1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月二十三日(水曜日)
午前十時三十三分開議
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○議事日程 第十九号
昭和四十一年三月二十三日
午前十時開議
第一 海岸法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第二 地方税法の一部を改正する法律案(趣旨
説明)
第三 国務大臣の報告に関する件(沿岸漁業等
振興法に基づく昭和四十年度年次報告及び昭
和四十一年度沿岸漁業等の施策について)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、議員派遣の件
一、皇室経済会議予備議員及び鉄道建設審議会
委員の選挙
一、日程第一 海岸法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
一、日程第二 地方税法の一部を改正する法律
案(趣旨説明)
一、日程第三 国務大臣の報告に関する件(沿
岸漁業等振興法に基づく昭和四十年度年次報
告及び昭和四十一年度沿岸漁業等の施策につ
いて)
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
迫水久常君から、海外旅行のため、明後二十五日から十人目間、請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。
来たる四月十一日から同月十六日まで、オーストラリアのキャンベラにおいて開催される列国議会同盟本年度春季会議に、本院から金丸冨夫君、相澤重明君、加藤シヅエ君を派遣いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/4
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005・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
欠員中の皇室経済会議予備議員及び鉄道建設審議会委員各一名の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/6
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007・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/7
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008・亀井光
○亀井光君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/8
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009・大矢正
○大矢正君 私は、ただいまの亀井君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 亀井君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/10
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011・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、皇室経済会議予備議員に青木一男君、鉄道建設審議会委員に木暮武太夫君を指名いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/11
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第一、海岸法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。建設委員長中村順造君。
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〔中村順造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/12
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013・中村順造
○中村順造君 ただいま議題となりました海岸法の一部を改正する法律案について、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
今回の改正案は、津波、高潮及び地盤の変動等に対する海岸保全事業の重要性が、特に臨海地帯における各種産業の発展に伴って、ますます緊要になってきている現況にかんがみ、この重要海岸のうち、政令で定める一定の地域において、主務大臣が施行する海岸保全施設に関する工事に要する費用について、国の負担率を二分の一から三分の二に引き上げて、事業を推進しようとするものであります。
本委員会における質疑のおもなる点は、海岸管理体制の一元化、保全事業の統一調整及び補助率等についてでありますが、詳細は会議録によって御承知願うことといたします。
質疑を終了、別に討論もなく、採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/14
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015・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/15
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016・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、地方税法の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。永山自治大臣。
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/16
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017・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 地方税法の一部を改正する法律案について、その趣旨と内容の概略を御説明申し上げます。
明年度の地方税制の改正にあたりましては、住民負担の現状と地方財政の実情とを考慮して、個人の住民税、個人の事業税等について軽減するとともに、固定資産税及び都市計画税の負担の調整等をはかることを中心として、所要の改正を行なうこととしたのであります。
次に、以下順を追って、その概要について御説明申し上げます。
第一は、道府県民税及び市町村民税についてであります。まず、所得割につきましては、基礎控除及び扶養控除をそれぞれ一万円、専従者控除を青色申告者につき二万円、白色申告者につき一万円引き上げるとともに、配偶者控除を創設して八万円の控除を行なうこととしました。これに伴い、道府県民税所得割りの税額控除の特例は廃止することとしております。
なお、退職所得については、他の所得と区分し、退職時に課税することといたしました。
次に、法人税割りにつきましては、法人税の税率の引き下げによる減収を回避するため、税率を調整することといたしました。
第二は、事業税についてであります。個人の事業税につきましては、事業主控除を一万円、専従者控除を青色申告者につき二万円、白色申告者につき一万円引き上げることといたしました。
第三は、娯楽施設利用税についてであります。ゴルフ場の標準税率を六百円に引き上げるとともに、その減収入額の六分の一をゴルフ場所在市町村に交付することといたしました。
第四は、料理飲食等消費税についてであります。免税点を二割引き上げるとともに、旅館及び飲食店その他これに類する場所の一定の奉仕料は、課税標準から控除することといたしました。
第五は、固定資産税についてであります。土地に対する税負担の均衡化を漸進的に確保するため、宅地等については、昭和四十一年度から所要の調整措置を講ずることといたし、農地については、現行の据え置き措置を当分の間延長することといたしました。
また、土地の免税点を引き上げるほか、土地にかかる昭和四十二年度の固定資産税の評価については、原則として昭和三十九年度の価格に据え置くことといたしました。
第六は、都市計画税についてであります。都市開発の促進に資するため、宅地等については、昭和四十一年度から三年度間所要の調整措置を講ずることといたし、農地については、現行の据え置き措置を当分の間延長することといたしました。
以上のほか、不動産取得税、鉱区税、電気ガス税等について軽減合理化をはかるとともに、所要の規定の整備を行なって一おります。
