1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月三日(木曜日)
午後八時四十三分開会
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委員の異動
三月三日
辞任 補欠選任
木村 睦男君 近藤英一郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 江藤 智君
理 事
岡本 悟君
金丸 冨夫君
岡 三郎君
吉田忠三郎君
委 員
近藤英一郎君
谷口 慶吉君
天坊 裕彦君
中津井 真君
平島 敏夫君
前田佳都男君
松平 勇雄君
吉武 恵市君
相澤 重明君
大倉 精一君
木村美智男君
瀬谷 英行君
浅井 亨君
中村 正雄君
岩間 正男君
国務大臣
運 輸 大 臣 中村 寅太君
政府委員
運輸大臣官房長 深草 克巳君
運輸省鉄道監督
局長 堀 武夫君
運輸省鉄道監督
局国有鉄道部長 原山 亮三君
事務局側
常任委員会専門
員 吉田善次郎君
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本日の会議に付した案件
○国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/0
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001・江藤智
○委員長(江藤智君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。
本日、木村睦男君が委員を辞任され、その補欠として近藤英一郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/1
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002・江藤智
○委員長(江藤智君) 木村美智男君から、委員長不信任の動議が提出されました。よって、委員長はこの席を譲って、理事金丸君に議事を主宰していただきます。
〔委員長退席、理事金丸冨夫君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/2
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003・金丸冨夫
○理事(金丸冨夫君) 運輸委員長江藤智君不信任の動議を議題といたします。
まず、提出者より本動議の趣旨説明を願います。木村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/3
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004・木村美智男
○木村美智男君 昨晩、運輸委員会は連日にわたって慎重な審議を今日まで続けてまいったわけでありますが、きわめて遺憾な事態が発生をいたしましたので、私は委員長不信任の動議を提案をいたしたわけであります。
簡潔にその理由を申し上げたいと思いますが、まず第一番に、参議院の本会議におきましても、今回の運賃値上げ法案というものが、あるいは物価の値上がりに拍車をかけ、結果としては多くの国民大衆に生計費の増加をもたらす、こういう意味できわめて国民生活にとっても重要な法案でありましただけに、冒頭から慎重審議を要望してこの委員会に入ったわけでありますが、委員長も一応は慎重審議のたてまえをとったかに見えました。しかしながら、昨晩のあの時点における状況は、われわれ社会党委員はもちろんでありますが、質疑の通告もいたしておりましたし、わが党の吉田委員が質問の最中であったわけであります。この質疑打ち切りの動議を提案をいたしました谷口議員のとった行動は、きわめて私は不謹慎なものであると言わざるを得ませんけれども、しかし、これを取り上げた委員長の態度は、まさに言語道断であったと思います。
そういう意味におきまして、このような非民主的な委員長が今後委員長としてこの運輸委員会を統括をしていくということにおいては、円滑なる議事の進行ははかりがたい、こういう立場から、私は昨晩委員長不信任の動議を提案をいたした次第であります。
したがいまして、本事案の今後の進行、さらに私たちのこれから国会正常化という問題を申し合わせた前国会のこの決議の趣旨にのっとりましても、さらにまた言論の自由を確保するという立場からいいましても、審議は今後さらに十分慎重を期すべきである、こういう立場で、江藤委員長をここに不信任をし、新しい観点から委員長を選出し直して、そうしてこの本事案の審議の促進をはかりたい、こういう立場で、不信任動議を提案をいたしたものであります。
簡単でありますが、以上委員長不信任の提案理由について申し上げました。終わります。
(「賛成」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/4
