1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月十三日(木曜日)
午前十時五十分開会
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委員の異動
七月十二日
辞任 補欠選任
森 八三一君 松平 勇雄君
廣瀬 久忠君 栗原 祐幸君
七月十三日
辞任 補欠選任
松平 勇雄君 伊藤 五郎君
栗原 祐幸君 横井 太郎君
高山 恒雄君 向井 長年君
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出席者は左のとおり。
委員長 藤田 進君
理 事
稲浦 鹿藏君
大森 久司君
山内 一郎君
大河原一次君
委 員
石井 桂君
奥村 悦造君
熊谷太三郎君
中津井 真君
平泉 渉君
横井 太郎君
瀬谷 英行君
田中 一君
松永 忠二君
鈴木 一弘君
高山 恒雄君
春日 正一君
国務大臣
建 設 大 臣 西村 英一君
政府委員
大蔵省国有財産
局長 松永 勇君
建設省計画局長 志村 清一君
事務局側
常任委員会専門
員 中島 博君
説明員
建設省計画局総
務課長 吉田 泰夫君
建設省都市局都
市総務課長 野崎 清敏君
参考人
首都高速道路公
団理事 飯田逸治郎君
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本日の会議に付した案件
○土地収用法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○土地収用法の一部を改正する法律施行法案(内
閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/0
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001・藤田進
○委員長(藤田進君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
委員の異動について報告いたします。
昨十二日、森八三一君及び廣瀬久忠君が委員を辞任され、その補欠として松平勇雄君及び栗原祐幸君が選任されました。
それからまた本日、松平勇雄君及び栗原祐幸君が委員を辞任され、その補欠として伊藤五郎君及び横井太郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/1
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002・藤田進
○委員長(藤田進君) 土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。
質疑のある方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/2
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003・松永忠二
○松永忠二君 本法律案を改正する目的は、この提案理由にありますように、総合的な地価対策の一環として、公共事業のための用地取得制度の改善をはかる、特にその中では、開発利益を含む土地価格で用地を買収するということのないように合理化する。あわせて、まああまりここには触れてないけれども、私たち、土地収用の迅速をはかるというそういうことに目的があると思うわけですが、そこで、本法案が地価対策の一環であるという理由を大臣から、簡潔でけっこうですから、説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/3
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004・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 御承知のように、地価対策としてのなかなかきめ手がないのでございまして、どういうことでも多小地価対策に好影響を及ぼすものがあれば、これは政府としてはそれを進めていくつもりでございます。しかしいままで、たとえば総理大臣の諮問機関でありました物懇の委員会におきましても、また宅地審議会その他のいろいろな物価並びに地価というようなものの議論の場におきましても、やはり地価対策は、なかなかいろいろな手を染めていかなければならぬ。そういうわけでございまして、そのまあ一つのこういう土地収用法を合理化することによりまして、やはりこれも地価対策の一環になるのじゃないか。ややもすると、公共用地が取得につきまして、やはり非常に事務がスムーズにいきませんと、とかく非常に高くかかる場合がある。そういうような場合は、ある一つのやっぱりそれが基準になってものをつり上げるのでございまするから、やはり一つの地価対策に影響があろうということで、その一環としたのであります。しかし、これをもって、それでは現在の地価の高騰がどれだけ押えられるかというようなことにつきましては、これはちょっと予測はできないのでございますが、少なくともこの地価対策のやっぱり一環にはなるだろうという考えをもってそういう改正の理由の一つにあげたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/4
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005・松永忠二
○松永忠二君 大臣がふだん言われているように、地価の問題については、需要と供給の関係にあると、こういうことをまあ強調もされておりますが、この法律でもって国民が公共用地に提供をして、そうして供給源がふえるという、そういう意味の土地対策というものは、そういう意味は、この法律の中にやはりあると考えるのですか、そういう点は……。大臣から言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/5
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006・西村英一
○国務大臣(西村英一君) これで供給源がふえるということではないのです。別に供給源がふえるわけじゃございません、これを強化したことによって。まあそのどういう質問かちょっと意味がわかりませんが、供給源はその改正をしたために、何といいますか、宅地それ自身の供給源がふえる、まあその宅地造成の場合にやりやすくなると、そういう意味によってふえるということを言うならば別でありますけれども、直接にこれでどうだというようなことじゃないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/6
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007・松永忠二
○松永忠二君 私の言うのはね、その公共用地を取得するにスムーズになるし、あるいはまたやりやすくなる、こういうようなことを予想しているのだから、結局これによって、やはり土地収用法を改正することによって、公共用地の取得はやりやすくなる。やりゃすくなるということは、やはりある程度スムーズに供給されてくるという、そういう見通しをもって立てられているものだと私は思うのですよ。そういう意味でお聞きをしたのであって、スムーズにいくということになれば、結局は容易に供給できてくるだろうと、そういうお考えというものはあるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/7
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008・西村英一
○国務大臣(西村英一君) そういう意味でしたら、まさにそのとおりでございます。それによってやはり非常に助けられる、スムーズにいくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/8
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009・松永忠二
○松永忠二君 そこでですね、ただ私は、そういう目的でお出しになっていると思うのだけれども、はたしてその目的を達成できるだろうかどうかという点について疑念もあるわけなんですね。それは要するに、今度の改正によって、収用法に対する信頼が非常にふえてきて、そして進んでとにかく収用法に基づいて快く土地を提供してくる、こういうことが必要なことだと思っておられると思うし、またそういうことが改正をする一つの理由にもなると私たちは思うのですね。ところが、土地を提供する者の立場から言うと、どういうことになるかというと、理屈はいろいろ——公共事業のために値上がりをしたいわゆる開発利益を含む価格で用地を買収することは不合理だというわけですね。だから大臣が言うように、要するに合理的に適正に買おうというわけなんでしょう。しかしこれは、表面のことばで言えばそうだと思う。もっと俗なことばで言えば、適正に安く買いたいということだと思うのです。開発利益が加わっているのは不合理だというのですから、開発利益というものが加わらない適正ないわゆる合理的な価格で買いたい、こう言うのだから、いわゆるこの収用法が改正をされて、より以上に自分らのものが非常に、ある程度高く買われるとか、合理的だというようには意識はしないと思うのですね。だから、質問時間もありませんから、私たち自分の意見のようなものを先にまじえて言うのですが、この前御質問があった千葉の国際空港の用地買収については土地収用法使わないと、こう言っているのは、それを、土地収用法を使うと安くなってしまうから、土地収用法を使わないで、つまり有利にやりますよということが、私は、その適用しないということで住民が納得している理由だとまあ思うわけなんですがね。
そこで私大臣にお聞きしたいのは、こういう改正をすることによって、土地を収用される者が喜んで収用されるというふうに考えておられるのか。これについては、やはり幾分そういう点については疑念があるとか、その判断はどう大臣考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/9
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010・西村英一
○国務大臣(西村英一君) その喜んでといいますか、収用される人は、自分がやはり収用されるのですから、喜んでというわけではないと思うのです。しかしまあ開発した利益をこれは加えてやることは、やはりこれは不合理であるから、開発利益というものは、これはやっぱり適正に配分しなければならない。しかし収用された人は、そのために不利益もこうむるから、税法上のまた恩典も授けてやろうと、こういうのでございまして、その安くたたくために、この法律の改正ということに直ちに結びつかないと思うのです。あくまでも適正な値段ということでやはり組んであります。それから何と申しますか、飛行場の問題につきましては、いまから土地収用法云々すべくものではないのでありまして、あくまでもやはり話し合いによって、両者の話がつかないときに、初めてこの公共の目的のためにこれを適用することもあり得ると思うのでありまして、いまのうちから土地収用法を云々するということは、まだそういう段階ではなしに、あくまでも協議して、やはり買う人売る人の納得する方法でいかなければならぬと思うのであります。私は買収される方が、これはやはりその値段のきめ方につきましては、これはやはり大部分は協議できるのですから、大部分は任意協議でいくんですから、そのうち両者の意見が合わないものにつきまして、初めてこの法が働くわけでありますから、大部分は協議でいくのであります。さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/10
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011・松永忠二
○松永忠二君 私がさっき聞いたところから展開していけば、やはり改正によって要するに公共用地を提供しやすくなる、また合理的だというような意識を与えて、そして積極的に提供もしてもらうことによって供給の源もふえてきて、結果的には地価対策の一環にもなる。あなたのおっしゃったのは、いままで高く買ったからほかのものも高くなるという、そういう地価対策と同時に、やはり公共用地を取得して、結局公共用地が取得しやすくなるというような意味で、要するに効果をねらっていると思うんですよね。ところが端的に言うと、私は合理的適格に買うとはいうものの、開発利益を含まないということを前提としている以上、とにかくいままでより買いやすくなる、俗に言うと、安く適正に買うということがはっきりしていると思うのですよね。したがって、私はやはり土地を収用される者が、この法律改正によって積極的に提供していこうという気持ちは、私はこの法律から出てこないと思うのですよ、これは私の意見。それから同時に、いまおっしゃったところによると、外国あたりではそうじゃない、むしろ自分からその収用法の適用を受けて、正確なもので収用してほしいという外国の事例あたりを書いたものを読んでみると、外国では逆なんです。まさにそうなければできない性格のものだとぼくは思うのです。そうなれば、結局地価対策も非常に有効になってくるわけですがね。まずいま言うとおり、個人そのものから考えると、開発利益を含まないというのだから、俗にいう少しは値が下がってということで意味がない。さっきの地価対策というのは、むやみに高く買うからいかぬという以上、やはりこの法律ができた以上、幾ぶん安い価格で適正に買うという以上は、個人としては安いものに買われるという気持ちが出てくると思うのですよ。だから積極的に協力していくという、この法律を改正したから積極的に個人がこれに協力してくるという気持ちは私は出てこない、この中から効果をねらうのはこれは無理じゃないか。そこでもう一つ、個人の収用される立場の者から言えば、自分ばかりいわゆる開発利益を否定されて、まわりの者はみんな開発利益を受けているじゃないか、ずいぶん不公平な話だと、そういう気持ちはますます強くなると思うのですね。これも従来、この前の法律は要するに税の特別措置法が出てきて、周囲の開発利益についてもちゃんと的確な措置が打たれているという中で、同時にこれをやろう、こういうことなら、まだ個人の気持ちとしては納得できるのに、まあがまんもしやすいのに、まわりの開発利益は何にも手をつけてないでおいて、そして収用されるその人の開発利益だけを含まないように、それが適正の価格の買い方だとこう言われたのじゃあ、あまりに均衡のとれないやり方だという気持ちになると思うのですが、この点については大臣は、この法律は現在そこまでいかなかったけれども、こういう方向で必ずしもそういう不公平なことはやらない、そういうような点をはっきりさせてもらわないと、これだけの片手落ちなやり方でこれを認めるというようなことについては、どうしても納得いきかねるという個人の気持ち、だからよけい提供しなくなっちゃう。むしろこういうものをつくったら、よけいに提供するのはいやだということで、効果を発揮できないのじゃないかという一つの理屈にも私はなると思う。この点についての大臣の御意見を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/11
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012・西村英一
○国務大臣(西村英一君) それはまさに議論のあるところでございます。そういうことは議論のあるところでございます。しかしながら、やはりそれであればこそ、特別な今度の収用される方は税法上の千二百万円の控除があるわけです。それでその収用以外の土地の開発利益というものはどうするかということは、これはたいへん議論があるものだから、今度は切り離したのでございまして、しかし、私はやはり衡平の原則に立てば、それらの方々の開発利益を、売る方々の譲渡所得の点につきましても考えなければならぬと思います。しかし、この開発利益と一がいに言いましても、それは非常に広い全国的にわたる問題でございまするから、別に税法上取り上げてこれは研究検討しようということでございます。したがいまして、先般の税制調査会につきましても、特に今回の場合は土地の譲渡所得の部会をつくりまして、大蔵省は相当な項目にわたって研究課題として投げておるわけでございます。私のほうも、この土地収用法のそういうものとの衡平の立場に立ちまして、これを答申が出ましたら、ひとつ検討をしたいとかように考えておるので、いろいろ議論がありますので、今回は切り離したのでございますけれども、私は衡平から言いまして、まあ松永さんのような気持ちは持っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/12
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013・松永忠二
○松永忠二君 この点につきましては、議論のあるところだと、こういうものを現実に今度は法律になって出てきたわけですよ。衆議院をいま通っているわけです。だから議論のあるところだというけれども、今度の場合やむを得ずこうなったけれども、おっしゃるとおり大臣、また私は局長にしてもこれでいいと考えているわけではない、絶対ないのだ。だから当然被収用者でない人の開発利益の問題については、いま税の特別委員会をつくってやってそれを早期に出してもらって、それでそういう点については、合理的にやるという決意を持っているというこの決意を披瀝してもらいたいということですがね。この点、ひとつ再度大臣と局長、その余分なことはいいですから、その点詰めて、あなたは交代するわけじゃないから、局長としてやはりそういう意味の、いままで、この前やったのとは少し違っているということについての、そういう意味の責任者としての私は決意を、やはりここではっきり聞いておかなければいかぬと思うのですが、簡単にひとつ、時間がありませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/13
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014・西村英一
○国務大臣(西村英一君) それも私がお答えしたほうがいいと思います。非常に注意深く言ったわけでございますが、結局現在諮問をして研究いたしております。非常にやはり開発利益ということを、やはり全般的に考えた場合には、いろいろむずかしいと思いまするが、ぜひともこれも答申があるでございましょうから、ひとつ衡平の原則に基づいて、早期にそれが結論が出ましたら、私としても、そういうものについてひとつ努力をしたいとかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/14
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015・松永忠二
○松永忠二君 そこで、まあこれが上がって出て、はたして提供しやすくなるかというと、私は提供しやすくならぬ。というのは、まわりがだめだ、自分ばっかり被害を受ける、いろいろ俗に適正だ合理化だと言ったって、要するにいままでよりは安く買われる、この気持ちは否定できない。そこでむしろ私は、こういうことをやるのはあとなんであって、全体の開発利益をまずどう処置するかという法律が出てきて、それでしかも、収用される人についてはむしろいわゆる優遇措置が行なわれる。大臣いま千二百万円の控除の話をしたけれども、千二百万控除があるからいままでより得になると言うならば、僕は意味がないと思うんですよ、これは。幾ら千二百万の控除があったからといって、従来より有利だということの保証はないと思う。従来より有利なようなことをするなら、何もこんな法律をつくることはないのだから、私は幾ら千二百万の控除があったからといって、非常に被収用者に有利だという理屈はない。むしろ私は逆なんだとこう思うんですよ。つまり開発利益をどうするかという法律が出てきて、そうして開発利益を皆が吸収する。その中でおれは土地を取られるけれども、土地を提供することだけしかできないけれども、その中で自分は税法的に千二百万の控除が出てきている。積極的に自分も提供しなければできないのじゃないか。こういうふうにいっていくのが私は順序じゃないか。そういうことによって、その段階でこういうものを出してくれば、私は非常に効果がある。これでもって積極的に快く土地収用に提供してこよう。そして同時にまた、自分でみずから進んでそういうことをやろう。供給源もふえてくるし容易になる。仕事は逆だと思うんですよ、僕は。土地の高騰に伴い、公共事業に伴い、土地開発利益をどう吸収するかという一般的な措置が行なわれる中で、そういうことが全部行なわれている。その中で収用される者については、土地を取られてどっかへ移らなければいかぬし、あるいは生活の根拠というものはまた別に移さなければできないけれども、まあまあ税法的にも控除の措置もある、そういう中で協力をしていかなければできないという気持ちが起こる。ところが、これはどういうことになっているかというと、開発利益はお前のものは見ないぞ。しかも適正にしろと言いながに、提案にもちゃんと書いてあるが、負担において行なわれる、高く買っているのが不合理だとはっきり書いてある。だからそれでもって押えられちゃ、これじゃ土地収用法改正して物価対策のいわゆる地価対策の一環だといってみても、そこまで一体……あまりひどいじゃないか。それからまた、そういうことによって、非常に効果が出てくるということはないという気持ちになるわけですね。だから学者の中には、こんなものをつくったって逆だ、むしろ逆にますます提供が困難になってきて反対が多くなるだろう、そんな効果なんかあがりっこないという言い方をする人もある。私は法的な立法のしかたといえば逆だ。むしろ開発利益をまず取っておいて、その中で収用される者は、被害者という面も一つあるわけだから、そういうものについては少しくらいの開発利益的なめんどうを見ていこうじゃないかということでスムースにいかれるものだと私は思うんですが、これについて大臣の考え方をちょっとお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/15
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016・西村英一
○国務大臣(西村英一君) やはりその値段をきめるのは、さいぜんも言いましたように、あくまでも買い手と売り手との任意協議でいくわけですね。しかし、時たまたまそれがはなはだしく合わないというときに、土地収用法の問題になるわけです。で、そういう場合に、その件についてそれがいつまでもそのときの値段のきめ方は、事業の認定時の値段でやるのだぞと、いつまでも話がつかなくても、裁決時じゃないのだということを言っているのですから、私は合理的であろうと思うのですよ。しかし、まあ周囲との関係もあるから、税法上の処置はとる。しかし、周囲はそれじゃまるっきり開発利益をもうけるじゃないかという議論がありますから、その問題については一般的、譲渡所得の問題になるといろいろあるから、あらためてひとつ譲渡所得については今後研究していく。それも今後やろう、こういうわけでございまするから、私は前回の土地収用法よりもはるかにこれは改善されたもの、合理的なものと、こういうふうに私は理解するのでございまして、いまのような行き方は、やはり一部の方々によって土地がつり上げられるということが十分あり得ると思うのであります。したがいまして、公共用地の取得にもスムーズにいくのじゃないかというように考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/16
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017・松永忠二
○松永忠二君 これは意見が違います。私は外国が収用を積極的に望んでくるとか、あるいはすぐ質問しますけれども、土地収用法そのものを、一体、大体公共用地については、こういう方向で合理的に取得をしていくのだという考え方に立つのか、ぐあいの悪いものをやるのだという、まああなたのような御意見があるのですね。しかし、必ずしもそれだって違う考え方がありますよ。しかし、とにかく私は土地収用法に対して信頼感を増していくということが、非常に重要だと思うのですよ。ところが、この改正の印象、いま一般の国民が持っている印象というのは、そうじゃないのであって、土地収用法が改められて強権を発動するという気持ちも相当来ているわけですね。信頼感を得て、なるほどこの土地収用法でやってもらえば安心だというふうにしなければできないが、それには私はこれは逆だということを言っておるし、この段階でほかのものを何も措置しないで、しかも、こういう言い方だけをしていくということは、これはプラスにならぬというふうに私は考えるわけなんです。
そこで、少し話を引きますけれども、適正な、正当な補償なりそういうものがあると、それで合理化するのだと、こういう話だが、そうすると、大臣、いまの御説明によると、これは要するに困って、いわゆる最終的に話し合いがつかないから、つかないものについて、小部分的なものについてこれをやるのだというような考え方を、はっきりおっしゃいましたね。これについてはそれが正しいかどうかということですね、これについては少しいろいろ意見があるわけですね。これはここに建設省の直轄の公共事業の用地取得のための手続に関する訓令というのを出した。これは昭和三十九年の三月十七日、これは直轄事業については土地収用法の適用をやりなさい、こういうことです。土地収用法は最も合理的なんだから、信頼をおかれるものなんだから、できるだけスムーズに土地収用でやっていくと、それで片づかないものは片づかないものとして離してやると、その途中の段階で協議というものをやっていくけれども、それほど土地収用法は常時のものとして考えていくという考え方が一つあった。しかし、大臣が言っているのはそうじゃなくて、いろいろ話し合いをしたけれども、どうもうまくいかないから、うまくいかないやつについてこれをやるんだということがはっきりしましたね。そこで、私はまだそういうことと関係して、それなら少しまたおかしいじゃないかという話になってくる点もありますが、これはそこの点がはっきりいたしましたので……。
そこでもし大臣の言うような、そういうお話であるならば、なぜ一体この法定協議というのをやめちゃったのか、つまり従来の古い土地収用法の改正前までには、協議をしなければできないということになっていたわけですね。法定で、法律でちゃんと協議することがきめられていた。今度はそんなことはないわけですよ、そういうようなことはね。この点を、まあこまかいところでちょっと先にその点について……。むしろ私は話し合いが中心であるということになれば、その話し合いというものを強化するという措置について欠けている点が、今度の法律にあるということを考えているわけです。だいぶ時間もないですから、私は質問の項目をちょっと……。そういう観点から言うと、どういう点が問題になってくるかというと、まず、いままでは土地の細目のこういう土地を取るぞというときには、市町村長から本人に通知があったわけですね。ところが今度通知がないのですよ。ただ縦覧するために公示をすればいいのです。だから、本人には何らの通知もないわけです。それから途中の段階で意見書を出すということが行なわれているわけですが、この意見書は必ず審議をされるかどうかということについても保証がないわけです。審議の日を通知するということはありますよ、通知はするけれども、それが必ず審議されなければいけないという保証は、どこにも法律上出ていないわけですね。今度の法律の改正に基づいて話し合いをするということよりは、むしろもう事業の認定が出たら、あまり接触をして話し合いをしないで片づけてしまおうという精神のほうが強く出ているのですよ、この法改正に。こういう点について、大臣は気がついておられるのですか、この点をひとつ聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/17
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018・大河原一次
○大河原一次君 ひとつあわせて御答弁願いたいと思うのですが、いまの松永さんの御意見の中に、今回はいわゆる法定的な協議制というものがなくなっているわけですね。しかし、一応はまた事業認定時価格というものが、厳然として一本くぎをさされているわけです。しかし、任意交渉の制度も望ましいということになると、この事業認定ということをきめた意味がなくなるのではないかというような気がしましたので、その際、任意交渉できまった価格というものは、この事業認定時価格というものによって拘束を受けるのかどうかということも関連してくるのではないかと思うのですが、この点、ひとつあわせて御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/18
