1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月四日(火曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 大坪 保雄君
理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君
理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君
理事 加藤 勘十君 理事 横山 利秋君
理事 岡沢 完治君
千葉 三郎君 中尾 栄一君
馬場 元治君 藤波 孝生君
神近 市子君 沖本 泰幸君
松本 善明君
出席国務大臣
法 務 大 臣 田中伊三次君
出席政府委員
法務政務次官 井原 岸高君
法務省民事局長 新谷 正夫君
中小企業庁次長 金井多喜男君
委員外の出席者
労働省労働基準
局監督課長 藤繩 正勝君
専 門 員 高橋 勝好君
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七月三日
委員坂村吉正君辞任につき、その補欠として中
尾栄一君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
会社更生法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一四三号)
会社更生法の一部を改正する法律案(田中武夫
君外十二名提出、衆法第七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/0
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001・大竹太郎
○大竹委員長代理 これより会議を開きます。
大坪委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。
参考人出頭要求に関する件につきまして、おはかりいたします。
すなわち、法務行政に関する件、ソ連における日本人によるスパイ事件に関し、先ほどの理事会決定のとおり、参考人から意見を求めることとし、参考人出頭の日時及び人選等に関しては、委員長に一任願いたいと存じます。以上について御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/1
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002・加藤勘十
○加藤(勘)委員 その人選ですが、委員長の指名の範囲にまかせてくれということでございますが、世界経済調査会の主幹者である広岡謙二氏を主として考えてもらわないと、ほかの人が来て、また責任でないからということで回避されるようなことがあっては何にもならぬのです。だから、その広岡氏が万障を排して出席するという前提のもとにおまかせしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/2
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003・大竹太郎
○大竹委員長代理 先ほど理事会でもそのとおり決定しておりますので、そのとおり取り扱いたいと思います。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/3
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004・大竹太郎
○大竹委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/4
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005・大竹太郎
○大竹委員長代理 内閣提出、会社更生法等の一部を改正する法律案、及び田中武夫君外十二名提出、会社更生法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤勘十君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/5
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006・加藤勘十
○加藤(勘)委員 その前に、政府提案の修正が行なわれるんじゃないですか。これは委員長から何か説明するという話だったが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/6
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007・大竹太郎
○大竹委員長代理 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/7
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008・大竹太郎
○大竹委員長代理 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/8
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009・加藤勘十
○加藤(勘)委員 この問題につきましては、すでに先般来同僚の委員からいろいろ質問がございまして、これに対する当局の説明で、ある点は理解ができた点もあり、また依然として明白にならない点もあるようであります。私は、極力重複を避けて、簡明に二、三の要点について御質問したいと思います。
まず第一に、私のお尋ねしたいことは、そして、先般来の同僚の委員の質問によっても明確にされなかったと思われる調査委員の選任の問題ですが、調査委員の選任は、一通りのことはわかりましたけれども、その調査委員の正確な身分というか、地位というか、そういうものに対して、どういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/9
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010・新谷正夫
○新谷政府委員 調査委員は、裁判所が更生手続を進める上におきまして、必要があると認めます場合に、裁判所が必要とする事項についていろいろの調査をする、それについての意見を裁判所に申し述べて、裁判所の判断の資料を提供するというのが調査委員の任務でございます。しかも、調査委員の報酬につきましては、これは当事者の予納金から支出されることになっております。そのような点を考えますと、この調査委員の行ないます行為は、裁判所の判断を助ける意味での調査委員なりのいろいろな調査あるいは意見の具申ということになるわけであります。それ自体が、当然に公務であるとはいえないだろうというふうに考えておるわけであります。調査委員そのものも、もちろん公務員とはいえないだろう、こういう解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/10
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011・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そういう何といいますか、準公務員というか、あるいは独自の存在というか知りませんが、裁判所は、その調査委員はどういう範囲から選定されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/11
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012・新谷正夫
○新谷政府委員 これはいろいろあろうかと思いますが、従来の調査委員の選任の実例から申し上げますと、弁護士の方にお願いするのが一番多いのでございます。続きまして、公認会計士、さらに実業界の方、それぞれ専門の分野の方にお願いしまして、裁判所が必要と認める事項について調査をお願いしているのが実情でございます。今後もその点については変わりございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/12
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013・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうしますと、その会社が更生の申し立てをして、その決定を見る前でもあとでも調査委員というものが選任されることになると思いますが、その最初の選任は、どういう範囲から選任をするんですか。裁判所は、かつてにだれかを見つけ出すというわけにはいかぬと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/13
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014・新谷正夫
○新谷政府委員 更生手続そのものは非常に急を要しますので、裁判所といたしましても、その事件が出ますと、早急に調査委員を任命して、必要な事項の調査をお願いするということになるわけでございます。したがいまして、実際の扱いといたしましては、更生事件における調査委員としてどのような人が適当であるかということを、あらかじめ裁判所といたしましても調査いたしております。名簿のようなものをつくっておいて、その中から最も適当であると思われる人を選任するようなことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/14
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015・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうすると、その事件ごとに、委嘱する調査委員なるものは、会社の性格また内容等によって個々の場合に違うと思うのです。そういう違う個々の場合を想定して、あらかじめ人を予選しておいて名簿をつくっておくということは、やはり何かの基準がなければできないと思うのですが、何を基準としてそういうことを選定される準備をするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/15
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016・新谷正夫
○新谷政府委員 あらかじめ想定いたしまして、調査委員となるべき人のリストをつくっておくということでございますが、これはその更生事件ごとに、またその同じ更生事件におきましても、裁判所が調査を必要とする事項によりまして、調査委員の適否も変わってこようと思います。したがいまして、一人の調査委員を選任いたしましても、その人がその事件についての調査委員として終始するというわけのものではないのでございまして、必要に応じまして、一人の調査委員を選任することもありますれば、さらに数人の調査委員を選任することもございます。また、事項によりましては、その事項だけの調査をお願いするための調査委員を選任することもあり得るわけでございます。したがいまして、非常にバラエティーに富んだ範囲の人を一応考えておく必要があろうかと思うのでございますが、一たん選任されれば、その人に固定してしまって、あとは融通がきかないというものではないのでございまして、必要に応じまして、こういう方が最も適当であるという方がございますれば、その人に調査をお願いするということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/16
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017・加藤勘十
○加藤(勘)委員 局長の答弁は、きわめてあいまいだと思うのです。一人ないし数人の調査委員を選定されるのですから、いろいろな場合を想定して、バラエティーに富んだ調査委員をあらかじめ選任しておく、こういうことでありますけれども、一体バラエティーに富んでおるだけに、人を予選しておくということは非常にむずかしいと思うのです。一つの問題が決定しておれば、これに対する調査委員の選任も比較的楽に裁判所ではわかると思いますけれども、種々な性格を持った事件ごとの調査委員ですから、これをあらかじめ選任しておくということは非常にむずかしい。その事件が起こって、まだ申し立てがなされるか、なされぬかしらぬし、またあるいは、決定がなされるかなされぬかはわからないし、そういう段階において調査委員を選任されるということになると、あらかじめ定めておいた調査委員の氏名というものは、ときによっては適切なものも得られるかもしれぬが、ときによっては不適切な人も選ばれないとは限らない、そういうことがありますから、それならばそのように、あらかじめ弁護士なら弁護士、あるいは、公認会計士なら公認会計士、そういうように範囲を限定されておけば明瞭であると思いますけれども、そうでない、ただそのときに臨んで、その事件の性質を見てからということになれば、おのずからきまってきましょうけれども、決定する前に選任することがあるのですから、または決定をする材料を調査させるための調査委員ですから、私は、当然いろいろな範囲にわたると思うのです。そういう場合に、いまのお答えでは明確を欠いておると私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/17
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018・新谷正夫
○新谷政府委員 私の説明が十分でなかった点があるかとも思いますが、あらかじめ調査委員を選任しておくのではございません。先ほど申し上げましたのは、更生手続の申し立てがございました場合に、臨機応変に裁判所としてそれに対処し得るように、どういう方が調査委員とすれば適当であろうかという方を一般的に把握いたしておきまして、具体的に更生事件の申し立てがございました際に、必要に応じて、そのつど裁判所が選任をその中からするということでございます。したがいまして、いま加藤委員の仰せのように、いろいろの事情の違っております事件ごとに、またその事件の中でも、調査する事項がいろいろ違っておりますので、それに応じて、そのつど裁判所が選任することになるわけでございます。私が最初申し上げましたのは、リストをつくっておいて選任するという趣旨を申し上げましたが、これは、あらかじめ選任しておくという趣旨で申し上げたのではございません。それだけの用意をしておいて、具体的に必要が生じた場合に、裁判所がその中から最も適当と思われる人を選任していく、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/18
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019・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうしますと、更生事件の申し立てがあって、これに対してどういう決定をするかということの前に、決定のための資料を集めたり、あるいは決定の可否を調べさせるための調査委員ですね。そうすると、申し立てがあって初めて、裁判所はその選任の予選といいますか、それを開始するのであって、それ以前にやるということは、事実上できぬわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/19
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020・新谷正夫
○新谷政府委員 更生手続の開始の申し立てがございませんと、調査委員は必要ないわけでございます。したがいまして、具体的に事件として申し立てがございました段階で、調査委員を必要とするかどうかということを裁判所は判断いたしまして、具体的な人をそこで選任いたすわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/20
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021・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そこで、問題は、その調査委員というものは、ある点からいうと管財人と同等、もしくはそれ以上の重要な事前の責任を持っておる人なんですね。そういう重要な責任を持つ調査委員に対して、そういうような選任方法でよいでしょうか。どうでしょうか。全然利害関係人の意見を徴することなくして決定していいものでしょうか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/21
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022・新谷正夫
○新谷政府委員 これは、いかなる人が適当であるかということは、裁判所が責任を持って判断しなければなりません。したがいまして、場合によりますと、何人の意見も聞かないで、裁判所だけの独自の判断で公正な人を選任することもございましょうし、また、調査委員選任にあたりまして、いろいろ専門的な問題もあろうかと思います。そういう場合に、商工会議所その他の意見を求めて、どういう人がいいかという扱いになる場合もあり得ると思います。裁判所としましても、経済界の問題につきましては必ずしも専門でございませんので、従来もそういった点にかなりの悩みがあったようでございます。運用については、広く意見を求めまして、その誤りのないように期しておられるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/22
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023・加藤勘十
