1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年四月二十日(水曜日)
午前十時十九分開議
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○議事日程 第二十五号
昭和四十一年四月二十日
午前十時開議
第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
第二 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案(趣旨説明)
第三 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
一、日程第二 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案(趣旨説明)
一、日程第三 銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)
一、日程第四 在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、国民健康保険法の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。鈴木厚生大臣。
〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/2
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003・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) 国民健康保険法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
国民健康保険につきましては、保険給付の内容を改善して被保険者負担の軽減をはかるとともに、その財政に対する国の援助を強化することが、当面の急務と考えるのであります。このため、昭和三十八年度から世帯主の療養給付率を七割に引き上げ、これに引き続き、世帯主以外の被保険者についても、昭和三十九年度から四カ年の年次計画をもって逐次その療養給付率を七割に引き上げる措置を推進しているところであります。また、七割給付を実施した市町村に対しては、特別の補助金を交付するなど、必要な財政援助を行なっているのでありますが、この際、世帯主以外の被保険者の療養給付率を七割に引き上げることを法定するとともに、市町村に対する国の負担を強化することが必要と考え、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の概要でありますが、まず第一に、世帯主以外の被保険者の一部負担金の割合を十分の三に減ずること、すなわち療養給付率を七割に引き上げることといたしました。
第二に、市町村の療養給付費についての国の負担を現行の百分の二十五から百分の四十に引き上げるとともに、調整交付金の総額を市町村の療養給付費の見込み額の百分の五に改めることといたしました。
なお、世帯主以外の被保険者の療養給付率を七割に引き上げることについては、従来の四カ年計画に基づき、昭和四十二年度までに逐次これを実施することとし、また、世帯主の療養給付費に対する国の負担については本年四月一日から、世帯主以外の被保険者の療養給付費に対する国の負担については、療養給付率の七割への引き上げに応じ、改正後の負担率を適用することといたしております。
以上が、国民健康保険法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。 大橋和孝君。
〔大橋和孝君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/4
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005・大橋和孝
○大橋和孝君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案されました国民健康保険法の一部を改正する法律案について、佐藤総理をはじめ、関係各大臣にお尋ねいたします。
昭和三十六年以来、二十七兆円にも及ぶ膨大な設備投資によって、四十五年度に二十六兆円という国民総生産の目標は、四十年度において少なくとも外見上はすでに達成されたかのごとくであります。しかし、その実態を見れば、このような急テンポの経済成長が、ことごとく国民大衆の犠牲によってなし遂げられたものであり、それがもたらした今日の構造的不況が再び国民大衆の犠牲の上に打開されようとしていることも、また周知の事実であります。そうして、この犠牲をまともにかぶっているのが、わが国総人口の約半数である四千百八十万人の国保被保険者であると言っても、決して言い過ぎではありません。すでに御承知のとおり、国保被保険者の七六・三%は、年間の所得三十万円以下という、いわゆる低所得者であり、しかも年間の所得九万円未満の世帯が二三・六%も占めているのであります。そしてまた、十四歳未満、六十歳以上の、所得能力に乏しい被保険者でその四〇%が占められていることも、政府の統計が明らかにしております。これらの高度成長から取り残された人々こそ、過去十年間の最高といわれる物価上昇の一番の被害者であることは、何人も否定できないでありましょう。
国民健康保険法は、その第一条に、「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民健の向上に寄与することを目的とする。」とあります。そして、そのために、国に対し「国は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるようにつとめなければならない。」と義務づけております。すなわち、国保は、自助、相互扶助の社会保険ではなく、国が責任を負う社会保障であると規定しているのであります。さらに具体的にいえば、国保の運営にあたって、国は、便宜上その事務を委託している市町村に対し、筋違いの負担をしいたり、被保険者の負担能力を越えるような保険料を課すべきでないということであり、もっと大切なことは、社会保障として被保険者の健康を向上させるために、国が最大限の努力を払わなくてはならないということであります。
はたして、今日まで政府は、この義務を履行してきたと言えるでしょうか。昭和三十七年度から三十九年度まで、わずか三年間に、ただでさえ苦しい市町村の一般会計から二百八十九億円を、この国保事業のために繰り入れさせてきました。また、被保険者に対しては、三十八年度から四十年度までの三年間に、一人当たり実に七一・九%の値上げという過酷な保険料を課し、しかも、今日なお、保険あって医療なしの地域が全国に散在しているのであります。市町村は、もう国保は返上したいと訴えております。被保険者は、こんなに保険料を値上げされたにもかかわらず、医者にかかるときには、三割も五割も自己負担させられ、安心して病気をなおすこともできないでおります。いまや、わが国の低所得階層は、せっかくの国民皆保険にもかかわらず、再び貧乏と病気の悪循環にはまり込みつつあるというのが実情であります。かつて佐藤総理は、僻地の欠食学童の窮状を見て涙を流されました。しかし、わが国の低所得層の間には、それに劣らぬ憂うべき状態が現実に起こりつつあるのであります。このような現状を所得格差の是正によって打開すべく政府が努力することは言うまでもありません。しかし、国保事業を通じ、これらの人々が病気のときに安んじて医者にかかれるよう、自己負担をなくし、また保険料も、これらの人々の生活を脅かさないよう軽減することは、政府がその気にさえなれば、きょう直ちにでも、実行できる施策であります。
佐藤総理にお尋ねします。もともと所得能力に乏しく、しかも今日の物価高に、その生活は危機にさらされ、その健康も破壊されようとしている人々に対し、現在及び将来にわたって、国保がどのような役割りを果たすべきか、佐藤総理はいかなる所信をお持ちでしょうか。僻地の欠食学童の窮状に涙を流し、人間尊重を政治信念とされる佐藤総理の社会保障に対する基本的な考え方をお尋ねしたいと思います。
次に、本法案の提案責任者である鈴木厚生大臣にお尋ねします。去る三月初め、厚生省の事務当局が、国保の給付改善は今後十年間行なわず、給付水準を七割に押えると公言しておりますが、厚生大臣は、これを了承しておられますか。もし了承しておられるとしたら、厚生大臣は、国保被保険者の置かれている現状を、どのように理解されておられるのか、お尋ねしたい。なお、本法案の内容については、いずれ委員会で納得のいくまでお尋ねするつもりでおりますから、本日は次の五点についてだけお尋ねしておきます。
第一点は、療養給付費補助金の四割定率化も、調整交付金の五%引き下げにより、実質三十億円程度の増額にしかなりませんが、これで四十一年度の国保事業が健全に運営され、三十九年度においてさえ百十八億円を負担した市町村に対し、一般会計から繰り入れなどという筋違いの措置をとらせずに済み、また、被保険者、特に低所得の被保険者に対し、これまでのように負担増をかけないで済むという確信がありますか。もちろん大蔵大臣と違って、国民大衆の健康を第一義に考えておられる鈴木厚生大臣としては、確信をお持ちでしょうが、念のためにお伺いいたします。
