1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月三十一日(水曜日)
午前十時十八分開議
出席委員
委員長 川野 芳滿君
理事 藏内 修治君 理事 佐々木義武君
理事 齋藤 邦吉君 理事 竹内 黎一君
理事 橋本龍太郎君 理事 河野 正君
理事 田邊 誠君 理事 田畑 金光君
大石 武一君 菅波 茂君
世耕 政隆君 田中 正巳君
地崎宇三郎君 中野 四郎君
中山 マサ君 藤本 孝雄君
増岡 博之君 三ツ林弥太郎君
箕輪 登君 粟山 秀君
山口 敏夫君 渡辺 肇君
川崎 寛治君 後藤 俊男君
佐藤觀次郎君 島本 虎三君
中谷 鉄也君 八木 一男君
山本 政弘君 本島百合子君
大橋 敏雄君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君
出席政府委員
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生省公衆衛生
局長 中原龍之助君
厚生省環境衛生
局長 舘林 宣夫君
厚生省社会局長 今村 譲君
厚生省年金局長 伊部 英男君
厚生省援護局長 実本 博次君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
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五月三十一日
委員西村直己君及び川崎寛治君辞任につき、そ
の補欠として三ツ林弥太郎君及び中谷鉄也君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員中谷鉄也君辞任につき、その補欠として川
崎寛治君が議長の指名で委員に選任された。
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五月三十日
健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
法律案(内閣提出第九八号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第九九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第七九号)
戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案
(内閣提出第八〇号)
厚生関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/0
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001・川野芳滿
○川野委員長 これより会議を開きます。
厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。世耕政隆君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/1
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002・世耕政隆
○世耕委員 先日から新聞にちょっと記事が報ぜられておりますが、和歌山県の日高郡由良町に今月の中ごろ赤痢の集団発生事件がございました。それから次第に病気は付近の町内にも蔓延し、あるいは遠隔の都市にも広がってきているようでございます。和歌山県はいままで毎年天災に見舞われていたのでございますが、さすがに厚生大臣をわが県から出すだけのことがございまして、衛生的には比較的完備されていた県でございます。天がどういうわけか、このたび和歌山県のほうに皮肉にも試練を与えられまして、私も、和歌山県だけではなくて、今後いろいろなわが国の防疫上あるいは厚生行政の上に投げかける問題が非常に多いと思いまして、ここに緊急質問をさせていただくことになったわけでございます。
簡単でけっこうでございますから、いままでの感染経路について御答弁をいただければけっこうであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/2
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003・坊秀男
○坊国務大臣 近ごろ全国的に衛生思想も普及いたしまして、そういったようなおりから、集団赤痢といったような不祥事が起こりまして、しかもそれが私の郷里であるということは、非常に私も残念なことに思っておりますが、御質問によりまして、簡単に今日までの経過を申し上げます。
五月二十二日ころより、由良町の町内、これは私より世耕委員のほうがお詳しいかと思いますが、人口九千四十六人のこの町内の主として小中学生を中心に、三十八度ないし三十九度の発熱、腹痛、下痢、倦怠感、まれに嘔吐を訴える患者が発生し、町内の三人の医師より赤痢の届け出がなされました。御坊保健所にて検便の結果、二十四日ゾンネ菌を検出し、赤痢の集団発生なることを確認いたしました。直ちに県、町、医師会等のメンバーによる防疫対策本部を設置するとともに、厚生省あて第一報を報告してきました。当時の患者数は二百八名、その後二十六日には累計四百八名、二十九日には累計七百七十九名、患者が四百四十二名、保菌者三百三十七名の発生を見たわけでございます。
防疫対策といたしましては、二十四日防疫対策本部を設置し、県内隣接五つの保健所、県衛生研究所、医師会、薬剤師会、地元町民の協力を得て、五月二十四日、五日、由良町全域を消毒し、さらに二十七日より自衛隊の応援を得まして、二十九日には重ねて旧由良町の消毒を実施完了いたしました。患者の収容、臨時隔離病舎の設置、検病調査とあわせて保菌者検索を実施するなど、防疫措置の万全を期するとともに、今日原因の究明を行なっておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/3
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004・世耕政隆
○世耕委員 地方と大都市との格差ということが、日本の政治の上でも叫ばれているわけでございますが、ともすれば、この防疫の問題は大都会に集中されまして、地方のほうは、環境衛生学的にもなおざりにされる傾向があるのではないかと思う次第でございます。地方の一番特徴としますところは、野菜とか魚とか、いろいろな大都会で必要な生活必需品を生産するところでございまして、この部分にいろいろな伝染病が発生いたしますと、これがいろいろな食べものを介して、また大都会に運ばれて大流行をみる場合がございます。そこで、地方の町村といえども、やはり環境衛生の充実、設備の改善、あるいは政府におきましてもいろいろな予算の大幅な措置、こういうことが私はどうしても今後の防疫対策上必要になってくるのではないかと思うのでございますが、この点、大臣におかれましてはどのようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/4
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005・坊秀男
○坊国務大臣 国民の全般が健康であるということは、これは何にいたしましても何よりも大事なことでございます。そこで、その健康保持のための政府の施策というものは、中央と地方とで甲乙があってはならない。私は、中央の大都会も、地方の町村も、ともにこれはさような不祥事を起こさないように、国としてできること、国としてなすべきこと、これは厚薄のないように、地方は地方の特性がありましょう、大都市には大都市の特性がありましょう、そういった特性に応じまして、伝染病などにかかるということのないように、施策はこまかくやっていかなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/5
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006・世耕政隆
○世耕委員 環境衛生あるいは防疫、こういうものは日常が非常に大切でございます。われわれのほんとうの敵は常に沈黙しているというようなことばがあるのでございますが、あらわれてくる敵はあまりこわくございません。黙っている敵のほうがおそろしいのでございます。こういうような伝染病の場合でも、病原菌というのは、おそらく人間が生きている限り死に絶えることがないだろうと思います。からだのどこかにひそんでいたり、いろいろ家の中とか地面の陰のほうにひそんでいたり、長い間ひそんでいて、突然何かのきっかけに、いままでしあわせであった町とか人たちを襲って暴力をふるうわけでございます。ですから、その病気が沈黙している間に、いろいろな社会環境の整備、公衆衛生学的に見た整備というものが大事になってくるのだと思います。そこで、万が一いろいろな病気が発生いたしましても、それをどこかで遮断して、病気が周囲に蔓延しないようにすることができるような環境を、ぜひともこれからいろいろ留意くださいまして、つくり上げていっていただくことを切願する次第でございます。
それからもう一つ、いま一日平均五、六十人の患者数がふえてきているような状態であります。さらに、防疫作業に取りかかったのは、発生してから五、六日たってからというふうに伺っております。これはちょっと時間的におそいのではないか、そのように私考えるわけでございます。私ふだん考えるのでございますが、都会のお医者さんでもそうです。地方の開業医の方々でもそうでございますが、いろいろないまの繁雑な健康保険機構というものの中で、朝から晩まで非常に目まぐるしい生活をしております。そこで、いろいろな臨床検査というものが、ともすればなおざりにされているのではないか。それから、検査をしようと思いましても、それを取り上げて検査所へ運ぶまでの操作とか手続が非常に繁雑でございます。あるいは民間の臨床検査所におきましても、必ずしも手が回っていないので、絶対に確実であるとはなかなか言い切れない場合が多い。そこで、国とか県の試験所に依頼するわけでございますが、これもたいへんめんどうないろいろな操作、手続が必要である。そこで、このような病気が発生しかかった場合でも、検査がなかなか不行き届きのために、はっきり病気の根源をつかまえることができなかったのではないか。そこでこういうふうな大流行がきたのではないか。そこでこの際、将来、都市にも、またはいろいろな各地方の町々にも、もっとお医者さんが便利に検査できるような臨床検査所の施設、そういうものをお考えになる、あるいは自動車で巡回して行ってその検査物を受け付けて、積極的にいろいろな病原を発生する以前に未然に防ぐようなことをお考えになる、このような具体的なことについて、厚生省はどのように今後をお考えになっておられるか、承りたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/6
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007・中原龍之助
○中原政府委員 ただいま、病気の発見のために必要な諸検査が、施設その他いろいろな面で不十分なために行なわれにくい、そのために病気の蔓延を来たすのではないかというお話がございました。私はそれについては、当然考えられることだろうと考えております。ただ、この一般のいわゆる臨床検査、それから伝染病予防上における検査というような問題は、同じようであって若干分かれております。主として一般防疫上の諸検査とかそういうものが中心になりますのは、大体国におきましては保健所の検査室、それからさらにその上に地方には衛生研究所というものが県にございまして、それが一応ネットワークを張っておるわけでございます。ただ、普通のいろいろの臨床検査になりますと、これもやはり受け付けますけれども、臨床検査の数が非常に多いという問題もあります。あるいはまた、普通の臨床検査は、病院等におきましては、自分のところで大体やっておるというところが非常に多いわけであります。そのほかに、最近はそういう検査を引き受けてやるというふうなことも、民間でやるようなものもぽつぽつできてきております。また医師会あたりでは、医師会の検査所を建てるとかというような気運になってきております。そういう意味におきまして、全体の検査機構というものは徐々に整備されつつありますが、なお一そうこれの整備ということに私ども当然かからなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/7
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008・世耕政隆
○世耕委員 おっしゃられるとおりの機構になってはいるのでございますが、保健所あるいは試験所の末端機構と開業医の方々との間の関係というものは、必ずしも密接ではないようでございます。やはりこれは社会生活上に非常に必要な問題を残しておりますから、今後具体的な形でもっともっとそれを進めていただきたい、これをお願いしておく次第でございます。
さらにもう一つ、これは以前から言われていることでありますが、今度の由良町におきましても、九千の人口を持っておりまして、これが山間僻地の飛び飛びになった集合部落でございます。ここにお医者さんは四人いるのでございますが、たいへん年配の方もおる。こういうことで、お医者さんはいるのではございますが、とてもこういう非常事態には手が回りかねる。そこで、無医村という問題無医村にひとしい問題、こういうものを今後もっと具体的に解決していくのには厚生省ではどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/8
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009・中原龍之助
○中原政府委員 この由良町の今度の問題につきましては、町内のお医者さんの方々の報告によりましていろいろわかり、そして集団発生ということがわかって防疫に乗り出したわけでありますが、こういう集団発生がありますと、もちろん地元の人たちばかりで足りるものではございませんで、県内の各方面から応援を得て、そうしてそれの収容、治療あるいは防疫、こういうものに従事さして万全を期するという措置をとっております。また、県で間に合わないという場合におきましては、私ども各県に委託費による職員を置いておりますので、それを厚生大臣の命によりましてその県に派遣をいたしまして、そうして応援せしめるというような態勢もとれるようになっておるのでございます。ただ、平常時の場合は、防疫というよりもむしろ一般の医療対策として、かねがねそういう無医村とか僻地の医療というものが問題になりまして、厚生省としてはそれの解決に努力しているわけでございまして、そのためには、その地方の一つの開発の問題もございます。あるいは公的の病院からそこの医師を巡回派遣するとか、あるいはまた、あるところから一時駐在の形で派遣するとか、各種の方法を講じておるのでございます。しかしながら、これで万全を期するところまではまだ至っておりません。僻地、無医村等にどういうふうにして十分な医療ができるかということは、私ども真剣に今後ともなお一そう努力していくべき問題である、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/9
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010・世耕政隆
○世耕委員 時間がございませんので、もう一つお尋ねしたいと思います。
現在、大体患者数が七百七十九名になってきております。九千の人口の中で七百七十九でございますから、かなりの発生率で、私の計算でまいりますと八・六%に達しております。そういたしますと、ただでさえ貧しい地方の財政、それから町村財政、こういったことから考えますと、これは人為的な災害ではございますが、自然に行なわれてきた天災にもひとしいような結果が生まれてきているわけでございます。現在ああいった寒村、これは日本国じゅう至るところにある状態でございますが、漁村は全部船を出すことができません。それから、魚がとれましても、これを買ってもらうことができないので、全部休んでおります。それから子供さんからおとなまで患者が出ているのでございますが、これの看護人とかなんとか、あるいはお医者さんが大ぜいよそから助けに来てくれる、看護婦が動員され、それからいろいろな従業員が動員されなければならない。たき出しも必要である。薬も必要である。いろいろな天災に似たような結果が出てきております。そこで、ただでさえ貧しい地方の財政がなお貧困になっていく。このような点から、何か特別融資とか財政的な処置とか、こういうものをぜひお考えいただきたいと思う次第でございます。その点お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/10
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011・坊秀男
