1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年四月十九日(水曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 本名 武君
理事 仮谷 忠男君 理事 高見 三郎君
理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君
理事 玉置 一徳君
安倍晋太郎君 小沢佐重喜君
小澤 太郎君 大野 市郎君
熊谷 義雄君 小坂善太郎君
坂田 英一君 坂村 吉正君
藤田 義光君 湊 徹郎君
粟山 秀君 伊賀 定盛君
石田 宥全君 佐々栄三郎君
實川 清之君 柴田 健治君
美濃 政市君 斎藤 実君
出席政府委員
農林政務次官 草野一郎平君
農林大臣官房長 檜垣徳太郎君
水産庁長官 久宗 高君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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四月四日
委員石田宥全君辞任につき、その補欠として石
橋政嗣君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として石
田宥全君が議長の指名で委員に選任された。
同月六日
委員鈴切康雄君辞任につき、その補欠として斎
藤実君が議長の指名で委員に選任された。
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四月三日
日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内
閣提出第五四号)
同月四日
漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第六八号)
同月十八日
漁業協同組合合併助成法案(内閣提出第二九
号)
中小漁業振興特別措置法案(内閣提出第六九
号)
三月三十日
農業協同組合農事放送施設の助成に関する請願
(平林剛君紹介)(第二三三号)
同外十七件(河野洋平君紹介)(第二三八号)
同外九件(門司亮君紹介)(第三一五号)
同外三件(田川誠一君紹介)(第三五八号)
消費者米価値上げ反対に関する請願外十六件(
下平正一君紹介)(第二九九号)
同(中澤茂一君紹介)(第三〇〇号)
同外十一件(平等文成君紹介)(第三〇一号)
同外九件(林百郎君紹介)(第三一四号)
同外六件(原茂君紹介)(第三二九号)
消費者米価据置きに関する請願(原茂君紹介)
(第三八五号)
同(中澤茂一君紹介)(第四一〇号)
同(林百郎君紹介)(第四一一号)
同(平等文成君紹介)(第四一二号)
四月七日
愛知用水公団職員の身分安定に関する請願(加
藤清二君紹介)(第六〇一号)
同月十四日
山村振興事業の市町村負担軽減に関する請願(
山中貞則君紹介)(第八七六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
農業共済基金法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二八号)
日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内
閣提出第五四号)
漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第六八号)
漁業協同組合合併助成法案(内閣提出第二九
号)
中小漁業振興特別措置法案(内閣提出第六九
号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/0
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001・本名武
○本名委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の農業共済基金法の一部を改正する法律案、日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案、漁業災害補償法の一部を改正する法律案、漁業協同組合合併助成法案及び中小漁業振興特別措置法案の各案を一括議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。草野農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/1
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002・草野一郎平
○草野政府委員 まず、農業共済基金法の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明申し上げます。
