1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月三十日(水曜日)
午前十時三十一分開会
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委員の異動
三月三十日
辞任 補欠選任
郡 祐一君 大森 久司君
竹中 恒夫君 中村喜四郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 林田 正治君
理 事
小林 武治君
沢田 一精君
加瀬 完君
原田 立君
委 員
大森 久司君
小柳 牧衞君
高橋文五郎君
津島 文治君
天坊 裕彦君
中村喜四郎君
鈴木 壽君
松澤 兼人君
松本 賢一君
市川 房枝君
国務大臣
自 治 大 臣 永山 忠則君
政府委員
自治省財政局長 柴田 護君
自治省税務局長 細郷 道一君
事務局側
常任委員会専門
員 鈴木 武君
参考人
一橋大学教授 木村 元一君
学習院大学教授 恒松 制治君
栃木県足利市長 木村 浅七君
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本日の会議に付した案件
○地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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001・林田正治
○委員長(林田正治君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、初めに本法律案について参考人から御意見を伺いたいと存じます。
参考人の方々におかれましては、非常に御多忙中にもかかわらず御出席願いまして、まことにありがたく存じます。これより、さっそく御意見を伺いたいと存じます。なお、時間の都合によりまして、御一人十五分程度にお願いいたしたいと存じます。
また委員の方々に申し上げますが、参考人の方方に対する質疑は、お三方の御意見が全部終わりましてからお願いいたしたいと存じます。
それでは初めに木村元一参考人にお願いいたします。次に恒松制治参考人にお願いいたしまして、続いて木村浅七参考人にお願いいたします。
最初に木村元一参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/1
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002・木村元一
○参考人(木村元一君) 時間が限られておるようでございますので、ごくあらまし国の今回の税制改正に関して意見を申し上げたいと思います。
ことしの税制改正は、かなり大幅な減税を目途にして、国税、地方税を通じまして、初年度三千億ばかりの減税をすることになりました。そのかわりに公債政策が入ってくるという、ここ十年来の日本の財政経済にとりましては、かなり大きな変化が見られる。ただ、いままでが正常であって、現在が危機的とか異常であるというような感覚は私は間違いだと思っております。つまり、いままでが少し異常過ぎたのでありまして、今後はむしろこういう状態がジグザグの形で続いていくというふうに考えて処置をとっていくべきである、こういうふうに考えております。
で、地方の税財政問題は、もう何回も皆さんの間で議論になっておりますように、国、地方を通じての事務配分の問題がよく考え抜かれておらないために、筋の通らない、いろいろな措置が絶えずつけ加えられてくるという状況になってしまう。それから、その対策を考えるための委員会といいますか、調査会といいますか、いろいろな機関があるのでありますけれども、税については税制調査会が主としておやりになる。事務配分の問題については地方行政委員会のようなものがおやりになる。補助金の問題については補助金の合理化審議会というようなものを設けてそこでいろいろ研究をする、補助金とよく似ておる交付税というのは、税という名前がついているがために税制調査会の仕事である。補助金をつけるつけないについて、その仕事の量とか、あるいは性質を選定いたしますにつきまして、当然問題になることでありますが、補助金の問題を考えるときには、現在の事務配分というものを一応前提とした上でひとつ考えていきましょうと、こういうことにならざるを得ない。つまり、事務とそれから国からいきます交付税なり補助金なりと、地方の持っております独立の財源——主として租税でありますが、租税、この三つがそれぞればらばらにいつも検討されておりまして、総合的に三つのものの調整をはかるということがどうもおろそかにされ過ぎておるように思うのであります。
従来はそのような状況にもかかわりませず、まあ十年来、昭和二十九年、三十年ごろから今日まで幸いにして、また僥幸といいますか、異常に高い経済の成長にささえられまして、いろいろな無理がそれほど意識されないままで済ますことができてきたように思うのであります。たまたま成長率が七・五%という、日本の経済にとっては私はもうそれでもなかなか大きな成長目標だと、つまり長期的に考えた場合に、七・五%といったような成長率は、それでも相当高過ぎるといいますか、目標としては高いものであると思うのでありますが、だんだん成長速度が鈍ってきて、税収が十分あがらない。これは国についてもそうでありますが、ことに地方についてそれがはっきりあらわれてくる、こういう状況になって、いままでやってきたことの継ぎはぎ的なやり方に対して、何か根本的に考えなければならぬのじゃないかという様相といいますか、事情がだんだんはっきりしてきたように私には思われるのであります。
そもそもと言うと少し大げさになりますけれども、地方の財政なり自治なり税制なりは、一体どうあるべきかという理想の姿というものを描くことが実にむずかしい。これは私の恥を申さなければなりませんけれども、地方の財政、税制について勉強を始めましてからまあ大体私七年ぐらいにしかならないのでございますが、若いときからやってきてなかったせいもありまして、一体地方自治というのはどういう意味なのか、そういうことから勉強を始めてみようと思って、いろいろな書物や外国の例などを調べてみますというと、もういよいよわからなくなってまいります。日本の例で申しますと、一方には地方の財源を充実して、国との関係をなるべく断ち切ったような形で自由に、それこそ自主的に地方がやっていくということが、地方自治の本旨といいますか、目標であると考えられておりますが、しかしながら、この財政上の実情を見ますというと、御案内のとおり、かなり裕福な市町村あるいは府県が一方にあるかと思うというと、ほとんどすべてを補助金とか交付税でやっていかなければ立ち行かないような市町村、府県もある。ことに最近興味を持って離島関係を調査に参りますというと、小さな村で、もう一から十まで県なり、あるいは国なりにお願いをして仕事を——道路をつけてもらう学校をどうしてもらう、港湾を整備してもらう。船を出してもらうについても、とても採算ベースに合うようなものがありませんので、結局県なり国から補助をもらわなければ交通もうまくいかないというふうな、非常に貧弱なところもございます。
そこで、もし地方の独立税主義というものを、地方自治のために必要なことであるということで推進してまいりますというと、財源といいますか、経済力のあります府県、市町村では、与えられた財源を、税源を十分利用して相当の仕事がやれるようになると思うのでありますが、しかし、貧弱なところでは、どんな税金をもらいましても、それを利用する道がない。まあせいぜい、たばこ消費税のような、現在たばこの本数で分けておるようなものがありますが、きわめて交付税によく似たような税金であれば、貧弱な市町村、府県にも潤ってまいりますけれども、ほかの税金を何を渡しても、格差は広がるばかりである。ところが、他方におきましては、テレビ、ラジオの普及とか、戦後の民主政治、デモクラシーのかけ声という影響もございまして、どこの町、どこの村へ参りましても、同じ程度の行政水準を要求する声が強い。いなかへ参りまして目立つのは、校舎が建て変わりましたために、非常にりっぱなものができまして、もちろん、しさいに見れば、都会の学校の施設と比べて劣るところがたくさんありますけれども、そこに住んでおられる村の方々の住宅と比べますというと、おそろしくりっぱな校舎ができておる。やはり学校関係で申せば、教員組合あるいは学校の先生方の研究団体、全国的な組織、あるいはその上に文部省の一定の基準といったようなものがございまして、それにのっとって教室の整備も、科学室も特別教室もというふうに広がっていくのであります。これも大きな目で見れば、日本の民主化といいますかのためには、必要なことであるようにも思われる。もしそのほうを強調するとすれば、地方にはあまり独立税を渡さないで、むしろ交付税を強化していくという方式のほうが、あるいは能率的であるかもしれない。しかし、交付税が非常に多くなってくる、あるいは補助金が多くなってくるということであれば、これは先ほど申しました地方自治という考え方、独立税主義という考え方に背馳する。一体どっちをどういうふうにあんばいして調整していけばいいかという点になりますと、私、実際よくわからない。これからもなお研究させていただくつもりですけれども、どうも結論はなかなか得られないような感じがしております。しかし、そういう矛盾した状況の中ではございますが、同じ国から地方をささえるためにお金を渡すとすれば、まあできればまず第一に税金で考えてみる。しかし、どうもぐあいが悪いということであれば、次に交付税で考えてみる。補助金で出すということになりますと、これは何と言っても一番国の、あるいは県の、市町村なり府県なりに対する統制と言いますか、ひもつきと言いますかが強くなってまいりますので、その意味で補助金はなるべく整備する。一番先に考えることは独立税、次に交付税、最後に、やむを得ないものについてのみ補助金を考えるというふうなシステムをひとつ仮定いたしまして、私そういう線で行ったならばどうなるだろうかということで一応考えてまいってきておるものでございます。
その意味で、今回の地方税の改正におきまして、私ども税制調査会のほうで考えました大きなポイントが、一つ二つ今度くずれております点は、まことに遺徳に私は思っておるのであります。その一つは、住民税の改正でございますが、所得税と住民税とを両方合わせた負担の軽減ということ、これはもう物価の騰貴その他を考えまして、おそらく、ほんとうの意味の減税になるというのではなくて、増税になっては困るから調整のために税率を下げ、あるいは基礎控除を上げるという措置をとらざるを得ないのですが、その意味で私どもは国税、地方税双方を頭に置いて改正の素案といいますか、要綱をつくったわけであります。
そのときの考え方は、地方の税金としては、どうしてもどちらかというと低所得層のほうに税金をかけるようにしなければ、先ほども申しました格差というものが非常に大きくなってしまう。現に小さな村に参りますというと、国税を納める人というのは、数えるほどしかいない。その国税にリンクさせたような住民税を取るということになりますというと、ほとんど住民税が取れないというような結果になってしまいますので、住民税のほうは少し所得の低いところからかけていく。国税を少し高いところからかけていく。しかし、全体として国税、地方税を通じた租税の負担は増税にならぬような意味の減税、調整減税をやるべきである。ところが、国税の減税については、大体提案どおりに相なりましたようでございますけれども、地方税については、いわゆる税源の委譲、国税で下げた部分の一部分を地方で取るということになって、各方面から反対が出たようでございまして、これは減税ムードの中で増税とはどういうわけだというふうな御意見が勝ちを制したようでありますが、私どもの提案したようなことをやろうとすると、ある時期にはどうしてもある程度の無理が起こるということは、これはもうやむを得ないのであります。川を渡って向こう側に行けば、合理的にある程度やれるというところに川がある。それを渡るときにある程度足がぬれるということは、どうしても改正に伴って起こってくることでございますが、そのときに、年々のことで、いま申しましたような幾らかでもどこかで増税になるような人が出たのでは困るのだという考え方だけでいきますと、合理的な税制の改正ということはむずかしいのではないかというふうに、ひそかに憂えている次第でございます。
それからもう一つ、あとで隣におられます恒松先生からもお話があるかと思うのでありますが、固定資産税につきまして免税点の引き上げという措置が加わったために、当初の増収予定から五十億ばかり減ったようでございます。この点は、事務的に私どもどの程度スムーズにいくかということが問題であったのでありますので、免税点の引き上げがスムーズにいくということであれば、これに反対する理由は少しもございませんけれども、ただ固定資産税をめぐって一般の議論を拝聴しておりますというと、自分がただ住んでいる家が、時価が上がったからといって税金をとるというのははなはだ不都合であるとか、あるいは実業界の方々から言われることでありますけれども、もうけてもいない会社に固定資産税をかけてくる、しかもそれが増税になってくる。増税といいますか、税率の引き上げじゃございませんけれども、時価が改定されるために税金をよけい納めなければならぬということになると、これははなはだ悪税であるというような声が聞こえておるのであります。
しかし、どんな税金でも、完ぺきに公平でりっぱな税金というものはあり得ない。所得税のごときものは、いい税金だとおっしゃったけれども、私ども大学の関係の者と会社へつとめておられる人で、社宅がある人とない人との間の生活の内容というものはずいぶん違うんです。しかし、所得税というものが、貨幣経済をもとにしておる関係上、現物給与について十分考慮することができないという本質を持っておる限り、ある程度の不合理というものは所得税においてもがまんしなければならない。固定資産税の場合でも同様でございまして、一つ一つのケースを見れば、はなはだ不合理なことが起こってまいりますけれども、平均的に見て、財産を持っておる人と持っておらない人との担税力ということを頭に貫きますというと、持っておる人のほうがやはり担税力があるのであります。そういう点で何か一つの税金を悪税ときめつけたり、まあ電気ガス税についても同様の見解があるようでございます。あれは悪税であるということを言うのでありますが、そういう意味で申すならば、税金はすべて悪税でございます。ないほうがいいのでございます。しかし、税金をとっておる国であるから資本の自由、民主的な政治ができるのでありまして、もしこれが全部国有の制度になってまいりますれば、税金という形で特別にとらなくても済むようになりますが、そのかわり、また全く社会組織の違った国柄に変わっていくわけでございます。税金というものは、そういう意味で、決して絶対的にそのある税自体が悪税であるとか良税であるとかということは、なかなか言えない性質のものであるということをこの際一言申し上げたいと思います。
たいへん予定した時間よりももう十分ほど過ぎてしまいまして、ほかの参考人の方々に御迷惑をかけましたけれども、ひとまず、これで私の意見を終わることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/2
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003・林田正治
○委員長(林田正治君) 次に、恒松制治参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/3
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004・恒松制治
○参考人(恒松制治君) いま木村先生から一般的な問題についてお話がございましたので、私は四十一年度の予算編成の場合の地方財政の問題点、あわせてこれからの地方財政のあり方と申しますか、そういうことについて意見を述べたいと思います。
で、四十一年度の地方財政計画の中で、非常に大きな問題が私は二つあると思います。一つは、地方税の減税によって税収の伸びが非常に小さくなったということであります。去年一五、六%の伸びがあったものが、ことしは五%くらいに減ったという。それからもう一つは、地方の財政需要と申しますか、いわば出るほうでありますが、そうした財政需要が依然として大きい。特に公共事業がかなり拡大される見込みでございますので、そういう意味では財政需要が依然として大きいということです。したがって、入るほうがあまり入らなくて、出るほうが依然として大きい結果、財政計画がかなり苦しい計画になっていると思います。その苦しさがあらわれておりますのは、二つの方向であらわれているわけであります。
一つは、歳入の中に占めますところの地方税の割合が非常に低下をいたしまして、国庫支出金の割合が非常にふえたということでございます。これは先ほど木村先生のお話にありましたように、地方自治という問題にかかわってくる問題でございます。それからもう一つは、地方債が著しくふえたということでございます。
で、この二点が顕著にあらわれている問題点だと思うわけですが、その最初の国庫支出金の割合がふえたということにつきましては、私はさほど大きく考えておりません。先ほど、国庫支出金の割合がふえるということは、地方自治にとって悪いというふうな考え方もあるというお話がございましたけれども、私はそれほどそれを強く感じておりません。しかも、地方税の割合が低下をしたといいましても、三%でございますし、国庫支出金がふえたと申しましても、その割合は二%にしかすぎないわけでございます。それよりもむしろ地方債が非常にふえたということのほうが、私は問題だと思います。で、将来の地方財政の運営に対してこれが大きな負担になるであろうというふうに考えられるからであります。こうした地方財政計画にあらわれました問題点は、いずれも、先ほどのお話にもありましたように、ことしの財政政策の方向として、減税ということと、それから公債発行ということが地方財政への影響としてあらわれた問題であります。これからの地方財政の運営がどのような方向をとらなければならないかということに対して、大いに検討を要する問題であろうと思います。で、これからの地方行財政の運営を行なってまいります場合において、どのような行政を国と地方との間でどのように分担し合うか、あるいはそのためには財源をどのように配分したらよろしいか、こういう問題がこれからの地方行財政の大きな問題点になるだろうと思うのであります。
そこで、こうした方向の中でことし幾つかの地方税の改正がなされたわけでございます。それに対して若干ここで意見を申し述べたいと思います。その一つは、第一番目は交付税率が二・五%引き上げられて三百三十五億の地方税収入の増になったということであります。私は、これはまさしく当然の措置であろうかと思います。交付税は御承知のように、本来地方団体の財政需要とそれから財政収入との差額を補てんするものでありますから、現在の財源の配分あるいは税の配分を前提といたしますならば、財政収入の伸びが少なくとも減税によって、あるいは減税政策によって財政需要の伸びに追いつかない、こういう事態が生じました場合には、当然自動的に引き上げられてしかるべきものであると、こういうふうに考えておるからであります。そのために国へのと申しますか、国庫への依存が増大いたしましても、それは一向に差しつかえないと思います。ただし、ことしの改正にありますように、四百十四億のいわゆる特例交付金が出されておりますけれども、こういう臨時的なものは、地方財政の制度と申しますか、あるいは秩序を維持する上において必ずしも適当ではないだろうと思います。なるべくこうした臨時的なものはないほうが望ましい、こういうふうに私は思います。
それから第二番目に、先ほど木村先生もお話しになりましたが、固定資産税と都市計画税の増税であります。これは増税ということばが適当ではございませんので、負担の調整といったほうがよろしいと思いますが、この改正も私は当然の措置だと思います。この固定資産税、都市計画税の調整は、主として土地に対するものでございますが、新しい評価制度になりました昭和三十八年のときに、昭和三十九年から四十一年までの特例といたしまして、田畑、すなわち農業用地でありますが、田畑は昭和三十八年度の負担をこえないという、それから、それ以外の土地に対しては、三十八年度の課税標準額の一・二倍、言いかえれば二割増しの額に税率をかけたものをこえない、こういういわば特例措置があったわけであります。その特例措置から申しますと、今度の改正は若干それに反するわけでありますけれども、しかし、私はこの特例規定そのものがもともと無理だったと考えております。もう昭和三十七、八年ごろから人口が都市へ非常に急激に集中するという現象を生じておりますものですから、こういう人口の都市集中という現象から見ますと、こうした規定が、当然負担に不均衡をもたらすということは明らかなことであったわけであります。したがって、もともとその規定それ自体が無理だったと思います。したがって、今度地価の値上がりに応じましてこうした負担の調整をするということは、私は必要な措置でありますし、当然の措置だろうと思っております。ただ聞くところによりますと、来年評価がえをする場合に評価がえをしないで、そのまま延ばしていくというふうな措置も講ぜられたように聞いておりますけれども、むしろ来年度の評価がえをして新しい評価制度に基づくところの負担の公平を期するほうが私は望ましいと思います。それからなお、それに付け加えまして、農地に対する特例でございます。これは今年度もあるいはその後も、三十八年度の税負担をこえないという措置が据え置かれるようになっております。しかし私は、これはもっと考慮すべき問題だと思います。土地というのはいろいろの用途に供せられるわけでございまして、現在の農地が必ず農業のためばかりに利用されなければならないという理屈は一つもございません。たとえば大都市のまん中にあります土地が、名目上農地である、こういうことのために、特別に低い評価によって税負担の軽減がはかられているということは、私は望ましい姿ではないと思います。特に土地のような貴重な資源を、わざわざそうした非効率な用途に向けるということは、日本の経済全体から見ても望ましいあり方ではないと思います。むしろ適正な地価によるところの税を払い得るような、そうした農業の生産力を高めるような方向こそ政策として正しいのであって、税の特例によって、生産性の低い農業をそのまま維持するとか、あるいは奨励するとかいう態度は、政策としては望ましくないと思っております。ただ、工場敷地のように、非常に大きくまとまらないと価値のないような土地に対しましては、それを付近の地価に見合って一坪当たりの地価をそのまま何万坪かに拡大して地価を算定する、それによって税金をかけるということは、やはり検討を要する問題だろうと思います。
それから今度の地方財政計画の中にあらわれました第三番目の問題は、国庫補助金を合理化するための超過負担の解消を目的といたしまして、百五十億円が見込まれたということであります。私は、これは非常に方向としては望ましい方向だと思います。しかしながら、国の補助金に対して地方団体がそれに足し前をいたしますいわゆる超過負担というものが、現在一千億をこえるというふうにいわれております現状からいたしますならば、百五十億円というのはいささか焼け石に水といった感じがしないでもございません。特にこれから地域開発というふうな関係で、国庫支出金でありますとか、あるいは国庫補助金が少なくとも減らないであろう、あるいはふえるかもしれないということを考えに入れますと、もう少しこうした超過負担を解消するような努力がなされなければならないと思います。これは地方団体の財政を苦しめるばかりではございませんで、財政の秩序そのものをも乱すものだと思われるからであります。
それから第四番目には、先ほど申しました地方債に対する配慮がもう少しなされなければならないだろうと思います。今度の地方債計画によりますと、一般会計、普通会計あるいは公営企業を含めまして約六千七百億という公債が予定されております。そのうち二千八百億余りがいわば縁故債でございます。はたしてこれだけの縁故債が消化し得るかということは、非常に問題だと思います。特に府県、大都市、市町村をそれぞれ比較いたしますと、市町村の縁故債の利子率というものは、他の地方団体に比べてかなり高くなっております。かなりというか、若干高くなっております。そういうことから申しますと、こうした縁故債を募集いたします場合に、ますます市町村の段階での負担が重くなりはしないかということが心配されます。
