1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十一年六月九日(木曜日)
午前十時三十九分開会
—————————————
委員の異動
六月八日
辞任 補欠選任
井川 伊平君 岡村文四郎君
平井 太郎君 安井 謙君
瀬谷 英行君 柳岡 秋夫君
亀田 得治君 大矢 正君
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 和泉 覚君
理 事
木島 義夫君
松野 孝一君
稲葉 誠一君
委 員
後藤 義隆君
斎藤 昇君
鈴木 万平君
中野 文門君
中山 福蔵君
大森 創造君
柳岡 秋夫君
市川 房枝君
国務大臣
法 務 大 臣 石井光次郎君
政府委員
警察庁刑事局長 日原 正雄君
法務省民事局長 新谷 正夫君
法務省入国管理
局長 八木 正男君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局民事局長 菅野 啓蔵君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
自治省税務局固
定資産税課長 森岡 敞君
—————————————
本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(横須賀における朝鮮人家宅捜索事件に関する
件)
(北朝鮮スポーツ関係者等の入国問題に関する
件)
○借地法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/0
-
001・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
本日は、まず、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、横須賀における朝鮮人家宅捜索事件に関する件及び北朝鮮スポーツ関係者等の入国問題に関する件について調査を行ないます。稲葉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/1
-
002・稲葉誠一
○稲葉誠一君 横須賀の朝鮮人家宅捜索の事件ですが、ことしの五月十三日の午後二時四十五分ころ、横須賀の長浦町四丁目二十三番地の崔龍国という人の家が警察の捜索を受けた、こういう事件かあるわけですが、どういうようなことから捜索をすることになったのか、この経過を御説明願いたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/2
-
003・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 報告を受けております横須賀市の事件の概要を御説明いたしたいと思いますが、五月の十三日の午後二時四十分ごろ、横須賀署の指令室に電話がありまして、「いま長浦の朝鮮人部落の杉山という者が、奥さんを殺して荷づくりしているところです。すぐ来てください」という男の声で一一〇番があったわけでございます。で、「あなたは」と、こちら側で聞き返しますと、「隣の長島です」と、こう答えましたので、警ら中のパトカーに緊急指令を出しますとともに、長浦部落を管轄しております田浦署に速報をいたしました。横須賀署のパトカー——戸塚、永島両巡査が乗務しておるパトカーが横須賀市内を安浦町から小川町方面に進行していたわけでございますが、指令を受けまして直ちに緊急進行に切りかえをいたしまして長浦部落に向かって、長浦の派出所前で田浦署のパトカー——これには田中巡査外一名が乗務いたしておりますが、それと合流いたしまして、午後二時四十七分ごろ長浦小学校わきに到着をいたしました。ここからは道が狭くてパトカーがはいれませんので、戸塚、田中の両巡査が直ちに飛びおりまして、約二百メートル離れた長浦部落に急行して、二時四十八分ごろ到着をいたしました。運転を担当しております乗務員二名は、パトカーを交通の妨害にならないように道路はたに寄せておりましたので、戸塚巡査等より若干おくれて到着をいたしております。それから警ら中の横須賀署の他のパトカー二台、それから捜査第一課の機動捜査隊無線車一台も急行いたしまして、午後三時五分ごろこの部落に到着をいたしております。それから田浦署からは捜査係長以下九名、これが三時五分ごろ、同じ時刻にここに到着をいたしております。それから田浦署長以下五名、これは三時七分ごろここに到着をいたしております。それから到着後の措置でございますが、二時四十八分、四十九分ごろに長浦部落に到着をいたしました戸塚、田中巡査が杉山という家をさがしたのでございましたが、わかりませんので、たまたま部落内の鈴木方入口にいた女の人に、「人殺しかあったという電話があったが、杉山さんの家はどこですか」と聞くと、「あの家が杉山さんの家です」と、約十五メートル離れた孫方を教えてくれたわけでございます。戸塚、田中両巡査がその家に行きますと、表に杉山という表札がかかっておりましたので声をかけたけれども、応答がない。裏に回ると、七才ぐらいの男の子二名が遊んでいたが、「杉山さんの家ですか」と、こう聞くと、「ぼくの家だよ」と、こう答えた。「おかあさんは」と、こう聞くと、「一週間ぐらい前に家を出て、いない」と、こう答えた。そこへ二人の女の人が来たので、「ほかに杉山さんという家がありますか」と、こう聞くと、約四十メートルくらい離れた杉山こと崔龍国の家を教えてくれたわけでございます。戸塚、田中の両巡査が教わった崔龍国の方のほうへ行きますと、ここに田浦署の刑事等も来て、聞き込みをしておりました。また、横須賀署のパトカーの乗務員もおりまして、戸塚巡査が横須賀署のパトカー乗務員のところへ行ったときに、女の人が「何ですか」と、こう聞いたので、乗務員の一名が、「殺人事件の電話があったけれども、長島さんの隣の杉山さんはこの家か」と、こう聞きますと、「長島さんは隣だよ」、こう崔龍国方の隣の長島方を教えてくれたのでございます。戸塚巡査が窓から崔方をのぞいたときにこの話を聞きましたので、入り口をたたいたけれども応答がない、入り口はあかないというので、窓のガラスは施錠がなくてあいたので、窓から土間に戸塚巡査だけが飛び込んだ。これは大体三時七分ごろでございます。飛び込んだんですが、家人はおらないし、殺人があった状況が認められないので、三十秒くらい中にいただけで飛び込んだ窓から出た。そのときに、窓下の土間にあった洗濯機を足場にした。
それから田浦署長の行動でございますが、三時七分ごろ長浦部落に到着したときに、先着の警察官は分散して聞き込みなどに当たっておりまして、孫方の前に警察官がいるのを認めましたので、署長もその家に行きまして、裏側に回って男の子に、「杉山さんはここか」と、こう聞いた。「そうだよ」と答えた。「おかあさんはいるか」と聞くと、「おとうさんとけんかしてなぐられて、もうせんに出ていった」と答えた。そこで、そばにいた女の人に、「杉山という家はほかにあるかないか」と聞いたところ、崔龍国の家を教えてくれたので、崔方に向かって、その途中で捜査係長が来て、「崔方にはだれもいない」、こう報告したので、その隣の長島方を見に行くと、入り口に電話があって、家の中に長島さんの奥さんらしい女がいたので、「一一〇番に電話したのはおたくですか」と、こう聞いたところが、「違う」と答えた。そこで、その電話を利用して田浦署に電話して、「確かに長島と言ったか」と、こう確認させたところ、「間違いない」と回答があった。そこで、署長は、捜査係長に指示して、この杉山こと崔の妻、それから同じく杉山こと孫の妻の安否の捜査を行なわした。部落内の居住者の聞き込み、それから捜査員を東芝まで確認に行かせまして、それぞれ確認できましたので、この一一〇番は偽り電話と判定いたしまして、午後四時十分引き揚げを指示した。
大体、以上のような経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/3
-
004・稲葉誠一
○稲葉誠一君 杉山というのが何か二人いるような印象を与えるのですが、最初に行ったところが杉山元三郎というので、これは日本人の人ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/4
-
005・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 二人杉山というのがおりますので、最初に行ったところは杉山元三郎——孫亨鎬でございます。それからあとに行きましたのが杉山こと崔龍国でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/5
-
006・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その最初に行った杉山という人の家に、これは入ったんですか。そのときには、隣の家のおじいさんか何か立ち会いを求めて入ったんじゃないですか、子供が一人いましたけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/6
-
007・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 杉山さんの家を、最初に行ったときですが、教えられたときに、その家へ行きますと、「杉山元三郎」という表札がかかっていた、それで声をかけたけれども応答がなかった、そこで裏に回って男の子に聞いたと、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/7
-
008・稲葉誠一
○稲葉誠一君 男の子に聞いたのはわかりましたが、そのほかにお隣の家におじいさんがいて、その人に立ち会いを求めて一緒に中へ入ったんじゃないですか。入らなかったんですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/8
-
009・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 最初の家に入ったとは聞いておりません。男の子と問答しておるときに女の人が二人来たので、「ほかに杉山さんという家がありますか」ということを聞いております。それは、おそらく、この男の子が「おかあさんは一週間ぐらい前から家を出ておる、いない」と答えて、「それでほかに杉山さんという家がありますか」と、こう聞いたんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/9
-
010・稲葉誠一
○稲葉誠一君 あとのほうの崔という人は、杉山というのは以前に使った名前で、そのころは杉山という名前は使っていないんじゃないですか。南というのを使っているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/10
-
011・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは奥さんの名前が南春子ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/11
-
012・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それで、崔という人も、杉山というのは前には使っていたらしいけれども、このごろは南という名前を使っているんで、日本名ではね、杉山というのは使っていないんだと言っているんですが、まあこれは別とします。
その一一〇番の電話をかけたというのがだれだということは、これはあとになってわかったんですか。——何か複雑な問題がこの長浦部落というところにはあるんですか。それを調べることになっているわけですね、警察では。調べたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/12
-
013・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 結局、偽りの電話とわかりまして、一一〇番した者を調べたわけでございますが、これは、一一〇番がかかったとき、名前は「杉山の隣の長島」と、こう答えただけでございまして、長島は「しない」と言っておるわけでございますので、現在捜査しておりますけれども、不明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/13
-
014・稲葉誠一
○稲葉誠一君 崔という人の家に入るときに、隣の人から、「その人は留守だ」と、こういうことを言われているんじゃないですか。一の宮という人の奥さんがいて、警察官が一生懸命戸をあけようとしておるので、「そのうちは留守だ」ということを警察官に言っているんで、それを警察官は聞いて知っているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/14
-
015・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) その点は報告はされておりませんが、ここで先ほど申したような問答があって、「長島さんの隣の杉山さんはこの家か」と女の人に聞いて、「長島さんは隣だよ」と、こういう返答を得て、崔龍国方の入り口をたたいたが応答がない、それから入り口はあかなかった、それで窓のガラス戸が施錠がなかったので、窓から入ったと、こういう報告になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/15
-
016・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこのところがどうも事実と違うようですね。その一の宮という人の奥さんから留守だということを言われておって、そのことは知っているようですね。
まあそれはそれとして、入った理由はどういう理由なのか。こじあけて入った法律上の根拠はどこにあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/16
-
017・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 最初の一一〇番の電話が殺人——「奥さんを殺して荷づくりしておるところだ」ということでございまするから、一つは被疑者の逮捕、一つは被害者の救出ということになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/17
-
018・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いや、それは別として、法律的に人の家へ入ってかまわないですか。この場合入っていく一体法律的な根拠はあるというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/18
-
019・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) まああとで偽りの電話とわかったから問題ではありまするけれども、これはほんとうの殺人事件が行なわれているということになりますると、現行犯人逮捕ということで入ることも考えられますし、また、殺人が行なわれておって被害者救出ということで緊急避難として入る場合も考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/19
-
020・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それなら、隣の家へ行って、長島という人が電話をかけたというのだから、その人に会って、現実にそういうふうな事実があるかないかということを確かめて、それから入って足りたわけじゃないですか。これは緊急な事件かもわかりませんけれども、隣の長島という家へは確かめたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/20
-
021・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは確かめたのがあとになっております。その点は緊急と認めて先に飛び込んだかっこうになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/21
-
022・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その崔という人が朝鮮総連の神奈川県本部の組織部長をやっているということは、警察には当然わかっていたのじゃないのですか。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/22
-
023・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) その点はわかりませんが、しかし、先ほど経過で述べましたように、杉山という家をさがして、二軒目に当てたところを見ると、特にそういうような考え方はこれはしていない、単なる殺人事件として処置をしておったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/23
-
024・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ここに行った人数というのは非常に多いので、署長まで出動しているのじゃないですか。普通、殺人事件があったからといって、署長まで出動して出かけていくということは、かりにあったとしても、ちょっと大げさではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/24
-
025・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 署長以下二十五名ということになりますが、決して多いとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/25
-
026・稲葉誠一
