1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月十六日(水曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君
理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
安藤 覺君 鍛冶 良作君
唐津 俊樹君 久野 忠治君
四宮 久吉君 田中伊三次君
千葉 三郎君 中垣 國男君
濱野 清吾君 山田 長司君
横山 利秋君 門司 亮君
志賀 義雄君 田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
法務政務次官 山本 利壽君
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 鹽野 宜慶君
委員外の出席者
議 員 田中 武夫君
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局
長) 寺田 治郎君
判 事
(最高裁判所事
務総局人事局
長) 矢崎 憲正君
専 門 員 高橋 勝好君
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三月十六日
委員佐伯宗義君、早川崇君、森下元晴君及び西
村榮一君辞任につき、その補欠として久野忠治
君、安藤覺君、鍛冶良作君及び門司亮君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員安藤覺君、鍛冶良作君、久野忠治君及び門
司亮君辞任につき、その補欠として早川崇君、
森下元晴君、佐伯宗義君及び西村榮一君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
会社更生法の一部を改正する法律案(田中武夫
君外二十名提出、衆法第一九号)
裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正す
る法律案(内閣提出第八一号)
最高裁判所裁判官退職手当特例法案(内閣提出
第八二号)
訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律
案(内閣提出第九二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
田中武夫君外二十名提出の会社更生法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/1
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002・大久保武雄
○大久保委員長 まず、提出者から提案理由の説明を求めます。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/2
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003・田中武夫
○田中(武)議員 社会党提出会社更生法の一部を改正する法律案について、提案者を代表して提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
御承知のごとく、会社更生法は、株式会社の持つ社会的、経済的価値の重要性にかんがみ、窮境にあるが、再建の見込みのあるものについて、直ちにこれを破産、解体せしめることなく、その事業の維持更生をはかろうとするもので、昭和二十七年に制定された法律であります。会社更生法による更生手続開始申請件数並びに更生手続開始決定件数は、統計の整備されている昭和三十二年以降昨年十月まで、それぞれ七百十一件、二百三十一件でありますが、ここ二、三年来、著しい増加傾向を示し、特に一昨年は申し立て件数、開始決定件数ともに飛躍的に増加し、それぞれ百七十二件、四十七件、昨年は十月現在百十九件、五十一件にのぼっております。
言うまでもなく会社更生法は、会社事業の維持更生をはかるため、株主、債権者等利害関係人の利害を公平、迅速に調整するものでありますが、更生手続の結果として、経済力の弱い中小企業、下請企業である債権者に深刻かつ多大の犠牲を押しつけておりますことは、現行会社更生法の制度上回避し得ないところであります。しかも会社更生法は、その性格上経済不況期に最も多く活用されるものであり、これら債権者のこうむる影響は、二重の意味においてきわめて重大であります。特に最近の経済情勢は、誤った高度経済成長政策の結果、ほとんど毎月企業倒産の記録が更新され、さきには東京発動機、日本特殊鋼、サンウエーブ等、近くは山陽特殊製鋼のごとく、相当規模の企業まで、相次いで倒産する深刻な事態が生じており、そうでなくても苦境に立たされている中小企業、下請企業は、まさに危機に直面しております。こうした情勢の中で会社更生法の不合理性はますます拡大されているのであります。
すなわち、これら中小企業、下請企業に対しては、たとえ株式会社であっても現実問題として、更生手続費用の予納、管財人の選任、更生計画樹立の困難性等の理由から、会社更生法が適用されることはきわめてまれであり、会社更生法によって保護されるのは、相当規模の企業や大企業に限定されるのが実情であります。この結果大企業は、会社更生法によって再建の方途が講じられ、ときには会社更生法を悪用し、これに便乗することによって計画倒産さえ可能であり、そういう事例も多いのであります。このような場合、大口債権者である銀行、系列親企業等は、事前に相談を受け、被害を最小限に食いとめているにもかかわらず、無担保債権者である中小企業、特に下請企業は、その従属的関係から平素不利益をしいられ、その上、全く知らないうちに一片の通知もなく、更生手続開始申し立てが行なわれ、はなはだしい場合は申し立ての当日まで納品を余儀なくされ、しかも下請代金は更生債権として凍結されてしまうのであります。言うまでもなく下請企業には、更生手続の終結まで下請代金の回収を待つ余裕があるはずはなく、金融機関からの、約手買い戻し請求に応ずる力もないのでありまして、結局、何ら、自己の責任によらずして自滅の道をたどる以外に方法がないのであります。
しかるに会社更生法は、こうした点について、単に形式的公平を考えるにとどまり、経済の実態に即応した実質的公平については、何らの配慮もいたしていないのであります。つまり会社更生法は、下請企業の犠牲において大企業を更生せしめる機能を果たしており、子の犠牲によって親を助ける法律となっているのであります。このような会社更生法の欠陥に対しては、すでに法律制定直後である昭和二十八、九年の不況期にも、強い改正意見がありましたが、最近ますます顕著に露呈されているその不合理性は、もはや看過することのできないものがあります。
もとよりわれわれは、会社更生法を経済の実態に立脚した、合理的な姿で機能せしめるためには、会社更生法のあり方全般にわたり根本的検討が必要であると考えるものであります。しかし、当面最も緊急の課題である下請企業について保護措置を講じ、あわせて労働者の利益保護等をはかることが、まずもって必要であると考え、ここに本改正案を提出した次第であります。
次に、改正案の内容を御説明申し上げます。
その第一点は、更生手続開始申し立て書に下請事業者の意見を添付させるとともに、裁判所に対し、下請事業者の意見の陳述を求めることを義務づけることであります。すなわち、会社更正法の適用は、下請事業者の存立にかかる重大な問題でありますので、親企業の一存で決定させることなく、下請事業者の意見を十分反映させようとするものであります。
第二点は、裁判所は、更正手続開始申し立てが会社使用人の不当な人員整理を目的とするものであるときは、これを棄却しなければならないことであります。会社更生法の適用は、ともすれば従業員の人員整理のための一方法として利用される危険があるので、現行法をさらに明確にし、これを防止しようとするものであります。
第三点は、裁判所は、保全処分に当たり、会社使用人の給料、その預金及び下請事業者に対する下請代金の支払いを禁止してはならないことであり、第四点は、更生手続開始申し立ての目前六カ月間及び当該申し立ての日から更生手続開始までの間に、会社が下請事業者から受領した給付にかかる下請代金及び会社使用人の給料は、いずれも共益債権とするとともに、会社使用人の退職金は、更生手続開始前に退職したときは退職当時の給料の六倍に相当する額まで、また更生手続開始後に退職したときも、共益債権となる退職手当の額が退職当時の給料の六倍に満たない場合は、更生手続開始前の在職期間にかかる退職手当の額をそれぞれ共益債権とすることであります。これらの点は、本改正案の中心をなすものであり、保全処分に制約を課することによって、下請事業者の連鎖倒産を防止するとともに、下請代金、労働者の賃金、退職金について、共益債権とされる範囲を現行法より一段と拡大し、下請事業者、労働者の利益を保護しようとするものであります。
第五点は、過怠更生罪の新設であります。御承知のとおり破産法には、過怠破産罪の規定がありますが、会社更生法にはこのような規定は設けられておりません。しかし、明らかに経営者の過怠により企業を危機におとしいれ、関連下請事業者や労働者に多大の犠牲と損失を与えた場合、これを放任することは社会正義に反すると思うのであります。かような見地から当該経営者の社会的責任を追及するとともに、会社更生法悪用による経営責任の回避を防止し、あわせて一般経営者の倫理感と責任感を自覚せしめる意味において、過怠更生罪を設けたのであります。
以上、簡単に提案理由及び改正の要旨を御説明申し上げましたが、親会社の会社更生法適用の陰に泣く、多くの中小下請事業者を救うために、何とぞ十分御審議の上すみやかに御賛同くださるようお願い申し上げ、提案説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/3
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004・大久保武雄
○大久保委員長 本案に対する質疑は後日に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/4
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005・大久保武雄
○大久保委員長 裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、最高裁判所裁判官退職手当特例法案、及び訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/5
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006・坂本泰良
○坂本委員 私は、まず最高裁判所の地位、職務、権限等についてお伺いしたいと思いますが、御存じのように、終戦後の日本におきましては、戦前における行政権に対するいわゆる司法権の独立に遺憾な点があり、それが重大な日本の敗戦を導き、さらに国民に対する誤まった裁判等が行なわれたのでありますから、それを是正するために一大改革が行なわれたのであります。したがって、最高裁判所は法務省から独立して法案その他の検討はありますが、いろいろ二つに分かれるについては権限の問題等もあったようでありますが、とにかく最高裁判所が発足をいたしまして、最高裁判所裁判官並びに長官、裁判官会議、その他司法研修所、裁判所書記官研修所、最高裁判所図書館等々が、このいわゆる最高裁判所の行政的権限ということで確立をいたしたわけであります。したがって、その確立につきましては、まず十五名の裁判官をどうするかということでありまして、さらに、当時期待するところは、憲法違反に関する法律その他の命令につきましては、これは理想としましては、民事、刑事の具体的裁判に対しての憲法違反の問題だけでなく、総括的に、いわゆる三権分立における行政並びに立法の関係から、憲法による法律がつくられた場合に、それが憲法違反であるという総括的な判断もこの最高裁判所がとるんだ、そういうような理想でありましたが、実際並びに法律上も、民事、刑事の具体的裁判を通じて憲法違反の問題を議論する、まあこういうことになって、自来今日まできておるわけであります。これに対しましては、かつて、朝鮮事変の直後と思いますが、警察予備隊法が国会でつくられましたときに、この警察予備隊法は憲法第九条に違反するのであるというようなことで、当時社会党の中央執行委員長鈴木茂三郎氏を原告としまして、国を相手に、日本国憲法に違反する行政処分取消請求事件という訴訟を起こしたわけであります。われわれもその代理人の末席を汚したのでありますが、その際の判決の要旨は、「わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。そして弁論の趣旨よりすれば、原告の請求は右に述べたような具体的な法律関係についての紛争に関するものでないことは明白である。」こういう趣旨の理由で訴訟は不適法として却下されたわけであります。その後国会におきましても、われわれ社会党といたしましては、この抽象的判断ができるような法律制度をつくらなければ、ほんとうの憲法の番人としての最高裁判所の存在はないじゃないか、こういうことで、その法律案の作成にも、西ドイツ、イギリスその他の憲法等も研究いたしまして改正案を考えたわけでありますが、まだそのことができずに現在に至っておるわけであります。
さらにまた、最高裁判所の事件のたまっておるそれの処理の問題としては、当衆議院の法務委員会におきまして最高裁判所の改革案と申しますか、そういうことが論議されまして、いわゆる一審から上がってきた民事、刑事の裁判に関する事件は、特定の裁判官がこれを裁判して処理する、憲法違反の問題については特に——私資料を持ちませんから記憶が多少誤っておるかわかりませんが、九名くらいの裁判官でその判断をする、そういうようなことで、これは自民党、社会党一緒になりまして、当時何と申しましたか法律案は忘れましたが、それの共同修正の議が事実上まとまったわけであります。ところが、当時の最南裁判所の裁判官会議でそれを否決されて、その後そのまま現在に至っておるわけであります。
そういうような経緯を経ておりますが、しかしながら最高裁判所ははたして民事、刑事の具体的問題についての憲法違反だけの処理をしておるかということについては、判決ではそうでありますけれども、実際上最高裁判所の長官が訓示その他の発言をいたしますことはやはり憲法に触れる問題でありまして、その問題につきましても、三代の長官になったわけでありますが、最初の三淵長官の時代が二年半、次の田中耕太郎長官が十年、現長官が何年ですか、計算すればわかりますが、現在に至っておるわけであります。この長官が本年の八月六日に定年退職、こういうことになっておりますから、そのときになれば当然長官の退職に基づく新たな長官の任命、こういうことになるわけであります。八月と申しますともうすぐでありまして、これはおそらく総選挙前に現在佐藤内閣の手によって実施されるんじゃないか、こういう段階に至っておるわけであります。