○坊国務大臣 伝染病が集団発生いたしまして、これに対して地元で経費がたくさん要る。たとえば臨時隔離病舎を建設するとか、あるいは消毒をするとか、いまあげられたようないろいろなことに経費が要るといったような場合には、伝染病予防法によりまして、国が三分の一、県が三分の一、地元が三分の一というふうに、これに対する経費を補助金でもってそれぞれが分担する、こういうことに相なっておりますので、当然今度の由良町の集団赤痢に対しましてはこの法律が適用される、こういうことになるわけでございますので、なお由良町に対して、由良町の財政状況等も勘案いたしまして、県とも十分連絡をいたしまして、特別交付税といったようなものによって突っかい棒をする、こういったような手もあるわけでございまして、現行制度といたしましては、そういうような措置が当然とられるはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/11
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012・世耕政隆
○世耕委員 坊厚生大臣は御自分の出身県でございます。もちろん私もそうなんでございますが、出身県になりますと、ともすると遠慮がちになるんじゃないかと思います。この点ぜひ遠慮くださらないように。それから、和歌山県の防疫対策というものをきっかけとして、今後各地で起こってくるところのこういった伝染病の突発事故に際してのいろいろな参考になるいい事例を残していただくことができますように、ぜひともお願いする次第でございます。
もう一つ最後に、この病気の感染経路、それからなおったか、なおらないか、これを今後十分に吟味していただきまして、厚生省とされましても、また県の衛生部のほうからも、はっきり伝染病の突発事故に対して回答を与える。はっきり黒白をつける。そういたしませんと、これが長く続きますと、地方の生活、住民の生活にますます直結してくるいろいろな深い事情がございますので、この点はぜひとも黒白をできるだけすみやかにはっきりさせて、十分な治療と、今後の十分な予防的な対策と、それから患者さんの予後を十二分に観察することができますように、大臣そのほか厚生当局の方々にお願い申し上げまして、私の質問を終わらしていただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/12
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013・坊秀男
○坊国務大臣 たまたま私の郷里で不祥事が起こったわけでございます。私といたしましては、遠慮をするとか、あるいはこれはできるわけのものじゃありませんが、さじ加減を厚くするとかといったような気持ちは毛頭ございません。ただ、現在発生の経路、発生の原因というようなものにつきまして、迅速に、正確にこれをキャッチいたしまして、何も私の郷里だけの問題ではございませんで、日本全国の問題として、十分これに対して適切、有効なるいろいろな措置を考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/13
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014・川野芳滿
○川野委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/14
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015・中谷鉄也
○中谷委員 お尋ねをいたしたいと思います。
先ほど、由良町の集団赤痢発生の問題について、その概要についての御答弁をいただきましたが、いずれにいたしましても、人口一万足らずのそのような町で、約一〇%に近い患者が発生をしているというふうなことになっておりますと、文字どおり町の社会的な機能というものが停止をしている、こういうことを言わざるを得ないと思うのです。非常に重大な問題だと私は思います。そこで、まず最初に、このふしあわせな和歌山県由良町のできごとに関連をいたしまして、次のようなことを私はお尋ねをいたしたいと思います。
これは大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思いますが、昭和四十年のいわゆる赤痢の罹患率については、すでに統計によって明らかであります。この点についてもあとでお尋ねをいたしたいと思います。ところが問題は、罹患率の低下ということと集団発生件数の激増、この点が私は非常な問題だと思うのです。したがいまして、現在赤痢対策というのは、集団赤痢対策をどうするか、この点に問題点があろうかと思います。この点についての大臣の御答弁をいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/15
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016・坊秀男
○坊国務大臣 御意見のとおりでございますが、非常に専門的なお話でございますので、関係局長から答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/16
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017・中谷鉄也
○中谷委員 大臣の御答弁がある前に政府委員の方に御答弁をいただきたいと思いますが、ちょっと御答弁の前に、大臣に重ねて次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。
統計によりますと、罹患率は、昭和二十七年が一三〇、これがピークであったと思います。昭和三十五年に至りまして罹患率がほぼ一〇〇。昭和四十年に至りまして罹患率が四九・五ないし六。このような罹患率の減少について、厚生省は、これは赤痢対策について成功だったんだというふうなことを言われた向きがある。しからば、昭和四十年に五〇まで下がってきたところの罹患率がはたして昭和四十一年においてどのような状態になっておるか。さらに、もう赤痢は夏だけの問題ではないということがいわれておりますが、昭和四十二年五月現在における罹患率というものはどのようなことになっておるか。私の一応の調査と推定によりますと、昭和四十年よりも今度は罹患率がさらに上向きになっておる、こういうことが言えると思うのだが、この点についてまず政府委員の御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/17
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018・中原龍之助
○中原政府委員 赤痢の発生件数につきまして、ただいま先生からお話がございましたが、四十年以前の状況につきましては、先生のお話のとおりでございます。四十年から四十一年になりまして、去年でございますが、約五割方ふえました。それで、ことしの状況について昨年の状況と比べてみますと、昨年一月一日から四月二十二日までの間では、昨年は一万五千七百四件でございますが、本年は九千五十四件になっておりまして、ことしは前年よりも減っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/18
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019・中谷鉄也
○中谷委員 罹患率というのは、人口十万に対するところから計算してくる推定方法、割り出しのしかたでありますけれども、そうすると、こういうふうに一三〇、一〇〇、五〇と下がってきた罹患率は、昭和四十一年では一体幾らということになるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/19
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020・中原龍之助
○中原政府委員 罹患率といたしまして六五・八でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/20
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021・中谷鉄也
○中谷委員 そこで今度は集団発生件数について資料を見てみますと、昭和三十四年で五百七十二件。これは、昭和三十五年、罹患率一〇〇の前年ですが、集団赤痢発生件数が五百七十二件。そして昭和四十年において集団発生件数は六百二十七に相なっておる。そういたしますと、昭和四十一年、昨年の集団発生件数というのは、どういう状況に相なっておるか、この点について御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/21
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022・中原龍之助
○中原政府委員 四十一年度の集団発生件数は九百十一件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/22
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023・中谷鉄也
○中谷委員 大臣に御答弁をいただきたいと思います。いわゆる赤痢というきわめて非文明的な病気——私、医療については全くのしろうとだけれども、友だちの医者に聞いてみたら、アメリカなんかでは、赤痢の勉強をするのに赤痢患者が少ないということがいわれておる。ところが、いわゆる経済社会発展計画ということがいわれておる。また人間尊重ということがいわれておる。そういう状態の中で、ただいま政府委員が御答弁になったように、昭和四十一年になってから、罹患率については一五・八%の増加、さらに集団発生件数についてはまさに三百件の増加、これは厚生省の赤痢対策というものが非常な抜本的な対策を必要とするということが統計上明らかになっている。これは厚生大臣として、専門的なことではなしに伺いたいが、はたしてしからば、いわゆる最近の伝染病の中におけるところの一番国民を苦しめている赤痢の対策について、どのような措置をおとりになるか、この点についてひとつ大臣として御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/23
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024・坊秀男
○坊国務大臣 赤痢のような、伝染病の中でも、お説のように、全く恥ずかしい伝染病といったようなものが日本でふえたといったような傾向にあることは、これは非常に憂うべきことでございます。そこで、こういったような病気が起こらないように予防していくためには、もちろん政府の施設あるいは諸般の指導といったようなこと、これは経済的な面、精神的な面、いろいろなものがございましょうが、これを厚くやっていかなければならないということは当然のことでございますけれども、また一般住民の衛生に関する思想、そういったような個人的な自覚の問題といったようなもの、これは私は無視するわけにはまいらない。そういったようなことについてもよく指導をする。それから、厚生省といたしましては、これは住民の環境の改善、環境の整備といったようなことをつとめてやってまいりまして、そうして、赤痢のようなはなはだ恥ずかしい伝染病といったようなものの起こらないように、極力いろいろな面において努力をしてまいらなければならない、かように考えております。今日起こりました事態につきましては、私は非常に遺憾に存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/24
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025・中谷鉄也
○中谷委員 先ほど政府委員の方にあらかじめお尋ねをいたしましたところ、必ずしも明確ではなかったわけですけれども、昭和四十年度の国民生活白書によりますと、「疾病予防対策費の現状」の中に伝染病予防対策というのが記載されております。国民生活白書の三十四ページです。それによりますと、昭和四十年度において、このような金額がはたして適切なものであるかどうか、という論議は別として、金額の絶対的な額としてははなはだ少ないと思いますけれども、八千六百万円。ところが、昭和四十一年度におきましては、八千二百万円ということが記載されておる。はたしてしからば、いろいろな点について御努力になるということを御答弁いただいたわけでありますけれども、これは一体どういうわけなんだろうということを、私お尋ねをせざるを得ないと思うのです。もとより、伝染病予防特別対策費あるいは対策というところの仕分けのしかたが、経済企画庁の仕分けのしかたでございますので、厚生省の仕分けとは若干違うものがあるかもしれないけれども、この点についてこまかいことを私お聞きするつもりはございません。ひとつ大臣のほうから、こういうふうな四十年度の国民生活白書に記載されているところの予算の減、要するに特別対策費というものが減少していることと、はなはだずさんな統計図面ではありますけれども、このように一たん下がってきたところの罹患率が四十一年度において急増しているということと、若干の関係ありと言われてもやむを得ないのじゃないか。したがいまして、全体としてのいわゆる特別対策費の増額に一そうの御努力あってしかるべきだ、このように私は考えます。この点についての大臣の御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/25
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026・坊秀男
○坊国務大臣 予算の減ったといったようないきさつにつきましては、これはいろいろ環境衛生の経費、あるいは伝染病予防の経費、そういったようなものと総合的に考えていかなければならないと思います。ところが、そこの問の総合的な仕組みの問題については、私はつまびらかにいたしておりませんから、事務当局からお答えをさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/26
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027・中原龍之助
○中原政府委員 先ほど先生がおあげになりました特別対策費、これにつきましては、当方のほうで特別対策費としてまとめたものではないような感じがいたしまして、これを経済企画庁のほうに聞いてみたのですけれども、それの数字から見ますと、伝染病予防の中の一つの施策として取り上げている中で、いわゆる伝染病の流行予測といったような形の諸検査の費用がございます。それからインフルエンザの特別対策というものをやっております。そういうものを合わせた額は、四十年度はちょうど八千六百万円になりますので、それに相当するのじゃないかと考えております。ただ、この問題につきましては、四十二年度は、これだけについて考えますと、一億一千万円にふえております。そして元来の伝染病予防費、これにつきましては全然減っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/27
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028・中谷鉄也
○中谷委員 お尋ねをいたします。集団赤痢の対策、この点が私はやはり赤痢対策としては一番大事な問題だと思います。これは、もうすでに厚生省の関係部局においては、何年も前から言われておることなんです。そこでお尋ねをいたしたいと思いますけれども、まず、昭和四十年は簡易水道の集団赤痢発生件数が九であったものが、昭和四十一年には十三にふえてきておる。原因別の水道関係を見てみますと、そういうことになってきておるのです。そういうふうな点から、まず大きな原因の一つになっておるのですが、今回の問題について、感染経路については徹底的に防疫の立場から究明をされるということであって、その原因が何であるかというようなことについては、いま私は論ずる資料と材料の持ち合わせがありませんけれども、一般的に集団赤痢の原因別の中においては、水道というものは非常に大きなウエートを占めておる。この点についての対策、これをどのようにお考えになっておるか、政府委員のほうから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/28
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029・中原龍之助
○中原政府委員 この集団発生の問題につきましては、赤痢のいわゆる防疫対策におきまして、一番ウエートを占めておる対策でございます。したがいまして、これのやり方につきまして、各県に指示をし、そしてやらせるようにしておるのでございますが、なかなか徹底をしない面がいろいろございます。それで、一体、赤痢がふえているといいますか、最近にちょっとふえたという問題についての私どもの考え方といたしましては、ここ数年来赤痢というものの症状が変わってきております。赤痢には大きく分けて大体四種類の菌がございまして、その中の一番軽いところのゾンネ菌というのが普通になってきておる。これは世界の文明国の大体の趨勢でございます。そしてこのものは比較症状が軽い。これがために致命率もまた非常に低いということで、とかく普通の胃腸炎あるいはかぜくらいに考えられる向きが非常に多いわけです。こういうことが、一般に軽視されるというもとになっている、初期の防疫のおくれるもとにもなっているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、集団給食をする施設とか、あるいはまた集団的な発生の一つの原因となる水道というものの管理とか、あるいはまた多数が集合しているところの管理とか、そういうものに特に注意をしているわけでございます。