それから地方債に伴う第二番目の問題は、将来地方財政の運営の面で公債の元利償還費が地方財政の運営を大きく圧迫するのではないだろうかという心配があるということであります。これに対しては何らかの措置が今後望ましいということであります。したがって、停滞的な、あるいは経済が若干衰退に向かうような地方団体に対しては、なるべく地方債を制限して、むしろ交付税を厚くするようなそうした措置がとられることがこれから必要になろうかと思います。こういうふうな四十一年度の地方財政計画にあらわれました問題点を拾ってまいりますと、これからの地方行政あるいは地方財政の運営にとって考慮すべき幾つかの点があると思います。それについてつけ加えておきたいと思います。
その一つは、地方財源の強化のためにどういうことをしなければならないかということであります。先ほどもお話がございましたように、所得税の地方委譲というような形での税源の配分も必要ではございましょうが、そのために地方団体間の格差がよけい広がって、調整の財源をどうするか、あるいは財政調整をどのような形で行なうかという新たなる問題が出てくるかと思います。私はむしろこれからの財源の強化のためには、額は少ないかもしれませんけれども、もう少し受益者負担的な要素を取り入れるべきではなかろうかと思います。たとえば使用料、手数料あるいは公営企業の料金、そういういわば受益者が負担するような措置をもう少しとったほうが、地方自治体の自流を発展させる上からも私は望ましいことではなかろうかと思います。
それから第二番目には、地方行政の運営をもっと合理化して、財政支出の面で合理化あるいは節約をはかっていく必要があるということであります。この地方行政の運営の合理化のためには、幾つかの方法があると思います。たとえば地方行政の広域的な処理であります。たとえば学校については二、三カ町村が共同でやるとか、あるいはし尿処理については四カ町村なり五カ町村なりの共同で行なう。そうした地方行政の広域的な処理の必要、あるいはその余地がもっとあると思います。
それから第二番目には行政費の節約に必要な制度の改正をしていかなければならないということであります。たとえば現在問題になっております地方公務員の定年制などもその一つであろうと思います。
それから第三番目には、地方行財政を運営してまいります場合に、年度間にわたる計画的な運営が必要だということであります。現在の地方行財政は、ほとんど全く場当たり的な運営をしております。したがって、もう少し長期的な計画に基づくところの財政運営が望ましいということであります。むしろそうした計画的な運営こそ、地方自治の発展にとっては一番重要な改正と申しますか、方向ではなかろうかと、こういうふうに考えております
以上、四十一年度の地方財政計画を中心にいたしまして、意見を申し述べました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/4
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005・林田正治
○委員長(林田正治君) 続いて、木村浅七参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/5
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006・木村浅七
○参考人(木村浅七君) 私ども第一線で地方行政をあずかっておりまする者の立場から申し上げたしと旭します
まず、地方財政の現状とそのあり方についても触れてみたいと思いますが、近年、地方都市におきまして地域開発あるいは社会開発など、国の要請に基づく財政需要が逐年増大をしておりまするのでありますが、その反面において、市町村の財政収入というものがこれに伴っておりませんので、地方財政というものは窮迫しておることはもう申し上げるまでもなく御承知のことだと思うのであります。ことに明四十一年度におきましては、国が公債政策をとって、公共投資、開発事業の投資等に大幅に増大をすることとなりまするので、勢いいま地方の負担というものは増大が相当なものが考えられるということも、おのずから考えられるわけだと思います。
そこで、この国の巨額の公債発行による公共事業の推進と、三千億からの大幅の減税を実施することに伴いまして、地方財政においては、支出の面では公共事業の拡大による地方負担がふえる。収入面では減税に伴う一般財源の減を招くこととなりまして、いよいよ窮迫の度を加えていくということになるのであります。このことは、昭和四十一年度の国の地方財政計画によって見まするというと、地方税の前年対比の増加率は五%であります。それに税率の引き上げを見ました地方交付税を加えましても七%にすぎません。半面に地方債は七七%の増、国庫支出金は二〇%の増を示しておるのでありまして、このことは、地方財政の歳入の面において国庫依存の度合いというものがいよいよ高くなったことだと思うのであります。それだけ地方財政は自主性が減退をした、地方財政全般が脆弱性を増したことを示しておると思います。またこういうことは、将来の都市財政に影響の響く問題でありまして、将来の地方債の償還というものもふえるでありましょうし、こういう意味からも、私どもは税制改正のたびごとに、地方の自主税財源の強化を強くお願いをして今日まできたわけであります。
私どもは、国が大幅に減税をするから、地方も減税をせよと言われましても、地方じゃ全然余地がない。国が地方税の減税による歳入欠陥の補てんをしてくださるならばというような、他力本願にならざるを得ないのであります。それほど窮迫しておるということを申し上げざるを得ないのであります。こういう意味からも、これはなるべく早くこの地方財政の窮迫状態を是正するという意味におきまして、国と地方団体間、あるいはまた地方団体相互間においての税財源の調整をする、国の財源を大幅に地方に委譲するというようなことも、どうしても考えてもらわなければ、この問題は解決ができない。このことは先ほども諸先生からお話がありましたように、国と地方との事務の再配分というような問題にも関連をしてくるでありましょうが、現実の問題として、地方の財政をこのままで放置はできないということがあるのであります。どうか慎重な、この地方税制の問題についてはお考えを切にお願いを申し上げる次第でございます。
そこで、一応地方税の現状とあり方に対する私どもの要望を申し上げたのでありますが、今回の地方税法の改正案について申し上げますというと、まあ住民税につきましては、課税の最低限の引き上げによる減収の補てんが講ぜられておりまするし、また法人税割りも法人税の減税に伴う措置が講ぜられておりまするし、あるいはゴルフ場所在の市町村に対しては、これまた利用税の交付金制度が初めて創設をせられたということであるのでございます。さらにまた、固定資産税、都市計画税においても、それぞれの調整措置がとられて、少しでも住民負担を軽くするという一方、また市町村の税源を確保するという配慮がなされておるということに対しましては、私どもは感謝をいたしております。
まあそういう意味で今回の改正案を考えまするときに、基本的には賛成を申し上げる次第であります。ただ衆議院におきまして政府の原案が、固定資産税に対する修正をされたわけでありますが、あの衆議院の修正案によりまするというと、固定資産税を中心に五十数億円の減収を招くこととなりまするので、これをこのままでおきましては、地方財政に甚大な影響を与えることはもちろんでありまするし、まあ衆議院におかれましても、修正案の決定に際しましては、政府の責任で完全に補てんをするよう附帯決議がなされておるのでございまするが、どうか参議院におかれましても、市町村の財政の現状にかんがみまして、完全な減収の補てんが措置をせられるようにお願いを申し上げる次第でございます。特にこういう固定資産税の改正案による減収を補てんをされる場合におきましては、どうか地方交付税の不交付団体、交付団体を問わず、全般の地方団体に行き渡るような減収の補てんの措置が御配慮がせられますように、たとえば、今回きめられました第一種臨時地方特例交付金のような方法で、この修正案の減税を完全に補てんの措置が講ぜられるならば幸いと考えるのであります。
そこで、この機会に今回の衆議院の修正案によりまする固定資産税あるいはまあ都市計画税の影響について、私の足利市として調査をいたしましたところが、相当な大きな影響がありまするので、少しくまあ申し上げてみたいと思いますが、固定資産税におきましては、この免税点の引き上げによりまして土地、家屋の納税義務者が二万九千人のうち四千百十九人減、一三・七%減という納税義務者が減ります。そして税額の減少は、土地の分が五百一万円、家屋の分が九十五万四千円、合わせて五百九十六万四千円の減となります。また償却資産の免税点も十五万円から三十万円に引き上げる、これによりまして納税義務者が二千四百四十九人のうち八百四十六人、三四・六%減ずることになります。そうして償却資産税の減収は二百五十一万一千円、そういたしまするというと、合計をいたしまして八百四十七万五千円の減収ということになります。一方、都市計画税も八十八万六千円の減となりまして、固定資産税と都市計画税を合わせて九百三十六万一千円の減となるのであります。政府の原案によりまする固定資産税等の調整措置によりまして、固定資産税を都市計画税の増収の見込みは千七百万円でございました。しかるところ、修正の案によりまして九百三十六万一千円の減ということになりまするから、これは歳入増見込みの五五%減と、こういう計算が出ることがわかったのであります。これはまあ相当の各市町村として大きな問題でありまするので、重ねて申し上げるようでございますが、どうか完全な補てんの方途を講じていただきたいことを特にお願いを申し上げる次第でございます。
次いで改正法案の内容の主要項目について簡単になお加えまするというと、住民税の改正につきましてはもう減収の補てんがなされております。しかも恒久的な減収の補てん措置が講ぜられましたので、これにつきましては私どもは何も言うところはございません。
固定資産税につきまして申し上げまするというと、固定資産税につきましては、年々地方税全体に占める割合が低下してきております。これはやはり評価がえ等が十分に実施せられなかった影響ということを申し上げていいと思うのでございます。今回の新評価による改正、まあ調整措置というふうな方法が講ぜられてはおりますが、まあこれから見ましても、負担の不均衡を是正するという意味から申しましても妥当な方法だと考えるのであります。また個人には宅地等に対する急激な負担増を調整するという措置も、これも国民負担の現状から見ましてやむを得ない妥当な措置であろうと考える次第であります。
ただ、農地につきまして少しく申し上げたいのでございますが、農地につきましては、いろいろ国としても政策的な見地から調整の対象外とされておるのでございますが、このことは農地以外の土地との負担の不均衡を来たすということはもう免れない、かように考えるのであります。ことにその農地の中でも宅地の転換が予想をせられる土地につきましては、一般農地と区別をいたしまして、宅地と同様な措置が講ぜられるべきではないかというふうに考えておるのであります。宅地の転換を予想して、農地が放置せられておるというものが相当に見受けられるのでありまして、このことは大きな負担の不均衡を招いているということを申し上げていいと思うのであります。
なお、今回の地方税の改正の中に、非課税の特別措置というようなことがやはりあげられておりますが、たとえば冷蔵用の電気に対する課税標準の特例措置、私どもはこの固定資産税あるいは電気ガス税のこういう地方税に対する非課税の措置あるいは減免の規定というようなものに対しては、地方税の税収を確保するという面から見ましても、これが撤廃方を国に向かいましても、国会に向かいましても強く例年要望をいたしてきておるわけでありまして、そういう国として経済政策上あるいは産業政策上必要であるというような面につきましては、地方の負担によることなく、国の責任において適当な処置をしていただきたいということで、今回もここに非課税の措置がなお講ぜられて拡大をされておるということにつきましては、まことに私どもは遺憾に存ずる次第でございます。
なおこのついでに、少しくあわせて申し上げておきたいことは、道路の目的税源というものが市町村には全くないということであります。府県や六大市には措置をせられておるわけでありますが、現在のような交通の事情というもの、また地方開発の重要性が叫ばれているときに、道路の改修ということは非常に重要な問題でありまするが、これに向ける地方の財源というものが非常に乏しいということであります。この問題はかねて来、私どもも地方にも、市町村にも特別な道路の目的税源を与えて地方開発に資するようにということを要望しておる次第でございます。この問題は、揮発油税あるいは石油ガス税を地方に委譲する、市町村の委譲についても何らか考えていただきたい。あるいはまた自動車の取得税等を創設をしまして、それを市町村に交付金として交付するとか、あるいはその税額に相当する自動車税の相当部分を市町村に委譲するというような方途もあろうかとも考える。この問題につきましても今後十分慎重にお考えを賜わりまするならばまことにしあわせと存じます。
以上、私ども市町村の第一線を担当しておる者といたしまして、一応地方税の改正等について申し上げた次第であります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/6
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007・林田正治
○委員長(林田正治君) ありがとうございました。参考人の方々の御意見の陳述は一応以上をもって終了いたしました。
参考人の方々に質疑のある方はどうか発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/7
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008・小林武治
○小林武治君 ちょっと迂遠なことを両先生に伺いますが、地方税とか地方制度とか地方行政、そういうことは大学では何か講座で扱っておられますか、どういうふうな名前でお扱いになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/8
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009・木村元一
○参考人(木村元一君) 私どものほうでは地方財政論という講座がございます。地方自治については法学部で、地方自治のための、行政法で、法律的な問題は法律の問題として教えておりますが、地方行政論という講座はまだ残念ながら開議されていなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/9
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010・小林武治
○小林武治君 そうすると、地方財政は独立した講座としてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/10
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011・木村元一
○参考人(木村元一君) 私どもの一橋にはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/11
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012・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 学習院では、地方財政論という講座がございます。それは、経済学の専門科目として地方財政論という講座が設けられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/12
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013・小林武治
○小林武治君 そうすると、いまの税制とか交付税とか、こういうふうなことは、お扱いになりますが、地方自治とか地方制度とか、こういうふうな問題については、行政法の一部として何かお扱いになっている、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/13
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014・木村元一
○参考人(木村元一君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/14
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015・小林武治
○小林武治君 一つ伺いますが、先ほど木村先生は、どうも特別財源を持たすといっても限度があるし、交付税も必要で、どうしていいか、いまのところわからぬというお話でありますが、そうすると結局いまのような状態が是認される、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/15
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016・木村元一
○参考人(木村元一君) 時間がないものですから、私の考えていることをみんな申し上げることができなかったのでございますが、極端なことでございますが、こういうことを考えております。市町村については行政上、たとえば名前は何としていいかわかりませんけれども、一等市町村、二等市町村、三等市町村ぐらいに分けまして、事務配分の上で、たとえば学校を国持ち、あるいは県持ちというようなことをやらざるを得ぬような市町村については、事務の量を減らしてしまうというようなことを考えて、どうしても三千五百市町村ございますということは、なかなか一律には制度の上で合理化することがどうもできないのじゃないか。そうすると、あるいはそういう市町村に指定されたところはどういうお気持ちをお持ちになるか、そのリパーカッション——反響をつまびらかにいたしませんが、ほとんど三千五百の市町村が同一の制度でもって立ち向かっているために、いろいろな整理がつかない問題が起こってくるような感じがいたします。それで、なるべくならば、独立税主義で地方の財源を強化し、それが日本の地方自治並びに政治、経済のためにいいことだと思っておりますけれども、取り残されたものについても、やはりある程度考えてあげないと、どうしてもちぐはぐが出てくる。事務の配分という問題とひっかけて、もう少しよく研究する必要があるのじゃないか、こんなふうに私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/16
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017・小林武治
○小林武治君 私は、法律論になるかもしれませんが、両先生に伺いますが、いままで地方自治ということは、自分のことは自分でまかなうということが一つの観念であったと思います。いまでは団体によって、お話のように、全体の歳出の一割も歳入のないところがたくさんあるのです。しかし、いまの民主政治からいけば、大体全国同じレベルに保たせるのがしかるべきじゃないかということになると、自治という観念と自主財政という観念は別に考える、こういうふうに自治は自治だ、その財政的な裏づけはやらないのだ、そういうふうに考えられるようなことが出てきておりますが、そういうことについて何かお考えありますか。地方自治というものは、財政の裏づけがなくてもいいんだ、こういうふうなお考えをお持ちになっておるかどうか、こういうことはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/17
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018・木村元一
○参考人(木村元一君) さいふを持たない地方自治というのは私はないと思うんです。ただ、お金をくれるについて、この仕事とあの仕事と、これをおやりなさいと言ってくれるか、それとも、まああなたのほうの御自由でひとつお使いなさいと言ってくれるか、そこいらに私は差があると思うんです。ですから、一々事務の中身まで立ち入って、これとこれとこれとをやったら補助金を上げますという上げ方と、まあ一応基準はあるけれども、何にお使いになってもよろしゅうございますと言って差し上げる交付税とでは、若干やはり性格が違う。それで、事務があるのに財源の裏づけがないがためにいろんな問題が起こっているという場合、その事務を少し減らしてしまって、減らした事務に相当するだけのものをあてがって、財源措置をして、その範囲で自由にやっていただきたいということが一つ考えられる。先ほど申し上、げたのは、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/18
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019・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 私は、いまおっしゃったように、自主財源ということと地方自治ということを、どこで線を引くかは別にいたしまして、一応別に考えてもいいんじゃないかと思っております。したがって、自主財源が多くなければ地方自治が保てないのだということではなくして、むしろ逆に、地方財政を運営していく場合に、その財源がどういう財源であろうと、運営の上で自主性というものが保たれれば、私は、それは地方自治にとってはむしろ望ましい姿かと思います。で、自主財源ばかりにこだわるあまり、地方財政間、あるいは地方団体に住む住民の負担の間で非常に大きな格差が生ずることのほうを、私はむしろおそれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/19
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020・松本賢一
○松本賢一君 木村先生にまずお尋ねしたいと思うのですけれども、お話の最初のほうのところに公債発行の話が出たわけです。それに、いままで公債発行しないでずっとやってきたということが、むしろ異常であって、公債発行をある程度するということは、危機的な問題じゃなくて、そのほうがむしろ普通の状態じゃなかろうかといったように聞き取れたのでございますが、その点についてもう少しお話をいただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/20
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021・木村元一
○参考人(木村元一君) 私はこういうふうに考えておるのです。公債発行できぬような近代国家というものは、自分に対して自信のない国家だ。歳入欠陥が起こったときに公債が発行できない、必要に応じて公債が発行できる、どっちがいいかといえば、発行できるほうがいい。ただ、いままでの公債発行論の根拠というのは、私のいま言ったような筋道からいった議論じゃなくって、民間では借金をしちゃっているから、政府は借金しなくて済んだ、民間は貧乏だ、だから今度は肩がわりするのだという最近の公債論の一連のあれになっておるその議論には、私は全然賛成しておらない。つまり、あの時期に政府も借金をしておったら一体どんなことが起こっていたか。これはもうたいへんなインフレです。民間の投資需要が減ってきたものだから、最近は物価高の不況という変な現象が起こっておると言われております。こういう時期に何千億もの公債を発行したらすぐインフレになるとかならぬとか、これは別問題だ。ただ問題は、私の一番大事にしていることは、一体国民所得の何%を財政支出に向けるかということの決定のほうが大事なんです。その中で、公債で財源を調達しようが、租税で財源を調達しようが、政府が使うものだけは民間から吸収されていく。その点はどちらの場合でも同じ。ですから、危険なのは、公債でやれば後世に負担が行くのだから、いまのところは楽にやれるとかやれぬとかいうような議論で、財政の放漫化が行なわれるということになると、危険なのです。
