1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月十四日(木曜日)
午前十一時三十分開会
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委員の異動
四月十三日
辞任 補欠選任
鈴木 万平君 上原 正吉君
館 哲二君 安井 謙君
四月十四日
辞任 補欠選任
上原 正吉君 楠 正俊君
安井 謙君 近藤英一郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 和泉 覚君
理 事
木島 義夫君
松野 孝一君
稲葉 誠一君
山田 徹一君
委 員
岡村文四郎君
楠 正俊君
後藤 義隆君
近藤英一郎君
中野 文門君
中山 福藏君
亀田 得治君
藤原 道子君
国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
政府委員
内閣官房長官 橋本登美三郎君
法務大臣官房司
法法制調査部長 塩野 宜慶君
法務省刑事局長 津田 實君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総長 岸 盛一君
最高裁判所事務
総局総務局長 寺田 治郎君
最高裁判所事務
総局人事局長 矢崎 憲正君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○最高裁判所裁判官退職手当特例法案(内閣提出、
衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(選挙違反事件に関する件)
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001・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、鈴木万平君及び館哲二君が委員を辞任され、その補欠として上原正吉君及び安井謙君が委員に選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/1
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002・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 最高裁判所裁判官退職手当特例法案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/2
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003・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この前お聞きした中で、最高裁判事の退職手当について特別な措置を予算要求したのは昭和三十六年からだという御説明だったわけですが、三十六年まではどうしていたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/3
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004・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 三十五年までは、最高裁判所の予算要求はいたしていないのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/4
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005・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、昭和三十五年までに、弁護士からなられた方で、やめられた方もあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/5
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006・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 三十五年当時に、弁護士からおなりになった方でおやめになった方は、ただいままでの手持ちの資料では、たしか三人おありになるのではないか、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/6
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007・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは、最高裁ができてからずっとですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/7
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008・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) さようでございます。もう少し具体的に申し上げますと、三人以上ございます。一々具体的に申し上げますと、塚崎裁判官、谷村裁判官、本村裁判官、それから小林裁判官、以上のお方が三十五年までにおやめになったお方ではないかと、ただいまの手持ちの資料ではそう考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/8
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009・稲葉誠一
○稲葉誠一君 三十六年から予算要求するようになった何か根拠にいいますか、特別な事情というか、そういうものはどこにあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/9
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010・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これは、特別の根拠というものではございませんけれども、おやめになった方の退職手当があまりに低過ぎる、非常にたいへんな犠牲を払って裁判官をおやりになっていただいたということになってしまう結果がこれらの裁判官の実例からあまりにもはっきりいたしましたので、そこで、何とか考えなければいけないではないかという意見が起きてまいりまして、そこで、三十六年からあらためて要求をするに至ったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/10
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011・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは、臨司とは関係がないわけですか。臨司は三十七年からですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/11
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012・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 仰せのとおり、臨司とは直接に関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/12
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013・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、そのときの考え方は、三十六年から予算要求したときは、それはやはり弁護士からなった方ということに限定して要求されたわけですか。それは何か法案みたいなものも当然つくられたわけですね。まあ草案みたいなものですか。それと、今度つくったものとは、どういうふうに違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/13
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014・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) その当時考えておりますのは、やはり、弁護士からおなりになりました方はもちろんでございますけれども、それ以外の裁判官も含めまして全体について予算要求をいたしておるのが実情でございます。その予算要求の趣旨に従ってやはり法案の──案とまではいきませんけれども、大体の考え方はつくっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/14
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015・稲葉誠一
○稲葉誠一君 弁護士からなった人の最高裁判事になった場合の退職金が非常に少なくてお気の毒だということならば、弁護士からなった者というものを限定して、弁護士を二十年以上やったとか、十年以上やったとか、いろいろ制限はあるかと思いますが、そういう形でそれに限定するということはできないのですか。そういうことを考えたことはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/15
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016・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) この点につきましては、塩野調査部長からあるいはお答えがあるかと存じますけれども、私どものほうといたしまして、事実問題として、弁護士からおなりになった方とそれから裁判官からおなりになったいわゆるキャリアからなられた方というものをさい然と識別するということが非常に困難であるという事実について一応申し上げてみたいと存じます。
たとえて申しますと、高木常七裁判官でございますが、高木常七裁判官は、最初約六年検事をやられまして、それから二十二年八カ月弁護士をおやりになりました。それから今度その後に十二年一カ月裁判官をおやりになりました。それからその後また三、四カ月、弁護士をおやりになりまして、それから最高裁判所に入っておいでになりました。この方は、もちろん弁護士出身の方というように考えられておるのが実情でございます。
それから次に小林俊三裁判官でございますが、小林俊三裁判官は、三十一年八カ月弁護士をおやりになりまして、それから直ちに裁判所にお入りになりまして三年十カ月裁判所においでになりました。で、最後は東京高等裁判所長官でございましたが、それからすぐ最高裁判所の判事におなりになっておいでになります。
それから三淵忠彦初代の長官でございますが、この方は、十九年七カ月裁判官をおやりになっておられまして、それからその後おやめになりまして二十二年一カ月ある会社の法律顧問とまで言うのは少しあるいは言い過ぎかもしれませんけれども、ある会社にお入りになりまして、そこで法律関係のお仕事をなさっておいでになりました。それからその後最高裁判所の長官におなりになっておいでになります。
それからただいまおられます五鬼上裁判官でございますが、五鬼上裁判官は、二十四年間弁護士をおやりになりまして、それから後直ちに法務省にお入りになりまして、それからまた裁判所にお入りになって、たしか大阪の高等裁判所長官からでなかったかと思いますけれども最高裁判所の裁判官におなりになっておいでになります。もちろん、五鬼上裁判官は、弁護士出身のお方というように扱われておるわけでございます。
このように、経歴が各人各人非常にまちまちでございまして、これらの方について、弁護士出身のお方だけをどういうように待遇するかということについても事実上いろいろ問題点もございますし、また、最高裁判所の裁判官の職責というものは、弁護士からおなりになった方、またどこからお入りになった方についても全く同様に非常に重要なものであるということは、これはもう稲葉委員御承知のとおりでございます。したがいまして、やはりそれら全員につきまして予算要求をいたしたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/16
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017・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの場合、たとえば弁護士を何年以上やっておった方、または最高裁判所判事になる最終の地位が弁護士であった者とか、そういうふうな形で限界を設けるということは、技術的には不可能なんですか。やろうと思えばできるわけではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/17
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018・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) あるいは、私のほうはもっぱらその担当ではございませんけれども、法技術的には不可能ではないのかもしれませんけれども、しかしながら、実際問題として弁護士からお入りになった裁判官であるというように思われる方がキャリアからなられたようになるというような、むしろ非常にいびつな実態が出てくるのではなかろうか。かりに技術的に可能といたしましても、実態に完全にマッチした法律を構成するという点はむしろ不可能に近いのではなかろうかというように思われるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/18
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019・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁なりあるいは法務省なりからまとめてお答え願いたいのですが、この立法の趣旨が、御説明を聞いていると、弁護士を長くやってそして最高裁判所の判事になった方が退職金が非常に少なくてお気の毒だ、こういう趣旨なのか、あるいは、そうじゃなくて、それをも含めるけれども、全体として最高裁判所判事の退職金が少ないという意味なのか、どっちなんですか。また、両方あるのだとすれば、どっちにウェートがあるのだとか、ここら辺はどういうように考えられたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/19
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020・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) この特例法案の趣旨がどこにあるかという御質問のように承りました。この特例法案の趣旨は、最初に提案理由説明にも申しましたとおり、最高裁判所の裁判官の地位の重要性ないしは特殊性、さらにはその任用の実情にかんがみましてこの特例を設けたものでございまして、端的に申しますと、趣旨は最高裁判所裁判官の退職手当について特例を設けるということでございますが、ただ、そのよって来たるゆえんの中には、任用の実情、すなわち、先ほどから御指摘のとおり、弁護士から任用される者が常に何名かずつあるという実情をも勘案いたしましてかような特例法を考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/20
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021・稲葉誠一
○稲葉誠一君 臨時司法制度調査会の意見は、それはどういうふうになっているのですか。「弁護士から裁判官(最高裁判所の裁判官を含む。)又は検察官となった者が退職した場合に支給する手当について何らかの優遇措置を講ずることを考慮すること。」、こういう形で、それはいまいう「弁護士から」という内容というか制限がなかなか技術的にむずかしいという議論はあったといたしましても、弁護士から裁判官になった、あるいは検察官になった者、それが退職した場合に支給する手当に優遇措置を講ずることと、こういうのが中心ではないですか。それとこの法案とは相当違ってきておるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/21
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022・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ただいま御指摘のとおりに、臨時司法制度調査会の御意見の中のこの問題についての項目は、御承知のとおり、「裁判官及び検察官の給与」に関するもののうち、「退職手当及び退職年金制度の改善」という項目を掲げまして、ただいま御指摘のとおり、「弁護士から裁判官又は検察官となった者が退職した場合に支給する手当について何らかの優遇措置を講ずることを考慮すること。」ということで、弁護士から裁判官、検察官におなりになった方についての優遇措置、これを提案いたしておるわけでございます。そこで、臨時司法制度調査会の意見として御提案になりましたこの趣旨は、弁護士からこういう裁判官等におなりになりました方について、いわゆるキャリアの裁判官やあるいは国立大学の教授などから裁判官等におなりになった方よりも弁護士出身の方だけを特に格差をつけて優遇しろ、こういう御趣旨では必ずしもないように理解されるわけでございまして、要するに、弁護士出身の方々は、従来公務員であられないために、現在の退職手当制度ではあまりに額が低過ぎる。これは、前回も申し上げましたとおり、五年間最高裁判所の判事をおつとめになりましても、その退職手当は百五十万円程度にしかすぎない。こういう現実の姿がございますので、これはあまりにひどいから、何らかの手当が必要であるというような趣旨で御提案になったように承知いたしているわけでございます。
そこで、それではそういう方々についてどういうふうな優遇措置が考えられるかということになるわけでございますが、これは当時臨時司法制度調査会でもその点についていろいろ御審議があったように承っております。御承知のとおり、現在の退職手当制度というものが、いわゆる勤続報償ないしは功績報償というものを中心として退職手当制度が組み上げられておるわけでございます。そこで、勤続期間が中心になりますと、これは公務員としての期間の長短によって一律にきめられるということになります。それから功績報償というようなことを考えましても、同じ最高裁判所の裁判官というお仕事を何年かおつとめになりますれば、それに対する退職手当というものはまた同じにならざるを得ないのでございます。そういうふうに、特別の職歴の方について退職手当で特別の退職手当を考えるということは、非常にむずかしいことなのでございます。これは、先ほども申しましたように、臨時司法制度調査会でもこういうような点が問題になったやに承っております。さらに、弁護士出身ということになりますと、先ほど最高裁判所のほうからも御説明がございましたように、どの範囲のものを弁護士出身というふうに見てくるかというような問題もあるわけでございます。
そこで、今回の特例法は、先ほど申し上げたとおり、最高裁判所裁判官の地位の重要性、特殊性ないしはさらにその任用の実情というものを勘案いたしまして特別な退職手当の支給率というものを定めようとするものでございまして、その結果、弁護士からお入りになった方につきましても、最高裁判所の裁判官としての在職期間につきまして特別の高い支給率を定めました結果、臨時司法制度調査会の御趣旨に沿ったように現在よりもはるかにその待遇を改善することができる、こういうことになるわけでございます。だから、最高裁判所の裁判官全体を取り上げておるわけでございますけれども、これを適用することによりまして、弁護士御出身の方にも相当な優遇措置を講ずるととができるわけであります。その面で臨時司法制度調査会のこれに関する御意見を実施することができると、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/22
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023・稲葉誠一
○稲葉誠一君 臨司の中で、いま言った「退職手当及び退職年金制度の改善」のところ、これは「意見書」の一三五ページにあるわけですが、そのずっとあとに行きまして、たとえば一四二ページに「退職後の処遇」ということがあるわけですが、いろいろありますが、「裁判官の退職後の処遇については、他の一般の国家公務員と同様に、国家公務員共済組合法に基づく長期給付としての退職年金等及び国家公務員等退職手当法による退職手当が支給されることとなる。前者は、保険数理に基づくものであり、後者は永年勤続に対する報償的性格が強いので、いずれも勤続年数が重要な要素となっている。現行の裁判官の任用制度の運用の実情を前提として見ると、キャリアの裁判官にとっては、特に問題とすべきものはないが、弁護士等から裁判官となった者の場合には、一般的に裁判官としての勤続年数が短いことが多く、その退職後の処遇について困難な問題を生じている。」と、ここに一つあって、それから結論的に一四五ページのところに、「裁判官の退職後の処遇は、裁判官の待遇を考える上において、重要な要素であるが、現在の退職年金の制度及び退職手当の制度は、すでに述べたとおり、キャリアの裁判官については、特に不備な点はないといいうるが、相当期間弁護士であった者が裁判官となり、退職した場合に、退職後の生活の保障に欠ける面もあるので、なお検討する必要がある。」と、こういうふうにまあなっているわけで、これは最高裁の裁判官の場合を特に指摘しているわけでもないし、特に除外しているわけでもないし、それを含めて言っているものだと、こう考えられますが、そういうふうになってくると、キャリアの裁判官にとっては、退職後の処遇、退職年金の制度や退職手当ての制度というのは、特に不備な点はないと言い得るのだと、こういうふうに臨司では言っておるのではないですか。だから、これは、ここにもありますように、相当期間弁護士であって、そして裁判官としての勤続年数が短いと、そういう場合に処遇の問題がポイントになるのだと、こういうふうになれば、相当期間弁護士であったということで一つのしぼり、それから裁判官としての勤続年数が短いということのしぼり、この二つのしぼりをかけて限定すれば、それは技術的な困難というものはなくなってくるのではないかと思うのですね。これはまあ立法の体裁としてはあまりいいことではないかもしれませんが、二つのしぼりをかければいいのであって、臨司ではキャリアの裁判官については退職手当の制度や何かは特に不備な点はないと言い得ると、こう言っているのではないですか。これは最高裁判所の皆さん方も委員として出ておられるのではないですかね。それから法務省は、これは検察庁関係ですか。私たちはそういう関係で臨司が絶対だと、こう言うのではありませんけれども、キャリアの裁判官については退職手当の制度については特に不備な点はない一と、こう言っているんですね。それを含めて立法の中に入れてくるというのは、どうもこの趣旨が拡大されて、悪いことばで言えば、技術的な不備だ不備だと言いながらそこに便乗しているというように考えられるんですが、特に退職手当の制度については不備な点はないと、こう言っているんですね。これはどういう意味なんでしょうか。これは、法務省とかあるいは最高裁は、いや、こういうふうに臨司では言っているけれども、これは間違いなんだと。間違いというのはちょっとあれだけれども、見解の相違なんだと、そういう御意見なんですか。ここら辺は何かちょっとひっかかるような気がするんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/23
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024・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ただいま、臨司の意見一書の当該部分を御指摘になりました。確かに、御指摘のように、臨司の「意見書」の中にはいろいろ記載してあるわけでございます。御指摘のとおり、「キャリアの裁判官については、特に不備な点はないといいうる」云々というふうな文言もあるわけでございます。これは、私どもといたしましては、弁護士から裁判官におなりになった方についての手当について特に現行制度では低過ぎるということで、それに対する関係でキャリアのほうはそれほど問題がないというふうに言っておられるにすぎないので、キャリアの裁判官につきましてはこのままでいいんだと、現行制度がいいんだというふうにまで御認定になっているのではないように了解するわけでございます。
臨司の一貫した考え方は、やはり、裁判官についての待遇、これは退職後の待遇をも含めまして、待遇について改善すべきだと。最初に打ち出しましたのは、独自の給与体系をつくるべきだというふうなことも提案しているわけでございます。裁判官の待遇改善というのは臨司の一貫した考え方になっておりますので、ここのところの文言だけでキャリアの裁判官については現行制度でいいんだというふうにまで言っているわけではないように了解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/24
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025・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁側はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/25
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026・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 最高裁のほうでも、ただいま塩野調査部長から言われましたように、やはり最高裁の裁判官として非常にまあ重要な仕事をやっておられて、しかも国民審査によって一律に国民の審査の対象になるというような、一律に非常に重要なポストにおられる方でございまして、したがいまして、臨司の「意見書」の一五四ページになるほど特に「弁護士から最高裁判所の裁判官となる者については、」というような文言も書かれておりますように、いずれにしましてもいまの退職手当で最高裁判所の裁判官が十分であるというようには考えられないのではないかと、こういうように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/26
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027・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、臨司の中で、最高裁判所の裁判官の退職手当を非常に大幅に上げなければならないと、こういうように書いてあるのはどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/27
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028・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) 臨司の「意見書」の中で、具体的に最高裁判所の裁判官についてだけ特に上げるべきだというふうに具体的に指示している点はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/28
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029・稲葉誠一
○稲葉誠一君 全体としての給与体系といいますかね、そういう点については、どういう点、どういう点が指摘されておるわけですか。そうして、それに対して、これは最高裁なんですか、法務省なんですか、具体的にどういうプログラムでこれは改善していきたいと。これはもちろん相手があることですから、自分のほうだけ思っても、そういかないかと思いますけれども、いずれにしましても、そういうふうな具体的なプログラムというか、そういうふうなものは、どういうふうになっているわけですか。ひとまずここは、最高裁の、あれでしょう、退職手当だけここでやりたいというわけでしょう。その後、具体的に何をどうやってやるのか、こういうふうな計画はどうやってやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/29
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030・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) 裁判官及び検察官の待遇の問題でございますが、臨司の「意見書」の要目の中に、「裁判官及び検察官の給与」という項目がございます。この中で最初に言っておりますのは、「これらの者の職務と責任の特殊性等にかんがみ、これにふさわしい独自の体系を樹立すべきである。」ということを提案しているわけでございますが、臨司におきましても、この「独自の給与体系」がいかなるものであるかということは非常に策定することのむずかしい問題でございますが、これを考えていく必要のあることはもちろんであるけれども、当面の措置として次のような諸項目を実施すべきだと、こういう具体的な提案をされているわけでございます。その具体的な提案の中には、たとえば、判事補、検事の初任給の増額とか、あるいは、経験豊富な判事の処遇を適正にするために、号俸を現在に上積みしていくべきだというような意見、さらに、号俸の刻みの簡素化とか、あるいは、特別調整額、いわゆる管理職手当でございますが、これを本俸に繰り入れるべきである、あるいは、簡易裁判所の判事あるいは副検事について特段の号俸をつくるべきだというような提案をいたしておるわけでございまして、この具体的な提案のうちの大部分は、たしか前の通常国会だったと存じますが、御審議をいただいて法律が制定されているわけでございます。
それに続きまして、「退職手当及び退職年金制度の改善」という提案をいたしているわけでございます。それは、先ほどから御指摘のございますように、弁護士から裁判官、検察官になった者についての退職手当、退職年金制度の検討ということを提案しておるわけでございます。その一環として今回の特例法がこれに当たるというふうに考えておるわけでございます。さらに、年金制度の問題がございますので、これも臨司の御審議の中でいろいろ御論議があったやに承っておりますけれども、非常にむずかしい問題がございますので、今後引き続いて検討を重ねてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/30
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031・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、「当面の措置としては、3以下の改善を行なうこと。」は、3以下であるわけですか。3、4、5、6、7ですか。それと別に退職手当と退職年金のものがありますが、これらは、あれですか、前の通常国会で出たんだ、それで大体もう改善されたんだ、こういうふうにお考えなわけですか、あるいは、そうじゃないんだと、まだその点についてはもっと改善すべきなんだと、こういうふうに考えておるわけですか。ぼくはここに書いてあることが全部そのままいいという意見ではないが、これは議論があるんだと私も思いますが、それは別として、これはどういうふうに考えられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/31