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019・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 私は、やはりあくまで公共事業をやれば用地が要る、そういう用地が要れば、用地を買わなければなりませんから、やはり用地買いということがその中心に当たりましょう。それから初めから収用法を適用するということなら別ですが、公共用地の取得ということは、いわゆる土地収用法に——これは田中先生が言っていました、公共用地は全部収用法にかけておいて、そして第三者が裁定したらいいのじゃないかというような御意見もありますが、私はそうじゃなしに、やはり任意協議をやって、そうしてそのうちどうしても収用法適用でやらなければならぬものが、収用法の適用になるわけです。今回の改正は、収用になった場合の手続を簡素化しよう。その場合には、今度は被収用者はそれとともに今度買い取りの権利というものは認められています。したがいまして、収用法にかかってからの手続を簡素化しようということでありまして、私は三十九年の書面というものは、どういうふうに出たのか、こいつは計画局長のほうから説明してもらいたいと思いますが、建設省で買う用地を、土地収用法を初めからかけて全部買ってしまえというような、そういう書面じゃないように私は思いますので、私は三十九年の書面というものは知りませんから、計画局長のほうからひとつ説明させますけれども、あくまで任意協議でいって、そしてこれの適用になるものはこれを適用する、土地収用法にかかった場合の手続を簡素にしょう、そのかわり一方は土地買い取りをする権利を与えてやる、こういうふうに私は解釈しております。ちょっと計画局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/19
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020・藤田進
○委員長(藤田進君) 簡潔に明瞭に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/20
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021・志村清一
○政府委員(志村清一君) 法定協議の制度が廃止されましたのは、大河原先生御指摘のとおり、いわゆる三十九年の通牒としての法定協議は廃止されましたが、事業認定を受けました後においても相互協議のたえまえはとっている、それがお互いに協議が相ととのいますれば、協議の確認という制度もありまして、収用委員会の裁決と同様の効果を発揮するというようなたてまえになっておるわけでございます。さてその際、法定協議の価格の内容は一体どうかということでございますが、事業認定を経ましてから裁決申請までは一年間——従来は四年間という非常に長期の猶予期間がいわばあったわけでございますが、一年以内、それをこしますと当然事業認定の効果も失われるというように、短期間に勝負がつくというようなことに、お互いの利益のためにしておるわけでございます。そういうわけでございますので、協議もそう事業認定を経てから時間がたつとは思いませんが、当然事業認定時価格の修正等を経ますので、事業認定時の価格そのものでは必ずしもないというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/21
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022・大河原一次
○大河原一次君 そうすると結局は、任意交渉は余地としては残っているし、任意交渉によってきまった価格というものは最終的価格であって、これは事業認定時価格による拘束は受けないという判断に立ってよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/22
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023・志村清一
○政府委員(志村清一君) 法の趣旨にのっとりまして一応考えるべきだと存じますので、事業認定時価格を基準として、やはりその後の物価修正等を考えまして事業認定時価格そのものではないが、一応事業認定時価格を基準として考えるべきだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/23
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024・松永忠二
○松永忠二君 大臣、いまあなた御答弁になっているように、できるだけ話し合いをして、最悪の場合に土地収用法にかけるのだという話ありましたね。しかし、最悪の場合土地収用法にかける場合でも、いま局長も説明しているように、要するに協議の確認というのがあって、その段階でも話をし合うということがあったわけですね。従来最悪の場合でも、法定協議ということで、必ず協議をしなければならぬという精神になっていた、なお尊重するようなやり方をやっていたわけです。最悪の場合でも話をするのだ、いまだってありますよというけれども、それは簡素化という名前の上に立って、逆に言えば法定協議という話し合いという手段、方法については、法的な根拠はなくしてきておるという理屈も成り立つわけですよ。だから、あなたのおっしゃるように、別に最悪のものをかけるのだとしても、この場合も最悪のものをかけるのだけれども、それは法定協議というものがあったわけです。今度もそういう精神は抜けていませんという局長の話で、結局これは協議の確認というものがあればあとでもいいんだということで、結局話は続けられるという段階になっていますね。だから、従来その事業認定から土地細目まで三年だ、王地細目の公告から裁決申請まで一年あった、これが長いのでなかなか迅速にいかなかったということであるならば、そのところを繰り上げるということはわかるけれども、どこまでも話し合いを進めていくというならば、もっと法定協議というものだってはっきりあって、私はさっき言ったように信頼感を与えなければだめだと思うのですよ。土地収用には、要するに法定協議もなくなってしまって、協議する義務もないということで、一つのものが抜けてしまった。しかも、どうかと言えば、その事業認定がないと、土地の保全ということも、法律がきまるとうっかり手がつけられないわけですよ。手がつけられなくなり、事業認定についても本人には通知がない、何も。いままで土地細目の公告があれば本人に通告があったのに、土地保全の義務もある土地にしてしまうのに、事業認定について本人に通知がないわけです。ただ市町村長が縦覧すればいいんです。それを長くやっておけばいいんです。そうして今度は起業側のほうから通知があって意見書が、いよいよ自分のところをとられるとか何とかで意見書を出してくる、それじゃ意見書を必ず収用委員会で審議をする義務があるかといえば、そんなことはどこにも書いてない、ただ単に審議の日について通知をするということはここにありますけれども、何も意見書を必ず審議しなきゃならない筋合いはないわけです。これじゃ要するに収用法ができても心配はないんだ、収用法というものは信頼のおけるもんだということにならぬのじゃないか。お話のように協議協議というけれども、協議そのものについても、少し前よりは簡素化という名のもとに協議の事実が行なわれない懸念が出てきているのじゃないかということを、われわれは指摘をするわけなんです。こういう点についてひとっこまかいことですけれども、やっぱり一番大事なことだと思うので、再度大臣にそういうことがなくなったことについては、それでも要するに、十分信頼の持てる協議が尊重されているんだということになるのかどうか、その点大臣答えてく、ださい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/24
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025・志村清一
○政府委員(志村清一君) 法定協議の問題等について廃止したということ等につきまして、お互いの話し合いと申しますか、そういうような機会が非常に減ってきた。そういうことは土地収用法に対する信頼を失わせるというような御趣旨でございますが、改正法案におきましても、実は事業認定前につきましても、あっせんの制度がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/25
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026・松永忠二
○松永忠二君 従来もあった。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/26
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027・志村清一
○政府委員(志村清一君) はい。従来どおり事業認定前でも一つのお話し合いができるということにいたしておるわけでございます。また事業認定を経た後におきましても、裁決申請が行なわれるまではお互いに協議して、その協議かととのいますれば、協議の確認ということで第甘十六条にございますように、協議の確認の制度も設けておるわけでございます。また収用委員会の審理が始まりましても、改正法の第五十条にございますように、お互いの和解が成り立ちますれば、これは収用委員会が積極的に介入して和解につとめるというようなことで、互いの話し合いをするということにつきましては、事業認定後におきましても、前におきましても、収用法においてもそのような手当てをいたしておるわけでございまして、これらにつきましては、従来どおりの考え方と相違がないわけでございます。ただ法定協議を廃止したというのは、どうも適当でないという御意見も確かにございますが、先ほど先生もおっしゃいましたように、今度は事業認定時に価格が一応基準として設定されましたために、なるべく早く裁決というふうな段階まで至りませんと、お互いにとって不利である。特に収用者側にとって都合の悪い場合もあろうということで、できるだけ早い機会にすみやかに収用委員会の判断による適正な補償を払い渡すということが必要かと存じまして、一年以内にいたしたわけでございますが、それにつきまして、法定協議は従来は実はいわば最後通牒的なもので、法定協議の段階においてお話し合いをするというふうな実態がなかったわけでございます。そういう意味で法定協議を一応廃止したわけでございますが、いわゆる最後通牒的な法定協議というものをやめただけでございまして、協議そのもの、お話し合いそのものを否定してないことは、第百十六条の協議確認の制度でも明らかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/27
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028・松永忠二
○松永忠二君 わかりました。その点については、私は必ずしもいまの局長の説明を納得するわけじゃありません。むしろ、私はこの改正によって話し合いということの努力については、欠けるところが出てくる。だから、これをいろいろ批判する人の中に、これはもう性格の変更だ、単なる改正じゃないんだ、性格変えちゃっている。要するに、もう事業認定ができたら話なんというのは形式だけであって、どんどん進めていけばできちゃう。要するに、単に法定協議のものがのけられちゃっている。細目の事業認定の通知も本人にはない、協議の確認ということだけ残っていたって、もう短時間にやつちゃうんだから、たいして本人と接触せんだって、どんどんこれでやっていけばいいんだ。そうすると、従来話し合いをよくつけて、土地収用法というものにかけたとしても、できるだけ話し合う、その段階でまとめようとする努力はほとんどこれじゃないじゃないか、これはもう性格の変更なんだ、そういう批判もあるということを、私は大臣に承知しておいてもらいたいと思うのですよ。そうなってくると、たとえば憲法十一条とどういう関係があるか、個人の権利の尊厳とどうだ、憲法十三条との関係はどうなんだ、二十九条との関係はどうなるという議論にまで発展していくようになってくると思うのですよ。しかし、私はとにかくこまかいところで言えば、本人に通知をするなんということに改めたらどうだろう。その意見書が提出をされたら、必ず審議をしなければできないということを簡単に加えていけるんじゃないか、それでいけばますます信頼性が高まるんじゃないかという気持ちもいたしますよ。しかし、今度の改正案が通って、これが適用されたときには、ぜひひとついま大臣が言われたように、いや法定協議で細目突き詰めるようになっていたのを省いたけれども、とにかく熱心に起業者が本人に、収用者と接触してできるだけ話し合いを努力していくのだ、そういうのがこの法律の趣旨なんだということをよくわからせていかないと、これはもう明らかにこういう意味の信頼感もなくなっちまう、むしろ強権発動をやりやすくしちゃう、起業者側ばかりに立って法改正しているじゃないか、この理屈だって私はもっと時間があれば、やっていけば、そう簡単に、あなた方の説明がそうでございますと納得はできないものがあるんですよ。
そこで、私はこの際大臣に要望したいことは、そういう点がある、前と性格が変わったように考えられる節もあるのだから、特にそういう点について今後実施の段階においては、特にこの点を留意をされて、そうして運用の誤りのないように、特にまたそういう点について機会を見て修正する機会があれば、十分そういう意味の協議の実をあげるということを、ひとつぜひ努力をしてもらいたいと思いますが、この点で大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/28
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029・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 私が一番おそれることも、強化されたのだ強化されたのだというようなことが、今回のやはり一番改正について注意しなければならぬ観点だと思う。もちろん公共事業をやる場合に、なるべくひとつスムーズにやりたいために手続等を早くしたということが、強化されたということならそれでいいのですが、何でもかんでも私権を侵して何でも取り上げるのだというような思想を持ってやることは、私も好まないのでございます。しかしまた、いままで行なわれた例を見ましても、やはり同じ公共用地でも、役所によってずいぶん価格が違って、それはやはりいまの法でいけば何とはなしに引き延ばされるようなことでスムーズにいかない。仕事をやる者は背に腹はかえられないというようなこともあります。しかし、今度は事業認定時というものでその価格をきめるのだから、もうきちっとしてくるわけでございまするから、やはりその点は開発利益を含まない、それをやはり適当に配分するという意味で、その所有者開発利益を全部取るというわけにはいかぬという、そういう思想を持っておることは確かでございます。したがって、その他のものはどうだということについては、他の法律によって対処したいのでございまするが、あくまでもこの運用につきましては、いま松永さんのおっしゃいましたような、私は心配がないよう十分留意する方法としていろいろ考えております。こまかいことになりますれば、これはやはり各公共用地の担当者に向かって、法の改正の意図しておるところをこまかく説明をしまして、やはり土地所有者につきましても十分な納得でやっていくように、あくまでも申請できるのだ、何でもかんでもこれでもって強化して取り上げるという思想は持たせない、十分運用につきまして留意をしていきたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/29
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030・松永忠二
○松永忠二君 そこで今度は少し価格の話ですが、要するに今度の場合、適正な補償をするのだ、補償の合理化をはかるのだ、こういうお話ですね。また、これはさっきの話じゃないですが、私は土地収用法に信頼感はふやす重要な眼目だと思うのですね。そこで、私がお聞きをするのは、正当な補償とは何なのかという場合に、私はこういう考え方を持っているわけなんですよ。正当な補償というのは、最低の条件として、前に持ったものと同じものが持てるという条件でなければできぬと思うのですね。前に所有した土地が取得できる。前の条件が著しく変化しない。仕事をやっていた場合でも。こういう必要があると思うのですが、これについては大臣、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/30
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031・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 同感です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/31
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032・松永忠二
○松永忠二君 そうなってくると、その次に、事業認定時と権利取得裁決の間、事業が認定されて、いよいよ権利が移るというときの権利取得裁決のときに、その間は何で変動させるかというと、物価の変動に応ずる修正率をかけてやる、こう言っていますね。そうするとこれはおかしいじゃないか。物価の変動で修正した場合には、もとの土地は買えないじゃないか。同じ坪数を買いたいと思ったって、もう周辺の土地はどんどん上がってきてしまう。これは買えない。物価の変動率というのは地価の変動率と全然違っているということは、これはこの間調査室でよく資料を整えてくれた、この資料にちゃんとあります。いかに消費者物価、卸売り物価というものよりも地価が高騰しているかということがわかっているわけでしょう。そうすると、事業認定のときと権利取得の裁決との間に期間があるわけなんで、その間物価の変同に応じて修正率を出すというのじゃ、もとの土地は買えぬじゃないかというんだ。これはおかしいじゃないか。なんで地価の変動率にしないのだと言うのです。これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/32
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033・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 非常に、何と申しますか、端的な話なんですが、自分の家は買い取られた。それを、それに引っかからぬ隣の家を買いたい。隣はすぐ開発利益でずいぶん上がってしまったということでございますが、そういう場合に物価の変動と、その物価の変動も何で見るかということでございましょうが、これはひとつ計画局長が説明いたします。物価の変動を何で見るのかということを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/33
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034・志村清一
○政府委員(志村清一君) 物価の変動に応ずる修正率につきましては、卸売り物価指数あるいは消費者物価指数というものを複合したもので考えたいと、こう存じておりますが、そこで先ほど先生のおっしゃられたように、物価と地価の値上がりのバランスがくずれている場合どうするかというような問題が出てくるわけでございます。それらにつきましては、法律にございますように、事業認定が行なわれますれば、直ちに土地所有者は補償金の支払い請求権があるわけでございまして、できるだけ早い機会にしかも補償金の支払いをいたさねばならぬ。ただ、それは起業者側の見積もった額でございますので、場合によって正当な金が出ないおそれもあろうと思います。それらに対応いたしまして、補償金の支払い額がい事業認定時における正当な価格と差がありました場合、その差の大きさに応じましていわば懲罰的の加算金なり、あるいは過怠金といったようなものを課すことにいたしておるわけでございまして、正当な補償金が支払われる担保をいたしておるわけでございます。さような意味におきまして、事業認定がありますれば、所有者はいつでも支払い請求ができ、すみやかに土地代を取得できるということによりまして、ただいまの矛盾はある程度解決がつくと、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/34
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035・松永忠二
○松永忠二君 それは、そういうことをおっしゃっているようだが、補償金の支払い請求ができる、しかし、その間に期間があるわけですね。それどころか期間がなくても、ここに事業認定が出たとたんに土地はもう上がってしまうのです。それで申請して、起業者と話し合いをして、十分な金が支払われない間にどんどん上がってしまっている。というのは、補償金の支払請求なら請求があって、支払い請求そのものだって、すぐ入らないのです。その上に、支払い請求があってもらった金だって、いろいろ話し合いでなかなかうまくいかない。あとで加算金を取るといっても、起業者の考えでやるわけなんです。そのうちにどんどん上がってしまうのです。瞬間に上がってしまって、それで上がったほうの開発利益は、一般は野放しに見ているのに、取られるほうは開発利益は見ない。それで裁決してよこすのですから、ほかの土地は買えないでしょう。補償金の支払い請求がありまして、補償金がすぐといっても、すぐ買えない。それだから、この物価の変動に応ずる修正率は、私が地価の変動率でなければできないというのは、単にもうかりたいから言っているわけじゃない。同じものが買えなければならない。少なくともそれは最低の、正当な補償の条件じゃないか。ほかにも私は幾つもそういう事例はありますよ、いまから申し上げると。まず一体大臣、これでもとの土地が買えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/35
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036・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 結局、あなたの説を突き詰めていくと、やれぬということになる。たとえばここを取られるから隣に行きたい。そうして同じ商売をしたいというようなことを、全部その主張をすれば、それはそのとおりいかんわけです。それは商売の点、生業の点についても同じでございます。したがいまして、十分ということはわかりますが、私はやはり失われたと等価のものを与えるのは当然だということは言えますが、それならば生業の点においても、商売の点においても、何でも等価の問題になるか、こういうことになりますと、いろいろこれは議論があるところでございましょう。しかし値上がりの点は見る。見るけれども、その隣の土地はもっと上がっているじゃないかということを突き詰めていくと、全部同じということにはいかないけれども、私は精神は失われたと同じやはり等価のものを、商売にしても同じですが、商売にしてもそれ以上の生業ができるようにやはり仕組んでやらないといかんということを言っているので、個々の問題になれば、あなたの言うような議論でなかなか困難になるということがあり得ると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/36
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037・松永忠二
○松永忠二君 そうすると、大臣も少し問題があるということは意識をされておられると思うのです。だから、私がさっき聞いたのは、お互いに前の所有している土地が買えるとか、前の生活条件とあまり差のないものができてくるというのはこれはあたりまえだ、それすら要望に沿えないことでは困ったことで、だから、具体的には物価の変動に応ずる修正率ということを言っているけれども、やはりそういう点についてはよほど——ただ、いま局長が言うように、消費者物価とか卸売物価の変動率をどうこうというだけじゃ片づかない要素があるということを考えてもらって、今後そういうものをつくる場合に、そういうことを十分考えておかなければいかん。われわれがこの法律に反対したりなんかする理由の中には、やはりこれがあるのですが、これじゃおかしいじゃないか。
それからもう一歩話を進めます。それじゃ、生活補償というのが一体——かえ地をもらいたい、もとの面積だけほかのところへかえ地をもらいたいということを請求できることになっていますね。ところが、生活補償なんていうことは、これにはひとつも出てはいないでしょう。公共用地取得の特別措置の中には生活補償の問題が出ているのに、これには生活補償が全然ない。かえ地の補償というのが出ているだけだ。こうなってくると、これまたこれはちょっと困るな、こういう気持ちになってくるわけです。生活補償のことは触れてないのだから。それから、こうなってくると、私は、要望としてはどういう御要望が出ているのかというと、かえ地をほしい、まあ俗に言えば値が高く買ってもらえないのだから、いいそれならかえ地をよこしてくれ、それなら快く提供しましょうよという話になってくる、事情になってくると、かえ地はますます要求が出てくるわけですね。じゃ、かえ地に応ずることができるような、土地収用委員会が充実をされ、組織をされているのかどうかということになると、これまた問題ですわね。だから、私はこの状況を、こういうものが適用されてくれば、かえ地要求というのは非常に多くなってくるだろう。それに応ずるだけのものがなければできないというのが一つですね。そういうことを質問するのが一つと、それからもう一つは、生活補償というのを全然この中に入れぬのはどういうわけだ、こういうことはどうなんだということを、大臣からひとつお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/37
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038・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 収用法のほかの項目にあるようでございますから、計画局長に説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/38
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039・志村清一
○政府委員(志村清一君) かえ地の問題でございますが、確かに、町の中などにおきまして道路をつくって、拡張するというようなこと等によって用地を収用されますと、かえ地の提供が非常にむずかしいということは事、実でございます。また、大住宅団地というようなもので相当大規模に行なわれますと、そこにおける土地を全部収用されてしまう、あとの生活のめどが立たぬというような問題が出てくることも事実でございます。それらの点につきましては、現在の法律としましては、市街地改造法とかあるいは新住宅市街地開発法というようなことで、もとの所有者に還元譲渡するなり、あるいは、土地をいわば立体換地的に建物で提供するというような制度を考えて進めておるわけでございます。再開発法につきましては、もっと広範な立場でやりやすくしょうということで、このたび都市再開発法案を上程しているのも、その努力の一つでございます。また、相当大規模な事業、大きなダム事業とかあるいは新幹線あるいは幹線道路というような大事業につきましては、生活に激変を及ぼす問題がございます。生活環境に大きな変化を生ずるおそれがあるわけでございます。これらにつきましては、先生御指摘のとおり、土地収用法におきまして、知事さんに申し出ることによって生活再建対策をいろいろ考えていこうという制度があるわけでございますが、この一般の法律、収用法、一般収用法の場合におきましても、いわば生活補償といったようなものがないかというと、そうではないのでございまして、収用法の八十八条に通損の規定がございますが、この通損の規定によりますと、いわゆる土地とかそういったものの補償のほかに、農業をやめねばならぬ離作料、あるいは農業の規模が小さくなるということに伴う損失、あるいは営業を休止せなければならぬ、あるいは廃止せなければならぬ、あるいはお得意先を失うといったような営業上の損失、あるいは建物の移転による賃貸料——家主さんに対する賃貸料の補償とか、いろいろな問題につきまして通常受ける損失につきましては、手当てをいたしているわけでございます。これらの詳細につきましては、公共用地補償基準というのが閣議で決定になりまして、さらに具体的に、たとえば山の中におけるウサギをとったりあるいはワラビをとったりしているというようなものにつきましても、権利として熟するものについては、天恵物補償ということで補償の規定を置くというような手当てなどをいたしまして、そういうものを総合いたしますと、生活の再建ができるというたてまえにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/39
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040・松永忠二
○松永忠二君 かえ地問題について大臣にひとつお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/40
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041・西村英一
