1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十年十二月二十四日(金曜日)
午後一時十四分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第三号
昭和四十年十二月二十四日
午前十時開議
第一 昭和四十年度における財政処理の特別措
置に関する法律案(趣旨説明)
第二 中小企業信用保険法の一部を改正する法
律案及び中小企業信用保険臨時措置法案(趣
旨説明)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、日程第一 昭和四十年度における財政処理
の特別措置に関する法律案(趣旨説明)
一、日程第二 中小企業信用保険法の一部を改
正する法律案及び中小企業信用保険臨時措置
法案(趣旨説明)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/0
-
001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/1
-
002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案(趣旨説明)。
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。福田大蔵大臣。
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/2
-
003・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、さきに申し述べました補正予算と表裏の関係をなすものでありまして、最近における経済事情に顧みまして、昭和四十年度における租税及び印紙収入の異常な減少等に対処するため、必要な財政処理の特別措置を定めようとするものであります。
以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。
第一は、公債の発行であります。昭和四十年度におきましては、経済活動の停滞に伴い、租税及び印紙収入は、当初見込み三兆二千八百七十七億円に対し三兆二百八十七億円と、二千五百九十億円の大幅な減少を来たす見通しであります。かかる異常な事態に対処し、この減少を補うため、昭和四十年度限りの臨時特例として、政府は、財政法第四条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることとするものであります。
第二は、交付税及び譲与税配付金特別会計につきまして、一般会計からの繰り入れ額の特例措置及び借り入れの措置を講ずることであります。
さきに申し述べました租税及び印紙収入の減少見込み二千五百九十億円のうち、所得税、法人税及び酒税の主税の収入見込み額の減少は千七百三十四億円となり、これに伴って、昭和四十年度に地方団体に交付すべき地方交付税の総額は、右の金額の二九。五%に相当する五百十二億円だけ減額することとなるのでありますが、昭和四十年度については、地方団体の財政事情の現況にかんがみ、特にその減額を行なわず、これを当初予算計上額どおりとすることといたしまして、このため、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れられる金額の算定についての特例を設けようとするものであります。
次に、今般、地方公務員の給与改定に要する経費の財源に資するため、昭和四十年度限りの特例措置として、地方団体に交付すべき地方交付税の総額を三百億円増額することといたしまして、このため、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして、地方交付税交付金を支弁するため必要があるときは、昭和四十年度において、三百億円を限り借り入れ金をすることができることとし、右の金額については、昭和四十一年度以降七カ年度にわたり返済が行なわれるように措置いたしておるのであります。
なお、これらの措置に伴い、国債に関する法律第一条を改める等、所要の規定の整備をはかることといたしております。
以上、昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/3
-
004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。成瀬幡治君。
〔成瀬幡治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/4
-
005・成瀬幡治
○成瀬幡治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程をされました法律案につきまして、大体、大まかな点、六点についてお尋ねをしたいと思います。
その第一は、本法律案と政府の態度についてであります。本法律案は再提出であります。臨時国会で審議未了になったからです。補正予算が流れたためでございます。そこで、まず、佐藤総理にお伺いをいたしますが、予算不成立の責任についてであります。国会、たち始まって以来、予算が不成立で居すわったのは佐藤内閣が初めてであります。あまりほめた話じゃございませんが、えらい記録をおつくりになりました。記録保持者でございます。過日、木村議員の、責任は感じておりませんかという質問に対しまして、佐藤総理は、意見として承りましたという答弁をされておるのでございますが、まじめにお答え願いたいと思います。そこで私は、あらためてお尋ねをするわけですが、予算不成立の責任は感じておみえになりませんか。幾ら無責任時代でも、前代未聞の記録をおつくりになったのですから、何か責任を感じておられると思いますが、いかがでございますか、お答えを願います。
その二は、見通しの誤りをすなおにお認めになりますかどうかという点でございます。ただいま大蔵大臣の提案理由の説明の中にもございましたが、歳入欠陥二千五百九十億を生じたことは事実でございます。政府は、昨年末から、日銀の窓口規制の緩和とか、あるいは七月の不況対策、いろいろと努力をされました点は認めますが、どれもこれもみんな的がはずれておりました。その証拠には、不況が回復いたしません。そこで、戦後初めての今回赤字公債をお出しになるわけでございます。これまた新記録でございます。景気の見通しを誤った点をすなおにお認めになりますかどうか。いや、その誤りは国民のほうで、政府のほうにはないと、こうおっしゃるのか、総理の御答弁をお願いしたいと思います。私は総理に対してはこの二つだけです。ですから、責任を感じておるかどうか、見通しを誤ったのかどうか、簡単でよろしうございますから、とにかく正確にお答え願いたいと思います。
以下、福田大蔵大臣に御答弁を願いたいと思いますが、その三は、本法律案は、ただいまの説明にもございましたけれども、とにかく公債発行と、特例法と、違ったものを一本にまとめてお出しになっております。そのことが結局は審議期間というものを制限をしている結果になっているのではないかという点について、お尋ねをしようと思います。
すなわち、本法律案は五条ございますけれども、五条だけでございますが、第二条は「(公債の発行)」の点でございます。第三条は「(交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入れの特例)」、第四条は「(交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金)」、第五条は「(交付税及び譲与税配付金特別会計の支出する地方交付税交付金の額の特例)」、こういうふうになっているわけです。すなわち、二千五百九十億円の公債発行という国の一般会計と、約五百十二億の借り入れと、ベースアップの財源措置として三百億円の借り入れをするという特別会計を、一本にまとめた法律案になっております。地方財政と国家財政を一本の法律案に束にするということがよいでしょうか。木に竹をつぐということがあるのですけれども、これは、まさにこのことでございます。昨年のベースアップの財源措置は、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部改正でやったのであります。なぜ、昨年行なったように、公債発行と特別会計を分けて二本の法律案として提出されなかったのかどうか。そこには私は政治的なねらいがあったと思うのです。一本の法律に束にしておきさえすれば、本法律案が通過しないと地方公務員のベースアップ分の支払いが事実上できない。それは野党の弱いところなのです。野党の弱みにつけ込んだ意図があると思います。その根性が私は憎らしいと思う。その根性があさましいと思うのです。(笑声)また、年内に成立させてほしいという声がございます。四十一年度予算編成に支障を来たすなどという声も聞こえております。しかし、公債発行は新憲法下初めてのことでございます。赤字公債は財政法が禁止しているところでございます。それをあえて特例法でやろうということでございます。公債発行は、政治経済の一大転換であり、まさに重大な問題でございます。それを二、三日の審議で片づけるというようなわけにはまいりません。年末の大掃除じゃございません。手っとり早く、はい、そうですか、というわけにはまいりませんですよ。これは、賛成、反対は別といたしまして、今後の国民生活に重大な影響と関係のある問題でございますから、慎重審議をするのは当然でございます。佐藤総理も慎重審議は賛成だと思います。したがって、年内の十二月三十一日までにというような論は、審議権を放棄した暴論であり、国会軽視の有害論だと思うわけでございます。かかる声には耳をかすわけにはまいりません。そこでお伺いをいたしますが、どうして一本にまとめなければならなかったのか、積極的な理由がお聞きしたい。御都合主義ではいけません。
その四は、本法律案は四十年度の赤字穴埋めの特例法でありますが、歳入欠陥は四十一年度以降も引き続いて残るといろ点でございます。四十一年度予算で、四十年度赤字に見合う金額を歳出で節減するとか、あるいは増税をしない限り、赤字が消えないはずでございます。四十一年度に建設公債をもし発行しないで予算編成をするとするならば、当然、四十年度と同じように、赤字公債を発行しなければならないはずでございます。四十一年度の建設公債発行は、赤字穴埋めの分も含んでいると思うのでございます。四十年度は赤字穴埋めであるから特例法で処理する、四十一年度以降は建設公債であるから財政法違反にならないとするのは誤りでございます。独善的解釈と思うわけでございます。四十一年度以降の建設公債発行は多分に財政法上の疑義を持っていると思いますが、御所見を承りたい。
なお、この際、四十一年度の予算編成方針のあらましと、その規模、減税内容を承りたいと思います。その場合、名目成長率はどのくらいになるのか、実質成長率あるいは物価上昇率を何%に踏まえているのか、藤山長官からお答えをいただきます。
第二点は、公債発行と中期経済計画との関係についてであります。本年一月二十一日発表の中期経済計画には、公債発行というものは全然ございません。少なくともいまから約十カ月前までは、公債発行というものは考えておられなかった。いや、そうではない。なるほど四十三年度には公債発行をするのであるとか、あるいは本年七月の不況対策では、長期減税とともに公債発行というようなことが新聞には発表されましたが、いずれにいたしましても、中期経済計画では公債発行は全然触れられておらないのであります。中期経済計画と公債発行というものは全然無関係なのか、どうなんですか、関係があると思います。
そこで、公債発行に踏み切った時点より、中期経済計画というものは紙くずになっちゃっておると思う。どろにまみれたハンカチということばがございますけれども、ハンカチどころではない、ぞうきんにもならんです。もう捨てられてしまった。そこで、所得倍増計画とか、中期経済計画といっておりますけれども、これはみんな誤ってばかりおってさ、国民に迷惑をかけたけれども、何の役にも立たなかった。もう長期展望というものは要らないというふうにお考えになっているのか。それとも、まあこの際、経済企画庁の影が薄い、その存在の意義すらどうも薄れているときだから、もう一ぺん中期経済計画というものを真剣に立て直すのか。その心がまえをお聞きするとともに、もし、中期経済計画をお立てになるとするならば、いつごろ発表ができるか、藤山長官からお答え願いたいと思います。
第三点は、公債発行の具体的内容と、その影響についてであります。
