1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年五月二十六日(金曜日)
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議事日程 第十四号
昭和四十二年五月二十六日
午後二時開議
第一 運輸省設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第二 厚生省設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 運輸省設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
日程第二 厚生省設置法の一部を改正する法律
案(内閣提出)
科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
午後二時十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/0
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001・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 運輸省設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
日程第二 厚生省設置法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
科学技術庁設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/1
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002・亀岡高夫
○亀岡高夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、日程第一及び第二とともに、内閣提出、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案、文部省設置法の一部を改正する法律案を追加して四案を一括して議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/2
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003・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 亀岡高夫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/3
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004・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
日程第一、運輸省設置法の一部を改正する法律案、日程第二、厚生省設置法の一部を改正する法律案、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案、文部省設置法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。
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005・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長關谷勝利君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔關谷勝利君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/5
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006・關谷勝利
○關谷勝利君 ただいま議題となりました四法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、運輸省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、
第一に、航空局に飛行場部を新設すること
第二に、本省の附属機関として、電子航法研究所及び航空保安職員研修所を新設すること
第三に、本省の地方支分部局として、東京及び大阪に地方航空局を新設すること
第四に、地方航空局の事務の一部を分掌する機関として、空港事務所その他の地方機関を置くこと
その他定員を百二十七人増員すること等であります。
本案は、三月二十三日本委員会に付託、五月九日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、二十五日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、厚生省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、公害防止行政を一そう積極的に推進するため、環境衛生局に公害部を設置するとともに、定員を四百六十四人増員しようとするものであります。
本案は、三月十八日本委員会に付託、五月九日政府より提出理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、二十五日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、
第一に、航空宇宙技術研究所に関する事務を振興局から研究調整局に移すこと
第二に、金属材料技術研究所は、金属材料等の品質の改善をはかるための研究のほか、必要な試験を行なうこととするとともに、委託に応じてこれらの研究、試験を行なうことができるものとすること