農業共済基金は、農業共済組合連合会を会員として昭和二十七年に設立されて以来、同連合会が保険金の支払い資金に不足する場合にこれに対する融資を行なって、農業災害補償制度の円滑な運営に資してまいったのでありますが、昭和三十八年に行なわれた農業災害補償制度の改正に関連して、農業共済組合連合会への貸し付け金の一部を無利息長期の融資に切りかえる、いわゆるたな上げ措置を講じたことに伴い、その収支状況に余裕がなくなっております。したがって、今後農業共済組合連合会の所要資金量が増大した場合、適切な融資措置を講ずることが困難な状態にあります。
とのような現状にかんがみ、昭和四十二年度において政府及び会員がそれぞれ三億円を追加出資して農業共済基金の融資能力を拡充することとし、所要の予算措置を講ずるとともに、この法律案を提案した次第であります。
すなわち、現行農業共済基金法では、農業共済基金の資本金は三十億円とし、増資に関する規定を設けておりませんので、必要に応じて増資することができるものとするとともに、その場合に政府及び会員が追加して出資することができるものとする等所要の規定の整備を行なおうとするものであります。
以上がこの法律案の提案の理由でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
引き続いて、日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
蚕糸業につきましては、生糸の国内需要が最近急激な増大を見せており、一方、生糸の輸出は当面減少してきてはいるものの海外における需要は将来一そう増加する可能性を持っており、蚕糸業は、これら内外の需要の増大に即応して今後とも安定的に発展することが期待される農業部門であるということができます。
最近における生糸の輸出の減退は、内需の急激な増大、価格の不安定等の原因に基づくものと考えられ、したがって、これに対処するには、基本的には繭生産の増強をはかり供給を確保することが必要でありますが、これによって需給の拡大均衡が実現するまでの間、生糸の輸出市場を喪失することのないよう海外市場の確保について特別な措置を講じ必要な規模の輸出を維持することはきわめて緊要なことであります。
この法律案は、以上のような状況に対処し、当分の間、日本蚕糸事業団に、生糸の輸出を確保するための生糸の買い入れ、売り渡し等の業務を行なわせるため、日本蚕糸事業団法の一部を改正しようとするものであります。これによりまして、日本蚕糸事業団が、製糸業者等から生糸を買い入れ、輸出業者等に一定の期間、一定の価格で売り渡す業務を行なうことを予定しているのでありまして、今回の措置によって輸出される生糸について安定した価格が保証されることは、生糸の海外市場を確保する上にきわめて有効なものと考えるのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及びおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
続いて、漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
漁業災害補償制度は、昭和三十九年十月に発足いたしまして以来、中小漁業者が漁業災害によって受ける損失を補てんすることにより、中小漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に寄与してまいりました。しかしながら、本制度につきましては、なお改善すべき事項が残されておりまして、このため中小漁業者の幅広い加入を得られず、この制度が十分に利用されなかったという状況にあります。
政府といたしましては、このような事情にかんがみ、異常な漁業災害に対処して政府の保険事業を実施するとともに、中小漁業者の加入の円滑化をはかる等、現行制度の健全かつ円滑な運営を確保することを旨として、鋭意検討を進めてまいりました結果、ここに本改正法案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、政府の漁業共済保険事業の新設であります。
政府の行なう保険事業は、漁業共済組合連合会が漁獲共済及び養殖共済についてその会員に対して負う再共済責任を保険する事業としておりまして、漁業者が共済組合との間で共済契約を締結いたしますと、漁業種別等に応じた保険区分ごとに、その共済契約にかかる再共済責任を一体として、政府と連合会との間に保険契約が成立するものといたしております。政府の保険の方式といたしましては、いわゆる超過損害額方式によることとし、その保険金は、保険区分ごとに、連合会が支払うべき再共済金の合計額が一定額をこえる場合に、そのこえる金額を支払うことといたしております。これらのほか、保険金支払いの免責、審査の申し立て、審査会の設置等所要の規定を設けることといたしております。
第二は、漁獲共済及び養殖共済についての改正であります。
