1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月十七日(水曜日)
午後一時二十五分開議
出席委員
委員長 八木 一男君
理事 天野 公義君 理事 奥野 誠亮君
理事 丹羽 兵助君 理事 板川 正吾君
理事 島本 虎三君 理事 折小野良一君
亀岡 高夫君 塩川正十郎君
田村 良平君 葉梨 信行君
三原 朝雄君 石田 宥全君
加藤 万吉君 河上 民雄君
工藤 良平君 中井徳次郎君
中谷 鉄也君 吉田 之久君
岡本 富夫君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君
運 輸 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
総理府総務副長
官 上村千一郎君
経済企画庁水資
源局長 松本 茂君
科学技術政務次
官 始関 伊平君
科学技術庁研究
調整局長 高橋 正春君
科学技術庁資源
局長 佐々木 即君
法務省人権擁護
局長 堀内 恒雄君
厚生省環境衛生
局長 舘林 宣夫君
水産庁次長 山中 義一君
通商産業政務次
官 宇野 宗佑君
通商産業省化学
工業局長 吉光 久君
運輸政務次官 金丸 信君
建設省河川局長 古賀雷四郎君
委員外の出席者
科学技術庁研究
調整局総合研究
課長 緒方 雅彦君
法務省民事局参
事官 味村 治君
文部省大学学術
局審議官 岡野 澄君
厚生省環境衛生
局公害課長 橋本 道夫君
通商産業省企業
局産業立地部長 馬場 一也君
通商産業技官 安藤 勝良君
建設省河川局河
川計画課長 望月 邦夫君
日本国有鉄道施
設局長 松本 文彦君
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五月十六日
委員地崎宇三郎君辞任につき、その補欠として
田村良平君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
委員加藤万吉君及び中井徳次郎君辞任につき、
その補欠として石田宥全君及び中谷鉄也君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員石田宥全君及び中谷鉄也君辞任につき、そ
の補欠として加藤万吉君及び中井徳次郎君が議
長の指名で委員に選任された。
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五月十日
公害防除の総合施策推進等に関する請願(吉田
泰造君紹介)(第九九六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律
案(内閣提出第六〇号)
産業公害対策に関する件(産業公害対策の基本
施策及び水質汚濁対策等)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/0
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001・八木一男
○八木委員長 これより会議を開きます。
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。大橋運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/1
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002・大橋武夫
○大橋国務大臣 ただいま議題となりました船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
この法律案を提案いたしました第一の理由は、今国会に別途提出されております千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約の受諾に伴いまして、国内の法制を整備する必要があるからでございます。この条約の当事国は、すでに三十一ヵ国に及んでおり、わが国のような大海運国がいつまでもこれに加入しないのは国際協力の見地から好ましくないと考えられるに至っておりますので、この条約の受諾と並んで関係国内法の制定が急がれているわけであります。
提案の第二の理由は、国内において船舶から排出される油による海水の汚濁が大きな問題となっておりますが、その対策を講ずる必要があるからであります。油による海水の汚濁は、特に水産物に対しかなりの被害を与えておりますとともに、港内、海水浴場等における衛生環境や美観をそこないつつあり、その度合いは石油関連産業の急速な発展に伴って今後ますます増加して行くものと思われますので、今やその対策は急務とされておるのであります。
以上のような現状にかんがみまして、船舶から海上に油を排出することを規制し、あわせて廃油処理事業等の適正な運営を確保する等により、船舶の油による海水の汚濁を防止する必要があります。
次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。
第一に、船舶からの油の排出を規制することといたしております。
その主要点は、油送船以外の船舶で総トン数五百トン以上のもの及び油送船で総トン数百五十トン以上のものが、わが国の海岸から五十海里以内の海域及び政令で定める沿岸海域において、油を排出することを禁止するとともに、総トン数二万トン以上の一定の船舶について、すべての海域において油を排出することを禁止することであります。さらに、油を排出することを禁止される船舶につきましては、ビルジ排出防止装置を設置し、及び油記録簿を備え付けて、油の排出等に関し記録をすることを義務づけることといたしました。
第二に、廃油処理事業に関し、必要な監督を行なうことといたしております。
廃油処理事業は、港湾管理者以外の者が行なう場合と港湾管理者が行なう場合とありますが、港湾管理者以外の者がこの事業を行なうときは運輸大臣の許可を要し、港湾管理者がこの事業を行なうときは運輸大臣への届け出を要するものといたしまして、それぞれ必要な監督の規定を設けております。
第三に、廃油処理施設の整備を促進することといたしております。
運輸大臣は、廃油処理施設の整備につきまして、港湾管理者に勧告できることといたしました。また、国は、廃油処理施設の建設または改良を行なう港湾管理者に対しまして、予算の範囲内で、その建設または改良に要する費用の十分の五を補助するものとしております。
このほか、船舶からの油の排出等の違反行為に対しまして所要の罰則の整備をいたしております。また船舶からの油の排出の規制等につき所要の経過措置を定めております。
以上が、この法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/2
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003・八木一男
○八木委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
本案についての質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/3
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004・八木一男
○八木委員長 産業公害対策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/4
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005・石田宥全
○石田(宥)委員 ちょっと要求しておる政府委員のメンバーがそろっておらないようでありますけれども、時間の関係もございましょうから、責任者のおられないところは代理の方でお願いするか、あるいはまたあとで御答弁を願う、こういうようにして質問を始めたいと思います。
先週の本委員会において、板川委員から態本における水俣病の問題並びに阿賀野川の水銀中毒の問題について質疑が行なわれたのでありますが、これに関連いたしまして若干質問を申し上げたいと思います。
まず最初に、態本における水俣病に対する対策がきわめて不徹底に終わっている。態本大学並びに新日本窒素の病院では、実験データを出したにもかかわらず、それが政府の見解とならなかったということについてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、厚生省並びに経済企画庁の所見をただしたいと思います。特に私が指摘したいことは、三十八年熊本の正式発表の数年前に、ただいま申しまするように、新日本窒素の病院で実験データができており、熊本大学はそれを基礎として実験の結果を発表しておるのであります。にもかかわらず、これが政府の結論となり得なかったところの理由について、特に時間の関係もございますので、厚生省並びに経済企画庁のそれぞれの担当官から御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/5
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006・舘林宣夫
○舘林政府委員 熊本県の水俣病の調査に関しましては、最初に厚生省が調査に当たったわけでございますが、これは特別の先生を委嘱いたしまして調査いたしました。その調査結果をもとといたしまして、食品衛生調査会に意見を聞くということをいたしたわけであります。その調査にあたりまして、三十四年十一月から経済企画庁が幹事役となりまして、厚生省が医薬部門、通産省が関連工場の排水関係、水産庁が生物関係、経済企画庁が工場排水中の物質の拡散分布関係、こういうような調査をいたしたわけであります。その結果、たびたび各関係省寄り集まりまして、それぞれの省の関係の調査を持ち寄って協議が行なわれたわけでございますが、三十六年三月、第四回の会合が最後になっておるわけであります。
それから、お尋ねのように、昭和三十六年九月に熊本大学は独自の調査研究を続行いたしまして、この原因となりました物質はメチル水銀化合物ではなかろうかという意見を発表いたし、三十八年の二月に至りまして、熊本大学としてこの水俣病に関する調査の結果を取りまとめて公表いたしておるわけであります。
以上がいままでの調査の概要でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/6
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007・松本茂
○松本政府委員 三十二年に水俣病特別部会が食品衛生調査会に設置されまして、その答申が翌年十月あったわけでございますが、この答申だけではなお不十分であるということで、厚生省、通産省、水産庁、それに経済企画庁、この四つがそれぞれの分野を分担いたしまして調査を行ない、お互いに報告し合ってその完全を期するということになりました。経済企画庁がその取りまとめ幹事役をやったわけでございます。
それで、先ほど環境衛生局長からお話がございましたように、三十五年から三十六年にかけまして四回この連絡協議会が開かれたわけでございます。最後が三十六年の三月六日、これが第四回目でございます。このように鋭意調査が行なわれたわけでございますが、当時の現地の状況からいたしますと、なお多くの問題がございまして、十分な結論を得ることはなかなかむずかしいというふうに思われる状況でございました。
一方、患者の発生は三十五年の十月を最後にいたしまして、その後発生を見ない状況になっております。また、病因物質の発生過程等につきましては、はっきりした結論が出ていなかったわけでございますけれども、通商産業省におきまして、水俣病の発生後、当時の工場に対しまして必要な行政指導を行なっておるという状況でございます。
それで、当時といたしましては、その後も主として医学的な研究は大学等で引き続き実施されるように措置されたわけでございますが、三十六年度以降はこういうふうな関係各省での調査ということは行なわれない状況になりました。したかいまして、先ほど申しましたこの連絡協議会もおのずから中絶するという状況になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/7
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008・石田宥全
○石田(宥)委員 先ほど環境衛生局長から御説明がございましたが、経済企画庁が中心となりまして、厚生、通産、水産等でそれぞれいろいろ御研究が進められたということでありますが、この総合調査連絡協議会が十名の学者に研究を委託をし、十名の中で清浦というたった一人の学者の反対のためについに結論を出し得なかった、こういわれておるのでありますが、これは事実でしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/8
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009・松本茂
○松本政府委員 当時も、連絡協議会におきまして調査結果につきましての報告がいろいろなされたわけでございますが、そのとき東京工大の清浦教授が同先生の学説を発表されたということがございます。また、それにつきまして委員の方々の間で議論が行なわれたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/9
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010・石田宥全
○石田(宥)委員 清浦教授一人が反論をされたために結論をつけるに至らなかったということは、各方面の印刷物その他で明らかになっておる。同時にまた清浦教授もそれについては意見を述べておられる。そこで、私は非常に重大だと考えますことは、十名の学者に委嘱をしたが、一人だけ反対をしたために結論を出し得なかったということになりますと、今回の阿賀野川における水銀中毒の問題の結論を出すにあたってきわめて重大な影響が予想せられるのであります。
そこで、先月十八日ですか、厚生省の研究班の取りまとめたものを報告書という形式で発表になりましたが、この取りまとめにあたりまして、厚生省の当局から、結論についてはあまりはっきりした結論にしないでもらいたいという意思表示があったということを伺っておるのですが、そういう事実はあったかなかったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/10
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011・舘林宣夫
○舘林政府委員 今回の調査は学術調査でございますので、全く学者の自主的な研究に基づいた結論が出されたわけでございまして、役所の側から特に結論をあいまいにしていただきたいという意思表示をしたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/11
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012・石田宥全
○石田(宥)委員 大臣がお見えになりましたから大臣に伺いたいと思いますが、一説にこういう説が流れておるのです。三つの研究班の報告書が出されましたね。これによりますと、その結論は、昭電の廃液が阿賀野川に流出してその河川の汚染によるものである、したがって昭和電工の廃液によるものであると診断する。こういう結論が出たわけです。この結論が出された後に、環境衛生局長が転任になるようだ、こういう話が出てきた。これは相当政治的に配慮されて、明確に診断をするというような結論を出させないような配慮をしておったにもかかわらず、報告書ではきわめて明確な結論が出たことに対する環境衛生局長の責任追及という立場で転任をさせるのではないか、こういわれておるわけです。こうなると非常に問題は大きな問題になると思うのでありまして、また、いろいろな点でそういうにおいがしないわけではないのです。ひとつ大臣、そこらの問題を一応承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/12
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013・坊秀男
○坊国務大臣 御質問の環境衛生局長の一身上の問題というようなことにつきましては、私は就任以来考えておりませんし、それから今日ただいまも考えていないことをここではっきりと申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/13
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014・石田宥全
○石田(宥)委員 前の大臣は、こういうような問題は政治的にかれこれすべきものではなくて、科学的な結論を尊重して対処しなければならないということを繰り返し強調されておったわけでありますが、実は先週の本委員会におきまして、八田委員のほうから、どうも学者やお医者さんなどにまかせておいてはならないのではないか、政治的にこれは解決をはかるべきであるというような意見が出されたのであります。私は、考え方によっては、善意に解釈すれば、そういうことも考えられないことはない。と申しますのは、このような高度の科学的な、しかも国民の生命、身体に重大な影響を与えるようなものについては、科学技術庁なり厚生省なりが十分これを検討するだけのスタッフがあって、そして権威のある結論を出し得るような状況であるならば、これは正しいと思うのです。けれども、阿賀野川の水銀中毒事件のような場合に、相当なメンバーで学者に依嘱をして、そこから出された報告書を政治的にこれをゆがめるというようなことは許しがたいことだと私は考えておるのです。大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/14
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015・坊秀男
○坊国務大臣 御意見のとおりでございまして、これは政治的にゆがめるなどということは絶対にあってはいけないことだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/15
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016・石田宥全
○石田(宥)委員 そこで、これは環境衛生局長に伺いますが、目下食品衛生調査会にこれの審議をゆだねられておるようでありますが、この法律を調べてみますと、阿賀野川における今回のような問題は、必ずしも食品衛生調査会に審議を委任しなければならないような問題でないのではないか。第二十五条一項を調べてみますと、「厚生大臣の諮問に応じ、食中毒の防止に関する事項、食品添加物公定書の作成に関する事項その他」というところがありますが、「その他食品衛生に関する重要事項を調査審議させるため、厚生大臣の監督に属する食品衛生調査会を置く。」と、こうなっておる。どうもこの文面をすなおに読んだところ、科学技術庁が中心となりまして九百六十数万円からの予算が出されて、そうして三つの学者グループの研究班を設置されて今日に及んでおるものを、さらに食品衛生調査会に諮問をしなければならないような事項ではないと私は考えるのですが、どういう関係でこれは諮問されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/16
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017・舘林宣夫
○舘林政府委員 本事件が、調査の結果、食品に基因する中毒事例であるということで審議対象となるわけであります。阿賀野川の今回の事例は、従来の水俣病のときの事例に非常に近い。それそのものという判断も調査班から出されておる現状でございますので、水俣病のときにやはり食品衛生調査会に諮問をいたしておりますので。そのときと同じように今回も諮問をいたしたということが理由の一つでございます。いま一つは、この事例を基礎といたしまして、河川汚濁等によりまする食中毒事例の発生防止、河川を介して魚等が汚染しあるいは水等が汚染して中毒事例が起こるということが今後起こるかもしれないということで、それらも含めまして包括的に今回は水を介して食中毒が起こることの防止に関する諮問をいたしました。その諮問の検討材料の一つといたしまして、今回の報告書をあわせて審議していただきたい、こういう願いをいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/17
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018・石田宥全
○石田(宥)委員 それから、同時に特別部会の委員を九名委嘱されて、目下その会合が開かれておるようでありますが、食品衛生調査会と特別部会との関係というものはどういう関係になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/18
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019・舘林宣夫
○舘林政府委員 食品衛生調査会には、必要に応じて専門委員を置くことができる規定があるわけでございまして、本来の食品衛生調査会の委員の範囲をさらに増強する必要がある場合には、その分野の特に専門の委員を加えて審議をするということから、今回はそのような見解で、この事例を特に検討するにふさわしい委員を増強いたしまして、特別委員会をつくりました。それに審議をお願いしてある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/19
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020・石田宥全
○石田(宥)委員 御承知のように、法律によると食品衛生調査会の委員は、五十名以内ということでございまして、四十九名委嘱されております。そのほかに臨時委員ですか、それが相当数あるわけですね。
そこで伺いたいのでありますが、食品衛生調査会の会長さんはどなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/20
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021・舘林宣夫
○舘林政府委員 日本医学会長の小林芳人先生でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/21
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022・石田宥全
○石田(宥)委員 私が先ほど、水俣の場合に十名の学者を委嘱した中で、一人の反対があったためについにあいまいにされたということを特別に持ち出したのは、問題はここにある。四十九名の委員と臨時委員三十数名という膨大な委員の中で、しかもこの権威あるべき委員の中のその会長が、なるほどそれは東京大学医学部の名誉教授であります。りっぱな人でしょう。けれども、この人が昭和電工の顧問なのですよ。昭和電工の顧問を会長とするような、そうして何十名もの委員を委嘱をしておいて、たった一人反対したからといって、かつて水俣病をあいまいもこたらしめたところのその轍を踏まないと、一体だれが言えるか。大臣、よく聞いておいてください。たくさんの人命をそこなっておきながら、またもや熊本県における水俣病と同じような結論を導き出そうとする陰謀以外の何ものでもないと私は判断する。あなたはそうでないとおっしゃるかもしれないが、なぜ一体、十人もの学者の中でたった一人異論を差しはさむ者があったからといってそれをあいまいにしたか。ここに問題が一つある。今回の阿賀野川の水俣病の場合に、食品衛生調査会などに特に諮問をしなくともよろしいではないか。科学技術庁が中心になって、その予算によって三つの権威ある班が構成されて、その権威ある三班の総合的な結論が出たにもかかわらず、さらにまた食品衛生調査会に諮問をし、特別委員を任命をしておるが、それの一番の総括責任者ともなるべきその会長が、いやしくも昭和電工株式会社の顧問であるというならば、一体その結論がどんなものが出るかはおおよそわかるではないか。私どもはとうていこれを承服したがたいのであります。昭和電工があらゆる御用学者を通して——かつて私が予算委員会で申し上げましたが、いろいろなことをやっておる。いろいろな学者のところを戸別訪問までやって節を曲げさせたり、あるいは私ははっきり言うけれども、昨年の十一月十日の科学技術振興特別委員会におきましては、昭和電工から頼まれて昭和電工の主張そのものを棒読みで朗読するようないわゆる御用学者をこの委員会に出したのですよ。ところが今度は食品衛生調査会の会長が昭和電工の顧問をやっておる人だというならば、おおよそわかるではありませんか。この会長の人選について検討をされる用意はございませんか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/22
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023・坊秀男
○坊国務大臣 この会長はおそらく私が就任する前からの会長だと思います。したがいまして、任命にあたりましては私の前でございますから、私はこれはタッチしておりません。そこで昭和電工の顧問というようなことも、これは私は存じない事実でございましたが、会長でございますから意見をとりまとめるという立場にある人だと私は思います。今日ただいま昭和電工の顧問であるからこれを取りかえるとかなんとかいうところまでは私は考えておりませんが、非常にデリケートな問題だと思います。今日は、私は直ちに昭和電工の顧問であるからこれをこの問題に関して私のほうから取りかえるというような考えは持っておりません。なお、この会長は委員相互の互選ですでになっておる、こういうようなことでございますので、大臣としてこれを取りかえるといったような考えは今日持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/23
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024・石田宥全
○石田(宥)委員 この問題は、先ほど私が申し上げるように非常にデリケートな問題であるし、昭和電工はこれに対して異常なほど抵抗しておるわけです。あらゆる手段を弄してやっておるのです。私はきょうはこまかいことは申し上げませんが、そこで多くの諮問機関というものは委員の互選になることが通例のように思われますから、そうでないところもありますけれども、いやしくもこの阿賀野川の水銀中毒事件の審議に関する限り、本人が辞退さるべきが当然だと思うのです。あなたはいま会長をやめさせるという考えはないとおっしゃるけれども、それでは国民は納得しないと思うのです。被害者は納得しないと思う。それで、いまここでやめさせなさいとは私は申しませんが、これはやはり何らかの形で善処するのが大臣としての当然の責務だと私は考えるので、これはひとつ懸案事項としてお考えを願いたい。よろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/24
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025・坊秀男
○坊国務大臣 慎重に考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/25
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026・石田宥全
○石田(宥)委員 これは大臣もよく聞いておいていただきたいと思いますのは、実はこの三つの研究班ができまして、昨年の三月二十四日に三つの班の合同会議で、工場廃液説、工場廃液によるものであるというふうに申し合わせが、一応結論が出たのですよ。ところが、これは通産省の関係の方が非常に強い御意見でそれにリードをされて、どうも工場廃液の可能性が強いという表現になってしまった。中間報告のような形でありましたが、しかし関係者、工場廃液の公算が強いということについては、一るの希望を持っておったわけです。ところが、それが昨年の三月二十四日であったのに、その後十月の末には出す、十一月上旬には結論を出す、十二月だ、一月だ、二月だで、結局この研究班の結論なるものが先月の十八日に発表されて、まだ海のものとも山のものともつかないというのが現状でしょう。私がいま申し上げたようないきさつから見ると、これはなかなか予断を許しがたいと私は判断をしておるわけです。そこで、そういう経過であることをひとつお含みおきを願っておきたいということと、この研究については国が九百六十余万円を出したところの行政調査であるから、みだりにこれを学会や世間に公表ずるようなことのないようにということを申し渡したというのでありますが、これは科学技術庁ですか、厚生省ですか、どちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/26
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027・舘林宣夫
○舘林政府委員 厚生省から特にそのようにお願いいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/27
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028・石田宥全
○石田(宥)委員 私は、いやしくも国の予算を使って、こういうかつて熊本県にも大問題が起こり、ついに結論がつかなかったような問題を、科学技術庁、厚生省その他の関係各省庁の間で委嘱をされた研究班の結論というものは、これは箝口令をしくなどということは許しがたいことだ、私はこう考える。委員の中には、そんなひも付きの研究費なら返してしまえという、かなり激しい抵抗があったということを承っておるのでありますが、私は当然だろうと思うのです。いやしくも国の予算で、このような大きな問題についての研究と取り組むということであるならば、むしろ公然とこれを明らかにすることによって、——WHOやFAOでも、これはいま検討事項になっておるくらいなんですから、進んでこれを国際的に明らかにすることによって、世界の学者の英知を集めて、これに対する対策等を検討しなければならないにもかかわらず、それを、かってに発表してはならないなどということは、私は許しがたいことであって、今後このようなことが断じてあってはならないと思いますが、厚生大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/28
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029・坊秀男
○坊国務大臣 これには幾つかの見方があろうと私は思います。と申しますことは、純粋なる学問的、科学的の研究ということをやる場合には、その研究の過程におきましては、責任を持った学者がほんとうに冷静に研究を続けていくというためには、私は、一々その研究の過程について、これを公表することが必ずしも適当ではなかろうと思います。また、もう一つの見方から申しますならば、そういったような研究の過程も、これをそのつど公にすることによって、おのずからそこにこれに対する御意見を承る、こういう行き方もあろうと思いますけれども、その冷静なる学問的研究、その結果はもちろんこれは秘密に付するべきものではないと思いますけれども、その過程、そのつどつどの発表をしていくということにつきましては、これは非常に慎重を要するのではなかろうか。ただ、これをいかに扱うかといったような、何と申しますか、行政上の措置とか——何もこれを政治で、行政によってひん曲げるとかなんとかいうことではございませんけれども、いかに扱うかということにつきましては、これは各方面からの御意見ということが非常に大事だと私は思いますけれども、冷静なる研究過程におきましては、必ずしもそのつどつどの発表ということが妥当であろうとは考えられないのでございますが、この見方についてはいろいろな見方があろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/29
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030・石田宥全
