1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月二十九日(火曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君
理事 細迫 兼光君
鍛冶 良作君 唐澤 俊樹君
佐伯 宗義君 田中伊三次君
千葉 三郎君 濱野 清吾君
早川 崇君 神近 市子君
横山 利秋君 田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 新谷 正夫君
委員外の出席者
専 門 員 高橋 勝好君
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三月二十九日
委員賀屋興宣君辞任につき、その補欠として鍛
冶良作君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員鍛冶良作君辞任につき、その補欠として賀
屋興宣が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十六日
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/1
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002・大久保武雄
○大久保委員長 まず、政府より提案の理由の説明を求めます。石井法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/2
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003・石井光次郎
○石井国務大臣 商法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
この法律案は、現下の経済情勢にかんがみまして、株式会社の運営の安定をはかり、株式の譲渡の手続を合理化し、さらに株式会社の資金調達の方法を容易に、かつ適正にする等のため早急に改正を要する事項について、府法の一部を改正しようとするものでございます。
次に、この法律案の要点について申し上げます。
第一に、株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定款で定めることができることとし、株式会社の運営の安定をはかるとともに、株式の譲渡を取締役会が承認しない場合には、他にその株式を買い受けるべき者を指定しなければならないこととして、株主が投下資本を回収することを保障いたしました。
第二に、会社が額面株式と無額面株式とを発行している場合には、株主は、額面株式を無額面株式に、また無額面株式を額面株式にすることを請求できるものとして、株主の便宜をはかることといたしました。
第三には、記名株式を譲渡するには株券を交付することを要するものと改め、記名株式の移転に裏書きまたは譲渡証書の添付の必要がないものとして、株式の流通の円滑化をはかりまするとともに、株券の所持を欲しない株主からその旨の申し出があったときには、会社は、株券の発行を停止し、または株券を銀行または信託会社に瀞託しなければならないこととして、安定株主の静的安全の保護をはかったのであります。
第四に、株主が議決権を統一しないで行使できる旨及びその手続を定め、株式の信託の受託者その他他人のために株式を有する株主が、その株式により実質上の利益を受ける者の指図に従って議決権を行使することを可能にするとともに、会社はその他の株主による議決権の不統一行使を拒むことができるものといたしました。
第五に、株主以外の者に対し特に有利な発行価額を定めて新株を発行する場合には、株主総会の特別決議を要することとし、新株引き受け権を株主以外の者に対して付与する場合にも、有利発行でなく、したがって株主を害しないときは、株主総会の特別決議を要しない旨を明らかにして、新株の発行の円滑をはかるとともに、会社が新株を発行する場合には、株主に新株引き受け権を与える場合等を除き、あらかじめその旨を公告するものとし、新株発行が公正に行なわれるよう担保する手段を講じ、株主の利益の保護をはかったのでございます。
第六に、株主の新株引き受け権を譲渡する道を開き、新株引き受け権を与えられた株主が新株の払い込み資金を得るために旧株を処分する等の必要がないようにし、株主の利益の保護をはかるとともに、新株の発行が円滑に行なわれるようにいたしました。
第七に、転換社債の転換の請求は、株式名簿閉鎖期間内でもすることができるものとし、転換社債権者は、同期間内に転換の請求をすることによって株式を取得して、これを処分する道を開いて、その利益の保護をはかるとともに、転換社債の募集の円滑化をはかりました。
以上がこの法律案の要点であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されまするよう希望いたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/3