○加藤(勘)委員 いまお答えのように、裁判所が経済社会的な経済活動についての十分な現実の知識をお持ちにならない場合があると同様に、調査委員の選任についても、ややもすれば法律的な観点に片寄って、社会的な実情というものが無視されて——無視というと少し言い過ぎかもわかりませんが、社会的な事情、経済活動の現実の情勢よりも、法律的な観点に主眼を置いて選任されるという欠陥が生ずると思うのです。そういう場合、ただ、運営について十分な注意をするというだけでは、この利害関係者にとってはいささか不安を感ずる点があると思うのです。そういう場合のことを考慮されておるのかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/23
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024・新谷正夫
○新谷政府委員 更生手続の開始の申し立てがございますと、裁判所といたしましても、広く各方面の意見を求める必要がございますために、現行法に、第三十五条に、監督行政庁その他の意見を求める規定がございます。今回もその規定を一部改正いたしまして、監督行政庁のみならず、事業を所管する行政庁の意見を求めるようにいたしましたこと、その他、裁判所が相当と認める者に対して、更生手続についての意見の陳述を求めることができるようにいたしたわけでございます。これは、加藤委員先ほど仰せのように、裁判所のいろいろな知識を補充する、また、その判断を誤らしめないという配慮から特に今回その点を取り上げたわけでございます。従来とても、この会社更生手続といいますのは、実際は、非訟事件的な職権で裁判所で手続を進めるという形になっておりますので、手続そのものについて、民事訴訟法のような厳格なものはあまり要求いたしておりません。裁判所が弾力的にその辺の運用ができるようになっておるわけでございます。特に更生事件につきましては、職権で裁判所が事実の調査もできますし、先ほど申し上げたような、各方面の意見を徴することもできることになっております。この規定が、まだ活用の範囲が狭いということから今回一部を広げたわけでございます。そういった点も考えまして、裁判所におきましては、調査委員を選任する段階におきましても、いかなる人が最も適当であるか、法律家に偏しないように、場合によれば経済界の権威者をお願いするというような問題も起きてくるだろうと思うのであります。そういった御心配の点につきましては、ただいま申し上げましたような点に触れまして、裁判所としても十分配慮して遂行できるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/24
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025・加藤勘十
○加藤(勘)委員 いまお答えのように、他の関係官庁、たとえば通産省とか、農林省とか、そういう官庁ですね。その意見をお聞きになって、ということもあり得るということでありましたが、それならば、会社更生の申し立てについて密接な利害関係を持っている、経済的利害関係人の各方面の関係者の意見を徴するということはなさらないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/25
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026・新谷正夫
○新谷政府委員 従来は、その点が非常に限定されておりまして、いかなる方面の意見をも聴取し得る仕組みにはなっていなかったのでございますが、今回の改正によりまして、裁判所が相当と認める者であれば、いかなる人でもその人の意見を求めることができるように特に改正をいたそうとしておるわけでございます。したがいまして、仰せのように、特に官庁のみということはございません。経済界の方でもけっこうでございます。また労働組合の意見を聞くことももちろん可能でございます。あらゆる方面の意見を十分徴し得るようにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/26
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027・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それは改正法の何条にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/27
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028・新谷正夫
○新谷政府委員 改正法の第三十五条の第二項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/28
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029・加藤勘十
○加藤(勘)委員 大体において、今度の改正案は、現行法よりは若干中小企業の立場を保護しておるということは見られますけれども、まだ、私からいうならば、もの足らない点がたくさんあります。
その次に、「中小企業者」という概念的な規定になっておりますが、この実態はどうやって把握されるのですか。中小企業法によって定められた会社で、資本金の制限はこの法律によれば設けられていないが、中小企業法によれば、資本金なり、従業員の数なりが制限されておるが、この法律による「中小企業者」というものに対しての見解はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/29
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030・新谷正夫
○新谷政府委員 中小企業基本法によりますと、商業、サービス業を営むものにつきましては、資本金一千万円以下、あるいはまた従業員五十人以下、それ以外の事業につきましては、資本金五千万円以下、従業員三百人以下、こういうふうに限定されております。したがいまして、その資本金を少しでもこえたり、あるいは従業員の数が少しでも多くなりますと、中小企業者としての中小企業法の一般の規定の適用を受けないわけでございます。しかし、この会社更生法の場合におきまして、そのような厳格な扱いが、はたして妥当であるかどうかということを、法制審議会におきましても審議されまして、私どもも、もちろんここで救済すべき中小企業者の範囲というものを、法律的にはっきりと限定することについては適当でないという結論に達したわけでございます。したがいまして、中小企業基本法の定めます「中小企業者」という概念を若干はみ出すことがございましても、社会通念上これは中小企業者だと認められるものにつきましては広く救済する必要があろうと考えまして、ことさらに百十二条の二の規定におきましては、中小企業者についての定義のようなものは設けなかったのでございます。それが中小企業者と常識的に考えられるものにつきましては、弾力的に運用できるようにという含みを残したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/30
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031・加藤勘十
○加藤(勘)委員 これは大きな会社の更生申し立てに対して、保護される立場に立ったときの中小企業者なんですが、今度は更生の申し立てをする範囲ですね、これには一定の限界があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/31
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032・新谷正夫
○新谷政府委員 これには限度も制限もございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/32
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033・加藤勘十
○加藤(勘)委員 従来の例によりますると、こういう更生の申し立てをする会社というものは、相当世間的にも知られた大きな会社が多いのですね。中小業者はその陰に隠れて、連鎖反応による倒産もしくはその他の不幸な目にあうので、この更生法においても、今度は、そういう点は、若干改正をされておるわけだが、更生の申立てをする当事者として、もう少しく小さい会社まで包含されるということについてはどうなんですか。これは実際上の運用としては、あまりなされていないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/33
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034・新谷正夫
○新谷政府委員 昭和二十七年から三十九年までの会社更生事件の実態を調べたところによりますと、資本金が少ないものにこの事件の申し立てをしておる数が多いのであります。たとえば一千万円未満の資本金の会社が百九十四件ございます。これは調べました範囲は三百十三件でございますが、その中で百九十四件は一千万円未満、一千万円から三千万円未満のものが六十件、三千万円から五千万円未満のものが十三件、五千万円から一億までのものが二十件、一億から五億というものが十七件、五億から十億のものが四件、十億以上が五件というふうになっておりまして、むしろ一千万円未満のものが半数以上を占めておるという実情になっております。今後もそういった規模のところについては制限はございませんので、中小企業といえども会社更生の申し立てができることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/34
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035・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それは一億円以上の会社が総会社の中に占める割合と、一千万円以下の小さい会社が総会社の中に占める割合とが非常に違いますから、単なる絶対数だけでこれが多いとか少ないとは言われないと思うのです。これはもう私が言うまでもないことです。ただ問題は、そういう小さい会社でどれだけ決定を受けておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/35
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036・新谷正夫
○新谷政府委員 ただいま申し上げましたのは、更生計画の認可された件数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/36
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037・加藤勘十
○加藤(勘)委員 決定数ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/37
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038・新谷正夫
○新谷政府委員 決定いたします更生手続と申しますのは、これは御承知と思いますけれども、債権者、株主が集まりまして、それぞれの集会を持ちまして、集会で、この会社を更生させるためには、債権者なり株主がどういうふうに自分たちの権利についての扱いをすべきであるか、あるいは譲歩をすべきであるかということを、それぞれの集会においてきめるわけであります。そのきめたことに従って債権者の関係の調整ができますし、さらに会社そのものの実質を計画によって定めていくことになるわけでありまして、それが裁判所の認可にかかっておるわけであります。その計画の認可された件数、最終的に手続上の結末のつきました件数が、先ほど申し上げた件数になっておるわけであります。したがいまして、申し立てそのものは、これよりももっと多いわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/38
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039・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうしますと、中小企業というものに対しての実際の認定といいますか、申し立ての決定をする場合の中小企業というものに対しての認定は、どういう機関がやるのですか。これは裁判所がやるのか、管財人がやるのか、あるいはその管財人の補助ともいうべき調査委員がやるのか、一向その点が明確になっていないと思うのですが、どの機関がやるのか、その点をひとつはっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/39
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040・新谷正夫
○新谷政府委員 百十二条の二で定めております中小企業者というものの認定の御趣旨であろうと思いますが、これは裁判所が判断するわけでございます。ただ裁判所がこれを判断するにつきましても、中小企業者と認定していいかどうかという判断に迷う場合もあり得るかと思います。そのような場合に、あるいは調査委員に命じまして、その実態を調べたり、さらに事業官庁あるいは商工会議所、その他の関係機関に意見を求めまして、そちらのほうの意見も十分聞きながら裁判所が判断するということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/40
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041・加藤勘十
○加藤(勘)委員 次は、使用人の給与、賃金もしくは積み立て金あるいは社内預金の問題ですが、六カ月までは共益債権として認められておる、それ以上のものは更生債権に回される、こういうことになっておりまするが、この基準は何をもって六カ月とされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/41
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042・新谷正夫
○新谷政府委員 従業員の退職金あるいは社内預金につきまして給料の六カ月分、「六月間の給料の総額」という表現をいたしております。現行法の百十九条の規定によりますと、使用人の給料は最後の六カ月間のものにつきまして共益債権とされておるのであります。これが一つの目安でございまして、給料のほかに従業員のこういった性質の債権といたしまして考えられますものが、退職引き当てなりあるいは社内預金ということになるわけであります。これらのものの中で、給料債権が何と申しましても従業員にとりましては一番大事なものであります。これが六カ月ということになっておりますので、そこに一応の目安を置きまして退職引き当てなり社内預金の共益債権の範囲を一応割り出すということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/42
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043・加藤勘十
○加藤(勘)委員 まず第一にお伺いしたいのは、給与という見解ですが、これは現実に支給されておる給与の全額を言うのであるか、あるいは基準賃金といいますか、基準報酬というか、そういう基準報酬を土台としたものであるか、どちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/43
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044・新谷正夫
○新谷政府委員 給料の総額と申しますのは、基準報酬ではございませんで、その六カ月間に受け取るべき金銭の総額を意味するわけであります。したがいまして、中に賞与が入っておれば賞与ももちろん含まれるという解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/44
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045・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それは明確になっていますか。何条ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/45
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046・新谷正夫
○新谷政府委員 これは法制審議会の審議の過程におきましても、そういう趣旨であるということを明らかにいたしておりますし、労働省におきましても同一の見解に立っておるわけでございます。基準給料だけを意味するものではなく、その六カ月間に給料債権として受け取るべき金銭の総額を意味するものであるということにつきましては、政府部内におきましても異論はないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/46
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047・加藤勘十
○加藤(勘)委員 これは非常に争いの起こるところなんです。だから、そういうように審議会の審議の過程においてなり、あるいは労働省においても、その見解について異見がないということであるならば、むしろこの法律の中に、明確に現実に給与さるべき総額ということを明記されておかぬと、これは争いの種になる。これがいままで労働者と更生決定を受けた会社との間の争いの一番焦点になっておるのです。これはやはり明確にされる必要があると思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/47
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048・新谷正夫