○石田(宥)委員 それでは具体的に伺いますが、四十一年四月三日、新潟大学の椿教授は、福岡で工場廃液説の立場から内科学会に発表しております。それから同じく四日には神戸大学の喜田村教授、それから東京歯科大学の上田喜一教授は岡山の衛生工学会でこれを発表しております。さらに四月七、八両日には、同じく宇部で行なわれました産業衛生学会で喜田村教授がいろいろな内容を含んだ発表をしております。五月二十九日には札幌の衛生工学部会で、東京大学の衛生工学研究室の宇井博士がこれを発表しておる。九月になってから宇井純氏と熊本大学の衛生学教室の入鹿山教授が、西ドイツのミュンヘンの国際水質汚濁研究会議で、それぞれ工場による水銀禍として、阿賀野川や熊本水俣湾の実情を報告をいたしておるのであります。このように学会等でこれを発表することは、いま大臣は二つに分類されて御意見を述べられたわけでありますが、学会において学者が発表するというようなことは、一体どっちの分類に層するものとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/30
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031・坊秀男
○坊国務大臣 阿賀野川の公害と申しますか、事件というものは、私は非常に複雑な問題であろうと思います。分析をいたしますにしても、疫学班が調べるにいたしましても、いろいろの面から、いろいろな角度からこれを検討していくということでございまして、全部の結論というものが出ない前でありますが、そういった過程におきまして発表された内容につきましては、今日私はしろうとでございまして、つまびらかにいたしておりませんが、これらの複雑な事態を分析いたしまして、そうして検討の経過、過程におきまして、学者がその学問的信念によりまして、この部分はこれは発表してもいいとか、この部分はまだ発表するには十分な自信がないとか、そういうようなことが学者の先生方の頭の中におのずから分析されておるのじゃなかろうか、これは私のしろうと論でございますが、そういったような場合に、学者先生方が、この部分については自分の信念でもって確信しておるのだ、こういうような部分につきましては当然それは学会において発表なさるとか、あるいはまた、こういったことがあるけれども、これはまだ十分の結論が出ていないが、自分としてはこういうふうに思うとか、これはどうも私は学者先生の心理分析をよくする知識も何もございませんけれども、そういったようなことがあってしかるべしと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/31
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032・石田宥全
○石田(宥)委員 見解はおのおの異なると思いますけれども、いやしくも学者が、自分が実験をしたりいろいろ検討をして、学問的に、学術的にこうであるという一つの確信のもとに意見を発表するということが、学術の振興の上に、向上の上に大いに役立つ行為であって、そうしてそこの中でまた反論も出たり批判が出たりすることこそが、学術の進歩向上に大きな役割りを果たし得るのではないかと私は考える。同時にそういうような、いま大臣が言われたような、あるいは環境衛生局長が言われたような態度というものは、昔の官僚の秘密主義で、いわゆる官僚の独善で、学術の官僚統制であって、許すことのできないものだ、私は実はこういうふうに考えておるわけです。考え方の違いがあればこれはやむを得ません。しかし、いやしくも学術の官僚統制というようなことは許さるべきものではない、こう考えておるのでありますが、御意見があったら簡単にひとつ所見を述べていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/32
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033・坊秀男
○坊国務大臣 学者の科学的研究によってその学者が自分の御意見を発表なさる、自分の意見はこうであるというようなことを。そういったような行為に対しまして、私は、役所がこれを制肘するとか、そういうようなことはやるべきことではないと思います。ただ、この問題の結論がつかぬ先に、合議体——学問に合議というのはおかしいと思いますけれども、要するに研究班としての結論がまだつかないときに、いかにもこれが結論であるというような発表をなさるということについては、先ほど環境衛生局長が申されましたが、ひとつそれは遠慮してもらいたい。こういうこともあり得ると思いますが、個々の学者が研究した結果を自分の学的良心に従いましてこれを外に発表するということに対しましては、これは制肘を加えるべきものではない、私はかように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/33
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034・石田宥全
○石田(宥)委員 私、所見を若干異にしますが、この問題であまり時間をとりたくありませんので、次に移らしてもらいますが、水産庁、どなたか来ておりますね。
水産庁のほうで実は三月六日に阿賀野川の河口から十七キロぐらい上流の魚の分析をいたしましたところ、水銀の含有量は前年と同様であるということが発表されておるわけです。そこで、同様であるということであるが、昨年と同様であっても、それははたしてメチル水銀の含有量が同じだというのか、全水銀含有量が同じだというのか、実は私、しろうとでよくわからぬのでありますけれども、それがわかっておったならば伺いたい。
それから同時に、問題が起こってからずっと検査をやっておられるということでありますから、これは毎月毎月のものをここで私は発表願いたいとは思いませんけれども、問題が起こってから以降、半年ごとぐらいの魚の水銀含有量というものをここで明らかにしてもらいたいと思うのです。
〔委員長退席、板川委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/34
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035・山中義一
○山中政府委員 ただいまの先生の御質問でございますが、実はこれは私、水産庁が答えるよりはむしろ厚生省のほうから答えていただいたほうが、適切だとは思いますが、わかっております範囲内のことをお答え申し上げます。
と申しますのは、私のほうでは、ずっとその年月に応じた魚の中の水銀含有量の調査は実はいたしておりません。初めの段階と、それから途中でわずか去年の十二月にやったので最後でございます。これは私どものほうといたしましても、直接分析せずに、魚を採捕いたしまして、それを衛生試験所のほうに送って、そこで分析してもらっております。と申しますのは、私どものほうは魚のことは専門でございますが、その中の水銀含量、これは特に有機水銀であるとかあるいは無機の形であるというようなことになりますと、分析技術が私どものほうとしては十分でなくて、若干の個人差が出るとかいろいろ問題がございますので、統一的にするために衛生試験所のほうに送ってやっております。
ただいまのお話の同じであったという点、私ちょっと申し上げますと、四十一年十二月に一歳魚、これは比較的小さい魚、〇・〇一PPM。それから四十二年一月になりましてから〇・〇一PPM。それからこれは依頼したものの結果をちょうだいしたのですが、四十二年の三月には〇・〇六PPM、これはちょっと魚が小さくなっております。二歳魚につきまして——これはニゴイでこ、ざいます。私が読み上げましたのはみなニゴイでございますが、魚の種類のうちでは、当初の調査におきましても、ちょっと正確ではございませんが、一番水銀含量が多い種類でありますが、最も水銀含量の多い種類のニゴイの二歳魚になりますと、十二月が〇・〇七PPM、それから四十二年三月、比較的最近でございますが、これは〇・〇三PPM、かなりばらつきがございまして、なかなか年月に応じて減るとというふうに断言もできない。しかし、いま申し上げたように若干減っております。それから、かなり年とった魚、四歳魚になりますと、四十一年十二月は一・一PPM、それが四十二年二月になりますと、〇・六PPM、これは若干減っております。三月になりますと〇・五四、これも減っております。こんなような結果であります。これは、申し上げましたように、私どものほうの独自の分析でございませんで、データはすべて衛生試験所のほうからちょうだいしたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/35
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036・石田宥全
○石田(宥)委員 実はきのう、厚生省のほうでデータがあろうと思って厚生省の食品衛生課のほうから資料を出してもらいたいと思ったのです。ところが、それは水産庁のほうがよく調べておるようだから、水産庁のほうから聞いてもらいたい、こういうことであったので、私はきょうこれを伺っておるわけです。しかし、あまり約束の時間もオーバーするとほかの方に御迷惑になると思いますから、とにかく若干のフレはあるけれどもそう違いがない。ことに古い魚の含有量は少なくなっておらない。それから若い一年生、二年生のものにはほとんど含まれておらないというようにもいわれておるのですが、大まかでいいですから、その点どうですか、そういうふうに理解していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/36
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037・山中義一
○山中政府委員 その点は、先ほど私が読み上げましたときの数で申し上げますと、四歳魚は、昨年十二月が一・一〇、それがことしの二月になりますと〇・六〇、四十二年三月が〇・五四、それぞれPPMでございます。これは古いのもやや減っております。それから若いのはもっとけたが少なくて、ポイントがもう一つ以下でございます。一歳魚になりますと、昨年が〇・〇一PPM、ことしになりましても一番多いので〇・〇六PPMでございます。けたが一つ下がっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/37
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038・石田宥全
○石田(宥)委員 その点は承っておきます。そこで厚生省環境衛生局長に伺いたいのでありまするが、最近新潟県の衛生部は、河口から十七キロメートルくらいのところまでの百人ほどの——従来妊娠すると胎児性水俣病または脳性麻痺の子供が生まれるおそれがあるから避妊をすべきであるということで、避妊を指導しておった婦人が約四十名おったわけです。ところが、先般その地域の百人ほどの婦人の毛髪中の許容量を調べてみたら、おおよそ一〇PPM程度で、若干下がっておるので避妊をする必要はなくなったのじゃないか、避妊の指導を解除しよう、こういうことになったようでありますが、これはもちろん厚生省の御指導によるところであろうと思いますが、どういう見解でそういう避妊を解除するという指導を行なおうとしておられるのか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/38
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039・舘林宣夫
○舘林政府委員 水俣の事例から、水銀中毒患者、慢性の有機水銀中毒患者の婦人からは胎児性水俣病の胎児が生まれる事例がわかったわけであります。これだけの根拠をもとにいたしまして、どの程度の毛髪中の水銀であればその危険があるかということを推定することは非常にむずかしい問題でございます。もちろん動物実験等もできるわけでございますが、動物と人間と違いますし、したがって、ただいまお尋ねのように、人間の頭髪の中の水銀量がどれくらいまで減ってくれば胎児性水俣病の患者が発生しない、すなわち指導を解除してよろしいかどうかということはむずかしい問題でございます。実態的には、従来からこのような調査をしながら、新潟県の衛生部と新潟大学の医学部と相談をしていただいて指導を続けてきておったわけでございます。私どもとしての見解は、やはり水俣市に起こりましたこの事例が参考にはなると思います。先般阿賀野川下流に一人胎児性水俣病かもしれないという患者が出ましたけれども、これは新潟大学で診断の結果、そうではなくて脳性麻痺の患者であったということでございますが、水俣病のときの事例では二十PPM、最も髪の毛の水銀が少ない婦人で起こった事例としては二十から三十、大体三十前後のPPMのときに起こっておるという事例がございます。それらから考えまして、今回調査をいたしております調査の結果がどうであるか、そういうことから安全性をある程度考えまして指導をするということで、医学的な分野は新潟大学の指導をあおいできめるということで、目下新潟大学の指導を受けて新潟県が検討いたしておる、かような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/39
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040・石田宥全
○石田(宥)委員 本問題はきわめて重大だと思いますので、実はこの小児性の脳性麻痺の子供は相当生まれておるといわれております。この点は非常に調査が困難なわけでありまして、明瞭な数字はなかなか出ておりませんが、疑わしいものが相当あるわけです。そこでそのメチル水銀の許容量の問題というものは、先ほどもちょっと私が触れましたように、昨年の秋のWHOでも再検討すべきである、分析の技術の発達につれてこれは再検討をする必要があるということになっており、先般の予算委員会では、二階堂科学技術庁長官は、本年度は約一億の予算で許容量というものをどの程度のところできめるかということについて本格的に取り組むと、こうおっしゃっておられるわけです。ただ毒物及び劇物の取り締まりの法律の中などでは、単に水銀というような表現で、あまり明確になっておらないわけですが、少なくともメチル水銀についての許容量は各国それぞれまちまちなところもあるようでありますけれども、国際的にもまだ再検討という段階にあるときに、阿賀野川の流域の毛髪に相当量含有しておる婦人に子供を生ましてもいいか悪いかということは、一面からいえば人道上の問題でもあり、またそれがために脳性麻痺の子供が生まれるというようなことがあっては、これはまたたいへんなことになるので、新潟県の衛生部を中心として新大の先生方と協議中という御答弁でありますが、これは十分ひとつ慎重に本省のほうでも御配慮を願いたい。いつまでも避妊をさせておくということにも私は忍びないものがあると思うけれども、だからといって脳性小児麻痺の子供が生まれるような状態になってはならないので、そういう点については慎重にひとつ御配慮を願いたいと思う。要望をひとつ申し上げておきます。
それから、時間の関係がございますから、どうも少し持ち時間をオーバーしたようですけれども、重要な問題もう二、三点を伺いたいと思うので実はお許しを願いたいのでありますが、これは水産庁の関係でありますけれども、実は私もあまり明瞭にいたしておらなかったわけでありますが、六十キロに及ぶあの阿賀野川という大きな川が死の川になっておる、これは忍びない。しかし、最初数ヵ月の間は漁区調整委員会ですか、漁獲を規制しておる。その後アユとか、サケとか、遡上性のものが入るときには漁獲規制を解いた。ところが、その後漁獲規制はしないが、食べることは危険だから食べてはいけない、それから売ってはならない、こういう行政指導が行なわれておる。そういたしますと、結局漁獲規制をしたと同じことなんで、結果は同じことなんですが、私は役人のずるさというか、官僚のずるさというものを見せつけられた感じで不愉快千万なんですが、魚をとってはいけないと、こう言えば何らか補償しなければならないとか、何かの措置をしなければならない。ところが、とるなとは言わないけれども、もう阿賀野川の沿岸の住民全部に食べてはいけない、それからそれを売ってはいけない、徹底しておるわけです。それで今日に及んでおるわけです。これくらい官僚のずるさというものを見せつけられたことは私は初めてなんですが、とにかくそれはそれとして何とか阿賀野川を生かさなければいけない。一体いつまで死の川にしておくかということで、私どもも漁業関係者といろいろ協議をいたしましたが、先ほど御報告を受けましたように、相当年数を経たニゴイのごときは多少減っておりますけれども、まだ水銀含有量というものはあまり減っておらない。そうすると、このごろ魚をとらないものですから非常にふえたのです。うんとふえておるのですけれども、とっても大きなものはまた捨てなければならない。小さな一年子や二年子だけ食ったってしようがないというので手がつけられない。そこで漁業組合の関係者の諸君は、六十キロに及ぶ阿賀野川の魚を全滅させるべきではないか。薬か何かで全部殺してしまって、一匹も残らないように殺してしまって、そのあとで養殖や培養をすることが何賀野川を早く生きた川にするゆえんではないか、こういう結論を一応得まして、通産省のほうに対しては、どうもアセトアルデヒドの製造はやめたけれども、その後あのどろを売って一どろの中の水銀はドラムかんに何本というほど出ておるのですが、そういう状態で、まだメチル水銀を含有したどろがあるとすれば、雨の降るたびに出たりいろいろするような危険性があるとするならば、魚を全部殺してしまっても、また次々と魚が汚染をされるということで、私は通産省に対して、今度はアセトアルデヒドの製造はやめたんだから、完全にもうメチル水銀は流れ出ないという保証ができるかどうか現地をひとつ調査してもらいたい、こういう実は依頼をしてあったわけですが、通産省のこれは化学工業局長ですか、私が依頼したことについて調査の結果をひとつ御報告を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/40
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041・吉光久
○吉光政府委員 最近担当官を現地に派遣いたしまして、いま御質問ございましたような点につきまして調査をしてまいったわけでございます。その報告によりますと、すでにアセトアルデヒドの製造設備は完全に撤去いたしております。と同時に、先ほどお話がございましたような、いわゆるボタ山、すなわち水銀回収スラッジにつきましても、すでに水銀の製造業者にその全量を売り渡しておりまして、同時に全量が現地から撤去されておりまして、現場にはそういうものは全然残っておらないわけでございます。したがいまして、新たに同工場から水銀が出てまいるということは考えられないというふうな報告になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/41
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042・山中義一
○山中政府委員 ただいまの、水産庁が漁業をずっととめたというふうに御理解いただいておるようでございますが、それを若干私から正確に申し上げさせていただきます。
昭和四十年七月十二日に、御指摘のように新潟県内水面漁場管理委員会の委員長名をもちまして「漁業法第六十七条第一項及び同法第百三十条第四項の規定により、次の区域内においては昭和四十年七月十二日から昭和四十年八月三十一日まで水産動植物の採捕を禁止する。」こうありまして、区域は、いま御指摘の全区域ではございません。中蒲原郡横越村、北蒲原郡京ヶ瀬村地内横雲橋から河口に至る阿賀野川で、これは十四キロばかりでございます。この間の水産動植物は全部禁止いたしました。そこまでは水産関係がやったことでございまして、したがいまして、九月一日以降は水産関係からではなくて、県の衛生部のほうから魚の種類を限定というか、川をさかのぼりますサケ、マス、アユを除いたウグイとかニゴイ、コイ「ナマズ、ウナギとか、そういったものについては一般国民に対してでなくて、魚市場、漁業協同組合、その他魚を取り扱う機関に、衛生上の問題があるから売らないようにというような指導をしたというふうに私どもは承知」ております。水産関係からは何ら通達その他は出しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/42
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043・石田宥全
○石田(宥)委員 私が言い間違ったかどうか知りませんが、大体そういうことは承知しておるのです。ただしかし、私は阿賀野川の沿岸に住んでおりますから、私どもの部落総会で、食べてはいけないし売ってはいけないということを行政指導が行なわれておるのですよ。これは事実なんだから、あなたのほうでは関係あるかないかなんということを私はいまここで重大視しておるわけじゃないのです。しかし、売ってはならないし食ってはならないという指導が、かりにそれは県がやろうがだれがやろうが、行なわれておる限り、やはり死の川であることには間違いないでしょう。私はそれを言っておるので、私がちょっと言い間違ったかもしれませんが、六十キロは死の川であることは間違いがないが、それを規制をしたのは下流のほうの十四キロか十五キロ、それも私は承知しておりますから、そんな問題でいまこれ以上時間をとりたくないから、これ以上あなたの答弁は求めませんよ。
そこで問題は、あとでもうこれ以上電工からメチル水銀が流出しないということが確認されれば、そこで次の問題として、一体六十キロの魚族を全滅させるほうがいいのではないか、そうしなければいつまでたっても、売ってはいけないし食ってはいけないということが続くわけです。だから私は、その話をするために、あなたに現在住んでおる魚の持っておる水銀量というものを聞いておるのですよ。ところが、それは多少は減ったにしてもまだ相当量あることが明らかになったから、そこでいまここの問題に移っておるわけなんだが、一体水産庁としては、これはやはり全部殺してしまって、そうして出直すということが適切ではないかと私は考えるのですが、その他に適切な方法があれば別として、そういうことについてひとつ御指導をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/43
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044・山中義一
○山中政府委員 ただいまのお話の、その魚を全部殺すというやり方は、方法としては一応考えられる方法でございますが、あれが川でございますので、いままで日本においても、よその国におきましても、池とかあるいは湖のようなものの魚は、こういう原因ではなくして全く別個の理由によりますものでございますが、魚を一応全部殺してしまって、あとで、相当期間を置いたあとで最も自分がふやしたい——自分というか、その地域の人のふやしたいと思う魚を入れるというような方法を講じておる例は、これは幾つもございます。日本においては、しかし御案内のように魚の特定の種類だけを入れようという考え方をとっておりませんし、また食習慣もそのようになっておりません。それから技術的には、川で上からどんどん水が流れてきます関係上、あれだけの広い川の魚を全滅さすということは、非常に技術的にも困難ではないかということが一つ。もう一つは、あそこに住んでおります魚のうちで、これはもう十分御案内のとおり、最も経済的価値の高いサケ、マスとかアユというようなものは、これはもうほとんど汚染されておりません。したがいまして、比較的価値の高いものまで全部除いてしまうというのは、経済的には問題があるのではないか。ただ技術的に、相当川の流れがございます大きな大河でございますから、困難ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/44
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045・石田宥全
○石田(宥)委員 どうもあなたはよく理解しないようだけれども、それじゃ一体三年なり五年なりたったならば、その魚をとって大きな魚から食べることができるようになるという見込みでもあるのですか。何かそういうお見通しになる根拠があるのですか。私は、これは漁業組合の代表といろいろ検討したのですが、実はこの前にも指摘したように、昭和電工のボタ山がくずれたときに全滅しておるのですよ。完全に全滅しておるのですよ。だから昭和電工は当時二千四百万円の補償をしたのです。全滅すると言うと、一般の人には非常にショッキングに伝わるかもしれないけれども、阿賀野川ではもうそういう経験があるのですよ。それで一ぺんに全部殺してしまって、そうして養殖をし、培養をして、今度は安心して漁獲ができる、こういうほうがむしろすっきりしていいのじゃないか。このまま三年なり五年なり待てば魚の中の水銀がなくなるという見通しがあって、それでは三年待ちましょう、五年待ちましょうということなら、話はわかるのです。遡上性の魚というものはアユとサケとマスが多少あるというだけのものでありますから、それはその時期だけはずさなければならぬことは言うまでもありません。けれども、このままで一体何年先までこういう状態にしておくのかということを考えると、やはり一ぺんに殺してしまって、培養するほうがいいのではないか。遡上性のものは別ですから、そういうふうに私どものほうでは考えておるわけなんですが、どうもあなたの理解とぼくらのほうの考え方がかみ合わないようだけれども、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/45
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046・山中義一
○山中政府委員 いまのお話のみな殺すという方法は、私の考えでは、理屈上と申しますか、理論的には考えられるのですが、現実問題として、いまの御指摘のボタ山がこわれたときに全部死んでしまったというような御説でありますが、それはそれで相当強力な有毒物質がそのときにあったのではないかと思われます。しかし、そういうことでみな殺すということをとらなくても、私が先ほどあげましたように、小さい魚の中ではもうずいぶんわずかの含量しかございません。この辺で、どの辺までがいいか、食べていいとか悪いとかいうことは私からは申し上げられるだけの能力がございませんが、これは衛生関係のほうである程度わかると思います。いま全滅をさせてしまうということ自体についても、いろいろな面から考えてみまして、非常に困難性が多くて実現はむしろむずかしいのではないか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/46
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047・石田宥全
○石田(宥)委員 これは厚生省のほうで、大体三年なり五年なりたったならばまあ害がないだろうというような、何かお見通しがありますか。水俣の場合には、ある一時押えた、ところが病人が出なくなったからまたとるようにした、また病人が出たという経験もありますね。お見通しがありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/47
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048・舘林宣夫
○舘林政府委員 先ほど水産庁のほうからお話がございましたように、最も水銀の含量の多いニゴイという種類を対象にいま調べておりまして、その中でも古いものほど水銀の含量が多い。したがって、当歳魚も調べておりますが、四歳魚を調べて——四歳魚のニゴイが一応最も多い種類の魚の代表ということで検討いたしておるわけであります。昭和四十一年の春の調査ではこれが三PPM程度持っておったものが、ことしの二月の調査では〇・六に下がっております。したがいまして、水銀の含量は、口へ入れる量よりは外へ出す排出量が多いという状態が続いておるであろう。したがって、いままでの経緯、またその中間の時点の調査等を参考にすれば、漸次下がってきておることが想像できるわけです。
それでは、どこまで下がったら解除ができるかという問題でございますが、この含有量が全部有機水銀であるか、無機水銀であるかが一つの問題でございまして、このような微量の水銀でございますと、なかなかその精細な調査は困難でございますので、最も危険なことを考えて、ほとんど有機水銀という想定で許容量をきめていくことが安全かと思うわけでありますが、今日天然にあります日本の魚類で非常に多いものは〇・五程度含んでおるものが見られるわけであります。したがって、今日ニゴイの四歳魚が〇・六まできておりますから、水銀の性質を考えなければおおむね天然の姿に近くなってきておる、かような判断ができるわけであります。残る問題は、この天然にある魚に含まれておる水銀は無機であって今度のものが有機であるとすれば、それはたとえ含有量が同じであっても危険性は残るわけでございますので、それらの点は今後調べなければなりませんけれども、漸次解除してもいい方向へは近づいておるのではないか。ただ、それがいつごろ解除できるかということは、もう少し精細な調査をしないときめられないのではないか、かように思います。
〔板川委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/48
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049・石田宥全
○石田(宥)委員 水産庁次長、あなたは水産庁におりながら漁民の心理というものを全く理解していないんだ。魚が何年もとらないものだからわくわくしているのだが、一体古い魚は食えないが小さいのなら食ってもいいなどといってとってきて、大きな魚を捨てて小さな魚だけ食べるようなことができますか。漁民の気持ちというものをあなたは少しも考えていない。あそこで養殖をし培養しておる漁業組合と漁民の気持ちを、もう少しあなたは考えてもらわなければ困りますね。どうもあなたは理解していないようだから、これ以上質問しませんけれども。
厚生省のほうで環境衛生局長、せっかくいまこういう問題になっておるのに、無機か有機かわからないのじゃ困りますね。それは検出するには相当費用もかかるでしょうけれども、ある程度の水銀はあるけれども、その中で無機は問題ない、有機の部分がどれくらいあるかということによってその尺度を定めなければならないのに、無機か有機か、それはおそらく混合しておるのではないかと、ぼくらしろうとで考えるのだけれども、もう少し親切に、メチルの部分はどの程度あるのだということくらいはあなたのほうで何か分析するわけにいきませんか。あんまり不親切過ぎますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/49
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050・舘林宣夫
○舘林政府委員 今回の三班の調査班の中の分析班が、終始このメチル水銀の分析を詳細に行なったわけでございますか、おそらくは世界でも最も詳細にこの分野の分析を行なったと思われるほど、この有機のメチル水銀の微量分析を努力いたしたわけでありますが、最終的には、今回の発表までの間には、先般いただいた答申にありますように、おおむねこう思われるという程度しかできなかったというほど、この微量分析の部分は非常にむずかしいようであります。したがいまして、私どもの推定とすれば、行政上扱うのであれば全量が有機だと考えて扱うということになるわけでございます。しかし、今後さらに専門家の調査を進めていただいて、そこらが明らかになれば、いま先生のお尋ねの、この中にどの程度チメルがあるかということを判別いたしまして、予想よりも早く解除できるかもしれません。その点は今後私どもとしても努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/50
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051・石田宥全