したがって、まあ簡単に言えば、公債は、もし売れる公債だけ発行しているならば、インフレの起こるはずがないのだ。ところがいろいろなてこ入れや何かをやるような事情があるということは、まだ日本の経済がほんとうの意味で自由化もしておらぬし、正常化もしておらぬという状況にある。そういう意味で、今度の公債発行について、私は、少しいま、将来に向かって危険な状況がはらまれている。その危険は十分私認めたい、認めたいというか、私も心配しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/21
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022・松本賢一
○松本賢一君 それから、国債発行についてこういう議論があるわけです。公債というものは、買う人は、それが採算に合うと思うから買うのであって、結局公債を買うことによってある程度利益を得る。それから今度それを払う政府は、結局税金を取って払うほかに道がないじゃないか。そうすると、公債発行というものは増税という意味を含んでいるのではないか、こういう議論ですね。将来税金で払わなければならないのではないか。だから、将来国民全体がその負担を受けることになるのじゃないかというような、こういう議論に対してはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/22
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023・木村元一
○参考人(木村元一君) いまのお話はこうですか、公債を発行すると、公債を買った人には利益がある……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/23
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024・松本賢一
○松本賢一君 公債を買う人は採算が取れると思って買うのですから。しかしあとで元利償還のために税金を取られる。だから結局国民がそれだけ負担を増すことになるのじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/24
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025・木村元一
○参考人(木村元一君) どういうことになりましょうか。——その場合に一番問題は、どれだけ経費を出さなければならぬかということがまずきまっているわけでございますね。むしろ、つまり公債でまかなって、ある道路なら道路とか、軍事費なら軍事費にとにかく出さなければならぬということがきまっているわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/25
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026・松本賢一
○松本賢一君 そのきめ方によって、公債発行をしなくてもいいきめ方もできるわけです。これは非常にむずかしい問題でしょうけれども、一方で減税をして、一方で公債発行するというやり方、これはそこまで減税しないで、公債を発行しないでやれるやり方もあろうし、また事業を減らして公債発行をしない方法もあろうしというような、政治的ないろいろな問題になってくると思うのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/26
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027・木村元一
○参考人(木村元一君) 非常に複雑な問題でございます。ただ、単純化した話で申しますと、いま公債で募集しないとすれば、現在の国民が税金を納めるわけでございますね。それで現在かりに一兆なら一兆の税金を納めるのを、十年先になって元利償還のときに十五兆納めるということになる。そうすると五兆だけ利子がふえるということになりますけれども、そういう議論を私どもよく聞いているのですけれども、しかし十年先の十五兆円というものは現在の十兆円なんでございますから、そこでは全然プラス・マイナスがない。ただ問題は、過剰な生産力が現在あるのに、税金で取れば過剰な生産力が動かないと、公債で補充すれば、その過剰生産力が動いてくると、景気がよくなるという効果がもしあるとすれば、その場合には税金を減らして公債をふやすということが、合理的である場合が出てくると思います。しかし、いずれの場合にしても、公債の場合で景気政策を考える場合に、一番の欠点は、経費支出の効果といいますか、行政的な効果というものを減じても何でもあんまり問題にしない、何でもいいんです、金さえ出せばいいという議論がフィスカル・ポリシーのほうでは強い。それが公債発行論に、つまり景気政策としての公債発行論に伴う私は一番盲点といいますか、で、金さえ出ていけば景気がよくなるんだと、それなら失業救済のために何をやっても、軍事費を出そうと、同じことになりはせぬか、その点の考慮が十分いっていないきらいがある。
しかし、先ほどの御質問で、国民負担というけれども、かりに公債を持っておる人の公債利子に全部税金をかけて、それを利子として払うということになれば、一向に差し引き——国民といっても公債所有者だけの問題になりますですから、結局、全体の税金が一体逆進的であるのか、累進的であるのかという問題にそれはひっかかってくると思う。かりに逆進的な消費税をどんどん取り上げて、それで公債の所有者に持っていって元利償還をするということになれば、これは低所得層の負担において高所得層のほうに所得を移転したということになろうと思うのですが、国民全体が負担するというような感覚で、そういう次元で問題にしているときには、差し引きどっちでも同じじゃないかというふうに感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/27
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028・松本賢一
○松本賢一君 もう時間が長くなるからなんですけれども、私の質問のしかたが悪かったかもしれませんけれども、逆進的な意味を含んでいやしないかということを考えるわけなんです。公債を買う人はそれによって利益を得るけれども、今度その重圧が国民大衆のほうにかかってこないかと、つまり逆進的なものが将来生じてきやしないかということだと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/28
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029・木村元一
○参考人(木村元一君) その場合に、私どもこういうふうに考えるのです。これは私個人の考え方というか、私の意見なんですが、かりに百万円持っている人がおります。その人が百万一体寝かしておくのか、たんすの中に入れておくのかというと、そうじゃないのです。少なくとも郵便貯金ぐらいにはしている。銀行にあるいは預けておく。そうしますというと、その人は多かれ少なかれそれだけの利子は当然入ってくるはずなんで、それに見合うだけの公債利子が入ってきたときには、それとの関係においてはプラス、マイナスなし。ただ資金の流れが民間投資のほうに向かうか、あるいは道路だとか、あるいは社会保障のほうへ回るかという回り方は違ってきますけれども、
〔委員長退席、理事沢田一精君着席〕
しかし公債所有者というものを、百万円持っている人が利子をもらうことが不労所得であるということであれば、これはまた話が別ですけれども、資本主義社会を前提とする以上は、百万円のお金があれば、五分なら五分という利回りでお金が入ってくるということは認めなければならぬ。そうしますと、公債を買ったからその人が利益であるとか利益でないということは、公債の利子も一般金利——利回りとの関係によってきまってくるのであって、特に公債を買ったからその人だけが利益になったということには考えられないのじゃないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/29
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030・松本賢一
○松本賢一君 先生と議論をするつもりでも何でもございませんので、もうこの辺で打ち切りますが、もう一つお聞きしたいのは、地方自治体の強いものと弱いものとの間の格差の問題が、いろいろお話が出るわけですがね。現段階で、一方大都市が困っている困っているという声を大きくあげているわけなんですね。そうしますと、大都市は大都市で困っていると、中都市は中都市で困っていると、町村は町村で困っているということになると、これはもう地方自治体は八方ふさがりで、その間の格差是正とかなんとかいうような問題じゃない。もう地方自治体全体の貧困ということが言えるのじゃないかということになりまして、そういう点の問題をどういうふうにお考えでございましょうか。どちらの先生でもけっこうでございますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/30
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031・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 非常にむずかしい問題なんでございますが、地域間の財政力の格差と申しますか、あるいは経済力格差ということを、どういうふうにしてはかるかということも、もちろん問題でございます。たとえば一人当たりの財政支出額とか、あるいは一人当たりの税収入額というふうなことで考えますと、明らかに大都市のほうが裕福でございます。で、それだけ経済力がある思います。しかし財政力というものを、財政需要との見合いでもって、どれだけ要るかということとどれだけ入るかということとの差額でもって考えますと、私はいまの地方団体すべて財政的には非常に貧困であると、たとえば大都市——いまおっしゃいましたように大都市は貧乏だという場合に、先ほども申し上げましたけれども、人口の集中の度合いが非常に激しいような町村では、それに対して行政的な施設をするだけの財源が入ってこない場合が非常に多うございます。一方人口が猛烈な勢いで減っております町村でも、一定の行政水準を維持いたしますためには、財政収入がもとより及ばない面があるわけでございます。したがって、そういう意味では、私はおしなべて現在大都市も地方都市も町村の段階も、財政的には非常に貧困な状態である、八方ふさがりとおっしゃる意味はそういうことだろうと思います。その意味では確かに八方ふさがりであろう。したがいまして、私はこれに対して、財源の補てんといいますか、あるいは逆に言えば、行政事務の配分をし直すと、すなわち、もう少し国自身で、あるいは中央政府自身で行政をやるように、いわば事務の配分を変えることによって、あるいはもう少し交付税を増すことによってでなければ、解消できない問題だと思います。八方ふさがりという面は、まさにそのとおりだと思います。
〔理事沢田一精君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/31
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032・松本賢一
○松本賢一君 時間もございませんので、もう一つだけ、それでは恒松先生にお尋ねしたいのですが、先ほど土地の税金の問題で、農地に特例を設けるということはどうも好ましくないというお話がございましたが、土地は高くなってきた、土地は、百姓はもうやめて、何かはかのものに利用すべきだというような御議論のように思ったのですけれども、こういう点は何か、それは一応の理屈はそうであったとしても、やはりおれは百姓していたいのだという人も世の中にはたくさんあるわけなんで、しかもそれよりほかにむろん生活の方法もおれにはないのだという人もたくさんあるわけなんでね。そういう点、国民生活とそういった税の理論的なあれと、相当な食い違いがあるのじゃないかと思うのですがね。そういう点どうですか。われわれは、こういう商売で、その辺のところ非常に気になるのでございますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/32
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033・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 私、先ほどお話しいたしました農地に対する固定資産税の問題、まさにいまおっしゃったとおりの趣旨でございまして、農業しかやれないという人で、しかもその農地が都市に近いところにあって、付近の地価がどんどん上がるという場合に、同じような地価で固定資産税がかけられてはかなわないという、確かにそれはわかりますけれども、私は理屈屋でございますから、理論的にはそういうふうに、たとえば坪当たり三万円の土地が坪当たり千円の利用しかされておらないということは、私は日本の経済全体として得なやり方ではないだろう、こういうふうに考えるわけです。したがいまして、もし農業としてやりたいということでありますならば、その三万円の地価に見合うだけの税金を払ってもなおかつ収益の上がるような農業の方法を考えるべきだ、あるいはそういうふうな農業の政策を考えるべきだ、こういうふうに私は考えております。したがいまして、固定資産税でもってそういう評価を低くして負担を軽くするような制度は、私はあまり好ましい制度ではない、こういうふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/33
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034・松本賢一
○松本賢一君 そうすると、こういうふうに考えていいわけですか、先生のお考えは。税金としてはもうそういう理屈で取るべきだ、しかし、その人の生活問題をどうするかということについては別な角度から考えるべきだ——考えなくともいいということじゃないでしょう、考えるべきだということなんでしょう、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/34
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035・恒松制治
○参考人(恒松制治君) それはもし農業としてやっていくということであれば、その農業のやり方を変えるか、あるいはたとえばいま現在行なわれておりますような基盤整備であるとか、あるいは施設園芸——ビニール栽培であるとか、そういうふうなことに対して国が援助する、あるいは野菜の価額安定を考える、そうした形で考えたほうが私は望ましいと、こういうふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/35
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036・松本賢一
○松本賢一君 これ以上きりがございませんから、この辺で切り上げたいと思います、ほかの方の御質問もございましょうから。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/36
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037・林田正治
○委員長(林田正治君) ちょっと委員の異動についてお知らせいたします。
本日付をもちまして郡祐一君が辞任され、その補欠として大森久司君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/37
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038・鈴木壽
○鈴木壽君 初めに木村先生と恒松先生にお尋ねしたいと思いますが、お尋ねというよりもお教えをいただきたいと思うのでありますが、これは恒松先生は、直接には先ほどお述べになった中でお触れにはなってはおりませんけれども、木村先生が冒頭お話しになり、いま松本さんからもお尋ねのあった減税、国が減税を行ない、また他方で公債を発行して、いわゆる暑気対策をやっていく、こういうことについてでございます。私も最初お話しをお聞きしておったときには、これからがいわば国の財政運営についての正常な姿であり、いままでが不正常なものであっというふうに聞いたもんですから、ちょっとこう奇異な感じを実は持ったのでありますが、いま、松本さんからのお尋ねで先生の真意はわかりました。
ただ、これからお聞きしたいのですが、いわゆる国の財政政策としてこういうことになった、これは私そういう場合があり得ると思いますし、まあ、特にこういう時期において公債を発行するということも、私個人としてはあり得ると思うのです。ただその量がどうとか、いろいろな問題はともかくとして、考えられることの一つだと思います。
そこで私問題なのは、今回のこの国のこういう政策が、実はそのままの形でと言っちゃ、あるいは言い過ぎかもしれませんが、地方のほうへみなかぶさってくるというところに問題が私ども地方財政を考える場合にある。もっと申し上げますと、減税をし、公債を発行してやるその仕事というのは、公共事業でございますね。今度公共事業を中心にやる。ところが公共事業は事業のほとんど全部が地方団体の手で行ない、そうしてそれには相当の地方からの負担をもってしなければならぬ、こういうところに四十一年度からの、恒松先生が御指摘になったような地方債の大量に発行しなれけばならぬ、あるいは地方債をもってまかなわなければならぬという、こういう事態になってきておると思うのですね。いまの地方の税財政の仕組みなり状態では、国が行なう、フィスカル・ポリシーというようなことばで言われておりますが、そういうようなものを事実上は地方が全部かぶらなければならないということに対しては、私たえられない状態になっているのではないかと思うのです。租税に対するはっきりした把握のしかたをしないままに、そしてまた、受け入れられるような態勢を考えないままに今回行なわれたというところに、四十一年度、それからこれからの四十一年度以降、これは相当私、一年や二年で終わるものだとは考えられませんし、政府のほうでもそういうようなことを言っておりますから、そうしますと、ここに一番私は大きな問題が出てきていると思う。よく私ども一般的に、いままで地方の財政の強化とか確立とか、あるいは税財源をもっとこうしなければならぬとか、いろいろなことを言っておるのですが、今度それを言うにも次元が違ったような形で私ども考えていかなければならぬ、こういうふうに思うのですが、少し前置きが長くなりますが、国の今度のこういうような政策、それに基づいて、それを受けて、あるいはそれを押しつけられた形の地方税財政というものは、一体今後どうなければならないのか、どういうふうに考えていかなければいけないだろうかということについて、両先生からお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/38
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039・木村元一
○参考人(木村元一君) 国が公債を出していない間でも、実はずっと公債を出しておりまして、しわ寄せが地方へきておったという事情は、もうここ相当長い間ございました。それが今度少しというか、かなり大きく出てきたのでございますが、ただ、地方の実情を見ておりますと、地方のほうでも実は公共事業というのは非常にお望みになっておられる。それは地方の県でも市町村でも、一番上で総合的にお考えになっておられる方は、両方お考えになっておられるのだろうと思うのです。つまり仕事のほうと、それから財源のほうと両方お考えになっておられると思うのですが、どうも新産都市の指定の問題一つをとってみましても、あれはほとんど起債で、政府の利子補給を認めるというようなことで色をつけただけのことでございますが、それでも最初三つか四つくらいにしぼるつもりのが、今度ふえて、十六か七もの数ができるというような事情がございますので、この問題は公債政策が導入されたがために出てきた問題であるというか、今後、非常に公債政策によって地方が圧迫されるということになったということは事実だけれども、そのまた背後には、少し口幅ったい言い方を許していただきますと、国も地方も両方とも一極の無責任態勢になっている。地方はどちらかというと国におんぶしようとする、国はそれをまた裏返しして、何とか押しつけようとするというふうな状況、さらにそれをまた突き進めていくというと、国に対する地方の不信感、また国の地方に対する不信感、黙っておれば地方はもうなに放漫なことをやるかもわからぬ、だから監督しなければならぬのだという気持ちができておる。その点になりますと、いまのお答えにちょっとはずれるのでございますけれども、せんだってある県段階の団体に参りましたときに、そこの知事さんがおっしゃいますのには、私どものところは何々児アパート経営株式会社だと、各省各庁から来ておる方々にアパートを貸しておって、それの管理人をやっておるのが知事なんだ。これは極端な表現をされたのでございますが、これで戦前の状況を見ますと、官選知事ではございましたけれども、知事の一存で、そこの住民のことを考えながら、また政府のことを考えながらやるのですけれども、一存できまっておったという。つまり、どこへ橋つくるとか、どこへ学校をつくるとかいうようなことは、もうすべてまかされておった。それで知事に対してくる命令権というのは、一応内務省に統一されて、外務省とか法務省とか文部省とか、いういろんな省があっても、それは一応内務省に統一されて、内務省から命令がくるというのであったのが、最近はそれがばらばらである。それぞれ各省が府県、市町村の出先的な個々のルートを通って、しかも補助金を通して支配しているという形ができてしまっている。
私は今度の問題でも、やはり公共事業がくることを非常に地方の方は望んでおられて、しかも財源については、その望む段階では財源のことはあまり心配しないで、何とか陳情し、声を大にすれば政府のほうが何とかしてくださるといったような気持ち、そこに私は今度のことがきっかけというよりは、むしろその奥に戦後の地方財政、行政、あるいは国の政治のあり方といったようなものが、何かみんなつながりがあって出てきた問題であって、単に今度公債がしわ寄せになるということより、もっと大きな問題じゃないかという感じがいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/39
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040・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 総体的にはいま木村先生のおっしゃったとおりだと思うのです。ただ公債に伴う公共事業の拡充によって、地方負担が増大してまいりまして、困ることは確かであります。一応地方債の増加というような形でそれがあらわれておりますけれども、やはり私は、もう少し国家として考えるべき点、があると思います。一つは、国がやりますいわゆる公共事業については、地方に負担を負わせないで、全部国がやるというふうな方法も一つだろうと思います。それからもう一つは、地方債、ことし約二千億ぐらい、去年から増加しておりますが、こうした地方債の形でやりますと、地方団体間にそうした地方債の負担に非常に差異が出てまいります。したがって、むしろ地方債の部分まで全部国債として発行して、たとえば一兆円なら二兆円の国債を発行して、そのうちの三千億ないし二千億部分は地方団体に財源として与える、いわゆる公共事業を負担する財源として地方に与える、こういうふうなしかたでも私は解決できると思います。先ほどおっしゃったように、国民経済全体としての公債の問題は、税の仕組みによって負担がだいぶ変わってまいりますけれども、非常に極端な言い方をいたしますならば、きわめて累進的な課税のもとでは、国債の元利償還は、自分の右のポケットから税金を払って、そうして元利償還として左のポケットに入れるようなものでございますから、一つも差しつかえないんですけれども、地方財政の負担いたしますところの債務というものは、必ずしもその地方債によるところの影響が、その他方団体の経済力の上に直接あらわれてまいりませんので、地方団体間にかなり負担の差が出てくるだろうと思います。ですから、私は望ましきはそういう形で、国債として一括発行して、そうして公共事業に伴う地方負担部分はその国債の一部を地方団体に与えるというふうな、そういう形のほうがむしろ望ましいんじゃないか、こういうふうな気がいたします。それと、先ほど申しました国の公共事業は全部国でその費用は負担する、このどちらかの方法をとられるほうが望ましいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/40
