1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月三十一日(木曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君
理事 井伊 誠一君 理事 細迫 兼光君
唐澤 俊樹君 佐伯 宗義君
四宮 久吉君 千葉 三郎君
濱野 清吾君 森下 元晴君
神近 市子君 横山 利秋君
田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 新谷 正夫君
委員外の出席者
専 門 員 高橋 勝好君
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三月三十日
借地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一三五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
借地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一三五号)
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
この際、発言を許します。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/1
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002・横山利秋
○横山委員 先般、本委員会でお願いをしておきました、商法の一部を改正する法律案に対する問題点について、きょう配付をされたのでありますが、一見をいたしましたところ、非常に要領よく整理されておりますが、これは本委員会におきまして御説明を願いたいと思いますが、しかるべき時期にそういうお手配を委員長にお願いしたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/2
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003・大久保武雄
○大久保委員長 ただいま横山委員からの御発言につきましては、趣旨に沿いまして善処いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/3
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004・横山利秋
○横山委員 この機会に、私、初めて衆議院常任委員会調査室規程というものを見たわけでありますが、これによりますと、第五条に、「各常任委員会調査室の事務は、次の通りとする。」として、七項目の事務の任務が書かれておるわけであります。その中に、第二に、「付託案件(これに準ずる案件を含む。)の提案理由、問題点、利害得失その他必要と認められる事項の調査及び参考資料の作成」とあります。私が十一年前に国会へあがってまいりました際に、大蔵委員会でやっておったわけでありますが、その付託案件の問題点並びに利害得失について常に詳細な客観的な資料を提出されておったわけであります。その後、どういうわけか知りませんけれども、各専門員室におきまして、問題点並びに利害得失について客観的な資料の提出をすることを何かちゅうちょしているやに雰囲気が見られるのであります。今回私がお願いいたしました商法の一部を改正する法律案に対する問題点は、その意味におきましてはこの調査室規程の第五条第二号にぴったり該当すると思われる。したがいまして、今後はひとつ、私どもが要求するといなとにかかわらず、すべての法案にわたって第五条第二号の付託案件に関する問題点並びに利害得失について、専門員室においては御苦労でありますが、ひとつ客観的なこの種の資料の提出をわずらわしたいと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/4
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005・大久保武雄
○大久保委員長 ただいまの横山委員の御発言につきまして、付託されました案件についての基礎的な調査を行なっておりますが、さらに督励いたしまして御趣旨に沿うよう善処いたしたいと考えております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/5
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006・大久保武雄
○大久保委員長 借地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/6
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007・大久保武雄
○大久保委員長 まず、政府より提案理由の説明を求めます。石井法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/7
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008・石井光次郎
○石井国務大臣 借地法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
最近における土地及び建物の利用の実情を見ますと、借地借家に関する紛争が相当多数にのぼっております。これは、一面においては、宅地及び住宅などの社会的経済的事情によるものでありますが、他面においては、土地及び建物の利用に関する現行の法律制度上、当事者間の利益を調整し、紛争の発生を予防する面において、なお十分でない点があることにもよるものと考えられます。したがいまして、借地借家に関する紛争を未然に防止してその安定をはかるとともに、土地及び建物の合理的利用を促進するためには、社会的経済的条件の改善に待つだけではなく、現行の法律制度を実情に即して改める必要があるのであります。この法律案は、かかる見地からいたしまして、借地法、借家法、建物保護法及び民法の各一部に所要の改正を加えようとするものであります。
以下、この法律案の要点を申し上げますと、第一に、借地権の目的たる土地の合理的利用を促進するために、事情の変更その他一定の要件が存する場合には、裁判所は、当事者の申し立てによりまして、一切の事情を考慮した上で、非堅固の建物所有の借地条件を堅固の建物所有の借地条件に変更し、または増改築の制限を緩和する裁判をするとともに、当事者間の利益の公平をはかるために他の借地条件を変更し、または財産上の給付を命ずる裁判をあわせてすることができるものといたしております。なお、この裁判は、原則といたしまして、借地の所在地の地方裁判所が非訟事件の手続により行なうものとし、裁判所がこの裁判をするについては、鑑定委員会の意見を聞くことといたしております。
第二に、借地上の建物の取引を円滑にするために、土地の賃借人がその建物を他人に譲渡しようとする場合において、土地の賃貸人が敷地の賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは、裁判所は、賃借人の申し立てによりまして、一切の事情を考慮した上で、賃貸人の承諾にかわる許可を与えるとともに、当事者間の利益の公平を考慮し、その許可に地代の増額、金銭の支払いなどの条件を付することができることといたしております反面、賃貸人の申し立てがあれば、相当な対価を定めてその建物を敷地の賃借権とともに賃貸人に譲渡することを命ずることができるものといたしております。なお、この裁判の手続も、第一の裁判と同様にいたしておるわけでございます。
第三に、地代または家賃の増減請求から生ずる紛争を防止するために、その請求があった場合の法律関係を明確にすることといたしております。
第四に、借家人が相続人なしに死亡した場合において、内縁の夫婦または事実上の養親子の関係にあった同居人の居住権を保護するために、建物の賃借関係の承継を認めることといたしております。
第五に、建物保護法第一条第二項の規定によりますと、従来同条第一項の規定により第三者に対抗することができた借地権であっても、建物が滅失すればそれと同時にその対抗力が消滅することになりますが、このことは、その後施行された借地法の解釈との関係において疑義を生ずる結果となりますので、この規定を削除することによって疑義の生じないようにいたしております。
第六に、地下鉄、地下駐車場、モノレール等の施設の所有のために土地を立体的に区分して利用する場合の便宜を増進するために、工作物の所有を目的とする地上権は、地下または空間の部分に範囲を限定して設定することもできることといたしております。
最後に、以上の改正に伴い、防火地域内借地権処理法を廃止し、不動産登記法等に所要の改正を加え、さらに、必要な経過規定を設けることといたしております。
以上がこの法律案の概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/8
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009・大久保武雄
○大久保委員長 次に、本案について逐条の説明を求めます。新谷民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/9
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010・新谷正夫
○新谷政府委員 借地法等の一部を改正する法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。
この法律案は本文が四カ条からなっておりまして、第一条は借地法の一部改正に関するものでございます。この中に借地法の関係の条文の改正を織り込んでございます。第二条は借家法の改正に関するものでございます。第三条が建物保護法の改正に関するものでございます。第四条が民法の改正に関するものでございます。それに附則がついておる次第でございます。
そこで、まず第一条の借地法の一部改正関係について御説明申し上げます。
そのうち、第八条ノ二の規定を新設いたしましたが、これは建物に関する主要な借地条件の変更等の裁判の制度を設けようとするものでございます。
第一項は、木造等の非堅固の建物の所有を目的とする借地権の設定後に、その地域が防火地域に指定されたり、または商業地域となる等の事情の変更が生じまして、現在当事者間において当該土地について合理的に借地権を設定するといたしますならば、堅固の建物の所有を目的とする借地権を設定するのが相当であることとなったというふうな場合におきまして、当事者間において非堅固の建物の所有の借地条件を変更して堅固の建物の所有のものとすることにつきまして協議が成立しませんときは、当事者の申し立てによりまして、裁判所は右の借地条件の変更の裁判をすることができるものといたしたのでございます。