漁獲共済のうち、採貝、採そう業等の被共済資格者は、一定の水域内でこれらの漁業を営む中小漁業者の全員を構成員とする団体となっておりますが、二以上の漁業協同組合の組合員が入り会い操業する水域で一つの団体を構成するには困難な場合が見られますので、このようなときは当該中小漁業者のうち所定の区域内に住所を有する者ごとに団体を構成し得る道を開き、加入の円滑化に資することといたしております。このほか、十トン未満の漁船漁業についての加入要件を緩和する等の改正を行なうことといたしております。
次に、養殖共済でありますが、現行の加入方式では、漁業者の個別加入となっておりますのを、漁場管理の実態に即して、その漁場が団体的に管理されている養殖業のうち特定のものについては、団体を構成して加入する方式に改めることといたしました。また、養殖共済の共済金は、現行制度では、同一の原因による共済事故ごとに支払うこととなっておりますが、共済事故の発生の態様等に照らして、特定の養殖業については、共済責任期間における損害額を通算して一定額をこえる場合に、そのこえる金額について支払いを行なうことといたしております。
第三に、連合会の漁業再共済事業についての改正であります。
連合会と組合との間の責任負担関係は、現行制度では、共済契約にかかる共済金額の全額につき両者が一定割合で分担することになっておりますが、漁獲共済及び養殖共済については、共済契約ごとに、共済金額のうち一定金額までは両者が一定割合により分担し、これをこえる部分は連合会が負担する方式に改めまして、漁業共済団体の事業経営の健全化を期することといたしております。
第四に、政府の保険事業の経理につきましては、現行の漁船再保険特別会計に新たに漁業共済保険勘定を設けて行なうこととし、これに伴い同会計の名称を漁船再保険及漁業共済保険特別会計に改める等、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
なお、政府の保険事業の実施をはじめ漁獲共済及び養殖共済に関する改正規定は、漁獲共済についてはその共済責任期間の開始日が昭和四十三年一月一日以後の日である共済契約につき適用し、養殖共済については同年四月一日以後の日である共済契約につき適用することといたしております。
以上が本法案の提案理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
次に、漁業協同組合合併助成法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
昭和二十四年二月、水産業協同組合法が施行されましてから全国的に漁業協同組合の設立を見、以来、漁業協同組合は、沿岸漁民の唯一の協同組織としてその経済的、社会的地位の向上と漁業生産力の発展をはかる上で重要な役割を果たしてまいりました。
しかしながら、漁業協同組合は地先漁業権と密接に結びついていたという歴史的事情もありまして、その地区は、農業協同組合、森林組合と比較してきわめて狭く、旧市町村以下の区域をその地区としているものが大部分でございます。このため、漁業協同組合としての活動が必ずしも十分とはいえない状況におかれている組合も少なくないのであります。
従来、政府におきましては、昭和三十五年に制定されました漁業協同組合整備促進法に基づき不振組合の整備につとめてまいりましたが、同法はおおむね所期の目的を達したと思われますので、同法に基づく整備計画の樹立の期限が昭和四十二年三月三十一日に終了することを契機に、最近の経済情勢に対応できるような漁業協同組合を広範に育成する見地から、漁業協同組合の合併を助成し、漁業に関する協同組織の一そうの強化をはかることといたした次第であります。
このため、漁業協同組合の合併についての援助、合併後の組合の事業経営の基礎を確立するのに必要な助成等の措置を講じ、新たな時代の要請に即応する漁業に関する協同組織の健全な発展に資するため本法案を提出した次第であります。
次に、本法案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、本法案による助成等の対象は、沿海の漁業協同組合の合併といたしており、その手続は、関係組合が、共同して、合併及び合併後の組合の事業経営に関する計画を立て、昭和四十五年十二月三十一日までにこれを都道府県知事に提出し、その適否の認定を求めることといたしております。
第二に、政府は、その計画が適当である旨の認定を受けた漁業協同組合が昭和四十六年三月三十一日までに合併いたしました場合には、予算の範囲内において、適正な事業経営のため必要な施設の整備に要する経費等につき助成することといたしております。
第三に、漁業権を有している漁業協同組合の合併を円滑ならしめるため、合併後の組合の漁業権行使規則の変更等につき特例を設けることといたしております。
以上が本法案の提案理由及びその主要な内容であります。