○国務大臣(西村英一君) かえ地問題は非常にむ、ずかしい問題ですが、この収用法に関するのは、私も一詳しくありませんけれども、その失われた、収用された人は、結局その起業者の持っておる土地は請求できるわけですね、その起業者の持っておる土地は。しかし、その他の土地については、やはり金銭をもって対抗することになるので、かえ地ということはやっぱり自分が見つけなければならぬ。しかし、そのあっせんの労をとるというようなことはできますけれども、法律上はやはり金銭をもって対抗することになるのであって、ただし起業者の有する土地についてはそれを請求することができると、こういうふうに土地収用法はなっておるのですが、ますます今後はかえ地の問題はひんぴんに起こるであろうということは、十分想像ができるわけでございまして、これはあくまで法律的ではなくて、やっぱりあっせんの労をとる、こういうふうなことにしなければならぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/41
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042・松永忠二
○松永忠二君 先ほどいろいろ法律でもあるのだというお話ですし、それからここにやっぱりその損失補償基準というのがあるけれども、これは別に法律で書いたことではなくて一これに相当こまかくありますね。しかしこれだけやっぱり法改正をしてくるということになれば、生活補償とかあるいはそういう問題で明確にうたってくるというようなことのほうが、やっぱり正しいのてはたいか。公共用地取得の場合でも、明確にそうして出ているわけなんですよね。先ほどのとおり、強権を強化するのではありません、いい法律をつくるのですと、こう言うなら、こういうことをわかるものをこさえてきたらいいと思うのですよ、そういう項目のあるものを。だからそういうこと言っているのであって、私はやっぱりこの法律についてなお検討をする不備なものもあるということを言っている。それから同時に、かえ地の要求が多くなる。かえ地については従来どおり、別に強化されてもいなければ弱めてもいないけれども、なお強化するぐらいのことを考えてくるし、これに応ずるだけのつまり土地収用委員会の組織づくりについても、責任を持ってやっていかないといかぬ。これはとても土地収用委員会では足らぬという結果になってくるということに私はなると思うので、こういう点を大臣ひとつ考えていただきたい。
そこでなお、時間がありませんから、ひとつさっきこういうことを言いましたね。補償金の支払い請求があれば、起業者のほうでその補償金の支払い請求に応じて金を出しますと言っていますね。起業者がたとえば国であり、あるいは市町村であるという場合、それは幾らでも応ずることができるだろうか。たとえば東名高速道路の事業認定が出たからといってできるのか、バイパスの事業認定が出たからといってバイパスをつくる金があるのか、それだけの予算的裏づけを持って、こういうことを言っているのか。もしそうでないとすれば、これに出ているように、手続保留地というものをつくるわけですね。ここにすぐ手をつけますが、これは保留しますという手続保留地というようなものを。そこで今度は、保留地については、手続開始したときが事業認定の時刻だと考えて、そこで価格の正当な評価をするというわけですね。そうすると、この間にはまた距離がある、一年あるいは二年。これはこの期間を規定している。そうなってくるとですよ、今度は同じ事業認定をした区域の中で、初め買った人は初あたから価格が安い、事業認定を保留されて、事業認定を開始される。その保留が開始されるこの期間に土地はうんと上がってしまうわけだから、この土地についてはこの当時の値段で買おう。これは法律にちゃんとそうなっている。そうすると、同一区域の中でもこの地価が、買う値段が差がある。それじゃあそれをやめて同一の値段で買おうとすれば、それだけ金があるのかどうか。要求されたら、事業認定が出たら、すぐ一体、それじゃあバイパスならバイパスのところみな買えますか。とても五カ年かかって用地を買収して、ちょっと手をつけようなんと言っているのに、そういうことは、補償金の支払い請求がありますから、ありますからと言ってそういう話だけれども、一体そんなことが予算上できるのかどうかということをひとつお聞きをしたい。
もう一つは、同じところが手続保留をしなければできない。一度に買えないから結局ここから手をつけるということをやって、それから次に手続保留する、また開始をする、し直すということになると、今度は買う値段が違ってくる。こういうことになると、同じところでも差ができるじゃないか。ますます今度は買った人は、もとのものを買いたくても買えないというようなことになる。こういうことについては、どういう見通しと自信があるのか。これは私はほんとうは大臣にこういうことは、大臣もお忙しいでしょうけれども、この中の一番大事なところだと思うのですよ、ここは。こういうところは、なぜこんなに長い問いろいろ審議時間にかかるかということは、そういうところいろいろ問題があるのですね、だからこういう点については、大臣としても少しやはり御承知をされていて、大臣御自身としてその考えられ方を述べられるということの態度がほしいと思うから、私は大臣に聞くわけですよ。仕事の面だから局長が答えるというなら、別に拒否するわけじゃありませんけれども、こういう面があるということについては、大臣ひとつ聞いておいてもらいたい。それについて大臣御承知でいやこれはこうなるというお話があるならお話をいただくし、また局長からでもけっこうですがこの点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/42
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043・西村英一
○国務大臣(西村英一君) それは事業認定してから買い取る権利が請求したらできるんですから、その予算がないとは私は言えないのであります。事業の仕事全部じゃないんですから、全部の予算じゃないのですから、その用地費しかも用地費の一部分でございますから、全部の人が土地収用法でやるというわけでもないのですから、これ予算、あったときありませんと言うわけにいきません。また予算は用意してからやるべきであると、当然私考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/43
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044・志村清一
○政府委員(志村清一君) ただいまお話にございましたように、もし補償金の支払い請求がございまして、予算がない、払わないということになりますと、日歩五銭という非常に高い金利がずっとつくわけでございまして、とても起業者としてはそういうことに耐えられないと思います。もちろん国でありましても、起業者のほうが市町村でありましても、そういういわば罰則的な加算金というものによりましてとても払い切れません。また、予算も確保していかねばならぬということは、大臣おっしゃったとおりでございます。ただ、たとえば一級国道一号線というように東京から大阪に至る道路、これをやるといって全体を一つの事業として事業認定をするというわけにはなかなかまいらぬことは、先生御承知のとおりでございます。ただ非常に大規模な事業としては、継続事業としてあるわけでございますけれども、その全体を一ぺんに必ずしも事業認定ができかねる場合がある。しかし、それぞれの事業認定を、事業といたしましては、まとまった単位で公益を実現し得る範囲というようなことでなければならぬことは当然でございます。しかしそういう場合、まとまった単位で公益を実現し得る範囲の事業につきましても、実際の事業施行等から申しますと、その性格や規模や工事施行の段取り等考えますと、相当大きな事業につきましては、長期継続的に行なわざるを得ない。事業認定を受けましても、直ちに用地を取得するというわけには必ずしもまいらぬ。地元の方々も、その土地を御利用になったほうがかえっていいという場合等もあるわけでございます。そういう意味で、そういう場合には手続保留という制度を例外的に考えたらどうか、こういうふうにいたしておるわけであります。ただその際には、手続が保留中でございますから、その土地につきましては、いまだに補償金の支払い請求権がございません。したがいまして、保留地につきましては一般の事業認定地と違いまして、補償金をすぐくださいと言うわけにもいかぬ。一般の事業認定を受けた土地につきましては、地主さんは補償金の支払い請求権がございますから、それは事業認定時の価格に若干の物価修正をしましてすぐにもらえるわけでございますから、それによって従前の状況に応じたような土地は買えるけれども、手続保留地につきましてはそれは認めていない。しかし手続保留地につきましても、それが解除されたら直ちに補償金の支払い請求ができるというようなたてまえにいたしているわけでございます。そういった制度によりましてバランスを保っていきたい、かように考えているわけでございますが、手続保留制度は、いずれにいたしましても、いわば例外的な事態と考えてよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/44
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045・松永忠二
○松永忠二君 私の申したのは、いま手続保留という問題もある。手続保留を、今度は事業を開始をするときに事業認定とするから価格が上がってきてそのときの地価になる。だから同じ事業認定の仕事の中で格差が出てくる、あとの人たちはああいうふうに買ってもらったという声も出る。それから全部やろうとすれば、金を全部持っていなければやれぬ、そういう困難な点があるということを、今度は法律を改正してから困難になった。結局、開発利益というものを認めて、いままでのようなやり方にしていけば、別にそんなむずかしい問題はないわけですね。だから、そういう問題が出てきているということを、考えてみなければできないわけですよ。だから、これまた要するに非常にむずかしい面が出てくるのです。で、さっきの話のとおり前と同じものを買えなくなる条件というものがあってみたり、同じところで、お前いいけれどもおらあばか見たという言い方も、そこに出てくる可能性があるということを、まあ十分ひとつ考えてもらいたいと思うのです。そこで
一体、こういうことを言う人があるけれども、これについてはどうお考えになるのですか。損害の損失という算定は、その発生のときに行なわれるべきものであって、権利喪失のときをもって基準とする、権利が喪失されたときに損害の算出をするのが、これが現行法律制度の原則だ。しかも、これはヨーロッパや諸国でも守られている。こういう原則であるのに、事業認定後の値上がりを直ちに否定をしてしまうような補償の原則が合理的だと称することについては、これは考え違いじゃないかということを言う人もあるわけです。とにかく権利が喪失されたときに損害の損失を算定するというのが、現行法のすべての原則だ、こういうわけです。しかも、それは諸外国でも認められている法律の一つの原則であるのに、開発利益をやらないのだ、そういうことをする補償の原則を立てることが合理的なんだという理屈はおかしいということを言う人があるわけなんですよ。これはこういうことについては、一体どういうふうに説明をされるのですか、これはひとつちょっとお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/45
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046・志村清一
○政府委員(志村清一君) 先生、諸外国の例にもないというお話でございますが、各国によりましてこの収用制度につきましては、現在のわが国の制度とはだいぶ違った傾向をとっております。アメリカなどはそれが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/46
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047・松永忠二
○松永忠二君 外国のはいいから、その理屈をひとつ聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/47
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048・志村清一
○政府委員(志村清一君) イタリアとフランスの例をちょっと申し上げますと、イタリアとフランスなどは事業認定ではなくて、イタリアのごとをは事業認定ではなくて、計画をきめたときの前の固定資産税の何年間の評価額平均で買うのだ、開発利益を全く排除するというようなたてまえをとっております。フランスの収用法におきましても、ややそれに類似いたしまして、事業認定を受けた何年か前の価格でもって評価するという制度がございます。学者いろいろのことをおっしゃいますが、そういう例もあるということだけ申し添えたいと思いますが、確かにお説の点は、そういうようなお説もごもっともでございますが、土地の問題でございますが、まあ収用法で事業認定をされますと、確かにその土地が確定いたしまして、収用——まあいわば運命づけられるわけでございます。その際におきましては、いわばそこまでは、要は起業利益、まあその土地が鉄道の駅舎になるというとずっと土地が上がる。そういう起業利益を反映した近傍類地の土地の価格と同じような値段に起業地もなると思いますので、そこが事業認定を受けたということになりますと、そのほかのものには使えない。駅舎の敷地以外には使えないわけであります。そういうような意味において近傍類地とだいぶ性格も異なってまいります。それらを物価修正することによりまして裁決時の価格に引き直すわけでございますから、ある意味におきましては、ただいまの学者の御意見とあまり隔りのないという解釈もできようかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/48
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049・松永忠二
○松永忠二君 そういうことを一つの原則を相当認めてのあれなんだという御説明ですね。そこで正当な補償という面からいっても、まだ聞きたいこともたくさんありますが、これはひとつまとめて、この点だけひとつあれですが、公正な地価の評価が収用委員会でできるかどうかということが一つ、さっき言った信頼感の問題であるわけです。それから公正な地価を評価するには、その資料が不備じゃないか。たとえば不動産研究所のような民間の地価のものを調査をとらなければできない。もっと建設省自身として、あるいはまたそういう政府としての、そういうふうな地価の評価というものが公的になされる機関がなければできないのじゃないか。特に土地収用委員会が鑑定士というものをたよりにしてただそれだけでやる。それだから公平だ、適正とはいえないのじゃないか。土地収用委員会がこういうように充実されてきて、土地評価のこれだけの客観的な研究もできてきて、そうしてそういうものを基盤にしてなされたものは、確かに公正な評価ができるはずだ、こういうふうにいきたいのだけれども、残念ながら、そこの点についてまだ不安が十分残っている。こういう点については、やはり大臣今後十分努力してもらわなければできないことと思います。この点をお聞きしておいて、もう一つで終わりたいと思いますが、この点ひとつお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/49
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050・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 公正な地価、正当な地価、これはなかなかむずかしいと思うのです、あらゆる点から考えて。しかし数人の収用委員会の方々がやっぱりあらゆる面から詰めまして、そして考えられておるのだろうと思います。もちろん統計等も必要でございましょうけれども、きのうの飯沼さんの意見も、やはりそうだったのです。こういう中でこうやるのだということをやらないで、あくまでも数人の方々が知恵をしぼって正当にきめたものが、正当な地価だということにしかならないのじゃないかと私は思います。しかしいま申しましたように、それを理論的に詰めていくという努力は、十分しなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/50
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051・松永忠二
○松永忠二君 そういう点について事実まだ聞かぬですが、土地収用法の、たとえば専従を置いているところは、その財源は結局地方持ちでしょう。一般的な交付税の配付があったとしても、そういうものについては地方持ちです。こういう財源措置を充実してやらなければできないと思うんですよ。それから僕は、土地収用委員会が資料として使う、資料を整備してやるということはつとめだと思う。そういうものも民間の者にたよっていて、それで公正なものは判断できますとか、公正なものはむずかしいので三人で集まって相談してくれますということでは、それはますます信頼がないと思うので、この点は今後の努力点だと思うのですね。そこで私は地価対策としてこういうふうなことをやられる。収用される者からいうと、そのほかの地価対策は強力に行なわれているという認識の中でこれが行なわれるというならば、これはまたそこにもあると思うんですよ。ところが、それじゃ地価対策として強力にやれと言われているものは、たとえば土地利用計画を確立しようということ、これについては、もう私は都市計画法で一部とにかく考えてきているのだから、努力されているというふうな点は言えるわけでしょう。あるいはまた物価懇談会あたりが言っている宅地の大量供給、こういう点についても、私はここにもいろいろ資料を出していますが、四十一年、四十二年とふえたのはたった二百ヘクタールですよ、全部で増加したのは。その答申にはここ一、二年の間、東京都の付近で三千ヘクタールの単位のものを五カ所ぐらいつくることが、大量供給して地価の安定になるのじゃないかという答申をしていますが、これは新聞にも相当出た。ところが、そういう宅地大量供給という点について、なるほどわかるというだけのことも十分にできていない。土地の利用計画の確立という点についても、一部努力はあるとしても、これは都市の周辺だけになって、全般的にどうするというふうなこともない。そういう中で、つまりこの改正によって被収用昔は土地を公共のためということで提供せにゃできぬことになってくるわけですね。そこで、私は土地収用法の手続を簡素化し、迅速化するという必要はあると思う。だから、そういう法律改正をやればいいことであって、そうしてまた開発の還元、一般から還元する立法措置というものがまず先にやられるということも一つの条件です。それからもしも、さっきから話が盛んに出ていますが、おっしゃるとおり、公共事業というものは何万件ある中で、この裁定に持ち込んでくる件数というものは、ここにも出ておりましたが、ほんのわずかな数ですよ。事業認定をしたのが五百二十件、その中で裁定の件数は九十八件ですね。公共事業というものが五、六万件ある中でほんのわずか事業認定をし、最後に裁決に持っていったのは九十八件です。この中ではたしてごね得をしているやつが幾つあるかというと、またこの中から下がってくるわけでしよう。それを防ぐためにこういう改正をしようというなら、もしそういうものがあるなら、それはいまある法律の中の公共用地の取得特別措置法というところをもっと対象を少し広げて、そのところでやったらいいじゃないですか、そんなわずかのものに対して適用することなら。こんな根本のこういう法律を変えるというならば、この中で変うべきものはもっと迅速にやる、手続を簡素化するということはこの法律でやっても、これはいいと思うけれども、そうでないごね得をなくすというほんのわずかのものを対象とするものならば、公共用地取得の特別措置法の一部を改正をしてそこでやっていったら、できないことはないじゃないですか。そういうことをやらずに、一般のこの法律をそこまでいじってきて、それでしかもさっき言うとおり、片方では一般開発利益は野放しだ。そういう中でこれで引き締めていこうとするから、結局、問題ができちゃう。だから、むしろこんなもので、これ一本でやるなら、私は迅速、簡素化ということには賛成だ。確かにそういうことは必要だ。しかし、いま言うとおり、開発利益を吸収して買うことはまずいと、こうおっしゃるなら、それはこういうほんのわずかなところへ出てきている、一つの話し合いでやります、話し合いでやるといっていますから、おっしゃるとおり、最後のところでしょうというわけです、これは。最後のところなら、そんな件数なら公共用地の特別措置法でやったらどうだ。それで準備がちゃんとできたところで、そこで初めてこういう他の開発利益も吸収することはちゃんと法的措置もできている。こういう均衡がちゃんとできた、また、宅地造成も大量にやっている、土地利用計画も出てきている。こういう中であなたたちもこういうことは必要なんだということで出てくることには、ぼくはそんなあれはない。全然つまり逆じゃないか、やることが。そういうつまり考え方というものが私たちは成り立つと思っているのですよ、これは。だからこういう点の理論もあるということを十分ひとつ考えてもらって、そうしてやっぱり念を押して、なおかつ慎重にやっていかなきゃできないものについては、ひとつ運営の面できしつと措置をしていくというようなことは、ますます必要だという点をまあお話をすると一緒に、私たち社会党としての考え方というのは、そういうふうな考え方があるわけなんですね。それでまあそういう点を申し上げて、そして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/51
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052・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 十分話はわかりました。けれどもやはりわずかしかないということですね。このわずかというやつが非常なわざわいをしておるというのです。そのためにたとえば相当早目に公共用地に使用できなかったというような例も私は知っております。わずかなことで数年待たされたとか、まあいろいろあるわけです。したがいまして、今回の改正は、私は従来の足らないところを補って十分効果を発揮すると思うのです。ただ、やはり松永さんも言われましたように、運用の面について特に考えなければならぬことは、さい、ぜんもいろいろ御指摘があったとおり、まあどちらかと申しますと、ざっくばらんに申しますと、むしろ社会党の方々に推進してもらえればもっといいという気持ちが実はするわけです。いろいろ意見が違うところがあるのでございますが、運用につきましては、あくまでひとつ強権を発動して取り上げるのだというような思想を持たせないで、公共事業をスムーズにやりたい、開発利益を合理的にやりたい、こういう趣旨であるということをお答えをいたす次第でございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/52
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053・藤田進
○委員長(藤田進君) この際、おはかりいたします。両法案審査のため、必要な場合は首都高速道路公団の役職員を参考人として出席を求めることとし、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/53
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054・藤田進
○委員長(藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/54
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055・鈴木一弘
○鈴木一弘君 これは建設大臣に、いままでの考え方では、土地収用の場合には被収用者がしんぼうしなければならない。そういうものは事業に必要な土地を取られるということだけであって、そのほかにはそういうしんぼうする義務はない。このように考えられていたのですが、今回の改正案で、被収用者は公共のためにはただ財産上の負担だけじゃなくて、財産の額の上の負担にも忍ずべきである、こういうふうに変わってきております。こうなってくると、一種の公益優先、悪く言えば滅私奉公というような精神が非常に強いと思うのですが、そういう変化が考えられるということは、何が原因か。いままではごね得そのほかのことがいろいろ出ておりましたけれども、私どもが言うと、もっといわゆる滅私奉公ならば国民よりも求めるべきものがまずあると思うのですが、その点について、どういう根拠からこう考え方が変わったか。提案理由にも言われておりますけれども、さらに詳しくお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/55
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056・西村英一
○国務大臣(西村英一君) やはり、この社会開発を進めなければならぬ。そうすると、やはりどうしても公共的な施設が非常にたくさん起こるわけでございます。したがいまして、その公共の仕事をやつばスムーズに進めたい。ところがいままでの収用法の運用によってみますと、必ずしもスムーズでない。ことにまた何と申しますか、土地の問題は諸外国の例をいろいろ引き合いにも出されまするけれども、やっぱり諸外国と日本は土地に対する観念が非常に違うわけでございますね。したがいまして、なかなかいろいろ問題が起こると思うのでございまするが、しかし一般的なやつば議論といたしましては、やはりもちろん私権もこれは尊重しなければならぬけれども、それと調和のとれた公益のためにやはりさらに考えなければならぬということは、一般的な常識になっておろうと思うのであります。またしこうして、いろいろ施設ができまする場合の、そのための地価の値上がり、いわゆる開発利益というようなものももう少し合理的にこれはやるべきではないか。いわゆる不当な所得になっておるのではないかということも頭に置きつつ、今回の改正をしたわけでございます。しかし、それならば収用される以外の人も同じことじゃないかという議論がございまするが、これにつきましては、税制一般でさらに検討をして、それに対して手を打っていきたい。かように思って今回提案をいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/56
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057・鈴木一弘
○鈴木一弘君 提案理由の中には、いわゆるごて得の弊害を生じ、早期買収について協力を得ることが困難である、これが一つの今回の理由になっているわけです。ところが、これは言いかえれば、事業のために自分の所有している土地が公共用地として必要になれば、所有者の有無を言わさずということになりましょうか。事業者の言うようにやれ、そういうことでなければ所有者のいわゆるごて得をするということはあとを断たないし、そういうことをやってもむだであるということを知らしめるということが、一つの大きな底意のように今回の改正は思うのですけれども、むしろ補償云々の金額、あるいはごて得の防止ということも一つのねらいだと思いますが、私はきょう特に国有財産局そのほか来ていただいたのは、いままでの公共用地の取得についても、確かに公共用地の取得があった。しかし、このごて得以上に何となく違法性があるというふうに感じられる問題があるわけです。それできょう来てもらったのですけれども、そういうようなごて得ということは、それはただ慣行でいまなっているからそれをなくそうというのじゃなくて、もっと経済政策的にも社会政策的にも、ごて得をなくすような方法をとるとか、あるいはそうでなければ、まず国が違法性のあるようなおそれのある土地については、違法性というものを全然ないようにして取得をしていくとか、そういうことを姿勢を正してやるということが大事じゃないか。私はこう思うのですが、その点大臣どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/57
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058・西村英一
○国務大臣(西村英一君) ちょっと御質問の趣旨がわかりませんけれども、違法性、国で持っているものについての違法性、国有財産等を何か違法に使っているのじゃないかというような質問に受け取りますが、そういうようなことは、それはかりそめにもあってはならぬと思われます。したがって、もう少し質問の趣旨がわかりますれば答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/58
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059・鈴木一弘
○鈴木一弘君 まず、これはチャペルセンターの問題について伺いたいのですが、あすこは首都高速の道路に現在なっております。憲法の第二十条に信教の自由のところで、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、」と、あるいはそういうことがうたわれておりますが、特権が付与されていたと思われる土地なんです。その土地について十二分の補償を考えたというふうに私は受け取ったのでございますけれども、その点はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/59
