1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月二十二日(金曜日)
午後一時三十四分開議
出席委員
委員長 大久保武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君
理事 濱田 幸雄君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
鍛冶 良作君 唐澤 俊樹君
四宮 久吉君 田中伊三次君
千葉 三郎君 中垣 國男君
馬場 元治君 濱野 清吾君
早川 崇君 横山 利秋君
吉田 賢一君 田中織之進君
出席国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 新谷 正夫君
委員外の出席者
専 門 員 高橋 勝好君
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四月二十二日
委員森下元晴君及び西村榮一君辞任につき、そ
の補欠として鍛冶良作君及び吉田賢一君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員鍛冶良作君及び吉田賢一君辞任につき、そ
の補欠として森下元晴君及び西村榮一君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、おはかりいたします。
本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、これに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/1
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002・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/2
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003・大久保武雄
○大久保委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/3
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004・大竹太郎
○大竹委員 私は自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。
御承知のように、現行商法は、昭和二十五年改正せられてから十年以上経過いたしました。その間新株引き受け権、会社計算に関する規定等について若干の改正がなされましたが、最近の経済情勢の実情を見ますると、必ずしも企業と経済の実情に即したものとは言えないものがございます。
そこで今回の株式譲渡の制限等七項目について改正されることになったわけでございまして、これらの事項は、いずれもきわめて緊急に立法の必要があり、また経済界等の要望なども参酌いたしまして、今国会に提出された次第でございます。
改正案のおもなる内容を見ますると、まず株式の譲渡制限についてでございますが、株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定款で定めることとして、株式会社の運営の安定をはかり、他方株主の投下資本の回収ができるよう、株主の保護をはかった規定を設けたわけでございます。また株式の譲渡方法につきましては、株券の交付だけで株式の譲渡を行なうこととし、現在株式の譲渡があり合わせ印の捺印一つで行なわれており、実質上も無意味に近い実情にあるので、これを実情に合わせて裏書きを廃止したもので、これによって株式の流通の円滑化をはかっており、他方株主側の保護をはかるために、株券の発行停止または寄託の制度を設けた次第であります。
次に、新株の発行手続につきましては、株主以外の者に対して特に有利な発行価額で新株の発行が行なわれる場合には、株主総会の特別決議を要することにして、新株の発行の円滑をはかるとともに、あらかじめ公告することによって新株発行が公正に行なわれるよう、既存株主の利益をはかっておるわけであります。
その他、株主が議決権を統一しないで行使できること、額面株式と無額面株式との間の変更を認めること、株主の新株引き受け権の譲渡の道を開いたこと、転換社債の転換の請求は、株主名簿の閉鎖期間内でもこれをなし得ることとした改正、いろいろございますが、これらはいずれも株主の利益の保護をはかった改正であります。
このような改正案の趣旨は、最近の経済情勢に照らして当面必要な処置であるわけであります。当委員会におきましても昨日は六人という大ぜいの各界それぞれの参考人をお呼びして、いろいろ意見をお聞きしたのでありますが、いずれの立場からも本改正案には賛成の意を表せられたようにお聞きしたわけでありまして、私も本改正案に賛成の意を表する次第であります。