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041・鈴木壽
○鈴木壽君 実は私公債の問題だけを問題にしてお尋ねしたつもりじゃなかったのでございますけれども、新たに今度特別事業債というものが千二百億、そのことだけを私どうこうということでなくて、そういうことももちろん含まれながら、地方財政の全般をどう考えていかなければならぬのか、こういうつもりでございました。確かに木村先生のおっしゃるように、千二百億の特別事業債が今度加わったわけだけれども、そんなに驚くに当たらないとも言えると思います。もうすでにいままで、もう地方債をみんな相当な部分受け持っておりますから、それは私単に額が大きくなったからといって、とんでもない問題だ、こういうのは当たらないと思いますが、ただいま言ったような国の政策として景気対策をやっていくといっても、実際は地方でそれの最終的な末端の処理をしなければいけないというようなこと、いまのようなかっこうにしておいたまま、では足りなければ地方債を使ったらいいじゃないか、こういうあり方ではいけないのではないだろうか、もっと考えていかなければいけないのじゃないだろうか。もちろんいま恒松先生から公共事業をやる場合のこれは全部国で持つべきでないか、あるいはまた国が公債でも発行したらもっとワクをふやして、その一部を地方に財源として与えるような、これも私確かにそういう方法はとられるべきであったと思いますが、いずれこれからの問題として、地方債の問題を含めて、地方財政あるいは地方税というものは、一体どうなければならぬかということの新たな観点からこれは考えていかなければならぬのじゃないだろうかというふうに、私はこう最近考えたものですから、それに対する先生方のお考えがあったらお教えをいただきたいと、こう思ったことでした。時間もございませんからその問題はそのくらいにしておきます。
木村先生から特に税関等において地方の税源の強化、あるいはもっと大きく地方財政の強化、こういうふうなことでいろいろ御検討をいただいておるようですが、現在の地方税なり、あるいはまた、今後いわゆる地方税の地方に入ってくる金を大きくするための、具体的にこういうものをこのようにしてやったらどうかというようなことについて、審議会での話の中に出てくる問題、あるいは先生御自身のお考えがありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
それからもう一つ、ついででございますからと言っちゃ悪いですが、固定資産税について御三人の方触れられておりますが、これは、そうはっきりおっしゃっておるわけではございませんけれども、今回衆議院で固定資産税の政府原案に対する修正というふうな形のものが行なわれた。このことで一部の間ではおかしいじゃないか、今回のものは、税のいわゆる増税ということでなしに、負担の公平、あるいはそういうところからくる一つの調整をしたにすぎないものに、何だかんだというのはおかしいじゃないかというような議論がずいぶんあるのですが、これはお答えいただかなくてもいいんですが、実は問題のとらえ方がちょっと私ども、今回の政府の案に対して、税の公平な負担とか、あるいは調整措置というようなことでやったことはわかりますが、しかしこれは御承知のように、三十九年にいわば暫定措置というようなことでやりまして、四十二年度から本格的にそういうことをやるのだ、こういう一つの大きな前提のあるところがら出てきた問題なんです。それを一年早めて、しかも何といいますか、本格的な検討を経た上でのものでないと思われるような、そういうことでやってきたところにこの問題があるのでございまして、新評価を使わないとか、あるいは負担の公平というものに対する何らの是正措置をとることに対して、反対するとかというようなことではないのでございます。税調等におきましても、一体この新評価によって急にふえたものに対して、そのままでいいということじゃないんで、何かの調整をしなければならぬ、その場合に率をどうするのか、あるいはその他のいろいろな方法で、やはり調整というものを考えなければならぬというような、当時税調におきましても考え方があって、いましばらくそれを検討しようということになっておったはずです。そういうものをわれわれも受けながら、まあ次の評価がえの時期である四十二年度、これまでの間にひとついい方法を考えよう、こういうことできたものが、いわば突如と言っては少し悪いけれども、四十一年度からこうするんだというふうにきたものですから、おかしいじゃないかと、こういうことになったことでございますから、これは木村浅七さんについても、ひとつその点についての御理解、御了解をいただきたいと思うので、これは衆議院のほうでやっていたけれども、これは単なる衆議院という問題でなしに、党対党というような形で行なわれたものですから、参議院のほうの——私、変な言い方をしてまずいかとも思いますけれども、そういう事情にあるということだけはひとつ御理解いただきたいと思います。なお、いまの固定資産税の問題については、別段お答えをいただくつもりはございませんが、先ほどの地方税の問題について、直接的にこれをどうこれから考えていったらいいのか、強化の策としてですね。それをひとつお教えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/41
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042・木村元一
○参考人(木村元一君) これは税調で考えておる意見ということじゃございません。御案内のとおり、やっぱり三十人の委員の方がおられますので、それぞれ皆さん御意見ございまして、私のこれから述べますような意見は、おそらく少数意見だろうと思います。しかし、せっかくの機会でございますので、ちょっと申し上げますが、こういうふうにしたらどうだろうかということを考えております。
それは、府県につきましては付加価値税を導入する、つまり、いまの事業税を付加価値基準のものに変えていく、そうして事業税、あるいはそれ以上の税金を付加価値税に求める。あとは大きな変化はございません、府県につきましては。そのかわり府県のとっております住民税、これは市町村へ戻してしまう。市町村は住民税と、それから固定資産税——固定資産税はできるだけ時価基準でやっていく。ただし、いまの一・四%という税率を下げていくことについては賛成でございますが、なるべくなら固定資産税一本のほうがいいんじゃないか。これをまた昔のように地租、家屋税、それから償却資産税というふうに三つに分けてしまうということが得策かどうか、この段階では、おそらく固定資産税一本にして、税率を一つにしておくほうがよろしかろうじゃないか。ただし、評価が上がってくるにつれて少し下げていくということは考えられる。ただ問題は、同じ住民税でも、法人に対する住民税、これを一体どういうふうに処理したらよろしいのか、これにも均等割と所得割がございまして、日本のように法人の数の多い有力な国というのは世界中にございません。七十万も法人があって、そうして個人企業がだんだん法人化していくという状況のときに、この分を全部市町村の住民税にくっつけて課税していいかどうか、府県とシェアにするかどうか、そこらのところは少し私問題があろうかと思います。その住民税も、私の素案のまた素案ですけれども、国税はたとえばある課税最低限のところから一五%とっぱなにかけていく、そうして住民税のほうはその下の部分にかけていく。ですからその下の部分については一〇%なら一〇%という税率でもって、ことしは六十二万円になりましたか、三万円になりましたか、標準世帯の所得以下の部分で、たとえば五十万円か三十五万円か、これはちょっと私もわかりませんけれども、全体としてこういう累進カーブを考える、そうして国税がかかるところは六十五万円とか七十万円でけっこうでございますが、そこでつながりを考える。それでは一億円とっている人はどういう税金を納めるかといいますと、一億円の一割のところは、やはり一千万円だけは地方に行く、それ以上の分については国税に持っていくというふうな一つの体系の中で、低い所得部分は——所得層じゃなくて所得部分ですね、所得部分、その最初の段階にかかるところは地方に持っていくといったような比例税率的なものをひとつ考えてみたらどうかしらと、そうすると自然に国と地方との間の配分の問題がこれで解決できるし、全体としても課税というものを考えることができる。同時に、先ほどもちょっと問題になりましたけれども、非課税措置とか、それからそういうものについてはもう少しやはり地方の立場を考えていただかないと、何でもかんでも国の政策だから、国の政策だからと、むしろそういう場合には国のほうで企業者が納めた固定資産税や何かで国が非課税にしたいならば、納めた分だけをそのまま補助金として企業に返してやるぐらいの手続をとったほうが私はいいんじゃないか。それからもう一つは、同じような税金について競合が起こってくる場合には、地方税をたとえば国の所得税で納めるときの課税標準の中から納めた地方税分だけ引く、引いたものに課税をするという調整をしますというと、自然にこれは税の委譲が行なわれていく形になります。これも少し研究する必要があるんじゃないか、いまのところ、そういうことによって地方団体としての財源の強化ということが出てくると思います。
それから、私先ほどちょっと申し足りなかった点があるので、松本さんの御質問に関連しましてこういうことをひとつお考えいただきたいのでございます。私どもの考え方では、ことし三千億の減税をやったと言いますけれども、ほんとうの意味の減税というものは企業減税だけでございます。あとの減税というのは、私は調整減税で、ほうっておけば増税になる分を、たとえば税率でもってあるいは基礎控除の引き上げその他でもって調整をしただけなんでございます。ですから、公債との関係を見ます場合にも、もちろん政治的な非常にむずかしい判断の問題が一方にあると同時に、税の中身の問題としても、比例税の場合にはちっとも増税になりませんけれども、住民税にしましても、所得税にしましても、累進税でございます。このような物価騰貴が起こってまいりますと、実質の減税がどのくらいになるかなかなか計算ができないのでございます。計算ができないのでございますけれども、実感として考えまして、かなりの部分が一種の調整税、その調整税ということを私ども一番大事な仕事だと思っております。その意味で先ほどお答えはいただかなくてもということでしたが、固定資産税につきましてなぜそれじゃ四十二年度にやるべきものを四十一年度に突然にお出しになったかというおしかりというか、まあそういうことでございましたけれども、実は私どもが二割頭打ちということを——二割頭打ちといいますのは、税金が去年よりもふえるけれども、二割だけはふえるところまでは認めますけれども、それ以上は取らないという二割頭打ちの制度を取り入れましたときに、これは非常な不公平が起こるということを私どもも知ってはいたのでございます。知ってはいたんでございますけれども、実地に実施してみた場合に、これほど不合理なことがまだ実感としてつかめなかったという点はございます。これは私どもの調査会全体としてその点は確かに不備であったと思うのですが、原案といいますか、中には二割頭打ちにも絶対反対なんで、そのときからもう少しずつでも上げていくべきだったという意見があったのが、一種の妥協ということもあって二割頭打ちになった。ところが、たとえば東京のまん中でもってすでに百万円しておる土地が百二十万円になりますというと、その高い課税標準に対して二割の増税が行なわれるわけでございます。百万円のものが百二十万円になりますというと、税金は二割ふえてまいります。そうすると、百万円の土地に対して一・四%ですから、相当金額が高いわけです、一坪について。ところが、郊外のほうへ行きますというと、百万円はしないにしても、いままで三千円か四千円くらいの土地が、東海道新幹線の大阪駅の場合のように、一ぺんに何十万円でしたか、何百万円でしたかに上がると、ところがもとの帳簿価額は四千円でございますから、かりに四千円としますというと、それに対する税金というものは、一坪当たり五十円かそこらしか払ってないで、その五十円に対してまた二割増しですから、せいぜい十円しか坪当たり上がってもないと、こういう不公平がいわゆる既成都心部とそれから郊外地域との間に実に激しいアンバランスで目だって出てきたと、それでこういうことはいずれば修正しなければならぬとするならば、少なくとも早いうちに、またじわじわいく形で修正していくということが必要じゃなかろうか。それはまあ実態のあまりのひどさということが一つの刺激になって、少し約束が違ったような法案の提出に相なったのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/42
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043・鈴木壽
○鈴木壽君 時間もありませんから……。じゃどうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/43
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044・原田立
○原田立君 先ほどから先生の御意見をお伺いしておりましたのですが、恒松先生のお話の中の、地方自治と自主財源とは別々に考えていいのではないかと、運営ということで地方自治が保たれればいいのじゃないか、こういうようなお話がございましたのですが、先ほど木村浅七さんのほうからも、地方財源が非常に不足していて困るのだ、何とかその確保をするようにというような御意見もありました。あるいはほかのところでは、ひもつき財源ではいけない、もっと自主財源をふやすべきだ、こういうふうな御意見もあって、非常に地方自治と自主財源とは切っても切れない関係にあるのではないか、こう思っておるわけなんですが、別々に切り離していくというよう御意見でありましたので、この点どういうのかなと思いまして、ちょっととお伺いしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/44
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045・恒松制治
○参考人(恒松制治君) 実は、自主財源と地方自治というものを結びつけるといたしますと、一体自主財源が何割になったら地方自治にとって望ましいかというふうな問題になってまいります。非常にその点では、たとえば三割がいいとかあるいは四割がいいとかいうことは一がいに私はきめてかかれない問題だと思います。そういうむずかしいということからのがれる意味で別に切り離したというわけではございませんけれども、私は、本来地方自治というのは財源の問題よりは、むしろその地方行政なりあるいは財政の運営をどの程度地方自治体の意思に基づいて、すなわち住民の意向を反映して行政が行なわれ、財政が運営されるかということの面で考えるのが私は地方自治だと思っております。だんだん経済が発達して、地域間の格差が目立ってまいりますと、自主財源、自主財源と申しましても、それだけで自治を云々することはとてもできないような私は段階だろうと思います。むしろ、新しい段階では、そうした形での地方自治を考えていくべきではないだろうかというのが私年来の主張なものでございますから、一応切り離して考えるべきだというふうに申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/45
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046・林田正治
○委員長(林田正治君) ほかに参考人に対する御質疑の方はございませんか。——それではこれにて参考人に対する質疑は終了いたしたものと認めます。
参考人の方々に対しまして、一言私からお礼のことばを申し上げます。本日は長時間にわたりましてきわめて貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。
なお、委員会の審査のためにきわめて有益なる御意見を承わりましたことを深くここにお礼を申し上げます。
それでは、暫時休憩いたしまして、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時四十分休憩
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午後一時五十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/46
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047・林田正治
○委員長(林田正治君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のおありの方は、順次発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/47
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048・鈴木壽
○鈴木壽君 今度の改正案で一つ気になることがございますのでお尋ねをいたします。それは、道府県民税における税額控除の廃止の問題であります。昭和三十七年度のこの税法の改正のときに、所得税を一都道府県民税に委譲した、その際にとられたこの税額控除、調整控除の措置が今度なくなるわけでありますが、私ども考えてみまして、また当時のこの税額控除を設けた趣旨、考え方、そういうものからいたしまして、今回四十一年度からはずすということについては、これは当を得ないものではないかというふうに思うのでありますが、これについて、ひとつ最初に控除の廃止についての考え方、それをまずお伺いをしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/48
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049・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 三十七年に所得税から道府県民税所得割りに税源の委譲が行なわれましたときに、御承知のように、当時配偶者控除、あるいは十五歳以上の扶養家族に対する扶養控除、その他専従者控除につきまして、両税の間に控除の差がございましたので、その差の部分につきましては当分の間税額控除をすると、こういうことで当時そういう措置がとられたわけでございます。で、その後住民税、いわゆる市町村民税所得割りにつきまして課税方式が統一されてまいりまして、現在では県民税と市町村民税とは全く同じ課税方式になったわけでございます。そういった事情の変化が一つございますことと、この税額控除自体が税制上持っております意味が、必ずしもいつまでも存続させることを許さないものがあるんではなかろうか。と申しますことは、三十七年に所得税から委譲いたしましたときに、所得税で減税になった分が県民税にいわば増税、委譲されたわけでありますが、そのときの状態における納税者についてとらるべき措置であったわけであります。それがその後ずっと引き続いてとられておりますために、たとえば三十七年当時は独身であったものが、その後に結婚いたしますれば、配偶者ができましたために自動的にこの税額控除を受ける、あるいは十五歳未満の子供が十五歳以上になれば自動的にこれを受けるということになってまいりまして、本来は委譲当時の家族構成について控除差があった分を補てんするというのが本来の趣旨であったわけでありますが、続けてまいりますと、必ずしも税制上それをずっと持続しなければならないかというと、多少その間に問題点があるわけでございます。そういったような税制上の問題もございます。さらに今回、県民税、市町村民税を通じまして大幅な減税をいたしました。配偶者控除、扶養控除以外にも基礎控除額を引き上げて減税いたします。しかも、それが県民税だけでなく、市町村民税、両税を通じていたしておりますので、県民税で二万円控除が上がれば、市民税でも上がるというようなことで、一つの控除が二重に働くわけでございます。その際の最低の税率をかけたものと比較をいたしましても、今回これを廃止しまして、住民の負担は、廃止した差し引き後において、なおかつ軽減になる、こういうような次第になったわけでございます。さらに、この税額控除につきましては、実は税務行政上もいろいろ問題がございまして、と申しますことは、県民税は、御承知のように、市町村の窓口で課税いたしておりますが、市町村の窓口は県民税だけ税額控除いたしまして、自分のところの本来の市町村民税については税額控除いたしませんので、納税者に聞かれるときに非常に説明にも困るといったような問題もございますし、一方だけ引いて一方だけ引かない関係上、計算上のミスが起こったりするといったようなことで、税務当局者からは、やはり他日機会があればこの問題を整理してもらいたいといったような要望も出ておったのでございます。そういったようないろいろな事情を考慮いたしまして今回の大幅減税の際にこれを廃止をいたしたい、こう考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/49
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050・鈴木壽
○鈴木壽君 いまお聞きしますと、大体四つの理由をあげておられるようであります。まずその点から確かめてまいりますが、一つは課税方式が道府県民税においても市町村民税においても同じようになった。こういうことが一つ。したがって取り扱いの上に差異があってはいけないではないか。こういうことが一つ。それから第二番目には、この調整措置は当時の時点、三十七年度の改正の時点に行なわれるべきものであって、それがずっと引き続いて後代まで続いておるということについては、家族構成の上からとか、いろいろそういう問題の点からいって不合理である。こういうような点であったと思いますが、これが第二点目でございますね。第三、今回の減税が道府県民税及び市町村民税と両方に全体として減税をしてそれぞれ控除額の引き上げ等をやっておる。しかも、それはいま言ったように、市町村民税において引き上げられればひとしく道府県民税においても引き上げられている。こういうので全体として大きな減税になっておる。そういう中でこういうものを——こういうものというのは、税額控除というものは撤廃しても差しつかえないのだ、こういうこと。それから最後の点は税務の事務と申しますか、課税の事務上からの問題で、県民税だけにこういうものがあって市町村民税にないということについて説明もしにくいし、また、あるいは事務上の誤りも出る可能性がしばしばであったと、こういうふうなことから取りはずしてもらいたいという要望が強かった。こういうふうに四つの点で述べられたと思いますが、いま私がまとめたようなことでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/50
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051・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/51
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052・鈴木壽