第二項は、増改築の禁止または増改築について地主の承諾を要する等の制限の借地条件が存します場合におきまして、借地人のしょうといたしまする当該増改築がその借地の通常の利用から申しまして許されるべきものであるのにかかわりまぜず、地主の承諾が得られないというようなときには、借地権者の申し立てによりまして、裁判所は、当該具体的な増改築につきまして、地主の承諾にかわる許可の裁判をすることができるものといたしたのでございます。なお、この場合には、増改築の制限の特約は、廃止されないで、一般的に存置されることになるわけでございます。
第三項は、裁判所が第一項及び前項の裁判をする場合において、当事者の利益の公平をはかるために必要がありますときは、他の借地条件の変更、たとえば地代の増額もしくは存続期間の延長をしまたは一定額の金銭の支払い等を命ずることができるものとしたのでございます。なお、この場合の金銭の支払いを命ずる裁判は、強制執行に関しましては、裁判上の和解と同一の効力があり、債務名義となるのでございます。
第四項は、裁判所が前三項の裁判をいたしますには、申し立ての要件の存否を判断するほか、借地権の残存期間から見まして堅固の建物の所有の借地条件に変更したり、増改築を許可するのが妥当かどうか、また当該土地の状況や権利金の授受の有無その他の借地契約に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならないものといたしたのでございます。
第五項は、転借地権が設定されている場合には、転借地権に関して第一項から第三項までの裁判をするのみでは足りませず、その原借地権につきましても第一項から第三項までの裁判をする必要がある場合もございますので、転借地権者から転借地権のみならず原借地権に関しましても第一項または第二項の裁判を求める申し立てがありましたときは、裁判所は、転借地権及び原借地権に関しまして第一項から第三項までの裁判をすることができるものといたしたのでございます。この場合にも、裁判所は、第四項の規定により一切の事情を考慮して裁判をすることを要することは言うまでもございません。
第六項は、第一項または第二項の具体的なそれぞれの事件につきまして、実情に適する妥当な裁判をするために、裁判所は第一項から第三項までの裁判をする前に、原則として、特別の知識経験を有し、実情に明るい者をもって構成される鑑定委員会の意見を聞かなければならないものといたしておるのであります。
なお、第一項から第三項までの裁判は、後に説明いたしますように、その性質から非訟事件の手続によってするものといたしております。
第九条の改正は、一時使用のための借地権につきましては、その性質上、第八条ノ二の新設規定を適用する必要がありませんので、そのことを明らかにしたものでございます。
第九条ノ二の規定の新設でございますが、土地の賃借権の無断の譲渡または転貸に関する紛争を予防いたしますため、一定の要件のもとに、賃借地上の建物の譲渡とともにするその賃借権の譲渡または転貸につきまして、借り賃の増額、金銭の給付等を条件として賃貸人の承諾にかわる許可の裁判の道を開くこととしたものであります。この場合におきまして、賃貸人がみずから譲渡等を受ける旨の申し立てをしましたときには、右の許可の裁判にかえて、相当の対価で賃貸人への建物及び賃借権の譲渡等を命ずる裁判をすることができるものとしたのであります。
第一項は、借地権者が賃借地上の建物を特定の第三者に譲渡しようとする場合には、それに伴う敷地の賃借権の譲渡または転貸について民法第六百十二条第一項の規定により賃貸人の承諾を必要とするのでありますが、その特定の第三者が賃借権を譲り受けまたは転借いたしましても、その第三者の経済的、社会的信用度等から賃貸人に何ら不利を与えないにもかかわらず、賃貸人が承諾を拒否しているときは、賃借人の投下資本の回収が困難となり、社会経済上不都合な結果となりますし、他方承諾を得ないままの譲渡または転貸が強行されることによりまして賃貸借契約の解除をめぐって紛争が生ずるおそれがありますので、建物の譲渡前に賃借人の申し立てによりまして、裁判所が右の賃貸人の承諾にかわる許可の裁判をすることができるものといたしまして、この裁判におきましては、当事者の利益の公平をはかる必要がありますときは、賃借権の譲渡もしくは転貸がなされたときに同時に地代の値上げその他の借地条件の変更が生じ、または賃借人から賃貸人に一定の金銭を支払ったときに右の承諾にかわる許可の効力が生ずるものといたしたのであります。
第二項は、裁判所が第一項の裁判をいたしますには、賃借権の残存期間から承諾にかわる許可の裁判をするのが適当かどうか、権利金の支払いの有無その他の借地関係の経過または賃借人が賃借権の譲渡もしくは転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮して、具体的事案に応じて妥当な裁判をすることといたしたのであります。
第三項は、賃借人が第一項の申し立てをした場合には、賃貸人は、裁判所の定める期間内に、賃借人の建物の譲渡及び賃借権の譲渡または転貸をみずから受ける旨の申し立てをすることができるものといたしまして、この申し立てがあれましたときは、裁判所は、その対価等を定めまして賃貸人への譲渡等を命ずるものといたしたのであります。この場合には、賃貸人の対価の支払いと賃借人の建物の引き渡し及びその移転の登記並びに土地の引き渡しとは同時に履行することとするのが公平でありますので、右の裁判におきましては、これらの義務の同時履行を命ずることといたしたのであります。なお、この義務の履行を命ずる裁判は、強制執行に関しましては、裁判上の和解と同一の効力を有するものとし、債務名義となるものといたしました。
第四項は、第三項の賃貸人からの申し立てにつきましては、賃借人からの第一項の申し立てが前提となっておりますので、その賃借人の申し立ての取り下げまたは却下がありましたときには、当然その効力を失うことといたしたのであります。
第五項は、第三項の裁判があった後において、第一項または第三項の申し立ての取り下げを一方的に認めますと、相手方の利益を害することになりますので、相手方の同意がなければ取り下げができないものといたしたのであります。なお、第三項の裁判が確定しましたときは、当事者の合意がありましても、取り下げがあり得ないことは申すまでもございません。
第六項は、裁判所が第一項または第三項の裁判をいたしますには、その前に、具体的事案についての妥当な裁判が得られますように、専門的な知識経験を有し、事情に明るい者で構成される鑑定委員会の意見を原則として聞くものとしたのであります。
第九条ノ三の規定の新設でありますが、競売または公売によりましてすでに第三者が賃借地上の建物を取得した場合に関しましても、第九条ノ二とほぼ同様の賃貸人の承諾にかわる許可の裁判または賃貸人の譲り受けの裁判ができるものとしておるのであります。
第一項は、第三者が競売または公売によりまして賃借地上の建物を取得いたしました場合に、それに伴う賃借権の藤波につきまして、賃貸人が不利とならないのにその承諾をしないときは、その第三者の申し立てによりまして、裁判所が右の承諾にかわる許可の裁判をすることができるものとしたのであります。もっともこの場合には、すでに、建物が譲渡されておりますので、当事者の利益の公平をはかる必要のあるときも、裁判所は、単に借り賃等の借地条件を変更しまたは財産上の給付を命ずるのみであって、第九条ノ二の場合のように、これらの変更または給付を許可の効力の発生にかからしめてはいないのであります。
第二項は、第一項の裁判をするにつきましても一切の事情を考慮する必要があり、また賃貸人のみずから譲渡等を受ける旨の申し立てを認めるのが相当でありますし、さらに本項において準用します第三項の申し立てと第一項の申し立ての取り下げまたは却下との関係及び右の準用によります第三項の裁判があった後の第一項または第三項の申し立ての取り下げの制限並びに裁判前の鑑定委員会の意見聴取につきまして、それぞれ第九条ノ二の場合と同様の取り扱いをするのが相当でありますので、同条の第二項から第六項までの規定を準用いたしたのであります。
第三項の規定でございますが、第一項の場合には、すでに賃借地上の建物が譲渡されておりますので、第一項の申し立てが何時にてもできることといたしますと、賃貸人との法律関係を長く不安定なものとする弊害がありますので、競売または公売の代金を支払いました後二カ月内に限って第一項の申し立てができるものといたしまして、申し立て期間を制限したものであります。なお、第三者が第一項の申し立てをいたします前に、まず民事調停法による調停の申し立てをした場合におきまして、調停不調による事件の終了の通知または事件解決のための必要な決定の失効の通知を受けましたときに、すでに右の二カ月の期間を経過しておりますときは、もはや第一項の申し立てができないこととなりまして不都合を生じますので、右の通知を受けました日から二週間以内に第一項の申し立てをしますれば、調停の申し立てのときに第一項の申し立てをしたものとみなしまして、その申し立てを適法のものといたしたのでございます。
第九条ノ四でございますが、賃借権につきまして適法な転貸借がなされている場合には、転借人がその転借地上の建物を第三者に譲渡しようとするときには、それに伴う転借権の譲渡または転貸につきましては、賃借人のほか賃貸人の承諾を要することになりますので、第九条ノ二の規定によりまして転借人の申し立てによりまして賃借人の承諾にかわる許可の裁判を受けるほかに、さらに転借人の申し立てにより賃貸人の承諾にかわる許可の裁判ができるものとする必要がございます。そこで、本案は、第九条ノ二の規定を転借人と賃貸人との間に準用いたしまして、また第九条ノ三の規定を転借地上の建物を土地の転借人から競売または公売により取得した者と賃貸人との間に準用するものといたしました。なお、賃貸人が、第九条ノ二第三項またはその準用によりまして転借人の建物及び転借権の譲り受け等の申し立てをいたしますには、転貸人の利益を考慮いたしまして、その者の承諾を得ることを要するものといたしたのであります。
第十一条の改正でございますが、これは、第八条ノ二または第九条ノ二の規定に反する契約条件で借地権者に不利なものを失効させるのが相当でありますので、これらの約定がなされても、その約定がないものとみなすことといたしたのであります。
第十二条の改正につきましては、本条による地代または借賃の増減請求がありました場合の法律関係を明確にするものであります。
第二項の新設の規定でございますが、本条の第一項の規定によりまして地代または借賃の増額の請求がありました場合には、当然地代または借賃が適正額まで増額されるのでありますが、その適正額について当事者間に争いがありますときは、増額に関する判決が確定いたしますまでは、適正額が明らかでないこととなりますので、地代または借賃の支払いとこれに関連する借地契約の解除をめぐって当事者間の紛争を生ずることが少くありません。そこで、かかる場合の当事者間の法律関係を明確にいたしますために、増額請求の場合の適正額について当事者双方の意見が一致しませんときは、その請求後も一応借地人がみずから相当と認める地代または借賃を支払えば足りることといたしまして、後日判決によって適正額が明確となりましたときに、請求の時にさかのぼって不足額にその本来の支払い期後の年一割の割合による利息を付して支払うべきものといたしました。