○稲葉誠一君 普通、殺人事件がかりにあったとして、署長まで出かけていくことは異例中の異例ではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/26
-
027・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは状況次第で一がいに言えませんが、殺人事件ということになりますれば、相当大きな問題として署長が出ることはそう希有なことではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/27
-
028・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ほんとうにそこの崔という人の家で殺人事件があったというふうに考えたのですか。ちょっと周囲を聞いてみればすぐわかるのじゃないですか。そういうふうなことがあり得ることかあり得ないことか、その人の家の家庭の状況を聞けば、調べればわかるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/28
-
029・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 署長以下結局だまされたかっこうにはなりまするけれども、本気に殺人事件として処置をしたのでございまして、それじゃ従来こういうような事例があったかと申しますと、この一一〇番のような事件はいままでどこにも発生したことはないようでございます。初めての事件でございまするので、それは多少聞き込みその他によって事前に準備をすればわかったかもしれませんけれども、緊急を要する処置をとったということでございまするので、その点は責められないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/29
-
030・稲葉誠一
○稲葉誠一君 中へ入ってちょっと見ればわかるわけですね、そういう殺人事件があったかなかったかということは。どうもこじあけて入った。それは殺人事件があったと考えて入ったとすれば別として、書類を盛んにひっくり返して調べている、どうもこういう形跡があるわけです。書類袋がありまして、それは前に破れていなかったのだけれども、破れておった、それからテレビの上に重ねてあった書類が別のところへ移動していた、こう言うんですね、あとから調べてみたら。
それから入ったのは、警察官は一人ですか。ほかの者は入ってないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/30
-
031・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 戸塚巡査一名だけでございます。
それから書類のことは一切そのような事実はない、部屋にも入らずに、土間に入ってのぞいただけで、あとは出てきておるわけでございます。そういうような事実はないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/31
-
032・稲葉誠一
○稲葉誠一君 土足のまま板の間におりて、それから隣に六畳間があるのですか、そこの上を歩いているのじゃないですか。土足のあとがあると言っていますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/32
-
033・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 土間だけだというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/33
-
034・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは土足のあとがちゃんとついておったと、それから書類が移動しておったということと、それから書類の袋が破れておったと、こう言うんですね、前に破れておらなかったものが。これは現地調査した結果でそういうふうに見ておるわけですがね。こうなってくると、何かこう特定の意図をもって家宅捜索が行なわれたんではないかと、こういう疑問が非常に出てきますね。
それは、あれですか、そういう事実がないというのは、戸塚巡査の報告でわかったわけですか。入ったのは戸塚巡査だけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/34
-
035・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 入ったのは戸塚巡査だけでございます。調べた結果そういうことももちろんないし、それからまた、いままでの状況からしてもそういうことは考えられないと私も思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/35
-
036・稲葉誠一
○稲葉誠一君 だって、殺人犯人をつかまえようとして土間へ入ってみたら、そこで、あれですか、殺人事件がないので現行犯じゃない、そんな事件はないとすぐわかるですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/36
-
037・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは片っ方が一部屋でふとんが敷いてありますけれども、ふすまも開いておりまして、のぞいたらすぐわかる状況だったようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/37
-
038・稲葉誠一
○稲葉誠一君 押し入れもあるでしょう。ぼくはこの家へ行っていないからわからぬが、押し入れがあるでしょう。その下に死体があるかもしれないが、土間だけ入ってちょっと見たらなんにもないからといって帰っちゃった。これでは警察官の職責怠慢じゃないかということになる。入ったら入ったでいいじゃないですか。部屋を見たり、上がって畳の上を歩いたのがほんとうならほんとうで、それはそのことでいいと思うんですけれどもね。その家の間取りがよくわかりませんけれども、土間におりて、そうして畳の上にも上がらないで、見たらなんにもない、「はい、さよなら」と帰っちゃったんじゃ、これは警察官として、もしかりに事件があったとしたら、職務怠慢になっちゃうんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/38
-
039・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 報告を受けておりますところでは、押し入れというものはこの部屋のほうにはございません。たんすがあるだけでございます。それから中へ入ったときの状況では、もうそういう気配が全然感じられなかったということで出てきておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/39
-
040・稲葉誠一
○稲葉誠一君 中へ入って気配が全然感じられないような状態なら、これはあけてみて外から見たってわかるんじゃないですか、そういう気配があるかないか。何か特定の意図をもってやったような、そうして結論として戸塚という若い巡査、これはパトロールの巡視をやっている巡査ですか、これだけに責任を負わせてしまったような感じがするんですがね。
どうもそこはよく納得できないんですが、このことについて警察署長があとであやまっている。結果としては間違ったのだから、あやまることはいいことでしょうけれども、マイクまで持って行って部落の人たちに警察署長があやまっているんですね。これはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/40
-
041・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 警察がにせの一一〇番でもって踊らされてやったということでは、当然またその点での問題があります。それからあと一つの問題は、入ったときに洗濯機を足場にしておって、洗濯機がへこんでおるというような問題もあるようでございますが、やはりにせの電話に警察が踊らされたという点では、これはあやまらざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/41
-
042・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そのあやまらざるを得ないのはあれですけれども、署長が出かけて行ってマイクでその近所の人たちにあやまったんでしょう。それは警察としては民主的かもわかりませんが、やり方としても何か大げさなような感じがしますね。どうしてそれはマイクまで使ってあやまったんですか。そういう事実はわかっていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/42
-
043・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 署長がどういうあれをしておるか、内容は詳しくは存じませんが、この後住居侵入だということで非常に何回も抗議を署長は受けております。そういう状況は出てきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/43
-
044・稲葉誠一
○稲葉誠一君 緊急手配は、普通よりも大きい規模ではなかったのですか。非常警戒に入って四、五十人警察官が動員されたし、警察が言っているのは数が非常に少ないけれども、そのほかに私服の刑事なども相当入っていたんではないですか。これは大体五十人くらいで固めて、付近の警察官が約百人以上が動員配置されたというふうに現場を見ていた人が言っているんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/44
-
045・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 最近のいろいろな事件から見て、緊急配備ということは徹底してやるように、迅速にできるだけの動員をかけてやるように強く言っているわけでございまして、事案そのものは本件は違うわけでございますけれども、こういう事件が起きた場合には当初において迅速にしかも動員をかけてやるということは、これは当然のことではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/45
-
046・稲葉誠一
○稲葉誠一君 一一〇番の電話があった際に、殺人だという電話があって、犯人が逃げようとしているという電話があって、それが真実かどうかということを一々確かめておれば、時間がかかっちゃって、その間にそれがかりに事実だった場合に犯人を逃がしてしまう、こういうことになってくれば困るからという意味は立場としてわかりますけれども、いままで、あれですか、そういうような電話があったときに、にせ電話もあるし、いろいろあるでしょうけれども、すぐ大ぜいで出かけていくのですか。普通は、最初に事実を確かめて、それから四、五人なら四、五人出かけていく、手配しておいて出かけていくという形をとるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/46
-
047・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 当務員その他ですぐに出かけられる者はすぐに出かけていく、後続部隊はあとから順次出かけていくという形でございまして、最初に行った人間の第一報を待ってから行くということでは、やはり緊急配備のような場合にはもう間に合わないわけでございます。そこで、順次投入していく。それから配備網は当初からしいて置くという形をとりませんと、現在のようなスピード化した犯罪には対処できがたいわけでございますので、そういう形を現在はとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/47
-
048・稲葉誠一
○稲葉誠一君 戸塚という巡査が入っていったのは、その人自身の判断で行ったんではなく、現地に指揮者がいたんだから、署長が指揮して、その容認というか、そのもとで入って行ったんでしょう。この点は、あとから抗議されると、戸塚巡査が一人でやったことなんで、署長は入っていったことを指揮したこともないし、知らなかったという意味のことを言っておるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/48
-
049・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 報告を受けたところでは、戸塚巡査が一人の判断で入ったようでございます。しかし、もちろん責任の問題になりますれば、指揮しようがしまいが、署長というものが責任を負うわけでございますので、決して責任のがれという意味ではなしに、現実の状態がそうであったというふうな報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/49
-
050・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこら辺のところはちょっと納得がいかないのですが、前の杉山という人のところへ行って、それから今度次の杉山ということを言われて行くときに、戸塚巡査が一人でかけずり回っているのですか。そこに警察官も五、六十人ですかいたんですから、警察の調べでは二十五、六人いたんですから、指揮者に対して指揮を仰いで出かけていっておるんじゃないですか。どうもそこら辺のところをあとになるとごまかしてしまって、署長などは知らない、入ったのは戸塚巡査一人だというふうなことを言っているのは、警察としては何か割り切れないように思うのですが、そこはどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/50
-
051・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) ほかの者はそれぞれ分担して聞き込みその他に当たっておるわけでございまして、ただかたまってそこに署長以下がきちっとおったという形ではないわけでございます。署長がそこに着いたのも戸塚巡査が入ったときよりあとのようでございまして、結局その際には戸塚巡査の独断の判断で入ったということでございまして、決して責任のがれするつもりはございません。ただそのときの実際の状態は一人で入った、こういうふうに報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/51
-
052・稲葉誠一
○稲葉誠一君 殺人犯人がいる、それからそれが逃げようとしておるというところへ、一人で入っていってやるというのは、おかしいじゃないですか。これは若い巡査でしょう。だから、当然そこに指揮者がいて、指揮者の指導なり何なりを得て入っているに違いないですよ。そういうふうに殺人があって逃亡しようとしているのをつかまえようと考えているなら、一人だけで入って抜けがけの功名みたいにするというのは筋が違う。署長なり何なりとも相談をし指揮を得て入っていくのが当然だと思うんですが、そこのところがどうもわからないんですが、あとになってくるとこういう若い巡査だけが悪いような形にしてしまうということがぼくはちょっと理解できませんね。
そうすると、若い巡査が一人で入っていっちゃったんですね。入っていったことは、署長は知らなかったのですか、あとでわかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/52
-
053・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) このときには署長はいなかったようでございます。ただ、あくまでもお話し申し上げておるのは、戸塚巡査単独の判断で入りましたけれども、決して署長以下が責任を負わないというつもりではございません。
それからそのときにいろいろな捜査上の指揮というととがあり得るわけでございますが、このように現行犯の場合には、やはり緊急を要します状態なので、第一線に出た者が相当自分の判断でやらなければならない場合が多かろうと思います。一々上司の指揮を求めておったのでは、このような事件の場合には間に合わない場合が出てきます。したがって、単独の判断でやる場合ももちろん想定していかなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/53
-
054・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはあなたの言われるような場合はありますけれども、そうすると、最初の人のところへ行き、それからあとの人のところに行き、家に入ったのも、全部この人が一人で行動しているのですか。集団で行動していないのですか。もし中にかりに別の連中なんかがいたら、かえって逆にあぶなくなっちゃうじゃないですか。それはちょっとおかしいですね。非常に個人プレーのような印象を与えるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/54
-
055・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この家に入ったときの状況を中心にお話ししておりますのでそういうことになりますが、それぞれこの家の前にはそういうような問答をしておった署員もおるわけでございまするし、それからほかに聞き込みに歩いておる者もあるわけでございます。入った状況についてはそういうことになってまいりまするけれども、それぞれ分担をして行動をしておったということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/55
-
056・稲葉誠一
