1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月五日(火曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
理事 濱田 幸雄君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
唐澤 俊樹君 四宮 久吉君
田中伊三次君 千葉 三郎君
中垣 國男君 馬場 元治君
濱野 清吾君 神近 市子君
横山 利秋君 田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 新谷 正夫君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 加治木俊道君
専 門 員 高橋 勝好君
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四月五日
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第三八
号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりをいたします。
先ほどの理事会で申し合わせましたとおり、ただいま審査中の商法の一部を改正する法律案について参考人の出頭を求め、その意見を聴取することとし、日時は来たる二十一日午前十時半とし、人選等は委員長に御一任願いたいと存じますが、これに異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/1
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002・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/2
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003・大久保武雄
○大久保委員長 次に、先ほどの理事会で申し合わせましたとおり、人権擁護に関する件、国士館大学問題について参考人の出頭を求め、その意見を聴取することとし、日時は来たる十五日午前十時半とし、人選等は委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/3
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004・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/4
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005・大久保武雄
○大久保委員長 次に、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
先般横山委員の発言もあり、本案に対する問題点等の資料作成について専門員に調査を命じましたところ、去る三月三十一日本資料が提出されました。この際、理事会の決定により、本資料について専門員の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/5
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006・高橋勝好
○高橋専門員 三月三十一日、委員長の御命令によりまして調査室において取りまとめました「商法の一部を改正する法律案に対する問題点」につきまして、内容を御説明申し上げます。
この問題点につきましては、二十九日委員長から取りまとめの御下命があり、事の性質上至急これを取りまとめる必要がございましたので、二十九日、三十日の両日にわたりまして、全力をあげて作成にあたったのでございますが、何ぶんにも時間が短いために、ここに取りまとめましたものにつきましては、その表現に舌足らずの点があったり、あるいはその表現が必ずしも妥当でない点があるように考えられますので、その辺につきましては何とぞ御了承願いたいと存じます。
この取りまとめの作業につきましては、次のような方針をとったのでございます。
今度提出されました商法の改正の項目といたしましては、株式の譲渡制限、額面株式と無額面株式との間の変更、株式の譲渡方式の変更、議決権の不統一行使、新株発行の手続、新株引き受け権の譲渡、転換社債の転換の請求、この七項目になっております。このうち第二の額面株式と無額面株式との間の変更、第三の株式の譲渡方式の変更、第六の新株引き受け権の譲渡、第七の転換社債の転換請求、これは一昨年四十六国会に提案された事項と同じでございます。その後、一の株式の譲渡制限、四の議決権の不統一行使、五の新株発行の手続、この三点が新たにつけ加えられておりますが、この七点とも急に改正の問題が持ち上がったわけではなく、相当古くからいろいろの方面においていろいろの機会に論議されておりますので、私たちもその問題の所在というものは一応心得ておりました。
そこで、取りまとめの方式といたしましては、これらの問題点につきましていろいろの方々が議論されているもののうち、比較的公正と思われ、同時に重要な意味を有するものを取り上げ、さらにそれらの点につきまして、この改正案に取り入れられていないものにつきましては、はたして取り入れないでいいものか、また取り入れない場合に問題はどういうふうになるか、こういうような観点から問題を整理いたし、この改正案に取り上げられました問題につきましては、この改正案で問題点はすべて解消されているかどうか、あるいはさらに残っている点はないか、こういうような観点から問題を整理したのでございます。
整理の方法は、まず基礎的な問題、一般的な問題、それからいま申し上げました七つの項目に従って個別的な問題、便宜こういうふうに分けました。
以下、このプリントに従いましてこれを読み上げて、若干の御説明を申し上げたいと思います。
一 基本的問題
(一) 商法(会社法・以下同じ)をめぐる各種の問題、従ってまた、商法改正の要否ないしその必要性に関する論点は、商法が現在の社会経済事情にマッチするか、否かという点にある、そこで、
(1) 商法が資本金数百億円、株主数十万人という超大型会社から、資本金数十万円、株主十数人という弱小会社に至るまで、みな一様に適用されることになっているが、そこに非常な無理があり問題がある。この点を放置しておいてよいか。
(2) 一株五〇円という株式の券面額があまりに時代離れなものである。その結果、株主は、ぼう大な数にのぼり、株券は天文学的な数字になっている。これが株主総会、株式の名義書換、その他株式をめぐるあらゆる問題の禍根をなしている。
この点にメスを加えず他の論点について改正を行っても問題の解決にはならないといわれている。改正案にはこの点について何等かの考慮が払われているか。
(二) 政府提出にかかる改正案については、学界においては次の諸点に問題があるとしている。
(1) 改正案は、大会社又は証券業者の利益擁護の面にのみ力をそそぎ、一般の株主の利益の擁護に欠け、株主の声が反映されていない。
(2) 改正案は、いわば部分的な改正点の集積であって、改正の方向に一貫性が欠けるうらみがあり、商法の指導性が失われているとのそしりをまぬかれない。
これは申し上げるまでもなく今度の商法改正の一番根本をなすものは、何と申しましても株券が非常に多く、株式の名義書きかえその他のために、会社はほとんど株券の中に埋まって仕事をしているような関係であり、その経費も膨大なものに上っている。これを何とかしてほしいというのがそもそもの出発点であるように考えられますので、これにつきましては原案には何も触れておりませんが、これについてどういうふうな解決がはかられたか、その点が問題として残る、こういうふうな考えに基づくものであります。
第二の個別的な問題につきまして申し上げます。
二 個別的な問題
(一) 株式の譲渡制限について
(1) 昭和二五年における面法の改正は、資本と経営とを分離し、株式会社の民主化の達成という根本的立場を打出し、いかなる方法をもつてするも株式の譲渡をさまたげ制限を加えることは出来ないこととした。しかるに、今度の改正案の第一点は、定款をもつてする限り、いかなる会社においても、株式の譲渡制限を行うことが出来るものとしている。このように一八〇度の転廻を試みた理由は奈辺にあるか。必ずしも明かでないものがある。
(2) 譲渡制限復活の理由として、会社荒しや会社乗取り行為を防止することにより、会社の運営の安定に資するということがとなえられているが、これは反面においては無能な経営者、好ましからざる会社理事者を不当に擁護する結果になる虞れがあり問題が残りはしないか。
改正案には株式の譲渡制限に反対の株主については、その投下資本の回収について当該株主保護に関する規定を設けているのでそれで十分であるとしているが、その規定は甚だしく煩さであるばかりでなく、例えば、裁判所に売買価格の決定方の請求をするまでにすでに四十四日という長期間を要することになっていること等に徴してその利用価値が少く、結局株主の利益保護に欠けることになる懸念がある。
(3) 改正案第三四八条によれば、株式の譲渡制限を行うための定款変更のための株主総会は、総株主の過半数が出席し、かつ発行済株式の総数の三分の二以上の多数の賛成を必要とすることになっているが、株主数の非常に多い会社において数千人の株主が出席し、法の期待するような条件を充す株主総会をもつことができるかどうか疑問である。却って形式的な株主総会を助長することになる虞れがある。
(4) 株式の譲渡制限に踏み切ることのできる会社は、同族会社及び株主数の比較的少い中小会社に限られるものと思われる。しからば、このことを法文の中に明かにして改正法の適用対象を明らかにし、これによって業界に無用の混乱を招くことを避けるための配慮を示すべきではないか。
こういう点でございます。これもまた特に申し上げる必要もないものと思います。
(二) 額面株式と無額面株式との変更について商法の一部を改正する法律案参考資料(八七頁)によれば、現に無額面株式を発行している会社は三菱倉庫、住友金属、及び富士観光の三社に過ぎず、無額面株式制度はほとんど利用されていないのが実情である。なに故、この際額面株式を無額面株式とし、また無額面株式を額面株式とするため相互変更を認める必要があるのか、その理由と法律改正の緊急性はどこにあるか不明である。
これは提案理由に明らかになっております当面緊急を要する事項ということから見まして、はたしてこの点に手を加える必要があるか、こういう疑問でございます。
(三) 株式の譲渡方式について
(1) 改正案は株式の譲渡について、従来株式の譲渡は株券に裏書をするかまたは譲渡証書を作成し交付するという方法によってこれを行うことになっていたのを改め、株券の交付をもつて足りることとしている。これによれば、一面においては、株式譲渡が簡単になりその流通を助長することになり、実際上、株券の取扱いが簡単になるが、他面株券を盗難、紛失、その他の事故によってその所持を失つたものは、結局その権利を喪失してしまうことになる公算が大きい。これでは、株主の権利保護が薄くなるばかりでなく、株券を対象とする犯罪が多くなり、証券市場に混乱をもたらす虞れがある。記名株式制度を堅持する限り、この譲渡方式の変更の是非については疑問がある。
(2) 改正法のような譲渡方式に切り換えたとしても、例えば株主から会社に対して株券の紛失、盗難その他を事由とする株主名簿書換え停止の事故届が出されると、会社としては、問題の株券を持参して株主名簿の書換を求めてきた者があつても、容易くこれに応じることはできないという実情にあることからみて、右の改正は、真に会社の労力を省くことに役立つかどうか疑わしい。問題は株券そのものを少くするということにあるのではないか。
(3) 現在、業界における株式事務の混乱は、株券数が天文学的数字に上つているということにある。したがって、券価額の引上げ、端株整理による大型株券化または任意合算の表示株券制度の推進化というような地道な努力を行うことによつて問題の根本的解決を計り、これにより株券の絶対数を少くし、その上で届出印鑑制度の復活、その他株主の保護を計る方が急務ではないか。改正案による手段だけでは、株式事務の混乱を解決するには足りないではないか。
(4) この改正案が成立した場合における株主保護の方策として、株券の不発行とか株券の寄託の制度というようなものが設けられているが、それは少数の安定株主の保護手段であるのにとどまり、株式によって金融をはかり、利益を得ようとする一般株主の保護にはならず、かえつて、株式の流通を阻害し換金上不便をきたし、株券の再発行とか寄託株券の返還請求等のため会社の株式事務に煩雑を来す虞れがある。それ故この改正法については、法律の中にこれを適用する会社と適用しない会社とを会社の規模の大小その他によって区別するのが相当ではないか。
〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
この問題は冒頭にも申し上げましたように、今度の改正案の非常に大きな論点になると思います。一面においては株式の譲渡が簡単になると思いますが、他面においてはいろいろ事故の発生、その多発というようなものが考えられますので、はたして株式をめぐる各種の事務が簡単になるかどうか疑わしいものがあるのではないか、こういうことであります。
(四) 議決権の不統一行使
(1) 改正案は、原則として、すべての株主に対して議決権の不統一行使を認めているが、それは、議案に対する賛否の集計その他の面において、却つて株主総会の円滑な運営を阻害することになる虞れがあると考えられる。むしろ、信託、その他特殊の条件を充す株式に限り、議決権の不統一行使を認めることにしたほうが実際的ではないか。
(2) 改正案は、議決権の不統一行使を認めながら、代理人を一人に限ることとしているが、それで差し支えないか。理論的な矛盾はないか。
これも特に申し上げる必要もないことと存じます。
(五) 新株発行の手続について
(1) 新株発行に関し、現行法の下において一般に行われて来た証券業者によるいわゆる一括買取引受は、法第二八〇条ノ二第二項に基づくものではないとされていたが、最近の判例はこれを否定している。このように第二八〇条ノ二第二項の解釈として、いわゆる一括買取引受が認められるかどうかについては議論の存するところであるが、この改正案ではこの点についてどのような解決を図っているか必ずしも明らかではない、議論がもち越される虞れがある。
(2) 現行法第二八〇条ノ二第二項は「株主以外の者に新株の引受権を与える場合には、株主総会の議決を要すると同時に、株主以外の者に新株引受権を与えることを必要とする理由を明らかにしなければならない」旨を規定し、単に、株主の利益保護にとどまらず、会社の支配権纂奪防止の趣旨をも明らかにしているが、改正案は、単に「特に有利」とのみ規定し、その余の点については格別の考慮を払つていないように思われるが、それで足りるか。
(3) 改正法第二八〇条ノ二第二項に定める「特に有利な発行価格」とは、何を基準としていうのか、その概念は、はなはだ漠然としており、会社に対し無用の紛争を招く虞れがあるように思われるがそれでよいか。
この新株発行の手続につきましては、これまた非常に問題のあるところでございまして、先ほど申し上げましたように、この商法改正に関する法律案を条文の形において私たちが拝見したのは、この法律案が付託された先月二十八日のことでございますが、いま第一点に申しましたように、この法律案によってはたして十分解決されたかどうかということにつきまして、この問題点にまだ疑問が残ると指摘しておるわけです。今月四日付の「財経詳報」に、竹中正明という山一証券の企画第二課長が「間接的新株引受権と買取引受」という論文を発表しております。その最後に「しかし、買取引受における引受証券会社の法律上の地位は依然として不明確のままとなった。このため、発行価額が著しく不公正との理由により商法二八〇条の一一に基づく差額払込の責任を問われるのは引受証券会社か、それとも最終取得者かという問題が残るわけで、」というふうに同じような疑問を述べておられます。その点を補足させていただきます。
(六) 新株引受権の譲渡
(1) 新株引受権証書は、有価証券の一種として売買取引の対象となると思われるが、その印刷その他の体裁があまりに簡略なものになると、先年の新株申込証拠金領収証におけると同様に、それが多数偽造されて流通し、取引市場を混乱させる恐れが十分であると考えられるが、改正案にはその対策が示されていない。これをどうするかということについて問題が残る。
(2) 新株引受権証書の偽造は、これまでの経験に徴し、不可否のことと思われるが、この危険を犯してまで、これを発行することを是とするか、それとも他の方法によるのを是とするか、再考の要があると考えられる。
これも問題は明らかであると思われます。
(七) 転換社債の転換請求について
改正案は、株主名簿閉鎖期間内でも転換社債を株式に転換請求出来ることとしているが、このような規定をもたない現行法について、国内においては格別の異論がなかつたものといえよう。しかるに、これを改正案のように改めるのは如何なる理由に基ずき、かつどのような必要性と緊急性があるのか必ずしも明かでない。
これまた申し上げる必要もないと思います。
以上のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/6
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007・横山利秋
○横山委員 委員長の御手配によりまして、かなりわかりやすい問題点を提起していただいたことを感謝いたします。
若干の技術的な質問があるのでありますけれども、特に大臣においでを願っておりますので、議事進行上、緊急に二、三の質問をお許しを願いたいと思うのであります。多少、本問題にはずれるのでありますが、緊急の問題でありますから御了承を願います。
まず、先ほど理事会におきまして話題になりました二点がございます。
一つは、先般の本委員会で、私が大臣に、この商法といい、あるいは借地借家法といい、あるいは刑法といい、いろいろたくさん重要な法案があるのですから、これからはどうなるのですかと言ったら、執行官に関する法律一つで終わりである、こうおっしゃる。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
