1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十二年七月五日(水曜日)
午後一時三十六分開議
出席委員
委員長 矢野 絢也君
理事小宮山重四郎君 理事 齋藤 憲三君
理事 福井 勇君 理事 石野 久男君
理事 三木 喜夫君 理事 内海 清君
秋田 大助君 池田 清志君
岡本 茂君 桂木 鉄夫君
佐々木義武君 世耕 政隆君
箕輪 登君 石川 次夫君
三宅 正一君 山内 広君
出席国務大臣
大蔵大臣 水田三喜男君
文部大臣 剱木 亨弘君
国務大臣 二階堂 進君
出席政府委員
科学技術政務次
官 始関 伊平君
科学技術庁長官
官房長 小林 貞雄君
科学技術庁原子
力局長 村田 浩君
大蔵省主計局次
長 岩尾 一君
委員外の出席者
原子力委員会委
員 有澤 廣巳君
原子力委員会委
員 山田太三郎君
参 考 人
(日本原子力産
業会議副会長) 大屋 敦君
参 考 人
(電気事業連合
会原子力発電対
策会議委員長) 加藤 博見君
参 考 人
(電源開発株式
会社総裁) 藤波 収君
参 考 人
(日本原子力発
電株式会社社
長) 一本松たまき君
参 考 人
(株式会社日立
製作所副社長) 清成 迪君
参 考 人
(東京大学教
授) 大山 彰君
参 考 人
(東京工業大学
教授) 垣花 秀武君
参 考 人
(全国電力労働
組合連合会会
長) 亀山 徴瑞君
参 考 人
(原子燃料公社
労働組合中央執
行委員長) 水船 隆昌君
参 考 人
(日本原子力研
究所労働組合中
央執行委員長) 鶴尾 昭君
参 考 人
(原子燃料公社
理事長) 今井 美材君
参 考 人
(日本原子力研
究所理事長) 丹羽 周夫君
—————————————
本日の会議に付した案件
連合審査会開会申し入れに関する件
原子力基本法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七二号)
動力炉・核燃料開発事業団法案(内閣提出第七
三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/0
-
001・矢野絢也
○矢野委員長 これより会議を開きます。
原子力基本法の一部を改正する法律案及び動力炉・核燃料開発事業団法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/1
-
002・石野久男
○石野委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。ただいま審議しておりまするこの事業団法の検討を進めていきますると、この事業団法が目的としておる新型転換炉並びに高速増殖炉の自主開発は相当長期にわたって行なわれることになっておりますが、これを可能にするにあたって、人材をどのようにして結集するか、資金をどのようにしてこれに注入するかという問題が、最終的には非常に大きい問題になってくる、こういうことかこの委員会でははっきりしておるわけでございます。単年度の仕事ではなく半長期的な計画になっておるのですから、これらの資金に対しての手当て、これが国の場で相当信憑性のある体制にならなければいけない、こういうように考えております。
そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、原子力産業を育成するというたてまえで、この法案を所期の目的どおりに成功させようとする場合、政府は、この半長期的な、十年ないし二十年にわたっての見通しに対する資金的裏づけというものをどのように考えておるか。特に、予算の支出面を預かっております大蔵大臣が、科学技術政策の側面から予算をどういうふうに見ておるか、原子力に対してはどういうようなお考えを持っておられるか、この際、大蔵大臣から所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/2
-
003・水田三喜男
○水田国務大臣 この事業団をつくるときに、もうすでに私どもはこの資金の問題の検討も行ないましたが、少なくとも十年間に二千億円くらいの資金を要するということでございますので、一年当たりと見ましても、算術計算でも二百億というものが出てまいります。いま科学技術庁の科学振興費のようなものが六百億ということを見ますと、この研究に踏み切ることが日本のいろいろなほかの科学研究費を相当圧迫するということはわかっておりますので、そこで、当初からこの問題についていろいろ検討しましたが、踏み切った以上は、この必要な資金を当然捻出するということは考えていますが、しかし、これは原子力委員会でもきめておりますように、それだけ巨額な資金を要することでございますので、ひとり政府だけの仕事ではいかぬ、民間あげて協力体制をとっていくのでなかったらこの研究の完成はできないというような意見も出ておりますとおり、これは官民一体で相当強力な体制をとってこの資金問題の解決にも当たらなければ、簡単な研究じゃないというふうに思っておりますので、国費の必要なものは国が分担しますし、民間に協力してもらう面についてはこれから協力体制をとるということによってこの研究を完成させたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/3
-
004・石野久男
○石野委員 この事業団をつくるにあたっての政府の予算的な面での負担をするという覚悟は一応わかりましたが、この事業団法をいろいろ検討していきますると、世の中が非常に景気のいい場合には案外に仕事はしやすいかと思うのです。景気が悪くなった場合などには民間などが協力体制から案外に消極的になってくるだろうというようなことも考えられる、そういう憶測を私たちとしてはするわけです。そうなってまいりますると、この事業団というのは、先ほども申しましたように、単年度でものごとを成し遂げるということではございませんで、十年ないし二十年にわたる長期の計画でありますので、そういうような経済的変動が来た際においても、やはりこの事業計画を国家的なプロジェクトとして、成功させるという強い決意がなければならぬだろうと思います。だから、一たん国民の血税をそこへつぎ込んでいくという以上は、むだ金になってはいけないということは、だれが考えたってわかることだと思います。したがって、それがむだ金にならないための政府の恒常的な形での積極性を示す体制というものが予算の中でどういうふうに出るかということを私どもは心配しているわけです。そこで、いま大蔵大臣からは、決意をした以上はやるんだ、こういうお話でございましたが、それを予算の面では、たとえば長期継続的な費用としてどのように組み上げていくのか、やはり単年度ごとの積み重ねというような方式だけでそれが可能になるのかどうか、そこらのところを——長期にわたる予算二千億というものは、私の考えではいま経済界はまだ物価面では落ちついておりませんし、経済の情勢から見ると、むしろ物価高というようなものが出てくるだろうと思うのです。そうなれば二千億かあるいは三千億、五千億をかけなければこの仕事がしにくくなるような状態になるんじゃないだろうか、そういう場合にも即応するだけの決意があるかどうかということ、これは簡単でいいのですが、大蔵大臣の決意をひとつ聞かしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/4
-
005・水田三喜男
○水田国務大臣 御承知のように、とりあえず本年度の予算措置はとりましたが、今後十年先の資金計画というものはそう簡単にはまいりませんので、いま言われましたような物価の変動、いろいろなこともございましょうし、今年度は片づきましたが、来年度の予算編成においてそう短期的な構想だけではこれはいかぬと思いますので、来年度の予算編成のときに、この問題は実際国のプロジェクトとして完成させるというための構想をまじえた予算編成をしたいというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/5
-
006・石野久男
○石野委員 長期にわたるところの予算に対して政府が腹がまえをしてそれを来年度の予算編成の中へ組み入れていこうという大蔵大臣の決意はわかりました。これはやはり積極的にやっていただかなければいけないと私は思いまするので、どうぞひとつそういうふうに予算編成を進めてもらいたいと思います。国がはっきりとこの予算の裏づけするということなしでは、事業団の所期の目的はとても達せられないだろうと思います。
一言だけわれわれの心配していることを申し述べますと、財界が、長期にわたるところのこのプロジェクトに対する協力体制を積極的にするかあるいは消極的にするかという問題の大きな問題点というのは、国が予算をどのように出すかということにかかっていると思います。だから、案外に国が消極的である場合には、おそらく財界は興味を持たないことになってしまうだろうと思います。私どもは別にこの予算を通じて財界に御奉公しようとは思っておりませんけれども、国のプロジェクトを達成するための国自体の熱意というものは非常に大事だと思っておりまするので、そういう点で、予算の編成にあたっての責任ある大蔵当局の態度をはっきりとこの際確認をしておきたかったのであります。
ことに、この問題については、ただ金を出すということだけではなしに、先ほども申しましたように人材を養成するという面がございます。人材養成という問題になりますると文部当局の仕事になろうかと思うのですが、二十年間にわたるところのプロジェクトを達成させるためにこの方面に関する技術者の養成というものは、いままだ確たる計画というものがないようでございます。しかし、これは相当程度積極的な文教政策上の体制が出なければ、おそらく事業団の趣旨を達成することはできないだろうと思うのです。
文部大臣にお尋ねしますが、この事業団ができますると、そういう人員計画等がおそらくもっと細密になされるだろうと思います。そういう問題に対して文教当局はそれに即応するような予算編成なりあるいは教育の体制というものをつくる用意があるかどうか、この際文部大臣の御所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/6
-
007・剱木亨弘
○剱木国務大臣 原子力専門科学技術者につきましてただいま要請されておりますのは、これは専門分野だけでございますが、前半五カ年ぐらいは約百十数名新たに補充をしていくということになっておりますが、後半に至りますと四百名以上必要であるということのようでございます。これにつきましては、ただいま七つの旧帝大でございますが、そこに原子力関係の学科がございまして、それらが、入学定員が大体三百六十名程度でございます。これは現段階におきましては一応充足できる状態にあると思っております。しかし、将来に向かいましてはなお不足する部面がございますので、原子力委員会その他とも十分御相談申し上げまして将来の養成計画を立ててまいりたい。
なお、原子力関係で専門原子力関係の技術者以外におきまして一般工学的な部面の技術者も初期におきましては千二、三百名ぐらい必要である。五カ年後におきましては、二千四百名から三千名を必要とする。これはただいまの技術者養成計画からいいますとその一部分でございますので、一応間に合う予定でございますけれども、なお詳細につきましては、今後その進展に伴いまして関係方面とも十分協議いたしまして、極力技術者の養成については努力してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/7
-
008・石野久男
○石野委員 いま文部大臣からお話のありましたような趣旨、それはそのようにしてもらいたいのですが、ただ原子力局から出ておりまする要員の資料においては、なお民間におきまする要員などもまだ完全には補足されてないと思います。しかも、このプロジェクトを遂行する過程においては、一面においては、軽水炉による発電がどんどん行なわれていくわけです。この軽水炉は導入炉によるか国産炉によるかわかりませんが、そういうふうにして業界におきまする原子力関係の要員というものも相当程度ふえるだろうと思います。したがって、ただいまお話しになっておられるのは、旧帝大と言っておりましたが、国立大学関係だけでそういうふうな御所見だろうと思いますけれども、私立関係、公立関係をも含めてこれらの理工科系学生の人員補足というものは積極的になされなければならないだろうと思いますが、文部大臣は国立大学だけでそういう充足をかちとろうとしておるのか、私立や公立についてはどういうように考えておるか、これらの点についてもひとつ御所見を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/8
-
009・剱木亨弘
○剱木国務大臣 いま国立の場合だけを申し上げましたが、現在におきましても、東海大学及び近畿大学におきまして原子力の要員を養成いたしております。
なお、つけ加えて申し上げますけれども、原子力の科学技術者は、相当高度の研究技術、能力を必要としますので、やはり大学を卒業しただけでなしに、修士課程及び博士課程におきましても相当の養成をしてまいる予定でございます。なお、最近におきましては、北海道、それから九州大学とか名古屋大学等に、これは最近でございますけれども、これらを増設いたしまして、できるだけ科学技術者の養成並びに高度の技術者の養成に努力してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/9
-
010・石野久男
○石野委員 人材の養成の問題は国立だけじゃなくして、公立、私立を含めて積極的にやらなければいけないだろうと思います。そのための文教政策が当然行なわれなければならぬ。文部大臣はそれをやるという決意をいま表明されました。これは当然予算がくっついてくることなんですが、大蔵大臣にお尋ねしておきたいことは、これらの文教政策上からくる科学技術の面での人材養成、それに伴うところの文教予算というものが、従来考えている以上に予算面では要求されてくるだろうと思うのです。そういう面については、大蔵当局はそれに優先的な配慮をして、それらのものに対する予算措置などを予算編成上考える用意があるかどうか、大蔵大臣の所見をひとつ承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/10
-
011・水田三喜男
○水田国務大臣 この前参議院の本会議で、同じような問題に私は答弁いたしましたが、やはり資本の自由化ということを前にして必要なのは、これから日本の国産技術の研究開発ということが一番大きい問題になります。したがって、来年はそういう意味で、こういう研究開発費というものについては私は思い切った予算を盛ってみたいということを申しましたら、参議院では社会党から非常な支持を得まして、なるたけその調子で大蔵大臣かわるなというえらい激励を受けましたが、その問題はじょうだんといたしましても、私はいろんな分野において研究費というものに相当大きい比重を置いた予算編成をする時期が来ているというふうに考えますので、この点は十分気をつけていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/11
-
012・石野久男
○石野委員 あと一つだけお尋ねしておきます。研究開発については思い切った予算的措置をするということは私もやはり非常に支持をいたします。大臣をやめないでやっていってほしい。
そこで、大蔵大臣、文部大臣双方にお尋ねしておきますが、最近日本における技術の面では頭脳が海外に流出していくという問題が一つあります。これを防ぐということは、これは文部大臣の問題じゃなくて、むしろ通産とかいろんな側面があろうと思いますが、主としてこれは大蔵大臣の、こういう高度な技術者を海外に出さないような体制をするかまえがなければいけないということになろうかと思います。そういう点についても、大蔵大臣は予算編成上の配慮をなさる用意があるものと思いますが、なお念のためにお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/12
-
013・水田三喜男
○水田国務大臣 いま言った答弁の中には、こういう学術研究費も一応全部入ってのことでございますので、御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/13
-
014・石野久男
○石野委員 この問題は、大臣は、ただいまの答弁の中であるということでございますが、私はやはり日本の頭脳を海外に出さないようにしようとするのには、予算的に、たとえばその人たちの処遇の問題とか、あるいは研究施設の問題とか、そういうものを配慮しなければ、おそらく流出は依然として続くと思うのです。いまちょうどテレビで「太郎」とかなんとかいうのが出ておる。あれにやはりそのことが出ておるわけです。資本の自由化が出てきますと、一番大事なのは、頭脳を流出させないというところに重点を置かないと、資本の自由化に対抗することはできないだろうと思います。これはやはり政府みずからがそういう腹がまえをしなければ、財界だけに、業界だけにそれをまかしても、それは無理だろうと思います。だから、この点ではもっと思い切った体制が政府の中から出てこなければいけないだろう、こう思うのです。これは大蔵だけではなしに科学技術庁のほうでも、あるいは文教政策上からもそういう問題があろうかと思いますが、この問題は私はきわめて重要だと思っておりますので、この際、一応各大臣に、それぞれの所管におけるところのこの問題についての御所見だけをお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/14
-
015・剱木亨弘
○剱木国務大臣 学者の海外流出の問題は非常に問題でありまして、ここにいらっしゃいますけれども、科学技術庁と十分調査をいたします。でございますが、現在におきましては、学問の国際交流という問題がございまして、たとえば二年か三年ぐらいの間、研究者が海外で研究しておる場合が非常に多いのでございますが、明らかに向こうに就職をいたしまして、一応長期にわたって向こうに滞在するという数は比較的に少のうございます。いままで調べましたところ、百四、五十名というところでございまして、その数は少ないですが、しかし研究者の研究業績は海外にとどまっておる人に非常にあがっておる人がおるわけでございます。また今後海外流出の場合が非常に多くなってまいりますので、私どもといたしましては、できるだけ国内におきまする学者の研究条件をよくいたしまして、海外に行かないで、日本にとどまって、日本の科学研究の上に貢献していただくという形に今後私どもとしては全力を注いでまいりたい、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/15
-
016・二階堂進
○二階堂国務大臣 ただいま文部大臣が御答弁申し上げたとおり、来年度の予算要求につきましては、文部省と緊密に連絡をいたしまして、具体的な方策をきめまして、ここにおられます大蔵大臣に強くお願いをいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/16
-
017・水田三喜男
○水田国務大臣 こちらは要求官庁でございませんで、ここの科学技術庁長官のほうから予算の要求があれば、十分それに対して対処するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/17
-
018・石野久男
○石野委員 大蔵大臣は、文部省や科学技術庁その他から、人材の特に頭脳の流出を防ぐための政策なり施策予算というものの要求があればそれにこたえるという御意見ですから、これは非常にありがとうございました。そういうふうにやってもらいたいと思うのです。私は、そういうように非常に積極的な大臣のお考はわかったのですが、それについては、ちょっとひっかかることが一つございますので、お尋ねしておきたいと思います。
去る五月十八日の本会議で私がこの事業団法案についての質問をいたしましたときに、大臣は、特にこの高速増殖炉、新型転換炉の開発にあたって「海外での開発の成果を直接取り入れるほうが効果的である」、こういうような場合には、「したがって、二年とか三年というふうに、適当な期間ごとに研究開発を一ぺん見直す」ということを言っております。そして答弁の最後には「一定の期間ごとにこの成果を見直すということが必要であるということを主張したわけでございます。」と、こういう御答弁を私はいただきました。そこで私は、この意味がもし私たちが心配しているような意味であると、これはたいへんなことだと思うのでお尋ねするわけですが、この三年ごとに見直すという意味は、たとえば新型転換炉を事業団として研究開発していきます。その三年目ぐらいのときに、海外で新型転換炉のすばらしくすぐれたものが出ておる、日本でもまあ大体開発は八分どおり九分どおりまでいっているけれども、しかしそちらのほうが安くていいじゃないかというような場合には、これを見直すということの意味は、もう研究開発というものをここらで打ち切って、こちらの事業を導入炉に置きかえてしまうという意味なのかどうなのか。ここのところがちょっと判断に苦しむわけなんです。もしそうであるとすると、これはたいへんなことだと思っておりまするので、大臣が御答弁くだすった意味というのはどういう意味なのか、この際もう一度わかりやすく説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/18
-
019・水田三喜男
○水田国務大臣 御承知のように、高速増殖炉の開発のほうは、今後まだ長年月を要する問題であり、各国ともいま研究に入っておるところでありますから、大体スタートはそろって研究に着手できるという問題でございますが、一方、新型転換炉のほうは、すでに外国においてその開発が行なわれて、日本の研究のほうが相当おくれていることは事実でございます。しかし、この研究開発をあえて日本がやるということは、やはり国産技術の開発というところに意味があることでございますので、この研究開発はするという方針はきめました。しかし、この研究をやっている過程において、日本の開発のほうがおくれて外国の技術が非常に進んでいるという場合には、いままでのこちらの成果を一応検討して、そういう技術は外国技術を取り入れてさらにその上の研究を続けていくということも必要になる。この研究の過程においては、そういう必要が出てくることも予想されます。したがって、長くかかる研究を、長期計画を最初の段階でもういろいろ計画化して固定化してしまうということは、資金の効率的使用という面から見ても問題な点が多いだろうということを考えますと、三年ぐらいの期間に当方の研究成果を一応見直して、そして、さらにそれを続けていくか、また、その過程において外国技術もそこで導入して、その上に国産技術の開発を積み重ねていくかというようないろいろな検討を加えて、この研究を進めていくことのほうがやり方として適正じゃないか、こういうことを考えて三年目くらいにいままでの成果を検討しようということを、これは私どもの意見ばかりでなく、科学技術庁においても大体そういう方向の同意が得られましたので、そういう答弁を申し上げたようなわけでございまして、これによって研究をやめるとかいうようなものを前提としたものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/19
-
020・石野久男
○石野委員 研究をやめるものでないという最後のところで大体了解はするのですが、途中の説明の中で、研究の過程において、外国で優秀な技術があり、実績のあがっているようなものがあった場合にはそれを取り入れるということまでは、これは研究開発の過程であり得ることだと私は思っているのです。だけれども、こちらの開発している進度とそれから外国でもうすでに完成品、実用炉という形でできてきたものとの見合いの中で経済的効果その他を見て、こちらは八分どおり九分どおりまでいっているけれども、どうもこれ以上金をつぎ込むことはまずいから、いっそのこと向こうのものを入れるということで、一部分じゃなく一〇〇%入れてしまうということになりはぜぬかということの心配を私はするわけです。そういうことになると、日本で研究したことはあんまり役に立たなくなってしまいまするし、投入しました資金もむだになってしまいますから、大臣の言う意味は、とにかく八分どおりきているけれども、向こうのものにいいものがあった場合、捨てるんじゃなくてやっぱり向こうの技術を入れて、とにかくこれはこれなりに完成させるというところまでの意図を持っているのかどうか、そこのところを私はもう一度聞かしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/20
-
021・水田三喜男
○水田国務大臣 そういう意図を持っておりますから、私どもはいろいろまた心配をしているわけでございまして、たとえばこの事業団が技術開発をやっている過程において、外国の研究のほうが進み過ぎたという場合には、はたしてこの国産技術の開発による炉を電力業者なら業者、日本の産業界が使うかどうか。全く使わない見込みというようなものが出てきますと、この研究はやはり一つの挫折ということになりますので、そういうことのないように、どういうふうにするかということがむしろこれから私どもが心配する問題であるというふうにも私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/21