その一は、応募者利回り六分七厘九毛五糸、期間七年、その種類は一万円とか十万円とか百万円、いろいろのことになると思いますが、あるいは日銀の国債担保貸し付け金利五分八厘四毛とおきめになったというふうに承知しておるのでございますが、そのとおりでございましょうか。産業資本側から、企業が不況で苦しんでいるこの御時勢に、銀行は二割、三割の増益、特に上位大銀行は百億以上の利益をあげているのだから、金利を下げるべきだとの意見もあります。他方、アメリカは最近、預金金利を五厘引き上げました。国内の預金金利の関係もありまして、金利の問題は非常にむずかしい問題でございますが、現行金利体系を当分動かさない所存でございましょうか。金利体系全体に対する所見を承りたいと思います。
その二は、発行方法でございますが、公募の形式で共同引き受け団をつくる。二千五百九十億の半分は資金運用部で、残り半分を市中金融機関で引き受ける。さらに、そのうち都市銀行十行で半分の約六百五十億を引き受けるということでございますが、シンジケート団はでき、その引き受け額はすでに決定をされていると伝えられておりますが、中身が承りたいと思います。そしてこういうような形で昭和四十一年度の建設公債発行も行なわれようとしているのか、どうなのか。ここ当分は日銀引き受けにしないという約束ができるかどうか、この点もお伺いいたします。なお、政保債あるいは民間の増資、社債発行などは、どのくらいの額が予定をされているのか。これとにらみ合わせて、四十年度、四十一年度の公債発行の市中消化の限度額はどのくらいが適正と踏まえておられるのか、お伺いをいたします。そして四十一年度を四期に分けて、赤字公債と建設公債はこれくらいずつ——一期はこれくらい、二期はこうだ、三期はこれくらい、四期はこれくらいだというように計画も立てておられると思いますが、その辺もお伺いをいたしたいと思います。
その三は、逆ざや対策についてお伺いをいたしたいと思います。シンジケート団のうち——大蔵省発表の昭和四十年度上期の預金債券コスト調べでございます。いまちょっとここに資料を忘れてきましたから申し上げるわけにはまいりませんけれども、あれを見ますと、こういうことだけはっきりしていると思うのです。公債発行利回りの六分七厘九毛五糸よりも預金債券コストのほうが高いところが、都銀、地銀の一部を除きますと、全部であります。すなわち、逆ざやになっているところは、興・長期、信託銀行、相銀、信金連、農中、みんなこれらは公債が割り当てられておりますけれども、預金コストのほうが高いわけです。したがって、高い預金コストで安い利回りの公債を買いますと損をするわけです。その対策をどういうふうに立てておいでになるのか。この対策がないと、せっかく公債は引き受けたが、しかし、手に持っているわけにはいきませんから、しかも、民間資金需要等を考えていたしますと、すぐに日銀の窓口へ持ち込むようなことになりはしないのか、逆ざや対策についてお答えを具体的にお願いをいたします。
その四は、結果的に公債は日銀の担保貸し付けになってしまって、通貨の増発になるのではないかという点でございます。その理由は、民間資金の欠乏、金利が逆ざやでありますから、どうしても日銀の窓口に持ち込まなければならないのではないでしょうか。通貨発行限度額とか、クレジット・ラインがあるから歯どめになる、そういうような意見も聞きますが、現に都市銀行十三行のクレジット・ラインは七千億に押えられております。しかし、日銀経済月報を見ますと、日銀からの借用額は、本年五月で九千五百二十億、八月で一兆四百四十億、十月で一兆七百億というふうに、一兆をこえて、しかも、こういう不況の中で月ごとにふえている傾向があるのでございます。したがって、クレジット・ラインはもうすでに三千億もこえ、高率適用で市中銀行は借り入れをしているわけです。このことは、都市銀行の資金需要の姿を示しているのでございます。ここへ約六百五十億円の公債を引き受けるのでありますから、銀行は持ち切れるわけじゃなくて、日銀へどうしても持ち込まざるを得ないのではないでしょうか。しかも、公債発行は四十年度限りでなく、四十一年度以降も公債を発行され、その公債は歯どめはございませんから、雪だるま式にふえていくのでございますから、市中銀行、あるいは他の市中金融機関は、持ちこたえられるわけはないと思うのです。しかも、都市銀行では、応募者利回りと日銀担保貸し付けの利率の差は約一分あるはずです。だから、日銀窓口に持ち込んだほうが都市銀行じゃ得なんですよ。日銀へ持ち込むのが私は人情だと思う。もし日銀担保貸し付けが制限をされるというようなことであれば、公債の流通性ということを制限したことになって、公債の本質に及ぶ重大な問題でありますから、制限をすることは私はできないと思う。したがって、公債発行は次の公債発行を呼ぶとともに、いやおうなしに通貨の増発にならざるを得ないのであります。通貨の膨張は貨幣価値の下落でございます。このことが消費物価へとはね返ってまいります。貨幣価値は消費者物価指数の逆数なんです。政府は、貨幣価値の下落に対しまして、卸売り物価指数が動かないからというような弁解も、かつて私たちは聞いたことがございます。しかし、国民は卸売り値段で生活しているのじゃないのです。消費者価格で物を買って生活をしているのですよ。貨幣価値の下落ということはどういうことになるのか。敗戦直前の公債発行額は国民所得の約一九〇%の一千七十五億円でありました。当時としては、たいへんな金額でございましたけれども、いまから見ればたいした金額じゃございません。インフレのおそろしさというものを示しているのでございます。そこで、貨幣価値の下落で得をする人は一体だれが得をするんだ、それはもう債務者がみんな得をするのでございます。企業の八〇%は借り入れ金といわれております。インフレ政策をとれば、この人たちがみんなもうかるのでございます。インフレ政策はまた不況対策でもある。公債発行の歯どめ、通貨膨張の歯どめ、すなわちインフレへ進まない道があるとするなら、この際、対策を承わりたいと思います。
第四点として、所得再配分としての間接税減税と物価対策についてお尋ねをいたします。その一は、公債発行は次の公債発行を必然的に呼びまして、やがて通貨の膨張になるということは先ほど述べました。そして、それは円の価値を下落させます。それが物価にはね返ってまいりまして、物価の上昇は必至でございます。物価が上昇をするということは、構造的欠陥があるとか、あるいは循環だとかいうような論がありますけれども、そういうことはさておきまして、物価上昇を何%に押えようとしているのか、公共料金を中心としての対策を藤山長官から承わりたいと思います。時間がございませんから、はしょりますが、物価上昇は国民の生活というものを苦しくさせるものでございます。そこで政府は公債発行で歳入もありますから、当然私は減税というようなことをお考えになると思います。しかし、減税規模とその内容が非常に問題になってまいります。巷間伝えられておりますように、四十一年度減税三千億、所得税と企業減税が重点であるとしておりますが、所得減税、企業減税の恩典にあずからない階層、ただ物価上昇の被害だけを受けている低所得階層は、たいへんなことになるのでございます。この人たちは、酒税であるとか、あるいは、たばこ、砂糖などの間接税をたくさん負担をしているのでございます。これは私がここで数字を申し上げなくても、まあ福田大蔵大臣は十分御承知ですから、私は、たとえば総理府統計の所得階級別間接税負担表を見ていただけば、月収一万円の人と二万円、三万円と、こうずっと出ておりますね、十万円まで。だれが一番多いかといえば、月収一万円の人の場合が間接税の負担率が多いことは御存じでございましょう。中堅所得者の減税は非常にけっこうでございますが、間接税の減税について、特に長期減税の対策の中でどういうふうにお考えになっているのか、その構想が承りたいと思います。
第五点は、公債発行の償還計画についてでございます。今後公債償還費が財政運営面を硬直させるとともに、国際的信用にも影響を与えることになりますから、元来ならば、余裕金が出ますと期限前でも買い上げて償還をするというのが望ましい姿であると思います。そうしますと、現行の国債整理基金特別会計法ではどうにもならぬことになっております。各国が行なっているような減債基金制度というようなものをとられる用意があるのかどうか。返還計画について確たる方針が私は樹立されているはずだと思う。まだ検討中なんということは許されないと思います。このことについての御答弁をお伺いいたします。
最後に、永山自治大臣にお伺いいたします。地方自治体は、ベースアップのために借り入れ金三百億があったといたしましても、完全実施の困難な団体が多数あると私は思います。同じ地方行政に奉仕しておりながら、差があるということは許されることではないと思います。完全実施の困難な団体への対策を承りたいと思います。聞こえませんか——三百億……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/5
-
006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 時間が超過しております。簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/6
-
007・成瀬幡治
○成瀬幡治君(続) 二百億借り入れますね。そうかといって、地方自治体は、完全に実施することはできない。非常に貧弱な町村だというと、ベースアップがやれない地方自治体があると思うのです。そういうものに対して、どういう対策を立てておみえになるかというのが一つです。
第二は、地方自治体は交付税の落ち込みを今度手当てをしてもらっておりますけれども、私は財政は非常に困難だと思っております。大臣は非常に元気のよい方でございますが、地方自治体の先頭に立って、地方自治体の財政確立のために努力される決意があるのか、実績をあげる自信があるのかどうか。その決意のほどをお伺いいたしまして、以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/7
-
008・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
臨時国会におきまして補正予算が通らなかったことについて、その責任を追及されましたが、ただいま、おことばはたいへんやさしいことばであったと思いますけれども、私は、補正予算の通過——審議も受けなかったということにつきましては、ほんとうに遺憾に思っております。成立しなかったことはもちろんでありますが、その中身が、御承知のように給与の改善であるとか、あるいは災害対策であるとか、その他、不況克服のために必要な補正予算でございまして、そういうふうなことを考えますと、一そう遺憾に思う次第でございます。しかしながら、この臨時国会を契機にいたしまして、国会の運営を正常化する、その方向へ道が開けたということは、私もたいへん喜びとするところでありまして、今後ともあらゆる努力をいたしまして正常化し、ただいまのような重要法案の審議はもちろんのこと、これの成立を期してまいりたいと、かように思っております。
第二の問題で、経済の見通しの問題でありますが、御承知のように、ただいま補正予算、しかも、多額の税の落ち込みに対する対策を立てておるのであります。私は、何と言おうと、予想が誤っていたと、そのことは私どもも率直に認めざるを得ないと思います。もともと、弁解ではございませんが、私どものやっているのは自由経済であります。いわゆる厳格な意味の計画経済ではありません。また、経済はしばしば生きものだと、かようにいわれております。したがいまして、なかなか予想どおりのものには、いままでもならなかったが、しばしば予想がはずれておるのであります。しかし、いままでのところは、多くの場合にこれはオーバーしていると、こういう意味で、国民に対してもあまり御迷惑をかけなくて済んだと、かように思いますが、今回の見通しは、これを下回ったということで、一そう予想の違いが国民に多大の迷惑をかけていると思います。かような意味を大いに反省をいたしまして、今後ともこの予想については、その精度を高める、そして予算編成等におきましても、十分その精度を高めてまいりたいと、かように一そうの努力をするつもであります。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/8
-
