1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月六日(木曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 大坪 保雄君
理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君
理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君
理事 濱野 清吾君 理事 加藤 勘十君
理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君
千葉 三郎君 中尾 栄一君
中村 梅吉君 馬場 元治君
村上 勇君 神近 市子君
神門至馬夫君 中谷 鉄也君
西宮 弘君 細谷 治嘉君
沖本 泰幸君 松本 善明君
出席国務大臣
法 務 大 臣 田中伊三次君
出席政府委員
内閣総理大臣官
房陸上交通安全
調査室長 宮崎 清文君
法務省刑事局長 川井 英良君
運輸省鉄道監督
局長 増川 遼三君
委員外の出席者
内閣総理大臣官
房参事官 日出 菊朗君
警察庁交通局交
通企画課長 片岡 誠君
法務省刑事局刑
事課長 石原 一彦君
厚生省医務局総
務課長 中村 一成君
運輸省自動車局
業務部旅客課長 横田不二夫君
運輸省自動車局
整備部長 堀山 健君
建設省都市局技
術参事官 馬場 豊彦君
建設省道路局企
画課長 豊田 栄一君
建設省住宅局調
査官 三宅 俊治君
専 門 員 高橋 勝好君
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七月六日
委員下平正一君、松前重義君及び三宅正一君辞
任につき、その補欠として中谷鉄也君、神門至
馬夫君及び細谷治嘉君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
委員神門至馬夫君、中谷鉄也君及び細谷治嘉君
辞任につき、その補欠として松前重義君、下平
正一君及び三宅正一君が議長の指名で委員に選
任された。
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七月五日
外国人登録証明書の国籍欄書きかえに関する陳
情書(第二一二
号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第九四
号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/0
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001・大坪保雄
○大坪委員長 これより会議を開きます。
刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前会に引き続き、質疑を行ないます。細谷治嘉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/1
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002・細谷治嘉
○細谷委員 刑法の一部を改正する法律案について質問いたしたいと思うのでありますが、今回の改正案は、刑法四十五条と二百十一条に関連いたしたものでありますが、この提案の理由を読みますと、「最近における交通事犯の実情等にかんがみ、」と、こういうことになっておるわけでございます。
そこで、お尋ねいたしたいことは、法務省としては、一体今日の交通事故の原因というものはどこにあるのか、どういう認識をなさっておるのか、こういう点についてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/2
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003・川井英良
○川井政府委員 いろいろな問題がからんで、交通事故の多発という現象が出ているものだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/3
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004・細谷治嘉
○細谷委員 いろいろな問題だけではいけないのであって、具体的にどういう問題があるのか、一つ一つあげて御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/4
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005・川井英良
○川井政府委員 まず第一に、交通機関が近代的な文明の機関として、急激に、しかも異常な発展を遂げておるということをあげることができると思います。
具体的には、あらゆる交通機関、特に自動車の台数というふうなものが、近年異常な勢いでもって増加しておるというふうなことが、まずもって一番大きな一つの要因としてあげることができるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/5
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006・細谷治嘉
○細谷委員 自動車の異常な増加、これは大体今月で一千万台をこすということでありますから、確かに異常な増加でございます。異常な増加ということだけで、今日の交通戦争といわれる交通事故が起こったという説明は、きわめて不十分ですよ。もっと具体的に、あなたの考えられるいろいろな点を具体的にあげていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/6
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007・川井英良
○川井政府委員 自動車の、あるいは交通機関の異常な発達に即応するような、いろいろな施設、設備というふうなものも、必ずしもその発達に追いついていかないような場面もあろうかと存じまするし、また一部には、これらの交通機関を運転、操縦する人の側におきましても、人命をなお一そう尊重していくというふうな考え方なり、あるいはそういうふうな人命に危険のあるようなものを運転するというふうな場合における注意義務ということについての考え方が、必ずしも十分にできていないというふうなことも、有力な原因としてあげることができるのではないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/7
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008・細谷治嘉
○細谷委員 いまあげられましたのは、車の異常な増加、それから、運転者の未熟といいますか、そういうような点、それから施設の問題等をあげられたのでありますが、これだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/8
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009・川井英良
○川井政府委員 これは、非常に大きな社会現象でありまして、総合的ないろいろな観点から深い検討を要することは言うまでもないことでありますけれども、当面問題を限定いたしまして、特に最近交通事故が多発しておるということに具体的問題をしぼりまして、そういうふうな観点から問題を提起していくならば、以上申し上げたようなことが、まずおもなる、また重要な一つの要因としてあげることができるのではないかと思います。
なお、さらにつけ加えて申しますならば、日本におきましては、歩行者の事故が最近非常に多いわけでありますけれども、そういうような歩行者の事故が多いということは、運転者の側におきましても、いろいろまた原因がありましょうけれども、一般国民の交通道徳とか、あるいは、交通秩序に対する考え方というふうなものも、一般論としては、まだ未熟な段階にあるのではないかというふうなこともあげていいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/9
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010・細谷治嘉
○細谷委員 いま二つばかりつけ加わったので、五つばかりあがったわけです。いや運転者の側だけではなくて、歩行者の側にもあるのだ、全体としては総合的な観点からの取り組み方が足らなかったのだ、こういうことで、言ってみれば、いろいろな点があげられたのでありますけれども、ちょうど大臣いらっしゃっているようですから、大臣は、きわめて要約して、この今日の事故というものをどう見ていらっしゃるのか、これをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/10
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011・田中伊三次
○田中国務大臣 まあ、言いにくいことをずばり申し上げるということになりますと、最も大きな原因は道路にあろうと思います。車は、スピードの上でも、発車時の機能の上でも、非常によくなっている。いやでもスピードを出しやすいように、出しやすいように、こういうように車が発展していく。道路の幅員一つにしても同じことだと思います。こういう道路の幅員が狭く、悪路である。大都会を通っておりますような道路は、比較的りっぱにできておりますが、しかし、それは国道でございます。地方道を含めて、全体として申しますと、道路の進み方が足らない、車の機能は進んでいる。車で進めていないのは、大型車にならないように、中型車でとめているという点が特徴でございますが、それ以外の車の機能はぐんぐん進んでいる。道路もこれに従ってぐんぐん幅も広がり、道路の舗装もよくなっていかなければならない、こういう状態であるにかかわらず、このバランスがとれていないということがやはり事故多発の原因であろうかと存じます。ことに、地方道についてそういうふうに考えるのであります。
それから、その次の、第二の原因というものは、運転免許制にあるのではないか。運転免許制は、心して改正をしなければならないものではなかろうか、こう私は考えるのでございます。こういうことを言い過ぎることは、法務省の所管事項でございませんから言いにくいのでありまするけれども、技術面の試験のほかに、人間といいますか、人物というか、人柄というか、そういうものについての試験も、電子計算機か何かにかけまして試験をする道はなかろうか。アメリカはこれを考えているようでございます。パリでもこれはやかましく議論となっているようでございますが、そういう道が何かなかろうか。単なる技術試験のみで免許を与えるという免許制というものにも反省をしなければならぬものがあるのではなかろうか。こういうことの試験がしっかりやれますと、ある程度悪質の違反というものは食いとめていくことができるものではなかろうか、こういうふうに実は考えておるのでございます。
それから、これも国会の大臣の申します意見としては、言いにくいことでございますが、どうも歩行者にも重大な責任の一半があるのではないか、善良な歩行者を相手にこういう話はしにくいのでありますけれども、やはり歩行者にも規則を十分に守っていただいて、そして交通事故が起こらないように努力をしていただく必要が歩行者にもあろう、私は歩行者にも事故多発の重大な責任の一半があるように思う。いろいろほかにございましょうが、私は専門家でございませんので、たくさんな事例を申し上げることができないのは申しわけないのでございますが、少なくともこの三点において反省をすべきものがある、こういうふうに私は見ておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/11
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012・細谷治嘉
○細谷委員 これは広範にわたって原因と言えば多々あると思うのであります。いま大臣がおもな点として三点程度あげていたわけでありますが、これを議論しておったら切りがありませんから、そこでお尋ねいたしたい点は、いろいろな原因があるわけでありますけれども、法務省としてはその対策の一つとして、刑法二百十一条の改正ということを思い立ったのだと思うのでありますが、こういうような観点に立って、どういう問題がいま国会で取り上げられておるのか、不敏で全部を知りませんからひとつ教えていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/12
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013・川井英良
○川井政府委員 御質問がたいへん広範なことでございますので、一度にお答えできるかどうかわかりませんが、順次補充してお答え申していきたいと思います。
私どもの考え方は、先ほど御指摘のように、最近交通機関による人身事故が非常に多発しておる。これは何人も疑わない事実でございます。昨年度の統計によりますれば、一日にまさに三十八名の死亡者を見ておりまするし、それから負傷者に至りましてはまさに一分間に一人の割合で負傷者を出しておるというようなことで、交通機関による災害といたしましては、世界にも類のないような悲惨な現況を呈しておりますので、このことに対しまして、法務省当局の立場からでき得る施策への貢献ということはどういうことが考えられるかということで、内閣に設けられました交通対策についての総合機関のほうへも私どものほうでも早くから参加をいたしまして、いろいろな角度から最も有効な対策の発見について努力を重ねてまいったのでございます。
そこで、私どもの面といたしましては、刑罰を上げることだけでこの対策に全面的に寄与することができるとはもとより増えておりません。しかしながら、今日の禁錮三年以下、千円以下の罰金という刑罰は、あらゆる面から考えましても低きに失するのではないか、現に、最近数カ年間における裁判の実情、特に最高裁判所でとっております司法統計によりまして事実を見ましても、刑であります禁錮三年という頭打ちの刑がかなりの数字を示しているということが、私どもとしてはたいへん注目すべき事実だと思うのでございます。御存じのとおり、刑罰はいろいろな刑罰がございますけれども、その法定刑一ぱいの刑罰をいくというようなものはほとんどないわけでございます。ところが、この刑罰に限りましては、最近この悪質化した事故の現状に対しまして、最高刑をいっている判決がかなり出てきているということは、私どもの面からは非常に注目すべきことだと思うわけでございまして、こういうことに携わっておる者あるいは被害者をめぐってのいろいろな住民の感情その他から申しましても、もう少し刑罰を上げていいんじゃないかという声が、私どものほうに非常に強く要望されておるというふうな事実もあるわけでございます。その辺のところからいろいろ勘案いたしまして、一挙に重い刑罰を加えるということはいかがかと思いまするけれども、その他のもろもろの総合的な行政施策と相まって、それとにらみ合わせた限度におきまして、今回御審議を願っておりますような五年という程度に刑罰を上げるということが、私どもの面からこの対策に寄与する一つの有力な、また実効のある対策ではないかと考えたわけでございまして、これは過失犯でございますので、ある程度刑を上げることによりまして、運転者並びに国民全般にわたりまして、一般的予防的な面を注意を喚起するという効果もかなり期待できるのではないかというようなことを考えまして、これらを主たる理由といたしましてこの提案をしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/13
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014・細谷治嘉
○細谷委員 残念ながら刑罰を上げることで今日の事故を防ぎたい、こういう点しかお答えいただけなかったのでありますけれども、先ほど大臣のおことばにもありましたように、たとえば交通安全施設の整備、こういうものがわずかではありますけれども、昨年来取り上げられました。それによりまして、安全施設が整備されたために、かなりの事故が防がれた、こういう実績はわずか一年でありますけれども、はっきりしておるわけであります。こういう問題をひとつ整備しようじゃないかという形できょうあたり交通安全対策特別委員会で、この問題についての法律を決定するやに伺っているのであります。これも大臣御指摘のとおり、重要な問題でありましょう。あるいは今日の運輸行政というものを見ても、これは道路の安全施設だけでなくて、運輸行政のあり方というものが、非常に重要だと思うのです。運転免許については、これは警察の問題でありますが、一体精薄者に対してどういう対策を講ずるのかということでありますけれども、現実にことしの四月一日からですかやってはおりますけれども、たとえば有名な大学の医学部ですらも、そんなことは責任は負えない。精神薄弱者であるかどうか、運転に適格者であるかどうかということを検討するには、少なくとも二、三週間ぐらい入院してもらわなければ、医者としての自信ある診断は書けない、こういうようなことでありますから、これもまあなかなかむずかしい問題でありましょう。そういうことからいって、私は総合的な施策がとられぬところに、いってみれば縦割り行政の弊害というものがやはり今日の交通戦争といわれる事態を引き起こした重大な原因ではないかと思いますが、そういう中において、いまのおことばの中にも刑罰を上げて解決するものではないということがありましたけれども、私は刑罰を上げる前に、今日の事態を回避する方途というのは、こういう刑法を取り上げる前に、交通安全問題の実施については当然国なり地方公共団体がやらなければならぬ、あるいは一般の人がやらなければならぬたくさんの問題があると思うのであります。これについてひとつ大臣、しゃにむに今日この段階において刑法に触れておかなければいかぬのだというお考えなのかどうか、これをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/14
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015・田中伊三次
○田中国務大臣 先ほど私が申し上げました多発の原因でございますが、どの原因をとらえましても、反省をして改められるものと、なかなか容易に改められるものではないものがあろうと思います。たとえば道路の問題にいたしましても、幅員の問題を私はおしゃべりいたしましたが、道路の幅員というものは簡単に広げられるものじゃない、ことに重要な、多発しております都市部におきましては。市街地において道路を簡単に広げるなどということを、口にして、なかなかやれるものではない。そこでやむを得ず横断歩道橋を設置するとか、シグナルの数をふやすとか、あるいは黄色い旗を持たして横断をさせるとか、いろいろ幅員を広げる以外の方法で交通事故を防ぐ道はなかろうかということを腐心しておること、現状のとおりでございます。
それから免許の問題にいたしても、いま先生御指摘のとおりこれはなかなか困難でございます。こういうふうな基準に該当する者は事故を起こすのだということの医学的研究が整えば、これは電子計算機にかかる、きわめて簡単に判別ができることになろうかと思いますが、お説のとおりパリにおいても、ニューヨークにおいても、熱心にやっておるようですが、なかなか確定的なものがないようでございます。自動車に乗った瞬間に、車のムードとそのスピードのムードに接した瞬間に、気違いになるというやつがおるというのですね。電子計算機にはたしてこれがどういう基準でかかるかどうかの医学的な基本的研究が完成をしないと、なかなかできぬのではなかろうか、こういうふうに考えてみると、先生お尋ねのことは、こういう答えになるのです。
ありのままに申し上げますと、これもやらねばならぬ、あれもやらねばならぬが、しかし、やれることと、急にやれぬことがある。こう考えてみると、やれる事柄で多発を防いでいく以外にない。やりにくい事柄を何ぼ言いましても、これは論議の程度を出ないことになるわけでございますから、やれることでやるよりしかたがない。そこで刑罰でございます。刑罰を重くして、これを引き上げて、三年以下の禁錮を五年以下の懲役、禁錮というようなことに引き上げて、はたしてそれがどれだけの効果があるかというと、この効果というものは、期待をするほど非常に大きな効果があるものとはいえないのではなかろうか。すでに第一、被害者が出て人が死んでおる、けがをしておるというもの、そのけががなおるわけでもなく、死んだ人間が生き返ってくるわけでもないのであります。そこでこれをいたします場合に、刑を引き上げることによって打開の目的を達する。一般予防、特別予防の目的を達する刑法の目標というものは無視できぬのではなかろうか。それは運転者がもっと反省をして、運転者がスピードの出し方というものについて反省をしただけでも本件の改正の効果はあるものだ。これは道路の幅員を広げて——狭いから事件が起こる、なぜ広げないのかという意見、なかなか簡単にこれができるものではございませんが、刑法を改正いたしまして、一般予防、特別予防の目的に向かってこれを施行するという段階に入りますれば必ず効果はある、こういうふうに私考えておるのであります。最小限度、改正をしない場合を考えますと、改正をしたことによってよほどの著しい効果がある、こう考えるのでございます。これだけで犯罪が根絶されたり、これだけで犯罪によって生じた被害が回復されたりするものではない。しかし、しないよりもよほどましだ、たよりない話でありますけれども。そういうふうに考えまして、全力を尽くすという意味で刑法改正を行ないたい、こういうふうに考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/15
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016・細谷治嘉
○細谷委員 いろいろと他の法律との関係は後ほどお尋ねいたしたいのでありますが、今度の刑法改正案を見てみますと、二百十一条に懲役刑というものを入れるわけなんであります。この案を拝見いたしますと、改正刑法準備草案、あるいは改正刑法仮案、こういうものが発表されておるのでありますけれども、その内容と違っておるのですね。これは、どうしてですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/16
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017・川井英良
○川井政府委員 主たる相違の点は、法定刑の点でございますが、法定刑は、準備草案は五年にしておりますので同じでございますが、おそらく今度の改正案は、禁錮のほかに懲役刑が入っておる点が最も注目される点だ、こう思うわけであります。
この刑法というものは御承知のとおり、世界的に大体相通ずる基本精神を持っておりまして、わが国の刑法もほかの国とあまり変わった方針はとっておらないわけでございますが、原則といたしまして、御承知のように禁錮刑というのは一種の刑罰ではありますけれども、いわば名誉刑とも称すべきものだという考え方のもとに、主として過失犯ないしはいわゆる政治犯と呼ばれるものについて禁錮刑を科すというのが、世界刑法の共通の考え方でありますし、またわが刑法も、沿革的にもそういう考え方をとっておるわけでございます。ただ、これはあくまで原則でございまして、現行刑法をごらんいただきましても、たとえば自殺関与罪なんかにも刑法の禁錮刑の規定があるわけでございますが、そういうふうな原則をとっておりながらも、それぞれその国の事情に応じまして、必ずしも政治犯と過失犯のみに禁錮刑を科するのだというようなことには相なっておらないわけでありまして、かなりの例外が認められてきておるのが最近の状況になっておるわけでございます。
そこで、本件でございますが、本件はもとよりいままで過失犯でございますし、また今後も過失犯という体系をくずすわけではございませんから、禁錮をもって主体とすることは当然のことでございます。先ほどは一般論として申し上げましたが、今回の改正の直接の主たる理由は、一般的に刑を上げるというのじゃありませんで、酒を飲んで運転して人をひき殺すとか、あるいは無免許で三人も五人も死傷者を生ずるというような、目に余るような、どなたがごらんいただきましても、これはひどいじゃないか、これで人命尊重かというふうな悲憤の念を抱かれるようなケースが最近非常に多いわけであります。こういうふうなものについて、裁判所が禁錮三年という最高刑を科して、先般中谷委員の御要求に応じましてお手元に若干の資料をお届けしてございますけれども、判決を言い渡す場合の裁判官の説示の中にも、刑が怪過ぎるのではないかということばまで出ているような状況に相なっているわけでございまして、私どもといたしましては、当面はそういう悪質、重大犯に限って刑を上げる、そういう運用でいきたいというふうな考え方を持っておるわけでございますので、実はごらんいただきますとわかりますように、罰金刑については今度はいじっていないわけでございます。これは下のものはいままでどおりでいいのだ、いままでどおりでいきましょう、ただ、上のほうの頭打ちになっているようなごく悪質な重大なものに限って、もう少し上の刑を量定していったほうがいいのじゃないかという考え方に立っておるわけでございます。その悪質、重大なものとは何ぞやということになりますと、これは先ほど申し上げましたような、酒を飲んだとか、あるいはきわめて極端なスピード違反でありますとか、どちらかといえば、もう未必の故意と紙一重のような事犯、これが過失事犯であろうかというような事犯がたいへん多発しているわけでございます。かような未必の故意と紙一重のような非常に極端な過失犯につきまして、犯罪の類型の面では過失犯でございますけれども、実質内容におきましてはむしろ故意犯に近いものである、こういうふうなたてまえに立ちまして、かようなものにつきましては禁錮刑よりはむしろ懲役刑をもって臨むのが至当ではないか、こういうふうな考え方から、本件につきましては今回あえて懲役刑をこの法定刑の中に取り込んできた、こういうふうな考え方に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/17
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018・細谷治嘉
○細谷委員 私がお尋ねいたしたいのは、明治四十年にできた現在の刑法体系というものがあるわけですね。その刑法体系につきましては、三十六年に改正刑法準備草案、こういうものが全体的な検討の中において一応できておる。にもかかわらず、その中からほんの一部分だけを取り出して、言ってみますれば二百十一条の部分だけを取り上げていったことについて私は納得できない、こういうことなのであります。
そこで、私はちょっと面を変えてお聞きしたいのでありますけれども、現在国会に道路交通法の一部を改正する法律案というのが提案されて審議されておるわけであります。その道路交通法には、第百十七条の二に、酔っぱらい運転とか、ひき逃げとか、あるいはにせの免許証等々、あるいは無免許運転は百十八条、こういうところについてはそれぞれ罰則が規定されておるわけです。いまの御説明によりますと、言ってみますと、そういうような悪質な道路交通違反、それに基づく事故を、草案の中のほんの一部分、それも草案は「五年以下の懲役もしくは禁錮又は三十万円」といってあるのですが、法律案では「五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ千円」、それが罰金等臨時措置法で五万円になるというのです。こっちは三十万円と書いてあるのです。道路交通法でも百十五条には「五年以下の懲役又は十万円以下の罰金」というのがあるのですよ。百十五条の内容は何かといいますと、信号機をかってに操作したり、安全施設を何かいじったり、そういう者については五年以下の懲役なり十万円以下の罰金が科されることにはっきり規定があるわけですよ。この悪質な運転というのも、言ってみますとこれは道路行政上の問題なんです。そういうことでありますから、道路行政についてのコントロールのことまで、もっともっとやらなければならぬたくさんの問題があるにかかわらず、刑法二百十一条だけを取り上げたということについては、私は問題があるのじゃないかと思う。私は法律のしろうとでありますけれども、法律の体系論をまたやりますと、あなたのほうが専門家でありますから言うでありましょうけれども、おかしいではないかという気がいたすのであります。道路交通法にはたくさんの罰則規定があるのであります。違反事実ばかりでなくて、民家を損傷した場合には、これはちゃんと百十六条で禁錮または罰金刑というものを科されるわけですね。ですから違反事実ばかりでなくて、物件の損傷までちゃんと入っておるわけです。これは道路行政のコントロールから出ているわけですよ。でありますから、刑罰、この問題よりも、もっともっとやらなければならぬ今日の交通事情の中において、これだけを一つ取り除いてきたということについては、私はたいへんな問題があるのではないか、ここに縦割り行政という、法務省のからを守ろうとする意図がてきめんにあらわれているのではないか、こういう気がいたしますが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/18
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019・田中伊三次
○田中国務大臣 お説、私わからぬこともないのでありますが、本件改正をお願いいたしております趣旨は、いまお話しになりました先生のお話のうちで、悪質な業務上の犯罪、業務上でなくとも運転免許その他を持たない重過失の犯罪、悪質のもので業務上の犯罪を交通について犯したもの、交通以外のものについても同様でございますが、そういう悪質なものについてだけ適用をしていこう。現在の段階においては悪質のものを適用するには、三年以下の禁錮、罰金というものでは低過ぎるということにそのねらいがあるわけでございます。そういうねらいで改正をお願いしておるという筋でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/19
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020・細谷治嘉
○細谷委員 私がお聞きしたいのは、もう酔っぱらい運転とかひき逃げとか、これは道路行政上の問題じゃないか。現に道路交通法で規定しているわけですから、あえて刑法で取り上げる必要はないのではないか、こういうことを申し上げておるわけです。しかも草案は——草案というのは刑法全体について改正のために検討したのですが、その中にありますということだけであって、そのほんの一点だけを取り上げてやって、そして道路交通の事故を防ごうということは、これは木によって魚を求めるかのごとき感があるのではないか、こういうことを申し上げておる。局長、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/20
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021・川井英良
○川井政府委員 仰せの中に二つ、問題点があるように思うのであります。一つは、この刑法の全面改正の案が一応できているのに、この事態に対処するという目的のためにその一部分だけを今日取り出してやっているというようなことは、何か意味があるのかというような御趣旨も含まれているかと思いますし、それからもう一つは、しょせんこの当面の問題は、道路行政の問題として問題が提起されているのであって、したがって、これの対策としては、刑罰の面においても、道路行政の一環として具体的には道交法の問題としてまかなうというのが筋ではないか、にもかかわらず刑法の改正という一般的な問題でまかなっていくのは、何かそこに理由があるのか、こういうふうな御趣旨かと私理解したわけでございますが、もしそうだといたしますと、最初の第一点のほうにつきましては、これはまた体系論になりますけれども、鋭意全面改正を大臣御指揮のもとに私どもやっておりますけれども、何ぶんにも非常に大きな作業でございまして、あとまだ数年は要するような見通しに相なっております。けれども、今日この情勢を看過するわけにいきませんので、いろいろ法制審議会にもこの案をかけまして御意見を聞いた結果、大方の御意見としてこれを緊急上程して、当面の事態をまかなうべきだという法制審議会の意見をもとにいたしまして、今回のような改正に踏み切ったわけでございまして、あくまでこれは緊急的な、臨時的な部分改正の立法であることは申すまでもないことでありますので、御了解を得たいと思います。
それから第二点でございますが、なるほど道路行政の一環ではありましょう。ありましょうけれども、問題はその注意義務、人命に影響のあるような業務に従事する者には通常人にかわって、もっとそれより高度の注意義務が課されているということが前提になっておりまして、その守らなければならない注意義務に違反したということが、私どものことばで言いますところのいわゆる反社会性と申しますか、社会悪と申しまするか、そこにその責任を問う悪性があるのだということになるわけでございまして、業務上の注意義務に違反したものについて、刑罰をもって論ずるということは、先ほど御指摘のとおり明治四十一年以来六十年来すでに国民の常識として意識の中にまさに定着しているものだ、こう言わなければならないものと思うわけでございまして、私どものことばで申しまするとこれはまさに自然犯、いわゆる単なる行政取り締まりの行政法規ではございませんで、自然犯として刑法の中に六十年来取り込まれてきているものでございます。またその上に裁判が積み重ねられてきた、こういう実情に相なっているわけでございますので、この注意義務に違反して悪質な事故を起こして人命を殺傷したというふうなものにつきましては、その道路に関するものでございますとかあるいはほかの面につきましては道交法でまかなえる部分がございましょうけれども、本質は注意義務に違反したということにどれだけの刑事責任を問うか、こういう本質の問題でございますので、この問題は、刑法を離れて論ずることはできないと思うわけでございまして、ただいまの御指摘のような御意見に従いますと、非常に悪質で、懲役五年にいくような注意義務の違反をした者は、取り締まり法規である道交法のほうにまいって処罰されることになりまするし、そうでないむしろ非常に軽い違反は、刑法のほうで自然犯として処罰されるというふうな、刑法の理論といたしましては非常に逆な結果になっておかしなことになるわけでございまして、自然犯というのはやはり重く処罰すべきである、行政取り締まり法規は、臨時的な取り締まりの目的のために、これを軽く処罰するというのが一応たてまえと相なっておりますので、どうしてもこれは刑法改正でまかなうのが筋であり、またそうしなければならない問題だ、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/21
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022・細谷治嘉
○細谷委員 いろいろ述べられましたけれども、すべての結論というのは、もう禁錮三年で頭打ちをしているんだ、だから緊急として上げるんだ、懲役も加えるんだ、こういうことに尽きるようでありますけれども、一言お尋ねしておきたいのでありますが、この種のもの、業務上過失致死というのは明治四十一年以来今日まで禁錮でやってきたのです。悪質でありますけれども、故意犯ではないわけですから、これは禁錮だけでいい、明治の末期から今日まで、六十何年やってきたのに、それにあえて懲役を入れるというのはおかしなことじゃないかと私は思うのであります。私は禁錮だけでいいんじゃないかと思いますが、これはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/22
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023・田中伊三次
○田中国務大臣 これもごもっともな御意見と率直に思うのです。ただ、この法案のねらいとしておりますところは、禁錮という性質の刑罰では目的を達しない姿の悪質犯罪が、最近はふえてきておる。自動車に乗った瞬間に、スピードを出した瞬間に、人がけがをしようがしまいが、通行人が迷惑をしようがしまいが、危険を承知の上でスピードで飛ばす、これは非常に極端に言いますと、本会議でも皆さんお笑いになったのでありますけれども、自動車という凶器で人を殺傷した、こういうふうに言いたいような悪質のものが先生御承知のとおりだんだんふえてきておる、青少年に多いのでございます。こういうものを処罰をしていきますには、かりにおことばのように、禁錮を五年に引き上げましても目的は達せられぬ。禁錮というものは懲役と比べると殿様だといわれておる。それくらい懲役と比べると禁錮は楽な刑罰であります。そういうものでは達せられぬ。これはやはり故意の殺人、故意の傷害、未必の故意の殺人、未必の故意の傷害というたてまえで、これに準じて処罰しなければならぬ。すなわち禁錮ではいかぬ、徴役刑で処罰をしなければならぬという、そういう悪質なものがだんだんふえてきておるということから考えますと、おことばのようにその禁錮を三年を五年に上げて、理屈はそれで合うのでありますが、どうも目的が達せられない。これは刑罰の性質をかえて引き上げかつ性質を強化をいたしまして、単に三年を五年に上げるのみならず、禁錮を懲役に転換してもらいたいということがねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/23
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024・細谷治嘉
○細谷委員 私は、法律の専門家じゃありませんけれども、しろうとの常識として見た場合に、明治四十年来禁錮でやってまいったものを、それに「懲役若クハ禁錮」しかも五年、こういう形で懲役を加えたところには——今日まで全体として刑法はバランスをとってきたのです。それを突如として今日の交通戦争、しかも刑法はオールマイティーじゃないのですよ。にもかかわらず、懲役でやるということは、これは国民常識としていささかどうも軌をはずれておるのではないか、こう私は思うのであります。
そこで、どうもせんじ詰めますと、あなた方のこの根拠というものは頭打ちだということが一つ。もう一つは、外国の刑が重いから——外国でも禁錮だけの例があるでしょう、あなた方の資料でそうなっておるのです。そして外国だって禁錮ですよ。刑は十年以上になっておるところだってあるのですから……。しかし、五年でないところもたくさんあるのです。それで、外国の例なんていうものは、明治四十年来やってまいった刑法体系というものがあるわけですからそれを基準にして、外国などはほんの参考にすればいいわけです。
そこでお尋ねしたいのでありますが、頭打ち、頭打ちとおっしゃるのでありますけれども、あなた方にいただいた資料から見ましても、今日過失致死傷罪というのは一般的には減っておるのじゃないですか。道路交通関係を除きますと、減っておるのでしょう、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/24
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025・川井英良
○川井政府委員 必ずしも減ってはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/25
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026・細谷治嘉
○細谷委員 お尋ねいたしますが、資料ではっきりいたしておりますが、業務上の過失致死傷の頭打ちの禁錮三年というのは、あなたたちのほうの資料によりますと、具体的な例をあげておりますが、全部で二十四件、この「自動車運転による重大な人身事故の具体的事例」に二十四件あげられておるのですよ、そのうち頭打ちというのは六つしかないですね。最近の実績で業務上過失致死傷で三年の禁錮を科せられたのは何件ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/26
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027・川井英良
○川井政府委員 四十一年の統計で、私どものほうで四十一年に限って報告を受けたものは六件ございます。
なお、これは私どもの統計よりは裁判所の統計のほうが正確でございますので、四十一年度につきましては最高裁判所のほうに統計をもらうように催足しておりますけれども、最高裁の統計は非常に慎重でありますし、また手間がとれまして、まだ四十一年度の統計はできていないようであります。さしあたり、私ども部内に照会した結果によりますと、頭打ちの三年の禁錮刑を受けているものは六件ございます。その六件はここに収録しました六件とはまた違う六件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/27
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028・細谷治嘉
○細谷委員 おたくのほうの資料にありますが、業務上の過失致死傷で、昭和三十九年には業務上過失致死で三年禁錮の刑を受けた人は十三件でしょう。傷のほうで七件でしょう、合わせて二十件じゃないですか。二十四年くらいからの統計がこれに出ておりますが、いま四十一年の——四十一年でしたね、六件というのは。六件でしょう。それは致死と致傷両方入れてでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/28
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029・川井英良
○川井政府委員 ちょっといま四十一年と申しましたけれども、それは四十年の間違いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/29
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030・細谷治嘉
○細谷委員 四十年ですね。そうしますと、いま四十一年は六件、三十九年は二十件、三十八年は十八件、三十七年が十六件、三十五年が六件、三十年が三件ということですよ。交通関係による事故によって三年という刑がふえたということはわかる、事実率直に統計的に認めざるを得ない。
ところで、それでは軌道関係というのを、その中を引き抜いてみますと、これは四十年まで三河島の国鉄事故一件だけですね、禁錮三年という最高刑受けたのは。そういうことになりますと、頭打ちの傾向というのは認めますけれども、これは三十九年を例にとりますと、終局総人員というのは六千九百九件ですよ。そのうちの二十件です先まあ昨年起こった愛知県の猿投町の保育園の児童が、居眠り運転でたくさんの死傷をした、あれが三年の禁錮で一万円の罰金というのは少しおかしいじゃないか。それだけ取り出していえばそうですけれども、全般的にはこういう状態ですよ。頭打ち、頭打ちとおっしゃるけれども、六千九百件のうち頭打ちはそれだけですよ。二年以上というのは三十件、一年以上になりますと七百九十件、六カ月以上ということになりますと三千件というのが三十九年の実績であります。四十一年のはこれに載っておりませんけれども、先ほどの話では三年以上はただ六件というのですから三十九年よりも減っておる。こういうことでありますから、これだけの理由で五年というのは私は根拠にならないんじゃないか、こう思うのでありますが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/30
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031・田中伊三次
○田中国務大臣 先生、こういうことに御理解をいただかなければならぬと思いますが、頭打ちというやつですね、裁判官が裁判をする場合に、法律を適用いたします場合に、最高限の刑を打つということは、あらゆる面から見て最悪質、もう人間社会に、これ以上の悪質はないと見る場合でなければ三年以下とか、五年以下とか、死刑とかいう最高限の刑は打たぬことは御承知のとおりですね。殺人事件というものは山ほどあるが、なかなか死刑にならぬ、死刑は最高でございます。この最高は、一点くむべきところがあれば死刑にはしない、絶対なりません。もう人間社会で、これほど悪質なものはないと、悪質条件がそろっております場合に最高限の刑を打つということが、今日までの法運用の実情となっておることは御承知のとおり。そういう点から申しますと、従来までの法律でも禁錮で限られておりまして、禁錮三年以下。自動車の運転で、このやろう、という悪質のものでなかったら三年は打たぬのですから、三年の最高限を打たれたものの数は幾らあるか、こうお聞きになるとこれはきわめて少ないということは普通なんですね。あることはあるけれども、非常に少ないということになるわけでございます。そこで、この統計をごらんをいただきましてもわかりますように、いまお読み聞けの資料と、私の持っておりますものは少し違うのでありますが、三年以上が十三件、二年以上の禁錮が二十五件、
一年以上のものについては六百七十四件という、私のほうの刑事局で調べた数字が出ております。
