1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月一日(金曜日)
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議事日程 第二十三号
昭和四十一年四月一日
午後二時開議
第一 国有資産等所在市町村交付金及び納付金
に関する法律の一部を改正する法律案(内閣
提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 国有資産等所在市町村交付金及び納
付金に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出)
都市開発資金融通特別会計法案(内閣提出)
災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に
関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出)
電波法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び
放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)の
趣旨説明及び質疑
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/0
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001・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/1
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002・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 日程第一、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
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003・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長岡崎英城君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔岡崎英城君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/3
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004・岡崎英城
○岡崎英城君 ただいま議題となりました国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、民間空港が所在する市町村の財源の充実をはかるため、民間空港の用に供する固定資産を市町村交付金の対象とし、国が管理している第一種及び第二種の空港については国が、都道府県が管理している第三種空港については都道府県が、それぞれ所在市町村に対して交付金を交付しようとするものであります。
本案は、二月十七日付託され、同月二十二日大西自治政務次官から提案理由の説明を聴取いたしました。昨三月三十一日、質疑を終了、討論を省略して採決を行ないましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対して、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案により、本法対象資産の評価の適正化及び国有林野交付金の固定資産税負担との均衡化について附帯決議を付することに決しました。
右、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/4
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005・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/5
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006・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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都市開発資金融通特別会計法案(内閣提出)
災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/6
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007・海部俊樹
○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
この際、内閣提出、都市開発資金融通特別会計法案、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/7
