1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月十六日(金曜日)
午後三時二十六分開議
出席委員
委員長 八木 一男君
理事 天野 公義君 理事 奧野 誠亮君
理事 小山 省二君 理事 板川 正吾君
理事 島本 虎三君 理事 折小野良一君
塩川正十郎君 砂田 重民君
田村 良平君 葉梨 信行君
三原 朝雄君 加藤 万吉君
河上 民雄君 工藤 良平君
中井徳次郎君 岡本 富夫君
出席国務大臣
厚生大臣 坊 秀男君
委員外の出席者
議 員 角屋堅次郎君
厚生大臣官房審
議官 武藤き一郎君
厚生省環境衛生
局公害課長 橋本 道夫君
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本日の会議に付した案件
公害対策基本法案(内閣提出第一二八号)
公害対策基本法案(角屋堅次郎君外六名提出、
衆法第一一号)
公害の顕著な地域等における公害防止特別措置
法案(角屋堅次郎君外七名提出、衆法第一二号)
公害対策基本法案(折小野良一君外一名提出、
衆法第一六号)
公害対策基本法案(岡本富夫君外一名提出、衆
法第二四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/0
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001・八木一男
○八木委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の公害対策基本法案、角屋堅次郎君外六名提出の公害対策基本法案、角屋堅次郎君外七名提出の公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案、折小野良一君外一名提出の公害対策基本法案及び岡本富夫君外一名提出の公害対策基本法案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。小山省二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/1
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002・小山省二
○小山(省)委員 私はこれから審議を始めようといたします公害対策基本法、特に政府提案にかかる基本法につきまして若干の質疑を行ないたいと思うわけでございます。特に担当大臣につきまして二、三お尋ねを申し上げたいと思うのでございます。
その第一は、御存じのとおりいま公害はわが国の一つの大きな社会問題となっておるわけでございます。その被害の及ぼすところ、幾多の悲喜劇を生んでおるというような状況に発展をいたしておりまして、早くからこの基本法の制定を望んでおったわけでありますが、いろいろな御事情もあったろうと思いますが、たいへんおくれてようやく今回政府提案を見るに至ったわけであります。この間、いろいろと新聞紙上等で基本法のおくれている問題について事情のあった点等が報道されておったようでございますが、私ども真偽のほどがよくわからないわけで、この際、公害基本法がこのようにおくれた理由というものを明確にしていただくことが、いろいろな面において誤解を解消する一つの方法であろうと考えまして、基本法制定が今日に至った事情について大臣からひとつ御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/2
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003・坊秀男
○坊国務大臣 公害対策基本法の国会提出が非常におくれたじゃないか、こういうことでございますが、公害は何もいま卒然として起こってきたものではありません。日本の経済社会はここ数年来著しいスピードでもって発展してまいっております。それに伴いまして、工業、工場等が非常にたくさん整備されてまいったということ、また、都市に対して非常に多くの人口が流入してまいったということで、それに伴いまして公害が生じてきたのでありまして、政府といたしましては、この顕著なる公害の事実に着目いたしまして、どうしてもこれを予防し、防除し、また救済していかなければならないということを考えまして、去る四十年の十月に公害審議会に諮問をいたしたわけでございますが、その審議会から答申が去年の十月に厚生大臣あてに行なわれました。その間に相当の時間がかかっておる。それからまた、厚生省はこの答申されましたものに基づきまして厚生省の試案というものをつくったわけでございますが、いずれにいたしましても、小山委員御案内のとおり、公害というものは非常に複雑で多面的なものでございまして、この公害に関する行政省庁といったようなものを数えてみましても、十四とか十五とかというのが関係しておる。かようなことでございまして、厚生省が作成いたしました厚生省試案というものを——厚生省は被害者的な立場にあるものでございますけれども、そういうふうに数多くの行政省庁に関係があるものでございますから、これを総理府へ送りまして、総理府におきまして関係各省庁とこれの連絡協議会をつくりまして、そこで厚生省の試案をたたき台といたしまして検討いたしたのでございますが、その検討をいたしまして、各省庁からの意見もこれを戦わせ、そうしてでき上がったものが、総理府の公害対策推進連絡会議の公害対策基本法試案要綱でございます。それをつくりまして、そうしてこれを再び厚生省へ——これは閣議了解によりまして、この公害対策基本法についての所管は被害者の立場にある厚生省、関係各省非常に多いのでございますけれども、たとえば通産省、農林省あるいは建設省といった各省があるのでございますが、これは大体におきまして公害を発生するほうの側を所管しておる役所でございます。そこで、厚生省が被害者の立場におきましてあらゆる公害の普遍的な立場を持っておる。そこで厚生省がその主管をすることと相なりまして、そしてこの総理府でつくりました試案要綱を、厚生省が中心となって、関係各省と連絡をとりながら、今度御審議を願うこの法律案を作成をいたしたようなわけでございまして、各省からのいろいろな問題、多方面な多岐な問題を総合的にこれを法案化していくということに相当の時日を要しまして、御指摘のようにおくれたということでございますが、何とぞ御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/3
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004・小山省二
○小山(省)委員 いま大臣の御答弁で、審議会の答申がようやく昨年の十月ですか、なされたというような事情であるとか、あるいはたいへんこの問題が各省間にわたっていろいろ複雑多岐な関係を持っておるために、そうした調整に相当の時間を要したというような御答弁でございまして、私もそうであろうとは考えておりますが、かつて鈴木前厚生大臣の前の神田さんの時代、基本法について通産当局との間に多少の考え方の相違があって基本法がまとまらなかったというような新聞記事等もありまして、その後におきます通産関係あるいは厚生省、そういう役所問の多少なわ張り争いといいますか、いろいろそういう役所間の考え方が一致しないというところに基本法の提出がおくれたのではないかというような誤解が相当あるわけであります。今後この基本法を中心に各種の法案が整備されるわけでありますが、私はそういう誤解がないように、すっきりとした形で各省間の話し合いがついて提案されたということを明らかにする必要があると思って御質問申し上げたわけなんですが、私がただ一つ心配をしておりますことは、政府案については相当企業保護色が強いということが定評である。したがって、この基本法が提出されるまでの間に相当産業界の抵抗があったのではないか、そういう方面からいろいろな注文が出されたのではないか、こういう懸念があるわけであります。こういう点につきまして、そのような点があったかどうか、この機会にひとつその辺のいきさつを大臣から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/4
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005・坊秀男
○坊国務大臣 御質問の点でございますが、法律によらず何によらず、ものごとをきめてまいる段階におきましては、いろいろの意見がお互いに出されまして、そうしてそれらの意見をお互いに自由討論をいたしまして、そしてものごとをまとめるというのが一応の筋であろうと私は思います。もちろん、この公害基本法案をまとめるにあたりましても、その検討段階においてはいろいろの意見が出ております。しかしながら、産業方面から、もちろん意見は出ておりますけれども、その意見に動かされたといったようなことは、これは私はここではっきりと、さようなことはありません。ただ、今度の公害基本法は、国民の健康、生命というものを公害から守っていく、またそういったような公害はこれをできるだけ予防していく、こういうような理念をもって一貫いたしておるのでございまして、御意見のような、どこかから圧力がかかる、あるいは強い抵抗があって、それによって動かされたというようなことは断じてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/5
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006・小山省二
○小山(省)委員 世評またいろいろ誤り伝えられる面があるものでございますから、私は、審議に先立ってそれらのいきさつをひとつ明快にしておく必要があるというふうに考えまして御質問を申し上げたわけでございますが、大臣の力強い御答弁によって、一応われわれはさようなことが、もとよりないと承知しておりましたが、十分その辺のいきさつが了解できたわけであります。
私は、これから本論に入って、少し内容について、基本法の制定に当たったいきさつあるいはその他についてお聞きをしたいと思うのでございます。
政府案の第一条によりますと、「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、」同時に「公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もって国民の健康を保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全することを目的とする。」と述べておるわけであります。この考え方を条文の上から見ますると、一見健康の保護ということがどうも第二義的に考えられているようです。社会党提案にかかります基本法を見ましても、この点を社会党のほうは明確にうたっておるわけであります。憲法にもありますとおり、すべての国民は健康で文化的な生活を営むことを保障されておるわけです。また、国は社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上につとめなければならない。この憲法の明文を基本法の中に十分織り込んでおるわけでありますが、政府原案を見ると、何かこの点が後退したような感じが見られるわけであります。この点につきまして、関係当局でも、あるいは大臣でもけっこうでございますが、そのよってきたる精神をどこに置いているか、その辺をひとつ御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/6
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007・坊秀男
○坊国務大臣 この公害基本法の目的は、前段におきまして「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務」、公害を防止する責務があるのだということを明らかにいたしますとともに、いま御指摘になりました「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」としたところがおかしいじゃないかという御趣旨かと思います。そこでこれに対してお答えを申しますが、この法律の目的は、私は二つあろうと思うのです。と申しますことは、国民の健康を保護していくということが一つ、もう一つはわれ一われの生活環境を保全していく、この二つがあろうと思います。そこで、この国民の健康を保護するということにつきましては、何らの修飾語を使っておりません。国民の健康を保護していくということは、これはもう絶対であります。いやしくも健康にかかわるといったような公害は、何らの条件を伴わず、これはもう除去していかなければならない。こういうことをはっきりとうたっておるのであります。ところが、生活環境ということになりますと、健康を保護するだけのことは絶対にやらなければならないが、しかし、もう一歩進めましてわれわれの生活環境をよくしていこう、生命には心配はないが、われわれの生活環境なりあるいは動植物の生育といったようなことについて、もう一歩進めて公害的なものを除去していこうという場合には、これはひとつ経済の健全な発展との調和をはかっていこう。こういうことでございまして、下手な例示でございますが、例をあげてみますと、健康にかかわるものはもう絶対だ、これは間違いございません。ところが、生活環境をよくしていくということは一歩進んだことでございまして、もうどんなことがあっても生活環境というものを、たとえば東京の空気を上高地の空気にまで持っていこう、これは生活環境をよくすることでございますが、そこまでのことをやりますと、東京は大都会として成り立つことは私はできないと思う。川崎市は工業地帯として成り立っていくことができないと思う。そういったようなものは上高地の空気にまではならなくとも、せめて秩父あたりの空気にまで持っていこうということで、そうすれば東京が大都市として成り立っていく、川崎は工場地帯として成り立っていく。ここに大都市なり工場地帯と公害防除というものとの調和点が見出される。こういうようなことをきめておるのがこの「経済の健全な発展との調和」、こういう文句でもってあらわしておるのでございまして、これを野方図に経済も健康も調和せずに、どっちも健康第一だからどんなことがあっても東京を上高地にまでしていこうというのも、社会経済発展の方途ではなかろうと思います。それからまた、どこまでも生産ということを第一主義にしまして工場を野方図にやっていけば、これはとうていわれわれの健康も保つわけにはまいらない。人生の手段であるところの経済、産業というものが主客転倒してしまうというようなことから、生活環境を保全していくという前にはひとつその間の調和点を見つけ出し、そして両々円満にやっていこうというのがこの法律の趣旨であると理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/7
