1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月十八日(金曜日)
午前十時十八分開議
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○議事日程 第十八号
昭和四十一年三月十八日
午前十時開議
第一 郵便振替貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第二 郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第三 国務大臣の報告に関する件(昭和四十一年度地方財政計画について)
第四 地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案(趣旨説明)
第五 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 郵便振替貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
一、日程第二 郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
一、日程第三 国務大臣の報告に関する件(昭和四十一年度地方財政計画について)
一、日程第四 地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案(趣旨説明)
一、日程第五 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案、
日程第二、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案、
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長田中一君。
〔田中一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/3
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004・田中一
○田中一君 ただいま議題となりました二法案につきまして、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
郵便振替貯金法の一部を改正する法律案は、郵便振替貯金は、送金及び債権債務の決済の手段でありまして、郵便貯金の一種としての要素に乏しい実情にかんがみ、この際、郵便振替貯金の利子を廃止し、そのかわりに各種の料金を大幅に引き下げようとするものであります。
次に、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案は、最近における労賃その他の諸経費の増高等を勘案して、売りさばき手数料を引き上げ、ことにその最低保障額をも改定して、売りさばき人の利益をはかろうとするものであります。
逓信委員会におきましては、郵政当局に対し、熱心な質疑を行ない、慎重審議をいたしましたが、その詳細は会議録によって御了承願いたいと存じます。
かくて両案の質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して光村委員より、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付して賛成する旨の意見が述べられ、討論を終了し、採決の結果、多数をもって附帯決議を付して原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
次いで、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案について、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/4
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005・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/6
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007・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 次に、郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/8
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009・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第三、国務大臣の報告に関する件(昭和四十一年度地方財政計画について)、並びに、
日程第四、地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案(趣旨説明)を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
自治大臣の報告及び趣旨説明を求めます。永山自治大臣。
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/10
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011・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 昭和四十一年度の地方財政計画並びに地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案について、その趣旨と内容の概略を御説明申し上げます。
昭和四十一年度は、経済の不況に伴う地方税等一般財源の伸びの鈍化に加え、国、地方を通じ平年度三千数百億円に達する大幅減税を断行することとなりましたので、歳入においては、例年のような増加が期待できない反面、給与関係経費、社会保障費等、義務的経費の増高は著しく、加えて、景気刺激のため、公共事業費等、投資的経費を大幅に増額する必要がありますので、現状のままでは、地方団体が、その財政の健全性を保持しつつ、住民福祉の増進をはかってゆくことは、きわめて困難であると考えられるのであります。このような客観情勢にかんがみ、明年度の地方財政につきましては、国、地方を通ずる財源の中において極力地方財源を確保することにより、地方団体が財政の健全性を保持しつつ、公共投資の増大、社会保障の充実等、当面必要とする施策を行なうことができるよう、所要の措置を講ずることといたしたのであります。
次に、以下順を追って、その概要について御説明申し上げます。
まず第一は、地方財政計画についてであります。すなわち、計画策定の具体的方針といたしましては、
第一に、地方税負担の軽減合理化を推進しつつ、行政水準の引き上げをはかるため、一、住民税所得割りを中心として負担の軽減をはかり、二、国税及び地方税の減税に伴う減収を補てんし、地方財源を充実するため、地方交付税率を二・五%引き上げて三二%とするとともに、昭和四十一年度に限り臨時地方特例交付金四百十四億円を交付することと、三、法人税率引き下げ等による減収を回避するため、住民税、法人税割りの税率等について所要の調整を行なうとともに、四、土地に対する固定資産税及び都市計画税について税負担の均衡化を漸進的に確保しつつ、都市開発の促進に資するため、税負担の調整措置を講ずることといたしました。
第二に、経済の安定した成長と均衡ある発展を達成するため、公共投資の増大をはかるものとし、公共事業等の円滑な消化をはかるため、地方債を大幅に増額いたしました。
第三に、社会開発を推進し、地域格差の縮小をはかるため、辺地事業債を増額するとともに、引き続き地方交付税を財政力の弱い地方団体に傾斜的に配分することといたしました。
第四に、行政の広域的処理を推進し、行政の能率化を徹底することにより、経費の効率的使用を促進いたしたいと考えております。
また、国庫補助負担金制度の合理化をはかり、地方団体の超過負担を解消することについて特に努力いたしたのであります。
なお、国民健康保険事業会計と地方公営企業会計の悪化は、これらの事業の運営を困難ならしめているほか、普通会計の健全運営にも支障を与えておりますので、これらの事業会計を健全化するため必要な措置を講ずることにより、普通会計の健全化に資することといたしたのであります。
以上の方針のもとに、昭和四十一年度地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は四兆千三百四十八億円となり、その前年度に対する増加は五千二百二十七億円、一四・五%となるのであります。
次に、歳入及び歳出のおもな内容について御説明申し上げます。
第一に、歳入についてであります。
その一は、地方税収入であります。ただいま申し上げましたとおり、明年度は経済の現況から自然増収について多くを期待できないのでありますが、現下の情勢にかんがみ、地方税についても負担の軽減合理化をはかることといたしました結果、前年度に対する増加額は七百九十三億円、増加率は五・三%にとどまっております。この結果、明年度の地方税の総額は一兆五千七百四十一億円となっております。
その二は、臨時地方特例交付金及び地方交付税であります。明年度の地方財政事情にかんがみ、地方交付税率を二・五%引き上げ、三二%といたしましたが、なお、不足する財源に対し、昭和四十一年度限りの措置として四百十四億円の臨時地方特例交付金を交付することといたしたのであります。
その三は、地方債であります。明年度は、景気対策の見地から、公共事業費等が大幅に増額されることとなりましたが、すでに申し上げましたように、一般財源については多くの増加を期待できない状況にありますので、昭和四十一年度限りの措置として特別事業債千二百億円の発行を認めることといたしました。この結果、昭和四十一年度の地方債の発行予定額は六千七百億円となり、前年度と比較して千八百五十八億円の増加となります。このうち地方財政計画に算入いたしますのは、一般会計債千四百四十五億円、特別地方債のうち一般会計分二百五十億円及び特別事業債千二百億円の合計二千八百九十五億円であり、前年度に比較して千二百六十五億円の増加となっているのであります。
第二は、歳出であります。
その一は、給与関係経費であります。
給与費につきましては、一、給与改定の平年度化及び昇給に伴う経費。二、警察官、高等学校の教職員及び消防職員等の職員の増加に要する経費等を見込み、前年度比較千六百七億円増の一兆四千六百七十九億円を計上いたしたのであります。
その二は、一般行政経費であります。
この一般行政経費のうち、国庫補助負担金を伴う経費は、総額四千七百七十一億円と見込まれ、前年度に比し六百六十四億円増加いたしました。また、国庫補助負担金を伴わない経費については、一般行政事務の増加等の事情を勘案して必要額を増額し、これに事務処理の能率化等による経費の節減合理化を見込んで、前年度比二百十八億円増の三千五百四億円を計上いたしたのであります。
その三は、投資的経費であります。
すでに申し上げたとおり、政府は、経済の現状を考慮して、明年度の国庫予算におきましては、公共事業費の大幅増額を行なうことといたしたのでありますが、公共事業費の大部分は、地方団体の手を通じて実施されます関係で、地方財政計画におきましても、投資的経費を大幅に増額いたした次第であります。すなわち、国の直轄事業に対する地方団体の負担金は、前年度に比し七十一億円増加し、六百十億円、国庫補助負担金を伴うものにつきましては、道路整備事業、住宅対策費及び災害復旧事業費等の増加により、前年度に比し千七百四十六億円の増加となり、総額は九千二百六十八億円と見込まれます。また、国庫補助負担金を伴わない地方単独の事業費につきましても、道路その他の産業基盤施設、住宅等の生活環境施設の整備に要する経費を中心として増額をはかりました結果、前年度に比し、七百七十億円の増加となり、その規模は五千七百五十億円となったのであります。
以上が、昭和四十一年度の地方財政計画の概要であります。
