1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十二年七月五日(水曜日)
午後一時十三分開議
出席委員
委員長 八木 一男君
理事 天野 公義君 理事 奧野 誠亮君
理事 小山 省二君 理事 丹羽 兵助君
理事 板川 正吾君 理事 島本 虎三君
理事 折小野良一君
伊藤宗一郎君 塩川正十郎君
砂田 重民君 田村 良平君
地崎宇三郎君 葉梨 信行君
橋本龍太郎君 三原 朝雄君
加藤 万吉君 河上 民雄君
工藤 良平君 中井徳次郎君
吉田 之久君 岡本 富夫君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君
出席政府委員
厚生政務次官 田川 誠一君
厚生省環境衛生
局長 舘林 宣夫君
厚生省年金局長 伊部 英男君
通商産業政務次
官 宇野 宗佑君
委員外の出席者
議 員 角屋堅次郎君
厚生省環境衛生
局食品衛生課長 石丸 隆治君
厚生省環境衛生
局公害部長 武藤き一郎君
厚生省環境衛生
局公害部公害課
長 橋本 道夫君
厚生省薬務局薬
事課長 野海 勝視君
農林省農政局参
事官 加賀山國雄君
通商産業省企業
局立地公害部長 馬場 一也君
自治大臣官房企
画室長 成田 二郎君
—————————————
六月二十八日
茅ヶ崎市円蔵の公害に関する請願(加藤万吉君
紹介)(第一七七八号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
公聴会開会承認要求に関する件
公害対策基本法案(内閣提出第一二八号)
公害対策基本法案(角屋堅次郎君外六名提出、
衆法第一一号)
公害の顕著な地域等における公害防止特別措置
法案(角屋堅次郎君外七名提出、衆法第一二
号)
公害対策基本法案(折小野良一君外一名提出、
衆法第一六号)
公害対策基本法案(岡本富夫君外一名提出、衆
法第二四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/0
-
001・八木一男
○八木委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の公害対策基本法案、角屋堅次郎君外六名提出の公害対策基本法案、角屋堅次郎君外七名提出の公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案、折小野良一君外一名提出の公害対策基本法案、及び、岡本富夫君外一名提出の公害対策基本法案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/1
-
002・島本虎三
○島本委員 これは厚生大臣というよりも、内閣自身の責任者である総理大臣に伺うのが正しいと思うのですが、いまの状態ではこれがなかなか困難でありますので、閣員の一員として責任ある立場にある厚生大臣にこの点をはっきり伺っておいてから、その内容についての質問に入りたいと思います。
〔委員長退席、板川委員長代理着席〕
その一つは、社会保障制度審議会が、ちょうど六月二十一日ですけれども、総理府で総会を開きまして、政府の公害対策についての意見書をまとめ上げて、大内会長のほうから過日総理に対して手渡したということは、大臣すでに御存じのとおりだと思うのです。これは政府の基本法提出を一応歓迎しながらも、同法案が公害審議会の答申から後退しており、公害処理の具体性にも欠けている、したがって、現行法令の制約や産業界の圧力によって公害防止の実効をあげ得ないままにから宣伝に終わり、から念仏に終わる、こういうようなことについての心配がある、このように警告しているのであります。そうして公害行政について、関係法令についても、強力な建設的な提案をしておるのであります。これは総理自身の諮問機関でございますし、総理自身は審議会の意見を尊重するという立場に立っておりますので、人間尊重、社会開発、こういうような基本的な立場をとっております総理としては、よもやその意見をないがしろにするような理由は私はないと思うのです。この際大幅修正して答申の意に沿うようにつとめなければならない、こういうように思うのですけれども、厚生大臣としてこの答申についてどのように考えられましょうか、その責任ある決意を承りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/2
-
003・坊秀男
○坊国務大臣 ただいま御指摘の総理府の社会保障制度審議会、大内先生が会長をしておられるその審議会から、「公害対策について」という申し入れをいただいたことは事実でございます。島本さんはいま答申とおっしゃいましたけれども、これは実は社会保障制度審議会へ公害基本法について正式に御審議を願いたい、こういうことでおかけしたものではございませんが、とにかくこれは重要な法案でございますから一応説明をするようにということがございまして、この法案に対して御説明を申し上げた。それに対して審議会の御意見をちょうだいしたわけでございまして、政府といたしましては、この意見書にも触れられておりますが、「公害行政の一元化につき責任をもつ中央機構を設置し、」云々とか、あるいは「環境基準を設定すること、」とか、それから「迅速な救済措置体制を確立すること、」とか、そういったような御意見がございます。これらのことにつきましては、これは基本法でございますから、今後具体的ないろいろな措置をとってまいらなければなりませんが、そういったときに際しましてこれを参酌いたしまして、この御意見の中で取り上げるべきだと思われるものは取り上げてまいりたい、かように考えております。
そこで具体的に申し上げますと、公害行政機構について一元化しろ、こういう御意見もある。これにつきましては、政府といたしましては各般の角度からいろいろ検討をいたしました結果、現在法案できめておりますところの、これはあとでまた詳しく御説明申し上げますけれども、公害対策会議といったような機構によりましてやっていくことが一番現段階としては適当であろう、こういうことでこれをきめたのでございます。それから環境基準の設定、被害救済制度の整備などにつきましては、実施でき得るものから可及的すみやかに実施してまいる所存でございます。
それから無過失責任につきましては、現在のわが国の立法政策上から、この基本法で一般的にこれを規定することが必ずしも適当ではなかろうと思いまして、その無過失責任ということについての規定はいたさなかったのでございますけれども、今後具体的にいろいろな基本法に基づく措置と申しますか、立法と申しますか、そういったようなことをやっていく上におきましては、これは一つの重要なる課題と考えまして、検討を続けていくつもりでございます。
それから大気汚染の防止法、騒音防止法の制定、これは現在大気汚染にはばい煙規制法等がございますけれども、そういったようなものも、これはひとつ総合的に考えまして、いずれはこれは大気汚染防止法といった大きなものにつくりかえていく必要が今後むろんあろうかと思いますが、そういったような規制の拡充強化をはかってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/3
-
004・島本虎三
○島本委員 大体、意図する方向はわかりました。わかったけれども、それで満足し、それですべて了解という意味ではありません。逐次ただいまの答弁によって質問を繰り返してまいりたいと思います。
まず、政府の基本的な考え方の問題について若干承りたいと思うのです。それは、公害対策基本法の提案までのいわゆるコースは、まことに困難をきわめたように思われます。この点では同情しております。公害審議会の答申に基づいて作成されたいわゆる厚生省試案なるものがあり、その後各省間の意見を調整して出したと思われるいわゆるこの公害対策推進連絡会議案なるものも拝承しており、その後さらに産業界の意見に左右されるまでに意見を取り入れた、こう思われるいわゆる政府原案なるものがあるわけでありまして、二転、三転、四転、ついに世論に押されて提案に至ったけれども、いわゆるこの第一次、第二次、第三次案とだんだん骨抜きになって、現在出されているこの第三次案と申しますか、この政府案なるものは、まさに小骨まで抜かれてしまったという感がなきにしもあらずであります。少なくとも自分の省が出した案よりも全面的に後退したものを提出することは、道義的にも政治的にも、これはやはりその責任上、許しがたいものがあるのじゃないか、こう思っている一人です。厚生省原案のどこが現在出されている政府案より悪かったのか。それと同時に、当初厚生省が考えられておった厚生省試案なるもののように、これは行なう確信がおありなのか。この二つの点をまずお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/4
-
005・坊秀男
○坊国務大臣 最初審議会から答申を受けまして、そうして今度の政府案というものになるまでに、非常にいろいろな経過をたどってまいっております。いつも申し上げますとおり、公害関係の行政各官庁というものは十四もあるというようなことでございまして、しかもこれがわれわれの生活万般に関係の多い事項を規定するものでございまするから、そこでいろいろな方面からいろいろな御意見があるということは、これはもうやむを得ないことでございまして、そういったような御意見を承りつつ、あるいは連絡会議、あるいは総理府といったようなところで、この成案まで持ち込んでまいったのでございます。その間もちろん最初の審議会案どおりということではございませんけれども、ただいま島本委員は小骨まで抜かれてしまっておるという表現をなさいましたが、これは小骨でない、おそらく大骨の間違いだろうと思いますが、大骨まで抜かれてしまっておるじゃないか、こういう御意見でございます。
〔板川委員長代理退席、委員長着席〕
私は決して大骨が抜かれたとか、大多数の小骨が抜かれた、かようには考えておりません。公害対策基本法は、いずれにいたしましても、人間尊重の基本的な考えの上に国民の健康と生活環境の保全についての基本的事項をきめようとするものでありまして、その点、厚生省試案要綱と前のものとの隔たりは、そんなに大きくはないと思います。ただ、法文化の過程におきまして、基本法としての性格や、あるいは法律技術上の問題、各省にわたる——先ほども申し上げましたが、広範な施策の相互の調整などの見地から若干の修正を加えてもおりますし、それから公害対策基本法として示されるべき理念につきましては、これは決して後退はいたしていない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/5
-
006・島本虎三
○島本委員 これはやはりいま大臣が言ったことに私は納得することができない。大骨はとっくに抜かれて、残された小骨まで抜かれて、骨らしいものはなくなっている。したがって、この出された原案、政府案なるもの、これは厚生省の原案に比べてどこが悪かったのですか。厚生省の原案のどこが悪くて、こういうような現在の政府案を出さなければならなくなったのかということ、同じだというならばいいんです。それよりもっといいからこれを出したということならいいんです。悪いものを出したということなら、これはとんでもないことだということなのですが、なぜ厚生大臣でありながら、厚生省試案といういいものがありながら、後退したと思われるこれを出したのか、ここなんです。したがって、厚生省試案のどこが悪かったのか、これを聞いているんです。
それともう一つは、あなたはいま政府案として出した責任者ですから、当初案、自分の省でつくった試案、この線まで完全に行なう確信がおありなのかどうか、この二つを聞いたのです。なかなか答弁がうまくて、これはもうだいぶそらしてしまってありますから、もう一回この二つを特に摘出してお伺いをいたします。明確にお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/6
-
007・坊秀男
○坊国務大臣 厚生省の出した原案のどこが悪くていまの案にしたのか、第一点はこういう御意見でございます。私は、厚生省の案とこの案との中には、これはいろいろ総合的調整の過程におきまして、若干の修正も行なわれておるということは申しましたけれども、その理念におきましては、これは厚生省の案のほうが非常によくて、そうしていま出しておる案が悪いとは決して申し上げていません。だから、そのどこが悪くてどうだということを答えろとおっしゃられましても、私は総合的な観点に立ちまして、現在御審議を願っておる法案と厚生省の原案との間にそんなに大きな隔たりはないものだ、かように考えておるのでございます。
それで、第二点につきましては、それじゃもとの案にまでこれを押し戻すかという御質問でございますが、私はもとの案に押し戻すということでなしに、この案について御審議を願って、何ぶんこの案を御決定願いたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/7
-
008・島本虎三
○島本委員 まだ誤解なすっておる。第一の点で厚生大臣の意見はわかりましたけれども、立案当局もおります。これは部長、課長、いま大臣がおっしゃったとおりですか。
それからもう一つ、大臣、これはもう当初の案のとおり政府原案で行なう自信があるのかということなんです。あるかないか、イエスかノーか、やるかどうか、そこをごまかしてはいけません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/8
-
009・坊秀男
○坊国務大臣 政府原案でやるかどうかということにつきましては、これは国会の御審議にまたなければならないものでございますが、私といたしましては、ぜひともこの政府原案でもって御決定を願いたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/9
-
010・武藤き一郎
○武藤説明員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、厚生省の原案と現在提出されております公害対策基本法との間に基本的な考え方については決して後退しておるものではございません。ただ、大臣がいま触れられましたように、法案作成段階におきまして、法律技術上の問題とか、あるいは各省との最小限の調整とかいうものがございましたことと、そのほか厚生省の原案では、たとえば公害防止地域というようなものにつきまして指定制度をとりますとか、あるいは行政機構につきまして公害防止委員会というようなものを提案しておりましたほか、若干の具体的な問題について規定をしておりましたけれども、そういうような問題につきましては、基本法という性格からいたしまして、主として理念的な基本法の範囲にとどめて、そのほかの問題は今後の実施法に譲っておるわけであります。だからといって、実施法の段階におきまして厚生省が考えておりましたような点とか、あるいは先生が御希望されるような点につきましては、それが実施段階におきまして入っていかないというようなことは絶対ないと確信しております。ただ行政機構の問題につきましては、先ほど大臣も触れられましたように、公害は非常に多岐にわたりますので、一つの行政機構として、自動車の問題あるいは大気汚染の問題その他都市公害の問題を一緒に取り扱う機関をつくらなくとも、対策会議というものを設けまして、強力に総合的な施策を決定して、それぞれの責任分野の官庁が責任を持って実施するということでいいのではないかということで、原案のような形に落ちついたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/10
-
011・島本虎三
○島本委員 いま大臣並びに部長が申されましたことは、私はそのとおりであればいいとこいねがうものです。そうなりませんことを、次から次へとこれから徹底的に質問してまいりますから、ひとつ明確に答えていただきたい。
では第一点、これは公害対策基本法のいまの基本的な考え方の二番目になるわけですが、具体策との関係になります。いませっかく部長がそれをおっしゃいましたから聞きます。公害というものがどうしてできたかということは、大臣も御承知のとおりですから、あえてここで繰り返しません。これは一つの顕著な事実であって、もうすでにこれを論ずる段階から対策の段階に入っておる。したがって、これは具体的な社会問題ですから、一日も解決をゆるがせにはできない。公害予防と公害の排除と公害の被害の救済、この三つが柱になって、これから具体的にこれを行なわなければならない。もう、一つの社会的な問題になっておるのです。したがって、迅速的確にこの目八体策を明確にしなければならない現在の段階であるがゆえに、ただ単に宣言的であったり、公害防止の理念もしくは抽象的な原則の制定にとどまって、大事な具体策については別に定める法律に委任されるようなものでは、全然具体性に乏しくて、実行性に疑問がある、こういうようなことを言わざるを得ないのじゃないか。いわば本気で取り組む姿勢を口頭だけは示しておりながらも、真実取り組む姿勢はとっておらないじゃないか、こういうことの懸念があるわけです。したがって、もしそうでないというならば、具体的な制度並びにその対策の方向を基本法自体に明記できないという理由について伺いたい。そして緊急に必要な施設法というものは、いま何を考えて、何本くらいあるのですか、これをひとつ具体的に答えてもらいたい。実施法のことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/11
-
012・武藤き一郎
○武藤説明員 実施法はどういうものを考えているか、こういう御質問でございます。公害対策基本法の二十一条によりますと、事業者の費用負担のことを規定しておりますが、この事業者に費用を負担させる場合の細部につきましては、別に法律をもって規定するということが明記してありますので、これは今後この法律を早急に作成する必要があるということでございます。
それから公害対策基本法の対象となっております公害の中で、騒音、悪臭等につきましては、まだ法律的な規制の対象となっておりません。したがいまして、先ほど大臣が申されましたように、今後騒音等につきましては騒音防止法といったものを考える必要があろうかと思います。
それから現国会に提出されております法案としましては、先生も御承知の船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律とか公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律、そういうものがございます。また土地利用関係では、現在建設省のほうで都市計画法の全面改正を計画しておりまして、近く政府部内としても最終法案を決定することになろうかと思います。そのほか、ばい煙規制法等につきましては、先ほど大臣が申されましたように、大気汚染防止法といったような方向で検討が必要かと思いますし、また水質保全法等につきましても、さらに現在の実態を考えまして、より厳格に改正するということも必要になってこようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/12
-
013・島本虎三
○島本委員 大臣、いま答えた程度ですか。そのほかにお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/13
-
014・坊秀男
○坊国務大臣 いまの時点におきましては、ただいま部長からお答え申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/14
-
015・島本虎三
○島本委員 予防と排除のほうについての具体的な案は、これからこういうような法律でやろうとするような案はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/15
-
016・武藤き一郎
○武藤説明員 ただいま申しました法律の中にはもちろん具体的な公害の規制をやる法律がありますので、そういう法律の中では予防的に排出規制をやっていくということが当然含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/16
-
017・島本虎三
○島本委員 まっ先に費用負担の面で法律をもって早急に対処したいという御答弁があったようです。法律をつくっても、これは早急に対処するその内容の問題が大きいウエートなんです。いままで法律が幾つあっても、阿賀野川のような問題、水俣病のような問題が平気で放置されているのが現実ですから、つくられる法律の内容が一番問題なんです。これはつくる予定だ、これだけじゃまだ仏もつくられておりませんし、当然それに入れられる魂もうかがい知ることができないわけであります。騒音その他について、これはきわめて常識的なことであります。いままで、船舶、それから騒音、こういったようなことをやったと聞いておるのでございます。審議しましたし、当然やりました。やはりこの中にもまだ抜けている点があるのであります。しかし、これをもって十全だとはまだまだ考えられない。十全だと考えられないのに——これからつくる内容が十全でないという前提の上に決して立ちませんけれども、まだまだこの点では心配な点が多い。こういうような点で、この費用負担の点はあとからじっくりお伺いをいたしますので、次の質問に移らせていただきます。
私はあまりこういうことは言いたくないのでありますけれども、政府案は、理念的な意味で、行政の姿勢を変更させるという意味では確かに効果があると思います。私はそれは決してマイナスだとは申しません。それはけっこうなんです。ただ、いま申し上げましたように、ちょいちょいと重要な問題を避けて通っているような傾向がないかということを私は心配するのです。重要な問題を避けて通ってはいけません。したがって、当面の対策、これは重化学工業を中心とした産業の災害を具体的に防止、排除することであり、かつ被害者の救済を具体的にしてもらうということが問題であります。したがって、この基本法は企業の費用分担というような点まではっきり具体的に触れておかなければならないはずのものです。被害者の救済といったような点につきましては必ずしも明確であるというようには私は受け取れません。また排出基準の問題にも、今後に残されている点が多いのはまことに残念であります。最も差し迫った、何とかしてほしいというようなものに対して、はっきり明確な基準を示しておらないということは、私は問題点の一つだと思います。なぜ私がこれを言うかというと、いままで基本法はだいぶ上がっております。農業基本法も中小企業基本法もあるのです。しかしながら、現実の効果という点では、私は、やはり基本法があっても、その点においては多分に疑義がある。ことばを決して悪く言うわけではありませんけれども、農業基本法ができて以来、日本の農村は有史以来の危機に立っており、あえて言うと崩壊を示しておるような現状です。それと同時に、中小企業基本法ができて以来、中小企業は史上最高の倒産を記録しておる。つまり基本法が隠れみのになってしまうということ、これを私どもは一番おそれるのです。社会党もこういうような点をおそれているのです。したがって、そこに社会党原案なるものもはっきり出してあり、きわめて具体的にその方向を指示しているのです。そういう点で、ここで肝心な点を抜くと隠れみののような様相を呈してしまうのが基本法の一つの特徴なんです。これを隠れみのにしてはならない。したがって、そうしないためには、具体的な施薬が怠られてはならない、こういうように思うわけです。これは人命にかかわるほど重要な問題でありますから、従来の基本法というようなものとこの公害対策基本法とは、これは同列の段ではないと思っております。この公害対策基本法のほうが、人命にかかわるがゆえに、数歩これは重要だと思っているのです。大臣は私のこの見解に対して賛意を表しますか、いままでの基本法と同じだという考えですか、この点をまずはっきり伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/17
-
018・坊秀男
○坊国務大臣 私は、基本法が幾つもあって、それで公害対策基本法と農業基本法あるいは中小企業基本法、それらの法律の中に優劣というものを考えるということはちょっと考えものでございますけれども、しかし、その扱っておる内容とするものは、公害対策基本法は人間の生命なり健康を守っていくためにつくられる法律でございますから、とにかく人間として最も大事なものはこの世の中に存在していく、こういうことなのでございまして、一口に産業と人間の生命それから農業といろんなものを比較してまいりますときに、何といってもそれは生命が一番大事でございますけれども、私はその時とその時の環境の関係といったようなものから考えまして、そういったような場合にここで一体何が大事かというようなことも考えてまいらなければならないと思いますけれども、一般的に申しまして何よりもこれは命あってのものだね、こういうことがいわれておるのでございますから、この公害排除ということは非常に大事であるということだけははっきり申し上げることができる、かように思います。しかし具体的にその場所、その時ということを頭に入れてまいってみますと、ここにまたいろんな考え方も生じてくるであろう、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/18
-
019・島本虎三
○島本委員 したがって、大臣は、やはり主管大臣としても主管官庁としてもこれは重点的に、この問題に対しては他のいかなるものより大事なんだという考え方を持って臨まなければ、いままでは、私が言ったように、いろいろデータがございますけれども、基本法かてきてなおかつ——農業基本法の場合は新しく立法したものが四つ、他にいろいろ改正しておりながらも、現在のような状態を招来しておるわけです。中小企業基本法にしても、特にそのために新しくつくった法律が二件で、そのほか改正をしておりますけれども、現在私が述べたような状態に逢着しておる。いかにこれが重要であるか、これはそれぞれみんな考えているはずなんです。考えておるはずの先輩である基本法もこういうような状態にあるのです。したがって、これで具体的な政策をもってびしびしやっていくのでなければ、隠れみのになってしまうおそれがあるのが心配だ。これは国民の声ですよ。私は、坊厚生大臣はこういうような考え方は決して持っておらない、こう思うがゆえに、これは人命にかかわる重要な問題だから、この問題だけは特に関係立法のほうはこれに並行して、またその立法の一つ一つの中に小骨まで抜かれないような配慮をした上で十全の策を講じてもらいたい。そうでなければ隠れみのになりますよ。こういうような一つの国民的な危惧をいま厚生大臣にぶつけているんです。おわかりでしょうか。おそらくはこれが通ってしまったあと、居眠りしていたならば、他の基本法と同じような轍を踏まないということは断言できません。私はそこが心配なんです。したがって、そうじゃない、これだけは特に自信があるんだ、こういうようなかたい決意があるならば、あえて厚生大臣にもう一回ここで国民のために表明してもらいたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/19
-
020・坊秀男
○坊国務大臣 島本委員から非常に力強い御激励を受けて、非常に感謝をいたします。私はこの公害対策基本法が隠れみのになるというようなことには絶対にいたさない、かように考えております。
そこで、この基本法を今国会において御審議御決定を願いましたならば、この基本法の方針に基づきまして、これから逐次できるだけすみやかに具体的な措置を、あるいは立法によって、その他の方法によって講じてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/20
-
021・島本虎三
○島本委員 いま大臣が答弁されたその趣旨にのっとって具体的に各種公害に関する個々の規制法令があるわけですけれども、またできるわけですけれども、その整備というものも今後重大化してまいります。従来公害関係の事件が多く、かつ解決のむずかしい理由、これには各種公害の個々の規制関係法令が主管官庁において区々に処理されておる、そうして相互的一貫性に欠けておる、したがってその効果をあげ得ないものも多かったわけです。私は、今後は相互的な一貫性を持つこと、その点に力点が置かれなければならないし、基本法目的達成のためにも区々にまちまちになっている公害関係法令を一元的に、かつ系統的に整備しなければならないと思っている。これは十四省庁にまたがっている現状ですから、これが個々にできて、個々にやっていたならば、そういう結果を招来することは当然だと思います。私はそういうような現状のままで基本法を認めても、これは仏はつくっても、ついに魂も入らない結果になるのではないかということをおそれております。したがって、この点は、各種公害に関する個々の規制法令の一環性を持つこと、また系統的にこれを整備するという点が重要だと思います。この点について大臣はどのように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/21
-
022・坊秀男
○坊国務大臣 お説のとおり、公害関係の行政各官庁が非常に分かれております。さようなことでもって一元化ということがむずかしいじゃないか、こういう御意見でございますが、そういうことを総合的に統一的に対策を立ててまいりますために、行政各省庁の長を委員といたしまして、それに行政最終責任者である内閣総理大臣を会長とする一つの対策会議というものを設けた次第でございまして、御趣旨に沿ったような対策をそこで調整、打ち出してまいりたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/22
-
023・島本虎三
○島本委員 それと同時に、今度は公害行政の一元化というような点も、先ほど大臣も述べられましたけれども、これも重要なものである。この公害対策は、国の基本的な重要な施策として、国の責任において一元的に強力に中央機構を設置して施行せられることが第一義ではないか。同時に、地方公共団体が地方の具体的実情に応じてさらに強力な対策を講じられるようにしておいたほうがいいのじゃないか。すでにそういう例もあることでありますけれども、この相互関連はまことに重大だと思うのです。私どもも八木委員長以下、先般公害の実情を視察してまいりましたが、この点は、やはり川崎、横浜を通じてつぶさに見れば見るほどこれを感じてまいったのです。したがって社会保障制度審議会の意見書にもこの点ははっきり指摘しておりましたけれども、この系統的一元的かつ強力な公害行政機構については、やはり、大臣からも先ほどそのようにしていきたいという趣旨が述べられましたが、これは中央、地方との関係で、公害行政の一元化と口では言っても、なかなかこの点は言いやすくして行ないがたいような結果が出ては困る。この公害行政の一元化について、大臣は矢ほどさらり流した答弁がございましたが、あらためて聞きます。どのような方法でこれを行なわんとするのか、これを明確にお答えを賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/23
-
024・坊秀男
○坊国務大臣 政府案によりますれば、ただいま申し上げたとおり、各行政省庁の長をメンバーといたしまして、その上に最高責任者である総理大臣がその会議体の長としてやっていくということを申しました。なぜそういうことにいたしたかと申しますと、一つの例として、札幌について申し上げますと、札幌における都市公害というものが非常に大きいものであるということは島本委員からも常にお聞きしておりますし、私どもも十分認識しておるのでございます。札幌における都市公害の中の一番大きいのは確かに冬の暖房によって煙突から出るばい煙、それからまた自動車の排気ガスといったようなものも大きな原因であろうと思います。それからまた札幌近郊等に工場もあるだろうと思いますが、そういったものが原因となって、札幌の都市公害といったようなものが形成されておるということを考えるのでございます。その原因について考えてみますと、暖をとるために燃料を燃すわけでございますが、その燃す燃料というものはおそらくは油か石炭か、そういったたぐいのものでございましょうが、通産省関係のものであろうと思います。それから建物等そういったものについては建設省の関係であろうと思います。それからまた自動車の排気ガスというようなものは、これは自動車をつくるときにその自動車の排気ガスをできるだけ自動車の中において処理するという施設を持っていかなければならないというようなことは通産省でございますが、またその油をどうするかというようなこと、また北海道でも相当交通がふくそうするときがあろうと思いますが、これは道路関係といったようなものがあって建設省、そういうように考えてまいりますと、一つの公害をとってみましても、そういったようないろいろな各省にまたがるものが集積されまして公害を発生しておるというようなときに、ただ出てくるその公害だけをとってきまして、そういったような異質のものを持ってまいりまして、一つの行政機構といったようなものをつくるよりも、それぞれのそれらを所管いたしております各省庁の長が一つの会議体に集まりまして、そしてこれを処理していくということのほうが、私は、これは現実的な行き方ではなかろうか、かように考えまして、今度のこの基本法における会議体というものをとった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/24
-
025・島本虎三
○島本委員 いよいよ重大な様相を答弁の面に帯びてきたようでございます。社会党の立案者もそろったようでございます。したがいまして、私は、いま大臣からまことに自信に満ちた答弁をいただいたわけでありますが、しかし私は十分それを聞いていながらも、現実の面で不安なのです。というと、従来の公害行政、これはやはり各主務官庁によってばらばらであったということは、皆さんも御存じのとおりであります。しかし、それを是正して、今後は一貫性、それと同時に実効をあげる、こういうような点からして、強力な公害行政がいまや必要になってきた実行の段階なんですから、もしそこに力点が置かれるならば、大臣、当然これは総理府に直属した行政機関を置いて、その権限については、公害関係法令の立案だとか、また公害防止計画の策定だとか、環境基準並びに排出基準の設定だとか、監視、測定、事業者の費用負担割合の判定、こういうような国が行なう公害行政の施策の一切を総合的に推進する、こういうふうな機関をつくるほかに、被害の救済とか和解、仲裁、こういうようなものも行なって、いわゆる準司法的機能を持つ独立の機関にしたほうが、いま大臣が言ったことを一番スムーズに行ない得る行き方じゃないか、こういうふうに私は思うのです。したがって、私は大臣に重ねて聞きたいのは、政府原案でいま大臣の説明をよく承りましたけれども、私は、公害対策基本法、またその関係法令が重要であると思えば思うほど、これな政府原案このものに対して、もっともっと修正を加えなければならないと思った。いま大臣が言ったそれによりましても、総理大臣が長で閣議と同じような対策会議の域を出ないんじゃないか。こういうような機関はいままでもやっておりましたから、関係各省の連絡の機構、こういうような役割りを果たすに過ぎないような結果しか期待できないんじゃないか。そして公害行政の強力な推進機関、こういうようなものであるということにおいては、少し疑問を持たざるを得ない。この政府原案のままで真に実績をあげられる、こういうような確信があるならば、これは具体的に答えてもらいたい。いま御提案になった政府原案によって——たとえば水俣病や阿賀野川のあの中毒事件、こういうようなものが起きておりますけれども、これに対処するために被害者の援護、救済、これを、では、どういうふうにして行ないますか。また、医療や生活の保護、こういうようなものをどのようにして行ないますか。これをまず承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/25
