1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月二十二日(木曜日)
午後四時二十二分開議
出席委員
委員長 八木 一男君
理事 天野 公義君 理事 奧野 誠亮君
理事 小山 省二君 理事 丹羽 兵助君
理事 和爾俊二郎君 理事 板川 正吾君
理事 島本 虎三君
伊藤宗一郎君 河本 敏夫君
塩川正十郎君 砂田 重民君
田村 良平君 葉梨 信行君
藤波 孝生君 三原 朝雄君
加藤 万吉君 河上 民雄君
工藤 良平君 中井徳次郎君
吉田 之久君 岡本 富夫君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
通商産業省鉱山
局長 両角 良彦君
運輸政務次官 金丸 信君
海上保安庁長官 亀山 信郎君
委員外の出席者
運輸大臣官房審
議官 鈴木 珊吉君
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本日の会議に付した案件
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律
案(内閣提出第六〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/0
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001・八木一男
○八木委員長 これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
去る二十日の委員打合会におきまして、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案について、全国内航タンカー海運組合会長筒井佐太郎君、汚水対策全国漁業者協議会会長安藤孝俊君、神戸市助役有岡信道君及び川崎市港湾局長川崎伸二君より意見を聴取したのでありますが、この際、委員打合会の経過について御報告申し上げたいと存じます。
その内容の詳細は記録してございますので、本日の会議録に参照として掲載することにいたしたいと思いますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/1
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002・八木一男
○八木委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らうことにいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/2
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003・八木一男
○八木委員長 船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がございますので、これを許します。岡本富夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/3
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004・岡本富夫
○岡本(富)委員 ずいぶん審議されましたので、あと要点数点をお尋ねしたいと思います。
その一つは、先ほども話がありましたように、港則法でこの小さな船を取り締まる、こういうお話でありましたが、港則法は、御承知のように船の運航、そういうものを取り締まる従来の法律でありますから、この海水油濁のための取り締まり法にしますと、これは法改正をしなければならぬ。こう思うのですが、それについて運輸大臣の御見解をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/4
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005・大橋武夫
○大橋国務大臣 港則法の中には、港湾の区域内あるいは港湾から一万メートル以内の区域内におきまして、みだりに海水にいろんなものを投げ込むことはいけないという規則がございまして、それでもって廃油等の投棄を取り締まろうというのが私どもの考え方でございます。
しかし、これについては、もともと海水の油濁防止ということだけを眼目にして規定した法規ではございませんので、運用にあたりましては一くふう要する点もあろうかと思いまするし、ことに一万メートル以上の水域におきましては、たとえ東京湾内といえども港則法の及ばざるところでございまするので、そういった点は法の一つの欠陥だということがいえると思うのでございますが、何ぶんにも海水汚濁の防止ということは、今度条約の批准に伴いまして運輸省としては新しく取り組んでいこうという行政の全く新しい面でございますので、一応お目にかけましたような法案でスタートいたしまして、すみやかにその実施の情勢を見まして、今後必要に応じましては、本法案自体の改正あるいは港則法の改正というように、逐次完全なるところへ補いをつけ改正をして万全を期するように取り運びたい、こういう考えで運用いたしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/5
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006・岡本富夫
○岡本(富)委員 私がなぜこうして再質問のようなことをするかと申しますれば、二、三日前に神戸の港の中を約二時間余り視察してまいりましたが、大体神戸の港に入っている船のこの適用外になるのが六八%、それから適用内になるのが三二%、こういうような数字を見、また実際にその海水の汚濁した姿あるいはまた瀬戸内海の魚の油くさいそういうような一つ一つを見ましたときに、今度のこの海水油濁を防止する法案というものは相当強力にしなければならぬと、つくづく私はその姿を見て、きょうは再度質問する次第です。
そこで、実際面を見ますれば、港則法なんかがあって、みだりに捨ててはいけない、こういうふうにいっておりますけれども、夜間投棄をして逃げる船があるらしい、こういうものに対するところの取り締まりは、海上保安庁はどうすべきか、これについて一言お聞きしたいのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/6
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007・大橋武夫
○大橋国務大臣 海上保安庁といたしましては、従来から港則法によりまして取り締まりを励行いたしておったわけでございますが、何ぶんにも、この法律を実施いたします前におきましては、みだりに海中に物を投棄してはいけないとありましても、特に廃油等につきましては、廃油を捨てるべき、その捨てる廃油を受け入れる施設がいまのところ全然ございませんので、これが取り締まりの励行はそういう面からいっても無理があったわけでございまして、自然現状では港の油の状態は非常に悪くなっておると思うのでございます。このたびこの法律実施に伴いまして廃油受け入れ施設が神戸港などにも完備することになりますから、そうなりましたならば港則法を励行いたしまして、百五十トン未満の船でも取り締まりを強力に進めることも差しつかえない、また事実すべきである。こういう状態に相なりまするので、相当改善できるだろうと思います。特に夜間はどうするかということでございますが、これらの点も従来取り締まりの手が、施設のない関係上自然に及びがたかった点が、今度施設が完備することになって、十分に及ぼすことができるようになりますから、せいぜい夜間の監視も十分いたすようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/7