なお、本法案と関連して、租税特別措置法の改正によりまして漁業協同組合の合併の場合の清算所得等につきまして税制上の優遇措置を講ずることを予定しております。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
最後に、中小漁業振興特別措置法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
わが国の漁業は、その漁獲金額において世界最高であり、動物たん白食糧の重要な供給源として、国民経済上きわめて重要な役割りを果たしておりますが、その生産の態様は、大規模漁業から零細な沿岸漁業まで多種多様となっております。その中にあって中小漁業は、総漁獲金額のおおむね半ばを占め、わが国漁業において主要な地位にありますが、最近、漁業経費の増大、国際的な漁業規制の強化等に対処してその近代化と合理化をはかることが緊要となっている業種が見られるのであります。
このため、これらの業種にかかる中小漁業について、沿岸漁業等振興法に規定する中小漁業に関する国の基本的施策の方向に沿って、生産性の向上その他経営の近代化を促進してその振興をはかる施策を計画的に推進するための措置を講じ、わが国漁業の健全な発展に寄与することとし、本法案を提出した次第であります。
次に、本法案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、本法案による措置の対象となる中小漁業者及び業種の範囲であります。中小漁業者は、漁業を営む個人または会社で一定の要件に該当するもののほか、漁業を営む漁業協同組合及び漁業生産組合といたしております。また業種は、漁業生産活動の相当部分が中小漁業者によって行なわれている業種であって、漁獲量の変動、漁業経費の増大等により当該中小漁業者の相当部分の経営が不安定となっており、または不安定となるおそれがあるため、その振興をはかることが特に必要と認められるものとして政令で定めるものといたしております。
第二は、農林大臣は、対象業種ごとに、その業種の振興に関する施策を計画的に推進するため、経営の近代化の目標及び目標達成のため改善すべき基本的事項を内容とした中小漁業振興計画を定めなければならないことといたしております。
第三は、農林漁業金融公庫は、対象業種にかかる漁業を営む中小漁業者に対し、農林漁業金融公庫法で定めるところにより、その者が中小漁業振興計画において定められた経営の近代化の目標に達することとなるように漁船の建造等を行なうのに必要な資金の貸し付けを行なうものといたしております。また、これに伴い、附則で農林漁業金融公庫法を改正し、同公庫がこの資金を貸し付ける場合の貸し付け利率を一般の場合よりも低く定めることといたしております。
第四は、農林大臣は、対象業種にかかる漁業を営む中小漁業者が合併、現物出資等を行なう場合において、その合併、現物出資等により当該中小漁業者の営む漁業の生産性が著しく向上し、中小漁業振興計画において定められた経営の近代化の目標に達することとなる旨の認定をすることができることといたし、当該認定を受けた中小漁業者に対しては、租税特別措置法で定めるところにより、法人税または登録免許税を軽減することといたしております。また、対象業種にかかる漁業を営む中小漁業者の有する固定資産について、同法で定めるところにより、特別償却をすることができることといたしております。
以上が本法案の提出理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/2
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003・本名武
○本名委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
次に、農業共済基金法の一部を改正する法律案、漁業災害補償法の一部を改正する法律案、漁業協同組合合併助成法案及び中小漁業振興特別措置法案について補足説明を聴取いたします。檜垣官房長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/3
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004・檜垣徳太郎
○檜垣政府委員 農業共済基金法の一部を改正する法律案の概要及びその趣旨につきまして補足的に御説明申し上げます。
農業共済基金は、昭和二十七年に農業共済基金法に基づき、農業共済組合連合会を会員として設立されたものであり、会員が保険金の支払いに関して必要とする資金の円滑な供給をその任務といたしております。
