1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月六日(火曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 本名 武君
理事 仮谷 忠男君 理事 高見 三郎君
理事 長谷川四郎君 理事 森田重次郎君
理事 石田 宥全君 理事 東海林 稔君
理事 玉置 一徳君
安倍晋太郎君 小澤 太郎君
大野 市郎君 鹿野 彦吉君
熊谷 義雄君 小坂善太郎君
小山 長規君 坂田 英一君
坂村 吉正君 田中 正巳君
丹羽 兵助君 野呂 恭一君
藤田 義光君 湊 徹郎君
粟山 秀君 伊賀 定盛君
栗林 三郎君 兒玉 末男君
佐々栄三郎君 實川 清之君
柴田 健治君 島口重次郎君
美濃 政市君 森 義視君
神田 大作君 中村 時雄君
斎藤 実君 中野 明君
出席国務大臣
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
出席政府委員
農林政務次官 草野一郎平君
水産庁長官 久宗 高君
委員外の出席者
水産庁漁政部長 池田 俊也君
水産庁漁政部企
画課長 下浦 静平君
水産庁生産部長 亀長 友義君
専 門 員 松任谷健太郎君
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六月三日
養豚振興に関する請願(池田正之輔君紹介)(
第一〇九一号)
新潟港の外国産小麦輸入港指定に関する請願(
小沢辰男君紹介)(第一一三四号)
ブリ資源保護に関する請願(仮谷忠男君紹介)
(第一一六四号)
森林開発公団の分収造林事業促進に関する請願
(吉田之久君紹介)(第一一六五号)
離島市町村の生活改良普及員増員に関する請願
(池田清志君紹介)(第一二〇一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
中小漁業振興特別措置法案(内閣提出第六九
号)
外国人漁業の規制に関する法律案(内閣提出第
九六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/0
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001・高見三郎
○高見委員長代理 これより会議を開きます。
本日は、委員長所用のため、委員長の指名により、委員長がお見えになりますまで私がその職務を行ないます。
中小漁業振興特別措置法案及び外国人漁業の規制に関する法律案の両案を一括議題といたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/1
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002・玉置一徳
○玉置委員 中小漁業の振興計画につきまして質問をしたいと思うのでありますが、先般の同僚議員の質問に対しまして水産庁長官から、「国際的な関係から緊急に措置すべきもの、またそのようなものが特に必要なものというように限定をいたしまして、」というお話があり、経営が不安定となっており、または不安定となるおそれがある中小漁業の業種、こういうようにお話がございましたが、これでは、不安定になってきたとかそのおそれがない限りは、この指定というものはふやしていかないのかどうか。これに関連しまして、非常に具体的な必要性ができ、「しかも、業界におきましても、それに対処するだけの十分な覚悟があり、具体的な案も熟しているという場合に、初めて行政のルートに乗る」、こういうようにお話があったわけであります。そこで、いま申しますように、国際競争上どうしてもその業界の近代化、立て直しをやらなければいかないという条件、あるいは非常に経営の不安定がきたという条件、それから業界が受け入れ体制の準備を整えておるという条件、この三つをきょうまでの質問に対して条件として御説明をされておるように思うのでありますが、そうすれば、この二つ以外に指定業種はこういう条件がない限り広めておいきにならぬかどうか、この際、もう一度あらためて明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/2
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003・久宗高
○久宗政府委員 先般の御説明の際に、国際関係のことを非常に強調し過ぎたかと思うのでありますが、必ずしもそれに限定されないのでございます。ただ、その漁業が非常に不安定な状況にございます場合に、緊急度から申しますと、いまの国際的な競争関係を頭に置かざるを得ませんので、またそれの体制がどの程度整っているかということが具体的に問題になりますので、そのように御説明したわけでございますが、必ずしもその国際関係——国際関係のないものはないわけでございますけれども、その度合いが非常に薄いけれども、経営が非常に不安定になっているという場合におきましては、必ずしもそれにとらわれないで指定する必要があろうかと思います。ただ、前にも申し上げましたように、補助を受けるという形になりますので、中小漁業におきましてはいままでいろいろな施策はいたしましたけれども、何と申しましても、あの業種のバイタリティと申しますか、自主的にこの漁業に取り組んでまいった業種でございますので、私どもといたしましては、たまたまこういう制度が開けて安直に補助を受けるといったようなことではなくして、本式にやはり業界でも相当の覚悟をきめられまして、積極的に振興対策に持っていきたいというものとの関連で指定していく必要があろうかというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/3
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004・玉置一徳
○玉置委員 沿振法の第三条によってこういうようになった、こういう説明でありますが、沿振法は沿岸漁業等振興法になっております。私は、中小漁業のわが国漁業界に占める地位の非常に重要なことはよくわかりますけれども、沿岸漁業等振興法——沿岸漁業というものはなお零細で、これの恩典にも浴せないわけでありますが、沿序漁業をどうするかという問題について、この法案と同時に、こういう施策で振興をはかりたいと思いますというのがないと、一つは変だと思うのです。
もう一つは、中小漁業振興特別措置法というものが、先ほどのように非常に限定されておやりになるのか、あるいはこういう法律の入れものだけつくっておいて、あとは省令で急速に次々と手を打っていってそれを広めていく意図があるのか、そうでなくて、先ほど言いましたような三つの前提条件がない限りはなかなかやらないのか、ここらを明らかにしていただくことによりまして、それは特定中小漁業振興法案という名前に直したほうがいいという言い方もできると思うのですが、第一点は、この法案と同時に、沿岸漁業振興に対してはどういう施策をとろうとしておるのか。第二番目には、この法律の箱をつくっておきますと、あとは省令でもってどんどん広めていく予定なのか。それはまたどういうものを予定されているか。具体的に御説明いただきたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/4
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005・久宗高
○久宗政府委員 いまの沿振法によりまして一連の施策をしているわけでございますが、その一環といたしましてこの中小漁業の特別法を考えているわけでございます。沿岸につきましては、この前、どなたか別の方にお答えした記憶があるわけでございますが、今度の特別法でやっておりますような形よりも、むしろ体制そのものの整備のほうが先ではないかという感じがいたしているわけでございます。ただ、沿岸振興法におきましては、そういう問題を非常に広範に御指摘がありまして、いわばその基本法の体系の中で、御承知のように、構造改善その他を進めておるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、そのような沿岸漁業の振興の中でうたわれております一連の問題の中で、現状で申しますと、組織でございます組合の体制にいたしましても、あるいは経営の最終的な補完をいたします共済制度にいたしましても、いろいろな経緯で中途はんぱになっておりますので、今回そのようなものの当面の懸案事項を全部網羅いたしまして、御提案申し上げまして御審議をいただいているような次第でございまして、一応現在の段階では、沿岸漁業につきまして、個別に個々の経営につきまして今回提案しておりますような中小漁業に対する対策のような形で進めるよりは、やはり構造改善のような全体制の問題として取り上げておったほうが適当ではないだろうかというふうに一応考えるわけでございます。さらにいろいろな事態が進行いたしまして、沿岸漁業におきましても、個別の経営につきましてこのような措置が必要になる段階もあり得るかと思うわけでありますが、一応現在のところは、沿岸のほうは組織なり施設なりの整備を総合的に行なっておりますあのようなやり方をもう少し固めていく段階ではないかというふうに思っておるわけでございます。
なお、中小漁業の関係の指定の問題でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、取り上げ方といたしましては、中小漁業全体を取り上げたいわけでございますけれども、業態の中身から見ますと、非常に個別に違いますし また個々の経営がやや企業になりかかっている形のものでございますので、取り上げ方としてはこのような形が適当であろう。そういうことになりますと、ただばく然と中小漁業一般の対策ということよりは、その中で業種別に取り上げまして、しかもそれに具体的な振興計画を立てまして措置をしていくような形が適当ではなかろうか。その際、先ほどもちょっと申し上げましたように、私どもといたしましては、現在の漁業の非常に困難な中で、実は中小漁業といわれる範疇の関係の方が、まさに素手で取り組んでおられるそのウエートが非常に高いし、またそのバイタリティと申しますか、さようなものは非常に高く評価すべきではなかろうかというように思うわけであります。したがって、かりにこのような業種の指定を受けて援助を受けるといたしましても、何と申しましても、自主的なその業界におきます気魄と申しますか、あるいは振興のめどといったものを中心に考えていくのが筋ではないかというふうに考えますので、ばく然と指定をふやしていくのではなくて、やはりもっとしぼって考えるべきだろう。もちろん、私どもといたしましては、法律に掲げております要件が整ってまいりますれば、当然指定しなければなりませんし、また指定したいのでございますけれども、むしろ、その過程におきまして、指定を受けるまでにも相当の研さんが業界においてもなされ、また役所においてもそういうことをいたしまして、せっかくこのような裏打ちをしていただきますとすれば、それを生かしていきたいという気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/5
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006・玉置一徳
○玉置委員 中小漁業振興計画の樹立につきましては、皆さんから御質問があったと思いますし、お答えがあったと思いますけれども、要するに、これは経営の近代化、経営の安定ということだと思うのでありますが、そこで、農林省がお考えになっておる複船化というものは必須条件かどうか、しかもそれはどのくらいに期待をされておるのか、どのくらいそれが実現するとお思いになっておるのか、御説明を承りたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/6
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007・久宗高
○久宗政府委員 経営規模を拡大してまいります場合に、いろいろ業種によって問題が違うと思うのでありますが、複船化についてお話しいたしましたのは、主としてカツオ・マグロ漁業におきましてそのような必要が具体的に出ておりますので、それを振興計画の中でも相当はっきり打ち出したらよかろうというふうに考えておるわけでございます。一応私どもの中では、何隻が適当かといった問題について相当議論がございます。特に補助との関連がございますので、財政当局との話し合いにおきましても、その隻数が実は相当問題になっておるわけでございますが、私どもといたしましては、率直に申しますと、隻数そのものにあまりこだわりたくない。いずれにいたしましても、カツオ・マグロの場合にはやはり複船経営がいいということは、業界自体の経験から申しましても非常にはっきりしておりますし、そのような中で業種を指定いたしまして、全体としての業種の振興をはかろうということになりますので、一応のめどはこの計画の中で組み立てていかなければならぬと思うわけでございますけれども、あまり何隻というふうに限定したくない気持ちがあるわけでございまして、この点まだ必ずしも熟しておりませんが、気持ちだけ申し上げますと、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/7
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008・玉置一徳
○玉置委員 その次に、二番の、左記事項の改善に関する基本的事項という中で、「賃金等の労働条件その他の労働関係及び労働環境に関する事項」をお書きになっておりますが、現在の漁業労働者の賃金と一般陸上の工場労働者の賃金との格差は一体どのようになっておるのか、あるいは労働環境はどうなっておるのか、そして今度はどういうことを具体的にここにお書きになろうと思っておいでになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/8
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009・久宗高
○久宗政府委員 いまの格差の問題につきましては、いろいろ白書にこまかい数字を出しておりますので、また担当者が来ておりますので、少し詳しくこの際御説明させていただきたいと存じます。
そこで、私どもの考えております振興計画の中にどの程度その問題を織り込むかという問題でございますが、いま私どもの考え方といたしましては、いわば二つございまして、経営の近代化の目標と申しておることを織り込みますし、それから沿振法を援用いたしまして、その中でいろいろすでに具体的に御指摘をいただいておるものをこちらに乗り移して、改善にかかる基本的事項というふうに二つに分けておるわけでございます。そこで、たとえば労務管理の合理化でございますとか、船員設備の改善でございますとか、賃金体系の合理化等の基本的な方向をこの中で明らかにしたいと思うわけでございます。ただ、御承知のとおり、今度の一斉更新とも関連いたしまして、たとえば漁船設備の基準というものにつきまして、御承知のように、一斉更新以後強制したいという考え方を持っておるわけでございます。もちろん、この場合には、今回カツオ・マグロなり以西底びきを一応私どもは指定を予定しておりますけれども、そのような指定された漁業だけではございませんで、指定漁業全般についてこれはやはり強制すべきものというふうに考えておるわけでございます。そういうことになりますと、それについて特別な融資がつくというような形は若干公平を害するおそれもございますので、さような意味におきまして目標の中に掲げろという御意見も実はあるわけでございますけれども、やはりこれは本来は基本的な事項といたしまして、業種別にそれぞれ中身が違いますので、振興計画の中でできるだけ詳しく盛り込みたい。ただ、最終的には、根本的に労使の関係の問題でもございますので、そのようなことで、ある振興計画の中に、定型的と申しますか、型をきめた形で盛り込み得ないものも相当あるのではないかと思うわけでございます。そこで、振興計画を吟味いたします際の論議の中で、そのようなものをできるだけ熟さしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、最終的にでき上がりました振興計画の中で、きわめて抽象的な触れ方ではないかというような御批判が、あらかじめどうも予想されるような気がするわけでございますけれども、私どもといたしましては、書いたものよりも、書きますまでの振興計画を練ります際に、相当突っ込んだ御議論をして、その成果を実質的に盛り込んでまいりたいというふうに考えるわけでございますが、なお、いまの格差問題につきましては、漁政部長からちょっと御説明させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/9
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010・池田俊也
○池田説明員 中小漁業の賃金の問題でございますが、四十年の数字をとって申し上げますと、全体の平均が一人当たり五十四万三千円という数字になります。この数字の内容といたしましては、経営階層によりましてかなり違いがございまして、たとえば、トン数の比較的少ない十トンから三十トンというような階層をとってみますと、三十一万六千円、それから、最高の五百トン以上という階層をとりますと七十九万五千円でございまして、非常に幅があるわけでございます。
それから、製造業と中小漁業の賃金がどういうような状況であるかという比較でございますが、労働省の毎勤統計の製造業の数字と比較をいたしてみますと、たとえば三十人以上の平均をとりますと、毎勤統計では四十年が五十三万二千円でございます。したがいまして、かりに三十人以上の数字で比較をいたしますと、中小漁業の平均の数字と三十人以上の毎勤の数字がほぼ近い——若干中小漁業が上でございますが、ほぼ近い状況でございます。ただ、これは四十年がそうなりましたわけでございますが、前年あたりの数字をとりますと、毎勤統計のほうの数字が若干上回っている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/10
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011・玉置一徳
○玉置委員 改善に関する基本的事項の内容は、大蔵省その他の審議のときにかなり具体的にあったはずでもありますし、われわれの審議をいたしますにつきましても、この点は相当詳しく具体的に御説明をいただかなければ、法案の審議が非常にしにくいのであります。そこで、もう一回、具体的なことばで、非常に短くてけっこうですから、「賃金等の労働条件その他の労働関係」、ことに賃金の問題でどういうように規定をされるおつもりかどうか、簡単に直截に御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/11
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012・久宗高
○久宗政府委員 賃金につきましては、もちろん額というような問題は問題にならないと思います。むしろ、この場合問題になりますのは、その賃金の支払いの体系そのものだと申し上げたらよろしいかと思うのでありますが、御承知のとおり、これが非常にいろいろ問題がございますので、また業種によっても違いますので、そういうようなものにつきまして、なるべく私どもといたしましては指導的な要素をこの中に入れたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/12
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013・玉置一徳
○玉置委員 それでは水産庁長官にお尋ねをいたしますが、大体この特定二つの業種につきまして、固定給制度をとっておるのは一体幾らほどありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/13
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014・池田俊也
○池田説明員 完全な固定給制度というのはごくまれで、ほとんどが歩合給に固定給を加味したというものがいわゆる固定給といわれておるものだと思いますが、ごく荒っぽい数字で申し上げますと、大体現在半分が完全な歩合給でございます。残りの半分のうち、さらに半分、大体四分の一くらいでございますが、これが歩合給に固定給を加味したもの、それから残りの四分の一が最低保障額をある程度保障いたしました歩合給、こういうような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/14