-
022・石野久男
○石野委員 いま私がお聞きしようと思ったことを大臣のほうから先に御答弁がございましたが、いわゆるユーザーの意見がこれには非常に関係があります。したがって、ユーザーが所望しないということになれば研究の意味がないじゃないかという意見は一応はごもっとものように見受けられますが、自主開発という側面からいきますると、ある時点ではユーザーの直接的な要求はなくとも、研究の成果に対する見通しからすれば、日本の国の国民経済の将来性から考えれば、長い採算計算の上ではこれのほうがいいんだという見通しがある場合が多々あろうと思います。特に研究開発の場合は、おくれて研究開発に入り込んだ日本の場合にはそのことが非常に重要だと思っておるのです。そのときに大蔵省が、ユーザーのほうでの希望が全然ないんだから——研究している意欲も非常に高まっているし、成果ももう目の先まできているんだというようなときに、ユーザーのなにがないんだからというので打ち切られちゃいますと、これはもうほんとうに自主開発というものはむだになっちゃうだろうと思うのです。ここらのところの決断のあり方というものは、事業団を発足させるにあたって、プロジェクトを設定するにあたって非常に重要な課題になろうかと思っております。私どもは、いま本法案を審議するにあたって、その点を一番問題にしているわけなんです。われわれの聞き及ぶところでは、ユーザーには新型転換炉なんかやるなという意見があります。もうそんなものはやらないで、導入して、高速増殖炉一本でやりなさいという意見が非常に強いということも聞いておるわけなんです。そういう段階で、これだけの予算も組み、研究に入っていくんですから、政府が中途で腰折れしてしまうというようなことになったならば意味がないと思います。そういう点についての大臣の腹がまえだけはこの際もう一ぺん聞かしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/22
-
023・水田三喜男
○水田国務大臣 さっき申しましたように、やはり国産技術の開発というところに意味があることでございますから、私どもが二、三年で一ぺんその成果を検討するということを言っておりますのは、そういうことをしないでいく場合にいろいろな危険性が出てくる。むしろユーザーの意欲とかいうようなものを知るためには、外国の開発技術を取り入れるべきものは取り入れる、そうしてその次の技術開発を日本の力でするというようなことを中途でしないと、むしろわれわれがおそれているような結果がきはしないかということを心配しておりますので、私はそういう意味からもときどき期間を切って検討をするということが、国産技術をほんとうに日本の技術開発を最後までやり遂げるんだという意味からも必要じゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/23
-
024・石野久男
○石野委員 大臣の意向は大体わかりました。非常にむずかしい問題だと思いますが、いまお聞きしましたような方針を曲げないようにやってもらうように希望いたしたいと思います。
大臣が急ぐようですから、私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/24
-
025・矢野絢也
○矢野委員長 内海清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/25
-
026・内海清
○内海(清)委員 大臣が非常に時間がなくてお急ぎのようですから、簡単に二点ほどお伺いいたしたいと思います。
大臣もすでに御承知だと思いますけれども、この委員会で、今度できまするいわゆる新事業団の性格につきましては非常な論議があったところでございまいます。結局、科学技術庁の長官もあるいは有澤委員も、そしてまた総理も、この事業団は原則として実施部隊を持たない、いわゆるボード的性格のもので、参謀本部的機能が要請されるものであるというところに統一されてきたと思うのであります。そういうことでございますが、しかしながら、御承知のように燃料公社関係部門がこれに事実上吸収されます。でありますから、この部門は別でありますが、動力炉の研究開発部門につきましては、いままで述べましたような特殊な性格を持ちまして、既存の官民各機関をそのままの形で総合協力体制を整える、こういうことになるのでありまして、この新法の二十四条だったと思いますけれども、業務の委託ということが非常に大切な、この事業団の成否を決しまするようなかぎとなる問題だと思うのであります。そのために、別に定める基準に従って各機関に業務の委託が行なわれることになる、こういうことであると思います。そこで、別に定める基準をどう定めるかということがきわめて重大な問題になってくるのでありますが、科学技術庁の御説明によりますると、これは大蔵省と十分協議して、その目的に沿うようにこの基準を定めるつもりである、こう答弁されておるのであります。この新事業団の新しい性格というものを十分生かすように、これは大蔵省でも格段の御配慮を願わなければならぬと思いまするが、大蔵大臣におきましてその配慮の御用意があるかどうか、この点をひとつお伺いいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/26
-
027・水田三喜男
○水田国務大臣 いまおっしゃいましたように、全体の参謀本部的な機能を果たすと同時に、自分自身、実際の研究を直轄してやるというようなこともいたしますし、委託という問題もございましょうが、そういう点は十分配慮してやっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/27
-
028・内海清
○内海(清)委員 この事業団は、いま申しましたような性格でございまして、もちろん企画というふうなものはここでされるわけでありますけれども、大部分の業務というものは、いま申しましたような方向に進んでまいると思うのであります。したがって、この点は確かに、いままでのあれからいいますと、新しい一つの行き方であると考えるのでありまして、これに対しまして大蔵省の十分なるこの裏づけが出てまいりませんと、この事業団は成功しないと思うのです。この点につきましては一そう今後御留意願いまして、この事業団が成功いたしますように、格段の御配慮を願いたい。時間がございませんので、あまり論議をいたしませんが、特に強く要望申し上げておきます。
それから次にお伺いしたいと思いますのは、これはどうかと思いますが、いま申しましたような性格である、委託業務ということがある、しかも長期の計画でございます。したがって、この事業団を遂行、実践いたします上につきましては、予算の面におきましても非常な配慮が行なわれなければならぬと思う。いま石野委員との質疑応答におきまして大臣もその決意を述べられ、これを成功させるのだという御意見を拝聴いたしまして、たいへん心強いわけでありますけれども、この委員会でもやはり、予算がもはや単年度制ではどうにもならないのではないかというふうな意見も出てまいったわけであります。結局、予算の要求や配分や消化に年じゅう追われているだけで、たとえば一つのものを買うにいたしましても、なかなかまとまって買えない、予算を流してはいかぬから、年度末になったらこれを購入してしまう。そこらにむだが生まれてきはせぬかということを私ども考えるのであります。
かつて、愛知さんが五年間のころがし予算というものを考えられたことがあると思うのでありますが、こういうことは、ことに長期のこの開発という面につきましては十分考えられなければならない問題だと思う。もちろん、これらにつきまして、いま大臣のお話を承りましても、三年ごとくらいにチェックして、そしてこれを前進の方向に持っていくという御意見でございます。けっこうでございますけれども、なお、われわれはやはり長期的な展望に立っての予算というものが必要である。ことに委託業務ということが付随いたしております以上、その点は十分お考えいただかなければならぬと思うのでありますが、この点に関しまして、科学技術庁関係の予算について大蔵大臣にこれを改めるような御意向があるかどうか。これは、私は前に原子力船事業団の場合にもいろいろ御質問したことがあるわけでありますが、いまだにその問題は残っておる。大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/28
-
029・岩尾一
○岩尾政府委員 科学技術関係の予算につきまして、先ほどお話しになりましたようなころがし予算というようなお話があるわけでございます。これは英国等でやっております。科学技術関係の予算についてある程度のターゲットを設定いたしまして、そのターゲットについて毎年毎年の予算の入りぐあいによってそれを修正しながら予算をやっていく、こういうやり方でございます。
今度は予算技術上申しますと、先ほど申されたような長期の計画を立てて、それに即応していくというやり方につきましては、現在の予算では国庫債務負担行為というような形でやるとか、あるいは継続費とか、そういった予算技術があるわけでございます。先生のおっしゃったような意味で、実際上の研究の成果を見ながらそれに応じて予算をよくつけていく。しかも、使い残しというようなむだのないようにしていけ、こういうおつもりでございますならば、科学技術庁とも相談の上、しっかりしたこの計画のターゲットをつくっておいて、そして予算としてはその中に、あるいは国庫債務負担行為で買うものもございましょう。そういうものによって処理をしながら、毎年毎年必要な経費を算定し、また、財政事情も勘案しながら予算をつけていくという現行の日本の制度で十分対処できるのではないかというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/29
-
030・内海清
○内海(清)委員 現行の日本の予算制度で十分対処できるということでありますが、この問題は、いま申しましたような事業団の性格からいい、長期のものであり、しかも委託業務があるという点から申しますならば、よほど考えられませんと、十分なる事業団の成果があがらないということです。単年度予算の積み重ねで、いまのようなお話で、はっきりした一つの計画ができていけば差しつかえないではないかということでありますけれども、この問題は、たとえば原子力船の問題にしても、そういうふうな問題で今日まで論議して突き当たった問題であり、それがいまだに考えられないのでありますが、ことにこういう大きなプロジェクトの長期のもの、こういうものにつきましては、どうしても長期的な考えを持っていかなければならぬ。そこで愛知さんが科学技術庁長官当時にそういうお話が出て、それはまことにけっこうであるというふうにわれわれは考えたのでありますけれども、それがいまだに実現しない。日本の会計制度では非常に困難な問題もあるかもしれませんが、しかし、困難な問題があるから、それをさらに考慮せずにこのままでいくということは、日本の科学技術の進歩を阻害する。ことに、先ほどもお話がございましたが、資本自由化等に対処して日本がほんとうに生きるためには、今後科学技術のより発展よりほかに道がないのであります。その根本だということであるならば、これらにつきましては、政府としては十分考えらるべきではないか、今後考慮さるべきではないか、こういうふうに考えるのであります。大臣の御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/30
-
031・水田三喜男
○水田国務大臣 全く計画がない場合は問題であろうと思いますが、たとえば防衛力の予算のように、一定の長期の計画というものが大体ある、その線に沿っての予算編成ということになりますと、いま主計局次長が申しましたように、単年度予算であっても、国庫債務負担行為というような予算技術によって対処し得る、現にいままでいろいろの問題をそういうふうにやってきましたから、その点では私は支障はないと思いますが、ただ、こういう大きい問題でございますので、全く長期計画なしではむずかしい。したがって、先ほど申しましたように、もう少し長期的なものについて、私どもは、科学技術庁との作業によって、この問題は支障のないようにやる、技術的には十分やれるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/31
-
032・内海清
○内海(清)委員 もう時間がございませんので終わりますが、いま直ちに日本の会計法を変える、そういうことも困難でございましょうが、いずれにいたしましても、要はこの事業団が所期の目的を達成できるようにということでございます。したがって、今後その面に関して大蔵大臣といたしまして十分なる御考慮をいただく、あくまでもこの事業団の目的を達成せしめるということにつきまして、予算面におきましても格段の御配慮をいただきたい、この点をひとつ強く要望いたしまして、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/32
-
033・矢野絢也
○矢野委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/33
-
034・矢野絢也
○矢野委員長 それでは速記を始めてください。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/34
-
035・矢野絢也
○矢野委員長 引き続き、参考人より御意見を聴取することといたします。
両案審査のため、本日参考人として、日本原子力産業会議副会長大屋敦君、電気事業連合会原子力発電対策会議委員長加藤博見君、電源開発株式会社総裁藤波収君、日本原子力発電株式会社社長一本松たまき君、株式会社日立製作所副社長清成迪君、東京大学教授大山彰君、東京工業大学教授垣花秀武君、全国電力労働組合連合会会長亀山徴瑞君、原子燃料公社労働組合中央執行委員長水船隆昌君、日本原子力研究所労働組合中央執行委員長鶴尾昭君、原子燃料公社理事長今井美材君及び日本原子力研究所理事長丹羽周夫君、以上十二名の方々に御出席を願っております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうか両案に関しそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。
なお、時間の都合もございますので、参考人の御意見の開陳は、お一人約十分程度にお願いすることとし、後刻委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願い申し上げます。
それでは大屋参考人からお願いいたします。大屋参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/35
-
036・大屋敦
○大屋参考人 今回、原子力基本法の一部改正法案、動力炉・核燃料開発事業団法案が御審議を願っておるということを承知しておるのでありますが、それにつきまして簡単に一言私から意見を述べさしていただきます。
私は原子力産業会議副会長をしております大屋敦であります。
大体もう皆さん御承知のとおりでございまして、近ごろ原子力発電というものがだんだんそろばんに乗ってまいりまして、日本のみならず、アメリカでも、あるいはヨーロッパでも、原子力発電所が相次いで設置されるというふうな機運になってまいりました。また、日本におきましても、ただいま東海村あるいは敦賀の方面に現実に完成したものもあるし、また目下設置中のものもあります。計画中のものを入れますと昭和五十年、これからまだ七、八年ありますが、五十年に大体六百二十万キロの原子力発電所が日本にできるということになっております。もうそれ以後は原子力発電専門になりまして、大部分の電力の需要は、原子力発電でまかなうということになりますために、それから以後の十年間にさらに四千万キロの原子力発電ができるというふうに想像されております。
わが国は従来大体軽水炉といわれます型を使うことにしておるのでございまして、それは海外の技術をそのまま使うという行き方でやっておるのでありますけれども、そろそろ世界の情勢が、それぞれの国の独自の技術を開発するという必要がだんだんに増大してまいりました。日本もそう原子力発電に海外の力をかりるというわけにもいかぬと思いますので、ことに、これから考えられます新しい原子力発電につきましては、どうしても日本の力で技術を開発する。場合によりましたら、そのでき上がったものを海外に輸出するということにつとめなければならぬような情勢になってまいりました。
それで原子力発電というもので一番大事な問題は、やはり燃料であります。火力発電所でも石油が大事でありますと同様に、原子力発電所でも燃料が大事でありまして、その燃料をいかに効果的に開発するかということが問題であります。
今回政府が動力炉・核燃料開発事業団というものをつくろう、そうしてそれらの問題を日本独自の技術で解決しようという案を出しておられるのでありますけれども、先ほど申し上げましたとおり、そういう技術は日本で開発しなければならぬという世界の大勢でありますので、われわれ原子力発電に関係のあります者は、原子力産業会議をはじめとし、あるいは電力会社、 メーカー、こぞってこの事業団の設立を熱望しておるのであります。
こういうものはひとつの勢いがありまして、この際にこれを発足させないというと、このせっかくの大事な問題が中だるみになってしまうということを非常におそれておりますので、何とかしてこれをレールに乗せたいということを財界、産業界が一致して希望して一おるのであります。
それにつきまして、もう少し詳しくお話しますと、従来のわれわれの使っております軽水炉というものは、普通のごく微濃縮と申しますか、濃縮ウランを燃料に使っております。濃縮ウランはアメリカから輸入をしたものを使っておることになるのでありますけれども、これから天然ウランをそのまま使うということになりますれば、それだけ原料の取得の範囲が広くなりますので、そういう原子炉を開発したい。それには転換炉とか、あるいはさらに進みまして増殖炉であるとか、こういうものをどうしても開発しなければならぬという運命になっておるのであります。まだここ数年間は、従来の軽水炉一本でいきますけれども、それから次には、できるだけ燃料を節約するという観点から、転換炉であるとか、あるいは増殖炉というものを開発しなければならぬ。しかも、その技術は、日本の技術をもって開発をしたいということがわれわれ財界、産業界の一致した希望であります。
それでありますから、なお詳しいことは、また御質問がありましたら御返事いたしますけれども、この設置法案というものの成立を、われわれ産業に従事しておる者は一致して熱望しておるということを特に申し上げまして、私の陳述を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/36
-
037・矢野絢也
○矢野委員長 次に、加藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/37
-
038・加藤博見
○加藤参考人 私はただいま御指名をいただきました電気事業連合会原子力発電対策会議委員長をいたしております加藤でございます。御指名により、今回審議の対象となっております二法案につきまして、簡単に御意見を申し上げたいと存じます。
私ども電気事業者は、この法案が早く成立して、法人が設立され、この法人の重要使命の一つでございます、動力炉の研究開発、高速増殖炉の実験炉と原型炉及び新型転換炉の原型炉の建設という一連の事業が、国のプロジェクトとして計画推進されることを強く希望するものでございます。
電気事業者は、原子力発電の重要性を早くから認識いたしまして、十年以上も前からその研究開発準備に取り組みまして、昨年には原子力発電会社に続きまして、東京電力、関西電力も原子力発電所の建設に着手いたしておるのでございます。
御承知のように、諸外国における原子力発電の進歩は目ざましいものがございますが、わが国の現状は、諸外国に比べて相当おくれをとり、まだその緒についたばかりでございます。したがいまして、現在やっております在来炉の進歩改良だけでも、前途に幾多の困難が予想されまして、高速増殖炉及び新型転換炉の開発を推進するためには、国家の総力をあげてその研究開発に取り組むべきであると考えるのでございます。
従来わが国では、諸外国の技術導入をいたしまして驚異的な経済成長を遂げてまいりましたが、今後は資本の自由化等を控えて、自主技術による自主開発でなければ、世界市場において優位性を保つことは次第にむずかしくなると考えられます。現在世界の先進国の一つとなりましたわが国といたしましては、独自のものを自分の手で開発していくべき段階になっておるのでございます。したがいまして、今回の新法人は、自主開発という面で、この方面の国内の技術向上に貢献するのみならず、これが実用炉につながる炉の開発に成功いたしますれば、原子力発電の発展、すなわちエネルギー資源の多様化と安定供給の確保、外資の節約、港湾、船舶の節約、公害の減少等につながりまして、国力の増進、国民の福祉に役立つことは非常に大きなものがあると信ずるのでございます。
かかる超大型プロジェクトにおいて、国際的立ちおくれを取り戻すためには、国と民間の力をもって総合的かつ最も効率的に推進すべきであると信じますがゆえに、電気事業者は法人設立の趣旨を体しまして、できるだけの協力を惜しまない所存でございます。
しかしながら、最後に、われわれとして新法人の運用に対し二つだけ御留意願いたい点をつけ加えさしていただきます。
その一つは、その統括者に適当な人を得るとともに、各方面から参られた方々が一致協力して所期の目的を達するよう努力していただきたいことでございます。
第二は、新法人は動力炉開発の責任ある中核体として、計画、設計、評価などのいわゆる参謀本部的の仕事にとどめ、委託研究、委託建設、委員会組織等の方法を活用するようにしていただきたいのでございます。すなわち、民間会社並びに原研等の従来ある組織を、組織ぐるみでできるだけ協力さす方法がより効果的であると考えるからでございます。
以上が私の希望する点でございます。
これをもって私の意見とさしていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/38
-
039・矢野絢也
○矢野委員長 清成参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/39
-
040・清成迪
○清成参考人 私、清成でございます。
御承知のように、現今の技術革新はきわめて急速でありまして、しかも広範なものでありまして、今日の新技術といわれておるものは、明白はすでにもう陳腐化しておるというようなありさまでございます。したがいまして、新技術の開発力がすぐれておりませんと、どうしても国力の増進というものは望みがたいものでございます。いつも先進諸国の後塵を拝していなければならない、こういうふうに考えます。
さて、わが国では戦時中の空白による立ちおくれもございます。また、企業の規模が非常に弱小であるということも相まちまして、この新技術の開発というのは非常におくれておるわけでございます。
今回、将来のエネルギー問題を解決すべき原子力発電というものにつきまして、国家の総力をあげて将来炉を自主開発するというために新事業団が設立されるということはまことに機宜を得たものでございまして、むしろわれわれに言わせるならば、おそきに失したとさえも私は考えるのでございます。ここで着手が一年おくれますと、外国との差はその数倍になってあらわれるというふうなことも間違いはないというふうに考えるのでございます。
ところで、この将来炉の開発ということは非常に大きな仕事でございまして、その所要資金は十年間に約二千億と概算されております。これはとうてい現在の日本の私企業では負担の範囲を逸脱するものでありまして、このたび国がこの事業団によって支出するという形になったことは喜びにたえません。
しかしながら、資金と並んで特に重要なのは、研究開発に従事する技術者でございます。もちろん、原研その他の国家機関には相当な技術者がおりますけれども、それだけでこの大事業をなし遂げることはとうていできません。われわれメーカーもそれぞれ原子力関係に技術者を擁しておりますが、これらの技術者をこの研究開発に向ける決意でございます。
ただ、目下各電力会社で建設されておりますところの軽水炉というものは、これはメーカーが技術導入によりまして建設するものでありますので、これが研究、設計、改善というところにも所要の技術者を充てねばなりません。したがいまして、現在の全陣容を投入するというわけにはまいりませんけれども、でき得る限りの努力をするつもりでございます。わが国におきまして、官民のほんとうの協力ができさえずれば、私は日本人の頭脳と技術力というものは、必ずこの大事業を完成することができると信ずるものでございます。