そこで、われわれがこの三代の長官を通じまして考えますことは、田中耕太郎氏が昭和二十五年任命されました当時は、御存じのように朝鮮戦争前夜のような状態でございまして、日本の占領行政には重大な変化を来たしたときであります。このことについてはあとで質疑いたしたいと思いますが、いろいろ田中長官の訓辞、発言あるいは行動についてはとかくの批判があったわけであります。そういうような関係で、やはり憲法の番人である最高裁判所が、長官あるいは判決によって、われわれが憲法上期待したところの最高裁判所で実際上はないような状態になっておる。
そういうような点からいたしまして、なおまた、田中長官が任命されました当時の状態を考えますときに、現在の状態はもっとそれより深刻な世界戦争と申しますか、いわゆるベトナム戦争に対する日本の態度について、憲法が国民のために正しく実施されるかどうか、今国会の衆議院の予算委員会の状態でもそうでありますが、特に参議院の予算委員会におきましては、沖繩に対する自衛隊のいわゆる派兵の問題についてここ数日間非常な論議がかわされました。そして今後どうなるかという点についても、これは憂慮すべき事態でありまして、昭和二十五年の朝鮮戦争の勃発する前の状態、それから朝鮮戦争が勃発しましたその後の状態とまさるとも劣らない。日本の平和と独立と日本国民の生命財産の問題については、現在重要な段階にあると思います。したがって、田中最高裁判所長官の任命されました当時を思いますと、今度八月に行なわれるべき最高裁判所長官の任命については、これは政党内閣のもととは申せ、やはり最高裁判所が司法権の独立を堅持いたしまして、そうしてその任務を果たす上においては重大なる問題である、こういうふうに考えるのであります。今国会では憲法を守る最高裁判所の裁判官の退職金問題の重要な法律案が提案されておるのであります。これは金の問題でなくて、最高裁判所における裁判官諸公の憲法に基づく裁判官としての国民のための裁判をやる、さらにその長官である者は、田中長官当時より以上の重大な地位に立つと思うのでありますから、その点について若干御質問を申し上げたいと思います。
まくらことばはそのくらいにしまして、まず最初に、最高裁判所長官及び最高裁判所裁判官の地位権限、それと裁判官会議の構成、職務権限、その会議の議長の地位の問題、あわせて司法研修所長の問題、裁判所書記官研修所並びに所長の問題、最高裁判所図書館及び図書館長の問題、これについて最高裁判所においてはいかなる具体的の運営をなされておるか。さらにこの運営の問題についてつけ加えますと、最高裁判所事務総長、このいわゆる補助機関でありますが、その補助はどこにあるか、裁判官会議の補助機関であるか、あるいは最高裁判所長官個人の補助機関であるか、そういうような現在の運営についての御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/6
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007・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま坂本委員のお話にございました点は、司法の基本に触れる問題が多々ございましたように伺ったわけでございます。私どもとしても常にこの問題については検討なり研究をいたしておるわけでございます。直接お尋ねのございましたのは、最高裁判所の裁判官の地位及びこれに関連する問題ということかと伺ったわけでございますが、まず先ほど来坂本委員からるるお話もございましたように、新憲法下、裁判所法によって具体的な機構ができまして、最高裁判所は発足したわけでございますが、これは戦前の大審院とは全く性格を異にするものでございまして、そのおもな点はまず第一に、違憲審査権があるということ、これも先ほど来坂本委員からるるお話のあった点でございます。それから第二に、司法行政権を完全に持っておるということ、それから第三に規則制定権を持っておること、この三つが戦前の大審院と違いまして、最高裁判所が司法の頂点にある、そうして憲法上非常に重要な地位を与えられておる、こういうことになるわけであろうと思うわけでございます。
このうち、まず違憲審査権を含みます裁判権をどういうふうにして行使するか、これは御承知のとおり大法廷及び小法廷の機構をもってとり行なっておるわけでございまして、大法廷は全員の裁判官、小法廷は通常三人以上五人の裁判官の合議で行なっておる。その関係におきましては、長官もその裁判官の一員であられるわけでございます。ただ、長官が裁判長になられますので、その訴訟指揮権等は長官が裁判長として行使される、かようなことになるわけでございます。
それから次に、司法行政権の問題でございますが、これは規則制定権もある意味における、広い意味における司法行政でございますので、規則制定権の行使も同様になろうかと思うのでございますが、広い意味での司法行政権の行使は、これは裁判所法の規定によりまして、裁判官会議の議によって行なう。そうして、最高裁判所長官がこれを総括する、かようなことになっておるわけでございます。その総括ということの具体的内容は、いろいろ実際的な問題になってまいるわけでございますが、さしずめ議長となるということでございます。表決権は同様でございますが、議長となるということでございます。そうして、それを補佐するのが、先ほどお話のございました事務総局でございます。そういう意味におきまして、事務総局はこれはあくまでも裁判官会議を補佐するわけでございまして、長官を補佐するという趣旨ではないわけでございます。
それから、司法研修所、あるいは裁判所書記官研修所、それから最高裁判所図書館、これらはいずれも最高裁判所内の一つの組織機構でございますので、当然最高裁判所の裁判官会議の命によって仕事をしておるということになるわけでございます。ただ、もっとも研修所等は、これはやはり一つの教育でございますし、教育というものは単なる行政事務ではまかない切れない一つの精神というものがあるわけでございますので、いわゆる教育の独立と申しますか、それほどの強い意味でございませんでも、実際の運営としてある程度教官会議というようなものが中心になって、少なくとも教育の内容については教官会議というようなものが中心で、所長がそれを総括しながら進めていかれるというようなことでございます。ただし、研修所の予算とかそういうようなことになりますれば、当然司法行政事務に入ってまいりますので、最高裁判所の裁判官会議の命を受けて、事務総局で応援しながら大蔵省と折衝する、こういうようなことになっておるわけでございます。
大体先ほどのお尋ねの点、大まかな点を申し上げますればそういうような運営でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/7
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008・坂本泰良
○坂本委員 そういたしますと、最高裁判所の長官は、他の裁判官と比較して特別な高い地位にあるかどうか。さらにまた、裁判官会議は長官も含めた十五名の裁判官でこれを構成して、そうしてその議決についてはもちろん長官も従うということになりますと、長官とその他の裁判官とを比較いたしまして優越な権能が与えられているかどうか、この二つの点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/8
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009・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点は若干デリケートな問題を含んでおるわけでございますが、と申しますのは、そもそも憲法の上で、長官と裁判官とにある程度の区別がされておることはっとに御承知のとおりでございます。と申しますのは、裁判官は内閣によって任命され、天皇の認証を受けるということでございますが、長官は内閣の指名によって天皇が任命されるということで、つまりその点で長官はいわば内閣総理大臣と同じような任命方式をとり、その他の裁判官は各国務大臣と同じような任命方式をとる、そういう区別を与えておるわけでございます。ただ、しかしながら具体的な権限におきましては、先ほど来申し上げましたとおり、裁判におきましても大法廷は全員の裁判官の合議で、長官はその裁判長となられるだけでありまして、司法行政権の行使におきましても、主体は裁判官会議でございまして、長官はその議長となり、あるいはこれを総括されるという権限をお持ちになっているにすぎない。したがって、表決権その他において差があるわけでない、こちらを重視いたしますれば長官とその他の裁判官とに、それほど大きな差異はないということは言えるわけであります。そういう点では、私どもの内部では、総理が報酬四十万円で各国務大臣が三十万円であるということは、それはいいとしても、裁判所の場合に長官が四十万円で、その他の裁判官が三十万円という差が、はたして合理的であろうかどうかという点に議論がないわけでもないのであります。しかしながら、先ほど申しましたとおり、憲法上ははっきり任命方式が違っておりますし、またある意味におきますれば、議長の権限というものは、これは国会においても議長というものを非常に高く評価し尊重しておられますと同様に、裁判官会議におきましてもやはり議長というものが相当に尊重すべきものであろう。またこの点では、これはおそらく国会でも表決権に違いがあるわけでなくても、議長というものは非常に尊重されているという意味合いで、裁判官会議においても表決権というものは同じでも、議長というものは相当尊重すべきものである。また裁判官会議において裁判長というものは、これは最終の表決権において差はございませんけれども、訴訟指揮というようなこともなかなか重要なことでございまして、この訴訟指揮の権能を持っておられる裁判長たる長官の地位というものも、見方によればやはり相当評価すべきではないか。これらの点が憲法が任命方式を区別いたしております一つの考え方のあらわれでなかろうか、こういうことでございます。そういう点が違うわけでございまして、お尋ねの中の、長官といえども具体的な権限行使については裁判官会議の命令に従うと申しますか、裁判官会議で定まった方針どおりに行動される、これはむろん当然のことでございます。むろんこまかい点に至りますれば一々裁判官会議にはかるわけにまいりませんけれども、重要な点は、これは特に最高裁判所におきましては十分に裁判官会議で練りましていろいろやっているわけでございまして、長官がいわば個人的な意見で行動されるということは、少なくとも重要な問題についてはないというふうに申し上げてさしつかえないと、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/9
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010・坂本泰良
○坂本委員 結局、長官も最高裁判所の組織の上においては他の裁判官と同一地位であって、その発言権というのは、十五名ですから十五分の一、こういうふうにいまの御答弁で了解したのであります。そこで他の裁判官に比較して優越的な権能は、いま御説明もありましたように私はないと思います。ただ俸給の問題その他については、これは金銭的に四十万と三十万の区別がある。この点もこれはまた考えなければならぬ問題じゃないかと思っております。そこで、最高裁判所の長官というのは、最高裁判所におきましては裁判官と同一の発言権を持ち、十五分の一の権限であるけれども、しかしながら、この長官は、最高裁判所を外部に対して代表する権限はないか。何と申しますか、ある学者が申しておりますように代表する顔である、こういうふうに考えられております。したがって、それは結局日本の裁判官全体を象徴する顔である、こういうふうに考えると、この最高裁判所長官の地位を占めておる人というのは、これはすぐれた裁判官でなければならない。これは国民的な要求だと思います。そこで最初に、最高裁判所の発足当時においては、先般他の委員の質疑もありましたように、初代の裁判官の任命並びに裁判官の任命、これにあたりましては裁判官任命諮問委員会規程というのがあって、これに基づいていろいろの、簡単に申しますと、裁判官から出た者が五名、弁護士から出た者が五名、学識経験者から五名、こういう構成で、第三条によると、衆議院議長、参議院議長、全国の裁判官の中から互選された者、それから全国の検察官並びに行政裁判所長官及び専任の行政裁判所評定官であった者の中から互選された者、それから全国の弁護士の中から互選された者、裁判所法第四十一条第一項第六号の大学の法律学の教授で内閣総理大臣の指名する者、それから学識経験のある者で内閣総理大臣の指名する者、こういう諮問委員会ができまして、そして先ほど申し上げましたような初代の三淵長官以下十五名の裁判官が任命された、こう思いますが、このときの裁判官の任命された振り合いと申しますか十五名の振り当てと申しますか、その関係と、その後の二代目の長官の任命の際においての事実を、簡単でけっこうですから、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/10
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011・矢崎憲正
○矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま、最初の任命のときとそれからその後の田中長官の任命のときとにおける学識経験者、弁護士会、裁判所からの出身者の比率についてはどうかという御質疑でございました。最初のときは、学識経験者、弁護士会、裁判所側から出ました者が五・五・五というような比率というように一般にいわれておるわけでございます。それからその後田中長官が任命された当時におきましては、学識経験者から出ました者が六名、弁護士会から出ました者が四名、裁判所から出ました者が五名、こういうような比率に相なったというようにいわれております。それは、最初庄野弁護士が最高裁判所の裁判官になられましたが、その後穂積重遠裁判官がそのあとをお継ぎになりました関係で、弁護士の五が四になりまして、学識経験者の五が六になったというような比率に相なっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/11
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012・坂本泰良
○坂本委員 そこで、その候補者を選出されるについて、委員会は、長官候補者として東大の南原繁氏、それから穂積重遠氏、それから弁護士は、有馬忠三郎氏、竹田省氏、この方々をあげられたけれども、いずれも辞退されて、裁判所側の推す三淵氏が長官に就任された、こういうふうに聞いておりますが、この点は間違いないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/12
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013・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 具体的な任命の事情は、御承知のとおり内閣の指金ないしは任命でございますので、私どもは具体的な事情は承知いたしていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/13