○鈴木壽君 そこで、続いてそれじゃお聞きしますが、これはいままとめた四つのうち、最後の四番目の問題でありますが、課税事務なり税務行政という立場からのいろいろなめんどうな手続、あるいは事務の複雑化していること、あるいはまたそれから起こるいろいろな間違い、そしてまた、外部の人に対して説明がしにくいというようなこと、これも税を考える場合には、いわゆる税の合理化とかいろいろな観点で税の改正をするわけなんでありますが、そういう場合に徴収手続なり税務の事務の問題からも不都合があってはいけないから、これはやはり考えなければいけないという要素が確かにあると思います。しかし、この問題については、いまの税額控除の問題については、たとえば県民税にだけあって市町村民税にないのはおかしいとか、そのために事務が、何といいますかな、事務上のいろいろなむずかしい問題が出てくるとか、複雑になって困るとか、めんどうだとかいうようなことは、これはちょっとすぐそのまま取り上げるべき問題ではないと思うのです。初めから市町村のその住民税については問題にない。こんなことをやる必要のない問題でありますから、たまたま所得税を一都道府県民税に委譲するという、この際に行なわれた、特に低額の所得者に対する増税にならないように、負担の増にならないようにという特定の目的のために、道府県民税において設けられた制度なんでありますから、それが市町村民税と違うとか、そのために忙しくて困るとか、間違いができるとかという、これは忙しいようなことについては同情にたえませんけれども、この制度をやめるための理由とは私はならぬと思う。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/52
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053・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 税制を考えますときに、税務行政の面もやはりあわせて考えてまいりたいと思っておるわけでございますが、本件に関しましては、やはり何よりも一番納税者の税負担をどうするかということがやはり基本であると思います。ただ、いま申し上げました税務行政上の問題、私どももこれだけですべてを考えようとは思っておりませんが、これも副次的な理由に申し上げた程度のものでございます。特にこの点を最初からそういうことはさまっているじゃないかという御指摘でございますが、三十七年当時でございますと、御承知のように、市町村民税自体が方式が分かれておりましたので、各市町村でまちまちであったわけであります。ところが、昨年から全部同一になりましたので、県民税と市民税とは全く申告の場合においては同じ要素を全部使っている。最後の段階の税額控除だけが違うというような形になってまいりましたので、一そうその点が表面化してきたというような事情があることは御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/53
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054・鈴木壽
○鈴木壽君 だから、そういう問題はありますが、そういう問題は私も否定しませんよ。しかし、それが税額控除を取りやめるというほどの理由にはしてもらっては困るということなんで、もともとそれははっきり県民税だけに対しての措置であったのですから、それが町村民税と違うんだと、こう言って問題が出てきたかもしれませんけれども、それはそれなりに割り切ってもらわないといけないと思うのですね。
それで、まずその問題は、私あとこれ以上追いませんが、次に、課税方式が現在では道府県民税と市町村民税と同じだと、こういう中で、ひとり道府県民税だけにこういう措置を存置しておくことはうまくないと、こういうふうなお話でございましたね。しかし、課税方式が同じだといっても、それからこれはあとにまたお聞きしょうと思っておったのですが、たとえば全体として減税が行なわれたと、こういっても、一体道府州民税における税額控除の制度というものが、どういういきさつで、どういう趣旨で、どういう目的のために置かれたものかということから私は検討しなければいけないと思う。たしかに課税方式は昭和三十七年当時、道府県民税と市町村民税の間では違っておった。違っておりましたが、その市町村民税のうちの、いわゆる当時の本文方式ですね、こういうものに一応、特に課税標準の面で合わせて考えたんです。そうでしょう。所得税の委譲に伴っていろいろやってみたが、これは所得税と一緒に課税標準なんかをそろえるということにも問題がある。そこで、課税標準の問題になりますと、いま言ったように、本文方式のそれに、市町村住民税のそれに形としては一応合わせようとしたが、実質上控除額が違うということでいまの税額控除の問題が考えられたわけなんですね。そこで、あなた方はいまの課税方式が同じになったと、こう言っても、それは形の上では同じになったけれども、問題はその当時の基本的に、私がいま言った違っておる課税標準等の問題、控除額等の問題で、それは今度の改正でも全部取り払われてはおらないのですね。ですから、こういう理由で税額控除をはずしてしまうということは、繰り返して申し上げますが、当時の道府州民税及び市町村民税それから所得税と道府県民税に委譲された関係、こういうものからいって、何も形式が、方式が同じになったからといってこれを取り払っていいということにはならぬと思うのです。それから、これはまあしばらくの間ということでやるべきであって、家族構成なんかも違ってくる。独身者が結婚したとか、あるいは十八歳以上の者が成人したとか、その次は小さい者が十八歳になったから自動的にこの適用を受けるのはおかしいじゃないかというお話でありますが、これも私は考え方が少しおかしいじゃないかと思うのですね、これは制度として残されたものですから。制度としてやったものに一年一年家族構成なり年齢構成なりが違ってき、したがって、控除の対象になるものも違ってくるのは当然なんですね。しかし、そういうものを目当てにやったんではなく、三十七年の時点においてそういうものだけを着目してやったんではなしに、いま言ったように、制度として課税標準の違いからくる、控除額の違いからくるそれをどう税の上に増税にならないように調整することができるかという、こういう考え方からとられたものであって、それは三十七年だけでなしに、三十八年も三十九年も課税標準に違いのある限り、控除額に違いのある限りこれは続く問題です。制度というものはそういうものですよ。そこで結論を申しますが、今回の税改正、四十一年度から確かに控除額は引き上げられました。しかし、当時控除額の差としてとらえられておった配偶者控除、当時は住民税のほうには配偶者控除はございませんでしたけれども、第一番目の控除に対応するものをつかまえて、それから十八歳以上の扶養控除、それから事業専従者の青色、白色、これについての差、これは配偶者控除については二万円、それから十八歳以上の扶養者控除についてはこれも二万円、青色専従者控除については四万円の差がありました。白色の場合には二万円と、こういう差があった。それについて税の一つの仕組みとしてのとらえ方をしてやったんですから、今度の改正によっては配偶者控除も、それから専従者控除も、それぞれ上がりましたが、二万円ずつしか上がっていません。なお一万円ないし二万円の差がありますね。一万円ずつといっても、専従者は二万円上がりましたから、二万円ないし二万円しか上がっていませんから、なお差は一万円ないし二万円あると、こういうのでありますから、全部取っ払ってしまうということは、これは私は許されないと思うんですね。いまなおあるところの差、一万円ないし二万円に、これについての税額控除をやはり残しておくべきですよ、これは。と思いますが、前段で申し上げたようなあなたの述べられた理由に対する私の考え方と同時に、最後の点についてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/54
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055・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) いきさつは鈴木先生のおっしゃるとおりでございます。当時所得税から県民税に委譲になりましたその控除差、十五歳以上の扶養親族について言えば二万円、この控除差を埋める一つの方法として税額控除の方法をとったわけでございます。したがいまして、そのいきさつから申しますれば、県民税の控除が所得税の控除額と同じになるときに全部やめるべきである。たとえば十五歳以上の扶養親族に対する扶養控除がその委譲時の所得税の額と同じになったとき、つまり二万円の差が埋まったときに全部やめる、一万円ならば半分だけやめるんだというのが、一応経緯から来た筋道であろうかと思います。で、ただ先ほど申し上げましたように、三十七年当時は県民税だけが基礎控除、扶養控除等の方式について全国一律的にやめる、いわゆる本文方式をとっております。市町村民税はただし書方式もございましたので、地方税法上はそれを制度的に確立していなかったわけでございます。それが、現在は三十九、四十年の両年度にわたりまして市町村民税も全く同じ方式に全部統一された。その結果、三十七年当時は県民税だけについて一律的な本文方式であったのが、現在は県民税と市民税と両方通じて同じ方式にいまなったという情勢の変化が一つあるわけでございます。そこへ持ってきて税額控除をするということは、当時の該当しておりました納税者の委譲分を調整するための措置であったわけでありますが、その後、先ほど申し上げましたように、納税者の状況が変わってまいりますので、この二百四十円なり四百八十円の税額控除というもの自体は、だんだんと単なる負担軽減の措置に実質的には変わってきておるわけでございます。そこで、今回県民税、市町村民税合わせて、御承知のようなかなり大幅な控除の引き上げを各項目についていたしたわけでございます。こういう際に、住民の負担を全体と差し引きして見て、なおかつ、十分軽減の措置がとれるという見通しを持ちましたので、今回この機会に税額控除の制度を廃止してまいりたい、こういうふうに考えまして今回御提案しているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/55
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056・鈴木壽
○鈴木壽君 税務局長あれですか、これを取り払うときにあなた方何の抵抗も感じませんでしたか。ただ、ほかのほうが減税になるからこれもまあこの機会にというようなぐらいですか、その点だけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/56
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057・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 実は午前も参考人の中で議論が出ておりました。今回は日の目を見ませんでしたが、住民税へ所得税からの委譲の問題を税制調査会で議論いたしましたそのときに、現在委譲するとすると、やはり両方の控除には差がございます。所得税と住民税では控除に差がございます。その差の部分の埋め方は、かりに委譲を実現した場合に、差の部分の埋め方はどういうふうにしたらいいのかという実は議論をいたしました。その際に、三十七年にはこういう税額控除という方法をとっておるということも議論にのぼったわけでありますが、そもそも委譲する際の税額控除自身も実は要らないのじゃないかというような税制調査会の方の御意見でございまして、まあ、そのこと自体は、したがいまして、日の目を見ませんでしたが、税制調査会の答申にあります委譲にあたっては、今回は実は三十七年にあったような税額控除の措置は内容として入っておりません。それで、そのこと自体は、こういうことで、結局今回採用いたしておりません。その際に三十七年の問題並びに今回の各種控除引き上げの減税の議論がありまして、実は従来の税額控除をこれに吸収して全体として負担軽減になる方法を考えたいというようなことを私どもも申し上げ、税制調査会としても、それが妥当じゃないかというような御意見で当時あったわけでございます。そういったようないろいろな審議の過程も経ておりますので、今回私どもといたしまして、いきさつ上は、おっしゃるとおりの県民税についてだけの措置でございましたけれども、こういう、当時はおそらく予想しなかった大幅の減税の機会でございますので、この際にいろいろな角度から見まして廃止することが妥当ではなかろうかというふうに考えて御提案しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/57
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058・鈴木壽
○鈴木壽君 どうも、税調で、いまお話しになったように、そんなに要らぬじゃないかとか、三十七年度当時でも要らぬじゃないだろうか、まだそんなものを残しておくのかというような意見があったというようなこと、これになると、これは税調の何といいますか、無定見といいますか、一体何をいま考えて税のいろいろな制度なり仕組みなりを考えているのか。これは私、税調の方々にうんと実は文句を言いたいのだな。というのは、三十七年の税調に、いまの問題を取り上げて、彼らの出した結論が、いま言ったような税額を調整しなければならぬということなんだ。しかも、暫定的にそれを行なわれて——暫定的という内容は、その差が縮まるまでの期間だ、こういうことなんだ。これは理屈からいってもそのとおり。私も実はこの問題について昭和三十七年から適用する、その前の国会でやるときには、この委員会でとことんまでそういうことについては審議しておりません、実際は。しかし、当時税調の答申なり、考え方なり、あるいはそれを受けたかどうか税務当局のあなた方のほうの説明なり、あるいは書いたものなり、こういうものを見て、私は私なりに理解しておったわけなんです。その理解のしかたというのは、先ほどから申したようなことであるのです。文章にもはっきりあるのだから、これはあなた方専門ですから、一番よくごらんになっている。それが今度、いまになると、税調ではそんなことはおかしいじゃないかとか、初めからそもそもなんていうふうなことになりますというと、これは税調一体何をして何を考えているのか。これは人がかわったということもあるかもしれませんが、とんでもない税調だと思うんですが、これは税調のことだからこれでやめましょう。そこで税調にここで小言を言ってみたってしようがありませんからやめますが、課税標準において所得税と同じようになるまでの控除の面等においてということは当時も考えたんです。これは税調でも考えたでしょうし、考えたことが確かに記録にありますし、あなた方自身としても——あなたはそのころおらなかったけれども、考えたでしょう。しかし、その前の年——三十 年に住民税の方式について国税の所得税とその影響を受けないようにという遮断措置がとられましたね。三十六年ごろからほんとうは所得税から委譲されてきたものに対する取り扱いですから、下のものが増税にならないようにという取り扱いをするんですから、ほんとうはおっしゃるように、所得税と等しくしなければならない。しかし、いま言ったように、その前の年、いやこれから低くしちゃいけないんだぞという形で遮断されている形から、いま直ちに同じような取り扱いをすることはいかぬというので、市町村民税のいわゆる第一次方式、これに合うように考えていこうじゃないか、こういうふうになってきますね。しかし、合うように考えるといっても、いま言った、実際は控除額が違うのだから、その違う控除額を一体どう取り扱うか、こういうことで起こった問題ですね。全体としては率を考える。しかし、率をいろいろやってもなかなかこれはたいへんだ。こういうことで、言ってみれば、やむを得ずというようなことばが使えるかもしれませんが、とにかく税率ではいろいろな困難な点があるからというので、いままでとられたような措置になったわけですね。だから、それは何べんも言いますけれども、一年限りとか、二、三年でいいということじゃない。その差がある限りこれは動いていく。だから、今度の改正によってその差がなくなればこれははずして当然いい、おっしゃるように。差が半分しか縮まっていませんから、まだ残っている差に対してわずかな金高ではありますけれども、税額控除を残しておいてやることが当然なんです。当然だということは、単に課税方式をどうするこうするという改正でこうなったんじゃないよ。所得税を都道府県税に移した。その場合、二百億、パーセンテージ二%、金額においては大体二百億を見当にやったんです。そのときに、私はいまになるとへたなことをしたと思うんだが、道府県税における税率を変えちゃったんです。いままでの累進課税の十三段になっておったものを比例税率にして、百五十万円以上あるものに対しては若干の累進的なそれを見たね。それをやって二段にしてしまえ。そういう急激にきちっとやっちまったものだから、さっき言ったように、税率ではどうにも動きがとれぬようになってしまった。当然減らしてやらなければならないと思っても、いま言ったように、税率ではできないからこういう措置をとった。そういうことなんですから、これは簡単に考えて、ほかの税金も減税にもなっているし、当時とは情勢が違うし、計算方式も一本になったからというようなことで扱える問題じゃないんです、これは。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/58
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059・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) いきさつは先ほどから申し上げておりますように、鈴木先生のおっしゃるとおり、当時県民税についての委譲がございましたので、県民税と所得税の控除差についての救済措置を講ずる、まあこういうことがあったわけでございます。で、当時一番問題になりましたのは、所得税の失格者で住民税を納める人についての一つの救済方法というふうにこれが考えられておったわけでございまして、両税を納めている人たちにはすべて当時も皆減税になったわけでございます。委譲しても減税になった。したがって、失格者についての問題があるわけでございますが、当時の所得税の失格者と申しますのは、三十七年で申しますれば、給与所得者にして標準世帯でありますと四十が八千九百円という人が失格者、それ以下の者が失格者であったわけであります。ところが、その状態の人についてその人が同じ状態を続けておりますと、おっしゃるような事例が当たると思いますが、今回県民税、市民税合わせましていわゆる住民税についての課税の最低限は控除の引き上げによりまして四十二万三千円になったわけでございます。したがいまして、当時と全く同じ横ばいの状態の人につきましても、実は問題は失格者が変わってまいりましたので解消したわけでございます。ところが、まあそれはそういうふうな実態論があるわけでございまして、結局、先ほどいろいろ税調の無定見というようなことでございましたが、私が少し誤ってお伝えしているといけませんので申し上げておきますが、税調として、実は当分の間と言うけれども、その後非常に控除予ての他も所得税など変わってきておりますし、先ほど申し上げましたように、納税者の家族構成や状態も非常に変わってきているんで、これをいつまでもこのまま続けておくことについては、税制上からいっても疑問があるのじゃないかというような意見が非常に活発に出たわけでございまして、そういったようなことで、今回の大幅減税の際に、先ほど来申し上げましたいろんな点での考慮から、この際全体として住民負担の軽減という点に立脚してこの改正をはかってはいかがか、こういうふうに考えたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/59
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060・鈴木壽
○鈴木壽君 確かに所得税のいわゆる欠格者ですね、これの救済措置なことはお話しのとおりで、私もそのように了解していますが、ただ、私は、したがって、その欠格者の救済措置といいますか、委譲されたために、もともとならば負担しなくてもいいやつが負担されるというようなかっこうでありますが、それを救済するためにとられておりました税額措置のこれらの項目が、これでこれを全部適用される形になりますから、それではたしていわゆる欠格者だけの救済になるかというと、そうでないもとのところまで出てくる場合があるのですよ、実際は。だから、そういう意味では完べきだとは言えないと思います。完ぺきだとは言えないと思う。当初考えたよりもっとほかの部面の人までこれの恩典をかぶるという面が出てきますから、だから、そういう意味では完全に欠格者の増税になることを防ぐための万全の措置だとは私は思っていません。しかし、お話しのように、欠格者に対する一つの救済措置として考えられたこれは制度ですよ。そのときの人が、今度たとえば大きくなったとか、家族構成が変わったとかなんとか言ったら、次の年はやらなくてもいいということじゃなくて、やはり控除額の差による税率の町から、次の代の人も今度新たにかぶっていくのです。もし所得税の委譲が行なわれなくて、県児税が従来のとおりの〇・八%とか一・二%とかいうあの段階に終わっておったら何も負担をしなくてもいいものが、委譲されたために二%という率になったために出てきた問題ですよ、それは。三十七年当時の人たちだけでなくて、ずっと続くわけです、制度が変わらない限り。ですから、いまになってそういうものを残しておくのはおかしいというような意見というのは、さっきも言ったように、まことに変な考え方で、自分たちで、めんどうくさいから読みませんけれども、ちゃんとこう書いて、答申の資料としてつけてきてやっておる。それに対してどうのこうのと言うのはまことに不見識もきわまれりと言わなければならぬと思います。これもさっきのように追徴のことばかり言ってもしょうがないからやめますが、ですから、それをすぐあなた方が受けて、なるほどそうだなどと考えられることに対して私は非常にふしぎだと思う。だから、私さっき何か抵抗感じないかと聞いたのはそこです。あたりまえだと思ってこういうものをやったとすれば、私はまことにけしからぬと思う。それから、あなた方のほうでも、税調のいまの人みんなかわっておりますが、われわれに対しての説明なり、これはさっきも言ったように、ここでとことんまでやったわけじゃありませんですが、いろいろ聞いたりあるいはあなた方の書いたもの、発表になっているもの、そういうものからしても、何かいまになるとうそをつかれたような、まやかしをされたような感じを持たざるを得ないのです。名前はやめましょう。やめますが、税額控除をして調整をしたこの措置について、われわれにも説明したことは、このとおりです。このような課税標準の相違は、将来において住民税の所得控除が引き上げられて、昭和三十六年の所得税のそれと同額またはそれ以上になった場合には不要になるということを——まだ何べんも言いますが、違っていますよ、三十六年当時の所得税のそれとは。そのころはうまいこと言って納得させておいて、いまになって今度それは間違いであったとか、事情が違ってきたなんて言うのはおかしい。問題があまり小さいものだからだれも言わないのですが、どうもぼくは解せない、今回の廃止の措置が。制度として私は残しておくべきだと思う。そうしてその控除額の差一万円、青色専従者控除の二万円、これについて一・二をかけた百二十円なり二百四十円なりというものをやはり税額控除して、当然差し引くべきだと思う。でなければ、金高はわずかだけれども、税額控除をして低額所得者の所得税の委譲によりよけい取られる、それを防ごうとする、それがまだ生きていますからね。それをなくしちゃそれが死んでしまいますよ。この問題についての賛成とか反対とかは別として、私はあなた方の考え方としてしっかりしておいてもらわなければいけないと思うのですよ。いささかなことであってもごまかしはいけないと思うのだ、私は。ほかのほうの税金は安くなったから、これなんかなくてもいいじゃないかと、そんなばかな話はない、大臣。こういう問題があったこと御存じですか。いまの私が申し上げておるようなこと御存じでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/60
