1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月二十八日(月曜日)
午前十時三十九分開会
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委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
大谷 贇雄君 塩見 俊二君
林屋亀次郎君 任田 新治君
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出席者は左のとおり。
委員長 徳永 正利君
理 事
青柳 秀夫君
藤田 正明君
成瀬 幡治君
中尾 辰義君
委 員
伊藤 五郎君
大竹平八郎君
栗原 祐幸君
木暮武太夫君
西郷吉之助君
塩見 俊二君
任田 新治君
西田 信一君
日高 広為君
木村禧八郎君
田中寿美子君
野溝 勝君
須藤 五郎君
小林 章君
国務大臣
大蔵大臣 福田 赳夫君
政府委員
大蔵政務次官 竹中 恒夫君
大蔵大臣官房財
務調査官 川村博太郎君
大蔵省主計局長 谷村 裕君
大蔵省主税局長 塩崎 潤君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
参考人
横浜国立大学教
授 井手 文雄君
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本日の会議に付した案件
○所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
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001・徳永正利
○委員長(徳永正利君) それでは、ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
本日は、まず、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の以上三案を議題とし、参考人より御意見を聴取いたすことになっております。
御出席をいただいております参考人の方は、横浜国立大学教授井手文雄君でございます。
この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。御存じのとおり、ただいま議題となっておりまする三案は非常に重要な法案でございますので、ここに本問題に深い学識を有せられます井手先生に参考人としての御出席をお願いいたして、三案についての御意見を拝聴いたしまして、本案の審査に資する所存でございますので、参考人におかれましては、本案に対しまして、この際、忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いいたします。
なお、議事の進め方でございますが、初めに、二十分程度、井手先生より御意見の御開陳をお願いいたしまして、終わりました後に、委員各位の質疑に移りたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
それでは、井手参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/1
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002・井手文雄
○参考人(井手文雄君) ただいま御紹介にあずかりました井手でございます。本日は、この委員会におきまして、税制改正問題につきまして私の意見を申し述べる機会を与えられましたことにつきまして、心からお礼を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/2
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003・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 井手先生、おすわりいただきまして、少し大きな声でお願いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/3
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004・井手文雄
○参考人(井手文雄君) ちょっと身辺、公私、もっぱら公でございますけれども、差しつかえがございましたので、あまりまとまったことは申し上げられませんので、思いついた点を若干申し上げたいと存じます。先ほど入学試験の採点云々と申されましたけれども、午前中は時間を取ってありますので、もし御質問がございましたら、その点御遠慮なく十分にお願いいたしたいと思います。
今度三千億の大幅減税が行なわれることになっておるわけでございますが、まあ三千億と申しましても、初年度は二千億ちょっとでございます。大体まあ一千億の開きがございます。これはいつも四月からの改正でございますから、平年度に対しまして初年度の減税額は少ないことにこれは技術上なっておるわけでございますが、これはちょっと私考えるのですけれども、今度の減税、いろいろ目的ございますけれども、この低圧経済下において、何とか景気を立て直そうというところから、減税において需要効果をねらったと、それが一つの減税の目的じゃなかったかと思うのです。そうしますというと、そういう効果はできるだけ早く実現したほうがいいんじゃないかと思うわけです。ちょうど公共事業費を繰り上げて、できるだけ早目に支出するように御努力をくださっておられますように、この減税も、せっかく大幅な減税をしてくださるのだったら、そういう刺激効果がいま即刻出るということが必要なわけです。そうしますというと、いつものように平年度は三千億減税、まあしかし初年度は一千億少ない二千億だということは、いかにも慣行に従ったやり方で、もう少しそういう刺激効果ということを真剣に考えられたならば、初年度から三千億減税ということが好ましいのじゃないかというような気もいたします。そうすれば、一月にさかのぼって減税ということになりますけれども、技術上あるいは多少困難がある、繁雑かもわかりませんけれども、最初から平年度と同じ三千億減税というようなことがとられなかったものだろうかというような気がいたします。それがまず考えられたわけであります。
それから次に、だんだん公債が発行されまして、財政政策の転換というようなことがいわれてきておるわけでございますが、それはつまり、いわゆるそのフィスカルポリシーをやっていくんだと、こういうことだろうと思うのでございますが、このフィスカルポリシー自体については私は別に反対ではなくて、やはり有効需要政策というものを財政を通じて行なうということも、時と場合によっては必要であり、また特に現在以降のわが国においてはある程度そういうことも必要であるということは、私も認めるわけでございます。
ただ、フィスカルポリシーと申しますと、これを租税の面からいいますというと、大体フィスカルポリシーというのは有効需要政策でありますからして、好況期においては黒字予算、不況期においては赤字予算、場合によっては均衡予算というように、予算のバランスを操作しまして、と同時に、予算の規模も拡大したり圧縮したりするという操作を行ないまして、そうして国全体の有効需要を調整をしていくということで景気を調整するということでありますが、これを租税政策として見ますというと、不況期低圧経済の場合は有効需要を造出しなければならぬということで、一方においては財政支出をふやす、一方においては減税をするということになる。そうして公債を発行して、その収入を支出のギャップを埋めていくということで、これはまさに四十一年度の予算がそうでありますが、この場合に、それから今度は好況期になってインフレになっていくということ、この段階においては逆に減税の場合に増税をする、それから支出のほうは圧縮していくということで、均衡予算を回復するか黒字予算にする、こういうことになる。これらは典型的なフィスカルポリシーだろうと思いますが、そうすると、フィスカルポリシーというのは、あるときには減税をする、あるときには増税をする、こういうことになるわけです。四十一年度はまさにその減税をして
いくという段階であります。そうしてこの場合は、有効需要をふやさなければならぬわけですから、減税においても有効需要ができるだけふえるような形での減税が望ましい、こういうことになります。
そうしますと、たとえば所得税におきましては、限界消費性向の高い低所得層の減税に重点を置くということがちょうどそのフィスカルポリシーの観点からも望ましい。この場合には、負担の公平化ということと景気政策というような経済政策の目的とがちょうどうまく合致することになるわけであります。ところが、今度は増税をして景気を押えていく、黒字予算あるいは均衡予算に変えていくという段階になっていきますというと、その増税というのは同じく今度は限界消費性向の高い階層、つまり中小所得層の増税のほうが効果があるわけです。つまり、消費需要を押える効果があるわけですからして、この場合には負担の公平ということとフィスカルポリシーの目的とは相反する、こういうことになります。
それで、もし今後フィスカルポリシーを効果的にやっていくところに、そういう方向に税制政策が向かっていくということであるとしますというと、税負担の問題がそこに出てくるのじゃないかと思うのです。税の重さあるいは配分でございます。つまり、いまは減税の段階で有効需要を造出していくということでありますが、やがて増税ということは当然フィスカルポリシーならば考えられる。ですからして、増税をするときに税負担が過重になるということは、これは問題。ですから、この減税をする段階においては思い切ってその中小所得層を中心とした減税をやっておく。そうして今度は増税をしなければならないという段階になれば、いま言いましたように、どうしてもこの需要を押えるという面から中小所得層の増税になりがちでありますからして、たとえそうなっても、はなはだしいその負担の過重にならぬようにしなければならぬ。そのためには減税すべきときには思い切ってそういう中小所得層の減税をしておくということが必要じゃないか。ちょうどその有効需要を造出しなければならぬ、中小所得層の減税がフィスカルポリシーの面からいっても望ましいというまさにそのときに、そういう中小所得層の減税をなまはんかにしておきますというと、今度は増税しなければならぬ、そうして景気を押えなければならぬというときになって、今度はそういう階層が非常に重い負担をこうむるということになってくる。特にだんだんと予算の規模は傾向としてはふえていきますし、それから公債もことしのみならずあと数年間は七千億あるいは八千億というあれが続いて、それからそれがなくなっていって今度は景気を押えていくという段階になるように、福田蔵相の御構想もそうだと思うのですけれども、相当の公債の累積、公債費というものはふえていく、ですからして、どうしても税負担は重くなっていく傾向にある。そこへもってきて、このフィスカルポリシーだということになるというと、需要造出——需要を抑えるという効果を持った造出ということになって、中小所得層の増税というものは非常にそのときになって相当多くなる。ですから、その予防のためにも、それを調整するためにも、現時点においては中小所得層の大幅な減税ということが、フィスカルポリシーの点からいっても、負担の公平という点からいっても、望ましいのじゃないか。
もしこういう観点から見れば、本年、四十一年度の減税の構想はもう少し所得税減税にウエートを置いてよかったのじゃなかろうか、こういうような気がいたすわけでございます。つまり、フィスカルポリシーはいいのだけれども、適正に行なわれればいいのですが、その名においてだんだんとこの中小所得層に対する税負担が重くなっていくという可能性はあるわけですからして、そこのところが見失われないようにしていかなければならぬ。そのためにはいま言いましたように、この段階においては思い切って中小所得層の減税をやっておくというようなことが望ましいのじゃなかろうか、こういうような気がいたしたわけでございます。
それから、これと関連もありますが、所得税の課税最低限度額の問題。これは非常にむずかしい問題で、どこまでが妥当かということは非常にむずかしい問題でありまして、相当統計的な資料も必要とするわけでありますから、私が抽象的にこの辺がいいとかこの辺までしなければならぬということは、いま確信を持っては実をいうと言えないわけでございます。これは給与所得者で標準世帯では五十七万円くらいから六十三万円台に、これは平年度でございますけれども、今度上がるわけでございますが、これが十分か不十分かということは当然問題にしなければならぬ。感じとしては不十分だという感じがするわけでございますが、ここでこの課税最低限度額につきまして、ちょっと別な角度から考えてみたいと思うのです。
いま申しました今度上がって平年度六十三万円台というのは、給与所得者の標準世帯について言っているわけでございます。配偶者一人、それから扶養家族が三人という、本人合わせて五人世帯でございますが、この給与所得者の課税最低限度額が六十三万円台——六十三万一千六百三十四円ということに、平年度でありますが、なるということが、低過ぎるか妥当かということが問題になるわけでありますが、それが一つあるのですけれども、それと同時に、標準世帯の給与所得者の課税最低限度額が六十三万円台になるということがおかしいのじゃないか、になるそういう計算がおかしいのじゃないかということを、ここでひとつ……。これは私の間違いかもわかりませんから、ひとつ御批判をいただきたいと思います。
大体、この課税最低限度額の計算はどうしますかというと、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、それから社会保険料控除とか——給与所得者については社会保険料控除、それと給与所得控除を足すわけです。事業所得者につきましては、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、それから給与所得控除は当然ないわけでありまして、社会保険料控除のかわりにその他の健康保険料控除とか、そういうようなものを加えるわけでございます。ところで、給与所得控除——六十三万円台といま言いましたように、給与所得控除を含めておるわけです。給与所得控除は今度少しまた上がりまして、収入八十四万円では十八万円でございますか、そこまで引き上げられることになっておるわけで、八十四万円をこえますというと、あとはもう十八万円で打ち切りということに今度なるのじゃないかと思います。従来は、現在は十五万円で打ち切りでありますから、八十四万円をこえますと三万円ふえるということであります。この課税最低限度額が六十三万円ちょっとでございますけれども、この六十三万一千六百三十四円について考えてみますと、給与所得控除は十四万九千百六十三円ですから、大体十五万円程度になるわけです。これが入ってちょうど六十三万一千六百三十四円ということになるわけで、課税最低限度額がそうでありますから、この程度の所得者はゼロになって税金がかからぬということになるわけですが、この十五万円くらいの給与所得控除が実は入っておる。
この給与所得控除というのは一体どういうことかといいますと、これは大体必要経費の概算的控除という考え方が強いわけです。必要経費の概算的控除であれば、給与収入から給与所得控除を引いた残りが給与所得ということになるわけです。そこで初めてその給与所得になるわけですから、その所得から、そうして計算された、つまり収入から必要経費を引いて所得が算出され、その所得からいろいろの所得控除を引いて課税所得が出てくるという段取りのはずです。そうすれば、事業所得においては当然事業収入から必要経費を引いて事業所得が出る。その事業所得について課税最低限度額を計算する場合においては必要経費は入れませんです。ところが、給与所得については給与所得控除を計算して、六十三万円になるぞという場合にはちゃんと給与所得控除額が入っておる。これは二重に引いておるのじゃないか。つまり、必要経費であるならば、給与所得算出項目の中に給与所得控除額を入れてはいけない。もしもいまのように六十三万円というものの中に十五万円くらいの給与所得控除額が入っておるとするならば、給与所得については必要経費は全く認められていないシステムであると、こういうふうに考えなければならぬのじゃないかと思うわけであります。もしも、必要経費を全然認めていないということになれば、これは非常に大きな問題。必要経費は給与所得についてもある程度認めなければならぬということで、概算的控除としての給与所得控除というものが設けられておるということが無視されることになる。もしもそれを通すならば、課税最低限度額を六十三万円というのはおかしいわけで、もっとそれよりも相当低くなっておると。だから、六十三万円で食っていけるかどうかという問題の前に、大体六十三万円になったということがおかしいんじゃないか。そう考えますというと、給与所得控除を算入しないで六十三万円ぐらいにせめてしなければならない、あるいは七十万円ぐらいにしなければならない、こういうような気がするわけでございますけれども、その点について、これは私のあるいは思い違いかもしれませんので、お教えを願いたいと思います。
シャウプ勧告ではこの問題については——時間が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/4
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005・徳永正利
○委員長(徳永正利君) けっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/5
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006・井手文雄
○参考人(井手文雄君) シャウプ勧告では、給与所得控除について、御承知と思いますけれども、ちょっと復習しますと、独特の考え方を持っているわけです。つまり、給与所得控除というものを勤労所得控除というふうに考えるというと、おかしいというのです。不公平だというのです。つまり、勤労所得控除が給与所得者にだけ当てはめられておるというのは非常に不公平だというのです。あのときは、シャウプ使節団がやってきたときは、二五%の給与所得控除でありました。それは高過ぎると。
つまり、そこでは、勤労所得控除というものはどういうものであるかということを考えると、これはシャウプ勧告の意見では、一つは、勤労年限の消耗に対する償却の意味、つまり機械などが減耗していくための減価償却引き当て金というものが認められておりますように、勤労者もだんだんと労働力の資本還元価値が減耗していくんだから、機械と同じように減価償却というものが認められてしかるべきだと、勤労控除にはそういう意味が一つ考えられる。それからもう一つは、余暇を犠牲にして努力するとかあるいは労働をするという、そういうことに対する表彰的な意味があると。それからもう一つは、つまり必要経費の概算的控除という要素があると。それからもう一つは、特に給与所得者について認められている理由としては、他の所得はほとんど一〇〇%捕捉されないのに、給与所得の捕捉率は非常に高いと。だから、実際において税負担が重くなるから、それを調整するということで、特別の控除を設ける。
大体この四つの意味を考えられるのだけれども、最後の、他の事業所得とかそういうような所得の捕捉度が非常に低い、給与所得だけが一〇〇%に近いということで、それを調整するために給与所得控除を設けられているということは認められない。それはなるほど脱税あるいは捕捉率の低いという点において税負担のアンバランスということはあるけれども、それは認めるけれども、それは当然徴税の合理化というようなことによって是正すべきで、それを前提として税制を設けるということは悪循環になるから、そういう意味での給与所得控除は認めない。それから、資本減耗に対する引き当てというような減価償却的な意味、これは勤労所得については当然考えなければならぬと。しかし、給与所得についてだけ考えるというのはおかしい。勤労所得というのは給与所得だけが勤労所得じゃない。たとえば非常に小さな商売をやっている事業所得者、その所得についても勤労所得という要素は幾らでもある。農業所得についても勤労所得という要素は非常に強い。そうするというと、そういう減価償却的なものを持った勤労控除というものを給与所得についてだけ認めるというのは、これはおかしい、不公平であると。だから、認めるのであったら、給与所得以外の、サラリーとか賃金以外のほかの事業所得とか農業所得の勤労所得的部分についても認めなければならぬ。給与所得について特別に控除を認めるというのは、必要経費が控除されないということです。だからその点については、給与所得について、特別に他の所得よりも多く控除をするということは必要だと。つまり、必要経費の概算的控除ということなんです。
そう考えるというと、二五%の給与所得控除ということは多過ぎるので、二五%のうち一五%は、これは減価償却的な意味とか、勤労努力に対する表彰とか、そういう要素があるわけだからして、それはほかの勤労所得にも均てんさせなければいかぬ。だから、いわゆる給与所得だけに対する給与所得控除は一〇%でいい。だから、二五%を一〇%に引き下げろというような提案を、シャウプは勧告したわけです。
これはわれわれサラリーマンから見ると、あまりおもしろくない提案でありますけれども、理屈は通っている。そうすると、あとの一五%は、給与所得にも、ほかの勤労所得的要素についても、認めなければならぬ。ところが、事業所得だとか農業所得、商工業所得の中でどれだけ勤労所得があるかということが、なかなかつかまえにくいものだから、その当時の貨幣価値ではかって、たしか年額二十五万円程度のそういう所得にはすべて勤労所得といって認めている、農業所得も商工業所得もですね。個人経営でやってる場合のそこら辺の八百屋さん、魚屋さんにつきましても、そういうのは事業所得だというけれども、二十五万円まではこれはみんな勤労所得だと。だから、勤労控除というものを事業所得も同じように認めなければならぬというように考えたのですけれども、それからまた一転して、そういうふうにすると今度は徴税事務が非常に繁雑になるからというので、結局二五%のうち一五%は基礎控除の引き上げと税率緩和ということに吸収してしまう。だから、この基礎控除、その当時の貨幣価値ですから、いまから見ると非常に低いわけですけれども、一万五千円だった。それを九千円基礎控除を上げて、基礎控除二万四千円にしよう、それから所得税の税率をある程度緩和しよう、そういうことで一五%をそれは吸収してしまう。そうすると残るところは、給与所得に対する必要経費の概算的控除という意味のものだけだから、給与所得控除は一〇%でいいという提案をした。
二十五年度の改正においては、それはちょっとひどいというので、給与所得控除は一五%とし、五%わが国の政府は色をつけまして、それから基礎控除額も、二万四千円を二万五千円にするというこういうことで、二十五年度の改正が行なわれたわけですけれども、その点からいうと理屈は確かに通っているのですけれども、給与所得と他の所得との間のバランスからいうと、前よりもちょっと悪くなっております。つまり、ほかの所得もみな均てんしたわけです、一五%分は。それは給与所得だけに与えられておった一五%のものを、ほかの所得についても、基礎控除引き上げによって均てんしていく。だから、高額所得についても均てんしていってしまう。二十五万円以上のすべての人に均てんする。だから、給与所得だけ一五%になりましたけれども、改正前は二五%でありまして、ですから、その点においても非常に従来よりも給与所得と他の所得との間のアンバランスが出てきたのですけれども、しかし、勧告は勧告なりの理屈を通して、そういうことをやった。
それからずっと今日に給与所得控除は来ているわけでありますけれども、一体今日、そうしていま言いましたように、八十四万円の十八万円というように上がってきている。しかも、それはいろいろ定額控除は四万円にするとかいう、非常に複雑になってきているわけですけれども、一体給与所得控除について真剣に検討されただろうか。その給与所得控除の意味は一体何だろうか。
それで、シャウプ勧告では二五%を一〇%に引き下げれば、一五%は基礎控除、税率緩和のほうに吸収されるのだと言うけれども、一体今日においては、そういうような基礎控除や、それから税率というものとの関連において、この給与所得控除を真剣に理論的に考えて、今日の十八万円打ち切りというような、ああいう低い給与所得控除は認められておるのだろうかと、こういう感じがするわけでございます。
租税政策というものは、やはり公平原則と、それからいろいろの経済政策的な原則によって支配される。私も何もその経済政策的な原則、要求というものを全く否定するということじゃなくて、やはり租税政策においては、ある程度いろいろの経済政策的な要素を導入するということも必要だと思うのですけれども、やはり基本は負担の公正でありますからして、常にその負担の公正ということがはなはだしく阻害されない、破壊されない配慮というものはこれは必要であって、何かにつけて、おりに触れてそういう負担の公平に対する検討を怠ってはならないと、こういうふうに思うわけであります。