第三に、宇宙開発推進本部は、委託に応じて人工衛星の追跡を行なうことができるものとし、また、沖繩に沖繩電波追跡所を設け、同所の職員には在勤手当を支給するものとするほか、所要の地に推進本部の支所を設けることができるものとすること
その他定員を九十八人増員することであります。
本案は、三月十八日本委員会に付託、五月九日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、本二十六日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、文部省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、
第一に、国立近代美術館の京都分館を京都国立近代美術館とすること
第二に、学術奨励審議会を学術審議会に改組すること
第三に、国立学校の職員等を三千三百九十九人増員することであります。
本案は、三月十六日本委員会に付託、五月九日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、本二十六日、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/6
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007・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これより採決に入ります。
まず、日程第一並びに科学技術庁設置法の一部を改正する法律案、及び文部省設置法の一部を改正する法律案の三案を一括して採決いたします。
三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/7
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008・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第二につき採決いたします。
本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/8
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009・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 租税特別措置法の一部を改正する
法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/9
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010・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 日程第三、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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011・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。武藤山治君。
〔武藤山治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/11
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012・武藤山治
○武藤山治君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、政府の反省を求め、反対の討論をいたします。(拍手)
租税特別措置は、多岐にわたり政策効果を失ったと思われるものもあり、われわれは強く改廃を主張してまいりました。今回の改正案の中でわれわれが強く反対しているのは、利子一配当所得の優遇措置が三カ年延長される点であります。
第一の反対の理由は、不労所得、資産所得があまりにも優遇され、勤労の所得と不均衡になるからであります。(拍手)個人の所得はすべて総合し課税標準とするのが所得税のたてまえであります。しかるに、株の配当に対しては特別措置により源泉税率を軽くし、分離課税を許し、確定申告不要の取り扱いで税負担を軽減し、年間三百六十億円の恩恵を与えてきたのであります。このような措置がなくとも、株式所有者には配当控除制度があり、株の売買利益には税金がかかっていないのであります。大蔵委員会で論議され、明らかにされたことに、個人の受け取り配当年間三千五百三十一億円のうち、税務署に申告された額は千七百六十八億円にすぎず、無申告が一千二百三十三億円に達することがわかり、かなり優遇されている配当所得がさらに税脱されているのであります。株式の売買が年間五十回以上行なわれると、株の譲渡所得税がかかることを法は定めております。ところが、国税庁の答弁では、譲渡所得課税はゼロとなっており、全く税金を納めていないのであります。アメリカ、イギリスでは、短期の証券の売買についてキャピタルゲインに課税しているのであります。いかに日本の税制が資産所得、不労所得に有利になっており、至れり尽くせりの優遇であるかは、以上のごとく明らかであります。(拍手)われわれが政府に反省を求め、本制度に反対するゆえんはここにあるのであります。配当優遇と同様に、政府は貯蓄の奨励と称して、預貯金の利子を総合課税からはずし、分離一五%の税率で三年間延長しようとしております。本来なら、累進課税の所得構造から見て五〇%あるいは六〇%の高率で課税されるはずの高額所得者が、わずか一五%の課税で優遇されているのであります。政府は、経済成長のため貯蓄を高めるための措置だと強弁をいたしますが、この措置と貯蓄高との因果関係は認められないと税制調査会でも明らかにしているのであります。昭和二十八年、昭和二十九年は源泉選択五〇%のものを分離一〇%に軽減したが、そのときの貯蓄率は一〇・六、一〇・四と、前年の一五・六よりも低下したし、また、三十八年に分離一〇%を五%に軽減したが、貯蓄率には変化がないのであります。すなわち、預貯金をする者は、利子率にのみ左右されて預貯金をするのではないことを実証しております。優遇措置によるよりも、所得の増加、減税による可処分所得の増加が預貯金の増加に結びついている事実を見のがすことはできません。(拍手)