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060・志村清一
○政府委員(志村清一君) 元チャペルセンターの敷地あとは、その当時靖国神社が建物を持ち、その土地を使用していたところに首都高速道路が通ることになりまして、その間の補償の問題があったことは承知いたしております。ただ、その際の補償もいわば正当な補償と申しますか、その分だけを出した、かように承知いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/60
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061・鈴木一弘
○鈴木一弘君 首都高速道路公団に伺いたいのですが、この道路のところにかかりまして、一億何がしかの補償をしていますね。総額で一億三百一万円という使用権の補償そのほかをなして、おりますけれども、その補償する際に、これはどこに対してやられたわけですか、補償は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/61
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062・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) ただいまお話のありましたように、霞ケ関一丁目二番地五に元チャペルセンターがございました。あそこがたまたま高速道路三号線の道路の一部にかかることになる。この土地はすでに御案内のように、大蔵省の普通財産でございます。その上に靖国神社が建物を所有いたしておりまして、したがいまして、公団といたしましては、その使用権に対する補償と、それからかかります建物の一部、それから切り取り改造についての補償をいたしたのでございます。いずれも権利あるものと認めまして、補償いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/62
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063・鈴木一弘
○鈴木一弘君 公団のほうに伺いたいんですけれども、これは国との契約書が靖国神社との間にきちっとなされておったということなんですか。それは確認されているんですか、いないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/63
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064・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 国の普通財産でございましたが、その上に靖国神社が建物を所有いたしておりました。しかもそれはすでに登記がされておるのでございます。したがって、正式の権利あるものとして認めたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/64
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065・鈴木一弘
○鈴木一弘君 私の聞いているのは、そういうことじゃないのです。登記をされていることは、登記簿見ればすぐわかる。そういうことじゃなくて、一体それじゃ大蔵省の普通財産、その公共地を靖国神社が使用していたということで使用権を払ったというならば、靖国神社と国との間に、国有財産の使用に関する貸し付けの契約というものがなされなければならない。その契約書はきちっとごらんになり、入手をして、その上でおやりになったんですか、そうじやなかったんですかと聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/65
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066・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) この建物の所有権の経緯といいますか、そういうものについてはいろいろございますが、最初に思賜財団陸海軍集会所でございますが、それが所有しておりましたものを、その後靖国神社のほうに正式に譲渡し、靖国神社のほうでそれを正式に登記をいたしております。最初の財団が大蔵省から貸し付けを受けておるということは、過去の経緯から見まして、われわれはそのように認容しなければならぬというように考えております。したがいまして、靖国神社がやはり建物の所有権を持ち、正式に持っておる以上、そこには当然使用権がある。かように考えたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/66
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067・鈴木一弘
○鈴木一弘君 どうして質問に対して答えてくれないんですか。それは恩賜財団の陸海軍集会所ですか、これが最初に建物を建てております。同時にとたんに贈与ということになっておりまして、譲渡じゃなくて贈与ですよ。そういうふうになっているのです、私が聞いているのは。それじゃ陸海軍集会所との間の契約書、国とのいわゆる貸し付けについての契約書であるとか、あるいは靖国神社との契約書をあなたはごらんになった上で支払ったのか、そうでないのかというのです。
それからもう一つは、土地の建物の建っているところだけの補償ですか、それとも借りていたところの、大蔵省が貸し付けていたところの、いわゆる今回道路にひっかかった公用地に補償をしたのか、どっちなんですか。建物の建っているところだけの補償をやったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/67
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068・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) これはもちろん建物の敷地だけでなくて、建物を建てるためのいわゆる敷地、そういうものを含めたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/68
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069・鈴木一弘
○鈴木一弘君 前段の質問に対して、契約書はごらんにならないで、今回のいわゆる補償契約をおやりになったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/69
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070・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 契約書については、私どもは見ておりませんが、過去の経緯から考えまして、これは当然使用権があるものと認めたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/70
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071・鈴木一弘
○鈴木一弘君 しかし、契約書はいつ変更になるかどうかわからないじゃないですか。それを確認しないでもって土地を取得した、使用権を補償したということになると、ずいぶんおかしな話だと思う。私もきのうから国有財産局にこの契約書の写しをもらいたいと言ったのですが、いまだに出てこない。普通なら国有財産局に言うと一日ぐらいですぐ出てくるが、出てこないからぼくは何かあると思うのです。契約書も全然見ないで補償したということだと、はたして靖国神社に貸し付けてあったのかないものかということの確認は全然なされなかったということになるのですね。そうすると、相当あいまいなたぶん「であろ」心配がないであろう、登記面でこうだから、「だろう」という推定、憶測、そういうもので公団はいままでもいろいろな土地についての補償をやられたというふうにとられてもしょうがないのですけれども、特にこれは公用地ですよ、どうなんですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/71
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072・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 先ほども申し上げましたように、本件の土地及び建物が靖国神社の所有権が移転いたしましたいままでの経緯等から見まして、われわれといたしましては、当然そこに社会通念上成熟した使用権あるものと、こういう考え方を持っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/72
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073・鈴木一弘
○鈴木一弘君 そうすると、社会通念上そういうふうな考え方でいくということになると、一々そういうようなものについて普通の土地、建物であれば登記簿を見れば大体わかります。担保に入っているかどうかも全部わかりますが、国有財産の場合には、この中にはどこに貸し付けてあるか登記簿には出てこないから、契約書をとって、そしてその上に立ってやらなかったら、これは不明確なものにならざるを得ないでしょう。少し軽率だったと思いませんか、その点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/73
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074・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 再三申し上げましたように、過去の建物の経緯等から考えまして、当然そこには社会通念上使用権があるものと認めたのでありまして、いまのところ軽率であったとは実は考えていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/74
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075・鈴木一弘
○鈴木一弘君 そういうことになると、国が契約していたであろうという推定だけでやることになりますと、今後いろいろな問題ですれ違いが起きますけれども、あるいは契約が解除になっているのを知らないでやったりということも起きやすいわけですよ。ですから、これは今後の問題になりますけれども、この問題についても一ぺん契約書をおとりになる、あるいは今後の問題についてもそのような国有財産に引っかかるようなときには、これが個人あるいは法人等に貸与されているときには、その契約書をおとりになる、そういう姿勢で臨まれるかどうか、また臨んでもらいたいと思うんですが、答弁ひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/75
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076・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) もちろん、われわれが一般の土地等の買収にあたりましては、でき得る限りの調査をいたしまして、権利の存在を確認する手続はいままでもとっておりますし、もちろん、今後といえども十分そういう手続をとりまして、遺憾のないようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/76
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077・鈴木一弘
○鈴木一弘君 いままでは手続をとっておりましたと。とってないから私言っているんですから、その点は厳重に反省してください。
それから、これはもう財産局長に、松永さんに伺いたいと思うんです。この靖国神社との契約書というのはおありなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/77
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078・松永勇
○政府委員(松永勇君) 一昨日あたりから、先生がそういう資料を出せということを言われているので、関東財務局にいま調べさしておるところでございますが、非常にたくさんのそういう証拠書類の中から現在さがしておるわけでございますけれども、現在に至るところまで、実はまだ見つかっておりません。私、その報告を受けまして、どうも本件は契約書がないんじゃないか。と申しますのは、先ほどちょっと説明がありましたように、本件は昭和十五年旧陸軍から大蔵省に所管がえになった。そして昭和十六年に当時の大蔵省が恩賜財団陸海軍集会所というのに無償貸し付けいたしております。それが終戦の昭和二十年になりましてその集会所が解散し、軍人遺族クラブというものが設立された。それにその上物である建物が譲渡された。その後このクラブは解散に際して靖国神社に譲与した。それと引き続き米軍に提供されてきたと、こういう経緯をたどっておるようでございます。したがいまして、当初の建物が建てられた当時、すなわち昭和十六年は無償貸し付けという旧国有財産法の裁定によって無償貸し付けが続いておったわけでございます。自後、終戦、それから米軍提供という期間を通じまして変遷をしてまいりましたわけですが、現在どうも貸し付け契約をしていなかったんじゃないかと、これは私の、現在まで調べております段階で、どうも契約書が出てこないところからの推定でございます。
そこで、そういう契約書がないということをどう考えるかということになろうかと思いますが、国有財産につきまして、これは種々その国有財産の管理処分について、いろいろ国会の御指摘を受けました。私のほうとしては、自来、その管理の適正を期するようにいたしておりまするが、終戦後のこういう期間に当然契約をすべきである、にかかわらず手続がとられてない、こういう性質のものを、私たちは手続未済の——契約未済ということでございますが、手続未済のものである、しかし、いわゆる借地法あるいは民法の上からは当然契約はあるはずである、ただ契約書をつくる手続がとられてない、こういうような性質のものも他にございます。そういうものは手続未済ということで、これに対するいろんな処理の進め方を定めて、管理の適正を期するように努力いたしております。こういう手続未済というようなものが本来あっては、私たちの職務としては遺憾な点でございまして、こういうものをなくするように、いま最大限の努力をいたしておりますけれども、どうも本件はそういうものであったのではないかというふうに、これはまあ契約書がただいま私さがしたところ出てこなかったところから、一つの私の推測でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/78
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079・鈴木一弘
○鈴木一弘君 建物の登記を見ましてもはっきりわかることは、昭和二十一年九月二十日に恩賜財団陸海軍集会所がこの建物を建てております。同日——いま局長は、それから遺族クラブが使った、それから靖国神社だと言われたのですが、それからではなくて、同じ日に靖国神社に贈与をされているのです、登記面は。そうすると、当然ここで本来ならば国の承認というのがなければ移転を——登記の移転でありますし、建物の贈与でありますし、そういう点は、国の承認がなければこれはできないわけですね。この辺の承認はあったんでしょうか、なかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/79
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080・松永勇
○政府委員(松永勇君) これはその当時の、終戦直後の混乱期でございまして、そういう承認の申請が出たのか、出なかったのか、そういうことも、現時点では実はわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/80
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081・鈴木一弘
○鈴木一弘君 すると、現在もこの土地については国は使用料を取っていない、無償で貸し付けという形になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/81
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082・松永勇
○政府委員(松永勇君) 契約がなされていなかった——いや、契約はあったといたしましても、事実上契約書の作成が行なわれていなかった関係から、使用料の徴収はなかったのではないかというふうに——これも推測でございます。まあ先ほど申しましたように、契約書があったのか、なかったのかということをいま調べておる段階でございますが、もしなかったとすれば、使用料の徴収は行なっていなかったであろうというふうに推定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/82
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083・鈴木一弘
○鈴木一弘君 そうなってくると、いま局長は「もし」ということを言われたですけれどもね。まず私もなかろうと思うのです。そうなりますと、日本国憲法にいうところの、国が特権を付与してはならないというところに該当してくるわけです。で、無償で社寺等に与えているのについては、昭和二十四年でしたか、二十二年かの法律がございますが、その法律によって、これは有償で譲渡をするとか、あるいは無償で譲渡をするということになっております。しかも、その有効期限はとうの昔に終わっております。社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律というのがありますが、これは昭和二十二年の法律ということから出てきて、昭和三十七年に改正を見て、期限が切れたのを最後に延ばしてやって、これですべて終わったということになっております。そうだとすると、この法律にも違反をしていることになるということにもなりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/83
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084・松永勇
○政府委員(松永勇君) 社寺に関する法律の違反ということではございません。それは社寺の法律は、そういう申し出でがあった場合に、申請があった場合に、国は無償あるいは半額で売るという法律でございますから、まあそれの手続を本件はとらなかったということであろうと思いますから、まあ違反という意味ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/84
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085・鈴木一弘
○鈴木一弘君 まあその法律が出たということは、憲法にはっきりと、いわゆる国は特権を付与してはならないというのがありますね。特権を付与してはならないということは——無償で貸し付けということは特権を付与したことになる。そういう土地であってはならないから、このように、上地あるいはそのほかの理由でもって国が無償でもって現在譲与しているものについては、もともと神社の所有の土地もありますので、それが明治のときに取り上げられたということもあります。そういうところに、これを半額あるいは無償等で社寺に譲与するという法律が出たわけです。ですから、言いかえれば、現在無償で、契約書が見つからない、ありません、しかも使用料も取っておりませんということになれば、明らかに憲法違反であるということになってくるわけですね。そういうものであるというように解釈していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/85
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086・松永勇
○政府委員(松永勇君) 御承知のように、これは本件はすでに首都高速道に処分をされて、現時点においては、そのいわゆる使用関係というものはございません。ただ、ある期間においてそういう建物の敷地として使っておったという期間があるわけでございます。それで、その期間の使用料を、いまのように貸し付け契約をしていないということになれば、おそらくは徴収をしていなかったであろうと推定をされるわけでございます。もしそういうことがわかりました場合に、過去にさかのぼってその使用料をどうするかという問題があるわけでございますが、まあ憲法に違反するという問題は、実体論として、社寺等に国が特定のいわゆる補助を与えるかどうかということが、憲法の禁止しているところだろうと思います。本件は、そういう実体論として社寺に、靖国神社に特別の恩典を与えたという結果になれば、これはやはり是正しなければならない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/86
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087・鈴木一弘
○鈴木一弘君 国有財産法の二十四条には、普通財産を貸し付けた場合において、その貸し付け期間中に国または公共団体において必要を生じたとき、あるいはこの貸し付けたいわゆる使用目的そのほかがだめになったときには、用途指定どおり行なわない場合には、解除することができるとなっているわけです。当然あそこが、チャペル・センターと靖国神社と距離が離れていますね。実際問題として、現在建物がないことになっている。高速道路に引っかかってくるのはその一部であります。まだほかの部分が残っているということになれば、当然これは国が解除をしなければならぬと思いますが、その辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/87
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088・松永勇
○政府委員(松永勇君) お説のとおり、国有財産法二十四条は、そういう国が必要な場合には、特別の解除権というものを国有財産法は発動いたします。本件の場合、当然そういう方法で行なうということもできたであろうということも想像されますが、ただ、本件はその方法をとらなかったという、実質上の話し合いでもって、何と申しますか、使用権を取り上げて道路をつくったということになっておりますが、結果的には、国有財産法の二十四条の契約権の解除をいたしましても、それはただで解除してよろしいというのではございませんで、二十五条以下に、その補償を行なう。行ない方も書いてございます。当然、正当なる権利の補償というものは行なうべきだ。まあ結論的に申しますと、いずれの方法をとっても正当なる補償はなすべきであって、やり方が違ったであろう。この事例の場合には、国有財産法二十四条の解除権も使わないで、首都高速道路公団のほうにおいて話し合いによる補償を行なって、円満に解決したという事態になっているのであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/88
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089・鈴木一弘
○鈴木一弘君 二つの問題に分かれますけれども、その公共用地に貸し付けたところであります。それは公共用地に貸し付けたところですね。そうであれば、当然国有財産の契約を解除しなければならないわけです。話し合いで事実上の解除になったであろうというような、そういういいかげんなことを言っては困るので、これは当然首都高速のほうでもこの契約を解除するということが、ひとつはっきりしておかなければいけなかったと思うのですね。そうしなければ、契約を解除しないで買うということになるというと、買いましたけれども使用権は両方にあるみたいな、変なふうになってくる心配があるわけです。
それから松永局長、三十条によってはっきりと用途の指定というものがなされて、その用途の指定どおりにいかないときは、これを契約解除することができるとなっているわけです。契約解除が、実際には首都高速以外に使われております用地がありますが、現在は建物はなかったと思うのです。すでにチャペル・センターはない。そういったときに、この解除ということを、三十条のことから見ても、これはやらなければならぬと思うのですが、その点はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/89
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090・松永勇
○政府委員(松永勇君) ちょっといまのことにお答えする前に、先生のお話ですと、二十四条で、それは解除することができるとございまして、そういう事態が生じた場合は解除しなければならないということではございません。この解除権は、いわゆる特別の解除権として法律が認めている。最終の場合にはもちろんこの解除権を行使して行ないますけれども、これは、ねばならないという規定の運用ではなくして、もちろん円満な話し合いができれば、それにこしたことはないという考え方で運用いたしております。
それから御質問の点でございますが、この用途指定の問題でございますけれども、御承知のようにこの三十条の前の、本文になります二十九条、この規定は三十九年の改正でございまして、本件が問題になりました当時は、用途指定をしていないで、そのままになっておったという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/90
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091・鈴木一弘
○鈴木一弘君 いずれにしましても、非常にこれは大臣、聞いていておわかりになると思いますけれども、契約書もない、そういうような国有財産を無償で貸し付けるといえば、特権を付与したということにこれは憲法上ならざるを得ない。とうていやれないところであります。それを首都高速が取得するときに、いわゆる公共用地としての契約書も見なければ、その存在の有無も知らないということでやったので、そういう、一方で手抜かりがあって、しかも金額でいって一億何ぼということになりますと、かなりの金額になってくるわけです。そういうことが行なわれているということになると、私が先ほど申し上げた、違法性の強い土地ということになるおそれがある。そういうことについて、少なくとも国——あるいは首都高速になれば国と同じでありますが、受け取るほうはそうとります。そこのところは、土地を取得するときに、筋を通さないで、はっきりした契約というものをきちっと整備しないで取得するということは、大いに問題がある。そういうことが続きますと、今度はこの盲点をついて、国有財産を利用してあるいは不当なもうけを取得することも可能になってくるわけであります。そういう点、どのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/91
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092・西村英一
○国務大臣(西村英一君) いまの質疑のやり取りを聞いておりますと、非常に終戦時のどさくさであって、いろいろなことが不明だということでありますが、正常に返った今日、これは大蔵省の国有財産局においても、ま公共用地に利用する私たちにおきましても、そういうようなことは絶対にあってはなりません。したがいまして、この点については、私は詳細は知りませんが、いまのやり取りを聞きまして、おそらくそういうような違法なことが行なわれたとは、想像したくないのでありますが、今後につきましては、十分留意をいたしたい、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/92
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093・鈴木一弘
○鈴木一弘君 ここのところの評価の算定はどういうふうになされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/93
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094・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 本件の土地の評価についてのお尋ねでございますが、これはそれぞれ鑑定士等の評価も依頼いたしましたが、その結果、坪当たりいわゆる土地の価格を当時三十五万円というふうに評価いたしました。それの二割、七万円が地上権といいますか、使用権の価格ということで補償いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/94