○稲葉誠一君 一一〇番の電話があったときに、「隣の朝鮮人で杉山という者が妻を殺して」云々という電話があった。隣の朝鮮人である杉山がどういう人かということは、警察で、横須賀署だから、すぐわかったんじゃないですか。横須賀署においては、朝連の組織部長というものがどこに住んでどういう名前かということは、当然わかっていたわけですね。それでなくて、ただだれだかわからなくていきなり飛んで行ったというのはおかしいですね。隣の長島という人から電話がかかったというんでしょう。隣の家の杉山という朝鮮人のところでこういう事件があっというんでしょう。その朝鮮人というのはどういう人だ、言われておる朝鮮人が朝鮮総連神奈川県の組織部長ということは、警察ではとっくにわかっておるわけですよ、警備課があるわけですから。それを全然調べないで飛んで行くというのは、ぼくはおかしいと思うんですね。それを調べているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/56
-
057・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは一一〇番にそういう電話がかかって、すぐ。パトカーに連絡しておりますので、そこに警備に連絡するような時間の余裕もございませんし、また、確実に違った杉山の家に行っておるところから見ても、その間の状況はわからなかったんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/57
-
058・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法務大臣がおいでになって、ちょっとほかのあれがあるそうですからちょっと中断をして、北朝鮮のスポーツ関係者の入国を中心とする問題、これを簡単に要点だけお尋ねいたします。
スポーツの問題は国境がないわけですが、石井さんも体協の会長をやっておられてよく理解があると思いますが、国際体育連盟というんですか、それで何か審判の講習会かなんかがあるということで、あるいはちょっと違うかもわかりませんけれども、何か二種類かあって、世界各国から審判員を日本に呼んでやるわけですか、一つは六月二十八日に駒沢の競技場でやるという話もあるんですけれども、こういうことに関連をして、北朝鮮のスポーツ関係者あるいはその他の国のスポーツ関係者が日本へ入国したいということを言ってきた場合に、大臣としてはこれに対してどういうふうにお考えになっておられるのか、それから現実の問題としていまスポーツ関係者の入国問題についてどういう点があるのか、これをちょっとお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/58
-
059・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 話として聞いておりますのは、私の体育協会側から聞いておるのでありますが、北朝鮮から入ってくる問題は、バレーボールの審判員の講習会の問題と、それから体操の審判員の講習会と、こういう両方とも講習会の問題ですが、これは単純な講習会でなくして、この講習会に出なければ公認の審判員になれない。バレーなんかは、国際的に公認されるバレーの審判員になれない、こういう大事な問題になっておるようであります。そういうふうな関係であります。体操もそのほうに近いものらしい、そういうことであります。これには東洋の各地からだいぶたくさん入ってきますし、そういうふうなどこからどれだけ来るかまだはっきりした最後の数はよくわからないようでありますが、相当の数がやって来て訓練をやるだろうと思うのであります。これは、いまお話しのように、スポーツに国境なしということばがありますが、体育の問題でありまするし、特に政治的な影響のない部面であると私どもは見ておるのであります。前にも、オリンピックの場合、それから世界スピードスケート大会のときなんか、二度ぐらい日本に来ておったようであります。そういう前例もありますから、今度来る人たちはどういう人たちか、そういうふうな問題が出ましたら、具体的な問題として扱っていくつもりであります。許す方針とか許さぬ方針とか、こういうことを聞かれますと、例によりましてケース・バイ・ケースというあの条項の中へ入りますけれども、いまのような心持ちでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/59
-
060・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大体、言外に、いまのスポーツの関係のことでの法務大臣の態度というものはわかりましたからあれですけれども、そうすると、スポーツに国境がないということで、あるいは前例等のことをしんしゃくして、これについては前向きでやりたい、こういうふうに承ってよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/60
-
061・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 私の心持ちはそういうふうな心持ちを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/61
-
062・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのはわかりましたけれども、もう一つ別の話ですけれども、例の北朝鮮のプラント輸出に伴う技術者の入国ですが、東工物産ですか、これに対しては正式に代理申請が出ておるのですか。現在どういう段階になっておりますか、事実関係を先に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/62
-
063・八木正男
○政府委員(八木正男君) 代理申請というのは、これは先生のような法律家にちょっとあれですけれども、私が法務省の法律専門家に聞いたところによりますと、代理申請という制度は別に行政法上はないのだそうでありまして、また、外国人の入国の原則から申しますと、入国にあたっては日本の在外公館に直接本人が入国を申請するというたてまえだと思います。ただ、諸般の事情から便宜的な措置として代理申請という制度をやっておるわけでありますが、従来のやり方は、渡航申請書をもらっていろいろ説明を聞きまして、関係方面の意向を聞いて、許可するという見当がついた段階で渡航証明書を出すように言って、それを代理申請するように申し伝えてそれを出させるというのが従来のやり方でございました。今度も同じようなつもりでやっておったのでありますが、御承知のとおり、いろいろ延び延びになったもんですから、関係者が焦燥しまして、先日私のほうのところへ関係者が直接来まして、とにかく代理申請をしたいという申し出がございました。そこで、いろいろ部内の意見を聞いてみましたところが、本来別に法律上きめられた制度でも何でもないのだから、便宜の措置にすぎないのだから、従来のやり方と違って、最終的な意思表示があるまで待つようにということをそう固執する根拠もないと、出したいなら出さして受け取ったらいいではないかという結論に達したものですから、それで申請の書式なんかを伝えまして、それによって代理申請の書類が出ております。しかし、われわれとしては、扱いは別にほかのケースと違って扱うというつもりではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/63
-
064・稲葉誠一
○稲葉誠一君 二、三日前ですか、通産大臣は、これはまあ受け入れを認めても別に日本の国益というものを害することもないのだから、まあ認めたいというような意味のことを答弁されたと、議事録を見ておりませんから、新聞で見たところではそういうふうになっておるわけですが、これはもう二年くらい前からのことだというふうに聞いておるわけです。それで、ぼくは、貿易の問題ですから、経済の問題ですし、もう二年も前からのことですし、当然認めていいことだと、こういうふうに思いますが法務大臣としてはとれについて今後どういうふうにされる見通しなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/64
-
065・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) これは、書類が出てまいりまして、そしてそれについて最後的な判断が下されればどういうふうになるか、それから先の問題でありますが、通産大臣がどうとか、法務大臣がどうとか、外務大臣がどうとかということでなしに、こういう問題は関係各省で話し合いをいたしまして、要するに、政府の意向として一本になって、そしてそれがきまったものとして外へ決定して出るべき問題であります。でありまするから、みんなの意向がまとまっていわゆる政府の意向というものがまとまらないと、またことばであらわしますと、聞かれると、慎重熟慮中というようないつも同じようなことを言うようなことになるわけでございます。いまその話し合いをしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/65
-
066・稲葉誠一
○稲葉誠一君 微妙な問題だと思いますから、かえって具体的にこうだああだということは私は聞かないつもりですけれども、結論的にはいつごろまでに大臣としてはその結論といいますか出したいというふうにお考えなんでしょうか。元来は、政府の問題であるけれども、主管省は法務省なわけなんでしょう。外務省か何か向こうにウエートが移っちゃっているのはちょっと筋が違うのじゃないかと思うんです。やはり法務大臣のきめるほうが一番ウエートがあるのが筋だと思うのですけれども、いつごろまでにこの問題のあれをしたいというふうにお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/66
-
067・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 扱うのは、入国関係は私のところ、出るのは外務省というのが大体の扱う場所でございます。全体の問題になります場合には、政府の意向ということでみんな話し合うわけでございます。話し合う場合には、どこにウエートもないわけでございます。いまの問題は、話し合いを進めて、いつそこに落ちつくかというのは、イエスかノーかということをきめてしまうのは、いついつまでに期限があるということにでもなれば、それまでにイエスとかノーとかきめなくちゃいけません。どういうふうにしてかまとまるものならまとめたいというのが考え方の一つの底流をなしているところであります。そういうことで話し合いを進めております。まあいつまでとおっしゃいまして、いまちょっとそれをはっきりと申し上げかねるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/67
-
068・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、いつごろということは別といたしまして、何とか円満にといいますか、うまくいくように進めたいと、こういうふうにお考えだと、こう承ってよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/68
-
069・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) できるものならそうしたいと思うておりますが、なかなかできにくいかもわからない。だんだんだんだん延びている、二年間もあなたおっしゃるようにかかっているということは、そう簡単ではないということも言えると思うわけでございます。その後の情勢は、あなたも御存じのような情勢で、説明はいたしかねる問題でありますが、十分各省の間で話し合いをして、まあここで政府の意向はこうこうこうだということを出すには、まだそこまでいっていないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/69
-
070・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そういうお答えならあれですけれども、要望としては、できるだけ早く、そしてこの問題がうまくいくように、大臣からもお骨折りをお願いしたいと、あまりよけいなことを言いませんけれども、そういうふうにお願いをしたいと、こういうふうに要望をしておきます。それに対して何かお答えがあれば、簡単にいただければ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/70
-
071・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 稲葉君からだけでなく、ほかからもいろいろそういう御要望を承っておるわけであります。なるべく御要望に沿いたいという心持ちでありますけれども、なかなかそう御要望にいままでこたえてないところがなかなかむずかしいところでございまして、どうなりますか、いろいろ努力はいたしておるということ以外には申し上げかねるわけであります。ほったらかしておる状態ではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/71
-
072・稲葉誠一
○稲葉誠一君 前の警察の話ですが、入って、畳の部屋に入ったり書類に手をつけたりしたということはないのですか。ないという根拠はどこにあるのですか。根拠じゃない、それは戸塚巡査の説明だけの問題ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/72
-
073・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/73
-
074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、土足で入って書類をひっかき回したり何かしたということの抗議がありましたね。そのことについても、現実にその人の家に行って調べたということはないのですか、そういう事実があったかなかったかということについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/74
-
075・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) お話の意味がわかりかねるのですが、その崔龍国方へ行って現場を見たかと、こういうことでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/75
-
076・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/76
-
077・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) そういうことは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/77
-
078・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、本件の場合に、そのときの——あとからされたのは別ですよ、そのときの主観としては、現行犯逮捕だというふうに考えたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/78
-
079・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 現行犯逮捕並びに先ほど申しましたような被害者救出と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/79
-
080・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、現行犯逮捕として考えた、あるいは被害者救出——まあ被害者救出は別として、現行犯逮捕として考えるに至ったのは、一一〇番の電話だけなんですね、根拠は。それに基づいてその裏づけなり何なりということはやらなかった、やるいとまがなかったからやらなかったんだと、こういうことですか。そうすると、だから警察がやった態度ということについては違法性はないのだ、こういうふうに結論を承ってよろしいでしょうか。もしそういうふうな結論であるとすれば、これはぼくはやはり問題として争うべきものは争わざるを得なくなるかっこうになってきますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/80
-
081・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 状況いかんにもよりまするけれども、この事案のような状況の場合、そうして従来からのそういうあれもなかったというような場合においては、ある程度やむを得なかった措置であると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/81
-
082・稲葉誠一
○稲葉誠一君 事件の内容については、ぼくのほうで調べたのと相当違いますから、もう一ぺんよく事情を私のほうで調べてみます。そうでないとフェアでありませんから。ぼくの調べたのは、どうも最初から組織部長がわかっていて、そうして客観的に考えられてもそういう事件がありようがないところに入っていって、そうしてあちこち書類なんかをいじくり回して見たというのが事実のようです、結論としては。その人一人に責任を負わせてしまって、もうあとは知らぬ顔をしておる、署長なんかは知らぬ顔をしているようにとれるわけですね。そこら辺のところは、まあ事件の個々の特殊性がありますから、内容をよく調べなければわからない点もあるかと、こう思いますがね。
いずれにいたしましても、内容をもう少し私のほうでも調べてみて、場合によってはそれに対してどういう処置をとるかはこれはあらためてのことにしたいと、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/82
-
083・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/83
