1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月二十五日(金曜日)
午前十時五十九分開議
出席委員
委員長 八田 貞義君
理事 上村千一郎君 理事 小沢佐重喜君
理事 谷川 和穗君 理事 八木 徹雄君
理事 川崎 寛治君 理事 長谷川正三君
大石 八治君 大野 明君
久野 忠治君 熊谷 義雄君
坂田 道太君 床次 徳二君
中村庸一郎君 西岡 武夫君
松田竹千代君 松山千惠子君
山村新治郎君 落合 寛茂君
河野 密君 松原喜之次君
鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 中村 梅吉君
出席政府委員
文部政務次官 中野 文門君
文部事務官
(大臣官房長) 安嶋 彌君
文部事務官
(大学学術局
長) 杉江 清君
委員外の出席者
文部事務官
(大学学術局教
職員養成課長) 安養寺重夫君
専 門 員 田中 彰君
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三月二十五日
委員重政誠之君、濱地文平君及び船田中君辞任
につき、その補欠として山村新治郎君、西岡武
夫君及び大野明君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
同日
委員大野明君、西岡武夫君及び山村新治郎君辞
任につき、その補欠として船田中君、濱地文平
君及び重政誠之君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/0
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001・八田貞義
○八田委員長 これより会議を開きます。
国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑を行ないます。通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/1
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002・長谷川正三
○長谷川(正)委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案について若干質問を申し上げまして、政府のお考えをただしたいと思いますが、すでにこの法案については何人かの方が御質疑をなすっているわけで、その中でいろいろ明らかになってきたわけですけれども、特に私はきょうは、学校名ないし学部名の変更、学芸学部を教育学部に直した提案に対しまして二、三質問を申し上げたいと思います。
先般どなたかの御質問の際に、杉江局長の御答弁の中で、学芸学部を教育学部に変更する件について、それぞれの該当大学と十分相談をした上で合意に達したものを提案をしておって、そういう点でまだ合意に達してないものは残してある、こういうような御答弁があったように存じますが、文部省側として、教育学部に変更するように要請をした学校はどことどこ、そして今回具体的に提案になったものが出ているわけですが、落ちたものはどこ、その間の事情をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/2
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003・杉江清
○杉江政府委員 名称変更につきましては、約一年間関係大学、関係学部、学長、学部長さんを中心にお話し合いを進めてきたわけであります。また教育大学協会等にもお伺いをして御相談をして進めてまいった。いずれも基本的には御了解をいただいたのであります。ただ、やはり学校の名称、学部の名称、これはそれぞれの大学の大きな問題でありますので、また各大学において十分御討議いただいたのであります。その結果、学芸大学におきましては、大阪学芸大学が大学名称及び学部名称の変更について議がまとまらなかったのであります。そこでこの点については、今後の問題として、今回は改称いたしておりません。東京学芸大学については、これは名称変更については基本的には御賛成いただいておるのであります。そこで学部名称については、教育学部と直すことについて御賛成いただいたのでありますけれども、大学名称は、これはほかに東京教育大学がありますので、どうもいい名称が見つからない。ひとつ今後も検討するから待ってもらいたいと、こういう御意向に即して、大学名称の変更はいたさないことにしておるのであります。もう一つ、秋田大学の学芸学部について、やはり学芸学部のほうで意見がまとまらなかったので、この名称はそのままにしております。学芸大学は全国で七つあるわけであります。そのうちいま申し上げたものが例外になっております。学芸学部は全国で十八あるのでありますが、秋田の学芸学部の例外があったわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/3
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004・長谷川正三
○長谷川(正)委員 そうしますと、学芸大学と名のつくものについては、全部教育大学にするように要請をされ、そのうち東京学芸大学は名称のいいのが見つからぬから待ってくれということであり、秋田大学は学芸学部の教授会の賛成が得られないということで、一応見送りになったということでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/4
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005・杉江清
○杉江政府委員 それと、大阪学芸大学の大学名称と学部名称については、そのままにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/5
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006・長谷川正三
○長谷川(正)委員 大阪学芸大学がやはりそのままですね。これも賛成を得られなかったという理由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/6
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007・杉江清
○杉江政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/7
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008・長谷川正三
○長谷川(正)委員 学芸学部を教育学部に変更することについては、全部同意を得られたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/8
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009・杉江清
○杉江政府委員 学芸学部を教育学部に直すことについては、いま申し上げましたように、大阪学芸大学の学芸学部と、秋田大学の学芸学部の名称変更については、賛成を得られませんので、そのままにしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/9
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010・長谷川正三
○長谷川(正)委員 それでは、今後大阪学芸大学及び秋田大学については、文部省としてはどういう方針ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/10
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011・杉江清
○杉江政府委員 今後とも十分大学と話し合いを進め、御納得いただくように、十分の努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/11
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012・長谷川正三
○長谷川(正)委員 いまあげた三つの大学を除いた他の学芸学部は、全部教育学部になるというわけですが、その中で非常に問題が起こった大学が幾つかあるように聞いておりますが、その実情を文部省ではどのように把握されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/12
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013・杉江清
○杉江政府委員 経過においてはいろいろありますけれども、しかし最終的には皆さんそれぞれ御了解いただいて、問題はないと承知しております。ただ横浜国立大学の学部名称変更については、教授会としては正式に御決定になったのでありますけれども、学生がこれを承知せず、この一月以来つい数日前までかなり激しい紛争が生じておったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/13
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014・長谷川正三
○長谷川(正)委員 その後伺いますと、学部長その他責任者が、そういう事態に対して辞表を出しているというようなことも伺っておりますが、なぜそういうことになったか、その点について文部省としてはどういうお考え、あるいはどういう責任を感じておられるか、その点をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/14
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015・杉江清
○杉江政府委員 まず教授会で正式に決定されながら、学生の反対によって一月中旬から授業が行なわれておりません。しかも学生は学校の自主管理と称して、事実上学芸学部の校舎を占拠し、教官をも中に入れないような激しいやり方をしてまいりました。教授会としてはその説得に努力されたのでありますけれども、なかなか学生は承知せず、つい数日前までそういった非常に異常な事態が続いたのであります。しかも横浜国立大学の試験は目前に控えておる、すみやかな解決をはからなればならぬ、こういう立場からその責任を感じられたというのが第一の原因ではないかと私は考えております。それから実態の面におきましては、学生側の主張として、教授会の決定があまりにも唐突ではないか、十分な審議が尽くされてなかったのではないかということも強く主張しておったのであります。そういう点において教授会内部においてもいろいろ議論もあり、その点において教授会内部の十分な意見統一もできなかったというような点も、辞任された原因をなしているのじゃないか。私は、大きくいっていまの二つの点が辞任された原因ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/15
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016・長谷川正三
○長谷川(正)委員 教授会が非常に唐突にきめたということが、学生側の非常な批判の一つの問題になっておるといういまの御答弁ですが、実情は、教授会はどうであったのか。学部長としては、不十分な審議の上に答申をしたというような事実があるのかないのか、その点はどう把握されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/16