ところが、理事会で話題になりましたのは、執行官に関する法律がなかなか容易に出ないらしいという話題であります。本問題は、本委員会が附帯決議を付したことがございまして、特に現下の喫緊の問題としてすでに根本的改善を政府に要望いたしました。今回提案をされると予想されます執行官に関する法律につきましては、必ずしも根本的でないうらみがございまして、その点は与野党委員の分かれるところでありますけれども、それにしても、もうこれで、会期終了までに重要法案をかかえております本委員会としては、あまりにもおそくなることは秤赦できないところであります。聞くところによりますと、大蔵省との交渉に手間どっておるようでありますが、すみやかにそれが提出できるのかどうか。もしあまりおくれますと、三つも重要法案をかかえております関係上、これは審議未了になるおそれがある。いわんや本日の与党委員の発作によりますと、できるならば他の法案に優先して執行官に附する法律は通したほうがよかろうという意見までありますから、この点どういう心情になっておりますか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/7
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008・石井光次郎
○石井国務大臣 ただいま横山さんのお尋ねの点、私どもも一日も早く、いままでに出してしまいたかったのでございますが、まだ打ち合わせが政府部内で終わらないものでございまして、気はせいているわけでございますが、仰せのように期日もだんだん迫りますから、ぜひ出す以上は期間内に上げていただくようにしなければならない、できるだけ急いで早く出すものなら出すようにまとめよということを、実は先週末もそんな話をしたところでございます。急いで仕事をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/8
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009・横山利秋
○横山委員 先ほども申しましたように、与党委員からは、特に他の法案に先立ってこれだけは保証してもらいたいという御要望がございました。まことに政府鞭撻の与党委員としてはたいへんなお骨折りだと思うのであります。われわれとしても多少同感を催すところがございます。いつごろ一体提案ができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/9
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010・石井光次郎
○石井国務大臣 まだいつということは、はっきりしたことは申し上げられませんが、一日でも早くというつもりで実はせき立てているわけでございます。間に合わないようなときに出して、皆さん方にわあわあ騒ぎ立てるわけにもいきませんから……。一日も早く急ぎます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/10
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011・横山利秋
○横山委員 私どもとしても、せっかくの与党委員の発言でございますから、他の法案に優先してこの法案を審議することをお約束してもよろしゅうございますから、すみやかにひとつ出していただきたい。
第二番目の問題としましては、やはりこれも理事会で私どもから要望したことでありまして、それなら大臣に聞いてくれという話でございますから、こういうところで申し上げるのでありますが、先般来わが党委員から国士館の問題について政府側に対してただしているわけであります。その中で、大臣個人に関する問題が出ておりますが、問題がはっきりしておりません。といいますのは、国士館大学としては、石井光次郎氏はわが館の顧問であると称している、大臣は、そういうことを頼まれた覚えはないというだけにとどまっております。したがって、この種のこのような言い方は、国会においても、与党の政治家の中で、いろいろ、頼んだ覚えはない、頼まれた覚えはない、いや、わしのほうは頼んである、こういうままに推移しておりますことは、まことによくないことであります。いわんや法務大臣のお立場からいって社会の指弾の的になる、大学に頼まれた覚えがないにもかかわらず、引き続き向こうが詐称しておるのならば、これは法務大臣の性格からいっても、氏名詐称の訴えを起こしても理非曲直を明らかにしておきませんと、私は大臣に対してどういう意味で国士館の質問をするのか、その立場にも私は心配をするわけであります。したがいまして、この際、もしも頼まれた覚えがないというならば、厳重に法的手段に訴えても、国士館と法務大臣石井光次郎氏との関係を明確にするべき必要があると思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/11
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012・石井光次郎
○石井国務大臣 この問題は前にお答えしたことがあるのでありまして、私は頼まれた覚えはないのでございます。しかし、よくこのことが問題になるようでございますから、実は先週私の秘書を使いにやりまして、そういうことは頼まれた覚えもないのだし、君のほうでは頼んだつもりでおるかもしれぬが、ぼくとしては頼まれた覚えはないのだ。親しいので石井先生というつもりで、石井顧問と言うたり、石井相談役と言うたり、かってに敬語のような意味で、いままでぼくらの演説をしておる場合に使われているような意味で、軽く使っておったのだけれども、このごろ問題になっているから、私は顧問でない、顧問を引き受けていないから、お断わりするのじゃない、引き受けていなかったということをはっきりここであなたに申し上げておくと、向こうにはっきり言っておきました。向こうもそのとおり了承して帰ってきました。それだけはっきりさしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/12
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013・横山利秋
○横山委員 向こうが了承したということは、直ちにあらゆる国士館大学の役員の名前から削除をすることを約束されたのでございましょうか。もしもそれがていさいのいいことを言って継続し、今日以降も国士館大学の入学募集その他の中に石井光次郎氏の名前が使われておったならば、大臣はどういうふうになさるおつもりでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/13
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014・石井光次郎
○石井国務大臣 今後においてはそういう名前を使うはずはまずないと思いますが、使えばそのときにおいては私は処置をいたします。また間違っても使うことのないように、なお今後とも注意をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/14
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015・横山利秋
○横山委員 第三番目は、まことにこれも恐縮なことでございますが、緊急やむを得ず本日質問するのをお許し願いたいのです。実は先般本委員会で、同僚委員から新潟の選挙違反の問題について質問をいたしました。聞くところによりますと、新潟地検におきましては、何としてもこの問題については起訴にするべく主張をしておるそうでありますが、巷間伝うるところによりますと、かなり政治的な圧力がありまして、高等検察庁においてはこの問題について起訴にするか不起訴にするかということについて迷っておる、動揺しておると伝えられる。それがはね返って、新潟地検の若手検察陣におきましては、もしもこれが不起訴になるようなら辞職すると、職をかけておる。今日までこれほど努力したにかかわらず、政治的な圧力でそのようなことがあるならゆゆしいことであると言って、地元では、検察陣の内部はもとより、外部におきましても、新潟選挙違反を起訴にするか不起訴にするかについては非常な注目を払っておる模様であります。また、私は保留いたしておりますが、岐阜のあの問題につきましても、かなり最近の検察陣に対して、町でうわさされております政治的な圧力につきましては憂慮をいたしておる次第であります。かくのごとき状況が、新潟で、岐阜で、あるいは所々において、近づく来年の地方選挙並びに本年あるかもしれない衆議院選挙を前にいたしまして、検察に対しましてうわさのごとき状況があるといたしますならば、これは第二、第三の隠れたる指揮権の発動という問題が提起されることをたいへん憂慮をいたしておるのであります。その辺について大臣がどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/15
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016・石井光次郎
○石井国務大臣 この問題はたびたび質問を受け、たびたびお答えをしておるように、私の考えは一定不動でございます。私は検察当局の厳正な態度に全幅の信頼を樹いておりまして、これに対しまして私どもが政治的にとやかくのことを言うたり、また総理大臣の心持ちはこうであろうと言って私が伝えたのではないかというようなことの質問を受けたことがありましたが、そういうことを言われたこともない、したがってそういうことを伝えたこともございません。今後ともそういうことをすることは考えておりません。じいっと検察当局がきめてくるのを待っておる。早くきめろとかゆっくりやれとかということを言えば、そのことが心の上に影響してはならぬと思って、私はその問題はそのうちにきまるであろうと、検察当局におまかせしておるということは、ずっと伝えておるとおりのところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/16
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017・横山利秋
○横山委員 大臣が御存じで言っていらっしゃるのか、全然御存じなくてその自分の所信を披瀝していらっしゃるのか、私には容易にわかりませんけれども、町で、新潟市内なりあるいは高検内部なり新潟の地検内部でうわさされておりますことは、実に深刻なものであります。しかもその問題は、今明日あたりに高等検察庁が右にするか左にするかとうわさされているものである。しかも、まことしやかに某政党の某幹部とそれから某某とが集まって、政府部内の閣僚某氏も入ってそういうふうになった。そして知事が辞職をしたのだからもういいじゃないかということになって、知事の辞職それ自身についても協議の上である。かくほどそのうわさは波及をしておる。しかも、最もその中で信憑すべきものは、新潟地検が全力をあげてやって、昨年以来何回も何回も、もうこれで高検がきめるというのがずるずるおくれているということについてまで疑惑の眼をもって見られる。しかも、もしもこのようなことであるならば職を辞する、不起訴にするようなら職を辞する、そういう感覚が新潟地検の中で横溢しているという話なのであります。この点だけは私は信憑性を持って聞いておる。あとのことについては、それじゃいつどこでということについては私はさだかに知りませんけれども、町のうわさというものは、火のないところに煙は立たぬといいますが、まことに憂慮すべき雰囲気であります。大臣がもし御存じでなければ、そのような雰囲気があるということを十分に腹に据えて善処をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/17
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018・石井光次郎
○石井国務大臣 こういうものがきまるまでにはとかくのうわさが立つものでありまして、みんな自分に有利なようなうわさを立てたがるのであります。質問の中にも、何の何がしがこういうことを言うておったが、そういうことを中央から流したのかとか、いろいろなことをお聞きになりましたが、そういうことは私の全然知ったことでも何でもない、初めてそういう質問を受けてびっくりしたようなことであったわけであります。いろいろなことを言うのでありますが、どこにどういうものがあるか、私は全然関与しておりませんから知りません。そういうことはおそらく流言だと私は思うております。今後ともそういうことが習われないように、きちんとした筋によって判断を立て、そしてそれの決定をするのが検察庁の大事な仕事だと、私はそう思っております。その意味において私は検察庁を信頼をして、内々待っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/18
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019・大久保武雄
○大久保委員長 これより本案に対し、前回に引き続き質疑を行ないます。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/19
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020・横山利秋
○横山委員 では商法につきまして私は二、三点伺いたいのであります。
私はこの法務委員会と大蔵委員会と両方担当して仕事をしているのでありますが、大蔵委員会におきまして証券関係の問題を議論いたします立場と、法務委員会において商法という立場において議論いたします立場とは、自分自身で感覚にずいぶんズレを感ぜざるを得ないのであります。たとえば大臣、こういうことをお考えでございましょうか。商法によって、株主総会を行なえと書いてある。株主総会をやって、そして議事録をちゃんととって、株主総会の議事録として届け出ろと書いてある。ところが商法の根幹をなします株主総会が現実どのように行なわれておるか。中小企業で株主総会をほんとうにやっておるところがあるとお考えでありましょうか。また大企業でも、株主総会が五分でも早く、一分でも早く、一秒でも早く行なわれたらそれで万々歳、そして総会屋を使って拍手、賛成、異議なしということを連発させることによって、商法の所期しています株主総会というものは全く有名無実ではないか。それを商法の立場としては、現実に行なわれていない株主総会を図上に描いて、現実に十分な議論がされていない株主総会を、されているかのごとく絵図面を描いて、そしてわが委員会が一生懸命にこの法案の審議をする。まさに空中楼閣の審議をしいられるという錯覚に私はおちいるのであります。専門委員室から朗読していただきましたこの問題点につきましても、その現実問題に多少は触れておるのでありますが、どうしても私どもは何か意味のない質疑をここでやるような気がしてならぬのであります。大臣はその点どうお考えでございましょう。われわれのやる商法の審議と現実に町で行なわれておる、例としては株主総会を言うたのでありますが、株主総会とのその矛盾を、どういうふうにわれわれは考えたらいいのでありましょうか。もしも中小企業が株主総会をやっていない——それはあたりまえのことで、やっていないのですよ、やっていないのにやっているかのごとく見せかけて、そして税理士なり会計士が株主総会の議事録をつけてそれを届け出る。明らかにそれは商法違反です、文書偽造ですよ。文書偽造が公然として行なわれておる。行なわれていないのがおかしいのであります。中小企業では何もやってはおりはせぬ。白昼公然として文書偽造が行なわれておる。それにもかかわりませず私どもは、この空中楼閣のごとき株主総会が行なわれて、その株主総会はこうしなければいかぬ、ああしなければいかぬといって議論をすることの矛盾、私はまことにはかない議論をここでしなければならぬと思う。その点は大臣はどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/20
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021・石井光次郎
○石井国務大臣 株主総会はどういうことをやるかということがきめられたことによって、そのとおりのことは形の上には行なわれているに違いないと思うのでございます。その内容がおっしゃるようにいかにも形式的であって、ほとんど有名無実じゃないかという問題になりますると、それはさまざまだろうと思います。大いに論議されるところもあるし、そうでないところもあると思うのでございます。しかし、株式会社の大体の株主というものは、ふだんの場合においては、その経営者を信頼し、定時株主総会が開かれる前の業務の成績表みたいなものを見て、普通の成績であればそれに信頼を撒いて、そして自分たちはその配当なら配当を受けて、その会社の株を持つことに満足をしておるというのが大部分の姿ではないでしょうか。それで間違った場合、それをごまかすというような場合になりますと、これはもう違反行為でございまするから、どんな悪らつな手でも用いていろいろやる者もございましょう。それが普通に行なわれておるとは私は思わないのでございますが、総会の場合にいかにもいまおっしゃったように簡単にさっさと議案第一号賛成、第二号賛成というような式で論議もされないで済んでおるということは、普通の姿にはよくあることだと私思います。が、これはいま申したように、経営者を信頼し、その業績を信頼しておる一つの姿と見れば見えぬことはない、こういうふうに思うて、できるだけ法のほうでは株主を守っていく、その会社が健全な方向に経営をやっていくような規定を守らせていく、少しでもこれを直していく、ばかばかしいと思うてもやはり規定を置いておくという必要があるのじゃないか、大体論として私はそういうような感じを持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/21
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022・横山利秋
○横山委員 そうしますと、大臣は、まあ中小企業では商法に基づく株主総会が行なわれていないという現実、並びに行なわれていないにもかかわらず行なわれているかのごとく文書がつくられて届けられておる現実、そうして、その文書を公的なものとして受け取って、政府においてもそれを認めておるという現実、そういう現実は認識していらっしゃるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/22
