいろいろな問題がありますし、能率も必ずしも高くないので、これをできるだけ単一学部に再編成していくということは、かねてから各方面から要請されておったことでございます。そういうふうな基本線に沿って、しかもこの大学の収容力をふやす社会的な要請があるわけでありますが、その要請にこたえてこれを改組していくというのが文部省の現在考えております基本的な方針でございます。今後これは他の残されました文理学部についても漸次その改組を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/35
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036・谷川和穗
○谷川委員 それでは次に大学院の新設についてでありますが、これは四十一年度に新たに七大学において大学院を置く、そのために国立学校設置法の第二章第三条の二の「大学院を置く大学」というところに、それぞれ新しく大学の名前を挿入するという技術的な問題だ、こう解釈してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/36
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037・杉江清
○杉江政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/37
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038・谷川和穗
○谷川委員 それでは大学付置研究所についてお伺いをいたします。
まず大阪大学の社会経済研究所というのでありますが、これはいままで大阪大学にこういうような経済学の研究関係も何もなかったところに全く新たに新設をするのでありますか、それともいままですでに何らかのこういうようなところがあって、それでその研究成果も十分認められておるので、新しくこういうような社会経済研究所という形に組織がえをするのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/38
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039・杉江清
○杉江政府委員 すでに研究施設としてあるものを研究所に切りかえるわけであります。相当内容も充実しておりますし、実績もありますので、これを研究所として一そうその内容の整備をはかろうとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/39
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040・谷川和穗
○谷川委員 ただいまの御答弁は、いままで研究施設としてあったものを、研究所として独立機関にするのだというような意味の御答弁に受け取りましたが、人員の問題その他についてはどういうふうにお考えになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/40
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041・杉江清
○杉江政府委員 これは研究所になりますと、いろいろ予算的な扱いにおいて異なってくるわけであります。研究施設にいたしましても、現在のところ部門はそのままでございますので、教官定員はふえませんけれども、事務官、雇用人というような、そういった研究所の運営に必要な管理部門の定員増がなされるわけであります。全体で、教官を含めての定員としていままでは十八名でありましたけれども、この研究所への切りかえによって三十三名にふえるわけであります。施設設備についても、今後とも一そうの整備をはかる予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/41
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042・谷川和穗
○谷川委員 それでは、こまかくなっていささか恐縮なんですが、ひとつ東京医科歯科大学の歯科材料研究所の名称及びその目的を改めるということについて内容を御説明願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/42
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043・杉江清
○杉江政府委員 従来はいわゆる歯科材料研究所と言っておったものでありまして、その目的はいわゆる歯科に必要な材料の研究ということが主になっておったわけでございます。ところで実際の研究は単に歯科に必要な研究だけにとどまらず、一般にもう少し広い医療に必要な器具機械の研究にまですでに発足しておったような実態もあり、またそういった広い意味の医療用の器具機械の研究を進めることが必要である。こういうふうな点を考えまして、その研究範囲を一そう広めたわけでございます。具体的にちょっと部門の名称を申し上げますと、金属材料、無機材料、有機材料とか、科学機器とか精密機械とか電気機器とか、こういうような部門に分かれて、医科及び歯科医の用いる材料の研究をすることになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/43
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044・谷川和穗