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017・杉江清
○杉江政府委員 教授会は、一月六日の教授会において、名称変更についてこれを可とする決定をされたのであります。それ以前において、教授会において十分な審議をされてなかったことは事実のようであります。その点においてもう少ししばしばやられたほうがよかったのではないかという意見もあるし、結果から見ればそういった点も反省されると思います。ただ私は、この問題についてはもう一年前からいろいろお話し合いを進めておった、で、そのことはもう広く関係者に周知されておったところだと思います。成規の教授会においての審議は十分でなかったとはいいながら、そういうことが問題になっておる、そして大勢としてはそれが変更の方向に進んでおるということは、私は関係者の方々は多く了承されてきたところだと思うのです。そういう状況を考えますと、正式の教授会における審議は十分でなかったとはいいながら、しかし一月六日の正式の教授会においては成規の手続においてその審議を了され、正式の決定をされておるのでありまして、私はその間重大な誤謬ないし不備があったとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/17
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018・長谷川正三
○長谷川(正)委員 教授会は形式的には一応決定をして答申したかっこうになっておるけれども、少なくとも他の大学に比べまして横浜国立大学の場合には、非常に不十分な審議であったということは局長も認められておるようです。そういう事実について、こういうことを行なう場合には、文部省は十分実情を把握し、慎重な態度をもって行なわないと、要らざる紛争を起こし、その間に使われるエネルギーあるいはその間に失なわれる時間は実にはかり知れないものがあると思います。教授を悩ませ、学生を苦しめる、こういう行政のあり方自体を文部省としてはまず第一に十分反省をする必要があるのじゃないかと私は思うのです。と同時に、少なくともそういう問題が起こっていることを察知すれば、現に秋田その他、今回は見合わしているところもあるのですから、横浜についても配慮をすることが決して時間的にも間に合わないはずはなかったと思うのですが、その点はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/18
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019・杉江清
○杉江政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題は一年前からしばしばいろいろな会合を開いて御相談申し上げてきたところであります。学内でそれをどうするかということは、それこそ私は大学自体の御判断にゆだねるべき課題だと思います。そこで学部の御判断によっていまのような決議をされたということについては、それでよろしいのだという御判断が私はあったと思うのですが、そういうふうな御判断に対して文部省がとやかく言うべき立場ではないと私は考えます。もちろん今回の紛争はまことに遺憾なことであり、名称変更がそのような紛争の原因をなしたのは残念なことでありますが、私はそれは単にそういった手続だけの問題ではなくして、もっと本質的な問題がからんでおると思います。と申しますのは、結局、名称変更そのものに反対だ、この際、教授会は決定機関だけれども、それを撤回させようという強い要求があって、それが撤回させる一つの——私はあえて口実と言いたいのでありますが、いまのような点についての非難がなされておるのは事実でありますけれども、本質的にこの名称変更に反対しよう、そのためにはあえて手段を選ばないという学生の行き方そのものに、私は、この紛争は重大な反省を求めていると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/19
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020・長谷川正三
○長谷川(正)委員 私がもう一歩突っ込もうと思っていた問題に局長も触れた御答弁をいただいたわけです。しかしその問題に入る前に、なるほど文部省側としては一年前から各大学に機会あるごとに問題を投げかけてあるのだから、あとは大学自体がどうこなそうとも、それは大学の自主性である、それもけっこうだと思います。しかし同時に、形式的に手続を踏んであるからそれでいいというものでなくて、やはり文教行政の府にある責任者としては、常に生きた実態を正しく把握しながら不祥の事態が起こらないような指導をするということは当然の責任であると思うのです。その点で、このような事態が起こったということ自体、一歩進めてこの問題の本質に入る前に、行政のあり方として反省すべき点があるのではないか、こう思いますが、そうお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/20
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021・杉江清
○杉江政府委員 名称変更に関連してあのような紛争が生じたこと自体非常に残念なことであり、その点において私どももいろいろな点を反省しなければならないと考えております。ただ私は、少なくとも文部省の立場でこの問題を扱うやり方、手続において遺憾な点があるという反省は、率直なところいたさないのであります。というのは、この問題はもう前からの問題で、できるなら一年前にもやりたいということで、ある程度そういうお話し合いもしてきたような問題なんです。しかし一年前においては諸般の状況が伴わなかったから、そこでむしろいろいろな問題の実施を一年延ばしまして、今度はひとつ十分お話し合いをして御納得を求めて、スムーズにやりたいということで私は最善の努力をしたつもりであります。そういうふうなことから各大学でそれをどう扱われるかというようなことまで、私どもはむしろすべきではないという立場でやってきておりますので、この問題の扱い方について私はこの程度で許されるのではないか、率直にそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/21
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022・長谷川正三
○長谷川(正)委員 杉江局長がそういうお考えであれば、私はそれはそうではないと思うのですが、そういうお考えだということが明らかになれば、それはやむを得ないと思います。たとえば注意しておったから事故が起こっても責任がないというものではないと思うのです。それと同じような関係で、この問題は念を入れてずっと前からおやりになり、示されておっても、実際にそういう事態が起こってしまったということについては、やはり責任があると思うのです。しかし私はこの問題については、すでに杉江局長のお考えは、私はそれでは遺憾であるということを申し上げて、手続を十分やるにしても、さらにその実態というものを考えて、こういう不祥の事態の起こらないように、行政の運営をし、そういう危険が察知されれば、無理してやらなくても、もう少し十分討議して、落ちるところに落ちたときにやるということでもいいはずなわけです。そういう配慮が欠けているという点は、一般的な行政のあり方として私は今後特に文教、教育行政については慎重な配慮をしてほしいということを申し上げます。
しかしこれは一般的な行政の問題ですが、いま局長の触れました本質の問題に一歩入ってみたいと思いますが、なぜこのように学生が三カ月間にわたっていわばストライキというような状況に入ってきたのか、また教授会が非常に審議が不十分であったということを、あとになって学部長はじめ認めているというような事態が起こってきたか、しかも文部省はあくまで一ぺん了承を得たのだからといって、鬼の首を取ったようにしゃにむに立法化しようとするのか、その辺に文部省の教育行政に対する非常に権力的なやり方というにおいを強く感ずるわけでありますが、その点に対しまして私はいま二つのことを申し上げたわけで、学生側が本質的になぜそのように反対することになったのか、それをどう把握すればいいのか、それからもう一つの問題は、いま申し上げたように権力的なにおいがありはしないか、この点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/22
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023・杉江清
○杉江政府委員 繰り返し申し上げますように、一年間お話し合いを続けてまいった、それで最終的に正式の教授会で決定されたのであります。しかし、それは教授会としてはそのことについてこれを再検討するとかいうような動きは全然示しておられないのであります。私どもはやはりそういった正式の教授会の決定の線に沿って事を進めていくというのが行政の当然の立場だと了解しております。決して文部省がその教授会の御意向に対してさからったり、また特別な意図を加えたりするようなことは全然ないわけでありますから、そういう意味において、この問題の処理について私は権力的だとおっしゃる意味が十分了解できないのであります。
それから学生がなぜこれに反対するかという点については、これは推測でありますけれども、やはり名称変更についての一般の反対とおそらく考え方を一にしておるのではないかと思うのであります。名称変更についての反対の一般的なものとしては、これを名称変更することによって、かつての師範学校タイプの教育が行なわれるのじゃないか、そういう点が最も基本的な反対の理由だと思います。そういう点と関連するのでありますけれども、学芸学部で教員に必ずしもならない者までも入ってくる余地を残し、また教員養成学部で要求される教職科目等も履修しないで卒業できる道を残しておいてくれというような主張も、それに関連してあるのではないかと思います。それから学生のほうの意見として、それほど強いとは考えませんけれども、いままである教育学部というのは非常に教官組織等が貧弱であります。そういった、すでにある教員養成をしておる教育学部のように名称変更によってかえって教官組織、規模等が縮小されるのではないか、そういうふうな懸念もあるいは加わっていたかと思います。大体以上のように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/23
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024・長谷川正三
○長谷川(正)委員 旧制師範の復活ではないか、また大学としての広い学問探究から、非常に狭い、いわば職人としての教師養成というような狭い道に追い込まれていくのではないか、こういったことが学生側の大きい関心ではないか。またそれに伴って、いまちょっとおしまいのほうがよくわからなかったのですが、学科や科目、そういうものの変更に伴う人事問題等を心配しておるのではないかというようなこともいまちょっと言われたと思うのです。おそらくそういうことはすべてやはり私も学生側が反対をする重要な原因の一つだと思います。そこで私どもも、学生側の意見を詳しくは知りませんけれども、同様な心配をこの問題については持つわけです。そこで、ほんとうはこれは文部大臣にお伺いしたいのですが、大臣がまだお見えになりませんから、局長なり次官からお答えを願うよりしようがありませんが、そもそも戦前の旧制師範における教員養成と戦後の新しい憲法下における教員養成との根本的な考え方の相違、あるいはその学問のしかたの違い、それをどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/24
