1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月十二日(火曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 坂本 泰良君
鍛冶 良作君 唐澤 俊樹君
四宮 久吉君 千葉 三郎君
馬場 元治君 濱野 清吾君
早川 崇君 森下 元晴君
山口シヅエ君 横山 利秋君
田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 新谷 正夫君
委員外の出席者
専 門 員 高橋 勝好君
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四月十二日
委員賀屋興宣君辞任につき、その補欠として鍛
冶良作君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員鍛冶良作君辞任につき、その補欠として青
木正君が議長の指名で委員に選任された。
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四月八日
自治会等人格なき社団法人の財産管理登記に関
する陳情書
(第二四二号)
借地法等の改正反対に関する陳情書
(第二四三号)
簡易弁護士制度の設置に関する陳情書
(第二七四号)
借地法等の一部改正に関する陳情書
(第二
七五号)
外国人登録証国籍選択の自由保障に関する陳情
書(第二七六号)
同(第三〇七号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/1
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002・坂本泰良
○坂本委員 質疑に入ります前に資料の問題でちょっとお聞きしたいのですが、大部の資料が準備してございますが、一番肝心の法制審議会の商法部会の審議録が出ておりませんで、法制審議会の決定が二つ出ております。昭和三十九年二月十七日の法制審議会の決定と、それから昭和四十年二月二十五日の法制審議会の決定でありまして、この点問題の商法の一部改正、特にこれは会社法の重要な改正と思いますが、これについては商法部会で鈴木竹雄氏が委員長で、相当慎重に審議が行なわれておる、こう思うわけですが、その審議録をぜひ見たいわけです。そうでないと、ただ商法部会から審議会の総会に持ち出されて、その決定がここにただ羅列的にあがっておるだけでありますから、この重要な条文、ことに二百八十条ノ二、この問題の審議についてどういう審議が行なわれたか、これはぜひわれわれ法務委員会としても出していただいて参考にしなければならぬ。もちろん見解の同じ人と見解の違う人もございましょうが、しかしそれについて相当慎重に審議されまして、そしてこの結論が出た、こういうふうに推察されるわけであります。そこでわれわれが、法務委員会でその決定だけに基づいて、もちろんそれについては提案理由の御説明、その他法務省の御答弁にはこれを盛り込まれた、それに基づいたところの答弁が行なわれている、こういうふうに思いますけれども、そうするとやはり法務委員会の独自性というものが全然なくなるわけでありまして、法制審議会で決定したから、そのまま、もちろんうのみではありませんけれども、それがよくわからずに審議したのでは、審議、また質疑そのものが、砂上の楼閣になっても困るわけでありますから、これから私は質疑は申し上げますけれども、やはり早急にこの議事録を出していただいて、あと数回の審議期間がありますから、やはり足らざる点等を補い、またその審議録がわからなかったためにこっちが違った方面に言い過ぎたり、よけいな質疑をしたというような点があれば、法案の審議でございますから、われわれ委員としても訂正するし、また足らないところは補って、そうして審議の完璧を期したい、こういうふうに考えますが、この審議録だけはぜひ御提出を願って、審査の資料にさせていただきたい、こう思うわけですが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/2
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003・新谷正夫
○新谷政府委員 商法の改正に関しまする法制審議会の審議録——議事録と申しますか、これを提出せよということでございますが、坂本委員も御承知と思いますけれども、法制審議会の審議の内容は、従来そのまま外部に出さない取り扱いになっておるわけでございます。と申しますのは、法制審議会におきまして委員の方々の自由な発言を願いますために、議事録をそのまま外部には公表しないということで従来まいっております。とは申しますものの、ただいま仰せのように、法制審議会でどのような議論が尽くされたかということを十分承知の上で、この法案の審議をやりたいという御趣旨でございますから、これもまたごもっともでございます。したがいまして、おそらく法務省といたしましても、従来法制審議会の議事録をそのまま外部に出したことはございませんが、何か別の方法で審議の経過がわかるような方法でもございますれば、それを参考にいたしまして、今回の商法の改正に関する審議の経過を御理解いただけるような方法をとりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/3
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004・坂本泰良
○坂本委員 前回の刑法の一部改正のときですか、その前の暴力法の改正のときですか、委員会の委員だけに極秘で審議録を出してもらったという例があると思うのですが、そういうような関係もありますから、そういうような方式でもいいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/4
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005・新谷正夫
○新谷政府委員 私も正確に存じませんけれども、刑法でございましたか暴力行為取締法でございましたか、前に法制審議会の審議の経過の概要を、御承知いただくように資料が出たことは承知しております。これも法制審議会の議事録そのままではなかったように私記憶いたしておるわけでありまして、そのままではございませんけれども、審議の経過がわかるような形にいたしまして、別の形にして資料として差し上げたのではないかと記憶いたしております。従来の経緯も取り調べまして、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/5
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006・坂本泰良
○坂本委員 暴力法の場合は多少政治的問題もありましたし、やはり先ほどおっしゃったような発言者についての自由な発言ということもあったから、それは要領だけじゃなかったかと思います。しかしこの商法の審議は国民の権利義務に関することでございますから、刑法その他の、いわゆる政治的に関連した法案とは違いますから、ほんとうは私は速記録そのまま出してもらっていいと思うのです。たとえばこの法案について賛成の方もあるいは反対の方もやはり堂々と意見を述べておられるのは、実務家にしろ、鈴木竹雄氏以下学者にしろ、賛成、反対の議論が相当戦わせられておる問題でありますし、「ジュリスト」を見ましても、法制審議会の商法部会部会長の鈴木竹雄氏なども、座談会なんかに出られて自由にいろいろ述べておられますから、この述べられたものの断片的なものでなく、やはりこの審議の審議録として秩序あるものが一番参考になるだろうと思うのです。そういう関係もございますから、あの委員はこういう発言をしているから暴力団の関係からにらまれるとか、また反対の立場に立つ人からその他の社会関係において非常に不利を及ぼされる、そういうことはわれわれも考えなければならぬですが、この商法の問題については私はそういうことはないだろうと思いますから、ぜひひとつ、できたらばこの審議録もわれわれは参考にしまして法案の審議をやったほうが、審議の完璧を期せるのじゃないか、こういうように存じますから、次会までにそれをお願いしておきたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/6
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007・新谷正夫
○新谷政府委員 先ほど申し上げましたように、従来の法務省の方針もございますので、部内で十分相談いたしまして、できるだけ御期待に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/7
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008・坂本泰良