第二点は、国民皆保険実施に先き立ち、中小企業者の団体が自主的につくり、財政難にも屈せず運営してきた国保組合に対し、定率国庫補助を二割五分に捉え置いた理由は、そもそも何に基づくものでありましょうか。
第三点は、国民健康保険の被保険者に限って、結核予防法、精神衛生法による公費負担の残額について、なお自己負担が課せられていることは、他の健康保険被保険者と比べ、著しく均衡を失するものであるばかりか、低所得者の生活と健康を守るべき国民健康保険の精神からいって、きわめて不当な措置であると考えますが、厚生大臣は改正の意思をお持ちでありましょうか。
第四点は、事務費についてであります。四十年の実支出額が一人当たり三百二十四円、厚生省要求は二百八十八円であったことは、御承知のとおりです。それに対し二百五十円でよしとされた理由は、何に基づくものでありましょうか。
第五点は、被保険者の負担能力を考慮して保険料を値上げせず、一般会計からの繰り入れでやりくりしながら、四十年度において国庫補助も受けず家族七割給付に努力してきた都市国保に対して、四割定率国庫負担はしないと附則がうたっていることは、国民健康保険法の本旨からみて、明らかに木末転倒だと思われますが、厚生大臣の所信をお尋ねしたい。
これと関連して、永山自治大臣にお尋ねします。この附則は、厚生省のいうことを聞かず、保険料値上げをしなかった自治体には、家族七割給付を実施していても、法定化された四割の定率国庫補助は適用しないぞといっているのであります。地方自治を守るべき自治大臣としての見解をお尋ねしたい。
最後に、福田大蔵大臣にお尋ねします。すでに申し延べてきましたとおり、国保に対し、保険原則を貫き得ないというところに、保険原則を強制しようとしても、そのこと自身、成り立たない議論であることは、よくおわかりになったと思います。したがって、これ以上の国庫負担は生活保護に近づくなどという理屈は、もはや空論でしかありません。このあたりで保険主義の金看板は、おろされてもよかろうかと思いますが、大蔵大臣の所信をお伺いしたい。
以上で私の質問を終わりますが、お尋ねした点について、社会保障に対する見解を明らかにされつつ、それぞれ担当大臣としての明確な所信を披瀝していただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/5
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006・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
政府、また国は、国民に対しまして、健康にして文化的な生活を営み得るように、そういう状態をつくること、そういう政治が目標でございます。したがいまして、病気の際に安心して医者にかかれるような、そういうことも国民に対して保障するというか、そういう制度を設けることが必要だと思います。この立場から国民皆保険の制度が生まれてきた、かように思います。しかし、これはあくまでも保険の制度でありまして、ただいま保障の立場において考えろと、こういうお話でごさいますが、ただいままでのところ、これは保険であります。しかし、政府は、低所得層等の立場を考えますと、この国民健康保険が中核をなしておる、そういうように考えておりますので、その給付率の引き上げ、また、低所得層に対しての保険料の軽減、さらに、また、国の援助等を在来から考えてまいりましたが、今後とも必要に応じまして所要のくふうを重ねていくつもりでございます。したがいまして、各界の協力を得まして、この国民健康保険制度が十分成果をあげるように努力してまいるつもりであります。(拍手)
〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/6
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007・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
今回の国民健康保険の改正は、家族七割給付を達成をいたしました市町村に対しまして、従来二割五分国庫定率補助をいたしておりましたものを、四割に引き上げをする、また、事務費を一人当たり二百円でありましたものを二百五十円に引き上げる、こういう趣旨の改善策でございまして、この家族七割給付の問題につきましては、御承知のように、昭和四十二年度までに計画的にこれを実施してまいる、こういう考え方でございまして、私は、全国的にこの世帯主及び家族の七割給付が達成をいたしました上におきまして、漸次その給付率の向上等につきましても努力してまいりたいと考えておるのでございます。したがいまして、事務当局がこの問題につきまして、今後は七割給付にとどめて、当分の間改善をしないのだと、こういうことを申したという御指摘がございますが、さようなことはございません。今後七割給付が全国的に実施されました上におきまして、各制度との均衡を保ちつつ、前進さしてまいりたいと考えておるのでございます。
第二の点につきましてお答えをいたしますが、保険料の負担の際におきまして、低所得者の階層保護世帯でございますとか、あるいは市町村民税非課税世帯でありますとか、そういう低所得の階層に対しましては、御承知のように、保険料、保険税の減額措置を講じておるのでありまして、その減額措置によって生じましたところの市町村の国保の財政の不足分につきましては、国からこれを補助し、補てんをする措置を講じておるのでありまして、今後低所得階層に対しまして保険料負担を重くするというような考え方は持っていないのであります。
第三の、国保組合に対する——今回、二五%を四〇%に定率を引き上げておきながら、国保組合に対しては二五%にこれを据え置いたという点の御指摘がございましたが、この点は、国保組合に対しましては、この二五%の国の補助がちょうど市町村の四割補助と均衡を保持しておるのでございまして、今回は二五%、従前どおりにこれを据え置いた次第でございます。
第四の、結核、精神の強度療養者に対しまして、この国民健康保険から給付をやり、支払いをする、こういうことでなしに、国が責任を持って措置すべきではないかというお話でございますが、御承知のように、結核で感染性の者、あるいは精神病で自傷他害のおそれのある者につきましては、強制入所の措置を講じておりまして、その際におきましては、国が公費をもってその治療に当たっておるのであります。その他の結核、精神病者につきましては、国の補助以外には、国民健康保険でこれをまかなってまいるというのが政府の方針でございます。
第五の、事務費の問題でございますが、昭和四十年度に百五十円から二百円に引き上げ、さらに今回、二百円から二百五十円に大幅に引き上げた次第でありまして、私は、この今回の改正によりまして、市町村の国保事務は円滑に進むものと信じておるのであります。
第六の、大都市の国保に対する定率四割の国庫補助については、昭和四十二年度までに、これを逐次実施してまいるのでありまして、決して大都市、これを例外にするという考えは持っておりません。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/7
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008・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) 七割給付の実施に対しまして、地方を権力的に圧迫するようなことがないようにすべきであるということでございまするが、その点は、さように心得ております。すなわち、御存じのように、七割給付に対しまして、政府は四割定率補助をいたす。さらに、調整交付金を五%出しておりますので、実質、国が負担するのは四割五分で、そして、二割五分が地方の負担になっておるのでございます。そうしてこれを四カ年計画で四十二年度までに実施しようという考え方に立っております。また、地方は、財政を圧迫させないように、一般会計からの繰り出しをせないように、健全なる経営をしようと考えておりますので、それらを総合調和いたして進むことが必要であると考えるのでございます。ここにおきまして、国と地方は一体となりまして、中央の権力的干渉のないように、また地方自治は卑屈行政におちいらないように、よく一体に話し合ってやるように行政指導をいたしたいと考える次第でございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/8