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025・杉江清
○杉江政府委員 根本的な相違は、戦後における教員養成は大学においてこれを行なう。戦前はこれを大学において行なわなかったのであります。戦後はこれを大学において行なうところに根本的な相違があります。大学は、学問、教育、研究の最高の学府であります。そして、ここには大学の自治が認められております。そういう大学において教員養成もやるんだという点が最も大きな相違であり、また大学でこれを行なうという限りにおいて、かつての師範学校のような教育に復活するという心配はきわめて薄いと考えてよろしいと私は思うのであります。
それから教育学部にすることによって、何か職人養成のような考え方が入ってくるんじゃないかという御懸念もあるわけでありますけれども、大学において教員養成を行なうということは、大学一般の原則が適用されるということであります。たとえば、一般教養も他学部と同様な一般教養が行なわれるわけであります。新制大学の一つの理念は、教養豊かな人間をつくっていこうという理念があるわけでありますが、その基本的な考え方は、教員養成学部においても当然適用されるのであります。そういう点で戦前とは非常に大きな相違があるわけでありますし、また大学において教員養成を行なうというその一点から、いろんな御心配も多くは杞憂だと私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/25
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026・長谷川正三
○長谷川(正)委員 非常に抽象的な御答弁なんですが、それじゃもうちょっと角度を変えて伺いますが、旧制師範学校における教員養成の致命的な欠陥、あるいは逆にこういう点はたいへんよかったと思っているところがおありになれば、その両面についてどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/26
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027・杉江清
○杉江政府委員 旧制師範学校の教育においては、教育内容を基本的に国できめておったのですが、そのきめ方においては、やはり当時における国家主義的な色彩が多分にカリキュラムに浸透しておったのであります。そして一般教養という点についても、当時師範学校における一般教養の考え方というのは狭かったと私は思うのであります。大きく言いましてそのような点について欠陥があったと思います。よかった点といえば、やはりその教育の目的もはっきりしておった。それからその教育課程が教員になるにふさわしいカリキュラムが組まれておったということは、一方において欠点もありながらも、たとえば小学校の先生に必要な資質として、音楽もできる、体育もできるとか、全教科にわたって必要な教育を一応はできるよう配慮されておった、そういうふうな点は長所であったと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/27
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028・長谷川正三
○長谷川(正)委員 いまの御答弁で、特に欠陥として、教育の内容を国がきめて、非常に国家権力の統制といいますか、そういうものの支配の中に教員養成が行なわれる、このことが一番欠陥である。戦後は、教員養成も学問の自由というものが保障されているところで行なわれる。そこが本質的な違い、こういうふうにおっしゃったわけでございますが、まさにその点に今回の横浜国大の問題にしても、あるいは広く学部の変更に対して、単に看板が変わるだけで何でもないじゃないかと言えばそれまででありますけれども、非常に私どもが心配するのはこの点にかかってくるわけであります。大学という名前は残しておるけれども、教員養成という目的大学にすることによって、いま文部省が用意をされているという教員の免許法等と関連しまして事実上大学の学問の自由も自治もそこなわれて、全く国家権力の目的に従った教科目だけを押しつけられて、それだけで教育をされる。事実上旧制師範と同じような、自由な学問の探究の素養とか、あるいは社会科学的な教養とか、そういったものがだんだん狭められていくのではないか。このことが非常に私どもとしては心配になるわけでありますし、戦前の教育がある面では非常な効果もありましたけれども、ああいう大きな戦争の惨禍に一億に近い国民があげて引きずられていっても、その誤謬を途中でみずから訂正することができなかったような深刻な反省の上に立って、教員養成というものは大学で行なうというふうに大きく切りかわったわけだと思いますけれども、なるほど大学という名称はそのまま残るにしても、教育大学になることにおいて、また教育学部になることにより、教員養成目的のために大学そのものの本質からだんだん離れていく養成機関になるということを強く心配するわけであります。
ことに昨年発足した宮城教育大学の問題につきましては、当時上村委員もいろいろ質疑をされて、そういう点については与党の立場からもただされておるわけであります。その宮城教育大学になってから、宮城教育大学の学生の話を聞きますと、学生生活そのものの中に自由な時間、自由な学問探究の時間が次第に狭められて、昔の師範のような生活、そういうものに類似するような事実の状態があらわれておるということも伺っておるわけであります。私は、この問題は、実際文教委員会として一ぺん十分徹底した調査あるいは直接現地調査等もやったらいかがかと思うわけでありますけれども、そういう心配を持つわけでありまして、もしそういうことがないというなれば、免許法の改正等が用意されておるようでありますけれども、そういうものとの関連を明らかにして、なるほどこれは心配がない、大学としての本質はりっぱに確立されておる、そういうことが明らかになった上にこういう御提案をなさったほうが私はいいと思うのであります。ですから、でき得れば、本法案は、いま私が取り扱った問題以外の部分では大いに社会の要請にこたえ、あるいは前向きに拡充される部分もたくさんあるわけでありますから、本法案について全面的に反対する気持ちはないのでありますけれども、しかしこの学部名の変更につきましては、どうしても私は納得ができないのであります。私の心配が杞憂ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/28
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029・杉江清
○杉江政府委員 学芸学部の性格については前にも申し上げたことがございますけれども、非常にあいまいであります。このようなあいまいな学部というのはほかに例がないのであります。いままでは文理学部がそれに匹敵するかもしれません。しかし、文理学部は、なおもう少しはっきりしている。しかしこれは複合学部でいろいろ問題があるからということで、いま改組を進めておるわけであります。その他私は、学芸学部ほど性格のあいまいな学部はほかにないと思うのであります。むしろ発想としては、そういうふうなあいまいな学部は大学の学部としておかしいんじゃないか。いずれの学部ももっと目的、性格がはっきりしている。だから、ほかの学部並みにその目的、性格を明らかにしたい、こういう考え方を基礎にしているわけであります。
それから教育課程などにおきましても、いずれの学部においても一定の目標を持って、それにふさわしいカリキュラムを組んでいるわけです。そのことは大学設置基準に示されております。ところが、学芸学部についてはその目的、性格があいまいでありますから、ほかの学部が持っておるような設置基準さえもつくれなかった。設置基準さえもつくれないような学部というのはきわめて変則であります。だから、設置基準もない、あるべき教育課程も基本がきまっていない、教官組織も整備できない、施設設備も整備できない、こういうふうな状況であったのでありまして、こういったいわば大学の学部としての特殊部落だと私は思うのです。ほかで当然やっていることがやられていないのです。それで実態は教員養成をやっている。それはこの学部の整備、充実のために基本的な障害になっておる。それを反省し、他学部並みに目的、性格も明らかにし、そして設置基準をつくる。設置基準をつくるということは教育課程の基本がそこである程度示されるということであるわけであります。そういうふうにやろうというのが今回の発想であるわけであります。だから、何かこんなことにして、ほかの学部と違うような特殊の部落をつくろうというのじゃなくて、むしろいままでのあり方が特殊部落だから、一般学部並みにこれを整備し、引き上げようというところに基本的な発想があると私は考えております。
なお、いまの御質問に対しては、まだ一部しか答えてないのでありますけれども、そういうふうな考え方から、むしろ性格を明らかにする。そして目的、性格を明らかにすれば、それに最もふさわしい名称をつけることがいいだろう、こういうことで御相談してまいったわけであります。そういうふうな考え方ですから、教育学部になることによって大学教育の本質から離れていくのじゃないかという御懸念については、私はそういう御心配はないということを申し上げたいのであります。
もう一つ、よくいわれることは、何か教員養成を目的とする学部ということにすると、大学は本来研究の機能があるはずだ。学部は教育の単位でもあり、研究の単位でもある。そういう面がないがしろにされるのではないかという御質問がしばしばあるのであります。しかしこれも、大学の学部である以上は教育の場であると同時に研究の場である。そういうことはこの名称を変更してもそれは厳として動かないことである。むしろいままでのようなあり方では研究も十分できないだろう。教官組織も不十分だし、施設設備も不十分だ。だから目的、性格を明らかにして、それにふさわしい教官組織を整備し、研究のできるような配慮をしていきたい、こういう考え方でやっておるわけであります。だから現実に教育学部にすると同時に、そういった研究機能をも拡充しようという考え方で、宮城教育大学にはいままで学芸学部では設けられなかった研究施設も設けたのであります。それからまた東京教育大学においては大学院もつくったのであります。そのことはやはりこの教員養成をする学部においても研究機能は重要である。だから他学部並みに研究施設を持ち、大学院もつくるという方向で整備をしておるのでありまして、今回の措置によって大学の学部としての実質を高める方向にこそ動くのであって、また動くべきであって、いまのような御懸念はないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/29
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030・長谷川正三
○長谷川(正)委員 まあ懸念はないというお話ですが、むしろいまのお話を聞きながら、私は一そう心配を深める面があるのです。たとえばいまお話の教育学部という名称にすることによって目的をはっきりさせ、そのことによって教授陣の配置なり職員の配置なり、いろいろなそういう充実の問題について配慮する。裏を返すと、名前を変えなければめんどうは見てやらぬ。こういうような行き方で、いよいよ文部省としての権力的な力を発動させ、ひらめかせながら、全部学部名変更に応じさせていく、こういったようなにおいも非常に強くするのであります。