○坂本委員 それでは質疑に入りたいと思います。
私も商法関係は少し遠ざかっておる関係で非常に勉強不足の点もありますが、この法案を見ますときに、やはり株式の公募、証券会社の関係等が改正の重要点ではないだろうかと思うわけです。特に買い取り引き受けの問題が従来証券界の慣習と申しますか、それと判例等の——昭和二十五年から昭和三十年に法改正が行なわれておりますが、証券会社の利益を合理化するというような関係が非常に見受けられるわけであります。
それからさらにこの資料の「法制審議会決定及び要望書」のところを見ますと、先ほど申しました昭和三十九年と昭和四十年の法制審議会の決定がありますが、そのほかは東京商工会議所、経済団体連合会、関西経済連合会、日本証券業協会連合会、全国株式懇話会連合会、こういう方々の改正意見とかあるいは要望とかが載っておりますけれども、一般大衆の株主に対する関係については、ないこともありませんが、株主の利益に関することは、たとえば新株式発行については、買い取り引き受けについて証券会社がどういう利益を得ても差しつかえないとか、さらに新株式を発行するところの会社の取締役会の権限が非常に広くなっております。そういう点から考えますと、株主は不利益をこうむってもこの人たちは利益を受け、さらに取締役としても、役得でなくてほかの会社関係から相当の金が入ってくる。それがひいては会社の政治献金とか、あるいは会社の取締役いわいる重役個人が政治献金をするし、あるいは政治運動をする、そういう点に金が流れて、そういうふうにやられると、株主は配当を受けるために企業経営に参加しているわけでありますが、その参加した株主に不利益になる結果が出てくる余地がある。またそういうことをやられても、これを特別背任あるいは脱税等の問題で取り上げて究明することはなかなか困難な状況に置かれるような法改正じゃないか、こういうふうに考えられる節があるわけなんです。法制審議会並びに法務省が改正を提案されるについては、こういう点について考慮されたかどうか。もしそういう点がありましたら、私の内容の質問に入る前に聞かしていただければ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/8
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009・新谷正夫
○新谷政府委員 御説のとおり、今回の商法の改正につきましては、経済界の要望、特に東京商工会議所、経済団体連合会、関西経済連合会あるいは日本証券業協会連合会等の団体からの要望がございまして、この改正の運びになったわけでございます。御承知のように、商法という法律は経済活動の基礎をなす法律でございます。したがいまして、経済の進展に伴いまして、それぞれ所要の改正を必要とする場合が出てまいるわけでございます。これは商法の特異性と申しましょうか、まず経済の動きが先行いたしまして、それと法制との間にギャップができます場合、法律のほうが実態を追っかけて改正するというのがこの商法の一般的な特色であろうかと思うわけであります。そういうことから、経済界の実情と商法の現在の規定とが遊離いたしますような場合、やはり経済界といたしましても法律の規定に違反しないように、あるいは経済の実態に合うように法律を改正してほしいという要望が出るのも、これは当然のことでございます。株式会社でございますので、営利事業を目的としておる法人でございます。したがいまして、そういう観点からその会社の利益になるように、会社のためになるように法律を改正してもらいたいという要望が出るのは、これは株式会社の側からいたしますれば当然のことであろうかと思うわけでございます。ただ、坂本委員がおっしゃいますように、あまりにもそちらに偏重するあまり、株主のほうに欠けるのではないかというところに今回の法律の改正の大きな欠陥があるのではないかというふうな御疑念をお持ちのようでございます。しかし、株式会社をよくするということは、とりもなおさずその株式会社の構成員である株主の利益になるわけでございまして、株主の立場を考えないで株式会社法の改正を考えることは、これはとうていできないわけでございます。今回七項目につきまして改正をいたそうといたしておるわけでございますが、これはいずれもそういう観点から、会社のためにもなるように考慮をいたしますと同時に、すべて株主の立場ということも考えまして、それぞれの手当てをいたしたつもりでございます。法制審議会におきましても、もちろんそういう観点から会社の立場、あるいは株主の立場の利害を考えながら、その調整をはかったということになっておるわけでございます。
少しく具体的に申し上げますならば、たとえば額面株式と無額面株式との間の変更の問題でございますが、これはまさに株主の利益のために改正すると言っても過言ではないわけでございます。
また、議決権の不統一行使、これも株主の議決権の行使の方法でございまして、これまた株主の利益のためでございます。また、新株引き受け権の譲渡も、新株の発行に際しまして、株主の資金の調達を便利にするために、新株引き受け権の譲渡を認めようということでございますので、これも株主の利益のために改正しようとするのでございます。
さらに、転換社債の株式への転換請求の期間の問題でございますが、これも社債権者が株主になりたいという場合の要望を容易に実現するようにいたしますために、転換社債の転換請求の問題について改正しようということにいたしておるわけでございます。すべてこれらは株主の利益のためのものであると申し上げて差しつかえないと思います。
さらに、株式譲渡制限に関する規定は、これは確かにある閉鎖的な同族的な株式会社にとりましては、株式が自由に転々譲渡されるということが好ましくない場合もございますので、それを取締役会の承認によってある程度制限できるようにしようということでございますので、これはその観点から見ますれば、会社そのものの利益のためということになるわけでございます。しかし、これにつきましても、株主の利益を考慮する必要がございますので、定款変更につきましては株主総会の決議の要件を一般の特別決議よりもさらに厳重にいたしまして、株主、特に少数株主の意向が反映できるようにいたしましたこと、さらにまた譲渡制限の規定を設けるにつきまして、これに反対する株主につきましては、自己の持っておる株式の買い取り請求権を認めまして、株主の利益の保護をはかろうということにいたしたわけでございまして、これは一方におきまして会社の利益であると同時に、株主の利益も十分に配慮したつもりでございます。
さらに、株式の譲渡方式に関する規定は、これは現在の株式の譲渡を容易ならしめるためのものでございまして、株式の一般取引に非常に便利になることはもちろんでございますが、そのことはまた同時に、株主にとりましても利益になる一わけであります。
さらに、すでにこの委員会におきましていろいろ御質問ございましたように、譲渡方式を改めることによって生ずるかもしれないような不安を解消いたしますために、株券の発行停止あるいは寄託の制度を導入いたしまして、これによって株主の立場を安定させようということを考えておるわけでございまして、これも株主の利益がこれによって考慮されておるということになると思うわけでございます。
さらに、新株発行の手続に関する改正は、これは会社が新株を発行することを円滑にいたしますために改正しようとするものでございます。確かにそれ自体は株式の発行の手続の問題でございますので、会社の便宜のためということが一応言えようかと思うのでございますけれども、これも株主の立場を考慮する必要がございますので、新株を発行いたします際には、あらためて新株発行の公告をすることを要件といたしまして、株主にとりましてその新株発行が法令あるいは定款に反する場合とか、あるいは著しく不公正な場合に、新株の発行の差しとめの機会を与えるというふうにいたしたわけでございます。
以上申し上げますように、いずれの点をとりましても会社の利益になる面ももちろんございますけれども、すべてにわたりまして株主の立場を十分考えまして、その利益を擁護できるようなことを考えておるわけでございます。一部、この商法の改正につきまして経済団体から要望が出たという形を見ますと、確かに仰せのように、株主の立場は全く閑却されているのではないかというふうな感じもいたしますけれども、この法律案をしさいにごらんいただきますれば、ただいま申し上げますように、株主の利益を擁護する措置は十分とってあるものと私どもは確信いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/9
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010・坂本泰良
