1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月十六日(火曜日)
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議事日程 第十号
昭和四十二年五月十六日
午後二時開議
第一 日本国とアルゼンティン共和国との間の
友好通商航海条約の締結について承認を求め
るの件
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○本日の会議に付した案件
菅野通商産業大臣の中小企業基本法に基づく昭
和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度中
小企業施策についての発言及び特定繊維工業
構造改善臨時措置法案(内閣提出)及び中小
企業振興事業団法案(内閣提出)の趣旨説明
並びに質疑
日程第一 日本国とアルゼンティン共和国との
間の友好通商航海条約の締結について承認を
求めるの件
午後二時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
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菅野通商産業大臣の中小企業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度中小企業施策についての発言並びに特定繊維工業構造改善臨時措置法案(内閣提出)及び中小企業振興事業団法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/1
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002・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) この際、中小企業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度中小企業施策についての通商産業大臣の発言を許し、あわせて、内閣提出、特定繊維工業構造改善臨時措置法案、及び中小企業振興事業団法案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣菅野和太郎君。
〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/2
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003・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする中小企業施策並びに特定繊維工業構造改善臨時措置法案、及び中小企業振興事業団法案について、その趣旨を説明いたします。
まず、昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする中小企業施策について御説明申し上げます。
わが国経済全般の回復とともに、中小企業の事業活動も活発化してきておりますが、経営面での回復は十分でなく、企業倒産も高水準で推移しております。
経営面での回復が十分でないのは、人件費、資本費が上昇基調で推移しているのに対して、生産性の向上によってこれを吸収するまでに至っていないためでありますが、これは労働力需給の逼迫、需給構造の変化等の中小企業をめぐる経済的諸条件の変化に対して中小企業が十分適応できていないことによるものと思われます。
中小企業の生産は、昭和三十年代においてかなりの伸びを見ましたが、大企業の生産の伸びが中小企業の生産の伸びを上回ったため、工業生産に占める中小企業の比重は若干低下しております。しかしながら、この間において生産の迂回度が高まり、消費が高級化、多様化したため、比較的中小企業の比重の高い分野での成長が高くなっており、中には、中小企業から大企業へと成長を遂げるものもかなり見られております。したがいまして、今後においても、経済の成長に伴い、中小企業の発展の可能性は大きいものと考えられます。
さらに、商業におきましても、卸売り業では経営規模の拡大傾向が見られ、小売り業でも大量廉価販売店の発展が見られております。しかしながら、わが国商業は、全体としては、いまだ経営効率の低い小規模企業が圧倒的に高い比重を占めており、このため消費者物価安定の見地からも、中小商業を含む流通機構全体の早急な近代化が特に要請されております。
政府といたしましては、このような状況に対処して、昭和四十一年度においては、経済的諸条件の変化に即応した中小企業の近代化のための施策を一そう充実するとともに、中小企業をめぐる環境の整備を進めました。これらの施策は、中小企業者の努力と相まって、一応の効果をあげておりますが、前述のごとく、中小企業がきびしい構造変動に直面していることにかんがみ、今後は事業の協業化、共同化等による構造改善対策を中心として、諸対策の総合的な推進をはかる必要があります。
昭和四十二年度においては、このような認識に基づいて、次のような諸施策を推進する所存であります。
すなわち、中小企業の協業化、共同化を推進するために中小企業振興事業団を創設するとともに、協業化のための新たな組織として協業組合制度を設けることとしております。
また、指導事業の充実、労働力の確保等のための労働対策の拡充、輸出の振興、官公需確保対策の強化等につとめるとともに、下請企業の問題につきましては、下請取引の適正化、受注の安定の確保をはかることとしております。
次に、小規模企業につきましては、個人企業の家族専従者に対する完全給与制の実施、小規模企業共済制度の拡充、経営改善普及事業の強化、中小企業振興事業団の活用等により、その経営の合理化と安定をはかることとしております。
さらに、金融面につきましては、政府関係中小企業金融機関の貸し出し規模の拡大、信用補完制度の充実等により金融の円滑化を進めることとしております。
次に、特定繊維工業構造改善臨時措置法案及び中小企業振興事業団法案の趣旨について御説明申し上げます。
まず、特定繊維工業構造改善臨時措置法案の趣旨でありますが、わが国繊維工業は、国民の衣料及び生産資材の供給と多額の輸出を行なう重要産業でありますが、その零細過多性等構造上の脆弱性に悩み、加えて労働力需給の逼迫、発展途上国繊維工業の発達等、内外の経済的環境は最近一段ときびしさを加えるに至っております。
この法律案は、このような事態に対処して、特定の紡績業と特定の織布業とを対象として、昭和四十二年度を初年度とし、関連労働者の職業の安定につき配慮しつつ、その構造改善をはかるための措置を講じようとするものでありますが、次にその概要を御説明申し上げます。
第一は、特定紡績業について、通商産業大臣が設備の近代化、規模の適正化、過剰設備の計画的な処理その他構造改善に関する事項について基本計画及び毎年の実施計画を定めるものとし、これらの計画の実施に関し、資金の確保及び課税の特例等の規定を置くこととしております。
また、過剰設備の処理に関しては、共同行為を指示することとし、さらにその後、特に必要ある場合には、処理に関する命令をすることができることとしております。
第二は、特定織布業について、特定織布業商工組合が設備の近代化、規模の適正化等の構造改善に関する事業を総合的に実施するため事業計画を作成し、通商産業大臣の承認を受けることができることとし、承認を受けた計画に従って実施する事業についての資金の確保、補助金の交付、課税の特例等の規定を置くこととしております。
第三は、繊維工業構造改善事業協会についての規定であります。協会は、この法律に基づき、業界関係者、関係都道府県知事及び学識経験者が発起人となり、通商産業大臣の認可を受けて設立されるものであり、協会の資本金は、その全額を政府が出資することとしております。
協会は、特定紡績業における過剰設備の買い取り及び廃棄、特定織布業構造改善事業に必要な資金調達をはかるための債務保証及び融資等の業務を行なうものとしております。このうち、債務保証及び融資の業務に関し、信用基金を設け、また、特定紡績業における過剰設備の買い取り等の費用に充てるため特定紡績事業者から強制徴収の裏づけをもって納付金を徴収することができることとしております。
以上のほか、この法律は昭和四十七年六月三十日までに廃止することとし、また、構造改善の円滑な実施をはかるため、繊維工業設備等臨時措置法について所要の改正を加えることとしております。
次に、中小企業振興事業団法案の趣旨でありますが、最近の中小企業をめぐる経済環境は一段ときびしさを増しており、わが国の中小企業は画期的な構造改善を迫られております。
政府といたしましては、中小企業の構造改善を促進するため、従来から各種の施策を実施してまいりましたが、わが国の中小企業をより一そう振興するためには、中小企業の構造改善を推進するための指導と助成を有機的かつ総合的に実施する専門的な機関が必要であると考えられます。
中小企業振興事業団は、このような要請にこたえるため、現行の中小企業高度化資金融通特別会計と特殊法人日本中小企業指導センターを発展的に解消し、両者を統合して一つの総合的な機関とするものであります。
次に、本法案が規定する中小企業振興事業団の概要を説明申し上げます。
まず、事業団の資本金としましては、一般会計からの出資金約百四億円のほか、中小企業高度化資金融通特別会計の貸し付け金債権等を引き継いで、合計で約二百五十億円を予定しており、役員は、理事長以下七名を予定しております。
次に、事業団の業務といたしましては、中小企業の構造改善を促進するために必要な事業を総合的に行なうこととしておりますが、これを法案に即して説明申し上げますと、
まず第一は、指導事業であります。中小企業の構造改善を促進するためには、親身になって相談に応じ、適切な助言を行なうことが大切であります。事業団は、都道府県と協力して中小企業者の依頼に応じて必要な指導を行なうこととしております。
第二は、資金の貸し付けあるいは施設の譲渡事業であります。事業団は都道府県の助成を前提に、都道府県と協力して中小企業者の事業の共同化、協業化を中心とする構造改善事業あるいは織布業が産地組合を中核として行なう設備の近代化、企業の集約化等の構造改革事業に対して、長期低利の資金の貸し付けを行なうとともに、さらに中小企業者の依頼に応じてこれらの事業に必要な施設の分割譲渡を行なうこととしております。
第三の事業は、研修事業であります。本事業団は中小企業の経営管理の合理化や技術の向上をはかるため都道府県の指導担当者を養成するとともに、中小企業者またはその従業員に対する研修にも力を注ぐこととしております。
事業団は、以上の業務のほか、これらの各業務を行なうための基礎となる中小企業に関する情報の収集や調査研究を行ない、その成果を広く中小企業者に普及する事業も行なうこととしております。
なお最後に、本事業団の監督は通商産業大臣が責任をもって当たることとしております。
以上が昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする中小企業施策並びに特定繊維工業構造改善臨時措置法案及び中小企業振興事業団法案の趣旨であります。(拍手)
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中小企業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度中小企業施策についての発言並びに特定繊維工業構造改善臨時措置法案(内閣提出)及び中小企業振興事業団法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/3
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004・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) ただいまの年次報告等についての発言及び趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。永井勝次郎君。