-
084・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をつけて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/84
-
085・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 次に、借地法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/85
-
086・稲葉誠一
○稲葉誠一君 借地借家法の改正の問題に入りますが、最初に知りたいことは、三十一年に借地借家法の改正が企てられたわけですね。その後に、どういう改正というものが行なわれたのか。まあこれは法律を見ればわかりますけれども。それと、その後に法制審議会民法部会で改正が論議されて、三十二年五月に「借地借家法改正の問題点」というのがまとめられたわけです。そうして、三十四年十二月に借地借家法改正準備会という名前で「借地借家法改正要綱試案」が出たわけですね。そして、三十五年の七月、次の年の七月に「借地借家法改正要綱」が出たわけですね。これを資料として提出を願いたいおけなんです。同時に、この要点を説明願いたいのですが……。なぜかというと、それと今度の改正案とが非常に違うんです。大きく後退しているわけですね。この後退した理由がどこにあるかということが大きな問題になってきますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/86
-
087・和泉覚
○委員長(和泉覚君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/87
-
088・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/88
-
089・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 借地借家法等の改正につきましては、終戦後のわが国の借地事情あるいは借家事情にかんがみましていろいろ問題が出てまいったわけでございます。そこで、一応現在の借地借家関係の法制をあらためて検討してみる必要はないかということになってまいりまして、先ほどお話しの借地借家法改正準備会というものができるに至ったわけでございます。ただ、この借地借家法改正準備会と申しますのは、正規の法務省の機関としてできたものではございません。昭和三十年前後からこの検討を始めたらということから、法務省民事局の関係の担当官、さらに民法関係の学者の方々等が相寄りまして非公式のそういった研究会を設けまして、そこで一応それなりの考え方をまとめてみたらどうであろうかということからこの準備会ができたわけでございます。したがいまして、その準備会そのものの出しました結論が直ちに法務省の案ということになるわけでもございません。また、民事局の案というわけでもないわけでございます。そういった関係者の考え方を一応取りまとめて、借地借家法制というものをつくるとすればどういう形になるだろうかという一つの試みとして出発したわけでございます。
昭和三十二年の五月に「借地借家法改正に関する意見」というものがまとまりまして、各方面の意見の照会をいたしたわけで断ります。それに基づきましてさらに「試案」というふうな形に取りまとめましたものが三十四年の十二月二十一日にでき上がりまして、これが大体法律案の、要綱のような体裁になったわけでございますが、これをさらに裁判所、あるいは弁護士会、あるいは経済界、あるいは関係団体方面に出しまして広く意見を求めたわけでございまして、これにつきましては賛否両論あることは当然でございますが、なかなか現在のわが国の借地借家の実情から考えましてその要綱のような点に一挙にいくことはいかがであろうかという批判的な意見がかなり強く出たわけでございます。
そこで、法務省といたしましては、この「要綱試案」というものを直ちに公の公式の意見として取り上げるわけにももちろんまいらないわけでございますが、慎重にこれは検討する必要があるということから、当時の民法部会におきましてどうしたらいいかということを審議していただいたわけでございます。その際に、もちろんこの「借地借家法改正要綱試案」というものをその材料に提供いたしたわけでございます。いろいろ御意見がございましたが、その「要綱試案」の骨子になりました点を一応簡単でございますが申し上げてみたいと思います。
まず、借地法関係でございますが、これは、現在の借地権が、物権であるところの地上権と、債権であります賃借権と、二つに分かれております。これを一元化いたしまして全部物権にしたらどうかということからそもそも始まっているわけでございます。と申しますのは、債権でございますと権利の譲渡性が完全でないというところから、複雑なそういった形態を改めて、一律に物権化してしまうということでございます。これはもうすでに御承知のように、相当以前から学者の間では賃借権の物権化ということが唱えられてまいりました。そういった考え方も強く影響した結果であろうと思うわけでございますが、借地権の譲渡性が十分でないというところにやはりこの問題の中心があったように考えられるわけでございます。
さらに、借地権の対抗要件でございますが、これも、現在の対抗要件といたしましては、登記もございますし、また、建物保護法による特別の対抗要件というものもございます。こういった点も統一して、むしろ登記のみに対抗要件を限定すべきではないかという問題でございます。
さらに、借地権の存続期間につきまして、最近の借地上の建物、これは建物一般についてそう言えることでございますけれども、非堅固の建物よりもむしろ堅固の建築がだんだんふえてきておる、こういう状況下におきまして、現在の借地権の存続期間の定め方でいいかどうか、これも再考の余地があるのではないか。この存続期間を今後一律にきめるほうがむしろ法律関係を明確にするのじゃないかという点が問題でございました。
さらに、借地権の消滅請求あるいは存続期間の更新の問題でございます。これは、現在の消滅請求は別といたしまして、更新につきましては、当事者の意思表示にかかっておるわけでございますが、これがいろいろ問題を生じておるわけでございます。そのために当事者間の借地関係というものがかえって混乱してくるという危険性もございますので、むしろこれは裁判によって裁判所の判断によってはっきりときめるという方向へ持っていくべきではないだろうかということが問題でございます。
さらに、借地権が消滅いたしました場合の明渡猶予期間というものを定めるのが妥当ではあるまいか。法律関係が終了したからといって、直ちに建物の収去、明渡ということは実際問題として不可能でございますし、国家経済の観点から申しましても考える余地があるところでございまして、明渡についての猶予期間というものを設けようということが一つの問題点でございます。
さらに、契約上の義務と申しますか、借地権者として負います義務に違反した場合の規定を明確にして借地権を消滅させる措置を考えたらどうであろうかというふうなことでございます。
さらに、地代の増減でございますが、これは、現在、御承知のとおり、当事者の意思表示によりまして地代の増減が法律上当然行なわれていることになるわけでありますが、このことがひいてはまた法律問題を不明確にするという一つの原因になっておるとも考えられるわけであります。これも、むしろ合意ができない限りは全部裁判所にきめてもらうというふうなことにしたらどうかというのがその考え方でございます。
さらに、建物の処分をいたします際に、その敷地の利用権、借地権と一括してこれを処分するようにするというふうな問題が借地法上の問題でございます。
こまかい問題はたくさんございますけれども、おもな点を申し上げますと以上のような点が問題になったわけでございます。
さらに、借家法関係でございますが、これにつきましては、適用範囲を明確にする必要があるのではあるまいか。現在、建物使用のためということになっておりますが、すべての建物についてこれを一律に適用するのがいいかどうかというふうな問題であります。
さらに、借地について問題となりましたと同じように、建物の賃貸借についての対抗要件の問題でございます。これは建物のほうは、物権化という問題じゃございませんで、従来の賃貸借を前提にいたしておりますが、この対抗要件といたしましても、やはり現在の借家法の引渡による対抗要件あるいは登記による対抗要件、こういうふうな二元的な建て方にしないで、何かここを引渡のみに限定するというふうなことはどうであろうかということが考えられたわけであります。
さらに、賃貸借の更新あるいは解約につきましては、これは裁判所に裁判によってやってもらうことにするほうが、法律関係を明確にするのじゃないかということでございます。
また、明渡猶予期間につきましても、借地法と同様の問題がございます。
また、義務違反による契約の解除につきましても特有の問題がございます。
また、借家法の特有と申しますか、現実の生活に密接してくる問題といたしまして、賃借人が死亡した場合の賃貸借の承継の問題でございます。これは今回の法律案の中にもその趣旨の規定を取り入れてございますが、居住権を確保するという意味でそういったことを考える必要はないだろうかというふうなことが中心であったのでございます。
こういった点が「要綱試案」の中に、織り込まれたわけでありますが、これに寄せられました各方面の意見は、賛成意見あり、反対意見あり、これはもう非常にさまざまでございます。ごく大ざっぱに申し上げますと、賛成意見もないではございませんけれども、一言にして申し上げますと時期尚早という趣旨の反対意見が非常に多いわけでございます。裁判所の関係におきましても、必ずしも賛成されない向きもございまするし、また、日本弁護士連合会におきましても、ただいま申し上げましたような「試案」の形式による改正はこの際すべきではないというふうな消極意見もこまかく出されてまいりました。そのほか、各種の団体から、賛成意見、反対意見、いろいろと入りまぜて、それぞれまた言われるところもわかるところがございます。概して申し上げますと、いまにわかにその「要綱試案」で改正案をつくるということについて、国民全体の感じといたしまして少し機が熟していないのではないかというふうな感じの結果になっておるわけであります。
こういった雰囲気のもとにおきまして、法制審議会におきましていろいろ審議されまして、反対意見はございましょうとも、現在の借地借家法制のもとにおきまして、訴訟その他の関係で非常に法律関係が紛糾して、土地あるいは建物の合理的利用が阻害されるという面が多々ございますために、そういった点を中心にして必要最小限度の措置だけでもとる必要があるのではないかということになりまして、法制審議会といたしましていろいろ審議されました結果、昭和三十九年の二月十七日に「借地法等の一部を改正する法律案要綱」というものができ上がったわけでございます。その要綱の趣旨は今回提案いたしました法律案と大体同じでございまして、むしろ法律案のほうがこれを若干ふえんいたしまして、こまかいところをつけ加えまして今回の法律案といたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/89
-
090・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/90
-
091・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 速記をつけて。
午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十二分休憩
—————・—————
午後一時三十二分開会
〔理事木島義夫君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/91
-
092・木島義夫
○理事(木島義夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
午前に引き続き借地法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/92
-
093・稲葉誠一
○稲葉誠一君 自治省関係の方がおいでになっていますので、最初に、地代家賃のことに関連してお聞きしたいわけです。それは、地方税法の改正で固定資産税と都市計画税が増税になった、それが
一体地代や家賃にどういうような影響があるかということを資料で概要を御説明を願いたいわけです。なぜかといいますと、六月三日に物価担当官会議というのがあったといわれていますが、その中でこれは経済企画庁のほうで御説明をしたのかどうかですが、固定資産税が上がってきたから、だから家賃なり地代を上げろという要求が非常に各方面で起きてきているわけです。それで科学的にいって固定資産税なり都市計画税が上がったことが一体どれだけ地代や家賃の値上げに寄与するのが妥当かということを中心にひとつ統計的に御説明願いたいと、こう思うのですが、それが終わりましてからそれに関連しての質問を最高裁なりあるいは法務省のほうにしていきたい、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/93
-
094・森岡敞
○説明員(森岡敞君) 地方税法の一部を改正する法律によりまして、固定資産税につきまして新評価に伴います新たな負担調整措置を四十一年度から実施することになりました。それによりまして、税負担が若干増加するわけでございます。ただ、私ども地方税法改正の際に、国会審議を通じまして申し上げてまいったわけでございますが、これによる増加額というのはきわめて微細な額でございます。もっとも、その土地や家屋の持ち方が人によっていろいろございますので、必ずしも一律的には申せませんが、私ども申し上げてまいりました平均的な土地家屋——主として住宅でございます、を持っておられる方の面積と平均的な単価で計算いたしますと、固定資産税だけの場合には月額約三十円、都市計画税を合わせますと約四十三円程度、これは大都市を平均した単価で計算したものでございます、その程度の増加であろうと申し上げてまいったのでございます。
かたがた、別途いろいろ実態調査もいたしまして、各都市の地代なり家賃の実態、それと現在の土地の固定資産税の額、それから今後負担調整によりまして四十一年度に税負担が増加いたしますが、いろいろ調査いたしますと、これまた最初に申し上げましたように態様がございますから、平均的なところで申し上げるよりいたしかたないわけでございますが、大体私どもが民間の家賃で建設省とも御相談いたしまして調査いたしましたところでは、家賃の中で土地の固定資産税の占めております比率は、高いところで三%ぐらいではないか、低いところというと一%以下になる、それから固定資産税の負担調整によりまして増加いたします額の比率ということになりますと、さらにそれよりも低くなるわけでございます。あるいは〇・一%、あるいは〇・四、五%というふうな比率になります。増加いたします比率がその程度になっておるわけでございます。いま申し上げましたのは家賃でございます。
次に、地代だけの中で固定資産税がどの程度になっておるか。これはまあ商業地とか住宅地とかでいろいろ異なっておりますが、平均的にやや荒く申し上げますと、一〇%というのが相当平均的なところではないか。で、負担調整によりまして増加いたしますのは、平均的に見まして二、三%の増加、こういうふうなことになるのじゃないかと考えております。
そこで、そういうふうな微細な増加でございますが、新聞紙上等で、最近、固定資産税の土地の負担が上がったから家賃も相当額上げてくれ、こういう要請が出て困っておるという一般の国民の御意見等が出ております。私どもはそういう実態を明らかにしてまいりたいということで、いま稲葉委員のお話のありました物価担当官会議に六月三日でございます、議題をのせまして、いま御説明申し上げましたようなことを御審議、御検討願い、地方税法の附帯決議に付されております負担調整を基礎として不当な地代家賃の便乗値上げを排除する措置を講ずる、そのためのPRと申しますか、指導と申しますか、そういうのを各方面に積極的に手を加えていきたい、こういう御相談をしたわけであります。
はなはだ簡単でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/94
-
095・稲葉誠一
○稲葉誠一君 六月三日の会議に次いで、十日の会議で、自治省が、便乗値上げの場合に借り手がどうこうしたらいいと、こういうようなことについて具体的対策を立てて何か提案するということになっておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/95
-
096・森岡敞
○説明員(森岡敞君) 具体的な対策といたしまして、十日に、成文と申しますか文案を練りまして、御相談したいと思っております。ただ、直接的には地代家賃問題でございますので、建設省の所管ということで、私どもお手伝いをいたしておるわけであります。そういう形で、先ほど申し上げましたような指導なりPRなりを報道機関にも一般の土地の所有者にも徹底してまいりたい、また、法律相談所でありますとかあるいは民生委員でありますとか、そういう相談を受ける人たちにも徹底をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/96
-
097・稲葉誠一
○稲葉誠一君 地代家賃の増額の調停が相当簡易裁判所にも出ていると、こう思うのですけれども、全体の中から見るとあるいは少ないかもわかりませんが、簡易裁判所にあらわれないものも相当あるし、それからあらわれ方が地代家賃の増額という形だけでなくてそのほかのものに付随してあらわれるものもありますから、なかなか統計もとりにくいと思うのですけれども、どの程度出ておりますか。あまり数は多くはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/97
-