一方、昭和三十八年に行なわれた農作物共済についての制度改正により、農業共済組合連合会の責任保有の割合が減少し、これに伴い、手持ち保険料も大幅に減少することになりました。したがって、それまでに生じた連合会の不足金を保険料収入により解消をはかることはより困難となったのであります。このため、農業共済基金は、昭和三十八年度末における連合会に対する貸し付け金の一部についていわゆるたな上げ措置すなわち無利息の長期貸し付けに切りかえる措置を講じたのであります。
このたな上げ措置に伴って、農業共済基金の収入利息が大幅に減少し、このままでは、その収支状況は今後相当窮屈になるものと考えられるとともに、最近における共済金額の上昇等により農業共済基金の融資所要額が増大することも予想されますので、農業共済基金がその任務を円滑に遂行するためには、その資本金の増加が必要と考えられるのであります。そこで、昭和四十二年度に政府及び会員がそれぞれ三億円、合計六億円の出資をすることとし、それに必要な予算措置を講ずるとともに、この法律案を提案した次第であります。
次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。
第一に、農業共済基金の資本金の増加について規定したことであります。すなわち、現行法では農業共済基金の資本金は三十億円と定められているのでありますが、必要があるときは、農林大臣の認可を受けてこれを増加することができるものとしたのであります。
第二に、政府及び会員の追加出資について規定しました。すなわち、現在政府及び会員の出資額はそれぞれ十五億円と定められているのでありますが、今回新たに、農業共済基金が増資するときは、それぞれ追加出資をすることができる旨の規定を設けたのであります。
第三には、追加出資の道を開くことに伴い、農業共済基金に対する会員の持ち分の譲渡禁止を緩和する等所要の規定の整備を行なったことであります。
以上で、この法律案の趣旨と概要の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/4
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005・本名武
○本名委員長 久宗水産庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/5
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006・久宗高
○久宗政府委員 漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。
昭和三十九年に漁業災害補償法が制定されまして以来、政府は、同法に基づき、漁業共済団体の行なう漁業共済事業及び漁業再共済事業の適正円滑な運営をはかりますとともに、この制度をさらに充実したものにすることを目途に、資料の蓄積とその分析につとめ、学識経験者の意見も聞いて各般の検討を加えてまいったのでありまして、その結果、ここに政府の保険事業の新設と漁業共済への加入の円滑化のための規定の整備を主たる内容とする改正法案を提出いたした次第でございます。なお、このような立法措置とあわせて、本制度の健全かつ円滑な運営を確保するための措置といたしまして、共済限度額率の引き上げ等による給付内容の充実、国庫補助の強化等をはかることとし、所要の予算措置を講ずることといたしております。
以下、本法案の骨子について、その概略を御説明申し上げます。
第一に、政府の漁業共済保険事業についてでありますが、保険の基本的な仕組みといたしましては、漁業災害の特殊性にかんがみまして、全国段階において保険設計を行ない、政府と漁業共済組合連合会との間に保険契約を成立させることといたしました。この保険契約は、連合会とその会員との間に漁獲共済または養殖共済にかかる再共済契約が成立いたしますと、当然に、漁業の種別または養殖業の種類に応じた保険区分ごとに、その共済責任期間の開始日が同一の会計年度に属する共済契約についての再共済責任を一体として成立するものといたしております。政府の保険金につきましては、連合会が支払うべき再共済金の合計額が一定額をこえる場合に、そのこえる金額を支払う方式をとっておりますが、この場合の一定額は、保険区分ごとに、再共済金額の合計額のうち、連合会の再共済責任にかかる危険の態様を勘案して算定される金額といたしております。また、保険料の金額は、保険区分ごとに、純再共済掛け金の合計額のうち、政府の保険責任にかかる危険に対応するものとして算定される部分の金額といたしております。
なお、政府は、連合会が法令もしくは連合会の共済規程に違反し、または損害額を不当に認定して再共済金を支払ったとき等の場合には、保険金の支払いを免責される旨の規定を設けております。一方、連合会は、この保険事業に関する政府の処分につき不服があるときは、農林大臣に対し審査を申し立てることができることといたしておりまして、審査の申し立てがありますと、農林大臣は、農林省に付属機関として設置される漁業共済保険審査会の審査を経て裁決することといたしております。