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015・玉置一徳
○玉置委員 私は、日本漁業の近代化という問題、ことに雇用の近代化という問題で御質問をしていくつもりでありますが、まず近代化された、安定した日本の漁業を生み出すためには、現在の労務状況から考えましても、労務確保という点から考えましても、固定給プラス歩合というのが理想であることは、水産庁長官もよく御存じのとおりであります。したがって、この四の事項にはそのことを明記されるかどうか。明記されるとすれば、その実効確保をどのようにしてやっていこうと期待されるか、その点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/15
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016・久宗高
○久宗政府委員 御承知のとおり、労働条件につきましては、だいぶ前に運輸省その他とも御相談いたしまして、指導要綱というものが出ておりまして、それによって実は指導をしておるわけでございますが、その中にも、賃金のあり方といたしまして、少なくとも全歩合というものの持っております若干の弊害かございますので、固定給プラス歩合なり、あるいは最低保障といったような問題を打ち出しまして、その指導に当たっておるわけでございますが、このことは、やはり基本的には賃金体系の問題でございますし、本質的には労使の間のお話し合いできめるべき性質のものであろうと思うわけでございます。したがって、賃金の支払い形態を固定的にある振興計画の中できめるというのは、私は、むしろ弊害があるのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、方向としてどういう方向にいくのが望ましいかという指導は、続けて強調いたしたいと思いますけれども、振興計画の中で賃金体系なりそのものについて固定的にきめるということは、これは業種によっても多少違う面がございますので、必ずしも適当でないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/16
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017・玉置一徳
○玉置委員 私は、日本漁業の将来の展望に立ちまして、漁業の安定と振興には遺憾ながら水産庁長官と見解を異にいたしますけれども、これは私のほうとしては重要な点でございますので、法案の賛否をきめる一番ポイントになるかと思いますが、続けて質問の中で解明をしていきたいと思います。
そこで、日本漁業の近代化ということをどういうようにお考えになっておるかについて、ひとつ基本的にお伺いをしてまいりたいと思うのです。日本漁業が今日まで世界で第一位の成績をおさめ、先年ペルーの急激な進出はありましたものの、内容におきましては依然第一位を続けておると言っても過言でないと思うのでありますが、問題は、通常、先進漁業国が生活程度の向上に伴いまして、後進国にある程度譲っていくところもあるのは事実だと思います。たとえば、今度特定繊維産業の構造改善の法案が出たわけであります。あれと同じようで、後進国は必ず追いついてくることは事実であります。したがって、先進国の繊維産業が思い切った高度な構造改善をここ五年間で実施しようとして、ランカシアが歩いた道をまた日本の繊維産業が歩むんだ、こういうような点と同じ意味におきまして、今日まで世界一を続けてきました日本の漁業というものは、私は、いろいろな後進国の非常な追い上げによりまして、われわれの漁業というものは、やはり先進国型の近代化、完全化された経営の安定を願えるような展望に立った指導をしなければならないと思うのです。そういう意味では、いま水産庁長官がおっしゃいました、それは労使の問題だからかえってほっておくほうがいいなんていう考え方は、私は言語道断だと思います。そこで、ただいま申しましたように、居住その他に今日までのような非常に後進性を持った日本の漁業がそういう形で勝負していったのでは、その分では後進国に追いつかれることはもう確実でもありますし、予想されることでありますので、日本の漁業の経営の安定と、それから思い切った近代化をやらなければ、私は、日本の漁業の地位を確保していくことはむずかしいと思うのです。そういう点から考えてみれば、今度の法案のごときは、沿振法によるとはいいながら、実に日本の漁業のおくれたやつを近代化するという意欲の足らないことおびただしいというように私たちは考えるのですが、十年後の日本の漁業のあり方は一体どういうようにならなければいかぬということについて、水産庁長官の考え方を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/17
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018・久宗高
○久宗政府委員 十年後のめどと申しますか、たいへんむずかしい御質問でございまして、ちょっとお答えしにくいわけでございますが、御質問なさっておられる意味は、近代化をうたいながら、はたしてその内容が具体性があるのか、あるいはどういうめどかということと承りまして、お答えをいたします。
その前に、先ほど振興計画との関連におきまして、労働条件、特に賃金支払い形態の問題につきまして御質問がございました。私お答えいたしましたのは、単に労使の問題だからほっとけばいいというふうに御指摘を受けたわけでございますが、申し上げているのは、決してそういうことではございませんで、新しい漁業法ができました際にも、最初に産業行政の中で本式に労働問題を取り上げましたのは水産行政と考えておるわけでございます。自来、遅々としてはおりますけれども、始終関係の組織とも十分御連絡をとりながら、労働問題の取り扱いについては腐心をいたしておるわけでございます。したがいまして、今回中小漁業の問題を提起いたしますにつきましても、組織の方々とも相当長い懇談を重ねまして、その中で、すでに熟しておりますものは法制的な取り上げをいたしたものもございますし、また、その中間的なものはできればこの振興計画の中に盛り込みたいと考えておるわけでございますが、たまたま御賛同が賃金の支払い形態でございましたので、たとえば固定給プラス歩合でなければいけないという、ふうに申し上げるのが適当かどうか、最低保障というような考え方もございましょうし、また、そういうことがかりに振興計画の中でうたわれましても、それに伴います。連の施策なりが伴えない場合に、単に振興計画の中でうたわれて、それが画餅、絵にかいたもちといったような形になりますことは、むしろ避けたい、実質的に一歩でも二歩でも振興されますような形で指導してまいりたいという意味におきまして、どの程度に組み入れますかにつきましては、それぞれの経営者とも、また労働の組織とも突っ込んだお話をいたしまして、盛り込んでまいりたいという気持ちでございますので、その点、誤解ないようにしていただきたいと思うわけでございます。
なお、近代化そのものについての御質問でございまして、これも非常に広範な御質問でございますが、まあ端的に申しますと、終戦後いろいろな漁業乃制度の改正をいたしました場合に、この問題をまっ正面からうたったわけでございますが、またそれなりの改正が行なわれたわけでございますけれども、やはり一番やっかいな問題といたしましては、少なくとも現在の段階まで、日本の沿岸周辺におきます資源に対しまして関係漁民が相当に多うございますので、何らかの調整が要るわけでございます。
〔高見委員長代理退席、委員長着席〕
したがいまして、非常に批判を受けました漁業権といったような制度も沿岸についてば必要でございますし、さらに沖合いにつきましても、いわば許可制度に伴います。連の問題にいたしましても、本来からいえば全く自由にしておきまして、そしてある時期にはとってはいけないとか、そういう漁業の漁具は使ってはいけないとか、一般に対しましてある種のそういうような規制だけで済ませれば一番いいわけでございますが、どうも現在までのところ、漁場の錯綜関係から見まして、結局企業そのものを許可する、許可しないという形をとらざるを得ないのが現状であるわけでございます。これはやはり全体の経済の発展の中で、就業構造も変わり、市場関係も変わってまいります中で、全体としての合理化なり近代化がはかられるものと考えるわけでございますが、そのような制約の中におりますので、主として一番目立ちます近代化のおくれている分野は漁業の労働関係にあろうかと思います。沿振法の際にもそのような問題が基本的な問題であるという御指摘があり、したがいまして、今回の中小漁業振興の特別法におきましても、振興計画の中でその問題に基本的な事項として触れようとしているわけでございます。
そこで、めどでございますけれども、従来は、やはり非常に漁場のふくそうした中で、しかも中小漁業においては、一般の産業におきましても中小漁業の置かれておる地位から申しまして、労働以前の問題と申しますか、経営が困難なために、経営者として相当労働問題に気を配ろうとしてもできなかったといったような事情もなきにしもあらずでございます。そこで、今回におきましては、経営の立て直しをまず第一にいたしたいと考えるわけでございますが、同時に、経営者の側でも、すでにあのような激しい形でここ数年労働力関係が動きましたので、今度の機会にその問題と真剣に取り組まなければ、企業それ自体あるいはその業種それ自体の存亡にかかわるという認識が徐々に生まれつつあるわけでございます。これはまだ十分ではございませんけれども、私どもといたしましては、この振興計画をつくってまいります過程におきまして、この点を特に経営者側には強調し、また労働の関係の方には、そこに入り込んでまいります場合にやはりステップを踏まざるを得ませんので、一挙に理想的な形に持っていけないという事情をとくと御説明をいたしまして、具体的な振興計画にまとめてまいりたい、これがやはり中小漁業におきます近代化の重要な一つの基本的な事項であろうという認識に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/18
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019・玉置一徳
○玉置委員 中小漁業の労務者確保という問題は、これから非常に困難を予想されるわけでありますが、どういうようにしてこれは確保していくおつもりがあるのか、どなたでもけっこうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/19
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020・久宗高
○久宗政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、一応私どもの施策といたしましては、個々の労務者の訓練の問題でございますとか施策をいたしておりますが、これは十分でないと思うわけでございます。一番大事な点は、やはりその業種につきましてある程度の希望が持てるかどうか、これは日本の漁業全体についてでございますけれども、漁業と申しましても、沿岸、沖合い、遠洋それぞれ違いますので、それぞれにつきまして、少なくともその漁業種類が将来に発展性があるかどうかということが、やはり基本的には重要であろうかと思うわけでございます。
先ほど担当者から格差の問題の御説明をいたしたわけでございますけれども、比較の方法が適当であるかどうか、若干私は実は疑問に思っておるわけでございまして、あのような数字であるにもかかわらず、ある種の業種につきましてはどんどん抜けていくという事実は、単なる格差にあらわれました数字だけではなくて、ある種の漁業について非常に見通しが暗いとか、そういうようなことが非常に影響しておるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、今回中小漁業を取り上げまして振興計画を立てようといたしておりますのは、そのような業種別に取り上げまして、少なくとも数年あるいは何年か先にはこういう方向に持っていけるといった確信をその業種自体が持ちますことが、同時に労務者の確保に通ずるものだろうというふうに考えますので、個々の、たとえば居室の問題でありますとか、海上労働におきますいろいろふぐあいの点を直していくということはもちろんでございますけれども、したがって、そういうことについては注意を払いたいと思いますけれども、やはり根本的には、その業種が希望が持てるかどうかといったことになりますので、さような意味におきまして、振興計画がどの程度の形につくれて、それがどの程度に確信の持てる形であるかどうかということが、同時に漁業労働者をどの程度確保できるかという問題に通ずると思うわけでございます。したがいまして、振興計画の中で最終的に文字で書かれるもののほかに、いま言ったようなことが、私どもはやはり一番大事ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/20
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021・玉置一徳
○玉置委員 長官、私はここ二十年ほど前のことは別といたしまして、産業の高度成長によりまして、陸の上で近代化された工場がどんどんできてきて、人手不足になりつつある。したがって、農業と同じことが言えるのは、漁業のこれからの労務確保は非常にむずかしいことだと思いますし、陸の農業ですら収拾がつかないほど後継者の獲得が困難になっております。ましていわんや、漁業というものは非常にむずかしくなっておる。したがって、賃金も当然陸よりもよけいでなければいかぬし、労働環境もまたよくなければいかぬし、それから、年寄ってからの社会福祉施設もよくなければいけないと思うのです。そういう意味で、先ほどの特定業種の二つの指定をして、金融と税制できょうの経営を複船化くらいで糊塗していこうと思うところに、将来の展望としては、施策としては、とてもゆるいですぞ、甘いですぞということを申し上げようと思って、言うておるわけです。
そこで、賃金の問題でありますが、たとえば三十七年ですが、十トンから三十トン、これが二百トンから五百トンになりますと、それの二・二倍になっておる。五百トン以上は十トンから三十トンの二・九倍になっておる。したがって、先ほど質問した陸の製造業との比較というのは、ほんとうはあまり当てにならない比較でありまして、五人から二十九人までの年間三十一万と漁業の平均三十七万というのを比べれば、その差は逆になりますが、三十人以上のところになりますと、四十五万となって、向こうのほうが多くなるし、五百人以上ということになると、ずっと多くなる。そのことは、漁業においても、いま申しましたように、十トンから三十トン、二百トンから五百トン、五百トン以上で、非常な階層別の格差があるわけです。
そこで、私の言わんとするところは、先ほど申しましたように、日本の漁業近代化ということを、将来に向かって思い切った構造改善をやっていこうと思えば、ただの税制や複船化くらいのことではお話になりませんぞ。ここに示しておるように、賃金でも、同じ中小漁業の中でもこのくらい格差があるわけでありますので、大型化をしていかなければ、これを見ましても、だめだということが出てくるのじゃないか。そこで、許可の問題まで最後は触れるわけでありますけれども、日本の漁業を近代化して、後進国に追いつかれていく日本の漁業を生産性の非常に高いものにして、世界の水準を維持していくというやり方をしようと思うのには、この法案だけでは非常になまぬるいということを言おうと思っておるわけであります。
そこで、もう一つは、先ほど申しましたように、労務環境が陸の工場よりもりっぱにならなければ、労務者確保、若い人を確保するということは困難ですぞという問題につきまして、毎年漁業で災害にあっておる。ことに死亡していく人は、このごろほぼ横ばいでありますが、何人ほどおられて、その原因は主として漁業のどういうところにあるのか。だれからでもいいですから、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/21
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022・久宗高
○久宗政府委員 計数につきましては、正確に申し上げたいと思いますので、ちょっと調べさしていただきまして、お答えを申し上げたいと思います。
ただ、御指摘を受けるまでもなく、毎年白書が出ますたびに、私どもも全くじくじたるものがあるわけでございますが、最近になりまして、やっと私どもの体系の中でも船舶安全につきまして本格的に取り組もうじゃないかという動きが出てまいりまして、御承知のように、今回の一斉更新におきましては、乾舷マークというような形を強制しようということでございます。できますならば、これはなるべく早くやりたいという気持ちもあるわけでございますけれども、現実にございます船の関係もございますので、やはり代船建造の機会、そういったものをとらえまして、ともかく早くこのような安全の問題だけはぎりぎりの線を確立したいということで検討いたしておるわけでございます。
なお、原因にさかのぼってまいりますと、いろいろございまして、たとえば漁業の補償制度でも完備しておれば荒天の際に出なくてもよろしいものを、出ていって、そのために遭難したといったような悲惨な事例が相当ございます。さようなことでございますので、船舶の設備あるいは労働条件、もちろんこれはぎりぎりの問題でございますけれども、それ以外の取り巻く問題、経営が非常に苦しいとか、あるいは補償制度が不備であるとか、あるいは組織が不完備であるとか、こういつたことがまさに総合的に取り上げらるべき時期に来たと考えるわけでございまして、特に一番無理をして遠出をいたします関係は中小漁業に非常に多うございますので、さような意味におきまして、今回の中小漁業の振興の中で、一斉更新とも関連いたしまして、若干の時間をかけましても、一歩一歩そこを固めてまいりたい、その第一歩といたしまして、いまの乾舷マークの強制といったような問題を打ち出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/22
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023・池田俊也
○池田説明員 ただいまお尋ねの海難の状況でございますけれども、海難の件数から申し上げますと、四十年でございますが、千百二十三隻ございます。いろいろ原因があるわけでございますが、その中で、比較的程度が重いと申しますか、転覆あるいは行方不明というようなのをとりますと、七十八隻でございます。傾向といたしましては、比較的最近は減っておる状況でございます。
それから、お尋ねのございました、どのくらい死亡者があるかということでございますが、ちょっといま手元に数字がございませんので、これは後ほど調べてお届けいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/23
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024・玉置一徳