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023・石井光次郎
○石井国務大臣 私は、形を整えるために形のとおりにはやっているだろうというふうに申しておるわけでございます。それがいかにも簡単にさっさっと片づけられるだろうとは思いますが、法の上の形は守っているのじゃないかと思うのでございます。大小にかかわらずそれを守っているのじゃないか、株主総会のきまりのものをごまかして、全然その規定に違反するような行動をとっておるのが原則じゃない、それが大部分だとは私は思ってないのでございますが、どういうことでございますか、それは私はあまり実例を知りませんけれども、規定は守っておる、少なくとも法の上においては守られておることが前提だ、こう私ども思うておるわけでございます。それが守られないようだったらそれは法の違反だと思っておるのでございますが、いかがなものでございましょう、逆に私が聞くのはおかしいのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/23
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024・横山利秋
○横山委員 私は、全部が全部株主総会をやっておらぬとは言いませんよ。私のような者でも、時には役員をやっておるところもありますから、少なくとも私の関する限りは、かっこうだけでも開け——開いて議論をし、そうしてやるようにつとめておりますけれども、まあ、とうふ屋株式会社八百屋株式会社あたりで専務がおむつを洗っているのに、専務早く来て株主総会に出ろ、そんなことはないですよ。私の申し上げておるのは、そういう現実認識をどう考えるかということです。中小企業では株主総会や役員会をやらぬのが普通である、普通であるけれどもやったように文書を偽造する、私はあえて偽造と言うのです。事実がないのです。それを偽通して届け出るじゃないか、では文書偽造だろう、そうして税理士や公認会計士がそういう文書偽造を白昼公然とやっておる、これに違反ならそれは罪だ、それは罪にきまっておる、罪にきまっておるけれども、それがもしも明るみに出たら明らかにこれは商法違反を犯しておるが、明るみに出なければそれでまかり通っている。だれが考えてもこういう意味の文書偽造は公然として行なわれておる。それをあなたは、今後はきちんと役員会、株主総会をやれ、やるように指導するとかりにおっしゃっても、事実上できぬのです。できぬところに問題がある。これはどういうことかというと、中小企業にこの商法の一言一句を実行しなければいかぬときめておるところに実は問題があるのじゃないかということを私は言いたいのです。これは多少専門的でありますから政府委員のどなたからでもけっこうでありますが、私の疑問に対してどういう見解を持っていらっしゃるかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/24
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025・新谷正夫
○新谷政府委員 現在の商法の株式会社に関します規定がすべての株式会社にそのまま適用されているかどうか、また現実の株式会社に対しまして、詳細な株式会社に関する規定がすべて適用されないのだとすれば、そこを何か考慮する余地はないかという御趣旨もあろうかと思うのであります。確かに漏れなくすべての株式会社が商法の規定どおりに総会を聞いておるかどうかということにつきましては、若干の疑問はあろうと思います。私どもも海法の規定のあります以上は、株式会社である以上は、商法の規定にのっとってやってもらうべきであるというふうに考えておるわけでございますけれども、お説のような小さな株式会社となりますと、必ずしもそれが行なわれていないかもしれないということは確かに言えると思うのでございます。先ほどの「問題点」にもございましたが、商法の全般の問題といたしまして、今後商法の株式会社というものをどうもっていくかという問題にこの問題はつながっていくわけでございます。小さな株式会社であれば、商法のこの詳細な規定を適用するのは妥当でないという御意見も確かにあるわけであります。そうかといって、株式会社を設立するに際しまして、資本金は小さくても、株式会社としての運用を行なうのであるということから、株式会社法の規定にのっとって株式会社を組織する場合も、これはあながち無理だとは言えないわけでございます。でき上がった株式会社が、その後の会社の運営について商法の規定をそのまま忠実に守っていくかどうかという次の問題になるわけであります。したがいまして、こういうこまかい規定をすべての株式会社について適用するのがいいかどうかということは、確かに検討の余地はあろうと思うのでございますけれども、これをすべて資本金なりそのほかの規模の小さいものについて、一律に一線を画して適用しないようにするということも非常に困難な問題でございます。またお話のような場合でございますれば、株式会社以外の会社に組織変更するということも考えられるわけでありますけれども、これも強制的にそれをやるというわけにもまいりません。法制審議会におきましても、この問題は非常に論議の中心になっておるところでございまして、今後の株式会社法のあり方を考えます場合、そういったことも十分考慮に置いて検討すべきであるという意見でございますけれども、そうは申しますものの、それではどの程度の規模のものまでは株式会社でいいかどうかということを一律に一線を画することもなかなかむずかしい問題でございます。こういったことにつきましては、政府といたしましては今後も十分検討を要する問題であるということは考えておりますけれども、ただいま直ちに資本金幾ら幾らは株式会社でいいけれども、そうでないものは株式会社は認めないというわけにもちょっとまいらないのが実情ではないか、こう思っておるわけであります。今後の問題としましては、確かに御意見のようなところも頭に置きまして慎重に検討を要すべきものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/25
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026・横山利秋
○横山委員 たくさんの問題があるのでありますが、きょうはひとつ新株発行の手続についてのみ限定をして質問をいたしたいと思うのです。
証券業者の一括買い取り引き受けは、証券局からお見えになりましたが、商法の何条のどこに根拠を置いて行なわれておるのか伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/26
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027・加治木俊道
○加治木説明員 証券界で言われております引き受け行為は、必ずしも商法の特定の規定に基づいて行なわれているものではないと私は考えております。なおこの点間違っておりましたら、法務省のほうから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/27
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028・横山利秋
○横山委員 そういう一括して買い取り引き受けをすることが商法に根拠を置かないとしたならば、それは違法ではないか、こういう感じがするのでありますが、法務省はどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/28
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029・新谷正夫
○新谷政府委員 いわゆる一括買い取り引き受けというものにつきましては、昭和二十五年の商法の改正の当時から、事実上の慣行と申しますか、経済界の一般的な傾向といたしましてだんだんとあらわれてきた問題のように私は思います。この買い取り引き受けと申しますのは、商法に根拠がないというわけではございません。御承知のように、現存、新株を発行いたしまして会社の資金を調達いたします場合に、原則といたしまして新株をその希望者に割り当てるわけでございます。新株の割り当てと株式の割り当てと申しますのは、これは一種の会社の業務執行でございまして、現行法におきましては取締役会に一任されております。これを何人に割り当てようと、これは取締役の完全な自由でございます。そこで、一般の株式を公募いたします際に、戦後非常にその株式の発行は量的にも多くなってまいりまして、発行会社がこれを一々一般の大衆に向かって株式の募集をするということは、非常に手数の上でも経費の上でも煩瑣になってきたということから、証券会社を通じまして公募の手続をとろうということになったのがそもそもの始まりのようでございます。買い取り引き受けの契約書を参考に差し上げてございますが、これをごらんになってもおわかりかと思いますが、公募の方法としてこの契約をいたしておるということを書いております。したがいまして、新株引き受け権を与えることになるかならないかということは、これは問題になったわけでございますけれども、そもそもこういう方式をとりまして新株を発行しなければならないということになりましたのは、公募の一つの形態といたしまして、経済界で考えついたものであろうというふうに理解しておるわけであります。その先で、これは一般の株式の割り当てではなくて、新株引き受け権を付与するものであるというところに争点が生まれてまいりましたために、それが訴訟の対象になったというふうな経緯でございますけれども、そもそもこれは新株引き受け権を与えるということから起きた問題ではなくて、一般の公募の形態としてそういう方法をとったというところに問題の発端があるように理解いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/29
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030・横山利秋
○横山委員 その発行会社が、証券業者に手続を依頼しただけであるから——こういう論拠のようでありますが、しかしながら、それは新株の引き受け権というものをワン・クッションそこを通らなければ公募ができない。そのワン・クッションというものは、もうまるっきり自由なトンネルであって、その証券業者に権利が一たん移ったというふうに見るべきが正当である。したがって、何年でありましたか、横浜地裁におきまして判決があって、その判決の趣旨は、明らかに新株引き受け権がその証券業者にあり、商法二百八十条ノ二の二によって違法な手続をしたからそれはいけない。明白になったことではありませんか。その点はどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/30
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031・新谷正夫
○新谷政府委員 そもそも事の起こりは、公募の一形態としてこの買い取り引き受けというものが始まったわけでございますが、実際には、一応証券会社が発行会社から一定の株式を買い取る形をとりまして、それを買い取り価額でそのまま一般の投資家のほうに売り渡すという形式をとっておるわけであります。したがいまして、証券会社は実は仲介的な機関にすぎないのでありまして、発行会社から買い受けた発行価額でそのままで一般の大衆にそれを売り渡す、証券会社はその間においてただ手数料だけをいただくという仕組みになっておるわけであります。したがいまして、一たん買い取ってそれを大衆に売り渡すということでございますから、一応証券会社が株主になるという形式にはなるわけであります。そういう意味におきまして、証券会社が株主になった上でそれをさらに一般の大衆に譲渡して、一般大衆から資金を獲得する、こういうかっこうになるわけであります。その際に、これは単なる新株の割り当てなのか、それとも新株引き受け権を証券会社に与えるものかというところが問題でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/31
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032・横山利秋
○横山委員 判決との関係を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/32
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033・新谷正夫
○新谷政府委員 判決の場合には、これは新株引き受け権を与えるものであるという認定になっております。したがいまして、当初実際界におきまして、新株引き受け権を与えるという趣旨でなくて出発したことではありますけれども、一応証券会社が引き受けた株式につきましては、必ずそれを発行会社から割り当てを受けて、そしてそれを一般の大衆に譲渡する義務が生ずるわけでございますので、そういう意味でやはり証券会社が受けますものは、一応発行会社から新株の引き受け権を付与されて、その上で、新株の発行を受けた上で大衆にこれを譲渡する、こういう法律構成になろうかと思うのでございます。ただこの新株引き受け権を証券会社が与えられるということは、面接に割り当てを受けるというのじゃなくて、割り当てを優先的に受ける権利を一応その買い取り引き受けの契約において定められたもの、こういうふうに理解すべきであるというのが判決の趣旨でございます。いろいろ分析して考えますと、そういうことにしませんと、証券会社としても責任を持って一般の投資家に株券を渡すことができませんので、これは理論構成としましては、判決のいうとおり、新株引き受け権を形式的には与えることになると思うのでございます。ただこれは一般の新株引き受け権の付与とは違いますことは、先ほど申し上げましたように、証券会社が発行価額でそれを引き受けまして、そのまま一般大衆に売り渡すわけであります。一般の新株引き受け権を付与されます場合には、これは割り当て前の段階としまして、その引き受け権の内容になっている範囲内においては、会社に申し出をすれば優先的にそれだけの株式の判り当てを受け得る権利でございまして、直接それを受けるものではございませんが、少なくともその割り当てを受けることを保証されておるのが新株引き受け権でございます。そういった保証をされたことによって、証券会社といたしましては、契約に基づく株式の割り当てを受けられます。その受けたものを一般大衆に売り渡す。売り渡す際にも、発行価額と同額で売るのでございます。したがいまして、証券会社がみずからその割り当てを受けた株式について、みずから自己が株主になるという意思ではないわけでありまして、一般大衆に売るために一応自分が責任を持って引き受けて、それを一般の投資家に売り渡す、こういう形式をとっておるわけでございます。したがいまして、本来ならば、新株の引き受け権を与えられますならば、その者が自分の好むところに従ってその範囲内で株式の割り当てを受けまして、みずから株主になるわけでございますけれども、この買い取り引き受けの場合には、証券会社がみずから株主になるという意思はないわけであります。それは契約にありますように、一般の投資家にそれを売ってもらうというところに目的がございますので、そういう意味で本来の新株引き受け権ではございませんけれども、法律上は一応新株引き受け権を付与したという形になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/33
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034・横山利秋
○横山委員 あなたがくどくどいうと、いかにも自分の自信のないことを白状しているようなものだと思うのです。あなたの言いたいことは、横山の言うように、新株引き受け権は証券会社に与えられた、理論構成はそうだ、けれども発行価額でそのまま横すべりするのだから問題はないと思う、こういうことに尽きるじゃありませんか。それを何べんも何べんもくどくど言われなくたっていいですよ。
そこで問題は、理論的にはあなたは新株の引き受け権を証券会社に与えたものだと自分も理解する、けれどもそれで問題はない、悪いことはしてないから問題はないという立場で、理論の問題と現実の問題とそっと切り離そうとしている。ぼくのまず最初に提起したのは、理論的問題です。商法第二百八十条ノ二の二「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルニハ」として、以下ずっと書いてある。これは実行されてないじゃありませんか。実行されてないから横浜地裁は、これは違法行為だとしたのです。その理論的な問題についてあなたは明確に答えなければいかぬじゃないか。引き受け権に二種あるのじゃないんですよ。引き受け権は発行価額で横すべりしようが発行価額以上で売ろうが問題じゃない。「新株ノ引受権ヲ与フルニハ」という商法の条項を実行してないから横浜地裁は違法とした。その点をあなたは、地裁の判決を何かあいまいにそらそうとしているのがいけない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/34
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035・新谷正夫
○新谷政府委員 買い取り引き受けの場合におきまして、新株引き受け権を与えることは適法であるかのごとくお受け取りになったのじゃないかと思いますけれども、私はそういう趣旨で申し上げたのじゃございません。新株引き受け権を与えることになるかならないかという御質問に対してそのままお答えしたつもりでございまして、ただその先の問題といたしまして、それでは商法二百八十条ノ二の第二項の規定に違反するではないかということになりますと、現在の法律解釈上は、株主総会の特別会議を経ないでそういうことをやるとしますれば、これは二百八十条ノ二の第二項の規定に違反するという裁判所の判決は正当だと思うのであります。ただ私が申し上げましたのはそこまでは言っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/35
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036・横山利秋
