1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月十二日(木曜日)
午前十時四十分開会
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委員の異動
五月十日
辞任 補欠選任
山崎 昇君 千葉千代世君
五月十一日
辞任 補欠選任
阿部 竹松君 山崎 昇君
五月十二日
辞任 補欠選任
杉山善太郎君 小柳 勇君
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委員長の異動
五月十一日阿部竹松君委員長辞任につき、その
補欠として千葉千代世君を議院において委員長
に選任した。
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出席者は左のとおり。
委員長 千葉千代世君
理 事
鹿島 俊雄君
丸茂 重貞君
佐藤 芳雄君
藤田藤太郎君
委 員
亀井 光君
黒木 利克君
紅露 みつ君
佐藤 芳男君
土屋 義彦君
山本 杉君
横山 フク君
大橋 和孝君
小柳 勇君
森 勝治君
山崎 昇君
高山 恒雄君
国務大臣
労 働 大 臣 小平 久雄君
政府委員
通商産業省化学
工業局長 吉光 久君
労働省労政局長 三治 重信君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
説明員
通商産業省化学
工業局窯業建材
課長 北山 昌寛君
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本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
(不当労働行為に関する件)
○一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(藤田
藤太郎君外三名発議)
○失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/0
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001・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開催いたします。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
このたび皆さま方の御推挙によりまして本委員会の委員長に選任されましたが、もとより浅学非才の者でございますので、いろいろと御迷惑をおかけすることもあろうかと存じます。幸い、委員各位におかれましては、御経験、御造詣の深い方々ばかりでございますので、皆さま方の御鞭撻、御協力を賜わり、本委員会の公正な運営をはかり、その職責を果たしたいと念願いたしております。どうぞよろしくお願いいたします。 (拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/1
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002・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 委員の異動についてお知らせいたします。五月十日、山崎昇君が委員を辞任され、その補欠として私が選任されました。また、五月十一日、阿部竹松君が委員を辞任され、その補欠として山崎昇君が選任されました。また、本日、杉山善太郎君が委員を辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/2
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003・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 労働問題に関する調査を議題とし、不当労働行為に関する件について調査を行ないます。
まず、政府より、小野田セメント株式会社の争議について事情の報告を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/3
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004・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 小野田セメントの人員整理問題についての経過の概要は次のとおりでございます。
第一に、昨年二月、会社側は赤字決算を出したことから、定員の二割削減を含む再建案を提示し、組合側はこれに反対して、四波にわたる実力行使を実施いたしましたが、会社側が人員整理を撤回して、七月一応解決を見ました。その後、会社側は、八月、津久見支部の骨田支部長ら五名を、春の参議院議員選挙に際しての就業時間中の文書配布行為や、七月二十三日のストライキ時の出荷阻止行為を理由として、懲戒解雇を行ないました。この件については、現在、大分地裁において審理中でございます。この間、津久見工場においては、津久見支部の闘争指導に批判的なグループがありましたが、右の合理化闘争を契機として積極的な活動を行なうに至り、八月に新組合を結成いたしました。
第二に、以上のような経過を経て、会社側は、九月期決算も大幅な赤字を生じ、二期連続の赤字決算を出したことから、十一月に再建策の一環として、従業員八百名の希望退職を内容とする合理化提案を行ないました。組合側は、これに反対してストライキを実施いたしましたが、会社側が、希望退職応募者が予定数に達しないため、十二月十八日、指名解雇を行なうことを明らかにいたしました。このため、組合側は中労委にあっせんを申請をいたしました。
中労委は、十二月二十三日に、指名解雇を行なわないこと、会社は十二月二十八日を期限として希望退職募集を行なうことを骨子とするあっせん案を示し、組合側は受諾しましたが、会社側は、一、削減目標人員に対する約七十名の不足は再建計画に影響があること。二、津久見工場のみ目標人員をかなり下回っていることは、他工場との関連で問題があると、この二つを理由として拒否をいたし、十二月二十五日、津久見工場六十八名、八幡工場三名、合計七十一名に指名解雇通告を行ないました。なお、津久見工場では、右のうち、九名が希望退職に応じたため、実質的には指名解雇は六十二名となったわけでございます。組合側は指名解雇に反対し、本年一月末、大分地労委及び福岡地労委に対し、不当労働行為の救済申し立てを行ない、現在両地労委において事情聴取を終わり、審問が行なわれております。
第三に、その後も本問題についての交渉が行なわれましたが、春の賃上げ闘争のため進展はなかったようでございます。しかし、五月十日、貨上げ問題が解決したことに伴い、同日労使間で、地労委の審理を並行して、今後自主解決のための話し合いを進めるとの意見の一致を見ました。
以上が現在までの経過でございますが、政府としては、団交も再開されたので、その成り行きを見守りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/4
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005・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 本件に関し、御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/5
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006・山崎昇
○山崎昇君 ただいま大臣から、小野田セメントの今日までの経過、あるいはその後の状態等について概略の御説明をいただきました。私も、この問題については、御存じのとおり、かなり世間を騒がした問題であり、かつ、三名も自殺者が出るというような、きわめて人権問題等も引き起こしております問題だけに、本来ならば、直接その関係者にここへおいでいただいて私ども直接お話を聞きたい、こういうことから、先般の委員会等を通じまして、ぜひ関係者の出席を要請をいたしておりますけれども、なかなか今日までそれらが実現していないわけでございます。こういう問題について政府にあまり質問をしても私どもは効果がないのじゃないかという気もいたしますけれども、しかし、そういう事情等もございますので、若干私から政府の見解等をまずお聞きをしたいと思うのであります。
いまの御説明にありましたように、事の発端は、世界一の輸出額を誇り、そうして国内でもトップクラスに属したこの小野田セメントが、経営の放漫さから、遂に再建策をやらなきゃならぬ、こういう状態におちいってそのしわ寄せを一切労働者にだけ寄せてきておる、これが端的に言って現況だと思うのです。とりわけ問題になりましたのは、労働争議が直接の動機でありますけれども、その争議にいたしましても、何ら暴力事件もなし、整斉と労働争議等が行なわれたにかかわらず、それによっての責任だけが幹部に負わされておる、こういうのがこの内容に実はなっております。したがって、労働省にまずお聞きをいたしたいのは、こういう正々堂々と行なわれた争議行為について組合の幹部が責任をとらなきゃならぬ、あるいはそれが理由で解雇される、こういうことが許されていいのかどうか。労働法の七条やら、あるいは労調法に関連をして、まず労働者の見解をお聞きをしたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/6
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007・三治重信
○政府委員(三治重信君) 組合の幹部が懲戒解雇を受けました問題は、直接この人員整理の問題、もちろん第一期の昨年の撤回までのときの問題にも若干は関連はいたしますけれども、懲戒解雇の問題は、一つは選挙違反の問題、これは相当昨年の参議院選挙の場合に、津久見工場の関係の組合で文書配布、その選挙違反が警察の手入れを受けたということで、会社側は、非常に会社の信用を失墜した、これは組合幹部の指導の結果に原因しているということが一つ。それから、ストライキそのものはけっこうなんだけれども、出荷の阻止までやるピケ、また、阻止闘争というものは違法のピケだから、これについての責任を問う、こういう形での組合幹部の五名の懲戒解雇の処分でございます。
それから、もう一つは、先生があるいは指名解雇の中に組合幹部が入っているじゃないか、こういうことではないかと思いますが、この指名解雇につきましては、会社側は、いわゆる先ほど大臣から御説明申し上げましたように、一般に各工場から八百名の募集をやったところ、他の工場では大体目標額の退職希望者が出たけれども、津久見工場だけが予定の退職者が出ない、したがって、他の工場との均衡上、指名の解雇の基準をつくって解雇せざるを得ない、その解雇基準によって解雇したので、決して組合幹部を目標として解雇したのではない、こういうふうないきさつになっております。もちろん組合側のほうの主張は、組合の相当な組織破壊的な目的のための解雇だ、また、懲戒の問題は、懲戒解雇までしなくともいい問題を、会社はやはり対抗上懲戒解雇という非常な厳罰で臨んできた、非常にけしからぬ、こういうことのいきさつになっているわけでございます。事の経過はそういうことでございまして、労政当局としてこれについての見解ということになりますと、こういう事件につきましては、争いが地労委なり、あるいは、ことに懲戒解雇の問題につきましては地裁のほうへ提訴されておりますので、こういう係属事件につきましては、従来とも、その場で相互に主張していただいて黒白をつけていただきたいというのがわれわれの態度であります。それをその審理の過程において行政当局が当不当といういわゆる見解を出すということは、決して問題の解決のためにはならないというふうに考えておりますので、この当不当の問題につきましては意見は差し控えさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/7
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008・山崎昇
○山崎昇君 いま労政局長からお答えがありましたが、私は、いま裁判をされている問題についてあなたにどうこう見解を求めているわけじゃないのです。しかし、いまもお話がありましたように、今度の事件の発端というのは、何といっても、町建をめぐって労使双方で団体交渉が行なわれて、そして一応会社側としても希望退職を募る、こういう話し合いがついて、また、中労委のあっせんを見ましても、指名解雇はやるな、希望退職でやりなさい、そのかわり若干の日にちを延ばしなさい、こういうことが第三者機関からもあっせんが行なわれて、その結果希望退職を戻ったところが、八百名のうち、七百三十八名出ておるのですね、いわばパーセンテージでいえば九〇%ぐらいの達成率になっているわけです。そうして会社側は、そういう中労委のあっせんがあるにかかわらず、また、九割の希望退職でその計画が実施をされているにかかわらず、六十八名の指名解雇を行なう、こういうやり方について私どもはどうしても納得がいかないわけであります。加えて、いま局長からお話がありましたように、その理由がおおむね二つあって、一つは、参議院選挙違反だ、しかし、これもいろいろ調べた結果、ほとんど文書違反の問題であって、そうして、また、結果としては不起訴処分等にもなっており、事件になっている問題でもないわけであります。もう一つのピケの問題についても、これは御承知のとおり、労組法の七条に従って、あるいは労調法に従って堂々とストライキを打っている。こういうものについて幹部が一々責任を問われたら、実際には法律には規定があったとしても、労働組合運動の否定に私はつながるんじゃないか、こういう考え方をとるわけであります。
そこで、労働省としては、こういう一般的に労働組合の行なうストライキそのものについて何ら違法性がないのに、幹部がその責任を問われる、こういうやり方について一体どうお考えなのか、こういうことについてお尋ねしているのであって、いま係争中の事件そのものについてあなた方の見解を問うているわけじゃない。その点はひとつ間違いないようにまずお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/8
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009・三治重信
○政府委員(三治重信君) この懲戒解雇の件の問題の一つである出荷阻止の問題になりますと、結局それが正当なストライキか、あるいは違法にまでわたったストライキかという問題になるわけでございます。これはやはり選挙違反の問題よりか、こちらのほうがいざ裁判所におきましては、おそらく組合幹部の責任を追及する原因として重視されるのじゃないかと思います。事情はそういうことでございまして、その出荷阻止のストライキが正当性の範囲内におけるストライキであったのか、あるいはそういうものが違法性にわたったかという問題は、やはりこれは係争の中心の問題になると思うわけであります。われわれのほうの調べでは、会社側では職制だけで出荷をやろうとしたのに、組合のほうがそれを集団の力で阻止して出荷をやれなかった。ほかの工場ではストライキ中であっても出荷ができた。しかし、津久見工場だけできなかった、それはやはりどうしても非常な違法だ、従来の、何と申しますか、ストライキの中においても、この出荷阻止闘争においての出荷の阻止という問題については、どうもこれは権威ある裁判例はあまりまだないわけですけれども、どちらかといえば、出荷阻止は争議行為の逸脱という部面の判決が多いように私どもは見受けております。しかし、これが事実どの程度と判定されるかという問題につきましては、繰り返して先ほど御注意を受けたのですけれども、これはやはり係争中の問題ですから、その点についてここで私が、それは合法だったとか、これは不当な域に出たストライキだったということを言うのは控えておきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/9
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010・山崎昇
○山崎昇君 それじゃ重ねてお尋ねしますが、中労委から、指名解雇をやめて希望退職でやりなさい、こういうあっせん案が出て、組合側はこれを受諾した、会社側ではこのあっせんを拒否した、強行をやってしまった。その結果、先ほども申し上げましたように、自殺者等も出ている、こういう人権問題を起こしているのですけれども、中労委のとった態度について労働省は一体どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/10
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011・三治重信
○政府委員(三治重信君) これはまあ第三者機関として非常に常識的な、適当なあっせんだと思います。一般の例からいえば、先生のおっしゃるとおり、まあその八百名に対して七百三十名の応募者が出れば、これをさらに無理押しして犠牲を払ってまでやらんでも、もう少し組合の説得なり労使の話し合いで解決できる問題じゃないかというふうに中労委が考えられてそういう案を出されたということについては、非常に常識的なあっせん案だと私は思います。ただ、会社側は、まあこういう一つの会社で、一工場一会社とかいう場合には、まあわりあいにこういうものが従来大体あっせん案で解決しているのですが、小野田セメントのように十何カ所も工場があって、先ほど大臣が申し上げましたように、津久見工場だけ非常に少なかったということが会社側で受けなかった原因ではないか。まあ会社側もそう申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/11
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012・山崎昇
○山崎昇君 そうすると、中労委のあっせんのしかたについては、大体まあ当を得た措置ではないかと。そうすると、それを拒否してこういう強硬策をとった会社の態度というのは、労働省としても歓迎すべき態度ではない、こういう結論に私はなるんじゃないかと、こう思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/12
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013・三治重信
○政府委員(三治重信君) 確かにそういうことなのですが、会社側は、まああくまで津久見工場だけその希望退職者が特別少なかった。これはやはり大体津久見の組合のほうが特別希望退職者を申し出るなという特別な強い運動をやったからだと、こう判断して、それではごね得になるじゃないかということで、非常に不均衡を来たしている、こういうことでまあ強く出たのだろうと思います。会社のほうから聞いても、やはりそれが重要な原因だと、こう申しておりますので、大臣も先ほどその理由として申し述べていただいたわけでございますが、この点は、会社側はそう信じているわけでございますので、これを私どものほうで非常に不当だというふうに言ってみても何ともいたし方ない、会社は会社なりのまあいま言ったような理由があるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/13
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014・山崎昇
○山崎昇君 いま局長の答弁の中に、津久見の場合には労働組合が強いから予定の希望退職者が出ない、だから、どうしても中労委のあっせんがあろうとも、強硬策でこれをやらなければならない。こういうふうになってくると、やはりその背後には、労働組合をたたけという、こういう私はものの考え方が工場長なり、あるいは小田野セメント一般の経営者側の考え方になっておるのじゃないかと、こう思われるわけです。その証拠には、この強硬策をやって四日後にはすでに第二組合が発生をしておる、つくらせておる、こういう一事からもってしても、何としてもやはり強硬策をとって労働組合をたたく、こういう私は底意がどうしても感ぜられるわけです。こうなってくると、この指名解雇の問題ももちろん問題でありますけれども、何としても、この労働組合をたたくという経営者のやり方を私どもは重要視をしなければならぬのじゃないかと、こう思っているのですが、そういうことについて、一体労働省は、労働組合や労働者を保護するという行政を行なう労働省としてどういう見解をお持ちなのか、重ねてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/14
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015・三治重信
○政府委員(三治重信君) いま現在の津久見工場の退職者の状況は、削減目標人員が会社全体として八百人のときに、大体津久見工場としては、各工場の均衡からいって百九十八名というふうに会社は予定をしておったようです。ところが、そのうちで退職応募者が八十四名、第一組合のほうが三十三名で、第二組合のほうが五十一名ということで、大体第二組合のほうは非常に協力的であった、こういうふうなことを申しているわけでございます。
それから、第二組合ができたのは、これはこの工場の組合側が分裂をする前から、組合の内部で相当批判的な空気とグループがあったのだと、したがって、これの整理の問題、指名解雇の問題をきっかけにして第二組合ができたことは事実だけれども、決して会社側がそそのかして第二組合をつくったわけではない、こういうふうに言っている。どこの会社でも大体そういうことは普通でございますが、そういうふうに弁明して会社側の方はおられます。また、一般に従来われわれが見ておりましても、人員整理の問題のときに、一番指名解雇まで会社が強硬措置をとるような空気があると、とかく組織の弱いところでは、また、一般に非常に強い闘争態勢を持った組合には第二組合が非常にできやすい状況がある。そういう一般的な従来の例のような現象が出たことだというふうに私たちは思っておりますが、その実相と申しますか、会社がほんとうにこの従来の組合をたたくために第二組合をつくったというふうな証拠については、大分県にも調査さしておりますが、どうもそれに明白な証拠と申しますか、事実というようなものは、どうもわれわれの調査機関もつかんでいないようでございますので、何とも申し上げられません。ただ、まあ解雇の対象者が結果として第一組合に非常に限られておるというような問題については、先生がおっしゃるようなことに見られてもやむを得ない部面も形式的にはあるというふうに思っておりますけれども、まだいずれにしても、処分の具体的な内容というような問題になりますと、会社のほうは初めから整理の基準、解雇の基準をつくって、それに当てはまるものを予定人員だけ解雇したのだ、こう主張しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/15
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016・山崎昇
○山崎昇君 冒頭に申し上げたように、どうも政府にこういう問題を幾ら尋ねても、ちょうど服の上から背中をかくようなものですから、ぱきっとしたことがわからないのですが、もう一点聞いて、あとは小柳先生のほうからいろいろ質問があると思うのですが、これは労働省もお読みになっただろうと思うのですが、サンデー毎日の一月二日号です。これをずっと私も見ると、あまり指名解雇の条件としては、ほかの会社にないような条件が示されている。そして、だれがこれは談話を発表したのか知りませんが、労働省のほうの幹部の談話だと称して載っているのを見ると、こんなことで首を切られるならたいへんです。こういう言い方をしておるようなんですが、一体、大臣は、この指名解雇の基準を読まれて、こういう基準で労働者がばつばつ首を切られていいものかどうか、大臣のひとつ見解を聞いておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/16