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次に、地方交付税法の一部を改正する法律案、及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
まず、地方交付税法の一部を改正する法律案の要旨でありますが、
その一は、地方交付税の率を引き上げることであります。国税三税に対する地方交付税の率は、昭和四十年度において百分の二九・五と改められたのでありますが、すでに申し上げましたような地方財政の事情を考慮して、明年度からこれを二・五%引き上げ、百分の三十二に改めることといたしたのであります。
その二は、人口急減団体に対する補正の新設であります。明年度の地方交付税の算定にあたりましては、昭和四十年十月一日に行なわれました国勢調査の結果による人口を用いることとなるのでありますが、地方団体の中には前回の国勢調査に比して著しい人口の減少を来たしているものが相当数あります。これらの地方団体は、急激に地方交付税の額が減少することとなり、行政水準の低下が予想されますので、これを避けるため明年度から昭和四十四年度までの間に限り、基準財政需要額の激変を緩和するための補正を設けることといたしたのであります。
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次に、昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案の要旨でありますが、
その一は、臨時地方特例交付金の交付に関することであります。
まず、総額四百十四億円の臨時地方特例交付金のうち、二百四十億円を第一種特例交付金とし、百七十四億円を第二種特例交付金といたしております。第一種特例交付金は、住民税減税に伴う減収額の補てんに充てるため、都道府県分七十億円、市町村及び特別区分百七十億円に区分して、それぞれ、前年度中におけるその区域内の製造たばこの売り渡し本数で総額を案分して交付することとし、また、第二種特例交付金は、昭和四十一年度分の基準財政需要額が基準財政収入額をこえる都道府県に対して、同年度分の普通交付税とあわせて交付することといたしたのであります。
その二は、昭和四十一年度分の基準財政需要額及び基準財政収入額の算定方法の特例に関する事項であります。
明年度における基準財政需要額の算定については、一、河川事業費、道路事業費等の公共事業費の地方負担に要する経費の財源として、地方債が大幅に増額されることに伴い、投資的経費にかかる基準財政需要額の一部を地方債に振りかえるため、関係費目の単位費用を改めるとともに、測定単位及び測定単位の数値の補正方法について必要な特例を設け、二、市町村民税減税補てん債の漸減に伴い、後進市町村の財源を確保するため、市町村分「その他の諸費」のうち、人口を測定単位とするものの単位費用の引き上げ、市町村における清掃関係経費を充実するため、「清掃費」の単位費用の引き上げをはかるとともに、三、生活保護基準の引き上げ等により増加する社会保障関係経費、給与改定の平年度化等により増加する給与関係経費、その他制度改正等により増加する経費を基準財政需要額に算入するため、関係費目の単位費用を引き上げることといたしましたことが、そのおもなる点であります。なお、今後測定単位の数値の補正方法を定めるに際し、後進地方団体への財源の傾斜配分については特に意を用いてまいる所存であります。また、基準財政収入額につきましては、第一種特例交付金の交付に伴い、普通税と同様に、これを昭和四十一年度分の基準財政収入額に算入する旨の特例を設けることといたしたのであります。
以上が、地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案の趣旨であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/11
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。鈴木壽君。
〔鈴木壽君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/12
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013・鈴木壽
○鈴木壽君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま説明のありました昭和四十一年度地方財政計画と、地方交付税法の一部改正案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案につきまして、若干の質疑をいたしたいと思います。
私は、昭和三十二年度の地方財政計画以来、毎年国会に出された地方財政計画を見てまいりましたが、いつの地方財政計画においても、地方行政水準の向上と、地方財政の強化、健全化をうたいながら、その実、これらの目標とは著しくかけ離れ、単に政府のそのときどきの施策と、国の予算に合わせて収支のバランスをとったということだけのものであって、地方財政計画の名に値しないものであることに、強い不満を持ってまいったのであります。今度で十度目、この昭和四十一年度地方財政計画を検討するに及んで、不満というよりは、地方財政の将来に対する大きな不安、そして強い憤りをさえ覚えたのであります。歳入歳出の総額四兆一千三百四十八億円、投資的経費の積極的拡大と社会保障の充実とをはかったとして、史上最大の規模の計画として示されておりますけれども、その内容は、それこそ、史上最悪の地方財政計画と称すべきものなのであります。この計画に見られるものは、地方財政の悪化がますます深刻化し、赤字財政、借金財政の路線が明確に打ち出され、不健全財政の性格をはっきり露呈をし、地方財政はすでに危機、いな、破局的な段階に立ち至っているということであります。地方財政の悪化の様相は、すでに昭和三十七年度決算にあらわれてまいりまして、三十八年度、三十九年度と、次第に、赤字財政、不健全財政の性格を浮き彫りにしてきたのでありますが、四十年度においては、昨年の秋、給与改定財源の措置をめぐって大きな問題となり、ついには地方財政計画の破綻というような最悪の事態になったことは、皆さまの記憶に新しいところであります。もともと地方財政は、構造的に、弱さ、もろさをかかえているのに加えまして、国の経済政策、財政政策の失敗による深刻かつ長期にわたる不況のあおりを受けて、税の減収、交付税の減等、著しく窮迫の度を加えてきているときに、そしてまた、一方においては、新たな財政需要が要請される現在において、地方財政の立て直し、その財源の強化のために、抜本的な対策が講じられなければならないのに、政府の措置はいつも思いつきで、その場しのぎ、こう薬ばりで、そのときどきのその場をつくろうという、そういうようなことを続けてまいったのであります。しかも、そのこう薬ばりというようなことも、動脈硬化にあたかも何とかパスというものを張りつけてごまかすというような、こういうごまかしが続けられてきました結果、いま見るような地方財政の状況になってしまったのであります。こうしたときに、さらに政府は、不況対策と称して、明年度予算に多額の公債を発行し、減税を行なうとともに、公共投資を大幅にふやし、これによって景気上昇をはかろうとして、地方団体をせき立て、公共事業を大幅に拡大をし、その政策に協力させようとしております。われわれは、この大幅な公債導入という政府の財政政策には賛成できないものでありますが、それはともかくとして、かりに政府がこのような政策をとる場合、公共事業のほとんど全部は地方団体の手によって行なわれ、それには必ず多額の地方負担を伴うものであり、事業の拡大は、とりもなおさず、地方の大きな財政負担となるということを考えなければなりません。地方団体がこの政策に協力し、大幅な公共事業を受け入れようとしても、現在の地方の税財政の仕組みとその能力からいたしますならば、とうてい、そのまま受け入れることのできないことは明らかであります。したがって、公共投資拡大の効果をあげるためには、地方団体が協力できる体制、受け入れることのできる地方財政の体制をまず整えるべきであります。四十一年度の地方財政計画、地方財政対策は、このような観点に立って、地方団体、地方財政の現状と将来についての十分な配慮、見通しのもとに、事業執行に必要な財源の確保が国の責任において行なわれなければならなかったのでありますのに、その財源措置はきわめて不十分かつ不合理なものであったために、地方財政の悪化がますます進み、その不健全性が拡大されていくのであります。かくして、史上最悪といわざるを得ない地方財政計画の策定となり、いよいよ地方団体の困惑と窮乏を深める結果になるのであります。自治大臣は、この財政計画の策定にあたって、その目標として、財政の健全化をうたい、地方行政水準の一そうの向上、そして地方財源を充実するということを言っておりますが、一体、この計画のどこに健全な財政が保持されているのか。何を指して地方財源が充実されたとするのか。具体的に、かくかくのごとく財源が充実され、財政の健全化がこのようにはかられたということを、数字をもって私は明らかにしていただきたいと思うのであります。
大蔵大臣にお尋ねをいたしたい。大蔵大臣は、去る二月三日、この本会議で、わが党の占部議員の質問に答えて、「今回ぐらい地方財政対策が完ぺきに尽くされているということはない。かように確信をいたしております。」、こう述べられております。また、その前日、二月二日の本会議におきまして、わが党の椿議員の質問に答え、「現在、国の財政の置かれている力といたしましては、これは最善の努力を尽くした、」と述べられているのでありますが、ほんとうに明年度の地方財政対策が完ぺきに尽くされたと思っておられるのかどうか。膨大な地方債という借金を押しつけて、なお完ぺきな財源措置といえるのかどうか。最善の努力でこれしかできなかったのかどうか。完ぺきさを具体的にお示しを願いたいのであります。どうも、あなた方は、地方財政というものについてわかっているのか、いないのか、理解に欠けるものがあるのではないかという心配を持つわけであります。しかし、どうも、ときどきおっしゃることを聞いておりますと、わかっても、いるようであります。「地方財政はまさに瀕死の重傷でございます。この体質改善には抜本的な施策をしなければならぬと痛感しております。……しかし来年度は、さらに財政の欠陥は重大でございます。政府は、三千億円の減税、七千億円の公債をというようなことを、まだきめてはおりませんが、そういう方向で行くように見えます。そうしたときには地方の財源が大体三千五百億から四千億円不足をするだろうと思うのであります。そこで私は、政府が金持ちで、地方が貧乏で、国民が貧乏するという政治は、民主政治ではないというように考えております。地方には借金する能力もない。借金したら払うこともできない情勢であるから、今度の財源補正も、政府のほうで、ぜひ地方へ回す金まで用意してもらいたいということを強く要望いたしております。」と言っておりますのは、永山自治大臣でございます。あなたは、昨年の十二月の全国町村長大会におきまして、こういうあいさつをいたしております。あなたは、たいへんよく地方財政の実情を理解しておられるようであります。ところが、その理解をしておられる自治大臣が、このような四十一年度の地方財政対策に満足しているというのは、おかしいじゃありませんか。福田大蔵大臣もよくわかっておるようであります。「国の財政と地方財政は車の両輪である。だから地方財政を軽視するようなことはしない。」ということを、しばしば言っておられますが、「従来、地方財政がややもすれば軽んぜられるような傾向にあったことは、私も率直にこれを反省をいたしております。今回の予算の編成におきましては、地方財政先議という方針を貫き通し」云々と答えているところから、地方財政の現状と、その重要性については、十分な御理解、御認識があるものと思うのでありますが、一体この結果はどうなのでありますか。あなたはわかっておっても、大蔵省の部下の役人たちがわからないというのでしょうか。自治大臣、大蔵大臣は、まことによき地方財政の理解者であると思うのでありますが、なぜ、このような地方財政計画ができ、そしてまた、このような地方財政対策に終わったのでありますか。
