1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十二年六月二十七日(火曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長 本名 武君
理事 仮谷 忠男君 理事 倉成 正君
理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君
理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君
理事 東海林 稔君 理事 玉置 一徳君
小澤 太郎君 鹿野 彦吉君
金子 岩三君 熊谷 義雄君
小山 長規君 坂田 英一君
田中 正巳君 丹羽 兵助君
藤田 義光君 湊 徹郎君
粟山 秀君 赤路 友藏君
伊賀 定盛君 角屋堅次郎君
兒玉 末男君 佐々栄三郎君
美濃 政市君 森 義視君
神田 大作君 中村 時雄君
斎藤 実君 中野 明君
出席国務大臣
農 林 大 臣 倉石 忠雄君
出席政府委員
農林政務次官 草野一郎平君
農林大臣官房長 桧垣徳太郎君
農林省農林経済
局長 大和田啓気君
農林省畜産局長 岡田 覚夫君
林野庁長官 若林 正武君
水産庁長官 久宗 高君
委員外の出席者
農林省農政局農
産課長 遠藤 寛二君
食糧庁総務部参
事官 小暮 光美君
専 門 員 松任谷健太郎君
—————————————
六月二十七日
委員熊谷義雄君、坂村吉正君、實川清之君及び
芳賀貢君辞任につき、その補欠として遠藤三郎
君、中尾栄一君、角屋堅次郎君及び赤路友藏君
が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員遠藤三郎君及び角屋堅次郎君辞任につき、
その補欠として熊谷義雄君及び實川清之君が議
長の指名で委員に選任された。
—————————————
六月二十四日
学校給食の用に供する牛乳の供給等に関する特
別措置法案(芳賀貢君外十二名提出、衆法第二
八号)
同月二十二日
中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願(岡田
春夫君紹介)(第一五九三号)
同(高田富之君紹介)(第一五九四号)
同(宇都宮徳馬君紹介)(第一七〇〇号)
同(北山愛郎君紹介)(第一七〇一号)
同(山本政弘君紹介)(第一七〇二号)
養ほう振興に関する請願(足立篤郎君紹介)(
第一六三五号)
昭和四十二年産生産者米価に関する請願外十六
件(赤澤正道君紹介)(第一六三六号)
同外一件(後藤俊男君紹介)(第一六三七号)
同外十六件(徳安實藏君紹介)(第一六三八
号)
同外七件(馬場元治君紹介)(第一六三九号)
同外二十二件(古井喜實君紹介)(第一六四〇
号)
同(愛知揆一君紹介)(第一七〇四号)
同(伊藤宗一郎君紹介)(第一七〇五号)
同外一件(宇野宗佑君紹介)(第一七〇六号)
同(大石武一君紹介)(第一七〇七号)
同外十一件(倉成正君紹介)(第一七〇八号)
同外一件(白浜仁吉君紹介)(第一七〇九号)
同外一件(西岡武夫君紹介)(第一七一〇号)
同(古内広雄君紹介)(第一七一一号)
土地改良区の職員給及び事務費に対する財政措
置に関する請願(丹羽兵助君紹介)(第一七〇
三号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第六八号)
漁業協同組合合併助成法案(内閣提出第二九
号)
加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を
改正する法律案(内閣提出第一二〇号)
果樹保険臨時措置法案(内閣提出第一二一号)
森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
三三号)
農林水産業の振興に関する件(昭和四十二年産
麦の政府買入価格及び麦の標準売渡価格)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/0
-
001・本名武
○本名委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案、果樹保険臨時措置法案及び森林法の一部を改正する法律案の各案を一括議題とし、趣旨説明を聴取いたします。草野農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/1
-
002・草野一郎平
○草野政府委員 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明いたします。
わが国酪農は、近年目ざましい発展を遂げてきたのでありますが、昭和三十九年ころを境に、生乳生産量の伸び率は漸次低下傾向を見せ始め、特に昭和四十一年下期からは、その伸び率が急速に鈍化するに至っております。
一方、牛乳・乳製品の需要はきわめて旺盛でありまして、特に飲用牛乳の消費の拡大は顕著なものがあり、飲用牛乳、乳製品ともに、今後とも国民食生活の高度化等に伴いまして、その需要は着実に増大するものと見込まれるのであります。
〔本名委員長退席、仮谷委員長代理着席〕
このような需給の動向に対処しまして、昭和四十一年度から施行されました加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づく加工原料乳についての生産者補給金の交付、畜産振興事業団の主要乳製品についての価格安定操作をはじめ、各種の酪農振興施策を講じてきたのでありますが、これらの施策の効果はいまだ十分あらわれず、四十一年度の年間を通じて、牛乳・乳製品の需給の逼迫傾向が持続し、畜産振興事業団の乳製品の輸入はこれまでにない量にのぼり、その輸入売り渡しにより生じました売買差益も、本制度創設当時には予想しなかったほどの額に達するに至ったのであります。
最近における生乳生産の動向がこのまま推移する場合には、わが国農業の基幹たるべき酪農は停滞の度合いを強め、今後ますます国民食生活において重要な地位を占めてまいります牛乳・乳製品の安定的供給にも支障を来たすおそれさえありますので、政府としましては、この際、各般にわたる酪農振興施策の積極的展開をはかり、かかる事態に対処しなければならないと考えている次第であります。
その一環といたしまして、今後家畜導入事業の飛躍的拡大、草地改良事業の拡充、加工原料乳生産者補給金制度の推進等の措置を講ずることとしているのでありますが、さらにこれらを補完し、生乳生産の停滞に対処し、酪農の発展を軌道に乗せるための措置として、畜産振興事業団の乳製品の輸入売り渡しに伴って生じます売買差益を、酪農振興対策に積極的に活用することとし、このたび加工原料乳生産者補給金等暫定措置法につき所要の改正を加えることとした次第であります。
畜産振興事業団は、それぞれの業務にかかる経理を業務の性格に応じ区分して経理処理することとなっており、加工原料乳生産者補給金の交付業務と乳製品の輸入売り渡しの業務とは補給金等勘定という一つの勘定において経理処理することになっておりまして、現行法においては、乳製品の輸入売り渡しに伴って生じます売買差益を助成業務等の他業務へ活用することはできないこととなっているのであります。
今回の改正法案におきましては、この点を改め、補給金等勘定において剰余を生じました場合は、その一部を畜産振興のための助成業務を経理処理しております助成勘定に繰り入れる道を開き、その繰り入れられた資金を酪農振興に必要な助成のための財源として活用することとしているのであります。
以上がこの法律案を提案する理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
次に、果樹保険臨時措置法案につきまして提案理由を御説明申し上げます。
果樹農業につきましては、政府は、農業生産の選択的拡大の一環として、その振興をはかってまいりましたが、最近、国民生活の高度化による需要の増大と、それに対応する農業者の旺盛な生産意欲に支えられ、果実の生産は急速に増加し、逐次その成果があらわれてまいっております。
したがって、わが国の農業における果樹農業の占める比重も最近とみに大きくなっており、これに伴い適切な災害対策の必要性がますます大きくなっていることは、あらためて申し上げるまでもないところであります。
このような果樹農業を取り巻く諸事情にかんがみまして、政府は、昭和三十五年以来果樹保険の制度化につき種々検討を続けてまいりました。しかしながら、果樹農業におきましては、保険制度を樹立するのに必要な諸種の資料がなお十分整備されておらない状況でありますので、果樹保険の全面的な制度化をはかるための準備として、まず、試験的に事業を実施し、保険料率算定のための基礎資料の収集、損害の評価等事業運営上の諸問題の検討を行ない、その成果に基づいて適切な損失補償制度の全面的な確立をはかることといたした次第であります。