全体の率からまいりますと、大きく原因を分けますと、水によるものと、食品によるものと、いわゆる接触によるもの——これは子供あたりがお互いよごれた手でもって遊んでお互いにうつしていく、そういうものと、それから不明なのと、大体この四分類にしておるのでございますが、最近は、水系と食品系というものは率といたしましては減ってまいりまして、大体接触系のものが順次ふえているというような状況でございます。しかし昨年は、特に水系の問題もやはり相当ありました。それから食品系の問題で全体的に集団発生が多かったというふうに考えております。それに対しまして、私ども、これは後半は普通になりましたけれども、年の前半がそうでありましたので、鋭意努力を続けておりました。それで、ことしに入りましてからは、昨年よりは若干減少しているというようなことでございます。ただ水系の問題につきましては、主管の局長からひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/29
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030・中谷鉄也
○中谷委員 いや、けっこうです。集団給食の問題、あるいは水道の問題いろいろな問題についてお尋ねをすべきであるけれども、水道の問題だけとりあえずお尋ねをしたわけです。したがって、答弁としてはそれで切っていただいて、私のほうはけっこうなのです。
ただ一つだけ指摘をしておきますけれども、いまの御答弁の中で、いわゆる接触によるものがかなりふえているのだ、こういうことなんですけれども、この点については、つとに専門家のほうから、感染経路についての原因の徹底的な究明というものが、行政的な面からも、いろいろな面においてもなされない場合がある、したがって接触というあいまいな表現になっている場合が多いのだというふうなことがすでに指摘をされておるわけですから、この点について、ただ単に接触というのが多いんだという御答弁については、これ以上私はお聞きいたしませんけれども、接触ということと感染経路の徹底的な究明、防疫的な観点からの究明ということとの関連において、さらにそのような統計については精度、確度を深めていただきたい、このことを私はひとつお願いしておきます。
そこで、この和歌山の問題に関連をして私一番心配なのは、厚生省の赤痢対策は、「赤痢対策の推進について」という昭和三十四年に出された通達、これが基本をなしているのではないかと思います。その後、年別にそれぞれ通達等が出されておりますけれども、その中で、都道府県は専任防疫職員の確保につとめよ、こういうことが指摘されておりますけれども、現在の貧困な地方財政の中において、厚生省のほうにおいて何らかの措置、大蔵省のほうにおいてこれに対する配慮がなければ、こういう通達をお出しになっただけでは、防疫専任職員の確保などということは非常に困難であります。現に、和歌山の由良町においても、お医者さんが足らない、専任職員が足らないということで、昼夜も分かたないで、夜も寝ないで県庁の職員が努力しておるがどうにもならない、こういう状態なのである。この点について、ひとつ政府委員のほうから、今後このような配慮をしようという御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/30
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031・中原龍之助
○中原政府委員 この専任職員の確保という問題につきましては、これは防疫の専任職員というものでして、これは国として委託費によりまして職員を各府県に配置しておるわけでございます。現在五百八十名の職員を配置しております。その者がほかの職務にもいろいろ従事しているというようなことでは困る、できるだけ防疫をひとつやってもらいたい、こういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/31
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032・中谷鉄也
○中谷委員 その次に、集団赤痢の発生につきまして、水道法の規定などによりますと、水道のこの部門の仕事に従事する人の健康診断についての省令ができておりますが、このような健康診断、ことに検便でございますね。さらにまた飲食業者の検便等、こういう検便等については、手数料というものが要るのですか。指導、勧奨ということは盛んに通達の中にお書きになっているけれども、要するに、そういう健康診断を受ける人は、手数料を払って健康診断を受けなければならぬことになっているのか。それとも、そうではないのだ、一般の場合、要するに伝染病予防法適用外の場合、それはただでそういう検査をするのだということに相なっているのか、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/32
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033・舘林宣夫
○舘林政府委員 水道の管理に当たります専任の技術者、あるいは食品関係の店舗等で直接食品に触れる従業員等に対しましては、法令の規定によりまして定期的な検便等の検査を行なわねばならないことになっております。これらに対しまして、伝染病の集団発生等がございまして、強制的に行政当局が実施するものに対しましては、行政当局の負担でございます。法の規定によりまして、定期の検査をしなければならないという規定に基づいての検査は、その検査を受ける者の負担でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/33
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034・中谷鉄也
○中谷委員 まとめて大臣から御答弁をいただきたいと思いますが、そういうふうな検査を受ける手数料はごくわずかだと思うのです。わずかだと思いますけれども、そういうものは受ける者が負担をしなければならないということ、こういう点も、私は、赤痢対策として、伝染病予防対策として必ずしも適切でないと思う。この点についてひとつ御配慮をいただきたいということが一つと、あと続けてまとめて御質問をいたします。
問題になる点は、現在由良町においては、三十坪について四十人、十戸ですから四百人を収容するところのプレハブ住宅を建設いたしまして、隔離のための努力をいたしておる。ところが、このプレハブ住宅に四百人を隔離いたしましても、先ほどの七百七十九名ということになってまいりますと、中学校へ隔離をしている人、あるいは近辺の病院へ隔離をしている人を入れましても、自宅療養をしなければならない人が出てまいりますが、この自宅療養ということはいわゆる伝染病対策として適切でないと思う。だから、この自宅療養ということについて当局がどうお考えになるかという点が一つと、いま一つは、世耕委員のほうからも指摘がありましたけれども、何と申しましてもこれは貧弱な財政の町なんです。それで三分の一は負担しなければいかぬ。ところがその予防法によりますと、適正な実費についてということがある。そこで一体、プレハブ住宅を建てた、では適正な実費ということはどの程度に御査定いただけるのだろうか、この点についてもずいぶん悩んでいるらしい。人間の命と健康の問題ですから、一生懸命になってそういう住宅を建てている。ところが、そういう点についての適正な費用、適正な実費などということについて、要った費用よりもずいぶん低いところの三分の一補助ということでは、地方財政が持ちこたえられないという問題が生じてくるだろうと思うのです。この点についてひとつ政府委員のほうから御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/34
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035・中原龍之助
○中原政府委員 この伝染病予防のために要した経費というものは、これは国と県と市町村が三分の一ずつ持つという形になっております。それで当然プレハブの建物もこれの対象に入ってくるわけでございます。したがいまして、いわゆるこのプレハブ住宅というもの、設置したその隔離病舎というものが費用になるわけでございます。だから、プレハブ住宅という特別なものでなくて、これは患者を収容するためにそこでいろいろな経費をかけたというものでございます。これについての経費は当然に見ていく、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/35
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036・中谷鉄也
○中谷委員 これはひとつ御答弁いただきたいと思います。要するに、こんなことが新聞に載っておって、私は非常にこれは残念だったのです。これは衛生思想の問題とも関係があるかもしれませんし、親子の情の問題とも関係があるかもしれませんけれども、かわいい子供が隔離病舎に隔離されるということで、それはいやだといって鉄砲をぶつ放した人がいる、こういうことが新聞記事に出ていたのです。これは私は、隔離病舎というものが三十坪、そしてそれに四十人ということになってまいりますと、隔離病舎というものはこんなものだということになるのかもしれないけれども、一人一坪に当たらないわけでございますね。そうなってまいりますと、隔離病舎というふうなものについても、いわゆる隔離病舎という、かつて私たちが子供のときに聞いておったような非常に暗いものでなしに、ほんとうにそこで療養ができるようなものを建てたいというのが町当局の気持ちだろうと思うのです。そこで、三分の一、三分の一、三分の一ということですから、町当局は隔離病舎を現在建てておりますが、その隔離病舎に要した費用というものの三分の一は国が負担をしてくださるわけですね。法に明定されていることなんだから。要するに、そのできたものについて——何もぜいたくなものを建てようとしているのじゃないのです。まともなものを、ほんとうに人間としての最低のものを建てようとしているのです。この点について、建てたあとで、それはそんなに金がかからないのだというようなことで三分の一、結局それが全体としては五分の一にもならないというふうなことでは、町当局がかわいそうだと思うのです。この点についてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/36
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037・坊秀男
○坊国務大臣 いま御指摘によりまして、まだ、そういった伝染病患者が、自宅療養をしておるのが七百何十人のうちの三分の一くらいおるというようなことはできるだけすみやかに解消するために、これは応急の措置でございますから、そこで、応急の隔離病舎というものをできるだけすみやかに建てていく、そして万全を期したい。そこで、この隔離病舎というものにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、これは現行法が三分の一ということになっておりますので、幾ら私の郷里といえども……(中谷委員「それはいいですよ」と呼ぶ)そして、最も適正な評価をいたしましてその法律を適用していく、こういうふうに努力をしていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/37
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038・中谷鉄也
○中谷委員 私はあまり話を詰めてするのは性格的に好きではないのですけれども、大事な点だからお尋ねをいたしますが、要するに、町当局が町民のしあわせを願って、また隔離病舎を——ほんとうに今度の場合子供が多いのです。小さい子供が多いというのが今度の赤痢の特徴だと思うのですけれども、そういう子供のしあわせを願って、そうしてプレハブの隔離病舎を建てた。それに金が要った。いなかの町のことですから、鉄筋の建物を建てようというつもりはないのです。プレハブの住宅なんです。そのようなものに実際お金が要った。まじめな町民、まじめな町当局が建てるに要った実際の金というのは適正なものとして見ていただけるというふうなことは、これは大臣お答えいただけると思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/38
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039・坊秀男
○坊国務大臣 これは適正なる要った経費というものをやはりベースにしなければならないと思う。ただ、和歌山県由良町、ことに世耕委員、中谷委員の、私もそうでございますが、郷里です。そういうところが、水増しといったような、そんなことをするとは思いません。そこで、適正なる価格をベースとする、こういうことを申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/39
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040・中谷鉄也
○中谷委員 それじゃ最後に一点だけお尋ねをいたします。水増しというようなことでないけれども、まさに大臣のお気持ちよくわかりました。それでその点は適正にひとつ処置していただきたい。
いま一つ、実は昨日、私、夜おそく県庁と連絡をとりましていろいろな話をした。ところがすでに防疫課長の春日さんが現地へ行ってくださった。その点は私はけっこうなことだと思う。何かの所用のついでにお行きになっていただいた、これは非常にいいことだと思うのです。ただ、聞くところによると、六月五日に防疫課の課員の方々が現地に行っていただけるそうです。ところが、今度の赤痢については、隣の町の湯浅町のほうにも飛び火したということを聞いておる。それから旧由良町だけでなしに、いわゆる合併前の白崎というような村のほうにも、飛び火したというようなことを聞いておる。だから、七百七十九名じゃなしに、ひょっとしたら九百名に達するのではないかと言われているが、そういうおそれもあるし、和歌山県全体で社会的なたいへんな不満を醸成していると思うのです。したがって、大臣のほうでこのことはどうでも御措置いただけることだと思うし、ぜひとも御措置いただきたいと思うけれども、六月五日ではなしに、ひとつ今晩でも防疫課の相当な職員の方を動員をしていただいて現地に急行していただきたい、この点をひとつ御答弁をいただきたいと思います。これは大臣、こういうような防疫課の御出張の問題ですけれども、大臣の問題として御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/40
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041・坊秀男
○坊国務大臣 私も郷里のことでございまして、私自身が飛んでいきたいという気持ちはございます。しかし、今日のこの国会の情勢では、なかなかそれも許されないということを非常に残念に思います。さようなことで情勢がだんだんと判明してきております。
なお、春日課長をついでにとおっしゃられたが、ちょうど京都に行っておった。そこで、できるだけ早く——京都と由良町は近いですから、君すぐ行ってくれ、こういう指令を出したわけでございまして、だんだんとその情報も入ってきておりますので、必要に応じましては、厚生省といたしましては、きょうでもあしたでも、そういったような視察のために職員を派遣するということには、決してやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/41
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042・中谷鉄也
○中谷委員 最後に一点だけ。要するに、私が聞いた話では、六月五日に防疫班の人が行っていただける、こういうことです。そこで、必要であればというよりも、現地では必要を感じているわけです。厚生省の適切な指導を求めているわけなんです。したがって、大臣の飛んでいきたいというお気持ちを尊重して、ひとつ今晩でも、必要があれは——必要なんですから、防疫課の専門の方が現地に急行してもらいたいということを、これはあたりまえのことなんだから、そうしましょうということをひとつ御答弁いただきたいと思います。その御答弁をいただければ、私終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/42
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043・坊秀男
○坊国務大臣 春日課長は、現在厚生省における、防疫の最も優秀にして、最も知識経験を持ったベテランでございます。その春日課長が刻々と情報を入れております。それでなお、自分の応援をしてもらいたいというようなことが、あるいは春日課長からあるかもしれません。そういうような場合には、厚生省といたしましては、即刻それは派遣をいたすことにはやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/43