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008・小山省二
○小山(省)委員 政府のお考えは私もわからないわけではありませんが、しかし、この条文の上にあらわれておることば、文字をそのまま考えますと、一般国民はなかなか理解しがたい面があるのではないかという考えを私は持つわけであります。野党各派それぞれ多少ニュアンスの相違はありますが、その提案された基本法を見ますと、産業に優先して公害の防止、原因の発見、これに重点を置いておる。したがって、政府提案の「経済の健全な発展との調和を図りつつ」という文字は、何か基本法の精神が後退しておるような感じを、率直のところ国民が持つわけであります。この点、もう少し国民が一見して理解しやすいように——もちろん、産業はどのような形であってもいいと考える人はおそらくなかろうと思うのであります。日本産業の現状を十二分に考慮してやらなければなりませんが、何かそこにもの足りなさを感ずる者が多いのではないかという感じを実際私は持ちますので、法文の上の表現はいずれにしても健康優先主義というものは貫くのだ、こういうお考えをお持ちであるかどうか、この点をもう少しひとつ明確に大臣から御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/8
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009・坊秀男
○坊国務大臣 法文の上でもこれは明らかになっておりますとおり、「公害対策の総合的推進を図り、もって国民の健康を保護する」、これには経済の健全な発展との調和をはかるなどということは全然かかっておりません。これは無条件、絶対。産業との調和が多少破れようとどうしようと、これはもう健康を保護するということが第一の目的でございます。それにさらに加えまして、先ほども申し上げましたとおり、生活環境というものを保全していくためには経済との調和をはかる。これは小山委員は東京の方でございまするからよく御理解を願えると思うのでございますが、東京に隅田川がございます。隅田川は、これは非常に水が汚染せられまして、大体隅田川下流かいわいは全くくさくて、非常に悪臭の公害を放っておる。水はもちろんきたない。これも公害でしょう。だから、その公害を除去するために、両三年前でございますか、利根川の水をあそこへ流しまして、そして隅田川が、アユは住むようにはなりませんけれども、やっと悪臭だけは、そういう点についての公害はだいぶ除去され緩和されたということがございましたが、さて最近になりまして、この干ばつで、あるいは千葉や茨城や方々で田植えができない。利根川の水がなくて田植えに非常に支障を来たす。そこで田植え、これは農業でございますが、その田植えができないということに相なりますと、米ができない。そこで一時隅田川に利根川の水を放流することを停止いたしまして、田植えができるような水を利根川から千葉その他の干ばつ地帯へ流すということをやりました。そうしますと、隅田川の下流の方面が——私はこの間参りましたが、そうすると非常な悪臭がまたもとに戻ってきておるというようなわけでございます。その悪臭は確かによろしくない公害には違いありませんけれども、とにかく一時の悪臭は人間の生命にかかわるという問題ではない。そこで農業という生産が干ばつで田植えができないということになってしまって、この農業産業がやれないというような場合には——生命に関係すると、これはもう別のことでございますが、たとえ生活環境上少し悪臭が出ても、農業のほうへ水を送るというようなことが、非常に素朴的、原始的な経済の健全なる発展との調和、こういうことであろう。これは私一流のへたな例示でございますが、そういうことが、環境基準に関する限りは経済の健全なる発展との調和を持たす、こういうふうに私は御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/9
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010・小山省二
○小山(省)委員 大臣の御答弁で意のあるところは私もよくわかるのであります。しかし、その条文に出た文字そのものから判読いたしますと、「国民の健康を保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図り」ということになると、健康を保持するということと経済の発展ということは全く同じような考え方の上に立つのだということになると、経済の発展ももちろん重要でありますが、何と申しましてもやはり人間の健康ということは経済に優先すべき性格のものである。そうだとすると、「健康を保護するとともに、」というその表現のすぐあとに「経済の健全な発展との調和を図り」ということですから、「保護するとともに、」だから、どうしても経済の発展と並行しなければならぬという考え——それはもちろん経済を無視するわけじゃないけれども、少なくとも国民の健康というものは経済に優先して考えなければならない重大な問題ではなかろうかと思うのであります。したがって、往々にして政府案を検討しますとき、そういう感じが率直なところ持たれるわけであります。せっかく政府も国民の健康というものを第一義的にお考えになっておるという御答弁でございますから、私は何らかひとつその辺を国民に十分に理解させる御努力をお願いしたいというふうに考えておるわけであります。
それから一口に公害といわれますが、産業公害の場合においては、大体公害というものがどういうところに発生し、どういうところに責任があるかということが比較的判定しやすいのですが、都市公害のような場合におきましては、なかなか原因を的確に把握するということはできにくいわけですね。したがって、その責任がきわめて不明確でございますから、被害者はある程度泣き寝入りという形にならざるを得ないわけでありまして、こういう点を国家としてどう対処していくか、都市公害に対する責任の所在というものを将来どうお考えになっていくか、この点につきまして大臣のお考えをひとつお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/10
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011・坊秀男
○坊国務大臣 公害一般でございますが、産業公害も、これは原因者が責任者であるということはもうはっきりしておるのでありますけれども、しかし、たとえば工場地帯、四日市だ、あるいは川崎だというような工場地帯でもって公害が発生する。ところが、その公害を発生させておるのは、それは確かに工場の煙突であり、あるいは汚水を排出する工場であるということははっきりわかっておりますけれども、とにかく煙突が一つや二つではない、幾つも幾つもある。排水口が幾つもあるというようなことでございまして、一体この公害を発生しておる工場がどれなのか、また、この公害を発生させておる煙突が一つなのか二つなのか三つなのか五つなのか、数多くの煙突の中でどれが一番公害の発生源であるかといったようなことが、これが事実上非常につかみにくいということでございまして、頭の中では、公害地における公害を発生しておるのは工場等に違いないということがわかるのでございますが、具体的にはこれを判定することがなかなかむずかしいということが公害の性質だろうと思います。
さらにいま御指摘になりました、こういう工場地帯でなくて、都市公害は一体どうするのか、私は工場地帯以上に都市公害、これはたいへん困難な問題だと思います。と申しますことは、一例を自動車にとってみますと、あの大原町の交差点を通ってみますと、あの付近はたいへんな排気ガスによる公害を受けております。これは一体だれが原因者であるか、だれが一体この責任者であるかということを考えてみまするというと、いまの日本の自動車を製造する側におきましても、さような悪質な、有毒な、有害なガスを、これはもう絶対排出しないということにまではいかないにいたしましても、こういうような自動車がふくそうすると大原町のごとくなるという事実を頭に入れますと、私は製造業者も一つの公害を発生させる原因になっておるものだろうとも思いまするし、それからまた都市計画、あそこを立体交差にいたしますならば、これはよほど違う。その立体交差がないためにあそこに自動車が長い間とまって排気ガスを出しておる。これは先ほど申しましたが、厚生省は被害者の立場。いま申し上げましたこの自動車製造ということにつきましては、何も通産省が犯人であり、責任者だというわけではありませんが、それを所管しておるのが通産省なんです。また、大原町がなかなか立体交差にならないということは、これはあるいは建設省とか東京都というようなところが、何も犯人ではないと思いますけれども、少なくともそういうことを放置しておくということは一部の責任があるということでございましょうし、そういったような都市公害はまことに複雑なものでございまして、一体だれが責任者なのか。それからもう一つ考えなければならないことは、自動車を買っておる人間でございますね。そり自動車を走らしておる人間、つまり東京都の住民もまた公害を発生しておる。別に犯人とか何とかというわけではございませんけれども、公害を発生させる原因者であるということは否定もできない。かような意味におきまして、そういうような公害が発生してくるということにつきましては、公害基本法にもきめておりますが、つまり公害を発生する事業者、それから国及び地方団体及び住民といったようなものがすべて原因者である。その原因者が、この公害を除去していく、防止していくというためには、それぞれこれに協力をしてまいらなければならないような関係にあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/11
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012・小山省二
○小山(省)委員 確かに都市公害というものは、その責任を追及する面になりますと、たいへん私もむずかしい問題であろうと思うのであります。いま大臣が御答弁になったような形にならざるを得ないということになると思います。さような点からおそらく提案をされたろうと思うのでありますが、社会党提案にかかる基本法におきましては、この企業の無過失責任というものを強く追及するような形で提案がなされておるわけです。公害によっていろいろ住民が被害を受け、この責任をあるいは損害賠償として要求しようとした場合、いま言ったように責任の所在がきわめて不明確でありますから、おそらくなかなかこの損害賠償なり責任の追及ということは至難な問題になる。そうなりますと、当然これは何らか法に訴えて解決をしなければならぬということになるわけであります。そうなりますと、これは民事訴訟法その他からいきましても当然挙証責任、証拠をあげなければならないということになるわけです。こういう点になりますと、どうしても責任の所在が不明確でありますから、証拠をあげるということが事実上困難である。そこでどうしても被害者は泣き寝入りという形におちいりやすい。こういう点が基本法の中で明らかにされませんと、せっかくこの法律はできたが、実際の運用面になって一体だれがこの責任をしょってくれるのか、こういう疑問が必ず起こってくると思う。したがって、企業が無過失責任を追及されなければならぬような今日の世相を考えますと、私は政府提案のこの基本法の中にも、もう少し企業に対する責任なり義務なりというものが明確に規定をされていいのではなかろうかというような感じを持つわけであります。この点につきまして、ひとつお考え方をもう一度明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/12
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013・坊秀男
○坊国務大臣 企業責任を明確にするために無過失責任主義をとったらどうか、こういうことでございますが、先ほども申し上げましたとおり、御審議を願っております基本法は、これは公害全般についての公約数と申しますか、普遍的な政府の方針、態度、基本方針を策定するのが今度のこの基本法の目的でございます。そこでこの基本法は、何と申しますか、概括的、基本的なことをきめておる。あらゆる公害に対しまして基本法を適用していく、こういうような趣旨でこの基本法ができ上がっておるのでございまして、その基本法におきまして無過失責任主義を掲げますと、完全なる基本法でございまするから、あらゆるものに対しての無過失責任、こういうことにならざるを得ない。ところが、先ほども申し上げましたとおり、自動車を製造しておるのが公害を起こしておるからといって、別に自動車を製造するときには、自動車を動かして大原町に公害を起こそう、そういったような意思は毛頭ないと思います。そういうようなことで、この公害基本法において無過失責任主義をとるということに相なりますと、立法上その他の技術上きわめて困難な場合も予想せられる、こういうことで基本法におきまして無過失責任主義をとらなかったわけでございます。しかし、今日無過失責任主義がとられておる法律も、たとえば鉱業法だとか、あるいは原子力もそうでございましたか、そういったようなものもございます。そこで、そういったようなものについては無過失責任主義がとられておりますが、この基本法に基づきまして今後そういったような具体的な措置が——この基本法だけではとうてい公害の防止ということについては——むろんこの基本法でもやれる部分もたくさんございますけれども、この法案に基づく具体的な立法をしていかなければならない。そういったような具体的事項に関しての立法をやっていく場合には、私は無過失責任と申しますか、これは重要なる課題として研究し、検討していかなければならない問題だと思っておりますので、基本法におきましては無過失責任主義はとらなかった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/13