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032・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ただいま申し上げました臨司が打ち出しております具体的な改善策、これは、いま申しましたとおり、このうちの大部分はすでに実施に移すことができたというふうに考えております。ただ、先ほど申しました項目の中で3の(二)「経験豊富な判事及び検事の処遇を適正にするため、現在の判事及び検事の特号の報酬又は俸給の額をこえる額の新たな報酬又は俸給の号を設ける。」と、この点は、実現すべく努力をいたしているわけでございますが、現在まで実現に至っておりません。これは、御承知のとおり、一般の裁判官、検察官の号俸の一番上に認証官の号俸がきまっているわけでございます。その認証官の号俸が、従来からの沿革で一般の公務員の特別職のほうの号俸と並んで定められてきたような沿革がございますので、それとの間にこういうふうに指摘されているような特別の号俸をはさんでいくということが技術的に困難でございましたので、この点は現在まで実施されておりません。将来、これが技術的に可能になる時期が参りましたらば、この点についてもできるだけ早い機会に実施いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/32
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033・稲葉誠一
○稲葉誠一君 「これにふさわしい独自の体系を樹立すべきである。」と、こう言われているのですが、これは、臨司としては、「意見書」だから、ただこれにふさわしい独自の体系を樹立しろと言うだけであって、具体的に何をどうしろということについては触れていないんだと思いますが、これは具体的には今後はどういうふうにするわけですか。同時に、「ふさわしい独自の体系」というのは、どういうふうにするのか、どういうところにポイントを置いて考えていくのか。抽象的でなくて、ある程度具体的な形でのものまで進んでいるのですか。どこが主体となってどういうふうにしてやっていくわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/33
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034・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) 「ふさわしい独自の体系を樹立すべきである。」というふうに提案されているのでございますが、独自の給与体系と申しますと、現在の裁判官の給与体系自体が一般の公務員の給与体系から見ますと独自のものになっているわけでございます。さらにこれを裁判官の職責にふさわしい独自の給与体系というふうにすべきだというのが御提案の趣旨でございます。そこで、そもそも裁判官にふさわしい独自の給与体系というのがいかなるものであるべきかということは非常にむずかしい問題でございまして、私ども臨司の意見以来研究をしているわけでございますが、現在のところ何を基準にして独自の体系を固めていくかというところまでまだ到達していないというのが実情でございます。これは、一つには、臨司でいろいろ御審議のありましたいわゆる法曹一元の制度ともからみ合う問題ではなかろうかということで、現行のような制度のままでふさわしい独自の給与体系というものがどういうふうに組み上げ得るのかということにいろいろ問題があると思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/34
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035・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ここには、たいへん失礼ですけれども、臨司の委員をやっておられた方もだいぶいらっしゃるわけですけれども、ただこういうふうにふさわしい独自の体系を樹立しろと言って言いっぱなしで、あとおまえたちやれというのでは、何かぼくはよくわからぬのですがね。それは別の問題として、いろいろ問題点があるとは思いますが。
これは、やっぱり、法務省が中心になってやるわけですか。臨司としてはこれにふさわしい独自の体系を樹立しろと言っているのだけれども、一体どういう具体的な考え方でどういうものを樹立しろと言っているのか、臨司なら臨司に確かめるという方法もあるわけですか。確かめたって、もう解散しちゃったのですから、確かめようもないから、全体の趣旨から見てやっていくのだ、こういうことになるのですか、あるいは、我妻先生が法務省の特別顧問をやっているから、我妻先生あたりの意見を中心として将来こういうようなものをつくっていくと、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/35
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036・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ただいま御指摘のとおり、臨時司法制度調査会は解散しておりますので、現在はこの調査会というものはないわけでございます。そこで、臨時司法制度調査会の御趣旨というものはこの「意見書」によって推測するというほかはないのでございまして、御指摘のとおり我妻先生が法務省の顧問をしておられますけれども、これは我妻先生の御意見というものを伺うことはできますけれども、それが臨司の意見であるというふうに考えることはできないだろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/36
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037・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの臨司の関係に関連しては亀田さんがあとに質問されることになると思いますから、この程度にしておきますが、ここにあります一般職員から最高裁の裁判官となったときに一たん退職したものとみなして退職手当を支給すると、こういうのですが、「一般職員」というのはどういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/37
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038・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ここに言う「一般職員」と申しますのは、退職手当法の適用を受ける職員と、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/38
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039・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、高裁長官なら高裁長官をやっていて、そうして一たん全部退職するのですか。どういうわけなんですか。退職しなくちゃいけないのですか。引き続いて最高裁の判事になれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/39
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040・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) その点は、実際の面では引き続いて御在職になっているわけでございまして、この退職手当を計算します上において退職手当に関して退職とみなす、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/40
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041・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、高裁長官なりあるいは高裁判事から最高裁の判事になる場合に、一たん辞表を出して発令してあらためて最高裁の判事に任命するというか、そういうことはやらぬわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/41
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042・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) さようなことはやらぬわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/42
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043・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうして、この場合に、いわゆるみなし規定で退職したものとして退職手当を支給するというのは、これはもうずっと前からというか、最高裁判所ができたときからこういう行き方をとっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/43
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044・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) ちょっと御質問の御趣旨がよくわかりませんでしたけれども、従来は、下級裁判所から上がって最高裁判所の裁判官になっておやめになるという場合には、ずっと引き続いて期間を計算すると、こういうことになっていたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/44
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045・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、私の言うのは、いままで、高裁の長官なりあるいは高裁の判事から最高裁の判事になった人は、あれですか、一たん高裁の長官のときに退職手当はもらわないで、通算をしてもらっていたのだと、今度は、この特例法ができるので初めてこういうふうな行き方になったと、こういうことになるわけですか。ちょっと私もはっきりしないものですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/45
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046・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) お尋ねは、すでに退職した方についての計算のしかたでございますれば、従来、たとえば高裁の長官から最高裁判所の裁判官になって御退官になったという場合には、全部の在職期間を通算して退職手当を支給する、こういうことでございます。その点が、今回の特例法施行後になりますと、高裁長官から最高裁の裁判官におなりになる場合に、その前日に退職したものとみなして退職手当を計算して、その段階でまず下級裁判所の裁判官としての退職手当を清算してしまう、そうして最高裁判所の在職期間だけ別にこの特例法による高い率によって計算する、こういうことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/46
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047・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この法律が通った場合に、下級審というか、高裁ですね、長官とは限りませんでしょうけれども、その人が最高裁に行った旧来の場合の退職金と、一たん退職した形になって清算する、それからまた最高裁の判事の退職金という形がもらうと、今度の場合は二度もらうわけですね。しかも、額が非常に上がってもらうわけですね。前の場合は一回だったわけですけれども、その計算上差額はどの程度になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/47
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048・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) これは、それぞれの方の勤務年限等によって違うわけでございますけれども、一般的には今回の特例法のほうが合計額が高くなると思いますけれども、高くならない場合もあるのでございます。それは、退職手当の計算の方法が、御承知のとおり、最後の俸給──裁判官では報酬でございますが、報酬の月額を基礎にして従来の勤続年数を一定の比率に従ってかけ合わせてそうして退職手当の金額を計算する、こういうことになっております。そこで、たとえば従来の俸給が非常に低い俸給で長い間公務員として御在職になった、それで最高裁にお入りになって、最高裁の裁判官の報酬月額が三十万円でございますから、三十万円というふうに報酬月額がぽんと高くなっている場合には、そこで従来の勤続年数がそれにかけ合わされてくるということで急に退職手当の額が高くなる、こういう計算になる、こういう計算になるのが従来の計算でございます。
ところが、今回は、先ほど問題になりましたように、最高裁にお入りになる前段階で切る、こういうことでございますから、最高裁にお入りになる前の全職歴は別途計算いたしますために、基礎の給与額が低い給与額を基礎にいたしまして、たとえば下級裁判所の裁判官でございますれば、その給与額を基礎にして従来の勤続年数をかけていく、こういうことになるわけでございます。それにプラスして最高裁判所の裁判官としての高い支給率の金額がプラスされる、こういうことになるわけでございますが、そこで、高い支給率になりましてからの勤続の期間がある程度長くなりますれば、それだけ高くなるわけでございますが、たとえば一年くらいでおやめになってしまうというようなことがかりに起こりますと、従来のほうが高いという場合があり得ることになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/48
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049・稲葉誠一
○稲葉誠一君 しかし、大体、高裁の長官クラスから最高裁の判事になるわけですからね。高裁の普通の判事がなるというのはなかなかないわけですから、部長の名前でなる場合もあるかもわかりませんけれども、東京高裁の長官なり大阪高裁の長官の給与とそれから最高裁の判事の給与とはどういうふうに違うのですか。
それから最高裁判事の在職一年ということは、これは亡くなった場合は別として、普通の場合にはあり得ないことでしょう、七十までですからね。高裁の長官は六十五ですか。普通の判事は六十三でしょう。だから、大体五、六年以上の方がまあなるのが普通でしょう。とこにあげてある資料だと、在職一年と在職七年とがありますけれども、どういうふうに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/49
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050・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 便宜私のほうから数額の計算等について申し上げることにいたしますと、たとえて申し上げますと、田中二郎裁判官でございますが、田中二郎裁判官は、四十五年末まで従来の計算方法にるよほうが退職手当としてお受けになる金額は高いわけでございます。要するに、従来の計算方法によるほうが新しい計算方法によるよりも約五年間有利である、こういうことになるわけでございます。それから岩田裁判官でございますけれども、岩田裁判官も、約二年間は従来の計算によるほうが有利である。また、下村裁判官につきましても、やはり同様にしばらくは従来の計算方法によるほうが有利であるというような計算の結果が出ておるわけでございまして、必ずしも今度の法律の計算方法によるほうが全体について圧倒的に有利だというわけでもないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/50
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051・稲葉誠一
○稲葉誠一君 今度の特例で百分の六百五十になるわけでしょう。前の場合、現行法でずっといけば、百分の六百五十というあれはないわけですから、これが加わってくるのだから、在職一年か二年の場合に従来のほうが有利だということはちょっと理解できないのですがね。田中二郎さんの場合は、これは大学の教授から入られた方ですから、ちょっと例が違うわけですね。岩田さんは高裁から行かれた方だから、この方の場合はこの例からいってみて比較するのに一番いい例だと、まあ下村さんもそうだと思いますが、どうもちょっとここにある資料を見ても、何かどこかにごまかしというか、からくりがあるようですね。そこまで検討するのもまああれだと思いますけれども、何かこれはおかしいな。よっぽど考えてつくっていますね、これは。どうもちょっと理解できないな。
あなたのほうとしては、高裁の判事から最高裁判所の判事になられた方がこの法案によって有利に非常になる、いわば便乗しておるのだと、こういうふうに言われるのが非常に困るものですから、そうじゃないのだそうじゃないのだという資料を盛んにつくってこちらに出しているのだと思うんですね。そこで、まあいろいろなかなか細かい技術的な計算をしているのだと思うのですけれども、最高裁在職一年なんということはあり得ないんじゃないですか。これは、定年退職を前提とすれば、あれじゃないですか、六十五から行くのが普通なんだから、最低五年間でしょう。それから下村さんでも岩田さんでも六十二、三で行っておられるのだから、七年ぐらい普通はあるのではないですか。平均を一年間にとるというのはおかしいんで、平均を五、六年にとって最高裁判事在職を計算するのが普通なんじゃないですか。ここで見ると、「最高裁判所の裁判官の平均在職期間は、約七年ないし八年である。」と、こういうふうになっておりますね。七年ないし八年という計算でいくと、どうなんですか、その場合でも、キャリアから行った人は、現行法の場合と特例法の場合とで、なおかつ現行法のほうが有利なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/51
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052・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) ただいま御指摘のとおり、その程度の年限になりますと、確かに新法のほうが有利でございます。ただ、しかし、一年や二年でやめた方がないかと申しますと、これはやはりそうではないので、たとえて申し上げますと、庄野裁判官でございますが、これは設置当時は第三小法廷の裁判官でお入りになったわけでございますけれども、昭和二十二年の八月にお入りになりまして、昭和二十三年の六月におやめになっておいでになります。この方はお亡くなりになりましたのですけれども、必ずしもそういう実例が皆無であるというわけではございません。しかしながら、ただいま御指摘のとおり、七年ぐらいになりますと、まさしく新法を適用したほうが有利であるということになることは間違いないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/52
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053・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁判事在職七年ないし八年としますと、これは大ざっぱですけれども、この表によっても、約一千万円現行法より今度の特例法のほうが有利になるのじゃないですか。税金もかかるからそうもいかないし、どっちに有利とかなんとかあまり変なことは言いたくありませんけれども、約一千万円くらい違うのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/53
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054・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 実は詳しい数字を出してはおりませんけれども、一千万円も有利にはならないのではないかというように考えております。たとえば……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/54
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055・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法務省の資料に書いてある。一千万円くらいになりますよ。現行法によりますと千八百五十二万八千円の人が、今度の新法によりますと二千九百四十一万千二百四十円になるから、一千万円増加するんじゃないですか。そういう資料が法務省から出ていますよ。──まあいいです。いいですけれども、大体そうじゃないですか、法務省の資料によると、平均的に言うと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/55
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056・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) 資料に記載してあるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/56
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057・矢崎憲正
○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) そのとおりでございます。ただ、私が申し上げましたのは、手取り金額の表を見ておりましたのでちょっと間違えまして、税金を控除しない金額といたしましては、まさしくこのとおりの約一千万円ということに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/57
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058・稲葉誠一
○稲葉誠一君 一千万円ぐらいのことであまり変なことを言うのもあれですから、なにしますけれども、だから、何かこう趣旨はわかりますけれども、技術的に困難だ困難だと言っていてしぼりをかけないで、この際あまりつつかれないで目をつぶっていてもらえば結局上がっちゃうのだからということで、なかなかうまいことを考えたものだと、こういうふうに考えられるんですがね。
まあそれは別といたしまして、別のことをお聞きしますけれども、疑問に思いますのは、失礼な話だけれども、最高裁の裁判官というのは現実にどういうことをやっておられるのだろうかということを疑問に思うのです。決して変な意味ではなくて、あれだけの厚い記録をとにかく読まれるわけはないと思いますし、現実にどういうことをやっておられるのだろうかということをこれからお聞きするわけですけれども、法廷は幾つに分かれるわけですか。三つですか。民、刑に分かれないで、第一、第二、第三小法廷という形に全部の裁判官が分かれていくわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/58
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059・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 全員で構成しておられるのが大法廷でございまして、分かれてやっておられますのは、御指摘のとおり、三つの小法廷でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/59
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060・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、一人の裁判官の方は、第一小法廷なら第一小法廷に必ず入っておられるのですか。そこはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/60
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061・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、当初任命になられましたときに小法廷の部属がきまりまして、これは一応形式的には毎年配属が変わるわけでありますが、実質上は毎年同じ小法廷にお入りになるという取り扱いになっておりますので、一度お入りになりました法廷へ引き続きお入りになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/61
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062・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、第一小法廷の裁判長というのは、どういうふうにきまるわけですか。固定はしていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/62
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063・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 第一小法廷は、長官がお入りになっているというたてまえになっておりますので、長官がお入りになっておりますときは、長官が裁判長であります。しかしながら、長官が差しつかえでお入りになりませんならばきまっておりませんし、第二、第三小法廷では裁判長はきまっていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/63
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064・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、全部で十五人ですか。ですから、一つの小法廷に五人あて、何といいますか、配属と言うと語弊がありますが、配属されるわけですか。裁判長というのはどういうふうにきめるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/64
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065・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 一つの小法廷に五人ずつお入りになっているわけですが、裁判長のきめ方ということは、別に法律でも規則でも特段の規定はございませんので、実際の運用になっておるわけでございます。そうして、小法廷によりましては、事件ごとにおきめになっている小法廷もございますし、慣習的に特定の者が原則として裁判長におなりになっているという扱いの小法廷もあるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/65
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066・稲葉誠一
○稲葉誠一君 たいへん失礼な話ですけれども、ずっと民事なら民事をやっておられた裁判官もおられるし、刑事をやっておられた裁判官もおられる。そういったとき、刑事の上告事件で非常にむずかしいというか大きな事件があった、こういうような場合でも、その小法廷に係属すると、小法廷の係属は受付順番ですか──それはあとでいいですけれども、その場合に、重要な刑事事件であっても、民事なら民事の専門家の方が裁判長をやられるのですか。あるいは、民事事件で非常に重要な問題、行政的な関係の事件の場合、従来刑事ばかりやっておられた方が裁判長をやられる、こういうようなこともあり得るわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/66
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067・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 抽象的にはあり得ると存じます。実際にどういうふうにそれぞれ裁判長をおきめになっておるかということ自体が、合議でおきめになっておるわけでございまして、私ども具体的な扱いの詳細まで事務当局はあずかり知らないわけでございますが、ちょっと一言つけ加えさしていただきますと、裁判長というものの役割りというものが、下級裁判所の場合は、これは事実審理とかその他相当ございまして、訴訟指揮というものにかかりますウエートが非常に大きいために、裁判長の重要性というものが単に三分の一以上の力を持っている。結論そのものは三人で合議するのですが、訴訟指揮というもののウエートが非常に強いと考えておるわけでございますが、最高裁判所は法律審でございますので、事実審理とかその他のことは原則としてございませんし、したがって、裁判長の持つウエートというものはおそらく下級裁判所の場合に比べて少ないのではないかと、かように私どもとしては考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/67
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068・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そのウエートの話は別として、裁判長のほかに、その事件の主任裁判官というものはきまるのですか、小法廷で。どういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/68
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069・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いまのお話の主任裁判官ということも事実上のものでございまして、これも原則としてお一人が主任裁判官になっておられる例が多いように聞いておりますが、事件によっては二人おられる場合もあります。事実上のもので、法制上のものではございませんで、どういうふうにきまるかとか、それと裁判長の関係はどうかということも、私どもの立場として正確には申し上げられないのですが、小法廷によりましては主任的な地位にあられる方が裁判長になられる慣例のようでございますし、また、小法廷によりましては必ずしもそうでないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/69
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070・稲葉誠一