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017・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 実は私もそのサンデー毎日の記事なるものを見ておらなかったのでありますが、一昨日でしたか、衆議院の社労委でそのお話がございました。基準なるものを幾つかお示しがあったわけでございます。それをやはりどう思うかということでございましたから、どうも常識的に考えて、御指摘のような事項で首を切るというようなことは、どうも私にはよくわからない、いわば不可解だ、率直にそう申したのであります。ただ、そういうことが、これはたぶん解雇の理由はこうなっておるようでありますが、別に何かまた解雇の基準ですかがあった、こういうことなんです。基準のいわば具体的なこととでもいうのですか、いろいろたとえば職場でラーメンを食べたとか、変な話ですが、立ち小便をしたことがあるとか、そんなことまでが解雇の理由になった、こういうお話でございましたから、それでどうも解雇するなんということは、われわれには常識でははなはだ不可解なことである、こういうことを私は一昨日も衆議院で答弁申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/17
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018・山崎昇
○山崎昇君 大臣はこれを読まれたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/18
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019・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) いや、まだ詳細ならず、読んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/19
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020・山崎昇
○山崎昇君 局長はどうですか、お読みになったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/20
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021・三治重信
○政府委員(三治重信君) 読んでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/21
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022・山崎昇
○山崎昇君 そうすると、いまそちらのほうからも出ておりますように、大臣はあまりよく知らなかったので、早急にひとつ検討します、こういうことを衆議院の社労で言われたそうですね。そうすると、それ以来、もう二日もたっておるのですが、こういう条件で労働者が首を切られて、いま盛んに問題になっており、さらに三名も死んでいるというような事態を招来しておるのに、労働省が何にも知りません、これでは私は許されないのではないか、こう思うのですよ。いま私はそれじゃお貸ししますから、ひとつ読んでください。どんなふうになっているのか、そして、あらためて、こういう基準で労働者が首を切られていいものかどうか、ひとつ大臣から聞きたい。特にこの中を見ますというと、社長が自分の好きかってにいろいろな経営方針をとって、それが全部行き詰まって、その結果赤字が出て、そのしわ寄せを労働者に転嫁をしておる。さらに先ほど来論議しておりますように、中労委はそういうむちゃくちゃなことをするなということであっせん案を出したにかかわらず、それもやめておる。そういうふうなやり方を労働省が許すとするなら、私は、労組法も死んでしまうし、あるいは労調法もあってなきがごとし、こういうふうに思うので、そういう意味でいま私お貸ししますから、ひとつ読んでからでもけっこうですから、あらためてひとつ大臣の見解を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/22
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023・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 一昨日の衆議院での質疑応答では、私は、どういう事情で、どういうことを会社が実際理由にして解雇をしたのか、その実情をよくできるだけ早く調査いたしましょう、こういう答弁をしたのです。そこで、さっそく労政局のほうできのう一日がかりででき得る限りの調査をした、こういう事情なんでございます。ですから、何といいますか、解雇の理由のよし悪しを検討すると言ったわけではないのでありまして、どういう事情で実際解雇をやったのか、理由はどんなことをあげたのか、そういうことを詳細調査をいたしましょう、できるだけ詳細いたしましょう、こういう趣旨で申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/23
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024・小柳勇
○小柳勇君 私、三月の予算委員会の一般質問でもこの問題は出ておったのです。一昨日の衆議院の社労でも問題が出ておるのですが、大臣の態度はまことに不謹慎です。さっきの報告も聞きましたけれども、あれは局長の報告です。大臣の報告ではありません。ただもう通り一ぺんに不当解雇の事実と、それから指名解雇の事実を報告しただけです。そういうものはみなわかっているのです。その背後に政治的なもの、経済的なもの、どういうものがあるかということを調査してこなければ、この委員会だって、再三再四参考人の招致も委員長・理事打合会で問題になっている。しかも、きょうここでこの問題を論議することはきのうからわかっているはずでしょう。そういうふうな態度ではほんとうは労働大臣の資格はないと思うのです。ぼくはあまりいやなことは言いたくありませんけれども、さっきの調査の報告を聞いておりまして、ただそういう通り一ぺんのものでは問題になりません。したがって、これは委員長も理事の皆さんも、あるいは各委員の皆さんも、近く参考人をなるべく早く呼んでもらわなければなりませんから、私が調査いたしました事実、政治的な背景、経済的な背景、解雇に至りました理由、そういうものを私の調査に基づいて簡単に説明申し上げてから問題点を質問しようと思うのです。
この解雇が出ましたこの政治的な背景は、いまから六年前にさかのぼるわけです。それは津久見の市が工場を誘致するために、最近はやりまする企業誘致、工場を誘致するために工場設置奨励条例というものをつくったのです。これは工場が参りますともちろん税金も取れますが、来るためには相当の市の金を使おうというようなもので、そういう工場設置奨励条例をつくって、これに大多数の市民は反対であった。津久見は、御存じのとおり、ほかの産業もありますが、ミカンの産地などでして、そういう工場にだけ市民の金を使うことはならぬということで、市民は相当反対いたしまして、その声がだんだん高まりまして、革新勢力が中心になって署名運動をやって、市民の声が爆発するようになりましたものだから署名運動をやりましたところが、有権者の過半数である一万二百二十一名の署名が集まった。そうしてこの工場設置奨励条例廃止行動が実を結ぼうとした。そういうことで、しかも、津久見は大分県では保守県であります。市長あるいは議長、あるいは保守勢力などがその津久見の工場などと結托いたしまして、これが廃止になっては工場の運営にも問題があるというようなことで、その工場の中にももちろんその市民がおりますから、工場設置条例には反対する市民がいる。工場にとりましては、市から工場が恩恵を受けるその条例に自分の会社の職員が反対することはけしからぬ、そういうところに政治的な背景がある。したがって、そこに来ました工場長、あるいはこの小野田セメントの幹部職員は、津久見における政治勢力といろいろ接触しながら工場の運営をやらなければならぬ、これは当然のことでありましょう。にもかかわらず、自分のところの組合員なり職員がその市の条例に反対するのは、これは市の運営に対して申しわけないという、そういうものが政治的な背景である。その政治的な背景をちゃんと調査しておかなければ何で指名解雇が出たかということはわからぬですよ。山崎君の発言によりますと、サンデー毎日の記事もまだ読んでおられないようです。基準の十二項目すらけしからぬ基準である。他のサラリーマンだって一カ月に一回は遅刻する、あるいは一年に一回遅刻せぬとは断言できない、あるいは病気欠勤もするだろう、あるいはチャンポンも職場で食べる、そんなことをしないサラリーマンはおそらくないが、そういうものが十二項目には入っておる。したがって、その十二項目だけではこれが不当とか、あるいは妥当とかいう判断はできないのです。政治的な背景はいろいろありますけれども、一番の発端はそういうところにありますから、それも十分調査してもらわなければ困る。これは政治的な問題です。これは大臣の問題ですね、労政局長よりも。大臣がこういうものを調査してもらわなければ困る。
第二の問題は会社経理の実態です。会社が赤字だから千二百名ばかり解雇したいと言ったが、これは団体交渉でけられた。次には各工場に希望退職を募った。ところが、八百名の割り当てのところが七百四十名、七百二、三十名まで希望があった。あと六十名か七十名です。そこまで希望があったわけです。その会社の経理は一体なぜそういう赤字になったか、このところも大臣がよく調べなければならぬのです。職員が多いからというだけで赤字になっているのかどうか、このことはあとで通産省に質問いたしますが、会社の赤字というものは、決して職員がなまけたから赤字になったんじゃないのです。安藤豊禄という社長がいろんな関連産業をつくって投資して、その子会社が全部失敗したから、その赤字を全部この小野田セメントにしわ寄せしたのです。そのしわ寄せを小野田セメントの労働者の首切りによって立ち直ろうとした、ここに大きな問題があります。この実態は、あとで通産省に質問しますが、その赤字の実態をいつまでに解消しようとしたか。最近セメント産業はよくなりました。このこともあとで通産省に質問しますが、そのころは、いつセメント産業がよくなるかわからぬような実態、だから幹部も若干整理しましたけれども、その大部分を労働者の首切りによって再建しようとした。私はこの前の予算委員会で大臣に質問して、一体労働省というのはどっちを向いて行政をやるのか、日本の内閣に大臣がたくさんおるけれども、労働者の立場に立ってものを考えるのは一体どこかと言ったら労働省だと言う。労働大臣は一体労働者を守る立場で行政をしておるかと言えば、そうだと言う。それではここに自分の経営の不振によって赤字になった、その赤字は、子会社が社長の経営方針が悪いので失敗して、それに対して労働者の首切りだけしようとしているが、それを待ってくれと言ったかというと、言ってない。そういう問題が労働行政としては根本ではないか、この問題はあとでまた質問いたします。
次は、この一番労働者と使用者との間の憲法とする労働協約というものが全然無視されてしまっておる。りっぱな労働協約があります。基本労働協約というものがある。珍しいくらいりっぱな労働協約がある。しかも、これに基づいてりっぱな就業規則がある。その就業規則の中には、ちゃんと会社をやめなければならぬ場合が書いてある。第四十条には、社員が次のいずれかに該当する場合は、労組と協議の上解雇の手続をとると書いてある。ここに五項目の解雇の条件が書いてある。この労働協約の第十六条には「会社は組合員たる社員を解雇しようとするときは、組合と協議する。」と書いてある。「解雇理由は、就業規則に定めるところによる。」と書いてある。日本には憲法がある。憲法のもとに労働組合法がある。その労働組合法に基づいて労働協約がある。労働協約に基づいて就業規則がある。ここにちゃんと憲法に基づいてあるこの労働協約が一方的に無視されておる。しかも、それに基づいた就業規則が一方的に破棄されて、かってにきめた十二項目の指名解雇の基準で解雇されておるのに、それを今日まで調べておらぬなんというのは一体何事ですか。労働省の役人の資格はない。憲法によって定められた労働組合法をあなた方守らなければならぬのです。しかも、労働協約が無視され、就業規則が全然無視されて、別の規則で、別の基準で解雇されておるのに、それを、その是非は地方労働委員会でやっておりますではあまりではないか、そういう問題があります。細部についてはあとで質問します。
それから、もう一つは、さっき大臣は、地方労働委員会がいま審議しておりますから、五月十日の団体交渉で地労委の審議と並行いたしますと言うから——大臣、聞いておいてくださいよ、一番大事なことです。首を切られたのは若い職員ですから、失業保険は六カ月か九カ月しかない。長い人で九カ月だ。失業保険は六カ月です。地方労働委員会は事件も多いし、人間は少ないから審理ができないわけだ。首を切られて一年かかるかもしれぬ。その間に失業保険が切れた職員は一体何で生活しましょうか。いま審議中だということは聞いております。私も聞いてきましたが、地方労働委員会が足らなければ、何かほかの方法で早く審議をして黒白をつけなければ一体何で生活するか。現在は組合員の皆さんが資金カンパしながら生活のめんどうみておる。そういうことでいいでしょうか。日本の経済を再建するのは、三分の一は労働者ですよ。資本と経営と労働者と、その労働者が三分の一をしょって日本の経済を再建しようとしておる。その労働者を一方的に首切っておって、地方労働委員会が審議中だからといってほっておくならば失業保険が切れます。失業保険が切れれば、あとはお互いが資金カンパしながら生活のめんどうみておる。そういうことでいいでしょうか。地方労働委員会の審議が長引くならば短くするように労働省がやらなければ、一体だれがやりましょうか。裁判所には行ってきましたが、身分保全の手続をやっております。早く判決を出してもらおうと、県会議員もおるし市会議員もおるし、組合の役員もおりますから、裁判所に頼んでおりますけれども、裁判所の判事も、私ども一人、二人でやっておりましてなかなかできません、一年くらいかかりますと言っておる。それでは一体失業保険の切れたあとは何で生活しましょうか。労働者も人間ですから、生きていかなければならぬのです。そういう法に不備があり、制度に不備があれば、国会や内閣が発議して法を変えていかなければ、国民はその谷間で泣いておるのですよ。組合員が資金カンパしないと言ったら何で生活しましょうか。失対労務者にもなりませんです、まだ審議中ですから。そういう問題があります。そういう根本的な問題をこの委員会で論議しておかなければ、ただこの指名解雇したことがいいか悪いかならば地方労働委員会が判定いたしますよ。そういう問題はあとで質問いたしますから、細部の問題について答弁願いたいと思う。第一は、通産省に、冒頭に言いましたように、当時の小野田セメントの経理実態並びた経営実態について御報告願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/24
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025・北山昌寛
○説明員(北山昌寛君) ただいまの先生の御質問は、小野田セメントの赤字経営をしておるということの実態の説明をしろという御質問でございますから、この前提といたしまして、まずセメント産業の一般的な傾向から申し上げたいと思います。
セメント産業は、三十八年ごろまでは年間一三%前後の需要増がありまして、まあ生産の概況等も非常によかったわけでありますが、三十九年度下期以降、これはオリンピックの以後でございますけれども、需要が非常に停滞いたしまして、また、輸出も、いろいろ後進国において自給度の向上等をはかりまして、低下いたしました。その結果、三十九年度以降、需要の伸びが逐次落ちております。その結果、市況も軟化いたしまして、三十九年度下期以後には非常な価格の低落を来たしておりまして、また、その結果、各社間の競争も激しくなっております。現在まだそれが十分な回復というような情勢になっておりませんですが、こういう市況の低落に伴いまして、セメント各社とも、三十九年度下期以降、従来の配当も減配、あるいは無配に転落するというふうな状況が出てきたわけでございます。
で、小野田セメントについてでございますが、小野田セメントの状況につきましては、特にこの会社につきましては特殊事情がございまして、実は昭和三十四年ごろから、先ほど申しました三十八年ごろまでの非常な需要増に対処いたしまして、合理化計画の一環といたしまして、新しい技術、これは改良焼成法といっておりますが、新しい技術による合理化を計画いたしまして、実はまだ十分本格的な成果をあげ得ないうちに不況に見舞われたわけでございます。これは相当膨大な投資をいたしておりまして、従来のような需要が伴えば相当の成果があげられると思うわけでございますが、それが十分な成果をあげ得なかったというのが非常な痛手になっております。また、先ほど先生から御指摘がございました関連会社への投資ということも大きな影響があるわけでございまして、当時会社といたしましては、いろいろ肥料、あるいは家畜の飼料、あるいはカーバイト等の関連会社に逐次投資をしておりました。これがたまたま不況に際会いたしまして十分な成果を上げ得なかった。で、現在の赤字は、三十九年度以降の累積赤字は約八十三億になっておりますが、この改良焼成法が成果をあげなかったということ、それから、関連会社への投資が十分な成果をあげ得なかったというふうなことと相まちまして、現在の累積赤字八十三億というふうな状況になっておるわけでございます。
以上、簡単でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/25
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026・小柳勇
○小柳勇君 現在のセメント業界の動向と、それから小野田セメントの実績、業務の実態について御報告を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/26
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027・北山昌寛
○説明員(北山昌寛君) 現在の業界の実態は、昭和三十九年の価格が非常に安くなった、市況が悪くなったのでございますが、最近は若干持ち直しておりまして、現在は市況はトン当たり六千二百円というふうな状況になっております。これは一般的な傾向でございます。この結果、一応各社とも四十年度上期を底にいたしまして、逐次経営の回復、経理の回復状況にあります。ただ、小野田セメントにつきましては、最近発表されました四十年度下期の決算案、まだこれは案でございますが、決算案につきましては、約三十四億のやはり赤字を計上しているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/27
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028・小柳勇
○小柳勇君 小野田セメントが子会社などを整理しながら、最近経営陣を変更したのですが、まあ役所から見て将来こうなるという断定はできぬと思いまするが、関連産業を含めて、これからの企業の見通しについて見解を発表願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/28
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029・北山昌寛
○説明員(北山昌寛君) 回復の見通しでございますが、これは一般の市況と、それから会社の自体の問題と、両方あると思います。一般の市況につきましては、現在の情勢でいきますと、採算確保には遠からず回復するのじゃないだろうかというふうに考えられます。ただ、小野田セメントにつきましては、従来の累積赤字八十三億というものを解消しなくちゃならないという事情にありますので、なおこれが配当をするというふうなことになるには相当時間を要するのじゃないかと思います。ただ、会社から聞いておりますのでは、一応四十三年度を目標にして再建いたしたいというふうに言っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/29
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030・小柳勇
○小柳勇君 会社の実態については、また参考人を呼んで、会社の幹部から聞くことにいたしましょう。
労働省の所管局長にお伺いいたしますが、セメント業界の最近の労働力の需給関係ですね、ひところセメント産業界が赤字になりまして、人員整理など、あるいは規模縮小などがありますが、最近は、通産省から報告があったように、だんだん経営もよくなって、値段もよくなってまいったのですが、労働力の需給状態はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/30
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031・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) セメント産業の業種別の需給関係のデータは現在持っておりませんが、一般的な労働力の需給情勢は、先生御承知のような傾向になっておりますので、セメント産業におきましても、若年労働力、あるいは現場の労働力については求人難という一般的な傾向をかぶっておるわけでございますが、各企業の工場の立地状態を見ますと、まあ相当へんぴなところにございます関係で、やはりまあ地域的には需給関係が非常に緩和しておるという状態のところもあるように見受けられます。まあその辺、地域地域によっての格差もございますので、一般的にセメント産業の労務の需給関係ということになりますと、ちょっとお答えしにくい事情もございますが、そういう事情だと思います。特に小野田セメントの場合には、まあ岩手県から大分県まで相当工場が分散いたしておりますので、地域地域の事情はそれぞれ違っておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/31
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032・小柳勇
○小柳勇君 たとえば津久見だけで六十二名の指名解雇があったのですけれども、職業訓練などするとして、一体自分の希望する職種などの訓練が受けられる可能性があるのかどうか。この人たちがもしも救済されないとすると、これはもう好むと好まざるとにかかわらず、新しい仕事を求めなきゃならない。若い人ばかりですから、二十代、三十代、四十代、働き盛りですからね、この人が津久見という小さい町にいまおるわけです。その人たちについて一体どういうふうな救済の措置がとられるか、見当でもいいから、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/32
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033・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 津久見の場合のように、比較的若い層の退職者といいますか、解雇者が出た場合には、これは具体的に本人の就職希望条件等を現在安定所において調査し、具体的な職業再就職相談を実施中でございますので、比較的若い年齢層については地元において必ずしも再就職はむずかしいかと思いますけれども、県内、あるいは県外の広域職業紹介体制を通じまして、ぜひまあ再就職の確保をはかってまいりたいと思います。まあ東京本部のように、非常に定年近い高年齢者が多い場合には、これはまあ労働市場から引退する者も相当ございまして、現に求職中の者は約六割程度にすぎないわけでございますが、津久見の場合は、ほとんど全員が再就職の希望者でございまするので、安定機関としては最善の努力を払ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/33