以上の地方税制の改正に伴い、昭和四十一年度におきましては、二百五十七億円の減収となり、平年度におきましては、五百十五億円の減収となるのであります。
以上が地方税法の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/17
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018・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。加瀬完君。
〔加瀬完君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/18
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019・加瀬完
○加瀬完君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案をされました地方税法改正案に対しまして、質問をいたします。
質問の第一点は、地方税の前提をなす地方財政構造の現状についてであります。
昭和四十一年度の財政計画によりますと、地方財政は極度に悪化、数年一五%も伸び続けておりました地方税収は五・三%にとどまり、また、二・五%引き上げられました交付税も、実質の伸びは三百三十五億円で、好況時の二分の一にしかすぎず、全体といたしまして二千七百八十億円の財源不足となり、結局はこの補てんを大幅な地方債の増額でまかなう、このような構想のようでございます。そこで、何ゆえにこのように地方財政が悪化をいたしたのか、この点をあらためて政府に尋ねたいのであります。
その一は、まず自治大臣に伺います。昭和三十八年度決算によりますと、政府の補助事業は、大都市では一八%から二四・六%に、町村では一三・四%から二三・六%と、大幅に増加をいたしております。ところが、地方団体が直接住民サービスとして行ないます単独事業は、大都市では五四・二%から一九・三%に、町村は三二・六%から一〇・二%にと、前年度に比べまして増加率が大幅に減退をいたしております。四十一年度財政計画でも、公共事業は前年比九・五%と増加をさせております。すなわち、地方が勝手に仕事を拡げますために赤字を生ずるのではありませんで、国が地方に負担をかぶせる公共事業等の無制限な拡張が、地方をして負担にたえ切れない現状の因をなしているのであります。この点はお認めになりますか。
その二は、国の財政と地方財政におきまして、租税収入による負担割合の問題であります。ここ数年の国税の自然増収に比しまして、地方税の伸びは何%になっておりますか。今次の地方税の改正で、この貧弱税源の是正が行なわれておりますか。
その三は、義務的経費の支出についてであります。地方歳出上の義務的経費を、国が予算上増額を行ないますと、地方の負担増は、たとえば社会保障関係費では三〇%、公共事業では六〇%、失対等では五〇%の増とはなりませんか。また、これが給与改定や一般財源を窮屈にしている原因となってはおりませんか。このように、国の委任事務の費用のために、地方は赤字を生ましめられておるのでありまして、このような義務的経費の財源は当然国が責任を持つべきであります。大蔵、自治両大臣に、これらの問題が解決されておるかどうかを伺います。
その四は、大蔵大臣に伺います。地方財源を苦しめているものに給与改定があることは、われわれも認めます。しかし、人事院勧告というものは、本来が公務員の生活安定を目的に、給与と物価等のバランスをとることをたてまえにしているわけでありまして、年度途中でありましても、勧告の必要があれば当然勧告をしなければならない筋合いのものであります。問題は、途中で勧告された場合、これを解決する財政の解決がはかられているかどうかでございます。ところで、給与改定の場合、国の所要額に対しまして地方支出は一・五倍であります。この補てんを、いままで毎年、特例法等で場当たりの処理をしてきましたけれども、このたびの税制改正では、これの解決がはかられておりますか、伺います。
その五は、地方の超過負担の問題であります。今日の地方財政を困難にさせておりますものに超過負担がありますことは、どなたも御承知のとおりでございます。昭和四十一年度の超過負担見込み額は千二百億円といわれておりますが、間違いはございませんか。これが対策は、新しい財政計画あるいは税法の改正で解決をされておりますか、自治大臣に伺います。
その六は、公債の問題であります。四十一年度財政計画は、歳入のしぼみにもかかわらず、地方債を七七・六%も伸ばし、しかも、これを公共事業費の拡大に充てております。前年に比べますと、公募で千七十億円、縁故債で千六百億円の増であります。しかも、新年度は国債の発行があり、その公募分は七千億円といわれているわけですので、公債の市場消化分は四十年度に比して一兆円以上の増加となります。この中で、地方債が確実に消化ができますか。消化不可能な場合は、その財源の補てんをいかなる方法で処理をされますか。ことしはこれで補うといたしましても、四十二年以降の不足財源を何に求めますか。しかも、公債費の適正規模は一〇%といわれております。一五%は危険だといわれているのでありますが、危険線を突破する団体が数多く出るわけでございます。四十二年以降の財政見通しについてお答えをいただきます。
その七は、租税特別措置等の取り扱いについて、総理、大蔵両大臣にお答えを願います。租税特別措置の地方税減収分は五百七十七億円、地方税法の非課税分は六百九十七億円、合計千二百七十四億円と推定をされます。なぜ地方税へのはね返り分だけでも、この際、遮断措置をとらないのでありますか。個人の場合でありますれば、所得税の減税分が地方税に影響しないために遮断措置をとっております。現在の地方財政の窮迫で、公債という借金に依存をしなければやっていけないときに、当然取れるものを免税させねばならない理由はどこにありますか。政府は、かかる地方団体の窮乏のときにおきましても、住民福祉をやめ、しかも、住民負担の増長となりましても、企業資本への奉仕をなぜしなければならないのでありますか、その理由を伺います。
質問の第二点は、今次改正の具体的問題についてであります。
その一は、住民税の最低賦課額であります。大蔵省は、標準家族の最低生計費を昭和四十年五十八万六百九十八円と押えまして、これに対応いたしまして、所得税の最低賦課額を六十一万三千四百二十一円といたしております。これにも種々異論のあるところでありますが、しかし、一応これで押えましても、住民税の最低賦課額は明年度でも四十二万三千十六円であります。現行法では、住民税は、標準生計費をさきましても納付をさせなければならない仕組みになっております。加えまして、この低所得層は、保険税の増加分と府県民税の制限撤廃分が加算をされてまいりますので、表向きは減税ということでございますが、実質には、はるかに増税となってまいるのでございます。地方税だけは、生計費をさきましても取りやすいところから取る、こういうやり方は、前述の企業資本の優遇策と比べまして、合理的といわれますか。この不合理はなぜ是正をされないのでありますか。
その二は、娯楽施設利用税についてであります。娯楽施設利用税よりは、ゴルフ税として担税能力のある者から徴収する方法をとるべきだと思うのであります。ゴルフ場は、他の施設に比べまして、固定資産税等の上がりも少なく、しかも、道路等、市町村に与える被害は大きいのであります。したがって、改正案のごとく、税収入額の六分の一を所在市町村に交付することでは問題の解決にはなりません。ゴルフ税によりまして税額を一人五百円引き上げますならば五十億、千円引き上げますならば平年度百億の増収が期待をされるのであります。以上の二点、大蔵、自治両大臣に伺います。
その三は、固定資産税について、総理、大蔵、経済企画庁長官に伺います。ただいまの御説明では、固定資産税の評価がえによる引き上げ額はたいして影響のないように御説明がなされておりますけれども、東京某区の三十九年度四万五千円の評価は、新評価では百七十七万円、赤羽一丁目の某くだもの店は、現在三万七千円が、新評価では八十万円、四十年六百円の固定資産税は、最終年は一万千二百円となります。十八倍であります。激変緩和早見表を見ましても、一割増のところは五年で二倍、十年で三倍、二割増のところは五年で三倍、十年で七倍、三割増のところは五年で四・五倍、十年で一六・五倍になります。これは趣中で評価がえがないとしての計算であります。評価がえは当然三年ごとに行なわれるわけでありますので、五年で十倍、十年で三十倍というところも生ずるわけでございます。いま六百円の固定資産税でどうやら経営のやりくりがついておりました店が、十八倍の税にはね上がりまして、三十坪としても三十三万円になります。中小企業の場合、経営や生活に影響しないと言い切れますか。固定資産税を上げましても、中小企業者たち障りもなく、物価にもサービスにも影響をしないという保障がございますか。