わが国の貯蓄性向は世界一高く、アメリカ八・五、イギリス八・四、ドイツ一三・六、フランス一一・九と比し二一・二となっているのであります。もはや利子所得の優遇は政策効果を失っていることが明瞭であり、特に実態を見るに、いよいよその不合理性が明らかとなるのであります。
昭和四十一年のベースで調べてみると、百万円以上の預貯金を有する世帯は、所得二百万円以上の高額所得のところであり、年間二百万円以下の所得者が九〇%の預金者比率を占めているが、ほとんど預金額は百万円以下であります。預貯金百万円以下は、少額貯蓄免税の制度により利子非課税であり、分離課税や税率軽減の恩恵は受けないのであります。したがって、分離課税、税率軽減の措置による二百七十億円の減税の恩恵は、二百万円以上の所得のある高額所得者わずか三十五万九千世帯にのみその恩恵が及んでいることになり、一世帯当たりにして七万円の補助金が、高額利子所得者に渡された計算となるのであります。(拍手)まさに金持ち天国といわざるを得ないのであります。二千六百万人の低所得者と、わずか三十五万九千人の高額所得者といずれにウエートを重く置くのが正しい公平の政治か。私は自民党政府に冷静な反省を求めたいと思います。(拍手)
また、現行の預金制度には、いろいろな問題が多く、国税庁のサンプル調査によると、脱税事犯の別段預金のうち、五四・八%が架空名義預金であり、四二・八%が無記名預金であります。実名の預金はわずか二%にすぎなかったことが明らかにされました。架空、無記名の預金がいかに多いかを実証しております。なぜ九〇%以上も架空、無記名預金となるのか、答えは明瞭である。脱税した資金の隠し場に利用されているのであります。
われわれは、これが改革を提唱して戦ってまいったのであります。政府は、貯蓄奨励と称しながら、一部の国民に特別な恩恵を与えるこの制度を続けるということは、国民の納税モラルを低下させ、政府は国民の指弾を免れることはできないと思うのであります。すみやかに本制度は廃止すべきであります。(拍手)
第二に、以上のように、利子・配当の優遇は、所得税の体系を乱し、総合累進税制をねじ曲げ、公平、応能の原則を破壊している点であります。
所得税は、国民の所得格差を調整し、富を再分配する機能を発揮すべき税であり、所得の多い者から多くの税金を取るという性格の税であります。個人に帰属する所得を指標として、その担税力を把握するものであり、累進税率を適用する基準となる課税標準にはすべての所得を総合することが本則であり、原理であります。水田大蔵大臣は、「ひとしからざるを憂う」と大蔵委員会で申しました。「不公平は重税より悪税なり」ということばもあります。為政者の忘れてはならない名句と私は思うのであります。(拍手)しかるに、利子・配当所得を特別に優遇し、総合累進課税から取りはずすことは、近代国家の重大な原理を踏みにじるものとして断じて許すことはできません。(拍手)
最後に、われわれは政府に次のことを強く要請し、すみやかなる善処を期待するものであります。
一、架空名義、無記名預金の取り扱いを廃止すること、一、短期の有価証券譲渡所得に課税すること、一、企業の交際費損金算入に限度を設け、飲食費については一人五千円程度、贈答品については一万円以内とすること、個人零細事業者に交際費と同性格の概算控除を認めること。
今回の利子・配当所得優遇措置は、いまこの本会議場において多数決により成立をせんとしております。しかし、この措置は、課税公平の原則を乱すものであり、国民の批判の的であります。三年の期間を待たず、すみやかに廃止することが、国民感情に照らしてみてもしかるべき処置であると思います。政府の猛省を促して、討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/12
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013・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 小峯柳多君。
〔小峯柳多君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/13
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014・小峯柳多
○小峯柳多君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、私は、自由民主党を代表して、政府原案並びに修正案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。(拍手)
政府案は、多岐多面にわたって租税に対する特別の減免措置を講じ、この減免によって、租税の角度から政府の直面する諸政策に誘引的アクセントをつけているものであります。
法案の取り上げている内容も、企業の体質改善、中小企業の助成、輸出の振興、社会開発の推進、土地と住宅対策、食糧政策など、さらには景気の調整、貯蓄の奨励、交際費の規制にまで及ぶきわめて広範囲のものでありまして、まさに政府の産業、金融、住宅と土地、社会開発等、諸般の政策の租税的表現であると申しても言い過ぎではないと思うのであります。(拍手)
租税は、それ本来の性質といたしましては、冷ややかな顔、とりすました顔つきをしているものであると思います。しかし、本案のごとく、特別の減免税を大幅に配慮される場合においては、租税もあたたかい顔、微笑をたたえた笑顔にさえ変わるのでございます。(拍手)本来冷ややかな顔つきであるべき租税のたてまえの中にあって、この微笑、しかも総額二千四百十九億円の微笑を広く国民と企業に贈ろうとする政府のあたたかい心づかいに対し、私はまず拍手を送りたいと思うのであります。(拍手)