私の伺ったところによりますと、福島大学では、教授会ではこれは反対だ。ところがいよいよ締めくくる段階になって、反対の傾向が非常に強かったけれども、しかしこれは反対をすると、いま局長が言われたように、いろいろな点で整備拡充の計画からはずされる。それではやむを得ないから、賛成というわけにはいかないから、学部長一任というかっこうにしよう。こういうことになって、結果的には学部長の判断という形で教授会の意向がまとめられて、答申をされて、名称を変更することになった。こういう事実も伺っておるわけでありまして、そういう点からも、どうも教育の権力統制をさらに強めていくような感じがしてならないわけであります。
まあ杉江局長自身は、ことばのとおりこれによっていよいよ教育学部というものが、学芸学部の時代よりも大学らしく、学問研究についてももっと純粋にその内容を高めることが保障されるのだ。こういうようにおっしゃっておられますし、主観的にはこれはうそをおっしゃっておるとは思いませんけれども、過去の文教行政全体の流れの中で、この問題につきましてはいまの御答弁をいただきましても、私は逆にそういう面で一そう統制を強められるのではないかというような、心配をせざるを得ないのでございます。したがってこれはいまおっしゃったようなそのこまかい各大学の拡充の具体的な内容、それとさらに先ほど申し上げた教員免許法の問題、そういうものが同時に出されて総合的に審議されることになりますと、私どもが警戒していることは、当局の御配慮で実はそうではない、このようにすべての面で前向きだということがあるいは明らかになるのかもわかりませんけれども、どうも私にはそういうふうには期待できない気がしてならない。文部大臣から、こういうわれわれの心配に対してどういうようなお考えであり、どういうような今後の運営についての御決意であるかを承りたいわけでありますけれども、大臣がいまだにおいでになりませんので、次官なり局長なりから、もし答弁があればいただきまして、一応私の質問を打ち切り、次の川崎君のほうにバトンを渡したいと思いますが、ひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/30
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031・杉江清
○杉江政府委員 いままですでに申し上げたことでございますけれども、名称変更の基本的な考え方は、教員養成の重大性にかんがみましていままで非常に立ちおくれておったこの教員養成の学部を整備充実したい。そのためにはやはり教員養成が大学の学部で行なわれるという実質をあくまで高めていく以外ない。その実質を高めるためには他学部並みにその目的、性格も明らかにし、また教育課程の大ワクについてのあり方をも設置基準によって明らかにし、それに基づいて諸般の整備をしていく以外にない。そういうふうな考え方で今回のことを御相談してきたわけであります。かつての師範学校のような形に戻そうという意図も全然ございませんし、そのことは先ほども申し上げましたようないろいろなことを現にやっておるのであります。研究施設をつくり、大学院をつくるというような方向で整備をやっておるのでありまして、そういうふうな意図は毛頭ございません。ただ、たとえば医師の養成の場合は、ほとんど全カリキュラムをかなりがっちり組んで、医師になるに必要な教育をやっておるわけです。いろいろな資格を養成する場合にはそれに必要なカリキュラムは組んでおるわけです。今後なすべきことの一つは、やはりいままであまりにその学部の性格があいまいであったためにいろいろなことが雑多にやられておった。こういう現状にかんがみまして、やはり教育者になるのだ、そのために教育を行なうのだというその目的、性格のもとに教育内容も反省され、カリキュラムも整えられる、教科施設も整えられるということは、これは当然のことだと思います。ただし、それらのやり方についてはあくまでも教育内容についての大学自治を前提とする、学問の自由を前提としてやる、そのことは大学の学部である限り当然のことであります。ただそれにしても、教員になるに必要な質の向上ということ、そういった大学教育という大前提の上に立ちながら、もう少し充実した教育が行なわれるようにする、こういう考え方を持って事を進めておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/31
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032・中野文門
○中野政府委員 間もなく大臣もこの席にお見えになると思いますが、いろいろと御意見なり御質疑が続けられたのでございまして、私もこの席で拝聴いたしまして、非常に啓発をされる点が多々あったことをお礼申し上げます。
杉江局長のほうから御答弁を申し上げたわけでございますが、私自身ただ一言で申し上げますならば、この質疑応答の間で示されました先生の御意図、お考え等につきまして、まだまだ文部省の態度につきまして、将来をかけて御心配の趣も多多あったように存じます。御意見は十分参考にさせていただきまして、先生の御心配のないように私どもつとめてまいりたい、かように存じますので、御了承賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/32
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033・長谷川正三
○長谷川(正)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/33
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034・八田貞義
○八田委員長 川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/34
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035・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大阪学芸大学、秋田大学、それから東京学芸大学の学部変更について了承を得られなかった、こういう経過について先ほど長谷川委員の質問に対する御答弁があったわけであります。その了承をとれなかった理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/35
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036・杉江清
○杉江政府委員 各大学によってそれぞれ多少の相違はありますけれども、一般的に見まして、やはりかつての師範学校のようなタイプの学部に変化するのじゃないか、こういう御心配が一番多いと思います。それからもう一つは、現にある教育学部——文理学部のあるところの教育学部のように、教官組織も貧弱な学部にされるのではないかという心配。それからムード的なものとしては、いままで使いなれてきた名称を何も変える必要はないじゃないかというような考えもあろうかと思います。大体以上のような点が反対のおもな点だと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/36
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037・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そのことについては、抽象的に高橋委員の質問に対してもそのような二つの理由を答弁されておるわけであります。なおその際に、されなかったために今後の整備の基礎が薄弱になる、このように高橋委員の質問に対してお答えになっているわけでありますけれども、なぜ整備の基礎が薄弱になるか。たとえば予算をつけてやらないぞ、こういうふうなおどかしのつもりなのか、あるいは学科目、教官組織の整備、そういうものが文部省で考えるように進まない、そういう意味で言っておられるのか。その点明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/37
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038・杉江清
○杉江政府委員 理論的に言いますと、その学部の目的、性格が明らかにならない。したがって、教育課程の大ワクもあるべき姿が明らかでない、いわゆる設置基準もきまらない、こういう状況では、これは整備の強固な基礎はないわけであります。そういう点からいままで学芸学部の整備が立ちおくれてきた。大蔵省へ定員要求をしても、一体全体の姿はどうあるべきだ、その全体の基準に当てはめてここが不足だからここを補ってくれ、こういうならわかるけれども、単にある部分だけをつかまえてこれが不足していると言っても、それは了解できないということを言われ続けてきたわけであります。だからそういう意味におきまして、その学部の目的、性格、設置基準、普通の基準に示されているあるべき教育課程の大ワクですね、その程度のものがないということは、やはり整備の基礎が薄いということが言えると思います。ただ、何もできないかといえば、現にその学芸学部といえども、やはり教員養成を主として行なっているわけであります。だから、今回私どもは、また違ったものにしようという考え方じゃなくて、そういう実態に即して、そういう実態だから、その実態を最もよくあらわす名称は教育学部でしょう。そういうふうにすっきりされたほうがよいのではないですか、こう申し上げておるわけであります。したがって、形式的にいいますならば、今後も整備の基礎はきわめて薄弱なものになるし、私どもは、そういった教育の実態を考えて、これに対して全く何もしないというような立場はとり得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/38
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039・川崎寛治
○川崎(寛)委員 教員養成系大学の設置基準がまだきめられていないわけですね。ところが一方、財政当局が統一をせい、整備をせい、こういう要望を言われ続けてきたから、こういうことになりますと、本来大学設置基準があって、それに沿っていくというのがしかるべき筋道であるのに、財政当局の要望にこたえるために文部省はこういう措置をとられようとしたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/39
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040・杉江清
○杉江政府委員 そうではありません。財政当局の……。(川崎(寛)委員「さっきそう言ったじゃないですか」と呼ぶ)いや、それは、現実に教官の定員増などを要求するときに、そういうことを言われ続けておった。そのことは、基本的にその学部のあり方が、他学部に比べて、何といいますか、異なっているということが、財政当局からもそういうことを言われる基礎にあるわけです。だから、その基礎を固めよう、本来言われなくたって当然やるべきことなんだ、学部である以上当然やるべきことを、そういういろいろな弊害もあるからやりたい、やるべきだ、こういう考え方で進めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/40
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041・川崎寛治
○川崎(寛)委員 どうも明確じゃないのですが、それならば、大学設置基準がおくれているのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/41
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042・杉江清
