1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月十日(木曜日)
午後一時三十一分開会
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委員の異動
三月一日
辞任 補欠選任
川村 清一君 小柳 勇君
出席者は左のとおり。
委員長 大河原一次君
理 事
剱木 亨弘君
小野 明君
鬼木 勝利君
委 員
高橋雄之助君
豊田 雅孝君
二木 謙吾君
松平 勇雄君
吉武 恵市君
阿部 竹松君
藤田 進君
宮崎 正義君
片山 武夫君
国務大臣
通商産業大臣 三木 武夫君
労 働 大 臣 小平 久雄君
政府委員
通商産業政務次
官 堀本 宜実君
通商産業省石炭
局長 井上 亮君
通商産業省鉱山
保安局長 森 五郎君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君
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本日の会議に付した案件
○当面の石炭対策樹立に関する調査
(昭和四十一年度石炭施策及び予算に関する件)
○炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○派遣委員の報告発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/0
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001・大河原一次
○委員長(大河原一次君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る三月一日、川村清一君が委員を辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/1
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002・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 当面の石炭対策樹立に関する調査を議題といたします。
この際、石炭政策について通商産業大臣及び労働大臣から順次説明を願います。通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/2
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003・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 石炭対策特別委員会の御審議をいただくにあたり、一言ごあいさつ申し上げます。
御承知のとおり、石炭鉱業は、エネルギー革命の渦中にあって、きわめて憂慮すべき状況に置かれており、政府といたしましても、昭和四十年度におきましては、第二次石炭鉱業調査団の答申に基づき、炭価の引き上げ、利子補給等の資金経理対策をはじめとして、諸般にわたる施策の拡充につとめ、石炭対策を強力に推進してまいりました。しかしながら、その後の事態の推移を見ますると、出炭の不振、労務状況の不安定、企業の資金繰りの深刻化等、その情勢はきわめて悪化し、過去数年にわたる急激、かつ、大規模な合理化過程において発生した過重な費用の負担と相まって、石炭鉱業の構造的な危機は予想以上に急迫の度を強め、現状のまま放置することを許されない情勢に立ち至っております。このため、昨春以来、石炭鉱業審議会において、石炭鉱業の抜本的安定対策について慎重な調査審議が進められ、昨年十二月政府に抜本的安定対策の基本的方向と抜本策実施までの間における諸措置について中間答申が提出されたのであります。政府は、直ちにこの答申の趣旨を尊重し、石炭対策を強力に推進する旨の閣議決定を行ない、今後の石炭対策の基本的方向を明らかにいたしました。この方針に沿いまして、現在、抜本的安定対策の具体的方策を可及的すみやかに樹立すべく、そのための諸準備を鋭意取り進めておりますが、それまでの間、石炭鉱業の経営悪化を極力防止するため、従来からの施策を一そう促進するとともに、特に次のような施策に重点を置いて、より強力に石炭対策を講じてまいる所存であります。
第一に、石炭鉱業の窮迫した資金経理状況にかんがみ、現行利子補給制度について、その補給対象の拡大、補給率の引き上げ等、大幅な拡充強化を行なうとともに、再建計画に見合って必要がある場合には、市中金融機関からの融資残高についても利子補給を行なうこととしております。
第二に、特におくれの著しい安定出炭及び保安体制の確保をはかるため、鉱区調整を積極的に推進するとともに、近代化資金及び新鉱開発資金の大幅増額、坑道掘進及び保安施設に対する助成の強化等をはかることとしております。また、炭鉱の機械化を一そう強力に促進するよう、炭鉱機械貸し付け制度を創設するとともに、炭層探査について新たに補助制度を導入することとしております。
第三に、鉱害対策につきましては、膨大な鉱害が累積残存している現状にかんがみ、鉱害復旧事業規模を大幅に拡大するとともに、新たに無資力鉱害農地にかかる被害者に対し、毎年賠償調整交付金を交付することとしております。
第四に、産炭地域の振興につきましては、従来から各般にわたる対策を講じてまいりましたが、産炭地域における鉱工業等の急速、かつ、計画的な発展をはかる必要がなお存続している実情にかんがみ、産炭地域振興臨時措置法の有効期間を五年延長するとともに、産炭地域振興事業団の業務に長期運転資金の貸し付け、出資及び工業用水の供給事業を加える等、産炭地域振興対策の一そうの充実を期しております。
第五に、このたびの国鉄運賃の値上げに際しては、石炭の流通経費の相当部分を占める運賃の上昇に伴う石炭鉱業の負担を軽減する見地から、値上げ分について一カ年の延納措置を講ずることとしております。
以上の施策を中心に、着実に石炭対策を推進することによって、極力石炭鉱業の経営安定に資してまいりたいと考えておりますが、さきにも申し上げましたように、石炭鉱業をめぐる環境はきわめてきびしく、石炭鉱業審議会並びに総合エネルギー調百会の答申を待って、できるだけすみやかに石炭鉱業の抜本的安定対策を具体的に策定樹立し、新たな決意をもって石炭鉱業の根本的な安定達成のため努力を傾注してまいる所存であります。
本委員会におかれましても今後とも一そうの御協力を賜わりますようお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/3
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004・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 次に、労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/4