また、地主の納税額が五倍、十倍と上がりますれば、地主は当然、この負担を、借家人、借地人にかけてまいりましょう。地代が上がりますれば、また家賃の上がることにもつながってまいります。固定資産税や地代が上がりますれば、地価にも響いてまいります。こういうイタチごっこを誘発させまして、政府の物価対策、地価対策に矛盾を来たしませんか、伺います。これは四十一年度のみの問題ではございません。将来にわたっての問題でございますので、将来の見通しの上に、地価または物価、あるいは生活についての影響を伺います。
さらに、周囲が繁華街になりますれば、単なる居住地でありましても、固定資産税は増徴をいたしますので、かりに百坪の宅地に住み、いまの固定資産税が坪六百円だったものが、評価が十倍になりますと、八年後には六千円になります。この人の年収が六十万とすると、この人は年収全部を固定資産税に取られるということになります。何もしないで、じっとしておりまして税金だけがふえる、これは不合理ではございませんか。実際に所得はふえませず、売却しない限り担税余裕のない者から税を取ることが、税の本則と認められますか。
次に、固定資産税の改正で、農山漁村地帯の現在の財源不足を補てんすることにはなりません。その結果は、やがて農地の評価がえにも迫られ、農地の評価がえに踏み切らざるを得ないことになりましょう。農地は据え置きといいますが、その「当分」というのは、いつまででございますか。こういう矛盾が非常にありますので、少なくも一年の猶予期間を置いて、このような税の性格上の不合理、あるいは徴収技術上の問題点等を、十二分に解明をして、その上に実施をすべきであろうと思うわけでございます。しかしながら、両党の申し合わせの事項によりまして、これらの問題点は政府において完全に解決をする責任を持つというのならば、この質問は取り消してもよろしゅうございます。
以上お伺いをいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/19
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020・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 地方財政は、最近の経済不況の結果、地方税、また同時に国税の収入減から、その交付税等も下がりまして、たいへん苦しい状態にあると思います。そこで、四十一年度は地方債を発行し、そうして公共事業をまかなっていく。一方で不況克服の政策にも協力をしておる。しかし、ただいま発行する程度の公債では、私は、今日の地方財政を危険にさらすものだと、かようには思いません。かつて、三十二年当時、問題になりましたときに比べましても、今回発行する額はさらに下回っておりますので、四十一年度はこの状況を十分見まして、また、経済が再建されればこの地方税も入ってまいりますから、この経済復興、不況克服、これにまず第一目標を置きたい、かように思っております。また、四十二年度以降におきましても、本年度程度の公債を発行するならば、これは地方財政をこれまた圧迫するものだと、かようには私は考えておりません。非常に長期にわたってこれの償還等に困難を来たす、こういうような時期は当分はまいらないと私は思いますが、もちろん、それらの点につきましても、加瀬君が御指摘になりましたように、十分注意していかなければならないことでございます。ただ大観的に申すと、ただいまの程度なら圧迫がないだろう、かように思います。
そこで、お尋ねになりました租税特別措置、これについてその整理等をこの際考えてはどうか、これはたいへん時宜を得た御提案だと思います。税制調査会におきましても、さような方針で、この租税特別措置については絶えず検討を続けております。今後とも、そういう意味の整理方法について税制調査会が検討を続けてまいりますから、その答申の結果を待ちまして善処したいと、かように考えております。
次に、固定資産税の問題であります。固定資産税の問題は、ただいまお話のありましたように、衆議院におきまして問題が起こり、同時にまた、参議院におきましても、たいへん関心を示しておられる問題でございます。政府も、これらの問題については、まず第一に、国会の審議、これに十分審議を尽くしていただいて、そうして事態を納得のいく方法で解決したい、かように実は考えております。しかして、ただいまもお話のありましたように、この固定資産税——農地は別でありますが、農地は別にいたしましても、いわゆる土地の最近の値上がり等から見まして、在来の固定資産税をそのまま維持していくことは実情に合わない。これは税制調査会も、三年前から検討の結果、さような結論を出しておるのであります。したがいまして、私どもも、固定資産税を改正の方向——実情に合うような方向でどうして結論を出さなければならない、このことは考えます。しかし、最近の土地の値上がりは、たいへん高騰、暴騰いたしております、十倍にも、あるいは二十倍にもなっておる。そういうことで、その評価に直ちに合わして固定資産税を徴収いたしますと、それこそ国民生活を圧迫することにもなる、かように思います。この評価額、これに応じた税を取るといたしましても、いわゆる激変はさせない。税は激変はさせない。そこで激変緩和のいろいろの措置をとっておる。だから長期的な十年というような計画で、実情に合うような徴収をしようというのが本来の骨子であります。この点は加瀬君も御承知のとおりだと思います。このことが必要であり、また、税負担の公平という原則から見ましても、やはり非常に資産がふえた者、そういう者が税を負担することは、これは当然だと思いますが、大事なことは、激変を緩和するという措置を十分徹底しなければならないと思います。
また、ただいまお話になりましたように、土地の固定資産税を上げれば、地主なぞはそういうものを土地の価格に転嫁する、それでは低物価政策をとっている政府の施策にも反するだろう。かような御指摘でありますが、これはまあどちらが先になるか、議論があるところでありますが、私は、現在のような固定資産税の制度をとっておると、土地の投機的な所有というものがだんだんふえてくる。土地はとにかく持っておればどんどん上がるのだ、こういう意味で、その土地を投機的に所有する、保有すると、こういう弊害も出てくるのであります。まあ、いずれにいたしましても、実情に合うということ、これが最も大事なことだし、また税はどこまでも公平の原則であり、また負担力のあるものが納めるということでなければならないと、かように私は思うので、今回の改正を、ぜひとも衆参両院におきましても、与野党の間におきまして、十分御審議をいただきまして、今回成立させたいものだと、かように考えております。
また、住民税と所得税との割合から見て、住民税は低所得層に対してもかかってくる、これはどうも不都合だ、かような意味かと思うような御非難の御発言がございましたけれども、これは税制調査会におきましても、所得税と住民税はこれは性格が違うのだ、住民税とすれば、地域の利益のためにできるだけ多数の方々が、地域住民の負担において、分任において仕事をしていこうというたてまえのように考えておりますので、これは所得税とは違うのだ。しかし、性格は違うことは理解されても、住民税が高いことは因るのだ、かようなお話だと思いますので、今後とも住民税のあるべき形につきましては、私どもも続いて検討してまいるつもりでございます。
その他の点につきましては、大蔵、自治両大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/20
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021・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 単独事業の伸び率は、昨年度とほぼ横ばいでございまして、一五・五%でございます。公共事業の拡大によりましても、やはり地方財源の占める関係は一四・九%でございますので、この伸び率が必ずしも不適当であるとは考えないのでございます。
なお、地方税の伸び率は四十年と四十一年度は五・三%でございますが、本年は政府も大幅な減税をいたし、また地方税も減税するというような政策をとりましたので、その伸び率が低いことは、またやむを得ない問題であると考えるのであります。
さらに超過負担の関係でございますが、これは国の補助職員に対しましては手当てをし、さらに学校その他の施設に関する点の単価の問題も是正をいたしましたので、三百三十億の超過負担を解消をいたしております。もちろん、千二百億円と推定されておりますので、不足でございますから、将来この超過負担の解消には全力をあげるのでございますが、しかし、税の再配分等の処置をもちまして、抜本的な解決へいくことが必要であると考えるのでございます。
なお、公債費の問題につきましては、本年度は六%の比率でございますが、しかし国民の所得が伸びてまいりますので、将来これが三千億の、本年と同じような公債を発行いたしましても、所得の伸びを一〇%に見ましたときにおきましては、大体当分七%の平均になりますので、この程度の公債費では地方財政を圧迫することにはならないと考えております。なお、個々の団体で災害が多くあって、公債費が多くなっておる点については、交付税等の措置をいたす。その他の問題については、再建整備の措置等でこれが危機を脱するように指導をいたしておる次第でございます。