-
026・坊秀男
○坊国務大臣 私は、現段階におきましては、各行政庁の長が集まりまして、そこの会議体においてきめたということにつきましては、これはそれぞれの責任を持ち、また権限を持っておる、厚生省については厚生大臣が責任と権限を持っておる、それが、その会議体においてきめたということにつきましては、これは実施するという義務が課せられるわけでございますから、別個の機関というものよりも、その義務を課せられたところの、しかもそれがその省の責任者であるということで、これは実行が可能なものである、できるということを私は考えております。
それからまた、その会議体においていろいろなことをきめていくということにつきましては、これは公害対策基本法におきまして、いろいろの基本的な方針、たとえば環境基準にいたしましても、排出基準にいたしましても、それから責任の所在といったようなものにつきましても、この基本法によって規定せられておるのでございまするから、その線に沿った会議の結論が得られる、そういうことでありますならば、それについてそれぞれ関係各省の長が、これはその実現の重大なる責任を課せられるわけでございまするから、これはやっていけるというふうに考えております。
なお、例示になりました阿賀野川の問題につきましては、これは今日、いつも申し上げますとおり、まだ基本法も何もできておりませんけれども、この阿賀野川の問題につきまして、いま厚生省におきまして、また政府におきまして、その実態の調査をいたしておるわけでございまして、この実態の調査が七月一ぱいぐらいに、厚生省における食品衛生調査会の結論が出されるということでございますので、その調査を待ちまして厚生省の意見をまとめて、そうしてこれを科学技術庁に持ってまいる。科学技術庁は、農林省、通産省といったような関係各省からの厚生省の意見書のようなものを、それぞれの関係各省からとりまして、そこで政府の方針をきめる、こういうことに相なっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/26
-
027・島本虎三
○島本委員 したがって、いままでと同じようなやり方をしておりますと、いかに強力にこれをやるといえども、厚生大臣がひとりこれを強力にやろうとしておっても、あなたの指揮下にあるこの調査班のこの結論が出ても、厚生省の結論とするためには、これはまだまだ時間が相当かかるだろうし、これをまた政府の結論とするためには、まだまだ日数がかかる。七月一ぱいということのようでありますが、そうなりますと、あなたのほうで出す結論というものを的確に早く出すことが、これがもう政府の結論を的確に早くまとめさせる一つの根幹なんです。政府のほうでは、専門家をいろいろ控えておりましても、この道では厚生省の持つ機能以上のものを持っているところはないでしょう。したがって、もう厚生大臣のほうで責任を持ってやれるような、こういうような機構にしておいて、一貫性があったならば、その処置も一番早くいくということになるのです。いまのとおりにしておって、これはいかにやっていても、各省庁ばらばらのようなこういうような行政のもとにあっては、おそらくは隠れみのになる心配のほうが先に立ちはせぬかと私は思うのです。そのためには、法令を一元化し、これをちゃんと整備して、それから、行政機構も一元化して、いま申しましたようにこれをやることが、たとえばこういうような阿賀野川や水俣病のようなこういう被災者に対する救済の道でも、今後の処置の方法でも、早く取り得るのです。私はそういうような状態を具体的な例をもって聞きたいのですが、これだけだったら、やはりまだまだ各省庁間の意見を調整して出さなければならないような行き方では、具体的な問題が発生した場合には、政府案においては、特に現在よりももっとよくなるという確信ができないじゃありませんか。私はそこが心配なんです。できたならば、たとえば阿賀野川の問題でもこのように早く処理できますという例証をあげて説明してもらいたい。私はこれが心配ですから、やはり社会党案にあるような一元化したような強力な行政機関の設置が必要だと思います。大臣の答弁のあったあとで、社会党案の提案者から社会党案の意味する一元化の問題についても御答弁を賜わりたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/27
-
028・坊秀男
○坊国務大臣 私は実態の把握と一元化ということとは、一元化をしたからといいましても、実態の把握ということがそれより非常に早くできるかどうか。ただそれに対する対策を一元化したからできるということは私も考えませんけれども、しかし、これに対する対策について、公害の一番の第一次的な責任者というものは、何としてもこれはその原因者である。産業の場合には産業をやっておるものである。公害の場合には先ほども申しましたとおり、いろいろなこともありましょう。そういったものの原因者をいかにしてこれをつかまえるか。それをつかまえないで、わけがわからぬなりにこれに責任を持たすということも、これはちょっとどうかと思われるということでございます。多くの公害というものは、不特定多数の原因者があるわけでございますけれども、その不特定多数の原因者の中で一体だれがほんとうの原因者であり、だれがその次の原因者であり、だれがその次の原因者であるか。最後にもう一つ工場かあるけれども、これについては煙突はなるほどあるけれども、しかし公害を発生するようなそういったような原因者でないといったような場合も私はあろうと思うのです。そういう不特定多数の集団によってある地域に公害が発生したという場合に、そういうものをどういうふうにこれを追及していって、探求していって、見つけるかということも、責任を持たすためにはこれを見つけてかからなければならない。こういうようなことで、そのためにしからば何か島本委員のおっしゃるような機構、一つの行政機関といったようなものをつくったところで、その原因者の探求、原因者の把握ということがそれほど早く行なわれるということは私はどうも考えられないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/28
-
029・島本虎三
○島本委員 大臣の答弁は少し不満ですから、私は社会党の答弁をちょっと求めましたが、大臣の答弁が完全であった上に立って求めたのです。これでは全然社会党の答弁は要りません。大臣にもう一回具体的に聞きます。私は阿賀野川の問題、水俣病の発生した経過と処置についての現在のような各省庁のこういうような状態を、そのまま連絡会議的に認めていくような政府原案で完全に実施できるか。あなたはやり得る、こう言うのだけれども、こういう点は心配なのです。私は法令一元化、行政機構の一元化によって国家行政組織法第三条によるところの強力な準司法的なこういうような権限を得たところの機関にしてやったほうがよろしいと思う。現在大臣が言うように、この提案されている基本法によってやり得るという確信があるならば、阿賀野川の事件、それから水俣病の問題に対しても、はっきりこれに対処する具体的な方法を示してもらいたいということで聞いておるのです。何かその点は私はそらされたように考えます。
じゃ、具体的に、私なりに調べたデータによってお伺いしたいのは、この水俣病の調査、こういうものが厚生省の手並びに熊本大学の手によってデータが出された。しかしながら、その後いろいろと通産省関係から話し合いがあったのかどうか知りませんけれども、だいぶ対策が延びておったような状態であった。したがって、政府の結論を出さなければならないときに、その結論を出すことを避けて、そして補償や再発防止等の処理対策、こういうようなことをうやむやにしてしまった結果——やはり禍根はこのときの政府の怠慢から始まったのではありませんか。そういうように考えた場合、いまと同じような行き方でそれぞれ話し合いだけをもってやるということになれば、第二、第三の水俣病も発生するでしょう。それと同時に阿賀野川の問題の解決にも何らいい結果をもたらさないだろう。このことをおそれて、具体的にこれでもこういう点ができますよという方法を聞いたのです。しかし、大臣からさっぱりこれに対して具体的な答弁がないのです。ないということは、いままでと同じというような結果でありませんか。これでは公害対策基本法ができても、結局は魂を入れないような結果になってしまい、これが隠れみのになってしまうことを、どうしてそうじゃありませんということの表現になりましょうか。私は、具体的に阿賀野川の問題並びにこの水俣病の問題、これは公害対策基本法ができたならば、こういうように完全に処理するから心配要りません、こういう問題について答弁を聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/29
-
030・坊秀男
○坊国務大臣 ただいまの阿賀野川の問題は、厚生省が調査班を出して調査しておるわけでございます。ところが今度この公害対策基本法に規定されておりまする対策会議ということになりますと、その対策会議のもとに各省の次官級と申しますか、そういったようなものが幹事会を組織いたしまして、その幹事会で対策会議の指示に従い、いろいろなことについて審議協議いたしまして、それが対策会議へ上がっていく。そして対策会議で決定いたしましたならば、またこれを幹事会におろす。そうするとここには各省のそれぞれ責任のある事務の最高の責任者が出ておりまするから、厚生省が調査するということでなく、公害対策会議、つまり非常に総合的な会議のもとにおける幹事会においてこれを受けてやるということでございますから、それぞれの各省庁を動員いたしまして調査を進める、こういうことに相なるわけでございます。なおそれでもいかぬじゃないか、こういうお話があるかもしれませんけれども、いまの阿賀野川でやっておることに比べまするならば、私は数歩の前進であるということを信じておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/30
-
031・板川正吾
○板川委員 関連。いまの発言で公害対策会議というのが政府案の二十四条、二十五条にありますが、どこに幹事会があるということがこの法案にうたわれておりますか。「幹事を置く。」というだけじゃないですか。幹事会というのがどこにありますか。法律の上で幹事会というものと対策会議というものがどういう関係にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/31
-
032・坊秀男
○坊国務大臣 第二十五条四項に「幹事を置く。」とあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/32
-
033・板川正吾
○板川委員 大臣が島本君の質問に対して、対策会議に幹事会というものがあって、そうした救済や何かの問題について具体的に活動するかのごとく言うから、それは法律のどこにありますかと聞くのです。対策会議には「幹事を置く。」というのがあります。幹事の任務はといえば「会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。」とあるが、幹事会というものがどこにありますかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/33
-
034・坊秀男
○坊国務大臣 法文上は幹事会ということがうたわれておりませんけれども、幹事を置いて、幹事は一人でいろいろなことをやっていくということではなくて、その幹事は、先ほども申し上げましたとおり、各省庁のそういったようなクラスの人が幹事として任命せられるのでございますから、そういった幹事が集まりまして審議をやる、こういうことに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/34
-
035・板川正吾
○板川委員 関連で悪いけれども、幹事を置くんだ、そうして幹事の任務は「会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。」というのが任務、これは政府案にあるのですよ、第二十五条の第六項に。だからその幹事会というのがあって、それが被害を受けたり何かする場合に具体的救済の行動をとるということを言っておる。大臣はそう言っておるんじゃないですか。それならいま何も各省に次官がいて、次官がそういう所掌事務について何か指示をしたり何かするのと同じじゃないですか。別にこの基本法によってそういう紛争等が円滑に処理されることには法律上は関係ないというのです。いまと同じでしょうというのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/35
-
036・坊秀男
○坊国務大臣 いまも、閣議もあり、また次官会議もあります。ありますけれども、ここにきめられまする公害対策会議というものは公害対策基本法に基づいて、公害対策基本法の趣旨、方針といったようなものを実現していくための公害対策・会議であり、それからまたそのもとに幹事が置かれるということは、これは公害対策基本法に基づいたところのその公害対策会議の幹事である、こういうことでございますから、いまあるのと同じだということではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/36
-
037・板川正吾
○板川委員 いいですか、だから幹事がやるなら、それは任務は「会長及び委員を助ける。」ということなんだよ。そういうことの中のどこに一そういう具体的な問題を解決するということが法律のどこに出ておりますかというのです。こちらの質問は阿賀野川やあるいは水俣のように、そういう被害事実が出ておって、それがいつもうやむやになってしまっておる、公害対策基本法ができればそういう問題を具体的にどこが解決してくれるのですかという質問だったのです。そうしたら大臣が、幹事会があって、幹事会がやると言う。その幹事会があったかもそういう問題を取り扱うごとく言うから、法律上ではそういうことはありません、現在各省の関係次官なりが所掌事務の関係からいってそういう公害の被害問題は取り扱います。指示いたします。それはあるでしょう。しかし、それでは次官が幹事になって、そうして何か仕事をやるということは、いまとちっとも変わらないじゃないか。だから公害対策基本法ができたために、救済問題が急速に円滑に解決するということとは関係ないでしょうということです。それを言っておるだけです。だから、質問に対してまともな答えをしてないからおかしいというのです。そんなことで審議をいいかげんにされては困る。大臣、どうも健保のことが気になって、心が社会労働委員会にばかり行っておるのじゃないですか。質問の要点がわからないのです。そうしてわけのわからぬことを言ってごまかしておる。そんなことで審議になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/37
-
038・坊秀男
○坊国務大臣 事件が生じますと、それに対する基本方針、どうしていくかという基本方針については対策会議がきめるわけです。その対策会議がきめたことについての、いろんな調査だとかあるいはこれを具体化するとかいったようなことについては、そのもとになる各省から出ておる幹事がございますから、それが実際の事務的——と言ってしまうことはできませんけれども、それに基づく具体的な方針については幹事がその方針に従って具体的なことについてこれを助ける形をとります。そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/38
-
039・島本虎三
○島本委員 大臣、いまの答弁については十分考えて、あとから補足する点がありましたら補足してもらいます。ただ私はいま聞いていながらも、なおこれをもって強力にやれるんだという、この執行体制の中にも若干の疑問が当然生じてきたわけです。
それで聞きたいのですが、これは所管官庁はどこになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/39
-
040・坊秀男
○坊国務大臣 この対策会議は総理府でございます。しかし、その庶務は厚生省がやる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/40
-
041・島本虎三
○島本委員 そうすると、所管大臣はどなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/41
-
042・坊秀男
○坊国務大臣 対策会議の所管は総理府でございますから、総理府長官です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/42
-
043・島本虎三
○島本委員 所管大臣は長官ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/43
-
044・坊秀男
○坊国務大臣 対策会議の所管は総理府長官です。しかし、その庶務は厚生省、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/44
-
045・島本虎三
○島本委員 その辺はどうなんですか。頭が二つ、または一つだけれども、おもやを貸してあるのですか。これはどうなんですか。はっきりしてもらわないと進められないじゃありませんか。総理府だというのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/45
-
046・坊秀男
○坊国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、所管は総理府長官になっております。ところが、その中の庶務は厚生省がやっておる。こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/46
-
047・島本虎三
○島本委員 所管大臣はどなたなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/47
-
048・坊秀男
○坊国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、対策会議の所管は総理府長官で、その対策会議の中の庶務は厚生省がやる。こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/48
-
049・島本虎三
○島本委員 そうすると、この公害関係の主務大臣、主管大臣はどなたになっておるのですか。総理府長官ですか。それとも総理大臣ですか。各省大臣だとすれば、やるのは当然総理でなければならないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/49
-
050・坊秀男
○坊国務大臣 この公害対策基本法については厚生省が所管でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/50
-
051・島本虎三
○島本委員 それから所管大臣は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/51
-
052・坊秀男
○坊国務大臣 対策会議は厚生省と違いますよ。基本法については——事務当局からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/52
-
053・武藤き一郎
○武藤説明員 お尋ねの公害対策会議の所管は、第二十四条に書いてありますように、総理府に付属機関として置くとありますので、総理府長官でございます。
二十五条で「会議の庶務は、厚生省環境衛生局において処理する。」ということでありますので、この会議の庶務は厚生省の環境衛生局でやるようになっております。
それからこの基本法の所管大臣はどこだ、こうおっしゃいますが、これはもちろん関係するところは十幾つの省がありまして、それぞれ関係するところはそれぞれ主務大臣が関係大臣でございますけれども、基本法の主たる主務大臣は、厚生省がやりますので、現在厚生大臣が主として答弁に当たっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/53
-
054・島本虎三
○島本委員 主たる官庁というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/54
-
055・武藤き一郎
○武藤説明員 公害対策基本法の主務官庁は厚生大臣でございます。ただ各省はそれぞれ公害対策基本法に関係しておりますので、関係する範囲で所管大臣になる。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/55
-
056・島本虎三
○島本委員 そうしたら各省大臣が全部所管大臣である。したがって、今度はこの公害対策基本法だけは総理府である。だけれども、答弁は厚生大臣である、責任は各大臣全部である、厚生省では庶務を担当しているのである、全部てんでんばらばらなんですか。どうも内容を聞けば聞くほど何か実力が分散されてしまって、一つに集中するのに困難なような状態が想定されるのですが、どうもその点はことばのあやとしてならばわかりましたけれども、実際はどうなんですか。もっと聞きたいことがあるんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/56
-
057・武藤き一郎
○武藤説明員 公害対策会議が総理府に置かれるとか、あるいは庶務を厚生省でやるとか、あるいは各省が公害対策基本法についてはそれぞれ関与しているとか、そういうことで、先生の御疑点は非常にばらばらじゃないかという御心配だろうと思うのです。この点につきましては、政策その他につきましては公害対策会議でやるようになっておりますので、その点は御心配はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/57
-
058・島本虎三
○島本委員 事務局はどこになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/58
-
059・武藤き一郎
○武藤説明員 この法律では事務局というものは置いておりませんけれども、庶務を厚生省でやるということになりますので、事務局的な仕事は厚生省の環境衛生局でやるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/59
-
060・島本虎三
○島本委員 だから庶務というようなものの権限はどういうことなんですか。事務的なものは厚生省でやるというのは、事務的なもの、または庶務というのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/60
-
061・橋本道夫
○橋本説明員 いまの御質問でございますが、公害対策基本法の全体の主務大臣は厚生大臣であります。これは閣議決定によってきまっております。おのおのの事項につきまして、厚生大臣のほか、各省の所掌事項において関係のあるものについてはおのおのの大臣が主管大臣であります。会議は、総理府設置法を改正いたして置くわけでありますから、会議の所管についてはどこかということになりますと総理府の組織令の中に入りますので、これは総理府の長でございます。それに対しまして庶務は厚生省がやるということになっております。
庶務と事務局との違いはどうかという御指摘であろうかと思いますが、いわゆる事務局という形になりますものは庶務と幹事が寄って相談をするということが実際上の事務局というような形になると考えておりまして、厚生大臣は全体の公害対策基本法の主務大臣として全般的な責任を持つということと、公害対策会議の庶務の世話をするということと、各省の合議体の中で方針が調整決定されていく、このようなメカニズムでやる、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/61
-
062・島本虎三
○島本委員 そうすると、庶務というのは厚生省にあるということですか。庶務というのは何をするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/62
-
063・橋本道夫
○橋本説明員 公害対策会議の庶務ということにつきましては、会議の開催につきまして各種の庶務の事項がございます。会議の通知、場所の準備、それにつきましてのいろいろな事務的なアレンジということがありますが、おのおのの事案につきましては各省がいろいろの資料を出してまいりまして、それを整えて印刷をして出すというようなことが会議の庶務の役割りとなるというように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/63
-
064・島本虎三
○島本委員 それぞれこの事務局対策会議、幹事会、こういうようなものがございますが、その招集者はどなたになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/64
-
065・坊秀男
○坊国務大臣 対策会議の招集者は総理府長官です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/65
-
066・島本虎三
○島本委員 総理府長官が対策会議を招集するわけですね。そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/66
-
067・橋本道夫
○橋本説明員 招集をいたしますのは、総理府の長たる内閣総理大臣です。詳細な手続につきましては、この法律に基づく政令によって定める、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/67
-
068・島本虎三
○島本委員 総理大臣が一人で全部やって、総理大臣のもとに事務局並びに庶務並びに幹事会だとかそういうようなものがそれぞれ動くということで、所管大臣は総理大臣の命令によって全部動くというシステムだということですか、公害関係のシステムについては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/68
-
069・坊秀男
○坊国務大臣 庶務のことでございますので、事務当局からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/69
-
070・武藤き一郎
○武藤説明員 会議の招集は、総理府のほうで招集いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/70
-
071・島本虎三
○島本委員 私は、この公害対策というものは重要であるから、その機構においても、これは社会党のほうでは法令関係の一元化とともに行政機構の一元化の上に立って、国家行政組織法第三条によるところの準司法性を持ったところの強力な委員会にしたほうがいいという一それよりいいのが現在の厚生大臣が言ったところの政府原案によるところの対策会議のこれがいいのだ、こういうように言うから、その運営について、機構について、その機能を聞いているのです。その結果はさっぱりてんでんばらばらじゃありませんか。私聞いていて、いまだに理解に苦しんでいるのです。むしろ私がここで聞きたいのは、最も温厚だといわれている山本重信通産事務次官、この人が四月の一日にある新聞で対談会を催しているのです。その席上で明確に言っていることは、厚生省は法律案の取りまとめをするだけで、国会での答弁の責任者となるということだけの意味である。こういうように言っているのです。あなたは答弁ロボットだと言っているんですよ。したがって、いま聞いてもあなたがわからない理由がわかったのです。こういうばかげたことが、強力な自主機関ですか。ほんとうに冗談じゃないですよ。それだけじゃないです。各所管の事務は各省の権限に基づいてそれぞれがやるようになっております。法案の内容を見ても、特に所管大臣ということばは何一つうたってはおりません。どうりで聞いてもないはずです。それと同時に、費用の負担の関連立法は、各省の共同提案となる見込みですと言うのですよ。部課長、この大事な費用の負担の提案は各省の共同提案なんだというのですよ。大骨、小骨、毛骨まで抜かれちまったようなものが出されるのですよ。そのおそれがないかということをさっきから聞いているのですよ。これはことばでは、おそれは感じられないが、こういうふうにして見ると、なるほど大骨、小骨、毛骨まで抜かれてしまう、こういうようなことまで当然想像される。それと、事務局は、庶務は厚生省が行なうことになっております。庶務というのは会議のアレンジをするだけのものであります。これだけなんですか。これだけが厚生省にまかされたところの庶務の権限なんですか。むしろこれだけではないというなら、はっきり証明してくださいよ、間違いであるというならば。大臣、山本重信通産事務次官に対して、はっきりここで、いま言ったことに対して、間違いを証明してくださいよ。これはいずれがいずれなんですか。厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/71
-
072・坊秀男
○坊国務大臣 事務当局に説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/72
-
073・島本虎三
○島本委員 事務当局でもいいがはっきり言ってくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/73
-
074・武藤き一郎
○武藤説明員 先ほどの御質問の庶務の問題についてでございますが、総理府に置かれます付属機関でありますので、招集する場合の招集者は総理府でございますけれども、会議の庶務は厚生省でやりますので、その事務は環境衛生局でやるわけでございます。
それから第二点の、費用負担の法律について、各省からいろいろ意見が出ていい案ができないのじゃないかというような御趣旨の御質問がありましたけれども、やはり関係するところがよく相談いたしまして、関係法律はつくるというのが現在政府部内でとっておりますたてまえでございますので、そういう点は十分関係各省等が相寄って相談して、それぞれの法律はつくる、こういうことでございます。
それから庶務の範囲はどうかという御質問でございますが、庶務にはいろいろな問題があります。先ほど公害課長から答弁いたしましたように、会議のアレンジとかあるいは各省から資料を集めまして、それを幹事会にあげて、幹事会から関係大臣をもって構成する対策会議にかける、そういう準備の下ならしというものについて、厚生省がおぜん立てをする、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/74
-
075・島本虎三
○島本委員 きわめて事務的にきわめて率直にあなたがおっしゃってくれた。だからこそなお心配になってくるのですよ。そのあとで山本重信通産事務次官は言っておるのです。厚生省的な立場に片寄り過ぎた対策が出てくることのないように、その点は関係各省と連絡してやっていくことになっておりますと言っておる。これはどういうことですか。公害対策基本法ですよ。いまあなた言ったのは、完全にいくようなことをちゃんと日本語でもってりっぱに言っておるけれども、その精神は、はっきり言っておるのです。厚生省的な立場に片寄り過ぎた対策が出てくることのないように、各省連絡をしてやっていくことになっておるのですと言うのです。あなた方だけ知らないのじゃないですか。こんなことになっていていいのですか。——ちょっと待ってください。その前にもっとあるのです。こっちのほうでなお調べたところが、経団連では、企業の費用負担の規定等依然問題点は残されているけれども、産業界の意向が以前よりも強く反映しているので、さしあたり政府に注文をつける考えはいまのところない。しかし、費用負担の規定が別の法律で定められることになるけれども、今後はこの法律をまとめる段階で、産業が不利な立場に追い込まれないように政府に積極的に注文をつけます。それと同時に、総理府を主管庁として、その付属機関として公害対策会議と公害対策審議会をそれぞれ設置することになっているけれども、産業の立場は十分わかってもらえるはずであります。この二点がはっきりしているからだいじょうぶだと言っておる。それがまた山本通産事務次官の言うこととかっちり符合している。これで皆さんのほうでは、これはもうりっぱな機構でございます。こんなことを言っても、対策会議も審議会も骨抜きどころか、完全にこれは企業擁護機関になってしまうということは、はっきりこれで言っているじゃありませんか。そして議会に対する答弁、責任機関は厚生大臣だけだと言っているんですよ。これだけだったら、はたしてこれは隠れみのでないということをはっきり証明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/75
-
076・坊秀男
○坊国務大臣 経団連でどういった議論が行なわれたかということはまだ私は聞いておりませんけれども、おそらく島本委員の御指摘のようなことが言われておるのでございましょう。しかし、それは経団連で言われていることでございまして——経団連で言われておることでございましょう。私といたしましては、まださようなことを、こういうふうにやっていくのだということを経団連当局から聞いたことも何もございません。そこでどういうことを言われておりましょうとも、大骨、小骨を抜いてしまうと言うておるかもしれませんが、私といたしましてはそういうことを全然聞いておりません。だから私はこの法案でもって、この法案の趣旨に従ってやっていく、こういうことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/76
-
077・島本虎三
○島本委員 そのように自信を持ってはっきり言っておりますから、あえて私はその自信の上に拍車をかける自信ある答弁をちょうだいしたい。それはこの基本法の目的の中の経済との調和ですか、これは厚生省試案にはなかったのが、今度のにははっきり入ってきた。それでも後退でないとあなたはおっしゃっておる。後退ではないとはっきりおっしゃっているけれども、われわれは後退だとこれを判断している。後退でないという理由を、あなた明確に表明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/77
-
078・坊秀男
○坊国務大臣 いま御指摘のことは、第一条の「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」こういうことかと思います。しかし、いつも私申し上げるのでございますが、この「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということは、「生活環境を保全する」これにかかっておるのでございまして、国民の健康を保護するということにつきましては、これはもう絶対でございまして、経済の健全な発展との調和をはかるというようなことによって国民の健康を保っていくということについては、これとは——経済の健全な発展というようなこととは全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/78
-
079・島本虎三
○島本委員 じゃ、いま大臣の言ったのをそのままだと私はすっかり善意に解釈すると、いま言った「国民の健康を保護するとともに、」これまではトップなんですね。あとは「ともに、」ではなくて、これを基本として、あとはそれに従うということなんですね。「とともに、」というのは、車の両輪のように一緒になっている。前後になると、この表現では、少し私の頭が鈍いかもしれませんが、何か弱い感じがする。これは同じようなことなんですか、前後なんですか、どっちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/79
