1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年六月七日(火曜日)
午前十一時二十二分開会
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委員の異動
六月七日
辞任 補欠選任
小野 明君 野溝 勝君
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出席者は左のとおり。
委員長 二木 謙吾君
理 事
北畠 教真君
久保 勘一君
小林 武君
鈴木 力君
委 員
楠 正俊君
近藤 鶴代君
玉置 和郎君
内藤誉三郎君
中上川アキ君
中村喜四郎君
吉江 勝保君
秋山 長造君
鶴園 哲夫君
野溝 勝君
柏原 ヤス君
辻 武寿君
林 塩君
衆議院議員
修正案提出者 川崎 寛治君
国務大臣
文 部 大 臣 中村 梅吉君
厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
政府委員
文部政務次官 中野 文門君
文部大臣官房長 赤石 清悦君
文部省初等中等
教育局長 齋藤 正君
文化財保護委員
会事務局長 村山 松雄君
厚生省児童家庭
局長 竹下 精紀君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 猛君
説明員
大蔵省主計局主
計官 小田村四郎君
厚生省児童家庭
局養護課長 中野 正剛君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○国立劇場法案(内閣提出、衆議院送付)
○教育、文化及び学術に関する調査
(特殊教育に関する件)
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001・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
理事の補欠互選についておはかりをいたします。
ただいま理事に一名の欠員が生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。
互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/1
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002・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 御異議ないと認め、理事に小林武君を指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/2
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003・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 国立劇場法案を議題といたします。
前回に引き続きこれより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。
なお、政府側より、中村文部大臣、中野文部政務次官、村山文化財保護委員会事務局長が出席をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/3
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004・秋山長造
○秋山長造君 私はちょっとしばらく休んでおりましたので、前にどういう質問があったかということ詳しくわかっていない点がありますから、多少重なる面があるかもしれませんが、ひとつお許しを願いたいと思います。簡単に数点お尋ねしたいと思います。
国立劇場がいよいよ近くでき上がるということは、何といってもやはり私どもにとって大きな喜びだと思う。ややもすれば、うっとうしくなりがちな文部行政の中でやはり明るいニュースであることは、これはもう否定できぬと思う。まことにけっこうなんですが、ただ、この間も参考人の皆さんの公述を聞いておりましても、やはり相当議論になっておりましたように、当初、私どもが期待をしておった、あるいは国立劇場ということから連想しておった内容とだいぶ結果的に変わってきておることは、これはこう間違いない。それが場所の点、あるいは経費の点、その他いろんな制約からであったにしても、相当変わった結果になっておることは間違いない。本来からいえば、国立劇場というこの名前から考えましても、単なる古典劇場だけでなしに、現代劇その他伝統的なもの、あるいは現代のもの、あるいは将来への見通しに立っての芸能の保護育成というようなことまで、全部含めたいわば舞台芸術に対する国としての一つのビジョンを差し指すような一大センターというようなものであってほしかったと思うし、今日でき上がったものが必ずしもそういう目的に全面的にかなったものではないにしても、国立劇場もこれっきりでもう終わりというわけではないと思うので、やっぱりさらに将来これを広げていく、あるいはこれに盛られなかった現代芸能の保護育成というようなものも、将来はやっぱり古典芸能と並行して取り上げて考えていかなければならぬ。また、いってしかるべきだと思うのです。そういういろいろな問題があるわけですが、そういうものもを含めて、文部大臣として、この現実にいまでき上がりつつある国立劇場については、法案が具体的に出ているのですから、大体の政府の考え方もわかるわけですけれども、出ている法案を越えて、いわゆる国立劇場というものの将来のビジョン、さらに舞台芸術全般に対する政府としての将来の見通し、ビジョンというものについて、ひとつ文部大臣の抱負をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/4
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005・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 御承知のとおり、設立準備協議会が設けられまして、いろいろの検討を続けております段階で、一時は舞台芸能全体を取り上げる構想もあったわけでありますが、いろいろな事情で伝統芸能を中心とする今度の施設及び法律案になったような次第でございますから、その他の舞台芸能あるいは現代芸能につきましては別途考慮を要するものである、かように私どもも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/5
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006・秋山長造
○秋山長造君 別途考慮を要するものということは、これはもうそのとおりですが、一体現在、政府として、あるいは文部当局として現代芸能の保護育成というような目的のためにどういうことを考えられて、どういうことをされておるのか。たとえば毎年芸術祭ですかね、それから優秀な映画なんかに文部大臣賞を出したり、あるいは文部省推薦の肩書きを与えたり、あるいは優秀な人を芸術院会員にしたり、まあそういうことをやっておられると思うのですけれども、現在、現代芸能の保護育成ということでやっておられる、考えておられることは、そういうことに尽きるわけなんですか。それとも、それに尽きるとすれば、あまりにも政策として貧弱過ぎると思うのですが、やっぱり将来——なるほどいまの国立劇場は古典芸能中心になっておりますけれども、将来、現代芸能中心の国立劇場、まあかりにいまできておるのを第一国立劇場とすれば、現代芸能中心の第二国立劇場というような構想があってしかるべきじゃないかと思うし、まあ四兆をこえる大きな予算の中で、国立劇場に何カ年計画かでつぎ込まれた予算が全部累計して三十七億ですから、私は一国の文化、芸術行政の経費としては微々たるものだと思うんでね。現在並びに将来にわたって現代芸能の保護育成ということについて、一体どういうことを具体的に考えておられるのか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/6
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007・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 現代芸能について現在どういうことをやっておるか、また、将来どう考えるかというお尋ねでございましたが、現在、現代芸能の分野に対しましては、いろいろな創作活動の助成、あるいは普及活動の助成、こういうことを中心に助成をいたしておる次第で、年間約六千二百万円ほどそういう助成方面に資金を要しておる次第でございます。あるいはまた文部省としましては、芸術祭を開催したり、あるいは芸術選奨という制度を設けて選奨を行なっております。また、芸術祭の際には、地方巡業等もその公演開催等を助成いたしておる次第でございます。そのほかに、芸術院というものがありまして、芸術院は芸術院の立場ですぐれた芸能に対して芸術院賞等を行なっておるわけでありますが、今後につきましては、いま御指摘がありましたように、たとえば伝統芸能の劇場を第一劇場にして、現代劇場を第二劇場というような構想で進めたらどうかという御指摘に対しましては、私どもも将来そう考えてまいるべきだと思っておるわけであります。ただ、伝統芸能につきましては、御承知のとおり、だんだんとしぼられてきておりまして、歌舞伎以外のものは特にしぼられております。歌舞伎にいたしましても、伝統歌舞伎保存会ができて、大体、今度の国立劇場で行ないますような自主公演も可能な状態になってきておるわけでありますが、現代芸能はさすがに発展途上にありますだけにいろいろな分野があり、また分派もありいたしておりますから、次にこういう現代芸能についての劇場施設というものを国の施策として考える場合には、関係者の方々に相当幅広く意見を伺って、そしてどう対処するのが適当であるかということは、かなり掘り下げた検討を要するかと思います。いずれにいたしましても、われわれはそういう方向に向かいまして今後努力をいたしたいというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/7
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008・秋山長造
○秋山長造君 端的に伺いますが、国立劇場というものは、単に今回の法案に書かれておるように伝統芸能だけに限るものであってはならない。伝統芸能の保存、振興をはかると同時に、現代芸能の保護育成、さらに新しい伝統を創造していくのだということをも含めて考えらるべきもだと私はそう思う、たてまえは。その点は文部大臣御同感いただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/8
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009・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 今度は場所その他の関係で、御承知のような国立劇場の設備ができたわけでありますが、これはやはり音響効果、あるいは舞台の装置というような関係がありますから、伝統芸能に重点を置いてまいりますが、伝統芸能以外のものでも使用可能なものについてはいろいろな運営上のくふうをいたしまして、現代芸能の振興に寄与できるものにしてまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。ただ、現代芸能は非常に幅が広いものですし、楽器その他も使用する現代芸能もありまして、いまできております国立劇場を使うことは国難な芸能部門も相当あるわけでありますから、全面的にというわけにはまいりませんんが、使用することによって成果をあげられるような部門につきましては活用をしてまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/9
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010・秋山長造
○秋山長造君 おっしゃるようなことは、この資料の、国立劇場の運営方針の中にも若干書いてありますし、また、衆議院の修正でも、第一条で、「主として」というのを入れて、多少そういう含みを出しておるわけです。まああいたときには貸してやるということだと思うのです。ただ、私のいまお尋ねしておるのは、あいたときには現代芸能にも貸してもいいのだということだけでは、現代芸能もあわせて国立劇場というものを考えておるんだということにはならぬので、やっぱりたてまえとしては古典芸能、しかも古典芸能も、この前お話がありましたように、たとえば非常に期待をされておった能楽堂というようなものは、ついにいろいろな関係でできなかったわけです。大体皆さんのお話を聞いておりましても、古典芸能と、こう一応広いことばを使っておるけれども、内容的にはまあ歌舞伎ですね。だから、国立歌舞伎劇場というようなことに事実上なっていると思うのです。皆さんの議論を聞いておりましてもね。ですから、やっぱりいまできておるのは、実はこれは歌舞伎本位の劇場の仕組みだと思うのですよ。だから、まあそれであいたときには現代芸能へも貸すんだから、現代芸能をおろそかにしておるんじゃないのだと言われても、それはまあ貸さぬよりはいい程度のことで、文部大臣自身もそれでいいんだとはお考えになっておらないと思う。予算の面、あるいは敷地の面、その他現代芸能ということになれば古典芸能ほどしぼられておりませんからね。まことにバラエティーに富んでおって複雑多岐にわたってありますから、一体どれとどれとどれを国立劇場で扱う現代芸能と認めるかということは、いろいろなむずかしい問題があるかもしれません。しかし、それはおのずから定まってくるものだと思う。ですから、ただ、抽象的に現代芸能についても保護育成をはかっていくのだということだけでは不十分なんで、古典芸能について、ただ抽象的に保存振興をはかるということだけでは、これは実効があがらぬし、やっぱり具体的な目に見えるものと場所とを与えて、そしてそれで保存振興をはかっていかなきゃ滅びてしまうんだということで、国立劇場という三十七億の国費をかけたああいうりっぱな殿堂をつくるわけですから、やっぱり現代芸能についても、ただ、抽象的に保護育成をはかるということだけでなしに、あるいは助成金として何千万円出すとか、芸術祭をやるとか、芸術選奨を与えるとか何とかいうようなことは、これは、いわば文部省として従来のしきたりで惰性的にやっておられることでもあるわけで、政府として、あるいは国としての新時代に向かっての新しいこういう面での保存政策を打ち出すのだということにはならぬと思いますので、せっかく、とにかく古典芸能中心の国立劇場が一つできるわけですから、これと並んで、ひとつ現代芸能中心の国立劇場というものがあってしかるべきじゃないかというように思うのです。それは来年から予算を組んでやるかどうかと御質問すれば、それは文部大臣も必ずそういたしますということは、いまの段階ではなかなか言明はされにくいとは思いますけれども、しかし、私は言明してくださってけっこうだと思うのですがね。それだけの、やっぱり具体的な意気込みといいますか、政府としての将来へ向かってのビジョンを示していただきたいと思うのです。中村文部大臣の在職中に、さらに竿頭一歩を進めて、現代芸能中心の第二国立劇場をしかるべきところへつくるんだという構想だけでもひとつ発表していただきたいくらいに私は思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/10
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011・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) いま御質問のうち、前段と後段に分けて申し上げたいと思いますが、前段のほうの、今回の国立劇場の活用について申しますと、大体、舞台芸能というものは急にやれといってもできるものじゃなくて、相当以前から、いつからいつまではこういうことをやるという計画と準備がなければ演劇はできないものでありますから、この法律にございまする国立劇場の業務の運営に関する事項を審議していただくために、専門家の方々に評議員になっていただいて、大体二十名程度の評議員を設けて、この人たちにそうした運営についての予定表の作成といいますか、計画をつくっていただくということになりますので、大体、いつからいつまでは何をやり、いつからいつまではどうするということの計画が出てまいりますから、まあ衆議院の修正どおり、主として伝統芸能ということになりましても、それじゃ主としないものは、あいたときに急に利用させるのかといえば、そうではなくて、やっぱり相当、事前に計画の中に、その一環に織り込まれて、その活用方法がきめられていくべき筋合いであると思いますので、私どもとしてはそういう運営が行なわれるものと、この特殊法人ができましたら特殊法人の機構としてそうやっていくべきものである、かように考えておるわけでございます。
後段の現代芸能について、できるだけはっきりした今後の考え方を示せというおことばでございましたが、これは私どもせんだって来申し上げておりまするように、現代芸能についても、今度の国立劇場がいろいろな変化をたどって今日の結論に至ったわけでありますから、これはこれでまあひとつ仕上げて、そうして、その上で次の段階のことを考慮し、また、前向きに検討してまいりたい、さように考える次第でございます。今度の国立劇場は、伝統芸能を主としておるにいたしましても、新劇等の現代劇にも利用されるわけでありますから、この劇場が、特殊法人が設立されてスタートをして、運営が開始されて、国立劇場としての運営面でまたいろいろな経験ができると思います。これらの経験を生かして次の計画を具体化すというのが順序ではないかと思いますので、そういう順序を踏んで、現代芸能についても次の施策を講ずるというのが妥当であろうと、こう私どもは現在考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/11
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012・秋山長造
○秋山長造君 重ねてお伺いしますが、それはもう大臣のおっしゃるとおり、この条文の中にも、第一条の目的に支障のない限りは劇場施設を一般に貸せるということですから、まあその中に入るんだろうと思うのですけれども、しかし、それはあくまで付帯的な、付随的な仕事であって、この国立劇場の本来の目的じゃないのですから、これはあくまでつけ足しですね、あいたときに貸せるというのですから。だから、そうでなしに、私が言うのは、国立劇場の目的として現代芸能の保護育成というものも含めた施設というものがほしいということを言っている。いまできておるものを一ぺんやってみて、そうしてその経験にかんがみて次を考えるということも、ある一面ではわかりますけれども、しかしこれはもういまあそこにできておる国立劇場を運営してみてからでなければ現代芸能のほうのやり方はわからぬという性質のものじゃないと思う。そういう順序のものじゃないと思う。本来並行して発足すべきものだったのですから、ただ、不本意ながらそれができなかっただけのことですから、ですから古典芸能を運営してみて、そうして現代芸能の運営のしかたが考えられるという順序のものじゃないと思う。ですから、私は文部大臣として、とにかく現代芸能についても、この古典芸能とまさるとも劣らないだけの同じような比重を置いて、今後その保護育成をはかっていくんだというその具体策を、文部大臣御自身の将来のそのビジョンとして伺っておけばそれでいいと思う。ただ、国立劇場を運営してみてから次のことを考えるということでなしに、私はもっと高度のビジョンを聞きたいと思ってしつこく言っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/12
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013・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 今度の法律案は、いまできておりまする国立劇場運営のための特殊法人に関する立法でございますので、やがて現代芸能についても別途の施策を講ずる段階になりますと、この立法を大幅に改正をするか、もしくは別途別の立法をして別の特殊法人をつくるかということをしなければならないと思います。先ほど私が申し上げました、この国立劇場の運営の経験等にも照らしてと申し上げましたが、一切の経験を積まなければやらないという趣旨ではなしに、並行して、この経験も次の計画なり研究の中に織り込んでいけばたいへん都合がいいんじゃないかと、こういうふうに考えておるわけであります。で、現代芸能につきましては、確かに、どちらが比重が重いか、あるいは同等かといえば、私は同等だと思いますが、しかし、本質が違いますので、伝統芸能はこの特殊法人の各条章に盛り込まれておるような目的のものであり、それから現代芸能はまだまだこれから開発発展をしていく性質のものであります。同時に、先ほども申し上げたように、部門も非常に数が多いし、それから、その主体になっておる芸能のやり方等についてもかなりバラエティーがありますから、これを次の現代芸能に関する、まあ仮称すれば第二国立劇場のようなものをつくるとすれば、どういうふうなつくり方、あるいはどういうふうな運営のしかたがよろしいかということになりますと、今回の国立劇場と同様にはまいりかねるんじゃないかと思いますので、そういう点は今後前向きに、そういう関係方面の意見を十分に聞きつつ検討を別途する必要があろうと思うのであります。私どもとしましては、衆議院で附帯決議をいただいておりますように、現代芸能についても将来積極的な気持ちで、御指摘のような方向に進んでまいりたい、こう思っているのが現在の心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/13