○横山委員 そこで加治木さんに伺いたいのですが、理論構成は明白になりました。あなたの、証券会社の一括買い取り引き受けは商法の規定によらないという感覚はいけませんよ。いまの質疑応答を聞いておわかりだと思うが、商法二百八十条ノ二の二によって行なわなければいかぬのですよ。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/36
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037・加治木俊道
○加治木説明員 先ほど私がお答えいたしましたのは、証券会社の引き受けという行為が、特別の商法の規定に基づいて行なわれているかというふうな御質問だったので、特別な規定に基づいてお引き受けしておるわけじゃないということを申し上げたわけでございます。これが違反しているかいないか、いま法務省当局から明確なお答えがありましたけれども、一応専門の方の御見解ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/37
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038・横山利秋
○横山委員 地裁の判決に出ています。読んでないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/38
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039・加治木俊道
○加治木説明員 承っておりますけれども、われわれは実質的な証券会社の機能というものに期待して、これが何らかの形で合理化されることを期待しておるわけであります。法律的な解釈については、私のほうは専門ではございませんので、もしあれが違反ということであれば、そのように証券会社の指導ということについても考慮いたさなければならぬと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/39
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040・横山利秋
○横山委員 まことに奇怪な話だと私は思う。かくほど大臣、大蔵省の——私も大蔵委員として向こうで議論する場合は、加治木さんの現実論にときどき傾斜してものを言うのですけれども、こればかりは地裁の判決が出ているのですからね。「株主以外ノ者二新株ノ引受権ヲ与フルニハ定款二之二関スル定アルトキト雖モ与フルコトヲ得ベキ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及最低発行価額ニ付第三百四十三条ニ足ムル決議アルコトヲ要ス此ノ場合二於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」となっている。「前項ノ場合ニ於ケル議案ノ要領ハ第二百三十二条ニ定ムル通知及公告ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス」となっている。この条項が行なわれないとして商法違反で訴えたのが、地裁でなるほどそうだといってその人に勝訴を与えた。そういうことを、大蔵省の担当者は、商法二百八十条ノ二の二があることは御存じで参ろうけれども、一括買い取り引き受けがそれに適合する条項であるかどうかについては知らなんだというか、関係ないと思っておったというか、そういう話で、いま法務省の専門家のお話を聞いて、それならそうします、——まことにたわいもない話じゃありませんか。しかし私は必ずしも加治木さんを責めているわけじゃないのですよ。現実にそうなんだという例証の一つとして言ったのです。この二百八十条ノ三の二は、これから増資がまた行なわれようとするやさきであり、しかもこれは発行会社と証券会社及び一般の公募の場合に多大の関係がある問題です。証券会社に一括買い取り引き受け権を与えますときには、これによって、ちゃんと株主総会において株主以外の者に新株引き受け権を与えることを要する理由を開示することになっておる。開示しないでやったんではいかぬことになっておる。もちろん、それは現実に行なわれていないということなんです。二の三は、通知及び公告はしておるかもしれぬけれども、ここで理論上明白になったのでありますから、もしも株主総会において理由を開示しなかったということで争えば、地裁の判決がある限りみんな勝てるんですよ。みんながそういうことを要求して裁判を起こしたら、増資はこれから一体どうなっていくか、事ほどさように問題があると思う。この点についてひとつ法務大臣の御判断を願いたい。大蔵省と法務省の意見の相違について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/40
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041・新谷正夫
○新谷政府委員 私からお答え申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、買い取り引き受けというものについての相違は、先ほど申し上げましたように、経済界におきましては、二百八十条ノ二の第二項の規定というものがあることは、十分承知しておったと思うのでございますけれども、株券の発行が非常に大量にわたるということ、また投資家が非常に多岐にわたるということから、発行会社のみではさばき切れないというので、証券会社を通じてこういう形式を考え出したわけでございます。その当時は、当事者におきましては、二百八十条ノ二の規定に抵触するということは考えていなかったのが実情らしいのでございます。それは、私が最初申し上げましたように、買い取り引き受けの契約書を見ましても、公募の形態としてこういう契約をするんだということをはっきりうたっているわけでございます。したがいまして、そのことから申しましても、二百八十条ノ二の規定に抵触するかどうかということは意識がなかったというのが実態であろうと思うんです。ところが法律的に分析してみますと、先ほど申し上げましたように、新株引き受け権を与えられなければ、証券会社としてはその契約を履行できないという法律的な説明になるわけでございます。そこで二百八十条ノ二というものが一応問題の基底になるということは、確かに横山委員のおっしゃるとおりでございます。現在の解釈としましては、いま申し上げますように、横浜地裁の判決を発端にいたしまして、買い取り引き受けなるものは、二百八十条ノ二の第二項の規定に違反をする、株主総会の決議を経ないでやっておるのであるから違反するという結論に、裁判所の判決は一応なっておる。その後昭和四十年の十月八日に、最高裁判所の第二小法廷で判決がございました。これは直接、ただいまの二百八十条ノ二の第二項の点には触れておりませんが、これに抵触をしておるという前提に立ちまして、その後発行された株券は有効かどうかという点についての判断はいたしております。これは株主総会の決議を経ないでやったのでございますから、一応それは違法ではあるけれども、それは会社の内部の意思決定にすぎないのである、取締役会が株券を発行する、そのための意思決定を株主総会が性別決議の方式でやるのだ、こういうふうに最高裁判所は判断いたしまして、その意思決定を欠いたからといって、内部的なものでございますから、外部に対して株券を発行してしまいますと、これは内部的な意思の決定がないということを理由にして株券の発行を無効にすることはできない、したがって、たとえ二百八十条ノ二の二項の規定に違反しましても、株券を発行しますとそれは有効になるというのが最高裁判所の判決でございます。そういう訴訟上の問題もいろいろ起きましたので、大蔵省のほうでは、その後この買い取り引き受けは行なわないように指導しておられるというのが現在の実情でございます。したがいまして、現在のままでございますと、株券の発行は有効ではありますけれども、その過程において違法な手続を踏まなければならなかったという点がございますので、そういう買い取り引き受けというものはしないように大蔵省当局としては指導しておられるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/41
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042・横山利秋
○横山委員 手元に最高裁の判決がありませんから、正確な表現をすることは困難だと思いますが、あなたの判断と私の最高裁の判決の判断とちょっと違うようでありまして、私は最高裁の判決はこういうふうに理解する。あとで出していただきたいと思うのですけれども。二百八十条ノ二の二に違反をするけれども、しかし時間もたってしまっているし、これが違法だといって株券を無効にすることによって生ずる事態というものを考えて判断をした、こういうふうに私は理解している。だから、最高裁の最終的な結論がそうだからといって、二百八十条ノ二の二の違法性が阻却されるということではなくて、やはりこれはこれで生きておる。だから、これに違反をしたことをするならば、明らかにそれは無効であるという立場に立たなければならぬと私は思う。この点はいいでしょうな。やってしまえばそれまでよ、内々だからいいんだ、こんなばかな理屈がありますか。この二百八十条ノ二の二に違反の行為があるならば、明らかにそれは違法であるという立場に立たなければ何の行政行為か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/42
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043・新谷正夫
○新谷政府委員 お手元に差し上げました商法の一部を改正する法律案参考資料の三四一ページに最南裁判所の判決を載せてございます。短いものでございますので、一応読んでみますと、「新株引受権を株主以外の者に付与することについては株主総会の特別決議を要するのであるが、既に取締役会の決定に基づき対外的に会社の代表権限を有する取締役が当該新株を発行したものであるかぎり、右第三者引受についての株主総会の特別決議がなされなかったことは、新株発行無効の原因となるものではないと解すべきである。けだし、新株の発行は、元来株式会社の組織に関するものではあるが、授権資本制度を採用する現行商法が新株発行の権限を取締役会に委ねており、ただ株主以外の者に新株引受権を与える場合には、株式の額面無額面の別、種類、数及び最低発行価額について株主総会の特別決議を要するに過ぎないものとしている点等にかんがみるときは、新株発行は、むしろ、会社の業務執行に準ずるものとして、取り扱っているものと解するのを相当とすべく、右株主総会の特別決議の要件も、取締役会の権限行使についての内部的要件であって、取締役会の決議に基づき代表権を有する取締役により既に発行された新株の効力については、会社内部の手続の欠缺を理由にその効力を否定するよりは右新株の取得者および会社債権者の保護等の外部取引の安全に重点を置いてこれを決するのが妥当であり、」云々と、こう申しております。この最高裁判所の判決が出ました後は、大蔵省のほうの指導によりまして、ただいま申し上げますように買い取り引き受けは行なわないようにしておるのが現在の実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/43
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044・横山利秋
○横山委員 わかりました。この判決の前のほうの文章の意味と、うしろのほうの文章、あなたが読まれた最後の文章の意味とは、ちょっとニュアンスが違いますね。あなたは前のほうをたてにとっておるが、私のほうはあとのほうをたてにとっておる。それで私は「会社内部の手続の欠缺を理由にその効力を否定するよりは右新株の取得者および会社債権者の保護等の外部取引の安全に重点を置いてこれを決するのが妥当であり、」こういう現実の認識論に結局は左右されざるを得なかったと判断をしておる。しかし、これはどういうふうに考えるにいたしましても、現在二百八十条ノ二の二がある以上はこれが尊重されなければうそなんです。こんなものは最高裁の判決があるからどうでもいい、やらなくてもいいという考えにはならないでしょう。
それから次に、私もしろうとですからこの際伺っておきたいのですが、証券業者の一括買い取り引き受けと、そうでない現在のやり方とは、どういうふうな違いがありますか、それを一ぺん説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/44
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045・加治木俊道
○加治木説明員 引き受けという形はいろいろ問題になっておりますけれども、いずれにしても証券会社と発行会社との間で株券を一定の価格で仕切るといいますか、こういう形が入るわけです。引き受けという用語はいろいろな方面で使われておりますけれども、募集の委託を受けて一括募集の事務に当たるという募集の取り扱いということがあります。これは発行会社と当該証券会社との間に株券の授受という形が行なわれておりません。発行会社にかわって募集を取り扱う、こういうことになりますから、この二百八十条ノ二の規定の抵触の問題は生じない、そういう契約形式になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/45
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046・横山利秋
○横山委員 そうしますと、その二つの違いは、前者のほうは全部そのトンネルをくぐって株券が動く、後者のほうはその証券会社オンリーでなくてほかもあるということ、それから株券が動かない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/46
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047・加治木俊道
○加治木説明員 募集の取り扱いをやるのは証券会社でないとできないことになっております。一業者でなくてけっこうです。大きい会社の場合は数業者でやる場合が多いようでございます。それから経済的な実質はどこが違うかといいますと、一括引き受けさせますと、現実にその金が会社にまるまる入ってくる。募集の取り扱いですから、そういう何らの責任を負いませんので、たとえば百万株発行して、募集を取り扱って五十万株しか応募がなくても、これは全く会社の責任になるわけです。そういう意味で経済的な実質からいうと、許されるならば一括買い取り引きうけあるいは残額引き受けという形が伴いますと、会社のほうとしては資金的に安定する、こういう経済的に実質的な違いがある。法律的には全く別のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/47
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048・横山利秋
○横山委員 いまの民事局長のお話によりますと、大蔵省は最近は一括買い取り引き受けはしないようにという意味のことを言われたのです。それが事実であるかどうか。それから一括買い取り引き受けするとしたならば、今後は明白に二百八十条ノ二の二で行なう、こうおっしゃったが、この辺は間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/48
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049・加治木俊道
○加治木説明員 そのように指導いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/49
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050・横山利秋
○横山委員 そこで、今度は証券会社の問題になるのですが、公募ということはどういう意味でありましょうか。不特定多数の人に公募の機会を与えることの意味、この公募というのは一括買い取り引き受けにおいても、それからもう一つの募集の場合においてももちろん公募でございますね。公募というのは、証券会社の社長以下役職員、担当者も公募の人の中に入るのですか入らないのですか。この点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/50
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051・加治木俊道
○加治木説明員 引き受けを行なった、あるいは募集の取り扱いを行なった、証券会社の役職員がそれに応募していいかどうかという質問でございましたが、これは個人として応募することは差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/51
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052・横山利秋
○横山委員 そこで問題になるのですが、おそらく私の承知するところにおいては、公募である以上、証券会社の社長から担当者に至るまでが自分が買っても何ら差しつかえないのだ、理論上そうだと思うのです。ところが、一括買い取り引き受けにしろ、あるいは募集にしろ、有利な新株発行、増資の場合に、証券会社が全部とは言わぬにしても、公募の中に自分も入っておるということで買ってしまうというようなものは——親引けということばがございます。私は専門語は知りませんが、証券協会にこれをやってやる、それから自分の会社の従業員、親戚にやる、そういうことは術語でどう言うのでありますか、そういう限界はどういうふうになっておりますか。どこまでやっていいか悪いかという限界。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/52
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053・加治木俊道
○加治木説明員 これは公募の場合に限定されておりませんけれども、今度の新証取法によりまして、証券会社の役職員に、一定の基準に該当するものは禁止規定がございます。その項の中にこういう規定があります。「証券会社の役員又は使用人が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の売買注文の動向その他職務上知りえた特別の情報に基づいて、又はもっぱら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買をする行為」、この行為に該当しますと、その場合は証取法によって行政制裁の対象になる。一般的に応募できるできないということでなくて、この禁止規定に該当するかどうか、具体的条件によって判定しなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/53