-
080・坊秀男
○坊国務大臣 この生活環境をよくしていくということについては、これは経済の健全なる発展と調和をはかっていく。と申しますことは、公害が発生した、その公害がわれわれの生命や健康に害を及ぼす程度であるというような場合には、たとえ産業を犠牲にしてでも何にしてでも、生命を保つというところまでは公害を排除していく、こういうことでございます。ところがさらに一歩進めてわれわれの生活環境をよくしていこう。生命を保全するというだけでは、これは十分でない。もう少しわれわれの生活というものを快適なものにしていく。そのためにはもう少し公害を排除していかなければならない。こういったようなことがあろう。さような場合には、これは経済の発展というものとこれをにらみ合わせてそういうふうに持っていこう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/80
-
081・島本虎三
○島本委員 どうですか、この「国民の健康を保護する」国民の健康というのはどこから持ってきたことばですか。憲法ですか、民法ですか、どこかに基準はあるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/81
-
082・坊秀男
○坊国務大臣 これは憲法とか民法とかということではなくして、国民の健康ということでございまして、その健康を分析してみますといろいろな角度から分析ができるかと思いますけれども、憲法から持ってきたとか民法から持ってきたとかというふうなものではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/82
-
083・島本虎三
○島本委員 きわめて常識的なものであって、これはわれわれはもうすべて憲法第二十五条第一項によるところの、すべての国民は健康にして文化的な最低限度の生活を営む権利を有する、この健康にして文化的な生活の基準、これがいわゆる「国民の健康を保護する」この基準になるのではないか、こういうふうにきわめて常識的に考えているのですが、そうではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/83
-
084・八木一男
○八木委員長 大臣、答弁なさらないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/84
-
085・坊秀男
○坊国務大臣 事務当局からやらせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/85
-
086・武藤き一郎
○武藤説明員 「健康を保護する」健康は、どういうところから引用してきたかという御質問ですが、これは一般的に、常識的に健康を保護するという意味の健康でございます。どの程度の健康かということについては、健康にもいろいろ幅があるわけでございますけれども、最低基準よりももう少し上のほうの健康状態ということを大体考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/86
-
087・島本虎三
○島本委員 では部長、憲法第二十五条第二項、私のところにあるから私が読んであげます。国がその責任を持たなければならない理由は、憲法第二十五条の第二項、それには「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と書いてあるでしょう。私は、公害対策基本法を出して国民の健康をうたうこの基本は、憲法第二十五条一項二項だ、それからいまここにうたわれるゆえんのものは第二項に依拠するものである、こう考えております。そしてよく見生しても、この中に、産業、経済、企業との調和ということばは書いてないのです。これは憲法にも書いてないことですから、わざわざ基本法にこれを書く必要はないじゃないですか。大臣、これは取ったらどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/87
-
088・坊秀男
○坊国務大臣 先ほども申しましたとおり、健康ということは、これは絶対だ。そこで健康は絶対であるから、健康を保全するという意味においては、経済との調和をはかるということは考えていない。さような意味におきまして、私はもう少し、一歩進めた場合に、経済との調和ということは、これはやっぱり必要であろうとか思います。さような考えから、これを削除するという考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/88
-
089・島本虎三
○島本委員 削除する考えがないならば、今度は、産業の保護についてはいろいろな関係立法が全部あるわけですね。どうしても調和が抜けないというならば、そういうような産業保護立法の中にも、これは当然健康の保護と生活環境の保全を考えてというのを全部入れたらいいじゃありませんか。それならば同じだ。入れなくてもいい、あえて考えなくてもいい、産業保護立法の中に、健康だ、環境基準だ、これだけはもう何もいわないで、ただやれやれ、完全に人の健康を守るほうにだけこれを入れてくる。不平等です。どうしても入れるというなら、両方に入れたらいいです。これがあなたの平等の精神です。どうしても抜く意思がない、入れるというならば、他の産業立法にも当然入れるべきじゃないかと思うのですが、これは厚生大臣としてそういう必要はないと思いますか、ありと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/89
-
090・坊秀男
○坊国務大臣 健康を守るということにつきましては、産業との調和ということを少しも関係さしていない、さような意味におきまして私はひとつ産業との調和、健康を守ることと調和さすということになると、これはたいへんなことだと思いますけれども、その第一の目的である健康を守るということは、これはもう何らの制約なしにやっていく、こういうことでございますから、生活環境をよくするということにその産業との調和がかかっておるということだと、別に私は支障のないものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/90
-
091・島本虎三
○島本委員 それは人の健康を守るための基準と生活環境の基準とこの二つをつくって、健康だけは必ず守ります。生活環境のほうはあわせて産業の調和をはかりながらこの基準をきめていきます。この二つきめるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/91
-
092・坊秀男
○坊国務大臣 大体観念はそうでございますが、実際の場合になりますと、これはいろいろなケースが出てくると思いますけれども、環境基準のうち特に健康とかかわり合いの深いのは、これは大気の汚染に関するものでありますが、健康を保護するに足る水準としては、これは環境基準が一律の水準できまるものと考えておりますが、しかしその地域によっては生活環境を維持するため、この水準よりもさらに正常な水準が要求される場合もある、この場合には、よりきびしい水準できまる場合もあると思います。水質の汚濁については、主として水域の利用目的に応じて、また騒音については地域ごとの特性、住居の地域あるいは商業の地域あるいは工業の地域に応じまして生活環境の保全という見地からきまる場合が多いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/92
-
093・島本虎三
○島本委員 大事なところですから、この点だけケリをつけさせていただきます。
私は、この経済との調和をはかりつっという考えには、抵抗を感じているのです。というのは、経済が発展すればするほど、みんないいのですという考えです。調和をほんとうにはからなければならないのは、私企業じゃないですか。これは経済の発展を、私企業の健全な発展と生活環境の保全の調和を十分とってやりなさい、こういうような意味じゃないかと思っているのですが、これは何か間違いじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/93
-
094・坊秀男
○坊国務大臣 この法の経済との調和というのは、これは私企業には限らない、一般の産業、たとえばある産業地域がある、ある産業地域において、たとえば四日市あたりで四日市ぜんそくといったような人間の健康に害があるといったようなものが起こってきておる、こういったようなものは、この公害対策基本法におきましては、これは絶対に防除していかなければならない、こういうことでございます。しかしながら、そこの四日市の海がよごれておる、その海がよごれておるが、生命に関係のないところまでは、大気の汚染も水質の汚濁も防除をしていったけれども、四日市の川なり海なりがまだよごれておる、そこで四日市の川にアユが住まない、そこでこれをアユを住ますというところまで持っていくということが、これが生活環境を非常によくしていくことなんです。ところがアユが住めるというところまで持っていくということについては、これはやはり産業も非常に大事でございまするから、そこで産業との調和を相はかりまして、アユは住めないけれども、これは例でございますが、コイぐらいは住めるというところまでこれを持っていくというようなことが、これは経済と産業との調和ということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/94
-
095・島本虎三
○島本委員 それではこれで一つ区切りをつけたいと思いますが、私は最後に大臣にはっきり言っておきたいのは、「国民の健康を保護するとともに」というこの国民の健康の保護と、それ以下の「経済の健全な発展との調和を図り」云々というのは異質のものであって、これはちょうどはしごを下りながら上がれというようなことなんで、はっきり言うと現位置にとどまれということと違わないのです。列車を後に走らせながら前へ行けというようなことで、これはどうも現在あるものよりも前進も後退もないのです。戦争と平和を一緒にやれというようなもので、何を言っているのかわからない。私はこうはっきりしないことばがあるなら抜いたらいい、こういうようなことでいま聞いたのです。大臣の言うことはしたがって私は善意に解釈して、経済の健全な発展こそ生活環境が保全されるものであるというような前提であるのだ、経済が発展すればするほどこれは人間なんか住みよくなるのだ、空気もよくなるのだ、水もよくなるのだ、これでなければならないのです。そうでないからこそ今度いろいろなことを言って、そこに今度いまの企業を守り、産業を守り、経済を守らなければならないというような一つの手段が講ぜられる、これが調和ということばにあらわされるものであるから、こういうような有害なものは取り除いたほうがいいというのが私の結論なんでございます。大臣、これに対して納得し得るならばそのまま帰ってよろしい、そのまま出てもいいのですが、納得できないならばここでやらなければなりませんが、黙って帰ったらいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/95
-
096・坊秀男
○坊国務大臣 ちょっとどうも黙って帰るわけにはまいらぬように思うのでございます。おっしゃるとおり、何らの制約なしに産業の発展ということをやっておりますと、その大気が汚染し、水質が汚濁し、いろいろなことで人間の健康が害せられるということ、その地域に住む人間の健康が非常に阻害されるということになることは、私はそれに対して、そうじゃないのだ、いま島本委員がおっしゃられたが、私はそういうことは考えておりません。何らの制約なしにどんどん産業にだけ力を入れていくということになれば、それは非常に公害が多くなりまして、肝心かなめの人間の生命というもの、健康というものに障害を及ぼします。しかしそれではいけないということで、そこでこの産業がどんどん発展していく、どんどん企業、工場が集中していくというようなことは、どうしてもこれに対して制約を加えていかなければならないということで、そうしてこの公害というものを押えていかなければならないということで、この公害対策基本法ができたのでございまして、そのためには先ほどから繰り返し申し上げておりますとおり、人間の生命にかかわるといったような公害は絶対にこれを排除していこう、しかしそれからさらに一歩、ちょっとかたくさんかそれは別といたしまして、一歩進めて、生活環境をよくしていこうという場合には、これはひとつその経済との調和をはかっていく、こういうことでございまして、無制約に、何らの制限をしなくて産業を野放しにしておいたのでは、これはとうていいけない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/96
-
097・島本虎三
○島本委員 部長にちょっとお伺いいたします。被害の救済規定についてちょっと聞きたいのですが、公害対策は、公害の予防、排除並びに被害の救済が一番大事なんです。被害の救済が目的の中に規定されないということは、骨抜きになる要件の一つだと思うのですが、これを目的に入れないで救済制度の確立をはかるということになりますと、それが目的でありませんから、これはもうすでに、中途はんぱとは申しませんけれども、目的に入れられるものよりも責任を持たなくてもいいという救済制度ができ上がるおそれがある。私はこれは骨抜きに通ずるのじゃないかという懸念を持つがゆえに、なぜこの目的の中に明記しなかったのか、これをまず伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/97
-
098・八木一男
○八木委員長 島本君、ちょっとほかの発言を許したいと思いますので、武藤部長の答弁はあとにさしていただきたいと思います。
この際、厚生大臣の発言に関連をして、角屋議員より発言を求められております。これを許します。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/98
-
099・角屋堅次郎
○角屋議員 先ほど来、島本委員と坊厚生大臣との間で公害対策基本法案の中で重要な問題点の一つである公害行政のあり方について質疑がかわされておりました。この点について、社会党の提案者として簡潔に提案の趣旨をお話し申し上げておきたいと思います。
御承知のように、われわれの法律案におきましては、公害行政の一元化、こういう立場に立ちまして、中央に中央公害対策委員会、地方には都道府県及び指定都市に地方公害対策委員会を置くことができる、こういうことで国家行政組織法第三条の趣旨に基づく独立の一元的な機構を持つことを提案をいたしておるわけでございます。これは今日まで公害基本法が制定される以前に、たとえばばい煙規制法、あるいは水質二法、こういうものの実施過程一つを見てみましても、水質二法の関係においては水質保全の関係の所管、あるいは工場排水規制の関係の所管というので、ずいぶんだくさんの省にまたがりまして、現実に指定水域が実施されたのは、九年近くかかってまだ十九系水域程度にとどまる、こういう現状等もございます。何といっても公害対策の問題は、被害を受ける立場にある国民の立場から見て、公害の予防、あるいは公害の排除、あるいは公害の救済というものが迅速適確に実施されていくということが国民的要請から見て望ましいのでありまして、日本の官庁機構は遺憾ながらセクショナリズム的な色彩が非常に強い。したがって、こういう十数省にまたがる公害の関係庁の現状を認めた上に立って、先ほど来いろいろ議論がなされてまいりましたその上に政府が公害対策会議を持つという形では、公害対策基本法が制定をされましても、真に被害を受けやすい国民の立場から見た万全な公害対策の実現ということはほど遠い姿になるのではないか、こう思うのであります。そういう点から、やはり総理府の外局になりまするけれども、両院の議決によって認められる中央公害対策委員のメンバー、その下に強力な事務局、あるいは地方には地方の支分部局、さらに中央公害対策委員会、地方公害対策委員会の権限内容として、たとえば、政府案でいけば環境基準、われわれでいけば許容限度ということになりますが、許容限度の設定あるいは排出等の基準の設定、こういうふうな問題についても、公害対策委員会で一元的にこれを取りきめていく。そのためにはやはり科学的判断というものが必要でございまするから、この立法の中にもありますように、中央に一元的な公害防止研究所というものを設置いたしまして、この権威ある研究機関によってこれらの許容限度あるいは排出等の科学的な研究に基づくところの基準の設定をやっていく、こういう裏づけをいたしたい、かように考えておるわけでございます。ただ、野党のほうの民社党、公明党からも行政組織の委員会の点が同じく出されておりまして、この問題の重要性を御指摘になっておるわけでありますが、民社党、公明党の場合は、地方の公害対策委員会を必置事項にしておるのであります。これも一つの行き方だと私は思うのでありますけれども、われわれが都道府県あるいは指定都市に地方公害対策委員会を設けることができるという形をとりましたのは、やはり中央の行政官庁、地方自治団体の自主性といった問題も考え、また同時に、今日全国的に日本の公害の現状というものをつまびらかに検討してまいりますと、直ちにいわゆる地方公害対策委員会を設置して一元的に強力にやらなければならぬ緊急の条件にある地方公共団体あるいは若干の一年なり二年なり間があるかもしれないというふうに判断される都道府県等、こういうものの現状から見て、これらの設置の問題については、公害防止行政の完ぺきを期する立場から、地方自治団体の自主的な判断にゆだねる、こういう形をわれわれの立法ではとったわけでございますが、基本的には何ら変わるところがございません。
細部の点についてはまた議論の過程でお答えをいたしたいと思いますが、今日のわが国の官庁機構のセクショナリズムの打破と公害の予防、排除、救済、これらの問題について純司法的な権能まで備えた強力な行政機関の設置ということは、被害を受けやすい国民の立場から見て強く望まれているのではないか、かように私どもとしては判断をいたしておるわけでございます。
以上、簡潔に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/99
-
100・島本虎三
○島本委員 きわめて明快な答弁をちょうだいいたしました。それ以上私は質問することはございません。あわせて今度の被害の救済規定について、ただいま私が申しましたように、公害の予防、排除、被害の救済というようなことは三つの柱になって考えられなければならない問題でありまするけれども、被害の救済が政府案では目的の中に入っておらないのでありまして、これはもう骨抜きになる要件の一つじゃないかということを心配しているのです。これは目的に明確に救済制度の確立を入れるということが私は重要じゃないかと思っているのです。政府案ではこれが入っておらないのは、私、遺憾なんです。社会党、野党案ではこれは入っているのです。私は、一方は入っており、一方は入っていない、これはやはり救済の規定だけの問題ではなく、それに対するポイントが違うのじゃないか、考え方が違うのじゃないか、こういうように考えられるのですが、なぜ救済制度を目的の中に入れなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/100
-
101・田川誠一
○田川政府委員 お答えいたします。
政府案におきましては、被害の救済についても第五節、第二十条のところに書かれてございますが、これは具体的には書かれておりませんけれども、公害対策基本法という基本的な方針を明らかにしておるわけでございまして、具体的なことにつきましては、今後別途被害の救済について検討を加えていくという方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/101
-
102・武藤き一郎
○武藤説明員 島本先生の御質問は、目的の第一条の中に救済のことが何も見つからぬという御質問でございます。第一条には「公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、」というふうにうたってありまして、第二章には一「公害の防止に関する基本的施策」としまして、「環境基準」とか「国の施策」、「地方公共団体の施策」、特定地域におきます公害の防止施策と並びまして、「公害に係る被害の救済」の条文を第二十条で、いま政務次官がお答えいたしましたようにうたっておるわけでございます。したがいまして、目的の中に入ってないということではなくて、公害の防止に関する施策の基本の中に、公害にかかわる被害の救済につきましてはうたってありますので、その点は御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/102
-
103・八木一男
○八木委員長 厚生省側の答弁に関連して角屋議員より発言を求められております。これを許します。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/103
-
104・角屋堅次郎
○角屋議員 先ほど機構の問題でお答えいたしましたように、公害対策基本法の中で骨組みとしてやはり考えなければならぬものは、公害の予防、公害の排除、公害の救済という、この三つの柱について基本法の中に必要なものが貫かれていくということが非常に重要なことだというふうに思います。今日わが国の公害の現状の中で、いかに多くの国民が公害の被害に呻吟をしておるかということは、島本委員も十分御認識のところでございまして、そういう救済の現状から見て、やはりこれを急速に体制を整備し、被害を受けておる国民を公害から救っていくという立場から見ても、第一条の公害の目的、この中においても、さらに第三条の事業者の責務、あるいは第四条の国の責務、第五条の地方公共団体の責務、特に第一条の目的と第四条の国の責務、第五条の地方公共団体の責務の中には、公害の防止のみならず、被害の救済については明確にそれぞれが責任を負っておるということの責任の所在を明らかにすることが、事後救済制度をどうするかという場合の制度を考える場合にもきわめて重要なことである、かように認識しております。したがって、そういう立場から、私どもの提案の中では、第一条の目的並びに第四条の国の責務、第五条の地方公共団体の責務の中では、この救済の条文を明らかにし、同時に事業者の責務の中では、さらに明確に第三条の第二項において無過失賠償責任という原則についても明らかにしておることは、質問者の御承知のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/104
-
105・島本虎三
○島本委員 ちょっと進めてまいりまして、私は許容限度について伺っておきたいと思います。
それは、基本法の中に、政府案の中にですけれども、環境基準が望ましい条件で定められるとうたったにいたしましても、経済の健全な発展との調和が考えられても、許容限度の設定がないという以上、具体的には企業擁護におちいり、公害防除の目的達成にはほど遠くなるおそれがあるのじゃないか、この点が私はもう心配なのでありまするけれども、許容限度の設定について、環境基準ということばで政府案ではあらわしているようでございまするけれども、許容限度の設定についてこれを具体的にやらないで、はたして所定の効果があげられるとお考えでしょうか。この点、厚生当局の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/105
-
106・武藤き一郎
○武藤説明員 許容限度という表現が社会党案にありますが、これと環境基準とはどういうふうに違うのだろうかという御質問でございます。許容限度と表現されておりますものは、政府案の環境基準とそのねらいなり趣旨なりというものは同じだろうと私は考えます。ただ一般的に許容限度という表現は、許容されるぎりぎりの限界数値というものを示す場合に用いられると思います。それに対しまして環境基準を定めましたのは、総合的な公害対策の目標としまして、政策の目標として定めるものであるということで、若干その点は違うわけでございます。許容限度といいますと、ぎりぎりの数値をきめるというような印象が多少ありましたので、私どもが議論しました段階でそういう議論がありましたので、その点はぎりぎりの数値をきめる印象の許容限度よりも、政策の目標として維持されることが望ましい、あるいは数字によっては、よりきびしいような数値をきめ得る環境基準というものを政策の目標としてきめたらどうかということで、政府案では環境基準というふうになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/106
-
107・八木一男
○八木委員長 この際、厚生省側の答弁に関連して角屋議員より発言を求められております。これを許します。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/107
-
108・角屋堅次郎
○角屋議員 いま厚生省の政府委員から環境基準あるいは許容限度、こういうようなものについての両者の意味するものについて御説明がございました。私も科学者でございませんから、厳密に学問的に言った場合に、許容限度あるいは環境基準というものを峻別した場合に、どういうふうに理論的にはなるのかという点を必ずしもつまびらかにしておるわけじゃございません。しかし、いまも厚生省の政府委員からお話しのように、許容限度という場合には、やはり国民の健康、静穏な日常生活、財産、農林水産資源等を公害から守るという立場から見て、ぎりぎりのところはどこかという考え方が表現上あらわれておるということが言えるだろうと思います。問題は、環境基準ということばを使うにいたしましても、あるいはわれわれの許容限度ということばを使うにいたしましても、この許容限度なり環境基準と、次の排出等の基準との関係がどうかということが一つ重要な問題であります。私どもでは、きめた許容限度を下回る範囲内において排出等の基準の総集積というものがきめられていかなければならぬということを明らかに条文上でいたしておるわけでございますが、政府案では、環境基準は、いまの御説明のおことばの中にもありましたように、政策目標である、こういうことばを使っておりますように、立法上環境基準とあとの排出等の基準の関係というのは必ずしも明確でないところが一つの大きな問題点だというふうに思うのであります。同時にわれわれの許容限度の条文の中では、第九条の第二項の中で、どういう性格の許容限度が内容になるかということを明らかにしておりますし、また第三項の中においては、これらの一たんきめた許容限度については常に科学的な検討を加えてレベルアップの努力がなされなければならない、こういう考え方についても法律上明らかにしておることは御承知のとおりでございます。
要するに、許容限度ということばを使い、あるいは環境基準ということばを使う場合に、学問的には相当な、理論的に峻別すれば差異があると思いますけれども、問題はそういうことと排出等の基準との関係あるいは環境基準なり許容限度で、一体公害から国民を守るというところで、どこまでの基準を考えておるのかという質的な問題が根本的な問題であろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/108
-
109・島本虎三
○島本委員 両方の意見、よくわかりました。
それで公害の定義の範囲について皆さんに意見を承りたいのですけれども、公害の概念として政府案では六つ、社会党案その他でもそれに似たようなものでございました。しかし日照障害、電波障害、蚊、ハエ、こういうような公害発生のもとになっているものも行政的な施策の対象になり得るんじゃないか、こう考えられている向きも多うございます。被害救済の原則も当然考えられなければならないとも思うわけでございますけれども、これらの公害もその親御の対象となるのかならなしのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/109
-
110・武藤き一郎
○武藤説明員 この法律におきましては、第二条で「大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭」ということで、ただいま先生がおっしゃいました広義の公害といいますか、そういう問題のうちから特に現在いろいろ社会問題なりを起こしておりますものを取り上げまして、これを公害対策基本法案の対象の公害といたしまして、いろいろの施策をいたしますことによって、この公害を除去するということを目的といたしておりますので、ただいまおっしゃいましたようなその他の問題については、この法律では触れておりません。もちろんこの法律で触れておりませんからといって、政府はそういう問題に対してそのまま放置するということはございませんで、所管省でこの問題はそれぞれいろいろ検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/110
-
111・島本虎三
○島本委員 これをだいぶやってまいりましたが、いろいろな関係もございますので、急いで私は質問いたします。
その次は排出規制についてであります。私が申しましたいわゆる厚生省試案はわりあいに詳しく述べられておりました。政府原案によりますと二十一字にこれが省略されておるわけでございますが、これだけではやはり環境基準は守られないおそれも当然あるわけでございまして、これは社会党案のごとく詳しく述べられておるほうが望ましいと思うのです。ことにこれは土地利用、立地規制というようなことも必要であることは当然ですけれども、一定の原因に対するところの禁止処分強化というものも当然考えられていいと思うのです。工場の操業停止または交通の緊急規制でも、設備の除去または事業の全面的禁止も含むような強力な処分、罰則等の強化も考えられてしかるべきじゃないかと思うのです。かてて加えて強力な行政代執行機関の機関的な方法も望ましい、こういうふうに思うわけでございますけれども、政府案では、排出規制の考え方はだいぶ後退しておるようでございます。これではたして所期の効果をあげることができるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/111
-
112・武藤き一郎
○武藤説明員 政府原案の排出等に関します規制が非常に簡単になっておるではないかという御指摘でございます。環境基準等の関係も先ほど社会党案の御説明のときにございましたが、先生の御指摘のように、排出規制は公害防止をする上で一番重要な問題でございます。各実体法等につきましても改善命令その他のいろいろな実体法規がございますけれども、先生が御指摘されましたようなより強い規制等につきましては、今後公害の実態等に照らしまして検討してまいりたいと思います。
それから環境基準と排出規制の関係でございますが、環境基準の維持のためにはもちろん排出規制も必要でございますけれども、土地利用その他の総合施策が相まって環境基準の維持が必要になってこようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/112
-
113・島本虎三
○島本委員 公害に対するいろいろな規制の問題も、ゆる過ぎては何にもならぬのでありますから、この点は十分考えておく必要のある問題の一つです。それと同時に、公害に対する原因者の責任と被害者の救済策というものも十分考えられなければならない問題です。最低の環境基準すら維持できない場合の被害者の救済、これこそ迅速かつ適確でなければならないわけなんです。これは大事です。したがって、このためには企業の集団共同で無過失責任を課すること、こういうようなことは具体的な方法を明示する、こういうようなことによっていま申しましたようなことは可能ではないかと私思っているわけです。同時にこれが必要じゃないかと思っているのです。と言うと、政府は、無過失責任を取り入れることは立法上困難である、したがって、個々の問題で対処していくように考えたいと言うのです。大臣が言っているのですが、これは不可能ではないというのが私の考えなんです。現在の段階としては、被害者はいわゆる加害者の故意、過失または因果関係の存在の立証を必要とせず、被害の事実と環境基準を侵害されていることの挙証があれば損害の賠償が請求できる、こういうようなことを考えたならば、一歩退いてもこれはもう被害者を守り得る条件の一つになるのじゃないかと思うのです。したがって、事業者は、故意、過失またはその因果関係の存在しないことを立証した場合のみその責任を免れることができる。いわゆる挙証責任転換の方法によって被害者救済を容易ならしむることができるし、それがいま必要なのじゃないか、こういうように思われるのです。個々の問題で対処していきたいということは、こういうような問題も考えて対処していくという腹づもりじゃないかと思っているのですが、これは大臣でなければむずかしゅうございましょうか。責任ある答弁なんですが、部長でなく政務次官からお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/113
-
114・田川誠一
○田川政府委員 無過失責任につきましては大臣から答弁があったと思いますけれども、立法上なかなかこれにあらわすことはできませんでした。しかし、いまお説のとおりに被害者に対する救済措置あるいは苦情の処理というような機関は何か検討しなければならないじゃないかという腹づもりでおりまして、これからも前向きに、また具体的にそういうようなことを検討していきたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/114
-
115・島本虎三
○島本委員 それは検討してもらいます。
それから公害防止事業の費用負担について、これは具体的に聞きます。公害防止のための費用負担、これは事業者もその費用の全部または一部を負担することになっております。企業の社会的責任として当然でありますけれども、しかし政府案によりますと、負担の割合等については別に法律で定めることになっております。そうすると、当該事業者と国または地方公共団体との協議ととのわない場合さえもあり得るという考えを当然私は持つわけです。問題はそこなんですが、政府原案によってみると、裁定すべき者の規定を省いたということは、実効性を減殺するような結果になりはせぬか。そうして協議ととのわなかった場合は一体どうするのかという心配があるわけなんです。厚生省試案、社会党案のように、これを公害対策委員会またはこれにかわるような三条委員会の裁定に服する、こういう規定でもって実効をあげることが望ましいのではないか、こういうように思うのですが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/115
-
116・武藤き一郎
○武藤説明員 第二十一条の二項の場合に、協議がととのわなかった場合にはどうするのか、こういう御質問だと思います。この二項から見ますと、「前項の規定により事業者に同項の費用を負担させる場合」ということで、これは協議する場合ではなくて、強制的に負担させる場合の趣旨をこの法律できめるわけでございます。したがいまして、先生が御質問されるような場合につきましては、この二項では一応たてまえとしては考えてない、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/116
-
117・島本虎三