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014・坂本泰良
○坂本委員 任命された経緯もわかっていないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/14
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015・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 現在承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/15
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016・坂本泰良
○坂本委員 いずれにしても、この委員会の推薦によってきまった人がそのまま任命された、そういうことについては間違いないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/16
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017・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 ただいま仰せのとおり、当時は裁判官の任命諮問委員会が設置されておりまして、その諮問による答申に基づいて任命ないし指名する、かようなことになっておりましたので、御指摘のとおりの手続であったと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/17
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018・坂本泰良
○坂本委員 このときの内閣は、片山内閣ではなかったかと思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/18
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019・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 たしかさようであったと記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/19
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020・坂本泰良
○坂本委員 そこで、昭和二十五年三月二日に三淵長官が退職されるまで二年半在職されたわけですが、その間の問題については、いろいろと調査をしますと、表面にあらわれた最高裁判所の判決については、その判決には少数意見がある場合は少数意見がついておりますから、その少数意見に対して裁判長である長官はいかなる処置をとられたかというようなこともわかるわけでありますが、われわれがここに推察するに、この二年半の在職中は、戦争直後の混乱期であって、いろいろな具体的問題が、裁判官が戸惑いするような——現在も幾らかあるのですが、困難な時代であるし、さらに新憲法その他改められた日本の法体系に適するような司法行政を行なうということは非常に困難であったろうということは、われわれ推察できるわけであります。したがって、この三淵長官が参加されました判決は、相当ありますけれども、日本の裁判史に残るような名判決と申しますか、そういうような判決は、さらにまたすぐれた判決文、こういうのはうかがわれないようでありますけれども、ただ私たちは、総括的に考えまするときに、この二年半の三淵長官の時代は、司法行政と内閣との関係において、やはりわれわれが要望するような独立的の立場に立たれて、最高裁判所は行政権に支配されない、内閣に支配されない独立の関係に立って司法行政に携わられたことがうかがわれるわけであります。
そこで、私が問題として申し上げたいことは、昭和二十五年の三月三日、最高裁判所長官に就任せられました田中耕太郎氏のことについて若干触れたいと思います。もちろんその前に、三淵長官時代もいろいろ訓示その他等はあったと推測いたしますが、それをまだいま私、調べる余裕もありませんし、時間もないから省略いたします。
この最高裁判所長官に就任せられた田中耕太郎氏は、四月十四日、最高裁判所で開かれた裁判所長官会同において訓示をなされておるわけであります。その要旨は、「わが国の現状を直視するとき、国民の民主主義に対する理解は十分といえず、法の権威の失墜と秩序尊重の自覚の衰退が跡を絶たないのみならず、国内の思想的および政治的対立抗争はますます深刻化している。加うるに最近の二つの世界間の微妙な関係は国内情勢にも反映し、事態は複雑の度を深めている。このときにあたり、われわれは司法権の独立なきところに民主主義なしという信念をもって、正義の実現、秩序の維持に献身しなければならない」、こういう訓示をなしておられますが、この点は間違いないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/20
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021・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 御指摘のような訓示がございましたことは間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/21
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022・坂本泰良
○坂本委員 そこで、この訓示そのものを見ますと何でもないようにも思いますけれども、これはやはり私が先ほど申し上げましたように、当時の日本の情勢、世界の情勢を見ますときに、いわゆる最高裁判所の長官として、全日本の裁判官の象徴の顔として発言されるについては、これは裁判官としては相当考えなければならぬ問題じゃないかと思う。当時の情勢は、先ほどもその一部を申し上げましたように、二十五年の三月といえば朝鮮戦争の前夜に当たり、占領行政にも重大な変化が起こっていたのでありまして、ことに昭和二十五年の一月一日にはマッカーサー司令官が突如として、「この憲法の規定は」——日本憲法ですね、「この憲法の規定は、たとえどのような理屈をならべようとも、相手方からしかけてきた攻撃に対する自己防衛の権利を否定したものとは解釈できない」こういう声明が発せられ、次いで同月十二日にアチソン米国務長官が、「アメリカは、われわれ自身の国防の利益のために日本の軍事的防衛の責任を負わねばならなくなった」。この間来参議院で、衆議院でも問題になったのですが、日本の人もまた同じようなことを言っているようにも思われる。ですから、私がここに田中長官のこの訓示に対して考えさせられるのは、この最高裁判所田中長官の交代された前後には、日本をめぐるいわゆる極東と申しますか、極東の情勢に重大な変化があったことは、これはもういまから考えて確かであり、しかもこの変化は同年、昭和二十五年六月二十五日に至って朝鮮戦争の勃発に向かって進んでいるのでありますから、そういう点を考えますときに、この訓示については、これを長官個人の思想、信念と申しますか、そういうような点が十分に含まれているものである。そういたしましたならば、最高裁判所の長官としては、これは司法権の独立を守り、全国の裁判所の頂点としての顔であるという点から考えますと、この長官としての地位についての発言については重大関心を持たなければならない。と申しますのは、今度六月、この長官の交代が行なわれますときに、これより以上の長官でも任命された場合に、はたして最高裁判所が司法権の独立として、憲法の番人としての、憲法擁護の裁判所としてのほんとうの地位が保たれるかどうかということを憂慮するあまり、これを指摘するわけですが、最高裁判所の長官の訓示は、もちろん現在見ますとたくさんありますから、それを見ますと、法のもとの平等とかいろいろなことは言っておりますが、あまり時局には関係しないことが非常に多いようであります。しかるに田中長官は、就任早々にこういう訓示をしておられる。これではたして最高裁判所の長官としての地位が保たれ、憲法を守ることができるだろうかどうかということを疑うわけであります。この点は総理大臣にもお聞きしたいと思っておりましたが、最高裁判所の問題として法案の提出者である法務大臣のほうは、こういう点について考えておられるかどうか、所見を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/22
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023・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 法務大臣へのお尋ねでございましたが、最高裁判所のことでございますので、私からも一言させていただきたいわけでございます。その上で法務省からの御意見を伺わせていただければ幸いであると考えるわけでございます。
先ほど坂本委員の御指摘にもございました訓示、これは確かに、先ほどお読み上げになりました一節が、田中前長官の訓示中にあったことは事実でございます。しかしながら、ひとつその前後もお読み取りいただきたいわけでございますが、まずその少し前のほうに「われわれは、さらにこの際司法官の使命について一層根本的な反省をし、又司法制度及びその運用に不断の検討を加え、もって新憲法によって委託せられた重大な権限の遂行に遺憾なきを期さなければなりません。」こういう一節もあるわけでございます。それからなお、その少しあとのほうに、わが国民が、「新憲法の掲げる崇高な理想である平和的、民主的な国家の建設に精進し、次第にその成果を挙げつつありますことは、まことに御同慶の至りに堪えません。」というような一節もございます。さらには、「裁判官は、一方司法官の世間知らずの批判におびえて現実政治と妥協したり、その要求に属従したりすることがあってはならない」こういうような一節もあるわけでございます。これらの点からは、先ほど坂本委員のおっしゃいましたように、新憲法を軽視するということではなくて、違憲審査権を持つ最高の裁判所として、この新憲法に基づく権限の行使に万全を期さなければならないという趣旨で、その間に、先ほどのお話のような節もございますが、これとても「公正な立場において、正義の実現、秩序の維持に挺身」するということで、私どもとしては、裁判所としてまさにあるべきことを訓示せられておるものではないか、かように理解しておるわけでございます。
なお、この訓示のでき上がります経過についてでございますが、これは内部的の問題でございまして、あまりこういう席で申し上げることがふさわしいのかどうか、いかがかと思いますけれども、これは決してそのときの長官の個人の意見というようなものではございませんで、やはり先ほど申し上げました裁判官会議に付議いたしまして、そこで他の裁判官からも十分に意見の開陳がございます。こまかい字句の点等は、事務総局でもいろいろ手を入れさしていただいたりする場合もございますが、根本の精神は、裁判官十五人の方全員の御同意のもとにでき上がっておるものでございまして、その点はひとつそういうふうに御理解をいただきたい、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/23
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024・坂本泰良
○坂本委員 私はいまの答弁のように理解できないから、ここに所見を聞いておるわけです。いまおっしゃったように、最高裁判所長官の訓示については、そういうふうに裁判官会議にかけてやられるかどうかについて非常な疑いを持つわけです。いろいろ前置き等はありますけれども「国内の思想的および政治的対立抗争はますます深刻化している。加うるに最近の二つの世界間の微妙な関係は国内情勢にも反映し、事態は複雑の度を深めている。このときにあたり、われわれは司法権の独立なきところに民主主義なしという信念をもって、正義の実現、稜序の維持に献身しなければならない」、これは、カトリックの信者であるところの田中耕太郎氏がその一つの自己の考えをもってやったのではないか。それはそんなことはないとおっしゃるけれども、あと申しましたように、朝鮮事変の勃発の前であります。そしてその朝鮮事変がどうなったかということをわれわれが考えたときに、こういうような長官であってよかろうかと、憂えるわけです。
ことにまた、六月に現内閣においてかりに長官が任命されるといたしました場合に、この日本の状態、極東の状態を考えますときに、不覇独立である裁判所こそが司法権の独立を守って行政権の横暴その他を押える、そうしてその公平を守っていくところに三権分立の思想の根拠があり、司法が立法、行政と不覇独立しておる 旧憲法では天皇のもとにおけるところの三権分立でありましたけれども、現在の憲法では完全な三権分立のたてまえであって、その司法であるから、いやしくも時局に関連してそういう発言をすることについて、非常に危惧を感ずるわけです。ことに現在のベトナム戦争に対するところの日本の政府その他の態度、また反対しているわれわれの態度ということについて、そういう基本的な頂点の考え方があれば、やはり下の裁判官に対してもそれが反映する。だから、電電公社のマンモス訴訟についても下っぱの裁判官がどうしておるか。これはストライキの問題に関連しておるんだから、一人々々の個人の憲法上保障された裁判を受ける権利を侵害するような立場になってくるわけです。そういうことになったならば、ほんとうに国の破滅を来たすものである。いわゆる行政権には行き過ぎがありましょう。立法権にも多数、少数のことにおいては行き過ぎがありましょう。ただ指を二本出しただけで二日国会を延長する。警察法の改正のときは、これも憲法違反であるから具体的の訴訟を起こさなければいかないというので——各府県の警察になったから、そういう中で警察の建物とかその他を掌握しようとしたから、それはいかない、憲法違反の警察法の改正であるから、それはいかないというので、全国に具体的の訴訟を起こして、その訴訟の内容は、いわゆる都道府県に移ったところの地方警察というのは、これは国家警察でなければいかぬ、さらにまた各市における自治警察でなければいかぬというので、その建物の変更等について反対の訴訟を起こしてやったけれども、裁判所のほうでその訴訟事件については進行しない。時がたってなしくずしになって、あるところでは訴訟費用の点について和解をして、その訴訟を終結したというのがたくさんある。訴訟の終結がつかぬから、それじゃその訴訟費用をどうして負担するかというような問題で、いろいろと私たちも苦慮したことがあるわけですけれども、だから私は多数決全部が横暴とは申しません。千に一つぐらいは横暴がある。小選挙区法のときには横暴ができなかった。私なんかは時の選挙の特別委員会の委員長をえんやらえんやらと外へかかへ出した。そういうことで法律は通らなかった。しかしながら去年の日韓条約の問題にいたしましても、それから一番大きい問題は、岸内閣時代の安保条約の締結の問題、このときなんかは強引にあれを通過させられて、そうして通過したならば、その法は悪法でも守らなければならぬということで守る。守ると、今度は佐世保に核潜水艦が入ってくる。やはりこれも悪法であるけれども、いわゆる日米安保条約に違反するからいかぬじゃないかと言っても、事実上どんどんやっていく。政府はこれを拒否しないというようなのが次々に出てくるわけなんです。そういう場合に、裁判所が、これは憲法違反の法律じゃないか、多数の横暴でやった、国民の世論に基づくところの法律でないから、これは憲法違反であるから、この法律は無効だということを宣言して初めてできるわけです。いま問題になった……(「国会否認だ」と呼ぶ者あり)国会否認でなくて、三権分立というのはそこにあるのです。私たちが素朴な大学の講義をする場合に、どうして司法権は独立であるかと言うときには、これは行政権が横暴した場合に、司法権が裁判権の行使によって、このような法律は憲法違反であるから無効にすることができるということで、そこで初めて三権分立の国家統治の形式ができて、国民のための政治が全うできる、こういうふうに考える。そういうことを考えると、この最高裁判所の長官の訓示というのはよほど慎重にやらなければならぬと思うわけです。