○坂本委員 もちろん今度の改正は、いま申されたような各般にわたっておるわけです。ただ私が感じたところを申しますと、それを見ますと、どうも株主の保護は名目だけで、株主以外の証券会社の利益と、それから新株を発行する会社の取締役の私利私欲を肥やすためのいわゆる資本の調達と申しますか、そうではないかと思われる節が非常に多いものですから、この二つをやるための関連の法改正ではなかろうか、こう考えましたから御説明を聞いたわけですが、順次質疑をいたしたいと思います。
問題は、何と申しましても二百八十条ノ二の一項と二項に中心はなるのではないか、こう思いますから、この点についての疑点を質疑をいたしましてから、ほかの点にも触れたいと思います。
なお、一口ここでつけ加えておきたいのは、額面株式と無額面株式との間の変更ということを自由にしたということを誇大に言われるように考えますけれども、実際いままでの実例は、この資料によりますと、無額面の株式の発行状況は、三菱倉庫、富士観光、住友金属工業、この三つの会社のようですな。わが国には多数の会社が存するのに、わずかこの三つの会社くらいしか無額面株式と額面株式との変更をやっておる会社がない、そういう状態なら、いま法改正して変更させるということは、実際上、実質的にも合わないし、したがって、この資料の例から見ましても、何もこんな必要はないじゃないか、従来のとおりでいいじゃないかと考えられるのです。これを額面株式と無額面株式との変更を自由にしたというのは、私が先ほど申しましたように、いわゆる新株発行の場合の買い取り権を認めて、そうして証券会社に利益を与え、新株発行の会社の取締役の私利私欲をふやすための一つの助けにはなるけれども、そう実際上の必要はないじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/10
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011・新谷正夫
○新谷政府委員 無額面株式を発行いたしております株式会社は、確かに仰せのように三菱倉庫、富士観光、住友金属工業の三社でございます。したがいまして、今回の額面株式と無額面株式の変更の規定を設けることは、わずかに三つの株式会社のためにするように解せられないではない点もございます。
〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
ただし、この資料をごらんになりますればおわかりと思いますが、三菱倉庫が二百四十万株無額面株式を発行いたしております。富士観光は数回にわたりまして、合計いたしますと約三億株になります。それから住友金属工業が三億五千七百六十万株の発行株数を持っております。したがいまして、この大量の株式の保有数、すなわち株主の数もそれに応じて非常に多いのではあるまいかと思うわけであります。額面株式と無額面株式を変更いたします理由は、額面株式、無額面株式の変更を容易ならしめようというところに一つの理由がございますので、これはとりもなおさず株主の利益のためにこの規定を設けようというわけでございまして、株式会社にとりましても株式事務が簡素化されることはもちろんでございますけれども、額面株式、無額面株式を保有いたしておりますその会社の株主の立場を考えますと、やはりこれは変更を自由にするほうが株主の利益になるであろう、こういう観点に立っておるわけであります。この額面株式、無額面株式の変更を認めることによりまして、会社の利益のみを手厚くするとか、あるいは会社の役員が特にこれによって利益を受けるという問題ではないのでございまして、その利益の帰属するところは、やはり株主にある、このように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/11
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012・坂本泰良
○坂本委員 新設の二百八十条ノ二の六、七、八号の三項目、ことに八号の追加法案によりますと、株主以外の者にして、特にこれに有利なる発行価額をもって新株を発行すべき者及びその新株発行の目的となる諸条件は取締役会がこれを決定することになる、こういうふうに考えられまするが、そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/12
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013・新谷正夫
○新谷政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/13
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014・坂本泰良
○坂本委員 それから、そういたしますと、現行商法に定められてある取締役会の権限を飛躍的に拡大せしめんとするものであって、この飛躍的権限の拡大の及ぼすところは、不当に株主の利益を害する、取締役会の権限乱用を大幅に是認することになるように考えられまするが、この点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/14
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015・新谷正夫
○新谷政府委員 すでに御承知と思いますが、現在の会社法によりますと、株式を発行いたします際の株式の割り当て、これは取締役会の権限に属しておりまして、これをいかように割り当てるかということは、取締役会が自由にきめ得るものでございます。俗に割り当て自由の原則といわれておりますのはこのことを意味するものでございます。株式の割り当てというのは、御承知のように、株式の申し込みをいたしますと、それに対して株を割り当てるわけでございますが、この割り当てることによって申し込み人が株式の引き受け人になりまして、払い込みをすれば当然株主になるということになるわけでございまして、割り当てによって株主たる地位を取得し得ることになるわけであります。
新株の引き受け権と申しますのは、これは割り当てに至ります前の段階でございまして、ただ割り当てを受け得る権利でございます。したがいまして、新株引き受け権を与えられましても、当然にその割り当てを受けたことにはならないわけでございまして、その引き受け権の範囲内で、引き受け権を与えられた者が何株の割り当てをしてもらいたいということを会社に申し出て割り当てを受ける権利を有するにすぎないわけでございます。一般の公募の場合でございますと、一般の応募者が会社に申し出まして直ちにそこで割り当てを受けるわけでございますが、従来の株主とかあるいは特別の株主以外の者に新株引き受け権を与えて、それによって株式の発行を円滑にしようという必要があります場合には、取締役会が新株引き受け権を与えるという形になるわけであります。したがいまして、割り当てが取締役会の権限に属しております以上は、新株引き受け権を与えるということもまた取締役会の自由にきめ得るたてまえになっておるわけでございます。ただ株主以外の者に対しまして特別に有利な発行価額をもって株式を発行する、またそれを前提にいたしまして新株引き受け権を与えるということになりますと、これは株主の利益にも影響いたしますので、それを規制いたしますために、現行法におきましても二百八十条ノ二の第二項の規定によりまして、株主総会の特別決議を必要とする、こういうことになっておるわけでございます。現行法のその趣旨も、一に特別に有利な価額をもって発行する場合がありますので、そのような場合に株主の利益を擁護するために株主総会の特別決議を要する、このようになっておる趣旨でございます。ただ規定の上では、特に有利な価額をもって発する場合という趣旨が、二百八十条ノ二の第二項では、必ずしも明確にはうかがえないわけでございます。そのことは、二百八十条ノ三の株式発行の均等条件に関する原則的規定がございます。これのただし書きに、「新株ノ引受権ヲ有スル者ニ対シ有利ニ之ヲ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」という規定がございます。これは言いかえますと、二百八十条ノ二の第二項の規定によりまして、株主総会の特別決議を経て新株引き受け権を与えておる場合でございますから、これは前提として、この発行価額についても議決を経ております。そのような場合には、二百八十条ノ三のただし書きによりまして、均等条件の原則を離れてもこれは差しつかにないということをいっておるわけでございます。したがいまして、二百八十条ノ二の第二項だけ見ますと、いかにも一般的に新株引き受け権を与える場合には、すべて株主総会で特別決議が必要であるというふうに読めるわけでございますが、趣旨とするところは、特別に有利に発行するという場合にこの規定が意味があるわけでございます。最初申し上げましたように、割り当ても取締役会の自由でございますし、新株引き受け権を株主以外の者に与えますことも取締役会の権限に属しておるわけでございますので、特に今回の改正によりまして、取締役会の権限を特別に強化したという趣旨のものではないというふうに私どもは理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/15