○島本委員 協議ととのわない場合でも、これはもう救済については何ら心配はないものである、こういうようなことでございますか。費用負担なんかの場合には、事業者に対しては全然そういうような心配はない、こういうような法律をつくるということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/117
-
118・武藤き一郎
○武藤説明員 私は現段階ではそういうふうに考えますけれども、法律をつくる段階で先生のおっしゃるような御心配があるとすれば、法律段階で検討したいと思います。
それからこの第二十一条の一項のほうの規定は、新しくここで、こういう事業につきまして事業者が負担するというたてまえを、公法上の社会的な責任として事業者が持つということをたてまえ宣言したわけでございますので、法律ができなければこれは負担しないでいいという趣旨ではございませんので、もちろんこの法律ができるまでの段階でこういう問題があれば協議によりまして事業者は当然負担していただくということは、実際問題としてあるわけでございます。現役階でも、四日市とかあるいは千葉とか、そういうところでは、こういうようなグリーンベルトのような問題が現在いろいろ計画が進められているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/118
-
119・島本虎三
○島本委員 公害によるところの損害賠償の問題で、これは少しまた具体的に聞きますが、私は第一次責任は原因者たる事業者にあると思う。これは当然だと思うのです。第二には、被害救済の万全を期するために、国もしくは地方公共団体にも公権的な賠償の責任を負担させるべきである。これが私の第二番目の考え。第三番目は、さらに国または地方公共団体のなすべき施策を怠ったために発生した被害、もしくは加害者の特定し得ない被害については、国または地方公共団体が当然直接その責任を負うべきである。私はこの三本が一番重要なんじゃないか、損害賠償のための三つの柱じゃないか、こう思っているのですけれども、この施策の一端として、国または地方公共団体、企業者の三者で保険制度かまたは基金制度を明確にきめて、そして被害者の救済の万全を期しておいたほうがいいと思うのです。この考え方が厚生省におありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/119
-
120・武藤き一郎
○武藤説明員 御指摘のように、公害問題は原因者が非常にわからない場合がある、あるいは多数の場合があるというようなことで、損害賠償等につきましていろいろな制度を考えたらどうか、こういうような御意見でございます。具体的に、保険制度はどうかというような御提案でございますけれども、保険そのものは、偶発的な事故を考えますのが保険でございますので、あるいは先生の御提案は基金制度のような問題を考えたらどうかというような御趣旨だろうかと思います。公害問題につきましていろいろ政府部内でも検討しておりますけれども、外国等の例を見ましても、なかなか先生のおっしゃるような基金制度あるいは保険制度という問題につきましては、原子力とかあるいは鉱害というような問題は別といたしまして、一般的な公害問題について基金制度等のような問題につきましては、外国でもその例がまだないようでございます。しかしながら、現実、いろいろ日本におきましては事象が現在起こっておりますので、こういう点につきましては政府部内で慎重にかつ早急に検討してまいりたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/120
-
121・島本虎三
○島本委員 保険制度も、これは自動車保険なんかもあることですから、それらをあわして慎重に考える対象の一つにしておいてほしいと思います。
まず通産省にひとつお伺いしたいのです。アメリカでは公害対策費は企業設備費の五%ぐらいを計上さしておるそうであります。日本では、いろいろわれわれが若干視察をしてまいりましたところによると、なかなかよく考えてこれをやっている向きもないわけではありません。ただし大企業であります。そういうような場合には、やはりその方面に対する指導、施策が万全であれば可能だということの証拠だと思います。平均してみると、全体の一・七%ぐらいしか考えられておらないというのが公害関係の設備の実態のようであります。しかし、やはりこれじゃ公害に対する策として当を得たものでないと思う。アメリカは五%をやっている。経済の成長では日本はなかなか世界に比肩し得るような生産量をあげておりますから、造船なんか世界で一番ですから、こういうような状態ですから、やはりこの点はもっと、もっと、考えたほうがいいと思います。これについて、今後やはり企業の設備費の中に当然公害関係の費用も含んでこれは指導すべきである、私はこういうように思っておるのですが、通産省ではどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/121
-
122・宇野宗佑
○宇野政府委員 わが国の企業の中におきましても、特殊な企業におきましては、五%程度の設備投資に対する公害防止施設をしているところもございます。しかし、一般的には島本委員がおっしゃったような程度だろうと思いますが、将来におきましては、やはり公害問題が非常にやかましいおりからでもありますし、当然人の健康を守らなくてはなりませんので、やはり企業に対しましてもある程度のめどにつけて行政指導をすることが必要ではないか、こういうふうに考えております。
ただ、その場合に、特殊な事態ではございますが、一応設備投資額に対する何%というきめ方はどうだろうかという面もあるわけでございます。なぜかならば、よく問題にされております重油の脱硫でございますが、直接脱硫をしてサルファ分の少ないものをつくろう、こういうときにはそれだけの施設が要るわけでございますが、頭から高いことをあらかじめ覚悟してローサルファの重油を買って、それによって公害を未然に防いでおる、こういう面もございますので、ただいまといたしましては、通産省はいま申し上げました二つの面において行政指導をしておることは事実でございます。そして、今日わが国の企業がはたしてどれだけの公害防止のための設備投資をなしておるかということに関しましては、調査の集計中でございますので、いずれ明らかにいたしたいと思いますが、お説のとおり、将来におきましては、やはり一つのものさしを持ちまして、それをめどとして行政指導をしていくことは当然だろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/122
-
123・島本虎三
○島本委員 私は最後に、これが最後でありますけれども、産業公害と都市公害との関係を聞いて、具体的な明快なる答弁をちょうだいして下がりたいと思います。
それはいろいろございますけれども、現在やっているのは産業の公害対策基本法でございます。しかし、先般公害対策特別委員会で川崎並びに横浜、神奈川県関係をちょっと視察してまいりました。その中で、産業公害と都市公害、これは切り離し得ないような部面がちょっとないわけでもないということをちょっと考えてまいりました。その比重はそれぞれあるでしょう。しかしながら、それを離せないような部門のあるのもこれは事実でございまして、そういうふうにして見ます場合には、これは特に今後、いわば基本法の第二条でございますか、それによってこの都市公害の面も具体的に対処していかなければならないのではないか、こういうように思うわけです。ことに冬季の場合の北海道になりますと、暖房のために各家で全部石炭や重油やまたはまきをたきますから、一戸残らずタール性ばい煙を排出することになるのです。そういうことになりますと、当然タール性油煙は肺ガンのもとになりますから——タール性ばい煙を吸いながらたばこを吸っていますと肺ガンの発生率が一番高いのだそうでありますから、たばこをのんでいる人は気をつけないといけないのでございます。そういうようなあんばいでありまして、これは今後十分考えなければならない健康保持のための一つの命題でもあるわけです。そこで、現在こういうような地域環境にある冬季暖房を使用するような地帯に対しては、いわば地域集中暖房等を考えたり、また具体的にいろいろと指導することによって公害対策の万全を期していかなければならない問題も残されていると思います。社会投資の問題で解決できる問題は、どんどんその方面からしていかなければなりません。それで、私はいまここに聞きたいのは、地域集中暖房、これをやるためには、年金の積み立て金等を利用してこれに充てる方法を考えたほうがいいのじゃないか、こういうように思っているのですけれども、これは同じ厚生省の関係でございますから、年金局長ですか、どういうようにお考えでしょうか、一応伺っておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/123
-
124・伊部英男
○伊部政府委員 年金の積み立て金のうち、還元融資として被保険者の福祉に回しておりますものが本年度千三百三億に達しております。そのうち、たとえば清掃等の生活環境にも相当の資金を充てておりますし、また公害防止事業団につきましても、その半分をいわゆる還元融資で持っているわけであります。ただいま先生御指摘の地域暖房の問題につきましては、札幌市等におきまして、冬季オリンピックを目標にして各種の計画が進行しておることは承知いたしております。また札幌市から個別的にも種々連絡等も受けておるのでございますが、今後いわゆる青い空をつくりますためには、さらに産業公害のみならず、御指摘のように、暖房でありますとかあるいはビルの暖房等の問題を解決するために地域暖房が必要であることは御指摘のとおりだと思います。その点につきまして、今後札幌市その他におきましても各種の計画が進められてくると思うのでありますが、これに伴う財源をどうするかという問題が出てくるわけでございます。今後問題が具体的に出てくる時期におきまして十分検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/124
-
125・島本虎三
○島本委員 次に、公害防止事業団の融資の問題でございますけれども、これは産業公害だけに融資できるような仕組みになっておりますが、当然これは産業公害以外の公害にも融資できるように法の改正も必要ではないか、こう思います。それと同時に、公害融資の機関として開銀、中小企業金融公庫と、いま言ったような事業団融資、公害防止事業団、それぞれありますけれども、これは全部門戸を閉鎖してなかなか困難なようでございます。こういうような問題に対しましては、やはり融資体制の一元化、こういうようなものも十分考えて、今後産業公害にしろ、都市公害にしろ、公害防止対策については十分金融的にも資金的にもスムーズにこれをやり得るようにしてやったほうがいいのじゃないか、こう考えておるわけなんでございますけれども、厚生省当局は賢明ですから、こういうような点を当然考えておられると思います。この公害防止事業団並びに開銀や中小企業金融公庫ですか、こういうような方面の公害関係への融資の体制等については、何かはっきりした今後の見通しがありましたらここに披瀝してもらいたいと思います。これはなかなか重要でありますから、大臣にかわってひとつ政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/125
-
126・田川誠一
○田川政府委員 公害に対する融資の御質問でございますが、いま御指摘のように、従来から行なっておる措置といたしましては、公害防止事業団あるいは日本開発銀行、また中小企業金融公庫というようなものもやっております。また税制の措置もやっておりますし、四十二年度には船舶整備公団あるいはまた中小企業振興事業団の融資というようなこともやっております。いずれにいたしましても、この産業公害に対する融資というようなものは、公害防止事業団を一元的に強化するように今後努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
〔委員長退席、天野委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/126
-
127・島本虎三
○島本委員 通産省のほうもついでに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/127
-
128・宇野宗佑
○宇野政府委員 いま厚生省の政務次官から答えましたとおり、たとえば中小企業振興事業団におきましても、この公害問題を取り上げておるわけであります。したがいまして、それぞれ各金融機関等いろいろ融資目的も異なり、あるいは性格も異なりますが、でき得べくんば将来いま島本さんも申されましたように、やはりどこかにおいて一元化をはかっていくということは、これはわが国の行政をスムーズにして、そうして国民に便宜を与え、また不安を与えないということにおいて必要かと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/128
-
129・島本虎三
○島本委員 特にこの都市公害、産業公害を通じまして、今後その絶滅を期して、まさにそれが経済の発展であるというような証左を明確にあげてもらうように、これは行政面でも特に努力してもらいたい、こういうことを最後に期待しておきたいと思います。
なお私は環境基準の考え方、先ほど申しましたように、これは意見が一致しておりません。それと同時に被害者救済制度の確立、これはずいぶん意見が違いまして、この問題については大臣が来なければこの二つの問題は話になりませんので、この二つを残しまして、私の質問はきょうはこれで終わらしてもらう次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/129
-
130・天野公義
○天野委員長代理 葉梨信行君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/130
-
131・葉梨信行
○葉梨委員 公害対策基本法案につきまして質問申し上げたいと思いますが、すでに与野党の委員によりまして、だいぶ御審議されておるわけでございます。またきょうの島本委員の御質問と私の質問もダブると困ると思いますので、できるだけ簡略に承ってみたいと思います。
公害の問題は、産業界と国民との間の加害者と被害者の関係だというふうに表現されておりますが、その背後にあるのが経済成長——経済成長があるからこそ公害の問題が起きておるわけでございます。そういう意味で最初にそういうことについて通産省にお伺いしたいと思います。
昭和三十年を基準としまして、四十年の鉱工業生産の伸びでございますが、これはどんな様子でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/131
-
132・馬場一也
○馬場説明員 お答え申し上げます。
四十年度の国民総生産の実績でございますが、これは大体二十四兆七千億円というのが国民総生産の実績でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/132
-
133・葉梨信行
○葉梨委員 たとえば三十年から四十年まで非常な伸びをしまして、このあと十年間、四十年から昭和五十年には大体どのくらい伸びるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/133
-
134・馬場一也
○馬場説明員 四十年の実績は二十四兆七千億円でございますが、先ほどお答えを落としましたが、三十年度の実績は九兆九千億円ということでございますから、四十年度、ちょうど十年間に倍以上伸びておるということでございます。将来五十年度にはどうなるであろうかという推定でございますが、これは通産省におきますエネルギー調査会の見通しをもってまいりますと、五十年度の国民総生産の見通しというのは一応五十四兆ということになっております。これは四十年度に二十四兆七千億円でございますから、これもまた倍以上という見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/134
-
135・葉梨信行
○葉梨委員 この経済成長に対応しまして、エネルギーの消費が非常に伸びておるわけでございます。まず、三十年に比べて、四十年が、石油とか重油とか、石炭、電力等についてどれくらい伸びておるか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/135
-
136・馬場一也
○馬場説明員 数字を申し上げますと、まず三十年度の実績でございますが、石炭におきましては、これは国内炭、輸入炭、合計いたしまして四千七百五十万トンという供給実績になっております。それから同年におきます石油でございますが、これも国産の原油あるいは輸入の原油、あるいは製品を輸入したものを含めまして千二百万キロリットルということになっております。それが四十年度になりますと、これも実績で出ておりますが、石炭につきましては、これは国内炭、輸入炭、合計いたしまして七千三百二十万トンという実績になっております。それから石油は、これもまた総数を全部合計いたしまして、一億二百万キロリットルという実績になっております。
それから、将来の見通しはどうかということでございますが、総合エネルギー調査会の推計によりますと、昭和五十年度の見込みでございますが、石炭におきましては、国内炭、輸入炭、合計いたしまして八千二百八十万トン、それから石油でございますが、二億六千二百万キロリットルという推定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/136
-
137・葉梨信行
○葉梨委員 こういう伺ったような状況でございますと、特に石油につきましては亜硫酸ガスが発生するわけでございますが、その亜硫酸ガス公害というものが将来ますます被害が非常に大きくなるということが予想されるわけでございます。こういうような状態は、経済界と申しますか、産業界にとっては非常なマイナスになる。公害が起こることによりまして、労働者にとっては労働条件が非常に悪くなる、あるいは企業の財産が侵害される、あるいはまた技術革新に障害が起きるというような、いろいろな大きな障害を生ずるのは明らかでございます。といって、逆に国民の健康を守るという立場、広くというと、国民の福祉増進のために、それではこのような被害をもたらす経済成長をストップさせていいかどうかということが問題になるわけでございます。これは御答弁を待つまでもなく、明らかにそういうようなことはできないわけでございます。私どもは結局、国民一般の立場からも、あるいは産業界の立場からも、当面最大の克服すべき目標はこの公害でございます。私ども高度の工業社会をつくった人間が、この悪である公害を防止できないはずはないという理念から、今日生まれようとしておるのが公害対策基本法であると思うのでございます。こういう意味からして、この公害対策基本法の第一条の目的の項では単純にして明快に規定すべきであると思うのでございます。すなわち私は、さっき島本委員からも御質問がございましたけれども、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」というような条項は削って、もう国民の健康を守っていくという最終目的一本にしぼるべきであると思うのでございまするが、これに対する御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/137
-
138・田川誠一
○田川政府委員 公害対策におきましては、人の健康を保護するということと、あわせて国民の生活環境を保全するということが目的とされておるわけでありまして、いま葉梨委員が言われました、第一条の目的のところに「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということばがあるのを、これをはずしたらどうかということでございますが、このことはすでにたびたび御説明をしてはおりますけれども、決して人の健康保持ということをないがしろにしているのではございませんで、何といいましても人の健康を保持するということは絶対的な要請でありまして、このことだけは経済の発展ということをも犠牲にしていかなければいけない、何ごとにもかえがたいものであるというふうに考えておるわけであります。ここに「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」と書かれてありますことは、生活環境というものは財産とか動植物までも含めて非常に幅の広い概念となっておるのでありまして、こういうことについては経済の健全な発展との調和も考えていかなければならないということでこういうような字句を入れておるわけでございまして、この点はひとつ誤解のないように御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/138
-
139・葉梨信行
○葉梨委員 先ほどからの大臣の御答弁でも、生活環境と人間の健康というものを切り離しておっしゃっているようでございますけれども、たとえば隅田川の水が濁っておるということ、これは直接にすぐに健康には関係ないかもしれないけれども、大気汚染というここ、大気も重要な生活環境でございますが、大気が汚染されたならばすぐに健康に響くわけでございます。そういうように、何か厚生省当局の御答弁というのは非常に観念的だと思うわけです。そういう意味で、これは野党の委員から何回か御質問があり、御答弁をいただいておって繰り返しになりましょうけれども、ひとつもう少し実態に即した考えをしていただきたいということを言っておきたいのでございます。
この経済との調和をはかりという条項につきましては、第八条二項の環境基準の規定についても同じくついておりますけれども、私はこれについてもやはり削ったほうがすっきりすると考えるわけでございます。そしてこの表現でございますが、第八条の表現が非常に消極的であるというふうに感じられてならないのでございます。というのは、厚生省原案と比較しますと、今度の政府提案によりますと、第一項では、「それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」こういうふうに書かれておりますけれども、厚生省原案では、「人の健康を保持し、及び生活環境を保全するために維持されるべき環境上の条件に関する基準を定めなければならない」——「保全するために維持されるべき」と、非常にきつい表現になっております。また第二項では、政府案では、「前項の基準のうち、生活環境に係る基準を定めるにあたっては、経済の健全な発展との調和を図るように考慮しなければならない。」、これに対して原案においては、「一により定められる環境基準については、それが一の目的に合致するものであるかどうかについて、常に、適切な科学的判断が加えられ、必要な改定が行なわれなければならない」こういうようにあるわけでございまして、明らかに改悪であると思うのでございます。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/139
-
140・武藤き一郎
○武藤説明員 御質問の第一点の「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということにつきましては、もう先ほど大臣、政務次官からお答えがあったとおりでございますけれども、生活環境について「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということを書きました趣旨は、先生御承知のように、生活環境といいますのは第二条の二項で「人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む」ということでございまして、人の生活に関係のございます財産、たとえば家具でありますとか、あるいはわれわれの生活に密接な関係を持っております家の、たとえばかきねでありますとか、あるいは動物でありますとか、そういったもの、あるいはその生育環境でございますので、川等も広く含んでおるわけでございます。したがいまして、現実の問題としまして先ほど御指摘がございましたたとえば川のような問題につきましては、やはり経済の発展の過程におきまして、川の近くに工場なりあるいは住居等をつくらなくてはいけないという実態が出てくるわけでございます。したがいまして、そういうような産業あるいは都市の発展に伴いまして、具体的にその川をどういうふうに利用するかという観点から、やはり現実の問題として川の汚染をどの程度にとどめるかということが必要になってくるわけでございます。そういう点で、この生活環境につきましては、やはり経済の健全な発展との調和をはかっていくという趣旨でここに書いたわけでございます。同趣旨で第八条の二項でも規定しておりますけれども、いま申しましたように、川でありますとかあるいは騒音につきましては、それぞれ地域性の問題あるいは川の利用目的という問題がありますので、具体的な地域あるいは川につきまして環境基準をきめていくということでございます。
それから厚生省案の第八条の環境基準のことにつきまして、いろいろ科学的な判断が加えられ、必要な改定が行なわれなければならないということが書いてあったけれども、そういう点についてないではないかということでございますけれども、こういう点につきましては、政府案におきまして具体的な条項は起こしてありませんけれども、当然そういう点につきましては配慮していくべき性質のものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/140
-
141・葉梨信行
○葉梨委員 そういう点についてはおっしゃるとおりに、ぜひ科学的に前向きな姿勢で環境基準をきめていっていただきたいと思います。
次に公害の定義でございますが、島本委員のお話にもございましたけれども、日照阻害、電波障害あるいは蚊、ハエ等の大量発生等の原因による公害も、必要に応じ、行政的施策の対象とすべきであると思うのでございます。定義にあたりましては、必要に応じて規制の対象となし得るように弾力的に考えていっていただきたいと思います。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/141
-
142・武藤き一郎
○武藤説明員 先ほどの島本先生の御質問とほぼ同じような御質問でございますが、先ほども御答弁いたしましたように、そこにあります大気、水質、騒音、振動、地盤沈下、悪臭というものが現在日本においていろいろ問題が各地に起きておるということ、それからいろいろの施策を考えていく場合に、同一のある程度の——もちろんそれぞれの公害の現象によって性質が違いますけれども、ある程度同一原則で処理ができるというものを取り上げまして、この公害対策基本法をつくったわけでございます。先生がいま御指摘になりました広義の公害といいますか、そういう問題につきましては、諸外国の法律では、ネズミ、蚊までも取り上げておるような国もあるようでございます。そういう点につきまして、決してないがしろにするわけではなくて、それぞれの関係法律なりあるいは関係の施策で、そういうような地域的な、あるいは個別的な公害問題については、当然積極的に対処すべきものと考えております。
〔天野委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/142
-
143・葉梨信行
○葉梨委員 そういう問題が起きたときに弾力的にキャッチできる法律をつくっておいていただいて、対処していただきたいと思うのでございます。
次にこの基本法が生まれる一つの原因としまして、いままでいろいろ水質保全法とか、ばい煙規制法とか、そういういろいろな法体系があり、また公害について各省庁に所管がわたっておったというようなばらばらなセクショナリズムがあったわけてございますしこれに対すそ反省から基本法が生まれようとしているのである、こういうふうに思うわけでございます。個別的ないろいろな法体系を一元的系統的に整備し、また行政の窓口を一本化しょうとしている御努力が、今度の基本法になってあらわれたと思うのでございます。ただ私は、それが必要であることはよくわかるのでございまするが、今度のような、たとえば公害対策会議、公害審議会というような機関でもってそれでは十分対処できるかどうかという疑問を持たざるを得ないわけでございます。どうしても強力な指導性を持った行政機関が生まれなければ、これはほんとうの抜本的な公害対策は行なわれないのではないか。たとえば厚生省が、先ほど島本委員の御質問にもございましたように、所管がどうだこうだという話がございましたけれども、必要な場合に、ほかの省庁に対しまして厚生省がいろいろな必要な措置を指示するだけの権限がいまの法案でもってあるかどうか、それについて明確な御答弁を伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/143
-
144・武藤き一郎
○武藤説明員 政府の提案しております公害対策会議では、公害行政の一元化についてははなはだ消極的ではないか、それから第二点は、厚生省はもう少し各省に対してはっきりと指示できるような規定はないのか、こういう二点の御質問であろうと思います。
私から申すのもいかがかと思いますけれども、公害対策基本法の提案を昨年の秋にいたしまして、ことしの冬にまとまりますまで、各省はあげてこの問題を熱心に討議いたしまして、ここに公害対策基本法案が政府としてまとまったわけでございます。従来からいたしますれば、この公害問題につきましては、厚生省のみならず、各省あげて積極的に協力されまして、総理府を中心といたしましてこの案ができたことは、決して公害問題について各省が消極的でなくて積極的なあらわれではないか、かように思います。それからこの公害基本法が提案になりましてから、地方におきましてもあるいは関係事業者におきましても、公害に対します熱意が非常に盛り上がっております。こういう点につきましては、やはりこの公害対策基本法を提案しただけでこういうふうなことになったわけでございますので、今後この公害対策基本法ができましたあとで、それぞれの規制法についてもより積極的に各省は臨んでいただける、かように私ども期待いたします。
それから厚生省に具体的に指示権はないじゃないか、こういうことでございますけれども、まあその点につきましては、公害対策会議におきまして厚生省の意見なりあるいはもちろん厚生省だけでなくて各省の意見というものは十分議論されまして、やはり国民の健康と生活環境を守るというのが公害対策基本法の骨子でございますので、そういう点につきましては十分政府として一体としてこの問題に取り組むことができる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/144
-
145・葉梨信行
○葉梨委員 たいへんけっこうな精神主義的なお話を伺ったわけでございますけれども、先ほどの島本委員の質問にもございましたように、たとえば重要な省庁でございます通産省の事務次官がああいうような言明を行なっておられるというような状況を聞きますと、非常に不安になるわけでございます。いまはまだ基本法の段階でございますから、これはみんなで力を合わせてやろうと言うことはやさしいけれども、具体的にいろいろな利害が対立してきた場合に、はたして公害対策会議で的確に処理ができるかどうか、たいへん心配なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/145
-
146・武藤き一郎
○武藤説明員 ただいまのような御心配につきましては、厚生省を激励していただくことじゃないかと思いますけれども、そういうことではなしに、やはり公害問題は多岐にわたっておりますし、各方面にわたっておりますので、御心配のような点以外にもいろいろと御議論、また逆の御議論もいろいろ私のところにも来ております。そういう問題はやはり大所高所に立った上で、総合的に公害問題というものは議論され結論が出てくるもの、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/146
-
147・田川誠一
○田川政府委員 私からちょっと補足させていただきますが、いま御懸念のあるお話でございまして、確かにそういう考え方もあると思います。しかし、まあ一つの行政機関をつくるにいたしましても、またこの法案にございます公害対策会議というような、行政組織法の第八条でございますか、それに該当する会議でありましても、要は政府の腹がまえではないか、また法律の運営のしかたにかかるんではないかと思うわけでありまして、そういう御懸念を払拭する意味からも、われわれ政府としては強い態度、特に厚生省といたしましては、健康を守るということを重点にこの公害対策に取り組んでいくということで、ひとつ御了承をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/147
-
148・葉梨信行
○葉梨委員 いまの御答弁を伺いまして、厚生省当局の皆さまの御熱意はよくわかりますけれども、でき得るならば、この点については、野党の委員の皆さんがおっしゃるように、行政委員会をつくって強力な機構と同時に、また心がまえと両々相まって、強力な公害対策を実行していただきたいということを繰り返して申し上げておくわけでございます。
次に、第九条の排出規制でございますが、この排出規制は、これだけで環境基準が確保される程度に強力なものでなければならないと思いますが、科学的水準からいいましても、私は、厚生省原案の環境基準を順守するための技術的経済的条件から判断して、一般的に可能な最も高い水準、こういうように規定しておくのがほんとうではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/148
-
149・武藤き一郎
○武藤説明員 先ほども申しましたように、排出規制につきましては、公害対策の最も基本的な事項でございますので、十分科学的にいろいろ検討さるべきだと思います。また、環境基準との関係につきましても、この排出規制のみならず、他の諸方策と関連して、この問題は、排出規制等につきましては考慮すべき観点もございます。しかしながら、いま先生が御指摘のように、科学的あるいは技術的に可能な限りこの排出規制を強化していくという方向につきましては、異論のないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/149
-
150・葉梨信行
○葉梨委員 この排出規制とか、あるいは土地の利用及び施設の設置に関する規制を行ないましても、それでも不十分な場合が起こるわけでございます。そういうときに、当局として、工場の操業中止とか、自動車の緊急規制とか、あるいは設備の除却、あるいは事業の全面禁止等のきつい処分を行なう覚悟はおありになるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/150
-
151・武藤き一郎
○武藤説明員 現段階で、先生が御指摘のような最悪の、最強力の規制をするという事態は、現在起こっておりませんけれども、そういう法的な規制につきましては、今後検討いたしたいと思いますが、そういう事態が起こらないように、この環境基準をきめまして、総合的な対策を推進していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/151
-
152・葉梨信行
○葉梨委員 この問題に関しましては、やはり行政当局がきつい態度で、こういう場合にはこういうような措置をするんだという姿勢をひとつきっちり示しておいていただきたいと思うのでございます。