098・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 土地建物関係の簡裁における調停の数は、大体年に二万件くらいでございます。三十五年から三十九年までの統計をとってみたのでございますが、そういうことになります。全体の調停事件が五万から六万というのが全国の総数でございまするので、約三分の一がいわゆる土地建物関係の調停事件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/98
-
099・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの話で、民事調停の中で三分の一くらいが土地建物関係だということだとお聞きするわけですけれども、民事調停の場合にはもっと多いんじゃないかと、こう思うのですけれども、商事調停というのは、ほとんどまあ少ないというか、手形訴訟ができてからほとんど訴訟でやってしまうのが多いわけでしょう。民事調停の中で借地借家以外の問題というと、どんなのがありますか。あまりないんじゃないかと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/99
-
100・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 民事の事件の中には、金銭関係の調停というのがやはりそのほかの部分としては比率が多いと思いますが、先ほど申し上げましたように、借地借家事件の特色といたしましては、調停の数が多いというのと、それから訴訟の事件の中で一般の事件よりも調停和解で事件が落着するという比率が一般の事件よりも多いということが借地借家事件の特色であろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/100
-
101・稲葉誠一
○稲葉誠一君 借地借家の事件の中で、地代家賃の増額ということをプロパーの問題として出しているのはあまりありませんか。付随して出てくるのが多いわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/101
-
102・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 例の地代の増額あるいは減額請求という形の訴訟事件はないことはありませんけれども、しかしごく少ない事件で、ただいま統計を持って来ておりませんけれども、これはごく少数のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/102
-
103・稲葉誠一
○稲葉誠一君 地代家賃の増額だけを目的とした調停は確かに少ないと思いますね。ということは、そこまでいかない段階で当事者間の力関係や何かできまっているのが多いのだろうと、こう思うんです。
そこで、お聞きしたいのは、借地借家法の、何といいますか、法律の指導と言うと語弊がありますけれども、周知徹底方といいますか、そういうのを調停委員の人たちに対してどういうふうに最高裁はやっているわけですか。ということは、借地借家の調停が出ますと、借りたもの返すのがあたりまえなんだという前提で調停委員の人がやっているのが非常に多いんですよ。これは、私どもが扱うものだけじゃなくてほかのいろいろな人の意見を聞いてみても多くて、調停委員が借地借家法の精神というものをほんとうに理解してないでやっているのが多いんですね。それが一つ。それから地代家賃の増額の場合でも、地代家賃統制令があるものとないものともちろんありますけれども、地代家賃統制令のあるものについて、統制があるんだと言うと、そんなことを言ったっていまごろ統制を守っている人なんかいないんだということで、問題にしないで地代家賃の増額をしていくという形が調停委員の人に非常に多いわけですね。
これは問題は、調停委員の選び方にもあると思うんです。調停委員は、たいてい、暇がある人とか、ある程度金銭的に余裕がある人が出てくるわけですから、どうしても土地を持っている人とか、大家さんとか、そういう層の中から選ばれるわけですね。裁判所の中では、いわゆる借地人とか借家人とか、そういう層の人たちから調停委員というのはほとんど出ていないわけです。意地悪く言えば、現在の調停委員の階層別の色分けなんか求めればあれですけれども、そこまでやるのはあれですからしませんけれども、だから、調停委員のものの考え方が、借地法とか借家法があったって、とにかく借りたものは返すのがあたりまえじゃないか、借地権なり借家権というものは十分保護すべきだというそういうことを抜きにして調停をやるわけですね。そうして、まとめよう、まとめようとするわけです。まとまらないというとまるで自分の腕がないような顔をして、自分は調停委員になってからまとまらなかった事件はないんだ、だからどうしてもまとめてくれというようなことで、無理にやっちゃうわけですね。そういうのが相当あるわけですよ。ですから、まとまって、帰りがけにぼくらのところに寄る人がある。調停のときには、裁判官はほとんど出てこない。最後のときにちょっと出てくる程度で、しかも名前を書いて判を押すわけじゃありませんから、まとまったのやらまとまらないのやら、本人同士にはよくわからない。あとは何とかなるだろうというのでまとめてきて、帰りがけに「調停委員なり何なりに押しつけられて困ってしまった」と言って来るのが相当あるんですね。どうも調停委員の制度というものが借地借家の事件に占めるウエートが大きいだけに、選び方も問題だと、こう思うのですが、前の問題として、最高裁当局として、調停委員の人たちに対してどういうような、法の周知徹底方というか、あるいは指導というか、そういうものをやっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/103
-
104・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 調停委員が事件に関与いたしますにつきましては、御承知のように、地方裁判所が毎年調停委員を一年の任期で選任するわけでございます。そうして、具体的な事件につきましては、いわゆる調停主任の裁判官が、毎年調停委員として一年の任期で選ばれた調停委員の中から、その事件の調停をするのに適当であるという人を二人以上選んでその事件の調停をしてもらっておるわけでございます。それで、毎年地方裁判所が調停委員として選任する方々を職業別で見ますと、いろいろの職業の方に調停委員になっていただいておるわけでございますが、官公吏であるとか、教員であるとか、会社員、弁護士、医師、神職、商工業、農業、水産業というような職に携わる方でございますが、何と申しましても、人数からいいますと、弁護士の方が一番多い、それから農業、商業というような職業別になっております。御承知のように、調停委員を選任いたします基準につきましては、あるいは労働委員会のように使用者側、労働者側というふうな委員を区別して選任するというような法律政策もございましょうけれども、調停委員のただいまの現行の選任基準といいまするか、どういう人を調停委員にすべきであるかということにつきましての現行法のたてまえは、いわゆる徳望良識のある方、そういう人を選べということになっておりまするので、まあ職業は千差万別でありまするが、要するに良識のある常識のある人を選べということになっておるわけでございます。
そこで、実情といたしましてそういう方々を選任する努力を裁判所といたしましてやっておるわけでございまするが、ただ、私どもがそういう現状の中で一つ問題点として考えておる点は、調停委員にかなり老齢の方が多いという点でございまして、これはもちろん十分にその職務を尽くしていただければけっこうなんでございまするけれども、老齢なるがゆえに多少いろいろの批評等を受ける場合があることを耳にしておりますので、その点につきまして何らかの今後の方針というものを打ち出していきたいということを一つの私どもの問題点としてはおりまするけれども、しかしながら、先ほど御指摘がありましたように、何でもかんでも地主のため、あるいは明渡が当然であるというようなことを前提といたしまして事を処理しておるというふうには私どもは実は考えておらないのでございます。これは、訴訟から調停に行く事件の傾向を見ておりますると、訴訟で法律的に割り切れば原告勝訴になる可能性がかなり出てきている事案につきまして、と申しまするのは、判決を出すというと被告側——借地人、借家人側がどうも負けそうだと、しかしながら、そうすぐ借地人が負けて家をこわすとか、あるいは借家人が負けて家を明けなければならないということは必ずしもその事件について穏当でないと思われるような事件が調停に回り、そのために、ある程度明渡を前提としながら、しかし一定の条件をつけて原告側——地主側、家主側に折れてもらう、そして話をつけるという事件が多いというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/104
-
105・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私の聞いているのは、いまおっしゃったこともわかりますけれども、調停の場合ですね。訴訟の中から調停に回る場合なりあるいは和解に回る場合は、和解の場合は裁判官がほとんど直接自分でやられるわけですから、これはまあわりあいに事態をよく見てやられているわけですよね。
〔理事木島義夫君退席、委員長着席〕
訴訟進行中に調停に移る場合は、もちろん調停委員がつきますけれども、その場合でも裁判官がわりあいに関与するのが多い。事態の中から真相をよく見てやられる場合が私はあると思うんです。それではなくて、最初から調停の事件がたくさん出ているわけですね。その調停の事件のときに、調停委員の人が選ばれるわけですけれども、いま局長が、裁判官がこの事件の調停にはだれがいいということで調停委員を選べばいいと言ったけれども、そんなことはどこでもやっていないわけですね。主任書記官ですか、あそこのところで選んでいるわけですよ。選んだ結果、あれを求めるわけでしょう。選び方はいろいろな基準があるでしょうけれども、一人はその土地の人で近所の人でよく事情を知っている人とか、あるいは一人は弁護士を選ぶとか、いろいろありますね。弁護士だって、忙しい弁護士——そんなこと言っちゃ悪いけれども、忙しい弁護士はそんなものになりませんね。比較的ひまな弁護士が調停委員をやっているわけでしょう。これは差しつかえもありますから、なんですが、実情はですね。
それで、調停でやっているもの、たとえば建物収去、土地明渡というような調停のときに、借地権があっても、その借地権というものがどれだけ強い権利かということ、これはもちろん一〇〇%絶対的なものじゃありませんけれども、そういう点についての調停委員の認識が非常に違うわけですよね。ということは、調停委員の人がやっぱり土地を持っている人の層から選ばれていて、土地を借りて家を建てているのだからこれはある年限がきたら返すのはあたりまえじゃないかという前提で、そういう気持ちで調停をやるわけです。建物の明渡なんか特にそうですね。借りているものは返すのがあたりまえなんだから、一定の年限を切って返しなさいと、それがほとんどだと思います。初めからそうなんですから。調停委員が老齢だという話もありましたけれども、老齢だからそうだというわけじゃなくて、むしろ出身の階層が地主の出身の人、それから大家さんの出身というか、そういう人が調停委員にほとんど選ばれているわけでしょう。これは九〇%以上そうなわけですよ。やっぱり、いま言った名望家が選ばれるわけでしょう。それから、結局、時間とひまのある人でしょう。ひまと言うとあれかもわかりませんが、そうなってくると、ふだん働いている人、昼間働いている人たち、そういう人は借地人や借家人が多いわけで、そういう人たちは調停委員になれないわけですよ。現実の問題として選ばれていないわけです。そうして、どうしても名望家でひまのある人ということになると、地主なり大家さんの階層から出てくる。こういう人たちは所有権のほうを非常に強く考えているわけです。ですから、私の言うのは、率直に言えば、調停委員がいま全国に何人いるかわからぬですが、職業別というよりもむしろ階層別なデータというものがあればいいわけですが、そこまでは要求するのは私も遠慮しますから要求しませんけれども、現実はそうなんです。
そこで、前に戻って、いま調停は、借地法なり借家法が非常に多いわけですね。金銭調停の場合はわりあいに簡単ですし、手形の場合はほとんど手形訴訟ができてからそっちのほうへ行っておりますし、裁判官が仲に立ちますから、なんですが、借地借家の法律の精神なり、特に今度の改正案が通れば、通ってから具体的にどうするのだというふうな改正法の趣旨ですね、こういうふうなものをどうやって調停委員の人たちに教え込んでいくかですね、これは私どもは非常に大きな問題だと、こう思うんです。この法案が通った後にそういうことをどういうふうにやっていくかということが一つと、それから現在借地借家法の精神というようなものについてどういうふうに調停委員の人たちに最高裁としては教えているかということですね、それをお聞きしたいわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/105
-
106・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 調停委員の人がどういう名望家、良識家であられましても、やはり法律的に事を解決するということがいわゆる法律事件でございまするから、調停におきましてそういう知識がなければ妥当な解決がはかれないわけでございます。そこで、日調連——日本調停協会連合会、御承知のようにそういうものがございまして、ここと最高裁がタイアップいたしまして、新しく調停委員に選ばれた方につきましては、いろいろ法律問題につきまして、研修と申し上げてははなはだなんでございまするけれども、一応の講義をするということがいまの体制になっております。なお、そういう点につきまして、不十分である、調停委員の方々の中からももう少し法律的知識についてのいろいろの資料、講義を聞かしてくれというような御要望もございまして、あるいは調停事項であるとか、あるいは調停のしおりであるとか、そういうものを日調連あるいは最高裁といたしまして調停委員の方々にお配りいたす等の手段をとりまして、法律知識につきまして各調停委員の方々に準備をしていただくような手配もしております。
なお、昨年初めての試みでございまするが、御承知のように、毎年調停委員の大会というものが各ブロック別にあるわけでございます。そのおりに、調停の協議会をやるわけでございます。これがとかく実質的な協議会にならない面もございましたので、この調停協議会を主催を日調連から裁判所のほうに変えていただきまして、それはいろいろ資料等の関係でやはり日調連よりも裁判所のほうが資料が多いというような点もございまするので、そういうように協議会の主催者を裁判所といたしまして、裁判所が責任を持ってその協議会を主催する、調停にあらわれるいろいろな法律問題その他の諸般の問題につきまして実質的な協議ができるようにというような体制に改めました。まあ十分な手当てとは申せないのでございまするけれども、御指摘のような点につきましては私どものほうといたしましても問題点があるということを意識しておりまして、少しずつでもそういうふうな方面に向かって努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/106
-
107・稲葉誠一
○稲葉誠一君 調停というのはなかなかむずかしいですよ、法律的にいって。いま言った法律知識がなければほんとうの調停はできないという意見は、法律家からいえばそうなんです。ところが、調停委員の人たちは、法律知識があると、また、法律知識のある人が加わると、程度問題ですけれども、調停はまとまらないという考え方を持つわけですよ。だから、調停という制度が一体近代的な権利感覚というふうなものから見てどういうふうなものなのかということは、これはいろいろむずかしい議論があるかと、こう私は思いますけれども、必ずと言っていいくらい、法律的な主張なんかすると、それは裁判でやってください、調停はそんな法律的なことを言うところじゃありませんよと、こうなるんですね。だから、代理人に弁護士がつくのを非常にいやがります。調停委員の人に弁護士がつくとまとまらない。しろうとの調停委員が中に入ったほうがまとまるわけですよ。案をつくって押しつけるわけです。ぎゅうぎゅう押しつけるわけです。女の人なんか、どうにもしようがないから、半分泣き顔になって「けっこうです」と言う。ちっともけっこうじゃない。帰りがけに、「調停委員に押しつけられた」「裁判所から押しつけられた」と泣いて来るわけです。非常にそういうのが多いでしょう。で、よくあれが出るでしょう、調停無効の問題であとになって執行停止の問題が出てくるのは、そういうふうなものがあるからなんですけれども、いずれにしましても、どの程度の法律知識が必要かはいろいろ議論があるのは別としても、借地借家法の基本的な法律の精神なり法律の理解というものをもっと調停委員の人に研修なり何なりを通じてしないと、借地借家という問題をめぐっての調停が非常にゆがめられてくると思うんです。私どもは身をもって感じているわけです。
いま調停協議会というのを言われましたけれども、これを裁判所のほうに変えてもらったというのはよく理由はわかりますけれども、これは集まって役員の改選をやるんですね。だれが会長になりたいかというので、そればかりやっていて、集まって飯を食ってビールばかり飲んで終わりでしょう。ほとんど一時間か二時間やって、ちょっといいところは温泉へ行ってやるというのもあるかもしれませんけれども——その程度ばかりじゃありませんよ、そういうのもあると思いますけれども、そういう形で、有名無実なんですね、現実は。これは、あれですね、法律知識というもののしっかりとした普及を調停委員の人にやらしていただきたいと、こう思います。
それから調停の中に法律家が代理人となってくるのを非常にいやがる風潮があるんです。弁護士が来るとこわれちゃう、せっかくまとまったものがこわれちゃうといってあれするのがあるんです。ぼくはこれ以上言いませんけれども、そういうのがあります。