なお、この改正によりまして地代または借賃の債務不履行を理由とする借地契約の解除の当否が訴訟で争われることがなくなり、もっぱら増額請求の適正額の確定のみに関する訴訟となりますので、この関係の訴訟が相当迅速化されることとなるわけであります。
第三項の規定の新設は、本条第一項の規定による地代または借賃の減額の請求がありました場合にも、第二項の増額の請求の場合と同じく、その適正額は、当事者双方の意見が一致しませんときは、判決によりその額が確定しますまで不明確でありまして、同じく紛争を生ずることとなりますので、減額請求がありましても、一応地主はみずから相当と認める地代または借賃を請求することができるものといたしまして、後日判決により適正額が明確となりましたときに、その額をこえて受領した分につきましては、その受領の時から年一割の割合による利息を付してこれを返還すべきものとしたのであります。
第十四条ノ二の規定の新設でありますが、第八条ノ二第一項、第二項もしくは第五項、第九条ノ二第一項もしくはその準用規定、第九条ノ二第三項もしくはその準用規定または第九条ノ三第一項もしくはその準用規定に定められました裁判の管轄裁判所を借地の所在地の地方裁判所とし、例外的に当事者の合意によりその借地の所在地の簡易裁判所にも管轄権を有するものとしたのであります。
第十四条ノ三の規定の新設でございますが、前条の裁判は、当事者間の実体上の権利義務の存否に関するものでなく、裁判所の後見的機能により当事者間の合理的な法律関係を形成するものでありますことから、原則として非訟事件の手続によることといたしたのであります。
第一項は、この法律で特別の定めのある場合を除きまして、前条の裁判について非訟事件手続法第一編の規定を準用することといたし、ただ、同法第六条及び第七条の規定は、この裁判の争訟的性格のため準用することが適当でなく、また第十五条の規定は準用することを必要といたしませんし、第三十二条の規定も、むしろ費用の予納を適当とし国庫立てかえは合理的でございませんので、これらの規定を準用しないことといたしたのであります。
第二項は、この法律に定めますもののほか、必要な裁判手続は、最高裁判所規則により定めることができるものといたしたのであります。
第十四条ノ四の規定の新設は、第十四条ノ二の事件の裁判が争訟的性質を有しますので、裁判の信用保持のため、裁判所職員の除斥、忌避及び回避につきまして訴訟の場合と同様といたしたのであります。
第十四条ノ五の規定の新設は、鑑定委員会の構成等を定めたものであります。
第十四条ノ六の規定の新設は、第十四条ノ二の事件の裁判の争訟的性質にかんがみまして、可及的に訴訟と同様の対審的構造をとることが適当であると考えますので、裁判所は必ず審問期日を開いて当事者の陳述を聞くべきものといたしまして、当事者の審問期日には他の当事者の立会権を認めることといたしました。
第十四条ノ七の規定の新設は、第十四条ノ二の事件の裁判の争訟的性質にかんがみまして、裁判所の後見的機能を果たすための職権による事実の探知及び証拠調べをいたしますほかに、訴訟と同じく当事者の申し出による証拠調べをもすることといたしまして、しかも右の証拠調べは、訴訟と同様の手続によることといたしました。その結果、当事者双方の立会権及び反対訊問権が認められることになるわけであります。
第十四条ノ八の規定の新設は、当事者の了知しない資料による裁判を防止し、かつ、当事者の陳述及び証拠提出を尽くさせるとともに、あわせて第十四条ノ十の規定により裁判の効力の及ぶ承継人の範囲を明確にいたしますために、審問期日において審理終結宣言をするものといたしました。
第十四条ノ九の規定の新設は、建物に関する借地条件の変更に関する裁判、賃借権の譲渡もしくは転貸の承諾にかわる許可または賃貸人の譲り受け等に関する裁判については、即時抗告を認め、これらの裁判は確定しなければ効力が生じないものとし、非訟事件の裁判が一般に告知により効力を生ずることの例外を明らかにするものといたしました。
第十四条ノ十の規定の新設は、前条第一項の裁判の最終の審問期日後裁判の効力の生ずる確定までの間に当事者の地位の承継がありました場合には、その承継人に対しましてもその裁判の効力を生ずるものといたしませんと、裁判が徒労に帰し、承継人を生じた当事者の相手方に不利益を与えることになりますので、右の承継人に対しましても裁判の効力が生ずるものといたしました。
第十四条ノ十一の規定の新設は、第八条ノ二第三項もしくは第五項、第九条ノ二第三項もしくはその準用規定または第九条ノ三第一項もしくはその準用規定の裁判で、財産上の給付を命ずるものにつきましては、既判力はないが、執行文の付与を受ければ強制執行の債務名義とすることができるものとするのが相当でありますので、これを強制執行に関しては裁判上の和解と同一の効力を有するものとしたのであります。
第十四条ノ十二の規定の新設は、第九条ノ二第一項またはその準用による裁判があった場合に、当事者間の権利関係を不安定の状態のままで長く置くことは適当でありませんので、裁判確定後原則として六カ月内に借地権者が賃借地上の建物を当該第三者に譲渡しないときは、その効力を失うことといたしたのであります。ただ、具体的事案に応じて、この六カ月の期間は、右の裁判において適宜伸長または短縮することができるものといたしました。
第十四条ノ十三の規定の新設は、第十四条ノ二の事件につきまして裁判所が適宜和解を試み、また調停に付することができることとするのが適当であるので、和解に関する民事訴訟法第百三十六条及び第二百三条並びに民事調停法第二十条の規定を準用することといたしました。
第十四条ノ十四の規定の新設は、第十四条ノ二の事件の争訟的性質にかんがみまして、事件の記録を公開するのが相当であるので、記録の閲覧、謄写または謄抄本等の交付の制度を設けることにいたしました。
第十四条ノ十五の規定の新設は、第十四条ノ二の事件の申し立て及び抗告の手数料を定めたものでございます。
第十四条ノ十六の規定の新設は、第九条ノ二第三項またはその準用による申し立てが同条第四項の規定により効力を失いました場合に、裁判所が裁判費用の額及びその負担者を決定するものといたしたのであります。
以上が第一条関係の借地法の改正に関するものでございます。
次に、第二条の借家法の一部改正に関するものについて申し上げます。
まず、借家法の第七条の改正でございますが、これは借地法第十二条の改正と全く同じ趣旨でございます。
第七条ノ二の規定の新設は、居住用の建物の賃借人が相続人なくして死亡した場合に、現行法では借家権が消滅し、同居の内縁の夫婦または事実上の養親子の関係にある者でも立のかざるを得ないことになりますので、これらの者の居住権を保護いたしますため、反対の意思表示をしない限り、これらの者が借家権及びその借家関係により生じました債権債務を承継するものといたしました。
第三条は、建物保護法に関する改正でございますが、その第一条は、第二項を削除することにいたしたのであります。これは建物保護法第一条第一項の規定により対抗力のある借地権の目的となっております借地上の建物が滅失しました場合には、その対抗力の存続について疑義がございますので、借地法との関係を調整して、従前対抗し得た地主に対しては、建物が滅失してもなお借地権を対抗することができることを明らかにする趣旨でありまして、かかる関係について疑義のある本条第二項の規定を削除するものでございます。
第二条は、本条の改正は、第一条の改正に伴う条文の整理でございます。
次に、第四条の民法の改正関係でございます。
民法の第二百六十九条ノ二の規定を新設することにいたしましたが、これは地下または空間の一定部分にも地上権が設定できるものとしようとするものでございます。
まず第一項の規定は、地下鉄、地下駐車場、地下商店街等の地下工作物や高架線等の空中工作物を所有いたしますために、他人の土地の地下または空間の部分のみを使用する場合が増加しておりますが、かかる場合に現行の地上権を設定しますときは、その地上権が土地の上下に及びますことから、土地の不必要な部分にも地上権の効力が及ぶこととなり、その部分の地主または第三者による利用ができなくなって不経済であり不便でもございますので、地下または空間の一定の部分のみに工作物の所有を目的とする地上権を設定することができるものとするのであります。
第二項の規定は、第三者が、その土地に地上権、賃借権等の使用収益権を有しております場合でも、その第三者の承諾を得れば、地下または空間の一定の部分に前項の地上権を設定することができるものといたしまして、この場合には、右の承諾をした第三者は、その地上権の行使を防げることができないものとしたわけでございます。
附則は、第一項は、この法律の施行期日を昭和四十一年七月一日とするものでありますが、借地法の改正中新たに非訟事件の裁判の制度を設ける部分並びにこれに関連する附則第二項、第三項及び第十項の規定は、最高裁判所規則の制定等の準備及び一般の周知期間を要する等の理由によりまして、この法律の公布日から起算して一年をこえない範囲内で政令で定める日から施行するものといたしたのであります。
第二項は、防火地域内借地権処理法を存置する必要がなくなります。これは同趣旨の制度が借地法第八条ノ二の新設規定に含まれたわけでございますので、そういう関係でこれを廃止しようとするものであります。
第三項は、借地法の新設規定による鑑定委員会の委員の旅費、日当及び宿泊料を最高裁判所規則で定めることとするのに伴いまして、同趣旨の罹災都市借地借家臨時処理法の鑑定委員会の委員の旅費等につきましても、同じく最高裁判所規則で定めることといたしますために、同法に所要の改正を加えるものでございます。
第四項は、民法第二百六十九条ノ二の規定が新設されることとなりましたが、採石権につきましては、同条を準用する必要がございませんので、これを明らかにするため採石法に所要の改正を加えるものであります。
第五項は、民法第二百六十九条ノ二の新設に伴いまして、それに関する登記の手続を定めますため、不動産登記法に所要の改正を加えるものであります。
第六項は、この法律の改正に伴う経過措置の一般原則を定めたものであります。
第七項は、この法律による改正後の地代または借賃の増減請求に関する借地法第十二条第二項及び第三項並びに借家法第七条第二項及び第三項の新設規定は、これらの規定の施行前に地代または借賃の増減の請求がありました場合に関して、附則第六項の原則によりこれを適用することは妥当でございませんので、その適用のないことを明らかにしたものでございます。
第八項は、この法律による改正後の借地法第十二条第二項または借家法第七条第二項の規定は、地代または借賃の増額請求の場合の増加適正額について争いがありますときは、これを確定する判決がありますまで適正額が明らかでないことを配慮した規定でありますから、地代家賃統制令の適用がある地代または家賃につきまして統制額の定められている場合につきましては、少なくともその額まで増加すべきことは明白でありますので、増額請求にかかる増加額のうち統制額をこえる部分についてのみこれらの規定を適用することといたしまして、増額請求がありましたときは、その統制額までの地代または家賃は、支払うべきものといたしたのであります。