そこで、これらのもののうちのどの部分についての引き上げをして適用したいのか、こう言いますと、先ほどから申し上げておりますように悪質なものについての引き上げをやりたい、その悪質のものの中の最悪質というものについては、最高限の三年とか、引き上げた五年とかいうものを打つわけでございます。悪質のものについては、全体として強化をしたいのだ、悪質でないものについては、従前のとおりにいきたいのだ、こういう考え方でございますが、悪質のうちの最悪質のものについては最高限でいきたいのだ、こういう考え方からいきますと、いままでの懲役のない禁錮三年というものではとてもまかなえないので、——まかなえないと言ったって、おまえ、明治四十二年以来同じことをやっているじゃないかと仰せになりますが、明治四十二年以来先例を見ないような悪質なものが昨今出てきた、こういう点で先例を見ないような懲役刑で処断をさしていただきたいと言うております理由なんです。そういう悪質のものが昨今出てきたということなんです。全くそういう事情を無視することができないので、ここでやむを得ず、これを体刑のうち、特に懲役をいただきたいというふうに申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/31
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032・細谷治嘉
○細谷委員 禁錮三年というのはこれは最高ですから、それはたいへんな社会的責任を負うべきでしょう。先ほども申し上げました猿投町の事故、これは砂利のトラックです。私も現地に行ったのですが、これはほんのわずかの居眠り、本人は自覚しない形で居眠りをしてああいう大事故を引き起こしている。社会的にはたいへん憎むべきです。しかし、居眠りというのは本人の責めに帰すべきものが全部かというと、これは必ずしもそうも言えないのですよ。そうでしょう。これは故意でも何でもないのですから……。そういうのが今日のいわゆる交通事情、社会事情、こういうものから起こっておるわけですよ。明治四十年から今日まで運転中にちょっと層眠りした、本人は気づかぬような居眠りをしたという例はあったでしょう。たまたまそれが重なって、社会的に憎むようなああいう猿投町の事故が起こった。それが今日の事情で禁錮三年、罰金は一万円ですね。罰金の最高限というのは五万円ですから。そういうことは、あるいは皆さん方の資料をいただいても——頭打ちと言いますけれども、今日のそういういろいろな、冒頭私はお尋ねしたような問題、そういう問題というのが未解決のまま——解決しようと努力しておることは認めますけれども、未解決のまま、本来禁錮でしかるべきものを、今日までやってきたものを、しかも懲役を加えて、しかも五年、こういう形は、私はどうしても理解できない。先ほど大臣は、私の統計と違うじゃないか、こうおっしゃっていますけれども、おそらく大臣の統計は過失致死だけの統計を言ったのじゃないかと思うのです。私は過失致死傷、二つの合計を申し上げておるわけでありますから、おたくのほうから出た資料に基づいて私は申し上げているのですから、誤りはないと思っております。そういうことを私は申し上げておるのであって、大体社会条件、道路条件というものが、外国と日本とを比べますと、今日雲泥の差があることを申さなきゃならぬ。外国の例、アメリカの例がこうだからといって、日本もこうだと言う。いろいろな事情というものを無視してこれだけ上げるということは、私はおかしいじゃないか。ですから、私が申し上げたいのは、道路交通法でもそういう悪質なものを取り締まっておるのだし、必要とあればこういうもので、現に四十一年は六件禁錮があったのですから、道路行政上のコントロールとしてのこういう刑については、必要とあればやはり道路交通法においてそういうものを規定してしかるべきじゃないか、こういうことを私は申し上げているのであって、ただ運転手が悪い、これはたいへん悪質なんだ、酔っぱらって運転すること、居眠り運転、無免許運転、スピード違反、確かにこれは悪質です。それが、たまたま大事故に結びつくような条件というのが、本人の責任に全部帰すべきでない形において起こっているということですから私は問題があろうと思うのであります。もう一度ひとつ大臣から聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/32
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033・田中伊三次
○田中国務大臣 かりに道交法でこれをやりますと、先ほど局長から御答弁を申し上げましたように、同じ業務上過失致死傷、重過失致死傷を犯しておりながら、運転者だけは懲役、禁錮五年以下、罰金で処罰を受ける。しかるところ、同じ業務上の過失致死傷、重過失致死傷を犯しておるのにかかわらず、自動車運転者以外の者は、具体的に言うと、医者であるとか、電車であるとか、汽車であるとか、航空機であるとか、船舶であるとかいうようなものについては、同じ業務上の過失致死傷を犯しておりながら、道交法の適用はいたしようがないので、現行の値上げをしないままの刑法でいかなければならぬ。一口に申しますと、こういう不合理が起こってくるのですね。そこで、あえて理屈を申し上げるのじゃないのでございますけれでも、近代国家における刑罰法規の体系というものは、同じ性質の犯罪について、あるものはある法律、あるものは他の法律というふうに刑を適用しておる先例というものが、わが国にもございません。これはそういう法律をつくりますことをたいへんいみきらっておるというのが近代国家の刑法の特徴でございます。そういうことから申しますと、おことばを私も承っておりますと、なかなか説得力のあるお話でございますから、私もつい引かれて、そうだというふうな感じで、うなずかざるを得ない気持ちで先生のお話を承るのでありますが、しかし、これは何とかそう仰せにならずに、明治四十二年来、前例のない悪質な犯罪がどんどん起こる傾向にある、これを押えなければならぬ。まことに運転者には気の毒だということもわかるのでありますけれども、これはやり得る方法で、とにかく可能な方法でひとつ交通対策をやっていかなければならぬ。にわかに道路の幅員も広げられぬしというようなことから、この可能な方法の一つとしてこれをお願いしておるという事情でございますから、どうかひとつまげて御理解をいただきますように、お願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/33
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034・細谷治嘉
○細谷委員 いま大臣の前段のことばというのは、それでは道路交通関係以外の列車とか何かということはどうするのか、憲法の法のもとに平等という精神に違反するのじゃないか、こういうことをおっしゃりたかったのじゃないかと思うのであります。具体的に明治四十年来今日までやってきて、禁錮三年にひっかかったのは三河島事故だけしかないのですよ。そういうことなら、これは大臣、わざわざ今日まで矛盾なくやってきて、全体のバランスをとりながら刑法を運営してきたわけですから、今度は懲役も加えるのだ、三年を五年にするのだ、こういう理屈はなくなってしまうのですよ。おそらく大臣、後段のことに、何といっても一億総犯罪、一億総被害者、こういうことを避けようというふうな切なる意図から出ておるだろうと思うのでありますけれども、私が申し上げるように、これだけでは片づきませんよ。これだけでは片づかぬ。しかも頭打ちと言いましても、おたくのほうがあげておる最近の実例は、二十四件中単に六件にすぎないじゃないか、こういうことから言いまして、この段階において刑法全体を総合的に草案に基づいて検討する段階ならば、全体としての体系のバランスのことからいいにしても、連綿として四十年以来今日までやってきたことを、ことさら草案の部分の一点だけを取り上げてやるというのは、私はどうも大臣をよく知っていますから、よくふろに入って、裸でいろいろ御高説を承ったことでありますから、よく知っておりますだけに、大臣の意図というのはどうもわからない。どうもこの辺に、私は冒頭言った、ほかの省にはまかせられないのだ、おれがやってやるのだという覇気はけっこうでありますけれども、潜在的な縦割り行政の弊というのがここにあらわれておるのじゃないかという気がいたすのであります。法務省がやらなければならぬのだ、ほかの省にまかせられないのだ、運輸省にもだめだ、警察庁もだめだ、よし、刑法を懲役五年、これでひとつ断固やってやれ、これが特効薬だ、こういう気持ちで出されたのではないか。しかし、大臣はそういう性格をお持ちにならぬから、私は実はふしぎに思っているのですよ。私は端的に申し上げて、いま申し上げたことから、いま道交法の改正というのに積極的に取り組んで審議が進められておるのでありますが、反則金制度というのが出てくる。反則金は金さえ納めれば、あなたは前科一犯になりませんぞということであります。金がなければ前科一犯になりますぞということでありますから、これもたいへんないろいろな問題点を含んでおります。法務省でもいろいろ御意見があると思うのですが、きょうはそれに触れませんけれども、そういう点でそれも憲法十四条から見て、反則金ということで、金持ちが金さえあれば前科一犯にならないのだということでいいのかという問題もありますよ。その辺のことで私は刑法二百十一条の改正というのは、道交法との関係において、あるいは今日の交通条件、交通事情というものを何とか緩和したいという意図からは、何らの効果も期待されないのじゃないかということを憂慮しておりますから、こうまで質問したわけであります。大臣、ひとつ大臣らしい——なわ張り根性はないと思いますけれども、そんなものは払拭した形において、大所高所からの結論を出していただきたいと思うのです。問題がありますよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/34
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035・田中伊三次
○田中国務大臣 なわ張り根性という情けない考え方は、法務省にございません。それは、役人はいろいろ考えるところはあるかもしれませんが、本件については、なわ張り根性はないのです。それは先ほどから私が申し上げましたように、たとえば酒の場合を考えてみても、酔っぱらいの運転は、自動車はいけないんだ、自動車以外のものは差しつかえないんだ、こんなこと言えないんですね。自動車は厳罰だ、自動車以外のものは軽い罰でいくのだ、こういうことにはなるまい、こういうので、実際問題としては、これをやりますと、先生お説のように、道交法を改正したと同様の、自動車の運転者に大部分適用される。自動車運強者以外の、注意義務に違反をして、そうして業務上過失致死傷、重過失致死傷として処罰を受けます者は、運転者以外にはごく僅少、もしくはないのではなかろうか、ごく少ないと思います。大部分は道交法を改正したと同様のことであろうと思います。しかしながら、それでは近代国家における刑罰体系というものが成り立たないのです。あるものは道交法でいくんだ、あるものは軽い刑法でいくんだということは、文明国の刑法としてはちょっとおかしいのです。これはほんとうに私はそう思っておるのです。これは裸で言うたって、服を着て言うたって同じです。ほんとうにそう私は思っておるのです。どうぞ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/35
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036・細谷治嘉
○細谷委員 私は法のもとにおける平等ということは守らなければいかぬと思うのです。しかし、いま大臣がおっしゃった面における頭打ちという傾向はないのであって、道路交通法上の悪質な違反事項について頭打ちの傾向がある、こういうことは認めますけれども、そうだからといって、今日この段階において、刑法二百十一条を草案からただ一点だけを取り出して、しかも罰金のほうはそのまま、草案のほうは取らないで、ただ千円という形にして、ただ、懲役刑五年か禁錮五年にするということだけを取り出したことについては、刑法の今日までの体系を乱すものだ、名法務大臣と言われようとしておる田中大臣にしてはとるべき道じゃない、こう私は申し上げておるわけです。しかもこの問題は、やはり道路行政上の重要なコントロールのポイントでありますから、道路交通法にも「五年以下の懲役又は十万円以下の罰金」という百十五条の規定もあるくらいでありますから、これも悪質なんですよ。信号等をかってに操作するというのは「五年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」というのですからこれは悪質です。これはたいへんな事故につながるかもしれぬというおそれはありますけれども、事故が起こっておるわけじゃないのですから、たくさんの人を殺傷したというわけじゃないのですから、しかも、それに五年以下の懲役あるいは十万円以下の罰金という規定すらもあるくらいでありますから、このことは私どもも好ましくないのでありますけれども、現状がそうならば、道路交通法に譲ってもよろしいんではないかということを主張いたしておる、また譲るべきではないか、こういうことを主張いたしておるわけであります。特に今日の道路交通法は、ひき逃げなり酔っぱらい運転ということについては、「一年以下の懲役又は五万円以下の罰金」と、こういう規定でありますから、これを三年なら三年、あるいは五万円なら五万円という形にすることによって、道路行政の問題は、それをコントロールする法律にゆだねるべきじゃないかということを私は主張いたしておるわけです。私は飛び込みでありますから、委員長、ひとつ私の意のあるところもくんでいただき、賢明なる法務大臣に善処されるようにひとつお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/36
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037・大坪保雄
○大坪委員長 神門至馬夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/37
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038・神門至馬夫
○神門委員 刑法の二百十一条改正の中で、特に交通事故の防止ということについていろいろいままで御説明ございました。これを中心にして、大臣及び関係当局に御質問したいと思います。
この刑法の一部改正の提案理由の説明を読んでみますと、現在の罰則では国民感情に合致しない、それから国家の刑政上これはよろしくない、こういうふうなことが主体となって改正をしたい、こういうふうに言っておいでになります。交通事故防止上の見地云々というふうなことは、この提案理由の説明の中にはないのですが、ただいまの質疑全体の中で出ている問題としては、むしろこれをきびしくすることによって交通事故を防止したい、こういうふうに言っておいでになるのですが、この辺の真意というものは、いままで申された点に間違いないと思うのですが、提案理由の中に特にその点を正面からお出しになってない、これはどういうふうなお考えであるか、ちょっとその点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/38
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039・田中伊三次
○田中国務大臣 提案理由は、法改正そのものの立場でこういう理由で改正を許していただきたいということを申し上げました。それを交通対策的見地に立ちますと、いまおことばのありましたように交通対策の重要な一環の一つである、こういうことも言えるのでございます。表にはうたっておりませんが、当然そういうことであるということは間違いないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/39
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040・神門至馬夫
○神門委員 先ほどの細谷委員の質問に対しまして、いろいろ交通施設を完備する、そういうふうなことはなかなか、この道路幅一つ見てもできることはない、だから手っとり早くできるものからひとつやっていきたい、こういうふうな御答弁がございました。この辺は、私非常に重要な問題だと思うのでありますが、たとえばいまこの国会のすぐ近くに三井ビル、三十六階百四十七メートルの巨大な日本一の高層建築が立っております。そのような建築を新たに建設省等が認可する場合、それは大臣がおっしゃったように既設の施設をどうこういじるものではなしに、新たに認可するわけです。そういうような場合には、いまのようになかなか困難な問題というのは起きないのですね。このような三井ビルの建設を許可される、こういうような場合には、これは法務大臣のほうではないのですが、建設省にお願いをしたいのですが、どういうような手続なりを経て許可されるのか、この点をお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/40
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041・三宅俊治
○三宅説明員 お答えいたします。ただいま御質問ございました三井ビルの許可の手続のことでございますが、現在建築基準法によりますと、特定街区という制度は一般的に容積地区、つまり建築物の延べ床面積が敷地面積に対して何倍まで許されるかという一般的な容積地区の中で、特に市街旧地の整備改善について資するところが大きいというものにつきまして特定街区の制度というものを認めておるわけでございます。この特定街区の制度というのは、東京であれば東京都知事が建設大臣に申し出て、都市計画として決定をするわけでございます。東京都知事が申し出る場合に、関係の権利者の同意を得ることになっておるわけでございます。したがいまして、この特定街区の制度というものは、都市計画上市街地の整備改善に資するとして都市計画の決定としてなされるわけでございますので、当然交通上、衛生上、防災上、諸般のことを十分勘案した上できめることになるわけでございます。建設大臣が都市計画としてきめるときには都市計画地方審議会の議を経て、その意見によってきめることになっておるわけでございます。
以上のような手続で特定街区の指定がなされますと、その次において、特定街区の指定のワクの中で建築の行為がなされる、その建築の行為につきましては、建築基準法による建築確認という手続を経てなされることになっておるわけでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/41
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042・神門至馬夫
○神門委員 いま、説明の手続的なものは大体わかりましたが、この三井ビルには収容人員というものはどのくらいのものが予想されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/42
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043・三宅俊治
○三宅説明員 日常約一万人と言われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/43
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044・神門至馬夫
○神門委員 私が建設省の担当官のほうで調べてみますと、一万五千人程度収容される、こういうお話があったのですが、そこでいまのような交通上の問題についても十分考えてこの認可がされる、こういうことでありますが、この三井ビルの屋上に展望台がつくられる、その展望台というのは、東京タワーよりか五メートルも高いので、いま東京タワーは、日本一の展望台という名称がなくなるということで足足しをしつつあります。東京タワーができましてから四十一年の二月まで一日平均にして約一万人ずつの展望台に対する観光客が来る、こういうことが運輸省のほうで正式の統計ではないが、大体把握されております。そうすると、この収容人員一万五千人、そして展望台に東京タワーと同じような人間は来ないにしても、大体近い人間が来るとすると、たいへんな人間があそこに出入りするわけなんです。いわゆる地方における中小都市が一つあそこに生まれたような状態になる。これはもう数字的に言えることなんです。いまのように都心が交通麻痺を起こしておるときに、そのような交通問題なり、展望台、あるいは収容人員全体が利用する交通施設、運輸手段、その辺のものをどういうふうに検討されてあの三井ビルを許可されたのか、またその過程において、そういう交通の責任省である運輸省なりと、十分連絡がなされてこれはなされたのか、これができてしまいますと、なかなかあの三井ビルができたからたいへんなことになったのだ、そのビルをとってしまえということになれば大臣答弁と同じことになるわけです。ところが、できる前の認可の段階におきましては、いまのようにこれはたいへんなことになるとするならば、これは認可をしなかったら簡単に済むものなんです、どこかほかへつくりなさい。これが実際問題として、たとえばその三井ビル一つを見ても、いわゆる交通行政、このような重大な交通戦争による大きな災害がもたらされておるときに、政府としてとられる政治責任、そういうような観点から十分御検討になったと思うが、この経過について詳しく御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/44
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045・三宅俊治
○三宅説明員 高層ビルと交通の問題でございますけれども、一般的に市街地における建築物の許可をいたします場合に、これは建築基準法によりまして行なっておりますが、従来建築基準法の規定によりますと、一般的に商業地域におきましては高さが三十一メートル以内、住居地域におきましては二十メートル以内ということになっております。その高さの制限に加えまして、建築物の敷地における空地の面積、これの規定がございます。この高さの限度とその空地の限度によりまして、おのずからその建築物の容積、つまりボリュームというものがきまってくるわけでございます。在来の制度によりますと、この高さ三十一メートル、商業地域におきましては、建物の敷地の中における空地というものはゼロでいいという、つまり敷地一ぱいに建てていいということになっておるわけでございますから、一般的には三十一メートルの高さの建物が敷地一ぱい建つ。そういたしますと、大体八階ないし十階くらいのビルができるわけでございます。
大体そういうふうなかっこうで、従来とも市街地における建築物の建設がなされてきたわけでございますが、それでは一般の市街地における都市交通施設等とのバランス上ぐあいの悪いことが起こるのではないかということで、昭和三十八年に建築基準法の改正をいたしまして、高さを押えるということではなくて、高さを押えるかわりに建築物の容積というものにこれを置きかえて、容積を指定するということにいたしたわけでございます。そういたしますと、建築物の容積は一定に押えられますけれども、高さが自由になりますから、したがいまして、敷地内の空地というものは十分に取り得る。つまり同じ床面積を持つものであるならば、三十一メトルの高さで押えられますと、どうしても敷地一ぱい建てないと、十分な建築の床が取れない。ところが、敷地港に十分な空地を取って、しかも建物を上に延ばすということであれば、勢い三十一メートル以上になるわけでございます。御指摘の三井ビルにつきましては、高さはなるほど三十一メートルをはるかに突破いたしておりますけれども、その容積というものは約九二〇%、つまり敷地の約九倍程度の建築の延べ床を持っておるわけでございまして、従来市街地の中におきまして敷地一ぱいに建てた九階建てのビルと同じくらいのバランスになるわけでございます。しかして、その敷地の中には有効な空地率というものを七三%取っております。つまり在来の手法でいきますと、敷地一ぱい建てなければならないものについて、七三%も敷地内に空地を取っているという手法になっておるわけでございます。したがいまして在来の制度から見まして、高い建物を許すということによって、一がいにそこに混乱が起こるということではなくて、建物が高いからそこに不当な混乱が起こるのではなくて、敷地内に十分空地も取ってある、駐車施設の用意も十分あるということで、これが大きな許可の要件になってきておるわけでございます。そういうことでございますので、ビルそのものが膨大な建築の床面積を持って、それがゆえに混乱をすることはまずない。
〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
つまり一般的な建築の手法である三十一メートル以下で押えた場合と、ああいうふうな高い建物を建てた場合との優劣を比べてみますと、当然高くて空地を取らしたほうがいいという見地に立って許可をしたということになるわけでございます。もちろん特定街区の制度は、都市計画の施設としてきめるわけでございますので、その点、東京都におきまして、知事の諮問に応じて都市計画審議会を開かれまして、審議会の委員が十分意を尽くして答申をいたしたもの、建設大臣はその意見によって指定をいたしたものでございますので、十分議論は尽くされておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/45
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046・神門至馬夫
○神門委員 建設省内部における法律上の手続なり、建築法上の諸規格、あるいは諸手続においては万全を期しておる。あるいは審議会において多面的な面から十分検討がなされてあろうというふうな御説明なんですが、そのような高さはいろいろ変化はあるけれども、全体のボリュームで押えた、こういうような説明でした。しかし、それによって混乱が起こるということは予想できない、こういう説明でしたが、やはり、いままでの通行量を前提とした地下鉄なり、路面電車なり、バスなりが通っております。あそこに二万人もの大きな交通人口が集中する場ができるとすると、それは私はたいへんなことになると思う。その辺が予想されないというふうにおっしゃっているのですが、その辺は、運輸省等にも、建設省が都の審議会から上がったものに対して許可される場合には、やはり十分なる横の連絡がなされておるのか、この点をもう一度建設省のほうから御説明を願って、鉄監局長もおいでになっておりますから——あそこには議事堂前の地下鉄がございます。路面電車、これは取りはずしの方向にある。そういう人間が集中して、朝と夜のラッシュアワーに混乱というものが予想されないのか。これは鉄監局長のほうに、既設のもので十分間に合うということであのビルの存在を見ているのかどうかを答弁願いたいと思う。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/46
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047・三宅俊治
○三宅説明員 建設省で具体的に都市計画決定をいたしますときには、運輸省と横の連絡はやっておらないと思います。しかし、都市計画審議会の段階におきまして、東京都内部において具体的に意見を建設省に出してくるときに十二分に議論があったものというふうに判断をいたしております。都市計画の決定でございますので、現在の交通上の施設の状態、及び将来における施設の状態等、十二分に検討いたして決定するのは当然のことであろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/47
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048・増川遼三
○増川政府委員 三井ビルができまして、そこに一万ないし一万五千人の通勤者が集中し、あるいは見物人等が集中いたすといたしましても、現在、あの地区におきましては、国電新橋駅、銀座線、丸の内線あるいは日比谷線というものの利用が可能でございます。かつ、その三井ビルができました際に入ってくる人たちがどういうものかと考えますと、おおむね丸の内あるいは日比谷地区にございます三井の傘下の会社等があそこへ移転をしてくるということが予測されるのでございまして、その人たちは、すでに現在もろもろの交通機関をもって都心地区に入ってきておるわけでございます。丸の内方面に行っている者は、従来通勤しているその途中でおりるという形になります。それだけあの地域から丸の内方面への地下鉄のお客というものは多少減る。かわりに、東のほうから通勤している連中はその間余分に乗るというようなことで、そうたいした動きはなかろう。一万人、一万五千人が新たに輸送需要としてふえるということにはならないのじゃないか。ただ、一地点に相当集中してくるということは考えられますが、地下鉄の現在の状況でございますれば何とかさばけるのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/48
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049・神門至馬夫
○神門委員 道交法が制定になりますときに、衆議院の附帯決議の第一項に、「警察庁、運輸省、建設省、文部省、労働省、通商産業省等交通に関係のある行政機関相互間の連絡調整を徹底して、総合的な道路交通行政の実現を期するとともに、」云々という附帯決議がなされているのです。いまは三井ビルを一つ、そこにありますから、私がひっぱり出して具体的にお尋ねしておるわけなんですが、いまのお話によりますと、政府側の答弁でありますからたいへんなことですとは言われないと思うのですが、やはり建設省と運輸省のほうとに、審議会においてはなされておると判断はするということはあったとしても、何ら連絡がなされてない。これは、やはりあそこに何万人という多くの人間が一点に集中する、そのことは現在の予想としてはたいしたことはないだろうと予想をされておるように言っておられますが、しかし、私らとしては、これはたいへんなことだろうというふうに実際問題として考えるわけであります。この点は、この道交法上の衆議院の附帯決議というものに対して、たとえば三井ビル一つを見ても、それが何ら直接には相互間の調整がなされてない。これとその決議との関連はどのようにお考えになっているのか、建設省なり運輸省のほうにお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/49
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050・宮崎清文
○宮崎政府委員 総理府がただいま御指摘の相互調整を一応所管いたしておりますので、私からかわって御答弁申し上げます。
御指摘の道路交通法制定の際の附帯決議もございまして、政府といたしましてはこれは従来からもやっておりましたが、まず昭和三十五年の十二月に、閣議決定で総理府に交通対策本部というものを設けております。ただ、この交通対策本部と申しますのは、総理府の総務長官を本部長といたしまして、関係各省庁の事務次官等からなります一種の会議体でございます。この交通対策本部におきまして交通安全全般に関します問題の総合調整をはかってきたわけでございます。ただ、この点、ただいま申し上げましたように何ぶん会議体でございまして、あまりこまかい議論等を詰めることも必ずしもできないという点もございまして、これは同じく昭和三十九年と四十年の道路交通法の一部改正の際に附帯決議で院の御決定になりましたが、さらにそれを専門的にやる機関を設けろということが附帯決議できめられまして、これらに基づきまして、一昨年、昭和四十年の五月に現在私が所属しております陸上交通安全調査室というものを総理府に設置いたしまして、これが自来事実上交通対策本部の事務部局的な役割りをやっておるわけでございます。
なお、交通安全全般に関します最高機関と申しますか、この点につきましては同じく昭和四十年の八月に交通関係閣僚協議会というものが閣議決定で設けられておりまして、これは交通安全に関します基本的な重要問題につきまして閣僚レベルで協議する、こういうことになっております。したがいまして、現在は交通安全全般につきましての総合調整は交通関係閣僚協議会、交通対策本部という組織で行なわれておりまして、その実際の事務は私どものほうでやっておる、かように相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/50
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051・神門至馬夫
○神門委員 いまの総理府のほうからの御答弁によりますと、基本的なものをやっていて、いまの、たとえば三井ビルというふうなものに対してはタッチしておりませんというふうなお話だったと思うのですが、やはり具体的に一つ一つ——地方の中小都市において人口が集中する、これが全体の都市問題として大問題になっておるわけなんです。このようなものが現在としては放置されているんじゃないか。いまのあの一つの例を見ても、建設省、運輸省相互間の、たとえば二つの省の相互間には何ら連絡がないということ、これといまの交通対策について、政府としては非常に緊急性を持ち、刑法まで変えて万全を期したいということとの関連において、非常に手落ちがあるように思うのです。いわゆる縦割り行政そのもののなわ張り的なものが、この三井ビル一つを見ても出ているのじゃないか、こういうように思うのですが、なぜその辺が、相互間の簡単なことだと思うのですが打ち合わせができないのか。いまの総理府のほうから御説明になったことをもってもまだ納得ができないのです。総理府がその辺の相互間の調整をはかる責任があるのに、そのようなことがなされていないのかどうか、この辺を御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/51
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052・宮崎清文
○宮崎政府委員 総理府といたしましては、本来の所掌事務は総合調整でございます。総合調整と申しましてもいろいろございますが、まず一番考えられますことは、交通安全全般に関する基本的な方針をどうするかということで、これは常時やっております。
それから緊急の場合に、緊急的な対策を打ち出す。たとえば一つの例でございますが、この前四月に、南海電車が非常に重大事故を起こしまして、こういう事故の再発防止は非常に重要であるということから、関係省庁集まりまして、先ほど申しました交通対策本部、交通関係閣僚協議会が緊急対策を決定いたしております。こういうぐあいで、各省庁間に非常に広くわたっておりまして、かつ調整を要することにつきましては、現在ほとんど大部分が総合調整が行なわれております。ただ、数少ない二ないし三の省庁間が問題でございまして、なおかつその省庁間で話し合いのつきますものにつきましては、現在必ずしも総理府が関与して総合調整を行なっていないというのが実情でございます。したがいまして、今後の問題といたしましては、もしそういうことが必要であるならば、そのほうも積極的に調整をはかりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/52
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053・神門至馬夫
○神門委員 そうすると、先ほどの法務大臣の御答弁ですね、いわゆる施設関係なり現在の既設の秩序を持っているものを何とかしょうとしても、これは金の問題やら時間の問題でどうにもならないのだから、とりあえずできるものからやりたいという、こういうお考えを言っておられる。しかし、いまこの三井ビル一つを見ても、これは一つでありますが、都内にはたくさん建っております。そしていま交通戦争といわれるように、たいへんな事故が起きている。こういうようなことに対しての一貫的なものがないのじゃないか。一貫的なものがあったとしても、具体的にそれなら末端まで、一つの建物までおろしてみると、ぽつんと切れている。いま建設省のほうでも、その横の連絡なり交通問題についての十分具体的な把握というものがない。そうなってきますと、できてからどうにもならないということでなしに、事前の対策が十分なされているとは考えられないのですが、この辺どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/53
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054・田中伊三次
○田中国務大臣 ただいま先生御質問の、具体的な三井ビルなら三井ビルという案件について見ますと、建築基準法並びにその関係法規の中身をいま大急ぎで調べたのでございますが、建物そのもの、敷地そのものの安全に関する規定はわりあいに行き届いたものがございます。それはただいま説明をいたしましたとおりでございます。しかしながら、この一地点を中心として何にしても何万という数の者が出社をする、退社をする。その出社時、退社時に、同一時灘になるのでありましょうが、建物そのもの、敷地そのものの外でたいへん交通上の混雑が起こってくるということは想像されるのであります。おことばのように、小さい都市がそこに急に生まれてきたというだけの困難があるわけであります。そういう場合に、いまお話を承っておって思うのでありますが、許可をいたします許可、その時点で、交通問題にいかに影響をするかということを考えていかなければ、真剣に都市問題と取っ組んでおるとは言えぬのではないか、こう私は考えます。法規の上で明文はありませんが、これを許可をいたします場合に、東京都なら東京都は条例をもってその基準をきめることもできる、制限することもできる筋のものでございますから、何らかの法的措置をひとつ早急に具体的に検討してみたい。建物自体、敷地自体の建築基準に関する法制は、中身は整っておるのでございます。ここから出入りいたします者がその町の交通に及ぼす影響というものを念頭に置きまして、許可に対して何らかの手を打つ必要があるのではないか。これは国会で附帯決議で議決をしておられる御趣旨にも沿うことができるわけでございますので、そういうことをひとつ念頭に置きまして十全を期していきたい。これをおろそかにしておりますようなことでは、都市問題の解決をどこまで真剣に考えておるのかと言われてみて、返すことばが出てこない、こういうふうに考えて、反省の材料にいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/54
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055・神門至馬夫
○神門委員 私が知っておるところによりましても、たとえばこんな大ビルができて、それがいまのような建設そのものの関係法規を適用しても、たとえばそれが他の交通関係所管の省とは全く無関係であって、その辺が非常にどうも私たちとしては理解できない事実があるようです。先ほどの道交法上の衆議院通過の際の附帯決議、それによっていろいろな閣僚協議会ですか、あるいは対策本部あるいは総理附に機関を設けて、そこでやっておられる、こういういろいろな問題がありますが、この閣僚協議会というふうなものが、いま実際問題として具体約に交通戦争といわれるような社会問題化したものに対して、積極的に何か取り上げてものを進めておる——もちろんこの刑法二百十一条の問題については、これはその辺から出たものかどうかわかりませんけれども、そういういろいろなものが現在考えられておるかどうか。大臣は国務大臣でもありますから、ひとつお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/55
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056・田中伊三次
○田中国務大臣 基本的な問題につきましては、交通対策の基本問題については閣僚懇談会でこれを取り扱う、こういう態度でございまして、何回かの会議は続けてやっておるわけです。こまかい問題につきまして一々閣僚間でこれを協議するということは、その目的ではございません。話はどんどん出ます。基本的な問題については閣僚の会議で方針をきめまして事務におろす、こういう方針をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/56
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057・神門至馬夫
○神門委員 宮崎政府委員にお尋ねしたいと思うのですが、この附帯決議が生かされていまのような対策会議なり協議会あるいは対策機関ができておるようですが、この附帯決議の第一項が具体的にはどのように生かされておるのか。これは全般的にわたっては非常に広範なものであろうとは思うけれども、大綱なりを類型別にひとつお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/57
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058・宮崎清文
○宮崎政府委員 たいへん広範な御質問でございますので、もし説明が十不分でございましたら後ほどまた御説明をいたします。
政府が総合的な交通安全対策を講ずるようになりましたのは——もちろん従前からもやっておりますが、特に具体的な方針をきめましたのは大体昭和四十年初頭でございます。これはなぜかと申しますと、御承知かとも思いますが、交通事故による、死者が昭和三十九年に史上最高という数字を出したわけでございます。このような事態に対処いたしまして、従来もいろいろと各省庁やってまいったわけでありますが、総合約な計画で交通事故防塵対策を推進すべきであるという見地から、昭和四十年一月十三日に緊急対策というものを交通対策本部で決定いたしております。
これは大きく申しますと四本の柱を立てているわけでございまして、第一の柱、交通安全施設の整備を中心といたしました道路交通環境の整備でございます。第二の柱は、交通安全活動の推進という柱になっておるわけでございまして、この内容は、たとえば学校における交通安全教育の推進をはかるとか、あるいは運転者の再教育あるいは運転免許制度の改善ということが内容になっております。それから第三の柱が、交通秩序の確立ということになっておりまして、これはいわゆる交通暴力というものの徹底的な追放ということが主たる内容でございます。それから第四の柱といたしましては、従来わが国において特に立おくれておりました被害者の救済対策を確立するということでございまして、内容は救急車等の救急搬送の問題、それから救急医療の問題、それから自動車損害賠償保険法に基づいて強制保険の額の引き上げ等を含めました損害賠償の確保の問題、こういう点を取り上げております。
なお、それ以外に、交通安全に対する科学的技術の推進であるとか、あるいは交通安全国民会議を開催するというようなことも、同じ緊急対策の中できめておりますが、いずれにいたしましても、この四つを主たる交通安全対策上の大きな柱にいたしまして、自来政府としては、この四本柱を推進するという姿勢で交通安全、事故防止に当たってまいったわけであります。
それ以来、しばしばいろんな事件も起こり、また交通事故の重大な事故も起こりましたし、そのつどその四本柱をさらに具体化するようなきめのこまかい対策をあるいは交通対策本部で決定し、あるいは閣僚協議会でその御方針をきめていただいて、これを進めているというのが実情でございまして、なお、詳しい個々の対策等につきましては、もし必要がございましたら資料を持っておりますので、御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/58
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059・神門至馬夫
○神門委員 具体的なものにつきましては、あとからまたお尋ねしたいと思いますが、先ほども質問として出ておりましたように、法定刑上の上限、長期を延ばすとか、あるいは懲役刑を加える、こういうふうに罰則を強化しても、それに対する効果については、法務大臣も、多くは期待はできないが、しないよりしたほうがいいだろう、こういうふうな意味の答弁がございました。過去、三十五年の道交法が制定をされたとき、三十九年に道交法の罰則が強化されたとき、ともにこの制定、改正において全体が罰則を強化されておるわけです。その法律が制定をされる前と制定をされた後、この辺の効果と申しますか、及ぼした影響というふうなものは、どのように数字的に出てるのか、この点をひとつ数字的に説明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/59
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060・川井英良