それからもう一つは、調停委員の選任に、いま言った名望家とかなんとかということばが中にありましたが、ぼくはこういうことは言いたくないのですけれども、昼間働いて夜帰ってくる人は全然出られないわけですから、いわゆる革新陣営の人はほとんど調停委員に入っていないわけです。これは百人のうち何人いるかわかりませんけれども、ほとんど入っていない。保守的な人が調停委員になっている。特に町から村から出てくる場合は、ほとんどこういう人ですから、そういう人が全部借地人、借家人のほうのあれじゃない形で出てくるわけです。もちろん、借地人のほうが財産があって、地主のほうが財産がなくて困っている場合もありますから、一がいには言えませんけれども、どうもそういう傾向があって、ですから、調停委員の任命ですか、一年ごとに任命するそのときに、もっと階層的に平均をとるような形で調停委員の任命をしてもらわないと、借地借家法というものはこわれてしまうんですよ。その点は十分留意をしていただきたいと、こう思うのです。どういうふうな形で各地方裁判所の所長なりあるいは会同のときにそういう話をされるか、技術的なことは別といたしまして、いずれにしても、調停委員の選任が片寄っているわけです。そういうものに革新的陣営というか、そういうふうな人がほとんどされていないわけです。多少ありますけれども、ほとんどされておりません。こういう点については、十分御考慮を願いたい、こう思います。この点について、ひとつ簡単にお答えを願いたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/107
-
108・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 調停委員の方が名望篤志家であると同時に、各界の層を代表されると申しまするか、各界の層の利益が公平に調停の面で反映するような人選をすべきであるという御指摘は、ごもっともでございまして、毎年行ないます調委員の選任につきまして、そういう点につきまして、やはり改良すべきであるというふうに考えております。ただ、実情といたしまして、私どもも、若い人、それから現にいろいろの職業で忙しく働いている人にも調停委員になっていただきたいということでお願いをする場合がありましても、なかなか受けていただけないという面もある点を御了承いただきたいと思いますが、選任の基準と申しまするか、選任する際の態度といたしましては、御指摘のとおり、あらゆる職業、あらゆる階層の人の中から良識のある方を選任すべきである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/108
-
109・稲葉誠一
○稲葉誠一君 忙しいのはわかりますけれども、簡易裁判所の判事の人が、調停にほとんど出て来ないんですね。出て来るところもあるでしょうけれども、まとまった場合に書記官が書いたものを読み上げるときに出て来ますけれども、あとはほとんど出て来ないんです。神戸ですか、非常に熱心な判事さん、吉田さんですかね、非常に熱心な判事さんがおられて、調停にほとんど出て来て、当事者が非常に満足しているという話もあるのだけれども、そのほかではほとんど出て来ないですね。それは、忙しいのはわかりますけれども、もう少し何とか出て来るように、指導と言うとおかしいが、会同なんかのときにお話しを願えないでしょうかね。事件が多いのはわかりますけれども 口をきめて分配をしてやっていただきたい、こう思うんです。ほとんど出て来ない。現実はどうなんですか、忙しいのはわかりますけれどもね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/109
-
110・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 御指摘のように、調停に立ち会うべき裁判官が、本来ならば調停の初めから終わりまで立ち会っているのが本来の姿であろうと思います。現状が必ずしもそうでないということは、私どもも認めざるを得ないのでありまして、これは事件数に応ずるだけの裁判官の数がないという、つまり忙し過ぎるということがあるわけでございまするけれども、それは本来の姿ではないのでありまするから、本来の姿で調停が運用されるように格段の努力をいたさなければならないというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/110
-
111・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、ここで資料要求するということでは決してございませんけれども、簡裁のいろいろな調停で金銭債務の非常に簡単なのがありますけれども、そういうのは別として、借地借家ばかりでない、ほかの調停もありますが、田舎の——田舎と言っちゃ悪いですけれども、むしろ支部の簡裁——支部の簡裁というか、本庁でないところの簡裁ですね、それから乙号支部あたりの簡裁のときには、裁判官が出て来るのが相当あるようにも感ぜられるのですけれども、いずれにしても、現在の調停事件を裁判官が出てきて、担当した場合に、一体裁判官をどの程度ふやさなければならないかということですね。これはいまここでなくていいですよ。資料を出してくれということではない。そういう研究をぼくはやっていてもらいたいと思うんです。というのは、率直な話、裁判官が出て来て調停をやってもらわないと、不安でしようがないのがあるんです。それは、いま言ったような、何とかしてまとめようまとめようとするんです、調停委員は。実際問題として自分が手がけてまとまらなかったら自分の不名誉と思ってやるということで、一生懸命やる。一生懸命はいいけれども、一生懸命やるからまとめろということでまとめちゃう。裁判所に行ってなかなかしゃべれませんから、ちゃんと自分の意見を言わなかったのが悪かったといえば、理屈はそのとおりですけれども、なかなか言えない。言わないというと、承諾したことにされてしまう。
それからもう一つ、いまの調停がきまったらきまったというように、何かきまったことを明確に形式づける方法はないのですか。当事者はきまったのかきまらないかよくわからないでいる人がいるんです。ただ、書記官が出てきて、裁判官が出てきて、これでいいか、これでまとまったのなら書記官読めといって読むわけです。熱心な裁判官は自分で読みますけれども、「このとおりでいいか」、「はい」と言ってこれでおしまいでしょう。名前を書いて判子を押すわけでもなんでもありませんし、非常にきまったようなきまらないような、あとで判決にかわる効力というのがあって、強制執行できるわけですね。だから、それはなるほど法律的にはそうに違いないんですけれども、一般の国民は、何かそこではっきり自分の名前でも書いて判子でも押さなければ、調停が成立したんだというふうにはとらないんです。非常に弊害が出てくる。その点なんか、これは純法律的に言えば、ぼくは、いまの当事者間の契約が成立しているわけですから、何も名前を書いて判を押さなくてもいいと思うんですけれども、その点について考えていただきたいというのが一つ。
それから借地借家の場合の調停のあれは、法律的にはどういうふうになるわけですか。当時者間の契約を裁判官がどうするのです。成立をまさか認証したわけではないでしょう。調停の法律的な効力というのは、どういうふうな性質になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/111
-
112・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 調停の場合に限りましても、これが訴訟法的にあるいは私法的にどういう形になるのかということにつきましては、いろいろ説もあるようでございますけれども、要は、やはり当事者間に合意がなければならないと思います。そうして、裁判所は、もちろん調停委員も、そこでその合意が任意になされた、結局任意になされた勧告によって合意がなされたということを認めた上でなければ、調停は成立しないわけです。しかるに、御指摘のように、調停無効の訴えというものが往々にしてございます。それが、あるいは錯誤であるとか、あるいはそういう意思がなかったというようなことで事件が出てまいるわけでございますけれども、まあそういう事件が出てきたときに、事件を審理しておりましたときにその申し立てがためにする申し立てである場合もございまするけれども、しかし、やはりほんとうに理解できなかった、合意するという意思がなかったのに合意されたというふうに表現されたという場合がなきにしもあらずで、したがいまして、判決におきましても、調停無効で原告と衝突するという場合が出てくるわけであります。これは当事者に合意があったという認定を誤ったわけでございまするから、そういう意味におきまして調停裁判官の落ち度であったわけです。それを修正する方法として、あるいは単に調書をつくるだけでなくて、当事者に判を押さしたりということも考えられないわけではございませんけれども、しかしながら、およそ裁判官で調停に立ち会ってそうしてほんとうにここに合意があったかどうかということは、責任をもって自分で認定しなければならない事柄であろうと思います。あえて当事者の印等を押さなくても、そこはほんとうに確かめた上でやるべきだ。たまたまそこをしなかったというような事件がございますれば、これはその裁判官として大いに反省しなければならない点であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/112
-
113・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのは、調停に最初から裁判官が関与しているなら、私はそれでいいと思うんですけれども、関与してなくて、きまったからといってこういうのを持って法廷から出てきて、ああこれできまったのかというようなことでやっているのが多いわけです。とてもそこで、当事者が「いや、違います」とは言えないわけですよ、調停委員もそこにいるわけですから。どうも、その点、何とか方法を考えないと、不当に法律が曲げられたり、権利が侵害されたりすることが起きてくると思うんです。調停無効確認の訴えを起こして執行停止を申請しても、これは民訴の条文からいって、調停無効確認の訴えでは執行停止は出さなくてもいいことになっているのでしょう。どうでしたっけ。請求に関する異議ではないでしょう。法律的に停止命令を申請できる場合に入っていないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/113
-
114・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 調停無効で行くべきか、請求に関する異議で行くべきか、いろいろな考え方がございます。請求異議で行きますれば執行停止という仮の処分の制度もありますし、調停無効で行きましてもそれを本訴としての仮処分として執行の停止を求めることもできます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/114
-
115・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いや、請求に関する異議というのは、しかし、あれでしょう、調停が成立した以後の、和解が成立した以後の条件、事情の問題が請求に関する異議の基本的な問題でしょう、普通の場合は。ですから、それでやる場合は条文がありますけれども、調停無効の確認なりあるいは和解無効の確認の場合には、裁判所の職権の発動を促すだけのことになるのじゃないですか。法律上の権利として執行停止の命令が申請できるというのとは違うのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/115
-
116・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) そういう場合の争い方は、もう一つ実はあるわけですね。期日指定によって、訴訟が終了していないという前提のもとに、つまり和解が無効であるのだから訴訟が終了しないということで期日指定の申し立てという争い方があるわけでございます……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/116
-
117・稲葉誠一
○稲葉誠一君 簡単でいいですよ、横道ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/117
-
118・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) そういたしまして、いまの執行停止の問題は、やはり片方のほう、債権者のほうは、つまり和解が有効だという前提のもとに執行してくるわけでございます。片方は、それを争う方法は期日指定の申立方法で争う方法もございますけれども、結局その債務名義を争う方法としては、その債務名義は無効だと、その仮処分として停止を求めるという形がある、このように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/118
-
119・稲葉誠一
○稲葉誠一君 まあその問題はここで特に論議すべきことでもありませんし、なかなかむずかしい理論ですし、それから実務的にもなかなかむずかしい問題がたくさんあるというふうにぼくは思いますが、いずれにいたしましても、調停無効確認なりあるいは請求に関する異議なりで執行停止をやっていくということは相当あるわけですね。これはもちろん引き延ばしのためにやるのもなきにしもあらずですから、いろいろあると思いますが、これはやはり調停が成立したときの事情が、十分本人が納得しないで成立さして、しまうんですね。
それからもう一つ、ぼくらがよく、何といいますか、相談を受けたり、あるいはいろいろな形であうのは、「このときにはとにかく三年後には明け渡すということをきめなさい。そのときになればまた調停委員が仲に立ってあげますよ」というようなことでまとめてしまう場合がある。建物収去の場合でも、「そのときになればまた考えてくれるでしょう」とか、あるいは「調停委員が仲に立ってあげますよ」というようなことを言うものですから、それでそのときには調停委員が仲に立ってくれてまた円満に延長になって解決するのだというふうに思っているんですね。ところが、そんなことは調書にはあらわれていませんし、法律的な効力があることでもありませんから、結果として非常にうらむのですね。調停委員なり裁判所をうらむという形があるんですよ。非常にぼくは残念だと思いまして、どうもこの調停というものはいいあれですけれども、問題点がことに借地借家の問題にからんで非常にたくさん出てきているということを考えるわけですが、これはいずれにいたしましてもまた別のこの法案と離れた問題になろうかと、こういうふうに思います。
それからもう一つは、訴訟額の関係で、建物収去、土地明渡なり家屋明渡が、ほとんど簡易裁判所にかかるようになってきておりますね。十万円以下ですか、固定資産の評価でいくと。ことに地方の場合は非常にそれにかかるわけですよ。ですから、たいへん失礼な言い方ですけれども、簡易裁判所の判事の人にやはり借地借家の法律の研修というようなことをもう少しやってもらわないというと、どうも少し不安のような感じがしてならないんですよね。だから、簡易裁判所の判事の管轄が非常にふえてきておるわけですから、これらの人の研修というものも十分最高裁としてお考えを願いたいと、こういうふうに考えます。現実にどのようにやっておるのかということを、将来借地借家法が改正になった場合のことも考えられて、どういうふうにするのか、こういう点について簡単にお答え願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/119
-
120・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) ただいまの統計で見ますと、借地借家事件が六千件で、そのうち、半数が簡裁で、半数が地裁というような形になっております。それにいたしましても、御指摘のように、先ほど自治省からもお話がございましたように、固定資産の評価の問題が三十九年までは非常に低かったわけでございますね。その関係で、実際に訴価の高いものが簡裁に行くという事件はございまするけれども、三十九年以後はその訴価の認定につきましてやはり固定資産税の評価額ということを基準として実務上やっておりまするので、かなりのものが地裁のほうに回るというような傾向になっております。
それから研修の点でございますが、御指摘のように、簡裁判事に対する研修ということは非常に重要なことであると私ども考えておりまして、いわゆる初任研修というのはこれは約三カ月近くやっておりまするけれども、これでもまだ不十分じゃなかろうかということで、なるべくその初任研修を長い期間やりたい。それから任官いたしました後におきましても、管内におります簡裁判事の数等によりまして多少違いまするけれども、大体二年おきか三年おきくらいには一カ所に集めまして一週間くらいの研修をしております。それから毎年簡裁判事の会同ということをやっておりまするけれども、これも高裁別のブロックでございます。この協議会の内容は、普通の裁判官の協議会、会同とは多少趣を異にいたしまして、内容的にはむしろ研修に近いというような方法でやっております。それでその時期時期によりまして、たとえば昨年あたりはやはり手形の会同であるとか研修であるとかということに主眼を置かざるを得なかったわけでありますが、このたびはやはり借地法という問題が表面に出てまいりまするので、こういう問題を研修の問題として取り上げてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/120
-
121・稲葉誠一
○稲葉誠一君 自治省の方がおいでになっておりますので、これは自治省の管轄ですか、いまの固定資産税や都市計画税が上がることが地代家賃にどういうふうに寄与するかということをいま御説明願ったわけですが、今度は物価が上がったから地代家賃を上げろ上げろという動きが盛んにあるわけですよね。これは、一体、物価といったっていろいろあるからたいへんむずかしいんですが、科学的に妥当性があるのかということですね。どこでわかるのですか。これは企画庁ですか。科学的にはなかなか無理ですけれどもね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/121