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004・大久保武雄
○大久保委員長 次に、本案について逐条の説明を求めます。新谷民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/4
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005・新谷正夫
○新谷政府委員 商法の一部を改正する法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。
ただ、御承知のように、商法の規定が、名所に分散いたしておりますので、ただいま大臣から御説明のございました七つの項目につきまして、項目ごとにまとめまして事項別に逐条説明さしていただきたいと思います。
まず第一に、株式の譲渡制限でございます。閥法の第二百四条第一項でございますが、現行法は、定款をもっていたしましても、株式の譲渡を制限することはできないものということになっておりますが、同族会社その他につきましては、会社運営の安定をはかりますために株式の譲渡を制限することを必要とするものがあるわけでございます。そこで、本項の改正によりまして、定款をもって株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨を定めるごとができるものといたしました。
しかし、他面におきましてこのような譲渡の制限を認めますと、株主が投下資本の回収を妨げられるおそれがございますので、第二百四条ノ二から第二百四条ノ四までの規定を新たに設けまして、投下資本の回収を保障する措置を講じたのでございます。
新設の第二百四条の規定でございますが、以下三条は、株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨の定めがあります場合に、株主が株式譲渡について取締役会の承認を得ることができないときの投資回収の方法を規定したものでございます。
第一項は、右の定款の定めがあります場合には、株式を譲渡しようとする株主は、会社に対しまして、その譲渡を取締役会が承認しないときは、他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求できるものとしたのであります。この請求は、書面をもってすることを要するのでありますが、その書面には、譲渡の相手方、譲渡しようとする株式の種類及び数をも記載いたしまして、譲渡の内容を明らかにすることといたしました。
第二項は、第二項の請求がありました場合に、その請求書に記載されております譲渡を承認しないときは、取締役会は他に譲渡の相手方を指定することを要するものとしたのであります。この場合には、その旨を第一項の請求の日から二週間内に同項の請求をした株主に対して通知しなければならないものといたしました。
第三項は、第二項の通知が同項の期間内になされない場合におきましては、第一項の請求にかかる株式の譲渡について取締役会の承認があったものとみなすこととしたのであります。これによりまして、第一項の請求をいたしました株主は、第一項の書面に記載した譲渡の相手方に株式を譲渡することができることとなるわけでございます。
第二百四条ノ三は、前条二項の規定によりまして、取締役会が譲渡の相手方を指定しました場合における手続を規定したものであります。
第一項は譲渡の相手方として指定されました者は、前条第二項の通知の日から十日内に株主に対しまして、書面をもって、その株式を自己に売り渡すべきことを請求することができるものとしたのであります。この請求によりまして、請求をした者と株主との間に株式の売買契約が成立した場合と同一の効果を生ずるわけであります。
第二項は、第一項の請求によりまして生ずる買い主側の義務の履行を担保いたしますための規定でありまして、第一項の請求をいたしますには、会社の最終の貸借対照表によりまして会社に現在する純資産額を発行済み株式の総数をもって除した額、すなわち一株当たりの純資産額に譲渡の目的たる株式の数を乗じた額を会社の本店の所在地の供託所に供託いたしまして、かつ供託したことを証する書面を第一項の書面に添付することを要するものとしたのでございます。
第三項は、取締役会が譲渡の相手方として指定しました者が第一項の期間内に同項の請求をしないときは、前条第一項の株式の譲渡につきまして取締役会の承認があったものとみなしまして、株主が当初予定いたしておりました相手方に譲渡し得ることといたしたのであります。
第四項は、第一項の請求により生じまする株主の義務の履行を担保するための規定でありまして、第一項の請求がありましたときは、株主は、一週間内に会社の本店の所在地の供託所に株券を供託することを要するものとしたのであります。この場合には、遅滞なく第一項の請求をしました者に供託の通知をしなければならないことといたしました。
第五項は、株主が前項の期間内に株券の供託をしませんときは、第一項の請求をした者は、売買の解除をすることがきる旨を明らかにしたものであります。
第二百四条ノ四は、第二百四条ノ三第一項の請求によりまして成立した株式の売買につきまして、その売買価格の決定方法等について規定したものでございます。