以上がこの法律案を提出する趣旨でありますが、以下そのおもな内容について御説明申し上げます。
第一に、果樹保険の対象とする果樹につきましては、主要な種類の果樹として政令で定めることとしておりますが、当面、ミカン、ナツミカン、リンゴ、ナシ、ブドウ及び桃の六品目を予定しております。
第二に、事業実施主体につきましては、農林大臣の認可を受けて、農業共済組合連合会が果樹保険事業を行なうことができることとし、これに必要な手続を規定いたしました。
第三に、果樹保険の内容につきましては、果実の減収、樹体の枯死等による損失をてん補の対象として取り上げることとし、保険金額、保険料率等につき所要の規定を設けることといたしました。
第四に、政府は、果樹保険事業を行なう農業共済組合連合会と再保険契約を結ぶことができることとし、その再保険契約の内容は、いわゆる超過損害歩合再保険方式、すなわち連合会の保険責任のうち異常責任部分の一定割合を再保険する方式によることとし、再保険金額、再保険料率等につき所要の規定を設けることといたしました。
第五に、国は、農業共済組合連合会が果樹保険事業を行なうのに要する事務費を補助するとともに、果樹保険事業の円滑な実施をはかるため、果樹保険に加入する農業者に対して交付金を交付することとしております。
このほか、農業共済基金は果樹保険事業を行なう農業共済組合連合会に対してその保険金の支払いに要する資金を融通することができることとするとともに、農業共済組合連合会は、農業協同組合その他の果実出荷団体に対して資料の提供につき協力を求めることができることとする等、事業の円滑かつ適正な運営を期するため必要な規定を設けることといたしました。
なお、この法律は、昭和四十三年四月一日から施行し、この法律が果樹保険の試験実施のための臨時措置法であることにかんがみ、その施行日から五年以内に別に法律で定める日に失効するものといたしました。
以上がこの法律案の提案理由とおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
森林法は、森林の保続培養と森林生産力の増進をはかることを目的として昭和二十六年に制定され、今日に至っておりますが、森林計画につきましては、昭和三十七年に制度の改正が行なわれ、農林大臣が定める全国森林計画に即して都道府県知事が策定する地域森林計画に従って森林の施業が行なわれるよう、勧告及び援助措置によって森林所有者の自主的な経営努力を助長することになっているのであります。
しかしながら、その後林業を取り巻く諸情勢は大きく変化いたしております。すなわち、木材需要の増大とその需要構造の変化の進行が見られるのに対して、生産面では十分これに対応できず、農山村における労働力不足等に起因して伐採、造林等の林業生産活動が停滞を示すとともに、外材輸入が増大する等、情勢は著しくきびしさを加えてきております。
このような諸情勢に対処して、さきに林業基本法が制定され、林業における総生産の増大、生産性の向上、従事者の所得の増大という目標が明示され、以来その趣旨に沿って林業構造改善事業その他各種施策の拡充をはかってまいりましたが、森林所有者の森林施業の面におきましても、森林生産の保続と森林生産力の増進に関する長期的な見通しに即応し、地域森林計画の達成と森林施業の合理化、計画化をはかるための措置を講ずる必要が強くなってきております。
すなわち、森林の計画的かつ適期の伐採と樹種または林相の計画的改良等の推進をはかるため、森林所有者の自発的意思に基づき、地域森林計画に従った合理的かつ計画的森林施業を推進する必要があるのであります。このため森林所有者による森林施業に関する計画の作成を促進するとともにその実行を確保し得るよう、公的にその計画を認定する制度を新たに導入し、その計画に従ってする施業に対し所要の援助措置を講ずる必要があると考えるのであります。
以上がこの法案を提案いたしました理由でありますが、次に、この法案の主要な内容につきまして御説明いたします。
第一は、全国森林計画及び地域森林計画の期間の改正であります。
林業を取り巻く最近の諸情勢は、森林所有者に対し計画的な森林施業の実施を強く要請しておりますが、そのためには森林施業実施の基準となる、より長期の林政の方針を示す必要がありますので、全国森林計画及び地域森林計画ともそれぞれその期間を五年間ずつ延長することとし、全国森林計画は十五年を、地域森林計画は十年を一期とし、それぞれ五年ごとに立てることといたしました。
第二は、森林所有者は森林施業計画について都道府県知事の認定を求めることができることとしたことであります。
森林所有者は、一人でまたは数人共同して、その森林の全部につき、森林施業に関する長期の方針に基づいて、五年を一期とする森林施業計画を作成し、これを都道府県知事に提出して、それが適当であるかどうかについての認定を求めることができることとし、都道府県知事は、この森林施業計画の内容が森林生産の保続及び森林生産力の増進をはかるために必要なものとして定められた基準に適合しており、かつ、地域森林計画の内容に照らして適当であると認められるときは、その森林施業計画が適当である旨の認定をすることといたしております。
第三は、認定を受けた森林所有者の森林施業計画の順守であります。森林所有者は、その認定を受けました森林施業計画を順守して森林施業をしなければならないことといたしております。
第四に、この森林施業計画の認定の制度の推進をはかるための援助措置としまして、農林大臣及び都道府県知事は、森林施業計画の作成及びその達成のために必要な助言、指導その他の援助を行なうようにつとめることといたしております。
以上のほか、森林組合は、組合員のための森林施業計画の作成の事業を行ない得ることとすること、森林施業計画の変更その他森林施業計画の認定の制度を設けることに伴う所要の規定の整備をするとともに、必要な経過措置を定めることとしております。
以上が本法案の提案理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/2
-
003・仮谷忠男
○仮谷委員長代理 以上で趣旨説明は終わりました。
引き続き、各案について順次補足説明を聴取いたします。岡田畜産局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/3
-
004・岡田覚夫
○岡田(覚)政府委員 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、補足して御説明申し上げます。
この法律案を提出する理由につきましては、すでに提案理由説明におきまして申し述べましたので、以下この法律案の主要な内容を御説明申し上げます。
まず、改正法案の主要点は、畜産振興事業団の補給金等勘定において剰余を生じた場合は、その一部を酪農の振興等に資するための事業についての助成の業務に必要な経費の財源に充てるため、助成勘定に繰り入れる道を開くこととしている点でありまして、繰り入れにあたりましては、農林大臣の承認を受けて、補給金等勘定の決算上生じた残余の額に政令で定める割合を乗じて得た額をこえない額を、助成勘定に繰り入れることができることとしております。なお、この場合の政令で定める割合としては、現在のところ、八割と定めることを予定しております。
次に、畜産振興事業団の助成勘定におきましては、国内産生乳による学校給食に対する助成と畜産の振興に資するための指定助成対象事業に対する助成とを行なっておりますが、今回の法律改正により繰り入れられる資金については、指定助成対象事業に必要な経費の財源に充てるための資金として管理しなければならない旨規定しているのであります。なお、この場合の指定助成対象事業につきましては、農林省令で定めることとなっておりますが、その具体的内容につきましては、生乳生産の回復をはかるため当面緊急と目されます有効適切な事業を定めることを趣旨として検討しております。
最後に、附則におきましては、昭和四十一年度に生じました乳製品の輸入差益の取り扱いについて規定しております。
すなわち、この改正法案は、公布の日から施行することを予定しているのでありますが、畜産振興事業団の昭和四十一事業年度は去る三月三十一日に終了し、五月三十一日までに決算を完結しており、昭和四十一年度の補給金等勘定の剰余金はすでに積み立て金として整理されておりますので、附則をもって、すでに積み立てられた積み立て金を、その額に政令で定める割合を乗じて得た額まで減額し、その残余を助成勘定に繰り入れ、本則の規定により繰り入れる資金と同様の取り扱いをすることとしているのであります。なお、この場合の政令で定める割合としては、二割と定める予定でありまして、昭和四十一年度の決算においては、約四十二億円が補給金等勘定の積み立て金となっておりますから、約三十四億円が助成勘定に繰り入れられることとなります。
以上をもちまして、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/4