-
122・森岡敞
○説明員(森岡敞君) 地代家賃の問題を直接所管しておりますのは、建設省と思います。それから物価問題との関連では、企画庁ももちろんいろいろ検討はいたしております。私どもは税の点だけでございまして、ちょっと地代家賃までわかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/122
-
123・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこで、最高裁にお願いというか、あれしておきたいのは、いまのは、固定資産税と都市計画税が上がって、それで地代家賃にどういうふうにはね返るかということの一応の科学的なのが自治省から出ているわけですね。それで物価担当官会議で十日に正式に提案されるわけですが、それからもう一つは、物価が上がったやつがどういうふうにはね上がるかということ、これはまあ物価のとり方にもよるし、なかなか言いにくいというか、統計はとりにくいかと思いますけれども、いずれにいたしましても、近ごろあらわれておるのは、税金が上がったから物価が上がったから地代家賃を上げろ上げろという形でどんどん迫っているわけですね。現実にそういうわけなんですよ。そうすると、これが調停に出てくるわけです。そうすると、調停に出てくるときに、地代の増額というプロパーな形で出てくるのは私はある場合には少ないかと思うんですね。だけれども、ほかのものに関連をして出てくるんですね。そうすると、また調停委員は、そんなに物価が上がったんだから、税金が上がったんだから、地代が上がるのはあたりまえだ、家賃が上がるのはあたりまえだといってやられるわけですよ。それが一つと、まあ率直にいうと、まだ公定が残っていますから、その公定どおりということはなかなかそれはあれかもわかりませんけれども、公定があるんだと、この借地の上に建つ建物の地代については公定があるんだということを言うと、そんないまごろ地代家賃統制令なんていうのはおかしいんだと、こう言い出すわけなんですね。非常に困るんですね。ですから、地代家賃にどういうふうに今度の税金改正ではね上がるかということ、これに関連をしていわゆる便乗の値上げの要求が相当出てくるわけですよ。これを裁判所が押えられるとか押えられないとかいう意味ではなくて、自治省なり建設省なり企画庁なりがこういう資料を出しているんですね。で、現実にはこの程度の科学的な負担増といいますかになっているんだという形のものをその会同なりあるいは裁判所が資料として流しておいていただかないと、そうでないというと、盛んにこれでやってきますから、非常に困っちゃうというか、せっかく法の意図したところと逆な方向に利用されるのがありますから、そういう点について、いま言った自治省なりあるいは建設省なり企画庁なりの地代家賃に関連をする資料を各地方裁判所に、簡易裁判所ですか、十分流して周知徹底させるようにこれはぜひお願いしたいと、こう思うんです。この方法をどういうふうにおとりになるおつもりですか。裁判所としては、こういうふうにやれということまで言えるかどうかは、これはぼくも問題だと思うんですよ。だから、これは民間の出した資料ならそれは別ですけれども、政府の出した資料がこういう資料なんだから、十分この点については周知徹底させるようにということなら言えると、こう思うんですがね。こういうふうに下部の裁判所に対してやれとまでは言えないにしても、こういう資料が出て、こういうものなんだということの徹底はできるんだと、こう思いますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/123
-
124・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 固定資産税がある程度今度の改正で上がりますと、建設省の告示によりましてある程度地代家賃というものが上がってまいるということは、法律的にそういうことになってくることでございまするから、それがある程度裁判あるいは調停の実情の上に反映してくるであろうということは、私どもも予想はしております。しかしながら、地代家賃統制令の十条で、裁判所が統制令の定めに必ずしも形式的に従わなくて裁定ができるというようになっておりまするけれども、この裁定の限度というものははたしてどういうものであるかというようなことにつきましては、従来とも裁判官会同等におきましていろいろ議論がなされておるのでありまして、大体の結論といたしましては、地代家賃統制令十条による裁判所の調停の地代の価額というものは、やはり認定額であるとか提示額であるとかというものと無関係のものではない、やはり地代家賃統制令の法律の趣旨を形式的には必ずしもそのまま守るものではないとしても、その精神というものはやはり十条で調停をする場合でも生かしていかなきゃならないというふうに裁判官の会同等でも議論されておるわけでございます。
そこで、今度法律的に地代家賃が上がるわけでございまするけれども、これがいわゆる値上げムードというものになってあらわれてきてはいけないわけでございまして、裁判所といたしましても、先ほど申しました十条の規定で調停をやる場合には、統制令の趣旨というものを十分に含んで、その上で調停をして、決して値上げムードというものに従ってはいけないというふうに考えておるわけでございまして、裁判官はやはり法律を見てその趣旨に従って事件を処理すべきものでありまするから、法律の趣旨を解釈していけばそういうふうになるというふうに必ずや裁判官は考えるであろうと、そうしてその趣旨に従って事件を処理していくであろうというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/124
-
125・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはわかるんですが、固定資産税なり都市計画税が上がったということで地代家賃にどの程度はね返るべきが妥当かということの認識がばく然としているわけですよね。だから、いま言った科学的資料が出たわけですから、科学的な資料に基づいて、自治省ではこういう見解なんだという形の資料をつくって裁判官に会同のときなりあるいはその他のときに流していただくということをひとつお願いしたいのですが、同時にですね、裁判官が調停にずっと関与していればいいと思うんですよ。そうでないから問題なんですね。裁判官が出て来ないから、調停委員がやるんですからね。だから、そこのところが徹底していないと、わけがわからなくなっちゃうですから、裁判官に徹底させると同時に、調停委員の人にそれが徹底するように、これは自治省なり建設省なり企画庁の科学的資料をつけて、そういうふうな研修というか徹底方をぜひはかっていただきたい。これはどんどん値上がりしていますから言っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/125
-
126・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 自治省それから企画庁等の資料の扱いにつきましてのお話は、御趣旨はごもっともでございまするので、資料を求めまして、そうして検討の上、各地に流すべきものは流して、そうして今度の固定資産税の値上げの趣旨というものを裁判官、調停委員にまで徹底させるような方策を講じたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/126
-
127・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それからもう一つ、別のことですが、この法案が通った場合に、最高裁側としてはどういうふうな準備というか処置というものを本年度なりあるいは来年度以降しなきゃならないのかということなんですがね。裁判官に聞きますと、これは法律が通ったらかなわぬという意見が相当あるんですね。とてもこれは忙しくなっちゃってかなわぬなんて言っている人も相当いるんですね。裁判所によけいなことばかりやらして困っちゃうと言う人もだいぶいますよ。具体的にどういうふうにしていくわけですか。人数の増加の問題もあるでしょうし、事務の分配の問題もあるし、いろいろあるわけでしょう。現在の予算の範囲でできることと、新しく予算をつくってそうしてやらなきゃならないことと両方あると思いますね。そこはどういうふうにお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/127
-
128・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) この法律が施行されますれば、裁判所としてはその受け入れ態勢といたしまして当然予算的に措置をいたしませんと、この法律が予期しております借地借家関係の紛争の迅速かつ適正な処理ということができないわけでございます。施行の時期は来年の六月になるわけでございまするから、本年は施行準備のための裁判官の会同をするための予算しかとっておりませんけれども、来年度は人員の要求等につきましても相当程度の予算措置を講じなければならないと思っております。私ども、これは見込みでございますから、推計した推定の数字しか申し上げられませんけれども、この法律によって裁判所に出てくる事件というものは、非訟事件として一万件、調停事件として一万件近く出てくるのではないか。そのためには裁判官としても百名近くの増員を必要とするというふうに考えられるわけでございますけれども、しかし、これが来年度すぐそれだけの事件が出てくるかということにつきましては、やはりこの制度の普及の程度がございます。まず、三分の一程度にみまして、人員の要求でも、百人必要なものとすれば三十人程度の人員の要求をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。その他、施行に関する会同、あるいは鑑定委員の選任あるいはこれの講習あるいは日当等につきましても相当程度の予算の要求をしなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/128
-
129・稲葉誠一
○稲葉誠一君 予算の要求は最高裁は直接できるわけですが、法案の提出は文部省ですが、法務省としては、本年なりそれから明年度以降においてこの法案が通った場合の予算の問題について大蔵省との間でどの程度の話し合いがついて、どの程度の了承が得られておるのですか。これは法務省としてはやっていないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/129
-
130・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) この法律案と予算との関係でございますが、法務省はこの予算に関係ございません。裁判所と大蔵省との関係になるわけでございます。と申しましても、政府側といたしましては、先ほど裁判所側からお話がございましたとおり、この法律案の趣旨に従いまして、事件が迅速適正に処理されることを期待しておるわけでございます。したがいまして、裁判所におきまして必要な予算が十分確保できますように、また、裁判所内部の体制も十分整備されまして法律の実施に当たっていただけるように期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/130
-
131・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最高裁のほうとしては、いまの百名というのは、簡易裁判所の判事ですか、地裁も入れるのですか、はっきりしなかったのですが、それは大蔵省との間で、これは民事局のあれじゃないかと思いますが、経理局ですか、どの程度の話がついているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/131
-
132・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) まず、裁判官の振り分けでございますが、これは地裁、簡裁込みでございます。その内訳につきましては、まだ正確な数字を出しておりません。
大蔵に対しましては、法案の説明はもちろんしてありまして、大体来年はこの程度の要求をしなければならぬという説明はしてございます。それで、法案を政府案として出されますにつきましては、大蔵ももちろん見ているわけでございます。本年度この法案が出たということにつきまして、来年は裁判所としてどのくらいの要求をするということは、私のほうから連絡しておるわけでございます。当然相当の予算を要するということは、大蔵省としても予期しておるところであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/132
-
133・稲葉誠一
○稲葉誠一君 本年度は、あれですか、特にこの改正に関連しての予算は組んでないんですか。あるいは、組んだとして、さらに明年度から施行されるとなれば、その準備のために特に増額しなければならぬとかなんとかいうことはあるんですか。そこまではいまないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/133
-
134・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 実際に動き出すのが来年度のことでございますので、予算を要する大部分のものは来年度の予算要求として、本年度といたしましては、私のほうといたしまして、法案が成立するまでの間にやはりいろいろの準備がございまするので、といいますのは、規則の関係もございますし、そういう関係で裁判官会同を開かなければなりません、そういう意味での予算は認められておりますし、それを支出するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/134
-
135・松野孝一
○松野孝一君 私は、時間もそうありませんので、総論的なことをちょっとお聞きしたいと思います。
まず、第一に、現在の借地関係は、借地人側の無断の増改築や無断の譲渡が多い反面、地主側も法外な権利金や承諾料などを要求する事件が多いなど、秩序のない、無秩序と言ってもいい面があると思いますが、これがためにこの法案も出されたことと思いますけれども、これも必ずしも十分とも思われないのでありますが、とにかくいま国が大馬力で推進しておる住宅建設もこのままでは十分達成されないと思うのでありますが、この点について御見解をちょっと承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/135
-
136・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) お説のように、現下の借地借家事情と申しますと、必ずしも秩序ある状況下にあるとは決して言えないわけでございます。ことに、戦後、土地の事情あるいは住宅の事情が非常に窮屈になってまいりましたために、一そうそういった不都合な関係、あるいは当事者間の争いというふうなものが増加いたしてまいったわけであります。ことに、借地関係におきまして、堅固でない建物を所有するために土地の賃貸が行なわれておる場合に、借地人が地主に無断でこれを堅固の建物にするというふうな事例とか、さらにまた、増改築の禁止の特約があります場合に、これを無視して増改築を敢行してしまうというふうな事態が往々にしてあるわけでございます。裁判所にもそういった関係の事件が多くなってまいりまして、必ずしも法律関係が円滑に進行しているというふうには考えられないのでございます。そこで、こういった紛争をできるだけ防止いたしまして、しかもその間に貸し主側と借り主側のやはり利害の調整というものも考えてまいらなければならないのでありまして、一方のみの立場に立って事を処理するということは決して適当な措置ではないわけであります。さらに、土地建物の法律関係を合理的なものにして、現在の社会情勢に合致するような方向へ持っていく、また、土地の合理的な利用を促進することに少しでも寄与するということを考えなければならないわけでございます。政府におきましても、いろいろの方面から土地対策あるいは住宅対策というものを推進いたしておるわけでございますが、法務省の所管といたしましては、当事者間の私法関係を規律いたします借地法借家法の関係が中心になるわけでございます。少なくとも当事者間の法律関係を合理的なものにして紛争を少なくし、しかもそれによって土地の有効利用に少しでも寄与できるならばということを考えまして、今回の法律案を提出するに至ったわけでございます。
もしも今回とろうといたしております措置がとれないようなことになりますと、たとえば借地条件を変更するというふうな問題の場合、地主が承諾しないために借り主が勝手に堅固の建物を建ててしまうということによって契約違反の問題を起こす、それがまた訴訟に進展していく、また、逆に何らかの方法でこれが合理的に解決されませんと、土地の有効な合理的な利用ということにも非常に差しさわりを生ずるわけであります。増改築の禁止の特約を無視して増改築を行なというふうな場合におきましても、同様の問題があるわけであります。さらに、借地上に建物がございますれば、これを他に譲渡いたしますことに伴いまして借地権そのものが譲渡されたり、あるいは借地の転貸が行なわれるということになるわけでございますが、これも現状のままに放置いたしますと、増改築の場合と同様のめんどうな問題が起きるわけでございます。現に、そういう事件がたくさんあるわけでございます。こういった問題をできるだけ円満にしかも合理的に迅速に解決するということが必要なわけでございます。借地法、借家法の改正は、そういうところを中心のねらいにいたしておるわけであります。