そういう観点から見ますというと、わが国の今日の所得税を考えますと、いま言ったような例から考えましても、どうも給与所得と他の所得との間の負担のアンバランスというような一番大きな、いつも国民が問題にしているこの問題は、もちろん政府もそういうことは考えられておられますけれども、もっと真剣に考えていただきたい、こういうような気がいたします。つまり、国民の納税者としての感覚からいうと、非常に負担がアンバランスになっている。シャウプ勧告は、捕捉率の問題は、これは徴税事務の合理化等によって解消すべきであると言っておりましたけれども、その後やはり九・六・四制度というように言われておるように、捕捉度が非常に違う。九というけれども、私などは一〇〇%捕捉されておるわけですからして、給与所得が九〇%捕捉されておるということは私はわからぬわけで、あれは一〇〇%捕捉。それから、六〇%というのは事業所得、農業所得が四〇%というのですけれども、もっと差があるんじゃないかというような気がするけれども、これは事実ですからして、それを前提として税制を立てるということは、悪循環ということもわかるのですけれども、それがシャウプ以来長い間是正されないということになるというと、ある程度そういうことも考えて負担のアンバランスというものを是正するというくふうがなければならぬ。そうするというと、給与所得控除の中にそういうような調整的な要素も非常に経費のほかに加味しなければならぬ。
いろいろ考えてみますと、いまの引き上げられまして十八万円どまりになりましたけれども、八十四万円以上は幾ら所得がふえても十八万円しか引かれないわけでありますけれども、これは思い切って給与所得控除は引き上げる必要があるんじゃなかろうか、こういうような気がいたすわけでございます。
それから、この減価償却的な要素はやはり考えなければならぬわけでありますが、減価償却は、たとえば耐用年数が十年であれば、ちょうど十年でもって減価償却積み立て金で新しい機械設備を更新することができるわけです。ちょうどそれと同じように、人間の労働も何年かたてば消耗し尽くしますから、そのときに貯蓄によってそれ以後の稼得力、生活力をつけていかなければならぬ、そのための留保分がいわば勤労所得における減価償却的な意義だろうと思うのです。そうすると、それを認めなければならぬ。いまはたして給与所得控除がそういう減価償却的意味までも含めたほどの額であろうかということが問題です。その場合に、退職金があるじゃないか、退職金というものがちょうど新しい稼得力を更新することになって、その退職金によって、生活をしていくんじゃないかということであれば、退職金に対する課税はおかしい。退職金は非課税所得というふうにしなければならぬのじゃなかろうか、こういうような気がいたします。
まあ、少しこまかいようでありますけれども、やはりこういうような国民の感情に密着した不公平感というものがありますと、そこから、せっかく政府が考えられておるような、たとえばいい意味での経済政策、景気政策的な要素を導入するということについても、反感が出てくるわけでありますからして、その点はやはりあまり無視されないで、こういう問題もこれは税制調査会で当然根本的にやっていただかなければならぬものでありますけれども、要求いたしたいと思います。
それから、これはよくいわれております配当所得、利子所得の分離課税がいいか悪いかということでございますが、もちろんこういう制度も確かに必要があって設けられたもので、資本の蓄積とか資本の形成ということであり、また確かにこういうような制度が、特に利子所得分離課税というようなものが相当長い間続いているわけでございますが、そういうような制度が長く続けば、それが一つの前提となって経済秩序、生活秩序も打ち立てられていく。いま急にそれを変えるというと、そういう秩序を乱す、確かにそういう面もあるかもわかりません。少し意味が違いますけれども、カナールでしたかだれでしたか、旧税は良税だ、新税はたとえそれを改良するにしても悪税である、旧税はすべて良税だというようなことを言ったわけでありますが、そういうような考え方もあるかもわからない。
しかし、これも負担の公平という点から申しますと、特に私どものように、すべてを総合課税されて累進課税をされる者から見ますというと、確かに特定の所得だけが分離されて、低い源泉課税だけで終わるということは、これは国民感情としては確かに不公平感というものがある。こういう不公平感に対して、いろいろ資本蓄積的な効果というものも、それはある程度あるかもわかりませんけれども、あるかないかという議論が非常にあるわけでありますが、しかし、そういうことで国民の税制に対する不満感、不信感というものが出てくると、非常に大きな損失であって、だから、その損失を償うほどの特別の経済政策的効果があるかということは、やはり考えていただく必要があるのではないか、こういう気がいたします。
ですから、利子所得が分離課税されるならば、配当所得も分離課税という、課税の平等化の要求が出てくるわけでありますけれども、そうであれば、やはり両方とも総合課税ということのほうが、総合課税主義の貫徹ということが、やはりすっきりするのではなかろうか、こういう気がいたします。
この配当所得と利子所得は、いまのは個人所得の段階における受け取り利子所得、受け取り配当所得でありますけれども、今度は企業の側、法人の側からいえば、支払い利子、支払い配当について、やはり注文が出てくるわけでありまして、支払い利子は損金に算入されるけれども、支払い配当は損金不算入だということ、これは不公平だ、だから支払い配当も支払い利子と同じように損金算入を認めて免税せよという要求が出てきて、そうしてそこまではというので、法人所得のうち配当支払いに充てる部分に対する軽課措置というものがとられておりますが、しかし、支払い配当を損金に算入しないという考え方は法人擬制説を前提としているわけでありますからして、そうして今日の税制を見まするというと、だいぶんあっちこっち破壊されておりますけれども、基本的には法人擬制説で仕組まれているわけです。そうすると、もしあくまで支払い配当を損金算入したい、そうして支払い利子と均衡をとりたいということであれば、法人実在説的に税制を立て直すということが必要で、そうなれば堂々と支払い配当は損金算入できる。
そのかわり、もしそうなれば、法人の受け取り配当は益金に算入しなければならない。配当控除制度をどうするかというような問題、これを調整しなければならない。それから、今度三五%に留保分はなったわけでありますけれども、そういう一本の比例税率というものでなくて、法人実在説であれば、法人税も負担能力に応ずる課税であるというので、累進税率の適用というふうになるのじゃなかろうか。ただし、小さな同族会社的なものは、これは少し違うわけでありますから、法人擬制説でいったほうがあるいは理論的に妥当かもしれません。そういうような中小企業と大企業、今度の改正では資本金一億円を中心として考えておるようでありますけれども、小さなところは、同族会社的なものは法人擬制説、それから大きなところは法人実在説ということで税制を立て直すとか、やはりこの点についてもっと基本的な税制の立て直し、再検討ということが必要ではなかろうかと、こういう気がいたします。
租税特別措置でございますけれども、今度企業の体質改善のための特別措置、それから中小企業の体質強化でございますか、そのための特別措置というもの、中小企業の体質の強化、それから企業の体質改善——企業の体質改善というのは、資本金一億円以上のもの、それ以下は中小企業として、体質の強化ということで、大体留保所得に対する税率の引き下げは一般的減税でありますが、そのほか大体政策的な減税であり、特別措置による減税だと考えられるわけであります。
特別措置については、もういろいろ議論があって、それが非常に負担関係から見てアンバランスであるから、しかも税制を複雑ならしめるから、できるだけこれを整理しろという意見が学界のほうでも強いようでありますが、基本的方向としては私もそういうふうに思うわけです。ただ、今日こういう建物の耐用年数の短縮、資本構成改善の促進、合併の助成、スクラップ化の促進というような目的のための減税でありますけれども、資本構成改善の促進は、資本構成を改善すれば減税をしてやるというようなことで、これがはたして理論的にすっきりしているかどうか問題でありますけれども、今日の開放体制下において、わが国の企業体質を強化していく、特に中小企業の体質を強化していく、自己資本比率を高めていくことが必要でありますからして、要は漸次改正の方向へ向かっていくわけです。必要なものは認めるけれども、できるだけ不必要なものは整理していくという方向へ行かなければならない。
私は、今回のそういう企業体質の改善の促進とか、中小企業の体質強化のための特別措置を必ずしも否定するわけじゃありませんが、特別措置の整理合理化で約三十億、平年度で二十九億税収がふえるということでありますが、それと、いま新しく取り上げられて設けられる、あるいは拡大される特別措置の減税額と比べますと、非常に全体として整理合理化はあまりにも少ないというような気がするわけであります。これは整理合理化、特別措置の調整合理化というところで、平年度二十九億プラスとなっておりまして、合理化を行なわれたような感じでありますけれども、企業減税のところで、特別措置による減税が非常に多いわけでありますから、全体として差し引き調整合理化はあまり行なわれていないということになるわけでありますから、必要な特別措置はやはり、いま急にやめろとか、そういうことではありませんけれども、もっと整理すべき特別措置は整理する。役目を果たしたものは、それを既得権化しないで整理していくという姿勢が必要ではなかろうかと、こういうふうに存じます。
いろいろございますけれども、時間があれですから、一応私の話を終わりまして、あと御質問にお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/6
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007・徳永正利
○委員長(徳永正利君) どうもありがとうございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/7
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008・徳永正利
○委員長(徳永正利君) この際、委員の異動について報告いたします。
ただいま大谷贇雄君が委員を辞任され、その補欠として塩見俊二君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/8
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009・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 質疑ある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/9
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010・木村禧八郎
○木村禧八郎君 たいへん貴重な公述をしていただきまして、ありがとうございました。特に、給与所得控除につきましては、われわれそこまで、先生がおっしゃった点を十分掘り下げて考えておらなかったのです。むしろ逆に、政府のほうでは大体減税の額から逆算して、ああいう六十三万というものを逆にああいうふうに計算していったのじゃないかというふうに勘ぐっておったのですが、先生のお話で、非常にわれわれも再検討しなければならない有力な根拠を示唆されまして、ありがとうございました。
あの中で、先生は四つ、前のシャウプ勧告のときの勤労所得控除について、その理由として四つあげられました。その後、現実の問題としては、勤労所得は源泉徴収でありますから毎月引かれるわけですね。それで、ほかの申告納税は四期——三期ですか、分納しますので、金利負担の不公平も考えて給与所得控除をやるというような点もあるわけです。
この点は非常に貴重な御意見で、われわれも参考にしまして、今後考えてまいりたい。それで、お伺いいたしたい点は、ほかの委員の御質問もおありと思いますので、簡単に二点だけ伺いたいのです。
その一つは、公債発行下における減税の問題なんですが、公債を発行しながら減税するということ、これはどうもわれわれとして、理屈として割り切れませんし、実は財政法との関係もあると思うのですが、減税するぐらい余裕があるなら、公債を発行しなくたっていい。その分だけは公債発行して、その財源によって減税をするということは、これは財政法に違反すると思うのですけれども、しかし、政府は、違反しますから、直接関連させないで、財政法に触れないように、公債を発行するのは公共事業費の財源として公債を発行する。そこに余裕ができるから、その税収の余裕分をもって減税に充てると、こう説明するわけです。しかし、実際は私は財政法に違反するのじゃないかと思うのですが、その点もお伺いしたいのですが、それよりも問題なのは、今後公債発行下において減税していく場合に、従来は自然増収を大体減税の目安にしたわけです。今後自然増収というものは多く期待できない。しかし、政府は長期減税計画というものを発表しているわけです。内容は発表しないのですけれども、ただ構想だけは、長期にわたって減税するというのです。その場合の減税は、何を一体基準として減税をすべきか、国税、地方税の国民所得に対する負担率を目安にすべきかどうか、それから今後の先生の日本の税負担のあり方は一体どのように考えたらよろしいのかということが一点なんです。
もう一つは、物価問題との関係なんですけれども、これまでに質問して明らかになったのですが、二つ問題があるようなんです。一つはいわゆる物価調整の問題、税制調査会でも非常に問題になりまして、昭和三十八年の中山さんが会長のときに答申されましたが、物価調整、名目的な所得がふえるために累進課税がかかって増税になるから、それは実質減税じゃないから、物価調整として考えなければならぬ、ほんとうの減税の場合はそれを引いて考えなければならないという問題、その物価調整が問題で、政府は戦後最大の額の減税をしたしたと言いますけれども、そういう物価調整を考慮に入れてみますとそんなに大きな減税ではないということも問題になるわけです。
それからもう一つは、そういう物価調整と離れまして、政府が公共料金とか米価を次々引き上げていくわけですね。そうすると、国民の負担増加分を計算してみますと、われわれが要求して政府が出してきた資料によりましても、大体三千五百億円くらいになるのですね。たとえば米価、鉄道運賃、あるいは私鉄運賃とかですね、あるいは社会保険料の引き上げとか等々を計算しますと、三千五百億以上になるんです。そうしますと、減税とはいいますけれども、そういう公課公租的なものの負担ですか、健康保険料とか鉄道運賃とか私鉄運賃、これも独占的な料金引き上げですからね、実質的には一種の税金のようなものじゃないかと思うわけです。間接税の場合は、酒の税金が重くなったら二合晩酌をやっていたのを一合に減らせますけれども、国鉄運賃が上がった場合に、半分乗って半分歩くというわけにまいりませんしね。ですから、間接税以上にきびしい増税、実質的にはそう考えられる。片一方で名目的には所得税を減税して、他方でそれ以上のものを実質的にいまお話ししたような内容で増税しているということになりますと、差し引きずると増税みたいになって、家計から見ると減税の意味がなくなっちゃうと思うのですが、そういう点、われわれ減税を問題にする場合、どういうふうにこの点をとらえていくか。われわれ俗には、減税というけれども、実際は増税だ増税だと、こう言っておるわけです。先生の御専門の立場でこういう点はどういうふうに取り扱うべきか、その二点についてお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/10
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011・井手文雄
○参考人(井手文雄君) 最初のは、これは税負担率をどうとらえ、どう考えるか。適正負担率という問題ですか。まあ、これは、国民所得に対して国税と地方税を合わせまして二〇%の線がどうとかこうとかいうような議論がかつて行なわれました。これは理論的に実は、国民所得に対する税額の割合が何%をこえると重いとかいうことは、理論的にはなかなか出てこない。二五%説というのも一つ外国で学者が出している。しかし、それも必ずしもきめ手のある理論じゃないわけですから、マクロ的に国民所得に対する税負担の割合が何%以上になったからこれはもう重過ぎるんだとかいうことは、なかなかこれは理論的には言えないむずかしい問題だと思うのです。いろいろ問題があるわけでして、だから、まずマクロ的にはなかなかむずかしい。しかし、戦前と戦後の負担の割合を比べて、そうして戦前にはこうだった、ところが戦後においては国防費その他もないのにこうなっておる、だからその点から推して二〇%をこえれば重過ぎるということになるのじゃないかというような議論はある程度、まあ減税をいたしていく、野方図に負担が重くなっていくことをチェックする目安として言えるのじゃないか。理論的にはなかなかむずかしいのですけれども、戦前と戦後とのいろいろ事情を比べてみて、かりに戦前は二〇%以下であった、それならばせいぜい二〇%でやめるべきじゃなかろうか、それ以上に負担率が重くなったら減税すべきじゃないかというような議論のしかたというものは、ある程度有効であって、税負担がむやみにふえていくことをチェックする一つの方法であると思うのですが、税負担が重い軽いは、それとミクロ的といいますか、やはり年所得幾らまでのものが所得税であれば税金がかけられておるかという、企業につきましても家庭につきましても、個別的にいわば積み上げ方式的にその負担を調べていって、積み上げて、これは重過ぎるとかいう行き方のほうが、実際としては、考え方としては合理的じゃないかという気持ちは、マクロ的な総体として幾ら、何%という目安と、それから積み上げ方式的に企業や家庭について、実際にこれは課税最低限度といわれておるそういうものとの額とも関係しますけれども、実際にこういう税負担ではこの会社は重過ぎる、こうなっておるから重いのだ、企業課税においては、国税、地方税と合わせて所得の中で何十%以下であり、実際問題として現実のその国の経済状態や企業のあり方とも関係しますけれども、現実にこれじゃやっていけない、そういうことからの負担率をつきとめるということと、両方やはり見合って考えなければならぬじゃないか、こういうふうに思うのですが、御質問の趣旨はどういうあれでございましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/11
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012・木村禧八郎
○木村禧八郎君 その点も、それはもうそれで了承いたしました。けっこうでございますが、前は、公債発行以前は自然増収が減税の大体の目安になっていますね。今後公債発行する場合に、減税の財源のほうの目安の問題ですね、これはどういうふうに生かしたらいいか。財政法との関係をさっき申し上げましたが、あれ財政法からいうと、どうも違反になるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。これは理屈になるかもしれませんが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/12
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013・井手文雄
○参考人(井手文雄君) まあ、もとはなるほど自然増収がありましたから、それを財源として減税と予算規模拡大というふうにもつていったわけで、ですから、それを前提として自然増収の何%減税だというようなことを打ち出しておいて、今度は変わったわけでありますけれども、今度国民所得、これは事情が急変してそうなったわけでありますが、一方公債を発行しながら減税するのはおかしいというわけでありますけれども、また考えようによれば、当面景気刺激効果、これがそういうことを中心に予算を編成することはいいか悪いか別として、もしそういうことが目的であるとすれば、財政支出をふやすということによる所得造出効果と、それから同時に、やはり税負担は重いのですから、税負担が重いということは、これはだれしも認めるわけですから、減税する必要があると同時に、減税効果、減税による所得造出効果だけでは今日の景気、不況を克服することができないとなれば、予算規模の拡大も必要だ、そういうことから公債の発行ということになったと思うのでありますからして、その限りにおいては減税の必要性、それからフィスカルポリシー、景気補整的政策といいますか、その必要性ということ、この両面をにらんだ結果とすれば、公債を発行しつつもまた減税をするということも、公債を発行してでも減税をするということも、これはあながち否定さるべきじゃないという気もするのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/13
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014・木村禧八郎
○木村禧八郎君 議論になりますから、それはやめますが、私はいまの財政法は、その後の状況によって実情に合わない点が非常に出てきておることは認めるわけです。それならば、なぜ政府は財政法を改正してやらないか。財政法というものには減税のために公債発行していいなんという規定は一つもないわけです。減税財源のために公債発行してもいいなんということは——実質的には減税財源になるわけです、公債発行が。ですから、その政策のよし悪しは一応問題としましても、とにかく、そればかりじゃなく、いろいろな点において、いまの財政法ではまかなえない現実の問題がずいぶん出てきているわけですね。それをいろいろなわれわれからいえば曲解し、いろいろに曲げて解釈しちゃったりなんかして、財政法違反をしているのですよね。財政法をはっきり改正してやるならいいですよ。ところが、財政法が現に禁じておるものまでどんどんやっていくという点を私は問題にしたいのですけれども、これは議論になりますから、先生との議論でなく、政府のほうとの議論になりますから、これは一応あれして、もう一つお伺いしたいのは、物価との関係で質問したいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/14
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015・井手文雄
○参考人(井手文雄君) さっきの財政法のことも、ようございますか、一言だけ……。
これは確かにお説のような見解も出ると思いますけれども、また考えようによっては、公共事業費と結びつけると、公共事業費を幾らでもふやせば——また公共事業費の内容にもよります。公共事業費の内容が非常に広範だし、しかし、一応公共事業費を、たとえばいろいろに内容をふくらませ金額をふくらましても、公共事業費とリンクするという考え方で一応の歯どめということを政府は考えておられるのじゃないか。だから、全然あれを改正する、理論的にいうと改正して、政府さえしっかりしておればかまわぬと思うのですけれども、これはそうもいかぬでしょうから、やはりそれを残して、私はかつて、理論的にしっかりしておれば第四条というものは、ああいうフィスカルポリシーになれば黒字予算のこともあるし赤字予算のこともあるのだから、ああいう均衡財政主義というものを財政法で規定するということはおかしいということを言ったこともあるわけです。だから、第四条は撤廃すべしということをかつて言ったこともありますけれども、しかし、なるほど、それは政府自体のあり方に保証があればともかくも、そうでなければ、やはりある程度の歯どめは必要だとすれば、財政法四条を残しておいて、そして公共事業費とリンクさせる。いまおっしゃった御意見もありますけれども、リンクさせているということで、ある程度の歯どめということも考えられるから、歯どめ的効用は若干あるのじゃないかと、こういう気がしますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/15
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016・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ちょっと誤解があるといけませんから、その点ひとつ。
先生、私は、四条を公共事業費以外の財源調達のための公債発行ができるように改正しようという意見じゃないのです。そういう意見には、むしろ逆に反対でありまして、いまの財政法を守らなければいかぬと。ところが、公債を発行して、その余裕財源を減税に向けるということは、いまの四条からいえばそれはできないんだと、こういう私の意見なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/16