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008・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/8
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009・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
都市開発費金融通待別会計法案、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/9
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010・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事金子一平君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔金子一平君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/10
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011・金子一平
○金子一平君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
初めに、都市開発資金融通特別会計法案について申し上げます。
この法律案は、別途今国会に提出されました都市開発資金の貸付けに関する法律案により行なおうとしております地方公共団体に対する都市開発資金の貸し付けに関する収支を明確にするため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理しようとするものでありまして、そのおもな内容は次のとおりであります。
まず第一に、この特別会計は、大都市の既成市街地における工場等の移転あと地または都市計画上重要な都市施設の用地の買い取りを行なう地方公共団体に対する国の貸し付けに関する経理を行なうことを目的とするもので、建設大臣が管理することといたしております。
第二に、この会計の歳入は、一般会計からの繰り入れ金、借り入れ金、貸し付け金の償還金及び利子並びに付属雑収入とし、歳出は貸し付け金、借り入れ金の償還金及び利子、一時借り入れ金の利子、事務取り扱い費並びに付属諸費といたしております。
第三に、貸し付け金を支弁するため、必要があるときは、この会計の負担において借り入れ金をすることができることとしております。
なお、この特別会計は、昭和四十一年度におきましては、一般会計からの繰り入れ金五億円及び資金運用部からの借り入れ金十億円の計十五億円をもちまして貸し付け金に充てることとしております。
次に、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
御承知のとおり、災害により住宅または家財の半額以上の損害を受けた者については、いわゆる災害減免法により、災害を受けた年分の所得金額が百二十万円以下の場合に限り、所得金額の多少に応じて、所得税の減免が行なわれることになっているのでありますが、この法律案は、最近における所得水準の上昇等に顧み、この所得限度額を次のとおり引き上げようとするものであります。
すなわち、所得税の全部が免除される者の所得限度額を五十万円から百万円に、所得税が二分の一軽減される者の所得限度額を八十万円から百五十万円に、所得税が四分の一軽減される者の所得限度額を百二十万円から二百万円に、それぞれ引き上げるとともに、この改正に関連して、源泉徴収所得税の徴収猶予を受けることができる者の所得限度額についても、百二十万円から二百万円に引き上げることといたしております。
以上の両案につきましては、審査の結果、木四月一日、質疑を終了いたしましたが、両案に対して、私、金子一平外三十八名より、自民、社会、民社の三党共同提案による修正案がそれぞれ提出されました。
修正案の内容は、原案において「昭和四十一年四月一日」からと定められております両案の施行期日を、「公布の日」からとし、なお、都市開発資金融通特別会計法案につきましては、昭和四十一年度予算から適用することに改めようとするものであります。
次いで、採決いたしましたところ、両案に対する修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、よって、両案は修正議決となりました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/11
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012・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これより採決に入ります。
まず、都市開発資金融通特別会計法案につき採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/12
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013・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
次に、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/13