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034・小柳勇
○小柳勇君 この六十二名は全部指名解雇を撤回させなきゃならぬと思っておるのですが、まあもちろんこれは地労委の回答もそうだと思うのですけれども、若い青年ですから、会社からそれだけきらわれるなら、まあ撤回されても自分から会社に帰らぬという短気を起こす人もあるいはあるかもしれぬ、世間がよくわからぬですからね。もう自分の会社よりももっとほかにいい職場があるような気もするかもわからぬ。そういうものを考えますと、私どもいかにも心配にたえぬのですが、あの周辺にたとえば再就職をするについて、職業訓練などで一体どういうのがあるでしょうか、大分県のあの付近にですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/34
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035・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) まあ津久見の立地条件は非常に悪いのでございますが、現在指名解雇で係争中の方々も、先生御指摘のような考え方で、小野田セメントに見切りをつけて他へ転職をしたいという熱烈な希望を持っておる方々も相当ございますので、現在までのところは安定機関を通じて、まあ地元中心に再就職をはかった者の数が二十名見当でございまするが、さらにわれわれといたしましては努力をいたしまして再就職の対策を強化してまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/35
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036・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、通産省の方にちょっと質問を、この際、小柳委員からお話のありましたのに関連して、一言尋ねておきたいと思うのです。
セメントの需要というのは、問題は需要と供給ですから、操業の問題に関係してくる。これが唯一の赤字になり、そうして今度のような争議になってきている。その根本は、私は設備投資の行き過ぎだと思うのです。四十年の十月現在で、セメントは五十何%ぐらいしか操業していない。値段を持ち直したとあっさりおっしゃるけれども、これは不況カルテルで価格維持しているから値段が維持されている。そしてそのものを中心にして経営を立て直していこう。だから、そこへ大きいひもをつけて、抵抗のない労働者に何か因縁をつけて首を切るという筋道以外に何もないと私は思う。だから不況不況とおっしゃるけれども、今日の不況は何が原因で不況になっておるのか、通産省はどう見ておられるのか、これが一つ。生産と消費のバランスがとれなくなって、ここで不況という問題が起きて、めちゃくちゃな設備投資のためにその資金調達を物価値上げでやって、だから多少名目所得は上がっても、実質賃金というものは低下している。そこにバランスがくずれている。だから根本的に通産省の責任は重大だと私は思う。セメントのように五〇何%しか操業していないで不況カルテルを適用して、そして会社の利益を守ってやるなんというものをものの考え方の基礎にして、問題を平面的に六千二百円、こうおっしゃったけれども、そこらのものをもっと真剣に、あなたは課長さんでありますけれども、通産省全体で取り組まなければいけないのじゃないか。今月に入ってから操業状態が新聞に発表された。昭和三十五年を一〇〇として一一〇とか一二〇とかいう数字が出ておる。しかし、その間に二十何兆という設備投資をした生産能力というものを全然加味しないで、そして生産指数だけ上がっているのだというような、全く子供だましのような生産指数が発表された。それで小野田セメントなんというのはむちゃくちゃな設備投資をした最たるものです。その犠牲を全部労働者に引っかぶせている。それでその犠牲にする名目は不況だという。不況は何でできたか。そこらあたりのことをもっと——設備拡大をしたら、血の出るような国民の資金ですよ、これで設備拡大をするわけですから、その生産というものは国民の幸福のためにするのですよ。大会社や独占会社の設備拡大をして、そこの蓄積だけやったらいいというのじゃないです。今日の近代社会、近代政治というものは。そういうものをおかまいなしに、いま昨年の十月現在で日本の生産力というのは二・七倍から八倍になっておる、通産省の資料ですよ。算術計算で設備投資が倍であって、あとの七〇%か八〇%は合理化によって生産力を上げて、合計して二・七倍になっているのですよ。実質賃金というものは三十五年を一〇〇にしてゼロですよ。そうして経済のバランスがくずれて操業が落ちてくる、利益が下がってくる。不況カルテルを適用して企業だけを守るところへ集中をして、それで労働者を犠牲にしている、この一番最たるものが小野田セメントだと私は思う。窯業界、セメント業界で一番最たるものが小野田セメントだと思う。そのことをもっと真剣に通産省はお考えにならないで、平面的にすらすらとおっしゃるようなことでいいのですか。どう考えているか、もっと突っ込んだ話を聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/36
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037・北山昌寛
○説明員(北山昌寛君) 私の説明が非常に不十分でございましたが、いま不況の原因について御質問がございましたが、私らのほうから見てみまして、過剰設備の問題、あるいは需要の停滞という問題もう少し詳しく御説明申し上げます。
セメント産業は、先ほど申しましたように、昭和三十八年ころは年間一三%ぐらいの需要増があったわけでございます。ただ、三十九年度以降におきましては若干需要の伸び悩みという点が予想されました。したがいまして、この点につきまして、われわれとしましても、業界に十分需要の停滞という点につきまして説明いたしました。また、同時に、それに対応しまして、設備投資の面につきましては、やはりいま先生のおっしゃるような事態が予想されましたものですから、設備投資の抑制という面につきましても、これは特に投資調整という面から、産業構造審議会の資金部会の場を通じまして業界に対して指導したわけでございます。
需要のほうは、私らの見通しに対しまして、実績といたしましては三十九年度は三十八年度に比べまして五%アップ程度の需要しか実際には出なかったという状況でございますし、また、四十年度は三十九年度に対しまして二%程度の需要増しかなかった、これは特に民需の落ち込みが非常に大きかったということが言えるわけでございます。また、四十一年度は、これは先の問題になりますが、四十一年度の需要見通しにつきましては、現在年間三千五百五十万トン、これは前年度に対しまして約六%増という数字でございますが、一応そういったような数字を見込んでおりますが、これに対しまして現在の設備能力、四十年度年間の稼働能力といいますものは約五千四百万トンと、現状はそういうことでございますが、ちょっと話はもとに戻りますが、先ほどのそういう需要の停滞ということも予測されたものですから、設備投資の抑制ということで、四十年の春に、三年間は能力増加となるような設備投資を押えるということにつきまして業界を指導いたしまして、各社の了解を得ております。したがいまして、四十年度、四十一年度、四十二年度はこれ以上の能力増というものは出てこないという形になっております。
また、一方、過剰設備の傾向がございますので、今後老朽設備の廃棄という問題も考えなくちゃならないということで、現在スクラップ税制等の適用について検討しておるわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/37
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038・小柳勇
○小柳勇君 大臣に質問いたしますが、その第一の問題の政治的なものですね、これはどこにもありますから、大臣の見解を聞いておきたいと思うのだが、津久見の市が工場設置奨励条例というものをつくって、市に来た工場には奨励金を出すんですね。ところが、従業員が帰れば市民ですね、自分の税金だからということで、その廃止行動に出たわけです。会社としては、自分のほうにその金の九五%も返ってくるんですから、会社としては反対してもらいたくないわけです。しかし、組合員である職員は、市民としての反対運動の中では、帰ったらやっぱりそれに参加しなければならない、そういうものが根になってこういうものが発展しておると私どもの調査で判明をしておるわけです。こういうものについては大臣はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/38
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039・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) ある会社の従業員が一市民という立場において、その考えるところを述べるなり、あるいはいまお話の署名運動に参加するなんといようなうことは、私は市民として自由であってしかるべきものだと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/39
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040・小柳勇
○小柳勇君 それに尾を引いて、前の参議院選挙のときに全国区、地方区おのおの組合が推した。これはどこでも全国にあると思うのですが、革新系の候補を推しておる。そこでたまたま文書違反に問われて調べられたけれども、これは不起訴になった。ところが、解雇の理由にそれがなっておる。三役及び組合員二名、これはそこの政治局員ですけれども、県会議員、市会議員です。この五名が解雇されたのですが、それが参議院選挙のときの文書違反、これは起訴にならなかった、罪にならなかったわけです。ただ調べられたという事実、それで解雇されておる。もちろんこれはいま裁判中でありますけれども、私どもは、これは政治活動の自由、労働運動の保障ですね、そういう点から言いますというと、これを理由に解雇したということについては納得できない。これは裁判の判決を待つまでもなく、われわれとしては、労働法を守る立場から、あるいは市民としていわゆる納得できないのですが、大臣の見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/40
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041・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) これは選挙法違反そのものを軽んずるわけではございませんけれども、ただ単に文書違反、いわゆる文書違反程度の選挙違反の事実が、かりにあったとしても、それが直ちに解雇の理由になるというようなことは、私はいかがなものであるか、むしろ否定的にもちろん私も考えておりますが、ただ、この場合の文書違反というものがどういう場所において、どういう時点において行なわれたのか。つまり会社の業務の執行の阻害とでも申しますか、それほどの状態において行なわれたのかどうか、そういう点、実は私もその実態等をよく存じませんでしたが、はっきり申して、そういう点もいわゆる会社のほうなり組合のほうなり、一体どういう状態でそういうことが現実に行なわれたのか、そこらのところをよく知らぬと、はたして解雇理由というものが文書違反そのものと、こう言っても、その内容がよくわからぬことには、それがはたして解雇につながったことが妥当なのか妥当でないのか、私にはちょっと判断がつきかねます。一昨日も私はそういうふうに御答弁申し上げておいたのであります。冒頭申し上げましたとおり、このまあ何といいますか、一般的に申しまして、文書違反そのものが直ちに解雇につながるというようなことは、私はむしろあるべきではない。むしろおかしいじゃないか、私はそういう感じを持ちます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/41
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042・小柳勇
○小柳勇君 初めの五名の解雇されました理由は、いまの文書違反と、七月二十三日のストライキのときの出荷阻止をやって、出荷阻止は、私は現地を見てまいりましたけれども、船の上から物を積む、そのときに課長が二人、非組合員が二人でやろうとしている。そのときに組合員がストライキをやっておったものですから、すわっておった、暴力も何もしないで。課長が行こうとしたけれども、話し合いで説得して帰った。現地を工場長、課長立ち会いの上で見てきましたが、そういうものが労働法に許されたスト権を制限するということは、私どもは社会労働委員会の委員の頭としては、考えとしては納得できなかったのですよ。いま言った参院選のときの文書違反と、それからストライキのときの出荷阻止、出荷阻止というのは非常にことばはきびしゅうございますけれども、船に自動的に積むのですから、機械でぴたりと積める。そのときに十名ばかり外部の人夫を雇っておる。船にはそういうことをやっておる。下の機械のところに課長が行こうとしましたら、それにピケをやる。それはストライキですから、出荷したらストライキになりませんから、どこでもやるストライキですから、出荷阻止ではない。課長は説得したところが、そこまで行かぬで帰ったということです。話し合っている写真があります。引き返す写真があります。それを理由に首切っているわけです。懲戒解雇ですから、指名解雇でなくて懲戒解雇ですから、その点よく大臣に頭に入れておいていただきたいと思います。その点は参考人を呼んだら論争しなければなりませんから、頭に入れておいていただきたいと思います。
それから、いま通産省の監督局長が見えましたから、さっき私申したように、会社の首脳部の経営方針の失敗によって赤字が出た。その赤字を補てんするために、再建するために労働者の首を——もちろん幹部も二、三退陣はしております。責任をとってもちろん幹部のほうでもやめておりますけれども、大多数を労働者の賃金によって再建しようとするそういうふうな赤字対策ですね、再建方策について労働大臣としては一体どう考えられますか。これはいま皆さんが社会労働委員会に法律を出しておるその法律にも、この間予算委員会でちょっと問題になりましたように、触れてまいりますけれども、解雇制限とまで言いません。しかし、もう赤字が出たら何でもかんでも労働者の首を切って会社の経理を立て直すというような考え方、経営の方針について労働大臣としてはどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/42
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043・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 私はふだんから申しておるのでありますが、今日における企業者の責任の問題でございますが、いかに自由主義経済のもとにおきましても、私は、企業者の社会的責任というべきものは、今日もう十分自覚されなければならぬし、それから、もちろん自覚ばかりでなく、現にそれを一番重んじて行動もされなければならぬと、私はさように信じておるのです。そこで、一般的にも、しからばそういっておるかといえば、なかなか私はそういかない面も現実の姿としては確かにあることも否定できないと思います。本件の場合にも、だんだん通産当局の説明等も承っておりますと、とにかく設備の更新と申しますか、拡充が相当自社についても行なわれた、あるいは関連会社への投資というものが相当大きく行なわれた、それが計画どおりいかなかった、そういう背景のもとにこの人員整理が行なわれた、こういうことでありますので、率直に申して、私は、首脳陣のやはり判断、計画というもの、それから、人員整理以外に一体どういう対策を会社当局がとったのか、これは実は私も知りませんので、はなはだ恐縮ですが、一体どういう手だてをほかにしたのか。それをやっても、なおかつ、どうしても会社の再建が人員の整理をしなければできないというところまではたして追い込まれておったのかどうか、その辺のところが、実は私も不勉強でまことに申しわけありませんが、どうも私にも実は納得がよくいかないのであります。いずれにしましても、この人員整理というようなことは、もうこれは最後の最後の手段であるべきであって、もしこれをしないことには会社全体として、むしろ倒産といいますか、参ってしまう、そういうことによってより多くの従業員にも迷惑をかけるというような事態にでもどうしてもこれはならざるを得ないのだ、また、だれが考えてもそういう事態なんだという場合には、私はいわゆる万やむを得ないということが言えるかもしれませんが、安易に、社会的な責任を忘れて、また、その他の手段に万全を期することなくして、解雇によって活路を見出そうなどという安易な考え方というものは、今日の事態においては当然これはもう排除されるべきである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/43
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044・小柳勇
○小柳勇君 そういう大臣の考えは、内閣として、政府として企業家に伝えなければならぬと思うわけですね。事業家、あるいは資本家にそういう方法なり具体的な施策がありますか、いま労働省のほうに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/44
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045・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) そういうこれは産業界の指導、何と申しますか、一般的な問題だと思いますが、役所の所管からいうと、私どもどこが所管ということになるのか、どうも法制上のことは私はよくわかりませんが、しかし、私自身の立場としては、いろいろの会合などにおいてお話などする場合においては、ずいぶん私はそういう趣旨のことを今日まで話してきておるのであります。しかし、産業自体の指導ということになれば、第一義的には通産大臣ではないかと思うのですが、私は労働大臣という立場において、あらゆる機会に私がいま申しましたような考え方は述べておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/45
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046・小柳勇
○小柳勇君 その問題はもうちょっとぼくやりたいが、工業局長が忙しいようですから、時間がないようですから、局長にまず先に質問しますが、いま課長から話を聞きましたが、セメント業界のここ過去二、三年の動き、業績と、それから現在、いま建ち直っていると私判断いたしておりまするが、このセメント業界の現状と、これからの見通しですね。いま問題にいたしておりますのは、小野田セメントが赤字になりまして、この再建のために労働者の首を切った、希望退職が若干足らなかったために指名解雇をした、この基準がけしからぬということで、会社も撤回をしなければならぬという立場でいま質問しているのですが、このセメント業界のいままでの業績と、これからの見通しについて局長の見解をお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/46
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047・吉光久
○政府委員(吉光久君) 実は決算委員会のほうに出席を求められておりまして、したがって、こちらのほうにしばらく不在をいたしまして、非常に失礼を申し上げました。
セメント業界全体の一般的な状況がどうであるか、あるいはこれからの見通しがどうであるか、こういう御質問でありますが、すでに申し上げるまでもないと思いますけれども、セメントというものは、やはり何と申しましても公共投資、あるいは設備投資、こういうふうなものの需要が旺盛であればこの生産はどんどん伸びていく、こういうふうな相関関係になっておりまして、現に昭和三十四年から三十八年にかけましては、そういう意味のひとつのブームに入ったわけでございまして、年率の生産量も一三%前後、各年一三%前後の伸びを示してまいっていたわけであります。この生産の伸びというものは、同時に需要の伸びにそれがくっついておったということであったわけでございますけれども、三十九年の下期に入りまして、これは三十九年に大体少しずつ落ち始めていたわけでございますけれども、三十九年に入りましてからそういう意味の一般的な設備投資が少しダウンをし始め、その影響がすぐにこのセメントの生産にあらわれてまいったわけでありまして、したがいまして、三十九年下期からこれはセメント各社、現在二十三社ございますけれども、セメント各社とも、損益計算上だんだんと苦しくなってまいったというふうな事態に相なりまして、その後依然としてそういう公共投資は四十年度におきましてもその指数をそのまま反映いたしまして、四十年度の前年度に対します生産の伸びも約二%前後というふうに、非常に低い伸びに終わったわけでございます。これは小野田セメントだけに限らず、セメント各社とも、三十九年下期、あるいは四十年度に入りましてからは、これは特別の需要地等、特に強い需要地を近辺に控えておると申しますか、そういう会社でございます住友セメントあるいは秩父セメント、この二社を除きましては、すべて減配ないし無配というところにまでなってしまったわけでございます。一応そういう事態で現在推移いたしておるわけでございますけれども、ただ、昨今の状況から判断いたしますと、これは見通しの問題でございますけれども、昨今の状況から判断いたしますと、たとえば、あるいは先ほど担当課長のほうから御説明申し上げたかとも思いますけれども、ことしのこの三月でございますけれども、この三月の生産量は、前月末が大体二百六十万トンベースの生産、十二月、一月、二月、これは不需要期に入った関係もございますけれども、二百六十万トン程度の生産をやっておりましたものが、三月には三百十四万トン、約三百十五万トン程度の生産に回復し、また、需要のほうも、これはシーズンに入る点もございますけれども、従来の二月末が微々たるものであったわけでございまするけれども、三月末には三百二十万トンの需要、これは国内需要と輸出とを含めてでございますが、三百二十万トンの需要ということで、これだけの出荷をいたしておるわけでございまして、在庫量も、二月末の百三十万トンから三万トンだけ落ちまして百二十七万トン、要するに生産量は相当大幅に、二百六十七万トンから三百十四万トンというふうに大幅にふえておりますけれども、在庫のほうもわずかではございますけれども、百三十万トンから百二十七万トンに減るというふうに、生産の伸びに比べまして在庫も依然としてと申しますか、むしろ減る傾向が出てまいったという状況に相なっているわけでございます。現在の公共投資の繰り上げ計画の問題でございますとか、あるいは民間設備投資に一部動意が見られております。すでに一部増大する動きが見られつつあるわけでございますので、こういう状況を反映いたしまして、少なくとも本年度の四十一年度でございますが、四十一年度は前年度に比べて六%程度の伸びを示すのじゃないだろうか、全体として六%程度のものの伸びは期待できるのではないだろうか、こういうふうな状況になっております。したがいまして、経理のほうから申しますと、九月期決算くらいからは少し損益計算上も有利になってまいるのじゃないだろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/47