009・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) まず第一に、中央の関係と地方の関係を一緒にした、これは何か作為があるのではないか、根性が悪い、こういうようなお話でございますが、私は、国会対策上の立場を考えましてそういう措置をとったのじゃないんです。今回のお願いしております法律案は、経済が悪化してきた、それに伴いまして減収がある、これは中央地方を通じて同じ問題なんであります。その共通の問題に対してどういう対策をとるか、これは一本の法律にするのが適切である、こういうすなおな考え方に基づいておるわけであります。同様に、昭和四十年度の予算につきまして、ただいま申し上げましたような事情で税収の欠陥ができてきた。それに対しまして、公債を発行するという措置をとったわけであります。
この公債を発行するにつきましては、いろいろ議論があります。これは、出すなという議論もあるし、出すということは認めるが、これは財政法第四条というような、こういうものに特例を設けちゃいかんのだ、これは憲法にも匹敵するようなものだというような議論もありますが、何といっても、ことしは税の落ち込みがあって、それに対して公債を発行しなけりゃならぬ。私は、その事実を、率直、すなおに認むべきだと思うんです。で、財政法第四条を曲解して、これを広義に解釈して、昭和四十年度にも建設費がたくさんあるじゃないか、その引き当てとして公債を出しゃいいじゃないかというような議論もありまするが、それは私はこじつけだ。そんなことしちゃいかん、率直に事態を認めて、それに基づいて、財政法第四条を守れないんだ、これは非常の特例として、今年度限り、歳入補てんの、減収補てんのための公債を出すんだということで、国会に御審議をお願いするのが筋である、それこそが民主的な考え方であると、そういうふうに考えまして、ただいま法律案の御審議をお願いしておるわけであります。
四十一年度の公債につきましては、これは私どもは違った考えを持っております。どこが四十年度と違うんだというと、おい立ちが違うのであります。つまり、四十年度のこういう歳入欠陥に対する公債を考える以前から、私どもの間におきましては、公債政策を転換する時期にきておる。つまり積極的に公共投資をやっていかなければならんじゃないか、あるいは減税もしなければならんじゃないか、また景気調整に、財政が出動すべき時期にきているじゃないか、そういうふうなことを考えまするときには、これは積極的に、四十一年度のような追い詰められた意味じゃなくて、積極的な意味において公債を出す、これが今日の置かれている日本経済に対する財政の使命であるという考え方に基づきまして、公債を発行することにいたしておるのであります。したがいまして、その性格が全然違うのであります。四十一年度の予算は、そういう考え方を根幹といたしましてただいま編成中でありまするが、大体、来年度の経済は横ばいというか、相当ほっておきますと、これはあまりいい調子じゃなさそうだ。財政が設備投資の停滞を補って、しかも、まあまあという成長率、つまり七、八%実質の成長率を達成するという規模で、予算の幅、また、したがって公債の発行額、また減税の規模等をきめていきたい、そういう考えのもとに、ただいま鋭意検討中であります。
公債を発行する方法につきましては、これは諸外国等と同じくシンジケートを結成するわけであります。このシンジケート団が公債の発行を引き受けることになるのでありまして、日銀引き受けの方法はとりません。今後とるのか、とらないのかという御質問でありまするが、今後とも日銀引き受けの形は絶対にとらない方針であります。この公債を発行いたすにつきましては、先般も申し上げたのですが、二つの原則を堅持していく、つまり日銀引き受けの方法はとりませんということと、もう一つは建設公債の性格は変えない、つまり歳入補てん公債の形はとらない。さようなことで市中消化をやっていこうと思うのでありまするが、市中消化と申しましても、ただ単に政府だけの公債が消化されればいいというのじゃありません。お話にもありましたが、政府保証債とか、社債とか、あるいは地方団体債、そういうものをすべてひっくるめて、これを順調にこなしていくという方針のもとに、その国債の消化額もきめていきたい、かように考えておる次第でございます。そういうような検討をいま進めておりまするが、大体七千億見当がまあこういうワクの中にはめ得る額ではあるまいか、さように見ております。
それから、公債を発行するにあたりましては、四半期別に見当をつけよというようなお話でありますが、これはもちろんであります。たとえば、ことしは二千五百九十億円の公債を発行いたすわけでありまするが、そのうち約半分は資金運用部が引き受けます。それから、さらにその残りは市中がこれを消化するわけでありまするが、その発行の時期——大体において七百億円ぐらいを一月中に発行する、残余を三月に発行するように、四半期別のみならず、月別に大体見当をつけて進めてまいりたい、かように考えるわけであります。
また、公債を発行すると、それが日本銀行担保貸しになり、日本銀行信用膨張になるではないかというお話でございまするが、市中消化を考えるということ自体が、そういうことにならない、ならしめないということのためなんであります。日本銀行の通貨は、今後とも適正成長量、つまり経済の成長に見合う通貨膨張、これは調達しなきゃならぬわけでありまするが、それをこえて通貨が膨張し、国民に不安を招かしめるというようなことがないように、全力を尽くし、御安心をいただくようにいたしたいと思います。
また、発行する公債の利回りにつきましては、六分七厘九毛五糸、本年度の分はそういうふうに考えております。これを日本銀行に持っていくと利ざやがかせげるじゃないか、都市銀行はそれでもうかるじゃないかというようなお話でございまするが、これは公債には税がかかるのであります。税引きにいたしますると、大体いまの日本銀行の国債担保貸し出し一銭六厘になっておりますが、その利回りと同じになるのであります。そういうもうけはないはずでありますが、大体におきまして日本銀行の国債担保貸し出しというものはやらない方針であります。公債を日本銀行が入手をするという場合には、オペレーションの対象としてこれを行なうという場合にいたしたいと考えておるわけであります。
逆ざや現象が弱小銀行については起こるが、これをどうするかというお話でございますが、これは、金融機関というものは、すべての投資がみな利回りがいいというものばかりに投資するのではないのです。高いものに貸す、しかし高いものには危険が伴う。しかし、安いもの、それは確実なものが多いわけであります。国債は、利回りが悪いけれども、しかし最も確実なものであります。国債のごとき利回りの安いものが中に入りましても、総合すれば、決して金融機関の不利益になるというふうには考えておりません。国債の利回りにつきましては、これは私どもとしては、どうしても民間で消化されなければならぬというので、そのためには高いほうがいいんです。しかし、私は財務担当者といたしまして、皆さまに御説明をしなければならぬ。そういう意味合いからいきますると、これはなるべく安くなければならぬ、そういうふうに考えるわけであります。そのすれすれの線をねらってただいまシンジケート団と話を進めておるような次第でございます。
それから、インフレになるか、ならぬか。これは、るる御説明を申し上げておるのでありまするが、インフレには絶対になりませんし、いたしません。つまり、この公債が直ちにインフレにつながるかというと、そうじゃないんです。要は、公債を財源として行なわれるところの予算、財政の規模が一体どうなるか。その規模が過大であって、国全体の労務、あるいほ資金、物資、あるいは国際収支、そういうものに不均衡を生ずるということになれば、これはインフレになる。しかし政府は今後とも、いわゆる公債がインフレにならない、この公債政策の歯どめといたしまして財政の規模は厳守していくというたてまえをとっておりまする以上、インフレにつながるところの危険というものは全然ない、かように御承知願いたいのであります。
さらに、減税の利益に浴しない階層に対してどうするのかというお話でありまするが、これはもう社会保障を大いに進めるというほかはないのであります。あるいは母子家庭、あるいは老人でありますとか、あるいは失業者でありますとか、そういうようなものに対する対策は、これを四十一年度の予算におきましても、強力にこれを推し進めていくというふうに考えておるのであります。
最後に、公債償還につきましてはどうするかというお話でありまするが、公債償還、これはもとより借金でありまするから返さなければならぬ。その返す方法につきまして、各国において減債基金の制度が採用されておるというふうなお話でありまするが、これは昔はそうだったのです。今日は、減債基金の制度をとっている国はそうありません。そのときどきの財政の状態に応じてこれを返済するというたてまえをとっているのでありまするが、公債の償還、これは非常に大事な問題でありますので、四十一年度予算の編成にあたりましては、償還計画を立て、それに基づいて御審議をお願いしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/9
-
010・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) お答えいたします。
中期経済計画はどうするのかという御質問でございました。御承知のとおり、物価の問題につきましても、あるいは公債発行の問題につきましても、中期計画と著しく違った状態になっておりまして、現状におきましては、これを改定するか、あるいは、やめるかということでございますが、いましばらく今日の現状を見ました上で、改定すべきか、あるいは、これを、別個にこういう見通しをつくるか、それらのものを検討してまいりたいと、こう考えております。
それから、明年度の経済成長率をどの程度に見るかということでございます。今日まだ、確定的にいろいろな材料がそろっておりませんから、はっきりした数字を申し上げるわけにまいりませんけれども、大体私どもとして考えてまいっておりまする点から申しますと、たとえば個人消費は従来のように伸びてこない、四十年度伸びた程度、来年も個人消費は伸びるだろう、そうそれを見ることは過大ではないのじゃないだろうか。それから、民間設備投資は、御承知のとおり、四兆八千四百八十億というようなことでございますが、一番最初の見通しでは、本年は四兆五千億程度に下がってきているようでございます。したがって、来年もこれを横ばいと大体見ていくというような考え方で、若干まあ強含みに見るかどうかというようなところがございますが、大体横ばいからちょっと、というようなところで見る。在庫投資については、若干の積み増しが出てくるのじゃないか。それから、輸出の点につきましては、まあ為替ベースで一〇%ぐらい伸びるというところが、大体いいところじゃないだろうかまた、鉱工業生産につきましては、これも大きく伸びるというふうに想定することはいかがと思います。したがいまして、だいぶ本年度落ち込んでおりますけれども、本年度から見て若干上回っていくというようなところではないだろうかというようなふうに見まして、さて、物価をどの程度に見て、実質成長率を出すかということでございます。物価につきましては、本年は御承知のように、七・五というようなところに落ちつくかどうか、もう少し高くなるのじゃないかということで、私どもは心配をいたしております。したがって、できるだけ、それらについて努力してまいらなければなりませんが、物価は、御承知のとおり、根本的な対策をもって積み上げてまいらなければなりませんので、急激に容易に下げるわけにまいりませんけれども、四十年度の場合を対象として考えてまいりますと、三月から四月にかけまして、私どもが言っておるように、三・四%ぐらいに「げた」をはいて、三十九年度から四十年度に移ってきたわけであります。かりに、七・五%前後のところでありますと、今年度三月から四月に移っていく「げた」というものがどのくらいかというと、昨年度から四十年度にかけてよりも、一%ぐらい下がって推移できるだろう、こう思います。したがいまして、そうなると、三・四%の「げた」が二・五%ぐらいになりますから、それこれ合わせて見まして、さらに政策的な努力を今後もやってまいりますとすれば、われわれは、五%台にこれを押えていけると、こういう考え方でございます。かりに五・五%ぐらいに押えられれば、非常にわれわれ、いいところに行ったんじゃないか、こう思いますが、そういうようなことを想定いたしまして、いま申し上げたような個人消費、民間設備投資、在庫投資その他のことを考えてみますと、実質七%前後の成長になっていく、こういうことでございます。