次に、事業者の責任の問題でございますが、企業の社会的性格を考えますと、原因のはっきりしました公害につきましては、全面的に責任を負うべきである、これはもう異論がないところでございますが、野党の諸君がいわれるような、無過失責任を負うべしということにつきましては、現実的にどうであろうかという疑問を私は持つのでございますが、この点につきまして御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/152
-
153・武藤き一郎
○武藤説明員 無過失責任の問題につきましては、法律上いろいろ問題がございましたので、この法案につきましては規定しなかったのでございますが、もちろん今後十分検討していかなければいけない問題でなかろうかと思います。ただ、問題は、先ほどからの御議論がありますように、無過失責任をこの法律に書いたからといって、直ちに、救済措置が行なわれるということにはならないわけであります。やはり先ほど島本先生の議論の中にありましたように、たとえば挙証責任の問題とかそういう問題につきましての法律的な検討もさらに加えなくちゃいけないということで、いろいろ問題があるわけでございますので、今回はこの基本法の中では取り上げなかった、今後の検討事項にいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/153
-
154・葉梨信行
○葉梨委員 たとえば、一つの例をあげますけれども、被害が生じた場合の救済というのは迅速適確に行なわれなければならないわけでございます。被害者が加害者の故意、過失または因果関係の存在の立証を必要とせずに、被害の事実を、環境基準を侵害されていることについて証明をするだけで損害賠償を請求できることとして、加害者が故意、過失または因果関係がなかったということが証明されたときには責任を免れるべきであると思うのでございますが、こういうときに一体それでは、損害賠償のしりをどこへ持っていったらいいか。被害があった、それから環境基準は確かに侵されている、しかし損害賠償について加害者が、故意、過失がなかった、あるいはまた因果関係がなかったという場合に、一体それでは被害者はどこへ損害賠償の請求をしたらいいだろうか、どこがそういう場合に責任を負ったらいいだろうかという問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/154
-
155・武藤き一郎
○武藤説明員 御設例の点は、一番公害問題でやっかいな問題を御設例になったわけでございます。現在のところ、そういうときにどうやっていったらいいだろうかということについては、制度としてはそういう問題は解決できないわけでございます。そういう点について、先ほども、たとえば保険とか基金制度等について十分検討していただきたいというような先生の御質問があったわけでございますので、そういう点についてはなお今後検討したい。しかしながら、やはりそういう事態が起こりませんようにいろいろ対策も考えていかなくちゃいけませんし、あるいは法律的には被害者に有利のような、たとえば挙証責任の転換というようなことも、法律家の間では検討されているようでございますけれども、なお相当法律技術上むずかしい問題があると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/155
-
156・葉梨信行
○葉梨委員 そういうむずかしい問題を解決してほしいというのが国民の立場であると思うのでございます。そういう意味で、そういう問題についてはさらに問題を突き詰めていろいろ御検討をお願いしたいと思います。その被害の救済につきまする条項は第二十条でございますが、あまり明確ではないわけでございます。この点については社会党案のように明確に規定したらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。特にさっきも話が出ましたけれども、救済基金であるとか、国、地方企業による保険の制度であるとか、あるいは国、地方企業による治療費の代理支払いとか、そういうようないろいろな案があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/156
-
157・武藤き一郎
○武藤説明員 第二十条で簡単に、被害の救済に関する制度を行なうということだけであって不十分ではないか、こういう御指摘でございます。もちろんこの被害の救済の問題につきましては、具体的な制度をつくりまして、その制度を実際に実施していくということでなければ、被害の救済は行なわれないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この被害の救済につきまして、たとえば苦情処理機関のようなものとか、あるいは紛争処理機関のようなものとか、あるいは先ほどからお話がございました基金の問題とか、あるいは現行制度では和解の仲介とかいう制度がございますが、そういう問題も含めまして、この非常にむずかしい公害についての被害の救済につきましての制度を早急に検討してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/157
-
158・葉梨信行
○葉梨委員 被害の救済と同じく損害賠償の請求、これが非常に重要な問題になると思いますが、この政府提案の基本法案では損害賠償の規定がないわけでございます。これはどうして規定をされなかったのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/158
-
159・武藤き一郎
○武藤説明員 損害賠償の問題も当然被害の救済問題とうらはらになる問題でございますので、そういう点につきましても、被害の救済の制度を考えます場合に検討してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/159
-
160・葉梨信行
○葉梨委員 次に費用負担について質問申し上げますが、費用負担について加害者と被害者の間で協議がととのわなかった場合に、一体だれがこれを裁定するかという裁定機関の問題が出てくるわけでございます。これはなかなか強力な権限を持っておらないと決定ができない。これについて政府のお考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/160
-
161・武藤き一郎
○武藤説明員 御指摘のような点につきましては、現行制度といたしましては、和解の仲介という制度が水質保全法とかあるいはばい煙規制法でありますけれども、あります。そういう制度等を含めまして、今後そういう事態についての諸制度を検討してまいりたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/161
-
162・葉梨信行
○葉梨委員 第二十一条に「全部又は一部を負担するものとする。」とございますが、全部を負担するということは容易ならぬことだと思うのです。具体的にこういうことがあり得ましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/162
-
163・武藤き一郎
○武藤説明員 私どもが第二十一条の規定をつくりましたときには、大半は一部で、だんだんと例外的に全部の場合もあるのではないか。その場合に一部と書いておきますと、全部持っていただくようなことができませんので、この場合には法文の例文として「全部又は一部」と書いた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/163
-
164・葉梨信行
○葉梨委員 この問題は特に損害賠償あるいはいろいろな公害防止対策を行なわなければいけない企業の側として一番不満を持つ点だろうと思いますので、よく御検討をお願いしたいと思います。
次に、社会党の角屋議員が見えましたので、お伺いしたいのでございますが、政府原案にない条文が社会党案にございます。これは社会党案の第八条「(公害の発生の防止に関する総合計画等)」ここに第一項、第二項、第三項とございまして、総合計画をつくりまたは年度別計画を作成し国会に提出する。またこれに対する報告をつくらなければならぬ。たいへんいい御提案だと思うのでございますが、これを御提案になりました趣旨を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/164
-
165・角屋堅次郎
○角屋議員 葉梨委員の御質問の最初からおりませんのでたいへん申しわけございませんが、ちょうど放送の約束がございまして、それを済ましてこちらに参りましたので、御了解をいただきたいと思います。
ただいま御質問の八条に関する問題でございますが、これは葉梨委員も御承知のように、農業基本法の場合でも中小企業基本法の場合でも、多くのすでに政府が成立させております基本法の中でも、この種重要な基本法については実施のプラン、実施の状況というようなものを国会に報告する義務を付与しておることは御承知のとおりであります。私どもの国会に対する報告の場合の計画として五年ごとというふうにいたしたのでございますが、最初昭和四十年の四月社会党案を出しましたときには、十年を目途とした計画でございました。所得倍増計画当時は十年ということをいっておりましたが、経済社会発展計画でも五年というような形をとりましたし、また最近経済発展のテンポというものが非常に早いというふうなこと等から見まして、従来とりました十年を、この際今日の現状の中では五年を目途にしたほうがよかろうというふうなことで、五年に変えたわけでございます。したがいまして、やはり五年を目標にいたしまして、それを達成するための総合計画、あるいはさらに五年でございますから年度計画が当然できるわけでございまして、そういうものを作成をして国会に提出をしていく。その場合公害の著しい地域あるいは著しくなるおそれのある地域というのは、社会党としては特別措置法として別途提案しておりますけれども、政府案では基本法の中に含まれておりますが、これらの問題は緊急かつ当面の問題でありますので、第八条の二項のところで「第二十条の特別の施策の概要が含まれていなければならない。」ということを特に記しておるわけでございます。同時に第三項では「総合計画及び年度別計画の実施状況」というものを国会に報告させる。つまり政府自身が基本法に基づいて責任をもって実施されるわけでございますが、公害防止という問題は国民的に重要な問題でございますので、それらの総合計画、年度別計画あるいはそれに基づく実施計画、実施状況というものは報告によって綿密な点検をやる、足らざる点についてはその施策をしていくということで、公害対策基本法が成立のあかつきには、その実施について国会も責任を持つ姿勢が必要ではなかろうか、こういう趣旨に基づいて第八条を設けておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/165
-
166・葉梨信行
○葉梨委員 たいへんけっこうな御趣旨だと思うのでございますが、政府におかれましてもぜひこの点を取り入れていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/166
-
167・八木一男
○八木委員長 熱心な御質問に対して熱心な御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/167
-
168・田川誠一
○田川政府委員 社会党案の国会に対する報告のことは、これも一つの案だと思います。われわれといたしましても、こういうことも一応の考え方として検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/168
-
169・葉梨信行
○葉梨委員 社会党の案の第八条第三項の毎年提出しなければいかぬということは、これは何もそのまま取り入れる必要はないと思いますけれども、この趣旨はひとつぜひ取り入れていただきたいと思うのでございます。
次に、第十八条の「公害防止計画の作成」に関連いたしまして、厚生省原案では地域指定ということを明記しておられたわけでございますが、今度の政府原案並びに社会党案、民社党案、公明党案、全部地域指定については明文がございません。やはり公害のはなはだしいあるいはこれから公害がうんと起こるであろうと思われるような特定地域については、関心を喚起する意味からも地域指定の条項をお入れになったほうがいいと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/169
-
170・武藤き一郎
○武藤説明員 この基本法は主として理念的な法でございまして、具体的な事項をきめておるのは環境基準なり特定地域についての公害防止計画でございますが、公害防止計画を策定する場合は、もちろん地域的な点についてはっきりしないと公害防止計画がきまらないわけでございますから、ただ法律上の行政行為として指定という制度をとらなかっただけの話でございまして、実際上はそれと同じようなことは当然きめられる性質のものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/170
-
171・角屋堅次郎
○角屋議員 いまの御質問の点は、先ほどちょっと若干申し上げましたように、社会党の公害対策基本法の関係においては、公害の顕著な地域等における公害防止につきましては特別措置法案を別途提案をしておりまして、したがいまして、社会党案でいきます場合には、第二十条のところの、「(公害の顕著な地域等における特別の施策)」というのを基本法の中で考え方を明らかにし、それを受けて、特別措置法で、具体的な実施のプランあるいは実施の具体的な内容については特別措置法に譲っておるわけでございます。したがいまして、特別措置法の中の第二条のところをごらんになりますと、中央公害対策委員会、これはわれわれのほうは、中央公害対策委員会を設置するということになっておることは御承知のとおりでありますが、この中央公害対策委員会のほうで「次のいずれかに該当する地域」として、公害が現に著じい地域あるいは第二号として、公害が著しくなるおそれがある地域というものについて、「その地域において実施されるべき公害の発生の防止に関する計画(以下「公害防止計画」という。)」この基本方針を示しまして、関係地方公害対策委員会ではこれを受けて立って、これに基づいて当該計画の策定をするように指示している。また同時に、この第二条の条文の中で、「地方公害対策委員会は、中央公害対策委員会に対し、前項の指示を申し出ることができる。」中央から指示する形をとりますと同時に、地方の公害対策委員会からもその指示を求めることができる。相呼応いたしまして、公害の著しく発生しておる地域や、あるいは著しく発生するおそれのある地域についての公害の防止について万全を期していきたい、こういう考え方に立っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/171
-
172・葉梨信行
○葉梨委員 この公害防止という大切な事業を実施する機関として公害防止事業団というものがあるわけでございますが、この政府案の案文には何か埋もれてしまったようで、何かかすんだような感じがしてしかたがないわけでございます。実際に公害防止事業団という項を起こして規定をされるとか、かつその事業活動についての規定をされるとかいうことも必要だと思いますし、またその過去のいままでの実績については報告書をちょうだいしているわけでございまするが、ほんとうに公害防止事業団を活用して防止事業に当たらせる、その御決意を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/172
-
173・武藤き一郎
○武藤説明員 先生の御指摘のような意見は法案作成の過程の段階に一部ございました。しかしながら、これは公害対策基本法案でございますので、具体的にここのところはだれがやる、あるいはどこの省が受け持つというようなことはこの基本法ではそういう事項についてはきめませんで、もちろん公害防止事業につきまして公害防止事業団にいろいろの仕事をやらしていく、あるいは現段階でやっておりますこと以上に公害防止事業団をあるいは改組してやらせるということも将来は十分積極的に検討していきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/173
-
174・葉梨信行
○葉梨委員 この公害防止事業を推進していくにあたりましては、財政措置あるいは税制に対する優遇等が必要だと思いますが、特に中小企業がこの公害防止事業を行なうにあたっては、政府の特段の御配慮がなければ企業の存在自体があやうくなるという事態もあり得るわけでございます。それにつきまして格段の御配慮をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/174
-
175・田川誠一
○田川政府委員 先ほど島本委員の御質問でお答え申し上げましたように、金融の面あるいは税制の面、こういう面でできるだけ優遇措置をとっていくように私どもも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/175
-
176・葉梨信行
○葉梨委員 第二節と第三節で中央の施策と地方の施策についていろいろ述べられておるわけでございまするが、十七条に「準ずる」という、中央に準じて地方が行なうというような文句がございますけれども、何か明確さを欠くような感じがするわけでございます。中央の施策と地方公共団体の施策について区別ができない問題もあるかと思いますけれども、一応中央ではこれとこれと必ずやる、地方にはこういう点をまかせるというような点について御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/176
-
177・武藤き一郎
○武藤説明員 御指摘の地方公共団体と国との事務配分の問題、再配分といいますか、あるいは施策の振り分けという点でございますが、この点は第三節で「地方公共団体の施策」といたしまして、一括して一条を起こした関係で、いかにも地方公共団体の施策を二次的に扱っているような印象がございまするが、この点は条文の整理の都合上こういたしたわけでございまして、決して地方公共団体の施策について二次的に扱っている趣旨ではございません。御承知のように公害が起きておりますのは地方公共団体の地域内で起きているわけでございまして、第一次的には地方公共団体が施策をやって、それについて、いろいろの問題について国がいろいろ協力体制をとるということは当然だろうと思います。ただやはり地方公共団体はそれぞれの地域あるいは人口等、いろいろ性格が各地方公共団体によって異なっておりますので、それぞれの地方公共団体の特色に応じて施策を考えていくということが第十七条の趣旨でございまして、その場合において都道府県は主として広域にわたる施策の問題を行なう、それから市町村の行ないます施策につきまして公害防止の広域的な観点を都道府県が取り上げるという趣旨が第十七条に掲げられた趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/177
-
178・葉梨信行
○葉梨委員 その地方公共団体の施策を行なうにあたりまして、財源でございますけれども、まあ事業会社の本社の所在地と地方にある事業場が違う、これは一般でございますが、そういうときに地方公共団体が公害防止事業を行なう場合に、負担ばかりが多くて過重になるというようなことも考えられるわけでございます。これにつきまして税制上何かうまい方法はないだろうかということを私ども——おそらくこれは地方の各県庁のたとえば公害担当者などは頭を痛めておる問題だろうと思いますが、たとえば住民税や法人税割りやあるいは法人事業税の分割基準が従業員数によっているのを改めて、固定資産の価額などを導入して、本店所在地より工場所在地の収入をふやす、何かこれは私どもしろうとでございますが、とにかく地方の事業を行なうのに、あるいはまた国税と地方税の配分を改めるとか、そんなことでもって財源を与えてやらなければならないと思いますが、この点についていかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/178
-
179・武藤き一郎
○武藤説明員 地方公共団体に対するいろいろの施策を援助したらどうかということにつきましては、この法案では第二十二条におきまして「国は、地方公共団体が公害の防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。」というふうにうたってありまして、これの中身といたしましては、普通交付税あるいは特別交付税あるいは補助金あるいは地方公共団体の融資とか、あるいは公害防止事業団を通じます融資等が考えられるわけでございます。先生の御提案の税の問題について、再配分の問題等につきましては、今後自治省あるいは大蔵省等関係当局と相談いたしまして、御提案の趣旨については検討さしていただきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/179
-
180・葉梨信行
○葉梨委員 自治省からもおいでになっていると思いますので、自治省のお考えも承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/180
-
181・成田二郎
○成田説明員 ただいま厚生省の武藤部長から御回答申し上げましたとおりでございますが、御案内のとおり二府県以上にわたります法人につきましては、いわゆる分割法人という関係で、従来は従業員の員数によりまして割り振っておりましたけれども、三十七年度からはこれを改めまして、本社の関係につきましては二分の一として算定いたしまして、工場等の所在する府県のほうに手厚い税源が配分される、こういうふうな方法をとってきております。固定資産税の関係その他につきましては、今後いろいろな税制上の課税等もございますので、一緒に検討したい、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/181
-
182・葉梨信行
○葉梨委員 最後に、いま茨城県の鹿島地区に臨海工業地帯の建設が進められておるわけでございますが、この鹿島臨海工業地帯の完成は大体何年くらいになるのでございましょうか、通産省から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/182
-
183・馬場一也
○馬場説明員 茨城県鹿島地区には、現在立地を計画しておる主要な企業が幾つかございますが、これらの企業はそれぞれ立地計画あるいは工場建設計画を持っておりまして、大体早いものは四十三年ごろから操業を開始する。あるいは四十三年度から四十五、六年度にかけまして操業を開始いたしまして、昭和五十年ぐらいになりますといわゆる工場地帯といいますか、本格的な操業に入る、このくらいの見当かと思います。もちろん各社によって相達はあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/183
-
184・葉梨信行
○葉梨委員 参考までに伺いたいのですが、昭和五十年ごろに鹿島地区で生産される総額は大体どれくらいか。またその場合、国内においては第何番目くらいの工業地帯になるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/184
-
185・馬場一也
○馬場説明員 ただいままで立地の決定をしております企業の昭和五十年ごろにおける生産、出荷は、いずれも各企業の考えております計画をそのまま総合いたしますと大体六千億円というぐあいに推定をされます。
これはその当時において全国でどのくらいの工業地帯になるであろうかということでございますが、その当時における全国のほかの工業地帯の分がどのくらい伸びておるか、これはなかなかむずかしい問題でございます。昭和四十二年の現在の時点における六千億円の工業地帯というのは全国でも有数の工業地帯になるかと思います。おそらく現在におきましては水島ぐらい、水島の工業地帯の出荷額が六千億までいっておりますかどうか、そのくらいの状況を思い浮かべていただけばけっこうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/185
-
186・葉梨信行
○葉梨委員 問題は、大きな工業地帯ができました場合に、四日市であるとか、京浜地区であるとか、その他いままで起こったような公害の失敗といいますか、ああいうような公害を今後は起こしてはならないというのがわれわれ国民の期待でございます。その点について、現在までにどのような施策を行なわれ、またこれから行なわんとしておられるか、ひとつ御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/186
-
187・馬場一也
○馬場説明員 先生御指摘のように、昭和五十年まで各社それぞれ計画を持っておりますが、各社がそれぞれの計画で立地をいたし工場を建設するといたしますと、その地区の、これは主として亜硫酸ガスの問題が大きいと思いますが、各社の計画をそのままやったとすればどのくらいになるかという点につきまして、昨年度通産省はこの地域に産業総合事前調査というのを行ないまして一推定いたしてみますと、これは地区によって違いますけれども、一番最高によごれますところの地区におきましては相当な濃度に達するわけであります。これではいかぬということで、最高に汚染される地区におきましては、現在ばい煙規制法で非常事態といわれております〇・二二PPM以上の汚染度が三時間以上継続しないという状況に保つために各社の立地計画を相当修正してもらう必要がある。そこに目標を置きまして、それぞれ各社に対しまして、たとえば煙突を高くするとか、集合煙突にさせるとか、あるいは使用燃料について指導するというようなさまざまな指導を行ないまして、その指導によりまして各社はこれから立地計雨を進める、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/187
-
188・葉梨信行
○葉梨委員 国と同時に茨城県の協力体制が必要だと思いますが、それはどんな状況でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/188
-
189・馬場一也
○馬場説明員 この事前調査を行ないます際には、これは通産省の調査でございますけれども、調査そのものに対しましてはむろん茨城県御当局の御協力も十分いただいておりまして、この調査の結果につきましては茨城県御当局のほうにも十分御連絡はしております。工場に対しましていろいろ公害防止上の指導をいたしますと同時に、工場地帯ができる地点がきまっておりますので、たとえば住宅地帯とか工場地帯の間配りを十分やっていただきませんと四日市のような問題が起きますので、それらにつきましても、調査の結果、われわれのほうで必要であろうと思われる点につきましては茨城県のほうにもお願いしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/189
-
190・橋本道夫
○橋本説明員 地元の地方公共団体の問題でございますが、工業整備特別地域の指定を受けると同時に、実は厚生省のほうに参りまして、何をしたらよいかという御相談を受けました。そこで私どもとしましては、茨城は一番理想的な工業地帯ができるであろうということで、まず最初に県は気象測定をちゃんとやるという指導をいたしましたので、さっそく県は数百万の予算を取りまして、全国で初めてのケースでございますが、全く白州の段階から数地点での気象測定をいたしたわけでございます。それから数年続けました結果を得まして、先ほど立地部長のお話しになった通産省サイドでの発生源的の調査と、昨年厚生省のほうでもまわりの環境条件というサイドからの事前調査をいたしまして、その両者をからみ合わせてこまかな実施計画を組ませるというようなことをいたしております。そういう点でいま通産省から、煙突をこうしてはどうかというお話がございましたが、本年度厚生省の開発地域の調査の対象といたしまして厚生省が数百万出し、県が数百万出すということで、通産省の指導されたデザインで煙突をつくってみた場合には濃度はどうなるかという最初のエアトレーサーのテストを本年度茨城県と共同でいたすことにしております。本年、試験検査の備品等につきまして私どものほうで補助金を出してめんどうを見たりいたしておりますので、講習会を開く段階に達するまでになっているというような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/190
-
191・成田二郎
○成田説明員 いま御指摘の地域につきましては、現地のほうといたしましては、関係市町村長あるいは学識試験者で公害対策関係協議会をつくりましていろいろ万全の措置をとるように配慮しております。いま厚生省のほうからお話がございましたように、基礎的な公害防止の関係の調査は一応やっております。昨年も若干経費がかかったようでございますが、これは立地されるであろうところの企業体のほうに、わずかな金額のようでございますけれども、転嫁することに決定いたしまして、県のほうでも、これにつきましてはすでにあの辺の地域対策、土地利用等について相当思い切ったレイアウトを考えておるわけでございます。自治省といたしましても当然そういう地域問題を検討して、公害問題がスムーズに解決されますような方向で協力的にあるいは指導的にやってまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/191
-
192・葉梨信行
○葉梨委員 各係各省庁、それから県当局並びに進出企業が協力して、ひとつぜひともモデルケースとしてりっぱな工業地帯をつくっていただきたい、このように希望するわけでございます。
以上簡単に基本法案について質問を申し上げましたけれども、政府当局と二、三重要な点について必ずしも意見が一致しなかったわけでございますが、政府におかれてはひとつ弾力的な態度で私どもの質問の意味を御理解いただいて、りっぱな法律を政府並びに国会、みんなでつくるように努力していただきたいということを要望しまして、質問を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/192
-
193・八木一男
○八木委員長 この際、公聴会開会承認要求の件についておはかりいたします。
ただいま本委員会において審査中の公害対策基本法関係五案は、公害対策の基本方針を定めんとする画期的な法律案でありますので、この際、理事会の申し合わせのとおり、右五案について公聴会を開き、広く学識経験者、利害関係者等の意見を聴取いたしたいと存じます。
つきましては、右の公聴会開会につき、議長の承認を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/193
-
194・八木一男
○八木委員長 御異議なしと認め、委員長においてその手続をとることにいたします。
公聴会開会日時、公述人の選定、その他諸般の手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/194
-
195・八木一男
○八木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/195
-
196・八木一男
○八木委員長 引き続き、質疑を行ないます。工藤良平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/196
-
197・工藤良平
○工藤委員 私は社会党の島本委員の質問がございましたので、なるべく問題を集中いたしまして、特に責務の問題について、あらゆる角度から検討してみたいと思います。
まずこの基本法の第一条の問題でございますが、この中にそれぞれ、「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、」ということがうたわれているわけであります。特に第六条の中には、住民の項が一つ置かれているわけでありますけれども、これと第一条の関係はどうなりますか。当然これは住民の責務ということもうたわなければならないと思うのでありますけれども、まずその点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/197
-
198・田川誠一
○田川政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよく了解できないのですけれども、第六条で住民の責務をわざわざ入れたのはどういうことか、こういう御質問ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/198
-
199・工藤良平
○工藤委員 もう一ぺんお伺いしますと、この公害対策基本法が、ただ単に事業者あるいは国や地方公共団体のみではなくて、それにはやはり全体的な国民の協力が必要であろうということから、第六条に住民の責務ということがうたわれたのであろうと思います。したがって、第一条にも当然出てこなければならないと思うので、その点の御質問をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/199
-
200・田川誠一
○田川政府委員 この公害に対する責務は、何といいましても、事業者それから国、地方団体ということがまず第一番でございまして、住民にももちろん協力を願わなければならないということもありますし、また別の面で発生者になることもあり得るわけであります。そういう意味で、事業者やあるいは国、地方団体とはまた別の立場にあるというような意味で第六条に入れたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/200
-
201・工藤良平
○工藤委員 したがって、当然第一条の大きな意味の中には含まれるというように理解をしていいと思うのでありますが、そこで私は後ほどこの責務の問題と関連をいたしまして一つだけ、これは通産省にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほどから再三議論になっておりますように、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」こういう字句が新たに、当初の原案からいたしますと入ってきたわけでありますけれども、私は特に、通産省の立場から、この産業の調和とは一体どういうことをさすのか、人間の生命を無視した産業保護の思想でしかないのではないかということを私どもは考えざるを得ないわけでございます。したがって、日本の全体的な産業の発展ということを、私どもはそれを否定するわけではありませんけれども、やはり技術というものは人間の生活を豊かにするものでなければならない。したがって、豊かにするということは、当然安全性を第一義に考えた技術でない限り技術でない、こういうように言っても過言ではないと私は思うわけであります。
〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
そういった意味から、この「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということの思想には、先ほど申し上げましたように、産業保護という大きな一つの流れというものが考えられるのではないだろうか、こういうように思うわけで、この点については、先ほどから、再三意見が出ておりますので、ぜひ考え方を明らかにし、改める方向でひとつ御意見をいただきたい、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/201
-
202・宇野宗佑