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014・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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電波法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/14
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015・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 内閣提出、電波法の一部を改正する法律案、及び放送法の一部を改正する法律案について、議院運営委員会の決定により、趣旨の説明を求めます。郵政大臣郡祐一君。
〔国務大臣郡祐一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/15
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016・郡祐一
○国務大臣(郡祐一君) まず、電波法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、放送その他の分野における電波の使用の発達と電波監理の実績にかんがみまして、周波数の計画的な使用をはかるための制度を設けますること、放送局の免許の基準及び手続を整備すること等の必要がありますので、これらの事項につき所要の改正を行なおうとするものであります。
次に、その要旨を申し上げます。
改正の第一は、周波数の計画的な使用であります。これは、電波を使用する業務の種別に応じまして、業務別の周波数分配計画を定めますとともに、これに基づきまして、放送局等に対する周波数使用計画を定めることとしようとするものであります。
第二は、放送局その他の無線局の免許の審査基準を整備することであります。これは、申請の無線局が周波数の分配計画または使用計画に適合すべきこと、及びその開設が公益上必要なものであるべきことを明定いたしますとともに、一般放送事業者の放送局につきましては、放送法に定める放送事業者としての適格性の要件を満たすべきこと等を加え、また、無線局の再免許の審査は業務の実績に照らして行なうことを明らかにしようとするものであります。
第三は、電波監理審議会への諮問事項とこれに関する公聴会であります。これは、さきに申し述べました周波数の分配計画または使用計画の作成、無線局の再免許の処分等を新たに諮問事項に加えますとともに、これらの諮問事項につきましては、従来の聴聞を公聴会等に改めようとするものであります。
なお、以上のほか、所要の規定の整備をすることといたしております。
次に、放送法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、放送の健全な発達をはかりますため、放送に関する国の施策の目標を明確にし、教育のための放送の放送番組に関する規定を整備し、放送世論調査委員会の設置運営に関する規定の整備、その他放送番組の適正化をはかるための措置を講じ、放送事業を営む者に対する免許の規定を設ける等、放送に関する法制の整備を行なう必要がありますので、これらの事項につきまして所要の改正を行なおうとするものであります。
次に、その要旨を申し上げます。
改正の第一は、国内放送の施策等に関する事項であります。この法律の目的といたしております放送の規律の原則に、教育の目的の実現と教養の向上に資することを加え、また、国内放送は、日本放送協会及び一般放送事業者が行なう体制を明らかにするとともに、置局に関する施策の目標を定めようとするものであります。
第二は、放送番組の適正化に関する事項であります。国内放送の放送番組の編集の準則といたしまして、青少年の豊かな情操の育成に役立つようにすること等の基準を設け、かつ、国民の一般的教養の向上に資するようにするとともに、放送番組の審議機関に関する事項を整備し、また、協会及び一般放送事業者は、その協議によって、公衆の意見を放送番組に反映させるための放送世論調査一委員会を設けるものとしようとするのであります。
第三は、日本放送協会に関する事項であります。協会の目的について、国内放送を行なうほか、国際放送並びに放送及びその受信の遊歩発達に必要な業務を行なうこと、放送受信料について受信設備の設置者にその支払い義務のあること、国内放送の放送番組の編集について教育番組を有すること、及び教育番組審議会を置くべきことを明らかにいたしました。また、協会の業務、財務等に関する事項、経営委員会の議決事項及びその委員の任命に関する事項を整備し、協会の財務の諸表には監査報告書を添えて提出すべきものとしようとするものであります。
第四は、一般放送事業者に関する事項であります。これにつきましては、新たに放送事業を営むためには郵政大臣の免許を要することとし、その基準といたしまして、同一の地域内に同一の種類の放送を行なう二の放送局を開設しないこと、これに準ずる支配をしないこと、放送番組に関する規定を順守すると認められる法人であること等を定め、また、その国内放送の放送番組の編集につきまして、当該地域の諸条件に応ずるようにすべきものとしようとするものであります。