○稲葉誠一君 だから、たとえば青梅事件があったわけですが、青梅事件で私も弁護人になったわけですけれども、たいへん失礼な話ですけれども、最初裁判長になられた方は、商法の大家なわけですね。お名前は申し上げませんが、商法の大家で、法学博士で、会社法の著述なんかあるなかなかりっぱな方ですけれども、その方が青梅事件の主任裁判官で裁判長なんですね。ぼくら、あれですね、どうもいままでずっと民事関係、ことに商法関係ばかりやっておられた方がああいう刑事事件の裁判長をやられて、これはあとで岩田さんにかわられましたからあれですけれどもね。それからいま朝日訴訟をやっておるわけですが、私も代理人になっているわけで、申し上げるのは恐縮ですけれども、民事なり何なりにあまり従来ずっと御関係なかった方が裁判長であり、主任のようなんですね。これは民事だって刑事だってやればやれることですからあれですけれども、従来ずっと刑事畑を歩んで来られた方が朝日裁判のあのむずかしい事件の裁判長だということになってきますと、どうも何か──最高裁の裁判官は万能だから、何でもおやりになれるのでしょうが、どうも少しという感じを受けるわけです。
そこで調査官制度というものが生きてくる、と言うと語弊があるのですけれども、非常に大きなウエートを占めてくるのじゃないか、こう思うわけです。で、調査官というのは、何人くらいおられるわけですか。それで、どういうふうに分かれて、何をやっておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/70
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071・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 調査官の人数は必ずしも一定いたしておりませんし、たまたま現在裁判官の異動シーズンでもございますので、ただいまのところ正確な数字を申し上げかねるわけでございますが、大体三十名足らずいるわけでございます。そういたしまして、その分かれ方でございますが、大きな分かれ方としては、民事、刑事に分かれておるわけでございます。なお、民事の中で行政関係はやや特殊でございますので、その民事の調査官の中で行政を専門に調査するという調査官がいるわけでございます。
大体そういうような区分けになっておりまして、そうして、これは、要するに、最高裁の裁判官に対して資料を提供する、つまり、裁判官が判断をされるについて必要なあらゆる資料を提供するということでございます。その資料と申しますのは、もう少し具体的に申し上げますと、たとえば従来の判例でございます。これはしばしば上告理由の中に判例が指摘されておるわけでございますが、その判例も必ずしも判例集に載っておりますものばかりでもございません。で、どこにあった判例かということをさがし出すだけでも容易ならざる仕事の場合があるわけでございます。そういう判例を鎮めまして、そうしてまた関連する判例等を集めまして、それを必要部分を印刷して提供する。なお、学説の関連するものも網羅的に集める。こういうようなことが一番おもな仕事でございます。さらに、必要がございますれば、外国の立法例、あるいは外国の注釈書の内容というようなものも翻訳して提供するというようなこともしばしばいたしておるわけでございます。大体かようなことが中心になろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/71
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072・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その資料というのの具体的な内容なんですが、刑事のほうの調査官は、合議のある日の一週間くらい前に調査報告書を完成して裁判官に提出しておかなければならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/72
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073・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 実際にはさようなやり方のように伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/73
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074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その合議にはまさか加わるんではないんでしょう。もちろん加われないでしょうけれども、陪席しているのですか、聞いているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/74
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075・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) むろん、合議そのものには加わりませんし、合議の席にも原則として入っていないようでございます。ただ、いろいろ集めました資料について疑義がございますような場合に、その説明のために参ることがあると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/75
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076・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その調査報告書というのに、どうもよくわかりませんが、これは内部の秘密のことでしょうから、よくわからないのがほんとうかもわかりませんけれども、何か記録の中の重要な部分の書き抜きをやって出すのですか。あれだけの大きな記録を御老体の裁判官が読むわけないと言ったらあれですけれども、なかなか読めないから、何か要点を書き抜いたものを出すのだという説がありますね。はげしいのになってくると、これは真偽のほどはわかりませんけれども、A説、B説、C説という三つの、一つの裁判書きの下書きまで調査官がやる、そのうちどれがいいかということは合議できめるんだという説もあるのですけれども、どうもぼくら疑問に思うのは、最高裁の裁判官があれだけの事件があって、あれだけの記録を読んで、御自分で判決される最終結論はそうなんでしょうけれども、どうもそこに行く前のところである程度の判決の草案なんかが調査官でできるんじゃないですか。まあ内部のことであれですけれどもね。そうでなきゃ、現実に事務が進んでいかないのじゃないかと、こう思うんですけれどもね。これはどうなんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/76
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077・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) そういうととろは、稲葉委員からもお話がございましたとおり、私どもは事務局でございまして、詳細のことを必ずしも存じているというわけにはまいらないかと存じますが、ただ、先ほどのお話の記録を書き抜くかという問題でございますが、これは、私どもの聞いております範囲では、たとえば、原判決というものを印刷する、あるいは、原審での控訴理由あるいは上告理由書というもののコピーをつくる。こういうことは、本来その記録を回覧されたらいいわけでございますが、同時にごらんになるというような場合にやはり手持ちされる必要がありますので、そういう関係部分を抜粋してそれぞれの方が手持ちになるように印刷物をつくるというようなことが、あるいは記録の抜き書きというようなことに伝えられておるのではないかというふうに考え得るわけでございます。
それから判決の原稿云々の問題でございますが、これまた、いろいろつまり学説が分かれております場合に、甲説はこう、乙説はこう、丙説はこうというような学説を羅列して出しますと、それが結局ある意味では判決の素材になる。むろん学説そのままをとって判決される場合はまれにあると思いますけれども、抽象的な法律論でございますれば、つまり、学説が三説に分かれている場合には、積極説、消極説、折衷説ということで出します。そうすると、その場合に、合議の結果、たとえば消極説がいいということになると、その学説のうたっておりますところが事実上判決の骨子になるというような関係の場合は、これはおそらくあるのではないか。ある程度想像がましいことでございますが、さように私どもとしては考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/77
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078・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁の裁判官は、民事も刑事も行政事件も──行政事件はいま民事に入っているわけですけれども、全部判決されるわけですが、それから調査官のほうは専門で分かれているわけですから、現実には調査官のところで判決の草案まで書いて持っていくことが現実行なわれているのじゃないですかね。どうもそういうふうにちょっと聞くのですが、これは神秘のべールかしらぬけれどもよくわからぬところですけれども、そうでなきゃ、七十近い、しかも民事なら民事専門の裁判官が、刑事の、いまことに刑訴が変わっていますから、それで刑訴のああいう判決が書けるのは、たいへん失礼な話だけれども、超人的だと思うんですがね。現実には調査官がほとんど書いちゃう。だから、弁護人が面会に行くのだって、全部調査官です。調査官がまるで最高裁の実権を握っているんだと、こういうふうに受け取られがちなんですけれどもね。現実の調査官の仕事というのがどうもわからないのですが、判決の草案まで実際は書くのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/78
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079・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま稲葉先生がお話しになりましたような意味で判決の草案を書くというようなことは、毛頭ないと考えております。ただ、御承知のとおり、ごく一行程度のきまりきった却下なり棄却の決定等もございまして、こういうものはだれが書くということでもないことかと存じますが、そういうものは持って参ることがあり得るかと存じますが、しかしながら、また同時に、これは私どももほんとうに最高裁の裁判官があのお年になってよくおやりになるというふうに常に敬服しておるような状況でございまして、ほんとうにおそくまで合議をやっておられる状況でございます。それからまた、記録をお持ち帰りになってお書きになっているような状況も陰ながら見ているような状況でございまして、なお、それも、最高裁の場合はかなり少数意見、補足意見が出て来ますので、そういう関係から申しましても、いま御指摘のような意味で調査官が原案をつくるというようなことは毛頭ないと私どもとしては確信しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/79
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080・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いま言われたような少数意見というものは、近来非常に減ってきているのじゃないですか。ここ二、三年来、少数意見で、何といいますか、判決に反対のような意見が出てくるので、裁判のいわば権威というか、権威ということばもおかしいのですけれども、そういう点からいって少数意見というのはだんだん出てこなくなったのじゃないですか。それを押えているような空気があるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/80
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081・寺田治郎
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、従来から、大法廷と小法廷ではかなり違うわけでございます。この点は稲葉委員十分御存じのとおりと思いますが、従来から小法廷では少数意見が比較的少なかったわけでございます。それに対しまして、大法廷では少数意見がかなり多かったわけでございます。当然少数意見がございますのが例でございまして、最近でも平均の数字にほぼ近い数字はあるわけでございます。ただ、従来に比べればやや少ないかというような印象を受けますのは、何と申しましても、憲法そのものにつきましても、またあるいは刑事訴訟法につきましても、できました当時はいろいろ学説その他も分かれ、そうして少数意見の出る素地が非常にあったわけでございますが、だんだんいろいろな問題について判例も確立し、学説も安定してまいったというようなことが、一つにはやはり少数意見がやや前に比べれば減りつつあるかと思われるような印象を与える原因になっておろうかと存じます。しかしながら、現在でも一年に十前後の少数意見があることはやはり間違いないわけでございまして、著しく減っておるということではないように理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/81
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082・亀田得治
○亀田得治君 私から若干お尋ねいたします。稲葉委員からも先ほど来臨司の関係について問題点の御指摘と質問があったわけですが、私も臨司の一委員としてこの審議に参加した立場もありまするし、非常にそういう立場から納得できないという面がございますので、お尋ねをしておきたいと思います。
これは法務大臣に──大臣はどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/82
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083・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/83
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084・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/84
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085・亀田得治
○亀田得治君 事務総長にまずお尋ねをしますが、臨司の「意見書」というものを最高裁としてはどういうふうに考えているのか。どういうふうにというのは、つまり、まあこれは最高裁の人も参加して御承知のとおりでき上がったものですが、これを尊重していく立場を持っているのか、単なる一つの参考意見というふうな軽い気持ちでいこうとしておるのか、その辺の姿勢をまずお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/85
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086・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 臨司の「意見書」につきましては、各方面からいろいろ御批判もございまして、あのように現在の司法制度、裁判制度を掘り下げて検討したものといたしましてはわが国においては初めてと言ってもよいくらい画期的なものでございまして、しかも、そのメンバーに選ばれた方は法曹で構成されておりまして、もちろん裁判所といたしましても臨司の意見はあくまで尊重いたしたい、かような立場にございます。しかし、そこに書かれておる事柄を全部うのみにするというのではなくて、その考え方を基礎にしていろいろ指摘された問題点を検討していくべきものである、かように考えております。もちろん、臨司の意見というものは、裁判所といたしましても十分尊重しなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/86
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087・亀田得治
○亀田得治君 最高裁から見て都合のいいところだけを抜き出して活用していくと、そういうふうな考えがあるのではないですか。まあそういうことは正面から聞いてもお認めにはならぬだろうが、従来の実績から見てそういうふうに考えられる点があるわけですが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/87
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088・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 裁判所の都合のいいところだけを抜き出してそれでやっていこうという、そういう考えは毛頭ございません。と申しますのは、御承知と思いますが、臨司の意見が発表されましたのは一昨年の八月の終わりごろでございましたか、もうそのとき大体臨司の意見としてまとまるものというものが予想されまして、それについても予算の要求などをいたしておりました。ただし、御承知のとおり、弁護士会の一部に臨司の意見そのものに対してあるいは臨司そのものに対して非常な反発がございまして、その点で法務省もそれから裁判所としましても、そういう反対意見をしゃにむに無視して立法化するということはこれは十分慎重でなければならぬ、反対意見の方につまりいわば弁護士の方々とも十分話し合った上で逐次実現していきたい、かような考え方でやっておりました。しばらくの間裁判所と弁護士会との間の対立というものが続きましたけれども、幸いにして、昨年の九月、日弁連の理事の方々、つまり日弁連との間でもある程度の話し合いがつきまして、そうして最近数回弁護士会と裁判所との間でいろいろ話し合いの機会を持っている次第でございます。決して裁判所だけに都合のいいものを実現していこうと、そういうことではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/88
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089・亀田得治
○亀田得治君 この臨司が出たあとに、臨司を基礎にして若干の法案の準備等を最高裁のほうでされましたね。それらについて弁護士会等から反発があったわけですね。ああいう経過を見ますと、やはり全体として臨司というものをとらえないで、そうして自分の都合のいい、従来考えていたことをこの際というふうなことがあったので反発を受けたのじゃないでしょうか。そこらはどういうふうに反省しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/89
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090・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 私どもから見ますと、それは逆でございます。立法関係はこれは法務省の所管でございますから、裁判所として表には立ちませんけれども、実質から申しますと、臨司に盛られた意見はそれぞれの所管においてなすべきことを尽くさなければならぬ、そういうたてまえから、意見全般についてやはり裁判所は裁判所なりの努力はいたしておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/90
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091・亀田得治
○亀田得治君 しからば、臨司の結論の中心は一体どこにあると理解しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/91
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092・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 臨司の制度そのものが設けられました発端は、例の法曹一元でございます。この法曹一元について調査会は相当のエネルギーを費やして結論を出しました。その結論については、御承知のとおりでございます。これが、いまの「意見書」にもございますとおり、法曹一元についての基盤の培養ということが一番大事な点である、最も大事な問題の一つであるというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/92
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093・亀田得治
○亀田得治君 まあいま総長からお答えになったとおりだと思うのですが、最も大事な問題の一つというふうに多少軽く言われておりますが、一つではないので、法曹一元制度をどう理解するかということが中心課題であったわけです。それを認める立場に立つか立たぬかということによって、たとえば給与の関係にしても、任用関係のあり方にしても、非常に違ってくるわけですね。そういうことから、法曹一元制度に関する論議というものが基本的な問題として長時間費やされたわけなんですね。だから、重要問題の一つというようなことではなしに、これはもう調査会としては最大の中心課題として取り上げられたわけなんです。だから、さっきの答弁は少し軽く並列的に問題を見過ぎておるのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/93
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094・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 先ほどの説明のしかたがまずかったかとも思いますけれども、決して法曹一元という問題を軽く見ているわけではございません。法曹一元に関する臨司の決議に対していろいろな見方がございますが、私どもといたしましては、これは法曹一元を否定したもの、そのお葬式をやったのだという表現で発表された御意見がございますが、そういうことは全然考えておりません。そして、これを念頭に置いて現行制度の改善をはかるということがやはり重要な問題でございます。そういう意味で先ほどのような表現を用いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/94
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095・亀田得治
○亀田得治君 そういうことなら一応了承いたしておきますが、ちょっと議論を進めるために法曹一元制度に関する結論の部分を読み上げてみますが、それによりますと、「法曹一元の制度は、これが円滑に実現されるならば、わが国においても一つの望ましい制度である。しかし、この制度が実現されるための基盤となる諸条件は、いまだ整備されていない。したがって、現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに、右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。」と、こうなっておることは御承知のとおり。これは、甲、乙、丙、丁いろんな議論が出まして、われわれから見ると、これはまだるっこいというふうな主張でありました。しかし、また別な面からの主張等もありまして、最大公約数として全会一致でこういうふうにきまったわけなんです。私は、こういうふうにきまった以上は、自分の個人的な気持ちというものはやはり殺して、もし答申というものを最初言われたような意味で尊重していくのだということであれば、十分これは検討してもらわなければならぬと思います。
そこで、検討するにあたってやはり一番大事なことなんですが、「法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら」と、こう書いておるわけですが、事務総長としてはこの点をどういうふうに理解しておられるか、今後あなたが事務的に中心になっていろんな問題に手をつけられることだろうと思いますので、この際、ちょっと、そうかた苦しい表現でなしに、ざっくばらんにひとつ気持ち、考え方というようなことでお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/95
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096・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 法曹一元制度の長所、それとその反面の短所といったような問題については、臨司の委員会でも十分討議されまして、そしてこの「意見書」にも盛られておるわけでございます。そういう一つ一つのことは別としまして、法曹一元といいますのは、何と申しましても、まず裁判の民主化に最も貢献するところがある。官僚育ちの裁判官ではなくて、ほんとうに国民に近い目を持った裁判官ができることが要請されるということで、その点では裁判の民主化ということについて非常に意義のあるところであると、かように考えます。それと、法曹一元制度をとりますと、いわゆる法曹界のうちのすぐれた人が裁判官になるということになります。したがいまして、裁判所の質的な向上という点についてもむろん寄与するところがある。
大きく申しますと、そういう点をとらえて私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/96
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097・亀田得治
○亀田得治君 そこで、いま審議している法案に入っていきたいと思いますが、先ほど、稲葉委員から、現在提案されておるものは臨司の結論と趣旨が違うじゃないかという立場からのお尋ねがあったわけですが、私も同様にこの点は考えておるわけなんです。それに対して法制調査部長からもいろいろ説明等もありましたが、非常に無理な説明をされていたと思うのです。
第七章の「裁判官及び検察官の給与」、この中で、「退職手当及び退職年金制度の改善」ということが取り上げられておりますが、これは、もう明らかに、在野の弁護士の方が裁判官になるのにいろいろ支障がある。その大きな一つの問題が、弁護士期間というものが公的な期間に算入されないので、退職金等が少ない。ことに、最高裁の場合には、相当在野においても有名な方でありまするし、はなはだつり合いがとれないということが調査会におきましても非常に強調されたわけです。調査会だけじゃなしに、前々からも法務委員会等でもそういう点の指摘があったわけなんです。その中から最高裁の裁判官の退職金問題というものの結論が生まれてきているので、私はこれを無視したような御意見ははなはだ身勝手だと思いますよ。
なぜ私がそう言うかといいますと、基本的な裁判官、検察官の給与体系については、これは法曹一元制度の進展等とにらみ合わせて、それと並行して合理的なものを検討すべきだ。これはわれわれ委員もみんな一致してそういう意見を持っていたわけです。しかし、それは、根本の法曹一元制度そのものが、結局、この答申の線で行けば、ゆっくり行くということになります。したがって、それに並行してでなければ裁判官、検察官の独自の給与体系というものをつくることはできないわけです。根本原則がはっきりしないわけですから、これはだれがやったってできっこない。しかし、それが待てないからということで、「当面」と、こう書いた。それで具体的にすぐ着手しなければならないのはこれとこれだ、こういう経過で指摘された問題でありまして、そういう立場から見て、キャリアの御出身の方につきましては、それは理想的な独自の体系という面から免ればあるいは問題があるかもしれぬが、しかし、当面の問題としてはそこまで考える必要がない。逆に考える必要がないということまではっきり出しているわけです。だから、そういういきさつでございますから、私は、今度出された法案というものは、全く経過を無視し、答申の精神というものをもう悪く言えば悪用した、そういう結論になっていると思うのですね。事務総長は、先ほど来その点についての答弁をされておらんわけですが、納得のいく説明ができますか。筋の通った裁判官だったら、ちょっとそれは説明しにくいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/97
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098・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 御指摘のとおり、「意見書」に書かれております文言は、まさにそのとおりでございます。しかしながら、この文章からしましても、やはり全裁判官の待遇を考慮しろという意味はあらわれております。その点につきましては、先ほど法務省の調査部長から説明した点に基本的には私も同感できると思います。問題は、キャリアから出身の裁判官が不当に得するじゃないかという感情があるもんですからそういう御疑念がわくと思いますが、これはいろいろな場合のケースにつきまして、つまり最高裁の裁判官に任命される前の経歴についていろいろなバラエティがあるということは、先ほど最高裁の人事局長から御説明をいたしたとおりでございまして、弁護士出身者だけを特に抜き出すということは、これは技術的には絶対に不可能とは言えなくても、非常に困難な問題であろうと思います。卑近な例を申し上げますと、たとえば三十年間弁護士をやりまして、そして弁護士から高裁の長官になって、二、三年つとめて最高裁の裁判官になったという場合は、これは高裁長官から最高裁の裁判官になったわけですから、弁護士出身の最高裁裁判官と直ちに言えるかどうか疑問でございます。逆に、三十年間裁判官あるいは検察官をつとめまして、それからやめて、弁護士をして二、三年つとめて今度最高裁へ入る、こういう場合も考えられます。この場合は、弁護士から入ったんだから、しかも経歴としては三十年という前の裁判官なり検察官なりあるいはほかの官庁としての経歴が長いのですけれども、たまたま最高裁に入るときには弁護士だったというわけで特別の待遇を受けるということになりますと、この二つを比較して差別を設けるということ、これはちょっとできかねる。そういうわけで、やはり最高裁の裁判官としての職責の重要性、その任用制度の特殊性、そういうものを重点に考えて、最高裁の裁判官としてのつとめられた期間は出身のいかんにかかわらず同じ待遇にする、それでキャリアの裁判官は入る前に打ち切ってしまう、こういう考え方がかえって筋が通ると思います。
なお、ついででございますので一言申し上げますが、昔の大審院時代は、大審院というものは下級裁判官の結局はそこへみんな入りたいという目標だったわけでございます。現在の新しい制度における最高裁の裁判官というものは、これはキャリアから入られる場合でも、そのときの偶然と言っちゃおかしいですけれども、ごくわずかのたまたまそういうチャンスに恵まれた少数の人が入る。そういう、いわば昔のような裁判官としての出世コースの最終点ではないというふうに考えられますので、そういう違いを御考慮に入れてお考えくだされば、今回の特例法の考え方もそう筋の通らない無理なものじゃないということがおわかり願えるかと、こうも存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/98