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017・井手文雄
○参考人(井手文雄君) そういう考え方もあるかと思いますけれども、それは考え方の違いじゃないかと思います。
それからもう一つ、確かにお説のとおり、減税と一口にいいましても、これは名目的減税と実質的減税というものがあるわけでして、物価騰貴の過程におきましては、何もしないでおれば、減税政策というものをとらなければ、貨幣価値低落の過程においては当然増税になるわけですからして、増税を防ぐという意味での調整的減税は最小限度しなければならない。そうしておいて、しかし、出発が重税で過重負担であれば、それを越えて実質的減税が実現する程度の大幅な減税というものが当然必要でありますからして、確かに、平年度三千億減税といいましても、それだけ税負担が軽くなるとは思わない、もし物価が何%かずつ騰貴していけば。あるいは実質的に若干ふえるかもわからない。それはやはりこの物価が——物価といっても卸売り物価とか家計にすぐ響く消費者物価、いろいろありますが、どういう種類の物価がほんとうにどれだげ騰貴して、そうしてわれわれの購買力が何%低落、消滅するかということをやはり客観的につかまえて、そうして減税額と比較して初めて、実質的減税であったか、あるいは単なる調整的な減税であったか、あるいは調整的減税も不十分であって実質的には若干増税になったかということが判明するわけで、われわれとしてもそういう検討は十分に行なわなければならぬ。相当むずかしいことでありますけれども、当然行なわなければならぬ。だから、三千億減税、三千億減税と言われましても、もちろんそれがそのまま実質的減税だというふうには当然とられないわけであります。当然消費者物価も何%かは騰貴するにきまっておりますからして、そういう意味においてはですね。ある意味においては、その物価政策が失敗すれば、この三千億減税は結果としては若干の、あるいは相当の実質的な税負担の過重の結果をもたらすということになるかもわからない。その点は十分に注意しなくてはならないし、当然税負担の問題を考える場合に避けることのできない問題だと思うのです。
それで、御質問はどういう……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/17
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018・木村禧八郎
○木村禧八郎君 もうけっこうです。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/18
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019・徳永正利
○委員長(徳永正利君) ほかにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/19
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020・成瀬幡治
○成瀬幡治君 一言だけ。木村委員も物価との関係で減税をやらなくちゃならぬじゃないかという趣旨を織り込んだことと思われるのですがね、質問は。これは先生のテーマには三法ということになっておりますが、実は、相続税もありますし、物品税も出てまいりますし、まあ物品税で今度は相当大幅な減税をするわけです。そうして通産省は、減税した分だけは物価を上げちゃいかぬということだけは言っておるわけです。そういう法律案と関係なしに、それでも消費者物価は上がってくるわけです。それから、卸は、政府は横ばい、横ばいと言っておりますが、若干上がりつつある。そういうふうなことを、私たちの立場でいえば、これは合理化等いろいろなことをされたのだから、もう少しその卸なんかは元来なら下がるべき性質のものである。もし下がらぬとするならば、それは企業の経営そのものが間違っておるかあるいは借り入れ金の金利負担、そういうようなことになってしまって、むちゃくちゃなことをやっちゃった。まあなっちゃったのだから、元来ならばそういうむちゃをやれば自己の責任において倒れていかなければならないのだが、それはまた社会的な不安もあるから、産業政策的な意味も織り込んでの税制政策ということもあろうと思いますけれども、そういう大づかみなことを、主として先生は物品税のあり方、物品税は根本的に戦時立法じゃないかという意味もあるのですから、いかぬということもあると思うが、若干奢侈的なものだけは残さなければならぬという意見もあるわけです。そういうような物品税についての考え方。もし基本的にこれを認めるということになれば、あまり問題はないと思いますけれども、否定するということになれば、いろいろな意見もあるわけでありますから、先生はどちらの立場か、その点はわかりませんけれども、一応そういうような点について基本的なお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/20
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021・井手文雄
○参考人(井手文雄君) まあ物品税は消費税と一応考えて、直接税か間接税かという問題もありますが、私は物品税について考えますと、まず、奢侈品の話が出ましたが、やはり何でもかんでも物品税はいかぬというのではなくして、徹底的な奢侈品に対する課税は、これは残しておいていいのじゃないかと思うわけです。まあ、ミンクのコートとか、買う者はだいぶ少ないかもしれませんけれども。だから、税収的に見てどれだけ寄与するかということだけからいうと、そんなものはたいして収入にならないから、やめておいていいということになるかもしれませんけれども、やはり公平原則からいえば、税収がどれだけ上がるとか減るとかいう、たとえば給与所得控除を引き上げれば税収がうんと減るということもありますから、そういうことから離れて、給与所得控除を上げるなら税収は減っても、やはり公平原則を一応貫いて考えて、同じ逆な理由で収入が上がらないかもしれないけれども、徹底的な奢侈品課税というものは、買う者もいるのですから、やはり負担公平原則から残しておいていいのじゃないか。
それから、物品税は大衆課税的な面もありますし、税率のアンバランスも相当あります。案外必需品的な、日用品的なものの税率が重くて、奢侈品的なものが軽かったり、いろいろしているのじゃないかと思いますので、そういう調整、内容の再検討は必要でありまして、そうして日用品的なものはできるだけ整理しつつ、相当の高級奢務品というものは残して置いていいのじゃないか。
それからまた、あれはなかなか転嫁の問題で、消費者にはたして行くのか行かないのかというような問題もあります。だから、減税して、その減税分が端的にまさに消費者のほうの軽減になるのかということも考えなければいけませんし、それからまた、といって、単に企業と家計と対立させてもいけないので、非常に零細な企業がつくっておる物品に対する課税もあるわけで、だから、物品税を必ず企業中心に考えてはいかぬといいますが、非常に零細な業者の物品ということになると、企業的立場から考えなければいけない。そうかというと、非常に大きな大企業の生産する物品もありますからして、非常に複雑でございます。
要するに、非常に高級品的なものは残しておいて、相当日用品的なものは整理する。そうして特に今日いろいろ奢侈品と日用品との間の税率などの矛盾もありますからして、再検討する。それから、凡百の物品を製造するといっても、いろいろな段階の企業が製造しておりますから、かなりそういう意味においては、単に家計的のみならず、一企業的な観点からも考慮するということも必要じゃないか、抽象的でありますけれども、大体こういうふうに私は思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/21
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022・塩見俊二
○塩見俊二君 だいぶ時間がたちましたから、簡単なお答えでけっこうでございますが、先ほどの給与所得の控除の問題につきましてお尋ねしておきたいと思います。
先生は給与所得を控除する根拠につきましては四つばかりおあげいただいたわけでありますが、全くそのとおりだと思います。それから、いまの状況から見ますと、その四つの中でも、やはり一体この給与生活者のいまの必要経費をどう見るか、またその把握率の問題、これが非常に大きな問題だと思います。日本の税法は御承知のとおり残酷な税法と申しますか、生活費は必要経費と見ない、こういうふうな原則に立っておるわけでございまして、したがって、給与所得者の必要経費は一体何であるか、ここから非常にむつかしい問題が生じてくるだろうと思います。あるいは物品費等の問題を考えましても、これはあるいは必要経費と見られるかもしれません。しかし、東京都の場合等におきましては、大体七、八〇%は会社持ちだというような実情もあり、なかなか必要経費の算定ということは、生活費を見ないというたてまえからしますると、非常にむつかしい問題だと思うわけでありまして、先生、これは一体何%ぐらいかということをお尋ねするのも答えの出ない問題かと思いまするが、どれくらいのウエートにそれを見るかというような問題、もしお聞きできるならと思うわけであります。
それから、私はやはり、先生からお話がありましたが、徴税技術の問題と税法上の公平の問題、これは悪循環になるというお説がありました。これはきわめてもっともだと思うわけでありますが、しかし、やはり負担の公平の原則ということは、税法上の公平と、また現実の徴税技術の現状というものを見て、その両方をかね合わせて負担の公平を実現していくということが必要じゃないかと思うわけでして、したがって、現在の給与所得の控除の問題は、やはり先ほどお話がありました各種の給与所得の実際の把握の状況というものをここで見て、やはりそのときどきの税法というものをつくっていかなければならないというふうに私は考えるわけであります。したがって、現在の状況では、むしろこの所得把握率の問題がこの給与所得の限界をきめる大きな一つの要素にならざるを得ないんじゃないか、こういうふうに考えます。
以上の点についてお教えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/22
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023・井手文雄
○参考人(井手文雄君) 給与所得者の必要経費といいますと、確かに困難な問題があるために、今日のような状態になっておるわけでございます。それで、必要経費は何%が妥当か。それから、後段のほうは、つまり必要経費じゃなくして、各種所得の捕捉度のアンバランス調整という要素が出てきている。確かにその点、給与所得控除制度は設けられております。シャウプ勧告以来ああいう問題が出てきて、それから次々に出てきました。税制調査会におきましても問題にしておりますけれども、その点が非常にあいまいになっておりますので、やはり私が申し上げたいのは、いまここではっきりと、給与所得控除というものは必要経費の概算的控除だけなのか、あるいは捕捉度のアンバランス調整という要素が入っているのか、あるいは調整的要素のほうが大部分であるのか、こういうような点を、この際もう少しいろいろ、まあ税制問題について検討すべきごとが確かにあるし、経済政策との関係からも税制問題というものがどうしても当面出てきますけれども、その背後に、もっとこういうような、じみだけれども、税制の基本になるような、しかも、じみでありますけれども、一般国民納税者大多数の大きなウエートを占める給与所得者階層の税負担の問題でありますから、こういう問題をもう少し真剣に取り上げて、その本質を究明し、またその正しいあり方をひとつ出していただきたい、こういうことを申し上げたい。
ですから、もし負担のアンバランスということの調整が給与所得控除のあり方だということであれば、なるほど課税最低限度額に給与所得控除額を構成項目として認めるということは許されるわけです。そのかわりに、給与所得控除については完全に必要経費は認めないというたてまえになる。それでいいかどうかということ、そういう点をもう少しみんなで検討する必要があるのじゃなかろうかというつもりで申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/23
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024・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 他に御質疑もなければ、参考人の意見聴取はこれをもって終了いたします。
井手参考人におかれましては、きょうは公私ともに御多用中のところ、長時間にわたりまして本委員会のために貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げる次第で、ございます。午後一時より委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。
午後零時一分休憩
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午後一時四十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/24
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025・徳永正利
○委員長(徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。
それでは、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/25
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026・木村禧八郎
○木村禧八郎君 前回、大蔵大臣に、公債発行下の税制につきまして質問したんですが、大蔵大臣は、その重点の一つは、大幅減税をして個人及び企業の蓄積をふやすということが一つのあり方であるというお話であったんです。そこで、これまで政府は、公債発行と関連して長期減税構想というものをたびたび言われているわけです。ところが、まだ、予算委員会の審議の過程でも、またこの大蔵委員会の審議の過程でも、政府の長期減税構想について具体的な考え方が発表されていないわけです。したがって、この長期減税構想というものはどういうものであるか。そうして従来は自然増収が大体減税の範囲になっておった。今後自然増収というものはあまり期待できない。そういうもとで減税をする場合、何をめどにして減税をしていくのか。そういうことも含めて、具体的に長期減税構想ないしは長期減税計画というものを政府がお持ちでなければなりませんし、たびたび言われているのですから、それを明らかにしていただきたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/26
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027・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 長期減税構想はこれから具体化していこうと思うのです。アイデアとしては、私はかねて申し上げておりますように、企業にも家庭にも蓄積をせしめたい、こういうふうに思うわけです。そういう考え方に従いまして、これから精力的に減税という方向を目ざして諸施策を考えていこうと思います。
それで、その中身につきましては、個人につきましても、あるいは法人につきましても、一つの適正な税率、これを策定しまして、それに向かって努力を積み重ねていく、こういうふうにいたしたい考えです。
で、大体の見通しとしますと、昭和四十二年、三年という年は、非常にそれの実現がむずかしい年であります。その後になりますると、幾らか財政は楽になる。その楽になるか苦しいかというポイントなんですが、それは結局、ここ数年間は公債を出していく。その公債の財源——公債を出していく対象としましては、公共的な事業、こういうものを考えておるわけであります。
それで、一方、そういう際には経常行政費ですね、これは経常財源でまかなう、こういうたてまえになる。それで、自然増収が相当期待できると思います。その自然増収が出るに従いまして、経常支出のほうが楽になる。で、そこにプラスアルファというか、ゆとりが出てくるわけです。その額が公債の発行額を消していくような形になります。そういう過程におきまして、私どもがいま公債政策下において一つの大きなねらいとしておるこの企業及び個人の蓄積、そのほうに幾ばくをさき得るか、こういうことがその時点時点における具体的な減税政策というものを決定するということになると思います。しかし、目標は長期構想としてこれを策定して、それをそういう申し上げたような各年度の財政需要というものとにらみ合わせながら実現する、こういう形になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/27
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028・木村禧八郎
○木村禧八郎君 長期構想という場合ですね、何をめどにして減税をしていくのか。従来は、税制調査会の答申などでは、国民所得の大体二〇%程度、これは国税、地方税を合わせましてその程度までに税負担を軽減する、一時は二〇%を上回りましたけれども、これが一つの目安になったわけですね。その次には、これは経済情勢も変化したものですから、今度自然増収の何%——二〇%ですか、そこにめどを置いておるのですね。ところが、今度は、長期減税構想をお出しになりましたが、めどがはっきりしないわけですね。前は自然増収というものの何%あるいは国民所得の何%というめどがあったのですが、今後はそのときの財政需要に応じて、そうして適正税率というものをこれから勘案してやっていく。その適正税率というのは一体、何をめどにして適正税率というのか、これがどうもはっきりしないわけですよ。たとえば戦前の昭和九−十一年平均の税負担は、国税、地方税を合わせまして一二%余、一二・九%ですかだと思いますね。そういう戦前の国民所得に対する税負担率に近づけていこうとしているのか、その点がどうもはっきりしない。
それからもう一つは、四十二年、四十三年は財源的にかなり苦しいと言われましたが、つまり、いわゆる低圧経済のもとでは自然増収が見込まれないというふうなことだと思うのです。そうすると、四十一年度のような減税は困難ということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/28
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029・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/29
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030・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それでは、その前の——四十一年度のようないわゆる大幅減税は、四十二年、三年は困難だ、その点についてはそのとおりだということですが、その前の質問に対してのお答えですよ。長期減税構想という場合に、また減税計画という場合に何をめどにしていくか。どうも適正税率といいましても、それが何が適正なのか、はっきりわからないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/30
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031・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 国民所得に対するパーセンテージ二〇%ということは、かつて一つの目標とされたことがありますね。これは私は一つの常ににらんでおかなければならぬ目安だとは思います。思いますが、しかし、これは絶対的なものであるかどうかというと、私はそれは疑問がある、こういうふうに考えるわけです。つまり、国民所得の二〇%に税負担をとどめるといいますが、その内容だろうと思うのです。経済が大いに繁栄して国民全体の負担力が大きい、こういう際に、まあ所得税でいえば足切りというか、課税最低限を引き上げる。そうして少数の所得税納税者が所得税負担というものが課せられる。それがそういうような状態を考えるときに、同じ国民所得全体に対するパーセンテージ、この議論ばかりでいくことがはたして適正であるかどうか、私はそれは問題があると思う。だから、税の内容というものが非常に大きくものをいうのだ。
それから、自然増収の何%という考え方ですね、少しこれは私はかた過ぎると思うのです。もう少し弾力的に考えたらいい。私は税制というものはその内容が非常に大事である。つまり、私は常々申し上げているのですが、所得税については課税最低限を一体どこへ持っていくか、これが当面としては非常に大事な問題です。それから、低い階層の税率をどういうふうに調整していくか、これも問題だと思う。そういうここ数ヵ年度において考えられます理想的な税の体系、税率、そういうものはどうあるべきかということを判断しまして、かたがたその自然増収の状況、また国民所得に対する全体のかかり方がどんなパーセントに動くであろうか、そういうのも横に見詰めながらいくという考え方がいいのじゃないか、そういうふうに思うわけであります。
いずれにいたしましても、それらの長期的に見てのある時点における理想的な税体系というものはどういうふうにあるべきかということを、税制調査会にもおはかりして、今後のひとつ租税政策の目標というものをつくり上げていきたい、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/31
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032・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それはわかったのですが、今後のいわゆる税体系ですか、その内容としましては、最低課税限とか、それから低所得者層の最低税率ですか、最低限税率をどうする、こういう内容はもちろん重要であると思うのですけれども、私たちの聞きたいことは、今度本格的な公債政策を導入して、それでこの二、三年はかなり巨額な公債を発行するわけなんですが、七千億をこえる、その場合の公債発行と減税との関係なんですね。前に政府は、特に大蔵大臣は、長期の財政計画というものはやはり必要だということを言われたわけです。この長期の財政計画というものを、これはもうどうしてもつくる必要がありますし、つくらなければいけないと思うのです。それと関連して、長期の民間の資金をも包含した全体の総合的資金計画ですね、これもどうしてもおつくりになる必要があるし、前につくられるというようなお話もあったのですが、そうした観点からの質問なんです。今後この程度に財政規模を持っていきたい——大蔵大臣は財政規模というのは非常に重要であるということを強調されておる。私もそうだと思うのです。それはやはり明らかにしないと、財政規模と公債発行と減税というこの三つ、これは総合的に考えなければならぬものだと思うのです。そういう点から質問しているわけなんです。長期減税構想というのは、いま内容としてはこれもどうもばく然としてよく——適正税率というのはどうだ、適正な課税最低限というのはどういうものか、これもまたあとで具体的に質問したいと思うのですが、私はそういういまお話ししたような点から伺っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/32