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005・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) 石炭鉱業に関する当面の労働諸問題について、一言所信を申し述べ、各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
最近の石炭鉱業の雇用情勢を見ますと、合理化に伴う人員整理はほぼ一段落し、昭和四十一年度においては、新規の合理化離職者の数は昭和四十年度を若干下回る見通しでありますが、他面、一部の炭鉱において坑内労働者の不足という事態も見られるところであります。このような状況にかんがみ、政府といたしましては、再就職が困難な離職者に重点を置いて現行の離職者対策を充実強化してまいる考えでありますが、特に就職促進手当につきましては、離職者の失業保険金日額、産炭地における再就職者の賃金等を考慮し、今回日額の最高限を引き上げることとし、関係法律の改正案を本国会に提出して御審議を願うことといたしております。
また、石炭鉱業における労働者確保対策につきましては、従来とも、第二次石炭鉱業調査団の答申の線に沿って、閉山や合理化に伴う離職者の高能率炭鉱への優先的あっせん、広域職業紹介の強化、職業訓練の推進等の諸施策を講ずることによって必要な労働者の確保をはかってまいりましたが、昨年十二月の石炭鉱業審議会の中間答申におきましても取り上げられているところでありますので、今後とも、これらの答申の趣旨を十分尊重して、労働者確保対策を進めてまいりたいと存じます。
次に、石炭鉱業に働く労働者の労働条件の確保につきましては、かねてから監督の重点事項として鋭意監督指導を実施してきたところでありますが、今後とも、なお一そうの努力を重ねてまいる所存であります。
また、石炭鉱業における保安の問題につきましては、労働者保護という見地から、通商産業省と緊密な連絡をとりつつ十分協議を行ない、また、必要に応じ勧告を行なう等、保安確保のため諸般の努力を重ねてまいったところでありますが、不幸にして昨年、山野鉱をはじめ、重大災害が相次いで発生いたしましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。
このような状況にかんがみ、労働省といたしましては、今後とも総合的な保安確保のための施策を推進するため、通商産業省との連けいを一そう密にして、石炭鉱山における労働者の災害防止に遺憾なきを期してまいりたいと存じます。
また、不幸にして事故にあわれた労働者の保護につきましては、かねてから労災保険制度の充実につとめてきたところでありますが、特に一酸化炭素中毒患者に対する医療対策につきましては、三井三池災害の発生以来、これが対策に万全を期するとともに、さらに、その充実を期するため、産炭地付近の労災病院に高圧酸素室及び精神神経科の設置、救急車その他救急器材の配置等を行なうとともに、九州大学、北海道大学等の大学に対し、一酸化炭素中毒に関する医学的研究を委託しているところであります。
さらに、労災保険の給付につきましても、昨年の通常国会において労災保険法の一部を改正する法律が成立し、本年二月以降は、障害補償給付の年金の範囲の拡大、遺族補償給付の年金化等、給付内容の大幅な改善が行なわれることとなりましたので、その円滑な施行につとめ、被災労働者及びその遺族の保護に万全を期してまいる所存であります。
以上、当面の諸施策について所信の一端を申し上げた次第でありますが、今後とも各位の御意見を十分拝聴しながら、行政の推進に一そう力を尽くしてまいりたいと存じますので、御協力をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/5
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006・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 本件についての質疑は後日に譲ることにいたしたいと思います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/6
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007・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 次に、去る二月十七日予備付託になりました炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/7
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008・小平久雄
○国務大臣(小平久雄君) ただいま議題となりました炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
石炭鉱業の合理化に伴う炭鉱離職者の援護対策につきましては、昭和三十四年炭鉱離職者臨時措置法の制定以来、同法に基づき、その職業及び生活の定安に資するための諸般の施策を講じ、炭鉱離職者の再就職促進につとめてまいったところであります。特に昭和三十七年には、石炭鉱業の総合的対策を確立するため石炭鉱業調査団が編成され、同調査団は、同年十月、石炭鉱業の近代化、合理化及び雇用に関する対策についての答申を行なったのでありますが、政府におきましては、この答申に基づき、新たに合理化に伴う炭鉱離職者に対する炭鉱離職者求職手帳の発給及び就職促進手当の支給等の制度を設け、炭鉱離職者対策の強化充実をはかることとし、昭和三十八年四月からこれを実施してまいっておるのであります。
この就職促進手当制度は、炭鉱離職者求職手帳の発給を受けた炭鉱離職者に対し、失業保険金支給終了後その支給期間も含めて三年間、引き続き日額最高四百五十円の手当を支給し、もって、その者が再就職するまでの生活の安定と求職活動の円滑化をはかるものでありまして、昭和三十八年八月以降はこれに扶養加算をすることにより制度を改善し、他の援護対策と相まって、炭鉱離職者の再就職促進を進めてまいったのであります。
しかして、最近の炭鉱離職者の失業保険金の日額別分布状況、あるいは、また、産炭地の再就職賃金等の状況にかんがみ、この際、本制度創設当初の諸事情の変化を十分考慮して、手当日額を四百五十円から五百七十円に引き上げることとしたものであります。
以上、この法律案の提案理由につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/8