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014・小山省二
○小山(省)委員 政府の意のあるところは大臣の御答弁でわれわれもある程度了解ができるわけでありますが、各党から提案をされております基本法全体について見ますと、たいへん許容限度がきついわけであります。言うならば、経済の健全な発展とはある意味においてはそう関係を持たせない、そうして農林水産資源なども絶対的に保護すべきものであるという考え方が一貫して基本法の上にあらわれておる。私、この考え方にも若干問題があると思うのです。少し一方的な感があるように思うのでありますが、しかし、技術開発とにらみ合わせて常に一定限度の責任を企業家に負わせる、これは私はどうしても必要な事項だろうと思うのであります。責任のないところに向上はあり得ない。責任を課することによって技術開発も行なわれるでありましょうし、公害防止にも大きく役立つ面が出てくるというふうに考える。したがって、企業に対する一定限の責任を課するという、そういうお考えはおありでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/14
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015・坊秀男
○坊国務大臣 産業公害が発生する場合、その原因者は、そこで企業活動をしておるところの企業者である場合が非常に多いわけです。おそらくそういったような場合、十中八、九まで企業から公害が発生しておるのだ、かように思います。さような意味におきまして、その産業活動から公害が発生するのでありますから、これは企業が第一義的にその責任者であるということをはっきりさせなければならない。そういうようなことでございますので、いま企業に責任を持たしたらどうか、こういう御質問でございますが、当然そういった場合が多いのでございますから、企業に第一義的の責任をとらすということを、この法律でもきめておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/15
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016・小山省二
○小山(省)委員 今回の政府提案を見ますと、全国的な公害防止に対する計画というものが義務づけられていないわけです。野党各派の提案には、そういうところにも何か新しい一つの特色を見せておる。そういう全国的な計画をつくる必要がないのか、あるいはつくることが困難であるというふうなお考えであるのか、何ゆえこういう計画を法の中から取り除いておるのか、その辺につきまして、これは専門的ですから担当者でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/16
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017・武藤き一郎
○武藤説明員 ただいまの御質問は、公害防止計画が全国的な視野でなされる必要があると思うけれども、そういう点についての条文が欠けているのではないか、こういう御質問だと思います。全国的な視野におきます公害防止対策としましては、第二章の第一節に「環境基準」というものを設けまして、環境基準を維持するためにあらゆる総合的な対策を立てるということがうたってありますけれども、この点が御質問の点ではないかと思います。それから第四節に「公害防止計画の作成」というものがありまして、公害が非常に著しい地域、それから将来公害が著しくなるおそれがある地域、こういう二つの地域につきまして公害防止計画というものを立てるようになっておりますけれども、御承知のように、公害というものは非常に地域的な問題でございます。また、その地域的な公害につきましても、いろいろ原因がその地域、地域によって異なる点もあるわけでございます。したがいまして、公害対策といたしましては、やはり地域的な計画というものを重視しまして、そこに必要な施策を集中するということが非常に重要な問題であろうと思います。したがいまして、特定の地域における公害の防止ということについて、この基本法でうたっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/17
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018・小山省二
○小山(省)委員 その四節に掲げております公害の著しい地域あるいは将来著しくなるおそれのある地域については防止計画を立てなければならぬということでありますが、その防止計画を立てれば——最近のように急激に公害を引き起こす産業が拡大発展をしておりますとき、その公害を引き起こすおそれのある地域に防止計画を立てられると、当然産業はその区域以外にまた新しい発展地を求めるということになるおそれがあるわけです。したがって、あらかじめ全国的に総合した計画を立てておきませんと、企業はその防止計画から常にはずれる、またのがれるためのいろいろな考え方を起こすおそれがある。したがって、公害に対する問題があとを断たないというようなおそれがあるやにわれわれは想像するわけであります。したがって、やはり全体的な計画の上に立ってこの防止計画というものを立てませんと、結果においてはあまり効果がないのではないかという懸念があるわけです。こういう点についてはどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/18
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019・橋本道夫
○橋本説明員 小山先生が御指摘になりました全国的な公害防止計画をつくることが必要かどうかということは、この法案の作成の過程においても非常に真剣に討議されたところでございます。この法案の中でどういうぐあいにそれが扱われているかということを申し上げますと、まず第一の問題は、第三条の「事業者の責務」といいますものは、これは全国どこであっても、事業者はその事業活動による公害防止をするために必要な措置を講ずるという責務を課せられたわけであります。現在までのところにおきましては、そのようにどこにあっても公害防止に必要な措置を講じなければならないという規制のかかった法律はございません。ばい煙でよごさないように、水でよごさないようにというような全く理念的な規定だけでございますが、この事業活動による公害防止に必要な措置というものは、きわめて広範に読めるものだというように考えております。
それから第二の点でございますが、「国の責務」と「地方公共団体の責務」ということになっておりまして、国の責務につきましては、第二節にございますように、種々の排出の規制、土地利用及び施設の設置に関する規制、公害防止に関する施設の整備等の推進というのがございます。これは御指摘のように、確かに規制のかかる面につきましては、少なくとも現行の規制の体系では、規制地域にしか規制がかからないという形になります。ただ、そういう点に対しましては、第五条の「地方公共団体の責務」及び第十七条の「地方公共団体の施策」というものによりまして、地方公共団体は、法令に反しない限りにおいて、国の施策に準じて公害防止の施策をやれということになっておりまして、条例で制定してやるということも当然あり得るわけでございます。そういう点で、公害の問題につきましては非常に地域的なカラーがある問題でございますし、この「地方公共団体の施策」のところにありますように、当該地域の自然的、社会的条件に応じた措置というような配慮の方向がやはり画一的な条件よりもまず必要なのではないかというようなことが、全体の計画の公害防止についての考え方としては論議の最終にまとめられてこのような形になりました。ただ、そのようなことだけでは非常に希薄でございまして、やはり現在の段階では、地域的に、重点的に、総合的に施策を講ずることはどうしてもしなければならない。そういう点におきましては、何か基本法でそれを打ち出す必要があろうというようなことでございまして、それに対しては最も機能的、実際的に応ずる形をやるには、十八条にございますような「特定地域における公害の防止」、このような計画を立てまして、第一項第一号にあるような、現に公害が著しいもの、第二号にございますような、これから拡大していくもの、この二つを重点的に取り上げて、まず徹底的にやっていこうということがこの公害対策基本法の趣旨になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、全国的な問題につきましては規定しておるわけではございませんが、重点的なものを前に打ち出すというような形でこの法律の構成はできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/19
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020・小山省二
○小山(省)委員 社会党の提案になりましたこの基本法の提案理由の中に、都市公害について外国との比例が述べられておるわけであります。たいへん何か日本は公害の面で外国よりも降下ばいじん量が多いということが指摘されておるわけであります。現在の日本のおかれておる実情、そういうものを簡単でけっこうですから、そのような状況にあるのかどうか、この辺ちょっと御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/20
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021・橋本道夫
○橋本説明員 公害につきましての外国の例との比較でございますが、まず非常によくとられます降下ばいじんということで申し上げますと、現在の東京都の降下ばいじんの汚染の状況というのは、ニューヨークとほぼ同じような状態にあるわけでございます。平均いたしまして二十数トンというところでございます。また、この数字は西ドイツのルールの工業地帯の都市群がやや東京よりもひどいのではないかというようなことろでございます。一方大阪等におきましては、現在は東京よりもやや下がっておりまして、大きな都市にしては比較的低いということでございますが、ロンドンにおきましては無煙炭のほうにかえてきておりますし、非常にダストが減ってきておるという事態がございまして、社会党の方の数字にございましたように、ロンドンの降下ばいじんと東京、大阪を比べた場合には、ロンドンのほうがかなりよいということは事実でございます。
それから亜硫酸ガスのほうにおきましては、現在東京の亜硫酸ガスの汚染は確かに局地的には非常に高いところがございます。ただ、非常に高いとはいえ、現在ロンドン、ニューヨークが経験しております数字に比べますと、まだかなり下であるということ、これも事実でございまして、私ども、全体平均的に大ざっぱに申しますなれば、東京全体の汚染というのはニューヨークに比べまして、行政的な立場でいえば大体二分の一から三分の一というところでございます。ロンドンに比べますと大体七割ないし八割というところでございます。四日市等におきましての濃度につましては、これは確かに非常に高いものがございます。そういう点で、局地的には四日市の局地、大阪の西淀の局地、川崎の局地におきましては、世界的には非常に高い汚染の状態だということは、これは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/21
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022・小山省二
○小山(省)委員 大体日本の置かれておる現状も政府の答弁でややわかるわけでありますが、そこで私は、いろいろまた被害の救済という面がたいへん重要視されてくると思うのであります。政府の案でいきますと、被害の救済というものを、司法制度の関係だの、あるいは関係者の権利保護の面から将来十分検討をしなければならないという形において一応保留をされておるわけでありますが、各党から出されました案を見ますと、これの対策委員会のような機関を置いて、この機関に権限をゆだねる、損害賠償の裁定でありますとか、あるいは差しとめ命令の行使であるとか、こういう権限をゆだねて、このような問題に対処しようという考え方を明らかにしておるわけであります。当然公害問題に関連してこういう問題は必ず起こる問題でございますので、私はあらかじめ基本法をつくるときにこれらに対する政府の考え方というものを法の中で明らかにする必要があるのではないかという考えを持っておるのですが、この点政府はどのようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/22
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023・坊秀男