○杉江政府委員 それは学部の目的、性格が明らかでなかったからであります。だから、その設置基準をやろうとすると、議論百出してまとまらないというのがいままでの状況であったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/42
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043・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それであれば、なおさら問題は大きいと思うわけですね。議論百出してまとまらなかった。議論百出してまとまらなかった大学設置基準が、定められない前に、学科目のあるいは教官組織の整備、そういうことで統一的に持っていこうとすることは、議論百出のまとまっていない設置基準自体がまとめられない、おくれておる、そういう基本的なものがありながら、一方具体的には予算面等から制約をしながら、入れもののほうについては追い込んでいく、具体的にいま事実関係で追い込んでいくということ、こういうことを作業としては、プロセスとしてはとっておる、こういうふうに当然理解せざるを得ないと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/43
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044・杉江清
○杉江政府委員 設置基準といいますのは、国公立大学だけのものではなくて、国立私立全体を通じてのものであります。それはいわば最低必要なものを掲げているわけであります。そういうものもいままで他学部並みにはできてなかった。しかしかつて大学基準協会で一応きめられた案というものはあるわけであります。それが非常にあいまいな規定になって、人文、自然、社会全分野にわたって学習するというふうなことになっておるわけであります。そういった基準協会で一応きめられたものがあるけれども、それ自体が非常にあいまいであったということが一つあるわけです。それで他学部に比べても、他学部並みのそういったすっきりした基準ができていないということがあった。そういうことが学芸学部全体の弱い点なんです。今度の国立大学の問題は、実はそういった国公私立を通じた問題以上にいろいろな点で整備されなければならない。一般の国立大学の学部は、やはりそういった最低の設置基準に要求されること以上の整備をいろいろな面でやっておるわけです。教官組織においても施設設備においてもみなやっております。そういう国立大学の整備ということを考えますと、これはやはりもう少しすっきりした目的、性格が明らかになって、教育課程の基準も明らかにして、その上で整備するということがどうしても必要になる。そこで先般教育課程の基準も御答申いただいたわけです。それらに即して国立大学としての整備を、最低の要件にとどまらず、もう少し教官の面においても施設設備の面においても整備して、実態はすでに教員養成という実態を持っているのであるから、そういう実態に即して諸般の整備をしよう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/44
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045・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大学設置基準は私学も含んでおる、そういう意味でいろいろと複雑な要素がある、こう言われたわけです。そういたしますと、なおさら、教員免許の基準等の答申もなされているわけでありますけれども、それらと関連をして、なお私学を含んだ全般的なものとして考えなければならないのを、国立系だけまず整備していこう、こういうことで事実関係を追い込んでおる、そういうことになりませんか。どうもいまの局長の御答弁では、その点きわめて不明確だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/45
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046・杉江清
○杉江政府委員 小中の教員養成としては、現実に国が大部分責任を負っておるのであります。ことに小学校教員の養成については、国立大学において大部分の責任を負わざるを得ないのであります。そういった特殊事情がありますので、国立大学においては、特にほかの公私立における教員養成以上にこれを充実強化していかなければならない、そういう要請に基づいて今回のような措置をしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/46
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047・川崎寛治
○川崎(寛)委員 答弁にはなっていないと思うのです。そういたしますと、小学校についてはむしろもう私立関係でやられることは迷惑だ、むしろ国立で全部やりたい、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/47
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048・杉江清
○杉江政府委員 そういうたてまえはとりません。しかし、事実上私学において小学校のあのように広い範囲の教育をやるということは、現実にほとんど行なわれていないし、今後も行なわれる見通しは私は少ないと思います。特殊な例はあります。だからやっていただけるなら非常にありがたいことなんですけれども、実際経営その他から、私学において小学校の教員養成は私は期待できないと思います。そういう意味において、優秀な教員の養成は、小学校教員においては特に国が責任を負っていかなければならない、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/48
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049・川崎寛治
○川崎(寛)委員 私学でやれない理由は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/49
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050・杉江清
○杉江政府委員 最大の問題は、全教科担任というたてまえから、多くの科目を用意し、多くの教官を用意しなければならない。それは経営上から見ても非常に困難を伴う、こういう点が最も大きいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/50
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051・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そうしますと、免許制度の開放性のたてまえというものは事実上狭められて、今後免許基準の改定あるいは強化ということがなされれば、これまでにおいてさえもそういう状態であれば、今後なおさらそのことが不可能になります。そうすると開放性のたてまえというものは変更になって、閉鎖性のものに事実上なる、そういうふうに見てよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/51
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052・杉江清
○杉江政府委員 だれでもやれるたてまえをとります。それは決して変えませんけれども、私学でそれをやるものが事実上ない、事実上絶対にないというのではないのですけれども、非常に期待できない、こういうのが現実だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/52
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053・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは免許法の改正案が出されていませんので、この点なかなか議論がしにくいわけですけれども、免許法の改正案はいつ建議に基づいて出される予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/53
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054・杉江清
○杉江政府委員 ただいま検討しております。なるべく早い時期に出したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/54
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055・川崎寛治
○川崎(寛)委員 本国会中に出される予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/55
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056・杉江清
○杉江政府委員 検討しておりますが、なるべくならば出したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/56
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057・川崎寛治
○川崎(寛)委員 先ほど来長谷川委員も言われたように、旧制師範教育への復活の懸念、あるいは具体的には大阪学芸大学なり秋田大学、東京学芸大学等が今回の名称変更について応じなかったということの理由は、旧制師範的なものへの復活を懸念しているのだ、それについては十分に了承を得られなかった、こういう結果になっておるわけでありますが、先ほど来の局長の答弁によれば、義務教育の問題についてはいよいよ国家の機関においてやろうという統一的な方向というものが事実上先行しておる、こういうふうに見ざるを得ないと思うのです。
そこで大学設置基準あるいは免許法の改正、そういうものが全部そろった上でこういう名称変更についても疑問の余地のないように、そういろ懸念のないように処置をされることが教育の円満な発展のためには私は好ましいと思う。なぜそういう措置をとられなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/57
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058・杉江清
○杉江政府委員 私が申し上げる前にちょっと課長からいろいろな点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/58
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059・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは根本問題だ。そういう根本の問題を説明員じゃだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/59
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060・杉江清