現在、メーカーには五つのグループがございまして、それぞれその特徴を持った仕事をやっておりますので、これらを最高効率で動かすような方策をぜひ事業団では考えていただきたい。もしこれを誤った運営でやりますと、その効率は私は非常に低下するのではないかということを心配するものでございます。
研究、実験、設計、製作、試験というような一連の仕事を、失敗、成功、失敗、成功、こういう形でもって繰り返していくところの研究開発の事業というものは、きわめて弾力的に、しかも迅速に事が運ばれなければならないと思います。そうして、これに対する処置としましては、一方では信じてまかせる、一方ではその信頼に値するような仕事をする、こういうあうんの呼吸が私は何よりも大事だというふうに思うのでございます。このためには、先ほども加藤さんがおっしゃいましたように、従来の公団とか事業団に見られなかったような生き生きとした、そして柔軟な運営ということを切望いたします。これが私はこの事業団成功のかぎだというふうに考えておるのでございます。したがいまして、議員諸公におかれても、ぜひこういうことが実現できるような側面からの御援助を期待しておるものでございます。
私の陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/40
-
041・矢野絢也
○矢野委員長 次に、垣花参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/41
-
042・垣花秀武
○垣花参考人 私、意見を簡単に述べさしていただきたいと思います。
御存じのとおり、原子力開発というものは、ビッグサイエンスと申しますか、非常に広範な、しかも深い学問を規範にいたしまして出発したわけでございます。それに引き続きましてビッグエンジニアリングと申しますか、これまた広範にして複雑なエンジニアリング、そういうものをつけ加えまして、現在までアメリカにおきましても、日本におきましても、発展してきたのであります。
ただいま私が強調いたしたいのは、そういう二つの準備段階を経まして、原子力というものはビッグビジネスの段階に入った、こういうふうに私は思うわけでございます。すなわち、原子炉を建設するという、そういう作業それ自身が非常に大きな国際競争になりつつある大きな一つのビジネスであります。と同時に、そのエネルギーをいかに有効に使うかということが、国全体の経済にかかわる非常に重要な経済的な問題である、そういうふうに考えるわけであります。
したがいまして、日本の経済、そういうものを考えます場合に、どうしても大きな国際的なコンペティションに少なくとも負けてはならない、勝たねばならない、そういうふうに考えるわけであります。そういう際に、一体、それでは単なる技術導入とかそういうことだけで、この大きなビッグビジネスにまで成長した原子力というものにうちかっことができるか、あるいは負けないで済むか、そういうふうに考えますと、非常にむずかしい。
御承知のとおり、原子力というのは非常な勢いで現在も発展しております。いわば目標自体が動いておる。したがいまして、単なる技術導入とかそういうことでその日を過ごしておりましたのでは常におくれをとってしまう、そういう特別と申しますか、そういう種類のエンジニアリングであり、そういう種類のビジネスであるわけであります。そういうときにあたりまして、新法人が設立されるということは、私は趣旨としてははなはだ賛成でございます。
ただ、私がここに望みますのは、そういう新法人の正しい活動、実質的な活動を希望する、そういうことを、当然でございますけれども考えるわけでございます。
その際に二つ問題があると思います。一つは過去とのかかわりを正しくつかまなければならぬ。必ずしもブリリアントな成功をわが国の原子力がなし遂げているとは申せませんけれども、過去十年以上の歳月にわたりまして、政府のあれといたしましては、原子力研究所をはじめ、原子燃料公社もあり、しかもそれはいろいろなことがございましょうけれども、おのおのりっぱな実績を持っている。それから民間その他まわりのいろいろな研究所にいたしましても、いろいろな使うべき実績を持っている。そういうものをこの新法人の中に正しく生かす。ましていわんやそういう主力の研究所であり公社である原子力研究所と燃料公社と新法人との間のフリクションとか、そういうものがあってはならない。そういうことをまず過去に向かいまして申し上げたいわけでございます。
次に未来の問題でございますけれども、これはたいへんな大きなむずかしい困難な仕事をするわけであります。しかも、一体相手方はどういう国であるか、あるいはその対象はどういうものであるかということをちょっと考えてみたいと思います。
まず、原子力の新しい炉を開発するという仕事は、たいへんサイエンティフィックにもエンジニアリングとしてもむずかしい、しかも大きな魅力のある仕事である。もしかするとたいへんな利潤を生む仕事である。そういうことを考えますと、アメリカにいたしましても、イギリスにいたしましても、全力を傾けてこの仕事をする。そういうものに対して新事業団を中心といたしまして日本がコンペティションをせねばならない。単に一つの新型転換炉あるいは高速炉をつくるというだけではなくて、それをできれば日本のユーザーに使っていただく。さらにできることならばこれが輸出の商品にならねばならぬ。そういう覚悟で事を処していただきたい、そういうふうに思う次第でございます。
そして、その際に私希望いたすのでありますけれども、これが国内のそういうあれを結集するだけでなくて、とうてい新法人がただ一つ、あるいは日本が総力を結集しても、国際的なコンペティションに勝てるかどうかということは皆さまもおそらく問題をお持ちかと思いますけれども、これを解決いたします一つの方策として、もちろん議員皆さま方の支持とかそういうこともございますけれども、国際的な協力ということも十分考えて、そして大きな国際的なビッグビジネスのシェアを日本がなるべく多く獲得する。わずか一%というような仕事ではなくて、世界的の原子力を開発するという仕事に流れ、あるいは動く金の六%あるいは一〇%を日本の産業がつかむ。そのために国際的協力も必要、それから国内のすべての協力も必要、そういうふうに私は思う次第であります。
私、趣旨としてこれが一日も早く通ることを希望する次第でありますけれども、この運営その他十分慎重に、そしてりっぱな人材がそれを指導され、日本の原子力が非常に栄え、それが基礎になりまして、日本の経済というものが何がしかあるいは大きく発展することを希望する次第であります。
私の意見はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/42
-
043・矢野絢也
○矢野委員長 次に、亀山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/43
-
044・亀山徴瑞
○亀山参考人 私の所属いたしております電労連は、御承知かと思いますけれども、九つの電力会社並びに原子力発電の労働者及び沖縄の労働者を結集をいたしまして約十三万名いるのであります。日本では、一つの産業界の労働者が私たちのように九八%までの高い組織率を持っている労働組合というのは、ほかでは繊維産業、海運産業くらいのものでありまして、われわれはそうした高い組織率を誇っておりますだけに、労働組合自体として経済社会に対して寄与しなければならない責任があるという自覚に基づいております。ましてや電気事業という非常に公益性の高い労働組合でありますだけに、われわれはそうした点で国民生活に寄与でき得るような労働組合運動ということを絶えず考えてまいりまして、過去におきましても電気事業の発展のためにはわれわれ自体としての正しい発言を絶えず行なってきたつもりであります。
したがいまして、この原子力発電問題につきましても、過去におきまして二回、科学技術庁や原子力委員会に対しまして提言を行なってまいりました。
第一回の提言でわれわれ電労連が申し上げましたことは、原子力発電開発体制は、外国に比べてまことに立ちおくれているではないか。さらに、これの政策を推進していく政治責任はどこにあるのか。国会での質疑応答を聞いておりますと、政府はすべてを原子力委員会にまかしたようなことを言っておるし、原子力委員会は、われわれが主張しても政府が聞いてくれないんだというふうな主張をしている。国民的にあるいは国家が発展するためにこれほど重大な問題の政治責任の所在がはっきりしていない、これでは困るではないか。ましてや原子力委員会は、極端な言い方をするならば、一握りの学者の方々が論議をもてあそんでいるような感じすらあったのであります。したがいまして、われわれは第一回の提言で、この原子力発電の開発体制をもっと明確にしなければいけない、総合的な政策を立ててくださいということを提言をしたのであります。
それから第二回目に提言をいたしましたのは、原子力委員会が新法人構想を発表されまして、これが原子力の開発担当機関であるということを明確にされました。しかしながら、実際にははたしてどうなのか、原子力委員会が、先ほどもお話が出ておりますように強化をされ、あるいは原子力の行政機構というものが整備をされるならば、これが頭脳になればいいではないか。現実に手や足として原研があり、あるいは原燃があり、あるいは原電があるではないか。そうするならば現在ある機関が明確にそのままで活用されていいのではないか。もっと率直な具体的な言い方をいたしますならば、たとえば新型転換炉については原電が担当をすればいいではないか、あるいは高速増殖炉については原研がさらに研究を進めていくということでいいではないか。いまそれぞれの機関がそれなりに力をフルに発揮しているときに、新しい事業団がこの機関をこま切れにして、ある部分を事業団に吸い上げ、ある部分だけを残していく、このようなこま切れの状態になるならば、いまフルに発揮されている力はさらに減っていくのではないか。このようなことはおかしいのではないかということを特に強調いたしました。
さらにその中でもう一つ申し上げましたことは、先ほど来も自主開発ということばが出ております。したがって私たちはこれに対して、意識的にと申し上げていいくらいに自主導入開発ということばを提唱いたしました。なぜかならば、わが国自体が自主的に基本的な計画を立てていく。外国ではやはり日本より進んでいるところもあるのでありますから、それらの積み上げてきた研究成果というものをわれわれが取り入れて、それらを合わせながら日本の総合的な原子力に対する政策を立てていく。これが本来的な考えではないか、こういう二点を特に強調したのであります。
その後この新事業団法の国会での論議の過程で、われわれの主張と政府の考え方とにさほど距離感はない、隔たりはないということはわかりましたけれども、そういう点でわれわれは特に今後の問題として、この事業団ができ、あるいはこの法案が通過した場合に、われわれとしては形よりも中身に非常に関心を持つわけであります。その点で、四つばかり簡潔に私たちの意見を申し上げたいと思うのであります。
一つは在来炉についてでありますが、これはまことに明確な政策がございません。これを国産化していこうというんならば私たちはこの場合の国産化というのは、たとえば三十五万キロの炉を導入してくる。そうした場合にそれを五十万キロの炉をわれわれの力でつくり上げる。これは、たとえばわれわれの所属しております電労連に入っております原電の労働者諸君は、いままでに発電をしてきた苦しい経験、いろんな苦難を乗り越えてもきております。また、国産化ということになるならば、これは政府も民間もほんとうにきびしい経験を経て私はつくられていかなければならないと思うのでありますが、この点、在来炉の今後の建設というふうな問題について明確なプランニングを立てていただくこと。
さらに、この際に申し上げておきたいのは、先ほど来も燃料の問題が出ておりますけれども、私もやはり炉型の選択よりも燃料が大事だと思うのです。燃料を安定的に確保しないではどうにもなりませんので、その点、燃料問題にからんでも、たとえば外交上の問題、リスクの問題、研究開発の問題、いろんな問題があると思いますけれども、これもひとつ具体的な燃料問題について確保するための政策を立てていただくこと。この点が私は第一にお願いしたい点であります。
第二番目には、高速増殖炉の研究開発という問題でありますが、いままでの論議の中では、どうも新型転換炉のほうが主点であって、高速増殖炉が横に置かれているような感じがするのでありますが、私は高速炉こそがやはり本命である。それだけにいま原研がいろいろな努力をしているわけでありますから、これに対して政府が従来以上に全面的な協力をしていく。全面的なリスクを負担しながらできるだけ早く進んでいけるような状態をつくっていただく。この点がお願いをしたい第二の点であります。
第三に申し上げたいのは、電力経営者あるいはメーカーの態度であります。ややもいたしますと、われわれが電力の労働組合でありますために、何かものを言いますと、経営者と同じ歩調で歩いているかの感を与えているようでありますけれども、われわれはあくまでも労働組合として、国民福祉に寄与するためにどうしたらいいかという大きい立場でものを言っているつもりであります。たとえば、私はこの問題に対する電力経営者の態度はまことに不可解であり、あるいは不満であります。なぜならば、在来炉の建設についても各電力がばらばらであります。私はこれは当然に一貫的な計画に基づいてやられるべきものである。あるいはまた、電力経営者というのは政府からいろんなことを言われることについて何かさわらぬ神にたたりなしのような感じがある。この発電問題については、政府の進めていることと電力がやっていることとは私はちぐはぐだと思っております。したがって、先ほども申し上げましたけれども、どうかそうした点では政府と電力経営者、もちろんメーカーでありますけれども、もっと意思疎通をして、ほんとうに官民が一致してこの重要な国策を推進していくという体制をつくっていただかなければならぬと思うのであります。その点はメーカーにも私は言えると思うのでありますが、確固たる姿勢がありません。もちろん過去においていろんなリスク負担ということが明確でない点、あるいは電力の場合には官僚の支配介入なんということがよくいわれました。こういう点が裏打ちされているのかもしれませんけれども、これだけの重大な問題でありますだけに、民間経営者、特に産業発展の第一のにない手である方々が、これについて積極的に官民一体の体制をとっていただくこと、これが私はこれからの最も望まれる状態であると思うのであります。
最後に、この事業団の性格でありますが、先ほどもお話がありましたように、人間のからだにたとえるなら、私は事業団は頭脳であると思います。そうして現在ある既存機関は手であり足であります。研究をするところもありましょう。建設をするところもありましょう。それぞれの実施機関は別であります。したがって、事業団は国のこの原子力の発電問題についての総合的な計画を立てていただく。そうして、それぞれの実施機関の間のコントロールをしていただくこと。それから、当然に国家資金をできるだけたくさんとって、それを配分し運用するというふうなことに中心を置いていただきたい。言いかえますならば、先ほども申し上げましたように事業団がほんとうに国の重要な政策を円滑に進める、しかも、政府も民間もほんとうに一致協力した体制で進み得るような状態を事業団がつくっていただくということが私は非常に大切であると思うのであります。
何かいままでの論議の中では、いろいろなあいまいな形がありますけれども、私は先ほども申し上げましたように、それぞれの現在の機関、その中に働いている労働者がわれわれの仲間におります。これがこま切れになって、本来的に発揮し得る能力を半減されるような状態については私は反対せざるを得ません。さらに、われわれ現実にその職場で働いているのでありますから、その働いている人間が理解をし、納得をし、将来に向かって目標を明確に定められて、それに向かって着実に進んでいき得るような、ほんとうにわれわれ労働者自体がたくましい意欲を燃やして働き得るような事業団にしていただくことを、私は十三万人を代表して切望を申し上げて私の意見にかえたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/44
-
045・矢野絢也
○矢野委員長 次に、水船参考人。水船参考人 ただいま御紹介いただきました原子燃料公社労働組合の中央執行委員長の水船でございます。
私はまず最初に、私どもの労働組合が去る三月の臨時中央大会で決定しました基本的な考え方を述べさせていただき、その後、なお二、三の問題点について多少詳細にわたりまして意見を述べ、なおかつ、お願いを申し上げたい、こういうふうに考えるわけであります。
今回の原子力界のいわゆる再編成が、事業団の発足と原子力燃料公社の解散という形で行なわれることになりましたが、これがほんとうに国のため、国民の利益を顧みてその方向が正しいかどうかということが、まず考えられなければならない問題だろうと思います。それからなお、過去十年の間蓄積されました経験がその中でほんとうに生かされるかどうか、これらを十分検討した上で事業団法が出されたものであるということになれば、われわれといたしましては決して反対するものではございません。しかしながら、当委員会の中でも与野党の先生方がいろいろなことから問題点を抽出されておりますが、相当の疑問があるようでございます。
まず第一に、何と申しますか、その設立当時に安易な妥協がはかられたのではないだろうかということを疑わざるを得ないわけでございます。また、炉の開発と一体となるべき燃料の開発につきましては、国の政策、それの実施機関、そういったものを考えてみますと、やはり疑問を持たざるを得ないわけでございます。今回の事業団の構想の中で、燃料関係の業務が非常に縮小された形で出てきております。こういうことは、従来から長官も言われておりますように、燃料問題については立ちおくれているのだということが燃料政策の実施面で誤りがなく行なわれるであろうかどうかということについて非常に疑問を持つものであります。しかも、なおかつ聞くところのうわさによりますと、事業団というものは非常に合理性といいますか、経済性と申しますか、そういうような観点からいわゆる研究開発部門に対する投資をなるべく少なくしようという観点から山の、具体的に言いますと、人形峠を切れとか国内の探鉱は縮小せよとか、そういうふうな議論が出ておるかのように承っております。こういうことがかりにあるということになれば、われわれといたしましては、われわれの職場、生活そのものを完全に奪うという形になろうかと思いますので、これに対しては断固として反対せざるを得ぬということでございます。これが去る三月の臨時大会で決定しました基本的な考え方でございます。
なお、この基本的な考え方に付随いたしまして二、三問題点をあげてみたいと思います。
原子力の開発は、官民一致して事に当たらなければならない問題でありますが、まずその開発体制をどうするか、再編成はいずれにいたしましてもこれは必至であろうと思いますが、どういう形がいいのか、これが非常に重要な問題であろうかと思います。私どもは次のように考えております。
既存機関の長所を伸ばし、短所を改めること、しかも、これが官民大合同の形でなされるということが、一番望ましいのではないだろうか、こういうふうに思います。その間には多少の交通整理はあろうかと思いますが、具体的に申し上げれば、原燃とか原電とかあるいは船の事業団であるとか、場合によっては原子力発電でもけっこうでありますが、その他そういうものの持っている力を結集し、炉なり燃料なりの開発を強力に進める体制をつくる、一本化してしまう、そのいう形を公社というかどうか、これは多少整理する点があろうかと思いますが、こうした形が必要ではなかろうかと考えておるわけでございます。
次に、燃料対策の面では、先ほども触れましたが、燃料政策なり実施面なりで非常に立ちおくれていることは事実であろうかと思います。かねてより実質的な燃料サイクルの確立をすることが必要であるということをわれわれは主張してきております。そのサイクルを確立するために、まだかなりの点で問題があろうかと思います。
まず第一に、核資源の問題であります。現在までの探鉱の結果、国内資源がその需要を満たすことができないという考え方がございますが、これを解決するためには、今後とも積極的に国内資源の探査、開発を続けることが必要であり、なお、これに並行いたしまして、海外資源の確保にもつとめなければならないと考えるわけでございます。それは、探鉱というものは、リスクの面から申しまして、一民間企業とかいうものの独力にまかせておくことはできないのではないか、むしろ国なり、しかるべき国の機関なりが行なうことがこの際ぜひとも必要ではないだろうか、こういうふうに考えます。国の主体性が、核燃料政策につきましても、もっと表面に出てくることをわれわれは期待しているわけでございます。
次に使用済み燃料の再処理の問題も一つだと考えております。再処理を外国に依存するということは、生成されますプルトニウムの管理あるいはコスト、これらの点から考えまして、早期に国内に工場建設を行なうことがぜひ必要であろうかと思います。これはプルトニウムの熱中性子炉での利用も含めて真剣に考えなければならない問題であろうかと考えます。
また、現在計画されている軽水炉の燃料、すなわち濃縮ウランの供給の問題が次にあろうかと思います。ウランの燃料をアメリカ一国に完全に依存するという体制は、石油の例を見るまでもなく、当然問題にされるべきことでございまして、これも国が責任を持って、その開発に当たるべきではなかろうか、こういうふうに考えます。
以上、原子力の開発について申し上げましたが、最後に、それに当たる人間の問題に関しまして申し上げてみたいと思います。
私は、労働組合の代表といたしまして、原子力の開発に情熱を持ち、全力をあげて協力することを誓うものでありますが、その情熱を阻害するようなことがかりにあるとするならば、これは決して許されない、こういうふうに考えます。われわれは、十年間原子力の開発に従事してまいりましたが、それらの成果を無視し、人員整理なり労働条件の切り下げに対しては、断固として反対せざるを得ません。過去十年間、原燃におきまして、労使の間で積み上げましたもろもろの権利義務は当然継承されるものと考えますが、事業団法の中の附則の権利義務の継承という形で、これは簡単に解決できる問題であろうかどうか、非常に疑問に考えておるわけでございます。そういう観点からしまして、ぜひともこの際附帯決議なりなんなりにそういうことについて入れていただきたい、私はこういうふうに考えるわけでございます。
それからなお、新事業団になりました場合も、全員の協力一致が必要であろうと考えるわけでございます。一部に新事業団には一時的に出向するというふうなことがうわさされて流れておりますが、協力一致という点から見て、これははなはだ疑問があろうかと考えます。また、かりに給料をはじめとする労働条件の格差が区分経理という形の中で出てくるということになりますれば、せっかく事業団を盛り上げてがんばろうとする体制がくずれてしまうのではないだろうか、こういう点を心配しているわけでございます。この辺特に御留意していただきたいと考えるわけでございます。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/45
-
046・矢野絢也
○矢野委員長 次に、鶴尾参考人発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/46
-
047・鶴尾昭
○鶴尾参考人 日本原子力研究所労働組合中央執行委員長の鶴尾でございます。
私は生涯をこの原子力の開発にささげて、いままでしてまいりましたし、これからもささげようとする科学者の立場から、この問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、現在のわが国の原子力の状態と、そしてまた、その中で提出されておりますこの事業団の構想というものに対して、こういうことを総合的に見ますと、今回の事業団構想に対しては著しく批判的な立場をとらざるを得ないことを申し上げたいと思います。
私は、わが国においてどうしても自主的な開発を行なうことが重要だと思います。これは、たとえば非常にわかりやすい例は、原子力の安全性の問題でございます。原子力のいろいろなことにおいて安全性ということが大きくクローズアップされることは、いままでの歴史の中にも非常にはっきりしておりますが、これを安易に導入し、他の国の国情に合って、あるいはその国の労働の状態や住民の状態や、そういう中で出てきました原子炉というものを安易に導入してくる。特に原子力というものが九〇%以上軍事利用の中でその一種の副産物として出てきております現状から見るならば、この安全性の確保ということを一つ考えてみましても、わが国の実情に合った原子炉をつくり上げていくということは、最も重視されなければならないのではないかと思うわけであります。