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005・金丸冨夫
○理事(金丸冨夫君) 別に御発言もなければ、これより直ちに採決を行ないます。
運輸委員長江藤智君不信任の動議に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/5
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006・金丸冨夫
○理事(金丸冨夫君) 起立少数と認めます。よって、本動議は否決せられました。
委員長の復席を願います。
〔理事金丸冨夫君退席、委員長着席〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/6
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007・江藤智
○委員長(江藤智君) 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑は終局しておりますが、この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、委員長及び理事の申し合わせによりまして、特にこれを許可いたします。中村運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/7
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008・中村寅太
○国務大臣(中村寅太君) 昨日吉田委員の質問に対して答弁をいたさなかった点がありますので、この際補足いたします。
第一に、国鉄の第三次長期計画の権威の問題でありますが、これは第一次、第二次の長期計画とは異なり、閣議了解で政府が承認し、その資金についても特段の配慮をいたすことになっておりますので、十分権威づけられているものと考えます。
第二に、この計画の運賃に依存する度合いはごく一部でありまして、国の財政事情その他からいって、ある程度利用者に負担をしていただくのもこの際やむを得ないと考えたからであります。運賃を国会にかけるという財政法の規定の趣旨は、国鉄が国の基幹交通企業で、その影響するところが広範であるということのために設けられたものと考えます。
第三に、昭和十一年を基準年次とした点でありますが、これは運賃値上げ率の算定の基礎としたものではなく、単に運賃が諸物価に比べてどの程度の上昇率になっておるかの一つの指標として、戦前比較の際に通常よく用いられる昭和十一年を基準年次に選んだだけで、別に他意はありません。
次に、岡委員の質問に対し補足いたします。
国鉄に対する利子補給、政府出資をはじめとし、国鉄経営の基本問題については、すみやかに検討善処します。
当面運賃法改正遅延のため生じた約三十億円の歳入不足については、とりあえず短期借り入れ金によって措置し、次の機会にその約三十億円については財政投融資によって補てんいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/8
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009・江藤智
○委員長(江藤智君) これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/9
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010・岡三郎
○岡三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対し反対をいたします。
反対の第一の理由は、この国有鉄道運賃法の改正によって運賃の値上がりによる物価への影響であります。御存じのとおり、本年の一月一日に米価が改定され、さらに私鉄の運賃が改正され、いままたこの国鉄運賃が改正されようとしております。なお、この後におきましては、郵政関係あるいは電話関係その他各般における公共料金をはじめとする物価値上げというものが控えておるわけであります。政府当局は、国鉄の運賃値上げが及ぼす影響については非常に過小評価しておりまして、その数を〇・三二%と言っておりまするけれども、心理的に、このような連続する値上げというものは、さなきだに生活苦に悩んでおる国民に対して大きな重圧となっていくというふうに考えます。私は、そういう点において、少なくとも政府が国民生活を安定する、そういうふうな立場に立つならば、国鉄に対して大きな出資あるいは利子補給等を考えつつ、しかも一方において国民の生活を救済するために具体的に財政投融資というものを現在よりも大幅に考えて、もって国鉄の第三次長期計画を推進すべきであるというふうに考えるわけであります。