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054・横山利秋
○横山委員 「証券会社の役員又は使用人が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の売買注文の動向その他職務上知りえた特別の情報に基づいて、又はもっぱら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買をする行為」は禁止されておる。これは行なわれておると思いますが、どうですか。この証券会社の健全性の準則等に関する省令第一条の五の禁止行為は正確に行なわれておるかどうか。それでこれに違反をした場合には罰則はたいのですか、これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/54
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055・加治木俊道
○加治木説明員 それは行政的な禁止規定、したがって、違反すれば行政制裁の対象になるわけであります。罰則の規定はございません。募集の場合には一体それに該当するようなことがあるかということでございますが、一般的には、私はそういう事態は、公募の場合に限定して申しますれば、あり得ないと思います。引き受けをかりにやるとしました場合に、問題の行為ですからこれを前提にすることは適当でありませんが、かりにそうやりました場合にも、その引き受け価額というものが当然時価を基準にしてきめられておりますから、役職員が一般の応募者と同じ価額で応募する場合に、そのこと自体がその規定に抵触するようた行為になる、あるいはそういう結果になるような行為があり得るとは私は考えておりません。いわんや募集の取り扱いの場合は不特定多数の均一の価額でやるわけでありますから、特定の役職員がかりに応募いたしたといたしましても、その人間が特に一般の価額と違った価額で応募するということがあれば別でございますが、それはそういうことはないわけでございますので、公募の場合にそういう事態があり得るとは私は考えておりません。しかし絶無であるということをいま申し上げるほどのあれはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/55
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056・横山利秋
○横山委員 証券会社の役職員が、大なり小なり、株を買ったり売ったりしないのはほとんどないのじゃありませんか。これは公募の場合云々は別としまして、これは公募の場合と限定しておりませんから。一般的に禁止しておるわけです。この一条の五もまた空文になっているのじゃないですか。「自己の職務上の地位を利用して、」どこまでが職務上の地位であるかないか議論がありますけれども、こんな包括的な規定、それから「もっぱら投機的利益の追求を目的として」、いま株を売ったり買ったりするのがどこまでが投機といえるか投機といえないか、これもまた全く空文ではありませんか。私は一つ具体的な例証を実はあげるべく持っておるのでありますが、しかしあまり具体的な名前をあげるのもいかがかと思うのですけれども、少なくとも募集なり一括買い取り引き受けをする証券会社がやっておりますことは、あなたは御存じでございましょうね。自分の名前ないしは目立つようだったならば親戚知人、そういうところへずっとやってしまう。そうしてお返しに親引けだとかなんとかと言って、有利なものは渡す、そういうことが堂々と行なわれていることを加治木さん知らなくはありますまい。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/56
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057・加治木俊道
○加治木説明員 その規定は確かに具体的な基準、明確な基準というものがはっきりしていないじゃないかというお説のとおりでございますが、実情に応じて具体的な基準もおいおい明確にしていきたいと思っております。要は証券会社の役職員が自己の利益のために自己の属する会社の行なっている業務の対象となる株その他の有価証券の売買に携わるということは、事故のもとにもなりますし、また会社のためにもならない、いわんや投機的な取引に熱中するような役職員が証券会社の中にいるということは、会社のためのみならず、顧客に不慮の損失を与える可能性があるわけでございます。したがって、これは一般的な投資家保護の見地からいっても禁ずべきであるというのが趣旨であります。しかし、だからといって、およそ証券会社の役職員は棟を全然買っちゃならないということもこれまたどうかということ。それで、まだ私自信がありませんけれども、たとえば投機的取引という場合に、六カ月以上じっと持っている場合にはいいとか、あるいは一年以上、要するに長期に自己の財産の一部として株を保有する場合にはいい。ただし、それを非常に短期に回転しているということであれば投機的な取引ということで、たとえばそういう基準あるいは信用取引であればこれは投機的取引と認める、この辺は若干割り切った、機械的な具体的基準を設けなくてはならないと思いますが、まだ具体的にどういう規定を段けるかということは、はっきりした自信を持ってお答えする段階じゃございません。やや抽象的な規定ではありますが、形式的な規定になっておるようでございますけれども、行く行くは実情に応じて、実情に適した明確な規定を設けて実効あるような規定にしたい、かように考えております。規定の趣旨はそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/57
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058・横山利秋
○横山委員 これもまた、法務大臣おわかりのように有名無実で、全くこういう条文になっておる。
それから証券取引所の役職員はどういう制限がありますか、証券の売買について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/58
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059・加治木俊道
○加治木説明員 私ちょっと不勉強でございますが、取引所にはたしか全く同じような規定は、現在のところはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/59
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060・横山利秋
○横山委員 職務上知り得たことをやってもいい。しかしそれはあとで調べて御返事を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/60
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061・加治木俊道
○加治木説明員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/61
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062・横山利秋
○横山委員 この二百八十条ノ二の改正で、今度は「株主以外ノ者ニ対シ特に有利ナル発行価額ヲ以テ」という「特ニ有利」というのが二つ入ってまいりました。またまたこれは問題を起こすことばだと思うのですが、いかなる条件といいますか、どういう必要性があって「特ニ有利」としたのか、また特に有利だというのはどのくらいが特に有利なのか、その点をひとつ正確にお答え——あまり長く言わないように、短く正確に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/62
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063・新谷正夫
○新谷政府委員 二百八十条ノ二の第二項の規定の改正の趣旨でございますが、これは新株引き受け権につきまして、現行法では、これを第三者に与える場合には株主総会の特別会議を必要とする、こう書いてございます。「特ニ有利」というのはこの規定の上にはあらわれておりません。しかし第三百八十条ノ三のただし書きをごらんになりますと、二百八十条ノ三の規定は、「株式ノ発行価額其ノ他発行ノ条件ハ発行毎ニ之ヲ均等ニ定ムルコトヲ要ス」という原則がございまして、ただし書きとしまして「新株ノ引受権ヲ有スル者ニ対シ有利ニ之ヲ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」こういう規定がございます。これは二百八十条ノ二の第二項の規定によりまして株主総会の特別決議を経て新株引き受け権を与えた場合であるから、これは株券を発行します際に有利に発行してもかまわないというふうに、二百八十条ノ二の第二項とこの二百八十条ノ三のただし書きが結びついてくるものでございます。単純に新株引き受け権を与えるだけの問題でございますれば、最初申し上げましたように株式の割り当てと同じでございます。むしろ株式の割り当てよりは弱いものでございます。新株の引き受け権というのは、その申し出によってその範囲内で割り当てを優先的にしますという権利でございますので、むしろ直接に会社に対しまして新株の割り当てを求めたほうが有利なわけでございます。しかし一応その前段階としまして、割り当てを受ける権利を与えるためにこの規定が置かれておるわけであります。これも株主保護のために、第三者に新株の引き受け権を与える場合には特別決議が必要であるということにしておりますが、二百八十条ノ三の規定によりまして、有利発行をする場合もあるということを関連づけて考えませんと、二百八十条ノ二の第二項の規定の趣旨がはっきりしないわけでございます。単純に引き受け権だけを与える場合でありますれば、割り当てと全く同じに考えていい筋合いのものであろうと思うのであります。
そこで、この二百八十条ノ二の第二項の規定をつらつら考えてみますと、有利発行の場合に株主を害することになりますので、その趣旨を明確にすべきではあるまいかというので、今回のように有利発行の場合に株主総会の特別決議を、要するというふうにいたしまして株主を保護しようとするわけでございます。ただ、ここで「特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ」と書いてご、ざいます。単純に有利な発行価額とは違って、「特ニ有利」と書いてありますところに実は意味があるわけでございます。現在の新株発行の実態を調べてみますと、発行いたしますことを決定いたします前日の株価を見まして、それから払い込み期日までの間が、早いもので一週間、長いものでは三週間ぐらい先に払い込み期日がまいります。そういたしますと、その払い込み期日の時点におけるその株の株価より高いものであっては困る。それ以下でなければ実際には払い込みができませんし、妥当でないわけでございます。その間の株価の変動ということを当然予想しなければなりません。そこでこの発行価額を決定いたします際に、その会社の株式数、またその株式の流通の度合い、市場の一般的傾向、その会社の株式の変動の状況、そういったもののもろもろの要素を考えまして発行価額というものをきめるようでございます。ただ、この発行価額をきめましても、実際にその払い込み期日までの間に株価の変動が生まれます。その変動の状況がどうなっておるかと申しますと、大体発行価額を決定いたします前日の株価と比べまして安くきまるのが普通でございますが、その場合でもその株式の状況を見ますと、払い込み期日までの間に一割ないし二割上下しておるのが普通のようでございます。そういたしますと、その程度のものは、これは株価の変動から考えましてもやむを得ないのではあるまいかということがいえるわけであります。したがいまして、二割というのは妥当かどうかわかりませんけれども、少なくとも一割から一割五分ぐらいの変動は当然予想されなければたらないものではあるまいか。そうなりますと、その程度の有利な発行価額をきめることは、これは一般の株価の、合理的に決定したという株価と比べまして、一割ないし一割五分ぐらいの上下は当然予期しなければなりませんので、それをこえて安く発行するということになりますと、これは「特ニ有利」ということに一般論としてはいえるのではあるまいかと考えております。それぞれの会社により、またその株式によりまして、一律に申し上げられる問題ではございませんので、非常にむずかしい問題でございます。けれども、ごく一般論として申し上げますならば、一割から一割五分ぐらいのところは許されるのではあるまいか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/63
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064・横山利秋
○横山委員 私はある弁護士からこういうことを聞いたのですが、裁判上で国会の法律制定の議事録というものを出す、それが裁判官の心証に相当影響がある、与野党の質問と政府の答弁というものは裁判の判決の上に相当影響がある、ということを聞きまして、いささか自分たちの質疑応答にも責任を痛感したわけでありますが、この辺のことは——いままでは現行法は「特ニ有利」ということばが二百八十条ノ二の中には入っていなかった、今度改正によって「特ニ有利」という条文を入れる、しかもその「特ニ有利」が、まあケース・バイ・ケースでやる、一般論からいうと一割ないし一割五分であるというあなたの答弁は、かなり将来の株式の発行についての紛争上に至大の影響を持つということをあなたは予見をしていま答弁をなさっておらぬと、非常にこれは問題がある。まああなたもそういうことを承知して言っていらっしゃると思うのだけれども、では聞きますけれども「特ニ有利ナル」というのはだれがきめるのかというと、取締役がきめるわけでしょう、全くその判断だけで、株主総会を開くか開かないかということが自由裁量にまかされる、改正法ではそうでしょう。「此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」、こうなるのだから、現行法ではこの「新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル」という理由だけでよろしいけれども、今度は特に有利でなければやらぬでもいいということになる。そうすると取締役の自由裁量に対して「特ニ有利」とは一体何だ、法律上、その株主総会を開くか開かぬかということが全く抽象的なあいまいな規定にすりかえられるということになるわけですね。したがって、その意味ではこの取締役に対して自由裁量権を与えることの是非論ということになるし、「特ニ有利」ということばの定義が、法律解釈の上であなたのおっしゃるようなあいまいなものであるとするならば、これは非常に問題を残す、こう考えられるのです。なぜ特に有利でない場合においてはこの理由の開示をしなくてもいいのか、なぜそうしなければならないのかという積極的な理由があるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/64
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065・新谷正夫
○新谷政府委員 通常の株価の変動くらいのことでありますれば、これは一般の場合にそれを問題にするということは少し無理ではあるまいかということが言えるわけであります。そういう状況下にあります場合には、取締役会といたしましては、現存の商法上新株の発行権限を与えられておるのでありますから、特に株主にとってそれが不利益になるとかどうとかいうことを問題にする必要はないのであろうと思うわけであります。ただしかし、いま申し上げるように三割とか、四割とか、特に安い価額で新株を発行いたします際には、一般の場合、合理的にきめられる発行価額に比べまして、特別に安くなるわけでありますから、これは取締役会だけの専権にゆだねるということは株主保護の見地から適当でない、そういう意味で、取締役会でこれをきめます際に、株主総会の特別決議にかからしめるということにいたしたわけであります。
なおこれは、取締役会がこれをきめるにしましても、株式会社が重要な新株の発行をする手続をとります際に、専門家が、先ほど申し上げましたようなもろもろの要件につきまして慎重に検討いたしまして、合理的にその発行価額というものをきめてまいっておるはずであります。したがいまして、責任は取締役会にありますけれども、そこまでに至ります過程におきましては、会社の内部で慎重に合理的なその発行価額をきめることになると私は確信しております。
なお、ただいま横山委員の御懸念になりますように、取締役会に全く一任してしまう、特に有利な発行価額であるかないかということは取締役会できめる、あとは、これが有利な発行価額でないということになれば取締役会の自由にやれるということは危険じゃないかというふうな御意見じゃないかと思いますが、実はそういう点も考慮いたしまして、今回の改正法案は、二百八十条ノ三ノ二という規定を特に新設いたしまして、「会社ハ払込期日ノ二週間前二新株ノ額面無額面ノ別、種類、数、発行価額、払込朝日及募集ノ方法ヲ公告シ又ハ株主ニ通知スルコトヲ要ス」、こういうふうにいたしまして、株主にこういう新株の発行が行なわれることを知らしめますと同時に、これが「特ニ有利ナル発行価額」ということで株主総会の決議を経る場合はよろしいわけでありますが、そうでない場合、言いかえますと、「特ニ有利ナル発行価額」であるにかかわらず、一般的に有利な発行価額の程度である、こういうふうに取締役会が考えまして、株主総会の決議は要らないというふうな措置をとりました場合には、ただいまの二百八十条ノ三ノ二の規定によりまして株主がその新株発行の差しとめの機会を与えられるわけであります。こういうふうにいたしまして、完全に取締役会の専権によって自由自在になるというふうなことになりませんように、株主保護のことも考えまして新しい規定を置いて慎重にその発行ができるようにしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/65