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099・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと官房長官がお急ぎのようですから、最高裁に対する質問は多少あとに回したいと思いますが、いま事務総長から説明された考え方は、少なくとも臨司の答申とは私は矛盾しておると思っております。これは後ほどもう少し詰めて論議したいと思います。
そこで、官房長官、稲葉委員からの御要求であったようですが、ちょっと私一言だけお聞きしておきたいのは、臨司ができて、そして相当長期間非常に熱心な論議をやりまして答申が出たわけですが、これに対して当時総理大臣も十分これを尊重していくのだということを言われておりました。佐藤さんになってからあらためてこれは聞いたことはないわけですが、官房長官たまたまお越しになりましたので、これは内閣に直属の機関として置かれた重要な調査会ですが、官房長官のこれに対する意見もこの際お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/99
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100・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 私はどうも法律のほうは詳しいほうじゃありませんけれども、ただ、現在の法制のたてまえから言いますと、御承知のように最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命するということになっております。最高裁判所の裁判官は内閣がこれを任命するわけですが、そこで、これがまあ最高裁判所長官並びに裁判官に対する唯一の規定であるわけであります。御承知のように、最初の制度ができまして最高裁判所の裁判官を任命するにあたって、法律によって諮問委員会ができておりまして、そこで諮問が出まして、これを内閣が任命するという手続をとったわけであります。その後、これが法律的に廃止になりまして、今日では内閣がこれを指名をして天皇が任命するという手続を長官についてはとっております。さような方法でやってまいっております。ただいま御質問のいわゆる臨時司法制度調査会の「意見書」を尊重するかということは、これはもう全体の構想としてのものの考え方は当然尊重していくという趣旨でありますが、この最高裁判所の問題については特にいわゆる「意見書」が出されておらないように聞いておりますので、その他の問題についてはもちろんこれは尊重する方針で参っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/100
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101・亀田得治
○亀田得治君 官房長官が、突然に聞いて、十分お答え願えるかどうかわかりませんが、もしお答え願えたらお願いしたいわけですが、答申では、法曹一元制度はこれを前向きに検討していく、現状からして急にはできないが、できるだけその基盤の培養ができるように現行制度の改善などについて考えていくと、こういうことが全会一致の結論として出されておるわけなんです。法曹一元ということのことばの意味も、これはまあいろいろあるわけですが、平たく言って、裁判所機構というものを官僚裁判官だけにまかしておるような状態を改めて、そうして民間の知識なり経験というものをそこへ導入していく。まあ現在でも若干そういうことは行なわれているわけですが、それをもっと本格的にやるという常識的な意味で考えてもらっていいと思うのですが、そういう法曹一元制度について慎重に検討しながらやっていこうというふうなことが結論として出ておるのです。この考えに対して、官房長官、政府を代表してひとつこの際ちょっと御所信を明らかにしてほしいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/101
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102・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 方向としては、そのとおりだと思います。現実的には部分的に取り入れておるわけですが、いま亀田委員のおっしゃるように、早急にはできにくい問題も多々あると思いますが、方向としては、やはり民主化といいますか、そういう面から考えても、いまおっしゃる方向にできるだけ最善の道を尽くすという方針に政府としても変わりはないと御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/102
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103・稲葉誠一
○稲葉誠一君 官房長官は時間の制約があるようですから、要点だけお尋ねいたしたいと思いますが、最高裁判所の長官と判事の任命は内閣の責任において行なわれると、こういうことなわけですが、そうすると、長官は別として、判事が十五名いるわけですが、それを選ぶのは、裁判官出身だとか、検察官出身だとか、弁護士出身だとか、学識経験者だとか、そこからどの程度ということは、大体の基準みたいなものはあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/103
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104・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) いわゆる規約上の基準はないと承っておりますけれども、ただ、いま先ほど亀田委員からもおっしゃったように、法曹の一元化といいますか民主化ということも考えられて、実際上の慣行としては五・五・五のような基準でこれを学識経験者の中から選んでおった。これはしかし必ずしも動かし得ないものでもないかもしれませんが、しかし、続けられた慣行ですから、やはり慣行は尊重されなくてはならぬと思いますけれども、そういうような、基準ではないが、一つの慣行として尊重されておるということは事実と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/104
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105・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁判所の長官は、いままで、大体、学者といいますか、そういう方が多かったのですね。学識経験者といいますか、純粋な判事だとか検事だとか、そういうのではなくて、長官はそういう人から選ばれるのが非常に多かったですね。それは一つの慣行的なものとして、今後もそういう方面から選ばれるというふうに大体なるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/105
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106・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 大体そういう考え方で、要するに、最高裁判所長官というものは、御承知のように、三権分立の上における一つの大きな柱ですから、広く国民から信頼される──必ずしも法律的な知識、専門家というのではなしに、国民から長官として日本の三つの柱の一つとして尊敬されるような人を選ぶという従来の方針を持っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/106
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107・稲葉誠一
○稲葉誠一君 だけれど、内閣が最高裁判所の長官は指名して天皇が任命するわけですけれども、内閣が指名するのですから、その時の政府の施策に反対のような考えを持っている人は困るわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/107
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108・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) これは、いろいろ反対といいますか、もちろん全面的な反対なら困るだろうと思いますけれども、ものによってはそれは個別の問題で必ずしも政府に全面的に同意の人である必要はないと思いますけれども、ある問題について裁判官としての門外の問題についてあるいは反対意見を持つ人もありましょうけれども、そうささいの問題は別にして、大きな面から言えば、世間の人がこの人が最高裁判所長官としてりっぱであると、こう目される人を選ぶというのが基準と言えば基準になる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/108
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109・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私はそれはわかりますけれども、内閣が指名するというのでしょう。その時の政府が指名するわけですから、ここに基本的な問題があると思うんですが、純粋な三権分立の精神から言えばちょっとおかしいとも思うんです。ですから、その時の内閣の基本的な方針に賛成の人を選ぶということに結局はなるわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/109
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110・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 基本的政策というのはどういうことかという問題があろうと思います。ただ、われわれは、政治の形態から言えば民主主義政治というものを主張しておる。それを基本としていますね。したがって、共産主義を信奉する共産党員から選ぶということはあり得ないと思うのですね、これは。けれども、その他の個々の問題で必ずしも政府と意見を一致しないものがあっても、これは最高裁判所長官として不適だということにはならぬ。広く国民がこの人は学識の上から見ても人格の上から見ても国民として尊敬するに足るという人であればいいのじゃないかと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/110
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111・稲葉誠一
○稲葉誠一君 だから、たとえば日米安保条約に反対だ、こういうふうな人は、最高裁判所の長官や判事としてはちょっと困るのじゃないでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/111
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112・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) いまの現状から言えば、現在の時点で言えば、国民の大多数はやはり安保条約は必要である、こう見ていますからして、そういう意味では、そういう人が出てくることもあり得ないであろうとも考えられますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/112
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113・稲葉誠一
○稲葉誠一君 あなた方のお考えだと、国民の大多数は自由民主党を支持しているわけでしょう。だから、自由民主党の政策に反対の人というものは、国民の大多数から見るとちょっとやはりはずれていると、こういうふうに論理的になっていくのじゃないでしょうかね。どうもそういうふうになりそうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/113
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114・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) これは、あまり卑近な例で、いま稻葉さんがおっしゃったようなそういう月で事を進めていいものか、議論の点があろうと思いますが、もしその例で言いますなら、とにかく、衆参両院、ここに自民党は多数を占めておるという現状を見れば、安保条約は国民によって支持せられておる、こう考えざるを得ないし、そうすると、国民の大多数は、それに反対する人が適任だということにはならぬのではないかと思いますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/114
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115・稲葉誠一
○稲葉誠一君 安保条約だけじゃなくて、官房長官の論理から言いますと、自由民主党の政策なり時の内閣の政策に反対する人は最高裁判所の長官なり最高裁判所の判事としては不適任だと、国民の大多数は自由民主党を支持しているのだということになればね。だから、それに反対しているのだからだめだというふうなことになるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/115
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116・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 必ずしもその問題がすぐそこに結びつくとは思いませんがね。いま申し上げましたように、国民大多数がこの人であれば学識経験ともに豊富であり、われわれ国民の大多数が最高裁判所長官として尊敬するに足る人である、こういう観点から選んだ場合に、その結果がどうなるかといえば、やはり国民の大多数が支持しておる政策を持つ人になるだろうと思うのですが、選ぶ基準というのは、いま申したように、国民大多数が支持し得るようなりっぱな人、経験豊かな人格者であるというところに選ぶ基準を置いておる、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/116
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117・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは、選ぶときに、具体的に最高裁判所の意見も徴するという形をとるわけですか、とらないわけですか。内閣の責任なんだから最高裁判所は関係ないと、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/117
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118・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) この法律のたてまえから言えば、内閣がこれを決定するわけですから、内閣の長である総理大臣が準備をするわけですね。その準備をする場合に、必要に応じてはその方面の比較的経験豊富な知識を持っておる法務省の国務大臣にあるいは意見を聞くこともあるだろうし、また、その他の各方面から意見を聞く。少なくとも内閣の長である総理大臣が準備することでありますから、官房長官を中心にして広く各方面の意見を徴して、そうして国民の皆さんから尊敬されるような長官を選ぶ、こういうやり方になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/118
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119・稲葉誠一
○稲葉誠一君 具体的には、いままでは、最高裁判所のほうの意見も徴するという行き方はとっていたわけですか、長官なり判事を選ぶ場合に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/119
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120・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 直接的に言えば、内閣がこれを決定するわけでありますから、官房長官としては内閣の必要なそれぞれの国務大臣に意見を徹することがあります。しかしながら、その意見を徴せられる国務大臣がなお準備するために各方面の意見を聞く場合もあるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/120
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121・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁判所の長官は、八月ですかに定年退職されるわけですね。そうすると、あれですか、もう、大体、選ぶというか、任命するについての具体的な準備に──具体的にとのように入っているかどうかということをお聞きするわけじゃございませんが、もう近く入らなければならない時期になっているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/121
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122・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 時期的に言えば、近くそれぞれの準備を進める段階になりつつあるというととであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/122
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123・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その場合には、やはり法務省の意見というものが法務大臣がまああれですが、相当大きなウエートを占めている──法務大臣のほうからこういう方をと言って推薦するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/123
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124・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 形式的に言えば、やはり適当の時期を見て内閣の長たる総理大臣が準備をするということを明示──明示ということは閣僚に明示をして、そしてその場合にあらためて総理大臣から準備を命令される。おそらくこれは法務大臣もあり得ると思いますが、必ずしも法務大臣だけじゃないと思います。そういう手続をとってから行くのであって、いわゆる関係国務大臣から持ってきたものを審査するという方法では従来やっておらないということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/124
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125・稲葉誠一
○稲葉誠一君 国民の大多数が支持するような学識経験者で、尊敬される人格者を選ばれるんだ、こういうふうなお話ですけれども、それはわかりますけれども、そうすると、いまの政府の考え方から言えば、国民の大多数というものは資本主義というものを支持しておる、こういうふうになるわけですね。ですから、資本主義以外の主義というと社会主義ということになるのですけれども、そういうようなものを支持しているという人は、国民の大多数はいまの段階では至当でないんだ、だから、そういう人になってもらうのは困ると、これはまあそういうことになりそうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/125
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126・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 学問の上では、資本主義とか、あるいは共産主義とか、経済理論の上とかあるいはイデオロギーの上とか、いろいろ議論はおありでありましょうけれども、実際の政治というものは必ずしもそれで割り切るわけにもいかない。御承知のように、学問的に言えば、修正資本主義もあったり、修正社会主義もあったりして、なかなか一律にこれが資本主義であるとかこれが社会主義であるとか政治の部面では割り切れないので、いまおっしゃるような意味でものを考えるかといえば、必ずしもそうはいかない。実際、政治というものはもっと生きたものですから、かなり人聞を中心としたものの考え方でやっていくことが必要であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/126
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127・稲葉誠一
○稲葉誠一君 内閣が任命すると。そうすると、内閣が自由民主党の内閣だ。自由民主党という党を離れても、その時の政府にとって不利になるような人を最高裁の長官なり判事に任命するということは、内閣が任命するという上からいっても考えられないのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/127
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128・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) そこが、どうも、われわれ政治を直接やっておることから言えば、世の中には政党政治ということばもありますけれども、もちろん自由民主党が多数を占めているから、自由民主党を基盤とする内閣ができておるわけですけれども、できた内閣というものは、やはり国民を基盤にした政治をやらなければ、これは国民は承知しないのですね。したがって、国会の審議の場面でも、あるいは国会外の場面でも、関係方面とよく話し合って、たとえば、組合運動にしましても、あるいは国会内における法案の審議でも、いろいろ大多数の考え方の上に修正して進んでいる。こういう民主主義的な議会政治のあり方から見ると、自由民主党の内閣であるから自由民主党的な人を選ぼうじゃないかというようなわけにはいかぬのですね。やはり国民的なことになるのですから。
そういう意味で、いま申し上げたように、一たん内閣ができれば、その内閣は国民全体の立場に立って、国民の大多数というか、もうそれは外国へ行ってもいいという人は別ですが、そうでない限りは、立場こそあれ、日本の国を愛する立場に立って、政党やイデオロギーというものを離れて対象にしているのですから、したがって、自由民主党の内閣であっても、その内閣というものは国民全体を目標にして対象にして政治をやっていく、こういうたてまえに立っているのですから、したがって、最高裁判所長官を選ぶ場合も、この立場に立っていわゆる選任する、こういう考え方でやってまいっているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/128
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129・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、いまの政府に対して反対の意見を持っている者でも、基本的に反対の意見を持っている人でも、場合によってはかまわないということもあり得るわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/129
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130・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) ちょっと仮定の話ですが、反対の意見を持っていてもと言われましても、その反対の内容が何やら、やはり具体的な問題、一人になってきませぬと、これはなかなか判定がしにくいと思います。したがって、要するに、これを選任する、決定する方針は、国民の大多数の人が見てりっぱな人だ、しかも学識人格ともに高い、こういうところに基準を置いて考える。一々の考え方を聞いて、これに賛成か反対かと聞くわけにいきませんから、国民の大多数が喜んで迎えられるような人をやはり最高裁判所長官に任命するということが内閣の方針であるということを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/130
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131・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはよくわかりました。そのとおりですね。そのとおりでしょうが、私の言うのは、内閣の基本方針に反対するような人を選ぶわけはないでしょうと、こう言われれば、それはやっぱり内閣の基本方針に反対の人を選ぶということはないというようなことに結局なるんですね、裏を返せば。それじゃ、結局、内閣の基本方針というもの、一定の方針というものに賛意を表せられる者の中から選ぶということになるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/131
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132・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) だから、いま稲葉さんのおっしゃる内閣の基本方針というものが何であるか。したがって、極端な例で、例にはならぬが、共産主義者を選ぶかといえば、選ばない。これは一言にして言えるわけです。けれども、その他、ある部分的な問題について反対の意見を持っている人といっても、その点がどうなのか、これらは本人に聞く必要もあろうと思いますが、単なる基本的政策に反対な人をというだけではちょっとどうも答弁のしょうがないというところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/132
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133・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、その人が共産主義者であるとかなんとかいうことはどうやってよく調べるわけですか。結局、最高裁判所長官になる人とか最高裁の判事になる人とかは、これは共産主義といってもいろいろあるのだから、純粋な主義者もいるし、それに近い人もいるし、やはり具体的にはこれは調べなければわからぬのですね、内閣の責任でもって任命する以上。そうなってくると、その人に対していろいろ調べるわけですね。そういうわけですね。調べなければわからないようなものをどうやって調べるのですかね。そこのところがまた問題になってくるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/133
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134・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 内閣にはそれぞれの調査させる方法もありますし、また、皆さんにおいても、たとえば稲葉さんが共産党員だと言う人もないでしょうから、そういう意味で、これはまあ常識でも、あるいはある程度の調査をしてもわかりますからね。したがって、少なくとも思想的に中立な人が選ばれるということは言えると思いますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/134
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135・稲葉誠一
○稲葉誠一君 まあここで論議しても、こと人事の問題ですし、また、具体的な人を傷つけたりなんかしてもまずいですからね。内閣の責任においてやることに対して立法府があまり介入すべき筋合いのものでもありませんからね。だから、あまり深入りした形のことは私は言わないのですけれども、内閣の責任において任命するというその任命の仕方がぼくは基本的に問題ではないかと、こう思うんですよね。その点についてはどうでしょう。三権分立ということからいって、行政府である内閣が責任をもって任命するということになれば、それはやはり行政なり政治に都合のいい人が任命されるにきまっているわけですよ、常識的にいったってね。それはそうでないんだ、国民的基盤で選ぶとかなんとか言ったって、それはそうはいかぬわけですよ、現実に。いままで選ばれてきた人そうなんですから。名前は言いませんけれども、非常に熱心な反共論者で、それが行き過ぎている人もいるしね。あるいはまた、その論議の中で、国連協力ということを言う。国連協力なんだけれども、国連というのは、それは侵略を撃退するためにとる行動であって、あれは戦争じゃないんだと、だから国連は戦争をするべき筋合いのものでないんだから、そこに派兵をしていくということは海外派兵にならないんだと、どういう考え方を持っている人も現実に最高裁の長官になっておられるわけですからね。そういうふうになってきますと、ぼくはいろんな面で問題が出てくると思うんですよね。ですから、個人的なことは私はお尋ねいたしませんけれども、内閣が責任を持って任命するというあり方が、基本的に三権分立ということからいって正しい行き方なのかどうかですね。その点はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/135
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136・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) ただ、現行の法律の規定によりますと、先ほど申しましたように、内閣がこれを決定して天皇がこれを任命するという一つの法律制度があるわけですね。その法律制度の上からいえば、やはり内閣が責任を持ってこれをきめていくということが一番正しいんであって、もしこの法律制度が特別の形があるにかかわらず、その法律制度によらないで内閣の責任でやっておるというんなら、それは御注意を承る必要があろうと思いますけれども、いま国会で承認された法律のもとにおいて、内閣の責任で決定せよと、こう法律が明示しているわけです。その現行法に従ってやるというやり方をしているわけで、かつて諮問委員会のような制度があったこともあります。これはまあ先ほどちょっと申しましたような責任の問題が明確でないという意見もあって、これが廃止になった。いやしくも法律に内閣がこれを決定するという以上は、内閣の責任で行なうべきである。しかし、その内閣の責任で行なう場合も、中立中正な、そうして国民大多数が最高裁長官として尊敬をするに足る人を選ぶべきである、こういう方針でやっておるのであって、稲葉さんのおっしゃることは、将来の問題としてどうかという議論はありましょうけれども、現行の法律のもとに言えば、内閣が責任を持ってこれを選ぶということが正しい姿ではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/136