〔永井勝次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/4
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005・永井勝次郎
○永井勝次郎君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十一年度中小企業の動向に関する年次報告についてお尋ねをいたします。
質問の第一は、中小企業を将来どのように持っていこうとしておるのか、そのビジョンを明らかにしていただきたいということであります。
年次報告は問題をいろいろ取り上げております。しかし、全体として、問題点を提示するにとどまり、その分析、究明、追求を十分に掘り下げておりません。現実直視を回避しておるのであります。したがって、それらの諸点に触れ、第一の質問の中身として、二、三お尋ねをしてみたいと思うのであります。
その一つは、中小企業の数が多過ぎるという点であります。全産業四百二十二万八千、大企業は二万七千、差し引きました残りの四百二十万、九九・四%が中小企業であります。さらに、中小企業の中の三百二十五万が零細企業であります。多過ぎることは事実であろうと思うのであります。政府は、その過多性を克服する方向で対策を進めてきたはずであるにもかかわりませず、数は、年々減るどころか、増加する一方であります。年次報告は、これを中小企業の繁栄として評価しておるのでありますが、過度の競争原因をどのように判断しておられるのか、承りたいのであります。
その二は、企業の規模が小さ過ぎるという点であります。中小企業の従業員数は三千百三十八万人、労働集約的と指摘をされております。工場出荷額、商業販売額は全体の半分前後でありますから、その過小性はいなめないところであります。これに対して政府は、規模利益追求の立場から適正規模の指導を進めてまいりました。適正規模の基準は何なのか、適正規模ならば企業経営の安定が保証されるのかどうかについてお伺いをいたしたいのであります。
その三は、企業の収益性が低いという点についてであります。国税庁調べによる法人企業の資本金別利益率の四十一年七月から九月期を見ますと、資本金十億以上の法人八百八十八社、その営業利益五千七百億円、純利益三千億円で、資本金五千万円以下の中小企業法人が全部束になってかかっても及ばない実情であります。このような利益率の格差をどのように評価されておられるのか、承りたいのであります。
その四は、共存企業についてであります。大企業と中小企業と共存している領域としてあげているのでありますが、共存といっても五分と五分の対等の立場にある共存ではありません。親企業と下請企業といった従属関係の共存であります。力関係を無視した評価に立っていると思うのであります。企業規模が適正であれば力関係は考えに置く必要がないというのかどうか、承りたいのであります。
その五は、倒産についてであります。昭和四十年度三千百四十一件、四十一年度三千百八十七件、四十二年度に入って漸増の方向であります。これらの数字は、負債額一千万円以上の大口の分についてのみの調査でありますが、それ以下の小口のものについての調査はどこにもありません。無視されておるのであります。おそらく膨大な数字にのぼるだろうと思われます。原因を景気変動に転嫁して、構造的要因、特に政府施策の欠陥に基づく要因についての究明を怠ってはいないか、倒産防止の対策があるのかないのか、承りたいと存じます。(拍手)
要するに中小企業対策は、中小企業のワクの中だけで立つものではありません。全産業の中で総合的に構成さるべきものであります。また、中小企業一般という大ざっぱな立案では、あまりにも粗雑に過ぎます。業種別、業態別、規模別の具体的なものでなければなりません。進行しつつある産業再編成の中で、中小企業はどう位置づけされ、どういう役割りが要求されるのか、そのビジョンを佐藤総理から伺いたいと思うのであります。(拍手)
質問の第二は、小規模企業対策についてであります。
近代化、高度化対策も、資金調達力強化対策も、予算構造も、小規模企業にはほとんど及ばない政策体系であります。中小企業基本法第二十三条の小規模企業に対する、すなわち、「他の企業の従事者と均衡する生活を営むことを期することができるように金融、税制その他の事項につき必要な考慮を払うものとする。」こういう規定は空文化してしまっておるのであります。「均衡する生活を営むことを期することができるように金融、税制その他の事項につき必要な考慮を払うものとする。」との規定は空文化してしまっているのであります。中小企業内部の格差は拡大する一方であります。一体、経済政策の観点からだけ小規模企業を考えているのかどうか。小規模企業の零細性、企業というよりは、生活のための仕事という性格の上から考えましても、社会政策の視点から十分に考慮し、政策を立てていかなければなるまいと思うのであります。一体、経済政策だけで小規模企業が成り立ち得ると考えておるのかどうか。その点、政府の中小企業対策は、ことばだけでありまして、中身は何もありません。じゃま者扱いで、避けて通るという冷酷なものであります。経済ベースで対処するのか、社会政策を加味するのか、明確にお伺いをいたしたいと存じます。(拍手)
質問の第三は、事業活動の不利の補正についてであります。
事業活動の不利の補正は基本法の重要な柱の一つであります。このことについて、政府はいままで何をやってきたか、その実績を明らかにしていただきたいと思うのであります。大企業との関連、下請関係の諸問題、金融における歩積み・両建ての問題、税金の問題、何一つ実効はあがっておりません。中小企業の近代化、高度化などの構造改善政策は、中小企業自身の内部の問題として、これを推進することができます。しかし、金融や不公正な取引など、強い者勝ちの外部にある諸条件は、中小企業だけでは手に負えないのであります。これら外部条件の整備が、中小企業対策でもあり、不利の補正の焦点でもなければならないはずであります。政府は、この解決に怠慢であります。今後どう対処するかを承りたい。(拍手)
この際、特に大蔵大臣にお伺いいたしますが、資本自由化のもとでは、金融は重要性を加えてまいりますが、拘束預金の問題はもちろん、中小企業関係への長期の金融、金融ワクの拡大等について、どのような対策があるのか、中小企業対策の重点並びに小規模企業等に対する対策について詳しく承りたいと思うのであります。
質問の第四は、資本自由化対策についてであります。
直接的には食品関係、建築金物関係、ちり紙など広範な範囲にわたり、特に中小企業の流通分野がねらわれていると伝えられております。間接的には、大企業の国際競争力強化の名のもとに、下請企業に過酷な条件を強要し、あるいはセレクションが行なわれるなどのことが予想されます。中小企業への影響は甚大なものがあるといわざるを得ません。大きくは民族資本と国内産業の自主的活動の立場から、小さくは中小企業の保護助長の上から、適切に、かつ迅速に対処すべきであります。資本の自由化は、今後どのような運びになるのか、どのような対策がもるのか、明示していただきたいと思うのであります。(拍手)
次に、政府提出の中小企業振興事業団法案についてお尋ねをいたします。
その第一は、いわゆる近代化倒産についてであります。
近代化はしたが、経営は思わしくない。借り入れ金返済の重圧にあえぐという事例が、たまたま見受けられるところであります。指導と事業と一体で進めるという仕組みの中で、政府の責任は非常に重くなってきたように思われるのでありますが、その辺の配慮についてお伺いをいたします。
第二は、経済環境の外側の整備が必要ではないかという点についてであります。
近代化、高度化は、中小企業経営の内部の経済体制として、政府の助成を得て進めることができます。構造改善後における経営については、大企業との関係もあります。企業間の競合もありましょう。製品需要構造の変動もありましょう。労働力その他の外部的変化も考えられるのであります。問題は、企業の外側にある環境の整備が、内部の整備よりもより重要性を加えてきておるのではないか、この点について、どう考えているのかを承りたいと思うのであります。
次は、特定繊維工業構造改善臨時措置法案についてお尋ねをいたします。
その第一は、この法案の適用を、綿スフ・合繊紡、綿・スフ、絹・人絹の特定繊維に限定したのは、どういう理由によるのか、明らかにしていただきたい。
第二は、日本の繊維産業をどういうふうに位置づけ、今後どのように持っていく考えであるのかを承りたい。
世界の繊維産業の動向を見ますると、先進国では、再び勢いを盛り返し、合理化投資を行なって、体質の改善に非常な力を入れてきており、わが国の強力な競争相手となりつつあります。また、中国、台湾、韓国、パキスタンなどは、設備の近代化、増強を急いでおり、日本を追い上げてきておるのであります。後進地域は、労働賃金が安く、製品のコストも低いので、日本にとっては大きな脅威であります。これらに対処するわが国の繊維産業は、今後どういう方向をとろうとするのであるか、承りたいのであります。
第三は、毛織、染色、仕上げ、メリヤス、縫製部門の強化が急がれるのではないかという点についてであります。
後進国から安い製品が競争としてあらわれてくる場合、わが国は加工度の高い、高級製品で対抗していかなければならないのではないか。そのためには、染色、二次製品業界などの構造改善を急ぐ必要があると思うのであります。何ゆえにこれらの業種を適用から除外したのか、承りたい。
第四は、わが国の製品の輸入制限についてであります。
わが国の繊維製品は、先進国からも、また後進国からも輸入の制限を受けております。わが国製品の声価と、また歴史の上から考えてみましても、もう少し努力の余地があるのではないか。経済外交に欠くるところがあるのではないかと思われるのでありますが、これらの諸点についてお伺いをいたしたいと存じます。
以上であります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/5
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006・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
私からは、中小企業の位置づけとでも申しますか、あるいは今後の見通しにおいての中小企業のあり方、これをお尋ねのようでございました。その他各般にわたってのお尋ねでございますが、それらは各大臣の答弁に譲らしていただきまして、私はただいま申し上げるような点でお答えしたいと思います。
永井君の御指摘にもありましたように、わが国の中小企業は、数の上におきまして、わが国の産業の九九・四%だ。その大部分を占めておる。しかも、輸出あるいはその他の産業の面において果たしておる仕事量、これはまたたいへんなものでございます。しかし、最近におきまして、いわゆる労働力不足の状態を来たしておるし、あるいはまた開放経済に本格的に取り組むような状態になりました。また需給構造の変化等もありまして、ただいまたいへん苦しい状況に立ち至っておるのであります。
政府におきましては、この中小企業がわが国民経済において占むるその地位を十分認識し、これを補強するということに絶えず意を用いてきたのであります。御承知のように、そのためには何といっても近代化をはかり、生産性を高める、そして国際競争力を強めることだ、かように思って取り組んでまいったのであります。三十年代の初めにおきましては、中小企業は、お話のうちにもありましたように、大企業よりもその成長率はやや高いところにあったと私は思います。しかし、ここ数年は倒産その他たいへん苦しい状態に追い込まれておる。しかし、その実情をごらんになれば、加工度の高い中小企業は、その成長は期待される状況でございます。