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066・横山利秋
○横山委員 なるほど二百八十条ノ三ノ二は入りました。しかし、一面二百八十条ノ十で「会社が法令若ハ定款ニ違反シ又ハ著シク不公正ナル方法若ハ価額ニ依リテ株式ヲ発行シ之ニ因リ株主が不利益ヲ受クル虞アル場合ニ於テハ其ノ株主ハ会社ニ対シ其ノ発行ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」とあります。この条項、現行法は会社の明白な間違いについて事前予防の意味があった。その現行法から「若ハ価額」をとってしまったこと、そして改正二百八十条ノ二で特に「有利」という文字を入れたこと、これらは明らかに株主の権利を少なくして取締役会の権限を強化したところに意味があると思うのです。私は、今回の改正法一般を通じてみまして、株主の利益を非常に過小評価して、取締役会なりあるいは会社の理事者の権利を強めるという考え方がこの府法改正案の中に貫かれておると思う。
それからもう一つは、先ほど引用なさった法律案の参考資料を見ましても、特に緊急な改正にとどめた、こうおっしゃるのだが、特に緊急というのは一体だれが緊急だと称したのかといいますと、この目次を見ましても、東京商工会議所、経済団体連合会、関西経済連合会、日本証券業協会連合会、全国株式懇話会連合会等々、まるきり大企業や証券会社の利益代表の意見だけを緊急とし、かるがゆえに、会社の理事者の権利、証券会社の利益だけが緊急とされておる。一般大衆投資家の利益が何ら保護されていない。こういう考えが賃かれておると私はまことに考えざるを得ない。これは意見でありますから、そちらの返事を聞こうとは思いませんが、私どもの強く感じておる点であります。
先ほどお伺いいたしましたが、証券取引所の役職員についての株の売買についての制限はどうなっておりますか。おわかりになりましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/66
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067・加治木俊道
○加治木説明員 ただいま調べましたところ、特にそういう趣旨の明確な規定はないようでございます。ただ証券会社につきましては、新たに新証取法に基づいてああいう省令で規制するような法律改正になりましたので、あなたのおっしゃるとおりでありますれば、必ずしも明確でないということでございますが、精神的な規定にしましてもああいう規定ができたのでありますが、これは指導上は前々からやっております。したがいまして、登記所についても指導上は全く同一の方針で臨んでおりますが、内規その他によって、もしほんとうの規定を補充すること等によって明確にしたほうがよいということでありますれば考えてみたいと思います。現在のところは全く同一の趣旨の明確な規定はないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/67
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068・横山利秋
○横山委員 まことにこれは驚いたことを聞くのでありまして、私は何かあるだろう。証券取引所というものは大蔵省の監督下にはあるけれども、非常に自主的な無償をされるものというふうに社会も期待し、そして公正な第三者的立場を維持しなければならぬものとして、私どもは大蔵委員会において、なるべくひとつ業界代表の取り締まり的性格から第三者的性格を強くするようにきつく言っておるのであります。言い始めてからこれはもう何年になるか、そのたびに言っておるのでありますが、証券会社に対しては抽象的なことばであろうと政令であろうとにかかわらず、証券取引所の役職員の職務上知り得た機密、あるいは投機的な取引をしてはいかぬということの一片の文章もないということは驚き入ったことだと私は思うのです。
先ほど私が引用いたしました親引けというのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/68
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069・加治木俊道
○加治木説明員 親引けということばは、シ団等が結成されておりまして、特にシ団の引き受け、たとえば国債の場合を例にとりますと、シンジケート団がいま結成されております。現在国債については親引け制度は認められておりませんが、特に大口の取引先に対してシ団のメンバーを——シ団からの引き取りになるのですけれども、特別に一定の条件のもとで引き取らせる、これを親引けと言っておるようでございます。株式の公募の場合にこういう親引け制度が行なわれておるということは私は実は承知いたしておりません。実は公募の場合は非常に例が少ないのであります。社債あるいは国債の場合以外に親引け制度があるかどうか、私ちょっと不勉強で承知いたしておりませんが、そういうことを、言うようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/69
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070・横山利秋
○横山委員 どなたか親引けについてもう少し具体的説明をしてくださる方はございませんか。専門員の中にもございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/70
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071・加治木俊道
○加治木説明員 これは法律的な概念ではないようでございますので、実際の内容を帰りましてもう少し調べまして後ほど申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/71
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072・横山利秋
○横山委員 それでは次の機会に親引けの実情をひとつなるべく詳しくお伺いいたしたい。
それから聞くところによりますと、法務省からあとで調査の際に聞いてほしいのですが、親引けと称して証券業協会に優先的に提供しておる実情を法務省から照会をしたけれども、正確な回答がなかったということをどこかで、この辺で見た記憶があるのですが、法務省ではそういうことを大蔵省に照会をされた記憶はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/72
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073・新谷正夫
○新谷政府委員 かつてこの商法改正をいたします作業のさなかに、各方面にいろいろな資料を求めました際に、発行会社の指定によって割り当てをした例があるのかないのか、発行会社の指定によりまして割り当てをするというふうなことがあるかないかということを照会したことがございます。おそらくそれがただいまの御質問に関係してくるものではあるまいかと思うのでございますけれども、これについては、回答は例がないという回答があったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/73
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074・横山利秋
○横山委員 私の見たのはそれではなかったような気がするのです。例がないのではなくて正確な回答がなかったというふうに私は何かで見ておるわけです。
時間もまいりましたので、この新株発行の手続その他についてまだ質問がありますけれども、特にきょう私が指摘をしたいと思いましたのは、二百八十条ノ二を中心にいたしまして事実上二百八十条ノ二が空文化しておること、それから証券会社及び証券取引所の役職員の恥部と申しますか、その問題についてこの際剔抉をする必要があるということ、それから特に「有利」ということばが先ほど御説明を受けましたけれども、まだどうしても納得ができないと思われること。どうもこの法案の趣旨が証券会社並びに大企業中心であって、
一般大衆投資家の利益を、権益を縮小しているおそれがあること等を中心に御意見を伺ったのでありますが、時間がございませんので、えらい長く大竹さんには恐縮でございましたが、一応きょうの私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/74
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075・大久保武雄
○大久保委員長 大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/75
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076・大竹太郎
○大竹委員 それでは前回に引き続きまして質問をいたしたいと思いますが、きょうはこの株式の譲渡の方式の点からひとつ御質問をやらせていただきたいと思います。
それでまず第一に、この譲渡の方式を変えるということの一番の大きな理由は、大量の株式の流通にかんがみ、譲渡の手続を合理化するということが言われておるわけでありますが、いまほど横山委員のほうからいろいろ取引所の問題その他について御質問がありましてわかったわけでありますが、私どもこの取引所における実際というものについては非常にうといのであります。聞くところによりますと株式は預けっぱなしにしておいて、ただ電話だけで動くというようなことで、取引所も非常に手数がかかれば、大きな会社になると、この株式の事務を取り扱っている人も非常な手数がかかるということを聞いておるわけでありますが、これらについてまず具体的に御説明をいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/76
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077・新谷正夫
○新谷政府委員 株式の譲渡方式を現行法の裏書きあるいは譲渡証吾によって行ないますことを改めまして、株券を交付することによって行なうということにいたそうとするわけでございます。確かにただいまおっしゃいますように大量の株式が証券市場で流通いたしております。その間におきまして、従来の譲渡方式によりますと、裏書きという形式を踏まなければなりませんために、非常な手数がかかっておるということも事実でございます。またそのために手数がかかるあまりに、記名、捺印を要する場合に、記名をしないでただ捺印のみでやっておるというふうな極端な例もあるわけでございます。しかもその捺印が、必ずしも会社に届けております判でなくてもよろしい、あり合わせの判でありましても差しつかえないわけでございまして、極端な場合には偽造をされた捺印が行なわれましても、善意の取得者に対する関係では、従来の株主が権利を失って善意の取得者が保護されるということになるわけであります。そのような実情を考えてみますと、現在の記名、捺印という形式を踏むことがはたして合理性があるのかどうか。問題はこのように裏書き制度を廃止いたしました際に、株券が盗難その他の事故にかかりました場合に、もとの株主はたちどころに権利を失ってしまうのではあるまいか。ただ譲渡契約と株券の交付というものがあれば権利が移転いたしますので、簡単な様式にいたしますと、そういった意味で株主の利益が害されることになるのではないかというところに御質問の中心はあるやに伺うわけであります。
一般の取引市場に転々いたしております株券は、ほとんど株主がみずから保管しておるわけではございませんで、これは実際は証券会社に預けてあるというのが実情のようであります。これについての保管の責任は株主にはないわけでありますが、一般の安定株主が自宅で保管しております際には、それはまさにこういう方式でいいかどうかということが問題になるわけであります。ただ、いまお話しのような、一般の株主がこれによって不利益を受けるのではあるまいかということを考えますと、特にこの譲渡方式を変えることによって生ずる不利益というものは直接には出てまいらない、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。問題は、先ほど申し上げたような事故がありました場合の措置であろうと思います。これは何も株券に限りません。公社債にいたしましても、あるいは小切手とか為替、あるいは商品券、あるいはさらに貴金属というふうなものにつきましても、それぞれの保管の責任を全うすることによってそういう事故から免れ得るわけでありまして、株券のみが特に盗難の対象になるということがこの改正によって生ずるということは、私どもは考えられないと思うのであります。かりに盗難事故という場合を考えてみましても、現に株券以上に厳重な扱いをされております預金通帳あるいは貯金通帳、そういったものでさえ盗難にかかりましていろいろ事故が起きておるわけでありまして、株券の譲渡方式を変えることによってこの盗難の件数が多くなるとかいうことは、ちょっとこの法律の改正によって生ずる問題として考えるのは適当であるまいというふうに考えておるわけであります。一般的に申しまして、一般の流通過程に置かれております株式につきましても、また安定株主の株式を譲渡するにつきましても、ただ譲渡方式を変えるということがそんな不都合な結果になるというふうには私どもは考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/77
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078・大竹太郎
○大竹委員 いまお話がありましたように、やはり一番問題になるのは、自分で株式を保管していたものが、極端な場合盗まれたというような場合が一番問題になると思うのでありますが、それならば一体、盗まれたとか、なくしたとかいう事故届けを、たとえば会社へ出した場合には、会社はそれの名義書きかえその他を断わることが今度の改正法律でできますか、できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/78
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079・新谷正夫
○新谷政府委員 株券盗難の事故届けが会社に出ますと、会社のほうでも名義書きかえに際してその点は十分調査いたしまして、株券を持ってきた人が正当に株券を取得したものでないということがわかりますれば、これは名義書きかえを拒否してよろしいわけであります。一応株券の占有者は適法の所持人と推定するということにいたしてございますが、これは推定でございまして、発行会社のほうでそうでないということがはっきりいたしますれば、これは名義書きかえに応じなくてもよろしいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/79
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080・大竹太郎
○大竹委員 それでまた小さい会社と大きな会社の問題になるわけでありますが、小さい会社に対しては譲渡の制限さえつけられるということになったわけであります。これはもちろん株式の盗難その他に対する保護という面ではないわけであります。しかしやはりこの株券というものは、普通の金や小切手とは根本的に違ったものだというふうに私は考えるのでありますが、たとえば定款でいままでの方式を譲渡方式にするというようなことをきめることはできますか、できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/80
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081・新谷正夫
○新谷政府委員 二百五条の規定の改正後におきましては、定款でそのような定めをいたしましても、これは効力を生じません。譲渡方式は、「株券ヲ交付スルコトヲ要ス」この規定によって運営されるわけであります。ただ、株券を譲渡する場合に、当事者の間で譲渡証書つくるということは事実上差しつかえないわけであります。甲から乙に株券を譲渡したという証明のために、一応契約書をつくっておくということは、これはむろん差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/81
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082・大竹太郎
○大竹委員 次にお伺いしたいのでありますが、会社に対する対抗要件としては、株主名簿に記載されることを今度の改正でも要すると思うのであります。やはり記名株式である以上は、その譲渡の場合においては、その株券には、株主名簿に記載されている現在の株式所有者の名前を書いて交付しなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/82
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083・新谷正夫
○新谷政府委員 裏書きを廃止いたしますので、現在のように、現在の株主が自分の名前を書いて判を押して渡すということはむろんいたしません。しかし、記名株券でございますと、株主の名前をそれに表示するのはこれは当然でございまして、新しい株主の名前をそこに表示するということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/83
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084・大竹太郎
○大竹委員 次に株券を転々させ始終動かすということなしに、いつまでも持っていたいという人のために特にいろいろ配慮してあるわけでありますが、これを見ますと、会社が自分の選択で株券を発行しないということで株主名簿に記載する、また株券を銀行または信託会社に寄託をするということになっておるのでありますが、これはどっちかといえば、私は株主の選択によってやるべきものだと思うのですが、この点についてどうしてこういう規定になったのか、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/84