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009・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対するお尋ねは、国民健康保険は、今日の段階になると、社会保障主義と申しますか、社会保険主義という考えはやめたらどうかと、こういう御意見のお尋ねでございまするが、つまりこれは、国民健康保険の財政を保険料でまかなうか、あるいは一般の税金でまかなうか、どうだと、こういう御意見と承っておるのであります。社会保障制度全体は、個人がだれも引き受け手がないというような公的給付というような問題、あるいは福祉諸問題、あるいは環境といいますか、生活環境を整えるというような諸問題、そういうことはどうしても税金によらざるを得ないと、かように考えます。問題の医療保障、これはやっぱり個人個人が責任を持つべき問題である。しかし、その階層によりましては、その個人の責任だけではどうしてもやっていけない、これには国家が介入すべきであり、その介入をするためには税をもってこれに充てる、こういう考え方を挿入すべきであり、いま各種の保険制度がありまするが、その保険制度の態様も非常に違っております。その違っておる態様の度合いに応じまして、これは介入の度合いを変えていくべきだ。私は国民健康保険につきましては、これは介入の度合いを最も強くすべき、高い考慮を払うべき問題である、かように考えるのであります。今後も、国民健康保険——一番これは資力の少ない階層の制度でありますので、できる限り配慮をいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 小平芳平君。
〔小平芳平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/10
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011・小平芳平
○小平芳平君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております国民健康保険法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
わが国において国民皆保険の計画が立てられてから、医療保険は順調な足取りを見て、いまでは国民のほとんどが何らかの形で医療保険の適用を受けるようになっております。その中にあって、国民健康保険の被保険者は四千三百万人にのぼり、全国民の半ばに近い人口を対象とする大きなものになっております。しかるに、国民健康保険事業をはじめ、他の医療保険も同様でありますが、保険財政はいまや危機に瀕しており、わが国の医療保障全体の建て直しこそ、緊急に解決しなければならない国内政治の重要課題となっております。このように難問をかかえた医療制度も、突き詰めていけば、結局、保険財政の赤字問題であり、その問題の核心は、現に悪化しつつある巨額の赤字を、いかなる手段方法によって解決するかという点に、しばられてくるとも言えるのであります。
そこでまず、具体的な法律改正の内容に入る前に、わが国の医療制度の現状と将来に対し、特に国保を中心にして抜本的な対策をお尋ねいたします。
質問の第一は、経済の長期計画と社会保障の関係であります。現在、佐藤内閣は、中期経済計画を捨てて、新しい長期計画を立案すると言われておりますが、いままでとられてきた政府の高度経済成長政策を振り返って見るのに、住民にとって最も必要とされる文教施設や、社会保障費などの経費は、高度成長の犠牲にされてきたのであります。その結果、一例を医療費にとって見ると、国民健康保険料の値上げをはじめ、公立病院の差額徴収の拡大、医療費の患者負担分の増大というように、国民生活を圧迫してきているのであります。医療財政が数百億円もの赤字を出すなどというのは、まさしく社会保障を犠牲にした高度成長であったという証拠であります。そこで伺いたいのでありますが、当然新しい長期計画の中には、今後の社会保障のあるべき姿も明らかにされると思いますが、その点はどうなっておりますか。政府が社会保障を推進していく上には、まず財政の裏づけを持った長期計画を立て、これを基準とし、尺度としてこそ、初めて審議会の答申も生かされるものと考えるのでありますが、総理並びに厚生大臣、経企庁長官の御所見を承りたいのであります。
第二は、医療制度の抜本策として言われていることに、医療保障をたてまえとするのか、あるいは医療保険をたてまえとするのかという問題があります。これは先ほども御答弁がありましたが、特に私の申し上げたいことは、国民健康保険の加入者は、農業従事者、零細な自営業者をはじめとして、被用者保険からはじき出されている零細企業の労働者、失業者、定年退職者等の、一般に低所得者といわれる人々が全体の七割を占めており、現在の保険料でさえ払えないような世帯の人々によって、ささえられているのであります。そうして、それと相対的に老齢者や病弱者も多くかかえているため、医療費の支出も他の医療保険よりも大きいのであります。もともと保険財政が赤字になる公算が強いため、医療保険の中でも最も国庫補助を必要とする種類の保険であり、いわゆる保険の原理のもともと通用しがたい制度であります。政府のさらに一歩前進した対策をお伺いしたいのであります。
次に、あくまでわれわれは、医療保険を医療保障に切りかえて——頭では保障だと言いながら、実態が単なる保険であるような現在のごまかしの体制を切りかえていかなければならないと考えるのでありますが、総理並びに厚生大臣と、財政を担当する大蔵大臣に御所見を承りたいのであります。
第三は、各種医療保険団体の統合についての問題であります。現在幾つにも分かれている各種医療保険を、一つに統合することが望ましいことは、当然であります。要は、政府が、国民健康保険や政府管掌健康保険などのように、膨大な赤字をかかえているものに対して、どれだけ財政的な援助を与えるかにかかっております。一人一人の平等な社会保障の実現のために、この統合問題についてどれだけ熱意をお持ちか。総理並びに厚生大臣、大蔵大臣の見解を伺いたいのであります。
第四に、病院経営管理のあり方についてであります。まず政府、現在苦境に立つ医療保険制度について、一体どこに欠陥があるかを徹底的に究明すべきであります。たとえば薬剤と医療保険の問題として、薬剤を多量に使わなければ、診療報酬のみでは病院の経営が成り立たない。しかも、現在では薬剤の使用が総点数の三〇%以上を占めるといわれ、保険経済という一定のワク内ではまかない切れない額になっているのであります。また、「もうかっているのに赤字だと言っている」とか、「点数をごまかしている」とか、「使わない薬を使ったという」とかいうような、多くの批判もあります。そして、製薬会社はますますもうかり、医師のほうも、技術を先行するのではなく、患者も喜ぶという理由から安易に薬剤を与える傾向となり、医療技術の発展に大きなマイナスとなっているのであります。このような実態の中に、最近新聞紙上をにぎわしている問題に、千葉大事件、日赤産院事件、朝倉病院事件等の、一連の病院の経営管理についての問題点が浮かび上がってきており、この中に、現代では考えられない封建性、後進性を見ることができるのであります。そこで申し上げたいことは、第一に、医師に対する技術報酬をすみやかに改善し、早急に先進国並みに引き上げ、医師が安心して医療技術をみがいていけるよう、全面的に改正すべきであります。第二に、医師の養成と大学病院のあり方、また医師のモラルの確立であります。現在の医学界がここまで混乱した原因は、政府の怠慢の結果であり、医療行政に多くの予算をつけるという、この努力を怠ったためであり、この責任を強く追及するものであります。
次に、法律案の具体的内容について二、三簡単にお尋ねいたします。
その第一は、定率四割補助になったことを理由に、これを保険料の引き上げの口実にしてはならないことであります。先ほども御答弁がありましたが、政府が今回定率四割補助に踏み切った裏には、被保険者の自己負担分が三割であり、残りの三割は保険料として賦課され、もしそれだけの部分の保険料を取り立てなければ保険者の責任であるという考えが、基本的な態度ではないかと受け取れるのであります。いずれにしても、われわれは現段階でこれ以上の料金値上げに絶対に反対でありますが、厚生大臣の御所見を承りたいのであります。
第二は、標準保険税率の提唱であります。これは、医療保障を国家的に行なう場合は、国民がそれぞれの所得に応じて一定の負担をしたならば、同一水準の医療を受けられるという国家的保障を確立するのは当然のことでありましょう。国保事業が市町村営で継続する限り、標準税率制度をとっていくべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
第三は、国保の事務費の問題であります。これも先ほど御答弁がありましたが、要するに、各市町村の事務費の増額を要求する声はまことに大きいのでありますが、もうこれ以上事務費の負担について心配をかけないと厚生大臣は断言できますかどうか、お尋ねいたします。
第四は、滞納処分を行なうことができるように法律が改正される案となっておりますが、現在滞納している人たちの大部分は、生活が困窮しているため滞納を余儀なくされている状態の人たちであります。そのような人たちに対し、どのような滞納処分をやるのか。この点の改正は、人間性を失った、非情な改正にならないよう留意すべきであると考えますが、いかがでしょうか。以上の諸点についてお伺いいたします。