○宇野政府委員 先ほどから、生活環境という点に関しましては、厚生省当局よりお答えがあったとおりでございます。したがいまして、具体的に申し上げますと、生活環境の中には当然人の健康というもの、これはもう何をおいても第一番の問題、優先的に対象としなくちゃならないことは当然でございますが、他にもやはり動植物であるとか、あるいは諸種の産業等があるわけでございまして、公害発生のトラブルが起こる根因をいろいろと探ってみますると、従前よりその場所にありました住民あるいは産業との摩擦というものが非常に大きいわけでございます。したがいまして、たとえば、ある地域におきまして一本の煙突から排出している煙自体ば排出規制に従っており、その基準を守っておる。ところが、それが複数になると非常に公害の発生原因となって、それが勢い生活の環境というものが、そこに露骨に差をあらわしてくるという点もございますので、そういう諸種の環境を考えまして、やはり諸産業の間においては、概念的に、経済の調和を保っていく、そうしたことをたてまえとして、もちろん人間の生命あるいは健康、これは優先的に取り扱いたいという意味でございますので、さようにひとつ御了解を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/202
-
203・工藤良平
○工藤委員 それでは厚生省にお伺いいたしますが、第一条の目的の精神というものと、それから第三条、第四条、第五条、第六条とありますが、この責務という条項の関係でございますが、私これをずっと読んでみまして、第一条の目的の精神と、それから第三条以降の精神——精神といいますとおかしいですけれども、考え方に若干の食い違いがあるのではないだろうかということを感ずるわけでありますが、その点についてはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/203
-
204・武藤き一郎
○武藤説明員 第一条の目的の精神と、第三条、第四条、第五条の出身とが少し食い違ってやしないかというような御質問でございますけれども、もちろん目的は、ここにありますように、この法律のおもなねらいというものを、いわば簡潔に書いたわけでございます。各条はそれぞれそれを受けまして、各条に必要な事項を書いたわけでございます。したがいまして、趣旨からいたしますれば、当然目的の範囲内でこの各条項は書かれているわけでございまして、決して矛盾するものではない。ただ、各条につきましてはいろいろの事項がつけ加わって書いてある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/204
-
205・工藤良平
○工藤委員 それでは重ねてお尋ねをいたしますけれども、この第四条では、「生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、」等々、こう書かれているわけでありますけれども、この中で、結局第一条の目的の中で出てまいりました「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」こういうこととあわせ考えますと、その条項に該当いたしますのは、そうしますと、「総合的な施策」、こういうことになるわけでありますか。第五条の場合には、たとえば「社会的条件に応じた」という字句が、そこら辺と精神的に一致するわけですか。その点をひとつ確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/205
-
206・武藤き一郎
○武藤説明員 第四条で「国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する、使命を有する」ということは、当然第一条の健康の保護と生活環境の保全ということとこれは一致することは当然でございます。それから「公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定」するというのは、第一条の「公害の防止に関する施策」の基本の事項につきまして、国は「基本的かつ総合的な施策」をやるのだということでございます。もちろんこの第一条には、総合的なということばは入っておりませんけれども、基本的な事項を総合的にやることが公害防止対策としては非常に必要なことでございますので、ここで第四条では「総合的な施策を策定」するというふうに書いたわけでございます。
それから第五条の「当該地域の自然的、社会的条件に応じた公害の防止に関する施策」という「責務」でございますが、これは当然地方公共団体が公害の防止に関する責務を持ちます際に、国の施策に準じまして、いろいろ基本的な施策があるわけでございますが、それに準じた施策をやる場合に、地方公共団体の自然的、社会的な条件に対応した公害の防止施策をやるということは当然でございますので、この点を特に地方公共団体の責務として書いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/206
-
207・工藤良平
○工藤委員 第一条のこの目的に、先ほど申し上げた経済の健全な発展との調和をはかるということが新たに入れられたということは、第四条、第五条は——第四条を読んでみますけれども、「国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」これは責務ですから、この責務の定義はあとでお聞きしたいと思いますけれども、非常に重要な問題なので、この中に産業との調和をはかるということは、総合的な施策ということに入るのかどうかということを私は聞きたいわけなのです。この第四条、第五条を見ますと、これはやはり国民の健康というものをとにかく考えるのだということが貫かれているので、第一条と第四条、第五条と別に違わないのか。それは「総合的な施策」なりあるいは「社会的条件に応じた」ということに第一条のそれが生かされて書かれておるのかどうかということを利は確かめたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/207
-
208・武藤き一郎
○武藤説明員 第一条で「経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全することを自他とする。」というところで、生活環境を保全することについてだけ「経済の健全な発展との調和を図る」という趣旨で、国民の健康についてはかかっていないということについては先般来から議論があったわけでございます。第四条、第五条につきましては、一々そういうような字句を書く必要はないということで、第四条、第五条についてはそういう第一条と同じような条文はつくらなかったわけでございます。
それから、総合的な施策という場合には、これは第四条では「基本的かつ総合的な施策を策定し、」というふうにうたっておりますのは、基本的な施策は「第一節 環境基準」、「第二節 国の施策」、「第四節 特定地域における公害の防止」というふうにありますが、たとえば特定地域におきます公害の防止というような問題につきましては、やはりこれは、基本的施策の中でも総合的な観点から施策が行なわれるわけでありますから、第四条で「総合的な施策を策定」するというふうにうたったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/208
-
209・工藤良平
○工藤委員 そうしますと、責務という問題についてお聞きいたしたいと思うわけであります。これはもちろん責任と義務ということだろうと思いますけれども、責務ということと責任と義務ということとは若干違うのかどうか知りませんが、ひとつ責務という定義についてお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/209
-
210・武藤き一郎
○武藤説明員 責務といいますのは責任と大体同義語でありますが、責任といいますのは、あることをしたりあるいはしなかったりすることに基づきまして、その結果、一定の義務とかあるいは負担とかあるいは制裁を受けるというようなときに比較的使用されているようでございます。責務はその点任務というような意味にも使われているわけでございます。明確な使い分けはなされない場合もあるようでございますけれども、本法案は基本法でございましたので、そういう点、やや宣言的に規定するという趣旨で責務ということばを使用したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/210
-
211・工藤良平
○工藤委員 日本語はたいへんむずかしいわけですけれども、責務というのを私もいろいろ検討してみたわけですが、この責務というのはもちろん責任と義務ということになりますね。責任と義務を負わされるということが明らかにされるだろうと思うのです。したがって、逆にいうと義務を尽くすべき責任、責め、つとめというものが当然生じてくるこれはもちろん第三条、第四条、第五条と関係がありますから、あえてこの定義を明らかにしておきたいと思うのでありますが、それでは責任とは一体どういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/211
-
212・武藤き一郎
○武藤説明員 先ほども申しましたように、責務と責任と義務とはどう違うかという御質問になるかと思いますが、この点は厳密な使い分けがなされるわけでもないようでありますけれども、しいて使い分けをしますと、義務というのはたとえば法律によって課せられました拘束という意味で使用される。それから、責任ということばは、先ほど御説明しましたように、作為または不作為に基づきまして、その結果について一定の負担とかあるいは制裁義務、そういうような一種の不利益を負わされるというときに使用されるわけでございます。責務といいますのは、大体責任と同じ意味に使用されるのでございますけれども、任務というような意味にも使われるわけでございます。したがいまして、本法案では、義務、責任、責務というものの用語につきましていろいろ検討した結果、基本法でありますので宣言的に規定するという趣旨で、そういう趣旨になじむ責務ということばを使用した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/212
-
213・工藤良平
○工藤委員 この責任というのは、いま御説明のあったことで大体理解できると思うのですが、私調べてみますと、自分の引き受けてなすべき任務、第二義的には道徳的または政治的責任に対していう法律上の不利益ないしは制裁を負わされること、こういうように書かれているわけです。したがって私は、この責務の際に、特に事業者の責務という第三条について、これは国の施策に協力する責務、あるいは第二項には「公害の発生の防止に資するように努めなければならない。」ということが書かれているわけであります。公害そのものについてはまた後ほど聞きたいと思いますけれども、それが発生した場合に原因の究明がなされる。原因が確定をする場合、これはいろいろ不特定多数ということばがしきりに使われておりますが、私はすべて原因があるというように考えております。原因のないものはないわけでありますから、時間がかかるかどうかは別として、これを追及していけば明らかになるだろうと思う。いずれにしても、この原因が明らかになった場合に、その救済という問題についても、当然その責務としてここにうたうべきではないだろうか。これは三、四、五の各条項にも適用することだと思いますが、その点についてお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/213
-
214・武藤き一郎
○武藤説明員 救済の事項につきましては、第二章の「公害の防止に関する基本的施策」の中の第五節の「公害に係る被害の救済」こううたっております。したがいまして、「公害の防止に関する基本的施策」に救済の問題は入るわけでございます。したがいまして、第三条の「国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策」といいますのは基本施策でございますので、当然その中に被害の救済の問題も入ってくる。それから第四条でも「基本的かつ総合的な施策」とありますので、当然この中にも救済問題は入ってくる。それから第五条でも「国の施策に準じて施策を講ずる」「自然的、社会的条件に応じた公害の防止に関する施策」をやる。これも当然「公害の防止に関する基本的施策」でございますので、この中にも救済問題は入ってくる。直接表現はされておりませんけれども、その中に包含されているというふうに解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/214
-
215・工藤良平
○工藤委員 もちろんその中に入っておるということであれば一応理解はできます。入っているとすれば、むしろ責務の条項からここに明確に当然入れるべきではないだろうか、こういうように考えるわけですが、その点についてもう一ぺんお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/215
-
216・武藤き一郎
○武藤説明員 基本的施策の中に、基本的施策について協力する責務、あるいは第四条、第五条につきましても基本的施策を国または地方公共団体がやるわけでございますが、第二章に掲げてあります施策を一つ一つ拾い上げるということにつきましては、法文作成のときにはとらないで、一括的に全部の施策について協力するなりあるいは施策を策定するというような法律の整理をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/216
-
217・工藤良平
○工藤委員 これは二条とも関係をするわけでありますけれども、いまの救済の問題、それと責務の問題でありますが、一般に公害、公害ということで簡単に片づけられておりますけれども、もちろん公害の範囲については第二条で明らかにされております。しかし、この責務の段階の中で、たとえば救済をしなければならない、あるいは損害補償をしなければならない、こういう問題が起こった場合に、これは先ほども無過失責任について当然それをうたうべきではないかという意見が島本委員のほうから出ておりましたけれども、公害というものは原因を突き詰めていけばわからないものはないだろう、いずれか原因があるわけでありますから、私はそういう気がするわけでありますけれども、民法上明らかに私書であると判断できるものと、いま申し上げましたように不特定多数という形の中でその原因が不明確にされるという状況があるわけなんで、その場合にこの私害については行政上処理しなければならないという立場と若干違うのではないだろうか。その点について、第三条の関連においてひとつお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/217
-
218・武藤き一郎
○武藤説明員 先生の御指摘は、公害と私害とを分けて考える点もあるじゃないかというような御質問だと思いますが、御承知のように、公害問題は産業の勃興あるいはその他都市生活の進展に伴いまして、昔では私害であったものが現在では公害の中に入れて処理しなければ処理ができないというような問題もだんだんと出てきているわけでございます。したがいまして、「この法律において「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、」云云とありまして、大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭の現象が相当範囲にわたった場合には、やはり公害としてこの基本法なりあるいはそれに関連する法律でいろいろ施策をやらないと、予防なりあるいはいろいろの救済措置がおくれてくる、こういうような実態がありますので、先生の御指摘の私害というような問題も、この法案では公害対策として現実の問題として取り上げられてくる、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/218
-
219・工藤良平
○工藤委員 もちろん一般的な公害という立場で、いまのように非常に複雑化あるいは広範囲にわたってまいりますと、それが一つの企業だけではなくて、全体的な汚染なりそういう状況の中で公害という形に発展をするということはわかるわけです。しかし問題は、たとえば水質の汚濁あるいは悪臭、振動、騒音、こういったものは一つの企業から出ているということがきわめて明確なものもあるわけであります。また私たちはそれを明らかにするために、それぞれの調査というものも徹底的にやり、原因の究明をやらなければならぬ。原因のわかったものからは、当然それは民法上の問題として損害補償させるという立場をとらなければならないのではないだろうか。そうしなければ、一般的に公害ということで、あるいは不特定多数という形で簡単に片づけられるというところに、非常に問題が起きてくるのではないだろうか。そういう立場から私はその点を指摘しているわけで、その点もう少し明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/219
-
220・武藤き一郎
○武藤説明員 先生御指摘の趣旨はわかるのでございますが、先生の御設例のような場合もやはり公害対策といたしまして発生源についていろいろの規制をしていく、あるいはその他の対策を立てていくということは、区別をしてやるということにはまいりません。またそういう問題も、原因者がわかっている場合も含めて、やはり総合的に強力にやっていかないと公害対策は不十分であるということで、そういうような観点からこの問題を処理しているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/220
-
221・工藤良平
○工藤委員 私もいま申し上げましたように、すべて私害のみであるということはもちろん申し上げません。私害であったとしても、なお行政的な責任というものはそれぞれ負わなければならない事項がたくさんあるだろうと思います。したがって、そのために第四条、第五条というものが当然生かされてくるのではないだろうか、こういうように考えるわけでありますが、その点についてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/221
-
222・武藤き一郎
○武藤説明員 もちろん第四条、第五条の点につきましては、公害が先生御指摘の私害を含めて現在社会でいろいろ問題を起こしておりますので、そういう問題については、やはり国、地方公共団体が公的な立場で、あるいは公法上の主体としていろいろ積極的に施策なりあるいは権限を持っていくということでなければ、公害は防げない、あるいは規制できないということがありますので、その点については先生の御趣旨と同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/222
-
223・工藤良平
○工藤委員 そういたしますと、先ほど私が申し上げました第四条の国あるいは第五条の地方公共団体の責務の問題でございますが、この点については特に公害がいままでややもいたしますと一つの産業、一つの企業と申しますか、それと被害者個人というものの間でいろいろと問題の処理が行なわれてきた。広範になるに従いまして、これが地方の行政機関なりあるいは国の段階でそれを援助していくという体制がとられつつあるわけでありますが、この第四条の国の責務あるいは第五条の地方公共団体の責務というものの基本的な考え方というものは、当然これは原因者対国、地方公共団体というものが個人にかわって問題の処理に当たる、このような責務というものが考えられるのかどうかですね。もちろんこれは非常に混乱をしてまいりますと、その個人を取り巻くいろいろな民主的な団体等がいままで中心になってこの運動をやり、問題の解決を非常に助けてきたということが、問題を解決する上においては非常に大きな役割りを果たしているわけでありますけれども、この国の責務あるいは地方公共団体の責務の中で、一つの大きな企業に対立して個人が当たるという立場というものはきわめて弱い。したがって、第四条、第五条でいう責務の中に、当然それらの個人にかわってやはり国なりあるいは地方公共団体がその問題の処理に当たるという責務を負うのかどうかという点について、ひとつ考え方をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/223
-
224・武藤き一郎
○武藤説明員 一つの企業と個人という間におきまして、もちろんその両者間の権利関係が生ずる場合は当然あるわけでございますが、そういう点につきましては、民法あるいはその他の法律によって個人の権利というものは確保されているわけでございます。しかしながら、公害問題は先生が御指摘なさいますように、集積されてきている、あるいはいろいろ問題が複雑化してきておるということから、やはり国なり地方公共団体が法律制度を含めましていろいろの施策をやらないと、国民の健康なり生活環境が保全できないというような実態にかんがみましてこの基本法をつくり、その中で国なり地方公共団体の責務を明らかにしたのが第四条、第五条の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/224
-
225・工藤良平
○工藤委員 それではもう一つここでお伺いをしたいと思うのですが、しきりに原因不明あるいは不特定多数ということが言われるわけであります。したがって、その場合の責任というのは一体だれがとったらいいのか。原因はいろいろ調べてみたけれども企業もなかなかつかめない、しかし被害を受けたということだけは現実にある。こうした場合にその責任というのは最終的に一体だれがとってくれるのかということが、被害者にしてみれば非常に重要な問題であります。この点についてひとつ考え方をお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/225
-
226・武藤き一郎
○武藤説明員 原因がわからない問題をどうするかということで非常にむずかしい問題でございますが、先生が先ほどからおっしゃったように、わからないといってもよく調べればわかるはずだということでございますので、そういうときには、政府といたしましては、あらゆる手段を講じまして、その原因なり調査をやれば相当程度まではわかるのじゃないか。ただその場合にその責任を特定の者に負わせることが現段階でははなはだむずかしいような事態が出てくることが考えられる。場合によっては、現に出てきておる事例もある。そういうときに被害者はその救済とかあるいはそのしりをどこに持っていったらいいかわからないということでございます。その点につきましては、先ほどから御答弁いたしておりますように、被害の救済につきましては、今後の問題として特に原因がわからないような場合等を考慮して、むずかしい問題でございますが、前向きに検討してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/226
-
227・工藤良平
○工藤委員 なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、その原因を追及する段階での責任であればまだいいわけです。問題は、どうしても原因がわからない、被害が現実にあった、こうした場合に最終的にその補償は一体どこでするのかという問題がこの責任の問題と関連をしてくるだろうと思うのです。泣き寝入りになってしまうということは現実にあるわけなんです。しかし現実に亜硫酸ガスなら亜硫酸ガス、あるいは水俣、第二水俣病のような被害を受けた原因がなかなかわからない。ある程度企業が出してくれればいいわけでありますけれども、それもできなかったということになると、被害を受けた者は一体どうなるのかという点で、私はこの責任の分野というものはきわめて明確にしておかなければならない。したがって、第三条、第四条、第五条の責任というものも私たちが真剣に考えていかなければ、将来にわたって重要な問題を起こす、こういう立場で私は御意見を聞いておるわけで、この点についてはぜひひとつ検討をしていただきたい。これは質問しょうと思っておったのですけれども、救済の責務という問題の中で、もちろん、第二十条ですか、ありますけれども、その救済の問題についてはどのような責任をそれぞれに負わせようとするのか、これはほかの法律なりあるいは制度をつくるということでありますので、これはそのような考え方を明らかに盛り込んだ救済の制度というものを考えていただきたい、こういうことでひとつこれは政務次官のほうからお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/227
-
228・田川誠一
○田川政府委員 先ほどの話にちょっと関連するのですけれども、先ほど工藤委員がおっしゃった、原因がわからない場合もあるということですね。原因がわからないということは結局責任がどこにあるかということもわからなくなってくるわけで、そこで非常にむずかしくなってくるわけです。そういたしますと、一般の災害の場合、大地震があった、これはだれの責任だということになりますが、それと同じような結果が出てくるわけであります。そこに公害に伴う救済というものが非常にむずかしくなってくるあれがあるわけですが、いままでおっしゃられたように、発生の原因がわからなかったけれども被害を受けた人がいる、お困りになっている方々に対して、やはり何か考えなければいけないのじゃないかということで救済の問題が起きてくるわけでありまして、この問題は先ほども島本委員の御質問でお答えいたしましたように、そういうお困りになった方々に対する救済の処置、そういうことをこれから具体的に前向きに検討していくということでひとつ御理解をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/228
-
229・工藤良平
○工藤委員 その点についてはそれ以降の各条項に出てまいります国が地方公共団体に対する財政措置だとか、さっき申しました第二十条の救済対策についての十分なる配慮ということによって、やはり全体的な社会の責任というものを負う。それはだれか。それはやはり最終的には国の責任においてやらなければならない。こういうことに基づいて、いま申し上げました今後出てくる幾つかの条項に当てはまるだろう、こういうふうに私は考えるわけで、ぜひひとつそういう点で具体的な施策の中に生かしていただきたい、こういうように考えます。
それでは続きましてもう一つ、私はこの責任の問題でお伺いをしたいと思いますが、国あるいはまた地方公共団体が法律に基づいていろいろと行政指導をなさっていられるだろうと思いますが、その監督不行き届きのためにもしも被害が生じた、こういうような場合には、その責任は一体どうなるのかということをひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/229
-
230・武藤き一郎
○武藤説明員 監督責任といわれますと、だれに対する監督責任でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/230
-
231・工藤良平
○工藤委員 たとえば国は地方公共団体に対する監督の責任があるという条項が一つあるとします。あるいは国なり県は、たとえば一つの事業者に対して、あるいは農薬の取り扱い業者に対しての指導監督というような問題が出てくる。これは後ほど私は具体的に出したいと思います。そういう問題が出た場合には、それぞれの行政機関というものが責任をとらなければならないと思います。これは当然のことでありますけれども、その辺を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/231
-
232・武藤き一郎
○武藤説明員 法律によりましてそれぞれ責任者がきまっているだろうと思います。それについての監督責任が不十分であったから直ちに地方公共団体とか国がその責任を全面的に負うということにはならないと思います。もちろん行政上の道義的な責任は負うと思いますが、直ちに監督不十分であったから、この法律上の責任を全部監督者が貰うということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/232
-
233・工藤良平
○工藤委員 具体的な問題について二、三お伺いをいたしたいと思います。これは先ほど厚生大臣が、阿賀野川の水銀中毒事件を食品衛生調査会、ここで検討されておる、その結論が七月中に出されるであろうということを発言なさったわけでありますが、五月十日の会議録によりますと、本委員会におきまして板川委員の質問に舘林環境衛生局長は、大体六月中旬には結論が出るであろうということを発言をなさっているわけでありますが、いつごろはたして出てくるのか。だんだん延ばされておるようでありますけれども、進行状態はどうなのか、そこら辺をまずお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/233
-
234・田川誠一
○田川政府委員 食品衛生調査会の検討が予定より少し延びておるようでございますけれども、こういうような事態でございますので、厚生省といたしましては、七月中には結論を出せるようにということを強く調査会のほうにお願いしておりますので、そう遠からずの間に結論が出るものと私ども期待をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/234
-
235・工藤良平
○工藤委員 五月一日に質問をしたわけですから、約二カ月近くになるのですが、そのおくれておる最も大きな原因というのはどういうところでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/235
-
236・石丸隆治
○石丸説明員 ただいま食品衛生調査会におきまして審議を行なっておるわけでございますが、ただいまの進行状況は、あと一人化学工業の専門家の先生を呼びましてその御意見を伺う、それで結論をつくる、こういう段階にまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/236
-
237・工藤良平
○工藤委員 その結論が非常におくれておりますために、問題の処理について非常に混乱をした状態が生ずるのではないだろうか、こういうように私は考えるわけであります。その一つは、先般会社側から出されました「阿賀野川中毒事件に関する当社の見解」というものが私どもの手元にも送られてきておるわけです。調査班の調査の結果、それから会社側の出してまいりましたこの資料等を総合的に検討してみますと、その論点というのはきわめて明確だろうと思う。出されております論点は、阿賀野川の上流にある鹿瀬工場の廃液という案と、それから会社側は新潟地震で被災した農薬なりあるいは一般的に使われておる水銀農薬が原因であるということがいわれておるわけなんで、これらに対する厚生省の考え方をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/237
-
238・武藤き一郎
○武藤説明員 原因についてはただいま食品衛生調査会で調査中でございますので、厚生省の意見をいま言うのはいかがかと思いますし、またできないわけでございますので、その点は御了承していただきたいと思います。
新潟地震のときの新潟港の倉庫に保管しておりました水銀系農薬の状況について申し上げますと、その当時新潟港倉庫に保管されておった水銀系農薬は、非アルキル系のものが千四十四トン、アルキル系のものが一・五トンでありまして、中毒事件との関係を疑われておりますメチル系農薬はアルキル系のものの一・五トンの中にあるわけでございますが、百二十キログラムございました。この百二十キログラムのメチル系農薬の中に被災した数量は七十八キログラム、メチル系水銀としては一・五キログラムございました。しかしながらこれらはいずれも製造業者に返品されておりまして、流失したものはないとの調査結果が厚生省にはまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/238
-
239・工藤良平
○工藤委員 農林省に一つお伺いしたいと思いますが、問題を非常に長引かせ混乱させておる原因が水銀系農薬ということに私の判断ではなるだろうと思うのです。調査班の調査の結果も、ほとんど九割九分まで鹿瀬工場の廃液であろうという結論が、まだもちろん結論が出ておりませんが、想像されるわけであります。ただ完全に一致することは、水俣病と同じような水銀中毒による被災だということだけは完全に一致をしているだろうと思うのです。これは後ほど厚生省にもう一ぺん聞きたいと思いますが、そういう関連で、一般的にいま農薬による公害というものが相当各地域で問題になってきているわけでございますけれども、特に水銀剤を使った農薬の問題について、農林省の考え方、あるいは現在までいろいろな研究をなさっておると思いますけれども、その点について若干御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/239
-
240・加賀山國雄
○加賀山説明員 お答え申し上げますが、ただいまお話しのように、近年水銀農薬の散布によるいろいろ被害と申しますか、そういうものが発生しておるものでございますから、それに対しましてわれわれは必要な対策を打っておりますけれども、ちょっと現況を申し上げますと、最近の統計によりますと、われわれが農薬によりますいろいろな危害というものを調べる場合に、散布によるものとそれから誤用によるもの、それからあとその他いろいろのものがあるわけでございます。そういうことで分けておりますけれども、私たちが一番問題にしておりますのは、散布による中毒あるいは死亡ということでございまして、それにつきましては、近年の傾向は非常な勢いで減っておるわけでございます。しかし、なおそういうような事実があるものでございますから、昨年四十一年度から特に水銀農薬につきましてに非水銀糸の農薬へ切りかえるという方針を立てまして、四十一年度で約四〇%の切りかえをいたしまして、低毒性の非水銀農薬に切りかえております。四十二年は目標を約七〇%くらいにしたいと思っております。来年度、四十三年度には、できれば全部非水銀糸農薬に切りかえたい、そういうことで非水銀糸農薬の製造のほうも、またそれの使用の指導も徹底してまいっておる、そういうような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/240
-
241・工藤良平
○工藤委員 そういたしますと、残留水銀の摂取による水銀量——特にイモチ病に水銀系の農薬を使うということから、日本人の頭髪は外国人に比較をいたしまして非常に水銀量が多いという報告がなされておるようでありますが、そういうことからいいまして、その残留水銀の関係から、とれた米を食する日本人は非常に水銀量が高い、こういうことまで、これは農協あたりの調査によりますと若干出ておるようでありますけれども、そういう関係について農林省で研究をされておるならば、その結果を御報告いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/241
-
242・加賀山國雄
○加賀山説明員 ただいまの御質問でございますが、確かに水銀粉剤あるいは乳剤いろいろございますが、それを散布いたしまして、その結果、玄米の中に水銀が残るという問題でございますが、現在のところわれわれのほうで知り得ております量というのは、全然散布しない場合には〇・〇五PPM、そういうふうな量になっておりまして、二回散布しますと〇・二PPM、そういうふうな残留分になっております。しかし問題はそのような量の玄米を食べたのが、どのように体内に蓄積をいたしまして、どのように人体に影響を与えるかという問題につきましては、これは非常にむずかしい問題でございまして、厚生省当局のほうとも連絡いたしまして、この問題の究明をいまやっておる、そういう段階でございまして、この際申しあげる段階に至っていないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/242