そこで、時間がありませんから要点だけ申し上げますが、田中長官のこの訓示ですね、これはもちろん先ほどのような日本の情勢の中に任命されたというのと、さらにもう一つは、初代の三淵長官その他の十五名の裁判所の承認は、諮問委員会できまったわけです。そして長官になる候補者は、出た人より有力な人がいろいろありますけれども、候補者が五人も上がって、それが辞退されて三淵氏になった。しかしながら、この三淵長官も、すぐれた判決とかすぐれた訓示はないけれども、ともかく裁判所の独立を堅持してこられた。これは認められるわけです。そこで田中長官になってから、そういうような冒頭に——三月三日ですか任命されて、四月十四日の長官会同で訓示された。これを言いかえると、闘士的の性格があったのではないか。というのは、やはり諮問委員会がもうなくなったから、当時の任命者は有名な吉田茂総理大臣です。吉田茂総理大臣から任命を受けたから、その意を受けて、こういう問題が出てきたのじゃないかということもまたこれはうかがわれると思うわけです。
ですから私の言わんとするところは、最高裁判所の長官というのは、やはり政治的の、あるいは社会的の発言は、これは十分注意をしてやらなければ、司法権の独立に疑いを持たれるようなことが出るじゃないかと思うわけです。したがって、長官の在職は十年で長かったのですが、裁判官としての判決の上の発言は、これは非常に少ない。これは戒能氏のあれですが、「最高裁の全員もしくは多数意見を代表したものは、恐らく尊属に対する傷害致死罪を特に重く罰することにした刑法第二〇五条二項が、憲法のいわゆる「法の下の平等」に反するものでないと述べた昭和二五年一〇月一一日判決と、チャタレー事件に関する昭和三二年二月一三百判決の二つだけらしい。また長官は若干の判決において、少数意見もしくは補足意見に参加しているけれども、田中裁判官自身の筆になると思われるのは、地方議会の議員に対する除名処分の当否は裁判所の判断すべきことでない、と述べた昭和二八年一月一六日判決の少数意見、松川事件に対する昭和三四年八月一〇日判決における反対意見、ならびに同年一二月一六日の砂川事件上告審判決における補足意見の三つであり、その他の事件では、少数意見に加わっている場合にも、他の裁判官の起草したものに同意しているようである。」ですからこの三つというのは少数意見に長官が賛成している。こういう判決からうかがっても、この最初の訓示というものが、いかに長官が吉田総理から任命を受けて感激の涙を浮かべて、そうして時局に対するところのものを出したから、司法権の独立をみずから汚したものではないか。それはそう考えない人も多いでしょうが、そう考えるのが多数だと思う。
そうして今後の問題。それは例をあげますと、田中長官は司法研修所にカトリック教の講師を選択をする、そういうような問題もある。宗教的の歴史を教育にやることはいいです。しかしながらそういうような講師を入れて、そうしてはたして司法試験に合格したものが、有能な裁判官、検察官、弁護士というものになり得るかというと、教育の問題としてこれは大きく考えなければならぬと思うのです。ですから、判決を見ますと、やはり裁判長としてこれはやられたのですけれども、裁判長みずから少数意見に賛成をして、やはり裁判官諸公の多数意見でその判決が行使されるということになると、判決についてもあまり有能な人ではなかったのではないかと、失礼だけれども、言わざるを得ないと思うのであります。
なおいろいろありますけれども、もう一つ問題は、これは訓示の法律的性格は単純なる意見であります。しかし、私はそう思ったけれども、先ほどの答弁によると、裁判官会議にかけ、そうして補助機関が筆をとって書いてやるのだとすれば、単なる長官の意見とも考えられぬ。そうすると、この田中長官は昭和三十四年十月二十五日号に「裁判批判を批判する」、こういう論文を出しておられるわけです。当時の状態は、「裁判批判を批判する」ということについて非常に問題があったわけです。それは時間がないから省略いたしますけれども、当時の社会運動あるいは労働運動についての裁判について、それに非常に批判をする。だからその批判は、批判してはよろしくないのだというので、逆に言論を押えるというような傾向がうかがわれる。それに、やはり裁判に臨む裁判官としても、ことにやはり人間ですから反映をする、そういうことになれば、やはり少数意見に賛成する、補足意見に賛成をするというようなことで、私はよい裁判官としては、政治や道徳に関心を持つことはいいですけれども、やはりそれは洞察力を備えたものでなければならぬと思う。私はこの点について、近く定年退職される方の裁判官の推薦についても、また六月ですか、行なわれる長官の定年退職によって推薦さるべき長官というのは、政党政治の自民党の総裁である佐藤総理大臣であっても、これは超党派的に日本の将来を考え、三権分立の思想に基づく司法権の独立ということを考慮してやらなければならぬ。ただ考慮しただけではいかぬので、具体的にやれるような人を選ばなければ、田中長官のようなあとで非常な批判を受けるような長官であってはならないと思う、こういうふうに思うわけです。
まだだいぶ準備しておりますけれども、なおこの点についてはもっと私も集約いたしまして、法務大臣並びに総理大臣に、整理をしてもっと聞きたいと思っております。——いま訴追委員会という発言がありましたけれども、最高裁判所の長官は訴追委員会にはかからないということで、かつて最高裁判所の裁判官に対して、記録の全部を閲覧してそうしてやったけれども、これは上告を棄却する、いわゆる三くだり半の判決です。しかも当時は判決は印刷してあった。あとで裁判官の名前を署名するだけになっておった。ところが、なかなか、最高裁判所のだれであったか、名前を忘れましたけれども、訴追委員会に来ないのです。だから再三頼んで、来てもらって聞くと、こんなのを印刷しておいてやったらだれでも、こんな厚い全記録をあの年取った裁判官が読まれるとは思わぬ。それを全部読んで、それが上告棄却だ。弁護人の上告趣意書は別紙のとおりと、弁護人が一生懸命書いた上告趣意書はそのまま印刷してうしろにくっつけてある。ですから三くだり半の判決と申しまして、しかもそれで訴追委員会にその問題が起こりました後は、印刷はやめて書くようになりましたけれども、内容はあまり変わりがないわけです。しかしその場合でも、これは国民投票により信頼を受けているから、罷免の訴追委員会、裁判官弾劾法には関連がないというので、最高裁判所の裁判官はこれを否定してこられておるわけです。私はそういう具体的問題にも相当当たっておりますけれども、やはり問題は、いつかの委員会でも申しましたように、司法の象徴である最高裁判所をつくるのは、建物は五百年あるいは千年と続くかわからぬけれども、やはりその中を構成するのは裁判官であり長官であるわけですから、それに沿うような裁判官がそこを充実しなければいかぬわけです。ですから特に裁判官の任命と長官の任命については慎重であり、またそれにふさわしい人を出さなければならぬ。そうするためには最初のような方式に返って、政令はなくなっておりますけれども、やはり五・五・五の比例を保つような推薦の方法もまたこれは無視してはならない。総理大臣の独裁によると、いい人が選ばれるといいのですが、間違った場合にはとんだあやまちを来たすことになるから、そういう点を特に要望をいたして、任命権者である総理大臣並びにその補弼に直接当たられるところの法務大臣の所見を伺っておきたいと思いますが、法務大臣がお見えでないから政務次官にひとつお願いします。
〔委員長退席、小鳥委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/24
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025・山本利壽
○山本(利)政府委員 ただいま坂本委員からるるお話がございました、あくまでも司法権というものは独立しなければならぬということは、われわれも賛成するところでございます。過去の長官についてあれこれの批判がございましたけれども、今後任命されます長官については、あくまで司法権を独立させるようなりっぱな人物を、あらゆる点から検討して、内閣の責任においてなされるものと確信いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/25
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026・坂本泰良
○坂本委員 なお最高裁判所の本法案に関する問題についてまだ若干ありますけれども、私はやはり、一番いい、りっぱな裁判官を選んで、さらにその長官を選んで、そういう人であれば、ほかの公団とかいろいろな関係においても今度の改正はまだ低きに過ぎるじゃないか、そういうような結論を持っております。なおこの法案については、この際もう少し具体的に掘り下げて質疑をいたしたいと思いますから、きょうはこの程度にしておきたいと思います。
なお、これに関連して司法研修所長の鈴木忠一氏の発言についても他の委員から質問があると思いますが、なお私の所見もありますから本日は留保いたしまして、この程度で終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/26
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027・小島徹三
○小島委員長代理 井伊誠一君。
〔小鳥委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/27
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028・井伊誠一
○井伊委員 私は、裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について若干の質問をいたしたいと思います。
この裁判所法の一部改正の点では、地方裁判所に調査官を置くことにするということでありますが、この置かんとする必要、理由というものは、近年工業所有権に関する事件と租税に関する事件が相当多数に出されておる。かっこの裁判は長期化する傾向がある。で、何とか迅速かつ的確にこの裁判を行ないたいというのがその趣旨でありますが、この工業所有権に関する事件というのはどういうふうにふえておるのであるか、また、その工業所有権に対するところの裁判というものの内容はどういうものなのであろうか、これを承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/28
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029・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点につきましては、法務省のほうから参考資料というものを出していただいておりますので、その統計によりながら御説明申し上げたいと思いますが、その参考資料の一五ページの一三というところでございます。その一番右の端に工業所有権という事件の分類がございます。これが昭和三十八年度の新受件数は全国で二百五十四件、三十九年度は二百八十一件、かようにふえてまいっておるということでございます。これは件数そのものといたしましては、民事訴訟の全体の件数から見ればあまり多い数字ではございませんけれども、しかしながら、その事件の複雑さ、困難さを考えながらこの件数を見ますと、私どもの立場からすれば三百件近い数字というのは相当な件数である、かように考えられるわけでございます。のみならず、これは私どもの口からはやや申し上げにくいことでございますけれども、裁判所の工業所有権に関する処理がさらに一そう迅速になり、あるいはさらに一そう機宜を失しない適切な判決を出せるということになりますれば、いわば潜在的事件というものが相当多数あって、それが裁判所の門をくぐらずに解決されておることがあるように聞いておるわけであります。これは単に裁判所ばかりでなくてもう少し広い意味の法曹と申しますか、弁護士さんも含めて弁護士事務所でこの種の事件を専門的にお取り扱いになる事務所も少ない。そういうものも本来はもっとふえていかなければならないわけでありますが、そういうことと相まちまして裁判所の体制を整えることによりまして、一そう増加する要素を含んでおるというところに、私どもがこの難件を非常に重視しておる面があるわけであります。
それから、なお審理期間の点でございますが、これは先般もちょっと申し上げたかと存じますが、普通の事件に比べまして、たとえば工業所有権関係の事件でございますと、普通の民事訴訟事件は大体一年なりそれ以下で処理されておるわけでございますが、この種の事件はやはり一年以上、一年二、三カ月を要しておるというふうな数字になっておるわけでございます。そこでそういうようなところから、ひとつ専門的な補助者を置いて裁判官の補助をさせれば事件が一そろスムーズにいくのではないかというのがこの法案をお願いしておる根本の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/29
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030・井伊誠一
○井伊委員 工業所有権の問題といってもこれは非常に広い範囲を持つのではないかと思うのであります。すなわち「発明特許、実用新案、工業的意匠又ハ雛形、製造標又ハ商標、商号及原産地ノ表示又ハ出所ノ称呼並ニ不正競争ノ防止」、こういうようなものがあり、なおこれは「本来ノ工業及商業ノミナラズ農産業及採取産業ノ範囲並ニ葡萄酒、穀物、煙草葉、果実、畜類、鉱物、鉱泉、麦酒、花卉、穀粉ノ如キ一切ノ製造品又ハ天産物ニモ及ブモノトス」、こういうように工業所有権に関する条約の中にその点がうたわれておって、わが国はもうこれに参加をしておるわけですが、そうすればかような問題が結局工業所有権の問題の範囲だと見なければならない。こういうふうに考えますときに、これは容易な、狭い問題ではなくて、これはますます時の経過とともにこの各種の工業権に関する問題として、地方裁判所の調査官の任に当たっておる者がこれを調べ、準備をするということにならなければならない、こう思うのでありますが、現在においてはこの問題は、このほかになお租税の問題もありますけれども、工業所有権の問題に関するならば、これは現在ではどういうような種類の範囲にまで問題は起きておるのであるか、全面的にこんなものまでも、工業も農業までもずっと広がっての問題があるのか、その点をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/30