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137・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと一つ。そしたら、官房長官、ちょっと端的に聞きますが、いまの問題、法曹として非常にすぐれた万がいて、そうして国民のたくさんの人からも信頼されておる、しかも政党的な傾向からいくと社会党が好きだ、こういう人は、さっき共産党の場合はちょっとはっきり言われましたが、これは可能性がありますか。そういう人があった場合に、これは有資格者だと私は思うのですが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/137
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138・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 仮定の場合で、そういう人があるかどうかはこれは亀田さんも仮定の場合でお話しになっているのですが、社会党を支持するということが国民の大多数の人から支持されるのと一致するのか、まあこの点が問題ですね。社会党員であって、かつ国民の大多数が支持しているということが一致する場合があり得るかどうかということもまあ問題があろうと思いますので、ちょっとどうも例としてはあまり適当な例でもないので、お答えのしようがありませんけれどもね。最高裁判所長官というのは、思想的には中正な人というのがやはり一つの条件でもありますから、そういう人こそ国民大多数から、社会党からも尊敬される。もちろん自民党からもということでしょうから、国民大多数という意味は、学識有識者にして人格高い人、こういう表現以外にちょっと表現のしようもないというところですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/138
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139・亀田得治
○亀田得治君 私は、社会党員とは言わない。まあ社会党が好きじゃと、こういう方、それが一つ、それから他方、そういう政治的な立場を、抜きにして、国民の皆さんもあの人は法律家としてはなかなかりっぱだと、こういう人は、私は、先ほどからのあなたの説明を聞いていると、当然論議の対象にならなければいかん人だと思う。党員じゃない。そういう人はたくさんあるわけです、現に。こういうのはどうでしょう。そこまでふたをしてしまったのじゃ、これは自民党だけということになってしまう。そういうことはおっしゃらぬだろうと思うのですが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/139
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140・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) まあ広く人材を求めますから、そういう人が全然選考の範囲に入らぬかというて、入らぬというわけでもなく、先ほど申しました最初の点で社会党が好きだとか自民党が好きだということは別問題としましてですね、国民の大多数から尊敬され、学識経験ともに豊かなる人というところに基準があるのです。自由党が好きだとか社会党が好きだとかということはまあ別の問題ですね。ですから、いま亀田さんの御推薦かもしらぬけれども、好ききらいだけではどうもちょっと基準の中に考えようもないので、基準としては、学識経験ともに豊かであって、かつ人格者であるという人、そうして国民多数から喜ばれて長官として尊敬される、こういうところが基準だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/140
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141・亀田得治
○亀田得治君 だいぶはっきりしてきましたが、そうすると、学識経験者、国民のたくさんの人から信望があるという人であれば、共産党とまではいかぬが、たとえ社会党が好きだということがあっても、それはまあ小さい要素だ、そういうふうにいまお答えを聞いたのですが、それでいいですね。重点はもう前のほうだというふうにおっしゃったわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/141
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142・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) まあその社会党が好きだというのは、ちょっと女が好きだというのとだいぶ違うので、解釈がむずかしいですよ。(笑声)社会党が好きだとか自民党が好きだとかいっても、どうもどういう意味なのか、日本が好きだというのとちょっと意味が違うのですね。まあそういう意味で、選考した場合にそういうことが出てきてどうのこうのという問題の中に入るべきものでもないように思うのですがね。やはり、基本的には、先ほどから申しているように、学識経験豊かにして、人格も高く、かつ国民大部分からこの人は最高裁判所長官としてりっぱである、こういう人が選ばれる、これがまあ選考の常識的な基準だ、こう申し上げるよりほかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/142
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143・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、その人の党籍といったようなことが最高裁の場合考えられぬのですが、いわゆる政治面における考え方ですね、そういうことはたいした要素ではないと、こういうふうに理解していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/143
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144・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 先ほども申し上げました政治的に中正である必要はあると思います。これは公務員の規定でも不党不偏──不偏不党ですか、と言っていますから、政治的な中立的要素を持つ必要はあろうと思いますが、社会党が好きとか自民党が好きとかはどう解釈していいか、どうも要素としてあまり考える必要もないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/144
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145・亀田得治
○亀田得治君 不偏不党といいましても、完全な意味でそういう方はおらぬわけですから、何らかの意見は持つわけなんですね。それは必ず持っています。そんなものを持たぬような人にまた大事な裁判をやってもらうのはおかしい話ですね。それでもしかしいわゆる不偏不党と普通言っておる。そういう中にも、やはり、社会党が好きだとか、自民党が好きだとか、いろいろあるわけですよ、傾向が。そういうことはあまり重きを置かぬのだと、こういうふうに理解していいんでしょう、あなたのお答えでは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/145
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146・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) ただ、先ほどから申しましたように、自民党が好きじゃ、社会党が好きじゃということは、どういう意味か、なかなかこれ皆さんもわかりにくいだろうと思います。男女関係であれば、あの人が好きじゃといっても、丸い顔が好きな人もありますし、長い顔が好きな人もありますけれども。その好きだということがどういう意味なのか、社会党の場合、いろいろあると思うのです、亀田さんのおつき合いの人なり、稲葉さんなり、皆さん。亀田さんが好きだというのと、社会党の政策が好きだというのと。ただいまおっしゃられておるように、社会党が好きだというのはどういう意味なのか、なかなかちょっと答弁に苦しむところですね、その辺は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/146
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147・亀田得治
○亀田得治君 これはいろいろな意味があるわけですよ。たとえば、政策的には自民党の考え方を支持するのだが、どうも自民党はあまり金を使い過ぎるのできらいである。だから、自民党を少しこらしめる意味で社会党ひいきになっておるとか、いろいろあるわけです。だから、そんなことは意味内容が複雑だから、そういうことはあまり気にしないんだと、こういうふうにおっしゃってもらえれば、それでこちらも大体見当がつくわけです。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/147
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148・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) どうもその意味がよく私自身わかりにくいのですが、とにかく、先ほど来から申しましたように、中正公正な人物、その中に気持ちの上で社会党が好きだとか自民党が好きだということがあり得るかもしらぬが、いずれにしろ、そういうことは基準の中には特に考える必要はなかろう。基準としては、学識経験ともに豊かで、人格の高い、国民大多数から親しまれ、かつまた尊敬さるべき人、こういうことであって、その中に、その人の個人個人いろいろつき合って、社会党が好きだ、自民党が好きだということがあり得るかもしらぬ。そこまでの調べはちょっとつきかねますから、とにかく先ほど申しました点で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/148
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149・亀田得治
○亀田得治君 わかりました。そういう御趣旨に沿うような者もまたありますればひとつ陳情に伺いたいと思いますから、その節は十分やはり検討してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/149
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150・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 広く私のほうも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/150
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151・亀田得治
○亀田得治君 それはどこからでも意見を求めたほうがいいですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/151
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152・橋本登美三郎
○政府委員(橋本登美三郎君) 先ほど来申しましたように、最高裁判所長官というものは国民の尊敬の的の一つでもありますから、広く各方面の意見は聞きたい、そうして内閣の責任においてこれを選ぶ、こういたしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/152
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153・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/153
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154・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/154
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155・亀田得治
○亀田得治君 先ほど来、いろいろ臨時司法制度調査会の答申の扱いなどについて最高裁の事務総長なりあるいは官房長官等にもお聞きしておったのですが、法務大臣にも、この点は基本的な大きな問題ですので、この際ちょっとお聞きしておきたいと思います。
御承知のとおり、池田内閣のちょうど最終、おやめになる直前にこの調査会の「意見書」はまとまって、当時総理に報告を出されて、総理もこの「意見書」は十分尊重して今後やっていくというふうにお答えになっておるのですが、法務大臣としてはその点はどういう姿勢でおられますか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/155
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156・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) それは、申すまでもなく、尊重するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/156
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157・亀田得治
○亀田得治君 この調査会で一番時間を費やして論議をし、そうして出しました全会一致の結論として、法曹一元制度に関しての結論を出しておる。これについても法務大臣は尊重してやっていく、こういうふうにはっきりお答え願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/157
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158・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) これは、法曹一元の長所を念頭に置きまして現行制度の改善をはかる、それが根本でございますけれども、法曹一元の基盤の培養ということも当然やらなければならぬと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/158
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159・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、官房長官も、最高裁も、法務大臣も、みんな法曹一元制度についての前向きの姿勢というものがそろったわけですが、私はその立場からいま問題になっておる退職金の問題というものを見ておるわけなんです。
調査会では、有力な弁護士が司法機構の中に入ってくる、裁判制度、検察官の中に入ってくる、何としてもこのことをとりあえずもっとしやすくしなきゃならぬということをずいぶん論議いたしたわけなんです。それで、現在は、キャリアの裁判官が大部分で、その両者のバランスがとれておらぬわけです。そういう立場からも、弁護士の裁判官へのなりやすい道を一つでも多くつくって、それには退職金の問題というものが前から懸案になっておる、こういう立場なんです。ところが、現在やられているような法律になりますとその精神が抜けちゃうんだね、抜けちゃう。それは裁判官、検察官の給与について全般的に検討しなければならぬことはたくさんあるんですよ。しかし、それはもう少し先だと。検討するのであれば、だいいち最高裁の裁判官だけというのはおかしいですね。これは第一線の裁判官のほうが見ようによっては非常に重要なわけですしね。それらを含めて全裁判官の退職金というものを検討するということは、これは決して調査会が無視しているわけじゃない。そんな考えが抜けているわけじゃないですよ。しかし、それは、先ほども申し上げた法曹一元制度自身の進行と歩調を合わせて逐次進むものだと、そういう考えだ。しかし、ほっておけないのは、弁護士で裁判官になった人のやめるときのきわめて少ない退職金、これを高くして、そうしてそこの欠点をなくしよう、これが目標であったわけです。だから、私は、調査会の答申というものを口先では三者ともみんな尊重されるというふうにさっきからお答えになっているわけですが、それなら、そのとおりまずその欠陥を補正するという態度をなぜとれないのか、そこに疑問を持つわけです。先ほどから、いや、裁判官になる人でも、純粋に弁護士をやって裁判官になった人もおるし、あるいは、裁判官になり、弁護士になり、また最高裁に入ってきた人、いろいろあって、なかなか計算がしにくいと言われますけれども、しかし、それは、ともかく調査会が指摘しておる点についてこたえていこうという立場で制度をつくろうと思えば、それは私はできると思うんですよ。決してそんな不可能なことじゃないんですよ。だから、なぜそれをやらなかったか。だから、まるで調査会の答申に便乗して最高裁の裁判官が自分たちの退職金を値上げしている、一般の裁判官をほったらかしておる、私はそういう疑念を与えるようなことで、どうしてりっぱな司法制度というものができるかというふうに疑問を持つわけなんです。ほんとうに私はそう思っている。だから、できたらその部分についてはやはり再検討してほしいというふうに思っておるのですが、法務大臣、どうですか。衆議院で本ずいぶん議論になったところだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/159
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160・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 最高裁の判事に対する問題が一番差し迫って多いわけなんであります。どうしてもこの問題を解決しないと、ちょっと大きく申しますと、最高裁の判事のそこの地位を弁護士から来る人たちになかなか適当な人を得にくいというような関係等ございまして、それならばその人たちだけやればいいじゃないかとおっしゃいますが、なかなか実際上の問題としてはやりにくい問題だと私ども聞いておりますので、これも事務のほうでお答え申すと思うのでありますが、で、最高裁のなにの退職金だけ出たわけなんでございます。この影響を考えますと、検事総長が同じような格に扱われておるわけでありますから、そこだけの影響というようなことなので、そこの扱いも将来は考えなければならないし、また、さっきお話しになりました下級裁判所の判事の扱い方というような問題等も当然考えなくちゃならぬ問題として残っておるわけであります。これらのものをもあわせて次に考えなければならないのでありますが、今日の場合は、まずこれが一番いい方法と私ども必ずしも思いませんけれども、こういうようにやるしかしようがないじゃないかと私ども思っているわけであります。そこまで来る行き方については、事務当局から最高裁のほうから説明いたしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/160
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161・亀田得治
○亀田得治君 それは問題ありません。細かい説明はだいぶあったんですが、納得がいかぬわけです。それで、この制度でいきますと、ずっとキャリアとして上がってきた裁判官、これは最高裁の裁判官になることに非常な魅力を一そう感ずるわけです。従来よりも。一年や二年でやめるのは例外ですからね。五年、六年、七年、平均七年だとおっしゃるのですが、魅力を感ずるのです、そういう面では。ところが、実際は、在野法曹からなかなかこれはと思う人が入りにくい。こういうところに欠点があるので、だから、そっちのほうが入りやすくすることが最初から私がやかましく言っておるこの調査会の結論である。法曹一元というものを前進させることにやはり寄与するわけです。これは、キャリアの裁判官が最高裁の裁判官になりやすい道を開けば、結果としては、なんですよ、在野法曹のほうははみ出されるんですよ。そういう面の影響も出てくるわけです。だから、何といってもバランスが現在としてはとれぬ。現在のバランスすらくずれやせぬかというふうに心配されているのが現状なんですから、そういうときに、弁護士関係のほうも優遇するが、同時にキャリアのほうもそれにくっついて従来よりもよくする、そんなことをやることは、答申の趣旨からいっても、法曹一元制度を前進させようという趣旨からいっても、私は間違いだと思う。現在の制度に、何べんも言うように、固定して、それでいい、絶対直す必要はないと、そういうことを言うんじゃない。両方とも都合よくなるようなことをすれば、結局一緒じゃないですか。法曹一元制度の基盤を培養するという趣旨からいって、私は明らかにこれは政策的にも間違いだと思います。大臣、どうですか。私だけではなしに、ずいぶんわが党ではそういう点については疑問を持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/161
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162・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) その点、そういうふうな問題で特に弁護士から裁判所の判事になる人をなるべく養っていく、よけい入れるというような心持ちは、裁判所のほうでも念頭にいつも置いて当然考えられた問題でございます。そうして、結局、これが一番いいと思いません、ここいらだということに落ちついたんだと思うのでございます。それから先は、こうなるほうがかえって悪いのだという御意見ですけれども、実際の扱う方面ではこれでやっていけると、その上に最高裁のほうにもつとさらにりっぱな人を安心して現状よりも弁護士の人を採用することができるということに非常な魅力を感ずることができるというのが今度の案だと思って賛成いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/162
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163・亀田得治
○亀田得治君 一たん法案を出されますと、なかなかその立場を堅持される気持ちはわかりますけれども、それじゃ、もう一つ聞きますけれども、下級裁判所の弁護士出身の裁判官、検察官で、最高裁まで行かないで下級裁判所で終わる方も多々あるわけです。なぜその方に対してこの法案の中で同じように出してこないのですか。最高裁の役人からずっと上がった人は急ぐ問題じゃない。これは調査会でも一致してそういうふうに言っておるのですよ。そんなところへ向ける予算があれば、なぜ下級審に在野法曹から入った人が相当おるその人を先に優先してやらないのですか。答申は、それらをも含めて、弁護士出身の裁判官、検察官について退職金の問題の考慮をしなきゃならぬ、こうはっきり書いているのですよ。それが先じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/163
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164・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) そのとおりの答申もありまするし、それらの点も考えられたわけでございます。この際はこの提案にとどめ、そうして引き続きそういう問題について検討をやっていくというような意味に私どもは了承しているわけでございます。そいつをここで打ち切ってほったらかすという意味には聞いていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/164
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165・亀田得治
○亀田得治君 私は、そこが、法曹一元問題に対する取り組み方が本気であるかないか、やっぱり分かれ目が出てくると思うんですよ。ほんとうに在野の諸君にもっと裁判機構の中に入ってほしいという気持ちが最高裁なりあるいは法務大臣、内閣等にあれば、私はやっぱり下級審のそういう立場にある裁判官、検察官の方の問題を先に取り上げてくれたと思う。本気じゃないじゃないですか、それでは。せっかく出てきてくれと、こう言いながら、キャリアの最高裁の裁判官だけ先によけいお金をもらうような改正をやる。私は、これは金額の問題じゃないと思うんですよ、そういうことになりますと。本気に司法制度を答申のような線でやる決意があるのかないのかということなんです。それがないものですから、あの答申に基づいていろいろな法律案を政府のほうでおつくりになる、そうすると、弁護士会その他から、なんだ、自分の都合のいいところだけとってきて立案するのはおかしいというような立場からの反対論が起こるわけでして、私は、そういう反対論等に対する立場から言っても、はなはだ今回の措置は遺憾だと思っているんですよ。できましたら、山田裁判官が何か今月の二十日過ぎのようでありますが、しかし、私は、これはさかのぼってでも山田裁判官に対する措置はできると思うんですよ。できますよ、やろうと思えば。過ぎ去ったことでも、この際キャリアの裁判官にみんな一ぺん金を払ってしまうんだというふうなことまでこれは法案でやれるのですから、山田裁判官が退職されても、あとから追加して法的な措置というものは私はできると思う、実体さえみんなが了解しておれば。山田さんということを口実にして早うこの法律を通してくれ通してくれということを非常に言われるわけですが、われわれは山田裁判官に決してそんな意地悪をしようという気持ちはありません。ありませんけれども、法曹一元制度に対する取り細みという点からいったら、はなはだ今回のような措置はまずいと私は考えるわけです。そういうような意味で、ゆっくりやはり検討して、そうしてそういうあとから変な批判を受けることのないような中身にして、そうして法律をつくるべきじゃないかというふうに考えるのですが、法務大臣、どうですか、どうしても山田裁判官の問題があるからこれは急ぐのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/165
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166・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) これは、今度こういう問題を提案いたして出したのは、これを通していただきたいから出したわけでございます。あとの問題は、さっきから申し上げたように、その方向に向かってやりたいし、また、その研究もいたします。それからわれわれはそれをいいかげんにほったらかしておくという心持ちもないのでございますけれども、一般の下級裁判所の判事全体の問題になりますと、これが及ぼす影響がほかのほうの関係の退職問題等にも退職関係の触れ合い等もいろいろたくさん起こってくる問題が多いものでございますから、なかなかそう急にというわけにはいかない。おっしゃるように、それも出してゆっくりとやれと。一元化というものが大事であって、ここの問題は別だと言うてしまえばそれまでのことでございますけれども、一つ一つもしこれに御賛成を得て離して通すことができますれば、一歩々々前進ということに御賛成を願いたいという意味でこれを出したのでございまして、あとのほうも続いて研究をやっておりまするし、また、その方向に進んで皆さんの御協力をお願いするという心持ちも変わらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/166
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167・亀田得治
○亀田得治君 法務大臣が来られるまでに、稲葉君からも答申の支章を指摘しまして御質問もあったのですが、先ほど稲葉君が指摘しなかった点についてもう一つ私から指摘しにおきますが、たとえば「意見書」の一五三ページです。稲葉君が先ほど二ヶ所ほど指摘されましたが、さらに一五三ページに同じ問題についてさらに詳しく指摘しております。ことでは「キャリアの裁判官及び検察官に関する限り、特段の不都合は認められないのであるが、」とはっきり書いてある。「弁護士から裁判官又は検察官となった者が退職した場合においては、退職後の保障に欠ける面がある。」退職金制度について、弁護士からの出身者についてもっと考えろということだけを書いているのではないのであって、キャリアの裁判官、検察官に対しては特段の不都合は認められないとはっきり言っている。財政が苦しい苦しいということを言っているときに、そうして一般の下級裁判所の裁判官等についても十分なことができておらないときに、最高裁の裁判官はそうしょっちゅうかわるものじゃありませんから、そのことのために国が背負いきれぬような負担をこうむるということは、私はもちろん考えておりません。おりませんけれども、しかしこれは意気込みですよ。気持ちの問題ですよ。なぜそういう当面の問題としては特段の不都合は認められないというふうにさえ言っておるところに金を差し向けるのですか。調査会の「意見書」の趣旨を体してとかなんとかいうような体裁のいい説明をしておりますけれども、明らかにこれは「意見書」の無視ですよ、今度の措置は。まあたいがいのことは、ことばというものは便利で、適当に説明するとつじつまが合いますけれども、今度の措置に限っては、これはもう答申の「意見書」に衝突しておりますよ、はっきりと。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/167
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168・塩野宜慶
○政府委員(塩野宜慶君) 先ほど私から御説明申し上げましたように、御指摘のように「意見書」には記載してございますが、問題は、弁護士から裁判官、検察官になった者について問題があるということを指摘しておられることは、そのとおりでございます。しかしながら、いわゆるキャリアの裁判官につきましても、全体の問題といたしましてその待遇を改善するということは臨司の趣旨全体に流れている趣旨であろうと思いますので、必ずしも今回のような特例法が臨司の御趣旨に反するものであるというふうには私どもは考えていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/168
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169・亀田得治