○新谷政府委員 確かに御指摘のような点が問題になろうかと思うのでございます。私どもも、この給料という意味を、ここではっきり定義づけたらどうかということも考えたわけでございますが、さて定義づけるということになりますと、それぞれの事業所によりましていろいろの形のものがあるでございましょうし、また現物給与でやっている面もないではないと思うのでございます。そういったことを、定義的に明確にするということがなかなか困難でございます。したがいまして、「給料の総額」ということばを特にこの際には使ったわけでございまして、総額というところに意味を持たせまして、もらうべき債権の総額ということを、これで若干でもその趣旨を出していけるということを考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/48
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049・加藤勘十
○加藤(勘)委員 その点は、実際の問題としまして、基準賃金というものをとればもうこれはきわめて明確であるけれども、残業による手当、あるいはそれと同じような日曜出勤の手当とか、給与のほかに手当ですね。それからまた、あるいは中には皆勤手当とか、いろいろなものがあるわけなんですが、そういうことを含めるか含めぬかということが、いままで一番問題になって、労働者を悩ましたことでもあるし、争いが絶えなかったわけなんですから、せっかく審議会の過程においてもそういうことが決定されておるとすれば、これをひとつ法文の上に明確化されて、現実に給与さるべき総額、こういうことになれば私は間違いないと思うのです。それならば、法律の条文の構成の上からいっても、決して不自然でもなければ無理でもないと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/49
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050・新谷正夫
○新谷政府委員 「給料の総額」と書きました趣旨は、まさに加藤委員の仰せの趣旨で私ども表現いたしたわけでございます。ほかにはこういう表現を使ったものはおそらくないのではないかと思いますけれども、この際は特に、ただいまお話しのような残業手当とか、特殊勤務手当、そういった労働の対価と目されるものは、すべてこの中に含める、こういったはっきりした態度で終始きたわけでございます。それをあらわすのにずいぶん苦労いたしたのでございますけれども、「給料の総額」、こう書くことによって、その辺も十分理解できるであろう、こう考えたわけでございます。その点は労働省も異存ございません。この際、明白に、受け取るべき金銭債権の総額、これは税込みのものでございますが、その総額を意味するということを、はっきりと申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/50
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051・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それは給与の総額ということで、一応そういうように解釈すれば解釈もできるし、また給与というものの本質が、それは基準給与である、こういうことに会社側でとる解釈のしかたもないではないと思うのです。これが実際上の争いになると思うのですが、そういうことをお考えにならぬでしょうか。私から申し上げるまでもなく、基準給与といえば、賃金のほかに家族手当等が含まれるわけですが、残業手当とか、オーバータイムについての加重手当とか、そういうものは入っていないのですね。だから給与の総額というだけでは明確を欠くおそれがあるし、両面の解釈ができると思うのです。いまおっしゃるように、審議会でもそのような決定を見たという。給与の総額といえば、給与といえば、一切支給されておるものだという解釈もとれるし、給与とは基準賃金のことであるという解釈をとる会社がないとは限らないのですから、それは争いのもとなんですね。法律的にも私は、ことばの上から言うならば争う余地があると思うのです。だから、そういう点を明確にされるということが今後の争いを、少なくともその点についての争いをなくする一番大きな理由になるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/51
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052・新谷正夫
○新谷政府委員 たびたび申し上げておりますように、御趣旨のところは全く私ども同意見でございまして、そういう趣旨で特に「給料の総額」という表現をいたしたわけでございまして、法律的にいろいろ調べてみまして、この表現が一番適切であろうというふうに考えたわけでございます。ことにこれは共益債権でございますので、弁済をする側にしてみますれば、これは管財人が実際の弁済の衝に当たるわけでございます。したがいまして、裁判所の監督下におきまして管財人がこの仕事をいたしますので、ただいまのような解釈上の疑義が生ずるということは、これは万々ないと私ども確信いたしておるわけでありまして、表現の問題といたしましていろいろ苦心いたしました結果、こういうことに一応なったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/52
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053・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それではこの点は、ひとつこの法律の運営に当たられる裁判所なり管財人により、十分趣旨徹底するように、私はやはり法務省としては、何らかの形において通達をされておく必要があると思いますが、そういう運営についての注意を促す通達をなさる意思があるかないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/53
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054・新谷正夫
○新谷政府委員 現行法の百十九条にも、この「給料」という表現が使っております。それにつきましても、従来裁判所の扱い上、全く争いはなかったようでございます。ただいま申し上げましたような趣旨で運用されてまいったのでございます。今後もなお一そう、その問題は大切な問題でございますので、法務省におきましても最高裁判所に連絡いたしまして、御趣旨のところを十分伝えまして、その運用に誤りのないようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/54
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055・濱野清吾
○濱野委員 関連して。実際問題の場合、裁判所は、給料というときには、われわれの給料の概念とは違った、ただ経済社会においては違った——たとえばオーバータイムとか、あるいはわれわれの業務でいけば業務手当とか、時間外手当、いろいろございますね。給料という場合は、われわれはそういう手当類は含まない。たとえば基本給とか、能率給とか、家族給とかいうのは、われわれの給料の概念であって、諸手当のごときは、いまの経済社会では給料ということばを使っていない。これが現実だと思います。ですから、いま加藤さんがおっしゃったような、そういう質問が出るんだろうと思いますが、これは、給与という文字に変えてどういう支障があったのですか。たとえばいまのあなたの御説明を伺っておると、現物給与というものも入ってくる。菓子会社が菓子を支給するとか、繊維会社が繊維を支給する、こういうようなことが現実としてはありますが、しかし、それは困難なことにはならない。やはり価格評価は会社としてもわかっているし、現物給与を受けるほうの勤労者においても、これは評価ができている。けじめがはっきりしているわけですから、私はほんとうの将来の運営から見れば、加藤さんの主張のように、給与という文字を使ったほうがこの法律としては適当である。何もそれを疑いやすい「給料の総額」と書く必要はない。「給与の総額」と書くべきである、こういうふうに考えておるわけです。特にあなたにお聞きしたいのは、給料というのは法律的な概念として、また経済社会の概念として、どの部分を言うのか。賃金構成というものが御承知のとおりございます。たとえばいまの事業所におきましては、賃金とはどういうものかという構成がございます。そういう見解をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/55
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056・新谷正夫
○新谷政府委員 私法の分野におきまして、民法あるいは破産法その他法律におきまして、使用人の給料とか、その他これに類する表現が随所に出てまいります。すべて同じような趣旨で使っておることばでございまして、更生法だけ特別に表現を変えるというのもいかがであろうか。従来もそういうことばを使ってまいっておるわけです。そういう趣旨から、この「給料」ということばを使ったわけでございます。しかし、この場合、特にこの点が疑問が起きる可能性があろうかと思いまして、「給料の総額」というふうなことばを特に使ったわけであります。その中に全部が入っておる、こういうふうに解釈いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/56
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057・濱野清吾
○濱野委員 私は法律専門家でも弁護士でもございませんから、したがいまして、そういうことはどうかと思うのでございますが、民法上に「給料」という表現が一般に行なわれておるから、この法律もやはり民法の表現のとおり「給料」とする、——私は、この法律ではもう少し考えていく必要があるのではないかと思います。この法律は、いわば経済社会——商法のうちの特別の法律です。ですから、争いの起きやすいのは御承知のとおり、加藤さんのおっしゃるとおりなんです。ですから、民法に右へならえしなくても、実際の経済社会においては、給料、給与というようなものの区別がされておるのでありますから、ことさらに民法に右へならえしなくても、特別な弊害はなかろう。むしろその実体を表現し、総括的な「総額」ということをおっしゃるなら、私は「給与の総額」、こうおっしゃったほうがその実態に合う表現ではないか、そのことによってトラブルが減少する、こう思うんですが、もう一度あなたの御意見を拝聴したい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/57
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058・新谷正夫
○新谷政府委員 これは結局水かけ論に終わるのかもしれませんけれども、現在の会社更生法の百十九条におきましても、同じ表現を同じ趣旨に使っておるわけであります。ことさらにこの規定だけについて特別な表現を使いますと、かえって解釈上の疑念が生ずる心配があるわけであります。従来の実際の扱いを踏襲しながら、表現におきましてもそういった混乱の起きないようにというふうに考えまして、「給料」ということばを使ったわけであります。そのことばの中身は、先ほど申し上げましたように、そういった労働の対価に相当するすべてのものを含むという解釈においては、ただいまのところどこにも異論はないわけでありますので、その辺だけ明確にいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/58
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059・濱野清吾
○濱野委員 もう一点。私はあなたの考え方に同調できないのです。法律家は法律の型をむやみに追いたがるくせがある。実際問題として、経済社会は、あなたのおっしゃっているようなことばを使っていないのです。ですから、法律のそれぞれの字句は、やはり実際に適したことばをお使いになっても決してこれは悪いことじゃない、私はそう思うんです。実際の表現を、時代が変わり、新しく法律を改正していく、あるいは新しいものをやる場合には、そういうふうに実態に即してお変えになったって何ら差しつかえないものじゃないかと思う。何か知らぬけれども、かみしもをつけて一律にしようという考え方は賛成できない。裁判所や各省が打ち合わせの結果、そういうふうに解釈するということをおっしゃるけれども、そういう一つのベールを着せた法文を何もことさら使う必要はないと思います。やはり法文は国民にわかりやすく、そうして実態を簡明に表現できるだけの文字をお使いになることがいいんじゃないか、これは私の意見ですから、参考のために申し上げておきますから、十分検討していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/59
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060・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そこで問題は、給与の総額の六カ月分ということでありますが、大体更生決定を申請するような会社は、賃金不払いということはあり得ることであっても、せいぜい一カ月なり二カ月なりの限度だと思うのです。労働者が実際働いておいて賃金をもらわなかったら、これは生活していかれないのですから、したがって現実問題としては、あるいは半額支給なり三分の一支給なりして、ともかくも一応ある程度のものは取っておる。したがって、六カ月という基準を設けられたことについては、そうたいした困難はないと思いますけれども、しかし原則は、私は停滞しておる全額支給が当然だと思いますけれども、かりに六カ月としても、それほどたいした、大きな違いはなかろうと思います。六カ月も黙ってもらわないでおることはないんですから。だから、実際問題としては問題にならぬが、今度は退職金の問題です。退職金の場合は、これは月々もらう給与とはちょっと違うのですね。言うまでもなく退職金は過去の労働への蓄積なんです。ある意味においては形を変えた賃金です。これはもう十分御承知ですわね。その賃金が、かりに一人の労働者が二十年、三十年という長い間つとめて、老後、何とかしてそれによって退職後は更生しようという考えで楽しみにしておった何百万円かの退職手当が、実際には給与の六カ月分で共益債権という資格を失って、更生債権に振りかえられてしまうということになると、実際は過去の労働の蓄積を会社のほうでさらに一そう食いつぶしてしまうということになるのですが、この点は、どうして月月の給与と同格に扱われたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/60
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061・新谷正夫
○新谷政府委員 本来の月々の給料と退職手当、これは実質は先ほど仰せのように、賃金のあと払いというふうに見られておるようでございますので、実質的には変わりはないということでございますが、月々支払いを受けるべき給料そのものが、六カ月分を共益債権としております。その残りはどうかといいますと、これは商法の二百九十五条の規定がございまして、一般の先取り特権がついております。そうしますと、会社更生法上は優先的更生債権ということになりまして、一般の更生債権よりは有利に扱われております。これも先ほど申し上げました更生計画の中でその処理がきめられますが、現実には優先的更生債権につきましては、これを減免するということは、まず行なわれていないようでございます。したがいまして、実際問題としては、その給料の全額が保証されるような結果にはなるわけでございます。ただ、さしあたり会社を更生させるために、債権者なり株主の協力を求めなければなりません。すべてにわたって債権を共益債権化いたしますと、今度は会社そのものの更生が困難になる場合もございます。給料さえも六カ月で一応共益債権の範囲をきめてございまして、その残りを優先的更生債権としてあります以上は、退職手当につきましても、同様に六カ月分を共益債権とし、その残りを優先的更生債権とするということが適当であろうという考えに立つのでございます。六カ月分については共益債権であるが、その残りについては全部一般の更生債権になってしまって減免の措置を受けるというのではございません。これは優先的更生債権になるということは、現在の会社更生法の規定の上でもはっきりしておるわけでございまして、したがいまして、特別に不利益になるといわれれば、それは不利益な面もございますけれども、給料債権との比較におきまして、それほど不利益になるというふうには考えられぬのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/61
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062・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうしますと、給与についての六カ月を限度とするという共益債権の決定は、そのほかに優先債権として賃金は先取ができる、その先取をした後の六カ月が共益債権になるという意味ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/62
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063・新谷正夫
○新谷政府委員 更生手続が開始いたしますと、債権は全部たな上げされるのが原則でございます。したがいまして、更生計画におきまして、個々の債権をどう処理するかということがきまるわけでございます。それがきまりますまでは、債権の弁済はストップされております。ただ、共益債権ということになりますと、その手続によらないで随時弁済して差しつかえないという債権でございます。ところがさらに一段下がりまして、優先的更生債権というのがございます。更生債権の一般のものと優先権のあるものと、二つございます。一般のものは減免の措置を受けるのが通例でございますけれども、それよりも優先する優先的更生債権は、一般の更生債権よりも有利に扱われる。普通の場合、優先的更生債権につきまして減免の措置はとられていないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/63