以上のほか、政府の保険事業の実施につきまして、所要の規定を設けておりますが、保険事業の業務の執行に要する経費は、一般会計から漁船再保険及漁業共済保険特別会計に繰り入れて国庫で.負担することといたしております。
第二に、漁獲共済及び養殖共済についての改正でありますが、魚獲共済につきましては、加入の円滑化をはかることを主眼として次のような改正を行なうことといたしております。
まず、魚獲共済について申し上げますと、その対象とする漁業のうち採貝、採そう業等につきましては、都道府県知事が定める一定の水域単位にこれらの漁業を営む中小漁業者の全員で一つの団体を構成して加入する方式をとっておりますが、二以上の漁業協同組合の組合員が入り会い操業する水域での加入を円滑に進めるため、政令で定めるところにより都道府県知事が当該中小漁業者の住所地のすべてが含まれる地域を分けて二以上の区域を定めたときは、その区域ごとに団体を構成し得ることといたしました。この区域は、当該中小漁業者の全員の住所及び漁獲物の販売に関する事情を考慮して、それぞれの漁業協同組合の地区ごとに定めることとする予定であります。
さらに、十トン未満の漁船漁業につきましては、一定の区域内に住所を有する被共済資格者の二分の一以上から加入の申し込みがなければ、共済契約を締結できないこととなっておりますが、この要件が成り立ちやすくするため、被共済資格者のうち当該漁業を営む日数が一年を通じて九十日以下である者は除くことといたしております。
これらのほか、漁獲共済の適正円滑な運営をはかるため、国庫補助を強化することとあわせて採貝、採そう業等につき共済金額の最低限度を設けるとともに、漁獲共済の対象とする漁業についての規定等の整備を行なうことといたしております。
次に、養殖共済について申し上げますと、漁業者が個別に加入する現行の方式を改正して、漁場管理が団体的に行なわれている漁業法第七条の特定区画漁業権に基づく養殖業のうち政令で定めるものにつきましては、都道府県知事が定める一定の水域内においてその養殖業を営む中小漁業者の全員で団体を構成して加入することといたしております。また、共済金の支払いについて養殖業のうち特定のものにつきましては、共済責任期間中の損害額の通算による超過支払い方式をとることといたしておりますが、これを適用する養殖業は、その経営事情及び共済事故の発生の態様に照らして特例を定める必要があるものとして政令で定める種類の養殖業といたしております。
第三に、連合会の再共済事業の改正について申し上げます。
現行制度では、漁業共済組合と連合会との間の再共済契約は、共済契約にかかる支払い責任を連合会と組合とが一定の割合で分担する比例契約となっておりますが、漁業共済団体の事業経営の健全化を期する観点から、漁獲共済及び養殖共済については、共済契約ごとに、支払い共済金が一定額以下であるものについては組合の責任を重くし、損害査定等についての組合の努力を促し、支払い共済金がこの一定額をこえる深い事故については連合会の責任を重くする比例超過契約に改めることといたしております。
第四に、以上申し上げた改正に伴う規定の整備といたしまして、漁業共済保険事業の経理を行なうため、漁船再保険特別会計に独立の勘定として漁業共済保険勘定を新設して、その歳入歳出科目を明らかにし、これに伴い同会計の名称を漁船再保険及漁業共済保険特別会計に改める等漁船再保険特別会計法の一部改正を行なうことといたしております。なお、当然のことでありますが、漁船再保険事業と漁業共済保険事業とは、保険の対象や仕組みを異にいたしますので、それぞれ明確に区分経理することといたしております。
以上のほか、漁業共済基金の監事の権限を強化し、役員の欠格条項を改正する等、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
最後に、本法案の施行期日及び適用区分につきましては、今回の改正が制度の全般にわたりますため、相当の準備期間を置くことが必要でありますので、本法案は、昭和四十二年十一月一日から施行することといたし、政府の保険事業の新設その他漁獲共済及び養殖共済に関する改正規定は、漁獲共済では昭和四十三年一月一日から、養殖共済では同年四月一日から共済責任期間が始まる共済契約について適用することといたしております。ただし、漁船再保険特別会計法の改正関係規定は、公布の日から施行し、昭和四十二年度の予算から適用することといたしております。
以上をもちまして本法案についての補足説明を終わります。
次に、続きまして、漁業協同組合合併助成法案の提案理由につきまして、補足的に御説明申し上げます。
本法案は、提案理由で御説明申し上げましたとおり漁業協同組合の合併の促進をはかることを目的としておりまして、法案の内容といたしましては、第一には合併及び合併後の組合の事業経営計画の樹立に関する事項、第二には都道府県知事による計画の適否の認定、第三には認定にかかる合併についての政府の助成措置、第四には認定にかかる合併後の組合の漁業権行使規則の変更等についての特例につき規定いたしております。