○亀田得治君 そういう意味のことをあなたが何べんも繰り返して言うわけですけれども、裁判官、検察官の給与について一般の行政官と違うそういう特質を生かしたところの独自の体系というものはつくらなきゃならぬと、これは臨司でもそう言っておるわけですね、あなたも言うとおり。しかし、それは急にはできない、法曹一元制度とからむわけですからね。私たちもそう思っておるんです。法曹一元制度がほんとに前進することになれば、弁護士収入などとも勘案していかなきゃならぬだろうし、非常に変えなきゃならぬというふうにはぼくらも思っておる。しかし、それは先のことなんです。しかし当面これだけのことは急いでやりなさいというのがこの調査会の結論なんです。その急いでやる中にいろいろ書いてあって、その一つとして弁護士からの裁判官の退職金のことを言うて、その中では、先ほど読み上げたように、キャリアの裁判官、検察官に関する限り特段の不都合は認められない、こう言っておるわけでしてね。あなたがどんなにじょうずに総論のところだけの都合のいいところを引いてきて、そうして上げることについての裏づけのすべに持っていこうというのは、これは矛盾しておりますよ、この点何と言っても。私たちは、こういう法律案が出される前でありましたら、ほんとうに徹底的に論議をしたいと思うところです。しかし、なかなかこうして法案が出てきますと、原案をつっぱる立場で説明される気持ちはわかりますけれども、どうもわれわれ法務委員として釈然としない。こういうものを認めるということは、われわれ自身が調査会の答申というものを何か軽く見、したがって、また、もう法曹一元といったような問題をも放棄するようなふうに外部からはとられるわけでして、はなはだこれは残念です。だから、慎重に検討して、そういうふうな疑いを持たれないように、何とか参議院の法務委員会で直してもらうということができれば一番いいと思っているんです。これは理事さんにもお願いするわけですが、先ほども申し上げたように、当面の山田さんの問題は、これは追加払いもできるのですよ。そういうことをしておっちゃいかぬということはこの調査会の「意見書」にも書いてあるのですから、退職の日におくれたからといってそれを補正する法律をつくっても、だれも文句は言いません。そういう立場に立って、ひとつほんとうに何とかならぬものだろうか。決して党派的な立場で言うわけじゃないわけでして、これはひとつ理事会の皆さんにお願いしたいと思っております。
いろいろ細かいこともたくさんあるわけですが、時間もだいぶんずれておりますので、臨司との関係の基本的なことだけで一応これで中止しますが、できましたら、何とかいい相談をしてもらえぬだろうかと思っております。ひとつ委員長に取り計らい方をお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/169
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170・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をとめて
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/170
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171・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/171
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172・亀田得治
○亀田得治君 それじゃ、最後に一言確かめておきたいと思いますが、今回の法案はいたし方ないとして、次の通常国会までに、弁護士出身の裁判官、検察官で下級審どまりという方、それらの人に対する退職金をさらによくするという問題につきまして、ひとつ具体的な案を出すように努力してもらいたいと思いますが、お答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/172
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173・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) ただいまの提案は、よく含んでおきまして、そういう御趣旨に沿うように努力を続けていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/173
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174・岸盛一
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 裁判所といたしましても、法務省とよく連絡をとりまして、それを目標にできる限りの努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/174
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175・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 他に御発言もなければ、本案の質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/175
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176・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/176
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177・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 委員の異動について御報告いたします。
本日、上原正吉君及び安井謙君が委員を辞任され、その補欠として楠正俊君、近藤英一郎君が委員に選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/177
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178・和泉覚
○委員長(和泉覚君) それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
なお、修正意見のある方は、討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/178
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179・松野孝一
○松野孝一君 私は、自由民主党を代表して、本法律案に対し、ただいま皆さまのところに配付いたしましたようなその施行期日に関する修正案を提出するとともに、その他の部分については賛成するものでありまして、修正案をちょっと朗読いたします。
最高裁判所裁判官退職手当特例法案に対す
る修正案
最高裁判所裁判官退職手当特例法案の一部を次
のように修正する。
附則第一項中「昭和四十一年四月一日」を「公布
の日」に改める。というものであります。
本法律案の内容は、最高裁判所の使命と同裁判官の職責にかんがみ相当と認められますが、さきに臨時司法制度調査会から提出された意見の次第もあり、政府において下級裁判所裁判官及び検察官の処遇、特に弁護士から任官した裁判官並びに検察官の優遇措置につきましてすみやかに検討成案されんことを特に要望いたしまして、討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/179
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180・山田徹一
○山田徹一君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております最高裁判所裁判官退職手当特例法案の修正議決に対し、賛成の討論を行ないます。
本法案によれば、民間より最高裁裁判官となった人に対しても退職金が増額することとなり、その趣旨には賛成するものであります。しかし、この改正によって、一般裁判官から上がった者についても同額の退職金の増額となるものであり、この場合は退職金が急増するということになります。この点については、臨時司法制度調査会の意見の真のねらいからあまりにもかけ離れており、不満の念を禁じ得ませんが、今後さらに民間登用の裁判官の退職金を是正するよう、強く意見を申し述べます。また、最高検の検察官などについての退職金と一般裁判官の給与改善もなされるよう強く要望申し上げて、賛成の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/180
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181・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 他に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/181
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182・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより最高裁判所裁判官退職手当特例法案について採決に入ります。
まず、松野君提出の修正案を問題に供します。松野君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/182
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183・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 多数と認めます。よって、松野君提出の修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/183
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184・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は多数をもって可決されました。
以上の結果、本案は、多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/184
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185・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
午後三時まで休憩いたします。
午後二時三十三分休憩
―――――・―――――
午後三時二十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/185
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186・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、選挙違反事件に関する件について調査を行ないます。亀田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/186
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187・亀田得治
○亀田得治君 前回質問いたしまして、さらに続行することを留保してありました塚田元新潟県知事の選挙違反事件、これにつきまして質問をしたいと思いますが、初めに、法務当局より、いままでの経過、それから不起訴にした理由、そういったようなことにつきまして、もう結論が出ておるわけですから、詳細に説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/187
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188・津田實
○政府委員(津田實君) ただいまお尋ねの前新潟県知事に対する被疑事件につきましての、不起訴になりました経緯並びにその理由を御説明いたします。
本件の被疑事実は、承御知のとおり、告発によるものでありますが、検察庁独自にも判断をいたしまして、かような被疑事実として捜査を開始したものであります。
被疑者塚田は、昭和三十六年十二月に新潟県知事になり、昭和四十年十一月十四日施行の同県知事選挙に当選し、昭和四十一年三月二十八日辞任したものである。その他の被疑者は、これは県会議員四十二名でありますが、いずれも自民党所属の同県県会議員であります。
被疑者塚田は、右昭和四十年十一月の選挙に、自己の当選を得る目的をもって、立候補前である同年七月十七日ごろから同年八月下旬ごろまでの間に、四十二回にわたりまして、被疑者鈴木太吉ら合計四十二名に対し、自己に有利な選挙運動を依頼する趣旨のもとに、その報酬として各現金二十万円を供与した事実、被疑者鈴木太吉ら四十二名は、塚田から前回趣旨のもとに現金を供与するものであることを知りながら各現金二十万円の供与を受けたものであるという被疑事実を中心にいたしまして捜査をいたしたわけであります。
これに対しまして、去る十一日に、犯罪の嫌疑不十分として不起訴の処分をいたしましたが、その理由を御説明申し上げます。
不起訴の理由につきましては、従来、この内容に照らしまして、理由そのものは申し上げておったわけでありますけれども、理由の詳細、ことに検察官の認定した内容につきましては申し上げることを差し控えさせていただいておったわけであります。しかしながら、本件は、相当の事実が半ば公然公知の事実になっております関係上、さような事柄だけでは御説明として相当でないというふうに判断いたしますがゆえに、本件に限りましてはなお詳細について検察官の認定を申し上げる次第であります。
本件は、自民党県会議員の飯塚宗久氏ら九名が、昭和四十年十一月十四日の新潟県知事選挙を目前に控えました同年十月二十日、右塚田からかねて中元として受け取った現金二十万円について、時期的に選挙に関連し、疑惑を招くおそれがあるとして同知事に返金をいたしまして、直ちにその旨を新聞発表をいたしました。次いで、社会党新潟県本部執行委員長杉山善太郎が塚田を被告発人として告発に及ぶとともに、直ちにその旨の新聞発表を行なうことに端を発した事件であります。
したがいまして、本件の捜査に着手いたします以前にすでに本件の内容がある程度世上に喧伝されておりまして、公然の事実となったという部分もあり、本件関係者のうちにはこれを政治的に利用しようと画策する者もあり、自然その供述にも事実をひどく歪曲し、もしくは誇張する疑いのあるものがございまして、事案の真相の把握がきわめて困難な状況にあったのであります。
そこで、検察庁といたしましては、自民党系県議会議員全員等につき取り調べを進めますとともに、県議会議員四名を含む数名を逮捕勾留いたしまして取り調べたほか、県庁知事室等十数カ所に押収捜査を実施いたしまして、鋭意真相の糾明につとめた次第であります。
まず、被疑者塚田に関しましては、被疑者塚田が被疑者鈴木太吉ら合計四十二名に対しましてそれぞれ現金二十万円を贈与または提供した事実につきましては、証拠によってこれは明白であります。しかし、現金を贈与または提供した趣旨につきましては、種々の弁解がなされておるのでありまして、塚田本人の主張といたしましてはおおよそ次のごとくなるようであります。知事選では自分は独走態勢にあったので、知事選目当ての運動報酬などを出す必要はなく、その意思もなかった。あくまでも党公認で当選した党人知事として、党活動を通じて県政に協力してくれた個々の県会議員に対して、任期満了を真近に控え、中元の機会に、四年間の締めくくりをつける意味で、党の慣例に従い、党人たる県会議員に贈与したものであるというような主張になっております。
かような主張を弁解と考えまして、諸般の証拠をさらに厳密に吟味いたしましたところ、積極、消極いろいろな観点から考えられるわけであります。
まず、塚田の立候補の決意の時期についてでありますが、これはすこぶる簡単な問題でありますが、塚田が、本件金員授受の当時、すでに再選を期し、立候補の決意を持っていましたことは、これを認むるに十分でありまして、塚田は、すでに昭和三十六年十二月の知事選挙で当選したときからすでに再選を期していたことであり、また、昭和四十年一月の定例年頭記者会見においても現役のまま再出馬の意図であるという意図を表明いたしておりますし、また、昨年七月上旬ごろ自民党県連幹事長に対しまして再出馬の手続を依頼したというような事実もあるようでありまして、その点は明白であると考えられます。
次に、いわゆる塚田知事の独走態勢という問題があります。これは主として当時の新潟県政関係の基盤となる状況でありますが、当時の県会をめぐる政治情勢を見まするに、同年七月九日から二十四日までの間開会されておりました定例県議会におきましては、与野党の県会議員が、近く行なわれる知事選挙を控えて、塚田知事の再選をめぐって激しいいわゆる攻防戦なるものを展開したというようなことが見られるわけであります。しこうして、社会党は、昨年の七月上旬ごろから、吉浦副知事に対しまして知事選への立候補を促す一方、自民党国会議員の一部もまたこれに同調いたしましたため、七月中旬ごろには吉浦も立候補するのではないかという風評が県会の内外に流れまして、被疑者塚田もこれを知る機会があったと認められるのであります。その後、八月一日に至りまして、社会党県本部は吉浦を推薦する旨新聞に発表いたしました。続いて、同月十日、吉浦は党県本部に受諾の意図を表明いたしました。翌十一日、吉補自身も立候補の意図を正式に表明するという経過をたどったことは明らかであります。
以上のような県会内外における動向によりまして、被疑者塚田のいわゆる独走態勢が七月中旬ごろから動揺し始めた状況が推断されるのでありまして、本件金員贈与は、選挙を目標にして行なわれたと疑う余地はあるわけであります。
そこで、この点に関しまして、被疑者塚田の主観はどうであったかということでありますが、塚田は、昭和三十六年十二月知事に当選以来、再選を期して県政に励んでおり、相当の実績をあげたと自認しておるわけです。塚田といたしましては、保守系より対立候補があらわれず、独走態勢が続くものと確信していたということが本人の意識の上にあったわけであります。
ところで、先ほど申し上げましたとおり、七月中旬ごろから吉浦立候補の風評が流れて動揺したかどうかという点でありますが、この点につきましては、八月初めに吉浦が立候補するのではないかという情報があったが、自分の県政における実績と、自分の直近の部下であった吉浦副知事がまさか知事選に限っては出馬することはあるまいということと、もう一つは、吉浦の接触する各方面でその吉浦の立候補を思いとどまらされるのではないかというようなことを確信しておったということについて、塚田自身はさような主観にあったということが推測されるわけであります。
一方、この点に関しまして、吉浦は、七月初旬から社会党から立候補を促されて、漸次その決意を固めていたが、具体的意図は相手方に一切示さなかった。八月五日に日比谷の日活国際会館における社会党・自民党国会議員団の会合で立候補の要請を受けたが、それに対しても最後まで確答を避けている。その後、相談する方面に相談した結果、同月十一日に立候補の声明をしたと、かようなことになっているようであります。
以上のような塚田関係の周囲の関係がございますと同時に、八月上旬から八月九日ごろまで、すなわち吉浦立候補決意の直前までの間には、これを立候補を断念させようというふうに動いたという証拠もございます。また、吉浦が七月二十日自治省参事官に任ぜられ、二十九日に赴任をし、八月十一日正式立候補を声明するまではその自治省参事官の地位にとどまっておったという事実もございます。
かようなことを総合して考えますると、被疑者塚田が八月九日ごろまでは自己の独走態勢を信じておった、また、かりに吉浦が立候補しても問題にならないと考えていたという塚田自身の主張なり弁解というものは、これは一がいに排斥することはできない状況にあるのであります。
本件金員の授受は、時期的に見ますと明らかなように、四十二件中四件を除きましては、いずれも独走態勢を確信していた八月九日以前に行なわれた授受であります。したがいまして、この点からもその趣旨を判断するに問題点があるわけであります。
次に、現金供与の態様についてでありますが、塚田は、新潟県知事就任以来、県費で支出する儀礼的なせんべつ等は別といたしまして、本件のように多数の県会議員に一律に現金を中元あるいは歳暮として贈ったという事実はなかったわけであります。しかして、相手方を知事公舎または知事室等に呼び出しまして、手軽にハトロン紙封筒に入れた現金を手渡す方法をとっていることは、通常儀礼的な中元としてはいささか異例に見られる点があるわけでありますが、その反面、塚田自身も、党活動に関する党人同志の贈答であるため、きわめて気軽な気持ちで手渡したということをも推測されるわけであります。また、かりに選挙目的であったといたしますれば、被疑者塚田が自民県議ほとんど全員に対し何ら警戒することもなく一律に半ば公然とみずから直接現金を供与したことは、選挙経験の豊富な者の所為としてはきわめて不自然でありまして、供与の態様自体からは、一がいに選挙目的で供与したものと断定することは困難であります。
次に、供与を受けた者の側から考えてみますと、受供与者のうち多数の者は、塚田知事は県政協力に対する謝礼の意味のほかに知事選の際によろしくという意味を含んでおったという旨を陳述している者もあり、かような立候補をめぐる選挙情勢を考え合わせると、本件金員の授受が選挙目的で行なわれたものと疑う余地はあるわけであります。
そこで、金員授受の趣旨に関する部分の諸般の証拠についての信憑性を検討いたしますと、これに関する供述は取り調べの過程において相当変遷がありまして、かつ主観的な推測を述べたものが多く、裏づけとなる補強証拠はほとんどないのが状況であります。
元来、本件金員の贈与は、被疑者塚田が終始全く単独で行なったものでありまして、その状況を判断する資料としては、塚田と各受供与者の供述以外にはこれを補強するものは存在しないのであります。で、被疑者塚田は個々の県会議員に本件金員を贈与する際、お中元ですという程度のあいさつをし、また、これを受け取った議員も、深くその意味をせんさくせず、簡単に礼を述べただけでありまして、知事選挙のことに触れる話があったとか、その他選挙運動を依頼する何らかの言動があったという点につきましては、証拠はありません。本件の証拠判断をする上におきましてこの点はきわめて看過しがたいところでありまして、本件金員が選挙目的で授受されたのが真相であるとすれば、被疑者塚田とその余の四十二人という多数の被疑者の間に知事選のことに触れた話題が出るのが自然であると思われるのに、さような話があったという証拠は見当たらないのであります。
一方、受供与者側の被疑者が、選挙運動の報酬を含めた趣旨であったと供述していることもあるわけでありますが、立候補をめぐる選挙情勢などといたしまして塚田知事の意思をそんたくした結果にすきないと認められる点が一つあります。いわば一方的な憶測であり、これも直ちに被疑者塚田の金員供与の趣旨を判断するきめ手とすることには必ずしも適切でないと考えられるわけであります。
ことに、先ほど申し上げましたように、本件捜査はすでに事実が半ば公然と喧伝されてから行なわれたものでありますので、受供与者の中にはことさら趣旨をあいまいにする者がある反面、また、受供与者の中には誇張し粉飾があるのではないかと疑われるようなものもありまして、補強証拠に乏しいこれらの供述は直ちにそのまま信用することは困難であります。
次に、塚田の主張になっております党人同志間の金銭贈与の問題でありますが、被疑者の塚田の主張は、本件金員授受が党人同志間の慣例的なものにすぎないということが言われております。党の公認によって当選した党人知事として、党の慣例に従って党人議員に対し党活動の一環としてたまたま中元の時期に贈ったということ、これはまた、一部議員だけに贈与してはかえって不公平、党活動に支障を来たすので、与党議員全員に対して金銭を贈与した、たまたま中元の時期であったし、知事任期が終わりに近かったので、お中元ということで贈与したというようなことが弁解されております。
党人同志間問の右のような問題の慣例があるかどうかという点は、これは証拠上はっきりすることはできませんが、一般に党人の同志的な交際を通じまして、選挙の際陣中見舞い、地盤培養のための資金、あるいは盆暮れに必要な資金など、党人同志にある程度の金銭の贈与が事実上行なわれることがあることは認められるのでありまして、関係者の中には、塚田知事が党の親分として自己の地盤培養のために配下にあるわれわれ党人議員に対し随時党活動資金をくれたというような供述をなしている者もあります。また、被疑者塚田から陣中見舞い、盆暮れに若干の現金をもらったというような者もあるわけです。したがいまして、本件の場合も、かような党活動の一環という意味における金銭の授受が行なわれたという主張は、一がいにこれを排斥することができないわけであります。したがいまして、知事選挙数ヶ月後に迫ったとしても、これをもって直ちに公職選挙法上の買収行為と認定することはいささか困難であるわけであります。
次は、県政協力の謝礼であるかどうかという問題、謝礼であるということであればどうなるかという問題であります。
被疑者塚田は、本件金員は県政協力の謝礼として贈与したというような主張がありますが、大部分の関係者にはこれに照応する主張があります。県知事が県会議員に対し金銭を贈与することは、その趣旨いかんにより画しては刑法上贈収賄罪を構成することがあり得ることは当然であります。しかしながら、その点に関しましては、党人として党活動を通じて県政に協力してもらった謝礼として党の慣例に従って党人議員に贈与するという一つの弁解があります。この弁解は、直ちにこれをくつがえすに足りる証拠は存在しません。問題は、また、かりにそれが党と無関係に県会議員に贈られたものといたしましても、具体的に県会のいかなる議事の運営に関して、いかなる協力をしたかということは証拠上つまびらかではありません。ことに、県会議員あるいは国会議員というようなかなり広範な職務権限のある者に対する贈収賄ということになりますと、その職務との関係につきましては非常に問題点が多いことは、すでに過去の例において示されているところであります。
以上、塚田につきまして種々の観点からしさいに検討いたしましたが、本件金員の贈与は、選挙運動の報酬の趣旨で行なわれたと疑う余地がないでもありませんが、これを裏づける明確な証拠には乏しく、他面、党人同志間の一般党活動に関連する金銭贈与にすぎないとの弁解をくつがえすだけの証拠もなく、結局、とうてい公訴を維持するに足る証拠がないと判断するのほかはなく、嫌疑不十分であると認めるのが相当であると考えたわけであります。
なお、鈴木太吉ら四十二名につきましては、被疑者塚田について嫌疑不十分であります以上、本件金員の授受に関する個々の事情や金員の趣旨に対する認識のいかんを問うまでもなく、同様に嫌疑不十分と裁定せざるを得ないことは明白であります。
以上の理由から、本件被疑者全員に対しまして、嫌疑不十分として不起訴の処分を行なったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/188
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189・亀田得治
○亀田得治君 ゆっくり具体的にお聞きしていきたいと思いますが、まず、最初に、塚田氏がこのために出した金、これは総額幾らになりますか。計算すればわかりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/189
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190・津田實
○政府委員(津田實君) 二十万円ずつ四十二人でありますから、八百四十万円であります、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/190
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191・亀田得治
○亀田得治君 この金の出所はどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/191
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192・津田實
○政府委員(津田實君) この金は、塚田個人が借り入れたものでありまして、公金とは全然関係はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/192
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193・亀田得治
○亀田得治君 それはどこから借りたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/193
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194・津田實
○政府委員(津田實君) 本件は不起訴処分になっておりますので、借り出し先はこれは一々申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/194
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195・亀田得治
○亀田得治君 不起訴処分であろうが、何であろうが、みな疑惑を持って見ているわけですから、すぐ不起訴処分だからというて逃げるわけにはいかぬ、これは。こういう事件は、もっとそういう点はわかっている限り明らかにしてほしいと思うのです。
それで、全体の選挙費用はどのくらいかかったのですか。帳簿を押収しているのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/195
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196・津田實
○政府委員(津田實君) 本件につきましては、関連事件につきましてはまだ処分未済でありますので、その点につきましては捜査中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/196
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197・亀田得治
○亀田得治君 選挙の出納関係の帳簿を押収していますね。その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/197
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198・津田實
○政府委員(津田實君) 出納帳簿を全部押収しているかどうか、ちょっといま私のほうでまだ調査いたしておりませんが、関係書類を押収していることは事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/198
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199・亀田得治
○亀田得治君 四十二名の県会議員に渡した問題が中心の問題になっておりますが、そのほかにも相当多数の金が出ているんじゃありませんか。それは帳簿によってわかっておるはずです。その点はどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/199
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200・津田實
○政府委員(津田實君) 本件のただいまお尋ねの問題点は、いま収支報告書の虚偽報告というものについて数名の被疑者を立てて捜査をして一おる事件は、先ほど申し上げました。そこで、本件について、ほかに金員の出入りがあるかどうかということなんでありますが、本件は、先ほど被疑事実として申し上げました問題を中心にして捜査をいたしたわけであります。で、関連事実がどの程度わかっておるかということは、いま私は承知いたしておりませんが、本件選挙関係の収支につきましては、報告をしておるという額は出ておりますけれども、それ以外にどういう収支があるのか、あるいはないのか、その点はいまのところ私どもにはわかっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/200
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201・亀田得治
○亀田得治君 なにも公式に届け出たのを私聞いているわけじゃないわけでして、二十万円事件のほかに相当金が全県下にばらまかれておるといったようなことをあわせて当然これはお調べ願っておると私は思っておったわけですが、そういう点はまだ捜査中なんですか、関連事件というのは。そんなあいまいなことではいかぬですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/201