最後に、国保財政に赤字が出たからといって、すぐに保険料を引き上げたり、給付率を引き下げたり、また患者の一部負担制を強化するなどは、最も愚劣なやり方であると言えるのであります。その上、国民健康保険の加入者の七割は低所得者層に属し、一般に保険料負担能力に欠けていることから、いかなる対策がなされたとしても、農漁村、市町村民の低所得者をそのままにしておいては、国保の財政危機を根本的に解決することはできないのであります。この点を総理にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/11
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012・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
先ほど、国民健康保険が国民に果たす、また医療制度において果たす役割りの点につきましては、大橋君にお答えいたしましたので、それで御了承いただきたいと思います。
問題は「国民健康保険の財政がたいへん思わしくないから——かように申しましても、ただ保険料を上げるだけでこれを片づけるというのではございません。そのときもお答えいたしましたように、給付水準を高め、さらにまた、低所得層に対する保険料の軽減をする、また、その赤字等については国の財政援助をする、こういうたてまえで、この国民健康保険の成果を十分にあげていくように、絶えず苦心してまいるつもりであります。
御承知のように、経済開発をいたしてまいりますが、経済開発それだけが——そのものずばりが目的ではございません。申すまでもなく、国民の生活をより豊かに、より健康あるいは文化的なものにする、これは、経済開発がそういう効果を国民に均てんさす、こういうところがそのねらいであります。こういう意味で、ただいまの国民健康保険制度や、その他の社会保障制度も始まったわけであります。しかし、わが国のこれらの制度につきましては、なお先進国に比べまして、たいへん劣っております。したがいまして、政府は今後とも、一そうの努力をいたすつもりであります。
また、これは保障か保険かというお尋ねがございましたが、先ほどもお答えいたしましたように、今日私どもは、保険というたてまえで、この制度の運用、そうして、先ほど申すような給付水準の適正、また保険料の適正、そういうような点を考え、そうして、財政的な援助ともあわせて、成果をあげるようにいたしておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/12
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013・鈴木善幸
○国務大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
社会保障を長期的な展望の上に立って、計画的にこれを向上させていく問題につきまして、お尋ねがありましたが、中期経済計画がありました当時におきましては、厚生省におきましては、その経済計画と見合った社会保障の計画を持っておったのであります。今回、中期経済計画は、経済の大きな変動に対処しまして、これを改めて、新しく経済計画を立てる、こういうことになりましたので、この新しい経済計画と見合って、今後わが国の社会保障をどういうぐあいに前進させるかという計画を策定いたしたい、かように考えているのであります。
第二の、医療保険か医療保障か、こういう問題でございますが、私は、今日まで政府が、事業主や、あるいは被保険者だけに負担をかけて、わが国の医療保険がなされておったというぐあいには考えていないのでありまして、この被保険者の負担の限度を考えながら、国として、できるだけの、これに対する助成措置を講じてまいったところであります。今回の国民健康保険法の改正にあたりましても、定率国庫四割をはっきりと保障する、また、この健康保険法の改正にあたりましても、国が百五十億の国庫負担をする、こういうぐあいに、被保険者の負担を重くしないように、政府としても、できるだけの助成措置を講じてまいったところでありまして、私どもは、医療保険というたてまえを堅持しながら、できるだけ国も、財政の許す限り、この医療保障を、国民の健康を守るために充実してまいりたいと考えているのであります。
第三の、医療保険制度の統合の問題でございますが、この点につきましては、御指摘のとおり、わが国の医療保険は多岐にわたっております。そうして、各制度間におけるところの、給付の内容におきましても、また被保険者の負担の点におきましても、そこに非常なアンバランスがあり、格差があるのでありまして、国民皆保険というたてまえからいたしまして、国民に公平な、均衡のとれた医療を給付するということが必要であるのでありまして、私は、この医療保険制度の不均衡を是正し、長期的安定の上に医療保険が前進をしてまいりますために、医療保険全体を今回抜本的に検討するという措置を講じたいと考えておるのであります。
第四に、診療報酬体系の適正化の問題についてのお話がありましたが、現在、診療報酬体系は、甲・乙二表によりまして定められておるのでありますが、診療報酬を技術と物に分離をいたしまして、そうして技術を尊重するというたてまえで、適正な診療報酬を保障するということが必要であると考えております。そういう方向に向かって、ただいま中央医療協においても御検討を願っておるところであります。
第五に、医師の養成、りっぱな医師をつくるということ、特に医師のモラルの向上という点につきましては、全く御同感でございまして、私ども、今後、医師のインターン制度の問題、あるいは無給医局員の問題、いろいろ、わが国の医師を、国民に信頼されるような、りっぱな医師に養成するために、制度的にもこれに再検討を加えまして、適切な措置を講じてまいりたいと考えているのであります。
第六に、今度の改正が保険料値上げの口実になるのではないか。今後保険料を値上げさせない、こういうぐあいに、はっきり政府として責任を持てるかというお話でございますが、今回の改正は、国庫負担四割の定率化、また事務費の二百円を二百五十円に引き上げる、こういうような、被保険者の負担を軽減いたしますための改正でございまして、今回の改正によりまして被保険者の保険料が値上がりをするというようなことは、私はないものと考えておるのであります。
最後に、標準保険料の問題でございますが、昭和四十二年度までに家族七割給付が達成をいたしまして、国庫四割の負担が定率化されるのでありますから、その実現を見ました暁におきまして、標準保険料の問題につきまして検討いたしたいと存じております。
保険料の滞納処分についてお尋ねがありましたが、保険税や他の社会保険の保険料と同様に、従来、処分を行なうことができるようになっておったのでありますが、昭和三十八年度の地方自治法の改正の結果、昭和三十九年六月からこれができないように相なっておるのであります。他の保険税や社会保険の保険料の徴収と均衡のとれるような事務的措置を講じますために、今回の改正をいたした次第でございます。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/13
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014・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) お答え申し上げます。
中期経済計画を廃棄いたしまして、新しい経済計画を立てますときに、お話のように、われわれ、経済計画は単に経済運営だけの問題ではございません。終局の目的は国民の安定した生活を確保するということでございますから、社会保障関係の問題を一つの柱として取り扱ってまいりたいと思います。
御承知のように、過去の情勢から見まして、中期経済計画あるいはその他の見通しにおきまして、主として社会保障関係は振り替え所得をもってあらわされてきておりますが、三十五年は国民所得に対して四・七%、五千六百二十六億、三十九年は五・八%、一兆一千九百六十一億というような順調な伸びを示しておりまして、四十年はまだ推計でございますけれども、六・一%、大体一兆三千七百億くらいに予想されるのでございます。われわれは、この過去の順当な趨勢に対応しまして、新たな計画の中に、さらに一そう強力に入れてまいりたいと、こう考えております。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/14
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015・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