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009・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 本案に対する質疑は後日に譲りたいと存じます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/9
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010・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 続いて、昭和四十一年度石炭関係予算の説明を願います。井上石炭局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/10
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011・井上亮
○政府委員(井上亮君) 昭和四十一年度の石炭関係予算の御説明を申し上げます。お手元に資料が出ておると思いますが、この資料に沿いまして御説明申し上げます。
最初に、石炭鉱業合理化事業団の出資金、以下項目別にずっと書いてございますが、石炭関係の予算としましては、二枚目をめくっていただきますと、二枚目の左側のほうの一番下でございますが、石炭局計といたしまして、昭和四十一年度は百九十九億九千九百万円、約二百億でございます。それから、右側のほうを見ていただきますと、石炭局関係の約二百億の予算のほかに、鉱山保安局の関係で一億八千百万円。それから労働省の、これはあとで労働省からお話があろうかと思いますが、念のため、石炭関係と通常称しております予算四十六億八千三百万円、それから鉱害関係の他省分三十三億二千万円、これを足しますと、通常これが私ども石炭関係予算と称しておりますが、昭和四十年度が二百二十六億に対しまして二百八十一億八千三百万円、これが総計でございます。
なお、一ぺ-ジに戻りまして、簡潔に要点の御説明を申し上げます。
第一は、合理化事業団の出資金でございますが、これはその中に、(1)、(2)、(3)、(4)、と書いてございますが、(1)は、一番大きいのは近代化資金出資金でございます。これは石炭鉱業合理化事業団に政府が出資いたしまして、無利子の融資をする基金でございます。この内訳としては、大規模近代化資金の融資のための出資金、それから、中小炭鉱機械化のための出資金。三番目に(ハ)としまして、新鉱開発出資金、これは昭和四十年度から新規に設けました新しい制度でございまして、四十一年度はその二年目に当たる制度でございます。四十一年度につきましては、この新鉱開発出資金につきまして、従来の融資比率は四〇%の融資比率であったものを五割に引き上げるという制度の改変が伴っております。金額は四億で、さして伸びてないようでございますが、新鉱開発は、御承知のように、本格的には四十一年度から始めていくというようなことでございますので、まだ金額的には少ないわけでございます。
その次に、保安施設整備出資金、これが四十年度に比べますと大幅に伸びております。四十年度は七億九千六百万円に対して、四十一年度は十七億五千四百万円、十億近く伸びております。で、単に金額が伸びただけではありませんで、この中には融資比率、たとえば坑道掘進のための融資というようなものにつきましては、従来四割の融資比率でありましたものを五割に引き上げるというような措置が入っております。
その次は流通合理化資金でございますが、これは主として専用船関係の予算でございますが、四十一年度は一応専用船関係は休止いたしておりますが、いままで大体過去三カ年の計画で、都合二十八隻の計画でございますが、一隻ふえまして、二十九隻という従来の計画を完了いたしましたので、一応四十一年度はただいま差し控えて、予算要求をしなかったわけでございます。
それから、その次は、炭鉱機械化促進出資金、これは新規の項目でございますが、これは中小炭鉱に対します炭鉱機械化のための、いわゆる機械の貸与制度の創設をいたしたわけでございます。初年度でございますので、一応三億程度の予算からスタートしてまいりたいというふうに考えております。
それから、その次に(3)としまして、石炭運賃延納保証基金出資金、これは五千万円となっておりますが、これは諸先生方御承知のように、国鉄運賃の値上げがあったわけでございまして、これにつきましては、石炭関係につきまして約一カ年延納をお願いいたしておるわけであります。約一カ年といいますのは、昭和四十二年の三月三十一日まで全額延納措置をお願いいたしておるわけでございますが、その延納に際しまして、特に中小炭鉱につきましては担保もあまり十分でございませんし、それから、保証人につきましても、必ずしも十分な保証人がないというような実情から、合理化事業団がその保証業務を行なう、そのために基金を設置しまして、それに政府が出資していくというような関係でございます。
それから、次は大きな項目の2でございますが、炭鉱整理費、これは二つありまして、いわゆるこれは事業団の買い上げといいますか、鉱区を消滅しましたものにつきまして交付金を交付するという制度でございます。それから、二番目が非常に保安関係の悪い炭鉱につきまして、特にそういう保安の見地から閉山したほうがいいという山についての買い上げという措置でございます。これにつきましては、四十年度より四十一年度予算が減っております。本年度は四十三億の予算に対しまして、来年度は三十五億六千六百万円と、減っておりますが、整理トン数がちょっと備考に書いてございますが、来年度の昭和四十一年度は三百二十二万九千トン程度の閉山予定をいたしております。なお、保安業務のほうは二十万トン程度を予定しております。こういう関係のものでございます。
それから、その次に右側のほうに入りまして、3でございますが、いわゆる利子補給金関係でございますが、この利子補給制度は昭和四十年度から始めた制度でございますが、四十一年度におきましては、だいぶ内容を充実いたしまして、現行では、御承知のように、財政資金関係につきましては、既往の財政資金の融資残高について三%の利子補給ということになっておったわけですが、四十一年度からは、昭和四十年三月末現在の財政資金の融資の残高に対しまして六・五%の利子補給をする。それから、特に再建整備を必要とするような企業につきましては、財政資金の利子補給だけでなしに、同じく昭和四十年三月三十一日現在の市中からの――市中といいましても、設備資金、整備資金に限りますが、これについての残高について三%の利子補給を行なうということになりまして、それに必要な予算が計上されておるわけでございます。
それから、4といたしまして、炭層探査費、この項目も四十一年度からの新規の項目でございますが、これは御承知のように、炭鉱におきましては、いまなかなか経理状態も悪く、資金調達も困難をきわめておりますので、通常二、三年先に掘るべき予定の地域の炭層探査がきわめておくれておるわけでございます。これがおくれておるために安定出炭の確保が非常におくれて、そのためにまた困難な事態に逢着するというような事態でございますので、この炭層探査につきまして補助制度を採用いたしたわけでございます。こういった新規の項目が行なわれております。初年度二億七千万円でございます。で、これは補助率といたしましては、一応五割の補助率ということで考えております。