ゴルフ税におきましては、本年は二百円引き上げまして、そのうちの百円を関係市町村へ交付することにいたしたのでございますが、これは他の娯楽施設の利用税との関係もございまするので、税体系から見て、これだけを引き離して税を加重するということは適当でないと考えるのであります。今日の状態から見て、この程度の引き上げが妥当であると考えておるのでございます。
なお、農地につきましては、当分の間は据え置くというのでございます。四十二年度は評価額の改定期でございますけれども、これはやらないということを今度の法律案で出しておるのでございます。その次の改定期は昭和四十五年度でございます。そのときになって検討をする時期であると考えるのでございますが、農地は一般にさほど値上がりをいたしておりません。したがいまして、同時に農地の関係は重大でございますので、事情をよく勘案いたしまして、十分ひとつ国民の意思に沿うたような処置をいたす考えでございます。当分はやらないということでございます。
なお、事例で出されました、四万円の土地を持っている人が、今度固定資産税が上がる場合には、その人が何にもせずにおれば、それは税の値上がりというものが影響するのでございましょうけれども、かりに四万円の百坪持っておるとすれば、そうすると四百万円、十倍になれば四千万円、四千万円の土地を持っている人が何にもせずに遊んでおるということはないと思う。私は必ずその人は相当の収入があると考えておるのでございまして、この点については委員会で十分ひとつお説を拝聴いたしたいと考えて、御答弁をいたすつもりでございます。
その他の関係等は、残りがございましたら、委員会でひとつ十分答弁をいたしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/21
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022・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
第一に給与の問題でございまするが、公務員給与は、これは人事院勧告に基づきまして政府がこれを決定する、その運営といたしまして、四月調査、八月勧告、かように相なっております。その結果、年度の途中で勧告が行なわれ、それに対して政府は処置をしなければならぬ、さようなことから、中央におきましても、地方におきましても、財源対策として従来非常に苦慮をいたすのであります。それを何とか時期の問題を改正することはできないかというので、ずっと検討を続けてきております。今朝も関係閣僚が集まりまして検討いたしたのでありまするが、どうもただいまのところ名案がない。昭和四十一年度におきましては、さしあたりいままでの方式でやろう、それ以外はない、こういう結論に到達したのでありまするが、それに伴いまする地方財政の問題、この問題は、まあ、そのときの状況に応じまして、適当に善処をいたしていきたいと、かように存じております。
それから、第二点は、超過負担の問題でありまするが、千二百億円という超過負担はそのとおりか、こういうお話でございまするが、千二百億円というのは、これは地方団体におきまして計算したものであります。超過負担につきましては、その原因が国にもあります。また、地方側にもあるのであります。そういうようなところから、適正な超過負担額というのが一体幾らになるかということは、判定きわめて困難な問題でありますが、さしあたり、昭和四十一年度予算におきましては、そのうち三百三十億円を解消する。その解消する事業、問題点は、知事会から要請がありました学校建築その他の八項目でございます。これはまあ非常に具体的に、的確に解消をいたすことに相なった次第でございます。
それから、地方財政の問題につきましては、申し上げるまでもなく、昭和二十八、九年ごろ、非常に窮迫いたしまして、再建整備法がとられ、三十一年度からこれが実施され、その結果が非常によかった。ほとんどまあ地方財政の再建計画ができ上がったと、こう見たのでありまするが、しかし、昭和三十九年度、経済の変転に伴いまして、また地方財政も悪化の傾向をたどっておるのでありますが、私は、今日の地方財政の窮迫の最大の根源は、景気変動にある、国においてもそうでありまするが。したがいまして、今回、国におきましては、景気を回復をする、同時に、社会資本を充実する、そういうたてまえから、多額の公債、七千三百億円の公債を発行するということといたした次第であります。地方財政におきましても、財政の規模は、それに伴って拡大をされたのでありまするが、地方財政のほうでは、あまり借金をするというようなことは好ましくない、さような考えのもとに、昭和四十年度、つまり今年度におきましては、公営企業を含めまして、総額五千五百億ぐらいの借金をいたしております。それを、国のほうでは七千三百億円の借金をするのでありまするが、六千七百億円の程度にとどめる。したがって、公債費の負担も、ただいま自治大臣が申し上げましたように、大体七%の水準を今後維持するように努力していくという方針で臨んでおるわけであります。なお、その消化につきましては、これは国債、地方債、政保債、事業債、さらに金融債、これらを含めまして、計画的にこれを消化してまいる。大体その目算も得ておる次第でございます。
特別措置を廃止したらというようなお話でございまするが、本席でしばしばそういうことを聞くのであります。今日、特別措置が、所得税におきまして二千二百億円余であります。そのうち最大のものは、貯蓄奨励的な意味を持つものでありまして、これが千四百億以上あります。その次に、中小企業に対する特別措置であります、四百億円。そのほか、三百億円が、一般の企業の体質改善、輸出の奨励等に対する措置であります。これが交付税の減少にはね返るわけでございまするが、しかし、さような特別措置の内容を考えまするとき、これはひとしく地方住民に好影響する問題でありまするので、そうそう特別措置といって、地方財政の見地から排撃するというのは当たらないと思いまするが、これはどこまでも特別措置でありまするから、経済の動きの状況に従いまして、これが改廃等を考えていきたい、かように考えておる次第でございます。
なお、課税最低限の問題につきまして、国が六十一万円、また、平年度では六十三万円でありまするが、それに対して、地方税が四十二万円というのは、これは過酷ではないかというお話でございますが、税制調査会におきましても、所得税と住民税は違う、住民税のほうは、まあ地域住民という立場が相当強調されなければならないというふうに印して、なお結論として、所得税の最低限と住民税の最低限が違うということはやむを得ない、こういうふうに申しております。私どもは、四十二万円というのは、いかにもまだ低いと考えておりますが、今後とも努力をいたして減税をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
娯楽施設利用税につきましては、ただいま自治大臣から申し上げたとおりでございます。
固定資産税の問題につきましては、評価率につきまして、これが漸進的にいくようにという措置をとっておるわけでございまするが、特に、千分の百十四という税率、これが漸進的に一、二%というふうなことでございますので、さして住民負担に関係するようなこともあるまい、ことに今回は、これと並行いたしまして、三千六百億円にのぼる大減税が行なわれている、そういうようなこともあわせ考えていただきますれば、さして御心配のこともなかろうかと存じます。また、担税力、つまりこれは、だまっていても評価額が上がる、土地を売らなければ固定資産税が納められないというような事態があるのじゃないかというお話でありまするが、相続税にいたしましても、固定資産税にいたしましても、ひとしくこれは資産税なんであります。資産税というのはそういう性格のものである。社会党においても、これは御理解をもって御協力をいただける改正である、さように考える次第であります。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/22
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023・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) お答えいたします。