○玉置委員 数字ははっきりいたしませんけれども、毎年約六百人前後死亡しておるというのが現状であります。鉱山その他が爆発をいたしまして、百人、百五十人というような集団的な災害が起こりますと、政府、国をあげまして、その救済に当たるわけでございますが、年々歳々六百人の人が死亡していくにかかわらず、保安庁の仕事かもわかりませんけれども、水産庁といえども、水産庁でこの事故をなくする方法は幾らでもある。いま水産庁長官がおっしゃいましたが、中小漁業が北洋など漁期がきまっておるような関係で、荒天でもかせがなければならないというようなことがあると思いますけれども、あの三十九トン型というのは、日ソ漁業条約の中で漁獲量の全般のワクでやられておるのか、三十九トン型で押えられておるのか。荒天を三十九トン型みたいなもので行くものだから、しかもその時分は気象状況を見ましても一番悪いときであります。それを何らの改良をせずに、ほかの補償制度や何やら言うておっても、それは無理だ。この間、私は塩釜に行きまして、海上保安庁にいろいろなことを聞いて調べてまいったのでありますが、そのときに、二百三十トン型でしたか、何ぽかの巡視艇に乗らされて、これでは、荒天のときに難破した、あるいは事故を起こしておる北洋の船団にもう近づくことができません、せめてこの新型の三百七十トン型とかいうやつに改良していただかなくては、こちらがとても作業ができないということをおっしゃっておりました。その船に乗せられたのです。ましていわんや、三十九トン型でやってこいなんということで、私は、人間の命を一体水産庁はどう思っておるのかと言わざるを得ないと思うのです。だから、日ソ漁業条約で総ワクできめられておるのか、船のトン数できめられておるのか。もしも総ワクできめられておるのだったら、またその話が成り立つ話ならば、人間の生命の尊重という点から考えても、せめて八十トンなり九十トンに全部これは強制していいわけです。ダンプカーがどんどん走る、学童が傷つく、あれは営業だからしようがないのだ、言えないのだというようなことを言うておる必要は私はないと思うのです。そこで、日本の漁業の近代化という点を考えぬと、労務の確保なんということは永久にこれは考えられませんぞ、こういう意味で、先ほど、いまの法案に出ておるような六分五厘でどうするとかいうようなことでお茶を濁してはいけません、ぞということを申し上げておるわけですが、いま申しますように、総ワクでおきめになっておるのか、船のトン数かける隻数でおきめになっているのか。いまはそうであろうとも、こういう人道上の問題に対してソビエトと交渉ができるかどうか、この点についてひとつ確信ある御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/24
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025・亀長友義
○亀長説明員 お答え申し上げます。
いまの御質問は、北洋のサケ・マス漁業、特にいわゆるB区域における漁業の御質問であると思います。B区域におきましては、ソ連との取りきめは全体としての漁獲量のきめ方であります。すなわち、全体としてこれだけの量にするということで、個々の船別の割り当てはいたしておりません。ソ連側の見解としては、B区域の小さな船、すなわち、日本海の小さな船からはえなわあるいは流し網の小さな船にまで船別の割り当てをせよという要求が毎年ありますけれども、私どもは、沿岸漁業的なものであり、また非常に従業者も多いし、船も小さいので、そのようなことは不可能である、そこで、全体としての割り当てを取りきめて、さらにそれには若干の、船も多いことであるから一割のアローアンスをつけるというのが現在の協定であります。船の大きさに関しましては、したがって、協定上別段の制限はございません。ただし、日ソ条約の経緯から申しまして、日ソ条約ができた当初におきましては、B区域というものは何らの規制がなかったわけであります。規制がなかったがゆえに、日本政府が逐次船を大きくして、B区域は、本来条約上小漁船ということばが使われておりますが、小漁船という範囲を越えて非常に漁船が大きくなった。そこで漁獲量が非常にふえた。いわば、日ソ条約で昔対象にしておったA区域以外のところで、日本がやたらに漁獲をふやす、それがB区域の設定された理由であります。しかし、B区域におきましては、個々の船の割り当てまでは日本側が拒否をいたしておりますので、現在のところ、全体的な漁獲量になっております。
御指摘の四十トンとかいう話でありますが、主としてサケ・マス流し網に関しての話かと推察をいたします。サケ・マスの流し網の漁船は、小さいものは七トンから、大きいものは八十五トンまであります。御指摘の四十トンクラスのものが、そのうち大部分であるということも事実であります。現在の全体的な割り当てでございますけれども、これを水産庁は、日本海の漁業者あるいは太平洋のはえなわの漁業者、流し網の漁業者にそれぞれ予定量を割り振って操業さしておりますが、大体この割り当て量から申しますと、私ども、四十トンの船であっても、それほど事故ができるほどの一船の平均の漁獲量にはならないのであります。ただ、全体的な取りきめでありますがゆえに、中にはとれたらできるだけやたらに魚を積んでくるという船があります。率直に申しまして、私は、それは常識を越えた操業であると思っております。ことしも二隻ほど事故がございましたけれども、船舶の能力を越えて非常に多量に積んでおるというのが実情でございます。もちろん、水産庁の側で、船のトン数の大きさは、過去の日ソの経緯その他から規制をいたしておりますが、現在並びに将来の漁獲量の動きから見まして、この船をやたらに大きくしても、それは漁獲量が全体としてふえる見込みがないというふうに私ども判断をしております。したがって、船を大きくする際にも、船舶の安全の必要な限度にとどむべきであろうと思っております。先ほど長官から御説明申し上げましたように、船舶の載荷基準を設けて乾舷マークをつける、あるいは船員の居住設備の改善の必要上船を大きくすることは、これは無条件で認めるという考え方を持っておりますが、それ以上に、私ども現在のサケ・マス漁業として特に大きくしなければ危険性を感ずるという事情はないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/25
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026・玉置一徳
○玉置委員 いまのお話によりますと、小さな船でも命には関係ない、積み過ぎるからだめなんだというようなお答えだと思うのですが、それでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/26
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027・亀長友義
○亀長説明員 現在の日ソ条約のノルマの範囲内で考えますと、非常に大きな船をつくりましても、生産量が制限されておりますために、かえって採算上も不利になるというふうに考えております。それから、サケ・マスは現在非常に有利な漁業でございまして、船員に対する賃金の支払いも、おそらく日本の中で一番高い、あるいはそれに近いレベルにあるだろうと私ども思っております。もちろん、現在の船そのままで必ずしも完全な安全というものは期し得られないわけでありますけれども、これに載荷基準を適用し、あるいは船員設備を改善するということを考えれば、必然的に魚倉の面積というものは相対的に小さくなるわけでありまして、それによって、あの水域であれば十分航海の安全性を保たれると私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/27
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028・玉置一徳
○玉置委員 私は、船を大きくしたら経営が楽になるという意味の言い方をしているのじゃないのです。逆に人命尊重ということを考えなければ——日本は、利益が多いから、低いから、もうそんな後進国じゃないわけです。人間らしい労働条件のもとに働ける水産業界でないと、日本の将来の水産業は成り立ちませんぞということを申し上げるために、四十トン以下の船であの荒天の中を行かざるを得ないような境遇においてやらしておるということが、将来の日本の水産業のあり方として正しいのかどうか。それが積み過ぎによろうが何によろうが、毎年六百人ずつ死んでいっていることも事実であります。そういうことを申し上げておるので、経営の問題を別にいたしましても、人命尊重という点と操業の安全という点から考えて、私は、日ソ漁業条約が総ワクで押えられておるのだったら、これから五年間の規制をする一斉更新において、水産庁は——十年の後では、二回しかその更新の場所がないわけであります。そういった人命尊重という点でお考えになる意思があるかどうか、こういうことであります。水産庁長官からお答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/28
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029・久宗高
○久宗政府委員 生産部長からお話をいたしたわけでありますが、考え方といたしましては、御指摘のとおりに私ども実は考えているわけです。ただ、一斉更新の機会でなければできないかと申しますと、そうではございませんで、たまたまそのような機会に増トンをいたすというようなことになりますと、それぞれの漁業種類に関連がございますので、そういう機会を利用しておるわけでございますが、私どもといたしましては、一斉更新にかかわりませず、今日までも漁業労働の安全のための特別な増トン計画をいたしたこともございますし、また今後もそういった問題について真剣に取り組んで考えていきたいと思うわけでございます。ただ、生産部長からお答えした中にも、ついことばとして出ましたように、非常識な経営が確かにございます。これはやはり船主そのものの考え方を根本的に改めていただくような行政指導が徹底して必要だろうと考えるわけでございますが、かりに漁船の設備を改善いたしましたり増トンをいたしました場合でも、今日までの惰性で、それを越えてやはりむちゃなとり方をする、あるいはその漁船の性能を越えた操業なり積み込みをするといった事態の懸念があるわけでございまして、さような問題は、やはりこのような振興計画を立てます際に、それを立てるプロセスの中で、私どもといたしましては、それぞれの業種団体を通じ、また労働の組織の御援助も得て徹底してまいりたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/29
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030・玉置一徳
○玉置委員 それでは北洋なら北洋に例をとりまして、ああいう漁期の間に海上保安庁の立ち入り検査というものはあると思いますけれども、水産庁としては、航行の安全、操業の安全のために、どれだけの監視員なりそういった指導に当たる人を派遣しておるか、お答えいただきたいのです。つまり、業者まかせで、業者の指導をして、やらなかったらそれはもうしかたがないんだということなのか、直接にいろいろな抜き取り検査その他のことをしにお行きになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/30
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031・亀長友義
○亀長説明員 船舶の検査につきましては、これは御承知のように、主として海運局でお願いをしておりますけれども、そのほうの系統は別といたしまして、水産庁では、サケ・マスに関連いたしまして申し上げますと、根室に常時サケ・マスの漁期中は三名から四名、さらにこれに北海道庁の協力を得まして、総数大体七、八名の者が常駐をいたしております。それで、もちろん、出港いたします前には、船舶の検査を一応いたして出すことにいたしておりまして、乗船許可証を渡す前に検査をいたしております。もちろん、海の上では常時、いま御質問のB区域のサケ・マス漁についてだけ申し上げましても、水産庁の監視船が約四隻稼働いたしておりまして、それに北海道の船が約二隻、六隻の監視船が海上保安庁の船以外に巡視をいたしております。もちろん、これは中にはソ連の監督官が同乗しておるものもございまして、本来は日ソ漁業条約による取り締まりを目的とするものでありますけれども、同時に、当然海上保安並びに船舶の安全ということをいつも配慮いたして運航いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/31
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032・玉置一徳
○玉置委員 私は先般塩釜へ行きまして、東北の海上保安庁のあれを見てまいりましたが、専門的な海上保安庁においてすら、東北管区内でわずか六名の労務担当官しかいないのです。それも専門官というのはそのうちの四名です。ほかは兼務しておいでになります。そういう事情でありますから、船が一ぱいずつ出ていくのを全部調べてみるというのは、ほんとうは間もありません。ましていわんや、ぼくは水産庁で満点なことはできていないと思うのだけれども、生産部長のおっしゃることを一応真に受けて、それならば、去年一年間に、積み過ぎだとかいろいろな点で摘発した件数は一体何ぼあったか、お答えいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/32
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033・亀長友義
○亀長説明員 お答えいたします。
船舶の荷物の積み過ぎにつきましては、現在のところ、これを処罰する根拠はございません。これはあくまで常識的な監視を出ないものでありまして、結局は船主なり乗り組み員の方々の良識に期待するほかはないわけであります。もちろん、A区域におきましては割当量がございますので、その場合には当然積み荷を検査することになりますが、一般的にはそういう制度になっておりませんので、私ども、今回新しくつくる船からは乾舷マークを入れさせるという制度を今度一斉更新に際しまして考えておるわけでございまして、これができますれば、当然その乾舷マークより積んだものは漁業法の上でも何らかの措置を講ずる、違反として扱うというような制度を目下考えております。それができれば、この点はかなり法規的な措置がとり得るようになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/33
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034・玉置一徳
○玉置委員 いままでは乾舷マークのあれがなかったから、積み過ぎておってもそれはもう向こうのことだというようなことは私はどうかと思うのですが、それはそれといたしまして、海上保安庁からいわゆる不正として摘発されたものを水産庁に通知があったものは、一体一年に何件ほどありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/34
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035・亀長友義
○亀長説明員 船舶の積み荷自体に関しましては、先ほど申し上げたような事情でございますので、保安庁からも特段の通知をいただいてはいないと承知しております。一般的な船員関係法規、あるいは備えつけるべき器具、備品等を備えつけておらないというような違反に関しましては、これは運輸省のほうから私どもに通知を求めておりますので、いま早急に調べまして、すぐ御回答申し上げます。しばらくお待ち願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/35
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036・玉置一徳
○玉置委員 その間進行してまいります。
その違反の通知を受けた者に対しては、許可の更新のときどういうような扱いをするか、あるいは今後はどういう方針でいくか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/36
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037・久宗高
○久宗政府委員 今回の許可の一斉更新にあたりまして、漁業関係法令の違反、それから労働関係法令の違反、その二つを問題にいたしまして、いろいろふるいにかけようとしたわけでございます。結果はすでに御承知かと思うわけでございますが、これは中央漁業調整審議会におきまして相当突っ込んだ議論をいたしまして、私どもといたしましては、御指摘のように、従来の漁業法関係におきましても必ずしも十分な取り締まり体制がございませんために、個々の漁業者の行為につきまして、それを許可の一斉更新の際にただ件数であらわしました場合には、どうも実質的な公平、不公平の関係が出てくるという問題が一つと、従来必ずしもそれについて的確な措置ができておりませんために、一斉更新に際して卒然といたしますことが必ずしも適当でないという判断に基づきまして、漁業法令の違反ないしは労働法令の違反の実態から見まして、この際、これを解除条件つきの許可にしよう、つまり、相当件数を重ねている者でございまして、どう考えてみてもこれは非常に悪質であるという者もございますし、また件数は相当ございますけれども、実情を調べてみますと、若干規則その他の無理がございまして、ことばは適当ではございませんけれども、形式的な件数がふえたけれども、実質的には必ずしもとがめられない、こういったものがございまして、役所としてやりますと一定の尺度でぴしっとやらざるを得ませんので、そのような形をいたしますことが、むしろ非常な公平感と申しますか、そういうものも阻害しますし、また、今後そのような形でただ形式的な適用だけがあるというような印象も与えたくないということで、いろいろ検討いたしました結果、相当の件数を重ねている者につきまして、今回は許可をいたしますけれども、それは解除条件つきでございまして、さらに一犯を重ねれば直ちに取り消すといったような形のものにいたしまして、そのような措置をとることによりまして、業界全般が若干いままでルーズに考えておりましたそのような問題につきまして、これからは本格的にやらないといけないんじゃなかろうかという感じを与えることのほうに重点を置きまして、処理をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/37
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038・玉置一徳
○玉置委員 おっしゃるように、突然今度の許可の一斉更新に際してということは困難なところもあると思いますが、ただ、不公平とかなんとかいう問題は、スピード違反だって見つかったものはやられます。立ち小便だってそうなんです。選挙違反のことを言っちゃおかしいですが、だから、やはり見つかったものはやっていかなければいかぬ。それは軽微なものは三回重なったらどうするとかいうような形で、五年後の次の更新までにはこうしますぞということをこの機会にぴしっとやっていかなければ、天下の公海であり、その公海の許可漁業に関しては、御承知のとおりの大きな権利金までついておる現状から見れば、そういう人々はそれに値しないのだ、ことに人命尊重なんというのを考えぬような人に日本の漁業を託しておくことは間違いだ、こういうようにひとつきびしく今後はお取り締まりいただきたい。そうしなければ、先ほども申しますように、雇用の安定ができないようなことでは、日本の漁業の近代化ということは考えても無理だと思うのですよ。
そこで、話を変えまして、ラスパルマスでしたかどこでしたか、基地漁業のうちで日本が相当やっておりましたのを、だんだんと台湾もしくは韓国の漁業に追いやられつつあるのはどこでございましたか。そしてその原因は一体何か。対策としてはどう考えられるか。私は、漁業の近代化と後進性の勝負では負けるという意味の何かがないかと思って聞くわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/38
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039・亀長友義
○亀長説明員 とりあえず私からお答えを申し上げます。