それから、五番目は技術振興対策費でございますが、これは御承知の石炭技研等に対する補助の予算でございます。
それから、一つ飛びまして、次は七番目でございますが、産炭地域振興対策費でございます。本年度二十五億六千五百万円に対しまして、来年度は二十八億三千八百万円、金額的な伸びは少ないのでございますが、内容的に見ますと、三つの新規の項目が認められておるわけでございます。その第一は、右側の備考の欄に書いてございますが、融資事業の中の運転資金の貸し付け制度、これは来年度から新規に二億円計上されておりますが、ほかに財投三億としまして、五億円を原資として事業団から産炭地に誘致しました企業に対する運転資金の、これは長期運転資金の融資をいたしたいということでございます。それから、次は、同じく融資事業の中に書いてございます出資事業でございますが、これは同じく産炭地に特に新規事業を計画いたしますときに、あるいは新しい技術をもとにしてつくる企業というような場合に、なかなか民間企業だけではそういった事業の振興ができないといいます場合に、産炭地域振興事業団に、噂に融資業務だけでなしに、出資業務ができるという制度を新規に設けたわけでございます。具体的には筑豊地域に、ボタ山を利用しまして軽量骨材をつくる企業、これをいま準備する計画を関係者間でいろいろ技術的に検討いたしておりますが、これに対しまして産炭地域振興事業団から出資をいたしたいということでございます。それから、第三番目の新規項目のこれの一番下に書いてあります工業用水ですが、産炭地域振興事業団は、いままで工業用水の確保についての事業はできなかったわけでございますが、今般そういった業務ができるような制度をつくりたいということで、予算としまして、一応ここでは二千五百万円、これは具体的には筑豊の鞍手地区のプリーク水を工業用水にする建設工事の費用でございます。その初年度分の必要な資金を計上いたしております。
以上、運転資金、出資事業、工業用水の建設のための事業を産炭事業団が行なえるようにというような予算が新規に計上されたわけでございます。従来の融資業務、それから従来の土地造成事業はもろちん継続して行ないます。
二枚目に入りまして、(3)といたしましては、これは産炭事業団の業務ではありませんが、産炭地域の工業用水確保のために市町村が事業をいたします場合に、それに対しまして国が補助をするということをやっておるわけでございまして、具体的には、右側に書いてございます久保白ダム、この久保白ダムは、これは飯塚市が直接いたしておるわけでございますが、これに対する補助、それから、もう一つは鞍手の工業用水、これは先ほど申しましたように、事業団が直接いたします建設については事業団が直接行ないますけれども、その事業団の費用のほかに、補助を同じく考えておるわけでございます。
それから、(4)番目は、産炭地域の振興事業債の調整分についての利子補給でございます。これは御承知のように、この前の国会で、産炭地域振興臨時措置法の改正をお願いいたしまして成立したわけでございますが、産炭地域につきまして、新産都市と同様の助成策を講ずるという制度に伴いまして、特に県に対しましては、県の産炭振興事業についての起債につきまして利子補給をするという制度がこの前の通常国会で通りました法律にございますので、それの四十一年度に必要な資金を予算として計上いたしたわけでございます。約四千万円考えております。
それから、次は鉱害対策の関係でございますが、この8の欄に掲げてありますのは通産省関係の鉱害対策でございます。
まず第一は、鉱害基金に対する出資金、これは有資力の鉱害につきまして、企業が鉱害賠償をいたしまするときに必要な資金を融資するために鉱害基金というものができておるわけでございます。これに対しまして、来年度もことしと同額の三億円を予算に盛っておるわけでございます。
それから、次は二番目でございますが、無資力鉱害の毎年賠償調整交付金一億五千万円、これは新規でございまして、従来相当長い期間強く鉱害被害者から要望されておりました制度でございます。有資力者の場合は、生きている炭鉱が被害者に対して毎年賠償をやっておるわけでございますが、無資力の炭鉱につきましては、被害者に対してだれもこういう毎年賠償をする人がいないわけでございまして、無資力の場合は、御承知のように、国が県とともに、炭鉱にかわって復旧をするという制度になっております。こういう毎年賠償はだれもしなかったわけでございますが、これを国が毎年賠償についてめんどうをみようという制度を新規につくりましたわけでございます。
それから、三番目は鉱害復旧の事業費、これは通産関係の鉱害復旧、つまり家屋とかそういうようなものにつきましての鉱害復旧の予算でございます。八億九千三百万円。なお、鉱害関係の全貌につきましては、この備考欄に書いてございますが、通産分が八億九千三百万、他省分のうち、大口は農林省関係、農地の鉱害賠償、鉱害復旧の問題でございますが、三十三億二千万円、合わせまして四十二億一千二百万円になるわけでございます。これを復旧事業に直しますと、来年度は五十六億円の鉱害復旧の事業ができるということに相なるわけでございます。その他合わせまして、先ほど申しましたように、石炭関係の予算は全体で約二百億、他省関係を合わせますと約二百八十一億というような内容になっております。
一応簡単でございますが、説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/11
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012・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 御苦労さまでした。
次に、有馬職業安定局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/12
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013・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 私から昭和四十一年度の炭鉱離職者対策関係の予算につきまして、お手元の資料によりまして御説明いたします。
最初に、炭鉱離職者の援護業務費でございますが、これは事業規模は十六億円でございますが、これに対する国庫補助金は十四億四千万円で、あとの一割は合理化事業団の交付金でございます。今年度と比較いたしまして減少しましたおもなものは移転資金関係の経費でございますが、これは合理化に伴なう離職も逐次減少し、本年度は合理化離職の規模も一万三千人と予定したのに比べまして、四十一年度は、たしか一万一千人程度の規模を予定しているからでございます。