○川井政府委員 いま私の手元には具体的な数字がございませんが、この前当委員会で同じような質問が当面の責任者である警察当局になされまして、その際に数字に基づいてのいろいろ説明がなされております。それらの説明やら、それから私どもの手元にあります若干の資料を検討いたしてみまして、三十九年の改正によって顕著にその事故ないしは道交法のルール違反の件数が激減したということにはなりませんけれども、その間における、たとえば交通機関の中でも、自動車の台数の急激な増加、その台数の絶対数の増加というふうなことと、事故の発生ないしは規則違反の違反件数の比率というようなものを見ますと、かなり顕著な効果を発揮しているというふうなことが言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/60
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061・神門至馬夫
○神門委員 台数当たりの件数から見ると、これは確かに総理府から出された統計資料を見ても減っております。しかし、この問題は絶対量がやはり問題になってくるし、それからいまこの法律改正がなされ、それが対象としようとする事件、悪質なもの、こういう中のたとえば酔っぱらいだとかいうふうな事件については、これは顕著にふえておるのですね。なるほど三十五年のときには、総理府のほうの資料を見ても、少年の場合には減っていますが、この少年のほうは別として成年のほうですね、成人そのものを見ますと、三十九年から四十年になりますと、たとえば酔っぱらい運転にすると、指数が一〇九・八から二七八というふうに、この法律改正がもたらす影響というものは、全体が激増しておるということで何らその効果をあらわしていない。もちろん、これは毎年台数はふえておるのですから、全体の増加率の中にあっての絶対量のまたこれは単純比較ではあるとしても、これはやはり比較対象になる数字だと思うのです。そういうことから見て、この刑罰を非常に加重するということの効果というものは、実際の数字からいって期待できないのじゃないか。その辺、先ほどちょっと説明があったようですが、もう一度どのようにお考えになっておるのか、ひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/61
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062・川井英良
○川井政府委員 確かに御指摘のとおりでございまして、私どもは長年この刑罰法規の運用をいたしておるものであり、またその刑罰法規の運営による効果の観察ということもずいぶん意を用いてやっておるつもりでございますけれども、刑罰のみによって犯罪を極端に減らせるとかいうふうなことにつきましては、なかなか大きな問題があろうかと思います。犯罪の撲滅ということのためには、刑罰法規の適正な運用とともに、先ほどからいろいろ御指摘がありますような、その他もろもろの一般行政的な対策というふうなものがこれとうまくマッチすることによって、犯罪対策としては著しい効果を発揮してくる。私ども、まさにそういうふうな点におきましては全く同感でございます。今度の、この交通戦争といわれております非常に悲惨な死傷者の続出というようなことに対処いたしましても、同じような基本的な考え方でございまして、いまお願いをしておりますこの法定刑の二百十一条の強化ということのみをもって、もしこれが通ったといたしまして、直ちに来年度から顕著に死傷者が減るというようなことの期待につきましては、ある程度の効果があるということは確信をいたしておりますけれども、数字的にないしはもう少し煮詰めた具体的な意味合いにおきましてどういうふうな効果があるかということにつきましては、その効果の観察、予想ということはたいへん困難だ、こう思うわけでございます。ただ一つ言えることは、これは故意犯ではありませんで、過失犯でございます。過失犯は、要するに注意をすれば避けることができるというのが犯罪の本質になっておりますので、こういうふうなものを、運転する危険な業務に従事する人に注意を喚起する、こういうふうな意味合いにおきましては、一般の故意犯と違いまして、ある程度刑罰を上げることによって、それを機会に一般国民全体に、この種の行為についての注意を喚起するということによって一般的な予防の効果をあげるということは、私は故意犯よりは過失犯であるだけに、かなりの効果が期待できるというふうなことが考えられますし、同時にまた、繰り返し申し上げるようでございますけれども、どうにもしようのないような悪質犯のみに限って当座の手当てをしていこうというのがこの法律でございますので、御了承を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/62
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063・神門至馬夫
○神門委員 私、自動車に乗りまして、運転手にいろいろ尋ねてみたのです。ところが、自動車の運転手としては現在のこのいろいろな制度の中で事故を起こせば道交法上の処分、行政罰あるいは刑法が適用されることもある、そして自分は大きな負担を持つ、こういうふうなことでたいへんな負担を感じておる。とてもいまのように形式犯であるから注意を怠っている、軽いから怠っているというような一面は、私が再々乗って——私も運輸委員会に所属しておるものですから、乗って尋ねた限りにおいては、そういうような、怪いからというようなことはもちろん言いませんし、私も私の立場というものを言わないから、自然に話しているのですが、たいへんなことです、事故を起こせば、事故を起こしたときに自分も死ぬかもしれない、それによっていろいろな処分なり賠償責任、その辺においては、むしろ処分のあまりの過酷さに彼らは不満を持っておるというのが実態だと思うのです。ですから、いまのように、この罰則を強化する、量刑を重くしさえすれば何らかの効果が期待されるんだということは、むしろ威嚇主義的な反発を彼らは持つんじゃないか。本人なりあるいは他戒的な意味において効果をもたらしたいという大臣の善意とはかけ離れたものが事実問題としてあるんじゃないかというふうに、私が直接会ったたくさんの運転手からは聞くわけなんです。そのようなことを考えてみますと、法の効果においては、その効果に対する研究も十分してみたいというふうなお話で、いまこれだけ天下の問題になっている刑法の一部改正、特に二百十一条の改正、それは提案理由の説明の中にあったように、国民感情に何か知らん迎合する——運転手は悪いのです、こいつを処分いたしましょう、政府はこういうふうにきめましたからという、政府の責任を運転手に転嫁することにしか、どうも実態上効果があらわれないような気がするし、そのような意思があるんじゃないか、こういうふうにも事実の中から思うのです。この七月二日の朝日新聞に非常におもしろい統計が出ているのです。見出しとしては、「横断事故の防止に、効果てきめん安全施設」施設をやると、全く魔術的なきき目がある。この中を読んでみますと、もうほとんど事故がゼロになっているんです。警察庁が警視庁、大阪、愛知、神奈川、京都、兵庫、福岡の各府県の県警を通じて調べた結果をこの中に出しておるのです。そうしますと、信号機一つを見ましても、十八のところで調査をした。そうすると、事故は二百四十八件から六十九件へ、死者は七人からゼロになった。あるいは横断歩道橋と地下道の問題につきましても同じように、いまのようにその効果を何とか考えてみなくちゃということでなしに、もうゼロになったところがたくさんあるんですね。そうしてその事故数というのが何分の一に激減しているんです。このように、予算を通じていわゆる交通環境を整備しさえすれば顕著な効果が出ておる。この顕著な効果そのもののほうに積極的に取り組まないで、刑法をもって何か国民感情に単なる迎合をして政治責任を免れようとしているのではないか、こういうふうに感ずるんです。ですから、そのような運転者の心理ですね、いわゆる加害者として対象とされている運転者の心理を、どのようにお考えになっているのか、またこのようなてきめんな安全施設を早くやることが、このようにたくさんの疑惑あり、反対あり、法体系上においてもそれだけを一部法案から抽出してきて、いまここに無理押しして改正することに、何か皆さん方もひけ目があるように皆さんの提案理由の中にもある。このように考えてみると、そのほうこそ緊急にいまなさるべきものだ、こういうように感じますが、その辺等についてどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/63
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064・田中伊三次
○田中国務大臣 いまのお話し、そのとおりだと思います。私も就任以来、役所から戻りますと、夜間はタクシーを用いている。日曜、祭日は、タクシーばかりを用いている。私も何十人か、先生と同じように、この刑法の一部改正について運転者諸君の意見を聞いてみた。いま、まるで私が聞きましたことばを写したように先生のおことばがあるので驚いておるのでありますが、そのとおりを運転者も申しております。
そこで私の申し上げたいのは、そういう、メーターをちゃんと持ちまして、タクシー会社の本社から無線でもって監督を受けて、正常な営業に従事しておられる善良な営業運転者諸君とはこの法律は関係ない、この法律がねらっておりますのは、先ほどからくどく言うておりますように、悪質運転手、それが業務上過失致死傷を起こし、重過失致死傷を起こすであろうそういう悪質な少数運転手をねらっておる、それ以外の者はねらっていない、こういうことなんであります。
そこで、そのことを私が、私も身分を伏せて新聞によると、というふうにいって説明をいたしますと、それならば話はわかる、おれたちを目ざしておるんじゃないんだな、善良な運転者まで、運転者は悪いんだ、交通違反は厳罰に処するんだ、そういう単調な考え方できておるものじゃないんですねということで、たいへん理解をするようでございます。
この法律のねらいは、じょうずに政府委員席から答弁をするためのものでなしに、ほんとうにねらいとしておりますのは、悪質の者をねらっておる、その悪質の者の中で最悪の者に対しては、最高限が足らぬから、最高限を上げていただくんだ、こういうことでございます。これがほんとうのねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/64
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065・神門至馬夫
○神門委員 その悪質な者、アクチブを何ぼかねらっていく、そのためのものだ、こういうふうにおっしゃっておるのですが、営業車全体に働いている交通労働者、運転者というものは、いま大臣がおっしゃっておるように、それは私以外の悪い者に対するものだというふうにはとってないんです。まだ、これ以上にわれわれに対する処罰をきびしくする、こういう一面でとっておるわけなんです。ですから、その点においては大臣と見解が——大臣も、先ほど細谷さんのほうから話がありましたように、九段の宿舎に私も一緒におりまして、いろいろ御高説を承っておりますし、いろいろその間に運転手と話し合いをしておるようですが、そういう点については非常に違うように私も思うんです。ですから、その点は見解の違いでありますから、そういう点を十分ひとつ御勘案を願いたい、こういうことですが、ただひき逃げを行なった者の瞬間的な心理、その中には、これは警察庁のほうで何か統計資料が出ておりましたけれども、ひいて逃げた者の思うには、ひかれた者は非常に軽い、軽度のものであった、こういうふうに思ったから逃げたとか、いろいろ言っておりますけれども、実はやはりそれによって発覚する、あるいは正式に事件となることによって、処分されることをおそれて逃げるというのがやはり一番多い。こういうふうにあの中では考えられる。この辺のものとむしろ逆な方向にいくのじゃないか。皆さん、当局のほうで提案趣旨と逆な結果がこの点なるのじゃないか。より罰を重くすると逃げてしまう、こういう点も考えられるんじゃないか。
それからもう一つは、これは六月の二十日の法務委員会での大竹委員の質問の中に出ておりました当たり屋の問題なんです。当たり屋が四十一年に約百件ばかりあって、その中で事件としたものが六件、三件が検察官もよく見破らずして処罰されておる、こういう答弁をなされております。この当たり屋というものが表面に出るのは非常に少ない。当たり屋というもの、これもたまたまああいう子供をえさにした悪質なものが出て社会問題になったのですが、全部運転者が泣き寝入りしている。こういうような点を考えてみたときに、現在の運転者の人身事故に対する処罰というものは、とにかくやりさえすれば、責任の存在がどこにあろうと、とにかく処罰をされる。行政処分をされる。こういうふうな点にあるんじゃないか。先ほどの話の続きなんですが、処分というものが軽いから事故を起こしておるのじゃなしに、この当たり屋事件一つが持っている側面、要件の中にあるように、確かにこれは行政罰なり刑事罰なりに対して戦々恐々としている運転者の弱みにつけ込んだ悪質な事件じゃないか、こういうように、私、あの質疑の中から感ずるわけです。
そうすると、そのような要件なり条件というものが、まだまだおびえさす、運転者をして縮み上がらす、このことが悪質な犯罪が横行する素地をつくるのじゃないか、こういうように考えますが、この当たり屋事件についてどのようにお考えになっているかということと、そのような見方についてどういうふうに御判断になったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/65
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066・川井英良
○川井政府委員 最初のひき逃げの点でございますが、私どもも立案にあたっていろいろ検討した中にそれがあるわけでございますが、刑を上げることによってもたらされるいい効果と、上げることによって予想される悪い影響というようなものをいろいろ彼此勘考いたしてみました。法制審議会にかけたときに、現状からいって五年の引き上げでは軽過ぎる、七年くらいが相当だという強い意見も出たくらいでありますけれども、いたずらに刑罰を重くすることは逆にマイナスの、ただいま御指摘のような影響も考えなければならないというふうなことから、いろいろなところを思量総合いたしまして、この際五年というところが相当であろうというようなことを考えたことを申し上げておきたいと思います。
なお、御存じのことだと思いますが、道交法では、ひいて逃げた場合には、たしか懲役三年の刑を規定しているわけでございます。そこで実務に当たっております裁判官からわれわれに言われることばは、ひいて逃げた場合に、ひいたほうは刑法の禁錮三年にする、ただ逃げたというだけで懲役三年がいく、この刑のアンバランスというのはどういうことだ。これは道交法のほうが当面の対策に対処するためにそういうふうな刑を盛ったのが、刑法の改正のほうがおくれたようなかっこうのために今日そういうアンバランスの状態になっているわけでございまして、人命尊重ということが非常に叫ばれておる今日、その人命を落としたという、ひいた事実については刑の量刑がなされない。その事故を起こして現場から届け出をしないで逃げたということで、裁判官がその逃げたということをもとにして刑を重くするというのが今日裁判の実情であるわけでございまして、この辺のアンバランスは、刑罰を運用するものとしては実はがまんできないアンバランスになっておるわけでございます。この辺のところもひとつまた御参考に、御検討を賜わらなければならないと思います。
それからあとのほうの、当たり屋の件でございますが、百件ばかりございまして、しさいに検討いたしまして、まことに申しわけないことでございますけれども、三件につきましては御指摘のように検察官もその真相を見破ることができなくて刑が確定いたしました。幸いにいたしまして略式罰金刑でございますので、この当たり屋の事件が懲役四年の刑罰でいま控訴しておりますけれども、当たり屋本人の刑が確定いたしますれば、その確定した確定判決をもとにいたしまして、検察官の手元におきまして再審の請求その他の措置をとりまして、三人の方々に対しましては法律上またもとの状態に戻すための最善の努力を尽くしたいと考えておりますが、なおこの三件につきまして、記録に基づいていろいろ検討いたしますと、これはなるほど当たり屋でございますけれども、その三人の人につきましてもみずから認めるような、納得するような若干の過失が同時に競合して認められるというような案件になっております。道交法の中にはいろいろな類型の罰則が定められておりますけれども、そういうような道交法で定められた注意義務の一つか二つをたまたま怠っておったというときに、たまたままた横から当たり屋が当たっておったというふうな事故でありましたために、問題になりました被疑者として取り調べられましたその運転者の者が、自分の過失が調べられますとある程度認められましたために、そこにまた検察官もその真相を見破ることができなかったというようなかっこうでありますので、かりに多少の過失がありましても、それが被害者が故意にぶつかったものであるというふうな事情がありますれば、おそらく起訴にならなくて、起訴猶予程度で済んだものではないか、こういうふうに思うわけでございますが、その間の事情をしいて申し上げればそのような事情があったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/66
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067・神門至馬夫
○神門委員 そういう過失を認めておいでになりますが、そのような過失が発生する要件というものは、やはり今度の刑法二百十一条をもって量刑を加重する、こういうふうないろいろの根底にある、事故を起こしたら運転手が悪いのだという過剰意識というものが、やはりこの当たり屋事件に特徴として集中してあらわれたのではないか、こういうように思うのです。それはなるほど、あとから申しわけないということになりますが、人身事故を起こしたときに、もうちょっと何とかすれば何とかなりはしなかったかというような期待を持って、そこに責任を追及すれば、必ずこれは何らかの問題はあるわけなんです。そこに運転者の弱みがあるし、現在常に泣かされている点なんです。ですから、その辺の意識というものが取り締まり当局のほうにあってこういう結果になったんじゃないか、こういうふうにも考えるのですが、その辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/67
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068・川井英良
○川井政府委員 何ぶんにもたくさんの事故でありまして、人身事故だけで検察庁が年間に受理いたしますものがおよそ四十万件ということでございます。余分でございますが、検察庁の受理人員というものは、数十年間にわたって窃盗が横綱格を占めておったわけでございますが、これが三十九年からは、窃盗にかわりまして交通事故が横綱になりまして、まさに四十万件という驚異的な数字を示しております。検察当局は、まさにこの業務上過失事件の処理に今日非常に難渋しているといいますか、頭を悩ましておるというふうな状況に相なっておるわけでございまして、そのために、専門的な者を養成してこれに充てるという特殊な対策を立てて、いまやらせておりますけれども、力足らずして、御指摘のようにいまのような点が出たことは、返す返も残念で、申しわけないことだと思っております。ただ、四十万件ほどございますが、前回にも申し上げましたが、起訴いたしますのが大体六割前後から、多いときで六割五、六分程度というものが起訴率でございまして、全体の平均、最近十カ年間平均いたしまして三割五分ぐらいから四割程度のものが、実は検事の手元へ警察から送られてまいりましても不起訴になっておるわけでございまして、これらは情状酌量して起訴猶予で、訓戒だけにとどめたものもございまするし、それから被害者のほうを調べまして、被害者の過失のほうが大きいということで、嫌疑なしと裁定したものもございますので、その点の数字からごらんいただきましても、部内におきましてはかなり慎重に取り扱っており、人身事故を起こしたから直ちに罰金、体刑だというわけではございませんで、平均いたしまして四割程度のものが不起訴処分を受けておる。これは警察から送られてきたものについてそういう程度でございますので、中には、かりに事故がありましても、現認された警察当局のもとで、全然これは過失がないものであるというようなことになりますれば、若干のものは警察限りで済んだものもあろうかと想像されるわけでありますけれども、私どもとしては、相当慎重に、間違いないように処理をいたしておる、こういうふうな状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/68
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069・神門至馬夫
○神門委員 そういうような人身事故を起こした場合、起訴されたのは三割程度ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/69
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070・川井英良
○川井政府委員 いえ、六割五分です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/70
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071・神門至馬夫
○神門委員 ですから、ほとんどのものが行政処罰だけ受けているんではないんですか。責任のあるなしにかかわらず、全員が行政処分を受ける、こういうふうに聞いておるのですが、この点はどうですか。またその考え方を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/71
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072・片岡誠
○片岡説明員 公安委員会の行なっております取り消し、停止でございますが、これも御承知のとおり、道路交通法の違反があって、しかも有責の場合に限ってのみ処分いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/72
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073・神門至馬夫
○神門委員 川井政府委員が逐条説明をしておいでになる中に、諸外国の例と見合わせて均衡ある五年の長期の延長、そして懲役刑というものを選択刑として加えることが云々というような説明があるんですが、諸外国のものについては先ほど二つ三つのものをもらいまして、私もちょっと資料を見ましたが、決してこの五年の懲役なり長期というものが、比較して短いものではないと思うのです。他の国と比べて短いという、平均以下だということはないと思う。そこで、問題になりますのは、その諸外国等に対して罰則は均衡をとらす、こういう点については、先ほども御説明になったように、あるいは法務省関係としてはやむを得ない点があるかもわかりません。しかし、悪質犯なり、事故を何とかする、あるいは世論形成が非常にやかましく、鋭くなったということの背景があって、国民感情に合致するように改正をする、こういうふうにお考えになっておるんですが、その事故の原因になります道路率とかあるいは信号機、あるいは全体の道路の舗装率、こういうようなものの条件は、これが対照にされている諸国とどうなのか。私はその点について、刑罰は均衡がとられていても、交通施設なり交通環境というものについては格段の差があると思うのです。これは先ほど台数当たりの事故について、年々減少しているから効果がある、こういうふうにおっしゃっておるんですが、この先進諸国と比べますと、べらぼうな——この総理府の自動車事故による死者の発生状況なんかを見ますと約六倍ぐらいなんですね。ただイギリスとかカナダ、アメリカ、オーストラリア、こういう古くから自動車交通全般が発達したところ、そういう歴史を持つところは、〇・五%ないし〇・九%程度から動かないのです。台数当たり事故というものは、いかに台数がふえてもそういうふうにとまっている。このことは、いわゆる運転者の注意力に期待する事故防止の限界というものを統計が示していると思うのです。そのようなことから考えてみても、日本人がこれらの諸国の民族と比べて六倍も質が悪いとは、これは単純な数字の比較ですが、どうしても考えられない。総理大臣は「大国だ」とおっしゃっておるんですから、一流の民族だ。そういうような点から、道徳観も、あるいは知識もある。そうすると、このようなべらぼうな数字が出るということは、近時急速に自動車の台数がふえたという先ほどの川井政府委員の説明もありましょうけれども、その中には施設全体が非常に立ちおくれておる、これに私は非常な原因があるんじゃないかと思うのです。ですから、それはやはり政治上の責任として見なくてはならぬものだと思う。そのような条件をそのままにして、量刑のほうを重くしていく。この点は、そもそも二百十一条の改正意思が、交通事故の予防なり絶滅を期するというところに出発点があるんですから、片手落ちじゃないかというふうに感ずる。根本的なものを解決せずに、何か先ほど——もう一ぺん言いますけれども、そういうような責任のがれを考えておられる以外には、どうも、うまく言われても、数字が示すように考えられない。この辺は過失犯に対する量刑の全国的な水準と、そのような根本的な原因である交通事故防止の環境、交通事故防止の基盤の整備、そういうものとの関係は一体どのようにお考えになっておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/73
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074・川井英良
○川井政府委員 刑罰の幅をきめます場合に、いろいろな観点から、またいろいろな資料に基づいてきめなければならないわけでございますが、刑法の改正でございますので、一応刑法という現在ワクがありますので、当面はその刑法のワク内において、そしてしかも過失犯というものは二百十一条だけではありませんで、ほかにも数個ございますので、その過失犯の数個の例を、もう一回過去にわたりましてその実態なり、その法定刑の中における裁判の言い渡しの実例なりというふうなものを、統計的に勘案いたしまして、それから先ほども御指摘がございましたが、改正刑法準備草案の中に、一応全体にわたっての刑法の法定刑の幅の一つのめどがございますので、そのめどというようなものも勘案いたしまして、それから一番問題になります今日の交通によるところの死傷者の激増、それに対する当面の法を運用する検察、裁判官の持っておる意識、考え方と、それにさらにまた先ほど御指摘の、国民感情というふうなものを勘案いたしまして、大体の幅を出しまして、その上にさらに、しからば諸外国では似たようなこの種のものについて、今日どういうふうな法定刑の幅を持っているだろうか、またこれについて最近改正はなかったのだろうかというようなことを一応最後に勘案をいたしまして、そういうような資料を持ち寄りまして、いろいろの角度から考えまして法制審議会に持ち出しまして、日本の最高水準をいっている実務家と学者の集まりであるところにかけまして、十二分に審議を願いました結果、この五年という刑罰が出てきた、これが結論でございます。三年を五年ということで、別にたいした問題はなく、常識的にもそんなところかもしれませんけれども、実際のここまで結論を得ました過程においては一応そういうふうなことでやってみたわけです。
そこで五年を出すという場合に、五年にしたらすぐ減るというのではありませんで、やはり外国の例を見ましても、それはその国の道路の設備であるとか施設であるとか、さらに最も大きな問題はやはり国民の順法精神だろうと思います。そういうふうなもの、あるいは国民性というものもいろいろ勘案いたしまして、さらにその程度の修正を要するのではないかというようなことで、実は私どもなりに、国民の順法精神とか、あるいは道路の設備、あるいは交通標識の完成のしかたであるとかいうふうな点をも勘案いたしたことは間違いございません。ただ問題は、いろいろの設備が整った上でさらにまた刑罰を考えるということも一つの政策でありましょうけれども、くどいようでございますが、この目の前に出ております非常に悪質な事故による非常に多くの死傷者の続出というような事態に対処いたしまして、刑法の全面改正までの数年後を待てない、とりあえずここでもって何らかの措置をして、この交通対策に刑罰の面から寄与していきたいというような気持ちがこの法案の提案ということになったわけでございますので、刑の幅をきめるにつきましては、いろいろ外国の法制も一つの参考とはいたしましたけれども、形式的に、機械的に外国の例をとったものではございません。あとから提出いたしました資料にございますように、社会主義国では大体十年が一応この刑の相場になっておるようでございます。私どもはそういうものをとりませんで、五年ということをとったということを御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/74
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075・神門至馬夫
○神門委員 私の言わんとする基本的なものは、やはり十分なる政治上の責任を果たして、その上にこの罰則が強化される。こうやってでもまだ悪質な事故をやる、こういう場合には、いま社会主義の国も出ましたけれども、これは当然だろうと思うのです。しかし、いまいろいろ、そこにあるからこれをどうするのか、こういうお話がありましたけれども、それをどうするのかということにのみ気がはやって、全体の環境整備の問題について、これが実際問題としては頭が先行して足がついていっていない。この実態を無視する、あるいは意図的に何か国民の感情の方向を変えてしまう、こういうようなところに問題がありはしないか、こういうことなのです。ですから、そのような根本的なものを解決されると、そのような目的も果たされることになるだろうと思う。たとえばそういう悪質な事故をする、重過失を行なうような、故意犯に紙一重だ、こうおっしゃっております。そういうような人物に——たとえば運転免許の許可制度の問題につきましても、これはいままでも出ておりましたが、現在の運転免許制度はほとんどが営業的な練習所で技術を取得して運転免許をもらう。そこに先ほど大臣も言われたように、技術は取得し得したけれども人格形成そのものについて、ある人格的な面を把握することができない、こういう点にも事故の原因があるのだ、こう三つの中の一つとしておっしゃいました。大臣がそのように三つの中の一つとして重要視をされるようなこの免許制度のあり方、あるいは教育制度ですね。運転者の免許を与えるまでの教育課程、この辺のものについて、何か抜本的にお考えになっているのか。そうしませんと、先ほども申し上げるように、入り口ではどんどん何でもかんでも入れておいて、結果で処罰するのは、これは厳罰主義だと思うのです。あるいは威嚇主義というのですか、こういうことであっては、私らが疑問とするような政治責任の転嫁、かくれみののための二百十一条の改正、こういうふうにしかとれないのであります。そういうふうに重大視されるようなこの辺のものをやはり営業本位に、全国で千カ所ですか、もあるようなこういうやり方を改めさして、何かここにもう一つぴっちりと責任の持てるような教育をする機関をつくったらどうか、この点についてはどういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/75
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076・片岡誠
○片岡説明員 私どもとしましては、指定自動車教習所におきます教育の内容、あるいは免許の試験の問題、あるいはその免許をとった者に対する再教育の問題、いろいろいままで手を尽くしてまいったと思います。しかしながら、御指摘のように指定自動車教習所の教育の内容にもまた問題があると思います。あるいはまたその試験のやり方についても、まだ改善すべき余地はあろうと思います。たとえば先般の改正で、指定自動車教習所を卒業するまでに路上練習をしまして、仕上げは必ず路上で練習をして実際的な交通になれるように、そういう手だても始めております。御指摘のような面もございますので、今後さらに努力いたしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/76
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077・神門至馬夫
○神門委員 将来考えることなのですが、現在の時点では路上練習ですか、そういうふうな点も何とか制度化なり方法を考えたいということですが、責任ある練習機関、免許取得機関、こういうようなものについてのお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/77
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078・片岡誠
○片岡説明員 日本の指定自動車教習所制度は、よその国に比べて決してひけをとらないりっぱなものだと私ども思っております。ただ、問題は箱庭練習で、箱庭で試験をやっているというところに仕上げについての問題があろうかと思いますので、そういう仕上げの路上における練習なり、長い目で見ればおそらくは路上試験という問題も起こってまいろうと思います。そういうことでりっぱな運転者が養成されるように持っていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/78
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079・神門至馬夫
○神門委員 免許制度そのものについては、この四十伊の本案が提出以来しばしば問題になっておるところでありますので、いま急に起きた問題ではないので、もう少し抜本的な何かを、具体的なものを出してもらいたいと要望しておきたいと思います。
それから先ほどは三井ビルの問題で、輸送人口の集中化とそれに対する交通対策の問題はどのように総合的に考えられているか、こういうことをお尋ねしたわけですが、もう一つは自動車のはんらんですね。自動車のはんらんに、いわゆる道路網なりがついていかない、施設がついていかないということが、これも先ほど大臣の御答弁の中にあったのです。そうしますと、生産される自動車台数についていかれるような、常に均衡のとれたような道路網を完備するか、あるいは道路網がおくれるとするならば、現在の時点においてはしようがない、しようがないといいながらも、まだまだ許している、これを何かコントロールして、そしてこれ以上ふやさないという方法はないか。たとえば東京にはいま千二百万台の自動車がおるわけです。毎年四十万台ですか五十万台ですかふえておる。こういうようなことになれば、幾ら道路網を二階、三階にしたところで及ばないわけです。そうすると、この道交法が通過する場合の衆議院の附帯決議の中にもあるように、通産省との連係を持ちながら、そういう自動車生産量を何とかしていくというようなことについて、——総理府はいらっしゃいますか。そういうような点は御検討になったことがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/79
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080・日出菊朗
○日出説明員 御質問のような点につきましては、交通の総合政策上はきわめて重要なことだと思います。したがいまして、総理府といたしましても、今後の重要検討事項といたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/80
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081・神門至馬夫
○神門委員 重要検討事項はいいのですが、そのようなものが現在まですでに検討され、いろいろ話には出ていると思うのです。これも長い間、運輸行政の中ではいろいろあったことだし、その経過として、現在何か具体的に前向きの姿勢で取り組まれておりますか。非常にむずかしい問題だろうと思うのです。自由競争の中にあって、国内の生産をコントロールする、こういうことですね。この辺のものは、重要事項として検討はいいのですが、可能性としてはどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/81
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082・日出菊朗
○日出説明員 お話のように、わが国の経済、産業開発上きわめて重要な要素を持つものでございまして、これに関連する関係各省庁もきわめて多くございますので、それぞれの省庁におきまして、過去においても検討されてまいったようでございますし、今後も検討を続ける問題だろうと思いますが、いずれにいたしましても関係省庁におきましては、前向きで検討していると思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/82
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083・神門至馬夫
○神門委員 その辺はこの程度でやめます。
これは今国会の質疑の中に出たことであったと思うのですが、自動車千台当たりの事故数として、自家用車と営業車の比較が出ていたと思うのです。絶対量としては自家用車のほうが多いけれども、台数単位、たとえば一千台単位にすると営業車のほうがはるかに多い、こういう統計が出ております。そういう中にあっては、働いている労働者が過酷な労働条件なり、あるいは雇用者から無理な要求を命ぜられる、こういうようなことが一つは原因であり、これもいままでたくさん議論になったことです。それでそういうような労働条件、営業車等の事故から考えてみて、いろいろな対策がやはり考えられなくちゃならぬと思うのですが、この交通行政、この交通事故防止という観点からして、事業主に対する、あるいは使用者に対する制裁——運転者に対する制裁というものは、このように行為者として重く罰せられようとしておる。ところが間接の行為者である、間接の責任者である事業主に対して、労働者に過労運転をさしたとか、あるいは速度違反を強要するとか、不良車に乗せるとか、あるいは貨物のオーバー積載をさせるとか、こういうようなことについて何か対策をお考えになっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/83
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084・片岡誠
○片岡説明員 先生御承知だと思いますが、現在道路交通法の第七十四条以下に雇用者等の義務に関しまして規定がございます。それともう一つは、運転者のやりました行為に関しましての両罰規定も別にございます。中身を申しますと、たとえば運転手が無免許であるにかかわらず運転をさしたとか、運転手が酒を飲んで酔っぱらっているにかかわらず運転をさせたというような、下命をしたり容認した場合は独立の罪であります。それから今回の、現在国会に提案して御審議をいただいております道路交通法の一部を改正する法律案の中で、新たに安全運転なり運行を管理する者が積載違反をして運転者に運転することを下命したりあるいは容認した場合にも独立罪として罰するという規定を組んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/84
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085・神門至馬夫
○神門委員 ちょっとその辺飛びますが、昨年の五十一国会で成立いたしました交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法、これに基づいて六百五億ですかの予算によって、第二年度に入って、先ほど新聞記事で読みましたように、警察庁が把握した交通安全施設そのものの効果がいろいろ非常に顕著に出ておる、こういうことで、これは何としてもわれわれ全体が賛成することであるし、急がなければならないこれこそ緊急な問題であると思う。これが進捗状態については大体話が出ておりますからわかりますが、六百五億というものに対して、警察庁なり建設省が理想とするものはどのくらいな予算が必要なのか、これは、六百五億というのは第一回目であって、ほんとうに焼け石に水の程度のものじゃないかと思うのだが、大体どのくらいの予算を必要とすると考えておいでになるのか。さっきも大臣の答弁で、これを全部やるとすれば五、六年はかかるだろうとおっしゃいましたが、それは待っておられない、こういう話がありましたが、三カ年計画ですから、倍になると思うのですが、どのくらいの予算というものを大体いまの施設状態からお考えになっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/85
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086・片岡誠
○片岡説明員 私、公安委員会所管の、警察所管のことについてお答えいたします。
六百三億円のうち、公安委員会所管は、御承知のように四十三億でございます。道路管理者主管の約十分の一足らずでございますが、四十一年から始まりまして、四十一、二、三と、三カ年でございます。来年度に公安委員会所管で、まだ二十一億の事業量が残っております。それで四十四年以降をどうするかという問題につきましては、現在ぼつぼつ調査を始めております。ただその三カ年計画を考えましたとき以後に起こりました問題として、学童寮児の通学路を、従来の考え方よりもさらに徹底をして保護するという、新たな要因が換わってまいりましたので、これにつきましては、現在至急にその需要量を詰めております。現在御承知のように、国会の特別委員会で審議されております四党共同提案の法律ができますれば、直ちにその具体的な数をつかんでいくということでやっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/86
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087・豊田栄一
○豊田説明員 お答えいたします。
ただいま警察庁の御答弁の中で、私ども建設省のほうでは安全施設五百六十億の三カ年計画で現在第二年目、全体の進捗率が六三%でございますが、特に昨今の情勢によりますと、歩行者保護に重点を置きまして、歩道橋の問題、そういうものを重点に置いての現在繰り上げ施行をやっておる状態でございます。あと四十三年につきましては、現在の残は約二百九億でございますが、ただいま片岡課長のほうから説明のございましたように、それに膚接していろいろ勉強中でございます。そういう点、今度の立法によります法律がきまりまして、さらに勉強の上鋭意促進をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/87
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088・神門至馬夫
○神門委員 いまいろいろ質問しまして、最終的には施設の整備計画、三年計画そのものの全体の必要度の中で、どのくらいを占めるかということについて明確な答弁がないようで、あまり足らないというと、あなた方の立場もお困りになるだろうと思います。私らが考えておるところによると、非常に足らない。大きな予算を必要とするものだ。これは交通安全対策委員会等においてもやっぱり議論されていることでありますし、運輸委員会においてもやはり議論されておる点であります。それは政府側でありますからむずかしいこともあろうが、やはり各種委員会で堂々とこれだけの予算を必要とするのだということを主張していただくことが、いまの交通戦争的な災害をなくすることにもなるだろうと思う。またそういうような交通戦争的なこの秩序の乱れの中に、悪質的なものも生まれる要件があると思う。全体を、やはり事故をなくすることに根源があると思います。
いままでいろいろ聞いてお尋ねをしたわけでありますが、どうしても厳罰主義と申しますか、量刑を重たくして、きびしく取り締まることによって事故がなくされるのだ、しょうという意思はあっても、それに対してどうも自信がないようです。数字的にこれまでの歴史を見ましても、量刑が重たくなったことによって、その年度のかわり目で顕著にあらわれるどころか、反対に事故がふえている。悪質なものさえふえている。こういうようなことを見てみますと、厳罰主義のもたらすものが、量刑を重たくする、罰則を重たくするということが、どうも私たちは疑問だと思うのです。その反面に、いまのような交通施設を整備する、環境整備するというと、目に見えてそういうような不慮の事故がなくなる。死亡事故さえ全然ゼロになったというようなものがたくさん出ているわけでありますから、そういう点に積極的に努力してもらって、刑法二百十一条などを改正するというような責任のがれ的なやり方は、ひとつやめてもらうように要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/88
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089・大坪保雄