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044・中谷鉄也
○中谷委員 終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/44
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045・川野芳滿
○川野委員長 次は、内閣提出の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案の両案を議題として審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/45
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046・山本政弘
○山本(政)委員 大臣に、援護二法に入る前に、二つほどお伺いをいたしたいと思います。それは過日ありました朝日訴訟についてのことでございます。私は、これは援護法とも無関係ではあり得ないと思いますし、同時に恩給法、そういうものと関連しまして問題があるというふうに感じますので、そのことでひとつお伺いをいたしたいと思うのです。
朝日訴訟の争点というのは実は二つあったと思います。一つは、憲法二十五条の精神と、それから、生活保障規定に違反をしているか、していないか。それからもう一つは、この種の行政訴訟で、原告の死亡後に相続人の承継が認められるか認められないか。この二つだったと思います。それで、国の勝訴となったわけでございますけれども、後段のほうにつきましては、私は、生活保護に相続権があるかどうか、こういう問題については、この判断の背景には、生活保護というのは、貧しい個人の生活を国または国民全体で救済をする、もし生活保護を受ける人が貧しくても、子供が裕福で、その子供に相続権が与えられるときわめて不合理だ、こういう考え方から、生活保護の受給権というものは一身上の専属の権利だ、こういうふうに最高裁は考えたと思うのです。私は、このことについては、言い分がわからないわけでもありません。しかし、前段のほうに触れてみますと、これは少し問題があるような気がするわけですが、大臣は、一体、この一番と二番の二つの争点のうちの、どちらに重点を置いてお考えになっているのか。ということは、大臣の談話を新聞で拝見いたしました。このときには、私はたいへん不満でありましたけれども、国が勝ったということで、そのことに力点を置いておられるようで、そのあとのことについてどうするかという、たとえば保護基準なんかについて一体どうするかということについては、あまりおっしゃっておらないような、そういう感じを受けました。したがって、そのことについて、一体どういうふうにお考えになっているかということをお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/46
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047・坊秀男
○坊国務大臣 判決につきまして、私はここで、この判決がどうだこうだという批判を申し上げることは、差し控えたいと思います。
そこで、二点の中でどっちにウエートを置くか、こういう御質問でございますけれども、私は、この判決の二点に対しまして、このどちらにウエートを置くかとお聞きいただきましても、そのどっちにウエートを置くということは申し上げかねるのでございますが、要するに、その一つのほうの、こういった受給者の請求権というものは、これは一身上に専属する権利であって、これを相続人が承継することはできないということでございますが、これはまっすぐこれをお受けする。最高裁判所でございますから、批判も何も許されませんけれども、これをお受けせねばならない。
それから第二点は、これは違法ではないが低きに失するということをうたわれておる。裁判としては、これは違法か違法でないかということを判定するのが裁判でございますから、なるほど裁判では、違法ではないということを主張しておるところの政府のほうを裁判が認めたということでございます。だから、裁判としてはなるほど勝った、こういうことになろうと思いますけれども、低きに失するということも言われております。私は、さような意味におきまして、この裁判があったからというわけではございませんが、生活保護というものは、これはそのときの国民一般の生活水準、あるいは物価、賃金、生活状態、いろいろな問題がございましょうが、国民一般のそういったような環境が私はあろうと思うのです。そういった環境と、もう一つは、私は時の流れというものもあろうと思います。たとえば、戦後の非常に日本の経済が荒廃いたしまして、そうして生活が一般的に苦しかった時、それから今日のこの時です。それから横にはその環境でございますね。一体日本の国民が現在いかなる生活状態にあるかといったような環境と、それからその時。いまの時点において国民全般がどういう生活をしておるかといったような環境と時との接触点と申しますか、そういったようなところから判断をいたしまして、そして、憲法二十五条にきめられましたところの、健康にして文化的な最低限の生活というものが私はきまってくるのだと思います。
厚生省といたしましては、そういった環境と時との接触点におきまして、できるだけ生活保護を受けなければならない方々の生活と国民一般の生活水準との格差がないように、そのためには、第一・十分位ですか、これが生活保護の方と接触をしておる方々の生活でございますが、そういったような方々と、できるだけ格差がないようにつとめてまいる。今日までも厚生省はそういうふうにつとめてまいりましたが、私は、今後とも、そういった角度からながめまして、最も格差を縮めてまいる、そこに健康にして文化的な最低限というものを見出して、そして、とにかく低きに失するということを言われておるのでございますから、だんだんと格差を縮めて、国民一般の生活に近づけていこう、こういうのが生活保護に関する私の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/47
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048・山本政弘
○山本(政)委員 大臣は、環境と時点を考慮に入れる、こういうお話がありました。私は、人間らしい生活をするという権利というものは、時の政府の政策によってかって気ままに左右さるべきものではないと思うのです。少なくとも健康を維持するには、総理がおっしゃったように、健康で文化的な生活、つまり人間らしい生き方というものができる程度でなければならぬと思います。したがって、総理のいう健康で文化的な生活、それは一体どういう程度か。たいへん通俗的でむずかしいかもわかりませんけれども、お考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/48
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049・坊秀男
○坊国務大臣 これは非常にむずかしい問題でございまして、私は、環境と縦の時間と申しますか、連結と申しますか、それを両方申し上げたのでございますが、健康にして文化的な生活と申しますと、これは非常に抽象的でございます。そこで、環境に照らして考えてみますと、そのときにおける国民の生活状態、これは、たとえばドイツ人の国民的環境とアメリカ人の国民的な環境と日本人の国民的な環境とで、私は非常に差異があろうと思います。そういったような環境の中において、日本は日本なりの健康にして文化的な生活、こういうことがあろうと思います。極端なことを申しますと、先ほど申し上げました、憲法が制定せられた当時、まだ日本が非常に荒廃しておる、経済もまだ非常に貧しい、生活も非常に苦しい、苦しいけれども、そのとき憲法がすでに制定されておって、そうして健康にして文化的な生活というものがないんだと私は言えないと思うのです。さような環境の中において、やはりその国民の環境に応じたところの健康にして文化的な生活があったであろう。それはその時と環境でございますが、今日の日本のこの状態というものは、時も環境も非常に当時とは変わってきておるだろうと私は思う。そういったような時と環境の中におきまして、具体的に一体健康にして文化的な生活というのはどういうことか、こう考えてみますと、繰り返して恐縮でございますけれども、日本の今日の国民の生活、いまの時点における国民全体の生活、その中で、保護階級、最も保護されなければならない人たちに接近しておるところの第一・十分位の方々の生活というものが、一つの目安なり尺度ということになって、そこへ格差を縮めていくということが、たいへん抽象的な話で恐縮でございますけれども、これが一つの方針でなかろうか。そこで、連年厚生省といたしましては、各種の基準、それをそこへ近づけるべく努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/49
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050・山本政弘
○山本(政)委員 朝日茂さんという人が敗訴になりました。朝日訴訟というものが敗訴になりました。ただ、朝日訴訟が果たした役割りというのはやはり大きいと思うのです。それが一つの社会問題になって、そのことによって生活保護基準というものが上げられてきた、こう思います。同時に、憲法二十五条には健康にして文化的な生活ということがうたわれておりますし、それから生活保護法にもうたわれておりますね。その場合に、私が心配いたしますのは、要するに、これは厚生大臣の自由裁量といいますか、法規内の自由裁量に属することだ、こう判決に言っているわけです。ですから、その場合に、先ほど申し上げましたように、時の政府の政策によって左右さるべきではない、私はこういうふうに思うわけですが、その点について、大臣は逐次上がっておるとおっしゃっておるけれども、援護法との関係においても、まだまだ不十分な点があるんではないか、こういう気が私はいたすのですが、その辺をどうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/50
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051・坊秀男
○坊国務大臣 そのときの政治、政策、そういったようなものによってのみ左右せられるべきものではない。先ほど申し上げましたとおり、われわれの生活環境というものは、まことに錯雑、複雑、いろいろな角度から生活環境というものはきまってくる。政治、政策、財政といったようなものも、全然無視してしまうわけにはいかないと思うのです。そういうものも環境を構成する一つの材料である。しかしそれのみによってわれわれの環境はきまるものではない。さような意味におきまして、時の政治、時の政策、時の財政といったようなものだけによって、これがきめられていくものではない。もっと複雑な、いろいろな角度から考えていかなければならないものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/51
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052・山本政弘
○山本(政)委員 最高裁の判決に多数意見と少数意見がありました。その数意見の中に、奥野裁判官の補足意見がございます。これは大臣御承知だと思いますけれども、憲法二十五条の規定は、時の政府の方針によって左右されることのない客観的な最低限度の生活水準を想定して、国にその責任を課したものとみるのが妥当である。したがって、厚生大臣が最低限度の生活を維持するに足ると認めてきめた保護を受け得る権利だけでなく、保護受給権は、憲法の趣旨に従って適正な保護基準による保護を受け得る権利と解すべきである、こう申しております。私が確認いたしたいことは、将来財政上の理由で生活保護基準が不当に低く押えられることがないとは言えないという感じが実はするわけです。ほかの恩給とか年金はどんどん上がっていく、しかし生活保護は上がらないというようなことがありはしないかということを実は危惧するわけです。そこで大臣に、そういうことがないということをここでお約束を願えるかどうかということでございます。
と同時に、もう一つ気にかかることは、大臣の談話の中に、収入認定についても、しゃくし定木にならないようにというようなおことばが一言ほど出ておりました。私は日にちは忘れましたけれども、この委員会でも、たしか河野委員だったと思いますけれども、冷蔵庫が備えつけられたばかりに保護手当がなくなった、そして、家族が自殺か何かされたという話がありました。そういうことについても、ひとつぜひそういうことのないようにお約束ができるかどうか。つまり私は法の運用というものは人にあると思う。法は人が運用することによって生きもするし、あるいは死にもする、こう思うのです。その点についてはっきりしたお約束が願えるかどうかということをお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/52
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053・坊秀男
○坊国務大臣 生活保護基準がくぎづけにされてしまうではないかというようなお話なんでございますが、そういうことがないというために、私は時と環境というもの、たとえばことしの時、ことしの環境、それから来年の一年先になったこの時、その環境というもの、これは絶えず動いていくものでございますから、そういった時と環境にできるだけふさわしいように、できるだけそういった時における日本の生活水準というものとの格差がないようにしていこう。日本の経済なり生活状態が、時が一年進んでもいまと同じだというようなことは、私はおそらくなかろうと思いますし、それで私は時と環境ということを申し上げておるわけであります。だから、これはそれによって動いていくということを、御理解願いたいと思います。
それからまた私はしゃくし定木にならないように、こういうことも申し上げました。それはこういう意味でございますから、御理解願いたい。具体的の事例に当たったときに、これは抽象的な法律とか制度とかというものを適用していくという場合には、千差万別の、バラエティに富んだあらゆる具体的の事例に対して法律を適用してまいりますから、これは法律の規定がそのケースに最もぴたっといくような場合もありましょう。しかしそうでない場合もあろうと思う。そういったような場合には、この法律を適用すると、これでいいんだといったような気持ちというものがかたく頭に固着してしまう。そうでなしに、運用は別といたしましても、こういったような場合には何とか考えるべきじゃないかということを、中央なりそういうルートを伝ってひとつ考えよう。上司において——上司というとはなはだ失礼ですけれども、国として考えたらどうだというような気持ちを、末端のケースワーカーにしても、第一線において行政をやっておる人間の頭が、法律がこうだからこれでいいんだ、こういう頭ではなしに、もっとやわらかい頭でもって考えて、それをひとつ中央の行政なり政治に反映するような気持ちでやってもらいたい。ただ、その場その場でさじかげんということを自由にやりますと、その制度自体がさじかげんによって左右することができるんだといったような観念になりますと、制度自体が非常に弱いものになる。早い話が、政府の内幕と申し上げたりなんかしてたいへんに——言うていいことかどうか。委員長、ちょっと速記をとめてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/53
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054・川野芳滿
○川野委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/54
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055・川野芳滿
○川野委員長 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/55
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056・山本政弘
○山本(政)委員 大臣がさじかげんで云々ということは、私はよくわかります。ただ、たいへん残念なことは、私どもが新聞で見る範囲におきましては、非常に硬直した態度で臨んでおるために、結局無用に犠牲が出ておるような気もするわけです。その辺も実は十分に指導していただきたい、こういうことをお願いをして、次の質問に移りたいと思います。
五月の二十二日でございましたか、社会保障制度審議会の総会で、各種の公的年金について、一部の年金だけが独走的にベースアップされるのはこれ以上許されない、政府は急いで各種年金の調整に乗り出すべきであるという趣旨の勧告をすることになった、こういう記事が出ております。このことについて、大臣のほうにそういう勧告がなされましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/56