○谷川委員 それでは、いままでお医者さんの使っておった主として外科的な材料だとか道具だとか、こういうことを含めて歯科大学で研究所をつくって、言うならばメディカルエンジニアリングといいますか、そういう部門を新たにここで研究するんだ、こういうふうに理解すればよろしいわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/44
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045・杉江清
○杉江政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/45
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046・谷川和穗
○谷川委員 それでは、今回のこの設置法の一部改正案の中にございます五つの学芸大学の名称を改める、さらには二十三の学芸学部を教育学部に改める、こういう提案がなされておるのでありますが、この点につきまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。
最近、横浜大学でストライキがあった。現在も続いておるのかどうか存じませんが、ストライキが始まったのは、何か伝え聞くところによりますと、学芸学部を教育学部に改めるということでストライキが起こったんだ、こういうことを聞くわけであります。どうも私は、こういう種類のストライキ自体についていささか奇異に感じるわけなんでありますが、しかし、その裏にはまたいろいろと議論があるのだろうと思うのであります。政府が今回この法律を提案をして名称変更に踏み切ったというのには、もちろん一つには予算との関係があるのだろうと思いますけれども、それと同時に名称を変更する以上は、何か独自な考え方が文部省当局におありになるのだと思うが、その点はどうなんでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/46
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047・杉江清
○杉江政府委員 学芸学部の本来の意味は、必ずしも教員養成をするという、そういう考え方ではなかったのであります。学芸ということばが、学術技芸というようなふうにも通常解されますし、またこの学芸ということばは、外国でいうリベラルアーツの日本訳だというふうな理解もなされておるわけであります。少なくとも新学制発足当時においては、やはりそういう考え方が強かったのであります。それにしても、この学芸学部は国立の学芸学部と公私立の学芸学部とでは性格もまた違っております。新制大学発足当時におきます国立の学芸学部においては、なお教員養成の性格が強かったのであります。しかし、やはり教員養成だけをやるところではないのだ。そのほか、広くそういったリベラルアーツを教育するところなんだ、こういうふうな理解が行なわれておったわけであります。そこで、実際にも学芸課程という、教員にならない者を養成するコースも置かれておったのであります。また、学芸学士を教育学士のほかに出すことも行なわれたのであります。しかしその後の経緯を見ますと、漸次国立の大学における学芸学部は教員養成としての実を明らかにしてまいっておりますけれども、なお当初のそういう考え方の残滓が見られるのであります。現に学芸課程を事実上置いているところもありますし、なお学芸学士を出しているところもあるわけであります。そういうふうな状況にあったわけでありますが、そういうふうな性格のあいまいさが学校の教育において教育者を養成するのだというその目的意識が薄らぎ、また入ってくる学生も自分らが教育者になるんだというそういう意識が薄くなってきた。そういうことがほかの理由とも関連していわゆるデモシカ先生をつくるというようなことの一因をもなしておったと私は思うのであります。そういうふうなことを反省し、やはりこういうふうなあいまいな学部の性格をそのままにしていくことは、本来学部のあり方としても疑問があるし、ましてりっぱな教員をつくるという目的からはきわめて不十分である、その内容も改める必要があるが、その内容の改善をはかると同時にこの名称をも変えて、その目的性格を明らかにする必要がある、こういう意見が前からあり、三十三年の中教審の答申においてはすでにそのことが明らかにされておるのであります。そういう御答申をいただいておるのであります。しかしなかなかそのことは実現いたしませんでした。文部省もそうすることが適当だと考えておりましたが、その後文部省に置かれております教育職員養成審議会等においても、その基本的な考え方を受け継がれていろいろな改善の措置を答申しておられるのであります。最近においては、そういうふうな基本的な考え方に即して教育課程の基準をも御答申いただいたのであります。そしてその御答申いただいた教育課程の基準に基づいて教員養成学部の整備をいまいろいろな面からしようとしておるのであります。本年度予算でまず着手いたしましたのは、この教育課程の基準をもとにいたしまして教官の整備、学科目の整備を、いままでと比べればかなり大幅に実現することになっておるのであります。そういうふうな状況でありますので、その名前も変えていただきたい、こういうことを大学当局といろいろ御相談してまいった。日本教育大学協会というものもございますが、そういった方面とも御相談し、また学長会議学部長会議等においても御相談してまいったのでありますが、基本的な御賛成をいただいたのであります。そこで各大学と具体的に御相談いたしまして、その御了承を得たものについて今回名称変更の措置をとった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/47