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033・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私も、いま木村さんのお話のように、長期にわたって財政を一体どういうふうに運営していくかということについて、できる限り構想を得たいと思っているのです。ただ、これを数字的に言っていくことは非常にむずかしい。誤解を受けるようなところもありましょうし、またその前提条件としてはいろいろな前提というものを想定しなければならぬ。その前提というものは、はたしてその前提のとおりに動くかどうか、一番大きな問題は今後の経済の実勢が一体どういうふうに動くか、こういう問題であります。それはもう何人もそう的確に予想することはできない。私は私なりにその一つの見通しを持っています。持っていますけれども、それが数字にこう表現できて、あとでこれはそのとおりいっていないじゃないかと言われても困るようなふうにも私は思うわけです。そういうようなことで、大体の経済の動き方についてもある程度の認識は持っておるわけなんでありまするが、これを具体的な数字で表現するということになると、いろいろ問題がある。その数字の上にみんな今度は、財政の規模にいたしましても、減税にいたしましても、あるいは租税収入の額にいたしましても、乗っていくのですから、今度はさらに不確定要因というものが出てくるわけであります。その前提の取りぐあいによりまして、その答えというものも無数の答えが出てくるわけです。そういうようなものを御披露申し上げても、これはいたずらに誤解を招くようなことになりゃしないか、そういうふうにも考えまして、数字で申し上げることは私は差し控えておるわけです。
ただ、私が申し上げておりますのは、この三年間は一応低圧経済だ、そういうタイプの経済情勢であろうと、こういうふうに見通しておるわけです。そういうもとにおいては、財政のウエートがやはり高くならざるを得ない。そういうもとにおいて自然増収は一体どうだというと、そう多くを期待することはできない。したがって、現在の形の財政、四十一年度の形の財政、公債依存の財政、これはその依存度が四十一年に比べましてやや高くなるように思う。四十四年度、五年度、このころになると、それがだんだんと、依存度という面から見まして過渡期になってくるのじゃあるまいか、そういうふうに見るわけです。前提条件の取り方によりまするが、前提の取り方いかんによっては、四年度、五年度、六年度、七年度、このころになりますると、公債の依存度というものが非常に減ってくる、こういうふうに見ておるわけでありまするが、それもただいま申し上げましたように、前提が一本どういうふうに動くか、経済がどういうふうに変わっていくか、こういうことに多く影響される問題でありますので、数字で申し上げるということだけは私は差し控えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/33
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034・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうしますと、公債依存度が四十二年、四十三年は四十一年度よりは低圧経済であるために高くなるというお話ですが、具体的には、たとえば四十一年度七千三百億の公債を発行しますね。そのうち余裕が出る分を、減税に二千億くらいですか四十一年は充てますね。それが四十二年は七千三百億あるいはそれより公債を多く発行するかもしれませんね、公共事業費が多くなると。そのうち減税には四十一年度ほどあまり向けない、あるいは全然減税はないかもしれない、まるまる歳出のほうに向けてしまう、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/34
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035・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 公債は、四十二年度になると四十一年度と異なりまして、減税との関連が非常に稀薄になるわけですね。四十一年度は、あなたがしばしば指摘されるように、減税と国債との関係がきわめて濃厚ですね。直接じゃないけれども、濃厚な関係がある。四十二年になると、ちょっと違うのです。四十二年になりますると、今度は自然増収がどういう額になるか、それから経常行政費ですね、これがどういう方向でふえるか、どういう幅になるか、これが減税の可能額を決定することになると思うんです。ですから、公債を発行してそれが減税の財源になるというのではなくて、主として自然増収が一体どういうふうになっていくかということが減税の問題と大きくひっからまってくる、こういうふうに考えているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/35
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036・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ややはっきりしてきましたが、そうしますと、今後の長期減税構想あるいは減税計画はやはり自然増収というものが一つの目安になっているんですか。それと、さっき言われたように、もちろん減税の額だけではなく内容ですね、税体系というものも問題だと言われた、そこのところをまず伺いたいんです。やはり自然増収というものが減税を、長期減税構想を実現するためにはやっぱり自然増収というものが前提になるというお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/36
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037・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 自然増収とそれから公共的事業費以外の一般の行政費がどういう幅でふえるか、この二つが減税の額をきめていく大きな要因になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/37
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038・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それでは、第二のほうの内容なんですけれども、いわゆる税体系のほうなんですが、最低課税限ですか、税率ですね、これについては具体的にどういうような、つまりまあ最低課税限ですね、課税最低限、四十一年度でしたら夫婦・子供三人で六十一万円ですね。そういういわゆる免税点ですか、それをどの辺にするかということと、それから税率というものが長期減税構想の内容としては中身として重要であるということを言われたんですが、その中身をもう少し伺いたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/38
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039・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私がただいま申し上げました減税を決定する、減税の幅を決定する要因というものは自然増収が一つだと、それからもう一つは歳出のほうなんです。歳出のほうの公共事業費以外の一般行政費がどういうふうにふくれていくか、この二つが減税の幅を決定すると、こういうふうにまあ申し上げておるわけなんです。その幅を見ながら目標に、その年度年度のその幅に従いまして減税政策を実行していくと、こういうまあことになると思うということを申し上げているわけです。ちょっと木村さんのお話は飛躍して、今度は減税の最終目標という議論になってこられておりますが、そのとおりですね。
で、その目標としては、私は数年間これは非常に流動的に考えていますから、数年間といいますが、数年間において実現すべき租税体系の理想タイプは一体どうなんだということを、こういうことを考えてみたいと思っています。その場合に課税最低限を幾らに持っていくというふうにするか、また最低税率その他低所得者階層に対する税率をどうするか、こういう問題、それから法人税につきましても、まあ配当軽課なんという制度もありますが、そういうものも含めまして一体どの程度の税率が適当であるか、どの程度をもって目標とすべきかというようなものを考えていきたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/39
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040・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それはわかりましたが、それでは、すでに税制調査会で今後かなり長期にわたる日本の税制のあり方について答申されておるのですね。あの税制調査会の答申はどうなるんですか。もうすでにそういう長期構想というものがあの中に答申されておるのです。それとかなりいま大蔵大臣が言われたのと違ってくるのか。もちろん、あの答申は、四十一年度から本格的な公債政策を導入しましたが、そういう条件のないもとでの答申なんです。ですから、勢い変わってはくると思うのですけれどもね、あの答申は。どうなんですか。政府はあれは尊重すると言っておりましたし、あの中では、特にたびたび衆議院でも問題になり、私も質問いたしましたが、利子、配当とか、そういう特別措置について非常にはっきりした答申を出しております。あの答申との関係はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/40
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041・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 答申は、私は、公債が発行されるようになりましても、その基本においてそう修正を加える必要はない、こういうふうに考えております。ですから、あれが一つの基本になると思います。しかし、その後経済情勢も動いてきております。そういうようなことも考えながら、もう少し具体的に、税制というものは理想的にはどうあるべきか、ことに私が公債を発行するそのねらいというものは、企業や家庭に蓄積をとるということをまあ考えておるわけです。そういう考え方はいままでよりは非常に強く私は出ておる考え方だと思うのです。そういうものも含めながら具体的な目標というものを策定していこう、これがこれから税制調査会にお願いをする長期構想の目標いかんと、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/41
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042・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それから、政府は所得倍増計画に次いで中期計済計画をつくりましたが、これが実情に合わなくなって、そこで次にまた長期計画というものをこれから策定していくというようになっております。この長期計画は、大蔵大臣がしばしば言われますように、今後の日本経済が低圧経済が続くと、つまり大蔵大臣の説明によれば民間の設備投資があまり活発に起こらぬと、こういうことが原因になって成長率もあまり伸びない、こういうのが低圧経済であろうというのですが、そこで財政のウエートが非常に大きくなる、こういう御議論のようです。そうすると、今後長期計画、全体の長期計画を立てる場合、財政のあり方というものが非常に従来よりこれはウエートが大きくなると思うのです。これはただ財政というだけの立場でなく全体の今後中期計画にかわる長期計画を立てるという場合の構想は、財政のウエートが非常に大きくなりますので、そういう点から今後の長期計画というものについて大蔵大臣はどう考えておられるのか、またそれをどういうふうに財政を位置づけるかということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/42
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043・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 今後の長期計画策定という問題は、御承知のように、中期計画がこれは御破算になって、まあ新しいスタートをしよう。その新しいスタートをしようというゆえんのものは、中期計画をつくってから、国際収支の面なんかで非常な変化が起こってきておるわけですね。それからもう一つは、財政面で公債発行というような事態になってきておる。そういうようなことで、全体としての計画を練り直す必要がある、こういう判断に基づくわけなん、でございます。
それで、その際に一体財政の位置づけをどうするかと、こういうお尋ねでございますが、私は、今後の長期計画におきましては、いままでと違いまして、財政が非常に積極的な役割りを講ずる、こういうふうに判断をいたしております。いままでは何といっても、あの企画庁で策定します国民経済計画を見ましても、設備投資というのが一番パーセンテージにしても高いわけです。それが一変して、昭和四十一年度では財政の財貨・サービス需要、これが一番高い率を占めるようになり、設備投資は転落いたしまして一五%というような状態になってきております。私はこの一、二年はそういうタイプであろうと思いますが、いわゆるデフレギャップもある程度その間には詰まってくる。そのあとにおきましては、一五%という比率がおそらくもう少し今度上がってくる。設備投資活動というものも出てくると思います。しかし、それにいたしましても、財政の経済全体の中で占める位置というものは、従来、つまり昭和三十年代のような状態ではない、こういうふうに判断するわけです。それがまた私は好ましいんだと。
それは、社会資本の立ちおくれという問題にわが国は当面いたしております。それから、各種の地域間の格差、あるいは業種間の格差、いろいろな格差問題に当面しております。そういう格差是正というようなこともしなければならない。これは財政の任務であります。それらを考えまするときに、財政の比重というものは三十年代と違った重みを持ってくる、こういうふうに見ているわけです。
しかし、その重みを実現するその年々の財政の働き、それは民間の経済需要の動きによって調節をとっていかなければならない、こういうふうに見ております。したがって、ここしばらくの間は公債政策のもとに運営されますが、その公債の額なんかも、そのときどきの経済情勢に従いまして、これは調節をしなければならないことである、こういうふうに考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、財政が長期計画を立てる場合において今度は主導的な地位を占める、これだけは私は確実なことであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/43
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044・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大体、長期計画の構想はわかりましたが、それと同時に、私は低圧経済のもとでは個人消費のウエート、これをもっと私は大きく見るべきではないかと思うのですけれども、設備投資の役割りは高度経済成長のもとで非常に大きく果たされたと思うので、それが設備過剰で行き過ぎて、今度それにかわって、設備投資にかわって経済成長を推進する力としては財政だけじゃないと思うのです。財政と、それから個人消費と、それと輸出もありますが、しかし、輸出のウエートは財政、個人消費ほど大きくないと思うのですけれども、どうも財政の役割りはかなり大蔵大臣は大きく見ております。それもよくわかるのです、御説明は。それと同時に、個人消費のほうのウエートをどうも私は少し小さく見ているように思うのです。大体、四十一年度は総需要の中で四八%くらいじゃないかと思う。四八%というのは少しウエートが小さ過ぎる。戦前は六〇%を上回る。諸外国では六〇%を上回っているように聞いているのですが、ですから、大体これを六〇%くらいにしていく必要があるんじゃないかと思うのです。ことに設備過剰の問題を解決するには、デフレギャップですね、総生産ではかりますと五二%くらいですね、しかし、総需要ではかると、その中には輸入が入るわけですが、四八%くらいです。それは少し低過ぎると思うので、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/44
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045・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 国民経済総活動の中で個人消費をどう位置づけをするか、これは非常にむずかしい問題だと思います。それで、大きく言えることは、つまりわが日本で生産されるものは一体どういうほうに費消されるか。国民消費に五二、三%は使われてきておるわけですね。それから、政府が公共事業等によって使うもの、これは政府といっても、政府諸機関であるし、地方団体も含めての話ですが、それが二三%、次いで大きい配分というか、それは設備投資一五%、あと小さい要因として民間の住民建設とかあるいは輸出入の差額というような要因になりますが、大きなシェアというのは国民が消費するもの、政府が消費するもの、民間設備活動が消費するもの、この三つだと思います。その配分を一体どうするかという問題。私は一番力を入れていかなければならないのはこの政府の活動だ、こういうふうに思うのです。
なぜそう考えるかというと、これは社会資本、つまり、われわれの生活というものはわれわれの家庭の生活だけが生活じゃない。と同時に、われわれは家庭を営むと同時に、われわれは所得の何がしかを貯蓄をして、そうして共同の家計を営んでおる、これは国家ですよ。国家経営です。これが共同の家計として道ができ、水道、下水道ができ、あるいは交通機関ができ、あるいは共同の住宅ができていく、こういうことになっていくわけです。そういう面が非常におくれておる。むしろ民間の投資活動がちょっとここでバランスを失して出過ぎておる。私はそういう大きな見地からいうと、国家の仕事のシェアというものを大きくしなければならない、共同の生活というものにもう少しわれわれは着目する必要がある。これが充実すれば、われわれの狭い意味の家計が少し狭くなっても、決してびくともする必要がないと思うのです。そういう面において考えてみなければならぬ問題である、こういうふうに思うのですが、そういう国家の活動、つまりわれわれの共同生活設計というものがおくれておる、そういうことを考えた場合に、どこを一体押えるのか。限られた経済能力ですから、しかも押える部分というのは個人の生活かあるいは産業の投資活動か、この二つになる。そのいずれを押えていくかということが非常にむずかしいことだと思うのですが、やはり個人の——私が生産活動を盛んにするゆえんのものは何かというと、われわれの生活環境を整えるということにありとすれば、個人のほうを押えるというのはいかがであるか、こういうふうに思うので、やはり現実の問題とすると、この数年間に設備活動のほうが少し出過ぎておる、これを押える。つまり、これを一五%ぐらいに見るという四十一年度の行き方は適切な行き方であると考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/45
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046・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 委員の異動について御報告いたします。
林屋亀次郎君が辞任をされ、その補欠として任田新治君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/46
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047・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これは大蔵大臣、四十一年の景気対策に非常に関連してくるのですが、この点は大蔵大臣の考え方はわかるのですけれども、これは公共投資に、社会開発に重点を置かれるということになっておりますが、やはりどこの国を見ても、歳出の二〇%以上も公共事業費に予算をさいているというところはないですよ。今度二〇%以上になると思いますね、公共事業費が全体の歳出の。いままでは一八%ぐらいでしたね。どこだって大体一〇%以下だと思うのですよ、よその国を見ましても。日本は社会資本の開発が立ちおくれたというので、非常に重点を置いたと思うのですよ。しかし、そんなに予算の中で占めるウエートが大きくありながら、また立ちおくれたということを言われておるのですね。しかし、それは民間の会社はシェアの拡大競争でどんどんどんどん設備を拡張しますね。そうした行き過ぎた設備に対応する産業道路をつくったり、その公共投資をやったりする、そういう面があるのじゃないかと思うのですよ。だから、設備過剰ということを前提として、それに対応した公共投資ですからね、まず過剰の投資のほうを調整しないと——過剰の投資のほうはいままで野放しだったのです。どんどん投資させて、拡大させておいて、そうしてそれは対応した公共投資をやるでしょう。それであとになって、これが設備過剰だということになるのですね。ですから、そういう過剰投資に見合った公共投資というものは、これは私は非常にそこにむだがあるんじゃないかというふうに思うのですよ。
ですから、今後の日本の財政は、財政のウエートが非常に大きくなる、そうして支出面から見るとやはり公共投資ですね、公共事業費が非常に大きくウエートを持っておる、こういう形だと思うのですよ。そういう場合に、民間のほうの設備投資のほうを、これを調整しないで、設備投資のほうは野放しにしておいて、そして設備がどんどんふえてきたら、それに対応して産業道路をつくる、あるいは工業用水つくったって、非常に無計画的になるような気がするのですね。その点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/47
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048・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) それはそのとおりなんで、それだからこそ、従来二二、三%のウエートを占めておった民間の設備投資活動、これが一五%というところへ転落していくわけなんです。まずそこに押えられるというか、そこへ引っ込むわけです。
それで、私は、とにかく一番おくれているのは国家のやるべき社会開発投資、つまりわれわれの生活の共同部面ですね、これがおくれている。で、それをふやさなければならぬ、そういう時期でありまするから、まあそのしわはどこに行くかというと、これは行き過ぎになっている産業設備活動に行くんだ、これは私は当然だと思う。しかし、この限られた経済力の中で、生活がそれだけまた伸ばし得るかというと、やはりそれよりも私は国家の共同活動のほうがおくれておる、そういうふうに思いますので、まあ生活のほうの問題は国民所得の伸びのような状態で推移するというふうにして、まずとにかく設備活動の落ち込む部分は国家財政がこれを引き受けてやっていく、このタイプが今後しばらくの間必要じゃないか、そういうふうに判断をしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/48
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049・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それはわかるのですけれども、われわれの立場と政府の立場といいますか、この設備過剰による不況の状態のもとでの対策についての考え方ですね、まあ対策のウエートの置き方ですか、そこの相違がかなりはっきりいま出てきているのですが、われわれは、もう非常に政府は公共事業費中心の不況対策になっているのですが、それでは話が全面的、全体的な総合的な経済バランスのとれた不況対策にならないと思う。非常に跛行的な不況対策になるのであって、公共投資の増加を否定するわけじゃないのですが、それに劣らずやはり個人消費のウエートをもっと大きく見るべきだ、こう思うのですね。
これは税制の面からも、特段にそういう面に私はウエートを置くべきではなかったかと思うのですよ。ですから、四十一年度の減税でも、企業の蓄積をこれ以上促進するような税制改正は、ここのところ足踏みをしているのですよね。むしろ最終消費、個人消費をふやすような税制改正、減税をすべきである。それから、社会保障費をふやせば、政府が社会保障をやってくれれば、無理して社会保障が不十分なために貯金している分が購買力に回りますからね。物を買い足しますから、そこで国民消費がふえてくる、こういう私たちの着想なんですけれどもね。そのウエートの置き方が違うのです。これは議論になりますから、御答弁は要りません。ほかの方の御質問もあると思いますから……。