○石田(宥)委員 そこで、さっきとの関連なんですが、まあ魚にしろ人間にしろ、排せつ物の中に微量のものが漸次排せつされるということも一応明らかになっておるようでありますが、問題は、やはり阿賀野のどろの中に相当量のメチルがまだ残っておると考えなければならないのです。そこで河川の管理は建設大臣の所管でございまして、河川法改正にあたっても、単に治水オンリーではやらない、かんがいのことも考えるし、あるいは漁業のことも考えて管理をするということを河野建設大臣が当時言明しておるのですよ。そこでいま申し上げたような、川をされいにするために、これはやはり建設省の所管ではないかと私は考える。あるいは中心は経済企画庁あたりが中に入って調整を考えるということであるかもしれませんけれども、やはりとりあえず私ども考えておることは、まず上流からもう水銀が来ない、それならば、殺してしまうかしまわないかは懸案にしておきますけれども、その場合に、まだどろの中に相当量あるものと推定せざるを得ないのです。そこで私どもの希望としては、電工の工場のちょっと上のほうに角神発電所がありますし、そのちょっと下のほうに揚川発電所があるのです。東北電力は十五か十六発電所を持っておるはずですから、そこの関係でひとつ支障を生じないような形にして、ゲートを取っ払って一度に流す、下流のほうで、どうもここには相当どろがあるようだと考えられるようなところには、漁業組合の諸君が出てかき回して、そしてこれを下流のほうに押し流してやるというような措置ができないものであろうかどうであろうか、こういうことを実は考えて御質問を申し上げるわけなんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/51
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052・望月邦夫
○望月説明員 実はいまのお話、われわれといたしましても、泥土がどのような状態になっておるかということにつきましては詳しく存じませんので、一応現地を調査させていただきまして、そういうことが可能であるかどうかということをまず検討させていただきたい、かように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/52
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053・石田宥全
○石田(宥)委員 だからきょう来てもらって聞いてもらっておったのだが、さっきからの質疑応答の中で大体おわかりでしょうが、それぐらいの措置ができないはずはないように私どもは思うのですがね。検討する、検討するではどうも困るので、われわれのほうもこれは真剣なんです。深刻な問題ですよ。河川の管理者である建設大臣としては、やはりそれぐらいのことをやって、死んだ川をひとつ生かすということに努力をする責任もあるのではないかと実は考えるので伺っておるわけですが、もう一歩前進した答弁はできないものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/53
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054・望月邦夫
○望月説明員 実情をよく調査いたしまして——いますぐどういうような形でできるかということにつきまして、われわれ具体的になかなか考えが浮かばないものですから、ひとつ検討させていただきたい、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/54
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055・石田宥全
○石田(宥)委員 どうもたいへん時間がオーバーして恐縮に存じておるわけでありますが、要は、一つは最初に申し上げましたように、食品衛生調査会などで、せっかく調査班の総合的な結論が一応出されたにもかかわらず、またあいまいのうちに熊本県における水俣のような轍を踏んではならないということ。これについては、いろいろな謀略もありましょうし、いろいろな抵抗もございましょうけれども、われわれ沿岸民としては非常に深刻な問題なんです。病人なども全く見るにたえない状態ですよ。すみやかにこの結論を出すことについて、ひとつ大臣に全力を尽くしていただきたい、こういうことが一つの問題。もう一つの問題は、川をされいにして、漁民がここで養殖なり培養なりをして、従来のような川にするということ。この二つの問題で時間をとったわけでございますけれども、大臣の決意のほどをお伺いして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/55
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056・坊秀男
○坊国務大臣 だんだん石田委員から阿賀野川災害についての御質問を承りましたが、阿賀野川の今日の現状が非常に悲惨な状態にあるということは、私もよく痛感いたしております。つきましては、これの善後措置につきましては、抵抗だとか、あるいはどこかからの圧力だとか、私はさようなものに全然影響されないで、ほんとうにその真相をつかみまして、これに対して政府としての最も公正妥当な措置を講じてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/56
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057・八木一男
○八木委員長 島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/57
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058・島本虎三
○島本委員 厚生大臣にお伺いしますが、閣議の決定によって公害基本法もできたようでございます。その間にはいろいろと紆余曲折もあったかのように報道され、聞いてもおるわけです。いま出た公害基本法に大臣は満足されておるのですか、不満なのですか、その点をちょっとお漏らし願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/58
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059・坊秀男
○坊国務大臣 御指摘のとおり、公害基本法が今日政府案の調整を得まして法律案ということに相なりまして、国会で御審議を願う運びに相なった次第で、そういうことになるまでの経過につきましては、ものごとがきまる過程におきましては、いろいろと議論があるということはよく御理解を願えると思います。そこで、何といたしましても十四とか十五とかいうような関係各省の間においての調整でございまするから、御指摘のとおり、その間にはいろいろな議論がありました。今日できましたこの法案でございますが、自分が生んだ子供でも、これは完全な理想的な子供だということはなかなか考えられない。人間のつくったもの、あるいは芸術品にいたしましても、選挙の結果にいたしましても、これで満足だ、これでもう何ら不足がないのだ、こういうように私は考えてはおりません。おりませんが、しかし現段階において、こういったようないろいろな紆余曲折を経てできた法律といたしましては、私はこれでもって理想的な、完ぺきなものだと思っておりませんが、この程度でもって私は満足いたしまして、そして皆さん方に対して御批判を願う、こういうような心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/59
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060・島本虎三
○島本委員 第一次、第二次、第三次と、いわば厚生省原案というものも拝見させてもらったのですが、私どものところにまだ正式に議案としてここではかかっておりませんけれども、その際にはゆっくりやらしてもらいまするけれども、私どもの入手した範囲においては、厚生省原案よりももっと悪くなって、まさに不肖の子にもなっているのじゃないか、こう思われるのです。それで大臣は満足だということには私はとうてい受け取れない、こう思って聞いたのです。おそらく満足ではないがやむを得ないというような発言だったと思うのですが、しかし、そうであるならば、これからまだまだ手がありますから、私どもこれからいろいろ言うことに、意思の疎通と申しますか、聞きたいことを存分に聞きますから、法案に触れないで、ひとつ考えをすなおに述べてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。
まず第一番に、公害行政の点では、これは方々でいま関心が高くなっております。科学的な根拠、また地域的な特性、また大局的な自然観察ということばも使われておりますが、その対策の樹立、これは特殊な政治分野を形成するに至る、こういうようなことまで言われておるわけです。そしてその対策については抽象論議の段階ではもうない、まさに決断と実行、具体的施策を必要とする時期なのだ、こうまで各方面から言われておるわけなのでございます。不満足ながらもと、こういった大臣の心境、わからぬわけじゃありませんが、各省で集めたあの案よりも、その原案となった厚生省の案よりも社会党の案なんかよりも、ずっと後退した。これが満足な案であるはずはとうていないわけです。私はそういうような観点からいたしまして、いま言ったような公害対策の面はこれから重要になってくると思います。法そのものも大事ですが、現下の対策という点もあわせて重要になってくると思います。この対策も重要になってくるわけですけれども、大臣はこういうような点についてはどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/60
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061・坊秀男
○坊国務大臣 いま島本委員が、不満足ながらもという表現をなさいましたが、私は不満足ながらもとは申しておりません。いろいろな経過、いろいろな情勢からいって、まあこの程度で私は満足すべきものだ、こういうふうに申し上げたのでありまして、頭からこれは不満足ながらもやむを得ないからということを申し上げたわけではございません。そこでこの基本法でございますが、これはともかくにも政府が公害を防止し公害を防除していくという上における基本的な方針を打ち出した法律案でございまするので、御指摘のとおり、この基本法に基づいて今後具体的ないろいろな措置が実現せられなければならないと思います。そういったようなこの基本方針に基づいた具体的法律をこれから、今国会というだけではもちろんございません。基本法が打ち出された以上は、そういった各般の具体的な法律なりその他の措置が必要だろうと思いますが、そういうことによって公害の防止ということがだんだんと具体化され、実を結んでくるものであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/61
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062・島本虎三
○島本委員 それならば現在の基本的な考え方でありますが、産業が国民の健康を害している。したがって、高度経済成長政策が遂行されて、その進展の度合いか高くなればなるほど、また工業が現在世界三位だといわれているけれども、そのようになって今後その勢いを増せば増すほど、そのひずみが全部国民にかかってくる。これが公害ということばにも言いあらわされているわけです。それと自然環境の中のいわゆる動植物、これらも含めてりっぱな環境を維持するためには、やはり公害基本法によって今後維持していかなければならないのです。大臣は、不満足じゃない、こう言うけれども、それならば、それに最もふさわしいような状態——それに障害になるようなことばがあってはならないはずなんです。各所にあるじゃありませんか。これはもう各所にありながら、それでもって満足だなどと言うと、精神分裂症だということになる。すなわち、産業との調和なんということばなど、これは要らないことばだと思っていたのですが、ずいぶん入っているのです。これは入れなければならないのか、入れなくてもいいのかという、その論はあえてあとからしてもいいのですが、こういうようにして当然入れなくてもいいものが入ってきて、これが完全な目的の遂行ができるかどうか、これをまずおそれるわけです。いわば加害者側に有利な解釈になってしまい、いま大臣がおっしゃったようなことの実施が具体的にできないような阻害条件を構成するようになったら、これはもう何にもならないじゃありませんか。この点は、解釈上すべてこういうおそれは全然ないというように大臣は自信を持って今後やっていけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/62
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063・坊秀男
○坊国務大臣 いまの御指摘の点は、産業との調和、こういうところが焦点のように承りましたが、産業との調和ということも書いてございますけれども、いずれにいたしましても、経済、社会の発展というものは、これは経済的発展も経済的の進歩もはかっていかなければならないことは御案内のとおりでございますが、しかし、経済的の発展、経済的の進歩ということが、その副作用によっていやしくも——これは経済というのはわれわれが生活する上における目的ではなくて一つの手段と申しますか、ミッテルと申しますか、そういうようなものでございまするから、われわれの目的というもの、人間の目的というものは、どんなことがあっても人間がその存在ということを完全に強調していくということでありまして、そのためには健康、身体というものを完全に保っていくということが目的でなければならない。経済という手段が、人間の目的である健康だとか生命だとか身体だとかいうものに対して障害を与えるというようなことであるならば、これは私は絶対に排除していかなければならない、かように考えます。
そこで、今度の公害基本法は、いやしくも人間の生命や健康に障害を及ぼすというようなことであれば、これはもう絶対に産業との調和を考えない。あくまでも生命、身体、健康というものに絶対性を置いて公害を防止していく。こういう趣旨でございまして、ただ経済の発展との調和ということは、もう少し環境を進めて、そうして住みよい——まあ健康はこれでもって保持できるけれども、さらに住みよい程度まで公害を防除していこうといったようなときに、これはやはり経済との調和、つまり生活環境を住みよくしていこうといったような場合には、これはやはり私は経済の発展、経済との調和ということを考えていくということで、経済の発展と人間の健康というものは、これは二つ別々のものであって二つ別に対立しておるというふうに考えますと、いかにもその調和というのはおかしいじゃないかということになろうと思いますけれども、ある程度経済が発展していくということは、また大きくマクロに見ますならば人間の存在というものをこれがささえていくことであるということを考えますと、生活環境をよくしていくというときには、これはひとつ経済との調和ということも考えらるべきものではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/63
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064・島本虎三
○島本委員 どうも大臣の話を聞いていると、私もいい気になるほど穏やかなのです。いまのような考え方でもしやっているとすると、前に石田委員も二の場所から阿賀野川の問題についていろいろ聞きましたけれども、こういうような調和が完全にできていたらああいう問題は発生していない。また、経済も発展し、それによってみんなもよくなるということであるならば、四日市のような四日市ぜんそく、こういうようなものも出ておらないはずなのに、それがむしろ人間の上に、企業がもうける以上に人命の損傷ということであらわれてきているから、ここに危機感を持って、いまこの基本法ができたんじゃありませんか。そういうようなおだやかな考え方じゃだめなんだ。それじゃ具体的にいって、目的の中にも調和があり、環境基準の中にも調和があり、すべて被害者だけじゃなしに、加害者も入ってきて、一緒に今度はその中の基準をきめようとしたら、加害者のほうは、被害者の立場で発言をしてきめますか、阻害するような決定をするでしょう。そうだった場合には、いま大臣が言ったことと反対の結果が出るじゃありませんか。大臣は少しお経を読んでいるような、いい気持ちになっているんじゃないかと思いますけれども、そんなようななまやさしいものじゃないですよ。いま言ったようにして、基準をきめるのにさえもこんな調和が入ってきていますから、そうなってまいりますと、具体的な問題としては、委員の構成までもその方面から入ってくるんですよ。大臣、それをわからないでこれをきめたわけじゃないでしょう。その点は、そうでないということであるならば、その論拠を明らかにして、これからの法案と取っ組みたいと思うのですが、そこをひとつお知らせ願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/64
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065・坊秀男
○坊国務大臣 いま申し上げましたとおり、この基本法案によりますれば、なるほど「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」と書いてございますけれども、それは生活環境を保全するというためには経済の発展との調和をはかる、こういうことでございますけれども、国民の健康を公害から保護をするということは、これは経済との調和というようなことを意味していない、こういうふうに御理解を願いたいと思うのです。
それからまた環境基準をきめるときには、これは経済の発展との調和をはかっていく、こういうことを言っているのでございますが、いやしくも生命や健康にかかわる場合には、そんなことは言っておれない。こういうことでして、例示されましたようなことがあるなら、四日市だ、やれ川崎だということがないじゃないか、こういう御指摘でございますが、そういう川崎や四日市といったような、ああいう事態を生ぜしめないように、ここでこの基本法というものをきめまして、今後そういったような公害によって人命をそこなう、健康を障害するといったようなことを防ぐというために今度の法律案を御審議を願う、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/65
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066・島本虎三
○島本委員 内容は出たときにゆっくりやりますが、そういう考えだったら、今度あらためてゆっくりやらないと——とんでもない、私はその考えと全然違います。文字の使い方も、それからその考え方も、全然大臣が考えているような意味じゃなくて、今後それがあるために逆用されるおそれさえある、こういうように思いますから、これが出た場合にあらためてやります。この問題はこれで終わります。
大臣にちょっとまた聞いておきたいのですが、やはり公害というものは個々の事業、または一つの事業、いろいろございましょうけれども、全部が集まって一つを構成するのもあり、一つの事業所から出ているのもあり、それはまちまちでしょう。しかし問題は、どういうふうになっても、発生させるものは企業であるに相違ないわけです。こういうようなものの責任を明らかにするということは当然必要であって、それを目をつぶってしまった場合には骨抜きになるおそれがあるのではないか、こういうふうに思うわけです。したがって、そういうような点では、近代重化学工業の特質というようなことば大臣などよく理解しているはずなんですけれども、国や県がそれを招致したとか、誘致したとか、こういうようなことをいっても、その公害の責任は国や県のみに負わせるというようなことはできない。企業そのものの責任も明確にしておくのでなければ、これはだめなんです。この企業の責任ということについては大臣はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/66
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067・坊秀男
○坊国務大臣 島本委員におかせられては、むろん試案要綱を十分お読みになってのことと思いますが、試案の三でございますが、事業者の責務というものをこれは明らかにしております。「事業者は、その事業活動によって公害が発生することを防止するため必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害防止のための施策に協力する責務を有する」、だから事業者は、自分の事業によって発生する公害を防止する責務と、これについて国または地方公共団体が実施する公害の防止のための施策に協力をする、こういう責務を事業者に課することを明瞭にきめてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/67
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068・島本虎三
○島本委員 大臣のいままでの答弁のうちではわりあいにはっきりしていた。しかし、それでもなおそれによって企業責任が明確にされたということにはとうてい解釈できない。もう国はやったとすると、防止の点はこれからの問題でしょう。いままで損害を与えていたやつはどういうふうにするのですか。責任というならばそれまであるのですよ。それは法案の出たときにやりますけれども、その前に聞いておきたかったのは、そんなようなあなた自身の明確な考え方を聞いておきたかった。しかし、いまはたして企業責任は完全にやらしておるかということになると、不完全なことはこの上もない。そんなことはありませんよ。——通産省から来ておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/68
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069・八木一男
○八木委員長 通産省から化学工業局長と、馬場産業立地部長さん、この二人が見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/69
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070・島本虎三
○島本委員 それじゃ、いろいろな公害関係の施設費、設備費こういうようなものに対しては、企業に義務的に何か負担さしておりましたか。これからそういうようなものを企業の中に入れて指導するつもりですか。この点、何かわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/70
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071・馬場一也
○馬場説明員 公害基本法が出ますまで、現在におきましては、何か法律による義務というようなかっこうで、国や府県の行ないますそういう事業に、いわば法律によって費用を負担せしめるという例はないように心得ております。ただ、それでは現実に何もそういう例がないかと申しますと、法律に基づく基づかないということではなくて、あちこちの府県で、たとえば工場地帯の背後に緩衝地帯というようなものをつくります際の費用を、当該府県あるいは市町村と、そこにおります事業者のグループとが話し合いをいたしまして、その費用につきまして応分の負担——応分の負担といいますか、費用を出し合っていく、企業のほうからも出しているというふうな例は数例ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/71
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072・島本虎三
○島本委員 何かはっきりしないのですけれども、ある筋から聞いたところによると、もうすでにアメリカあたりでは五%を企業の設備費の中に、公害の発生するおそれのある企業にはそれを負担さして、指導さしているという話がある。それを通産省のほうでも以前から十分知って指導されているという話なんですけれども、いまのところでは全然やっていないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/72
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073・馬場一也
○馬場説明員 ただいま私のお答え申し上げましたのは、企業が自分みずからの工場を持っておりまして、その工場からいろいろ汚水なりあるいはばい煙なりというものが出ますが、こういう直接自分のところから出るばい煙なり汚水なりを最小限にとどめますために、企業がこれに対して必要な防止施設をつくる。そのために企業として必要な金を使うということは、規制法のあるものにつきましてはもちろんでございますけれども、規制法のないような種類の公害につきましても、それぞれ企業はみずからのことについて金を使っておりますことは、これはもう非常に広範にございます。それが諸外国の例に比べまして具体的にどの程度になっておるか、わが国の企業がどの程度そういうみずからの公害防止施設に投資をしておるかという例は、これはまとまった資料は現在ございませんが、目下代表的なものにつきまして調べております。私が先ほど申し上げましたのは、そういうみずからの防止施設ということではなくて、その一つ一つの設備ということではなくて、たとえば工場地帯の背後に府県等が調整施設をつくるというような、全体的な事業にどのくらいつき合っておるか、あるいはつき合わしめておるかということにつきまして、話し合いの結果そういうものを持っておるという例が数例ある、こういうことを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/73
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074・島本虎三
○島本委員 厚生大臣の先ほどの答弁にはいろいろ無理があったようでございまするけれども、われわれのほうでは、公害を出すおそれがある施設等に対して、あらかじめわかるから、通産省のほうではもうすでに当然ある程度指導しておったものであるというふうに理解しておりましたが、私の理解の不足であった。アメリカではもう五%ほど設備費の中に入れて、これを義務的にやっておると聞いておるから、日本も当然やっておられるだろうと思っておった。調べてみたら、そのパーセンテージも〇・〇幾らかぐらいしか見ておらないのです。数字は幾らになっておるかわかりません。しかしながら、そういうようなのは指導だとはいえない。おそらく指導は全然考えなかった。しかしながら、依然として現在そういうような状態だった場合には、初め厚生省の原案の中には産業との調和なんかは出ていなかったのだが、通産省のほうと何かやっている間にこつ然としてこれが入ってきて、厚生大臣が、苦しいような顔をして、ここで不肖の子ではないと言わざるを得ないような答弁をせざを得ないような状態になっておるのじゃないかと思うのです。それにしても、通産省がこれに対する一番強力な発言者である、こういうことになっておるのではないかと思うのですが、今後この基準の設定だとか、また、目的の実施等についても障害になるような、たとえば委員を出してやる場合の委員の構成の場合にも、最後までその人ががんばるからできないんだなんということだったら、ほんとうに基準なんかできないでしょう。今後そういうようなおそれがないように指導しなければならぬのです。主管官庁は厚生省であると聞いておるのです。そうすると、厚生大臣がやれと言ったら、通産省のほうにいかに有能な通産大臣がおっても、主管官庁が厚生大臣である場合には、厚生大臣の意のとおりになることになるわけですか。この点心配でございますから、ちょっと聞いておきたいと思ったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/74
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075・馬場一也
○馬場説明員 この基本法ができまして、たとえば環境基準というものをきめることにいたしておりますが、たとえば環境基準をきめる、あるいはいろいろな施策をやる、全部「政府は」という表現になっておりまして、われわれ環境基準をつくります場合に、公害行政というものは各省にわたっておりますので、全体にまたがりますような基準をきめますときには、厚生省を中心にいたしまして各省が協議をし、そうして調整の結果きまるものというふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/75
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076・島本虎三
○島本委員 今度の場合でも、いろいろな公害の中に、国際的な範囲にわたる公害、特に放射能の問題がある。医師会あたりでもこの問題に対してはなかなか関心を持っておられるようです。そうして、これは国民がどのような意思を持っても、国際的な協力によるのでなければ排除することはできるものではない。放射能対策は、全人類の課題として、物理学者や生物学者の声を世界的に結集して、その対策をはからなければならないものである。そうして個人的な対策であっても、多少にかかわらず、効果ある科学的研究は、実際に役立てるように指導しなければならない。国はその責任を自覚すべきである。これは医師会のほうで言っているわけです。放射能の問題に対しては基本法の中でも当然考えられておると思うのです。この対策と、無過失責任をこれについてとっているのか、とっていないのか、こういうような問題に対してとるのかとらないのか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/76
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077・坊秀男
○坊国務大臣 放射能についての御質問でございまするが、たとえば放射能以外にもたくさんの公害の種類がございます。そういったような種類のものにつきましては、基本法については厚生省が主管でございますが、その具体的な公害の種類によりましては、あるいは厚生省と通産省との共管といったようなものも具体的なものには出てくると思います。
それから放射能につきましては、放射能ももちろん公害の一種、大きな公害でございまして、これの措置は、公害基本法でも措置するということは考えておるのでございますが、何にいたしましても、この放射能というものについては、原子力基本法がございまして、そこでいろいろなことをその基本法に基づいてやっているものでございますから、この公害防止基本法におきましても、放射能はもちろん取り上げて、これは公害ということに規定をいたしますけれども、これに対してその具体的な、どういうふうにしていくかということは、原子力基本法に基づく措置に譲っておる、こういうことでございます。主管は科学技術庁でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/77
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078・島本虎三
○島本委員 それによっていろいろ対処していくという話ですが、それによると無過失責任、無過失賠償制度を採用しているということを聞いているのですが、この点は原子力の場合にはそれを採用しておりますか。事務的にでもけっこうでございますから、それを御発表願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/78
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079・始関伊平
○始関政府委員 お話のように原子力によります公害につきましては、無過失損害賠償の制度、主義を採用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/79
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080・島本虎三
○島本委員 原子力の場合でも、はっきり無過失賠償制度を採用している。そうなりますと、よくわかってまいりましたが、公害の処理は、これはやはりいろいろな点で企業責任もはっきりしている。受けるのは国民である。これの民法的ないろいろな決定が出るまでに、これをそのままにしておく間に、それを受けた国民は死んでしまう場合だってあり得るわけです。そういうようなことをなくすためには、これは無過失責任というか、賠償というか、こういうような制度は当然確立しておくべきではないか、こういうように思うわけなんですが、この点等は、やはり公害基本法の中に貫く意思がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/80