ところが、現在の実情は全く反対であります。現在は、先ほども多くの参考人が述べられましたように、とうとうたる米国型原子炉の導入の波の中に、われわれが十年間築き上げてまいりました原子力研究開発のその潜在力は、いままさに動員されております。そしてさらに、在来炉、在来炉ときわめて簡単にいわれるわけでございますが、在来炉と申しましても、数十万キロワットのものは近年において完成したものばかりでありまして、現実に運転の経験はございません。それですから、その運転の中で多くのトラブルが生じることは火を見るよりも明らかであります。現実に日本原子力研究所に設置されておりますたかだか数千キロワット、あるいは数万キロワット程度の研究炉あるいは動力試験炉等におきましても、当初考えてみることもできなかった多くのトラブルが生じております。これは決してその当事者の責任云々ということではございませんで、現実に強い放射能のもとで何年間かさらされ、多くの複雑な力を受けておる材料なり構造材なりがどのような変化をなすかということは、これは学問的にも多くの未知の領域であって、それが数年の運転の後にあらわれてきておる、こういう実情でございます。そうしてその開発は、単に簡単な小手先のことで解決することではなく、かなり基本的な物質に関する知識、基礎的な研究から積み上げていかなければならないようなものが非常に多いわけであります。そのような状態の中から、今後の昭和五十年までに六百万キロワット、さらには二十年後に三千万、四千万というものの中で日本原子力研究所がおそらく果たすであろうと思われる一つの道は、そういうトラブルやクレームに対して国家的な処理の試験機関として試験所化の役割りであります。現実に日本原子力研究所は、私は非常に残念でございますが、試験所化、原子炉運転所化の道を一つ歩んでおるわけであります。そのために、いままでの十年間の蓄積された力がある方法で着実に動員されておる、それが事実であります。
そうして同時に、そういう中でなされますこの自主開発という名前のもう一つの道は、これは必然的にごく限られた一部をその開発にささげざるを得ない結果として出てきますことは、いみじくも言われました導入開発ということであります。すなわち外国技術のための仕様書書きの道であり、中途はんぱな設計所化の道であります。われわれが自主開発ということばを聞きましたのは、これが初めてではございません。十年前に原子力基本法ができましたときに、自主、民主、公開の三原則は厳然ととられたのでありますが、残念ながら、そのようにしてできました潜在力は、軽水炉導入のために動員されておる。同じことが現在の体制の中で、この事業団の中で出てくれば、結局十年後あるいは十数年後におきます新型転換炉あるいは高速炉のための技術的準備機関に堕す、設計所化の道、この二つの道の中に日本の技術者が投入されていくということを私は非常におそれるものであります。
これは単に日本原子力研究所のことを見ただけではございません。現実に、私どもの中からかなり多くの、その人なしには研究ができないというようなかなめのような方が、たとえばこの数年間に二十数人、あるいは三十人近く、たとえば大学へ、あるいは外国へというかっこうで流出されていかれております。そうような方に、私よく話すのでございますが、どうして君たちはこういうところに残って、一緒に仕事をして、日本のために原子炉の開発をやっていけないのか、しかし君、日本でこのような開発をする保証が全くないではないか、そういうことであったならば、私は大学に行って、そうして基礎的な研究でよいから、着実に自分の力を生かしていきたい、そのように言うわけであります。現実に現在展開されておりますいわゆる原子力の大幅な導入計画の中で、多くの技術者が必要でございまして、各大学で養成された技術者たちは、次々と電力会社、電機メーカー、あるいは原研に来るわけでありますが、私ども最近、たとえば原子力関係のいろいろなメーカーも含めました労働組合の懇談会などを開いてみまして、そのような委員長さん、これは同時に、私と同様科学者の方も多いわけでありますが、聞くと、いや、われわれのところは一、二年前に研究室というものは全廃されて全部設計室になったのだとか、あるいは、いや、うちのところは、親会社のサービス機関に徹しろという社長訓示が出ているのだとか、そのような体制で、開発の体制はまさにない。すなわち、国も、そして原研も、メーカーも軽水炉導入という、いわば金もうけのためには金も出すけれども、ほんとうに自主的な開発のためには金も人も出さない。そのようなことが現在の状態であり、ますますあらわれてくる状態であります。私は、もし国がこの状態を根本的に改めまして、ほんとうに自主開発をするのであれば、次の二つの条件が必要であると思います。
第一は、ここでもって日本の国が責任をもって開発しました動力炉、これを実用化するという保証であります。それを電力産業が使う、それ以外のものは使わせない、このような保証なしに、単に経済性の比較の上でもって、いまのような状態でいくならば、これは単なる技術導入のための機関化することは明らかであります。
第二に、それをほんとうに保証すたるめには、無制限に、先ほど清成参考人が述べられたようなかっこうで、導入炉のために人が流れていかないように国が保証しなければならないと思います。そのためには、やはり軽水炉の導入というものの、これを国家の力で規制するということが必要なのではないかと思います。
そのような条件ができますならば、われわれ日本におきます非常に高い技術を持ちました、知識を持ちました科学者、技術者は、必ずすぐれた動力炉を開発する力を持っていると、私は信じております。
以上でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/47
-
048・矢野絢也
○矢野委員長 次に参考人に対する質疑に入るのでありますが、議事の都合上、この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。
文教委員会において現在審査中の日本学術振興会法案について、文教委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/48
-
049・矢野絢也
○矢野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
なお、連合審査会開会の日時につきましては、文教委員長と協議の上決定いたしたいと存じますので、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/49
-
050・矢野絢也
○矢野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/50
-
051・矢野絢也
○矢野委員長 引き続き、質疑応答の形式で御意見を聴取することといたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/51
-
052・石野久男
○石野委員 参考人の皆さんにお尋ねしたいと思いますが、大ぜいの方がいらっしゃいまするので、質問の中で私のほうから名ざしする方のほかに、もし御答弁いただければしていただきたいと思います。まだほかにも質問者がいますから、私は質問を一まとめにしていたしまするので、そのようにひとつ……。
まず、第一番の点は、これは大屋参考人と加藤参考人にお尋ねしたいのですが、ユーザーという立場、電力資本の立場で、この事業団が計画しておりまする新型転換炉の開発というものは、むしろ新型転換炉は海外でももう相当開発されているのだから、事業団では、そんなことはもうやらぬでもいいじゃないかというような御意見などもままあるように聞いておりまするけれども、ただいま参考人のお話を聞きますると、積極的にやってほしいという御意見を承ったのです。しかし、必ずしもそれがすべてだというようには思っておりませんような気持ちがありまするので、この際私はお聞きしておきたいのでございまするが、海外で新型転換炉の開発が相当進んでいるような雰囲気もありまするようなこととにらみ合わせて、むしろこの事業団は高速増殖炉だけをやればいいじゃないかという意見もあるやに聞いておりますが、そういう点についてどのような御意見があるかということをひとつお聞かせ願いたい。
それから、その次に、この事業団は、長期にわたるところの計画であり、しかも国家的な総力を結集しなければならぬということを私たちも考えておりますし、参考人の皆さんからもそれぞれお話がございました。こういう長期的な計画をするにあたって、国のプロジェクトを達成するために、長期にわたる確定的な成果を期待するために、一番大事なことは、経済変動がその期間中にはおそらく何回かあろうかと思います。そういう経済変動がある場合に、財界の皆さん方が、こういうプロジェクトに対して、国と協力し得る体制を持続することができるかどうかということでございます。業界の方々に、国家的な見地からそれをやるべきだという御意思はありましても、財界に変動がありまして、経済変動がきびしく出てまいりますると、会社を代表する方々の意見は、必ずしもその国家的意欲だけにはついていけません。株主さんの意向も聞かなくちゃなりませんから、したがって、長期のこのプロジェクトに対して、徹底的にそれについていくということは非常にむずかしかろうと思うのです。それをやるためには、やはり国にもっと大きな規制力がなければならぬのじゃないかというふうにも私どもは考えたりします。しかし、財界はそういうことを必ずしも好んでいない。むしろそういう統制的な意味を持っているものはいやだというような御意見もあるやに聞いております。したがって、財界の皆さんが、そういう十年、二十年にわたるプロジェクトに積極的に協力をするというかまえをなされる、また、いまは積極的にやるのだということを言っているということの裏づけはどういうふうになされるのだろうかということの心配があります。そういう点について、この際皆さんには非常にお答えがしにくいかと思いますけれども、ひとつ御所見を承っておきたいと思います。これは電力関係の方にも、メーカーの方々にも、また、原子力産業会議の方々にも、ひとつこの点についての御意見をお聞かせいただきたい。
それから三つ目のお尋ねは、特に財界の皆さんがただいま申しましたような、長期にわたるところのプロジェクトに協力するために、長期にわたる展望の中で、国に何を要求するかということでございます。そういう点でひとつ皆さんの御所見を聞かせていただきたい。
それから第四番目にお尋ねしたいことは、人材をどのようにして集めるかということにつきまして、先ほど清成参考人からは、非常に大事なことであるけれども、メーカーとしてもやはりそれぞれの用があるから、まあできるだけ人材は協力させましょうという御意見がございました。私どもはそのことはそのとおりだと思います。しかし、その点について、そのために大きなプロジェクトに人材を結集することができなくなってしまうことを危険に思っておるのであります。そういう点で業界の方々が人材をこのプロジェクトに結集させるということについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、以上四つの点を一まとめにしましたので、それぞれの方々、特に人材の集め方については経営者の立場に立っている方と、それから労働組合の関係から、特に原子力研究所やあるいは燃料公社等が過去において労働者の立場でそういう点ではお苦しみになっていることもあると聞いておりますので、御所見を承らせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/52
-
053・矢野絢也
○矢野委員長 参考人各位に申し上げます。御発言のある方は手をあげていただいて、発言の意思表示をお願いいたします。
それでは大屋参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/53
-
054・大屋敦
○大屋参考人 私から一括してお答えいたします。
この計画が、時世の変化とともにいろいろな条件が変わってきたときに、民間が依然今日と同じような熱意を持って協力してくれるかどうか、こういう御質問のように思うのであります。これは大体十年の計画を立てておるのでありますけれども、途中でレビューする、見直すということをきめております。それですから、非常な変化が起こるというふうなことであれば、今日きめたことをあくまで何年たってもそのとおりにやらなければならぬというふうなことはないのでありまして、レビューをするときに、この仕事はもうやめたほうがいいんだというような事態が起こらぬとも限りませんのでありますから、その上で最後の決心をするわけでありますが、今日のところでは向こう十年ぐらいの間は、この高速増殖炉というものの必要は、これが動揺するとは考えておりませんので、大体当初の計画どおりに進むものと、こう思っておるのでございます。
それから第二番目は、新型転換炉は大体プルーブンタイプになっておるのだから、そんなものをやめて高速増殖炉をやったらいいじゃないか。ごもっともでございます。そういう意見はわれわれの間にもありました。ありましたけれども、新型転換炉というものがまだ確実にプルーブンタイプというところまでいっておりません。それで従来の軽水炉というものは大体外国のものを受け売りをしておるのでありまして、せめても新型転換炉というものは和製の、日本製の新型転換炉というものを完成したいということがわれわれの熱意でありますから、とにかく今日の状態では新型転換炉も増殖炉に並びまして開発を進める、こういうふうに決心しておるのであります。新型転換炉というのは増殖炉ほど困難ではありませんが、案外実用価値が起こってくるだろうというふうなことも想像しておるのであります。
それから、国に何を要求するかということは、結局国は金を出してくれるということを一番要求するのであります。国の方針とかいいますけれども、原子力のような今後どう変わるかわからぬものを、何でもかんでも国の言いなり次第になれと、こういうようなわけにはなかなかいかぬと思いますから、国はできるだけこういう方針に賛成していただきまして、必要な資金を出していただくようにお力添えを願いたい、こう思っておるのであります。
それから、なお詳しいことは、それぞれ電力なりメーカーの御関係の方がおられると思いますので、私があまり一括して御返事をすることはいかがかと存じますから、これで失礼させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/54
-
055・加藤博見
○加藤参考人 ただいまの御質問に対しまして私の意見を申し上げます。
新型転換炉の問題でございますが、原子炉の一番の理想的な型は、御承知のとおり高速増殖炉でございます。したがいまして、それに対して全力をあげてこういう法人を中心にしていろいろやっていかなければならぬということでございますが、その高速増殖炉のほんとうに実用化するのは、おそらく十五年ないし二十年先じゃないかというふうに考えます。したがいまして、先ほど大屋さんからもお話のありましたとおり、その間にいまの在来炉と高速増殖炉のその中間において新型転換炉というものが必要じゃないか。それは非常に燃料効率のいいものである。それから多様化という意味において天然ウランを使う炉であるというような面、そういう面からこういう新しい炉がその中間に必要じゃないかということを考えておるわけであります。したがいまして、世界のいま使っておる炉をいろいろ研究をし、そういう知識も吸収しながら日本独特の自主的の新型転換炉を何とか開発できないかということで、ここで研究をさせていただければ非常にけっこうじゃないかというのが、やはりわれわれ電力会社の希望でございます。したがいまして、今後の研究の成果によってこれが実用炉につながるかどうかという点に問題はあると思いますが、先般の中東のああいう動乱から見ましても、この燃料の多様化というのは、こういうような日本の島国では非常に大切なことでございますので、私は何とかしてやはり新型転換炉というものを日本で自主開発するほうがいいんじゃないかというふうに考える次第でございます。
それから長期にわたる問題で、経済変動があったときにどうするんだという問題でございますが、私どもといたしましてはいま電気事業の経営の状態というものは比較的安定いたしております。したがいまして、何とかこの原子力発電という国の非常に大事な政策にも協力して、初めはこれはとても重油専焼並みにはいかぬと思います。いかぬと思いますけれども、それに協力をしてまずやってみよう。そして将来七十万キロというような大型になりますれば、これは重油専焼火力に匹敵するものになるだろう、そこを希望しながらこれを進めておるわけでございます。したがいまして、経営状態としましてはわれわれとしてはできるだけ技術革新、合理化を進めまして、何とかそういうような国の政策にも協力をしていこうという気持ちでやっておりますので、先ほど大屋さんのおっしゃいましたように、ここ十年は何とかわれわれも動力炉開発事業団を中心にしたこの政策に協力ができるんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
それから三番目の国に何を要求するかという問題、これはもう大屋さんのお答えのとおりでございまして、世界各国がこの原子力の研究開発費に出しておる金額というものは非常に大きなものでございまして、日本の数倍になるような先進国ばかりでございます。したがいまして、今回この事業団を通じて国が十年に二千億と申しますか、これはどうなるかわかりませんが、ぜひこのくらいの気持ちで協力をしていただくということが、日本の原子力発電発展のために非常にプラスになるんじゃないか。一にかかってこの予算の面が一番国に対してお願いをしたいことでございますが、なおこの法人の今後の運営に対しましては、議会をはじめ各方面においてこれに御援助を賜わりたいというのがわれわれの気持ちでございます。そうでないと、この法人というものは各方面の寄り合い世帯でございますので、なかなかむずかしいんじゃないかと思いますので、特に御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと思うのでございます。
それから人を集める方策でございますが、これが私先ほどお願いを申し上げました第二の点でございまして、いわゆるこの法人というものは頭脳的——先ほど組合の方もおっしゃいましたが、頭脳的の仕事だけをやるということは、そこで少数精鋭主義でやるということでございまして、できるだけ少数精鋭主義にして、そして頭脳的に全体を考えながらやっていく。それで原研その他現在ある組織、組織はできるだけ組織ぐるみで利用する。ひとつこういう目的でこういうものを研究してみてくれ、こういうときにこういう効果をあげてくれ、こういうふうにそこへ委託するわけでございます。そうしてそのいろいろな組織、メーカーもございましょうし、電力会社もございましょう、おのおの特徴を持っております。そういうところを十分生かしてやっていただきたい。そうしますれば、ここに集める人は比較的少なくて済むのじゃないかということでございまして、この精鋭主義というのはそういうことでございますので、その少数精鋭主義の法人に対しては、われわれも民間として、メーカーさんもできるだけ協力をして、その人を出したいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/55
-
056・清成迪
○清成参考人 もう大体大屋、加藤の御両所から意見の開陳がありましたので、私は蛇足を加えることがないようになりましたですけれども、そのうち二、三につきまして申し上げてみたいと思います。
一番の問題は軽換炉の問題でございますが、これは先ほども加藤さんから懇々とお話がございました。さらに高速増殖炉というものは夢の原子炉とかなんとかいわれておりますだけに、われわれがぜひともこれはねらわなければならぬものでございますが、外国でも十五年とかというようなことを考えております。したがいまして、立ちおくれておる日本では、おそらく十五年より早くはならぬだろう、あるいはそれが二十年になるかもしれないというようなことになりますと、先ほど加藤さんのおっしゃったような、その途中にぜひわれわれは燃料サイクルのもっともっと効率のあがるような、しかも燃料の多様化というようなことをねらえるような、アメリカの濃縮ウラン一辺倒を避け得るような転換炉というものが開発されなければいかぬ、こういう信念でやっておるわけでございます。
それから第二番目の景気の変動の問題でございますが、これは石野委員のおっしゃるとおり、景気というものは、おそらく政府が経済企画庁で書きましたような直線で進んでいくものでは決してないと思います。それは大かたのトレンドであって、必ずそこには、数年の間には起伏があることは、これはよく承知をしております。しかしながら、国がほんとうに国民の生活を考えて安いエネルギー源を供給したいということから、国が非常に大きな目的をもってやるところの新動力炉の開発というものは、私は景気の変動によってゆらぐものではない、こういうふうに考えるわけでございます。これは例をとってははなはだ悪いのでございますけれども、こういうところに来るとすぐあげ足をとられるので、皆さんあげ足をとらないようにしていただきたいのですけれども、たとえば戦時中と申しますか戦前と申しますか、軍で国防の一つの体系を立てて、そして海軍なり陸軍なりあるいは空軍なりから研究完成を委託されるというようなことは、景気の変動によってわれわれはそれに協力することを一つも左右されておりません。これは国が大きな国防という方針のもとに手をゆるめないから、それができる。この動力炉開発も、景気が少し悪くなったから金を出すのはよそうかというへっぴり腰の政府の考えだと、これはわれわれのほうもたじろがざるを得ません。しかしながら私は、ちょうど戦前における国防のごとく、この問題はほんとうに国が真剣に取り組むべきことだというふうに思いますので、景気の変動云々によってわれわれの協力がこれに左右されるとは考えておりません。ただ、われわれが、やっておりますその他のものは、利益がなければやめなければいかぬ。株主に申しわけないとさっきおっしゃいましたが、そのとおりでございますので、その他のものはそうなるかもしれませんけれども、事そういうことに関しては、政府がおたじろぎにならぬ限りはわれわれはたじろがぬつもりでおります。
それから、人材の問題でございますが、人材の問題は、先ほど私が申しましたのが、非常に誤解を受けておるようでございます。軽水炉というものは、もうすでに現在から実証されて、経済性の面でも火力に匹敵するというふうな実績がアメリカその他であがっておる。したがって、これはどうしても取り組まなければいかぬということでございますので、これに人材を多少さくことは、これはやむを得ません。しかしながら三千万キロ、四千万キロの軽水炉ができても、それはおもに製作とか据えつけとかいうような面でありまして、研究、実験というような面には、これははなはだ申しわけないのでございますけれども、技術導入という形でやっております関係上、たくさんの人は要りません。しかしそういうようなことで全陣容を投入できないということだけを申し上げただけで、私は日本の人材というものは、これに十分研究を続けていくだけのソースはあるというふうに考えておるわけでございます。
それから、産業界は一体国に何を望むのか。まさに先ほどからおっしゃいましたように、金を出していただきたいということですけれども、ただ金だけではない。それはやはり確固とした方針のもとに、先ほど加藤参考人は寄り合い世帯ということを申されましたが、確かに総力を方々の組織が結集しますので、寄り合い世帯というような感は免れません。ただこれに統一した目標を与え、そしてそれに協力せしむるための油さしの役といっては、これはまた政府の方からしかられますけれども、そういう役をぜひやっていただきたい。このことが私は一番望むところでございまして、しかもその油さしの役も、あまりに実は油が過ぎることはいいけれども、先ほどちょっと私が申しましたような、やっぱり非常に柔軟なおのおのの特徴、自主性というものを生かしながら、効率を最高に発揮していくという形でやっていただきたい、こういうことを実は考えるのでございます。
つけ加えてそれだけ申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/56
-
057・鶴尾昭
○鶴尾参考人 人材の問題で申し上げたいと思います。
まず原子力のこの十年間の中では、十年前のことを申してみますと、一番問題になりましたのは、十年前というと私はちょうど大学を出たばかりのことでございましたが、指導者がいないということがほんとうにしばしば問題になりまして、それが国会でも議論されたことは、あるいは御承知かと思います。十年たちまして、現在われわれの悩みは後継者がいないということであります。私どもはこの十年間、自分の青春をほんとうに原子力の開発のためにささげてまいりました。しかしどの研究室を見ましても、この数年間研究室にほとんど人がさかれませんで、原研に多くの人は採用されておりますけれども、それは多く原子炉の運転部門あるいは最近特に充実されてまいりましたラジエーショソ・ケミストリー、放射線化学のほうでは若干の増加がございますけれども、きわめて微々たるものである。また、その研究部門といいましても、主として設計部門のほうにさかれているというのが実情でございます。そういうわけで、われわれはほんとうに何か一つの、ここから入って、中がこうふくらんで、まただんだん小さくなっていくような、そういう後継者のいない悩みというものを非常に味わっているわけでございます。