先ほど大橋さんからお尋ねのように、国民健康保険につきましては、社会保障の性格のものにしたらどうか、こういうお話でございますが、これは完全にそういう考え方に切りかえてしまうということは、私はできないと思います。つまり、やはり個人個人、一人一人の健康につきましては、われわれが責任を持たなければならぬ、この考え方はどこまでも残しておかなければならぬと思います。しかし、国民健康保険のごとき、その対象が非常に弱い保険機関につきましては、これは国家がその援助を厚くしなければならぬ、そういう意味合いにおきまして、今回の改正で四〇%定率という高い援助を与える、また、事務費につきましても二百五十円に引き上げを行なうというような考え方、これが大体妥当なところではあるまいかというふうに考えております。お話のように医療保険財政はきわめていま苦しい立場にあります。それはなぜかというと、医療給付の額が非常な勢いでいま伸びております。大体年率にいたしまして二〇%の伸び、それに対して医療収入のほうは一〇%しかない。この傾向を放置しておきますると、末広がりになって、どういうところに行ってしまうか、まあ現状ではたいへんな事態になってくるのではないかと心配をいたしておるのであります。私は、そういう間において、戦後まあ自然発生的に医療の諸制度というものがタケノコのようにできてきておるわけでありまして、その間に非常な不均衡もある。また、したがいまして、受益者、被保険者の立場も、それぞれ厚薄ができてくる。制度といたしまして、まことに不合理な状態であるということが、率直に申し上げざるを得ないところでございます。私は、どうしても保険諸制度のこの統合という問題を解決しなければならぬ。それに向かって、とにかく一挙ということはむずかしいかもしれませんけれども、一歩一歩積み上げていかなければならぬ。それが私は、この問題の解決の根本にあると、こういうふうに考えております。ことしは何とかして、この問題を解決いたしたいというので、厚生大臣非常にまあ一生懸命にやっておりますので、私も御協力いたしまするが、どうか国会におきましても御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/15
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016・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/16
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017・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第二、入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案(趣旨説明)
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。坂田農林大臣。
〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/17
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018・坂田英一
○国務大臣(坂田英一君) 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案につきまして、その趣旨をご説明申し上げます。
わが国の農山村におきましては、古くから入会林野等の利用が行なわれてきたのでありますが、今日なお、その面積は二百万ヘクタールをこえ、全国の民有林野面積の一三%に及んでいるのであります。これらの林野の利用状況は、一般に粗放であり、農林業経営の発展及び農山村民の所得の向上に十分寄与しているとは言いがたい現状でありまして、これによる国民経済上の損失も少なくないと思われるのであります。入会林野等の利用が低位にとどまり、その開発がおくれている原因は、いろいろあると思われるのでありますが、その最も基本的なものは、これらの林野に入会権等の権利が存在していることであります。これらの権利に基づく利用は、今日に至りましても、依然として旧来の慣習に制約されておりますため、時代の新たな要請に応じて利用の高度化をはかろうといたしましても、容易にその転換ができないのであります。したがって、入会林野等についてその利用を増進し、農林業経営の健全な発展に役立たせるため、このような権利関係を近代化すること、すなわち、入会権等の旧慣による権利を消滅させ、これらを所有権、地上権等の近代的な権利に切りかえることが強く要請されるに至っているのであります。
しかしながら、現状におきましては、このような権利関係の近代化をはかりますためには、かなり煩瑣な手続や、多額の経費負担を必要とし、農山村民が独力でこれを実行することはきわめて困難でありまして、そのことが、これまでに権利関係の近代化を進める上の大きな障害となっていたのであります。したがいまして、入会林野等の農林業上の利用の増進をはかってまいりますためには、このような障害を排除いたしまして、農山村民が自主的、かつ、円満に近代化を実現し得るよう助長する措置を講ずることが緊急に必要であると考えるものであります。
以上のような理由からいたしまして、この法律案におきましては、入会林野等の権利関係の近代化を行なうに必要な手続を定めますとともに、関連する登記手続の簡素化、租税の減税、経費の補助等、各種の援助措置を定めたのであります。
以上がこの法律案を提出する理由でありますが、次に、法律案のおもな内容について御説明申し上げます。
第一は、入会林野における権利関係の近代化、すなわち、入会林野整備の実施手続等に関する規定であります。入会林野整備を行なうにあたりましては、まず、入会権者全員の合意によってその整備計画を定め、その計画について土地所有者、その他の関係権利者の同意を得る等の手続を経た上で、都道府県知事の認可を受けることとしております。次に、都道府県知事がこの計画について認可をした場合には、その旨を公告することとし、その公告があったときは、入会権及びその他の権利が消滅し、入会権者が所有権、地上権等の権利を取得することとしております。入会権者が取得した権利の登記につきましては、都道府県知事が一括して登記を嘱託することといたしております。また、この場合、入会権消滅後の土地の効率的利用をはかるため、協業化の方向を助長する趣旨から、入会権者が生産森林組合等に権利の出資を行なう場合の登記につきましても、都道府県知事がこれを嘱託することといたしております。
第二は、市町村及び財産区の所有する林野で旧慣の存しておりますもの、すなわち、旧慣使用林野の整備の実施手続に関する規定であります。この場合におきましては、農業または林業構造改善事業等の効率的な実施を促進するために必要な場合に行なうことができるものといたしております。また、この整備計画の作成については、市町村長が、あらかじめ旧慣使用権者の意見を聞き、市町村の議会等の議決を経ることといたしております。
なお、旧慣使用林野整備計画の認可の公告による権利変動、及びその後の登記等については、入会林野整備の場合に準ずることといたしております。
第三は、入会林野整備等が円滑に行なわれるように援助措置についての規定を設けております。まず、登記手続につきましては、政令で不動産登記法の特例を定めることができることとしてその簡素化をはかるほか、税制上の特例といたしましては、入会林野整備等により権利を取得した者の経済的な利益については、課税しないものとするほか、不動産取得税及び登録税の減免措置を講ずることといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由及びおもな内容であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/18
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019・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。中村波男君。
〔中村波男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/19
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020・中村波男
○中村波男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま農林大臣から趣旨説明のありました「入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案」について質問をいたすものでございます。
まず、最初に、入り会い権の本質について政府の見解をただしたいのであります。入り会いの利用状況は、今日においては、古典的な共同利用の形を残しているものは二三%にすぎず、他は、入り会い集団による直轄利用、権利者に配分する分割利用、契約によって権利者、無権利者の別なく利用させる契約利用等があります。これらの権利内容は、まことに複雑多岐にわたり、それだけに、この実態を完全にとらえることが最も重要でございます。さらに、入り会い権の内容は、学説、判例に多くの異説があり、その含み得る範囲はきわめて広いのでありまして、聞くところによると、最初林野庁は、それを広く解釈して立法をはかったところ、公権論を固執する自治省に押しまくられ、ついに、地方自治法上の慣行使用権は、一応入り会い権とは別なものであるという立場をとることで妥協した結果、入り会い権者全員の納得が得られれば、その得られた方向で近代化をはかっていくという便宜主義をとらざるを得なくなったのであります。かかる妥協の産物である本法案の矛盾点を具体的に取り上げ、農林大臣の所見を伺っておきたいのでございます。