○大坪委員長 本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時三十五分休憩
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午後三時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/89
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090・大坪保雄
○大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
刑法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。沖本泰幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/90
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091・沖本泰幸
○沖本委員 部分的なお話になるのですが、警察庁の交通課長さんにお伺いするのですが、いま全国で交通信号機は幾つくらいあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/91
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092・片岡誠
○片岡説明員 正確な数字をいまちょっと覚えておりませんが、一万と少しあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/92
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093・沖本泰幸
○沖本委員 それの電灯料はどういう仕組みになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/93
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094・片岡誠
○片岡説明員 電灯料は普通の電灯料金で、公安委員会の経費で支払っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/94
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095・沖本泰幸
○沖本委員 そうすると、あれは三つあるんですね。三つあって、一つに一つの家庭の電灯料金を払っているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/95
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096・片岡誠
○片岡説明員 私その点いま正確に存じておりませんが、特別の料金じゃなくて、一般的には普通の家庭と同じ電灯料金だと思います。ただ電力会社の中で、半分くらいは一割引きしてくれているんじゃないかと記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/96
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097・沖本泰幸
○沖本委員 公共のための、交通安全のための信号機が、どうも、普通のとおりに、家庭の電灯料と同じような支払い方の仕組みであるということ自体が私はおかしいと思うのです。そのことに対する年間の予算は膨大な金額になっていくと思うのですけれども、税金がそのまま各電力会社へずるずる流れ込んでいくというのは、これはどう考えても不合理なんですね。それで、聞くところによると、一般家庭の電灯料ですと、電灯料の集金人がおるわけです。集金人のいろいろな負担費、そういうものは一括して払われるわけですから、省けるはずなんですけれども、そういう面、御検討なさって御交渉なさったことはないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/97
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098・片岡誠
○片岡説明員 これは単に信号機の電灯だけではなく、街路照明も全く同じだと思います。私かつて電力会社、配電会社に交渉した経験を持っておりますが、向こうさんの言い分は、私どもは工場の動力用と同じように特別に扱えないかということで交渉したのでございますけれども、やはり電灯である限りこの電灯料金なんだ、どうしてもまけろというんなら固定資産税をまけてくれ、こういう話が出ました。そういう経過がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/98
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099・沖本泰幸
○沖本委員 どうも電力会社自体が、公共性に対する考え方が全然なっていないわけです。ですから、交通安全灯であるとかあるいは痴漢が出るようなところの照明とか、そういう問題に対しては、もっと考えて電力自体に公共性を持たしたものをやらなければならないわけですが、現実としてそこのところの電灯料に対する集金人の費用分だけは引けるはずなんです。それを込みで支払っているということは、全く余分なものをお払いになっているわけですから、それは交渉なさって、その分だけは差し引けということになれば、大きな財源がそこから浮いてきますから、それによってもっと信号灯もふやすこともできるわけなんですけれども、これは各都道府県の警察本部がみな頭をいためている問題でございますから、早急にこの点は電力会社と交渉なさって、そして余分な財源を浮かしていく、そしてうんと活用する、こういうふうにしていただきたいのです。これは、できるということをちゃんとよそのほうでは言っているわけなんですけれども、中央のほうが動いてくれさえすればちゃんとなるというわけで、期待をしておられますので、早急に実現していただきたいと思います。
それから、次に話は変わりますが、私はいま手元に、昭和四十一年九月に全国人権擁護委員連合会があらわしたところの「いたましい交通事故被害者の実態」こういうのがあって、これでいろいろと勉強させていただいたわけです。これは非常によく調査なさって、いわゆる関東関係の各府県の事故の実態、こういうものに対して詳細な調査があったわけなんですが、その「むすび」の最後に「当連合会は、以上のような調査報告に基づいて、協議検討した結果、交通事故対策特別小委員会を設け、被害者救済の具体策を検討することになったものである。」こういうことがあるのですが、大臣は御存じでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/99
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100・田中伊三次
○田中国務大臣 刑事局長から答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/100
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101・川井英良
○川井政府委員 人権の大会その他におきまして、交通安全対策の一環として被害者についての救護の措置を法制的にもまた予算的にも特に強力に措置することが必要であるということが問題とされまして、私どもも側面からそういうふうなことについて協力をするということで、法務省の内部におきましても、主として人権局あるいは民事局、法務局というふうな関係の部局がございますので、それらの部局におきまして、私どもとまた連絡をとりまして、そういうふうな被害者救護の対策についていろいろな検討をいたしていくことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/101
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102・沖本泰幸
○沖本委員 この調査報告書によりますと、全くその被害家庭とか、あるいは示談の内容とか、どういう点が解決されないとかという点が詳細に述べられております。以前、ほかの委員の方の質問の中にあったわけですが、裁判所とかあるいはそれに類する関係筋のところで、この被害者のいわゆる補償に関するいろんな問題について、何かその救済方法がないかというような御質問があったときに、民事の問題に触れるから裁判所ではそういうことはできないとか、いろんな答弁がございました。しかし、この人権擁護委員会は、いわゆる人権擁護の立場から自然発生的にこの問題を研究検討なさっていったことになります。法務局の人権擁護のほうに——これに対するいろんな相談に応じてあげようというような姿勢をここで述べていらっしゃるわけですが、大臣はひとっここのところで——こまかい内容は抜くとしまして、ほとんど法律を知らない、そのためにわずかのお金で話がついてしまっている、またあわてて交渉してしまって、あとから後遺症が出てきてどうにもならない、こういう問題がたくさんあるわけですから、警察のほうでも交通相談所をつくって全国的にやっているわけですけれども、これは民事不介入で、事故に対する問題しかなかなか相談に乗らない。そこで最近になって各地方自治体のほうでは交通相談所をつくって、そういう方向に向かって進んでおりますけれども、これまたみんなPRが足りないわけなんです。そういう観点から、この法務局の人権擁護のほうに人権擁護の立場からいつでも相談にきてください、その内容に応じて、あなたはこういうことを相談なさったらいいでしょう、あるいはこういうところへ行けば解決できるし、あなたはこういう方法で解決できる道があるとか、加害者、被害者両方にわたって、人権の立場からそういう相談部門をつくって、うんと法務局のこういう制度が生きていくような制度をおつくりになるお考えはありませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/102
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103・田中伊三次
○田中国務大臣 先生お説のとおり、中身は人権擁護に力を入れなければならぬ問題の一つであろうと存じます。ただ、法務省が現在担当しております法務局内にある人権擁護課というものがございます、この人権擁護課で取り扱いますものといたしますと、どうもこの損害賠償関係の民事関係には介入しにくい、したがって、この加害者という立場の相手方を呼び寄せて、これこれの金を出すがよかろう、こうしてやるがよかろうということまで介入をいたしますことはいかがかと考えられる節がございます。ただし、人権上非常に大事な内容を持っておりますので、被害者本人との間に、こうするがよかろう、ああするがよかろうという指導を、適当なる手続をとる寸前まで与えるなどということはやってたいへんよろしいことではなかろうか、そういうふうに考えますので、人権擁護の立場の許される限り、本人たちの人権を守る意味において手続をとります寸前までいろいろ親切にこれを指導し、意見を述べて導くというようなことには親切丁寧にやってみたいものだと考えるのでございます。そういう意味において、前向きの姿勢で、いま仰せになりましたようなことを全国的な立場で、人権擁護の立場からこれを守っていく道がなかろうかということをひとつ検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/103
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104・沖本泰幸
○沖本委員 ぜひとも実現していただきたいわけです。と言いまのは、御関係のほうの人権擁護委員連合会が、みずから前向きにこまかく被害者の中に入っていって、どういう状態であるか、後遺症はどうであろうか、あるいは救済対策はどうなっているのだろうか、あるいはどういう面に問題があるかということを詳細に調べて、そして発表していらっしゃるわけです。ですから大臣としてもその点をくみ取っていただいて、ただ刑法だけ改めたらいい、こういうのでなくて、それ以前の問題を法務省のほうでもできるのなら最大限にやっていこう、こういうふうにやっていただきたいものです。ぜひともよろしくお願い申し上げます。
それで、大臣にも、ほんとうは総理大臣に聞いていただきたいのですが、どうも来ていただけそうもなかったので、私が質問申し上げております趣旨というのはどこにあるかというと、ここに「示談」という本があるのですが、その中に加害者、被害者にわたっていろいろ問題点を論じて、そこで被害者の立場がなまなましく書いてあるわけです。「事故現場にかけつけました私には、恥も外聞もありませんでした。停車しております加害車を見ては、魔ものよと叫び、運転手を探しては鬼よとののしり、果ては殺してやるぞとばかり猛り狂いました。医師の鎮静剤にてようやくわれを取り戻しましたるものの、頭部はほとんどなくなり、その上、朝着せました服その他は、血だるまと変わり果ててしまいましたわが子を抱き上げねばならなかった、親の私の心情をお察し下さい。世にこんな悲しさ辛さが私達子を持つ親にありますでしょうか。声をあげて泣きました。かけつけてきた母妻共々相擁して泣きました。そしてあまりにも悲しいあまりにも不運なあの子の運命をのろいました。それとも世の文明の器のなせることなのでしょうか。それでは何のための文明なのでしょうか。」また次のほうには「尊い命を奪って、過失致死というだけでよいものでしょうか。「すみません」という言葉だけでかたづけられる問題ではありません。もし昔の話のように、仇討という事が許されるなら、何年かかってでも、きっと仇を討ってやりたいと本気に思ったりします。」それと反対に、今度は加害者の立場で五味康祐の名古屋の事件の、週刊誌にも出ました立場が出ております。また「交通事故で少女を死なせた裁判官が「私に過失があろうとなかろうと、人間としての罪は消すことができない。私はもはや人を裁く立ち場にはない」と周囲の慰留を振り切って辞職した」こういうふうな悲惨なことが毎日、一日に三十数人ずつ死んでいっているわけです。こういう立場に立ってお伺いをするわけです。命は地球よりもまだ重い、こういう観点に立ってお伺いをしたいわけですけれども、総理府の安全対策の問題で、この人権擁護委員連合会のほうの調べた中にも、対策の中にいろいろ出ておりますが、一々申し上げると長くかかるのですが、このあなたのほうでおきめになりましたところの緊急措置に基、つく三カ年計画、また、救急医療対策、脳外科のある救急病院の指定とか赤十字マークの救急報知機の新設、救急車の酸素高圧ボックスの設置、救急医療施設の指定委嘱制の改正、救急車の増加、自動車の救急箱の備えつけの義務化、それから免許試験に止血手当てあるいは看護科目の新設等、いずれも必要な要望事項が第一点に盛られておる、こういうことが載っております。まずこの点について伺いたいのですが、これがどういうふうな形で具体化されていったのですか。具体化された問題に対してお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/104
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105・日出菊朗
○日出説明員 ただいまの御質問につきまして、先生のおっしゃっておられる資料を、もしお差しつかえなければお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/105
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106・沖本泰幸
○沖本委員 いま申し上げたとおり、四十一年の九月に発行された全国人権擁護委員連合会の出した「いたましい交通事故被害者の実態」なのです。いま申し上げたのは総理府のほうの辻木さんが座談会でお答えになっているわけです。あなたのほうの御関係じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/106
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107・日出菊朗
○日出説明員 総理府の関係ではないと思われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/107
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108・沖本泰幸
○沖本委員 間違いました。——ですが、一応その緊急措置法が出て、こういうことが一応具体化されていくという一つの方針が出ているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/108
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109・日出菊朗
○日出説明員 交通安全施策につきましては、従来からいわれておりますように、交通安全施設の整備拡充の問題と、それから交通安全思想の普及徹底の問題、さらに交通秩序の確立の問題、この三点が中心でございましたけれども、最近におきましては被害春救済対策、この一点を加えまして四つの柱が中心になって施策を総合的に行なっておるわけでございます。特に最近におきまして、先生の御指摘のように、不幸にして交通事故にあわれた場合の被害者についてどのような救済措置をとるかということが喫緊の問題でございますので、まず第一点といたしましては、事故にあった場合の緊急搬送体制あるいは緊急医療体制を整備充実する、こういうことに重点を置きまして、それぞれ自治省あるいは厚生省におきまして、今年度は特にその予算も重点的に増加いたしまして、これらが施策を行なっておるわけでございます。また不幸事故にあわれてなくなられた方とか、あるいは重傷で後遺症に苦しむ方とか、そういう方々の家族の方に対する事故相談につきましては、先ほどお話ございましたように、法務省におきましてもそれぞれ努力されておるところでございますが、今年度におきましては総理府におきまして、全国の都道府県に交通事故相談所を公営のものとして設置することになりまして、過日七月一日にそれぞれ発足いたしておるわけでございます。この数は全都道府県にまたがっておりますので、七月中に開設予定が三十九府県になっております。八月以降七県でございますから、四十六都道府県に交通事故相談所が設置されて、国から補助金を出しましてそれぞれ育成いたしまして、事故にあわれた方々に対して相談に応ずる、あるいは助言なり指導をいたしたい、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/109
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110・沖本泰幸
○沖本委員 いまのお答えは、結局先ほど私が質問しておりました被害者に対する救済の問題であって、あとで質問したのは、いわゆる救急医療というものがどうなっておるか、総理府のほうで総理大臣を中心にして安全対策協議会というものができて、だんだんそれが具体化されていっているわけです。ですが、そこで打ち出されたものが、ただアドバルーンに終わってはならないわけで、今年度に予算づけをなさった分がどういう結果になって医療救急体制というものが実施されつつあるか。予算が出たとおっしゃっておるわけですから、その予算の出た分に対して、あなたのほうで立てられた対策が完成するのはいつごろであって、どういうことをどっちのほうに注文した、こういうことをお聞かせ願いたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/110
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111・日出菊朗
○日出説明員 その点につきましては、厚生省のほうが主管しておられますので、厚生省のほうにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/111
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112・中村一成
○中村説明員 厚生省で担当いたしておりますところの救急医療の整備の問題につきまして御説明申し上げます。
厚生省といたしましては、救急制度につきまして、一般の医療機関に救急医療機関として挺身していただくという意味におきまして、病院、診療所の告示という制度を昭和三十九年にとりましてから、告示する医療機関をできるだけ多くやっていただくという指導をいたしまして、これで三千五百の医療機関が指導を受けておりますが、本年度からは特に交通災害におきますところの、特に頭をやられますところのケースが多いということ、これはまた死亡率が高いというような重大な点に注目して、主として交通外傷に対しますところの専門の医療施設を整備することといたし、全国でただいま百カ所の医療機関につきまして、その推進をはかっておるところでございます。これは、私どもといたしましては、この医療機関につきましては、計画といたしまして、おそくとも明年までには整備することといたしまして、すでに十六の病院につきましては、大体一応の能力を持つという整備をいたします。本年度は二十一カ所の病院を整備することといたしまして、ただいまそれぞれの病院と打ち合わせをいたしておるのであります。したがいまして、昭和四十二年には全国で三十七の交通外傷関係の専門の医療施設ができることと相なっております。しかしながら、問題はそういう建物の整備だけでは十分ではございませんで、要はそこに勤務するところの専門医の確保の問題でございます。この点につきましては、前回の委員会でもお答えいたしましたように、わが国におきましても、これは先進国も同様でございますが、脳神経外科の専門医というのは非常に少ないわけでございまして、日本の場合二百三名が国際的な水準にある。いわゆる国際脳神経学会の登録医が二百三名でございます。一番比率の高いところのフランスあたりでございましても二百八十一名フランスの国内におる。そういうふうにこれは世界的な問題でございますが、そういうような専門医の方々にいかにそういうところにおいて働いていただくか、御協力いただくか、そういう体制をとることと、それからそういうような専門医というものをこれから先養成していく、こういうことに力を尽くし、あわせてその方面の努力もいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/112
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113・沖本泰幸
○沖本委員 いま全国で百カ所つくるということなんですが、私、よくこの「示談」という本を例に引いてやるわけなんですけれども、交通事故の死者の七割から八割は頭部の外傷で死んでしまう。ですから年間約四千人前後の人がすみやかな医療体制ができないために死んでしまっている。それの救済の方法も、事故が起きてから一時間ないし二時間あるいは二十四時間以内が勝負なんだ。こういう数字はもうそちらのほうでもよくおわかりだと思うのですけれども。ですから、ただ全国に百カ所つくることにしたというわけなんですが、百カ所でどの程度のことができるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/113
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114・中村一成
○中村説明員 私のほうといたしましては、もちろん百カ所では不十分でございますので、救急医療を担当するところの医療機関は全国的に全般としては現在三千五百ございますが、それを早急に五千まで数をふやしたいと思っております。したがって百の医療機関だけでこれをやるわけではないわけでございますが、百と申します医療機関におきましては、特に重傷の患者、交通外傷等の重傷の患者につきましての専門的な処理ができる専門医を常時置いておくということにねらいがあるわけでございまして、したがいまして、一般のそういう救急医療機関とお互いに連絡をとりまして万全の措置をとる、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/114
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115・沖本泰幸
○沖本委員 厚生省にはっきりした医療体制という対策はあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/115
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116・中村一成
○中村説明員 救急医療の問題は、厚生省といたしましては最優先の問題として大臣以下これに熱心に当たっておるわけでございまして、私どもといたしましては、ただいま申し上げました救急医療機関の整備はさらに——あと後遺症の問題もございますので、そういう後遺症の方々に対するメディカル・リハビリテーションの施設も現在だいぶ整備も始まっておりますけれども、これも早急に整備をいたしまして、まずそういうような医師等の職員の充実をはかりまして、これに対しては遺憾のないように全力を尽くしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/116
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117・沖本泰幸
○沖本委員 後遺症のお話が出ましたけれども、それではこの間も御質問したのですが、後遺症患者で、いわゆる一家の柱——でなくてもいいのですけれども、全国で後遺症患者で、自分で生活できないような患者が何名くらいいるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/117
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118・中村一成
○中村説明員 交通災害に基因するところの後遺症患者に関する正確な数字は、私どもとしては全国的な数字は持っていないのでございますが、これは学者その他の実際の実務者の方々のいろいろな研究によりまして、大体交通関係で事故にあわれた方でリハビリテーションを必要とする方は、全国の交通事故の方だけに限って申し上げますと、大体二十万人くらいじゃなかろうか、こういうふうに推定をいたしております。なお、私ども厚生省といたしましては、ほかの科学技術庁その他各官庁と、警察庁その他消防庁等とも連絡をいたしまして、ただいま交通専門の医療機関につきまして患者の追跡調査を始めておりますので、そういうような調査等がまいりまして、ある程度精密な結果が出ると思いますけれども、このことにつきましては全数の追跡ということはなかなか困難でございましょうけれども、しかし大体におきまして交通外傷におきますところの型は、幾つかの型がきまっておると申しますか、型がございますので、およそ類推できるのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/118
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119・沖本泰幸
○沖本委員 厚生省のほうはこの本をお読みになりましたか。先ほどから盛んに使っている……。御研究なさいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/119
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120・中村一成
○中村説明員 私どものほうも会議でいただいております。昭和四十一年九月にいただいて勉強いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/120
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121・沖本泰幸
○沖本委員 昭和三十九年に一回やっているわけです。そのときにすでに追跡調査を後遺症患者につき、あるいは生活保護をしなければならないとか、いろいろな点について、独自で関東人権擁護委員連合会は関東地区に関して真剣に追跡調査をやっていらっしゃるわけです。さらにそれを四十一年度におやりになったのですが、厚生省としては、こういう問題を一ぱいはらんでおるわけなんですけれども、いまから始められたというところなんですか。これからおやりになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/121
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122・中村一成
○中村説明員 私どもといたしましては、もちろん全国人権擁護委員連合会の御調査については、貴重な資料として参考にしながら仕事をいたしておりますが、なお私どもは現在私どもの医療機関を中心といたしまして、かつ各省の連絡のもとにいま詳細な検討を開始いたしたというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/122
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123・沖本泰幸
○沖本委員 その結論が出るのはいつごろでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/123
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124・中村一成
○中村説明員 第一回の分につきましては、中間的なものでございますが、この八月にはそれにつきましての一応の中間的な結論が出るということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/124
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125・沖本泰幸
○沖本委員 これはいわゆる事故の、原因はどういうものが主体であって、加害者は何歳くらいであり、転落家庭はどういうふうになっている、示談の内容がどういうふうになっているということが詳細に出ているわけです。厚生省としては後遺症で結局生活保護を受けなければならない転落家庭がどれくらいあるかということくらいは握っていらっしゃるのが当然じゃないか、こういうふうに思うのですけれども、実際に東京都あるいはあちらこちら問い合わせてみましたけれども、現在はしっかりしたものを握っていらっしゃらないわけです。ただ単に自賠法のほうで救済しておるというだけなんですけれども、事故の根本は歩行者の事故が一番多いというのが日本の特異性である。アメリカやヨーロッパでは、歩行者の事故者は少ないわけです。そして車対物、あるいは車の中の事故で、車と車の事故の場合は、ほとんど即死しておるということになるわけです。なぜ日本がそういう歩行軒の問題が多いかということになると、ヨーロッパのほうは車にかわる馬車というものがあったわけです。そのため昔から、早くから歩道と車道とがちゃんと分かれておった。ところが日本の国はそういうものがなかったために、歩車道がみな一つでずっと来た。最近になってその問題がやかましく出てき出したわけです。そういうのが日本の特異性であって、歩行者のほうが非常に数が多い。それも歩行者の事故で一番ひどいのは、大体十五歳から五十五歳に至るところの一家の柱になる人たちの事故が比較的多いということを考えてみますと、これは社会的な問題になってくるわけですけれども、そういう点についてしっかりした資料がなければ、当然対策ができていかないと思うのです。ですから医療救急センターにしましても、予算づけの問題だとか、あるいは医師会のほうの解決の問題だとか、いろいろな問題を含んでおるわけですけれども、そういう点がどうも手が抜けているんじゃないだろうか。だから、先ほど申し上げるように、いわゆるアドバルーンは上げられるけれども、実態に即したものをはっきりと握っていらっしゃらない、こういうふうに考えざるを得ないわけです。
そこで、今度はもう一つ突っ込んでお伺いしたいわけですけれども、結局救急医療センターを整備なさるために今年度予算化されたわけですけれども、その事業の全部の完了年次はいつごろになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/125
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126・中村一成
○中村説明員 私どもといたしまして、いま申し上げましたような医療機関の整備と申しますのは、明年までに一応の医療機関の整備を終わり、さらにリハビリテーションを要する者の施設につきましては、その翌年ころまでには一応の整備は終わりたい、こういうわけでただいま関係当局あるいは地方と連絡をとって仕事を進めておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/126
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127・沖本泰幸
○沖本委員 その救急センターについてですけれども、これは国が全部持っているわけじゃないのでしょう、地方にも負担さしているのじゃないでしょうか。率はどれくらいなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/127
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128・中村一成
○中村説明員 百カ所のうち国で直接いたしますものが三十七でございまして、残りにつきましては、あるいは県あるいは市等が行ないますもの、あるいは日赤、済生会といった公的な経営主体が行なうものというふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/128
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129・沖本泰幸
○沖本委員 その地方なりあるいは日赤あたりが、持ち分については喜んで持っていくのでしょうか、しり込みしているのじゃないでしょうか。現況としてはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/129
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130・中村一成
○中村説明員 私どもといたしましては、ただいまのところ、もちろん十分な国の補助というわけにはまいりませんが、還元融資あるいは長期資金の貸し付けといった等のものにつきましては、これは優先して配分いたしております。これはなかなかたいへんな仕事でございますので、お金の問題よりもやったあとの運営ということ、これがなかなか、医師の確保その他たいへんでございますから、おそらくそういう機関としましては、建設の問題よりもその後の運営ということについて非常に慎重な態度でやっておられるのではないか、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/130
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131・沖本泰幸
○沖本委員 予算づけの問題で、その後の問題がたいへんだ、こういうことなんですが、これは厚生省のほうからそういう問題をもらった地方のほうもたいへんなわけです。どの病院をどういうふうにして指定しようか、そこにベッドをどういうふうに持っていこうか、あるいは看護婦やお医者さんをどういうふうな解決方法でやっていこうか、こういうことになるわけですけれども、そういう救急病院網の整備について地域的な偏在があるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/131
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132・中村一成
○中村説明員 救急病院三千五百の医療機関全部について見ました場合においては、まだ必ずしも場所的に適正であるということは言えない面も確かにございます。ただ私どもが一番方を入れております百カ所の医療機関につきましては、これは立地条件その他十分各都道府県と打ち合わせの上いたしておりますので、これにつきましては、一応必要な場所に必要な医療機関を置けるというめどでやっておるわけであります。
なお、つけ加えますと、今度消防法の政令の改正によりまして、搬送の基準が人口十万の都市が五万の都市まで広がってまいります。そういう点も考慮いたしまして、あるいはまたさらに各都道府県と医療機関の整備について打ち合わせを続行しておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/132
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133・沖本泰幸
○沖本委員 もう少し突っ込みますが、救急医療の問題は初期治療が一番大事だということはさっきから申し上げておるわけですけれども、三十九年以来告示を受けてやっておる救急病院に対して、現在までどういうふうな助成策を講じられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/133
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134・中村一成
○中村説明員 助成につきましては、医療機関につきまして、公的なものにつきましては国で直接経費を投ずる、あるいは補助金を支出する、あるいは起債等をこれに充てるため起債の承認を受けるという点でございます。それから私的なものにつきましては、医療金融公庫等においては、そういうものについて優先してこれを貸し付けるというような措置をとっております。
なお、そういう救急医療施設に勤務するところの医師につきまして、特に救急医療につきましての研修を府県等に委託いたしまして実施している、こういうようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/134
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135・沖本泰幸
○沖本委員 それで話をちょっともとへ戻すわけですが、これは脳外科の専門医が全国で二百人くらいしかいない。フランスの例をお引きになったのですが、結局厚生省の方針としては百万人の都市に対して百カ所、こういう構想だと伺っておるのですが、そうしますと、そのまま当てはめるとしましても、一カ所当たり二人しか当たらないということになるわけです。そうすると百万人の都市に二人しかいない。これはどういうふうにして解決なさる御構想なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/135
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136・中村一成
○中村説明員 脳神経外科医の養成につきましては、もちろん現在の二百三名という専門医ではあまりにも少な過ぎるわけでございます。私どもの計算といたしまして、百の病院で、一つの病院に九名の専門医を必要とする計算をいたしておりますので、少なくとも一千名に近い専門医を必要といたします。それでいま申しました二百三名の専門医というものは、大学の教授、助教授として大学にいるのがほとんど大部分でございます。したがいまして、その養成はなかなかむずかしい問題でございますが、いま、現在全国で十九の大学、医科大学におきまして、脳神経外科の教室においては教室員の養成にあたっております。しかし、これをもちましても、なかなか一人前の医者になりますのは、数年の長きを要するわけでございますから、そう急に何名というふうに養成をするわけにいきませんが、しかし十九の病院の数をもっともっとふやしていく、そして全国の大学病院におきましてそういう養成をしていただくように、文部省とともに、ただいま打ち合わせをいたしておるところでございます。一方私どもとしましては、ある程度の素養のある外科医の場合におきまして、脳神経外科といった専門のところまでいきませんでも、ある程度の開頭術を行なえるところの外科医というものの養成はさほどむずかしいわけではないわけでありまして、そういう専門医の大学等における養成とあわせまして、一般外科医の方々が、そういう外傷、特に交通外傷等に備えての研修を実施するといったような方法をとりまして、これを補足していきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/136
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137・沖本泰幸
○沖本委員 このお医者さんの養成の問題ですと、結局現在のところではなかなかむずかしい問題だからできないといまお話があったようなんですけれども、いろいろなケースを示して、それによる算術の方式で、この人はどういうところがいたんでおるから、これはどういう処置をとったらいい、こういうような一つの基本の算術方式がある。そういうものをやっていけば、普通の外科医でもある程度のところはできる。ですから、診断の方法で、「脳血管写や超音波テストなどをしなくても」、「四〇年の国際脳神経外科学会で発表された「急性頭蓋内血腫と脳挫傷・脳浮腫との鑑別表」を使えばいいではないか。これなら衝撃方向、外傷直後の意識障害、意識障害の経過、頭蓋円蓋部骨折の有無、嘔吐の有無、瞳孔不同症の有無など簡単な診断と算術ができれば、頭蓋内血腫の有無は八〇ー一〇〇%診断できる」という、こういう方式をとっていけば、普通のお医者さんでも第一次の処置が十分できる。ところが、現実に私のところはどうもそれはむずかしい、こういうふうにやられて、あっちの病院、こっちの病院と振り回している間に死んでしまった、あるいはそのために手おくれになって、後遺症の残る患者ができてしまった、これが現在のわが国の状態なんです。こういう点について、こういう方式をお使いになる方針はないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/137
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138・中村一成
○中村説明員 先ほどお答えいたしましたとおり、いま先生の御指摘のようなそういう修練をいたしますこと、これは厚生省としては各都道府県と一緒になってやっているわけでございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたような脳神経外科といったような非常に高度の専門医でなくても、普通の医師——普通の医師というような言い方はあるいは失礼かと思いますが、医師にある程度のそういう研修等を行ないますことによって、相当程度の効果を期待することができますし、また最近におきますところの自動診断装置等の発達によりまして、おそらく早晩そういう医療器具自体の発達ともまた相まちまして、おそらく交通外傷に対するところの治癒体制というものは、うんとよくなっていくのじゃないか。そうして死傷者の減少にも役立つのではないか、こういうふうに私どもは期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/138
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139・沖本泰幸
○沖本委員 そういうことにつきまして、全国の開業医であるとか、あるいは私立あるいは大学の病院等のやや専門に近いようなお医者さんにある程度時間をさいていだだいて、義務づけにして、そういう施設のあるところで実際の手術内容を自分で、いわゆるインターンしていただく、こういうふうにして、ある程度の技術的な開発をしていけば、相当埋められていくということになるわけですけれども、開業医の方に一時仕事を休んで、そういうことに前向きに、国家国民のためにやってほしいといっても、はたしてやってくださるかやってくださらないか、それはわからないわけです。それを強制することもできないわけです。法律できまれば別ですけれども。そうなってくると、結局現在のところでは、厚生省のほうで何らかの予算措置をしていく、財政的な問題が関係するわけですけれども、それと同時に、こういう病院あたりに、それだけのものを余分に持たしていく立場から、現在は医者と看護婦が非常に払底しておる。まして地方の病院は公営の企業体になっておるために、赤字をかかえ込んでしまっておるというのが現状ですが、そういう点について、医師や看護婦の待遇及び病床の確保、こういう点については、みな頭打ちになっておるわけです。その運営に関する経費について、今後厚生省のほうでは財政措置をおとりになっていく構想がおありなんですか。またそういう御意思がおありでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/139
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140・中村一成