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085・新谷正夫
○新谷政府委員 株券の所持を欲しない株主が会社にそのことを申し出ますと、会社のほうの選択によりまして、株券を発行しないということを株主名簿に記載してその株券を無効にいたしますか、それともその株券をそのまま銀行なり信託会社に寄託して保管の責任に任ずるという二つの方法をとったわけでございます。ただこの場合、発行会社といたしましてどちらの方法をとるかということは、それぞれの会社の都合もございましていろいろの事情がございましょうから、これは会社に一任する。ただ株主といたしましては、自分が株券を所持しないということだけでよろしいわけでございまして、会社にそのことを申し出て、あとの措置を会社にまかせるということにいたしたわけであります。ただしかし、株主といたしましては、株券を発行しない旨が株主名簿に記載されたのか、あるいは銀行に寄託されたのか、その辺の事情がわかりませんと株主としても不安でございます。そこでどういう措置をとったということを発行会社といたしましては株主に通知して、その辺の事情を明らかにしていくという形をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/85
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086・大竹太郎
○大竹委員 それで私は考えるのでありますが、これはこんなようなめんどうなことをしないで、株券は株券として発行させ、そしてその株券を自分が預かっていて、どこかにいったり何かして悪いからという株主のためにこういうものがあるんだから、その発行会社が責任を持って保管しておくということにするのが一番手っとり早いし、経済的でもあると私は思うのですが、そういうことはお考えにならなかったのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/86
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087・新谷正夫
○新谷政府委員 これは実は譲渡方式を改めますにつきまして、経済界から非常に強い要望があったわけでございますけれども、大竹委員が最初御心配になりましたような点もございますために、法制審議会といたしまして非常に慎重に検討いたしました結果、この不発行あるいは寄託の制度というものを考えまして、特にこの規定を設けまして株主の保護をはかろうというふうにいたしたわけでございます。もう少し手続を簡単にするなり、あるいは会社がみずから保管するなりということも考えられないことはないと思うのでございますけれども、事が株主の保護に関することでございますので、できるだけ間違いのないようにいたしますためには、やはり不発行にして無効にしてしまっておくか、それとも確実な銀行等にこれを寄託しておく、そして会社の手元に置かないというほうがよろしかろう、こういう結論になったのでございまして、確かに仰せのようにやや繁雑なきらいはないではございませんけれども、株主保護のためにはその程度の措置は必要だろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、不発行にするか、あるいは銀行、信託会社に寄託するか、これはどちらでもよろしいわけでございますが、会社が定款で特に定めますれば、どちらか一つの方法に限定するということもむろん差しつかえないというふうに解釈されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/87
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088・大竹太郎
○大竹委員 私この点については多少意見があるのでありまして、株券そのものも大事でありますけれども、株主とすれば、その会社がほんとうに信用できないような会社の株券を持っておること自身がおかしいのでありまして、その株券をその会社に預けられないというようなものの考え方は、私はどっちかといえばおかしいかと思うのであります。これは銀行や信託会社に預ければ相当その面の金もかかることで、費用の負担の問題もこまかく出てはいますからあれでありますが、こういうことはやはり何かの機会にもう一度私はお考えになっておいていただきたいと思うわけであります。
それで、よそへ寄託した場合でありますが、これはもちろん株券は発行会社が預かってよそへ寄託するのでありますから、株主と寄託された銀行または信託会社とは何ら法律関係は生じないのでありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/88
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089・新谷正夫
○新谷政府委員 株主としましては、発行会社に対しまして、単に自分は所持を欲しないからという申し出をするわけでございまして、それに応じて発行会社は自分の判断に従いまして、不発行にするか、あるいは発行会社の責任において銀行、信託会社に寄託しておくかということでございます。したがいまして、法律関係といたしましては、株主と寄託を受けた銀行なり信託会社との間には直接の法律関係はございません。したがいまして、株主は発行会社に対してのみ返還を求め得る、こういうことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/89
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090・大竹太郎
○大竹委員 次に議決権の不統一行使の問題について二、三お聞きしたいのでありますが、この逐条説明によりますと、不統一行使をさせないとかえって株主総会の円滑な運営を阻害する場合も生じ得るということが書いてあるわけであります。第一に、議決権の不統一行使は、いままででも許されるというような学説その他もたしかかなりあったやに聞いているのでありますが、この問題で争われたり、いわゆる総合の円滑な運営を阻害した例や判例は相当あるのですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/90
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091・新谷正夫
○新谷政府委員 特にこれが争われまして訴訟になったというふうな例は、そんなにないように承知しております。ただ古い事案、ただ一件だけたしか訴訟になりまして、不統一行使は許されないというふうに判決したものがあったと思います。しかし、現在の学説なりあるいは実際界の解釈としましては、議決権の性質上これは不統一行使を許されるべきものであるというふうな考え方がだんだん多くなっておるわけであります。実際の株式会社におきましてこれをどのように扱っておりますかということにつきましては、必ずしも明確ではございませんけれども、場合によりますと不統一行使は許さないという態度でやっておるところもございましょうし、また不統一行使も差しつかえないという前提で議決権の行使を認めるところもあるのじゃないかと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/91
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092・大竹太郎
○大竹委員 次に、やはりこの法律の中にありますが、信託その他他人のために株式を持っているという場合はもちろんはっきりしているんでありますが、「その他の場合」となっているのでありますが具体的にはどういうような場合を考えておられるのか、むしろこういう不統一行使というような、ある意味においては矛盾した面もあるわけですから、「その他の場合」というようなもの、そういう不明確な場合には不統一行使をさせないという、非常に限定した場合にしておいたほうがよろしいように考えるのですが、どういうようなことを考えておられるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/92
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093・新谷正夫
○新谷政府委員 二百三十九条の二の改正規定でございますが、その第二項に「株主が株式ノ信託ヲ引受ケタルコト其ノ他他人ノ為ニ株式ヲ有スルコトヲ理由トセザルトキ」云々と規定してございます。「其ノ他他人ノ為ニ株式ヲ有スルコト」という場合というのは、信託のほかにどういうことがあるかということでございますが、現在実例としてまさにこれがぴたりと入るという例は実はございませんけれども、信託を例示にあげまして、「其ノ他他人ノ為ニ株式ヲ有スルコトヲ理由トセザル」と、こういうことにしたわけであります。その信託以外に考えられますのは、消費寄託の場合があり得るだろうと考えます。これは現在まだ確定的なあれではございませんけれども、株式の集中決済をいたしますために振替決済制度というものが業界で考えられております。試験的に実施されておるように承知いたしております。これなどは信託ではなくてむしろ消費寄託であろうというふうに考えるわけであります。こういった例がだんだん将来経済界の発展に伴いまして出てくることも考えられますので、それに対処いたしますためにこういうことによりまして不統一行使を認める場合、認めない場合を規定していくべきであろう、こういうことで今回の処置をとったわけであります。
そこで、問題はいま御質問にございましたように、ある一定の場合にのみ限定すべきではないかという御意見でございます。限定することも一つの考え方としては確かに成り立つわけでありますが、ある特定の場合にのみ不統一行使を認める、不統一行使は差しつかえないというふうな規定にいたしますと、この限定した場合に該当したかどうかということ、これを正確に判断しなければならないと思います。もしもそういう場合に該当するとして不統一行使を認めましても、万一それがその事案に該当しないというふうなことになりますと、決議の有効、無効の問題が出てまいるわけであります。そうしますと、株主総会の決議が取り消されるかどうかというふうな問題もまたひいては発生するわけでございます。そこでどちらを原則にするかということになりますと、不統一行使というものを認めておいて、ただ会社のほうで明らかにこれに該当する、こういう事由に該当するから、これは不統一行使を認めない、認めるというふうにしたほうが実際的ではあるまいか。原則として不統一行使を認めることにいたしまして、ここに書いておきましたように、他人のために株式を有することを理由としないとき、こういうことが明白であれば、会社がそれを拒むことができるというようなやり方がむしろ実際に合うのではあるまいかということで、こういう規定にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/93
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094・大竹太郎
○大竹委員 その点何だか不明瞭の点があるのですが、たとえばよく実際にあるのは、いま役員は株を持っていなくてもいいような規定になっておりますけれども、株は何も持たぬけれども役員になるというようなことで、いわゆる他人の株を借りて何か株主になると同時に役員になるというものがいまも相当あると思うのです。そういうような場合は一体どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/94
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095・新谷正夫
○新谷政府委員 議決権を行使しますために他人の株を形式的に借りて議決権を行使するという場合だろうと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/95
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096・大竹太郎
○大竹委員 そうじゃないのです。たとえば、その会社の役員になる、けれども株は持っていない、だけれども、ぜひその人に役員になってもらいたい、だからほかの役員が他人名義の株をその人に貸してやって、株主の名義にして、そして役員なら役員にするという場合がいまも世間に相当あると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/96
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097・新谷正夫
○新谷政府委員 お説のような取締役になるために一定の株を持っていなければならないという場合に、形式的に甲という者が乙の株を譲り受けた形をとりまして、甲の名義になるという場合でございます。この場合も、その実質を考えなければならないのではないかと実は考えられます。と申しますのは、甲が乙から譲り受けまして、自分が株主でなければならない、そのために乙から譲り受けておるわけでございます。取締役の地位を去れば乙に返すのでございましょうけれども、少なくとも取締役であります間はみずから自分が株主であることを要件とするわけでございます。自分のためにそれは名義を書きかえておるのではあるまいかと考えられます。そういう場合にはこれに該当しないと思います。ただしかし、そうではなくて、形の上だけ一応甲の名義にしておるけれども、それはあくまで乙の議決権を行使するのだ、実質的には乙が株主としての利益を享受するのだけれども、形だけ自分が預かっておくという趣旨でございますと、他人のために株式を有することになるのであろう、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/97
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098・大竹太郎
○大竹委員 それではやはり問題になると思うのでありますが、これによりますと、総会の三日前に書面をもって議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならないということになる。それで一方では、正当な議決権を行使しないということになっておるのでありますが、これはやはり不統一行使をするほうで、法律的なことばでいえば疎明するとかあるいは証明するとかいうようなことで拒否されれば勢いそういうものを出すというふうに、実際問題とすればなるかもしれませんが、そこはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/98
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099・新谷正夫
○新谷政府委員 不統一行使をしようといたしますときには、その旨と理由を三日前に書面で通知することを要すということが書いてございますので、株主はその旨を通知すればよろしいわけであります。はたしてこれが第二項の規定によって拒み得るものかどうかということは、これは会社が判断するわけでございます。形式上はその理由を書いてございましても、実質的にそれがそういう理由を持っていないということが明白である場合、あるいはその理由そのものが他人のために株式を有しておるということになっていない場合、これが明白な場合には、これは会社のほうで議決権の不統一行使を拒否できる、こういうことにいたしたのでございます。株主のほうでそれを証明するというのではなくて、むしろ会社のほうでそれを確かめて、議決権の不統一行使を認めるか認めないかを会社がきめる、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/99
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100・大竹太郎
○大竹委員 そうすると、さっきの議論にまた戻るわけですが、総会の円滑な運営のためにこういうものを認めるということがこの規定の趣旨とされていながら、もう現在不統一行使を許すか許さないかということで議論になって、ますますいまの最初の趣旨と相反することになるのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/100
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101・新谷正夫
○新谷政府委員 確かに、不統一行使を許すべき事案であるかどうかということが問題になりました場合には、仰せのように、その意味においては株主総会の運営を円滑に進行することができないということも言えるかと思いますけれども、もしも会社のほうではっきりしたそういう事情が把握できませんと、これを拒否することができませんので、議決権の不統一行使を認めざるを得ないということになるわけでございます。またかりにこれを拒否いたしましても、株主としては不統一行使を許されないというだけで、従来一般に行なわれておりますように、賛成か反対か、どちらかの議決権を行使することは、むろんこれは差しつかえございませんので、そのことによって株式会社の総会の運営が円滑を欠くようになるということは言えないのじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/101
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102・大竹太郎
○大竹委員 次に、この間の株主の数の問題とやはり関連してお聞きしておきたいのでありますが、不統一行使を通知する場合には、少なくとも不統一行使の内容と申しますか、名前まではあげる必要はないですけれども、たとえば三つに分かれておるのなら、議決権の数も、百、二百、三百と内容が分かれていたら、その内容をあらかじめ会社へ通知しておく必要があるのじゃないか。それでなければ、不統一行使さえ通知しておけば、その内容はいわゆる出てきた人間の自由に、たとえば百のものなら一と九十九に分けられれば、幾様にでも分けられるというのは、やはり私は総会荒らしとか、そういうものがそこに介在する余地が残っているのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/102