○坊国務大臣 御指摘のとおり、公害が生じてきた、この被害に対する救済ということはどうしてもやらなければならないというので、本法におきましても、第二十条におきまして、「政府は、公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るために必要な制度の整備を行なうものとする。」、こういう規定がございますが、この基本法を御審議、御決定いただきまするならば、この条項に基づきまして、いまおっしゃられた、たとえば被害者の苦情処理の機関だとか、あるいはこれに対する救済をどういうふうにしていくかといったような処理の機関といったようなものは、これは本法に伴う一つの制度として、この法案を御審議願ったならばこれを策定していかなければならない問題で、きわめて重要な問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/23
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024・小山省二
○小山(省)委員 将来そういう問題を考えてみますと、公害関係というものはたいへん各省にいろいろな仕事がまたがっておる。何とかひとつこれをすっきりした形において統一的にこの公害関係の仕事を指導、担当できるような行政機構を改善してもらいたいというふうにわれわれは考えておるわけでありますが、できればこの基本法を制定しますときを契機として、できるだけ行政間で話し合いをして、統一的にこの公害関係の行政指導が行なえるように十分政府側でひとつ考慮していただきたいというふうに考えておるわけでございますが、大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/24
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025・坊秀男
○坊国務大臣 御意見非常にごもっともなことでございまして、複雑多岐なる公害、これをいかにして防除し予防し処理していくかということにつきましては、公害行政の統一、一元化ということをはかってまいりたいと思っておりますが、それにつきまして少し世間で誤解がおありになるように思っております。と申しますることは、一つの公害に対する独立した機関と申しますか、そういったようなものをつくったらいいじゃないか、こういうふうな御意見があるわけでございますが、それにつきましては先ほども申し上げましたとおり、発生する公害の源泉というものがきわめて多岐にわたりまして、それで各省庁にわたっておる。そういったような各省庁から公害というものだけを取ってきまして、そしてそれを処理するといいましても、これは産業に伴うものであってみたり、交通に伴うものであってみたり、いろいろその背景があるわけなんです。その発生した公害だけをとってみましても、先ほど大原町のことで申し上げましたが、非常に多岐にわたっておる。そういうものでございますから、そこでそういったような公害を発生するような事項を所管しておる役所、また、厚生省のごとく被害者の立場に立つ役所、といったようなところの責任者、その行政の衝に当たっておる責任者、これが集まりまして、そしてこれに行政の最高責任者である総理大臣が長として、そこでいろいろの討議をやりましてやっていくということが、非常に異質の、産業だ、やれ交通だ、やれ何だといったようなものから生ずる公害だけをとっていって一つの機関をつくるよりも、そうしてやっていったほうが結局総合的な一元行政がやれる。こういうふうな解釈のもとに今度御案内の公害対策会議というものをつくった次第でございます。何にいたしましても、これは強力に統一的にやっていかなければならないということは申すまでもないことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/25
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026・小山省二
○小山(省)委員 まあ、いまの行政機構の中であまりむずかしい理想を御注文しても、それは確かに無理もあると思います。無理と思いますが、私はやはり、あくまで被害者の立場というものが常に大きく取り上げられ、その権利が守られなければならぬと思うのであります。むしろ企業は加害者の側でありますから、ある意味において最も救済しなければならない被害者の利益を代表する役所が、この問題について特にリーダーシップをとって法の運用に当たってもらいませんと、ややもすると法の精神がゆがめられた形において施行されるおそれがないではないわけであります。私は、そういう意味で、できるだけ一元的に公害関係の仕事は処理してもらいたいという強い希望を持っておるわけでありますが、将来ひとつ、行政機構の改革とにらみ合わして十分閣議等においてもこの点を大臣から力説して、そういう方向に日本の行政機構が向かうように御努力をお願いしたいと思うわけであります。
もう時間もたっておりますから、いずれにしてもまたゆっくり御質問を申し上げたいと思いますが、ただ最後に、悪臭が今度公害の中に包含されておるわけであります。この悪臭をどういう形において防止する基準をきめるかということです。たいへんこれはむずかしい問題だろうと思うのです。しかし、これが従来比較的放置をされております関係から、たとえばし尿の処理場をつくるにしても、あるいはごみの焼却場をつくる場合においても、関係住民から非常に反対が出まして、この施設がなかなか住民の理解を得るところにならないわけであります。地方自治体はいつもこの問題で悩んでおる。しかし、はっきり基本法の中で悪臭に対する基準というものが定められ、取り締まられるということになれば、そういう従来トラブルを起こした問題等もおのずと解決の方向に向かっていくのではなかろうかというふうに考えておるわけでありますが、この悪臭の問題につきまして、基本法の中でどういうお考えで処理されるおつもりでございますか、その辺をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/26
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027・橋本道夫
○橋本説明員 悪臭の問題は、先生から御指摘のございましたように、非常に基準のきめにくい問題でございまして、本基本法でも、環境基準のところでは悪臭をできないということで省いております。ただ、第九条の「排出等に関する規制」の第二項の中で、前項に準じて必要な措置を講ずるようになっておりますが、これは、ばい煙とか水質のように排出濃度をきめて画一的に規制をするというのはちょっと無理だというような立場に立ちまして、施設の構造であるとか、あるいは特殊な設備であるとか、操業の条件、時間とか、そういうものをきめてやっていこうということでございます。特に御指摘のございましたごみ焼き場等を例にとりますならば、炉体の中の温度を大体九百度以上の燃焼温度に上げますと、悪臭の問題というのは非常に解決されます。あるいはこれは投入するダンパーというようなところへ陰圧しますと、全部外に空気が出ない。また、拡散をはかるために煙突を高くするというようなことで、現在できております東京の最新のごみ処理場は、悪臭の問題に対しては全く心配がないということでございます。し尿処理場等の古い施設につきまして、先生の御指摘のような問題のあるものは、これはどんどん解決しなければならないというように考え、厚生省においても、公害部の中に環境整備課が入って今後努力をいたすわけでございますが、新しいし尿処理場という点においては、硫化水素等についてはスクラバーをやったり燃焼したりするというようなことによりまして、そのような措置をとられております。全体の規制はむずかしゅうございますから、清掃法、下水道法、へい獣処理場法等の個別の規制の法の中に盛り込んでやっていくということで進めていきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/27
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028・小山省二
○小山(省)委員 まだ将来公害として取り上げなければならない問題が相当残されておるように私思うのであります。しかし、実際問題として、この取り扱いは技術的にもたいへんむずかしい問題であります。いずれにしても、この基本法が定められました以上は、その精神にのっとって、それぞれできるだけこれの防止につとめなければならないわけでありまして、ひとつ基本法に関連する付属法規をつくる場合において十分さような点に注意を払われまして、国民の中からそうした公害に関する不満がさらに大きくならないよう関係当局で十分御善処願いたいと思う。
各党から出されました基本法につきましては、日をあらためてまた御質問を申し上げたいと考えております。
きょうは時間もありませんので、田村君に譲って、私これで質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/28
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029・八木一男
○八木委員長 田村良平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/29
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030・田村良平
○田村(良)委員 政府提案の公害対策基本法案につきまして、少しく御質問いたします。
私は、四十年ですか、できました公害防止事業団につきましては、実は非常に疑点を持っております。国民生活に最も重大な関心のありますこの公害が一事業団法で防止できるかということを率直に考えております。言うなれば、これはたいへん広範多岐をきわめた、しかも内容においてはまことにデリケートな困難性をたくさんかかえ込んだ公害対策について、このたびこの基本法案が提案されておるわけであります。
〔委員長退席、小山(省)委員長代理着席〕
私の率直な見解を述べながら逐次御質問をいたします。
法第一条に事業者、国、地方公共団体の責務の規定がございますが、この責務というのは一体具体的にどういう責務をお持ちになっているのか、目的の大事な点でありますので、これを率直にひとつお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/30
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031・坊秀男
○坊国務大臣 第一条の「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務」でございますが、これらのものが公害を防止する責務を持っておるということを端的に表現したのがこの責務でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/31
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032・田村良平
○田村(良)委員 責務のやりとりでなんですが、これは一番大事なところですね。日本の公害を特に対策する基本法でありますから、事業者と国と地方公共団体は公害の防止にどういう責務を持っておるか。この責務に基づいて、第二条以下どういうことをするのだということになると思うのですが、それは責務を持っておりますだけでは、どういう責務かわからない。内容についてちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/32
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033・坊秀男
○坊国務大臣 責務とはどういうことかというお話でございますが、第三条以下に、「事業者の責務」、「国の責務」、「地方公共団体の責務」、「住民の責務」と、第三条、第四条、第五条、第六条に責務を列記して規定しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/33
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034・田村良平
○田村(良)委員 そうすると、一条の責務というのは三条以下にあると、こうなりますが、法四条に、国は「基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」と、ここにまた責務が出てまいりますが、この責務の第一番であります法四条にいう基本的かつ総合的施策策定するというのは、どういう内容が策定されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/34
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035・武藤き一郎
○武藤説明員 第四条の「国の責務」の中で、「基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」、これの具体的な一つとしましては、先ほどお話ししましたように、環境基準をきめるという問題が基本的な施策でございます。第二章以下に、環境基準の策定、それから国の施策としましては排出に関します規制、土地利用及び施設の設置に関する規制、以下監視、測定等の体制の整備、科学技術の振興あるいは地域開発等についての公害防止の配慮等が基本的な施策でございます。それから総合的な施策の内容としましては、第四節の特定地域におきます公害防止計画の作成。そういうようなものが基本的かつ総合的な施策でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/35
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036・田村良平