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057・坊秀男
○坊国務大臣 まだ正式には私のところまでは参っていないように思います。しかし、これはいま私も国会で、本省との間が非常に密接でなければならぬことが、漏れ落ちたりなんかする場合がままございますので、いまは私は受けておりませんが、あるいは事務のほうで受けておるかもしれませんけれども、そこのところはひとつ御理解を願いたいと思います。私はお受けしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/57
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058・山本政弘
○山本(政)委員 この骨子は、一部年金の独走をこれ以上許すと年金制度が混乱をするということが一つだったと記憶しております。もう一つは、各種年金の横の連絡を十分にはかって、社会保障的な考え方で共通する部分と、それぞれの年金の特殊性を配慮する部分とに分けて、共通部分については各年金とも同じレベルでスライドが行なわれるようにすべきであるということが第二点だったと思うのです。第三点は、政府は公的年金の総合調整諸原則を確立して、医療保険のような失敗を繰り返すな、こういうことだったと思いますが、この三点について大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/58
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059・坊秀男
○坊国務大臣 それぞれの年金には、私は、それぞれの使命、それぞれの立場というものがあろうと思います。さような意味におきまして、各種の年金の中には、おのずから、どの年金が非常に尊重されて、どの年金が軽視されるというようなことがあってはならない。それぞれの目的に向かって、それぞれの立場において、できるだけ充実したものでなければならない。こういうような観点からいたしまして、私は各種年金にはバランスが当然あろうと思います。さような意味におきまして、一部の年金だけが独走する、先行するというようなことがあってはならないというふうに考えております。
それから、御指摘になりましたように、医療保険は、これもやはり各種の保険がありまして、そしてその保険の、たとえば給付率、費用負担、そういったようなものがアンバランスであるといったようなものは、これはどうしても是正をしていかなければならぬ、今日そういうことになっておる。これを是正しなければならぬという事態に来ておるのでございますから、年金もやはり総合的な観点から、歩調といいますか、これは金額その他はそれぞれの目的があるのでございますから、これは当然そういうような土壌にふさわしいことになろうと思いますけれども、それはそれといたしまして総合調整をしていかなければならない、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/59
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060・山本政弘
○山本(政)委員 私は三点お伺いをいたしたのですけれども、二点目の総合調整、これはよくわかります。ただその点について、大臣は今日の段階でバランスがとれているとお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/60
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061・坊秀男
○坊国務大臣 できるだけ各種の年金というものは調整されていなければならないものであって、そういうふうに努力はしてまいっておりますけれども、これは完全にバランスがとれておるということは、ここでそう胸を張って申し上げることができない。そこでやはり年金制度というものにもこれは検討を加えていかなければならない、こういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/61
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062・山本政弘
○山本(政)委員 いまのあれで大体わかりましたが、一番の一部年金の独走——私はこれは恩給をさしておると思いますが、これの独走をこれ以上許すと年金制度は混乱する、こう勧告を出そう、こう言っておりますけれども、このことに対するお考えですね。独走しているとお思いになっていらっしゃるのか、あるいは独走してない、こうお思いになっていらっしゃるのか。私は、この点については大臣の御答弁をまだいただいておらないような気がしますので、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/62
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063・坊秀男
○坊国務大臣 大体年金は、御承知のとおり社会保障の中の所得保障、こういうことでございまして、その他の恩給とかあるいは援護法に基づくものだとかいうものは、これはただ単に所得保障、それでは割りきれない面もあるわけですね。これは国家が賠償すると申しますか、そういったような思想も、これはいまのところ全然捨ててしまうというようなことでもない。そういったようなことも加味されておるといったような観点からいたしますると、にわかに両者を比較しまして、それで、援護だ恩給だといったようなものが進み過ぎておるんだということも、私はこの際言い切るわけにもまいらない。これは非常にむずかしい問題でございまして、相当分析、検討と申しますか、これは心理が入っておりますので、さような意味におきまして、にわかに両者を比較いたしまして、援護、恩給が進み過ぎておるんだということも言い切れないような始末でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/63
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064・山本政弘
○山本(政)委員 間もなく援護には入りたいと思いますがもう少し……。
恩給は曲がりかどにきた、こう最近言われております。ことしの予算もたしか二二%増額されておると思います。四十二年度の総額は千九百八十九億円です。私はなぜ先ほど朝日さんのことについての御質問を申し上げたかと言いますと、いまの貧弱な社会保障をたな上げにして恩給というものをこのまま増額をしていいのかどうかということについては、私は若干疑問を持っておるわけです。なるほど、お仕事をされたり、あるいは軍人の方等でたいへん気の毒な方もございます。しかしそれはそれとして、恩給についての増額というものについては、この状態のままのカーブで上がっていっていいのかどうかということについては疑問を持っておるからお伺いいたしたわけでございますが、そういうことで再度大臣のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/64
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065・坊秀男
○坊国務大臣 恩給等につきましては、これは一応スライド制というようなことが行なわれまして、それでこれは毎年毎年上がっておる。ところが、いまその他各種の年金は、そういったようなことがない。それからもう一つは、国民年金等については、掛け金ということもありまして、両方の観点から考えてまいらなければならないというようなことで、そこに仕組みの違いもございます。そういうような現状に相なっておりますけれども、国民年金その他の年金につきましても、いまの年金でもってこれは十分だということは考えておりません。さような意味におきまして、できるだけこの制度を整備充実していかなければならない、こういうふうに考えておりますので、私は、この社会保障の中の大事な所得保障というこの年金は、できるだけ充実、整備をはかっていこうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/65
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066・山本政弘
○山本(政)委員 それでは重ねてお伺いいたしますけれども、旧軍人の遺族数はどれくらいおられるか、それから七十歳以上の高齢者はどのくらいおられるか、お知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/66
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067・実本博次
○実本政府委員 恩給の関係で公務扶助料を受けております遺族の数は、四十二年五月現在で百十六万三千名でございます。それから、これは遺族だけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/67
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068・山本政弘
○山本(政)委員 旧軍人とその遺族数です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/68
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069・実本博次
○実本政府委員 軍人恩給の対象者でございますれば、これは恩給法のほうになりますので、ちょっとわかりかねるのでございますが、公務扶助料の遺族、軍人の遺族の数だけは、いま申し上げましたように、ことしの五月現在で百六十万三千百六十一人という数にのぼっております。
それから七十歳以上の者につきましては、これもやはり公務扶助料についての数字は出てまいりませんのでざいますが、遺族年金につきまして、七十歳以上の者の全体に対します百分比を見てまいりますと、遺族年金で五六%というものが七十歳以上の者になっております。したがいまして、公務扶助料の場合も、大体この率がこのまま類推されると思いますので、百十六万のうちの過半数の者、約六十万近い者がやはり七十歳以上になっているのではないかというふうに推定されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/69
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070・山本政弘
○山本(政)委員 旧軍人とその遺族というのは、大体大まかな数字でございますけれども、百六十七万だと思います。それから七十歳以上の高齢者はそのうちで、七十八万。この面だけから見ますと、私は、大臣の言われたように、これは一つは社会保障的な意味もあると思うのです。と同時に、戦後処理的なものもある。この二つが私はやはりあると思うのです。そして、だんだんと前者のほうの傾向がこれからは強くなっていくのではないか、こういう気がいたしておりますけれども、この点については、大臣どうお考えでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/70
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071・坊秀男
○坊国務大臣 傾向といたしましては、いまの御意見のとおりだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/71
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072・山本政弘
○山本(政)委員 そうすると、先ほどの話に戻りますが、生活能力のない人たちに国が差し伸べる生活保護と、それから先ほど申しましたように、一定の期間軍籍にあったことに伴う権利としての恩給と、これには性格的には差異がございますね。その点はどうでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/72
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073・坊秀男
○坊国務大臣 それを受ける方々の中にはダブったのがあろうと思いますけれども、考え方といたしましては、生活保護ということと恩給、援護といったようなものとは性質が違う、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/73
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074・山本政弘
○山本(政)委員 繰り返して申しますけれども、私が大臣にお願いしていることは、ひとつぜひ広い視野に立ってこの社会政策のことについてお考えを願いたいということを実は申し上げたいのであります。たとえば高齢者の雇用対策についても、高齢者だからどうだとかいうようなことももちろんありますけれども、同時に積極的な面というものも打ち出す必要があると思うのです。この辺についての大臣のお考えはどうか、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/74
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075・坊秀男
○坊国務大臣 非常にごもっともなことと私は思います。高齢者が、いまの日本の人口構成でまいりますと、ますますふえてまいりまして、人口全体に占める割合は、若年者に比べまして、はるかにその伸び率がふえてくる。そういったような人たちが、今日の所得保障を私は十分だとは思っておりませんけれども、もしかりに十分な所得保障といったようなことで、左うちわでもって生活できる、そういう極楽みたいなことはいまのところはあり得ませんけれども、かりにそういうようなことがあっても、人間というものは、ただ生活だけが安定しておるというようなことでは、その人のしあわせと申しまするか、この世に生を受けたその人がそれほどしあわせではない。かような意味におきまして、高齢者の健康状態あるいはその人の適性といったようなことを、できるだけ社会として、国として引き出して、そうして、自分も国のためにと申しますか、社会のためにと申しますか、人のためにこういう意義ある仕事をしておるのだというようなことを施策としてやっていくということが、これから私は非常に大事なことだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/75
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076・山本政弘
○山本(政)委員 じゃ最後に、お願いと同時に大臣のお考えをお伺いして、本論に移りたいと思います。
繰り返し申し上げますけれども、生活保護について今後十分にレベルアップをしていくということは、大臣御異存はございませんね。——わかりました。それでは戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の御質問をしたいと思います。
これは援護局長にお伺いしたほうがいいのではないかと思いますけれども、款症程度の障害者に対して障害年金または障害一時金を受給者の選択によって支給することにした、これが今度の改正でございますね。これは簡単でけっこうでございますけれども、恩給法に準じてそうなさったのかどうか、その点だけお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/76
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077・実本博次
○実本政府委員 お説のごとく、款症程度の軍人たる障害者に対しまする恩給法に基づきます傷病年金が、年金、一時金の選択性を認めておるわけでございまして、援護法におきましても、この選択性、本人の選択によってどちらかにきめるという制度をこの際導入しようということで改正案を出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/77
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078・山本政弘
○山本(政)委員 援護局長さんは昨年も援護局長でございましたね。——それじゃちょっとお伺いいたしますが、四十一年の六月一日のこの委員会で、粟山委員の障害年金または障害一時金のいずれかを受給者の選択によって支給する考えはないかという質問がたしかあったと思います。そのときにあなたの御答弁は、そういう意思がないという御答弁であったと思います。その理由として、これは私、要約でございますが、障害が款症程度という比較的軽度のものであることにかんがみて、その状況が安定している場合には、むしろ高額の一時金たる障害一時金を支給いたしまして、社会人としての更生の資とするというのが援護の実をあげるゆえんである、こうおっしゃっておられます。そしてなお、障害の程度に変動が認められる場合には、年金たる障害年金を支給して、障害の変動に応じてその額を改定するということによって、現症に即応した適切な援護を行なうことが妥当である、こう言って、厚生年金の例もあげておられるし、同時に、恩給についてはこれは特例であるというふうにあなたはお答えになっております。いま一年たっておりません。一年たっておらない今日、なぜそのようなお考えになったのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/78