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014・秋山長造
○秋山長造君 やや積極的なお考えを聞かせていただいたわけですが、それで、大臣としてはさっそく——何かどうも審議機関ばかりで、審議会のことを申し上げるのはちょっと気がひけるのですれども、やっぱり大臣一存というわけにもいかぬのでしょうから、何かそういう専門家でも集めて、現代芸能について——現代芸能のほうはこれでとにかく一つ足場ができたわけですから、さらに、いま片手落ちになっている現代芸能のほうについて、今後どうするかという具体的な御相談をされるつもりがありますか、これからすぐ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/14
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015・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 現在、具体的な構想は持っておりませんが、再々申し上げておりまするように、私どもとしましては、現代芸能についても考慮すべきものであると、かように考えておりますので、今後その方向に向かって努力をしてまいりたいと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/15
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016・秋山長造
○秋山長造君 ひとつ現代芸能を、古い伝統を保存すると同時に、やっぱり新しい伝統をこれからつくり上げていくということも大事なことですし、また、古典芸能古典芸能といいましても、これはもうその当時にはやっぱり現代芸能だったわけですから、時がたつに従って古典になってくるわけで、現代芸能もこれから何年かたてば古典芸能みたいなものになっていくわけです。ですから、伝統の保存も大いにやっていただきたいが、同時に新しいりっぱな伝統をわれわれの手でつくり上げていくということのほうも、ひとつあわせて、いまの大臣のおっしゃるような方向で、ひとつ今後一そう努力をしていただきたいことを特に申し上げておきます。
それから第二点の問題は、伝承者の養成ということなんです。この前も村山さんから伝承者の養成について若干の御説明があったわけですが、とりあえず、初等科及び研究科の二科を置いて、義務教育を終わった程度の者を入れて云々というお話があったんですが、どうも、この運営方針の「芸能伝承者の養成」というところに書かれておること、さらに、この前、村山事務局長から御説明のあったようなことをあわせて考えますと、これはなるほどそういうように考えてはおられる、伝承者の養成をこれでやれるというように、やろうというようなお考えになっていることはわかるんですけれども、しかし、実際にやってみると、養成されるのは、伝承者ではなしに、古典芸能なんかについての学者といいますか、古典芸能についての評論家といいますか、何かそういう古典芸能についての知識を持った人が養成されるような結果になるのではないか。俳優そのものが一体これで養成されるんだろうかという私疑問を持つんですけれども、この間の参考人の人のお話なんか聞いておりましても、歌舞伎俳優なんかの養成というのは、なかなかこれは、ただ学校で子供を教えるというようなわけにいかぬ点があるんですね。特に国立劇場だって、女形を廃止されるわけじゃないんでしょうし、やっぱり歌舞伎の伝統に基づいて女形の養成を行なわれるのでしょうけれども、子ういうことになると、相当、氏とか育ちとか、そういうことにかかわることがいいか悪いかは別として、やっぱり歌舞伎を純粋な形で、背の形のままで保存しようということになれば、俳優の養成というようなことでも、ただそれならというので、私の子供をちょっと預けて歌舞伎俳優にしてくれというたところで、これはそう簡単にできるものではないんで、やっぱり氏とか育ちとかというようなことは、これは否定できぬのじゃないかと思うのですが、そういう面と、たとえば音楽家の養成なら、それは上野の芸術大学の音楽科へ入れて養成できるだろうと思うんですけれども、それと似たようなやり方で歌舞伎俳優の養成が一体できるものかどうかということになると、なかなか実際問題としてむずかしい問題があるんじゃないかというように思うんですけれども、そこらはどういうようにお考えになって、どういうやり方をすれば、いや、それはできるんだということになるのか、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/16
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017・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 伝承者の養成の問題は、前回にも御説明申し上げましたように、現在こうしたらいいんではないかという具体的な成案は持ち合わしておりません。ただ、伝承者の養成はぜひ必要であり、やるべきであるというほぼ決定的な御意見を受けまして、四十二年度以降に具体的な計画を立て、実施すべく、四十一年度は準備段階といたしまして各方面の御意見を承りながら、まあ計画の素案からだんだん練り上げていく段階、かように考えております。内容的に申しますと、これも御説明申し上げましたけれども、伝統芸能の伝承者は、従来は親から子、あるいは師匠から弟子という、ほぼ個人的、家族的な形で受け継がれておったわけでありまして、そういう形は現在でも滅びたわけではなくて、まあ行なわれておりますが、関係者の間で、これだけでは限界があって行き詰まるのではないか、こういう方法も改善をしながら続ける必要もあろうし、これ以外のもっと集団的な養成方法も考える必要があるという、かなり強い意見が出てきておるわけであります。集団的な伝承者の養成といえば、一番典型的な形は、学校教育の中にこれを取り込んでいく、あるいはその目的のための学校をつくる、あるいは既成の学校の中にそういう円内のための、何といいますか、学科などをつくる、いろんなことが考えられるわけでありまして、そういう形も現在ある程度は行なわれております。大学で演劇に関する学科を持っておるようなところもございます。そういう形も検討する必要がありましょう。それから養成をもっぱら目的とするような施設、いわゆる養成所でありますが、俳優学校というようなものでありますが、こういう形も現在、歴史的に、あるいは芸能の種類によりいろいろなものができております。たとえば伝統芸能でいえば、かつて六代目菊五郎がつくりました俳優学校というようなものもありますし、現代芸能であれば、たとえば俳優座、文学座などで養成施設を持っておるようであります。こういう形も考えられます。個人的な伝承方法、それから学校教育の中に取り入れる方法、それから学校といいましても正規の学校の課程ではなくて、そのための特別な学校、つまり養成所をつくる方法、いろんな方法が考えられるわけでありまして、それらにはまたいずれも長短得失があって、どれが一番いいというようなことは現在までのところきまっておりませんし、今後も必ずしも容易に出てくるとは思いません。それらの方法を研究し、発展させながら、国立劇場としてはとりあえず一番問題の、何と申しますか、技術面といいますか、あるいは伝統芸能の雰囲気になれさせるといいますか、そういう面から養成施設をつくっていきたい、それが義務教育を終わった程度、つまり年をとってしまうと、理屈は達者になっても手足が動かぬという問題がありますので、若いうちから技術の習得を基礎として、それから国立劇場に出演される先輩の人々から話を聞いたり、考えを受けたり、伝統芸能の雰囲気に触れさせる、そういう方式を現在自主的な伝承者保存の施設としてつくられております歌舞伎保存会の方々の御意見を承り、協力を得ながらやっていきたい、こういう考え方でおるわけであります。まあ具体的な計画は、何度も繰り返しになりますが、四十一年度中によく練り上げまして、四十二年度から小規模で発足してみたい、こう思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/17
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018・秋山長造
○秋山長造君 あなた方だけのお考えでなしに、歌舞伎保存会その他、その筋の実際家や専門家の意見を取り入れて計画されておることですから、もちろん私はけちをつけるつもりでも何でもない。これはもう計画どおりやっていただけばけっこうなんでありますけれども、どうも私しろうと考えで、的に当たっていないかもしれぬですけれども、私はこういうように思われてならぬのです。歌舞伎といえども固定したものじゃないので、やはり時代とともに、西欧演劇だとかいろいろなものの要素を吸収しながら、しかも伝統も保存しながら、しかも固定したものじゃなしに、だんだん時代とともに発展していくべきものじゃないかというように私は考えておったのです。そういうことなら、このいまおっしゃるような伝承者を国立劇場で教育をやるとか何とかいうようなことで、新しい教育方法で育ってきた俳優というものが十分歌舞伎の伝統を維持しながら、しかもそれをだんだん発展させていくというような役割りをするにふさわしい俳優ができてくるのじゃないかと、こう思っておったのですけれども、どうもそうでなしに、そういう、発展さすとか何とかいうようなことじゃなしに、この間も早稲田のあの郡司という教授がおっしゃっておったですが、そういうことじゃないので、この国立劇場でわが国の古典芸能を保存し振興させるというような、まさに滅びようとしている古典芸能、たとえば歌舞伎なら歌舞伎というものの保存をはかるということで、発展さすとか何とかいうことじゃなしに、明治の団十郎、菊五郎、この団、菊の線で一応完成されたといいますか、集大成されたという歌舞伎というものをそのままの姿で、できるだけ純粋な姿で、その時のままの姿で残していくのだと、そういう保存のほうへウエートが非常にかかっておるのですね、この国立劇場第一条の目的というのが。だから、時代とともに歌舞伎といえども新しい要素を取り入れて発展して、多少でも変わっていくのだという考え方でなしに、やはり昔一応でき上がったものとして、それをそのでき上がったところで固定をした形で保存をしていくということにどうも重点があるように思うのです。もしそうだとすれば、これはなるほどこの間参考人のおっしゃっておったような、親から子へ、子から孫へというように、家庭的な教育で俳優を養成していくというようなやり方は、ある面からいえば封建的かもしれない、あるいはあまりにも時代離れした教育方法かもしれぬけれども、それはもう封建的だとか、時代離れしたといったって、それは封建的であり、時代離れがしているからこそ古典でもあるのですからね。だから、その点を否定してしまえばこれは古典でも何でもありゃせぬことになってしまうわけですからね。そこらになかなか新しい理論で割り切れぬところがあると思うのですよ。したがって、いまのあなた方の計画しておられる芸能伝承者の養成という方法によって養成される、この方法による養成方法というものと、この法律の第一条の古典芸能の保存をはかるということにも多少私は実際面になって食い違ってくる面ができるのじゃないかと思うので、私はぴちっとわかりよく、いいぐあいに説明ができませんけれどもね、感じはわかっていただけるのじゃないかと思います、私の疑問を持っておる点は。そこらはどういうようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/18
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019・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) まあ伝承者の養成方法、具体的に言えば、国立劇場で行なう養成所でどういう方法、内容で養成をやるかは今後の検討課題でございますが、現段階でいろいろ話し合っておりますのは、とにかく基礎的な訓練に重点をおいてやるのがいいのではないかということでございます。裏を返しますと、養成所であるからといって芝居のけいこをやるのでは必ずしもないということでございます。歌舞伎は総合芸術でありまして、芝居の要素として舞踊がありますし、うたがありますし、音楽その他芸能の多くの分野を含む総合芸術でありまして、その全体の素養がなければ結局芝居もうまくできない。一番問題なのは、踊りをやるとか、それからうたをやるとか、もっと基礎的なことで言えば、歩き方、声の出し方、そういうものは何といいましても若いうちからやらなければ、年齢が高くなってから始めたのでは、理屈はわかっておっても体が動かないということになります。そこで、養成施設としてまず取り上げるのは、そのような基礎的な訓練から始めていく、そういう基礎的な訓練を積んだものを、今度、芝居をやらせる段階にどう移行していくかということにつきましては現在まだ検討が及んでおりません。そういう基礎的な訓練を積んでいけばどういう方面にも応用がきくのではないかというような予想のもとに計画をいろいろ練っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/19
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020・秋山長造
○秋山長造君 私の申し上げていることをよくのみ込んでいただけないように思うのですが、わかるのですよ、村山さんからこの前、小林委員の御質問に対しても繰り返し、繰り返しいまのことをおっしゃった。それはわかる。それはいまの新しい学校教育の理論ならそれでいい。もうそれでりっぱなものです。けれども、大学に演劇科があったり何かしますよ、日大芸術科があったりするけれども、そこらを出て俳優になっている人もあるけれども、その学校教育——いまのわれわれのすらっと常識的に考える学校教育の理屈で育つのは、現代劇の俳優ならそれでいいです。私はやはり古典芸能、歌舞伎なんかというものを古い形のままで純粋に残していこうということなら、どうもやはりいまの現代劇の俳優を育てる理論と同じ理論で、一体そういう古い歌舞伎の純粋な形のままのものを残していくというそういう伝承者、俳優というものを一体育てていけるのかどうかということを非常に疑問を持っている。それはいい悪いは別ですよ。そんな歌舞伎俳優なんかの世界では封建的でいまの時代には向かないと言えばそれまでですけれども、向かないのがりっぱだから保存しようというのですからね、だからやはり向かないのがほんとうだろうと思う。だけれども、そういうものを一応古典芸能として純粋な形のままで純粋性を保存していこうというたてまえでこの法律ができておるわけなんですから、そうならそれで純粋に保存していかなければならない。そこに今日の学校教育理論と方法を持ち込んで、一体はたして歌舞伎の純粋性というものが保てていけるのかどうかということを私は疑問を持っておる。それで最初私が言いましたように、歌舞伎といえども時代とともに動いていくんだ、新しい演劇理論を取り入れたり、あるいは西洋のいろいろな芸能なり何かの要素を取り入れて、やはり歌舞伎といえどもだんだんと発展していくんだということなら私はそれでいいと思うのです。だけれども、そうじゃなしに、純粋な形のままで昔の歌舞伎そのままの形で純粋性をできるだけ保っていこう、ちょうど昔できた有形文化財をいま昔の形のままで虫に食わさないように、できるだけ壊さないようにそのままの形で保っていこうというのと同じやり方で古典芸能というものを純粋に保存していこうとしているわけですからね。だから、そこにどうも私はこういう方法で一体純粋に古典芸能の伝承者というものを育て得るのかどうかということは、どうも疑問を持たざるを得ない。どういうように説明したらすぱっとわかっていただけるかと思うのですけれども、私の言う意味はおわかりいただけるんじゃないかと思うのです、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/20
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021・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 私が出るのはどうかと思いますが、確かにおっしゃるとおり非常にむずかしい問題ですが、ただ、この国立劇場建設計画以来、今日までその道の方々、あるいは世論にいたしましても、歌舞伎の伝承者の養成が大事である、これはもう一致しておるわけです。したがって、その方向に向かっておるわけですが、しからばその伝承者をどういうふうにして養成するかということになりますと、非常にむずかしい問題で、現在は国立劇場設立準備委員会がそういうことまで諸般の問題と合わせて各方面の意見を聞いて研究しておる段階でございまして、各方面の意見も先ほど局長が申し上げたようにまちまちでございますから、この準備委員会としてもどう具体的にやるかということはなかなか結論を出しにくいわけです。せいぜい出せるのは基礎的な訓練がまず入り用じゃないか、こういうわけでありまして、これは私は確かにそうだと思うのです。例は当たらないかもしれませんが、私の懇意な家庭の娘さんが踊りを習っているうちに、とうとうこって、花柳何とかという大家の家にみずから志願をして住み込んで、今日ではかなり一流のお弟子さんになったというのがおりますが、やっているうちに好きになって弟子入りして、師匠について師匠の家庭に入ってやろうというのも出てまいりますから、こういうのも現実の人間の心理状態としてあるわけです。しかしながら、いままでの伝承者というのは、子供とか孫とか、そういう演劇界の大家の子孫だけが受け継いできたのですが、これは今後なかなかそれだけに期待することは困難である。そういうまた師匠、弟子、親子、子孫という関係であることは、非常に時代から見れば封建的で、いまの町勢に合わないということは言えると思います。しからば、その封建制というのは全部払拭して伝承者を養成できるかというと、私はそうもいかないのじゃないかと思う。歌舞伎自体が非常に古い時代のものですから、そういう伝承者の養成についても養成所のようなものだけでできるかどうかというとできない。どうしても残った部分ができる。その残った部分はやはり封建的と言われても、歌舞伎自体が古いものですから、古いものを伝えていくためにやはり私は必要なのじゃないか。こういうようなことで国立劇場がスタートいたしまして、評議員の中にも専門家がほとんど全部入るわけですし、それから歌舞伎の大家も演劇家もそこに集まってきますから、そこらの段階で、それから先のことを具体策を練りつつ進んでいかなければ、いい到達点にはいかないのじゃないか、こう思っておりますので、この段階で最後までものを詰めて考えていくということは私どもも実は考えていない。あなたがいま疑問を持っておっしゃるのもそういうことだと思うので、そういう点はこれからの国立劇場の運営、発展段階で煮詰めていくということになるんじゃないか。また基礎的な訓練をやり、のどをならし、踊りの訓練をしている間に脱落者もできて、あるいは脱落者の一部が新劇のほうにいってしまうのもできるかもしれませんが、中には名優の家に住み込んでも自分はこの名優のあとを継ぎたいというのもきっと出てくると思いますから、そこらは非常にむずかしい問題で、かみ合っていかないというと、一本の線だけでどうも伝承者を必ずりっぱに養成できるかと言われると、できるという名案はいまのところなかなか出てこないわけです。目下は国立劇場をスタートさせるための準備委員会の段階でございますから、まあ局長がお答え申し上げておる程度のことでひとつ御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/21
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022・秋山長造