さて、この法律案に関する最大の論点は、言うまでもなく、租税に対する特別措置はいかにあるべきかという根本的な問題であります。租税に対する特別措置は全部やめてしまえというような極端な論議はもちろん、個々の特別措置の是非に関する論議も、ひっきょう、この根本的な問題に帰着するのではないかと思うのであります。したがって、私は、まず租税特別措置のあり方に関し、私たちの考え方を卒直に申し述べたいと思うのであります。
御承知のとおり、租税特別措置は、特定の政策目的を達成するための手段として、租税の誘引効果を期待するものでありまして、近代的経済財政政策の一環をなすものと見ることができるのであります。誘引効果を期待するための傾斜的減税であります以上、租税負担の公平あるいは租税の中立性等が一時的にたな上げされますことはきわめて当然でありまして、租税特別措置を論議する場合、公平論や中立論にこだわることは本末を取り違えたもので、無意味な論戦と申さなければなりません。(拍手)したがって、租税特別措置の一面の、しかも形式的な欠点を非難するに急で、その重要な政策的な意義、役割りを見落とした議論にはとうていくみし得ないものでありまして、かかる論者とは、ともに近代経済を論ずる必要なしとさえ言いたいのであります。(拍手)
私たちは、行政経済政策における租税の誘引効果を高く評価し、これを政策手段として有効に活用することの意義を強く認識するものであります。したがって、本案に盛られたような一連の特別措置こそ、資本の自由化に対処しつつ、わが国の経済を手がたく安定的成長を続けさせるために、当面特に重要視されなければならないと確信をいたすものでございます。(拍手)
しかし、私たちは、特別措置万能を主張するものではありません。特別措置はあくまでも特別措置でありますから、特別措置の乱用が税制の大本を乱すことにならないよう、不断に厳戒すべきものであると思いますし、また、その整理合理化も、環境と条件の変化に応じて遅滞なく実行する心がまえを堅持しなければならないと思うのであります。もっとも、特別措置の整理合理化を検討実行する場合には、現行の措置が産業の助成、輸出の振興、設備の近代化、貯蓄の奨励等の重要な施策の一環を形成しつつ、企業の行動と、国民の生活心理にまで深く食い入り、経済の現実に広く定着している現実を軽視してはならないと思うのであります。
さきの暫定措置で、利子と配当の源泉税率の引き上げがきまると、郵便貯金の利下げが問題になるなど、経済界は生きたつながりで結ばれており、一波万波を呼ぶ関係にあることを強く記憶しなければならないと思います。したがって、特別措置の整理合理化には積極的な意欲を持ちながらも、これが実行にあたっては、細心の注意と、慎重な段取りとを考慮する必要があると思うのでございます。
方向としましては、当然に整理合理化を進めなければならぬ利子と配当の特別措置、また、交際費の規制などに対しましても、本案が漸進的な段取りで進めておりますことは、利子と配当に対する特例や、交際費の慣習、惰性がすでに個人生活と企業経営の中に定着しているという事実を重視しているからでございます。
以上、特別措置のあり方に関しましては、要は、経済政策の目的と、税制の基本的目的とをいかに調和させるかということでありまして、この辺に自由主義財政経済政策の絶妙なる手綱さばきがあると御承知願いたいのであります。(拍手)
以上のような観点から政府提出の租税特別措置法改正案の内容を見まするに、政府原案は、しさいに検討すれば多少の不備未熟な点はあるにせよ、時局柄きわめて適切な措置を網羅しているものと考え、賛成の意を表するものでございます。(拍手)
ところで、この改正案の内容は、当面の政策要請にこたえて新たに特別措置を講ずる必要のあるものと、既存の特別措置につき実情に即して整理合理化の措置を講ずる必要のあるものと、二つに大別されるのであります。
前者に属するものでは、企業の体質改善、中小企業の体質強化、輸出の振興、社会開発の促進、あるいは土地と住宅対策の充実等、当面の政策要請にこたえて、新しく所要の措置を講じております。また、税制の景気調整機能強化の見地から、法人税の課税特例を設ける等の改正も新しく取り上げられております。しかし、いずれの措置も、時宜を得たきわめて適切なるものと認められるのであります。ことに、近代財政政策としてフィスカルポリシーへの関心が高まっている昨今、徴税を弾力的に行ない得るこの種の特別措置には、時節柄大きな意義があると思うのであります。
次に、後者に属するものとしましては、利子・配当の所得課税についての特別税率の引き上げと、これに関連する割引債の償還差益課税の特例新設、交際費の損金不算入制度の改正等、いわば整理の方向に向かっての合理化を進めている各種の措置があります。適用期限の到来する特別措置についても、必要に応じ、整理ないしは合理化を加えつつ、適用期限を延長することにいたしております。さらにまた、税制簡素化の観点も取り入れて広く改善合理化がはかられているのでありまして、この面におきましても政府の措置は適切妥当なものと認められるのであります。
以上のとおり、政府原案は、租税特別措置の根本的なあり方という本質的な観点からいたしましても、また、当面の政策上の要請という現実的な観点からいたしましても、ともに必要にしてかつ適切な改正であると考え、私たちは責任をもって本法案に賛成するものでございます。(拍手)
なお、この際特に申し加えたいことは、この案に反対する諸君が目のかたきにする利子と配当に対する特別措置についてであります。
働く低額所得者と、利子と配当の加算される高額所得者との不均衡論が、反対論者の重要な論点でありますが、私たちからすれば、かかる論者は、あまりにも近視眼的であり、かつ、租税特別措置なるものの本質をあまりにも知らな過ぎると思うのであります。