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008・岡本富夫
○岡本(富)委員 それから、この間神戸の助役さんが来ていろいろと話をしておりましたが、いま運輸大臣から話がありましたように、処理施設をつくる、こういうことです。あの神戸港に二つつくるのだそうでありますけれども、それでは十分でないというような話がありました。大体全国にこういう指定された港が六港ですか、六カ所の港が指定されてつくるというようになっておりますが、あとの未整備港ですね、こういうのは多数あると思うのです。そこで、それじゃその整備港に来て油を排出していけばいいじゃないか、こういうことになりますけれども、現在の運賃の単価、すなわちタンカー協会の会長さんの話では非常に運賃が安い、こういうことでありましたし、また事実標準運賃を割っている。こういうことですから、その処理施設をつくっても未整備港あたりの船はどういうようにするのか、これに対するところの取り締まりはどうしたらいいのか、これについて意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/8
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009・大橋武夫
○大橋国務大臣 さしあたり本年度予算におきましては六港ということにいたしておりますが、これは予算の都合上今年度でそれだけにいたしましたので、来年度以降におきましても逐次整備する港の数をふやしてまいりたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/9
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010・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうすると、この法規制ができましても、来年の予算まではしかたがない、こういうことでございますね。ひとつその点についてはもう一度考えていただきたいと思います。
そこで、これは次の機会に、法改正のときに考えていただきたいことは、ここで算出したところの数字によりますと、百五十トン以下のタンカー全部含めた一般船全部をこの法規制にしますと、バラスト水で処理の費用が一トン三十七円、現在の費用ですと五十二円、それからビルジ水にしますと、一トンが現在の法規制の状態ですと千百四十六円、それから一般を全部この対象にしますと三百十六円、こういうようになりまして、現在の大型のみになりますと非常に高くつく、こういうような数字が出ております。したがって、一日も早く小型船もこの規制をしなければならぬ、こういうように私は考えるのですが、大臣どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/10
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011・大橋武夫
○大橋国務大臣 さしあたり、先ほども申し上げましたように、条約を批准するという見地から、条約の指定しておりまする船を目途として今回立法化をお願いしたわけでございますが、これをやって効果がはたして十分であるかどうか、これは実施すればすぐわかると思いますので、今後はできるだけすみやかに全体の船を取り締まり得るような方向へ進めるのが行政の方向だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/11
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012・岡本富夫
○岡本(富)委員 それで、いま一番問題になっておりますのが、石油コンビナートのところへ着くタンカーでありますが、このバラスト水は、いまの法規制のような一万メートル先、あるいはまた五十海里先で捨てて、そしてコンビナートのそばまで来るわけにいかない。なぜかなれば、特に冬季なんかのあらしのときは、コンビナートのそばへ来て、いままで積んできた水を捨てて、そして給油をしなければ船がもたない、こういうことでありますので、石油コンビナートのあるところには必ず廃水処理施設をつくらなければならぬ、こういうように義務づけなければ完全とはいえないと思うのですが、通産省の方いらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/12
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013・両角良彦
○両角政府委員 お尋ねの大型タンカーのバラスト水の処理の点でございますが、私どもとしましては、大型タンカーの……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/13
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014・岡本富夫
○岡本(富)委員 大型も小型もみな一緒です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/14
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015・両角良彦
○両角政府委員 油濁の防止処理施設のそばにタンカーのいわば待避が必要な場合もあろう、かような意味から義務づけてはどうかという御指摘でございますが、通産省といたしましては、石油の荷役にあたりまして、これが港湾の油濁等におきまして大きな被害を与えることなく、港湾管理者におきまする油濁の防止施設が円滑に運行されますよう、十分石油業界としても協力体制を整えたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/15
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016・岡本富夫
○岡本(富)委員 あなたは質問を聞いておりましたか。
そうすると、もう一ぺん聞きますけれども、石油コンビナートのあるところには、必ずバラスト水の処理場あるいは油濁した水の処理場をつくることをそういう会社に義務づけるかどうか、これを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/16
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017・両角良彦