なお、以上のほか、所要の規定の整備をすることといたしております。
以上が二改正法律案の趣旨でございます。(拍手)
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電波法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/16
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017・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。森本靖君。
〔森本靖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/17
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018・森本靖
○森本靖君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました放送法の一部を改正する法律案及び電波法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係各閣僚に対して若干の御質問をいたしたいと存ずる次第でございます。
まず第一にお尋ねしたいことは、両法改正案の立法の経過についてでございます。
わが日本社会党は、今日テレビ、ラジオが広く国民の間に普及し、社会生活の上に重要な役割りを果たしつつあるばかりでなく、将来の国家の方向にも至大の影響を及ぼすものであることや、放送法がわが国ただ一つのマスコミ立法として、憲法の保障する表現の自由のあり方にもかかわる重大性を持っている事実などにかんがみ、との両法の改正については、いたずらに党利党略にとらわれることなく、大局的な立場に立って超党派的に検討すべきであると考え、臨時放送関係法制調査会の答申が提出されまして以来、しばしば逓信委員会の会議においてこれを強調してきたのでございます。これに対し徳安前郵政大臣は、委員会の答弁におきまして、「私どもこれは独善的に独走する考えはございませんので、各方面の御意見ももちろん聞き、野党の諸君の御意見も伺いながら、提案に至るまではそうあまり大きな論争というものを残さないように進めたい」と言明されたのでございますが、今回の立法作業の過程においては、全く野党を無視し、政府・与党のみで隠密裏に作業を進め、しかも新聞報道等によれば、大詰めの段階に至って与党一部の諸君の突き上げに押され、答申を離れた重大な決定を行なったというのでございます。かかる政府の仕打ちは、郵政大臣の言明に反し、政治的道義にもとるばかりでなく、政府・与党が、この言論立法にみずから政治的な争いを導入した行為として、きわめて遺憾しごくでございます。(拍手)これにつきまして総理は、佐藤内閣の前閣僚の行なった公約が無視された事実について、内閣としての責任をどうお考えになっておられるか、また、郵政大臣は、当然引き継ぎを受けているはずの前大臣の約束を果たさなかったことについて、どう責任をとられるつもりであるか、明確にお考えを願いたいと思うのでございます。(拍手)
続いて法案の内容について若干の質問を行ないたいと存じます。
この政府提出の二法案を通覧いたしますると、まず第一に受ける印象は、政府が他を責めるに厳格である反面、みずからを戒めるにきわめて寛容であるということでございます。すなわち、この政府案は、NHK、民放を通じまして、放送事業者に対しましては、後述のように各種各様の規制強化をはかり、ことに民放については、後来からの無線局免許に加えて、新たに事業免許制度を設け、二重免許という異例の措置さえも講じておきながら、行政の規律に関してはわずかに規定の整理を施したにとどまっておるのでございます。
さきの臨時放送関係法制調査会の答申は、その「まえがき」において、「放送に関する問題点は、放送行政の基本的方針の確立、免許を中心とする放送行政の一貫性の確保、番組内容の適正化」の三点にありと認められておるのでございます。この三重点のうち、みずからの行政実績にかかる二点については、ほとんどこれを改めようとしていないのでございます。
今日、わが国の放送界には、政府が誤った行政処分を行なった結果生じた幾つかの難問題がございますが、その典型的な実例といたしまして、私は東京12チャンネルの問題を取り上げてみたいと存じます。
御承知のとおり、東京12チャンネルは、昭和三十七年十一月競願数社を排しまして、科学教育専門のテレビ局として予備免許を受けたのでございますが、この免許処分をめぐっては、競願社より訴訟が提起され、東京高裁においては郵政省が敗訴したばかりでなく、肝心の12チャンネル自体が、開局以来極度の経営不振を続け、昨年の再免許にあたっては、異例の条件をつけられるという仕儀におちいった上、最近においては従業員の約半数を整理、放送時間を約三分の一に短縮し、わずかに命脈を保っているような状況でございまして、行政処分の不当を事実をもって証明する始末となっておるのでございます。
上述の経過についてみても明らかなとおり、この12チャンネルの問題は、行政処分の誤りに基因することは争う余地のないところでございまして、政府の責任はきわめて重大であるといわねばなりませんが、総理並びに郵政大臣、さらに同局の経常主体である日本科学技術振興財団の監督者たる科学技術庁長官は、東京12チャンネルの免許と監督についての責任をどう反省し、また今後どういう対策を講ずるつもりでおられるか、この際、明らかにしていただきたいと思うのでございます。(拍手)