しかしながら、本法案は当面さしあたって緊急やむを得ないものについて改正したものでありまして、昨日の参考人等の意見等をお聞きしましてもわかりますように、商法については根本的に改正すべき多くの点があるように考えられるわけでありまして、今後当局におかれましてはそれらの点について十分考慮を払われるよう最後に要望をいたしまして、私の賛成討論を終わる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/4
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005・大久保武雄
○大久保委員長 坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/5
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006・坂本泰良
○坂本委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本法案に反対の意見を述べたいと思います。
本法案は、商法、いわゆる株式会社に関する法の改正であります。会社法をめぐる各種の問題は、この改正の要否ないしその必要性に関する論拠は、特に株式会社が現在の社会経済事情にマッチするかどうかという点にあると思います。したがって、商法改正、ことに株式会社に関する改正はまず根本的に考うべきであります。大会社と小会社はこれを区別すべきである、こういう点がいわれておりまして、今回の改正は大会社のための改正であって、昨日の参考人の意見にもありましたように、中小企業は有限会社に追いやるんじゃないか、こういうような点も述べられたわけでありますが、そういう点からいたしまして、本商法の改正には賛成できない根本的の理由があるわけであります。
ここに一言申し上げたいのは、現在の日本の法律を改正するにあたりましては、当面のある事実をとらえて、そのために法律体系をそのままにしておいて部分的の改正が行なわれようとする、そういう点について、日本が法治国として法律組織が完備した現在におきましては、刑法、商法、民法その他重要な法律の改正にあたりましては、これは根本的の改正に基づいてやらなければならないと思うのであります。たとえば刑法の一部改正のごときも、ただ業務上の過失について法定刑を重く罰するということのみで刑法の一カ条あるいは二カ条を改正をする。刑法のごときは、これは刑法体系として大きな問題でありますから、その刑法自身の改正については慎重を要さなければならぬ。しかもその改正にあたっては、刑法体系をくずさない基本的の考え方に立ってしなければならない。したがって、やむを得ない場合はあるいは時限立法でもして、そうしてその刑法の改正に当たらなければならぬと思います。商法におきましても、この商法は戦前の古い法律でありまして、そのときどきに当たって幾らかずつ改正が行なわれてきておる。終戦後におきましても若干の改正を行なって、大体昭和二十五年の改正に相当大きな改正がありましたけれども、改正はしたものの、その基本線に沿う実施が行なわれておるかというと、行なわれていない。やはり商法、ことに商法は会社編が主でありますけれども、これがこの社会の経済事情にマッチするために改正をするという段になりますと、やはり商法全部にわたるところの基本問題を等閑視してはならないと思うのです。ただ当局がそのときの情勢に応じて今度の法律も、これは昭和二十五年の改正があって、その後商慣習として行なわれてきた新株発行の際の引き受けの問題、こういう問題等につきましても裁判に判例が出て、証券会社その他に非常な不利な判例が出ている。それを今度法律をもって改正をして合理化する、こういう点が多分に今度の改正には含まれておるのでありまして、そういう点は厳に戒めなければならない。二百八十条ノ二の改正等につきましても、これは判決を見ますと、それはやはり慣習があって、そうしてその慣習に基づいてやっていたら裁判に負けた。だからその法律を改正する。そうなりますと、その前にわれわれが考えなければならぬのは、商慣習があるなら、しかも五年、十年の商慣習があるならば、すでにそこに商慣習法というのができておると思うのです。そうしたら、やはり現行法に対する商慣習法という慣習法としての法律の改正の問題が事実上そこにできておるとするならば、裁判で敗訴するようなことはないはずなんです。これはやはりきのうの参考人の中にも、中島氏の参考意見もありましたが、やはり株主の保護に欠けておるというので訴訟をやる。そうすると証券会社の慣習としてやったのが法に違反するというので敗訴をしておる。これは訴訟の過程において商慣習としての立証が足らなかったので、商慣習法ができておるならその点を立証したならば、裁判官がやはりその適用にあたってはそういう商慣習に基づいてもう法的の権威が社会化しておる、法的地位と申しますか、法的解釈を与えてもいいということになれば、敗訴するわけはないのです。立証が足らずに敗訴になったから、また立証はしたけれどもまだ商慣習として法としての価値がないから現行商法の解釈としては敗訴せざるを得ない、こういうふうになっておるわけですから、そうなったからといって直ちに商法の一部改正としてそれを合理化するような改正ということは、これは十分考慮しなければならない、こういうふうに考えられるわけであります。