御指摘の場所はサモアであると承知しておりますが、サモアの漁業は、御承知のようにアメリカの領土でございまして、あそこにアメリカのかん詰め工場がございます。そことの契約で、日本の漁船があの付近でとったものをサモアに陸揚げをして売るということで、サモアの基地漁業が始まったわけでございます。当初は日本の漁業が事実上ほとんどでありまして、日本の船がほとんど全部アメリカと契約が成立をして、あの港へ入ってマグロを売っておったわけでありますが、その後韓国が進出をいたしまして、アメリカのマグロ会社と契約をするようになりまして、現在のところ、台湾の船もさらに若干嫁働いたしております。したがって、全体に占める日本の比率というものは、発足当初に比べると相当低下はいたしております。この原因は何かと申しますと、単に海上での競争ということでなくて、そこでとったマグロをアメリカに売る、結局アメリカのかん詰め会社の選択ということが大きな要素になってまいります。すなわち、アメリカの会社が買う場合に、日本の漁船から買うほうが有利か、あるいは台湾、あるいは韓国の船から買うほうが有利かということでございまして、そうなりますと、一つには価格の問題、さらにこれは経済的にどちらが卸しやすいかというようなこともあるかと思います。そういうふうにアメリカの会社がどの国から買うことが有利かということから、どの国が一番多い勢力をそこで占めるかということが決定的な要因になるわけでありまして、その場合に、いままでの例から見ますと、日本の船は、当初考えられていたほど多くの船があそこに寄港しないようになってまいりました。これは一つには、サモアの魚価と内地の魚価との相対的な関係によるものでありまして、日本の漁船はアメリカのほうへ契約をしても、必ずしも全部揚げるというわけではなくて、内地の値段がよければ内地へ持ってくるという状況にあります。そういう価格面の違いから、日本の漁船が減ってまいりまして、一方韓国のほうは、やはり自国へ持って帰ってもそうたいした価値はないので、できるだけサモアで売る、こういうことであります。結局原因は、その辺の価格関係から現在のようなシェアになってきたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/39
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040・玉置一徳
○玉置委員 その問題は、あとの価格の問題に移しまして、大臣お見えになりましたので、一応いままでのことを簡単に総ざらいをしてみたいと思います。
日本の漁業が世界の漁業の中で一番優位を占めておりましたし、現在も占めておる。それが後進国のいろいろな追いつきでもって、だんだんと日本の漁業のあり方そのものを考えなければいけない。いわゆる生産性を思い切って高めていかなければいかぬ。それは近代化であると思うのです。その次は、日本の近年の産業の高度成長のために、農業も同じでありますが、漁業も、第一次産業に就業をする後継者と申しますか、若い人々が非常に少なくなりつつある。この両方から考えても、漁業を思い切って近代化し、思い切って生産性を高めた形にしなければ、いまのサモアの例のように、韓国、台湾等の進出に勝負ができなくなるのじゃないだろうか。そういうような意味で、先ほどもお話ししておったのですが、まず賃金の格差、陸との格差というよりは、中小漁業の中のトン数におきます格差が非常に大きい。階層別の格差が非常にはなはだしい。つまり、大型のほうが能率はあがるという、そういう一応の統計が出ておるわけであります。それともう一つは、年々六百人近い人々が死んでまいります。これは水産業だけじゃないのかもわかりません、この統計は。そういうような意味で、いままでのような労働条件の形では、労働環境では、新しい人々を漁業に収容していくということは非常に困難であることは事実であります。したがって、経営の近代化と同時に、雇用関係、労働環境の近代化というものをどうしてもやっていかなければ、これは先進国である日本の漁業が将来とも世界漁業の中で優位を占めていくということはでき得ないと思う。その意味では、この提案は、私から言わしむれば、非常に微温的なものである、こう申し上げておったわけです。そういう人命尊重という観点からしても、三十九トン、四十トンで北洋のあの荒波の中をやっておるような現状で黙しておっていいのかどうか、もう少し航行、操業の安全性のある大型の船に直していかなければならないのじゃないか。日ソ漁業条約の中では総漁獲数、数量を問題にしておるのであって、一ばいずつの船は問題にしてない。問題にしてということばはおかしいのですが、そういう取りきめ方ではないという質疑応答もあったわけであります。
そこで、私は、その人間的な生活条件を与えるという意味におきまして、まず水産庁長官にお伺いしたいのですが、ILOの漁業に関する条約の批准は日本ではまだでありますが、内容は一体どういうことを言うておるか、お答えをいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/40
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041・久宗高
○久宗政府委員 ILO関係では、船舶一般につきましてはいろいろな規定があるわけでございますが、その中で漁業問題を引き出しましたもので幾つか懸案の事項がございます。これは後ほど大臣からもお話があると思うのでございますけれども、私ども一番苦慮しておりますのは、漁業のみならず、一般に日本の労働関係におきましては非常に厳密に条約を解釈いたしまして、条約を批准いたしました場合に、完ぺきな国内体制を整えたいということを頭に置きますので、さような点から見ますと、幾つか漁業関係で条約ができておりますけれども、どうしてこういう国が批准できたのかという疑問が起こるような感じもございます。したがいまして、私どもといたしましては、それぞれすでに問題になっております案件につきまして吟味をいたしておりますけれども、一番主として問題になりますのは、やはり家族労働者の取り扱いでございます。私どもの関係では、特に中小漁業関係になりますと、これが非常にウェートを占めますので、そのようなものをどう取り扱いますか、ILOの会議の席上におきましても、よその国でも当然問題にしないのがおかしいと思うのでございますけれども、そのような問題が、あまりその種の漁業が一般的に少ないということもあり、必ずしもその家族労働者の特殊な地位についての考慮が条約の中で十分でないように思うわけでございます。それを裏返しますと、その例外的な扱いをすべきかどうかという問題と関連いたしまして、これをもしいまの段階で批准いたしますと、日本的に考えますと、いろいろな違反という形になりますので、その辺が一番問題の焦点であろうかと思うわけでございます。きめられております内容は、そう私は大した問題ではないと思うわけでございますが、どうも漁業問題が一般にILOの中でも特殊な問題として考えられておりますので、その中のさらに非常な特殊な構成を持っております日本の漁業が、必ずしもぴったりしないという問題が残されておるように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/41
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042・玉置一徳
○玉置委員 私は、ILOの批准そのものを金科玉条とするんじゃなくて、先ほどからずっと続けてまいりましたように、近代漁業というものを雇用並びに労働環境が人並みの生活を得さしめるようなことでないと、今後の後継者というものは獲得が困難であるという点から考えても、日本の将来の近代漁業というものは、ILOのいかんにかかわらず、当然、その条文のややこしいところはあり得ると思いますけれども、もうそれはやっていかなければならない問題だ、こう思いますからお伺いしたわけでありますが、そこで、話をもとへ戻しまして、先ほどの左記事項の改善に関する基本的事項の中で、四番の「賃金等の労働条件その他の労働関係及び労働環境に関する事項」という中で、水産庁長官は、雇用の問題のなには労使の関係だというような感じの答弁があったわけでありますが、私は、いま申しましたような意味で、日本の沿岸漁業を振興するということは、沿岸漁業の将来の経営の安定であり、ひいては日本の近代漁業の創設だと思うのです。そういう観点から考えれば、これは労使の関係だから関係ございませんというような態度は望ましくない。一朝一夕にできないものもたくさんあると思います。しかしながら、ある年限を限って、ここまでいらっしゃいということだけは、そうしなければあなたたちは自滅いたしますぞ——ところが、業界というものは、だれだって、先ほどの生産部長の話もあったけれども、積み過ぎてひっくり返ることもあると思うのです。まずやはりもうけることから入りますから、私は、許可権を持っておる水産庁がかなり思い切った指導をしない限り、この問題は日暮れて道遠しだと思います。保安庁の諸君とよくいろいろな問題につきまして一緒に勉強するのですけれども、業界の皆さんは、保安庁の諸君よりは、許可を握っておる水産庁の言うことのほうをよく聞くという実態から見ましても、水産庁がそういった大きな視野から問題をながめていかなければいかないんじゃないだろうかというような意味で、四番の「賃金等の労働条件その他の労働関係」、この問題をどういうふうにおきめになっていくか、もう一度ひとつあらためて御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/42
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043・久宗高
○久宗政府委員 先ほどお答えした中で、基本的にはこれは労使の関係でと申し上げましたが、それはしたがって役所に関係ないということではございませんで、役所が介入いたします場合に、どういう形で介入すべきかという問題を申し上げたわけでございます。御承知のとおり、私どもといたしましては、漁業法そのものの中にも労働問題をはっきり取り上げておりますので、従来はなはだ不十分ではございますけれども、運輸省その他とも御相談いたしまして、指導要綱を打ち出しておるわけでございます。これの末端への徹底が遺憾ながら十分でございませんために、私どももその点非常に遺憾に思っているわけでございますが、今回の中小漁業の特別法を出しますについての準備過程におきます問題、あるいは一斉更新と関連いたしまして中央審議会におきます論議も、ほとんどこれに終始したわけでございますので、さような観点で、従来の惰性を打ち切りまして、労働問題の位置づけと申しますか、それが経営の存廃にも関連するものだという認識は、ほぼ中央においては深め得たと思っておるわけでございます。ただ、それぞれの業種団体におきましても、この種の問題をこれから下部へ徹底していくことになると思うのでございますが、下部への徹底につきましては、相当な努力が要ると考えておるわけでございます。
なお、ただいまの二つの業種につきまして、これから振興計画を立てる過程におきましては、基本的な事項となっております関係もございますので、十分具体的に中で検討いたしてまいりたいと考えておるわけでございまして、最終の形になりました振興計画の中に——振興計画の形式もございますので、でき上がったものが、先ほど申しましたように、やや抽象的なものにならざるを得ないと思うのでございますが、検討といたしましては、個別に、かつ具体的に検討してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
なお、賃金の問題につきましては、私どもの考えておりますのは、やはり賃金の支払いの体系と申しますか、そういう問題には、これは触れたいと考えておるわけでございますが、それをいわばこういう形でなければならないという形で一本の強制されるようなものにすべきかどうかにつきましては、これはまさにそれぞれの経営の内部あるいは業種においても違いますので、これはやはり業種団体と労働の組織の間で突っ込んだ御相談がまず先行すべきものじゃないかというふうに考えておるわけでございます。カツオ・マグロ漁業におきましては、すでにそのような検討会が経営者側からもお申し出がありまして、労働の組織のほうもそれを受けて、お話が進んでいるような形でございます。私どもとしましては、これはたいへんいい動向であるというふうに考えておるわけでございまして、さようなものの中から、ある種の漁業種類の振興計画の中で定型的にも打ち出してよろしいというものが熟してまいりますれば、それをこの中に盛り込んでいくことも考えられるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/43
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044・玉置一徳
○玉置委員 それでは四番の「賃金等の労働条件その他の労働関係及び労働環境に関する事項」並びに五番の、今後五年の間に、許可の次の一斉更新の間に大体どういうものを予定しておいでになるか、この四番と五番——五番はいいです。四番につきまして、この法案の上がるまでにひとつ、答弁じゃなくてけっこうですから、資料としてお出しをいただきたい、こう思います。四番の内容です。
そこで、一点大臣にお伺いしたいのですが、操業中の水難事故でなくなりました方の遺族に対して、船員保険で遺族補償があります。一番最低の方、低いほうのところで、これはだいぶ前のもので、年限にもよりますが、八千数百円であります。ところが、いわばスライドというか、現実の毎年の物価並びに生活程度を勘案いたしました生活保護法は、標準世帯で八戸では一万円をこえているわけです。拠出しております船員保険のほうは八千数百円で、言い方は変でありますけれども、無拠出である生活保護法のほうが一万をこえておるというのが実態であります。これでは公的年金制度、保険制度なんかの存在の根底すらゆらぐことになります。昨年は公的年金制度にスライド制の原則を認める条文を入れることになったわけでありますけれども、まだ実態は検討されておりません。こういう事実、これは、私のほうの参議院議員が八戸へ行きまして、遺族の方々と懇談をしてまいりましたときの実態でありますし、私が塩釜に行きまして、海上保安本部その他船員部なんかを歩きましたときも、そのことは確認をしてきたわけであります。こういう問題につきまして、各種年金その他の関連はございますけれども、この船員保険についての直接の所管省ではございませんけれども、その受益者は水産庁の所管——ということばは変ですが、関連の方であります。あるいは農林年金その他につきましても、同様のことがある場合には言えるのじゃないか。いまの実態から見ましても、すみやかにどういうふうにスライドするか、これはむずかしい問題がございましょうけれども、検討に踏み切らなければならないわけですが、まず大臣、そういう実態を御存じかどうか。二つ目はそういう問題とどういうように取り組んでおいきになるか。この機会に船員労働者の労働条件の一つの参考に質問をしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/44
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045・倉石忠雄
○倉石国務大臣 私は、いまのお話につきまして、あまり事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、もしお話しのようなことだというと、たぶん基礎の賃金において非常に低いのではないか。そういうようなことは、先ほど来ここでお話のありました漁業の振興、ことにいま御審議を願っておりますような中小漁業の振興を考えておる立場から申しますと、非常に穴になっておるところでありますから、わがほうでもそれぞれの所管省と研究をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/45
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046・玉置一徳
○玉置委員 せっかく来ていただきました大臣ですから、もう一つお伺いしておきたいと思います。
いまずっと水産庁長官に御質問を続けてまいりましたように、日本の漁業の近代化ということは、やはり雇用労働条件を含めまして、喜んで就業し、後継者が幾らでも出てくるような安定したあれでないとだめだと思うのですが、こういうことに関連いたしまして、漁業に関するILOの条項の批准をする努力をされるかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/46
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047・倉石忠雄
○倉石国務大臣 農業のほうと漁業のほうと、やはりいまお話しのような点については全く同じ状況にあると思うのでありまして、私ども日本全体として考えてみますときに、労働力の問題は将来とも非常に大きな問題でございます。農業のほうで労働力が流出して、それを補うためにいわゆる近代化をしなければならぬ。省力のために機械力をできるだけ用いなければならない。そして生産性を上げると同時に、その従業者の所得を上げてまいる。漁業においても同じ考え方に立たなければいけないというので、いま御審議を願っておるような法律を立案いたしておるわけでありますが、ただ、ILO条約につきましては、私も漁業条約についてあまり詳しく存じませんが、政府は原則としてはなるべくILO条約を数多く批准するというたてまえで、今国会でも百号条約を批准いたしたいという考えを持っておるわけであります。したがって、十分検討いたしたいと思いますが、たぶんいままでそれが行なわれておらないのは、わが国はよその一、二の国と比べて、国民性が非常に潔癖でございますからして、よそでは批准はしておるが、実施しなくても政府も国民も一向あまり騒がない。わが国はそういうふうなわけにいきません。したがって、何かの支障であるいは行なわれておらないと思いますが、要は、ILOが期待しておるような漁業従事者の待遇をよくするということでなければ、現実の問題として大事な漁業を守っていくことは不可能でありますからして、逐次そういうふうにしたいと思います。
ただ、玉置さんとともに私ども日本人として考えなければなりませんことは、われわれたとえばヨーロッパの国を見ましても、西独であるとかイギリスなどもそうでありますけれども、だんだんとわれわれ一般の生活水準が上がってまいると、経営に要する費用のうちの賃金分がかなり増大してまいる。また、そうしなければ労働力を維持し、漁業を守っていくことはできませんけれども、その結果、やはり私ども全体考えておかなければなりませんことは、低賃金で労働力の余っておる国が近代的な技術を身につけて、そして独立後の張り切った気持ちで漁業なりその他の事業に進出してくるものは、非常にコストが安いわけであります。したがって、たとえば、御存じのように、トランジスターラジオの部分品をとんでもない国に送って、安い賃金でその組み立てをして、日本のマークをつけて国際市場へ入れておるというふうな状態、そういうことは、数十年前の日本が先進国と相争った時代と同じような経過をたどっておる。そういうことを考えますと、やはりわれわれはどうしても近代化をして、できるだけ生産を上げて、そして各人の所得をふやしていくということに力を入れなければいけないだろう。水産庁等におきましても、わが国の漁業の地位を守り、漁獲高を維持するためには、やはりどうしても近代化に力を入れてまいらなければなりません。したがって、私どもといたしましては、皆さんの御協力を得まして、せっかく今日の優位を持っておる日本の水産業というものを、ぜひこの位置を守り続ける意味において、近代化には全力をあげて努力しなければなるまい、このように思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/47
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048・玉置一徳
○玉置委員 お昼になってまいりましたし、もう少し質問したいので、適当なところで委員長ストップをかけていただきたいと思うのですが、そこで、せっかく大臣お見えになっておりますので、日本の漁業の近代化というものを急がなければ、国際的に優位な現在の立場を維持することが非常にむずかしい。非常に賃金の安い後進国の追い上げに対しまして、それだけ生産性の高い、近代化された漁業をやっていかなければならぬというのは、大臣のおっしゃるとおりでありますが、一点だけ途中の聞き方になりまして恐縮でありますが、今度指定されたものに対しては、金融、税制上の恩典をされるわけでありますが、私が微温的だと言うのは、輸出の漁船の金利は一体幾らであるか、水産庁長官からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/48
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049・久宗高