○両角政府委員 お答えいたします。さような処理施設を義務づけるかどうかという点は、通産省の立場といたしましては、むしろ運輸省の御判断にまっておる次第でございまして、われわれとしましては、石油サイドから、さようないわば油濁防止の施設の円滑な運用のために協力をいたすように業界指導の用意がある、かような立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/17
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018・大橋武夫
○大橋国務大臣 運輸省といたしましては、少なくとも大規模な石油コンビナートにおきましては、それが海岸に接しており、タンカーの往来がひんぱんであります限りにおきましては、そこにこの油濁防止のための処理施設をつくるように指導すべきである。こう思うのでございまして、義務づけるかどうかは、これは通産省の御判断にまかせる次第でございますが、少なくとも運輸省といたしましては、義務づけたと同様に確実にそういう施設が行なわれるよう、通産省の十分な御協力を得て行政指導をいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/18
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019・岡本富夫
○岡本(富)委員 この問題については、これは一番大事なんです。なぜかと申しますれば、これは全国にそういうことがあると思うのですが、私の一番よく知っているところは、兵庫県に姫路というところがあります。そこに、播磨の臨海地帯に今度出光石油が進出してくる。こういうことについて、家島あるいは飾磨あたりの漁業者が、これによって、海水汚濁によって水産資源が全部被害ができる、こういうわけでむしろ旗を立てるというような事態にもなっておるわけです。したがって、石油コンビナートが来たらこういうように義務づけて、そしてビルジあるいはバラスト水をきれいにするとはっきり政府のほうで約束をしてあげないと、これはたいへんなことになる。こう思いますので、そこでいま聞きますと、運輸省のほうは、これは通産省のほうだ、通産省のほうは、これは運輸省の御意見ですと、こういうようになりますれば、どこへ言っていったら一番いいのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/19
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020・大橋武夫
○大橋国務大臣 そうではございませんので、通産省は運輸省の意見によって全面的に協力するということを政府委員がお答えになりました。そこで運輸省といたしましては、義務づけるかどうかは通産省におまかせするが、運輸省の方針としては、義務づけたと同じような結果があがるように御協力を願うようにいたしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/20
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021・岡本富夫
○岡本(富)委員 では、その問題はまた先の問題にしまして、私、この間神戸のほうを回っておりますと、油の一ぱい入ったところの船が沈船となってたくさんあるのです。聞いてみますと、神戸港の中で大体百七十隻ぐらい、見えているのが六十隻、これが台風になりますとぼこぼこ浮いてきて、そして船の運航をとめたり、事故が起こっておるということを聞きましたが、これについての管理者、あるいはまたこれを整理すると申しますか、その責任が明確でない。これについてひとつお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/21
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022・大橋武夫
○大橋国務大臣 港湾を常に良好な状態に維持することは港湾管理者の責任でございまして、神戸港でそういう事実がありましたならば、管理者たる神戸市長において清掃の案を立てて運輸省に御相談くださいますれば、運輸省としてもできるだけの御協力を申し上げるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/22
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023・岡本富夫
○岡本(富)委員 これは横浜でもずいぶんあるそうです。全国至るところでこれで困っている。それで神戸におきましては一隻これを処理するのには二十万円、横浜におきましては費用が大体三十万かかるそうです。瀬戸内においては二千隻くらいある。こういうことでありますので、これは相当大がかりな手を打たないと、あるいは沈船引き揚げの一つの法律をつくるとか、こういうようにしませんと、これは効果があがらない。あるいはまた神戸の川崎製鉄からは、ちょうど自分の会社の下にたまっていますから再三海運局並びに海上保安庁に対して陳情をしておるけれども、何の取り上げもない。こういうような状態でありましたが、いまのお話を聞きましてひとつ安心はしましたけれども、まだ不安でありますから、強力にやっていただきたいと思います。これに対するところの法律案をつくるような用意があるかどうか、運輸大臣に承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/23
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024・大橋武夫
○大橋国務大臣 私も港湾区域内でそういう事実があるということをただいま初めて御指摘をいただいたのでございまして、さっそく各重要港湾について調査をいたしまして、管理者の意見も十分に聞き、相談した上で対策を立てさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/24
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025・岡本富夫
○岡本(富)委員 ではもう一点、これで終わります。ちょっと忘れたのですが、この排水が百PPM以上の水は流してもよい、こういうふうになっておりますが、この百PPMを簡単に調べる方法、こういう機械、あるいはこういうことができるのですかどうか、鈴木審議官にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/25
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026・鈴木珊吉
○鈴木説明員 百PPMかどうか調べます簡単な方法は、いまのところ私聞いておりません。やはり試験所へ持っていきまして鑑定する以外、いまのところは方法はないというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/26
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027・岡本富夫