物価の問題につきましては、根本的に——われわれも企画庁の中に各界の方に来ていただきまして、そして物価問題懇談会をつくりまして、基本的な構造上の問題から積み上げて解決をしていくように努力してまいりたいと、こう思っております。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/10
-
011・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) ベースアップの財源配分につきましては、交付税方式でいたしまして、貧弱市町村にも支障のないようにいたす考えでございます。
第二の、地方財政は非常に苦しい状態になっていることはお説のとおりでございますので、したがいまして、地方財源の確保につきましては、最善を尽くす決意でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/11
-
012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 中尾辰義君。(「議長、答弁漏れがございます。」と呼ぶ者あり)時間がございません。十五分超過しております。
〔中尾辰義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/12
-
013・中尾辰義
○中尾辰義君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明がございました「昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案」に関し、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたすものであります。質問が多少ダブる点もございますが、この法案が、わが国財政の一大方向転換を示す重要法案でもございますので、また、政府の答弁を再確認する意味も含んで質問をいたしますので、懇切丁寧なる御答弁を願いたいと思うのであります。
この法律案の趣旨は、深刻な経済危機と財源難に追い込まれた政府が、年度途中に、ついに税収不足を理由に、二千五百九十億円にのぼる赤字公債を発行しようとするものであります。これは、戦後一貫して続けてきたわが国の均衡財政を破り、赤字公債を財源とする財政の一大方向転換を意味するもので、一歩間違えば、国民生活の破綻を招くものであり、国民のひとしく危惧するところであります。それだけに、政府の政治的責任は、まことに重大であります。本来ならば、その責任をとって、内閣の総辞職か、あるいは解散をして、信を国民に問うべきであると思うのでありまするが、総理は、しきりにその要はないと弁明をされております。しかしながら、このような財政危機に追い込まれたのは、政府の経済政策の失政によることは明らかであります。遺憾ながら、経済の実勢は、政府の不況対策にもかかわらず、依然として低迷し、金融はゆるめても、選別融資は逆に強化され、中小企業の倒産も月間五百件にものぼり、昨年の一・五倍の六千件にも達して、年末から明年三月にかけて、さらに一段と激増が予想されるのであります。しかも、相次ぐ消費者物価の上昇は著しく、本年度の経済成長率は実質で二——三%、それから明年度は五%程度と予測をされ、景気回復は当分望めず、不景気は長期化すると思われるのであります。しかるに、政府は、このたびの不況を、ただ構造的なものであるとして簡単に片づけておりますが、これではあまりにも無責任である。まして赤字公債を発行しようとする以上は、総理は、その経済政策の失敗を、議会を通じて国民に陳謝すべきであります。しこうして、どのように景気判断を誤り、どのような対策を講じたのか、どこに財政経済の見通しに間違いがあったのか、あわせて今後の景気見通しと対策について、国民の納得する答弁を、総理並びに大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。
質問の第二点は、政府は、不況打開の対策といたしまして、膨大な公債を発行し、来年度には四兆円を上回る膨脹予算を組もうといたしておりますが、わが国の公債発行を歴史的に見ましても、明治初年の急速な資本主義発展の基盤を固めるため、殖産興業公債の形態から始まり、昭和初期の金融恐慌期における緊急措置の形態、さらには軍事経済を維持するための軍事公債の形で、一貫して増大を続け、終戦前年の昭和十九年には、実に国民所得の二倍に近い国債が累積したのは周知のとおりでありますが、当時の国民所得が約五百三十億円、国債の残高約一千百億円でありました。国民所得といえば、今日では約二十兆円でありますので、その倍ということになりますと、約四十兆円であります。また、戦後においては、復興金融公庫債の発行がインフレの高進を助長したのも、記憶に新しいところであります。このような巨額の公債が、現在では国民所得の三%程度に消却されておりまするが、この償還がなし得られたのは、その後の物価の上昇と通貨価値の下落を伴うインフレが、公債発行によって助長されたからであります。そして、さしもの悪性インフレは、戦後、ドッジプランによって、超均衡財政によって終息したのでありますが、その間の国民生活の疲弊の状況は、いまさら申すまでもないところであります。政府は、不況から脱出のため、本年二千六百億円の赤字公債並びに来年以降多額にのぼる公債発行をしようといたしております。これらの公債は、今後さらに大きく累積され、何兆億円となることは明らかでありましょう。そうなれば、わが国の政治経済の現状から見まして、また、過去の歴史に見るごとく、インフレ政策により通貨価値が下落しなければ、その償還が困難になるのではないかと危惧されるのであります。政府は、この際、今後発行され累積していくであろう公債について、何年後にどのくらいの残高になるのか、また、国民所得の何%くらいを発行限度とするのか、そうして償還計画は、どのような形で、国債費は歳出額の何%程度を、めどにするのか、これらの点について、総理、大蔵大臣の所信を伺いたいのであります。
質問の第三点は、政府の今日までの発言によりますると、今年度中に発行する国債は、税収不足を補うための、歳入補てんのための赤字公債であり、また、来年度以降の公債は、財政法第四条に定める範囲内の建設公債であり、その性格が異なるかのごとき説明がなされておるのであります。赤字公債の発行が財政法で禁止をされているのは、これがいかにも不健全であり、インフレ要因となり、財政の基本原則に反するからであります。先ほどの答弁で、大蔵大臣は、いかにも、もっともらしく、この法案は四十年度限りの特別立法であるとおっしゃっておりますが、それは、財政法第四条の立法の精神を破るものであります。今後公債発行がないというならばともかく、まだ政府はこれから本格的に出そうとするときに、財政法の精神を破ることからスタートするのは、全く悪例を残すことになり、今後の財政政策の先例となることを懸念するのでありますが、総理、大蔵大臣の見解を承りたいと思うのであります。
また、公債発行とインフレとの関係について、大蔵大臣は、国力が充実した今日、公債発行がインフレにつながるとは考えられないと、しばしば言明をいたしておりますが、しかしながら、公債発行は、経済の問題であると同時に政治的な問題であります。わが国の政治、経済の実情からいいまして、このような安易な赤字公債発行方式による財源調達が認められるならば、財界をはじめ、多くの圧力団体により、予算規模は毎年々々膨張の一途をたどることは明らかであります。しかるに、大蔵大臣は、財政法第四条による建設公債によれば、公共事業に限定される歯どめがあり、また、市中消化の原則を貫けば、国債の日銀引き受けを避けられ、インフレ防止の効果があると、しばしば言っておりますが、結局は、市中消化といいましても、現在の政府保証債と同様、日銀の買いオペの対象となり、日銀券の増発につながって、景気の過熱を呼び起こし、ひいてはインフレの道をたどることは必至と思われるのであります。しかも、先ほどもありましたが、現在予定されておる国債発行の条件は、最終応募者利回り六・八%程度とされておりますが、これは、市中消化のためとはいえ、発行条件を高利回りにすることは、将来の財政負担を過重にするばかりでなく、市中銀行が、これを担保に日銀から借り入れを行なえば、日銀の国債担保貸し出し率五・八四%でありますから、銀行が九厘五毛の利ざやをかせぎながら、安易に日銀券の増発を促すことになると思うのでありますが、これは、先ほど答弁がありまして、税金があるそうでありますから、まあ、このようなことにならないかもしれませんが、もう一ぺん答弁をいただきたい。
さらに、先ほどの答弁によりますと、日銀の国債担保貸し出しはしない、このような答弁が大蔵大臣からありましたが、それでは、民間の資金を民間にかわって政府が投資をすることになり、これでは、政府の言うところの有効需要を喚起する景気振興策とはならないように思われるのでありますが、この点はどうか、大蔵大臣にお伺いをしたいのであります。
また、歯どめとして建設公債を発行いたしましても、来年度以降の景気の回復がおくれ、税収も伸びないとすれば、またまた財源不足から、赤字公債の発行も不可避になってくると思われるのであります。しかも、現実の問題として、一度公債を発行した後、急にこれをとめようとしても、ストップすることがはたしてできるか、これはきわめて至難のわざであります。本年度二千六百億円、さらに明年度は七千億円と公債を発行し、明後年度もさらに財政支出は膨張し、公債発行規模は約一兆円をこすでありましょう。そうなりますと、その後の公債発行額をゼロとするならば、三年後の財政規模は、前年度に比しマイナス一兆円と、急激に減少いたしまして、経済活動全体にも大きな混乱を起こし、事実上そのようなことが不可能であります。
以上のように考えるならば、建設公債の発行に依存しても、また、その発行法を市中消化によって歯どめをするといたしましても、これは全くごまかしでありまして、まぼろしにすぎない。決してインフレ防止の決定的な対策にはならないのであります。したがって、建設公債といいましても、実質的には、財政のつじつまを合わせる赤字公債であることには何ら変わりはないように思うのであります。総理、大蔵大臣のお考えを承りたい。
質問の第四は、財政法第四条に基づいての、公共事業費の財源として建設公債を発行するといたしましても、しからば公共事業とは何か、また、公共事業の範囲はどうきめるかによりまして、建設公債のワクの拡大が予想されるのでありますが、この点は、どうお考えになっておるのか。さらに、一般会計の公共事業費をふやしましても、地方財政には国の行なう公共事業に対する地方団体の負担金が乏しく、すでに三十九年度で百五十億円、また、今回の特別措置法で三百億円の地方交付税の先食いをすることになり、来年度の地方財政は約三千三百億円の財源不足が予想されておるのであります。地方団体のほうからは、公共事業返上の声さえ起こっておるのでありますが、建設公債によって公共事業を拡大することと、この逼迫せる地方財政との関係を、どうお考えになるのか。地方交付税率を引き上げるか、むしろ景気対策の即効を期待するならば、財政投融資による施策が効果的であると思われるのでありますが、この点はどうお考えになるか、大蔵並びに自治大臣に承りたいのであります。
質問の第五は、公債の市中消化といっても、公社債市場が育成されておらない今日、どのようにして消化するのか。結局は、公債引き受けの金融機関に半強制的に割り当てるということになりまするが、今年度は、一——三月の財政の揚げ超期にもかかわらず、政府保証債が八百億円のほか、多額の金融債、事業債の発行が予定されております。その上、赤字公債の半額に当たる一千三百億円の市中消化をはかろうとすることは、きわめて困難ではないかと考えられるのであります。加えて、明年度以降七千億円以上の建設公債の市中消化を強行すれば、起債市場には著しい混乱が生ずると思われ、この間の調節をいかように進める方針であるのか、お伺いしたいのであります。
また、国債発行とからんで、今後の財政金融政策の一つといたしまして、公社債市場を育成して金融正常化をはかることが、公債の市中消化の前提であると考えるのでありますが、今後の方針について大蔵大臣にお伺いをいたします。