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031・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 井伊委員の御指摘のとおり、工業所有権と申しましてもたいへん範囲が広いわけでございまして、御指摘の条約によりましても非常に広範なものが掲げられておるわけでございます。権利の面から申しますと、私どもとしては一応工業所有権というのは、特許権、実用新案権、意匠権というようなものがおもなものであると考えておるわけでございます。現在工業所有権について東京地方裁判所、大阪地方裁判所等では特別の部を設けて処理いたしておりますが、この部で処理いたしておりますのは、いま申し上げましたような権利関係の事件であるわけでございます。
そうして、その内容という点の御質疑でございますが、先ほど御説明申し上げました法務省から出していただいております参考資料の十五ページの統計の中で、この統計そのものには内容の区分までは掲げていただいておりませんが、そうして必ずしも全国的な件数の区分というものはわかっておりませんが、さしあたり東京地方裁判所の昭和三十九年の新受件数百二十六件というものがございます。この百二十六件の内訳を調べてみますと、大体機械関係が九十三件、電気関係が十五件、化学関係が十八件と、かような数字になっておるわけでございます。大体裁判所では非常に大まかに区分いたしまして、このように機械関係、電気関係、化学関係と分類いたしておりまして、数字から申しますと圧倒的に機械関係が多い、かようになるわけでございます。この区分の新受は、先ほど御指摘の工業所有権の保護に関するパリ条約の表現とは必ずしもマッチいたしておりませんので、これはそれぞれについてそれぞれがあり得るということであろうと思います。たとえばブドウ酒ならブドウ酒という問題でも、結局その製造の機械の特殊性ということが問題になれば、私どものほうでは機械というふうの分類に入れるわけでございますし、その間における一つの化学変化というようなものに特許の中心があるというようなことになってまいりますれば化学のほうへ分類する、こういうふうな分数のしかたをしているわけでございます。具体的に農業その他の産業、あるいはその中の産品の事例についてどういうものが多いかということまでは統計をとっておりませんのではっきりいたしませんが、特許の特色といいますか、つまり機械という面に特色があるのか、あるいは化学変化の面に特色があるのか、あるいは電気の系統を利用するその利用のしかたに特色があるのかという、そういう特許の特色のとらえ方によって分類すれば大体そういうことになる。そして、これは非常に広範なものであるということは井伊委員の御指摘のとおりの実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/31
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032・井伊誠一
○井伊委員 これは現在においては、工業所有権の問題で国際的な争議というようなものは起きていませんかどうか。もしそれがあるとすれば、どういうふうにこれは処理しておるであろうか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/32
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033・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 これは御指摘のとおり非常に国際的な問題でございますし、またこの工業所有権の事件というもの、特に特許権の事件というものは非常に国際性を持ったものであるという点が特色の一つであるというように裁判官等も指摘しておるわけでございます。そこで、実際の具体的事件を一つ一つ申し上げますだけの資料は持っていないわけでございますが、しかしながら、非常に国際性を持ったものであるという点は確かでございまして、向こうの会社等がこちらの弁護士さんに頼みまして、そうしてこちらの弁護士事務所が担当してやっておられるのが通例でございます。しかしながら、事件そのものとしては国際性を持って、外国の会社のいわば運営に関するような非常に重大な事件も東京等では相当に起こっておるように聞いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/33
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034・井伊誠一
○井伊委員 この国際の問題でも工業所有権の問題は関連が出てくるということが考えられるのでありますが、こういう場合に、地方裁判所の調査官というものがそれらの点まで調査を行ない得ることかどうか。自然ここに必要性ができてくるとすれば、その調査官の資格をどういうふうなものに置くが、どういう者をこれに採用をするかという点にも関係してくると思うのであります。その点について御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/34
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035・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 調査官の制度が成功するかどうかは、その調査官に人を得るかどうかにかかっておるということはまさに御指摘のとおりでございまして、私どもとしてもこの予算要求をいたします際に、十分それにふさわしい人材が得られるような待遇でなければ目的を達しないというところからいろいろ交渉いたしまして、先般もちょっと申し上げました、一応二等級ということで待遇するという、そういう予算になっておるわけでございます。そこで二等級と申しますのは、一等級というのは普通の公務員の中では一番上でございますので、その次ということでございますから、これは普通の公務員としてはかなりの地位でございますし、また特許庁等と比較してみましても、特許庁のほうで一等級というのは、審判長のきわめて少数の数人の方が一等級であられるだけで、それ以外は審判長であれ、審判官であれ、あるいは審査長、審査官、いずれも二等級以下の給与を受けておられるわけでございますので、特許庁の職員との給与の比較からまいりますれば十分人が得られるのではないか。必ずしも特許庁のみから充員するということではございませんが、たとえば特許庁と比較すればそのような給与関係になっておりますので、十分人が得られる、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/35
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036・井伊誠一
○井伊委員 いまのお話で、二等級であれば人が得られるというお話でありますが、大体月収七万四千円ぐらいのものになるんじゃないかと思うのですが、こういうような特殊な知識を必要とするもの、そういう専門家がそのぐらいのことでほんとうに求められるかどうかということについては、これは一つの見込みでありますけれども、どういうふうなところからそれを得られるのでありますか。特許庁あるいは特許に関係しておる人というようなあれでしょうが、どういうところの推薦、あるいはまたその資格というものをどういうふうにして採用されるのか、その点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/36
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037・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 先ほど二等級と申し上げましたが、これは金額にいたしますと大体五、六万円ぐらいから九万円ぐらいまでにわたっておるわけでございます。平均いたしますると、井伊委員のお話の七万数千円ということになろうかと思います。なお、これはこまかい問題でもございますので、先ほど申し上げませんでしたけれども、それに大体二割程度の調整額、つまり割り増しと申しますか、そういうものもつく予定でございます。そういうことで、これはまあ現在公務員全体が必ずしも給与的に恵まれておると申せませんので、そういう金額的に高いものであるとは言えないかもしれませんけれども、公務員の中で見れば、これはまあ相当な待遇であるというふうに先ほど申し上げたわけでございます。
そこで、実際にどういうところからという点につきましては、現在東京高等裁判所に数人の調査官がおりまして、これは現在、大体特許庁の審判長クラスから来ていただいておる実例のようでございます。しかし今度は地方裁判所でございますから、はたして審判長クラスからおいでいただけるか、あるいは審判官なりそのもう少し下のほうからおいでいただくことになるか、これはまだ十分打ち合わしておりませんが、何と申しましても六人の中で特許関係は三人の予定でございますので、この程度の数字であれば特許庁からでもおいでいただいても、そう御迷惑はかけないのではないかというのが一つでございます。それからなお、そのほか大学もずいぶんたくさんございますので、そういうところの大学は給与も悪いようでございますから、大学の先生でおいでいただける方もあり得るんじゃないか。そこで、何と申しましても三人でございますから、充員についてはいまのところ不安は持っておらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/37
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038・井伊誠一
○井伊委員 地方裁判所に置かれるところの調査官六名を予定しておられるようでありますが、この六名というようなそういう少数の人では、これだけ特殊な事件で、裁判所においては実はもてあましておられる——率直にいえばそう言えるんじゃないか。努力はしておられましょうけれども、何ぶんにも特殊な性質を持っておるし、長引く、こういうことになっておる。その特殊の性質のものを、六人あればそれで足るというお考えでありましょうか。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/38
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039・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 この調査官の六人というのは、私どもの予定といたしましては、租税関係に三人、工業所有権の関係で三人という割り振りを考えておるわけでございます。そこで、その数があまりに少ないじゃないかという御指摘、まことにもっともでございまして、私どもとしては、その点は今後の努力に御期待いただきたいと考えるわけでございますが、こういう数になりましたことの一端の理由と申しますか、を少し申し上げさせていただきますれば、一つには充員関係、先ほど御指摘の、大ぶろしきを広げましても、はたして充員ができるであろうかという点の見通しがあったわけでございます。
それからもう一つは、先ほどの統計でもごらんいただけますとおり、工業所有権事件のほとんど半数が東京地方裁判所に起こっておるわけでございます。そして残りは全国に分かれておるわけでございまして、大阪がやや多うございますが、これとても全体から見ればかなり少数で、それ以外の裁判所というものはほとんど一件、二件というところが多い、あるいはないところもございます。そういう関係で、配置の点につきましても、これは一つの裁判所に一人置くということはとうてい考えられないわけで、数個の裁判所で一人置くというような配置になりますと、その間の問題もございます。そういう点も一つの考慮になって、とりあえず重点的な配置として東京地方裁判所に三名置いて、そうして円滑な処理をはかりたい、こういうのが一つの考え方であったわけでございます。
それからもう一つは、これはあまり理由にならないかもしれませんけれども、いま御審議いただいております増員数、総員八十五人でございますが、これは現在の予算情勢と申しますか、政府全体の御方針からしますれば、かなりの数字というふうに私どもは考えておるわけでございまして、その八十五人の中で裁判官の二十七人あるいは書記官の三十七人というものは、これは裁判所としては是が非でも入れていただきたい数字でございまして、そちらにいわば超重点を置きました関係で、この調査官のほうは何と申しましても新しい制度でもございますので、人数の点は一応こういうことで了承した、かようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/39
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040・井伊誠一
○井伊委員 一口に言えば予算が得られるかどうかということになりそうなんだが、この必要性というものが、その業務というか任務の対象となるところの範囲、それからそれが国内的というだけではなく、国際的な問題もからんできておるというようなことになれば、その工業所有権の問題一つでもずいぶん、六人などではこれは処理し切れないところのものをいままで持っておられるのではないか、それがその六名で足るというのは、それはもういわば、とにかく制度の上に一つできるだけのものをあげるということでがまんをする、こういう意味合いなんですか、そういうふうに聞いてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/40
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041・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 がまんをするという表現が妥当でございますかどうですか疑問でございますが、確かに井伊委員のお話のとおり、結局は予算の問題でございますが、ただほかの増員とこの調査官の関係がちょっと趣が違いますのは、法律が通っておらない状態のもとにおいて予算折衝を私どもとしてはいたしたわけでございます。そこで大蔵省のほうとしても、そういう予算を入れても法律が通るかどうかわからぬじゃないかという反駁といいますか、逆襲をされれば、これは私ども国会でおきめいただくことですから、それは絶対通りますとまで言い切れないわけで、それでは努力しますということになるわけで、そこでいま法案を御審議いただいておるわけでございますので、これをひとつ円滑にお通しいただいて裁判所法として成立して、裁判所法の上にはっきり地方裁判所調査官という制度が載ってまいりますれば、六法全書に入ってまいりますれば、今度はそれを背景にして来年以降の予算折衝では非常に強力な要求ができるであろう、かように考えてこの法案について特段のお願いをしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/41