きょうここでなされました議論の中で、まず高速増殖炉がほんとうに実用化されてどんどん使えるのは、十五年から二十年後であろう。すなわち各メーカーの方々が商売になるのは十五年か二十年後であるということと、それからそれに追いつくためには、いまから全力をあげなければならない、そういう二つの観点がはっきりしておると思います。そうしますと、この十五年間から二十年間、一方で軽水炉の大きな導入があるという中で、片一方のほうはどんどん大きな穴があいて、はたしてこの十五年から二十年後に大きな成果があがるかというところで、その人材が確保できるかどうか。私は単にそれが新法人をつくるというようなことだけで可能になるとは、どう見てもわからない。特にこの数年間の原研、それから私の研究者である同僚の人たちが、各メーカーや何かの中でどういう研究テーマからどういう研究テーマに向いていったかというようなことを見ておりますと、どうもそれほど熱心であったのならば、こういうことはないんじゃないかというようなことをほんとうに感ずるわけであります。原研におきましては、たとえば原子力というのはビッグサイエンスということを皆さんはおっしゃいました。たとえば、かつて研究というものは、一つの研究室で小さな机があればできた時代がございます。しかし、たとえば私がある原子炉でものを照射いたしまして、それである研究をしようと思いますと、原子炉の運転員が十人近く、それから放射線管理の人間、あるいは原子炉の地下でもっていろいろポンプを回したり何かする人間、こういう人がいわば三直四交代でぐるぐる四十人から六十人という規模でもって何週間か夜間作業を続けてやらなければ一つの成果が出てこない。そういう中で非常に深刻な人材不足がありまして、それは原子炉を安全に運転するということがやはり第一になりますが、一番来ないところは研究部門であります。そしてその結果、たとえば研究室長みずからがそういう直勤務の中に入って、過労の中でもって、放射線作業とあるいは関係があるか、その辺わからないのでありますが、一応そういう疑いもあって、労働基準局にいまいろいろ研究所としても出しておるようでございますけれども、若くして死ぬというような、そのような深刻な——これはただそれだけじゃございませんけれども、そういうような深刻な人材の不足というものがある。そういう中で次々と、十年のキャリアを持つ最も中枢的な、扇でいえばかなめのような人々が、これでは研究ができないというかっこうで流出していくというのが、先ほど申しました理由でございます。この実情から見まして、先ほど申しました、抜本的な何か対策でもとらない限り、幾ら大学で養成されても、あるいはメーカーや何かで人をお集めになりましても、それがほんとうに国産炉の開発に向けられるという保証がどう考えてもわからないというのが、私の意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/57
-
058・水船隆昌
○水船参考人 かりに動力炉事業団が成立すると仮定いたしますと、燃料公社は解消することになりますので、したがって、われわれの大部分は新事業団の中に吸収されるということで、その面においては人材の確保といいますか、これはなされるであろう、こういうふうに思います。
ただ燃料公社のできましたのは昭和三十一年でございましたけれども、当時はいわば核燃料の国家管理というふうな思想のもとに出発したはずでございます。ところが、世界情勢とか国内の情勢の変化によりまして、徐々にそれが曲げられてきた結果、現在われわれの労働組合は組織人員七百名で、一〇〇%の組織をしておりますけれども、平均年齢がかなり高くなっている。これは業務がだんだん縮小されてきた結果であろう、こういうふうにわれわれ見ております。
それから、先ほども少数精鋭主義で動力炉のほうはやるのだというお話がございましたけれども、われわれがその中へ入っていきますと、それじゃはたして給与体系その他はどうするのかという問題が出てくると思います。先ほども私多少述べましたけれども、かりに出向とかなんとかというような形になりますと、事業団の中の融和とか、事業団を盛り上げていこうというふうな形で業務が運営されないのじゃないだろうか、こういう面で私は非常に心配をしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/58
-
059・矢野絢也
○矢野委員長 三木喜夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/59
-
060・三木喜夫
○三木(喜)委員 参考人の方、きょうは非常に御苦労をかけましてありがとうございました。特に丹羽さんや今井さんはもうすでに十数回もこの委員会においでいただきまして、ほんとうに御苦労さんでございました。しかし、きょうは、いよいよ大詰めでございまして、どうしても皆さん方の御意見を徹底的に私たち聞いておかぬと、いまのお話を聞いておりましてもやはり心配な点がございますので、どなたにということを言わずに、問題点によってひとつお聞きしたいと思います。その点でひとつお答えをいただきたいと思います。
いま聞いておりまして、お話しになる要点は、官民の総力を結集せよ、これはごもっともなことですし、国際協力をしっかりやってこの際自主開発をやろうじゃないか、こういう御決意を皆さんから承り、非常に力強い思いがいたすわけであります。それからまた、過去の蓄積をしっかり生かして、国際的におくれをとらないようにする。もしこの事業団が一歩やり方を誤ったなれば、それはもう取り返しのつかないたいへんなことになる、こういうお考えも承って、私たちこの事業団法と取り組んだ者といたしましても、非常な責任を感ずるわけであります。そういう立場におきまして、運営面とか、あるいは協力体制とか、さらに資金の面とか、こういう面について十分に考え、皆さんとともに今後ともども考えていかなければならぬのじゃないか、そういう点があるということを感じました。
そこでお伺いしたいのですが、皆さんの非常に御熱心な気持はよくわかりました。しかしながら、御熱心であればあるほど、その中にたいへん心配なものがあるということを先がた申し上げたのですが、その心配に立ってひとつお聞きしたいと思います。
それは、体制の問題と意欲の問題と実践の問題です。体制の問題と意欲の問題と実践の問題で、いま聞いておりまして、お二人ほどは、確かにこの事業団のやり方に対しましてさか櫓をつけられたような感じがするのです。一直線に何が何でもやるのだ、自主開発をやるのだ、そういう意欲でなくて、自主開発がどうもいけぬということなら、途中において変更せざるを得ない、しりに帆を巻いて逆に走らなければならないということもある、こういうように聞いたわけであります。これは私はやはり心配の種だと思うのです。それから、寄り合い世帯だからこれについては政府としては十分に考えなければならない。まことに政府の責任は重いわけなんです。過去十年間に私たちも非常な痛手を受けたわけであります。しかし、これとても決してマイナスではなかった。そうした科学者が育ってきましたし、日本の体制がそれによって高い月謝を払ったわけでありますけれども、しかし皆さんのお話を聞いておりますと、今日になれば、もう月謝を払っておるというような時代でないようです。もうのっぴきならぬところにきて、諸外国からかなりのおくれをとっておる、それに追いつけ、追い越せというような体制の中にあって、もう月謝を払って勉強しておる時代ではない、こういうような感じがするのですが、いまお話を聞いておりますと、軽水炉を導入するべきところは導入しなければならぬじゃないか——いま言われました中では、亀山さんのお考えと鶴尾さんの言われたお考えとが食い違いましたし、それから財界、産業界の言われました中にも、そういう危惧の念を非常に私たちは持つような点がありました。
そこで、最初に垣花さんと鶴尾さんにお伺いしたいと思います。
垣花さんは、中央公論の五月号の中に原子力政策についてお書きになっておりますが、この中に、やはり憂いに満ちた心配になるような点を書いておられます。こういうように書いておられます。
要は、「わが国の原子力開発の現状は原子力先進諸国に追いつくことの不可能さを感じさせるほど混乱し、かつ弱点にみちたものであるが、その中に正しい発展への強い萌芽をも内蔵している」こう五月号にお書きになっておる。それから鶴尾さんは、いまお聞きしておりますと、私もその点非常に心配するわけなんですが、どうもいままでの産業界なりあるいはユーザーの考え方というものは、ほんとうのダイヤモンドを掘り起こすというような姿勢ではない、イミテーションのダイヤモンドでもいい、それのほうが手っとり早いじゃないかというような思想なり考えが途中にあるのじゃないかという考えがあるのですね。そういう意味のことをいま言われました。そこで鶴尾さんとそれから垣花さんから、日本の持っておる体質の弱さ、イージーに流れそうなという心配、そういうものについてもう一回聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/60
-
061・垣花秀武
○垣花参考人 私の粗雑な論文を読んでいただきましてたいへんありがとうございました。私、どういうふうに私の意見をここで申し上げていいのかちょっと考えがまとまらないのですけれども、考えながら話したいと思います。
まず、原子力開発は二つの面があると思います。一つは、なるべく安い原子力を産業界あるいはわれわれの家庭に供給する、こういう義務を電力はお持ちだと思います。したがいまして、ある時点で考えますと、最も安い最も安定した原子炉というものを日本に建設するという必然的な動きがあると思います。これは、電力界の方々のそういう傾きというものは日本の全産業を見まして正しいものだと思います。
しかしながら、もう一つ問題がここにあると思います。それは、原子炉をつくるということが、先ほど申しましたとおり大ビッグビジネスである、大ビッグビジネスというのもおかしいですが、たいへん大きなビジネスである。これはいろいろなシチュエーションがございますけれども、大体一九七〇年代の中ごろに世界じゅうで建設される原子炉並びにそれに使われる核燃料というものの総額は、非常に大ざっぱに申しまして、日本の一九六一年度の総輸出額に匹敵するくらいの大きな仕事なわけでございます。したがいまして、こういうものが、いかに原子力が外国のもののほうが安いからといって全部それを買ってしまう、導入するということは、それほど大きなビジネス、日本全体の経済にかかわるような、そういう製造業というものを犠牲にするわけです。そういう意味で、現実的な問題としてもやはり考えなければいけない。それからまた、いつまでも導入しておりましたのでは、先ほど申しました、十年後、二十年後の日本のエネルギーの高さ、安さというものに対して非常にハンディキャップができてしまう。したがいまして、現時点では導入なさるということは確かにわかりますけれども、大きなビジネスであるということをもう一回考えていただきまして、なるべく日本のものを使う、日本の国産炉と申しますか、二号炉以下は必ず使う。必ずということにしますとたいへんでございますけれども、そういうことを考えていただくそのバッググラウンドとして、いかに大きなビジネスであるか、いかに大きな産業であるかということを考えていただきたい。と同時に、そういうことの蓄積が十年後、二十年後には世界のどこの原子力よりも安いエネルギーが日本で生産される可能性がある。そういうことも含めて考えていただきたい。これが一つのお答えと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/61
-
062・鶴尾昭
○鶴尾参考人 私にその辺の体質について述べよと申されましたけれども、私そのような体質云々についてはなかなか申しにくいわけでございます。ただ、十年間やってまいりました経験から、実地というものは申し上げられるのではないかと思うわけでございます。
すなわち、たとえば在来炉である。そしてこの在来炉は、技術を買ってきてルーティンに流すのであるからこれは問題はないのだというところに、私はとてもそういうことではないだろうということを申し上げたいわけであります。と申しますのは、これも先ほど冒頭に申し上げましたように、現在の多くの未完成な技術を集めて、それでとにもかくにも一つのものをまとめ上げていくということでございますから、それの技術は有機的につながっております。そうしますと、ここでどこか一カ所におかしなところが起きますと、これがほんとうに下から積み上げてあって、なぜここはこういうぐあいになっているのかということがわかって、あるものをつくり、ある材料を使っている場合ならば、何か運転途中あるいは建設の途上でもって問題が生じたときに、直ちにいままでの経験を生かして直すことは可能なわけであります。おのずから方策が出てくるわけでありますが、現実のところはそういうことが、安易な技術導入というようなことのために非常に手間がかかってくるというのがやはり事実ではないか、このように思うわけです。ただしこれは私どもの研究所に直接かかってくることと考えますと、結局そういう今後の大きな導入のために、導入によって出てきたそのようなクレームやなんかの問題、そして先ほど申しましたような原子力というものが、実用化といいましても、また基礎と申しましても、非常に大がかりな研究体制というものが要るというようなことから、原研の持っておりますポテンシャルというものは、そういうクレーム処理のための試験所化していく必然性があるということを先ほど申し上げたわけでございます。
なお、さらに意見を述べろということでございましたら、現実にいまわが国の産業界の置かれている状況を、私非常に不勉強ではありますが、ながめてみますと、決してこの自主開発というかっこうがとれるような、そういう状況ではない。これは資本的にも技術的にもおくれており、そしてそのおくれている技術をおくらすがためにますます外国技術を導入していってますます深みにはまっていく。これは私はよくはわかりませんけれども、おそらく経済界の方でありましたらそういう態度をとらざるを得ないのではないかということはわかるのでございますけれども、やはりそこを断ち切るのがあるいは政治の力ではないかと思って、私は科学研究者という、あるいはこれは狭い立場かもしれませんけれども、もしほんとうに日本に自主的な技術をつくろうというのならば、そういう経済の大きな力に負けないような具体的な政治の力による保証、それを私は二つの条件、すなわち軽水炉導入の制限と、そして自主開発した技術の採用の政府による保証、この二つの点にしぼって申すわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/62
-
063・三木喜夫
○三木(喜)委員 いま心配な点をお聞きしたわけです。経済界、産業界の方にあとでお聞きしたいと思うのですが、次に、いまお述べになりました鶴尾さんのお考えの中にこういう言い方があるわけなのです。自分が過去十年間体験した原研の研究者としての体験というものは、研究室が全廃され、それが設計室になり、開発体制がいまなくなってきた、こういうことがまたまた十年、二十年同じ轍を踏まないか、こういう御心配が出て、私も非常に心配するわけなのです。
それで、きょうはほんとうに皆さんの腹を打ち割ったお考えを聞きたいと思うわけなのですが、亀山さんが先がたこういうように述べておられる。メーカーの態度は、私たちは労働組合の立場で国民福祉のために十分考えておる、こういう立場から見たときには不可解である。電力界も不可解だという意味だと思うのですが、在来炉に固執をし、そして各電力会社はばらばらで、そして政府からいろいろなことを言われる、さわらぬ神にたたりなし、確固たる姿勢なし、リスクの問題が非常にいま問題になる、こういうように言われておるわけなのです。もしここにおいでいただいておる皆さんが、まあ出発からそういうごじゃごじゃしたことを言うたってしょうがないじゃないか、まあやってみなければしょうがない、まあまあという気でやっておられるということなら、これはたいへんなことだと私は思います。したがって、亀山さんからその辺をもう一ぺん言っていただいて、そうして各位のお考えを私聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/63
-
064・亀山徴瑞
○亀山参考人 先ほど鶴尾さんが言われた在来炉については制限をすべきではないかというお話でございました。これは、私も同じようなことを言ったつもりなんです。いまおっしゃいました、電力経営者の現在の原子力に対する計画というものはばらばらではないか。そのために軽水炉を何かばらばらに導入しているような感じではないか、この辺にやはり在来炉そのものについて長期的な計画を持つということ、そうすればやはり民間もそういうペースで走っていくということになるから、一貫したものになるのではないか、この辺を私も申し上げたつもりなんです。その点は、鶴尾さんとそんなに意見の違いはないと考えております。
それから、いまお話がございました点は、私から見ましたら、いまの計画についてそうであるし、あるいは原子力委員会がたとえば、新型転換炉というものを取り上げた場合に、先ほど加藤参考人は、確かに新型転換炉は必要だと言われましたけれども、現実の電力の実践は、高速増殖炉にずいぶん力を入れているという印象をわれわれ労働組合としても持つ。ところが、原子力全体の展望から見ますと、確かに本命であるものに力を入れることも大事であるけれども、これも先ほど夢とか何とか言われましたように、そこへ行くまでの発展過程の中では軽水炉も必要でありましょうし、新型炉も必要であろう。それであれば、やはりそういうふうな点についても、当然に電力経営者として考えていくべきであるし、メーカーも考えていくべきじゃないか。そういう意味では、先生もおっしゃいましたように、遠慮なしに事業団が、単にいままでの既成の事業団のように——前の事業団を悪く言うのは申しわけないのですが、寄り合い世帯のような状態ではなしに、ほんとうに民意が反映され、国の政策というものが民間経営者にもほんとうに浸透するような、一体になった体制というものを、これは特に政治の面で考えていただかないと、ほんとうの意味の発展が出てこないのではないか。そういう意味で、電力の経営者なり、あるいはそのメーカーにも、十分いままでの態度を反省していただき、そういう寄り合い世帯でないものをつくるために、ぜひ考えていただくような政治の力というものを波及していただきたい、こういう意味で御希望を申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/64
-
065・三木喜夫
○三木(喜)委員 加藤さんからは、あとからまとめて聞かしてもらいます。指名させてもらって悪いですけれども、話の順序がありますから……。
そこで話の順序ですけれども、いまお聞きしておりますと、予算の点は十分言われましたし、それから、民間協力の面で、私は、いまああいうような質問をしまして、多少心配を持っておりますから、あとで十分お話を聞かしていただきます。
それから、マンパワーの面がやはり気になるわけであります。そこで、同じ原研の丹羽理事長がおいでになっておりますから、いま鶴尾さんのほうからお話がありました、非常に有力なかなめの役のような人が次々と流出をする。前にお聞きしたときには、それはほんのごくわずかで、みんなやむを得ないものが出ておるのであって、そうそう心配ないということでありましたが、いまの話ならば、非常に心配であるのであります。こういう体制では困るということと、それから、もう一つに、問題点が出ておることは、後継者がないということですね。それから、原研においてもすでに平均年齢が高くなってきた。これは次々、高速増殖炉あるいは転換炉も日本の一つの至上命令だ、こういうことで、過去ずっと取り組んできたはずなんです。原研におきましても、推進本部を置いて現在の事業団を新設する以前からそういう体制はあったにもかかわらず、なぜこういう人的な配置をそのままにしておかれたか。そして、いま言われる話は、かつて丹羽さんが言われたことと食い違っておると思うのです。これは、丹羽さんを責めるのではなく、あるいは、鶴尾さんが間違ったことを言われておる、こういう意味ではなくて、マンパワーが、そういうような形にあるということなら、やはり憂慮すべきことだと思うのでお聞きするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/65
-
066・丹羽周夫
○丹羽参考人 この話につきましては、御承知のように、この席でも二、三回だったか、一、二回だったか、申し上げた記憶がありまするが、いま、三木さんから重ねてお確かめの御質問がありましたので、大体同じようなことになりますけれども、もう一ぺん申し上げさしていただきます。
いま、原研の委員長である鶴尾氏が述べられましたこと、これは、この前、どなたの御質問でしたか、そのときに申し上げましたとおりに、過去五年間、いろいろな理由でもって、合計四十八名やめておる。その中には、死んだ者、あるいは結婚した女の人等々、その他家庭の事情でやむを得ず商売を変えるのだというような人も含んでおる。しかし、行く先が一番多いのはどこであったかと申しますと、当人の希望もありましたし、また、御承知のように、昨今各大学が競ってといいますか、原子力工学に関する講座を実際は非常にふやしておりまして、とかく原研に人材がおりますものですから、非常に外部からの要求もある。そして、本人をまず口説いて、そしてこちらのほうへ正式に願い出てこられるというケースがあるのであります。どちらが何%多かったかということは、ちょっとそこまで調べておりませんが、この間も申し上げましたように、学校関係の先生となった者は、過去五ヵ年間に二十二名あるわけであります。これは、先ほど鶴屋氏も言われましたように、中には惜しいなあと思いながら、ぜひということで、本人がぜひと言った場合もありますし、大学のほうがぜひと言った場合もありますし、給料のことまで打ち合わせをして、それならばしょうがないということで割愛した場合が相当あるのであります。そして、これは私はこの間申し上げませんでしたが、ある意味においては原研はお役に立ったということすら言えると思います。というのは、ちょっとしょった言い方でありますが、事実、現在でも原子力人口は原研に一番多数おりますし、各大学の教授なり助教授なりになっていかれたということは、それだけに、日本の各地における原子力関係のサイエンティストといいますか、それが原研によってふやされたというふうに考えられないこともない。原研だけの立場から言いますると、実に、全部とは申しませんが、二十二名の中では、あの人はおってほしいなあと事実思った人もあるのであります。しかし、私は、これはある意味においてはやむを得なかったというふうに思います。
もう一つの点ですが、これは鶴尾氏がいままで関係されてきた研究項目の経験から主としてああいう発言が出たと思うのでありますが、これもこの前のどなたかの御質問のときに申し上げたように、研究とか開発とか設計とかということばで一言にして言うことは間違いだ。私もあまり長くしゃべらないほうがいいと思いますので、したがって、ことばが少なく、また誤解を受けがちだろうと思いますが、たしかこれだけは申し上げたと思います。
いわゆる研究にもいろいろな段階がある。原研が受け持ってやるような段階は初期の段階である。しかも、その初期の設計は何が主であるかというと、高級なる計算である。しかも新しい機器においては使い得ない、アンノーンの、使い得ると言ったほうがいいですが、使い得る理論なりフォーミュラ、公式などというものはほとんど少ない。したがって、初期における最も大事な設計者というものは、すなわち研究者であり、実験者でなければならない。しかも、私は、目的基礎研究ということを言って誤解を一時招いたことがありまするが、原研でやる基礎的な研究の中には、たとえば大学がやられるような相当高級な研究よりももっと高級な、基礎的な高級な研究もあり得るのだ。しかし、私に言わせると、その基礎的な研究はやはり目的基礎研究である、こういうふうに私はこの前も申し上げたつもりであります。そういう点において、原研の若い人々、たとえば鶴尾君のような方々にはまだまだ若干徹底不十分の点がありはせぬかというふうに私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/66
-
067・三木喜夫
○三木(喜)委員 よくわかりました。私の申し上げたのは、こういう非常な使命を持ってまいった場合に、どのパートも非常に大事だ。ユーザーの方もメーカーの方もあるいは原研も原燃もどこもないがしろにすることはできない、学界もそれから大学もね。しかしながら、一つ原研をとってみても、魅力があればその年齢層がそういう高くならない魅力を持たしてそこに生きがいというものを持ってもらうべきではないかという意味合いで申し上げたわけであります。