○秋山長造君 よくわかりました。いまの大臣の御答弁を聞こうと思っておったのです。それ以上いま詰めてもおっしゃるとおり無理です。それはどうせ初めてやることですからね。だから、それはやってみなければできるかできないかわからぬけれども、まあとにかくできるようにやるつもりでおやりになるんでしょうから、この前、小林委員からも、自信を持ってやれと言ってだいぶ叱咤されたわけですが、ほんとうにそれはやってください。ひとつそのつもりで大いにがんばっていただいて、そうして、とにかくやってみなければ、初めてのことですからね、しかも、こういうことを、従来のしきたりからいいますと、一番不得手な皆さんがおやりになるんですから、相当それは骨が折れるということはもう当然だろうと思うんですが、まあとにかくやってみてからまた次の議論をしなくちゃいかぬ。そこで、その点はもうそれで重ねて申しませんが、こういうので一応伝承者を育てられるわけですね。育てた伝承者というものは、結局将来、国立劇場自身の自主劇団を持たなければいかぬような話がこの間もだいぶ出ておりました。国立劇場自身がかかえていくのかどうかですね、育てた俳優を。自主劇団なら自主劇団を結成して、国立劇場が、ただ自主公演だけじゃなしに、自主劇団を持って自主公演をしていくということをねらっておられるのかどうか、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/22
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023・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 専属劇団の問題は、持つべきであるという御意見が有力でございますし、私どもも理想としてはそういたしたいと思っております。しかし、計画として述べるにはあまりにもまだ具体性がございませんものですから、いままで専属劇団を持つというような計画を述べたことはございません。伝承者養成の問題も、ある程度それとかみ合うわけでございまして、伝承者養成が成功していき、軌道に乗っていくという時期、それで専属劇団の必要性がさらに高まってまいります時期には、これをある程度組み合わせて専属劇団を持ちたいという希望は持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/23
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024・秋山長造
○秋山長造君 そこまでいくのがやっぱり理想だろうと思うんですけれども、そこまでいくまではやはりあちこちから適当な俳優をかき集めて、そうして公演をやっていく、こういうことですね。その場合に、この前も参考人からそういう意見が出ておりましたが、自主公演——なるほど国立劇場が自主的に計画を立て、自主的なプランでやるという意味で自主公演とおっしゃるでしょうけれども、肝心のそれを演ずる俳優はあちこちから、俗なことばで言えばかき集めてということになると思うんですがね。それをもっと俗なことばで言いますと、一般の市中の商業劇団で働いている俳優に、あるいはサービスをしてもらうとか、アルバイトをやってもらうとかというようなことにならざるを得ぬのじゃないかということも思うんですが、そういう俳優をかき集めてやりながらも、しかも高い水準の芸能というものを、芸能の商い水準というものを確保していけるのかどうかというような点についての見通しは持っておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/24
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025・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 国立劇場では、諸外国の例を見ましても、演技者とすべて雇用関係を結んでいるとは限らないようでございます。フランスの国立劇場は大体演技者、それから舞台技術者とも専属的な雇用関係は結んでおるようでありますが、たとえばドイツのオペラ劇場などはオーケストラとか、コーラスとか、そういうものは雇用関係でやっておるようでありますが、肝心の主演級の演技者は、一つの演目ごとに契約をしたり、あるいはレパートリーである程度包括的な契約をしたり、まあいずれにせよこの身分まで拘束するような関係ではないようであります。わが国の国立劇場におきましても、その目的に照らして、将来、専属俳優を持つにしても、どういう形でやるかはまあ検討の課題となっております。さしあたり専属俳優を持たない段階での自主公演をいかにして自主性を確保できるかということでございますが、そのためにまず企画を自主的にやる。企画のためのスタッフは、これは国立劇場の職員として持つつもりでございます。それから演出も国立劇場の職員によってやっていきたいと思います。もっとも、歌舞伎劇などは新劇におけるような演出というのはないわけでありまして、ほとんど俳優が自主的にやる。まあ劇場側はそれを後見するというような意味における演出だと思いますが、とにかくまあ演出もやり、それから、それ以前の段階で、正しい姿、高い水準を維持するために脚本の校訂、それから何と申しますか、演出の型の検討、それから道具、背景、その他付属設備の準備、それらをいわゆる正しい姿、高い水準を確保し得るように用意し、そのように総合的に計画準備することによって、いわゆる専属俳優を持たなくても高い水準、正しい姿での自主公演ができると、かように考えております。これはまあ俳優側の意見でありますが、現在ではいろんなところで妥協して、俳優自身としても劇の上演そのものが不満足な場合が多いと、国立劇場であれば十分な用意、けいこもやって、自分らもその高い水準、正しい姿で初めて上演できるように意欲に燃えておるというようなお話も承っておりまして、劇場側の企画、それから俳優側のそういう気がまえ、両々相まちまして正しい姿、高い水準での上演ができる、そういう期待を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/25
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026・秋山長造
○秋山長造君 それからちょっと、さっき二つ聞き忘れたのですが、伝承者の養成ですね、国立劇場で育て上げた者は、一体国立劇場のまるがかえにするのかどうかという問題ですがね、まあこれがうまく成功をすれば、国立劇場での俳優の養成ということが、伝承者の養成ということが成功しますれば、これはやっぱり一般の民間企業なんかで個々に、高い費用と複雑な手数をかけて養成するよりは、それはもうよほどこういうところで養成してもらったほうが安上がりでもあるし、それが筋が立っていくということになりますからね、ですから、ちょうど民間企業全体の、何かこう俳優の養成を国立劇場が一手に引き受けるようなかっこうになってくる場合もあると思う。あるいは国立劇場が自分で劇団をつくろうと思って、そのメンバーにしようと思って、えらい丹精して育て上げた俳優を、せっかく育て上げてこれから舞台へ出ていくというところになって、さっさとスカウトされて持っていかれてしまう、高い給料で。どうせ国の関係は、それは民間に比べて、それが民間より高いということはまあまあそうないことでしょうからね。国立劇場なんかは相当奮発されるかもしれぬけれども、まあ限度がある。だから、その少し高い給料を出してせっかく育てたものをスカウトされて持っていかれてしまうというようなことだってあり得るだろうと思うんですね。そういうことはとのように——まあいまの階段でそこまで心配しよったら切りがないけれども、心配でも何でもないんですけれども、事実そういうことはあり得ると思うんですよ。そういう場合のことを一体お考えになったことがあるかどうか、ちょっと聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/26
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027・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 養成の問題が現在まだ素案の段階でありますし、それから専属劇団に至りましては、これはまだ希望の段階でございまして、養成した者がどうなるか、確たることを申し上げかねる次第でありますが、私の私見といたしましては、養成した者に国立劇場に就職すべき義務づけをするというようなことも現代向きではないのじゃないかと思います。それからまた国立劇場の側におきましても、養成した者を全部雇わなければならぬ義務を負うことも困難ではないかと思います。できるだけかかえたいとは思いますけれども、国立劇場で養成された者がよそに行って働くということも、ある意味では意味のあることではなかろうかと思います。外から引っぱりだこになって残る者がなくなってしまうというような事態、これはまああり得ないのじゃないか、こんなぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/27
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028・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 午前の委員会はこの程度にして、午後は一時半から再開いたします。
これにて暫時休憩をいたします。
午後零時三十二分休憩
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午後二時三十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/28
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029・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
午前に引き続き国立劇場法案を議題とし、質疑を続行いたします。
質疑のあるお方は順次御発言を願います。
なお、政府側より中村文部大臣、中野文部政務次官、村山文化財保護委員会事務局長が出席をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/29
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030・鈴木力
○鈴木力君 最初に、いままでもずいぶん議論があったところなんですけれども、はっきりさせるために、もう一ぺんお伺いいたしたいのです。
それは、やはり現代芸能との関係です。どういっでも現代芸能の関係の方々、あるいは現代芸能に関係のあるというよりも、芸能関係の識者なり、あるいは理解者なり、この人たちが伝統芸能関係の人も含めて、やはり国立劇場のこの法案については、ずいぶんいろいろと不満もあれば、それからまた注文もあるという現状だと思うのです。そこで、ひとつ伺いたいのは、何か準備協議会で審議をしてきた過程で、いままでの説明では準備協議会の了解を得て今日の法案のようになった。こういう説明を受けておりますが、しかし、まあ協議会の一員である方も参考人としてこられて、単なる建物法案ということを見てびっくりした。こういうふうな意味の発言もあったわけでございます。この準備協議会の方々と文部省自身との間で、やはりお互いの理解に食い違いがあったのじゃないかという感じがするわけです。そこで、そういうことも含めての関係といいますか、当初、現代芸能を含めた内容のものから、この法案に移る過程の説明をもう少し詳しく伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/30
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031・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 国立劇場の設立の経過につきましては、審議資料も提出してございますし、実はかなり詳しく御説明したと思いますが、さらに、重複するかもしれませんが、御説明申し上げますと、まず、国立劇場設立の議は、さかのぼれば、ずいぶん古い話でありますが、この法案に関する限り、その直接の発端は、昭和三十年に国立芸能施設の設置に関して調査研究をすべきであるということで、文化財保護委員会に調査費の予算計上がされたのに発足するわけなのでございます。それが三十年度でございます。三十一年に国立劇場設立準備協議会が閣議決定により設けられまして、その事務は同じく文化財保護委員会において行なったわけであります。
そこで、準備協議会におきまして、まず先決問題は敷地の獲得であるということで、敷地獲得のためにいろいろな案が検討されました。比較的具体性のありましたのは、究極的には国立劇場の敷地となりました。パレスハイツのあとと、それからもう一つは大宮御所の一部というものであったわけでありますが、準備協議会としては結局パレスハイツ案を推進いたしました。それで敷地の獲得と並行的に国立劇場で何をやったらいいかということを議論したわけでありますが、一番最初に、やはり伝統芸能中心の劇場をつくるということが、まあ中間的にまとめられました。そのころから一方において現代芸能も含めるべきであるという御意見が強くなってまいりまして、設立準備協議会にも、主として臨時委員の形で現代芸能関係の方々をふやしまして、幅広く伝統、現代両面にわたる芸能施設の建設について討議が進められました。そのころ国会におかれましても、国立劇場の設立促進のために国会議員有志の方々のお集まりがありまして、敷地決定について側面的に指導援助がなされました。三十二年の七月十日には、衆議院の文教委員会におきまして国立劇場早期実現に関する決議もなされております。この決議は、要約いたしますと、伝統芸能の保存振興のための劇場建設というのはもはや議論の段階を過ぎたようであるから、できるだけ早くやるようにという趣旨であったわけであります。そうこういたしますうちに、三十三年の十一月に国有財産中央審議会におきまして、現在の隼町の場所、パレスハイツのあとの約三万二千平方メートルの敷地が国立劇場の敷地に決定されました。蛇足でありますが、このとき同時に、その隣の場所は最高裁判所の敷地として同じく国有財産中央審議会できめられたわけであります。
ここで敷地がきまりましたので、いよいよ具体的に内容の検討に準備協議会では入ったわけであります。それで、内容の検討は建物のみならず、建物で行なうべき仕事の中身も同時に議論はされたわけでありますけれども、どちらかといえば、どういう建物をつくるかというほうに議題の焦点が集中しがちであったというぐあいに聞いております。それで、そこでできました案が伝統芸能、それから現代芸能、それから能楽堂、それから伝統芸能の小劇場という四つの施設を含む国立劇場の設立案でございました。それで、このころから実は敷地にいろんな問題が出てまいりまして、建築基準法の高さの制限や、建蔽率の問題、それから高速道路が下を通るのではないかというような問題、そういう問題が出てまいりまして、この四つの劇場案は、最初からそういう建築技術の面を含めて建てることができるという確信を持った案ではなかったのでございまして、そういう関係がありますので、この四つの劇場がだめな場合には、とりあえず、伝統芸能と現代芸能と一つずつつくるとか、あるいは伝統芸能だけの大小二つの劇場をつくるとか、いろいろな案があわせて答申されたかっこうになっております。それで、この修正案を含む種々の案をさらに具体的に敷地に当てはめて計画いたしますと、最終的にかなり縮小しなければならない、建蔽率、高さの制限、それから日照時間、それから駐車場をつくらなければならないというような問題、それから交通の規制の関係、それらの点からかなり縮小しなければならないということがはっきりしてまいりました。そこで、縮小するとなれば、結局、選択の問題になりまして、何を選び何を先にするかということになったわけでありますが、まあこの段階におきまして先にやるとすれば、やはり保存についてもすでに問題が起こっておる伝統芸能のほうが先であろうということが第一点でありますし、それからまた、現代芸能の点につきましては、この施設もつくるからには非常に大きいものが必要であるということが主たる理由となりまして、縮小計画に盛り込むことは非常に無理があるということがございました。大体その二つの理由から伝統芸能のほうを先にするということになりまして、三十六年の二月になりまして、国立劇場の設立準備協議会で、三十四年ごろに出たいろいろな案を、最終的に伝統芸能に関する大小二つの劇場案をつくるということに修正議決した次第でございます。このように案がふくれて縮む段階の国立劇場の設立準備協議会には現代芸能の関係の方も入っておられたわけでありまして、必ずしも毎回出席というわけではなかったかと思いますが、現代芸能の方々も含めて、そういう実行計画の決定について御了承願ったと、この事務をとりました文化財保護委員会の事務局では考えまして、以後ばかなり事務的に事を取り運んだ次第でございます。
次にやりましたのは、大小二つの伝統芸能の施設をつくるという前提で、建築設計につきましては公募いたしまして、当選案が三十七年から三十八年にかけてきまって、三十八年度に設計をやり、三十九年度から具体的な工事に入って、本年度竣工する、こういう運びになったわけであります。そういう関係で、三十六年以後につきましては、これも御説明申し上げましたけれども、別途、閣議決定等による審議会類似の機関は法律に基づかざる限りやめるようにという政府の方針もありまして、設立準備協議会は、何と申しますか、形式的には自然消滅したようなかっこうになりまして、全体の会議というものはほとんど開かれなくなりまして、必要に応じて、施設に関する一部の方々とか、あるいは舞台機構に関する専門的な御意見を承るために、またその関係の一部の方々にお集まり願うとか、そういう設立準備協議会のメンバーを必要に応じて一部お集まり願うことはございましたけれども、全体がお集まり願うというようなことはほとんどなくて推移いたしました。いよいよ四十一年度予算で、国立劇場の運営を特殊法人を設立してこれに当たらせるという方針をきめまして、予算案とそれから法律案を提案し、法律案が閣議決定をした段階で旧——旧と申したほうがよろしいかと思いますが、旧国立劇場設立準備協議会の現存のメンバーの方々に、二月の何日でありましたか、二月の九口に閣議決定したのでありますが、その直後にお集まりを願いまして、こういう経過でこのような法律案の原案を出すに至りましたという御報告をした次第でございます。その席にも実はあまり多数の方々の御出席は得られなかったわけでありまするけれども、特に経過についての御質疑等はなくて、むしろ設立される国立劇場の運営についてどういう出しものをやるとか、あるいはどういう態度で臨むとか、そういう点について御希望なり御注文がありましたけれども、経過に関する御質疑等は必ずしもなかったように記憶いたしております。そういうことで、私どもとしましては、経過につきましては御了承願ったと思って取り運んでおった次第でありますが、法案を衆議院で審議する段階になりまして、現代芸能の方々から、実は自分らの了解したところと違うのだという御意見を承りました。経過を重ねて御説明して、これまた当事者としては御了承願ったと考えたのでありますけれども、結果的にに御了承が得られておらなかった。具体的に言えば、食い違いがあったということになりましたので、その点につきましては、おわびを申し上げて、今後の御協力をお願いしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/31
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032・鈴木力
○鈴木力君 まあ私どもが心配なのはいまの経過から出発すると思うのですね。いまの説明でも再三言われましたように、了解してもらったと思っておったという説明があったわけです。しかし、事実は了解していなかった。そういうことがずいぶんある。経過から言うと、長い期間なわけですから、了解してもらったと思ったといっても、はたして了解していなかったのか、了解しておったのか、この期間中全然気がつかないで、法案を閣議決定したあとで実は気がついて、悪いことをしたのだ、そういう経過にだいぶ問題があるように私どもは考えるのですね。だから、もう一つ重ねて伺いますと、最初に敷地が獲得できた段階で、いまの説明にあったように、何をやったらよいかということについて意見がそろそろ出てきた、そこで、そのときに伝統芸能をやるということにまとまった、だが、そのとき、現代芸能の人たち、これを臨時委員として含めて、さらにまた検討に入った、こういうように説明をされておるわけです。そのときのまとまったといういまのお答えは、最初は伝統芸能の人たちだけを集めて、それで伝統芸能だけをやるということでまとまったのか、あるいは、そういう空気が非常に強かったけれども、現代芸能の意見も聞けという声があって、現代芸能の人たちも臨時委員として集めたのか、その辺の経過をひとつ伺いたいと思う。と申しますのは、常に文部省は早合点をし過ぎてしまって、この会議はまとまった、そういう確認の上に次をやっておる。しかし、実際はまとまっていないんで、結論が出ていないので、新しい角度で検討しようという声があったとすれば、どうもその事実と説明とは違うと思うのです。そういう点のいきさつをもう少し伺いたいのです。