第九項は、この法律による改正後の借家法第七条ノ二の規定につきましては、相続人全員が相続放棄をした場合にも相続人なくして死亡した場合に該当するのでありますが、同条の施行前に借家人が死亡し、その施行後に相続人全員が相続放棄をしました場合にも、附則第六項の原則にかかわらず、同条を適用するものといたしまして、内縁の夫婦または事実上の養親子の関係にあった同居者の借家権の承継を認めることといたしたのであります。
第十項は、附則第二項による防火地域内借地権処理法の廃止に伴いまして、その廃止前に同法第二条第一項の申し立てがありました事件につきましては、廃止後もなお従前の例によるものといたしたのでございます。
以上が借地法等の一部を改正する法律案の逐条説明でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/10
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011・横山利秋
○横山委員 議事進行について大臣にお伺いしたいのですが、ここしばらくの間に——商法並びにいまの借地法、それから追って刑法が出てまいります。あと一カ月半ばかりの間に、庶民的に非常に関係のありますこれらの法案が慎重に審議されなければならぬのですけれども、何か新聞を見るところによりますと、少年法だとかあるいは先般お答えになりました会社更生法だとか、まだまだ本委員会にとりましては重要な法案をお出しになるという気持ちもあるようでありますが、これでしまいでございますか。それともほかに法案をお出しになる予定がございましょうか。あまりおそくなりますと、実はわが委員会におきましても慎重審議ができないので、おそくなるのでは困りますので、ちょっと伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/11
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012・石井光次郎
○石井国務大臣 私のほうから提出いたして御審議願う問題は大体この程度でございます。ただいまお話のありました少年法のごときは、ただいま検討中でございまして、それ等につきましてはまだ一般の意見等も聞きまして、今度の国会には出す心持ちは持っていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/12
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013・横山利秋
○横山委員 会社更生法は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/13
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014・石井光次郎
○石井国務大臣 これは今度には間に合わないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/14
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015・大久保武雄
○大久保委員長 本案に対する質疑は後日に譲ります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/15
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016・大久保武雄
○大久保委員長 次に、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/16
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017・大竹太郎
○大竹委員 まず基本的な問題についてお尋ねを申したいと思うのでありますが、この提案理由の説明を拝見いたしますと、「現下の経済情勢にかんがみ、株式会社の運営の安定をはかり、株式の譲渡の手続を合理化し、さらに株式会社の資金調達の方法を容易に、かつ適正にする等のため早急に改正を要する事項について」云々、こうなっておるわけでございまして、わずかな字句にとらわれるわけではございませんけれども、今度の改正は、早急に改正を要するものというふうに言われておるわけでございますが、これらの早急に改正を要すると認められた経緯と申しますか、それをお伺いいたしたいと思うわけであります。
同時にまた、早急ではないけれども、まあ根本的にゆっくり考えて改正しなければならぬという点もあるということは、このことばの裏からも考えられるわけであります。と申しますことは、今度改正をしようとされております株式譲渡の問題一つ取り上げてみましても、いままで同じことに取り扱っておりましたのを、これは同族会社その他中小会社に主として適用されるのでございましょうが、会社の譲渡を一方においては制限をする、また一方において、これは提案理由の説明の中にもございますが、上場株のように大量に動かしておる大きな会社の株式については、いままで以上に流通しやすくしようという、ある意味においては矛盾した二つのものが取り上げられておるわけであります。これはもちろん申し上げるまでもなく現在の株式会社法によりますと、たとえば十人くらいの株主で、資本金も百万以下というような小さい会社もありますし、また何百億の資本で株主が何十万もいるというような会社もあるわけでありまして、そういうようなことを考えますと、単に株式の譲渡の問題だけでなく、たとえば株式の額面を、現在五十円のものが一番多いわけでありますが、その後改正になって五百円になっておるということにゆきいたしましても、何十億の会社と何十万の会社と一体同じことでいいものかどうか、またたとえば株主総会の規定あるいは公告の規定その他でも、私は同じことにする必要はないのではないかというようなことも考えられるわけであります。これはなかなか広範にわたる質問でございますが、それらについて簡単にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/17
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018・石井光次郎
○石井国務大臣 この法案が急ぐような急がぬような形に見えるという問題でありますが、この問題はさほど急ぐ問題だということもないように見えますけれども、一日早ければ一日経済界には有効に働くのではないか、こういうふうなことを考えますと、早くこれはきめたほうがいいのじゃないか、そういうふうに思っておるわけでございます。経済界の各方面から要望されたのでございますが、それは関西経済連合会とか、日本経団連でございますか、それから東京商工会議所というような団体、それから全国株式懇話会連合会、いろいろな経済団体のほとんど一致した希望でございまして、その要望にこたえてどういうふうにしたらいいかということは、私どものほうで各方面の要望等も考えながら、こういうふうなところが適当じゃないかと思って立案したわけでございます。
さて、そのお話の中で一番問題点は、株式会社が大きいのと小さいのとピンからキリまである、これが一番大きな問題と私どもも思うのでございます。たいへんなマンモス会社があるかと思うと、百万円にも満たない会社がある。これはたしか数字があったと思いますが、登記上存在する株式会社の資本金別の数は次のとおりであるということで、ちょっと参考までに申し上げましょう。一億円以上が、まあ一億円以上だけでは少しばくとしておりますが、一億円以上が五千六百七十四、一千万円以上が四万一千四百八十九、百万円以上が三十六万五千九百十七、百万円未満が二十八万八千五百七十四、計七十万一千六百五十四という表が出ておるわけでございます。そういうわけで、まことにどうもたいへんな開きが出ておるわけでございます。おっしゃったように、これを一律に同じ株式会社ということで律するかどうかということは、これはわれわれのほうとしても問題になっており、法制審議会等でも長年論議されておるわけでございます。かと申しまして、これをどういうふうにいたしたらいいかというようなことで、あるいは中小会社をこの際はもう株式会社でなしに有限会社にしたらどうだというような案も考えられたことがあるようでございますけれども、いや、やはり株式会社のほうがいいというのもあるようでございまして、また法制審議会なんかでは、株式会社の資本金の最低額をきめたらどうだというようなことで、一応検討されたこともあったらしいのでございますけれども、これはとうとう結論を得なかったというようなこともございます。お話しのように、これは非常に基本的な問題でございまして、私ども今度の問題は、目の前の問題だけ扱ったような形でございまして、こういう基本問題はまだ扱っていないのでございます。ぜひこれは扱わなければならない大事な問題だと思います。法制審議会のほうともよく相談いたしまして、ひとつよく検討いたしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
あとは局長から申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/18
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019・新谷正夫
○新谷政府委員 法務大臣から御説明ございましたとおりでございまして、今回の法律案は経済界から早急に改正を要望された問題を、この案の中に織り込んだわけでございます。会社法全般の問題につきましては、確かに、御指摘のように、いろいろ問題があるようでございます。今後とも法制審議会を中心にいたしまして、その他の問題につきましても検討を加えてまいる予定になっております。
ただ、御承知のように、この商法という法律そのものが、経済界の活動を基盤にいたしましてできておる法律でございます。むしろ、どちらかと申しますと、経済活動のほうが先行いたしまして、商法がそれを追っかけるというのが実情なのであります。ただ、その場合に、経済取引が二途に出る、あるいは三途に出るというふうなことで、秩序のない状態になりました場合に、これを規制していかなければなりません。商法は、そういう経済界の実情をながめながら、実態に合う改正を行なっていくというふうに従来とも考えられておりますし、行なわれてきたわけでございます。とりあえずは部分的な改正でございますけれども、特に経済界から要望の強い問題を法制審議会で取り上げまして、このような案を出したというわけでございます。その他の問題につきましても、もちろん御意見のように今後十分検討しなければならぬものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/19
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020・大竹太郎