○久宗政府委員 輸出入銀行を通しますものは、御指摘のように、若干安いわけでございますが、これは相手にもよるわけでございまして、非常に漁業の競合関係にありますところの問題と、それから全くいまの段階におきまして漁業の競合はなくて、他の輸出振興上の一連の関連から輸出いたす場合に、直ちにその金利問題だけで比較はできないのじゃないだろうかというふうにわれわれは考えております。もちろん、輸銀できまっておりますものは相当幅がございます。その幅がございますと申しますのは、他の貿易上の政策と関連いたしまして、ある国については、ほかの問題との関連で、その幅の中で適当な金利を選ぶという形をとっているわけでございます。現在までのところ、私どもが漁業の競合関係でこの金利問題が非常に問題だなと感じたことはございませんわけでございまして、韓国のほうの関係は、御承知のとおり、別の協定に基づきまして処理をいたしておりますので、現在のところ、輸出漁船の金利関係からこちらが非常に特別な不利な態勢になるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/49
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050・玉置一徳
○玉置委員 昼の休憩の時間にひとつお調べいただきたい。と申しますのは、私は、日本の金利体系がいま少しばらばらになっておるんじゃないか。この間、中小企業白書の質問のときに本会議場で総理にもお伺いしたのですが、総理は逃げましたけれども、医療金融公庫、それから環衛の公庫、六分五厘ですが、中小企業一般の日本の輸出をしておるところでも八分何厘とか、こうなっております。いまのはたしか四分くらいのやつが出ておるはずなんです。ちょっとお調べいただきたいのですが、そうすると、たとえば日韓の場合の、こしらえまして向こうへ送ります船が、金利がどのくらいになっておるのかという点をひとつ。そこで、言おうと思うのは、先ほど大臣がおっしゃいましたような思い切った構造改善を実施しなければ日本の漁業はあぶない、後継者も労務確保もむずかしいというようなときになりますと、私は、陸の農業の三分五厘は直接農民の問題でありますが、中小漁業は若干でも経営の形態をとっておりますから、これは別だとは思いますけれども、それならば、その他の家族労働を主にする沿岸漁家ですね、漁家漁業等については、陸の三分五厘と同じような金利のものがあってもいいのじゃないだろうか。それともう一つは、これだけ思い切った構造改善をするのに、年々三十億円くらいの金で日本の漁業の構造改善ができるのかどうか。海上、ことに水産界におきます年間のガソリンは一体どのくらい使っておるのか。それで、それを金利補助のほうへ回しますと、たとえば年二分回しましょうか、あるいは三分回しまして、五分五厘、四分五厘、三分五厘というような金利体系のものを打ち立てていこうと思うと、年間何百億になるのか、それは逆算すればわかるわけですが、どの程度潤わしていけるか。やはり根本的なことを考えようと思ったら、これは二年前でしたか、私年末に質問いたしまして、海員ストのときでしたけれども、内航海運が過剰船腹でどうともならないようになりまして、その過剰船腹を係船いたしまして、三年間に八十万トン、八十億円の政府からのあれをいただき、業界から八十億円出して、たしかあのときに三年間でそれだけ——海運界のそのときのめどは、あとで実施になったときはどうなったか知りませんけれども、海運業界で使うガソリンというものを目当てにしたと思っておりますのです。こういう一連のものを考えて、ひとつ昼からの質疑を続けていきたいと思いますので、その間にお調べおきをいただきたい、こう思います。委員長、休憩してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/50
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051・本名武
○本名委員長 午後一時三十分再開することとし、これにて休憩いたします。
午後零時二十五分休憩
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午後一時五十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/51
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052・本名武
○本名委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き質疑を行ないます。玉置一徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/52
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053・玉置一徳
○玉置委員 午前中に御質問申し上げましたのは、日本の漁業が世界の漁業界において優位を占めておる、ただ、後進諸国の非常な追い上げによりまして、先進国である日本漁業は、生産性のきわめて高い、思い切った近代化された漁業に構造改善をしなければ将来が非常に心配される。また一面、近年の産業の高度成長下における現象といたしまして、一般に第一次産業に申すことができるわけでありますが、漁業界におきましても、後継者を獲得することが非常に困難になってきた、いわゆる労務確保がむずかしくなることも予想されるわけであります。この両方から考えて、漁業の構造改善には、現在提案されておる法案ではまことに微温的であって、完全とは言いがたいということを申し上げてきたわけでありますが、そこで、今度は逆に経営の近代化、いわゆる経営の安定という点からこの問題を取り上げてみたい、こう思います。
そこで、農林大臣は、「指定業種ごとに、当該指定業種に係る中小漁業について中小漁業振興計画を定めなければならない。」、こういうことで目標の設定をするわけでありますが、まず、以西底びきの適正規模をどのようにお定めになろうと思っておいでになるか、水産庁長官からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/53
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054・久宗高
○久宗政府委員 以西底びきの場合には、御承知のとおり、カツオ・マグロのように複船経営と申しますよりは、やはり船そのものの規模と申しますか、そういうことが一応問題になると思うわけでございます。そこで、具体的にはやはりスタントロール化ということが頭にあるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、規模そのものにつきましてあまり限定的に申し上げてしまうことが、はたして妥当であるかどうかという問題がございますので、的確な申し方ができないわけでございますが、おおむね四組以上が適正な規模ではないだろうかということを一応考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/54
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055・玉置一徳
○玉置委員 四組というのですか——何トンですか。もう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/55
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056・久宗高
○久宗政府委員 御質問は、あるいは船型そのものをお聞きになっているのを私が取り違えたかと思うのでありますが、これにつきましては、一応現在の考え方といたしましては、百五十トンから百八十トン程度ということが、私どもの間ではやや熟した考え方になってきつつあるわけでございますが、ただ、スタントロール化という問題と関連いたしまして、この規模の問題につきましては、もう少し吟味する必要があるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/56
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057・玉置一徳
○玉置委員 百五十トンから百八十トン、まあ一般的に言って、大型化ということは、経営の安定並びに近代化にとって好ましいことでありますが、そこで、現在の九十五トンに居住区のボーナス・トン数を加えまして、載荷基準を加えてみましても、御承知のとおり百二十トンということになります。そこで、三十トンはどこからか買ってこなければならないわけでありますが、現在の状況では、売り手をさがすことはそうたやすくございません。こういう中で設定されると思われるこの適正規模百五十トン以上というものをどの程度に進捗するように期待されておるかどうか。それから、その障害は何であって、その障害を克服するために打つ手はどういう手をお考えになっておるか、長官から御返答いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/57
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058・亀長友義
○亀長説明員 以西の船型の問題につきましては、もちろん、現在の九十五トン型あるいは百八十トン型、韓国の漁船が大体将来百七十トン程度のものを考えておるというふうな情勢、あるいは従来船型のいろいろやっております実際の結果を見ましても、大体そういう型が現段階においては合理的でないかと思います。しかしながら、ずっと以西の過去の歴史を振り返ってみますと、あまり適正船型ということに——私ども事を決定するには非常に慎重な態度を要するのではないかと思っております。と申しますのは、漁場なり経営の条件が変わってまいりますと、そこでやはり適正という問題が変化をしてくるという心配を持っておるのであります。当面、現在における判断といたしましては、いま申し上げたようなことでございます。
そこで、問題は、そういう船型を大きくする場合に、御承知のように、九十五トンに載荷基準あるいは船員設備を足しまして大体百十トンから百二十トンまでは無条件にできるわけであります。それ以上、かりに百八十トンにする場合に、百八十トンが理想型であると仮定しまして、それまで無条件にそれでは大きくするということにいたしますと、以西全体の操業努力、漁獲力としては非常に強化されてまいるわけであります。もちろん、現在の韓国なりあるいは新しい国が進出してこようとする際に、日本だけがことさら制限をする必要もないという意見も一部にはございますけれども、やはり何といっても、現在の東海黄海におきまする底びき業の大きな漁獲努力と申しますか、漁獲圧力というものは、以西の底びき船としまして、これを無条件に相当程度に大幅に拡大をするということが、はたして日本の以西の経営にとって安心できるかどうかという不安があります。この点については、私ども役所側でなくて、現にやっておられる当業者においても相当な不安を持っておられるわけであります。
したがいまして、私どもとしまして、非常に大きくする人が買ってこなければならないというふうな事情はありますけれども、やはりそこは企業の合併であるとか、あるいは複船経営という形で合理化を進めるというふうに考えてまいりたい。もちろん、個々の人としては無条件に大きくさせろという要求もございますが、現在の以西をやっております当業者の人の意見の大勢としては、無条件補充は、むしろ大きな漁獲努力の強化となって、将来の資源なり経営に不安をもたらすという意見がかなり強いのであります。そういう事情を考慮いたしまして、載荷基準なりあるいは船員設備基準の設置によります拡大は、これは無条件にいたしたいと思いますけれども、残余のトン数につきましては、やはりそこに複数経営あるいは合併というふうな形でトン数を補充して大きくするほうが妥当ではないかというのが、現在の私どもの大体一致した意見でございます。
したがいまして、現在のいろいろな調査の結果を見ましても、かりに九十五トン型四隻を廃業して、それを二隻程度にして百八十トンなりあるいは二百トン近いものにする、そういうことにすれば、漁獲高としては多少減るけれども、経費の節減ということで、かえって経済的には合理的であるというのが従来の調査結果でございます。一般の御意見も大体そういう方向でございますので、私ども中小漁業振興法の運営にあたりましても、もちろん若干の修正は考えなければならぬと思いますけれども、大筋としてはそのような方向で対処していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/58
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059・玉置一徳
○玉置委員 生産部長のおっしゃる資源論からいう、むやみに大きくすることは全般としての経営の不安を心配する、その点はよくわかるのでありますが、そこで、合併といっても、売り手がほとんどないということは、合併もむつかしいということも、ある一面言い得るような感じもするのです。事実上どの程度を期待されておるか。ここ五ヵ年なら五ヵ年の間にその合併その他をどの程度実現すると期待されておるか。つまり、もう一つ言いますと、その百五十トンという設定を、いまの原則で間違いはないと思いますけれども、絵にかいたもちに終わらぬかどうかということを心配するわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/59
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060・久宗高
○久宗政府委員 いまの経営の拡大と関連いたしました合併その他の問題でございますが、御指摘のように、これは実はなかなかむずかしい問題でございまして、漁業種類によりましては非常に進み得るものと、漁業の実態から見まして、なかなかそういうものが進みにくいものとがあるように思うわけでございますが、私どもも一応内部で多少議論したことはございますけれども、合併をどのくらい予定しているかと申し上げますと、何かそれが既定の事実になりまして、あるいは役所としてはそのくらいでいいのかといったような考えとか、あるいは逆に、そこまでは無理でもやらせるのではないかといったような誤解も生じますので、この点はこの段階で申し上げないほうがよろしいのではないかというふうに考えております。しかし、具体的な合併そのものが有利であります経営もございますので、そのようなものにつきましては、振興計画の作成途上、またその実行の過程におきまして、相当突っ込んだ慫慂をいたしまして、必ずそのほうがいいという場合に、指導には怠りのない措置はとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/60
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061・玉置一徳
○玉置委員 非常にまじめな長官のお話だからおこりもしませんけれども、少し政治的な答弁に過ぎる。横においでになる政務次官の答弁だったらそれでいいとしても、ちょっと私はどうかと思うのです。やはり法案を審議するにつきましては、どのくらいの期待が持てるのかどうか、絵にかいたもちにならぬか、こういうことが業界にほんとうに喜ばれて、スムーズに受け入れられるのかどうか。先ほどのお話によれば、業界全体が受け入れ態勢が整ったと思うところからやるのでありますからというお話でありましたが、われわれの見るところは、なかなか実際問題として、中小漁業者、日本の中小企業者全般に言えることで、共同化、協業化、いろんなことは言いますけれども、困難が伴って、いままでの過去の経験に徴しまして非常にむずかしいと思うのです。そういう意味で、そのことをお伺いしておるのでありまして、ただいまのような答弁をいただくつもりで質問をしておるのじゃございません。
そこで、質問を続けていきたいと思いますが、このカツオ・マグロの複船経営あるいは共同経営、このことも非常にむずかしい問題だと同様に思うのですが、まず個人経営、あるいは二つのものが一緒になりまして民法の組合の形をとるか、あるいは法人化されるか——私は法人化される場合のほうが多いんじゃないかと思うのですが、そのときに、資産の再評価等の恩典を与えてこの法人化という第一段階をスムーズにいけるような方途を、税制上の恩典を与えるようなことができるかどうか、またそういう努力をお払いになっておるかどうかについて答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/61
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062・久宗高
○久宗政府委員 この問題は、現実には非常に重要な問題であるわけでございます。御存じのとおり、いままでこのような場合に、従来の例といたしましては、農業生産法人の場合に、土地制度まで手を入れまして措置したのが一番特殊な例になっておるわけでございますが、今回も折衝の過程でいろいろ経緯がございましたけれども、やはり中小漁業の振興という問題になりました場合に、一応形の上からは、法人になりました場合の問題は別問題とも考えられるわけでございますけれども、私どもは、現実にある漁業につきまして、また業界の御要望も相当強い問題でございますので、この点につきまして折衝いたしまして、ほぼこれにつきまして、今回の中小漁業に対します特別措置の、それこそ特殊な意味を考えまして、御希望のような形に持っていけると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/62
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063・玉置一徳
○玉置委員 この近代化に要する資金として初年度約三十億円を予定されておるわけでありますが、次年度からこの五カ年にどのくらいの資金を必要とするように予定されておるか。それからもう一つ、そのわずかな税制もしくは金融の恩典によって、この五カ年に日本の指定された二業種の近代化をどの程度にやれるとお思いになっているか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/63
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064・久宗高
○久宗政府委員 一応の計算といたしましては、この前、四十一年度の中身は非常に詳しく申し上げたわけでございます。大体役所の内部の準備といたしましては、それに見合う一応の五年間のカツオ・マグロ漁業と、それから以西底びきにつきまして、事業費といたしましては、三百七十三億五千一百万円というのが事業費でありまして、融資額といたしましては二百五十三億という見当を立てておるわけでございます。それで、その中の第一年度分といたしまして三十億を予定いたしておるわけでございます。これは二年度、三年度になりますと、だいぶ——初年度は特殊な期間にやりますので、こういう形になっておりますが、二年度は、たとえばいまの三十億というような金額ではございませんで、もっと相当大きな数になるわけでございます。五年間といたしましては三百七十三億、二業種につきまして計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/64
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065・玉置一徳
○玉置委員 それで一体、指定の二業種の業界といいますか、経営体の何%程度を近代化するように想定されておるか。
もう一つ、次の指定業種をあとどのようなテンポでどのようなものをお考えになっておるか。でなければ、指定されたたった二つの業界だけが五年間に、これもほんとうにびほう的な近代化しかできないと思うのです。このようなテンポでは、日本の中小漁業界あるいは沿岸漁業を含めまして、差し迫った後進国の追い上げに対抗して、日本の漁業の生産性を高めた近代化ということにはほど遠いと思いますので、二番目の次の指定業種をどのようなテンポでどのようにお考えになっておるか、具体的にお教えいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/65
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066・久宗高
○久宗政府委員 経営体につきまして何%というのは、実は非常に申し上げにくいわけでございます。ある方は船をつくりますし、ある方は船のつくり方も、機械を特に入れたいとか、いろんな形になりますので、少なくとも業種の指定がありました以上、いままで調べましたものの中から、船の関係でどういうものを、施設の関係でどういうものをということは、これまで相当業界も準備しておりますので、ほぼ見当がつくわけでございます。ただ、もっと的確に何%かということになりますと、役所的にお答えすれば、この業種に関するものは、みんなそれぞれこれの関連をつけてやればできるんだというお答えに実はなるのでございます。さような意味で、ちょっと的確にお答えできないわけでございますが、立て方といたしましては、中小漁業の中をさらにしぼっておりますので、その中で相当稠密にやってまいりたいということでございます。