それからあとの段階で、敷地の都合でだんだん縮小してきたその経過はよくわかります。その経過はよくわかりますが、修正可決をしたときの、いわば、いまの説明では最終案と、こういう説明をされておるが、その最終案が出たときに、そのときに現代芸能の委員を含めて了承を願ったと思った、そういう説明があったわけですね。そのときに、はたして全部が賛成という形で、その場で意思表示をされておったのか。というのは、さきの例もありますし、また、このあとにも若干申し上げたいことがあるんですが、何か文部省的に、ある程度賛成の人があると、これはもうきめたという進め方で進めておったところに間違いがあったのではないか、そういう感じがいたしますので、その辺をもうちょっと詳しく——詳しくというよりも、どういういきさつで、たとえば全員が賛成だったのか、反対の人があったけれどもきめたことにしたのか、あるいは反対の意思表示はしなくても、相当批判的な意思の表示があったが、文部省の決定したことを決定として持っていったのか、そういう事情を伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/32
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033・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 前段でございますが、国立劇場の設立準備協議会には当初から現代芸能の方も参加されておりました。しかし、それは少数でございまして、設立の議が進んでまいりますと、現代芸能のほうからもっと意見を聞いてほしいという御要望があって、臨時委員の形で大いに増強したという経過のようでございます。
それから三十六年にまあ最終的に現在の形がきまった際、どういうこまかい議論が行なわれたか、実は正確に速記による記録が残っておりませんで、精密にお答えしかねるわけでありますが、傾向としては、それは現代芸能の力は快く賛成されたのではないようでありまして、非常に遺憾ながらやむを得ないということであったと思います。で、現代芸能もこれで建てないということではなしに、次の段階で考えてほしいというような希望条件を付して、やむを得ず了承ざれた、こういう経過のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/33
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034・鈴木力
○鈴木力君 そこで大体わかってきたんですがね、やむを得ず了承されたと、そう理解しておったのだが、先ほどの説明によると、そのあとはほとんど事務的に仕事を進めておって、そのやむを得ずというところに対する手当てというのはきわめて少なかったのじゃないのか、こういう感じがするんです。実はこの前の参考人の方々の御意見でも、たとえば菅原さんなんかは、答申は近代芸能を育成する分野を含んでおったはずだ、ところが、実際、法律案を見ると建物案になってしまっておる、びっくりした、あるいは非常にがっかりしたという、そういう意味のことがあった。把握が全然違っているんですね。把握が違っておっても、こっちは決定したんだからという進め方が続くと、どうも国立劇場という今後が心配になるような気がするのです。そこでもう少し伺いたいのですが、そのときに国立劇場というこのことばに対する理解といいますか、解釈といいますか、理念といいますか、そういうものに対する議論というものがなかったのかあったのか、その辺を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/34
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035・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 先ほど御説明申し上げましたように、設立準備協議会ではもちろん国立劇場のあり方、それから運営の基本といった問題について論議はなされたのでありますけれども、何と申しましても論議の量から言いますと、いかなる建物をつくるかということが非常に大きな部分を占めておったようでありまして、言うなれば建物中心に議論が進められて、それに付随してあり方や運営の問題が論ぜられた、たとえば運営につきましては、これも前に説明したと思いますが、国立国営方式とそれから特殊法人方式が考えられるという、ある程度の方向を示したにとどまっております。そういうことでございますので、文化財保護委員会の事務局としても、やはり建物を中心にものごとを考えまして、それから建物を使って運営していくには仕事の弾力性その他を考えまして、国立国営よりは特殊法人方式がよかろう、特殊法人方式をとるということは準備協議会で議論した範囲内のことであるから、それはある程度事務的に処理して差しつかえなかろう、こういう判断のもとに特殊法人の設立に関する今回の法律案を準備した、こういうことでありますので、今回の法律案には準備協議会で議論された一切の事柄がそのまま盛り込まれたというよりは、設立準備協議会で示された方向に従いまして、とにかく伝統芸能の保存振興をはかるための特殊法人の目的運営のあり力を規定した、こういう経過になっておる次第でございます。したがって、今回の特殊法人国立劇場の目的が、理論的に考え得る国立劇場のあり方に関するあらゆる要素を網羅したものとは言いがたいわけでありまして、隼町に建っております伝統芸能の上演を中心とした特殊法人の仕事の目標を示した、こういうことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/35
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036・鈴木力
○鈴木力君 いまの法案立案の趣旨はいままで何べんか説明があったように、確かに現在建っておる国立劇場をどう運営していくかということが中心になっておるんですから、伝統芸能ということになると思いますけれども、私は一番大事なことは、いままで大臣の答弁にも何べんもありましたし、それから村山事務局長の答弁にも何べんかありましたが、現代芸能を捨ててはいない、そして将来は現代芸能関係の劇場も考えなければならない、こういう方向の答弁がずいぶん繰り返えされておる、その方向は私どもも賛成なのですから、そういう立場でものを何っておるのですけれども、そういう文部省の考え方でこの法案を読んでみると、どうも法案はそうなっていないように見えてしようがない。つまり、それは私なんかが考えますと、国立劇場という一つの考え方は、まあ現代なり、あるいは伝統なり、日本の文化政策、まあ芸能文化政策として、あるいは演劇文化政策として基本をそこにつくった、あるいはそのセンターとなるような、そういう方針を頭に描いておる。そしてそこでその仕事を進めるために必要な、具体的な建物の劇場というものが出てくる、こういう考え方をとりたいわけなんです。そういたしますと、いままでの説明にあったように、たとえば敷地が足りないとかあるいはその建物を建てる建蔽率とか、その他の条件であのような規模のものが一つしか建たなかった、しかし、それは土地やその他の条件で一つしか建たなかったけれども、国立劇場という一つのものがあって、それは将来は現代芸能にも発展をしていくのだと、そういう形に国立劇場という規定がなされると、これは現代芸能の関係者の人たちというよりも、関係者が多いというのじゃなしに、参考人の方々の御意見にもはっきりしておりますように、たとえば歌舞伎の人たちも現代芸能を育てなくちゃいかぬ、片手落ちなことはやっちゃいかぬ、そういう意見でありますから、芸能関係の識者といいますか、そういう方々は一応全部、現代芸能を大事にせよと言っておるわけであります。国立劇場という一つの概念は、そういう近代も含めた、そういうものを概念規定としておって、とりあえず、土地の関係でいまの隼町に建っておる劇場をこうするのです。こう言ってもらうと話がわかるような気がするのですけれども、そういう考え方には立つことができないかどうか、ちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/36
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037・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 事務的に申し上げますと、特殊法人設立に関する法律案の目的は、設立される特殊法人が行なう仕事の範囲を忠実にカバーして、かつそれを逸脱しないものでなければならないわけでありまして、現在考えております特殊法人の仕事の内容といたしましては、これは現代芸能も無視はいたしませんし、一部の仕事の範囲とはいたしますけれども、主たる内容が伝統芸能の保存振興にあることは言うまでもないわけであります。そういう意味合いにおきまして、目的としてもその主たる仕事の内容を忠実に表現するような目的を掲げました次第でありまして、今後広がるべき目的に関しましては、その時点においてまた法律を改定するなり、あるいは大臣もお答え申し上げましたように、別途、法律を用意するというようなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/37
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038・鈴木力
○鈴木力君 法律用語の解釈は、これはちょっとぼくらはよくわかりませんのですがね。たとえば第一条に、「国立劇場は、」としてある、「国立劇場は、わが国古来の」と、ずっと続いておるわけです。そういたしますと、その次に、かりに現代芸能の劇場をつくる場合には、「国立劇場は、現代の」と、こう続けるようなことになるわけなんですか、あとで法律をつくるという場合に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/38
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039・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 将来、現代芸能を主たる目的とする劇場施設ができるという段階に立ち至りますれば、この法律の目的を現代芸能を含めまして改正するか、あるいは別途に現代芸能の上演、振興を目的とする別の法人なり施設をつくるというようなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/39
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040・鈴木力
○鈴木力君 そこが先ほど来、私が質問申し上げました納得しない芸能関係の人たちが数が多いという理由ではないのかというふうに感じられるわけです。いまこういう方針を一つつくっておいて、今後いつのことかわからぬけれども、現代芸能のことも取り扱う時期が来たら法律を改正して、そうしてそれを持っていく。国立劇場とはという考え方には、そういう段階的な考え方を先につけておくというところに不満があるのではないかという感じがします。現代芸能を含むべきだという主張論者も、先にできておる、いまできておる劇場が伝統芸能を中心とするのだ、そういうことについては文句がないわけです。ただし、考え方として、国立劇場は伝統芸能をやるのだ、そういう考え方に非常に文句があるのであって、国立劇場はどういう芸能も、日本の政策として育てなければならない芸能は全部含むんだ、そうして、さしあたりこれをやるんだという順序をつけられたということについては文句がない。だから、それをいまの説明でも最初の趣旨のような説明をなさるけれども、大体いまのような趣旨の説明をなさるところが、先の設立準備協議会の御了解を得たと思っておったというところから出発をしておるわけですから。ところが、了解をしていなかった人たちがいるわけです。そこから出発をして、この法律ができたのだけれども、了解をしていない人たちもいる。そのことがわかって、おわびを申し上げるとか、遺憾であったとかいうことばが出すがね、そこをカバーするためには、その考え方もやっぱり変えていく、そういうことが必要ではないか、こう考えるのです。そこで、これは私の考え方を申し上げたのですけれども、衆議院でこの法案が修正になっているわけでありますから、そこで、修正案の説明をなさった川崎委員に、この辺の事情を少し伺いたい。
衆議院で討論なさったときにも、速記録等を見ますと、やはり現代芸能をどう尊重し、現代芸能の関係の意見といいますか、希望といいますか、現代芸能に関するいろいろな意欲について、その意欲をくみ上げて修正をしたというふうにも聞いておる、そのいまの事務局長の説明と、それから衆議院で修正に持っていった論議の過程で、どういう違いがあるのか、その辺を説明をしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/40
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041・川崎寛治
○衆議院議員(川崎寛治君) 衆議院におきまして三党で修正をいたしました立場から、ただいまの御質問に対してお答えいたしたいと思いますが、当初、政府提出の原案には、私たちの衆議院におきます質疑において明らかになりましたことは、この国立劇場法案は伝統芸能に限るということが明確になったわけであります。でありますから、伝統芸能に限る国立特殊法人、国立劇場法案である。といたしますならば、先ほど村山事務局長から御答弁がありましたように、国立劇場設立の経過の中にありますこの準備協議会の現代芸能の皆さん方が参加をされてきました過程の中で修正をされて、今回の劇場法案にあります最終的な案が決定をいたしましたときに、現代芸能の方々の理解とは違っていた、こういうふうにわれわれも了解をいたしたわけであります。そこで、この政府原案のままでまいりますならば、特殊法人国立劇場は、これは伝統芸能に限られる、こういうことになりますので、今回のように「主として」ということを入れまして、きわめて抽象的であり不十分な点は免れませんが、そういう立場から修正をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/41
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042・鈴木力
○鈴木力君 もう一つ伺います。その伝統芸能に限られてはいけないという趣旨で修正をされた、そこはわかりました。そこで、この国立劇場の考え方、国立劇場という考え方を、やはりいま建っておる、いま建築中の劇場だけを考えて討議をなされ、その結論としてその修正ができたのか、あるいは大臣のお触れになりましたように、機会があればといいますか、いつということは言えないにしても、現代芸能の劇場ということを一応想定の中に含んである、そういうことも含めた中での討議の上の修正であったのか、その辺を伺いかい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/42
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043・川崎寛治
○衆議院議員(川崎寛治君) 先ほども村山事務局長の答弁にもありましたが、現代芸能の皆さん方が、打ち切られた、つまり打ち切られて伝統芸能に限られたということについての理解は、了解はなかった、つまり当面、隼町にできる国立劇場は伝統芸能のためだ、だから当然に、次に第二国立劇場なるものが設立されるし、現代芸能の振興のためのものが設立されると理解をしていた、こういうことでございますし、私たちも審議の中で、今回の国立劇場というものがナショナルシアターとして考えるならば、当然に伝統芸能の保存、振興だけに限られるべきではなくて、広く国民の現代芸能も含まれるべきだ、こういう立場から「主として」という、法案を修正をいたしますと同時に、決議といたしましても、当初は自民、社会、民社三党で了解をいたしておりましたことは、第二粛正劇場を早急に、こういう附帯決議をつけたい、こういうことで話し合いいたしましたが、現在のこの国立劇場が第一でありません。その意味において第二という附帯決議をつけることは好ましくない、こういうことでありましたので、附帯決議といたしましては、すみやかに現代芸能も含むものとして、こういう形での附帯決議にいたした、こういう過程でございますから、ただいま鈴木委員の御質問になられたような方向で私たちは審議をし、修正をいたしてまいった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/43
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044・小林武
○小林武君 関連。川崎さんに質問をいたしますが、この修正案をお出しになったときに、こういうことが問題にならなかったか、ひとつお尋ねをいたします。第一条の「国立劇場は、」というこの第一条でありますが、ここの場合、修正をしない場合は、「わが国古来の伝統的な芸能の公開、」云々、ここでは伝統芸能だけが書かれておる。それに「主として」ということが加えられておる。そうする場合には、この「主として」というのが入ったために伝統芸能以外のものが入ってきた。その場合、「主として」というのは、「主として」を抜かした部分は現代芸能にこれが振り変わらなければ、これはあなたたちの修正の意思には合わない、こういうことになる。そこで、私は法律の専門家ではございませんのでよくわかりませんが、これは熟読玩味してみましたところ、どうもそうならない。十九条のたとえば「業務」のところがあります。これ一号二号、五号のところまである。第二項のところでは、「第一条の目的の達成に支障のない限り、」というところを削った。そういたしますと、これを削ることによって、これは二項は、「国立劇場は、前項の業務を行なうほか、前項第一号の劇場施設を一般の利用に供することができる。」と、こうなっている。「一般の利用」ということになると、これは必ずしも現代芸能だけをさすものではない、非常に領域が広くなったということです。ここで現代芸能にうんと貸してやれという条件は一つも私は出てこないように思う、悪く解釈すればです。そういうことになりますというと、たとえば三十九条ですか、罰則がございます。この罰則の「第十九条に規定する業務以外の業務を行なったとき。」というのがある。ということになると、「一般」というものに対してこれをぐんぐん広げていったら、この間に第十九条の罰則とは幾らか矛盾を来たすようなことがないか。で、私は実はこの間ちょっと悪口を言って、この修正案というものは、現代芸能をやるという条件をつくったのではなくて、卒業式にも貸すわ、何々大会にも貸すわ、総決起大会にも貸すわというようなぐあいに、利用のあれを広げていったことに結局法律解釈上はなるのではないか、もしさようなことになると非常にこれは憂慮すべきものだと、こう考えています。その点の疑問をあなたたちは持たなかったかということですね。絶対これは現代芸能にだけ席をつくったんだということに理解されるような根拠がどこにあるのか、ひとつ説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/44
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045・川崎寛治
○衆議院議員(川崎寛治君) まあ修正の過程では、ただいま小林委員の御指摘になられました三十九条云々、そういったような点についての論議は行なわれておりません。私たちといたしましては、「主として」と入れたこと及び十九条の第二項において、「第一条の目的の達成に支障のない限り、」というのを削除した意味は、たとえば、これを文部省が四十二年度予算案の折衝の際に要求をしたいと答弁があったわけでありますが、国立劇場で行なわれます上演をされるものについてはすべて無税と、免税と、こういった点については当然行なわれるべきじゃないか、そのことは、何も現代芸能以外の、いま御指摘のようなそういった面にむしろ広がるんじゃないかといった点の理解ではわれわれはなかったわけであります。われわれといたしましては、あくまでも現代芸能の振興と、そういう立場から第一条と第十九条の二項の削除、こういう修正をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/45
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046・小林武
○小林武君 なお、いまここから、川崎さんにはよろしいですが、文部大臣にこの解釈のしかたについて質問したいけれども、厚生大臣がおいでになったし、お二人そろってなきゃぐあい悪いので、ここで打ち切らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/46
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047・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 委員の異動について報告をいたします。
本日、小野明君が委員を辞任され、その補欠として野溝勝君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/47
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048・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) この際、教育、文化及び学術に関する調査中、特殊教育に関する件を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。