租税特別措置は、個人所得上の不均衡は初めから承知の上で、特別の対策目的達成のため、租税の誘引効果をねらったものであります。だからこそ特別措置と呼ぶのであって、このたてまえを正当に理解されれば、個人所得上の不均衡を論議の中心とすることはどうしても解せないのであります。
ところで、利子・配当に対する特別措置で誘引しようとする政策目的は何かと言いますと、国民経済、特に安定成長下の国民経済にとって重要な役割りを持つ金融市場と証券市場に、利子・配当所得者の資金を誘引することがこの目的であると申さなければなりません。経理と計数に敏感な利子・配当所得者の資金を、正常な金融市場や証券市場に誘引しようとすれば、利回り計算をもって誘引する以外に方法はありません。そして、その利回り計算を確立させるために、利子と配当に対する特別措置が必要なのであります。もしこの特別措置がなく、他の所得と総合されて累進所得税率が適用されるようになりますれば、大方の利子・配当所得者は……
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/14
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015・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 小峯君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/15
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016・小峯柳多
○小峯柳多君(続) その手持ちの資金を、国民経済的には好ましくない方向、たとえば不健全手形の買い取りだとか、高利の運用だとか、土地の思惑などに動員して、金融市場と証券市場における現実の穴の大きさには、けだし予想外のものがあるだろうと思われるからであります。
しかし、実際問題として、特別措置がありますがゆえに、これらの利子・配当所得者の資金は、あるいは預金に預け入れられて金融市場をつちかい……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/16
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017・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 小峯君、小峯君、簡単に願います。結論をお急ぎ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/17
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018・小峯柳多
○小峯柳多君(続) あるいは証券に投資されて、民間の産業資金と政府の財政投融資資金の相当額をまかなっているのであります。
私たちは、利子と配当に対する特別措置が存在することによって、利子・配当所得者の資金が、国民経済的に有効な機能を発揮し、一国経済の安定成長を助け、国民所得水準を引き上げ、本案の反対論者が声を大にして庇護する低所得者の所得引き上げにもやがてはものを言う筋合いにあることを……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/18
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019・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 結論を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/19
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020・小峯柳多
○小峯柳多君(続) この際、感情論でなしに、冷静に事実認識をする必要があると思うのであります。
最後に、修正案に対しましても、私は賛成をいたしております。
以上、簡単でございますが、賛成の討論を終わりたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/20
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021・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 竹本孫一君。
〔竹本孫一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/21
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022・竹本孫一
○竹本孫一君 私は、民主社会党を代表しまして、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)
第一に、私ども民社党は、当面の政策上の要請にこたえて、一定の税制上の特別措置を講ずること自体については、必ずしも反対するものではありません。四十二年度の五兆円の予算につきましても、その財源の大宗は言うまでもなく税金でありまして、租税及び印紙税の収入は三兆八千五十二億円の多きに達しております。この税金は、あくまでも公平に、できるだけ普遍的に取られるべきであることは言うまでもありません。しかしながら、当面の政策上の要請に端的にこたえるためには特別措置が必要であり、有効であることを認めるにやぶさかではありません。
今回の改正案で設けられました新しい特別措置の幾つかのもの、すなわち、試験研究費の税額控除制度、紡績業及び織布業の構造改善対策、あるいは石炭鉱業の整備対策、あるいは土地対策、住宅政策等々につきまして、若干の特別償却や割り増し償却あるいは準備金の創設、税額控除等が行なわれることにつきましては、私どもはその政策効果を期待するものであります。また、大蔵委員会において修正されました消費生活協同組合等の内部留保に対する二分の一の非課税措置につきましても、消費生協を他の協同組合と特に差別しなければならない理論的根拠がないのみならず、消費者保護の徹底、物価値上がりムード抑制の見地に立ちまして、その努力を多とするものであります。