○杉江政府委員 免許法は国公私立を通じて全体の問題であります。しかし国立においては国立が現にになっている役割り、今後果たすべき役割りを考えて諸般の整備をしていく、その一環として、名称も国立についてこのような措置をとることが適当だ、こういう考え方で進めていくわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/60
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061・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この点は水かけ論に終わると思うのです。そこで、それでは安養寺説明員にお尋ねしたいと思いますけれども、三月十六日の本委員会における私の質問に対して安養寺さんは、「昨年の一月」つまり四十年の一月です。「昨年の一月の下旬に教員養成関係の大学の学長及び教員養成関係学部の学部長にお集まりをいただきまして、」こういう説明をしたということで、名称変更の問題については説明をされたわけでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/61
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062・安養寺重夫
○安養寺説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/62
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063・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは杉江局長はうそを答弁していることになるわけです。同じく三月十六日の本委員会において、高橋委員の質問に対して杉江局長はこういうふうに答弁しているわけです。つまり昨年宮城教育大学のその問題が本委員会でたいへん議論になったときの答弁に関連をしまして、それを高橋委員が質問されましたことについて、局長はこういうふうに言っている。「ただ当時におきましては一般に名称変更をする計画は、まだそのときには具体化していなかったわけであります。」そのときは三月ですよ。三月の末具体化していなかったわけであります。ところが一方安養寺課長の答弁では、一月にそういう具体的な計画について話し合いをしておる。そういたしますと、本委員会でわれわれがいつも指摘をいたしておりますように、あなた方にはこの委員会にかけられたときにその場を過ごせばそれでいいんだという考え方があるわけです。だから皆さん方の答弁に対して、与党の皆さん方からすればあるいはしつこいと言われるぐらいに繰り返し繰り返し追及がなされておるわけでありますけれども、どうですか、一月にやっておきながら三月のこのときにはそういう計画はなかったのだ、これは食い違いじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/63
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064・杉江清
○杉江政府委員 前から御相談申し上げてきた基本的態度を、これを御納得を得てやりたい、もし皆さんの御納得を得ることができなければこれを強行するというようなことは事実上できないし、やるべきでもなかろう、こういう考え方で御相談してまいったのであります。だから当時においてこれをやるという方針はもちろんきめてなかったわけでございます。そういう意味において私は具体化してないというふうに申し上げたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/64
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065・川崎寛治
○川崎(寛)委員 局長が具体的にきめていなかったことを安養寺課長が大学の学長や教員養成関係学部の学部長に対して方針を説明するというのは、それは越権行為じゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/65
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066・杉江清
○杉江政府委員 それは課長から申し上げたのも、私がいま申し上げたような態度でこういうふうに考えたらどうですかということを申し上げたと私は理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/66
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067・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それは本委員会でそういうことの懸念についていろいろと質疑がなされているわけです。なるほどきまってはいません。しかし計画はあったわけですね。計画はあったわけでしょう。予算の方針の説明の際にそういうことをちゃんと担当課長はやっておられる。ところが当時におきましてはそういう計画は具体的にはなかったのだ、これは私は簡単には了承できないのです。一方では具体的に各大学なり学部と相談をされておる、そういう方針を説明されておる。ところが本委員会における追及に際しては具体的な計画はないのだ、こういうふうに答弁しておられる。そのことを十六日の、つい一週間そこそこの前のときにもそういうふうに答弁をしておられる。そういたしますと、局長の答弁というものが責任を持って、そしてまた大臣の答弁というものが旧制師範の復活その他のものではないというふうに言い切ってみても、あるいは先ほど師範教育の根本的なものは教育の国家統制だという点について局長も言っておられるわけだけれども、そういう懸念があるという世間のあるいは大学当局の疑問というものについても、私はそういう態度ではこれはやはり了承を得られない。具体的に事実関係が食い違っているのですからね。明確にしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/67
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068・杉江清
○杉江政府委員 先ほど御答弁したとおりでありまして、そのときも基本的態度としてあくまで御相談の上事を進めていきたいという態度であったわけであります。だからそのとき非常な問題、御異論があればそういうことも思いとどまらなければならないというふうな考え方もうちに含みながら御相談しておったところでありまして、そういうふうにすべきだというようなそういう基本的な方針というものは、まだあの段階においては具体化しているということを申し上げる段階ではなかった。その意味において、私は食い違っているというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/68
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069・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それは納得できないのですよ。そうでしょう。具体的にこうしたいんだという方針というものは話し合われている。しかし、具体的計画はなかったと三月の段階で答弁しておられる。どう考えてもおかしいですよ。関係者には方針を説明しておられるのですよ。本委員会ではそうじゃないと言っておられるのですよ。計画はないんだと言っておられる。なぜ率直にこういう方針で関係者とは話し合いしておるということが言えなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/69
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070・杉江清
○杉江政府委員 いまの私の答弁について食い違っているということばは、速記録のどの部分について御指摘なのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/70
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071・川崎寛治
○川崎(寛)委員 十号の二ページ、最後の段の一番最後のところに「ただ当時におきましては一般に名称変更をする計画は、まだそのときには具体化していなかったわけであります。」その次に、一ページおきまして五ページの一番上段ですね。安養寺説明員の「昨年の一月の下旬に教員養成関係の」そういうあれは具体的に進めているという説明があるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/71
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072・杉江清
○杉江政府委員 わかりました。用例が適切であったかどうかの問題はありますけれども、私の気持ちはそういうことであります。それと今回法律改正の措置をとるということは、もうその暮れまではきめなかったのです。どういう状況になるかわからぬというような見通しを私は持っておったわけであります。しかし幸いにして大多数の御賛成を得ましたので、今回踏み切ったわけであります。名称変更の問題は、実は中央教育審議会が三十三年に答申されたそのときからも出ているわけなんで、これは常に話題にのぼっており、また機会あるごとにむしろそのほうがいいのではないですかということは申し上げてきたわけです。しかし、はっきりと法律改正まで踏み切るというような、そういうふうな強い考え方で当時いろいろ話し合いを進めたわけでありません。そういう点で私は具体化はしてなかったというふうに申し上げたのでありますが、ただその具体化という意味がいろいろな広い意味を持ちますから、そういう御理解されるような意味にもし解釈されるならば、その点において多少の食い違いはあったということにもなるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/72
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073・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは法律改正とか、つまり、そういったふうな固まったものとしてではなかったんだ、こういうふうな意味で善意にとりたいと思います。
なおこれ以上追及してもあれですが、ただしかし委員会の審議については責任を持ってもらいたいと思うのです。先般中村大臣も、昨年の宮城教育大学をめぐる論議についてはいろいろと食い違いがあるようだ、こういうふうなことも言っておられるわけだけれども、こういうことについてはとにかくとかく世間に疑点を持たれがちですから、こういう点についてはひとつ慎重に、そして本委員会における答弁においては責任を持って答弁をしていただくように、政府側に要望いたしておきたいと思うのです。