○中村説明員 先生の御指摘いただきましたような、そういう研修につきまして、ことしの予算で二千万円を計上いたして、各府県に委託をいたしておりますが、明年以降さらにそういう研修につきましては、財政的な問題につきましても、省としては大いに増額をお願いいたしたい、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/140
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141・沖本泰幸
○沖本委員 二千万円だけ出して、そういう点に対して措置を講じていくということでなくて、先ほど言うとおりに、救急対策に対するほんとうのビジョンというものが厚生省にできていなければ、そういう問題に移っていけないわけですけれども、はっきりした、これはこうしていくというようなものはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/141
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142・中村一成
○中村説明員 先ほど申しましたとおり、厚生省といたしましては、救急医療につきまして、いろいろな点について総合的にこれを実施していくというわけで、年次計画でもってただいま実施中でございますので、もうしばらくお待ちを願えれば成果があがると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/142
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143・沖本泰幸
○沖本委員 成果でなくて、総合的な中の具体的なことを私は聞いているわけです。具体例について、今後こうしていくというものがなければ、そういう点を予想してそれぞれの準備をしていくはずなんです。そういうはっきりしたものが出ないから、どうしてくれるのだというところから、みなしり込みをしてしまう、こういうことになってしまいます。重ねて、航空機及び電車の事故等が最近は大きく扱われるわけですけれども、そういうふうな集団的に発生する救急患者に対する医療の確保については、国としては、どういうふうな対策を持っているか。そういう問題に大きな対策費が要るわけですから、それに対する費用の負担、こういうような点についてどういう構想がおありなんですか、またどうなさろうとしているのですか、現在、案がおありでしょうか。
重ねて言いますけれども、たとえば私は大阪におりますから、近いところで知っているのですが、伊丹に交通事故があった場合には、羽田のような施設はないのです。あそこで起きたら大問題になるわけです。そこで、伊丹のお医者さんはお互いに協力し合って当番の日をきめて、何かのときには出動しよう、そうでなければ大事件になって、伊丹の市民あるいは豊中の市民が困ってしまう。こういうふうな民間体制までできておるのです。ところが、羽田、板付、あるいはこれから成田の飛行場、こういうことになっていくわけですけれども、そういう問題に対して政府のほうとして、厚生省のほうとして、どういうふうな対策をしていらっしゃるか、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/143
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144・中村一成
○中村説明員 先生の御指摘いただきましたのは、おそらく集団的な事故の発生の予想をして、一体いかなる救急体制が考えられているかという御質問だろうと思います。この集団的な事故の場合におきましては、単に医療機関だけの問題ではなく、これは事故者の搬送でありますとか、その他大きないろいろな問題がたくさんございます。それでそういう集団的な事故の発生に備えまして、厚生省、警察庁、消防庁その他関係の者が集まりまして、それでそういう集団的な事故の発生に備えての体制づくりということは、これは十分議論いたしておるところでございますが、その確保の面につきまして、特に医療機関の側においていかにすべきかということにつきましては、各都道府県と、そういう集団的な事故に備えて、そうして各都道府県単位において対策を検討するということで、各県がただいま検討を進めている。たとえば先般の大阪の南海電鉄の尾崎駅における事件がございました。ああいうような場合におきまして、一つの先例となりまして、一体どういうふうにしてその事故対策が行なわれたかというような実例につきまして、これを詳細に検討して、そうしてその結果というものを全国にも示しております。その他また近鉄におきますところの最近の事故もございました。そういう点の検討等を通じまして、集団的な事故の発生に対していかにあるべきかということについて、各県と連絡をとりながら、各県の単位について一応検討いたしております。しかし、これは県を越える大きな事故も予想されます。そういう点につきましては、今度は数府県にまたがる問題として検討する必要がございますので、これから先はこういう県を越える問題についての検討という段階である。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/144
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145・沖本泰幸
○沖本委員 羽田の飛行場ですら、カナダからBOACあるいは全日空の問題から、航空機の問題に対して非常な悩みが出ておるわけです。ただ、いまのお話を伺いますと、都道府県によくやらしめてというふうになっているのですが、都道府県にまかせきりじゃないでしょうか。事故の現実を見てみますと、事故発生して、その現場にいろいろな人が寄ってきて、にわかに付近の病院を探して、できるだけ大きい病院にできるだけ収容して、そこで応急措置をとるということになっているわけですけれども、その間にだって救ってあげられる人と救ってあげられない人とが出てくるわけなんです。ですから、いわゆる厚生省のほうとしても、こういうような集団事故発生に対して、たとえばプロパンのタンクローリーが爆発した、付近に大きな損害を与えたということもありますし、火薬を載せた自動車も走っているわけです。だから最近は大きい事故の発生率のほうが高いわけです。こういうふうなものに対して、厚生省自体に、救急に対する大きな組織活動ができていくような、組織化された対策がなければならないはずなんですけれども、いまのお答えのお話を伺っていると、全然それは都道府県のほうに、地方のほうにまかせておって、問題があったときは相談に乗ってあげよう、こういうようなふうにしか受け取れないわけですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/145
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146・中村一成
○中村説明員 もちろん、そういうような大きな事故の場合において、厚生省として消極的であるというわけではないのでございますが、しかし、事故が発生しましたときは、まずファーストエイドが非常に重大であります。したがいまして、やはり当面した事故の救急体制としては、区域として市町村の単位では無理でございますし、やはり都道府県というものが第一線のまず応急の措置として、これに対する体制をとってもらうということが緊要であると考えます。そして、その都道府県の力を越える場合につきましては、もちろん国といたしまして——これは厚生省だけでなく、労働省もございます。警察もございます。防衛庁もございます。あらゆる役所が協同するわけでございますが、救急の面につきましては、何と申しましても緊急なことが必要でございます。いま先生がおっしゃいましたとおり、せっかくのあれでも、おくれたために死んだということの不幸があるわけでございますから、したがいまして、やはり医療という問題は、地域的な観点から応急の措置ができるという体制を考慮しておるわけでございます。そういう中におきまして、都道府県が中心になるわけでございますが、むしろその地域内にあります医療機関は、国の病院も、地方の病院も、私の病院も、すべてがそれに当たる、こういう体制をとるわけでございますので、もちろん地方に責任をまかしてしまうというわけではないと私は思っておるのでございますけれども、性格上やはり府県というものが率先してこれの体制を確保するという必要があろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/146
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147・沖本泰幸
○沖本委員 いまのお答えですけれども、災害救助法が出た、こういうような場合に国が動くとか、そういうような面が多いわけです。ですから、災害救助法以下の問題になったときは、地方のほうに責任を持たしてしまって、厚生省のほうは知らぬ顔である、あるいは厚生省のみに限らず、ほかの面でも言えるわけですけれども、確かに交通事故に対し、こういうような災害に対して救急センターをつくる、またつくっていらっしゃるわけですし、脳外科医の問題だって真剣に考えざるを得ないような内容に事態が進んできているわけです。したがいまして、地方のほうでも、災害に対しては、消防団であるとか、あるいは水害救助の水防団であるとか、いろいろな自衛的なものを組んで持っておるわけです。したがいまして、厚生省のほうとしても、こういうような不慮の災害に対して、医療救急という点についてこういう方法で組織を動かしていこう、この段階ではこういうふうにしてほしいというふうな、はっきりしたビジョンが厚生省から出ない限りは、いろいろなところでいろいろな問題が起きてまいります。ですから、この程度のときにはこのところに病院を指定しておく、これは国が援助してあげるから、早急にここのところにはこういう事件を持ち込めるようにしておきなさい、こういうものがなければならない。南海電車の事故でも、助けられた人が助からないということは、小さく調べていけば出てまいります。そういう点どうもうまくないんじゃないか、こう思うのですけれども、そういう組織化をするお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/147
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148・中村一成
○中村説明員 私どもといたしましては、いま先生のおっしゃいましたような、そういう御趣旨で体制固めをするように都道府県と打ち合わせをいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/148
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149・沖本泰幸
○沖本委員 ちょっと横道にそれますけれども、警視庁の方にお伺いいたします。パトカーに救急箱がありますか。またはパトカーの乗務職員に救急方法を、こういう場合にはこういう方法で救助するということでなく、ただ乗せて病院に運んだらいいということになっているのでしょうか、あるいは消防庁のほうは、救急自動車はおれのほうだ、こういうことで一方的に持っていらっしゃるわけですけれども、そっちのほうにまかせておいたらいい、私のほうは治安維持のための警備のほうだけを持てばいいんだというのか、どっちなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/149
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150・片岡誠
○片岡説明員 第一義的に消防の救急隊が救急措置に当たるというたてまえになっております。たとえば東京、大阪というような大都会では救急車が十分整備されておりますので、大体消防の組織で救急をやるのを原則として、警察は補完的にやっております。ただし、いなかのほうへ参りますれば、必ずしも救急隊が整備されておりませんので、警察の車両には救急の器具を積み込んでおる。——大部分積み込んでおると私は思うのであります。それから救急の手当ての方法につきましては、御承知のように、一年間の初任教養の間に救急の措置を教えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/150
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151・沖本泰幸
○沖本委員 ついでにあわせてですが、いわゆる営業自動車というものには確かに火災が起きたときの消火器はきちっと積んでおるわけですけれども、自分の車自体が加害者のほうになった、自分の車が被害者になった。そういうときには、者がすぐそういう問題に対応できるような一つの方法、救急方法なんかを含めたいわゆる方法はおつくりになっていないのでしょうか。あるいは、なければ、今後つくる意思があるかないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/151
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152・片岡誠
○片岡説明員 救急の問題は、たとえば初めの止血であるとか、ある程度訓練を受けた人にできる範囲のことは、少なくとも警察官はやるべきだと思うし、現にやっております。しかし、それをすべてのドライバーにまで推し及ぼすことについては、現在考えておりません。
それから、あるいは厚生省の方からお答えするほうが正しいのかとも思いますけれども、傷害の程度によっては、しろうとがなまじっか動かさないでおいて、救急車なりあるいは病気のほうに連絡をとるというほうがかえっていいという場合もあるかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/152
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153・沖本泰幸
○沖本委員 それでは厚生省のほうにもう一度質問を戻しますけれども、今後こういう問題に対して、厚生省のほうで、すべての問題を整理統合して単独法を制定する必要があると思うのですけれども、政府機関としては、法務大臣がいらっしゃるわけですけれども、厚生省としてのこういう交通事故に対する単独法をおつくりになる考えはありませんか。またそういう話は出ていないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/153
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154・中村一成
○中村説明員 救急医療の問題につきまして法律で規制したほうがよろしいという問題もあろうかと思いますが、いまのところ私どもといたしましては、救急医療法という法律をつくることもあるいは一つの方法かと思いますが、やはり現実に体制を固めていく、こういう現実の面における体制固めをまずやりまして、そういう法律で規制すべき問題が起こりましたときには、それはあるいはお願いすることになろうかと思いますが、いまのところはそういうことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/154
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155・沖本泰幸
○沖本委員 もう少し話を戻しますけれども、この救急センターのみを取り上げて、考えてみましてもあれなんですけれども、全国に、一応百万都市に一カ所つくるということ、それから百カ所にする。大都市に一カ所じゃとてもじゃないけれども、全国をまかなえるわけじゃないのです。全国百カ所を四十四年度までに完成するという意気込みを示していらっしゃるわけです。そうすると、ただ施設だけでなくて、中における病床であるとか、医療器械だとか、医師の問題であるとか、そういういろいろな問題がかかってくるわけです。また政府のほうへ、いろいろな問題で医師会のほうが、患者は私たちのほうがもらいたいのだ、こういうところから反対も起きてくるはずなんですけれども、そういう問題に対して全部でどれくらい金がかかるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/155
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156・中村一成
○中村説明員 先ほど来申しておりますところの整備の面——人的な面は別でございますが、整備の面から見まして、大ざっぱに百億程度の資金を必要とすると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/156
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157・沖本泰幸
○沖本委員 百億でできるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/157
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158・中村一成
○中村説明員 この救急医療の整備と申しますのは、ここに新たに病院をつくるといったわけではございませんで、すでにございますところの医療機関をそういう点において充実をしていくというわけでございますから、したがいまして、百億の資金をもって、私どものほうは一応先ほど申しました全国五千の医療機関と百カ所の救急センター、あるいは私どものはかにいろいろな計画を持っておりますそういうものを整備するのだ。ただ、しかし、これを運営していくところの金と申しますのは、計算がなかなかむずかしいわけであります。ただいま申しましたのは物的な整備というわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/158
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159・沖本泰幸
○沖本委員 この「示談」をお書きになった玉井さんが言っているのは、厚生省案の意義は率直に認めてけっこうだ。非常にけっこうだけれども、膨大な投資とお医者さんの間の緊密な協力体制というものは絶対とらなければならない。そういう点でこの医師間のあつれき、これも協力体制をしてもらうということは不可能じゃないだろうかというようなことを述べていらっしゃるわけです。ですから、ただ単に厚生省のほうで立てたところのものが作文に終わってしまうのじゃないだろうか。実施されても、ただお茶濁しに終わるのじゃないかという心配をしていらっしゃるわけなんです。医師のそういうふうな全国の医療機関に対して協力を求める上について、現在までどうでしょうか、協力しましょうという線が強く出ているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/159
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160・中村一成
○中村説明員 協力しようという線が強く出ております。三千五百の医療機関が救急医療機関として告示を受けておりますが、これは国のほうから、あるいは都道府県知事から押しつけたわけじゃございませんで、救急医療をやりたいといって申し出られたところの医療機関について知事が告示をするという形をとっておりまして、この制度の発足にあたりましては、関係の方面ともよく検討いたしました結果、これを押しつけちゃいけない、あくまでも医療機関側からの自主的な盛り上がりに待とうということで、こういうようなしかたにいたしたわけでございます。それで、そのことが私どもとしましては、医療機関において盛り上がりがずいぶんあるということの一つであろうと思いますが、さらにただいま各地方におきまして、お互いの医師同士、医療機関同士において、日曜日等におきますところの急患等に対して医者がいないということがないようにしようじゃないか、お互いに当番をもって、そして地域の医療機関として急患に備えようという一般のいわゆる医療の対策というか、全国的にそういう体制固めが行なわれつつある空気が非常に強く出ておりますし、それからまた地方の医師会等におきますところの講習会、講演会というものにおきましては、最近の例を見ますと、大学のそういう救急医療関係の教授の方に来ていただき、そういう関係者の話を聞くといったようなものが非常にふえてまいっておりまして、全国的に医療関係者の間におきましても救急医療に対する熱意は盛り上がっておる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/160
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161・沖本泰幸
○沖本委員 ですから、先ほど申し上げましたとおり、地方自治体のほうは厚生省のそういう構想に対して、現在のところは地方自治体が持つ財政的な問題は三分の二ですか、それに対して難色を示しておるわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/161
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162・中村一成
○中村説明員 救急センター等の整備につきましては、関係の府県は、整備費の問題につきましてはどの県もほとんど不平ということはございせまん。これはもういまやらなくちゃいかぬのだという空気がございまして、都道府県の当局者はみな最優先の事業であるとして、都道府県の衛生当局がこれに当たっておりますので、いまのところは、先ほど申しましたとおり、そういう資金面についてはほとんど意見はございません。ただ問題は、はたしてそういう専門の医師を十分に充足できるかどうか、この点について一番苦慮しておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/162
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163・沖本泰幸
○沖本委員 できればこういうように問題が煮詰まってきたわけですから、ひとつ法務大臣にもお願いするわけですけれども、いわゆる刑法の一部改正という問題は、これは事故が起きたあとの最終的な問題です。命を取りとめさせてあげる、何とかけがを最小にとどめてあげる、また事故がないようにしてあげるということが一番問題なんです。それで、結局は刑法の一部改正にしても、そういうことだけ先走ってやって、そして肝心の人命救助、あるいは歩行者の安全を完全にはかってあげるという問題のほうがおくれているんじゃないか。総理大臣は、人命尊重の立場からこの問題はと、こういうことで総理府のほうで、関係閣僚会議でこういう問題が十分問題視されてきたわけで、その結果が改正という結果になってきたというふうに承っておりますけれども、その改善の問題が大切ですから、厚生省の、こういう問題は厚生大臣がお見えになったらお伺いしよう、またそういうふうにお願いしょうと思っていたんですが、課長さんではなかなか結論が出ないと思うのですけれども、こういう問題を総合的な問題として、何とか単独法をつくっていただいて、そういう法律に従ってどんどん進めていけるようにしていただきたいわけです。これはお願いでございます。
次いで、今度は後遺症の問題なんですけれども、いまのところ地方自治体のほうでは、生活保護を受ける人たちも自賠法のほうで解決してしまうから、はっきりした数がつかめない、後遺症のためにいわゆる廃疾者になって、一家の柱としてやっていけないということなんですけれども、そういう問題が厚生省のほうでつかめていないということは、私は遺憾だと思うのです。そういう問題に関して、これからどんどんふえていくわけです、年間に負傷者は、死亡者も含めますけれども五十万からですから。そうすると、ふだんの転落家庭の生活保護ということよりも、こういうことに対する保護のほうが重要な問題になってくる、こういうことになってまいります。しかし、その生活保護の家庭の中には、まだまだ賠償金をもらうじゃないか、あるいは社会保険のほうから取れるじゃありませんかこういう点で、いろいろなことでだんだん追い詰められていって、究極は自殺するというようなケースが一ぱいあるわけです。ですから、この後遺症患者あるいは廃疾者に対してすみやかに事情をとっていただいて、そして生活保護規定の中で新たにこういう人たちの救済方法という問題も考えていただかなければならないわけですけれども、そういうことに対する厚生省の現在のお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/163
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164・中村一成
○中村説明員 交通事故によるところの負傷者の後遺症の問題は、ほかの疾病の後遺症の問題にまして重要でありますことは、先生のお話のございましたとおりでございます。特に交通外傷というものの四〇数%が頭をやられておりますし、頭をやられました者の後遺症というケースが特に多いわけでございます。しかもこれは、一応転帰といたしましては、軽快、要するになおった、あるいは調子がよろしいというような転帰であって、しかもそれが何年か後にまた症状があらわれてくるといった、非常に困難なケースの場合が多いわけでございます。したがいまして、そういうような場合におきましては、もうすでに一応被害者としてのあらゆるケースが終わったあとの問題でございまして、そういう方々に対しますところの医療の問題というものは、特に費用の負担の問題におきまして問題があるわけでございます。したがいまして、メディカル・リハビリテーションにおきますところの費用の負担の問題はそもそも問題があるのでございますけれども、特に交通外傷等の方々に対しましては、これは別な特別な措置をする必要があるのではないかと思って、私ども厚生省といたしましては目下この問題を十分検討いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/164
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165・沖本泰幸
○沖本委員 早急に検討していただきたいのですけれどもね。この関東人権擁護委員連合会の調査に当たった内容の中には「人権擁護委員が被害者の家庭を訪問し、被害者または、その家族に直接面接して調査する。」こういうふうなやり方でお調べになったわけですけれども、例としまして、「事故被害者の家族で、事故により働くこともできず、補償もないので生活困窮となり高校中退の己むなきに至ったもの。」「事故被害者が一家の主柱であるため、家族が夫々住込等働きに出るため一家離散の生活をおくることになったもの。」「事故被害者が後遺症のため家族全体が生きる望みを失ったもの。」「加害者が無資力のため、補償が決ったが、空手形に終わったもの。」「示談解決に、おどし、不当手段があったもの。」これは被害者、加害者にもあるわけですけれども、さらに今度「示談解決にあたり、加害者が、白紙押印させ、一方的に記載して、被害者は全くなにもわからないまま、示談書が作成され、被害者は相手にされないもの。」これは厚生省じゃないのですけれども、今度警察庁にいまのことでお伺いしたいのですが、現在警察のやり方としていわゆる損害賠償のことに関して、あるいはその事故事件の処理に関して、はっきりした示談の成立があればいいということから、いわゆる被害者のほうは弱いところもあり、無知でもあり、こういう点から白紙に判こを押された委任状の上に示談解決の文書を書き込まれて、あとでいろいろなことで困っている例はたくさんあるわけなんです。そういう点は警察庁のほうでは何か対策を講じていらっしゃるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/165
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166・片岡誠
○片岡説明員 警察としましては、大体金もなくひまもなく、それから知識もない庶民の場合に、結局一番初めに事故を取り扱っている警察にどうしたらいいかということで相談する場合が非常に多くございます。で、警察はまず一番初めの窓口としての機能を果たさなくちゃならぬじゃないかということで、昨年全国に指示をいたしまして、各警察署に交通相談係という窓口をつくりました。そこで事故事件を捜査している過程で加害者のほうの強制保険はどこの保険会社に加入しているか、それから保険証書の番号は何番であるかということを聞き取りまして、事故原票に必ず記入するようにいたしております。そして被害者が相談に見えたときには、その保険会社の営業所はどこにあるか、またその保険証書の番号も教えまして、そこへ差し向ける。保険会社のほうは交通相談所の看板を出しておりますから、それを引き受けて被害者請求の手続を代書してでも進める、それから仮渡し金のことについても進めるということで、とりあえず強制保険による救済をはかるようにするということをまずやっております。それからそれだけではやはりだめで、示談ということでもう少し損害賠償の金額を相手方に交渉するという場合には、加害者のほうを呼び出して場所を提供して、ここで御相談しなさいということもやっております。それからさらに、それでどうもうまくいかないような場合には、御承知のように各県にございます安全協会で交通相談所をやっておりますので、そこへ紹介したり、さらに先ほどお話がありましたように、今回各府県に県立の交通相談所ができますので、そのほうとも連絡をとって差し向ける。あるいは弁護士会でやっております交通事故処理委員会のほうにも紹介をするというようなことで、窓口の初めにおきます交通整理を親切にやるということを強く指示いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/166
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167・沖本泰幸
○沖本委員 お話の趣旨はよくわかるのですが、現実の問題としましてあるいはタクシー会社あるいはトラック会社のたくさん車を持っているところの事故係の方は、ほとんど警察出身の方だといっていいぐらい事故係にいらっしゃるわけです。そうすると、警察の中は非常にお詳しいのですね。ですから被害者のほうも、生きておったとか目撃者がおるとか被害の現場が十分に確認されたとか、こういうことになれば問題はある程度違ってきますけれども、全く目撃者もなく、ただ加害者だけがいて被害者はもう死んでしまっている、こういうときには往々にして被害者のほうに責任がある、こういうようなかっこうにされてしまっておる。そして被害者のほうは、警察のほうで被害現場を調査したその調査結果すら十分に聞かされていない。あとになって検察庁へ呼び出されてみて、警察からの報告ではこうじゃないか、こういうふうに言われて、被害者はあわてておる。こういうことはしょっちゅうあるわけなんです。こういう点に関しましては、警察の方は、私の個人の考えとしましては、非常に専門的な知識を持っていらっしゃるので、いわゆる職業の選択に対しては憲法で認められておりますけれども、どうも好ましくない、こういうふうに思うのですね。また被害者のほうからもそういう目で見られていく、こういうことが多いんですけれども、この問題に対してお考えはありませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/167
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168・片岡誠
○片岡説明員 昔は警察で事故事件の捜査をしますと、検察庁へ送致した場合に検察庁のほうから示談書をつけて送致してくれという習慣がございました。その示談ができてるかどうかによって情状を見ようというそういう傾向だろうと思いますが、しかし、それには若干弊害が伴っておりましたので、最近では事件は事件として送致する、示談ができれば示談書は追送するという形で、事件の捜査を示談とは切り離して捜査するということをやっております。
それから御指摘のように交通事故がありました場合、被害者がなくなっておったり、あるいはすぐ病院に運ばれておるということで、警察が捜査をやります場合の実況検分になかなか立ち会いができない。したがって、ややもすると加害者のほうの言い分に左右されるおそれがあります。そういう点につきましても私どもやかましく申しまして、必ずそういうことに左右されないように客観的な実況検分をやれ、それからさらに被害者が病院から退院でもした場合には、その被害者も立会させてまた再検分をやれということで、被害者側の言い分も十分採用できるような捜査を十分やるように強く指示しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/168
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169・大坪保雄
○大坪委員長 沖本君、まだだいぶありますか。だいぶ時間が超過しておりますが、あとにまだ二人残っておりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/169
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170・沖本泰幸
○沖本委員 できるだけ縮めさせていただきますので……。
いまのことに関しまして、大きい事故が起きまして被害者のほうが死亡しておる、こういうような場合には、事故現場の検証に必ずその遺族の方を呼んで、納得のいくように立ち会わせて後に調書をつくっていく。また被害者が重傷を負って病院に入っている場合、被害者側の調書を取るのもある程度の健康体にならなければとれないわけですが、その間に示談交渉はどんどん進んでいってしまう、こういうことがあるわけです。そういう場合にも被害者側の家族のほうの人なりあるいは関係のある人を現場検証に立ち会わせていく。こういうような方法のほうが公平だと私は考えるわけです。
それからまた、お役所のほうは最近はいろいろ施設をつくってやってくださるのですけれども、どうもPRがへたなんですね。ただつくりましたということがちょろっと載っているだけで、一般の人たちは知らないわけです。ですから警察のほうで被害者なり加害者のほうを一応調べる段階において、交通相談所があるんだ、そこへ行って言い分は言ってきなさいと、一ぺんそこをくぐらせてみる、こういう方法も技術約にできるのじゃないかと思うのですけれども、そういういう方法についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/170
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171・片岡誠
○片岡説明員 先生御承知のように、特に大阪の場合にはそういうことに熱心でございまして、大阪府警本郷と安全協会が中心になりまして、地方裁判所あるいは簡易裁判所、弁護士会、保険会社などが共同しまして、リーフレットをつくったのは御承知だと思います。ベストセラーになりまして四十万部くらい出ております。ああいう形で、なるべく被害者に損害賠償の手続なり保険の手続というものをよく徹底をして、権利を保障していくということをやっておりますので、今後ともそういうことを続けていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/171
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172・沖本泰幸
○沖本委員 先ほどの後遺症の問題に戻るわけですけれども、大体、厚生省のほうにお伺いするわけですが、「半数以上が家計に影響を及ぼしている。被害者の、家計に占める地位を分析して見ると、」「家族を扶養している者が三八%、扶養関係者はないが、独立の生計を営んでいるものと見られる者が二二%で、六〇%の者が生活に直接影響している。また、事故により失職、転職した者は、全体の二五%近くもある。その結果、収入面について見ると、何等かの減収をしたものが二八%、無収入になった者が一〇%ある。職業の面で影響のない者の中にも、収入面では減収しているものがある。そして事故後、一年以上たった調査時において、補償問題が解決したものは七〇%で、三〇%のものが未解決である。」これも大臣一緒に聞いておいていただきたいのですが、「加害者が被害者に対し、一方的に少額を支払ったのみで、未解決となっているものが多い。未解決者一、六一〇名について、調査時までに何等かの支払いを受けたか否か、を調べて見ると、」「加害者の一方的な支払いのみを受けたものが意外に多く、三二%もあり、全く何等の補填のないものが二五%もあることは問題である。」「加害者が一方的に支払った支払額を分類して見ると、」「死亡の場合に、一万円以下の金額で片づけようとしたものが一〇〇人中九人、一〇万円以下のものが二二人で四分の一弱にもなる。また、治療一ケ月以上の重傷において、単に一〇万円までの金額をもらった者が一〇〇人中二三人もいることは注目される。」「加害者よりの一方的な支払金額に対する被害者の感想は、全部が不満であるがその対策がとられていない。」というのです。加害者の一方的な金額、しかも少額で不満であるが諦めたのが六六%もおるという。そうしてこの調査のときにおいて、全く補てんのないものの中には、保健金さえ請求していない者がいる。この自動車賠償保険につきましても、被害者請求というのがたてまえなんですけれども、査定とかあるいは書類の作成とか、こういうものはほとんど専門的な人でないと書けないような現状なんです。こういう問題をどうして解決していくかということになるわけです。あるいは事故の起きた賠償についても、ここにも出ていますけれども、フランスでは七千万円だというのです。日本ではやっと今度総理大臣が、政府のほうは三百万円まで認めた。その三百万円も、もらうにはたいへんな努力が要る。そういう繁雑さのため、子供をかかえた転落寸前の家庭の人が、どうしてそういう解決ができていくか。それにすぐ暴力団的な示談屋が入ってきて、そうしてもらっても一部だけ、とっている、こういうのが現状なんです。ですから厚生省のほうに言いたいことは、実際何%という問題、ここまで調査ができているわけなんです。それに対しては私は非常に手ぬるいと思うのですね。だから今度は救済の方法について、その耳目をゆるがしたから、いろいろな問題になりましたから、だから救急センターあるいはリハビリテーションをやっていきます。こういう前向きになってきて、これは三十八年ごろから盛んにやかましくなってきた問題なんです。ところがいわゆる民生の関係においては、全然これは手がついていないわけです。ですから社会保険の制度のほうもすみやかに救済ができるとか、こういうふうになっていかないと、結局日本じゅうの働く者の中で、たくさんの廃疾者ができていることは、もう間違いないわけです。アメリカの兵隊はベトナムで負傷したって、本国に帰れば十分の補償を受けるわけです。しかしそれ以上の、大きなアメリカのベトナムにおける損失よりも、まだまだ商い率の日本の国の中のこの交通事故にあっている人たちなんですから、この点はもっと厚生省は力を入れていただきたいと思うのです。いまの保険制度の問題、あるいは非常に無知なため十分でない、こういうことに対してどういうふうに周知徹底して、この人たちを助けてあげられるか、関係筋の方がいらっしゃったらお答え願いたいと思います。運輸省はいらっしゃいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/172
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173・田中伊三次
○田中国務大臣 法務省の直接の所管事項ではございませんが、交通事故に関する非常に熱意のある重要な御発言でございます。私はとくと承りましたので、関係閣僚にさっそく連絡をいたしまして、御意に沿うように十分の行き届いた対策を講ずるように善処をしてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/173
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174・沖本泰幸
○沖本委員 以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/174
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175・大坪保雄
○大坪委員長 松本善明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/175
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176・松本善明
○松本(善)委員 前会に引き続いて質問をいたしますが、法務省はこの法律は悪質なものの処罰だということを再々言っております。法務大臣の刑事局長もそういうふうに言っておられますが、私も悪質なものの処罰を否定をするということはないのでありますけれども、現行法でも相当できるんじゃないかと思います。法務省刑事局のつくりました資料によりますと、禁錮三年に処せられた六例が出ておりますが、この四例は、めいていの上業務上過失致死傷事件を起こしている。しかも逃走した、こういう事例であります。これは道交法の百十七条違反、いわゆるひき逃げとそれから刑法二百十一条違反との併合罪、併合罪加重をするならば四年六月以下の処罰に処することができる、こういうふうに考えますが、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/176
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177・川井英良
○川井政府委員 法律的にはそのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/177
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178・松本善明
○松本(善)委員 そうすると、ここに法務省のあげられました例で申しましても、結局法律で可能な最高限の刑を科しているということはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/178
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179・川井英良
○川井政府委員 人をひいて、そのひいたことが過失であるかあるいは不可抗力であるかは別といたしまして、その事故を申告しないで現場から逃走したという行為に対して、道交法は御指摘のように懲役三年の刑罰を盛っているわけでございまして、今回の改正は、御承知のように、そのもととなった過失による人をひいた行為、その行為を刑法上もう少し重く評価しよう、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/179
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180・松本善明
○松本(善)委員 私の言いますのは、要するにこれらの事件でも法律上可能な最高限まで処罰をしているというわけではないのですねと、こういうことを念を押しておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/180
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181・川井英良
○川井政府委員 人をひいて逃走したという事案につきまして、ひいた点においては別といたしまして、逃走したという点で懲役三年の刑罰がありますので、ひいた点で禁錮が三年、それから逃走したという点で懲役三年、両者が併合罪であるとしますならば、比べてみて重いほうの逃走した点の懲役を採用いたしまして、その一倍半ということで懲役四年半ということは理論上出てくると思いまするけれども、裁判の実例といたしましては、いままでそのような事故に対して懲役四年半の最高刑を盛ったという、こういう事例はないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/181
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182・松本善明
○松本(善)委員 ないけれども、要するにその最高限までは科してないということは、答弁ではっきり認められないようですけれども、間違いありませんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/182
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183・川井英良
○川井政府委員 四年半の刑罰を盛ったという事件はないようでありますけれども、これはなかなかそういう量刑ができないという裁判上の理由があるんじゃないかと私思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/183
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184・松本善明
○松本(善)委員 それはどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/184