この点につきましては、日本社会党は、さきに衆議院に鉄道整備緊急措置法を提案いたしまして、戦後疲弊した国鉄の再建について大きなる国鉄当事者の努力を要請してまいったのでありまするけれども、国民に対する運賃の値上げ等によってまかなってきた国鉄の現況はすでに限界に来ておる。第三次長期計画を見ましても、その資金計画が、ばく大なる借金をもってこれをまかなう、こういうふうな立場にあるわけでありまして、われわれといたしましては、やはり政府の物価安定と輸送計画緊急対策というものをかね合わして積極的な施策を講ずべきであるという点にあります。
さきに政府は、山一証券の危機に際しましては、相当数の融資を少数の担保においてやってまいりました。あるいは農地報償法案等においては、ばく大なる財政をもって、国家資金をもってこれをまかなおうというふうな現況にあります。しかし、国鉄に対しては、利用者負担である、独立採算制である、そういう美名のもとにすべてのしわ寄せを国民大衆にしているというその現況は、われわれとしてはどうしても容認するわけにはまいらないのであります。特に、この運賃値上げによりまして、低所得者の苦しみはまことに甚大なものがありまして、これに対する特段の対策が政府にないということであります。しかも、そのほか身体障害者あるいは失業者に対するあたたかい施策というものを、社会保障制度において行なうという一言のもとにこれが削られておるということ、こういうふうな点から見て、この運賃値上げというものが勤労大衆に特段に大きなしわ寄せをするということを考えて、反対の第一といたします。
次に、私は、公共負担と企業性の問題、特に国鉄の独立採算制に反対いたします。独立採算という美名のもとに、先ほど申しましたように運賃の値上げにこれが直結する。そうして、日本国有鉄道法に基づいて国鉄は公共の負担に耐えるべきである、こういうことを言っておりまするけれども、そのような形で進行するならば、すべてのしわ寄せが運賃値上げに参ります。運賃値上げも限度がありまするので、結局、企業性というものを守り、独立採算制を守るためには、どうしてももうからない保安対策というものが軽視されてきたのが現状であります。第三次長期計画におきましては二千億をこえる保安対策その他の費用がありまするけれども、しかしこれは、中身は借金であります。やがてあと六年後におきましては、国鉄は借金のこの大きな荷物のもとに運転がつかないような状態になるということをわれわれは考えるわけであります。したがいまして、このような立場から言うならば、いままで公共負担という美名のもとに国鉄にしわ寄せし、その国鉄のしわ寄せが国民にしわ寄せしているこの現況からかんがみて、どうしても公共負担というものを抜本的に洗い直して、そうして国鉄の企業の健全性、国民にしわ寄せすることなく豊かな日本の国づくりに対して貢献できるような国鉄のあり方にわれわれはする責任があると思うのであります。もちろん、農林物資なり、あるいは鉱工業生産物なり、その他学童の学割の問題等多くの問題は、これはやってもらわなくてはなりません。しかし、公共負担ということではなくして、諸外国の例にも見られるとおり、やはり学割等は文教政策でありまするから文部省、あるいは鉱工業生産物というものは、これは通産省関係でありまするから、そちらの対策にまつ、あるいは農林物資等の軽減という問題につきましては、それらの方面の行政措置、国策に基づいての取り扱いというものが深められなければならぬというふうに考えるわけであります。したがいまして、われわれは、今回の投資計画にあるところのこの財政計画というものについては、絶対に承服ができません。どうしても今後政府はやはり、公共性という美名に隠れることなく、国鉄の健全なる経営が国民大衆にしわ寄せすることないように、深甚なる取り扱いをせなければならぬというふうに考えるわけであります。
なお、国鉄の輸送計画なりあるいはその他、われわれとしては国鉄のサービスその他こまかい点がありまするが、そういうこまかい点にはいま触れません。
大きく言って、物価に対する大きな影響、国民大衆に対するしわ寄せ、運賃値上げによって諸物価の高騰にさらに拍車をかけ、国民生活に甚大なる影響を及ぼす点。
第二は、公共投資による美名のもとに国鉄にしわ寄せし、それが運賃値上げと直結して国民大衆に犠牲をしいるという、この運賃値上げについては、われわれは絶対に承服できません。
以上二点を大きく申し上げまして、反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/10
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011・金丸冨夫
○金丸冨夫君 私は、自由民主党を代表して、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に賛成の討論を行なうものであります。