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061・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) この問題は、お説の点は非常に理論的にも傾聴に値しているのでございますが、しかし今回は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/61
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062・鈴木壽
○鈴木壽君 いや、この問題について承知しておられたかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/62
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063・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/63
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064・鈴木壽
○鈴木壽君 そういうことを承知していながら、なおかつ、こういうことをしなければいけなかったのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/64
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065・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) これは元来税源の委譲に伴いまして、負担の増大を避けるということが目的でございましたが、今回両税を通じまして各種の控除を引き上げましたので、非常に負担は軽減をされることになったのであります。すなわち、総額におきまして、三百六十六億のうちで、この税源の委譲の分が五十四億大体あると思われますが、それを差し引いて三百十二億の負担減になるのでございます。こういうような負担の問題が中心でございましたのが、負担減になるということと、当時の状態は、いまの御説のように、課税方式が違っておりましたが、今度は課税の方式が統一されてきまして、そうして住民税でございますので、住民税といたしましては、結局負担減になるというような考え方でこういうような措置をされることが妥当だろうということで賛成をいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/65
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066・鈴木壽
○鈴木壽君 どうもあなた方、税というものをあるいは住民の負担というものを少し軽く考えているのじゃないかという心配がしますね、私は。最も大事な税の、この金高はともかくとして、それを安易に取り扱い過ぎると思うのだな。こういう税額控除の措置を徹底するというようなことをされたことについて、いま考えてみて、こういう実は税額控除でなしに、あの際考えられた、多少めんどうであったかもしれないけれども、税率でやっておけばよかったなというふうに、いまになって実は考える、ほんとうを言えば。所得税、道府県民税合わせて二%、所得税と、当時の低いところで十万円以下の〇・八%という道府県民税のあの率、それを合わせて二%になりまして、全体を通じて〇・八%の減税になっておるわけですね。道府県民税は増税のようなかっこうですけれども、通じて見た場合には、全体として税率で言えば〇・八%の減税というかっこうである。しかし、その減税という〇・八%分が県民税において、所得税をかけなくても、増税とか減税と関係がない欠格者がかぶるということに問題があるのだから、かぶらせないで〇・八%逆にかけてこれを軽減してやるべきであったと思うのだな。いまになってみると、これはいろいろ困難な問題があったかもしれません。こういうことをやったために、何か目につくかっこうになっちゃって、あなた方がさっき言ったように、めんどうくさい、こんなものなんて目ざわりだというような考えで取っ払われたのじゃかなわぬと思うのだな。私はもっとこういうものの扱いというものは慎重であるべきだと思うのです。確かに、おっしゃるように、全体としては、今回の減税全体としては相当の減税ですから、その中にしかしそういうものも埋没させてしまって、こういう制度をつくった趣旨なり目的なり性格というものを全然否定してしまうということは、私は許されないと思うのだ。目ざわりかもしれません。全体からすれば、あんなこぶができたようなものでと思うけれども、しかし、それはね、つくられるべくしてつくられたそれなんで、それなしには、繰り返して申し上げますが、当時の欠格者等に対する救済ができなかったんだということですから、それは当時ばかりでなくて、この税制がいまの道府県民税の二%、四%というああいう率でいっている限り、どこまでも続くやつです。しかも、いま言ったように、差がある限りですね、これはひとつ特例を設けて復活しませんか。差額の一万円、二万円について一・二かけたね、百二十円、二百四十円、みみっちい金かもしれません。たばこの一つか二つの値段かもしれませんけれどもね、これは制度として、私はやっぱり当時の趣旨からいって、なくすることはおかしいと思う。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/66
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067・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) この問題は、おっしゃるようないきさつがございます。そこで私ども実はこの問題を、まあ結果においてはこういう御提案で、廃止にいたしたわけでございますが、考えるにあたって、二つの面でいろいろと検討いたしたわけでございます。一つは、おっしゃるように、制度論としてどうであろうかという問題、それからいま一つは住民の負担論としてどうであろうか。まあこの二つの面から、この問題についていろいろ検討いたしたわけであります。制度論といたしましては、確かにおっしゃるように、所得税から県民税への委譲でございまして、委譲の際の一つの方法として残されたものでございますので、制度論としては、おっしゃるとおり、たとえば控除が二万円が全部埋まるまでは、このまま残すべきだという議論が十分成り立つわけでございます。ただ、その場合に制度論として考えるにあたっても、そもそもはこの制度と負担の軽減とが一致しておったわけでございますが、だんだんとその後情勢が変わってまいりまして、制度としての意義よりも、むしろ負担の軽減という意味のほうにウエートがかかってきておるというのが現状じゃなかろうか、こういったようなこともございまして、今回実は負担の軽減という面で見てまいりますと、当時の問題になっていない基礎控除でありますとか、十五歳未満の扶養控除でありますとか、しかも、それが県民税、市民税両方を通じて行なわれるというような減税の際でございますので、私どもは、今回こういう措置に出たわけでございます。したがいまして、私どもは、今回の控除の引き上げによって当然にこれをやめるべきであるというふうな考えでこの結論を持ったのではございませんで、いま申し上げましたように、制度的な問題と負担軽減の両面からいろいろ検討いたしました結果、最後の結論としてこういった御提案を申し上げておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/67
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068・鈴木壽
○鈴木壽君 だからね、さっき私がお聞きしたように、あなた方少しこういうものを考えるのに安易だというのは、私そこなんですね。負担論として、その他においても相当な軽減をされているのだから、こんなものは——こんなものはと言うと悪いけれども、取っ払ってもいいというふうに考えるところに、私はおかしい問題があるのではないかということを言っているのですよね。制度として存置すべきもので当然であるなら、しかも、これは負担論からいっても、住民の負担の軽減のためだ。だから、制度としてやるなら、やっぱりそれがたてまえだ、筋だと言うなら、制度として多少の目ざわりのこぶがあったにしても、それをすぐ取り去るというようなことについては、やっぱり慎重でなければいけないのではないかということを言いたいのだ、私はね。いつでも私、便乗のにおいが濃厚だと思うのだよな。こういう機会にこういうものをやっちまえと、しかも、それがわずかではあるけれども増税、道府県民税だけについていえば百二十円、二百四十円だけれども、これは増税ですよ。そんなものたばこ一つ二つじゃないかと言われればそれまでだけれども、そんなものではないと思う、税というものは。だから、こういうところに私は問題があると思うのでね。これは基礎控除も上がったし、その他の控除も上がったから、それは確かにそのとおりだけれども、だからといって、事の本質が、税の委譲に伴っての一つの当然とられなければいけない救済措置であったのだから、救済しなければならないという事由がなくならない限り、その制度をやめるというのはおかしい。これは何と考えているのか。大臣もう一ぺん考えてみる余地はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/68
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069・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 住民税といたしまして、基礎控除が二万円引き上げられたのでございますので、住民税としては、負担軽減になっておるのでございますので、しかも、当時は課税方式が違っておったのを、今度は同一課税方式になって、住民税としての税を取っております関係上、この税負担が大幅に行なわれるときにこの処置を考えたということでございますので、この原案をぜひひとつ御審議を願いたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/69
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070・鈴木壽
○鈴木壽君 まあね、ここまで来た、いまさら考え直して、法律を、原案を直すというようなこともこれはできないでしょうからやめますがね。直接の担当者である税務局長ね、これ何か、まあこの法律はこの法律としても、どこかになおしばらくこの制度を残しておくというような手直しできま
せんか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/70
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071・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) まあ先ほど申し上げましたような制度の議論もございますけれども、また負担の面、あるいはその後の住民税の立て方が変わってまいりました点、あるいは税務行政の合理化といったようないろいろな面から見まして、私ども当然の措置とは考えておりませんけれども、大幅な負担軽減のできる際であるので、この際こういうことによって合理化をしてまいりたい、まあこういう結論を一応得たわけでございますので、その間の事情をひとつ御了察いただいて御審議いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/71
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072・鈴木壽
○鈴木壽君 その県民税自体、市町村税については、方式が今度統一されたとかなんとかということ、その後起こっておりますけれども、県民税については何もそんなことありませんよ。ただ、今回、基礎控除が若干上がったというその基礎控除等の上がったということも、何も減税なんていばるような——あなた方いばっているわけではないけれども、そんな筋合いのものじゃなくて、物価なりそういうようなものから考えてみても、もっともっとこれは実は控除額なんか引き上げなければいけないのです、ほんとうをいえば。物価調整にもならぬ程度のことをやって、こういう際だからなくしてしまうなんていう、どう考えても私は解せないものがあるんですがね。
じゃ、ちょっと観点を変えて、この税額控除の廃止に伴って出てくるその税額はどのくらいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/72
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073・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 全体で五十四億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/73
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074・鈴木壽
○鈴木壽君 個人にとっては、さっきも言ったように、ピース何本分とかなんとかというようなことが言えるかもしれぬけれども、これは全体をとってみますと相当大きいんですね、五十四億というと。今回の四十一年度の住民税の減税はどのくらいになります。そうしますと、これは除いて考えた場合に、減税は、県民税において幾ら…。これはここにあなた方の資料もあると思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/74
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075・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 今回の控除の引き上げは、基礎控除の引き上げ、扶養控除、専従者控除の引き上げ、それぞれございますが、それらの額の合計は、全体調整税額控除を加味しまして初年度で二百九十七億でございます。そのうち税額調整控除の分が五十四億ございますので、もしお尋ねが税額調整控除前ならば幾らかということであれば、二百九十七億に五十四億を加えました三百五十一億、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/75
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076・鈴木壽
○鈴木壽君 そうすると、これは何分の一か。三百四十一億のまあ六分の一くらいかな。七分の一までいかない。これはしかし、相当なあれですね、五十四億というのは。いま言ったように少なからざる私は金だと思うのです。わずか二百四十円、四竹八十円の該当者だけれども、それはしかし集めてみると五十四億円にもなるというのは、これはやっぱり私はばかにならないものだと思いますね。三百億の減税をするか、三百五十億にするか、二百五十億程度にしようか、いろいろ五十億の差がうんと問題になるときですよ、いま。逆に今度五十四億というものが取られてしまうと、これは私は不当に取られてしまうというふうに言わなければいけないと思いますね。いろいろな税改正あるいは減税、これは十分に考えてやっておられると思いますがね。しかし、私いま指摘したこの問題は、あなた方少し考え方がルーズであったと思いますね。こうして数字を見ますと、決して小さくない金高というものが今回この税額控除の廃止によって住民が負担をしなければならぬということなんです。個々に言うと、さっきも言ったように、二百四十円あるいは四百八十円ではありますけれどもね。しかも、今回の廃止措置というものは、この制度をつくった趣旨に反する措置だと、こういうふうに思うのですが、やはりどこまでもこれをこのままでやっていきたいということのようですが、大臣、やはりだめですか。これは修正したいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/76
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077・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) やはり二万円の控除をいたしますので、住民税としては控除されますので、その各個人においてもそれだけの負担増にはならないのであります。増税されては意味がございませんので、結局二万円の控除が住民税として行なわれますので、さらにまた全般的にはその他の控除等によりまして減税が相当強く出てまいりますので、ぜひひとつこの点で御審議をいただきたいと存じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/77
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078・鈴木壽
○鈴木壽君 二万円の控除ができて、控除が新しくふえて減税になるといったって、それはそれなんですよ。それは当然やらなければいけないことで、だから、そういうことをやるから、無理なもんでもいままでの制度をやめて取ってやろうという考え方が私はおかしいと言うんだよ。あなた方から改正法案の要綱みたいなものをもらってびっくりしたのです、実は。今回のいわゆる減税、基礎控除の引き上げとか、扶養控除の引き上げとか、配偶者控除、これは新設でもないだろうが、いずれ名前がどういうふうになったとかということのそれとは関係のないもんなんです。それができたからすぐこれを全然なくしてもいいというもんではない。その引き上げの措置が三十六年当時のそれと合うようであればこれはもちろん要らないけれども、まだ残っているんだ。そういう不十分なことをやっておきながら、正当に存置しなければならぬやつを取ってしまうということに対して、私は簡単に承服できないということなんです、これは理屈から言って。それを何だかんだ、あっちも減税、こっちも減税だから、まあまあこれはいいじゃないかということで、全体の負担が大きくならないとか、それでも減税になるのだからということで取り扱うべき問題じゃないと思う。そんなふうな扱いができるのだったら、税法というのはたいへんなことになりますよ、今度。どういうような制度をつくっても、どういうことをやっても、今度こっちをちょっといじったからこれによってこれなんかなくしてしまえというような、こんなことをやったんではおかしいと思う。少し相談してください、私はちょっと承服できませんから。大臣、ひとつあなた方の最終的な態度を相談していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/78
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079・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 先刻も申しましたように、やはり十五歳以上の子供を持っておる関係の人や青色申告におきましても、やはり基礎控除額が二万円あるいは四万円になりましたので、住民税としてはこの税額控除の差の関係というものはやはり税額控除によってなくなるわけでございますので、さらにその他の控除等が総合されますと結局相当な減税になる関係等がございますので、この場合ひとつこれで御審議を進めていただきたいというように、衆議院でもこの点は強く問題にされたのでございますが、いろいろ検討いたしまして、この原案によってぜひお進めを願いたいと、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/79
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080・加瀬完
○加瀬完君 ちょっと関連。鈴木委員の御指摘の点はですね、税の性格の上から、前回設けられた、いま指摘をなさっておりますような点は、これは存置すべきではないか、こういう御趣旨ですね。承っておりますと、いままでもそういう例が多いのですが、徴税技術の上からどうも最大公約数で固めていくという傾向が自活省のほうには強いように思われるのです。府県民税の三十六年度の改正のときも、やはり非常に不合理の点がたくさんありまして、われわれは指摘したわけでございますが、徴税技術の面からといったような御答弁も何度かございました。これは、やはり、私は、鈴木委員の御指摘のように、もう少し徴税技術といったようなことよりも、税の性格ということやその御指摘の点が、どうして設けられたかという経緯から考えても慎重に扱っていただかなければならない問題だと思うのですよ。いまここですぐ御相談して御返事というわけにもいかないでしょうから、明日あらためて御審議の上御回答をいただきまして、私どももそれについてまた質疑を重ねるということにしていただいたらいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/80
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081・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) これはまあ課税方式が三十六年度の当時は市町村民税と違っておりましたのを今回あのように課税方式が一体化いたしておりますのでこの措置をとったわけでございますので、お説の点は十分ひとつ検討は続けるつもりでございますが、今回は、ぜひひとつこの関係で御質疑をお進め願いたいと存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/81
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082・鈴木壽
○鈴木壽君 いま加瀬理事からお話があったように、これはここで審議を全部私はやめるというのではありません。ほかの方の質問もあるでしょうから、それはあとに続けていっていただいてけっこうですから。ただ、いまの問題については明日、じゃあらためてもう一度考え方をただしたいと思いますから、そのように委員長も心得ていただきたいと思います。それからまああと言わなくてもいいようですが、実は、私自分の理解しておったことが誤っておったのかと、こういうことで、さっきも例示しましたが、この税調の、三十六年十二月に出た「答申及びその審議の内容と経過の説明」をひっくり返してみたんですよね。そうしたら、税調では、いま問題にしておる税額控除を、「暫定的に、課税所得の相違する金額について現行の最低税率の〇・八%がそのまま適用になるよう、これに改正税率二%と現行〇・八%の差額の一二%を乗じた金融を税額控除することが適当であると認められた。」、こういうことをはっきり言っているのですね。だから、これは私は何べんも言いますが、制度としてあの移譲という事態があった。道府県民税に所得税の移譲という事態があって、税率を県民税のほうで変えた。これはもう所得税のほうでも多少変えておりますよ。いずれにしても、そういうことから負担の調整をはかっていく上からとられた措置として正しいものだということを認めてやっておるのです、制度として。これはそのとき限りだから三十七年に……。家族構成が違うから適用することはおかしいということだけじゃなしに、これは制度が、税の移譲がそういうふうに行なわれたあとすっとそのころのきめられた税率なり何かがある限り続くのです。そうして、それは具体的には控除額の差がある限りそれが続くと、こういうふうに見なければならないのであって、これは間違いじゃないと思う。これはおまえの言うことは少しおかしい、理屈に合わぬというのなら、それは指摘していただいてけっこうですがね。これは私は正しいと思う。そういう見地に立っていま私いろいろお尋ねをしておるのですが、いずれにしても、私、この問題についてのお尋ねは、きょうはこれでやめて、あしたあらためてひとつ論議したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/82
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083・原田立