-
243・工藤良平
○工藤委員 いずれにいたしましても、水銀剤を使った農薬は若干影響があるだろう、そういう想定の上に立って、四十三年までの間にこの水銀剤を使った農薬は漸次変えていきたい、こういう方針を持たれておる、こういうことでございますが、私はこのような危険な農薬を扱う規定なりある
いはそれを監督するのは一体どこなのか、その点
の責任をお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/243
-
244・加賀山國雄
○加賀山説明員 ただいまのお尋ねでございますけれども、われわれのほうとして、法的には農薬取締法という法律を持っておりまして、これは農林省所管の法律になっておるわけであります。これで製造業者あるいは輸入業者が実際に農薬を販売する場合には農林大臣に登録の申請をいたしまして、必要ないろいろの事項を届けさせるわけでございますが、それをさらに農薬検査所という所を持っておりまして、そこで十分検定をいたしまして、かつその中で特に毒物及び劇物に関するようなものでございますと、そのような試験結果がついてまいりますから、直ちに厚生省のほうへ連絡申し上げまして、毒物並びに劇物としての必要な措置をとる、あるいは取り扱い上の注意をやる、そういうようなことの指示をいただいておるわけでございまして、それをいただきましてわれわれのほうは登録をする、そういうようなことになっております。でございますから、毒物であったり劇物の場合は、それの保管なりまた取り扱いの注意というものは、全部厚生省のほうの毒物及び劇場取締法に基づきましてやっておる、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/244
-
245・工藤良平
○工藤委員 そういたしますと、たとえばこの新潟地震のときの写真を見ているわけでございますけれども、このように現実に被災後放置されていたとするならば、これが原因であるとはもちろん私は断定はし得ませんけれども、しかし問題を混乱をさせておる大きな原因になっておるということだけは事実だろうと思います。したがって他の倉庫に入っていたものは、報告によりますと、自衛隊その他を動員をいたしまして防止することができた。もちろんこれは地震でありますとか津波でありますから、防止することはなかなか困難であったろうことはわかります。しかしある一つの倉庫が水没をした、そのどこに置いてあったか。私も農林省の出身でありますから、倉庫の構造というものはわかります。ややもいたしますと、その農薬あるいは肥料というものが出ている最盛期にはいわゆる本屋でなくて下屋に置くということがしばしばあるわけであります。そのようなことがあってはいけないということを県の衛生部長の名前で通達を出しておるということからいたしまして、そこには指導、監督上の大きな責任の誤りというものがここにあったのではないかという気がするわけでありまして、その点については、厚生省ですか、運輸省ですか、担当はどういうことになりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/245
-
246・野海勝視
○野海説明員 先ほど農林省のほうから話もありましたように、農薬の多くは、その毒性によりまして毒物及び劇物取締法の毒物または劇物に指定されているわけであります。毒物または劇物に指定されているものにつきましては、その毒物または劇物の製造業者あるいは販売業者そのほかそれを業務上取り扱う者、これが保管責任を持っておりまして、盗難にあったり紛失したりしないような措置を講ずること、それから流れ出したり漏れ出たりしみ出たりしないような必要な措置を講ずること、こういった責任と義務を課せられておるわけであります。しかしながら、いま先生がおっしゃいましたような場合、震災というような異例の事態でございますから、この場合に倉庫業者が業務上取り扱い者として必要な措置を講じておったとしても、起こり得たかもしれないという問題がありまして、したがって、倉庫業者が保管上の責任は負っておるわけでございますけれども、これが直ちにああいう異例な事態でああいう結果になったからといって、必要な措置を講ずる義務を怠っておったと言うことはできないと思います。その毒物、劇物を業務上取り扱う者につきまして、毒物、劇物法上課しております義務は、盗難、紛失あるいは流失、漏失等を防止するために必要な措置を講じる、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/246
-
247・工藤良平
○工藤委員 時間がたいへんおそくなりますから、私はそう深くこの阿賀野川の問題を追及しようとは思いませんけれども、この写真によりますと、四十年の七月に撮影をした写真ということになっているわけで、これが信憑性があるかどうか私はわかりませんが、すでに震災後一年たった時点の写真だということが明らかにされているわけでありまして、こういうことが指導、監督上はたして許されるのかどうか。これは私は非常に重大な問題だと考えるわけです。この点については次回でもけっこうでありますけれども、事実を明らかにしていただきたい。もちろんこれは調査会におきましても明らかにしておると思います。その点はぜひひとつ明らかにしていただきたいと思います。要は、法律はつくるけれども、その法律の監視というものが局部的にはある部面では非常に行なわれるけれども、一方においてはたいへんな手抜かりがある、その手抜かりによって、問題の解決を困難にし、さらに被害を増大していくという原因になっている、こういうことを考えてみますと、私はこの原因の追及なりあるいは責任というものを明らかにしていくということがきわめて重要だということを先ほどから追及をしているわけです。この点については、ぜひ次の機会に明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけです。この点については、ぜひひとつ厚生省のほうでも御約束をしていただきたいと思うし、もし農林省あたりにおきましても、これらの問題について調査をしておりますれば、明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/247
-
248・武藤き一郎
○武藤説明員 御指摘の点につきましては、詳細につきましては次回なりあるいは資料等で御説明したいと思いますが、私が聞いております範囲では、地震後毒物または劇物になっております農薬につきましては、直らにしかるべき処置が行なわれたというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/248
-
249・加賀山國雄
○加賀山説明員 ただいまの工藤委員のお尋ねでございますが、われわれの関係のあるところは調べまして、材料を集めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/249
-
250・工藤良平
○工藤委員 それでは次に、非常にいま重要な幾つかの公害、特に人命を脅かすようなたいへん重大な公害というものが何件か発生をしてまいりました。特徴的に言えることは、まず水俣病の問題、それからいま御指摘をいたしました第二水俣病といわれる阿賀野川の水銀中毒の問題、もう一つは富山県の鉱山の廃液による痛い痛い病の問題、それから四日市のぜんそくの場合、こういった幾つかの特徴的な事例があるわけでありますが、この中で各地方公共団体の公害発生前なりあるいは発生後における対策というものを見てみますと、この第五条に関連をしてまいります責任なり非常に重要な問題が幾つか指摘されるだろうと思うわけであります。
〔島本委員長代理退席、小山(省)委員長代理着席〕
たとえば、発生後における県のとった処置、あるいは市のとった処置、こういうものをそれぞれ並べてみましても、大きな開きがあるわけであります。これらに対する国としての指導、監督はどうするのか。もちろん各県におきましては、公害室を設けたり、いろいろ違ったあれがあろうと思いますけれども、やはり全体的にこの公害の行政を一本化していくという立場に立って考えようとするのかどうか。そこら辺をひとつお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/250
-
251・武藤き一郎
○武藤説明員 具体的に公害問題が起きたときに、いろいろと取り扱いを聞くと、地方では場合によっては手ぬるいようなことが感じられる、こういうような御指摘だろうと思います。厚生省のいままでの扱い方につきましては、そういう事態が起こりますと、必要な指示なりあるいは場合によっては当然担当官等の派遣、あるいはいろいろ研究等を要する場合には、それぞれの予算を用いましてその事態の究明等に当たっておりますし、また関係各省にわたります場合には、いままでは個別にあるいは総理府に置かれております公害対策推進連絡会議等で取り上げでいただきましてやるとか、あるいは関係省庁が集まりまして、その対策を早急に検討するということを行なっているな第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/251
-
252・工藤良平
○工藤委員 私、これは不明確な点もあろうと思いますけれども、水俣の場合あるいは新潟の場合、富山の場合、四日市の場合、この四つを取り上げまして、それぞれ各市あるいは県が行ないました対策というものを、たとえば予算的に見てみましても、非常に大きなアンバランスがございます。これはもちろんそれぞれの市なり県の熱意にもよりましょうけれども、これはそういうものの熱意によって変わってはいけない。その対策は当然私は万全の対策が平等に行なわれなければならない。こういうように考えるわけでありまして、本日は時間がありませんから、その具体的な数字は申し上げませんけれども、できればこれは後ほどの機会に、いま特徴的に申し上げました各市県の支出をいたしました予算の内容等についてぜひ資料をお示しをいただきたい、こういうように考えるわけであります。
この点から関連をいたしまして、先ほどそれぞれ島本委員なりあるいは葉梨委員のほうから御指摘のありました国あるいは県の地方公共団体が支出をすべき予算的な問題等につきましても、私は早急に公害対策として確立していただくように特に御要望を申し上げておきたいと考えるわけであります。その点について、ひとつ次官のほうから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/252
-
253・田川誠一
○田川政府委員 地方公共団体の公害対策に対する熱意の有無のお話がございましたが、地方団体は地方団体なりにいろいろ一生懸命おやりになっているはずでございます。しかし、今後この公害対策基本法が成立をすることを機会といたしまして、できるだけ地方団体におきましても公害対策に熱心に取り組んでいただくように、私どもといたしましても努力をしてまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/253
-
254・工藤良平
○工藤委員 もう一つお伺いをしておきたいと思います。
これは第十二条、第十三条に関連をいたしまして、調査の問題でございます。特に公害病は発見をされるまでに長い潜伏期間がある、こういうことがほとんど定説のようになっております。これを発見をするためには、公的な機関というよりも、むしろ地元の医師会なり、そういうところが中心になりまして、非常に地域の住民の協力の中で、それらの問題が発見をされるという事例がたくさんあるわけであります。したがって、私は、この公害の発生への事前調査というものについて、やはり積極的な方針というものを打ち出すべきではないだろうか、こういうように考えるわけであります。私の地域は大分でありまして、これから実はたいへん重大な公害の発生の地域として注目を浴びているわけでありますが、特に大分の場合には、この公害発生の事前調査として、医師会が自主的に鶴崎地区の約十万枚のカルテを中心にいたしまして、約一年間にわたりましてその調査をして、健康の状況についてその構造調査をいたしているわけでありまして、これらの問題は、やはり事件発生原因究明のためにはきわめて重要な調査ではないだろうか、こういうように考えるわけであります。現在通産省なりあるいは厚生省を中心にいたしまして、水質の汚濁の問題とか、そういう調査が行なわれておりますが、特に私は、この疾病の構造調査について、ぜひひとつ厚生省なりで取り上げていただきまして、十分なる調査を行なって、この公害病が長い潜伏期間の中においてもやはり発見をされる、こういう立場が非常に貴重ではないだろうか、こういうように考えますので、この点については特に強い要望として申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/254
-
255・武藤き一郎
○武藤説明員 第十二条、第十三条に関連しての御質問でございますが、先生の御指摘のように、第十二条で監視、測定等の体制の整備をうたっております。現在でも大気、川あるいは海、騒音等——騒音につきましては条例でございますが、それぞれ法律がございまして、監視を府県が中心になっておっておりますが、なお、今後ともこの体制の整備については、御指摘のように、より積極的にやる必要があろうかと思います。
それから、第十三条の公害の予測に関する調査等につきましては、先ほど通産省あるいは厚生省から御説明しましたように、鹿島地区等につきましてはいろいろ予測調査をやったわけでございます。それから、先生のお話しになりました大分等につきましても、厚生省といたしましては、予測調査につきましては予算等を支出し、地元と協力しまして調査を行なっているところでございます。
なお、疾病等についてのいろいろ調査につきましては、現段階におきましては、あるいは不十分な点もあろうかと思いますが、先生の御要望の線に沿ってより積極的にこういう点につきましては考えていきたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/255
-
256・工藤良平
○工藤委員 最後に、ただいまの問題につきましては、私は先般の本委員会におきまして試験研究機関の問題について特にいろいろと質問をいたしたわけで、ぜひそのような意見を尊重していただきまして、具体的に今後の施策の中で生かしていただきたいと思います。
公害の問題につきましては、私は特に責任の問題について先ほどから再三申し上げましたけれども、私たちがほんとうにそれぞれの持ち場、持ち場で責任を遂行していく、そのことが、原因の究明を早め、そうしてよりいい公害の発見と対策というものを樹立をしていくだろうと私は考えるわけであります。特に複雑化してまいりました現在のような産業経済のもとにおきましては、個人というものはきわめて弱いわけでありまして、それを守る立場というものが産業公害の基本法の本旨でなければならない、こういうように考えております。特に過去の補償の実態等から見ましても、貧しさというものが人間の価値に対する判断をゆがめる。人間の命が三十万で買われる、このようなことがあってはいけない、私はそのように考えます。いわゆる低額補償というものは、その被災した農民なりあるいは漁民というものの貧しさというものを物語るのではないだろうか、こういうような気がするわけでありまして、これを救うものがやはり政治を行なうものの人間の命を大切にするという精神に基づいた施策でなければならない、こういうように考えるわけでありまして、ぜひひとつこの基本法の問題については十分なる御検討を願いまして、社会党をはじめとして、各党の案もあるわけでありますから、ぜひひとつ皆さん方で十分な討論の中でよりいい結論を出していただきますように特にお願い申し上げまして、私の質問をこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/256
-
257・田川誠一
○田川政府委員 たいへん有益な御意見をいただきました。できるだけ御趣旨に沿うように、厚生省といたしましても、政府といたしましても、努力してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/257
-
258・小山省二
○小山(省)委員長代理 岡本富夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/258
-
259・岡本富夫
○岡本(富)委員 たいへんおそくなりましたが、大事な基本法でありますし、それから、国民はひとしく一この公害対策基本法を制定して、りっぱに国民の健康を守ってもらいたい、こういうような念願のもとに、国民はわれわれの姿を見ておると思いますので、あとわずかな時間、ひとつ政府委員の方もがんばってもらいたいと思います。
そこで、最初にお聞きしたいことは、この公害基本法は、国の公害対策を、全般にわたってその対策を立てるところの基本法であり、また、国民の健康を保持するための基本法である、こういうように考えてよろしいか、これは舘林環境衛生局長に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/259
-
260・舘林宣夫
○舘林政府委員 この公害対策基本法は、公害施策に関しまするわが国の施策の基本方針を示したものでありますが、もちろんこの国の基本方針の中には、地方公共団体の守るべき公害対策に関する態度、あるいは企業側が守るべき態度、そういうものを包括して、わが国の施策としてはこれでいくというような基本をすべて包含をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/260
-
261・岡本富夫
○岡本(富)委員 そこで、最初に、第二条のところに「相当範囲にわたる大気の汚染、」それから「水質の汚濁、騒音、」とありますが、この「相当範囲にわたる」というのは、「大気の汚染」のところだけですか、それとも、最後の「悪臭」までがずっとかかってくるわけですか、この文字は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/261
-
262・舘林宣夫
○舘林政府委員 その大気の汚染とか、あるいは水質の汚濁とか、騒音とかというものが、ある程度の広がりを持ったものが、この法の対象とするものの定義とするという意味は、そもそも公害というものは、こういう定義であるということじゃなくて、本法としてはこれを法の対象としてとらえる、かような書き方をしてあるわけでありまして、この場合に、ある程度の広がりを持ったものというのは、大気汚染のみに限らず、水の汚濁も、流した水が隣のうちに流れるというだけではなく、騒音も隣のうちのラジオの音がやかましいというだけではなくて、ある程度の広がりを持ったものがこの定義にかかっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/262
-
263・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうすると、これは国の一番の公害対策の基本法です。それで、騒音も振動も地盤の沈下も悪臭も全部相当範囲にわたらなかったならば、本法には抵触しない。すなわち、「相当範囲」、この「相当範囲」とはどういう範囲でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/263
-
264・舘林宣夫
○舘林政府委員 この法文の表現だけで、直ちに向こう三軒両隣であるとか、あるいは一町四方であるとかいうことは、必ずしも明言できませんけれども、ここでこの法の対象としてとらえた、すなわち、このような国が方針を定め、一定の方式に従って公害対策をするというような対象として今後施策で取り上げるのは、ある程度の広がりを持ったものでなければ、いわゆる私害として民法上の関係で、隣の家がやかましいとかいうようなことは、これはすでに相互で解決できる問題でありまして、あるいは軽犯罪法で処分できるものもあるわけであります。そのようなものを、わざわざこのような基本法を設けてまで処理しなくても、民法上の損害賠償なりあるいは騒音の軽犯罪法上の取り締まりなり、そういうようなもので片づけられるものを、何もこういう大きな基本法を定めて国が処理をするという必要はない。やはりある程度の広がりを持ったものに対して、公法上の処置の規定を設け、あるいは国の責務をうたい、あるいは事業者の責務をうたうというようなことで、国が大きな方針をきめてやらなければ解決しないということを、この法の対象としたわけであります。したがいまして、この範囲は、そのような施策を必要とする範囲ということでありまして、ここで直ちに、騒音についてはどの程度ということを端的には申し上げられませんけれども、ある程度の広がりを持ったものが対象となるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/264
-
265・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうすると、「相当範囲」ということが非常にあいまいでありますので、あと関係法規も若干——若干というよりも、相当これははっきりしてこないのじゃないか、こういう面が懸念されるわけです。いまの話では、では隣の工場、まあ私書ですね。——私害といいますか、こういうものは対象にならない、こういうことでありますが、そうすると、一つ例をとりますと、蒸気機関車のばい煙、これは全国に操車場がだいぶあるわけですが、神奈川の子安操車場、あるいは鶴見の操車場へ行ってみますと、臨海工業地帯で引き込み線がある。鶴見では大小九台の機関車がものすごいどす黒い煙を吐いて操車をしているわけです。付近の住宅では、この石炭のばい煙で非常に困っておりますが、こういうものはこの基本法では対象にならないわけですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/265
-
266・舘林宣夫
○舘林政府委員 そのような操車場における事例が全国各地にある。そして、それらに対しまして、共通の何らかの施策を必要とする。たとえば排出の規制を基準を設けてやるとか、あるいは何らかの補償措置を講ずる、そういうような共通の施策を、特段に規定を設けてする必要があるというようなときには対象になり得るわけでありまして、お尋ねのようなことが、ごく局部に限られまして、それば話し合いでも解決するというような問題につきましては、必ずしも公害基本法の本筋からどうのこうのということをしなければ解決しないわけではございませんので、そのような場合には、局地的な解決をはかるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/266
-
267・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうしますと、大体、船舶がとまっておりますと、神戸や横浜あたりでは、長い間停泊するとばい煙が非常におかに上がってくるわけですね。こういう場合も話し合いでやる。また、日照阻害ですか、要するに大きなビルが建って、そうして谷間になってしまって暗くなった。あるいはまた、電波障害あるいは農薬の危害によるところの水銀の中毒ですね。こういうようなのがちょいちょい発生しておるわけですが、こういう問題。また風致的なもの、これらは生活環境が悪くなるわけですが、こういう問題は、やはり住民側から見れば、市民の生活妨害になって、そうして非常に困っているわけですが、この基本法ができても、そういう問題は個々に話し合わないと解決しない、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/267
-
268・舘林宣夫
○舘林政府委員 いま例示されました事例のうちで、日照のようなものは、今回のこの法の対象としては取り上げなかったわけであります。今回この法の対象を、特段に大気汚染とか水質汚濁あるいは騒音とか地盤沈下というような一部のものに限った理由は、これは一部とは申しましても、今日公害として一番大きな問題になり、また、これらに対しても各種の公法上の規制をし、国が基本方針を示し、責任区分を明確にして解決しなければ解決できない、しかも当面特に必要であるというものをこのような形で取り上げたわけでございまして、この法の対象とならないからといって、公害でないというわけでもないし、また政府におきましても、また地方公共団体にもおきましても、施策として取り上げないというわけではないわけであります。
ただ、日照のようなものは、ほとんど一対一の問題、あるいは大きなビルであれば数軒それによって被害を受けるかもしれませんが、被害を与えた者と与えられた者とはきわめて明確でございまして、そういう他人に被害を及ぼすというものの解決の方法は、すでに民法によって定められているわけであります。それによって当然解決をはかるべき筋合いでございます。
御指摘のありました、港における船がばい煙を出して、それによって多数の住民が非常に害をこうむるという場合でございますと、この法に定むる大気汚染の対象になり得る対象でございます。したがいまして、必要に応じて排出の規制をするかもしれませんが、これは今後この法に基づきまして、個々の法律をきめる場合に考慮してまいることになるわけでございます。
電波障害につきましては、日照と同じように本法の対象とはいたしてございません。
それから、農薬につきましては、農薬そのものが直接害を与えるというようなものは本法の対象ではございませんけれども、ただ農薬のようなものを製造し、それが回り回って、いわゆる公害を惹起するということのないように、法の対象にした事業者の中で特に「物の製造、加工等に際して、」云々という条文でうたってあるわけであります。それらが回り回って、河川を汚染する場合には水質汚濁の問題になりますので、本法の対象としてはそういう形で取り上げていくことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/268
-
269・岡本富夫
○岡本(富)委員 なぜこういうこまかいことを聞くかと申しますと、みんな現実の問題で困っているわけです。そうして、この公害基本法がりっぱに成立するのを待っておる。私たちもそのつもりで聞いておるわけです。
そこで、地下街の大気汚染について、神戸の三宮のさんちかタウンにおきましては、炭酸ガスが、通路は大体〇・〇七%、じんあいが九百個、細菌が三百八十、食堂のほうは〇・二四%、じんあいが四千個、細菌は少なく百ぐらいですが、これは環境的な目安として炭酸ガスが〇・一%、大体それで見ておるということを聞いております。そうすると、食堂付近は相当汚染されている。これは一つの例にすぎませんが、全国にこういう地下街が相当あるんじゃないか。これは国民の健康保持上重要な問題であると思うのですが、この問題はどうですか。これも基本法で取り締まれるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/269
-
270・舘林宣夫
○舘林政府委員 広い意味では大気汚染の問題でございますけれども、これを具体的に処理するとすれば、現行法では建築基準法におきましてある程度の衛生設備を考える、あるいは、特に工場でございますれば、労働基準法によりまして労働者の保護のために衛生措置を考えるということになっております。しかしながら、御指摘のような地下街とか、あるいはこのごろの、一つの事業体でなくて多数の事業体、あるいは住民が集まって大きなビルを形成しておるという一つの町のようなものが、建築に際しては便所をつくるとかいうような衛生上の配慮はございましても、その後の維持管理が不適正でございますと、窓のないような建築物、あるいは地下に都市が出現するというような、今日非常に不衛生になることは御指摘のとおりでございまして、この点は、今日言ってみれば、盲点といいますか、やや国の法律上の監督が行き渡っておらない点でございまして、厚生省といたしましても、何らかこれを法規制を必要とするということを考えまして検討いたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/270
-
271・岡本富夫
○岡本(富)委員 次は自動車の排気ガスでございますが、最近自動車のふくそうによって一酸化炭素が非常にふえてきておる。私の調べたところでは、環七大原の交差点付近では一〇〇PPM、労働衛生では作業場は一〇〇PPMが基準であるが、外部の環境基準はその十分の一ですから一〇PPM、これが学者の通念です。横浜あたりで調べると、八四PPMのところがちょいちょいある。自動車運送車両法、この保安基準では、有害物質を出してはならない、こういうようになっておるだけであって、特にアイドリングの場合は一酸化炭素の排出が多い、こういうのはこの基本法ではどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/271
-
272・舘林宣夫
○舘林政府委員 自動車の排気ガスによる大気の汚染を防ぐ方法は二つの方面からございまして、交通の側から防ぐ、すなわち自動車の構造そのものを変えることによりまして排気ガスを改善するという方法がございまして、アメリカ等はその点すでに非常に進んでおりますし、わが国もようやくその方向にあるわけでございます。それからまた、立体交差のようなものをいたしまして、道路に自動車が渋滞しないように、アイドリングによる排出を減らすということも一つの方法であるわけでございますが、それらの措置を講じても、なおかつ最近のような非常に多数の自動車のはんらんになりますと、路上は、お尋ねのような一定の限度を越えて、健康によくない状態が生ずるかもしれないということを、私どもとしても憂慮をいたしておりまして、これに対しましては、そのような限度を越えないような環境の基準をつくりまして、その限度を越えた場合には、自動車交通をある程度規制をするとか、また、それを目安にして立体交差その他の措置を講ずる、あるいは交通の流れの方向で解決するとかいうようなことで、環境基準としてこれを解決してまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/272
-
273・岡本富夫
○岡本(富)委員 そうすると、それは厚生省でやるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/273
-
274・舘林宣夫
○舘林政府委員 本法に基づきます環境基準は、国のあるべき今後の大気の姿、あるいは水の姿、あるいはやかましさの程度というようなものを国としてきめることになりますので、政府として方針を決定し、さらに各般の施策をそれに集中してその基準を守るようにいたす、かようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/274
-
275・岡本富夫
○岡本(富)委員 その窓口は、自動車の排気ガスの場合、厚生省ですか、運輸省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/275
-
276・舘林宣夫
○舘林政府委員 この自動車の改善策、交通の面でとらえれば運輸省でございますし、また、国民の健康を守る、健康に障害があるものを排除するという側から見れば厚生省でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/276
-
277・岡本富夫
○岡本(富)委員 両者でやるというわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/277
-
278・舘林宣夫
○舘林政府委員 公害対策は一省の施策にとどまらず、各省それぞれの分野で相協力して実施することに相なりますので、それぞれの分野の仕事に関しましてはそれぞれの省庁が窓口になり、責任を負うてやることになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/278
-
279・岡本富夫
○岡本(富)委員 その問題はあとにしまして、今度の山陽新幹線の工事で、公害対策が非常にやかましくいわれておりまして、神戸の灘区の五郷地区の自治会から、やかましく神戸市のほうに言ってきておりますけれども、工事がここ数年間も続いて、ダンプカーの騒音あるいは排気ガス、あるいはまた風致地区の破壊、あるいはまた、幼稚園とか小学校がありまして、その通学にも非常に心配である、これについて国鉄のほうでは何の連絡もなく一方的にやっている、こういうことで、この自治会から市のほうに陳情して、あっせんをしてもらいたい、こういうふうに言ってきておるわけです。こういう取り締まりはやはりこの基本法でできるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/279
-
280・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねの新幹線の作業場の付近の住民が困っておる事態は、騒音の問題でございましょうし、騒音のみに限らずいろいろの公害間間があろうかと思います。それに対しまして、これが騒音でございますれば、今後この法律に基づきまして国が騒音の特別な法律をつくって、たとえば騒音防止法というような法律をつくって、当然その法規制の範囲内で処理することになりますし、また、事業者の責任というような点でも、この法の精神を受けて処理する、かようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/280
-
281・岡本富夫
○岡本(富)委員 非常に素朴な質問をいたしておりますけれども、これは国民の願いじゃないかと思うのです。
もう一つ、本基本法の精神は、生きる権利を優先する、産業犠牲者をなくする法律でなければならない、こういうように思いますけれども、先ほどちょっと話があったかもわかりませんが、神岡鉱業所の痛い痛い病、あるいは兵庫県の生野鉱山のけい肺の問題、こういう産業公害におけるところの被害も守ってあげることができるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/281
-
282・舘林宣夫
○舘林政府委員 痛い痛い病のような、カドミウムと一応疑われておりますけれども、そういう病気が、もしも産業排水のようなもので起こっておるということであれば、当然に水質汚濁の対象として本法に基づく各種の施策によって今後対策が立てられることになるわけでございまして、お尋ねのような事例は、いずれも今後この基本法の基本精神にのっとって各法が働き、あるいは法律がなくても、公害防止の見地から各種の施策が行なわれ、処理されることになるわけであります。ただ、総括的に申しまして、わが国の狭い国土で、これから将来の方向といたしましても、重化学工業が非常に発達し、推進していくことになるわけでございまして、その意味合いから公害問題が各地に惹起され、国民としてその懸命な解決を必要とするようになるかと思います。それの意味合いにおきまして、お尋ねのような、今日住民が非常に困っておるような事態、あるいは将来起こるかもしれない事態を、この法律によってできるだけ予防し、また、これによって処理するということを念願いたしておるわけでございます。もちろんその際に、ただ被害を防止するという観点からだけでなくて、やはり産業の健全な発展、望ましい発展という方向もあわせ考えて処理してまいるということが、本法の処理の一つの手段でもあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/282