次に、炭鉱離職者緊急就労事業費でございますが、総額におきまして、本年度の二十五億六千万円に対し、四十一年度は二十六億六千万円を計上いたしておりますが、その内容につきましては、吸収人員を五千四百人、事業費単価を千九百円といたしております。
三番目に、訓練関係につきまして申し上げます。訓練の規模は、四十年度は、都道府県の行なう訓練と雇用促進事業団の行なう訓練と合計いたしまして八千二百四十人でございましたが、四十一年度は四千百六十人と、かなり減少いたしますが、訓練関係の指導員、職員等の人件費の単価増もございまして、金額といたしましては大体本年と同額となっております。
次に、二ぺ-ジ目の就職指導関係の経費でございますが、就職促進手当は、大体本年度の対象人員と比べまして、相当人員が下回りますので、それに見合って金額が減っておりますが、先ほど大臣の所信表明でも申し上げましたように、その最高日額を現在の四百五十円から五百七十円に引き上げることといたしております。それから、広域職業紹介関係につきましては、これも対象人員が減ってまいりましたので、金額は多少減っております。なお、このほかに移転就職者用の宿舎でございますが、今年度と同様に一万戸を予定しており、石炭離職者の就職に役立たせていきたいと考えております。したがいまして、移転資金と就職促進手当の経費が相当減りましたので、総額におきましては、本年度の五十八億三千万円に対し、四十一年度は四十六億八千万円の予算を要求いたした次第でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/13
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014・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 本件に対する質疑は後日に譲ることにいたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/14
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015・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 派遣委員の報告に関する件を議題といたします。
先般、当委員会が行ないました石炭に関する諸問題の実情調査のための委員派遣について、派遣委員から御報告を願いたいと思います。
まず、派遣報告を、第一班、松平勇雄君からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/15
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016・松平勇雄
○松平勇雄君 第一班は常磐地方に派遣されましたが、二月二十一日、二日の二日間の日程で大河原委員長と私とが参加いたしました。
私どもは、第一日に平石炭支局で常磐地方における石炭の生産並びに保安状況を聞き、さらに関係市町村協議会から地方行財政の状況と要望を、また、教員労働組合から教育の現状と対策に関する陳情を聞きました。ついで好間炭鉱で会社側から、常磐磐城炭鉱で鉱業所側及び労組側から説明を聴取し、小名浜の石炭積み込み設備を視察した後、当地方の経営者との懇談会に臨みました。
第二日は、まず、常磐共同火力で低品位炭の使用状況並びに第六号機の建設現場を視察、ついで重内炭鉱を視察し、常磐茨城では鉱業所側から、主として隣接諸炭鉱との協業化問題を聞き、労組側から要望事項を聴取した後、新斜鉱の新式巻き揚げ設備を視察しました。ついで高萩炭鉱で鉱業所側と炭労石城支部と懇談して帰京の途についた次第であります。
二日間に以上の日程を運ぶことは相当に困難がありましたけれども、関係者の御配慮により、周到なる資料と懇切なる説明、案内を受け、短時間の間に常磐地方石炭産業の当面している諸問題につき、その要領をつかむことができたと思うのであります。
まず、常磐の近況について申し上げますと、炭鉱数は逐年減少し、昭和三十三年の七十七炭鉱が、現在ではわずかに十七炭鉱となっています。古河好間が、第二会社として好間炭鉱株式会社に縮小されるなど、大手にも変動がありましたが、比較的規模の小さいものが終閉山しております。
出炭高はたいした変化なく、大体年産三百八十万トンから四百万トン付近を往来しております。終閉山が福島県側に多いので、出炭高比率で、前には福島県側が断然多かったのが、最近ではだいぶ接近し、三十九年度の実績では、福島県二百十万トンで、茨城県百七十三万トンであり、大手、中小の割り合いでは、大手二百九十三万トン、中小九十万トンとなっています。労務者数は、三十三年の二万四千五百から、現在では半減して一万一千ぐらいと見られるので、一人当たり出炭能率は二倍以上になりました。
保安状況は、多湿高温といわれながら、幸いに他の地方と比べますと大事故が少ないのですが、それでも昭和三十年以来昨年末までの十一年間に、死亡三百九十五名、うち、落盤事故が最も多く、百九十九名にのぼっています。
常磐地方の石炭鉱業も、石炭一般の共通の悩みを持っておりますが、また、この地方の特性から由来する問題もかかえているのであります。
まず、石炭一般として非常な関心を持っているのは、今後石炭鉱業審議会や総合エネルギー調査会で出されるであろうところの石炭の位置づけがどうなるかということで、わが国唯一の地下エネルギー資源としての石炭再認識を望む声が労使ともに至るところで強く叫ばれていたのであります。そして、安定補給金の支給、それも企業の損益に関係なく、一律一定額の支給が強く主張されておりました。
金融については、過去の債務につき、財政資金による肩がわり案に賛成ですが、その際、中小炭鉱については一般債務までこれを拡大する要望も出ていました。また、現在、中小企業金融公庫を通ずる融資について、これを別ワクとし、限度を一億円に引き上げるか、あるいは財政資金による融資は、すべて合理化事業団を通じ一本化すること、坑道掘進や保安施設についての融資については、これを大幅な助成措置に切りかえることも要望されております。
炭鉱機械貸与制度は好評で、すでに堀進ローダー、採炭用ホーベル等を申し込みたいという山もあったほどであります。ただ、この予算の金額が何ぶんにも少な過ぎるという声が上がっております。
産炭地振興について政府関係事業を誘致すること、石炭消費産業を誘致することが要望されました。
鉱害については、鉱害現象を広い立場から考え、河床が上がるため、河川の上流に防除施設をつくるなども鉱害対策の一つとして考慮されたいとのことでした。