わが党は、この東京12チャンネル問題をはじめとする放送界の混乱は、主務大臣たる郵政大臣のひんぱんな交代によって、チャンネル・プランや免許方針など、放送管理の基本的な政策に一貫性を欠き、歴代大臣の思いつき、政治的判断によって思うままに放送行政が行なわれ、行政の公正が軽視されてきたことに原因するものと見られるものでございます。かかる欠陥を是正するためには、調査会の答申に従って、放送行政に関する委員会を設置し、民主的に選出された委員の議決に基づいて行政を行なうことが何よりも必要であると考えるのでございますが、政府はなぜ答申をいれようとされなかったのか。今次改正案に見られるような免許規定の手直し程度で、行政の公正と一貫性が確保できるとお考えであられるのか、あわせて郵政大臣より答弁を願いたいのでございます。
次に、わが党が重視いたしますのは、放送番組に対する規制の強化であります。
わが日本社会党は、すでに「放送法改訂に関する党の態度」を公表しておるのでございます。すなわち、放送の自主的な発展は、国会による直接コントロール、郵政大臣の人事や予算への介入、政府などの放送命令等々の政治的干渉を完全かつ徹底的に排除することによってなし遂げられる。したがって、放送番組の法律や行政機関による規制は行なうべきでない、また、放送時間や民放系列化を法的に規定すべきでないとの考えを公表しておるのでございまするが、この政府案には、番組規制の意図が強くうかがわれ、しかも一応は、直接規制の形をとらないという、きわめて巧みな擬装が施されているのでございます。わが党の規制の徹底的排除とは全く対照的な意図のもとに成文化されているのでございます。番組編集準則を強化して、NHK、民放、一律にその順守を求めることにしたのをはじめ、従来より強化された番組審議機関の上に、法定の放送世論調査委員会の屋上屋を重ね、さらに答申を越えて、推賞や勧告の権限を付与したほか、事業免許制度を新設して事業監督の道を開くなど、陰に陽に事業者に対する締めつけを強化しているのでありまして、放送による表現の自由に対する重大な脅威となることは疑いないところでございます。特に、放送法による事業免許は三カ年間の期限であり、事業免許としては異例中の異例であり、前代未聞の法案といわざるを得ないのでございます。(拍手)言論の規制については、国民は、戦前、戦中を通じて、きわめて深刻な体験を持っているのでございます。政府の意図については敏感にこれを国民が見抜き、かつての大本営発表のような放送の悪夢の再現を極度に警戒しているのでございます。申すまでもなく、表現の自由は、民主体制下における不可侵の原則であり、放送法もその第一条において、放送による表現の自由を確保することをうたっているのでございます。放送規律の問題は、放送だけではなく、ひいてはマスコミ全般のあり方の上にも重大な影響を持つ問題でありまするから、特にこの際総理にお伺いしておきまするが、総理は、言論の自由保障についてはどうお考えになっておられるか、また、今回の改正案はこれを侵すものでないとお考えになっておられるかどうか、御所見を承りたいのでございます。
放送番組の規制にかかる改正規定の中には、さらに不可解な点が若干ございます。その例をあげてみまするならば改正法第三条の二第一項の第五号として、放送番組の編集準則に新たに加えられた「人命若しくは人権を軽視し、又は犯罪若しくは暴力を肯定することとならないようにすること。」という規定でございます。番組編集準則には、従来から、「公安及び善良な風俗を害しないこと。」という定めがあり、新規定の内容は当然この規定中に含まれていると解せられるにもかかわらず、ことさらに「犯罪若しくは暴力を肯定する」云々の規定を設けようとするのはなぜであるか、その意図を疑わざるを得ないのでございます。かつて、安保問題等の際、正常な請願運動をも、左翼暴力などと称して、右翼テロと同列に見ようとした保守的な感覚のもとにこれが設けられたとすれば、危険きわまりないものでございます。(拍手)重ねて申しまするが、この規定は、「公安及び善良な風俗を害しないこと。」という規定が残されている以上は、全く必要のない規定でございます。政府は、おそらく格別の底意はないと言われるでありましょうが、由来、法律というものは、立法者の意思にかかわりなくひとり歩きをするものでございまして、かかる悪用のおそれのある法律はつくるべきでないと考えまするが、これについて郵政大臣の明確な御答弁をお聞きしたいと思うのでございます。
また、この放送法改正案に見られる教育放送強化の諸規定は、文教当局筋の強い意向に基づくものと伝えられており、この改正を手がかりに、文教当局が放送に介入を企図しておるのではないかとも憶測されるのでございますが、文教当局の放送介入が不当であることは申すまでもないところでございます。教育面における放送機能の充実を望むならば、文教当局は、むしろ、そういうことよりか、放送利用設備の整備にこそ専念すべきであると考えまするが、文部大臣は、この際、文教当局としての意向を明確にしておいていただきたいと思うのでございます。
次に、電波法の改正要点について若干お尋ねしたいと思います。