-
283・岡本富夫
○岡本(富)委員 要するに、産業のために工場で働いており、あるいはまた、その工場の廃液によってそういう病気になった、こういう面に対しては、いまもあらゆる施策と言いましたけれども、現在までいろいろな法律がありまして、水質保全法、あるいはまた、工場排水法ですか、こういうのがありましたけれども、結局はたくさんの犠牲者が出ておるわけです。そのために国民は、今度の基本法をほんとうに一日千秋の思いで待って、私のところにも、いいものを早くきめてもらってください、こういう激励がずいぶんきていますけれども痛い痛い病の問題にしましても、過日参議院の特別委員会において私どもの矢追議員から話があったと思いますけれども、こういう病気がわかってから何年になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/283
-
284・舘林宣夫
○舘林政府委員 初めは、この病気は特段の地方病としてはわからなかったわけでございますが、いまから記録を調べ、あるいはその当時から病気になっておる人を調べたりなどいたしまして推定いたしますと、昭和十八年ころすでにこの病気が発生しておったのではないか、かようにいわれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/284
-
285・岡本富夫
○岡本(富)委員 厚生省として、この痛い痛い病を発見したのはいつごろになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/285
-
286・舘林宣夫
○舘林政府委員 痛い痛い病の存在は、終戦後、昭和二十四、五年のときにすでに明らかになっておったわけでありますが、これは特殊の地方病といたしまして、何か栄養失調によるものであるということが長くいわれておったわけであります。と申しますのは、この地区の経産婦で、しかも何回もお産をしておった女の人しかからない、あるいは、特殊の生活態度の方々、栄養状態の特殊な方方だけがかかっておるという事実がございますので、非常に栄養に関係があるということで、栄養面での指導がその当時から行なわれていたわけでございまして、これがカドミウムによるかもしれないということが言われ始めたのは、ごく最近のことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/286
-
287・岡本富夫
○岡本(富)委員 ごく最近とはいつでしょうかね。先国会においてもこの話が出たと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/287
-
288・舘林宣夫
○舘林政府委員 昭和三十九年、厚生省は調査費を出しまして、この病気の治療あるいは診断等の努力をいたしました。それから、昭和四十年には、文部省が特別研究費を出しまして調査をいたしました。そのころからようやくこれが重金属による障害のおそれありということがわかってまいったわけでございまして、これがどうもカドミウムの中毒らしいということが判明いたしたのが、昨年の早々でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/288
-
289・岡本富夫
○岡本(富)委員 じゃ、政務次官に、何か忙しいらしいですから聞きますけれども、本法三条に、「事業者の責務」というところがありますが、ここに公明党及びあとの野党三党は、「故意又は過失がなくても、当該公害に係る被害につき損害賠償の責を免れることはできない。」すなわち無過失責任のことでありますけれども、この事例について若干聞いておきたいと思うのですが、公害発生の第一義的責任は、何といっても事業者ですが、福島県のいわき市に小名浜というところがあります。ここに工場が四つある。最近稲や松が大きな被害を受けておる。それぞれの工場では、これは私の工場からではない、うちと違う、うちと違うといって、盛んに逃げ合っておる。そうして地方公共団体が中に入って、この賠償の問題、費用負担について折衝をしようとするけれども、定まらない。また、秋田県の大館市では、地盤沈下の問題が起こっておるのです。これは鉱物の採掘をやっておる業者、それから工場用水のために水をあげておる、こういうように両方の原因にわたっておりまして、いま原因不明でその処置に困っておる。また、先ほどお話がありましたように、態本県の水俣病——まあ阿賀野川の問題は大体解決しそうですか、こういうように、阿賀野川の問題でも、もう二年有余になりますが、いろいろと論争をしても、現実には住民が困るわけです。だから、早く国民のそういう病気になった人たちを守るためには、ここに無過失責任論というものが必要になってくる。したがって、今回の基本法にどうしても織り込むべきではないかというように思うのですが、大臣がいませんので政務次官の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/289
-
290・田川誠一
○田川政府委員 無過失責任の問題については、たびたび御質問があり、答弁も申し上げておるはずでございますが、いまの法律の体系から、これをここに入れるということは、いままで申し上げましたように、できかねるのでございます。しかし、先ほど来お話がありましたように、かといって、原因不明の公害でお悩みになっておる方もおられますし、被害を受ける方もありますので、結局しりの持っていきどころがないというような問題も起こっておりますので、そういうことを処理するといいますか、救済するために、この基本法の中にも救済制度を考えなければならぬというようなことも含まれておるわけでございます。残念ながら無過失責任の項をここに入れるということはいたしかねるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/290
-
291・岡本富夫
○岡本(富)委員 どこに救済制度が出ていすか、第何条に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/291
-
292・田川誠一
○田川政府委員 第五節、第二十条におきまして、「公害に係る被害に関する救済の円滑な実施を図るために必要な制度の整備を行なう」ということを入れております。先ほど来具体的な問題をどうするかという御質問がたびたびございましたが、それに対しましては、私どもは今後具体的な問題を研究をしていくということをお答え申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/292
-
293・岡本富夫
○岡本(富)委員 先ほどからも論争があったかわかりませんが、この基本法をこうして国会に出す限りにおいては、関係法案、要するに実体法ですね。これが出てこなければ、これはしり抜けになると思うのです。したがって、国民の側から見れば実体法が一番大事だ。なぜこの基本法と一緒に出さなかったか、これがわれわれ国民としては非常に疑問な点がある。したがって、政令できめるとかいうところは、ちょいちょい別の法律ではありますが、これの明示がなぜ一緒にできなかったのか、これについて政務次官にもう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/293
-
294・田川誠一
○田川政府委員 個々の法律はもうすでにあるのもあるわけです。御承知のようにばい煙規制であるとか、あるいは水質であるとかございますし、それから今後は、現在国会で——もう衆議院を通ったと思いますが、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律、あるいは飛行場の騒音に関する法律というようなものも出ております。それから都市計画法も準備をしております。で、理想から、言えば、あらゆるものを全部一緒にやるのが一番理想かもしれませんけれども、それを待っておったんでは、基本法の提出がおくれるということで、でき得るところからどんどんやるということで、今回の基本法の提出になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/294
-
295・岡本富夫
○岡本(富)委員 国民の側から見れば、すでにいろいろと関係法案があるじゃないか、こう言いますけれども、水質保全法にしましても、ばい煙規制法にしましても、防止法にしましても、それについて話があればまたそっちにいくのですけれども、ずいぶんしり抜けになっているのです。ばい煙規制法は今度は大気汚染防止法ですか、こういうような名前に変わるとかいうような話も聞いておりますけれども、それぞれ関係法案があるのだといいますけれども、ではいまの、たとえば富山県の痛い痛い病、あるいは生野鉱山のけい肺の問題、これに対する救済法という法律はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/295
-
296・田川誠一
○田川政府委員 ちょっと、誤解があるといけませんから申し上げますけれども、すでに法律があるからいいと私申し上げたのじゃございません。すでにある法律もあります。それから、いま国会で御審議を願っている法律もあります。今後出さなければならない法律も出てくる。それから、すでにある法律も直さなければならない、この基本法が成立した場合には、手直しをしなければならないことも出てまいります。ですから、私どもが申し上げているのは、基本法を出して、そうして側側にやらなければならない法律もできるだけ早く出したい。しかし、それを全部待っておったのでは、基本法も出し得ないということで提出をしたのでございまして、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/296
-
297・岡本富夫
○岡本(富)委員 じゃ、この点を了解したことにいたしまして、次に申し上げたいことは、国民の待っているのはその関係法案、実体法、これがいつどの時点において出てくるか、これを一つ一つスケジュール——これを私かつて本会議においても総理にも要求いたしましたけれども、いまだに出ないわけです。そのプログラムを出してもらいたいと思うのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/297
-
298・田川誠一
○田川政府委員 環境衛生局長から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/298
-
299・舘林宣夫
○舘林政府委員 ただいま政務次官から、本国会に提出いたしております法案について申し上げたわけでございますが、この公害対策基本法の中で、明確に法律を必要とするということが書いてある費用負担に関する法律というものを別に定めなければ、この条文が生きてこないような形になっております。当然にこの法律は早急に制定することになるわけでありますが、そのほか未規制公害、特に騒音に対しまする法律改正、法律の制定、あるいは既存のばい煙規制法、水質保全法というものも当然に本法に応じて改正する必要がございますし、また都市計画法ではたしてすべての工業立地計画に関する規制ができるかどうか。やはり工業の立地の規制を特段の法律の規定で行なう必要があろうかと思われるわけでございますので、そのような法規制というようなものが、比較的早期に制定される傾向にございまして、これらはいずれも政府が現に検討をし、あるいは近い将来に検討する必要があると考えておるものでございます。
そのほか、お尋ねの救済制度のようなものをどのような救済制度にするか、これはなおこれから慎重に検討してまいる必要があるわけであります。まず苦情を受け付けるところ、あるいは仲介の労をとるところ、あるいは救済の内容、措置、そのようなものをまずきめまして、それを必要があれば法制化をはかるということになるわけでございますが、これも厚生省としては、特に公害の被害者は今日非常に泣いておるという実態がございまして、何とかして救済の仕事を早く発足させたい、かように考えておる点でございます。
以上のようなものが当面比較的早期に法案化をはかる必要があると考えておるものでございますか、そのほかにも基本法にうたってあることを実際に実施してまいる上で法律の制定を必要とするものがあれば、それを法制度にする必要があるわけでございますが、この点はただいまどのようなスケジュールでどんな内容のものを考えておるかということのお尋ねには答えられませんけれども、当面早急に制定を必要とし、あるいはその検討を加えておるものは、以上申し上げたとおりのものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/299
-
300・岡本富夫
○岡本(富)委員 当然実体法をつくらなければならぬものについてはつくらなければならぬ、これはあたりまえです。ちゃんとこの基本法にうたってあるわけですからね。これは政務次官に申し上げたいのですが、いまの答弁では、何を聞いたかさっぱりわからない。早急に早急にと言ったって、早急がいつだかわからない。そこで、いま言っても、いついつと、こういうことは言えないかわかりません。
一点だけ聞きたいことは、この痛い痛い病あるいはまた生野鉱山のけい肺病、これはずいぶんいるのです。全国にも相当けい肺の患者がいますが、坑内作業中に粉じんを吸って——大体生野町には五十九名、これは兵庫県ですけれども、明延には二十九名、中瀬には二十二名、こういうような状態でありまして、各鉱山のけい肺でいま患者が相当人数がおるように聞いております。が、こういう面の救済法は厚生省のほうではどういうようにしてどういう制度をつくろう、こういうように考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/300
-
301・舘林宣夫
○舘林政府委員 けい肺に関しましては、これは労働衛生の問題でございまして、すなわち企業体に働く労働者の労働疾病に対する措置でございます。これに関しましては、すでに特別のけい肺法ができておりまして、それに対する各種の救済措置は講ぜられておるわけでございます。
お尋ねの、工場排水が有毒物質を含んでおりまして、それによって中毒を引き起こすということのないような措置に関しましては、毒物及び劇物取締法あるいは水質汚濁防止法、場合によりましては河川法等が現にございまして、その範囲で取り締まり得るものもございます。しかし、その範囲で取り締まり得ないものもあるいはあろうかと思われますので、その点は早急に検討いたしまして、もし現行法で処理できないものでございますれば、処理するようにたしまして、阿賀野用事件のようなことが起こらないような方途は講じてまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/301
-
302・岡本富夫
○岡本(富)委員 あなたの話を聞いておりますと、現行法では取り締まれないようなものについてはと、こういう話です。ぼくは取り締まれない話をしているのじゃなくして、現実に痛い痛い病でも、いまの話のように重金属の作用による。栄養失調でこんなことになるのだったら、全国に相当数おるはずです。そうしますと、やはり重金属の鉱山の水によってこうなったのだ、こういうようなところまできておるわけです。そこまで大体わかってきたのですから、今度はこの問題についてはどういうように救済してやるか、どういう制度を設けてどういうようにするか、これはもう厚生省のほうで大かた原案が立ってあるはずだと思うのです。そうでなかったら、この基本法を出してこない。まして、ここに救済制度を——だからその点について若干お聞かせ願いたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/302
-
303・舘林宣夫
○舘林政府委員 原因が明確でございますれば、すでに民法によりまして当然に損害賠償をとれるわけでございます。問題は、原因が必ずしも明確でない、訴訟を起こしても勝てない、こういうような場合の措置でございます。公害は、ことに個個の工場は、それほどそれだけで被害を起こすような程度の排出をしていない。これが多数集まりますと、害を出す場合もございましょうし、また、その害が工場だけでなくて、家庭から排出されるものも一部加担をしておるというようなことでございますので、加害があることは確かにあるわけでございますが、被害者が被害のもとがどこであるかということを明確に言えない。これが公害の救済といいますか、根源を明らかにする場合に非常にむずかしい。これから公害対策を処理していく上で一番むずかしい部分であろうと私ども考えております。これを単に、こういう原因がつかめなければ、これはもう補償のとりょうがないから放置するか、あるいは、原因がつかめなくても、何らかの救済措置を講ずるか。そういう措置の例として、何かどこかにプールのような金かあって、そこから救済資金でも出せないのかというふうな制度がこれから考えられるわけでございます。いま申しましたように、原因が必ずしも明確でない、裁判を起こしても勝てないというようなものに対して、どのような救済措置を講じていくかということは、今日わが国では制度として確立していないと申し上げたほうがいいと思います。したがって、今後それを何とか処理するという方向で、この基本法の中にそれに関する制度を国としても考えていくという基本方針でございますので、その基本方針に従って具体的措置をこれから講じてまいりたい。
それでは、その方法は何かということでございますが、実は、私どもも、当然にこの国会でこの質問はあるということで、私どもとしても具体的な案をあれこれいろいろ検討はしておりますけれども、この段階で具体的なことを申し上げる段階に至っておりません。今後十分検討してまいりたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/303
-
304・岡本富夫
○岡本(富)委員 そこで、この段階で具体的なことは言えない。また、もう一つはっきりしない。こういうことになりますれば、いま困っている住民は、どこへそれを持っていったらいいか。この基本法ができてああよかった、こう言ったところで、あなたのほうはとうしようもないよ。これは突っ放されたのも一緒です。
そこで、政務次官、やはりどうしても、先ほど私が事例をあげました福島県の問題あるいはまた秋田県の大館の問題は、ここでやはり事業者がその責任を持たなければならぬわけです。しかし、どの事業者がその責任を持たなければならぬか、その原因がはっきりしない。そうすると、われわれ野党三派の出した無過失責任というものをやはりここでうたわなければ、国民のほうは安心ができない、こういうように思うのですが、政務次官、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/304
-
305・田川誠一
○田川政府委員 先ほど御指摘の福島県の問題は、事業者のほうも、応分のほうの責任じゃないというふうにおっしゃっておられますし、責任の所在がまだ明らかでないわけでございます。そういうことでありますから、その救済問題が出てくるのであると思います。そういう救済については、先ほど申し上げましたように、苦情の問題については、今後ひとついろいろな面で検討していこうということを申し上げたわけであります。
その問題と、ここに法律に無過失責任を入れる問題とは、少し問題が違うんじゃないかと思うのです。先ほど来申し上げましたように、せっかくの御意見でございますけれども、いまの法体系から、民法上の問題からここに無過失責任を入れるということはいたしかねるわけです。しかし、責任の持っていきどころがないというようなこともございますので、今後そういうような問題については、慎重に検討していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/305
-
306・岡本富夫
○岡本(富)委員 いま福島県の話が出ましたけれども、このいわき市の小名浜というところは、ほとんど農業地みたいなところです。そこに四工場ができた。それで稲や松が大きな被害を受けているのですが、四つの工場側は、わしのところは責任がないということを言っているのです。それをまたはかるところもありませんしね。ただ、いままでそういう被害がなかったのですから、その稲や松や農民が受けた被害というものは、この事業者か起こしているに違いない。しかし、どういう事業者かわかりません。そういう立場から見れば、あなた、私のところは違うから責任はわからぬじゃないかと言いますが、そうすると、今度は中へ入ったところの地方公共団体の町役場とか県庁とかが、この賠償の折衝について非常に困るわけです。それで、ここへ無過失責任というものを入れておけば、これはその四つの工場がおかしたに違いないのですから、この四つの事業場で話し合ってちゃんと賠償ができ、被害を受けた国民はそれで補償してもらえる、こういうことこなるわけです。それとも、その事業者が、四工場がおかしたところのそういうものに対しても、舘林さんからいま話があったように、国が補償するのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/306
-
307・舘林宣夫
○舘林政府委員 お尋ねの福島県の石灰の作業場、これは大きな作業場——大きいと申しましても中小企業、の二、三カ所が、その約七、八十人の部落に対して障害を与えておるといいますか、直接疾病を惹起しておるとは必ずしも言いかねますけれども、非常に石灰が至るところに積もっておるという事態があることは御指摘のとおりでございます。このような事態は、原因を起こしておる工場そのものは非常に明確でございまして、また被害も非常にはっきりしておる。もう屋根の上まで積もっておるというような事態そのものがあるわけでございまして、それぞれ周囲の人に損害を与えておる。ただ問題は、その八十人の部落の過半数が、またこの工場の従業員でもあるというような事態がございまして、これを訴訟に持ち込んで争うということがなかなかむずかしい事態があるので、この解決がかなりむずかしいようになっておりますけれども、これは当然に民法の対象として損害賠償を請求すれば、裁判において処理できる筋合いのものだ。このような明確な因果関係のものは、まずそれによって処理されるものであると思います。問題は、御指摘の無過失賠償の場合におきましても、原因であるということが明確でないのに賠償を取るということはできないはずでございます。原因であるということがまずきまりまして、そしてそこに過失があったかなかったかということによりまして、過失がなくても損害を与えておれば賠償金を取る、こういうことになるわけでございます。
なお、私、いま石灰の栃木の話と間違えましたが、福島の事例もおそらくそういう事例かと思いますけれども、もしけい肺の問題でございますれば、先ほど私はこれは労働基準法でと申しましたけれども、周囲の人に与えておる障害に対しましては、これは労働衛生の同順でございませんで、やはり公害問題として処理さるべきものでございますが、大筋は、ただいま申しましたように、一対一、あるいは多数対多数でございましても、明確な対象と対象との処理でございますれば、当然に今日の裁判によって処理される道は開かれておるわけでございます。その開かれない場合に、公害に対してどのように救済制度を設けていくかということが今後の問題である、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/307
-
308・岡本富夫
○岡本(富)委員 なかなかうまく話をされましたが、結局、まだ人体に影響もないんだ、こう言いますけれども、稲やそういうものを販売して食べていくものですから、これがだめになったのでは人体に影響があると言っておるのです。
それはそれとして、それじゃ言いますけれども、秋田県の大館地区の地盤沈下の問題、工業耐水でくみ揚げている、片っ方では鉱山で採掘をやっておる。この地盤沈下は原因がどこやらわからぬ。こういうふうな原因不明なような状態の場合においても、やはり国が補償するのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/308
-
309・舘林宣夫
○舘林政府委員 先ほど来国家救済制度について申し上げておりますのは、それは直ちに国が救済をするということを意味するわけではないわけでございます。救済に際しましては——それは国が制度としていろいろ考えていくことにはなりますけれども、救済に際して、もしお金をやるというような場合に、何らかのお金の基金を必要とするという場合には、そのお金は事業体から特殊の形で取る、あるいは保険の形式をとっていくというような方法があるわけでございまして、その集めた金に国が何がしか援助はするにいたしましても、基本はあくまでも事業体が負うというような形になることが予想せられておるわけでございまして、したがいまして、救済であれば直ちに国が国家の一般会計からそれを負担していくという形になるとは限らないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/309
-
310・岡本富夫
○岡本(富)委員 そこで、国が補償はできない、また、事業者のほうからは取れない、こういうことになりますと、やはりどうしても私は、無過失責任をここに入れなければならぬということをもう一ぺん要望しておきます。いま政務次官は一ぺん次の事態に考えよう、こういうことでありましたが、政務次官は用事があるそうですから、どうぞ行ってください。
そこで、もう二、三点。先ほど地下街の問題や蒸気機関車の問題や船舶の問題あるいは山陽新幹線の問題について一つずつ話をしましたが、これは関係省が相当あちらこちらにまたがっているわけです。これでは、一番困るのはいろいろ芳情を持ってこられるところの地方公共団体になるわけです。それを一つ一つ処理するというのはたいへんな労力がかかる。そこで、どうしてもここで行政の一本化が必要である。今度この基本法ができると同時に、われわれ野党三派で出しているような強力な行政指導ができるところの、何といいますか、行政の一本化が必要である、こういうように私は思う。それについての厚生省の見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/310
-
311・舘林宣夫
○舘林政府委員 私はその案を必ずしも否定するものではないわけです。なぜかと申しますと、厚生省が厚生省案をまとめましたその中には、一つの行政権限を持ちました行政委員会という形を提示してあるわけであります。しかし、それでは政府が出しましたこの対策会議という形がそれに比べて劣るかといいますと、それぞれ特徴を持っておるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、各省庁に実体が分かれておる公害に対しましては、たとえば自動車の排気ガスの規制であれば、運輸省が自動車の構造を規制し、あるいは建設省が道路をつくり、あるいは厚生省が道路の一酸化炭素の排気ガスの障害を調べるというふうに、それぞれの省庁が、それぞれの立場、責任において分担したものを持ち寄って、総合政策を立てるわけであります。したがいまして、実体を持たない総合的なものができて、しかも手足を全然持たないという形で公害政策を取りまとめていきましても、はたしてそれが地についた公害施策になるであろうかということが懸念されるわけであります。その意味合いから、内閣に関係各大臣が集まって相談をいたしまして、そのような最高責任者が集まって方針がきまれば、それに従って各省がその分野の仕事をするという形態が今日の段階では最もいいということで、政府の案のようにきまったわけでございまして、先生のお尋ねのような考え方もあり得ることは、すでに厚生省自身が、当初そう考えておったという点で、私どもも一たんはそう考えたわけでございますが、いろいろ政府の各省の事業との関連を考えまして、政府の案が最もよろしいということでこのようにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/311
-
312・岡本富夫
○岡本(富)委員 そこで、なぜそういうように行政の一本化が必要であるか。いまあなたは、行政委員会には下にいろいろな関係のあれはないから、それよりも各省でやったほうがいいというお話ですけれども、やはり公取のようにして各省をきちっと取り締まっていく、その衝に当たっているところに対しては、強力な行政指導をしていく、こういうことが望ましい。
そこで、時間がありませんからあれしますけれども、なぜいまのままではぐあいが悪いか。それについてはもう舘林さんもよくわかっているはずなんだ。なぜかならば、あの厚生省の試案、国民がみんな熱望して、ああ、これならいいな、ちょっと不十分だけれども、このくらいならと、こう言っているのがどんどんどんどん後退してしまった。そしていまのこんな法案になってしまったわけです。したがって、今後出てくるところの実体法が、またああいうように各省の大臣が集まって話をしますと、通産省のほうは通産省のほうで、やはり企業を守るようになってくる。そうすると、厚生省のほうでは、これは国民の健康を守るのだ、こう言いましても、結局どんどんどんどん後退してしまって、みんな骨抜きのような実体法ができたんじゃ、それはしんぼうができないわけです。また、窓口であるところの厚生省にしても、非常に困ると思う。だから私は、そのことをいま特に申し上げておるわけです。
そこで、今後この関係法規の実体法がいまよりも後退しない、すなわち骨抜きになってしまわない、この確信がありやいなや、これについて厚生省の見解をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/312
-
313・舘林宣夫
○舘林政府委員 先ほど来岡本先生がおっしゃっておられたように、公害基本法が通ったからといって、公害対策がすぐ非常な勢いで前進するものではないわけでありまして、個々の実体法ができて初めて、実際に動くわけであります。したがいまして、実体法がよくできなければ、お念仏だけ幾らりっぱなことができても何もならないという点は、全く御指摘のとおりでありまして、私どもも、この公害対策基本法に示された基本線がくずされないように、あくまでもその線に沿った実体法ができるように努力することが、むしろ非常に大事なことである、かように考えて、その覚悟で努力をしてまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/313
-
314・岡本富夫
○岡本(富)委員 じゃ最後にもう一点。
この実体法の関係法規をいつごろ提出されるか。このスケジュールを、これは資料要求します。いま出せとは言いません。
最後に、自治省の方にお聞きしたいのは、監視、測定、こういうものに対しては、非常に科学的な、あるいはまた専門的なところの技術が必要だと思うのです。公害対策のこの監視員なんかは、各省でいろいろと技術養成すると思いますけれども、この専門技術員に対するところのある程度の資格と申しますか、食品衛生法には食品衛生監視員、あるいはまた環境衛生監視員、こういうようなシステムになっておりますけれども、そういうような地位を与えてあげるかどうか、これについて自治省のほう、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/314
-
315・成田二郎
○成田説明員 正確に、各府県あるいは市町村におきまして、そういう職制を設けておるところはないようでございますが、関係条例等をつくりまして、その条例あるいは関係規則が適正に施行されるために、機構、組織等について十分配慮しておることは、先ほど先生もちょっとお触れになったとおりでございます。それぞれの関係地方団体、特に公害関係の大都市所在の県が苦慮しておるところでございますけれども、それについては相当出費もございますものですから、いまおっしゃいましたように、専門的に職制をつくるためにはそれなりの財政上の事情もからみますので、こういう点につきましては、御案内かもしれませんけれども、自治省といたしましては、すでに地方交付税等におきましては、普通交付税のほうで標準団体につきまして百八十万円でございましたか、これは厚生省のほうの強い御要請もございましたので、基準算定上の予算措置はいたしてございます。それでも当然十分でございませんので、特別交付税におきまして、昨年実績でございますと大体四億六千万円ぐらいですか、こういうような措置でできるだけの措置はしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/315
-
316・岡本富夫
○岡本(富)委員 予算はそうでしょうが、公害監視員、こういうような身分保障と申しますか、こういうことをしてあげられるかどうか、これが一点。
もう一点は、地方公共団体、これは大体都道府県だとこういうように解しておったのですが、政令指定都市、この主張もそういうような地方公共団体の一つとしていろいろ意見をいれ、そしてやることができるか、すなわち二重行政にならないか、これについて最後にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/316
-
317・成田二郎
○成田説明員 お答え申し上げます。
これは、先ほど申し上げましたように、現在職制ははっきりしたものはございませんが、今度公害対策基本法が施行される暁におきましては、そのような点を踏まえまして、関係当局のほうとよく連絡いたしながら前向きで検討いたしてまいりたいと存じております。
それから、政令指定市の関係でございますが、これも近々中に、行政上、財政上の関係で、事務配分等の関係につきましても、当省の諮問機関でございますところの地方制度調査会におきまして検討する手順になっておりますので、その際いま先生の御指摘のような点につきましても注意してまいりたい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/317
-
318・岡本富夫
○岡本(富)委員 どうもはっきり聞こえなかったのですけれども、二重行政の面と、それから公害監視員の身分保障の面、この二つについてもう一ぺんはっきりひとつ言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/318
-
319・成田二郎
○成田説明員 後段のほうの件でございますが、地方制度調査会が近く開かれるわけでございますが、その際、府県とか市町村あるいは国の事務の再配分の関係を、特に財源の配分という関係もからみまして検討するようにしておるわけでございます。その際、特に六大市、いま御指摘の政令指定市につきまして、相当大幅な事務委譲の点が懸案になっておるわけでございますが、いまおっしゃったような点につきましても、二重にならないような点で公害対策の施策が施行されるように配慮していく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/319
-
320・岡本富夫
○岡本(富)委員 最後に、厚生省並びに関係省に、特にこの法案は大事な法案でございますので、さらに再考をいただきまして、そして、修正すべきは修正し、国民のために一日も早くりっぱに制定していただきたい。これを要求いたしまして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/320
-
321・小山省二
○小山(省)委員長代理 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これをもって散会いたします。
午後七時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504381X01319670705/321
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。