第一項は、前条第一項の請求がありました場合の株式の売買価格につきまして協議がととのわないときには、売買の当事者は、同項の請求の日から二十日内に裁判所に対しまして売買価格の決定を請求することができるものとしたのであります。
第二項は、裁判所が右の売買価格を決定する際にしんしゃくすべき事情を規定したものであります。
第三項は、第一項の期間内に裁判所に対しまして売買価格の決定の請求もなく、当事者の協議もととのわないときには、前条第二項の規定によりまして供託した額をもって売買価格とみなすことといたしまして、法律関係の簡明化をはかったものであります。
第四項は、株式の移転の効力の発生は、代金の支払いのときに生ずるものといたしまして、株式移転の時期を明らかにいたしたものであります。
第五項は、前条第二項の規定による供託と代金の支払いとの関係を明確にしたものでありまして、株式の売買価格が供託額をこえないときは、売買価格確定のときに代金の支払いがあったものとみなし、また売買価格が供託額をこえますときは、供託額に相当する部分について支払いがあったものとみなしたものであります。
第六項は、売買価格が供託額をこえます場合におきまして、その差額を買い主が支払わないために株主が売買を解除いたしましたときは、第二百四条ノ二第一項の株式の譲渡につきまして取締役会の承認があったものとみなし、株主が当初予定しておりました相手方に譲渡し得ることといたしたのであります。
第二百四条ノ五でございますが、株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあります場合に、株式が競売または公売された後の手続を規定したものでございまして、競売または公売により株式を取得しました者は、会社に対しまして書面をもって、競売または公売による取得を承認しないときは株式を買い受けるべき者を指定すべきことを請求することができるものといたしまして、その後の手続等につきまして、譲渡に関する規定中所要の規定を準用したものでございます。
第百七十五条第二項第四号ノ二の規定でございますが、株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨を定款をもって定めることといたしたことに伴いまして、その定めを株式申し込み証の記載事項としたものでございます。
第百八十七条は創立総会におきまして定款を変更いたしまして株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めを設ける場合の要件を定めたものでございます。
第三項は、右の場合には、その決議については、会社設立後にその定めを設ける場合と同数の賛成を必要としたものであります。これは後の第三百四十八条の説明を御参照いただきたいと思います。
第四項は、右の決議に反対いたしました株式引き受け人の保護のために、その者に株式引き受けの取り消し権を与えたものであります。
第百八十八条第一項は、前条第四項の新設に伴いまして、設立登記の期間の起算日を明確にしたものであります。
第二百二十五条第八号は、株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨を定款をもって定めることができることにいたしたことに伴いまして、その定めを株券の記載事項としたものでございます。
第三百四十一条ノ三第五号は、株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨を定款で定めることができることといたしたことに伴いまして、その定めを転換社債の社債申し込み証、債券及び社債原簿の記載事項といたしたものであります。
第三百四十八条は、株式の譲渡制限に関する定めのない会社が定款を変更して株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定めを設けますと、株主の利害に重大な影響を及ぼしますために、決議の要件等につきまして特別の規定を設けたものでございます。
第一項は、右の定款変更決議には、総株主の過半数の賛成と発行済み株式の総数の三分の二以上の賛成を必要といたしまして、決議の要件を厳格にいたしたものでございます。
第二項は、議決権のない株主も、右の決議によって重大な影響を受けますので、その決議について議決権を有するものといたしたものであります。
第三項は、株式の譲渡制限に関する定めのない会社が転換社債を発行しております場合には、転換請求期間内に右の定款変更を行ないますと、転換社債権者の利益を害することになりますので、右期間内は右の定款変更はできないものとしたのでございます。
第三百四十九条は、定款を変更しまして株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨の定めを設ける決議に反対する株主を保護いたしますために、株式の買い取り請求権を認めたものでございます。