物価問題を扱っておりまして一番大きな問題の一つは、地価が上がっていくという問題でございます。これがやはり将来の物価問題に非常に大きな影響がある。今回の固定資産税の改正は、一方におきましては、地方財源の充足という点に眼目が置かれておりますけれども、他面、やはり土地あるいは家屋等に課税いたしますことは、それを将来にわたって評価額を上げて、そして取ってまいりますということは、やはり土地の価格を押える一つだと思います。むろん、土地の価格を将来押えていくためには、土地の造成であるとか、あるいは高度利用であるとかいうようなものも、当然考えてまいらなければならないけれども、土地に対する税制、この問題は、税をかけたから地価が上がるのだというお考えもございます。しかし、税をかけることによって、将来それの著しい騰貴を押えていくという見解もとられるわけでございます。今日までのような非常な地価の暴騰が起こってきたということが、加瀬さんの言われますように、将来引き続いて起こっていっては、なかなか物価問題というのは解決しませんし、物価問題のみならず、日本の経済は非常に困難な立場に入ると思います。したがって、あらゆる面から地価の高騰を押えていくということが必要でございまして、その意味から言えば、やはり税もあわせて併用していくことが望ましいことでございまして、私は、物価対策上、決してこれが悪影響を将来にわたって起こすものではないと考えております。
また、当面の問題といたしましては、新評価に対して、漸次これを狭めていくという立場に立って案がつくられておりますので、その点においては、御指摘のような非常に大きな影響は、大蔵大臣も言われましたように、ないと思います。
また、消費生活の上で、これは統計的数字を申し上げますと、また、いかがかと思いますけれども、われわれ日本経済全体を扱っている者として統計数字を見ますれば、総理府の家計調査、全都市全世帯の消費者支出金額平均が五万一千三百二十八円、その中で、都市計画税と固定資産税が〇・〇八三という割合になっております。以上のようなことでございますから、今回の固定資産税には、われわれも賛成をいたす次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/23
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024・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は、終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
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025・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第三、国務大臣の報告に関する件(沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十年度年次報告及び昭和四十一年度沿岸漁業等の施策について)。
農林大臣から発言を求められております。発言を許します。坂田農林大臣。
〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/25
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026・坂田英一
○国務大臣(坂田英一君) 先般国会に提出いたしました「昭和四十年度漁業の動向等に関する年次報告」及び「昭和四十一年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」につきまして、その概要を御説明いたします。
これらの報告及び文書は、沿岸漁業等振興法第七条の規定に基づいて、政府が毎年国会に提出いたすものであります。
まず、「昭和四十年度漁業の動向等に関する年次報告」について申し上げます。この年次報告は、「第一部漁業の動向に関する報告書」と「第二部沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」とに分かれております。
第一部の「漁業の動向に関する報告書」におきましては、沿岸漁業及び中小漁業の動向に焦点を置き、昭和三十九年を中心として漁業の動向を明らかにいたしております。
その概要を申し上げます。
わが国の漁業生産は、昭和三十一年以降、逐年増大の一途をたどってまいりましたが、三十八年において、わずかながら減少に転じ、三十九年にも、サンマ及びイカの不漁を主因として引き続き減少いたしました。このような漁況変動による漁業生産の停滞が見られる反面、国民所得水準の上昇に伴い水産物に対する需要は増大し、その価格も上昇を見せ、また、輸入も、その量は国内供給量の一割足らずでありますが、増加しております。もともと漁業生産は、自然的条件の変動に左右される面が多いのでありますが、近時、新漁場開発も漸次困難となっており、また、水産資源に関する国際規制が強化されるなど、水産物需要に応ずる漁業生産の発展には、きわめてきびしいものがあると申さねばなりません。
漁業の経営件数と就業者数について見ますと、これらはともに、引き続き減少しており、特に中小漁業の経営体数と雇用者数の減少が目立っております。また、就業者の年齢構成も高齢化しており、若年労働力の不足が見られるのであります。しかしながら、沿岸漁業、中小漁業のいずれにおいても、比較的上層の経営が増加しているのに対し、下層の経営は減少する傾向も見られるのであります。
次に、沿岸漁家の経営を見てまいりますと、その所得水準は、近年着実に上昇しております。特に昭和三十九年には、ノリの豊作に加えて、魚価の上昇もあり、その所得は大幅に上昇いたしました。しかしながら、その一人当たり額を都市勤労者世帯に比べると、いまだ低位にあるのみならず、豊凶の影響を受けて、必ずしも安定的であるといえないという問題を残しております。また、沿岸漁家の生活水準につきましても、その家計費の額や漁村の生活環境等を見てまいりますと、都市勤労者との格差は依然として大きいと考えられるのであります。
また、中小漁業の経営におきましては、漁業収入が伸び悩んでいるのに対し、物的経費や人件費の支出が増大しているのみならず、自己資本比率が低下し、支払い利子の負担が増加するなど、収益性を低める要因が見られるのであります。一方就業者の賃金水準はかなり上昇しておりますが、労働条件及び労働環境にはなお改善の余地が大きいと考えられるのであります。
以上は、第一部の概要であります。
次に、第二部の「沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」について申し上げます。これは、昭和三十九年度を中心とし、四十年度にも触れつつ、政府が沿岸漁業等について講じた施策を、おおむね、沿岸漁業等振興法第三条の項目に従って記述したものであります。
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最後に、「昭和四十一年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」について申し上げます。
この文書は、年次報告にかかる漁業の動向を考慮して、昭和四十一年度において政府が沿岸漁業等について講じようとする施策を明らかにしたものであります。
最近における漁業の動向は、ただいま御説明したとおりでありますが、政府といたしましては、このような動向を考慮しつつ、沿岸漁業等振興法の定めるところに従い、沿岸漁業及び中小漁業に関する施策を着実に具体化することを基本的態度とし、昭和四十一年度においては、水産資源の維持増大、漁業生産基盤の整備、沿岸漁業と中小漁業の近代化、水産物の流通合理化及び災害対策の充実を重点に、諸施策の推進をはかることといたしておるのであります。
この文書におきましては、これらの昭和四十一年度において講じようとする諸施策を、おおむね、沿岸漁業等振興法第三条の項目の分類に従い、沿岸漁業及び中小漁業に関する施策全般につき、農林省所管事項にとどまらず、他省所管事項をも含めて記述いたしております。
以上、「昭和四十年度漁業の動向等に関する年次報告」及び「昭和四十一年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」について、その概要を御説明いたした次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/26
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027・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。川村清一君。
〔川村清一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/27
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028・川村清一
○川村清一君 私は、日本社会党を代表し、ただいま御報告になりました、いわゆる漁業白書について、佐藤総理並びに農林大臣に対し若干の質問をいたします。