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064・加藤勘十
○加藤(勘)委員 どうもはっきりしませんが、こういう意味ですか。給与は六カ月を限度として共益債権である、その共益債権は他の共益債権に優先して取れる、こういう意味であって、六カ月分を優先共益債権として天引きするのでなくて、一般の共益債権の中で優先する、こういう意味なんですね。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/64
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065・新谷正夫
○新谷政府委員 共益債権は、本来更生債権である場合もあるわけでありますけれども、法律の規定によって、たとえば給料の場合には六カ月分は共益債権とする、こうございますと、その部分は、手続によらないで、随時弁済してよろしいということになるわけであります。したがいまして、そういう意味では、これは最優先的に支払われるわけであります。更生手続が開始いたしましても、管財人がどんどん払ってよろしい、こういうことになるのであります。
それから、優先的更生債権は、それより一段下がるわけでありまして、更生計画によってその弁済方法が定められるのでございます。それまでの間は、一時ストツプしておりますけれども、更生計画が定まりますと、その計画に従って逐次弁済されていく。しかし、これは一般の更生債権よりも有利に扱うべきものとされております。実際の更生計画の中におきましては、たとえば分割弁済とか期限の猶予ということはいたしますけれども、減免措置は、一般の場合には、とっていないようでございます。
しかし、一般の更生債権になりますと、さらにそれより一段扱いが下がってまいります。これは更生計画におきまして減免されて、あるいは五〇%減額するとか、三〇%減額するということが、計画によってきまるわけであります。そういう不利益な扱いを受けないというのが共益債権であり、また優先的更生債権である、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/65
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066・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そうすると、あなたのおっしゃるのはこういう意味ですか。かりにある更生申し立ての会社において、従業員に七カ月の賃金の停滞があった——これは現実の一つの例を考えてみます。七カ月の賃金の、債権ということばを使えば債権だが、支払い停止があった。それで今度更生の申し立てが行なわれたから、同時に労働者としては賃金を払ってくれということから申し立てた場合に、管財人の申し立てによって裁判所はこれを共益債権として、まず六カ月分は支払う。残った一カ月分については、これをさらに、共益優先としては扱うけれども、他の共益債権と同じ立場において、優先的に扱う、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/66
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067・新谷正夫
○新谷政府委員 七カ月分の給与が不払いになっております場合に、六カ月分はすぐ払ってよろしいわけであります。残りの一カ月分は優先的更生債権となります。したがいまして、一般の更生債権よりは、そこは有利に扱うべきである、こうなっております。更生計画でその趣旨が定められていくわけであります。その場合に、優先的更生債権につきましては、期限の猶予とか分割弁済とか、そういうことはあり得るのでありますけれども、それを切って落とすということは、いままでの例としては、ないようでございます。ただ、一般の更生債権になりますと、そこは減免の措置を受けます。五〇%あるいは六〇%減額するとかいう措置も受けるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/67
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068・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そこで、今度は退職金の問題に移るのですが、退職金は、言うまでもなく、過去の労働の報酬の蓄積である。これに対して、賃金と同じように六カ月分だけは——これがかりに三十年おって三百万円もらう人が、月々十万円ずつもらっておったから、六カ月といえば六十万円だ。三百万円の中から六十万円はすぐに払ってもらえるが、あとの二百四十万円については共益債権として扱うが、それは時によれば分割払いを受けることもあるし、一挙に払われることもある、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/68
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069・新谷正夫
○新谷政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/69
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070・加藤勘十
○加藤(勘)委員 そういうことで、退職手当を、いまいうとおり、退職した後の自分の老後の生活の設計のために唯一のたよりとして生きてきた労働者が、かりに幾らもらうかわからぬけれども、相当年限が長ければ、退職金は相当の金額にのぼっておるはずです。それがわずか給与の六カ月分だけで打ち切られてしまう。あとはどういうようにしてもらえるのか、総額もらえるのか、分割払いにしてもらえるのかわからぬというような不安な状態に置かれるということは耐えられないことなんです。これはあなたでも月給を取っておって、——政府だから月給の不払いなんということはないだろうけれども、かりにそういう立場に立ったときに、労働者の心理状態はどうでしょう。私は過去の労働の蓄積であり、これも当然また給与と同じように全額保証されるべきであるという考え方を持っておるんですが、無理でしょうか、私らの考え方は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/70
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071・新谷正夫
○新谷政府委員 労働者の債権を優遇すべきであるということにつきましては、基本的には私どもも全く同意見でございます。でありますからこそ今回の改正案におきましても、できるだけ使用人の退職手当等の確保の道を開いたのでございます。さればといって、これを全額共益債権にいたしますと、相当数のものが退職いたしますような場合、会社は窮状に入っております。何とかして立ち直りをしたいという状況下におきまして、一挙に多額の金銭を支払わなければならないということになりますと、今度は会社そのものの破綻を一そう深刻にするわけでありまして、更生どころではなくて、破産に導くというふうなこともあり得るのでございます。このことはひとり労働者の給与の面のみならず、中小企業債権についてもいえることなんでございますが、要するに更生手続といいますものは破産とは違いまして、破産でございますれば、会社の財産を全部債権者に平等に分割するということでございますので、現有財産をできるだけ集めまして、債権者に公平に分配すればそれでよろしいわけでありますけれども、会社更生といいますのは、会社そのものを破綻の状態から立ち直らせて、この事業を継続させる。これによって債権者も助かるし、また従業員も助かっていくということになりますので、債権者とかあるいは株主の協力によって会社の更生の方法を見出していこうというのがこの会社更生手続でございます。そういう意味で、債権者もこれに協力すべき義務があるというのが会社更生法の精神でございます。その際に、どの範囲のものを共益債権として優先的に保護するかという問題が起きてくるわけであります。これを無制限にやりますことにつきましては、更生という面から申しまして相当問題がございます。給料との均衡もございます。そういったことを考えますと、とりあえずは六カ月分を共益債券としまして即時弁済いたしますが、残りにつきましては、優先的な更生債権としてその保護の道をはかっていくということが適当であろうということになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/71
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072・加藤勘十
○加藤(勘)委員 それはあなたがいまいわれるとおり、更生なんだから、会社が立ち直るという前提の上に立っての問題の進展なんです。したがって、そこに働いておる労働者の諸君も、ある者は退職していくであろうし、ある者は会社に残る。労働者がなければ会社は更生しません。当然労働者はそこにとどまるということを前提にしての話です。しかし更生会社が実際の更生の方法を考える場合に行なわれることは、まず会社の整理なんです。同時に会社の多くは債権のたな上げ、あるいは打ち切り等による新株式の発行、こういう段取りになっておるんですね。したがって、過去の労働の蓄積である退職手当を全員の労働者が取って、そこの工場から行ってしまうというならば、会社の再建は成り立たない。だからこういう場合においては、当然労働者の代表である労働組合と会社とが話し合いの上で、退職手当の問題はどういうように支払いをつけるか、こういうことは労働者の自由な意思によって、会社との話し合いで決定をされるということはあり得ることなんです。また、われわれもそういう実際の場面を幾つか見ております。だから、その労働者の自由な意思によって、交渉の結果どういう方法で支払いされるかという、支払い保証についての名目を求めるということは、これはもうちっとも差しつかえないけれども、法律で六カ月以上の分は、まず、共益債権として扱われないというようにきめられてしまうと、今度は労働者は身動きができない。一応それで泣き寝入りだから、あとは決定を待ってどうなるかわからない。法律ですべて定められてしまう。こういうことは当然労働者の自由な意思によって、会社との話し合いで決定されなければならないものなんです。だから、むしろ六カ月なら六カ月というものについて、一定の限界を設けるというならば、その他のものについては、そういう法律によって優先するとか、あるいはどうこうという法律によって一方的に決定されるのではなくして、労働者の自由な意思によって会社との話し合いで決定をする。労働者が会社の更生について協力の態度をとれば協力の態度を示すであろうし、もしこの会社では将来望みがないといえば退職していくであろう。退職していく場合の退職金の支払いは、いまは会社に何も金がないからどうにもならぬが、これをどういうように払うかということは、双方の話し合いの合意の上で決定をされるべきである。これが私は現実の社会情勢に適合した方法だと思うのです。また、それによって幾つか解決しておる問題もある。その法律で一方的にきめてしまうということになると、身動きがとれぬことになる。そういうことは労働者の自由な意思と、管財人でもいいが、管財人なり会社の経営者なりの、相互の話し合いによる談合によって決定をされなければならないのではないか、こう私は思うのですがどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/72
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073・新谷正夫
○新谷政府委員 私が先ほど申しましたのは、今度の改正法の百十九条の二の第一項の原則的な規定について御説明申し上げたわけであります。これは更生計画認可の決定前に退職した人、こう規定してございますので、計画の認可決定前であればいつでもよろしいわけです。更生手続の申し立て前の者もこれは含まれるわけであります。しかも、退職の事由をここには書いてございません。自己の都合の場合にも、あるいは先ほどお話のような会社の都合によって退職しなければならない者も、全部含めておるわけであります。任意に退職しようとする者も、これによって六カ月分は共益債権として保護しよう。会社の都合によって退職する者も保護しよう。これはその時期を問わないということであります。計画の認可の前に退職した者であれば、いつでもこの規定の適用を受ける、こういうことになっております。しかし、先ほど仰せのように、労使の話し合いによって、会社の更生のためにどうしてもやめてもらわなければならないというふうな場合に、この規定一本でいくのは適当でないじゃないかという御意見であります。それもごもっともであります。そのことにつきましては、百十九条の二の第三項に規定を設けまして、「前二項の規定は、第二百八条の規定により共益債権とされる退職手当の請求権については、適用しない。」こう書いてあります。この趣旨は、現行法の二百八条が共益債権となる場合の規定でございますが、この規定によって、退職手当が共益債権となる場合は一項の規定によらないで、二百八条の規定によって共益債権とする、こういう趣旨であります。そういたしますと、二百八条によって共益債権となる場合ということになると、ただいまの会社の都合によってやめていただくという場合には、これは全額が共益債権となる。その場合までも百十九条の二の原則規定だけで処理しようという趣旨ではございませんので、先ほど来私申し上げておりましたのは、百十九条の二の一般規定についてまず申し上げたわけであります。御指摘のような場合につきましては、全額が共益債権として更生法の二百八条の規定によって処理される、この道は残したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/73
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074・加藤勘十
○加藤(勘)委員 実際の場合を想定しますと、会社が更生しようという場合に、会社側では、多くは相当年齢を重ねて長い勤務をして高給をとっておる、そういう高給をとり長い間つとめて老齢になって、十分な働きができぬという人にやめてもらいたい、それで若いまだ労働力のたくましい、賃金も比較的安い、そういう労働者に残ってもらいたい、これは会社が更生しようという場合の常例なんです。したがって、退職を攻められ、もしくはみずから退職していこうというような人には、その退職金の問題は自分の死活に関する問題なんです。会社もそういう場合には、更生開始の前だとかあるいは手続のとられる前の場合においては、実際にはそういう労働者は会社から説諭されて、退職金をあるいは少しよけいもらってやめていくという場合もありますけれども、できれば最後まで働ける限りは働こうという人も多いわけです。そういう場合に、当然この規定が今度は生きてくるわけなんです。すると、実際には給与の六カ月分しか退職手当がもらえない。あとは、一般の共益債権に回されてしまう。まあ共益債権であるから普通の更生債権よりは有利であろうけれども、とにかく一応たな上げされる形になる。これではたまらないということを感ずるのは当然でしょう。だから、そういう場合の保護規定がなければならぬ。私はその保護規定としては、労働者の自由な意思と、会社なり管財人なりの当局者との間に、自由な意思で話し合った結果、納得して、労働者が承知すればけっこうですけれども、一方的に法律できめてしまうということはいけないのではないか、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/74
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075・新谷正夫
○新谷政府委員 百十九条の二の新設規定は、あくまでも更生手続の認可の決定までにやめる人の措置でございます。この場合にも、一般論としましては、先ほども申し上げましたように、給料総額の六カ月分か、あるいは退職手当の総額の三分の一か、どちらか多いほうを債権として取得するということになるわけでありますが、仰せのように、会社の都合でやめてもらわなければならないという場合には、第三項の規定が働きますので、その場合には全額が共益債権として即時返済を受けるということになるわけです。なお、引き続いて会社につとめておる人につきましては、この規定の適用はございません。したがいまして、会社の更生した暁におきましてやめる方につきましては、これは当然一般の原則に従って退職金が支払われるということになるわけであります。
ただいま仰せのように、従業員の立場も十分配慮しなければなりませんので、私どもとしては、事由のいかんを問わず、またその時期を問わず、一般論としては六カ月分あるいは総額の三分の一という規定を置いたのでございますけれども、会社の都合によってやめるという場合には、全額を共益債権として即時支払われるようにいたしたというのもそういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/75
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076・加藤勘十
○加藤(勘)委員 会社が更生する場合に、残った従業員の問題に対して、この退職手当に関する限りの規定は適用されないということになっておりますけれども、実際は私たちが知っておる——私も若干関与したのですが、その会社の場合だと、退職していく人に一年間その退職金の支払いを猶予した。これはもう労働者の自由な意思によって会社と話し合いの上できめた。残った人は、もしやめていくならばそのときには支払うけれども、やめていかない限りは三年間停滞する、そういう相互の合意の上に話が成り立っておさまった会社があるのですよ。だから、適用とか不適用とかいう——もちろんやめないのだから退職手当の問題が適用されるわけはないが、やはり労働者にとっては、これに対する保証がなければ不安心なんですよ。幾ら更生に協力しようとしても、そういう点についての過去の蓄積に対して何らの保証もないということでは不安心だから、この会社の場合は、三年の間にやめていくならば別だけれども、三年間以上やめていかないで続いて働いておる人については、三年間は支払いを求めないという要求を話し合った結果でき上がった、そういう実例もありますから、私は全額の問題がきめられても——これまた法律できめるというと、あるいは固苦しいということになるかわからぬが、双方の合意によってそういう決定を残しておく、弾力性を持たしておくということが法の運営の上において適切ではないか、こう思うのですが、この点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/76