総理も、地方財政については、きわめてよく御理解があられるようであります。ことしの一月三日の「町村週報」という、全国町村会発行の新聞に載った総理の年頭のことばの中に、「ことしもまた、内政に、外交に、多くの困難な問題があると思います。とくに、地方財政、経済政策と青少年対策は」云々とありまして、「わたくしは、これらの政策を着実に実施し、みなさまのご期待にこたえたいと思います。」と、こう述べられて、重要施策のトップに地方財政をあげられております。したがって、総理のこの問題に対する理解と熱意はなみなみならぬものがあると思うのでありますが、総理から見た昭和四十一年度の地方財政計画、地方財政対策をどのようにごらんになっておられますか。これで、あなたのおっしゃる国民の期待に沿うような、あるいは地方団体の期待に沿うような地方財政計画であり、地方財政対策であるというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、はっきり承りたいのであります。
私は、以下、地方財政計画の内容につきまして、若干触れてまいりたいと思いますが、特に歳出関係におきましていろいろ問題もございます。たとえば公共投資の拡大に伴っての一般行政費あるいは人件費等の圧縮、単独事業の大幅な減、あるいは公債費の問題、不交付団体分の経常経費の大幅削減の問題、一体これは何を意味するものであるのか。いろいろ申し上げたい、そしてお聞きしたいことがございますが、主として、以下、歳入関係についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
まず財源対策でございますが、四十一年度地方財政計画の歳出合計は四兆千三百四十八億円で、四十年度より五千二百二十七億円の増となっておりますが、この増に見合う所要一般財源は、給与関係費千三百六十三億円、一般行政費四百十一億円、公債費百十四億円、投資的経費千二百八十二億円等、合計三千百八十億円であります。歳入における一般財源増加の状況を見ますと、地方税七百九十三億円、これには例の固定資産税の引き上げ等百億円が含まれております。地方譲与税三十九億円、臨時地方特例交付金四百十四億円、地方交付税三百三十五億円、これに使用料、手数料、雑収入等、目一ぱいに見てその増が三百二十三億円、すべてを加えて千九百十五億円にしかならないのであります。所要財源の三千百八十億円に対しまして一千九百十五億円、その不足一千二百六十五億円というものは例の地方債によってまかなえというのであります。このような歳入構造、すなわち所要一般財源増加分の四〇%が地方債という、そういう名前の借金でございます。これによって穴埋めをさせ、つじつまを合わせなければならないというところに、先ほど言いましたように、四十一年度地方財政計画最大の問題があり、四十一年度地方財政計画が赤字財政であり、不健全財政であるということの理由であります。大蔵省や大蔵大臣は、国も公債も発行するのだから、地方も地方債を発行してということでございましょう。千二百億円の借金を背負わせ、しかもそのうち政府資金分は五百億円、残り七百億円は縁故債でと、こういうふうな突き放した形でございます。政府が膨大な仕事を押しつけておいて、金が足りないなら縁故をたよって借金してこい、そうして仕事を進めろというのでございます。これで完ぺきな地方財政対策と言えますか。国の景気対策として、地方団体は多くの仕事をさせられ、あげくの果てに多大の借金を背負わされて、地方団体の財政は一体どうなるというのでありますか。車の両輪という一つの車、地方財政の車は、すでにパンクをして、ひしゃげているようなかっこうではありませんか。最善の努力とは一体どういうことなのでありますか、あらためて大蔵大臣にお聞きしたいのであります。自治大臣は、「これで地方は完全に行政ができ、事業ができ、景気調整に役立つことができると信じております」と、先日、占部議員の質問に答えておられます。一体こういうことで、何が完全に仕事ができ、事業を完全に遂行するということができるのでありますか。景気調整が、これでどの程度の役立ち方をするわけでありますか。総理、あなたの言う重要だという地方財政、その対策が、このようにでたらめで、むしろ冷酷で、地方団体が多くの借金をかかえて、この上、苦しまなければならないという、こういうありさまであります。
以下、私は、地方財政のいまの問題、特に地方債の問題について、若干申し上げてお聞きをしたいと思いますが、いま申しましたように、どんどん借金がふえていく、地方だって地方債を持ったらいいじゃないか、こう言われますけれども、しかし、地方団体は、現在まで多くの借金を背負って、その返済に苦しんでいるのが現状でございます。もともと、赤字になるような、そういうものを、地方債という名前で、起債という名前で肩がわりをして、やりくりをしてきたのが、現在までの地方財政の状況でございます。
昭和三十九年度末における地方債の現債高は、普通会計分一兆六百八十四億円、四十年度末の現債高は、普通会計だけで一兆四百一億円、いずれも一兆億円をこしております。そして、年々返さなければいけない、いわゆる元利償還のこの経費は、四十年度では一千三百三十五億円、四十一年度計画では一千四百七十六億円でございます。試みに、地方団体のこの公債費の状況をちょっと見たいと思います。東北地方、関東地方の各府県の、青森から岩手、宮城、山形、秋田、福島、こうずっと見てまいりますと、いずれも、三十九年度決算から見まして、公債費が十億円から十五億円でございます。元利償還費が十億円から十五億円でございます。税収入の二五%、二三%、一八%、三三%、二八%、こういうように、税収入の約三分一近くが公債費に食われている。そうして、三十九年度に新たに起債を起こした額が、青森では十二億円、岩手では九億円、宮城では十二億円と、こうありますが、これらのうち、起債の額がそのまま借金を返す公債費に埋めてなお足りない、こういう団体が、宮城県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、千葉県、ちょっと拾っただけでも、このようになっているのであります。こういう借金のために苦しい地方団体、これに今度また新たに千二百億円以上の地方債を加えて、一体今後どうなるのか。私は、この公債費の問題が、現在もそうでありますが、今後とも地方財政の一つの大きな重圧の要素となっていることを指摘せざるを得ませんが、自治大臣並びに大蔵大臣の、これに対する御見解を承りたいのであります。
このような不健全財政が、単に計画上の数字、あるいは地方財政対策の上からの数字的な問題だけでなしに、地方団体には、実際にいま、はっきりあらわれてきておるのであります。昭和四十一年度の都道府県の予算案を見ますと、税が非常に伸び悩んでいる。それから、いろいろないま申し上げました公共投資の拡大等のために、非常に苦しい。しかも、不健全な、形としては積極的とも言えるかもしれませんし、大型とも言えるかもしれませんが、内容においては非常に苦しい予算案を、いま議会でいろいろ審議をしているわけなんであります。数字的なことは時間の関係で申し上げられませんが、とにかく大きな歳入の欠陥、それを地方債で埋めている。地方債は、都道府県だけで明年度千七百四十五億円、これの地方債を予定しております。これは、去年の地方債と比べますと、はるかに多い数字の地方債を当て込んで予算を組んでいるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 時間が超過しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/14
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015・鈴木壽
○鈴木壽君(続) 次に移りますが、地方債の消化対策について承りたい。
今度の地方債、特に緑故債が非常に多くなっております。公募債も、市中公募も五百六十億円とありますが、縁故債千六百六十一億円、この完全消化を、一体、自治大臣、大蔵大臣はどう考えられるのか、そうしてまた、その対策はどうであるかということを、私はお聞きをいたしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/15
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016・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 鈴木君、時間が超過しております。簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/16
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017・鈴木壽
○鈴木壽君(統) 以下、いろいろお尋ねをしたいことがございます。簡単に申し上げておきますから、前もってお示しをいたしてもおきましたから、ひとつ、それによって御答弁をいただきたいと思います。
地方交付税の率の引き上げ、これは、いろいろ問題があるのでございますので、そこの要項のとおり、どうした根拠からこういうものが出てきたのか。さらに、交付税の基準財政需要額の算定において、一般的な投資的経費と起債との振りかえ問題について、さらに、この振りかえた約六百億円及びこれを含む特別地方債千二百億円、これは当然、私は何らかの形において元利を補給すべきものと思うのでありますが、一体これに対して、どのように考えられておるのか。これはきわめて大事な問題でございますから、ひとつ大蔵大臣から、はっきりお聞きしておきたいと思います。
地方交付税の制度の問題、補助金制度の問題、超過負担の解消の問題、明年度中途において給与改定があると思いますが、これに対する対策がおありであるのかどうか。この問題。
国保会計、企業会計の健全化についての対策。全般的に地方財政の根本的な建て直しと言われる、その根本的な建て直しの策があると思いますが、それをお示しをいただきたい。
以上お尋ねをしまして、はなはだ、まとまりのないようなことになりましたが、先ほど申しましたように、要項が出ておりますので、あとのほうは、これによってひとつ具体的にお答えをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/17
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018・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
地方財政のあり方につきまして、基本的な政府の考え方は、もう大蔵大臣からしばしば申し上げておりますように、車の両輪のようなものだ、中央と地方がうまくいかなければ、国政は十分の成果をあげることはできない、かように言っておる。また、私もしばしば申し上げておるのでありますが、私どもが今日、民主政治、これを充実さしていく、また、成果を上げていく、このためにも、地方自治体のあり方というものは最も大事なことだ、かように考えております。また、こういう意味におきまして、いわゆる行政的能力あるいは財政的能力を地方自治体に与える。そして、ただいま申し上げるような民主政治の完ぺきを期していくという考え方でございます。
最近の経済情勢等から、来年度の歳入に対しましては、たいへん国も地方も非常に困った状況に当面しております。そうしてまた、一面、その収入減があるにかかわらず、歳出の面では非常に多くのものを要求されておる。もちろん、地方の公共団体、自治体は、地域住民の福祉の向上のために、公共事業費その他の積極的な施策を必要としておるのであります。こういう際でありますから、来年の処置といたしまして、ただいま鈴木君も御指摘になりましたように、地方交付税率の引き上げであるとか、あるいは特例交付金であるとか、あるいはまた、特別事業債であるとか等を、来年の歳出をまかなう財源としていろいろくふうし、まず、それらの点についての一応の手当てはできた、かように私は考えております。しかしながら、御指摘にありましたように、地方自治体そのものの財政が健全でありますためには、借金政策などはできるだけやめなきゃいけない、こういう意味で、独立財源、これを地方でも確保するように努力してまいるつもりでございます。しかし、いずれにいたしましても、将来の問題として、この借金——公債を考えていかなければならない。そのときの経済の動向、これによりまして、歳入、税収というものも非常に変わってくるのでありますから、経済の動向に、まず重点を置くし、また、今後の税制調査会その他で、いろいろ審議されて、恒久的な独立財源、健全な独立財源が付与される、こういうようになれば、その地方財政の実情等をも勘案いたしまして、そうして将来の対策を立てるべきだと思います。先ほどお尋ねのありました特別事業債等の償還についてはどう考えるかというお話もございますが、これらはいずれ大蔵大臣からもお答えするだろうと思いますが、私も同時に、恒久財源の確保、健全財源の確保並びにこれらの公債の償還等につきましても、特段の留意をするつもりでございますので、検討の上、善処してまいるつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/18