現在の住宅建設との関係も、確かにこれはないではございませんけれども、住宅建設ということになりますと、やはりその住宅そのものの建設を推進していくという積極的な面がこれはどうしてもまず先行することになると思うのでございますけれども、それにいたしましても、当事者間の法律関係が紛糾するというふうなことになりますと、せっかくの住宅の建設ということも半ば意味のないような結果になる場合が生ずるわけでございます。借地法、借家法が合理的に改められるということになりますれば、若干ではございましょうけれども、政府の行なおうといたしております住宅建設にもある程度の寄与がなされるであろうというふうに確信いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/136
-
137・松野孝一
○松野孝一君 いまのお話で、非常に改正案の重要なことがわかりました。また、政府がいま計画しております住宅推進政策にも非常に関係のあることもわかりました。しかし、今日まで私のところに来ている陳情書なんかを見ますと、借地法、借家法の改正案が、地主のほうを無視して賃借人保護法である、あるいは、所有権を破るというようなことばを使って盛んに陳情があるわけです。ぼくのところだけでも十ぐらい来ております。あるいは借地権の物権化をはかる意図があるとか、そういうようなことまでいろいろ書いてきているのですが、こうずっと見ると、地主のほうもよく考え、あるいは家主のほうもよく考えているというふうに思われるのですが、必ずしも借地人あるいは借家人のみを保護しているようには見えないのでありますが、こういうことを言うのは、何か皆さんがそういうお考えを持っているのか、それに対する御見解を承りたいと思います。政府のほうにも行っているのじゃないかと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/137
-
138・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) この借地法あるいは借家法という法律は大正年代にできました法律でございまして、第一次世界大戦後のわが国の借地事情あるいは住宅事情が非常に窮屈になりましたときに、借り主の立場を重視いたしまして借地法、借家法というものが制定されたわけでございます。したがいまして、その精神は、これはいまさら申し上げるまでもなく、借地人、借家人の立場を十分保護しようというところにあるわけでございます。しかし、現行の借地法にいたしましても借家法にいたしましても、貸し主側の利益を全く無視するということにはなっておりません。いろいろと法律関係を規定してございますが、これにつきましては双方の立場をやはり考えながら、その調整をはかるようになっておるわけでございます。しかしながら、第二次大戦後の借地事情、借家事情は一そう窮屈を加えてまいりました現在におきまして、現在の借地法、借家法だけではまだ不十分な点があるのではないかということから、今回の法律案を提案することになったわけでございます。
これは、本来の借地法、借家法の精神はそのままにいたしまして、現行の借地借家法では十分まかないきれないところを最小限度に手直しいたしまして借地借家関係の合理化をはかっていこう、こういう趣旨でございます。したがいまして、借地人の立場も十分考慮いたしてありますと同時に、また反対に貸し主側の利益もこれは無視できないわけでございますので、その間の利害の調整ということを十分に考慮したわけでございます。
いろいろ巷間伝えられますところによりますと、今回の法律案は所有権を全く無視するものであるとか、あるいは従来の債権である賃借権を物権化するための一つの段階であるというふうに言われる向きがございます。しかし、先ほど稲葉委員からも御質問がございましたように、いろいろ検討を加えました段階におきましては、理論上の問題といたしましては物権化ということも確かに考えられる。これは古くから法律関係の学会においてもいろいろと論ぜられたところでございまして、現行の借地権というものを一元化してすっきりした形にする、さらに投下資本を十分に活用できる道を開くには借地権というものを物権にしたほうがいいという考えがあるわけでございます。しかし、これも、先ほどの御質疑で私お答えしたつもりでございますけれども、いろいろ各方面にそういう法律的な構想をとることに対する批判的な意見があるわけであります。先ほどもそのごく概要を申し上げたわけでございますけれども、現在の情勢下においてそこまで進むことは適当でない、むしろ部分的な改正によって現在の借地法なり借家法の不利と認められる点を改めていくという方向に持っていくのが相当ではないかという意見が多いわけでございます。そとで、政府といたしましても、現在の債権であります賃借権をこれを物権にしようというふうなことを考えておるわけではございません。ただ、賃借権でございますと、やはり債権関係でございますので、どうしてもそこに投下資本の回収というふうな観点から考えてみますと若干不便があるわけでございます。この不便をある程度緩和して、投下資本の回収もできるようにすると同時に、また、地主側の利益もその際に十分考慮する道があればこれにこしたことはないわけでございますので、そういう趣旨におきましてこの法律案についていろいろ考慮を加えたつもりでございます。所有権を無視するとか、あるいは賃借権を物権化するとかいうことが言われておりますけれども、そういう考えを政府として持っておるわけではございません。
さらにまた、非常に各方面から言われたことでございますけれども、わが国の全般にわたって統一的な借地借家関係の慣行というものがない、それぞれの事情が違うんじゃないか、そこへ画一的にこのような法律を施行することにも問題があるのではないかということが言われております。しかし、私どもの調べましたところでは、たとえば権利金の授受というふうな問題にいたしましても、一部で言われておりますような状況下にはなくて、むしろ、どちらかと申しますと、そういった慣行がないといわれておる方面にむしろ実際問題としては権利金の授受の行なわれている例が多い。これはパーセンテージからそれがわかるわけでございますが、そういう実態も公式に確認できるわけでございます。したがいまして、それぞれの立場の方がいろいろの御意見をお持ちであろうことも十分わかるわけであります。また、反対意見が全くないということもこれはいかなる法律案につきましても考えられぬことでございます。それぞれのお立場の方がそれぞれのお立場からいろいろ御意見をお寄せになることはこれは当然でございますけれども、むしろ一律にそういうふうな慣行の差異があるということを言い切ることも逆に適当でないんじゃないかということが考えられるわけであります。
そういうことから考えまして、いろいろの反対するような趣旨の御意見もございますけれども、この法律案をしさいに御検討くださいますならば、大体そういった現在問題にされておるような事柄も十分これによって解決し得るようにできておるというふうに政府といたしましては確信いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/138
-
139・松野孝一
○松野孝一君 この今回の改正案を見ますと、借家のほうについては相当検討する余地もあると私は思っておるのですが、ことにアパートの部屋ごとの賃貸とかいうような問題もあります。ところが、わずか二点より改正ができてないですね。これは、今後借家の問題についての改正を検討する御方針ですか、どうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/139
-
140・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 借家関係につきましては、お説のように大別いたしますと二つの点について改正いたそうといたしておるわけでございまして、ただいま例示されましたようなアパートの賃貸の場合、その他こまかく考えますといろいろの形態のものが考えられるわけであります。それはそれなりにそれぞれの特殊事情を考慮に入れましてこの借家法が適用されるべき筋合いのものであるかどうかということを裁判例あるいは学説等通じまして現在の大体の考え方というものが方向づけられていきつつあるように考えられるわけであります。こまかい形態を一々ここで考えますと、非常にめんどうな問題が起きてまいります。たとえば、ただいまアパートの賃貸のお話がございましたが、よくデパートなんかにございますケース貸しというのがございます。こういった場合になりますと、さらにその限界がはっきりしないような問題がずいぶんございまして、借家関係の形態を克明に分類するということもなかなか困難な問題でございます。確かに、お話のような点を明確にしていくということは今後必要になってこようと思うのでございますけれども、今回の改正につきましては、そこまでは手が及ばなかったわけでございます。さしあたり大きなところで、どうしてもこの際合理的な解決をはかっていく必要があるという緊急必要性の最小限度のところでとどめたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/140
-
141・松野孝一
○松野孝一君 それからもう一つお伺いしたいのですが、今回の改正案によりますと、たとえば借地法の今度の八条ノ二とかあるいは九条ノ二などの裁判は非訟事件手続法によることになっておる。まあわれわれもそれはほんとうだと思う。しかし、特にまた争訟的な面もありますので、相当対審裁判のようなことも考えておるようであります。証拠調べ等の問題その他について相当争訟的な点を考慮してやっておるようであります。この非訟事件手続法によってやったということはなお憲法上の疑義があるという説もあるようでありますが、この点はどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/141
-
142・新谷正夫
○政府委員(新谷正夫君) 今回の改正案におきまして、特に借地法の第八条ノ二、第九条ノ二の関係の裁判につきましては、非訟事件手続法によるということにいたしてございます。これは、この内容をごらんいただきますれば十分御理解いただけることと思うのでございますが、この法律に定めてございますことがそれ自体争訟の対象にはなれないものなのでございます。争訟事件と非訟事一件の違いの問題になってこようかと思うのでございます。たとえば八条ノ二の関係について御説明申し上げますと、もしも借地条件に違反して借り主が勝手に堅固な建物を建ててしまったということになりますと、これは当然契約違反になります。契約違反になりますと、貸し主のほうはこれを理由といたしましてその賃貸借契約を解除するという手段に訴えてまいるわけであります。そうなりますと、借り主側は、いや形式的には借地条件に違反しておると言われても、これは実質的には正当だという主張をするであろうと思うのであります。そうなりますと、契約解除そのものが有効であるかどうかということが争いになってまいます。とことんまでまいりますと、これが裁判所に持ち出されまして訴訟という形になってまいります。ここで争われます対象物は、契約解除の結果、賃貸借関係というものがなくなったという貸し主の主張と、いや、そうではないと、解除は無効であると、したがって賃貸借関係はまだ残っておるという主張が相対立するわけでございます。その賃貸借関係あるいは賃借権というものの存否を確定いたしますのが民事訴訟でございます。すでに争いになりました法律関係をあるかないかということを裁判所が判断してその存否を確定するというのが訴訟でございます。こういった争訟の場合にその道を閉ざすことは、これは憲法違反の疑いがあるわけでございます。
ところが、今回の借地法で定めておりますものは、そのような法律関係の存否の争いを裁判所できめようというのではないわけでございます。規定にも明確に定めてございますが、たとえば借地条件を変更しようという場合に、借り主がまず貸し主に相談を持ちかけるわけでございます。そこで話し合いがつきますれば、それで万事解決でございますけれども、どうしてもそこで話し合いがつかない——そこから先の問題でございますが、もし話し合いがつかないために、借り主が無断で借地条件を無視して堅固の建物を建てるということになりますと、先ほど申し上げたような訴訟になるわけでございますけれども、そういうふうな形に持っていかないで、むしろ賃借権があるかないかという争いに立ち至ります前の段階で当事者間の法律関係を合理的に形成していくということをこの法律案は考えておるわけであります。話し合いがつきません場合に、借り主の側からたとえば裁判所に申し出まして、その借地条件を変更してもらいたいという申し出をいたすわけでございます。裁判所は、諸般の事情を十分考慮に入れまして、その当事者の間の法律関係は将来いかにあるのが合理的であるかということを考えまして後見的な見地からその法律関係を合理的に形成変更していくという作用を営むものでございます。
したがいまして、従来の権利関係の存否を争って、それがあるかないかということを確定するのではございませんで、これから先貸し主と借り主との間の法律関係をどういうふうに定めていくかということでございます。いわば行政的な処分と言ってもよろしいかと思うのでございますが、したがいまして、これは本来憲法で言っておりますような訴訟ではないわけであります。したがいまして、こういう措置をとるということは決して憲法違反にはならないというふうに考えるわけであります。ことに、訴訟の場合でございますと、先ほど申し上げましたように、単に賃借権があるかないかということを判断の対象といたすわけでありまして、訴えを起こして裁判を求める趣旨も一にその点にあるわけであります。裁判所は、それ以外の点について判断はできません。しかし、今回の非訟事件におきましては、将来の法律関係をいかに形成していくか、合理的に法律関係を形成するかということを裁判所が考えて、それを非訟事件手続によって裁判の形できめるわけでありまして、その際に貸し主側あるいは借り主側の立場を十分考えまして、双方の利益を公平にはかるための特別の処分ができるようにいたしてございます。これは、本来当事者が申し立てしていなくても、裁判所がその配慮を行ないまして当事者の利益を公平にはかるために特別に処分ができるということになるわけでございます。このことは、従来の訴えによってはできません。非訟事件でございますから、こういう当事者の利益の公平をはかる特別の処分もできるわけなんでございます。例といたしましては、現にすでに罹災都市借地借家臨時処理法あるいは家事審判法におきまして、いろいろの法律関係を形成変更する手続を非訟事件手続法でやる例が多々あるわけでございます。これにつきましても、先ほどの御意見のような憲法違反ではないかという訴えが起こされまして、最高裁判所まで行ったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういった事案につきましては、これは憲法違反にあらずというはっきりした結論が出ております。今回の非訴事件手続法によることにいたしましたのも、全く同様の考えに立っておるのでございまして、憲法違反の疑いは毛頭ないというふうに考えるわけでございます。
ただ、事柄が、借り主と貸し主との間の非常に微妙な問題になります。訴訟の対象になるような法律上の紛争ではございませんけれども、やはりそこに利害の対立、あるいはこれは争いと言ってよろしいかと思いますけれども、そういう対立関係がございますので、これを非訟事件において処理をいたします場合にも、やはり訴訟に近い形で双方の主張を十分尽くさせる、また、証拠調べも当事者の申し出に基づいて民事訴訟と同じ形において証拠調べを行なっていくということが望ましいのではないかと考えるわけであります。非訟事件手続法でございますと職権主義になっておりますけれども、借地借家関係の特殊事情にかんがみまして特に対審的な構造をとることにいたしましたわけでございます。まあこれによりまして十分に貸し主側、借り主側の主張、立証も尽くし得る機会を与えたわけでございます。もちろん憲法違反ではないと考えますと同時に、従来の非訟事件手続法では十分でなかった点につきましても、以上申し上げましたような点におきまして配慮を加えたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/142
-
143・松野孝一
○松野孝一君 最後に、最高裁のほうにちょっとお伺いいたしたい。これはもうすでに稲葉委員からの御質問がありましたので、特に申し上げることもないですけれども、さっきお話しの——もしこの法案が通りますれば、一年以内に施行することになっておるようでありますが、来年度これをまあ施行するについての人員の要求とかその他の要求が必要なわけでありますが、裁判官何人と言いましたかな、来年要求するのは。ちょっと簡単におっしゃってくださいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/143
-
144・菅野啓蔵
○最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 先ほど概数で申し上げたのでございますが、法律が全面的に施行されますと、百名足らずの裁判官が必要である、しかしながら、制度のしかれました当初におきましては、それほどまだ趣旨が国民に普及しておりませんので、そう急激には事件が出てこないといたしますと、まず三年たって先ほど申しました百名程度の人を必要とするような事件が出てくるであろう、そういたしますと、来年度の予算要求といたしましては、まずその三分の一、三十名弱の裁判官としては増員の予算要求をする必要がある、それに伴いましてもちろん書記官であるとか事務官であるとか付属の要員の予算、事務的な増員の予算要求もいたさなければならない、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/144
-
145・和泉覚
○委員長(和泉覚君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115206X02519660609/145
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。