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016・坂本泰良
○坂本委員 そこで問題が、株主以外の者に対して、これに「対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ」云々とこうありますね、この株主以外の者に対して、これに「対シ」という意味は、現行の「株主以外ノ者」と、こういうふうに解していいかどうか、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/16
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017・新谷正夫
○新谷政府委員 「株主以外ノ者」という意味は、現行法の「株主以外ノ者」というものと同じ意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/17
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018・坂本泰良
○坂本委員 そういたしますと、「株主以外ノ者」というのは、どういうものを対象にしておられるか、その点を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/18
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019・新谷正夫
○新谷政府委員 一般公募の場合に、株主にも特別に新株引き受け権を与える場合がございますが、そうでなくて、株主以外の一般投資家に投資してもらって新株を発行したいというふうな場合に、この「株主以外ノ者」ということになるわけでありまして、株主以外の者と申しますのは、もう文字どおり、株主である者以外の者すべてに対して発行する場合を規定したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/19
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020・坂本泰良
○坂本委員 「株主以外ノ者」と、こうあるわけですが、これだけじゃわからないのですね。具体的にどういうものがあるか、どういうのを予定してそういうようにやっておられるか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/20
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021・新谷正夫
○新谷政府委員 株式の発行は公募を原則といたしております。したがいまして、一般の投資家であればだれでもよろし、わけでありまして、特にこの株主以外の者を限定する趣旨のものではございません。従来、株主として、この会社と特別の関係に立っておった者以外の表でございますれば、どのようなものであっても差しつかえないわけでございまして、どういうものが当たるかという御質問でございますけれども、お答えといたしましては、株主にあらざる者すべて、と申し上げるほかはないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/21
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022・坂本泰良
○坂本委員 これはあとからも出てくると思いますが、結局「株主以外ノ者」というのは証券会社をさしているのではございませんか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/22
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023・新谷正夫
○新谷政府委員 証券会社を意図しているわけではございません。結局、証券会社を通じましていわゆる買い取り引き受けの場合は、新株が一般の投資家に渡るわけでございます。したがいまして、株主以外の者に対してと申しますのは、証券会社を発行の相手方として意識してこれを書いているという趣旨ではないわけでございまして、株主以外の者であれば何人であろうとすべてこの中に入る、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/23
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024・坂本泰良
○坂本委員 この株式の買い取りを除けばほかに何人であろうととおっしゃるけれども、証券会社よりほかにないと思うのですが、そのほかにありますか、あったら教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/24
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025・新谷正夫
○新谷政府委員 買い取り引き受けの場合でございますと、その買い取り引き受けの対象になっております株式につきましては、一応証券会社が引き受け権を取得することになります。しかし証券会社が引き受け権を取得いたしましても、その引き受け価額そのままでこれを一般の投資家に売却するわけでございます。ねらっておりますところは、証券会社にこの株を持ってもらうということではございませんで、ただ一般公募の手段として、方法といたしまして証券会社を通じてこの公募を行なうというのが買い取り引き受けの目的とされているところでございます。したがいまして、証券会社に株を持たせるためという意味ではございませんで、買い取り引き受けと言いますのは、証券会社を経由いたしますけれども、結局は一般の大衆投資家に株式を割り当てるという結果になるわけでございまして、特に証券会社を対象に株式を発行するというのが目的ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/25
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026・坂本泰良
○坂本委員 いや、目的を聞いているわけじゃないのです。ここに一括買い取り引き受けといえば証券会社ですよ。だから株主以外の者といえば証券会社より以外にない、こういうように思えるわけであります。証券会社が一括買い取り引き受けをして、それを多数の人に、希望者に株式の割り当てをするのは、この先の段階なのです。ただこの法改正は、先の段階は問題にしていない。一括買い取り引き受けについて株主以外の者とあるから、そうすれば証券会社よりほかにないのじゃないか。そこで、それから先がいろいろと問題になってくると思うのですが、そこで証券会社よりほかにないと私は思うわけですが、そのほかにあなたはあると言うのだから、どんなものがあるか教えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/26
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027・新谷正夫
○新谷政府委員 買い取り引き受けの例で申し上げましたので、一応は証券会社が引き受け人になる、こういうふうに申し上げざるを得ないわけでございます。しかし、この新株の発行はすべて買い取り引き受けの形態をとるというわけではございません。直接公募する場合もございますし、また募集の取り扱いを証券会社に委託する場合もございまして、いろいろの形があるわけでございます。この商法二百八十条ノ二第二項の規定は、そのすべての場合に適用されるわけでございます。したがいまして、証券会社を通じないで、いきなり一般大衆に公募する場合もこの規定が働くわけでございまして、その場合に、ある特定の株主以外の者に対しまして有利発行しようという場合には、株主総会の特別決議が必要なわけでございまして、証券会社のみに限るということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/27
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028・坂本泰良
○坂本委員 そのととがどうもふに落ちない。一括買い取り引き受けの場合は証券会社よりほかにない。証券会社はそういうことをやる会社なんです。そのほかに公募する場合がありますか。一括買い取り引き受けの場合はないと思う。株主割り当てとそれから一般公募と従来のように分けてやる場合は、それはその公募によってあると思う。しかし、今度の法改正によると、取締役会で新株の発行をきめれば、その一括買い取りは証券会社にまかせるわけでしょう。その場合に、証券会社にある一部をまかせ、ほかに一部をやる場合があるかどうか、そこをお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/28