まず第一に、入り会い権、旧慣使用権を個別に私権化する場合、権利の確認をめぐって紛糾することは、過去の事例からしても十分予測し得るところであります。この点について、いかなる見通しと処理方法を用意されているか。
その第二は、利用目的が二つ以上に分かれた場合、たとえば、一方は植林を主張し、他方は草地利用を主張して、ともに譲らず、どうしても意思統一ができない場合、その解決基準をどこに求めようとしているのか。
第三としましては、入り会い権と所有権者と別人であるところの、地役の性質を有する入り会い林野については、先日の小繋裁判の例に見るごとく、多くの場合、両者が鋭く対立しているか、さもなくば、入り会い権者が泣き寝入りをしているかのいずれかであると考えられ、このような中で関係権利者の合意と同意を前提に置き、それによって入り会い権近代化の実をあげようとすること自体、現実を無視したやり方ではないのか。
以上三つのケースについて、具体的な対応策をまず承りたいのであります。
次に問題にいたしたいのは、旧慣使用林野の整備計画の手続規定の中で、発議権者を市町村長のみに限定し、しかも議会が優位に立ち、権利者には意見を聞くにとどめているという点であります。過日の衆議院における永山自治大臣の答弁に見られますように、公権論一点ばりでこれを運用し、指導されることに対し、大きな疑義と危険を感ずるのであります。さきにも述べましたように、私権論は今日学界の通説になっているのであって、いやしくも私権論の立場からするならば、公有地たりといえども、正当な補償なくして入り会い利用を廃止することは、憲法違反であると私は考えるのであります。さすがに自治大臣も、旧慣使用権か、入り会い権かという事実認定の問題については、やはり訴訟の判決の結果を待たねばならぬとつけ加えているのでありますが、これは語るに落ちるでありまして、必ずや権利をめぐって紛争が起こることを私は断言してはばかりません。かつて、国有林の入り会い権を否認した際、各地で農民騒動や、盗伐、放火などが頻発し、結局、地元施設の制度をいろいろ設けざるを得なかった過去の経験に徴しましても、公権論的、形式的解釈で入り会い権問題の解決をはかろうとすること自体に無理があり、政府の態度は全く安易だと言わざるを得ないのであります。なぜ自治省は、判例や学説を無視し、公権論を固執しようとするのか、疑問を持たざるを得ないのであります。慣行使用権の由来と実情に照らし考えてみますとき、公有地入り会いといえども、原則として個別私権化の方針に徹するべきだと考えるのでありますが、自治大臣の見解を本院において重ねてお伺いしておく次第であります。
また、これに関連いたしまして農林大臣にただしたいのは、自治省、県、市町村等が公権論に立つ限り、公共性、公益性、近代化の美名のもとに、行政介入がなされるおそれが多分にあり、さらに、自立経営育成に名をかり、農基法同様、小規模経営者の首切りを危惧する向きが多いがゆえに、これらの点について率直な答弁を求めたいのであります。
続いての質問は、公有地入り会い権に対する司法と行政の見解の相違についてであります。前にも述べましたごとく、入り会い林野と旧慣使用林野とは、もともとは同じような実態を持った入り会い林野から出発したもので、いわゆる入り会い山、部落山、村山、萱場、草刈り場等、地方により呼び名はさまざまであっても、地域の人々が、慣行慣習で、あるいは共同体的な村のおきてに従って使用収益し、徳川中期ごろになって、入り会い林野は慣行として確立され、今日に至ったもので、すなわち、入り会い権は山村農民が血と汗で守り抜いてきた生活権であります。この入会林野が、明治維新以降いろいろ内部的、外部的条件に影響を受け、特に政府が国及び市町村の公共目的に対応させるためにとった入会林野政策によりまして、今日の旧慣使用林野が形成されるに至ったのであります。したがって、裁判所は、一貫して、入り会い私権論、つまり、公有地にも民法で認めている物権たる入り会い権が存在するという立場から、判決を下しているのであります。しかるに、公有地入り会いに対する行政当局は、公権論の立ち場に立ち、司法当局の方針と大きな意見の相違を来たしたまま、数十年にも及んだのであり、しかも、この事実が今日まで見過ごされてきたということは、法治国日本として、まことに奇妙不可解きわまる現象であると言わざるを得ないのであります。ましてや、法務省が長年にわたる裁判所と行政当局との意見の食い違いを放置した怠慢もさることながら、本法案の旧慣使用林野の入り会い権に対し公権論を支持する態度には、承服できないものがございます。したがって、これに対する総理並びに法務大臣の所信をお聞きいたしておきたいのであります。
次に、権利配分後の農業生産法人等への助長策、並びに収益があがるようになった場合の税法上の措置について、大蔵大臣に質問をいたします。大臣は、衆議院において、山村の振興については特別な配慮をする必要があるとか、整備後は、造林補助、林業構造改善補助を行なうほか、融資を拡大する等の助成策を講ずるとか、実に抽象的な答弁をなされておりますが、私が聞きたいのは、抽象論ではなく、より具体的な内容についてであります。
農林省の林野整備促進事業の実施計画によりますれば、十カ年に百五十二万八千ヘクタールを予定いたしておるのであります。これに要する造林費は三千億円以上にのぼるのであろうと思うのでありまして、この膨大な事業費に対し、十分な助成を政府が行なわない限り、事業の推進はおぼつかないと私は考えるのであります。また、四十五万ヘクタールの原野は、でき得る限り、牧草地、果樹園等へ活用すべきでありまして、そのためにも、国の助成が不可欠であり、これらの助長対策は具体的にどのようなものをお考えになっているのか、お尋ねいたしたいのであります。
さらに、この際、明らかにされたいのは、生産森林組合、農業生産法人等は、協同組合としての税制の適用を受けることはきわめて困難であり、さらに組合から配当金を受けた組合員についても山林所得の適用を受けることはむずかしいと思うのであります。したがって、税制上に特別な考慮を払い、税金の減免措置を講ずる必要があると私は考えるのでございます。
以上二点について、大蔵大臣に所信のほどをお伺いいたしたいのでございます。
最後に、総理にお伺いいたしたいのは、入会林野の近代化、並びに林業振興に対する基本的指導理念についてであります。言うまでもなく、入会林野は、比較的、その多くが里山にあり、また、二百六万ヘクタールのうち、原野が四十五万ヘクタールを占めていると言われておりますだけに、これらの利用を、林業の面だけではなく、畜産振興、果樹栽培等の農業経営への利用はもちろんのこと、国民の保健衛生、さらに三重県の湯の山、長野県の蓼科などに見られますように、観光という立場からも考えるべきであり、加えて、国土開発、治山治水等の国土保全と総合的な土地利用の面からも、これを検討すべきであると、私は考えるのであります。これらに対する総理の基本的指導理念を、まず承りたいのであります。
質問の第二は、政府が、入会林野の近代化の必要性として、利用状況が粗放であるため、経営面、所得面からの寄与率がきわめて低いごとをあげている点については、私も同感であります。しからば、国有林、民有林等の利用状況が格段と高いのかといいますならば、これまた、よくないのであります。たとえば、全森林面積二千五百十万ヘクタールに対しまして、人工林は七百三十七万ヘクタール、その人工林化率は二九・三%にすぎないのであります。これに対し、林業白書で、人工林化はなお五三%が可能であると指摘していることは、総理も先刻御承知のことだと思うのであります。ここで重視しなければならないのは、林業の生産基盤の造成に不受欠な人工造林化が、特に民有林において、三十六年以降、漸減傾向を示し始め、一方では、用材の需要の増大に対し、国産材の供給率は大きくこれを下回り、三十五年の五%増と、その伸び率はきわめて低いのであります。その結果として、年々、外材の輸入は増大し、いまや国内需要の三分の一の二千万立方メートルに達し、外貨千六百億円程度がこれに充てられているということであります。さらに、政府が成長作目として奨励しておりますところの畜産は、飼料の自給対策が貧困なため、そのしわ寄せを畜産農民が受け、これまた畜産事業は停滞傾向にあり、その打開の一大方策として、放牧地、採草地への林野の活用が強く要請されているにもかかわらず、政府はこれに対応する積極政策をとらず、かけ声に終わらせている、その政治責任を、この機会に追及いたすものでございます。
以上、いろいろ申し述べてまいりましたが、問題は、入り会い権、入り会い権者の定義がまことに不明確であり、加えて、入会林野の実態を完全に把握しないまま権利を明確にするためだけの手続的法律を制定することは、全く無謀だと私は言わざるを得ないと思うのであります。現に、入会林野の今日的利用形態は、国が直接手を加えなくとも、経済的環境の変化に伴って近代化しつつあるのでありまして、それよりも先んじて政府が考えなければならないことは、さきにも述べましたように、農山村民を取り巻く経済的環境を総合的に整備充実するとともに、林野の高度利用を、総合的、計画的に推進する中で入会林野を位置づけてこそ、無理なく成果をあげることができると考えるのであります。
これらの点について総理の見解を求め、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/20