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042・井伊誠一
○井伊委員 この調査官というものは、もちろん当該事件についての審理と、それから裁判に関する調査をするのだということでありますが、審理と裁判というのを特に分けたように——いまではありませんが、前の高等裁判所のときからそうなっておるのでありますが、審理と裁判を特に分けてあるのはどういうところからでしょうか。これは私の解釈に多少の疑問もあるのだが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/42
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043・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 これは私ども裁判所法が制定されました当時の資料を詳細に調査いたしておるわけではございませんので、若干不正確であるかも存じませんが、一般的に裁判所の権限は、ある事件について審理及び裁判をする、それが裁判所の権限である、こういうような規定の立て方になっておるわけでございます。方々にそのことが出ておるわけでございますが、たとえば一つの例として、裁判所法の十八条等でも「但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、」こういうような表現がございます。そのほか方々にこれは出ておるわけでございますが、要するに裁判所の権限は審理及び裁判だ、こういう表現をとっておるわけでございます。結局、審理だけしても裁判しなければ無意味でございますし、裁判するためには審理が必要なので、こういう二本建てでずっと裁判所ができておりますので、その裁判所の権限にあることについて一つの補助をする、そういうことでこの表現になったものだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/43
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044・井伊誠一
○井伊委員 その点はわかりましたが、裁判官はこれに対して補助機関として調査官を使われるということですが、この調査の結果の採用いかんというものについて、ある場合、その内容は非常にむずかしいということになれば、最後の裁判のときには、もちろんその結果を援用して裁判をされることになるのでしょう。審理のほうの準備も裁判の準備もともにここでやられるとするのでありますけれども、最後にこれを取り上げるときに、その取り上げ方は拘束はされないというのが調査官の仕事であろうかと思うのですが、それはそうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/44
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045・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 それはまさに御指摘のとおりでありますばかりでなしに、私どもとしては結論を援用するという、そういうところまで調査官に補助させるという気持ちでもむしろないわけでございます。これはあくまでも判断に必要な資料の収集とか整理、あるいはその他の調査、あるいは判断の前提となる論点の整理、そのための予備知識の獲得、こういうような全く判断の基礎になる文献その他の調査ということでございますし、そういう意味では結論というものを調査官に出させるということも、あるいは場合によってはないとは言えませんけれども、むしろそういうことがほんとうのねらいではなくて、その前提となる事実そのものについて資料を集めさせるということのほうにねらいを持っておるわけであります。そこで判断そのものはあくまでも裁判官の判断でございますし、それが調査官の判断を援用するというようなことでは、ある意味では非常に影響を受けるというおそれもございますので、そういうような運用のしかたではなくて、むしろその前提となるそれぞれの内容を明らかにする。そうして、一例を申し上げますれば、ある技術ともう一つの技術というものが抵触するかどうか、つまり特許権の内容たる技術と、被告なら被告が取っております技術というものが抵触するかどうか、これはまさに裁判官の判断すべき事項でございまして、その前提となるそれぞれの技術の内容について、専門的にはっきりいたさない点をいろいろ文献その他で調べて補助する、この程度にどとめさせたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/45
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046・井伊誠一
○井伊委員 だんだん裁判所の職務の範囲というものが拡大してきます。複雑な裁判審理をしなければならない、そういうことになる傾向が見られるのでありますが、この調査官を設けることのごときもその一つのあらわれである。こういう形で、いまだんだん裁判官のあまり専門的でない部分が大きくなってくる。裁判官としてもこういう経験はあまりないというような事態——法律問題であるならばこれは詳しいでしょうけれども、そういうものでない、こういう工業所有権の問題、それは詳しいかもしれないけれども、租税の問題、これはなかなか複雑でありますし、租税についての問題では深刻な争いがある。こういうものについて、裁判所が一手でもってこれをやっていくわけにはいかないような世界がだんだん出てきておると思う。こういうふうになっておりますとき、全体としての、つまり裁判官のあり方、裁判所のあり方として、これはどういうところでこういう姿というものを完全に受けとめて、そうしてその訴訟そのものが迅速にまた正確に行なわれるようにするかという点については、私は、いま裁判所はその点で行き詰まっておられるのでないかというふうに思うのです。こういうものに対する改革のしかたは、これから先逐次こういうふうな必要に応じてのなしくずしの処理というものでは長続きはしない、じきに詰まってしまうのではないかということを私は思うのであります。こういう押し詰まってくるところの裁判事務そのものが、内容的にもあるいは技術的にも非常にむずかしくなっていく。これはだんだんふえる一方だと考えられる。これにどういうふうにして対処していこうかという裁判所のあり方、そういうものについてひとつ伺わしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/46
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047・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 井伊委員のただいまのお話しの点は、非常に重要な、しかもまた非常にむずかしい問題でございます。そして、ある意味では裁判所の制度のあり方の問題でございまして、これは法務省でもつとに御検討いただいておる問題でもございますし、また最終の立法機関である国会、特に法務委員会等でもひとつ十分御検討いただきたい問題でございますが、裁判所の立場といたしましては、必ずしも行き詰まっておるようにも考えておりましせん、またなしくずしというお話のような気持ちも持っておらないわけでございます。
今度の調査官を設けていただきます制度のうちで、たとえば租税の問題等は、これはいろいろ学者等の意見もございますが、むしろ将来大学の法学部等で税法というようなものをもっと専門的に教育する方向に当然なるべきものでございます。そうして裁判官といわず、弁護士さんも、もっと税法というものに詳しくなっていただく必要があるんじゃないか。税法事件になるとすぐに税理士の援助をかりるということではいわば不十分で、アメリカ等ではむしろ税法というようなものは法科大学の講義の中の非常に重要な部分を占めるというようにも聞いておりますが、当然そういうような解決になってまいるだろうというふうにも考えておるわけでございます。そこで、同時に逆に申しますと、そういうたとえば税務署の職員とかその他税の担当者の中から司法試験に合格するというような人もどんどん出てくることがあり書ていいのではないか。両方から歩み寄って、つまり一本化するということも十分考えられることであろうと存じます。
それに対しまして、特許のほうはこれは一つの技術でございますから、いわば法律学というものとはその面ではかなり遠いものでございますけれども、しかしこれも、たとえば東京地方裁判所でかなり長く特許部の仕事を担当しておられた方に伺いますと、技術そのものが非常にわかりにくいけれども、結局判断すべきものはやはり一つの法律的判断であって、それは法律的と申しますか、あるいは社会的と申しますか、価値の評価、比較考量の問題であって、つまり先ほどちょっと引例いたしました、ある技術の内容が、特許の技術の範囲に含まれるかどうかということは、単なる技術者の判断ではなくて、やはりそこには社会的な評価と申しますか、法律的な評価と申しますか、そういうものが入っておるんで、それはそういう意味では決して従来の法曹あるいは裁判官が処理し得ない、あるいは処理するのに非常に困難を来たすものではない。ただその前提の技術の内容を理解するのに若干の困難性があるので、それをある程度補助させれば、最終的な判断はむしろそういう技術者よりも裁判官の、あるいは法曹のほうがすぐれておるのだ、そういうような感じをしみじみ持つということを述懐しておられるわけでございまして、私どもとしては、そういう行き方が正しい行き方ではないかと考えておるわけでございます。国によりましては、あるいは特別の裁判所を、あるいはそういう技術者を含めた技術者を構成員とした裁判所をつくっておるというところもあるようでございますし、またわれわれの行き方のように、何らかの補助者を利用しておるような行き方のところもあるようでありますが、私どもとしては、やはり特別裁判所制度というものは憲法上の問題もございますし、かたがた問題であって、現在の行き方が正しいのではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/47
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048・井伊誠一
○井伊委員 この原案が出ます場合に、臨時司法制度調査会の意見というものが加味されたという御説明がありました。その臨時司法制度調査会のどういう意見を参酌されたのか、その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/48
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049・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 井伊委員の御指摘のとおり、この法律の改正部分は、臨時司法制度調査会の意見に沿って改正したものであるというふうに御説明申し上げているわけでございます。そこで、臨時司法制度調査会でどういう意見が出ているかということにつきまして簡単に御説明申し上げたいと思います。
御承知のとおり、臨時司法制度調査会におきましては、司法制度の各種の部門につきましていろいろな改正の意見を出しているわけでございます。その一環といたしまして、まず裁判官制度についての改正意見を出しているわけでございますが、そのうちに裁判官の補助機構についての意見が出ているわけでございます。その補助機構について幾つかの意見を出しておりますが、その一つといたしまして、「地方裁判所に、裁判官の命を受けて工業所有権関係事件等の特殊事件の審理及び裁判に関して必要な調査をつかさどる裁判所調査官を置くこと。」という提案をいたしているわけでございます。その御意見を受けまして今回の改正を試みようというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/49
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050・井伊誠一
○井伊委員 さらに定員法のほうに関係しますが、地方裁判所のほうの調査官は六名ふやすという、それはわかりますが、この家庭裁判所のほうの調査官は二十五名になるようですけれども、この点はそのとおりでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/50
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051・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 二十五名増員していただくようにお願いしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/51
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052・井伊誠一
○井伊委員 この配置はどういうふうになりましょうか。やっぱり東京……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/52
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053・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の調査官の増員は、提案理由説明でも述べていただきましたとおり、主として少年関係の事件の増加と、それからこれの処理の適正をはかるということでございます。そこで、少年関係の事件が比較的ふえておりますと申しますか、件数の多い裁判所に重点を置いて配置したいと考えておりまして、現在予定といたしましては、大体東京、大阪に重点を置いて、さらに京都、神戸、名古屋等のこれに準ずる部会に数人ずつ置く、こういうようなことでいま計画を立てております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/53
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054・井伊誠一