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081・坊秀男
○坊国務大臣 公害基本法におきましては、これはもうあらゆる公害に通ずる基本法でございます。そこでこの公害基本法におきましては、明文の上に無過失責任ということはうたっておりません。しかしながら、公害を起こしてはならないのだという、その規定を初めにもううたっておりますので、あらゆる公害について無過失責任ということになりますと、これはいろいろその公害の実態等ともにらみ合わせて考えなければならないというようなことで、いろいろ立法の形式、立法の技術といったようなこともありまして、公害基本法では、明文上は無過失責任ということはうたっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/81
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082・島本虎三
○島本委員 おかしてはならないことはそのとおりでございますが、おかさなければいいのですが、おかすから問題になるのですから、そういうような点で、その名目だけをうたっても結果が発生してしまえばこれはどうにもならないのです。私はそれをおそれるから、やはり公害基本法というものができましたら、あくまでも人権擁護と住民福祉の立場から施策を樹立させなければならないものであると私は考えているのです。したがって、企業の責任ありと申しましたが、まあ法案を見てからゆっくりやりますけれども、あると言われますから信じておきましょう。
それと同時に、もう一つ聞きますけれども、その対策のために、これはひとつ準司法権を持った強力な行政機関の設置ということが当然準備されなければならないと思うのです。その場合には、大臣は国家行政組織法三条による委員会にするのか、普通の八条によるものにするのか、それともこんなものに関係ない申し合わせ懇談機関にするのか、いずれに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/82
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083・坊秀男
○坊国務大臣 いま条文をあげられましたが、私はその条文等については今日つまびらかにいたしておりませんので、関係の局長からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/83
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084・舘林宣夫
○舘林政府委員 公害行政を強力に行政委員会のような形で実施をする、あるいは決定権を持って強く進めていくという考え方もあり得るわけでございまして、厚生省の原案には、そのような行政委員会を想定いたしておったわけであります。先般各省連絡会議でつくりました試案要綱におきましては、そのような各省の公害行政を統一的、調整的に実施する総合対策を樹立する組織として、公害対策会議という形でそれを考えていこう、そのようなことにきまったわけでございまして、その委員には関係行政機関の長がなり、会長は総理大臣という形で、ただいま厚生省の案として申し上げました行政委員会に近いような力を持って、ぜひ実施する努力をしていきたい。そのようなことで、対策会議という形で実施しよう、こういうことにきまったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/84
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085・島本虎三
○島本委員 驚いたな。その辺だったらとんでもないじゃないですか。いま大臣言ったのが、それじゃ全然しり抜けになってしまうおそれさえある。初めからそういうことを出してはいけない。そういうようなことは厳重にきまっているから、これは君、出さないであろうという前提のもとに無過失責任なんかうたわないのだということで、もしやった場合には、より強力なる一つの行政機関によってそれを補うからいいんだというふうな意味なのかと思って聞いてみたら、一番弱い、何が何だかわからない組織になっている。それならばまさに骨らしいものさえないじゃないですか。まだ読んでないからわかりませんけれども、準司法権を持った、水裁判所的なというとわからないかもしれませんが、私の考えでは、これは現在の公取委のような権限を持った委員会にしていく、いわゆる国家行政組織法第三条による委員会と言ったのはそれなんです。それとも八条による普通の審議会、こういうふうに思っていたら、それよりももっと下の申し合わせ機関的なものだ。これだったらもう全然問題になりませんな。いま話を聞いて、これではがっかりです。そんなばかな話ありませんよ。大臣、これでも不肖の子じゃないですか。厚生省の原案なんかめっちゃくちゃじゃないですか。全然ないようなものです。これが不肖の子じゃない、私は満足ですといったらどうなりますか。国民の生命を守るための厚生大臣がこれじゃ困ったものですな。これで満足ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/85
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086・坊秀男
○坊国務大臣 公害対策会議は、とにかく行政府の長である関係各省の大臣がその委員となり、それの会長として総理大臣がなるということでやってまいりますから、これは対策としては非常に一元化された、関係各省の長が全部集まっておるのでございますから、そこで強力な対策が打ち出していける、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/86
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087・島本虎三
○島本委員 まことに残念な答弁です、そういうようなことでは。総理大臣はじめ厚生大臣も、いままで歴代優秀な大臣がなり、それから通産大臣だってりっぱな大臣がなって指導しておる。行政機関だってりっぱにありながら、公害基本法を出さなければならないような状態になってしまった。また、総理大臣をはじめみないるような、こういうような、どっちがどっちだかわからないような委員会にしておいて、これがりっぱだということにおいては、私はどうもいただけません。この問題は言ってもしようがありませんから、出たときに徹底的にやります。そんなばかな話はありませんよ。
じゃ、次にいきます。今度は、水銀の問題がだいぶ問題になってきました。先ほども聞きましたけれども、有機水銀の問題は非常に大きい農薬問題だ、こういうようなことになって、公害対策の中で今後考えなければならない問題になってくるだろうと思うのです。何か年間三百トン水銀が輸入されて、狭い日本に散布されているのだそうです。そうなりますと、これがいつ有機水銀に変化しないとも限らない状態では、国民にとっては非常な脅威です。先ほどもちょっと話が出たように、日本人の頭の毛には、私のような薄い人もいますけれども、この中から相当量の水銀が検出されるそうです。外人なんかにはない。日本人がまた外国に行くといつの間にかこれが消失している。こういうようなことも医師会のほうで例証しております。そういたしますと、この水銀問題は日本農業の特殊性として、まあいまクローズアップしてますけれども、これは今後大きい問題になるのじゃないかと思うのです。この場合は、厚生省のほうでは、採用するときには検討をほんとうに簡単にしまして、結果が発生するとこれを重視する。こういうような傾向があるのは今後考えなければならないのじゃないか。このままだと無責任と言われてもやむを得ないんじゃないかと思うのです。これは科学性の欠除を物語るものであり、将来は水銀対策も学者の協力を得まして十分考えなければならない段階にも来ている。こういうふうに思っているのですが、この点大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/87
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088・坊秀男
○坊国務大臣 御指摘のとおり、水銀がわれわれの生活、健康に非常に障害を与えておるということは、これはもう否定はできないと思うのです。そこで事件が起こったあとからだ、こういうふうにおしかりでございますが、阿賀野川のあと、同様の水銀を使っておる三つの工場が日本にございます。それらの工場においてもう水銀を使ってはならないといったような指導もやっております。完全に除去すると申しますか、除外する装置を完全にしろと三工場には指導いたしております。それから四十二年度にはさらにこれを各方面に強化してまいるということで、予算等の措置もやっております。それから農薬等につきましては、これは御案内のことと思いますけれども、四十三年度を期しまして、これは農林省の関係でございますが、水銀農薬というものはもうつくらせないというようなことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/88
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089・島本虎三
○島本委員 だいぶ前の人の時間が長かったから、私はまだまだありますが、二点だけ質問をして終わらしてもらいますが、そのうちで、大臣、これはいろいろ調べてもみましたが、やはりこういういろいろな公害発生に対して、防止をさせるということも当然必要であります。これは第一番でしょう。その中でも、やはりこの起きたものに対する救済ということも忘れてはならない。これは当然だと思う。いままで水産関係のものなんかもずいぶんいわれておりました。先ほどもここでいろいろいわれて、この結論が出るのじゃないかと私期待して聞いていたのですが、ついに出なかったので、水産庁関係の方も見えておりますから聞いてみたいのですが、これも本年までで七十四億五千二百八十六万円に当たるほどの水産関係の被害が発生しておるということでありますが、こういうような額に対しての補償は、いままでどういうようになってやられておりましたか。水産庁関係の人がおりましたらちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/89
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090・山中義一
○山中政府委員 ただいま島本先生の御指摘の数字は、水質汚濁関係すべての数字であるというふうに考えられます。この水質汚濁関係の被害につきましては、ある特定の工場からその汚染源が出たということがはっきりしているような場合は、漁業者とその工場との間で交渉いたしまして、ある程度の補償金的なものを出しております。しかしながら、どこが源かわからない。たとえて申し上げますと、沿岸の大都市あるいは中都市あたりの工場群あるいは、都市下水と申しますか、このようなものに基づく被害に関しましては、補償的な措置は全然講じられておりません。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/90
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091・島本虎三
○島本委員 水産関係の、公害関係によるところの水質汚濁による被害、これだけでもいまのような状態で、補償なんか全然講ぜられておらないということであります。そうすると、防止の点はいいけれども、水産関係のほうを見てもこれほどのものが、まず時間がかかって、原因と結果がわからないという点もあるでしょう。それから、それによって現に自分自身がもう水俣病のように被害を受けて不具廃疾に近いような状態になっている人もあるでしょう。しかしながら、依然としてそういうようなままに放置されているとするならば、これは防止も大事だけれども、この救済に重点を置くのでなければならない。今後やはりそういうような点はおろそかにしてはならない。通産省はこれに対して反対しておるわけでは全然ないとは思うのですけれども、しかし、やはり今後の行き方としては救済を重点的に考えるべきじゃないか、こういうように思うわけです。大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/91
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092・坊秀男
○坊国務大臣 さような被害者に対しまして補償をするということは、これは大事なことだと思います。そこで、そういったような公害を発生した原因者というもの、これがまず第一次の補償の責任者てある。これをはっきりとさせて——今日までぐずぐずしておるじゃないかというおしかりでございますが、そういったような原因者をできるだけすみやかにこれを追及して、はっきりとさせるということで、その補償をさせていくというためにも、今度の公害基本法でも、その救済ということについて規定を設けておるというようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/92
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093・島本虎三
○島本委員 これで最後になろうかと思いますが、この一点だけはもう前回聞いてわからなかったのですが、においの点では、基準を設けるとすればどういうような考え方を持っておられるでしょうか。これは、前回から何回聞いてもこの点はわからないけれども、いよいよもってにおいの点が出ておりますので、この点を聞いておきたい。これがまず一つであります。
もう一つは、このにおいの点にあわせ、いままで制定されておったばい煙関係の排出規制法の問題、水質関係の法律案、こういうものはしり抜けであるというような悪名をこうむりながら、現在まだ依然として存在しておるわけです。公害基本法ができた場合には、当然これは基本法の施行法的に強められなければならないし、改正されなければならないものじゃないか、こう思っておるのですが、これに対する考え方と、においの基準をひとつ教えてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/93
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094・舘林宣夫
○舘林政府委員 においの環境基準をつくるということは、技術的に不可能とは思いませんけれども、具体的にそれがどうなるかということは今日の段階ではかなりむずかしい問題でございますので、別の観点からにおいの規制をするということが考えられておるわけであります。たとえばにおいの発生源たる化学工場に対する規制、あるいは斃獣処理場に対する規制、動物の飼育場に対する規制、そういうような形でにおいの発生源に対して措置をせしめるということで、においのため悪い環境をつくらない公害対策を進めるということが、当面最も重点的に私どもとして考えておるところでございます。
それから、お尋ねのように従来の排出規制法だけでは公害の状態がどんどん悪くなっていくのを防ぎ切れない。別のことばでいえば、しり抜け的なところがあるという点が指摘されておったわけであります。それは個々の工場を幾ら規制をいたしましても、工場の数がどんどん無秩序にふえていくということで、幾らでも空の状態なり川の状態が悪くなるということでございまして、そのためにこれ以上はよごさないという環境の基準をまず明確にいたしまして、その基準を破らないために、排出の規制もさることながら、それ以上工場をふやさないとか、あるいは土地の利用方式を考える、都市計画でそれを規制していくというようなことによって、一定度以上はよごさない。そのために、それぞれ個別の法律、既存の法律で間に合うものは既存の法律、法律の足りないものはつくっていくというようなことで環境基準を守るような方向で考えたいというのが、今回の公害基本法の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/94
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095・島本虎三
○島本委員 これで終わりますが、なお、大臣の所信を聞きながら通産大臣も来て、両方対比しながらきょうやりたかったのですが、ついにあらわれなかったのは残念であります。しかし、これはまだ基本法が出ておりませんから、出た場合には、いま厚生大臣が考えておったようなのは、私の見るところでは基本法の精神でありません。これはほんとうに大臣は甘過ぎます。大臣が考えているのは、厚生省の原案の当時の考え方ではなかったかと思います。現在は大臣が考えるような甘いものにはなっておらないので、これは拝見さしていただいた上でその理非を明らかにさしてもらいたいと思いますから、その節は再びやることを宣言いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/95
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096・八木一男
○八木委員長 通産省の関係者に申し上げます。委員会の要求にかかわらず、大臣は商工委員会でございますが、政務次官が来ない。こういうようなことが今後あっては、当委員会としては、それは承服できないので、適当な措置をとるということを省内に完全に浸透さしてください。
次に、工藤良平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/96
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097・工藤良平
○工藤委員 私は、ごく部分的な問題でございますけれども、文部省、厚生省、通産省あるいは科学技術庁の問題について、ごく問題をしぼりましてお聞きをいたしたいと思います。
まず第一番に、公害が非常に局地的な問題から一般化をしてまいりました。したがって、住民が自衛のためにみずから自主的な調査とかあるいは研究を行なうという傾向が非常に顕著にあらわれてまいりました。特にその中でも、極端に言いますと、町内会の人たちまでもが公害のための調査を行なうというようなことが行なわれているわけでありますが、そうなってまいりますと、おのずから国なりあるいは地方自治体の調査研究機関に対して非常に大きな期待を持っていたわけでありますけれども、なかなかそれも思うようにできない、こういうことから医師会なりあるいは大学の研究機関の活躍というものが非常に目立ってまいりました。住民の立場からいたしましても、それに対する期待が大きいのでありますが、この点について医師会あるいは大学の研究機関の自主的な研究というものはどういう状態にあるのか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/97
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098・緒方雅彦
○緒方説明員 ただいま国の研究機関がどういうことであるかという御質問かと思うのでありますが、現在の研究機関は行政機関の付属機関という形で、それぞれ各省あるいは庁の付属機関という形でそれぞれ設置されております。それぞれその各省あるいは各庁の行政に必要な部面の研究を主として研究しておる、こういう形になっておるわけでございます。したがいまして、公害関係で申し上げますと、先生御指摘のように非常に範囲が広うございまして、たとえば発生源の問題につきましては通産省の資源技術試験所であるとか、発酵研究所あるいは東京工業試験所といったようなところがそれぞれの立場から研究いたしております。それから、たとえば大気汚染とか水の問題、これなんかも人体への影響につきましては厚生省の研究所というようなことで、それぞれの各省庁の立場からする研究を現在しているというのが現況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/98
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099・工藤良平
○工藤委員 厚生省にお伺いいたしますが、自主的に医師会あたりが調査研究をやっていろ地域がたいへんあると思うのですが、その点について把握をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/99
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100・橋本道夫
○橋本説明員 いまの御質問の医師会の公害の研究でございますが、四日市とか大阪とか横浜あるいは東京におきまして、医師会自身が非常に公害の問題の調査研究を始めておりますし、また厚生省自身の行なっております影響調査あるいは開発地域の調査等に必ず地元の医師会の人たちが代表として加わっておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/100
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101・工藤良平
○工藤委員 文部省まだ見えていないようでございますので、通産省にお伺いいたしたいと思います。
四十年の九月一日に第三回の公害研究推進会議というのが持たれまして、四十年から四十五年にかけての「産業公害防止技術の研究開発推進体制と研究開発長期計画」という長い表題のようでありますけれども、そういう計画が出されておるようでございますが、これが具体的にその後どのように進んでいるか、御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/101
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102・安藤勝良
○安藤説明員 いま先生の御質問のあった点についてお答えいたします。
まず煙のほうから申し上げますと、硫黄の問題につきましては、ばい煙から抜く技術いわゆるばい煙脱硫につきましても昨年度から工業技術院の大型プロジェクトという制度の中に組み入れまして、すでに実施しております。それから直接脱硫につきましては、昨年よりその体制を進めつつ、ことしより大型プロジェクト制度に組み入れるべく予算要求をいまやっている段階でございます。
それから自動車の問題につきましては、すでに官民一体の研究体制を進めるべく、ことしより機械試験所と資源技術試験所が中心となって自動車安全公害研究センターを設置すべく予算を要求しておるとともに、機構の面におきましても機械試験所に自動車安全公害部というものを設けまして、ここで一括研究を進めていくというふうに体制を整えました。
それから水につきましては、資源技術試験所に去年まで産業公害防止技術部というものがありましたのですが、一部増設するべく要求いたしまして、すでにそれはつきましたわけでありますが、一部と二部に分けまして、二部のほうで総合処理、それから拡散という問題を取り上げていわゆる総合化された問題点につきましてここで処理していく。そのほか傘下の試験研究機関をそれに応援させるような形で体制を整えるようにしております。いまのところ、この連絡会議でいろいろ御検討願った点につきましては、ほぼ順調に進めているという段階でございます。
なお、予算につきましては、すでに御存じかと思いますが、昨年度五億九千六百万を費やし、他省庁からの移しかえも含めますと約七億数千万円の予算を投入したわけでございますが、本年度は十億数千万、さらにいま未確定なども入れますと十二億前後になろうかと思いますが、昨年の約二倍の予算を投入し、かつ組織にあたりましては二部増設、人員十九名増、約百二十名の人員を投入して、御審議していただきましたこの長期計画を推進していくという体制を整えつつあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/102
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103・工藤良平
○工藤委員 そういたしますと、これからのこの試験研究機関の一つの方向として、いま御説明がありましたように長期約な計画の中で進めていかれるということで、予算を見ましても、本年度からは相当——と言いましてもこれは全体から見ますとわずかなものでありますけれども、いままでの伸び率からいたしますとずいぶん伸びているということだけは認められると思うのですが、ただ先ほど申し上げましたように、国立公衆衛生院とかあるいは国立衛生試験所とか、いま申し上げました科学技術庁を中心とした試験研究機関等を通じまして相当精力的にはやっておるようでありますけれども、非常に広大なこの公害に対処するための試験研究機関といたしましては、私はきわめて弱いものではないだろうか、こういうような気がするわけでありまして、したがって、これも通産省にまずお伺いをして厚生省にと思っておりましたが、まだ見えておりませんので、この非常に重要視されてまいりました各大学の試験研究機関、これの活用についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、その点まずお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/103
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104・舘林宣夫
○舘林政府委員 御指摘のように、各大学の試験研究機関を活用するということはきわめて重要なことでございます。実は厚生省としましても、公害研究所をこの際つくりまして公害の基本的な研究をするということも考えたわけでありますが、そのような研究機関を数年かかって整備し、研究をさらに数年かかって進めるということでは追いつかないほど今日の公害問題の進みが早いということで、それよりは既存の大学あるいは研究機関の活用を考え、全国の大学、研究機関が打って一丸となって公害の研究をしていただく。それぞれ連絡をとりながら、あるいは共同の班をつくりながら調査研究を進めていただくということを考えまして、昨年度までは委託研究費が二千万円でございましたものが、本年度からは一億円にそれをふやしまして、ただいま申し上げましたような委託研究を進めていく、かような体制をとっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/104
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105・工藤良平
○工藤委員 委託研究をお願いしておるということでございますが、これは科学技術庁から出ております特別研究促進費という形で出ているわけですか。どういうかっこうで出ているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/105
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106・舘林宣夫
○舘林政府委員 それとは別に厚生省独自の公害特別の予算としてそのような予算を計上してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/106
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107・工藤良平
○工藤委員 そうしますと、厚生省からおろしておりますこの対象といいますのは、大学の部面で、たとえば国立、公立、私立それぞれあろうと思いますけれども、どういうところを対象にやっていただいておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/107
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108・舘林宣夫
○舘林政府委員 国立、公立、私立全部の大学並びに公害研究を行なうにふさわしい研究機関をすべて包含をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/108
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109・工藤良平
○工藤委員 そういたしますと、その大学の数は大体どの程度でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/109
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110・橋本道夫
○橋本説明員 大学の数をいま正確にあげることはできませんが、全体の数は十ないし十五の数に及ぶと思います。しかしながら、厚生省の場合には、非常に幾つかのチームが寄って研究をしなければ一つのプロジェクトができないという研究の特性がございますので、そういう点はほかの研究プロジェクトを進める場合と若干違った要素がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/110
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111・八木一男
○八木委員長 工藤君に申し上げます。文部省の岡野審議官が科学技術特別委員会で答弁中でございますので、終わりましたらすぐこちらに来る予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/111
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112・工藤良平
○工藤委員 ただいま十ないし十五という御回答でございますが、この公害問題に関する資料集等を見ましても、相当数の大学が、これは全く自主的な調査かもわかりませんけれども、調査をしている。しかもそれが水質汚濁の問題から大気の汚染あるいは騒音、排気ガス、こういった非常に広範な、しかも特定の工場から出てくるということよりも、むしろ非常に不確定な、原因の不明確な状況の中でそれを究明していきたいという努力がこれらの学校の研究所によってなされている。こういう問題については、特にこれは最後に触れたいと思いますけれども、補償なりあるいは救済の問題とも関連をいたしまして、私はたいへん重大な問題ではなかろうか、こういうように思うわけでありますが、相当数の学校が自主的に行なっておる。その中でいま言うように国立あるいは公立、私立という範囲にわたりますと、十ないし十五くらいではないのではなかろうかと思うのですが、予算的な支出等については十ないし十五ということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/112
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113・橋本道夫
○橋本説明員 大学として参加しておられるところはかなりございますが、はっきり委託費を出してやっているという形になりますと、そのように制限されまして、いま申し上げたような数になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/113
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114・工藤良平
○工藤委員 私、当初に申し上げましたように、公害が一般化してまいりますと、相当広範に調査網を拡大をしなければならぬと思うのです。したがって、十ないし十五の学校に委託をするということで、はたして被害の調査ができるか、研究ができるか。国の研究調査機関は幾つございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/114