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095・鈴木一弘
○鈴木一弘君 私は、これは大臣、はっきりと憲法違反のような感じがあるところに対して、積算の根拠はいま示されたとおりでありますけれども、総額で一億近いお金が払われたということについて、非常に疑問を持つわけです。憲法違反であれば当然のこと、有償、無償であっても、無償の貸し付けであったとすれば、新たに契約し直して、国が取得する場合には、契約の解除を行なって、大蔵省のどこにも貸し付けてない普通財産にして取得するほうが買うとか、そういう形態をとるべきであったと思う。そうすれば首都高速にいくときには、無償において貸し付けるということになってくるわけです。首都高速道路公団に対しての国有地、国有財産については、無償で貸し付けることができるように国有財産法でなっていますから。そういうような筋を通すべきだと思うのです。その点のところは、監督等は建設省としては十二分におやりになったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/95
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096・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 総務課長が来ておりますから、当時の模様をよく知っていると思われますから、説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/96
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097・藤田進
○委員長(藤田進君) 鈴木君よろしいてすか——都市局の総務課長野崎君です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/97
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098・野崎清敏
○説明員(野崎清敏君) 私のほうでこの用地買収に関係いたしましていろいろ承知をいたしておりますことを、簡単に御説明を申し上げたいと思います。
現地につきましては、先ほどお話がございましたように靖国神社の古い建物で、そこに建っておったわけであります。首都高速がそれを買収するにあたりまして、この建物の新設当初の事情、その後の権利関係の推移をずっと考えますと、不当物件というふうには考えられないものでございまして、したがいまして公共事業を施行いたしますためには、これを撤去するに際して損失を受ける土地に関する権利の補償をしなければならないということになるわけでございますが、ただ現在、その時点におきまして適法な手続によります国有財産使用の許可がございません。したがいまして、借地権の発生ということはないわけでございます。したがって、借地権としての補償ということはできないわけでございます。しかしながら、靖国神社自体が、この建物の所有権を取得いたしました後に、その買収時点に至りますまで、その敷地につきまして直接または間接にこれは使用、受益をしているという事実ははっきりいたしておるわけでございますので、民事上の使用貸借による権利というふうな考え方で損失の補償をすることが必要であろうというふうに考えたわけでございます。使用貸借に伴います補償につきましては、建設省の訓令によります補償華年または公共用地審議会会長から建設大臣への答申というふうなことで、使用貸借に関する補償のしかたがいろいろ示されておりますので、こういったことを基準にいたしまして、補償をいたしたわけでございます。したがいまして、国有財産自体の賃貸借契約がございません関係上、賃貸借契約がございますれば、土地の価格の約六割程度を補償しなければならなかったであろうと考えられるわけでございますが、使用貸借というふうに考えまして、土地価格の二割程度の補償にとどめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/98
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099・鈴木一弘
○鈴木一弘君 私は二割程度でも多いと思うのですよ。というのは、契約書がないのは不法占拠だということです。不法占拠したところまでそういうような補償を一億近くも出すということはどう考えたっておかしい。しかも、これが神社としての祭典あるいは行事を行なうための必要な土地であるということならば、これはもう私はわかるのですけれども、そういう場所じゃ全然ないわけです。国会のまん前で、九段とうんと離れている。これはどう考えたって、国民の側からすれば不法占拠であるとしかとれない。そういう点で、これは私は徹底的に一度きちっとした態度というものを、建設省自体としても出していただきたい、こう思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/99
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100・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 私は、いま聞いておっただけでは、これが違法であるように受け取れないのでございまするが、私もきょう初めて聞くことでございまするので、もうしばらく時間をかしていただいて調べてみたいと思います。そういうことがあってはならないのは当然でございますので、いろいろな点につきましてもう少し調べてみたいと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/100
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101・鈴木一弘
○鈴木一弘君 で、これは資料として、契約書があるかないかわからないですから、あればあったで契約書を提出していただきたい。軍人集会所に対するところの契約書、靖国神社に対するところの契約書、それから国と今回の首都高速との間に取りかわされておるところの契約書、そういうものがあるかどうか知りませんけれども、あるとすればそういうものを、なければそれでいいです。それをいただきたいと思います。それを委員長にはかって、もしなければ、なぜなかったかという経緯をきちっと書いたものをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/101
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102・藤田進
○委員長(藤田進君) それぞれ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/102
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103・松永勇
○政府委員(松永勇君) 先ほどの貸し付け契約書の問題は、なお調べて、ございましたら提出いたします。なかったらないということを御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/103
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104・鈴木一弘
○鈴木一弘君 経緯を出してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/104
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105・飯田逸治郎
○参考人(飯田逸治郎君) 公団のほうにおきましては、靖国神社に使用権がありという認定のもとにそれの使用権の消滅補償という形でいたしております。したがって、国との関係はなくなるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/105
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106・鈴木一弘
○鈴木一弘君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/106
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107・藤田進
○委員長(藤田進君) ちょっと私からお尋ねいたします。以上の質疑応答を聞いておりますと、まず第一に国有財産局長ですがね。私ども多年の理解としては、大蔵省ももとより、この際は土地に関する契約、これは公法上の契約をなされる場合に、たとえ大蔵大臣といえども口頭でその土地は譲渡しようとか、あるいは土地の使用権を認めようとかいうことは許されないので、それぞれ文書にし、かつ登記が完了されなければならない。そうして初めて権利の発生があるというふうに理解をしていたのですが、いまの、これは戦前といえども、いまの話によると文書がない場合もあるということですね。これはどうもその辺怪しいと思うのですね。これは幾ら終戦後のパニック状態とはいいながら、やはりきちっと整理されておくべきものである。陸海軍人、軍属等が終戦時軍需物資を相当多量に持ち去ったとか、これ自体も違法なんです。これは許されていない。ですから隠退蔵物資の摘発とか、問題はその後起こったわけですが、そのようにちゃんと権利義務の関係は国の機構、機関である以上、登記がされてなければならぬ、これが第一点。いまでも口頭であり得るのか。また戦前ならばよかったのか、私は文書でやって初めてこれは権利が発生すると思う。
それから第二の点は、いま聞いておりますと、首都高速道路公団のほうで使用権として一億余の補償をされた。これは金額の多寡ではなくて、あるいは憲法論はさておいて、無償で、国がこの公共性なり何なりという基準で無償で貸与されていたとすれば、その貸与を受けておるものが第三者にそれ相当であろうとなかろうと、補償を取ってその権利を譲渡するというようなことは起こり得ないは、ずです。これは当然、大蔵省のこれに対するアプルーバルがなければならない。これは文書で。同時に首都高速道路公団自身が、名のように公団ですから、これは国の機関ですからね、うかつといえばうかつ。現在の補償というものも無効といえば無効。その点は質問の鈴木君も明確にしたいと言われておりますから、いずれ適当な機会、場所でおやりになるでしょうが、とりあえず問題になりました点以上二点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/107
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108・松永勇
○政府委員(松永勇君) 現在国有財産の処理にあたりまして、売り払い、貸し付けすべて口頭でやるということは、これはいたしておりません。必ず権利の移動を伴うものは文書による、という措置をとっております。本件、まあ先ほど終戦の混乱期ということを申し上げましたけれども、本件も処分をする、つまり所有権を渡すということであったならば、そういうことにはならなかったろうと思いますが、私どもの管理が当時十分でなかったという一例になるかと思いますけれども、貸し付け契約をしておいて、もちろんその貸し付け契約をいたします期間というものが定められる。その期間が到来すると、当然その時点において新しい期間の更新の手続が、文書によって行なわれるというのが通常でございます。またそうしなければならぬのでございます。ところが、この終戦のどさくさで、その従来の無償貸し付けから今度有償貸し付けに切りかわるという時点においてそういう手続が文書によって行なわれないで、そのまま終戦のどさくさで過ぎてまいったという点に、私たちは非常に反省しなければならない、手続が粗漏であったという点を申し上げておるのでございまして、一般的に国有財産が、そういう、口頭なり何なりで行なわれているというものではございません。ただ、こういう事例があったということで、まことに申しわけなく思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/108
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109・藤田進
○委員長(藤田進君) それから第二点ですね。国有財産局長、国有財産の扱いとして、無償で貸し付けたものがあるとすれば、それに、借りたものが、補償なり何なり金取って譲つちまうということは、どうも国民の立場から言えば——これは地上権があって建物があったとかということなら別ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/109
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110・松永勇
○政府委員(松永勇君) 第二のお話は、実は首都高速のほうからかと思ったのですが、私たちが従来、こういう場合に、先ほど鈴木先生のお話にもありましたように、大蔵省で本人を立ちのかしてそうして無償で首都高速に提供したらいいじゃないかというお話がございました。私たちは、実はこれを本人を立ちのかせるためには、先ほど申しました国有財産法二十四条による解除権を行使して行なうということになりますが、これに対しましては、やはり財産権としての権利の補償を行なわなければならないことは、この二十四条第二項に明示しております。やはり私どもとしても、それに伴って実は予算を必要とする。ところが、こういう道路の何のときに、私のほうとしてそういう予算措置はなかなか講じられない。そこで、道路を実施する側である首都高速のほうでその補償はしてもらうということを、通常従来やっております。で本件の場合でもその事例の一つだと思いますが——。無償で貸しておった、かつて。そういうものに権利の補償というものをしなくてもいいということになるかどうかだと思いますが、私は、先ほど申しましたように、本件は手続未済であったけれども、不法占拠ではない、実体的には。その建物があり、それの土地を使用する権利はあったのですけれども、遺憾ながら、当時、貸し付け契約という文書による手続はとられていなかった。そういうものを立ちのかせるという場合に、その権利の額をどのように評価するか。これは公団が適正な評価をなさったことだろうと思いますが、それによって本人を立ちのかしたというものでございます。私のほうから見ましても、本件の処理は、補償をしたこと自体が違法であるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/110
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111・藤田進
○委員長(藤田進君) これは時間とりますからね、事実認識、事実問題があなたのは違うです。これは、ちょうど国会の前に進駐軍がいることはいかにも立法府として困るというので、私も議運の理事をやりまして、そうして米軍に交渉をさせて国会の前から立ちのき、そして立ちのき条件としては、これにかわるべき建物を建ててくれというお話、その線を押して出てもらって、あそこにだれもいなかった。進駐軍が入るためにあれはつくったようなものです。ですから、補償しているのは地上権というか、建物補償とかそうじゃなくて、何か使用権ということで出しているのでしょう。これはあなたの問題の把握とは違うと思う。よく検討をしておいていただきたいと思います。——続けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/111
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112・鈴木一弘
○鈴木一弘君 これは質問私は留保しておきますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/112
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113・瀬谷英行
○瀬谷英行君 若干きのうの参考人の意見等に基づいて大臣にお聞きしてみたいと思うのですけれども、技術的に見ると、今度の収用法の改正というものは、きのうの参考人の意見の中には、なまぬるいという意見もあったし、また妥当であるという、こういう意見もあったのです。
この土地収用法の改正というのは、実にしばしばやっているわけですね、今日まで。こんなにめったやたらと手を加えているという法律は、ざらにないのではないかという気がするのです。しかし、これというのが、小手先細工にだけ終始しているからこういうことになるので、やはり建設省としては、お役所としてのつとめを果たすという意味では、こんな改正も必要なのかもしれないけれども、根本的には、いままで何回も何回も言われてきて行なわれていない、たとえば土地利用計画といったような大所高所からの政策というものを思い切って実行しないことには、いつまでたっても、こういう収用法の部分的な改正をちびちびこれからも繰り返していくということが続けられるのではないかと思うのです。こういう点の心配ははたしてないのかどうか。今回の改正によって、これはもう今後この問題については心配はないというふうに断言できるのかどうか。大臣としてはどのようなお考えを持っているか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/113
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114・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 仰せのとおり、相当改正があるわけです。わずか十四、五年前の法律でございますが。しかしそれはですね、私はその改正を一々見ておりませんが、やっぱり手続上のことが多かったのではないか。したがって、今回の土地収用法の何と申しますか性格が違ったというさいぜんの話もありましたが、そういうまあ大きい改正は、今回が初めてではないかと私は思いますので、したがいまして、この今回のような改正は、そうこれからたびたび行なわるべきものではないと、まあかように考えております。
それからもう一つ、この法律の改正の前にやることがあるのじゃないかというようなことでございますが、それはもちろん土地の問題につきましては、多くの問題を控えておるわけでございます。その前後の関係は、それは多少あろうと思いますけれども、すべてを整理してちゃんとやるというようなことが、実際上不可能でございますので、やはりもう成案を得て、この納得がわれわれのほうでいくというようなものを出したにすぎないのでありまして、これよりも先に、開発利益の税法の点において根本的なことを片づけて、というふうな議論もありますけれども、それもなかなかむ、ずかしいので、この法律の改正になったわけでございまして、今後これがたびたびというようなことは、根本的にはあまり私は考えられないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/114
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115・瀬谷英行
○瀬谷英行君 収用法の適用ですけれどもね、伝家の宝刀というか、最後の手というふうな感覚をわれわれ持っておったのですよ、土地収用法というのは。できれば土地収用法というものを使わないで、公共用地取得のためにスムーズに話し合いが行なわれるということが一番望ましいわけです。ところが、何回も何回もこれ土地収用法の法の改正を行なってきたということは、つまり法の適用をやりやすくするために行なわれてきたんだろうと思うのです。今後やはり最後の奥の手という考え方になるのか、それとも公共用地取得のために一つの土地収用法というものが利用される、一つの公共用地取得のための過程におけるルールとしてこれが用いられるという考え方になっているのかどうか。この法の適用についての考え方ですね、いままでどおりこれからいく、変わるのか変わらないのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/115
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116・西村英一
○国務大臣(西村英一君) この法律の改正によって、この法律の何といいますか、適用の事件が多くなるか多くならぬかということが一つあると思います。いままでの法律ですと、まあ公共事業の数によりましょうが、年間は千件ぐらいあった。この法律ができましたら、その適用が一体少なくなるのか多くなるのかというようなこと、それから今度は起業者が、この認定価格というものをきめていますから、認定価格によって事業認定というものは、これは私はよく知りませんが、あらゆる公共事業について事業認定をぴしゃっときめるものではない。話し合いをやれば、きめなくてもいいのですから。しかし今度は、事業認定を、公共事業はこの収用法を適用する、適用せぬいかんにかかわらず、事業認定の事業をぴしゃっときめるんじゃないか、公共事業はそういうような変化があるのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。詳しいことはひとつ計画局長に…。その二点ですね。はたしてこれでもって適用される事件があるのかどうかということと、事業認定が、公共事業はいままではやっておりません。あらゆるものにやるわけがないんですから。ところが今度は事業認定を受けるのに、公共事業はやるんじゃないか、こういうように感じられますから、詳しいことは局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/116
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117・志村清一
○政府委員(志村清一君) 瀬谷先生お話がございました土地収用法がいわゆる伝家の宝刀であって、まあ言うことを聞かないやつはぶった切ってしまうんだというふうな観念を、起業者も土地所有者も両方持っておるということは、一部事実でございます。ただ、収用法は先生御存じのとおり二十六年の、戦後の改正によりまして、そういうような伝家の宝刀ではなくて、収用法をよく読んでいただきますとわかりますように、私権と公益との調整をはかる、いわば話し合いの場としての収用委員会を活用いたしております。また先ほども御説明いたしましたように、収用委員会の審議だけではございませんで、あっせんなり協議なり、調停なりというような話し合いの場も、法律の中に持ち込んでいるわけでございまして、いわゆる言うこと聞かないやつは切ってしまうんだという伝家の宝刀ではないというように、私も考えております。ただ、あらゆる公共事業に関する用地問題の案件を、すべて収用委員会の裁決にまかすべきであるかどうかということにつきましては、累次大臣も御説明申し上げておりますように、やはり話し合いで解決がつけばお互いに満足し合って、譲り合って解決つくならばそれも望ましいことでございますので、必ずしもそのように考えていない。今後における収用法の事業認定ないし裁決の件数の推移はどうだろうかということにつきましては、先ほど御質問もございまして、外国では喜んでということもございましたが、わが国におきましても、だいぶ都市周辺とかその他のところでは起業者と土地所有者の間でああでもない、こうでもないと言い合いするのはいやだと、むしろ公正な第三者である収用委員会にお願いしたいという声が、土地所有者の間でも出てきてまいっております。さような条件等が熟してまいりますと、事業認定あるいは収用案件ということも、ふえてくるのではないかというふうに想定しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/117
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118・瀬谷英行
○瀬谷英行君 伝家の宝刀という考え方になると、収用法というのは、いわば医者でいえば手術室のような感じだった。この改正によって手術室という考え方から健康相談所的な考え方になってくるのかどうかですね。つまり公共用地取得といったような問題についての一つのルールですね。まあ軌道に乗ったルールというふうになれば、そのような考え方もできるわけなんです。しかし、そういう方向にこれからなるかどうかですね。それは収用法の改正だけで片がつくことじゃないと思いますけれども、やはり総合的な問題の解決ということと相まってでなければできないと思うんです。
だから今度は、大臣としては一体これは土地収用法という法改正から言うと、ほんとは技術的なものかもしれませんけれども、政策的に考えてみた場合、これからも公共用地取得のためには、いろいろ問題が出てくると思うだからその対象が、われわれが一般的にこの土地収用法の提案理由の説明から受けた感じでは、道路であるとか鉄道であるとか、駅前広場であるとか、住宅団地であるとか、公園であるとか、そういうもののためにこの土地収用法を改正するかのように受け取れるわけです。しかしそれが適用の範囲が、たとえば空港のたとえば反対の多い成田空港なんてことが、いま当面問題になっておりますけれども、採来国際空港などというものが、成田のほかにも必要となってくるという事態もあるかもしれませんし、あるいは事実上は、米軍の使っている基地の拡張というようなことに関係してくるというようなこともあるかもしれない。ということになると、この土地収用法なるものが非常に使いやすくなってくるということは、われわれとしても相当考えなければならぬことになってくるわけです。だから、対象というものをどのように限定できるのか、適用の対象というものが、十分に国民をして納得をさせ得るようなものにとどまるかどうか、こういう心配もあるのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/118
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119・西村英一
○国務大臣(西村英一君) この法律の改正で、特定な仕事に対してこれをどうこうしようというものでは私はありません。しかしやはり公共施設、公共事業というものは、年々歳々やらなければならぬと思っております。これはまた社会開発をやる上に、また国土の発展上当然なことでございます。従来よりも公共事業というものは今後も伸びるわけでございます。したがいましてその場合に、その公共用地をあくまでもやはり公正な価格で買いたい、公共用地を高く買うことは、やはり国民の税金の問題になるわけでございまするから、公共用地というものは安く買う必要はもちろんないけれども、やっぱり公正な値段で買いたいということが、まあ一つでございます。もう一つは、やはりそのために起こる開発の用地は、いまのこの一般の人から感じますれば、土地を持っておる、座して不当な利益を得ておるじゃないかというようなことがいままでもありましたが、今後このままの法律では、ますますそれがひどくなるのじゃないかと言われる。したがいまして、そういうようなことをチェックする意味におきまして、公共用地を公正な価格で買いたい。またそのために公共投資による公共の利益というものも、やはりでき得るだけ公平にそれを分配すべきだというような考え方で十分改正の理由はある、かように考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/119
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120・瀬谷英行
○瀬谷英行君 大臣がいまおっしゃったような趣旨であるならば、この土地収用法のこういう部分的な改正では事は足りないのではないかという気がするのです。だから土地を持っているというだけでうんと不労所得がふところに入ってくる、こういう人間が社会に存在するということは好ましくない、それから地価の高騰というものも阻止しなければならぬ、こういう考え方であるかのようにとれるわけです。そうしますと、やはりこの土地の利用計画というものをちゃんとして、地価が上がらない、つまり、なにもこんなに道路を広げるからとか、団地を拡げるからとかいうことを言っても、急にその近辺の土地が値上がりするといったようなことのないようにしておくことがあらかじめ必要じゃないかと思うのですね。つまり、この何日か前にありました集中豪雨でもって相当の被害が出ておりますけれどもね、あの被害の出ているところは、がけの上とか下とか、普通人があまり買わないようなところを不動産業者が安く買って、粗製乱造的に住宅を造成をしたというところに相当問題があったのじゃないか、現にそういう危険のあるところは集中豪雨がないからいいようなものの、かりに集中豪雨があった場合に、同じような目にあう可能性のあるところというのは、ずいぶん多いと思うのですよ。東京周辺でもあるいは大阪周辺でも相当あるのじゃないかと思うのです。運よく極端な集中豪雨というものにぶっからないから済んでいるというだけの話なんです。そういうところはやはり住宅難、日本の結局住宅政策というものが十分でないからそう現象が出たんじゃないか。そうすると、そういう問題を考えてみた場合には、やはり住宅対策あるいは土地利用計画というものに万全を期していかないと、単なる土地収用法の部分的拡大では問題は解決しないんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、その点は、特に建設大臣としては責任のあることなんでありますから、一体これからどういうふうに対処しようとお考えになっておるのか、その点をお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/120