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019・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 地方財政のあり方につきましては、国と地方が一体的立場に立ちまして、経済を安定成長にもっていくという考え方でございます。したがいまして、地方におきましても、思い切った減税をいたしまして、すなわち、住民税におきましても、約三百億の減税を、今年度いたしておるのであります。そうして同時に、地方の事業を伸ばして、すなわち都市開発、地方開発をいたしまして、過密対策に資し、過密都市の合理化をはかっていく、さらに地方の落ち込みを、これを是正いたしまして、行政水準を向上すると同時に、地方にもやはり工場を誘致いたすようにいたし、農漁山村、中小零細企業者の生活をよくするいう考え方に呼応いたしての予算編成でございます。したがいまして、この政策が進むに従いまして、私は、地方の財政力は強化いたすものと信じておるのでございます。そうして、地方の行政水準もよくなり、旧来のレジャーブームから公共事業ブームヘの置きかえをいたしまして、地方にうんと事業を興していく、このことが、私は、地方財政をよくする根本であると考えておるのでございます。
したがいまして、本年度の予算の編成が借金政策に堕しておるというそしりはございます。ございますけれども、経済がよくなることによりまして、私は、その借金は返せると思うのでございます。すなわち、国民の生活が向上いたしますれば、経済がよくなれば、税金もよくなるわけであります。たとえば、経済成長率が一〇%、ずっと進むといたしませば、本年度のように三千億の借金を続けていたしましても、借金の率はわずかに七〇%である、本年より少しも上がりゃせない。ここ二、三年、地方が借金をいたしましても、経済が成長すれば、断じて地方の経済が悪くなることはないのでございまして、私は、借金政策を苦にすることはない。それよりは、地域間の格差を是正をいたしまして、地方経済をよくするということに重点を置く政策を好むものでございます。したがいまして、千二百億の借金でまかなわねばならなくなっておる点については、お説のとおりでございますけれども、この千二百億円は一般財源に当たるものでございますから、将来は何らかの処置で、十分、地方財政の安定にだけに終わることは断じてせない方針で進んでいきたいと考えておる次第でございます。
さらに、この千二百億円の中に、縁故債七百億、あるいは特別債の中にも縁故債がございます。ございますけれども、それらは政府と一体になって地方で消化することは困難ではございません。いま直ちに実行へ入っておりますことは、地方の財務局、日銀当局あるいは銀行当局、並びに地方団体と協議会をつくりまして、そうしてこれが消化に対して全力をあげ、しかも、なお、この起債の許可標準に対しては、いち早く地方に知らして、そうして、必要な金は、大蔵省の財務局でこれを前渡しをするというような行政措置をとっておるのでございますからして、これが消化に対しては困難ではないと考えておる次第でございます。
さらに、超過負担の解消に対しては、実質二百五十億、総計三百五十億の解消になっておりますが、これは十分でございません。まだ一千億円から残っておりますので、鈴木さんのお説のように、将来努力して、その解消に全力をあげねばならぬと考えておるのであります。給与勧告を受けるという状態になれば、もう財源ございませんから、どうしても政府のほうで、国のほうで手当てをしてもらう以外にはないということを私は言っておるのでございますから、勧告を受けんでもいいような経済体制を確立しなきゃいかない。この点に対して、私はいま政府部内で強く推進をいたしております。すなわち、合理化できる産業の人が、卸価格を下げるという体制をとっていけば、私は、農機具や肥料が下がれば、農村の労働賃金を上げても、米の値段は上げずに済むのでございます。すなわち、合理化できるところの、資本家と労働者が協力いたして、そうして卸価格を下げる。そうなれば、公共事業や、あるいは農村や中小商工業者の、合理化のできるところで、賃金が上がっても——上がるのはあたりまえですよ。所得均衡をはかるのはあたりまえ。上がっても、物価は上がらないという財政政策を確立することが第一であるということを、私は強く要望をいたしておるのであります。
さらに、国保やあるいは地方公営企業関係につきましては、経営の健全化をはかるために、公営企業等に関する法律を出しまして、そうして公益関係と独立採算制と、自己努力の三者の総合調和で、健全性をはかる方途を講ずるようにいたしておるのでございます。しかし、鈴木さんの言われるように、地方財政に持っていただく点に対しては多大なる敬意を払っております。したがいまして、将来におきましては、税の再配分等によりまして、必ず地方財政の確立に対して最善を尽くして、御期待に沿うように全力をあげたいと考えている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/19
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020・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 鈴木さんから、地方財政対策がまことに完ぺきでないではないか、こういうようなお話でございました。しばしば申し上げておりまするとおり、今回の地方財政対策といたしましては、地方財政先議と言いますか、また、ことばをかえて言いますと、国と地方は一体だという基本方針を貫き通したと考えるのであります。つまり昭和四十一年度におきましては、地方財政は、経済情勢の影響、また、中央の財政政策の影響等によりまして、二千五百億円の赤字が出る。それに対しまして、国では二千二百億円の対策をとり、地方の自己努力によりまして三百億円を埋める。完ぺきと申せるかと思うのであります。
なお、その内容といたしましても、国の減税政策による影響、つまり交付税の減収五百七億円と言われますが、それに対しましては交付税率を引き上げまして完ぺきにこれを埋める。また、たばこ消費税を昭和四十二年度において改定するという含みをもちまして、本数割りの特例交付金制度を設ける、こういうようなことをいたしますとか、また、懸案の超過負担の解消問題、これは大体知事会とも相談をいたしまして、その要望に基づくところの措置を講ずるとか、あるいは補助金の整理合理化に踏み出すとか、あるいは公営企業問題について御審議をわずらわすとか、あらゆる問題につきまして手をつけることになりましたので、地方財政対策としては非常に前進だと、さように考えております。
御指摘の公債の問題でございます。これは公債公債と言われまするが、ここでも申し上げておりまするとおり、今日の経済情勢下におきましては、中央政府におきましても公債を出さなければならぬ。七千三百億円の公債の御審議を願っておるわけでございまするが、しかし、そういう状態下におきましても、地方ではなるべくそういうことにならないように、そういう配意を持っているわけなんであります。今日御審議を願っておる中央財政の予算におきましては、公債依存額が一般会計におきまして一七%になるのであります。一体、地方はどうだというと、地方財政計画で見ている地方債は約二千九百億円、地方財政計画歳入額の七%でございます。公債依存度、これは戦前標準時におきましては、地方財政では二七%も公債に依存をしておった。今日七%、非常に配意を加えておるというふうに御承知を願いたいのであります。なお、その消化につきましては、これは公募債におきましても縁故債におきましても、ただいま自治大臣からお話がありましたように、これは御心配をおかけいたしませんというふうにいたしたいと存じます。
交付税の税率の引き上げを三二%とした理由いかん、こういうことでございまするが、ただいま申し上げましたとおり、中央の減税額の影響、それによりまして交付税が五百七億減る。それに対して五百八十六億円に相当する三二%という改定を行なう、さようにお考え願いたいのであります。
また、特別事業債に対して元利償還をどうするかというお話でありますが、これは、地方財政執行上支障のないように、お説のとおり処置する方針でございます。まあ、政府の政策は、地方財政に対して非常に理解がない、こう薬ばりだというお話でございますが、今日、なぜ地方財政が非常に苦しいか、これは昭和二十九年ごろ非常に苦しかったわけです。それが、再建整備計画ができまして、三十一年から実施されて、非常に改善を見たわけであります。改善を見たのは、再建計画と、もう一つは日本経済が発展したためであります。あの鹿児島においてさえ、黒字が十数億円もたまるというぐあいに改善されてきた。それが昭和三十九年から悪化をしてきている、その最大の原因は、一つは、経済の影響を受けているという問題、一つは、人件費が四割も占めるという、地方財政における人件費の増高という問題があるわけであります。私は、そういうことを考えまするとき、地方財政というものは、この経済の不況が一転をする——いま、そういう政策を進めているわけであります——一転をいたしますれば、また面目を一新する、そういうふうに考えております。その情勢を見た上、地方財政をさらに再検討して、前進への努力をすべきである、さように考えまするが、さしあたり問題になりますのは、公営企業の問題であります。これはどうしても取り急いで、その再建計画を立てなければならないというので、ただいま御審議をお願いしているわけでありまするが、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/20
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021・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 原田立君。
〔原田立君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/21
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022・原田立
○原田立君 私は公明党を代表して、ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案及び昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案について、総理並びに関係大臣に対し質疑を行ないます。
地方公共団体に、それぞれ自主的、普遍的な固有財源を与えることは当然のことであります。現在の地方財政はほとんど自主性がなく、国家財政への依存度がきわめて高いところに、大きな欠陥があります。久しく論議されている問題点でありますが、一向に解決されないで、逆に国からのひもつき財源である国庫支出金がどんどんふえております。幾らふえたとしても、結局、それは本質的に地方自治の基盤を失わせる以外の何ものでもないことを意味しております。各地方団体の四十一年度予算案を見ても、その規模は著しく大型化したが、その内容は、不況を乗り切るために、公共事業を促進するという、国の施策に呼応した、投資重点型になっているのがその特徴であります。財政需要が大幅にふえているにかかわらず、景気停滞の影響を受けて、歳入増加は期待できず、地方債を大幅に発行するという、いわゆる不健全な借金財政になっているのが現在の実態であります。四十一年度の地方財政計画の規模も、国の予算と変わらないほどの大型予算でありますが、国に比してはるかに悪い一四%の伸び率であります。地方税五・三%、地方交付税四・七%で、前年度に比べると三分の一しか伸びておりません。財政面で国への依存度が強まれば、結局、地方自治体の自主性が失われるのは火を見るよりも明らかであります。いまや、二割ないし一割自治になり下がろうとしているのが実態であります。