なお、政府側より中村文部大臣、鈴木厚生大臣、中野文部政務次官、佐々木厚生政務次官、斎藤初中局長、竹下厚生省児童家庭局長、小田村大蔵省主計局主計官が出席いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/48
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049・野溝勝
○野溝勝君 私はただいま委員長からお話しがありました特殊教育につきまして、この際、関係大臣からお伺いをしておきたいと思います。特殊教育に触れる前に、私はまず一般的に心身障害児対策についてお伺いします。
心身障害児に関した教育問題については、文部、厚生両省が前向きの姿勢で努力している点はよくわかりますが、現状はまだまだ、先進国とか、近代国家とかいわれている日本としては、とうてい了承できるような状態ではない。今日マスコミでも盛んにいろいろと取り上げております。そこで、申すまでもないが、特に近代国家、先進国としての今日の日本としては、より一そうこうした方面にもっと力を入れなければならない。ところが、本四十年度予算の編成過程をみても、たとえば、児童手当制度の問題にいたしましても、その他身体障害児の職場の問題にいたしましても実現もしないし、促進も見られません。どうも政府の中で意見が一致しないのか、あるいはその努力が足りないのか、どこに一体デッドロックがあるのか、こういう点についても非常に疑問を持っております。最近では、六月の「文芸春秋」におきましても、たぶんごらんになったと思いますが、「社会福祉になぜ血が通わないか。身体障害者、精神薄弱児問題など社会の谷間の問題を、ひとり政府にまかせてはおけない」という作家水上勉氏の意見を出して、世論に強く訴えています。私は関係当局がこれらの問題について努力して、いる点はわかるのでございますが、この点に対しましては一そうの関心と誠意を具体的に示してもらいたいという考えでお伺いをするのであります。でありますから、まず最初に両省から、福祉政策あるいは文教政策等に対する基本的な考え方をひとつお二人からお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/49
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050・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 難聴児の教育をはじめ、特殊教育につきましては、文部省としまして従来たいへんおくれておりましたので、目下極力その推進をはかり、こうした特殊教育の充実を期してまいりたいということで、鋭意努力をいたしておりまする次第でございますが、こまかい点は担当の局長からお答えをいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/50
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051・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) ただいま野溝さんから御指摘がありました、あるいは重症心身障害児、あるいは重度精神薄弱児、あるいは重度の肢体不自由児、またろうあ児等々、ハンディキャップをしょっておりまする気の毒な子供さんたちの福祉の問題につきましては、政府といたしましてもできるだけの今日まで努力をしてまいったところでございます。この国会にも児童扶養手当法あるいは特別児童扶養手当法等の改正法案を提案をいたしまして、在宅におけるこれらの児童の扶養手当の増額等の措置を講じますと同時に、すでに御承知のように、四十一年度予算におきましては、重症心身障害児のために初めて全国的に十カ所、それに東京の整肢療護園を加えまして十一カ所に五百二十ベッドの収容施設を設置する等、できるだけの措置を講ずるように努力をいたしておるところでございます。しかしながら、まだまだそういう気の毒な子供さん方は数も多いことであり、対策にはきめこまかな、また総合的な施策が必要でございますので、今後とも一そう努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/51
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052・野溝勝
○野溝勝君 ただいま両相から簡単にお答えがありましたが、もちろんそうした努力をしておるということは私どももわかります。そういう考えのあらわれというのは予算的にも出ておりますからそれはよくわかりますが、確かにいままでよりは予算も多くなっておりますし、また、部分的にはいま両相の触れられたような点で私どももそれを認めるにやぶさかではないのでございます。しかし、戦後二十年の日本は、とにかく経済は高度に成長したとか、近代国家であるとかいわれ、特に最近の佐藤総理は、社会開発、人間尊重というようなことを強調されておる。それにしては、私は予算上はあまりにも貧弱じゃないかと思うのです。皆さんの努力はわかります。しかし、総理が言われておる社会開発とか、あるいは人間尊重とかいう考えの具体化には、まだほど遠いんじゃないか。特にここで憲法を出すまでもなく、あるいは教育基本法を出すまでもなく、あるいは児童憲章を出すまでもなく、当然それらの基本法にのっとってその政策は出さるべきものでありますから、そこで、私は一問一答ということをなるべく避けまして、私見を多く申し述べることになりますが、それについてまたひとつお答えを願いたいと思います。
非常に努力はされておりますが、わが国における社会保障や文教政策の推移を数字で国際比較してみると、社会保障関係では、一九六〇年——昭和三十五年ですが、国民所得に対する社会保障給付費の割合は、イギリスでは二二%、西ドイツでは二二%、日本では六%、非常に低いですね。一九六一年——昭和三十六年ですが、国の歳出に占める社会福祉費の割合では、イギリスが二九%、西ドイツが一三%、日本は二一%、この比較で見ると日本は努力のあとが見えている。しかし、教育方面においては非常におくれておるわけですね。たとえば、国家予算、社会保障費、教育費の伸びで比較してみると、一九六〇年で、イギリスは一般会計の歳出が一二三%、社会保障費は一四六%、教育費は一七三%。これが日本では一般会計歳出は一七一%、社会保障費が一九五%、教育費が一六八%。これから見ると、欧米先進国では、教育費の伸びは国の歳出や社会保障費の伸びより大きく、特に教育の比重が高い。日本は社会保障関係は、まあ、ちょっと上がっていますが、教育関係のほうは最近では伸びが低停しております。それから一般会計当初予算における社会保障費と文教費の占める割合、これは当然、大臣みずから承知のことだと思うのですが、昭和四十年が予算総額三兆六千五百八十億円、四十一年四兆三千百四十二億、この予算総額に対しまして、社会保障費は四十年が五千百六十四億で一四・一%、文教及び科学振興費が四千七百五十五億で一二・九%、四十一年度は、社会保障費が六千二百十七億で一四・四%、文教、科学振興費が五千四百三十三億で一二五%となっているが、ワクにはめられたように伸えられています。私はまあ外国との比較、国内におけるところの予算状態を簡単にお話し申し上げたのですが、申すまでもなく、当局はこれを御承知なわけです。国民所得に対する教育費の割合は欧米先進国並みにはなって来たが、教育費の伸びが停滞しております。最近では教育施設の不足、生徒一人当たりの教育費の少いのが目立ちます。私はこの点に大きな関心を持ち、いまの文教政策に疑問を持っておるのです。で、文化国家といわれておる、あるいは近代国家といわれておる、高度経済が成長したといわれておるその中で、どうして一体この教育のほうにもう少し力を入れないか、こういう点を非常に問題にしておる。特に今日、父兄の児童に対する負担というものは、学習書や学用品などで年間二百億以上にも達しているらしいのでございます。中村さんが文部大臣になって力を入れておるのはよくわかるけれども、これらの点から見て、私はより一そう力を入れなければならぬと思う。こういう点に大蔵当局と折衝をしたことがあるのか。もちろん折衝もしたでしょうけれども、どうしてこういう点に対する理解がないのか。こういう点でひとつあなたの所見なり考え方を話していただきたい。主計官が来ておりますから、当然、主計官にも私は見解を聞いておきたいと思う。特にあなたが教育関係法あるいは児童憲章なりから見ても当然やらなければならぬでしょうし、これは主張されたと思うのですがね。この点、大蔵省はどういうことを言われておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/52
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053・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 私ども文教関係の予算を極力充実したい気持ちで努力をいたしておる次第でございますが、ただ、文教関係は義務教育の教職員国庫負担があるものですから、伸び率からいいますと、ほかの役所のような伸び率にどうしてもならないわけであります。この点、残念に思っておるのですが、実質的にはほかの官庁の伸び率程度には伸びておりますが、給与費の負担という大きな幅があるものですから、全体として率を考えますと、四十一年度でも他の官庁の伸び率に達していないというのが現状でございます。いずれにしましても、いま一つ一つの、たいてい予算編成のときには各項目別に折衝を積み重ねてまいるものですから、総体としてこういう点で行き詰まっておりますということは申し上げにくいのでありますが、たとえば、この特殊教育について考えてみますと、私の記憶では四十一年がたぶん九十五、六億円になっておると思うのです。前年が七十何億かで、大体二〇%ぐらい伸びになっていると思うのですが、もっと速度を早く、特殊教育の充実はおくれておりますので、私ども馬力をかけてまいりたいという念願をしておるわけであります。今後とも文部省としてはこれは最重点事項として努力をして、この恵まれない特殊教育の対象児童の教育環境をよくし、また、りっぱな先生、教師の養成を行ない、また施設の充実をいたしまして、愛情のある特殊教育の充実を期してまいりたい、こういうように考えておる次第でござます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/53
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054・野溝勝
○野溝勝君 私は以上の概念的な質問をするのは、結局、特殊教育の問題に対し、当然、国が努力しなければならぬのを、いまのような国の考え方では、とても特殊教育だとか、愛情のある教育というものはおぼつかないと私は思うのです、あなたが幾ら努力されても。そこにこの問題を私は序論において投げかけたわけでございます。そこで、いま大臣も努力されておる、また大いに努力すると言われておるが、ちょうど主計官が来ていますから、主計官のほうから考え方をこの際お聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/54
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055・小田村四郎
○説明員(小田村四郎君) ただいま文部大臣からお話がございましたとおり、大蔵省といたしましても、いわゆる肢体不自由児、精薄児等の気の毒な方々に対します特殊教育の充実ということにきましては、十分意を尽くしまして、できる限り国家財源の許す限りにおきましてその予算の拡充をはかってまいったのであります。文教予算全体につきましては、いま文部大臣からお話ございましたとおり、義務教育の給与費の国庫負担金の増によりまして、多少の上がり下がりがございます。しかし、特殊教育関係の予算につきましては、年々増額をはかっておりまして、たとえば義務教育諸学校の特殊学級等につきましては、毎年一千学級の増加、増設を計画いたしまして、これを実施してまいっておるわけでございます。その他養護学校の新設等も、年次計画によりましてその遂行をはかっていっております。そのほか、たとえば四十一年度におきましては、特殊教育に対する視聴覚教材の補助も新規に計上いたしましたし、その他各般の施策を文部省と御相談しながらやってまいっておるわけであります。今後におきましてもさらに内容の充実をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/55
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056・野溝勝
○野溝勝君 厚生大臣に社労のほうから至急にというお呼び出しがきていますから、私は先に厚生大臣にお伺いしたいと思います。
いま大蔵省の主計官からお答えありましたが、憲法二十五条、二十六条、それから児童憲章あるいは学校教育法などから見れば、そんな少しばかりのことでお茶を潤すというのではいかぬ、やはり文部省や厚生省からきた予算を大体全部承認する、あるいはそれに対して協力するという体制がなくてはいかぬと思うのです。特に文部省や厚生省の特殊教育や心身障害児に関係した問題などは、何も個人の問題じゃないですから、社会的な問題なんですから。この点は大蔵主計官もひとつ、特にきょう私からそういう要望があったということを大臣に伝えておいてください。本年度予算でも予備費は六百五十億もあるのですから、それは文部大臣も、厚生大臣も大いに要求して取ってもらいたい。それだけをお願いしておきます。
次に、厚生大臣にお伺いするのですが、先ほど、非常に努力をされておるということは聞きましたが、重症心身障害児のための療養施設の問題、あるいはその他いろいろと言われておる、その点は認めるのです。しかし、何といっても、国立療養施設なども全国で十一カ所、五百二十ベットで問題にならないほどに少い。今日まだまだ座敷の牢に扱われているような不幸な子供たちがおるのです。しかし、表にあらわれた数字では一万五千人です。この重症心身障害児ですね、これらに対して五百二十ベッドというのはあまりにも情けない、しかし、あなたが努力したからここまでいかれたと言われればそれまでです。こういう状態ではとても安心できないです。先ほど話したとおり、実際座敷牢におるような重症心身障害児童は相当多いのですから、そういう点も考えてみると、こんなことだけではとても満足できません。
それから、あなたに聞いておきたい問題は、障害者の雇用促進です。これなど非常に強く言われておるけれども、しかし、雇用促進はけっこうですが、職場の問題は非常に大きな問題になっております。とにかく社会に出ても職場がないというのです。幾ら促進法をつくっても、会社や工場では受け入れてくれない。そこで、職場がないということになると、障害手当をもらって、それでやっていくというわけでございまして、国もやはり大きな損だと思う。職場を与えるということに対して、真剣に考え、その予算を組んでおるかどうか、特に私の心配なのは、私、最近、宿屋であんまさんにかかったんですが、あんまさんにかかると、これは水上さんもそういうことを言っておるのですが、大体、盲人さんは昔はあんまさんであった。いまあんまさんがみな目あきのあんまさんになっている。マニキュアをやっておるかどうか、それは知りませんけれども、とにかくおしろいをつけた若い娘さんがあんまさんをやっている。そうなると、いまの政府の考えているこの考え、職場を見つける、あるいは促進する、こういうことと非常に食い違っておるのですが、盲人の職場をなくすということに結果においてなっているのでございます。こういう点についてどういうふうに考えておられますか。
それからこの際申し上げておきますが、厚生省では一昨年から重度精神薄弱児扶養手当として、月額千二百円を出しておる。これは非常にけっこうなことです。ですけれども、二十万円以上になるというと出さないのですね、年収二十万円以上になると。年収二十万円以下なんていうのはどのくらいあるかということ、台東区あたりでは三件しかなかった、東京の台東区。そうなるというと、非常にいい法律をつくっておりますけれども、結局は手当ては与えられないということになる。こういう点、非常に私は矛盾しておると思う。こういう点を一体どういうふうに考えておるか。
それからまた、社会復帰の対策としていろいろ考えておるらしいが、もっと会社とか、大ぜいの人を雇っておる工場とか、そういうものに対して身体障害者を使うように何とか考えたらどうか。外国ではあるそうですね、私は外国のある程度のことは聞いておりますが、調べたことはありません。外国では何百人、何十人以上の工場に対しては、身体障害者なり、あるいは心身障害者、そういう人を使うようにしておるのでございますが、この点はどうですか。大体これだけお伺いします。あとは最善の努力を払って、児童福祉法もあるし、それから身体障害者に対しては、やはり身体障害者も十九歳になればあと追い出されるということのないように、身体障害児に対しても重症障害児に対しても、この点の立法化なり対策を立てる必要がある、こういうふうに思っているのですが、この点をお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/56
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057・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) だいぶ多岐にわたって御質問がございましたが、時間の関係もございますから要点だけお答えをいたしたいと思います。
まず、重症心身障害児と障害者の対策についてでございますけれども、昨年の八月の調査によりますと、重症心身障害児は全国で一万七千人ほどおります。御指摘のように、以前はうちの奥座敷のほうに隠したり、いろいろなことがあったようでありますが、最近は相当世間もこれらに対する理解、認識も進んでまいりまして、親たちも重症心身障害児を守る会というようなものをつくって、世論にも訴え、積極的に更生援護の具体的な活動を進めておるというようなことから、昨年の実態調査はやや私は実情に近いものではないか、こう考えておるわけでありますが、その一万七千人ほどの重症心身障害児のうち、どうしても施設に収容しなければならないものは一万六千人ほどでございます。そこで、今日までもっぱら民間の収容施策にお世話を願っておったのでありますが、国もみずから施設をつくって、この救済養育に当たらにゃいかぬと、こう考えまして、昭和四十一年度の予算で、先ほどお話を申し上げましたように、全国で十一カ所の収容施設をつくることにいたした次第でございます。なお、これは第一年度でございまして、今後五カ年計画をもちまして、全体の三分の一程度、五千人程度を収容する施設を計画的に整備をいたしたい、このように考えております。
それからなおお話がございましたコロニーにつきましては、群馬県の高崎市の郊外に二百二十四ヘクタールの国有地を開放いたしまして、おおむね五十億余りの建設費をもちまして、今後これを総合的な収容施設として整備をいたしたい、このように考えておる次第であります。また、各府県におきましてもそれぞれの計画がございますので、そういう建設計画に対しましては国としてできるだけの助成の措置を講じたい、かように考えておるわけであります。
それから重症身体障害者あるいは精薄者に対しまして、児童福祉法で十九歳という年齢の制限があるわけでありますが、今後、子供からおとなまで一貫した身体障害者の福祉行政を進めますために、ただいま審議会におきまして御検討願っておるのであります。すでに厚生省におきましては、社会局と児童家庭局に分かれておりました行政を、児童家庭局に一元化をいたしまして、まず行政上の窓口も一本化を現実にもうやっております。これにならいまして、各都道府県におきましてもそのような行政措置を講じておりますし、法律の面におきましては、ただいま申し上げました審議会の答申を待って、早急に一貫した福祉行政を実現をしたい、このように考えておるわけであります。
それから身体障害者に対する雇用促進の問題でありますが、これは御承知のように雇用促進法がございまして、官庁におきましては三%、それから民間におきましては、すでに六%以上も身体障害者を雇用しておる、こういうことで、官庁及び民間におきましても身体障害者の雇用促進につきましては、法律の精神にのっとりましてできるだけの努力を進めておるところでございます。
また、これらの方々の社会復帰のため、また更生援護のために、あるいは授産易を設けるとか、あるいは職業訓練所を設けるとか、そういうようなこともいたしておりまして、厚生省といたしましては労働省と緊密に連携をいたしまして、身体障害者の自立更正ということにつきまして、特に力を入れておるところでございます。
それから扶養手当に対するところの所得制限の問題でありますが、この点につきましては、ただいま参議院の社労委員会で御審議を願っておりますが、従来、所得制限が二十二万円でありましたものを二十四万円に引き上げ、また、扶養義務者の支給制限につきましても大幅な改善をはかりまして、八十二万円ほどに限度額を引き上げるというような措置も講じておるわけであります。いずれにいたしましても、身体障害者に対するところの福祉行政と、これは教育の問題も含めまして、非常に総合的な施策が必要でございますので、十分、文部省、労働省とも連携をとりまして、できるだけの努力をいたしたいと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/57