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185・川井英良
○川井政府委員 事故を起こして、過失によって人をひいたという行為と、それからその事故を申告しないで現場から逃走したという事故を比べてみた場合に、私は直接人命に影響を与えた、過失によって人をひいたという事故のほうが法的には重い評価を受けるべき事案だろう、実務家の立場としてはかように考えるわけでございまして、道交法の規定はその辺のところを必ずしも考えておりませんで、過失があろうとなかろうと、逃げたというだけで懲役三年の刑を盛っていくということでありますから、法律的にはなるほどひいて逃げた、そうしてそのひいた場合にも過失があったというふうな場合には、併合罪の関係になりますので、その重いほうの逃げたという点だけを基本にして懲役四年半という刑罰を盛るということは、理論的には、また刑法的にはなるほど可能でありますけれども、裁判の実務の実際といたしましてそれを考えた場合に、そのひいた点をもその逃げた点のほうに加味いたしまして、直ちに懲役四年半という最高刑を盛るということは、事案にもよりけりでございましょうけれども、なかなか出てこないのではなかろうか、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/185
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186・松本善明
○松本(善)委員 最後に幾らか認められたようですが、事案によれば、結局そういうことも可能であるけれども、いまはそういうことがないということだと思います。なかなか思ったとおり答弁をいただけませんものですから、これはこの程度でけっこうですけれども、禁錮三年に処せられた六例というのは、昭和三十五年からでありますが、私いただいた資料によりますとそういうことですが、七年間に六件しかない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/186
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187・川井英良
○川井政府委員 正確を期すために裁判所の司法統計に基づいて——この法案が国会に提案されて以来、その司法統計に基づいて資料を提出いたしておるわけでございますが、具体的な事例につきまして、私どものほうへ現場の検察庁のほうから、特に重大な事案だとして報告のあったものの中からこの六例を選んで提出したようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/187
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188・松本善明
○松本(善)委員 それじゃ続けて聞きますが、またここにあげられました二十四例、きょう一つ追加をされても二十五例ですが、そのうちの前の二十四例でいきますれば、そのうちの二十一例までがめいてい、もしくは酒気帯び運転であるということは前回も指摘されましたが、めいてい運転の場合には道交法百十七条の二及び刑法二百十一条が併合罪の関係になる。併合罪加重にするならば四年六月の禁錮にすることができる、こう考えますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/188
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189・川井英良
○川井政府委員 法律的にはそのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/189
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190・松本善明
○松本(善)委員 そうすると、やはりこの四年六月の禁錮になっているのは一つもないわけなんで、可能な最高刑まで処罰しているというのはないというふうに考えていいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/190
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191・川井英良
○川井政府委員 御承知のとおり、この裁判の実際におきまして、併合罪加重を行なうというふうな場合と、それから加重を行なわないで、ただ一つの罰則に基づきましてその定められた法定刑の範囲内において刑を量刑するというふうな場合におきましては、裁判の実務の実態からいうならば、ややその間に趣が変わってくるのじゃなかろうかというような気もいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/191
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192・松本善明
○松本(善)委員 きょうの読売新聞の社説によりますと、今度のこの刑法改正は全般的に過失犯の刑罰を重くしょうというのではない、単純な過失犯はむしろ軽くしようとするものだ。全くこの刑法の趣旨とは違いますが、これについて法務大臣いかがでしょうか、こういう趣旨でございましょうか。——読売新聞にこういうことを言っているのです。全般的に今度の改正は、そのとおり読みますと、「こんどの改正は故意犯に等しい悪質者の罰則強化がねらいで、全般的に過失犯の刑罰を重くしょうというのではない、単純な過失犯はむしろ軽くしようとするものだ」。これはもう全く読売新聞の間違いだと思いますけれども、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/192
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193・川井英良
○川井政府委員 新聞の社説でございまするので、いろいろ読み方があろうと思いまするけれども、私が読んだ限度では、この記事の趣旨はこういうことではないかと思います。合同の改正の趣旨は、二百十一条全体の関係として、それにひっかかってくるあらゆる交通事故を全般約に重くしよう、いわば従来罰金で済んでおったものを、今度の改正が行なわれればとたんにそれが禁錮になってくる、従来禁錮であったものは、改正が行なわれますととたんに懲役刑になる、そういう意味での全般的な過失犯の引き上げをはかった、こういうふうなものではなくて、いままで行なわれておった通常の形態のものが、いままでどおりの刑罰が大体予想されておって、今度上がりますのはその上のほうだけを上げるということになりますので、それを先ほど御指摘になりましたような、非常に悪質な重大な事故で、いままでの最高刑をもってしてもまかなえない、適当でないと思われるような悪質なものだけについてこれを上げるのだ、私どもは繰り返しこの法案の趣旨についてそういうような説明をいたしておりますので、そういう観点からいま御指摘の記事を読んでみますと、私はそういうふうな趣旨のつもりでこの社説が書かれているのではないか、こう読んだわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/193
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194・松本善明
○松本(善)委員 刑事局長が再々にわたってそういう説明をしていることは知っておりますけれども、そういう説明を強調するものだから、この読売新聞はこういう間違いをおかしているというふうに思うわけなんです。これは明らかに刑法の改正案が全般的に過失犯の刑罰を重くしようとするのではないのだ、刑法の改正案は酔っぱらいだけの問題なんだ、むしろ過失犯は軽くするものだ、こういうのは人を惑わすことになるのではないかと思うのです。
ついでにお聞きしますが、刑事局長は盛んにそういう趣旨の答弁を言うのだけれども、酔っぱらいなど悪質な者の処罰が問題で、交通労働者には影響ないということを前回言い切りましたけれども、そういう保証がありますか。交通労働者には一切影響させないという保証は、一体どこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/194
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195・川井英良
○川井政府委員 刑法の改正された条文のみをごらんいただきますと、必ずしもその保証が十分でないことは、私もこれを認めるにやぶさかではありません。しかしながら、よくこの条文の成立の経過、ないしは条文そのものを前の条文と比べてごらんいただきますと、体刑の部分だけ、上のほうの上限だけを三年を五年というふうに修正してあるわけでございまして、下限のほうの罰金刑につきましては、現行法どおりを維持しているわけでございます。御承知のように、刑法準備草案などごらんいただきましてもわかりますように、これにつきましては罰金も三十万円という刑罰をすでに盛り込みまして、これをもととして刑法全面改正の作業が行なわれておるわけでございます。それにもかかわりませず、罰金を現行法のままにとどめたというのは、実は深い趣旨があるわけでございまして、下のほうを上げようという趣旨は今回はいささかも持っておりませんので、くどいようでございますけれども、悪質重大な、もうまかなえない、頭打ちになっておるような、いまここにあらわれておりますような、こういう事案についてのみこれを上げて処理していくのだ、こういうことを緊急的にまかなっていきたいということで、刑法の一部改正の御審議をわずらわしておる、こういう事情でございます。
それからもう一つ申し上げますが、それだけでは十分でないじゃないかという御疑念があろうかと思いますけれども、裁判の実情は松木委員もよく御承知のとおり、同様の事案についてすでに罰金刑で確定しておる何万というケースがあるわけでございます。そういうふうなケースは日本における裁判の判例として積み重ねられておりまして、今日罰金刑が上がっておりませんのに、かりにこの条文が国会を通過したといたしましても、いままで同等の事故について一万円なら一万円の罰金で済んでおったものが、今回の改正によって直ちにそれが体刑になるというふうな裁判の運用ということは、まず日本においては私は考えられない、こう思うわけでございまして、この辺のところからお考えいただきましても、改正の趣旨も先ほど申したような趣旨でございますし、またいまの下限をいじっておらないということも、かような一つの保証になるのではなかろうか。これは裁判の実態とあわせて、そういうふうなことを確信しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/195
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196・松本善明
○松本(善)委員 保証は十分でないと言われましたが、私はやはりないのじゃないかと思う。検察庁が交通労働者関係の過失致死傷関係は起訴しないのだというなら別です。しかし量刑は実際は裁判所のやることです。刑事局長がいかに保証されていると言ったって、そんなことはとても信用できないです。上限が五年に上がりまして、懲役になれば、これを適用する裁判官が、これを重視するのが国会の意思である、立法機関の意思であるということで、重く量刑するということは、十分に考えられる。十分に考えられるよりは、それが普通であります。それを一般予防と言っているのではありませんか。法務大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/196
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197・田中伊三次
○田中国務大臣 本件の場合については、下は罰金であります。上は禁錮または懲役、いずれも五年であります。いま刑事局長が御説明を申し上げましたように、下を引き上げるということをこの改正でやっておらぬ限りは、上の悪質な者を厳罰にする方針だなということは、これは松本さん、常識ではないでしょうか。裁判官から見ても、また立法者の意思はこれでたいへんよくわかるように考えるのでございます。この改正のやり方自体、上限を上げるが下は底上げをしないのだというこの事実をもって、保証と言っても何と言っても、もうそのことだけは明らかではなかろうか、こう思うのですがね。それで十分に意思表明はできる。したがって、下のほうは従前のとおりなんだ。悪質の者、最悪質の者、こういう者を強く処罰をして一般予防、特別予防の目的を達したい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/197
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198・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣そう言われますけれども、実際にはそうでないと思う。それは、こういうふうに改正をされた場合に、裁判所も、上限が上がったということで量刑が変わっていく、これはむしろ私の言っているほうが常識だと思う。上限が上がったけれども、これは酔っぱらいだけのことだ、罰金のほうが上がっていないのだから、こういうふうに解釈して運用されるということは、むしろそうでないと思う。それが裁判の実情であろうかと私は思いますけれども、ここで法務大臣とさらにやりとりをしていても始まりませんので、次の別の質問をいたしますが、これについては最近だいぶ新聞が取り上げたわけです。ここが私は非常に大事な問題だと思いますので、ちょっと質問として言っておきます。
七月四日の朝日新聞によりますと、刑法一部改正案に対する反対論として、「交通労働者の不安もわからぬではないが、社会全体からは何としても、一集団のエゴイズムといった印象を消すことはできない。」といっている。私は刑法一部改正案の社会的な意味は、こういう新聞紙上のキャンペーンを許すところにあると思います。この改正に反対をしている者は、交通災害をなくすことに不熱心であるかのような印象を与える。いまほんとうに交通事故をなくすために必要なのは何か。これは、安全施設を急速にふやすことと、交通労働者の労働条件を飛躍的に向上することが必要なんだ。いろいろ悲惨な例があげられたが、これをなくすためにやるべき一番重要なことはこの二つであります。この世論を起こす必要がある。この世論を起こす必要があるけれども、こういう新聞論調が幾つも幾つも出てきますと、この世論に水をかける結果になっているのです。そうして、交通労働者はいかぬ、あるいはこの刑法の改正に反対をしている者は、交通災害をなくす熱意がないのだ、こういうキャンペーンが張られようとしている。そこに私たちは問題があるのだ。審議のときには、処罰だけ考えているわけじゃないのだ、法務大臣もまたそう言おうと思っておられると思いますけれども、実際には、この法案を提案することによって、私は安全対策や交通労働者の労働条件向上という緊急の仕事を政府が十分していないということを、事実を隠す、あるいは免罪する結果になっていると思いますけれども、法務大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/198
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199・田中伊三次
○田中国務大臣 いま松本さんが仰せのような、労働管理に無理のないようにする、そして交通事故防止に対するいろいろな設備に力を入れる、これは政府も放任をしておるのではない。先ほどからの各省の御答弁によっても明らかなように、行き届かない程度ではありますけれども、政府としては財政の許す限りとにかく計画を立てまして、年次計画のもとに一生懸命になってこれをやっておる。したがって、政府はそれは否定せぬのです。先生仰せのとおり、おっしゃることはみんなこれをやらなければならぬ。それが原因で事故が多発しておるわけでございます。そのことはわかっておる。同時に、刑罰も、ひとつ悪質の者は重くすることが必要ではないか。交通事故の防止対策に具体的な努力を払うことを惜しんではならぬ。それはやらなければならぬ。同時に、悪質の違反者に対しては厳罰をもって臨む、断固たる態度をとるのだ。それが全部じゃないけれども、これもまた役に立つのじゃないでしょうか。厳罰は一般予防、特別予防の上に何にも役に立たぬのだ、それは政府が責任をおっかぶしておるものだなどというように、ひねってものを考えないで、すなおにものをお考えいただくと——何もかも力を入れてやる、漸次交通事故の発生が減少していく、こういうことになってくるのではなかろうかと思うので、そういう意味で、この刑法一部改正で交通事犯の悪質なものを値上げをしていただくということだけでは解決する問題でないけれども、せぬよりよほど力がある、これはもう一般予防、特別予防ということには非常に力があるということは私は確信を持っておるのです。そうしたら、この法律をここで通してやれば、来年から悪質犯は何割何分何厘減るのか、こういわれると、そういう計算は常識上できません、それは無理でございます。ということを言うのでございますが、とにかくやらないよりましで、私は相当強い反響をもたらすものと、これは自信を持ってここに提案をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/199
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200・松本善明
○松本(善)委員 私も処罰を否定するものでもないし、先ほど来言っておるように、現行法で十分できるんだということをいっておるわけですけれども、議論になりますと、これは一つの意味を持ってくる。たとえば、もう一種やはり読売新聞のきょうの社説を引用しますが、交通事犯の多発、悪質化は、それを待っていられない、安全施設だとか労働条件の改善というのを主張するのは間違っていない、しかしそれは待っていられない、こういつている。だから処罰をすることを考えなければいかぬ——国民は確かに待っていられない。待っていられないから、すぐ予算も増額をし、労働者の労働条件の改善もすぐにやらなくちゃいかぬ。いまの程度のことはもうやむを得ないのだ、予算も、交通安全施設にいま政府が使っている程度のことでやむを得ぬのだと認めて、あとは刑罰でいけ、こういう議論になるのですよ。私は、それはいかぬ。それは、もっともっと予算を増額し、それから労働条件の改善についてももっと真剣な考慮を払ってそれをやる、それがほんとうに待っていられないということの内容じゃないかということなんです。ことばの上では同じように待っていられないといいますけれども、その内容はたいへんな違いです。処罰のほうで待っていられないほうをやろうというのか、いや、待っていられないから予算を増額しよう、それから労働者の労働条件の向上についてもっと真剣に考える——それは違うのですよ。そこが問題じゃないかというふうに思いますが、法務大臣、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/200
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201・田中伊三次
○田中国務大臣 松本さんのお話、なかなか説得力があるから、お話を聞いておると、私もなるほどそうかというふうに思うのですが、あなたがお考えになっても、この点は私の言うこともわかっていただけるんじゃないかと思うのです。それは、一番手っとり早い、一番きき目のある事故防止の対策は何か、刑罰を引き上げて厳罰にするということ、これが一番きくわけですよ。これくらいきくものはない。それは事故を防止いたしますには、けさから私が言っておりますとおり、とにかく交通事故防止対策というものに力を入れて、そして事故が起こらぬようにすることが第一。第二は運転者の責任で、運転者がぴんときてくれなければ困る。それには労務管理も含んでおるのですよ。第三は歩行者が不注意であってはならぬ。歩行者も十分に注意してほしい、こう考えるのでありますが、事故を起こさない歩行者を罰するという手はない。だからやはり事故を直接起こしていく危険な仕事に従事してくれている運転者について、まことに気の毒だけれども、そのうちの悪質なものについて、捨ておけぬものについては厳重処罰をしていく、これが最も手っとり早い。金をかけぬと手っとり早いことをやるのかというおしかりが続いて出ようかと思いますけれども、事故防止対策について一審手っとり早いききめのあるものは、法務省的観察じゃなくて、全体から見まして、私は刑罰強化の必要がある、こういうことです。しかるところ、三年間も一生懸命にお願いをしておるのですが、いまだこの法案は通してくださらぬ。こういうことで、私たちは今日たいへん熱心になってお願いを申し上げておる、こういうことでございます。御協力をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/201
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202・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣、だいぶ処罰がお好きなようでございますが、私はやはり処罰が本筋ではないと思う。最も効果があるというふうにいま言われたけれども、それが本音だとすればこれはたいへんな間違いであろうと思います。前回、刑事局長を相手にいろいろやっていたのですけれども、ほとんどの人が過失犯で刑罰に処せられるというような状態になっておるわけです。それを刑罰を強化したらよくなるというようなことは決してない。だからその考えを私は政府のほうで変えてもらいたいと思います。
もう一つ言いますが、東京新聞のきょうの社説によれば、国会が何かこの問題について不熱心であるかのようなことを書いてある。こういうのがたいへんな問題のすりかえなんです。政府の問題なんです。これは熱心にいろいろな立場から討議がされているのです。私に言わせれば、政府の予算が足らない問題、あるいは労働条件の改善についての熱意の不足というような問題がほんとうは追及さるべきであるにもかかわらず、そこが新聞のキャンペーンによって変わってきておる。これが刑法改正案の社会的な意味だと思う。立案をした人は、あるいはそういうことを考えなかったかもしれません。しかし、客観的にはそういう役割りを果たしておる。政府を免罪するという役割りを果たしておる。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/202
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203・田中伊三次
○田中国務大臣 松木さん、この新聞記事などをお読みになるあなたのお読みになり方が、少し違うのじゃないでしょうか。私もこれを読んだのですが、そう思わぬ。それから私の言うておることは、刑罰強化をして国民を罪に落とせば事は済むのだ、そんなことは考えていない。くどくけさから言うておりますように、自動車という凶器を用いて人を殺傷すると言いたいほどの悪質な者に対してこれを厳重処罰するのだ、そして目的を達するのだ、こういうことは大きな声で言うて私はしかる人はないと思う。しっかりやれという激励が私はあるものと思う。また激励せぬ人があったらせぬ人が間違いだというふうに、私は自信を持って言うのです。悪質な者を厳罰にせよということ、どこが悪いか、こういうことでございます。
それから決してこの新聞の肩を持つわけでございませんけれども、この新聞を見ましても、悪質なる重過失致死罪の上限を懲役五年にすることが人命尊重の思想に反するとは毛頭考えられぬ、こういう論調なんですね。新聞を擁護することはいかぬのですが、どうもこれを私は読んでみて、たいへん無理なことを書いておるようには思わぬ。国会に責任を負わしておるようにも思わぬのです。こういうよい法律は早く通してやれという意味はあるようでございます。それはあるようでございますが、どうもここに論じております文字自体からくる感触からいいますと、そんなに無理な議論を新聞がしておるようには思わないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/203
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204・松本善明
○松本(善)委員 だいぶ処罰の話が出ましたので、別の観点から法務大臣にお聞きしたいと思いますが、国鉄でありますとか、私鉄でありますとか、航空機あるいはハイヤー、タクシー、トラックなどの交通労働者の労働組合が、全日本交通運輸労働組合協議会、全交運というのを組織しておるわけです。そこの要求というのを見ますと、交通安全対策をいろいろ要求しております。事業主や使用者に対して罰則を強化してほしいということを言っております。たとえば、次のような場合に労働者に命令を下したり、労働者にそういうことをするのを容認をしておった雇用者であるとか、あるいは安全管理者であるとか、あるいは監督者の刑罰を引き上げて、きちっと処罰をする。一つはトラックの積載超過。積載超過をそのままやれということを命令される。砂利トラなんかそうですね。こういうことがあるということをいっております。それから整備不良車の運転。整備不良車を整備しておったら一日休まなければいかぬ、そのままやれということを命令される。それから過労運転。過労運転で、労働条件がひどいから多少疲れておってもやれということです。それから最高速度の制限違反、これは実際上スピード違反を容認しておる、むしろ奨励をしておるという事業者は幾らでもある。こういうことを働いておる人は要求しておるのですよ。処罰をするとなればこれのほうが大事じゃありませんか。これのほうがよっぽど大事だと思いますが、法務大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/204
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205・田中伊三次
○田中国務大臣 いまお話しのような場合の面の責任者の責任も、たいへん重いものがあると思います。そういう関係については、話は違いますが、道交法自体については、一応そういう面の責任を追及する規定もございます。そういうことでありますので、いまお話になりましたような重大な過失を犯す管理者その他の責任者につきましては、これをいかにして対処するかという問題も、ひとつ慎重に検討を、今後の問題として加えてみたい。おろそかにはできぬ問題である、これは私もそう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/205
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206・松本善明
○松本(善)委員 それはしかし、そういう点が一緒に出てこないところに、片手落ちな点があるのではないかと思いますけれども、これはこの程度にしておきましょう。
それからこの際に、もう一言これに関して言っておきますが、いま申したような場合は、労働者がやむを得ずやらされているという場合が大部分なんです。首を切られるとか、賃金を奪われるとか。だからこういう場合には、労働者の処罰を廃止をする、むしろそういうことを考えてもらいたい。そうして使用者を、雇用者と事業主だけを厳重に処罰してもらいたい、こういつていますが、法務大臣いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/206
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207・田中伊三次
○田中国務大臣 よく考えてみましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/207
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208・松本善明
○松本(善)委員 やはり交通労働者の全交運の要求によりますと、これは公安委員会でございますか、道路安全施設の管理者について、道路安全施設の設置の義務づけを法定化してほしい、こういっている。重要道路における交差点の信号設置義務、重要道路における横断歩道橋の設置義務、それから重要道路におけるガードレールの設置、車道、歩道の区別など、こういう歩行者保護施設の設置義務、重要道路における街路照明設置義務、重要地点における信号、標識設置義務というようなものを要求している。重要地点とか重要道路は具体的に法律できめてやれというのです。こういうことが交通事故をなくするためにきわめて重要な施策だと思いますけれども、法務大臣、いかがでございましょうか。
〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/208
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209・田中伊三次
○田中国務大臣 その点も大事な事項と思います。考えてみます。
それから、そういうふうに、大臣が考えてみようというほどのことが多いんならば、改正、提出と一緒にしたほうがいいのじゃないかというふうなことを、いましばしば仰せになりますが、これはまた少しお考えが別のところではなかろうか。それは、このたびやっておりますのは、悪質な、重大な悪質なものについて、これを厳罰にしようということがねらいでございます。必ずしもそういうものが多数続発してくるかどうかはわかりませんが、これをねらいとしておるところでございます。したがって、いま仰せのように、一体どういう種類の人々がこれによって処罰をされるのかというと、やはり大部分は交通労働者ではなかろうか。電車とか、汽車とか、航空機とか、港湾とか、海上とかいうようなもの、あるいはお医者さんとか、その他の人々というような場合には、同じ刑法が改正になりましても、悪質なるものとして処罰される、この改正のねらいでひっかかってくるというような人は、まあ絶無とも言えませんがほとんど絶無に近いものではなかろうか、こういうふうに私たちは見ておるわけでございます。やはり結果において出てまいりますのは、交通労働者が大部分ではなかろうか、こういうふうに観測をしておるのであります。それでありますから、いま仰せになりましたようなことは、いずれも大事なことである。非常に大事なことであると思うので、これは一番考えてみます。
〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/209
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210・松本善明
○松本(善)委員 前回の委員会で、警察庁の答弁の中で、昭和三十七年にいわゆる神風タクシーをなくせという新聞のキャンペーンが、交通事故をなくすのに相当効果があったという答弁があったわけです。この神風タクシーをなくせという運動は、自動車関係の交通労働者が始めたのです。これは自分たちの賃金を上げてもらう、あるいは労働時間について考えてもらうということをしてもらわないと、神風タクシーになってしまうのだ、だからこの問題を訴えて運動したのです。それを新聞が取り上げたのです。これを見ますると、被害者は交通労働者なんです。法務大臣、そこを頭を切りかえていただきたいと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/210
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211・田中伊三次
○田中国務大臣 くどく申し上げるように、悪質のもの、最悪質のものをこれによって厳罰にしようという趣旨でございます。松本さんの頭は、もう交通事犯は全部なべて厳格に処罰をされるのだ。全体的にオールタイムで値上げをされるのだとお考えになっておられる。そうじゃないのです。頂点だけであります。最頂点かどうかわからぬが、とにかく頂点、その頂点のものについて厳罰にするのだ。それ以下は従前どおり変わりはない、こういうふうに私たちは信じて、また裁判官は今度の改正はそういうふうに必ず見てくれるもの、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/211
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212・松本善明
○松本(善)委員 そういうふうには必ずしもいかないので、いろいろ意見が違うようになっているのだと思いますけれども、法務大臣の言いますその悪質なものということについて、さらにお聞きしておきますが、交通違反の受刑者は、長く受刑をさせておけば、改俊ができて交通事故を起こさなくなる、こういう考えで法務省は行刑をやっておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/212
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213・田中伊三次
○田中国務大臣 行刑の問題でありますけれども、長期にわたって刑務所に収容しておけば改過遷善が行なわれる、交通関係の者についてはそういうふうになるのだというようには考えていない。これは相手が交通の犯人であろうが、それ以外の犯人であろうが、収容を受けておりますその人の天性、天稟、その者の持っておる性格というものによって、改過遷善の実が上がるか上がらぬかということが変わるのであろうと存じます。交通労働者は刑務所に長く入れておけば改過遷善をするから、交通労働者は厳罰にするのだという考えには立っていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/213
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214・松本善明
○松本(善)委員 そうでしょうね。法務省では、交通違反の受刑者をわりあい早く出しているというふうに聞いております。それは事実でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/214
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215・田中伊三次
○田中国務大臣 早く出しておるのはどういう理由かということでありますが、刑の目的を達したと考えられる、改過遷善の実が上がった、こういう場合に、法規の命ずるところにしたがって、一定の条件のもとに仮釈放いたしまして家庭に帰す。早く働いてもらおうという考え方に立っております。それが交通労働者だからという考えではないのですが、比較的に見ますると交通労働者にわりあいに数が多いのかもしれません。その辺よく認識をしておりませんから、専門家がここにおりますから、専門家からひとつ御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/215
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216・川井英良
○川井政府委員 よく御存じのことでありますので、くどくは言う必要はないと思いますけれども、過失犯によって刑罰を科せられた者であろうと、故意犯によって刑罰を科せられた者でありましょうとも、行刑上の目的といたしましては、両者とも相通ずるものがあろうかと思うわけでございまして、改過遷善、教養を主体にいたしまして、やはり刑罰でありますので、幾らかのそれには応報的な意味も加味されて行刑が行なわれておるというのが今日の実情だろうと思います。ただ、この種の事故を起こして禁錮刑に処せられた者は、最近かなり数字にのぼっておりますので、法務省の行刑の当局におきましては、全国にたしか五カ所だったと思いまするけれども、特にこの種の人たちを収容して特別の行刑といいますか、技術的な面からの更生をはかるということでもって、東京の近郊では、たしか習志野であったと思いますけれども、特に一カ所に収容し、また特別な教官を充てましてこの種の行刑の近代的な、かつまた改過遷善に最も適当な教育を考えて、特別な訓練と教養を行なっているというふうなことが大体の事情でございますけれども、行刑の目的としては先ほど申しまして二つの目的をあわせ持っておると思いますが、技術的な面におきましては特別な一つの措置を考えて強力にこれを実施中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/216
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217・松本善明
○松本(善)委員 この交通違反関係の受刑者の仮釈放になりますというか、身柄の拘束を解かれるというのは、普通犯と比較してどういう程度になっているかということをお話ししていただきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/217
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218・川井英良
○川井政府委員 詳細な数字はきょう持ってまいりませんでしたけれども、大体のところは三年とか五年とかというふうな、比較的長い刑罰を受けている者はありませんで、最高が三年、多くは一年以下くらいのところに集中しておりますので、ごく短期の文字どおりの短期自由刑ということになっており、しかも内容は禁錮刑であるというふうなところから、普通三分の一つとめますというと、仮釈放の条件が出てくるのは御承知のとおりでございますけれども、一年未満で三分の一といいますと、入って何もしないですぐ出てくるというふうなかっこうになりまして、行刑の目的からいいましてもいかがかと思われまするので、概括的な点を申し上げますというと、禁錮で入った者は三分の一で出るというよりはむしろ二分の一くらいをつとめたところで出る。大体三カ月ないし六カ月くらいをつとめたところで仮釈放の条件が満たされるというのが実情のようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/218
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219・松本善明
○松本(善)委員 そういういまお答えになりましたような技術的ないろいろの方法も考えておられるということですが、当然のことかと思いますが、それはやはり交通事故のいわゆる受刑者というものを長く入れておくということだけで改善できるものでもない。これは当然ですけれども、それはやはり同じ考え方をこの刑法改正についても考えるべきじゃないか。これは刑を重くしたからといってこういう事案はなくなるという性質のものでないということは、いまの行刑の実態でも明らかじゃないだろうか。やはり本来のあるべき姿といいますか、刑罰が主ではなくて、政策でこれは解決をしていくという方向が、いまの行刑の実態からも出ているように私は思うわけですけれども、法務大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/219
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220・田中伊三次
○田中国務大臣 行刑の問題から引いて、この科刑の問題に論及をされるのでありますが、これは私の見解をもってすれば質の違うものではなかろうか。刑罰というものは、やはり重く処罰——どの程度重くするかは別論でありますが、重く処罰をすることによってより強く科刑の目的、すなわち予防の目的は達成ができる、こういうふうに私は見ております。それでありますから、行刑の場合に長く入れたから改心が早いという理屈のものではございますまい。ございますまいが、私の考えでは、刑罰はやむを得ざる場合には重く処罰をする方針をとる。涙をふるってこれをとる。そうして刑罰が決定をいたしまして、行刑の段階に入りますならば、法律制度の許す限り、条件を具備する限り、一日も早く改過遷善をせしめて社会に復帰させたい、一日も早く家庭に帰したい、こういう考え方に行くべきものではなかろうかと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/220
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221・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣はよほど、何といいますか、刑罰を重くすることによって処罰するぞということが、非常な効果をあげるかのよう思っておられるのではないかと思いますが、それはやはり違っているんじゃないかと私は思いますけれども、ちょっと別なことをお聞きしたいと思いますが、ことしの二月九日に労働省が、交通事故と交通労働者の労働時間とが密接な関係があるということで、通達を出したということを御存じでしょうか、法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/221
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222・川井英良
○川井政府委員 私は聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/222
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223・松本善明
○松本(善)委員 この通達の中でも言っているのですが、刺激性の強い歩合給制度のために、事実上ノルマを強制するようになっている。営収をあげるということを取り上げておるわけなんです。この営収をあげるために——営収というと水揚げといいますか歩合給になっております。この水揚げをあげるために、事実上制限時間でありますとか走行キロを超過をする、あるいはスピード違反を犯すというようなことが非常にあるわけです。こういうことについて法務大臣はどう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/223
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224・田中伊三次
○田中国務大臣 私はこの運転者の賃金制度の問題と、交通事故の問題というものは、非常に深い関係があるものと考えます。考えますが、交通事故防止の対策から、はたしてこういうものをどの程度に制限をするかという問題は、またさらに一段と困難な問題であろう。これが非常にむずかしい、また密接不離の大事な関係に置かれておるものだということを念頭に置きまして、この問題はひとつ十分両者の関係を検討してみたい。いま積極的な御発言があるのに、にわかにここで私の一時の思いつきを申し上げることは申しわけないことと存じますので、この両者の関係については十分検討を加えてみたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/224
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225・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣についでに申し上げておきますが、その賃金制度が歩合給だとかあるいは低いというために、もし交通労働者が道交法を完全に守った場合には営収が一挙にずっと減るんですね。だから交通労働者が順法闘争として道交法を守るぞ。これがストライキの手段——ストライキというのは正確ではありませんけれども、闘争の手段だ、そういうふうなことがあるんだということを御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/225
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226・田中伊三次
○田中国務大臣 聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/226
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227・松本善明
○松本(善)委員 そういう実情をなくすということが、やはり一番大事なことじゃないだろうか、私たちはこう思うのですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/227
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228・田中伊三次
○田中国務大臣 事故防止の見地からも、非常に大事な対策の一つであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/228
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229・松本善明
○松本(善)委員 さらに聞きますが、タクシーの事業主の中では、交通違反を全然犯さないという交通労働者は営収が少ないということでむしろ優遇されない。交通事故は多少起こしても、どんどんかせいでくるというのが優遇されているのが実情なんです。そういうことは交通安全対策ということで、閣議や何かの中で政府は考えているんでしょうかね。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/229
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230・田中伊三次