そこでまず、総理にお聞きするのでありますが、この疲弊した地方自治をば、自主性を持たせることについて、どのように考えておられるのか、将来どういう姿をもって自立せしめようとしているのか、政府のビジョンとも言うべきものを示していただきたい。
また、過日、総理は、いわゆる所得課税最低限度額をば八十万円以上にしたいと言明なさったのでありますが、それに伴い住民税のほうの課税最低限度も当然引き上げられるでありましょう。そうなると、課税対象世帯もかなり減少すると思います。かなり減少すると思いますが、その際には地方財源確保にどのようになされるのか、また、当然、課税最低限度額は、私どもの主張では、扶養家族三人で年収八十万円にまで高め、これ以下の勤労大衆の住民税は全廃することが必要であると考えますが、総理のお考えを承りたい。
地方交付税制度の持つ財政調整機能を生かして、できるだけ客観的な公正な基準に従って運用するために、制度上の保障を与えるべきであります。また、交付率を引き上げて地方公共団体の財源を増加させるとともに、地方交付税の配分の基礎となる単位費用の計算などを実情に即して改正し、適正な配分を通じて地方公共団体の団体間の格差を解消するようにしなければならない。
そこで、第二に、今回地方交付税を二・五%引き上げて、三二%にしたのでありますが、これはどういう根拠をもって算定されたのか。地方財源確保のためにも抜本的な対策をすべきだと思いますが、いかがですか。そうなると、交付税率は、地方財政審議会が意見書に言っているように、三七%以上にすべきであると思いますが、自治大臣、大蔵大臣は、この意見を尊重するのかどうか、そのようになさる決意はないのかどうか、お伺いいたします。
第三に、人口が急減した市町村に限り基準財政需要額の激変を緩和するための補正を行なうが、どのくらいの恩恵が与えられたのか。また、交付税によるこのような措置だけでは、これらの市町村財政は健全化をはかれないと思います。政府は他に救済策をどのように立てられるのか、お伺いしたい。
第四に、臨時地方特例交付金四百十四億円中、第一種特例交付金の二百四十億円は、たばこ本数案分方式になっておりますが、四十二年度以降は、たばこ消費税へ移行されることになったと聞いております。この際、さらにこの配分税率を引き上げて、専売公社の利益の中から、たばこ代金を値上げせずに地方公共団体への配分額を増加せしめ、地方財源確保をはかるべきであると思うが、いかがですか。
第五に、交付税率の引き上げ、臨時地方特例交付金など、一般財源で一千億円の増加をし、財政措置されているが、これだけではなかなか穴埋めにもなりません。健全な姿ではありません。それにかわるに一般会計分地方債を一千二百六十五億円にふくらましたことは、いわゆる借金政策であり、地方財政を極度の不安におとしいれるものであります。地方財政は、あくまで均衡財政、健全財政の方針を貫かなければならないと思います。特に一般行政費をまかなうための赤字地方債の発行は、全面的に禁止すべきであろうと思います。特別事業債を新設し、一千二百億円も計上しております。ゆえに、前年より実に七七。六%増であります。また、一般会計債の現債高は一兆六百八十四億円と膨大であります。それが年々元利償還せねばならないが、ますます地方財政を圧迫悪化せしめるものであります。この疲弊した地方財政を健全ならしめるために、税の再配分を早急に確立せねばならないと思うが、どう考えているか、総理の所信を承りたい。
第六に、超過負担で苦しみ、財政が困窮しているのは、全国的なケースであります。四十年度推計一千二百七十三億円に対し、四十一年度において政府は二百五十億円を解消したいと言っておられますが、今後いつごろまでで全額解消するものか、あるいはまた、基準単価、補助単価の引き上げをやるべきだと思いますが、どのように処置なされるか、お伺いいたします。
第七に、地方公務員のべース・アップ問題は、勧告時期等がまだきまらず、依然として解決いたしておりません。これが昨年同様の方法によるならば、ますます地方財政は大混乱を来たすおそれがあります。財源措置等、どのように対処するお考えか、お伺いしたい。なおまた、固定資産税、都市計画税の増税は、衆議院の段階において話し合っていると聞いておりますが、もしこれが減額になれば、どのように財政的に裏づけをなさるのか、お伺いしたい。
現在の地方自治が持つ最大の欠陥は、地方自治を法律上保障しながら、その裏づけとなる財源が確保されないという点にあります。一方において、住民の地方行政に対する要望が大きいにもかかわらず、実際には上位の政府機関から押しつけられた委任事務が非常に多く、その処理や報告に忙殺されて、住民に対するサービスがおろそかになっている。固有財源の確保が強く要望されている次第であります。しかるに、現状では、四十六都道府県中四十二道府県、三千三百九十三市町村中三千二百二市町村が地方交付税を受けております。これは、明らかに税源配分の不合理性を示すものであり、その改善策がすみやかにとられなければならない。こうした欠陥を改善するため、国、都道府県、市町村の税源を、それぞれ明確に区分する独立税主義の原則を根本的に改善し、維持することを主張するものでありますが、総理の見解をお伺いいたします。
以上をもって質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/22
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023・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
先ほど鈴木君にお答え申したように、地方自治体の行政能力、同時にまた財政的能力、これが十分でなければ、国の政治、行政としては万全を期するわけにまいりません。その意味におきましては、地方、中央を通じて、しっかりした基盤に立つということが、民主政治を守るゆえんでもある、かように、私、思っておりますので、このただいまお尋ねになりましたような点について、考え方は大体みな同じ方向だと思います。そういう意味で、今回の経済の現況から、来年度の予算の編成にはずいぶん苦心をし、先ほど申し上げたように、特別事業債なり、あるいは交付税率の引き上げなり、また特例交付金などを設けて、つじつまを一応合わせております。それによって一応経済の開発ができ、地域的にも発展すれば、将来の歳入も、こういう点では非常に格段に相違してくる。これこそがほんとうの発展を期するゆえんだ、かように実は思って、種々の政策をやっておるわけであります。これらの点は御理解いただけたろうと思いますが、そこで、将来の私どものねらいとして、いわゆる八十万円までは、ぜひ課税限度を引き上げるといいますか、その辺までにしたい、こういう一つの目標を立てております。そこで私どもが願いたいことは、自治体の自主性もございますが、中央において減税もやり、そうして住民の負担を軽減すると、こういう基本的な態度をとっておりますので、地方自治体におきましても、やはり地方住民の負担軽減、これには、やはり努力していただきたいと思います。税金は申すまでもなく、同一の人が、あるいは国税を納め、地方税を納め、市町村税を納めておるのでありますから、その全部について負担が軽減されるということでなければ、住民は納得ができないのであります。そういう意味で、地方自治体の行政上の努力も要求されるのでございます。これらの点では、過去におきましても、また今後におきましても、自治体の協力を特に願うゆえんでございます。
次に、いろいろ具体的な問題についてのお話がございましたが、とりあえずの問題、これは四十一年度の予算編成でありますけれども、将来の問題といたしまして、お説にもありましたように、地方自治体の財源は健全性が保たれなければならない。今回の公債発行、これで直ちに地方自治あるいは地方財政を危殆に瀕せしめたものと、かようには、私、思いませんけれども、しかしながら、だんだん公債の発行が長く続いていく、長期にわたる、そうすると、その公債の償還等にもいろいろ苦心しなきゃならない、かような圧迫を生ずるようなおそれがあってはならない。かように思いますので、ただいまの地方債の発行等につきましても、おのずから限度があると思います。しかし、基本的には、何と申しましても、この経済の建て直しをすることによって、地方財源が無理をしなくても入ってくるように、そういう好況の状態をかもし出すこと、これは私どもも、つとめなければならないと、かように考えておるのでございます。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/23
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024・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 基本問題については前に答弁を申し上げましたので、具体的な問題について申し上げます。
将来のビジョンにつきましては、自主財源の確立をいたして地方自治の安定をはかるということは、ぜひ実行せなければならない考えでございます。地方制度調査会の答申をもちまして、地方財源の再配分並びに事務の再配分等を根幹といたしまして、地方財政の確立をはかっていきたいと考えておる次第でございます。
なお、地方交付税の配分につきましては、格差を是正いたしまして、行政水準の均衡化をはかるということを中心に考えておるのでございます。したがいまして、今回の人口激減の都市に対しましては、激減緩和の方途を講じ、あるいは傾斜配分方式をいたす、あるいは内陸団地あるいは低開発地の工場誘致、そういう方面の財政的処置等をも勘案をいたしまして、地方の経済をよくする方面に力を入れたいと考えておる次第でございます。
なお、たばこの消費税関係につきましては、来年度は二百四十億に対しましては、これを恒久化していきまして、地方財源の安定財源としたいと考えておるのでございます。将来の問題といたしましては、お説のように、さらにこれを強化する問題は検討をいたす必要があると考えるのでございます。
なお、地方債一千二百億円の基本問題については、先刻申した次第でございますが、これが財政を将来圧迫しないように、何らかの方途でこれが処置をいたす考えで、地方が迷惑をこうむらないような方法にいたす考えでございます。
超過負担に関しましては、お説のように、本年度は不十分でございますので、必ずこれが解消に対して強力に推進をいたしたいと考えておる次第でございます。
なお、べースアップの財源は、先刻申しましたとおりに、この場合、ございませんので、べースアップをしないでもよろしいような経済体制を確立することに重点を置きながら、そういう場合におきましては、やはり政府の財政的処置を要望する以外にないと考えておる次第でございます。
なお、固定資産税減額法の問題が論議されておりますが、これは、国会におきまして、このようなことが起きた場合においては、これは都市開発に必要な財源でございますので、一般財源として確保できますような常識ある結論を出していただきまして、院議を尊重いたしたいと考える次第でございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/24
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025・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答えします。
交付税の税率を三二%ときめたのはどういうわけかと、こういうことでございますが、これは、今回の中央の税制改正によりまして、交付税が地方に回るべきものが五百七億円減るのであります。それを埋めるということを目途といたしまして、二・五%の引き上げを行なう。その結果三二%に相なるのであります。これをさらに引き上げたらどうだ、こういうようなお話でありますが、いま地方財政が非常に困窮しておる。それはそのとおりでありまするが、その困窮の原因は、今日、中央でもそうなんです、経済、財政情勢が悪い。それを反映して、地方でも中央でも、税収が落ち込む。そこに問題があるのであります。そういう流動的な過程におきまして、根本的な交付税率の改定を行なおう。——これは適当でない。ただ、中央で行なう国税の減税、それに見合うものだけをこの際解決する。そういう趣旨をとったわけであります。