そこで次に移りたいと思いますが、つまり教育の国家統制、教育内容というものを国できめることにたいへん問題があったんだ、こういうことを師範学校教育との関連で先ほど答弁をしておられるわけでありますけれども、やはり教育の官僚統制ということになりますならば、先ほど長谷川委員も御質問になっていましたように、戦後の大学における教員養成というたてまえからしますならば、その教育の自主性というものが失われて、むしろ政府側で期待をいたしております優秀な人材が集まってくるということについては、逆の結果が出てまいると思うのです。この点については、先ほど来の長谷川委員への御答弁を承っておきたいと私は思うのでありますけれども、しかしこれに関連をしまして、局長も前の各委員の質問に対して答弁をされて、とにかく最も根本的なもう一つの問題は、教員の待遇あるいは身分の保障、そうした点が問題だ、それをよくしなければならぬのだ、こういうふうに言っておられるわけでありますけれども、教員養成系の大学における学科目なり教官組織なりあるいは施設、設備の整備等の拡充を進めていくとともに、国や地方団体が教師に対して報いるだけの待遇というものを十分に保障しなければならぬと思うわけです。その点について具体的に当然養成というものと、それから卒業生が教師として現場に立った場合の、その待遇なり身分なりの保障というものを大幅に引き上げていかなければならぬ、これは谷川委員もILOの勧告等との関連で御指摘もありました。その点について、当然これに対応しなければならぬものとしての具体的な施策といいますか、具体的な方針というものをお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/73
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074・杉江清
○杉江政府委員 これは私の立場では十分お答えできないわけでありますけれども、ただ待遇の改善、身分の向上については、文部省として十分に努力をしなければならぬ大きな課題だ、かように私は考えております。
それからなお、先ほど先生から、二度にわたって何かこの委員会における私の答弁が食い違っているとか一貫してないという御意見がありましたけれども、私、その点について一百釈明させていただきたいのです。
この前、名称変更のことはいまのところ考えておらないということを前の委員会において申し上げた。それを今回やるのはどういうことかという御質問ですが、そのときも、私は上村委員に対しては、はっきり漸次そういうふうにしたいということを申し上げているので、同じ当時の委員会において先生に対して別のお答えをするはずがないと私は考えたのであります。ところで、その後調べてみましたら、やはり私が申し上げたとおり、そのいまのところ考えておりませんということは、いわゆる総合大学において教員養成を行なっておりますそういった学部を分離、独立させるかどうかという先生の御質問に対して、そういうことはいまのところ考えておりません、こういうことを申し上げたわけでありまして、名称変更については、当時から漸次そういうことをいたしたいということを言っているわけであります。
それからいまの御質問についても、いまちょうど記録が出ておりますけれども、やはり昨年度においてもそういう質問が上村委員からありましたときに、それは現にお話している、だが、多くの学部長さんからたくさんの意見が出ておりますということを、これは上村委員の御質問に対して答えておるわけであります。そういうことで、先ほどの点、高橋委員からの御質問に対しては、あるいは具体化というような用例について、いろいろな解釈があるから御指摘のような御疑問も起こったかと思いますけれども、ただ前の委員会において私が申し上げたことは、その当時からいろいろ御相談している、そして、その当時においてかなり多くの賛成者がございますということを私はお答えしているのでございます。そういう意味において、いろいろ私の答弁にも不適切な点があったかもしれませんが、一応釈明させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/74
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075・川崎寛治
○川崎(寛)委員 免許基準の改正という問題についてはまだ検討中で出てこない、こういうことですが、先ほど来、小学校は国立で、こういうことに事実上なるという見通しをお述べになられたわけです。ところが、二月に出されました教養審の建議を見ますと、それに基づいて免許法が改正されますと、当然に免許基準の強化がなされて、そうして私立における、あるいは一般大学における小学校の教員養成ということは事実上不可能になってくると思うのです。それは開放性のたてまえをとっておられる、こういうことを言っておられますが、事実的にはそういう問題が出てまいろうと思うのです。そういたしますと、いま現場のほうにもありますし、あるいは教員養成の大学に在学中の諸君も持っております懸念というのは、小学校、中学校間における格差がつけられるんじゃないか、これは全国の小学校長協会の会長もやはりそういう不安を申しておられるわけです。このことは、現在の給与の三本立てというものが、さらに四本立てになっていくのではないか、こういう懸念を持たれておるわけでありますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/75
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076・杉江清
○杉江政府委員 今回の改正は、基本的には給与の三本立てと関係ないと私は考えております。いま小学校の教員養成が事実上国立大学が負担しなければならないようになるのではないかという点につきましては、これは現に小学校の教員養成は八割以上国が担当しておるわけであります。そして、この小学校の教員の資質向上が、いま非常に重大な問題であるから、そういう観点からその教育内容も改善したいというのが今回の措置であり、またいま検討しております免許法の改正においても、そういう配慮からいろいろ考えております。しかし、開放性のたてまえはくずさないで、ただ事実上そういうことになっているわけでありまして、そのことは、今後ともそういう状況が続くかと思いますけれども、しかし、そのことのために何か小学校の教員養成の格下げになるというようなことは全然考えておらない。むしろ、小学校の教員養成こそ重要だから、その部分を現に国で担当しているのだから、それを大いに充実強化したい、こういう考え方でいろいろな措置を考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/76
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077・川崎寛治
○川崎(寛)委員 教員の給与の問題についても、具体的に引き上げられなければならぬと先ほど御答弁になられたわけですけれども、これは自分の所管じゃない、こういうふうに言われたのです。それでは責任がないと思うのです。具体的に先ほど言いましたように、国や地方団体がそうした点で報いられるだけの待遇の改善をしていくということが優秀な人材を確保していく根本になるわけであります。そのことは文部省として具体的にどのようにして実現をしようとしておられるのか、それをお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/77
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078・杉江清
○杉江政府委員 これは私の所管事項でないので、あまりはっきりしたことは申し上げかねるのでありますけれども、私は文部省の一員といたしまして、そのことについて最善の努力をすることをはっきり申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/78
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079・川崎寛治
○川崎(寛)委員 教員養成大学の設置あるいは創設といいますか、そういう形をとらないで、名称変更等の形で事実的に目標に持っていこうとしておられる。当然これに対応する待遇の問題はこれと並行しなければならぬわけです。優秀なる人材を確保するというたてまえであるならば、優秀な教員を養成していくそのことと当然に並行していかなければならぬ。局長の所管でないということであれば、大臣がおられませんから、政務次官に基本的な御方針をお述べいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/79
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080・中野文門
○中野政府委員 私、常々考えておることでありますが、学校の教師の仕事というものは昔もいまも変わりなく、どの職域の仕事よりも大切な仕事である、私自身平素から実は思い続けておるのでございまして、あらゆる機会に、陳情の方とかいろいろ参ったときに、私はまず開口一番申し上げますことは、先生は自分の身分の待遇向上のためにいろいろ強力な要求を出して、そしてその目的達成をされるというような形自体がまことに不自然である。要求を待つまでもなく、何といいましても、国の構成の上から申しまして、私どものあとに続く青少年の教育ほど大切な仕事はない、大切な職場はないんだ。したがって、これはまことに常識的な私の発言でございますけれども、要求を待つまでもなく、どの職域の人たちの給与よりも先生の職にある人の給与は最優先的に尊重して、その向上につとめなければならないということを、実は平素から私考えておるのでございまして、現在もその気持ちに変わりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/80
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081・川崎寛治
○川崎(寛)委員 大臣がお見えでございませんので、締めくくりの大臣に対する質問は保留をさせておいていただきたいと思いますけれども、最後に局長に、これは先ほど来長谷川委員もるる質問された点でありますけれども、子供を教える技術の教育が重点になってまいりますと、大学の本来の研究活動は犠牲にされてまいるわけです。その点については、教育研究というものが大学の中で保障をされ、そして十分に行なわれていく、大学のそうした教育の研究活動について押えるものではない、その点は断固として大学教育の原則といいますか基本目的、そういうものは貫かれていくものであるというふうに理解をしてよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/81
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082・杉江清
○杉江政府委員 大学が教育の場であると同時に、研究の場である、この原則はあくまで守るつもりでございます。のみならず、その研究機能をますます高めるように努力いたすつもりであります。ただ私は、研究の面として、その内容面の研究と同時に技術の研究もまた必要だ、この点が実は研究の面において欠けていたのではないか、こういう点は同時に考えております。しかし教員養成の学部におきます教育を技術面に片寄らせることはとるべきではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/82
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083・八田貞義
○八田委員長 午後一時十分まで休憩いたします。
午後零時四十二分休憩
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午後一時二十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/83
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084・八田貞義
○八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/84
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085・川崎寛治