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029・新谷正夫
○新谷政府委員 新株を発行いたします際に、その発行する株式の全部を一括買い取り引き受けで証券会社に引き受けさせるということもございますし、そうでなくて、発行総株数のうちの一部を証券会社に買い取り引き受けさせる場合もございます。それで、残額は一般の公募の方法による場合もございます。これは、新株の発行を成功させるために、できるだけ円滑な方法をとりたい。手続の繁雑にならない方法をとるために買い取り引き受けという方法が実際において行なわれるようになったわけでございまして、すべてが買い取り引き受けの方法によらなければ公募ができないわけではございません。それは発行会社の自由でございます。したがって、新株を発行する際にすべて買い取り引き受けになるということではないわけでございまして、直接発行会社が一般大衆に向かって公募の公告をいたしまして、申し込み者に株を割り当てることももちろん可能でございますし、買い取り引き受けの方法ではなくて残額引き受けという場合もございます。これは一称の請負でございますが、証券会社がある一定の数の株を一般投資家に買ってもらうことを請け負いまして、その請負としてやる場合もあるわけでございます。いろいろの形があるわけでございますので、この二百八十条ノ二の第二項の規定などによって、すべて新株の発行が買い取り引き受けになるということではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/29
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030・坂本泰良
○坂本委員 繁雑を避けるために一括引き受けをやるのでしょう。そうすると、あとで質問したいのですが、手数料を取られる。それからプレミアムをつけてもやることができるわけでしょう、有利な株ですから。そういうような場合に、一部を公募の方法によってやる、その一部を証券会社の一括買い取りの方法でやる、そういう場合が想像できますか、どうですか。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/30
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031・新谷正夫
○新谷政府委員 先ほども申し上げましたように、一部について買い取り引き受けを行ない、一部について一般公募をするということも可能なわけでございます。ただ現在は、御承知のように裁判所の判決もございましたために、現行法によりますと、株主総会の特別決議を経てないので、その手続の一部に法律に合致しない面があるということが起きてきたわけでございます。これは、最初申し上げた問題と関連してまいるわけでございますけれども、そういうことから、この規定をそのままにいたしておきますと株式の発行ができなくなるということから、そもそも二百八十条ノ二の第二項の規定がねらった趣旨を明確にいたそうというので、この規定の改正をしようというわけでございます。買い取り引き受けの場合に、引き受けた証券会社は、契約に基づいて一定の価額で新株の引き受け権を取得するわけでございますが、それをさらに一般の投資家に売却いたします際には同じ値段でこれを売却するわけでございます。したがいまして、これを引き受けることによって、さらにそれを分売することによりまして証券会社がもうけるということはないわけでございます。ただ、証券会社はこういう仕事を取り扱います手数料を発行会社からもらうというだけのことでございまして、これをやることによって特別に証券会社が利益を受けるというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/31
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032・坂本泰良
○坂本委員 また先までいって戻ることがあるかもわかりませんけれども、この程度にします。
そこで、「特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スル」、こうあるわけですね。そこで、「特ニ有利ナル発行価額」というのは、一体どの限度でどこに求めるか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/32
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033・新谷正夫
○新谷政府委員 「特ニ有利ナル発行価額」の限度はどうかという御質問でございますが、これは実はまことにむずかしい問題でございます。「特ニ有利ナル発行価額」とは何かと申しますと、通常新株を発行するといたしますならば、その新株の発行価額となるべき価額というものがあるわけでございます。一般に新株を発行する場合に、その発行価額として相当とする価額というものがあるわけでございます。その額よりも特別に有利な発行価額を定めました場合に、これを特に有利なる発行価額、こういうことになるわけでございます。
それでは、一体その間の関係はどういうことになるのかということになるわけでございますが、新株を発行いたします際には、まずその発行価額を決定いたさなければなりません。それから、新株の株金の払い込み期日までが、これは実際の例を資料として差し上げてございますが、短いものは一週間、長いものは三週間、あるいはそれ以上先になるわけでございます。その間に株価の変動が当然出てまいります。したがいまして、新株発行の価額を決定いたしましても、払い込みの期日にその株価が発行価額より下回っているという場合には、好きこのんでその高い発行価額を払い込んで新株を取得することはしないわけでございます。したがいまして、通常の場合はその株式の市価より安い値段で発行するのが多いわけでございます。しかし、それが一体どの程度ならば普通の発行価額として許されるかというところに問題があるわけでございます。そこで、その発行価額をきめます際には、それぞれの発行会社において非常に慎重な検討を加えるようでございます。たとえばその会社の資産状況、あるいは将来の市況の見通し、あるいは発行株数、あるいはその会社の株式の習性、市場における変動の傾向、そういったものを十分考慮いたしまして、何日か先の払い込み期日におけるその株式の値段ということとにらみ合わせて、この程度なら新株の発行は成功するであろうという値段をきめるわけでございます。
そこで、実際の例をいろいろ調べてみましたところ、資料の三七七ページをごらんいただきたいと思います。その三七七ページの右側の欄の「公募要項」というのが大項目にございまして、中項目に、(2)として「公募価額の決定は決定前日の株価の何%以下に定めたか」という資料がございます。ここに、五%以下、一〇%以下、一五%以下、一六%以上というふうにそれぞれの結果が出ておりまして、一〇%以下、一五%以下というところが一番多いわけでございます。したがいまして、この程度の差は新株を発行する上におきまして当然見ておかなければならないということになろうかと思うわけでございます。したがいまして、一〇%ないし一五%程度の低い発行価額でございますれば、これは新株を発行するために通常必要とする発行価額といえるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、それをはるかに上回るものになりますと、特に有利な発行価額、こういうふうに理解してよろしいのではないかと思うわけでございます。もっとも、これは、会社によりまして、その株式によりまして、それぞれの特殊性がございます。事情も違うものがございますので、一律にこうだということは申し上げられませんけれども、大体のところを申し上げますと、ただいま申し上げました一〇%ないし一五%くらいのところでございますれば、これは特に有利だとはいえないものというふうに考えてよろしいのではないかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/33
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034・坂本泰良
○坂本委員 時間がありませんから先へ進みたいと思いますが、ここで問題になるのは、いまのような有利な発行価額をもって新株を発行する、その限度はいまわかったのですが、株式会社の資金の調達がこういうような方法で容易にできるかどうかについて疑問を持つわけですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/34