第一項は、右の買い取り請求権の行使の要件を定めたものでございまして、右の決議をなすべき株主総会に先だちまして会社に対し、書面をもって、その定めの設定に反対の意思を通知し、かつ、総会においてこれに反対した株主は会社に対しまして、自己の有する株式を、決議がなかったとすればその株式の有すべかりし公正な価格をもって買い取るべき旨を請求することができるものといたしたものでございます。
第二項は、右の買い取り請求につきまして、営業譲渡の場合の買い取り請求に関する規定中所要の規定を準用いたしたものでございます。
第三百五十条は、定款に譲渡制限に関する定めのない会社が定款を変更しまして株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定めを設けました場合には、従来の株券をそのままにしておきますと、第一著に不測の損害を与えるおそれがありますので、株券を回収する手続を定めたものであります。
第一項は、右の決議をいたしましたときは、会社はその決議をした旨、一月を下らない一定の期間内に株券を会社に提出すべき旨及びその期間内に提出されない株券は無効となる旨を公告いたしまして、かつ、株主及び株主名簿に記載のある質権者には各別に通知をしなければならないとしたものであります。
第二項は、右の定款の変更は、前項の期間満了のときに、その効力を生ずるものといたしたものでございます。
第三項は、旧株券を提出することができない者に対する新株券交付の手続を定めますために、第三百七十八条の規定を準用したものであります。
第四百八条第四項及び第五項の規定でありますが、株式会社が合併をします場合、合併により消滅します会社に株式の譲渡制限に関する定めがなく、合併後存続する会社の定款に株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定めがあり、または合併により新設する会社の定款にその定めを設ける場合には、消滅会社の株主を保護いたしますために、合併承認決議の要件等を規定したものであります。
第四項は、右の場合、消滅会社における合併承認決議につきましては、第三百四十八条第一項の規定によることといたしました。
第五項は、吸収合併の場合におきまして消滅会社が右の決議をいたしますには、存続会社の定款に株式の譲渡について取締役会の決議を要する旨の定めがあることを株主に知らせますために、そのことを株主総会招集の通知及び公告の記載事項としたものであります。
第四百十条第一号は、新設合併の場合におきまして、新設会社の株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定めますことは、合併当事会社の株主に重大な影響がございますので、その定めを合併契約書の記載事項といたしたものであります。
第四百十二条第一項及び第四百十三条第一項は、第四百十六条の改正に伴いまして株主総会または創立総会を招集すべき日を明確にいたしたものでございます。
第四百十六条は、消滅会社の定款に株式譲渡の制限に関する定めがなく、存続会社の定款に株主の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定めがあり、または新設会社の定款にその定めを設ける場合には、その消滅会社の株券を回収する必要がございますので、株券の提供に関する第三百五十条第一項及び第三項の規定を準用することといたしました。
第二百十条第四号は、第三百四十九条第一項に株主の買い取り請求権を規定したことに伴う条文の整理でございます。
第三百四十一条ノ四第二項第四号は、第三百四十一条ノ三の改正に伴う条文の整理でございます。
第三百五十一条ないし第三百七十四条は、第三百四十八条から第三百五十条までの改正に伴う整理でございます。
第二点の額面株式と無額面株式との変更でございますが、第二百十三条におきまして、額面株式と無額面株式との相互の変更を認める規定が現行法上はございませんが、額面株式と無額面株式とを有する株主は、その双方の株式の株券を併合することができませんし、不便がございますので、その変更に関しまして規定したものでございます。
第一項は、株主は、このような変更を請求することができることとしたものでございます。ただし、会社の事務上の便宜を考慮いたしまして、この請求は、会社が額面株式と無額面株式とを発行している場合に限るものといたしましたほか、定款で別段の定めをすることもできることにいたしました。
第二項は、株主が無額面株式を額面株式にすることを請求する場合には、額面株式の額面未満の発行が行われたのと同様の結果になることを防止いたしますために、会社の資本が額面株式一株の金額に発行済み株式の総数を乗じた額以上であることを要するものといたしました。
第百八十八条第二項第五号は、現行法におきましては発行済み株式の額面無額面の別が登記事項とされておりますが、第二百十三条の改正によりまして額面株式と無額面株式との変更ができることとなったことと、発行済み株式の額面無額面の別は、登記する実益に乏しいことにかんがみまして、これを登記事項から除くことといたしました。
第二百八十四条ノ二は、第二百十三条の新設規定によりまして額面株式を無額面株式とし、または無額面株式を額面株式といたしました場合に、資本に変更を生じないことといたしまして、資本の額を明確にしたものでございます。