以下その細目につき若干補足させていただきます。
まず第一に、合併及び合併後の組合の事業経営計画についてでありますが、これは第二条及び第三条に規定しております。合併及び合併後の組合の事業経営についての方針は、合併参加組合の組合員にとって最も関心が高く、かつ、あらかじめこれを策定しておくことは合併を自主的、計画的に進めるためにきわめて重要なことであることにかんがみて、合併参加組合は、これらに関する基本方針を定め、総会の特別議決を経ることといたしております。
第二に、都道府県知事による合併及び事業経営計画の適否の認定でありますが、これは第四条に規定いたしております。都道府県知事は、その組合の経営的基礎が適正な事業経営を行なうのに十分なものであり、かつ、その事業経営計画が経営条件からみて適当でしかも達成可能である場合に限り、合併及び事業経営計画が適当である旨の認定をすることといたしております。なお、都道府県知事が合併及び事業経営計画につき適否の認定を行なうにあたっては、学識経験を有する者の意見を聞くことといたしております。
第三に、政府の助成措置でありますが、これは第五条に規定しておりまして、都道府県に対し補助金を交付することができることといたしております。補助金といたしましては、合併後の組合が合併による規模拡大に伴い施設の統合整備が必要となることが考えられますので、都道府県知事の認定を受けた合併及び事業経営計画に従い、合併後の組合が施設の改良等を行なう場合にこれに要する経費につき助成することができることといたしておりますほか、合併参加組合が自主的に行なう合併及び事業経営計画の樹立、実施につき都道府県が指導を行なう場合に、この指導に要する経費を補助することができることといたしております。なお、昭和四十二年度予算におきましては、合併助成のための経費として二千七百五十五万六千円を計上しております。
第四は、漁業権行使規則についての特例でありまして、第六条に規定しております。これは漁業協同組合が、販売事業等の経済事業の主体であるとともに漁業権の管理主体としての性格をも有しておりますため、経済事業の面からみれば明らかに合併した方がよいと思われる場合でも漁業権管理の面で話し合いがつかず合併に踏み切れない場合も見られますので、このような事情のもとにある組合の合併を促進させるため、部落総有的な漁業権につきましては、従来漁業を営んでいた漁業者が合併により不利な扱いを受けることがないように配慮したものであります。
なお、本法案と関連して別途提案されております租税特別措置法の一部を改正する法律案におきまして、都道府県知事の認定を受けた合併及び事業経営計画に従い昭和四十六年三月三十一日までに合併した組合の清算所得等につきまして課税の特例を設けることにいたしております。
その内容は、合併後の漁業協同組合が被合併組合から引き継いだ欠損金につきまして法人税の課税標準たる所得の金額の計算上損金算入を認めるとともに、合併の場合における清算所得に対する法人税及び不動産または漁船の権利取得にかかる登記に対する登録税につきましてもそれぞれ課税の特例措置を講じ、また、合併によるみなし配当に対する所得税の源泉徴収はしないこととすることにより、従来から合併推進の障害となってきた問題につきまして税制面での優遇措置を講ずるものであります。これに伴いまして、事業税につきましても、合併による清算所得及び被合併組合から引き継いだ欠損金につき法人税におけると同様な優遇措置が講じられることになります。
以上をもちまして、漁業協同組合合併助成法案の提案理由の補足説明を終わります。
最後に、中小漁業振興特別措置法案につきまして、さらに補足的に御説明させていただきます。
この法案は、提案理由で御説明申し上げましたとおり、振興をはかることが特に必要と認められる業種に属する中小漁業につき、その振興に関する施策を計画的に推進するための措置を講じて漁業の健全な発展に寄与することを目的としておりまして、中小漁業の振興に関する国の講ずべき措置について規定いたしております沿岸漁業等振興法に即応して提案いたしました。
この法案の内容といたしましては、第一には、この法案による措置の対象となる中小漁業者及び業種の範囲、第二には農林大臣による中小漁業振興計画の策定及び公表等に関する事項、第三にはこの計画に即した漁船の建造等に要する資金の農林漁業金融公庫からの貸し付けに関する事項、第四にはこの計画に即するように行なわれる合併、現物出資等の場合における課税の特例等に関する事項につき規定いたしております。
以下、その細目につき若干補足させていただきます。
第一に、この法案による措置の対象となる中小漁業者及び業種の範囲についてでありますが、これは第二条に規定いたしております。