○大竹委員 この基本的な問題だけでも、議論していれば、幾らでもあると思うのでありますが、まだほかの委員からも御質問があると思いますので、私は打ち切りたいと思いますけれども、いまの御答弁によりますと、経済界その他から要望があったから、この点だけをとりあえず改正することにしたんだということでございますが、そうなりますと、またこの次の機会には、また部分的に要望の強いものを改正するというようなことで、全体としては相当矛盾も出てくれば、ていさいも悪い法律になるというふうに思うのでありますが、何とかこれは根本的に改正するという案を——これは、いろいろほかの問題もあって、なかなかむずかしいとは思いますけれども、やはり早急に考えられる必要があるのではないかと思いますので、この際、ひとつ御要望申し上げ、そして次の質問に移りたいと思うわけであります。
まず、この株式の譲渡制限の問題でございますが、これはたしか戦前の商法にはもっと強い、制限というより、むしろ禁止とでもいうべき規定があったと思うのでありますが、これはたしか昭和二十五年の改正でございますか、この譲渡制限の規定がなくなって、十五年ばかりやってみた上で、またここで再び、いま申し上げましたように、相当緩和されているようでありますけれども、譲渡制限の規定が出てきたということになるわけでありますが、一体、この譲渡制限の規定がなくてやってきた問に、どういうような法の不都合があったのか、そしてまた最近どういうふうにこれが改正されなければならぬ強い必要性があるのか、それらのいきさつについて御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/20
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021・新谷正夫
○新谷政府委員 株式の譲渡制限につきましては、御説のように、昭和二十五年までは、制限あるいは禁止することができるようになっておったわけでございます。その当時の株式会社の実情を私どもで調べてみました。日本橋の登記所の登記されておる面から、三百数十社につきまして、一つずつ当たって調べましたところが、二十五年当時の株式会社の八五%近くが、譲渡制限の規定を置いているわけでございます。一般的に申しますと、八〇%ぐらいは譲渡制限をやっておったであろうというふうに申し上げて差しつかえないと思うわけでございます。とのような譲渡制限をやりました理由は、株式会社と申しましても、同族会社的な、閉鎖的な株式会社もたくさんございます。また開放的な株式会社もございますが、閉鎖的な株式会社におきましては、その株主相互間の信頼関係に立って、会社の運営というものが行なわれるわけです。相互の気持ちの合ったものが融和して円満にやっていきますためには、だれが株主になってもよろしいというふうな形をとらないほうが望ましいのだということも一つの理由であったと思います。また小さな会社でございますと、外部からの支配を受けやすい、手っとり早いことばで申し上げますと、会社の乗っ取り等も比較的容易に行なわれるというふうなことも考えられたわけでございます。
二十五年の改正によりまして、株式の譲渡について制限等の規制を加えることができないように、全くの自由な制度にいたしたのでございますが、その後株式会社の実態は、ただいま法務大臣からおっしゃいましたように、百万円未満の会社も非常に数が多いわけであります。一千万円未満の会社というものが大多数であると申しても過言でないような状況でございまして、こういった小さな会社につきましては、昭和二十五年当時の状況とあまり変わらないのではないか。会社の融和をはかり、また外部資本の浸透を避けて、こじんまりと同族会社的な、家族的な会社の運営をやっていこうという場合には、やはり株式の譲渡制限を行なって、会社の経営の安泰をはかっていくということが望ましいということになるわけでございます。
そういった小さな規模の会社が非常に多い現状におきまして、やはり株式の譲渡制限をすることによって、その会社の経営の安定をはかるべきである、こういう趣旨で、今回の改正を行なった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/21
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022・大竹太郎
○大竹委員 それでこの問題も、先ほど御質問いたしたように、主として同族会社、中小会社というものに必要性があるということで、再び商法の上で取り上げられることになっておりますが、規定そのものでは、資本金その他でどれだけ以下の会社に適用になるということにはなっておらないのでありまして、大規模の会社にもこの規定によって制限をしてもいいということになるわけでありますが、特に上場されている株というようなものを考えました場合に、上場株でも、最初から制限をしてあれば、そういう株は上場ならぬという場合もあるのでよろしいかと思うのでありますが、現在上場されている株が、この制限を受けたということになると、そこに非常な混乱とでも申しますか、そういうものが起きるやに思われるのでありますが、そういう点についてはどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/22
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023・新谷正夫
○新谷政府委員 確かに、上場されております株式につきまして、譲渡制限が行なわれますと、これはその譲渡制限の効力が発生しましたときから自由な譲渡が制限されることになりますので、上場株の取引という面からいたしますと、混乱が生ずるということも一応考えられるわけでございます。しかし、御承知のように、現在上場されております株につきましては、大蔵大臣の認可に基づきまして、上場審査基準あるいは上場廃止基準という基準が設けられております。これによりまして、会社の規模とかあるいは株式の数とか、いろいろの要件にはまったものを上場し得る、そうでなくなったものは上場できなくなるということになっておるわけであります。現在上場株につきまして、この譲渡制限を行なおうといたしますと、やはりその上場基準の問題が関連してまいるわけであります。おそらくこの法律が成立いたしますと、上場審査基準あるいは廃止基準というものにつきましても改正が行なわれることになると考えておるわけでありまして、これは大蔵省当局もそのような考えでおるようであります。もしも譲渡制限の定めができますと、これらの上場に適さない株式ということになりますので上場廃止ということになるわけでございます。ただ上場されております株式会社というのは、御承知のように非常に大きな会社で、株式も多数に発行しておる会社であります。今回の株式の譲渡制限は、先ほど申し上げましたような趣旨において必要な会社において譲渡制限を認めようということでございますので、定款の変更を要するわけでございます。この定款の変更も一般の変更決議では足りないことにいたしまして、特に決議要件を厳格にいたしました。そのような次第もございまして、現に上場されております会社につきまして、この譲渡制限が行なわれるということは、まず普通の場合でございましたらないのではないかというふうに考えられるわけでございます。かりに譲渡制限をしなければならないということになりますれば、一応上場の取りやめをやって譲渡制限を行なうか、あるいは譲渡制限が効力を発生しますれば、上場廃止基準に該当して上場からはずされる、こういうことになろうと思います。当初から譲渡制限のある会社でございますれば、上場されないことはまず間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/23
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024・大竹太郎
○大竹委員 いまのお話で大体わかったのでありますが、大蔵省の定めております上場基準というものは、これは法律でありますか、それとも内規でありますか。六法なんかにはそういうものがないように思うのですが、それをひとつあとでこちらへ資料として出していただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/24
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025・新谷正夫
○新谷政府委員 これは証券取引法に基づいてやっておることであります。どういうことになっておるかという詳細につきましては、別途資料を差し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/25
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026・大竹太郎
○大竹委員 それで譲渡制限の株式の譲渡の問題に関連してでありますが、それならば、制限のあることを知らないでたとえば買い受けた人があるということになりますと、少なくともこれは会社に対していわゆる株主になったということは対抗できない。当事者間の問題は別といたしまして、少なくとも会社に対しては対抗できないというふうに考えてよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/26
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027・新谷正夫
○新谷政府委員 譲渡制限のあります株式を知らないで買い取ったというふうな場合には、もちろん会社に対して自分が株主になったということを主張できません。そういう意味におきまして会社に対して対抗できない、こういうふうに解釈されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/27
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028・大竹太郎
○大竹委員 次に、会社が承認しなかった場合には、いろいろ繁雑な規定——これはもちろん株主が投下した資金を回収するためには、いろいろ繁雑でもこういう手続をして保護する必要があると思うのであります。戦前には、たしか制限禁止の規定があっただけで、こういう繁雑な規定はなかったと思うのでありますが、それならば戦前にはとういうような——制限の株は持ったきりでどうもならなかったのか、その当時の実情をおわかりだったら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/28
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029・新谷正夫