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048・小柳勇
○小柳勇君 もう一点は、操短は二年くらい前は五割から六割平均ですが、現在どのくらいでしょう、セメントの操短は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/48
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049・吉光久
○政府委員(吉光久君) これは稼働率というものをとるのはこれは非常にむずかしいわけでございますが、いま私どものほうではじいておりますところでは、現状で大体四十年度全体で六一・二%程度の稼働率であったのではないだろうか。これは御参考までに申し上げますと、その前の年の三十九年度は六九・五でございます。三十八年度までがよかったわけでございますが、三十八年が七三・三。で、三十五、六、七は八〇%を上回っておりますが、三十八年に七三・三、九年が六九・五、そうして四十年で大体六一・二というくらいの稼働率に相なっておりまして、最近も大体この辺の線——三月現在で申し上げますと六二%、四十年度の平均は六一・二でございますが、三月だけが六二%程度というところに稼働率は相なっているようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/49
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050・小柳勇
○小柳勇君 ちょっと問題がこまかいのですが、小野田の場合、いま現在の操短稼働率と、それから三月期末の赤字の累積はどのくらいと踏んでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/50
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051・吉光久
○政府委員(吉光久君) いまの操短のほうの関係は、おそらく全体の数字に非常に近いところじゃないかと思いますが、ちょっと調べてまいります。
三月末の累積赤字でございますが、これは私どものほうで聞いておりますところでは八十三億円、これは三月決算ではなく、全部含めた累積赤字が八十三億程度であるというふうに承っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/51
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052・小柳勇
○小柳勇君 ちょっといまの赤字は会社側のほうと違うようですから、あとでそれは参考人と並べてお聞きいたしましょう。局長のほうはこれで質問を終わります。どうぞ退席してけっこうです。
大臣、さっきの話ですが、いま新しい法律を出しておられるのですけれども、かってに赤字再建のためにかように首切りするというようなものを労働省が把握するとか、あるいは何か制限しなければ、労働行政として一番背骨が要るのじゃないかと私は思うのです、特にこの問題から。こういう類似のものがたくさんありますから、どうですか、この点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/52
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053・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 今度御審議をわずらわすことになっております雇用対策法案におきましても、この労働者の雇用の安定、職業の安定ということを一つの大きなねらいといたしておるわけでございまして、事業主の職業安定のための努力ということを極力助長するように国はつとめなければならぬ、そういうことも第一条においていま申しましたような趣旨のようなことをうたっておるわけでございます。ただ、直接的に解雇制限そのものということになりますと、これはなかなか労務管理の自主性と申しますか、そういう面とのかね合い、こういう点から、法律としてそこまで割り切って書くということはいかがであろうかと、まあこういうことで解雇制限ということ自体はうたっておらないのでございます。一方においては職業選択の自由、こういうことももちろん憲法上これは認めなければいけませんし、それとのかね合いと申しますか、そういうことから労務管理の自主性ということもこれまた重んじなければならない、こういうことなので、いろいろ検討と申しますか、研究はしたのですが、どうもそこまで解雇制限を直接的にそこにいくということはいかがであろうかということで、そこまで踏み切れなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/53
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054・小柳勇
○小柳勇君 その問題はまた本院でひとつ十分論議をしてください。それは基本だと思うんです。この小野田の問題もやっぱりそこに根源があると思いますから、十分にその法律のときに論議していただきたいと思うのですが、それにつながってまいる問題がいまの指名解雇の問題です。さっき私申し上げましたように、りっぱな労働協約があるし、就業規則があるにかかわらず、これを一方的に破棄して指名解雇基準なるものを出して、これはもう組合はもちろん拒否する。こんなばかげたことはないと拒否する、それを強引に指名解雇しておる。そして第二組合の問題も、さっき報告されましたけれども、第二組合ができましたのは指名解雇後四日目です。警察官立ち合いの上ですよ、警察官がちゃんと立ち合って、結成式場の横にちゃんと張り番しておって、そして職制が招集して第二組合を結成しておる。その第二組合の結成をしましたときの当時の副支部長はその会社の重役の女婿である、そういう事実。その指名解雇するときは第二組合はありませんから、当然労働協約は生きている、就業規則ももちろん生きている。その後過半数の職場では第二組合ができましたけれども、もちろん労働協約はない。その問題を一体労政局としてはどうとらえますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/54
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055・三治重信
○政府委員(三治重信君) これは第二組合の問題につきましては、労使双方について調査いたしましたところ、先ほど大臣から御答弁いただいたのが要約でございますが、新組合の母体は、三十七年に竜愛会という親睦的な組合が、津久見の支部の組合の指導部の批判的グループとして、組合の内部にそういう親睦的な組織ができておって、そしてそのいわゆる執行部批判のグループがきっかけになっておるのだということが一つ言えるのじゃないかと思います。もちろん組合側のほうは、これは会社側がつくらしたのだ、まあこういう主張でございます。それで新しい組合の主張は、旧労の幹部の独裁によって階級的色彩が強くなったこと、また、過激な社会主義革命運動化する傾向がある、これでは組合員の家族の真の幸福は招来できない、こんなようなことが書かれておりますが、しかし、会社側のほうも、全体にわたって第二組合をつくらすということならまあ会社のほうのあれも考えられますが、第二組合関係は、小野田セメントの工場が十幾つかある中で、実際問題はこの第二組合問題が出てきているのはここだけなんです。会社側のほうも、現在のいわゆる小野田セメント組合全体としては非常に信頼に足る組合で、労使協調して信頼関係を持ってやっておりますと、こういうことで、したがって、この津久見工場だけの第二組合なので、会社がいまの小野田セメントの組合を敵とするというふうなことならばわれわれがつくらしたということを言われてもやむを得ないけれども、われわれは小野田セメントの組合はあくまでも信頼して、今後もこの問題については組合を相手にして処理していく、決して組合を相手にしないということではないのだ、ただこの津久見工場だけの内部の争いだと、こういうふうに言っているわけでございます。
それから、先ほど最後で今後の見通しを述べましたが、小野田セメントの組合全体と会社とは、提訴はして労働委員会で争うけれども、しかし、並行して団体交渉をやって、平和的に解決していくように労使双方とも努力しようというようなことをやっておりますから、また、現にここの第二組合の問題については、具体的には係争事件にはなっていないということから見まして、やはり必ずしも私のほうはまだ断定的に言えませんけれども、会社がそういうふうにやらしたというのではなくて、あるいは現地の工場の中の幹部がそういう行動をとったことがあるかもわかりませんが、これも現在ではなかなか詳細にわかりにくいところでございます。そういうことで、この問題が解雇の問題で、会社と組合との関係で、第二組合の問題でそうこじれることではないのではないか。会社のほうも、あくまでいわゆる第一組合の系統の小野田セメントの組合と話し合いしてやっていく、こういうような態度であることは間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/55
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056・小柳勇
○小柳勇君 事実関係を聞いているのじゃない。労働協約のりっぱなものもある、就業規則もりっぱなものがありますが、破棄も何もしない、一方的に無視して、別の指名解雇基準なるもの十二項目を出してばさばさ指名解雇するそのやり方について労政局長としてはどう感じますか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/56
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057・三治重信
○政府委員(三治重信君) この就業規則と、今度新しく出た十二項目の解雇条項とは非常に違うわけですが、結局津久見の工場で希望退職者が少ないために、他工場との均衡を保つためにやはり解雇をするということ、しかも、中労委のあっせん案が出たにもかかわらず、それを拒否してやるという会社の態度、これは非常な強硬な態度だと思います。それで、この解雇基準でございますが、この解雇条件につきましては、われわれもこれを見て、いままで行なわれたほかのところの従来の解雇条件から見ると、非常にシビアーな解雇基準であることは事実でありますとともに、まあこれについて会社側に聞いたところ、いろいろ弁護士さんとも相談して、弁護士さんにいろいろ解雇の事由を会社の実情を見てやってもらったので、法律上はあまり間違いはないと思いますけれども、やはり労使関係から見れば非常に不適当なところがあるかもわかりません。しかし、まあわれわれのほうとしては総合的に判断をして、これを形式的と申しますか、やはり一応基準はつくらなければならぬのでつくったけれども、やはり総合的にその会社をやめてもらいたい人をつくってやった。もちろんこの解雇条項については、それぞれ該当事項は各本人には説明してございます。それから、それに対して各個人別に解雇事由について相当長時間をかけて説明をし、また、反駁も聞いてやっておりますと、こういう説明を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/57
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058・小柳勇
○小柳勇君 会社の代弁でなくて、労政局長はどう考えておるかということですよ。これは非常に歴史的な文書だから、全部いまから私読み上げるから、速記録に残しておいてもらいたいと思う。将来こういうことがまたほかの会社でもある危険性がありますから、指名解雇基準十二項目あますので、読みます。
「(1)、定年に近い男子。(2)、有夫の女子」、これは夫を持っている女子です。「及び昭和四十年十二月三十一日現在で満三十歳以上の女子。(3)、昭和三十七年十二月一日〜昭和四十年十一月三日迄の三年間の欠勤等が次の各号のいずれかに該当する者。」、三年間のものですよ。「(イ)、無届欠勤が二日以上ある者。(ロ)、正当とみられない事故欠勤が年四日以上の者又は通算一〇日以上の者。(ハ)、傷病による欠勤回数が年四回以上の者、又は通算一〇回以上の者。(ニ)、遅刻、早退が年十二回以上の者、又は通算二十回以上の者。(ホ)、前各号に準ずる者」、これがたいへんですね、「前各号に準ずる者」。
「(4)、病弱で次の各号のいずれかに該当する者、但し業務上の傷病者を除く。」、これに人権侵害的なものがありますが、「(イ)、昭和四十年十一月三十日現在、病気休職が二年以上に及んでいる者。(ロ)、昭和三十五年十二月一日から昭和四十年十一月三十日迄五年間に病気による休職が二回以上に及ぶ者。(ハ)、病気を理由として遂行すべき業務が限定されている者、又は配置転換に応じない者」。
それから、(5)のところですけれども、「精神もしくは身体に障害があり、業務上支障があると認められる者(精神病の既往者を含む)」と書いてありますね、既往者を含むと。
「(6)、三交替勤務の困難な者。(7)、事業場間又は事業場内の配置転換が困難な者、又は配置転換に応じない者。(8)、勤労意欲に欠ける者、又は業務怠慢な者。(9)、業務遂行能力がおとり、将来も向上の見込のない者。(10)、職務上の命令に従わないなど会社の秩序を乱す者。(11)、上司又は同僚との融和協力を妨げる者、又は協調性を欠く者。(12)、会社の方針及び業務運営に非協力な者」、
以上十二項目でありますが、その中には、たとえば有夫の女子を解雇する、あるいは三十歳以上の女子を解雇する、あるいは精神病がなおっておっても、かつて精神病であったような者はこの際やめてもらう、そうして指名解雇されたものをずっと項目を読んでみますというと、最後のほうの(8)、(9)、(10)というのが一番多い。「職務上の命令に従わないなど会社の秩序を乱す者」とか「上司又は同僚との融和協力を妨げる者、又は協調性を欠く者」、「会社の方針及び業務運営に非協力な者」、理由はもうささいなことがたくさん書いてありますけれども、(8)、(9)、(10)と、それが非常に多いのです。五十九名が指名解雇されたという事実です。もう一回ひとつ労政局長から聞いておきますが、労働協約、就業規則をかってに無視してこういう基準を一方的につくってどんどん指名解雇できるのかどうか。いまのような労働法もちゃんとある。憲法に保障された労働者がばりばり指名解雇されていいものかどうか、聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/58
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059・三治重信
○政府委員(三治重信君) 指名解雇するからには会社の最後の手段とすべきだ、こういうことについては先ほど労働大臣から御答弁いただいたと同意見でございますし、それから、指名解雇についての解雇基準というものはやはり非常識なものである、いかにもまあへんぱな基準ということについては、これは決して適当なものではないというふうに思います。この十二項目は、従来の一般的な指名解雇の基準からいけば、基準として非常にシビアーな基準だということについては確かだと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/59
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060・小柳勇
○小柳勇君 大臣、どうですか。いまのこういうふうなこと、労働協約をかってに無視し、就業規則を無視して一方的に基準をつくって、そしてその切る者をちゃんと合致させていくようなやり方についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/60
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061・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) その点がこの両者の見解が違うのではないかと私は思うのですが、つまりその点というのは、協約を無視したとか、あるいは就業規則を無視してかってにやったとか、かりに全然協約なりあるいは就業規則なりというものを無視してこれをやったのだとすれば、私はこれは不当なことであると、そう思います。
そこで、まあついでの話で恐縮でありますが、私は、そういう場合に、片方はどうも無視している、片方は無視しているんじゃないのだと、おそらくそういう立場をとっているのじゃないかと思うのですが、争いになってこれを労働委員会に持ち込んでいるということなんでしょうが、争議にいく前に、労政当局といいますか、労働省の行政としてもう少し何かやることがあるのじゃないかという実際私は感じを私自身が受けているのです。ただ、いままでいわゆる労使間の問題に不介入だと、こういうたてまえで、もし紛争が起きれば、それは労働委員会でやってもらうと、こういうのが筋道ではございましょう。そこに労政当局が何らかの口をきくということになると、どうも労使の問題に介入したのじゃないかというまた一面から御非難も起きやすいというようなことで、まあ原則は不介入だと、こういうことで来た。それも現行法のたてまえに私は違いないと思いますが、どうも若干そこにギャップがあるのじゃなかろうか。もう少し労政当局で、争いにいく前に、たとえばいまお話しのとおり、これは会社がこういうことをやるのはいわゆる就業規則無視であるとか、こういう組合が見解をとられるならば、組合側から御連絡をやはりいただいて、会社側がそういう見解に立ってやるということはどうもちょっとおかしいじゃないかとか、まあ指導といいますか、御相談に乗るというか、そういう点がもう少しあっても——これは度が過ぎるとまた介入という問題でこれはまた問題になりましょうから、そこまでいかぬ、世間も納得する程度のもう少し労政当局が努力をするところがあっていいのじゃないかと、これは一面からいえば労働委員会の仕事がどうするかと、これもいろいろ御検討はいただいているわけですが、それらの問題もございましょうが、私は法律的な関係を詳しくは存じませんが、どうもそういう感じを受けておる。この点はひとつよく事務当局にも研究をさしていきたいと、こう思っていることだけを念のために申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/61
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062・小柳勇
○小柳勇君 いまの問題を私は質問しようと思ったのです。そこが一番重要なポイントですよね。これは中央労働委員会は知っておったのですよ。中央労働委員会があっせんを出したのですからね。指名解雇しなさんなよと、希望退職の期間を延ばしなさいと、組合がそれをのんだのだから。それで今度は、それにもかかわらず、会社がけって、一方的に基準を出したでしょう、そして指名解雇したでしょう。中央労働委員会が知ってるんですからね。そのときに救済をどうするか、たとえば基準監督署に行って個々にやって、就業規則を無視しておりますから、何とかひとつ救済してくださいと言ったって、労働省はすぐこれを取り上げるかどうか。中央労働委員会があっせんを出したけれどもけ飛ばしたが、中央労働委員会に何とかしてくださいと再度組合からあっせんを申請するかどうか、労働法の不備ですね、これはいまの労働法を一体どうするか。どうかしなければならぬです。これは今度私は四・二六の春闘であっせんが不調に終わった。あっせん委員というものは、あるいは中労委の委員というものは、もうこれであっせん不調になりましたから責任ないというような逃げるようなものであっていいかどうか、これは労働法の基本的な問題だと思うのですね。あっせんする以上は、最後までやはり責任を持ってあっせんしていただく、あるいはもう裁定を出したら、裁定は完全実施しなければならぬものだ、政府にちゃんとやはりそれだけの力を持っていただかなければ労働行政はできませんね。これは民間のことですから地労委はわかっていたのだから、しかも現地の監督署はわかっておるはずですね。その点についてどうするか。ただ大臣が、これは困った問題だじゃほんとうに困った問題ですからね。内閣から発議して法律改正するか、あるいは社会労働委員会で取り上げて法律改正するか、そこにいきませんと、また再々こういう問題が出てきやしませんか。基準局長、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/62
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063・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 就業規則違反が行なわれたといったようなことの処理をどうするかということでございます。労働基準監督機関としましては、一般論で申し上げますと、いわゆる労務管理指導をいたしておりますので、平素から就業規則のつくり方、いろいろやっております。それとの関連におきまして就業規則違反の問題が起こりましたような場合におきましては、いわゆる指導という形でいろいろやっておるわけでございます。ただ、問題が労使紛争という形であらわれてきました場合に、一般的に争議不介入といったような方針が従来とられておりましたので、その間、いわゆる指導を行ないますについても慎重な処置をとる、ただ、基準法違反がございましたときには、これは事柄が別でございまして、いわゆる監督そのものでありますから、法に従った措置をとるという二つの形に分かれるわけであります。就業規則違反があった場合には指導通知でやりますけれども、ぎりぎり決着の問題として、行政機関が扱うのか司法機関が扱うのかという点は、これは非常にむずかしい問題であろうと思います。現在の組織といたしまして、労働基準法という法律に定めた事項の違反がございましたときには、司法、検察官としての権限を行使いたしまして送検するという措置までは行政機関である監督機関がやるわけでありますが、その先は司法機関にゆだねる。それから、就業規則違反がございましたときに、それが直接労働基準法にかかわりのある事項でない場合には、一般的な違法問題として、行政機関ではなくして、司法機関のほうにそういう問題をゆだねる、こういうかっこうになっているわけでありまして、そういう行政機関、司法機関の扱うべきこの問題の分野という問題がありますので、基本的にはいろいろむずかしい問題があるだろうと思います。ただ、御指摘のように、労働者保護の見地から、そういった法律で定められた権限行使ということと別に、内面的な指導とか、そういう事実上の措置によって何らかのことをなし得ないかという問題は十分考えられるわけであります。先ほど大臣から、困難な問題ではあるが検討したいという点について、私どももちろん大臣の意を体しまして、今後十分検討したいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/63
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064・小柳勇
○小柳勇君 その司法機関に移行するやつは、これは論外です。裁判に移行するやつは、これは裁判所を促進するだけですが、地方労働委員会、公企労働委員会というのは行政委員会ですから、行政委員会のほうにまかせっきりでは監督官庁としてはあまりにも芸がなさ過ぎるのじゃないかということ、それが一つ。それから、いま指導体制、一体予算を幾ら使って指導しているか。いまこの問題で私がおこっているのは、工場長が技術者で労働法がよくわからないでやったのならおこらないけれども、法学士なんでしょう。しかも労働法はよくわかっている。福祉課長というのは、かつて労働組合の責任者なんです。その連中がちゃんと労働法がわかりながらやっているから私はおこっているし、問題にしている。彼らは法の欠陥はわかっているのですよ。法の欠陥がわかって、その網の目をくぐってやっている。だからよけいしゃくにさわる。たとえば職制が第二組合をつくるときに、第二組合にいけば首を切らないということで第二組合をつくることによって就業規制を事実上なにしている。ちゃんと法的にわかってやっている。そういうことだから私はここで社労委員会の問題にしなければならぬ。そういう第二組合をつくったのはもうたくさん資料がありますから、これはいま地方労働委員会で論議しておりますから、ここでは論議しません。この労働法がわかって、その労働法の欠陥、弱点を握りながら第二組合をつくって自分たちの労働者の首切りによって企業の再建をはかろうとすることが道義上許せぬ、こういうことを一貫して私は言っている。