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048・谷川和穗
○谷川委員 昨年宮城教育大学というのが設置されましたときに、この大学を学芸大学とせずに特に教育大学としたいというのが、たしか地元から起こってきた要望だったと思うのであります。宮城がそういうふうなことを言ってきたのは、教育の目的をはっきりさせたいという学校側の考えであったと思うのであります。つまり言いかえれば、目的使命が学芸学部ではどうもはっきりしない、宮城教育大学というのは学校の先生になる教員養成を主たる目的でつくる学校なんだというので、この目的使命をはっきりさせたいという意味で、名前を学芸大学でなくて特に教育大学にしたいのだ、これが地元の要望であったと思うのでありますが、間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/48
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049・杉江清
○杉江政府委員 私はそのように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/49
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050・谷川和穗
○谷川委員 それでは現在学芸学部あるいは学芸大学というのは必ずしも教員養成機関だとは言い切れないわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/50
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051・杉江清
○杉江政府委員 現状の実態は教員養成大学学部でございます。ただ先ほど申し上げましたように、発足当時いろいろな理解が行なわれており、ごくわずかでございますが、一部その残滓が残っておる。全体の国立の教員養成学芸大学及び学芸学部の現在における実態は教員養成学部でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/51
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052・谷川和穗
○谷川委員 最初に私触れさしていただきましたように、現在の日本の教育の中では、この質の向上をはかるということが非常に重大なことだ、こう思うわけであります。これはおそらく文部当局においても同じように考えておられるのだと思うのでありますが、質の向上をはかるには何といってもりっぱな先生を確保するという教員の資質の問題、これが一つあると思う。もう一つやはり何といっても大事なことは、教員をいかに養成していくか、養成課程の中の質の向上ということもあると思うのであります。しかし先ほどからのお話をお伺いしておりますと、教育をささえる最も大事な教員の養成において何か混乱をしておるようなことを感ずるわけでありまするが、しかし一面、日本の現在の教員養成というのは、私は二つの面で戦前になかったようないい面もあったと思う。
その一つの面は、まず広く一般教養を教師たる者に身につけさせる、これが一つあると思うのであります。それからもう一つは、免許を取得するにしても非常に開放性であって、どこからでも免許を取れるような形になっておる。これもなかなか考え方としてはいいと思うのです。しかしよき制度も、現在の現実の姿を見ておりますと、戦後の教員養成制度の性格がいささかどうもあいまいであったというか、教育内容も——私は教職というのは専門職だ、とう考えますが、この教職の専門性を確立するためにはちょっと内容的に充実を欠いておったきらいも一部ではやっぱりあったと思うのであります。そういう意味から、おそらく宮城大学なんかは特に、現場で教育者をつくるのだ、教員養成機関たる大学にするのだという御要望が非常に強くて、いまのような名称からしても教育大学というような名前をつけたいんだというふうなことであったのだろうと思うのであります。
ところで、東京にある教育大学なんでありまするけれども、これは教員養成の大学だというふうに判断をしてよろしいのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/52
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053・杉江清
○杉江政府委員 そのとおりでございます。
なお、この際ちょっとつけ加えさしていただきたいのですが、ただいまお話しのありました教員養成という目的を明らかにするということ、そしてそれに伴って名称も変えるということは、新制大学の理念である一般教養を軽視する結果になりはしないか、広い教養を身につけさせる、そういう新制大学の理念を無視して、何か狭い教育に必要な教養を詰め込ませることになるんじゃないか、そういうふうな理念が一部にあることは事実でございます。しかし決してそういうことではございません。そういうことでなくして、大学一般に通ずる一般教養のあり方は、学芸学部を教育学部に直してもこれは変わらないのであります。たとえば現在においては三十六単位の一般教養をする。人文、社会、自然にわたって一般教養をするということは、これは学部の名称を変えましても、目的を明らかにしても全然変わりないのであります。むしろいまの問題は、他の学部ではその目的、性格はおおむね明らかであります。しかし学芸学部ではかえって他の学部以上にその目的、性格が明らかでない。むしろ他の学部並みに目的、性格を明らかにして、それにふさわしい教育をしていこう、そういう考え方をとって今回の措置をいたしておるわけであります。