最後に、公債発行と物価及び減税についてお伺いをいたします。福田大蔵大臣は、先日の財政演説の答弁の中に、物価と不況対策は相矛盾する要素を持っていると答えているが、これでは、物価抑制よりか、不況対策が先決であるかのごとき印象を与えるのであります。最近における公共料金の相次ぐ値上げに、国民の怒りは一段と強まっております。来年一月からの消費者米価八・四%の値上げに端を発した公共料金は、国鉄、私鉄、郵便料金等に広がり、さらに水道代、健康保険料、授業料等は、まさに値上げの時期を、たんたんと、うかがっておるのであります。全くこれでは集中的な値上がりであります。一月から消費者米価が上がれば、さらに、みそ、しょうゆ、うどん、パン等の食料品も連鎖反応を起こしまして値上がりするのは必至であります、しこうして、消費者物価の上昇率は八%に達しようといたしておるのであります。これが対策といたしまして、政府は、最近ようやく物価対策閣僚協議会を設置いたしまして、物価対策を発足することになりましたが、もうすでに、目ぼしい公共料金の値上げを決定したあとであります。そうして、そのあとで、ただいまから物価問題と真剣に取り組むということは、全くこれでは、政府の物価対策は偽りの看板にすぎないと言わざるを得ないのであります。値上がりの筆頭である土地と物価に対して抜本的な対策をなし得ないで、公共投資優先の公債政策を進めることは、インフレがつきまとうのは当然であります。しかも、急激に一兆円近くの公債による景気刺激策をとれば、輸入は急増し、国際収支は直ちに危険信号となり、再び企業の利潤は低下し、今度、次に訪れる不況は、さらに一段ときびしい深刻なものが予想される心配があるのであります。今後、膨大な公債発行によるインフレ財政下に、どのような土地対策、また物価対策を考えておるのか、企画庁長官並びに建設大臣にお伺いいたしたいのであります。
また、来年度の大蔵大臣の減税構想は約三千億円といわれておりますが、そのうちに、所得税の減税をどのくらいにおやりになるのか。企業減税と所得税減税を四分六分と見ましても、所得税の減税は一千八百億円、これが初年度になりますと一千三百億円程度しか減税がなされ得ないように思われるのであります。ところが、一方、国鉄料金が値上げになりますと、それで約一千八百億円の国民負担が増加いたし、消費者米価の値上がりで約六百億円、それから郵便料金の値上げで約四百億円、電信電話の値上げで約六百億円、その他、水道代、私鉄運賃等の値上げ等を考えますと、これだけで、締めて約四千億円の国民負担の増加となるのでありますが、これは、国民に対する一種の大衆課税であります。この際、思い切って大減税をやらなければ、減税どころか、実質的な増税となり、大蔵大臣の得意中の得意である、「ゆとりのある家計」にはほど遠いのであります。
ことに、わが国における所得税の課税最低限は、戦前と比較いたしましても、また諸外国に比較をいたしましても、著しい低い位置にあり、加えて、物価の値上がりによって直接影響を受けるのは低所得層であることを考えるならば、中高所得層の減税よりも、わが党の主張する年間所得百万円までの非課税が現状において要請されている最良の方法だと思うがどうか。
また、公債発行による社会資本の費用の負担は、一般に後世代の負担となり、しかも、公債の償還の時期におきましては、元本と利子は、公債を所有しない低所得層を含めた国民全体の税金によって支払われることになり、低所得者への社会保障費の持つ所得再分配とは全く逆の作用をもたらすことになるわけであります。四十一年度の財政施策といたしまして大蔵省の示された中高所得層の課税負担の軽減、及び企業減税の拡充、大規模な公債発行、さらに公共料金の引き上げ等、このような一連の施策は、国民大衆の負担のもとに、景気振興、企業減税の達成がもくろまれておるように思われるのでありますが、政府は、公債発行、公共料金の引き上げと、この減税との関係について、どのようにお考えになっていらっしゃるか、総理、大蔵大臣の所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/13
-
014・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
ただいま、成瀬君にお答えしたと同じような、最近の経済見通しについて誤った、その政府の責任をまず第一に追及されたのでありますが、私が先ほどお答えいたしましたように、私どもは、いわゆる計画経済、きびしい意味の計画経済を採用いたしておりません。経済は生きものだというようにも言われておりますので、しばしば予想外のこともあるのであります。しかし、今回の狂い方は、確かに大幅な狂い方でありますので、今後私どもも、この見通しにつきましては、正確度を一そう高めるということで努力してまいって、かようなことを再び経験しないようにいたしたいものだと、かように考えております。
また、本年の特例法を出すことによりまして——先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたが、私に対する質問は大蔵大臣と重なっておるようですが、その多くを大蔵大臣に譲りたいと思います。特に私からも申し上げたいのは、特例法はことし一年限りである、この赤字公債は二度とそういうものを出す考えでないということ、このことを、はっきり申し上げておきまして、御協力を得たいと思います。その他の事柄につきましては、大蔵大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/14
-
015・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 財政法は、憲法に準ずる大事な法律と考えております。特に、その第四条は、これは尊重しなければならないと、こういうふうに考えまするがゆえに、これを、いたずらなる解釈によって運用してはならない、かように考えまして、特に本年限りの特例といたしまして、今回法律の御審議をお願いしておると、かように御了承願いたいのであります。もとより、公債政策の運用にあたりましては、これはお説のとおりであります。慎重に扱っていかなければならない、かように存ずるのであります。慎重に扱うそのやり方につきましては、しばしば申し上げておるところでございまするが、そのワクを、きちんときめなければならない。特に大事なことは、財政の規模、これを、御指摘のように、政治的に左右するというようなことが絶対にあってはならぬと、かように考えております。私どものただいまの考え方は、経済の状態に見合いまして、この財政の幅というものは伸縮していい。経済が落ち込んでおるときには、財政は大いに拡大してよろしい。しかし、経済が好況のときには財政は引っ込む。そうして民間経済と国家財政との調和、つまり、国民経済活動が全体として、年々において、でこぼこなしにやっていける、これが安定成長の根幹をなすことであると、かように考えるわけであります。そういう考え方に基づきまして、そのときの経済情勢に見合って適正と判断される規模、したがって、公債の発行額がきまってくるわけであります。その財政の規模、国債の額を一たびきめた以上は、いかなる圧力がありましても、断じてこれを変えることはないということを申し上げておきます。
国債の担保貸し出しにつきましては、先ほどお答えいたしたところでありますが、そういう方式は原則として採用しない。国債を日本銀行が入手する道は、オペレーションを通じてやる、こういうふうにいたしたいと考えるのであります。いま御指摘の点は、四十一年度以降もだんだんと公債が出ていくのではないか——私は、今日の経済情勢、また今後の経済を考えますときに、どうも当分の間というものは、低圧型の、つまり設備過剰状態の経済が続くのではないか。その状態下におきましては、どうしても財政が積極的役割りを尽くさなければならぬ、こういうふうに思うのであります。積極的な役割りを尽くすための財源をどうするか、増税によるかというと、これはなかなかむずかしい。したがって、やはり公債政策を採用する、これがよろしい、こういうふうに考えておるわけであります。公債の運用につきましては注意をしなければならぬけれども、これを罪悪視し、あるいはおそれる必要は、私はないと思います。むしろ、これを善用することこそが、今日の日本の経済を安定的に堅実に発展させる唯一の方法であろうと、かように考えております。公債の発行にあたりまして、これを厳に建設公債としての性格を堅持していくつもりであります。その公債の、一体、建設費というのはどういう範囲かというお話でございまするが、これは、国の資産として、国民の財産としてあとに残るもの、そういう性格のものに公債の使途を限定するという考えでございます。その限定のしかたで、どうにもなるんじゃないかというような御想像をされる方がありますが、そうはならないのでありまして、その範囲は国会に明確に提示をいたしまして御審議をお願いし、ずっとそれを続ける考え方であります。
それから、さらに、市中消化、市中消化というが、なかなかむずかしいんじゃないか、割り当てになるんじゃないかというようなお話でありまするが、公債の消化を考える場合におきましては、ひとり公債だけではないのです。たとえば、ことし二千五百九十億円の公債を発行する、これは、その消化を考える場合におきましては、政府保証債も、あるいは地方債も、事業債も、みな一緒に考えなければならぬというように考えておるのであります。そういうような考え方をとりまして、そうして検討をいたしますると、市中消化は、ことしは実際むずかしい。そこで、二千五百九十億円の約半額を資金運用部においてこれを消化するということをいたすわけであります。そういうふうに、全体をくるめて消化の方法を考えまするがゆえに、地方債でありますとか、あるいは政府保証債に影響することはないはずでございます。
それから、さらに、特に地方財政に重大な影響がある公共事業が伸びる関係上、地方財政を圧迫するんではないかというお話でありまするが、国の公共事業を行なうに伴いまして地方の負担も増加してまいります。その負担につきましては、中央、地方を通じまして、両方が円満に事業が遂行できるような財源措置をとってまいる考えでございます。
なお、公社債の市場育成の方法はどうかということでございまするが、公債をこういうふうに多額に発行することを考えますと、やはり公社債市場をつくり——市中消化というけれども、国民にこれを消化してもらう方途を講ずる必要があると思うのであります。そういうふうにして考えまするときには、やはり公社債市場をつくらなければならぬ。そういうことから、まず手始めに、政府保証債の値つけ市場といいますか、気配交換、これを始めたいと思います。それがある程度見当がついた段階で、政保債などを市場に上場いたします。その体験の上に立って国債の気配交換を行ない、まあ国債を市場に出してもよかろうという、春以降の時期におきまして、国債を正式に市場に上場するという段階を踏んで、国民消化を考えていきたいと思います。
なお、減税につきまして、その内容はどうかというのでありまするが、これはやはり、物価の問題、これを十分考えていかなければならぬと思います。そういうようなことから、所得税において最低限の引き上げ、これはもとより考えなければならぬ。しかし、同時に、国民各層の間で中堅所得層の税負担の軽減という問題が叫ばれておるのでありまして、私は、大幅に減税を行なうこの機会に、中堅所得層の減税問題も解決してみたい、こういう考え方を持っております。
それから、同時に、不況産業の体質改善の措置でありますが、私は、今度のような不況、これは珍しいことでありまするが、これを再びしてはならない、今日のこの不況を転じて幸いとなすというような考え方をもって財界が立ち上がることを期待するものでありますが、その立ち上がりを助成するという意味におきまして、あるいは合同した場合の税制について配慮いたしますとか、あるいは自己資本を充実するという措置をとりました企業につきまして配慮いたしますとか、あるいは中小企業の貸し倒れ準備金なんというものにつきましても特別措置を講じますとか、そういうような企業減税も、またこれをやるべきである、こういうふうに考えております。いま税制調査会に、はかっておりまするが、近く結論を得て、また御審議をお願いしたいと、かように考えておるのでございます。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/15
-
016・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 公共事業が増大した場合においては、大蔵大臣が中央地方を通じてこれが消化に万全を期すというお話でございますので、これ以上申し上げることはないと存じます。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/16