私は、さような点を考えますと、中小企業、これはその加工度を高め、その生産性を高めることによって存立を続けることができる、また存立の意義がある、かように思うのでありまして、そういう意味からこれが対策をただいまいろいろくふうしておるわけであります。それがいわゆる税制あるいは資金融資の面においての問題でもあります。また、生産性を高めるための近代化を進める、あるいは業態の変化、協業化あるいは共同化を進める、こういうことにもなるのでありまして、今回、中小企業振興事業団をつくることも、ただいま申し上げるような具体的政策のその一つであります。
私は、今日中小企業の方々が当面しておられる状態はまことに苦しいものだと思いますが、ただいま申し上げるような政府の施策と、同時に、中小企業関係者の協力によれば、必ず近代的企業としてりっぱに成長することができる、かように確信するものでありまして、私は、さような意味で今後とも最善の努力を続けていくつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/6
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007・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 中小企業の大本につきましては、いま総理から詳細な御説明がありましたので、具体的な問題についてお答えしたいと思います。
中小企業の適正化の問題についてお尋ねがあったように思うのでありますが、中小企業の適正規模ということは、結局中小企業が存立し得るように中小企業の規模を持っていくというところがねらいでありまして、御承知のとおり、今日は大規模と比べて所得の格差があり、生産性も低いし、収益性も低いというところに中小企業の悩みがあるのであります。したがいまして、その適正規模というのは、その生産性なりあるいは収益性というものを確保できるように規模を持っていきたいというところがねらいであります。そういう意味におきまして、今回、中小企業振興事業団を設けましたのも、それをひとつねらって設けました次第であります。
それから産業構造に関連しても御質問がありましたが、なるほど産業構造自体は、これは中小企業者自体の問題でありますけれども、やはり外部的の問題についてこれを考慮すべきではないかという御質問があったと思います。これはもうお話のとおりでありまして、中小企業者自体がこれはもちろんやるべきでありますが、しかし、中小企業者自体でできないことが多々あります。そういう場合には、政府が積極的にこれを援助したいと思うのでありまして、たとえば先ほど御説明申し上げました繊維産業などの、これも産業構造の改善でありますが、これは業者自体でできない部分を政府が乗り出して、繊維産業の改善をやろうということで、今回皆さん方の御審議をお願い申し上げておる次第であります。お説のとおり、中小企業自体だけでは決してこれは完全に行なわれるものではありません。
それから小規模の対策についてお尋ねがあったと思いますが、これについては、労働、金融、税制面等においてできるだけ政府がその対策を講じなければならないことはもちろんであります。これは大規模と比べて、その点においても劣っておる点がありますからして、たとえば金融面につきましても、金融の資金の豊富、あるいは金利を安くするとか、あるいは税制面においては、大企業に比べて税金をもう少し安くするとかいうようなことについては、今回も個人企業の専従者の免税、減税というようなことを認めたのもその一つのあらわれでありまして、中小企業者の税金をできるだけ安くするというような方針をとって今日までやってきておるのであります。
それから、資本の自由化の問題について、中小企業に対してどう考えておるかというお話があったと思いますが、資本の自由化の問題について、これは日本の産業経済に対しては重大な影響を及ぼしますので、したがって、これが対策については目下政府が慎重に対策を検討中であります。ことに中小企業がこの資本取引の自由化において最も影響を受けると思いますから、したがいまして、その対策の重点はやはり中小企業が重点であります。そこで、この中小企業の対策につきましてはまだ具体的にこれは決定しておりませんが、外資審議会などにおきまして、目下審議いたし、また、通産省におきましても、これが具体的に、業種別に資本自由化に対してどうすべきかということをいま検討中でありまして、おそくとも六月までにはこれを完成したいと思っております。それによって、中小企業が資本の自由化によって打撃を受けないようないろいろな方策をいま考えておる最中であります。
なお、景気がよくなったにもかかわらず中小企業の倒産者がふえているじゃないかという御質問があったと思いますが、お話のとおり、確かに倒産者はふえております。それについては先ほどもちょっと申し上げましたが、労力の不均衡あるいは需給の関係等、あるいはまた中小企業が近代的な生産に沿うていけなかったというようなところに原因があると思うのでありまして、したがいまして、今後の中小企業を振興せしめるという意味におきまして、先ほど御説明申し上げました振興事業団をつくりまして、資金面のことについて考慮すると同時に、中小企業者の協業化、共同化をはかり、同時に、政府があるいは府県庁がこれを指導して、そうして営業を続けていくように、また繁栄せしめるようにしたいというのが今回の事業団の設立の本旨でありまして、そういうことによって今後倒産者を減らしていきたい、こう考えておるのであります。
それから、繊維についてお話がありましたが、なるほど永井さんのお話のとおり、繊維界はいま岐路に立っております。そこで、先ほど申し上げましたとおり、繊維産業の構造改善についての法律案をいま御審議をお願いすることになったのでありますが、お話のとおり、先進国は繊維産業についての構造的な大改善をやっておりますし、また、低開発国は繊維産業について安い労賃で繊維産業に手を染めておりますから、日本はいまはさみ打ちにあっておるような状態であります。そこで、思い切って繊維産業の構造改善をやりたいということで、先ほど御説明申し上げた法案を提案したのでありまして、これによって私は繊維産業のこの岐路を打開できるのではないかというように考えております。先ほども染色やその他二次製品についてはこの繊維特別法は考えていないじゃないかというお話がありました。なるほどその点はわれわれも気づいておる点でありますが、基本的なものにまず手を染めて、それから同時に引き続きこの染色というような問題に進んでいきたい。お話のとおり、染色、二次製品が日本の今後の繊維産業の進むべき道であると考えますので、この点は決してわれわれのほうでも等閑に付しておるわけではありません。引き続きこの問題については、また皆さん方の御審議をお願いしたいというように考えております。お話のとおり繊維産業というものは、今日は輸出の大体二割近くの地位を占めておりますが、日本全体の産業といたしましては約一割を占めておりますから、これは日本の重要産業でありますし、また、今日までの日本の産業というものは、繊維産業の発達のおかげでここまで来たと思うのでありますからして、また繊維産業自体は私は日本に向いておる産業だと思いますので、したがいまして、この繊維産業というものはこれを確保し、またその発展をはかることに今後通産省といたしましては全力を注ぎたい、こう考えている次第であります。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/7
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008・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
まず第一は、拘束預金の問題についての御質問でございましたが、昭和三十九年六月以来、いわゆる歩積み・両建て預金の整理を促進する措置をとってまいりまして、相当の効果をあげておりますが、昨年十一月から、さらにいわゆる第二ラウンドとしての措置をとることになりました。拘束預金の比率を下げるということ、それから拘束預金に対応する部分の貸し出し金利を下げる、この二つについて、各金融機関ごとに目標を示して、その実現に目下努力しておるところでございますが、銀行局の報告によりますと、第二ラウンドに入ってから、この五カ月間に、いま御質問のございました拘束預金の比率低下というものは急速に改善が見られるようになったとのことでございます。
それから、次は中小企業に対する金融ワクの増大策ということでございましたが、まず、政府関係の資金ワクについて申し上げますと、四十二年度の中小企業関係の財政投融資は、国民金融公庫、中小企業公庫、商工中金、これに合わせて新設の環衛公庫を加えますと、貸し付け規模は合計六千六百八十五億円で二割一分の増加でございますし、財投の規模は三千二百三十五億円で約二割九分の増加となっております。本年度における財政投融資の全体の伸びは一七・八%でございますので、それに比べて中小企業に対しては特に三割近い増加をはかっている次第でございます。
一方、民間資金、金融機関の資金はどうかと申しますと、最近中小企業の資金需要が非常に強いということもございまして、全国銀行における貸し出し総額の中に占める中小企業金融の比率は、昨年の九月から毎月比率は上昇しておりまして、五カ月間に五千億円以上の拡充を見ることになっております。
また、資金供給をもっと広げるということにつきましては、ただいま金融制度調査会に中小企業金融制度の全般について諮問して検討をお願いしている次第でございますので、この結論を得ましたら、この中小企業金融についての制度的な改善もはかりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/8
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009・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 玉置一徳君。
〔玉置一徳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/9
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010・玉置一徳
○玉置一徳君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま説明のありました中小企業関係三件につきまして、総理並びに各大臣に若干の質問を行なわんとするものであります。
政府は、去る四月二十五日中小企業の白書を国会に送り、昭和四十年から四十一年にかけての中小企業の動向を分析し、わが国の中小企業が直面する諸問題を解決する施策の基本的な考え方を明らかにしたのであります。
ここで目立つのは、景気の順調な回復と上昇にかかわらず、中小企業の企業倒産は依然高水準を続け、一昨年を上回る六千百八十七件を記録しておることであります。このような中小企業の経営内容が依然として困窮を続けているのは、労働需給の窮迫、需給構造、市場条件の変化等に対し、中小企業が十分な対応力を持っていないためだと指摘し、ここに中小企業の健全な成長をはかるためには、その特色である企業の過小過多性、資金調達力の弱さ、技術水準の低さ、経営管理のおくれなどを改善する必要を強調しているのであります。
白書は、こうした観点に立って、協業化、共同化を中心とする構造改善事業について、資金助成、指導など、あらゆる施策を集中的に実施し、その強力な推進をはかっていく必要があると指摘いたしております。
白書の指摘する問題点並びにこれに対する施策の提示は、その限りにおいては当を得たものと見るべきでありましょう。しかしながら、中小企業の現状を見るに、資金梗塞は何ら緩和されず、また、その資金コストは大企業に比べはなはだしく割り高であります。また、設備を近代化して生産量を増加すれば、そのことが競争を激化し、加えて親企業からの単価引き下げを誘発するのであります。特に、資本自由化の接近とともに、大企業の中小企業分野への進出、大規模生産による大量販売方式の強化、下請条件の再編成など、力関係による大企業からの中小企業圧迫は、ますます強化されるばかりであります。