-
005・仮谷忠男
○仮谷委員長代理 大和田農林経済局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/5
-
006・大和田啓気
○大和田政府委員 果樹保険臨時措置法案につきまして、補足して御説明申し上げます。
この法律案を提案する趣旨につきましては、すでに提案理由説明において申し上げたところでありますが、ここでは、米麦等と異なり事業を全面的に実施せず、これを試験的に行なうこととした理由につきまして、若干御説明申し上げます。
政府は、果樹保険につきましては、その制度化を目途として、昭和三十五年に検討に着手し、特に昭和三十八年から三年間は、主要生産県二十一県において、ミカン、ナツミカン、リンゴ、ナシ、ブドウ、桃等について料率算定の資料の収集等のための試験調査を行なってまいりました。
しかし、保険技術上困難な問題の多い果樹保険を本格的に実施するためには、この試験調査のようないわゆる机上保険によって得られた資料では十分とはいえず、保険料率算定の基礎となる被害率、適正な損害評価の方法等について、金銭の授受を伴う実際の事業の試験的実施を相当広範囲に行ない、これを通じて精細に検討を行なう段階を経る必要があると考えられるのであります。
このような事情にかんがみまして、今回は、果樹農業につきまして適切な損失補償制度の確立に資することを旨として、昭和四十三年度から五年間、事業を試験的に実施することといたした次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして、章を追って御説明申し上げます。
この法律案は、全五章及び附則からなっておりますが、まず第一章におきましては、この法律案の趣旨と果樹保険の対象とする果樹とを定めております。
この法律は、試験的に農業共済組合連合会が果樹保険事業を行なうことができることとするとともに、政府の再保険その他必要な事項についての規定を設けることによって、果樹農業につき適切な損失補償制度の確立に資することをその趣旨としております。
また、果樹保険の対象とする果樹は、政令で定めることになりますが、政令では、果樹農業振興特別措置法の対象となっている果樹のうち、相当規模の生産量のあるものを選ぶこととし、当面提案理由説明で申し上げました六種類の果樹を予定しております。
第二章におきましては、農業共済組合連合会の行なう果樹保険事業につきまして、その実施の手続と事業の内容を定めております。
実施の手続といたしましては、農業共済組合連合会が果樹保険事業を行なおうとするときは、総会の議決を経て事業の基本となる事項について果樹保険事業計画を定めた上、農林大臣の認可を受けなければならないこととしております。
果樹保険の内容といたしましては、第一にその種類でありますが、収穫保険及び樹体保険の二種類を行なうことといたしました。
第二に、これらの内容でありますが、まず収穫保険は、果樹の種類または品種ごとに、被保険者が、果実の減収または品質の低下によって政令で定める一定割合以上の損害を受けた場合に、農業共済組合連合会が保険金額及び損害の程度に応じて保険金を支払うものであります。
次に、樹体保険は、果樹の種類または品種ごとに、被保険者が果樹等の枯死、流失等によって損害を受けた場合に、保険金を支払う保険であります。
第三に、実施主体を都道府県単位の農業共済組合連合会とする関係上、農家との連絡を密にするため、事務の一部を、必要に応じて、農業共済組合、農業協同組合等に委託することができることとしております。
その他、この事業の円滑な運営を期するため、農業共済組合連合会は、農業協同組合その他の果実出荷団体に対して、資料の提供につき協力を求めることができることとする等、制度の運用につき必要な規定を設けております。
第三章におきましては、政府の再保険事業について規定しております。
政府は、果樹保険事業について、農業共済組合連合会と再保険契約を締結することができることとしております。
再保険の仕組みは、いわゆる超過損害歩合再保険の方式によるものであることは、すでに提案理由説明において御説明申し上げたとおりであります。
第四章におきましては、国の助成及び農業共済基金の融資等について規定しております。
国の助成につきましては、すでに提案理由説明において申し上げたとおり、事務費の補助及び保険契約者に対する交付金の交付に関する規定を定めております。
次に、農業共済基金は、果樹保険事業について、農業災害補償法による保険事業の場合と同様に、農業共済組合連合会に対して資金の貸し付けを行なうことができることとしております。
第五章は、罰則に関する規定であります。
附則におきましては、この法律案の施行期日及び失効並びに農業共済再保険特別会計法の一部改正について定めております。
この法律は、昭和四十三年四月一日から施行し、その日から五年をこえない範囲内で別に法律で定める日に失効することとしております。
農業共済再保険特別会計法につきましては、果樹保険についての政府の再保険事業の経理は、農業共済再保険特別会計に臨時果樹勘定を設けて行なうこととしております。
これをもって提案理由の補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/6
-
007・仮谷忠男
○仮谷委員長代理 次に若林林野庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/7
-
008・若林正武
○若林政府委員 森林法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。
本法案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下、その内容の概略を御説明申し上げます。
第一は、全国森林計画及び地域森林計画の期間についての改正であります。森林計画は、その地域内における森林所有者の森林施業の実施のための指針となるものでありますが、森林所有者に対し計画的な森林施業を要請するに際しては、より長期の林業政策の方針を示すことが必要と考えるのであります。そこで、第四条及び第五条を改正し、全国森林計画は十五年を一期とし、地域森林計画は十年を一期とし、それぞれ現在より五年間長い期間の計画として、五年ごとに立てるものとしたのであります。
次は、森林施業計画の認定の制度を設けることといたしましたことによる改正であります。
その第一点は、森林施業計画の認定の請求及び都道府県知事の認定でありまして、第十一条及び第十八条の改正であります。
森林所有者は、一人でまたは数人共同して、その者が森林所有者である森林の全部につき、森林施業に関する長期の方針に基づいて、五年を一期とする森林施業計画を作成し、これを都道府県知事に提出してその森林施業計画が適当であるかどうかにつき認定を求めることができるものといたしました。この場合、小規模森林所有者の森林施業計画の作成を推進するため、第七十九条を改正し、森林組合は、組合員のための森林施業計画の作成の事業を行ない得るものといたしております。
都道府県知事は、森林所有者からの認定の請求がありました場合に、その森林施業計画の内容が森林生産の保続及び森林生産力の増進をはかるために必要なものとして、政令で定める樹種または林相の改良その他の森林施業の合理化に関する基準に適合しており、かつ、地域森林計画の内容に照らして適当であると認められるときは、その森林施業計画が適当である旨の認定をすることといたしております。なお、この認定は、第十七条の改正規定により認定を受けた森林所有者の包括承継人に対しても効力を有することとしております。
第二点は、森林施業計画の変更でありまして、第十二条の改正であります。
都道府県知事の認定を受けた森林所有者は、当該森林施業計画の対象とする森林とその者が森林所有者である森林との範囲が異なることとなった場合または認定を受けた森林施業計画の内容が認定の要件に適合しなくなったときに都道府県知事からその旨の通知を受けた場合には、都道府県知事に森林施業計画の変更の認定を求めなければならないこととするほか、森林施業計画の変更を必要とする場合には、その変更の認定を求めることができることとしております。
第三点は、認定を受けた森林所有者の森林施業計画の順守義務に関する第十四条の改正規定でありまして、認定を受けた森林所有者は、森林の施業につきまして森林施業計画を順守しなければならないことといたしております。
第四点は、認定を受けた森林施業計画に従った施業の実施を確保するための措置に関する第十五条及び第十六条の改正規定であります。