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035・新谷正夫
○新谷政府委員 普通の場合でございますれば、その時価によって発行すればよろしいわけでございます。ただ、その時価の変動というものもございますし、応募する者にいたしましても、将来どうなるかということがわからない段階で発行価額をきめられて、そのままで新株を発行いたすということになりますと、どうしても発行会社の側から見ますると予期しただけの効果があがらない。つまり、新株発行が完全に成功しないということも考えられるわけであります。したがいまして、ある程度有利に定めることは、これは先ほど申し上げましたようにやむを得ない措置でございまして、特別に有利に発行するという場合は、その会社の特殊な事情に基づいて、これは新株の発行を成功させる必要上どうしてもやらなければならないという場合にいたすわけであります。これは通常の価額よりは安いわけでございますので、特に株主総会の特別決議にかけまして、株主の利益の保護をはかるということになるわけであります。こういう措置を講じますことによって、もちろん新株の発行の円滑を期し得るわけでありまして、すべての場合に特に有利な発行価額を定めるというわけのものではございませんけれども、必要によってはこういう措置をとることによって新株の発行を成功させ得るということになるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/35
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036・坂本泰良
○坂本委員 そこで、従来の慣習によってそういう方法を証券会社がとっていたでしょう。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/36
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037・新谷正夫
○新谷政府委員 買い取り引き受けの場合の御質問かと思いますが、必ずしも特に有利な発行価額ですべて発行を受けているということではないと思います。買い取り引き受けなるがゆえに特別に有利なる発行価額でなければならないというわけではございません。その会社の業績が非常に上向きの場合とか、株価の状況が非常によろしいとかいうときに、あえてそういうことをする必要もないわけでございますので、すべての場合に特に有利な発行価額を定めるということはないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/37
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038・坂本泰良
○坂本委員 従来も、証券会社に一括買い取り引き受けの方法でやっていたわけですね。それが判決で、その慣習を認めない、こういう事例があったのじゃないですか。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/38
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039・新谷正夫
○新谷政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/39
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040・坂本泰良
○坂本委員 そこで、結局一〇%ないし一五%ですか、あるいは二〇%引いて有利に一括引き受けをやるわけですね。そうすると証券会社があまり一もうけ過ぎるから、そうではないというので株主のほうから異論が出て、そうではない、それでは株主の利益を害するものであるといって訴訟が起きたわけです。その訴訟において、そういう慣習は認められないというので、判決では認めなかった、そういう事例があったわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/40
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041・新谷正夫
○新谷政府委員 これは資料をひとつごらんいただきたいと思います。三五七ページ、それから三六二ページ。三五七ページのほうからまず申し上げますと、ここに買い取り引き受けの場合の契約書が載っております。こういう形で従来やっておりますが、この頭書きの二行目のところにこれこれの株を「公募するに当り、〇〇証券株式会社との間に左記条項を契約する。」こうございます。これはすべて「公募するに当り」という表現を使っております。それから三六二ページをごらん願いますと、これは具体的な証券会社との契約書でございますが、これも「新たに発行する株式壱千四百萬株のうち五拾萬株を公募するに当り」これこれの証券株式会社との間に左記条項を契約する、こううたってございます。これでおわかりのように、そもそも買い取り引き受けを始めました当時には、発行会社も証券会社も、これは公募の一つの方法だという意識で始まったわけでございます。ところが、証券会社の側からいたしますれば、一応発行会社からその株式を全部発行を受けましてこれを一般大衆に分売する方法をとっております。その関係で、一応証券会社が新株の引き受け権をこの契約によって与えられ、その申し込みによって株の割り当てを受けて株券の発行を受け、さらにそれを一般投資家に売るという過程をとるわけでございます。当初ねらいましたのは公募の方法としてこのようなことが始まったわけでございますけれども、法律的にこれをながめますと、確かに新株引き受け権を証券会社に与えると同じ結果になるということに理解し得るわけであります。ただ、一般の新株引き受け権を与えます場合には、その引き受け権を取得したものがみずから株主になるということになりまして、自分の必要な範囲の株式の割り当てを発行会社に申請をいたしましてその株の割り当てを受けるわけでございます。その場合には、もちろん引き受け権を持っておる者が名実ともに株主になるわけでございます。ところが、この買い取り引き受けの場合には、これがそもそも公募のために始められたことでございますので、一応形式的には証券会社が新株を引き受け権を取得して株券の発行を受けて分売するのでございますけれども、もともと、みずからが株主になる意思はないわけでございます。この契約書にもうたわれておりますとおり、これだけの株式を公募するためにこの契約をするということをはっきりうたっております。そういう関係で、一般の引き受け権をもらう場合とはその点が違うわけでございます。証券会社がみずから株主になって、実質的に株主としての利益を享受するという目的で、新株引き受け権が与えられているわけではないわけでございます。そこが通常の場合と違うわけでございます。しかし法律的にはともかく新株引き受け権を与えることになるというふうに理解されますので、横浜地方裁判所その他の裁判所におきまして、それは法律上新株引き受け権を与えるものであるというふうに認定いたしまして、商法の二百八十条ノ二の第二項の規定に違反する、こういう判断を下されたわけでございます。確かに仰せのように、買い取り引き受けは現行法の二百八十条ノ二の第二項に違反する、こういうふうに理解されると思いますけれども、これはことさらに二百八十条ノ二の二の規定の適用を免れるためにやったというよりは、実質は公募の方法として考案されたことが、遺憾ながら法律に違反しておったということになるものと御了解願えればけっこうだと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/41
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042・坂本泰良
○坂本委員 ですから、経団連とか証券協議会とか、そういう点の強い意向があって、慣習と思っていたら慣習法にならなかった、だからそれを法改正して合理的有効化する、こういうことになったわけでしょう。あとで質疑いたしたいと思いますが、だから株主の経済的の権利とかその他は考慮せずに、ただ証券会社がそういうふうに従来やっていた。しかし、それで証券会社は立っていたわけですね。経営ができたわけでしょう。これがなかったらできないでしょう。だから、その要望だけにこたえて法改正をしたんじゃないか、そういう疑点がここに出てくるからお伺いしたわけですが、そこでこの法改正をするにあたって、これをこういうふうに改正したら、資金調達の面においての株主の利益は何もなくて、取締役個人個人の私利私欲をふやすためとか、証券会社の利益を確保してやる、こういうようなための法改正ではないかという疑いがそこに出てくるわけなんですが、株主の関係については、この際に考慮されたことはございますか。ありましたらどういう点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/42