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202・津田實
○政府委員(津田實君) 本件は、先ほど申し上げました被疑事実を中心にして行なわれ、関連事実について立件されているものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/202
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203・亀田得治
○亀田得治君 刑事局長、わからないと言われますが、押収した帳簿から相当そういう種類の金が出ておるということだけははっきりしておるんじゃないですか。金自体はそれがどういう意味のものであるかどうかといったようなことまでは突き詰めておらぬかもしれませんが、そういうこともわかっておらぬのですか。どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/203
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204・津田實
○政府委員(津田實君) その点は、どういう金の出入りがあったかということは押収帳簿の中にあるいは出ておるのかもしれませんが、その点は、その点を主眼にして調査したことは私はないだろうと思うのですが、私自身は現在知りませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/204
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205・亀田得治
○亀田得治君 これから調べてください、それは。これは二十万円事件にみんなが関心が集まり過ぎていて、ほかの問題が、何というのか、ついでに無視されてしまうということでは、これはたいへんな間違いでしてね。そういう帳簿を押収しておらぬというのなら別なんだが、選挙事務長に当たる人との関係から押収しておるはずですよ。そういうふうにぼくらは聞いておる。だから、それはこの二十万円事件よりももっと選挙に接着した時期の出入りのはずですから、それは調べてください。全然そういうものがないのならない、あればどういう内容のことか、関連事件として調べておるのなら調べておる、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/205
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206・津田實
○政府委員(津田實君) この事件の捜査の間に、捜査の端緒となるべきものがあれば、当然捜査を開始すべきはずでありますし、していると思いますが、捜査を開始しているということは事件を立件しているということなんですが、その立件しているということは私は聞いておりません。しかしながら、この事件の捜査の間においてそれだけの端緒を得ておるかどうかということは私はいま知りませんが、それは聞いてみます。聞いてみて、現在の段階においてその捜査がどうなっておるかということは一応検討してみることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/206
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207・亀田得治
○亀田得治君 それから、県会の開会中に四名の県会議員を逮捕しておりますが、この被逮捕者の供述はどういうことになっておりますか、この二十万円の性格について。それが四人あるわけですが、一人ずつ明らかにしてほしいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/207
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208・津田實
○政府委員(津田實君) 県会議員四名を逮捕いたしましたのは、十二月県会の最終日であります。最終日に逮捕いたしました理由は、県会が閉会になりますと同時にみんな散ってしまうわけですから、その意味において最終日に逮捕したということになっておるようであります。しかしながら、当該逮捕者の個別の供述につきましては、これは事件の具体的証拠の内容に関する事項でありますので、申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/208
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209・亀田得治
○亀田得治君 知事選に関する協力の意味も含むというふうに被疑者の中でしゃべっているのもおるということなんですが、それは何名そういう者がおるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/209
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210・津田實
○政府委員(津田實君) 具体的事件の供述内容の色分けにつきましては、説明することを差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/210
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211・亀田得治
○亀田得治君 いや、そういうことでは、この二十万円事件についての報告が納得がいかぬわけなんです。どうせこれは、なんでしょう、告発であって検察庁が手をつけるまでに、知事もそれから金を贈られたほうも、みな話し合う機会というものがあるわけなんですがね。だから、そういう点で検察庁が苦労されたということがわかるわけですが、それにもかかわらず若干名の者は選挙の意味も含むということを言っておるということは、これは、重大なことなんです、この点は。大体、ああいう場合には、なんですよ、選挙のことがお互いにわかっておる諸君だし、そんなものすぐ打ち合わせというものは行なわれますよ。なにもいい悪いは別です。現実の姿で。それにもかかわらず、検察官から追及されて、そうして知事選挙のことも含むという意味のことを言っておる者がおるということは、これは検察庁としては非常に有利なやっぱり一つのきめ手なんです。そんな程度のややこしい、全体の数から見たらば数が少ないといったような見方は、これは国民は納得せぬ。そういう打ち合わせが十分できるような状態であるにもかかわらず、追及された結果、その趣旨を認めざるを得なかった者がおるということは、私はこれは重大だと思う。それで聞いておるわけです。それはまあ名前までは遠慮してもいい。一体何人かと、これくらいはあなたに明らかにしてもらわぬといかぬじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/211
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212・津田實
○政府委員(津田實君) 先ほども申し上げましたように、本件受供与者の供述内容につきましては、これは相当変遷がございます。本件は新聞発表が行なわれた後において捜査が開始しておるということ、それから新潟県会をめぐる諸般の政治情勢というものは必ずしも単純なものではなかったというような事実から見まして、その受供与者側の供述というものは十分吟味する必要がある。形式的にその趣旨が入っておるとか入っておらないとかいうような供述を自然のまましておるというものをそのまま信憑することがきるかどうかということが非常に問題のある事件でありまして、一般論としてそういう不利益なことを認めるということについては非常に有力なきめ手だという議論も成り立ち得ると思いますけれども、その背景そのものから考えます場合に、個々の供述の信憑性というものは十分検討評価をしなければならぬというふうに考えます。
そこで、先ほども申し上げましたように、さような供述をしておる者もあるということを申し上げたわけですが、さような供述があるということは事実でございますけれども、しかしながら、その信憑力の問題は、あげて全証拠を検討した者でなければその心証というものは出てこないと私は思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/212
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213・亀田得治
○亀田得治君 しかし、あなた、もらった本人がそういう供述をしておるということは、この種の選挙においてはきわめて重要なことじゃありませんか。そういう供述を、いや、全体の証拠の関係だとかなんとか言ってむしろ検察庁のほうはわざわざ薄めて、弱めて、消していっているんじゃないですか。そうでないならない、何人の者がそういうことを言っておるのか、その言った時点というのはどの時点か、そういうことを明らかにしてください。私たちもそれは一つの大きな判断の基準ですからね。明らかにしてください、人数なり時点なり。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/213
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214・津田實
○政府委員(津田實君) 御承知のとおり、選挙違反あるいは贈収賄の事件につきまして受供与者が明白に述べておるというような事件は、しばしばあるわけであります。しかしながら、それにもかかわらず、最終的に有罪の得られない事件も相当にあることは、御承知のとおりであります。したがいまして、自己に不利益なことを受供与者が言ったということから、すぐにそれが真実であるというふうにはなかなかつながらない。これは、従来の裁判例が示しておるところであります。したがいまして、検察官といたしましては、有罪の判決を得る確信がなければ起訴すべきでないという方針を堅持しております以上、いまのような証拠の価値判断というものは、あげて当該検察官あるいは取り調べを担当した全検察官の心証にかかる問題であろうというふうに私どもは考えておる次第でございます。そこで、具体的事件の何人がどう言ったかこう言ったかという数の問題は、やはりいまとなっては重要な問題では私はないと思いますけれども、数の問題につきましては具体的な事件の捜査内容に入るわけです。そこで、具体的事件の捜査内容につきましてこれを明らかにいたしますことは、将来の検察権の運営に非常な障害になります、この事件は不起訴事件でありますけれども。その意味で、従来から、将来の検察権に重要な障害を来たすような事項につきましては御説明をすることを差し控えさせていただいておる、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/214
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215・亀田得治
○亀田得治君 将来の検察権の行使に悪影響などは私は少しも出てこないと思うんですよ。それだけ世間がおかしいと思っておる問題ですからね。自白が何名あったけれども、これこれの理由でその自白を信用しないのだというなら、もっとそのことをはっきりすべきじゃないですか。選挙違反では、たとえば五百円とか三百円とかそういうものについて、検察官が、あるいは警察が、買収、供応といったような立場からの供述を求めておるものがたくさんありますよ。あなた、被供応者が言ったことがそんな簡単に検察官のほうから信用できないといったようなことは、これは私はおかしいと思う。そういう処理をしたこと自身世間が疑うわけですからね、なぜそういう処理をしたのかと。四人なら四人の方があるなら、そのことを明らかにしてもらって、この人の言うのはこう言っているけれども、こういう事情でそれは信用できないというなら、それは言うてはっきりしなきゃいかぬじゃないですか。これは納得いかぬですよ。どういうことなんですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/215
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216・津田實
○政府委員(津田實君) 御承知のとおり、起訴いたしました事件においては、その点の有罪を得る場合には公判廷におきまして立証もいたします。弁護人の防御の活動もあります。そこでその内容は明らかになります。しかしながら、不起訴事件については、その内容は明らかになりません。明らかに検察官は本件については嫌疑不十分であるという判断をいたしております。そこで、それじゃどういう理由でと申しますと、先ほど来申し上げました理由は、これは不起訴裁定の理由と非常に近いものであります。ただし、具体的の何某の供述ということはここでは申し上げておらぬわけであります。そこで、具体的内容につきまして一々これを明らかにいたしますことは、本来言えば、不起訴事件については刑事訴訟上公にしないたてまえになっております。ただ、国会の国政御調査に対してどの程度まで明らかにすべきかという問題──本日申し上げましたことは、これは一般的にはとうてい申し上げられないことでございます。しかしながら、検察といえども、将来の検察権の運営のためには被疑者、関係人──まあ被疑者は別といたしまして、関係者の十分な協力を得なければ検察権の行使はできません。そこで、検察権の行使のためには関係者の協力を得る。ことに、任意処分をたてまえといたします刑事訴訟におきましては、当然のことであります。そこで、具体的内容を不起訴事件について申し上げますことは、要するに将来のそれらの協力者に協力を得られないことに追い込む結果になるので、従来から具体的内容につきましては御説明することを差し控えさせていただいておるわけであります。このことは、すなわち、将来の検察権の運用に重大な障害があるから、控えさせていただくやむを得ない事情にあるわけであります。
そこで、この不起訴処分の内容につきましては、すでに検察審査会に申し立てがなされておって、検察審査会におきましては十分その点については調査されるはずであります。これは検察庁の不起訴処分について直接調査される機関でありますので、そこにおいてその内容は明らかになることは当然であると私は思いまして、検察官自体の独善的な処分を行なっておるということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/216
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217・亀田得治
○亀田得治君 まあとにかく、検察への国民の協力ということは、そういう不起訴処分の供述内容をしゃべるとかしゃべらぬとか、そんなところから来るのではなしに、やはり検察官が政治権力に屈しないでそうして公正にやっているという、そういう信頼が失われては、そんな協力なんかは出てきませんよ。自分の検察庁に言うたことがちょっと漏れたとか漏れぬとか、実際のところそんなことはたいして気にしませんよ。そういうことよりも、いや、いくら協力して何したって、最後は上から押さえられて変なことになってしまうと、そういう疑惑のほうがよほど大事なんです。だから、私は洗いざらい──普通はそこまでは聞かないことなんですが、明らかにしてほしい、こう言うておるわけなんです。一々の名前が言いにくかったらA、B、C、Dといったような符号でもいいわけなんです。だから、そういう意味で聞いているわけですから、これはもう思い切ってもっと中身を説明されたほうが私はいいと思う。
それから、先ほどの説明の中で、党の慣例ということを数回言われているわけです。塚田知事にはそういう慣例というものはあるんですか。しかも、二十万円を四十二名の方に渡すといったようなそういうことを慣例として認められるようなことがあるんですか。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/217
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218・津田實
○政府委員(津田實君) 個々の党の県会議員その他党関係の者に金銭を渡しておるという例は、これはあります。しかしながら、本件が問題になっているのは、二十万円という金を一律に渡したというようなことが本件の問題になっていることであろうと考えます。そこで、そういう意味においては本件の金員の授受のしかたは異例なことであるということなんですけれども、党の慣例と申しますと、党人相互間の先ほども申し上げました陣中見舞いであるとかあるいは地盤培養資金であるとかいうようものの授受が行なわれているという慣例があるということを申し上げておるわけでございます。二十万円ずつ渡している慣例があるということを申し上げておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/218
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219・亀田得治
○亀田得治君 それじゃ、党の慣例というのは、どの程度はっきり具体的に捜査の中でつかんでおられるんですか。そんなことをよく言いますよ。やくざもそういうことを言いますよ、因ると。「いや、そんな金はいつでも使っておる」とか、「今度だけじゃない」とか、使わぬ者でもそういうふうに言いますよ。だから、そんな党の慣例というようなことを言うのであれば、ほんとうに捜査の過程の中でそういうことをはっきりつかんでおられるんですか。それは塚田さんのことだから、多少の金は適当な方に渡しておることもあるだろうが、それでもけっこうですよ。じゃそれならそおられるのか、ちっともはっきりしないじゃないですか。だろうというようなことじゃ了承できないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/219
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220・津田實
○政府委員(津田實君) 党の慣例と申しますか、党人として渡している事実はございます。しかし、本件の金がそれに当たるかどうかということは問題になるわけであります。党人間の金であるから直ちにそれがよろしいんだということを私どもは言っておるわけではございません。しかしながら、党人間のそういう意味の党活動を通じての協力に対する謝礼であるという主張に対して、一がいにそうでない、そうでなくてそれは選挙運動のものだというふうに認定するだけの証拠とはならない、こういうことを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/220
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221・亀田得治
○亀田得治君 だから、党人間問題として金を渡しておる、こうはっきり言われるんですが、捜査の中でそれじゃ塚田さんが知事になってからどれだけ渡したんですか、はっきりしてもらわなければ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/221
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222・津田實
○政府委員(津田實君) 具体的に一々は申し上げられませんが二十万ないし十万、五万というような金は相当数渡されている事例を調べております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/222
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223・亀田得治
○亀田得治君 それは、二十万、十万、五万、時期はみなばらばらなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/223
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224・津田實
○政府委員(津田實君) そうであります。したがいまして、本件が一律に渡されたということが異例であるということは、検察庁も十分認めて考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/224
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225・亀田得治
○亀田得治君 いや、それはあとの説明はわかりますよ。と同時に、世間が問題にするのは、異例だから問題にしているわけなんです。異例なことはわかっているんですよ。ただ、党人間の慣例というようなことをおっしゃって、その慣例が少しちょっとふくらまった程度のものだというようなことを塚田さんが言っているようだから、それで聞くわけなんですよ。それで、十万、二十万、五方とかいうのは、塚田さんが知事に就任してから何回お渡しになっているんです。検察庁としては何回それをつかんでおられるんですか。一々相手の名前などは聞きませんが、何回ぐらいなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/225
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226・津田實
○政府委員(津田實君) おもだったものにつきましてもやはり二十数回になっていると思いますが、それ以外のものにつきましてはどれだけあるか、その全部を当たっているわけではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/226
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227・亀田得治
○亀田得治君 それは知事になって以降のことですね、いまおっしゃったのは。そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/227
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228・津田實
○政府委員(津田實君) そのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/228
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229・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、知事になって以降というと、ずいぶん長い期間なんですよ。それから、われわれにしたって、そんな金額は、もっと少ないですが、いろいろな関係で渡す場合はずいぶんありますよ。そういうものとそれは比較にならないわけですよ、今度のは。その異例のことはあなたも認めているからいいですが、ただ、そういう比較にならぬようなことを塚田さんが持ち出すから、私は、一体しからば何回ぐらい渡しているのかということを聞きたくなっただけで、聞いてみますると、案の定、あなた、四年間に二十回、三十回。そんな程度の金を渡すということは、別に今度の問題と比較できるような問題じゃないですよ。だから、党人間の慣例的な気持ちで渡したといったようなことは、これは通じない。多少そういう点があったとしても、同時に知事選挙なんです。両方の意味が含まっておれば、やはり選挙違反になるでしょう。選挙の意味もかねてということになれば、選挙違反になるでしょう。それはどうなんですか、解釈としては。あたりまえのことですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/229
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230・津田實
○政府委員(津田實君) 解釈は、いまおっしゃったとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/230
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231・亀田得治
○亀田得治君 そうでしょう。だから、選挙の意味をかねないで、従来とははなはだしく違った数で短期間に大量に出す、こんなことは、あなた、ちょっと考えられませんよ。しかも、それが、お聞きするところによると、私財でしょう。公金じゃなしに私財じゃないですか。そんなことを普通の人間がやれますか。だから、党人間の慣例とかいうのは、立場の弁解もこれはもう成り立たぬですよ、そういうことは。
それからもう一つお聞きしますが、立候補を断念させるために塚田知事が動いた、こういうことを言われましたね。それはいつごろ動かれたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/231
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232・津田實
○政府委員(津田實君) 立候補を断念させるために塚田知事が動いたことはありません。それは申し上げておりません。他の者において立候補を思いとどまらせようという動作があったことはある、こういうことを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/232
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233・亀田得治
○亀田得治君 それはいつごろです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/233
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234・津田實
○政府委員(津田實君) それは、八月の上旬から九日までのことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/234
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235・亀田得治
○亀田得治君 それはどういう動きをしたのですか、吉浦君に対して。吉浦君に会ったり、あるいは吉浦君の知人に働きかけたりというようなことをしたと思うんですが、大要はどういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/235
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236・津田實
○政府委員(津田實君) 具体的に名前を申し上げることを差し控えますが、吉浦副知事が相談するような相手においてさようなことをやってもらおうというような動きもあったし、それから吉浦副知事にどの程度の関係のある者かわかりませんけれども、とにかく県議会関係の人がそれぞれの立場においてそれぞれの「つて」と申しますか、それぞれの方法によってアプローチをしたということのようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/236
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237・亀田得治
○亀田得治君 動いた諸君というのは、結局は県会議員がおもなんでしょう、自民党の県会議員が。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/237
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238・津田實
○政府委員(津田實君) 新潟県においてはあるいはそうであろうと思うのでありますが、東京においてもさような動きはあったことが看取されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/238
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239・亀田得治
○亀田得治君 したがって、そういう相手候補の問題にしても、これは突然に出てくるわけじゃないのです。先ほどあなたのほうの吉浦候補についての経過の説明もありましたが、だから、こういうものは、もう正式に出てくる、あるいは正式とまではいかなくても非公式に出てくる、その前からいろいろ経過をたどって生まれてくるわけでね。だから、そういう段階においてそれをやめさせるというふうなことをやっているということは、これはまた大きな選挙運動なんですよ。だから、ちょうど金の授受はそのころを中心に前後に行なわれておるわけですね。その前のやつはもう関係ないんだというような解釈だったら、検察官なんか落第ですよ。それは二月も正月も前だというんなら別ですがね。だから、はしなくも、あなたのほうから、そういう向こう側の塚田さんの関係の県会議員等が立候補断念のために動いたと。これは選挙運動に入っているのですよ。こういう状態の中で二十万円がずっとばらまかれて、それが選挙に関係のないというようなことを言っても、これはちょっと一般の常識としてはすなおには受け取らぬですよ。
津田さん、どうですか。あなたのそんな報告なんかどうでもよろしい。これはもう従来の慣習というものから非常にかけ離れたやり方で金がばらまかれた。しかも、その時期は、具体的にもう選挙運動になっていますよ。それは、立候補を断念させるというのですから、大きな事前運動だ。法律上の事前運動であるかないかは別として、事実上の政治活動をやっている。それからもう一つは、検察官から聞かれて、やむを得ず知事選の意味も含めてもらった、こういうことを堂々たる県会議員であって言っている人がおる。これだけの条件がそろえば、これを選挙と無関係というような判断をするということは、これはどうしても納得いかぬですよ。そういうふうに検察庁で処分されたのを刑事局長が受け取って報告しておるわけでしょうが、一体、刑事局長は、事件のいろいろ経験もおありになるわけですが、こんなことが正当な処分と思いますか。もっと私の端的に言いたいことは、金が授受された実事ははっきりしておるのだし、その性格についてはいま指摘したようにずいぶん異例なやり方であり、したがって、疑いを持たれておるのであるし、当然私はこれは世間の批判にこたえるためにも起訴すべきじゃないかと思う。裁判官の判断を求めるべきですよ、検察庁は。裁判官によってうんと違いますよ、こういう事件は。それはその裁判官が批判されるだけであって、裁判官の判断も通さないで検察庁だけで処理してしまうということは行き過ぎだと思うんですね。そう思われませんか。これは裁判官によっては、いくら否認しても、選挙もからんでの金だと、こう認定すれば、これは少しも差しつかえないですよ、有罪にして。何か差しつかえがあるのですか。向こうからの報告というようなことじゃなしに、あなたの専門的な意見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/239
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240・津田實
○政府委員(津田實君) 前回お尋ねがございましたときは、私は、事件の内容は、あのとき申し上げたとおり、随時報告を受けている以外は承知しておりませんでした。しかしながら、本件が処分段階になりまして、私は逐一報告を受け、関係の事項について調査をいたしました。
そこで、本件の不起訴処分は、私といたしましてはこれはやむを得ないものというふうに判断しておるわけであります。やむを得ないものということは、不起訴処分が相当であるということであります。いまほど仰せられましたように、世の疑惑を避けるために起訴をするという方法は、方法と申しますか、そういうことを検察官がしようとすれば、これはいとやすいことであります。しかしながら、かようにいろいろと御調査の対象になるということにもかかわらずあえてこれを嫌疑不十分として不起訴にせざるを得ないということは、これはやはり検察官の職責に忠実なるゆえんであると私は思うわけで、なるほど金員が授受されたことは明白であります。問題は、その趣旨いかんということであります。先ほど来御説明いたしておりますように、積極証拠もあれば、消極証拠もある。しかしながら、一がいに積極と断ずることができないという証拠と、それからその両方の証拠に対してそれぞれこれをささえるための補強証拠がないということだけは、本件事件については公訴維持上致命的なものであります。とにかく自分のほうは逃れて裁判官に判断をしてもらおうという態度はいまの検察庁としてはとっていないわけでありまして、検察官としては、みずからが検察の組織を通じまして検察官が考えたことは、要するに、有罪の判決の確信があるかどうかということを起訴時点において考えるということであります。そこで、先ほど来るる申し上げましたいろいろな積極、消極の証拠をかみ合わせて、諸般の当時の新潟県会の情勢を考えました場合においては、この事件についてこれを積極的に踏み切るだけの証拠が不十分である、したがって、犯罪の嫌疑が証拠上は嫌疑不十分であるという結論にならざるを得なかったという新潟地検の処分は私は相当であるといま考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/240