もう一つは、いま山崎委員から紙が回ってきたが、解雇権の乱用ではないか、労働大臣、あなたはあのサンデー毎日を読まれて解雇権というものをどう考えられるか。明らかにこれは解雇権の乱用ではないか。いろいろありますけれども、このことを、私だけじゃありませんから、最後に労働大臣から聞いて質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/64
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065・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 先ほど私も申しましたし、労政局長から申しましたように、この今回の十二項目にわたる基準というものは相当シビアーなものである、私もさように思っておるわけでございますが、これがしからば直ちにこういう基準で解雇するということは解雇権の乱用ではないか、こうお尋ねを受けますと、私がはたしてこの場で乱用であるとかないとか、どうも私には正直に申しますと、そこまで言う、何といいますか、立場に私はない、かように申し上げざるを得ないと思いますが、その点はむしろ具体的な事実に徴して、裁判所によっていろいろな証拠も調べられて、裁判所が判断をくだすべき事項である、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/65
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066・小柳勇
○小柳勇君 どうもやはり政治的に発言されますからかみ合わないのだが、そういうことでは委員会の議論というものはなかなかかみ合っていかない。次の機会にやりますけれども、大事な問題が二つあります。一つは、さっき基準局長が言われた、行政指導いたしますという指導体制の強化、こんなことをほかの会社でもまたやりかねないから、こんなことを阻止するためにはどうするか、かってに指名解雇するのはけしからぬじゃないかということを労働省としては当然やらなければならぬと思うが、これはどうやられますか。ことしはどのくらいの予算を組んであるか、どうやりますかという問題が一つ。それから、地方労働委員会が審議中でありますけれども、なかなかたいへんだ。月に一回ぐらいしかできぬ。そうすると一年ぐらいかかりますよ。八月ごろまでに結論を出しますと言うけれども、結論は出ぬのじゃないか。そうすると失業保険期間が切れます。地方労働委員会の審議能力というものを労働大臣として検討しなければならぬのじゃないかと思う。そうでないと、首切っておいて、組合の弱いところは資金カンパもできないからやめてしまう。そういう審議能力を強化するにはどうするか。たとえば各県で人口によって人数がきまっているでしょう、五名とか七名とか。それをある場合に倍にして五名のところを十名にするとか、特に臨時地方労働委員会を何らかの方法で組織するとか、労働法の改正、これをしなければならぬ。こういうことを検討してもらいたいと思うが、以上二点について御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/66
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067・三治重信
○政府委員(三治重信君) 先生も御存じだと思いますが、労働委員会が事件を継続して月一回ぐらいしかできぬということはございません。地労委のこの件についての大分の場合につきましては、第一回は二月九日、第二回は三月十一日、それから第三回が三月二十九日、これは組合側、それから会社側も同じように三回やっております。ただ、問題は、この不当労働行為制度の委員会としての審査のやり方が問題でありまして、これはあまりにもアメリカ式の双方対人審問というような形になっておるところに、結局どちらかが引き延ばせばどんどん引き延ばせるというかっこうになるわけで、こういう問題の審理のやり方なんかについての権限は中央労働委員会の規則によってきめられているわけです。この問題については、したがって、従来の地方労働委員会の規則なんかは、全部労働委員会の協議会なんかにはかって、そして大体の賛同を得て改正しているわけです。この問題で関係者の意見を聞いておりますと、一番問題になりますのは、双方弁護士がつくようになっており、この弁護士の日程の都合で審議が延びていることであります。それは結局調書式な書類での提出で大体のところを調査するとか、それから、審問の回数はできるだけ限って行なうとか、それから、もう一つは、事実の予備的な調査に身分保証を与えた調査官が行くというような制度をつくって、そして事件のあらましの予備的なものを精力的にフルタイムの常勤職員が担当することによってこなしていくというふうな規定を設け、制度を改善していくというような、いろいろのことがあると思います。この問題につきましては、したがって、労働委員会の審査機能、調停機能を区別して、もちろん審査機能は公益委員会だけで行なわれるわけですが、やはり手足が非常に少ない。少ないというよりか、手足としての整備が行なわれていないということになっているわけでございます。したがって、制度そのものは、まだいまの現行法でも、やり方さえ変えれば十分改善の余地があるように思われます。ところが、いま実際の慣習上、そういうふうになっておると、どこでそのけじめをつけるかということになると、なかなかむずかしい問題があるのではないかという問題になってきております。そういうような点につきましては、現在労使関係研究会で相当研究されておりまして、近くレポートが出ると思います。それによって各界の意見を聞きまして、法改正を要するところがあれば、法改正のまた審議会をつくって、結論を得て改正に持っていきたいと思います。運用上の問題で改正すべき点があれば、それは中労委のほうで中央労働委員会の規則を改正していただいて、その審査機能の増進のために処置していただくというようなことをやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/67
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068・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 就業規則を中心に申し上げますと、現段階におきましては、中小企業について就業規則の作成が十分でない、内容も不備であるといったような問題が特に強く意識されております。したがいまして、中小企業に対しましては集団指導という形をとりまして従来指導してきたわけであります。ところが、今回問題になっておりますように、日本でも有数な企業であり、就業規則もできておる、法律の裏表を知っておるというような企業におきまして組合との間の問題として事が表面化したという場合になりますと、非常にむずかしい問題になるわけであります。予算的な措置としては中小企業対策といたしまして、そういった集団指導を通じまして、就業規則の作成、内容の整備といった措置は講じてありますけれども、本件のような場合につきまして、いわめる監督指導が仲裁とかあっせん、調停といったような労働関係の調整的な面を持ってまいりますと、労働基準監督機関に対しましてはそのような調整機能の発揮を戒めておりますので、事は非常にむずかしいということになろうかと存じます。したがいまして、本件のような問題に対しまして即効性のある措置ということになりますと非常にむずかしい、しかし、一般的には、就業規則の作成及び順守について、いま申しましたような形で指導を強化してまいりたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/68
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069・小柳勇
○小柳勇君 希望だけ述べて質問を終わりますが、一番基本的には、やっぱり労働者を守るという立場から労働行政をやってもらわなければならぬ。会社側のことを聞いてきて、会社側の代弁とか、あるいは会社側の弁解だけではなくて、やはり労働者を守る立場から労働行政をやってもらいたいということが労働大臣への私の希望です。
それから、委員長並びに委員会の皆さんに、五月十日の団交では地方労働委員会と並行して解決を進めようということがいろいろ検討されておるようでありますが、解決されない場合には、早急に参考人を呼ぶことを御決定いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/69
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070・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) その件については、また理事会で御相談を申し上げまして取り計らうようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/70
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071・山崎昇
○山崎昇君 いま締めくくりに小柳委員のほうから参考人の要求が出ましたから、私から申し上げませんが、ただ、私から労組法の改正のときに申し上げたように、盛んにこの委員会ではいいことも議論されるのですが、残念ながら、第一線の労働に関する行政機関は逐次縮小されておるのですね、実際は。これは私も自治体自身でありますから、よくわかりますが、たとえば労働教育関係は予算がだんだん減ってくる、あるいは人が減ってくる、何か欠員不補充というものがまつ先にやられておる、あるいは労政事務所にしても縮小されておる。ですから、第一線の労働機関というものは、私はかなり後退していると見ておるわけです。ですから、そういうところも十分労働省で配慮してもらわないと、大臣や局長がここでうまいことを言われても、実際は第一線は活躍できない、こういうことに私はなろうかと思いますので、その点は十分ひとつ大臣以下局長の方々にもお考えをいただきたい。そのことを申し上げたいし、それから、私は前々の委員会から参考人を呼んでもらいたいということを希望しておったのですが、残念ながら、なかなか実現しなかったのです。きょうはいろいろ専門に小柳さんから調査をされましたので、それを土台にして話を聞いたわけですが、聞けば聞くほど不可解な点が出てくる、あるいは労働省のほうにおかれても、この事件はどうもぐあいが悪い、あまりいいやり方ではない、こうあなた方もお考えだと思うのです。しかし、行政機関になりますから、答弁の限界があると思うのですね。そういう点で私からもぜひ委員長にお願いしたいのは、これは早い機会に現地の関係者を呼んで直接聞きたいこともありますし、こういう問題は、一つ見のがしますというと、また二つ、三つと同じ事件が起きますので、ぜひこの問題は労働者の立場から結着をつけたいと、こう考えますので、委員長のほうに重ねてお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/71
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072・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 小柳委員の御要望に沿って、理事会でよく御相談申し上げたいと思います。
他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/72
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073・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案を議題といたします。
これより本案に対する質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/73
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074・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 御承知のとおり、私が一酸化炭素中毒症に関する法律の提案者でございます。きょうは予定していた時間が過ぎましたから、私はきょうはこの問題についての議論はなかなかきょうの時間ではむずかしいと思います。次回に譲ってもらうことにいたしまして、この一酸化炭素の中毒の方は、三池で八百名、伊王島その他を交えて千名からの中毒者が出て、本人は申すに及ばず、家族の皆さんが非常にお困りであります。かつて日本で医学上もあまり突き詰めた対策がないようでありまして、困るのは被災者であります。ですから、この方々を何としても——労働者災害補償保険法があるわけでありますが、この法律で縛られない要件の保護が必要だと思うわけであります。これは至急この委員会で問題の結着をつけていただきたいと私はお願いをしたいところであります。
そこで、政府、労働省にお願いしておきたいのは、この次の機会にやりますから、だからその一酸化炭素中毒者がどのような原因で起きて、どの場所で何人おり、その治療がどういう方法でやられて、そうして今日までどういう経過をたどっておるか。その経過の中で、本人は申すに及ばず、家族の皆さん方のお困りの状態があるわけで、だんだんと被害者は減ってまいってきております。しかし、減りましても後遺症の残っておいでの方もあるでしょうし、それらの保護措置も考えなければなりませんし、こういう不安をやはり除いてあげなければ地下労働者というものの身分が保護されないわけですから、地下労働者全体が不安であり、それにプラスして、最近の現状は一般の生産工場、化学工場その他にもこの一酸化炭素の中毒者がおりますし、最近では交通巡査がこの中毒にかかって途中で倒れるというような状態も起きているわけであります。単に地下労働者の問題ばかりでなしに、これだけ近代生活、近代社会の発展するに応じて、この被害者が地下ばかりにでなしに、外にも出てきた、工場にも出てきた、こういうことでありますから、私は、労災だけでは保護し切れない面があるので、何とか保護せなければならぬ、そう思うのは私一人ではないと思います。ですから、そのような現状について労働省から詳しい資料をひとつ至急に出していただいて、そうして、できたら次の委員会でこの問題の問題点を明らかにしていただいて、救済の実現ができますようにしていただきたい。私は委員会の審議にお願いするのでありますけれども、心配をする一人として、労働省にそのような資料を全部そろえて次の委員会に出してもらいたい。そのことだけを提議して、時間がありませんから、きょうはこの問題は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/74
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075・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 御要求の資料は、できるだけ詳細にひとつ提出いたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/75
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076・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本案に対する審議は、本日はこの程度にとどめておきます。
暫時休憩いたします。再開は午後一時半といたします。
午後零時五十三分休憩
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午後一時四十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/76
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077・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
失業保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。まず、政府より本案に対する提案理由の説明を聴取いたします。小平労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/77
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078・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
日雇失業保険制度は、日雇い労働者の失業時における生活の安定をはかることを目的として、昭和二十四年、第五回国会における失業保険法の一部改正によって創設され、社会保障政策並びに雇用失業対策の一環としてその機能を果たしてまいったところであります。
現行の日雇失業保険金日額は、昭和三十六年における失業保険法の一部改正によって定められたのでありますが、最近における日雇い労働者の賃金の実情にかんがみ、今般その保険金日額の引き上げ等を行なうこととしたのであります。
以上が、この法律案を提出いたしました理由でありますが、以下その概要を御説明いたします。
第一に、日雇失業保険金の日額の引き上げについてであります。現行制度では、日雇失業保険金の日額は、第一級三百三十円、第二級二百四十円とされておりますが、現行の日額は、すでに申し上げましたように、昭和三十六年に定められたものでありまして、その後現在までに日雇い労働者の賃金額も相当に上昇しており、実情にそぐわないうらみがありますので、この際、新たに五百円の保険金日額を設け、これを第一級とし、これに伴い、従来の三百三十円の日額を第二級とし、従来の二百四十円の日額を廃止して、給付内容の改善をはかることとしたのであります。
第二に、日雇失業保険の保険料日額の改正についてであります。現在の保険料日額は、第一級十六円、第二級十二円とされておりますが、保険金日額の引き上げに伴い、その引き上げ率と同率の改定を行なうこととし、新たに二十四円の保険料日額を設け、これを第一級といたしました。これに伴い、従来の十六円の日額を第二級とし、従来の十二円の日額を廃止するものといたしたところであります。また、新しい第一級及び第二級の保険料日額の区分は、日雇い労働被保険者に支払われた賃金日額が六百六十円以上の場合は第一級、六百六十円未満の場合は第二級といたしたところであります。
なお、保険料日額の改正に伴い、日雇い労働被保険者及び事業主の負担すべき保険料額は、従来どおり労使折半とし、それぞれ第一級については十二円、第二級については八円とした次第であります。
以上がこの法律案の要旨でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/78
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079・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) これより本案に対する質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/79
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080・森勝治
○森勝治君 労働大臣にお伺いしてみたいと思いますが、ただいま本件の改正提案理由の説明がなされたわけでありますが、私は、まず大臣に基本的な問題について御意見をただしてみたいと考えます。
私は、かねてから、まじめに働く者はだれでも安心して生活ができるようなそういう世の中をつくるべきではないかというふうに考えてまいってきたわけでありまするが、したがって、金持ちはますます金持ちになり、貧乏人は幾ら働きましても楽にならないような現在の仕組みには私は反対をするものであります。憲法二十五条によりましても、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」さらに、また、二項には、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」というふうにうたわれてありまするが、人並みの生活を願うのは国民のだれしも持つ権利でありますることは、いまさら私がここでちょうちょうするまでもありません。憲法の保障するこの国民の権利をほんとうにわれわれのものにするためには、大資本のみがひとり太っていくというこの姿というものを改めていかなければならぬと私は考えております。そのためには、働く者の権利を守るとともに、物価の値上がりなど、公害、住宅難、通勤地獄などの解消をはかり、消費者のための行政を充実して、そうして人間喪失の政治というものを改めていかなければならないと思うのであります。そのことが全きを期し得るならば、世の失業者というものはやがて少なくなっていくわけでありますから、初めて本法によって社会保障の念願する、国民のだれしもが豊かに、安楽に暮らせるという考え方にやがて合致していくだろうと思うのでありますが、どうも今年度の予算の内容を見ましても、ただいまの御説明をいただきましても、さらにその他の大臣の所見をお伺いいたしましても、これは私の邪推ならけっこうなのでありまするが、どうも積極果敢な、働く者の生活を守る、権利を擁護する、こういう前向きの姿勢にややもすれば欠けんとするがごとき印象をぬぐい切れないわけであります。したがいまして、大臣にこの点についてのひとつ所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/80
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081・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 先生御指摘のとおり、憲法第二十五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、こうございますし、第二項では、そのために国が社会福祉、社会保障あるいは公衆衛生の向上、増進につとめなければならないと、こういうふうに明らかにうたっておるのであります。しこうして、いま先生御指摘のように、まじめに働く者が安定した生活ができる世の中をつくる、こういうことは、今日のいわゆる福祉国家の建設ということが政治の最高の目標として、それぞれの分野において、あるいは行政面から申しますならば、それぞれの政府当局においてその方向に向かって努力をいたしておるわけであります。もちろんこの間、見方と申しますか、御批判の余地がまだまだたくさんあるほど、必ずしもこの目的が今日の段階において十分に達しておるというわけにはまいらぬかとも思いますが、しかし、われわれ政府当局といたしましても、先生お示しのような方向に向かってそれをできるだけ早く実現したいと、こういうことで及ばずながら努力をいたしておるところでございます。さしずめ私に与えられました労働行政、労働政策の面につきましても、私ははなはだ微力ではございますが、この方向に向かって最善の努力を傾けてまいっておるところでございます。この労働政策、労働行政の面だけをとらえてみましても、幾多のことをなさなければならないのでありますし、それが今日の段階で私自身が考えましても、すべてが決して満足すべき程度にはいっておらない、こう率直に申し上げるわけでございますが、しかし、われわれは、いまも申しますとおり、労働行政の部面においても、この憲法の示すところに従って、あるいは先生のお示しのような世の中をつくるために微力を傾けてまいっておるわけでございます。今回御審議を願っております雇用対策法におきましても、雇用の安定、これを通じて国民の完全雇用にも資したい、また、そのことによって労働者の経済的な、あるいは社会的な地位の向上もはかっていきたい、そのために今後政府が一体となってあらゆる施策を展開をいたしていきたい、こういうことが大きなねらいなわけでございまして、それもいま申しましたとおり、従来からそういう点は全然やってこなかったわけでもございませんが、しかしながら、これまた今日の段階において十全とは申しかねるのでありまして、われわれが今回この雇用対策法案を御提案申し上げましたゆえんのものも、いま申しますとおり、やはり憲法の示すところに向かってより一そう努力をしたいと、こういう念願のもとに御提案を申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/81