国鉄の現状は、第一次、第二次の五カ年計画による輸送力の増強、輸送の近代化等の実施にもかかわらず、いまなお慢性的輸送力の不足状態を脱却し切れず、列車ダイヤは過密化し、主要幹線の輸送力は弾力性を失い、産業発展の隘路となっておるのであります。このため、国鉄は、昭和四十年度より、大都市付近の通勤輸送の改善、主要幹線の輸送力の増強及び保安設備の整備を主眼とする投資規模約三兆円の第三次長期計画に着手しているのであります。この改正案は、長期計画の実施に要する資金の一部をまかなうために旅客三二%、貨物一七%の値上げを行ない、運輸収入の増加をはかろうとするものでありまして、もし、国鉄が運賃法の改正をせず、現在の運賃水準のまま、不足する財源を借り入れ金に依存するとすれば、昭和四十六年度の末には四兆数千億円の借り入れ金の残高を持つこととなり、経営の維持はきわめて困難な状態に立ち至るのであります。かかる国鉄財政の現状から見て、今回の運賃改正は、国鉄経営の健全化をはかるために真にやむを得ないものと存ずるのであります。
ひるがえって、本計画の実施後の効果を見ますと、輸送力の増強と安全性の確保が達成され、また列車の高速化、輸送方法の近代化等によりまして、輸送時間の短縮となり、取引の迅速化がはかられ、流通費の軽減、ひいては物価の安定という効果をもたらし、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与することとなり、そのもたらす利益は大なるものがあると信ずるものであります。このため、国鉄利用者の負担が若干増加するとするも、これにまさる大なる利益配当を享受し得るものと確信するものであります。
以上の趣旨から、私は本法案に賛成するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/11
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012・浅井亨
○浅井亨君 私は、公明党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法一部改正法案に対しまして、反対の意見を表明するものであります。
反対の第一点は、今回の運賃改正が、国民の納得を得るための必要な手続を踏んでいないからであります。政府与党は、運輸審議会の公聴会の中途で値上げ方針を決定いたしたばかりではありません。昨日の運輸委員会では、質疑打ち切りを強行いたしたのであります。このような国民の意思を無視した暴挙は断じて許すことはできないのであります。
反対の第二は、政府が運賃値上げの根本原因である政府の政策の貧困をたな上げいたしまして、国鉄の独立採算制の美名に隠れまして、大衆負担を当然とする考えに立っているということであります。政府の高度成長政策の失敗が、通勤ラッシュ、過密ダイヤとなってあらわれておるのであります。この点を改めずして国民に犠性をしいているということは、真摯な政治姿勢とは言いがたいのであります。
第三点は、国鉄の第三次長期計画の資金の問題であります。政府は、資金の大部分が借り入れ金に依存していることを知りながら、金利を負担しようともしないのであります。これでは値上げ幅は金利の支払いのほうに消えていってしまうことになるのであります。資金構成にメスを入れなければ、再び値上げをせざるを得なくなるのであります。政府が国鉄の公共的負担を肩がわりするのが、本来の姿でなければなりません。この点を是正せずしては、一種の大衆課税と言わざるを得ないのであります。
第四点は、国民生活に与える影響であります。政府はその影響を極度に小さく見ております。これほど無責任きわまることはないと思うのであります。まさに今日の値上げは、インフレ助長策と断ぜざるを得ないのであります。
第五点は、国鉄の経営の合理化努力が不十分だということでございます。いわゆる財産管理、用地取得等、改善施策の断行を強く要望いたしまして、私の反対討論といたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/12
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013・中村正雄
○中村正雄君 私は民社党を代表いたしまして、議題となりました案件につきまして、反対の討論をいたします。
反対の理由は、社会党、公明党等よりそれぞれ、物価の値上がりによる国民生活の圧迫、また現在の運賃値上げに対しまする物価に与える影響等の過小評価は、同感でありますが、重複を避ける意味におきまして、新たな観点から、二、三反対理由をつけ加えて討論にいたしたいと思います。