そこで、メーカーあるいはユーザーの方にお聞きしたいのですが、人材の問題です。きょうお話を聞いておりますと、うちも導入した炉があるから人材あるいは金の面、こういう面では協力いたしましょう。しかしながら、うちもそういうことをやっておるからという、またこれはさか艪が一つづきました。私はそういう心配を非常に持ったのです。やはりどこからも人材を出していただいて、それもチームワークの形で出せというような御意見もいまありました。一人一人出していけば、そちらとの融和がどうなるか、あるいは研究との関連がどうなるかということで一つの単位で出してくれ、こういうのがいいんじゃないかというお話がいまありましたのですか、そういう人材の面でもどういうようにお考えになっておるのか、あるいは利益の面でどういうぐあいにお考えになっておるか、自主開発の面で、在来炉にあるいは外国のすぐれたものがあれば——これは石野君の言いましたことにつきましてお話がありましたので私はわかりましたが、そういう二つ、三つの点で財界あるいは産業界、ユーザー、そういうところの御協力をどのようにして得たらこれが遂行できるかということが、やはり問題点じゃないかと思うのです。そういう立場に立って忌憚のない御意見をひとつ伺いたいと思うのです。どなたからでもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/67
-
068・加藤博見
○加藤参考人 三木先生の御質問に対して組合の方々からもいろいろ御意見が出まして、その中で電力界の原子力計画というものが何かはっきりしてないじゃないか、もう少ししっかりせねばいかぬじゃないかという御叱正もあったやに聞いたのでございますが、実は私ども電力の長期計画というものを毎年つくっておりまして、その面で原子力発電をどのくらいつくっていくかということは明確になっておるのでございます。そうして現在この十年間におきましては、いわゆる軽水炉を中心にした在来炉を大体入れて計画を立てております。それでこれはやはりだんだん火力が原子力に変わっていくという形において、だんだん将来はこの原子力のパーセンテージがふえていく、こういう形で一つの一貫した方針でやっておるわけでございます。
それで皆さんの御心配は、この新型転換炉なり高速増殖炉がどうやってその長期計画に入っていくかという御心配であろうと思います。しかし、これは現在の段階において、これを長期計画にはっきり入れて、この新型転換炉を実際使って、何年から着工してどうだというところまではっきりしていないわけです。それをはっきりさすべくこの法人が原型炉を一応設計をして、建設をして、実用炉につながるものが何かできないだろうかということを、国のプロジェクトとしてひとつやっていただこうということでございますので、これの成果がある程度わかってきて、これが経済的にどうか、あるいは安定的にどうかというような見通しがつきますれば、ここでこれが長期計画にだんだん入っていくわけでございまして、原子力発電としてはこういうふうに望ましいという長期構想は出ておるのでございます。それを在来炉にするか、これを新型転換炉にするか、いつの時点においてこれを高速増殖炉に変えるかという問題は、この法人のやっていただく国のプロジェクトの原型炉の成果というものを見ながらやっていくわけであります。したがいまして、この成果いかんにあるわけでございまして、この法人の使命というものは非常に大きいというふうに私は思うわけでございますのと、どなたかおっしゃいました在来炉に対する規制を設けるとか、あるいは新型転換炉に対して使用せよという強制の法的の裏づけをぜいというような問題は、われわれ経営者としては、はっきり申すと困るということでございまして、われわれも一つの企業でございますと同時に、やはり公共事業といたしまして国策に協力するという面は非常に深く考えているわけでございますので、この新型転換炉なり高速増殖炉が国産化されてある程度安定的なものであるとすれば、これの採用にはやぶさかでないというふうに思うわけでございまして、決していまの原子力政策、原子力の計画が一向不安定であるという御心配はないのでございますので。その点はひとついまのあれと一緒にお答えをいたしたいと思います。
それから国産の奨励に対しては、これは私らユーザーといたしましても非常に意を配っておるわけでございまして、日本の電気関係の技術というものは私はもう世界的なレベルに達しておる。アメリカの次に非常に優秀だ。これは清成さんがここにおられますけれども、大手メーカーを中心にした国産の技術は非常に優秀でございます。したがいまして、われわれとしてはできるだけ国産の製品を使うということにやぶさかでないのでございまして、現に私どもの美浜の一号炉にしましても、タービン発電機は国産化に初めから踏み切ったというぐらいの思い切ったことをやっておるわけでございまして、この点は、信頼が置けるのであれば、できるだけ国産のものを使うということでございます。
それからもう一つ、人材の面でございますが、これはやはりいま原研を中心にしていろいろ養成しておいていただいている新型転換炉並びに高速増殖炉の技術員という者は非常に少なくて非常に貴重なものだと思います。しかし、原子力発電をどんどん建設していく場合にやはり一番大事なものは、建設に必要な技術員なんでございます。われわれは新鋭の火力をたくさんやっておるのです。それでこれはもう十数年来、私の関西電力の例をとりましてもすでに火主水従、水力が二百万キロで火力が四百五、六十万というような火力に非常にウエートがかかっておる発電をやっておるわけでございますが、この新鋭の火力の建設というのが非常に原子力に似ておるのです。半分は、タービン発電機の部分あるいは電気配給の部分と電気変電所の部分というのはほとんど火力と何ら変わりない。そうすると原子炉部分だけなんです。したがいまして、この技術員に対しましては、火力で十数年来やりましたこの技術員が非常に大きく使えるということでございまして、こういう点に対してまで、こういう今後の新型転換炉なり増殖炉の原型炉をおやりになるときも、そういう技術員を大いに使っていただければ、人材の全体を集められるという問題は何ら心配ないんじゃないか。私の申し上げましたのは、やはり委託建設とか委託研究というものをできるだけ利用して、いまの組織を使いながら進めていただければ、人材の問題に対しても心配ないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
それから、先ほど何か原研の組合の委員長の方から、中の融和の問題その他私が寄り合い世帯というようなことばを使いましたので誤解を受けたかもしれませんが、やはり中の全体の統括者がどうやるか、あるいは中のそこに集まった方が一致協力してやるにはどうしたらいいかという問題はいろいろむずかしい問題があると思いますが、いずれにしましても、新法人ができてからそれを考える。これは組合の方の意見も大いに入れて、そこで考えるということになりますれば、これは私は何とかうまくいくのじゃないかというふうに思っておるわけでございまして、これはただそういうふうにしてできないかという私の希望を申し上げまして、お答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/68
-
069・清成迪
○清成参考人 私、メーカーといたしまして簡単に意見を申し述べたいと思います。
先ほど三木先生からお話のありました点、第一に体制の面、意欲の面、実践の面で非常に確固とした形が見られない節があるのじゃないか、新型転換炉をやってみたところがうまくいかぬ、それじゃこれをやめるかもしらぬというお話があったという点の御指摘でございますけれども、研究開発というものは必ず完成させるという意欲を持ってもちろんやりますけれども、これがもう一〇〇%どの時点で完成するという見通しはつかないものであります。ですからして、これは非常に大きな変化と先ほど大屋参考人から申されたのは、そういう点でございましょうけれども、ともかくもわれわれは実際にやってみなければほんとうのことはわからぬ、そういうようなことをやるわけなんでございますので、この点はひとつ皆さんもよく御了解を願いたいと考えるわけでございます。
それからもう一つは、寄り合い世帯という点がいろいろな意味で述べられておりますが、ちょっと私の言うのは何ですけれども、こういう寄り合い世帯というものでやることは今回が初めてなんでございます。実を申しまして、アメリカその他ではGEやらウエスチングハウスあるいは、バブコックというのは、おのおのその一社でもって実験炉をつくり、原型炉をつくり、実証炉をつくってこの開発に邁進をしておる。ところが、日本のわれわれの企業というものは、それだけの資力がない。これが日本の企業の悲哀でございますので、こういう大きな問題に現在取り組まなければいかぬということになりますと、総力を結集せざるを得なくなるということなんでございます。したがいまして、寄り合い世帯というのは非常に不安定なものが寄り集まったというのじゃなくて、そういう必要に迫まられてこれはやることなんでございますので、何とかして総力を結集するということをうまくやっていきたいというふうに考えるのでございます。
それから、原研の鶴尾さんのお話でございますけれども、まことにごもっともと思います。軽水炉と簡単に言うけれども、軽水炉というものを実際にやってみるというと思わぬトラブルが出てくるのじゃないか、私もそういう心配はないとは決して申しません。まだわれわれがほんとうに手をかけたことのないものでございますので、出てくるかもしれませんけれども、これはいまの転換炉とかあるいは増殖炉とかいう全くほかのものをやりますのに比較すれば、わりあいに少ないはずでございます。それはもうすでに実証炉といわれておるぐらいにある程度の実績のあるものでございますので、それほど手はかからないのじゃないか、あるいはまた、実際に安全問題その他でもって諸外国と同じように律するわけにはいきませんので、そういう点ではわが国独自の研究にまたなければならぬ部分もありますので、そういう点の心配もありますが、これもまた実際に取っ組んでみなければほんとうにはわかりません。そういう問題が起こるときには多少開発関係が期限が延びるというようなことは、これはやむを得ないことかと私は思うのでございますが、将来の増殖炉あるいは新型転換炉というものに対して、何と申しますか、非常に成功をお疑いになるわけなのでございますが、ごもっともと思います。ごもっともと思いますけれども、これは水泳を覚えさせるために水に入れる、水に入れるとあぶないから入れない、そういうことを繰り返していきますと、どちらにしても水泳というものは身につかない。ある程度のリスクは覚悟して水に入れてみないと泳ぎというものは覚えぬ。こういうものなんでございますので、こういう点はお考え願いたい。
それから、国産の問題は、先ほど加藤参考人から非常に御理解をいただきまして、いまの火力機器その他のものは相当に力があるんだというお話がありましたが、われわれは必ずしもそうとだけは思っておりません。まだまだユーザーの方々に対しては相当に不十分なところがあると思っておりますけれども、これはできるだけのことをやりましてひとつ御期待にこたえるということで、総力をあげるつもりでございます。そういう点だけを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/69
-
070・三木喜夫
○三木(喜)委員 最後の問題ですけれども、リスク覚悟だ、こういうぐあいにおっしゃいました。まことに私はたのもしいことばを聞いたと思います。これはなかなか大きなリスクが出ますよ。これは、日立の場合はそういうように思われると思うのですが、加藤さんの場合もリスクは覚悟だ、こういうことでわれわれ了解していいですか。それから大屋さんも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/70
-
071・大屋敦
○大屋参考人 当然民間の仕事というものは、リスクを覚悟しなければ何も新しい仕事はできないのでありますから、ある程度リスクを覚悟するのはやむを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/71
-
072・三木喜夫
○三木(喜)委員 ことばじりでなくて、リスクというものは相当大きなものが出ると私は思うのです。これは、国も私たちも考えるということは言っております。しかしながら業界でもリスクが出るからということで新しいものと取り組むことは、いまの水泳の話じゃないですけれども、こわいということではいけないと思いますので、十分この点はお考えいただかなければならぬと思います。まあ総力をあげる面は、業界だけにそんなものを負わしておくということではいかぬだろうと思います。
そこで、最後に一本松さんからお聞きしたいと思うのですが、今度の新しい動力炉の開発については、原発はなかなか大きな意欲を持って考えておられるそうです。特に一本松さんのお考えを新聞で読んだことがあります。どういう覚悟でやろうとしておるか、お聞きしたいのです。そして、一番最後になりましたけれども、東京大学教授の大山さんの御意見を聞かしていただいて、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/72
-
073・一本松たまき
○一本松参考人 ただいまの三木さんの御質問は、民間協力とマンパワー、そういうようなことに一つのウエートを置いて、原子力発電会社がこの事業団にいかに協力をするかという御質問と拝しましたが、原子力発電会社といたしましては、しばしば申しておりますが、この事業団に全面的に協力をするということを申しておりますし、私自身としましても、この事業団の法案が一日も早く成立して、多くの困難を持っておると思いますけれども、この成果があがってくることを非常に期待しておるものであります。
そこで、原子力発電会社としての協力方法につきまして、一言簡単に申し上げたいと思いますけれども、私たちは過去十年間原子力発電会社の実際の建設を担当してまいりました。そういうことから考えまして、原子力発電会社としましては、この組織体をもってこの事業団に全面的な協力をいたしたい、そういう考えでございまして、組織を割りましてこれに御協力をすることは適当でない、そういうふうに考えております。もちろんこまかい問題は別としまして、大筋としましてはそう考えております。
そこで、どういうふうな協力のしかたをするかということになりますと、これは事業団としまして研究段階から建設段階に移って最後の実証というところまで追いついていかれると思うのでありますが、その建設段階からすでに十年間原子力発電というものに取っ組みました私たちの経験は、この事業団にお役に立ち得るものと考えておりますので、御用命がありましたら私たち喜んでこれに御協力を申し上げたいと思っております。また、建設の段階になりましたならば、私たちは、さっきもお話しございましたが、原子力発電というものについて多くの困難、失敗と申しますか、いろいろな事件を経てきております。その体験、知識というものを十分に活用さしていただけるような御協力をさしていただきたい、さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/73
-
074・大山彰
○大山参考人 東京大学の大山でございます。
まず最初に、いままで比較的お話の出ませんでした全体の問題についてちょっとお話しを申し上げて、それから特に私、大学の人間でございますから、大学と事業団との関連というようなことをお話し申し上げたいと思います。
全体的な問題につきましては、今度の事業団ができたといたしますと、たびたびお話が出ておりますように、責任ある中核機関とか参謀本部とか、いろいろなことばがあるようでございますけれども、要するに頭脳的あるいは神経的な活動をしていくということなんでございますので、この事業団としてぜひそういう頭脳活動の研究を非常に大きくしていただきたいと思います。つまり効率的な能率のいい有効な開発をお進めになるためには、国の内外、海外の状況、日本の国内の状況、いろいろな科学的、技術的なデータというようなものの収集、整理、調査、それから国内の関係者への配付というようなこともぜひやっていただきたいと思いますし、それから国際協力の面、国際協力もいろいろな程度がございまして、金と人を出し合って一つの炉を開発するというような、欧米で行なわれているものもございますし、また、もう少し違う形で基礎的なデーターを交換し、人材を交換し、意見を交換するというような国際協力もあるわけでございますが、それらにつきましては非常にきめのこまかい、かつ決心をしたら即座に動けるようなフレキシブルな、つまり簡単に申しますと、国際協力でいま決心しましても、次の年度の予算でないと動けない、そういうようなことでは国際協力はできませんので、フレキシブルに動ける体制はとっていただきたい、そうして、科学技術的に見てほんとうに効果的な活動をやっていただきたいというふうに思っております。これがいままであまり出ませんでした全体的なお話でございます。
その次に、大学と事業団との関連という点がいままでお話が出ておりませんので、ちょっと申し上げてみたいと思います。
学界ということばはあまりはっきりしたことばではございませんけれども、大体大学を中心とする研究者の集団を学界と言っているようでございますが、大学のことと考えまして、大学がこういう国家的なナショナルプロジェクトに対して寄与することができる、あるいはそれを期待される道としては二つあろうと思っております。一つは、基礎研究をやるということでございます。他の一つは、人材を養成して高級な技術者を各界に送ることだと思います。すぐあとでお話ししますように、大学におけるこの基礎研究の振興ということと、人材の養成ということは、実は根元ではかかわり合っているところが非常に大きい。かなり同じ根の上にあるというふうに思うわけでございますが、一応分けて考えてお話ししてみたいと思います。
基礎研究と申しますと、これまたあいまいなことばでございまして、非常にいろいろなイメージで話しする場合がございますが、今度のナショナルプロジェクトとしての動力炉開発に伴う基礎研究ということになりますと、高速炉及び新型転換炉に伴う基礎研究を原研あたりで、目的基礎研究という話もございましたが、そういうことをやっておられますけれども、さらにアカデミックな態度と申しますか、教育的な態度で基礎を研究していくのが大学の使命であろうかと思います。それならば、高速炉や重水炉に関係のあるいわゆる原子力学者だけがやればいいかというと、非常にすそ野は広いわけでございまして、生物学の方、農学の方、あるいは工学関係で申しますと、土木工学とか建築学などという関係も、新しい自主的開発に伴っていろいろの基礎的な研究が必要になってくる。非常にバラエティーの多い基礎研究を、これまたきめこまかく推進していただく必要があるのではないかというふうに存じております。
基礎研究の振興と申しましても、要するに研究費をつければいいだろうということになるかもしれないのでございますが、基礎研究に研究費をつけるというのは、実はなかなか算定がむずかしいわけで欧米などでこれをどういうふうにやっているかということは、私は欧米なんかに参りますときによく聞いてまいるのですけれども、なかなか向こうでもむずかしい。開発研究でございますと、こういう目的で一年間なら一年間にこういうことをやって、イエスかノーかをはっきりさせろという研究になりますので、これは有効か有効でないか、途中で望みがなければやめさせるというような作戦計画が立てられますけれども、基礎研究というのはもっと将来をねらっておりますので、これがほんとうに有効かどうかという判定がなかなかむずかしい。どういうアイテムをやったらいいかということもなかなかむずかしい。そういうときの割り切り方といたしましては、どうも欧米諸国では、非常に大きな国家的なビッグサイエンスをやりますときには、少し乱暴な話でございますが、全経費の一割ないし二割ぐらいをともかく基礎研究に使う。そうしてそれは直接原型炉をつくるとかということと一応切り離した基礎研究に使っているというようなことをやっているようでございます。そういうことをわが国としても参考にして基礎研究も同時に進歩していかないと、われわれの目的は、別に原型炉ができたらおしまいということではございませんで、原型炉自身にも基礎研究が反映いたしましょうし、将来の国際競争にたえる実用炉の基盤をつくる意味で、その進歩を考えていただきたいと思います。
人材養成でございますが、日本学術会議の原子力特別委員会原子力開発基礎研究部会という非常に長い名前の会がございます。そこで大学における原子力研究の将来について数年来議論しておりますが、このときにも、しばしば、これから日本が動力炉の自主開発をしますときに、どれだけの人材が必要だろうか、それに対して大学はどういうふうに体制をとっていったらいいかという議論をしておりますが、現在のところ、いわゆる原子力工学科とか原子核工学科とか称せられておりますもの、つまり原子力専門の学部の学科が全国に七つあります。国立大学で七つ、私立に二、三ございます。国立だけの数字で申しますと、現在約二百名ぐらいの者が毎年原子力専門の者として卒業しております。それから大学院の修士コースからは約百名、それから博士課程を済まして出る者が約五十名、半分半分というような感じに、現在二百名、百名、五十名というふうに出ております。最近また学科もふえておりますので、二、三年たちますと、それがなお五割くらい増すのではないかという見込みでございます。でございますから、こういう研究開発につきましては、たぶん主力としては大学院を出たような人、少なくとも修士を出たような人が従事をするかと思うのでございますが、年々百人とか百五十人ぐらいの者は供給し得るという体制にあります。それに、原子力開発と申しましても、別に原子力工学科の卒業生だけが必要なわけではございませんので、周辺の電気とか機械とかその他いろいろ必要でございますので、かなりの新人は供給できる体制に現在あると思います。
少し長くなりますので、簡単に結論を申しますと、事業団としては頭脳活動が非常にしやすいような体制をとっていただきたい。それから、大学との関係におきましては、基礎研究を将来遠くを見て振興していただきたい。それから人材養成の点は、大学における基礎研究を振興していただくと、かなり関連を持って優秀な学生がその道に進むのではなかろうかというようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/74
-
075・三木喜夫
○三木(喜)委員 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/75
-
076・矢野絢也
○矢野委員長 内海清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/76
-
077・内海清
○内海(清)委員 本日は、動力炉・核燃料開発事業団法案もいよいよ最終段階にまいりまして、参考人の皆さんに御足労を願いまして、長い時間たいへんお疲れであったと存じます。心からお礼を申し上げたいと存じます。すでに、かなりの問題につきまして、いろいろ質問が出ましたので、私はごく簡略に二、三の方に対するお伺いをお許しいただきたいと思います。
そこで、まず第一番にお伺いいたしたいと思いますのは、私は、今日まで原子力発電の開発に当たられました事業者であらせられまして、十年間というきわめて長い経験を積んでおられます一本松参考人に三、四点お伺いいたしたいと考えるのであります。
御承知のように、今度できます新事業団というものは、いわば日本的転換炉並びに高速増殖炉、こういうものを開発するということになっておるわけでございます。これが使命であります。この事業遂行を担当する事業団というものの性格なりあるいは機能につきましては、これまた御承知のことと思いまして申し述べませんが、現在政府が考えておりまするような構想に対しまして、これまで原子力発電の開発を担当してこられましたそういう立場から、御所見をお伺いしたい、これが第一点でございます。
第二点といたしましては、開発建設ということになりますると、原電のこれまでの経験というものが非常に重要になってくる。これが十分生かされなければならぬと私は考えるのであります。そこで、原電として、少しお伺いいたしたいと思いますが、この事業団に対しましてどういう協力のしかたをされるおつもりであるか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
第三点といたしまして、この事業団の設立ということと現在の原電の立場というものにはある程度微妙な関係があると私は考えるのであります。この原電の使命という点、並びに事業団に対しまする評価、こういう点につきまして率直にひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
第四点といたしまして、原子力学会長であらせられます一本松さん、また事業者として新型転換炉に対する評価、並びにいま言われておりますような開発方法について御所見があれば承りたいと思います。
以上の四点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/77