放送関係法制の改正問題が起きて以来、事業関係者や有識者の間において最も強く要望された事項の一つは、放送秩序の確立でありまして、現に混乱や行き詰まりを生じている放送界の既成秩序を是正し、新しい放送秩序をつくらなければならないのでございます。さらに東京12チャンネルの問題について申し上げましたように、放送秩序の混乱は、主として行政処分の誤りに由来するところでございまして、放送行政秩序の回復をはかることが絶対に必要な現状でございます。
かかる観点より今回の電波法の改正点を見ますると、周波数計画に関することのほかは、大体において旧制度の踏襲でありまして、免許関係規定中の審査基準も、旧来どおり審査すべき事項を示したにとどまり、また、新たに設けられた周波数計画関係の規定でも、計画の策定基準についてはきわめて抽象的な定めをしているにすぎず、具体的な重要な事項については、すべて郵政大臣の裁量にまかせられることになっているのでございます。もとより複雑多岐な条件のもとに放送の秩序を立てることは決して容易なことではございません。これを律する基準をつくることは不可能に近いとさえいわれている今日の状態でございます。さればこそ、調査会の答申は、具体的な電波使用計画の策定を、放送に関する委員会の判断にゆだねることによって、政策の公正を期待しようとしたのでございまするが、政府案はこれをいれなかったため、その公正の期待を失わせ、実質的には現状とほとんど変わらない結果に終わったと見られるのでございます。
かように、法律で見る限りにおいては、放送秩序の確立を約束する何ものもないのでございます。調査会が最も力点を置いて答申したと見られる行政改善の問題が、かように内容のあいまいな改正となってあらわれたことは、はなはだ遺憾でございまして、今回の放送関係法改正全体の意義を失うものでございます。
郵政大臣は、わが国放送界のあり方として、いかなる放送秩序を立てるおつもりであるか、また、この改正規定の実施については、いかなる手段をもって電波使用の公正をはかっていかれるつもりであるか、具体的に、かつ詳細に御説明を願いたいと思うものでございます。
以上数点にわたりまして御質問いたしましたが、最後に、特に三百申し上げておきたいと思います。
わが日本社会党は、本来かかる放送関係法制の改正のような問題を、与野党間の争点とすることを本意とするものではございません。しかしながら、今回の政府提出の両法改正案は、上述のような諸点よりして、遺憾ながら、きわめて難点の多い法案と見ざるを得ないのでございまして、これが自由民主党政権下において施行されることは、放送事業の将来にとってきわめて危険であるばかりでなく、日本国家の方向にとっても暗影を投ずるものでございます。わが日本社会党は、かかる諸点から、今後の委員会審議の段階においては、本法案については徹底的に慎重な審議を行ない、両法案の反動性と危険性を国民の前に明らかにしようと考えておる次第でございます。
以上をもって、簡単な質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/18
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019・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
今回の放送法並びに電波法の一部改正案、これはわが国の放送が十数年の経験を積み、その間、この経験も生かさなければならないが、同時に、国民の放送に対する要望、これを背景にいたしまして、今回、今後の放送のあり方、同時にまた、電波政策の基本を定めようとするものであります。その意味におきまして、御指摘にもありましたが、まことに重大なる意義を持つ電波法並びに放送法の改正だ、かように私ども考えております。したがいまして、一昨年設けられました臨時放送関係法制調査会の答申をもとにいたしましたことはもちろんのこと、各界、各方面の方々の御意見を参酌いたしまして、そうして今回の成案を得たのであります。
前郵政大臣徳安君から、この改正はそういう意味で非常に慎重に扱う、また野党の諸君の御意見も十分聞く、こういうようなお約束をした、こういうことでございますが、私は、おそらく徳安君の考え方は、まことに重大なる法案であるから、各界、各方面の意見をたんねんに参酌いたしまして法案をつくる、かように考えたことだと、かように思っております。したがいまして、ただいまこの案についてのいろいろの社会党の立場など、森木君からお話がありましたが、どうか委員会を通じまして十分御審議をいただきたい、かようにお願いをいたしておきます。
12チャンネルの成績につきましてのお尋ねがありましたが、私は、12チャンネルがたいへん苦しい状況にある、かように聞いておりますので、当事者の一そう格段の努力を期待すると同時に、この詳細につきましては、担当大臣から答えさせたいと思います。
また、冒頭に申しましたように、今回の法律はまことに重大な意義を持つものであります。近代デモクラティックな、民主主義の国家として、最も大事なことは、申すまでもなく言論の自由、同時にまた報道の自由、これが確保されなければならないのでございます。御指摘のとおりであります。したがいまして、今回の法律改正におきましても、この言論の自由を尊重する、報道の自由を尊重する、これはもうどこまでも意を用いたところでありますから、十分に保障されておる、かように私は考えております。