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077・新谷正夫
○新谷政府委員 いま仰せのような場合には、先ほど私御説明申し上げました二百八条の規定によって全額共益債権となるだろうと思うのでございますが、ただ弁済の方法について、当事者と会社の間の話し合いでさらにきめること、これはもちろん差しつかえないわけでございます。その辺のことまではちょっと、これは自由な合意に基づくものですから法律では書けませんけれども、少なくとも全額の債権は保証されるということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/77
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078・加藤勘十
○加藤(勘)委員 この退職手当の全額の保証は、もちろん六カ月云々でなくて保証されるわけなんですね。ただその中で、更生開始がなされようとなされなかろうと、六カ月分に関する限りは即時支払われる、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/78
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079・新谷正夫
○新谷政府委員 六カ月分と申しますのは、百十九条の二の第一項に定めてあるのでございます。これはたとえば更生手続開始の申し立てをする前にやめた人があるといたしますと、そういう人は、これは本来一般の更生債権として退職金の請求をするか、あるいは優先的更生債権になる場合があるかと思うのですが、いずれにしましても、申し立て前の場合には共益債権には本来ならないわけでございます。そういうものも含めて今回は共益債権にしよう。また退職する理由が自分の意思に基づいて、自分だけの都合でやめようという場合、こういう場合にも特別に共益債権として本来保護する必要はないという理屈も立ち得ると思うのでございますが、そういうものも含めまして百十九条の二の第一項によって六カ月分は共益債権としてすぐ払え、こういうことにいたしたわけであります。残りは優先的更生債権となるわけであります。
そうではなくて、会社の都合によって更生手続が開始した後やめるという場合には、これはただいま申し上げました六カ月ということには関係なく、受け取るべき退職手当全額が共益債権となって即時支払われる、これが三項の規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/79
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080・加藤勘十
○加藤(勘)委員 これは十分に納得いかないが、まだ法文もよく全部目を通しておりませんから、いまはあなたの説明をそのまま聞いておきます。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
次に、もう一つお伺いしたいのは、この更生を申し立てる会社の、これは任意債権といえば任意債権であるかもわかりませんけれども、したがって、更生債権の中に入れられても文句は言えないかとも思うけれども、小さな商店で、会社の日常必要とする事務的な物品を納入している商社ですね。それは金額にするときわめてわずかなものなんです。そういう日常会社の運営上なくてはならない事務用品等を納入しておる商社が、わずかな債権を持っておって、それが更生債権に回されてしまう。そうすると事実上解決したときにどういう結果があらわれるかというと、この商社の債権というものは更生債権として、おそらくこの場合減資による新株式の発行で、その価値のない、配当ももちろんない、こういうもので額面で支払われてしまうわけです。事実上はこの小さな商社というものは、もうどうにもならない、泣き寝入りだ。債権者会議に行ったって、わずかな債権であるから、これはもうほとんど債権者会議においても顧みられない。結局泣き寝入り——泣き寝入りならいいけれども、へたすると店を締めなければならぬ。こんな不幸なことを行なっておる実例があるわけなんです。こういう場合についての、きわめて少額の、しかも会社の日常事務をとる上においてなくてはならない、事業運営の必要な物件を納入しておる——これは製品関係じゃなくてむしろ事務関係ですね。事務関係になくてはならない物品を納入しておる小さな商社が、わずかな債権を抱いて、一文の価値もない新株を交付されて、結局ひどいのになると店を締めてしまう、どうにも救済の方法はない、こういう場合について今度の法律は全然顧みられていないわけなんですね。それは一般債権者としての扱いしか受けていない。こういう小さな商売に対して、何らかの救済の方法はないものか。下請工場なんかについては、連鎖反応を防ぐ意味から多少の改正が行なわれておりますけれども、いま申しましたような点についての考慮が何も払われていない。こういう点についてはお気づきになっておるかおらぬのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/80
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081・新谷正夫
○新谷政府委員 事務用品を納入する会社、業者その他の保護の問題でありますが、これは先ほどもちょっと問題になりました百十二条の二の「更生債権の弁済の許可」に該当する場合もあり得るかと思います。これは「中小企業者」と規定しておりますので、必ずしも下請業者には限らないわけでありまして、原材料の納入業者、運送業者、その業種は何でもいいわけでありまして、中小企業者と考えられる以上はすべてこれに含まれるわけであります。したがいまして、その納入業者の事業継続に著しい支障を生ずるというふうな場合には百十二条の二の規定によって弁済の許可を求めることができるわけであります。のみならず、同条の末項、第四項でありますが、四項に特別の規定を置きまして、特に金額の少ない場合、少額の債権を持っておる場合には、中小企業者であろうと何であろうとこれは問いません。少額の更生債権を持っておる場合につきましては、これを早く弁済することによって更生手続のほうも円滑に遂行できるということになりますので、そのような場合には、管財人の申し立てによって、裁判所が即時弁済することができるような許可を与えるような道を開いたわけであります。この二つの規定によりまして、ただいま御質問のような場合には少額の債権を持っておる者も十分救済されるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/81
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082・加藤勘十
○加藤(勘)委員 いま申しますように、債権者会議に行ってもほとんど問題にされないのですよ。大口債権者が——一番悪いのは銀行だと思うのです。銀行は担保を取っておるから、一番優先的に大きな発言力を持つ、時によれば強制力を持っておる。そういうところに行って、小さなわずか何十万円ぐらいの程度、しかも小さいというけれども、何十万円というものがその商社にとっては死活に関する大きな債権なんです。だけれども、会社から見ればわずかな債権だ。そういう場合に、ほとんど訴える道がない。結局いま言うように新株の、配当もない、値打ちもない、額面価額で弁償されるか支払われるか、株券交付でこの債務が償われる、こういう状態なんですね。だからそういう場合には、いまおっしゃる百十二条の規定によれば、この個人は、管財人なりあるいは裁判所なりに申し立てというか訴えていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/82
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083・新谷正夫
○新谷政府委員 管財人に申し出をしまして、少額の債権については管財人から裁判所に弁済の許可を求めるわけでございます。いま仰せのように、更生手続を進める上におきましても、少額の債権者の立場というものは非常に微妙なものがございます。むしろそういう少額の債権者は、早く弁済してしまって、手続一般が円滑に遂行できるようにしたほうが全体的な立場から見ても望ましいことでございますので、ただいまのような少額のものにつきましては、特別に、金額が少ないというだけの理由によりまして、特別の弁済の許可を与えることができるようにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/83
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084・加藤勘十
○加藤(勘)委員 この場合の少額ということの見解ですがね。これも実際問題となるとなかなかむずかしいと思うのですよ。かりに一億なら一億の資本でやっておる会社で、五億なら五億の債務を持ってどうにもならなくて更生を申し立てたという場合の百万円以下の債権ならば少額といえるわけなんですね。だけどその少額といえども、一万か二万なら少額だけれども、百万からになれば少額でないといわれれば、また少額でないということになる。それだから、その実際の運営について非常に困るのですね。
それからまた、更生債権として管財人から最後の決定がなされて処断されるまでには、少なくとも何年間かはかかるのですね。その何年間かはどうすることもできないで、いつもそれだけの債権を持ちながら小さな商売人はおろおろしておる。こういう実情なんですね。だからそういう場合に、いまおっしゃるように、早急に開始前といえども支払ってやれということでいくと、今度は少額とはどれだけのものだ、こういうことになると、少額というのは法律的な規定がないとすれば何によって判断をするかということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/84
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085・新谷正夫
○新谷政府委員 確かに少額の範囲がどのくらいかということが御指摘の問題になろうかと思うのでございます。参考になりますのは、現行法の二百二十九条に更生計画を定めます場合の条件についての規定がございまして、同じ性質の権利を有する者の間では平等に条件を定める。こういう規定がございますが、その中に債権の少額なものについては別段の定めをしておく。これはそれらの債権者の間に差等を設けるということも考えられるわけでありますが、その差等を設けることが、実質的な衡平を害しない場合には完全平等でなくてもよろしい、こういう規定がございます。ここに「少額」ということばが出てまいります。この実際の扱いについて調べてみますと、私どものほうで調べました四十四の会社につきまして、これは更生手続に入った具体的な会社でございまするが、これを調べたところによりますと、この少額の債権ということをどの程度に扱っておるかということがある程度わかるわけでありますが、少ないものは一万円ぐらいのものもございます。さらに十万円、二十万円、二十五万円、百万円というのも少額の中に入れている例がございます。これは先ほどお話しのように、その更生会社の規模あるいは債権者たる会社その他のものの事業経営の規模なり資本金なり取引高、そういったものを勘案いたしまして、これは少額と見ていいかどうかということをきめるべきであろうと思います。実際の扱いといたしましても、ただいま申しますように、一万円から百万円という非常な隔たりがございますけれども、実際問題といたしましては二百二十九条の運用上はそういった幅の広い運用をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/85
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086・加藤勘十
○加藤(勘)委員 少し時間がかかり過ぎましたからもう終わりますが、最後に一つお伺いしたいのは、社会党案で出しております過怠更生の問題なんですが、過怠罪の問題についてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/86
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087・新谷正夫
○新谷政府委員 罰則につきましても、私どもも慎重に検討いたしたわけでございます。現行法に過怠破産罪の規定がございますけれども、過怠更生罪の規定が入っておりません。どの辺にそういう理由があるのかということをつらつら考えてみたわけでございますが、この更生手続と申しますのは、破産の場合と違いまして、黒字倒産の場合にも更生の申し立てができるわけであります。破産といいますと、支払い不能あるいは債務超過という客観的な事実がございまして、それがあれば破産宣告ということになるわけでありますが、会社更生の場合には、そういった窮況にはあるが、立ち直る可能性がないでもないという状況下にあれば更生の申し立てができるわけであります。そこに破産の場合と若干違いがございます。できるだけ更生手続に乗せて、そういった窮状に入った会社を救済すべきであるという考え方から、できるだけ罰則も少なくして、更生の申し立てが幅広く利用できるようにという趣旨から、おそらく過怠更生罪の規定を除かれているのであろうと思うのであります。しかし、破産法におきましてはこの過怠破産罪の規定がございます。しかし、破産法と会社更生法の性格は、いま申しましたように若干の違いがございます。多少破産法よりはゆるやかにしておくほうが更生法の運用上はむしろ望ましいのではあるまいかということに帰するであろうと思うのであります。これは罰則の問題でございますので、刑事局のほうとも十分相談いたしておるのでございますが、もしも会社更生法にこの罰則を置くということになりますと、あるいはまた破産法の罰則その地の罰則も、均衡上もう少し掘り下げて検討してみなければならないということでございまして、かなり範囲が拡大するような問題もございましたために、今回急を要する改正には間に合いませんでした。なお、慎重にこういった点も、今後の問題として検討はしてみたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/87
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088・加藤勘十
○加藤(勘)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/88
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089・大坪保雄
○大坪委員長 松本善明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/89
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090・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣にもお聞きしたいのですが、法務大臣の出席はどうなっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/90
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091・大坪保雄
○大坪委員長 参議院で目下答弁中だそうです。間もなく、それが済みまして来る予定です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/91
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092・松本善明
○松本(善)委員 それでは、法務大臣に対する質問以外のことを聞いておきますが、この法律案がかけられた法制審議会の会社更生法部会の委員の中には、これは民事局長に伺いたいのですが、経団連の常務理事、あるいは経団連の法規委員、あるいは関経連の副会長、あるいは東京商工会議所の常任理事、大阪商工会議所の常任理事、あるいは富士銀行の副頭取、全国銀行協会連合会法規部委員とか商工中央金庫監事とか、こういうようないわゆる財界、言いかえますならば独占資本の代表者というふうに言ってもいいかと思いますが、そういうふうな人たちの名前はたくさん見えるわけですけれども、この審議会の中には、労働者や下請の中小零細企業の代表が入っておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/92
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093・新谷正夫
○新谷政府委員 中小企業者の立場も十分理解できるような方がもちろん望ましいわけでありますが、一般的に申しまして商工会議所の関係の方であれば、そういった立場も十分代弁できるであろうというふうに考えられましたことと、中小企業者につきましては、代表的な方をお願いいたしまして参加していただいております。労働組合につきましては、全般について必ずしもこれは労働組合の問題ではございません。しかし、法制審議会といたしましては異例の措置でございましたけれども、総評、同盟、新産別、中立労連の代表の方に来ていただきまして、関係のところについては御意見をお聞きして、それを参考にいたしましてその審議を進めたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/93
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094・松本善明