-
078・一本松たまき
○一本松参考人 たいへん広範な御質問でございました。はなはだ未熟でございまして十分お答えができるかどうかわかりませんが、この新事業団の性格あるいは構想等に対しまして私の考えておることをまず第一に申し上げます。
今度の事業団というものは、非常に大きな仕事だと思います。ビッグビジネスとよくいわれるものであると思います。それから原子力と申しますものは、特殊の非常に広い範囲を持った総合科学であるというふうに考えます。私、さっき原子力学会長と申されましたが、この五月で任期がまいりましてやめております。かつて原子力学会におきまして原子力のシンポジウムをやろうといたしましたときに、関係学協会というものが実に三十三にのぼっておりました。それほど非常に広い範囲の仕事がこれに従属しておるわけであります。したがいまして、この関連機関というものも非常に多いわけであります。こういう非常に複雑な関連機関の中にあって、今度の事業団が一つの目的を定めて、それに向かってこのビッグビジネスを推進していこうというのは実に容易ならぬ大きなむずかしい仕事だと思うのであります。そういうふうに非常に広い範囲の総合科学であり、関連機関と申しますか、数が非常に多い。そういうことを考えますと、第一に最も必要なことは、それらの諸組織と申しますか、諸機関と申しますか、そういうものがこの事業団に心から協力をし、またそれらの持っておる能力を十分に活用するということだというふうに思います。いま私が痛感しておりますことは、非常に多い機関でいろいろなことをやっておられますが、それを総合して一つの目的に向かって進むようなことが欠除しておると思うのであります。それに対しましては、協力ということができる体制を持つということがまず第一に重要のことと思います。そういうことを考えました場合に、事業団としましては、その運営にあたりまして、できるだけその機関でやられることを活用してやるために、それぞれの得意であるところを委託するというようなことが第一番の重要な仕事だと思います。
それからさっきもちょっとお話が出ましたが、参考人の皆さんから非常に出ておりますこの事業団というものが頭脳的な仕事であるということであります。したがいまして、参謀本部的な業務といいますか、そういうものが大切であるということを十分に認識しなくちゃならないというところに一つの大事な点があると思います。これはさっき申しました諸機関を総合しまして、一つの中核的業務をそこで責任を持ってやるということであると思います。
それじゃどうも抽象的でお前の言うのはわからないというお話があるかもわかりませんが、実際ブレーンとなるものの仕事を考えますと、非常に重大にして多くの広い範囲を持っておると思います。例を二つか三つに分けて申しますと、事業団の計画というものは、先ほどからお話があったように非常にむずかしいのであります。しかもそれを長期にわたって立てるということそれ自身は非常にむずかしい問題で、これをやらなくちゃならぬ。しかも、それをただ長期計画を立てただけでは意味がないのであります。それを細部実施計画に移して、それをさっき申しましたたくさんの各諸機関に振り割りまして、委託して、それぞれを得意な面に協力をさす、これは非常にむずかしい仕事だと思います。御承知のように、日本には、たとえば清成さんがここにおられますが、メーカーにいたしましても、そういうたいへん得意のところを十分に割り当てをし統制をとる、ダブっておるものは、こっちはダブっておるとか、あるいはこっちが足らぬというようなことは、この事業団の責任において十分に監督、監視してやっていかなくちゃならぬと思います。そういう仕事は非常にむずかしい仕事だと思います。
それから、さっきもお話が出ましたが、国際協力という面は、この事業にとって非常に重要なものだと私は思うのであります。先ほどから自主の問題と国際協力の問題が出ましたが、外国ではっきり開発されたものを、同じことを同じように日本でやるということには問題があると思います。これはそう簡単に一口には言えぬかもしれません。金を出さぬと向こうからも送ってくれぬというようなこともあるかもしれません。しかし国際協力なしにこの原子力の大きな仕事をやるということはできないと私は思います。過去におきましても、相当わかっているものを入れても問題がある。ですから、国際協力なしに自分だけでやるということにあまりにも固執されることには問題があると思います。
それから、さらにこの事業団として最も大事なことは、いろいろな委託をいたしまして、その評価をし、監督をし、それに対しての処置をする、こういうことは非常にむずかしいことでありますが、それをやることによって実際の仕事は進んでいくと思います。この事業団はそういう本筋の仕事に専念されるということを御希望申し上げたい。少し長くなりましたけれども、これが第一の問題点であります。
それから次は、開発建設計画で事業団にいかに協力するかという御質問でございましたが、これは私の会社としましては十年間失敗の歴史を繰り返したというふうに私にも思えるくらい多くの問題にあいました。最初から考えたことは、かなり、そうでなかった、これも失敗であったと思い当たることが非常に多いのであります。おそらく事業団でおやりになる場合にもそういう経験におあいになると思います。ことに事が新しい問題で、新しいアイデアによってやるという場合にはこういう点を注意しなくちゃならぬとかいうこともやはり体験というものも相当大切な問題ではないかと思うのであります。そこで、実際的な御協力は私のほうの全組織をもってこれに応援、協力を申し上げたいと申しますことは、研究段階からすでにあるのでありまして、これはアメリカの例でもいろいろ原子力についてわからない二とは、オークリッジの研究所におきましても相当のアメリカのコンサルタントを使いまして、こういう点はどうなっている、こういうことを調べてこい、こう点はこれでいいのかというような御質問があるわけです。アメリカでこれはコンサルタント業務というふうにはっきり申しております。私はこの事業団におかれましてもわれわれの会社に——われわれの会社だけじゃございませんけれども、そのコンサルタント的な仕事を命じていただきますことが、仕事の成果をあげるゆえんだと思います。
それから、原型炉の建設の段階になりましたら、もちろん責任の分は全部この事業団でおやりになりませんと、事業団のほんとうの意味がないことになると私は思います。ですから、責任のある仕事は事業団でおやりになりますけれども、この発電所を建設するのに、たとえば用地の敷地をどういうふうにするとか、あるいは地盤をどういうふうにやるとか、あるいは準備工事としましては冷却水の問題とか変電所とかいろいろあるわけです。それから発電所の原子炉を建設する場合には、その建物の設計からあるいは据えつけというようなものも、これはその仕事は事業団でおやりになりませんでも、諸機関にまかせられてしかるべきものと思うのであります。私がそういうことを申し上げますのは、事業団の本来の本筋の仕事というものは、さっき申し上げますように非常に重要な問題があるのでありますから、そういう、どちらかといえばどこかですでに経験を積んだようなものはそこにまかせるというお考えのほうが所期の目的を達するのに一番いいんじゃないか、さように信じておりますので、原電としての協力はかなり広い範囲にわたって実際の委託をお受けしたいと考えております。もちろんこれは原電だけとは決して申しません。電力のほうでさらに得意のものがありましたらそれも分けて、この部分は電力のほうでやれ、この部分はメーカーでやれというようなこともあると思いますけれども、そういうふうにそれを参謀本部的業務に専念するというようなことで申し上げたいと思うわけでありますが、原電の協力はいまのような形でさせていただきたいと思います。
それから、原電の使命につきまして、事業団ができたら原電はちょっと影が薄くなるのではないかというようなお気持ちのようなことがあったと思いますが、原子力発電会社の使命と申しますか目的は二つございまして、一つは、初期段階の原子力発電の企業化をする、いわゆる平たいことばで申しますと、パイオニアの仕事をするというように申しております。
それから第二はコンサルタントの仕事をする。これは日本で初めて十カ年の経験を積んだ会社といたしまして、その知識経験を最も広く使っていただきたい。これは電力会社でお建てになりますときもお役に立ちたい、それからまた、今度の事業団に対しましてもそれはぜひお役に立ちたい。これは先ほど申しましたが、そういうようなことを考えておりまして、この事業団ができたから、うちの会社がちょっとやることがないようになったということはない、さように思います。
それからもう一つ、第四の問題の新型転換炉に関しましての問題と関連をいたすのでありますが、私は新型転換炉というものは必要であるというふうに考えます。この理由を四つくらいに分けて申し上げます。
一つは、先ほどからしばしば言われたことでございますが、ブリーダーが理想型であるにしましても、本格実用化は二十年後と見られる。その間四千万キロワット程度のものを原子力で開発しなければならぬ。そうなりますと、いまのところこれを軽水炉一本でやるということはあまりにも膨大な一炉型に偏する形になりまして、多様化が必要であるということが一つ。
第二は、いまの世の中は技術革新時代である。原子力発電というのはまだ生まれたばかりで、これからの技術革新が大いに期待される。だからその技術革新にもう見切りをつけて、必要はないという議論はあまりにも短見であるというふうに考えます。
第三に、世界の現状を見ましても、どこの国も中間炉、つまり新型転換炉と申しますか、非常な努力をいたしております。アメリカにおきましても、いま、 ハイテンーペラチャ・ガスクールド、オーガニック、リアクター、それからいまの本命はシードブランケット、この三つの型に限定しておるようでありますが、過去においては多くの失敗した例もあります。それからイギリスにおきましても、三つの型をいまやっておりまして、ドイツもやっておりますし、フランスもやっております。そういうことから見て、日本だけがもう新型転換炉をやらないのだというようなことは、これはあまりにも偏した考えというふうに言われてもしようがないんじゃないか、以上のような理由によりまして、この新型転換炉は必要だと思います。
それで、私のほうの会社のパイオニアの仕事との関連もございますが、そういうふうに新型転換炉は必要であるということでありますならば、私はそう考えておるものでありますが、原子力発電会社としましては、これの研究をいたしております。組織をつくりまして研究をいたしております。しかしいまのところは、これはなかなかむずかしゅうございまして、そう簡単にこの炉がいいというような結論に至っておりません。これは世界じゅうみんなそういうことだと思うのであります。しかし、将来のことは非常にわからないのでありますが、われわれの事業団で開発します新型——一種の新型転換炉だと思うのでありますが、それが非常にりっぱに成功すれば、これでいくということは、もちろん当然のことでありまして、それを私たちできるだけやらしていただきたいという気持ちはありますが、しかし外国も一生懸命やっている、非常にたくさんの炉をやっておるわけであります。ですから、ある時期に、あるいはまた、非常にそれが早い時期に、外国で有利な新型転換炉ができた場合、これは一つの問題だと思います。このときは大いにみんなでディスカッションしまして、その安くできたものを入れるかどうかというのは、そのときに検討すべきだ、いまのところはまだありませんので、私のほうの会社としましては、そういう将来の原子力発電の趨勢を見ながら、事業団ができたから、うちのほうは使命が終わったとか、どうも影が薄くなったとか、そういう感じは、少しも持っておりません。将来の大きな原子力発電推進のお役に立つという確信を持って進んでおります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/78
-
079・内海清
○内海(清)委員 十年という経験から、たいへん貴重な参考意見をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。せっかく皆さんにおいでいただきましたので、いろいろ聞きたいこともございますけれども、かなりお疲れのようでございますので、あともう一問程度で私は失礼さしていただきたいと思いますが、ひとつ加藤参考人と清成参考人に、これは同じお尋ねでございます。
先ほどの意見の御陳述で、いろいろ今後の動力炉の開発等についてもかなりのリスクは出るだろうが、それらは当然それぞれの費用を皆さんで負担する用意があるという、まことに力強い御意見であったと思うのであります。これにある程度重複いたしますけれども、この委員会でいろいろそれらの点につきましても論議いたしましたので、もう一度お尋ねいたしておきたいと思うのであります。
この委員会の審議の過程におきまして、在来炉、ことに軽水炉の国産化ということについての国の方針が問題になったわけでございます。一般に外国技術を自分のものにするためには、相当なリスクが伴うことは当然だと思うのであります。特に動力炉のような大きな資金を必要とする場合には、そのリスクが、これはまたきわめて大きいものが出てくるのではなかろうかということを予想いたすのであります。そこで軽水炉の国産化という国の方針を民間企業に実践させる場合に、そのリスクをだれが負担するかという、そのことを明らかにしなければ、国産化方針を十分に実践することはきわめて困難であるという指摘が行なわれたのであります。そしてそのリスクの負担者の第一は、これは国自身であれ、そういうことが述べられてきたのであります。しかし国の方針を実践するのでありますから、国が最大の責任者であるという意味からは、そうであろうと思いますけれども、メーカーにいたしましても、ユーザーにいたしましても、また今後これは相当の受益者となられるはずであると思うのであります。これは間違いないだろうと思います。したがって、メーカーもあるいは電力会社も、まるまるリスク負担を国にかぶせて自分は知らぬ顔をする、こういうことは許されないと思うのであります。しかし先ほどのお話で、皆さん方の御意思は十分わかったのでありますけれども、そういうこの委員会におきまする審議の経過から申しまして、いま申し上げましたようなことに相なっておると思います。この点はきわめて重要な点で、もう一度御両者から御意見をちょうだいしておきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/79
-
080・加藤博見
○加藤参考人 リスクの点でございますが、われわれやはり電気業といたしましては、一つの企業として発電というものをやっております。したがいまして、水力というものを主にしてやっておった従来の方式を、火主水従ということで、だんだんかえておるわけでございます。しかも、その火力というものは、だんだん石炭を重油に切りかえてきておるというのが実情でございます。しかし原子力というものがやはり日本のエネルギー問題を解決するものでございますので、火力をだんだん原子力発電にかえていくという方針で考えているわけでございます。したがいまして、従来は在来炉を、主としてやろうとしているのは軽水炉でございますが、軽水炉に対する研究開発というものがわが国ではそう進んでおりませんでしたので、やはり技術導入ということで一号炉というものは一応アメリカから輸入をするという形で進めておるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、やはりこれはだんだん国産というものに切りかえていくということでございます。
リスクの点でございますが、原子力発電そのものが、先ほど一本松さんからのお話しのとおり、やはり大きな新しい技術であるということと同時に、そこにリスクを伴うということは当然でございます。一本松さんのほうが非常に御苦心になってやられた東海発電所におきましても、所期のとおりにいかないということ、あれを見ても新しい技術は非常にリスクが多いということでございます。しかしわれわれとしましては、これはやはり国策に順じなければいかぬし、しかも電気事業将来のためには、これがいわゆる電気事業長期安定に通ずる一つの道であるというふうに考えてこれをやっておるのでございます。したがいまして、われわれといたしましは、そのリスクというものを乗り越えてこれをだんだん開発していかなければならない、こういう気持ちでおるわけでございます。したがいまして、この在来炉をわれわれの責任においてやっておる以上は、それの事故その他における運転からきましたリスクですね、運転ができなかったとか、そういうようなリスクは一応企業そのものが持つという覚悟でおるわけでございます。しかし原子炉に対しましては非常に特別な重大事故というようなものも考えられまして、安全委員会においてもそれを仮定していろいろ安全の施設をやらしていただいているわけでございますが、それにもかかわりませず、非常に重大なる事故がありました場合には、国民に対する何か放射能その他の事故がありました場合には、その賠償はどうするかという問題がございまして、これはいまの賠償法ということで、企業の責任はここまで、それ以上は国において考えていただくという法律になっておるかと思いますが、それによって処理していただくということでございますが、そういうような重大事故は、われわれとしてはあってはいけないし、また、そういうものは現在世界においても起こっておらないということで、ここでは私らはそういうことがないことを希望しており、また、ないように努力をしたいというふうに思っております。したがいまして、在来炉に対しましては国に補償していただかなければいかぬというリスクは現在においては非常に少ないと思いますが、資金その他において特別の御配慮を願うとか、あるいは非常な特別の償却を御考慮願うとか、そういうような問題において補完的にいろいろ御指導いただきながらやっておるということはございますが、その事故に対するリスクというものは、一応企業としてのわれわれ電気事業者が負うという気持ちでおるわけでございます。
それから次の新型転換炉と高速増殖炉の問題でございますが、これは今後、先ほどから私申しておりますように、この事業団において主として政府の資金によりましてこれを研究開発していっていただく。そしてこれが十年ないし十五、六年の間に、新型転換炉におきましても高速増殖炉におきましても、実用炉の前のいわゆる原型炉までここでやっていただくわけであります。これの成果ですね。それは先ほど私申し足りませんでしたが、経済的の成果もございましょうし、安定供給ができるかどうかという成果もございましょう。いろいろな面においてこれがほんとうに国産化していけるかどうかという見通しですね、これを実用炉につないでいくかどうかということは、その成果を見通した時点において、電気事業者が実用炉に使うかどうか決心をつけるというふうに考えておるわけでございます。それで原型炉の資金というようなものの一部は、やはり民間が持ったらどうかというような初めの御計画もございます。そういうことはわれわれもすべて知りながら、われわれとしてはこの事業団の御計画に全面的に賛成をいたしまして御協力を申し上げようと言うておるわけでございますので、その点ひとつ御了承願いたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/80
-
081・清成迪
○清成参考人 ただいま加藤さんから御意見が出ましたので、われわれメーカーも電力会社さんのお考えとほとんど同様でございます。ただ、電力会社さんのリスクと申しますか、そういうものとは、メーカーとしておのずから範囲の違うところはございますけれども、火力の場合におきましても、あるいは原子力にしましても、現在外国で行なわれてきておりますようなリスクの負担の方式というものはおのずからきまっておりますので、軽水炉についてメーカーとして負担すべきリスクというものは全面的に負担するつもりでおるわけでございます。したがいまして、加藤さんのお話しになりましたように、軽水炉に対しましてはわれわれは政府の補償というようなことは、いまのような大きな賠償その他を抜きにしましては、あくまでわれわれ自身がやるつもりでおるのでございまして、この点ははっきり申していいかと思うのでございますが、将来炉につきましては、これもいま加藤さんがお話しになりましたとおりで、これは国のプロジェクトとしてほんとうに原型炉まで開発するのでございますから、この原型炉の製作中にもあるいは不測の事故というものが起らぬとも限りません。こういうもののリスクというものもおのずからやはり、これはどうしたって国が主になっておやりになることでございますので、国にほとんど全部のリスクをしょっていただくということになると私は思います。ただし、その中で一部委託されたようなところの責任に帰するようなことは、これはそのつど考えて対処していくということにやぶさかではございません。
次に、国産化の問題でございますが、そのリスクに関係しまして、国産化の問題が出ましたのでございますけれども、国産化を国の方針としてやらせるというお話でございますが、これは軽水炉に対しましては、やはり先ほど加藤さんのお話しのように、電力会社が私企業としておやりになっておるということでございますので、必ずしも私は、いますぐに国の方針としてこの国産化を命ずるというようなことが適当とは考えておりません。したがいまして、国産化というものは、電力会社さんとわれわれとの信頼の問題でございまして、私は、無理押しに国がリスクを持つから国産化せいというような形にはなかなか押し切れないだろうという気がいたすのでございます。われわれもそういう気持ちでもって電力会社さんのほうの御信頼を得るべく全力をあげてまいります。また、一日も早く政府の御方針のように国産化が進むことを期待して努力を続けていきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/81
-
082・内海清
○内海(清)委員 いろいろ御意見を拝聴いたしましたのですが、私どもは今度のこの事業団が、わが国の将来のエネルギー源の開発の問題にきわめて重要な問題であって、国をあげてこれと取り組まなければならぬと考えるのであります。わが国とドイツが大体同じように原子力開発に取り組みまして、しかも今日ではかなりの水をあけられておるこの原因のやはり大きいのは、国の責任もございましょう。しかし、また一面、メーカーなりあるいはユーザーなりの皆さん方もこれは御反省いただかなければならぬ面があったのじゃないか。すなわち、ドイツにおきましては、すでに国際競争にうちかつために原子力産業の確立、樹立ということに民間の企業もすべて打ち込んできた。すでに今日ではいろいろ国際競争場裏に入っております。そういう点をわれわれは思いますときに、やはりドイツがとってまいりましたような、一定以上のリスクはやはり国が責任を負うべきではないかというふうなことでいろいろ論議があったわけでございます。これらを今後すべて克服してこの事業団の成功をはからなければならぬ。いずれにいたしましても、この事業団は、いわゆる官民一体によって目的を達成するということでございます。したがいまして、きょう御出席いただいておりまする財界、学界、さらに企業の皆さん方、さらには関係の組合の皆さん方、ほんとうに一丸になってこれの推進をはかっていただかなければ、これはなかなか容易なことではない、かように考えておるのでございます。
まだお聞きしたいこともございますけれども、以上で終わりたいと思います。まことにありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/82
-
083・矢野絢也
○矢野委員長 石川次夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/83
-
084・石川次夫
○石川委員 きょうは参考人の方、それぞれ皆さんたいへんお忙しいところを長時間にわたりまして貴重な御意見を伺いまして、まことにありがとうございました。
いままで基本的な問題点につきましては、いろいろな方からそれぞれ御答弁をいただきましたので、私はちょっとピントをはずれるかもしれませんけれども二、三点御質問をいたしますから、たいへんお疲れでもございましょうから、簡単に御答弁いただいてけっこうでございます。