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058・野溝勝
○野溝勝君 あんまさんの問題は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/58
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059・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) あんまさんの問題につきましては、御指摘のようなことが温泉地等におきましてはよく見受けられるところであります。そこで、厚生省といたしましては、このあんま、はり、きゅう等の養成機関を認可いたします際におきまして、盲人の養成機関、これを優先的に実はいたしておりまして、晴眼の者の養成施設はできるだけこれを押える、あとに回すと、こういうような配慮をいたしておるわけであります。ただ、憲法のたてまえ上、晴眼者があんまをやっちゃいかぬとか、はり、きゅうをやっちゃいかぬとかいう職業の制限を加えるわけにまいりませんので、その養成施設を認可いたします際に、晴眼者の養成施設はできるだけこれを抑制をして、そうして盲人等の養成施設のほうを優先的にこれを認めていくと、こういうような行政を通じまして、御趣旨に沿うように努力していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/59
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060・野溝勝
○野溝勝君 質問でなくて、それで大臣、けっこうですよ。いま憲法には職業選択の自由はあるけれども、せっかく厚生省がこうした谷間にある人の職場の対策を考えておるときですから、私はそのことを裏づけをするためには、こういうところから行政指導をはっきりしていったほうがいいと、こういう意味で言ったんです。
次に、私は文教関係について文部大臣から少しお伺いをしたいと思います。先ほど来、文部大臣からもいろいろお話がございましたが、この社会福祉事業というのは、これはやはり厚生省だけではいかぬし、また文部省だけでもいかぬ。厚生大臣から総合対策が必要だと、まあ答弁なんだが、どうかひとつこの問題を解決するためには総合対策を具体的に練っていただいて、谷間にある人々の気持ちをやわらげる、そういうような方向に努力してもらいたいと思います。この点をひとつ所見を中村大臣から聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/60
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061・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 確かに御指摘のとおり、総合的に文部省としていろいろな身体あるいは精薄等障害がある人たちに対する施策を努力していかなければなりませんが、同時に、労働省、厚生省等とも総合的にやっていく必要があると思います。実は、私も都立の青鳥養護学校なども見学をいたしたんでありますが、精薄児で、普通だと非常に無理な子供さんでも同じ程度の人たちを一つの場所に集めて、同じ簡単な作業をやらせますと、かなり能率的にりっぱにやっております。たとえば俵をほぐしてわらをそろえる者はそろえておる。それから縄を機械にかけてなう者は何台か並んでやっておりますが、非常にあれはわらを二本か三本こう手の先でかげんして、太くなったり細くなったりわらがなっちゃいけませんから、二木なら二本ずつこう拾ってやる。そういう作業が精薄の子供さんにしてはむずかしいが、きちんとした正常な姿でやっておる。だんだん作業が軌道に乗ってきますと、人が見学に行ってもわき目もしない。非常に私はほかの作業もたくさん直接見てきましたが、感心をしました。ですから、こういう人たちを楽しく人生を送らせるようにするためには、教育と同時に、そういう仕事を覚えさせ、同時に、こういう故障のある方々の雇用関係ということが一つの大事な問題ですが、軽度の人は一般の人間とはさまって雇用関係を解決できるかもしれませんが、やっぱり相当重度の者は、同じ程度の同僚を一カ所に集め、そこでなれた職業に楽しく従事させるような授産所というか、共同作業場のようなものを今後われわれ労働省なり、厚生省等とも相談をして進めて行ってあげることが、教育に関連して一つの重大な問題ではないかというふうに考えておりますが、こういうことひとつ考えてみましても、なかなか文部省は文部省だけでけりがつく問題じゃないので、やっぱり関係各省がよく協議し、また、財政当局の大蔵省にも理解していただいて、総合的なりっぱな施策を逐次完成し、整備していくことが必要だろう、こう思っておりますので、私どもも大いに熱意を傾けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/61
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062・野溝勝
○野溝勝君 これは文部大臣でなくて、厚生省の局長でもけっこうでございますが、お伺いしたいと思いますが、心身障害児はいろいろ数字が発表されておりますが、その数字はどこに根拠があるかさっぱりわかりませんが、どのくらいあるのですか、たとえば精神薄弱児はもちろん、肢体不自由児、あるいは身体虚弱者、あるいは難聴児童、弱視者といいますか、目の悪い者、弱視者等に分類して——分類は一々めんどうでしょうが、トータルとしてどのくらいあるのでしょうか、どの数字がほんとうなのかさっぱりわからぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/62
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063・中野正剛
○説明員(中野正剛君) 昨年、厚生省の児童家庭局あたりで身体に障害のある児童を調査いたしましたところ、身体に障害のある児童は全部で十一万九千八百名というふうに推計いたしたわけでございます。その中で視覚障害一万四千四百、聴覚障害一万五千九百、音声もしくは言語機能障害一千七百、上肢機能障害二万一千六百、なお肢体不自由児は、いま申し上げました上肢機能障害、下肢機能障害、体幹機能障害とありまして、七万六千二百名というふうに推計いたしております。なお、精神薄弱児につきましては詳細な調査がございませんので、本年度、児童家庭局において調査をすることにいたしたい所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/63
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064・野溝勝
○野溝勝君 いまのようなお答えで、大体まあ委員の方もおわかりだと思うのですけれども、大蔵省へ予算要求する場合に、やはり根拠ある数字を持ってでないと、向こうのほうだって予算否定をしますよ。ですから、これは厚生省の局長さん、十分やはりそういう点はきめこまかに、やはり資料というものを持たなければいかぬと思うのです。いろいろやるといってみても、抽象的では大蔵省だってなかなか出しにくいし、出さない。ですから、そういう点は至急実態調査を徹底されまして、これは基礎にして折衝するようにしていただきたい。そして、こういう資料はいつごろまでにできますか、総合的なものは心身障害者の。あす、きょうというわけじゃない。大体のめどをきめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/64
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065・中野正剛
○説明員(中野正剛君) 精神薄弱のほうの調査は、おおむねことし一ぱいで総体的な事項は判明するだろうと思います。詳細な点は来年になるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/65
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066・野溝勝
○野溝勝君 精神薄弱児だけでなくて、いま私が言いましたいろいろの心身障害者、その数はいつごろ大体できますか。もちろん関係しておる局が、精神薄弱児の調査だけやるわけじゃないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/66
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067・中野正剛
○説明員(中野正剛君) 昨年度調べました身体障害児竜の調査と、それから本年度行ないます精神薄弱児の調査と突き合わせまして、大体、身体障害児あるいは精神薄弱児の統計数字が出るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/67
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068・野溝勝
○野溝勝君 くどいようですが、特にそういう、要望があったということを強く言って、厚生大臣のほうにも、その調査を具体的に早く調べておくようにということの要請があったということを、あなたからお伝え願いたい。それから、ここでなくてよろしゅうございますから、大体いつごろまでにその資料ができるかということをひとつ私の手元へ報告してください。文部大臣、ひとつ私の言わんとする気持ちを厚生大臣にお伝え、連絡願いたいと思います。
次に、私がお伺いしたいのは、この問題に関しては、四年前に作家の水上勉さんが、拝啓総理大臣様というあれ以来、相当問題になったのですが、あれはしかし、重症児に対する点がおもに取り上げられたと思っております。しかし、その後、子を守る母の会とか、あるいは芸能人の伴淳さん、森繁久弥さん、それらの力もあゆみの会をつくりまして非常にこれに協力しております。その他、進歩的な事業家などもこうした一つの社会福祉事業に非常に協力しています。非常にこれはけっこうなことでございますが、しかし、当局が総合的一貫した施策を進めなければ、一般の民間人がどれほど理解し、また経済的に協力しても、これは解決する問題じゃないのです。特にその中でも、私は文部大臣にお伺いしたいのは、この施設と相まって特殊教育ですね、特殊教育の部面が非常にまだおくれています。あなたたちは努力されています、非常に努力されておりますけれども。全国的に見ても、たとえば特殊学級の普及など問題になりません。非常に特殊教育に熱心な、これは難聴関係ですが、岡山大学教授の高原滋夫さんの所見を見ても、特殊教育はまだ非常におくれていることがわかります。また、特殊教育に関して施設ができましても教育者がない、あるいはそういう優秀な人々がいないということになりますると、せっかくの特殊教育が生きてこないと思うのでございますが、特殊教育の研究、開発あるいは教員養成など、こういう点は大臣どういうようにお考えになっておるか、あるいは今後どういうふうにしようとするのか、そういう点をお聞きしたい。
なおついでに、あわせて申し上げておきますが、先般わが党の千葉千代世さん、私が台東区の西町小学校での難聴教育の研究発表会に参りました。その際、大臣も御出席いただきました。特殊教育に対する情熱を傾けられたあなたは、また、この「なんちょう」という親の会の雑誌にも述べられておりますが、私も意を強くしたのでございますが、こうした問題は一朝にしてなかなかできるものじゃない、教員の養成にしても。だから、こういう特殊教育の先生の養成、あるいは、何といいますか、手当等に対する待遇の問題、そういうような点をどういうふうに考えておるか、ひとつこの際お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/68
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069・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のように、教職員養成は非常に大事なことでございますので、今年も金沢大学その他に新しく設けまして、大体九つの国立大学で特殊教育、教職員養成課程を設けて、専門にこの特殊教育の初めから希望する教職員を正規に養成をしてまいる手はずでございます。なお、東京教育大学の教育学部の中に特殊教育についての大学院の課程を設けまして、ここではさらに高度の人たちの研究をさせる、こういうようにいたしたいと思っておりますが、なお、そういうことだけでは、これからの養成ですから急に間に合いませんので、現在、特殊教育に携わっていただいておる教職員を、現職教育を十分にいたしまして、つとめてこの特殊教育について知識を持ち、また理解と情熱を持ってこうした特殊の教育を担当してもらえるような教師を育成してまいりたいと、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/69
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070・野溝勝
○野溝勝君 大臣ね、そういう通り一ぺんのごあいさつでなくてね、まあお互いにしろうとじゃないのですから、そうでなくて、ひとつこれだけの予算を出して、これだけの教員養成なり何なり、まあ養成をやろうとしておるというように、具体的な考えを、私見でもようございます。別にこれを取り上げてどうというのじゃない、私見ですから、考えですから、だからそういう点を私はお聞きしたい。ただ、これから大いにやろうと思うというようなことでなくて、もう少し具体的に。さっきも、雇用促進法ですか、あの話がございましたが、私は、厚生大臣が時間がないのでしかたがなかったんですが、あれも通り一ぺんのごあいさつでございましたが、もっと私はきめこまかく聞きたい。最近、子を守る母の会、親の会ですか、あれに、北浦雅子さんの書いた文章、十九年間障害者の子供をかかえて苦労しておるその出版を見ました。ところが、どうも橋本官房長官は涙をのんで感激したんですな、書いた文章に。推薦人です。そこで、その官房長官は大蔵省のほうと大いに折衝をして予算を確保したらいいと思うのだ。ところが、予算として具体化はしない。あなたのほうの予算についてみても、ミルクの問題さえも四億も削っちゃう。これじゃ私はおかしいと思うんだ。だから、そういう点を私は案じておりますがゆえに、文部大臣としてもこうした点を非常に考えておるようだし、あなたはほんとうに特殊教育に対して非常に努力されておると見えるんだが、具体的に特殊教育に対する、特に教員養成に対してはどういうふうに考えているか、また私見でよろしゅうございますから、こういうふうにしようという考えをお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/70
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071・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 野溝さんから、具体的に教員養成には幾らの金をかけて、どういうふうにやるかという具体的なことを言えと、こういう御指摘でございますが、先ほど申し上げたように、国立九大学に特殊教育の教職員養成科というものを設けて、そうして特殊教育に対する十分の知識と関心の深い教職員を養成していこうということは、すでにきめられて推進しておるわけでありますが、この経費はやはり国立学校特別会計の中に入っておりまして、全大学の経営の一環でございますから、いま急に、特殊教育の教職員養成のために年額幾らの経費を投じて云々ということはちょっと困難でございますから、その点あしからず御了承いただきたいと思います。
それと、現職教育については、これは事務当局からお答えをさせてもよろしゅうございますが、いろいろな施策を講じまして、現職教育の強化、これについては極力努力をいたしておるところでございます。具体的な数字は私手持ちがございませんので、必要がございましたら事務当局からお答えをさせるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/71
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072・齋藤正
○政府委員(齋藤正君) 教員養成以外の現職の教職員の方々の資質向上をはかるということのためには、従来も各種のいろいろな講座等を実施してまいりましたが、四十一年度の予算で特に新たに加えましたのは、内地留学生の制度を開始したことでございます。これは国立大学あるいはその他国立の教育研究所等に対しまして、それぞれ各種の障害に応じた専門的な教育に関する研究を一年間やっていただこうという考え方で、各府県に対しまして現職の教員の方々から内地留学生を募集いたしまして、国立大年その他の研究機関に配属いたしまして一年間研究していただく、これが本年度新しく加わったことでございます。なお、数字でございますが、先ほど大臣お答え申しました国立大学教員養成学部の整備の関係が四千五百万でございます。それから教職員の研修関係が、これが八百五十万円程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/72
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073・野溝勝
○野溝勝君 なかなかこまかい問題について質問をしようとすれば幾らでも時間がかかります。私はあとわずかで私の質問を打ち切りますけれども、これは御答弁を願うというよりは、私はまあ私見を述べて一そう大臣の御健闘を願うのですけれども、あなたが僻地教育に非常な英断を用いた、まことに私はけっこうだと思います。よくやってくれたと思います。あれじゃまだわれわれの立場からいえばまだもの足りないけれども、いままでの大臣から見るとよくやった。それで、最近不審なことは、文部大臣をやった灘尾君、あの人が何と福祉協会の全国会長で陳情を持って来た。私はそう言ってやったんです。あの人は文部大臣をやっているときは何をやったか、自分が大臣やっておるときには、協会どころか、この陳情書の中にある予算などとらないで、今日、中村君が、君、努力しておる。君、そんなものによく全国会長になって陳情書出せるなと言って笑ったのでございますが、まあ前大臣よりはあんたはそれはよくやっておる。それは私はこの一つだけでも——まあたくさんは言わないけれども、この一つだけは確かに。それから難聴教育に至るまで特殊教育に力を入れておる。まあ僻地教育を筆頭といたしまして、あれはヒットだ。私はそういう点はすなおに、いい点はいい点、何の政府がやろうといいことはいい。だれがやろうといいと思う。しかし、まだまだもの足りないんですね。実際。そこで、私は最後にこれを申し上げたい。あんたはより一そう信念的にやってもらいたいと思う。先ほど申したとおり、憲法の二十五条の生存権の問題、それから二十六条の教育を受ける権利の問題、それから教育基本法の第三条の教育の機会均等の問題、第四条の義務教育の問題、第六条の学校教育に対する問題、学校教育法では第十二条の健康診断の問題、第二十二条では保護者のその心身障害者の子女の義務教育課程のことが規定されおる。それから第三十九条では、小中学校の特殊教育に就学させる義務、第七十四条には特殊教育に関する学校設立の義務、第九十三条には、二十二条、三十九条、七十四条の施行期日をきめる政令、それから児童憲章では、「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境のなかで育てられる。」、まことに児童教育に対するすべてのことが織り込まれておるわけです。だから、これだけ整っておるのでございますから、予算要求をする場合は、堂堂と私は主張できるんじゃないかと思うのです。だから、文部大臣におかれましては、一そう私は自信と一つの信念を持って、大いにこの上とも努力を願いたい、私はそれだけ申しまして、あとこまかいことはたくさんありますが、時間をあまりさくのもどうかと思いますので、この程度で私は打ち切りますが、主計官は、特に強く要望されたということをひとつ大蔵大臣にもお伝え願って、予備費を流用しろというようなことまで叫んだということをお伝え願いたい。このことを最後に所信をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/73