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079・実本博次
○実本政府委員 確かに、私、粟山委員の御質問に対しまして私の考え方を述べましたが、ただ、全然考えないのでなくて、慎重に検討する必要があるんじゃないかというふうな意味の御答弁を申し上げたかと思いますが、今回そういうふうなケースを法案の中に盛り込みました理由といたしましては、最近非常に年金の額が、先ほど先生のお話のございましたように、改定されてくる実情にかんがみまして、さきにそういった症状が固定しているということで一時金を受け取られました方との問においてのアンバランスと申しますか、そういう問題ですでに受け取られた方々からの御要望が強くなってまいりました。そういう実情にかんがみまして、過去に障害一瞬金を受けた者につきましても、この際あらためて障害年金を支給してはどうか。なお、経過的ではありますが、恩給法でそういった選択を認めたケースがある、お手本がございますので、いろいろ検討の末そういうふうなことに踏み切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/79
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080・山本政弘
○山本(政)委員 要望はその当時からすでにありました。と同時に、速記録をもう一度ごらんになっていただきたいと思うのですが、慎重にというか、むしろあなたの御答弁は、厚生年金についてもこうでございます、恩給法についてはこれは特例でございますと、はっきり言っておられると思います。去年から一年まだたっておりません。そういう要求があったから、おそらく粟山委員のほうからそういう要求があったと思う。その点に対して、あなたはもう一ぺん速記録をごらんになっていただきたいと思いますけれども、きわめて慎重にお答えになっておるのです。厚生年金もこういう例でございます、恩給法は特例でございますと、はっきり申しております。しかし、私の記憶では、慎重に考えたいという文句はなかったと思うのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/80
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081・実本博次
○実本政府委員 おっしゃられるように、恩給法が経過的に一時そういった選択制を認めた、これはやはり援護法にも取り入れていいんじゃないかというふうな意見で踏み切ったわけでございますけれども、おっしゃられますように、御要望はそう熾烈なものではなかったわけでございますが、一応御要望があったわけでございます。ただ、四十二年度におきましても、恩給のベースアップと同じように、援護法におきましても障害年金の額が上がるというふうなことにもなってまいりまして、先ほど私が申し上げたように、過去に一時金をもらった者との差が、現在、同じような款症程度のもので、症状が固定しないということで年金の支給を受けている者とのアンバランスが目立ってまいったわけでございます。それと、昨年のこの委員会におきます援護法の可決をいただきましたときに、そういった意味での戦傷病者の援護がおくれているので、大いに進めろというふうな附帯決議もいただきましたので、改正に踏み切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/81
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082・山本政弘
○山本(政)委員 それではちょっとお伺いいたしますが、一時金の裁定を受けた人にもこの措置が適用されるのですね。これはどういう理由でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/82
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083・実本博次
○実本政府委員 すでに障害一時金を受けた者にもそういう選択権を与えるということは、そういう裁定というものをすでに受けた者についても及ぼさなければ、その人自身が一時金を受けたときには、選択できて受けたものでないのでございまますから、そういう意味でその人に選択権を与えるということを考えたわけでございます。
ただ、この場合に、今回の措置によりまして、障害一時金が相当な額があって、その上に重ねて障害年金を支給されるというような方は、これは避けなければならないということで、そういう場合には所要の調整をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/83
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084・山本政弘
○山本(政)委員 一時金をもらって、そうしてまた適用を受けるわけですね。そうすると、これは二重になりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/84
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085・実本博次
○実本政府委員 そういう場合を調整するために、調整の方法といたしまして、たとえば障害一時金としてすでに支払われた額を、たとえば数年間に分割いたしまして、今後選択して出されます年金の額から控除するといったような控除方式、それから、控除することができないほどごく最近において多額の一時金を受けておるという場合にも、これは控除する期間を長引かすといったような方法で調整をいたしていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/85
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086・山本政弘
○山本(政)委員 話はもとに戻りますけれども、これについては、先ほど私、この本論に入る前にお伺いしたんですが、一体援護法というものは、戦後処理的な意味を含めているんでしょうか、それとも生活保障的な意味を含めておるのでしょうか、どちらでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/86
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087・実本博次
○実本政府委員 それは総則の第一条にも書いてございますが、援護法に基づきます援護というものは、「軍人軍属等の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家補償の精神に基づき、軍人軍属等であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする」ということになっておって、給付の目的は援護でございます。しかし、おっしゃいます精神というものは、国家補償、一種の賠償理論に立った国家補償、国家が自分の使用人を公務によって傷つけ、または死亡さしたということに対する国家補償の精神に基づいてやっておることでございまして、どちらかと申しますと、そういった国家補償のルールでやっておる色彩の強い援護行政でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/87
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088・山本政弘
○山本(政)委員 確認いたします。賠償理論によって、こうおっしゃいましたね。これは私はあとのほうで質問いたしますけれども、賠償理論によっての国家補償だ、間違いございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/88
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089・実本博次
○実本政府委員 それは、賠償理論といいますか、完全にそういった賠償理論のルールでやるということではなく、国家補償の精神に基づき援護しろ、こういうことでございまして、完全な賠償理論によってすべてを割り切れという意味ではございませんで、精神として国家補償の精神を基調として援護を行なえ、そういうふうな意味での国家補償の上に立った援護でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/89
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090・山本政弘
○山本(政)委員 話がちょっと横へそれるかもわかりませんが、援護法第二条第三項第四号に、開拓義勇隊の隊員が準軍属として取り扱われることになっておりますね。これは私のほうでお話をしておったのでお答えを願えると思いますけれども、昭和四十一年の六月八日、これは死んだはずの満蒙義勇隊員が二十三年ぶりに母親に会ったという新聞の見出しが出ておりました。宮崎県の方でございますけれども、皆元あきのさんという方の次男の満男さんという方ですが、この方は三十五年に戦時死亡宣告が出ております。そうして四十年の二月に生存がわかって、四十一年の六月八日に帰ってこられたというのですが、あなたがいまおっしゃった国家補償の精神に基づいて、この問の補償がどのようになされておったのかということをちょっと説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/90
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091・実本博次
○実本政府委員 お話の宮崎県の御出身の皆元さんのケースでございますが、この援護法等の関係におきましては、先生のおっしゃいますように、この方は満蒙開拓義勇隊として満州におられたわけでございますが、三十五年の三月に戦時死亡宣告を地元の知事から申し立てられまして、戦時死亡宣告が確定いたしました。この戦時死亡宣告の確定をされました皆元さんに対しましての援護措置といたしましては、未帰還者に関する特別措置法に基づきまして、まず弔慰料というものが出るわけでございます。これは戦時死亡宣告を宣告いたしました方には、公務死という扱いをいたします。それで公務死をなさったということで弔慰料をお出しするわけでございます。それは未帰還者に関する特別措置法に基づく弔慰料の二万円でございます。それから今度は、満州開拓青年義勇隊であった人、つまり先生のいま御指摘になられました第二条三項四号に該当する準軍属ということで、この方の公務死に対します弔慰金というものが三万円支給されております。それから、やはり未帰還者留守家族等援護法に基づきます葬祭料というものが三千円支給されておるわけでございます。この方の場合、援護法におきましては、さっき申し上げましたように、準軍属の方の公務死として弔慰金を三万円出しましたが、この方にはお母さんがおられまして、遺族給与金が出るわけでございますが、この遺族給与金を支給いたします要件で、父母につきましては、六十歳未満の者には支給しないというふうな規定がございます。これは先生が御指摘になられますように、国家補償の賠償理論とはここが違うところなんでございますが、ここは社会保障的と申しますか、そういうような理論に立ったところでございますが、そういうふうな支給制限がございますので、遺族の方に対する給与金というものは、支給要件を欠いておりますので差し上げていない、こういうふうなことで、三十五年の死亡宣告に基づきます援護措置が行なわれてまいったわけでございます。
それから、いかがいたしましょうか、お帰りになられましたときのことを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/91
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092・山本政弘
○山本(政)委員 いや、けっこうです。四十年二月までは当然適用を受けたということでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/92
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093・実本博次
○実本政府委員 そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/93
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094・山本政弘
○山本(政)委員 それでは第四条で、日華事変以後の戦地、事変地で死亡した軍人、軍属の遺族で、死亡者の死因によって現行援護法の適用を受けられない遺族がありますね。こういう項がここにあると思います。「重大な過失」とか「故意」によるということでお伺いいたしたいのは、「故意」によるというのは別ですけれども——私は拡大をすることについては、率直に申し上げまして積極的ではございません。ただ、法律がこういうふうに制定された場合に、実際上に気の毒な方がおれば、これはやはり私は生かしてやるのが法の精神であると思いますのでお伺いをするわけですけれども、「重大な過失」というのはどういうようなものか。その点について具体的に何かあれば、こういう場合にはこうなんだということがあれば、お伺いいたしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/94
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095・実本博次
○実本政府委員 先生おっしゃいますのは、四条の一項または二項におきます支給要件、公務傷病の範囲の条件だと思います。われわれのほうでいままで「重大な過失」とはどういうことかというふうなことで扱ってまいりました最も典型的な例を申しますと、たとえばけんかでございます。酒を飲んでお互いにけんかし合った。それから性病でございます。そういうものが一番大きなケースとして、最も典型的にあげられておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/95
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096・山本政弘
○山本(政)委員 そうすると、そういう例以外の過失であれば、大体四条の二項については認めておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/96
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097・実本博次
○実本政府委員 お説のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/97
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098・山本政弘
○山本(政)委員 戦傷病者特別援護法には戦傷病者相談員という制度を設けておりますね。この相談員の実情をちょっとお聞かせを願いたいと思うです。
〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/98
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099・実本博次
○実本政府委員 戦傷病者相談員につきましては、現在全国で四百七十名。これは沖縄地域も十名含んでおりますが、四百七十名の者が、四十年の十月から厚生大臣の委託を取けまして、戦傷病者の相談、指導に当たっておるわけでございます。これらの相談員の方の制度発足以来一年間の業務の総件数を見てまいりますと、四万九千三百五十七件にのぼっておりまして、平均いたしますと一人一カ月八・七件の処理をしておるというふうな実績になっておるわけでございます。
なお、こういうふうな情勢にかんがみまして、本年十月以降は、現在の人員四百七十名をさらに五割ふやしていただくようにいたしておりまして、七百五名のものにしたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/99
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100・山本政弘
○山本(政)委員 その業務の取り扱いの件数、一人当たりどれくらいになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/100
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101・実本博次
○実本政府委員 先ほど申し上げましたように、相談員一人当たり一カ月八・七件という取り扱い実績になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/101