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115・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねのように、いやしくも公害に関連する学問をしておられる大学あるいは研究機関はおそらく全国のほとんど全部の大学ないし研究機関でございまして、これらが基本的な公害の研究をなさる場合には、文部省ないし科学技術庁の学術研究費によって行なわれるものと思われるわけでございますが、厚生省におきまする調査費は、主として現に公害対策として大きく問題になっておるものをとらえまして、その学術的な究明をはかるということでありますから、全国の中でも特に公害が大きな社会問題としてクローズアップされておる地域に重点的に実施する、その場合になるべくその地域に所在の大学を重要視し、またそれが研究の便宜でもあるということから、ただいま申し上げましたような十幾つということでやっておるわけでございますが、しかし、お尋ねのように、他の地域は他の地域なりにそれぞれ公害問題をかかえておるわけでございますので、私どもといたしましても、予算の拡張に伴いまして、できるだけ全国的にこれを広げてまいりたい、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/115
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116・工藤良平
○工藤委員 公害の問題については、先ほど私が指摘をいたしましたように、一つの工場なりあるいは鉱山といったところからの被害というものと、きわめて明確に区別することができない——特に近ごろのように公害が拡大をしてまいりますと、その原因不明という問題が、現在の状態からいたしますとそういう事例が非常に多いわけでございます。たとえば私の地域は御存じのように新産業都市に指定をされた大分でございますが、いま九州石油がすでに操業を始めた。ことしから石油燃焼の火力発電所がすでに着工された。来年からはいよいよ本格的に昭電がまいりまして、石油コンビナートが形成をされる。こういうような状態の中においては、数の少ないときにはその原因というものが究明できますけれども、非常に多数になってまいりますと、なかなかその原因究明ができない、こういうような事態が起こってくるのではないだろうか、こういうことをいまから懸念をされるわけでありますが、そういう場合に、国としての調査、それから研究、さらに監視、こういった機関について将来どのようにお考えなのか、お聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/116
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117・舘林宣夫
○舘林政府委員 これからの公害対策を進めてまいります上で、公害の確認ということが、もちろん予防対策上もいろいろの公害調査が必要でございますけれども、公害の確認、一刻も早く公害の発生を察知すること、あるいは公害が発生しようとする情勢を察知することが必要でございまして、また公害が発生した場合に、その原因は何からきておるか、被害はどこまで及んでおるかということを明確にしなければ、対策も立たなければ、補償問題も解決しないということでございます。その意味合いにおいて、公害の調査並びに研究ということは公害対策の眼目であるわけであります。これをだれがどの程度の分担でやるかということでございますが、これはたてまえは、各地方に起こりましたものは都道府県、場合によりましては市町村が中心になりまして調査をするわけでございます。したがいまして、その段階で県なり市なりの手にとても負えないという場合に、多くの場合にその地に所在の大学に委託をしたり、あるいは医師会に協力を求めたりするわけでございますが、それでもなおかつ手に負えないというようなむずかしい問題がたくさん出てくるわけであります。そういうものの解決はやはり国が乗り出しまして、国家的レベルで調査研究をする必要があるということで、国もそれらの行政、地方の行なうものは助成するとともに、国みずからも調査に当たるということが必要であります。先般起こりました阿賀野川事件のごときも、国みずからが調査班を編成して実施をした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/117
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118・工藤良平
○工藤委員 公害が一般化してまいりまして、非常に範囲が広がったということをしきりに申し上げますけれども、しかし、その中においても、特に石油化学産業の発達に伴って非常に局部的に、しかもそれがある程度広範な範囲で公害が出てきた。こういう場合に、やはり国として、あらかじめ被害が起こる以前にこの公害を防止しなければならぬというのは私は原則だろうと思うし、したがってこの調査、研究、監視の強力な機関というものを、その重点的な地域については当然行なうべきではないか。産業開発という意味で新産都の指定が行なわれて、逐次コンビナートが形成されていくという状況の中においては、当然それが一つの地方自治体の負担の中で行なわれるということは、私は基本的に問題がありはしないかと思う。したがって、そういう問題については、やはり明確な国の機関に逐次移していく、こういう傾向というものをとらなければならないのではないか、こういうように考えるわけでありますが、その点についてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/118
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119・舘林宣夫
○舘林政府委員 お説のとおり、常時公害の襲来を監視しておるということが必要でございまして、その実際上の任に当たるのは各地域の地方公共団体というたてまえで実施をいたそうといたしておりますが、それに対して国も助成する必要があるということで、本年度から全国的に公害の予測される地域には自動監視網を張りめぐらすということで、テレメーターという特殊装置をつくる、重点的に要点には自動記録装置を据え込んでおいて、それが中央へ自動的に集まってきて常時監視の役目を果たす、国がそれに補助金を出すということで本年度計上いたしておりますが、そのほかに枢要な地域には国の直接測定点を設けまして、ちょうど測候所のようなものを設けていきたいということで、すでに三年ほどそのような計画で進めておりまして、今後ともそのような測定点をふやしてまいりたい、こういう計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/119
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120・工藤良平
○工藤委員 近く大分の海水の調査が、これは通産省の関係だと思いますが、行なわれるということを聞いておるわけでありますが、これらの国が参加をした調査について、地方自治体の負担というものが相当額にのぼるわけでありますが、これらについては、国が参加をして実施をする、こういう調査については、やはりできることならばこれは全額国が負担をしていくということ、当然そうしなければならないと思うわけで、今後そういう形になってまいりますか、お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/120
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121・馬場一也
○馬場説明員 ただいまお話のございましたように、いわゆる新しく工場の建ちますことが予想されるような地域におきまして、事前防止の見地から、各地に大気汚染関係、水域関係それから河川関係というところに、実施を想定いたしました事前調査ということをやって、いろいろ実地調査をやっております。こういう予算は通産省についておりますが、これを具体的に、たとえば大分で行ないます場合には大分県にいろいろ調査を行ないますについての準備について御協力をお願いしておりますが、たてまえといたしましては、一応その費用は、国が調査をするのでございますから、全部国が国の予算をもって行なう、こういうたてまえでやっておりまして、地元の各府県あるいは市町村御当局には、いろいろ調査をやります実行面の御協力をいただいておる、こういう状態で現在やっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/121
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122・工藤良平
○工藤委員 次にお伺いいたしたいのは、いま申し上げましたように、これからの調査、研究、監視の問題については、逐次やはり私は国の負担において、地域の地方自治体に非常に大きな負担がかかるということのないように措置をしていただきたいということと同時に、特に紛争が起こってまいりますと、被害者につきましてはこれを組織的に調査をするということが非常にむずかしいわけであります。どうしてもいま申し上げましたような機関にたよらざるを得ない。したがって、紛争処理の問題につきましては、できることならば紛争処理機関についてもう少し権威ある機関というものを配慮すべきじゃないだろうか、こういうように考えるわけでありますが、これは先般の板川委員でしたかの御質問の際にも出ておったと思いますけれども、その点について御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/122
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123・坊秀男
○坊国務大臣 公害にかかる救済制度ということのお尋ねかと思いますが、基本法の試案要綱にも「政府は、公害による被害の救済の円滑な実施を図るため、必要な制度の整備を行なう」、これは基本法でございますからそういう規定を設けてあるのでございますが、実際公害が生じた場合に苦情を受け付ける、あるいは苦情を処理する、あるいは相談に応ずるといったようなことを当然やらなければならないことでございますが、基本法でございますので「必要な制度の整備を行なう」ということを基本法には規定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/123
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124・工藤良平
○工藤委員 これから基本法ができてまいりますと、その窓口も当然一本化されてまいるだろうと思いますけれども、現在のところは、地域住民の人たちが被害を受けた、どこに飛び込んでいくかということになりますと、なかなかそれが明確でない。こういうことから先般も私はこの点について御質問をいたしたわけでありますけれども、ぜひひとつ具体的にこの紛争処理機関というものを明らかにしていただきたい。抽象的な問題ではなくて、たとえば労働争議が起こった場合に地労委に持ち込む。これは裁判所に持ち込むよりも非常に権威がありながら簡単に持ち込めるという措置がとられるわけなんで、そういう面についてはぜひこれからの法案審議の際にも配慮していただきたい、私はこういうように考えるわけであります。
それから次に、これは文部省が見えましたからお伺いをしたいと思いますが、先ほど大学の研究機関が自主的に公害の問題について取り上げておる実態がわかればお知らせをいただきたいということをお願いしてありましたので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/124
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125・岡野澄
○岡野説明員 公害の問題についてはいろいろ研究すべき課題があるわけでございますが、それらの問題は、通常におきまして大学の工学部とか、医学部あるいは農学部などの関連の講座等に属する研究者が研究しておるわけでございます。しかし、非常に社会的な問題となっておりますので、文部省の科学研究費というのがございますが、その中で大気汚染、水質汚濁の二つの問題を取り上げまして、科学研究費のうちに特に指定いたしましてそれを推進する方策を講じまして、昭和三十九年度におきましては約五千万円の研究費四十年度に四千八百万円、四十一年度に五千万円、合計いたしまして一億五千二百万円の研究費を支出いたしまして、全国の大学関係の研究者がこれによって研究をいたしたわけでございます。もちろん研究は、その大学の研究者が自発的に研究をしたいというものに対しまして研究費を支出するわけでございますが、大気汚染、水質汚濁等の研究分野におきましては、なお基礎的に研究を要する事項が多いので、こういう文部省でいたしますことはどっちかというと基礎的な事項が多いわけでございますが、そういう研究を推進したという現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/125
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126・工藤良平
○工藤委員 ただいまお話のように、ほとんど実質的な調査が行なわれておるということでございますが、政府機関なりあるいは地方行政機関から委託を受けて調査をされる、こういう割合というのは大体どういう程度になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/126
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127・岡野澄
○岡野説明員 地方庁等からどれぐらい委託があったか、実は恐縮でございますが、いま資料を持ち合わしておりませんので、後刻調べまして御返事申し上げたいと思いますが、こういう大学関係の研究がだんだん蓄積いたしまして、それが各行政機関の研究機関にも取り上げられて、科学的な対策が立てられるというようなプロセスが通常期待されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/127
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128・工藤良平
○工藤委員 研究機関が非常に少ないという現在においては、おそらく特に地方における大学の試験研究機関の利用あるいはそれに依存する度合いというものは高くなるだろうと予測されるわけであります。したがって、被害者にしてみれば、個々人でその調査をやることもできませんので、おのずからその調査というものに大きな期待をかけてくる。こういうことになるだろうと思うが、そういう問題について文部省の方針としては、できるだけそういうものにやはり協力態勢をとらせる、こういうお考えなのか、お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/128
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129・岡野澄
○岡野説明員 大学の使命は固有の上級教育を職務とするものでございますが、特に地方の大学は地域社会に奉仕するということにも事実上大きな責任を持っておるというふうに考えております。したがいまして、そういう御要求があれば、本務に支障のない限りは協力すべきものであるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/129
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130・工藤良平
○工藤委員 ぜひそういうことでお願いをしたいと思うのであります。ところが、やはり実際の問題になってまいりますと、問題が起こってきた、その問題を処理をする、こういう段階になってまいりますと、被害者と原因者との間においては、それぞれ利害関係が相反してまいりますので、おそらくいろいろな問題が起こってくるのではないか、こういうことを予測をするわけでありますが、この点については、特にこの公害問題を扱う行政官庁として、厚生省のほうで、その点についてはさっきちょっと出ておりましたけれども、やはり現在のこの調査研究機関が充実していない段階においては、特に地方の場合にはそれらの大学を最大限に利用していただく。もちろん、それが大学の運営なり研究に阻害になるようなことがあってはならないと思いますけれども、やはりとうとい人間の命を守るという立場に立ってぜひ指導を願いたいと思いますけれども、その点について大臣のほうから御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/130
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131・坊秀男
○坊国務大臣 御意見非常にごもっともだと思いますので、できるだけそういうことにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/131
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132・工藤良平
○工藤委員 最後に、特にこの試験研究問題について問題を詰めてみましたけれども、お話によりますと、文部省が出しております予算にいたしましても一億数千万、厚生省が出しておる予算にいたしましても大体一億前後のものでありまして、きわめて微々たるものであるわけであります。ぜひこれはひとつ早急に助成対策を講じていただきまして、公害からとうとい人命、健康を守るという立場に立って、十分なる措置をお願いいたしたい。こういうことを特に要請をいたして、私の質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/132
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133・坊秀男
○坊国務大臣 厚生省といたしましても、できるだけの配慮を持って努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/133
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134・八木一男
○八木委員長 国務大臣として予算の問題がありますから、その御答弁をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/134
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135・坊秀男
○坊国務大臣 予算につきましては、これは財政当局と折衝の問題でございますので、ここではっきりとどういうことになるということはお答えいたしかねますけれども、厚生省といたしましては、できるだけその折衝に努力をしてまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/135
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136・工藤良平
○工藤委員 努力していただきまして、具体的にひとつその実現方を明らかにしていただきたい。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/136
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137・八木一男
○八木委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/137
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138・中谷鉄也
○中谷委員 厚生大臣にお尋ねをいたします。
先ほど島本委員のほうから、主として提案されるであろう基本法についての考え方ということで、公害防止に対する基本的な大臣の見解を求めたわけですけれども、若干納得のいかない点がございますので、わずかの時間ですが、お尋ねをいたしたいと思います。
端的にお尋ねをいたしますが、次のようなお尋ねのしかたをいたしたいと思います。要するに、経済の発展ということば、このことばが一番公害防止といいますか、この関係において問題のあることばだと思うのです。そこで、いわゆる公害審議会の中間報告——政策決定過程の中でこれが私は一番出発点になると思うのですが、この中間報告の中に次のような一節がございます。これは大臣十分御存じだと思いますけれども、「公害の中には、人体の健康その他金銭によって償い得ない被害を及ぼす性質のものもあり、被害が一定の限度をこえる場合には、産業の発展を多少とも犠牲にする必要があることも、十分認めなければならない。」こういうふうな中間報告になっている。したがいまして、この中間報告の考え方というのは、公害防止という観点からは、産業の発展あるいは経済の発展というのはコントロールされなければならないのだ、その観点においてはコントロールされなければならないのだという考え方だというふうに私は理解する。そういたしますと、そういう経済の発展と公害の防止というものの二つの中を行ったり来たりした中でようやく法文化された公害対策基本法案なるものが、経済の発展との調和だということは、島本委員のことばをもってすれば、生まれてきた子供は鬼子ではないかと言わざるを得ないのではないか。これが私の基本的なきょうのお尋ねしたい点なのであります。この点についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/138
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139・坊秀男
○坊国務大臣 先ほど来も島本委員にお答えを申し上げましたとおり、何にいたしましても、われわれ人間が一番大事なことというものは、これは人間の存在するということを最も強く主張し、これを確保していくことが一番大事なことであります。今日まで一経済の発展を期してまいったことも、言うならば、そういったような人間の目的を豊かにし、確保していくというためのものが、これが経済であり、政治も行政も私はすべてがそうであろうと思います。つまり、人間のためのものが経済であり、その経済の発展が、いやしくも人間の目的である存在を阻害する、障害するといったような場合には、あくまでも人間の存在を無視してまで経済の発展をしていくというようなことは、まさに主客転倒でございまして、そういう観点からいたしますならば、もしも経済の発展が人間の健康を障害するということによって人間の存在を傷つけるというようなことがあった場合には、これは中谷委員の言われるとおり、これは経済が一歩引いて、そしてほんとうに人間のためのものであるという本来の性質に返らなければならない、私はかように考えております。しかしながら、先ほどもお答え申し上げましたとおり、人間が生活や生存を脅かされる程度の公害ならば、どんなことがあってもこれは排除していかなければならないけれども、さらに一歩進んで、きわめて——きわめてとまではいかなくとも、生活を非常に愉快にしていこう、一歩進んで何かをやっていこうというようなときには、これはやはり経済の発展との調和をはかっていくということも、その人間の生活、人間をしあわせにするための経済ということも念頭に置かなければならない、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/139
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140・中谷鉄也
○中谷委員 大臣、先ほど非常に大事なことばをお使いになったと思うのですが、これは問題になることばなんです。大臣は人間の存在ということばを使いましたね。そうすると、これはその点だけお聞きしておきます。公害基本法については非常な論議になるわけで、その点だけお聞きしておきます。人間の存在ということばをお使いになった。そうすると、提案されることになっている公害基本法にいう健康、国民の健康の保持の健康、これは先ほど大臣がおっしゃった、大臣は人間の存在を脅かすようなということばをお使いになった。そうすると、公害基本法が保護しようとしておる法益は、ただ単に健康というふうなものじゃないのだ。要するに人間の存在ということなんだということをおっしゃっておられて、そのような人間の存在というふうなことは経済の発展というようなことによってコントロールできないのだ。——前提としての質問はまだ残っておりますね。要するに経済の発展ということと公害の防止ということが対立概念なのかどうかという一つの問題、私飛ばしておりますが——ということなのか。ただ単に健康という、大臣が提案されようとする公害基本法でおっしゃっておる健康というのはどのようなもの。人間の存在ということばは、ただ単に物理的に生理的に存在しておるわけじゃない、社会的な人間として存在しておるという意味でおっしゃっておる。要するに、人権宣言で申しますと、人間の尊厳にふさわしい生活、こういうふうな意味での人間としての存在だと思うのです。そういうふうなものが保護法益だ、こういうふうにおっしゃられるのかどうか。これは大臣から御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/140
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141・坊秀男
○坊国務大臣 存在と申し上げましたのは、存在というものは非常に内容がたくさんある。人間の存在というものは健康であるということ、しあわせであるということ、われわれがこの世に生まれてまいりまして、病気をしたり、差別を受けたり、いろいろな存在を傷つけることがありますが、そういうふうなことでないように、むしろわれわれの存在と申しますか、生存と申しますか、これは御了承願えるでしょう。存在と申し上げましたことは、人間でございますから物ではございません。生存と申しますか、その生存を傷つける、つまり生命だとか健康だとかいうことを傷つけることを防止していくということが、今度の基本法の目的であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/141
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142・中谷鉄也
○中谷委員 大臣の御答弁は、壮大な論理の展開をしておられる問題で、また健康というところに戻ってこられて、生理的にということは非常に理解ができないので端的にお尋ねいたします。
佐藤総理は、最近といいますか、一年ほど前ですか、憲法を読み直そう、こういうふうなことを言われた。そこで、憲法二十五条はこうなっています。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」そこでこれは大臣に答弁を求めるのだけれども、政府委員から意見を聞いてもらってもいい。憲法のものの本によりますと、ものの本によらなくても、「健康で文化的な最低限度の生活」というのは、健康であり、文化的な生活でなければならないわけです。健康で文化的なということはイコールでつながっていると思うわけです。要するに、健康で文化的な生活というのは分けられないのだ、健康で文化的な生活というのは、健康であり文化的でなければならないということに、憲法のおおむね学説はなっておると私は思うのです。そうすると、いわゆる公害対策基本法で考えられている健康というのは、憲法二十五条にいっているような、そのような宣言的な、あるいはまた人権宣言的な健康、広い意味のそういう健康というものを意味しておるのだと私は思うのです。まさに病気とすれすれのところにおる健康、死にかけておるようなことでないのが健康だというふうなものを、いまわれわれはこの時代において保護法益とじて保護されるというのはおかしいと思う。現実はともかくとして、そのようなことが公害対策基本法というものができてきたときの法益であり、理想だとされるということではあまりにもみじめだと思う。そのように公害対策における健康というのは、憲法二十五条の第一項の健康で文化的な生活という、そのような健康だというふうなひとつ大臣の御答弁をいただきたい。この点特に存在というふうなおことばをお使いになったので御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/142
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143・坊秀男
○坊国務大臣 中谷委員の非常に専門的な御質問でございますが、健康で文化的なということは、私もお説のとおり健康と文化的というものを二つに分けてこれは考えられない。健康であり文化的な人間生活といいますと、ずいぶん幅が広いものだと思う。その人の環境、その人の境遇、その人の現在の地位、いろいろありまして、非常に私は幅があると思います。憲法で保障されておる健康で文化的な人間生活というものは、その中の——とにかく法律でございますから釈迦に説法だと思いますけれども、限界を示しておるのが憲法でございまして、いまおっしゃられた病気すれすれだといったようなことが、これが非常に、観念といいますか概念といいますか、つかむにむずかしい問題でございますけれども、病気すれすれといったようなことが健康であるかと言われますと、病院には入ってないけれども病気で寝たり起きたりしておる、病気とまでは言わなくても、不健康で寝たり起きたりしておるというようなことは、これは健康で文化的な生活といったようなことには私はならないと思います。ここいらのところ、健康で文化的な生活を具体的に、また抽象的にこういうものだということを、どうもものさしに当ててはかることは私は困難だと思います。いずれにいたしましても、抽象的には相なりますけれども、健康で文化的な人間生活というものを守っていくということ、そのために公害を防止していくということも確かに私は一つの目途になるであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/143
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144・中谷鉄也
○中谷委員 論点を私のほうから整理します。こういうふうにお尋ねします。要するに、中間報告というものが正しいのかどうかは別として、中間報告の中では、産業の発展というものと公害の防止、逆に言うと、公害の防止のための施策の健康の保護、その法益であるところの健康の保護、あるいは生活環境の整備などの諸施策、要するに公害の防止ということと産業の発展ということとはどこかでとにかく衝突してくるんだ、しかし衝突はしてくるんだけれども、その場合には産業の発展のほうが道を譲るべきなんだという考え方に立っていると思うのです。これはもう大臣、何といっても私の選挙区の大先輩ですから、非常に御勉強になっていると思うのですが、その後のいわゆる自治省の公害対策基本法についての意見によりましても、こうなっています。これは大事なことですから一度読み上げてみますけれども、「企業の活動といえども住民の福祉を犠牲にしない限度で認められるべきであることは当然であって、かりに企業が経済技術的に可能な公害防止施設を設置したとしても、なお、地域住民に被害を与える場合においては、無過失責任を追及されるべきことが近代の趨勢である。」自治省はある時期にはそういうふうに言っている。ところが、提案を予定さている公害対策基本法においては、経済の発展ということと、公害の防止ということの中の生活環境の整備ということが、これは矛盾しないんだ、調和させるんだ。調和させるんだということは、いずれにしてもこれは対立するものだということは変わりないですよ。最初の中間報告でいっているように、経済の発展というものは排除さるべきものだというふうな考え方が後退をして、調和という考え方に変わってきていると思う。これでいわゆる八月の何日からの攻防の中で、いろいろな経過、いきさつの中で生まれてきた子供は、鬼子ではないのですか、この点をお聞きしたい、こう言うのです。最初、排除さるべきものだと言っておったのが、調和さるべきものだというふうに変わってきておるじゃないか、これは一体どうなんだ。しかも、そもそもそういうような中間報告を受けられたのは厚生省じゃないか、それで満足だとか不満がないというのは一体どういうことですかということをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/144
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145・坊秀男
○坊国務大臣 審議会から報告を受けまして、その報告に基づいて、厚生省は厚生省としての試案をつくって、それを総理府へ持ってまいりまして、とにかく先ほど申し上げましたとおりです。これが十四省か五省という各省が関係しておるわけでありますので、その各省が厚生省の試案というものを爼上に乗せて慎重なる検討をいたした。
〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