そういう見地に基づきまして若干所見を申し上げますと、まず第一は、商法が資本金数百億円、株主数十数万人、こういう超大型の会社から、資本金数十万円、株主は十数人という小会社、これが相当の数があることはすでに審議の過程でわかったわけですが、これをいわゆる商法会社編で一様に適用することになるわけでありますが、こういう点についてやはりきのう少数意見がありましたように、中小企業の小会社はもう有限会社に追いやるじゃないかという、いわゆる一様に適用される。そこに非常な無理がある、こういうふうに考えられるわけであります。
次は、一株五十円という株式の券面額です。これはきのうだれかの参考人の意見がありましたけれども、物価は戦後四百倍になった。物価は戦後四百倍になっておるのに券面額は五十円である。したがってその結果は株主は膨大な数にのぼり、株券は天文学的な数字になっているわけであります。株主総会、株式の名義書きかえその他株式をめぐるあらゆる問題がここに禍根をなしておることになるわけであります。株の券面額の改正について証券会社その他から賛成がない。現状の五十円がいいというのはやはり手数料を取るというふうな関係もある、そういうふうにも考えられるわけであります。こういう点を考えずに、そうしてある一部の論点のみについて改正を行なう、こういうことは私は冒頭に申し上げましたような商法の体系として、会社法の現在の社会経済的事情からしてもっと慎重にしなければならないのじゃないか、こういうふうに考えられるわけであります。
次に、本改正案については、かつて指摘されましたように、次の二点につき問題があります。一は、改正案は大会社または証券業者の利益擁護の面のみ力を注ぎ、一般の株主の利益の擁護に欠けておる、したがって、株主の要望を反映していない、こういう点が私は第一に指摘さるべきだと思います。次に第二は、改正案は、いわば部分的な改正点の集積であって、改正の方向に一貫性が欠けておる。したがって、商法の指導性が失われておる。大資本擁護の、いわゆる証券会社等に対する問題になっておる点の法律改正によってこれを擁護しようとする。特にこの商法二百八十条ノ二の一項、二項の問題は指摘さるべきだと思うのであります。そういうふうで、私が冒頭に申しましたように、刑法の改正にしろ、商法の改正にしろ、法務当局はもっと一貫性を持った、指導性を持った法律の改正をしなければならぬと思うのです。ですから、その改正ができなかったならば、そのときの時限立法として考えておいて、そうして、期間がかかるならば時限立法で一時補って、そして根本的の改正はやはりある一カ条にしろ二カ条にしろ、一貫した改正をすべきである、こういうふうに考えるものであります。
そこで、個別的な問題について一、二述べますと、先ほど来も連合審査で問題になっておりますが、株式の譲渡制限の問題であります。これは昭和二十五年における商法の改正において、いわゆる資本と経営を分離して、株式会社の民主化の達成という根本的な立場を打ち出して、そして、いかなる方法をもってするも株式の譲渡を妨げ、制限を加えることはできない、こういうことになったのでありまするが、しかるに、今度の改正案は、定款をもってする限り、いかなる会社においても株式の譲渡制限を行なうことができる、こういうふうな改正をするものでありまして、この譲渡制限復活の理由としては、会社荒らしや会社の乗っ取り行為を防止することにより会社の運営の安定に資するということがいわれておるのでありまするが、これは反面においては、無謀な経営者好ましからざる会社理事者を不当に擁護する結果になるおそれがあるのであります。さらに、この改正案には、株式の譲渡制限に反対の株主については、その投下資本の回収について、当該株主保護に関する規定を設けているので、それで十分である、こう言われておりまするが、その規定は、だれか委員の質疑にもありましたように、四十数日かかる。こういう長期間を——いわゆる裁判所で持ち株の売買価格の公平ということを決定するためには四十数日かかる、そういうことになりますと、この株式に対する利用価値が少なくなる、結局株主の利益保護に欠ける、こういうことになるわけであります。