○田村(良)委員 お伺いしましたことで、環境基準とかいろいろありますが、みな抽象的でございます。私がお尋ねしたいのは、現在起こっておる公害をいかにして絶滅するか。この法の目的達成に、基本施策として、かかる公害に対してはこのように公害の発生を絶無にする基準を定めるということではなくして、たとえば四日市では、御承知のようにぜんそくで住民に非常に迷惑をかけている。そうすると、四日市で発生しているあの工場地帯のぜんそくをなくすための公害防止は次の方法をもって、次の施策で国が責任を持って解決をはかる、こういうものがどこにあるかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/36
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037・橋本道夫
○橋本説明員 いま先生の御質問のありました点、四日市の問題も含めましてこの基本法の条項で申し上げますと、まず初めに、第二章の第一節にあります環境基準でございますが、一体四日市をどの程度までよくするのかということが現在の段階では示されておらないわけでございます。環境基準ではございませんで、ただ緊急時の措置をする問題だけがばい煙規制法にございますが、それを目的として直していくということではございません。そういうことで環境基準の中の大気の汚染に関する基準をこの法律に基づき、またこれから出てくる別の法律という形を見ますと、法形式については問題がございますが、これを含めてそこまで下げるということをやるわけでございます。その場合にどういう形でするかということでございますが、これは第八条の第三項に「公害の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。」となっておりまして、これは政策責務という規定の書き方をいたしておりますが、「総合的かつ有効適切に講ずることにより、」ということはどういうことかと申し上げますと、第二節の「国の施策」の中に、一つは排出の規制がございます。
〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕
大気につきましては、第九条一項の事業者等の遵守すべき基準ということにつきまして、現状のままで妥当であるかどうかという問題は今後起こってこようかと存じますが、そのような規制の措置を講ずるということがございます。
第十条に「土地利用及び施設の設置に関する規制」ということがございますが、現在の四日市の事態で申し上げますと、住居地帯を工場が取り囲んでおるということに問題がございまして、土地利用に関する規制が適切であるかいなかということの論議は、いずれこのあとの特定地域の公害防止計画等に乗った場合の論議の材料になるのではないかというように思っております。
次いで、第十条の後段にございますような公害の原因となる施設の設置に関する規制、これは具体的には工場立地の規制等をこの内容と考えておるわけでございますが、そのようなものにつきましては、一つは現在通産省がいろいろ努力をしておられます工業立地適正化法、これはいま政府の中で検討しておられる最中でございますし、またそのほか都市計画法や建築基準法といった問題もそれに入っておるということでございますが、これは将来の検討として現在続けられておる問題でございます。
また第十一条の「公害防止に関する施設の整備等の推進」というところで、前段の、緩衝地帯の設置等公害防止のために必要な事業でございますが、これは先生先ほどおっしゃいました公害防止事業団の事業が一番典型的なものでございます。現に四日市におきましては、四日市市が中心となりまして公害防止事業団法第十八条四号の緩衝地帯の施設をやることにきまりました。そういうことを現在進めております。それにつきまして企業は協議によって半分の費用を持つということになります。これは強制徴収ではございません。これは第二十一条の「費用負担」の条項のこの強制ではない場合で、地方公共団体と企業とで話し合いをしてきめた額を企業が持つということにいたしておるわけでございます。
また、県、市が監視、測定をいたしておりますのは第十二条に当たり、総合的な調査をいたしておりますのは第十三条の「調査の実施」に当たります。
第十四条の「科学技術の振興」に当たりますものは、脱硫のテストプラントを現在中電の火力発電所でやっておるというのがこの形になろうかと思われます。
第十五条の「知識の普及等」につきましては、まだ今後私ども非常に努力をしなければならないところだと思うのであります。
第十六条は、地域開発施策等において公害防止の配慮をするということで、現在確定された計画ではございませんが、厚生省、通産省のやった調査、建設省のやった調査を中心としまして四日市は一応のマスタープランの案を持っておりますが、そのようなものはこの十六条に掲げたような「地域開発施策等における公害防止の配慮」というべきものでございます。
第十七条に「地方公共団体の施策」とございますが、三重県におきましては、公害防止条例をきめるかきめないかということをこの公害基本法の制定に伴って検討すると申しておりますので、それは第十七条の、地方公共団体が法令に違反しない限りにおいてやるこの施策の一つであるというように思っております。
そのような計画をやるという場合に、政府の各省の問題がございますので、第四節の「特定地域における公害の防止」の第十八条一項一号の「現に公害が著しく、」云々と申しますような地域は、現在ばい煙規制法の指定地域にしておりますが、それだけでは手に合いませんので、これにつきましては各省が寄ってやるということで、十八条の一号のようなものが、現在考えられる具体的な地域の例としては四日市のようなものがあがってこようというように思っておりますが、まだ確定された計画として全面的に動いておるわけではございません。
第二十条の「公害に係る被害の救済」でございますが、これは現段階においてはまだ非常に不十分でございます。現在市が汚染地域の患者に対して行なっている医療費の自己負担分についての公費負担分といいますのは、この二十条の精神に当てはまるかと思いますが、国も一部助成いたしますが、決してこれだけではまだ満足なものとはいえないというように私どもは思っております。
第三章の費用負担の点につきましては、先ほど申し上げたような協議によって、市のやる緩衝地帯に対して国は負担をするということを、いま現在進めつつあるところでございまして、地方自治体に対する財政措置につきましては、国が補助金を出しまして、その測定、監視の施設を整備したりするというようなことをいたしておりますし、四日市の石原産業の湿式の電気集じん機等は公害防止事業団の融資によってやられたものでございますが、それは第二十三条に該当するものであろうというように思っております。
以上のようなことが個別に行なわれておりますが、政府全体としてやるということのために、次の第四章第一節の「公害対策会議」において根本的な方向を検討するということが、この公害対策基本法の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/37
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038・田村良平
○田村(良)委員 二十条の先まではまだ御質問しておりませんが、えらい答弁がされている。私の聞いておりますのは、法第四条には「基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」、だから、どういう責務の内容かといまお聞きしましたら、一例、四日市については環境基準がまだ示されておらぬ、こういうのですが、おろそうというのですが、四日市の現在の公害に対しては、少なくとも次の施設をすることによってこの公害はなくなる、その責務を国が持ってこそ法律の価値があるのですから、いまの御答弁でまだ標準を示されておりません。これからおろそうとしておる。二十条までずっと行ってしまったのですが、逐条御質問をしているのですが、具体的に現在発生して、あるいは厚生省なり各省が察知しております明らかに原因のわかっておる公害に対して、それを絶滅する法律ができないのでは、ここで基本法の質疑応答するのは全くむだな労力だ、私そう考えます。ですから、具体的に言うならば、いま大臣がちょっと一例を示された大原町の交差点、これは何べんも引き合いに出されております。あすこにおる交通巡査は昔だったら防毒面をかぶらなければいかぬですね。ですから、これは交通の取り締まりとか公害の取り締まりでなくして、ほとんど想像にあまるような車が多いということ、その車は当然排気ガスを出すのですから、排気ガスがある限り、何ぼ公害基本法ができてもだめなんですね。いま大臣は、立体交差でも早くしなければならぬ、こういうお考えです。それすら行なわれておりません。いまお話のように、責務の内容というものが法律上明確にせられて——いま申し上げますように、きわめて端的な例をあげれば、これ以上の排気ガスを排出してはならぬ、それがためには車両制限から全部起こってくると私は思うのですね。車だけはかってにつくらしておいて、排気ガスはかってに吹き出させて、そしてこれを取り締まれといっても、ちょっと無理じゃないですか。そういうことはどこにもうたわれておりませんので、せっかく公害対策基本法という法律をつくられても、御説明はまことにけっこうですが、肝心の被害者たる国民は、これができてもちっとも救われない。毎日公害は発生するわけでありますから、そういうことで先走らずに、第四条にいう国の「基本的かつ総合的な施策」とは何ぞや、その基本的、総合的施策は次の施策、その施策は即現状のこれこれの公害にこういったいわゆる禁止ないし絶滅の対策ができると、公害を防止ないし絶滅する対策が法律にうたわれぬ限り、私はただ法文の解釈の質疑応答に終わるのじゃないか、こう思いますが、第四条にいう国の「基本的かつ総合的な施策」、それの責務をもう一ぺん御説明願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/38
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039・橋本道夫
○橋本説明員 第四条に規定している国の「基本的かつ総合的な施策を策定し、」という、この施策とは何かという御指摘でございますが、これは先ほどあまりいろいろ申し上げまして恐縮でございましたが、第二章に掲げた「公害の防止に関する基本的施策」というところで、第一節の「環境基準」と第二節の「国の施策」の中に、この個々の施策としての事項が出されておるわけでございます。ただこの場合、あくまでも個々のものが出されておるわけでございまして、ある事象を解決するためにどれを優先さして、どれをどんなテンポでやっていくかという問題になりますと、これは非常に政策的にいろいろな判断を要することになりまして、このような個々の事項だけを起こしてはならないということで、それが対策会議あるいは対策審議会にかかっておりますが、いま先生の御指摘になりました基本法だけができても、いまあるものをこの条文に当てはめても意味がないではないかという点につきましては、この基本法では直接規制の力を発揮いたしませんので、その点になりますと、個別の規制法にその具体的な規制が移る、あるいはこの個別の公共事業をだれが実施するかといったような形の法律の権限を志向していくことになってくるわけでございます。その法律が一々整備されているものもあり、今後制定されていくものもございますので、そのどの法律をいかに組み合わせてどのようなテンポで進めるかという点が、この目的にございますような事項を達成するための「基本的かつ総合的な施策を策定し、」ということになるように考えております。もっと基本的なものは公害対策会議で行なわれるものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/39
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040・田村良平
○田村(良)委員 せっかくの御答弁ですが、そうすると、法第四条にいう国の基本的、総合的施策とは、つまり第二章以下に述べてあるわけだ、それが第四条にいう基本的、総合的施策、こうなりましたら、第二章の第一節、たとえば八条を読みましても、何も規制措置はないわけですね。何も基本的な施策はないですね。ただ「大気の汚染、水質の汚濁及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」望ましい基準とは次のとおりということはないわけですね。そうすると抽象的なことを、ただ公害に対する基本的な考え方が、こういうことは総合的に行なわれる必要があるであろうということを、たとえば第二章以下に述べられた。こういうことであって、私のお聞きしたいのは、これだけやかましい公害だから、法律をつくって公害を防止する以上は、排気ガスに対してはこう、四日市ぜんそくに対してはこのような施策が講ぜられる、その施策について国が責任を持って次の施設をつくるとか、そういうものが出てこないと、この基本法というものが、何か私としては、いかにもたくさんの人が集まって作業せられたことについて、大山鳴動ネズミ一匹とは言いませんが、この辺はどうでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/40
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041・武藤き一郎