最後に、今度は具体的に伺っておきたいのです。あまり質問する機会もないと思いますが、ここで、いままで質問してはっきりしていない点がまだ残されていますので、この点伺いたいのですけれども、一つは、これはきょう、先ほど横浜大学の井手教授から公述を受けまして、われわれちょっと不勉強であった点が指摘されたのですが、給与所得控除の中に、たとえば四十一年、夫婦・子供三人で六十三万円になるのですね。この六十三万円の計算の中に、六十三万円の最低課税の計算の中に、給与所得控除が入っている、しかし、これは含めるべきではないという御意見なんですよ。ですから、この給与所得控除を引くと、これは六十三万円の最低課税限よりはずっと低くなるのですね。これは非常に重大な指摘だと思うのです。もし井手教授の説が、お考えが正しいことになると、この給与所得控除のほうは、これは上積みされなければならないのですね、最低課税限に。その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/49
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050・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 給与所得控除の根拠あるいは計算方法についての御質疑だと思いますので、私からお答え申し上げたいと思います。
私も、途中でございましたが、井手教授がお話しになりました点は、おそらく給与所得控除の中には費用の部分がありはしないか、それは所得ではないのではないか、したがって、課税最低限を費用であるところの給与所得控除を込めて六十三万円といっておるのは高めに出ておるのではないか、というようなことが一つの根拠になっているのではないかと思うのでございます。
もう木村先生も御存じのように、給与所得控除がなぜあるかという点につきましては、各種の考え方があると思いますが、私は、最も給与所得控除につきまして重要な支配的な根拠は、やはり何と申しましても、給与所得というものが一身専属的なものであり、資産と労働との共同の所得であります営業所得とも違い、さらにまた資産そのものの所得のこれとも違いまして、担税力は弱い。こういった担税力の減殺要因から来ておることが最も大きな理由だと思います。第二には、先ほど来お話も出ておりました先払いの点の利子による不利益を減殺をする、これも第二の要素でございます。
第三は、これは現実問題といたしまして、何といってもガラス張りの給与所得、経費として当然事業収益から控除される給与の支払いでございますので、比較的税務署に——比較的と申しますか、完全に経費として主張されるためには、税務署にもガラス張りになり、源泉所得税に適用される、こういったことから、その他の所得と違いまして、なかなか正確につかまえられる、そのあたりが税務執行の現状から問題がございますが、担税力が違わないか、これが第三の理由でございます。
それから、第四の理由が、先ほど申されました一つの費用が含まれる。確かに費用もあろうかと思います。私どもが役所に通い、または給与所得者が会社に勤務する場合の、たとえば洋服、ネクタイ、くつ、これらの減価償却費が費用として考えられるのではないか、これが一つの理由でございましょう。私ども計算もいたしておりますが、こういった費用はほとんど、計算しましても、十八万円という最高限度がございますし、定額の給与所得控除の四万円もございますが、こういった減価償却費は金額といたしまして幾らにもならないのでございます。
さらにまた、もう一つ、先ほどもお話ございましたたとえば通勤費、これも一つの収入でございますが、同時に、完全なる個人消費でなくして勤務地に通うまでの一つの費用であって、雇い主のために支出せざるを得ない費用であるということで、これは別途に、税与所得控除のほかに費用といたしまして控除されております。さらにまた、特殊な制服を着る方々につきまして、あるいはまた雇い主の都合で特定な場所に住まなければならぬ者につきましては、住宅が提供されましても、これは費用といたしまして給与所得控除と別に控除されております。
それを考えますと、厳密にいえば、ただいま申されたような費用の部分が入っておるということは間違いございませんけれども、その部分は評価いたしますと幾らにもならない。むしろ、やはり給与所得控除を考えまして、一番大きなものは先ほど申しました担税力の相違に基づく所得控除、この理論が中心となっている、こういうふうに考えていただきたいと思います。さらにまた、営業所得者につきましても、同じような家計と共同に使われるせびろとかくつのあることは御存じのとおりでありますが、これは別に費用としては引かないということにいたしております。そんなような関係で、一つの指摘される要素としてはございますけれども、金額といたしますれば幾らにもならない、こういうふうなことが言えると、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/50
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051・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これはまたあとでいろいろ伺いたい点があるのですけれども、次に、これは前から問題になっているのですけれども、私あまりこだわり過ぎると言われるかもしれませんが、配偶者控除なんですよ。これはどうしてこだわるかというと、前に、大蔵大臣御存じないかもしれませんが、田中大蔵大臣のときに、税制調査会でもこれは基礎控除と同額にせよという答申が一時あったのです。それに基づいて田中大蔵大臣も、この次に減税の余裕があったら必ず同額にすると約束したのですよ。ところが、その後の税制調査会の答申では必ずしも同額にせよという答申ではなかった、それをたてにとって、田中さんはまた一万円差をつけてしまった。昭和三十六年に同額になったのですね。いままでは扶養控除というのを、配偶者控除という名前を新しく設けまして、そうして妻の座を引き上げるというので、同額にするということにして、三十六年だけはそうなった。その後ずっと一万円差がついてしまった。
これは小さい問題のようですけれども、この前私は、野党と与党とのいままでの予算あるいは税制に対する審議、また意見の相違の場合、だれが見てもほんとうに納得されて、当然これは実現すべきものであるという場合、また財源的にも可能な場合には、政府がこれを修正するにやぶさかでないくらいの態度をとってこれを実現させませんと、もうオール・オア・ナッシングになってしまう、全部反対かということになってしまう、その一つの私はきっかけとして、だれが見たってもうあたりまえじゃないかという問題を一つ選び出して、そうして要求したのです。こんなわかり切ったことさえも政府は認めないということの標本として、一つ前に提起したのですがね。いかがでしょうか。これはもう少し前向きな形で考えられたらどうかと思うのですが、来年度すぐできなければ、もう少し研究されて、アメリカあるいは西独みたいな二分二乗式というのですか、そういうようなやり方もあるのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/51
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052・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 妻の座につきまして木村先生が非常に熱心な議論を展開されたことは、よく承知しております。税制改正の過程におきましても、木村先生がいろいろ御提案があるということも論議をされまして、積極的な反対はございません。結局、諸控除を引き上げるということにいたしましても、財源の問題なんです。それで、不均衡是正までいけるかいけないか、こういうところで、そこまでいけない、つまりそこまで金が回らない、こういうので見送りになったのですが、先ほど申し上げましたこれからの税制の問題として、内部では、この問題は優先的に取り上げなければならぬ一つの問題だと。その場合に控除額のバランスを回復するという方法がいいか、あるいはいまお話しのような二分二乗というようなところまで積極的にやるがいいか、いろいろ方法があろうが、ともかく次の段階で取り上げなければならぬ、こういういきさつなんです。財源の関係でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/52
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053・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 私からもひとつ要望しておきますが、これは寡婦ばかりでなしに、並列的には老人控除、不具廃疾者控除がからんでいる。これはぜひひとつ真剣に御検討願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/53
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054・木村禧八郎
○木村禧八郎君 財源はこの前、約百億だったのです。これは予備費から出しなさいと。予備費から出し得たのですよ。われわれの考えでは、出し得たと思ったのです。財源がなかったわけではないのです。そういういきさつです。
それじゃ、いま大蔵大臣が前向きで考慮されていくということですから、次に償還計画ですね、公債の。あれ、最後に、一体締めくくり的に、大蔵大臣、どういうふうにされますか。それはわれわれ理屈をいえば切りがないと思いますよ。確かにいまの政府予算総則に書いてある程度では、われわれは財政法で言うところの特定銘柄に対する償還計画でないことは、大蔵大臣もよくおわかりのことですよ。最後に、締めくくり的に、償還計画についてどうするかを伺いたい。
一般には、普通常識的に、借金したとき、その返済計画をきちんと立てないで借金するのはおかしいじゃないかと考える、それは常識なんです。これから巨額な公債の発行をするのですから、償還計画がはっきりしていない、この点については非常な疑念を持たれますし、また公債の信用にも関することになると思うのです。ですから、これはこの機会に、もうたびたび何回も質問しましたけれども、その最後に、もう質問しなくても済むような御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/54
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055・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十年度債につきましては、現金償還ということで計画を立てるということは御説明申し上げたのですが、昭和四十一年度債につきましても、なるべくそういうふうな努力をしたいと思っているのです。しかし、あの公債が七年ものである。私どもは当然二十年ものぐらいでいいし、そういうふうにしたかったのです。ところが、市中の情勢からどうしてもそれができないので、政府保証債並みの七年もの、こういうことになったわけです。そういうようなことも考えまして、これは相当部分は七年後の償還期には借りかえでやる、こういうふうにならざるを得ないと思うのです。しかし、ただいま申し上げましたように、現金償還の努力もする。その努力をどういう仕組みでするかということにつきましては、この一年間にいろいろとその方法を考えてみたい、こういうふうに存じておるわけです。
財政法でいう償還計画、これはどういうことを考えているのか、これは立案者に聞いてみるのだけれども、全然見当はつかないのであります。木村先生あたりに何か名案でもあれば、ぜひ承らしていただきたいと、こういうふうに思うのですが、一応、当時立案に関係した人の意見なんかでは、七年後というと、それを七年後の償還だということを付属表ではっきり明示をしておくということだというようなことになってしまうのですが、しかし、それでもあまり芸のない話で、何かもう少し納得を得るような方法はないものか、いろいろ考えているのですが、当面ないので、いま御審議をお願いしておるような形になっておるわけです。一年間かけてもう少し合理化されるような方法、あわせて国債償還の積み立て金の方法、こういうものにつきましてもとくと検討してみたい。ぜひひとつ木村先生にお願いしたいのは、何かそれはひとつ名案がありましたら教えていただきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/55
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056・木村禧八郎
○木村禧八郎君 あと一つだけ最後に……。何かこっちにげたを譲ると、大蔵大臣実に答弁うまくなってしまって、そうすると非常に今度はやりにくくなるわけです。
四十二年債以後の公債は、これはあの公債、公社債市場の育成等と相まって考えなければならぬと思うのですが、これは七年ぐらいの短期じゃなく、十五年とか二十年の長期債ということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/56
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057・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) いまの七年ものというのでは、私はこれは短過ぎると思います。これはまあ市中状況等にもよりましょうが、何とかしてこれをもう少し長期化する、一挙に十年ものというのはむずかしいと思うのです。漸を追うて長期化する方向で努力をしてみたい、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/57
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058・成瀬幡治
○成瀬幡治君 最初に伺いたいのは、この三法あるいは五法、税法全体について党を代表して田中先生が質問されたときに、大臣が公債と、そして、減税をいろいろと言っておるのでありますが、その中で、別なことばでいえば、楽しい豊かな暮らしですか、そうして明るい何とかという一つのキャッチフレーズですか、そういう中で減税をおやりになったわけだと思うのですが、そういう場合には、公共料金等の値上げ等があって、物価のはね返りもあって、なかなか、大臣としては減税をおやりになったけれども、そうあなたのおっしゃるような豊かな暮らしになりそうもないじゃないか、一体減税は豊かな暮らしにどうも結びつかぬじゃないかと、こういう趣旨の話があったわけです。それに対して大臣のほうははなはだ熱心に、おれのほうは三千億の減税なんだということを非常に主張されたのですが、一体今度の減税は、一番そのねらいは、なるほどこの要綱を見れば五つくらい項目はあがっておりますが、それはまあ所得税はこういうわけだ、物品税はこうだ、租税特別措置法はこうだ、法人税はこうだと、こうなっておりますが、ほんとうの今度の減税をおやりになったねらいと申しますか、重点を置かれたのは何でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/58
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059・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) それは国をささえる家庭と企業の蓄積を強化する、これが最大のねらいだと思います。
いまお話がありますから、私からも申し上げたいのですが、われわれの社会の共同施設、これは非常におくれておりますね。道路にいたしましても、河川、港湾にいたしましても、あるいは公害対策というようなことにつきましても、あるいは共同の住宅というようなことにいたしましても、あるいは交通、通信にしても、非常なおくれです。これはもう何十年という程度のものではない、たいへんな立ちおくれになっているわけです。これは一体だれが直すのだというと、国以外にないのじゃないでしょうか。つまり、国のやる仕事が非常にふえているわけです。それからさらに、社会保障制度、これはかっこうはできつつあるけれども、厚みをつけていかなければならぬという問題があります。教育水準は日本も相当進んでおりますけれども、さらにこれを充実しなければならぬ。それらのことを考えますと、政府では金がずいぶん要るのです。とてもそれは国の財政を縮小させるというような状態ではなくて、むしろ充実させなければならぬ。それがまた必要であり、そういうことをやることが国の責任であるというふうに考えられます。
そういう際に、これを否定するならば格別ですよ。そんな必要はないのだ、国はもう仕事はせぬでもよろしい、社会保障もほうっておけ、教育もほうっておけ、道路も港湾もそう力を入れぬでもいいというなら格別です。しかし、私はこれは承認をされていいのじゃないかと思います。だれも否定することはできない。その否定できない仕事であるということを考えると、やはり政府は金が要る。
その財源をどうするのだ、こういう問題になってきますね。これを私は増税に求めちゃいかぬと思う。もし今度公債を発行しないということになれば、増税しなければならぬ。それだけ国民の所得、資産というものを取り上げることになりますので、それでは私は今日の企業の状態あるいは家庭の状態から見て適当でない、こういうふうに考えまするがゆえに、公債というものは国に対する債権、資産でありますから、最も安全な資産です。これを国民に持ってもらって、そうしてそのかわり税のほうは増徴せざるのみならず、減税をしていく、そうして国民の蓄積をふやしていくのだ、こういう考え方をとっているわけであります。
一面におきまして、国鉄の問題があり、あるいは郵便の問題があります。国鉄の問題も、国鉄の殺人的な輸送状況、安全運転ができるかできないかというせとぎわまで追い詰められておりますが、これをほうっておいていいというなら格別です。ですから、これは施設の改善をして、そうして利用者の便宜をはかろうと、こういうことでございますが、しかし、減税はただいま申し上げましたような考え方でやっていくんで、これは私は国民の生活を豊かにする、たくわえを持たしめる、企業にも蓄積を与えるという上におきましては相当の効果をあげていく、こういうふうに考えておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/59
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060・成瀬幡治
○成瀬幡治君 あなたと私はここで議論するわけではないのですが、私は豊かな生活、楽しい暮らし、そういうふうにはなかなかならぬのじゃないだろうか、こういうことを言いたいのですが、そのことはそのこととして、三千億減税を非常に誇張されるのですが、一体前のときは、長期の減税等に基づけば減税の規模というものを大体自然増収の何%かに押える、こういう一つの行き方があった。今度はそういうことでなくて、三千億の大幅な減税だと言っている。来年もおそらく公債発行、また減税ということになってくるでしょうが、その場合に減税の大体目安というのですか、そういうようなものは、何か国民所得に置くとか、どっかにめどというものが私はあるだろうと思います。今度は偶然三千億をやられた、それを逆算してみたら二〇%というような形になったものか、そういうようなところをどっかめどを置かれての数字なのか、それとも何もなしにやったほうがいいだろう、なるたけ減税をしようじゃないか、租税の負担の公平とか、あるいは景気の刺激等もある、物価も若干上がる、いろいろなことを勘案して出された減税なのか。いろいろなことを加味されると思いますが、何かこれにひとつ準拠して、ここら辺のところは来年もやる、再来年もやっていくのだというような、そういう長期的な展望まで加味された減税なのか、これはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/60
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061・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 国民所得に対するウエート、これはまあ一つの標準になると思うのです。あるいは毎年度の自然増収ですね、それの何%というような考え方も、これも一つの標準というようなものになると思う。しかし、それらが私は絶対的なものじゃないと思うのです。一つの目安である。
私は、ただいま申し上げましたように、企業にも国民にも蓄積を持っていく上の刺激としての減税、こういうことを主軸に考えていきたいのでありますが、そういう観点から数年間において達成すべき税制の理想的な形はどうであるかということを考えるのが一番適切である。これを私はまあ国会でも済んだならば、その問題を取り上げてみたいと、こういうふうに考えるわけです。目標をつくりまして、それを毎年努力する。しかし、毎年努力はしていきますが、何年度にどれをやろうというようなことは、ちょっと言えません。それは各年度における経済の情勢、また財政力、これと見合いながらその年度のことはきめていきますから、つまり、数年間の間にはこれだけのことをやりたいという目標だけはきめて、これを毎年努力していくという形をとりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/61
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062・成瀬幡治
○成瀬幡治君 前の長期答申は、中期計画を受けて、大体こういうふうにしたらどうだろうという形で書かれた。いまおっしゃるように、伺いますと、大臣は数年間の見通しを立てて、そうしてゆっくりやっていきたい、国会が終わったあとにでもやっていきたいというような趣旨ですが、片一方のほうでいえば、経審関係でいえば、何か中期経済計画を直されたものを出されるというようなお話にも聞いておるのです。私たちも何かその場当たりに減税というものが出てくる。それでは、何か過熱した場合に増税もあるかもしれぬのですが、何か物価やいろいろなものでもって、名目的なものが上がってくることは確かですね。だから、国民所得もふえているわけです。そういうようなことを考えたときに、どっかに減税の目安というものがあってしかるべきだと思うのです。
そこで、私がお尋ねしてはっきりしておきたい点は、そういう何か今度経企庁で出された中期経済計画にかわるようなものができる、それを基準としてこういう長期的な展望を立てられると申しますか、税制の、減税の見通しを立てられると、こういうことなんですか。そういうこととは全然切り離して、大蔵省として税調等と相談をして出されようとしておるのか。非常に中期経済計画というものが前の長期減税とはうらはらになっておった。今度はそれがなくなった。それを今度はつくると言っておるが、それとは無関係にお考えになるのかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/62
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063・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私の言っておる長期減税目標、これと中期経済計画、これは検討が大体同じ時期になるわけです。そういうようなことから、これは相互に見合いながらやらなければならぬ問題であります。しかし、それが数字的にきちんとした関連という状態であるかというと、私はそうじゃないと思う。まあ大体両者の傾向をお互いに見合うという程度のものじゃないかと思いますが、中期経済計画が日本の経済についてどういう見通しをとるか、その間において企業や国民の蓄積というものについてどういう考え方になるか、そういうようなことが税制の考え方にも影響はしてくるわけであります。しかし、数字的にどういうふうにつり合いがとれるかというような程度の問題じゃないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/63
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064・成瀬幡治
○成瀬幡治君 いままでの税制改正においていつも答申に出てくるのは、大体従前はいわゆる国民所得が基準だったわけですね、それに対して多い少ないと。その次に変わってきたのが、この間は自然増収の問題になってきた。いままで基準というか、目標はあなたもあげられたけれども、二点あげられた、国民所得に置くか自然増収か。ほかにファクターがあるとするなら何があるか、私はなかなかないと思うんですね。そこで、自然増収ということもなかなか予想されないとするなら、やはり目安は国民所得に置くのが妥当だと思うわけです。何かこれから検討しますからというだけで終わらずに、ここらあたりに目安を置かなくちゃならぬじゃないかというものがあってしかるべきじゃないかと思うんですがね。二つしかない。まだほかにファクターがあるというのなら、それをお示し願いたいし、二つのうちならば、自然増収が今後考えられないとすれば、国民所得が一つしか残らない。ですから、これを目安に置くべきがあたりまえじゃないか、これから検討したいじゃなくてね。そう思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/64