○岡本(富)委員 この件も、この法案を設定するにあたりましてははっきりしておきませんと、ああ流して逃げた、それから水を取って水質試験所へいけば大体一週間ぐらいかかるわけです。それから百五十PPMあった。こういうような手ぬるいことでは、これは漁業者を守り、あるいはまた日本の港湾を守ることはできない。こういうふうに思いますので、その点に留意をしていただきたいことを最後にお願いしまして終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/27
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028・八木一男
○八木委員長 他に質疑はございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/28
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029・八木一男
○八木委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
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030・八木一男
○八木委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/30
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031・八木一男
○八木委員長 起立総員。よって本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/31
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032・八木一男
○八木委員長 次に、本案に対し自由民主党、日本社会党、民主社会党又び公明党を代表して、島本虎三君外三名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
まず、提出者より趣旨説明を聴取することといたします。島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/32
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033・島本虎三
○島本委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。
まず、案文を朗読いたします。
船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案に対する附帯決議
政府は、この法律の施行に際し、次の事項について措置を講ずべきである。
一、各種廃油処理施設を早急に整備するため、予算措置の充実に努めること。
二、巡視船艇、航空機等を整備強化して、強力な監視、取締体制の確立を図ること。
三、わが国の実情に即応した適用船舶の範囲について検討し、船舶の油による海水の汚濁の防止に万全を期すること。
四、海水の油濁による水産被害等の救済制度を確立し、遺憾なきを期すること。
右決議する。
以上であります。
提案の趣旨につきましては、すでに当委員会及び運輸委員会との連合審査において各委員から質疑を通じて意見が述べられておりますので、説明を省略いたします。
何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/33
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034・八木一男
○八木委員長 以上で説明は終わりました。
採決いたします。
本動議のごとく決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/34
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035・八木一男
○八木委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。
この際、大橋運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大橋運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/35
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036・大橋武夫
○大橋国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨は十分に了承いたしました。つきましては、これを尊重いたしまして、その趣旨に沿うよう善処いたす所存でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/36
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037・八木一男
○八木委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/37
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038・八木一男
○八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しま
した。
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〔報告書は附録に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/38
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039・八木一男
○八木委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/39
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040・八木一男
○八木委員長 本日は都合により正規の委員会としないで、産業公害対策特別委員会打ち合わせ会を開会いたすことにいたします。
これより船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案について、ただいま全国内航タンカー海運組合会長筒井佐太郎君、汚水対策全国漁業者協議会会長安藤孝俊君、神戸市助役有岡信道君、川崎市港湾局長川崎伸二君に御出席願っておりますので、その御意見を承りたいと存じます。
筒井さん、安藤さん、有岡さん、川崎さんには御多忙中にかかわりませずわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
これより本案につきまして御意見を承りたいと存じますが、皆さまにはそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。筒井佐太郎君、安藤孝俊君、有岡信道君、川崎伸二君の順にお願いをいたすことにいたします。あとで十分に御意見を伺いますが、大体お一人十五分程度で先に御意見をお述べ願いたいと思います。