終閉山に伴う問題では、隣接鉱区の終閉山により排水を行なわなくなるため、その水が流れてきて、継続稼行している山の排水費がかさむので補助してほしいということ、終閉山炭鉱の上水道の整備事業費及び運営維持費が市町村の異常な負担になっていること、石炭関係緊急就労事業を四十三年以降も継続、恒久化されたいということ等が訴えられ、これからの問題としては、現在出炭が好調なので、夏ごろから貯炭融資の必要が生ずるかもしれないから配慮してほしいとのことでありました。
次に、常磐地方特有の問題としては、まず第一に、鉱区の条件があります。これは特に茨城地区でありますが、ここでは常磐炭鉱の神の山、中郷、大日本の磯原、宇部興産の向洋、それに重内、高萩等の炭鉱が近接してあり、しかも、鉱区が錯綜していて、中には、みずからの鉱区を採掘するのに他の会社の坑口から入ったほうが便利だろうと思われるところもあるのであります。そこで、これらを企業合同して、合理的な採掘をしてはどうかという意見があり、各社で協議しているのが実情であります。私どもはこの声を茨城側三社で聞き、常磐の茨城鉱業所では特に詳細な説明を受けたのであります。
合併の利点としては、一、合理的採掘ができるので、重複投資を避け、原価が安くなる。二は、管理部門の簡素化が可能になる。三は、排水、通風等がよくなり、保安確保に貢献する。四、炭鉱の生命も伸び、労務者に希望を与え、労務者確保となる等が期待され、茨城地区で年二百万トン出炭を維持できるが、もし各炭鉱の協業化が行なわれず、現状のまま推移するとすれば、十年後には一、二の炭鉱が残るのみで、他は没落してしまうだろうというのであります。
私どもは、茨城鉱業所の中郷新斜坑を見学いたしましたが、これは協業化の際の中心坑道になるものと見られるもので、設備投資十八億六千万円、ベルトコンベアーによる石炭搬出と人車坑道を持ち、人気坑を兼ね、全般的にオートメーション装置の進んだりっぱなものでありました。
この合同合併の問題については、向洋炭鉱が難色を示している以外は大体賛成でありますが、ただいまのところ、石炭位置づけの決定いかんや、政府の資金的裏づけいかんがその成否を決定するものと、情勢観望の形であります。また、企業合同について、労働組合側も鉱区の調整の重要性を強く認識していますが、ただ、合同に際して労組や自治体の意見を聴取されたいとの希望を申し出ています。
次に、常磐に低品位炭が多いということであります。その点では、低品位炭専門の常磐共同火力ができていることが非常に大きなささえになっております。共同火力の勿来発電所は、現在百三、四十万トンをたいて発電し、東京電力と東北電力に送っています。この石炭は常磐各社が出資比率に応じて供給していますが、その量は、常磐全体の出炭高の約三割に達するのであります。共同火力で目下増設中の第六号機十七万五千キロが完成すると、実に常磐炭の五割に近い量がここで電力用として消化される見込みであります。常磐にもそれほど低品位炭ばかりあるわけではないので、第六号機は五千二百カロリーをたく設計であります。
共同火力のほかにも電力用炭の納入が多いわけですが、その価格が常磐炭に幾分不利となっているので、是正されたいという要望がありました。
第三に、常磐の持つ自然条件であります。地下は高温多湿であり、ことに常磐磐城は温泉の湧出に悩まされています。したがって、通風施設の費用を多く要するので、これの援助が要望されており、特に磐城では自家発電平火力の増強が必要になっているが、これに対し近代化資金の貸し付けを希望しておりました。温泉の出ることは、炭鉱としては大きなマイナス条件ですが、この温泉を利用して、常磐炭鉱では、一月十六日から観光事業ハワイアン・センターなるものを開業し、目下予想以上の成績をおさめております。廃品利用と産炭地振興という点から注目すべき施設であります。
第四点としては、常磐の地理的条件でありまして、幸いにここは郡山市とともに新産業都市に指定されたこと、比較的東京都に近いこと、付近に工業都市があること等が石炭鉱業に好悪両面の作用を与えているのであります。それは、まず、労働力確保の困難にあらわれています。炭鉱労働者の子弟家族でも、工場等への通勤が多く、炭鉱の住宅施設が、時によると日立の住宅であるかしらと思われるようなところもあるそうです。そこで、炭鉱側からは、労働基準法を緩和し、養成目的で入坑可能年齢を引き下げ、若年者の入坑を許し、子弟の離散や不良化を防止したいという意見も出ておりました。これに対して、労働者側はもろちん強く反対しておりますが、炭鉱労働をもっと魅力あるものとするための特別年金制の実施、それも全額国庫補助による実施や、住宅確保に対する諸施策、保安施設に対する国家の援助などは、あえて常磐のみとは思われませんが、労使双方とも強く要望していることでありました。
新産都市との関係では、鉱害予防または地上権益との競合についてしばしば困難な問題が生じており、調整を要することを感じたのであります。消費地に近いことは利点で、それも小名浜の荷役設備が完備したことは、共同火力とともに、常磐の石炭を非常に力づけています。小名浜石炭荷役会社は資本金二億二千五百万円、その五割を県で、残り五割を石炭各社で出資してつくった会社で、年間百万トンの荷役設備があり、一時間七百トンの積み込みが可能、ただいま就航しておる三千七百五十トン積みの石炭専用船山栄丸にも、わずかに五時間半で積み込みが完了し、しかも人員はほとんど要せず、すべてオートメーションであります。非常な合理化と言えるのであります。
第五点として、常磐は、石炭としては小さな産地であり、そのために国の施策その他で無視されるのではないかという心配であります。その端的な例は、県教員組合の石城支部で産炭地教育のための教員特別配置で別ワク二百名のうち、福島県へはわずかに三名の割り当てに過ぎなかったが、これではとても足りないほど問題が山積しているので、全体のワク及び福島県への割り当てを増加されたいと熱心に訴えていました。
終わりに臨み、常磐の石炭鉱業においては自然や炭質の悪条件と戦いながら、労使ともにその安定、振興のため、非常な努力を払っておりますものの、企業や労働の力には限界があるとして、双方とも国の施策に大きな期待を寄せておりましたことを申し添えてこの報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/16
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017・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 御苦労さまでした。次に、第二班、剱木亨弘君にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/17
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018・剱木亨弘
○剱木亨弘君 第二班の派遣報告をいたします。