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065・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) これからの減税の原資、財源は一体どこであるか、これはやっぱり自然増収なんです。自然増収は出ないというふうなお話ですが、これはいままでの高度成長型ほどの余裕は出ませんが、これは相当程度のものが出ることを予期しているわけです。ことに、これからは経済回復過程ですから、いわゆる弾性値というようなものをとらえてみても、相当高い弾性値が出てくるであろう、こういうふうに見通しております。つまり、国民総生産が伸びますね、伸びますが、これはいわゆるデフレギャップを消していくわけですね。デフレギャップが多ければ多いほど、収益の上から見て、企業にはロスな形になってきておるわけです。それが消されて、ですから成長率よりは、むしろ収益率の上昇のほうが多かろうと、こういうふうに思われます。そういうようなことを考えましても、決して自然増収が少ないとは私は考えません。相当のものがあるだろうと思う。
それが一体どういう額になるか、これは一方において、三、四年後になれば公債発行額を消す要因にもなるわけですね。と同時に、減税の財源としての働きをなすわけで、ですから、いま二つの基準の中で一つが消えちゃったとおっしゃいますが、これは消えてはいないのです。ですけれども、私はそのときの自然増収が幾らかというのは、これは減税を行なっていく上の一つの基準にはなると思いますが、これは絶対的基準じゃない。
それから、国民総生産に対する比率という問題も、これは常に税の負担が、全体としてマクロで見て一体どのくらいなウェートになっているかということは常に見ていかなければならぬ問題であるが、これは絶対的な基準じゃない。ことに景気が非常によくなり、国民のふところぐあいもよくなる、企業も収益力がよくなる、こういう際になりますると、同じ税率でありましても、これは負担に対する感じ方というものが違うわけであります。したがいまして、二一%というのがあるいは二二%になっても、ちっともびくともしないという状態になるかもしれぬ。これは私は一つの基準として、国民所得に対するパーセンテージというのは考えるべきだと思いますが、絶対的なものじゃない。
そういう空気が財政に反映して、どういう自然増収が出てくるか、そういう状況、それから国民総生産に対して租税負担がどういう割合になるかというこういう比率の動き、これはどこまでも注意深くながめておかなければならぬけれども、それだけできめるわけにはいかぬと、こういうふうに思うわけです。
それで、私といたしましては、これから税制調査会には、ここ数年間において実現すべき理想的な税制の形はどうあるべきかということを諮問し、われわれも検討していきたい。それがきまりましたならば、その目標に向かって毎年毎年努力を積み上げていくと、こういうふうにいたしたいと思うのです。もちろん、そういう税制をつくる際において、自然増収だとか、あるいは国民所得の状態とか、そういうものをにらんでこの税制がきまるということ、これはもちろんそのとおりでございますが、これから企業にも、あるいは家庭にも、なるべく蓄積を持ってもらうというようなことを考えながら、国民生活全体の立場で税制というものをきめていく。その際の理想型はどうあるべきかということを策定いたしまして、それを追っていきたい、こういうふうになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/65
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066・成瀬幡治
○成瀬幡治君 そうしますと、長期税制についていつごろそういうことを諮問されるわけですか。それが一つと、それから、来年の減税になるか、そういうことは一応長期減税答申とにらみ合った一つの税制改正が行なわれるというふうに了解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/66
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067・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まあ検討のスタートは、国会が終わったらなるべく早くやろうと、こういうふうに思っています。ただ、その結論がいつになりますか、これはまだ見当もつきませんが、四十二年度にすぐそれを実行にかかるかというと、かかりたいと思います。しかし、財政の展望からいいますと、四十二年度、三年度というのが非常に苦しい。減税の財源は公債じゃありません。公債じゃなくて自然増収なんですから、自然増収と自然歳出、この両者を並べて検討してみまするときに、四十二年度、三年度というものは非常にそのバランスがデリケートな時期になるわけなんです。まあいろいろくふうをして、目標ができましたならば、その実現のために努力いたしまするけれども、そのサブスタンシャルなものが四十二年度に実現できるかというと、今日ははなはだ私は悲観的な見方をせざるを得ないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/67
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068・成瀬幡治
○成瀬幡治君 大臣がそういうふうにおっしゃるなら、私も納得できるんですよ。だから、そういうふうな——まあこれは私のほうの聞き方も悪かったかもしれぬけれども、私は何としても国民所得等に置いていただけば来年度も必ずできると。それから景気の見通しについてえらい強気な話もありましたけれども。
それから、先ほどの木村委員の公債の問題について、七年と言われましたけれども、この前は七年たったら必ず返すというようなことをおっしゃった。きょうお話聞いていると、なかなかそのことが借りかえもやっていかなければならぬ、なかなかむつかしい情勢だと、こういうふうな見通し等についても、私たちも実は慎重な見通しを立てておるわけです。ところが、大臣のいまのお話を聞いていると、なかなか強気だったから、それならどうもそんなに強気なのがどこから出てくるのかと思っておったのですけれども、きょうお話聞いていてなかなか慎重だということがわかったから、これでよろしゅうございます。
次に、第二点としてお尋ねしたいのは、非常に所得税が重いじゃないかということは、先ほども木村委員も触れておると思いますけれども、井手参考人も言われておったんですがね。所得税の重たいということは、今日だれでも常識になっておると思うんですね。もう少し精一ぱいやれなかったものかと。所得税の減税というものが、少なくとも所得税と法人との比率というものがいつも何対幾つなんといわれておって、なかなか、所得税の減税というのが、重点にとらえてきておったことは過去はそうで、今度はどうもそこが違うわけですね、そこがいまの、今度は税の負担、租税公平の原則ではなくて、景気と申しましょうか、不況対策と申しましょうか、そういうもののほうに何か非常にウエートを置かれたようなふうにも受け取れるわけですが、大臣はこういうような点についてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/68
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069・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) やはり税制の基本的な考え方は、企業にも蓄積、個人にも蓄積、この際蓄積を強化する、こういう考え方に尽きるわけです。あとのことに補足的なんです。そうして国民全体に安定した資産を持ってもらう、そういう世の中にすると、これが経済安定の真骨頂である、こういうふうに考えておるわけなんです。
それで、いままでの税制改正というと、大体八割以上を所得税の減税に回し、その他が二割程度だと。今度どうしようかということを考えたのですが、今度はまあ減税が平年度ベースで三千億になる、この際に、従来いわれておりました、まあ相当大多数の人から要望されておる問題があるんです。その問題も解決しておこう、こういう考え方を一つとったわけです。それが税率調整の問題であり、それから一つは相続税の問題、一つは物品税の問題なんです、この三つなんです。それからもう一つは、いま中小企業が長期不況で非常に苦しんでおる。これに特別の考え方をしなければならぬという考え方をとったわけです。まあこれはいまお話しのような不況対策というものにも非常に大きくつながってくるわけなんですが。
それからもう一つは、今日の経済の課題は、不況克服ということだけじゃないんだと。もう一つは、不況克服の過程を通じまして、今日のような経済の異常な状態を繰り返さない、そのための企業の全体を通じての蓄積政策、これを刺激してみよう、こういう考え方ですね。まあこれは一億円超の法人に対する措置というようなものになったわけでございます。
まあしかし、どこまでもこれは税制改正の眼目である所得税の減税、こういうものが中心でありまして、これに平年度ベースでは大体六割のウエートを置く。それだけいろんなことをしながら、しかも六割のウエートを置く、やはり所得税中心の減税である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/69
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070・田中寿美子
○田中寿美子君 予算委員会のほうに行かなければなりませんので、すみませんけど、ちょっと二、三点。
私は、さっきも成瀬先生からも出ましたけれども、大蔵大臣がしばしばおっしゃる豊かな家計というのにまだ実はこだわるわけなんですが、もちろん減税だけでもって家計を豊かにしようというふうには考えていらっしゃるとは思いませんけれども、大蔵大臣ですから、日本の財政経済全部を掌握なさる方なんですけれども、実際に物価が一方で上がっていく。そうして実際に経済を担当しております、家計をやっております者の側からいいますと、支出は今度の減税でも、もう標準ぐらいのほんとうに普通のサラリーマンで、みんな支出は赤になっていくわけなんですね。それで、さっき、共同施設がおくれているから、そちらのほうにたくさん国の財政は向けなければならないのだとおっしゃる。それは私ももう大賛成で、その点は非常におくれていると思うんですけれども、しかし、共同施設というのも、何を意味なさるのか、たとえば社会保障なんかの費用は非常に不十分だと思いますし、それから教育費なんかもそれに入っていくと思うんです。それで、国民総所得に対してどれだけが戻ってくるか、国民に戻ってくるか、つまり振替所得の比率ですね、これは大蔵大臣は昨年度よりも四十一年度はずっと高く見積もっていらっしゃるのかどうか。これは世界的に見て、日本は三%ないし五%で、そうしていわゆる豊かな家計を持っておりますヨーロッパあるいは北欧の諸国は一〇%、一四、五%まで振替所得というものがあるわけなんですね。で、そういうものがあり、しかも給与、賃金なんかが日本の二倍、三倍であり、それから国民の一人当たりの所得が高い。それにプラスしてそういう振替所得があるから、豊かな家計というものが保障されていくのだと思うんです。そういう点を総合的に考えていただきませんと、たいへんことばは魅力的で、この前おっしゃったように、青々とした芝生があって、そうしてみんなが教育を受けられる家庭というものはみんなが願うことなんですけれども、非常にやすやすと使っていられるような気がいたしますので、一体振替所得をどのくらいに見積もっていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/70
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071・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 豊かな家庭というのにずいぶん反撃されましたが、これは私の政治目標です。したがって、さあ一年でそういうことができるかというと、そういうわけにはいかないのです。これは順を追い年を追ってそこに近づいていくという私の考え方の目標というものを申し上げているわけです。それに向かって一つ一つ積み上げていくのだ、積み上げが今日始まるわけなんです。
昭和四十一年度において社会保障がどうなるか、こういう話でございますが、予算でいいますと、二〇%大体ふえるわけです。予算全体の伸びは一七・九%であります。それから国民総生産が一一%、それから失業者のサラリーが一二%、それから生活保護世帯のあれが一三・五%、そういうふうに伸びますが、医療保障に非常に金が要るのであります。そういうようなものを含めまして、大体社会保障が二〇%ふえる。一般行政費の伸びとしては相当の伸びを示しておるわけであります。一方においてはそういうふうに社会保障施設、つまりわれわれの共同の諸施設をやっていく、それから物的施設は公共事業費のほうでやっていくと、そういう考え方をとっておるわけなんです。そういうふうに着実に理想を実現していく、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/71
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072・田中寿美子
○田中寿美子君 振替所得の点ですね、国民総所得に対する国民に還元されてくる社会保障その他の振替所得の比率です。たいへん日本は低いのです、欧米諸国に比べて。それがないと暮らしは豊かにならない。もしいまなかったら、あとでもけっこうですけれども、大蔵大臣、ぜひその比率を上げていただかなければ豊かにはならない。
それから、先日大蔵省発表で、課税最低限を八十五万幾らにするというようなことを新聞紙上で拝見したのです。それは三、四年先のようなんですが、そうしますと、また物価が上がっていくわけですから、いつまでたっても課税最低限がほんとうに上がるというふうにはならないように思うのですけれども、その辺はどういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/72
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073・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 八十万円というのは、今日の時点で八十万円ということを、私この国会で申し上げているわけなんです。これはやはり消費者物価の変動なんかありますから、やはりそれはそういうものも考慮しながら、八十万円というものを現実にどういうふうなものにするかは考えていかなければならぬ、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/73
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074・田中寿美子
○田中寿美子君 そうしますと、大蔵大臣も現在のところ、六十三万円よりも八十万円までに最低限を上げるほうが好ましいとお考えになっているというふうに考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/74
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075・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) この数年の間にはぜひ実現したい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/75
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076・田中寿美子
○田中寿美子君 それはつまり、いま四十一年度の割合で八十万円というふうに考えるのですね。これは念を押しておきます。
それから、先ほどもお話が出たと思いますけれども、給与所得者の退職金に課税するというようなこと、この点も非常に無理があると思いますので、考慮していただきたい点でございます。
それから、租税特別措置なんですけれども、税負担の公平という点でたいへんここに問題があるのですが、そうして税制調査会の答申でも整備縮小をいたしていくようにということになっておりますけれども、四十一年度の二千二百二十億円の減税総額のうち、大臣の御説明ですと、これは非常に中小企業のために大部分を使うような御説明なんですけれども、実際はいかがでしょうか。大蔵省からいただいた資料で見ますと、大企業のためと中小企業。この中小企業というのは一億円以下の企業というような考え方のようですけれども、そうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/76
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077・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 私どもが使っております中小企業という定義は、法人税法におきましては一億円以下、一億円超の法人を私どもは便宜上大法人と、かように言っております。
お話のありました点でございますが、二千二百二十億円のうち、税目別にこの税収項目を見ますと、千六百五十三億は所得税でございます。で、法人税が四百五十一億であり、その他が百十六億でございます。そんなような関係で、大臣が先ほどおっしゃいましたように、特別措置の中の大部分が大企業に使われているのではないということを申されておるのでございます。そうしてこの所得税の分を除きまして、いわゆる企業の分を抜き出してみますと、いま申し上げました一億円というところで限界を分けて、企業にかかる減税分を見ますと、大企業分は三百三十八億円、中小企業分は四百六億円となっております。したがいまして、企業分を一〇〇といたしますと、大企業が四五・五%、中小企業分が五四・五%、こんなような数字になります。その他がいずれにも属さない分でございますが、そのうちの大部分が、これも大臣がしばしば申されておりますように、貯蓄奨励にかかる分でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/77
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078・田中寿美子
○田中寿美子君 中小企業と申しましても、定義がいろいろあるのですね。それで、ほんとうに今日倒産して非常に苦しむのは中小零細企業のほうだと思うんです。先日予算委員会の公聴会に出てこられました生活協同組合の理事の竹井二三子さんの公述の中に、主婦たちが集めて一口二百円でやっています生活協同組合、一千万円の資金なんだけれども、自分たちに税金がかかってくることで非常に苦しい思いをしている、ほとんど無報酬で働く者以外、あとは従業員には払っているけれども、理事たちは無報酬で働いている、そういうところに対して、租税特別措置なんというものは何にも恩恵を及ぼさないということの公述がございました。ですから、ほんとうに中小企業のためということでしたら、もっとこれは比率なんか改めていただくべきものではないかしらと私は思っております。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/78
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079・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) おっしゃる点は、消費生協につきまして農協あるいは中小企業協同組合と同様の留保所得の半分を課程所得から控除するといった特別措置がないと、こういうことの御指摘からだろうと思います。この点につきまして、私どもの大臣も衆議院の大蔵委員会で、その理由、さらにまた将来の方向につきまして御答弁がございましたが、そういった方向で検討してまいる、かようなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/79
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080・成瀬幡治
○成瀬幡治君 大臣、いまあなた所得税に重点を置いたと、六対四だと、こういうお話ですが、これは計算が違うかもしれぬけれども、私の調べた資料によりますと、昭和四十年度では所得税の軽減が九百二十億円、四十一年は千四百六十五億、それから企業のほうは四十年度が三百十五億。ですから、九百二十億に対して三百十五億は三対一の割合、六対二です。四十一年度になりますと、所得税は千四百六十五億、企業減税のほうは千五十五億、七対五という比率になっているというふうに資料で計算をし、どうも大臣のおっしゃられるような数字にならないと思っておりますが、ちょっと数字が違うのかな……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/80
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081・徳永正利
○委員長(徳永正利君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/81
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082・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/82
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083・成瀬幡治
○成瀬幡治君 どうもいまの数字が違っておるようですが、考え方として六対四になっておるから所得税の減税に重点がある、これは私、あとで一ぺん数字の比率の問題については資料を調べて質問し直したいと思うんですが、少なくともいままでの税制調査会のあり方としては、企業減税、企業のほうは、法人税については諸外国に比較して高くないという立場をとってきている、いままでの税制調査会というものは。ところが、今回は、お聞きしておりますと、中小企業等の内容が非常にふえない、したがって将来の立場等を考慮して思い切ってこの際減税したのだ、こういうようなふうに承る。そうしますと、いままで法人税は高くないと指摘してきた、諸外国に比して高くないと言ってきたのは間違っておったのか。それとも今度減税することによって、日本の特徴であるところの中小企業が非常にえらいからこの際は思い切ってやったということになるとするなら、いままで法人税は高くない高くないといって、しばしば税調なり大蔵省もそれを認めておみえになったのですが、そういう態度と矛盾があると思うんですが、こういうような点に関連してはどういうふうに説明をされようとされるのか。ただ単に中小企業はやりくりできなかったからこの際思い切って、こういうことなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/83
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084・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 法人税の税率は、その税率自体から見ると、諸外国に比べてそう高いほうでもないというふうに思われるわけです。そこで、ただ、わが国の場合は事情が違いますのは、蓄積が非常に少ない、そこが非常に違うと思うんです。これは個人の場合も同じだと思うのでありまするが、同じ税率であっても、諸外国の場合の響き方とわが国の場合の響き方とは非常に違ってくる、こういうふうな認識を持つわけであります。私は前々から言っておりまするとおりに、とにかく企業でも家庭でも蓄積を持たせるように経済政策が運営されなければならない、租税政策もそれに協力するものでなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。特にその場合で中小企業の立場というものを考えなければならぬ、こういうふうに考えますので、今度は中小企業につきましてはそういう考え方の中でも特例的な厚い考え方をとっている、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/84