第二百十四条ないし第二百二十一条は、第二百十三条の規定の新設に伴う整理でございます。
第三は、株式の譲渡方式等に関するものでございます。
第二百五条は、現行法におきましては、記名株式の譲渡は、株券の裏書きまたは株券及び譲渡証書の交付によってすることとなっておりますが、近時における大量の株式の流通にかんがみまして、譲渡の手続を合理化いたしますために、本条を改めたものでございます。
第一項は、株式の譲渡については、株券の交付を要することといたしまして、株券の裏書きまたは譲渡証書の交付を要しないことといたしました。
第二項は、前項による譲渡方式の改正に伴いまして、株券の占有瀞を適法な所持人と推定することといたしたものであります。
第二百二十六条ノ二は、第二百五条の改正によりまして、記名株式の移転も株券の交付によることとなりますため、記名株式の流通は容易になりますが、その反面、株主が一たん株券を失うと、その株券について善意取得者が生じて、その株主は、株主としての権利を失うおそれもございます。そこで本条におきまして、株式の流通よりも、むしろ株式を安全に保持することを望む株主のために、株主が株券の所持を欲しない旨を会社に申し出ましたときは、会社は、株券の発行を停止し、または株券を銀行または信託会社に寄託しなければならないものといたしまして、株券の喪失による危険から株主を保護することにいたしました。
第一項は、株主は、その記名株式につきまして、会社に右の申し出をすることができる旨を定めたものであります。この場合すでに発行されました株券があるときは、これを会社に提出しなければならないことにいたしました。なお、会社の事務上の便宜を考慮しまして、定款で別段の定めをすることができるものといたしました。
第二項は、第一項の請求があった場合には、会社は、遅滞なく、株券を発行しない旨を株主名簿に記載するか、または株券を銀行または信託会社に寄託し、いずれの措置をとったかを株主に通知することを要することにいたしました。
第三項は、会社が株券を発行しない旨を株主名簿に記載しましたときは、会社は、株券を発行することができませず、また、第一項後段の規定によりまして、会社に提出された株券は、無効になる旨を規定したものであります。
第四項は、株券の所持を欲しない旨の申し出をいたしました株主も、後に株式の譲渡を欲する場合がございますので、そのような場合には、株主は、株券の交付または返還を請求することができるものといたしました。また、会社が株券を銀行または信託会社に寮託した場合には、株主は、会社に対してのみ株券の返還を請求することができるものといたしまして、法律関係の明確化をはかったのでございます。
第五項は、株主の申し出によりまして、会社が銀行または信託会社に株券を寄託いたしましたときは、その費用は、会社の負担といたしまして、株主の利益の保護をはかったものでございます。しかし会社が株券の発行を停止いたしました場合、株主の請求によって株券を発行いたしますときは、その発行費用を株三に負担させることができますので、その場合との均衡を考慮いたしまして、その費用に相当する額につきましては、会社が銀行または信託会社に株券を寄託したときも、会社は、株主にその支払いを請求することができるものといたしました。
第四百九十八条第一項第十六号は、株券の所持を欲しない旨の株主の申し出に関する規定を設けたのに伴いまして、罰則について所要の改正を加えたものであります。第二百二十三条第一項は、第二百二十六条ノ二の新設に伴う条文の整理でございます。第二百二十九条は、第二百五条の改正に伴う条文の整理でございます。
第四は、議決権の不統一行使でございます。
第二百三十九条ノ二の規定を新設いたしました。株主が二個以上の議決権を有します場合に、これを統一しないで行使することができるかいなかにつきましては、現行法上疑問があるわけでございます。信託の引き受け等が行なわれまして、法律上の株主とその株式により実質上の利益を受ける者とが興なります場合には、法律七の株主が実質上の利益を受ける者の指図に従いまして議決権を行使することを可能にするために、議決権の不統一行使を認める必要がございます。その他の場合には、議決権の不統一行使を許さなければならないとする必要は必ずしもございませんが、議決権の不統一行使を全く許さないことといたしますと、かえって株主総会の円滑な運営を阻害する場合も生じ得るわけでございます。本条は、右のような見地から、議決権の不統一行使について規定したものでございます。
第一項は、株主が二個以上の議決権を有しますときは、議決権を統一しないで行使することができるものといたしまして、この場合には、株主総会の会日から三日前に、書面をもって、議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならないものといたしました。
第二項は、株主が株式の信託を引き受けたこと、その他他人のために株式を有することを理由とする場合を除きまして、会社は議決権の不統一行使を拒むことができるものといたしたものでございます。