○新谷政府委員 確かに二十五年の改正以前におきましては、株式譲渡制限に関する定めができる、禁止に関する定めができるという規定だけでございまして、自後の手続がございませんでした。したがいまして、かりに発行会社のほうで株式の譲渡を承認いたしましても、その承認を受けたものと株主との間の取引がうまくいったかどうかということについては、実は保証されていないわけでございます。私その当時どのようにしておったかということを実は存じませんが、おそらくすべて円滑に問題なく株式の取引が行なわれた、あるいは訴訟にも何にもならないでそういう取引が行なわれたということは保証されません。これを、譲渡制限がございましても株主のほうで売りたいという希望から今回のような規定を設けたのでありまして、やはり譲渡制限がありましても、完全にそれを押えてしまう、禁止するということは適当でございませんので、株主の投下資本を回収さしてやるという株主の立場も考えなければいけません。何とかそこにぜひ売りたいという場合には、その売る道を考えていかなければならないというので、繁雑なようではございますけれども、規定をいろいろ置きまして、必ず売りたいと思うものについては売れる道を開こうじゃないかというので、今回のような規定を置いたわけであります。これがございませんと、せっかく売りたいと思っても、売れないというふうなことも生ずるのではないか。戦前もそういうことがあったと思います。そういうことを考慮いたしまして、繁雑ではございますけれども規定を置いた次第であります。なお条文の規定全体をごらんいただきましても非常に長い規定でございますけれども、それぞれの場合場合によりまして、株式会社の承認があったものとみなすというふうな段階を置くことにいたしております。したがいまして、それほど御懸念になるほどめんどうな手続を全部の株式譲渡についてとらなければならないかということになりますと、必ずしもそうではあるまい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/29
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030・大竹太郎
○大竹委員 ただ私お聞きしたいのは、戦前にはこういうめんどうな規定はなかったというようなこと、それからいわゆる制限じゃない、禁止もできたというようなことから、もうそういう株主というものは、これは譲渡できないのだといって金にかえることをあきらめていたのかどうか。もしだれかに売って金にしたいのだということになると、こういうようなめんどうな手続が必要だというようなことになるようにも思われるので、そういうようなことを考えますと、戦前はこれに関しての訴訟とか争いというようなものが相当あったのじゃないかというようにも考えられるのでありますが、そういう資料といいますか、統計とかというものはございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/30
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031・新谷正夫
○新谷政府委員 ただいまのところ二十五年以前の株式譲渡制限にからまる訴訟事件というものの実態がわかっておりません。一応調査いたしまして、ございましたら差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/31
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032・大竹太郎
○大竹委員 それで、非常に長いいろいろな規定がありますが、順々に読んでいくと、非常に理屈に合っているので、よくわかるのでありますが、それにいたしましても、これを全部この手続をやると、一週間とかなんとかいうのをみな足していきますと、たしか四十幾日かかかる計算になるかと思うのであります。こういう繁雑な規定——どっちかといえば、これは競売法か、何か手続法に規定するのが一番いいくらいに思われるようなことでありますが、結局、こういうめんどうなものは、それだけでめんどうがっちゃって、こういうものはあまり利用しないというようなことにもなりかねないように思われるのでありまして、何とかもう少し——そうかといって、それならおまえ示せと言われてもあれでありますけれども、もう少し何とか簡略な方法をお考えになれなかったものかどうか、そういう点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/32
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033・新谷正夫
○新谷政府委員 この法律でいろいろ手続を書きましたのは、売り主と買い主との間の相談がまとまりません場合に、株式を売ろうとする者の利益を擁護しなければなりませんので、できるだけそれが処分できる道を開こうというのでつくった規定でございます。もちろんこれはすべての株式の譲渡についてこの規定が適用になるものではございません。多くの場合には、相手方との間の話し合いがつくだろうと考えられますので、協議がととのいますれば、もうこの規定は一切適用ございません。最後の保証という意味でこの規定を設けたわけでございます。おそらく大部分の場合には、相手力との話し合いによりまして円滑に株式の譲渡ができる、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/33
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034・大竹太郎
○大竹委員 それから会社のほうでだれに売れということを指定するようになっているわけでありますが、これを売る方で拒否した。たとえば、会社がきめた人間を、あの人間はいやだといって拒否した場合には、結局、それでは換価の方法はないというふうに解してよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/34
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035・新谷正夫
○新谷政府委員 株式を処分しようとする者の希望をできるだけ実現させるためにこの手続を設けたわけでございますので、会社の指定した者に対して株主がその株を売らないということでございますれば、これはもちろん譲渡の目的は達成できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/35
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036・大竹太郎
○大竹委員 それでは会社は一人だけ指定して、その人間を相手が断わったら、あとは一切責任は負わぬということになるのですか。その人間がだめなら、この人間はどうだという義務はないということでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/36
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037・新谷正夫
○新谷政府委員 会社の指定を受けました者が、自分がそれを買い取りますという申し出をいたしますれば、そこに売買契約が成立するわけでございますが、いまおっしゃいますのは、株主のほうでその相手方はいやだと言う場合でございますと、指定がない状態のままで、−指定がございましても、その指定を受けた者が買い取りの意思表示をしないで、しかも株主もその者に売ろうとしないという場合にはそのままになるわけであります。しかし、会社から指定を受けました者が、自分が買い取ります、こう言えばそこに売買契約が成立するわけであります。そこでこの手続に乗っかってまいりまして、この手続を履行しませんと売買契約を解除になるという場合が出てくるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/37
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038・大竹太郎
○大竹委員 次に、定款変更については、譲渡制限を定款に規定するための手続は非常にむずかしい手続になって、株主の過半数、それから株式の三分の二以上という珍しくむずかしい制限になっているわけであります。
あとでその点よくお聞きしたいと思うのでありますけれども、株主権の不統一行使という面との関連で、不統一行使した場合には株主の数は一体どうなるのか、その点どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/38
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039・新谷正夫
○新谷政府委員 御質問の趣旨は、今回の譲渡制限につきまして新しく定めます三百四十八条の規定によりまして、譲渡制限の定款変更決議をいたしますには、総株主の過半数の賛成と、発行済み株式総数の三分の二以上の賛成を必要といたしまして、決議要件を厳格にいたしたわけでございます。一般の定款変更の場合にはこのようになっておりませんが、今回は特に総株主の過半数の賛成ということを定めたわけでございます。この趣旨は決議要件を厳格にいたしまして、少数株主の意向も十分反映できるように株式の譲渡を制限しようという非常に重大な事柄でございますので、できるだけ株主の意向をその決議に反映させるために非常に厳重な決議要件を定めたわけでございます。ただ、この場合に議決権の不統一行使を行なった場合に、この頭数、総株主の過半数というものをどのように計算するかという趣旨の御質問だろうと思いますが、議決権の不統一行使をいたしますと一部分の株式については賛成、一部分の株式については反対という議決権の行使の幅になるわけでございます。したがいまして、賛成の票も出ますし、反対の票も出るということになります。この総株主の総数を数えます場合には、賛成のほうにも一人、反対のほうにも一人、つまり一人が賛成と反対と両方に分かれて投票いたしますので、差し引きいたしますればゼロでございますが、一応数えます場合には、反対のほうにも賛成のほうにも一人ずつ加えるほかはない、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/39
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040・大竹太郎
○大竹委員 この不統一行使の場合は、もっと研究したいと思うのでありますが、もちろん個数を計算する場合には正確に出るわけですが、第一、不統一行使をする場合には、不統一行使の内容というものが、不統一行使をする旨を通知しろというふうに、たしかこの条文の上ではなっているようであります。一体その内容を通知する必要がないのでありましょうか。たとえば三人から株式の信託を受けているというようなことになりますと、一人で三人の株主権を不統一行使できるというように考えるのでありまして、そうなるといわゆる三個の株主として、三個の投票権を持つというふうに考えられる、それでなければほんとうの不統一行使にならぬように思いますが、その点一体どうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/40
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041・新谷正夫