その第一は、運賃値上げの基礎となっておりまする七カ年計画そのものが、不完全なものであり、またその内容において、現在の国鉄においては、分不想応の計画がなされているという点であります。具体的には、国鉄が出してまいりました財政の計画でありまする資金収支計画自体を見てまいりましても、支出の面において、現在の物価は横ばいということで計算されております。たとえば経常経費を見てまいりましても、対前年七%の増加で見ておりますが、過去五カ年間の人件費の増加のみの統計をとってまいりましても、前年対比七%の値上がりでは済んでおりません。したがって、この計画自体の経営費自体の数字にいたしましても、これは過小評価されております。必ずやこの計画は、二年ないし三年のうちに変更しなければならないずさんな机上プランであるという点であります。
具体的の第二は、四十年度末におきまする国鉄の財政状態と、この計画が完成いたしまする四十六年度末の国鉄の財政状態を比較検討してまいりますると、四十六年度におきましては、資産状態は別といたしまして、財政状態においては、国鉄企業は破産状態に頻しておるというわけであります。このような計画自体、私は間違っておると思うわけであります。
具体的の第三は、現在の国鉄の能力、社会の要請等から考えますならば、通勤輸送の緩和のための輸送力の増強、及び人命の安全にかかわる設備投資に限定すべきであって、山陽新幹線等の計画は、現在の国鉄の財政状態のもとにおいては、分不相応であると考えるわけでございます。
反対の第二の理由は、国鉄自体の企業努力が不完全であり、運賃値上げ、借り入れ金のみに依存いたしておる点でございます。国鉄の昭和三十二年から始まりました第一次五カ年計画、三十六年から始まりました第二次五カ年計画は、原因は別といたしまして、いずれも所期の目的を達しておりません。言いかえれば失敗いたしております。この反省の上に立って、第三次長期計画を立てておると思うわけでありますが、三兆円に近い工事費、物品購入費等について、工事の請負制度の改善、物品購入制度の改正等により、全体の一割から二割の節約の可能性ということは、東海道新幹線を建設しました経験から見ても、私は明らかであると思うわけでございます。その具体策について何ら検討されておらないという点でございます。
反対の第三は、国鉄企業運営の責任者でありまする総裁以下役員の政府依存主義の考え方であります。国鉄の今日の危機の原因の大きな部分は政府にあること、歴代の自民党内閣にあることは言をまちません。しかしながら、運営の責任者は総裁以下の役員であります。政府がめんどうを見ていないから、国鉄がこのような事態になったのだというのであれば、なぜ今日まで政府にめんどうを見さすような努力を払わなかったか。努力をしたけれどもできなかったというのであれば、自己の能力の不足を反省しなければならないと私は思います。また総裁は、国鉄財政の危機の大きな原因は公共負担にあると、国会でも、あるいは対世論的にも宣伝されております。しかし、運賃の面におきまする公共負担は、今日において新たに制度化したものではございません。国有鉄道発足以来、種々の経過と歴史のもとに、国鉄自体の性格上制度化されてきたものでございます。詳細な資料を私は持っておりませんが、戦前と今日と比較して、その種類において私は差はないと考えております。また、私企業でありまする民間交通機関においても、割引の程度の差こそあれ、国鉄と同じように公共負担はあります。そういたしますると、運賃の面における公共負担は、国鉄が国有であるという理由で負うものではなくして、交通機関であるという、公共の企業であるという面から負うものであって、国鉄だけの独特のものではないということを銘記すべきであります。ただ、公共負担が民間交通企業に比べて国鉄に独自のものがありとするならば、不採算路線、言いかえれば赤字路線の問題であろうと思います。民間企業であれば、採算のとれる路線のみを自己の意思に基づいて開発いたします。国鉄の場合は、自己の意思いかんにかかわらず、国の政策の立場から、不採算路線の運営を強制されておる点でございます。しかし、今日の赤字路線は、必ずしも明日の赤字路線とは断定できないわけであります。たとえば、私が国鉄に入りました昭和十一年ころの大阪の城東線——いまの環状線でありますが、当時は赤字路線の最たるものでありましたが、現在においては、ドル箱の路線となっておるわけであります。また、東京におきまする山手線、これらの利用客は、国鉄の言うところの公共負担である通勤通学の定期旅客が大半を占めておりますが、これまた、黒字路線であるわけであります。また、現在の赤字路線といえども、線区別に計算すれば赤字であっても、それ自体黒字路線の培養線である性格を持っていることを忘れてはならないと思います。民間交通機関といえども、線区別に見れば、赤字路線は相当多数にのぼっております。また、三年後、五年後の黒字を見越して、赤字を覚悟で開発いたしております路線もあるわけであります。このように考えてまいりますると、路線の面におきまする公共負担は、特定の政策のために敷設せられましたもの、あるいは地域的に見て永久に採算に乗らない路線等、局限されてまいるわけであります。この程度のものは、これこそ、国有であるという性格から当然来る国鉄の負担と言わなければならないわけであります。