それから改正案の三百四十八条によりますと、株式の譲渡制度を行なうための定款変更のための株主総会は、総株主の過半数が出席し、かつ発行済み株式の総数の三分の二以上の多数の賛成を必要とすることになっておるが、株主数の非常に多い会社において、数千人の株主が出席し、法の規定するような条件を満たす株主総会を持つことができるかどうか、これは疑問であります。かえってこれは形式的な株主総会を助長することになるおそれがあると思います。
さらに、株式の譲渡制限に踏み切ることのできる会社は、同族会社及び株主数の比較的少ない中小会社に限られるものと思われるのでありまして、さらにまた、この法文の中に、改正法案の適用対象を明らかにしないことには、やはりこの業界において無用の混乱を招くことを避けることはできないのじゃないだろうか、こういうふうに考えられるわけであります。
次に、額面株式と無額面株式の変更の問題、これは私も質疑いたしましたが、現在無額面株式を発行しているのは、資料によると、三菱倉庫、住友金属、及び富士観光の三社にすぎない。だから、いま特にこの規定を設ける必要があるかどうか。だれか、きのうの参考人の意見では、それを設けておると、規定があると、そういうことを利用することがあるかもわからぬ、現在は三つの会社にすぎないけれども、今後あるかもしれない、そのために賛成だという無邪気な意見もあったわけですが、やはり、額面株式と無額面株式との問題については、お互いに相互変更を認める必要がどこにあるかという点がどうしてもわれわれとしては認められない。したがって、法律改正の緊急性はない、一部を改正するという緊急性はこの点はないのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
次に、株式譲渡の方式については、従来、株式の譲渡は、株券に裏書きするか、または譲渡証書を作成し、交付するという方法によってこれを行なうことになっていたのを、今度改正しまして、改正案は、株券の交付をもって足りることとしている。これによりますと、一面においては株式譲渡が簡単になり、その流通を助長することになり、実際上株券の取り扱いが簡単にはなりますけれども、他面においては、先ほど堀委員の質問にもありましたが、株券が盗難、紛失その他の事故によってその所持を失ったものは、結局その権利を喪失してしまうことになるわけでありまして、これでは株主の権利保護が薄くなるばかりで、株券を対象とする犯罪が多くなる。さらにまた、証券市場に混乱をも一たらすおそれがある。したがって、記名株式制度を堅持する限り、この譲渡方式の変更は不必要である、かように考えるのであります。
次に、改正法のような譲渡方式に切りかえたとしましても、たとえば株主から会社に対して株券の紛失、盗難その他を事由とする株主名簿の書きかえ停止の事故届けが出されますと、会社としては問題の株券を持参して株主名簿の書きかえを求めてきた者があってもたやすくこれに応じることができない、こういう実情にあることから見て、この法の改正は真に会社の暴力をはばむことに役立つかどうか、こういう点については疑わしいのであります。
さらに、現在業界における株式事務の混乱は、株式の券面額は一株五十円であるから、株券数が天文学的数字にのぼっておる。したがって、券面額の引き上げ、端株の整理による大型株券化などを、任意合算の表示株券制度を推進する、こういうような地道なことを行なうことによって問題の根本的解決をはかり、これにより株券の絶対数を少なくし、その上で届け出印鑑制度の復活その他、株主の保護をはかるほうが急務でありまして、改正案による手段だけで株式事務の混乱を解決するには足りないと思うのであります。
さらに、この改正案の成立した場合における株主保護の方策として、株券の不発行とか、株券の寄託制度というようなものが設けられておりますけれども、それは少数の安定株主の保護手段にとどまり、株式によって金融をはかり利益を得ようとする一般株主の保護にはならないと思います。かえって株式の流通を阻害し株式による換金の不便を来たし、株券の再発行とか寄託株券の返還請求等のため、会社の株式事務に繁雑を来たすおそれがあると思うのであります。
次に、議決権の不統一行使の問題、改正案は原則としてすべての株主に対して議決権の不統一行使を認めておりますが、それは議案に対する賛否の集計その他の面においてかえって株主総会の円滑な運営を阻害することになるおそれがあると考えられるのであります。さらに改正案は、議決権の不統一行使を認めながら、代理人を一人に限ることとしておりまするが、この点についてはあまり論議もなかったようですが、理論的矛盾を来たすのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