それから次に、どんなテンポで指定していくかという問題でございますが、私どもの勉強がもっとしっかりできておりますれば、あるいはもう少しこの段階でも指定し得たものがあったかと思います。つまり、現在でも、御指摘のように、この二つの漁業は比較的優等生ではないかという御批判すらあるわけでございます。ただ、調査も多少いたしてはおりますし、常時分析はいたしましたけれども、業界で必ずしもそこまで足並みがそろっていないといったような問題もございまして、この段階におきましてはこの二業種に限定したわけでございますが、前回にも申し上げましたように、私どもといたしましては、法律で規定しておりますような条件が熟してまいりました場合には、ちゅうちょなくもちろん指定するわけでございます。ただ、せっかくの機会でございますので、不用意に飛び出して、十分態勢の整わないままで、それだけの施策を裏打ちしていただいて、もったいないということになってもいけませんので、できるだけ満を持して、そういうような措置を受けました場合に、十分それが生かせるような形で業種を指定してまいりたい。したがいまして、あまり限定してしまって、これだけという考え方は持っていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/66
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067・玉置一徳
○玉置委員 草野政務次官にこの点について一言お伺いをしておきます。
先ほども申しましたような国際環境の中で、日本の漁業界は、ことに中小漁業界は、私から言わしむれば、非常に微温的ではございますけれども、この法案の成立を歓迎していると思うのでありますが、この二業種だけではなしに、ある程度業界の、ことばは変ですが、受け入れ態勢その他が整えば、なし得れば、なるべくすみやかに日本の中小漁業界全般にこのことを推し進めていきたいのだというようなお考えがなければ、大きな期待を持ってこの問題を見詰めておらないと思うのです。そういう意味では、政府としてはこれに対して今後どういう心がまえでおやりになるか、ひとつ、大臣にかわりまして、草野政務次官の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/67
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068・久宗高
○久宗政府委員 かわりまして私からお答え申し上げます。
先ほどのお尋ねで、何%ということは非常に言いにくいと申し上げたのでございますが、御参考のために、隻数その他でもって大体の見当の数字がございますので、あとで担当課長から報告をさしていただきたいと思います。
それから、いまのお尋ね、政務次官からお答えしていただくわけでございますが、私がお答えいたしましたのは、非常に限定的にお聞こえになったと思うのでありますが、そうではございませんで、中小漁業全般を何とかしたい、しかし、それをやる具体的な方式としては、特定な業種で固めていきませんとそれだけの恩恵が受けられませんので、しぼりをかけたわけでございますが、ざっくばらんに申し上げまして、必要性はどの業種にも相当あるわけでありまして、それらがどのような形で熟するかによりまして、私どもといたしましては、できるだけこちらの検討も早めるし、業界でのいろいろな準備なりさようなことも詰めていただきますならば、できるだけ早く逐次指定が進んでまいりまして、全体としての中小漁業の中に幾つかの柱が確立していくような形に持ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/68
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069・玉置一徳
○玉置委員 そこで、この目標の設定でありますが、要は、資源の問題があろうとも、わが国の中小漁業の近代化ということが大眼目でありますので、目標の設定をお立てになりまして実施されることはけっこうでありますけれども、その難易その他の考えて、せっかくのこういった施策が十分に行き渡らないような点が発見されれば、私は弾力性をもって今後考えていくという態度が必要だと思いますが、長官のこれに対する答弁を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/69
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070・久宗高
○久宗政府委員 御質問の御趣旨がよくつかめないのでございますけれども、私どもといたしましては、この種の振興計画を立ててやりますと、特に政府の責任で立てるということになっておりますので、その振興計画に非常に縛られまして、これがかたいために、なかなか実情に即せぬというような御批判を受ける性質の型の行政だろうと思います。今回のこの問題につきましては、事が事でありますので、できるだけさような御批判のないような形で準備もしたいし、運用もいたしたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/70
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071・玉置一徳
○玉置委員 そこで、午前中の質問の続きですが、問題は、日本の漁業の経営の安定であるし、生産性の向上である、そして現在占めておる世界の漁業におけるわが国の漁業の優位性をどこまでも保っていき、高めていくんだ、こういうように考えますと、きょうも申しましたように、経営の安定と雇用その他の安定というようなことが必要だと思うのです。
そこで、生産部長は、北洋のサケ・マス漁業につきまして、トン数の多くなること、必ずしも生産があがるものじゃないという説明をされたわけですが、サケ・マスのあれはおっしゃるとおりでございまして、階層別に三十トンの漁業収入の指数を一〇〇といたしますれば、四十トンで一一〇、五十トンで一一七、六十トンで一二〇、九十トンまでいきましても一二五となっております。これに見合うような漁業所得が出ておりまして、三十トンで一〇〇のものが、まん中では多少のでこぼこはございますけれども、九十トンで一〇四という漁業所得が出ておるのもこのことをいうのだと思います。しかしながら、同じ裏作の問題になりますと、サンマの漁業でありますが、三十トンで漁業収入が一〇〇といたしますと、四十トンで一三一、五十トンで二二八、六十トンで三〇八、七十トンで三二七、九十トンで五三四になっております。漁業所得を見ましても、三十トンを一〇〇といたしますれば、九十トンで三倍の三一三になっておるわけです。これを通算いたしましてやりましたときに、この二つを突っ込んだような成績が出るのは当然でございます。
したがって、サケ・マスの漁業が非常に収入をあげておるといいましても、期間の短いことであります。そこの経営体としては通年の経営でものを考えなければいけませんし、乗り組んでおる漁船員につきましても同じことが言えると思うのです。年間所得が幾らだ、年間収入がどうだ。だから、三カ月のサケ・マス漁業だけをとって、その優位性はあまりないんだという言い方は間違っておるんじゃないか。サケ・マス漁業のときには、大きくても小さくてもあまり差がないことはおっしゃったとおりでありますが、裏作のサンマというものを一応例にとってみますと、かなり大きな開きがあることが言い得るわけです。そこで、通年をとってものを考えなければ、経営の安定がない、経営の安定がないところに雇用の安定はあり得ない、いわゆる漁業の近代化はあり得ない、こういう見方ができるわけでありますが、この点は率直にお認めいただけるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/71
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072・亀長友義
○亀長説明員 一般的に申しまして、必ずしもトン数の大きさと漁業の収益が比例的に増大するという性格のものではなかろうと思います。いろいろ船が大きくなければ償却費も大きくなるという関係もございます。また同時に、それだけ漁獲が伸び得るかという問題もございまして、比例的に上昇するということはないと思いますけれども、一般的に大型のほうが有利であるということは言い得ると思います。サケ・マスの場合には、いろいろ漁獲量の制限もございますし、それが個別であれ、あるいは全体的なものであれ、いずれにしても制限がございますので、船の大きいということが直ちに大きな利益としてあらわれないのでございますが、サンマの場合には、確かに御指摘のような筋合いに相なろうかと思います。しかし、サンマ船でも現在四十トン前後から五十トンのものは相当数多いのでございまして、問題は、結局現在サケ・マス漁業の人が他の漁期にサンマを兼営している。他の漁期にサンマを兼営している業種は非常に多いのでございまして、たとえばマグロ業者がある時期にサンマを兼業する、あるいは以東底びきが兼業としてサンマを行なうというふうに、現在サンマなどは日本では一つの兼業の形として行なわれております。したがいまして、このサンマ漁業における経営の合理性ということを前提にいたしまして、他の漁業に合理的なる船を用いるということに相なりますと、たとえば以東底びきにいたしましても、それぞれ以東底びきにおける資源なり経営の問題から特殊な船の制限を行なっております。サケ・マスにつきましても、サケ・マスにおける特殊な事情から特殊な船の制限を行なっております。マグロにつきましても、マグロ漁業における特殊な事情から船型の制限を行なっておりますので、その際に、兼業であるサンマ漁業の利益性を最優先に船型を考えて、他の部面、たとえばサケ・マス、以東底びき、マグロというよだ分野を従に考えるか、どちらを主に考えるかという根本的な問題がございます。
これはサケ・マスだけの問題として御質問に相なったように私考えるのでございますけれども、問題は、サンマ漁業との組み合わせの問題でございまして、サンマの合理性という観点に立って、他の漁業の漁船のトン数制限をどのように修正をするかという問題は、これは少なくともサケ・マス、以東底びきあるいはマグロというふうな各部門について検討した上で最後の結論を出すべきであろう、かように考えておるわけでございます。この三者のうちでは比較的サケ・マスは有利な漁業でございまして、有利な漁業だけに、さらにサンマの分野において特別の恩典を与えるという点については、他の種類の組み合わせでサンマを兼業している人とのバランスという点から考えましても、私どもとしては相当慎重な配慮を要するのではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/72
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073・玉置一徳
○玉置委員 午前中に申し上げましたのは、日本の漁業の近代化、生産性の向上という点と同時に、人間らしい操業の安全性を保たなければ労務者を確保することはでき得ない、こういうことを申し上げたつもりであります。したがって、そのときに、トン数を上げてみても必ずしも成績があがらぬというお話でございましたし、統計にもそういうように出ておりますが、しかしながら、いま申しましたように、経営の安定であり、経営の近代化ということになれば、裏作を含めた周年操業でなければならない。こういう点を考えますと、三十トン、四十トンまでは木造船でないとやりにくい。転覆の可能性がある。大きくなれば鋼船になるわけです。いまちょっと調べてみましても、三十トンと九十トンでは、年の償却費はほぼ同額であります。こういう点が非常に経営を安定させておるのではないかと思うのですが、そういうような意味におきまして、日本の漁業の近代化をはかるのに、なぜ遭難の多い、あるいは居住区その他劣悪な労働条件でやらなければならないような、そういうところを無理に諸般の状況を考えてということだけで押えておるのかということが私にはわからないのです。
〔委員長退席、仮谷委員長代理着席〕
なるほど許可のいろいろなむずかしい条件が各階層別に行なわれております。だから、皆さんのような専門家はかえってこのことが困難であろうと思うのです。われわれはしろうとだからこそ、こんなことでいいのかということが言えるのではないか。しろうとだからそうおっしゃるけれども、中に入ってみたらなかなかむずかしいですよと、水産庁の人はみんな言うのですよ。私は、それはしろうとのほうが正しいことを見ておるのではないか、こんなことで、日本の漁業は、後進国の賃金三分の一の御連中と一緒に勝負して勝てるはずがない、思い切った近代漁業を先進国として目ざすほかに方法はないのではないか、こう思うがゆえに、午前中もそのお話をしておったのであります。
そこで、問題点は、サケ・マスにおきましてはあまり大差はございませんけれども、サケ・マスの裏作としてまず一番多いと思うサンマの漁業につきまして、大型であれば非常に収益が多いし、それだけではなしに、午前中にも話しましたように、操業の安全という点では絶対不可欠ではないかと私は思うのです。だから、操業の安全に絶対不可欠であって、五年、十年後の日本の漁業をそこへ切りかえていかなければならないし、なおその上に、経営上はるかに採算のいいような条件があるのでありますから、そういう方向に日本の漁業を引っぱっていくという努力が、許可その他の点で考慮を払われなければならないのではないか。許可がむずかしいからというので、生命の安全までそのままにしておく漁業では、とうてい世界の後進国の追い上げに対し日本の漁業の優位を保つことができない、こう考えますがゆえに、私は御質問を申し上げておるわけです。あまりに区々にわたりましたので、質問の焦点が少しぼけたかとも思いますけれども、ただいま申し上げておりますのは、労働条件の近代化だけでも、これからの日本の漁業のあるべき姿でなければならないのに、ましていわんや、経営の安定まで伴うというような条件がそろっておるにかかわらず、そういう方向にいこうとされないのはどういう理由であるか、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/73
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074・久宗高
○久宗政府委員 たいへんむずかしい御質問で、お答えになるかどうかわかりませんが、御指摘の第一の点は、私どもも全く同じように痛感しておる問題でございます。つまり、漁業権制度も含めて、沿岸、沖合い、遠洋を含めました許可制度の現状を見ますと、まことに複雑でございまして、調整に追われまして、個々に切り刻んだ形になっておるわけでございまして、このような形がいいかどうかの問題は根本的にあると思います。
また、おっしゃるように、そういう中で、たとえば先ほどお話の出ましたような、なるべく周年操業に近いほうが経営としてもいいし、労働の関係からもいいということがわかるわけでありますが、生産部長から具体的にお答えいたしましたように、ある種の漁業につきましては、現段階でそのことをいたそうといたしますと、それぞれの調整の全体系がくずれるような問題にもなりますので、その限定の中で、できるだけ今回の一斉更新におきましても合理的な船型にしますことと、漁期の調整をいたしまして、なるべく周年操業に近い形、つまり、経営の安定できるような形を現在の制度の中でぎりぎり一ぱいにやったつもりでおるわけでございますが、いつまでもこういう形ではたしていいのかどうかという根本的な疑問はあると思います。ただ、これは先生の御質問の前段にもございましたように、確かに一つの大きな過渡期に来ておりまして、私どもの漁業の中でも、労働の問題が根本的にこの産業の基礎の問題だという認識が経営者の中に生まれてくるほどに労働力の流出がございまして、そのこと自体は、やはり他の経済発展との関連におきまして、魚の市場の関係、つまりマーケットでございますが、どういう分野にどういうふうに需要が出てくるかという問題と関連いたしまして、私どもはやっとこの段階に来まして一つの全く新しい要素が漁業に出てきたなという感じを持っておるわけでございます。
従来の一連の許可制度は、やはり非常に多数の方をある資源と結びつけますためのやむを得ない形でございまして、これらがほとんど解決のつかない問題ぐらいな感じで私どもの制度の中に巣をくっておったわけでございますが、やはり根本的に労働事情が変わってくるという事情が一つと、また、そのこと自体が、経営者から申し上げれば、どんどん労働力が流出していきまして、経営そのものがほとんど維持できない、こういったような問題が一部の漁業種類には出てきているというような状態でございますので、このような発展の中におきまして、初めて本格的な労働と経営の問題が、資源の制約はもちろんございますけれども、もう少し具体的な形で出てくる段階に来たというふうに思うわけでございます。しかし、あくまで過渡期でございまして、この段階でまだ根本的な許可制度そのものに手をつける、これは全体系に及びますので、そこまでは踏み切っていないわけでございまして、今回の一斉更新におきまして、現段階におきます一応の調整をいたしますとともに、そのような段階におきます中小漁業の振興にはこのような裏打ちが必要ではないかという形で出しておるわけでございます。もちろん、その段階におきまして、たびたび御指摘のございますような生命の安全につきましては、ようやく熟してまいりました一連の問題が乾舷マークの強制という形に一歩前進してまいったわけでございまして、遅々としておりますが、そのような方向で私どもとしては対処いたしたいと考えておるわけでございます。
なお、たびたび御質問の出ます後進国との関連でございますが、確かに、さような意味におきまして、労働問題はそういう角度の検討が必要でございましょうし、また、世界のILOの会議その他におきましても、しばしば出た代表の方々から、先進国でありながら労働条件に非常に問題があって、指摘を受けるのは非常に困るというお話があるわけでありますので、この点は二点だけ明らかにしておきたいと思いますのは、ILOその他でお話が出ます場合には、ごく特殊な問題が強調されまして、こんなことが日本ではまだできていないのかというような御質問も出るようでございますが、先ほども申しましたように、全体の漁業労働の条件と関連をいたしまして、世界の漁業の個々の経営と比較いたしまして、そう見劣りのする、とんでもないおくれた、ばからしいことをやっているとは私ども考えていないわけでございます。ただ、条約との関連におきまして、条約の討議過程におきましては、たいへんいろいろ御批判を受ける向きもあるように聞いております。
それから、もう一つでございますが、後進国の追い上げの問題がございますけれども、私どもこの段階であらためてわれわれ自身が認識し、また、そういうつもりで対処しなければならぬと思いますのは、労働条件もさることでございますけれども、やはり長い経過を経まして、沿岸から沖合い、遠洋漁業という一つの体系がそこに非常に画然とでき上がっておるわけでございます。また、それに伴います。連の関連施設というものもできておりますのが日本の漁業の一大特徴でございまして、さような体系を持っております国は、実は数えるほどしかないのではないかというふうに思うわけでございます。
そこで、単に労働条件の比較だけではなくて、そのような全体の漁業の体制、沿岸、沖合い、遠洋を含めますそのような総合的な日本漁業の体系というものを合理的な調整をいたしまして、そこに新しい活を入れていくと申しますか、特に労働力が非常に問題になるといった条件の中で、従来そのような体系の欠陥でございました一連の制度というものの検討に入っていくということが、後進国との全般的な関連におきまして日本漁業を維持いたします基本的な形ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/74
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075・玉置一徳