○川崎(寛)委員 われわれこの法案については慎重に審議を進めてまいったわけであります。先般来次官あるいは局長に対しましてもいろろいと御質問を申し上げましたが、最後に二、三点大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
まず第一には、これは先般来お尋ねをいたしておる点でありますが、確認をいたす意味におきまして大臣にお尋ねするわけですが、今回の学芸大学あるいは学芸学部を教育大学、教育学部に統一をして名称を変更しようとされる。このことについては、教育を国家統制するものではないか、それから旧制師範教育への復活ではないか、こういうことで、現に秋田大学あるいは大阪学芸大学等においてもそういう懸念が持たれて了承を得られなかった経過があるわけであります。われわれもその点についてたいへんに危惧を持っておるわけでありまして、もし名称をもとに戻されて、あるいは学芸大学、あるいは学芸学部、こういう従来のままで修正をされるならば、われわれとしてはこの法案については、あと北見工業大学その他大学院の新設等きわめて重要な内容を持った、またわれわれが賛成すべき内容を持った法案でございますので、名称の変更があれば全面的に賛成をして、さらには年度内成立という方向についても努力をいたしてまいる、こういうつもりであったわけであります。しかし、先般来の質疑を通じて、名称等の変更については長い経過があってできない、そういう趣旨でもありますし、それであれば、われわれとしては、年度内成立の努力をいたしてまいりましたが、この点については責任を負えない、こういうことになりますので、今後の問題についてもいろいろと問題があろうかと思いますが、ひとつ最後に念を入れてこの点を確かめて、この法案の審議を終わりたい、こう思います。
そこで、先ほど言いましたように、国家統制による旧制、師範教育への復活ではない、そういうものを意図するものではないということについての大臣の明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/85
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086・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 ただいま御指摘の点は、たとえば国家統制とか戦前の師範学校への復活とかいうようなことは絶対にございません。私どもの目標は、中教審や教職員養成審議会の研究と答申及び建議の精神に沿いまして、できるだけりっぱな教職員を養成したい、そのためにはなるほど教科内容等は充実いたしますが、それと同時に教官の充実等をいたしまして、教育内容を改善し向上していきたい、そして、りっぱな教職員の養成をはかりたいということだけでありまして、それにはすっきりとした、学芸学部とか学芸大学というように何を目標にしたのか明確でないような姿よりは、やはり教職員を養成する学部、学科であるということを明記するようにという審議会の答申や建議の線に沿いまして、教育学部等に名称を変更したいということでありまして、名称を変更するからといって、旧師範学校のような姿にしようというような意図は絶対にございませんし、また、戦前と今日とは世の中が全然変わっております。憲法上の制度も変わっております。したがって、私は御納得をいただいてこの内容を御検討いただければ、その危険性も全然払拭していただくことができるのじゃないか、こう思っておる次第で、時勢並びに諸制度から見ましても、また私どもの文部当局の考え方といたしましても、師範学校に復元するというようなことも絶対にありませんし、また、それがために教育を統制していこうなんということも、これは学校教育法、教育基本法等で日本の教育制度の根本はきまっておるのでありまして、さようなことは絶対にございませんことを、私はここに明言申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/86
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087・川崎寛治
○川崎(寛)委員 第二点は、教員養成というものの重要性についてはわれわれも十分に認めておるわけであります。学科目あるいは教官組織、施設設備、そういうものの整備充実ということは当然になされなければならないと思いますが、それと同時に、問題は、そうした大学を卒業した現場に立つ教師の諸君が、誇りを持って教育に専念できるということのためには、これも先ほど来繰り返し御質問をいたしておりますが、国なり地方自治体なり受け入れる側が教師の待遇を十分に引き上げて、そして身分保障を行なっていく、こういうことが当然並行しなければならないと思うわけであります。いまの場合は、一方の養成関係の組織のほうだけが進んでおりまして、そちらの点は並行していない、こういう点が繰り返し何人かの委員から、これは与党を含めまして質疑の際に、重要性は政府側からも答弁があるわけでありますが、給与その他の待遇の大幅引き上げについて具体的にどのように進めていかれるか、その方針をお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/87
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088・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 教職員の待遇を改善する必要のありますことは、私ども痛感をいたしておるところで、今後一そう努力をいたしたいと思いますが、従来におきましてもやってはおるのですが、あまり目立った効果を発揮しておりませんので、そういうような御指摘をいただくわけでございます。教育職職員の俸給表制定のころから、教育職員につきましては一般職の公務員に比較しまして初任給を若干高くしてございまして、これはおそらく約一千円くらいだったと思いますが、自来俸給の改善につきましては文部省として数回にわたって人事院に向かって要望をいたしております。昨年の人事院勧告におきましてはその要望の一部が取り入れられまして、今度は初任給の一般職との差額が約二千二、三百円になったかと思いますが、そういうふうにいままで努力をしておるところでございます。今後も私どもは努力を続けたいと思いますが、それにはやはり誇りを持ってその教職の職務を遂行していただく。また実態的にも、教員養成の学部の施設設備、教官組織の内容充実をいたしまして、そういうわれわれの主張が人事院その他関係方面で受け入れられるような客観情勢もつくっていく必要がありますので、そういう方向で努力をし、将来は、できれば教育職というものにつきましては、教育特別職といいますか、判検事等が特別職の制度になっておりますが、そういうようなことも検討して進めていくべきであろうというふうに考えておりますが、それについては、やはりそうした人事院を中心に、関係方面の受け入れられるような客観情勢というものを整える必要がある。この意味からも、今回のこの教員養成学部、学科の名称変更並びにそれに伴う施設設備、教官組織の充実等は、非常に基礎的な作業として重要なことであるというように私ども考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/88
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089・川崎寛治
○川崎(寛)委員 第三点といたしまして、この国立学校設置法と並行して、当然免許法の基準改定についての建議に基づいた法案の計画もあると聞いておるわけでありますけれども、そうしたものが明確に出されなければ、いろいろの教育課程の改正による今後の問題点等についても十分な議論ができないわけでありまして、それらの点、今後の問題として、こうした免許基準の改定、そういうことによって大学内の一般教育や専門教育というものが不当に圧迫されたのでは、大学教育の本来の目的というものが否定をされてまいるわけでありますから、そうした学術専攻のための教育課程が今後制限をされる、そういうことのないようにされなければならぬと思うわけでありますけれども、そのことについての所信を表明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/89
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090・中村梅吉
○中村(梅)国務大臣 大学でございますから、大学の教育は、教育と同時に研究を兼ね備えたものでなければなりませんので、この精神はますます充実をしてまいりたいと思っております。
ただ免許法関係につきましては、これも御承知のとおり教育職員養成審議会でいろいろ研究をしまして、その結論が答申されておりますので、私どもは、この答申は専門家の研究として尊重をしてまいりたいと思っております。しかしこれもできるだけ無理のないようにいたしたいと思っておるわけでありますが、御承知のとおり、小学校は非常に幅広い科目を受け持ちますから、やはりその幅広い状態に応ずる、あるいは中学校は、それの次に位する、あるいは高等学校は、受け持つ科目は少ないが、しぼられるが、深くいかなければならない、こういう差がありますから、そういう差に応じた、やはり免許の単位の取得等について考慮をしていきたいと思っております。まあこれなども私どもは、教員養成の実態を充実向上させていこうという意図に基づいておるもので、御指摘のように、できるだけ教員養成の学部、学科における教育の内容を整備充実していく、この精神には変わりがありませんので、御指摘の御趣旨と全く沿った考え方であると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/90
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091・川崎寛治
○川崎(寛)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/91
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092・八田貞義
○八田委員長 これにて本案についての質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/92
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093・八田貞義
○八田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の通告もございませんので、直ちに採決いたします。
国立学校設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/93
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094・八田貞義
○八田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/94
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095・八田貞義
○八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/95
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096・八田貞義
○八田委員長 次会は来たる三月三十日水曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105077X01319660325/96
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