○松本(善)委員 法務省の民事局が作成いたしました資料によりますと、この法律案をつくるについていろいろ要望書がありますが、この要望書は商工会議所でありますとか、経済団体の要望書がきわめて有力なものとして扱われておりまして、労働組合の意見を十分に徴したというような資料はないわけですけれども、この点についてはいまの答弁でもありましたけれども、労働組合はたいした問題はないのじゃないか、こういうふうに考えてこの案をつくられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/94
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095・新谷正夫
○新谷政府委員 そうではございません。各方面の意見を徴しましたのは、各団体に委員を出していただくように依頼したわけでございますが、労働組合の関係は、労働省を通じましてそちらのほうへも連絡をとっていただくという考えであったわけであります。しかし、それのみでは十分でございませんので、法制審議会の審議の過程におきまして、各労働組合の代表の方にも来ていただいて、意見を十分拝聴いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/95
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096・松本善明
○松本(善)委員 しかし、先ほど、これは直接労働組合の問題じゃないので、委員には入れなかったという趣旨の答弁をしたのではありませんか。この案の中には、労働組合の、この会社更生法の適用会社ですね、更生会社の中で自分たちの生活や権利を守って争議をやったりなんかしている労働者の意見が反映してないと思うわけですけれども、これはそういう法案の立案の態度から出ておるのではないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/96
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097・新谷正夫
○新谷政府委員 そういった現に争議を行なっている労働組合の意見を聞くということはいたしておりません。しかし、具体的には管財人、いろいろ更生会社の手続に参画しました管財人、あるいは調査委員の方、その他の方にも来ていただきまして、具体的に更生手続の実情についてお話を伺ったわけでございます。その際に、組合としてはこういう要望が非常に強いというふうなことも十分に反映されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/97
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098・松本善明
○松本(善)委員 どういう労働組合の組織が、特にこの更生会社の中で争議をやったり、あるいは更生会社になる前に争議をやったという状態にあるかということは、法務省のほうではつかんでもいなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/98
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099・新谷正夫
○新谷政府委員 私どものほうでは、具体的にどの会社についてどういう労働争議があったということは把握しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/99
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100・松本善明
○松本(善)委員 民事局がつくりました資料で、抽出調査をしました幾つもの会社の名前をあげておりますが、こういうところで一体どういうふうに労働組合が組織され、その労働組合はどの労働組合に参加しておるかということは簡単にわかるのです。たとえば、私たちの非常に狭い範囲の調査でも、総評に加盟している全国金属労働組合、こういうようなところでは、この関係のことが非常に多いわけです。そういうようなところの意見は何にも聞かぬでやってもいいんだ、こういう考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/100
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101・新谷正夫
○新谷政府委員 労働者の立場を全く聞かないでもいいというふうには考えていないのであります。この差し上げました資料は、裁判所が中心になりまして調べました実態調査の結果を、わかります範囲で資料として差し上げたわけであります。その中で、労働組合がどういうふうな動きをしたかというふうなことは把握できておりませんけれども、裁判所の所管の手続として扱われております現在におきまして、私どもとしては裁判所の協力によってこの程度の資料を入手したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/101
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102・松本善明
○松本(善)委員 そういうようなことについては、労働省と連絡をとるとか、あるいは中小企業庁と連絡をとるとかということで、一体会社更生法の適用の中で、労働者や中小業者はどういう被害を受けているかということについて調査をし、それをなくそうという考え方は、この法案にはないというふうにしか受け取れませんけれどもどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/102
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103・新谷正夫
○新谷政府委員 労働者の立場とか、中小企業者の立場を考えてないというふうな御意見のようでございますけれども、私どもとしましてはむしろそうではないのでありまして、できるだけ中小企業者、零細企業者、さらに労働者の立場を十分考えて、その優遇措置を考えなければならないというところからそもそも問題がスタートしたのであります。そういうことを全く無視してやったということではございません。この法律案の内容をごらんいただきましても、そういった点が随所にうかがわれるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/103
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104・松本善明
○松本(善)委員 それはあとの質問の中でも明らかにしますが、決してそうではない。労働者の立場や、零細業者が十分に保護されるというような状態にないと思いますが、これはあとで質問しますけれども、あなた方の言ったことがかりにほんとうだとしても、実際に労働者はいろいろな戦いをやっています。自分たちの賃金だとか、あるいは退職金を取ろうとして一生懸命ストライキをしたり何かして戦っている。そういう人たちの意見を十分に聞かなければ、これは実情に合っているかどうか、ほんとうに保護になるかどうかということはわからないではないか。いまの民事局長の答弁の中では、ほんとうにそういう声が聞かれていないという欠陥を痛切に私は感ずるわけです。
労働省が来ていると思いますので関係して聞いておきますが、この最近三年ばかりの間で労働者の債権、退職金でありますとか、社内預金でありますとか、あるいは賃金等が切り捨てられた、あるいは長期の返済というようなことになって、実際上切り捨てられた、そういうような債権はどのくらいになっておるか、そういうことを調べておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/104
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105・藤繩正勝
○藤繩説明員 会社更生事件に関連いたしまする賃金、あるいは退職金、社内預金の不払い状況の調査、あるいは先生いま御指摘になりましたように、切り捨てられるというような実態につきましては、ただいま御指摘の法務省の資料が一つございますが、私どものほうでもそれぞれの監督署を通じまして賃金不払い、退職金不払い、社内預金の不払いにつきましては、四半期ごとに統計をとっております。ただ本省でこまかく把握しておりますのは三百万円以上のものに限るわけでございますが、たとえば更生会社における賃金不払いというような点につきましては、四十年四月以降、昨年の十二月までに報告がございました三百万円以上の賃金不払い事件は七十八件でございますが、そのうち十件が会社更生法による更生手続開始決定を受けたものでございます。ただこれを見てみますと、平均が一人当たり三万四千四百円程度になっておりますので、大体一カ月か一・五カ月程度の不払い。したがいまして全額共益債権の扱いを受けているというふうに私どもは考えております。
それから退職金につきましては、これは法務省のほうの資料をごらんいただきましても、一部のものにつきまして優先的更生債権になっておりますものの切り捨てが若干見られるわけでございます。私どものほうで把握いたしておりますものは、やはり昨年の十二月末までに三百万円以上のものにつきましては百件のうち十三件が会社更生法による更生手続開始決定を受けたものでございましたが、それにつきましても大体平均賃金の六ないし七カ月分に相当する平均額になっておりますので、大部分は六カ月の範囲に入ると思いますけれども、しかしながら、一部未解決のものが現に残っておる状況から見まして、若干のたな上げといいますか、不払いがなおあるというふうに考えられております。
それから社内預金につきましては、ただいまの報告で全体でやはり十九件のうち会社更生法による開始決定のあったものは五件でございます。そのうちには山陽特殊製鋼等も入るのでございますが、これも不払いの残高は大体平均月額の一・五カ月分ぐらいに当たるのではないかというふうに考えております。山陽特殊製鋼は、ほとんどもう落着いたしておりますが、その五件のうち、すでに二件は完全に落着いたしておりまして、あと三件が残っておりますが、それも大体一件を除きましては近々支払いの見通しが立っておるというようなことでございます。
そこで結論を申し上げますと、賃金なり社内預金については、おおむね総切り捨てということはないと思いますが、退職金につきましては、遺憾ながら一部そういう現象があろうかと思います。ただ、今回退職金につきましては規定が改正になりますので、今後はそういったものはさらに改善されるということになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/105
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106・松本善明
○松本(善)委員 いま額がどの程度のものかということはある程度わかりましたが、それが実際に払われているかどうかということは調べがついておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/106
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107・藤繩正勝
○藤繩説明員 十二月末現在ではどうなっているかという状態については一応わかっておりますが、その後の状況についてはまだ報告がまいっておりませんが、たとえば社内預金について言いますれば、いま申し上げましたように個別の会社について大体の見通しをつかんでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/107
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108・松本善明
○松本(善)委員 十二月末までに支払われたということを確認しておるわけですか、いまのように。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/108
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109・藤繩正勝
○藤繩説明員 たとえば社内預金が数が少のうございますから申し上げますと、五件問題がある。日電工業、住吉鉄工所、福泉産業、山陽特殊製鋼、関西工機、かような会社でございます。そのうち福泉産業、山陽特殊製鋼については支払われておりますが、山陽特殊製鋼は若干残っておる。これは十四万円ばかり残っておるわけであります。これは取りに来ない人の分で、わずかなものであるというふうに聞いております。それから住吉鉄工所につきましては、たとえば昨年六月末に十万円未満は全額、十万円以上は十万円までは払う、かような支払い計画を聞いておりますし、それから関西工機につきましても、六月末に支払う予定であるという報告を受けております。ただ神奈川の日電工業につきましては三月末でまだ九百八十九万円の凍結がございまして、これにつきましてはいま申し上げたようなほかの二社のような明確な見通しは私どものほうではつかんでおりませんが、その程度のことはここにつかんでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/109
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110・松本善明
○松本(善)委員 中小企業庁のほうに聞きたいのですが、ここ最近三年間ばかりの間で、下請企業の債権がどのくらい、いわゆる更生会社の関係で犠牲になっているかということを報告してもらいたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/110
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111・金井多喜男
○金井政府委員 過去三年間に下請企業関係の更生債権がどうなっておるかという御質問でございますけれども、私どものほうは、端的に申しまして、結果的にはそういう数字につきましては、私どもの現在の機構なり能力をもってしては、はなはだ不十分でございます。ただ私どものほうといたしましては、中小企業の全般的な構成あるいは関連倒産防止というようなことのために、たとえば中小企業信用保険の臨時措置法によります保証の増額、あるいに商工中金、中小公庫、国民金融公庫、いわゆる政府三金融機関等による特別なる融資のあっせん等を行ないまして、できるだけこういう中小企業債権者あるいは下請債権者が損害をこうむらないように努力は続けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/111
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112・松本善明
○松本(善)委員 それでは、法務省の民事局長に聞きますが、更生会社を実際に動かしていくのは管財人ですが、この管財人は、裁判所によってどういうふうにしてきめられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/112
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113・新谷正夫
○新谷政府委員 更生手続の開始決定をいたします段階で、どういう方がその会社についての管財人として適当であるかということになるのでございますが、裁判所といたしましては、一々その会社の実態を詳しくつかんでいるわけではございません。具体的にどういう方が最も適当であるかということについては、かなり判断に迷う場合もあろうかと思うのであります。しかし、管財人を適正に選ぶということが、更生手続を円滑に、適正に遂行する上に必要であることは言うまでもないことであります。裁判所としましては、商工会議所その他の関係方面とも連絡をとりながら、具体的にどういう方が適当であるかということを勘案して管財人を定めるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/113
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114・松本善明
○松本(善)委員 この管財人の選任について、いま民事局長が言われたが、商工会議所や何かに相談をしてやるということですが、そういうことになると、結局実際上は、管財人というのは、大企業とか銀行筋で選ばれてくる、そういうようないわゆる財界、そういうところで選ばれた人がなっていくのが実情ではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/114
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115・新谷正夫
○新谷政府委員 必ずしも金融機関とか、財界の大どころの推薦によって管財人を選ぶというのではないようでございます。更生会社の推薦によるものもかなりの数ございますし、債権者その他のものからの推薦に基づくものも相当あるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/115
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116・松本善明
○松本(善)委員 しかし、この会社更生を進めるかどうか、いわゆる再建の見込みがあると判断するかどうかということが会社更生法の中心の問題になると思いますが、この問題は、実際上大企業であるとか、銀行が乗り出してきて、この企業は再建させていこう——こういう大きなところが出てこなければ、実際上は会社更生法の適用を受けられないということになるのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/116
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117・新谷正夫
○新谷政府委員 銀行等の金融機関を含めて、債権者の協力がなければ更生手続は遂行できません。こういった債権者の協力によって、減免すべきものは減免の措置を講じながら、会社そのものの更生をはかっていくのが会社更生法の精神でございます。したがいまして、もちろんそういった金融機関等も含めた債権者の協力は確かに必要でございますし、また、それがなければ会社更生ということも実際問題としてはできないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/117