○田中国務大臣 閣僚間の協議の中にも、しばしば深刻な問題として登場してくる内容でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/230
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231・松本善明
○松本(善)委員 交通労働者は刑罰をおそれるといいますよりは、事故を起こした場合には、自分もまた被害を受けるわけです。事故を起こした場合には自分もけがをする。場合によっては命を失う。それから処罰というだけでなくて、免許証の停止や取り上げというのは、これのほうがよほど——食えなくなってしまう、失職してしまう、その間妻子を養えなくなってしまう、収入がなくなったり、激減をしたりということで、非常な真剣な注意を払っている。こういう実情を、法務大臣、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/231
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232・田中伊三次
○田中国務大臣 よく存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/232
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233・松本善明
○松本(善)委員 それではさらにお聞きしますが、自動車関係の交通事故ということだけを考えて申しますと、交通労働者に固定給で非常に高い賃金を保証した場合には交通事故は激減をする、私はそう思いますが、法務大臣、いかがでしょう発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/233
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234・田中伊三次
○田中国務大臣 一がいにも申せませんが、安定をした賃金を制度として与える場合には、交通事故の発生に相当な影響があるもの、これは常識としてそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/234
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235・松本善明
○松本(善)委員 そのための対策は政府としてはやっておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/235
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236・田中伊三次
○田中国務大臣 それは道交法において管理者の責任、労務管理の場合におきましても、業務管理の上におきましても、無理をいたします場合においては、その責任を問うように制度として置かれております。しかしこの問題は、先生がお話しのごとくに重要な問題でありますから、臨時応急のこのたびのような改正のものでなく、根本的問題としてこの道交法というもので考えていかなければならぬ、重点を置いてひとつ検討をしなければならぬ重要問題の一つであろう、今後はこの問題は、真剣に前向きの姿勢で取り組んでいかなければならぬものだ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/236
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237・松本善明
○松本(善)委員 社会主義国でこの関係の刑が重いという話が先ほど出ておりましたけれども、これは交通労働者に特別に労働条件がいいのです。そういうようなことがなければ、これは交通労働者いじめというだけになるのです。それは幾ら法務大臣は酔っぱらいだけだといったって、そんなことにはならぬのですから、そこら辺がやはり重要な問題だと思いますので、これは場合によっては最低賃金制とか、あるいは労働基準法、そういう労働関係の立法にもなるかと思いますけれども、よほどの決意を持って、交通安全ということを言うならば、交通労働者の労働条件ということをすぐ考えるというくらいにならなければなくならぬと思いますけれども、そういう決意でやってもらえますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/237
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238・田中伊三次
○田中国務大臣 松本さんのお話を聞いておると、交通労働者一般、その交通労働者が違反を犯した場合、処罰一般ということをすぐ論じられる。今度提案をしております構想は、そうじゃないのです。悪質な違反、故意に近いようなけしからぬ違反、そのけしからぬ違反を犯した者を厳罰にしようというその局部をとらえての御相談なんですね、本件法案は。一般論じゃないのです。事故が多発するような状態に置いておきながら、事故が起こったら厳罰にするというのは何事か、そういう議論じゃないのです。頂点をとらえておるわけです。そういうけしからぬ違反を犯した者については厳罰に処するのだ、これは厳罰以外に道はないのだ、法務大臣は、こう、思い切って言う男ですから、極論をしておるわけです。これ以外に道はない、とりあえずこれをやらなければならぬ、こういう考えに立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/238
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239・松本善明
○松本(善)委員 法務大臣がこの前おられなかったので、そのときにだいぶ私問題にしたのですけれども、いわゆる悪質なといわれておるめいていとか、特に酒飲みですけれども、この関係の事故は全体のほんとうに一部なんです。大部分はそうじゃないのです。だから、局部だ、局部だと言われるけれども、それは交通安全対策の中心じゃないのだということを私は言っておるのですよ。そんなことがまるで、このことができるかどうかで交通安全対策がよくなるか悪くなるか、そんな大問題と思っていられるかのごとき発言だから、そうではない。この前お聞きしましたけれども、私は三十九年の警察庁の資料を持っておりますけれども、めいてい運転七・二%ということのようです。ごく一部ですよ。これは自動車道路交通関係だけじゃないでしょう、全体の交通事故、航空機だとか国鉄だとか、いろいろなことを考えますと、全体の交通安全対策から考えると、これはほんとうに一部じゃないか、それで言っておるのですけれども、そういう趣旨なんです。これはまた大臣のほうから同じ趣旨のおそらく答弁になると思いますので、私の意見を申し上げて、これは別に答弁を求めません。
法務大臣に伺いますが、先ほど申しました全交運——交通労働者の労働組合の連合体ですが、その全交運は、警察がいたずらに交通労働者の違反追及、罰金の取り立てに専念をし、交通事故をほんとうになくしていくのだという観念が少ないのだということを取り上げている、むしろやはり安全施設だとかが整備をし、交通労働者の労働条件が改善をされるという状況のもとで、警察が違反追及とか、罰金の取り立てということでなくて、歩行者も含めた交通の指導に重点を置いていくというのが本来の姿じゃないかということを要求しておるのです。このことは法務大臣いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/239
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240・田中伊三次
○田中国務大臣 私もいま仰せになったことは一部賛成で、同意見でございます。それは歩行者の訓練ということを案外政府も——政府は若干言うておるのですが、重点的に言うておりません。それから世間もそういうふうに言わない。ただ単に運転者が悪いのだ、自動車が悪いのだということの一点ばり。それでやはり交通事故を防止いたしますという対策の重要な点は、けさから私が何度も申し上げておりますように、歩行者にも一半の責任がある、歩行者が道交法を守ってくれる、歩行者が慎重な態度をとってくれるという場合には——歩道にまで飛び込んで車が人を殺すということはあるいはあるが、そういう場合はごくわずかでございます。ですから、歩行者も注意をしなければならぬ。それからもっと注意しなければならないのは、政府当局がやはり交通事故防止対策について金を惜しまず、努力を惜しまず、誠意を尽くして、懇切に役立つ施設をつくりますことに力を入れていくということを——先ほどから申し上げますように、年次計画を立てて、私なりの見方によりましては、政府も真剣に戦っておる、こういうふうに私は見ておるわけであります。歩行者の注意は特に喚起したい。歩行者が注意をしてくれぬことには、刑罰の強化だけではなかなか目的を達し得ないということは確かにあると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/240
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241・松本善明
○松本(善)委員 警察庁に伺いますが、交通事故が起こった場合に、その交通事故の原因を究明して、そういう交通事故がその場所では二度と起こらないような対策を立てて、それを実行するというようなことはやっておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/241
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242・片岡誠
○片岡説明員 これは昭和三十九年の当初から、交通事故の分析要綱というものをつくりまして第一線に指示してやらしております。そのやり方はいろいろありますけれども、当面一番重点を置いておりますのは、道路交通環境と事故との関連性に一番重点を置いてやっております。それで、たとえばある路線の中で特に事故が多い区間、場所を統計的に抽出しまして、その現場について実態調査をしまして解析をしていく、そうしてそこに信号機を設置したらいいとか、あるいは横断橋をつくればいいとか、ガードレールをつけるとか、あるいはすみ切りをしてみるとか、そういういろいろな角度からこれを分析しまして道路管理者と一緒に対策を立ててそれでやっていく、その成果が昨年三カ年計画に実ってきたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/242
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243・松本善明
○松本(善)委員 それが確実にやられているならば、事故多発地点というものはなくなるはずなわけです。それがそういかないで、同じ個所で何回も何回も事故が起こっておるのは、どこに原因があるのですか。予算がないのですか、それともどこかが怠慢なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/243
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244・片岡誠
○片岡説明員 御承知のように、たとえばある交差点に非常に事故が多かった、歩行者事故も相当数あったというところに信号機をつけた結果、歩行者事故はゼロになった、しかし、信号機をつけたことによって、当初の間は追突事故が生じたというような事例もございます。しかしながら、対策を打ったところは、多い場合には半分以上、少ない場合でも二、三割方といったような事故の減少はいたしております。一番問題の地点から逐次そういう解決方法をとっていっておりますが、御指摘のように公共投資の限界もございましょうし、それを最も重要な地点から逐次優先的にやっていくというやり方をやっておるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/244
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245・松本善明
○松本(善)委員 使用者が労働者に、交通違反をせざるを得ないような状態に追い込んでいるのは、何も民間のタクシー会社だけではないのです。私鉄はもちろん、国鉄のような交通安全に最も努力をしなければならぬというようなところでもそういうことがあります。たとえば名神高速道路、あそこに国鉄のバスが走っておりますが、ダイヤは道路制限の速度ぎりぎりに組んでおります。それは百キロです。制限速度百キロのところを百キロで走らないと、ダイヤに基づいて走れないようになっています。もちろん自動車は一定の速度で走るわけではないので、ダイヤを乱さないようにするためには相当の距離を百二十キロから百三十キロで走らなければならない。乗客は安全ベルトを締めておる。そういうふうにして命がけで乗らなくてはならぬような状態になっているのです。これでも事故が起こりますと、労働者の責任になっておるのです。政府はこういうようなところを、まず身近な自分の足元からやっていくことがまだまだあるんじゃないかと思いますけれども、法務大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/245
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246・田中伊三次
○田中国務大臣 松本さん、いま例としてお出しになったのは高速道路の場合ですが、高速道路の場合は事情はちょっと違うのではないでしょうか。スピード問題は、これはスピードを出すことがたてまえです。アメリカの道路で百キロ以下のスピードであった場合には罰金をとるという制度もございますね。日本の道路というものは高速道路につきましては、スピードはしっかり出してよい。制限はございます。以下で走ってはいかぬというような制限はアメリカのようにはないわけでございます。これはダイヤの組み方が国鉄の場合にことに違法である、それは危険しごくのものではないか。——一方通行もございますね。同じ道路でお互いが行きかうことはございません。センターラインはちゃんとしっかりした区別がついておるということでありますから、ここの場合に国鉄がそういうダイヤを組んでおるから、これは事故の発生に一役買っておるのではないかという判断はできないのじゃないでしょうか、この場合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/246
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247・松本善明
○松本(善)委員 制限速度百キロなんですよ。そこで百キロのダイヤで走るということは、どうしても相当の範囲を、百二十キロから百三十キロの制限速度違反で走らないとダイヤどうりにはいかないということなんです。全部走り出しから百キロで走るわけではないですからね、止まったりなんがするわけですから。ですから、百キロで全部走るように組んであるということは、これは百二十キロ、百三十キロという速度違反を犯さざるを得ないというダイヤであるはずなんです。それはいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/247
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248・田中伊三次
○田中国務大臣 そういうことがあるかどうか、よく調査してみましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/248
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249・松本善明
○松本(善)委員 ぜひそういう調査をしていただきたいと思いますけれども、実際に一緒に並行して走った人が、国鉄のバスは何というべらぼうな速度を出して走っておるのだろうかといって驚いて、ついていくのをやめたという人が何人もいるんです。まず、そういうようなところで、政府全体の姿勢が、やはり安全施設でありますとか、あるいは使用者、雇用者、あるいは責任者、そういうところに目を向けて、交通事故がなくなるようなそういう労働条件、働く条件というものをつくることにもっと努力をしていただかなければならぬと思います……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/249
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250・大坪保雄
○大坪委員長 運輸省の自動車局整備部長がおりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/250
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251・堀山健
○堀山説明員 ただいまの名神高速バスについてお答えしたいと思います。
御承知のように、日本で初めての高速道路でございまして、その道を通る速度はおおむね百キロでございます。場所によりまして八十キロ制限その他はございますが、おおむね百キロで走るということになっております。あのバスを通しますにつきまして、あらかじめ路線を調査いたしまして、それぞれ無理のない最高の速度で走れるようにダイヤを組んであると思いますし、またある車には運行記録計をつけてございます。したがって、運行の全部の記録がついてございます。ただ、たまたま追い越しその他で若干オーバーすることがあるかもしれませんけれども、全体のダイヤとして、その運行の速度がオーバーすることはない、あるいは特急便でたしか名古屋−神戸間で三時間だったと思いますが、距離の平均で割りましても百キロは出ないような勘定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/251
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252・松本善明
○松本(善)委員 運輸省の人がおられるから、もうちょっと聞いておきますが、全体百キロダイヤということになると、私の聞きましたように部分的には百二十キロ、百三十キロ出さざるを得ないというような結果になりませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/252
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253・堀山健
○堀山説明員 おおむね平均して割りましても、百キロを越すようなダイヤにはならないはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/253
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254・松本善明
○松本(善)委員 それでは、それはまたあらためてその事情をさらに明らかにした上で聞きましょう。
自動車一台当たりの事故率が減少してきているんだということが前回警察庁の答弁であったわけです。これはまた事実であります。これは道路でありますとか、安全施設の整備が、自動車台数の激増に伴わないというのが事故の根本原因ではないかということの一つの証明じゃないかというふうに思うのですけれども、法務大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/254
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255・田中伊三次
○田中国務大臣 刑事局長からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/255
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256・川井英良
○川井政府委員 ほかにも、またいろいろな原因があろうかと思いますけれども、そういう見方も成り立つのではないか、こう思うわけであります。ただ、私つけ加えて申し上げたい点は、一般的に事故というものをどう見るか、また事故を減少させるための一般的な対策として道路交通事情の整備をはかるということと、それから交通労働者の待遇改善をはかるということが一般的に事故防止のためにたいへん重要な対策であるということは私全く同感であります。
ただ、くどいようでありますけれども、今度の法案でお願いいたしておりますのは、いかに交通労働者の待遇改善をいたしましても、また、いかに道路の整備をいたしましても、それだけではまかなえないような悪質重大な事故が発生しているんだ、そういう事故が多くなっているんだ。ほかにもいろいろありましょうけれども、一つの対策としては、そういうふうな悪質重大なものについて、この際若干刑罰を上げることによって打開の目的を達するとともに、頭打ちになっておる裁判を打開して交通戦争に対する対策の一半に資したい、こういうことでございますので、一般論としてはまさに御指摘のとおりでありますし、私どもがあらためて御配付申し上げました事故二十数例について詳しくごらんいただきますればわかると思いますけれども、この中にはこの場所の道路の状況が悪かったためにこの事故が起きたんだ、あるいは雇用主が異常に乱暴なために、その命令とか、指示とか、あるいはその威力に負けたために何らかの条件が加わって、こういうふうな重大な事故が起きた、だから禁錮三年とか禁錮二年半以上とかいうふうな非常に重い刑罰がいったというような事例はないわけでございます。私どもそういうふうな事例に基づきまして——しかもそういうふうな事例が非常にふえておるということはたいへん困るんじゃないでしょうか。これに対処するためには、ここで大臣も先ほど熱を込めて御答弁申し上げましたけれども、やはり刑罰のみによってすべてこの事態がまかなえるということは、もとより私ども考えておりませんが、かような悪質重大なものについては、刑罰をもってまかなうということも非常に有力な一つの対策ではないか、こう考えておるわけでございます。一般的に交通労働者の待遇をよくする、道路をよくするということは、確かに交通事故を防止するために役立つものであることは、私どもも疑わないわけでございますので、つけ加えて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/256
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257・松本善明
○松本(善)委員 一般論については、先ほど来申し上げておりますので繰り返しませんけれども、街路面積率はワシントンで四三%、ニューヨーク三五%、東京の区部一三%、けた違いに道路が少ないのです。そこに急激に自動車がふえているのです。これが交通事故の根本の原因なんだと思う。交通労働者の問題ではないんだ、運転者の問題に帰すべきでないんだというふうに私は思います。
さらに法務大臣に伺っておきますが、モータリゼーションということばがあります。御存じだと思いますけれども、自動車をふやすことがあらゆる産業を活発にするのだという考え方がある。たとえば、これをふやしていけば自動車が石油を使う、道路をつくるから鉄鋼も要る、機械も要る、電気やセメントも要る。これをどんどんふやしていくのが産業を活発にしていくのだという考えで、政府は自動車の激増政策をとっているというふうにしか見えません。この結果、独占資本、大企業、こういうものを作っている自動車のメーカーでありますとか、道路建設のための諸産業、大きな会社が、もうかっている。これが不均衡にやっているということが、交通労働者ではなくて、交通災害の元凶ではないかと思います。法務大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/257
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258・田中伊三次
○田中国務大臣 何度も申し上げることでありますが、交通事故一般論といたしましては、お説のようなことが問題になろうかと存じます。これは慎重に検討すべき将来の問題である。ここに御相談を申し上げております本件は、悪質許すべからざる重大犯罪を犯しました場合に、故意紙一重のごとき重大犯罪を犯しました者を処罰しようというのでありまして、そういう故意紙一枚といったような重大犯罪を犯しました責任は、いま仰せになったようなところに原因はない。これは運転者それ自体、その人の責任である。その人を刑務所に入れて改過遷善せしむべきである、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/258
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259・松本善明
○松本(善)委員 その点について再々の答弁ですけれども、しかし、それが実際に動き出すときには、交通労働者全体に影響していくということだから、再々にわたって全体の問題を問題にしておるわけであります。
後日に質問を留保いたしまして、きょうの質問はこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/259
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260・大坪保雄
○大坪委員長 中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/260
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261・中谷鉄也
○中谷委員 お尋ねをいたします。
前回資料要求をいたしまして、たとえば「自動車運転による重大な人身事故の具体的事例」などという資料を努力してつくっていただきました。この資料に基づいてお尋ねをいたしたいと思いますが、要するに刑の威嚇力、一般的予防という観点から、警察庁のほうにお尋ねいたします。
ひき逃げですね。これは私非常によろしくないと思う。ひき逃げの検挙数というのはどのくらいございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/261
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262・片岡誠
○片岡説明員 いまちょっと資料を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/262
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263・中谷鉄也
○中谷委員 では引き続いて。ひき逃げの無検挙数がかなりあるということは、ひき逃げをしても逃げられるのだということで、運転手に対するところの一般的予防という観点から非常にいけないと思うのです。そういう面をしぼっていくことも、私は交通安全秩序確立という面においての一つの大きな問題点であろうと思う。この点については、あとで資料をいただきたいと思います。
次に、お尋ねをいたしたいと思います。
「自動車運転による重大な人身事故の具体的事例」、いただきました二十四と追補で二十五の事例でございますけれども、この事故が一体どういう状況で起こるのだろうか、どんな人がこのような事故を起こすのだろうか、したがって、どういうふうに事故を防止すべきか、防止が可能なのかどうか、刑の引き上げによらずして防止が可能なのかどうかということが問題の焦点であろうかと思うのです。したがいまして、この点についてもできましたら、一般的な傾向でけっこうですから、ひとつお教えをいただきたいと思います。年齢、免許の種類、免許を取得してどのくらいたっているのか、どんな人がこういう事故を起こしたのか、さらにいわゆる交通事故、あるいは道交法の前科の有無、こういう点については詳細に資料を御検討あると思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/263
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264・片岡誠
○片岡説明員 引き逃げはあとでお答えいたしますが、いまの手元にございます資料によりますと、自動車などが第一次当事者となった場合の運転者の経験年数別の発生件数を見ますと、大体……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/264
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265・中谷鉄也
○中谷委員 違うのです。私がお尋ねしたのは「自動車運転による重大な人身事故の具体的事例」という法務省から御配付をいただいた資料について、これについて掘り下げて分析をしてみたいので、法務省に対する私のお尋ねなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/265
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266・川井英良
○川井政府委員 これは前回の御注文に応じまして、罪となるべき事実と量刑についての説示あるものについて、至急収録をしてお手元にお届けしたわけでございますが、もう実務にたんのうな方であられますので、説明の要はないと思いますけれども、この種の事件について日本の裁判所で交通標識があるべきところになかったとか、あるいは被害者側にも重大な過失があったとか、あるいはオーナードライバーじゃなくて、たまたま交通労働者であったというときに、その雇用主との関係において非常に無理な雇用の関係があったのだというような、およそ裁判上酌量すべき状況が認められるような事案につきましては、禁錮二年とかあるいは一年とか三年とかというような刑は、実情といたしましていっておりません。禁錮の、要するに体刑の実刑がいきましたような事案は、ここに二十数例が掲げてございますけれども、これらは日本の裁判といたしまして、すべてあげて被告人である人の責めに帰すべき事故というふうなもので、ほかにしんしゃくすべき事情がないというようなものに限りまして、特に禁錮三年あるいは二年六月というような非常に重刑がいっているわけでございまして、裁判の実態からいきまして、今日日本の裁判は、量刑が世界の趨勢から申しまして、実証的にある程度研究を進めておりますけれども、こんなに軽い国は今日非常に珍しいわけでございまするけれども、その国の裁判の実情において、しかも最高刑に近いような刑罰が盛られておるということは、よくよく異常のことだ、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
なお、この一件一件につきまして、年齢なり、あるいは免許を受けてからの年数なり、あるいはその業務の態様なりというふうなものも、一応調べればわかるわけでございますが、前回のお約束では、この罪となるべき事実、すなわち、違反行為の実態がいかがなものかというような点に重点を置きましたので、取り急ぎその違反の行為と実態だけをここに掲げたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/266
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267・中谷鉄也
○中谷委員 免許制度について質疑を発展させていきたいと思っているわけです。したがいまして、いわゆる一種免許、二種免許という中で、これは一種免許の人ばかりなんだろうか、それとも二種免許をとっているような人もこのような重大事故といわれている二十五例の中に相当数あるのだろうか、この点は、まず事故分析の中で、免許制度というものが非常に安易じゃないかという指摘が、従来各委員からなされておりますから、そういう点でお尋ねしておるわけですが、その点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/267
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268・石原一彦
○石原説明員 ただいま刑事局長から答弁がありましたように、私ども中谷委員の御要求に従いまして、できるだけ明らかにする意味で本資料を作成したわけであります。
それで、この中に氏名は伏せてございますが、犯罪の日時及び判決をいたしました裁判所名を全部明らかにいたしました。
なお、被害者につきましても、男子であるか女子であるか、あるいは年齢が幾つであるかということも、事実をそのままお示ししたほうがいいということで全部出したわけでございます。それ以上に年齢と前科の有無ということになりますと、被告人の前科そのものを出すようなことに相なりますので、被告人の名誉等も考えまして、この点はごかんべん願いたいと思います。
なお、免許の種類、一種、二種、すなわち営業車であるかそうでないかということでございますが、この点は裁判の判決そのままを書きましたので、この事実の中でしか判断はできないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/268
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269・中谷鉄也
○中谷委員 その点はひとつ知りたい点です。
それから、ここに掲げられている重大事故の例というのがすべてではなくて、ほかにもあるということでございまするけれども、昭和三十七年という年度を基準にしてきょうお尋ねしたいと思うのです。
昭和三十七年に判決を受けました者は、この事故例によりますると、禁錮二年六月の判決を受けている。七七ページ、福島の件、例の二十二であるように私は思う。
そうすると、昭和三十五年二件、昭和三十六年三件、昭和三十七年一件、昭和三十八年四件、昭和三十九年三件、昭和四十年五件、昭和四十一年六件、昭和四十二年については追補としてとりあえず一件ということにこれは相なっておると思うのですけれども、昭和三十七年という年はこの種事案がほかにもございますかどうですか、この点はいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/269
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270・石原一彦
○石原説明員 すでにお手元に配付いたしました「刑法第二百十一条関係統計資料」の第九表以下の数字を足しますと、三十七年はたしか十八件であったと思います。したがいまして、それ以外の分はこの表には載っていないわけであります。
なお、裁判所の統計は、ごらん願えばわかりますように、二年以上でまとめてございまして、二年六月というのはございません。じゃ、しからばその他のものは何であるかという点でございますが、これは一つは執行猶予がついたものではなかろうかというぐあいに考えられるのでございます。もう一つは、この資料の冒頭に書きましたように、刑事局に報告のありましたもの、これを全部収録いたしたものでございまして、ほかの分はそれ以外の点でございまして、まだ検察庁で関係記録が保管されている、かような事件であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/270
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271・中谷鉄也
○中谷委員 そこで、いま御答弁をいただきました表第九表以下について、これを基準にしてひとつお尋ねをいたしたいと思いますが、私のお尋ねをいたしたいことは、刑の上限を上げるだけなんだ、全体としての量刑あるいは求刑等において、全体として上積みをされるというか、引き上げられることはないんだ、こういうふうな御答弁が繰り返し繰り返しなされているわけなんです。しかし、私ははたしてそうだろうかということについて非常に疑問を持つのであります。
そこで、次のようなことを指摘をいたします。この点について、ひとつ納得のいく御答弁をいただきたいと思います。と申しますのは、これは私、同僚委員が質疑をいたしている間に大急ぎで計算をいたしましたので、はたしてパーセントにおいて非常に正確であるかどうかについては疑義がありますけれども、たとえば表第九表の業務上過失傷害、この点をひとつごらんを願いたいと思うのでございまするけれども、終局総人員について、私自身は有罪の判決のうち禁錮以上の刑を受けたところの総数、これと比較の比率を出してみたのです。そういたしますると、昭和三十六年は比率が〇・三一五ということになると思います。もっとその前々から申しますと、昭和二十五年が九・六%、昭和三十年が一三・九%、昭和三十五年が二一・五%、昭和三十六年に至りまして三一・五%、昭和三十七年が四五・七%、昭和三十八年が四四・五%、昭和三十九年が四九・九%ということに相なるわけでございます。ということはいろいろな——昭和三十七年というのは、神風タクシー等のキャンペーン等が行なわれた。こういう中において、同じ量刑、法定刑の上限禁錮三年という中においても、有罪の判決を受けた者が、昭和三十七年においては有罪判決のうち禁錮以上の刑に処せられた者が四五・七%、すなわち三十六年の三一・五%よりも一四%以上上回っておるということに私のきわめて簡単な算術で相なるわけなんです。ということを考えてみますと、同じ上限の中においても、これだけ検察庁の公判請求をする請求の数だとか、あるいは裁判所の量刑の中においては変わってくるじゃないか。要するに法務大臣の御答弁のとおりであるならば、悪質だというふうなものについてのなだらかな一つの数に対するパーセントというものを描かなければいかぬ。もちろん昭和二十五年当時の〇・〇九六、九・六%というふうなところの業務上過失傷害に対するところの非常な軽い考え方というものが、私はいつまでも維持されていいとは思わないけれども、こういうふうな統計を見てみますと、ある時の要請、ある時の状況、事情によりまして、公判請求をされるものの率は非常に上がってくる。そういうことになってまいりますと、禁錮五年、懲役五年ということに相なってまいりますと、いわゆる体刑を受ける率というのが飛躍的にふえてくるんじゃないか。たとえばここに記載されております一年以上であるとか、二年以上というふうなものの率は、非常に上昇するということがいえる。そうすると、ただ単にきわめて悪質、非常に悪質という者だけの量刑をふやすんだということにはならないだろう。要するに法というものがひとり歩きをするんじゃなかろうか。この点は、私はむしろこの法案について、悪質な者だけを処罰するんだということで御説明になっているけれども、法それ自体の性格からいって、そういうことではなくて、全体としての量刑が上がってくるんだ。それは時の勢いとしてやむを得ないことなんだというふうに御答弁あるほうが、今後こういうことは統計資料が出てまいりますことでございますから、むしろ私は率直な御答弁ではないかと思うのです。この点についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/271
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272・川井英良
○川井政府委員 そういう計算は、私は個人で自分としてはしておりませんでしたけれども、おそらくその九表に基づいて計算すればそういう結果になるだろうと思います。同時に、業務上過失致死傷が二十八年以来本年までの間、非常な急激な上昇を遂げてきているという事実に着目を願いたいと思うわけでございまして、要するに、全体的にいきまして、悪質犯と認められるものが非常に多くなってきたということが全体の傾向として言えると思うわけでございまして、悪質犯の急激な増加という一般的な趨勢に応じまして、裁判もこれに対して勢い禁錮刑が趨勢として多くなってくるということは、これはもう当然の傾向だろうと思うわけであります。
それから禁錮三年以下という、罰金千円以下という法定刑をきめました場合におきましても、それがいかなる時代におきましても、またいかなる客観情勢におきましても常に固定したものであって、コンクリートなものであって、それが動かないというわけのものではございませんで、これはやはりその時の客観情勢と、それからまた違反の実態、内容に応じまして、おのずからそこにその量刑の傾向が出てくるというのは、これはまた刑罰あるいは刑事裁判の実態からいってあたりまえのことだろう、こう思うわけでございます。ただ問題は、今回の三年を五年に上げたということでもって、これを契機にそのときからとたんに重い刑罰、いままで三年で済んだものがすぐ四年になるというようなことにはならないということを私ども強調しているわけでございまして、確かに、ただいま御指摘の点は、いつまで、どういう、何年たちましても、全く同じような傾向をたどっていくものであるということを固執しているわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/272
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273・中谷鉄也
○中谷委員 悪質犯が昭和三十七年になって急激に増加したというふうなことは、私非常に統計の読み方がへたですけれども、そういう統計の中から少しも出てこないと思うのです。念のために表第五表をごらんをいただきたいと思いますが、表第五表は「道路交通法令違反事件の処理人員累年比較」でございます。この表によりますと、昭和三十六年は二百二十六万六千一の件数がございました。それが昭和三十七年になりまして三百二十五万九千四百七十九というのが起訴の合計でございます。念のために昭和三十八年を申してみますと、三百三十九万八千四百九十七件ということに相なっております。昭和三十六年から昭和三十七年にかけまして百万件、いわゆる道路交通法令違反事件の処理人員累年比較の中で増加をしている、こういうことなんです。
ところが、だからといって悪質がふえたということに相ならない。どういうことかと申しますと、次の表の第六表を私見てみました。刑事局長さん、すでにおつくりをいただいたわけでございまするから、十分この点については御検討いただいていると思いますけれども、表の第六表によりますると、「業務上過失致死傷事件通常受理人員の推移」というところの「人員」のところを見てみますると、昭和三十六年が十三万六千二百、昭和三十七年が十四万八千九十九ということになっておるわけです。道交法違反が百万件もふえておる。ところが表第六表の業務上過失致死傷事件の通常受理人員については非常にふえ方が少ないわけです。しかも、昭和三十八年に至りまして十九万五千五百六十四件というふうに、約五万件ふえておるわけでございます。いま一度念のために申し上げますけれども、昭和三十八年の道交法違反事件は三百三十九万八千四百九十七件でございますから、この三十六年から三十八年までの間における道交法違反のふえ方と業務上過失致死傷事件のふえ方との間にはずいぶんアンバランスがある。特に昭和三十七年という年は業務上過失致死傷事件のふえ方が非常に少ない年だと言える。この点についてそのようなことの中から、検察庁、裁判所の一つの考え方によって実刑の率がふえたり、あるいは禁錮の率がふえたり、公判請求の率というものが非常にふえてくるということは私は言えると思う。だから、上限が上がった、しかし全体としての刑は上がらないのだよ、安心しなさいということの保証もなければ、むしろ法のひとり歩きという、法の性格の中から全体としての刑が上がってくるということは、こういうふうに私はきわめて単純にわずかの時間この表を拝見しただけでも、それだけのことが言えると思うのです。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/273
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274・川井英良
○川井政府委員 烱眼にたいへん敬服するわけですけれども、事故は別ですけれども、道路交通法違反のいわゆる反則と称するものの統計というものは、もちろんその統計に間違いがあるわけではございませんけれども、御承知のようにたくさんの交通警察官が時の要請に応じまして繰り返し、一斉取り締まりを強行するというふうなときには、ものすごい数字になって違反が上がってくるわけであります。ところが、いろいろまたほかの事情もございまして、しばらくその取り締まりを手控えるというふうなときには、その数字はまたなだらかな下降をたどるということもこの種の事件につきましての実態であるわけでございまして、一千万台に近い車がふえてきた今月の交通事情から申しまして、それを取り締まるための警察官はおおよそどのくらいあるかということを考えてみますと、もう非常にわずかの警察官が昼夜兼行でもってその取り締まりに当たっておるという実情でありますので、取り締まりのやり方ないしは取り締まりに繰り返し力を入れるというふうなことによって、この種の取り締まり法規の件数というものは、ある場合には非常に上がり、ある場合には必ずしも上がってこないということは、私どもの部門におきましては一つの常識になっておるわけでございますので、その道交法違反の数字は、おそらく最近におきましてはそういうことがなくて、非常に的確な方針のもとに警察庁が常時計画的に行なっておると思いますので、最近の数字におきましては、そういうふうなことはないと思いますけれども、過去十年ないしは十五年をさかのぼってこの統計を見ますと、ただいまの御指摘のようないろいろな数字の起伏があろうかと思うわけでございますので、そのような点も、そういう数字をごらんいただく場合に一つの参考資料としてお考えを願いたいと思います。