この白書を一読して端的に感ずることを率直に申し上げるならば、まさに優等生の作文であります。政府当局に都合の悪いところは、意識的に巧みに避けながらも、一般的にはまんべんなく、そつなく記述されておりますが、何が重点なのか、胸にこたえるものは何一つありません。沿振法により義務づけられておるため、義務的作業として、形式的に報告書をまとめたにすぎないとのそしりを免れることはできないと思うのであります。少なくとも、政府の提出する白書には、政策がなければ無意味であります。現在、沿岸漁民の置かれている実態を正しく認識し、その実態を踏まえて、沿振法の目的たる沿岸漁業等の生産性を向上し、他産業との格差是正のための強力な施策を、重点的に志向する政策を、国民の前に明らかにするところに、漁業白書の意義があります。
わが国の漁業は、いまや、大きな曲がりかどにきております。国際的には、かつては水産王国の名をほしいままにし、世界の海に雄飛していた日本漁業も、いまや、漁獲高においてはペルーに王座を奪われ、続いて、ソ連にも追いつかれようとしておりますし、韓国その他、後進国の漁業発展も目ざましいものであります。これに対し、わが国の遠洋漁業は、世界漁場においてきびしい規制を受けて、しりつぼみの状態になっております。国内漁業では、沿岸漁業、中小漁業と、大資本漁業との二重構造は、一向に解消せず、格差はますます拡大しております。独占資本の収奪支配の中で、沿岸、中小漁業は縮小の一途をたどっておりますし、さらには、沿岸と中小漁業相互間の矛盾も逐次増大しているのが実情であります。このような情勢の中で、将来日本の漁業はどうなるのか、沿岸漁民は漁業で生きていけるのか、中小漁業の経営はどうあるべきか、漁業者は進路を求めて迷っております。これらの漁業者に対し、長期的展望に立って希望を与え、進むべき方向を的確に指示するものが漁業白書であろうと思うのであります。しかるに、本白書は、現象面をただ追って、統計的な数字を羅列しているにすぎないし、講じたおもな施策は、ただ単に予算執行の経過を平板的に報告したものであります。ここには、特に深く心を配って分析究明した問題もなければ、問題解決のために最大の努力を傾注したあとを認め得るものは、何一つなく、しいてあげれば、日韓漁業協定の締結だけであります。要するに、本白書は、漁業政策不在の白書であり、国民に何らの示唆を与えるものではありません。一体、政府は、どんなおつもりで、この白書を国会に御提出になられたのか、総理の御見解をまずお尋ねする次第であります。
質問の第二点として、わが国経済の異常な高度発展の過程で、漁業は、農業とともに、一方的に犠牲をしいられ、他産業との格差を拡大されてまいりました。漁業生産は三十七年をピークに連続減産を続け、三十九年は、前年より沿岸では一一%、中小漁業では五・八%減少しております。生産の低下を需要増による魚価の上昇により若干カバーしておりますが、このことは決して恒常的なものではなく、漁業経営の安定を物語っているものではありません。沿岸、中小漁業の前途はきわめて憂慮にたえないものがあります。したがって、わが国漁業構造の中で九割五分を占める沿岸漁業経営体は年々減少し続け、中小漁業もまた同じ方向に推移しております。このことと相関的に漁業就業者数も激減しておりますことは当然の帰結であり、労働力の流出は、はなはだしく、特に若年労働力の流出に大きく傾斜しております。このため沿岸漁村の衰微は、はなはだしく、ますます魅力のない漁村となり、青年の離村に拍車をかけているのが漁村の実態であります。沿岸、中小の困窮をよそに、大資本漁業のみは発展を続け、階層分化はますます激しくなっております。白書は、その他の漁業として生産面にのみ若干触れておりますが、それによると、大資本漁業は、三十九年度に、沿岸、中小とは逆に、生産量は一二・五%増加を見ているのであります。生産量の増加は一二・五%でありますが、その収益率はばく大であります。北洋母船式サケ・マス漁業に一例をとりますならば、母船と独航船の関係において、独占資本は、買魚価格で中小を収奪し、経営面、金融面で支配し、市場価格形成の場においてもそのどん欲性を拡大しているのであります。いまや独占資本は、沿岸、中小漁業のあらゆる分野で、生産、加工、流通の各過程を通じて、収奪をほしいままにしていると言っても決して過言ではないのであります。しかるに白書は、この点の分析を故意に避けておりますが、この問題が今日のわが国漁業構造上の最大の問題であります。この問題の究明なくして沿岸漁業の抜本的振興対策はあり得ないと確信しておりますが、これに対する総理の御見解をお伺いしたいと存じます。
さらに、この際、総理は長期的展望に立って、わが国民経済の中における漁業の位置づけを明らかにしていただきたいと存じます。
質問の第三は、世界の沿岸国は、漁業先進国であるわが国漁業の進出に対し、いずれもきびしい規制措置をもって抑制せんとしております。後進国の漁業発展への意欲と漁獲努力にのみ専念し、資源の維持開発を無視した、わが国漁業に対する不信感は、わが国遠洋漁業に対し、各国沿岸からの締め出しをはかっており、わが国が領海三海里と公海自由の原則を主張しても、相手方がなかなか容認しないのが実情であります。加えて、日韓漁業協定で、名目は専管水域でありますが、実質的には領海十二海里を認めたことから、さっそくニュージーランドが韓国同様に専管水域十二海里を主張して紛争を起こしており、かかる紛争は今後ともその他の国々との間にも惹起する可能性があります。世界の沿岸国で領海三海里を主張する国は少なく、大半は六海里あるいは十二海里を宣言しているのが実情であり、日本の主張は国際的に通らなくなってきております。かかる情勢の中で、わが国はあくまでも領海三海里を主張し続ける方針なのか、明らかにしていただきたいと存じます。
海洋に関する国際条約として、すでに、領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約、大陸だなに関する条約が発効しておりますのに、世界一流の漁業国であるわが国が、いまだこれに加盟しておりませんが、これはいかなる理由によるものか、理解ができません。今国会に批准案件として提案される御意思がないか、お伺いいたします。要するに、国際漁業は、国際信義と協調に立脚し、人類共同の資源を保護育成して、永続的に漁業が継続されるよう、世界的視野からわが国遠洋漁業の位置づけをすべきだと思いますが、これに対する総理の御見解を承りたいと存じます。
次に、農林大臣にお尋ねいたします。農林大臣には、白書から摘出した具体的な問題についてお尋ねいたしますので、御答弁も、具体的に明確にお願いいたします。
質問の第一点は、沿岸構造改善事業に対する成果と欠陥が分析されていないことについてであります。沿岸漁業の生産は、漁船漁業については減少し続け、ノリ漁業につきましても、一昨年は凶漁、昨年は豊漁でありましたが、本年はまた暖冬異変の関係で大不作といわれ、関係漁民はその対策に天災融資法の適用を願って、陳情運動を行なっております。このように、その生産動向はきわめて不安定であります。沿岸漁業の振興をはかる目的をもって、多額の国費、地方費を投入し、あるいは地元漁民も経費を負担して、沿岸構造改善事業を施行しているのでありますが、その効果が漁業生産の面にいまだに顕在化されないことは納得できません。白書は何ゆえこの点を明らかにしていないのか、お答え願います。
質問の第二点は、資源についてであります。わが国漁業の発展過程が科学的資源論を基礎に置かない生産第一主義の漁獲操業として進められてきた関係上、諸外国に比べ、資漁研究は非常に立ちおくれていることは、何人も認めていることであります。このことは、毎年の日ソ漁業委員会の論議の焦点となり、日本の主張が相手方を納得させることができないで推移してきたことでも明らかであります。白書においても、生産の減産が、イカ、サンマの海況の変化による不漁が原因であると軽く片づけておりますが、はたして短期的な海況の変化が魚群形成を阻止したのか、乱獲による資源量の減少なのか、魚道変化があったのか、もっと突っ込んだ分析解明がなされなければならない問題であります。資源問題の分析には、困難が伴い、長期的な努力を必要としますが、そうであればあるほど、国は試験研究に本腰を入れ、さっそく取り組むべきであり、科学的資源論に基づいた強力な水質汚濁対策や恒久的な生産対策が打ち立てられなければならないと思いますが、これに対する御見解をお伺いいたします。
質問の第三点は、水産物の需給関係と価格の問題についてであります。白書は、生産量は減少したが、旺盛な需要によって価格は上昇して、漁家所得は前年より三%増加したことを報告しております。水産物の価格が上がり、漁家所得が向上したことは、漁民にとっては喜ぶべきことではありますが、これは政策的になされたことではなく、需要が増加したことによる自然的現象であります。したがって、恒常的に安定したものではありません。生産減を価格が補うという経営は不安定であります。白書は、この点、深く分析すべきであります。資本主義機構の中では、価格が需給関係で形成されることは確かであるが、少なくなれば何でも高くなるとは限らないのであります。消費動向を予測し、需要の長期的見通しに立って生産の計画運営をすべきであり、このことによって漁家経済の安定が期せられるのであります。水産物の輸入は、対前年比五一%増で、三十五年当時の六倍近くに激増をしております。白書は、この点、需要の増大と国内生産の停滞によるものと言っておりますが、これこそ全く、輸入に対する定見を欠いたものであり、場当たり行政の最たるものであります。国民の健康を守る動物性たん白質資源である水産物の必要需要量が推定され、これにこたえる国内自給率の計算を基礎に輸入量をきめていく分析がなされない限り、長期的な政策を立て得ようはずもなく、ソ連、韓国等から多獲性大衆魚の輸入におびえている沿岸漁民を安心させることはできないと思うのでありますが、これに対する御見解をお尋ねする次第です。