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121・西村英一
○国務大臣(西村英一君) いろいろなことが相互関係にやはりなるので、したがいまして、この法律の改正も一つは、たとえば宅地政策をやれといいましても、かりに三多摩なら三多摩にしても、宅地の造成をやると、そこに交通機関をつくろうといっても、やはり中で土地を買わなければ……、宅地政策はできましても、そこに交通施設をする場合にはやはり何らかの土地を買わなければならぬということ、その前にどうそれに対処していくかということがあるわけでございますから、まあ一つづつ切り離していけないのでございまして、したがいまして、この法律とともに政府が考えておるのは、もうこの委員会にも土地の再開発法の法律も出しております。それから都市計画法も出したわけでございます。それから、いま午前中に松永さんからいろいろお話ございましたこの他の開発利益を一体どうするのかというような問題も、これもぜひとも解決しなければならぬ。少し前後関係がそれは事実あります。ありますけれども、すべてをちゃんと統一的にやるということも、なかなかこれはむずかしいものでございまするから、こういう結果になるわけでありますが、全部やはり関連性を持って土地問題を攻めていきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/121
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122・瀬谷英行
○瀬谷英行君 この問題に限定してみた場合には、いま言われるような話で、突っ込んでみても突っ込みようがないような感じがするのです。しかし、今回の土地収用法の改正というのは、大局的に見た場合には、きのうちょっと言ったんですが、蚊取り線香の補充をやっておるような感じがするのですね。どぶさらいもしないし、どぶの草もそのままにしておいて、蚊が出てしょうがないから蚊取り線香たくといったようなことであって、これはどうも切りがないわけなんです。だからまあできるならば、この土地収用法の蚊取り線香なんかは必要としないような根本的な対策ということに力を入れたほうが、建設省としてのあり方として、私は正しいのじゃないか。それはまあ、非常に仕事が大き過ぎて容易じゃないというかもしれませんけれども、いままでだって言われながら、容易じゃない、たいへんむずかしいということで過ごしてきたから、いつまでたったってこういう道路整備だとか、土地収用だとかこまごまとした後手に回るようなことばかりやっている。なかなか私はこれでは、問題は根本的に解決しないのじゃないかという気がいたします。だから、西村さんも建設大臣をいまおやりになっているんだから、西村構想といったようなことで、むしろ土地収用法なんというものは手をつけなくたってもいいような、総合的な土地利用計画といったようなものを全面に押し出して、そして問題を一挙に解決する こういうような構想はないのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/122
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123・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 土地の利用計画につきましては、非常に重要な問題でございますので、先般も都市計画法の提案をいたしました。その中身の主要なものは、土地の利用計画でございます。したがいまして、これはまあ他日御審議を願うこととなりますが、それはやはり根本の問題に考えておるわけでございます。実は、正直に申しますと、都市計画法は、非常に難儀をしたのでございます。もう時日をかせば相当な期間がかかるわけでございまするが、とにもかくにも、やはり根本的な姿勢でもって臨まなければならぬということでもって、ようやく法律の改正案までこぎつけたのでございまして、鉄道でいえば鉄道営業法に相当するくらいな古い法律でございます。それをまあとにかく、少しくらいの字句のあれはあっても、とにかく出そうということで、先般閣議の決定を経まして、この国会に提案をしておる次第でございます。したがいまして、この問題だけを取り組んだわけではございません。また、もう一つこの委員会へかかります都市の再開発の問題ですが、これまで非常に難儀をいたしました。これは権利義務の関係で非常に難儀をした法律でございます。いろいろ御批判があろうかと思われますが、こういうような法律をもってやはり対処しておるのでございまして、その他今後もいろいろあろうかと思われますが、一番私が重要に考えておるのは都市計画法、これは思想を確立したい、しかしこれは、やはり私権と公益との相当な衝突が起こる大問題でございますが、私としましては、でき得るだけの努力を払ってこの二法案を提出し、しこうして、いま御審議を願っております土地収用法のまあその一環であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/123
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124・春日正一
○春日正一君 いままで法案の中身について質問ありましたけれども、私の聞きたいと思うことも、その中で聞かれているところがありますから、そういう点はできるだけ重複しないように、先ほどの質問の中でも、法改正の理由、あれがいままでここで出たことでも、社会開発を促進するためと、それから地価対策という面もある、それからごね得をなくす面もあるというふうに言われたのですが、これの改正を三回も出してきて、まだ出そうというこの改正の政治的、経済的な背景といいますか、動機といいますか、そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/124
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125・西村英一
○国務大臣(西村英一君) これは、私は大臣になってからの問題でありませんし、ずいぶん前からの議論であったと思います。しかし、やはり皆さま方と同じように、どうしてもやはり、日本は他の物価の上昇もさることながら、やはり土地の高騰ということがガンになっておる。そこへいくと、物価問題を進めていったら、土地問題がやっぱりガンになるということで、あらゆるこの場でそれが議論されておったのが、もう久しい前からでございます。しかしながら、やはり何と申しましても、いい手はそうないわけでございまするから、その場合にやはり話になるのは、いわば土地の利用計画であり、土地の有効利用であり、またこの土地収用法の不合理も直さなければならぬのじゃないかといういろいろな、あるいは土地の価格制度も考慮すべきだ、あるいは鑑定士の養成もしなければならぬという、さまざまな土地問題について議論が起ころうと思うのでございます。その一環として、この土地収用法が早く取り上げられまして、国会にたまたま提案をされたのでございます。そして他の、この土地利用計画なんと一口に申しますが、これがまたなかなかたいへんなんで、それを法律的にまとめるということになれば、これはたいへんな問題です。土地の高度利用の問題、再開発の問題、そうでございます。再開発という点で見ると、法律でやっぱり攻めてみますと、そう簡単なものじゃございませんが、幸いにいたしまして、土地の収用法は前からも法律がございまして、それに不合理なところを手直ししようじゃないかというので、一番初めに取り上げられたということではなかろうかと思うのでございまして、私もそれを継承したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/125
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126・春日正一
○春日正一君 やはり社会開発ということのために土地がうんと要る、それを早く収用しなければ事業が進まないということは、結局いま発表されている経済社会発展計画ですか、ああいうものに沿ってやっていこう、それをやっていく上で土地が早くほしいのだ、たくさんほしいのだということですね。そういうことだろうと思います。そこで地価の問題が必ず出るわけですけれども、地価の値上がりの主要な原因が何かということですれ私はこの土地収用の問題というのと地価の値上がりという問題はたいした関係のないものだ、収用それ自体は、そう思っていますけれども、これはこの収用法の対象になる問題ですね。だけれども、地価の値上がりの一体原因は何か、地価地価と言うけれども、この点聞かしてほしいのですがね。そうすると、その位置づけがはっきりしてくると思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/126
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127・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 地価の値上がりと土地収用法との直接な関連は、それはありません。しかし、やはり相関関係は、薄いけれどもやっぱり何らかの関係を持っているということになるので、相関関係は私はあろうと思います。直接的な関係はない。なお、計画局長専門屋でございますから、計画局長から説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/127
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128・志村清一
○政府委員(志村清一君) 地価の値上がりの原因についてのお尋ねでございますが、これはいろいろな問題が複合しておろうかと思いますが、やはり日本の産業構造が大きく変わって、一次産業から二次、三次産業への大きな移り変わりがある。それを局地的に申しますと、いわば都市化の現象が非常に強く起こってまいった。そういうことによりまして、大臣もしばしばおっしゃられますように、土地の需給のアンバランスという問題が起きたということが、非常に大きな原因かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/128
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129・春日正一
○春日正一君 そこが一番問題でしょう。だから、土地需要が非常に激増した、高度成長によって、大体まあ、私、話を簡単にする意味でこっちの調べた資料を言いますから、もし違っておったら訂正してもらいたいと思うのですが、大体五〇年から五五年に農地の転用面積は三万ヘクタール、年平均が五千ヘクタール、それから五六年から六
○年の間では七万五千ヘクタール、一年間平均して一万五千ヘクタール、六一年から六四年が十二万七千ヘクタール、年平均して三万一千ヘクタール。だから最初の五年に比べて次の五年には三倍になっている。それからその次の五年には最初の五年に比べて六倍になっている。こういう大きな土地の、これは民間のあれも農地の転用ですから含めて、需要がある。それから臨海工業用地の場合でも、五六年から六三年で一万二千六百ヘクタール余りの造成があるというようなことをして、非常に土地の需要が大きくなっていっている。そしてそのことが結局土地の値上がりというものを促進していっている根本のさっき言った需給関係の問題で原因だと思うのですよ。
そうしてもう一つの原因は、やはりそういう土地需要が非常に激増している、需給関係がアンバランスになっているという関係の中で、土地投機が非常に活発になっているという問題があると思うのです。不動産の売買件数を見ますと、三十五年には百五十万件、三十九年には三百万件、その坪数が三十五年から三十九年で八十億坪ということです。これは何回も往復するものも含まれていると思うのですけれども、全市街地面積の八倍だと言われているのです。だから、非常にたくさんの土地が大規模に売買され、投機されている。そうして、そこから値上がりがっくり出されているということです。それで法人の数でも不動産会社が三十一年には二千九百九十一あったのが、四十年一万六千七百五十になっているというように、不動産会社もうんと数がふえているということは、こういう数字を見れば、どれほど土地投機が盛んになってきているかということを、はっきり示しておると思うのですよ。そうすると、こういうところが価格の上がるいわゆる主動力なんで、それでもちろん公共用地の収用といいますか、そういうことも、土地の需要関係の面から見れば、当然この価格を騰貴させる原因になるけれども、それを売り渡すのを渋るとか渋らぬとかということは、これは消極的な原因じゃないですか。売りたくてしょうがない。何かもうけてやるから売ろうと思っている人が、これは売り渋って、そのために土地を上げていくとか、そういうことをするなら、これは価格値上げの積極的な要因になるけれども、ここで収用法の対象になるものは、売りたくないと言っているのでしょう。取られちゃ困ると言っているのでしょう。それを取り上げるというから、それなら補償してくれという問題が出てきて、収用しなきゃならぬ、強制収用をやらなきゃならぬという問題も出てくるということになれば、ここで収用の対象にして早く取り上げなきゃならぬといっておる問題は、土地の価格の値上がりというものから見れば、消極的な理由なんです。そうすると、当然この収用法改正の一つの重要な要因として、土地の値上がりがあるから収用法を改正しなきゃならぬ。それで値上がりを防ぐのだということは、正当な論拠にならないのじゃないか、そう思うのですけれども、どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/129
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130・志村清一
○政府委員(志村清一君) 先ほど大臣も申し上げましたように、この土地収用法の改正によりまして地価対策が終われりということではないと存じます。ただ、御存じのように、大きな事業を行ないました場合に、最後に事業をどうしても遂行せにやならぬというところで、あまり妥当でない地価を呈示せざるを得ないというふうなことによりまして、大事業につきましては、その付近の通常の価格よりも相当高い価格を払ったという事例もございまして、それが付近の地価に非常に悪い影響を与えるという事例もあったわけでございます。これらにつきましては、いろいろな政府あるいは民間の研究、あるいは審議会等の御意見にも出ているような次第でございまして、そういった著しく適正を欠く値段が、一般の地価を牽引しているということを、この収用法の改正によってある程度チェックできるという点はあろうかと存じます。また、先ほど来お話がありましたように、宅地化、宅地の供給でございますが、鉄道なり道路が整備されることによって、宅地になり得るような地域が漸次拡大していく。そうすると供給が相当ふえてまいるというような点から、地価対策上の一つの一環の対策になり得るのではないか、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/130
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131・春日正一
○春日正一君 だからその説明では、収用法を変えて安く取るから地価対策になる。つまり自然需要がふえて供給とアンバランスになるから上がっていく。その関係で土地投機が行なわれて上がっていくというような、一番主要な原因になっているものをそのままにしておいて、そこでこの土地収用、しかもこれは国家権力で強制的に収用するという一つのあれを持っているんですね。先ほど松永さんの質問でも、実際収用にかけられる例ば非常に少ないということを言われたし、私どももそう思っております。しかし、これは伝家の宝刀ですから、結局実際私どもの知っている例でも、収用法にかけられると損するから、かけられぬ前に何とか話をこぎつけよう。だからできるということは、実際に強制収用がどれだけ適用されるかという問題よりも、そういうものができたということ自体が、一つの圧迫といいますか何とかということになって、実際にそれの前に解決されるものにも影響を与えてくる。そういう意味では、収用対象になるもの全般にこれは影響していく法律だと思いますよ。そういう法律で安く取るというたてまえでやりながら、一方では土地投機というのは野放しにしている。この前聞いて非常に腹が立ったのですけれども、例の光明池団地の問題、あれが一年間に十倍になっているでしょう、売買七回もやって。それは明らかに不当な所得だと思うし、国家に損失をかけている。この国損をどうするかと質問したら、いやそういうものは資本主義では売買は自由で、高い値段で売って高い値段で買ったのだから、それはどうにも制限のしょうがないという答弁を受けたんです。そうすると、そういうものは認めておく。これなんかもああいう問題とからんでいるから、なおさら問題になるわけですけれども、そうでなくても、やはり商売の自由なんだから、幾らで買ったものを幾らで売ってもわしは自由だという形で、土地投機は野放しで認めていく。そういうことをしながら、一方では公共事業の対象になるものだけ法でもって安くとにかく取っていくというふうなことにするということになれば、政府が国民に対して不当な犠牲をしいるというたてまえです。そういうことになるわけですから、だから先ほども松永さんも言ったように、いわゆる譲渡差益に対する吸収の方策をどうするとか、土地投機を抑制して横行できないようにしてしまうとかという手をとっておいて、それとの関連で、政府の取り上げるものもこうなんだということになれば道理が合うけれども、これは野放しだ。そうしておいて取り上げただけ、しかも国家でやる。そういうものを一番低く押えるというようなことになれば、非常にそこに不公平が出てくるし矛盾が深くなってくる。そういうことになるんじゃないですか。だから問題は、収用法でやれば地価対策として幾らか影響があるというなら、どのくらいの影響があるかということをはっきりさせなければならぬと思うけれども、おそらくそれはできないだろうと思いますが、どうですか、その点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/131
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132・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 実は春日さんが、予算委員会で光明池の質問があるというので、私は調べたんですが、これはいまから考えますともっともでございます。これは収用法にかけて取ったものじゃないんでしょうがもっともです。あなたの言わんとするところは、そういうことをやりつつ、また一方零細な人から取り上げるのじゃないか、こういうこと等を彼此比べて言っておるのだと思いますけれども、実は、国家権力で取られる取られるということを言ってもらいたくないのは、公共福祉でございますから、大多数のために、大多数の国民の幸福のために、少数の方々が犠牲を払う場合もあるということは言っておるのでございます。したがいまして、光明池の問題等については、私も調べまして遺憾に思います。いまだにまだ使っておりません。これは私といたしましては、これを手に入れたからには、少なくとも有効に使うような手をとらなければならぬということで、一生懸命やっておる次第でございますけれども、まあそれとこれとをひとつ対比して考えると腹も立ちますけれども、これはこれでもってほんとうに大衆の、公共の福祉、とにかく国家が公共の福祉をはかる意味においては国家でございますけれども国家国家と言わずに、強権と言わずに、公共の大多数の福祉のためにというふうに善意に御解釈を願えば、そう腹も立たぬのじゃないかと、かように考えますから、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/132
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133・春日正一
○春日正一君 まあそれは大臣の口から言うとすればそういうことだと思いますが、私ども共産党でも公共の利益のために土地を収用して——収用というか、強制ということまで私は何も含めているわけじゃないけれども、収用して使うということを否定するわけじゃないのですよ。ただ、問題はそれをやっていくことでだれが犠牲をこうむって、だれが得するかという実態的な中身ですね。そうしますと、結局、私これはきのう参考人のときにも言ったんですけれども、やはりそうやって収用した土地が一体どこでどうなっているか、この点でどうですか、いろいろな意味で計画法でやられている、整備法でやられている。いろいろな意味でやられている土地ですね、公共用地と称せられる大きなもの、工場の埋め立ての造成まで含めて。ああいうものの帰属ですね、つくった後にどう帰属し、どのように利用されているかという点については、あなた方調査があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/133
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134・志村清一
○政府委員(志村清一君) 収用の対象になる事業につきましては、土地収用法の第三条の各号に掲げられておりまして、特別立法によりましてこのほかに収用が認められておる案件もございますが、これ以外のそういった法律に認められたもの以外にはございません。それらにつきましては、もし事業認定をいたしまして、収用いたします目的に反して使われたり、あるいは使われなかったりするというような事態が起きました場合には、これについては買い戻し権という制度がございまして、買い戻しができることになっております。その価格も大体何と申しますか、原則としては収用された価格を大体基準にして考えるということで措置をいたしておるわけでございまして、目的に反して使ったり、あるいは他の目的に使ったり使わなかったりというふうな事例はなかろうと存じます。ただ問題は、一体所有権はだれにあるかと
う問題でございますが、そういう意味合いにおきまして、本来の事業に使うということ以外には使われぬはずでございます。次に、特異なものといたしましては、新任宅市街地開発法というような法律がございまして、それによりまして住宅団地の開発を認められております。これらにつきましては、一般の方々に土地をお譲りするということになっておりますので、施行者自身の所有地になっていないで、土地を譲り受けた一般の方々の所有になっているという転換はございます。これは法律の認めるところでやっておるところでございます。
なお、もう一つ申し上げたいことは、たとえば鉄道の敷地になる、そうして鉄道の敷地になることで土地を提供されました。ところが、それが高架鉄道になったと、高架下が住宅地区であるにかかわらず、キャバレーとか、あるいはたいへんがんがんする工場というものに使うというふうなことは望ましくないわけでございます。これらにつきましては、五十一国会におきます衆議院の建設委員会におきまして、三党共同、与野党共同修正によりまして、十分そういう点に注意して管理して使うようにというような修正案がございました。これらにつきましては、今回の提案いたしました改正法案には、そのまま採用いたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/134
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135・春日正一
○春日正一君 私はそういう特殊な場合を聞いているのじゃないですよ。たとえば例の数寄屋橋のあすこのところの高架道路ですね。あの下にいろいろできているということで問題になりますけれども、そういう特殊なケースを言うのじゃなくて、計画された目的どおりに使われてだれが得しているかと、たとえばこの間も言ったけれども、千葉県の海岸をずっと埋め立てしている。私も横浜に住んでいるけれども、本牧の海岸もずっと埋め立てしてしまっている。あすこはノリだの何だのとっておったし、海水浴にも使ってきた。あそこは補償して、漁師を丘へ上げてしまって、大きな埋め立てをやっているでしょう。それは公共的な一つの事業として県なり国なりの力であればやって、いまあそこへ石川島播磨造船が建っています。日本石油の工場が建っています。というような形、あの本牧の広い海は、漁師を丘へ上げちゃって、実際帰属したのは、大きな、私どものことばで言えば、独占企業という大きな会社に全部帰属してしまっている。あるいは千葉県の海岸でもそうでしょう。そういう形なので、公共の用地として取り上げて、確かに産業の発展だ何だというけれども、しかし、それがそういう一つの私的な営利会社がますます大きくなるために取り上げたという結果になってしまっておる。そういう問題ですね。この公共用地の取得額といいますのは、ばく大なものなんですね。たとえば富士製鉄の例に見ても、土地の資産が五百七十万坪ですか、坪五百七十円と評価して三十三億円。しかし、時価では七百八十億ということで、非常に大きな含み資産を持っている。資本金なんか八百二十億の会社ですから、それにほぼ近いほどの土地を買い集めて、とにかく含み資産として持っておるというような状態ですね。そういうようなものが、これは富士製鉄の例ですけれども、大きな会社を調べれば、ほとんどそうだと思うし、東芝にしても、日立にしても、石川島にしても、数え上げて見れば、新しく工場を建てる、そういうようなことをやっているところは、この計画の中で非常に大きな土地を取得していっている。そうして含み資産として大きなものを持っているし、実際こういうものを担保に入れて金繰りをつけているというところもある。というところもあれば、公共のために、国民のためにというけれども、それが国民全体のために——国鉄の場合なんか、大体こういう通勤路線はみんな使っておりますけれども、そういうことに使われているんなら納得がいくんだけれども、そうではない大きな私的企業の利便のために、あるいは直接利益のためになるような形でそれが使われている、そういう場合にも収用法が適用されていくというようなことになると、これは非常に大きな矛盾を起こしてくる、不合理になってくるということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/135
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136・志村清一
○政府委員(志村清一君) ただいま先生御指摘になりました海面の埋め立ては、土地収用法とは別の体系の公有水面埋立法によるものかと存じます。これは、私どもの所管ではございませんが、公有水面を埋め立てる場合には、知事が申請に対して許可をする、免許をするということになっておりまして、免許するものは、公有水面に関して権利を有する漁民等の同意があった場合とか、あるいは埋め立てによって生ずる利益の程度が損害の程度を著しく越える場合、あるいは道路とか、そういったものをつくるというような場合とかいうふうなことになっております。収用法の体系とは異なるものかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/136
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137・春日正一
○春日正一君 そういうことで、取るほう自体に、さっき言った根本的な問題がある。だから、私に言わせれば、ごね得とか、あるいは土地の値上がりを防ぐとかいうようなことは、これは理由にはならぬ。ただ残るものは、結局公共事業をやるために、早いこと土地を調達するために必要なんだというような理由だけが残るということになると思いますよ。
それから、そういう場合の収用される者への補償の問題ですけれども、この近傍類地の価格による算定ということも、近傍類地というのは大体どういう基準になっているのですか。常識的にはまあ近所の土地の相場ということになるけれども、実際問題としてあなた方やる場合、大体具体的にはどういうことでそれは決定されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/137
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138・志村清一
○政府委員(志村清一君) 土地収用法におきます裁決の原則、補償基準といたしましては、先生御指摘のとおり、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもって補償しなきゃならぬという原則がございます。まあ近傍類地と申しますのは、できるだけ近くであって、その収用されるべき土地に最も類似した土地ということでございまして、ただそれも、場合によりましては買いたたかれて売った場合とか、あるいは非常に特殊な例で高く売った場合とかというふうなことを捨象いたしまして、できるだけ公正な、近傍類比の価格を出しまして、それを十分考慮して、相当な、適正な価格にするというたてまえで進んでいるわけでございますが、収用法におきましては、その判断は収用委員会がいたすわけでございます。収用委員会に至らざる通常の公共補償、私どもが道路をつくりたいということで地元の方々といろいろ御折衝する場合におきましても、大体その原則に従ってお話を進めておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/138