都道府県知事の認定を受けた森林所有者は、当該森林施業計画の対象とする森林について立木の伐採、造林等をした場合には、その後において都道府県知事にその届け出書を提出しなければならないものとして、その施業の確認と必要な指導に万全を期することとしております。また、都道府県知事は、森林施業計画を順守していないと認められるとき、森林施業計画の変更の認定の請求をすべき場合においてその変更の認定の請求をしないとき、もしくは請求をしましてもその認定を受けられなかったとき、または森林施業計画の対象とする森林について伐採、造林等の届け出書の提出をせず、もしくは虚偽の届け出書の提出をしたときには、森林施業計画の認定を取り消すことができることとしております。
第五点は、森林施業計画の認定の制度の推進をはかるための農林大臣及び都道府県知事の援助措置でありまして、第二十条の改正でございます。
農林大臣及び都道府県知事は、森林施業計画の作成とその達成のために、必要な助言、指導、資金の融通のあっせんその他の援助を行なうようにつとめるものとすることといたしております。
以上のほか、森林施業計画の対象とする森林の所在地が二以上の都道府県にわたる場合には、森林施業計画の認定その他この森林施業計画の認定の制度において都道府県知事の権限に属させた事項は、農林大臣が処理することとする等、所要の規定を整備するとともに、必要な経過措置を定めることとしております。
以上をもちまして本法案についての補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/8
-
009・仮谷忠男
○仮谷委員長代理 以上で補足説明は終わりました。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三十三分休憩
————◇—————
午後零時十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/9
-
010・高見三郎
○高見委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案に対する質疑はすでに終局いたしております。
これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
漁業災害補償法の一部を改正する法律案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/10
-
011・高見三郎
○高見委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/11
-
012・高見三郎
○高見委員長代理 この際、ただいま可決いたしました本案に、角屋堅次郎君外三名から、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
まず、提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/12
-
013・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、皆さんのお許しを得まして、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四派を代表いたしまして、漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付する動機を提出いたします。
まず、決議案文を朗読いたします。
漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)に対する附帯決議(案)
政府は、本制度が真に中小漁業者の漁業経営の安定を図り、漁業生産力の発展に資するためさらに左記事項について、すみやかに検討を加え、これが実現を図るよう努めるべきである。
記
一 政府の漁業共済保険事業については、今回の改正による方式のほか異常災害、通常災害の区分による保険制度についても検討を行ない、その検討の結果にもとづき適切な措置を講ずるとともに、漁具共済事業についてもすみやかに保険事業を実施すること。
二 本制度発足以来今日までの間に生じた漁業共済団体の赤字分(金利負担分を含む。)については、事業の円滑な運営に支障を生じないよう財政措置を講ずること。
三 政府の保険責任部分に係る漁業共済組合連合会の再共済金の支払いに必要な資金については、保険金の概算払制度を実施する等国において適切な措置を講ずること。
四 共済掛金率の改定にあたっては、漁民の経済負担力の弱少の実情にかんがみ、その引上率は最少限度にとどめるよう措置すること。
五 中小漁業者の加入を促進するため、補助限度率の引上および単独契約についても国の助成を行なう等適切な措置を講ずること。
六 政府の保険責任を連合会の手持掛金の一定率以上とする場合の一定率(一三〇%、一二〇%等)については、連合会の経営の安定を図る立場で慎重に措置すること。
七 共済組合と連合会の共済責任分担率は、今後の実施状況に応じ検討を加えること。
八 義務加入制度をすみやかに実施すること。
九 無事故継続加入者に対しては無事故戻制度又は掛金割引制度を採用する等優遇措置を講ずること。
十 漁業共済団体の事務、人件費及び宣伝啓蒙費等を増額するとともに、事務の近代化のため機動力の充実を図ること。
十一 可及的すみやかに、任意共済をこの法律に基づく事業とすること。
右決議する。
以上であります。
本決議案の内容につきましては、現在までの本委員会の審議により、十分明らかにされておりますので、この際あらためて御説明申し上げる必要はないと存じますが、念のため、特に重要な点、数点について、簡単に触れておきたいと思います。
まず、決議案の第一の異常災害と通常災害の区分による保険制度の確立についてであります。この件につきましては、中小漁業者等の長い間の要望でもありますし、真に中小漁業者の漁業災害補償とするため、国の責任において行なう異常災害に対応する保険制度及び漁業共済団体の責任において行なう通常災害に対応する共済制度を骨子とした制度に改めるように特段の努力を要望し、近い将来その実現を期待するものであります。
次に、第二の漁業共済団体の赤字分の処理についてであります。昭和三十九年、漁業災害補償制度発足以来、今回の改正により政府の保険事業実施までに生じた共済団体の共済金の支払い超過分及び事業運営にかかる金利負担分については、法案審議中しばしば質疑にのぼったとおり、各党とも、国の保険事業実施を機会に国の財政で全額措置すべきであるとの主張が強かったのであります。したがいまして、政府は、事業の円滑な運営に支障を生じないよう、最も近い機会に国の財政で措置し、団体の財政の負担を軽減することを強く要望いたしておきます。
次は、第四の共済掛け金の引き上げについてであります。今回の掛け金の改正にあたっては、二倍、三倍という大幅引き上げ率のものも含まれており、漁民の負担力、加入の促進等の点から見て、きわめて問題であります。掛け金の引き上げ率につきましては、わが日本社会党は最高二割の範囲内で認むべきであると主張し、民主社会党も公明党も、おおむね同様の主張をいたしておるのであります。自由民主党もまた、漁民の経済負担力の弱小の実情にかんがみ、引き上げ率を最小限度にとどめることに賛成であります。共済事業の経営実績から見て、基本的な問題はありますが、各党のこのような主張の趣旨を体し、掛け金の引き上げの抑制のため、掛け金補助の増額等、中小漁業者の負担軽減に一そうの考慮を払うべきであると思うのであります。
次は、第六の政府の保険責任の定率の件でありますが、政府は、今回の改正により、連合会の手持ち掛け金の一三〇%と政令で定めることを予定しているようでありますが、委員会の審議中にもありましたように、一二〇%あるいは一二五%にすることについての理論についても真剣に検討を加え、連合会の事業の発展のために適切な率を適用するように要望する次第であります。
次に、第十の諸事項であります。前段に掲げてあります共済団体の事務、人件費及び宣伝啓蒙費については、現在も若干の予算化はされておりますが、今回の改正を契機として、強力な加入促進をはかることになるわけであります。したがいまして、先行投資の立場から、政府においても、団体が十分活動ができるよう、これらの経費につきましては、大幅に増額してやるべきものと思うのであります。また、事務及び事業の近代化、能率化をはかるために、都道府県の共済組合に対し機動力を持たすことが必要であり、かつ、緊急事と思うのであります。
〔高見委員長代理退席、委員長着席〕
それがため、組合に対してはすみやかにライトバン及びオートバイを配置するとともに、全国団体に対しては、将来電子計算機を設置することができるよう配慮する必要があると思うのであります。