なお、先ほど東京教育大学は教員養成学部であるかという御質問であったわけでありますが、私、ちょっと聞き間違えまして、東京学芸大学は教員養成学部であるかということと思って答弁を間違えました。現在の東京教育大学は、これは教員養成学部とは言い得ないと思います。その実態を見ますと、かなり教員になる者も多いのでありますけれども、たとえば教職単位も必修にさすということは必ずしも行なわれておらない。そういうふうなところから、教員養成学部である、こういうふうなことは必ずしも言えないと思います。訂正いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/53
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054・谷川和穗
○谷川委員 私は先ほど東京教育大学は教員養成機関であるかどうかというのをお聞きしたのは、実は最後に局長がお触れになった教えておる内容を、ちょっと聞きたかったものですからお尋ねしたのですが、いまの御答弁ではっきりいたしました。
ところで、局長の御答弁をお聞きしておりまして感じたことでありまするが、私も、まことにかたい表現でありましたけれども、教職の専門性というようなことばを使わしていただいたわけでありますが、私が申し上げました教職の専門性というのは、人を教える、特に義務教育へ通う年ごろの児童を教えるということは、専門的な知識を必要とする、こういう意味で申し上げたわけでありまして、先ほどの局長の御答弁をお聞きしておりましてふと感じたのでありまするが、戦後の日本の教員養成といいますか、その課程の中でも採用されておる広い全人格的な教育をするのは、名称が変わってもやるのだというお話でありました。したがって、ちょっと世の中で一般の人々がすぐ頭に置くことは、かつての師範学校制度というのは非常に専門性に力点が置かれておって、どちらかというと、戦後の教員養成課程から見ましても、さっき局長が指摘をされましたその他の全人格的なところはむしろ切り捨てて、ただひたすら、いかに人を教えるかというところに、その専門性にのみいささか重点が置かれたきらいがあると思うのでありますが、今回の名称の改名といいますか、改称といいますか、これは決してかつてのそういうような狭い意味の師範学校制度というか、そういうような教育課程というか、養成というか、そういうものを考えておるわけじゃないと理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/54
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055・杉江清
○杉江政府委員 そのとおりであります。確かにかつての師範教育には、御指摘のような点があったと思います。なお、かつての師範学校においては、その教育内容等についても、かなり国の強い規制があったのであります。しかし今度学芸学部を教育学部に名前を変えましても、それがかつての師範学校の教育のような方向に中身を変えようとする意図では毛頭ないのであります。やはり小、中学校の先生も、戦後は大学において教育をし、養成する、こういう大きな転換を遂げたのであります。大学において教育をするということは、大学の他の学部と同様な基本的なたてまえに立って、その教育が行なわれるわけであります。やはり大学においては一般教養が尊重されるし、またその教育内容については、基本的には大学の自主的な立場を尊重する。国で何か細部にわたってまでも規制するというようなことはしない、大学の自治を重んずる、こういうふうな基本的な立場に立って行なわれるものであります。ところで問題は、いままではほかの学部では、その目的、性格も明らかになっており、それに応じてその学部を設置するときに、こういうふうな学科、また教育内容で、そして施設、設備の基準はどうであるかという、いわゆる設置基準が一般にあるわけであります。
〔委員長退席、上村委員長代理着席〕
ところが学芸学部の設置基準はなかったのであります。全国に二十以上もある学芸学部の設置基準がなかったということは、きわめて異例なことであります。それはなぜかというと、やはりこの学芸学部の目的、性格が明らかでなかったために、設置基準がつくり得なかったのであります。そういうふうなことがあって、少なくとも他学部並みにその目的、性格も明らかにし、それに応じて内容も明らかにするということが必要だ。設置基準もそれに応じて他学部並みの設置基準はこれをつくらなければならぬ、こういう考え方でいま整備を進めておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/55
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056・谷川和穗