○玉置委員 水産庁長官のおっしゃいます、現在の漁業の秩序、体系の中でできるだけのことを配慮したつもりだという点については、私もわからぬことはないのでありますけれども、農業におきましても農地解放のような思い切ったことをやっておるわけであります。私は、現段階における日本の漁業の構造改善というものは、そのくらいのエネルギーと努力をもってやらない限り、ほんとうは十年すればしまったということになることをおそれるから申し上げておるわけでありまして、そういう意味では、ことにこれは公海のものでありますし、特定の人がそういう産業を預かって、日本の国並びに社会のために貢献をしてくれておるわけであります。その貢献に対してはわれわれ敬意を表し、あたたかく迎えなければならないと思いますけれども、それが働いている人にとってもたいして意味のないようなことでは、これは陸の農業よりももっと国の指導を強化していいんじゃないだろうか、こういうことを午前中から再再申し上げたつもりであります。
いまの各種段階の非常にこまかく整備されたトン数制限、回数制限のあれをお考えになりますから、問題は非常にむずかしゅうございますけれども、日本の漁業の経営の安定であり、生産性の向上であり、近代化だということになりますと、ただいま申しましたのは一例でありますけれども、サケ・マスの裏作として六〇%はサンマをやっておることは統計に出ておるところでありまして、イカその他を入れて、裏作の約八〇%を占めておるわけであります。こういった問題をなおざりにして、三ヵ月だけの短期間の生産性を見て、非常に有利だというふうに見ることは間違いじゃないか。せっかく中小漁業の近代化を水産庁が考えておいでになるのだったら、この許可のあり方にメスを突っ込んでいかなければいかぬじゃかないか。その整備された秩序と申しますか、体系を乱すことをおそれるのあまり、外へ一歩も出ないようなことでは、先ほど申しましたものすごいエネルギーと情熱をもって日本の漁業の近代化をはからなければならないときに、あまりにも保守退嬰ではないだろうかと思うがゆえに、このことを申し上げておるわけでありまして、将来周年操業、これなくしてはまた雇用の安定も事実上あり得ない、こういった問題に、許可権を含めて取り組んでいく決意があるかどうか、長官の決意のほどを承りたいと思います。
〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/75
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076・久宗高
○久宗政府委員 日本の漁業の将来と現行の許可制度の矛盾その他からの御指摘でございますが、確かに、一番ポイントはその辺にあると私どもも感じつつあるわけでございます。ただ、もちろんそういうような問題が基本的な問題でございますので、それと取り組んでいく覚悟は持っておりますけれども、現在の段階で、直ちに許可制度の改廃ということを申し上げる段階まで至っておりません。ただ、それにつきましてのいろいろな矛盾が非常に具体的な形でそろそろ出かかってきたなということと、また、それが、おっしゃるように、漁業発展それ自体を規制するほどの問題になりかかっているということも事実でございますし、また、そういう問題を考えます場合に、一番基本的に問題になります漁業の労働の需給関係が、これまた根本的に変わろうとしている時期でございますので、少し幅広く、若干の展望を持ちましてそういう問題と次第に取り組んでまいりたいという気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/76
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077・玉置一徳
○玉置委員 くどいようでありますけれども、先ほど申し上げておりました許可は、たとえばサケ・マスの北洋の場合を見ましても、一番多いのは三十五トンから三十九・九トン、これが百十隻であります。その次が三十トンから三十四・九トン、五十一隻であります。こういうことを考えましても、私は、五トンずつの一つの階層を区切ったようないままでのあり方は、操業の安全、経営の安定、どこから見ても、もう改良すべき時期に来ているのじゃないだろうか、三十トンの権利を買っていらっしゃいというようなやり方では、抜本的な改革はでき得ないのじゃないか、勇断を持ってこの日本漁業の近代化をはかる方法をひとつ今後御検討いただきたいことを希望しておきたいと思うのであります。
そこで、近代化の場合に、この法案で盛られておるのは税制と金融の特典だと思うのでありますが、私はこの特典だけではどうかと思いますのは、中小漁業一般に対する、沿岸漁業を含めまして、金融体系というものが、一体どうなっておるかを見直さなければならないのじゃないか。漁船その他の金融の金利のあり方につきまして、どなたかから一応の御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/77
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078・池田俊也
○池田説明員 漁業に関する金利の体系でございますが、大別いたしますと、沿岸漁業の関係と中小漁業の関係に分かれるわけでございます。
沿岸漁業の体系といたしましては、御承知のように、沿岸漁業構造改善事業というのを行なっておるわけでございますが、その一環といたしまして、金融面におきましては、非常に沿岸漁業者は零細でございますし、経済的な基盤が弱うございますので、これに対してはかなり低利の金を公庫から貸し出しているわけでございます。一般的な近代化資金といたしましては、年利三分五厘という金が出ております。それからさらに、経営安定資金という名前で呼んでおりますが、これは漁業者が病気でありますとか、その他不漁等の事由で、どうしても金が要るというような場合に出すわけでございますが、これの金利は五分でございます。その他、補助事業につきましては補助残融資といたしまして、たとえば七分五厘というような金が出ております。
それから、中小漁業でございますが、これにつきましては、たとえば漁船の建造ということでございますと、従来公庫から漁船の建造資金といたしまして七分五厘の金が出ているわけでございます。これを今回の中小漁業のこの法案におきまして六分五厘に引き下げる、こういうことを予定しているわけでございます。
ごく概括的でございますが、大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/78
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079・玉置一徳
○玉置委員 漁船の建造が七分五厘だという問題は一応さておきまして、これはやはり経営だというように考えられると思うのですが、陸の農業と同じような考え方から見ますと、近代化資金の三分五厘は当然であろうといたしまして、経営安定資金五分というのは、ちょうど自作農創設維持資金のような目的に使われておると思いますので、陸の農業の三分五厘に匹敵する金利に直すべきじゃないか、こう思います。
もう一つは、きょう大臣に午前中質疑をいたしておりましたように、調査をお願いしておきました輸出漁船の金利、それとの関連において日本の中小漁船の金利体系を見て、ひとつ御説明をいただきたい。先ほど申しました経営安定資金五分の三分五厘への努力をどうされるか、この二点について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/79
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080・池田俊也
○池田説明員 漁船の輸出の場合でございますが、これは午前中も長官からお答え申し上げたわけでございますが、輸出入銀行の当然融資対象に下るわけでございます。ただ、従来実績があまりないようでございますが、輸出入銀行の金利は四分から七分の範囲内で、融資対象に応じましてそれぞれの適当な金利を適用する、こういうことになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/80
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081・玉置一徳
○玉置委員 三分五厘の経営安定資金のほうは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/81
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082・池田俊也
○池田説明員 沿岸漁業の場合の金利は、大体農業と同じ考え方に立っているわけでございまして、先生御指摘ありました経営安定資金は、大体私どもが承知しておりますところでは、自作農の場合と同じだと聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/82
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083・玉置一徳
○玉置委員 いまのお答えは、私ちょっとど忘れいたしましたので、いずれまた調べて経営安定資金のことは質問をしたいと思います。
そこで、もう一つ、自民党の先生方の御質問の中で、基盤整備の一つの漁港の整備が非常におくれておる。道路や河川の五ヵ年計画といえば、大体三年ないし四年のうちに先食いをいたしまして、四年目でまた大幅に改定していくのがこのごろ例となっております。にもかかわらず、漁港の整備は、八カ年計画の現在の進捗率は芳しくないじゃないか、こういうことでありますが、その原因は一体どこにあるのか。私は、一つの原因で考えられるのは、国庫補助率が六割でありますか、それに対して地元の府県並びに市町村が残りを分担されるのが例となっておるように考えております。各所の港に参りましたところ、漁業協同組合長さんの御陳情は、私のほうの小さい三万、四万の市では、府県並びに市町村が二割ずつの二割をとうてい負担しきれません、したがって、それがほとんど漁業協同組合に肩がわりをしてまいります、この点も非常に大きな支出であります、こういうことを二、三カ所で陳情を受けた事実がございます。私は、こういうことがこの進捗をおくらしておる原因の一つじゃないか、こう思うのです。いままで小さい漁港に参りますと、ほとんど河口その他を利用しておられたわけでありますが、船型の大型化に伴いまして、外港にそれがほとんど出つつありますので、ほとんどのところが御承知のとおり漁港の整備をし直さなければならないことになっておりますが、それがいずれも小さくても七億とか九億とか多額の金を要するわけでありまして、二割の市町村の負担ということも相当な金額になります。そういうことになりますと、手元まことに不如意な地方財政といたしましては、これを受け持つことができないで、勢い漁家の負担に転嫁されておる場合が、いい悪いは別といたしまして、事実問題としてはかなりの数が見受けられるように私は見てまいりました。こういうことが一つの進捗率の妨げになっておるんじゃないだろうか。横でやっております同じ港の港湾関係の運輸省関係は、そういうことなしにどんどん進んでまいりますにかかわらず、こっちは一向に進まないのは、こういう問題があるのも一つの原因だと思いますが、このことをお認めになりますかどうか。そうして、これに対してはどういうように手を打っていかなければならないか。三つ目は、その問題以外に、漁港の整備計画が進まないのはどういう原因であって、それに対してはどういう手を打とうと思っておいでになるか、いささか重複のきらいもありますが、もう一度念のためにお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/83
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084・久宗高
○久宗政府委員 漁港の計画が総体的に非常におくれております点、私どもも非常に苦慮しておるわけでございますが、御指摘の地元の負担の問題これがやはり相当大きな影響をしておることは御指摘のとおりのように思います。したがいまして、私どももこの補助率を上げますことについて累年努力をいたしたわけでございまして、またその際に、事業量のほうをある程度目をつぶりましても、根本的にはこの点を何とかしておかなければいかぬということで、数年間この補助率アップ、そこに焦点をしぼった時期がございまして、その時期に大きく総体的に引き離されたという事実もございます。しかし、通覧してみますと、もちろんその問題もございますけれども、やはり他の道路なり他の港湾におきましては、たとえば貿易の振興とか、あるいは道路におきますある計画が大きく浮かび上がりまして、その時期に相当大きく質的に事業量がふえておるわけでございますが、漁港におきましては、そのような特別な時期を画しまして、これだというような打ち出し方ができませんために、総体的におくれた。その上に、先ほど申しましたような補助率——事業量をある程度目をつぶりましても、根本的に補助率の問題を解決しておかなければならないということで、そちらに努力を傾けざるを得ない時期がございまして、そういったものが相乗されまして、全体としてのおくれをとったように思うわけでございます。今回はさような問題が集中されまして、四十二年度予算におきましても一斉更新その他の問題もございますし、それから中小漁業の振興の問題もございますし、私どもとしてはこの時期にぜひ漁港のおくれを取り戻したいということで折衝したわけでございますが、たまたま財政投融資関係に景気との関連で大きなワクがはまりましたために、せっかく伸びる時期をそのワクの中でとどめられたというような不幸な経過をとっておるわけでございます。私どもといたしましては、いまの御指摘の補助率アップの問題もさらに突っ込んでまいりたいと思うわけでございますけれども、何としてもこの事業のおくれを取り返したいということで、今後も努力するわけでございますが、前回申し上げましたように、もう少し問題をしぼってまいりますと、たまたまいろいろな経済計画がここ数年の間に幾つかできてはくずれましたので、それとの関連におきまして大きな展開ができなかったわけでございますが、今後の問題といたしましては、経済が安定期に入り、また漁業のほうにおきましても、ほぼ沿岸の行き方、沖合いの行き方が集中してまいりますと、背後地の市場関係の問題も含めまして、中核的な漁港に集中的に問題を集めていくと申しますか、そういう形の計画にそろそろ組み直す必要があるのではないかということを考えておるわけでございまして、これはもちろん漁港だけの問題ではございませんで、水産物の生産から流通全体を含めました問題との関連におきまして、新しい漁港の役割りを頭に置きました計画を組み直していくような段階に入ってまいろうと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/84
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085・玉置一徳
○玉置委員 先般塩釜を見まして、つくづく思いましたのは、長官からこの間同僚議員の質問に対してお答えもありますが、漁港の整備はいまもお話しのとおり、重点的に地域地域の重点施行をしなければいかぬのじゃないか。そのときに、冷凍施設、背後の加工業、並びに遠隔地でありますけれども、東京とか仙台とかいう消費地に至ります輸送経路の難易というようなものが非常に問題になるということを見てまいったわけでありますが、いまのお話のとおり、まんべんなく平均的にものを渡すよりは、やはり東北なら東北の今度ここだけはというところの重点整備をしておおきになることが必要ではないかということを痛切に感じてきたのでありますが、いずれにいたしましても、もう少しスピードのあがるような方向にわれわれもともに努力してまいりたいと思いますので、今後の努力をひとつ要望いたしておきたい、こう思います。
話をかえまして、韓国の漁業援助でありますが、日韓問題のときに、韓国の開発を日本政府が援助する意味におきまして、先方の切なる要望にこたえて、有償、無償の一こちらから申し上げますよりも、御存じでありますから、そちらにお聞きしたいと思いますが、有償、無償でどの程度今日まで直接、間接韓国の水産業の振興のために金が渡ったかということが第一点。それから、韓国漁業の近代化装備の完成はいつごろであって、日本の漁業に響いてくるのは、それはどのような形でいつごろあらわれてくるか。三番目には、それに対してどのような調整の手を打っておおきになるつもりであるか。この三点をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/85
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086・久宗高
○久宗政府委員 御承知のとおり、日韓の話し合いによりまして、無償請求権関係では、無償の三億ドルと民間信用供与の三億ドルの中に漁業関係が入ってくるわけでございますが、実績といたしましては、請求権資金によります漁業協力では、有償は関係ございませんので、無償だけでございますが、第一年度といたしましては——第一年度と申しますのは、四十年の十二月から四十一年の十二月まででございますが、千三百五十三万ドル、第二年度は去年の十二月からことしの十二月までの期間でございますが、約四百九十三万ドルでございます。このうち漁船関係といたしましては、第一年度は当時まだ民間信用供与関係がいろいろな条件がきまっておりませんでしたために、動き出さなかったわけでございます。そこで、第一年度におきましては、暫定的にその中で、大型ないしは中型漁船、もちろん百トン程度のものでございますが、建造または導入も含みまして千三万ドルであったわけでございます。第二年度は、今度は民間信用のほうも動き出すめどでございましたので、一応無償関係は沿岸プロパーに限定いたしまして、沿岸の小型漁船ということで二百三十二万ドルの計画になっておるわけでございます。一番ごたごたいたしましたのは民間信用供与の関係でございまして、例の漁業協力関係では総額で九千万ドルあるわけでございます。その中で、沿岸関係向けの四千万ドルと、それよりもう少し大きなものを考えました五千万ドルと、二つの範疇があるわけでございます。金利その他につきましていろいろお話し合いがつきませんために、ずっとおくれてしまったわけでございますが、先般この金利なり条件もきまりまして、一応動くような形になりつつあるわけでございます。
そこで、御指摘の、そのような計画がどう完成するかという問題でございますが、昨年も経済閣僚が四人もおそろいになりまして九月に参りまして、先方の全体の経済計画のお話も聞き、私も実はその際について参ったわけでございますが、いわば全体の経済計画が、日本のみならず、各方面からの非常に多額の借款によりまして組み立てられたものでございまして、日本側といたしましては、そのような計画がはたして実行できるのかどうかという点が、経済閣僚懇談のお集まりにおきましても相当問題の焦点であったわけでございます。先方はその五カ年計画を二年くらいに詰めたいという非常にせっかちな計画でございます。したがいまして、漁業関係におきましても、こちらからの計画的な御援助ということをもっとこの段階で詰めてやってほしいという御要望が非常に強かったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、かりに日本側からの経済援助、またよその国からの援助も含めまして、韓国の経済がどういう形でいつごろどういう形になるのかについて、専門ではございませんので的確に申し上げられませんが、漁業の分野だけから見ますと、少なくともお考えのほうがはなはだ進み過ぎておりまして、現実が必ずしもそれに伴っていないんじゃないだろうかという点、テンポが非常に早過ぎるという問題が一つ。これも先方の内部の問題でございますからいかがかと思いますけれども、私ども直接御援助申し上げようとする気持ちから申し上げますと、援助を受けられて、それを使う分野でございますが、沿岸のほうで流通問題も含めまして関係の施設にもう少し大きく金を使われたほうが合理的ではないかと思いますけれども、やはり漁船のほうに非常にウエートが置かれまして、しかも沿岸の漁船もさることでございますが、たとえばよく問題になりますサケ、マスでございますとか、あるいはカツオ、マグロでございますとか、そういったものに直接の関心が非常に深いように見受けて、実はそこに相当問題があるのではないかというお話を始終いたしておるわけでございます。