それから、たばこ消費税の地方交付率を拡大したらどうだ、こういうお話でありますが、これも同じような意味合いにおいて、今回は、そういう措置はとらない。本数割りによる措置と、こういうふうにいたしたわけでございますが、昭和四十二年度以降においてはそういう方向で検討してみたい、かように考えております。
その他の地方、中央を通じまして、税の再配分をやったらどうだ、こういうお話でありますが、これも、もう少し経済の落ちつきを見ました上で、再検討したい、かように考えております。また、その際には独立税を大いに強化すべし、こういう御議論でありますが、これもそういうふうに考えます。考えまするが、それ一点ばりでいくわけにはいかない。つまり、独立税ばかりにしてしまいますれば、地方自治団体それぞれの間に、格差、不均衡が起こってくる、これは必然であります。それを調整するという意味におきまして今日のような交付税あるいは譲与税、こういう制度もなお相当存置しなければならぬ、かように考えております。
超過負担の問題につきましては、ただいま自治大臣からお話がありましたが、これがどれくらいになるか、あるいはその発生の原因がどうか、これはきわめて複雑であります。自治団体のほうにその原因があるという点もあるのであります。つまり、既定の事業量をこえて事業をしたというようなケースも相当あります。しかし、これはいろいろな原因が重なっておりまするが、また、そういう複雑な原因もありまするから、幾ばくの超過負担があるのだということにつきましては、今日、はっきりした見当がついておりません。しかし、これは少なくとも、そういう問題は解消しなければならない、こういうことから、昭和四十一年度予算におきましては、三百四十億程度の解消をいたしておるわけであります。さらにこの努力は続けてまいる、かような考えであります。
借金財政につきましては、先ほども鈴木さんにお答えいたしたところでありまするが、地方財政が借金にのみ依存しているという姿はよくないと考えております。そういうことから、中央では、大幅な借金政策をとることにいたしましたが、地方ではこれがなるべく軽微に済むようにという努力を払いまして、まあ、一般会計の歳出の七%という程度にこれをとどめたわけでありまして、今後もその程度のことにとどめていきたい、かように私は念願をいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/25
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026・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/26
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027・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第五、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。福田大蔵大臣。
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/27
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028・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、アジア開発銀行への加盟に伴う出資の財源、その他一般会計の歳出の財源に充てるため、外国為替資金から一般会計に繰り入れることができることとし、あわせて、先般発効した「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二議定書」に基づく対韓国清算勘定残高の処理に伴う外国為替資金の減額整理に関しまして、所要の規定を設けることとするものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
すなわち、第一は、アジア開発銀行への加盟に伴う出資の財源に充てるための外国為替資金の一般会計への繰り入れであります。昨年十二月四日マニラにおいて調印されました「アジア開発銀行を設立する協定」に基づいてアジア開発銀行が設立されることになりましたが、同銀行の授権資本総額は十億ドル、日本の出資額は二億ドルであり、うち、払い込み資本額は一億ドル、その二分の一が現金による出資、残りの二分の一が国債による出資となっております。現金による出資五千万ドル、すなわち、邦貨に換算して百八十億円は、昭和四十一年度から五ヵ年間に毎年度三十六億円ずつ分割して行なわれることになっております。この出資の財源に充てるため、昭和四十一年度から昭和四十五年度までの五ヵ年間において外国為替資金から総額百八十億円を限り、一般会計へ繰り入れることができることといたしております。
第二に、昭和四十一年度における一般会計の財源事情を勘案いたしまして、約百七億円を限り、外国為替資金から一般会計に繰り入れることができることといたしております。この金額は、いわゆるインぺントリーの残額から、アジア開発銀行の出資財源に充てられる分、及び、次に述べます対韓国清算勘定残高に相当する分を差し引いたものでございます。
最後に、先般発効いたしました「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二議定書」において、韓国の要請があるときは、清算勘定残高にかかわる債権の賦払い金について、韓国からの支払い並びにわが国からの生産物及び役務の供与が同時に行なわれたものとみなすという処理を定めているのでございますが、これは当該債権について現実の支払いがないにもかかわらず、その支払いがあったものとみなされるわけでございまして、これにより外国為替資金に生ずる損失を同資金の額から減額して整理することといたしております。
以上、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げた次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/28
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029・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。成瀬幡治君。
〔成瀬幡治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/29
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030・成瀬幡治
○成瀬幡治君 社会党を代表いたしまして、ただいま提案をされました外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、主として海外経済協力の点について、総理をはじめ、関係大臣に質問をいたします。
戦後の特徴の一つといたしまして、南北問題があります。それが経済協力という形で大きく取り上げられてまいりました。マーシャル・プラン、ガリオア計画を出発点として、次々と対策が進められてまいりましたが、特に一九六〇年代に入りますと、南北問題への認識が一そう深まり、IDA、DAG、IDBなどが設立されましたが、特に一九六二年の国連総会では、六〇年代を開発の十年間と呼んで、低開発国の経済成長率を五%まで高めるよう先進諸国が協力する、という趣旨の決議が行なわれております。そして一昨年の六四年七月には、国連の第一回貿易開発会議で、先進工業国がそれぞれ国民所得の一%拠出を目標として援助努力をする旨の「量の決議」が行なわれ、さらに昨年の六五年七月には、DAC上級機関で、DAC加盟国は政府援助額のうち少なくとも八〇%を、贈与または期間二十五年以上、金利三%以下の借款にし、この目標達成については、特別の事情のない限り、先進諸国は三年以内に実現を期すとの「質の決議」がされております。日本はいずれの会議にも参加し、賛成をしているのであります。今国会の当初の総理、大蔵、外務、経企の各大臣の所信表面演説でも、海外経済協力推進の点について触れられておるのであります。また、去る三月七日の新聞は、外務省は経済協力三ヵ年計画を検討し、大綱案をまとめたと報じているのであります。
そこで、まず第一点としてお尋ねをいたしますが、政府に経済協力に関する基本構想があるのか、政策目標は何かという点であります。今回のアジア開発銀行に例をとってみますと、域外のアメリカが日本と同額の二億ドルを出資しております。その発想もアメリカから出ていることも周知のとおりであります。過去の海外援助協力は、どう見ましても、アメリカのしり馬に乗って走っている感じがするのであります。そのことが、最高出資者である東京にアジア開発銀行の本部がこない根本原因があるではなかろうか。アジアの諸国の間には日本不信の影があり、その結果として、日本国民の期待が裏切られて、マニラに本部設置となったのではないでしょうか。大いに反省をしてみる必要があろうかと存じます。また、DACのソープ議長の、日本の援助は商品と結びつき過ぎているとの批判もあります。政府はこの際、アジア諸国内にひそんでいる不信の念をぬぐい去り、独自の姿勢を示す意味からも、この際、基本構想を明確にされるのが当然と存じます。
なお、与党自民党内におきましても、基本法制定などを含めて対策を検討されていると聞いております。援助対象国の中心はアジアが中心なのか、アジア開発銀行の東京支持の八ヵ国が中心になるのか、文字どおり低開発国なのか、政治形態で差があるのか、政府中心か、民間中心の援助なのか、貿易との関連性はどうなるかなど、総理の基本方針、基本構想を、この際、承りたいと思います。
第二点は、経済協力機構の一元化についてであります。大蔵省に国際金融局があります。外務省に経済協力局があります。通産省に経済協力部があります。経企庁に調整局があります。四省にそれぞれに窓口があるのであります。まあ外務省が外回りで注文を取ってきて、国内で、物の割り振りは通産省がやって、大蔵省が経理担当係で、経済企画庁が調整役と、各官庁がおのおのポジションを守って有機的に活動をしているんだから、これでけっこうであるとお言いになるかもしれませんですけれどもね、どうもそういうふうには受け取られません。官庁間のなわ張り争いは目に余るものがあると思うのであります。DACの一九六四年の第三回年次審査でも、この点が問題になりまして、日本の援助機構の多元化は、援助に関する重大な責任の所在を不明確にする危険があることと、援助の効率化について考慮しなければならないということを指摘しているのでございます。DACの国際会議などでこうした問題を指摘されるということは、日本としてはたいへん不名誉なことであると思うわけでございます。経済協力推進について、民間相互の協調も重要でございますが、各行政官庁のセクショナリズムは、妨害にこそなれ、推進には何の役にも立ちません。総理は今回の施政方針演説の中で、「経済協力を積極的に進める。実効のある施策を進めてまいりたいと思います。」と述べておられますが、行政の能率化のため、機構一元化についていかなる所存でございますか、その考え方を承りたいと思います。
第三点は、経済協力の具体的方策いかんという点でございます。国際収支とにらみ合わせまして、不安はないかという点でございます。