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118・松本善明
○松本(善)委員 そうすると、その債権者というのは、やはり一番大きいのは不動産を担保に取っておるというような大企業や銀行、そういうところが、債権者の中での、有力な債権者として事実上の発言権を行使していくというのが会社更生法の運用の実態であるとすれば、やはりどうしても管財人が、少なくとも出身はともかくとして、大企業であるとか、銀行筋との当たりがいいといいますか、意の通ずるといいますか、そういうような人でなければ、実際上はできないのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/118
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119・新谷正夫
○新谷政府委員 各債権者の立場も十分に考え、また債権者の協力を得なければ管財人としても円滑な仕事の遂行はできません。そういう意味におきまして、やはり債権者と十分話し合っていけるような人が望ましいわけであります。しかし、銀行その他の、大口の債権者だけの意見を聞いて処理するというわけのものでは絶対にないわけでありまして、私どもは管財人の実際の体験談を何回か聞かせていただきましたが、そういった債権者の立場も考えつつ、会社内部の立場も考えるというふうな、公正な立場で現在まで管財人の方は仕事をやっておられるように承るのであります。大口の債権者は、確かにそれだけに力は強い、また関係人集会におきましても発言力がそれだけ強くなるわけであります。勢いそういったところに重点がいく場合もあろうかと思いますけれども、それのみにたよって管財人の仕事をするということはないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/119
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120・松本善明
○松本(善)委員 もちろん個々の管財人は、それぞれの債権者を同じように扱うという態度でおる人もおると思いますし、また、そうなければならないわけでありますけれども、実際上は、やはり有力債権者の意を迎えなければ、会社更生の仕事というのは進められないでしょう。だから、実際上は大企業や銀行が動かしておるような形になっておるのが実情ではないかということを、実態を言っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/120
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121・新谷正夫
○新谷政府委員 御承知のように、会社更生法の更生計画を立てます上に、一般の更生債権者の組と、更生担保権者の組、あるいは株主の組というのがございまして、それぞれの集会におきまして議決されたところによって計画が樹立されるわけであります。ことに、ただいま御質問の点は、金融機関でございますので、多くは担保権を持っております更生担保権者のグループの扱いが問題になろうと思いますが、現行法におきましては、更生担保権の減免の措置等をとります際には、担保権者全員の同意がなければ集会の議決として成立しないことになっております。その辺に非常に管財人としての悩みがあるように私ども承知いたしております。何とかその辺は、そうでないように、もう少しスムーズに更生担保権者の組の議決が行ない得るような配慮をしてほしいということは、各管財人こぞって言われるわけであります。今回の改正におきましても、その点につきましては十分考慮いたしまして、若干の手直しをいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/121
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122・松本善明
○松本(善)委員 若干の手直しをしたけれども、しかし、それは主要な更生担保権者、銀行のようなものの意思を無視してできるというようなものではありませんね。そういう趣旨では、根本的にそういう更生担保権者というような大きな大企業、もしくは銀行、そういうところの意思を押えてこの更生の手続を進めていくというようなことはできませんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/122
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123・新谷正夫
○新谷政府委員 大きな金融機関等になりますと、私どもの聞きましたところでは、更生担保権者の組における議決の際にも、やはりそれなりの見通しを持って相当の協力をいたしておるようであります。間々小さな債権者が、自分だけの立場で主張いたしますために、担保権者の組の議決がうまくいかないということがあるようでございまして、大体私どもの承っているところでは、金融機関も、一般の金融機関においては、そのような無理は言わないように承知いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/123
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124・松本善明
○松本(善)委員 ただ、銀行であるとか、大企業のほうで、これは更生させようということであれば、これは協力していくでしょう。しかし、その協力が得られなければ、結局更生の見込みがないということになる以外にないんじゃないかということを私は言っているのです。結果的にはそういうことになるでしょう。もちろん更生させるという更生開始決定が出て、そして銀行もそれに加わっているということになれば、ある程度の協力はあるでしょう。しかし、その協力が得られないということになれば、更生の見込みがないということになって、更生会社にはならぬというのではないかということを言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/124
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125・新谷正夫
○新谷政府委員 もちろん、関係人の協力がなければこの更生の手続は遂行できません。そういう意味でありますれば、関係者の協力なしに更生手続の認可ということはあり得ないわけであります。これはひとり金融機関のみでなく、一般の債権者についても言えることであろうと思うのでありまして、確かにおっしゃるように、関係者の協力はぜひとも必要な仕組みになっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/125
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126・松本善明
○松本(善)委員 今度の改正案では、保全処分の段階で保全管理人を置くということになり、その保全管理人は、会社の事業経営から財産の管理、処分までできるという、ほとんど全能ですね。これもやはり管財人と同じように、そういう大企業あるいは銀行、そういうところの意を受けたといいますか、そこの意がある程度通じているという人でなければ仕事ができぬ、こう思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/126
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127・新谷正夫
○新谷政府委員 保全管理人を置きます理由は、不適当な会社の理事者が、事業経営に失敗いたしまして、そのまま居残っていくということになりますと、会社の更生にもこれは影響いたしますので、そういった理事者を排除して、適正な事業経営、財産の管理、処分ができるような人を暫定的に選任いたしまして、経営権なり財産の管理、処分権をそちらに移しておるわけであります。これは更生手続の開始決定がありますまでの暫定的な処分でございます。したがいまして、保全管理人に人を得るか得ないかということが過渡的にではありますけれども、会社の更生に重要な影響を持つわけであります。これをどのような形で選んでいくかということは、もちろん、裁判所が慎重におきめになるわけでありますけれども、一般の管財人の場合と同様に、その段階におけるいろいろの事情を考慮いたしまして、各方面の意見も裁判所が求めた上で管財人の選任をするということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/127
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128・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣に伺いますが、いままで法務大臣おいでにならぬときに、会社更生法の適用の中心は再建の見込みがあるという判断をするかどうか。その判断の中心はやはり大企業でありますとか銀行が、これは更生をさせようということで乗り出してくるかどうかということできまってくるのじゃないか、そういう実態ではないかということで民事局長に聞いておったのです。そのことばどおりに認めたわけではありませんけれども、大体そういうような結果になっているということがうかがえるような答弁でありました。こういうふうにしていきますと、結局私のことばでいえば、独占資本、財界あるいは大企業や銀行筋が、企業を系列化していく、あるいは資本を集中していくということにこの会社更生法というのは非常に威力を発揮している、こういう結果になっているのではないかと思いますが、法務大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/128
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129・田中伊三次
○田中国務大臣 結果において、間々そういうことに移行をする危険もお説のようにないとは言えません。しかし、本件会社更生法を改正しようとするねらいがそういうところにないことは、いままで関係者より御説明を申し上げておるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/129
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130・松本善明
○松本(善)委員 今度の改正の問題点について、またあとから伺いますが、この会社更生法の運用の実態がそういうものでありますために、下請の零細企業の債権を切り捨てるとか、あるいは場合によっては労働者の賃金まで切り捨てる、あるいは更生の名のもとに労働者の首切りだとか、労働強化が行なわれる、こういう実態があるわけなんです。法務大臣、そういうことについてどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/130
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131・田中伊三次
○田中国務大臣 まず、中小企業者の持つ債権でございますが、この債権については、従来申しますと、共益債権でない限りはたな上げされてしまう。更生決定が認可になりますまでたな上げになるということであります。こういうことでは倒産の連鎖反応が起こるおそれがあろうということから、いろいろ苦心をいたしました結果、提案を申し上げておりますような中身のもので、これを裁判所の許可を求めた上で返済ができるようにしていこう、こういう方向に、苦心の改正を提案しておる次第でございます。
それから、退職金につきましても、全部ではございませんけれども、六カ月前の俸給と合わせまして、多い額についてはこれを共益債権化しよう、こういう考え方であり、また社内預金につきましても同様の考え方を持っておるのでありまして、仰せのごときことがねらいではないわけであります。一部はうまくいかないようなものも出てくるということは起こり得るのでございますが、更生会社の会計の許す限り有利な方向に努力をしていこうという改正でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/131
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132・松本善明
○松本(善)委員 それでは改正案のことについてお聞きしますが、この改正案で保全管理人を選ぶという問題があります。この保全管理人は、会社の事業経営、財産の管理、処分の権利を持っております。ほとんど全能であります。保全処分の段階からそうなんです。管財人は、いままでどおりそういう権限を持っておるのも言うまでもありません。それから調査委員の任命というのがありますけれども、この調査委員は更生手続開始の条件の重要なものをすべて裁判所に報告をする、更生の見込みの有無を報告をするということになっております。それから更生手続を開始することがいいかどうかということも報告をするということになっております。だから、結局この保全管理人とか調査委員とかいうものは、実際上は更生管財人の職能と合わせまして、更生手続を進めていく実体者であります。裁判所は形の上でといえばたいへん語弊があるかもしれないけれども、実際上はその人たち、管財人とか、あるいは保全管理人とか、あるいは調査委員とか、こういう人たちが更生手続を動かしていく、こういうことになるわけであります。
その人たちの人選は、先ほど来、法務大臣がおられないときにだいぶ民事局長とやっておったのですけれども、結局大企業だとかあるいは銀行がほんとうに乗り出して更生手続を進めるということにならなければ更生がいかないものだから、実際上はたとえば商工会議所に聞くとかなんとかして、いわゆる財界の意を迎える、これがことばが強過ぎれば、意に通じた人がなってこないと進まない、こういう実態にある。そうなると、調査委員でありますとか、保全管理人とかいうものを設けるということは、先ほど法務大臣が、そういうことはあるだろうというふうに言われました、大企業が資本系列化をしていく、中小企業を系列化していく、合理化を進めていく、あるいは資本を集中をしていく、そういうことがますます便利になるということしか考えられませんが、法務大臣、この点についてどう考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/132
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133・田中伊三次
○田中国務大臣 何でもものをひねって考えますと、そういうこともないとは言えない。しかしながら、この法案の目的としておりますところは、そういうふうにひねってないのです。これは、つぶれかかった会社をおのれの系列化に置こうなどという、独占資本と称せられる資本力を持ったものがあるか、一体そういうことをやるかどうかということなんですね。これは議論になりますけれども、実際問題ではありませんから、何回議論をしても役に立ちませんが、どうも私はそういうふうには考えない。しかし先生仰せのようなこともありましょうね。弱みにつけ込んで、それじゃひとつ融資をしようではないか、重役を送ろうではないか、製品を回そうではないか、材料をやろうではないかということになれば、これは結果において系列下に入ってしまうということなしとしない。それはお説のような危険が間々ないとはいえない、こう私は正直に思うのであります。思うのでありますが、本改正のねらいとしておりますところは、そういうややこしいことにねらいは持っていない。
それからいま先生の仰せになりましたこの調査委員の選び方でございますが、更生手続開始の申し立てがあれば直ちに調査委員は選べるわけでございます。一人のみならず、専門家といわれる方面の人は、弁護士からでも、公認会計士からでも、あるいは現職の前線に立って働いていらっしゃる実業家からでも、自由に何人でも専門専門で選び得る。その意見を聞いて裁判所が判断をしていくというのでありまして、この調査委員制度の運用の結果、判断を自主的に行なうのは、申し上げるまでもなく裁判所でございますから、調査委員にその決定権を持たしておるわけでもございませんので、この点は御心配は要らないのではないか。
それからもう一つは、監督員と管理人の関係でございますが、保全管理人、監督員というのは、これは同時に選ぶことはない。どちらが役に立つという場合においては、これは監督員でよかろう、監督員ではいくまいから保全管理人にしようとかいうふうに選ぶわけでございますが、これは更生手続が開始になるまでの役割りであります。その間にこれがいたします仕事も、いずれも監督員が出ます場合においては、監督員によって監督をされるその取締役、これが会社におりますから、この取締役を監督しながら仕事をやらしていくということになるわけでございます。
それから更生手続が開始決定が行なわれました後には、破産の手続の場合と同様に、これは管財人が全責任を持っていくということになるわけでございまして、人の選び方が先生のお説のごとくに非常に大事なものではなかろうか。妙な者を選びますと、妙なところへ持ち込まれてしまうという心配もございます。裁判所もみずから監督はしておるのでありますけれども、何ぶんこの忙しい裁判官がそういう複雑な企業の中身を一々手落ちなく監督ができるということもなかなか困難な仕事の一つであろうと思います。
そういうことから申しますと、いまお説の出ました調査委員、監督員、それから保全管理人、管財人というような、これらの法律でうとうております急所急所の任務を果たしていただく人物を選ぶのには、非常に用意周到に、適材適所でこれを選んでいくということをやっていかなければならぬものと、いま御意見を伺いまして思うのでありますが、よほど慎重な態度でこの人選をしていかないと、妙に結果が間違ってくることがあってはならぬということを深く感ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/133
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134・松本善明