それでは筒井さんからお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/40
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041・筒井佐太郎
○筒井佐太郎君 私、こういうところへ来て先生方にお話し申し上げるのはきょうが初めてでございますが、長年油の輸送、小型タンカーの輸送をやっておりまして、東京湾のよごれが飛行機の上から見まして、実に残念なくらいよごれておりますので、私らも東京、横浜を中心として仕事をしております関係上、どうしてもこれは港をきれいに浄化しなければいかぬ。これはやはり市民として、都民としてもできるだけのことを、ビジネスを離れてもやらなければいかぬということで、きょうわれわれをお呼び出し願ったことは非常に時宜に適したことだ、われわれもできるだけかたくならずにお話を申し上げて御参考に供したい、こういうぐあいに思っております。
率直に申し上げて、今度の法律で海水汚濁防止について、油の廃油を処理するということは、これは非常にけっこうなことでございますが、われわれの中小企業がこの処理施設をやるということはとうていできないことでございます。それからいまの現状からいたしまして、率直にいうと、われわれのお得意さん、油屋さん自体も油の販売競争に努力しておいでになって、非常に市況が乱れておる。したがって、われわれの小型タンカーにも大いにそのしわが寄ってくる。われわれの監督官庁の運輸省の方もおいでになって、いろいろ調整運賃その他のことでわれわれに御援助を願っておるわけですが、油の市況が悪いためになかなか思うように役所で認可せられた、許可せられた運賃をいただくということができないわけです。率直に申し上げて、親子何代というようなことで油を売り始めてからずっと出入りするというようなわれわれ業者であるので、お得意との関係が昔の主従関係のような状態になっております。したがって、がまんしろ、市況のなおるまでがまんしろというようなことであると、極論をいえば、もとを切ってでもある程度のがまんをするというような、ずっと明治以来のしきたりで今日までやってきておるのです。それで世の中がいまのような状態になっても、そのとおりになかなかなってきません。だから昔のとおりのような状態ですから、われわれの経営は非常に困難である。したがって、油汚濁の問題につきまして、御趣旨としてはわれわれは双手をあげて賛成しますが、何にいたしましても法律では沿岸から二十海里以上は沿岸船は出ることができません。したがって、今度の法律では沿岸から五十海里以上でなければ投棄してはいかぬというような状態になっておりますので、どうしてもいわゆる積み地、いわゆる石油会社の近くに汚水処理場をこしらえていただいて、そしてそこですぐ積み荷をする、すぐいわゆる汚水を処理して、揚げて、そして積むというような状態にならぬと、これはわれわれの損得ということよりは油の輸送にえらい支障を来たすということになって、これは先生方はよく御研究なさっておいでになるが、いまの日本の総需要量は年間一億二千万といわれておりますが、その七割を国内のタンカーによって運んでおります。だからその使命というものはえらいたいへんなものでございますので、これらの使命もひとつ石油会社自体も当然、石油会社のパイプラインあるいは手足となってわれわれはやっておりますが、やはり適正運賃をお認め願って、そうして安定した仕事をやらせていただく、こういうことにぜひお願いしたい。その油のいわゆる汚水処理の問題はぜひやっていただきたいが、われわれ業者の希望としては、日本石油、三菱石油あるいは出光興産と申しますか、その石油会社の周辺に処理場を置いてもらって、出光に行った場合にはそこで汚水を処理してすぐ積み取るということでないと、いまは内航タンカーも非常に大型化してきましたから——戦前は二、三百トンの船はとにかく優秀船であったのですが、今日では千五百トン、二千トン、三千トン、もう五千トン近くの船で運航するというような状態ですから、小型といいましても昔の大型船に匹敵するような状態でございます。したがって、運航することもなかなかたいへんでございますから、空船になりますと、ちょっとした風でも運航ができない。バラストを取りかえるということもできませんから、その場で汚水を処理して、その場で積むというようなことにしていただかぬと、われわれも損をするということよりは、この油の輸送に大支障を来たす。こういうぐあいに思っておりますから、これはわれわれももちろん御協力申し上げるということにはやぶさかでないが、まず国が中心になってお考えを願って、そしてぜひやらせていただきたい。
それから御参考に——これは委員長、こういうことを申し上げるとなまいきだとおっしゃるかもしれないが、私はたたきあげですが、おやじもおじも明治時代からこっち回漕業をやっておりまして、私のおやじが船に乗っているころには永代橋で干潮時にいわゆる船の飲料水が取れた。私の小僧時代は王子の砲兵工廠で干潮時に飲料水が取れたわけですよ。それがいまは飲料水どころではない、現在柳橋あたりではくさくて魚も住まぬというような現状でございますから、そういうことを申し上げるとなまいきだといっておこられるかもわからぬが、タンカー船ばかりでなくて、すべてが、一市民、一工場に至るまで注意しなければならぬことだ。こういうぐあいに思っておりますから、ぜひこの問題はさらに強めてやっていただきたい。こう思っておりますが、ただ、われわれ中小企業にしわ寄せしてわれわれが成り立たないようなことでは困りますから、まあこの点を特に御配慮をお願いしたい、こう思います。
よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/41
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042・八木一男
○八木委員長 ありがとうございました。
それでは、汚水対策全国漁業者協議会会長安藤孝俊君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/42
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043・安藤孝俊
○安藤孝俊君 私は、汚水対策全国漁業者協議会会長の安藤でございます。
本日、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案の御審議に際しまして、参考人として意見を申し述べる機会をお与えいただきまして、まことに光栄に存じます。厚く御礼申し上げます。
最近の沿岸漁業は、つまり取る漁業からつくる漁業へと移行してきておりますことは御存じのとおりであります。政府も、水産資源の保護増殖あるいは沿岸漁業振興対策に特に意を注がれました結果、ノリ、ワカメなどの海草及びハマチ、クルマエビなどの魚介が相当増産するようになりました。