○井伊委員 いまの少年犯罪というのがふえておるという点は、いまあげられたようなところが最も多いと思うのですけれども、しかし、この点は最近の傾向から申しますと全国的な問題でありまして、この調査官は地方の裁判所にそれぞれ数名おりますけれども、家庭裁判所で扱うこの少年の犯罪事件、そういうものに対しては必ずしも大都会のみではないというふうにむしろ考えるわけです。これがすでにいまおあげになりましたように、固定しておるとは考えておらないので、私どもの見るところでは、やはり地方においても相当の少年犯罪はふえておる、こう考えておる。ことに大体もう少年のあれは集団的な傾向を持っておるのでありまして、それは都会であるから起きるというよりは、むしろ集団的に辺陬の地方にも多くなりつつある、こう私は考えるのであります。ことにその問題はなかなか調査官の力を要することが多い関係がある、こう考えるのでありまして、いまの配置の数というものは、地方の裁判所のほう、家庭裁判所のほうにはあまりお考えにならないのでしょうか。その点をひとつ伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/54
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055・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 私の先ほどの御説明がやや不正確と申しますか、明確を欠いたかと存じますので、少し補足させていただきたいわけでございますが、先ほど申し上げましたのは、大都会では少年事件が非常にふえておって、いなかのほうではそれほどふえておらないという趣旨で申し上げたわけでは必ずしもないわけでございます。この調査官に限りませず、裁判官でも書記官でも同様でございますが、常時私どものほうとしては全体の事件の動きというものをにらんでおりまして、それに応ずる人員の配置をいたしておるわけでございます。ただ、そう申しましても、少し減ったからすぐ定員を減らすというふうなそれほど機動的なこともできませんけれども、大きな意味では事件数の増減に伴って配置定員の変更をするということを絶えずやっておるわけであります。
そうして、そういう点から申しまして、何と申しましても大都会のほうは、ことに東京等でございますと相当調査官の数が多うございますので、そこである程度有無相通ずるということで、普通の件数計算から割り出しました数よりも少なく押えるということも場合によってはいたしますし、それからまた地方のほうでも最小限度、たとえば五人なら五人は要るということになりますと、実際の事務量としては、かりに三人半というようなときでも五人置いているというようなこともあるわけでございます。そういうところをいろいろにらみまして、前のときにたとえば定員計算で端数を切り捨てましたようなところへ今度は持ってまいるというようなことで、今度の配置の中でも、新潟等には一人持っていこうというような計画を立てておるわけであります。先ほどはおもなところを申し上げましたので、新潟の名前をあげませんでした。ただ、これは新潟の裁判所から、国会でおれのほうへよこすと言ったじゃないか、こういうふうに言われてもどうかと思いますので、私どももまだあくまで一つのプランでございますのであげておりませんでしたけれども、しかし新潟へも一人というような一つの腹案を持っておるわけでございます。
そういうことで、全体を調整しながら適当な数で割り振ってまいりたい。その場合にはどうしても東京や大阪に従来多少御無理を願っておる、(横山委員「東京、大阪、名古屋」と呼ぶ)名古屋は先ほど申し上げましたので省略いたしましたが、名古屋にも二、三人配置する予定でございます。こういうことで、これは二十五人を割り振るわけでございますから、委員の皆さま方全員の御了解を得るということはなかなかできないわけでございます。そういうことでございますので、ひとつそういうふうに御了承いただきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/55
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056・井伊誠一
○井伊委員 なお私もこの問題についても御質問をしたいと思いますけれども、本日は時間もあれでございますから、一応この程度で質問を打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/56
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057・大久保武雄
○大久保委員長 横山委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/57
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058・横山利秋
○横山委員 ちょっと関連してお尋ねしたいと思います。
名古屋で聞いた話でありますが、これは何も名古屋ばかりではありません。私のような法務にしろうとの人間は、庶民的な注文にはたいへん納得する場合が多いので、専門家の皆さんから言うとそんなことはあたりまえなことだと言われるかもしれませんが、関連質問でありますから、きわめて俗っぽい問題であります。
この間裁判所へ行ったら、おじいさんが多数私のところへ来まして、いろいろ相談を受けている中で、きわめて卑俗なことであるけれども、いつも出頭命令が午前十時になっておる。そうして午前十時に行って午前十時に始まった例は一回もない。大体順番でいくとそれが一時になり二時、三時になる。そんなことが初めからわかっておるなら、なぜ一時に出頭命令を出さぬのだろうか。あたりまえのことだが、どういうわけだろう。いま先輩に聞いてみたらほかのほうではやはり一時、三時というところもあるそうです。けれども、そのおじいさん方はある裁判でもう毎月行っておるわけです。毎月午前十時に行って毎月必ず弁当を必要とする。そんな、何というか、名古屋弁で言うととろくさいことは、何で裁判所が少しは好意を持って考えぬだろうかということが一つ。
それからもう一つは、裁判所で待っておるところがない。廊下でぼさっとしておる。それで寒い。それからちょっとどこかコーヒー屋へ行くといったって、いつ呼び出しがあるかわからない。マイクがない。全くわれわれを何と思っているんだろうかというわけです。私はそれを聞いて、一応法務委員としては多少政府の弁解もせんならぬのが大体普通ですから、おじいさんこういうこともあるんだよと言いたい。けれども、その場合は、私は言うことがないのです。私は、裁判所は庶民に対するサービスということはへにもかけぬのでしょうか、関係ないでしょうか、こういうことを一ぺん聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/58
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059・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの横山委員のお話はもう重々ごもっともな点ばかりでございまして、まず呼び出し時間の問題でございますが、これは前々から非常に問題になっておることでございまして、一体どういうふうに区分をすればいいか。ただこの場合でも、いま横山委員のお話しのように、十時に呼び出して、ずっと尋問が継続して午後になることはこれはたびたびございますが、十時に呼び出してほかの事件をやっておって一時以後になるということは私どもとしては絶無と申し上げたいのですが、横山委員がそういう例があるとおっしゃいましたので、これはひとつ十分調査と申しますか、現地の裁判所にもお話しをして、十時においでいただいて午後になるというようなことにはならないように今後とも努力いたしますし、十分そういうふうに善処いたしたいと思います。ただ一時に呼び出して三時まで待たされたということはしばしば聞くことでございまして、その点は非常にむずかしい問題でございます。これは一時、二時、三時と区分けして呼び出したほうが非常にうまくいくのか、あるいは一時、三時、そういうふうなのがいいか、これはなかなかむずかしいところでございます。私どもとしては、少なくとも二時間きざみ、できれば一時間きざみということをつとに言っておりますが、実際の事例は一時間きざみは必ずしも十分に行なわれていないかもしれないと思います。しかし、二時間以上のきざみでその日にやる分を全部朝十時に呼び出してやるということは、普通行なわれていないと了解いたしておりますが、お話がございましたので、その点はさらに十分調査して善処いたしたいと思います。
それから建物の問題が一つございます。これは待合室は昔はあったわけでございますが、だんだん職員の増加に伴ってまかなえなくなっておるわけでございまして、名古屋の場合は、先般衆議院を通していただきました予算で簡易裁判所の増築ということが認められましたので、今後は相当よくなると思いますし、それから横山委員に、名古屋の場合には、ひとつ交通裁判所をごらんいただきますと、これは非常にいろろろな設備が整っております。そちらのほうもごらんいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/59
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060・横山利秋
○横山委員 これは一例なんですけれども、やはりだれでも裁判所に行くことはいやがる。いやがるけれども行かざるを得ない。行かざるを得ないから行くと、全くサービスというか、そういうことがなっておらぬとみんな考えるわけです。廊下で待たされて、ストーブがないのはしようがないけれども、火ばちもない。そうして呼び出しがいつくるかわからぬ。二時間も三時間も待っていて五分で済む場合が多い。それは裁判官と弁護士さんとの関係でやむを得ないと思うのですけれども、五分や十分で済む場合が多い。それで終わると、今度はいつかというと、来月だと言う。そういうことを何回でも繰り返す。どっちが悪いのか、それはわかりません。わかりませんが、庶民としては全く裁判所というところはなっておらぬ。五分か十分で済むことならなぜ先にやってくれぬかと言う。集中審理ということがあるんだよと私が言うのですけれども、それならそんなことくらいやってくれてもよさそうなものだ、もう少しやり方を変えてくれというのがもっぱらの話です。
それからもう一つは、証人や参考人、全くはした金で、へい御苦労さん——御苦労さんも言わぬということは、これまたなっておらぬ。何であのくらいのはした金を出すのか、ばかにしておる、こう言うのです。大臣もお見えになったところだけれども、もう少し参考人であろうと被告人であろうと、裁判所の中におけるサービス部門について、金を使うのもいいと思いますけれども、金を使わんでも、まだ大事にしてくれるという雰囲気が私はできそうなものだと思う。それは最高裁がどのくらい指揮権を持っておるのか、遠慮してよう言われぬのか知りませんけれども、ほかの問題と違って、裁判所の内部における国民に対する扱いについてはちゃんとおやりになったっていいじゃないか、やるのが当然じゃないか。ほかのお役所でもサービスの悪いところはありますけれども、裁判所ほどサービスの悪いところはないというもっぱらの評判ですよ。裁判所ばかりでなく、法務局もそうだと言います。向こうもやっぱり言うのです。区役所に行って、戸籍抄本なり印鑑証明なんかをくれと言うとすぐくれる。ところが法務局に行くと全くひどいと言うのです。一ぺん統計をとってみてちょうだい、こう言うわけです。法務局へ行って右から左にくれるものは何もない。そうしてごった返しておる。大体最高裁や法務省というところは裁判をさせるものだで、国民というものはちりあくたのように見て上からながめてござる、スポーツでは庶民的な大臣もござることだから、もうちょっとよくなりそうなものだとみんなが言っておるのですよ。ほんとうの話ですよ。たまに行った人だからよけい痛感するかもしれないけれども、ほんとうにみんながそう言っておる。この辺はもうちょっとよくしてもらわなければいかぬと思うのですが、大臣、しまいのほうだけお聞きになってもおわかりだろうと思うのですが、一ぺん意のあるところをお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/60
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061・石井光次郎
○石井国務大臣 途中から伺いましたが、どうも役所風を吹かすということが問題のようでございます。裁判所のほうといたしましても、法務省の関係でも、どうもえてしてそういうことを言われやすい性質の役所でございますから、特に注意しなければならぬのでございますが、本省からいたしまして実にいかつい建物でございます。あの中に入ってくると、二度と来るところじゃない、ちょっとこわいような気がいたしますと、私の選挙区の者が来てそう私に申しておりましたが、たぶんそうだろうと思います。私どもはそれほどまでには思わないけれども、一般の人は近づきにくいところだという感じを持つわけでございますが、一そう中で働く者は気を配らなければならないと思います。その点につきましては、私どももみんなとそういう話はよくすることでございますが、話をしておるときはまことにそうだと言いながら、よく心持ちが行き渡らない場面もあると思います。今後とも気をつけて、いやな思いをせぬように努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/61
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062・横山利秋
○横山委員 こういう錯覚があるんじゃないかと思うのですよ。法務省とか最高裁、裁判所というところは威厳がなくてはいかぬ。その威厳ということとサービスというものは矛盾する。やはり権威、威厳というものを持っておらなければいかぬという錯覚が伝統的にあるんじゃなかろうか。ほかの官庁のように花を植えたり、ストーブをつけたり、はい何々さん今度は裁判でございますという呼び出しをするようなサービスをすることは、つけ上がらせると思っておるんじゃなかろうか、こんな感じが私はするわけです。あなたはそんなことはないとおっしゃるに違いないと思いますが、あなたがそうであろうと、一般の末端にはそういう感じがあるんじゃなかろうか。行く人がおずおずして行くからつけ上がる雰囲気ができるわけですが、その辺はこの機会にひとつ十分改善をしてもらいたい。
それから、最高裁にお伺いしたいのでありますけれども、あとで法律案が出てくるはずではありますけれども、例の執達吏はまだ薄暗いところに入っておるのです。これはお約束願っておるのですが、あれをもうちょっと明るいところに出してもらうわけにいかないですか。いつまでたっても、お約束願っても、各所とも暗い地下室のような、ごみためのような中に入って、そこでごちゃごちゃやっておるから、やっぱりよい雰囲気は生まれぬ。建物はできぬでも、一室やそこら何とかあかぬことはないんだから、執達吏の事務所をもっと明るいところにして、公明正大な仕事ができるようにしてもらいたい。できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/62