また、その目的とする放送法第一条にはっきり明記いたしておりますように、いわゆる不偏不党で、また放送表現の自由も確保されておる。同時にまた、放送番組が最も重大なる役割りを果たすものでありますが、この編集にあたりましては、放送当事者の専権と申しますか、その自由でございます。何人もこれに干渉するものではないのであります。今回の法律におきましても、これらの原則は十分守られておる、かように私は確信をいたしております。どうか、詳細については委員会において御審議を願いたいと思います。(拍手)
〔国務大臣郡祐一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/19
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020・郡祐一
○国務大臣(郡祐一君) 立案の経緯につきましては、ただいま総理からお答えがございましたように、臨時放送関係法制調査会の答申を基礎にいたしまして、前大臣の言明にもございましたように、各方面の意向を十分しんしゃくいたしました。したがいまして、社会党政審から御発表の「放送法改訂に関する党の態度」等、あらゆる方面の意見を参酌いたしまして、成案に到達した次第でございます。
次に、放送事業に規制を加えるのではないか、また、放送行政に新しいどういう秩序を立てるかという点は、基本的な大事な問題だと思いますので、初めにそれをお答えいたします。
放送法では、国内放送体制として、民放にNHKと相並んだ地位を与え、そしてそれぞれの複数の番組の聴視を放送局置局の目的といたしまして国内放送の原則をきめましたし、電波法では、周波数分配計画と使用計画を作成いたしまして、それによって使用させる周波数を定め、その手続は電波監理審議会の議決を十分尊重いたしまして行なう、法律上の保障を明らかにして処遇をいたしまするから、郵政大臣の恣意による心配もなければ、放送事業に新たな規制を加えることにも相なりません。
その点に関して、事業免許についてお触れになりましたが、ただいま申しましたように、民放にNHKと相並んだ地位を確保いたしまするためには、民放は個々の事業者がその主体でありまするから、これを保障するために、放送法上、事業の免許という新たな位置を与えたのであります。したがいまして、かかる法的な性質でありまするから、法律におきましても何ら独占的な権利も与えませんし、また、事業内容の監督も規定していないのでありますから、免許に籍口して介入する余地は全くないのであります。
次に、番組についてのお尋ねがございました。放送が国民の一般的教養の向上に資しますることは、国民の広い要望でございます。したがいまして、番組審議機関について新たにこれを充実して、公表して、国民と結びつくような手だてを講じ、また、民放とNHKの協議によりまして、放送世論調査委員会を設置いたしまして、国民の広い世論というものを番組に反映させることにいたしております。これらはすべて編集の自由の保障を前提としておりまして、もっぱら自主的な向上を期待しておる次第でございます。
特に暴力否定を規定した意図についてお尋ねがございました。番組編集の準則に、人命、人権を尊重し、犯罪、暴力を肯定することにならないように、犯罪、暴力を否定するようにということは、番組の現状に対するきびしい世論がこの点に特に集中しておるので、それにこたえたものでございます。もとより、御指摘のように、現行法の「公安及び善良な風俗を害しないこと。」というのに含まれることではありますが、特に特記して実効を期待しておるのであります。犯罪、暴力の否定でございまするから、これについて政治的意図のないことは、きわめて明瞭だと思います。
次に、12チャンネルについてのお話でございます。当初免許の際、事業計画、収支見積もり等を十分検討いたしまして、科学技術教育専門局として免許いたしたのでありまするが、当時におきましては、これが最も適当だと考えましたことは、本院の科学技術振興対策特別委員会の御決議とも一致しておる次第でございます。再免許にあたりまして、事業改善の状況が不満でありましたので、これにつきましては誓約をいたさせ、また、条件をつけまして、その条件の履行を前提に、継続開設が可能と判断したのであります。しかしながら、現在経営が困難でありますることは、まことに遺憾でございまするが、財団が、科学技術教育専門局の意義に徹しまして、局開設の目的達成にみずから努力することを期待しておる次第でございます。
最後に、放送行政委員会について、その設置の必要をお尋ねになりました。放送行政というような、社会的、経済的、文化的に関連するところの多い行政につきましては、いかにその委員会の性格なり機構を考えましても、行政委員会はこれに適しない性質のものでございます。むしろ、行政委員会というものは、政府の責任の所在を不明瞭にするおそれがありますので、電波監理審議会の諮問事項を増加し、公聴会を開く等、諮問的機能は増加いたしましたが、行政委員会は採用いたしておりません。このように法的に十分な手続をとめながら、政府の責任において放送行政の公正と一貫性の確保を期しておりまする政府案について、十分の御理解をお願いする次第であります。(拍手)
〔国務大臣中村梅吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/20