質問の第四点は、漁船漁業の経営と漁業調整の問題についてであります。白書は、沿岸漁家層を分析して、ミトンから五トン層の経営が、漁業所得の生産性が比較的高く、家族労働力を中心に経営も集約的に営まれているので、この層の経営体数が最も伸び、沿岸漁船漁業の中核として今後とも発展が期待されると分析評価しております。一方、中小漁業につきましては、十トンから三十トン層が著しく減少していることを明らかにしておりますが、従来、この層は、沿岸漁業の中心的存在でもあり、沿岸経済に対する寄与率は非常に高かったのであります。しかし、近年、資源の枯渇によって企業採算性が低落したため激減したのであります。このような情勢の中で、政府は、今後沿岸の漁船漁業に対し、どのような方針で指導なされるか、そのお考えを明らかにしていただきたいと存じます。
さらに、続いて、二百トンから五百トン層への大型化が増加していることに対しは、何らかの施策が考慮されなければならないと思うのであります。このことは、資本装備の拡充と相まって、操業区の拡大と生産力の増大を促進はしてきたが、生産の伸びが順調に進まぬ限り、資本効率を低下させ、経営が行き詰まる危険性を多分に包蔵しております。このことが中小漁業の独占資本への系列化が激増する要因になっていると思考されます。大資本と中小漁業との関係の中で、この問題にどう対処していかれるか、明らかにしていただきたいと思います。
次に、白書は、漁業調整、漁業取り締まりについて相当詳しく報告しており、沿岸沖合いにおける底びき漁業については、厳重な取り締まりのもと、著しい効果をあげたと分析しておりますが、沿岸の実情は必ずしもさようにはなっておらないのであります。小型、中型機船底びきによる沿岸漁民に与える損害は、相も変わらず相当額にのぼり、両者の紛争は各地に頻発しております。底びき漁業は沿岸漁民の怨嗟の的になっているのが現実の姿であります。沿岸漁民は政府に対し、底びき網漁業の禁止区域の拡大、網目の規制、夜間操業の禁止、暴力的入り会いの徹底的取り締まり、違反漁船の許可取り消し等、強力な措置を講ずることを要望し、底びき漁業からの被害の絶滅と乱獲を防止し、資源の維持を期待し、願っているのであります。日韓漁業協定では、共同規制水域内の底びき漁業について強力な規制措置をとっておりますが、わが国沿岸においても当然規制措置を強めるべきであると思いますが、これに対する御見解をお伺いいたします。
最後に、北洋サケ・マス漁業の問題についてお尋ねいたします。本年度の漁獲量の決定をめぐって、現在モスクワにおいて日ソ漁業委員会が開かれ、種々論議されております。詳細につきましては、交渉のさなかでありますので、あえて私は避けたいと思いますが、報ぜられているところによれば、ソ連側の主張する規制措置はきわめてきびしいものがあり、特に本年はマスの不漁年であるということから、北緯四十五度以南、いわゆるB区域の出漁船の九割減船を要求していると言われております。これが事実であるとすれば、事態はまことに重大であります。B区域の出漁船はほとんどが沿岸零細漁民であり、船型も七トン以下の小型が多く、しかもその数は二千隻を上回っております。この漁業を禁止されますことは沿岸漁民の死活に関する問題であり、いまや関係漁民は異常な関心をもってモスクワ会議の成り行きを見守っております。政府はこの問題について、いかなる方針をもって対処せんとしているのか、御決意のほどを明らかにしていただきたいと存じます。
以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/28
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029・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 川村君にお答えいたします。
まず第一、漁業白書、これはもう毎年国会に提出するものでございますが、この中身が、ただいま言われますように、どうも政策的な、また長期的な展望に立っていない、こういう御批判であります。確かに私もさような点を感じます。申すまでもなく、お話にありましたように、かつての水産王国、世界第一の日本が、ただいまではその地位を守ることができなくなった。また、新たに各国とも漁業に進出してくる、あるいは国際的な規制も強まってきている。こういうことで、なかなか遠洋漁業もいろいろの制約を受ける。かように感じますので、やはり白書におきましても、沿岸漁業振興等についての特殊な政策を盛ることは当然でありますけれども、同時にまた、漁業のあり方等につきまして、長期的展望に立っての第二部、あるいは第三部と申しますか、そういう意味のものを皆さま方に報告するのがいいように思います。そういう意味でいろいろ政府も検討しております。また、各方面のお知恵も拝借いたしまして、ただいまの御要望に沿うように努力したい、かように思います。
第二の問題といたしまして、沿岸漁業、また中小企業と大資本の漁業との問題についてのお話であります。私が申すのもいかがかと思いますが、この漁業は、魚の種類あるいは漁場等によりまして、それぞれの適当な経営規模があるように考えるのであります。この適当な規模、それが守られる限りにおいては、大資本と中小漁業との間に競合の関係は起こらないはずだと、かように思いますが、しかし、最近の漁業の実態等を見ると——あるいは特に母船式漁業における独航船との関係などを見ますると、ただいま申し上げるように全然競合しないというわけじゃない。これは競合するが、しかし、むしろ協力関係においてこの問題を規律することのほうが望ましいのではないか。いわゆる競争の弊ばかりを考えるよりも、お互いに協力的関係においてこれを規律していく。そういう意味で、沿岸漁業についての特殊な振興方策は、もちろん資金等におきまして考えてまいりますが、ただいまの母船式漁業等においては、許認可の際にただいまの競合関係が起こらないように十分注意していくつもりであります。また、そういう意味で努力しなければ、この大資本に太刀打ちのできない中小企業だと、かように考えておりますので、特に許認可等の場合に十分考える、あるいはまた、その振興方策として金融等も特に注意するということでありたい、かように考えております。
次に、領海の問題についてのお尋ねがありました。領海の問題は、これは伝統的に大多数の国がただいまの三海里説をとっております。わが国もさような意味で三海里説をとっておりまして、これを変える考えはございません。しかし、特殊な国との間に専管漁業水域——領海とは違いますが、専管漁業水域というようなものを設定しておる例は御指摘のとおりであります。そういう点で、ニュージーランドも新しくこの十二海里専管水域を主張しているというのですが、これは外交交渉で十分目的を達するようにいたしたいと、かように考えております。
ジュネーヴにおける海洋法会議の決議についてのお尋ねでありますが、この決議が四つなされております。そのうち三つは、御指摘のとおりすでに発効しております。いまの領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約、この二つのものは、国家間の慣行を法文化した程度でありますので、これは別に加入する、あるいはこれを批准することについては問題はございません。したがいまして、この二つは政府も批准するような準備をしているわけであります。しかし、この国会には提案して御審議をいただくまでには、段取りが運んでおりません。この二つの問題は、ただいま申し上げるように問題はない。しかし、あと大陸だなに関する条約と、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約、この条約はまだ発効しておりませんけれども——大陸だなに関する条約は発効いたしております。これを批准するかどうかということは、わが国のように遠洋漁業が今日の漁業の中心をなしている、こういう場合にずいぶん利害関係がありますので、これは慎重を期していくつもりであります。十分検討いたしまして、そうして結論を出すということでありまして、まだ政府は態度をきめておりません。(「領海は何海里を主張するのか」と呼ぶ者あり)領海の話は、先ほど申しましたように三海里を主張する、これは変えない、かように思っております。重ねてお答えしておきます。