第二百二十九条第六項は、株主が二人以上の代理人を株主総会に出席させることができるかいなかについては現行法上疑問がございますが、第二百二十九条ノ二の新設によりまして議決権の不統一行使が認められることに従い、二人以上の代理人の出席ができると解される可能性がありますが、株主総会の円滑な運営をはかりますため、会社は株主が二人以上の代理人を総会に出席させることを拒むことができることといたしましたものでございます。
第百八十条第三項は、第百三十九条第六項及び第二百三十九条ノ二の新設に伴う条文の整理でございます。
第五は、新株発行の手続に関するものでございます。
第二百八十条ノ二第二項につきましては、現行法におきましては、新株引き受け権者に対しまして新株を発行する場合に限って有利な条件で新株を発行することができるということになっておりますし、また、株主以外の者に新株引き受け権を与えますには、株主総会の特別決議を要するものとして株主の保護をはかることとしております。そのため、新株引き受け権が付与されたかいなかについて疑問が生じ、争いとなる事例がございます。しかし、株主にとって重要なことは、株主以外の者に対しまして有利な価額で新株が発行されて株主の経済的利益が害されることでございまして、株主以外の者に対し新株引き受け権が付与されることではございません。したがいまして、本項を改正いたしまして、株主以外の言に対して特に有利な発行価額をもって新株を発行いたしますには株主総会の特別決議を要することを明らかにしたものでございます。
第二百八十条ノ三ノ二の規定は、株主に新株発行差しとめ請求権の行使の機会を与えますために、会社は、払い込み期日の二週間前に、新株の発行に関する事項を公告し、または株主に通知しなければならないことといたしたものでございます。
第二百八十条ノ三ノ三の規定でございますが、第一項は、株主の新株引き受け権の目的であります株式及び有利発行について株主総会の特別決議のあった株式につきましては、株主に新株発行差しとめの請求をする機会を与えることを要しませんので、前条による公告または通知をすることを要しないものとしたのであります。なお、これらの株式につきまして第二百八十条ノ三の規定を適用しないことといたしましたのは、現行法における同条ただし書きの規定と同じ趣旨でございます。
第二項は、株主に新株引き受け権が与えられました場合に、端株の合計数に相当する株式及び失権株につきまして株三を募集することがありますが、これらの株式は、通常少数でございますので、この場合には、前条による公告または通知をすることを要しないものとしたものでございます。
第二百八十条ノ二筋一項第五号及び第八号は、第二百八十条ノ二第二項の改正に伴う条文の整理でございます。
第二百八十条ノ三は、第二百八十条ノ三ノ三第一項の新設に伴う条文の幣理でございます。
第二百八十条ノ十は、第二百八十条ノ二第二項の改正に伴う条文の整理でございます。
第六は、新株引き受け権の譲渡でございます。
第二百八十条ノ二第一項第六号と、第七号の規定でございますが、現行法におきましては、新株引き受け権の譲渡は、会社に対しましてその効力を生じないことと解釈されております。その結果、株主が新株引き受け権が与えられました場合に、その株金の払い込みのための資金を有しませんときは、旧株の譲渡等によって資金を調達するほかはないという不便があるわけでございます。
そこで、本条におきまして、定款または新株発行に関する取締役会もしくは株主総総会の決議におきまして、株主に与える新株引き受け権の譲渡ができることを定めることができるものといたしました。なお、この場合には、会社は、新株引き受け権証書を発行しなければならないこととなりますが、会社の事務上の便宜を考慮しまして、株主の請求がありますときに限りまして、新株引き受け権証書を発行する旨を定めることができるものといたしました。
第二百八十条ノ四第二項の規定は、新株の引き受け権を譲渡することができる旨を定めましたときは、これを公示する必要がありますので、その旨を本条第二項の規定による公告に際しまして、あわせて公告することといたしました。
第二百八十条ノ五の規定は、新株の引き受け権を譲渡することができる旨並びに株主の請求がありますときに限りまして新株引き受け権の証書を発行すること及びその請求をすることができる期間を定めたときは、これを株主に知らせる必要がございますので、その内容を本条第一項の株主に対する通知及び第二項の公告に記載しなければならないことといたしました。
第二百八十条ノ六ノ二は、株主の新株引き受け権を譲渡することができる旨を定めましたときは、その譲渡は、有価証券である新株引き受け権証書によってする必要がありますので、これについて規定したものでございます。
第一項は、会社は、申し込み期日の二週間前に新株引き受け権証書を発行しなければならないことといたしたのであります。ただし、株主の請求があるときに限りまして、新株引き受け権証書を発行すべき旨及びその請求をすることができる期間を定めたときは、その定めに従うことにいたしました。
第二項は、新株引き受け権証書によりまして新株の申し込みに必要な事項を知ることができますように、新株引き受け権証書の記載事項を定めたものであります。