○武藤説明員 御質問の御趣旨は、基本法が提案されて具体的に公害防止の実効があがるようなことにならないのか、こういうようなことだろうと思います。これにつきましては、先生これは条文をごらんになればわかると思いますけれども、この公害対策基本法はいわゆる基本法でございまして、しかも理念的なことを中心といたしておりまして、具体的に公害を防止する規制そのものは、それぞれいままでの実体法なり、あるいはその改正なり、あるいはこれから新しくつくろうとする法律によって具体的に確保される、あるいは防止されていくということかと思います。それにつきまして、そういうふうな実体法の改正なり、あるいは制定につきましては、先生の御督励のありますように、早急に緊急を要するものから実施しなければいけない、かように考えておるわけであります。もちろん、理念法ではございますけれども、たとえば環境基準とか、あるいは公害防止計画とか、あるいは対策会議とか、具体的な点も規定いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/41
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042・田村良平
○田村(良)委員 そうすると、ちょっと私おかしいのですが、いま資料としていただきました「公害対策基本法案関係資料」、この中にはばい煙規制法年度別指定地域とか、水質保全法年度別指定水域、公害防止事業団の事業進捗状況、公害関係主要法律、こう出ておりますが、三十三年とか三十九年とか四十年とか、過去につくられたそれぞれの具体的な法律でやるのだというならば、これはつくる必要はないんじゃないですか。その法律を現況に合うように一部改正すれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/42
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043・武藤き一郎
○武藤説明員 もちろん具体的な規制につきましては、各実体法によりまして整備をはかっていけばそれで足るという考え方もあると思います。ところが、今回この公害対策基本法を提出いたしましたのは、いままでいろいろの実定法があります。また、いろいろの法律以外の努力も関係者はいたしておりますけれども、御承知のように、わが国の経済が急速に発展いたしまして、公害問題が非常に各地で問題になっておりますので、こういう点につきましては、やはり個々の実定法で早急に公害に対処すると同時に、やはり公害についての対策のいろいろの基本的な方針というものを関係者が統一いたしまして、また総合的に対策を立てていくということが必要であるということが認識されましたので、今回公害対策基本法というものを策定いたしまして、公害についてのいろいろの規制が統一的にかつ総合的に行なわれていくということについての推進を果たすものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/43
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044・田村良平
○田村(良)委員 オウム返しになりますが、私にはちょっと受け取りがたいのは、ばい煙、大気の汚染、廃液あるいは水質の汚濁、騒音、それぞれを取り締まる、あるいはそれぞれの公害に対する完全な処置がなし得る法律があるとすれば、何もこんなものは要らない。抽象的な理屈を言って、あらねばならないとか、規制すべきであろうとか、地方公共団体は云々ということは要らないですね。そうすると、これはいま申し上げたように具体的な公害発生の原因を除去する施設さえできればいいわけですから、そういう点で私は納得いきませんが、時間もおそくなっておりますので、この問題は一応保留して次に移ります。
そういうことになりますと、第五条に、地方公共団体は、「自然的、社会的条件に応じた公害の防止に関する施策を策定」、またここで施策が出てまいりますが、国の場合には基本的、総合的施策をつくり、地方公共団体は自然的、社会的条件に応じた公害防止をやる。地方公共団体がやらなければならない自然的条件に応じた施策とはどういうことでしょうか、あるいは社会的条件、これは非常にむずかしいと思うのですが、どうしてこういう用語を使われて施策をするか、これをひとつ具体的に、地方公共団体は自然条件としてはこういうことをやるんだ、それは公害の絶滅にどういうように影響するか、ちょっと御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/44
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045・橋本道夫
○橋本説明員 自然的条件で何か特殊なことをやるとはどういうことかということでございますが、これは具体的に申し上げますれば、ある場所に非常にうしろに山がびょうぶのようになって、そこに発生源施設がある。そういった場合に、公害の発生源施設は同じでございましても、自然の条件の不利によって生ずる公害の状況というのは非常に違うわけでございます。そういう場合に、その地域に応じた条件の設定のしかたをしなければならない場合があるわけでございます。現在規制法をかけていないところにおきましては、この地方条例ということができるわけでございますが、地方条例では、いま申し上げましたような自然の条件が自分のところは不利だといった場合に、現行の規制法で考えておるような基準を非常に上回るような非常識な基準を課することはできないと思いますが、現行の規制法で課せられているような基準で、排出基準は同じであるが、たとえばそこは煙突が普通より高くなっておるという形で特殊な手を入れた条件をきめるというようなことがあるわけでございます。
また社会的な条件と申すことになりますと、たとえばある場所に果樹園等がございまして、その地帯は非常にそのような農業や果樹園等の問題が大きなところであるということになってまいりますと——川崎と東京とは非常に社会的に意味が違うわけでございます。そうしますと、そこの工業とそこの農業ということの関係で、ある特定の時期に特別の措置をする。現在千葉におきましては企業群と農業関係と行政が話し合いまして、ナシの花の咲く時分に特殊な対策をやるというようなことをいたしておりますが、これはある意味では自然的ではございますが、その地域の社会的な条件によってそのようなことをやっているというようなものであろうと思います。
また、ある所におきましては、非常に未発達の状態で、産業が何とかきてほしいという地域もあるわけでございますが、そこの中に、東京、大阪のまん中にやってくるときに非常にきびしく課するような条件の基準までも課さなくても、まわりで公害を起こさない程度に必要なものであればよいのではないか。このようなことがございまして、自然的、社会的条件に応じた施策ということを書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/45
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046・田村良平
○田村(良)委員 それでは御参考に伺いますが、先般茅ヶ崎で砂利採取の非常な行き過ぎといいますか、大きなプールみたいになりまして、子供が二人水死した。こういうこともありましたが、私の体験で、ずばりそのものでお伺いします。
自然的な問題で、ある山で急に採石の作業が始まったために、すぐ隣にあります小学校はとびらを締めても、全然教室などで授業できない。したがって、どうしても学校が移転をするか、作業をやめてもらうか、どっちかですね。そういう点で学校当局としては困りまして、いろいろ問題が起こったわけであります。その結果、この工事を差しとめる権利は学校にない。そうすると、ちょいちょいハッパがかかりますから石が飛んでくる、子供の通学にも危険になる。学校が校舎を移転をして騒音のないところに行けば一番安全ですが、そういうことが起こってきます。
今度は公害基本法で、ここにいわれます地方公共団体は自然的条件に応じた公害防止の施策をする、それが地方公共団体の責務となりますと、これから新しく工場誘致が行なわれて、いままで歴史的にも現在的にも何ら影響がなかった静かな場所に、いま申し上げましたような現実の問題が起こってくる。その際差しとめができたり、学校の移転を全部地方公共団体の責任で促す、そういうことまでこの法律が及ぶものですか、ちょっと御参考に聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/46
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047・橋本道夫
○橋本説明員 現在、先生のおっしゃいましたような問題は最もむずかしい問題でございまして、そういう場合に差しとめができるかということになりますと、この公害基本法ではとうていそのような差しとめはできません。また実際やる段になってまいりますと、おそらく学校とその事業者、あるいは学校と地方当局との折衝になるのではないか、あるいは民事になるかもしれませんし、そのような場合にどのような判決が出てくるかということだと思います。
それでは、司法上の処理にまかすことだけでは非常にまずいという問題がありまして、そのようなものに対してどういうぐあいに地方条例で何か設けることができるだろうかということでございますが、いまおっしゃいましたような問題、一つは騒音の問題というものがございますが、これは時間調整と、それから採石の場所の状況いかんによりますが、そのようなものによってどの程度調整できるか。しかし、谷間においては事実上非常にむずかしい問題があろうかと思います。そういう点で、そのような採石を許すか許さないかということのほうが、むしろ、そのような事業を開始さす前、採石業としてやらせる問題の前に一つあるのではないだろうかということで、私どもの所管ではございませんが、通産省、建設省サイドが採石業のほうの取り締まりについて、公害防止の観点から検討を始めたというように承っております。
また、ほこりが出るという問題が、先生のおっしゃったような場合にあろうかと思いますが、その場合には機械的な破砕工程でございますので、機械的な破砕工程から出てくる粉じんを押えるというのは、これはかなりの程度に現在では可能でございます。
もう一つは保安の問題で、上から落ちてくるということでございますが、それを公害関係の法規で押えるということは、これはなかなかできないものだというように私ども思っております。
そういう意味で、決して万能の形ではできないものでございますが、地方におきまして開発をする場合に、ある企業を持ってきた場合に学校にどういう影響が及ぶか、それとも学校をどこかに移すか、学校のほうを保護してやるということの方針を決定してやっていくのがほんとうの筋道ではないだろうかというのが、この基本法の立て方の根本でございまして、直ちに役に立つ形ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/47
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048・田村良平
○田村(良)委員 ちょっと非常に重要な問題になりますが、この法律では、当該地域の自然的条件に応じた公害防止に関する施策を策定し、これを実施する責務を有する。いまのお話を聞くと、そこまではいけないでしょう、むずかしいと思います。これじゃ学校に石が飛んでこようが、煙がどんどんこようが、学校は移転もできなければ何もできない。こういう場合、少なくとも地方公共団体が自然的条件あるいは社会的条件に応じた公害の防止に関する施策を策定し、そうして実施する責任を持つ、その公害のよって来たる原因と現実を処理する責務を持つのですから、持つのに、責任ある形ができないとなりますと、書いただけのものである。われわれしろうとが読むとそうなります。だから、そういう事態が起こってはならないが、もし起こる場合には事業認可をどうするか、認可をすれば、地方公共団体は直ちに策定した計画を実施するその責任を持たなくちゃならぬのですね。何もないというなら、これまたやっぱりわれわれ陳情して、同じように関係者走り回って、同じように陳情せねばいかぬ。教育委員会に行け、建設省に行け、通産省に行け、厚生省に行け、文部省に行け。それでは全然だめです。ですからそういうせっかくの基本法というものを、大前提をおつくりになるとすれば、私はそういうことが当然これはなされるものだと思うのですが、それは格段の責任がないということになりますと、自然的、社会的条件に応じた公害の防止の計画を何ぼ立てられても、あるいは実施の責任があると書かれても、ただいま田村良平の質問したその具体的問題についてはどうとも申し上げられませんでは、これはいかぬと思いますが、そういうことがいままで一番重大な問題であったのですね。これについてもう一ぺん御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/48
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049・坊秀男
○坊国務大臣 いまの御例示されました採石場と学校との問題でございます。これは公害対策基本法が関知しない、そんなことを考えておるわけではございませんが、一体公害というものはどういうものを公害というかと申しますと、第二条に「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる」云々、こういうふうに書いてございます。もちろんこれは学校でございますから、たいへん大ぜいの子供さんもおられましょうし、相当広範囲ということもいわれるのでございますけれども、そこで、その学校が採石をする事業によって非常に騒音だ、ほこりだ、いろんなことで困っておるということにつきまして、直ちに基本法を適用する——むろんこれは一種のそういったような人間に対していろいろ障害を与えるというようなものでございますから、どうしても除去をいたさなければなりませんが、直ちに公害基本法でいくか、あるいはそうでなしに採石法だとか特定のそういったような法もある。それから、その学校がおそらく公立の学校でございましょうが、これはその市町村とその採石をやっておる事業者というもののはっきりとした関係なんでございますが、そこで市町村とそういったような害を起こしておるところの事業者との問の話し合い、交渉といったようなことも、これもやはりやらなければならない問題だと私は思います。そういったようなことを直ちに公害基本法だけでもって処理していくというには、人体に障害を与えるということについては、何としてもこれは除去していかなければなりませんけれども、いろんな角度からこの解決というものについては考えていかなければならない問題ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/49