中小漁業者の範囲は、漁業を営む個人または会社であって、その常時使用する漁船の合計総トン数が二千トンをこえない範囲内において政令で定めるトン数以下であるもの、漁業を営む漁業協同組合及び漁業生産組合といたしております。また業種は、指定業種として政令で指定することといたしておりますが、指定業種の指定は、漁業生産活動の相当部分が中小漁業者によって行なわれている業種であって、漁獲量の変動、漁業経費の増大等により中小漁業者の相当部分の経営が不安定となっており、または近い将来不安定となるおそれがあるため、振興をはかることが特に必要であると認められるものに限り、行なうものといたしております。なお、指定業種といたしましては、昭和四十二年度においては、カツオ・マグロ漁業及び以西底びき網漁業の二業種を指定することを予定いたしております。
第二に、農林大臣による中小漁業振興計画の策定及び公表等についてでありますが、これは第三条及び第四条に規定いたしております。中小漁業の振興に関する施策を計画的に推進するためには、中小漁業の経営の近代化の目標を示すとともに、目標達成のための改善すべき基本的事項を明らかにしておくことがきわめて重要なことであることにかんがみまして、農林大臣は、指定業種ごとに、これらの事項を内容とした中小漁業振興計画を定めなければならないことといたしております。この計画の期間は、五年間といたしたい考えであります。
また、農林大臣は、中小漁業振興計画を定めたときまたはこれを変更したときは、その要旨を公表するとともに、その計画の達成のために必要な助言、指導及び資金の融通のあっせんを行なうものといたしております。
第三に、中小漁業振興計画に即するように行なう漁船の建造等に要する資金の農林漁業金融公庫からの貸し付けに関する事項でありますが、これは第五条に規定いたしております。農林漁業金融公庫は、中小漁業振興計画において定められた経営の近代化の目標に達することとなるように漁船の改造、建造等を行なう中小漁業者に対しまして、それに要する資金の借り入れの申請に基づき、農林漁業金融公庫法で定めるところによりまして、当該資金を貸し付けるものといたしております。また、これに伴い、附則で農林漁業金融公庫法を改正し、このような場合における漁船資金の貸し付け利率を一般の漁船資金の貸し付けの場合よりも低利の六分五厘と定めることといたしております。なお、昭和四十二年度においては、この資金の貸し付けワクとして三十億円を計上いたしております。
第四に、中小漁業振興計画に即するように行なう合併、現物出資等の場合における課税の特例等に関する事項でありますが、これは第六条及び第七条に規定いたしております。
これは、中小漁業者が中小漁業振興計画に定める経営の近代化の目標に達するために合併、現物出資等を行なう場合があり、その合併、現物出資等を円滑に行なわせるために課税の特例の措置を講ずることを定めたものであります。この場合、農林大臣は、中小漁業者に対して、その者が合併、現物出資等を行なうことにより、その漁業の生産性が著しく向上し、かつ、計画に定める経営の近代化の目標に達することとなると認められる旨の認定を行なうとともに、現物出資についてこの認定をする場合には、当該出資にかかる資産が当該出資を受ける法人等の営む指定業種の漁業に必要なものである旨の認定をあわせてすることができることといたし、これら認定を受けた中小漁業者等については、租税特別措置法で定めるところによりまして、法人税または登録免許税を軽減することといたしたものであります。また、指定業種の漁業を営む中小漁業者は、租税特別措置法で定めるところによりまして、その有する固定資産について特別償却をすることができることといたしております。
なお、以上の課税の特例の措置は、この法案と関連して別途提出されております租税特別措置法の一部を改正する法律案におきまして規定されております。
その内容は、農林大臣の認定を受けて法人が合併した場合の清算所得にかかる課税について繰り延べを認めるとともに、農林大臣の認定を受けて現物出資した場合にも当該法人の特別経理を条件に課税の繰り延べを認めること、またこれら合併及び現物出資の際の会社の設立、増資または不動産、漁船の取得の登記等に関する登録免許税を軽減すること及び指定業種の漁業を主として営む中小漁業者の漁船の償却にあたっては通常の償却額の三分の一の割り増し償却を認めることとなっております。
以上をもちまして、中小漁業振興特別振興法案の提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/6
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007・本名武
○本名委員長 以上で補足説明は終わりました。
なお、質疑は後日に譲ることといたします。
次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X00419670419/7
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