審議会から厚生省がこれを受けて、そして厚生省から総理府へ持っていって、そこで検討しておる過程におきましては、そのことがきまる経過、過程におきましては、これはいろいろの議論もございまして、そしてそういったような議論を戦わせました結果生まれてまいったのがこの基本法の試案要綱。その要綱に基づいて今度御審議を願う基本法というものを政府から国会に提案したのでございますから、その過程におきましては、最初のものと全然同じということであるならば、審議、調整そういったようなことは一体総理府で何をしたんだ、こういうことにも私はなろうと思います。そこで各省の意見を調整いたしまして、そしてでき上がったもの、これが鬼子であるとかかたわであるとかいうことは、私はそういう過程、スクリーンを通して現在の時点においてでき上がったものとして、決して鬼子であるともかたわであるとも考えておりません。いまの環境におきましては、もちろん先ほども申しましたとおり、これが理想的な、もうどこへ持っていっても普遍妥当性を持ったものだ、そんなことまで私は考えておりませんけれども、いまの時点において生まれてまいりました子供は、これはこれで満足すべきものであった、そしてこれを皆さんの御批判によりまして、できるだけ審議をしていただいて、そうして決定をお願いしたい、こういう心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/145
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146・中谷鉄也
○中谷委員 お尋ねいたします。
たとえばある新聞には、この提案を予定されている法案が閣議できまったというふうなことが報道されましたう、「後退した健康優先、公害基本法案、産業振興巻返す」こういうふうな見出しで出ております。また、きょうのある新聞の囲み記事の中にも、「はじめ厚生省のかかげた健康第一の考え方が、その後の各省との調整の段階で、産業の発展を阻害するおそれがあるとの反対をうけ、譲歩させられている。」こういうふうにも記載されているわけです。これは大臣、そういうのはもうどの新聞ということではなしに、これは連日のようにそういうふうな意見、報道、新聞の評論というものが報ぜられているわけですから、これはいやというほど目に入ってくるだろうと思うわけなんです。
そこで、先ほど大臣の御答弁にありましたが、もう一度私お尋ねいたしますけれども、かりに私たちの立場から見たら一番あたりまえだと思われる中間報告はさておいて、厚生省の試案と、提案を予想されている法案との間にも違いがある。では、こういうふうにお尋ねしましょうか。中間報告の考え方、ことにその経済の発展との関係においての考え方と、提案を予定されている法案との、経済の発展に対するかまえ方は、大きな隔たりがあるというふうにお考えになるのか、それともそれは変わらないのだということなのか。中間報告においては、経済の発展というものを排除さるべきなんだというのが、法案においては、それは調和さるべきものだというふうなことになって、これは大きな考え方の違いがあるのかないのか、この点についてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/146
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147・坊秀男
○坊国務大臣 中間報告とおっしゃるのはこの審議会の報告のことかと思いますが、審議会の報告によりますれば、中谷委員が問題にしていらっしゃるのは、「公害対策の推進にあたっては、産業の健全な発展との調和を図ることが強調されている。一般論としてこのような配慮の必要なことは今後も変わらないであろう。しかし、公害の中には、人体の健康その他金銭によって償い得ない被害を及ぼす性質のものもあり、被害が一定の限度をこえる場合には、産業の発展を多少とも犠牲にする必要があることも十分認めなすればならない。」ここのところだと思います。
われわれの生活をやっていく上におきましては、それは金銭にも、ほかの何ものにもかえがたいというものが、われわれの生存していくためにはあるわけでございます。そういったようなものを、これをいやしくも損傷する、障害するといったようなときには、これは産業が一歩うしろへ引かなければならないということは、この公害基本法においてもうたっておると私は思います。ところが、その生命にかえがたいというところまでいかないで、われわれの生活をさらに積極的に進めて、たとえば——たとえばと申しますのは、私、東京の隅田川を例に引かせていただきますが、隅田川は濁っておる。その隅田川でたとえばメタンガスが出る、非常に悪臭が出る。そういったようなことで、その流域の人たちがそのメタンガス等のために生活、生存が不健康になるといったような場合には、これはどんなことがあってもそのメタンガス等の出てくるということを排除しなければならない。ところが、極端な例でございますけれども、隅田川をさらに上高地の梓川の水にまでする。これはわれわれの生活環境を非常によくするということでございますけれども、そこまではとてもいきませんけれども、メタンガスがとまった、それから悪臭もとまった。しかしながら、それではまだ魚も住まない、その水をせめてコイとかフナとかあるいはハゼくらいが住めるようなところまで持っていく、こういうことが生活環境をよくしていくということであろうと思いますが、その前段の、健康に害があるというような場合には、これは絶対に防止して、健康に害のないような隅田川に持っていかなければならない。だがしかし、それより一歩進んでいろいろな魚が住む、アユが住むところまではいかぬにしても、コイが住める程度のところに持っていくということが生活環境の改善だ、その生活環境の改善をしていくというような場合には、これはどうしても経済ということを無視してしまうのでなく、その程度のことについては経済の発展との調和をはかっていかなければならない、こういうふうに私は観念いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/147
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148・中谷鉄也
○中谷委員 少し違うと思うのです。私、納得いたしません。
それじゃもう一度お尋ねいたしますけれども、公害基本法あるいは公害防止の基本的な対策の中において保護さるべき法益であるところの健康というのは、これは生存権なんだ、大臣のことばで言えばそれは人間の尊厳なんだ、それは同時に人間がそこに存在するということなんだ、こういう御答弁が次から次へとぽんぽんと飛び出してきておるのですが、憲法二十五条などを持ち出したので、大臣としても非常にお答えしにくかったのではないかと思いますが、ぽんぽんとそういうことばが飛び出してくる。そうだとすると、ここで保護さるべき健康というのは、単に病気などと対比さるべきところのものではない。要するに憲法二十五条にいうところの健康で文化的な生活だということになってくると思うのです。そうすると、これは法案の審議ではありませんから、こういうようにお聞きします。生活環境の整備というのは密接にイコール健康と関係がございますね。あるいは健康で文化的な生活ということと生活環境の整備ということは切っても切れないことでございますね。そうすると、その生活環境の保全が経済の健全な発展というものと調和をしなければならない、どこかで譲り合わなければならないということになれば、イコール健康というもの、しかもそれは単に肉体的な健康ではない、憲法二十五条でいうところの健康の後退、新聞などでいっている健康の後退になるんじゃないですか。それが中間答申にしろ、厚生省の試案にしろ、それの考え方とは全く違うものではございませんかというのが私の質問なんです。
そういうことをお答えいただく便宜のために、一つ例を出しておきますけれども、生活保護法第一条の関係において、一体大臣は健康というもの、生活というものをどのようにお考えになっておられるか、この点についてひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/148
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149・坊秀男
○坊国務大臣 これも釈迦に説法になりますが、憲法二十五条に基づいて生活保護法第一条というものは、これを社会生活、人間が生活していく上において裏づけをしておるのがこの生活保護法の第一条だ、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/149
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150・中谷鉄也
○中谷委員 そういうことだとしますと、生活保護法という法律においても、憲法二十五条の理念に基づき——これは昭和二十五年にできた法律でございますね。そういうことがとにかく目的の中にうたわれておるわけです。そうすると、ましていわんや公害防止基本法という、不特定多数の国民に被害を与えているそのような被害を防除するのだ、排除するのだというところのものが、単なる健康の保護というふうなものであっていいはずがないと思うのです。まさにそこにいう健康というのは、健康で文化的な生活だと思うのですけれども、そのような文化的ということの中には、そうすると生活環境の保全というのも当然入ってくると思うのです。そのようなものはどのようなわけで経済の発展というもののコントロールを受けなければならないのか。道を譲り合うということになれば、これは大きくいえば二十五条の精神にも反するじゃないかというのが私の考え方なんです。
これは大臣と私と行ったり来たりして、どうも答弁もかみ合いませんが、まさにこの点が攻防の一番の基本のところだと思いますけれども、私はこの点を通産大臣にお聞きしたいので、厚生大臣にあまりお聞きしたくないのですが、その点についていま一度お尋ねしますけれども、健康の保護というものがあって、生活環境の保全というものがあって、そうして経済の発展というものがある。生活環境の保全というのがイコール健康の保護につながっていくのだということは、大臣これはそのとおりだということの御答弁でございましょうね。生活環境の保全というのがイコールある意味において大部分の健康の保護につながるのだということはお認めいただけますかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/150
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151・坊秀男
○坊国務大臣 非常に極端なことを申し上げますと、たとえば東京、川崎あるいは四日市といったようなところも、これは工場ができたり、産業の発展のために空気をよごしたりあるいは水質が汚濁をされたりしておるのでございますが、その生活環境を一〇〇%、こういうところを目標として考えますと、そういったようなところを和歌山県の県境の紀見峠あたりの空気まで持っていくとか、さらにまた上高地のあたりまで持っていくとか、こういうことにしなければ、極端な例でございますが、これは生活環境が完全であるということは私は申せないと思う。しかし、さようなことに持っていくということは、これは日本の国の産業なり、経済なりというものをやはり考慮してかからなければならないということは、中谷さんもよく御理解願えると私は思っている。そうすると、そこに生活環境というものの程度というものが、日本全国が紀見峠みたいなものでなくとも、あるいはまた上高地みたいなところでなくとも、これは憲法二十五条にもとるものではないと私は思う。そこでおのずから環境基準というようなものをきめることによりまして、少なくとも生活していく上におきましては、その環境基準に従った環境をつくり出していこう。それをやるためには、これはやはりいまの上高地みたいなところまでにしていくということは、これは経済との調和をはからないということでございますから、そこまではいかないで、経済発展との調和をはかる。こういうことがこの基本法にうたってある趣旨だと私は心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/151
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152・中谷鉄也
○中谷委員 高野山とか、上高地、紀見峠というような話が出てきますと、どうも話がふるさとの話になってきまして、そうなってきますと、私も話を飛ばしていきたいと思っておりますけれども、そういうように上高地とか紀見峠とか高野山などを例に引かれ始めますと、現在提案を予定されている基本法のいわゆる環境基準なるものが、社会党などが考えている許容基準でなければいけないのだというふうな考え方が説得力を持ってくるわけです。しかし、その点についてはあと御質問のある方かおられるようですから聞きませんけれども、例としてはきわめて適切でなかったと思うのです、紀見峠などをお引きになったことは社会党の言っている考え方に近づいてくるわけですから。
そこで、この機会にひとつ舘林さんに私はお教えをいただきたいと思うのですが、かりに経済の発展と生活環境の保全というふうなものが対立する——どこかで衝突をするものなんでございましょう、衝突するものだとした場合に、理論数値として——理論数値というようなことばが、私、経済はよくわからないから、そういうことばが適切かどうかよくわかりませんが、理論数値として、公害型産業の中において設備投資に対しどの程度のいわゆる公害防止あるいは防除の費用を投下することが適切と思われるか、何%程度か。たとえば人によっては三%ぐらいしかやっていないじゃないか、けしからぬと言う人もおるし、カナダのほうにおいては五%をかけておると言う人もいる。公害型産業といっても電力もあるし化学もあるが、この場合に、経済の発展と生活環境の保全との調和ということをおっしゃっているのだけれども、調和ということは、理論数値として、設備投資に対してどの程度のいわゆる公害防除、公害排除のための投資をすることが適切なのか。むしろこれは具体的な問題として、そういう点をひとつお答えいただきたいと思います。
〔島本委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/152
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153・舘林宣夫
○舘林政府委員 いままでの欧米におきます比較的公害対策をやっております国々、先進国の公害を発生しやすい産業の公害防除設備の設備投資の金は三ないし五%といわれております。今日、日本の公害を発生する産業の実情はどうかといいますと、それよりかなり低い実情でございますが、最近つくっております火力発電所等における設備投資は相当多額の公害防除施設を設けておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/153
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154・中谷鉄也
○中谷委員 理論数値というふうな妙な発言を私したわけですけれども、そうすると、パブリック・ニューサンスだとか、プライベート・ニューサンスだとかいうことで千八百年代からそういうことが裁判例にもなっておる、そういうふうな欧米において、いわゆる公害防止先進国においての設備投資に対する割合に比べて、日本のほうは当然いろいろな条件、事情があるので、公害の防止をしようと思えば設備投資に対する公害防除のための投資額というのはふえてくることになるということなのかどうかがまず第一点としてお聞きしたいことです。
いま一つは、これは舘林さん御専門だから、私などの調査というものは不十分かもしれないけれども、いま三%ないし五%とおっしゃったのは全産業に対する割合であって、私が特に引用した公害型産業、要するに公害を起こしやすい産業に対する割合というのは欧米においてもっと多い。最低一五%程度ではないかというふうに私は理解しているが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/154
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155・橋本道夫
○橋本説明員 いま引用されました数字は、ロスアンゼルスの大気汚染防止行政のレポートの中に、本体施設の投資額の一五%を投入しているというデータが出ております。よく三とか五%といわれますのは一般的な論でございますが、通産省のほうがこまかな数字がおわかりになると思いますけれども、通産省が従来の産業構造審議会の設備投資の中に出された数字の中には一〇%に達したものもございます。あるいは二%前後のものもございます。そういうことで、先生の引用なさいましたのはいまから三年ほど前、事業団をつくるときの論議になりました数字でありまして、現在では、業種によって非常に異なってくるということと、非常に多額のものを投じておるものもあれば、あまり供ってはいないものもあるということで、電力におきましては、いままでの数字で見ますと二・七か三くらいではないかというように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/155
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156・中谷鉄也
○中谷委員 では、大臣にあと二点だけお教えをいただきたいと思いますが、これはまだ法案が出ていないのですけれども、経済との調和といったって一体どこで調和ができるということになるのか。要するに、調和ができるということは、環境基準が守られているということで調和ができているんだということになるのか。しかし、その環境基準をきめる経済の健全な発展ということは、どれだけ産業のほうが、事業主のほうが腹を痛めるかということとの問題だと思うのです。そのことについては、舘林さんは非常に御専門家だと思っておりましたけれども、何かその点については明確な、この程度は負担しなければいけませんよという政府のあれはないわけです。そうすると、一体調和というようなことをおっしゃっても、これは結局——先ほどから私、先輩である大臣に非常に失礼だったけれども、まさに健康の後退、健康の保護ということが押され押されて八月以来今日まできたというような新聞の報道あるいは大方の評論と同じように、産業との調和という中においてどの程度企業の腹が痛むのだという基準というものがなければ、環境のいわゆる許容基準というふうなものがかりにあったとしても、調和がどこにあるのかというようなことについては非常におかしいことになるのではないか。この点については大臣いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/156
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157・坊秀男
○坊国務大臣 中谷さんしばしばおっしゃられるように、公害の防除ということと産業の発展ということがどこかにおいてぶつかる。人間の生活、健康というものを考えずに産業をどんどん発展せしめていくというのは、これは人間の健康にぶつかる。それなら人間の健康——健康はともかくとして、生活環境というものをよくしていこう、それに一生懸命になってやっていく、その要請のみを満たしていこうといたしますと、産業の発展にこれまたぶつかる。しかしながら、われわれは、われわれの生活環境も、それから産業の発展ということも無視できない。産業も発展させていきたい、生活環境もよくしていきたいというところに、おのずからそこに調和点というものが——二つの相反する要請でございますね。その相反する要請の中に調和点といったようなものを考えていかなければならない。その調和点をどうして生み出していくかということについては、これは人間のすることでございますから、これも数学的に岡潔博士が計算するといったようなこと、あるいはできるかもしれませんが、そういったようなことを私がここで御答弁は申し上げかねますけれども、その調和点というものをきめていくにあたっては環境基準といったようなものをものさしにしていく、こういうことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/157
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158・中谷鉄也
○中谷委員 では、もう次の方もおられますからこの程度にしておきますけれども、誤解のないようにひとつお聞きいただきたいのは、経済の発展というふうなことが大事なことだ、この点については私自身もそういう前提を否認しているわけではないのです。また一つ、受忍義務というふうなことばは私はきらいだけれども、住民のほうで許容しなければならない限度というふうなものも一般社会の中においてはあるだろうということも私は一応認めているわけです。要するに、東京の空が直ちに上高地と同じようになれといったようなことを言っているのではない。そういう前提でお尋ねしておるのですけれども、きょうは問題の提起程度にとどまったわけです。
一点だけ最後にお尋ねしておきますけれども、これは島本委員の質問に対する大臣のお答えの中に、いわゆる公害基本法によってあらゆる公害について防止するための措置をしていくんだ、それの基本法なんだ、こういうふうな御答弁がありました。これはあげ足とりでも何でもない、念のためにお聞きしておきますけれども、公害基本法にいわれておるところの公害というのは制限列挙でございますね。そうすると大臣のお考えは、たまたま提案を予定されている法案については、あらゆる公害ということばはどういうものなのか。要するに、さらにいろいろな、たとえば日照妨害というようなものもその中に加えたいという意欲があるのか、あるいはそれらのものは別個の観点からというお考えなのかこの点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/158
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159・坊秀男
○坊国務大臣 私が最初にあらゆる公害と申し上げましたのは、いまの段階におきましては、基本法に列挙しておる——中谷さん法律家てございますので、非常にきめのこまかい御質問でございます。私は非常に荒っぽい概念のお答えをしたわけでございますが、私はいまの公害基本法が目的としておりますのは、公害基本法にあげましたいわゆる公害を申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/159
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160・中谷鉄也
○中谷委員 以上で質問を終わりますが、ことに通産省の政務次官には、ひとつぜひともいろいろな点をお聞きして厚生省とのお考えの違いを明確にしたいと思ったのですけれども、また別の委員会でもお会いする機会ありますので……。
また、大臣に一つ要望しておきますけれども、私自身の二十五条との関係についての聞き方も若干整理の足りない点があったかもしれませんけれども、大臣のお答えも、非常に何か私にとっては答弁が納得いかないというのじゃなしに、答弁が左にいったのを右にいったと言ったり、右にいったのを左ということで、私は非常に整理の足りなかった点があると思うのです。この点についてはまたあらためてお尋ねするということにして、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/160
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161・八木一男
○八木委員長 折小野良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/161
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162・折小野良一
○折小野委員 公害対策の基本的な二、三の問題について、時間の許す限り申し上げたいと思います。
まず、建設省が去る二月、河川管理の立場から河川法第二十九条に基づきます政令を設け、そうして流水の水質基準を定めようというふうにされました。当時の新聞はこれを非常に大きな期待を持って報道をいたしたわけであります。また、その報道を見ました国民といたしましても、特に公害に悩んでおります国民といたしましては、その成立の一日も早からんことを期待をいたしておったわけでございます。この政令の内容の概要と、その後の経過についてお知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/162
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163・古賀雷四郎
○古賀政府委員 御指摘のように河川法の第二十九条に、「流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、」「政令で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。」というのがございます。流水の清潔を保つということは河川管理上非常に重要な問題でもあります。また、生活環境の向上にも重要な問題である。また一方におきまして水資源の問題とも非常に関連してくる問題でございます。したがいまして、この政令の法文につきましてわれわれ成案を得ましてただいま各省と協議中でございますが、まだ具体的な案は成立しておりません。
そこで、この政令の内容でございますが、これは二十八条関係の船またはいかだの通航の制限とかございますが、排水管、排水渠その他の排水施設により直接河川にし尿を含む水または事業に基因し、もしくは付随する排水もしくはこれを含む水を排出すること、そういった種類のものにつきまして河川管理者の許可を得しめるということが一つの要件でございます。それからさらに河川の流水で石を洗ったりあるいは砂利を洗ったり、そういうことによりまして河川が汚濁するというようなこともございまして、それらにつきましても許可を受けさせるというようなものでございます。そういった許可を受ける段階におきまして、それらの汚濁を防止するための施設の問題等につきましても具体的に許可の要件といたしておるわけでございます。
それで問題は、排水管あるいは排水渠その他排水施設によって出てくるものの水質の問題が問題でございますが、われわれとしましては、全国に相当数の河川がございますが、少なくともいまいい状態にある河川は良好な状態を保ちたいということでおるわけでありまして、さらにたとえば隅田川のような非常な汚濁をいたしましてBODが五〇にも達するような河川につきましては、河川管理者がみずから水を注入する施設をやりまして河川の浄化につとめたい。さらに汚泥物が相当隅田川の河底にあります。そういったものも過去数年来除いてきておりまして、最近の状態ではまことによくなっております。今後さらにこの状態を続けていくつもりでおりますが、そういったことにつきまして当該河川水域の水質をどの程度に考えたらいいかというような問題も一応考えてこの内容をきめてまいったのであります。なお、そういったような水質の汚濁しておる川につきまして、急速にこれを基準に合わせてやるということはかなりむずかしいと思います。したがって、経過的にこれをよくすることができるかどうかということで経過措置も設けておりまして、逐次汚濁された川の公共用水等をされいにしていこうという河川管理者の立場で検討したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/163
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164・折小野良一
○折小野委員 ただいま局長からお話しの水質の基準でございますけれども、私どもが承知しておりますところによりますと、PH五・八ないし八・六、BOD四PPM、こういうふうにお聞きしております。こういう水質基準は常識的に考えてどの程度のものであるか。先ほど厚生大臣から、たとえばアユは住めないがコイは住めるというようなことをおっしゃったわけでございます。そのような常識的な面から考えて、どの程度のものかお知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/164
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165・松本茂
○松本政府委員 BODで申しますと、BOD三というのが、水道の水源といたしまして厚生省のほうがその程度以下であることが適当であるというふうにお考えになっておるところでございます。またBODで五という程度が、高級なアユとかそういった魚は住めませんが、フナとかコイとか、そういったわりあい生活力の強い魚はとにかく住み得る程度、こういうことでございます。それからBOD一〇というのは、悪臭か発生したりなんかしないで、こういうぎりぎり、とにかく最低限度その程度は維持していかなければならないというふうに思われる水質、大体そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/165
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166・折小野良一
○折小野委員 ただいまのお話によりまして、建設省が考えておられますBODの四というものは、相当経済の発展と調和をとられた数字であるというふうにいま私ども考えますが、しかもこの案が、お話によりますと現在協議中だということでございますが、これは建設省自体において協議中であるというわけではないので、建設省の案からいたしますと、四月一日から、すなわち本年度からこれを実施しようというふうに立案された。その段階におきまして関係各省に御相談になった。すなわち、協議中ということは、ほかの省との間の調整がとれないのだ、こういうことであると私は考えておるわけでございます。したがって、この点につきまして、ほかの関係、特に水には非常に関係がございます経済企画庁におきまして、どういうふうにお考えになっておるか、お知らせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/166
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167・松本茂
○松本政府委員 建設省のほうで、先ほど御説明ありましたような案につきまして御相談がございました。私どものほうでもそれを受けましていろいろ検討いたしておるところでございます。これにつきましては、現在水質保全法によりまして水質基準の設定等、水質汚濁の防止についての基準の設定をいたしておるわけでございます。この法律との関係等につきまして、法律的にもいろいろ問題があるように思われるわけでございます。そういった点につきまして、いろいろいま内部でも検討し、また各省の御意見もお伺いいたしまして、政府内で十分よく検討を進めていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/167
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168・折小野良一
○折小野委員 ただいまの経済企画庁の御意見といいますのは、端的にいって、建設省が示しましたこの基準が高いというわけですか、あるいは低いというわけですか。その点を端的にお示しをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/168
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169・松本茂
○松本政府委員 私どものほうで検討いたしました結果、まずこれが問題点ではなかろうかと思われますのは、現在水質の基準の設定等につきましては、水質保全法という法律でいたしておるわけでございます。それに対しまして、今度は河川法二十九条に基づく政令ということで、水質基準にそれと実質同じようなことが行なわれるということになるにつきまして、その目的とかあるいは対象等が違っておりますれば格別問題はないのじゃないかとも思いますが、大体似たようなことになってまいりますと、その間の法律上の問題もございます。そういった点が私どもまず問題点ではなかろうか、こういうふうに考えている点でございまして、政令案の中でお考えになりました一般的な基準としてBOD四というのが高いか低いかというのはまたその先の問題だ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/169