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021・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
ただいま、この入り会い権の問題をめぐりまして、法律論的に、また、たいへん専門的な御意見を聞かしていただきました。なかなかむつかしい問題であります。すでに裁判等におきましても、こういう入り会い権をめぐりまして長い訴訟が継続されておることも御承知のとおりであります。したがいまして、十分その実情に即した判断をしないと、これはなかなか単純な結論は出てこない、かように私も思います。したがいまして、この入り会い権の取り扱い方は、在来のままでは実は困る。申すまでもなく、農業については農業基本法があり、林業については林業基本法があり、そうして農林業の構造の改善をはかっていって、そうして近代的な経営をすることによって農林業のおくれを取り返そう、かように考えておりますが、その場合に、既存の権利、特にこの入り会い権などは、そういう場合、どうしても新しい構造改革をしようという場合に障害を来たしておる、これは御承知のとおりだろうと思います。したがいまして、今回取り組むのも、入り会い権の近代化をはかって、そうして構造改善を進めていく、その上に役立たすようにしようというのが、今回のねらいであります。また、そういう場合におきましても、林業の育成強化、あるいは農業の改善等が、ただいまお話になりましたように、いろいろ多種多様である。いわゆる立地条件に合わない限り、これは目的を達するわけにまいりませんから、それぞれの実情に応じて処置をとる、たとえば畜産あるいは果樹等も、そういう意味で十分実情に即した処置をとらないと、目的を達しないのであります。そういう意味で、今回の構造改善に役立たす意味で入り会い権の近代化をはかるというのが今回の法律であります。いずれ委員会等を通じまして十分御審議をいただいて、そうして、それがその場所に適合するように、行政的な指導が行なわれるということで、両両相まって農林業が改善されるのだ、私かように期待いたしております〇十分御審議のほどをいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/21
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022・坂田英一
○国務大臣(坂田英一君) 中村議員の御質問にお答え申し上げまするが、お話のとおりに、この入り会い権は農村の生活権であり、慣行上において非常な用途を持ってまいりましたことは、言うまでもないのでございます。すなわち、以前におきましては、農山村民が日常生活や自給農業を営むために、古くから一定の山林原野を使用いたしました慣行上の権利でございまして、それらの問題については、現在の情勢から申しますと、先ほど総理からもお答え申しましたとおり、どうしても近代化していかなければ能率を高めた活用はできないということが、非常に多く相なっておりますことは、言うまでもございません。かような意味合いからいたしまして、今度の法律案は、何も強制的にこれを行なうというのではなくして、話し合いによって十分その目的を達成しよう、そのために税制の問題その他の便宜を与えていこう、こういうことを主眼としておるものでございまするので、その点御了承を願いたいと思うのでございます。入り会い権を私権化する際に、権利者をめぐって、その権利者であるかないかといったような、いろいろの点をめぐっての紛争があるのではないか、あるいは、また、全員が同意する際にそれは非常に困難な問題でもあって、いろいろそれらに関する問題もあるのではないかという意味合いの御質問でございまするが、先ほど申しましたようなわけでございまして、入り会い権者の範囲はいろいろでありますが、それぞれの集団は慣行によって定まっておるのが通常でありまするから、その現地においては、多くの場合、権利者の確認をめぐって紛争を来たしておるということはありまするけれども、そんなに普遍的ではないのでございます。しかし、慣習についての解釈上の不一致がある場合もありまするので、かような問題については問題はありまするから、十分これらの問題は話し合いによって進めていこうというのでございます。当事者間の話し合いを中心として、円満な解決に導いていくよう指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
それから、計画作成の際には全員の合意を前提とするものでありまするが、これは入り会い権の法律的な性質からやむを得ないことであると思います。しかし、われわれのほうで実態調査をいたしまして、また、構造改善事業計画などによっていろいろ見たのでございますが、かなりの地域においては可能性があるのでございまして、また、国としてもこのような点について十分指導をいたしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
それから、利用目的が二つ以上に分かれたようなときにその関係をどうするかといったような意味の御質問でございまするが、入り会い林野等の農林業上の利用の増進ということの、この法案の趣旨がそこなわれないように、権利者の協議により十分納得を得させ、そうして合理的な土地利用計画が作成されるように指導し努力する、かような行き方でございます。で、入り会い権者と所有者が別人で、合意に達しない場合も、十分協議をさせるとともに、両者の納得のいくところでこれらについて合意を得られるようにあっせんを進めてまいるということで、進んでいきたいと考えておるわけでございます。
まあ大体そういうことでございます。(拍手)
〔国務大臣永山忠則君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/22
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023・永山忠則
○国務大臣(永山忠則君) お答え申し上げますが、これは地方自治法の第二百三十八条の六第一項で、所有権は地方団体にあることになっております。したがいまして、これを議会の決議で処分されることになっておるのでございます。しかし、今回の法案は、これを使用しておる旧慣使用者へ、農林業近代経営のために、これを譲り渡すということが目的でございます。旧来は、議会がかってに処分して公共事業へ持っていくこともできるようになっておりますが、今回の分は意見を聞いてやるということになっておるのでございます。そうしてこの使用者のほうへ譲り渡すということが目的でございまするから、私権化の方向へ整備をいたしているという状態でございます。したがいまして、旧来のような紛争はないようになるものであると考えるのでございます。(拍手)
〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/23
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024・石井光次郎
○国務大臣(石井光次郎君) 裁判判決例では、公有地につきましても、私法上の入り会い権の存在を認めているものがあるのであります。一方、地方自治法では、旧慣使用権なる権利についての規定をしておるのは、御説のとおりであります。したがいまして、公有地入り会いを、公法上の権利であるとか私法上の権利であるとかを、一律に判定することは困難ではないかと考えておるのでございます。すなわち、具体的事案を慎重に検討した上で、私法上の入り会い権であるとか、あるいは旧慣使用権であるとかを、判定すべきものであると考えておるのでございます。また、公有地を慣習によって利用しておる権利が、公権か私権かについて争いがあるように言われておりまするが、公有地について、私法上の入り会い権が存立しておる旨の裁判がなされた場合におきましては、関係行政庁は、もとより、その裁判を尊重すべきものであると存じておるものでございます。(拍手)
〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/24
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025・福田赳夫
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
造林事業に対する国費の支出が少ないのではないか、もっと増額せいというような御意見でございまするが、造林につきましてはもとよりできる限りの努力をしております。ただ、これが一挙にそう急にというわけにはまいりませんので、逐次ということでございますが、現に昭和四十一年度におきましても、造林費は五十四億円、また、その他融資のほうで七十一億円、それから草地改良の計画に乗り出しまして、十年間に四十万ヘクタール、その初年度といたしまして二十五億円というわけで、四十年度に比べますると、いずれも大幅な増額を計上しておるという次第でございますが、また、山村振興事業はいよいよ昭和四十一年度からその施行の第一年度という性格におきましてスタートされるわけであります。これも私は山村の振興のために相当貢献し得るものと考えております。