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074・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のような特殊教育は、これだけ日本の教育程度が形として教育水準が高くなっているのにかかわらず、特殊教育が非常に手おくれになっておりますことは御指摘のとおりです。私ども全く同感でございます。たとえば、中等度の難聴児が文部省の調査では大体六千人くらいいる計算になりますが、これらのうち学校に就学しておる者はその一部分でありますから、こういう立場にある人たちを、難聴関係だけを考えてみましても、全員どこかで教育を受けられる状況をつくらなければ、特に野溝先生は難聴児教育の後援会の会長を引き受けていただいて、非常にこの方面に御尽力をいただいております。これは難聴だけでなしに、ほかの特殊教育についても言えると思いますから、私ども、とにかく責任を果たす意味で最善を尽くしてまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/74
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075・秋山長造
○秋山長造君 齋藤局長見えておりますから、一まとめにして私御質問しますから、ひとつお答え願いたい。
養護学校ですね、養護学校の職員の中に、技能訓練士というのがありますね、全国で二千人くらいおるわけですが、ところが、これは身分上の根拠が何にもないのですね、免許法にも何にもないのです。だから、まず法律上のその位置づけというものをはっきりする必要があるんじゃないか。なかなか養護学校というような特殊な学校では、技能訓練というようなことは非常に重要なんですね。それがもう身分がはっきりしておらぬものですから、八%の調整費という名目で特別な手当が出ているわけですが、そういうものを同じようにやっておって、技能訓練士はもらえぬわけですね。それを今後どうされるおつもりかということが一つ。
それから第二点は、いまの調整費の八%ですか、八%と言うたら僻地手当ですね。僻地手当の一番低いところが八%ですね。もちろん僻地手当が十分だとは言いません。また、それとは性質が違いますから比べるのはおかしいと思うけれども、何かこういう特殊教育に携わっている人の心身両面の疲労度というものは大へんだと思うのですね。ですから、文部大臣がせっかくこうやって大きな国是として、特殊教育に画期的に力を入れるという方針を打ち立てられているこの機会に、八%という調査費というものをもう少し引き上げて、福岡県かどこかで単独でやっておるようですが、一二%とか、一四%とか、二五%とかというふうに奮発したらどうかということ、そういう御意思があるかどうか。それと並んで、養護学校とまでいかなくても、一般の学校の養護学級に行っている子供がある。その養護学級の教職員にはそういう調整費的な、特別手当的なものが何もついていないわけですね。八%同じようにつけたいということで予算要求をしたら、全額、大蔵省に削られたというお話ですが、一体これは今後どういうことにするおつもりなのかということ。
それから第三点は、養護学校の教材費ですが、この間、私は実はちょっと電話で文部省の担当課の人にお尋ねしたのですけれども、はっきりわからなかったのですが、同じ特殊教育であって、盲学校とか、ろう学校とかの教材費の単価と養護学校の教材費の単価というものと格段に違うのですね。たしか盲学校が一番多かったのですが、四千何百円ぐらいだったのです。それからろう学校が三千幾ら、養護学校は二千幾らだと、ちょっといま正確な数字を手元に持っておりませんけれども、何か非常に違いますよ。なぜそういうことになっているか、こういう面がちょっとぬかっている点があるのではないか、非常にこまかいようですけれども、やはりこういうところから積み上げていかぬと、ただ抽象的に特殊教育に力を入れると言いましても、実質が伴わない、その三点をちょっとひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/75
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076・齋藤正
○政府委員(齋藤正君) 第一点の訓練関係の免許資格の問題でございますが、この点につきましては、教職員養成を担当しておるところと、事務的に簡易な措置でそういう資格を与える方法がないかということを担当裸としては折衝している段階でございます。なお研究をさしていただきたいと思います。
それから第二の調整額の問題、特殊学校の教員、それから特殊学級の教員の調整額、この点も検討してまいりますが、実は昨年、ただいま御指摘ございましたように、特殊学級の関係者の問題につきましては相当程度の折衝を行なったのでございますが、その考え方の問題につきまして、若干、どういう方式をとるかという点の検討が本年度にゆだねられたような関係でございまして、実現いたしません。これは重大な課題であるということを私どもとしても承知いたしておりますので、なおよく検討いたしたいと思います。
それから教材費の積算基礎の問題でございますが、古ろう養護学校のそれぞれの積算基礎が、一々の教材についてどういう差があってそういうことになるのかという点について、私、現在承知しておりませんので、調べて適当な時期に御返事できるようにいたしたいと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/76
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077・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/77
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078・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) この際、再び国立劇場法案を議題とし、質疑を続行いたします。
質疑のあるお方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/78
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079・小林武
○小林武君 私は関連でございますから長くやれないのですが、文部大臣、先ほど衆議院の川崎君に対して質問をしたのですが、どうもこれは法律が「主として」ということばが第一条に入ったのと、第十九条の二項の、「節一条の目的の達成に支障のない限り、」というのを削った。こういうことによって、これは現代芸能が国立劇場を利用するとか何とかいうこと、こういうことにはならない、いわゆる一般の利用の幅が広くなっただけだと、これは趣旨としては説明をいろいろされたから、そう受け取れるか知らぬけれども、法律としてはそうならないと、ぼくははなはだ修正案がきたときにびっくりぎょうてんしたんですが、いかがなものなんですかね。これ、あなたのほうではどういう解釈をなさっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/79
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080・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 私はまあ考え方としましては、国立劇場は主として伝統芸能を中心とした公開、伝承者の養成、調査研究、保存、振興をはかっていく、しかし、あわせていろいろな運営上の企画を立てまして、伝統芸能にいたしましても連日やるということはとうてい不可能でございますし、また、伝統芸能の保存という点からいいましても、一年中やる必要はないことでございますから、適当な企画がおのずから運営上きまってくる。それ以外の期間は、努めて現代芸能に活用していきたいというように考えておるわけでございます。ただ、御指摘のような意味からいいますと、第一条がそういう解釈でいくとすれば、第十九条のほうの修正で削った分はあるいは削らないほうがいいのかという気もするんですが、しかし、衆議院では、まあ各党相談の上、「支障のない限り」、という部分をお削りになったわけでございますが、そうなった場合におきましても、私どもとしましては、いま申し上げた考え方で運営をしてまいる。ただ、その間、双方とも使用目的のない期間が年のうちに幾日か——中間が全部詰まってスケジュールを立てるということもありませんでしょうから、そういう場合に、ほかの何か催し等が国立劇場の趣旨に全然反しないようなことで利用の場合があれば、それは活用をさしても、かえってそのほうが全然あけておくよりは国立劇場の採算上もいいことだと思いますから、そういう程度に実は私どもとしては心得ておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/80
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081・小林武
○小林武君 文部大臣はその修正の趣旨をよく聞かれて、その趣旨のあるところを理解されての御発言、これは私はけっこうだと思うんです。ただ、法律でありますから、でき上がってしまっていった場合に、法律上のことからいうとどういうことになるか。私がどうも非常に気にかかるのは、第一条に「主として」と入れたために、もっぱら、もうとにかく伝統芸能をやるということではなくなっちゃう。非常に余裕ができたんだな、「主として」で。それが今度は第十九条にいきますというと、今度は第一条の目的のところを削ってしまいますと、その余裕のできたところがどこへいくかといったら、一般の利用ということになる。この一般の利用になるというと、現代芸能はそれは使わしてくれればけっこうだけれども、一般の側が広がったから現代芸能の使う側も広がるだろうというようなことに解釈されるのは、いささかこれはちょっと法律的には問題がある。法律的に誤りだとするならば、これは何らか手を打たなければ妙なことになるんじゃないかということになるんですが、これは村山さんにお伺いしたいんですが、そういう心配はありませんか。ぼくは法律のことはよくわからぬですけれどもね、ここのところでそういう心配が起こってこないか。現代芸能を文部大臣としては非常に重んじてやろうという考えがあるから「主として」が入ったのでたいへんよかったといって大喜びしているんですね、しろうとの人たちは。いわゆる現代芸能の人たちは。何か新聞に書いてあるのを見て、あれでたいへんよかったと言っておる。しかし、これは期待はずれになりはせぬか。これを解釈する人は、今度は大臣がおかわりになり、所管の責任者がかわれば、こんなことでなくなっちゃうんじゃないかと、こう思うんですがそういう心配がないかどうかですね。この点についてはぼくは法制局あたりの意見も聞きたいのですが、まず村山さんの御意見を聞きたい。そういう心配はないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/81
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082・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 文化財保護委員会としましては、この国立劇場法案の目的は、抽象的な概念としての国立劇場の目的一般を規定するのではなくて、今回設立しようとしている特殊法人の業務内容の指針としての目的を掲げると、こういう趣旨で、伝統芸能の保存、振興ということを主たる目的として原案のような表現にいたしたわけであります。ただ、伝統芸能以外のものを一切認めないというほど窮屈な趣旨は原案作成のときからなかったわけでありまして、十九条の業務のところで、二項の施設利用、それから第一項のほうの五号の付帯業務、ここら辺でまあ伝統芸能から若干はずれるものもこの特殊法人の業務の対象とし、施設の利用をはかろう、まあかように考えておったわけであります。で、そういう御説明をるる衆議院の段階で申し上げましたのですが、その時点におきまして、そういうことであれば目的ももう少しその幅を持たしたほうがよかろうと、幅を持たして、そこに入ってくるものは、要望のある現代芸能関係にできるだけ充てるように、こういう御趣旨に拝聴いたしまして、まあ修正案を了承した次第でございます。そういうことでありますから、私どもとして、衆議院の修正のおもな趣旨は、第一条の修正にあるのじゃないか。で、第十九条の二項の修正のほうは、大臣も申されましたように、何も直さなくてもという感じもいたした次第でありますけれども、まあ幅を持たしたのだから、十九条の業務の、特にその施設利用の段階ではあまり窮屈なことを言うなというような御感触で、「第一条の目的の達成に支障のない限り、」を削られたように拝聴いたしております。そういう趣旨でありますから、運営にあたりましても、原案でも考えておったわけでありますけれども、修正をいただきましたので、一そう幅を持たせて、各般の御要望にこたえたいと思っておりますけれども、目的に反するような措置は、十九条の二項が削られようとも、それはそこまで広げる趣旨ではございませんので、施設貸与の基準のほうは、依然としてこれは現代芸能の利用には供しますけれども、その限界点あたりにつきましては慎重に検討しながら運営してまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/82
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083・小林武
○小林武君 いまの説明で心配は多少なくなったような気もしますがね。ただ、そうすると、「主として」ということが入ったために、これは伝統芸能だけではなくて、これは現代芸能とも書いておらないから、まあ芸能一般というか、その他の芸能というようなものがこの中に入ったと理解してよろしいですか、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/83
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084・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) まあ特殊法人国立劇場としては、大体、演劇芸能の公開、保存、調査研究等でございますので、広がりましても、広がる範囲はやはり演劇芸能に関するものだと思います。で、演劇芸能の中で、伝統芸能のほうは比較的範囲が明確であります。そこで、私どもは明確なものをまずやろうと考えたわけであります。しかし、現代芸能に広げようということで修正がなされましたので、修正して広がるほうは、芸能のうちの現代芸能、これはその限界が明瞭でありませんので、事務的にはやや困難な点がございますが、国立劇場におきまして評議員その他の御意見を承りまして、国立劇場の設置目的にふさわしいようなものという限定で現代芸能関係を取り上げていきたい、かように考えておるわけであります。その終わりのほうは確かに御指摘のように明瞭でない点がありますが、今後研究しながら運営してまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/84
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085・小林武
○小林武君 主として伝統芸能ということになったために、ここに現代芸能というものを一応頭の中に置いて、「主として」としたということになると、「主として」を入れた——代芸能を入れたとすれば、それの「公開、伝承者の養成、調査研究等を行ない、」、というこれは、「保存及び振興を図り、もって文化の向上に寄与する」ということにかかりますか、現代芸能が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/85
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086・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 文理的にはかかると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/86
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087・小林武
○小林武君 かかるね。文理的にかかるというのじゃなくて、法律的にかかるかどうかということを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/87
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088・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 法律上かかると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/88
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089・小林武
○小林武君 そうすると、九ページの第十九条ですね、これを削ったということは、これはどうも何のために削ったかはっきりしない。これは人の修正したものを文句言うわけじゃないけれども、どうも第一条の目的を達成するのですからね。第一条の中には、現代芸能も、とにかく伝統芸能も入っているのです。それを何で「第一条の目的」を削ったものやらね。削ったことによってどういうことになるだろう。そうすると、一般の利用というやつが非常に今度は広くなっちゃって、目的に沿わぬではないかということになる。そこらはどうですか。あなたとしては、何だか先ほど削らぬでもよさそうなこと言っていた。削らぬでよさそうでなくして、削るべきでないようにぼくは思うのです、「第一条の目的」は。一般のところには支障のない限り貸すというのはあたりまえなんです、というふうに。法律ですからね。いろいろな解釈をされるのは文書ならいいけれども、法律なんだから、今度運用される人がかわったらいかようにも解釈することができるようになったら困るから、念のために申し上げている。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/89
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090・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 原案では、第一条の目的は論理的には非常に限定的でございました。そとで十九条二項で受ける場合にも、その論理的に狭く限定された目的というのはかなり明瞭なわけであります。ですから、「それに支障のない限り、」というのも、かなりまた限定的に出てまいります。修正によりまして第一条の目的そのものに幅を持たせられましたので、十九条二項で受ける場合にも、それに支障があるかどうかというような判断の上にも弾力性が出てきて、「目的の達成に支障のない限り、」というような限定を設けること自体があまり意味がないというような趣旨で修正せられた。私としてはかように解釈した次第でございますが、衆議院の段階で、修正理由につきましてはもう明瞭であるというようなことで、具体的な御説明がなかったので、あるいは当たっていないかもしれませんけれども、私としては以上申し上げたように解釈しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/90
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091・小林武
○小林武君 これは私は先ほど罰則等のことを考えて言ったんですけれども、これはちょっと第一条の目的——第一条の目的というのは非常に原案よりも幅広くなった。これは現代芸能ということは頭に置かれたと言うが、あとで解釈する人が、現代芸能以外のものを入れたところで、これは納得がいくことです。そうすると、第十九条というのは削ったことはたいへんなことだと思うのだが、しかしあれですね、これはたいへんなことですね。しかし、文部大臣の考えとしては、一般の利用をどこまでも幅広くやっていくような考えは毛頭ない、第一条の目的に沿うようにやっていく、こういうあれですが、私は法律的に疑義がある問題ですから、ひとつ運用の面で誤りのないように、それから、しかるべき機会には、これはやはりさらに修正して、第一条なんかも、こんなあいまいなものにして、主たるなんて言わなくて、そこまで行ったら現代芸能をはっきりさせて、第十九条を改めるような方向に御検討いただきたいと思う。
法制局に質問するということを申し上げましたけれども、大体いまのところでわかりましたから、けっこうであります。はなはだ申しわけありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/91
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092・鈴木力
○鈴木力君 いまの解釈の問題は大体いまで終わりましたから、そのあとの運用の問題で若干伺っておきたいと思います。
問題は、先ほど企画を自主的にやるという御答弁があったわけですが、この企画を自主的にやるという関係と、それから、たとえばこの問の参考人のときに、松竹の香取さんが、何ですか、営業上の暗躍になっては因る、競争関係を生じては困るということでだいぶ心配されておったんですが、そういう関係について何か具体的な将来の運用で配慮されていることがあるならば、その点をお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/92