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082・森勝治
○森勝治君 重ねて基本的な問題についてお伺いしてみたいと思うのであります。
先ほど小野田セメントの事件について小柳委員からるる質問がなされたところでありますけれども、その中で経営者の経営責任という問題についての小柳委員の質問に対して、大臣はこう答弁をされておるわけであります。前段は省きますけれども、経営者としては社会的責任を十分自覚すべきだ、そればかりではなく、重んじて行動すべきだ、しかし、実際はなかなかそうはいかないことも事実だというふうに言われておるわけであります。ただ、さらに重ねての小柳さんの質問につきましては、労働大臣の立場において、各種の会合であらゆる機会においてその点を主張してきた、こういうふうに言われておるわけでありますが、なるほど経営者側の反省を促すこともけっこうでありましょうけれども、先ほどの小野田セメントの件についての質問に対する局長の答弁を聞いてもわかりますように、明らかに不当労働行為がこの段階でも先ほどの質疑応答の中でも立証されておるにもかかわらず、どうも当該局長は会社側のその非の点については、非常に抽象的な答弁しかいたしておらない。小柳さんが、間違っておりますねとか、労働協約違反なんですとか、明らかに労働法の定むるこの問題については、労働法に抵触しているにもかかわらず、どうも語尾を濁して歯切れが悪いわけであります。そうなりますと、どうも大臣があらゆる会合において働く者の立場を守るということを主張され、この点についても小柳委員が最後の結びとして、労働省は働く者の立場に立つ行政こそしかるべきだという発言をされておるわけでありまして、この点は大臣も同感されておるわけでございまして、同感されているが、さて経営者側の不当労働行為の問題になると、これはもう労働委員会でおやりでしょう、それから先は裁判所でおやりになるでしょうと、あたかも人ごとのごとき感を呈するような、そういう印象を受けるような、どうもこの前向きの答弁を私は得られないままという午前の会議の印象を受けたわけでありますが、もし大臣が小柳さんの質問に答えて言われることが、大臣の心の底から出た大臣としてのほんとうのおことばとするならば、小野田セメントの例に見られるごとく、先般当委員会で証人を呼びまして聞きました大阪の新東洋硝子事件を持ってきてもわかりますように、小野田の問題についても新東洋硝子の事件につきましても、いずれも経営者側の放漫政策だ、経営の失敗によっての首切りだということであります。しからば、経営者側の道義的責任追及ももちろん必要でありましょうけれども、このように労働者がまじめに働いて、一生懸命生産の第一線に立ってがんばっておるにもかかわらず、経営者が経営能力がなかったのでしょう、あるいは、また、放漫政策をやったのでしょう、あるいは、また、過当な設備投資をやったのでありましょう、あるいは、また、経営者の独善的な経営の失敗、もろもろいろいろな条件がありますけれども、そういう経営者の失敗につれてちまたにほうり出された労働者の救済、何の、失業保険があるといえばそれまででありますが、私はそれ以前にやはり問題があると思う。小平さんは、先ほど労働法の改定をしてしかるべきだという御意見も出されているわけでありますけれども、こういうまじめに労働者が働いているにもかかわらず、経営者の放漫政策、いわゆる経営の失敗によって自分の使っている労働者をちまたにほうり出すことになれば、それは明らかに経営する能力に欠ける。よく三公社五現業においては当事者能力云々が先般の当委員会でも論議されましたが、こういう能力に欠ける経営者をいたずらに私は放任をしてよいものかどうかということをしみじみ考えるものであります。そうであるならば、やはり経営者が事業に失敗するようなことがあり、しかも、経営者の一方的な首切りということが行なわれるならば、いかにわれわれが失業保険を充実しても、あとからあとから失業者は生まれてくるわけであります。したがって、このように経営能力のない、あるいは、また経営の失敗によって失業者を出すような経営者には、やはり経営権の制限のようなこういう強い措置を講じることが労働者の立場を守る一つの方策ではなかろうかと思うのであります。したがって、もちろんそうなれば他の部門との関連が起こってくるのでありますけれども、小柳さんが先ほど後段で申された、労働省は働く者の立場を擁護する位置につくべきだ、こういう点を強く主張いたしましたが、労働大臣はうなずかれていたのであります。小柳さんの意見に同感だと思うのであります。しからば、そういう経営者の失敗によって労働者をちまたにほうり出すような経営者に強い制裁、強い措置がまたあってしかるべきであると思いますので、そういう問題については労働省の立場で一体どうお考えをなされているか、大臣からその問題を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/82
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083・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 先ほども私は経営者の社会的な責任ということを申し上げたのでございますが、このことはもう最も基本的な問題でございまして、いわば労使関係といったような問題以前の問題ですら私はあると思う。もちろん労使関係においてもこの社会的な責任を果たしてもらわなければ困るのでありますが、それ以前の問題ですらある、このように日ごろ私は考えておるのであります。そのことは、また、具体的には今回の雇用対策法案等におきましても、先ほどもちょっと触れましたが、当然そういうものは経営者には要求さるべきであり、そのことに向かって経営者は努力をいたすべきである、こういう前提に立って政府としてもその努力を助けていく、そのための施策は政府はやはりやらなければならぬと、こういったような趣旨を持っておるわけであります。ただ、そういう基本的な考え方を持っておるわけでございますが、先生から、そう言いながら、どうも小野田セメントの場合のことを質問すると、どうも結局歯切れの悪い答弁しかないじゃないかといったような趣旨のお話もございましたが、しかし、一面、私どもとしましては、やはり現在の法制のもとにおけるそれぞれの所管、それぞれの任務というものは、お互いにこれはまたそのことのよし悪し、あるいは批判の余地の有無は別にして、現在の時点においては、やはり現在の法制というものを重んじていかなければ当然これまたならないわけでありまして、現実に小野田の場合ですと労働委員会に提訴もされておる、そういうものは労働委員会において処理するのだ、こういうたてまえに相なっておる以上、われわれの立場から、はたして不当労働行為であるのかどうか、そういうものをわれわれが断言をあらかじめするというようなことは、これはやはりいまの法制のもとにおいては、われわれの立場としては慎まなければならない、こういうたてまえに相なっておりますから、確かに歯切れが悪いと言われればそれまでなんでありますが、どうもそれ以上のことをわれわれが申すわけにはいかない。その間の事情はひとつ御了承を願いたいと思うわけであります。
さらに、こういった事態を引き起こしたような能力ない経営者というものを放任しておいていいのか、そういう者については何らかの規制といいますか、制限を加えるのが至当じゃないかという御趣旨の御質問でございますが、現在のこれまた憲法をはじめとする法制のもとにおきましては、いま直ちにこういう事態を引き起こした経営者をどう処罰するか、それは法に照らして背任であるとか、そういた問題がありますならば、それはそれで処罰されましょうが、やはり法定されておらない一般的な何らかの規制というようなことは、これは憲法でも職業選択の自由も認められておるわけですから、それとの関連においても、いま直ちに今後会社の経営に当たってはいけないとか何とか、そういうところまで行なうことはいまの法制上のもとにおいても私はできないと思いますし、また、将来に向かっても、現憲法のもとでそういうことがはたしてできるものかどうか、私は疑わしいのじゃないかと思うのであります。しかしながら、一般的に申しますならば、やはり私はそういうこの経営能力を欠くというような経営者、しかも、それが一般的に、あるいは常識的に見ましても、そういう事態を招いたような経営者というものは、やはりいまの自由競争のもとにおいても社会的なやはり制裁といえば制裁、そういうものが自然にこれは及ぶことであろう、これは何ぴとも法をもってその人を規制する、処罰するというようなことがなくても、私は、やはり一方において経営者の社会的責任というものが強調される。それが自覚されてまいるに従って、また社会的な制裁というものは当然これは強まる、また、強まるべきである、かように私は考えておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/83
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084・森勝治
○森勝治君 それでは具体的な問題に移ります。局長にお伺いしたいのですが、一般失業の保険金につきましては、賃金の上昇または低下という問題が起こりますと、自動的に法律改正をせずして変更し得ることができる、すなわち、スライド制を採用しておることは御承知のとおりでありますが、いま出されておりまするこの日雇失業保険制度につきましてはそういう規定がありません。したがって、保険金を変更しようなどといたしますれば、すなわち、法律改正が必要になってくるわけであります。そこで、私は、一般失業保険同様に、この日雇失業保険制度というものも、保険金については法律を改正しなくても変更するように柔軟な規定を設けるべきではないかと思うのでありますが、その点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/84
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085・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 御指摘のように、一般の失業保険につきましてはスライド条項がございまして、法律の改正を待たずして保険金日額の改正が行ない得るわけでございますが、日雇失業保険につきましては、この一般の失業保険の場合と異なって、スライド条項が実はないわけでございます。私どももいろいろ一般と比較して、そういった問題について不利な点があるのじゃないかということで検討はしておりますけれども、日雇いの失業保険というのは、御承知のように、一般の失業保険と非常に異なりまして、雇用の形態も違いますし、それから失業の実態も大いに違っておりますので、どうしてもやはり現在の法律がとっておりますような二段階制の定額制というふうな制度で対処せざるを得ないという制度的な悩みがあるわけでございまして、したがって、一般の失業保険制度のように、スライド制でこの賃金事情の変動に対処していくということができかねておるわけでございます。したがいまして、私どもも、できるだけこの賃金経済の一般的な事情を加味して、法律改正によって給付の額が不利にならないような改正をそのつどやってきておるわけでございますが、なお、今回の改正にあたりまして、中央職業安定審議会におきましても、また、社会保障制度審議会におきましても、その辺の事情の変化をどういう段階でながめて失業保険の日額を改定するかという点についての考え方をもう一度根本的に検討し直すべきではないかという意見も出ました。私どもも、率直にこういった意見について今後審議会においても御検討をいただきまして、そして日雇失業保険に対する適応性をもっと十分に確保してまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/85
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086・森勝治
○森勝治君 一般同様の扱い、いわゆるスライド制に移行できないというおもなる理由というのは、取り扱い方が繁雑だということだけですね。思想的にはその点はかくあるべきだと、いわゆる一般と同じようなスライド制にすべきだという考え方ですね。しかし、事務取り扱い上繁雑だからいま直ちに実現するということはちょっと決意がいたしかねる、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/86
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087・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 考え方としましては、一般と差別を設けるつもりはありませんけれども、制度の技術的な面で日雇失業保険については一般と同じようなスライド制を設けるということは困難である、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/87
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088・森勝治
○森勝治君 重ねてお伺いしますが、技術的に困難だという具体的な事例をひとつ説明してくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/88
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089・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 日雇失業保険につきましては、雇用が日々雇用でございますので、この日々雇用に応じた賃金に一般の失業保険と同じような保険料率を適用して日々計算する、こういう仕組みを一般に準じて考えるとするならば、これは非常に事務量も複雑膨大に相なりますし、また、労働者の側においても雇用主の側においても、その事務量の煩鎖ということは同じようにあるわけでございます。したがいまして、日雇いについても、この制度の発足当初以来、二段階の定額制というものを踏襲しておりまして、技術的にいろいろと検討しておりますが、やはり技術的にこの問題は解決が困難であるということで現行制度を踏襲しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/89
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090・森勝治
○森勝治君 重ねて、しつこいようで恐縮ですが、技術的に不可能ではないと私は思います。いまの御説明をお伺いしますと、人為的に不可能だということじゃないかと思うのですね。人間の配置さえ、人さえふやせばできるのでしょう。計数をことあげするわけですから、技術の分野では技術的に不可能ではなくして、そうでしょう、人的資源さえ確保できればできるはずじゃないですか。だから技術の問題じゃなくして、予算措置上の問題で人間をそれに回すことができない、人が少ないから、労働省が手薄だからできない、こういうことでしょう。技術的なことでできないということじゃないでしょう。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/90
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091・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 御指摘のように、絶対不可能かといわれれば、絶対不可能ではないとお答えせざるを得ないのですが、やはりそこには技術的な限界もございまするし、それから、また、この日雇失業保険制度の特色といいますか、一般と違った利点もございますので、やはりまあ私どもは現在の二段階の定額制というものが一番実情にぴったりしているというふうに判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/91
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092・森勝治
○森勝治君 いまの最後の段階は、思想的にスライド制に反対だということですね、それじゃ。うしろのほうの課長はうなずいているのですよ、一般失業保険というのに。スライド制に移行することが理論的にはよい、私はそう思っているし、皆さんもそう思っているのじゃないですか。いま局長は、最後になったら、それはだめだとおっしゃるけれども、明快に言ってくれませんか。先ほどはそういうのもけっこうだけれども、技術的に困難だから移行できないとおっしゃった。だけれども、いまは現行制度のほうがよろしいと前言をひるがえされちゃまことに困る。明快にひとつ御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/92
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093・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) まあスライド制の考え方には私は賛成でございますが、これを日雇失業保険に制度化する場合にはなかなか技術的にむずかしい問題がある。そして現在の二段階定額制をとることのほうが実情にも合っていていい面もあるのだ、こういう答弁をしたと思いますので、決してスライド制の考え方を根本的に否定しておるというわけではないのでございます。それが証拠に、できるだけ時宜に適したように給付金額も逐次法律改正をもって対処しておるわけでございますので、その点は基本的に考え方はそう違っていないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/93
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094・森勝治
○森勝治君 こだわるようで恐縮でありますが、本件について、もう一点について発言だけしておきたいと思うのですが、いま局長は、前段において、一般失業保険のようにスライド制が日雇失業保険でも適用されることが思想的に正しい、しかし、現行のあり方についてはなかなか事務的に——技術的じゃなくて、私はむしろ事務的だろうと思いますが、事務的にむずかしいのでいまのような方法をとると、こういうことだと思うのです。そうですね、技術的じゃなくて、事務的でしょう、事務的処理の段階について困難なんでしょう、技術的に困難じゃないのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/94
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095・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 技術的と申しましたのは、安定所の側もさることながら、雇用するほうの事業所側の立場に立っても同じような問題があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/95
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096・森勝治
○森勝治君 これで論争してもここで結論も出そうもありませんから、違った問題に移りたいと思いますが、どうかひとつ技術的には困難だということで、先ほどの発言の中で、必ずしも不可能ではないという意味の発言をされておりますので、ひとつ可及的すみやかに、思想的に一般失業保険同様なことの考え方がおありでしたら、ひとつ御検討をわずらわしたい。
そこで、次に移りますが、今回保険料率が値上げになったわけでありますが、この日雇失業保険の保険料というものは、一般の失業保険に比べて、これはむしろ率からいけば安いのでなくして、高いのではないかと思うのです。さらに具体的に申し上げれば、今度改正されてこの案が、かりに本院を通過し、実施されるという想定のもとに申し上げますならば、二十日間納めるということになれば、第一級では二百四十円、第二級では百六十円となるわけであります。ところが、一般失業保険では二万三千円の労働者で百六十円でありますから、第二級とほぼ同額くらいになるわけであります。したがって、一般失業保険に比べて保険料率というものは決してこれは安くないと思うのでありますが、この点についてのひとつ御返答をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/96
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097・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 保険料が高いか安いかという問題でございますが、これは保険料だけを見ますと、一般の場合と比較しまして、日雇失業保険が保険料の面では二・一倍というふうに高くなっておりまするが、他面、保険給付の面で見ますと、一般の保険は三・四%という非常に低い失業率、受給率を想定いたしておりますが、日雇失業保険の場合には四四・四%と、十倍以上の失業率ということに一般と比較いたしますと相なりますので、この両方を比較検討してみますと、日雇失業保険のほうがそういう両面の計算をいたしますと得である、また、保険の収支関係からいいましても、ここ数年続けて赤字を生じておるという実態からいたしましても、まあ損得の議論は非常にむずかしい問題でございますが、両面からひとつ御検討を願いたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/97
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098・森勝治
○森勝治君 次の問題について質問をしたいのですが、五人未満の事業所に対する保険の適用の問題であります。これはもうすでにいまから三年前ですか、三十八年の八月か何かの当参議院のすでに附帯決議がこれはなされておりますし、社会保障制度審議会においても雇用審議会においても、その他ほとんど関係の機関においては、五人未満の事業所にも法適用の拡大をはかれ、こういう要請があったはずであります。労働省においても、伝え聞くところによりますと、四十一年度、すなわち、ことしその実現方をはかるということで準備をされてきたやに、あるいは検討されておるやに漏れ承っておるわけでありますが、こういう関係各方面がこぞって要請し、決議し、意見書等をすでにもう大臣の手元まで出しておるわけでありますが、にもかかわらず、これがなおかつ実施の段階まできておらないということは一体どういうわけなのか。さらに、もうすでに労働省でもこの点についての御検討はなされておるし、もう具体的にこの問題を処理すべき段階にきておるわけでありますから、むしろ私をもって言わしむるならば、本件についてはおそきに失した感があるというふうに私は考えざるを得ないのでありますが、この点についての経過措置と、一体どうされるおつもりか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/98