○松本(善)委員 私は、個々のあれを選ぶときに、それぞれ違った、いま法務大臣の言われたような形で選ばれることがあると思いますけれども、実際上は、先ほども民事局長と言っていたのですけれども、大企業や銀行、そういうところが乗り出して再建に参加をしよう、参加をさせていこう。債権全部をとってしまうのではなくて、不動産が大体担保に入っております。工場の建物とか、土地だとか、それを引き揚げるということを大きいところがきめれば、会社更生というのは進まないわけです。だから、実際上はその成否を大きいところが握っているのではないかということを言っておるわけです。そうなると、実際上、これを更生をさせていこうということになると、そういうところと意を通じた人たちが、保全管理人だとか、あるいは管財人だとか、あるいは調査委員になってくるということにならなければ更生が進まないから、更生をやめにしてしまうということならだれを選んだっていいということになるかもしれないが、更生させようということになると、どうしてもそういうことになっていくのではないか。それは結果として、資本の系列化、資本の集中をもたらすということになるのではないかということを言っておるわけであります。その点については法務大臣も同意見ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/134
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135・田中伊三次
○田中国務大臣 私が詳しいことを知りませんので、たいした意見を持つわけではないのでありますけれども、いまお話のような更生債権者、それからもう一つは更生担保権者というものは、会社がこの更生手続に入りますまでにすでにちゃんと権利を持っておる人が中心になるのですね。ですから、見ようによるのでありますけれども、独占資本が介在をしてくるのは、この会社更生法を適用される以前からすでに介在をしてきておって、この更生法が適用された後においては、それが更生債権者であり、更生担保権者である場合が多いのではなかろうか。それがよいか悪いかは別でございますが、更生会社の更生手続の以前にすでにそういう関係があるのではなかろうか。そういう関係がありますので、債権者としても、担保権者としても、強い発言権を持つようになってくるということになるのであります。独占資本が介在をし、これにくちばしをいれるとその影響力が大きいという意味の心配は、この会社更生法自体の改正からは出てこない、それ自体からは出てこないのではなかろうか。新たなる独占資本が食指を動かす余地が出てこないのではなかろうかというふうに私は見ておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/135
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136・松本善明
○松本(善)委員 結局、更生という機会に会社を乗っ取っていくという結果になるということを言っておるわけですけれども、時間を節約する趣旨で、それはもし法務大臣がそれについて意見を言いたければ、あとでほかの機会に答えていただきたいと思います。
この退職金、社内預金等について優遇しておるということを先ほど言われましたけれども、実態は、その更生会社になる場合の不動産はいま話ししましたように大企業や銀行の担保に入っておるわけでありまして、ほとんど什器や備品程度なのであります。そんなもので退職金だとか、それから未払い賃金だとか、あるいは社内預金というようなものはまかなえないということが実際には非常に多いわけです。そういうことについて法務大臣、どう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/136
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137・田中伊三次
○田中国務大臣 これは具体的な更生会社について、会計の具体的な内容はこういう内容だ、債権関係はこういう債権関係になっておるというバランスを見ませんと、具体的にどうとかこうとかいう意見がたいへん述べにくいのであります。抽象的にお話を承りましても、それはどうかということがたいへん言いにくいのではなかろうかと考えます。あやふやな、自信のない者がいろいろ申し上げるより、いまの点は大事な点でありますから、事務当局から一言お答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/137
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138・新谷正夫
○新谷政府委員 更生会社と申しますか、更生手続を申し立てた会社、あるいは開始決定のあった会社、これはいろいろ資産状況に差異があろうかと思います。ただいまお話のように什器類等の動産類しかないような会社もあるいはないではないと思いますけれども、そのような会社につきましては、これはごく一般論でございますけれども、おそらく更生手続に乗るような会社ではないというふうにも考えられるわけであります。そこまでいってしまえば、おそらくもうこれは破産の段階に入っておると思います。したがいまして、そういう会社から共益債権として債権は全部弁済を受けるということは、これは不可能でございまして、これは具体的な事案によってそれぞれ判断されなければなりませんけれども、極端な財政逼迫した会社につきましては更生手続は開始しない、むしろ破産のほうへ持っていくべきものであろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/138
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139・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣に伺いますが、事務当局ではそういう答弁ですけれども、いまの世の中で、自分のところの財産を使ってできるだけ資本の運用をしようということですから、不動産や目ぼしい財産が担保に入ってないということはほとんど考えられない。そういうことがないんだというようなことは全くの空論なんですよ。だから実際問題としては、事実私たちはいろいろな事件を見ている中では、ほとんど目ぼしい財産というものはないのです。ただ、それを大企業や銀行が乗り込んでいって、それじゃ、おれがこれを更生させていくという、こういう場合に更生できるわけですよ、大まかに言って。これは個々のことを審議している場合でないから、個々の、別々のことを言うわけにはいかないけれども、大まかに言ってそういう状態です。だから、申しますけれども、共益債権にするということで多少優遇するとしても、労働者の債権はそれではまかない切れないのですよ。そういう実態がある。労働者には、みんな会社更生法の適用を受けるということになったら、労働組合は争議に入るというような体制で戦って、取っております。取っておるところもありますけれども、実態はそういう状態なんです。だから、共益債権にするというようなことが、それだけで労働者の優遇措置には決してならない。この点について、法務大臣、どう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/139
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140・田中伊三次
○田中国務大臣 けれども、松本さん、それは共益債権化をしないよりしたほうが利益になるでしょう。それはどの程度の利益になるかは会社会計の力による。それは更生会社の中身によりますから。けれども、何も役に立たぬじゃないかというふうに仰せになるほど頼りない制度じゃないでしょう。これは、社内預金についても、退職金についても、中小企業のこれについても、それは十分のものでないでしょう。それは十分にどんどん返していけるんだ、この制度を活用してたいへんな効果があるんだというなら、この会社は更生会社になる必要はないわけで、ちゃんと独立してやれるわけでしょう。そういうことでありますから、やはり会社をつぶさないでやっていって、とりあえずはこういう措置で、ないよりましの措置をするんだ。ないよりましというと、たいへん言いにくいわけですが、先生のいまお話しのような場合が多いのではないでしょうか。そうすると、ないよりましだ。しかし、これで会社が更生できるんだ、こういうことで会社を更生さしていこうというところにこの法律のねらいがあるといたしますと、直ちに目立ったその効果はなくとも、債権者も、担保債権者も、労働者も、これで満足して、この会社の更生には協力をしていただくというその御協力の観念を持っていただいて、この改正案の運営をやらしていただきたい。こういう気持ちなんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/140
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141・松本善明
○松本(善)委員 それではちょっと申しますが、法務大臣、この改正案には二百十条の二というのがありまして、せっかく共益債権にしたしかし強制執行する、こういう場合に、もし更生が支障が生ずるという場合には、それは中止をするんですよ。労働者が賃金で、支払いの仮処分をとって、強制執行している。これでは更生できぬということになると中止させるという。共益債権にした、ないよりましだというけれども、いざという場合には、たとえば労働者全部に払っちゃったらこれはだめだというようなことが起こった場合には、それをとめちゃう、こういうことになる。そういうことになると、実際上はこの保証というのは非常に浅い。形の土ではなるほどないよりましだ。形の上では何か債権にした、よさそうに見えますけれども、実際上は何の役に立つだろうかという程度のものにすぎない。そう思われませんか、こういう規定も一緒に入っているということになると。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/141
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142・田中伊三次
○田中国務大臣 松本さん、共益債権化したものが支払えないで、強制執行手続を踏まなければならぬというような事態が起こるような場合であるというと、これは更生手続開始決定が行なわれないのじゃないでしょうか。そんな頼りないものは——やはりいま申しました中小企業の問題については、これは許可制でございますから、どれだけの部分ということは言えないでしょう。会計に力のある限度においてということになるのでしょうが、はっきりここで分量が分かれるのは、退職金、社内預金という場合には、はっきり責任の支払いの義務が生じますけれども、そういうものでさえ、せっかくそうしてつくり上げたものでさえ支払い能力がないんだというようなものであれば、これはもう更生開始決定にはならないのではなかろうか。これは先ほども局長が申しましたように、これは配分の値打ちもない、破産に打ち込んで処理をする以外にはない。葬式をしてしまうことになるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/142
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143・松本善明
○松本(善)委員 共益債権にする権利として認めるということには、場合によっては強制執行ということをやはり考えたことなんですよ。それが自主的に払われるというのは、いまの状態だって同じです。労働組合が交渉して、自主的に払っているんですから。それを権利にしたということは、そういう強制執行ということまで考えたはずです。そういうことを考えることになった場合には、更生にならぬのだということになったら、ますますこれは、何のことはない、絵にかいたもちと言っても差しつかえないくらいのものじゃないでしょうか、私はそう思います。
ついでに法務大臣に伺いますが、これはほんとうに保証しようということになれば、退職金とか社内預金——退職金は労働者の賃金のあと払いの性質を持っており、これは全額支払うものだと思う。賃金のあと払いという性質をいまの状況は持っている。社内預金については、それ以上保護しなければならぬものだと思う。これをほんとうに確保するためには、更生担保権を押える以外にはない。更生担保権を持っておる大会社や、あるいは銀行自体が持っている担保権で押えている財産、ここからも払うということをしない限りは、これは労働者の保護には決してならない。これは大企業とか銀行を押えることになる。こういうことをおやりになる気はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/143
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144・田中伊三次
○田中国務大臣 退職金にいたしましても社内預金にいたしましても、債権者で、債権である、更生会社に対する債権であるという点においては、その性質は全く同様である。しかし、こういう言い方は、事実の重要性をわきまえざる言い方なんですね。先生の仰せのとおりに、退職金というものが非常に大事なものであるし、社内預金というものも大事なものだ。社内預金は一般預金として、給料として受け取ったものから預金される。そして退職金というものは給料のあと払いであるということは非常に重要です。その重要性を考えればこそ、ここに御相談申し上げておるような共益債権化を、一定限度で相済まぬのでありますけれども、一定限度でありますけれども、共益債権化をして、これを保護しよう、その重要性にこたえようという趣旨であります。でありますから、仰せのごとくに十全のものではないのでありますけれども、確かにやらぬよりは運用上いい。そして会社を更生さすことに御協力を願う、こういうふうに持っていくにはなかなかよくできた考え方ではないかという、てまえみそですけれども、そういうふうに考えて御審議をお願いしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/144
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145・松本善明
○松本(善)委員 この改正の中心は、一方では、私に言わせれば、ほんとうにかすかな、形の上だけの労働者に対する優遇措置、しかも実際上の結果が出てくるのは、先ほど一番最初に申しました調査委員の任命とか、それから保全管理人、ここが中心課題ですよ。それは先ほど申しましたように、私は資本の集中と系列化を促進する、実際上の結果として、この改正はそういうふうな意味を持っておると思うのです。
法務大臣にお聞きしますが、きょうの新聞あたりでも、資本の自由化の問題が七月一日から起こってきて、もうそれの影響が出てきている。ソニーは株が買い占められるという状態ですし、それから化粧品のメーカーは三社倒産している。これからそういうことがたくさん出てくると思うのですね、倒産というようなことが。そういう中でこの会社更生法はたいへんな威力を発揮するだろう、私はそう思うのです。資本の自由化、それから資本の集中系列化ですね、それから中小企業の合理化、倒産、取りつぶし、それの中での労働者に対するしわ寄せ、こういうものが進められていく中で役割りを果たしていくのではないか、そういうことになるのじゃないかと思いますが、法務大臣の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/145
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146・田中伊三次
○田中国務大臣 私はそのお説はたいへんよくわかるのでありまして、そういうことがないとは言えないと思います。ないとは言えないと思うんだが、それならばこの会社更生法というものを改正せずにしておいて何かよい道があるのか、こういうふうに逆に考えてみるというと、この程度の改正でも思い切ってこの際急ぎ改正をし、これを特に急いで施行するように努力をする必要がある。これはやらぬよりいい、一歩前進だ、こういう考え方を失わないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/146
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147・松本善明
○松本(善)委員 最後にお聞きしておきますが、そういうことだと、やはりいま申しましたように、更生担保権ですね、中小業者とそれから労働者の権利を守っていくために、やはりそれを押えていくという方向に踏み切らなければならないはずだと思うのですが、その点については、再びの質問ですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/147
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148・田中伊三次
○田中国務大臣 むずかしい問題だと思います。更生担保権者の権利を押えていくということ、これを削っていくということは、非常に容易ならざる、ちょっと法制的に考えてみまして——よくわかるのであります。仰せになることよくわかるのでありますが、そういうふうに法制的にそれをしていくということはなかなか容易なことではないのではなかろうか、こう考えます。むずかしいことではなかろうか、私はこう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/148
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149・大坪保雄
○大坪委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
次会は、来たる六日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。
午後一時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X02919670704/149
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