○新谷政府委員 新設の第二百三十九条の二の規定によりまして、株主が二個以上の議決権を有しますときにはこれを統一しないで行使することができるようにいたしまして、その場合にあらかじめ会社に対しまして書面でその旨を理由とともに通知する、こういうふうに規定いたしております。いま仰せのように形式上の株主がおりまして、その背後に実質上の利益を受ける株主と申しますか、それがおります場合に、この株主の意向を反映して、その指図に従って形式上の株主が議決権を行使できるようにしようというのがこの不統一行使の趣旨なのであります。したがいまして、実質的に株主として利益を享受するものが三人おりますれば、その三人の指図に従うわけであります。議案に対して甲という者は賛成、乙は反対、丙は賛成という場合には、甲と丙につきましてはその株数に応じて賛成の議決権を行使しますし、乙につきましてはまたその株数に応じまして反対の議決権を行使をするわけでございます。事前に会社に対しましてその旨を通知しなければなりませんが、この場合には甲の分あるいは丙の分について賛成をし、乙の分について反対をするというところまで通知する必要はないわけでございまして、不統一行使をするということと、その理由を通知すればよろしいわけでありまして、自分は甲、乙、丙から株式の信託を受けておるので、これに基づいて甲、乙、丙のために、統一しないで議決権を行使する、こういう通知をすればよろしいのだと解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/41
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042・大竹太郎
○大竹委員 そこで、どうも私納得できない点があるのでありますが、さきのお話だと、たとえば十人の株主がいてそのうちの一人がいわゆる不統一行使をした。さきの御意見だと名簿上の株主は十人だけれども、その場合においては一つだけふやして株主の総数は十一人ということにおやりになるのでありましょう。やはり株主の数は十人としてお勘定になるのですか。これをちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/42
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043・新谷正夫
○新谷政府委員 株主名簿に登載されております株主がかりに十人といたしまして、そのうち一人が不統一行使を行なうということになりますと、残りは九人でございます。したがいまして、これがかりに五人が賛成、四人が反対ということになっておりますときに、残る一人が不統一行使をいたしますと、一部分は賛成、一部分は反対、こういうことになるわけでございます。その場合に、本来賛成いたしております五人というものがございます。それに対してさらにこの議決権の不統一行使をいたします株主が賛成の表決をいたしますと、それに一人加える。それからまた反対の議決権行使をいたしました者が四人でございますと、不統一行使をいたしましてやはり反対の議決権行使をいたしました者を、やはり一人として反対のほうへ加えられる、こういうことになるわけであります。(横山委員「全部で九人の場合はどうなる。四、四で一人。」と呼ぶ)全部で九人の場合は、四、四で一人でございますと、それで五、五、こういう結果になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/43
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044・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、株主の過半数というんだから、やはり株主は十人にするのですか。十一人の過半数ということになるのですか。その点はどうなんですか。いまの御答弁でははっきりしないように思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/44
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045・新谷正夫
○新谷政府委員 結局、九人のところへ一人、一人加わるわけでございますから、十一人が基礎になる。その過半数でございますから、六人あればそれで足りる、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/45
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046・大竹太郎
○大竹委員 私はそこが問題だろうと思うのでありまして、いま三人から信託を受けておって、そのうち二人が反対で一人が賛成というような場合に、反対のほうだけは一つしかそこへ加えないで、そしてそれを株主の総数——名簿上は十人だけれども、その反対のほうの不統一行使の部分を一人だけふやして十一人として、その過半数という計算をされるということは、私にはどうも納得がいかないんで、やはりほんとうから言えば、その信託の内容によって、三人いるなら三票そこへふやして、そしてその過半数ということにされるのが理屈に合うのじゃないか。その一つだけふやして十一にして過半数という計算をされるというその基礎が、私はどうも納得がいかぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/46
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047・新谷正夫
○新谷政府委員 ただいま申し上げました例で形式上の株主、つまり株主として株主名簿に記載されております者はAという者が一人でございます。ところがそのAという者に対しまして甲、乙、丙という者が株式の信託をいたしております。そういたしますと、その信託の内容によりまして甲、乙、丙が利益配当金をAから交付を受けるというふうな契約があるわけでございます。そういう場合に、実質的にその株主としての利益を受けております者は甲、乙、丙でございまして、Aはただ形式的に株主名簿に記載されておる株主にすぎないわけであります。しかし、議決権の行使という株主権を行使いたします際には、株主名簿に記載されておる者でなければ議決権の行使はできません。したがいまして、実質上の株主としての利益を受ける者が三人おりましょうとも、十人おりましょうとも、株主としての権利を行使するのはA一人でございます。ただ、Aがその議決権を行使いたします際に、実質上の株主、つまり株主名簿に記載されておりませんけれども、実質的に株主としての利益を受けておる、その背後にある実質上の株主の意向に従って、その議決権を分けて議決権の行使をするわけでございます。あくまでこれは同一人、一人が一部分賛成、一部分反対という議決権の行使をするにすぎないわけであります。したがいまして、ただいまの十人の場合に、五対四となっておりますときに残る一人が一部賛成、一部反対ということをやりますときには、それぞれにやはり一人ずつ加えざるを得ないという結果になるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/47
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048・大竹太郎
○大竹委員 またあとでこの不統一行使のときに譲ることにして、譲渡制限の問題をいま一つだけお聞きしておきたいと思うのであります。
もちろん、会社の安定、俗に言う会社の乗っ取り、そういうものを防ぐためにこういう規定を設けるということ、これはその面から見ますと、私は非常にけっこうな規定だと思うのでありますが、しかしこういう会社に出資している人たちといたしますれば、一面また早急にこういう株式を金にかえたいということもあり得るわけであります。ことによくあることでありますが、最近は同業者なんかが一つの会社をつくっているというような場合においては、仲間うちにあまり知られないで、その株でもってちょっと金融したいというようなことは相当あると思うのであります。これでは、取締役会にかけてみんなの承認を得て、みんなに自分の財産ぐあいまでみんなわかっちゃうというようなことになって、そういう面から今度はそういう会社には金を出さないというような問題も出てきますし、また会社をつくった以上はなかなか金融が容易にできないということで、非常に困るというようなことも出てくると思うのであります。そういう面で何とか——これは通産省あたりの関係にもなると思うのでありますが、仲間うちに知られないでそういうもので金融する道というものを考えてやる必要があるのではないかというふうにも私は考えられるのでありますが、そういう点は何かお考えがあるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/48
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049・新谷正夫
○新谷政府委員 いまの御質問の御趣旨は、株主がその株式を利用して金融を受けるなんという場合のことではないかと思いますが、先ほども申し上げましたように、株式の譲渡制限の定めをいたしますには、できるだけ株主の意向をその決議に反映させるという措置をとりまして、議決要件を厳格にしたわけであります。したがいまして、この要件を満たす限りは、やはり株式会社における多数決の原則によってその定款が定められることになるわけでございますから、その株主としても多数の意向に従うということは、これは当然なことであろうと思うのであります。そうは申しますものの、どうしても自分はそういう譲渡制限には反対だというふうな株主も確かにあろうと思います。そういう場合のことを考えまして、そういった反対の株主のために、会社に対して自分の株式を買い取ってもらうという買い取り請求の道を開きまして、そういうことによって株主の利益の保護をはかるということを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/49
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050・大竹太郎
○大竹委員 あんまり時間がかかりますから、次に移りたいと思います。
額面株式と無額面株式との間の変更でありますが、聞くところによりますと、現在、日本の株式会社では、無額面株式を出している会社は非常に少ないということを聞いておるのでありますが、何かそこにその点の資料をお持ちでありますかどうか。そしてまた、せっかくこの無額面株式というものを出したのに、一体なぜこの無額面株式の発行というものは少ないのか。そしてまた、今度のように、相互間の変更が自由にできるようにするということは、株主に対してどれだけ便利なのか。また、反面からいって、これをやらぬことによって株主がどんな不利益、不都合を受けるのか。それらの点を簡単に御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/50
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051・新谷正夫
○新谷政府委員 現在わが国におきまして無額面株式を発行しております状況につきましては、実は数が非常に少のうございます。資料といたしまして、皆さま方に差し上げました参考資料の八十七ページでございますが、無額面株式の発行状況の資料を載せておきました。これによりますと、三菱倉庫、富士観光、住友金属工業の三社が、現在無額面株式を発行いたしておるわけであります。