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099・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 去る三十八年七月におきまして当社会労働委員会で附帯決議が行なわれまして、その際に、失業保険を五人未満の事業所に当然適用すべし、こういう附帯決議がついておりますことは御承知のとおりでございまして、私どもも、この附帯決議を動機といたしまして、正直な話、私その直後に現在のポストにつきまして、この附帯決議をすぐ実現しようじゃないかということで、四十一年度、すなわち、今年度を目標に拡大適用という方向に踏み切るように準備を進めてまいってきたのでございますが、何せこの五人未満の問題は、事業所の数におきまして百万事業所、被保険者の数にいたしましてわずか二百万ちょっとというふうな対象がございまして、この五人未満の拡大適用の問題につきましては、の問題と保険料の徴収の問題、この問題が非常に技術的にむずかしい問題がでございます、かたがた、大蔵省あるいは各種の審議会等においても、失業保険だけ独走して五人未満の拡大適用を考えるということでなくて、労災あるいは厚生省の関係の社会保険、これら全部被用者保険については一体となって五人未満問題を積極的に考えるべきである、こういうふうな意見が出まして、私どももその方向で現在各種の社会保険と共同歩調でもって適用、徴収の技術的な問題について検討を進めてまいっております。したがいまして、当初の予定よりも多少おくれておりまするが、私どもとしましては、四十三年度実施ということを目途に、現在具体的な準備作業を進めております。この間におきまして、もう一つ事務の点から申しますと、従来の徴収方法を相当大幅に変えまして、現在何といいますか、専門用語ではIDPシステムというデータの電送システムをとっておりますが、これを使って五人未満の徴収、適用の問題を解決していこう、こういう事務の機械化の問題が並行的にございます。これらを同時に解決しようということに相なって準備を進めておりますので、若干当初の計画よりも時期的におくれておりまするけれども、決してサボっておるわけではございませんので、われわれの善意を御信頼いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/99
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100・森勝治
○森勝治君 いま聞くところによると、四十三年度ということになると、逆に後退した姿が出ますね。これにも出ているように、あなたのほうの発行でしょう。この中でも明らかに、もう私も若干言いましたから読み上げなくてもいいのですが、お話の都合上申し上げますが、「五人未満事業所への適用拡大」という中で、労働省の見解として、前段、後段を省きますが、「労働省としては四一年度中の実施を目途として、目下準備を進めつつある」と、こういうふうに言われているわけでありますね。これは公文書でございますね。ところが、いまの話だと、軽々しく四十三年ということになると、一体どういうことになるのですか。これは前向きではなくて後退でしょう。私は、こういうところにほんとうに労働省が、小柳さんが午前の質問の後段で、働く者の立場に立てということを強く強調されたが、そういうわれわれの危惧というもの、懸念というものが、せっかく公文書で発表しておきながら二年も三年もずれて、機械化ということを言われておりますが、それはさておいても、公文書でこういう発表をされておるのですから、半年、一年というなら私はまたそれはやむを得ないと思うのですが、二年も三年もということは、あなたが局長になったときに直ちに実施しようとせっかく御努力され、意気込まれたわけでありますから、当然四十三年といわずに、直ちにできるはずじゃないですか。それが後退しているじゃないですか。これじゃ話にならぬじゃないですか。どうぞ四十三年といわずに、積極的におぜん立てができているはずでありますから、もう少し前向きの積極的な御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/100
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101・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) この基本的な方向について後退をしておるとは私は思いませんけれども、先ほど申しましたような事情が途中から大きく出てまいりまして、この問題を技術的、事務的に解決しないと、百万事務所、二百万被保険者を対象に拡大することは非常に困難だということで、鋭意この技術的、事務的な問題を解決をして四十三年度に実施をしようという意気込みでいまやっております。それまでの間におきましては任適なものもございますけれども、適用拡大について従来のぺ−スをさらに一段と上げまして、事実上の拡大適用をはかっていくという方向で、両面から実はこの拡大適用をはかってまいりますので、最初四十一年度ということをこの御指摘の公文書にも指摘してございますが、その後の事情でやむを得ない事情が出てまいりましたことをひとつ御理解いただいて、基本的な方向としては決して後退をしないつもりでやっておりますので、御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/101
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102・森勝治
○森勝治君 おくれることについては了解できませんから、可及的すみやかに実施方の御検討をわずらわしたい。
それで、また保険料の問題に移りますが、三十八年の八月ですか、国、事業主、労働者が三分の一ずつ負担ということでありましたが、三十八年に改正になって、国が四分の一、事業主、労働者がそれぞれ四分の三というようになって後退したわけですね。したがって、これはやはり負担の額が前の定めよりも今日的段階における料率というものは労働者の負担過重になっているわけでありますが、前の料率から比べると。したがって、これはやはり改めていかなければならぬと思うのでありますが、その点についてのお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/102
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103・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 確かに御指摘のように、かつては一般の失業保険についても国庫負担が三分の一であったわけでありますが、これが三十八年の改正において現行の四分の一に切り下げられたこの経緯については、社会保障制度審議会等の答申の経過等によりまして十分御承知だと思いますが、私どもとしても、社会保障全体の問題から考えまして、必ずしも当時の改正がよかったかどうかという点については賛成しかねる面もございまするけれども、諸外国等のこういった制度との比較におきましても、国庫負担は大体四分の一程度の場合が多いようでございます。現在の失業保険制度の運営にあたりまして、四分の一の負担でさほど大きな支障はございませんので、まずこの負担の問題は将来さらに検討すべき余地はあると思いますけれども、現行のこの制度でまずまず十分対処していけるのではないか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/103
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104・森勝治
○森勝治君 その点については、ひとつ重ねて労働者側の負担の過重にならざるよう、ひとつ今後とも配慮を願いたい。
次に移りますが、最近はこの失業保険の受給者についての著しい制約、すなわち、行政指導というものが強く打ち出されております。何か受給資格の決定、さらには失業の認定の強化などということでおやりだそうであります。たとえば具体的な事例を申し上げますと、結婚や妊娠、出産、育児、あるいは、また、病人の看護、その他家事の手伝い等のために退職した者や、または農業とか商業等の家業の繁忙に伴って、それらの繁忙期に家業を手伝うために他に就職のできないような事情のある者は、局長通達によれば、「一般的に労働の意思及び能力がないと推定される」から、「この推定をくつがえすに足りる事実の立証、確証が得られない限り、受給資格の決定を行なわないこと」というふうに通達を出されておるそうでありますが、これは明らかに違法、不当な通達でありまして、この点についての訂正方をお願いしたい。したがって、お考えを聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/104
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105・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 一昨年八月の適正化通達を御指摘になっておることと思いますが、私ども、失業保険制度始まって以来十七、八年この方、まあ何とか制度の本来の趣旨に沿って運営をしてまいっておりまするが、当時まあ経済の成長が非常に高度成長の時代を迎えましたにかかわらず、一方で失業保険の受給者が、率においても絶対数においても、非常にふえてまいってきておる。この原因はどこにあるかということをいろいろ探求をいたしました結果、やはり失業保険の運用が多少ルーズに流れつつあるという点がはっきりしてまいりましたので、私どもといたしましては、この一昨年の通達によって本来あるべき姿に引き戻した、この通達によって初めて何といいますか、適正化が行なわれたように受け取られておる向きもございまするが、これは保険制度始まって以来の各種の通達、手引き等をごらんいただければおわかりだと思いまするが、従来から指示をしておった当然のことを再度確認する意味で通達をいたしたわけでございまして、まあ保険制度の運営がややもすると放漫になりかけておった時点に適正化を通達いたした次第でございまして、従来の通達を確認したものであるというふうに私どもは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/105
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106・森勝治
○森勝治君 重ねて申し上げましょう。この通達は三十九年の九月一日、局長通達で、「失業保険金受給資格者の就職促進及び給付の適正化について」ということで、受給資格の決定及び失業の認定の強化、早期の職業紹介及び職業訓練等の受講の指示並びに給付制限の実施、不正受給の摘発強化、この三点を主とした通達でありますが、私が先ほど違法であり、不当だと申し上げたのは、安定所の性格は一体どういうものであるかという問題について若干触れたいと思うのです。御承知のように、安定所は受給資格者の自由な意思というものを基調にするものでありますから、それぞれのそれらの方々の持つ能力に適当な職業につく機会を与えることが安定所の任務でありまして、個人の自由意思、あるいは希望を制限して就職を強制することはできないはずでありますけれども、私がいま読み上げました三十九年九月一日の通達の題目の内容によりますと、いま私が違法だと申し上げたこの個人の自由意思や希望を制限して就職を強制するようなことがしばしば下部末端で行なわれている。このことを見のがすわけにはまいりません。したがって、そういう問題についてはどう対処され、どうお考えになっておられるのか、ひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/106
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107・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 安短所の任務は、あくまで求職者に対して適職をあっせんするということが任務でございまして、憲法の保障する職業選択の自由の範囲内におきまして求職者に適職をあっせんをする、こういうたてまえになっておりますので、その間に強制がましい措置が出てくるはずはないのでございます。御指摘の適正化通達がこれと関連して矛盾するのではないかというふうな御意見のようでございますが、私どもそういう基本的な立場で安定所を運営しておるのでございまして、具体的に、たとえば結婚によって退職をし、失業保険をもらいにくるという場合が一番典型的なケースじゃないかと思いますが、現在の雇用事情からいいますと、結婚をしたからといって、必ずしもそれだけで退職をしなければならぬ事由はほとんど実際問題としてないわけでございます。にもかかわらず退職をするというのは、やはり新しく家庭を持った場合に通勤距離が長くなるから退職せざるを得ない、あるいは結婚すれば何となく職場におりにくいというふうな職場も一部あるかと思います。そういった事情で退職をしてくる場合がもちろんございます。その場合には、さらに退職後に、退職してから再就職をしたいという意思が非常に強い場合でございまして、私どもの窓口においても、そういった場合には必ず再就職の意思を強く表明をいたしまして実際問題としましても失業保険の受給資格を認定をいたしております。したがって、女子の受給者の状況を絶えず私どもも注意して見ておるのでございますが、一昨年と昨年とを比較いたしましても、女子の受給者の比率は決して下がっていない。一昨年が四四%であったわけでございますが、昨年は四八%と、これは性別の受給者の構成比でございますが、そういうふうに下がっておらないという実績もございます。決してこの適正化通達が、何といいますか、御指摘のような非常に無理な運用を第一線でやっておるというふうには私どもは承知しておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/107
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108・森勝治
○森勝治君 そういうことをおっしゃると三時では終わりませんよ、失礼ですけれども。私のほうは、きょうは初めて御婦人が名誉あるわが委員会の委員長に就任されて主宰をされている日でありますから、尊敬の誠を払って、御婦人の問題については質問を慎もうかと思いましたら、そちらからお出しいただきましたので、私ども御婦人の問題についてひとつあなたの見解をただしたい。
先ほどの午前中の小柳さんや山崎さんの話にもありましたように、小野田セメントでは女子が三十歳になると首切りされるのですよ。結婚ということで働く職場を失った人がおびただしい数に上がるのですよ。御承知でしょう、そのことは。もし結婚した女性が——あなたも結婚した女性の話をされましたから私も申し上げますが、働くことを求めたとき、あるいは、また、子供を持った婦人が働くことを希望したら、それぞれの条件を満足させるところの就職先をさがす義務が安定所にあるわけでしょう。第四十八回のILO総会の日本政府の報告書抜粋を読み上げましょうか。「変化する世界における婦人労働者」の中で、その一般原則でこういうことを言っているんですよ。いいですか、よく聞いてくださいよ、局長。「どんな理由があるにしろ、家庭の責任を持つ婦人が家庭外で働いているところでは、彼女らが差別待遇のおそれなしに働くことができるようにし、また彼女ら自身または家庭全体、特に子供の健康や福祉を害することなしにその任務を果たすことができるようにする措置をとる必要がある。」と、公式にILOの場で賛成の意見を出しておるのですよ。あなたのおっしゃることはこの日本政府の公式見解に抵触するじゃありませんか。ひとつ御返事をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/108
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109・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 職業紹介の面と失業保険の運用の面と両方問題があると思いますが、私どもは、いま御指摘の勧告に対する意見はもちろんわれわれ尊重いたしておるのでございまして、これとは決して矛盾がないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/109
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110・高山恒雄
○高山恒雄君 関連して。局長は結婚という問題を地域に限定しておる考え方だと思うのです。結婚は国外もあれば国内もあるわけですね、全般にわたるわけですよ。そういう結婚で、かりに帰って一年間も余裕がある、その間働きたい、こういう場合の失業保険はやらないということになるんですよ、あなたの見解から言えば。私が前回あなたに質問したときは、そういうものは規制いたしておりませんと、こういう回答であったのですが、いま森委員の質問に対しては、そういうものは典型的なので、私のほうでは規制せざるを得ない、こうおっしゃった。この前のときょうの回答とは違うんだ。どうです、これは大事な点ですからね。結婚はいろんなところにあるんですよ。
それから、もう一つ、これは大臣もよく問いといてもらいたいんですが、労働省がものごとを考えたり扱ったり行政をやる場合に私は考えておいてもらわにゃいけないことは、年少労働者ですね、年少労働者のほんとうに退社する場合に、日本の場合は、もし年少労働者が足らない場合にたやすくひまをくれるかといったら、くれないんです。したがって、結婚を理由にして退社しておるというこの事実を把握してもらわなくちゃならぬ。こういうことをたな上げして、結婚を理由にして退社した者には失業保険をやらない、こういう考え方が私は誤りだ。その事実がほしければ私調査したのがありますから、お見せします。両方の面を考慮に入れて、そうして事実結婚で退社したのか、あるいはひまをくれないから結婚を理由にして退社したのか、この辺は非常にむずかしいところです。行政上の問題ですけれども、そういう点は私考慮に入れなくちゃいけない。これがほんとうの労働行政だというふうに考えるのです。この点はひとつ大臣は十分行政の上に取り入れてもらいたいと思いますね。なお、局長の先ほどの私の答弁を森委員の答弁に対しては大きな違いがあります。この点をひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/110
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111・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) この前、高山先生から御指摘になって、私も女子の結婚退職者の失業保険の適用の問題について御答弁申し上げましたが、そのこととは全然今回の答弁は食い違ってないと思います。ただ、私は冒頭に、今日の社会情勢では、昔と違って、結婚をしたからといってすぐやめなければならぬというケースは必ずしも多くない。しかし、いろんな事情でやめなければならぬ、やめてくる場合が相当あるから、この場合には私どもとしましても、結婚退職ですぐ家庭に入って再就職の意思がないという場合が、帰趨調査の結果は再々申し上げておりますとおりに、二十歳では五〇%以上が家庭に引っ込むわけでございます。そこで、私どもの立場としては、窓口においてほんとうに再就職の意思があるのかどうかというととは、これはやはり確認をしないと失業保険制度がくずれるもとになりますので、その確認のしかたがいろいろと議論されるわけでございます。そこで、第一点の、結婚をしても昔と違ってまあそう簡単にやめなくてもいい事情になってきたという点について、先ほど私は、そう認識しているのですが、いや、そうじゃない、小野田セメントの例を見ろというふうに反論があったのですが、この点はいろいろ見方があろうかと思いますが、私どもは、やはり昔に比べれば非常にその点もよくなった。にもかかわらず、結婚のためにやめてきた場合には、一方では帰趨調査では半分以上が家庭へ入って再就職しないという事実が、毎年帰趨調査やっておりますが、出ております。そこで、その半分の真偽をどうやって見分けるかということが非常にむずかしい問題でございます。御指摘のように、労働の意思、能力というものは、本人の主観、客観的な窓口の判断、ここに食い違いがあることはまま起こるわけでございますが、それでも先ほど申しましたように、やめた事情が、新しい家庭を持って従来の職場へ通勤できない距離にあるというような場合には、これは無条件に認めております。また、先ほど御指摘のように、小野田セメントのような職場で、結婚したらやめざるを得ないというふうな雰囲気の職場が事実あります。そういうときには、それはすぐ再就職の意思ありと言えば、そういう事情ですかということで受給資格を認定しております。そういうことを申し上げたわけでございまして、決してこの前と話が違っているわけではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/111
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112・高山恒雄
○高山恒雄君 関連。前提が間違いですよ、結婚したらやめなくてもいいということは、職場結婚したときのことをあなたはおっしゃっているのですよ。結婚はどこでもするのです。日本全国至るところで結婚する人が多い、そうでしょう。職場結婚だけをあなた前提に置いているから問題が起こる。それで半年も一年間も——婦人の方の代表に聞いてごらんなさい。結婚にはみんな準備があります。その準備が長ければ、これは働きたいという意思があれば皆さん当然じゃありませんか。あなたの前提が悪い。その前提を私は撤回してもらいたいと思う。結婚は日本全国至るところにある。あなたは職場結婚をした場合のときを理由として通達をしておる、ここに問題がある。この点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/112
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113・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) どうも議論の次元が違うようた感じがいたしますが、御指摘のように、結婚は幾らでもあるわけであります。問題は、失業保険との関連において議論する場合には、結婚前からつとめておって、そして結婚したために職場をやめる。やめて今度はすなおに家事に専念するために労働の意思なしということで、窓口にあらわれてこないのも相当ございます。しかし、保険金をかけておったのだからかけ捨てになるという意識もあって、何とかもらえるものならもらおうというのも、これはまあひとつ人情としてはわかりますけれども、失業保険制度としては、ほんとうに再就職の意思があるのかどうかということを確認しなければ失業の認定はできませんよと、これは制度がそうなっておるのですから、そこを確認しておるわけでございまして、結婚一般の問題を議論しているわけでもないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/113
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114・高山恒雄