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043・新谷正夫
○新谷政府委員 ちょっとくどいようで恐縮でございますけれども、ただいま申し上げましたように、買い取り引き受けの過程におきまして、株主総会の特別決議を経なかったという面において、新株引き受け権を与えることが商法の規定に違反するということが判決で言われたわけでございます。しかしながら、その引き受けをやりまして、株券の発行を受け、一般投資家がその株券を取得いたしますと、その段階におきましては、その株券の発行そのものは違法ではないというのが裁判所の一貫した態度でございます。その中間の手続に違法な面があったというだけなのでございます。しかしながら、実際界におきましては、少なくともそういうところで違法な点があるとすれば、この買い取り引き受けそのものはこの際避けるべきである。たとえ発行した株券は有効なものであるといたしましても、中間の手続において少なくともそういう違法な面が出てくるということになりますと、これは避けるべきであるという考え方から、現在まで買い取り引き受けの方法はとっていないというのが実情でございます。
そこで、いま坂本委員の御質問でございますが、これはもっぱら証券会社あるいは発行会社の取締役の私利私欲を肥やすための改正ではないかという御質問でございますが、これはそうではなくて、その会社のために新株の発行をする必要があるわけでございまして、その手続を違法でなく円滑にやりますためには、当初考えられておりましたような商法の趣旨に従いまして、その点を明確に法律の上にあらわすというのが今回の改正の趣旨なのでございます。したがいまして、特に証券会社その他特定の者の利益をはかるという趣旨のものではないことは申すまでもございません。
そこで、株主の立場がそれではどのように考慮されておるかということでございますが、これにつきましては、新株を発行いたします際に、こういう方法で新株を発行するということを株主に知らしめる必要があるのでないかということから、二百八十条ノ三ノ二の規定を新設いたしまして、「会社ハ払込期日ノ一週間前二新株ノ額面無額面ノ別、種類、数、発行価額、払込期日及募集ノ方法ヲ公告シ又ハ株主ニ通知」しなければならないことにいたしたわけでございます。これによりまして、どのような形で新株が発行されるかということを株主は知り得る機会を得るわけでございまして、これに基づきまして、もしも新株の発行が法令に逓反するとか、あるいは定款の規定に違反する、あるいは著しく不公正な方法で株券が発行されたというふうな場合には、株券の発行の差しとめの請求ができるという機会を与えることにいたしたわけでございまして、株主の立場もこれによって守られるということになるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/43
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044・坂本泰良
○坂本委員 一項はそれくらいにして、二項の点で一、二点お伺いします。
この二項の改正は、株主以外の者について、これに対し特に有利なる発行価額をもって新株を発行すべき権限、これを取締役会に与えるという規定を新設する、こういうことになるわけですか、その点いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/44
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045・新谷正夫
○新谷政府委員 株主以外の者に新株の引き受け権を与えることを取締役会の権限に属さしめるということが、この今回の改正によって新しくできるというものではございません。これは現行法の二百八十条ノ二の第一項の第五号でございますが、「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」とございます。これは株主であると株主以外の者であるとを問いません。現行法におきまして、すでに取締役会の決議によりまして株主以外の者に対して新株の引き受け権を与えることも許されておるわけでございます。したがいまして、今回の改正によりまして特に取締役会の権限を強化したということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/45
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046・坂本泰良
○坂本委員 この二百八十条ノ二の五号の場合は、これはあとで取締役会は株主総会にこれをかける義務が生じてくるわけであります。しかし第二項のほうの改正はそれもなくなるのではないか、こういうふうにも思われますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/46
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047・新谷正夫
○新谷政府委員 新株を発行いたしますことについて特に重要なことは、第三者に、株主以外の者に対しまして新株引き受け権を与えることということではございませんで、最初申し上げましたように、特別に有利な価額をもって新株を発行いたしますと、これが株主の利害に非常に影響いたすわけでございます。したがいまして、特別に有利な発行価額をもって新株を発行する場合には、これは株主の利益の保護のために株主総会の特別決議を必要とするということにいたしたわけでございます。その趣旨は、最初申し上げましたように、二百八十条ノ三のただし書の規定との関連におきましても、現行法におきましてもそのように解されるわけでございますけれども、形式的にはすべて新株引き受け権を第三者に与える場合には、取締役会の決議のみならず株主総会の決議も必要だというふうにも読めますので、その点の関係を明白にいたしますために今回の改正をいたすわけでございます。趣旨におきましては現行法と変わりはないものと私ども理解いたしておるわけでございまして、そもそも新株の割り当てにいたしましても、新株引き受け権の付与にいたしましても、もともとこれは取締役会の権限に属する事柄でありますので、株主の利益を守るためには特別に有利な発行価額をもって新株を発行する場合にこれを規制する必要があるというところに今回の改正のねらいがある次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/47
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048・坂本泰良
○坂本委員 次に、この二項の改正は、「株主以外ノ者」というのは証券会社以外にもあるというさっきのお話でしたが、証券会社に、特に有利な発行価額で新株を発行することを決する権限を取締役会に付与する、こういうふうにも考えられるのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/48
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049・新谷正夫
○新谷政府委員 特に有利な発行価額をもって新株を発行する、これは相手方が証券会社でございましょうと、そうでない者でございましょうと同じでございますが、そのようなことをきめますのは、これは取締役会の権限でございます。一応取締役会が定めますけれども、ただそれだけでは不十分なのでございまして、その規定にもありますように、この場合には株主総会において特別なる決議を経なければならないということにいたしてあるわけでございます。もっぱら有利なる発行価額をもって発行する場合には株主の利害に非常に影響いたしますので、それがはたしていいか悪いかということは取締役会できめるだけでは足りない。さらに株主総会の特別決議によってこれを許すか許さないかということを決定することにいたしてあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/49
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050・坂本泰良
○坂本委員 まだ少しあるが、審議録を見たいと思うのですが、そのあとにしたいと思うわけです。
そこで、時間がありませんから、この間の質問にもあったようですが、この証券業界に親分けということばがあるし、いろいろやっておられることがあるそうですか、この点は法務省のほうではどういうふうに理解されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/50
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051・新谷正夫