確かに、一部の中小企業には、政府の施策と相まって、いわゆる中堅企業として改善をなし遂げたものもありますが、これに該当するものは全体のわずかに二%であって、少数の例外にしかすぎません。その他の大多数の中小企業は、今日もなお深刻な経営難に脅かされ、倒産の危機にさらされているのであります。これは、長年にわたる大企業中心、大企業優先の自民党内閣の政策の帰結でありまして、このような基本を変えることなくしては中小企業問題の解決はとうてい達成されるものではありません。これに対する総理の反省はいかがでありましょうか。
次に、政府は、四十二年度の中小企業対策として、協業化、共同化を中心とする中小企業の構造改善を強力に推進するため、中小企業振興事業団を創設し、また、新たに協業組合制度を設けて、共同事業に対する助成を量的にも質的にも拡充する、と述べておられるのでありますが、中小企業基本法、下請代金遅延防止法、官公需確保法など、すでにこの種の構想に基づく中小企業対策は数多く立法されてきたのであります。しかしながら、それらは一部の中小企業の優等生にだけ恩恵と効果を与えただけであって、あの程度のザル法でもってしては、中小企業の安定は百年河清を待つにひとしいものといわざるを得ないのであります。
そこで、佐藤総理にお伺いいたしますが、わが国中小企業は、以上のような問題点をかかえながらも、いまもなお国民経済において圧倒的な重要さを持っているのであります。総理は、一体このような中小企業を、しかも高度成長下のわが国の産業構造の中に、最後にはどのように位置づけをしようと思われるのであるか。すなわち、わが国経済における中小企業のあるべき理想像はどのようなものであるか、この際、総理のビジョンを承りたいのであります。
次に、中小企業問題の根源はわが国経済の構造にあるといわれておりますが、本日では、それに加えて、後進国の追い上げや、資本の自由化など、さらに悪条件が加わり、わが国中小企業の近代化は緊急焦眉のことと強調されているのであります。佐藤総理は、このような新事態に備え、中小企業保護のためにいかなる対策を講ぜんとするものであるか、総理の政策構想をお示し願いたいのであります。
なお、商売は元手次第といわれるとおり、ここに中小企業金融については、その資金量と金利について格段の措置が講ぜられなければなりません。さきに、政府は、環境関係業者に対し、特に環衛公庫を新設し、その金利は六分五厘という英断を下された。これは零細中小企業に対する低金利の先べんをつけられたものとして、まことに歓迎すべきことで、この際、同様な立場にあるその他の中小企業に対しても、政策平等の憲法の精神にのっとり、同様の施策を講ずべきものであると思うが、これに対する佐藤総理の所見をお伺いしたいのであります。
なお、三百六十万の中小企業者のうち、四〇%を占める小規模事業に対する政府の施策は、いまだ何ら見るべきものがないといっても過言ではありません。この際、小規模零細企業をどのようにして近代化し、合理化をはかろうとするのか。
なお、小規模企業に対する金融、税制上の優遇措置は、中小企業基本法の宣言事項であるが、政府の施策はいまだに不十分であります。この際、さらに強力な実効ある措置を講ずべきであると思うが、あわせて総理並びに関係大臣の所見をお伺い申し上げます。
次に、所管の各大臣に、簡単に質疑を行ないたいと思います。
まず最初に、中小企業対策のうち、最も重要なものは、不公正競争の排除であり、不公正取引の是正であります。今日の大企業の中小企業分野へのあくなき進出や、下請代金の事実上の支払い遅延は、目をおおうものがあります。政府は、生産分野調整法を制定し、中小企業の存立基盤を確保すべきときだと考えますが、菅野通産大臣並びに北島公正取引委員長の御所見を伺いたいのであります。
第二に、これと関連して、中小企業の存立を脅かしている資本の自由化にどのように対処せられようとしているか。また、資本の自由化とわが国中小企業の近代化とを、いかなるプログラムをもって調整しようとされるか、御説明をいただきたいと思います。
第三に、中小企業の構造改善の急速な実施を迫られておる現状におきまして、雇用労働の需給の確保からも、同業種、同地域、同一技能の労使間交渉による最低賃金制度の確立は、技能給給与体系とともに、もはや放置できない問題であります。老齢年金など社会保障制度の拡充強化とともに、わが国産業の構造改善実施についての前提条件ともいうべきこれらの問題につき早急なる実施を望まれますが、労働大臣並びに厚生大臣の所見をお伺いいたします。
中小企業の経営基盤強化のため、自己資本の充実の急務なることは、白書の指摘しているところであります。そこで、来年度は中小企業の法人税の減税を実施し、少なくとも現行二八%から二五%程度へ引き下げ、自己資本の充実に資するべきであると思いますが、水田大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
さらに、小規模事業者の所得は、そのほとんどが勤労所得によるものである点にかんがみ、事業主の特別勤労控除を創設し、これまた自己資本の充実に資するべきだと思いますが、あわせて大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
所得税においては、来年一月一日から中小企業専従者の完全給与制を認め、事実上支払われた給与の金額を控除することになっておりますが、地方税である事業税もこれと歩調を一にしなければ均衡がとれません。藤枝自治大臣はこれに対しどのような措置をとられるか、この際明らかにしていただきたいのであります。
次に、労働大臣にお伺いいたします。
現下、労働者の需給の逼迫にかんがみ、特に困難な中小企業向けの労務確保のため、どのような雇用対策を用意されておられるか。特に中高年齢者の雇用が重要な部分を占めることを予想される中小企業の現状にかんがみ、英国の選択的雇用税等を参考に何らかの奨励制度を設けることが望ましいと思われるが、労働大臣はどのようにお考えになるか。
さらに、中高年齢者雇用対策と関連いたしまして、職業訓練制度の強化、充実がいよいよ必要となってくるが、この対策もあわせてお伺いしたいと思います。
次に、私は、繊維の臨時措置法案につき、総理並びに関係大臣にお伺いいたします。
繊維産業のわが国経済に占める比重は、戦前は言うに及ばず、現在においても全付加価値額の一二%、輸出額においては実に約二〇%を占め、わが国民経済の中できわめて重要な位置を占めているのであります。しかし、戦後いち早くこの繊維産業に転換の波が押し寄せ、第一に、天然繊維から化合繊維への需要構造の変化、第二に、開発途上国における繊維産業の発展と、それに伴うわが国輸出市場の狭隘化、第三に、先進諸国の繊維産業における集約化政策の実施と構造改善による巻き返し等々は、従来のわが国繊維産業の大きな転換を余儀なくさせているのであります。このときにあたり、万年供給過剰の病源をかかえた繊維産業の構造改善政策が、その一歩を踏み出した意義ははなはだ大といわざるを得ないのであります。わが国初めてともいえる産業界ぐるみの繊維産業構造転換政策を実施するにあたって、私は今日までの政府の基本的な姿勢に重大な注意を喚起するものであります。
まず、佐藤総理に対し、繊維産業転換政策の基本的姿勢についてお伺いをいたします。
すなわち、この画期的な産業政策の成否のかぎは、一にかかって労働組合や消費者である国民各階層の協力をどうして得るかということであります。政府は、労働組合や消費者等、国民各階層の代表者の意見を聞き、構造改善実施の各段階で労使の事前協議制を充実し、制度化して、再編成の過程に生ずる労使間の諸問題の解決をはかることが必要であり、さらに国の段階でも、経済、産業、労働等の各政策の立案や審議の場に労働組合が積極的に参加し、発言を行なうことを制度的に保証することが重要であると考えますが、これに対する佐藤総理の御所見を承りたいのであります。(拍手)
次に、担当大臣にお伺いいたします。
まず第一に、本案の政策対象は、紡績業と織布業だけであり、化合繊や二次加工品であるメリヤス、縫製品、染色加工等、最も近代化がおくれ、過当競争の激しいこれらの中小企業分野が対象になっておりません。なお、いまだに徳川時代そのままの商慣習が少なからず残されておる繊維の流通機構の改善が、この際同時に行なわれることが必要と思われますが、全く除外されております。また、本案第二章に規定する構造改善基本計画は、繊維産業全体の総合計画の上に立って実施されなければなりませんが、この点どのようにされるか、大臣の見解をお伺いしたいのであります。
第二の問題として、織布業の産地構造改善事業は、絹織物をはじめ織物の産地の地域経済の興廃を決するものでありますが、これらの計画は、全国各地方の全体計画のバランスの上に立って実施されなければ、その効果は望むことができません。かえって正直者がばかをみることになりかねないのでありますが、この産地構造改善計画と全国的な計画とをどのようにして調整されようとしておるのか、お伺いを申し上げます。
第三に、本案実施のため労働者に与える悪影響を除去し、産地構造改善事業の円滑なる進展をはかるため、地域ごとに計画の指導委員会を設置することは審議会の意見でもあります。従業員代表を当然に参加せしむべきであるが、この際あらためて政府の見解をただしておきたいと思います。
第四に、やみ織機の取り締まり問題であります。従来の新旧繊維法を通じて、設備を登録制にして取り締まることにしておりますにかかわらず、登録されない無籍のままの織機が大手を振って操業しております。これら無籍織機の取り締まり強化につき、いかなる政策の用意があるかお伺いをします。
次に、労働大臣にお伺いします。本法案は、わが国の紡績織布等、繊維工業界の構造改善をはからんとする画期的な政策であり、その成否は一にかかって関連労働者の理解と協力によるものといわねばなりません。本法案に、政府は関連労働者の職業の安定につき十分な配慮をなさねばならないことを義務づけたのもこのためであります。本政策実施にあたって、雇用の不安はないかどうか、また、不可避的に生じた犠牲の社会的救済や保障を制度的に確保して、労働者にしわ寄せされる犠牲を最小限に食いとめる方策をどのように考えておるか。すなわち、審議会の答申によれば、離職者対策として職業転換、給付制度の拡充、雇用促進事業団の活用、退職金課税の大幅減税を具申されておるが、政府はどのように実施しようとしているか、具体的に御説明を願いたいのであります。
次に、いたずらな雇用問題のトラブルを避け、構造政策の進展を円滑ならしめるため、中央、地方に政府(地方公共団体を含む)、業界、労働者が一体となって雇用対策を取り扱う雇用連絡会議を設けることがぜひとも必要だと思いますが、御所見を承りたい。
最後に、近時労働者の、特に若年労働者の需給が逼迫しつつある現状におきまして、従来、青年婦人を多数雇用してまいりました繊維産業の将来の労働確保について不安はないかどうか、将来の展望とこれに対する対策につき所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/10
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011・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
中小企業が果たしておる役割りは、先ほど永井君にお答えいたしましたので省略させてもらいます。この中小企業がたいへん大事なものだ、これは御指摘のとおりであります。で、これが悩んでおるその姿から見まして、私どもは今日政治課題の最も重点の一つだ、かように実は思っております。基本的な考え方から申しますならば、わが国の産業構造から申しまして、中小企業の発展、これはわが国の経済を成長さすための前提条件であるということであります。したがいまして、わが国の経済を発展させようと思えば、中小企業、これを安定成長の基調に乗せる、これがもう一体でございますので、そういう立場に立ちまして、この中小企業問題と取り組んでおるのであります。今回の中小企業振興事業団をつくりますことも、そういう立場から発足いたしたのであります。また、予算におきましても、ことしの予算は昨年に比べまして一八・二%程度の増加でありますが、むしろ財投のほうにより重きをかけておるのではないかと、かように思いますので、財投の増加率は実に三一%にものぼっております。これは、ただいま申し上げるような点を配慮しての事柄でございます。