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170・折小野良一
○折小野委員 御意見でございますが、水質保全法におきましては、もちろん個々の川につきまして実情に応じていろいろの水質基準がきめられるわけでございます。おそらく河川管理上この水質をきめようというのはすべての河川についてということであろうと思っております。通常の場合、すべての河川についてきめられる一応の基準というものは、普通河川として考えられておりますものの最低の基準である、こういうふうに考えるわけでございます。そういう立場からいたしますならば、必ずしも河川法の施行令でこれをやっても、あるいは水質保全法で特定なところを規制しても、同じ規制するにつきましては制度上それほど問題はないのじゃないか、私どもはそう考えるのでありますが、その点につきましてはどういうふうなお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/170
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171・松本茂
○松本政府委員 先ほど私の申しましたような点につきましては、法律上の問題点でもございますので、内閣の法制局にもいろいろ御相談してみる必要がある、こういうふうにも思っております。それからまた、水質の問題につきましては、現在水質保全法等で水質基準をつくり、それを受けまして工場排水等の規制法で各省の大臣が工場の監督をする、水質基準を順守させる、こういうたてまえになっておりまして、関係各省にもいろいろ関係があるわけでございます。したがいまして、通産省はじめ関係各省の御意見もさらによくお伺いした上で企画庁としても結論を得たい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/171
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172・折小野良一
○折小野委員 ただいまの法律上の問題等につきましては、まあそれぞれ御協議なさるとして、お考えとしましては、こういうような水質基準をきめて、そうして環境の浄化をはかるという趣旨につきましては御賛成でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/172
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173・松本茂
○松本政府委員 公害防止の基本法を成案を得た段階になっておりまして、その中には水につきましての環境基準をつくる、またそれを受けまして排水基準をつくって、水質汚濁を防止して水に関する公害を防止していくという基本的な性格がその中にも示されておるわけでございます。そういった方向で私ども関係の行政に携わる者は努力していかなければならない。その点につきましては全くそのとおりと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/173
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174・折小野良一
○折小野委員 河川の水質基準を設定するにあたりまして常に問題になってまいりますのは、いわゆる工場からの排水、こういう問題であろうと思っております。したがって、こういう面につきましては当然通産省のいろいろな御意見があろうと思っておりますが、この建設省案に対する通産省のお考えをお知らせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/174
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175・宇野宗佑
○宇野政府委員 基本法が制定される以上は、幾つかの条項が新しく設けられなくちゃなりませんし、また、既存の法律におきましても、よりその趣旨に沿うように改定されなくちゃならないと思うのであります。したがいまして、先ほど建設省が申されました河川法に基づくところの政令制定という問題に関しましても、建設省のお考え方は私たちも了とするところでありまするが、しかし、法律体系から考えますと、やはりそうした汚濁防止という問題はできるだけばらばらなのじゃなくして、法体系が一本化することが正しいのではないか、こういうふうに考えております。したがいまして、今日ただいまの通産省の考え方といたしましては、ただいまあります水質保全法というものの関係を中心として、今後さような趣旨に合うような問題を解決していきたい、こういうように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/175
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176・折小野良一
○折小野委員 法体系の面から問題があるという御意見でございますが、法体系が整いましたならば、やはりこのような水質基準の設定、こういうことは賛成でございますかどうか。特に現在出ておりますこの案について、法体系の問題は一応別としまして、通産省の立場として賛成されるのでありますか、あるいはこれに対してどういうような意見を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/176
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177・馬場一也
○馬場説明員 河川をされいにするという目的からいたしますれば、これを実施いたしますのに、水質保全法という体系を利用してやることもできますし、あるいは河川法二十九条の政令という手段をもってやることも、理論的には、法律的には両方できますが、実質手段は、河川の水質の浄化ということに関する限りは、なるべく一つの体系でやるほうが望ましい。かように政務次官のほうからお答えしたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/177
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178・折小野良一
○折小野委員 ただいまそれぞれの立場からの御意見をお聞きいたしたわけでございますが、政府が政府だけでできる政令、これをつくるに際しましても、ただいまお聞きいたしましたとおりいろいろな問題があり、いろいろな立場があり、なかなか実現しないというのが現在の状態でございます。これをあるいはセクト主義とか、あるいはなわ張り根性とか、こういうような批判もございます。必ずしもそう言わなくとも、やはり各省にいろいろな仕事が分かれておる、権限が分かれておる、こういうところに特に公害対策の実効が期せられない一つの大きな原因があるんじゃなかろうか。この点につきましては、この前からの質問におきましても、対策がばらばらであるとか、お互いの連絡が悪いとか、あるいは本日の大臣のお話の中にも十四、五省庁でいろいろ扱っておられるということがあるわけでございます。確かにこういう点、公害対策が推進しない一つの原因があると私どもは考えております。そういうような面からいたしますと、今回基本法ができることによりまして、公害対策を推進していくそういう立場からいたしますならば、できるだけこれを一本化する、一元化する、そういうことによって公害対策を進めていこう、こういうふうに考えるのが当然ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。特に今日公害対策の基本法をまとめるにあたりまして、いろいろ調整のお役目をやってきていただいております総理府の副長官がおいででございますから、そういう点についての御意見、あるいは今日までの過程においていろいろ御考慮、御判断になった点がありますならば、お知らせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/178
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179・上村千一郎
○上村政府委員 ただいま折小野委員からおっしゃいました点、ごもっともな点でございまして、いろいろ総理府におきましてもこの総合調整に当たってまいったわけでございますが、公害と一がいに申しましても、御案内のように非常に多岐にわたっておるわけでございます。先ほど厚生大臣からもお話しになられましたが、公害対策基本法につきましては、これこれの点を公害とするというふうにいたしておりますが、社会の進展その他におきましては、それ以外にもいろいろな部面が考えられることはもっともであろうと思うわけでございます。また、大気汚染とか水質汚濁と申しましても、その発生源といいますか、その根源をたす点を考えますと、大気汚染の点でも、あるいは工場の煙突から出るばい煙、あるいは自動車その他の排気ガスの問題とかいうふうに、根源からいいましてもいろいろ多岐にわたっております。こういう点から、公害というものに対しますところの対策というものにつきましては、おのおの関係各省におきましてこの対策を実施していくということが能率的であろう。しかしながら、先ほど折小野委員がおっしゃったように、これがばらばらになってしまったんでは、これまたその目的を達するわけにはいかない。しからばどういうふうにこれを調整していくかという意味で、総理府のほうで試案をつくりました際におきましては、公害対策会議というものを設置をする、これの法的な性格は総理府の付属機関、こういうふうになっておりまして、構成員は関係各省大臣をもって構成する、長は内閣総理大臣が長に当たる、こういう構想にいたしました。しかしながら、総理府の付属機関と申しましても、関係各省の大臣をもって構成されるのでございますので、その公害対策会議というものが公害対策の総合的な施策の企画をする。審議機関にはなっておりますけれども、実際問題としましては強力な実施運営の機関になっていくであろうと思われるわけでございます。先ほど折小野委員がおっしゃったように、一つの心配というものをどう解決するかという問題は相当論議の的になったわけでございますが、総理府におきまする試案としましては、先ほど申し上げましたように、公害対策会議というものを設置してこれに当たっていく、こういう結論になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/179
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180・折小野良一
○折小野委員 先ほどお聞きいたしました河川の水質基準の設定、こういう一つの問題をとらえてみましても、なかなか現実には解決がついていないのであります。もちろん、法体系の問題もございましょう。しかし、それぞれの立場における水質基準に対する考え方というものもやはりあるであろうというふうに考えております。建設省としては、当時、今年度からやろうとされておりましたのが、すでに今日まで三ヵ月延びていっている一わけであります。一つのことがこういうふうにだらだらになってまいりますならば、たとえどんないい施策も現実には全然効果があがらないということになってまいります。したがって、私どもといたしましては、特にこの基本法ができるこの機会におきまして、何とか公害対策が実効をおさめる、こういうような体制ができることを最も期待をするわけであります。その案の中におきます公害対策会議につきましては、ただいま副長官からいろいろお話がございました。確かにりっぱな、しかも偉い大臣方が集まって会議を結成される、これは強力な会議のように見えます。しかし、考えてみますと、十五省庁にわたるということになりますと、各省庁の担当大臣が全部出られるということですと、これは閣議とひとつも変わらない。別に公害対策会議というものを設けられる意味というものは一つもないのではないかというふうに考えられます。私どもは、むしろ、こういうところにお偉いあるいはお忙しい方々をもってきて、そうして貴重な時間をわずらわすよりは、ほんとうに実効の上がる機構を考えていくことが大切じゃなかろうか。また、その下で具体的な仕事をやられる各行政機構にいたしましても、先ほどの河川の例から見ますように、各省庁ばらばらではなかなかその仕事が進まないというのがやはり現実の姿でございます。こういうような点からいたしますならば、そのすべてということは言わなくとも、少なくも公害基本法に列挙されております各おもな公害につきましては、現在の担当行政機構を統合し、一元化する。そうすることによって執行力を高めていき、実効を高めるということが、最も必要じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。また、この考えにつきましては、いろいろな人の意見その他も聞くわけでございます。多くは行政機構の一元化ということが実効を高める上に必要である、こういう意見を私どもも聞いております。こういう点について政府はどのように考えておられるか、そして今後どういうふうにされるのか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/180
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181・上村千一郎
○上村政府委員 折小野委員のおっしゃったような心配は十分私どもも考えられます。と申しますのは、総理府におきまして各案を相互調整をいたした過程におきましても、相当いろいろな問題があることもよく承知しております。でございますが、とにかく先ほど申し上げましたようなことに試案を決定をいたしたわけでございます。今後の運営の問題におきまして、十分その点を考慮しながら公害対策会議の運営をいたすことと相なると思うのでございます。なお、この幹事会というものが設置されることによりまして、各省の事務次官クラスにおきまして幹事会をつくって相互の調整をはかるということで、いろいろな先ほどの御心配の点につきまして運営をはかっていこうというような考え方に相なっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/181
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182・折小野良一
○折小野委員 調整でまとまったからこれでしかたがない、こういうふうな御答弁のようでございます。が、私どもは、やはり少しでもよくしていかなければならないというふうに考えます。たとえある段階において調整でこういうふうな案にまとまったといたしましても、次の段階において、さらにいい案にまとめていくということができますならば、最後までその努力をしてまいらなければならないと思っております。もちろん、基本法の案はすでに閣議の決定を見たということは私どもも承知をいたしております。しかし、それが国会の審議に付されるまでの間にはまだ時間がございます。まだ努力の余地はあるんじゃないかと思っております。また、審議の過程におきましても、まだまだ努力の余地はあろうと思っております。私どもの意見を、これはいいというふうにお考えになりますならば、場合によっては修正に応じていただく、こういうような考え方が出てきても決しておかしくはないのじゃないか、かように考えるわけでございます。したがって、せっかくつくりますこの基本法がほんとうに国民の期待に沿うようなものになっていく、またお互いにそうするように最後まで努力を払ってまいりたいと考えます。
また、これは私のほうが答弁みたいなかっこうになりましたが、幹事会を置くというお話もございますが、しかし、これは通常政府の中でいろいろ運営されておる事務次官会議というのと結局は同じことでございます。そういうのにただ名前をつけたというにすぎないんじゃないかと私どもは考えます。こういうものをほんとうに効果のあるもの、ほんとうに総合的な企画のできるもの、しかもその企画をほんとうに推進できるものとしていただくことが、公害対策を推進するための組織として最も大切なことじゃないか、そのように考えるわけでございます。その点につきましては、おそらく今後厚生省が庶務的な仕事をやっていかれる予定である。こういうふうに承っておりますが、厚生大臣としてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/182
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183・坊秀男
○坊国務大臣 だんだん御意見を承ったのでございますが、つまりこの公害の発生源というものが、あるいは産業であり、あるいは交通であり、その他もたくさんありましょうけれども、そういったようなものから公害が発生してくるということでございまして、さような意味におきまして、公害を発生するそういう一番の根源を所管しておる各省が分かれておるというようなことで、公害だけ切り離してしまって一つの機関をつくっていくということは、発生源と公害とは、そこから発生するのでございますから、そこでこれを切り離して特別のものをつくるということも、一つの考えだとは私は思いますけれども、しかし、その発生源を所管しておるところの各省の責任者が集まりまして、そして公害対策会議というものをつくりまして、その会議においていろいろ検討をする。そしてこれを最も行政の長であるところの総理大臣が会議の長として司会し、これを運営していくということが、現段階におきましては非常にまっとうな姿であろうと私は思っております。それから、これに対する対策ということになりましても、たとえば厚生省が所管しておりますことは大体において被害者的な立場、ほかの各省、これは発生をして、表現が悪いかもしれませんけれども、加害者的な立場にあるわけで、その被害者的な立場にある厚生省と加害者的な立場にある各省のそれぞれ責任のある大臣が相談をいたしまして、これに対する対策——対策でも被害者だけの立場から対策というものは非常に立てにくい。そこで、これもまた加害者と被害者との間におけるいろいろの相談、検討ということによって対策が立てられていくというような意味におきまして、今度の公害対策会議というものは、今日の公害対策をやっていく上におきましては非常に妥当なる機関と申しますか、妥当なる仕組み、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/183
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184・折小野良一
○折小野委員 公害の発生源が違う。したがって、それぞれの発生源に伴う関係行政機構が違う。そのことがやはり公害対策をおくらしておる現実の理由じゃないかと私ども思うわけです。ただいまの大臣のお考えは、それぞれの立場において発生源まで持っておるところが十分責任を持った対策をやって、そしてその調整をはかることがいい、こういうふうにおっしゃいます。ところが現実には、そういう立場にあることが強調され過ぎておりますがために調整がつかない、したがって対策がおくれている、あるいは行なわれない、こういうふうになっておるんじゃないかということを懸念するわけであります。もちろん、機構その他を運営していきますのは人でもございます。ですから、これは機構ばかりがすべてをきめるわけじゃないと、私どもそう思っております。したがって、十分にその間の連絡がとれ、十分にお互いの調整ができますならば、それはおっしゃるようなことになろうかと思いますが、そうするためには、やはりとりあえず組織の面からそれにふさわしい、また現在それを阻害しておるような面を取り除いてやっていくということが一番いい方法じゃなかろうか、近い方法じゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。御検討願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/184
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185・坊秀男
○坊国務大臣 ちょっと私の申し上げましたことが舌足らずのために誤解を招いたか、あるいは私が聞き間違えたのかもしれませんが、私は、公害の発生源がそれぞれ対策を立てればいいではないかとは申し上げたのではないのでございまして、公害発生源と、被害者的な立場にある厚生省と、それぞれ発生源がたくさんございますが、そういったような立場のものの責任者が会議体をつくりまして、そこでお互いに相談をして、そしてその発生源を突きとめ、かつまたこれに対する対策を立てていく。この会議体が基本的なそういったような対策を考えていく。それを会議の長として総理大臣がやっておるので、そこでこの姿がいまの公害対策をやっていく上におきましては妥当な姿ではないかと考えておるということを申し上げたように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/185
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186・折小野良一
○折小野委員 考え方としましては、確かにおっしゃる考え方も一つの考え方であろうと思っております。しかしながら、現実にはその対策が進まない。また現実には、その被害者を代表していただきます厚生省が加害者を代表するその他の省庁から押され気味である、こういうふうに私どもの目に映るわけであります。したがって、そういう点をなくしていくためには、少なくも行政機構の一元化をはかることが必要じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。この点につきまして、は今後の問題として、またどのような形になったにいたしましても、運営の問題として十分その実効をあげていただくように御処理をお願いいたしたいと思っております。時間がなくなりましたので、あとは法案の出ましたときに申し上げることにいたしまして、一つだけ申し上げておきたいと思います。
先ほど環境衛生局長さんのお話の中にも公害の確認ということがございました。確認あるいは認定ということは非常に大切なことだと思うのでございますが、現在出ておりますこの基本法の試案要綱その他のものを見ましても、はたしてこれを認定するのはどこか、だれかということに対する規定なり考え方というものが全然ないように考えるわけでございます。しかしながら、いわゆる被害者という立場になってまいりますと、直ちに何とかしてもらいたい、そうした場合にかけ込む先がないというのが現実の姿でございます。そうした場合に、まずそれが公害であるかどうか、あるいはどの程度のものであるか、あるいはそれに対してどういうような対策を講ずべきであるか、そういう基礎になる公害を認定するその責任者、こういうものを基本法の中においてはっきりうたっておくということは、すべての対策を進める上に最も大切なことではないか、かように考えます。この公害の認定者についてどういうふうにお考えになっておりますか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/186
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187・舘林宣夫
○舘林政府委員 お説のとおり公害を認定すること——まず公害があらわれるあらわれ方は二種類ございまして、一つは住民の苦情の形でそれが表に出てくる。その場合に、お尋ねのようにその苦情を受けつけるところ、そしてその苦情に基づいて実態の調査をするところが必要になってまいります。それと同時に、住民が知らない間に公害の進んでおることもございますので、苦情がなくても常時監視をしておりまして、もう実際上はあぶない状態になっておるかどうかということを調べておるところが必要であります。これらの公害の監視に当たる機構につきましては、今回の試案要綱にもございますし、その趣旨を取り入れた基本法ができる予定でございます。問題は、お尋ねの苦情処理を受けつける機構でございますが、これにつきましては、やはり要綱並びに基本法の実際の文章の中にも取り入れる予定でございまして、今後それらの具体的な整備が行なわれる、かようなことになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/187
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188・折小野良一
○折小野委員 監視あるいは調査機構というものを整える、またその機能を充実させる、こういうことは非常に大切なことでございます。しかしながら、これの対策を適切にかつ効果的にやっていくためには、何としても一定の権限を持った認定者というものが必要ではないか、ただ単に監視してこういう結果が出た、調査した結果こういう結果が出た、それだけでこれを認定者と見ていいのかどうか、その点に問題があるのではなかろうかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/188
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189・舘林宣夫
○舘林政府委員 このことは、実際の処理にあたりましてはかなり専門的な知識を必要とする。行政的な認定というよりは、むしろ第一次的には科学的な調査が必要であって、判定もでき得る限り科学的な判定を行なう必要があるわけでございます。その意味合いで、これらの専門の仕事に当たる専門家をこれから養成していかなければならないということで、そのような規定も設けられることになっておるわけでございまして、今日まで必ずしもそれらの専門技術者が十分ではございませんし、また体系も必ずしもすっきりしたものがあるというわけではございませんので、今後の早急に解決すべき課題となっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/189
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190・折小野良一
○折小野委員 認定ということの中には、ただいまおっしゃいましたような技術的な問題、そういうものが前提としてあるわけでございますが、認定するということは、やはり行政上の責任の所在ということだと思います。それはやはり明らかに基本法にきめておくということが必要であろうと思っております。その認定のためのいろいろな資料の収集その他につきましては、これはもうただいまおっしゃるようなことで、その充実をしていかなければなりませんが、認定の行政上の責任の所在、これを明らかにしておく必要があるのではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/190
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191・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねの件は、おそらく今日原子力基本法において設けられておるような機構を、やはり公害に対しても必要ではないかという御趣旨でおっしゃっておられるかと思いますが、これらの機構は、今回の予想せられる法案の中でも救済制度等この法律の施行を円滑にするための機構は、今後検討というか整備するというようなことになっております。具体的にお説のような線に沿ってそのような組織を整備する必要がある、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/191
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192・折小野良一
○折小野委員 一応これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/192
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193・八木一男
○八木委員長 岡本富夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/193
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194・岡本富夫
○岡本(富)委員 最初に厚生大臣に一言お伺いいたします。
このたび閣議決定されたといわれておる基本法におきまして、その中で、政府は、大気の汚染、水質の汚濁及び騒音にかかる環境上の条件について、それぞれの健康を保護し、生活環境を保全する基準を定めるものとする、こういうようにございます。
そこで、いま私の申し上げたいことは、近年産業公害によるところの被害は顕著で、東大の石崎達教授は、集団検診の結果、東京、横浜、こういうところに住んでおると、五十歳以上に達すると気管支症状または肺機能低下、こういうように人体の健康が非常に急激に衰弱しておる。こういうように発表しておりますけれども、ここでいろいろと調べましたところ、亜硫酸ガスで非常にやられておる、こういうように出ておりますが、この亜硫酸ガスについての基準、こういう面について、厚生大臣はおそらく閣議においてこういうものを決定するときにおいていろいろと研究なさったと思うのです。それでなかったならば架空の空論になりますから、それについて一ぺんお聞かせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/194
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195・坊秀男
○坊国務大臣 川崎等の問題につきましては多少事務的にわたりますので、環衛局長からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/195
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196・舘林宣夫
○舘林政府委員 ただいま亜硫酸ガスにつきましては排出の規制が行なわれまして、ばい煙規制法によりまして地区指定を受けました地区においては、個々の煙突から出てまいりますばい煙と申しますか、煙の中の亜硫酸ガスの濃度は一定量以上あってはならないという規定があります。もう全国多数の地域にそのような地区指定をいたして規制をいたしておりまして、ことに四日市や川崎は強度な規制をいたしております。ただお尋ねの点は、それとは別に、そのような個々の規制をしても全体的な空が必ずしもきれいになるわけではないので、これ以上きたなくしないという、中谷先生のおことばであれば亜硫酸ガスの許容限度、そういう意味合いでの環境基準というものは、公害基本法の答申を出していただきました公害審議会の中に特別部会が設けられまして、ただいまその基礎となる資料を取りまとめまして審議に入っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/196
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197・岡本富夫
○岡本(富)委員 これから審議するということでありますが、この一つの事例を見ましても、厚生大臣に申し上げたいことは、今度の総理を中心としたところの閣議でもって決定したこの基本法というものは非常に穴だらけである、しり抜けである、こういうように私は推定したわけであります。それでこういう基準につきましても、一つ一つ積み上、げた中からやはり基本法をつくっていく。現在私の申し上げたいことは、ほんとうに住民が困っておる、たくさんの人たちが困っておるこの実情においてつくっておるのかどうか。先ほどからいろいろな方の話がありましたように経済との調整、こういう面で、実際に困っておるもの、これからつくってないように感ずるわけです。だから厚生大臣、こういう基準はどうなっていますか。非常にこまかい問題で、こういう問題はやはり担当官から答えるのがあたりまえでありますけれども、一番いま最重要なこの国民の健康を保持するところの公害基本法について、全部はわからなくとも、こういう環境基準について、やはり亜硫酸ガスの問題、これはこれからどうなるのか、もっともっと私は思いやりのある考えから勉強もしてつくってもらいたい。これを強く要求するわけです。そういう考えはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/197
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198・坊秀男