なお、以上の諸点のほか、第三項の、政府の保険責任にかかる漁業共済組合連合会の再保険金の支払いに必要な資金についての保険金の概算払いの制度の実施問題、あるいはまた、第五の、補助限度率の引き上げ及び単独契約についても国の助成を行なう配慮等、さらにまた、第七の、共済組合と連合会の共済責任分担率について、今後の実施状況に即応して検討を加える問題、第八の、義務加入制度をすみやかに実施する点、さらに第十一の、任意共済をこの法律に基づく事業とすることをすみやかに実施する点等も、いずれも重要でございまして、これらの点も附帯決議に付しておることは御承知のとおりであります。
何とぞこれらの附帯決議の問題については満場御賛成を賜わりますようにお願いを申し上げまして、提案理由の説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/13
-
014・本名武
○本名委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。
ただいまの角屋堅次郎君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/14
-
015・本名武
○本名委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。
この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。倉石農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/15
-
016・倉石忠雄
○倉石国務大臣 ただいま御決定になりました附帯決議につきましては、十分に検討いたしまして、その趣旨が貫徹できますように努力をいたしてまいりたいと思っております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/16
-
017・本名武
○本名委員長 次に、漁業協同組合合併助成法案を議題といたします。
本案に対する質疑はすでに終局いたしております。
これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
漁業協同組合合併助成法案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/17
-
018・本名武
○本名委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/18
-
019・本名武
○本名委員長 なお、ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/19
-
020・本名武
○本名委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
—————————————
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/20
-
021・本名武
○本名委員長 引き続き、農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
この際、昭和四十二年産麦の政府買い入れ価格及び麦の標準売り渡し価格について、政府から説明を求めます。小暮参事官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/21
-
022・小暮光美
○小暮説明員 本日より米価審議会をお願いいたしまして、食糧庁長官から、四十二年産麦の政府買い入れ価格及び麦の標準売り渡し価格の決定に関連いたしまして、御審議をお願いいたしておりますので、参事官からかわってその概要を御説明申し上げます。
まず、政府買い入れ価格でございますが、御承知のように、麦の政府買い入れ価格は、農業パリティ指数を用いまして算出されます額、これを基準に決定いたすことに従来いたしておりまして、本年も基本的にはその考え方に基づいて政府買い入れ価格の決定をお願いいたしたいというふうに考えております。ただ、昨年の米価審議会の際にも申し上げておりましたことでございますが、現在の農業パリティ指数は、昭和三十五年の農家の支出の実態に基づきまして、パリティの算出の基礎でございます支出のウェートが定めてございます。すでに相当の年数を経過いたしておりまして、特に昭和三十五年から四十年までという五カ年間は、御承知のように、経済のさまざまの側面できわめて急激な変動のあった時期でございます。昭和三十五年の支出金額に基づくウエートで農業パリティ指数をはじき出しますことは、農家の支出の実態を反映しないという問題がございます。かたがた行政管理庁のほうでも、政府の各種の指数につきまして昭和四十年基準にできるだけ改めるようにということもございまして、昭和四十年度の農家の支出金額に基づくウエートにこれを改定いたして農業パリティ指数を算出することに改めたいというふうに食糧庁としては考えております。ただ、先ほども申しましたように、非常に経済変動の激しい時期にこの五カ年間が遭遇いたしておりますために、古いウエートに基づいて従来どおりに算出されますパリティ指数と、新たに昭和四十年度の農家の支出金額に基づいてウエートを定めまして試算いたしましたパリティ指数との間に、従来になく差が出るわけでございます。ウエートの改定は、すでにこれまで二回いたしましたラスパイレスの算式の性格から、新しい算式がやや低目に出るということは、過去二回の経験でも明らかになっておりますが、今回はその差がきわめて大きいように見られますので、パリティのウエートの改定に伴う影響を緩和するために、指数に若干の調整を加えることはいかがかという考え方で、具体的にはこの一年間新しい指数のもとで、この一年間に上昇したと思われる値上がり率と申しますか、これが約四・五二%になるわけでございます。その一年間に四・五二%上がったという姿に着目いたしまして、前年産の麦価にこの新指数による一年間の上がり分、これをかけましたものを基準としてものを考えたらいかがかというふうに考えております。古い指数の昨年の五月と新しい指数の本年の五月と直に比較するのは従来の形でございますが、そういう形にいたしますと、三・一%前後しか上がらないという形になりますので、ただいま申しましたような指数の調整をいたして、ウエートの改定に伴う影響の緩和に配慮して決定するということにしていただいてはいかがかということで、ただいま審議会におはかりいたしております。
標準売り渡し価格につきましては、食糧管理法並びにこの付属法令に基づきまして、御承知のように、家計費に基づき算出されます価格、俗に家計麦価と申しておりますが、その範囲において米価との関係に基づき算出されます。これも対米価比というふうに言いならわされておりますが、これをその額をもって定めるというのが従来の考え方でございます。その考え方の基本は本年も変わらないわけでございますが、これによって算出されました額が、おおむね前年の決定いただきました標準売り渡し価格とほぼひとしいように試算されますので、一応前年の標準売り渡し価格と同じというふうに考えた額、これを基準といたしまして、本年は特に昨年来米価審議会等に御説明いたしまして、種々検討いたしております麦の管理改善対策、これは製粉、精麦等の加工業者と産地の農協との間で麦の流通に関する契約を結んでいただきまして、これに基づいて生産奨励金を生産者に渡すという構想で、ただいま関係の向きといろいろ検討を取り進めております。その生産対策費が円滑に企業から支出されるようにいたしたいという考え方を一つ持っております。
そのほかに、外国産の小麦につきまして、外国産小麦の国内における売り渡し価格の銘柄間の格差、これがこれまで内麦との品質格差ということを基準にして定めてまいりましたために、長い間に実際に輸入されます海外におけるそれぞれの銘柄の品質格差とかなり大きな隔たりが起こっております。そこで、価格水準はどこまでも内麦の価格水準を基準といたしまして、それとの品質格差で外麦の価格水準を考えますが、外麦の相互の中での銘柄間格差、これにつきまして、漸次海外における銘柄間格差に近寄せていきたいという考え方を、今回の外小麦の売り渡し価格の考え方の中に織り込んでまいりたいというふうに考えております。
なお、その場合に、外麦の中で下がるものもございますが、上がるものもあるわけでございます。銘柄間の格差を実態に近づけようという考え方で、主としてハード系の小麦に一部値上がりを見るものがある。それからソフト系の小麦では、ウエスタンホワイトのような中心的な銘柄は逆に若干引き下げるというようなことを考えております。このハード系の小麦が若干値上がりいたしますことに関連して、一般家庭の購入する食パンの価格に影響を及ぼさないように配慮する必要があるのじゃないかという問題を含めまして、麦の標準売り渡し価格についての決定をお願いしたい。
以上申し上げましたような趣旨で、ただいま政府買い入れ価格並びに標準売り渡し価格についての御諮問を申し上げておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/22
-
023・本名武