○新谷政府委員 親分けとか親引けとか言われておるそうでありますが、私も詳しいことはよく存じませんが、要するにこれは証券会社に委託あるいは買い取り引き受けの契約をいたしまして新株を発行しようといたします場合に、普通の場合でございますれば一般大衆にその新株を引き受けてもらう、あるいは新株を買ってもらうという形をとるわけでございます。ただ発行会社の側から、特別の者に、たとえばその発行会社の取締役とかその他の特別の縁故のある者にこれを売ってやってくれということを証券会社に依頼しまして、それによって証券会社が新株を分売していくという形をとるのがただいまの親分けとか親引けとか言われておるものらしゅうございます。これにつきましては法律上別に規制はございません。これは現行法におきましても何らの規制措置はございません。ただ、特別法によりまして、会社の役員が特定のそういった株式の取引をすることを制限、規制されている場合もあるようでございますけれども、商法の立場からいたしますと、その点についての特別の規制は行なわれていないというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/51
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052・坂本泰良
○坂本委員 いや、親引けとか、こういう問題があるから、証券会社が第一項の八号ですか、そういう規定を設けてこれを合理化してやることができるようにするというのがこの法案を改正する——そういうので経団連とか証券会社とかの非常な要望があってやるのだ、そういうふうに聞いていた。それに関するところのいろいろな弊害については聞きたいことがたくさんあるわけですが、大臣もおられませんからもう少し私も検討して聞きたいと思います。
そこでこの親引けは、こういうことではいかないというので、「ジュリスト」の一九六一年の九月一日号ですが、「株式公募の問題点」というので、それに商法部会の会長である鈴木竹雄氏も出て、そうしてここにいろいろ載っているわけですが、ここに阪田商会の阪田方式、こう出ているんですね。この点についてはどういう理解をされておるか。またこういう点について、今度の法改正について参考にし、あるいは株主を保護するためにはこの方法でなければいかない、法改正をして証券会社の利益等を擁護するより株主擁護のためにこういう方法もあるではないか、いわゆる阪田方式ですか、こういうことがここに論議されておるようですが、この阪田方式についてはどんな理解をされておりますか。これは「ジュリスト」なんかにちゃんと出ておりますから、ことに鈴木竹雄氏なんかもこの商法部会に出ているからこういう論議も出ておると思うわけですが、ですから法務省当局としてもこういうのを知らずにこの法改正をされたということには見えないし推測できないと思うわけです。親分け、親引けですか、親引けの点についてもそういう意味でお聞きしたわけですが、知らぬ、わからぬとおっしゃられるのですが、この阪田方式というのはどういうふうに理解されているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/52
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053・新谷正夫
○新谷政府委員 阪田方式と申しますのは、これは普通の場合でございますと、株主に割り当てます場合には額面で割り当てるのが普通でございます。五十円の株でございますればその五十円で新株を割り当てるというのが普通の場合でございます。ただ、阪田方式といいますのはその会社の状況あるいは株価の状況をにらみまして、五十円の額面株式を七十円とか八十円で株主に割り当てるという方式でございます。これ自体につきましては別に法律上これは違法であるとかなんとかという問題は起きないわけでございまして、そういうこともむろん取締役会で自由にきめ得るわけでございます。発行価額を幾らにするかということだけの問題であろうかと思います。今回の改正は特にその点については触れておるものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/53
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054・坂本泰良
○坂本委員 この式があるから株主の保護なんかは達せられるし、そうして増資その他新株の発行なんかもできるわけなのです。できるのに、証券会社が慣習上やってきたのが、それは法に違反する、そういうところで無効になったわけです。それをわざわざ法を改正してこれを合理化してやるというのは、あまりにある一部の者に対するところの法改正ではなかろうか、こういうふうに思えるわけです。ですから、やはり改正するかせぬかの問題が大きい問題であるし、改正するにしてはこのほうがいい、しかし改正せぬでもこういう方法でできるじゃないかということが当然商法部会でも論議され、そうしてきまったのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、そういう点は、審議会の決定に基づいて法を提案される法務省の側においてはどういう考えを持っておられたか、その点を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/54
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055・新谷正夫
○新谷政府委員 買い取り引き受けの場合に、その手続が二百八十条ノ二の第二項の規定に違反するということでございますけれども、これはその手続に違法な点があったということにとどまっておるわけでございまして、これによって手続そのものが全部無効になるということは、裁判所は申しておりません。究極的には新株の発行の段階まで進んでしまった後に訴訟になっておるわけでございまして、新株が発行されてしまいますと、たとえ株主総会の決議がなくても、これはその会社の内部的な意思決定の問題であるから、それがないからといって新株の発行が無効にはならない。したがいまして、株主総会の特別決議を経なくても、発行された株式は有効である、こういうふうに結論はいたしておるわけでございます。ただ実際界といたしましては、株式の発行は有効であっても、その途中の手続が少なくとも違法であるということであれば、これはやはりその方法を慎重に考え直す必要がある、また法律の改正が妥当なものであればその改正をしてもらいたいということから、今回の改正が行なわれるようになったわけでございます。特別に証券会社の利益をはかるとかなんとかいうのではございません。発行会社の立場において、新株を発行することが円滑にいく、その新株発行が成功することによって資本を増加することができる、またそれが会社の企業経営に役立つということから新株の発行をいたすわけでございますので、いま御心配のように、証券会社あるいは特定の発行会社の役員のふところを肥やすということを目的にしたものでは毛頭ないわけでございます。もっぱら会社そのものの資金調達のために、手続を適法に円滑に行ないますためにはこれが必要である、しかも現行法でもねらっておりますように、特別に有利な発行価額をもってやる場合には、これは株主の利益に影響いたしますので、その点については株主総会の特別決議を要するということを明確にしようというのがこのたびの改正の趣旨でございます。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/55
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056・坂本泰良
○坂本委員 大体の私の聞かんとする筋道はわかったわけですが、これに対して私も意見を持っておるし、いろいろのこの法改正についての疑点と、改正されたならばいわゆる取締役会の権限が拡大になりますから、その取締役と証券会社の間においていろいろのトラブルが起きる問題が多少想像されますから、そういう点もありますが、ぜひ審議会の審議録を、私は非常に期しておるわけですが、それをひとつ至急にととのえていただきまして、われわれの審議の独自性も援助してもらいたいと思います。
本日はこの程度で私留保してやめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/56
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057・大久保武雄
○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
次会は明後十四日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X02519660412/57
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