なお、税の扱いについて、生産森林組合が農業協同組合などと処遇が違うのじゃないかというような趣きの質問でございますが、考え方におきまして、生産森林組合と農業協同組合との課税につきましては、何らの違いはないのであります。ただ、生産森林組合におきましては、態様が少し違うのであります。大部分のものは農業協同組合のように相互扶助団体という性格でございますが、一部のものが、組合員が組合の中に没入すると申しますか、月給を取る、そういう仕組みのものがあるのであります。その仕組みをとるものを農業協同組合のように扱うわけにはまいらない。つまり農業協同組合と違いまして、生産森林組合の組合員が組合のために作業をする、その作業に応じて分配を受ける金、それにつきまして、これを損金算入にするという、そういうことは、もう税の理論上できないわけであります。また、いずれの場合におきましても、残余の剰余金を分配する、これはあたかも株式会社の配当に相当するものでございますので、これは配当課税が行なわれる、かように相なるものでございまして、これらの点はやむを得ないことでございまするが、根本的な考え方におきましては、農業協同組合と差別すべきものでもなし、また、差別してはおらないと、かように御了承願いたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/25
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026・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。寺
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027・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第三、銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事沢田一精君。
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〔沢田一精君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/27
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028・沢田一精
○沢田一精君 ただいま議題になりました銃砲刀剣類所持等取締法及び火薬類取締法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、
第一に、猟銃、空気銃の所持許可は、銃砲の所持取り扱いについての講習会の修了者等でなければ許可しないこと、所持の許可は五年ごとに更新すること、猟銃については、許可の制限年齢を二十歳に引き上げることなど、所持許可の規制を強化し、
第二に、銃砲の用途については、新たに標的射撃を加えるなど、規定を整備して、それらの用途以外には使用でなきいこととし、保管にあたっては、実包等を装てんしておかないごとなど、使用者に適正な方法で保管する義務を課す等、使用、保管についての規制を強化し、
第三に、猟銃等に使用される実包火薬類等の譲渡、譲り受け等の許可に関する権限を、都道府県知事から都道府県公安委員会に移管すること等をおもな内容とするものであります。
本委員会におきましては、暴力団の取り締まり及び拳銃の取り締まり状況、銃砲等の所持許可、使用の実情、精神障害者による事故対策及び更新の期限等について、慎重審査いたしましたが、詳細は会議録に譲ります。
かくて、質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、本委員会におきましては、銃砲による危害予防の一そうの徹底を期するため、銃砲の保管についての十分な指導措置、精神障害者に対する事故防止策の推進、さらに、狩猟用及び射撃用のいずれにも使用されることのない銃砲の発生防止につとめることを要望する旨の附帯決議を、全会一致をもって可決いたしました。
以上報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/28
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029・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/29
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030・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/30
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031・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第四、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長木内四郎君。
〔木内四郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/31
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032・木内四郎
○木内四郎君 ただいま議題となりました法律案は、現在の在勤俸が昭和三十七年に制定されて以来、世界各地とも、物価や生活条件に変動があり、かつ諸外国外交官の給与との格差が著しくなったこと等を考慮いたしまして、在外職員の給与を改善するため、在勤俸の支給額を改定しようとするものでありまして、特に、中級及び下級職員並びに生活環境のきびしい東欧、アフリカ、中近東等における在外職員の在勤俸の改善に配慮を加えたものであります。
なお本案につきましては、衆議院において、施行期日を公布の日に改め、本年四月一日から適用すること等を内容とする修正が行なわれております。
委員会におきましては、慎重審議、特に在外職員の人事、給与上の諸問題等につき、熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。
四月十九日、討論、採決の結果、本案は全会一致をもって衆議院送付案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/32
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033・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/33
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034・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二分散会
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〔木内四郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/34
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035・木内四郎
○木内四郎君 ただいま議題となりました法律案は、現在の在勤俸が昭和三十七年に制定されて以来、世界各地とも、物価や生活条件に変動があり、一か?諸外国外交官の給与との格差が著しくなったこと等を考慮いたしまして、在外職員の給与を改善するため、在勤俸の支給額を改定しようとするものでありまして、特に、中級及び下級職員並びに生活環境のきびしい東欧、アフリカ、中近東等における在外職員の在勤俸の改善に配慮を加えたものであります。
なお本案につきましては、衆議院において、施行期日を公布の日に改め、本年四月一日から適用すること等を内容とする修正が行なわれております。
委員会におきましては、慎重審議、特に在外職員の人事、給与上の諸問題等につき、熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと思います。
四月十九日、討論、採決の結果、本案は全会一致をもって衆議院送付案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/35
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036・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/36
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037・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105115254X02319660420/37
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