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102・山本政弘
○山本(政)委員 戦傷病者相談員というわけですから、戦傷病者特別援護法によってこれは設けられているわけですね。そうすると、戦傷病者戦没者遺族等援護法については、相談員はないわけです。現実にはやっておられるかもしれませんが、ないわけです。戦傷病者については設けておるが、この本法に設けておらないという理由をお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/102
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103・実本博次
○実本政府委員 現在傷病軍人手帳を持っております人たちが、去年で恐縮ですけれども、四十一年の四月一日現在で約十二万人おるわけでございます。そのうち傷の重い軽いで項症と款症に分けてございますが、約半数近く、五万六千七百人というものが項症程度の重症の方々でございます。こういった重症の方々は、視覚障害者あるいは肢体不自由者とかで、とにかく家にいなければならぬ、出ていって相談するとかそういうことができない人が非常に多うございまして、そういう意味で、特にそういった戦傷病者の相談員、いわゆる重度の身体障害者の相談員ということでございまして、非常に専門的なと申しますか、そういった特殊のニードがある人方が多い上に、相談の中身もリハビリテーションに関するものもございまして、こういった者だけの専門的な制度として要望が強かったので置いたわけでございまして、一般の御遺族の場合のケースは、こういったハンディキャップのある人でございませんので、大体市町村、都道府県の援護係なり世話係なりの相談員のほうにお出向きを願う、そういったことで行政を進めてまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/103
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104・山本政弘
○山本(政)委員 戦傷病者の相談員という制度が戦傷病者特別援護法に設けられております。これは戦傷病者特別援護法の第八条の二の三項に規定があるわけです。その規定は、「戦傷病者相談員は、その委託を受けた業務を行なうに当たっては、個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。」と書いてあるわけですよ。いま援護局長のお答えによりますと、戦傷病者、特に重症の方々は、手取り足取りをしてめんどうを見なければならないから相談員が必要なんだ、こうおっしゃっておる。私はそのことを否定するわけではありません。もちろんそのこともたいへん大きな理由であると思うのです。しかし同時に、この八条の二の三項に書かれておる精神というものもまた忘れてはいかぬと思うのです。戦傷病者の重症の方々に対して、もちろんその身上に関する秘密を守らなければならない場合が多々あると思うのです。だが同時に、戦没者の妻の方々あるいは遺族の方々についても、そういうふうに身上に関する秘密を守らなければならない事柄がたくさんあると思うのですよ。事実私自身が耳にしておることもありますので、そういうことになれば、相談員というものをなぜ戦傷病者戦没者遺族等援護法のほうに適用といいますか、準用といいますか、そういうことをなさらないのか、なさるおつもりはないのか、このことをお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/104
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105・坊秀男
○坊国務大臣 御指摘の点でございますが、片方は戦傷病者でまだ生きておる。片方の遺族は、御主人がなくなって奥さんが生きておる、こういったようなことで、戦傷病者はその本人がまだ——まだと言っては失礼でございますが、現に生きていらっしゃるというのと、そこに少し違うところがございましょう。そういった点で、指導をする上において、いろいろな秘密というものは、本人がなくなられてしまったのと、本人だということとは違いがあろうと思いますけれども、御指摘の点もありますので、これは検討をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/105
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106・山本政弘
○山本(政)委員 私が、冒頭、本論に入る前に大臣にお伺いしたら、さじかげんでない、こうおっしゃっていました。私は、法の運用というものは人にあるということを申し上げました。だから、大臣のおっしゃるように、さじかげんでやれというのではなくて、ここまでくるのだったら、あなた方も、全く完全ではない、こうおっしゃいましたけれども、賠償の理論、国家補償の精神というものに従って、それだけの親切な法の適用をしてやらないのかということが疑問なんです。これは戦傷者はたいへんお気の毒ですけれども、同じように、戦傷病者あるいは戦没者の遺族も他人に言えないことがあると思います。あるいは戦没者の妻の場合でも人に相談ができないということがあります。これも私はあとでお伺いいたしますけれども、戦後心ならずも再婚しておる人がおります。そういう人たちが一体だれに相談をすればいいかということになれば、援護局長のお話しのように、人格は非常にりっぱな方で、そして相談員になり得る人にすがっていくよりほかにないじゃございませんか。そういうことに対しては、この援護法、それからこれは戦没者の妻に対する特別法ですか、これについても皆さん方の御配慮が足らないような気がするわけです。ぜひそのことについて御検討をお願いしたいと思うのですが、その点、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/106
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107・坊秀男
○坊国務大臣 さしあたっては、そういった方々の相談相手には、民生委員というものがございまして、それがやることになっておりますけれども、民生委員だけでは、片方の戦傷病者のほうと権衡がとれないというようなこともございまして、御指摘もありますので、検討をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/107
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108・山本政弘
○山本(政)委員 民生委員というのは性格的に違うと私は思うのです。大臣のおっしゃるように、戦傷病者あるいは戦没者の遺族、この方々はお世話をするという性格ではないと思うのです。民生委員はもっと別な性格があるはずです。ですからこのことはぜひ御配慮をお願いしたいと思います。
同時にお伺いいたしたいのは、かりにそれだけの御配慮があるならば、相談員というのは月に八・七件ですが、いろいろな個人に一々相談に乗ってやれば手間ひまもかかると思うのですが、月五百円というものは妥当な金額でしょうか、このことについてちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/108
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109・実本博次
○実本政府委員 いまの月五百円というのは、民生委員さんの場合と同じように、全くほんとうの昼飯代といったようなことでございまして、普通の、そういう仕事を実際にやっていただく事務職員に対する報酬のようなところまではとても望めないといたしましても、また望むべきではないとは思いますが、しかし、それはほんの昼飯代というふうなことになっておりまして、そういう意味では、それにも欠ける場合もあるかと思いますので、それはなるべくそういう御迷惑が少しでも減るようにという方向へ持っていかなければならぬとは思っております。そういう意味で非常に適当であるというふうには決して考えておらぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/109
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110・山本政弘
○山本(政)委員 大臣、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/110
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111・坊秀男
○坊国務大臣 いまの五百円という金額は、御苦労を願ったからそれに対する報酬とか、そういったような意味では私は決してないと思うのです。そういうような一種の社会事業と申しますか、それをやっていただく方に対して、とにかく昼飯代と申しますか、薄謝と申しますか、(「薄謝にもならぬよ」と呼ぶ者あり)薄謝はほんとうの薄謝でございます。さようの意味だと思いますけれども、もちろん私といたしましても、それで十分だとか、そんなことは考えておりません。たとえ薄謝にしても、できるだけ改善をしてまいらなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/111
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112・山本政弘
○山本(政)委員 再婚解消の妻、これは死別した場合も含みますが、これについての遺族年金支給期間の延長、このことについてどうお考えですか。たとえば、昭和二十一年二月一日以降再婚したけれども、昭和二十七年四月二十九日以前に再婚を解消した戦没者の妻には遺族年金が支給されていますね。しかし、昭和二十七年四月二十九日以前に再婚して、昭和三十年六月三十日までの問にそれを解消した妻に対しては、これは適用されていませんね。この理由は一体何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/112
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113・実本博次
○実本政府委員 二十一年から二十七年四月二十九日までの問に再婚をされて、そして解消されたという方を援護法の対象といたしておりますゆえんといたしましては、二十一年には恩給法が全部ストップになりまして、そしてその間、遺族としての、特に妻として、一番先順位にある遺族としての公務扶助料もすっかりとめられてしまって、経済的に非常に苦しい時代にやむを得ず再婚された。しかし、やはり先夫のほうがよかったということで、解消されて実家に戻られた、あるいは一人で生活されておるというふうな、その間、非常に険しい条件の中を生き抜いてこられたという方、その期間にすべて再婚のケースを解消されたという者については、援護法あるいは恩給法が復活したときに、やはりそういう人たちだけはお迎えすべきではないか。そういう援護法なり恩給法が復活されたのを見て、再婚解消すれば公務扶助料なり遺族年金が出るというふうな条件になって以後解消されたという人との間の御苦労の差に目をつけまして、そういうふうな期限の制限を行なってきておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/113
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114・山本政弘
○山本(政)委員 二十一年の二月一日から二十七年四月二十九日まで、これは恩給が停止されたということで気の毒だ。しかし、二十七年四月二十九日前に婚姻を解消した人には、これは精神的にも物質的にもどうにもならないから結婚した人だってあると思うのですよ。しかも、心ならずも結婚した人が今度は耐えられなくて離婚した、こういう場合だって考えられますね。せっかくあなた方はここまで——私、先ほど申し上げたように、社会保障というものをもう一ぺん根本的に考えるべきだ、こうお話ししましたが、私の考え方はそこにあります。しかし同時に、現実には恩給法並びに一連の年金というものをだんだん拡大されてきているわけですよ。そしてこういうところだけさっと頭の上であなた方はお切りになっているということは、私には理解できないのですよ。ただ、しゃくし定木に、この恩給のない期間だけやる、これはもう適用する、その後については適用除外だ、こういうわけにはならないでしょう。この期間に結婚をして、その以後に解消した人の生活環境というものは考えるべきじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/114
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115・実本博次
○実本政府委員 お説のようなケースで最も考えなければならないのじゃないかと思われる例をあげますと、たとえば二十七年の五月一日に解消されたというふうな人は、ほんとうに一日の差で処遇に大きな差が出てくる。そういうものはもう少し弾力的に考えてもいいじゃないかというふうな御意見ごもっともだと思いますが、ただ、こういったある程度の期間というものを切ります根拠がもっともだということになりますれば、どこかの時点でやはりそういうふうな方々が出てくるわけでございまして、それを考えました場合に、全部いつでも解消したらというふうに期限をとってしまったらすべてのケースがうまくいかない、こういうふうなことになる制度でございますから、これは当然とってしまうということでは、またちょっといろいろ不都合な点もあるわけでございます。そういう意味で、この時期が、恩給法がなくなってしまって、援護法によって復活するまでの間歯を食いしばっておられた、その間にすべて事を解消されたという方々だけに限っていくべきだとすれば、やはりこの時点を守っていかざるを得ない、こういうふうなことで、いまのようなかっこうに落ちついているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/115
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116・山本政弘
○山本(政)委員 じゃ同じようなケースがあるわけです。三十一条一項の七号、これはたしか氏を改めた場合には父母、祖父母に遺族年金を支給することができないという規定ですね。これは妻の場合にも同じような規定があると思うのですよ。ここにこういう例がございます。これはそのとおり読みます。「戦没者の父親は戦没者が幼少のころ死亡し、その後、私は女手一つで十年余養育してまいりましたが、一人前になった喜びもつかの間、昭和十三年に陸軍に入隊、昭和十九年中支方面にて戦死いたしました。娘と私はあのおそろしい原爆に被爆し、家屋は全焼、私も傷を受け苦しみましたが、昭和二十二年に親戚のすすめにより再婚いたしました。氏を改めた婚姻ゆえ年金等は受給できず、弔慰金のみ受給いたしました。その後昭和三十七年再婚の夫とも死別し、私は一人になってしまいました。」こういうことなんです。これは自分の意思で婚姻を解消したわけじゃないんですね。心ならずも死別したわけですよ。そういう場合の救済規定も結局はないわけでしょう。私が申し上げたいことは、いま申し上げた再婚解消の妻の場合と同じように、こういう救済規定というものをどこかに設けていいんではないかと思うのですよ。大臣は、もしもこういうことを直接お知りになったときに、一体、ただお気の毒ということでお済みになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/116
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117・実本博次
○実本政府委員 先生のいまおっしゃられましたケースは非常にお気の毒なケースでございますが、お説のように三十七年に再婚をされた方と死別しておられるということで、これはどうにもいまの援護法の対象に取り込むことができないというケースになってしまうわけでございます。それが、先ほど申し上げましたような、恩給のない期間がんばっておられたというほかに、もう戦没者と別れてから十年も十五年もたった場合のケースというものについても、やはりやむを得ぬじゃないかというふうな考え方も、さっきの二十七年の四月で切った例の中の一つに、この援護措置で行なわれたときにある程度あったわけでございまして、戦後六、七年の間なら、まだ前夫のあたたまりがあるが、しかし、もう十五年もたちますと、前夫のあたたまりも全然さめて消えてしまっているというふうな議論もございまして、そういうふうな整理期間をつくったということでございますので、はなはだお気の毒なケースではございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/117
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118・山本政弘