また、資金の貸し付け条件について、低利、長期が望ましいという御指摘でございました。この詳細は大蔵大臣から答えることにいたしたいと思いますが、御承知のように、今回のこの資金は、高度化の事業に対する資金の場合には三分五厘でございます。さらにまた、繊維の場合だと、これが三分になっております。その他にも都道府県の無利子の資金がございますから、今回、中小企業の面におきましては、金利もよほど中小企業に益するようにできておると、かように私は確信をいたしております。
さらに、融資比率等につきましても、これは業種によって違いますが、いろいろくふうされまして、六五%から八〇%までという非常な広い範囲におきまして、融資率でも特に考慮を下しております。
次に、繊維工業についてのお尋ねでございますが、繊維工業についての基本的な考え方、これは私が申し上げるまでもなく、かつての花形産業であった。これが最近は先進国は高度化を進めておる。また、発展途上の国々からも追いかけられておる、押し上げられておる。それでわが国の繊維工業はたいへん苦しい状態に置かれておる。こういうのが現状でございます。しかし、私は、今日なお、この繊維工業が国内の需要を満たし、さらにまた、輸出はだんだん減ったとは申しましても、なお十八億の輸出を継続しております。こういう点から見ますると、この繊維工業にさらに活力を与える、これは、私ども、当然のことだと思います。この活力を与える具体的な方法はいろいろ考えられておりまして、今回は繊維新法に次ぐような構造改善もいろいろおはかりしておるわけでございます。で、その際に組合あるいは消費者の協力を得なければうまくいかないだろうというお話であります。私は、すべての産業は、労使双方、ことに組合の協力を得ないとうまくいくものではないと思います。まして、今回繊維工業が当面しておるような構造改善、こういうような問題、これをりっぱに成功さすためにも、また成果をあげるためにも、労使双方の協力、これは絶対に必要だと思います。そういう意味で、ただいまの御指摘になりました諸点については、私も御意見に賛成するものでございます。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/11
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012・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
まず第一に、事業主について特別勤労控除制を設けよとする御意見は、給与所得者については給与所得控除を認めているではないかということからの御質問と思われますが、給与所得者に給与控除を認めておりますのは、事業所得については認められている経費の控除、これにかえて、給与所得者は給与を得るための経費というものを概括的に控除する必要があるということから、こういう制度をとっておるものでございます。したがって、給与所得者と事業所得者というものは事情が全く異なっておりますので、御指摘のような事業主に対して特別な勤労控除制度をとるということには、非常に問題があると考えております。
それから中小企業の負担軽減というものについては、もう従来から、毎年の減税の際最も配慮しておるところでございまして、将来も十分考慮してまいりたいと存じておりますが、お尋ねになりました中小法人の軽減税率、これをすぐに実施するかということでございますが、これは中小企業の個人企業者との均衡、税負担のバランスを考えなければなりませんことと、もう一つは、所得税のあり方、所得税の負担とも関連する問題でございますので、両方の問題から、これは私ども慎重にこれから研究したいと考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/12
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013・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 日本の今日までの産業政策が、大企業中心であり、中小企業をないがしろにしておるのではないか、したがって、倒産者なども出ておるではないかというようなお話がありましたが、過去の高度成長におきましては、なるほど大企業が一段と発展して、中小企業の発展がおくれたことは事実であります。しかし、これはもう御存じのとおり、大企業の生産性が高いために、したがって、大企業がそれだけ発展なし、中小企業の生産性が低いためにおくれたのでありまして、目下その中小企業の格差、おくれておるのを取り返すために、今回の中小企業の対策を講じておる次第であります。
なお、この中小企業の対策といたしましては、従来は資金面あるいは金利あるいは税制というようなことを考えてまいったのでありますが、同時に、中小企業の今日の悩みは、大企業に対して対抗することができないという点、それにはやはり協業化、共同化ということが必要であります。したがいまして、従来、協業化、共同化ということにつきましては、比較的それの指導がおくれておったのを、今度は特に協業化、共同化ということを重点として指導して、そして大企業に負けないような収益性、生産性をあげたいというので、今回の中小企業振興事業団をつくった次第であります。
それから中小企業は将来どうあるべきかということは、これは今回の中小企業振興事業団の指導によって、私は中小企業のあり方というものがおのずからきまってくると思います。中小企業というものが、日本の産業において重要な役割りを演じておるのでありますからして、したがって、これを軽視はもちろんできないのでありまして、やはり日本の産業の基本をなしておりますから、したがって、中小企業の確保、存立、発展をはかるということが今度の中小企業振興事業団の目的でありますからして、この事業団の運営によって、私は中小企業というもののあり方がおのずからきまるというように考えておるのであります。
それから、小規模対策について一つも案がないじゃないかというお話でありますが、先ほどから申し上げております中小企業振興事業団というものは、そもそも小規模対策が根本でありますからして、したがいまして、小規模対策を中心としてこの事業団の設立をはかっておるのであります。
それから、資本の自由化に対してのお話がありましたが、これは先ほどお答えしたとおりでありまして、中小企業が資本取引の自由化において最も影響を受けますので、したがいまして、通産省におきましては、この資本取引の自由化に対して中小企業がいかにあるべきかということを、いま慎重にいろいろと対策を練っておる次第であります。
それから、繊維の問題についてお話がありましたが、先ほども総理からお話がありましたとおり、繊維産業というものは、日本の産業において重要な役割りを持っておるものでありますから、したがいまして、繊維産業の確保、発展のためには政府は一段と努力したいというので、今回の改善臨時措置法案という法案を出したのでありまして、これの実効をあげるがためには、これはもちろん国民の御協力を得なければならぬし、同時に業者自身がまずその覚悟を持ってもらわなければならないと考えておるのであります。いかに政府がいろいろ対策を講じましても、業者自身がそれだけの自覚がなければ、また、自分からやるという決意がなければ、私は、この実績はあがらないと考えております。
そういう意味におきまして、先般も関係業者の人に集まっていただきまして、こういう法律を出すがと、業者の覚悟をまず聞いたのでありまして、それで、業者も、政府がこういう法律を出すのであれば、われわれのほうも進んでひとつやりたいという覚悟を聞きましたので、今回の法律案を出すことに決定いたしたのであります。
それから、加工や二次製品のことについてお話がありましたが、これも先ほど申し上げましたとおりでありまして、日本の繊維産業としては、加工とか二次製品の問題については、これをやはり中心として進んでいかなければならぬということにつきましては、今後、このほうにつきましても対策を講じたいと考えておる次第であります。
それから、なお、繊維の問題につきまして、繊維の、ことに織布業の改善の問題につきましては、各地区で構造改善指導援助委員会というものをつくりたいと考えておるのであります。これはもちろん業者とか、あるいは学識経験者などをメンバーとしてやりたいと考えておりますが、なお、通産省といたしましては、労働対策上の指導援助グループとして、関連労働者の立場を代表する者がこの委員会に参加するための基盤が、今後各産地においても醸成されることを希望しておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣早川崇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/13
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014・早川崇
○国務大臣(早川崇君) お答えいたします。
第一は、中小企業の人手不足が激化しておるので、中高年齢層を雇うための方策を講じろ、こういうこと、それに関連いたしまして、イギリスの選択雇用税の制度あたりを考えてはどうか、こういう御質問でございます。
御承知のように、若年労働力がたいへん減少してまいりまして、本年は新規学卒が百六十万近くあったのでありますが、今後、昭和五十年には百十七万という減り方でございます。そこで、これは中小企業だけに限らず、国全体の労働力というものが、若年労働力が不足してくるのでございまして、これを埋め合わすためには、中高年者が非常にふえてくるわけであります。十年後五百万人もふえてくるわけであります。そういう観点から、中小企業におきましても、どうしても中高年を雇う体制を政府としても考えていかなければならない、このように考えまして、昭和四十二年度から、特に中高年を雇う中小企業者には、月四千円の住宅確保奨励金を出すことにいたしております。また、中高年者の中小企業に対する職業転換に対しましては、職業転換給付金、また、中小企業に転職するための職業訓練を受ける中高年の方には職業訓練の訓練手当を増額いたしまして、中小企業の中高年者の採用の利便に資したいと考えております。イギリスのように選択的雇用税の制度を設けろという御主張でございまするが、現在はまだそこまで考えておりません。ただ、考えておるのは、官公庁におきまして、中高年を雇う比率を、たとえば六五%とか、あるいはエレベーターの担当者を、若年の婦人ではなくて中高年を雇う、六五%程度そういうふうにしようとか、そういう雇用率の設定をいたしまして、政府機関、公社を指導いたしております。そういったところまでは実施いたしておりまするが、イギリスのように、ある産業にいけば税金をまけるというような統制的な制度、これはまだイギリスにおきましても必ずしも成功いたしておりませんので、これを採用するという考えは、現在は持っておらない次第でございます。
二番目に、技能労働者が非常に不足してくる、いわゆる工員が不足してくる、これの対策いかんという御質問でございます。これに対しましては、昭和四十二年度に新たに公共職業訓練所を十六ヵ所新設いたしまして、全国で公共職業訓練を実施する人員を大幅にふやしまして、十二万七千人を本年度訓練いたしたいと考えております。また、事業内の職業訓練に対しましても、労働省といたしましては、補助金を増額いたしまして、四十二年度は八万四千人を養成いたしたいと考えておりまするが、これだけではむろん技能労働力は不足でございまするので、今後とも、学校教育とも連絡いたしながら、技能者尊重の気風をわが国の社会に醸成いたすために、施策を講じてまいりたいと存じます。