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241・亀田得治
○亀田得治君 だいぶ細かいところを刑事局長に聞きましたが、法務大臣にお聞きしますが、塚田さんが、かりに、昨年、わしゃもうやめる、そういう事態であったらば、この二十万円は出ておらぬでしょう。知事選挙があったから出ておるのじゃないですか。これは、あなた、きわめて常識的なしろうと的な判断なんだが、そこなんです。もう任期満了でやめる、それでもあの二十万円は出たとお考えですか。そうでない場合には出なかったと普通見るのが当然じゃありませんか。大まかなところを私は聞くのですが、そういうことを、大臣、どういうふうにお考えになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/241
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242・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 塚田君が四年間つとめたところでやめた──仮定のことでありますから、仮定のことにお答えするのは不適当でございますが、四年間つとめたので、その間何やかやとお世話になりました当時の人にお礼に行って、先生は気前のいい人でありますから、金を出すということもあったと思うのであります。二十万円出したか、あるいはもっと出したか、あるいは少なく出したか、それはわかりません。私は、相当奮発して出したろうということは思うのであります。二十万円出したかどうかわかりません。出したに違いない、相当奮発したろうというような心持ちはします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/242
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243・亀田得治
○亀田得治君 まあ無理やりにそういうことを言われますけれども、それは多少普通の常識では合わぬのじゃありませんかね。そういうことはいつも自民党でやるのですか。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/243
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244・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) お聞きになるから、私の心持ちを申したのであります。塚田君は私と同じところに同志のようにしておるとこの間あなたもおっしゃいました。相当気前のいい男でございまして、そういうことはどうしたのだろうとさまざまに考えられて、ちょっと見当がつかないのであります。このくらいが適当であろうかということは、こういう場合にこういう問題もありますから、私はちょっと申し上げかねるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/244
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245・亀田得治
○亀田得治君 新潟地検の検事正が上司の指揮を仰ぐために一件書類を持って来ましたね。それはいつですか。もうそういうことは明らかにしてもらっていいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/245
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246・津田實
○政府委員(津田實君) 二月上旬一回、三月上旬一回であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/246
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247・亀田得治
○亀田得治君 最初の二月上旬に検事正が来るときには、必ず起訴できる、そういう立場で了承を得るという確信を持って来たようでありますが、結果はそうならなかったようですが、それはどういう点に問題があったんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/247
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248・津田實
○政府委員(津田實君) お答えいたします前に、先ほど二月上旬と三月上旬と申し上げましたが、二月上旬と四月上旬の誤りでございます。そこで、二月上旬に参りましたときは、あらかたの捜査を済ましたので、問題点の検討並びに報告を兼ねて検事正が東京高等検察庁に上京して参りました。そこで検討された内容は、従来、重要と申しますか、複雑困難な事件につきましては、しばしば地方検察庁から高等検察庁に、場合によりましては最高検察庁にまで来て相談をするということは、これは検察の常時行なっていることであります。そこで、本件もその例に漏れないわけであります。そこで検討された議論の内容につきましては、もちろん私どもは立ち会っておりませんから知りませんが、要するに、検察官といたしましては、第一線は、まあたとえて申しますれば、鹿を追う者は山を見ずという式に捜査を進めるということが間々あるのであります。そこで、上級官庁が、はたして証拠上差しつかえないか、法律問題は差しつかえないかというようなことを、一歩引き下がって、いわば第三者的立場から検討するというのが、これを公訴を提起いたしました場合に、公訴維持にたえ得るゆえんであると思うのであります。
そこで、本件につきましても、さような意味におきまして、いわば中間報告ということになるわけであります。その報告をいたしまして、問題点の検討を高検におきまして検事長以下各検事が集まりまして、地検から検事正と次席が参りまして、あるいは関係者が来たかもしれませんが、それで検討いたしましていろいろ論議をした結果、この点、この点、この点というものがやはり捜査を要する。それから問題点としてこの点は検討してみる必要がある。つまり、捜査した結果を考え合わせてその価値判断を検討してみる必要があるという点が出てまいりまして、それを受けて検事正は帰って補充捜査を始めた、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/248
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249・亀田得治
○亀田得治君 それはどういう点なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/249
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250・津田實
○政府委員(津田實君) 個々の点につきましては、一々申し上げることを差し控えさしていただきたいのですが、主として問題点は、やはり本件全員の趣旨の点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/250
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251・亀田得治
○亀田得治君 しかし、趣旨の点は、これは初めから地検でも問題になってきておるわけですね。事実はもう当初から明確なんで、だから、趣旨の点についてどこが不十分であるというのですか。そんなあなた新潟の検事正がいいかげんなことで捜査をやったわけじゃないと思う。どこの点が欠けておるというんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/251
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252・津田實
○政府委員(津田實君) 先ほど来御説明申し上げましたように、本件は、結局、趣旨について一辺倒な結論が出せない、しかもそれに補強する証拠がない、こういうことになってくるのでありますので、そこの補充捜査をいたしました結果も、やはりそうなってしまったということなんでありまして、その意味におきまして、もうすでにその趣旨の点については証拠上足りない点がたくさんあるということになってくるわけであります。したがいまして、具体的に、だれについて調べろ、どの点を調べろ、あるいは、どの点はだれについて調べろということはもちろん議論されたと思いますけれども、その具体的内容はいま私は承知いたしませんけれども、その点はこれは申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/252
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253・亀田得治
○亀田得治君 だから、大まかに言って、趣旨ということはわかりますが、趣旨の中の点についてどの点が問題になったのか、欠けている欠けていると言われますが、それを知りたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/253
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254・津田實
○政府委員(津田實君) それは、従来申し上げておる域を脱しないということになるかもしれませんが、要するに、本件は、選挙運動報酬目的のために出されたということが被疑事実であります。それに対しまして、選挙運動報酬として出されたその趣旨でいいかという問題、結局それで踏み切れるかどうかということがある。踏み切れないならば、当然そこは捨てるべきじゃないかということになるわけでありますけれども、なおかつその問題点を各方面から検討を要するという問題と、もう一つは、選挙運動報酬にならないなら、今度は贈収賄の点にならないかという半面的な点も問題、この二つが中心になったと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/254
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255・亀田得治
○亀田得治君 贈収賄のことは二の次にして、これは何といっても選挙に関連して出た金ということが問題になっておるわけで、新潟の地検においてもこれは初めからわかっておるわけですね。いろいろな諸般の状況を総合して判断する以外にないという立場で進めておると思うのです。したがって、いろいろな状況というものをずっとピックアップして、それに沿うような調べをやってきていると思うのですね。そういうことでしょう、調べ方としては、新潟地検においても。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/255
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256・津田實
○政府委員(津田實君) それは、最初に申し上げました被疑事実に該当する事実があるかどうかということを中心にして調べておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/256
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257・亀田得治
○亀田得治君 そこで、新潟地検としては、幾つかの各種の要件というものを調べて、これを総合すれば選挙に関する違反ということになるという確信を持って来たんでしょう、上京したのは。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/257
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258・津田實
○政府委員(津田實君) 二月上旬に上京して参りましたときは、先ほど申し上げましたとおり、いわば中間報告──あらかたの捜査が終わったところで問題点の検討並びに証拠の価値判断あるいは証拠の不足なきやという点についての協議をするために上京したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/258
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259・亀田得治
○亀田得治君 それは、起訴をするについて了承を求めに来たのと違うの。それはもちろん中身の検討は同時にするでしょう。単なる中間の報告をして、いかがでしょうかと、そんな弱いものなんですか。そうだったら、あなた、無責任じゃないですか、県会中に四人も県会議員を逮捕するようなことをやっておって。それはどうなんですか。二月の上旬に来たというときには、これこれの条件だから、これでもう起訴に踏み切るという勢いで出てきたんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/259
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260・津田實
○政府委員(津田實君) 勢いというかどういうかそれは一わかりませんが、そのときの状況は私は知りませんが、そのときの状況をあとから報告を求めたところ、ただいま申し上げたとおりでありまして、検事正が起訴意見を固めて、その了承を得るためにということではなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/260
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261・亀田得治
○亀田得治君 初めから、じゃ、どうなるかわからんがやってみようということで捜査しておったんですか、新潟地検は。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/261
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262・津田實
○政府委員(津田實君) 本件は告発にかかわる事件でありますし、さらに被疑事実として先ほど申し上げた事実を考えて捜査をしておる以上、その被疑事実に沿うような証拠があるかどうか、その証拠を合理的に判断して被疑事実について有罪判決を求められる確信を得らるべく努力したことは、これは間違いありません。捜査というものはその目的で行なったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/262
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263・亀田得治
○亀田得治君 あの逮捕は軽率だったということになるんですか。責任問題じゃないですか、それなら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/263
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264・津田實
○政府委員(津田實君) これは、県会中というお話でありますが、県会の最終日であって、散る前に逮捕したということであります。その間に証拠を固めておきたいというような趣旨があったのはこれは当然でありますけれども、御承知のとおり捜査というものは証拠を追って進行していくわけでありますので、そのときには逮捕すべきであるという判断をして逮捕し、勾留請求をしたと思うのであります。最終時点に到達してみまするとやはり嫌疑が不十分であった、こういうことになつても、それはやむを得ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/264
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265・亀田得治
○亀田得治君 そんな無責任なことは許されませんよ。それは、当初逮捕するときに、相当確実な可能性というものを検察官が考えているに違いないんですよ。しかし、そのことは最後まで不明確な点がつきまとうものなんです、趣旨なんですからね。金銭の趣旨ですから、最後まで不明確なものがつきまとう。だから、最初はちゃんとそれでいけるという確信で踏み出してきたことは間違いないのでしょう。いつからどういうふうにこう変わったんですかね。選挙の模様などは、逮捕する前に大体検察官としちゃつかんでおるのでしょう。あとから調べてわかったというようなものじゃないでしょう。細かい一日、二日の点とかそういったようなことは、それは具体的な調べをやらなければわからぬでしょうけれども、全体の仕組みというものは、逮捕に踏み切ったときにもう確信を持ってくるのじゃないですか。もちろん不明確な点もあるだろうが、それはもう最後までつきまとうのですよ、そういうことは。だから、最終的にあなたの報告を聞きましても、不明確な点もあるが、しかし選挙違反としての相当自信をもってやれるのじゃないかという点もやはり一方では出ておるわけですね。最初は黒だったけれども、あとは白になったと、そんなものじゃないですよ、これは。最初は黒の確信だったのでしょう。検事正はそう言うていますわな、新聞記者に。それはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/265
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266・津田實
○政府委員(津田實君) 御承知のとおり、逮捕あるいは勾留については要件がございますが、そのときに疑うに足る理由があれば、それは逮捕する、あるいは勾留請求するということになるわけであります。しかしながら、それが進んでまいりましたら常にそれが全部黒になってしまうということでないことは、もうすでに従来の例に示されておるところであります。したがいまして、その進行に従いまして、これが黒でなくなって、あるいは灰色に終わってしまうということも、これは間々あることであります。逮捕したから直ちに黒の確信を持っている──少なくとも逮捕するときには確信というか黒の疑いが相当あるというふうなことで逮捕すること、これは間違いないと思うのでありますけれども、確信を持っているという段階にはもちろん当然至っていないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/266
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267・亀田得治
○亀田得治君 ともかくや、確信を持ってやったと、手をつけたのは。そう検事正は言うておるわけだ。それがいつから変わったのだね、いつから。調べの結果、私はそれが深まっても、薄れるというのはおかしいと思うんですよ。それは不明確な点は初めからある。最後まであるんです。相手は任意捜査で口を合わすのじゃから、これはそうなりますよ。しかし、これは常識的に判断して、検事正も私は当初決意したものだと思うんですよ。初めからそうなんです。なにも調べたから不明確な点が出てきたのじゃないんですよ、それは。だから、私は、その検事正に来てもらって、そこら辺の経過をはっきり聞きたいわけなんです。いやしくも、あなた、県会の最終日であろうが、開会中に県会議員を引っぱるのに、いや、だんだん調べたら結果はどうも白だった、疑わしくなくなったと、事実はそんなんじゃない。二月の上旬に検事正が上京されて、そうして、なんでし、占う、それから塚田さんが二、三日して知事をやめるという意思表示をされた。その辺がからんで検察庁の態勢というものが消極的になったのと違いますか、実際は。だいいち、補充捜査といったって、一月もどうしてそんな補充捜査にかかるのですか。これだけの重要な事件ですから、地検自体がともかくいろいろ気を配ってやっておると思うんですよ。補充捜査に一月もどうしてそんなにかかるのです。そうじゃなしに、実際はやはり辞意を表明したということから検察庁の態度が変わってきたのが事実なんじゃないですか。そのことを最終的には事案が不明確だったというふうなところへ持っていって不起訴にしておるのじゃないですか。実際そうでしょうが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/267
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268・津田實
○政府委員(津田實君) 塚田前知事の辞意表明あるいは辞任ということと本件とは全然関係がございません。本件が起訴猶予ということであるなら、それはそういうことも考えられる余地があろうかと思いますが、本件は、犯罪の嫌疑不十分で、辞任ということとは無関係でございます。
なお、検察庁がいつどういう判断をしているかと。これは、捜査というものは、御承知のとおり証拠を追って進んでいくわけであります。したがいまして、そのどの時点でどういう判断をしたかということは、まさに主任検事の胸のうちにあるわけでありまして、どれがどういうように作用したからこういう判断に持ってきたというようなことは、これは心証形成の過程でありまして、それは一々説明することは無理なんで、これは主任検事自体がすでに上司に説明することによってもなかなか上司の心証というものを形成することが困難であることは、われわれの日常承知するところであります。したがいまして、心証というものは、あくまでも事件の全証拠を当たって判断する立場にある者の心証でなければならないし、同時に、さようなものでなければ法律家としての心証というものとは申せない。よそから見ておってこの事件はこうあるべきだというような心証を申し上げるというようなことは、これは法律家としては考えられないことであると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/268
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269・亀田得治
○亀田得治君 二十万円の金の性格がいま論争になっているわけで、これは疑わしい点も相当あるが、疑問な点もあると、こういうことなんでしょう。結論的に言うと、疑わしい点が全然ないというのじゃない、あなたのほうの説明を聞いたって。あるんですよ、大いに。だけれども、なかなか踏み切りにくいという程度のことなんだ。だから、そういう場合には、知事が辞任するという事態というものは、そこの処分に影響するんじゃないですか。影響していませんか。これは各新聞みんな書いていますわな。きわめてこれは常識的ですよ。実際は影響しているのと違いますかね。世間の関心から見て起訴しなきゃならぬというふうにも思うが、まあやめたんだから何とかこう考えようというふうなことになって、しかし起訴猶予ということではなかなか政治問題化してもいかないということで、無理やりに証拠不十分というところへ持っていっているんじゃないですか。法務大臣、どうなんですか。そういうふうに疑われておるわけですね、本件は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/269
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270・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) この問題は、絶えず私が申し上げるように、検事当局に一切をまかして、そうして新潟の検事当局が厳正な立場でこういう長い間かかりましたけれども、長い間かけただけにそれだけ慎重にいろんな角度から、さっき津田局長からもいろいろと申し上げたように、あれやこれやと各方面から考えて、こういう判定を下したわけだと思うのでございます。検事当局が知事のやめるとかやめぬとかいう問題と関連してその処分が変わったというようなことは、少なくとも私どもの中央の影響があってはならぬ。そのためには、この間亀田君がこうしたらああしたらというサゼッションもありましたけれども、そういうことは一切何もしないんだと申し上げましたとおりに、ほんとうにじっと様子を見ておったわけでございます。新潟の検事当局においても、独自の立場において、そうしてその上司と話し合ったということは、さっき話のあったとおり、話し合ったでございましょう。そして自分たちの判断で不起訴処分にしたというのでございまして、そのときに政治的に知事がやめたらという問題をそこで考えるという問題は、どうも私はそれはなかったろうと、こうかたく信じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/270
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271・亀田得治
○亀田得治君 まあともかく、前回も申し上げましたが、われわれは、選挙はもっと自由な形でやりたい、こう思っているんですよ。現在の選挙はきわめて窮屈過ぎる。しかし、これは言論とかそういうことにおいて自由でありたいということであって、ただ、金を使って票を集めるというのは、これだけはそのかわりもっとはっきり厳重にやってもらわなければならぬと実際に思っているんですよ。だから、そういう立場から見ますと、非常に悪い前例がここで何かできるような気がするんですね。知事とか市長とか四年目にみんな任期が来る。そのとき、皆さんお世話になりましたと、塚田さんのような気前のいいのは二十万円といくでしょうが、そうでないのは、じゃ五万円ずつ──これは地方の市会議員、市長ということになれば金額も下がるだろうし、五万円ずつ、まあ盆のときなら中元じゃ、これはわしの借りてきた金じゃと言うて渡したって、何でもないことになりますな。それはいろいろな名目を使いますよ。暮れは暮れで適当なやり方があるでしょうし。とにかくそういうことでしょうがないんじゃと、こういうことになるわけですが、それでいいでしょうかな。細かい形式犯をあまりやってもらいたくないが、金の問題についてそんなルーズなことになったら、これはたいへんなことになると思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/271
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272・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 私も、選挙対策については、あなたと全然同感でございます。金の問題でいろいろ変なことにならないようにというのが、いろいろ選挙法の改正についてこのごろ勉強し、いろいろ選挙法改正の問題も、そういう点から出発しておるように聞いておるわけでございます。
今度の問題を振り返りまして、私ども政治に携わる者といたしましては、これがだから金をいくら使ってもいいんだというような解釈というよりは、私は逆に戻ると思う、こういうことではいけないんだと。こういう金が動けばこうやって問題を起こすのだから、今後こういうふうな金は十分注意をいたさなければならない。法律的には、それは法に反せなければいいとか、法に反せばもぐればいいじゃないかという風習が出てきてはいけないし、われわれ政治家としてもそういうことにならないようにまずみんなが戒めていく、これを他山の石としてやっていこうという方向に逆にすべきだと、私はそう思っております。また、そうでなくちゃならぬと、こういうふうに思っておるので、だから、これだからいいと言ったら、塚田君はいい状態かというと、いい状態と考えているとは思えないし、新潟の人がいい心持ちかというと、いい心持ちでいるということではないだろうと思う。これを善用していかなくちゃならぬ。これは政治家の責任だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/272
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273・亀田得治
○亀田得治君 法務大臣のお気持ちはわかりますけれども、しかし、起訴猶予じゃないんですからね、これは。これはもうともかく法律的には白なんだと、こういう結論ですからね、この影響は大きいですよ、何といったって。法務大臣はこれを善用すると言いますけれども、これは白ということになると、今後警察でも検察庁でもそれに類することについてはもうタッチしないようになるんじゃないですか、逆に。少なくとも新潟の第一線の検事などは、もうこりごりだと、日曜も正月も返上して調べていた、最後に白ではね。起訴猶予じゃないんですからね。だから、私は、この影響というものは非常に悪い意味で大きいと思うんです。法務大臣、どうも逆に受け取られるんですが、どういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/273
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274・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 法に触れるような場合においては、当然法によって裁くことはやっていかなくてはならないわけであります。その点は、今後といえども厳正に法を適用していくということ、いいかげんにあしらっていくという考えはもちろんないのでございます。これは私ども今後とも気をつけて法の運営について気をつけていきたいと、こういうふうに思っております。さっき申しましたのは、私、政治家の心がまえを申したわけでございまして、こういうことのためにまあ何でもかでも野放図になるというような状態には持っていってはならないし、また、持っていくことはないと私は確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/274
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275・亀田得治
○亀田得治君 では、最後に、検事正をひとつ参考人として一ぺん呼んでほしいと思うのです。きょうは刑事局長から概略聞きましたが、一番大事な点がやはり聞けないわけです。それは、当初県会議員を逮捕するときには異常な決意と確信を持ってやって、それが途中で変わってきておるわけなんです。これは検事正が非常な軽率な行動をとったのかどうかということがその経過を聞かないとわからない。検事正は決して軽率じゃない、もっともな行動であったが、いろいろ意見が各方面から出てきてやむを得ずこういうところに落ちついたということになるのかどうか、そこら辺が非常に私は大事な点なんです。これはもう当の検事正しかわからないわけでしてね。まあ記者会見等では若干いろんなことを言っておるようですが、しかし、それもはっきりしません。だから、そういう立場から一度理事会等で検討してほしいと思っております。
きょうは一応これで質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/275
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276・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ただいまの亀田君の発言は、あとで理事会で検討いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X01519660414/276
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