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050・田村良平
○田村(良)委員 それではその問題は後ほどもう一ぺん触れますので、一応その程度でおきますが、私はやはりそういった具体的公害の問題が処理されていくような方向で立法されるべきであり、そういう措置が講じられなければならないと考えます。後に出てきますのでもう一ぺんお尋ねします。
それで、ただいまこの委員会でもずいぶん論戦がありましたが、第八条にいう大気の汚染とか、水質の汚濁あるいは騒音の基準ですが、私は土佐の高知の山紫水明の郷里を持っておりますが、われわれの小学校時代には隣の川で平気で裸で泳げたわけですが、いまはほとんどそういう川はありません。大臣もしょっちゅう言われますが、たとえば隅田川に例を引かれますが、これは台所のお互いの食器類その他にカビがはえるなり、腐敗がひどかった。いまはどういう程度になっておるか知りませんが、あのときもさんざんやかましく言いましたが、なかなかこれは問題が解決しません。コイが泳ぐとか、アユが通るとかいろいろ言います。あるいは上高地の問題も出てまいりますが、みんなが一番聞いておきたいことは、一体どの程度で基準を引いているか。言うべくして非常にむずかしいのですが、われわれはこの問題について、抽象的なこの基準で、これからどの程度にしからば河川あるいはその他の問題が出るか。一例を引きますと、この部屋の中でたとえば私がでっかい声を出しますと、これはやはり騒音防止ですね。これはあまりどなられるとやかましくて聞こえぬ。これも公害のうちに入ります。というなら羽田の飛行場はどうだ。あれは一大騒音だということになりますと、ジェット機は飛んではいかぬ。飛行機の発着を停止せなければいかぬ。こういうことになっていけばこれは実にたいへんなことになりますが、そういう点について、騒音その他の基準を示すと書いてありますが、具体的にどうかと、こう質問をされたら、これは一体どういう御答弁をされるか。たとえば羽田の飛行機の発着場、これは騒音の最たるものでしょう。そうすれば、これは飛行機が飛べなくなる。そういうことで、ほかのことも言っていきますと、たとえば隅田川の水なんというものは、いろんな廃液が流れていく、基準を引くということはたいへんなことになると思います。最悪の事態になれば、当該事業すべてを禁止せねばいかぬということが当然起こると思いますが、そういう点で、一体この法にいう基準、水質の汚濁とか、大気の汚染とか、騒音というものについて基準を示す、これはどの程度の御考慮をもって臨むのかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/50
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051・橋本道夫
○橋本説明員 第八条の環境基準でございますが、そのうちの大気汚染という点と水質の汚濁と騒音と、みんなそれぞれ性質が違うわけでございます。大気の汚染という場合におきましては、一つは健康の保護は絶対である、こういうことでございますから、健康に障害を生ずるようなあぶないものを置いて基準にしようという考え方はございません。これは全くぎりぎりのことでも非常にあぶない。それに対してどのような程度の安全率をもってきめていくかということが問題となるわけでございます。しかしながら、健康には直接影響はございませんが、生活妨害としての性質の問題、たとえば降下ばいじんなんかはその例だと思いますが、これは住宅地域と工業地域とでは差があっても当然ではないかというような考え方に立っておるわけでございます。そういうことで、直接健康にかかわるような考え方の水準と、それ以上にそれに対して安全率を見込んだ考え方、また、よりよい生活環境を保つためにはどの程度の水準にまで保つか。非常に卑近な例で恐縮でございますが、たとえば東京の中でキンモクセイが全部咲くということは非常にむずかしい。しかしながら、通産省の前では沈丁花が咲いておりますが、あれが咲くぐらいな濃度といえば、厚生省の霞ケ関のモニターではかっている濃度ぐらいが沈丁花の花が一応咲けるというようなことなっております。そのような水準をきめましてそれを基準とする。
次の水質のほうでございますが、水質のほうは、直接飲むかあるいはそこで泳ぐかということ以外には健康には直接かかわってきません。ただ、間接的に、有機水銀でよごれた魚を食べるとかいうことによって非常に恐るべきものを引き起こすというリスクがございますが、飲むか、泳ぐか、有毒なものを食べるかということについては、あくまでも健康の観点からこれを処理すべきだというように考えております。ただその場合に、水域によりまして、隅田川で泳ぐということはだれも考えておらないわけでございますが、あるいはほかの場所では泳ぐということがあるわけでございますから、水域の用途に応じてその場所の水質をきめるということは、大体国際的にはそのようなやり方をしておりまして、現在の水質保全法も水域を指定してやっていく。ただその場合に、先生の御指摘のように、なかなかそれが及んでこないじゃないか、よごれるのを待っておるというような御批判があろうと思いますが、水質基準をきめる場合には、水域の用途に応じて基準をきめていくということが最も妥当であろうと思います。隅田川の場合には悪臭を発しない程度という基準でございまして、また四十八年を目途としまして、ハゼが住むぐらいな程度というようなことを目標とした基準でございます。
それから騒音の場合におきましては、現在の段階におきましては、先生の御指摘のように世界各国ジェットの問題には非常に悩んでおるわけでございますが、これにつきましては、はなはだしい生活妨害としての現象としてとらえております。この生活妨害によって起こってきますことは、夜眠れないとか、学校の授業ができない、それで教育が低下するとか、あるいはいらいらするといったような問題でございますが、そういう点では、これは直接的に健康ということよりも、間接的にいろいろ情緒的なこと、心理的な問題を引き起こすものだというふうに考えております。これは生活環境の保全ということにかかわりました点では非常にむずかしい問題でございますが、この点につきましては、公共性というふうな問題もございますし、できるだけ音を下げて、少なくとも夜は眠れるように、また学校の勉強ができるようにするということが基本でございます。そういう点におきまして、今回運輸省が提出しております公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律といいますのは、学校と病院等につきましては措置をいたしておりますが、個人の住宅には及んでいないというところにつきまして今後どのように措置をするかという点が、夜は眠れるようにしなければいけないというところでございます。ただ、もしも非常に異常な飛行機があらわれまして、その飛行機が飛べばその辺が全部どうかなるといったような飛行機があらわれますならば、断然これは健康絶対ということが基本法の立場でございますから、そのような怪物のような飛行機に対しましては絶対ノーと言うつもりでございます。騒音につきましては、地域的に差があり、時間的に差があるということを考えてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/51
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052・田村良平
○田村(良)委員 それには九条に関連がありますから、いまの御答弁であわせてお伺いしますが、国の施策として事業者の守るべきいろいろな基準を定めるといわれておりますが、非常に複雑な各種の産業ですから、業態別にそれぞれケースが違うと思います。それを国のほうが施策として必要な規制をする、そういうことが具体的に実際やれるのですか。
それといま一つ、学校、病院等については幾らかやっておるが、一般住民についてはやれないと言われますが、そうすると、この法律九条二項等にいいます騒音とか振動、地盤沈下、それぞれの公害防止のために必要な措置を講ずるとありますが、たとえばいまの隅田川にはどういう措置を講じますか。あるいは羽田の飛行場に具体的にどういう措置を講ぜられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/52
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053・橋本道夫
○橋本説明員 隅田川にどういう措置を講じておるかというようなお話でございますが、隅田川の一番基本は公共下水道の整備でございまして、大体年間二百四、五十億は上回っておるのじゃないか。それだけの公共投資をいたしまして、トータルの額約三千億の下水道整備をやっておるわけでございます。そのほか各工場の除害施設であるとか、あるいは公害防止事業団のような事業も、全く小さいものではございますが、やっておるものもございますし、河川の浄化のためにしゅんせつをする、あるいは先ほど大臣のお話にございました利根川水系から浄化用水を流すということによってこれを達成しようとしておるわけでございますが、最終目標は大体四十八年ごろになってくるというのが隅田川の目標になっております。
羽田の場合にはどうしておるかということでございますが、これは運輸省と地域住民と東京都が
一緒に羽田の騒音対策協議会なるものをつくり、数年前から非常に努力されまして、深夜の飛行機の発着をある時間をきめてしないということの原則をきめられたわけです。もちろん、不時に着陸をするとか、あるいは時間変更が不時に起こったということでいたし方ないものは別でございますが、十一時以降次の朝の六時まででございましたか、その間は原則として発着しないという形をとっておりますことと、飛行機の航法を規制いたしまして、なるべく海の上に上がるというような航路をきめ、運輸省では飛行機の騒音をモニターするためのステーションをつくられまして、それに違反するような航空機会社に対しては注意をするということと、あとは学校の防音装置等をやっておるわけでございます。
先ほどちょっと申し落としましたが、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律には、ある一定の地域におきましては土地の買い取り請求の措置もとられておりまして、その点におきましては非常にひどいところにつきましては、一応の措置の道は新しい法律では開かれようとしているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/53
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054・田村良平
○田村(良)委員 それでは、隅田川は四十八年を目途として鋭意公害の除去につとめておるということでございますね。それから羽田の問題は、言うべくしてなかなか困難だと思います。私はこの公害基本法は、最も大きな公害の現象に対していわゆるきめ手というようなものは、得べくして実はなかなか簡単にないのじゃないかということを考えまして、やはりケース・バイ・ケースで、一日も早くそういった発生の事実を解消する施設ないし対策がむしろ急がれねばならぬ。そのためには、ただいま御答弁になりました過去においてできておる具体的な法律をむしろ一部改正をして、その法の規制を強めるとか、あるいはそれに予算を多くつけてすみやかに実施をさすという方向が急がれるのじゃないかと考えます。その点、五年も十年もこういう状態でほうっておかれたのでは、そのことでこちらの命が続かなくなります。
それは一応この辺でおきますが、その次に、ただいま触れられた山で採石が始まるという学校等についてでありますが、この十条には土地利用の規制措置がうたわれております。次に十三条には、公害予測の調査実施の規定がございます。私は一番これに興味を持つわけでありますが、公害の予測調査が行なわれて、明らかにたいへんなことになるのだということになれば、それは当該事業の産業といいますか、それらのものは禁止しなければならぬ。それを認めておいて公害が発生する、また新たな法の適用をするというのではたいへんなことだと思います。したがって、今日の公害をすみやかこ絶滅して、新たな公害の発生を防止するためには、この法第十三条にいう公害予測の調査をする。そうなった場合に、その土地にある事業が認可を求めてきたが、その事業内容を予測すれば明らかに公害を発生するとなれば、その土地の利用は禁止されなければならぬ。土地の利用をやっておると、どんどん工場ができ、公害が発生する、それがこちらのほうでは予測調査でちゃんと初めからわかっておる、こういうことが必ずセクト的には出てくると思います。したがって、ここいら辺の公害の予測調査、その実施の結果によっては土地の利用というものは禁止されなければならぬ。私は十条と十三条はそういう関連性を持っておると思いますが、こういうことについては立案者のほうでは一体どういう趣旨でこれをつくられておるか、また事実上それができるかどうか、それをあわせて御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/54
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055・橋本道夫