次に、繊維産業の構造改善に伴いまして、離職者がふえて非常に困ってくるのではないか、こういう御質問でございます。これに対しましては、繊維工業審議会の答申にもございまするので、そういった離職者に対しましては、職業転換給付金制度の拡充、雇用促進事業団による雇用促進対策の活用、退職金課税の大幅減税、これ、いずれもすでに政府で実行をいたそうといたしておるわけでございます。
同時に、繊維産業はいまは非常に人手不足でございます。たいへん不足いたしておる。そこで、三百万錘近くの整理がありましても、その方面の雇用問題というものは、大きく見れば人手不足でございますから、そう心配しなくてもいいのではないだろうかと存じます。ただ、将来繊維工業につとめる若年労働力が心配だ、特に婦人の若年労働力が中心でございまするが、この面につきましては、国全体としても若年労働力が減ってくるわけでございまするから、全体としては非常に心配ですけれども、特に繊維産業で非常に心配だということは私はないのではなかろうかと存じておる次第でございます。
最後に——あと二つほどございまするが、最後に、繊維の雇用の連絡会議を設けたらどうか。まことに御趣旨もっともでございますので、われわれは、繊維の構造改善に伴いまする雇用者の離退職の情報交換という意味も含めまして、雇用連絡会議の設置を考慮いたしたいと考えておる次第でございます。
申しおくれましたが、もう一つ、最低賃金をひとつ実施して中小企業の雇用の安定に資したらどうか、こういうお説でございます。現在も、御承知のように、審議会方式、十六条方式というのと、業者間協定による最低賃金を実施しておるのが、大体五百六十万人の中小企業を中心とした勤労者に適用されておるわけでございまするが、今回、最賃審議会の答申によりまして、ILO二十六号の精神に疑義のある現在の業者間協定を改めまして、ILO二十六号条約の線に沿った、労使対等の審議会方式というものに改めろという御答申が昨日ございました。この答申を尊重して、ILO精神に沿うような労使対等の審議会による最賃のきめ方というものも成案を得まして、この国会に提案して、御審議を賜わりたい、かように存じておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣坊秀男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/14
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015・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。
近来、わが国の老人人口が増加の傾向にございまして、このことがまた中小企業に影響を及ぼす一つの要因になっておるということは、これはもう推察できることでございます。この老人問題は今後ますます重要性を加えてくるものであろうと考えられます。そこで、政府といたしましては、さきに国民皆年金制度を発足させましたけれども、その後、この制度を鋭意整備すべくつとめてまいりましたが、さらにこれの充実をはかってまいる所存でございます。
しかし、老人の問題は、年金等の所得保障といったようなことにとどまらず、老人の能力とか、あるいは適性に応じまして、広く社会活動への参加を促進していくというようなことを考えるほか、物心両面の対策を充実してまいるべきものであろうと考えております。(拍手)
〔国務大臣藤枝泉介君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/15
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016・藤枝泉介
○国務大臣(藤枝泉介君) 所得税とは性格を異にする地方税たる事業税でございますので、各種控除を所得税にすべて右へならえということではないと思います。しかし、専従者給与につきまして、国が税制上、一定の方針を樹立いたしたのでございますから、その方針は十分考慮しなければならないと存じます。いずれにしましても、これは先刻御承知のとおり、国税の完全給与制、四十三年からでございますので、前年度課税である事業税については、四十四年までに方針を決定いたしたいと考えております。(拍手)
〔政府委員北島武雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/16
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017・北島武雄
○政府委員(北島武雄君) 独占禁止法で禁止いたしております不公正な取引方法の一つに、取引上の優越的地位の乱用ということがございまして、独占禁止法の付属法律でございまする下請代金支払遅延等防止法は、大企業がその取引上の優越的地位を乱用いたしまして、中小企業者であるところの下請事業者に対して行なうところの不公正な取引方法を禁止いたしておるわけでございます。そのための特別制度でございますが、私ども、この下請代金支払遅延等防止法をお預かりいたしまして、はなはだ乏しい人員ではございますが、年々この施行の強化に心がけてまいったつもりでございます。
昭和四十一年度におきましては、まず、親事業所に対しまして、下請取引の報告を求めまして、約三千六百件ございましたが、それのうち、下請代金支払遅延等防止法違反の疑いのある四百二十四の事業所に対しまして、立ち入り検査を実施いたしました。そしてさらに、明らかに下請代金支払遅延等防止法違反の行為がございましたものに対しまして、法に基づく勧告なり、あるいは行政指導などによりまして、是正いたしましたものが三百二十五ございます。昭和四十二年度におきましても、若干でございますが、人員の増加がございますので、この乏しい人員をさらに動員いたしまして、たとえば親事業所からの報告は五千五百程度とるとか、あるいは立ち入り検査は六百程度まで目標とするとかいうことをいたしまして、極力下請事業者の利益を確保いたしてまいりたいと思います。
なお、下請代金支払遅延等防止法によるもの以外に、大企業が、その大きな力を利用いたし、まして、中小企業者に対して不当な拘束条件づき取引をしいましたり、あるいはまた、差別価格などをいたしますと、これはもちろん独占禁止法の不公正な取引方法の禁止の規定に触れます。これらに対しましては、従来からも厳重に監視いたしておりまして、今後十分監視を続けまして、強化をいたしまして、大企業の中小企業者に対する不当な、不公正な取引方法を押えてまいりたい、こう出与えておるわけであります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/17
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018・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 近江巳記夫君。
〔近江巳記夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/18
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019・近江巳記夫
○近江巳記夫君 私は、公明党を代表いたしまして、今回政府が提出されました中小企業白書並びに本年度施策、さらに中小企業振興事業団法及び特定繊維工業構造改善臨時措置法に関し、特に重要と思われる数点につきまして、総理並びに関係大臣の所信をお伺いしたいと思います。
中小企業がわが国経済に大きなウエートを占めていることは御存じのとおりであります。現在、中小企業にとって最大の課題は、資本自由化の影響と小規模企業の前途に対する問題であります。この点、今回提出された白書の分析及び施策はあまりにも不十分であります。資本の自由化に対しては、中小企業を含めた総合的な構造改善を実施するといっているだけであります。
全国中小企業団体中央会がこのほど発表した資本自由化の中小企業に対する影響等の調査結果によりますと、食料品、機械・金属工業、繊維、小売り業など、数多くの業種が大きな打撃を受けるであろうといっているのであります。そうでなくとも、競争の激しい中小企業の分野に外資が進出すれば、競争は一段と激化し、倒産や下請企業の整理などの起こることは必然であります。大企業さえも資本の自由化をまくらことばに産業再編成を進め、いよいよ寡占化体制を強固にしようとしておるのであります。自動車産業、電子工業、石油化学など、自由化を許せば、外国大企業の膨大な資金力によって産業発展の芽をつまれないとも限らないといわれております。いわんや、中小企業は一体どうなるでありましょう。いまのままでは見殺しにしてしまうのであります。こうした点からいっても、ことしの施策は、資本の自由化と中小企業の関係に焦点を合わすべきであったと思うのであります。
そこで、総理並びに通産大臣にお伺いしたい点は、資本の自由化は時期尚早であると思うのでありますが、今後のスケジュールと中小企業を資本の自由化からどのように保護していくか、具体的にお伺いしたいのであります。
総理は、施政方針演説の中で、「中小企業擁護のため、振興事業団をつくる」と述べているが、この事業団では、ごく一部の限られた優秀企業しか守られないということは定説になっておるのであります。小規模企業がいかに困窮しているかは、倒産件数を見ればはっきりするのであります。本年四月の倒産件数は六百二十一件と、依然高水準であり、このうち九割を小規模企業が占めております。五月に入ってからも、小樽の大東産業、鳥取の青谷機械製造の倒産等と、次第に地方へ移動している様子があらわれているのであります。すでに本年に入ってから二千四百五十八件と昨年の四割をこえ、特徴としては小口化し、さらに小規模特有の飲食料品、木材製品等の増加が目立っておるのであります。今後の見通しとしても、資本の自由化、さらにその防衛のための大企業の寡占化体制整備に伴い、下請企業への圧迫、景気過熱から、もし金融引き締めがなされた場合等考えると、先行きはまっ暗であります。政府はどのような責任を感じ、今後どのような対策を講じていくのか。
昨年の二月二日の本会議で、総理は、「倒産が増加しているのは非常に遺憾である。産業の安定成長目ざして進んでいきたい。そこで倒産問題については、しばらく時間をかしていただけば、必ず政府の政策の効果があがる」ということを述べておられますが、そのしばらく時間をかしてくれとは、一体どのくらいの時間なのか。現在一年三カ月たっておりますけれども、今日倒産の件数が増加しているというのは、これは政府の施策が間違っていたことなのか、それとも時間が不足なのか。さらに通産大臣は、昨年十二月二十三日に経済閣僚懇談会がありましたが、そのあとの記者会見で、「最近の倒産を見ると、倒れるべくして倒れたものが多い。町の金融業者から高利の金を借りたあげく、経営が破綻してほうり出したものに対しては、政策的に手の打ちようがない」と、零細企業を見捨てるような発言をしているが、それが政府の本心なのか、伺いたい。
次に、中小企業振興事業団についてお伺いいたします。
この事業団は、高度化資金融通特別会計と中小企業指導センターを合併したにすぎず、従来の施策から何ら前進していないのであります。いままで政府が最も力を入れていた高度化資金特別会計の決算を見ると、三十九年度二十億円、四十年度二十九億円と多額の不用額を出しております。このことは、対策が当を得ていない証拠を示しているのであります。したがって、単なる衣がえにすぎないこの振興事業団も、希望が持てないではありませんか。政府はこの振興事業団によって、はたして中小企業の振興を可能と考えているのか。この振興事業団の具体的運営の方途について、総理並びに通産大臣にお伺いします。
さらに、協業化に進めるのはごく限られた一部の企業であります。そこで残された企業の多くは、望むと望まないにかかわらず、転廃業の問題を考えざるを得ない状態に追い込まれているのであります。政府の転廃業者に対する助成措置の態度をお伺いしたいのであります。