○坊国務大臣 おっしゃるとおり、公害防止ということは、何といいましてもわれわれ住民の生活なり、生存なり、健康なりということを公害から守っていく、こういう趣旨のものでございますので、この基本法に基づいてつくってまいります環境基準というものはその目的に沿ったものでなければならない。われわれの生活、健康が、環境基準をつくって、その環境基準をつくりながらものさしがなお低いところにあって、その後も健康が阻害されるといったようなものであってはこれは何もならない。さような意味におきまして、りっぱな環境基準というものを作成してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/198
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199・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうなれば、いまこの亜硫酸ガスの問題について全国で一番困っておるのは、重油をたきますとどうしても亜硫酸ガスが出るのです。それではこの亜硫酸ガスの少ないそういう原油はどこからくるのか、まずその国をお聞きしたいのです。これは厚生大臣に聞いてもしかたがありませんので、科学技術庁にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/199
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200・始関伊平
○始関政府委員 これは通産省のほうからお答えを申し上げたほうがいいのだと思いますが、御指摘のように産地のいかんによりまして硫黄の含有分は相当違っております。アラビア辺から産出いたしますものは含有量が相当多い。これに反しまして北スマトラ等のものはかなり含有量が低い、こういうふうに承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/200
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201・岡本富夫
○岡本(富)委員 あなたのほうから発表しておりますところの報告の中に、硫黄の低い重油が入っております。一ぺんこれ読んでください。それで私の言わんとするところは、各国との状況があって、輸入につきましては硫黄の少ないものばかりをとるわけにいかぬと思うのです。そうすると、勢いどうしても硫黄分の多い重油の脱硫方法、脱硫しなければ先ほど厚生大臣が言ったように亜硫酸ガスの低い基準のそういう状態にはマッチしないと思うのですが、この脱硫方法についてお聞きしたいのです。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/201
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202・始関伊平
○始関政府委員 脱硫方法には、重油の中から直接脱硫いたします方法と、排ガスの中から亜硫酸を抜く方法と二つあるわけでございますが、前者につきましては、すでに千葉県下にございます出光興産の製油所、それから横浜の日石等におきまして、アメリカの技術を導入いたしまして、規模は必ずしも大きくございませんが、脱硫装置の建設に着手をいたしておりまして、一番進んでおりますのは出光の分だと思いますが、この秋ごろには完成するということに承知をいたしております。なお、私ども総合調整の立場でございますが、具体的には通産省の工業技術院のほうでおやりになっておるのであります。政府といたしましても、この直接脱硫の技術開発の問題を本年度予算で取り上げまして、三ヵ年計画で緊急に着手するということになっております。
それから排ガスから亜硫酸分を除去する方法につきましては、すでに昨年から政府がいわゆる大型プロジェクトとして取り上げまして、その研究開発を進めておる。こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/202
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203・岡本富夫
○岡本(富)委員 基本法がいよいよ提出されようというときに、実際に脱硫して油を使えるようにしなければ何もならないと思うのです。この実用化、いつから使えるかという見通しはどうなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/203
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204・始関伊平
○始関政府委員 技術的には、すでに実行可能な方法が確立しておるわけでございまして、日本で使っております重油の膨大な量につきまして全部即時というわけにはまいりませんが、本年の秋ごろから、脱硫したことによりまして硫黄の含有量の少ない重油が出回るという手はずになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/204
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205・岡本富夫
○岡本(富)委員 厚生大臣、申し上げたいのは、こういうようにまだ脱硫装置も完成していない、したがって、やはりしばらくはいままでと同じような重油を使うことになるわけです。私のほうの調べによりますと、出光のほうの完成は四十二年の九月、ことしの秋になっておりますけれども、これも全国で使われる量に比しますと非常に少ない。密集地帯で、そこでいいと思いますけれども、これ一基だけでは非常に少ないわけです。ちょっと考えますと、自動車の速度制限をしておいてメーターがない、こういうようなちぐはぐ感ずるわけです。したがって、一つ一つこういうふうに検討していきますと、非常にしり抜けになる基本法ではなかろうかと国民は心配をしているわけです。その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/205
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206・坊秀男
○坊国務大臣 今日一つ一つの公害発生の事態というもの、これを観察、観測してまいりますと、おっしゃるとおりです。私は、今日の段階におきましては、公害が発生しておるという事実は否認はできないと思います。そういった公害の発生を防止し、規制していくために今度この基本法をつくりまして、そして公害の発生源であるそういったようなところの企業者に、事業活動によって公害を発生しないようにしていく、こういう責務を負わしていく。これができることによって、さような公害からわれわれの健康を守っていきたい。今日の段階において一つ一つこれをあげてまいりますと、まだ非常にたくさんの公害の発生源というものが存在しておることは否定できないことだと思います。しかし、できるだけ御審議を願って、この法案を通していただいて、そしてこれに基づいて具体的な、あるいは法律その他の措置によって公害を防除していこうということが今度の法律の趣旨であり目的であろう。私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/206
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207・岡本富夫
○岡本(富)委員 いま私が一つ一つについて厚生大臣に聞きますと、わからぬわけです。これはどこそこの担当だ、これはどこの担当だということになって、結局はこの基本法ができても、またこの基本法をつくるについても、はっきりしたリーダーシップをとっていくところ、それがなければだめだと思うのです。たとえば脱硫装置にしましても、こんなおそくてはだめではないか。たとえば厚生省が主管ならば、厚生省がどんどんこれを推進していく。こういうようになるには、やはりどうしてもただいまのように行政がばらばらではうまくいかないと思うのです。先ほどだれかお話がありましたように、この行政につきましても、先ほど厚生大臣は、いや、これでも総理がやっているのだからだいじょうぶだ、こういう話がありましたが、厚生大臣にこの環境基準をきめるについてたった一言聞いても、これは所管庁が違うから、こういうような状態です。したがって、私の申し上げたいことは、行政の一本化がやはり必要ではなかろうか、こう思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/207
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208・坊秀男
○坊国務大臣 御指摘のとおり、公害の中にはいろいろなものがございますが、たとえば亜硫酸ガスによりましてわれわれの健康が非常にそこなわれる、これの原因は一体どういうことだ、これは脱硫装置といったようなものができていないからだ。こういうふうに私は原因を突き詰めていきまして、これを公害対策会議でどういうふうに措置していくかというようなことを迅速にきめていって、そうしてこれに対する対策を立てていく。そういうようなことを一つ一つ積み上げていくことによりまして公害を防止していくということでございます。公害対策会議はそういうようなことをやらねばなりませんから、そこで、たとえば産業の面における通産大臣も入っておれば、被害者の立場にある厚生大臣も入っておる。こういうようなことで具体的に一つ一つそこで突き詰めて対策を立てていく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/208
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209・岡本富夫
○岡本(富)委員 なるほどお聞きすると、一つ一つ取り上げて、それからやっていくのだという話でありますが、たとえばその取り上げるところの通産省は、私のほうの担当しているところの工場はたくさん亜硫酸ガスを出しているんですよ、ひとつこれを取り上げてください、こう言うわけにはいかぬでしょう。おそらく被害者のほうから、たとえば官庁でいうと厚生省のほうからそういうものが出てきて、初めて対策会議にかけられるが、そういうことになりますと、ほかのところは、通産省にしましても非常に加害者的になるから、なるべくなら引っ込めておく。こういうことになりますと、もっともっと厚生大臣はしっかりしてもらわなければいかぬと思うのです。環境基準一つでも、これはあなた方で十分検討してもらったと思うのです。そうすると、これはどうなっておるのだ、どうなっておるのだ、ほんとうに真剣に今度の基本法について検討なさっておるならば、もうこんなことは、あなたは一つ一つわかっておる。それでなかったら、私は対策会議といってもたいしたことはないと思う。先ほど申しましたように、加害者のほうは、なるべくならば何も言わずに知らぬ顔をしております。そうすると厚生大臣、もっとしっかりしてもらわなければならぬと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/209
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210・坊秀男
○坊国務大臣 厚生大臣がしっかりしていないとだめじゃないかというおことばでございますが、まさにそのとおりだと思います。私は、これからも、今日までも、この基本法をつくるに当たりまして、皆さんからごらんになれば、たいへん後退じゃないか、こういうおことばでございますけれども、いまの状態におきましては、この程度でもって、理想的だとか十分だとかいうことは考えてはおりませんが、いまの事態においては、これでもって私は満足している。今後この法律をお通し願いまして、これを運営していくにあたっていろいろ具体的な措置、あるいは法律もつくってまいりましょうし、あるいはいろいろな行政措置も行なってまいりましょうが、それに対して無力ではなはだ申しわけございませんけれども、全力をあげたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/210
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211・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうすると、厚生大臣のお考えでは、現在はこれしかしかたがない、将来はしかし行政の一本化もしていこう、こういうビジョンを持っていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/211
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212・坊秀男
○坊国務大臣 もちろんいま作成いたしましたこの法律案というものは、これは理想的な完ぺき無欠のものだ、かように私は考えておりません。いまの段階においてはこの程度でもって、これは所管大臣としてはこれでもってまあ満足すべきものだという考えでありますけれども、未来永遠にこれでもってもう完ぺきなものである、さようなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/212
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213・岡本富夫
○岡本(富)委員 未来永遠といいますと何千年にもなりますけれども、ことばじりはちょっとおかしな話ですが……。この件は、いよいよ審議されるようになりましたら、私ども公明党としましても、こういうような審議でなくして、独自の立場でもっと審議させてもらいたい、こう思います。
次に、あとだれもおりませんからゆっくりやってもいいわけですけれども、皆さんに迷惑がかかりますから……。法務大臣をお願いしてあったんですが、おいでになっておりませんので……。先ほどからいろいろ話がありました阿賀野川の中毒事件につきまして、こういう公害問題でたくさんの人がなくなった、あるいは病気になっておる。この阿賀野川の問題について司法当局が全然関与しない理由は何でしょうか。これは堀内さんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/213
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214・堀内恒雄
○堀内政府委員 ただいまの御質問でございますか、法務省か刑事事件として取り上げないことはどうかという御趣旨のようですが、いかがでしょうか。——そうでございますとすれば、私、その所管の局でございませんので、ちょっとお答えはできませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/214
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215・岡本富夫
○岡本(富)委員 あなたの所管は何ですか。——人権擁護局ですね。じゃ、この事件で、憲法で保障されたところの基本的人権、それからこうして生存権をいまおかされておる、それに対する局長のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/215
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216・堀内恒雄
○堀内政府委員 私ども人権擁護の立場といたしまして、昭和四十年の六月十三日の各種の新聞でただいま御質問の事件を承知いたしまして、人権の立場からゆゆしい問題だと考えておるわけであります。ただこの事件につきましては、厚生省あるいは新潟県がすでに乗り出しておりまして調査などをいたされておりますので、私どもとしましては、被害者から申告もありませんので、それらの関係省と連絡をとりながら情報を集めておる、こういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/216
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217・岡本富夫
○岡本(富)委員 申告がなければだめなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/217
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218・堀内恒雄
○堀内政府委員 私どもの立場は、申告がありませんでも活動いたすのでありますが、そこでただいま申しましたように情報を集めておる、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/218
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219・岡本富夫
○岡本(富)委員 この事件が発生いたしましてから足かけ三年になります。二年有余になります。もしもほかの事件で——たとえばこの前東京駅の新幹線でダイナマイトの事件があった。申告がなくてもやはり行くと思うんですね。直ちに活動しますね。しかしながら、この阿賀野川の問題だけは調査中ということは、いつまで調査中なんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/219
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220・堀内恒雄
○堀内政府委員 すでに新潟県あるいは厚生省のほうが調査いたしておりますので、これらの省と連絡をとりながら私ども情報を集める、そういうことをいたしておるわけでありますが、直接に調査をいたすだけの能力という問題が若干ございまして、私どもとしてできるだけのことをするということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/220
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221・岡本富夫
○岡本(富)委員 じゃ、大体いままでの調査した結果としましては、工場排水というように一応確定しておるようです。もしもこの工場排水というようにきちんと確定した場合の司法的処置はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/221
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222・堀内恒雄
○堀内政府委員 私ども、いま申し上げましたように直接調査しておりませんので、因果関係などの問題を私どもとしてはまだ結論を出しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/222
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223・岡本富夫
○岡本(富)委員 確定した場合の司法的処置、あるいはいつごろ調査するのでしょうか。もうたくさんの人たちが、学者も研究し、また科学技術庁ですか、こっちのほうでは大体結論が出ておるように聞いておりますけれども、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/223
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224・堀内恒雄
○堀内政府委員 まだ厚生省のほうでも結論を出されておらないのじゃないかと思いますが、厚生省などで結論を出されましたならば、私どもなお検討さしていただきます。
〔委員長退席、島本委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/224
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225・岡本富夫
○岡本(富)委員 厚生大臣どうですか、こっちは結論出てないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/225
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226・坊秀男
○坊国務大臣 厚生省におきましては、事件発生以来、科学技術庁の予算によりまして、この事件の真相を追及いたしますために調査班を設けまして、調査三班ございますが、その三班からそれぞれの答申をいただいております。厚生省としては、この答申を現在食品衛生調査会にかけまして、そしてその結論を得まして、厚生省からこれを科学技術庁へ提出いたしまして、そして科学技術庁で最後の決定をする。政府の意見としての決定はその段階において行なわれる。こういうことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/226
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227・岡本富夫
○岡本(富)委員 実際に現地の状態を私はこの前の予算委員会で、行ってまいりましてお話しましたのですが、悲惨なものです。五名死んでおりますし、それから二十何名はたいへんな病気です。先ほどからもその点については話がありましたけれども、非常に手ぬるいやり方じゃないかと思うのですが、もう少し早く、また一日も早く現地の人たちを、あの住民の人たちを安心させてあげる、それでなければならないと思います。このような事件が前に熊本県の水俣でありまして、またこのたびも発生したわけです。こういう発生原因者の無過失責任について、これは法律に明記しなければならぬと私は思うのですが、司法当局はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/227
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228・味村治
○味村説明員 御質問の阿賀野川事件については、まだ調査中でありまして、原因等が確定したという段階にはなっていないと存じます。この事件を契機といたしまして無過失責任を規定すべきかどうかということは、御指摘のように非常に問題のあるところであろうかと思います。何ぶんにもいまの民法は過失責任主義を基調としているわけでございますが、はたして阿賀野川事件あるいは水俣事件等におきまして、無過失責任主義を採用しなければ原因者の責任を追及できないものであるかどうか、非常にここら辺は検討を要する問題もあろうかと思います。最近の動きといたしましては、危険な事業を行なう企業に対しては無過失責任主義をとるべきであるという意見も相当有力でございますので、そういう点は今後の検討課題であろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/228
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229・岡本富夫
○岡本(富)委員 スウェーデンでは水の裁判所を設けて、企業の監視あるいは取り締まりをやって、企業の認可制あるいはまた被害者の保護、紛争の処理、また被害の認定、補償等を実施しているけれども、日本でも公害裁判所を設定すべき段階に来たのではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/229
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230・味村治
○味村説明員 実は現在公害に関する裁判例というのがほかの不法行為の事件に比べまして非常に少ないわけでございます。したがいまして、現在のところで公害のために特別の裁判所を設置すべきかどうかということは、まだ一般的には議論にはなっていないように存ずるわけでございまして、まあ私の単なる私見でございますけれども、現在の裁判所の能力でもって公害に関する事件を処理することも可能ではなかろうかというように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/230
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231・岡本富夫
○岡本(富)委員 これはまた大臣にお聞きしたいと思います。法務省にはいろいろとまた検討しておいてもらいたいと思います。
最近自動車の排ガスが非常に多くなりまして、そして公害がたくさん起こっておる。この事例につきましてはきょうは申し上げませんけれども、先般私が当委員会におきまして尼崎の立花駅の付近の踏切の問題を取り上げまして、運輸政務次官に対して約束したことがあります。なぜかならば、あそこにたくさんの自動車が停滞します。そしてそこから排ガスをたくさん出すのです。したがって、商店街がありますが、その中にたくさんの排ガスが入ってきて、お客さんがだれも来ない。やかましゅう言っておるわけですが、その踏切問題について、計画をこの次に発表します、こういうようなことでございましたが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/231
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232・金丸信
○金丸政府委員 先般の委員会におきまして御質問があったわけでありますが、ちょうど私も月曜日に神戸の百年祭の祝賀式がありましたから向こうへ参りまして、その状況も聞きました。まさに先生が御指摘なさっておるような状況のようであります。この問題につきまして国鉄あるいは運輸省の鉄監局なりにもいろいろ聞いたわけでありますが、その結論といたしましては、道路管理者側の事情がありましてこれまで延びておるわけでありますが、国鉄といたしましても、できるだけこれを早くやりたい、こういう考えでおるわけでありますが、なお運輸省といたしましても、速急にこの問題を道路管理者側と国鉄と協議するように促進いたしたいという考えで、国鉄とも先般話し合いをいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/232
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233・岡本富夫
○岡本(富)委員 早急にやりたいと話し合っただけでは住民は納得いたしません。なおおそろしいことは、この踏切はいままで手動でやっておりまして、そのときは大体信号が鳴ってから一・八キロの距離でもって列車が来るわけです。そうすると大体四十秒くらいで来るわけです。現在、二月の二十四日では一・三キロで特急が来るわけです。そうすると二十秒で入ってくる。その踏切でもしも車がえんこしたら一発で事故が起こるわけです。そういうような、最近運輸省でも非常に問題にしておりますところの私鉄のあの踏切の事故、こういう面になりますと、相当な事故が起こるのではないか、こういうように思われるわけです。ですから、計画をひとつ出していただきたい。そして一日も早くやっていただきたい、こう思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/233
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234・金丸信
○金丸政府委員 この問題につきましては、前には人によりましてあすこの踏切を整理いたしておったわけでありますが、それを機械化してまいりまして、そのために非常に時間が長くなる。こういう問題点もあるわけでありますが、しかし、保安上、絶対人命というものが一番尊重されなければならないことは当然のことであるわけでありますので、人力でやるより機械でやることのほうが間違いがない、これは保安対策上しかるべくやるべきだ、こう考えるわけでありますが、しかし、それでは先ほど御指摘のとおりでありまして、非常にガスの公害もある、あるいは時間的にも非常にロスがある、こういう迷惑を非常にかけておるのでありまして、一日も早くこれを立体化すことが必要であろう。
この問題につきましては、国鉄から施設局長が来ておりますから、局長のほうからも詳細にお聞き願えれば非常に幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/234
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235・松本文彦
○松本説明員 ただいまの御質問についてお答えいたします。結論は、ただいま政務次官からるる御説明のあったところでありまして、そのとおりになると思います。
ただいま御質問のこの自動踏切についてでございますが、これは現在では踏切の通過換算交通量は約十万九千ということになっております。私どもといたしましても、鉄道側自衛の立場からも何とか早くこれを立体化いたしたいということでございまして、運輸省御当局の御指導もございまして、すでに三十九年には、この踏切を何とか立体交差をいたしたいということで計画を策定して提出いだしております。自来尼崎市当局と、実施を推進するべく協議を進めてまいっておるわけでございます。
先生御案内だろうと思うのでございますが、大体尼崎市に当時から問題になっておる立体交差化すべき踏切が約三ヵ所ございまして、この踏切が実は第三番目に取り上げられた。いままで、ナンバーワン、ナンバーツー、二ヵ所はもうすでにこれを立体化いたしました。この次の時点でいま御指摘の自動踏切を立体化するということにつきまして私ども尼崎市当局と協議をいたしまして、大体今年度から予算化したい。実は国鉄はすでに昨年からこれの調査に当たっておりまして、昨年度から予算をいろいろと使って調べておるのでございますが、なかなか協議が成り立ちません。いよいよもう現在の交通状態では、いたずらにただ人間の判断だけでやっておるのでは非常に危険であるということでございまして、多少無理して、沿線の皆さんに御迷惑のかかることは十分承知はしておったのではございますが、非常に通行量が多くて危険な状態になりましたので、やむを得ずあのような措置をとった次第でございます。
なお、現在立花駅を橋上駅にいたしまして、少なくとも通行する歩行者につきましては立体的にこれを扱うという工事を進めております。立体化の工事は約四億六千万円程度かかりますが、これを本年度から至急に進めたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/235
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236・岡本富夫
○岡本(富)委員 それはよろしくお願いします。
それから先般の委員会で、大阪の空港問題の騒音防止について金丸政務次官に対していろいろとお話を申し上げました。近く淡路島に新空港ができるというようなうわさがあるのですが、この問題も騒音防止についていろいろと考えていただかなければならぬ。こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/236
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237・金丸信
○金丸政府委員 その問題につきましては、一応本年度は調査をしようということで調査費を一部盛っておるわけでございますが、騒音防止という問題も法案が出るという事態でありますから、飛行場をつくる問題につきましても、そういう問題について十分調査の上これを施行しなければならない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/237
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238・岡本富夫
○岡本(富)委員 調査も必要ですけれども、お話の踏切の問題といい、いろいろな問題についてできるだけ早くお願いしたいと思います。
時間もたちましたから、これできょうは終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/238
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239・島本虎三
○島本委員長代理 次会は来たる二十四日水曜日午後一時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後六時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X00519670517/239
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