○本名委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/23
-
024・石田宥全
○石田(宥)委員 私は、ただこれから審議を進めるにあたりまして、資料の要求だけをいたしたいと思いますので、委員長のほうでしかるべくお取り計らいを願いたいと思います。
最初に、消費者米価の変動と物価上昇の関係、それから、消費者米価値上げと小麦消費量の関係、三番目には、麦作付面積の昭和三十年度以来の推移、四、米生産費調査農家の変動の状況、五、三十九、四十、四十一年度の八〇%バルク農家の生産費と八〇%バルクライン農家の住所、耕地面積、労働人員、六、調査農家の階層分布、七、平均生産費と従来とってきた標準偏差と八〇%バルク農家の生産費の比較、八、四十一年度米生産費中の時間当たり賃金、九、学校給食用パン食及び農家のめん類消費の状況、十、国際的食糧需給状況、十一、戦前、食管法以前の深川、堂島等米穀取引所における内外米価格の比較、以上でありますが、先般当委員会において大野委員から要求があった資料、並びに今回米価審議会が開かれるにあたりまして、政府で用意されておる資料とダブる面があるのではないかと存じますので、その分については省いて、要求いたしました資料をそろえていただきたいと要望申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/24
-
025・本名武
○本名委員長 佐々栄三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/25
-
026・佐々栄三郎
○佐々委員 中国のことわざに「狡兎死して走狗煮らる」というのがございますが、私は、麦の問題を考えますと、いつもこのことばを思い出すのであります。終戦直後しばらくの間、国民が非常に食糧に不足をいたしましたときには、いわゆるあめとむちとでも申しますか、ときには強権供出、いわゆるジープ供出が行なわれるかと思いますと、また一方では追加払いとか、あるいは特別加算とか減収加算というような、いろいろなあの手この手の方法が使われて、麦の買い入れに血道をあげた時代がありました。今日ようやく食糧難が緩和をいたしまして、麦に対する政府の考え方と申しますか、やり方というものが、当時を知る者にとりましては、とうてい想像もできないような酷薄というか、薄情というか、麦及び麦作農家に対してまことに冷淡な措置、態度がとられておるように私は思うのでございます。そういうことを反映しましてか、麦についての質問の時間が非常に限られておりますので、私は、考えておりますことを十分に御質問をして、農林省の当局の方々の御意見を十分聞き出すということは不可能だろうと思いますけれども、若干の問題につきましてお答えをお願いしたいと思うわけであります。
いま述べましたように、麦に対する当局のやり方というものが非常に冷淡なやり方になっておるのにかかわらず、今日麦に対する需要というものが相当高まってきておるようでございます。麦需要に対する今日の趨勢とその理由、それから今後の見通し、まず、私は、この点について御意見をお伺いをしてみたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/26
-
027・小暮光美
○小暮説明員 御指摘のとおり、近年食生活の構造が次第に変わってまいりまして、粉食を中心に麦製品の需要は年率わずかずつながら着実に伸びております。今後も人口増加の問題のほかに、麦製品に対する一人当たりの需要量の増大が見込まれますので、今後もなお麦の消費需要は増大するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/27
-
028・佐々栄三郎
○佐々委員 こまかいことをお尋ねするのを省略しまして、それでは麦に対する需要が非常に増大をし、今後、私の承ったところによりますと、十年後の昭和五十一年には、これは間違っておるかもしれませんが、小麦については六百六十万トン、大麦、裸麦については二百五十五万トンの需要が起こってくるだろうというふうなことを、私ある資料で見たのでありますけれども、それはともかくといたしまして、今後相当量の需要増し、これは人口の増加に伴う点もあると思いますが、食生活の変化によって、こういうふうに需要が増加をしてくると思います。
それでは、これに対して、これに見合うべき麦生産の状況はどうであるか。今日までの趨勢と今後の見通しなどについて、簡単でよろしゅうございますから、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/28
-
029・小暮光美
○小暮説明員 先ほど主食のことだけについて申し上げましたけれども、御指摘の数字とあわせて考えますと、実はえさの需要といった問題もございまして、先ほど御指摘のような数字が試算としてはあり得るかと存じます。
ただいま御質問の生産の状況でございますが、精麦用の大麦につきましては、作付面積が年々減少いたしておりまして、昭和三十七年を一〇〇といたしますと、四十一年で六六・八という程度に作付面積が減少いたしております。若干の反収の増加がございますので、実収高としては約七割程度になっております。ビール麦につきましては、これはやや事情が変わりまして、三十七年を一〇〇といたしまして、九六・八%程度になっております。何とか増産いたしたいというふうに考えております。年により若干ふえることもございますが、まだ残念ながら横ばい程度でございます。数量もほぼ横ばいでございます。それから裸麦につきましては、同じ三十七年から四十一年までの間に五八・九%という作付反別の減少を見ております。小麦につきましては、六五・六%という作付面積になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/29
-
030・佐々栄三郎
○佐々委員 小麦、大麦、裸麦を合計いたしまして、昭和三十五年に対して昭和四十年度で大体生産量が半分になっておるというのが、これが農林省から発表されておる統計の数字だ、こう考えております。これは非常な激しい勢いをもってする麦生産の減少だと、こう申して差しつかえないと思います。
ところで、麦の消費の需要が上がり、生産が反対に下がる、そういたしますと、結局その差額というものは、これは輸入に仰いでおるわけでありますが、その輸入の今日までの趨勢と、それから今後の見通し、並びに、これは昨年度でよろしゅうございますが、外麦を買うために支出をいたしました金額、それと数量、簡単でよろしいからお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/30
-
031・小暮光美
○小暮説明員 外国産麦の輸入の動向は、主食用といたしまして、先ほど申しました三十七年と比較いたしますと、三十七年度に主食用百六十九万五千トン、それから四十一年度に三百一万七千トンに増加いたしております。そのほかに、飼料用として三十七年度に七十二万三千トン、四十一年度で九十七万トンのものを輸入いたしておりますので、合計いたしますと三十七年度が二百四十一万八千トン、四十一年度が三百九十八万七千トンということになります。
今後の見通しにつきまして、的確な数字的な見通しを申し上げる用意がただいまございませんけれども、主食用の伸びのほかに、ふすま等をとりまして、むしろ粉のほうが逆に副産物になるといったような形での消費を含めまして、えさ用需要を含め、やはりかなりの増大になる傾向にあるというふうに考えております。
なお、金額というお尋ねでございましたが、ちょっと外貨に換算した数字をただいま持っておりませんが、約三百万トン、主食用三百万トンと考えましたときに、トン当たり輸入原価で約三万円前後に相なるかと思います。なお、時間がございましたら、数字を取り寄せてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/31
-
032・佐々栄三郎
○佐々委員 三十七年に小麦百六十八万トン、四十一年度、これは見込みの数字でありますが、三百六万トンということになっております。それを事実といたしますと、小麦だけで約倍額になっておる、こういう勘定でございます。
それから、いまの金額ですが、大体私の計算したところ、主食用、飼料用合計で三百九十八万七千トンで、八百億円あるいは九百億円以上になるのじゃないでしょうか。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/32
-
033・小暮光美
○小暮説明員 先ほどトン当たり三万円前後とたいへんラフに申し上げましたけれども、二万八千円ぐらいかと思いますので、大体御指摘の数字に近いかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/33
-
034・佐々栄三郎