次に、新株発行の手続でありまするが、新株発行に関し、現行法のもとにおいては、一般に行なわれてきた証券業者によるいわゆる一括買い取り引き受け、これが問題でありまするが、この一括買い取り引き受けは商法第二百八十条ノ二の第二項に基づくものとされていましたが、先ほど申し上げましたように、最近の判例はこれを否定しております。このように第二百八十条ノ二の第二項の解釈としていわゆる一括買い取り引き受けが認められるかどうかについては議論の存するところである。したがって、これを商慣習として行なわれておる、こういうふうに言われますけれども、判例はこれを否定した。これが私冒頭に申し上げましたように、訴訟の段階において商慣習が真に慣習法としてできておるならば、そういう判例にはならないはずである。これは立証の不十分か、あるいはまた商慣習として裁判所が認めるに足りないという結果であろうかと思います。
さらに、特に中島参考人から言われたことですが、二百八十条ノ二の第二項は、株主以外の者に新株の引き受け権を与える場合には、株主総会の議決を要すると同時に株主以外の者に新株引き受け権を与えることを必要とする理由を明らかにしなければならない。ところが、単に株主の利益保護にとどまらず会社の支配権防止の趣旨を明らかにする、こういうことになっておりますが、単に特に有利と、こういうふうにのみ規定してあるわけであります。この有利の問題についてはどれを、どこを基本にするか、やはり現在でも問題であるけれども、やはりこういうふうに有利ということを規定する以上は、今後もこの問題の解決は残るわけです。第二項に「特ニ有利ナル発行価額」こうあります。これは何を基準としていうのであるか、やはり結局こういう抽象的なことば、文字を使っておれば、会社に対しては無用の紛争を招くおそれがある。であるから、現行法でも問題がある。しかしながら、これは改正案でもやはり問題がある。問題があるなら改正の必要はないじゃないか、こういうことになると思うのであります。
次に、新株引き受け権の譲渡の問題であります。新株引き受け権証書は、有価証券の一種として売買取引の対象となるわけであります。そこで、その印刷その他のていさいからあまりに簡単になると、新株申し込み書、証拠金、領収証、それと同様になるわけであります。したがって多数の偽造が激増する。したがって取引市場の混乱するおそれがある。さらに今度の規定によりますと新株引き受け権証書をつくることになっておる。そうしますと、大体この証書をつくるのに三十円ないし四十円ですから、一株が五十円とするならばこの新株引き受け権証書をつくるのに三十円ないし四十円かかったら、会社資本の新株の資本は幾らになるか。十円ないし二十円になるでしょう。さらにまた、これは法文からいけば数万株持っている人が一株ずつの証書を全部出してくれ、こう要求された場合に実際上の事務手続がどうなるかというと、これは手続上の困難ができまして実際上これは行なわれない。これを忠実にやれば一株について三十円ないし四十円もかかるということになればその資本はどうなるか、こういう問題になるわけであります。こういう点については、私自身はまだ質問をしておりませんけれども、法務当局はどう考えておるか。しかしながら、改正案を押していけばこういうことになるはずですから、この新株の、いわゆる資本増資の新株発行について実質上の増資になるんじゃないか、こういうことが考えられるわけであります。
まだいろいろ指摘すればたくさんありますが、以上のような点で実質上不可能な点、それからそういう緊急性もない点も多々あるわけでありまして、本法案は、もっとやはり商法全体から考えて、一貫した社会経済の実情にマッチするような改正を希望するのでありまして、本法案については反対であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/6
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007・大久保武雄
○大久保委員長 吉田賢一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/7
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008・吉田賢一
○吉田(賢)委員 簡明に、民社党を代表いたしまして、本法案に賛成の意見を申し述べます。
申すまでもなく、この法律案の要点は、一は株式の譲渡制限の復活二は額面株無額面株の交互変更可能の規定、三は、株式譲り渡しは株券の交付をもってなし得る譲渡方式の変更、四は、議決権不統一行使可能の規定を設けた、五は、新株発行の手続の規定、六は、新株引き受け権譲渡の道を開いた。さらに七は、転換社債の転換請求に際し、議決権行使の制限をなし得るものとした、以上七点でありまするが、要するにこの改正案は、いまの社会経済の大きな動きという観点からいたしますると、きわめて部分的の、さらに不十分な面はずいぶん起こっておると思うのでありまするが、一、二これらの点を指摘いたしまして、私は直ちに結論に入ってまいりたいと思います。