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103・新谷正夫
○新谷政府委員 不統一行使と申しましても、議案に対しまして同一人が、何株については賛成、何株については反対という議決権の行使をいたすわけでございます。したがいまして、その形式的な株主の背後におります実質的な株主と申しますか、実質上株主としての利益を受ける者の意向に従ってやります場合に、そういった人が三人あるいは十五人とおりますと、その集積が賛成として何某、反対として付票ということになるわけでございます。ただこれはそのときどきによって動く可能性もございます。したがいまして、書面によって通知いたしました後に、実質上株主として利益を受ける者の意向が反対に変わったというような場合もあり得ることを予期しなければなりません。そういう意味から申しまして、三日前に通知いたします前に確定的に何票、何票ということをきめさせることは、はたして結果的に当を得たことになるかどうかということに多少疑問があるわけでございます。そこはある程度ゆとりを持たしてもいいのではなかろうか。何票を賛成にし、何票を反対にするということは、これは本来は形式上の株主の専権と申しますか、株主がきめたらよろしいことでございますので、背後にある実質上の利益を受ける者の意向を十分尊重してやることでございますけれども、それが必ず三日前に確定していなければならないということになると多少窮屈になるのではないか、そういうことで、そこまで内容を明確にして通知する必要はない、こういうふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/103
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104・大竹太郎
○大竹委員 いまのお答えは、私の質問が悪かったのかどうか、ちょっと私の質問に答えていないのです。私の言っているのは、たとえば背後に三人おった、そして三人とも百票ずつでもよろしいですが、三日前に賛否をきめるということは、そういう場合もあるかもしれませんけれども、むしろそこへ行ってからきまる問題である。ただそれならどう組み合わせても百票ずつの配合にしかならないわけです。私は、それを通知しておかなければ、その百票もみな分けて行使できることになるのじゃないか、それを心配しているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/104
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105・新谷正夫
○新谷政府委員 これは実質上の株主たるべき者の指図に従ってやるわけでございますので、それに違反しますと、今度はその当事者の間の問題になるわけでございます。したがいまして、形式上の株主が議決権をどのように行使するかということは、むろんその背後にある実質上の株主の指図に忠実に従うべきものでございますので、それに反して議決権を行使すべきものではないと考えます。ただ百乗ずつ持っておる実質上の株主がおります際に、三日前にそれがはたして、それぞれ百票全部賛成に回るのか、あるいは全部反対に回るか、あるいは二対一になるか、一対二になるか、そういうことは確定いたしかねることになろうと思います。そういう意味で、三日前にこれを決定することはやや無理があるのじゃなかろうか、こう申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/105
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106・大竹太郎
○大竹委員 そうじゃないのでして、とにかく百票全部賛成か反対になればいいのですけれども、あらかじめ背後にある株主の各人が持っておる議決権というものを明らかにしておかないと、いま、代理人がどう行使するかはそれは代理人とその背後にある人の関係だとおっしゃるけれども、それなら背後にある人間が、自分の中のものをそれに指図して適当に動かされるということになれば、それなら一人の株主はそういうことはできないのに、その背後にある人間だけができるということになれば、それは不都合じゃないか、こう私は言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/106
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107・新谷正夫
○新谷政府委員 株主名簿に記載されております株主、その株主の有する株式数に応じて議決権を行使するわけでございます。したがいまして、形式上の株主甲というものがおりますと、甲の株式として三百株が名簿に書いてございます。その背後におります乙丙丁という者がそれぞれ百株持っておる。この場合に甲が議決権を行使いたしますのは、名簿に登録されておる三百株について議決権を行使するわけでございます。その範囲内で議決権が行使されるわけであります。したがいまして、この議決権を統一行使するかどうかということを通知いたしますときには、その三百株をどうするかという問題になるわけでございまして、これは議決権を行使します形式上の株主と背後にある実質上の株主との関係によってきまるわけでございます。ただその間、三日の間に一対二が二対一になる、逆になるということもあり得ますけれども、要するに総ワクとしましては、名簿に記載されております甲の持っておるという形式上の株式数によって議決権を行使する、こういうことでございますので、御懸念のようなことは心配ないのではあるまいかという感じが私いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/107
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108・大竹太郎
○大竹委員 どうも私の質問がおわかりにならぬような気がするのです。たとえば、背後に三人おった。そして百株ずつ持っておったとしましょう。そして議決権を総会において行使する場合に、一つのものについて賛否をやる場合に、三百株のうち二百株が反対、百株が賛成、そういうように行使できるというわけなんでしょう。この規定はその場合に、一人が百ずつ持っているのだということをあらかじめはっきりしておかないと、最初の百のものを五十だけ向こうへつけて二百五十を賛成のほうへつけ、そして五十だけ反対ということをしたとてわからぬじゃないですか。出席している人は、自分が一人で出席していれば不統一行使はできませんね。それなら背後にいる人が不統一行使をしたと同じ結果になるんじゃないですか、私はそれを心配するのです。あらかじめ百ずつにしておけば、その百を分けては不統一行使できませんよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/108
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109・新谷正夫
○新谷政府委員 それは背後におります三人の者の持つ株というものは、会社に対して、自分はこういう株数の株を持っておるということが言える筋合いのものじゃないわけでございます。したがいまして、あくまでも会社と議決権を行使をします株主との関係は、株主名簿に書いてある三百株ということになるわけでございます。しかし事実上百株ずつ分かれておるのだから、その百株は乙が百株、丙が百株、丁が百株というふうにあらかじめ申し出させるべきじゃないか、こういう御意見だと思いますが、それは申し出しましても、法律的には乙、丙、丁が百株ずつの株主というわけにはまいりませんで、法律上それによって拘束されるとかなんとかいう問題は起きないわけでございます。事実上それを通知しましても、それは決して違法だという筋のものではございませんけれども、法律的にそこを要求するというのは少し行き過ぎじゃあるまいか。これは事実上通知することは一向かまいません。実は、乙のために百株、丙のために百株、丁のために百株行使するのだが、これが一対二の比例になって議決権を行使するということを申し出ることはかまわないと思いますけれども、必ずそれを分けておかなければならないというのは法律的にはどうであろうかという感じがいたすわけでございます。事実上それを申し出ることはむろん差しつかえございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/109
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110・大竹太郎
○大竹委員 申し出ることが差しつかえあるとかないとかいうことではない。もしそういうことを申し出るようにしておかないと、いま私が申し上げたような不都合が起こるのじゃないか、こう言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/110
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111・新谷正夫
○新谷政府委員 大竹委員のおっしゃるのもわかるわけでございます。乙、丙、丁が百株ずつ持っておって、乙、丙が二面株賛成、丁が百株反対ということであるから、その内容はあらかじめ通知しておけという御趣旨だろうと思います。しかし、通知しました後に、乙、丙、丁の考え方が変わるかもしれません。したがいまして、二百株と百株の議決権の行使ということに拘束されることは妥当でないわけでございまして、賛成していた丙が今度は反対に回って、実際に議決権を行使します際には乙百株と丙、丁の二百株に分かれても百株賛成、二百株が反対ということになる場合も考えなければならない。これは乙、丙、丁の意思に従って甲が議決権を行使するわけでございます。議決権を行使する時期における乙、丙、丁の意思を尊重して、その信頼関係に立って甲が議決権を行使するのが適当なのでございまして、あらかじめそれを通知いたしましても、それに拘束されるというような結果になったのでは妥当でないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/111
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112・大竹太郎
○大竹委員 いまの株主総会の実際をあなたは御承知ないのじゃないかと思う。三日前に通知するときに賛否の内容までも通知を求めるという意味じゃないので、普通の場合だったら総会に行って、そこでその内容がきまるべきものだと私は思う。だからいまのような三日前にきめるというのは、株数だけを三人なら三人にきめておく必要があるのじゃないか。それでなければ、その内容を明らかにしておかなければ、いまのお話で百の中さえ分けて行使されたってしょうがないでしょう。それなら一人百株持っていって、それを五十ずつに分けて、一人で出ていった株主は不統一行使はできないのに、皆後にいた人間が自分のかってに不統一行使をしたという結果になるじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/112
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113・新谷正夫
○新谷政府委員 仰せのように当初予定したことに反して、形式上の株主がかってなことをやるかもしれないということでございましょうけれども、これは形式上の株主と背後におります実質上の株主との信頼関係でございまして、そこまでこの不統一行使の際に立ち入って議決権の行使の方法をきめておくということまでするのは、少し行き過ぎではあるまいかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/113
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114・大竹太郎
○大竹委員 法律上はそうなりますけれども、それなら二人がぐるになってやったらどうなるか。私はそういう不統一行使をすることによって、いわゆる総合荒らしとか、不当な議決権の行使をすることをなくすことが必要だろうと思う。いまのままでは、二人がぐるになれば、いわゆる自分の株をその三百株の中からどうでも自由にあやつれるじゃないですか。それがいけない。百ずつ、どっちへいってもそれはいいですけれども、その中を細工できるということは私は不都合だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/114
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115・新谷正夫
○新谷政府委員 この不統一行使と申しますのは、最初申し上げましたように、皆後におります実質上の株主の意思を尊重して、その指図に従ってやるわけでございます。したがいまして、形式上の株主が議決権を行使いたしますのは、背後におります実質上の株主の意向を尊重するたてまえになっております。したがいまして、甲という形式上の株主が議決権を行使いたします際に、あくまでもその信頼関係に立って、背後におる株主の意向を尊重してやるべきものでございます。それを違反して、形式上の株主がかってに自分で議決権の内容を左右してしまうというふうなことは、これは許される筋合いのものではないと思いますけれども、そこまで法律的に規制してしまうということは不可能ではないか。これはもっぱら、形式上の株主と背後におります実質上の株主との間の信頼関係の問題であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/115
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116・大竹太郎
○大竹委員 それをいかにも法律的に割り切っていらっしゃるけれども、それなら、たとえば背後にいる株主が五十ずつ分けて行使しろと言って頼んだら、一体どうなりますか。だからそういう矛盾したことをなくすためには、少なくとも背後にいる株主の賛否なんかということは問題じゃない。背後には何人の株主がいるのだ、そしてその株主は何株持っているのだということだけをはっきりさせておかなければならないと思います。もちろん代理人が無断で好きに行使する場合、これはあなたがいまおっしゃったような場合だから、それはお互いの間の問題にしておけばいいのですけれども、それなら、二人でぐるになったり、または背後にいる人がたとえば百株を何かの都合で五十ずつ分けて賛否を入れてくれと言った場合には一体どうなりますか。私は非常に困ると思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/116
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117・新谷正夫
○新谷政府委員 会社と議決権を行使いたします株主との関係は、あくまでも形式的に株主として会社の株主名簿に登録されておる甲という株主、そしてその持っております議決権は、株主名簿に記載されております株式数でございます。したがいまして、これを会社との関係におきましてどう行使するかということの責任は、会社との関係におきましては、甲が当然負うべき筋合いのものでございます。ただしかし、その背後におります者の意向を尊重して不統一行使を認めようということでございますので、背後におります者と形式上の株主との関係は、これは法律の面には出てまいりません。あくまでそれは信頼関係に立って甲と乙、丙、丁の間を律すべきものでございます。もしもそれが乙、丙、丁の指図しましたとおりに甲が動かなかった場合に、これは甲対乙、丙、丁の間の問題として考えるべき問題であります。そのことによって会社に対する甲の議決権の行使というものが左右される筋合いのものではございません。したがいまして、株主側の事情とその株主と対会社との関係というものは、法律的には全然別個の問題でございまして、会社に対して、実質上の株主が何株持っておる、あるいはそれをどういうふうに議決権行使について分け合うかというふうなことを法律上明確にするということは不可能ではあるまいか、こういうふうに考えております。確かにおっしゃいます事情はよくわかるわけでございます。わかるわけでございまけれども、形式的に議決権を行使し得る権能を持っております甲という株主と株式会社との関係、これはもっぱらその二つの関係によってきまるわけであります。それを議決権をどう行使するかということは、その甲の責任において会社に対してやるわけでございます。しかし、甲と乙、丙、丁の関係は、会社の関係とは別問題でございまして、これはもっぱら事実上株主としての利益を受ける乙、丙、丁という者の指図に従って、統一しないで甲が議決権を行使し得るということを認めただけなんでございますから、法律上の問題といたしましては、あくまでも株式会社と甲との関係のみでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/117
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118・大竹太郎
○大竹委員 おっしゃることはわかるのですが、ただ先ほどから、あらかじめ賛否を会社へ通知することは、あとで変わると困るということをおっしゃっているのですけれども、何も賛否の問題じゃないのでありまして、その個数だけを通知するものにあわせて通知をさせておけば、私はいま申し上げましたような不都合は起こらぬと思うのですが、これはあとでひとつよく考えてみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/118
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119・大久保武雄
○大久保委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/119
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120・大久保武雄
○大久保委員長 それでは速記を始めて。
本日の議事はこの程度にとどめます。
次会は明後七日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02319660405/120
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