○佐々委員 そこで、先ほど麦の生産が非常に減少しておるということについてお答えをいただきましたが、結局いろいろな原因があるにいたしましても、最大の原因は麦の作付面積の減少である、こういうふうに考えるわけであります。そこで、麦の作付がいままでどういうふうに減少してきたか、これも今後の見通しがつきましたならばお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/34
-
035・小暮光美
○小暮説明員 食糧庁という立場からちょっとお答えしにくい点がございますが、間違えましたらまた農政担当のほうから後刻御訂正をいただくことにいたします。
作付面積の減少面積は、先ほど申し上げたような趨勢でありますが、昨年、一昨年と麦対策につきましていろいろ省内で検討いたしました際の分析から判断いたしまして、一つは水田の裏作の麦、これが労力的にも畑の麦よりも生産費がやや高いという事情がございます。それから比較的経済立地に恵まれた、いわば平たん部の水田が面積としては多いわけでございます。もちろん山間僻地にもございますけれども、面積としては経済立地に恵まれたところが多い。そこで、他に就業の機会があると申しますか、あるいは野菜、あるいは水田裏のイチゴ、その他農業といたしましても換金作物としてより有利なものがあり得る。それから他産業に就業の機会があり得る。しかも水田の裏は畑麦よりも生産費がどうしても高いという事情がございまして、水田の裏における減少が特に目立つようでございます。もちろん畑麦につきましても減少の傾向がございますけれども、非常に大きく減少面積を左右しておりますものは、近年の趨勢では水田の裏作の麦でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/35
-
036・佐々栄三郎
○佐々委員 大体私の調べたところによりますと、昭和三十五年に百四十四万ヘクタールであったものが、四十一年で八十一万ヘクタール、半分近い減少を示しておるわけでございます。私どもは、こういう事実が起こったということについて当局の責任をただしたいと思うのでありますが、それはともかくとして、その次に関連をしてお尋ねをしたいことは、耕作麦の作付の減少ということは、他の作物に転換をするとか、ただいまお話がありましたようないろいろな事情がありますが、そういうような不作付地の中で、そういうようなもの以外に、全然耕作を放棄したという、そういう事情があるわけだと思います。いわゆる休閑地と申しますか、耕作の意思があってほかの事情で耕作できないのではなくて、そもそも耕作の意思がなくて耕作をしないという場合があり、またそういう土地があると思います。いわゆる耕作放棄地です。そうした不耕作地が昨年度でけっこうでございますから、大体何ヘクタールぐらいあるかということをひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/36
-
037・遠藤寛二
○遠藤説明員 ただいま累計の数字を持ち合わせておらないのでございますが、四十一年において作物別に申しまして、小麦で不作付地となりましたものが二万八千六百ヘクタール、それから大麦で六千八百ヘクタール、ビール麦で五千四百ヘクタール、裸麦で八千五百ヘクタール、それが昨年単年度の減少でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/37
-
038・佐々栄三郎
○佐々委員 ちょっと私の統計数字が見方が間違っておったのかもわかりませんので、もう一度お尋ねしたいと思います。経営地面積が全部で五百八万五千ヘクタール、これに対して休閑地が百五十七万六千ヘクタール、約三割が休閑地になっている、こういうふうに私は了解しているのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/38
-
039・遠藤寛二
○遠藤説明員 ただいま申し上げました数字は昨年単年度でその作物ごとの増減を申し上げましたので、そういうことになりますが、全体の面積といたしまして、冬作物でほかにも減ったものもございますので、大体そういう数字になるかと思います。私もいまちょっとはっきりした数字を持ち合わせておりませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/39
-
040・佐々栄三郎
○佐々委員 どうもたよりないお答えと思います。百五十七万六千ヘクタールが休閑地になっておるわけです。これはもう麦をつくってもおもしろくないからつくらぬという耕作放棄です。
そこでお伺いしたいのですが、この百五十七万六千ヘクタールというものに麦をつくったならば、一体どれだけの収益があるか、そこで計算していただいてもけっこうですが、概算でよろしいからお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/40
-
041・遠藤寛二
○遠藤説明員 急に計算いたしましたので、あとからまた正確な数字は計算し直しますが、大体におきまして二千億くらいになるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/41
-
042・佐々栄三郎
○佐々委員 私もその程度だと思います。
そこで、大臣にせっかくおいでいただいたのでお伺いいたしますが、当局の施政のやり方が悪いのかどうか、その点についてはともかくといたしまして、農民が麦を耕作することを放棄しておるという土地がいま申したように百五十七万ヘクタールもあり、そのために、毎年毎年約二千億の損失を国家としてはいたしておるわけであります。これについて農林大臣としてはどういうふうにお考えになるかということをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/42
-
043・倉石忠雄
○倉石国務大臣 先ほど来ここでお話がございましたように、麦につきましては、大体その裏作を放棄する傾向が出てまいっている。これは麦をつくっておることによって所得が期待いたしておるよりも少ない。したがって、ほかのほうの産業に出て現金収入をとるほうが楽だという考え方が多く出てまいっておることはいなめない事実でございます。私どもといたしましては、昨年米審でも御意見がありましたように、麦についての将来の方向について検討すべきであるということであります。私どもは、やはり労働力が他産業に流出いたしてまいり、生産がこれに伴わない、かろうじて水稲におきましては御承知のようないろいろな施策を講ぜられておりますので保っておるわけでありますが、麦につきましてはなかなかむずかしい問題がたくさんあります。ことに御存じのように、畑作物の麦の間には、間、間に植えてまいりますそういうものが、取り入れのときに妨害になりますので、機械化いたしてまいることが非常に困難な情勢である。そこで、省力のために機械力を用いようとしても、そういう支障がありますので、これはやはり大きな規模で主産地を形成して麦作をやるというようなところでなければ、なかなか大型の機械を用いることができない。そういうことで、麦作地帯においてはいろいろなネックがあるわけでありますが、私どもといたしましても、ただいまの麦の需要の状況、これは麦につきましてはそれぞれ用途がございますけれども、日本人の食糧の需給動向から見ましても、めん類を主としておる国内産麦というもののある程度の維持は絶対に必要でございます。そういう見地に立ちまして、昨年も二億五千万の資金を出しまして、この維持改善について努力をいたしておるわけでありますが、何にいたしましても、傾向として、麦というものが、裸とかあるいはビール麦のような特殊な契約によって所得を確保されるものは減っておりませんけれども、その他のものについては漸減の傾向がある。これをひとつ何とかして奨励をしていかなければならないということで、昨年の予算でもお願いし、四十二年度予算でもお願いいたしておるわけでありまして、したがって、私どもは、この麦の生産者のために一定の所得を確保することに施策を集中してまいらなければいかぬ、こう思っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/43
-
044・佐々栄三郎