この額面株式と無額面株式という区別を設けましたのは、昭和二十五年の改正によりましてやったわけでございます。これは、そもそもこのような二つのものを認めました理由は、御承知のとおり新株を発行いたしまして資金を調達しようという場合に、額面株式でございますとその券面額以下で新株を発行ができません。そこで、無額面株式をつくることによりまして、その制約から離れて資金を調達できるということになるわけでありまして、無額面株式でございますれば、額面がございませんので、額面以下で発行してはならないという制約がないわけでございます。会社のそのときどきの経営状況、あるいは株価の状況によりましては、一般の額面株が券面額を割っておるというふうな場合に、新株の発行ができないことになりますので、そういうことのないようにいたしますためには、無額面株が望ましいのではないかというところにこの理由があるわけであります。
ところが、わが国におきましては、昔から額面株式ということで一本で統一されておりまして、無額面株式というものについてまだ十分なれていない。何だか額面株式と無額面株式に差別があるのじゃないか、不利益があるのじゃあるまいかという一般的な危惧もあるのではないかと思われるのでございます。株券をもらう株主にしましても、額面の書いてないのは何だか株券らしくないというふうなことも考えられるので、無額面株式の発行ということがそれほど盛んに行なわれていないというこどでございます。しかし、権利の内容といたしましては、額面株式も無額面株式も全く同一でございます。ただ発行の際にそういう差異があるわけでございまして、議決権の行使にいたしましても、また利益配当にいたしましても、額面、無額面のゆえをもって差異は全く出てまいらないわけでございます。ただ、このようにいたしておきますと、株券を併合いたしますときに、額面株式と無額面株式と二つありますと、同一の券面額のものでないわけでございますので、これを併合するのが不可能であるという不都合がございますのと、それから、せっかく無額面株を出しておりましても、会社の株式事務を扱う面から申しますと、非常に繁雑な手数がかかるということになりますので、無額面株式を額面株式に統一してしまうことも許したほうがいいのではないか、また逆の場合も同様の理由によって変更を認める必要があるのではないかということから、額面株式、無額面株式の相互の変更を認めるということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/51
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052・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、お聞きしたいのでありますが、無額面株式を額面株式にする場合でありますが、無額面株式を額面株式にするには、一体割合をどこの基準に置いてきめるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/52
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053・新谷正夫
○新谷政府委員 無額面株式を額面株式にいたします場合にも、無額面株式一株が額面株式一株ということになるわけでございます。特に割合という問題は起きないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/53
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054・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、五十円の株式を四十円で出した、そういう場合にも、今度は変更を求めるときには、無額面株式を五十円の額面株式一株にかえてもらえるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/54
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055・新谷正夫
○新谷政府委員 御質問の趣旨はおそらく資本の額に影響するのではないかというところにあるのではないかと思います。額面五十円の株を発行いたしております際に、無額面株で四十円の株を発行したといたしますと、資本の総額におきまして、無額面株式の発行価額は四十円でございますが、それに無額面株式の発行済み株式の総数をかけたものと、額面株式の額面額にその株数をかけたものが資本の額になるわけであります。したがいまして、全部が五十円の額面株式の場合と比較いたしますと資本の額が少なくなっておる。それにもかかわらず、なおかつ無額面株式から額面株式に無条件で変更を許すということにいたしますと、資本の額が全部五十円の額面株式を発行した場合より少なくなりまして、これでは会社の資本が充実しないという結果になります。そのような場合にはこの変更を認めないというふうに法律に定めております。つまり、かりに無額面株式を全部額面株式に変更したと仮定いたしまして、その株式総数を額面額に乗じた金額、少なくともそれだけの資本の額がなければならない。それ以上の資本の額がある場合に限って無額面株式から額面株式への変更を認めよう、こういうふうに特に規定の上で明らかにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/55
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056・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、いまのように五十円のものを四十円で売り出したというような場合には、額面株式に移転できないということになるのじゃないですか。その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/56
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057・新谷正夫
○新谷政府委員 そのものの状況でございますと、これはできない。しかし、その準備金を資本に組み入れるということ等もございますし、資本の額はふえるということも考えられます。そういたしますと、無額面株式を五十円として計算いたしましても、なおかつ資本の額は余りがあるという場合には、これは無額面株式を額面株式に変更しても差しつかえないわけでございます。そうでない場合、つまり、四十円の無額面株式を発行して、資本の額もそれを基礎にのみして、そのままになっておるというふうな場合には、無額面株式から額面株式への変更はできない、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/57
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058・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、いまの商法の規定からいうと、再評価積み立て金でも資本に組み入れた場合のほかは、ほとんど、額面以下で発行した場合には、無額面株式から額面株式に変えることはできないように思うのですが、そう解釈してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/58
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059・新谷正夫
○新谷政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/59
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060・大竹太郎
○大竹委員 次に、あとでまたお聞きしますが、転換社債の場合には、株主名簿の閉鎖期間内でもたしか株券に転換できるように今度改正されたようでありますが、額面株式と無額面株式との間の転換は、名簿閉鎖期間内でもできるのですか、できないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/60
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061・新谷正夫
○新谷政府委員 額面株式、無額面株式の変更が、株主名簿閉鎖期間内にできるかどうかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、粗面株式を持っておる者と、無額面株式を持っておる者との間に、権利の相違は全くございません。株主である地位にも全く相違はございません。したがいまして、すでに無額面株式を持っておる者でございますれば、株主の名簿閉鎖期間内にそれを額面株式にいたしましても、その議決権には影響はございませんので、これはその期間内といえども変更の請求はできる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/61
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062・大竹太郎
○大竹委員 それからもう一つ、これは規定を私まだよく見ておりませんから、あれですが、念のためにお聞きしておきますが、この転換は定款でできないというように禁止規定を置くことができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/62
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063・新谷正夫
○新谷政府委員 定款で別段の定めをすることは差しつかえございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/63
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064・大竹太郎
○大竹委員 もう時間も相当でありますし、私、恐縮ですが、またこの次お許し願うことにして、この程度で打ち切りたいと思いますから、お許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/64
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065・大久保武雄
○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
次会は四月一日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02119660331/65
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