構造的不況の中で、ただ一つの明るいささえは国際収支の黒字でございます。しかし、黒字であるからといって手放しで喜んではおられないと思います。その理由は二つございます。第一は、外貨準備に不安があるという点でございます。外貨準備高は、六五年十一月で、二十億八千六百万ドルでありますが、これは六四年以降の外貨準備にゴールド・トランシュが加えられ、すなわち、二億四千万ドルの底上げがされた点を考慮いたしますと、ここ三、四年の間は、外貨準備高は実質的に横ばいでございます。ふえておりません。しかもその内容は、アメリカの市中銀行への預金など、固定化されているものが大体七億ドルでありますから、流動的なものは十億ドルを若干上回るものと推定をされるのであります。さらに、金の保有の割合は、わずかに一五・二%であります。国際通貨制度の問題が大きく取り上げられているときに、わが国の大きな弱点の一つであると私は思うのでございます。弱点の第二は、対外資産、負債状況に不安があるという点でございます。六五年六月末の統計によりますと、長期バランスは十五億一千八百万ドルの債務超過でございます。アメリカのドル防衛の強化、内外金利差の縮小、または金利が逆転でもいたしますと、輸入ユーザンスやユーロダラーが急激に流出するかもしれません。これは杞憂であるといわれるかもしれませんけれども、わが国の外貨準備、対外資産、負債関係などの対外均衡関係の現状は憂慮すべき状態であり、楽観を許さない状態であると思います。この認識は誤りでしょうか。これで先進国家と自負することが許されるでしょうか。
以上のような弱点をかかえた国際収支のわが国がUNCTADへの国民所得の一%拠出、そうして、そのうち八〇%は贈与か、または、ゆるやかな条件にせよという決議を、ただ先進工業国という名で協力をしなければならないのか。また、ほんとうにそういうことが可能でしょうか。外務省で検討したと新聞が報じている三ヵ年計画は、一は、四十一年度から四十三年度の三年間に、国民所得に対する援助額の比率を一%に引き上げる。二は、四十三年度の援助総額は約八億七千万ドルをめどとする。三は、特に政府ベースの直接借款と技術援助を拡大し、援助条件についても、期間二十年、金利三・五%程度の条件のゆるやかな援助をふやすなどを骨子としていると報じておりますが、ほんとうに国民所得の一%拠出が実現、実行が可能でしょうか。いままでの例を見ますと、六〇年が〇・七八、六一年が〇・九七、六二年が〇・六六、六三年が〇・五四、六四年は〇・四四と、こう下がっております。そうしてこれは破棄されましたけれども、中期経済計画の中ではどういうふうに予定をしておったかというと、六八年、すなわち四十三年には〇・九二というのを予定をしております。これは、中期経済計画が不況でだめになって、御破算になってしまう、そういうときに、四十三年には一%をやるというようなことをラッパを吹かれたわけでありますから、私は永山さんみたいなラッパはきらいであります。椎名さん、ほんとうに可能か、大蔵大臣、ほんとうに可能か。私は国民の負担からいってたいへん過重な数字ではないだろうかという点を心配して、お尋ねをするわけであります。しかし、そうは言いますけれども、また低開発諸国が国連の場で、先進国は援助または補償の義務があるとする気持ちも、わからぬわけではございません。しかし、かつて広大な植民地を持っておった欧州のイギリス、フランスなど、あるいはアメリカの立場とは、おのずから日本の立場は異なっておるものがあると思うわけでございます。UNCTADの決議についての対策は、今後の日本の国民経済にとって重大な影響があります。政府の援助の具体的方策は何であるか、この際ここでお伺いしておきます。
なお、最近、アジア開銀の設立協定の中で、「アジア開銀の投融資資金は同開銀に加入している国の財貨と役務を購入するときだけに使用できる」との規定がある。これがOECDの「貿易外取引に関する自由化綱領」の自由化義務に触れるではないかということが取り上げられているということを、新聞は報じておりますが、これに対する政府の御見解をお伺いいたします。
第四点は、韓国との経済協力についてであります。韓国市場は、外貨準備が少なく、購買力が低く、期待を持てないが、有償無償の五億ドルがある。日本政府が保証するのだから、これほど安全な商売はないとして、請求権に対して盛んな割り込み工作が行なわれているとも言われております。他方、表面にあらわれない形での直接投資、技術提携、延べ払いは、かなり進んでおって、すでに請求権の大部分には、つばがつけられているという、こういうことを言う人もおります。潜行形態は、韓国企業とアメリカの企業がまず契約をし、次にアメリカの企業と日本の企業が契約をする形であると言われております。また、最も不幸なケースは、日本の過当競争と韓国の政商との結びつきであるとの声もありますが、こういう点は、政府が今後、対韓経済協力を進めていく上で十分に注意し、留意していただくことといたしまして、ここでは政府の対韓経済協力の構想が何であるかお答えを願いたいと思います。合同委員会がまだ正式に開かれておりませんと、韓国からまだ具体的な条件が提示されておらないから、具体的な構想はこれからでありますというのでありましょうか。何にもやっておらないというなら、そうしたお答えでもけっこうでありますが、いずれにいたしましても対韓経済協力の構想が承りたいと思います。
これに関連いたしまして、去る十四日、第五十三海洋丸が韓国警備艇に不当に捕獲されるという不祥事件が発生しました。しかも抑留船員が起訴されるというような、うわさも出ておるのでありますが、一体これはどういうことなんですか。日韓条約の審議の中で、政府は、李ラインは当然、条約批准後、韓国の国内法が廃棄されるのであると、そうして、こういうようなことは起こらないということを、しばしば繰り返して答弁をされておったと思うのであります。どうなっているのか、事の真相と今後の対策並びに政府の所信をお答え願いたいと思います。
最後に、中小企業、農業の近代化、高度化の対策についてであります。
低開発国家に対して、資金、技術などの援助を進めてまいりますと、当然、その国の資源開発と農産物や軽工業品の輸出促進となってまいりまして、これが日本経済へはね返ってまいります。そういたしますと、国内の中小企業、農業との競合が問題となってまいります。今日の不況が構造的であると指摘されております。格差是正が大きな問題となっておりますが、海外の低開発国への援助とともに忘れてならないのは、国内の中小企業、農業の近代化、高度化であります。いままでも中小企業の近代化対策とか、あるいは農業の近代化対策ということは、しばしば発表はされました。しかし、それはみんな紙に書かれたもので、紙つぶてであって、財政的な裏づけが少しもありません。いつでも、あと回しにされたようなところがございます。ここが問題でございます。少なくとも、海外経済協力について、国民所得の一%という基準が許されるなら、当然、中小企業や農業の近代化についても、基準を示して、そして努力してみるというのも、一方法ではないかと思うわけでございます。海外のほうに国民所得の一%を向けるというなら、国内へも、中小企業や農業の近代化、格差是正のために、一%予算を出すと、こういうようなことを、あるいは一%じゃなくて、もっと、三%とか五%とか多くやる、そういう思い切った斬新的な施策ということが私は必要ではないかと思うわけでございますが、こういう点に関して御所見を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/30
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031・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 日本の海外協力の問題、しばしば言われることでありますが、わが国の力は一体どういうことなのか、自由主義陣営の三本の柱の一つだと、かような言われ方もしております。しかし、少なくとも、アジアにおける、日本が唯一の工業先進国であること、これは何人も認めるだろうと思います。したがいまして、日本のいわゆる経済協力の場合におきましても、アジア地域におきましては、自分のところが唯一の工業先進国である、その立場に立っての責務を果たしていく、これが私どもの考え方でもありますし、また、アジア諸国が日本に期待するところでもある、かように私は確信をいたしております。そこで、いわゆる経済協力につきましては、国連や、OECDや、あるいは世銀等で、それぞれ決議したものがありますし、これがいわゆる国民所得の一%、その辺を目標にしておる。わが国の実績は、必ずしもそれに沿っておりません。なお今後とも努力してまいるつもりでございますが、まず、この目標に沿って、これを実現するような意味で、ただいまの経済協力を発展させていく、そうして、わが国の重点は、アジア諸国にこれを指向しておる、また、援助の形式や条件等は、相手の国、さらにまた、経済援助のプロジェクト等によりまして、具体的にそれぞれきめていく、これが実はわが国の基本的な考え方であります。
三月七日の新聞に出たもの、いろいろこの点についてもお尋ねがございましたが、これはまだ、政府が政策として決定したものではございません。ただいま申し上げるような、まだ抽象的な考え方の基本的な方針を立てておるだけであります。
また、この海外協力の問題ばかりではございませんが、わが国の行政機構がそれぞれに分かれておる。外務省、通産省あるいは大蔵省、またその他にもあるだろう。こういうことで、これが一元化をする必要があるんではないか。他の国におきまして——あるいはイギリス、アメリカ、ドイツ等では、かようなことを、くふうされておるように伺いますけれども、私は、ただいまの状態におきまして、まず現状においては、その一元化の必要はない、実はかような見方をしております。お話にもありましたように、それぞれの官庁がそれぞれのポジションをよく守って、そうしてチームワークの実をあげていく、そのチームワークは、総理自身が各省を督励し、お互いに協力する。こういう形で進めていけば、現状におきましては、十分成果をあげ得る、かように私は考えておるのであります。せっかくのお話がありましたが、現状で対処していくつもりであります。
また、最も重点を置いてお尋ねになりました日韓の問題でございますが、日韓の経済協力、ことに日韓の国交を正常化して初めての不幸なる事件が起きた。この詳細につきましては、後ほど外務大臣からお答えするつもりでございますが、私は、わが国の正当なる主張、これをどこまでも貫くという、これが両国の関係を今後とも持続さすゆえんだと、かように私は考えておりますし、また、それがわが国漁民の保護にも通ずるものでありまして、今回の問題の処理につきましては、いたずらに騒ぐことなく、よくこの事件を説明をいたしまして、そして正当なる主張は、どこまでもこれを貫いていく、こういう態度を堅持してまいりたいと思っております。
中小企業や農業につきまして、国内の問題として特殊なくふうをしろという、これは御趣旨としてごもっともだと思います。外国の経済援助にいたしましても、外国の産業が興る、こういう場合におきまして、わが国の中小企業や農業に悪影響が及ばないように、貿易の面におきましてもいわゆる保護貿易をとっておりますし、自由化等も、物によりましては、しばらくこれを差し控えております。非自由化の品目もありますし、また、国内におきましても積極的に近代化を進めておるような状態でございます。ただいまのいわゆる海外の経済協力と国内に対する対策と、別に私は矛盾しておると、かようには考えておりません。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/31
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032・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
まず第一は、国際収支について非常に深い関心を示されております。私も、国際収支という問題は、経済政策を考える場合におきまして、片時も忘れてはならぬ重大問題であると、かように考えます。ただいま外貨準備が、二十億ドルまた二十一億ドルのところを低迷しております。その内容が悪いんじゃないかというお話でございます。確かに、ゴールド・トランシュを組み入れましても、その程度で、この数年間二十億ドル前後である、こういうような状態から言いますると、私は、いい状態ではない。しかも貿易が非常に伸びておる、それに対しまして、この程度のことでは満足すべきものではないというふうに考えまして、今後二十億ドル、二十一億ドル、さらにこれを増強したいという考えでございます。ただ、一つ申し上げておきたいのは、昨年四十年度をとってみましても、経常収支が大体八、九億ドルの黒字であります。それに対して七、八億ドルの資本収支の赤字である。そういうような状態でございまして、それ以前、三十九年度まで数ヵ年間二十億ドル近い経常収支の赤字が続いた、それを借金でまかなってきた。日本の国際貸借は非常に脆弱化したわけでありますけれども、それが四十年度には、とにかく八、九億ドルの規模において改善を見ておる、こういうことであります。また、四十一年度以降におきましても、大体経常収支は黒字である、資本収支は赤字であるという、この基調は続くのじゃないか、そういうふうに考えます。それに伴いまして、二十億ドルという数字はまあ固定化されておるようであるけれども、内容は非常に改善されておるという点も御了解を願いたいと思うのであります。