第二百八十条ノ六ノ三は、第一項は、株主の有する新株の引き受け権の譲渡ができることとする場合に、その譲渡が円滑に行なわれますよう、新株引き受け権の譲渡は、新株引き受け権証井の交付によってすることといたしたのであります。
第二項は、新株引き受け権証書につきまして、株券と同様、その占有者を適法な所持人と推定いたしますとともに、その善意取得者を保護いたしますために、所要の規定を準用いたしたものであります。
第二百八十条ノ六ノ四は、第一項は、新株引き受け権証書を発行いたしました場合には、新株引き受け権の譲渡は、新株引き受け権証書の交付によってなされることになりますので、この場合の株式の申し込みも新株引き受け権証書によっていたすことにいたし、株式申し込み証による株式の申し込みに関する規定中所要の規定を準用したものでございます。
第二項は、新株引き受け権を有する者が新株引き受け権証書を喪失した場合には、除権判決を得る期間がないと考えられますので、新株引き受け権証書によらないで、株式申し込み証によって、株式の申し込みをすることができることにいたしたものであります。しかし、新株引き受け権証書を取得いたした者があって、その者がその新株引き受け権証書によって株式の申し込みをいたしたときは、株式申し込み証による申し込みは、効力を失うことにいたしまして、その間の法律関係を明確にいたしたのであります。
第二百八十条ノ十四は、新株式引き受け権証計を発行する場合につきまして、株金の払い込みの取り扱い場所に関する所要の規定を準用したものであります。
第四百九十八条第一項第九号は、新株引き受け権証書に関する規定を設けましたのに伴いまして、罰則につきまして所要の改正を加えたものであります。
第二百二十二条ノ四は、新株引き受け権証件の制度の新設に伴う条文の整理でございます。
第二百六十六条ノ三第一項は、新株引き受け権証書の制度の新設に伴う条文の整理でございます。
第二百八十条ノ十二は、新株引き受け権証書の制度の新設に伴う条文の整理でございます。
第七は、転換社債の転換請求に関する規定でございますが、条文の順序が前後いたしますが、第三百四十一条の七から御説明申し上げます。
現行法におきましては、株主名簿閉鎖期間内は、転換社横の転換の請求をすることができないことといたしておりますので、転換社債権者にとりましては、その期間内に転換社債の転換を請求して株式として売却することができないという不便がございます。このため外国において転換社債を発行するについて、支障が生じておるわけでございます。
そこで、本条の改正によりまして、株主名簿閉鎖期間内も転換の請求をすることができることといたしまして、条文を一条繰り下げたものでございます。
もとへ戻りまして、第三百四十一条の六第一項は、株主名簿閉鎖期間内の転換請求によりまして株式が発行される場合に、このような株式の株主もその期間内に開かれる株主総会におきまして議決権を有することといたしますと、その者に対する総会招集通知が必要となる等会社の事務上の負担を増加し、また、転換社債権者にとりましても、その総会で議決権を行使する必要性は少ないと考えられますので、このような株主は、株主名簿閉鎖期剛内は、議決権を有しないものといたしたのでございます。
第二項は、会社が総会において議決権を行使すべき株主を定めるために基準日を定めました場合におきまして、その日後の転換請求によりまして株式が発行されましたときは、その株式の株主も、株主名簿閉鎖期間内の転換請求により発行された株式の株主と同様に、その総会におきましては、議決権を有しないものといたしたのでございます。
次は、附則でございます。
第一項は、施行期日を定めたものでございます。
第二項は、新法の適用に関する原則を定めたものでございます。
第三項は、この法律の施行前に行なわれた株式の移転または取得につきましては、この法律の施行後も、なお旧法第二百五条及び第二百二十九条の規定を適用いたしますが、この法律の施行前に株券を取得した者がこの法律施行後に株券を占有いたしておりますときは、適法な所持人と推定されることといたしたのでございます。
第四項は、この法律の施行前に発行された株券をこの法律の施行後取得するにつきましては、株券の裏書きまたは株式の譲渡を証する書面の整否につきまして調査をいたさなくとも、善意取得の妨げにならない旨を規定いたしたものでございます。
第五項は、この法律の施行の日から二週間以内の日を会日とする株主総会または創立総会における議決権の行使につきましては、二人以上の代理人の出席の拒否及び議決権の不統一行使に関する新法の規定を適用しないことといたしたものであります。
第六項は、この法律の施行前に新株の発行の決議または株主以外の者に新株引き受け権を与える旨の決議がありました場合には、その新株の発行については、なお従前の例によることといたしたものであります。
第七項は、商法第二百二十四条ノ三第一項の規定による基準日がこの法律の公布の日前でありますときは、新法第三百四十一条ノ六第二項の規定は、適用しないものといたしたのであります。