このように考えてまいりますると、公共負担が国鉄財政を危機に導いたという言いわけは、民間企業に比べ独自の理由にはならないので、責任転嫁の言いわけにすぎないということを反省すべきだと思うわけであります。ただ、現在のもとにおきまする公共負担の額が、国鉄として調和がとれておるかどうか、限度を越えておるかどうかということは、これは別の問題でございます。もし国鉄の言い分が、公共負担が限度を越えているから国鉄財政を圧迫し、危機に導いておるというのであれば、民間企業と比較し、国鉄の歴史を振り返って限度額を明示し、政府が当然負担すべき分を明らかにする作業を今日までに行なって、その責任の所在を明らかにすべきであると思うわけであります。国鉄財政が困ったら政府が何とかしてくれるだろう、政府にけつをまくればそれで責任は回避されるという印象を与えるような政府依存の考え方は、反省すべきだと思うわけであります。
以上をもって反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/13
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014・岩間正男
○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、ただいま議題となっている国鉄運賃値上げ法案に絶対に反対するものであります。
反対理由の第一は、本法案が佐藤内閣の物価抑制どころか、物価値上げ政策の重要な一環として諸物価の値上がりにますます拍車をかけ、勤労人民の収奪を一そう強めるものだからであります。政府はすでに元日恒例の消費者米価をはじめ、私鉄運賃、郵便料金など、公共料金を軒並みにつり上げ、または、つり上げようとしています。特に国鉄運賃は、米価とともに、これら公共料金の大宗であり、その他の公共料金をはじめ、諸物価に連鎖反応を引き起こし、その影響するところは、はかり知れないものがあります。政府は、国鉄運賃値上げの物価、家計に及ぼす影響をわずか〇・三%だと言っておりますが、大衆の実態を無視するも、はなはだしいものがあり、これこそ、政府の物価値上げ政策に反対して盛り上がっている人民の運動をそらし、押えつけようとする魂胆にほかなりません。
このような人民の反対を完全に無視して、旅客三一%、貨物二二%、平均二五%という未曽有の高率値上げを強行する佐藤自民党内閣こそ、物価安定どころか、物価値上げの張本人であり、人民収奪の元締めであると断ぜざるを得ないのであります。
第二の反対の理由は、こうした大衆収奪によってかせいだ膨大な資金をもととして、米日独占本位の輸送力を増強し、あわせて景気を刺激し、目下不況に悩む独占資本擁護の政策を強行しようとすることであります。国鉄の第三次輸送力増強計画の規模は、七カ年で総額二兆九千七百二十億であり、その資金の大半は運賃値上げでまかなおうとするものであります。国鉄は、第三次計画の目標として、通勤地獄の緩和、保安の確保、幹線輸送力の増強の三つをあげ、目下大わらわに宣伝しておりますが、さきの二つは、全くのうたい文句、さしみのつまであり、その真のねらいは、第三の幹線輸送力増強にあることは、きわめて明らかであります。
まず、これを資金の面から見れば、通勤輸送の緩和は全体の一七%であり、保安の確保は七%にすぎません。これに反して、幹線輸送力増強は全体の四一・二%、一兆二千五百億にのぼっているのであります。これではだれのため、何のための輸送力増強であるか。言うまでもなく、独占奉仕の輸送計画であることを雄弁に物語っています。しかも、これはあくまで用地取得、物価、さらに資金計画等に非常に不確定要素の多い机上プランであり、過去の実績はいつもこれに伴わないのであります。混雑緩和を例にとれば、その実施状況は、第一次計画では当初計画の六〇%、第二次計画では五五%にすぎません。ところが、新東海道幹線だけは、当初予算を大幅に増額して、一〇〇%を遂行しているのであります。
一方、運賃収入の面からこれを見れば、このたびの値上げで、その増収分は六カ年で一兆四千億が見込まれています。しかし、これまでの実績は、いつも当初計画をはるかに上回っていることを考えに入れねばなりません。このような膨大な大衆収奪資金で、申しわけ的に混雑緩和や保安確保をうたい、これをえさにして得た資金の大半を米日独占資本の利益に奉仕する、かかる羊頭狗肉の収奪政策を絶対にわれわれは容認することはできません。また、かかる収奪政策は、旅客輸送には高く、鉄鋼、石炭、セメントなど、独占本位の貨物運送には安いというやり方にも、はっきりあらわれています。元来、国鉄は、その発足以来いつも財閥の利益に奉仕させられ、財閥は国鉄を食いものとして太ってきました。独占からは原料や資材を高く買い上げ、また、多くの金利を支払い、しかも、その運賃はといえば、安く買いたたかれてきました。このくされ縁を断ち切らない限り、国鉄の健全経営、国鉄の民主化などはとうていあり得ないのであります。