一例をノリにとりますと、昭和三十年十五億枚でありましたものが、四十一年には三十四億枚という二倍以上の急速な生産増となっておるのであります。このことは往々にして沿岸漁業を見る一般の世論のあやまちをくつがえす有力な資料となっておると思います。一般の世論は、往々にしまして、もう回遊性の魚が取れないと沿岸はもうだめなのだ、では船を大きくして沖へ出て行け、あるいは世界の海へ行けと簡単にすぐ考えやすいのですけれども、しかし、沿岸における回遊性の魚がとれなくなりますと、それは海潮の変化なのでありますから、それにかわった魚が来るというのは常識なのでありますし、また、そこに何かの支障がありますと、それを取り除けばまた再び別な魚がやってまいりまして、海の産業としての価値が出てくるにきまっているわけです。それに対して一般が非常に誤っておられますが、そういう点を考えますと、いまこれだけの増殖ができたということは、私はそれを立証する材料になると思うのです。この意味におきまして、沿岸をあきらめないという前提の上に私たちはいま働いております。
しかしながら、産業の高度成長特に石油関連産業の急速な発展に伴いまして、船舶の油による沿岸海域の汚濁によるいわゆる沿岸漁業の被害はあまりにも目に余るものがあるのであります。昭和四十年度で概算四十七億円の多額にのぼった損害を見ております。しかも、このままに事業を進めますならば、ますますこの被害が増大することは明らかであろうと思うのであります。ただ単に漁業被害だけにとどまりませず、海水浴客に対してまで油をかぶる状態になってきている。結局、国民の健康保持のためのレクリエーションさえもがこのために不可能に近いものになっていると私は見ておるのであります。特に船舶の油による被害は、日本船だけでなく外国船も相当ございまして、この場合の損害補償は、日本が油による海水汚濁防止条約を批准していなかったことなどからいたしまして、ほとんどが未解決のままに放置されまして、被害者はただ泣き寝入りにその日の生活に苦しんでおるような状態になっておるのであります。したがいまして、われわれは従来からこの条約の早期批准と関係国内法の制定を国会及び関係方面に強く要望、陳情をいたしておりました理由もその点にあるのであります。
幸い、昨年度の本特別委員会におかれましては、全員一致この問題を解決するように御決議をなされました。今日国内法案及び条約案ともにまことに御熱心に御審議が進められておりますことは、日ごろ船舶の油に悩まされております漁業者としましてはまことに感謝にたえないところでありまして、ここに三百万漁民を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。何とぞ一日も早く国内法の制定と条約の批准を進められますよう、この場合お願い申し上げる次第であります。
なお、法制定の暁におきましては、廃油処理施設などをすみやかに完備するための十分な予算措置の裏づけ、あるいは適正な運営及び厳格な規制を実施されるとともに、次の諸点について十分検討されますよう懇願するものであります。
まず第一に、監視、取り締まりの徹底を期することであります。特に夜間の取り締まりにつきましては十分なる御措置を御検討お願いいたしたいと存じます。第二に、船舶の適用範囲については、法案では総トン数百五十トン以上のタンカー及び総トン数五百トン以上の一般船舶となっておりますが、一般船舶百トン以上、タンカーは全船とすることを御検討いただきたいと思います。
第三は、排出基準百PPMは、廃水処理技術の研究開発を促進せられまして、可及的すみやかに引き下げられますよう要望いたすものであります。
第四は、被害者の救済についてでありますが、目下御審議中の公害対策基本法案の御検討とあわせましてこれが具体的方策を確立していただきますようお願いいたします。
第五は、港則法の一部を改正いたしまして、現行港則法における港の境界外一万メートルという適用範囲の拡大と、不適正用語の削除、たとえば法二十四条の「みだりに」などのまぎらわしいことばを削除することをお願いいたしたいと存じます。
第六は、石油コンビナート等からの油性排水取り締まりの強化と、油性混合物の海洋投棄禁止の措置を進めていただきたいことであります。
第七は、タンカーなどの海上衝突予防法の再検討をすみやかに行なわれ、同時に特定航路の開設にあたっては漁業者の意向を十分御考慮の上に漁業生産に支障のないよう御配慮を賜るようお願いいたしたいのであります。
この後段にお願い申し上げます各項目は、まことに漁業者にのみ依存したかってなお願いのようにも聞こえますけれども、私はそのようには解しておらないのであります。何といいましても原始産業であります農山漁村の生産維持あるいは培養というものは国家の基礎をなすものでありまして、高度工業国家としての日本が隆々たる進展を遂げつつありとしましても、その基本をおびやかすことは、これは絶対に文化国家のなすべきことではないと私は信じておるのであります。したがいまして、先ほど私の前の参考人の方のお話にもございましたように常に海は清澄であるべきである。公害などというものがそこに発生することは、これは恥ずかしいものだと私は理解します。もちろん、今日日本の国力の進展過程におきましてはそういう経過を通ることは、これはやむを得ないと思うのです。それをいやがっておりましては今日の隆盛はこなかった、こういうことも理解しておりますが、しかし、この程度でひとつ原始産業を見直そうじゃないか。ことにわが国の食糧が自給度が八〇%弱になってきた。これは将来おそるべきものだ。どういいましても農山漁村が一致団結いたしまして、ここに生産性を高めながら食糧の自給国家としての基本を守らねばならない。その上に工業国家ができますならば、それこそ真に私たちの期待する理想文化国家となるということを信じ切っておるのであります。したがいましで、私たちはいまお願い申し上げました——かってによそさまの仕事にちゃちゃを入れる意味では絶対ないのであります。ただ、そういうことはむしろ国家の責任において何とか保護する必要があれば、油に対して中小企業を御保護になったらよかろうと思う。しかし、そういうことのために海の清澄を害してはならない。沿岸漁業がこれから大いにまた往時の繁栄を取り戻そうとして、私は確信を持っております。先ほども申しましたように、いわゆる技術の改良進歩あるいは父祖以来の経験の活用によりまして沿岸の漁場はもう必ず回復します。そうなった場合に輸入水産物の一部の防遏も可能になるのであります。どうかその意味におきまして私の過分に申し上げたことに対しまして特別な御諒恕を願えれば非常にしあわせに存じます。
以上によりまして、簡単でありますが、私の意見開陳を終わります。まことに御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/43
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044・八木一男
○八木委員長 どうもありがとうございました。
次に、神戸市助役の有岡信道君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/44
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045・有岡信道
○有岡信道君 ただいま御紹介いただきました神戸市助役の有岡でございます。
船舶による海面油濁の防止につきましては、本特別委員会の先生方に非常な御尽力を賜っておりますことを、港湾管理者といたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。