第八項は、新法第二百四条ノ四第一項及びその準用規定並びに第三百四十九条第二項において準用する第二百四十五条ノ三第三項の規定による株式の価格の決定に関する裁判手続等を定めますため、非訟事件手続法に所要の改正を行なったものでございます。
第九項は、新法第二百四条ノ二から第二百四条ノ五までの規定を設けましたことに伴いまして、有限会社の社員の持ち分の譲渡につきまして社員総会が承認しない場合等に関する規定を整備する等のため有限会社法に所要の改正を加えたものでございます。
第十項は、有限会社法の改正に伴ないまして、経過規定を定めたものでございます。
第十一項は、新法及び付則第七項による改正後の再評価積立金の資本組入に関する法律の規定によりまして株主の新株引き受け権が新株引き受け権証書によって譲渡できる道が開かれたことに伴いまして、外資に関する法律の規定を整理いたしたものでございます。
第十二項は、株式会社の再評価積み立て金の資本組み入れに伴い新株を発行する場合も、商法の規定によりまして新株を発行する場合と同様、株主の新株引き受け権を新株引き受け権証書によって譲渡する道を開くため、株式会社の再評価積立金の資本組入に関する法律に所要の改正を加えたものでございます。
第十三項は、新法第二百四条第一項の改正及び第二百四条ノ二から第二百四条ノ五までの規定の新設に伴いまして、日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社の株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律を整理いたしますとともに、その不備を補いますため、所要の改正を加えたものでございます。
第十四項は、商法の改正に伴い会社更生法の規定を整理いたしたものでございます。
第十五項は、新法によりまして株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要する旨の定めが登記事項となりましたこと及び第四百十六条の改正に伴いまして、商業登記の手続を定めますため、商業登記法に所要の改正を加えたものでございます。
以上が商法の一部を改正する法律案の事項別逐条説明でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/5
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006・横山利秋
○横山委員 いま提案理由の説明並びに逐条説明を、膨大なものをお読みいただいたのでありますが、私の感ずるところを申し上げすと、専門家の同僚諸君は別といたしましても、なかなか容易に、この多岐に発展をいたします問題を短い期間で審議ができるかどうか。十分な審議をしないままに本院を通過することによって、将来われわれの職責が十分つとまらなかったということをおそれるのであります。
それで委員長にお願いしたいのでありますが、まことに恐縮なお願いでございますけれども、この商法の一部改正は、もちろんわれわれの質問によって政府がお答えになり、議論が発展するとは思いますけれども、審議が円滑に重点的に行なわれますように、改正案の問題点を客観的に整理をしてもらいたい。それができるかどうかは、専門委員室にお願いすることになると思うのでありますが、政府とは別な立場で、客観的に、どこが一体問題なのか、それはこういう意見とこういう意見があるから議論を煮詰めるべきではなかろうか、あるいはまた、この改正案には載っていないけれども、従来商法の改正についてはこういう点が議論がある、これは一体そのまま審議を尽くさなくてもいいのであろうかというような問題点、それらをひとつ、あまり膨大なものをつくってもらっても、また要約なんということになると思いますから、しろうとの私が要求してぜいたくな話でありますが、要約された問題点というものをなるべく本委員会に提出をしていただくわけにはまいるまいか、その問題点によって重点的に審議をするようにできないものであろうか、こう考えるのでありますが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/6
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007・大久保武雄
○大久保委員長 ただいまの横山委員からの御発言は、御発言の趣旨に沿いまして善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/7
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008・横山利秋
○横山委員 お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/8
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009・大久保武雄
○大久保委員長 次会は明後三十一日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02019660329/9
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