そこで、そのようなものがどういう形で具体的に影響してくるかということにつきまして、いま的確に判断が申し上げられないわけでございますけれども、少なくとも私どもの計画といたしましては、特に民間信用でございますと、向こうの為替収支の関係も問題がございますので、年間のワクの中で全体の優先順位をきめて、たとえば漁業のほうを先にするのか、その他のものを先にするのかといったような問題もございまして、漁業の総ワクをきめます場合におきましても、その辺の調節が実は必要でございます。私どもの基本的な考え方といたしましては、先方の御要請もございますけれども、全体の計画から見まして非常に無理なテンポでは、せっかく御援助しても無理があってもいけないし、またかりにそのような形で実現いたしました場合には、私どものほうにもいろいろな影響がございますので、全体の計画の中で非常に無理なテンポでないこと、それから、私のほうの計画と直接摩擦を起こすような形にならないような調節を、計画を立てますとき、また計画の実行に当たりました際にお話をして、進めてまいる形をとっておるわけでございます。現在のところ、私どもといたしましては、先ほどちょっとお話の出ましたサンマその他におきまして競合が起こっているということで、非常に神経をとがらす方もあるわけでございますけれども、全体といたしましては、この経済協力によりまして非常に大きな摩擦、禍根を残すようなことはないと考えておりますし、またそのような調節をよく二国間でも話し合いまして、処理に当たろうと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/86
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087・玉置一徳
○玉置委員 そこで問題は、北九州、対馬等のそれによって直接影響をこうむります地域の日本の漁民に対して、転換方策としてどんな手を打ったか、もしくは打とうとしておるか、これが問題だと思うのです。日韓問題のときに、いろいろな点で議論は多うございましたけれども、実質被害をこうむる方々に対しまして、どのような転換策を日本政府としてとろうとしておるかということが非常に大事な一点であって、このことは当時質問もされないままに終わったのであります。私は、当時のあれで、この日本の漁業界は、漁業者側は漁業協定をどう評価し、日韓条約の締結をどう受けとめてまいるか、文字どおりとまどっているのが実情でありますということを原稿に書いておったのであります。だから、ただいま申しますそのことはうしろ向きのようにも見えますけれども、まだまだ今後手を打っていかなければいかぬ。それに対して実情は、その近海の漁家の諸君はそうお困りになっておらないのかどうか、それから転換策というものの有効適切な手を打たないでいいかどうか、この点について所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/87
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088・久宗高
○久宗政府委員 日韓の条約を締結するまでの過程におきまして、いろいろな御議論があったと思うのでありますけれども、現実にあれが発効いたしましてから一年若干たっておりますが、その過程におきましては、あの前に想像いたしましたような混乱なりそういうものはございませんで、比較的平穏に、またほぼ行政のワクに乗りまして運用をされておるわけでございます。もちろん、たびたび侵犯もございまして、取り締まり上は若干問題がございます。しかし、私どもといたしましては、この一年間たびたび向こうの漁船がこちらに入りました場合に、条約の締結直後でもございますので、一つ一つこういう形になっているので注意をしてくださいと、懇切に事情を申し上げ、向こうにお帰ししておるわけでございまして、いわば拿捕云々という形は避けてきているわけでございます。きょうから実は日韓共同委員会の第二回も始まっているわけでございますが、その間に私どもはいわば取り締まり上問題になりましたものをよくお示ししまして、韓国側におかれても、せっかくうまくいきかけております調整がくずれないようによく注意をしていただくように、お話を進めたいと思うわけでございます。たまたま漁が非常に悪うございまして、予期された漁獲よりも日本側も少ないし、韓国側も非常に少ないわけでございまして、それが多少問題になりかけたこともあるわけでございますが、これはこの水域におきます全体の漁獲が悪うございましたための問題でございまして、特にやかましい、むずかしい問題は起こっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/88
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089・玉置一徳
○玉置委員 だんだん終結をしていきたいと思うのですが、沿岸漁業のうちでは、浅海養殖業の近年の発展は目ざましいものがありますし、またこれは思い切って伸ばしていかなければならないことは御承知のとおりであります。どなたかの質問と重複するかと思いますけれども、えさの問題あるいは施肥の問題、こういう問題に思い切った力を入れていかなけれ、ばならないが、これに対してどのような予算でどうされようとしておるのか、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/89
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090・池田俊也
○池田説明員 先生御指摘の浅海養殖の関係の事業に対します国の助成でございますが、これは御承知のように、構造改善事業の一環としてやっているわけでございます。内容といたしましては、どういうようなことをそれに関連してやっておるかという項目を拾って申し上げてみますと、一つは養殖漁場の造成でございます。これはノリ等の漁場の造成でございます。それから次に、かん水の蓄養殖施設、ハマチ等でございますが、これの築堤その他のいろいろな施設に対する助成を行なっております。さらに水産種苗の供給施設、俗に種苗センターということで呼んでおりますが、そういうものに対する助成を行なっております。それから施肥でございますが、これにつきましては、施肥のための施設、具体的には施肥船——船でございますけれども、それをつくる場合の助成を行なっております。それから餌料の関係でございますが、これは従来は天然のものを使っていたわけでございますが、これにつきましては、それを保管するための施設、具体的には冷蔵庫でございますが、そういうものに対する設置の助成を行なっているわけでございます。それからさらに、養殖と申しますよりか、増殖ということばで申し上げたほうがいいかと思いますが、増殖関係の助成事業といたしましては、これも構造改善事業の一環でございますか、つきいそ事業——石を海の中に入れましてテングサその他の増殖をはかるという事業でございますが、つきいそ事業というような事業、それから魚礁の設置も、当然構造改善事業の大きな一つの柱といたしまして継続してやっているわけでございます。
大体項目を拾って申し上げますと、以上のようなとでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/90
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091・玉置一徳
○玉置委員 そのえさの問題、施肥の問題の資源の開発のための研究をどういうようにしてやっておるか、こういうことです。その予算はどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/91
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092・久宗高
○久宗政府委員 施肥関係の予算としては、そう大きなものではございません。これは広範囲にやる必要はございませんで、一定のところでめどをつければ、あとは事業に移せるわけでございますので、あまり大きな予算は組んでおりません。
それから、浅海養殖の問題につきましてのお尋ねは、現にいまやっておりますことにつきまして部長から申し上げましたけれども、おそらく御指摘は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/92
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093・玉置一徳
○玉置委員 えさ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/93
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094・久宗高
○久宗政府委員 その関係は、やはり沿岸漁業の一つの大きな根本になるのではないかというお考えでの御質問かと思うわけでございます。最近、研究機関の中で、長年の蓄積によりまして、相当思い切った新しい可能性が出てきていることは事実でございます。エビその他につきまして、すでに一部実施に移されているものもあるわけでございますが、少なくとも研究の水準から申しますと、それがもう少し行政と結びつけば相当大きな効果を生む可能性がある段階まで技術が熟してきたように思いますので、できるだけこの機会に、現在到達しております増養殖の水準で、特にえさ関係の限定のあるものにつきまして、つまり、未利用資源と申しますか、私どもが直接に口にできないものをある生物体を通しまして、それをさらに魚が食ってという形での利用が、実は相当大きな問題としてあるのではないだろうかと思うわけでございます。確かに、現在までやっておりますような増養殖関係におきましては、えさの限定がございますために、それが十分伸び切れないというわけでございますが、これからの方向といたしましては、いま申しましたような形で、えさに限定されないで、天然資源の中にこれをたとえば放流いたしまして、そこにおります未利用資源を食って、それがわれわれの口に入るような形になって、しかも漁獲ができるというような形のものに持っていきたい。エビは、そろそろその水準にきかかっておるわけでございます。その他幾つかの魚種につきまして、その可能性の芽が試験研究機関の中で芽ばえておりますので、この関係につきましては、一応その水準をよく確かめました上で——研究者は非常に慎重でございますので、相当でき上がっておりましても、なかなかそれが実施に移せないという問題がございますけれども、沿岸におきましては、それがやはりできるかできないかが振興の一つのポイントにもなってまいりますので、行政分野におきましてそれを引き上げるような形で処理をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/94
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095・玉置一徳
○玉置委員 最後に、重複いたしますけれども、資源の問題につきまして、もう一度水産庁の意見をただしておいて、私の質問を終わっていきたいと思うのですが、外国の後進国の漁業も非常な勢いでもって進出して、追いついてきつつあるわけでありまして、いずれはサケ、マスその他の現在資源保護のために漁獲について規制のあります以外のものについても、国際的な協約の必要が起こってくるのじゃないだろうか。そうなれば、日本だけ一生懸命にむずかしい許可ばかりを資源保護、資源保護といいながらやっておるいまのあり方が、そういうことを近く想定をすれば一そういうことというのは、国際的な協約を結ばなければいかぬという事態を想定すれば、自分のところだけ一生懸命に縛っておるいまのやり方は賢いのかどうか、これが第一点であります。
それからもう一つは、いずれいろいろなところから排他的に規制をされるよりは、みずから進んである時期に協約を結んでいくことのほうが、実績保護という点から考えても賢明ではないか、これが第二点であります。
第三点に、今般の領海並びに日本の港への答港阻止、外国人漁業の規制に関する法律案でありますが、その場合に、専管水域の問題につきまして三海里説をいまなお主張されておりますゆえんは、よく了承せられるわけでありますけれども一九六〇年のジュネーブの第二回海洋法会議におきましても、一票差で実現をしなかったけれども、大多数の意見もそこに集約されかかったわけでもありますので、この実績から考えても、やがては何らかの結論に達しなければならないのじゃないだろうか、こういうように考えられますが、現在の外国人漁業の規制に関する法律案だけで、はたして日本の近海の漁業を守り得るのかどうか、この際、答弁の中で長官は、さらに周辺に漁船が入ってまいりますと、あるいは漁場に対して動いてまいります力関係いかんによっては、もっと基本的な方策があるいは必要かと思います、寄り寄りその対策を検討したいと考えています、こういうようにお答えになっておりますが、具体的にいえば、どのようなことをどのようにしよう——されるという意味じゃなしに、どのようなケースがあり得るか、こういう御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/95
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096・久宗高
○久宗政府委員 資源の保護の問題でございますが、一般的にいま国際的なお集まりで、必ずまくらことばのように資源保護というお話が出るわけでございますが、ほんとうの意味で、実際的にそれだけの資源の保護をしているかどうかということになりますと、私は、やはり日本列島の周辺におきまして、たびたび御指摘を受けますようなああいう許可制度ですね、非常にしちめんどくさい規則をきっちり守って、またそれでなければ資源が維持できないというところまで、ぎりぎりに高度に利用しているという点では典型的なものだろうと思うのであります。よくよその国で資源保護云々をいわれますけれども、客観的に見ますならば、資源の保護以前に資源の高度利用がむしろ問題になるのではないかとすら思うのでありまして、もちろん私どもとしましては、この資源保護に徹底をしていくわけでありますけれども、国際的に申し上げれば、まだまだ現在の経営体で資源の保護の必要な漁種類もございますけれども、いろいろな可能性がある資源のむしろ高度利用につきまして、もっと開放的にものを考えられてししのではないかとすら思うわけでございます。
それから、国際的なさような動きの中で、日本だけがやかましく隻数を制限いたしましたりそういうことをしていることが、一体いいかどうかという問題でございますが、これはやはり何らかの意味でほんとうに資源問題が議論になりまして、どちらがとるべきかというような問題になったり、あるいはどういう規制がいいかという問題になりました場合に、私どもとしては、よその国は、私どもの漁業の制度、私どもの漁業の資源保護のためにとっております体制というものがあれほどこまかいものであることは、よく話せばおそらくびっくりするだろうと思うのです。そんなことをやっているところはどこも実はないわけであります。さような意味におきまして、私どもといたしましては、日本周辺におきましてもかりに国際的な規制をいたします場合に、わがほうはこれだけのことをやっているんだということがはっきり言えることが、同時に必要な国際規制を打ち出します場合の有力なむしろ根拠になるのではないだろうか。一部に、よそがかってにやっておりますから、こっちもかってにやったらという御意見もございますけれども、私は必ずしもそう考えておらないわけでございます。
最後に、今回の法案と関連いたしまして、これで守備できますのは領海の内部の問題でございます。公海につきましても、もちろん漁港を規制いたしますので、その漁業活動を別な意味で相当規制する効果はございますけれども、何と申しましても、直接規制の及びますのは領海の範囲内になりますので、この法案が通りましても、依然としてその領海の外の問題が残るわけでございまして、さような場合には、これは二国間あるいは数国間におきましてある種の漁業につきまして、こういうような規制のもとにお互いにやろうではないかといったような国際的な協定というものも、これは時期、方法その他にはいろいろ問題はあろうかと思いますけれども、そのような必要が十分起こり得るだろう、そういう場合には、そういうもののあるなしにかかわりませず、最小限度この法案は要るわけでございまして、そのほかに、それ以上の公海におきますいまのような規制の必要が起これば、それぞれ必要な関係国と話を進めて、そこに国際的な協定をつくっていく、こういうことも必要になってこよう、こういうことを予想しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/96
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097・玉置一徳
○玉置委員 最後に御要望申し上げておきたいと思うのでありますが、この中小漁業振興の特別措置の法案は、わが国の中小漁業の近代化という観点から出されている法案でありますが、国際的に見て、その必要性が非常に、しかも緊迫して起こっております。わが国の漁業の構造改善の観点からすれば、少しもの足りないような感じがいたします。しかも、それは規制その他も若干危惧するような点もないこともありませんので、ひとつその運用よろしきを得ていただきたい、こう思いますのと、こういった構造改善事業を実施するにつきましては、水産庁はやはり大なたをふるうぐらいの一つの力を持ってやらなければ、先ほど申しました大型化、近代化あるいは経営の安定と操業の安定、人命の尊重というような点から考えても、裏作のことまで、通年操業のことまで考えなければそのことはでき得ない。ただあちらを見、こちらを見ておったのでは、とてもできるものじゃないと私は思うのです。そういうような意味におきましては、一斉許可の場合だけがその時期ではないでしょうけれども、五年、十年の長い展望に立ちまして、一斉更新の場合にも、こういうようにいたしますぞ、あるいは悪質な違反者は一切認めません、ぞというような、きびしい行政の目標を与えるとともに、助成措置も、いまの助成措置では——私はこう言いましてはせっかくの努力に対して恐縮でございますが、なお一そうの助成措置を徹底したほうが、そこにほんとうについていきやすいんじゃないかというような点も考えますので、別にことしだけの法案にとらわれることなしに、常に御努力をいただきまして、次の国会にはまたあらためてその点の実現が期し得られますような御努力をいただきたい、かように思います。
言いたいことを言ったような感がございまして、まことに恐縮でございましたが、水産庁の皆さんの今後の御努力をひとつお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。委員長、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/97
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098・本名武
○本名委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/98
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099・本名武
○本名委員長 速記を始めてください。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/99
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100・本名武
○本名委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
本委員会において調査いたしております農林水産業の振興に関する件、特にブドウの特定農薬による効果等に関する問題について、その調査に資するため参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/100
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101・本名武
○本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
次に、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/101
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102・本名武
○本名委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
次会は、明七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X01719670606/102
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