○高山恒雄君 それはあなたのおっしゃるのは結婚した場合のことです。結婚退社でやめた場合はどうするかということです。その通達はそうですよ。私は見て知っている。結婚退社でやめたやつに一体やるのかやらぬのかという問題が起こってくるのです。結婚したらやめる人もおればやめない人もおるでしょう。結婚退社で郷里へ帰った場合に、その間が準備のために帰ってから一年も一年半もあると、そのときにはくれないじゃないか。そのくれない事実を知っているから私たちはいまそれを追及しておる。あなたは、結婚した場合のことはやめてもいい、やめなくてもいい、その点はむろん他に理由があればやめなければならぬ場合もあるでしょう。そのことはわかっているのです。結婚退社した場合にどうするか、これが大きな問題です。準備があるでしょう、結婚には。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/114
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115・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 結婚してやめた場合と、結婚の準備のためにやめた場合と、これは失業の認定の立場からいうと同じでございます。要するに本人に再就職の意思があるかどうかということを認定の基準にしておるわけでございますので、これは問題の性質は一緒でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/115
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116・高山恒雄
○高山恒雄君 結婚準備で帰って、その期間が六カ月もあったり一年もあった、そういう場合は出してもいいということですね、そういうことですね。それを出さぬとあなたおっしゃったら問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/116
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117・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 労働の意思があればあくまで出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/117
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118・高山恒雄
○高山恒雄君 その回答されたから私は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/118
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119・森勝治
○森勝治君 くどいようですが、後段であなたが答弁されたことをもう一度私にもお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/119
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120・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 失業保険は、労働の意思、能力があるということが失業認定の要件でございますので、その認定をするために、結婚で退職した場合、あるいは結婚準備のために退職した場合に窓口で認定をやっておるわけでございますので、もしどうしても働きたいという労働の意思があるならば適格者として認定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/120
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121・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 有馬さん、先ほどからあなたやっこだこのように胸張って、法律がこうだとおっしゃるけれども、大臣、労働省というのは法律がきまったらそれでやるのだということじゃなしに、労働省の機構、行政というのは何が一番よいかということで法律の改正もやる、改正をやって労働者に一番いい方法をとるのが労働省の役目じゃないですか。いま有馬さんのように、再就職の意思がないからだめなんだという一点ばりの御議論がある、結婚のために。しかし、その議論は私は変えるべきだと思う。変えなければ、この間も三十五年も働いて定年退職したので、再就職の意思ありますかありませんか。——失業保険が始まってから二十二年でしょう。それで、それだけ高い掛け金を三十五年もかけて定年退職した人に、それがありますかありませんか。再就職の意思がありませなんだら失業保険金は払えませんと、こういう窓口なんですよ。そういうむちゃくちゃなことを、いま結婚でやめるとき云々というだけで皆さん方議論をして、有馬さんはまるで鬼の首を取ったように、法律がこうじゃこうじゃとあなたおっしゃる。テクニックの問題をここで議論したってつまらぬ。何のために失業保険があなたあるのか。失業補償ならいま局長のおっしゃるように、大いにおやりになったらいい。三分の一は労働者が払い、三分の一は使用者が払い、政府が三分の一しか払わない。相互扶助の保険制度じゃありませんか。それを高度な意識が云々という理屈がつくのか私は知りませんよ、保険経済云々で。保険経済云々なら、もっと違った保険経済の立て方があるはずです。だから結婚云々というような議論に入る前に、再就職の意思がありますかありませんか、再就職の意思がありませなんだら一銭も払いませんと、この理屈に通じます。単に三年や五年つとめて結婚でやめる人の失業保険の問題じゃない。これからずっと続いていく、二十年も三十年も掛け金をして高い保険料を払って、それでもう五十五から六十になった人でも、再就職の意思ありません、もう老後の人生を楽しみますとおっしゃったら一銭も払いませんということになる。そんな理屈を法律で金科玉条のようにここで議論するのは、私は労働行政の根本的間違いだとこの前言ったんだけれども、きょう出たから、このことを明らかに直そうということにお気づきなさるのが労働行政だと私は思う。そうでなければ同じ議論を繰り返している。単に結婚の問題じゃない。定年退職をして三十年も会社で働いて、制度ができたのは二十二年ですか、それを高い掛け金全部払っても一銭もあげません。満五十六ですね、たいてい五十五か五十六ですよ。そういうものをして玄関払いをするなんというようなことの理屈を、結婚でやめるやめぬの理屈じゃないですよ。そんなんなら、一定の限度までしたらどうする、結婚の場合にはかけてかけ捨ててあるのですから、それをどれだけの分をその人に返してやるとか何とかいう方法をちゃんととっておいていまの理屈をおっしゃるなら、それは筋は通りますよ。それだけれども、取るだけ取っておいてあとは知らぬ。結婚するのに再就職の意思があるかどうかなんて前段で聞かれて、再就職の意思がなければできません、ごっそり会計にその金はいただきますと、何にも言わんでいただきますという、そんな不合理な保険制度がありますか。そのことをなぜ労働省としてはお考えにならないのか。私はさっきから話を聞いていて、私はそのことを大臣に真剣にこれを考えていただかなければ、これは局長は法律とおっしゃるけれども、その法律のたてまえ自身が社会的の制度の中に矛盾していたら、これはそれでなければもっと突っ込んでやらなければどうにもなりませんぜ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/121
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122・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 現在の失業保険制度では、いわゆるかけ捨て的な場合がどうしても生じておるわけです。これは皆さんすでに御承知のとおりなのですが、ただ、結局いかなる条件が備わった場合に失業と見るかという問題です。失業保険は、文字どおり失業を保険してまいるたてまえでできておるわけでありまして、失業とは何ぞやとなると、働く能力と意思があるものだと、こういう解釈ですから、能力はあっても意思がないという場合には失業じゃないんだと、そういう場合には保険金を払わないんだと、むしろ法律からいえば払っちゃいけないんだと、こういうたてまえであるわけです。そういう場合にどうしても掛け捨ての問題が出てくるわけです。こういうことを申し上げて、はなはだよけいなことでおしかりを受けるかもしれませんが、保険的な、あるいは共済的なことをやるとどうしてもそういう問題が起きるんじゃないかと思うのです。国会議員のあれでも、十年以上で二回以上やらないと、九年何カ月つとめても、それで落選したという場合には一文にもならないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/122
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123・森勝治
○森勝治君 資格がないから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/123
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124・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) ええ、資格がないから。ですから、いまの失業保険の制度からいえば、やはり能力があっても意思のない者は資格がないということになっているのです。いまのはこういうたてまえになっているのです。ですから、その結果として掛け捨て的なことが起きてくる、どうもこれは常識的にいってはなはだおかしいんじゃないかと、私もその点はそう思うのです。しかし、保険である以上は、一方においては、これも損得の話ではなはだ恐縮ですが、一方においては得する者も出る、一方においては損する者も出る、そこで初めて保険というものが成り立つだろうと思うのです。ですから、その保険の損得をいかにそうはなはだしくないものにするかといえば、たとい働く意思と能力のない者でも、職業戦線から去るというような場合には若干のものを差し上げると、こういうことになれば、いわゆる退職金的なものですね、そうなると、そういうものを給付するだけやるとなれば保険料も当然ふやさなきゃならぬと、保険制度である以上、そうなってくると思うのですね、実際問題として。ですから、そこらのところをどちらに割り切るかという問題だろうと思うのです、これは。内々は、実は就任以来そういう話も事務当局と私自身はしたことがあるのです。あるんですが、しかし、いまの制度をたてまえとする以上はやむを得ないんじゃないか、これを改めて退職金的な性格のものもやるんだと、こうなれば話はまた別になってくると思うのですが、いま直ちにそこまで私も踏み切ったものかどうか、実は決断が、まあ決断といいますか、まだ結論は得ておらないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/124
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125・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 失業保険というのは、一定の年数掛け金をしたら三カ月から六カ月、中には九カ月の間保険金を出すというのがこの保険制度のたてまえなんですね、そうでしょう。だから秋田や北海道や盛岡の出かせぎで二百億も金を出すのも、理屈を言いながら出しておるわけでしょうね、そうでしょうね。それで頭から結婚したら出さぬというなら、それはその分だけ省けばいいじゃないですか。何も退職金を出せばいいと私は言っているわけじゃないのですよ。初めから出さぬとわかっておるのなら、女子の従業員が多いのなら、また違った方向をおやりになったらいいじゃないですか。結婚の問題はそうです。女子の問題はそうでしょう。それから、定年退職、満五十五にも五十六にもなって、就職する意思がなければ失業保険金をやらぬというような理屈に通じてくると、これは大臣でも矛盾すると思われるでしょう。五十五にも五十六にもなっても、一定の企業の中にあって自分は働きたいのです。働きたいけれども、その企業で首を切られるわけですよ。定年という制度によって首を切られて街頭にほうり出されるわけです。そうすれば失業保険をもらって生活を続ける。それでも政府は強弁する。
私はもう一つ言いたいのは、五十五で定年退職なら、五十五から年金を差し上げます、それで生活をしなさいというのなら話は幾らかゆとりはあると思うのです。それを六十歳にならなければ厚生年金は上げません、五十五歳で首切って街頭にほうり出して、いままで技術を積み上げてきた人が、収入を得てきた人が、それだけの収入でどうして食べていけるですか。職業なんかありゃしないのです、外へ行ったって。それも保険金より一円でも多かったらそこへ行きなさい、六割の一円でも多かったらそこへ行きなさい、行かなかったら保険金を上げませんというような酷なことを——再就職の意思、能力が云々というような理屈だけを延ばしていったらそういうことになるのです。そんなものが失業保険だからということにはならないと私は思うのですよ。あなたはいま保険制度だとおっしゃったが、保険制度というのは双方がかけて、初めからもらえぬものならかけやしませんよ。強制でしょう。どうしてもかけなきゃいかぬということで、強制で初めかける。女子の人は失業保険をみんなかけているわけです。もらえぬのだったら、三年して結婚するのだから、そうすれば私はもらえないんだからその保険はかけませんといえばかけなくても済むわけですが、強制で取っておいてそういうことをするわけですから、何かそこらあたりほかの制度を考えることもできるのじゃないか。私はこれを大いにこれからまた一から始めて議論しようとは思いませんけれども、そこのところの整理ができないから、局長は、働く意思と能力がないからそんなもの払えませんと、法律がそのたてまえだなんと言うて、それで突っぱられるわけです。その突っぱられる論理のもとは、定年退職であろうと何であろうとあきまへんということにつながってくるわけです。そういう制度がいいかと私は言っている。だから、その根本の問題について少しやっぱり労働省としても真剣に取り組んで、これは失業補償制度で国が出す場合なら、あなたは仕事があって、また結婚したところで生活されるのだから、もうあなたには上げませんよと、こうおっしゃったら、私はそれは理屈は立つと思うのです。しかし、三分の一かけているわけでしょう。かけておいてそういうことをするのは少し酷じゃないか。ここであまり議論いたしませんから、そこらを分けて、よく真剣に検討してくださいよ。そうでないと同じ議論を何べんでもせなきゃいかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/125
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126・高山恒雄
○高山恒雄君 大臣にちょっと考えておいてもらいたいのだが、私はこれが実施された年月はちょっと忘れていますが、昭和二十四年であったかと思うのですが、一時休暇を六カ月間やったことがあるのですね。それに対して厚生年金や失業保険を使ったことがあるのです。これは相当な額で支払いをしておるのです。そこで大量の一時休職に対して失業保険を適用しておきながら、今日、局長の通達を見ると、個々の退職者の人が最もいやがるような方向に窓口を今日締めておるわけですよ、ここが私は行政の問題だと思うのです。さっきから藤田委員が言われるように、労働者の一人のためにもやはりサービスをするという労働省のあたたかい気持ちがなければ労働省じゃないのです、私に言わせたら。そうでしょう。そういうものをほうっておいて個々の人をセーブして、何とかして出さないようにしようという、こういう考え方が私はおかしいと思う。それを私はもっと考えてもらいたいと思うのですよ。そういうことがいかぬ。こういう通達は一ぺん取り消してもらって、ほんとうを言うならば、やっぱり失業保険のほんとうの意味を生かす。むろん法律にありますごとく、本人が働く意思のあるものでなければならぬでしょう、局長の言われるように。その点は私も賛成します。ないものにまた失業保険をももらえるといったってしかたがないでしょう、就職をあっせんするところですからね。だからその趣旨が徹底しておるならいろいろな小細工の通達を出さなくても私はいいのじゃないか。過去においては失業保険を一時解雇の者に対して支払った時代があるのです。これはこういうものを無視しておいて、個々の個人をなにするというようなことは労働行政の中で大きなマイナスだ、これは後退しておる、最近の労働行政は。こう考える。この点十分考えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/126
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127・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 多少誤解があるようでございますが、あくまで労働の意思、再就職の意思がある場合には、結婚退職の場合であろうと、藤田先生の御指摘の定年退職の場合であろうと、年齢のいかんを問わず、支給するたてまえになっておりますし、そういう運営をやっております。ただ、退職手当と違いますので、そこはまた再就職の意思というものを一枚加味しないと失業保険が成り立たない。これはもう世界各国共通でございます。また、そのきわどい認定については非常に各国とも悩んでおる。むしろイギリス等はわれわれの扱いよりももっときびしい扱いをやってようやく失業保険制度を維持管理しておるという実績もありますので、そこら辺は、どうもさっきからおしかりばかり受けておりますが、全体の運用のためにひとつ公正な運用を期していきたいということに尽きるわけでございます。
それから、もう一つ、女子の場合が非常に不利なような御意見がございましたが、現在の運用の状況をごらんいただきましてもわかりますように、被保険者の数は、大ざっぱに言って、女子の被保険者は全体の三分の一でございます。で、もらいにくる場合は、お客さんの半分は女子でございます。だからイギリスのように、女子を当然適用から差別扱いをするということがいいかどうかということは非常に疑問がある。現在のように、当然適用していることによって女子の場合が非常に有利になっておる、この事実も見のがすことができないのじゃないかと思います。
それから、最後に高山先生が一時帰休の古い事例を御指摘くださいましたが、確かにそういう事例がございました。これは綿紡を中心に、一時帰休の実態に対して失業保険を適用した。しかし、これはあくまで表面上は解雇をして、そうして次の再就職までの生活保障として失業保険制度を適用したわけでございます。この場合、あくまで再就職の意思がなかった者にも失業保険を乱給しておったということはないわけでございます。その点はひとつ誤解のないようにお願いしたい。
それから、また、昨年来の不況に対して、電気産業の大どころがこの前例にならって、一時帰休にならって失業保険を無条件に支給してくれという申し出が実はあったわけです。私どもはこれはだめだ、今日の雇用情勢は十年前とはずいぶん違うということでお断わり申し上げたために、失業保険に依存するという経営者側の安易な考え方が防止されたわけでございまして、私は、やはりこの失業保険というものは相当厳正にやっていかないと妙な運営になってくるという点を非常に心配して、公正な運営をやっていきたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/127
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128・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 あまり議論はしませんが、ちょっと言っておきますが、全く再就職と就労の意思がある人には払いますとおっしゃいますけれども、賃金に対する六割の失業保険ですね、六割で三万円なら一万八千円ですね、一万八千円に一円でも多ければ働きに行きなさい、どんな仕事でも働きに行かなければ、あなたは能力があって働かないのだから失業保険をあげませんよと、職安の窓口で全部話がついておる。何ぼあなたいいことを言ってみても、これはその支出は全部職安でやっているわけです。いままで三万円もらっている人がやめて一万八千円、この一万八千円より一円でも多かったら働きなさいと言う、それで働かない人には失業保険をあげないということが全部行なわれているわけです。そういうちゃんともっともらしいことをあなたはおっしゃいますけれども、それはやはり全体をもう少し検討してください。ここの社労委員会でもこれだけ意見があるのだから、それをいまここで強弁されないで、労働省としては、いまの失業保険の制度の問題についてこれはずっと審議が続くのですから、この次の会議までいろいろの角度から検討してきて、そうしてきょうはもうなんですから、そうしてどうしたらいいかという議論、そういう話をしましよう。そうでなければ、やっています、こうしています、法律を守っておりますと、こういうふうに幾ら言ってみても、ここだけでもこれだけ多くの疑問があって議論があるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/128
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129・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 先ほどから御指摘のようないろいろな問題点が確かにあるわけでございますから、失業保険のこの制度につきましては、御指摘の点を十分しんしゃくして役所としても十分検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/129
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130・森勝治
○森勝治君 もう時間も御承知のような時間になりましたので、きょうのところはこの辺で私も発言を慎みたいと思うのですが、一点だけ局長に反省を促したいと思うのでありますが、それは婦人労働者の問題についてでありますが、あなたの先ほどのお話の中に、結婚しても本人がやめるという意思を表明しない限り、このごろはやめなくて済むようになりました、こういう発言がなされたのでありますが、これは全く反対であります。十年前ならいざ知らず、今日的段階として小野田の例を引くまでもなく、地方公共企業体の中で、有夫の婦人が三十歳に達するならば割り増しとして八割増すことが現に出ているじゃないか。公共団体において、官公庁においてしかり、民間においてまたそれをおしなべて右にならって、によってくだんのごとしということになってきておるじゃないか。この現実の姿というものを見ておらないじゃないか。この点については私の言うのが間違いか、私は冒頭であなた方の反省を求めたわけでありますが、ひとつおたくのほうにも調査機関がおありでありましょうから、十分専門的な頭脳を駆使して実態を調査していただいて、実認識の上に立っていまここで論議されたもろもろの問題についての善処方をお願いしたい。したがって、きょうはそういうことでありますから、この次やってもらえるということでありますので、ひとつきょうは私の発言はまだだいぶ残っておるのでありますが、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/130
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131・千葉千代世
○委員長(千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
次回の委員会は五月十七日午前十時から開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。
午後三時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114410X01519660512/131
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