○原田立君 二、三お伺いしたいと思うのですが、固定資産税についてですけれども、今回の内閣案とそれから衆議院で改正になってきた案とでは、五十億からの開きがある、減収になる、そういうふうに聞いておりますけれども、地方団体においては目一ぱいの収入を見込んでおる、そういうことだろうと思うのですが、一体この財源措置はどういうふうになさるか、そのお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/83
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084・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) この点は、衆議院で附帯決議で財源措置をやれという強いのがついておりますので、政府としましては、院議を尊重をいたして、財源の処置を十分いたすように努力をいたしたいと考えております。大蔵大臣もこの点に関しては十分ひとつ院議を尊重をしてやるということを申しておるようでございますので、皆さん方の御意見を十分尊重してやるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/84
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085・原田立
○原田立君 院議を尊重してしかるべく措置をするということですから、これで一応納得いたしますけれども、年末になれば、年の中ごろになれば、また人事院の給与勧告等なんかがあって、地方が財源に困る。それは自治大臣が一番よく御承知のわけでありますから、具体的にどういうふうになさろうとするのか、具体的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/85
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086・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 人事院の勧告ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/86
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087・原田立
○原田立君 いやいや、違う、その問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/87
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088・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) この問題に対しては、大蔵大臣が具体的の案については十分ひとつ考えるから、いろんな財政上その他の関係等考慮して、とにかく院議を尊重して御期待に沿うようにやる考えだということで、具体案についてはまたいろんな今後の財政その他の事由で収入支出いろいろございますから、それらの状態を見た上で具体案としては検討するが、いまこれを申し上げることにはいかぬが、とにかく責任を持って財政の措置を院議を尊重してやるということで言明を委員会でいたしておる次第でございます。具体的処置はただいまのところ直ちに確定はいたしかねますけれども、その財政的措置を十分院議の趣旨に従ってやるということを言明いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/88
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089・原田立
○原田立君 固定資産税の税率を将来引き下げる考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/89
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090・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 固定資産税の負担調整等、政府の税制調査会で審議していただく過程におきましては、税率の問題も出たわけでございます。したがいまして、昨年暮れに出ました答申におきましても、税率について引き続いて検討するという意味の答申がうたわれておるのでございます。税率と一緒に負担調整措置をどうして考えないかという御議論もあろうかと思うのでございますが、けさほど参考人の御意見もございましたように、負担調整措置自体を取り上げて税率と引き離して進行させて、そうして税率についてはまたもっと広い角度からこれを検討していきたい、こういうことであったわけであります。具体的に申しますと、税率につきましては、土地だけの税率を切り離して考えるのがいいのか、家屋、償却資産を通じて税率を考えるのがいいのか、また、そうした場合に固定資産税に対する税負担と他の所得課税との税負担とのバランスをどう考えたらいいのか、あるいは、企業体が負担をしております税負担を見てまいりますと、御承知のように、現在は非常に所得課税の部分が多いわけであります。具体的には法人税でありますとかあるいは法人税割りであるとか法人事業税といった所得に対して負担をしている部分が多くて、固定資産税のように外形的に負担をしている部分が非常に少ないのでございます。そういった企業の税負担をどういうふうに持っていったらばいいかといったような問題もいろいろからんでおりますので、広い角度から引き続いて検討してまいりたい、こういうことになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/90
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091・原田立
○原田立君 ちょっとこまかくなると思うのですけれども、今度の法律の中で三倍未満は一・一、三倍から八倍までは一二、八倍以上は一・三と、こういうふうになっておりますが、ここでわかったらお答え願いたいと思うのですが、この率の中で、五千以上一万未満の町村においては一体どのくらいの金額、税額等になるのか、あるいは、一万から三万の市町村、三万から五万までの市町村、五万以上の市町村、こういうふうに分類してできておりますか。こまかいことですから、あとでもけっこうです。あとでいいですけれども、資料ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/91
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092・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 人口段階別には、いま用意をいたしておりません。大都市、都市、町村といったようなグループによります税の変動は調べておりますが、個別に人口段階で調べておりませんが、どこか特別にこういう町というようなことありますれば、後刻調べてお届けしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/92
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093・原田立
○原田立君 実はそれが問題なんですよ。政府の固定資産税のPRについては、税金は百円か三百円か、三百六十円ぐらいしか上がらないのだから、安いからこれを通すべきだというような、そんなような意見も前聞いたし、新聞雑誌等にも出ておりました。ところが、実際に政府で計算している全国の市町村の何か統計、平均らしいのだけれども、それはもちろんそういう平均値を出すのも大切だろうと思いますが、たとえば東京とか大阪とかこういう都市こそ宅地等が非常に値上がりして困っている。そうなると、山また山みたいな町村、それなんか全部ひっくるめて、そうして平均幾らだから幾らだというような言い方だと少し乱暴じゃないか。それで、いま御質問しているような内容をお聞きしているわけなんです。これは相当量課税なんですね。これはこの前、課長さんに二、三資料をつくってもらって調べてもらったけれども、たいへんな金額になる。それでいまお聞きするわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/93
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094・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 御承知のように、宅地の値上がり倍率といいますか、新評価におきます上昇率の区分で宅地の分布を見てまいりますと、都市、大都市に非常に片寄っているわけでございます。町村宅地ももとより多少の値上がりで、これは倍率は非常に低いわけでございます。そこで、私どもといたしましては、いろいろ個人の土地あるいは家屋を持っている状況というのは非常に千差万別でございまして、私どもも全国的にかなりの数の個別の担税力調査というのは実はいたしてはおります。おりますけれども、非常にその人の所得段階と、その人の持っている土地の広さ、家屋の広さというものにはいろいろな状況がございまして、なかなか、その中からだけ全体を類推することが困難であるわけでございます。そこで、私どもは、都市、大都市に片寄っている実態、全体の傾向から見まして、都市、大都市を通じての平均の単価、これを用いて一つの標準的な負担変動のめどをつくっておるわけでございます。その場合に、つくっておりますものは、このお配りいたしました資料の中にも入っておりますが、固定資産税で私ども調べてまいりますと、専用住宅の宅地の広さは、全国的に見てまいりますと、五十五坪でございます。住宅統計調査等で調べましても、大体それに近い数字が出ております。都市、大都会はそれよりも狭くなっておりますが、大体五十五坪ぐらい。それにのっております住宅は二十三坪、こういう平均的な姿をもとにいたしまして、都市、大都市を通じます平均の評価額、これをもって税負担を計算をしてまいりますと、明年度について申しますれば、都市計画税まで合わせまして、本年に対する増が五百十一円というようなことになるわけでございまして、個々のものはもとよりいろいろ実態が違うと思いますけれども、やはりこれが一つの標準的なめどになろうと思っております。
なお、これによりまして総理府の家計調査等におきます標準的なサラリーマンの所得を見てまいりますと、大体四十一年度で八十八万ぐらいになりますが、そういう人について明年度は税制上どういう変化が起こるかといいますと、所得税、住民税で約一万四千四百円の減税になるわけでございます。そうして、いま申し上げました固定資産税の場合で申しますれば、固定資産税と都市計画税を合わせた額で申しますれば年額五百十一億円、こういったような税負担の状況になりますので、この今回の固定資産税の負担の増加分は税制自体の面でも吸収されていくべきではないだろうか、こういうふうな考えができたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/94
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095・原田立
○原田立君 先ほど言ったのを、できましたら、資料を提出してもらいたい。これは実際この前おたくのほうで調べてもらったんですが、荒川の町あたりで十一倍、新評価額ですね。それから福岡市内で十三倍、こういうふうなところが非常に多いんではないか。結局、これが、政府の言っているように、今回の固定資産税の改正はそんなに圧迫しないんだ、住民に圧迫しないんだとは言いながら、実際は非常な圧力がかかるんじゃないか、そういうふうなたいへんな心配をするわけです。全国的にプールして見れば、実際は非常に低くなるかもしれませんけれども、都市部なんかはべらぼうに高くなるんじゃないか、こういう心配をするんです。そういうことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/95
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096・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) これは、上昇倍率のことだけで議論も実はできないと思います。しかし、宅地につきまして全国で十倍以上に上がっております地積、面積でございますが、面積は全宅地のうちで六・九%、七%に足らないわけでありますが、地積で全国の六・九%が十倍以上の上昇率の区分に該当するものになっております。したがいまして、いま御指摘のような、十倍以上をこえておるというものは、面積的に見ましてケースとしてはそう大きな部分を占めてはいないということが言えると思います。
なお、もう一つ申し上げておきたいことは、特に大都市におきましては上昇倍率の高いのは、どちらかといいますと、大都市の周辺部分に多いのでございます。いわゆる新開発地域と申しますか、そういうところに多いのでございまして、そういう所の倍率は非常に高くなっておりますが、いわゆる旧評価額、三十八年度までの単価は非常に低いのでございまして、低くて、その地域が非常に発展していくたびに倍率が高くなっておるというようなことがございます。その点は、私どもも上昇倍率区分別に旧評価の単価をとってみますと、六大都市を通じまして倍率の高いものほど旧評価額のほうが額が低いというような実際の数字が出ております。したがいまして、負担の面から見ますれば、倍率の大小だけで負担の増大の問題を議論することは必ずしも当たらないではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/96
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097・原田立
○原田立君 十倍以上が七%であるというと、何かかなり少ないような、あまり被害はないようた印象を受けるわけですが、これは必ずしもそういう被害が少ないということでなしに、多いんじゃないかと思うのですよ。ひとつ、そういうような点、よくよく御考慮願って今後進めてもらいたい。
次に、電気ガス税が今度は非課税の措置が一つ設けられておりますけれども、こういういわゆる大衆課税といいましょうか、非常に低所得者までも全部にわたる税金というのは、むしろ悪税ではないか、そんな考え方をするんですが、この電気ガス税は廃止なさるお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/97
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098・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 電気ガス税については、いろいろ議論が繰り返されておりまして、悪税だという御議論もございますが、いろいろそのお立場によっての議論だと思うのでありますが、私どもは、少なくともこの税は、市町村の税としては非常に市町村税制の中で大きな地位を占めている税制ではなかろうか、こう考えているのでございます。と申しますことは、やはり電気ガスの消費ということ自体につきましては、それを使用します生活の水準を一番端的にあらわしているのではないだろうか。いろいろ統計等を見てまいりましても、所得の高い人ほど電気ガスの使用料が多い。その関係はおおむね比例をいたしております。そういったようなことから見まして、やはり所得に対する補完税としての電気ガス税は、それなりにいい地位を占めているものである、こういうふうに実は考えているのでございます。
それからいま一つは、電気ガス税も、御承知のように、数百億、年々百億ぐらいづつの自然増があるわけでございますので、そういったような状況から市町村の財政に占めております地位も非常に大きなウエートを現在占めておりますので、それこれ考えてみますと、私どもとしてこれをいま廃止するというような考え方は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/98
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099・原田立
○原田立君 電気及びガスの使用料かその人の収入が多いのだとかいうような御意見だったけれども、それは科学が進んでくれば電気やガスを使うのはむしろあたりまえで、日常品ですよ。その日常品をつかまえて課税するというのはおかしいと思う。
それで、もう一つお伺いしたいんですけれども、現行法のガスの免税点四百円、電気のほうの五百円の免税点ですけれども、この免税点を引き上げるようなことはお考えじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/99
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100・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 一昨年までは、両方の免税点か三百円であったわけでございますが、昨年の改正で、電気は四百円、ガスは五百円に引き上げいたしたわけでございます。そのときのいろいろ引き上げにあたって検討いたしましたのは、電気ガスそれぞれの料金の変動、それから消費の水準の向上、こういったようなことを要素にいたして実は昨年引き上げたところでございます。したがいまして、本年もこれについての検討をいたしましたが、昨年とその辺の事情にあまり大きな変動がないと考えまして、今年はこれを見送りをいたしました。しかしながら、先ほど申し上げましたように、料金の問題であるとか、あるいは消費の水準といったようなものの向上に応じまして、将来やはり徐々にこれを考えていくべきもの、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/100
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101・原田立
○原田立君 それでは、もう一つ、電気ガス税の税率ですね。現在百分の七となっていますけれども、これを引き下げる考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/101
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102・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) これも、先ほど申し上げましたようなことでいろいろ税制としての御議論がございますし、引き下げろという御議論ございますが、先ほど申し上げたような考え方から、私どもとしては、現在のところは、これをちょっといじる考えがございません。しかしながら、政府の税制調査会におきましても、昨年七月に発足をいたした新委員の任期があと二年半ほどあるわけでございます。その過程におきまして、やはり国税、地方税の体系的ないろいろな御議論もある予定でございます。その際は、この電気ガス税についても十分議論の対象になるものと考えておりますし、私どもも御審議をいただきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/102
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103・原田立
○原田立君 地方財政、地方の財源という問題と、それから一般住民の負担ということの二つがからまってくるようなので、もちろん地方財政からいけば財源の確保という面でそれは十分考えなければならぬとは思いますが、大衆課税、非常に大ぜいの人が零細な収入しかないような人でもかかるようになっている。将来、全廃していくか、むしろそれができなければ、免税点の引き上げとか、税率の引き下げ、これはひとつ十分検討願いたい、要望をいたしておきます。
それから個人の住民税の均等割りについてお伺いするのですけれども、道府県で二十九億七千万円、市町村において百七億円、それぞれ四十一年度において見込まれているわけですが、両方合わせて百三十六億円ですか、これは来年度の地方税の収入見込み一兆五千七百万円から比べてみると、比率としては百対一で非常に弱い。昭和三十年ごろの地方税収入は三千八百億くらいですから、その当時の市町村民税の均等割り収入が九十六億円、府県の場合はちょっと数字はよくわかりませんが、現在もたいした変更はないと思うのですが、そうしてみると、均等割りというものは、地方税収入か四倍になっても、いままで手直しをしたことはない。したがって、地方税収入に占める地位ははなはだ低いという現状ですが、一方、納税人員のほうを見ると、三十年当時の均等割りの納税人員約二千四百万人、これが三千万人にふえて、総理府の労働力調査報告によると、十五歳以上の人口は七千三百四十万人、労働力人口は四千八百三十万人、就業者の数では四千七百九十万人、男女別に見ても、男は二千八百九十万人、女は千九百万人、女性の三三%くらいが既婚ですから、約六百万人くらいが同居者、配偶者と見て均等割りを納めないものと考えて、差し引き四千戸万人の就業者に対して約三千万人くらいの納税者が起こるということで、その割合が七〇%以上である。実際に収入を伴う仕事に一時間以上従事した者及び若干の休業者ということになっているわけですが、こういうふうに納税義務者が七〇%以上をこえるということは、税額が低いとか高いとかいうことを別にして、重大な問題があると思うのですが、そこら辺のところはどんなふうにお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/103
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104・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 住民税均等割りを地方税制の中でどういう地位に置いて考えるか、あるいは、地方団体との間の結びつきをどう考えるかといったようなことでいろいろ考えが違ってくるかと思います、か少なくとも私どもはこの均等割りというものは存置をしてまいりたい、こういうように考えております。均等割りの額自体が、現在、御指摘のように非常に低いのでございます。昭和二十六年以来、十五年間にわたって実は据え置きになっております。税制上から申しますれば、経済情勢の変化等を考えれば、当然にこれは適当な時期に引き上げてしかるべきものと考えておりますけれども、いろいろな諸情勢もございますので、国民生活の度合い等も考えて、現在まだ据え置きそのままになっておるのでございます。そういったいろいろな事情から見まして、私どもとして、この均等割りをいまやめるというような考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/104
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105・原田立
○原田立君 それで、いわゆる七〇%以上の人に税をかけるというのは行き過ぎじゃないかと、こう思うんですよ。で、このような大衆負担を求めながらも、税収入としては、法人分等を含めて、地方税の総額の約一%、非常に少ない。このような異常な大衆負担が生じたのは、住民税の所得割りは所得の計算の方法がはっきりしているが、均等割りは生活している限り何らかの所得があるはずだというそんなところでなっているわけですが、生活保護の対象者や、幼児、小中学生でもない限りすべて課税するというところにたいへん大きな問題があると思うんですよ。で、いま局長が言われたように、物価が上がっているし、生活水準も向上するし、当然そうなれば課税最低限度も引き上げるのが当然なことじゃないか。所得割りについては、国はもとより、住民税においても若干引き上げられておりますけれども、均等割りについていまお話しになった十数年——十五年ですか、そのまま据え置きというのは、これはやはり将来再検討を要する重大な課題ではないかと思うのです。このような点について、ひとつもう一ぺんお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/105