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139・春日正一
○春日正一君 まあ、それだけではやはりたいしてぴんとこないのですけれどもね。だけれども、そこの問題で、先ほど松永さんも非常にこの点強く指摘しておられたのですけれどもね。つまり、近傍類地の価格で取り上げて、それで土地を提供した人は、かりに道路になるとすれば、近傍類地の価格で取り上げられるけれども、そこへ道路ができてしまったために、その近傍の土地の価格がずっと上がってしまった。そのために国家のために、あるいは公共のために土地を提供した人が損をするというような結果になってしまうと、まあそれについて松永さん、盛んに言われましたけれども、やはりそういう場合に、そういう不労所得ですね、これを吸収してどう配分するかということが一番問題になるし、それを片づけなきゃならぬ。収用委員会あたりでは、これは起業者に帰属すべきだなんてことを言うけれども、やはりそれより前に、その被収用者へ十分補償をするということにもしなきゃならぬだろうし、同時に、そういうものが通れば、当然いろいろな公害が起こるのですね、特に都市周辺なんかでは。交通事故が起こるとか、ガスが出るとか、騒音がどうとかと、そういうものに対する補償なり、そういうものを防止するためのものにそういう金を使うというような形で、全体として公共事業が国民に被害を与えないという形でやられていくような、そういうことが保障されなきゃならないし、これはやろうと思えば、道理のあることなんだから、当然さっきの土地投機の禁止とあわせてできるはずだと思うのですよ。それを思い切ってやらずに、これだけ切り離して出してくるというところに、この改正の一番の弱点もあるし、矛盾もあると思うのですよ。まあその点は先ほど松永さんの質問に対していろいろお答えになったから、私は特にそれ以上聞きませんけれども。
そこで補償の基準の問題ですね。先ほど営業補償とか、生活補償とか、いろいろほかの条文で配慮されているというように言われましたけれども、実際にこの補償というものがどうやられておるのか。あなたは下のほうの事情までよく御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/139
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140・志村清一
○政府委員(志村清一君) 私、直接土地所有者等に会いまして補償額を算定したことはございませんが、ある程度存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/140
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141・春日正一
○春日正一君 で、補償が大体大きいものですね、これにはわりあい有利になっている。ある場合には特別有利になっているという面もあるのですね。たとえば私、例をあげてみれば、あの新宿の副都心の計画でもって、小西六の工場を移転をさせた。あれは収用法七十九条の、補償のかわりに買収した物件ということになっているのですね。ところが、あれの中身を調べてみますと、土地が十三億三千五百万ですか、物件、建物等が十億二十六百万、それに付帯費用、移転費、営業補償、合わせて六億八千九百万で、全部で合計補償が三十億五千万ですね、あすこの工場の移転が。それで向こうの日野のほうに移転していった。そうしてこの移転の補償で小西六の経営内容は楽になった、向上したというふうに言われている。そこでこの中を見ますと、たとえば特殊付帯設備の補償、四億九千九百万円という中には東電とかガス会社が新しい型の設備を新設する場合の値段ですね、いまのものの評価でなくて、越していったあとで新しい型のものを新しくつくる場合の値段で評価して四億九千九百万というものを払っている。あるいはリレー式計算機というものは千四百万円くらいで買ったものを千八十五万円に、相当使い古したものを買い取って、しかもそれは使いものにならなくて八万五千円でスクラップで払い下げているというような補償ですね。大きいものに対してはだから文句の出ないように、越して得した、助かったという形で補償しておる。ところが、小さなもので見ますと、こういうひどい例もあるのですよ。私は特に小さなあれを言うのですけれども、たとえば、環状七号の買収の場合でも、二十年来高級つくだ煮屋をやって、借家で営業をしておった。間口三間、奥行き四間、これは非常に弱いです、家は借家ですし。それの補償が百三十万ということですね。そうすると百三十万でよそに行って商売できるかということになるわけですね。それからまた、ずっとあすこでせんべい屋をやっていた人が、やはり借家でせんべい屋を三十年来やっておった人が補償が八十一万円。これはだんなさんが死んで商売やめておるような状態で、本人も病気で生活保護を受けていた。ところがその補償をもらったとたんに、生活保護がぴたっと打ち切られてしまった。補償を使い切るまでは生活保護は見てやれないという形で、非常にこれは残酷だと思います。これは立ちのいて補償もらって、その間食えるだろうと言いますけれども、とらの子を放してしまって、せんべい屋やっておればいい場合ですけれども、立ちのいて、補償をもらったから、だから生活保護は打ち切るということになっておる。ただ生活保護費だけじゃなくて医療保護も打ち切られるから、入院しているときには相当早いところ八十一万円というものはなくなってしまう。こういうふうな形でですね、あるいは左官をやっている人が借家で補償額二十九万円。だから結局これは借金のカタに取られてしまうから、裸で一家離散というようなことになる。こういう小さな者の状態ですね、そういう点について、私も何回かそういう相談を受けて、役所といろいろ話をしてみたこともありますけれども、下のほうにいくと、大臣は先ほど運用においてそういうことのないようにやると言いましたけれども、しかし、下のほうにいけば、これは役人の仕事だし、法律なりあるいはそういう基準があってやることですから、それば事情なそうだろうけれども法律でこうなってますとか、上のほうで出てきた補償基準がありますと言う。これよりほかにしょうがありませんという形で片づけられてしまう。だから、そういうふうに、いわば大きい者には非常に十分な補償がされているし、それから弱い者に対しては、それがこれしかないからこれだけの補償といったって、実際それで追い立てられれば、この土地に住んで、ここに営業しているから生きていけるんです。そこを離れたらまるきり違ってきてしまう。そういう者に対しても、同じように土地が何坪だから幾らとか、借地の権利があれだから幾らという形でやるということが、至るところでやられている。こういうことを見ると、この収用法というものは、結局ほんとうに数とすればそういう人が多いのだけれども、そのための配慮というものがやられてない。
だからそういう点で、もう一つお聞きしたいのですけれども、これもついでにひっくるめてですけれども、収用されたあとの人たちがどうなったか、たとえばダムなんかで村が立ちのくとか、そういうような形で収用されて立ちのいた人たちの追跡調査というものを、実際やっておいでになるのか、どうなったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/141
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142・志村清一
○政府委員(志村清一君) 補償基準の内容並びにその運用の問題についての御質問が第一だと存じますが、補償基準につきましては、私どもといたしましては、先ほど先生おっしゃられたような、まあどちらかというとあまりお金のない方々につきましては、十分の配慮ができるようにという趣旨で検討いたして、基準の作成などにも従ったわけでございます。たとえて申し上げますれば、普通、商店を経営している方が収用によりましてどうにもならなくなったという場合に、二年以内で転業と申しますか、さようなことが可能じゃないか。農民の場合はそういった点から三年以内ということでなければなかなかむずかしいじゃないか。漁民になりますと、さらにもう一年加えて四年以内でないと通常はできないじゃないか。それから個々のいろいろの違いはございましょう。そういうような区別なども考えております。農業なども、大きなお百姓さんがわずか一反歩程度とられても影響しないという場合には、経営規模の縮小による補償はいたしませんが、五反百姓の方がそのうち二反とられるということになりますと、経営規模の縮小、機械等を持ち、馬を持ったりしていても十分使えないということの補償も十分考えようというようなことで、基準はつくっておるわけでございます。さような意味におきまして、先ほど来お話がございますように、収用法のいわゆる通損の規定に応じまして、できるだけいろいろな補償をいたしまして、それらをからめ合わせますと、その方々の生活再建ができるような方法で考えたいという気持ちで、基準もつくっておりますし、また運用も進めたいと思っております。ただ、借家人につきましても同様でございまして、補償基準におきましては、非常に借家人が追い出されてしまう、どうにもならないという場合には、当該建物に照応する他の建物を借りるために必要な費用を補償する。しかし、昔の家賃は非常に安かった、今度の家賃は非常に高いということになりますと、通常支払われる賃貸料相当額に比していたずらに前が低額であると認めるときは、総合的に勘案しまして、適当な期間その差額について補償するということ等もいたしております。しかし運用につきましては、なお十分に留意をいたしたいつもりでございます。
それからその次の御質問でございますがダムその他のいろいろな収用を受けた方々の、土地を失った方々のトレースでございますが、これはなかなかむずかしゅうございまして、場所によりましては、地元の方々とそれから起業者とお互いに相談がよくできまして、新しい村づくりができたというようなところは非常にわかるのでございますが、町に出てきて、個々ばらばらにその後の生活が変わっておるという事例につきまして調査の検討はいたしておりますが、なかなかトレースはできませんので、申し上げるような資料はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/142
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143・春日正一
○春日正一君 それでこういう結果から見ても、私もずいぶん調べてみたけれども、民主団体のやった調査で、横山ダムの場合ですね。あそこでの追跡調査、これはかなりたんねんにやっておりますよ。それで建設省がやったんじゃできないだろうという感じもします。非常に苦心をしておる。だから労働組合の人が来たといっても、どうせ御用組合だろう、ぐるだろうということで、なかなか口も割らぬ。何回もたずねていって話をして、そして信用していろいろ話してもらったということがこの調査についておりますから、役所が行ってどうだと言っても、これはへたなことを言ったらたいへんだということで、なかなかできない。むしろこのような状態をつくるということ自体に問題があると思う。そういうことですけれども、この調査の特徴を見てみますと、やはりあそこでは二十人組といってわりあい補償の額の多い人々ですね、こういう人たちはわりあい早く収用に応じたし、そうしてまた、そういう人たちはその補償金で、あと一応営業立てて何とかやっているというふうに大ざっぱにいって言っています。ところが、十七人組といって最後までがんばった人たちというのは、補償金が二百万とか三百万とかいう非常に低い人たちですね。だからどうにもしようがなくて、現場でも建設省の役人の人たちもずいぶん骨折ってくれて、十七人がまとまって、そこに住めるようになったと、だから何とか助け合って、励まし合ってやっているけれども、なかなか生活の安定という点ではうまくいってないと言うし、特にそういう人、いままで半農半猟みたいな形でやっていたそういう土地の少ない人たちが越して行った先を見ると、みんなつとめ人になるんですね、あまり労働条件のよくないようなそういう形で。だから仕事があってつとめているんだから、それで片づいたんじゃないかというけれども、やっぱり相当年輩の人たちなんかは、就職の条件なんかも非常によくないというようなことで、越して行ったあとで、やっぱり非常な困難をしている。そして前のほうが非常によかったと、こういうふうに思っているんですよ。特にこの人たちが共通して言っているのは、いまになっても横山ダムというものが公共のためになるのかどうかということに疑いを持っている。あるいは関西電力やなんか、あれをもうけさしているんじゃないかといまだに疑いを持っている。だからそのために自分たちがこういうところに、状態にきたということに対しては、納得のいかないものを持っているということを総してみんな言っているんです。だからそこらのあれですね、大臣先ほど公共のためなんだから、それは納得してもらわにやならぬと言ったけれども、そういう状態の中でやっぱりダムをつくって電力会社が電気をとって売っている。それで営業行為としてやっている。そういうのを見ておって、公共のためだと言って村を立ちのかされて水没したんだけれども、しかし、それがほんとうに公共のためと自分たちの犠牲をしのぐのに値をするものかということに確信を持ってない、みんな疑いを持っておる、こういうふうな状態なんです。だから、やはりこういう状態のもとでこの改正だけ早くやるという面だけがどっと出てくるということになると、非常に大きな矛盾をつくり出す。だから先ほど松永君も言ったように、手順が違っているんじゃないか。つまり、むしろ投機の抑制とか、譲渡所得の吸収とかいう手を打っておいて、それからこれを出してくるというならまだ道理は立つけれども、そういう一番肝心な問題をそのままにしておいてこっちだけ出してくると、それはあとから考えます。いつ考えるか、いつになるかということになると、大臣もちょっといつまでにやりますということは言えないでしょう。そういうことでこれ出してくるというところに無理があるんじゃないか、まあそう感じるんですけれども、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/143
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144・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 春日さんのおっしゃることは、とにかく零細な低所得者のために非常に割りが悪いじゃないかということでございます。したがいまして、そういうことを十分に、この法の適用の場合には考えなくちゃならぬと考えます。電力会社の例を引きましたが、これはやはり電力会社も民間の株式会社ではございますけれども、一方そういう権利を与えてやるとともに、また正当な理由がなければ絶対に電気の供給を拒むことができない義務を負わしておるのでございます。したがいまして、あらゆる場合に私はあなたのおっしゃいますように、わずかな人のことのみを考えていくというようなことは、これは何よりも気をつけなきゃならぬということは、あなたに十分お約束できる、そういうつもりで建設大臣としては指導したいということを申し上げたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/144
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145・春日正一
○春日正一君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/145
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146・藤田進
○委員長(藤田進君) この際お伺いいたしますが、本院の予算委員会で五月の十日に、土地収用法に関連して亀田委員、それから北村委員、それに私、質疑をいたしましたが、その中で佐藤総理あるいは建設大臣のそれぞれ答弁がございますが、特に具体的な事例としまして、いま問題となっている大阪市所在の阪神高速道路公団所掌の高速道路について、これは大阪工業大学その他十二校が、合わせて十三の学校、か騒音その他公害を受けるということで根強い反対もあり、昭和三十八年六月五日に河野建設大臣のとき、この路線は近代高速道路としては不適格であるということで、これが実施せざる旨の回答がなされていた件ですが、その後河野建設大臣なきあと再び問題が台頭して、これが実施の方向になっていたところ、たまたま予算委員会における本件の質疑が行なわれているところです。
で、最近の事情は、予算委員会当時大阪三号分岐線ということでありましたが、どうもどういう事情か路線の名称を変えまして、起点と終点をうんと長い距離のようにして、分岐線ではないというようなかっこうにして印刷物もできましておりますし、名前が変わればまた大臣答弁もこれとは違うんだ、あれは三号分岐線だが、といったようなことの可能性も出ております。同時に御答弁の中では、「これはあまり手をつけたくないと、かように考えておる次第でございます。」と言われておるのですが、「これはあまり手をつけたくない」手をつけたくないがやるということもあるし、私考えますのに、この路線の経緯なりそれから同時に近代高速道路としての実態等から見て、当然路線変更さるべきだと思うのですが、少なくともこの土地の被買収者あるいは公害を受ける学校等の話し合いがまとまらないままにこれが事業決定をするということは、必然、土地収用法の発動ということになりましょうし、非常に円満を欠くと同時に、被害者も非常に大きいといういろいろな面から見て、この際建設大臣としての明確な御答弁をいただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/146
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147・西村英一
○国務大臣(西村英一君) 大阪三号分岐線が名称が変わったということは、これは私は聞いておりません。しかしながら、予算委員会でもお答え申し上げましたように、あの線はやはり私も相当にいろいろ研究をいたしましたが、私は地元のやはり買収される被買収の方々、あるいはまた非常にその公害を受けるという学校がたくさんあるというようなことにかんがみまして、これらの方々との話し合いがまとまらなければ、事業の着手はいたさないつもりでございます。あらためて委員長の御質問でございますから、さようにお答え申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/147
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148・田中一
○田中一君 最初に七十一条と百三十六条の政令をなぜ当委員会に出さなかったのか、それを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/148
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149・志村清一
○政府委員(志村清一君) 政令につきましては、まだ完全な案ができておりませんので、概略につきましてはできておりますが、まだ完全な案ができていないようでありますので、御提出申し上げなかった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/149
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150・田中一
○田中一君 この政令にゆだねる——ゆだねている内容について、非常に重大な利害が盛り込んであるわけなんです。今日まで建設委員会に長年私は属しておりますけれども、政令案を出さないで、ことに国民の権利に関する問題が提案されているこの法律案の改正というものに対して、そういった資料を出さないということはおかしいと思う。ことに、先ほど個人的に要求して得たものを見ますと、七十一条の政令の内容にしても、これは非常に物価修正の政令なんです。これが当委員会に、国会に一応考え方なり、あるいは具体的比率なり、あるいはなぜきめるかという根拠なり明らかにしないで、こういうものを看過させることはできません。同時にまた百三十六条も、おかしな話で、まるで収用委員会の審理の代理人が二名とか三名とかに制限なんということは、一体何をおそれてそういうことをするのか。共通な利害を持っている人たちが四十人、五十人ともにその審理内容を聞きたいといって行く場合には許すべきである。それを、いま案を見ると、代理人の場合にも収用委員会は審理の期日に出席することができる代理人の数を起業者、土地所有者または各関係人について三名までに制限することができるものとする。こうした制限は、何の意図でやるのか、ちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/150
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151・志村清一
○政府委員(志村清一君) 収用委員会といたしましては、会長の審理権もあるわけでございますが、たくさんの代理人の方が出まして、せっかく相互に話し合いを円満に進め、早期に結論を得たいというふうなことに支障のある場合もあろう、そのような場合におきましては、収用委員会の判断によりまして、代理人の数が制限ができるということにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/151
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152・田中一
○田中一君 何か大ぜい行って暴動でも起こしたという実例があるのですか、いままで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/152
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153・志村清一
○政府委員(志村清一君) 制限いたしておりますのは、代理人の数でございまして、権利者等につきまして申し上げておるわけでは全然ございません。各権利者を代理する方の問題でございます。また、暴動というようなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/153
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154・田中一
○田中一君 傍聴者は許しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/154
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155・志村清一
○政府委員(志村清一君) これは各委員会の会長が公開をはばかるという場合には、審理権の発動によりまして、非公開にすることも可能かと存じますが、通常公開になっておると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/155
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156・田中一
○田中一君 法律上公開にするか、非公開かということは、何か条文ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/156
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157・志村清一
○政府委員(志村清一君) 現行法の第六十二条で、「審理の公開」という項があります。「収用委員会の審理は、公開しなければならない。但し、収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。」という規定があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/157
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158・田中一
○田中一君 物価の変動に応ずる修正率、これはどういう基準で行なわれるか、議事録に明確にしておいていた、だきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/158
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159・志村清一
○政府委員(志村清一君) 当委員会におきます質問の間にもお答えいたしたわけでございますが、消費者物価指数と卸売り物価指数、それを総合いたしました数値をもちまして、物価変動の修正率といたしたいという考え方でございます。ただ、事業認定時の物価に応ずる数値といたしましては、むしろ認定の告示の月のときだけではかえってまずいのじゃないか。その前後一カ月にかかわる修正数値の平均値で考えたほうがよかろう。また、権利取得裁決時ということになりますと、必ずしも資料が十分そろわないということもあり得るわけでございますから、権利取得裁決のときに属するとき以前の最も近い三カ月内の平均値ということによって修正をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/159
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160・田中一
○田中一君 それから三十条、これは、なるべくいままでの質問者と重複しないように聞こうと思っているのですが、三十条の二の新設、事業の廃止、変更云々というものは、これは土地の収用等の必要がなくなったとき、この場合には市町村に通知するのだということになっておりますけれども、一応事業認定を行ない、そうして変更、廃止等があった場合の損失補償は考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/160
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161・志村清一
○政府委員(志村清一君) 現行法におきましても、九十二条におきまして、廃止、変更のときに、廃止、変更に伴う損失があった場合はこれを補償するという原則になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/161
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162・田中一
○田中一君 その損失補償の基準は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/162
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163・志村清一
○政府委員(志村清一君) これは明文の規定はないわけでありますが、事業の廃止または変更に伴う損失の発生したときについて損失を評価するというふうなことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/163
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164・田中一
○田中一君 これは農地であって植えつけをしちやならぬと思うから植えつけをしない。そうして二カ月たったら、これはもう君のほうの農地は要らないのだと言った場合に、機会を失えばその収穫というものは一年間皆無になる。そういう場合には、その予想される収益というもの、利益というものを補償するのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/164
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165・志村清一
○政府委員(志村清一君) 新しい法律の二十八条の三で、土地の保全義務がございますので、事業認定を受けますと、土地の保全の義務がございますが、たとえば、たんぼであったところに稲を植えるというふうなとこまで、通常の利益まではチェックいたしていないわけでございまして、起業地において明らかに事業に支障を来たすような形質の変更は認められておりませんが、たんぼに稲を植えるというようなことは認めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/165
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166・田中一
○田中一君 それに類似した土地があった場合はどうなりますか。たんぼの場合には植えるのはかまわない。そうしてまた猶予もすることができるようになっておりますけれども、そうでない場合、たとえば、いま田がきをしたり、それから田植えをしたりする、これはその程度は許されるのですね。そうして今度はそうでない場合、そうでない場合というのは、それを利用すればかりに一定の収益があるというものが、何もしなかったためにできないという場合にはどうなりますか。その基準を言ってください、基準を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/166
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167・志村清一