第一の問題点は、譲渡制限につきまして、株主の利益を軽視しないかというような点でありまするが、これらの点につきましては、私自身はこの改正案を出すに至ったいろいろな社会事情、たとえば株主とそれから各株主間の利害、また意見の相違、あるいは会社の存在の利益、これら等が一致しないことがあり、あるいはそれが重大な会社存立危機の不幸な事態におちいったことも多数にありますので、できるだけ未然に防ぎたいのが本改正の理由でもあるようですから、これらの諸点を考えて株主権の擁護につきましては、さらに法の各規定の運用面も考慮して補完すべきではないかと私は考えております。
譲渡方式の問題でありますが、これにつきましてもだんだん質疑応答で指摘されておりましたが、盗んだ株も、譲り受けた株も見分けがつかぬじゃないかという問題は、確かにそのとおりであります。そのとおりでありますので、これらにつきましては何らかの方法で——いまの改正法案が実施されますと、あたかも株式が普通の動産化する状態でありますので、今後法制審議会あたりにおきましても、さらに検討を加えまして、そのような動産ではない、紙ではあるけれども一紙ではない、ほんとうに重大な権利の表象であるという点にかんがみまして、私は何らかの方法でこれを十分に保護することを考えていかねばなるまいと思うのであります。
さらに問題点は、新株発行の手続でありますが、この中に特に有利なというような文句がついておりまして、この点とかく議論の焦点になったようでございますが、こういうあいまいな字句につきましては、しかるべき基準を相当明確にするという努力が論議されていくのでないと、かえっていろいろと紛議の種をまいたことになるのじゃないかと思うのでございます。
その他転換社債の問題、新株引き受け権の譲渡の道等についても若干問題があるのでございますけれども、要するにこれは法律が一切の社会事象に対してすべて満足を与えるものではないのでございますから、いつの時代におきましても激しい流動の中におきまして、特に商法のごときは、商法の規定の適用は、われわれの経験からしましてもいろいろ不満足、不備、これではということがよくございますので、多く指摘されましたごとくに、この改正につきましては現在のたとえば会社荒らしとか総会屋とかあるいは株式の流通の問題とか、会社企業の安定の問題とか、あるいはまた別の角度から株主権の保護の問題とか、こういったことにこたえようとするのであるが、最終的な結論でないということ、ただし現時点におきましては私どもはこれに賛成の意を表し、進んで法制審議会におきまして商法全体にわたりまして、これは総則からあるいは株式会社編、その他いろいろな角度から商法全般にわたって相当改正を要するものが随所にあるとわれわれは存じておりまするので、これを契機といたしまして抜本的な改正に踏み切っていく、こういうふうに強く要望をいたしまして本法案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/8
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009・大久保武雄
○大久保委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
商法の一部を改正する法律案について賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/9
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010・大久保武雄
○大久保委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
次に、おはかりいたします。
ただいま可決せられました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/10
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011・大久保武雄
○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は付録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/11
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012・大久保武雄
○大久保委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後二時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X03019660422/12
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