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021・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。
文部当局は教育放送に不当介入するようなおそれはないか、あったらばよろしくないという御趣旨の御質問がございました。これは放送法の第三条にも明記されておりまするように、放送番組編集の自由というものが定められておりますので、文部当局が、教育放送を各放送機関にしていただくことは感謝しておる次第ではありますが、不当介入するようなことは絶対にございません。ただ、同じ教育放送の中で、学校教育放送というのがございます。これは幼稚園、小中学校、高等学校の教科の一部として教育放送をされるわけでありますので、この点につきましては、現行法の四十四条及び今度の改正で組みかえをされました第三条の二の三項、これにこの点を明記されておりまして、放送の内容が、学校教育に関する場合には、「学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠するようにしなければならない。」という、これは命令規定ですか、訓示規定ですか、そういう規定が明記されておるわけでございます。したがいまして、放送機関は、学校教育の放送、教育の一部をなす放送をいたします場合には、この教育課程の基準に従わなければならない。したがって、そういう問題について、教育課程の基準は法令によって文部大臣が定めることになっておりますから、そういう知識を借りにくる、あるいは相談を受けるという場合には、これは学校教育の一部として利用させていただいておるわけでございますから、われわれは積極的にその御相談にも乗り、御協力も申し上げることはいたしますが、決して御指摘のように不当介入のようなことはございませんし、また、絶対さようなことのないように、われわれも十分配慮してまいりたいと思います。(拍手)
〔国務大臣上原正吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/21
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022・上原正吉
○国務大臣(上原正吉君) 私に対しまする御質問は、12チャンネルを免許するにあたりまして、その免許は判断を誤ったものではないか、さらに、12チャンネルが非常な経営不振であるのに再免許を与える、そしてその後ますます不振なるものを放任しておいたのは怠慢ではないか、こういう御趣旨と承ったのでございます。
御承知のように、12チャンネルは、日本科学技術振興財団という財団法人の経営でございまして、科学技術庁は、この財団法人の設立に際しまして免許を与えた責任があるのでございます。しかし、免許を与えまするに際しましては、この財団が行ないまする事業が公益法人としての財団の目的に適合するかどうか、また、テレビ放送も公益に寄与するかどうか、あるいは事業遂行に必要な人的、財的能力があるかどうか、こういう点を調べまして、免許を与えたものでございます。
この財的能力があるかないかに関しましては、百社をこえまする日本の代表的な企業が協力会を結成いたしましてこれを強力にバックアップする、こういう目論見書でございまするから、十分能力がある、かように判断した次第でございます。(拍手)
それから、申し添えますが、財団法人が新しくテレビ放送事業を開始するにあたりましては、郵政省との間に申し合わせがございまして、科学技術庁は放送事業以外の仕事を監督する、放送事業に関しましては郵政省の専管とする、こういう申し合わせができておりまするので、この点は申し添えておきます。
そして、昨年の再免許に際しましては、経常が不振で約十三億円の赤字があるということは、報告を受けまして承知をいたしておりましたが、その際にも、百社をこえる日本の代表的企業が協力会を結成して援助する、こうなっておりまするので、その心配はしなかったのでございます。
それから、この四月から12チャンネルは再建策を打ち立てて実行に着手する予定でございます。この再建策は、二五%認められておりました娯楽放送を一切やめて科学教育放送に専念する、したがって、スポンサーをとることもやめる、そして経費を従来の三分の二以下に切り詰めまして、協力会一木にたよって経営する、どういうことでございます。しかし、これではこの累積しました赤字を急速に解消するということは不可能かと思われますので、この財界を代表する協力会が、さらに一そうの努力を重ねられまして、りっぱに再建できますことを期待いたしておる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/22
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023・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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024・山口喜久一郎
○議長(山口喜久一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105254X03619660401/24
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