派遣委員は小林理事、小野理事、鬼木理事、久保委員、阿部委員と私の六名で、現地では小柳委員も参加されました。期間は二月二十日から二十三日までの四日間でありました。
日程は、端島、大ノ浦、山野、本添田の各炭鉱を視察するとともに、福岡通産局において、通産局、鉱山保安監督局、関係事業団、福岡県庁、教育委員会、九炭労、三池炭鉱罹災者家族等からそれぞれの意見を聴取しました。なお、産炭地教育の特性にかんがみまして、小野理事と久保委員は、教育事情を視察するため、二十一日には長崎県松浦市の今福中学校、調川小学校、志佐小学校を、二十三日には福岡県筑豊地方の稲築東中学校、川崎中学校を訪れました。
まず、石炭関係から申し上げます。
端島炭鉱は長崎市の西南二十キロに位置する周囲わずか一・ニキロの小島であるいわゆる軍艦島にありまして、明治二十三年に三菱の経営に移って以来、今日まで順調に続いているのでありますが、一昨年八月、自然発火によって深部稼働区域を水没放棄し、現在では三十六年から開発中でありました三ツ瀬区域に移行し、昨年十月から出炭を再開するとともに、一方、端島沖開発に着手しておる海底炭鉱であります。
現在稼働中の三ツ瀬区域の炭層状況は、旧深部区域の四十五度から六十度の傾斜とは異なり、十度から三十度程度の傾斜で、炭たけ累計も十八メートルと割合に条件もよく、炭質は高級原料炭とのことであります。したがいまして、年産状況も旧深部の場合と異なり、スライシング方式によって上下二段の機械採炭を行ない、水没前の鉱員千名、月産出炭量二万数千トンに比べ、鉱員六百名、月産出炭量三万トンとなり、四十七トンの出炭能率を示しているのであります。しかし、ここでは今後の計画として端島沖の開発を進めており、将来、三ツ瀬区域と合わせて年間六十万トンの出炭を見込み、それに要する開発資金四十億円の援助を要望しておりました。また、旧深部区域の買い上げも要望されておりましたが、これには島の地形上から端島沖開発のため、新たに坑口を開くことができないので、古い坑口をそのまま利用できるような特段の配慮をして買い上げてもらいたいとの要望がありました。私どもも海底採炭の特殊事情を認め、合理化法の解釈により、将来の石炭産業の育成強化のために当局の格段の配慮が必要であろうと思われました。
貝島大ノ浦炭鉱は明治十七年に開発されて今日に至っておるのでありますが、昭和三十八年九月の再建計画に基づき、満之浦炭鉱、菅牟田炭鉱、第二大ノ浦炭鉱を分離、第二会社化し、六億円の再建資金、借り入れ金の返済猶予、金利のたな上げ等による資金負担の軽減をはかりながら、現在では大ノ浦坑と中央露天に集約再建中の炭鉱であります。
最近の生産状況は、大ノ浦坑で月産五万トン、露天掘りで四万トン、人員千六百人とのことでした。中でも、ただいま採掘中の露天掘りはわが国唯一の大型露天掘りで、三十七年着工、三十九年完成、総工費九億円を要して開発したもので、その炭量は三百万トン、炭たけ累計十三メートルとのことでしたが、今後は採掘区域を周辺に広げていく計画とのことでした。
ここでは鉱害問題をかかえており、企業再建のため会社は分割操業しており、鉱害処理については貝島炭鉱が窓口となって事務処理を行なっておる現状でありますが、不安定鉱害地域が広範囲にわたり総合的な復旧が困難な状況にあるとのことでした。特に露天掘りにおける剥土の搬出及び堆積地に関連して、不安定鉱害であっても、いずれ鉱害が安定すれば、臨鉱法の適用を受ける見通しの際には、剥土の捨てズリを農地復旧の一環工事として臨鉱法の適用を受けられるよう、特段の配慮を要望しておりました。
山野炭鉱は、昨年六月のガス爆発によって二百三十七名の罹災者を出し、一時採炭を中止していましたが、十月から生産を再開しておることは御承知のとおりであります。現在は本層群を稼行中で、四十三年までに年産五十万トンずつ出炭して終掘し、以後は大焼層に移って、年産五十七万トンの出炭を見込み、現在、大焼層部内への坑道を起業中とのことでした。これが計画実現のため、当炭鉱では労使双方から、大焼層開発資金九億円の近代化資金及び開銀資金による融資、鉱区周辺の終閉山炭鉱からの流入坑内水の揚水経費年間一億五千万円の援助を要望しておりました。中でも、大焼層開発は山野炭鉱が第二会社に移行したときからの命題でもあるので、労使ともども、開発の成功を確信して、これが援助を強く要望しておりました。
このほか、労働者側は、保安確保対策の前提として、国内炭のエネルギーにおける位置づけ、炭鉱労務者の適正賃金の決定、年金制度の早期実施を求めておりました。
特に、ここでは、昨年の爆発事故による一酸化炭素中毒患者及び遺家族の現状について説明を受けたのであります。一酸化炭素中毒患者については、事故発生時に二十七名の患者があったが、現在では十名に減じ、入院中は一名ですが、これも六月には退院が予定され、他の九名は通院患者で、いずれも軽く、うち七名は軽作業に従事しているとのことでした。
遺家族につきましては、就職あっせん不要者十三名を除いて、就職決定者百六十六名、帰郷者五十一名となっており、今後の就職希望者は六名を残しているが、このうち二名は就職先が予定されており、未定の者は四名だけであるとのことでした。また、就職者百六十六名の大半の九十五名は第一靴下の工場につとめております。この工場は、事故発生後に誘致され、昨年十二月から操業を開始した工場で、これは工場誘致が山野の遺家族対策の一環として行なわれ、遺家族の就労による生活の安定と地域社会の産業開発に貢献している一例と思われます、しかしながら、遺家族は、生活のためになれない作業に従事し、相当の労苦が見られるので、今後国及び三井鉱山はもちろんのこと、新会社においても格段の指導と援助が必要であると思われました。
本添田炭鉱は、筑豊炭田田川地区の南部にある可採炭量千二百万トン、年間出炭二十万トン、鉱員五百人程度の中小炭鉱でありますが、ここでは中小炭鉱業者及び中小炭鉱の労働者からの陳情を受けたのであります。その項目を申し上げますと、経営者側からは、大手の債務の肩がわりに匹敵する長期無利子の財政資金の融資、一律一定額の安定補給金の支給、坑道掘進保安施設に対する大幅助成、炭鉱整理交付金の大幅引き上げを内容とする全国中小炭鉱業者の大会における要望の実現を要求し、また、労働者側からは、一、石炭助成策が大手偏重にならないこと。二、中小炭鉱の近代化のため特別の指導、援助を行なうこと。三、融資条件を緩和すること。四、鉱区調整を合理的に行なうこと。五、大手、中小の炭価格差を解消すること。六、保安確保に一そうの助成を強化すること。七、賃金その他労働条件の格差をなくすよう助成すること。八、炭鉱労働年金制の実施、炭鉱健康保険の一木化に努力すること等、八項目にわたる要望がありました。