ことにも、ここで特に指摘せねばならぬことは、暴気刺激の問題であります。いま高度経済成長政策の失敗により、経済界は深刻な不況に見舞われています。こうしたやさきに、三兆円になんなんとするこのたびの国鉄第三次計画は、独占資本本位の不況対策として大きな役割りをになっているのであります。昨年八月二日発行の「国鉄通信」によれば、いまかりに国鉄が一千億の投資をするとすれば、その行く先はどのようになるかを次のように述べています。すなわち、輸送機器四百億、建材百八十一億、一般機械百二十四億、電気製品百十一億、セメント五十四億、木製品二十一億、鉄鋼十八億であります。
以上でも明らかなように、国鉄の新計画によって太るのは大企業であり、反対に人民は窮乏にさらされるのであります。
反対理由の第三は、この計画の中で、人員の増加は全く見込まれておらず、国鉄労働者に対する徹底的な合理化と、労働強化による犠牲の上に、この計画が行なわれようとしていることであります。国鉄職員の定員は、この十年間ほとんど増加していないにもかかわらず、一人当たりの業務量は一五〇%にふえています。いままた第三次計画によってますます業務量がふやされることは明らかであります。現に国鉄当局は、昨年十二月、国鉄労働組合が提出した定員増加の要求を拒否し、あくまで合理化によってこれを切り抜けようとしています。軽々しく企業努力などと言っていますが、それは職場の労働者の過酷な負担をしいる以外の何ものでもないのであります。こうして第三次計画は、国鉄労働者の犠牲の上に成り立っています。過酷な労働をしいれば、不満や要求がつのる。それをしも押し切って労働強化をしいるためには、上からの権力的圧制が加えられる。現在ファッショ的な労務管理と労働戦線の分裂攻勢が露骨に展開されており、職場の民主主義は破壊されています。ある駅長は、「命令されればやるという国鉄職員の本能をよく見込んで当局は無理を押しつけている」と、私にそのふんまんをぶちまけました。また、国鉄労働者の賃金は、労働生産性の伸びに比べてきわめて低くて、七〇%の労働者が内職によって生計をささえている実情であります。このような労働強化と低賃金政策の中では、当局がどれほど声を大にして保安対策、サービスの向上を叫んでも、その結果は、事故の続発となって、被害が大衆に及ぶことは避けられないのであります。
以上述べた理由によって、われわれは絶対これらの法案に反対するとともに、わが党の次のような政策を掲げて、徹底的にこれを粉砕するために戦います。
わが党の政策は次のようなものです。
第一は、運賃値上げをやめ、米日独占資本の収奪に反対します。
第二は、公共の安全保持のため、また、混雑緩和を中心とした輸送力の増強をはかること。
第三には、このため必要な経費は、国の財政から出すこと。
第四には、借り入れ金、債券の償還を引き延ばし、利子率を引き下げること。
第五は、独占価格の引き下げ、工事契約、資材購入を公正な入札で行なうこと。
第六は、独立採算に反対し、必要な経費を国の一般会計から出資すること。
第七は、世銀借款をやめること、米軍と自衛隊の軍事輸送を停止すること。
第八は、独占収奪のための合理化反対、労働者をふやし、賃金を保障すること、労働条件の根本的改善をはかり、労働者のストライキ権を復活すること。
第九は、国鉄運営の徹底的な民主化であります。
以上の九つの政策を掲げて、われわれは本案にあくまでも反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/14
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015・江藤智
○委員長(江藤智君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/15
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016・江藤智
○委員長(江藤智君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/16
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017・江藤智
○委員長(江藤智君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/17
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018・江藤智
○委員長(江藤智君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後九時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105113830X01219660303/18
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