○山本(政)委員 大臣は、こういう意味では戦後はまだ終わっておらないのだということを、たしか申されたように記憶しておるのですが、先ほど款症程度の場合に一時金の裁定を受けた者が再び適用を受けるということがありましたね。これは二重だと私お伺いしましたら、そうですというお答えがありました。この人は弔慰金を受けております。昭和二十二年に再婚して、「氏を改めた婚姻ゆえ年金等は受給できず、弔慰金のみ受給いたしました。」ということですから 弔慰金は受給しているわけですよ。そうすると、昭和四十年に制定の特別弔慰金というものは、この人には支給されないですか。私は、遺族年金は支給されないかもわからないけれども、弔慰金は支給されるのではないかと思うのですが、この点どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/118
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119・実本博次
○実本政府委員 特別弔慰金のほうは、遺族年金とか公務扶助料とか出ていない方には重ねて出ることになっております。だからこのケースは出ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/119
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120・山本政弘
○山本(政)委員 三十九条の二、これは準軍属の適用は、この項についてはないですね。なぜここに準軍属は適用されておらないのか、お伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/120
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121・実本博次
○実本政府委員 これは軍人軍属だけでございまして、準軍属にはこの適用はございませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/121
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122・山本政弘
○山本(政)委員 適用はございませんが、どういう理由で適用がないのでしょうか。ほかのは、ずっと軍人軍属、それから準軍属という規定であるでしょう。この場合にだけなぜ準軍属というものは除かれているのか、その理由をひとにお聞かせ願いたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/122
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123・実本博次
○実本政府委員 一項の一号も二号もいずれも——特に二号につきましては、戦地におきますケースでございますが、一号も戦地または事変地におきます場合でございまして、準軍属と申しますのは、主として内地にいた雇用人なりあるいは動員学徒の人だとか、内地勤務が前提になている人が主でございました関係と、それから、この法律ができましたときに、準軍属の方々は、実はいまその名前がそういうふうな名前で残っておりますように、年金じゃなくて一時金を差し上げておった。これが昭和三十四年に、準軍属も一時金から年金に切りかえてまいったわけでございまして、そういう一時金だけの処遇であったというふうな関係もございまして、準軍属にはそういった三十九条の二の適用がないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/123
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124・山本政弘
○山本(政)委員 後段は別として、前段では主として内地勤務であったというお話でしたね、準軍属の方は。しかし、冒頭に申し上げましたように、満州開拓義勇軍は、これは準軍属です。これは外地です。この方々は適用がないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/124
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125・実本博次
○実本政府委員 そういう例外もございますので、実は先生の御指摘のように、準軍属の処遇といたしましては、軍人軍属との関係におきましてその点処遇のアンバランスがあるので、こういった準軍属の方々の一時金制度を厚生省といたしましても検討しておるわけでございますが、まだその実現の運びに至っていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/125
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126・山本政弘
○山本(政)委員 戦傷病者会館というのが一昨年予算で承認されまして、できることになりましたね。その後一体これはどういうふうになっているのか。それから現状をひとつお聞かせを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/126
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127・実本博次
○実本政府委員 戦傷病者会館は、昭和三十九年度の予算に二億円の国庫補助が計上されまして、その補助金を受けて、四十二年の三月、ことしの三月末に竣工いたしまして、会館の規模は当初の計画どおり総坪数が約千四百坪ばかりございます。
この会館において行ないますおもな業務は身体障害者収容授産施設で、大体百人程度の収容を考えておるわけでございます。それから補装具の製作、研究、それから更生医療に関します相談指導といったようなことを考えておりまして、目下社会福祉法人戦傷病者会館という法人の手によりましてその業務の開始の準備を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/127
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128・山本政弘
○山本(政)委員 いま収容されておる方々がおられるのか。補装具の製作とか修理とかということがございますね。これはもう仕事が始まっているのかどうか。そういうことをひとつお聞かせ願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/128
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129・実本博次
○実本政府委員 いまそういう身体障害者収容施設としての開設許可をとりつつありまして、百名の収容者について募集をいたしておるところでございまして、開設認可がおりましたらすぐそういう業務を始めたいという態勢をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/129
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130・山本政弘
○山本(政)委員 これはどなたにお伺いしたらいいのでしょうか。東京に、被爆者、つまり原爆にあった方々が、いまどれくらいおられるか、おわかりでしょうか。東京だけでけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/130
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131・実本博次
○実本政府委員 公衆衛生局のほうでいま確かめますが、被爆者健康手帳を持っている者は、いまの私の記憶では大体二十四万五千でございましたか、約二十五万近くございますから、そのうちのどの程度が東京におられますか、ちょっと見当がつきませんのですが、大体一割と見ても二万四、五千くらいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/131
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132・山本政弘
○山本(政)委員 三月二十九日に厚生省から原爆被爆者の実態調査で出ておりますから、ひとつよくごらんになってほしいと思うのです。ただ、これは四十年までしか出ておりません。現在はどれくらい出ておるか、おそらくこれ以上の数だと思うのです。ただし、そうかといって二万人も三万人もおらないと私は思うのです。実本さんのおっしゃるように一割もおらないと思うのです。もっとずっと実数としては少ないと思います。ただ、この人たちについて、この戦傷病者会館を利用させるというようなお気持ちはないのでしょうか。もちろんこれは福祉法人になるのでしょう。ですから、強制力は当局としてはお持ちでないかもわかりませんが、そういう指導というものはなされるおつもりはないでしょうか。人数はたくさんおらないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/132
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133・実本博次
○実本政府委員 身体障害者の収容授産施設といたしましては、身体障害者手帳を持っておられる方であればだれでも収容する。それ以外の方でも、いろいろな補装具とか更生指導相談の業務にはこの施設が利用できるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/133
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134・山本政弘
○山本(政)委員 それでは、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案については最後にいたしたいと思いますが、あと父母に対するのがあります。
原爆被爆者の死亡者のうち、当時医療機関で原爆病であるということがわからなかった人があると思うのですよ。つまり外傷によって単なる爆弾というふうに理解されて、そして取り扱われている人がおると思うのですけれども、原爆の被爆死亡者で、死亡について公務性の立証が困難な軍人、軍属、それから準軍属の遺族に対して、遺族年金を支給するというお考えというものはないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/134
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135・実本博次
○実本政府委員 原爆被爆者の原爆症の関係の軍人、軍属その他の方々で、援護法の対象としてはっきり公務上の死亡だということが認定できないものは、すべて援護法の対象にしたらどうかという御意見でございますね。原爆病の公務性の問題につきましては、従来非常にむずかしいケースがたくさんあるわけでございますが、そういったことで、原爆症はどういう場合であろうと一律に全部公務にするというような取り扱いは、制度のたてまえ上どうにもできないことでございます。そういった公務の傷病の認定につきましては、やはり一つ一つのケース、ケースでもってきめていかざるを得ない。また現実に、いままでの取り扱いといたしましても、そういうふうなケース、ケースの問題としてむずかしい問題がありますときには、専門家が入りました援護審査会でいろいろな御意見をいただいて、できるだけ抱いていけるような方向で指示を進めてきているというふうな態度をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/135
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136・山本政弘
○山本(政)委員 いまのお話と関連いたしますけれども、三月の十一日に、厚生大臣がお会いになったと思いますが、平和七人委員会で、昭和三十二年の原爆被爆者医療法に生活保障も加えた完全な法律化を早急につくっていただきたいという要請がございましたね。そのときに大臣は、法律制定に真剣に取り組みたい。ただ、それと一緒に、法律制定のための審議会を次の国会でつくっていただきたい、こういう要望もあったと思うのです。このことについて、大臣は法律制定に早急に取り組む意思がおありなのかどうか、それが一点です。
もう一点は、厚生省で被害者の実態調査を行なっておるので、その結果を待ちたい、こうお答えになっております。ここにはもう厚生省の原爆被爆者の実態調査というのが出ておりますね。(「中間報告だろう」と呼ぶ者あり)そのことについて、中間報告かどうかは別といたしまして、大臣のこの二点に対するお考えをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/136
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137・坊秀男
○坊国務大臣 ただいま中間報告という声がございましたけれども、厚生省といたしましては、原爆被爆者の実態を調査すべく鋭意急いでおるわけでございます。それでこの調査は、基本調査、生活調査、健康調査、三部面からこの調査をしておるのでございますが、ただいま御指摘のものは、基本調査の中の中間調査の報告でございます。さような意味におきまして、私は、この三部面からの調査というものをいま鋭意急いでおりますが、この調査の結果が出るのが大体ことしの秋だ、こういうことでございます。何にいたしましても、その実態をしっかりと把握いたしまして、これを踏んまえた上に制度というものを検討したい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/137
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138・山本政弘
○山本(政)委員 この原爆の被害者の実態調査についての質問は、この次にさしていただきたいと思うのですけれども、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案に入る前にちょっとお伺いをいたしたいことがあります。それは、昭和三十八年に戦没者の妻に対する法律ができて二十万円、昭和四十年に戦没者の遺族で三万円、昭和四十一年に戦傷病者等の妻で十万円、昭和四十二年にここにあります戦没者の父母等についての十万円、これだけは法案として次々と、三十八年、四十年、四十一年、四十二年と出てきたわけです。私はこのことについても、率直に申し上げますと問題があると思うのですけれども、この質、問に入る前に、戦傷病者の父母等については、これは未実施でございます。実施しておらない。これはおやりになるつもりですか。ならないつもりですか。それだけ一つお伺いをいたしまして、時間だそうですから、私の質問を保留させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/138
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139・坊秀男
○坊国務大臣 ただいまのところは、これに何らかの措置をするというような考えは持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/139
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140・山本政弘
○山本(政)委員 ただいまのところという意味は、どういう意味でありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/140
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141・坊秀男
○坊国務大臣 現在持っておらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/141
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142・山本政弘
○山本(政)委員 私が心配することは、戦没者の妻、戦没者の遺族、戦傷病者の妻、それから戦没者の父母、残されておるのはもう戦傷病者の父母だけなんです。金額は別として、法案として出されていないのはこれだけなんです。これこそ私は、ひとつ社会保障の抜本的な対策の上に立って、いろいろな恩給、年金も考えていただきたい。したがって、この次の国会とかなんとかというようなことで、安易に戦傷病者の父母ということについてされてもらっては、これはやはり問題があるような気が、実は率直に申し上げていたします。その点について、ひとつぜひ慎重にお考えになっていただきたいということをお願いしまして、この次にひとつ戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案についての質問をさしていただきたいと思います。
きょうはこれでやめさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/142
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143・川野芳滿
○川野委員長 次会は、明午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105504410X01419670531/143
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