その他、福岡通産局において関係者からの意見聴取も行ないましたが、結論的に申し上げますと、石炭鉱業においては、現在六月末の本答申待ちの感が強く、異常債務の財政資金への肩がわり、開発資金のワクの拡大の要望があり、労働者側からは保安の確保、年金制度の確立、一酸化炭素中毒患者に対する特別立法、中小炭鉱に対する助成策の強化を求める意見が強かったのであります。特に炭労三井三池の労働組合及び一酸化炭素中毒患者の家族の代表から、去る三十八年十一月の三井三池の大爆発事故により八百名にのぼる中毒患者を出したが、まだ二百八十名の入院患者があり、患者の回復はおそく、現在なお意識の全く不明の者や、あるいは家族をようやく意識できるにすぎないほど神経系統がおかされた重症患者もあり、しかも、本年十一月には満三カ年を経過することになって、労働基準法による三年間の解雇制限の期間も切れることになるので、患者の家族の不安はつのるばかりであるから、早急にこれら患者に対する保護措置として、一酸化炭素中毒症に関する特別措置法を制定してほしいとの強い要望がありました。
最後になりましたが、小野理事、久保委員が視察されました産炭地教育につきまして、便宜、私からその要点を申し上げます。
産炭地における教育環境の悪化がいわれましてすでに久しいのでありますが、この事態は、生活保護に依存しながら、一方、出かせぎ、日雇い、内職等に追われ、子供の教育には無関心で、放任状態という現状であります。その上、炭鉱災害、家出、離婚等による欠損家庭の激増、児童生徒の激減、暴力化による児童の心理的不安など、教師も子供を十分に把握して教育することが困難なほど産炭地の教育には悪条件が重なっているのであります。このような教育的悪条件のため、長欠、不就学の児童生徒が目立って増加し、次第に集団化、悪質化する非行少年及び問題児の発生、また、学力の低下、体位、衛生状態の劣悪等、産炭地教育は崩壊に近い状態を示しているのであります。これがため、現場の教師は、夜おそくまでの家庭訪問、生活指導に涙ぐましい努力をしているにもかかわらず、あまりにも多い非行少年や問題児にまで十分に手が回り切れず、また、要保護児童聖徒の増加に伴う教師の事務量が増大し、学習指導に支障を来たしているのが現状であります。
このような事態に対して、現地の教師から、一、生活指導教員の配置とその制度化。二、学級編制標準の引き上げ。三、養護教員、事務職員の必置、四、準要保護児童生徒に対する就学奨励費等の補助率の引き上げ、また、市町村当局からは、一、校舎改築費に対する補助の増大。二、校舎建築債の償還利息の特別交付税への組み入れ。三、人口急減に伴う地方交付税の財政需要額の算定に対する特別の配慮等の強い要望がありました。
以上が報告の概要でありますが、今回の視察にあたって御協力をいただきました現地の関係者に厚くお礼を申し上げまして、派遣報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/18
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019・大河原一次
○委員長(大河原一次君) 御苦労さまでした。
ただいまの両報告に対して、特に御質問等ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/19
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020・藤田進
○藤田進君 これからの審議のことについて要望しておきたいんですが、当面は予算があり、あるいは衆議院との関連で、通産大臣、あるいは労働大臣等にそのたびごとというのもむずかしい面もあるでしょう。しかし、どうしても所管大臣に出ていただいて、たっぷり時間をとって審議をするということについて委員長の御配慮をお願いしたい。
第二の点は、いま松平調査団、劔木調査団の御報告があったわけですが、従来、委員会の調査というものは、現地では非常に期待をしながらも、その調査が終わればさしたる実を結ばないままに事態が推移してしまうというきらいがありますが、いま承わりますと、相当報告の内容は要望、陳情といったようなものが多いようであります。それで、ぜひ速記録ができたころにこれが質疑もいたしまして、現地の要望等については、六月の審議会答申を漫然と待たずに、当特別委員会としても真剣に取り組んでいくべきであると私は思いますので、ぜひその機会を持ってもらいたい。
それから、第三の点は、いずれ速記録ができますれば両調査団の内容はさらに読み返しもできますが、調査室におかれて、非常に手数でしょうが、幸いに商工委員会のほうも、そうメジロ押しでもないようだから、いまの両調査団の要望について、それぞれ分けて一覧表をつくってもらいたい。これに対して本日説明された政策と対比して、予算はどうなっておる、あるいは補助率は高めてくれというようなことがいまありましたが、これが今度一〇%にしたというようなこともありますが、それがどうつながっているのか、私はよくわかりませんから、施策、予算の面でこの要望は解決済み、これはそうでないというように、分けて一覧表をつくってみてもらいたい。しかる上で当委員会としても調査の審議を深め、六月答申に、いずれこれは会期末ないし閉会中に答申になるかもしれませんけれども、エキスパートのお集まりの皆さんは石炭関係の権威者ですから、当委員会としてもやっていきたい。特に納税者国民の立場から見ると、このままで石炭というものが、ただ補助するとか融資するとかいったようなことで今後どうなるのかということは、かなり問題がもう出てきていると思います。よって、社会党は抜本的な対策というものを、すでに要綱の発表までいたしているわけでありますから、その段階になれば、政党政派でそんなに隔たり、対立もなかろうと思われるので、それらについても私どもひとつやってみたいと思いますので、その段階になれば所管大臣はぜひこれは必要だと思います。この三点を要望いたしまして、これらを織りなしてこの委員会の実質的な審議と集約ができるようにやってみたい。お互いに他の委員会とかけ持ちですから、思うように日取りができないと思いますけれども、何とか繰り合わせて、あるときは政務次官、あるいは局長の出席を願って深めていくといったようなことでもいいのじゃないかと思うのです。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/20
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021・大河原一次
○委員長(大河原一次君) ただいまの藤田君の御提案、非常にもっともだと存じますので、できる限り御要望にこたえるように、なお理事会等で打ち合わせいたしまして、御意見を尊重いたしたいと思います。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時四十二分散会
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114589X00519660310/21
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