-
017・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 中尾議員からの御質問に対してお答えをいたします。
物価対策をしっかりやらなければいけないじゃないかというような御趣旨だと思います。むろん、私どもも、今日物価の問題は大きな問題でございまして、国民生活の上からいいましても、あるいは日本全体の経済の将来の運営の上からいきましても、価格の安定ということが一番先決問題でございます。したがって、これに真剣に取り組んでいかなければならぬと思います。ただ、今日の物価は、御承知のように、これは、高度成長の構造上の問題から来ているところに原因があるわけでございまして、単純な需給関係の問題でございますれば、たとえば牛肉の緊急輸入をするというようなことで手当てがつきます。しかし、構造上から来ております問題は、そういうようなことだけでは手当てがつかないのでございまして、したがって、根本的に掘り下げまして、これを解決していかなければならぬと思います。そうして長期にわたる物価の安定というものの基礎をつくってまいらなければならぬと思います。そういう意味におきまして、幸か不幸か存じませんけれども、物価の対策と景気高揚の対策とは必ずしも反発するものじゃなくして、構造上の問題を解決いたしますときに——たとえば、景気高揚のために、住宅問題が波及効果で一番大きな問題でございますから住宅問題を取り上げる。この住宅建設ということは、景気対策の上で波及効果が非常に大きい。同時に、今日、たとえば本年度四月に非常に消費者物価が上がりましたのは、教育費の問題と住宅の問題でございます。したがって、住宅問題においては、物価対策と景気対策とは、決して相克摩擦をするものでなくして、助け合っていける対策でございます。輸送の関係を円滑にしてまいります上において、景気対策の上から、道路構築あるいは鉄道の輸送の充実、そうした設備をやってまいりますことは、今日の物価の輸送上の難点を解決することによりまして解決できていく問題でございまして、これらの問題について、これからしっかりした施策のもとに、ともにこの効果的なものをねらってやってまいらなければならぬと思います。
そこで、私どもは、こうした問題に取り組んでまいりますのには、若干の時間がかかることは、これはやむを得ないと思います。そうして、これらの問題を基本的に考えていく。でございますから、それを考えますと、今日の事態においては、ただ単に一年ストップしたからといって、そのくらいで、すぐに物価問題というものは解決いたしません。やはり、ほんとうにこういう問題に触れていかなければ、二年、三年先の物価の安定ということは期せられないのでございまして、したがって、その間の暫定的な処置として、過渡的な処置としては、ある程度現状を改善するために何らかの形でもって最小限に引き上げるというようなことも、あり得ないとは申しませんし、また、われわれも、そういうことによって、当面の切り抜けをやってまいらなければならぬ問題がたくさんございます。したがって、国鉄の運賃あるいは郵便料金等につきましても、そういうことを考えて、でき得るだけ時期も調節をしながら、内容については小幅にこれを押えて、そうして進めていく、こういうのが私どもの考え方でございます。こういうことによりまして万全の処置を講じながら、今後の数年後における物価がほんとうに安定して、そうして安定成長の軌道の上に乗って、日本の経済がしっかりした発展を遂げていくことの基盤づくりをいたしたいと、こう考えております。(拍手)
〔国務大臣瀬戸山三男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/17
-
018・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 地価の上昇については、御承知でありましょうが、最近、昭和三十年以来、地価の上昇を来たしております。近年十年間で、全国都市平均で約七倍という上昇を来たしております。そういう状態でありますが、たとえば東京都あたりで十倍以上の上昇を来たしております。こういう問題につきまして、政府では、従来とも、この地価対策等についていろいろ検討を加え、法律の改正等をして措置をいたしておりますが、しかし、その実効がそれほどあらわれておりません。そういうことで、この際、住宅建設を大幅にしなければならない、あるいは、先ほどもちょっと触れられましたように、公共投資を拡大しなければならぬ、これは国民の強い希望であり、日本の将来の建設に必要であります。そういう際に、このままに地価の問題を放置いたしますことは、問題になっておりますいわゆる物価の基礎にも大きな悪影響がある、こういう状態でありますから、政府といたしましては、この際、抜本的な対策を講じなければならないということで、先般、閣内に地価対策閣僚協議会を設けまして、基本方針を定めております。
そのあらましを申し上げますと、住宅計画を強力に進めなければなりませんので、宅地の大量供給をするために宅地の大規模な造成をはかる、これは公的機関によりますのと、民間に協力を求めるのと——それから、もう一つは、都心においてできるだけ高度の高層の住宅を建てる。これは土地利用の問題でありますが、さらに、これに対応いたしまして、土地取得の方法といたしましては、土地収用法を改正して、土地の不当な値上がりをチェックする。御承知のとおりに、国民と申しますか、これが、国が施策いたしますと、その所有に基づく土地の値上がりによって不当な利益を得るという現状は、この際、チェックするという方法を講じたいと思います。さらに、これに応じて税制の改正をいたしたいと思います。そういう不当な利益は、税制の改正によってこれを国に回収する、こういう基本的な方針をきめまして——これは非常な複雑な地価対策でありますから、目下、法制上の問題あるいは行政措置等について鋭意検討いたしておりますから、近く成案を得て国会におはかりいたすつもりでありますが、そのときは御協力をお願いしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/18
-
019・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
———————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/19
-
020・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険臨時措置法案(趣旨説明)
両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。三木通商産業大臣。
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/20
-
021・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) ただいま議題になりました中小企業信用保険法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
小企業者の金融を円滑にするため、政府といたしましては、これまで、信用保証協会が行なう小企業者であって一定の要件を備えているものについての無担保、無保証人による保証について、特別小口保険制度を設け、小企業者の信用補完を促進している次第であります。しかしながら、小企業者を取り巻く最近の経済環境は一段とそのきびしさを加えつつあることにかんがみまして、この際、特別小口保険制度に所要の改正を行ない、もって、小企業者の信用補完に遺憾なきを期する必要があるものと考えられる次第であります。
以上の趣旨に基づきまして、今回、中小企業信用保険法の一部を改正しようとするもので、その概要は、すなわち、特別小口保険の小企業者一人についての保険価額の限度額を改正し、現行の三十万円から五十万円に引き上げようとすることであります。
以上がこの法律案の要旨であります。
—————————————
〔議長退席、副議長着席〕
次に、中小企業信用保険臨時措置法案の趣旨を御説明申し上げます。
中小企業の経済環境の最近の情勢につきましては、御承知のとおりでありますが、政府といたしましては、中小企業者に必要な資金が適正な条件によって円滑に供給できるよう、これまで政府関係金融機関等を通じて、資金量の拡充、金利の引き下げ、信用補完制度の充実等を行なってきている次第であります。しかしながら、中小企業者は物的担保が乏しく、金融機関からの借り入れが困難な状況にあること、また、取引の相手方たる事業者の倒産、事業活動の制限の実施により、一部の関連中小企業者が経営の安定に支障を生じていること等の事態が生じていることを考えますと、この際、信用補完制度に関し、昭和四十二年三月末までの間、特別の措置を講じ、もって信用力の薄弱な中小企業者の信用補完に遺憾なきを期する必要があると考えられる次第であります。
この法律案は、以上の趣旨に従いまして、中小企業信用保険に担保を提供させないで行なう中小企業者の債務の保証にかかる特別の保険制度を設けるとともに、取引の相手方たる事業者の倒産等に伴い、経営の安定に支障を生じている中小企業者の経営の安定に必要な資金にかかる中小企業信用保険に関する特別措置を講ずること等により、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にし、もって中小企業の経営の安定に資することを目的とするものであります。その概要は、
第一に、第一種保険について、そのてん補率を改正して、百分の七十から百分の八十に引き上げることであります。
第二は、無担保保険を新設することであります。無担保保険制度は、信用保証協会が行なう物的担保の提供を要しない保証についての保険でありまして、中小企業者一人についての保険限度は二百万円、てん補率は百分の八十であります。
第三は、倒産関連中小企業者が受けた倒産関連保証について中小企業信用保険の特例を設けることであります。特例の内容は、当該中小企業者に認められる信用保険の通常ワクに対して保険価額の限度額を別ワク扱いとし、保険のてん補率を通常の百分の七十から百分の八十に引き上げ、保険料率を通常年百分の三以内でありますところを年百分の二以内において政令で定める率に引き下げることであります。
以上が、この法律案の趣旨であります。
両案の提案の理由を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/21
-
022・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。近藤信一君。
〔近藤信一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/22
-
023・近藤信一
○近藤信一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました中小企業信用保険臨時措置法案外一件に関し、総理大臣並びに関係大臣に対し、若干の質問を行ないたいと存じます。
わが国経済の最近の動向を見まするに、依然として景気は不振の一途をたどり、不況はますます深刻化の様相を呈しております。今年三月期決算に引き続いて、九月期決算においても、赤字会社や減配会社、無配会社が続出し、また、企業倒産件数もその高水準を続け、景気回復のきざしは見えず、まことに憂慮すべき段階に達しているのであります。政府は、去る七月末に、財政支出の増額、繰り上げ支出など、一連の景気刺激対策を打ち出したのでありますが、この結果、株式市況の反騰など、一部にはその反応があらわれたのでありますが、これとて、その経済の実勢を反映したとは見られないのであります。
佐藤総理は、前国会の所信表明演説において、「産業界の生産調整、経営合理化など、真剣な努力の効果が浸透するにつれて、景気は回復に向かうものと期待される」と言っております。おそらく、総理は、供給力過剰が不況の根本原因だとする景気観に立っているものと思われます。今回の臨時措置法でも、倒産関連保証で、カルテル業者を相手方とする保証に対し特別の保険をかけられるようにするのも、そのあらわれだと思います。企業が生産調整その他でお互いに仕事を減らし合って、一そう需給のつり合いをくずしてしまう、需要に供給を合わせようとする努力が、さらに需要を減らすという仕組みになり、いわゆる縮小均衡となって、景気沈滞が恒常化してしまうおそれが多分にあると思うのであります。確かに、生産調整が全体の不況対策に役立たないわけではない。しかし、減産という政策手段を使うには、あくまで主役の有効需要造出策のわき役としてこれを活用するということが、真に有効な不況対策といえるのではないか。佐藤内閣は、その成立の当初、社会開発をスローガンとし、公共投資の立ちおくれを回復するのだと言いながら、日韓問題などに熱をあげて、すっかりその初心を忘れてしまったかの観があります。それでは現下の不況はとても克服できない。そこで、まず第一に、総理の景気観と社会開発政策の行くえについて、その所信をただしたいのであります。