○佐々委員 三十七年から四十年の間に政府が行なった開拓、干拓の事業でありますが、この四カ年に十一万千二百ヘクタールを開拓、干拓をしておるのです。これに投じた金額が、間違いがあるかもわかりませんが、一千四百二十八億円でございます。四カ年間を一年に平均しますと三百五十七億。一年に三百五十七億のお金を投じて三万ヘクタール足らずの開拓、干拓を行なっておるわけです。私は、一方で百五十七万ヘクタールもの土地を遊ばせて二千億の損失を年々こうむりながら、他の方面では一千四百二十八億円というようなばく大な金額を投じて、わずかに——わずかと言うと語弊があるが、十一万ヘクタールの開拓、干拓をやったにすぎない。私は、もちろん開拓、干拓も大切であり、必要であると思いますけれども、一方でそういうことをやってたくさんの国費を投じながら、他の方面では百五十七万ヘクタールという膨大な土地を遊ばせて平然としている。私が見たところ、そう思われる。そうでないならば、来年度からこの休閑地が活用されるような政策を示すべきです。そういう政策は、現在の農林省のやり口からは全く期待できません。こういうことを考えますと、私は非常に矛盾を感じる。これについて農林大臣、どういうようにお考えか。百五十七万ヘクタールというような土地がすぐ生きて活用できるような施策に、開拓、干拓にばく大な金を投じるより、より力を注ぐのが、これがほんとうの農政とはお考えにならぬかどうかということを農林大臣にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/44
-
045・倉石忠雄
○倉石国務大臣 わが国は限られた狭い国土でございますから、ことに鉱工業がだんだんと発展してまいるに従って、それだけの地面を要するわけで、それが農耕地に食い込まれないようにいたしますためにも、私どもはやはりできるだけ開墾、干拓等もすべきであると思いますが、一面において休閑地が出てくる。このことは、見方によっていろいろな判断もつくかと思いますが、大体、麦というものをつくっておるお百姓が、その麦をつくることによって得る所得よりも、ほかのことに手を出すほうが所得がふえる、所得が大きい、こういうことが裏作不作地帯が出てくる現象の大きな理由の一つであります。私どもは、そういう意味で、麦の増産を期待いたすということももちろん大事なことでありますけれども、一方においてはやはり——自分のことを申して申しわけありませんが、私の選挙区なんぞは、長野県の中でも麦が非常に多いところでありますけれども、年々非常に激減してまいります。これらの農村の人たちのお話を聞きますと、やはり麦をつくることによって得る所得よりも、他に出ていく所得のほうが家計を助ける上において非常に大きい。私どもはそういう意味で、何とかこの麦の生産を確保してもらうために、ただいま米審にも諮問をいたしましてお願いをいたしておるところでありますが、先ほどちょっと申しましたビール麦のような契約栽培のものは、量も維持されておりますが、一面において、今度は一般の麦につきましても、やはり契約栽培的な考え方を活用いたすことによって、麦の生産を確保してまいりたい、そういうことで考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/45
-
046・佐々栄三郎
○佐々委員 ただいまの大臣の御答弁は、これはどうも筋違いというか、見当はずれの御答弁だと思うのです。麦よりほかのものがいいからとか、よそへ出かせぎに行ったほうがいいから出かせぎに行く、そういうことのために休閑地ができておるのだというようなお答えだったと私は思います。私が言っているのは、そういうことでなしに、土地そのものが百五十七万ヘクタールというものが遊んでおる。それで麦をつくったならば年々二千億というような収益がある。麦をつくらなくても、たとえばあなた方がやっておられる選択的拡大の畜産、これにしても、外国からどんどん飼料が入ってきておる。飼料作物に転換をすれば、これは畜産の奨励にもなる。麦に限らず、とにかく遊んでおるこの膨大な土地を生かすということが私は大切だと思うのです。特にこれは先祖から伝来し、多年の間農民がそこに汗と油を落とし込んだ貴重なとうとい国土であります。その国土が、百六十万町歩というものが遊んでおる。今後も現在のような政府の考え方、態度であるならば、遊ばざるを得ないだろうと私は思うのです。一方にこういうふうに遊ばしておきながら、一方には全くこれと比べれば引き合わぬような膨大な金をかけて開拓、干拓をやっておる。開拓、干拓に入れる力、それと同じ程度の力、いな、それ以上の力を休閑地の解消のために注ぐべきじゃないかと私は思うのです。それについての御答弁を私は欲しておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/46
-
047・倉石忠雄
○倉石国務大臣 私、ちょっと勘違いいたしておりまして、麦の生産をどうやって確保するかということに集中されたようにとったわけでありますが、ただいま非常に高度な農業政策のことについて御見解をお述べになりました。私どもとして全く同感であります。そこで、一つの土地について、一つの作物について、時代の推移に従ってそれが経済的でないという場合には、他に転換することは、もちろん大事なことであります。ことに先ほど来ここでお話のありました、濃厚飼料の輸入がああいうふうにふえてきておるときに、私どもといたしましては、やはりいわゆる選択的拡大の方針を進めてまいるにしても、必要なものは飼料でありますから、そういうことについて、草地の造成等によって休閑地を防ぎながら必要なる生産をあげてまいるということについては、もちろんこれは熱心にやるべきことであります。当然そういう方向に努力をすべきことはもちろんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/47
-
048・佐々栄三郎
○佐々委員 端的にお尋ねしますが、今日のような麦政策、麦対策、これをもってこの休閑地が解消するとお思いになるかどうか。農林大臣の姿勢は、これを解消する方向へ向かっておるかどうか。こういうやり方をやっておっては、いつまでたっても、この百六十万ヘクタールは、拡大することはあっても減ることはないというふうにお感じにはならないか、その心境をお聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/48
-
049・倉石忠雄
○倉石国務大臣 たいへん大事な問題でありまして、麦の増産対策には鋭意これつとめる必要がありますが、いまおっしゃるように、休閑地が自然に生じておるものにつきましては、私どもは、他の作物、もちろん時代にとって必要なる作物に転換をさして所得をふやすと同時に、農業全体の需要を満たすことに力を入れなければならない、そういうことに努力をしてまいるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/49
-
050・佐々栄三郎
○佐々委員 大臣もなかなか苦しいところだろうと思いますので、これ以上追及してもお答えは困難でしょう。そこで、いままで論じてきたところの最後の結びについては、また明日でも、大臣の御出席をいただいて結論的に意見を聞くことにします。
そこで、食糧庁の方にお伺いしたいのですが、麦の生産量の減少、つまり、主としては耕作放棄ということが原因になっておると私は考えるわけですが、耕作放棄の根本的な原因は一体どこにあるかということについてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/50
-
051・小暮光美
○小暮説明員 食糧庁といたしましては、麦生産の問題につきまして、主として価格面から接触いたしておるわけであります。それ以外にもいろいろ農政上の問題があろうかと思いますけれども、価格面から考えますと、ただいまの麦価の水準、これは食糧管理上は、実は内麦の買い上げ価格が、大ざっぱにいってトン当たり五万円前後に相なっておりまして、輸入いたします場合の原価が、先ほど御議論ございましたように二万八千円前後、この問題は、食糧管理といたしましても非常に心配いたしておる一つの側面がございます。しかし、再生産の確保に資するようにという立法の趣旨に即しまして、パリティ価格を下回らざることということで、年々買い上げ価格を定めてまいっておりますけれども、それぞれの農村の実態によりましては、麦の買い上げ価格が、他の収益と比較いたしまして相対的に必ずしも有利とは言えないといったような問題が、価格の側面からはあろうかと思います。その他の農政上のさまざまな問題もあると思いますが、食糧庁の側面から私どもの考え方を申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/51
-
052・佐々栄三郎
○佐々委員 まだあと質問したいこともございますし、ただいまの御答弁に対しても申し上げたいことがあるわけでありますが、時間もまいりましたので、明日質問をさせていただくことにしまして、きょうはこれまでにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/52
-
053・本名武
○本名委員長 次会は、明二十八日十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505007X02619670627/53
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。