本日は、全国の港湾管理者を代表いたしまして、ただいま国会に御提案中の船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案につきまして、次の五つの点につきまして意見を述べたいと思います。
その一つは、規制対象船舶の範囲であり、その二は施設未整備港の整備計画、第三に原状回復義務、第四に自家用廃油処理の問題、最後に港湾管理者に対する国の財政援助についてでございます。
まず最初に、規制対象船舶の範囲についてでございますが、本法案は当初われわれが予想しておりました範囲より著しく後退していると思うのでございます。すなわち、本法案は第十条第一項におきまして、五百総トン未満の一般船及び百五十総トン未満のタンカーは適用を除外されておりますが、御承知のとおり、日本におきましてはこれら適用除外されている小型船の占める割合がきわめて高く、神戸港を例にとりますと、内航船の入港隻数中、一般船においては約九〇%、七万八千九百隻が五百総トン未満であり、タンカーにおきましては約五三%、九千二百隻が百五十総トン未満となっているのでございます。また、排出油性汚水を比較いたしますと、昭和四十四年の推定の排出量は、一般船が一日平均七十五トン中、小型船は六十トン、八〇%を占めており、タンカーにおきましては、一日平均に換算して約千四百トン中四百トン、二八%を占めると予想される次第でございます。
もちろん、この数量は神戸港の例でございますから、全国的に見た場合には若干その比率を異にすると思いますが、このような数量が適用から除外されますことは汚濁防止の実を上げ得ないのではないかとおそれる次第でございます。この意味におきまして、適用を除外する船舶はもっと制限をきびしくして、一般船においては百総トン以下に、タンカーにおきましては二十総トン以下に押え、汚濁防止の実をあげてほしいと期待する次第でございます。
政府におきましては、小型船は港則法で規制し得るとのお考えのようでございますが、港則法による取り締まりにつきましては、次の二点で非常に疑問に思っておるのでございます。
その一つは、港則法そのものの立法趣旨の問題であり、その二は、海上保安部の警備体制の問題でございます。
すなわち、港則法は、第一条に規定しておりますように、港内における船舶交通の安全及び港内の整とんをはかることを目的としており、したがって、いわゆる公害防止を直接の目的としていないという点でございます。それゆえに同法二十四条の廃油投棄禁止規定も水路保全の章に設けられており、水路の保全に支障を来たさない場合には法的強制力を発動し得ないのではないかと疑われる次第でございます。このために、小型船舶の油性汚水排出禁止を港則法で取り締まるならば、港則法そのものの中に公害防止的な精神を盛り込んで一部手直しをするのでなければ、具体的な実効力を期待し得ないのではないか、かように思う次第でございます。
第二に、海上保安部の現体制では、適用除外の小型船取り締まりに手薄ではないか、私どもは客観的にこのように考えております。もちろん、この問題は国内部の問題でございまして、私どもがとやかく申すべき問題でないかもしれませんが、小型船舶の取り締まりを港則法に求め、しかもこれを実効力あるものにするならば、夜間投棄の問題も御考慮の上、いま一度海上保安部の体制を御検討くださいまして、その強化に十分の御配慮をお願いいたす次第でございます。
要するに、われわれは適用除外船をもっときびしく制限してほしいと思う次第でございます。したがいまして、適用除外船を本法案のようにゆるいものにするならば、海上保安部で確実に取り締まってほしいし、また取り締まれる体制にしてほしいと考えるのでございます。法令をゆるくし、しかも海上保安部では実際取り締まれない、そして港がよごれたら管理者の責任だということのないよう、この点十分に御配慮をお願い申し上げます。
次に、施設未整備港の問題でございますが、本法案は一第五条第二項におきまして、廃油処理施設が整備されていない港につきましては適用されないことになっております。それにもかかわらず、昭和四十二年度における運輸省の施設整備対象港は、横浜、川崎、千葉、和歌山、下津、水島、そして神戸の六港にすぎません。もっとも、施設未整備港は別途運輸省令で指定されることになっておりますかち、六港以外はすべて未整備港となるというわけのものではないかもしれませんが、具体的に取り上げられた整備対象港が全国でわずか六港で、大阪湾の例でも、神戸と和歌山下津だけが整備港というのでは、この法律がざる法化するおそれがあるのではないかと懸念する次第でございます。それゆえに整備港は漸次拡大していくということではなしに、早急にふやしていく努力をぜひお願いいたす次第でございます。
第三に、原状回復の問題でございます。本法案では、排出禁止の違反者に対し、三月以下の懲役または十万円以下の罰金に処することにしておりますが、これの刑量の適不適は一応別といたしまして、港湾管理者として最も要望することは、原状に回復してもらいたいということであります。国が罰則を加えてみたところで、あとが放置されるということでは、港湾管理者として非常に困る次第でございます。そうしてこの原状回復の義務は、排出禁止の違反者だけにとどまらず、第七条第一項第二号において適用除外とされている船舶の損傷等の場合についても、当然適用してしかるべきではないかと考えるものでございます。このような意味におきまして、原状回復義務の規定を設けることにつき、いま一度御検討をわずらわしたいと思う次第でございます。
第四番目に、自家用廃油処理の問題でございます。本法案は、廃油処理義務者を規定することなく、廃油を処理する者については、営業的に行なう廃油処理事業者、自家用施設による処理者及び港湾管理者の三者を予想して規定いたしております。しかし、廃油処理施設を所有して行なう廃油処理については、採算の合いにくい事業でありますので、前二者による受け入れ設備建設の期待に乏しく、結局、法案第二十七条による勧告規定により港湾管理者がやることを余儀なくされるものと予想される次第でございます。そうして、このようなことでは、何かと管理者へのしわ寄せにより解決を迫られるということになりかねないので、将来新設の石油ターミナルまたは造船所等については、新設時に自家用の処理施設を義務づけることについても、せひ御検討をお願いする次第でございます。
最後に、本法案における港湾管理者に対する国の財政援助について意見を申し述べたいと思います。
この法律案が、海水汚濁の防止という国際的な動向と国内的な世論を背景にしておりますことは、われわれも十分承知しており、したがって、われわれ港湾管理者といたしましても積極的に協力していきたいと思っておりますが、この問題に関し、協力体制のパイプ役を果たすべき国の管理者に対する財政援助については、政府の姿勢として消極的に過ぎると考えられるのでございます。
すなわち、本法案は、提案理由にございますように、国が批准しようとする海水汚濁防止条約の国内関連法として提案されたものであって、国が批准する行為に伴って大きな費用負担を港湾管理者に押しつけるということは、われわれとしても納得のいきにくいところでございます。この意味におきまして、法案第二十八条に規定する建設または改良費の五〇%の補助率は、これを改め、国において格別の配慮をしていただきたいと思う次第でございます。