第二に、本件に関する基本的問題は、利子所得・配当所得に対する課税の特例がその適用期限を昭和四十五年三月末まで延長された点であります。この問題は、御承知のごとく多年国会においても深刻なる論議を呼んだ問題であります。国会の中でも、野党のみならず、広く国民世論の中においても、最も悪評のはなはだしきものであります。政府・自民党を支持しておられる方々の中でも、そのあり方に疑問を持ち、また憤りを感じている人の決して少なくないことを私どもは知っておるのであります。
本件は、高額所得者を特に利益する悪法でありまして、郵便貯金の非課税、少額貯蓄の非課税等を合わせれば、すでに元本二百万円までは利子所得について無税となることになります。まじめに働いておる農民、中小企業者あるいは労働者の何%が、はたしてこの利益を受けることでありましょうか。また、配当所得につきましては、その九〇%以上が百万円をこえる高額所得者でありまして、この配当所得の措置によって利益を受ける人は一部高額所得者だけであることは、あまりにも明々白々であります。(拍手)貯蓄に対する影響を考慮し、資本蓄積を強化するという美名のもとに特別措置を講じようとしておるのであります。この措置によって、しからば資本蓄積の政策効果があがるでありましょうか。これはほとんどあがってはいないのみならず、逆に脱税や、先ほども御指摘のありました無申告による脱税が激増しただけであります。すなわち、この特別措置は、一方において政治の根本倫理を破壊したのみならず、国民一般の道義心の低下を招き寄せたのであります。
われわれは、ただに国民の声としてその廃止を要求するのみならず、まじめな国民の怒りと正義心を代弁して、本法に強く反対するものであります。(拍手)
思うに、貯蓄の増強は、物価の安定と国民所得の増大にまつべきものでありまして、分離課税や特例税率のパーセンテージの問題でないことは、いまや経済学の常識であります。また、資本の蓄積は、日本の資源、資金、労働力の総合的、合理的、計画的な配置と運営等、すなわち経済政策の基本的課題にまつべきものでありまして、これまた、源泉選択制度や特例税率、配当控除等々の思いつきの対策に期待すべきものではないのであります。
要するに、政府の利子・配当による特別措置は、経済政策の根本をたな上げして、一握りの高額所得者のために不当の優遇措置をはかるものでありまして、これがために、租税の大原則である公平の原則が破壊せられ、政治の正義感がねじ曲げられようとしておるのでありまして、われわれの断固として反対するところであります。(拍手)
交際費損金不算入制度につきましても、きわめて事務的な配慮が試みられただけでありまして、それはあたかも、利子・配当所得について今回特例税率を五%引き上げたと同じように、わずかに良心的なゼスチュアをしたにすぎないのでありまして、問題の根本的解決にはほど遠いことを指摘しなければなりません。
第三に、私どもは、この際、中小企業に対する思い切った租税の特別措置の法定を主張するものであります。
今日の、中小企業は、御案内のごとく、外からは資本の自由化のあらし、内では大企業のシェア獲得競争のあおりを食って、内外から挾撃を受けて、はなはだ苦しい立場に立たされております。この中小企業のためにこそ思い切った特別措置を講ずべきであります。しかるに、われわれが中小企業に対する特別措置を講ぜよと言えば、通産大臣も大蔵大臣も、それは租税公平の原則に反すると言って反対をされました。これは一体どうしたことでありますか。強き立場の大資本のために利子配当の特別措置を講ずることは租税公平の原則に反しないが、弱き立場に立つ中小企業のために特別措置を講ずることが負担公平の原則に反するというのでありましょうか。われわれは断じて理解し得ないところであります。
なるほど、政府も中小企業法をすでに制定せられ、若干中小企業に対する特別措置を今日講じておられます。たとえば特定の中小企業に対する減価償却の特例、中小企業海外市場開拓準備金制度、中小企業構造改善の準備金制度、あるいは中小法人に対する軽減税率等の措置が現在講ぜられております。また、今回は、新たに発足する協業組合に対する現物出資についての課税の特例措置、協業組合の有する機械等についての割り増し償却等々の措置が設けられようとしております。しかし、せっかくの協業組合について見ましても、すみやかに蓄積をふやして経営を安定させるために、内部留保の累積額が資本金額に達するまでは毎年の留保分のうち半分だけは免税にすべきであるという要望が業界からも強く出ておったのでありますけれども、今回の租税特別措置法の中には、それが全然無視されてしまっておるのであります。協業化は中小企業がこれから生き残るためのただ一つの道であると通産大臣も言っておるにもかかわらず、今回のこの特別措置は全く遺憾しごくであると申さなければなりません。
要するに、中小企業に対する政府の若干の措置は、いわゆるスズメの涙一滴の程度でありまして、いわば、これによって政府の顕微鏡的正義感がささやかに貫かれておるにすぎません。
わが民社党は、中小企業や農民、働く労働者のためにこそ、思い切った大胆で新鮮な特別措置を講ずべきことを要望するものでありまして、政府の今回の原案は、特別措置を講ずべきもののためには特別措置を講じないで、特別措置を講じてはならないものに特別措置を講じようとするものでありまして、小峯議員の言われたところによれば、笑顔をつくることは必要であるかもしれませんけれども、その笑顔の向け方と方向を誤ったものであります。(拍手)
私どもは、こうした方向を誤った特別措置に対しまして、あくまでも断固反対の意思を表明いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/22