政府は多くの施策を打ち出しておるけれども、その効果において、先ほど来事例をあげたとおり、抜本的な対策とは言えないのではありませんか。ここにおいてわが党は、大企業優先の現在の通産行政から、血の通ったしかも抜本的な中小企業振興をはかるため、現在のばらばら行政を一元化する中小企業省の設置を提案するものであります。これに対する総理の所見を伺いたい。
次に、具体的な問題についてお伺いいたします。
わが党としては、かねて中小企業といっても大企業に近いものから、家族だけで経営している零細企業まで、その規模は広範囲であります。したがって、現在の画一的に講ぜられている対策を、規模別、構造別に対象をきめ、きめのこまかい具体的な対策を推進すべきであると主張するものでありますが、総理並びに通産大臣の所見をお伺いしたいのであります。
第二点は、中小企業と大企業との関係を合理化し、両者の分野調整を行なうことが必要であります。
最近の著しい傾向は、資本の自由化を控え、大企業が中小企業、小規模企業の専門分野に手を広げる傾向も、日増しに強くなってきております。過当競争を激化しているだけでなく、中小企業を市場から駆逐したり、倒産させたりしておるのであります。また大企業が持ち株一〇〇%の子会社を中小企業の中につくり、これが中小企業を圧迫して、経営を困難にさせており、さらに中小企業が生存していくためには、中小企業の系列化や、下請工業化の傾向が強く見られ、大企業への完全な隷属という姿も多く見られております。現在、中小企業団体法によって行政指導がされているものの、力を発揮していないのが実情であります。
わが党は、大企業の進出から中小企業を守る意味から、中小企業の出荷額、あるいは付加価値率七〇%以上を占める分野を、中小企業の専門として、大企業の新たな進出を規制するよう、産業分野調整措置法を制定することを主張しております。
この法律は、市場支配率がきわめて高い産業分野や、ほとんど中小企業で占められている産業分野、あるいは大企業がまだ進出していない産業分野について、調整機関を設けて、業種別に分野調整をはかることを目的とし、これによって大企業の不当な進出を規制するのであります。さらに、産業分野の調整は、大企業と中小企業間だけでなく、中小企業相互間にあっても行ない、過当競争を防止するよう提案するものでありますが、実施する考えはないか。
第三点は、下請企業の問題であります。
中小企業の危機を端的に示し、中小企業が直面している各種の問題を集約的に包含しているのが下請企業であります。わが国の下請取引関係は、経済の二重構造のもとで、親企業が下請企業を収奪することによって、自己の資本投下を節約し、雇用労働者の労働条件抑圧の効果をおさめ、下請企業を景気変動の安全弁として利用するという、きわめて冷酷な日本的特殊性を持っております。一たび親企業が倒産すると、親企業自身は会社更生法の適用によって再建されるにもかかわらず、下請企業は下請代金を更生債権として凍結され、銀行では約手買い戻し請求を受け、一切の私財を投げ出して債務を処理せざるを得ず、結局、親企業のために自滅するのであります。このような親企業と下請企業の関係は、まさに前近代的な身分的支配、従属関係が今日歴然として存在することを示すものであり、二十世紀における日本のふしぎといっても過言ではありません。
そこでまずお伺いしたい点は、政府は会社厚生法の改正を考えているようであるが、今国会に提案するのかどうか、お伺いします。さらに、会社更生法を改正するにあたっては、下請債権者の権利を守る方向を堅持するのかどうか、お伺いいたします。
次に、中小企業を大企業による金融面での圧迫から守るために、下請代金支払遅延等防止法がありますが、下請業者がこの法律に基づいて大企業と交渉することは、かえって親会社ににらまれて、不利な扱いを受けることがありますので、現実には下請業者にとって救いとならないざる法であります。したがって現行法を抜本的に改正し、不当業者に対する罰則規定を強力にし、さらに支払い利息を日歩五銭ほどに改め、絶えず中小企業を守り、大企業の圧迫を排除していく考えはないか。
さらに、下請業者の利益を守り、その地位の改善をはかるために、公正取引委員会の担当官を増員し、その権限を強化しなければならない。特に、支払い遅延の場合は申告制になっているが、これを改正して調査と取り締まりに重点を置き、紛争処理機関などをつくり、法の活用をはかる。このため、その地方機関を新たに大都市に設けて、強力な行政命令を出せるようにしたらよいと考えるが、総理並びに公正取引委員長の見解をお伺いしたい。(拍手)
次に、特定繊維工業構造改善臨時措置法について一、二点お伺いします。
政府は、三十九年六月に繊維新法を制定し、百万錘の紡機を凍結したが、まだまだ過剰設備を解決できず、四十年十月には不況カルテルを結成し、さらに今回この法律により合計三百万錘を破棄しようとしているが、政府の見通しの甘さが見られる。今回のこの措置で抜本的に繊維業界の不況を克服できるのかどうか、お伺いしたいものであります。
次に、三百万錘といわれる紡機の破棄によって、中高年層の労働者をどう処理するかが問題であるといわれるが、完全に対策が講ぜられなければならないが、この点についてお伺いします。
最後に、中小企業の金融制度改変についてでありますが、答申はいつごろ出されるか、さらにいまの試案から見ると、中小企業専門の機関をつくれ、あるいは中小企業銀行をつくれというようないろいろな案が出ておりますが、制度の改変というのはきわめて主要な問題であります。この答申によって中小企業向け銀行をつくったり、あるいは地方銀行と合併するとかの場合、それがいつの間にか大銀行あるいはただの金集めに終わる銀行となって、中小企業にお金が出ていかないということになりかねない。そこで中小企業の要望を十分に受け入れる用意があるかどうか、大蔵大臣並びに通産大臣に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/19
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020・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
資本の自由化、これは中小企業といわず、大企業に対しましてもたいへんな問題を引き起こしております。また、中小企業そのものが本来弱体でございますから、このたび資本自由化ということに踏み切れば、その影響は一そう大きいのであります。これは直接外国資本が中小企業の面に出てくる場合もありますし、また、資本の自由化を前提として大企業がいろいろこれに備える、そのための間接的影響も受けることになります。御指摘になりましたように、これはたいへんな問題であります。しかし、お話では時期尚早だ、かように言われますが、私は必ずしも時期尚早だとは思いません。問題は、資本の自由化が行なわれたときに、わが国の産業に混乱を起こすか起こさないかということであります。その混乱を起こさないように、私どもが、政府が十分めんどうを見る、これが政府の本来のたてまえであります。外資法の運用におきましても十分注意してまいるつもりでありますし、また、この外国資本の自由化が行なわれたそのときに技術がどんどん進んでまいりますから、そういうたいへん長所もあるわけであります。問題は、一に混乱を起こさず、同時にまたわが国の産業の発展に寄与する、こういうような外資である、これならばもちろん歓迎すべきものだと思いますから、この外資法の運用にあたりまして十分注意していくわけであります。混乱を来たさないような状態は一体どういうことなのか。そのために、やはり企業の体質の改善が必要だし、今日、近代化をはかる、あるいは国際競争力を強化する、あらゆる面でくふうをするわけであります。今回の中小企業対策、これも一連の対策、この振興事業団などもそういう点に処すという——いよいよ外資が自由化され、外国資本がどんどん来る、わが国の業界は混乱はしない、りっぱに立っておる、そして国際競争力がむしろこれによって強められる、こういうような状態に持っていきたいのであります。そこで、今回協業組合制度なども導入いたしますが、これなども必ず国際競争力強化という点に役立つ、かように思います。
小規模企業対策、これは倒産等から見まして特に私どもが気をつけなければならないと思います。その面で、税制の面におきまして、あるいは資金の面において特にくふうをする。今回完全給与制を採用いたしましたことなどは、この小規模企業対策として必ず効果をあらわすものだ、私はかように確信をしております。
倒産についてお触れになりました。まだ時間が足らないのか、こういうような御指摘であります。私は、いつまでも時間が足らないということで私の責任をのがれるつもりはございません。もちろん、中小企業の方々が、今日なお倒産が続いておる。こういう痛ましい状態については、私も心から同情し、こういう産業が倒産というようなうき目を見ないようにぜひともしたいものだ、一そう努力するつもりでございます。御承知のように、ただいま産業自体はすでに不況から脱却いたしまして、そうして上昇機運に向かっております。こういう際に、ただいまのような倒産がなお続いておる、これは特別な理由か、さらに私どもは掘り下げてみる必要があると思います。御指摘になりましたように、最近はその倒産件数は相当だが、その金額はだんだん小口化している、こういうことであります。このいわゆる小口化したところに、私どもがさらに意を用いなければならないのではないか、かように思います。全般としてはいいわけでありますから、そこでこれは主として金融の問題だ、かように考えますので、政府関係三機関の量をふやすこと、さらにまた質をよくすること、同時に信用補完の制度を考えていくこと、無担保保険の制度を拡充していくとか、あるいは国民公庫等の融資が楽に行なわれるようにすること、さらにまた、御指摘になりましたように、連鎖倒産など積極的に防止するということにいたさなければならないと思います。ただいま悩みの問題は、この倒産をいかにして私どもがこれを減少さすことができるか、一そうの努力を必要とするものであります。
次に、高度化資金の不用額がずいぶん出ておるじゃないか、これは政策的にもおかしいのではないかという御指摘であります。私も、この不用額が相当たくさん出ておることについてやや疑問を持っておりますから、十分検討してみるつもりであります。
中小企業振興事業団で小規模企業は救えるか、こういうお話でありますが、私どもはこれで救える、これを必ず活用して、そうしてりっぱな成績をあげたいというのでこのたびつくるのでございますから、どうか御協力をお願いいたします。
御提案として、中小企業省をこの際つくったらどうかというお話であります。いままでしばしばかような議論がございました。しかし、私は、役所をつくるだけが能ではないと、かように思っております。中小企業省をつくることには、ただいま私は賛成いたしません。
次に、規模別、構造別に対策を立てろ、これはまさしくそのとおりでございまして、中小企業と一口に申しますが、業種、業態、規模別によりまして、それぞれ対策が違うのでありますから、実情に応じて対策を立てなければならない、これは御指摘になりましたとおり、私もその必要を感じます。
下請代金支払遅延等防止法を改正するかという御指摘であります。いろいろこの点について御意見並びにお尋ねがございましたが、私は、ただいまこの改正の必要ありやいなや、罰則強化をする必要ありやいなやという点についてのみお答えいたしますが、これも今後とも続けて十分検討してまいるつもりであります。ただいままだ改正の決意はいたしておりません。今後十分検討するつもりでございます。以上。(拍手)
〔国務大臣水田三喜男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/20
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021・水田三喜男