原子力の開発が非常に重要なことは、いまさら申し上げることがないわけでございます。ほかのビッグサイエンスと違いまして、この原子力は特に将来のエネルギーの問題である。われわれの生活に密接な関係があるというだけではなくて、実を言いますと、技術開発の一つのモデルケースとして、原子力に非常に典型的な一つの形を示してもらうということを通じて、たとえば宇宙の問題とか海洋の問題とか、以下これに準ずるという体制をつくる一つのモデルケースとしての意味を見出したかったわけです。たとえばEECというふうなものも、これは高度工業国家の間における貿易というものが国を繁栄させるんだということから生まれたんでありましょうけれども、一つはやはりアメリカに対抗して欧州で打って一丸となってこの原子力を研究しようというようなことで、この原子力がいわば国境を突き破った一つの原動力にもなっているというくらい各国ではほんとうに真剣に取り組んでおります。もちろんこれには軍事力ということの背景もありますけれども、それに対して、日本の原子力に取り組む姿勢としては相当関心を持たれておりますけれども、まだまだ予算の面から見てもわかりますように十分だとはとても言えない、こう思っております。したがって今度事業団法というものができまして、民間、政府の力を糾合するという体制ができたということは、一応の進歩だろうとは思っておりますけれども、しかし私はこれで十分だとはとうてい思っておりません。一つの素案として——実はイギリスに原子力公社というものがございます。ここに有澤さんがいらっしゃるので、はっきり申し上げることはちょっと、ちゅうちょされるわけでありますけれども、日本の原子力委員会は相当のメンバーを集めてはおられますけれども、委員会では事務局がない。事務局は全部科学技術庁の中の原子力局が兼務をするというようなかっこうで、これではたして独特の、特異の力が発揮できるかどうかということは非常に疑問であります。そういう問題の解決をはかりながら日本の原子力の開発の体制というものを整えるという場合に、今度の動力炉・核燃料開発事業団というようなものではたして十分な体制がつくれるかどうかというと、私はたいへん心もとない感じがするわけで、それにかわるものとして、イギリスの原子力公社というようなものを一応考えてみたらどうだろうかと考えましたけれども、これにはなかなか異論もあります。まだわれわれとしても考え方はまとまっておりません。これは民間の方々の御意見も聞かなければならぬと思いますので、官民の事情に比較的詳しいと思われます電源開発の藤波総裁あたりの御意見も伺いたいと思っております。それから民間の清成さんの御意見も伺いたいと思っておりますが、この原子力公社というのは、たとえばイギリスあたりは、原子力委員会というふうなものが中核になって、実際強力な組織をつくっております。しかしながらこれは国家的なモノポリーにおちいるおそれがあるというふうな点もあるわけで、あるいはまた、官僚統制が非常にきびしくなるというような懸念もありはするけれども、しかしながら、国をあげて原子力開発に取っ組む一つの体制としては、原子力公社というものも一つのモデルになるんではないか、こう私は考えておるわけです。たとえばイギリスの中でガス冷却炉というふうなものを入札をしますと、アメリカのものが落札をした。ところが原子力公社というものは、これは自国の、英国のものを使えというようなことでこれを拒否したというようなこともあるわけです。もちろんこれは別な問題になりますけれども、それまで強制力を持つことがいいか悪いかという別の議論もありますけれども、そういうふうなことで、たとえば原研、たとえば動力炉開発、たとえば重要な核燃料の開発というようなものを含めた原子力公社というような、原子力委員会を中核とする体制をつくるという、一つのまだまとまらない素案でございますけれども、現在の事業団法よりははるかに前進した形になるのではないか。研究は足りませんけれども、われわれはこう考えておるわけであります。その点につきましてひとつ御意見を伺いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/84
-
085・藤波収
○藤波参考人 ただいま石川先生から原子力公社というものをつくることはどうかというお尋ねがありました。原子力公社という考え方もあり得るとは存じまするが、現在のわが国の原子力関係の情勢から判断をいたしますると、今日の段階におきましては、この事業団の案がよろしいものではないか、そういうふうに考えておる次第であります。公社にもまた、公社の特徴があるとは思いますが、いまの日本の情勢から言いますと、新型転換炉とかあるいは高速増殖炉を研究するというのにはこういう形でよろしいのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。非常に簡単でございましてお答えになるかどうかわかりませんが、これをもってお答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/85
-
086・清成迪
○清成参考人 私のお名ざしがありましたので簡単に申し上げます。
科学技術の開発のモデルケースとして原子力がこういうふうにして開発されることは非常によろしい、御遠大な御構想でたいへん敬服をいたしました。
なおまた、いまお話がありました原子力公社というようなものと現在の体制との比較論でございますが、私は現在の時点では、いま企図しております新型転換炉の原型炉あるいは高速増殖炉の実験炉、原型炉、この二つをまずやることが一番の急務でありまして、その三つをやっていきますのには現在の計画の事業団というもので十分じゃなかろうかというふうに思います。また現在の原子力の国策をきめるためにありますところの原子力委員会というようなものも、これは十分その指導機関としてやっていけるのではないかというふうに思います。ただ石川さんの言われるような非常に大きな構想を具現しますためには、なお現在の原子力委員会みたいなものでは不十分かもしれません。それは今後ひとつ各方面で検討を加えまして、日本のさらに一そう大きな技術の発展を期するという意味でりっぱな案ができ上がることを私は切望するのでありますが、まず第一着手としましてこの事業団の成立を一刻も早くお願いするということに尽きるわけでございます。
私の意見を簡単に申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/86
-
087・石川次夫
○石川委員 ありがとうございました。
垣花先生の先ほどお話があった中央公論を拝見いたしました。非常に原子力というものの産業と研究というものの重要性というものの問題点をあげながら、将来の方向づけの中でかなり楽観的といいますか、楽観的というと語弊がありますけれども、やればやれるんだということを思わせるようなところがたくさんあるわけです。それは、たとえば基礎研究では過去の実績からいって非常に注目する研究成果というものがあがって、海外では非常に高い評価を受けているというようなことを書いてあるわけで、そういう点で、日本人の知能をもってすれば——導入炉といいますか軽水炉に依存し切るということではなしに、どうしてもいい意味でのナショナリズムというものを発揮して、多少の不利はあっても、日本のものを使うのだ、こういうようなことにもっていきたいと、私個人としては念願しておるわけであります。そういう点で、たとえば、核燃料なんかの問題につきましても、いまのところは、アメリカから無制限に入るような——濃縮ウランの問題につきましても入手できるような安易感を持っておるのでありますけれども、私の調べは、ちょっと不十分かもしれませんけれども、あと十年ぐらいたちますと、アメリカは輸出能力がないのじゃないかと思わせる点が多々あるわけであります。そういう点からいいましても、何としても日本で燃料の濃縮の技術というものを開発したい。ところが、この研究の内容を見ますというと、まことにささやかな研究しかやっておらぬというような状態なんで、非常に歯がゆい感じがあるわけであります。そういう点で、何とか日本としては、将来のエネルギーの首根っこを押えられるような形の導入炉依存ということではなしに、日本独自の国産炉というものを、何とかして新型転換炉あるいは高速増殖炉というものを早く完成させたいという、いわば焦燥感に似た期待を持っておるわけであります。
ところで、垣花さんのお書きになったようなものを見ますというと、日本人でこれはできるのではないか、やればできるのではないか、ただし、問題はいろいろ条件があると思うのであります。そういう点で、たいへんラフな質問で恐縮でありますけれども、大山先生、それから垣花先生にお伺いいたしたいのは、日本人がやればできるのか、これはまあ将来の問題ですから、確約できないということはよくわかっておりますが、これは、日本人でも外国に追いつくだけのことはできるのだというような見通しをお立てになるかどうか。ただし、そのためにはいろいろな条件があると思うのであります。どういう条件が満たされれば、日本人でもこれをやっていけるのだということになるのか。これはとても期待は持てないというふうなお考えなのか、その点をちょっと、子供だましのような質問でたいへん恐縮なんでありますけれども、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/87
-
088・大山彰
○大山参考人 簡単にお答え申し上げます。
重水炉にいたしましても、高速増殖炉にいたしましても、先ほどからお話がありましたように、非常にいろいろな分野の技術を使ったり、総合的な技術を使った大きなプラントになると思いますので、その端から端まで全部日本人が世界で一番のようなものがつくれるか、こういうお尋ねだとしますと、常識的なことでございますが、それは無理であるということになると思います。
それじゃ、世界のうちでどの国がそういうことをできるかということになりますと、おそらくできそうなのは、アメリカあるいはソ連というあたりであって、ヨーロッパのイギリス、フランス、西ドイツ、イタリアというような国は、とてもそんな全部のことを全部自分でやるということはできないと思います。しかし、それならば、アメリカならアメリカの技術が世界を席巻して、みんな技術導入でおしまいになるのかということになると、そういうことはございませんで、それぞれの国でそれぞれの得意の技術を生かして、そこで国独自の技術を持ち、技術輸出もできる項目を持ち、それから、他の国で開発した技術をそれと引きかえに導入してくるというのが今後の姿じゃないかと思います。国際協力が非常に大事だと先ほど申し上げましたのも、そういう意味でございます。
日本はどうかと考えてみますと、現在の時点の考えと、今後——予想でございますから当たらないかもしれませんが、今後十年くらいの間を考えてみまして、新型動力炉について独自の技術をある程度持ち、それからもちろん導入すべきものは導入して、日本の国産の新しい原子炉をつくっていくという、いわば原子力の一流国になれるという可能性は、能力からして十分あるのじゃないか、ヨーロッパ諸国並みにはあるのじゃないか、そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/88
-
089・垣花秀武
○垣花参考人 お答え申します。
原子力開発における成功、不成功というのは、成功、不成功という二つの概念があるだけではなくて、その間に相当幅の広いものがあると思います。したがいまして、いかに成功に近いと申しますか、具体的に申しますれば、国際的なコンペティションでどの程度のシェアがとれるか、そういうことになると思います。そういたしますと、私は、かなりな程度楽観主義でございます。もちろん、いろいろな問題がございますけれども、そのために、まずそれでは、成功に近いと申しますか、原子力開発で先進国の仲間入りをして、十分技術的な貢献を世界にもするし、商売にもなる。そういうことのための必須条件みたいなことが一つか二つあると思います。
それは、まず第一には、先ほど私はビッグサイエンス、ビッグテクノロジー、ビッグビジネスと申しましたけれども、ビッグビジネスに目を奪われて、ビッグサイエンスとビッグエンジニアリソグのあれを忘れてはいけない。実はこの十年間われわれは努力したわけでございますけれども、原子力をささえるビッグサイエンスの面においてもまだ不十分なところがある。それから、エンジニアリングの面においても不十分なところがある。そういうものをもし軽視いたしまして、ただ空中楼閣のような、何かデザインとか、そういうものばかりに夢中になっておりますれば、これは原子力のコンペティションに勝つ可能性が少なくなる。したがいまして、一方に大きなビッグビジネスの状態がございますけれども、われわれはそれに努力しながら、なおかつ十年間のハンディキャップを回復するためにビッグサイエンスとビッグエンジニアリングの欠を補い、あるいはさらに努力しなさいということ、これが第一点。
それから第二点、これは非常に重要でございまして、先ほど石川委員もおっしゃっておられましたけれども、核燃料、これは天然ウランではございません。プルトニウムとか濃縮ウラン、そういうものが日本で全然手当をされていないということは非常に重大な問題でございます。これはいわゆるプルーブンタイプというものの燃料に関しましても、ある意味では国全体が非常に困る可能性もあるような問題でございます。同時に、現在問題になっております新型転換炉にいたしましても、それから、さらに将来問題になります高速炉にいたしましても、もしそのりっぱな炉が、日本独特の炉が、あるいは国際協力でつくられた日本のユニークなものが入りましたそういう炉ができたとしても、そしてそれが国際的な商品になるとしても、もしそれにチャージする、それに入れる燃料がなかったらどうなるか、そういう問題になるわけであります。これは商品として価値がないわけであります。そういう意味で、燃料というもの、それも天然ウランなどという燃えないものではございませんで、濃縮ウラン、プルトニウム、そういうものを現実に考えられて、この二点でそろそろ手をお打ちになったほうがよいのではないか。そういうことがミニマムリクァイアメントの一つではなかろうか、そういうふうに考える次第でございます。
最後に、三番目といたしまして、全面的な処理とか、そういうことではございませんで、小さなエンジニアリングの上でのパーフォーマンス、あるいはサイエンティフィックな独創性とか、そういうものをてこにいたしまして——いまたいへんわれわれが弱点に見ておりますけれども、そういうものをてこにしていけば、相当なところまでわれわれは進めるのではないか、そういうふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/89
-
090・石川次夫
○石川委員 ほかにも、いまお話がありました核燃料の問題その他で伺いたいことがたくさんありまするが、たいへん時間も経過してお疲れだろうと思いますから、この辺でやめておきますが、いまのお二人のお話で、力強い、いわば楽観的な展望を伺って——ただし、この力を発揮させるための体制をいかにしてつくるかという問題は、この動力炉の事業団というものをいかに組織され、いかに運営されるかということにかかっていると思うのでありますけれども、率直に申しまして、先ほど参考人の方々から、民間協力は積極的に、リスクを覚悟の上で、惜しまない、こういう非常に力強いおことばがございました。たいへんありがたく思っているわけでありますが、そういう点で、経済界、財界というものは、何といっても採算がとれなければおいそれと日本の国産品を使うわけにいかないというので、軽水炉一辺倒ということになる懸念をわれわれは非常に強く感じておるわけであります。その考え方を切りかえていただいて、核燃料の確保と同時に、何とか国産技術を育てていかなければどうにもならぬのだ、こういうことで、積極的な自主開発のための御協力を心からお願いすると同時に、期待をしております。よろしくお願いいたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/90
-
091・大屋敦
○大屋参考人 いまの石川さんのお発言で思いついたことを申し上げますけれども、従来の軽水炉型をある段階では禁止したらどうかとか、あるいは今度新しい転換炉そのほかを命令で置いたらどうだろうかというような御意見もちょっとあったように思うのでありますが、私はそういうやり方は全面的に不賛成でございます。それよりも、むしろもしも政府にそういう希望がありましたら、政府はファイナンスによってその目的を達することができるのでありまして、たとえば新型転換炉でもって炉をつくりたいというものに対しては低利の金を融資するというような方法をもっと強力に使えばそういう目的を達することができると思います。ただ、命令でさせるとかさせぬとかということではなしに、やりたければファイナンスの問題、電気事業一般の問題ではありますが、特にそういう新型の原子炉の採用については特別のファイナンスを考えてやるということを政府は別途に御研究になる必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/91
-
092・鶴尾昭
○鶴尾参考人 石川先生の御意見に関連しましてちょっと申し上げたいと存じます。
やはりこの燃料の確保というのは非常に重要でございます。そういう意味で濃縮ウランの確保あるいはプルトニウム再処理の問題、これは冒頭に原燃の水船参考人から申し上げたとおり非常に重要なことだと思って、これがないとどのような計画も水のあわになってしまうのではないかと思うのであります。ところが同時に、御承知のように濃縮ウランの技術、プルトニウム再処理の技術、これはまさに原水爆製造そのものにいままで以上に密接につながる技術でございます。そういう点で、このような計画を進めるにあたりまして、最も重要でもって、また国民のほんとうの支持が得られるという状態をつくるためには、やはり原子力基本法におごそかに規定されておりますあの平和利用の原則、これをほんとうに挙国一致してつくっていくということがほんとうに大事なのではないかと思うのであります。
実は、私、きょう午前中は、日本原子力研究所のアイソトープ研修所というところで講師をしておったのでございますが、その生徒さんはちょうど高級課程でもって一人だったのでありますが、その方は防衛庁の方でございまして、そういうことで、私、実はこれから議会に行かなければならないのだがと言って途中で振り切ったのですが、非常に熱心にそういうことをお聞きになっていらっしゃいまして、私も非常に熱心にお教えしてきたのでありますけれども、これはもちろんそれでもってどうだということは申しませんけれども、ほんとうに私どもがそういう自分の持っております科学者の開発しました技術というものがそういう不幸なものに使われないというような保障を何とかつくっていただく、それが第一点。
それからまた、そういう平和利用という展望の中で、在来の機関をほんとうに生かしていく観点からも、原子力基本法あるいは日本原子力研究所法に規定されましたように、原研におきまして、基礎及び応用の研究を全面的に発展させていくのが、垣花先生もおっしゃいましたように一か八かという問題ではなくて、小さな勝利を大きな勝利にさせていく非常に重要なポイントではないか、このように思います。そこで単に計画をあるリアクターの開発にしぼるということでなくて、それを重点に置きながらも全体的な基礎及び応用の研究を進めていくという体制をともに伴ってやっていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/92
-
093・矢野絢也
○矢野委員長 福井勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/93
-
094・福井勇
○福井委員 きわめて長時間でございますのでまたかとお思いになるかもしれませんが、自民党から一人も発言がありませんからどうかということもございまして、一言だけお礼を申し上げたり、ほんのわずかだけお尋ねすることもございますから、御了承願いたいと思います。
今度のように動力炉・核燃料開発事業団法の成立に民間はもちろん各方面から協力してもらいましたことは、私は非常に少ないことだと思っておりますし、また、日本の原子力界といたしましても、この段階は最も重要なことだと存じております。学界、財界を代表する皆さんが長時間非常に御努力くださっておると同時に、私のほうも、大臣がこのような席を重要視しておるものでございますから、皆さんの御意見を拝聴するだけに初めかららしまいまで委員会に出ておるというのは、委員会では初めてでございます。これはもったいぶったことではなくて、これほど政調会から何から、ずっと大臣が努力をしておられますと同時に、委員のほうも一生懸命で、与野党一致しまして、民社の方も社会党の方も、この法案を成立させなければならぬということで、ほんとうに日夜努力を続けてまいりました。そういうこともございますので自民党は一言も発言しないとサボっておるのかなという心配もございますので、一言お礼を申し上げるわけでございます。
私は途中でちょっと抜けましたので重複したらたいへん失礼しますが、藤波さんの御意見をちょっとだけ聞きたいことがございます。あなたの電発さんのほうとしては、原子力発電についてどういうようなお考えであるか、ちょっとだけお漏らし願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/94
-
095・藤波収
○藤波参考人 お尋ねがありましたのでお答えいたします。
原子力発電につきましては、電源開発株式会社のやるべき仕事の分野といたしまして、第一は水力、第二は火力、第三に原子力というのも入っております。現に一本松君のところの原電に対しましても出資をいたしております。また、人員も参加をしております。電源開発株式会社が原子力発電をやるということに政府並びに民間、各方面で御同調、御協力を得られます時分には、進んでやるつもりでおります。しかし、私どものところで単独で決意をすることはございません。しかし、そういう体制でありますればやります。それから、そういうときに対処しますために原子力関係の調査、そういう意味の研究は平素からいたしております。また、そういう調査関係の団体にも参加をいたしております。そういう時代が参りましたらどうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/95
-
096・福井勇
○福井委員 それでは私のお尋ねは、もう全部社会党さんから民社党さんからそれぞれ意義のある質問をされましたので、重複するおそれがありますからお尋ねはいたしません。ここで私の感想と、また皆さんに対して御協力を願うためのことばを一言申し述べたいと存じます。もちろん委員長からは別なお礼は申し上げますが、私の立場から申し上げます。
私、自民党の科学技術特別委員長をしておりますので、今後、こういうそれぞれの委員各位が、それぞれの御意見の中にも、非常に重要であるという点については一致して御発言ございましたので、これらの点については、党としても、私たちも当然全力をあげて御期待に沿うようにやらなければならぬと存じております。
私、昭和二十八年の第五次吉田内閣のころでありましたが、駒形君がまだ若いころに二人で相談して原子力の問題を国会で取り上げました。これは最初であって、気違い同様に取り扱われたことを記憶しておりますが、いまから思い起こしますると今昔の感にたえません。その後二年を経過しまして中曽根さんが予算獲得に非常に努力してくだすって、その実りが開拓されたことが十四年間のうちの一言で申し上げれば一番端緒でございまするが、どうかその過去十四年間の民間の皆さん、また官庁側の努力を今度の新しい転換期に、いい意味の国内総力をあげて動力炉・核燃料開発事業団を設置するのを機会に、いままでのいろいろなにがい経験をいい方向に生かしてりっぱな成果をあげたいと心から念じております。
私国会でも少ない技術屋でございますけれども、ずっと原子力のことばかりやってきました。しかし、私は本にも書かなければ発言もしない。国会というところは法律屋がほとんど押えて、技術屋を重く見ないという傾向が特に強いところでございました。そういう関係もあって、今日までながめておりましたけれども、これからは私は技術屋の立場から、松前重義君も戻ってきましたし、また、日本の原子力界の官庁側の開拓者としての佐々木初代原子力局長もまたここに見えるし、齋藤さんもおいでになるし、その他自民党、社会党、民社党のそうそうたる勉強家の方々と協力して、御期待に沿うようにほんとうに努力するつもりでございます。せっかくの御協力を特にお願い申し上げまして、自民党を代表してではございませんが、自民党の科学技術特別委員会の委員長としてお礼を申し上げる次第でございます。
どうも長時間ありがとうごいました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/96
-
097・矢野絢也
○矢野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。
本日議題といたしました両法律案は、わが国の将来にとっても非常に重要なものでありまして、今日まで当委員会において十数回にわたり質疑を重ねてまいったのでありますが、本日関係各界の皆さま方より御意見を拝聴する機会を得ましたことは、両法律案審査にとって、まことに有意義なものであったと確信いたしております。ここに委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
次会は、明六日木曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。
午後六時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105503913X02019670705/97
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。