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093・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 御承知のように、歌舞伎に限定して申し上げますと、現在、歌舞伎の俳優は三百人近くいるわけでございますが、大体三対一くらいの割合で、松竹関係、それから東宝関係ということになっております。国立劇場といたしましては、専属の俳優を持つことは将来の理想でありますが、さしあたりは松竹、東宝が支配している俳優と契約によって自主公演をやっていく、こういうことでございますので、これに対しましては、松竹、東宝とも協力をしてやっておりますし、現に四十一年度の公演計画につきましては、準備室において内々具体的な相談に入っておりますが、細部の点は別として、方針としては協力的な体制で進んでおります。そういう話し合いによる、何といいますか、自主公演ということで摩擦なくやれるものと考えております。松竹が心配するのは、現在の観客層を奪い合うようなことになっては、商業劇団であるところの松竹側は困るというようなお話であったと思いますが、この点につきましては、根本的には新しい観客層を開拓することによって、現在の観客層を固定なものと考えてこれを奪い合うという事態を、開拓する以外に根本的な打開策はないと考えております。そこで、国立劇場においては、新しい観客層の開拓、これも御説明申し上げましたが、従来、商業劇場がやっているような会社等の団体客の誘致というような方法ではなくて、学生とか、若い青年男女層とか、そういうところに教育普及というような方法を用いて、伝統芸能を理解させることによって新規観客層を開拓していく、既成の劇団と、言うならば共存共栄をはかっていこう、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/93
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094・鈴木力
○鈴木力君 いまの御答弁で、非常にりっぱな御答弁をちょうだいしたわけですが、私が心配するのは、先ほどの準備協議会の経過についてはちょっと申し上げたんですけれども、どうも文部省が協力関係にあると思っているのは、自分だけ思っているという気持ちがないかということを心配するわけです。たとえば、四十一年度の準備過程は、これはもう相当協力的に話し合いが進んでおるというふうに伺ったのですが、できたときのこけら落とし興行についての準備の段階で、どういう手続でどういうところと話しておって、そしてどういう準備が進んでいるのか、具体的にまずそれを伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/94
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095・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 具体的には、松竹の演劇担当重役は、先日、参考人として出られました香取さんであります。それから東宝の担当重役は菊田一夫さんでございます。国立劇場側におきましては準備室室長の寺中氏が折衝当事者になっております。必要に応じて私どもも同席したこともございます。まあ香取、菊田、寺中三者で話し合いをやっておるというのが具体的な方法であります。
なお、現在の俳優との専属形態から申しますと、東宝は法律的に専属契約を結んでおります。そこで、東宝との話し合いは、東宝と話し合いがつけば東宝が専属契約を結んでおる俳優については、自動的と申しますか、俳優と重ねて契約を結ばなくても国立劇場との契約に入れる、こういうかっこうになります。もっとも事実上俳優にあいさつは必要だと思いますけれども、法律的には俳優と重ねて契約するということは必要でないわけであります。それから松竹は、俗に松竹の専属俳優といっておりますけれども、法律上の専属契約というような明確なものは現段階まで完全に結ばれておらないようであります。もっとも最近、国立劇場ができるということで、一部その専属契約を結ぼうという動きがあるようでありますが、話もはかばかしくいっていないようであります。そこで、いわゆる松竹の専属俳優の場合には、法律的には松竹と話し合うだけではなくて、それぞれ出演俳優とも何か法律上の手続を国立劇場で踏む必要があると考えておりまして、松竹とその傘下俳優と両建てで話し合いをやっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/95
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096・鈴木力
○鈴木力君 ほんとうにそういっておれば私どもはあまり心配しないでいいと思うのです。いま香取さんのお話が出たのですが、実はこの間、香取さんが、こけら落とし興行の出しものについても、どこでどうきまったものだかよくわからなかったという話で実は不満の意を漏らされておるのですね。しかも、だれがどういう役をやるのかというようなことも、松竹の俳優の人たちに相談にこられてわかった。こういうことを繰り返されますと、松竹とすれば、一つの出しものに俳優を割り振る場合には、大体長い間の出しものの関係からいろいろと配慮しながら削り振りをしなければいけない。それを横から、準備室だかが協力関係にあるというごあいさつをされただけで、協力しますという返事をしたら、あとはそっちでどんどん進められて、そして従えと言われるようなことでは将来心配だ。ほんとうの話、これは雑談でされたのです。ここの場でされたのじゃないけれども、そういう話を伺った。そういうことを私はそちらから聞いたし、そうすると、文部省の局長からは、十分話がついている、こういうことになるわけです。話がついておればいいけれども、私が心配するのは、何べんも申し上げますが、準備協議会でも御了解を得たと思っておりましたと言っておる。しかし、相手が了解しないことが了解を得たと思ったことでどんどん仕事が進められて、あとでいろんな文句が出て困っておるわけですそういう形でいまのようなものがあるとすると、いろいろ心配しておる人たちがたくさんあるわけです。何か国立劇場という国の一つの機関だということで、別な新しい一つの権力といいますか、権威といいますか、そこに立って強引に進めていくのじゃないかという心配さえ実は持っておる人たちが相当あるような気がするのです。だから、そういうようないき方で自主計画といいますか、計画は自主的にやるというその計画の立て方等も、もう少し配慮された計画の立て方があるような気がするので、その辺の考え方をお聞きしたかったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/96
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097・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 香取さんの心境や言動は私どもにはよくわからぬわけでありますが、察するに、これは香取さんから伺った点もあるんですが、香取さんの心境としては、国立劇場ができるというのは、やや下火である歌舞伎振興の上で仲間ができて喜ばしいという気持ちと、これは商売がたきができて観客を奪い合うということになればたいへんだという気持ちとまじり合っているのじゃないかと思います。そういう心境からいろいろな言動をされるんじゃないかと思います。私どもと話し合う段階ではたいへん友好的でありまして、御指摘のようなおことばには接しなかったわけでありまして、実は出しものとか、配役とかは、これは一般の常識であれば、上演月の一年くらい前にはほぼきまっておるのが常識であります。国立劇場については相当おくれておるわけであります。そこで、法案もできませんものですから、事実上の話し合いをするといっても限度がありますので、段階的に申し上げますと、松竹との話し合いは、演目はつい最近までは申し入れなかったわけであります。ただ、その俳優を、十一月はこういう俳優を回してもらいたいという希望はもう昨年の段階から申し入れてありまして、その線はおおむね了解をされながら話し合いを継続しておった。特に松竹とは契約関係をどういう関係でやるかという問題がありますので、なかなか具体的な話し合いに最近まで入れなかったというわけでありまして、突然というようなことではないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/97
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098・鈴木力
○鈴木力君 大臣にもちょっと伺いたいんですけれども、その前にもう少し事務局長に伺いたいんですが、何か話がだんだん違ってくるような気がするんですね。それは確かに松竹側では協力をするという話し合いの中で、協力してくれという申し入れがあった、それから俳優を回してくれという話し合いがあって、回しましょうという返事もしておった。そうしたら、自分の持っている俳優から、おれはこういう番組のこういう役を仰せつかりますけれども、どうしましょうという相談にこられた。そうすると、今後の運営をしていく場合に、専属の俳優はしばらく持てないと何べんも言っておる、われわれも確かに専属の俳優を持って、専属の劇場でどうしろこうしろということは技術的にもできるはずじゃないからそうは申しません。そうすると、ある時期までは民間の、たとえば松竹さんなり東宝さんなり、そういうところで持っている俳優に頼んでやらなければいけないわけでしょう。そのときに、一回目に俳優を回してくれと頼めば、あとはこっちでいろいろと組みかえて俳優に直接交渉してもいいものか。それとも、持っている松竹なり東宝側なりにそういうことまでも頼みにいくのか、そういう相談をするのがいいのかどうか。いま聞いてみると、だいぶ前に俳優を回してもらうことを頼んであるから、それはそちらの了解を得てあるから、あとはこっちで進めた、どういうことでありますけれども、その辺の事実はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/98
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099・村山松雄
○政府委員(村山松雄君) 芝居の演目の決定というのは、これは興行上の常識としまして、決定するまではこれは秘密でございまして、これが筒抜けになっておったのでは企画ができないわけでございます。そこで、国立劇場側では、演目のことは現段階で実はまだ発表できないわけでありまして、伏せて、俳優の確保の話を松竹とやっておった。こういう劇場の内幕をこういう席で申し上げるのは、私たいへんちゅうちょするのでありますけれども、国会審議でありますからあえて申し上げますと、松竹側としては了承もし、はっきりした契約をいついつまでに結ぼうというような話し合いが何度かされておるわけです。ところが、その期日ごろになると、まだ話が詰まらないからもう少し延ばしてくれというようなことで何度か延び延びになってきた。それで俳優のほうにしても、十一月は国立劇場のためにあけてくれと言われただけで、自分は何に出るかわからないでは、これは不安でしようがない、内々でもいいから漏らしてくれという気持ちになるのは、これは自然であります。そこで、最近の段階では、十一月に国立劇場のために保留された俳優に対しまして、ある程度どういうことをやるんだということを内々で話し合いを始めておる段階だと、こういうことになっているわけであります。それに対しまして松竹が御不満だということは、これはもっと早く契約方式まで含めて話し合いが成立すれば、そういうことにならなかったわけでありますけれども、そこら辺で俳優の保留と出しものの決定、契約といったものが並行して順調に進まなかったので、多少前後したというのが真相でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/99
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100・鈴木力
○鈴木力君 この出しものを決定するについては、俳優の割り当てからずっときまるまでは秘密にしなければいけない、そのことはわかるような気がします。秘密というのは一体どういうことなんですか。たとえば、松竹なり東宝なりから俳優を借りてきて、そこでこけら落とし興行をやらなければいけないのに、その相手側にも秘密を保たなければいけないという意味なんですか、当事者同士も秘密にしているという意味なんですか。これは松竹が公演をする場合には、松竹のほうの担当君には全部相談をしているでしょう。回りに言わないだけの話でしょう。だから、それが当事者であるのに言わないで、われわれから言えば、別のところにいって話をしておって、契約したか、しないかは別だ、契約以前に協力をしてくれと言っているでしょう、そうして、あとは契約ができていないから俳優に内々相談をしましたとか、特にこれは秘密を要するから言いませんでしたなどということを、もし本気でおっしゃるなら、これはもう協力をしてくれということは、松竹や東宝には言えた義理じゃないと思う。そういう考え方で今後も運営をされるとすればたいへんなことなんです。これは大臣にちょっと伺いたい。これが、いま私が質問をして、事務局長から伺った経緯なんです。そういうたてまえで今後もいかれるとすれば、だいぶ問題があると思うので、まず運用のかまえといいますか、運用のしかたについてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/100
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101・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) いま鈴木さんの御指摘になっている点は、今後とも非常に徴妙なむずかしい点で、苦労を要すると思うのです。骨組みとしては、やはり松竹、東宝の関係の歌舞伎役者が、国立劇場で伝統歌舞伎を演ずる場合には演ずることになりますので、この松竹と東宝中心に話をして詰めていくことが必要であります。同時に、やっぱり役者というのは、特殊な社会的存在で、相当わがままもあると思う。個人の私的な考え方もあると思いますから、この個人個人ともある程度話を詰めていかなければならない。両様を並行してなめらかにいく努力をすることが今後の一番肝心な点だと私は実は考えております。もしこの間、松竹の人が鈴木さんに不満を漏らされておったとすれば、そういうような点に若干不十全な点があったと思いますから、今後、国立劇場の運営としましては、さような点を十分に注意していきたい。それから同時に、運営の中心になって相談をされます評議員の人たちに、松竹とか東宝の関係者にも入っていただいて、基本の相談から、その関係者にやっぱり地固めをしていただかないとうまくないのじゃないか。現在はそういうような国立劇場の機構そのものがまだスタートしておりませんから、準備委員会でありますので、そういう点が若干私は遺憾な点があったと思うのですが、この点は十分細心の注意を払っていきませんと、理解を失ったり、あるいはもめごとが起こったりする危険性がありますから、国立劇場の運営としてはそれが非常に大事な点だ、こう思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/101
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102・鈴木力
○鈴木力君 いまの問題は、大臣のそういう配慮をしてもらえればいいことですけれども、重ねて申し上げますが、いまの事務局長の答弁なんかも、何か少し役人的に過ぎるのじゃないかという気がするのですね。なぜ相談しなかったかと言うと、この種のものは秘密を要する——これは常識的に考えて、当事者を秘密の対象にするというような言い方をしてほんとうに通るという考え方であれば、これはぼくはたいへんな間違いだと思う。そういうことが、一方、他から見れば、そう悪意がなかったにしても、どうもお役人さんというものはという声がすぐ出てまいります。したがって、国立劇場というのは、歌舞伎を国家的に何か統制するのじゃないかというような、そんな話さえ出ている。その話がどこから出てくるかというと、私はいままでのような一方的に自分が思ったこと、それだけが正しいというような言い方が、ここでさえもやられるのですから、各所でやられているんじゃないかと思うのですが、そういうようなことが、そういうような疑惑を生んだり、そういう言い方を呼び起こしたりしているとたいへんなことだと思いますから、そういう運用については十分注意をしていただきたいと思うのです。あくまでもやはり芸術とか芸能とかいう問題は、やっぱり役所がつくるものじゃない。一つの政策として、それを援助して盛んにもり立ててはいきますけれども、やはりつくる主体はそういう大衆といいますか、そういう人たちの中から盛り上がってくるわけですから、そういう配慮をしてやっていただかないと、せっかくいいことをやった国立劇場があとでまた批判をされたり、うらまれたりするようなことになるような危険を感じますので特に申し上げたわけです。
そこで、同じような立場で若干お伺いをするのですけれども、この法案で出ております役員の任命について——時間がありませんので、急ぎますが、評議員会ですか、評議員の任命等についても、この構成とか、あるいは運営についての構想があったら、それを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/102
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103・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) まだ法案が審議段階でございますから、構想を持ち合わせておりませんが、考え方としましては、評議員には、法文にも書いてありますとおり、その道の経験者というような人たちを中心にお願いをいたしまして、ここで大体、「国立劇場の業務の運営に関する重要事項を審議」し、また相談、企画をしていただくということにいたしまして、理事長その他の役員は、ここの相談を経て、それを実施に移すという形の仕組みにいたしていきたい。評議員になっていただく人たちは、たとえば松竹とか、東宝関係はしかるべき人の推薦方を依頼してございますが、まだ具体化されておりませんので、そういう状況にございますことを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/103
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104・鈴木力
○鈴木力君 具体的なことは、まだそれこそ伺うわけにはまいりませんから、いまのお答えでわかりました。くれぐれもお願いしたいことは、いま大臣がおっしゃったように、経験者なり、関係者なり、専門家なり、そういうところがその企画といいますか、企画のアドバイスといいますか、そこが中心になるような運営をしていってもらいたいということが一つ。それから役員については、やはりいろいろとまだ勘ぐられるかもしれないんですから、特にこういう特殊な任務を持っている法人の役員を大臣が任命をなさる場合に、従来、ともすると世間で言われておったような、文部省の天下りとか、外郭団体とかいうような、そういう目で出発から見られるような役員構成であると、いままでいろいろなものの言い方があっただけに、せっかくのやろうとした試みも、不本意な結果からすべり出すということもあり得るわけですから、そういう点の配慮もお願いをしておきたいと思います。問題は、この国立劇場を設置しようとする御意図については、いろいろな問題点があったにせよ、その点、いままでの審議で大体大臣の御意思もはっきりせられました。表現の足りないという点についてはいろいろあったにしても、現代芸能等にまで広げていく方向もはっきりいたしました。そういう趣旨がほんとうに生きるように運用をぜひお願いしたいと思います。何べんも申し上げますけれども、官製歌舞伎をつくる場所になったり、あるいは運営面について役所の優位性というものが少しでも出るということになると、せっかくの国立劇場の趣旨に沿わないと思いますから、そういう点を強くお願いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/104
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105・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/105
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106・二木謙吾
○委員長(二木謙吾君) 御異議ないと認め、本件に対する質疑はこれにて打ち切ります。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115077X01919660607/106
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