○橋本説明員 初めに第十条の土地利用のことでありますが、これは御承知のように現在は都市計画法と建築基準法が中心となりまして、設置についての用途別の規制を一応やっておるわけでございますが、これに対して抜本的に改正するということを現在建設省が中心となって検討されておるところでございます。それによりましてかなりの改善が見られるように私ども期待をいたしておりますが、その次の施設の設置に関する規制と申しますのは、これは公害の原因となる施設の規制ということでございまして、土地利用の用途地域をきめるということだけでは、ある一定の平面の地域を用途地域の色を塗るという形でございますが、あるところに具体的にこのものが入ればどうかということの審査が行なわれるわけでございます。従来から用途地域のきめられたところでは、建築基準法の定める範囲内においては施設の設置の規制ができることになっておったわけでございます。今後工場の立地等の規制が必要だということで現在の検討が進められておるわけでございますが、すでに首都圏、近畿圏の工場設置制限の地域では、一応の制限の措置がかかっておるところというように思っております。これが先生のおっしゃるように最も基本のところであるというように私ども思っております。
それから十三条の公害の予測でございますが、ここであげております公害の予測と申しますのは、現在通産省と厚生省の両方で開発地域の事前調査というのをやっておりまして、発生源の状況や環境の状況等を詳細に精査いたしまして、その結果に基づいて、これは煙突をどうしなければならぬとか、企業の規模をもう少し押えなければいけないというような、具体的な行政指導で動き出したところでございますが、これがどのような規制手段と結びつくかということが今後の重要なところだと思っております。先生のおっしゃる施設の設置についての規制で、この施設が入ってきたらどういう公害が起こるかという予測をするのではないかということでございましたが、個別のものについては、どのような施設が入ってくればどのような公害が起こるかということはほとんどのものは明らかでございますので、むしろ、それは公害の規制法の問題、あるいは立地についての制限についての措置として対処すべきであろう。公害の予測の調査といいますのは、むしろ地域開発等の場合に使うべきものであると思っておりますので、私どもの調査の結果は、現在は厚生省から建設省の都市局と合同で討議をいたしまして、都市局のほうで必要な場合は用途地域の改定等をやっておる事例も一部にはあらわれてきております。これを制度的なものに持っていきたいというような考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/55
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056・田村良平
○田村(良)委員 私はいまの御説明の趣旨はわかりますが、やはり公害が起こることがあらかじめ調査でわかれば、それは土地の利用も、そういった事業についても禁止措置か何かしないと、抜けられるところは抜けてできて、公害が起こってからまたその問題に手当てをするのでは、この法律ないしはこの調査というものは非常に意味が薄いと思います。この点はやはり私の申し上げましたような点で、内容の充実といいますか、やらないと、土地のほうは建築基準法でいろいろやっておりますからと言われたのでは、合法建築なら許可するにきまっています。そうなってきますと、申し上げたようにまた各省別々に分かれてばらばらになっていく。それは現状のままと同じでありますから、こういう基本法をつくって総合対策を打ち出す以上は、それについての措置と申しますか、それが必要じゃないかと思います。
たいへんおそくなりまして恐縮でございますが、最後に一点お伺いしますが、二十一条の費用の負担でございますが、事業者が費用負担できない場合は、その事業をとめることはできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/56
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057・橋本道夫
○橋本説明員 この二十一条は、国または地方公共団体が、事業活動による公害を防止するための事業を実施した場合に必要な費用の全部または一部を負担するというたてまえを規定したものでございまして、その費用を負担しなかったらその事業をとめることができるという、そのような規定はこの公害基本法ではございません。また、その次にあります第二項の「別に法律で定める」ということにつきましても、強制徴収にかかわることについての規定でございまして、この強制徴収に応じなかった場合にどうなるかということは、この強制徴収の法律の中で、その義務に応じなかった場合の制裁規定として入ることと思っておりますが、直ちに施設の操業の停止に結びつくものとは公害基本法の考え方からいけばならないのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/57
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058・田村良平
○田村(良)委員 それは、私はやはりこれだけやかましい公害の問題を法で規制する以上は、明らかに公害の発生する事業をやるという場合には、公害の発生しない処置を当該企業者がすべきである。向こうさまがその事業を始めて金もうけをする、品物をどんどん売っていく、隣近所におる方は公害で大きな迷惑をする。その上その住民が税負担までさせられたり、地方公共団体が一部分担をして、その会社の公害の規制措置に援助をするというようなことは、全くこれは漫画じゃないかと思うのですね。ですから、そういう住民に非常な悪影響を与える公害を当然予測されるような事業について、どういう規制をするかという問題と、さらに明らかに公害を伴う企業については、あらかじめその公害防止の措置を講じさせる、その費用は当該企業者が当然持つべきである、こういうように考えますが、それを地方公共団体とか国が分担するということについてはたいへんなことだ。だから、ここに全部または一部——全部を負担しなければならぬということがわかったときに、企業は、私は全部はよう負担できませんよ、こうなったときに、負担しないままにどんどん工場ができ、公害が発生する。そういうことになればこの二十一条は全く意味がないのじゃないか、私はそう思います。やはりそれだけ峻厳に出るということが、公害に対するそれぞれの立場の責任者にそれぞれの道義的なあるいは経済的な自粛、規制を与えるものだ、こう考えます。これは別の法律で定めますので、できない場合にはそのときにあらためて御相談しますでは、どんどん工場ができて公害が発生する。そういうことでは、私はちょっと後手になりはせぬか、それでは二十一条は全く意味がない。全部または一部の負担については明らかにすべきじゃないか、このように考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/58
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059・武藤き一郎
○武藤説明員 二十一条を置きました趣旨は、事業者が、先ほどからの議論にありますように、第三条で公害を防止するために必要な措置を講ずるということで、第一次的にはここでとにかく事業者自身が、公害を出した場合にはまずみずから防止施設をつくるということは当然でございます。もちろん、それにつきましては排出の規制その他のいろいろの取り締まり規定がかかるわけでございまして、それは当然だろうと思います。二十一条を置きました趣旨は、公害防止施設、たとえば廃水処理施設等につきまして、技術的に経済的に見まして共同で設置する場合があろうかと思います。そういう場合に、個々の事業者が設置するのを待っておりますと、公害防止についていろいろ問題が出てくる。あるいは一、二の事業者の非協力によりまして公害を防止できないというようなこともあるわけでございます。したがいまして、共同して設置しなければいけないというような状態がありましたときに、国または公共団体が事業者にかわって公害防止の施設をつくる。廃水処理施設とかあるいは緩衝地帯とか、そういうものをかわってやるということが予想されるわけでございます。そういう場合に、国または地方公共団体が先に事業者にかわってやったことにつきまして、あとから事業者がその費用を負担するということがこの費用負担の規定の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/59
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060・田村良平
○田村(良)委員 そうすると、これは読んで字のごとくなっておらぬですね。「前項の規定により事業者に同項の費用を負担させる場合における負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者の範囲、各事業者に負担させる額の算出方法その他その負担に関し必要な事項については、別に法律で定める。」となっておりますから、どの程度の業者がどの範囲を負担するかわからない。そういうときには国ないし地方公共団体が立てかえて施設をしてやる、それをあとで計算をする、これはまたたいへんなことになるのですよ。でき上がったあとで、操業開始せられて事業が始まったあとで、あなたの会社は幾ら持ってくれ、あなたの会社は幾ら持てといったって、初めから負担についてすら責任を明確にしない事業主が三つ、四つ混合で事業を始めるときに、それはたいへんなことだと私は思いますが、そういうことですと、これは最初申し上げましたように、公害を発生さす人が一番責任者です。これはだれも責任者じゃないのです。公害は政府のおかげじゃないんですよ。公害を排除する施設のないままに野放しでどんどんきてしまったものですから、いまからこれを規制しようとするのですから。そうすると、新たにある地域に三つ、四つの工場がコンビナートをつくってくる、そこでそういういま起こっておるような公害が当然発生するとわかり切ったその際に、三つなら三つの事業主体がABC別々に幾らの経費を負担し、どういう施設をつくるか、そのつくられた施設は完全に公害を除去し得るものであるということ、専門家の立会検査の結果、このとおりやるならよろしいということにならないと、国や地方公共団体ができ上がったあとの公害の施設をかわって金を払ったり、施設をつくったり、あとから徴収するなんということは、私はこれはたいへんなことになると思うんですがね。そういうことを予想されておるとすればちょっと考えものだと思うが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/60
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061・橋本道夫
○橋本説明員 私どもの御説明が不十分であったというふうに思っておりますが、二十一条の二項をお読み願いますと、「事業者に同項の費用を負担させる場合に」といいますのは、一つは強制的に負担させて強制徴収してしまうということの場合のことを別の法律できめる、これはだから強制であります。そうでない場合は協議でございます。費用負担というものは、話し合いをして、この負担をしてくれといって話し合いが合意に達して取れるものと、もう一つは、別の法律で、ここにございますように、負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者の範囲、各事業者に負担させる額の算出方法その他負担に関し必要な事項は別の法律できまるわけでありますから、この強制徴収できる条件の場合のことがこの法律できまったならば、いやおうなしにこの条件に合うものは強制徴収できるということでございます。ただし、この場合に費用負担といっても、非常に零細企業があって、どれほど費用負担に耐え得るかといった問題が、原則外の例外的な事項として生じてくるものも中にはあろうかと思うわけですが、当然そのようなことは相手に賦課をする場合に経済能力によって判断されることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/61
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062・田村良平
○田村(良)委員 本会議終了後たいへん長いことになりまして恐縮でしたが、重大な公害の問題でありまして、きょうは逐条的に簡単な質疑応答になりましたが、私の考え方としては、大都市を中心とし、ないし地域別の公害ということは、きょうの御答弁だけでは、たいへんすっきりしておる、いい法律ができたというように考えるわけにまいりませんので、また次の機会にあらためて質問をいたしたいと考えますが、お願いしたいことは、いまの規制の問題についてもう少し明確な線を打ち出してこないといけないのじゃないかというように考えます。
長時間私の時間をとりましたが、とりあえずこの程度できょうは質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/62
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063・八木一男
○八木委員長 さきに委員長に御一任願いました船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案についての運輸委員会との連合審査会開会の日時は、運輸委員長と協議し、来たる二十日火曜日午前十時と決定いたしましたので御報告いたします。
次会は、来たる二十日火曜日午前十時より運輸委員会との連合審査会、正午より委員会を開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01019670616/63
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