次に、中小企業の声を聞いてみますると、以前には、資金が足りないから金融を円滑にしてくれという要望が強かった。その後、労働力が不足で若年労働者を雇うことが困難だから、労働力確保に力を入れてほしいということであった。最近では、注文が減って仕事がないので困るという話である。御承知のとおり、金融は緩慢化し、どの金融機関でも金利を下げまして、借り手をさがしているというのが現況であります。そういうときになって、政府は、この二法案を出して、金融の円滑化をはかろうとしています。政府の中小企業対策が、一手も二手もおくれていることは、いまに始まったことではないが、新しい政策が、もっと早く、昨年か一昨年に打ち出されていたならば、中小企業はもっと政府の施策に信頼を寄せたことだろう。これは、はなはだ残念に思う次第であります。しかし、おくれたにしても、私は、政府が、中小企業、ことに零細企業の金融に大いに努力していることは、けっこうなことであり、金融緩慢と称しながら、その緩慢な時代においてさえも、なお、融資を受けるのに困難なる業者もあることですから、この二法案が決してむだではないと考えるのであります。ただ、金融対策だけでは、現在はなはだ不十分だと申したいのであります。
そこで、業界に対する注文を多くする、需要を喚起する政策をとるべきではないか、それについて政府の対策はどうかということであります。行政指導による操短ということは、あまりにもよくわかっている。しかし、中小企業に対する需要を増加することについては、はなはだ不熱心ではないだろうか。中小企業基本法には、第二十条で、官公需に関し、「中小企業者の受注の機会の増大を図る等必要な施策を講ずるものとする。」と書いてあります。ところが、政府も与党も何もしていない。わが党は前の通常国会に、「官公需の中小企業者に対する発注の確保に関する法律案」という、りっぱな法律を提出したのであります。それが継続審査になっていたが、前国会で日韓問題のために流れてしまった。そこで、総理に伺いたいのは、総理として、また、与党の総裁として、中小企業に対する注文をいかにして確保しようとするのか。それも民間会社に対して注文を出せというのは、東京電力のように特別の会社ならともかく、一般にはできない相談だが、最も簡単なのは官公需だから、この際、官公需に関する法律を成立させる、そういうお考えはないかどうか。この点をお伺いいたしたいのであります。
なお、佐藤総理は、昨二十三日の経済閣僚懇談会で、中小企業対策にもっと力を入れろ、こう指示された旨を新聞で拝見いたしました。さすがに総理も、中小企業の現下の不況、倒産続出に、目をつぶっていることができなくなったと思われます。しかし、政府のいままでの中小企業対策では、いつも、かけ声だけに終わっているので、今回も、おそらく、たいした実効をあげるには至らないだろうという疑問が起こるのであります。総理の構想はどんなところにあるのか、具体的に、これを御説明願いたいと思います。
第三点として、今春に出た中小企業白書では、中小企業の現下の不況の裏には、構造変動に由来するものが少なくないと指摘されています。これはまさに、中小企業の基本に関する問題で、もちろん、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、これは中小企業にとって実に重大な問題であります。中小企業が中小企業という形で存続していけるのか、それとも、企業合同し、あるいは合併されなければならないのかどうか。政府が中小企業に対する需要を喚起し、あるいは官公需を確保することに熱心でないとすれば、中小企業の前途はまことに暗たんたるものであります。中小企業が、大企業中心の経済の中で生き抜いていくためには、何としてもその力を結集していく必要があり、それには、従来、組合という制度が重視されてきたのであります。ところが最近では、中小企業構造を高度化すると称して、政府は盛んに団地や協業化、さらに合同合併に熱を入れている。しかし、その成果は、あまり見るべきものがないようにも聞いております。中小企業の将来にとって、構造政策はきわめて重大な関係を持っているので、この際、政府の方針を明示していただきたいのであります。
先ほども申し上げましたが、大企業の操短のしわは、強く中小企業に寄せられているのであります。原材料メーカーを中心とする不況カルテルや、勧告操短による減産は、結局、原材料価格の上昇となって、これらの業界から原材料の供給を受ける中小二次加工メーカーの活動を圧迫し、各業、種でその影響が表面化してきている。たとえば、鍛造業界では、コストに占める材料費の割合は六〇ないし七〇%といわれていますが、鉄鋼の操短でそれが値上がりに苦労するばかりでなく、注文主の自動車業界からもきびしくコストの引き下げを要求されて、双方の板ばさみに苦しんでいるところであります。同様のことが、板紙の不況カルテルによって段ボール業界が、また綿紡績の不況カルテルによって泉州地区の織布業者が、大きな打撃をこうむっていると伝えられています。さらに、粗鋼の勧告操短による減産は、北九州工業地帯の中小企業に壊滅的な打撃を与えております。
独禁法によりますと、その第二十四条の四に、公正取引委員会がカルテル等を認可する際には、一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがない場合に限ることになっております。しかし、下請発注量が減少して、下請が倒産に追い込まれるというような事態は、まさに利益を不当に害した例であろうと思います。こういう悪影響があるからこそ、今回の臨時措置法で倒産関連保証制度の新設を必要とするわけでありまして、もし公取が独禁法のたてまえを守って認可すれば、不当なしわ寄せはないはずであり、また、不当なしわ寄せが生じたならば不況カルテルを禁止すればよいわけであります。いずれにせよ、両者互いに矛盾しているように思われるのでありますが、公取委員長の御見解を伺っておきたいのであります。しかしながら、操短の中には、公取の関与しないものがある。先ほど申し上げました鉄の操短、粗鋼の減産のように、政府の行政指導によるものがあります。本来ならば、独禁法で不況カルテルの制度があるのだから、それ以外の行政指導によるカルテルなどは許されるべきものでないと思うのであります。ところが、現実には、しばしばこれが実施されており、さきに紡績操短があり、いま、また粗鋼操短が行なわれているのであります。公取としては、かくのごとき操短について、いかなる考えを持っておられるかどうか。おそらく、その実施については協議にあずかっておられると思いますが、その際、その操短が中小企業者に不当の影響を与えるかいなかについて、判断したのであるかどうか、公取の御答弁をお願いいたします。同時に、かかる行政指導に際し、関連中小企業に対し、いかなる配慮をなさったのか、通産大臣の御答弁をも、あわせていただきたいのであります。
次に、本臨時措置法案を見ますると、これを時限立法として、期限を来年度末にしております。そこで、政府は、景気回復の時期を一応来年度末と見ているのかという問題であります。最近の経済の動向について、景気回復のきざしは見えていないとする見方が強く、この不況は簡単には短期間に回復しないというのが、このごろの一般の経済見通しと思いますが、政府は一体、回復の時期をいつであると見ているのか。また、元来、中小企業の景気は、いつでも半年なり一年なりおくれて、初めて回復の徴候があらわれると言われておりますが、政府は、本臨時措置法で、この期限までにその目的が達成されるという考えを持っているのか、お伺いしたいのであります。それと同時に、中小企業は万年不況とも言われております。景気が立ち直れば立ち直ったで、金融などの面では、中小企業はかえって苦しくなるものかもしれない。そういう意味では、この臨時措置法のごときは、元来、これを恒久立法として実施すべきものではないかと思うのでありますが、政府の御見解をお伺いいたします。私見をもってすれば、四十二年三月になっても、本法を廃止すべき時期にはならないで、おそらく、これを延長するか、あるいは、これを恒久法に組み入れるか、いずれかの検討を要することになろうと思うのですが、この際、御見解を伺っておきたいのであります。
最後に、法案の附則にある遡及効の問題に関して伺いたいと思います。政府は、二法案の附則において、昭和四十年十二月十七日から適用すると定めようとしておりますが、どうして、このように十二月十七日と決定したのか、その理由を承りたいと存じます。これらの法案を提出するに至った背景となっているわが国経済の状況、ことに、倒産、操短などの現象は、この十二月十六日以前から発生しておりまして、すでに、これらの対策は、各関係業界から要望されていたのであります。それにもかかわらず、政府は、日韓問題に日をおくらせて、うつつをぬかして今日に及んだのであります。この点からすれば、政府は、最近の倒産現象など、きびしく、発生した時点までさかのぼって、効力を認めるべきであると信ずるものであります。両法案のように、十二月十七日までさかのぼるのでは不十分で、少なくとも、十二月一日ごろまでさかのぼるようにすべきではなかったかと思いますが、その点、政府の御見解はいかがでしょうか。
また、このように遡及効を適用するならば、本法の成立そのものは若干おくれてもよいように思うが、この点、いかがでしょうか。適用をさかのぼらせることによって、この信用補完制度拡充の政策は、実質的には、十二月十七日から効果を発揮することになると見るのが、政府の見解と思いますならば、この法案が実際に成立するのは、十日や二十日おくれてもよく、その間に、政府のおっしゃるように、慎重審議して、先ほども申し上げましたように、臨時法でなく、恒久法にすべきかいなか等の点についても十分に検討した上で、これを成立させてもよいのではないかと思います。何ゆえに、政府としては、すみやかに御賛同願いたいと言うのか、明快なる御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/23
-
024・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
私は、内閣を組織して以来、現経済の立て直し、また、不況の克服、同時に、物価問題等を正常化すること、これが私に課せられた課題だと、かように思って、実はスタートし、いろいろと対策を立ててまいったのであります。ただいま近藤君が御指摘になりますように、七月末以降、積極的な、それぞれの対策をとってまいりましたが、不幸にして、これらのものが十分成果をあげることが、まだできておりません。しかしながら、最近の情勢、ことに、この十二月に入りまして以来、支払いなども、だいぶ活発になっておりますので、ようやく、あの対策の効果がそろそろ出てくる、こういうようなときに回ってきたのではないかと、実は考えているのであります。しかしながら、問題が問題でありますだけに、もちろん、これを楽観するつもりはございません。ことに、近藤君が御指摘になりましたように、政府は生産調整を言ったじゃないか、あるいはまた、企業間の自粛をずいぶん話し合うようにすすめたではないか、かような御指摘があります。むしろ、さような方法よりも、今日は、需要を喚起することが景気対策の第一ではないか、かような御指摘であったと思いますが、私どもが、ただいまの生産調整や、あるいは産業界の自粛を求めましたのも、経済の基調を強固なものにする、このことはどうしても必要なのでありまして、そういう意味の指導もいたしてまいりました。しかし、今日になりまして、これらの効果があがる、これらの指導の結果が出てくることを期待しながらも、最近の経済情勢は、実は必ずしもまだ健全な方向に向かってはおりません。そこで、ただいま言われるように、積極的な需要の喚起ということが必要になるわけであります。しかし、私どもが、経済を正常化しよう、健全化しようということは、しばしば例に引かれます——この三十九年中における会社の交際費の額が、最近の国税庁の調べによりましても、五千億前後のものがあるとか、また、利子の支払いが、何と二兆円を越しておる、かようなことが指摘されるのであります。こういう点に思いをいたしまして、産業界もみずから自粛し、そうして健全化をはからないと、ほんとうに立ち上がる力は出てこないんじゃないか、かように実は考えて、長期的な観点から、いわゆる生産調整なり自粛なりを要望しておるのであります。しかし、今日当面しております問題として、特に中小企業の問題等になりますると、かような意味における、いわゆる健全化のみを要求するわけにもいかない実情にあるように見受けるのであります。ここに、経済対策のむずかしさがありますし、また、経済対策の成果が短期間にあがらないということも、おわかりがいただけるんじゃないか。一面、締めながら、また一面、刺激——積極的な政策をとっていかざるを得ない。こういう、相反する二つの政策があるのであります。