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063・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 執行吏の事務所は、各地によりましてややいま横山委員のお話しのような実情ではございますが、これは逐次その建物の改築計画が進むに伴いまして改善されていくように、私どもとしては善処したいと考えておるわけでございます。名古屋の場合は、先ほどちょっと申し上げました簡易裁判所増築ということで相当前進するのではないか、かように考えるわけでございます。
なお、制度全般の問題につきましては、いま横山委員からもお話がありましたとおり、法制審議会等で御審議いただいたわけでございまして、私どもとしてはこの国会に提案していただくことをお願いしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/63
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064・大久保武雄
○大久保委員長 坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/64
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065・坂本泰良
○坂本委員 私は、終わりでありますから裁判所法でただ二点だけ確かめておきたいのは、特殊事件についての裁判所の調査官、この中には工業所有権、租税の関係がありますから、何か学者なんかを調査官にするという予定があるかどうか。それと、この調査官に対する給与の問題についてどういう程度に考えておるか、その点をひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/65
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066・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 地方裁判所の調査官の給源として学者を考えているかというお話でございますが、これは学者も一つの給源として私どもとしては考えております。ただはたしておいでいただけますかどうか、その辺はまだ必ずしも自信はないわけでございます。
それから給与の問題は、先ほど来るる御説明申し上げましたとおり、二等級でございますので、大体五、六万円から九万円くらいの月額でございまして、その上に約二割程度の調整額がつく、こういうことになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/66
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067・坂本泰良
○坂本委員 工業所有権とか租税の関係は、学者といっても、そう専門でない学者でいいからそれを考えたのと、いま給与の点をお伺いしたのです。
それからもう一つは、現在裁判官に非常に欠勤者があって、実際の定員が何名と裁判所にきまっていても、ほとんど出勤のできないような裁判官なんかがあって、他の裁判官がこれを兼務——といってはいけませんが、陪席なんかをやらしている。そういうような関係で欠勤者が多いと聞きますが、大体十日、二十日くらいの欠勤じゃなくて長期欠勤者は何名くらいあるか、この点お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/67
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068・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 お話しのとおり、裁判官はかなり激務でございますので、病人が出る場合もございますけれども、いわゆる長期欠勤者というものはそう大ぜいはいないように了解いたしております。はっきりした数字をいまちょっと申し上げるだけの資料を持っておりませんが、数名を出ないと考えております。そしてそういう場合には、いろいろ処置をとっておりまして一とれない場合もございますけれども、ごく一例を申し上げますれば、たとえばある地の所長さんが入院されるというような場合に、所長さんをかわっていただくような場合もございます。そういうようなことでいろいろ処置をして、そんなに大きな影響のないようにいたしておるつもりでございますが、不十分な点はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/68
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069・坂本泰良
○坂本委員 それから訴訟費用等の法律案ですが、前回執行吏のベースアップの問題がありました際に調べますと、執行吏と執行吏代理がほとんど半々になっているような資料をもらったわけです。これはこれから執行官法ですか、これができますと、それの中には執行吏代理は全部なくする、こういうふうに伺っておるわけですが、そうなりますと別ですけれども、執行吏の退職金だけをきめておくと、結局執行吏の資格のある者だけがこの法律の適用を受ける、執行吏代理はちっとも関係がない、こういうようなことが起こる。そうしますと、大体現在の執行吏の執行のあり方を見ますと、家屋の明け渡しとか差し押えとか建物の取りこわしをして、土地の明け渡しとか、いわゆる直接行為をやる場合にはほとんど執行吏代理が行くわけですね。それから一例をあげますと、裁判所の和解調書に基づいて執行吏が行く場合は、執行吏代理が行って、そうして代物弁済その他の和解調書で直ちに明け渡しの談合をする、取りこわしの一部着手をする、そういうことになりますと、それに対して、ことに当事者の和解調書についてはこのごろは慎重にやられていますけれども、力の弱い者とか、いわゆる借金をした者がなんとかかんとか、それでは金を貸さぬぞというような関係で和解調書ができているのがやはり相当あると思うのです。そういうような場合に、家屋の代物弁済に基づいて、金を払わなければ、家をあけるとか建物を取りこわして土地をあける、こういうような場合、直ちに執行吏が出かけて、そうして一部の執行かあるいは半分くらい当たることもありますね。そうすると異論のある場合に、それに対して執行異議の申し立てをするとかいろいろやる場合に、やはり債務者はなかなかやれないわけです。そういうような仕事には、問題のある場合には、ほとんど執行吏代理が執行に行っているわけです。それはもちろん執行吏の代理でやるわけで、責任は執行吏にあるのでしょうが、しかしながら現在執行吏代理の月給は二万円か三万円であって、そうして直接人民の利害に関する執行行為に当たる。執行吏がそういうところには行かずに、そうして相当の、法にきめられた手数料を取る、そういうようなことで執行吏のベースの問題でも問題になりましたが、臨時に置く執行吏が全国の執行吏の半分もいる、こういうことになると、これは非常な問題だというので法律は通ったわけでありますが、その後執行吏代理が減っているかどうか、その点と、この執行吏の退職金については、全然執行吏代理には関係がないが、何とか執行吏代理の合同事務所か何かでそういう点は操作をしているのかどうか、その点をこの際承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/69
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070・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 執行吏及び執行吏代理に関するお尋ねでございますが、この法案でお願いいたしておりますのは、執行吏の恩給の調整ということでございまして、これは一般の公務員の場合における低額恩給の改善ということについての恩給法の改正案、それに伴いますところのほんの部分的なと申しますか、びほう的な措置にすぎないわけでございます。先般の法務委員会でいろいろお尋ねもいただき、問題になりました執行吏及び執行吏代理に伴います全般的な問題につきましては、先般ちょっと申し上げました執行吏に対する補助金の増額等の予算的措置につきましては、先般衆議院で可決いただきました四十一年度予算においても盛り込まれているわけでございますが、その他もう少し制度的な面は、先ほど来お話しの執行官法で根本的にやっていただくということを私どもとしては考えているわけでございます。いま法務省のほうにそういうことでお願いをいたしているわけでございまして、その執行官法を御審議いただきます際には、十分な資料も整えまして御説明申し上げ、また御批判もいただき、検討をいたしたい、かように考えるわけでございます。さしあたり執行吏代理の数は、正確な数字はいま持っておりませんけれども、そういう大きな変化はないと考えておりますが、ただ執行官法を通していただき、さらに執行吏に対する恩給増額の予算が通過いたしますれば、それらの措置と相まちまして、急速に執行吏代理を整理、つまりこれが執行吏あるいは将来の執行官に採用できる者はそういうふうに採用し、またそれはふさわしくない者はしかるべき方法で将来とも見ていくということで善処いたしたい、かように考えているわけでございます。その全般的な青写真と申しますか、そういう点はいずれ執行官法を御審議いただきます際に十分な資料を整えて御説明申し上げたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/70
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071・坂本泰良
○坂本委員 ぜひその執行官法で執行吏代理の制度はなくさなければいかぬと思う。ただ前回の通常国会ですか、執行吏のベースの改定の際の資料を見ますと、いま数は忘れましたけれども、執行吏と執行吏代理がほとんど四百人ですか、あるいは千何人ですか、ほとんど半分は執行吏代理がやっている。それがほとんど国民に直接関係して、差し押えとか、いわゆる執行行為をやるわけです。差し押えであれば、競売までは二週間の期間が民事訴訟法に基づいてあるわけです。ですから、債務者はその二週間内に違法な和解調書なんかについては保護を求められるけれども、家屋の明け渡しなんかの場合には、八畳と六畳と二間の部屋で、明け渡しをしたら、八畳の部屋の荷物を全部六畳の部屋にやって、八畳の部屋をくぎづけしていってしまうわけです。それは執行吏代理がやるのです。そうすると、そのあと違法な和解調書を救済するのには、仮処分をとって、執行のあれを取り消してもらうか、執行行為の原状回復でやれるのじゃないかといっても、それはやれないというわけです。そうすると、直接債務者に対する影響が非常に大きくなるわけであります。ですから、その審議の当時も、私、申し上げたと思いますが、執行吏代理は早急になくしなければならぬ、それは法のたてまえからでも、そうしなければならぬ、こういうふうに質疑を申し上げた記憶があるわけであります。それは三年ぐらい前と思うのですが、執行吏代理がその後減っておるかどうか、大体のところでいいですから、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/71
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072・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 執行吏代理を漸減する方向に持っていかなければならないということは、先般来御指摘を受け、また私どもとしてもそういう方針を御説明申し上げていたところだと思います。ただ、三年ほど前の国会でというお話でございましたが、一番その点をやかましく議論になり、問題にされましたのは、先般の国会でございます。この前の通常国会であったと思います。
そこで、私どもとしては、それをなくするとしても、いわゆる無手勝流ではできませんので、それには何としても予算が要る。そこで執行吏について予算的措置を講じて、なるべく執行吏にいきやすいようにする。そうして執行吏がふえれば、執行吏代理は整理できる。そういうことで、先般来、予算もお願いしたわけでございまして、方針としては着々進めてまいっているわけでございます。ただ、現実の数字というものは、まだ御期待に沿うところにはまいっておりませんけれども、そういう方向で今後とも善処してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/72
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073・大久保武雄
○大久保委員長 この際、おはかりいたします。
ただいま議題となっております三法律案のうち、裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、及び、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案の両案に対する質疑はこれにて終了したいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/73
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074・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/74
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075・大久保武雄
○大久保委員長 これより両案に対する討論に入る順序でありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
まず、裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/75
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076・大久保武雄
○大久保委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/76
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077・大久保武雄
○大久保委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、おはかりいたします。ただいま可決せられました両案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/77
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078・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/78
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079・大久保武雄
○大久保委員長 次会は、明十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X01519660316/79
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