それから事故の場合におきましては、人身事故を起こした場合でありますから、原則として、これは検察庁に事件送致をするということに原則が相なっておりますので、おそらく、事故を起こした場合に、一日とか半日とか、あるいは単なる赤チンでもつければなおるというようなすり傷であるというふうなものまで、一々送ってきているかどうかということについては、検察官が一々見ておりませんのでわかりませんけれども、それにいたしましても、事故を起こした事件につきましては、大体その数字はおそらく人身事故の実態を物語っておることに間違いない、かように考えております。
そこで問題は、裁判の実態でございますけれども、この実態はよく御存じのように、時の勢いとか、あるいは一部の勢力とかいうものに影響されまして、刑が急に重くなったり軽くなったりするというようなことは決してありませんので、長年この種の事件についての裁判の処断の実績というものは積み重ねられておりますし、また繰り返し、判事も検事も年に一回ないし二回は会同を開いて、二の種の事件の量刑の公平というようなことについての協議をいたしておりますので、それはたくさんある事故の中でありますから、あるいは場合によって特異なものもありましょうけれども、全体の趨勢といたしましては、私、そう時代によって変わった量刑をとっておるというふうには思われないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/274
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275・中谷鉄也
○中谷委員 刑事局長、何べんも私申し上げますように、私は統計について読み方が非常に幼稚なんです。ただしかし、刑事局長の御答弁も、私が申し上げているその数字を若干、すなおに御検討いただいていないように思うのです。
もう一度申し上げます。表第六表によりますと、昭和三十六年は十三万六千二百、昭和三十七年が十四万八千九十九、このときは例年の業務上過失致死傷事件のふえ方の中では、ふえた数の一番少ない年なんです、昭和三十六年、三十七年にかけて。そうでございますね。表がそれを物語っているわけなんです。ところがいま一度表第九表に戻っていただきますけれども、昭和三十六年、終局総人員に対するところの禁錮以上の刑を受けた者の割合が三一・五%なんです。それが昭和三十七年に至りまして四五%・一四%ふえているわけでございますね。したがいまして、長年の積み重ねというふうなことではなしに、検察庁の御方針が、このときに交通事故厳罰主義という方針を打ち出された年なんです、昭和三十七年が。そうでなければ、交通事故数においては、業務上過失致死傷事件数においては、絶対量においても一番ふえ方の少ないその年において、いわゆる禁錮以上の刑を受けたそのパーセントが一四%も増加するなどということは、方針の変更以外にはあり得ない。この年に方針の変更があった。だからそういうことで、そういうふうな方針の変更とかなんとかというようなことをおっしゃらなくても、上の三年の天井を五年まで上げてしまえば、全体としての有罰人員に対する禁錮以上の刑の率というものは急速に上昇してくるだろう。ことにまた、あるいは一年以上の禁錮あるいは懲役というようなものについては、従来の例から一五%、二〇%も上昇するだろうということは、むしろそれも一つの考え方と思う。交通事故防止の観点から全体としての刑が上がることは一つの方向なんだ、方針なんだというふうなことは、むしろ率直に御答弁になって、その上でそういうことが正しいかどうかを論議すべきだと私は思う。いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/275
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276・川井英良
○川井政府委員 質問の御趣旨はよくわかりました。三十七年に検察庁がこの種の事故についての求刑の引き上げをはかって大いにやったかどうかということは、ただいま私、的確には記憶いたしておりませんけれども、今日、検察官と裁判所との関係におきまして、検察官が求刑の基準をきめて、それに基づいて事務を処理するというようなことが、直ちにその裁判の実態を動かすというふうには、今日の裁判所はそれほど簡単ではございません。そういうようなことが多少の影響があるということにつきましては、もちろん否認するわけではありませんで、三十七年にそういうことをやったならば、それが数年後に効果を持ってくる、あるいは検察官が指向するような方向に向いてくるというようなことまではわかりますけれども、検察官がそういう求刑の引き上げというようなことをその年にとった、だからその年に急に裁判もそれに応じて急に上がったというようなことではなくて、またそのほかの事情もここにはからみ合っているのではないかというふうに考えていますので、正確にこの点をお答えするについては、三十六年と三十七年との裁判の実態についてのもう少し慎重な検討が必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/276
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277・中谷鉄也
○中谷委員 私は、どうしても一つの執念を持っているわけです。悪質な交通事故というもの、業務上過失致死傷事件は、刑の引き上げではなしに防止できるし、私はまた併合罪の規定の適用等によってまかなえるという確信というか考え方を持っておるのです。
しかし、そういうふうなことは別といたしまして、次のようなことを、私この表から申し上げたいと思うのです。要するに、昭和三十七年に昭和三十六年に比較いたしまして百万件も多く道交法違反の事件を検挙いたしました。要するに一般的予防といわゆる道交法の罰則によるところの威嚇をこれによって国民に与えたわけです。そういうことで昭和三十六年から昭和三十七年に至るところの業務上過失致死傷事件の伸び率あるいは絶対数の増加というものは、非常に押えられました。ところが昭和三十八年、一年たっただけで、そういう威嚇力というようなものは全く効果がないということが統計上あらわれてきている。要するに幾ら道交法によって威嚇をいたしましても——道交法も一つの威嚇作用を持っておると私は思うのです。一般的予防の作用を持っておると思うのです。そのことが数字にあらわれてきている。そういう威嚇を食らわしたけれども、昭和三十八年には昭和三十七年に比較いたしまして、驚くなかれ、ということばをあえて使わしていただきますけれども、五万件の業務上過失致死傷事件の増加を見ている。要するに、だから第一義的には交通事故のあと始末をする。社会的倫理あるいは社会正義の観点から、刑の上を上げなければ承知できないのだという観点から刑を上げる。いま一つは、一般的予防という観点から三年を五年に上げるとおっしゃるけれども、威嚇力なんというものはその法改正が通ったときだけであって、あとはもう全然威嚇力なんというものによる一般的予防というようなものはないじゃないですか。そのことは、昭和三十六年から昭和三十八年までの統計が、そういう威嚇力があるというお立場にお立ちになる場合、非常に悲しく物語っているじゃないかということを私は指摘せざるを得ないのです。いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/277
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278・川井英良
○川井政府委員 二十年から三十五、六年、四十年にかけてのこの交通機関の発達のカーブもあわせて検討する必要があると思います。三十六年と三十七年の間にはたして自動車がどれだけ伸びたかということは、ここでいま私数字を見ておりませんけれども、数年間にわたってのその間における自動車の台数の増加というふうなこともあわせて考えてみないと、この事故の数字との間——いまの道交法の改正が行なわれ、また改正に応じてきつい取り締まりが行なわれた、にもかかわらず、依然として事件というものは減っていないじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、それはあるいはそのとおりかもしれません。しかし、あわせてその客観情勢、この国の経済の伸び、しかも世界に類のないようなこの異常な発達というふうなことを考えてみますと、その法律の改正なりその法律の罰則の的確な運用なりの効果というものは決してゼロではない。やはり刑罰は刑罰としてのそれ相当の効果を発揮している、こういうふうに私は信じているものでありますが、もしお説のような——そういうつもりで御指摘になっているのではもちろんないと思いまするけれども、およそ刑罰というものは効果がないのだよ、こういうふうなことでありますというと、私はその考え方を徹底していきますと、刑法というものの存在を否定するようなことになる。もとより専門家であられますから、そんなことを言っているわけではないと思いますけれども、私の立場からまた言わしていただくならば、やはり刑法の存在というものは私ども文明国家の一員としてこれを認めていかなければならない、その存在も国民に及ぼす効果——たいへん講釈めいて失礼でありますけれども、国民の最後の倫理的な規範というものを、ここに明らかにそれを守っていくというところに社会共同生活の基盤がある。こういうえらそうなことを言っては申しわけないと思いますけれども、そこまでお答えしなければならないかと思うので、ひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/278
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279・中谷鉄也
○中谷委員 ただやはり局長さん、もう少し御検討いただけませんでしょうか。御答弁がやはり非常に問題点を御指摘になっていると思いますけれども、この指摘、私が摘示いたしましたと申しますか、局長に申し上げた数字、要するに第五表と第六表との相関関係についての説明といいますか、合理的に納得のいく説明はないと思うのです。もちろんいろいろなことを私は考えてみました。たとえば第五表の関係は道交法違反の事件の場合は、その送致の日数が非常に短いだろう。業務上過失致死傷事件については送致の日数がかなりかかるだろうし、処分にもかなりかかるだろう。ところが、同じ三十七年であっても、三十八年のほうに食い込まれて、事故の発生が三十七年であって、実際統計にあらわれてくるのは三十八年というものもあり得るだろうというふうなことも私考えてみましたけれども、これだけ大きな違いというものがとにかく出てまいりまして、しかも百万件も検挙したあと、結局その年は非常に増加率は押えられたけれども、そのあと、一万件を割っておった増加率が、毎年五万件ずつ増加しておるというこの事実は、どう考えてみても、私もちょっとむずかしいことを言わしていただきますけれども、法心理学的にも、法社会学的にも、私の能力では説明がつかない。これはやはりひとつ表をお出しになった法務省のほうの責任で、納得のできる御答弁がなければ、威嚇力の問題ということの説明には相ならないだろう、こういうふうに思われるわけです。そういうふうな点についての御答弁を、私はひとつ納得のいく御答弁をいただきたい、こういうことでございます。
したがいまして、この機会に警察庁の方にお尋ねをいたしたいと思いまするけれども、警察庁のほうは交通事故の事故分析等最近非常におやりになっておりまするけれども、この昭和三十六年と昭和三十七年の業務上過失致死傷事件についてあまりふえていない。道交法違反事件については百万件も増加しているということの、何か納得のいく御説明がありましたら、していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/279
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280・片岡誠
○片岡説明員 非常に単純な事実だと思います。と申しますのは御承知のように、昭和三十五年の十二月に道路交通法が施行になりまして、三十六年にかけて新たに法律が動き出したわけでございますけれども、交通事故の抑制力が直ちには働かなかった。そしてこの年に史上最高と申しますか、多くの交通事故が発生したので、昭和三十七年におきましては、御指摘のように前年に比べて百万件以上、約三割四、五分だったと思いますが、交通取り締まりをやりました。これは派出所、駐在所のおまわりさんをやはり街道筋に立てて、駐在所、派出所をからっぽにするような無理な、いわば臨床療法的な措置をとったわけでございます。したがいまして、おまわりさんの姿が、街道筋にたくさん立ち並んだということもございまして、また検挙も多くしたいということによって、確かに抑制力、警戒心が働き、この年事故が非常に激減した。したがって、業務上過失致死傷罪として送致した件数も非常に少ないのは事実だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/280
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281・中谷鉄也
○中谷委員 そこで、次に警察庁にお尋ねをいたします。
警察庁からいただきました「交通事故の現状と対策、道路交通法の改正」五月号でございますか、特別号の表がございます。表第十一表「昭和三十五年以降における成人、少年別、違反類型別交通取締状況」がございます。この表によりますと、昭和三十五年が指数一〇〇ということで計算されているわけでございますけれども、要するに重大事故の例として摘示していただきましたところの人身事故の具体的な事例は、無免許、酔っぱらい、そういうふうなものであろうかと私は思うわけです。そこで違反件数の中で酒酔いのところを見ますと、昭和三十五年を指数一〇〇といたしまして、昭和三十六年には五三、昭和三十七年には一〇〇、そうして昭和三十八年には二二九、そうして昭和三十九年に至りまして一九八、昭和四十年に至りまして二七八というふうな増加を来たしている。これは先ほど局長御答弁になりましたように、昭和三十六年から昭和三十七年にかけては、三十七年から三十八年にかけてよりも、自動車の増加率がうんと少なかったということは、統計上ないわけなんですが、こういうふうに昭和三十九年、四十年において酒酔いの指数がむしろ倍増するようなかっこうでこれはふえてきているわけは、一体原因はどこにあるのだろうか、この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/281
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282・片岡誠
○片岡説明員 これも非常に単純な事実でございまして、酒酔い運転そのものは潜在的にたくさんございます。警察は御承知のとおり、取り締まりをする場合には、例の飲酒検知器で取り締まりをやっております。したがって、その検知器がだんだん整備されまして、いままで潜在的にあったのを、取り締まり可能になってきたということじゃなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/282
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283・中谷鉄也
○中谷委員 次に、無免許の点については、例年の指数を見てみますると減少の傾向にある。このことはどういうことでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/283
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284・片岡誠
○片岡説明員 指定自動車教習所もこの間に次第に整備されまして、自動車学校の数もふえた。それから無免許の取り締まりも私どもも相当いたしてまいりました。それから無免許運転そのものの危険性も訴えてまいりました。そういうことで、免許証をとる年齢、とった人も多くなりますし、また練習のチャンスも、やる場所も多くなりましたので、自然無免許というものが少なくなってきている。行政として進歩していったんだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/284
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285・中谷鉄也
○中谷委員 そこでお尋ねをいたします。
酒酔いの点ですけれども、私はこういうことでそういうふうなこまかいことをお尋ねするわけなんです。要するに重大事故というのがある。その重大事故の原因というのは酒酔いであり、無免許であり、そうしてあるいはその結果とみてのひき逃げなんで、ひき逃げは別として、酒酔いというものをそこの点で取り締まっていく。酒酔いで運転してはいけないのだということの点について拘束力を強めていく。どの程度の拘束力があるかは別として、刑事局長のおことばによると拘束力があるのだというのだから、強めていけば、いわゆる重大事故というものは防げるのではないか。あるいはまた無免許という面についての取り締まりは防げるのではないかという考え方も出てくる。何も結果が発生してから、懲役刑五年をくらわす必要がないじゃないか。まずそこの点を押えていったらどうか。その点の努力が必要じゃなかろうかという点でお尋ねをするわけですけれども、酒酔いについて、単純な事実だとおっしゃるのですけれども、そうすると昭和三十六年は、昭和三十五年の指数一〇〇に比べまして五三まで激減をいたしておりますのは、これは一体どういうわけでございましょうか、五三まで激減をいたしているように私は資料で拝見をいたしますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/285
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286・片岡誠
○片岡説明員 確かにこの数字、御指摘のように五三になっておりますが、三十五年から三十六年にかけてどういう事情で変化したか、ちょっと私いま御説明いたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/286
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287・中谷鉄也
○中谷委員 ですから、いわゆるアルコール検知器が整備できたから、単純なんだとおっしゃっていただいてもいけないと思うのです。どうしても酒飲み運転というものはなくなってもらいたい。そうすれば事故というものはなくなるだろうという観点から、昭和三十五年から三十六年にかけて何で減らすことができたんだろうか。この理由を知りたいと思う。この点については、私は成果が非常に上がっていると思うのです。どういうわけがあるのか、次回にでも、これはまじめにひとつ私は検討してみたいと思うのです。事故分析を次回にいただくということをお約束いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/287
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288・片岡誠
○片岡説明員 次回までに原因を調べます。あるいはひょっとしたら数字が間違っているかもしれませんので、よく調べたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/288
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289・中谷鉄也
○中谷委員 私も質問を申し上げながら、この五三というは、あるいはミスプリントじゃないかという感じもするのですが、この数字が頭にこびりついて離れませんので、分析してこの結果をお知らせ願いたいと思う。
そこで、そうすると、あらゆる重大事故というものが酒酔いと追い越しあるいはまた最高速度の出し過ぎということによって惹起されておるという点から、まず警察庁にお尋ねいたしたいと思います。酒酔いなどについての行政処分というかっこうの一般的予防、あるいは本人に対して反省を促す方法、これを行政処分の実態について、酒酔いについてどういうふうな行政処分になっておるかというようなことは、お答えいただけるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/289
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290・片岡誠
○片岡説明員 酒酔い運転につきましては、行政処分としては一番きびしい態度をもって臨んでおります。したがいまして、事故が発生しない場合でも、必ず行政処分はするというたてまえで、特に酒酔いの程度のひどい場合には、取り消しまでするというくらいの態度で臨んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/290
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291・中谷鉄也
○中谷委員 取り消しまでするではなしに、取り消し件数はこのくらいあるんです、こういうふうに取り消しをしておれば、酒酔いに対するむしろ威嚇力というか、予防的な作用というものがあるんじゃないか。何も運転手は、重大事故を起こして、人が二人も三人もなくなる、あるいはかわいい子供さんを殺すというふうなときには、懲役五年をくらうんだということを頭において運転をしているものではなかろうと思うのです。それよりもっと身近な、酒酔いで運転をすれば、行政処分によって免許が取り消しになる、あるいはまた公判請求もされるということのほうが、むしろ威嚇力というか、一般的予防という点からいって大きいのではないか。これを私たちは道交法の中の活用において十分まかなえるのじゃないかという考え方なんです。したがいまして、酒酔い運転であるとか、あるいはまた追い越しであるとかいったような点についての行政処分について、強い態度で臨んでおるのだということではなしに、これについて大体このような行政処分の傾向になっておるという資料をもって、酒酔い運転などについての行政処分というようなことがどんどん出されて——私は当然だと思うし、そのようなことは、交通事故防止を願っておるわれわれの立場からいっても全く賛成なんですから、そういう点についての資料をお出しいただきたい。そういうような資料について、私のほうは、もしかりにそういう点についての行政処分が不適当ではないか、さらに重くすべきだという点がありましたら、その点については問題点を指摘させていただきたい、かように考えるわけです。
そこで刑事局長さんにお尋ねいたしますが、いわゆる道交法違反事件についてでありますが、酒酔いであるとか、あるいは無免許などについては、大体どの程度いわゆる公判請求をされておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/291
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292・川井英良
○川井政府委員 そういう統計はつくっておりません。非常に数が多いのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/292
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293・中谷鉄也
○中谷委員 だから、統計は別として、非常に酒酔いであるとか、あるいは無免許、あるいは追い越し、非常なスピード違反というものについては、どんどん公判請求をしておるのだということで、私はむしろそういうことについて異議はないわけなんです。納得するわけなんです。そういう点について、あらためてまた資料と言ってもこれはたいへんなことですから、資料、資料と言って資料の要求はいたしませんが、一応次回に課長さんのほうから一般的な傾向についての御答弁をいただけるように、ひとつこれはお願いをしておきたいと思います。
次に、この機会にお尋ねをしておきたいと思いまするけれども、反則金の問題でございます。これはもう、反則金の性格その他については、いろんなことを論議されておりますから、そういう点についてはお伺いをいたしませんが、要するに反則金というものを設けたのは、とにかく罰金を科すことによって罰金による感銘力が低くなるのだ、だから反則金というものを設けたのだということなんですが、私はやはり最も悪質な事犯というものは、そういう一番下のところからの積み重ねの中で出てくるだろうと思うのですが、反則金という制度を設けて、きわめて単純な、きわめて俗な言い方ですけれども、お金のある者が刑を免がれるというふうな一面を持っていないかということがいわれるのですけれども、そういう中で、順法精神全体に悪い影響を及ぼさないかという点が心配だと思います。ひとつ、局長さんのほうからこの点については御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/293
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294・川井英良
○川井政府委員 反則金通告制度につきましては、確かにいろいろな問題があろうかと思います。道交法違反という、ちょっと十年あるいは二十年前には予想もしなかったような事態が、今日現出されておるわけでございまして、御承知のとおり、大体検察庁で受理しますのは、年間六百万件ということでございます。その六百万件の内訳について、先ほど御指摘のように、その中で酒酔いが幾らある、無免許が幾らあるというようなことを、ほんとうは一々分類することが適当でしょうけれども、技術上は分類が不可能な状況なほどふえておるかっこうに相なっておるわけでありまして、いま手元に統計の持ち合わせがないということは、そういうところに一つの根因があるわけでございます。問題は、罰金のこのままの制度でいきますならば、道交法違反について、罰金の感銘力を薄くするのだということも、この制度を導入しようとした確かに一つの動機であることには間違いありません。ただ問題は、そうかといって御指摘のように、金を出せば済むんだというようなことで、順法精神を低下させるということは、この交通事情の現実からいいまして決して適当なことではございませんので、いろいろと勘案をいたしまして、現在の道交法の罰則はそのまま残しておきまして、その罰則の類型の中で、比較的定型的なものであって、そしてまた比較的軽微なものというふうなもののみにつきまして、反則金制度というものをとって、一方におきましては、反則金をとった類型のものにつきましても依然として罰則は残してあるわけでございます。その辺のところが、先ほど御指摘になりました順法精神の低下を何とかして防ぎたいという一つの打った手であるわけでございます。ただ、反則金の性質については、あえて質問しないとおっしゃいましたけれども、これは反則金の性格にも関係することでございまして、やはり反則金という名前からも明らかなように道交法という罰則に違反した者に課せられる一種の行政上の制裁金であるということは、これは明らかなことでございまして、単に金を納めれば済むというわけのものではありませんで、罰則に違反したということを前提といたしまして、その行為について科せられる反則金であるというふうに御理解を賜わりたいと思います。そうであるといたしますならば、先ほどの罰則を依然として残しておくという制度と相まちまして、順法精神の低下ということについては、これを防ぐための有力な布石になるのではなかろうか。またその辺のところを、この制度が成立しますならば大いに強調してまいらなければならない、また運用につきましても、順法精神の低下にならないようにこの制度の慎重な運用をしなければならない、こういう覚悟でおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/294
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295・中谷鉄也
○中谷委員 それから、警察庁の方にお願いしておきますが、統計というのは何年かおくれて出てくるわけですが、無免許、酒酔いについての指数の関係で、四十一年から四十二年にかけての傾向は一体どういうことに相なっているか、この点について詳しいものをお出しいただきたいということは申しませんけれども、この傾向ははたして刑法改正をしなければならないのかどうかということと関係がありますので、この点についても次回に御答弁をいただけるようにひとつ御準備いただきたい、このことをお願いしておきます。
そこで、時間がないようでございますので、運輸省の方にお尋ねをいたしたいと思います。次のようなことです。要するに、交通事故の取り締まりをとにかく徹底化していくというようなことで、事故のあった者についてはきびしく処分をしていく、こういうふうな考え方というのは、同時にたとえばタクシーの運転手などについての、個人タクシーの認可などの問題との関係において理解しなければ、ただ取り締まりだけをきつくして処分だけしていくということでは私はいけないと思うのです。要するに、たとえば個人タクシーの認可というものを運転手が望んでいる、そういう場合に運転手が、自分が事故を起こしたら刑務所へ行かされるから事故を起こすまいという抑止力以上に、いわゆる違反をしないでおったならば個人タクシーの認可がもらえるのだ、だから違反をしないようにしようという拘束力と一体どちらが強いだろうかということになってまいりますと、私はそちらのほうが強いのじゃないかという感じさえもいたします。ところが個人タクシーについては、たとえば三十万都市等においては、なお認可されていない町なんかもある。もちろん私はこの問題について相当調べてみましたけれども、中小タクシー業者のいわゆる経営難といわれている問題との関係において、それからまた県に個人タクシーの認可がされたら、同時に中小タクシー業者に対する増車分の免許もおりてくるだろう、そうすると、現にタクシー運転手として働いておるところの一台当たりの水揚げが減ってくるということに対する不安などというものがからみ合いまして、なかなかにこれはむずかしい問題であることが最近私はわかりましたけれども、個人タクシーの認可について、これは閣議においても問題になったことですけれども、どういうことに相なっているのか。何か道路運送法の運用の面において前向きに、というようなもう言い古された答弁では私は困るのですが、どういうことに相なっているかということについて、ひとつ明確な方針についての御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/295
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296・横田不二夫
○横田説明員 個人タクシーは、御承知のとおり三十四年に神風タクシーを契機といたしまして生まれたものであります。これはもちろん事故防止をねらいといたしまして、ハイヤー・タクシーの運転手に夢を与えるとともに、タクシー業界に新風を吹き込む。といいますのは、タクシー業界がサービス面で欠陥があります、この場合に個人タクシーのよさを発揮させる、こういう点にあったと思います。したがいまして、この創設の本旨につきましては、現在でもわれわれの考えは変わっておりません。かつて昭和三十八年には行政管理庁からも勧告を受けました。当時はオリンピックを控えました前年でもございますので、当時、東京の場合を例にあげますと、二千二百両ばかりでございましたけれども、そこに千八百両の免許をした次第であります。それからごく最近におきましては、この六月二十七日に臨時物価対策閣僚協議会におきまして、ハイヤー・タクシーのサービスに関連して、個人タクシーの一そうの育成を行なうべきではないか、こういうふうな項目を含む了承がなされました。この点につきましては、わが省といたしましても事務の処理促進に十分配意いたしまして、特に東京においておくれておる未処理件数の処理につきまして、ただいま東京陸運局で早急に計画を立てておるところでございます。また、地方の三十万中小都市につきまして、個人タクシーをどういう場合に配置するか、この点につきましては、単に人口規模だけで基準をきめておるわけでは何もございません。個人タクシーは、御承知のとおりみずから経営者であると同時に、また運転者でもある。すなわち、人を使用しないで、みずからがみずからの事業と生活をかけている。この点から安全が確保される。また特に道交法その他の事故等、あるいは違反等を見まして、交通事故のない、いい人を厳選しておりますので、したがいまして、りっぱな人が現在やっておられるわけでございますが、そういうふうな営業形態でございますから、個人タクシーという、一人でやっていくという仕事が成り立つような町、タクシーでございますので、流し営業が成り立つような町であれば、それが何十万の都市でありましょうとも、認めて差しつかえないと思っております。御承知のとおり、現在認められておりますのは、全国で四十五都市に及んでおりますけれども、その中には三十万に満たない都市もございます。あるいは陸運局相互間に若干の相違はあるかもしれませんけれども、その点につきましては、今後ともよく陸運局を指導してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/296
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297・中谷鉄也
○中谷委員 私はそういう御答弁じゃないかと思って心配していたのです。端的にお答えをいただきたいと思います。大体三十万くらいの都市といえば、六百から七百程度のタクシーが、要するに自動車台数があると思うのです。ずばりとお尋ねをいたしますけれども、一体個人タクシーについては、そのあるべき姿としては、要するにタクシー業者のタクシー台数に対して、何割程度が三十万くらいの都市では適当だと思いますか。要するに、三十万くらいの都市の運転手については、個人タクシーが四台や五台認可されてきたら、かえって非常な混乱乱を生ずるという心配がある。だから、結局あるべき姿としては一体何台くらい認可すべきだろうか、そういうようなことについての御方針は少しもないようなんですね。道路運送法の解釈の中で、いろいろな問題が成り立つように、前向きに、というようなことで、とにかく自動車局の御答弁はいつもそんな御答弁の繰り返しなんです。だから、一体あるべき姿として、中都市において何%くらいの個人タクシーを認可すべきか。日本全国でもいいでしょう。日本全国の中で、今後何年後には何割くらいの個人タクシーということに相なるのだろうかというような御方針についての御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/297
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298・横田不二夫
○横田説明員 個人タクシーが、地方の中小都市、たとえば三十万以下の都市におきまして、全体の車両数で何割くらいを占めるべきかということは、理論的にはちょっと申し上げられないと思います。ただしかしながら、その都市の実際の実情——タクシーというのは流し営業でございます。したがいまして、流し営業のサービスの実情に応じまして、場合によっては、何割であろうとも個人タクシーに出さなければいけない場合もあろうと思います。しかしながら、現実にはたとえば申請がない場合もございます。そういうことでございますので、たとえば東京では二割近くになっておりますが、これを今後ある程度ふやしてまいりますと、場合によっては、東京においてはこの割合を越えることもあるかもしれません。しかしながら、全国的に個人タクシーの数が法人タクシーとの比較において何%でなければならない、こういうふうなことは、私限りでは何とも申し上げられませんけれども、個人タクシーが生まれました趣旨というものが、新風を吹き込み、ハイヤー・タクシーの運転手に夢を与える、こういうことでございますので、道路運送法六条一項の基準ばかりではございません。また、三項には弾力条項があります。その弾力条項の運用によって、その地、その地の実情によって運用していくのが時宜に適するものである、かように私は考えるものでございます。したがいまして、この点は全部陸運局長の権限になっております。陸運局長は、陸運局長の権限におきまして、各地の実情に応じてやっていく、こういうふうに指導していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/298
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299・中谷鉄也
○中谷委員 ですから、何%ということを、——三%とか一四%ということを聞いているわけではないのです。とにかく、何%から何%までの間に落ちつくでしょう、それはとにかく自動車行政の中で、タクシーに対する行政指導の中で、またあるべきタクシー業界の姿として考えているんだというふうな御答弁があってしかるべきなんです。要するに各都市の需要と供給との関係、いわゆるいろんな複雑なファクターを出してくれば答えにくい問題ですけれども、全体としてというようなことになれば、きわめてざっぱくな質問をしているんだから、しかし、それはざっぱくであると同時に、方針に関することなんです。そういう点についての御答弁を私はひとついただいていいんじゃないかと思うのです。もっとこまかいことを言えば、三十万都市なんかの新規のタクシー業者というのはだれなのか。警察署長を含めて陸運局につとめておった課長さんですよ。そんな人がタクシー新規の認可を受けている。まともにタクシー業をやろうとしているまじめな人のところに、なかなか認可はきませんよ。そういう状態の中で、個人タクシーというけれども、要するに厳罰をもってタクシーの労働者に処するんだったら、同時にあめも与えてやらなければいかぬじゃないか。そのあめの一つには、個人タクシーの問題もあるんじゃないかということを私は申し上げておる。そのことについて、とにかく課長さん限りではそういうふうな答弁は無理でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/299
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300・横田不二夫
○横田説明員 今後の方針そのものを、とにかく変えるとかなんとかいうことを申し上げるのは私は課長でございますからできませんが、しかしながら、ハイヤー・タクシーの運転者に夢を与えるという意味で生まれているわけでございます。したがって、その点は十分尊重してまいります。ではありますけれども、一般のたとえば自家用の運転者さんからの出身者を、これをそうなるがゆえに拒否するというわけには法のたてまえ上できないものでございます。しかしながら、ハイヤー・タクシーの運転者であれば運転あるいは道路運送法等の営業知識も豊富でありましょうから、そういう点について重く見ているということは考えられることでございまして、当初の創設の趣旨を尊重してやっていきたい。しかしながら、やはり事故を起こさないということで、いい運転者さんを選んでいる。これは厳選をしているからこそ現在の個人タクシーがよろしいわけでありますので、この方針を続けていく。そのためにはやはり事故歴とか、あるいは道路運送法違反、たとえば白タクの経歴があるとか、こういう方を入れるわけにはいかない、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/300
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301・中谷鉄也
○中谷委員 当然のことでしょう。そういうふうな人身事故を起こしたとか、あるいは陸運局のいわゆる方針に反したような違反があった。道路運送法それ自体だって、これは大論争がございましたね。道路運送法のいわゆる認可というふうなことは、はたして必要なのかどうか。最高裁の判例も出ましてそれで確定いたしましたけれども、大論争がございましたね。そういうようなことを考えてみますと、個人タクシーの当初の目的というのは、現在は非常にゆがめられたと思うのです。また同時に、課長さん、個人タクシーの認可を受けている人で、タクシーの運転手さん出身が一体どの程度の割合か、あるいはまた自家用車の運転手さんがどの程度のものかというようなことについて、大体のことはおわかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/301
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302・横田不二夫
○横田説明員 全国の点は承知しておりませんが、東京陸運局管内、特に東京都、神奈川県三市、この一都三市におきます最近における個人タクシーの免許の状況を見ますと、ハイヤー・タクシーの運転者出身の方が六十数%、約三分の二を占めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/302
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303・中谷鉄也
○中谷委員 関西のほうでは足切りということばがございますね。要するに水揚げを幾らあげなければ歩合が零になってしまう。その足切りというのが八万円であったり、十三万円であったりというふうなことで、ずいぶん各業者によって違うというのが事実です。あるいはまた、あるタクシー会社の運転手が道交法に従ったそのとおりの運転をして水揚げをしてみたら、いつもの水揚げの三分の一にしか達しなかったという話も聞いておりますが、もちろん、そういうふうな、何万円まず水揚げしてこなければ歩合給は渡しませんよということは、もうおたくのほうの立場からいってはとんでもないことだということに相なるのでございましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/303
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304・横田不二夫
○横田説明員 私のほうにおきましても、道路運送に基づきます自動車運送事業等運輸規則というものがございまして、これにおきまして例の神風タクシー問題が起きました三十三年、そのときに改正を行ないまして、一定の収入をあげるとか、あるいは一定の距離を走らなければいけない、こういうふうな俗にいうノルマを強制するような結果になるようなことをやってはいけない、こういうふうにいたしております。また最近におきましては、先ほどお話がございましたことしの二月九日、労働省の出しました自動車運転者の労働時間等の改善基準、この通達に従いまして事業者を指導しております。もちろんこれは労働省の所管でございますので、われわれとしては側面からの協力でございますけれども、やはり運転者諸君も、また事業者も、いずれも法を守っていく、これが第一前提である、かように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/304
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305・中谷鉄也
○中谷委員 刑法の審議の中で、大竹委員が最初お触れになった点ですけれども、私は別の角度から指定自動車教習所の乱立の問題であるとか、あるいは教習所の指導員というものは、一体どの程度の能力と指導力を持っておるかというふうな問題、これは本日の冒頭で私がお伺いをしました自動車運転による重大な人身事故の具体的事例、おそらく一般的にいって免許の取り方が非常にやこしい運転手ではなかろうか。これはずっとさかやのぼって分析していけば教習所の問題にまで突き当たっていくのだろうという点から、私はそういう点をお聞きしたいとも思います。
それから精神病の問題については、かなり皆さんお尋ねになりましたのでこの点は避けるといたしまして、要するに、重大な事故の原因というのは、酔っぱらいと無免許、そして結果としての引き逃げというふうなものである。そうすると、一体酔っぱらい運転というものはどうして防止するか、そういうものがかりに防止できたならば、別に刑法を改正しなくてもいいのではないかという論議を展開してみたいと思います。こういうふうに思いますので、そのことはさらに刑事局長さん、あるいは警察庁の方にお尋ねをいたしたい。本日、私がきわめて粗雑ではございましたけれども、いただきました表等に基づいて指摘をいたしました点については、さらにひとつ政府委員のほうにおいてもぜひとも御検討いただいて、次会にはそういう点についての論議をさしていただきたい。こういうことで本日は質問を留保いたしまして、この程度で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/305
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306・大坪保雄
○大坪委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
次会は、明七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後七時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505206X03019670706/306
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