またさらに、対外債権が不安定ではないかという御指摘でございます。これも私も安定しておるというふうには申し上げません。今日、日本は貸借を考えてみますると、債務超過の状態であります。しかし、国際収支が昨年度八、九億ドルに改善をされたというふうに申し上げましたが、それに伴いまして、日本の対外債権の状態もそれだけ改善をされておる、これも御承知願いたいのであります。しかし、国際収支は常に重要視しなければならぬわけでありまして、ただいま御指摘の国民所得の一%というDACの要請に、どういうふうにこたえていくかというお話でございまするが、これは私はなかなか努力を要する問題であるというふうに思うのであります。DACの要請は二つあるわけです。一つは、量的に一%——国民所得の一%を数年間に達成せよということ、それからもう一つの問題は、その量的な基礎に立って、その内容の質的な改善をすべし、つまり、その条件を低開発国にふさわしいようなものにせよ、こういうことであります。私は、この二つは分けて考えるべきものである、こういう基本的な考え方をいたしておるのでありまするが、一%、これはもう昭和四十一年度においてはおそらく〇・六%くらいまでにはいくのだろうと思います。この二、三年たちますれば、まあ一%というところまでは達成できるのじゃないかと思いまするし、また達成しなければいかぬ。日本もこれだけの工業国になりました以上、アジアの先進国といたしまして、アジア諸国、特にわれわれの近隣に対しましては、協力をしなければならぬという、この立場、責任を貫いていかなければならぬ、こういうふうに考える次第でございまするが、しかし、その条件になりますると、私はDAC、OECDの諸国が言うように、きわめて低利資金——低利長期、そういう極端なことはできない、また、する必要はないのじゃないか。アメリカにいたしましても、フランスにいたしましても、戦前、膨大な植民地を持っておった。その植民地体制の変わった形として、低利長期というような、非常にゆるやかな条件がとられておるという向きが私には感じ取られるのでありまして、必ずしもそういう零囲気の中から出てくるOECDの意向に、量、質的な面で同調するかどうかということにつきましては、私は慎重に考えなければならぬ問題である、かように考える次第であります。
また、アジア開発銀行の融資内容がOECDの自由化協定に違反するのではないかというような御疑念でございまするが、いまだかってOECDの中で、そういう議論が行なわれたことはございません。また、OECD二十一ヵ国の中におきましても、アメリカ、イギリスあるいはフランス、ドイツというような諸国が、これには参加しておるわけであります。そういうような次第でございますので、このOECDの場において、アジア開銀がどうも不都合だというような意見は出ないであろうということを信じておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/32
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033・椎名悦三郎
○国務大臣(椎名悦三郎君) 総理、大蔵大臣からお答え申し上げましたが、多少私から補足する意味で、経済協力の具体的方策についての御質問に、いささかお答えしたいと思います。
わが国の経済協力は、賠償等の国際義務に基づく支払い、そのほかに任意借款、延べ払い、民間投資、技術協力等、種々の形態で行なわれておりまして、今後ともこれらを通じまして、最も効果的、効率的な協力を行なっていきたいと考えております。もちろん、関係省に協議をいたしまして、わが国の財政、国際収支あるいは外貨準備等の状況をも十分に考慮をしつつ、過大な負担とならないように気をつけなければならぬことはもちろんでございますが、わが国の協力は、国際機関への拠出金を除けば、ほとんどわが国の商品とか、あるいはサービスの輸出に、いずれも結びつけられておるのでございまして、これが呼び水となって、国際収支にプラスをするという面も考えなければならぬと、こう考えております。
次に、去る十四日、第五十三海洋丸が韓国警備艇に拿捕されたという事実がございまして、その経過について申し上げ、政府のこれに対する対策の点につきましてお答え申し上げたいと思います。
三月十四日午後一時四十分、わがほうの漁船第五十三海洋丸は、済州島の西側の共同規制水域内、すなわち韓国漁業水域の外側約四マイル半の地点で、韓国の警備艇一〇六号に臨検を受けたのであります。わがほうは巡視船「せんだい」が現場にかけつけて、一〇六号と交渉いたしまして、事件の円満解決につとめたのであります。しかるに、十五日午前一時四十分、突然一〇六号艇が第五十三海洋丸に強行接触をいたしまして、武装した警備艇員二名が乗り込み、先に乗り移っておった同艇員二名とともに、威嚇射撃を行ない、また銃じりにてわがほうの乗り組み員を殴打するというふうな行動に出まして、実力行使によって第五十三海洋丸を済州港方面に連行をいたしました。「せんだい」はこれを追尾いたしまして、同艇に対して抗議及び釈放要求を繰り返したのでありますが、第五十三海洋丸はそのまま連行されたのであります。
事件発生の報に接しまして、十四日夜、外務省から在京韓国大使館に対し、また在韓日本大使館を通じまして、韓国の外務部に対し、本件の円満解決を申し入れたのであります。十五日に至りまして、小川アジア局長は、在京韓国大使館の安公使を招致して、第五十三海洋丸が韓国漁業水域を侵犯した事実はないこと、よって拿捕連行は不法不当であること、抑留漁船及び乗り組み員を早急に釈放すること等、事件の円満な解決を要求する旨、申し入れたのであります。また、十六日には、在韓日本大使館吉田公使より延亜州局長に対しまして、同様の趣旨を申し入れ、さらに、昨日、私は金韓国大使を招致いたしまして、事件の円満解決を強く申し入れた次第であります。このように、政府としては、ソウル及び東京におきまして、拿捕が不当である旨、また、早急に釈放すべき旨を強く申し入れております。
今回の事件は、日韓国交正常化後、最初の事件であり、事実関係を十分に調査をいたしまして、その上でわが国の正当な主張はあくまでこれを主張し、今後の円満な漁業協定の実施を確保するように配慮し、漁民の利益の保護につきましては今後とも遺漏なきを期するつもりであります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/33
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034・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 成瀬君の私に対する御質問は、第一番は、対韓経済協力に対する基本的な方針、過当競争、利権化等の懸念はないかということが一点であります。
まあ、対韓経済協力については、一つのプリンシプルが私にはある。一つは、その経済協力が韓国の健全な経済発展に寄与するものでなくてはならぬということ。また、もう一つは、韓国の希望というものを尊重するということもやはりこれは大事で、また、その希望というものが韓国の長期的な経済開発計画に即応するものであるということが必要である。またさらに、この経済協力が一部の国民を利する利権的なものであってはならない。こういうことが対韓経済協力の基本だと思います。そこで、この点については韓国が毎年年次計画を立てるわけであります。この年次計画を日本と協議をする、その場合に、日本の政府は、これらに対して認証を与えるわけでありますから、いま申したような一つの対韓経済協力のプリンシプルを日本もまた推進する機会はあるわけであります。さらに韓国自体としても、資金管理委員会とか、あるいは基本計画に対しては国会の承認を必要とすることになっておりますし、あるいは資材とか役務の調達は韓国の調達庁が一手にやる。これはやはり入礼のような公開の制度でやるということで、韓国自体も日本の経済協力をガラス張りの中でやりたいということの態度があるようであります。日本としても、この過当競争を、私も成瀬さんと同じように心配している。韓国に対する日本の過当競争——商社、メーカーの過当競争を心配している一人でありまするが、これについては自主的な調整態勢というものを、われわれ行政指導を通じて今後つくり上げて、過当競争により韓国への経済協力というものの効果が減殺されないような努力をいたしていきたいと思っております。
第二点は、対外経済協力よりも中小企業の近代化にもっと力を入れるべきだ。中小企業の近代化は何もしないで、対外経済協力というのはおかしいじゃないかというお話であったと思います。これは少し成瀬さんの御主張が私は受けとれない。今年度の中小企業関係の対策費をごらんになっても、予算の伸びの中で一番大きく予算が伸びたものは中小企業対策費であります。三六%という伸びであります。まあ全体としての金額は多くはないけれども、しかし、約三百億に近い対策費を盛って、その中心は、結局は中小企業の近代化を促進したいということが予算の中心になっております。また、政府関係三金融機関も五千五百億円くらいの資金のワクを持っておりますが、その半分は中小企業の近代化のための資金として用意をいたしておるわけでありまして、まだ努力が足らないというおしかりならば甘んじて受けますが、何もしていないというこの御主張に対しては、承服いたしかねるのでございます。またさらに、海外経済協力は、これとはやはり別でありまして、中小企業対策もやれば海外の経済協力もやるということでなければ、私は日本が国際社会における責務を果たしておるとは言えないのであります。やはりこの今日のようなときに、核兵器時代における世界の平和の維持ということは、これはすべてに優先することですから、先進国と後進国との格差がこんなに拡大していくというところに平和を乱していく条件があるわけで、日本もこれは先進国であることは間違いない。工業生産力あるいは国民生活水準から見ても、この先進国の一員として、世界の平和の維持、それを乱していくであろう後進諸国の社会的停滞、貧困、これに対して応分の寄与をするということは、今日の日本の立場からして当然の責務であり、これもやりながら、中小企業に対しても力を入れていくということが必要と考えております。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/34
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035・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 成瀬さんの御質問に、大体、総理はじめ各大臣が御答弁になりましたので、特につけ加える必要はないかと思いますが、ただ、経済協力の問題につきまして、日本の代表が国連もしくはOECD等に参りまして、そうして国民所得の一%、あるいはソフト・ローンの問題等について決議に参加いたしておりますので、したがって、できるだけ将来はその方向に近づけるように何らか進めてまいらなければならぬことは、日本が国際信用を得る上からいって当然のことだと思います。したがって、それが逆な数字が出てくるようでは相ならぬのでありまして、その意味におきまして、外務省、大蔵省、通産省等の御意見を伺いながら、何らかの形で、将来その方向に進むべきような、若干の案をつくってみたいと、こういうふうに考えております。おそらく新聞に出ました外務省の三ヵ年計画というのは、たまたまその事務的検討の過程にあったものと、こう承知いたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01619660318/35
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036・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十四分散会
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