最近、経済の見通し等につきまして、私どもも、たいへんな甘い見方をしたのではないかということで、おしかりを受けておりますが、しかし、最近、ただいま言うような明るいほうの見通しもあります。株価なぞもだんだんいいほうに出ております。こういうところから、いわゆる社会開発懇談会等におきましても、この経済界に反映し、同時に国民生活の実態に即する意味において、住宅政策を大きく取り上げ、そうして、いわゆる量の住宅でなくて質の住宅、かような意味で住宅問題を推進すべきだ、かようなことを実は申しております。これは申すまでもないのでありますが、この衣食住のうちの住宅問題がいままでは非常に急がれて、量的にはだんだんふえてまいりましたが、質的——たとえば交通問題であるとか、あるいは上下水道の整備であるとか、あるいは病院、学校等々の、流通機構から、さらにまた、遊び場まで含めてのいわゆる質の住宅ということになりますと、どうも考えがまとまっておらないようであります。こういうことで、社会開発懇談会では、さような意味における答申をしております。今回の予算編成にあたりましても、これは一つの柱だ、かように思っておるのであります。このことは同時に、経済対策に関連を持つのでありますが、一つの施策を行ないましても、それが経済全般に及ぼす、いわゆる波及率の大きいもの、それを取り上げて進めていかないと、十分の効果はあがらないように思う。この意味では確かに住宅は波及効率の高いもの、かように実は考えておるのであります。たとえていえば、鉄道の建設、あるいは車両の整備であるとか、あるいは電電公社の電話機の問題であるとか、これなども大いに波及効率の高いもの、そういうものを実は取り上げていかないといかぬように思います。ことに、中小企業と一口にいわれますが、昨日も詳細な報告を徴したのであります。この中小企業の業種によりましては、今日の不況感のあまりないものもある、たとえば、双眼鏡なぞつくっているような事業は、ただいまも輸出に依存いたしておりまして、別に倒産なぞは起こしておりません。しかしながら、機械工業、ことに鉄鋼等の問題で機械工業の中小企業は非常に困っておる、かような点も見受けられるのでありますので、いわゆる中小企業全般としての対策としては需要喚起ということばに尽きると思いますが、それぞれのこまかな対策を業種別に立てることが、今日中小企業対策として望ましいのではないかと、かように思います。もうすでに金利を下げたり、あるいは資金の量なぞはふえておりますので、それらの点においては万遺憾なきを期しておるようでありますが、その波及効率の高い事業について、その需要を喚起するように特別な政策をとるべきものだと、かように考えておる次第であります。
なお、他のお尋ねにつきましては、通産大臣からお答えをいたしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/24
-
025・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 近藤君の御質問にお答えをいたします。
第一の御質問は、中小企業対策として有効需要の喚起をはかるべきだ、そのためには官公需要というものに対して中小企業の取り扱いをもっとふやすべきだ、われわれもさように考えて、少なくとも五〇%、これを越える程度は中小企業が官公需要に対して取り扱えるようにしたいということで努力をして、だいぶんその割合はふえてまいっておりますが、まだ五〇%までいってない。したがって、今後中小企業が官公需要に応ずるための手続とか、いろいろそれを中小企業に周知徹底さす必要がある、どうしたら官公需要に応じられるのか、よくその手続を知らない場合があるわけです。——周知徹底する。また、官公庁に対しても、中小企業の取り扱う製品を多く使おうという、この中小企業対策として、関係各省の連絡会議というものを開いておるわけであります。こういうことも、連絡会議なども活用して、できる限り、中小企業の製品、取り扱いの商品を官公需要として充てるように今後も努力をしていきたい。いま法律をつくってというところまでは考えておりませんが、必要があれば、そういうことも検討をいたしたいと思っておるわけでございます。
第二の、中小企業に対しては構造政策が大事である、お説のとおりであって、困れば救済するというだけでは、いつまでたっても中小企業の安定はない。したがって、中小企業の構造政策こそが、中小企業政策の中核であるという御説には、私どもも全く同感でございます。そのために、近代化資金あるいは高度化資金という制度を設け、また、来年度からは機械貸与——こちらが機械を買って、中小企業に貸与する制度も設けて、設備の近代化をはかるという、そういう機運が、中小企業みずからの中から起こってくる機運を助長したいと考えておるわけでございます。ところが、中小企業はなかなか、高度化資金などを用意しましても、みんなで協同してやるという、こういうことが、中小企業者はなかなかそういう気持ちにならない面もあるわけで、これに対してできるだけ指導して、中小企業は零細な経営規模でありますから、もう少し協業化、協同化というものをしなければ、なかなかこの零細な企業が、一人だけで、ひとり立ちでやったのでは、経営の近代化、合理化はしにくいという、こういう点で、指導体制というものを強化していきたい。よい相談相手になってあげたい。それで、ばらばらにある中小企業の指導体制を一本化して、府県ごとに指導センターというものを設けて、この指導の機構というものを強化していきたい。そして、中小企業みずからが、中小企業の近代化、高度化をはかろうという、そういう機運が、中小企業みずからの中から起こってくるような機運を助長したいと考えておる次第でございます。
次に、信用保険臨時措置法と不況カルテル、これが矛盾するのではないかということ。しかし、御承知のように、独禁法の二十四条は、もし中小企業などに対して不当な不利益を与えるようなことになれば、これは不況カルテルそのものを許さないのですから、認可要件の中に——消費者や事業者に対して不当に利益を害さないということが認可要件になって、もし、そういう事態があるならば、認可を取り消すこともできるわけでありますから、このことが直接に矛盾するとは思いません。しかし、多少の影響のあることは事実でありましょう。したがって、われわれも、この不況カルテルというものが中小企業の圧迫にならないように、これを監視することの必要というものは認めておるわけであり、通産省としても、不況カルテルと中小企業との関係というものは、絶えずこれは注目をいたしておる次第でございます。そのものが相互いに直接に矛盾するとは思わない。その影響が及ばないように注意をしなければならぬと考えております。
それから、この臨時措置法を昭和四十二年の三月までとしたのはどういう意味かというお話ですが、政府が、財政金融あるいは輸出の振興を通じて、一日も早く景気を回復したいと、いま努力をしておるのですから、少なくとも、昭和四十二年の三月ということになれば、相当に景気は回復しておるという予定のもとに、一応の不況対策としてこういう立法を考えたのでございますが、その時期がきて景気が回復しても、なおかつ、中小企業の持っておる体質的な弱点から、こういう立法をなお継続していく必要があるという場合には、これは継続することをちゅうちょするものではございません。そのときにあらためて検討いたしたいと思うのでございます。
また、この法案が十二月十七日に遡及して効力を発生するという意味はどういう意味かということでございます。十七日といわずに、十二月の一日からこれを実施したかったのでございます。年末対策の一環として、信用の補完制度を考え、いま近藤議員お話のように、相当金融は緩漫になっても、担保力がないものですから、零細企業は金が借りられない、一日も早く年末金融のために信用の補完制度を整備したいということで、十二月一日から実施したいと思ったんですが、御承知のような状態で、これは廃案になってしまった。そうなってくれば、一日も早くということで、この再提出を閣議決定する予定日の十二月十七日ということにさかのぼって効力を発生することについて、信用保証協会にもこのことを伝えて、こういうことになるから、年末の対策としてこの法案の精神を生かしてもらいたいという通牒を、信用保証協会に出した次第でございます。いっそ、おくれついでに、これは慎重審議をしたらどうかという近藤議員のお話ですが、これはあまりそう複雑な法案でもございませんし、しかも、これが延びたことによって、何か、これが通るであろうと思っても、不成立の場合には、この法案というものは非常に不安定な地位に置かれるのでありますから、どうか、これがいますぐに通らなくてもたいしたことではないというふうにお考えにならないで、中小企業者が一日千秋の思いでこの法案の成立を願っていることに思いをいたされまして、すみやかに御審議賜わるようお願いをいたす次第でございます。(拍手)
〔政府委員北島武雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/25
-
026・北島武雄
○政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。
ただいまの第一の御質問は、独占禁止法上の不況カルテルは関連事業者に不当な影響を与えない場合に限って認可するのに、今度の中小企業信用保険臨時措置法案というのは、その不況カルテルのしわ寄せに対処するというものであるから、どうも矛盾するのではないかという、こういう第一の御質問のようでありますが、この点につきましてはただいま通産大臣からもお話がございましたが、独占禁止法第二十四条の三の不況カルテルの認可の要件にはいろいろございますが、そのうちの一つの要件といたしまして「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」というのがあげられております。私ども、ただいままで十七の不況カルテルを認可いたしてまいりましたが、その認可の申請がありました際におきましては、この点に十分の検討を加えまして、関連事業者の状況を十分調査するとともに、直接関連事業者を公正取引委員会にお招きいたしましてその御意見を承り、その上で慎重に認可いたしておるような次第でございますので、実際に、ただいまの中小企業信用保険臨時措置法案第二条第二項第二号の、通産大臣の御指定になるというような場合は、まあ、ないかと考えるのでございますが、しかし、万が一、このようなことが情勢の推移、変化によりまして生じ得ます場合におきましては、これはまた、独占禁止法第六十六条におきまして認可要件を欠くこととなりますので、認可の取り消し、あるいは変更その他の措置をすることになっておるのでございます。しかし、そのようなことも起こらないよう、事前に十分認可の申請にあたりまして審査いたし、また、今後もそのような方針を続けるつもりでございます。
第二点は、粗鋼の勧告操短に対して通産省から協議を受けたであろうが、その際、中小企業者に対する影響を考えなかったのではないか、こういう御質問でございますが、もともと粗鋼の勧告操短は通商産業省の権限と責任において指導する、こういうことでございますので、もともと独占禁止法上の不況カルテルの認可として私どもで審査するまでに至らなかった次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/26
-
027・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X00319651224/27
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。