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106・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 住民が地方団体の経費を負担する場合は、できれば全住民がわずかながらも負担してもらいたい、こう考えるのでございます。それの一番顕著なものが均等割りでございます。したがって、その性格上からいきましても、納税義務者数の割合が高いのはむしろ当然のことであって、そこにこそ均等割りの値打ちがあると実は考えておるのでございます。それで、その額が地方税の中で非常にウエートが低いということは、先ほど申し上げましたように、むしろ長期間据え置いておるというところに問題があるわけでございまして、やはり自治体自体の行政水準もだんだん上がってまいるわけであります。学校や道路の費用も上がってまいるわけでございますので、均等割りの額につきましても、将来はむしろこれを適正な額に引き上げていくというような方向で検討をすべきものと考えておるのでございます。昨年の政府の税制調査会におきましても、長い間据え置かれておる均等割りの額については、将来検討していこうじゃないか、こういったような御議論が実は出ておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/106
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107・原田立
○原田立君 それでは、別にして、いつだったか日にちはちょっと忘れましたけれども、予算委員会で総理大臣は、所得税の課税最低限度を八十万円まで引き上げたい、こういうような言明があったわけですが、現行所得税は六十二万円、住民税は四十二万円、おのおの課税最低限度になっておりますが、もし八十万円になった場合、当然住民税の課税最低限度も上がると思うのですけれども、引き上げるべきじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/107
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108・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 所得税と違って、住民税はやはり住民がなるべく広く負担をしてもらう、こういう考え方に立っておりますので、所得税のように課税の最低限が年々上がっていくというのに住民税として追随していくことは、性格上困難であろうと思います。ただ、やはり経済情勢も変わってまいりますし、あるいは、生活保護基準といったいわゆる最低社会保障費の向上といったようなこともございますので、将来住民税について課税最低限を考えます場合には、やはりそういったたとえば社会保障の限度額との関係をどう見ていくか、あるいは納税人員の中に占めるウエートをどう見ていくか、あるいは所得税の納税者と住民税の納税者との比率の動きをどう見ていくかといったような点なども考えていくべきものと思いますが、所得税の控除が八十万円に上がれば必ず住民税も追随して同じ比率で上がるというふうな考えには立っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/108
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109・原田立
○原田立君 これは重要な発言だろうと思うのです。それはおかしいじゃないですか。所得税のほうで課税最低限度が引き上げられれば、住民税だって引き上げていくのがむしろ当然ではないかと思うのです。それを、いま局長の言明では、所得税は上がったって住民税のほうはそんなことはやらない、極端なことばで言えば。そういうはっきりした言明だけれども、これはまずいんじゃないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/109
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110・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) まあ上げないという言い方の問題があるかと思いますが、追随して同じ比率で上げるというようなことは考えられないということを実は申しておるわけであります。と申しますことは、やはり、住民税は、その地方団体の経費を分担してもらうしかたの問題に関連をいたすわけでございます。なるべく広く、わずかずつでも住民が経費を負担してもらいたい。したがって、住民税自体は、いわばその住民にとっては生活の中の一つの経費なんだというような考え方に立っておるものでございます。所得税とそこが根本的に性質も違うと思うわけでございまして、一昨年ですか、税制調査会でもずいぶんこの問題については長い時間をかけて議論をいたしました。結局、最後に、住民税と所得税の課税最低限については差があるのがむしろ当然であるというような結論が出たわけでございます。そういったような点から、かりに所得税が将来八十万円になるといたしましても、住民税がそれに同じ割合で追随して上がっていくということは私どもとしては考えていない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/110
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111・加瀬完
○加瀬完君 ちょっと、関連。それは去年の予算の分科会で大臣の御答弁なさったことと違いますよ。それはあとで申し上げます。
で、いま局長さんの御説明が、私は異論があるわけです。なぜかと申しますと、人頭割りで、所得があろうがなかろうが、住民である限りは全部一応の課税負担というものはされておるわけですね。それに加えて所得割りがあるわけでしょう。その所得割りが——所得税ならば、一応大蔵省で考えた最低生活基準というものを割っている者は所得税をかけないという、大体バランスをとっているわけですよ。ところが、地方税は、最低生活基準にかかわりなくかかってきているわけですよ。確かに、地方税の性格から、いずれも若干の負担をしなければならないということは成り立つでしょう。それはちゃんと人頭割りで負担しているじゃないですか。その日の生活費を割るような経済力の弱小な者でもさらに所得割りが課せられているというところが問題ですよ。それで、前の大臣が、これは徐々にやはり所得税の扱い方にならってまいりましょうという答弁をされているんです。去年は。急に変えるわけにはいかないけれども、そういう方向に考えましょうということをおっしゃっているんですよ。だから、ぼくはそうおっしゃるのが当然だと思う。いまの局長さんのお話ですと、性格が違うんだから同じ水準にできるかできないかということは別ですよ。やはり、所得税の扱い方と同じような方法を方法としてとっていくのが当然じゃないかという御質問なんです、原田さんは。それはやらないということになれば、これはおかしいと思うな。人頭割りを払っているでしょうに。払っていないならばまだしも、払っているんですよ。所得税には人頭割りというのはありませんよ。所得のない者が人頭割りで国税を払っているということはないわけです。地方税は別だ。二重に払っている、極端に言えば。そこを考えていただかないと、いま原田委員が指摘したように、人頭割りが高いの安いのという問題さえあるのに、人頭割りで取っているのを忘れてしまって、同じ所得割りだってみな経費分任のたてまえからこれは地方住民としては負担をすべきだということになりますと、ちょっとあらためて伺いたいという気持ちになるんです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/111
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112・細郷道一
○政府委員(細郷道一君) 多少どうも両極端で議論をしていたようなきらいがあるかもしれませんが、所得税で課税最低限を何年の後かわかりませんが八十万円にしたいという一つの長期減税構想といったようなものがちらほら出ているようであります。私どもがいま申し上げておりますことは、所得税の課税最低限が上がるからといって、すぐそれに追随して、向こうが一万円上がればこっちも一万円上げるのだという意味で住民税の課税最低限については考えていけない。住民税はやはり性格が違うのだから。所得税のほうは、やはり、国民の生活水準が上がれば、上がるに応じてこれはできるだけ私は上げるほうがむしろいいのかもしれないとすら思っております、所得税自身としては。しかし、住民税は、かりにそういうふうになっておるといたしましても、所得税と同じベースでこれを考えていくことはできない。やはり、両税で性格が違うし、住民税というものは確かに均等割りは払っておりますけれども、均等割りの額がいま幾らというふうに問題になっておるような状態でございますので、そういったものともにらみ合わせて将来考えていかなければならないと思いますけれども、やはり住民にとってみれば、その地方団体の経費をともかく何がしかずつ負担をしていくという考え方がございますので、その意味におきましては、住民税というのは生活費の一部であると言うことすらできるのではなかろうか、こう考えるわけであります。
そこで、将来、では住民税については課税最低限はもう全然いじらぬのか、あるいは所得税にいつもくっつくのかという両方の極端な議論になると思いますが、私が先ほど申し上げましたように、住民税の課税最低限につきましては、やはり将来行政も動いていくことであるから、納税者数の有業人口に対する割合がどのくらいになるか、あるいは所得税の納税者と住民税の納税者の割合がどうなるか、あるいは国が最低の生活保障としてとっております生活保護基準等の動き、そういったようなものを勘案してこれを考えていく、所得税とはやや違う別の立場でものごとを考えていく、こういう点を私は強調したかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/112
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113・加瀬完
○加瀬完君 関連で恐縮なんですが、一応おっしゃることはわかりますよ。住民の生活費みたいなものだから、所得税とは違って住民税は払わなければならない。それならば、租税特別措置法やなんかいろいろな国の政策の中で、地方税の減免をしている分をなぜ遮断しないかというんですよ。野方図にそのまま認めているかというんです。生活費なら、法人であろうが個人であろうが、当然これは分担すべきです。そちらのほうはさっぱり整理をしない。それで、今度、個人の所得割りになりますと、三十六年以前の所得税の免税の線にかかわりなくこれは地方税はかけられてくるのでしょう。一般の住民には非常にきびしいですよ。企業資本には地方税はゆるやかです。企業資本が全部つぶれていいというような暴論は私は申し上げませんが、これほど逼迫しているときなら、しかも、住民の生活費としての地方税、住民税ということならば、これは少なくとももうかっている会社からは生活費は負担をしてもらうべきですよ。住民税は払ってもらうべきですよ。あるいは地方税は払ってもらうべきですよ。そちらのほうの整理はいまさっぱり行なわれていないのは、本会議でも質問しましたが、なぜでしょう。これでいいでしょうか、大臣にひとつお答えいただきます。不合理じゃありませんか。取りやすいところからは経済力がなくても取る。いろいろ文句の出そうなところからは取れるのに取らない。こんなものをほうりっぱなしにしておいて均等割りを頭並みにまた上げようとか、上げるのが当然だという議論をなさいましては、住民自治とは言えません。大臣、ひとつこの点は、地方税は取れるところから取ってくるとおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/113
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114・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 住民税の最低限度額の関係と所得税の関係は、いま局長の申しましたとおりでございますが、とにかく、生活保護の関係や、あるいは生活水準の上昇、その他あらゆるものを勘案いたしまして、適正に今後も考える必要があると考えております。必ずしもこれはスライドして一致するということには考えませんけれども、諸種の点を考慮いたしまして、やはり経済の動向等を見まして考えるものである、こういうように考えております。
なお、いわゆる特別措置に関する関係につきましては、原則としてやはり遮断することが好ましい、こういうように考えておりますが、あるいは中小企業、農漁山村、その他零細関係者の生活を向上していく経済の関係等では、やむを得ぬものは受け入れざるを得ないものがあるかと思いますが、また、今年もああいうように法人の合併、スクラップ化促進、あるいは資本構成改善等の分に対しましては、こちらに影響を受けないような処置を講じたのでありますが、できる限り影響を受けないようにすることが望ましいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/114
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115・鈴木壽
○鈴木壽君 大臣、前段のお話、ちょっとわかりませんね。前段の課税最低限の問題ですね、考慮するというのだが、考慮ということはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/115
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116・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 課税最低限の関係は、必ずしも国税関係と一致をいたすものではないと思うのであります、か、しかし、生活保護費の関係、あるいは生活水準の上昇、物価の関係、あらゆる経済状態を勘案し、また、国税の減税等とも見合いまして総合的にいま検討をいたしていく必要があると思うのであります。これは、何といっても、われわれが地域社会の生活をいたします上において一体に結び合っていかねばならぬのでございますから、地域社会を住みよいいい環境のものに仕上げるというような関係におきましても、非常に住民との結び合いも強いものでございますから、これらをあらゆるものを総合してやる必要があると思うのでありまして、これをどうするか、スライドしていくか、その率をこういうようにせにゃならぬということにはいかないと思います。あらゆるものを総合しまして、経済のあらゆる変動等総合し、生活状態を総合しまして検討をして、その情勢に応じて最低限を漸次に引き上げていくということが好ましいんじゃないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/116
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117・鈴木壽
○鈴木壽君 関連ですから、これでやめますが、お話を聞いても、あらゆるものを総合的にということで検討していくとおっしゃっておりますが、
〔委員長退席、理事沢田一精君着席〕
いまのお話の中にありましたたとえば生活保護費の問題とか、これはあれですか、生活保護費は国で組みますね、それを見て何かわれわれの普通の生活というものの水準をやっていくと、こういうのですか。あんまり生活保護費の問題と何べんもおっしゃるのだが、一体どういう意味なのか。国のきめているいまの生活保護費というのは、いわばでたらめな、何も生活が保障できるようなところまで考えているのでなくて、予算的にどうしてもというようなことできめているだけの話で、そういうものをもとにして課税最低限の問題を一体どう考えるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/117
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118・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 私のことばが十分でないので誤解を受けたかもしれませんが、生活保護の関係者は住民税をかけないわけでございますから、やはりそれらを参考しまして、まあそれを上回らねばならぬことは言うまでもないわけです。物価の上昇、あらゆるものを総合して、できる限り最低限は引き上げていくことが好ましいんじゃないか、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/118
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119・鈴木壽
○鈴木壽君 これは関連ですからやめますが、自治省の局長なり大臣なり、いまの地方団体の財政あるいは税源といいますかね、そういうものが非常に窮屈だという前提を強く頭に置いて税の問題を考えておられるんですね。こういう苦しいときに減税どころの騒ぎじゃないんじゃないか、こういうのがまず優先してくるように私は感じますね、お話を聞いておって。しかし、減税の問題やら、特にいまの住民税における課税最低限の問題は、それだけに縛られてどうにも動きのとれないというものじゃないと思うんですよね。
〔理事沢田一精君退席、委員長着席〕
もちろんそれを無関係にという意味じゃございませんけれども、一体、所得に対する課税というものはどうあるべきか、それから考えていかなければいけないと思うんですよね。一方において、もちろん所得税というものがある。しかし、所得税は国の予算だから、どういうふうにきめられても、住民税における所得割りというものは別段そんなこととは別なんだ、生活とは別なんだと、こういうふうな考え方がもしありとすれば、これはやっぱり改めてもらわなければいけないと思うんだな。さっきも加瀬さんから御指摘があったように、住民税の中には、均等割りもあり、そのほかにいわゆる負担分任というような形からはいろいろ考えておる。それからまた、所得割りそのものにおいても、私も、おっしゃるように、広く、できるだけ多数の住民から負担をしてもらうということもこういうことも生かさなければいけないと思う。しかし、いまのを見ていると、広く浅くならいいけれども、深く重く——広く軽くじゃなくて深く重くなんです。それでは私はいけないと思う。だから、地方財源がどうのこうの、あるいは地方財政のいまの問題がどうというのは、これはまた別に私は考えなければいけないことであって、現状のいろいろな税なり財政なりの仕組みをそのままにしておいて、その中だけで、減税すればたいへんだとか、市町村は困るとかいうようなことでは、お互いに人間暮らしていく上にたいへんなことになっちゃう。今後検討なさるというお話ですから、これはいますぐここでどの程度の課税最低限がいいなんということも簡単にあなた方の立場からは言えないと思いますが、しかし、それは検討するということはけっこうでございますし、その検討というのは、現状のたとえば今度四十一万円ですか、これでいいとはだれも思っていらっしゃらないだろうと思う。もっと引き上げなければならぬと思っていらっしゃるでしょうから、そういう意味での御検討だろうと思いますからいいんですけれども、その検討する際にいま申し上げたようなことをひとつ十分考えていただかないと、いつまでたっても検討は検討で終わってしまう。所得税が今度平年度六十三万円になる。住民税は依然として四十一万円、二十万円の差がある。いままでもありましたが、二十万以上です、今度は。どう考えたってこれはいわゆる所得に対する課税としては不合理ですよ。あるいは、その所得税のほうにおいて住民税の負担したものを何かの控除で見てくれるというのであればまた別だ。そういうこともしないで、いまのようなかっこうのままにしておいて、こんなに大きな開きがある、こういうことは私は許されないと思うんです。ですから、ひとつ、御検討いただくのはけっこうですし、ぜひ御検討していただきたいと思いますが、それは、いまのあれでいいとか、あるいは——私も、極端なことを言って、かりに何年先になるかわかりませんが、大蔵大臣が言っているように八十万円程度の所得税の課税最低限の線を将来実現したいと、こう言っているそのときに、住民税のほうも八十万円にせいという意味じゃもちろんございません。若干の差はあってもやむを得ないと思いますが、いまのはあまりに差があり過ぎる。ですから、そういうことをひとつ含めて御検討していただくように、これはまあ質問というよりも、要望ということになって……。しかし、私は大事な問題だと思う。数年前からしょっちゅう繰り返されておりますが、どうもあなた方の考えを聞いておれば、とてもじゃないが、いまの地方財政の現況から、減税だとかあるいは課税最低限というものを大幅に引き上げていくことはとんでもない話だというふうにおっしゃっているように聞こえるんですね。ですから、ひとついま言ったようなことを要望して……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/119
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120・原田立
○原田立君 ぼくの言いたかったことを全部鈴木委員や加瀬委員が言ってくださいましたようで、それでもう一ぺんあらためて言うようになると思うのですけれども、国民全体の所得水準が低い段階にあったときならやむを得ないと思うんですよ。だけれども、現在のように経済の発展、非常に伸びている、こういう段階で、いつまでも地方自治負担分任という名に隠れて生計費に食い込むような課税方法を続けることは適当でない。はっきり申し上げたいのです。そういうことで、標準生活費にまでも課税するということもはなはだおかしい。こういうような点から、住民税の最低課税限度ですね、当然引き上げるべきだ、はっきり申し上げたいのです。局長は両極端だとかあるいはなんとかいうようなことを言っているけれども、当然上げるべきなんですよ、住民税のほうも。その点について何か御検討なさるということであったので、一応それで了解したいのですけれども、さらにもう一ぺんお伺いしたいと思うのですが、大臣。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/120
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121・林田正治
○委員長(林田正治君) ちょっと委員の異動について御報告申し上げます。
本日付をもって竹中恒夫君が辞任され、中村喜四郎君が選任せられました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/121
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122・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 課税最低限を引き上げるということに対しては好ましいことであると考えているのでございますが、まあ地方財源の関係やら、あるいはさらに何といっても自分の住んでいる地域社会をよりよくすることが好ましいのでございまして、やはり学校なり道路なり直接利害関係を強く受けているのでございまして、国税と同じような率ということは必ずしもとられないかと考えておりますが、できるだけあらゆるものを総合してこれが引き上げ等に対して将来十分ひとつ御意思の点をもよく取り入れまして検討いたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/122
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123・林田正治
○委員長(林田正治君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じます。
なお、次回は明三月三十一日午前十時開会の予定でございます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105114720X01419660330/123
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