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023・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたします。
採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/23
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024・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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中小企業近代化促進法の一部を改正する法律
案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/24
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025・亀岡高夫
○亀岡高夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、内閣提出、中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/25
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026・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 亀岡高夫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/26
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027・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/27
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028・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長島村一郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔島村一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/28
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029・島村一郎
○島村一郎君 ただいま議題となりました中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
中小企業近代化促進法は、中小企業のウエートが高く、かつ、特に近代化を急ぐ必要のある業種を指定し、それぞれの業種ごとに実態調査を行ない、それに即した近代化計画を策定するとともに、近代化計画の円滑な実施をはかるための金融、税制上の措置を講ずる目的をもって、昭和三十八年に制定されたものでありまして、現在までに八十余の業種が指定されております。
本改正案は、近代化計画の推進をはかるための税制土の特例につきまして、
第一、減価償却の特例が適用される中小企業者が、資本金五千万円以下の会社または従業員数三百人以下の会社か個人に限られておりますのを、この限定を削除すること
第二、合併、共同出資等の場合の課税の特例が適用される中小企業者が、企業組合については、出資総額五千万円以下または従業員数三百人以下のものに限られておりますのを、この限定を削除することの二点の改正を行ない、これによって本法上の中小企業者すべてに課税の特例措置が及ぶようにするため提案されたものであります。
本案は、去る四月二十七日当委員会に付託され、四月二十八日菅野通産大臣より提案理由の説明を聴取し、五月二十四日から質疑に入り、きわめて熱心なる審議が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲ります。
五月二十六日に至り、質疑を終了し、引き続き採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対し、指定業種の拡大及び業種指定における労務対策の重視を骨子とする附帯決議を付しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/29
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030・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/30
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031・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105505254X01719670526/31
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032・石井光次郎
○議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十四分散会
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出席国務大臣
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
文 部 大 臣 剱木 亨弘君
厚 生 大 臣 坊 秀男君
通商産業大臣 菅野和太郎君
運 輸 大 臣 大橋 武夫君
国 務 大 臣 二階 堂進君
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