○国務大臣(水田三喜男君) 金融制度調査会は、昨年の六月以降特別委員会を設置して、中小企業金融問題の検討を進めておりますことは御指摘のとおりでございます。審議は非常に順調に進んでおりますので、答申が出てきますのはことしの秋以降と考えております。中小企業が国民経済に果たしている役割りが非常に大きうございますので、中小企業の金融においては、量、質ともに十分な資金を確保するという方向でいま御検討を願っておりますが、もし答申によって制度的な改善をするというときには、先ほど御指摘になりましたような御心配の点のないように十分気をつけたいと考えます。(拍手)
〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/21
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022・菅野和太郎
○国務大臣(菅野和太郎君) 中小企業の問題についてお尋ねがありましたが、総理がほとんどお答えになりましたから、私から重ねて申し上げる必要はないと思います。
ただ一つ、高度化資金の不用額が多いということについてお尋ねがありましたが、これは、高度化資金を設けたときがちょうど不景気になったときでありまして、したがいまして、それを利用する人が少なかったのであります。今度中小企業振興事業団にこの高度化資金を入れることになりましたから、おそらく今後はこの高度化資金が足らぬようになるのじゃないかというように私は考えております。経済界が変わってきたのでそういうことになったわけであります。
それから、転廃業のことについても総理からお答えがありましたが、転廃業のことにつきましては、総理が言われたとおり、政府関係の金融機関による融資、あるいは信用補完制度の活用という点が転廃業に対する一つの対策でありますが、なお、昨年度から設けられました構造改善準備金制度によって自主的な転換資金の積み立てを非課税とするという措置を講じておる。また、小規模企業共済制度を拡充しまして、小規模企業者の転廃業等に不安のないようにしておるのが、この転廃業に対する一つの対策であると存ずる次第であります。
それから、大企業と中小企業との分野の問題についてお話がありました。この分野について立法する考えはないかということでありましたが、今日自由競争の立場をとっておりますので、これについて法的に、大企業はこの産業、小企業はこの産業ということをきめることは困難かと思います。しかし、大企業と中小企業との対立ということにつきましては、中小企業団体法中に特殊契約の制度が設けられておりますから、これによって大体その分野をきめたいと存じておるのであります。そのほか、小売商業調整特別措置法、あるいは百貨店法、あるいは環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律などによって、この分野の問題が多少緩和されるのではないか、こう考えておる次第であります。
それから、繊維新法の問題で、大体政府は不正確な計算をしておるのじゃないかというお話がありましたが、なるほど繊維新法をつくったときには、あれによって繊維産業の改善をはかりたいと考えておったのでありましたが、あれで問に合わぬように経済事情が変わってきておるので、繊維産業の事情が変わってきておりますので、繊維新法の精神を受け継いで今度の特別措置法を案出したような次第であります。(拍手)
〔国務大臣早川崇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/22
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023・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 設備の構造改善による整理に伴って失業者が出ますが、その大部分は勤続年数が非常に短い女子、若年労働者でございます。その若年労働力は、需給が逼迫しておりまするので、雇用上生ずるいろいろな問題は比較的少ないのではないかと考えます。しかし、同時に中高年の離職者が出てまいりまするので、これに対しましては配置転換をはかると同時に、やむを得ず失業する人に対しましては転職訓練の実施、職業転換給付金制度の活用などによりまして、円滑な再就職の促進につとめてまいりたい、かように考えております。(拍手)
〔政府委員北島武雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/23
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024・北島武雄
○政府委員(北島武雄君) 下請企業は、お説のとおり親業者に対して非常な従属性を持っておるわけであります。したがいまして、お話のように申告制を基調といたしましたら、とうていこの下請代金支払遅延等防止法というものは実効を期し得ないのであります。したがいまして、公正取引委員会といたしましては、積極的に親事業者に対しまして定期に報告を徴し、その報告によりまして、下請代金支払遅延等防止法違反の疑いある事業者に対しまして立ち入り検査を実施し、それに基づいて勧告あるいは行政指導等の是正の措置を講じておるわけでございます。もちろん、下請企業者からの申告は、これは大いに歓迎いたすところではございますが、単独ではどうしてもなかなかでき得ませんので、比較的下請企業を多く包摂包含いたしておりまする中小企業団体十八団体に協力を求めまして、その協力により、親企業の違反事実がありましたらばすみやかに公取に連絡願う、その他下請取引の実情把握に協力をお願いしているわけであります。なおまた個人的には、下請取引に非常に通暁いたしており、かつまた熱意を有するところの個人の方を、下請取引改善協力者の制度を設けまして委嘱いたしております。しかし、とにかくこれは積極的に私のほうでもって乗り出さなければ実効を期し得ない法律だと考えております。そういうふうに実施いたしておるわけであります。
ただ、人員の点につきましては残念ながら十分ではございません。この二年間にわたりましてある程度の増員はございますが、今後さらに引き続きましてこの増員をはかって充実を期してまいりたい、こう考えております。
なお、罰則の強化につきましては、ただいままでの運用の実績においては、ただいまのところ罰則を強化する必要はないのではないか。ただし、この運用のいかんによりまして、その必要があればさらにその際に検討を要する、こう考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/24
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025・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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日程第一 日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/25
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026・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第一、日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/26
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027・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。外務委員長福田篤泰君。
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〔報告書は本号末尾に掲載)
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〔福田篤泰君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/27
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028・福田篤泰
○福田篤泰君 ただいま議題となりました日本国とアルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
わが国とアルゼンティンとの間の通商関係に関しましては、明治三十一年に署名された修好通商航海条約があり、戦後復活されておりますが、ガットや国際通貨基金協定との関連規定が欠けておりました。また、両国の通商関係も拡大いたしましたので、諸般の待遇保障の改善充実をはかる必要があり、かねてから新たに通商航海条約の締結を交渉しておりましたが、昭和三十六年十二月二十日、東京において本条約及びその不可分の一部をなす議定書に署名調印を行なったのであります。
本件は、昭和三十七年の第四十回国会に提出されましたが、同年三月アルゼンティンにクーデターが起こり、同国の議会が解散となりまして、批准の見通しが立たなくなりましたので、そのまま審議未了となっていたのであります。
本条約は、待遇保障の拡充を目的として滞在、居住、出国、身体の保護、財産の公用収用、裁判権及び課税等に関し内国民待遇及び最恵国待遇を、入国、事業活動及び自由職業の遂行、関税、為替管理に関し最恵国待遇を、海運に関し最恵国待遇及び一部事項に関する内国民待遇を、それぞれ相互に許与すること、ガット及び国際通貨基金協定との関係、商事仲裁、科学及び技術の交流等について規定しております。
本件は、三月二十七日外務委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ない、なお、参考人を招致して意見の聴取を行なうなど、慎重審議をいたしましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
かくて、五月十二日、本件に対する質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、全会一致をもってこれを承認すべきものと議決いたしました。
右、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/28
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029・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/29
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030・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/30
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031・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後四時二十二分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
厚 生 大 臣 坊 秀雄君
通商産業大臣 菅野和太郎君
労 働 大 臣 早川 崇君
自 治 大 臣 藤枝 泉介君
出席政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
公正取引委員会
委員長 北島 武雄君
通商産業省繊維
雑貨局長 乙竹 虔三君
中小企業庁長官 影山 衛司君
中小企業庁次長 金井多喜男君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01319670516/31
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