次に、漁業の問題は、沿岸漁業は別でありますが、ただいま申し上げるように、国際漁業ということに発展いたしておりますので、どうしても各国間で協調することが必要だし、また、国際的信義を守っていかなきゃならないし、また同時に、漁業資源の保存と同時にこれが利用、こういう観点に立ちまして、わが国の漁業を発展さしていく、こういうような基本的な考え方を持っております。あとは農林大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/29
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030・坂田英一
○国務大臣(坂田英一君) 川村議員にお答えいたします。
一つは、白書は構造改善事業の効果について触れてない、沿岸漁業等には大切なことであるので、その効果を分析し記述すべきであるが、どうか、この問題でございます。御指摘のように、構造改善事業は全く重要な事業でありまするので、その効果を分析して記述することが、私は必要であると存じておる。しかし、この事業の内容は、漁業生産基盤の整備を含み、将来において具体化する性格の事業を多く含んでおりまするので、その効果はいますぐこれを把握して記述しがたいという状態にありまするし、特に漁業生産が、御存じのとおり多種多様で、自然的条件に左右される面が多いので、なおさらのことでございます。よって今後、その効果の把握の方法等について検討を進めた上で、御趣旨に沿うように漸次進めてまいりたいという考えでございまして、その点については総理からお答え申しておるとおりでございます。
第二番目には、白書は水産資源に触れていないが、科学的な資源分析に基づいて恒久的な漁業施策を講ずべきでないか。不作になった、そのかわり値段が上がった、というような不安定なことによって利益を得るというようなことでは、だめではないか、こういう御質問でございます。それで政府は、調査研究を推進し、水産資源の実態の把握につとめるべきであります。現状でも幾多の調査研究の成果をあげておることは御存じのとおりでございまするが、なお今後にまつべき点が少なくないのでございます。資源の動向の把握にはなお長期の観察を必要とする事情にありまするので、年次報告において資源を総合的かつ具体的に記述するに至るには、まだ困難な面が非常に多いということであります。しかしながら、今後とも水産資源に関する調査研究を推進いたしまして、漁業施策を講ずるにあたっても、もちろん限られた部面ではありまするが、つとめて科学的に資源を活用してまいりたい、御指摘のとおりそういうふうに考えておる次第でございます。
それから第三番目に、沿岸漁業、中小漁業は、先ほど申しましたように、価格の上昇あるいはそれらによって経営が成り立つというようなこともあるが、大体需給関係をよく考え、生産計画を十分立てて、計画的に進めていかなければならぬじゃないかというような御質問であったように拝承いたしたのでございます。水産物の需要のほうは、これは非常に増加しておりまして、また、その内容も、多獲性魚よりも高級魚、塩乾魚よりも高次加工品の伸びが非常に高く、また、畜産の飼料用の需要が強調であるというようなことで、消費の内容などは非常に変化が見られることは御存じのとおりでありますが、水産物一般の需要については、ある程度見通しを立てておるのでございます。しかし、生産計画となりますると、わが国は魚種が多種でありまするほかに、漁況、海況等の自然条件に左右される面が多くて、生産計画の予想はきわめて困難であります。しかし、需要増加に対処し、漁業政策の充実をはかって——とにかく需要は、うんとふえるのでありまするので、その生産の維持増大にはでき得る限りの努力を払ってまいりたい、こういう所存でございます。
それから、政府は水産物の必要需要量を予測して、生産の面もさようであるが、輸入量についてもさようなことをもっと計画的に考えないと非常に困るのではないか。特に沿岸漁業において非常に困るという御質問でございますが、水産物の需要の増加に伴いまして輸入量は増加いたしておる。これは現在一割近くに達しております。今後の水産物需給を見るに、需要のほうは、食料用及び飼料用、ともに増大するのに対しまして、供給は、先ほど申したように、漁況変動、未開発漁場の減少、国際規制の強化等、漁業生産にとってきびしい環境下にあり、したがって、輸入の増加も考えられているというわけであります。この場合、輸入水産物と競合するおそれのある水産物がわが国の沿岸漁業者に生産されている場合において、これが一番沿岸漁業者にとって非常な不安でありますことは、言うまでもございませんので、現在は国内の需給状態を見て、そして輸入割り当て制度の活用等によっているのでありますが、なお、沿岸漁業等振興審議会において基本的な検討を行なっているのでございます。輸入量をどうきめるかについても、需要量の測定、次の漁期における生産量の予測等、むずかしい問題でありますが、同審議会においてもこれを取り上げて検討中であるわけでございます。
それから、漁船漁業経営と漁業調整についての問題として、政府は三ないし五トン層を中核漁家として育成するつもりであるか、その他、漁船漁業経営についての指導方針はどうか、こういう点について明らかにせよという御質問でございまするが、沿岸漁業等は、各地域により、それぞれ事情を異にするので、どの階層の漁船漁業を育成すべきであるかということは、これは一がいに言うことはできませんが、一般的には、主ないし五トンの階層にある漁船漁業が、家族労働を主体とした漁業の中で比較的生産性も高く、所得も多い階層であると言えまするので、これらの階層について相当考えておるのでありまするが、なお最近においては、五トンないし十トンの階層でも、漁船装備の向上によって、家族労働を主として生産性の高い経営も出てきておるという現状でございまするので、これらの点を考慮して進まなければならぬと考えております。また十トン−三十トン層は、沖合い漁業の中で経営規模も小さく、漁場の中で経営規模も小さく、操業上不利な点もあるが、小型機船底びき網漁業のように比較的安定しているものもあるわけでございます、御存じのとおり。政府としては、魚種、漁業条件等に適合した高い生産性及び所得を得られるような漁船漁業経営の育成に——かれこれ考えまして、それからの育成につとめていくことは言うまでもございません。
また、二百トンないし五百トンの大型化が進んでいるが、そのために中小企業が圧迫を受けるじゃないかという点については、総理からお答えいたしましたので省略いたしたいと思うのでありますが、なお一つ、つけ加えて申し上げたいことは、多額の資金を必要とするのでありまして、これらに対し農林漁業金融公庫及び農林中央金庫の資金を重点的にあっせんすることによって、中小企業者の漁船大型化に支障のないよう処置してまいるということで進んでまいりたいと思うのでございます。
また第五番目といたしまして、白書は底びき漁業についての取り締まりの効果をうたっておるが、実際は沿岸漁業との紛争が頻発しておる。そこで底びき漁業の規制をもっと強化すべきではないか、こういう御質問であります。もちろん、その点もあると思いまするが、ところによって、これは相当規制すべきところもあるし、また少し緩和したほうがいいというところもございます。たとえば北海道のごときはかなり規制を進めていく必要があるのではないかとも思われるのでございまして、それらの地域によって、これらを考慮してまいるわけでございます。したがって、必要なところに対しては必要な規制を加えてまいるということで進みたいと考えるのでございます。
第六には、日ソ漁業協定においてソ連側の考え方、この問題でございまするが、三月一日からモスクワにおいて会議が行なわれておりますることは御承知のとおりでありまするが、最近、技術会議、いわゆる小委員会が終わったところでございます。これからサケ、マス、それからカニ等の漁獲量の協定等に入る——最近入る予定でございます。その際において、B地域におけるわが国漁業船舶数の九割削減を主張している模様であるが、これでは沿岸小型漁船、漁民にとってはたいへんな問題である、こういう点について御心配のあまり御質問になっておるわけでございます。ソ連側は昨年、一九六六年のマス資源の水準が低いとの見解に基づいて、B地域におけるわが国操業漁船数の九割削減の意向を表明したいきさつがあります。しかしながら、わが国としては、今年の会議でさような主張がなされたとしても、さようなことは漁業者に与える影響が甚大なので、資源回復のための措置としても、とるべきでないと考え、これに対処する方針でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/30
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031・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X01719660323/31
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