また、廃油処理場の運営面についてでございますが、冒頭規制対象船舶の範囲で申しましたように、五百総トン未満の一般船及び百五十総トン未満のタンカーが適用除外になりますと、その料金面において、神戸港の推定試算では、はっきりはいたしませんが、バラスト水でトン当たり五十円程度の高額料金の徴収の必要が予想されるのでございます。そうして、このような高額料金ではたして法の実効性が期待できるかというと、その点、きわめて疑問に思う次第でございます。したがいまして、われわれの予想以上に大きく適用除外船を拡張しました本法案に基づく処理場の運営につきましては、油性汚水処理料金の妥当性をはかり、条約を順守するとともに、国内法の妥当性と実効性を確保しようとする点につきまして、格別の御検討をわずらわしたいと考える次第でございます。
御存じのように日本の港湾は、公共投資の拡張が急がれており、これがために管理者の費用負担は累増の一途をたどっている現状でございます。昭和四十二年度におきまして、神戸市の港湾会計は約四億八千万円程度の赤字が予想されるのであります。また市債の償還も、昭和四十一年度の九億四千万円が、四十四年度には十六億三千万円に累増することどなっているのでございます。港湾管理者といたしましては、自主財源の確保の対策として入港料等についでも考慮いたしているのでございますが、このような事情を十分御賢察くださいましで、国の責任を港湾管理者の負担により解決しようとすることのないように、港湾管理者の立場としてくれぐれもお願い申し上げる次第でございます。
以上、ざっぱくでございますけれども、港湾管理者としての私どもの意見を申し上げたわけでございます。
港湾を含めまして、日本の沿岸から油濁を追放しも社会問題となっております失われてゆく海水浴場を回復するとともに、ノリの養殖その他漁民への被害を防止し得るよう、ひとえにお願い申し上げる次第でございます。
この機会を得られましたことを全国港湾管理者を代表いたしまして心からお礼申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/45
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046・八木一男
○八木委員長 ありがとうございました。
次に、川崎市港湾局長の川崎伸二君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/46
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047・川崎伸二
○川崎伸二君 ただいま御指名をいただきました川崎でございます。
私は、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案に関しまして、地域的な川崎港の問題について御説明を申し上げながら、若干の意見を申し上げたいと思います。
まず、川崎港におきます船舶の油による海水の汚濁状況について申し上げますと、現在川崎市の臨海工業地帯には石油関係の工場、事業所といたしましては、石油精製工場六社、油槽所が十二社、石油化学工場が二十社ございます。これらはいずれも大型または小型のタンカーによる海上輸送にまりまして油の取り扱いをいたしております。そこでお手元に資料を差し上げましたが、三十二年からの油の取り扱い量といたしましては七百八十九万二千トン余り、これが十カ年後の四十一年におきましては二千八百十五万トン、約三・五七倍に増加いたしております。なお、これの海上出入総貨物量と油類との比較でございますけれども、第二表にございますように、四十一年度の実績から申しますと、総貨物量の五一%ぐらい、このような状況になっておるのでございます。なお、入港総船舶とタンカーあるいは一般船舶の割合につきましては、入港船舶は総隻数で六万隻、そのうちタンカーが七二%の四万三千隻、一般船が一方六千八百、二八%、トン数におきましてはタンカーにおいて五三%、一般船舶においては五〇%弱このような状況になっております。
そこで意見として申し上げたいことは、この法案第十条の適用除外船でございますが他の参考人からの意見も出ておりましたが、われわれの港におきますこの六万隻のうち、五百トン未満の一般船舶は、入港船舶の総隻数に対しまして約二二%、トン数において約七%となっております。これらの点から見まして、やはりこの十条の適用除外の範囲をなるべく縮小していただきたいというのが一点でございます。
次は、その次の第四表にございますように、これは小型油送船の百五十トン未満と百五十トン以上の区別をいたしました係留の実績でございます。これによって全部をはかるわけにはまいりませんが、おおむね推定ができるのではないかというように考えます。これによりますと、大体タンカーの入港隻数のうち、隻数においては三二%、トン数においては約一三%、これが百五十トン未満のタンカーということになっております。これも先ほどの意見と同様に、第十条の適用除外ということに法案では規定されておりますけれども、これも同じく先ほど申し上げましたように適用除外の範囲を縮小していただきたい、このように考える次第でございます。
そこで、このように油による汚濁が非常に激しくなっておりまして、先ほど来他の参考人からの御意見もございましたように、港内に漁業権もございますが、これは港内の水質についての調査分析をいたした資料はございませんけれども、具体的な現象といたしましては水産資源に相当の悪影響を与えておるということは明らかでございまして、またこれによって護岸その他海岸施設等が非常に汚染をしております。このこともまことに明らかでございまして、これらはおおむね船舶からの廃油の投棄によるものではないかというふうに考えられます。
そこで、対策といたしましては、これは廃油処理施設の整備がまず先決であろう、こういうふうに考えられるわけでございまして、それによりまして規制をきびしくしていただく、そして汚濁を解消せしむべきであるというふうに考えられます。
そこで私どもといたしましては、運輸省所管の国庫補助をいただきまして、四十二、四十三年度の二カ年度において施設を整備することにいたしておりますが、これによります運営につきましては相当の運営費を要します。われわれの推算では年間約二千万円以上の運営費を要するのではないかと考えます。そこで、他の参考人からの意見もございましたように、私どもの対象といたしております相手方はおおむね小型タンカーであろうと考えますので、この処理料についての適正な御措置をお願い申し上げたいというふうに考えるわけでございます。
以上、簡単で、まことにざっぱくでございますが申し上げまして、法案につきましてはぜひひとつ実現されますようにお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/47
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048・八木一男
○八木委員長 ありがとうございました。
参考人の皆さま方には貴重な御意見の御開陳をいただきまして、ありがたく存じます。
これにて打ち合わせ会を終了いたします。
午後雰時四十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01119670622/48
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