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085・木村禧八郎
○木村禧八郎君 どうもことばにこだわるわけでもないけれども、蓄積が少ない蓄積が少ないと言いますね。われわれの考えですと、とにかく蓄積は過剰ではないかと思うんですね。というのは、設備過剰ということは、資本としては有効需要と比較したらこれは過剰なわけでしょう、蓄積が。設備投資というものは、これはつまり資本の蓄積ですわね。ですから、諸外国に比べて蓄積が足りないということはわかりますよ。諸外国のほうが歴史が長いですし、しかも、日本の現状では蓄積が足りないというのは何を基準にして蓄積が足りないか。それは蓄積は多ければ多いほどいいのですけれども、資本主義のメカニズムを前提にして考えた場合、やはり有効需要との関係でバランスを考えながら蓄積をしなければならぬでしょう。ところが、バランスを考えれば、これは蓄積は過剰ではないか。しかし、それも日銀からオーバーローンというような形で必要な蓄積を上げる、また外国から借金までもして蓄積やっているでしょう。ですから、そういう意味では蓄積が過剰ではないか。ただ、大蔵大臣の言うのは、その過剰な蓄積を信用インフレでやったわけですから、それを財政に肩がわりする、こういう意味ではないかと思うのです、公債を発行するという意味は。その民間の企業に蓄積を与えるというのじゃなくて、過剰蓄積になって、信用インフレでやっていた、金利負担に追われてしょうがない、それだから政府が公債発行して減税して軽くしてやるということは、これはただ肩がわりしてやるということじゃないかと思うのです。
それからもう一つは、個人のほうの蓄積にしたって減税による蓄積と公共料金引き上げによるマイナスと比較しますと、はるかに公共料金の値上げによる負担のほうが大きい割合ですよ。ですから、そちらのほうだけ度外視して減税をとらえて、これで個人の蓄積をふやすふやすといったって、私は論理が合わないと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/85
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086・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 公共料金、公共料金とおっしゃいますが、国鉄が企画庁で計算したところではわずかに〇・七%のウエートだ。それはそうたいしたあれじゃないのです。米がどうだ。これは〇二二%だという。合わせて一%になるかならぬか、こういう問題です。われわれがいまやろうとしていることは、所得をとにかく七・五%実質的にふやしていこう、こういう政策。その際に、おまけに三千六百億の減税をしよう、これは響くです。決してあなたのおっしゃるように相殺するというような程度のものじゃない。あなたはどうも、国民総生産の、また国民所得の増加についてはきわめて消極的で、高い関心を示されませんが、われわれは総所得をふやすのです。総所得をふやして、しかも減税をしていこう。これはもう必ず残る、そういうふうに考えておるわけなんです。
それから、第一の問題は、蓄積が多いという。私は企業経営のあり方なんかを見てみると、工場がたくさんできた。これは確かに過剰投資です。しかし、あれは借金がああいう設備に化けているんだ、それじゃいかぬと。そうじゃなくて、手金でああいうものが大体においてできるような状態にならぬと、ほんとうにミクロの立場から見た経済というものは安定しない。さらに、そういう工場がたくさんあるという状態は、マクロの見地から見てきわめて不安定な経済だと、こういうことを言っているわけなんだ。設備の過剰であるということは、これはお話のとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/86
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087・木村禧八郎
○木村禧八郎君 関連ですから、あんまり私の質問が長くなるといかぬですがね、私は資料を要求しまして、米価引き上げによってどれくらい国民負担はふえるかという資料を政府からもらいました。そうしたら、六百二十八億円国民負担はふえるのですよ、八・六%引き上げによりまして。それから、鉄道運賃引き上げによりましては、千六百三十億円国民負担がふえるのですね。それから、政府管掌の健康保険料引き上げによって四百二十八億。それから、郵便料金引き上げによりまして、二百八十六億国民負担がふえますね。それから、国民年金の一万円年金実現のための料金引き上げによって、四十四億負担がふえるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/87
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088・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 厚生年金……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/88
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089・木村禧八郎
○木村禧八郎君 厚生年金。ありがとう、自民党から応援してもらうとは。……。(笑声)それから、私鉄運賃引き上げで約三百億、それを合わせますと、約三千五百億円ぐらいになるんですね。もちろんこれは全部が均等に負担するんじゃないですけれども、しかし、これは大部分は一般国民の負担で、間接税よりはもっと私はきびしい増税のようなものだと思うんですよ。それと、それじゃ所得税幾ら減税かというと、千二百八十九億でしょう。これと比べてみれば、それはその負担のほうがはるかに大きい。
それから七・五%、これは実質成長率を見ているわけですけれども、しかし、それは総平均でしょう。みんなの所得が七・五%ふえるわけじゃないですよね。所得のふえ方は人によっていろいろ違うわけですからね。また、実際問題として五・五%の消費者物価の値上がり、これも総平均なんですよ。それから、物価の値上がりが一番大きいのは、とにかく生鮮食料品でしょう。そうすると、エンゲル係数の高い人ほどその影響は高いわけですよね。そうなると、総平均比べただけじゃいけないと思うんですよね。やはり実質的に、家計からエンゲル係数をもとにして比較してみませんといけないんじゃないか。
ですから、大蔵大臣、日本銀行の中に貯蓄増強推進委員会というのがありますね。あそこで貯蓄に関するアンケートをとってるんですよ。四十年度のあれを発表しています。それで、物価値上がりによってこれまで貯蓄をしていたのが減っちゃっているパーセンテージが何%であるか、それから貯蓄していたんだけれどもできなくなっちゃった人がどのくらいあるかという調査を、ちゃんと具体的にしてあるんですよ。そうすると、四十一年に五・五%あるいはそれ以上に消費者物価が上がった場合に、はたして今度の減税程度で家計の蓄積をふやすということは、これは所得階層によって違うかもしれませんが、一般家庭においては、ことばだけで、実際にはそういうことは困難ではないかと私は思うんですよね。
それから、資本のほうについては、大蔵大臣ははっきり認めたから、それでいいんですけれども、結局、借金によろうが借金によるまいが、資本の蓄積が過剰であるということは、それはもう認められたわけですよ。ただ、その借金を民間会社の借金にするか、政府の借金にするかなんでしょう。ですから、借金を政府が肩がわりしてやるということです。それをわれわれが、信用インフレを財政インフレに転嫁すると、こう呼んでいるわけです。どうなんですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/89
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090・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) どうも木村大先生と私は見解が違うんですがね。国鉄の料金を上げた。国鉄の料金を上げて、それを一体何にするかというと、利用者に対するサービスの改善です。安全の保障というようなものになってはね返ってくるわけです。また同時に、その金は何になるかというと、これは物の注文として、車両メーカー、その下請、こういうふうに回り回って国民経済の中に溶け込んでいくわけです。同時に、その最終消費は何かというと、これは賃金ですよ、結局。賃金になっていくわけだ。国鉄に働く者あるいは下請に働く者までも含めての賃金になっていくわけです。それだけ国民総所得がふえるわけなんですよ。そういうものの集積がとにかく七・五%。これは形式的物価要因じゃないんですよ。これは実質でそれだけふえる。形式的にいえば、一一%以上もふえるわけです。
で、そういう中において、減税が三千六百億円行なわれる。これは相当の蓄積効果を持つとこういうことを申し上げておるわけなんです。木村先生は、どうも所得を増加せしめるということにはあまり熱心でもなく、またそれに考慮を置くこときわめて薄いと、そういうふうに思うのですが、私どもはそうじゃないんだ。大いにふところぐあいをよくして、その上さらに減税をやっていこう、こういうのでありますから、必ずこれは蓄積の効果をあげる、こういうふうに確信をいたしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/90
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091・木村禧八郎
○木村禧八郎君 じゃ簡単に。四十年度の総理府統計局で発表しましたものでは、四十年度も一応成長はしたのですけれども、成長のしかたが低かった。賃金は実質的に下がっちゃっているんですね。四十年は、政府は四・五%の消費者物価値上がりを予定したけれども、七%以上上がった。そうすると、実質賃金は切り下げられているんですね。そういう状態を私は頭に描いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/91
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092・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) それを改善するんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/92
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093・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうなると、この程度の減税で蓄積をふやすといったって、これはことばだけで、ふえない。一方で減税しながら他方でうんと負担をふやしていくと、相殺分がむしろ大きくなって、負担の増加のほうがむしろ大きくなる。多少実質的成長によって所得がふえても、そうならないというのならいいのですよ。私は四十年みたいになるんじゃないかと、こう思うものですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/93
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094・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 四十年度は、これは国民経済の成長が大体において横ばいという状態です。でありまするから、消費者価格が上がりますると、実質的な生活内容というものは切り下げられていく。ほぼそういうような傾向の数字も出ておるわけです。しかし、今度はそうじゃないのです。今度は四十年度に比べて実質七・五%の成長をさせよう、形式では二%以上もの成長をさせよう、こういうのですから、形勢は一転してくるわけなんですね。そこへ減税をやろう。七・五%というのは、物価騰貴というような要因は一切見ていないわけですね。一一%というのは物価騰貴という要因も入れているわけです。その二%という場合、物価をその中に考えておりますが、その中には、御指摘の国鉄料金のはね返りだとか、郵便料金のはね返り、そういうものみんな入っておるわけです。それらを捨象して考えても、七・五%の実質の成長がある。その際の減税というものは、私はいままで二、三年のような状態ではない、こういうことを申し上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/94
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095・木村禧八郎
○木村禧八郎君 結局、問題は物価ですね。物価をどう見るかということになると思うんです。ですから、この点は私はこの程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/95
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096・成瀬幡治
○成瀬幡治君 非常に中小企業の減税をたくさんやったような御説明ですけれども、そういうことについても、資料でいえば、あなたのほうのお出しになった資料で分ければ、やはり企業減税ということは大きなところが大体中心になっていると思う。
塩崎さん、数字をちょっとお聞きしたいんですが、租税特別措置法によって、先ほど田中寿美子さんに答えられた中で、所得税関係で千六百五十三億、法人税で四百五十一億、その他で百十六億、こういうような数字をあげられて、二千二百二十億が租税特別措置法による減税だ。そこで、これを大、中に分けるというのはおかしいかもしれませんが、中小企業関係と、いわゆる資本金一億以上のものと以下のものとに分けるということはできますね。それからもう一つは、同じ所得者の中でも、保険料だとか基礎控除だとか、そういうこともあると思うんです。ありますが、配当あるいは利子、そういうようなものでいえば、これはおよそ低所得者には関係のないことだと思うんです。そういうような分け方であなた方の何かまとめた数字というものはございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/96
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097・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) いまおっしゃいました点は、私ども、木村委員の御要望によりまして御提出申し上げました昭和四十一年度租税特別措置法の資料の減収額から推算いたしております。で、その減収額は、御存じのように、貯蓄の奨励、内部留保の充実、技術の振興及び設備の近代化、それから産業の助成その他といったような分類でして、ございます。御指摘の貯蓄奨励の中に利子、配当についての特例がございます。これはもうほとんど所得税でございます。その中でもたとえば少額貯蓄利子の非課税の類は小所得者であり、生命保険料控除は四百もあるけれども、小所得者にも影響しておる。こんなふうな考え方をとることも可能でございます。どのあたりを小所得者といいますか、その基準は問題でございましょうが、企業にかかる分は、先ほど申しました一億円超で分けましたが、所得者につきましては、一つの基準、仮定を設ければ、おそらく御指摘の資料はできるかと思いますが、そのあたりどういうふうに基準を設けるか、これはよほど慎重に検討してみなければなりませんし、また、成瀬先生の御意見を伺えば、計算も可能かと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/97
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098・成瀬幡治
○成瀬幡治君 私も、その所得がたとえば二百万までくらいというところ——三百万未満と、その辺で切られたらどうかと思うんです。それから、法人税のほうでいえば、四百五十一億というのは、そうするとこれは一億超の人たちの租税特別措置ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/98
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099・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 法人税はもうすべての法人の利益に適用がございますので、四百五十一億は大法人のみならず中小法人にも適用のできる租税特別措置でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/99
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100・成瀬幡治
○成瀬幡治君 法人のほうも、たとえば中小企業構造改善準備金、これは一億ですか、中小企業貸し倒れ引き当て金九十四億とかなんとかいうのがございますですね。それも私はそういうようなふうに分けていただくといいと思いますがね。とともに、資本金一億とある、こういうのと中小企業基本法との関係はどうなっておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/100
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101・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) ただいま税法上の大法人と中小法人についての分け方の一億について、中小企業基本法との関係いかん、こんな御質問だと思います。
基本法は資本金五千万以下あるいは従業員三百人以下、この二つが定義になっております。したがいまして、資本金が一億になりましても、従業員が三百人以下ならば中小企業の範囲に入ってまいります。で、税法もそのあたりどういうふうにこれを取り入れていいか、いろいろ考えたんでございますが、税制では、どうも従業員基準というのは常に動く要素でございますので、税務のトラブルがそんなようなことで起こることも国民経済上むだである。そうなりますと、少し資本金基準は上げても、従業員基準はやめたほうがよかろう、こういうことにいたしたのでございます。さらにまた、過去におきまして特別償却を中小企業に適用します際に、やはり資本金一億円というのを、私が税制一課長でございましたもう三十四年ごろから用いておりますので、そんなような意味では資本金一億円を基準として、大法人、中小法人の限界といたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/101
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102・成瀬幡治
○成瀬幡治君 あなたのほうで一億にすることによって、中小企業の人たちは恩典にあうようなことは何にもないでしょう。ただ、減税は中小企業にこれぐらいやっておるんだという、額だけがふえるというだけではないんですか。資本金五千万円を一億円に引き上げられることによって、何か恩典が違うようなことはあるんですか。ただ、あなたのほうの資料のやり方で、減税を中小企業にこれだけ向けたから、これだけ多くなっているんだというように——そんなふうに一億円に上げられたんだが、従業員三百人というのはつかみにくいからと。こういう二つの柱、資本金と従業員の数、それで法律の適用はそれ以外にはないわけですね。中小企業金融公庫、商工中金あたりの、公庫の融資対象からはずされるとか、いろいろなことがあるわけですが、何かあなたのほうは一億にすることによって、そういう点で特別のものがあるなら、お聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/102
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103・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) もう成瀬委員御承知のように、今回の税制は資本金一億円というところで、相当仕組みを変えたつもりでございます。法人税の基本税法におきましても、昭和三十六年から中小法人の競争力の強化という見地から、年所得三百万以下の法人税率は六%の差を設けておりまして、基本税率は三七%でございますが、年所得三百万以下につきましては三一%、こういうことにいたしておりましたが、この制度はもう当時から大法人でも中小法人でも全部適用するという仕組みでございます。したがいまして、何十億の大法人でも、その下積みの三百万円以下は三一%の税率の適用がある、こんなような仕組みになっております。
しかし、このことをよく考えてみますと、中小法人の体質の強化あるいは競争力の援助といったねらいが、これはおかしいではないかと。この制度はひとつ中小法人だけに適用するような仕組みに今回改めたらどうか。したがいまして、一億円超の法人は今度は三七%が三五%に下がります。一本税率でございまして、年所得三百万以下でも今度は三五%でございます。一億円以下の法人は、これはいま申しました年所得三百万未満というのは依然として置きまして、しかもその軽減税率は三七%が三五%に下がる、これは二%でございます。特にこれを現行の三一%から三%引き下げまして二八%にするといったような仕組みを講じ、さらにまた、特別措置におきましても、たとえば一億円以下の中小法人は貸し倒れ引き当て金の率を、大法人と違いまして、二割増しに引き上げるということにいたしております。
したがいまして、それは五千万ということに持っていけば、五千万と一億の間の法人がその恩典はなくなるだろう。もちろん、五千万にして、もう少し利益を高くするというやり方もありましょうが、これは先ほど申し上げましたような中小法人の定義のこと、さらにまた私はこういったことが、税制上の資本金について、現在もそうでございますが、増資の抑制というようなことに働いても、これは国民経済上むだだと思います。そんなようなことを考えまして、やはり現在のところ資本金一億円以下と一億円超で区切るのがいまのところでは、過去の沿革も加味いたしまして適当ではないか、かように考えて御提案申し上げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/103
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104・成瀬幡治
○成瀬幡治君 そうすると、基本法との間の食い違いがある。税のほうは一億円なんだということなんですが、これは何かやはりいろんな点で食い違いが出てくるわけですね。たとえば所得税でいえば、われわれのような住民税、普通の地方税と国税との関係でもいろんな計算が違って、なかなかわかりにくいわけですが、今度こういうことになってくると、資本金の問題で区切っているからはっきりしていると言われても、通念として中小企業と普通いわれたときは、資本金五千万というふうに区切るのが普通なんですが、そこのところはこう何か税制上わかりやすいという意味で、どっちが妥当だというんじゃないんですが、そういう恩典があれば、これは受けたほうがいいですから、そういうようなことで、一ぺん何かちぐはぐに出ているものをどっかで整理していくということは考えられませんですか、実際に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/104
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105・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 成瀬委員の御指摘の点、私どもも非常に気にしたところでございます。中小企業庁とも十分打ち合わせたところでございます。基本法のみならず、機械工業振興法にいたしましても、他の法律でも、おっしゃるように、必ずしも基本法と合致したような中小企業の定義になっていないように見受けられます。そんなような点も考えましたのでございますが、先ほどから申し上げましたような理由から、やはり従業員基準が、どうしても税のように毎年の課税というようなことになりますと、どうしても従業員基準というものが入りにくい。金融のように弾力性のある、さらにまた臨時的にとどまるといった場合には、確かに従業員基準ということもいいでございましょうけれども、私どもはすぐ脱税とか、租税の回避とか、どうもむずかしい結果を招来するような場合には、不安定な、トラブルの多い従業員基準というのはよくない。そうしますと、どうしても五千万というところで区切りますと、従業員三百人の問題が出てまいりまして説明がつかないということで、十分私どもも考慮し研究したわけでございますが、中小企業庁とも相談の上、こんなような御提案を申し上げた次第でございます。もちろん、今後もできる限りこういう方向に統一する方向は各方面とも研究していただきたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/105