○谷川委員 私はこの教職の専門性ばかりを論議しようとは思いません。やはり戦後新たに採用されました全人格的な教育といいますか、教養といいますか、それをまずこの学校の先生になる人に身につけていただいて、さらにそのあとにそれに加えて専門課程に進むといいますか、教職の専門性というものを身につける、そして生徒に当たっていただく、こういう考え方でいきたいと思います。ですから文部省といたしましてもその点はくずさないといういまの局長の御答弁でしたので安心をいたしました。ただ、あえて申し添えるならば、その全人格的な教育に対してはいままでなかなか熱が入っておったけれども、逆に専門性の点がいままでわが国の教員養成機関の課程においてこの点はむしろちょっと低きに失しておったのではないかという感じさえするのであります。ユネスコ、ILOの先般出ました教員の地位に関する勧告案の中でも、やはりこの教職の専門性というものは強調されておるわけでもありますし、今日のように社会が各方面において非常に進歩、発展が激しいとき、あるいはいろいろ文明度が進んできて、子供たちの心の動きというものも非常に動きやすくなってきておるようなとき、あるいは社会の教育に対する需要というものが今日ほど高まっておるとき、こういうときにやはり教職の専門性というものも、この際再検討していく必要もあるのではないかという感じを、私は非常に強めております。そういう意味から言いますと、教員養成を目的とする大学その他の大学における現在の教員養成の免許の基準とか、あるいは専門科目の内容など、どうも私にはまだ少しあいまいで、いままであった過去三つの審議会の答申も、おそらくこの辺を特に問題として取り上げてきて、あの相次いでの三つの答申になったのではないかというふうに判断をいたしております。だからいま局長の御答弁の中にも学芸学部というのは目的、性格がはっきりしなかったから基準もつくれなかったのだ、こういうような御答弁です。やはりせめて他学部並みの基準というものは当然持つべきだ。ましてやそれが先ほどから議論いたしております教職の専門性ということを強く訴えなければならぬ今日ならばなおのこと、やはり整備さるべきだというふうに私は考えております。たとえば幼稚園の教諭だとかあるいは小中学校の教諭だとか、こういう小さい子供に接触する教諭であればあるほど、専門性というものは叫ばるべきだと思いますし、あるいは特殊教育においても、今日これは非常に重大な問題でありますが、やはり教育の専門性というのは大きく取り上げらるべきでありますし、さらには時代の要求であります技術革新、これに常につながりのありますたとえば工高教師だとか、あるいは体育芸能、知育、徳育、こう言いますが、こういった方面の専門性も、これもまたやはりこの際教員養成課程においては十分検討していただかなければならぬというふうに考えております。
時間もまいりましたので、この辺で私の質問を終わらせていただきたいと思いますが、最後に、教育は国家の根底をなすものであり、その教育の成果を高めるのはやはり教師の資質や、あるいは能力に負うところがまことに大きいと言わざるを得ないと思うのであります。教員養成制度における国民の関心がきわめて高い。ことしの二月に至ってから新聞各紙で報道されておりまする教員養成課程に対するいろいろの論評を拝見をいたしてみましても、いかに国民の高校教員養成に対する関心が高いかということがうかがい知れるわけであります。教職における使命感が高く、かつ全人格的教養を同時に身につけた教育者を一人でも多く養成するため、何が必要であるか、この際、特に文教の府にある方々の一そうの御努力を期待をいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/56
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057・上村千一郎
○上村委員長代理 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/57
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058・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大学局長のほうに、国立学校設置法を審議するについて、ひとつ資料をお願いしたいと思います。
それは、国公私立別の大学の数とその現在の学生定員。同じく夜間のそれを。それから短大も同じく国公私立と夜間のそれぞれの数と、現在の学生定員というのをひとつお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/58
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059・杉江清
○杉江政府委員 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/59
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060・二宮武夫
○二宮委員 私もちょっと資料要求をしておきます。