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106・成瀬幡治
○成瀬幡治君 私は資料の問題にからんで少しお尋ねしていくんですが、一度租税特別措置法をまあ世にいう中小企業基本法に基づくほうで区切るということですね、それから、所得のほうは三百万未満でどういうふうな形になるかというような資料を一ぺんつくっていただいて——どうも結論的に私らが言いたいのは、租税特別措置法というのは大きい人を大事にしているんじゃないかということが言いたいわけです。そういうような私たちの言いたいような資料になるのかならぬのかわかりませんが、そういう資料をひとつお出し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/106
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107・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 従業員の三百人が非常につかみにくいので、非常にむずかしいかと思いますが、ぜひ私どもも推計を加え、あるいは中小企業庁と相談しながら、つくってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/107
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108・成瀬幡治
○成瀬幡治君 各論についてですが、各法律案については逐次いろいろまた別な機会に取り上げたいと思いますけれども、租税特別措置法ですね、これは税調等もあまりふやさぬほうがいいんじゃないかということをしばしば指摘しておる。今回これが広げられた。何か既得権等になってしまって、なかなか容易じゃないということが心配されたから言われていることだと思います。そこで、この租税特別措置法の問題について基本的な考えをまず第一に承りたい。
それから、この前のお話を聞くと、配当、利子の問題、これは少し残しておいたほうがいいというような御意見だったんですが、これもやめたらどうだという税調の、何というんですか、勧告というんですか、答申があったと思いますが、何か税調が答申しましても、そういうようなことについては大蔵省が都合が悪いからやらぬというなら、税調の意味がないと思う。ですから、そういうようなことについて、大蔵省は税調の答申に対してどうしているのかという基本的な問題を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/108
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109・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 租税特別措置は、所得税あるいは法人税等に対する特例ですからね、これは私は将来は一本化、つまり廃止すべきものである、こういうふうに考えております。
ただ、租税政策がそのときの経済政策ともマッチしなければならぬ面がありますから、一がいに一挙にというわけにはなかなかいかぬと思うわけです。この間利子所得、配当所得に対する特例を廃止しろというお話がありましたが、これは原則論としては、特例措置であるからこれは廃止する、そういうふうに考えていきたいが、これをいま、来年期限が来るから、廃止することをここで言明せよと言われましても、そう簡単には言明はできません。特にそういう制度が今日現存しておりまして、貯蓄やその他経済政策にどういう影響を及ぼしているかということをよく見きわめ、これを撤廃してもそうたいした弊害がないという見通しがあって初めてこれが改廃ができるので、いまここで言明はしませんが、心持ちは将来の方向としてこれを整理していきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
税制調査会の答申は四十一年度、つまりただいま御審議を願っている法律案の改正ですね、これはすべて税制調査会の答申に基づくものであり、そのとおりである、そのとおりのものを御審議をお願いしている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/109
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110・成瀬幡治
○成瀬幡治君 これに関連して、少しほかの問題に触れるわけですが、実はこの前開発銀行のことに関連して伺ったんですが、たまさかいわゆる体制金融ということばが出てきた。これも源は、御案内のとおりの特振法に基づくものである。大臣がお見えになりませんでしたから、要望として申し上げておいたんですが、特振法がつぶれてしまった、実質的に。ところが、動いているわけですね。開発銀行の資金が流れている。実質的に動いている。こういうことは、何といったって議会を否定することになると思うんです。その姿勢でいえば、いいことだからやるのだということでは済まされない問題だ。よしあしを越えて、こういうことは一度はかってみて、それが法律として国会で通らなんだということは、いい悪いの問題じゃない。したがって、こういうようなことは、なるほど通産省の歳出にからむ問題ですからあまりここで議論したくないと思いますけれども、そういう姿勢が間違っているという点は、少なくとも大蔵大臣は正すほうの側にある、ゆがめるほうの側でない。ですから、今年度は七十億ほど組まれているというんですが、これを動かすことはやめてもらいたいと思う。もちろん四十年度の予算はまだ使われていないんですね、四十億ほど使われていないが、そういうようなことについてはどういうふうにお考えになっているか。いわゆる税調の答申に対し今年度は一〇〇%守りましたと言うが、なかなかそう守られておらないことも間々あると思うんです。ですから、税調等にはかった問題等についても、尊重したというからには、よしんば違っても、一〇〇%と言わなくても、九九%あるいは九九・五%までは、答申を受けたというなら、税調にはかった意味がある。いま申しましたような問題は、国会で否決された問題は、何といったって、事の善悪を越えた私は問題だと思うんですから、これはひとつ凍結をしてもらいたいと思うんですが、そういうことについてどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/110
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111・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 開発銀行の任務は法律で規定をしておるわけです。私はその文言は忘れましたが、趣旨とするところは、産業の開発発展のために、他の金融機関でなかなか行ないがたいこういうものに対する融資をするというところにその任務があると思うのです。ですから、そのワクを越えまして開発銀行の融資が行なわれるということがあると、これは私は法の趣旨に反している、こういうふうに思います。ですから、大蔵省としては、どこまでも法の趣旨を尊重して対処していくと、こういう考えでやってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/111
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112・成瀬幡治
○成瀬幡治君 そうすると、いわゆる体制資金というのがございますが、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/112
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113・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 名前は聞いたことありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/113
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114・成瀬幡治
○成瀬幡治君 名前を聞いたことがないと言われれば、これはちょっと問題外になりますが、実際は、繰り越してあるのが四十億なんですね。そして昭和四十一年度は七十億ということは、これは常識になっておるんですがね。大蔵大臣が知らぬと言われちゃちょっと困った話で、そういう答弁は、うそも方便ということがあるから、それなら私も了承しますけれども、開発銀行がやるのは、たとえば造船だとかなんだとか、いままでは項目別に分けてきちっとしておった。その他の中に何が入るかということはいろんなことがあると思うが、少なくとも、御案内のとおり、特振法に基づいて何と何に出るかということはあったわけですね。それに対して、産業基盤の整備強化のために融資するということはちょっと好ましい姿じゃないと思うんですがね。法を守るとおっしゃるなら、文字どおりやってもらいたいと思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/114
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115・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 成瀬さんが具体的にどういうことを頭に置かれて言われているのか、それがよくわからぬもんだから、答弁しにくいのですが、開発銀行は、日本の産業の開発発展のために必要であって、しかも他の金融機関ではなかなか融資することが困難な事情があるときに融資を行なう、こういうのですから、そういう範囲を越えていろんな融資を行なうということは私はよろしくない、その原則は守っていきますと、こういうことを考えておるわけです。
何か具体的にお話があれば具体的にお答え申し上げますが、体制金融ということばをお使いになるんですが、よくこれは新聞でそういうことを言うのです。しかし、私どもは体制金融ということばは別に使っているわけじゃないし、どうもそれだけではお答えがしにくいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/115
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116・成瀬幡治
○成瀬幡治君 委員長、ちょっと速記とめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/116
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117・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/117
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118・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/118
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119・成瀬幡治
○成瀬幡治君 物品税ですが、これがたいへん引き下げられて、通産省は減税した分だけは値段を下げよということを盛んに言っておられる。私は、物品税の改正等の問題なんか、通産省ともいろいろとあなたのほうで御相談願っておやりになっておると思うが、それが一つの条件になっておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/119
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120・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 条件とまではいっておりません。おりませんけれども、十分話し合いをしながら進めております。なお、詳細必要であれば、政府委員から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/120
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121・成瀬幡治
○成瀬幡治君 なぜそういうことを言うかというと、入場税の例があるわけです。下げよということになって、あのときは相当大蔵省も努力されて、何か掲示板なんかつくって入場税の減税をちゃんとやることになった。そしてどのくらい続いたか、ちょっと記憶ありませんが、あまり長続きしなかった。そしてもとへ戻っちゃった。そういう苦い経験もあり、これが朝令暮改式のものであると、非常に、何と申しますか、法律は守らにやならぬと、政府の行政指導というものは相当私はウエートがあってしかるべきだと思うわけです。それが何かなしくずしになってしまうと、国民に与える影響というものは非常に大きいものだと思うわけですから、どういうようないきさつになっておるのか、そこのところをお聞きしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/121
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122・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) 成瀬委員の御指摘のように、物品税は消費税でございます。消費税は本質的に、本来消費者が消費税を負担するたてまえでございまして、間接的に徴収される業者の利益とすべきものでないことは言うまでもございません。そんな意味から、今回の物品税の減税はひとつぜひ価格引き下げの形で実現さしていただきたいということで、二月八日の閣議了解もいただきまして、昭和三十七年と同じような姿でひとつ価格引き下げを実現したい、かように現在努力中でございます。確かに入場税のお話も私も記憶がございます。このあたりはひとつ今後とも十分注意してまいりたい、かように思っております。
通産省がこれは中心となりまして、各業界と話し合って、現在のところ、新聞紙上をにぎわしておりますように、業界によって若干の反応が違っておりますけれども、大体減税相当分に近いものは引き下げよう。ただ、現在のところやはりいますぐにそれを出しますと、四月一日以降まで買い控えという問題が業界にとっては非常に苦痛である。したがいまして、とにかくぎりぎりのところでその姿を出したいのがその中心でございます。大体各業界に、通産省はこんな方向でいきたいということの案は出ておるわけでございます。
さらにまた、私どももそういったことを強力に進める意味で、四月一日から値下げになる、そうなりますと、三月中に蔵出ししたものが高いのでは、これはとても四月一日で値下げはできないと、こうなります。これも三十七年に実施したのでございますが、いまからひとつ未納税制度というかっこうで、税金は全然納めないで一定の場所までの蔵出しをして、そこを製造所と見て、そこから出たときにはじめて課税する。それは四月一日以降に課税するわけでございますが、そうなりますと、減税の将来のことについて不安なく蔵出しもできる。こんなふうな姿で現在のところ四月一日以降の値下げの実施を進めております。
さらにまた、成瀬委員のような御心配もございますので、私どもは残っておるものにつきまして、さらに考える将来の減税というものも相当ございますので、今回税金の引き下げがあるにもかかわらず価格を引き下げないものにつきましては、ひとつ十分注意して、今後の減税にも影響するような考え方をとりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/122
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123・成瀬幡治
○成瀬幡治君 大臣の御答弁によると、確約ではないが、相当な約束があるやにも受け取れるわけです。私も、全部税率を下げたものが値段にすぐそのままはね返るということは容易じゃないと思うのです、実際問題としては。そこで、一〇〇%はね返るものとそうじゃないものとあるわけですが、これは大体一〇〇%はね返る、こんなふうにして、たとえば入場税のときは掲示板までつくってやったんですが、今度はそういうことはあるのですか、何か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/123
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124・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) おっしゃるように、一〇〇%引き下がるもの、あるいはまた非常に在庫が多くて全部が全部の引き下げは当分なかなかむずかしいが、しかしそれを織り込んで引き下げよう、こういった業界もあることは御指摘のとおりでございます。そこで、これは入場税まではいきません。これは製造者課税でございますので、簡単に価格表示もできません。大体いままでどの程度の税金が入っておるかわからないものが相当あるのでございますが、しかし、少なくとも百貨店等につきましては、わかるものにつきましては店頭に表示するようなこと、それからまたプライス・カードまたはカタログに減税による価格の引き下げがあった旨を、業界にひとつ勧奨いたしまして出していこうというようなことを、現在閣議了解の線に基づきまして、通産省が中心となりまして進めておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/124
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125・成瀬幡治
○成瀬幡治君 ちょっと、閣議了解というお話が出たんですが、閣議了解というものはどういうことが閣議了解でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/125
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126・塩崎潤
○政府委員(塩崎潤君) これは三十七年のときにも同じようなことをやりましたが、おっしゃるように、法律でこれは値下げを強制することは消費税の性格からできないのでございます。しかしながら、税のたてまえから、紆余曲折はあるにいたしましても、長い目では消費者の負担というたてまえなら、値下げはすべきであろうということで、そういった税の精神に照らしまして、行政指導をする意味においての閣議了解が、今度の物品税の改定の際に、ことしの二月八日の閣議了解の形で行なわれたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/126
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127・成瀬幡治
○成瀬幡治君 では、最後に一つ。新聞を見ますと、関税の問題があるんですけれども、三十五条の問題ですね、何かOECDの中では日本にたいへん好意的な話も出ておるようですが、大づかみな見通しとしまして、大体日本に対していま二十二ヵ国ぐらい差別待遇があるわけですね、どんなふうになっているのか、何か大臣のところに話が来ておるものなら、この際お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/127
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128・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私、詳しいことは存じませんが、日本は八条国になった、そういうことから、OECDの参加各国は非常に好意的に変わってきておるわけです。ことに問題はヨーロッパ諸国にあるわけなんです。貿易の形でいいましても、アメリカには三割から四割ぐらいのシェアですね。アジア諸国も三割以上貿易をしておるわけです。それにもかかわらず、あれだけの人口とあれだけの所得、消費力を持っておるEECの諸国は、わずか十何%という貿易しかしていない。それは特にフランスとイタリアです。この二ヵ国が日本に対しましていろいろな制限をしているわけです。ドイツは非常に改善されてきております。で、それらの国に対しては、日本のヨーロッパ外交としては非常な重点を置いて差別撤廃の努力をしておりますが、逐次実りつつある、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/128
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129・成瀬幡治
○成瀬幡治君 また、こまかい話は関係のお方から承るようにしまして、少なくとも日本の貿易構造を垂直貿易から水平貿易をふやさなければならぬということは当然なことだと思います。そこで、せっかく八条国に移行して、日本では思い切って九七、八%ですか、自由化してしまったわけですね。それが、こういうときですから、輸出が不景気で何と言ったってプレッシャーがかかっておるから、私は成績は上がっておると思うが、これは好況に転換すればまた逆になって出てくる。ですから、国際収支のほうから勘案して非常に重要な問題だと思うが、大臣も非常に関心があってせっかく努力されたんですから、私はこういうことになってきたと思うんですが、およそOECDの結論はそこで出たような形になってきておる。これが今度いろいろなことをやられるのは個々の国との折衝になってくるかと思うが、そういうような経済外交という大綱のもとに動かれることだと思いますけれども、そういうようなことは一体外務省だけの人にまかせておくということになっておるのか。あそこにも大蔵関係の方が出ていたようですね。それから、たとえば問題になるフランスあるいはイタリアというようなところには、相当大蔵省関係から私は外交官に、何というか、駐在員というんですか参事官というんですか、そういう人を相当思い切って出さなくてはならぬと思うんですけれども、そういうようなことについて、何か大臣としてお考えになっているのかどうか。いわゆるOECDの中の特にEECの関係に関連して、どういうようなことを考えて経済外交を展開されようとしておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/129
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130・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 通商の問題になりますと、所管はこれは通産省なんです。それから、その出先が外務省だ、こういう形になります。したがいまして、大蔵省は通商問題には直接な関係はないわけです。しかし、とどのつまりは国際収支、これは大蔵省の所管です、ここにはね返ってくる問題でありますから、大所高所からのタッチはとっておるわけです。ことにまあ閣議段階とかそういう段階になりますると、大蔵省もいろいろの主張をし、また提言もするわけなんであります。が、しかし、まあ本来が責任官庁はだれかというと、通産省と外務省でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/130
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131・成瀬幡治
○成瀬幡治君 いや、ちょっとそこのところわかりにくいんですが、OECDに出ていってこういうようなことをやられるのは大蔵省なんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/131
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132・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114629X01419660328/132
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133・徳永正利
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
五案につきましては、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後四時二十五分散会
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