これは法案関係の資料要求ではなくて、私立大学の助成について、振興対策調査会のほうが早急に資料を出そうというような空気になってまいりました。本会議の答弁におきましても、文部大臣の答弁よりも首相の答弁のほうが、あるいは参議院における文部大臣の答弁のほうが、むしろより積極的になっているような感じがしたわけなんですが、ただ、私がここでお願いをしておきたいのは、私学の中にも種々雑多なものがあるということで、ずっと以前から問題になっておりました例の国士館大学の件ですが、これに対する資料をひとつ。これは助成をして介入せずという大学自治に対する基本対策としましては了解ができますけれども、私立学校法の第六条によるところの教育の実態調査、あるいは報告を求めるという所轄庁のやるべき仕事というものにやや文部省は消極的ではないかという感じがするのです。そこでお願いしておきたいのは、国士館大学における柴田学長の実践倫理の教典の中に、「革命はいかにして起るか」という本人の著書がございます。それから「日本はこうすれば立直る」こういう二つの著書があって、これを教典として実践倫理の問題の講義をやっている。もしこれに違反をし、批判的な態度をとると、教授も、あるいは生徒も、退学、停学、あるいは解雇になる。こういうようなことは非常に私どもとしては納得がいかない。しかもその中には、国内治安対策として、共産党は非公法化し、共産党並びに社会党はこれを中ソに引き渡せというような極端なことばを使って、その定款を見ると、学校教育法並びに日本国憲法、教育基本法、そのほかに基づいてつくったという定款になっている。その中の理事には、文部省のかつての高級官僚、高級公務員であった人が入っておる。現職の参議院議員が理事に入っておる。これは内容を見て、はなはだけしからぬ教育が行なわれているのではないかということがございますので、委員長にお願いしたいのは、資料として、いま申し上げました著書二点、それから、もう少し学校の教育実態というものを、管理局を通してひとつ調査をして、その調査の結果を御報告をいただきたい。一方的な資料では私どもの批判がまた公正を欠くうらみがございますので、その資料の要求をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/60
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061・上村千一郎
○上村委員長代理 承知いたしました。——資料は、参考としてという意味でいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/61
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062・二宮武夫
○二宮委員 ええ、いいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/62
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063・上村千一郎
○上村委員長代理 ただいまの資料の要求中、著書の件につきましては、もし文部省当局にそういうものがあれば、参考としてお示したまわれば幸いだ、この程度でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/63
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064・二宮武夫
○二宮委員 文部省は私立学校、私立大学等の学校法人が経営しているような学校の教育実態については報告を求め、調査をするという権限が第六条に明確にある。したがって、こういうものについてはどういうことをやっているのか。全然関知しないというようなことではなくて、報告を求めてもいいと私は思うのです。そこで、いま申し上げましたようなものを、教育の教典として、教科書用として、教科書がわりとして使っているというような事実がもしあれば、それをひとつ報告を求めて、その資料を出してもらいたい。著書はあるのですから、その著書をひとつ。そういうものを文部省から要求して出してもらっても、これはあまり大学自治に介入したということにはならぬ。所轄庁としての当然の責任ではないかというふうに考えているのですが、もし異存か何かあれば、それから法文解釈上に疑義がございましたならば——これは杉江さんの担当のほうではない。管理局の担当だ。——大臣、そんなところで相談しないで、この要求を一ぺん中へ持って帰って、法文解釈やそのほか、私の要求したことが無理なのかどうか、出せるのか出せないのか、相談してください。私は出してもらいたい。そういう教育が行なわれている。しかも、自民党の議員の中にはずいぶんその中に顧問がいる。名前は申しませんけれども、顧問がいる。相当大ものの顧問もこの中にいる学校なんですから、そういうものは所轄庁として内容は全然関知しないということでなくて、介入するというような意味でなく、自治を侵すという意味でなくて、やはり第六条の解釈をすなおに解釈して、ある程度の報告を求めることができるのではないかと私は思いますから、そういうことについては、要求しておきますので、文部省の内部で検討していただいて、その結果で処置してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/64
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065・川崎寛治
○川崎(寛)委員 もう一つつけ加えまして、私のさっきの資料に、国公私立大学の四十年度と四十一年度の入学金と授業料、それをあわせて資料として出してほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/65
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066・上村千一郎
○上村委員長代理 次会は、来たる四日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X00619660302/66
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