○政府委員(志村清一君) 先ほど申し上げましたように、土地の保全義務は、起業地において明らかに事業に支障を来たすような形質の変更は、知事の許可を受けない限りはいかぬ。そういうものをしましても、それによって生ずる損失については補償しませんよという規定でございます。ただ、事業認定によりまして、そういうふうないろいろな損失が起こりました場合、個々具体につきましては、当然九十二条の規定によりまして、土地所有者または関係人が損失を受けた場合には、当然これを補償するということにいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/167
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168・田中一
○田中一君 いままで現物補償した例がいままでどのくらいありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/168
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169・志村清一
○政府委員(志村清一君) 現物補償と申しますか、収用委員会の裁決に基づいた現物補償というふうなことは主として、まだ実例つかんでおりません。ただダム事業の場合だとか、あるいは河川事業等の場合につきまして新しい土地を、農地あるいは宅地を造成しまして、それをいわばかえ地として提供したという例は、幾つか聞いておりますが、具体的にこれこれということまで承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/169
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170・田中一
○田中一君 収用委員会が、まず最初に金銭補償をする前に、起業者に対して現物補償をする余地があるかどうかということが、最初にそういう質問が行なわれているのか、あるいは初めからもう金銭補償ということに重点を置いて話し合いをしているのか、どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/170
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171・志村清一
○政府委員(志村清一君) 土地収用法の第七十条、現行法第七十条の規定でございますが、「損失の補償は、金銭をもつてするものとする。」という原則がございますので、土地収用委員会においては通常金銭と考えておりますが、ただこの法律の規定によりまして、かえ地による補償とか、あるいは耕地の造成、工事の代行、移転の代行、宅地の造成その他いろいろないわば現物補償的な規定があるわけでございますから、これらの要求に基づきまして、収用委員会は審議をするというたてまえになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/171
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172・田中一
○田中一君 聞いたら、聞いてもう済んでいるといったら済んでもかまいませんよ、議事録に残っておれば。百四条の二ですがね、補償請求に基づいて高い補償金は、過払いがあった場合はどうするのてすか、取らないというように聞いているけれども、返してもらわないでいいんだというように聞いているけれども、法文じゃこれはとてもそうは読めないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/172
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173・志村清一
○政府委員(志村清一君) 起業者が支払いました前払い補償額が、収用委員会で裁決された額よりも多いというような場合につきましては、起業者がその差額分は取り戻すというたてまえにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/173
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174・田中一
○田中一君 ちょっと明確にしてくださいよ。過払いがあった場合に、その金は収用委員会の裁決があった場合、それは過払いなればそれは返してもらうのだということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/174
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175・志村清一
○政府委員(志村清一君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/175
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176・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/176
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177・藤田進
○委員長(藤田進君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/177
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178・田中一
○田中一君 この百四条の二の過払いの場合には、当然これは原則として返してもらうということが正しいのだけれども、しかしながら、これがその金はもうない。なければいつまでも払ってくれるまで請求権として起業者のほうへ残るということにならざるを得ない。実態はそういうもんじゃないでしょう、実態として考えた場合にはどう処置しようとするのか、論理と実際とは違う。収用法の一番のねらいというものは、論理だけでは、法理だけでは解決されないというところに問題があるのですよ。そういう場合には、私はかって、過払いの分に対しては請求権を放棄いたします、というような答弁を聞いたと記憶しているわけです。これ一ぺん議事録を調べてみますけれども、その点がもしいま言うとおり債権はどこまであり、かつまた請求権があり、かつまたそれを払ってもらうのだということならば、そうしないでこの問題を解決するという道はあるかないか、その点を聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/178
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179・志村清一
○政府委員(志村清一君) 先ほど私は過払いの場合と申し上げましたが、過払いのできるような場合はごく限定された場合でございまして、まことに例外的なことでございまして、補償請求に基づいて補償金を払った後に権利の内容がすっかり変わってしまったというようなときに、結果的に過払いになり得ることが例外的にあり得るということでございます。通常の原則としては、過払いというようなことになるようなことはまずあるまい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/179
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180・田中一
○田中一君 たとえばね、近傍類地の価格といっても、あそこに火葬場をつくるんだ、じんかい焼却炉をつくるんだ、じんかい焼却炉はたしか収用法の適用をされているもんだと考えておったけれども、そうすると地価は下がりますよ。火葬場をつくるんだということで下がっちゃいますよ、火葬場はどうか知らぬが、じんかい焼却所は。そうなった場合には、やっぱり過払いが起きるのです。初めはさら地ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/180
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181・志村清一
○政府委員(志村清一君) ただいまのような事例、じんかい焼却所とか、火葬場とか、終末処理場とかいうふうな場合に、先生のお尋ねのように地価が下がることも考えられると思いますが、今回の規定によりまして、事業認定時の価格でございますから、そこが火葬場になるかもしれぬというふうな事態における価格でございます。それ以後裁決時までの間によけい下がりましても、その下がった分はマイナスしない、事業認定時の価格に物価変動率を加えた額を出すというふうなたてまえになっておりますので、御心配の点はなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/181
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182・田中一
○田中一君 そうすると、それは裁決の場合どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/182
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183・志村清一
○政府委員(志村清一君) 裁決の場合も同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/183
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184・田中一
○田中一君 裁決の場合に、過払い金よりも低い裁決が起こった場合には、いま言うとおり請求があるんだ、返してもらうんだといっているのですね、収用法の適用を受けて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/184
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185・志村清一
○政府委員(志村清一君) 先ほど来申し上げておりますように、当事者主義でございまして、起業者の申請と土地所有者の申請の額の中間で額を出すことになっておりますから、通常の場合過払いということはあり得ないのでございます。ただ特殊な、権利の内容の変更とか、何か特殊な場合起こり得る例外的な問題として過払いは考えるべきじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/185
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186・田中一
○田中一君 特殊な例外という事例あげてください。どういうことです。どうもはっきりしない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/186
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187・吉田泰夫
○説明員(吉田泰夫君) たとえば土地がありまして、借地権者がおりました場合に、補償金の前払いの請求した場合は、確かに借地権者に補償金の支払い請求はできます。二カ月前に払わなきゃいけませんから、起業者は払うわけですが、その後に裁決になるまでの間に借地人の地代の滞納とか、いろいろな正当な解約事由があって借地権が消滅させられる、解約させられてしまったということになりますと、その人はもはや借地人ではないわけです。ないけれども、すでに補償金を払っておりますから、払い過ぎているわけです。そういう場合に、裁決時には権利者ではないのですから、補償金は取れないわけですけれども、しかしすでに払ってしまっておりますから、こういうものはいわば正当な補償がないわけですから、その分は取り戻す、こういうような意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/187
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188・田中一
○田中一君 それは権利の移動ということから生ずるところの被権利者でないものに対して払った場合を言うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/188
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189・吉田泰夫
○説明員(吉田泰夫君) 通常は権利、たとえば借地権が甲という人から乙に移った、こういうような場合は、これは別途今度は裁決手続開始の決定というものを収用委員会でいたしまして、その登記をいたします。その登記後権利を移転しましても、もはや関係人とはなれない。この法で二重払いが防がれているのですが、移転の場合はいいのですが、消滅するという場合、借地権というものが解約され、なくなってさら地になってしまうわけですが、そういう消滅の場合には、登記をしておっても押え切れないのです。そういうものはどうしても極論すれば二重払いにならざるを得ませんので、これは裁決のときの権利者に払うというのが正当な補償ですから、裁決のときにもはや権利者でないという人には払えない。本来裁決のときの権利者に裁決のとき払うという現行法であればこんな問題ないのですけれども、改正法では限定価格主義の関係もありまして、早く払わなきゃいかぬ。したがって、最終的には権利者にならないかもしれないというやや不安な時代に先払いしなきゃいけませんので、そういう問題が大部分は権利の移転で甲という人から乙に権利が移転した場合には、別途の登記のほうで解決されておるわけですけれども、なお解決し切れない権利の消滅と、それからもう一つは権利内容の変更、同じ借地権と言っても、たとえば堅固な建物を建て得る借地権の内容は、仮設的なものを建て得る借地権よりは価格的には低いと思われますが、何らかの正当な事由によって、地主と借地権者との間の契約内容がその後に変更したというようなまれな例があり得るわけでございまして、その場合のためにそうしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/189
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190・田中一
○田中一君 私はそうは思わぬが、なかなか御承知のとおり請求に応じて支払った見積もり補償金過払い、これはむろん収用委員会の裁決ということを見合って言っているということですよ。これはその収用する対象の土地の見積もり補償金に過払い額で払った場合ということは、かりに単価十万円のものが八万円になったというようなことを言っているのであって、そんな権利が変わったとか地上権が別のものが入ってきたということは、二重払いになることはあり得ないのですよ。こういうことは現状のままの保全の義務もあり、いろいろあるわけなんです。だからその両方が裁決の場合の金額と見積もり補償金の金額とに過払いがあった場合というようにぼくは読んでいるのですが、しかしこれはもう一ぺん、いま吉田君の説明じゃ何かあいまいで、何を言っているのかわからないのですが、対象が的確に握れないのですから——ぼくは実態をよく知っているのです。実態をよく知っているものたから聞いているんですよ、そういう解決ていいんですか。それは建設大臣にも聞きますよ、ちょっとよく相談して政府委員だからちゃんとしておいてください。議事録にきょうは残しておかなければ困るから聞くんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/190
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191・志村清一
○政府委員(志村清一君) 田中先生の御指摘のように、たとえば私の土地が収用対象になった。私が所有権者である、裁決時も私であった。こういう場合に支払い請求に基づきまして補償金を前払いした。その額が十万円であって裁決は八万円であるという場合があり得るかという御質問かと存じますが、かような場合はあり得ないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/191
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192・田中一
○田中一君 これはどうもおかしい。だって政府のその起業者と収用委員会の委員の裁決と同じであるということはないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/192
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193・志村清一
○政府委員(志村清一君) 再度申し上げておりますように、収用委員会の審議は起業者であるものの申し立ての金額とそれから被収用者である土地地主との間の申し立ての金額の間できめることになっております。非常な変わった方がおりまして、そんなに要らぬから収用委員会でけんかしたい、もっと安くしてくれということがありますれば、先生のおっしゃったような過払いの問題が出るかもしれません。そういうようなことは、普通は常識的にはあり得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/193
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194・田中一
○田中一君 その点はよくわかった。そこで最後に聞くんですが、一体収用委員会の権限は、調停委員会じゃないはずだ。事後処理委員会でもないわけです。少なくとも法律できめられた独自の立場、いわゆる被収用者の立場あるいは起業者の立場でもってものを判断するものではないと思う。せんだっても大臣そばにおって聞いておったからわかるように、現在の収用委員会の委員は、いわゆる起業者の立場に立ってものを言っているのじゃないかという危険を感ずるわけなんですよ。少なくとも善意の第三者という形でもって考えられると、われわれはこの法律によると、そう認めておるのです。しかし、いまの志村局長の言っているように、双方の調停をする役目だというなら、あっせん委員も要れば調停委員も要る。しかし、収用委員会の委員の性格がそのようであるならば、大臣からはっきりそういう説明をしていただきたいと思うのです。私は公正なる第三者が収用委員会であると認めている。だから、収用委員会にかけて、第三者の判定でもってものをきめなさいと、しょっちゅう言っているのですが、しかしいまのような答弁が正しいならば、収用委員会に対しては非常に危険を感じます。余分に払うこともいけなければ、少なく払うこともいけない。ましてや、起業者の持っているところの予定価格、一種の見積もり価格でもって押しつけるなんということは、収用委員の役目なのか。これはたいへんな私の誤認でした。私はそういうものじゃないと思うのですよ。
それじゃ、最後に聞くのですが、どこに、収用委員は起業者の見積もった見積もり補償金というものを中心にどうだこうだとか、あるいは被収用者が要求する金額に対してどうだこうだというような規制があるかどうか。何条にあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/194
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195・志村清一
○政府委員(志村清一君) 現行法第四十八条の三項でございますが、収用委員会は起業者の申し立てた意見書、土地所有者、関係人、準関係人が申し立てた範囲をこえてはいかぬという、当事者主義の原則を強くうたっておるわけでございまして、これは立法当初からそのようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/195
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196・田中一
○田中一君 建設大臣に伺いますが、宮城県の鳴子ダムで、委員会の裁定に対して政府はこれに上告というのかな、提訴しているわけなんですよ。それはもう大体話がついたらしいのですけれども、こういう事例が今後ともありますか。あると思っておりますか。これは建設省の問題だから、建設大臣に伺うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/196
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197・西村英一
○国務大臣(西村英一君) あの事件は七月四日ですか、解決したように聞いております。今後そういうことがあるかないか、これは私はちょっといま、ないと断言できるかどうかわかりませんけれども、ないことを好みます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/197
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198・藤田進
○委員長(藤田進君) この際、委員の異動について報告いたします。
本日、高山恒雄君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/198
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199・藤田進
○委員長(藤田進君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/199
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200・藤田進
○委員長(藤田進君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。両案に対し御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/200
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201・田中一
○田中一君 昭和二十六年に新しい収用法が制定されて以来、数次にわたる改正が行なわれました。その趣旨は、どこまでも起業者側の立場に立って、早期に収用を完了しようというところに改正の重点が置かれております。今回の法律の改正もそこにあることは、いままでの審議の過程から見ても明らかであります。
私は、提案理由の中に、この収用法の改正によって地価の高騰を抑制するとか、過当な補償を要求する国民に対して、その要求をとどめるというところに重点を置かれてこの改正が立案されたということでありますが、これははなはだ不当なものと考えます。むろん収用法の本法というものは、最初の法律というものは、国民の私権を十分に尊重し、かつまた、それぞれの機会において被収用者の意思、希望というものを常に聴取するというような、意見の開陳をする機会もたくさん数重ねて持つというような制度であった。
ところが、今回はもうそのようなものは一切なくなってしまって、事業の遂行を重点に改正が行なわれている点につきましては、非民主化されたものであり、かつまた強権的な性格が非常に強くなっているというふうに考えるものです。むろんこの内容については、いろいろこまかい規制等はとるべきものもあります。しかしながら、これによって起こる、国民の印象並びに今後の被収用者の行動というものがどういう形であらわれるか。これによって事態の、被収用者の要求が満たされるということになるのか、あるいは大きな抵抗が生まれるか、この点に対しては、非常に危惧の感を抱かざるを得ないのであります。
したがって、この改正後におけるところの各起業者に対しましては、建設大臣は十分に行政指導を行ない、少なくとも国民の不利にならないような形で指導してほしいと思うのです。その意味におきまして、社会党としては、今後の指導を期待しながら、現段階におきましては、反対せざるを得ないというような立場に立っております。
社会党の反対討論とします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/201
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202・稲浦鹿藏
○稲浦鹿藏君 私は自由民主党を代表して、次の付帯決議を付して賛成するものです。付帯決議案を朗読いたします。
政府は、本法の施行にあたり、公共事業等に
おける公平な負担、円満な遂行を期するため、
行政指導で、次の各点を留意すべきである。
一、事業認定に際しては、手続保留地の運用をなるべくさけるとともに、収用手続の簡素化に伴って被収用者が不利とならぬよう努めること。
一、起業者は、用地の取得に際し、あらかじめ各起業者相互間の調整を図り、補償価格の不均衡を生じないよう努めるとともに、被収用者の生活再建のための措置を十分に講ずること。
右決議する。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/202
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203・鈴木一弘
○鈴木一弘君 公明党を代表して反対の討論を行ないます。
第一には、地価対策の一環というのが一つの理由となっておりますけれども、はたして土地収用法の一部改正で、土地投機の問題が解決できるとは考えられない。ごて得の弊害を防止するということか難価対策の一つてあるということを言われておりますけれども、むしろいままでの高速道路あるいは新幹線に見るように、政府みずから土地価格を引き上げているとさえ見られることからも、経済政策、社会政策という一環したものがなければ片づかない問題であり、かような基本的な問題をわきまえての上の改正でなければならない。
二番目に、土地自身が一体どこに帰属すべきものであるか、最終的な基準というか、その基本的な態度がないということであります。その上所有権の制限を強化するということは、言えばなしくずし的に国の権利強化、私権の制限ということになってまいります。もしも、国に最終的に帰属すべきものである、このように土地の所有権がなるものであるというならば、それなりの法整備というものになるはずでありますし、その点、基本が決定しないで表面を糊塗するような改正ということになるということは、非常に情けないと思うのであります。
そのほか、運用の過程等についての懸念等もありますけれども、以上のような基本的な理由から、私は、今回は公明党としては反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/203
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204・春日正一
○春日正一君 共産党を代表してこの改正案に反対します。
理由は、改正の理由として出されてきている地価対策の一環であるとか、あるいはごね得をなくすというようなものが根拠のないものだということは、質問でも明らかになりましたけれども、結局、向かうところは、社会開発を促進する、そのために早く安く土地を取り上げるということに尽きるわけです。しかもこの背景にあるものは、すでに政府が発表しておる経済社会発展計画、特に、資本自由化に対応する独占資本の育成を中心とする日本経済の再編強化、国際競争力の強化、東南アジア進出というような大きな経済政策を進めていく、それの一環としての社会開発事業ということを促進するということが目的になっておるわけです。
で、そういう結果これまでの伊、から見ましても、そういう社会開発事業、公共事業との関連において、やはり大資本、これが非常に大きな便利を得、あるいは利益を得ていくというのに反して、この収用の対象になる多くの人たちが、生活を破壊され、あるいは不便な生活を余儀なくされるというような犠牲を受けるということになっております。しかも、こういう、この土地収用というようなことによって、公共事業によって土地が値上がりしていくというような利益は、収用を受ける人たちが排除されてくる。そこだけが強調されておって、実際に、土地値上がりの根本である、土地投機あるいはこの譲渡所得の増加というようなものに対する規制が何ら行なわれていない。だから、このことは、この収用法がきわめて不公正な内容を持ったものだというふうに思います。
だから、共産党としては、決して、この公共事業のための土地の収用一般、これに反対するものではありませんけれども、しかし、こういう法の改正によって、収用される人たちの権利なりあるいはそれを主張する機会というものを縮小して、そうしてこの取り上げるほうだけ急いでいく。しかも一方では、それによって利益を得る方面、これに対する何らの規制もされていないというようなことでは、矛盾がますますはなはだしくならざるを得ない。そうして多くの人を犠牲にせざるを得ないということになる。だから、当然、それをやるためには、まあかつての農地委員会みたような形で、やはり民主的な土地委員会というようなものを上から町村までつくって、それが土地の取得管理処分というようなことを一切行なうというようにして、徹底的に土地投機を禁圧する。あるいは譲渡価格に対して吸収の措置を税制その他で設ける。それを被収用者に対しての補償にし、あるいは公共事業によって生ずる公害その他の防除のために使うというような、全体の施策の中でこのものが生きてくるだろう。そういう意味で、私どもは、強制的に収用するということでなくて、あくまでそういう公共の立場に立って納得づくでこの土地が収用できるような、そういう施策をとるべきであると思います。
その見地から見れば、今度の改正案というものは、それにむしろいままでよりももっと悪くなっているという側面が強く出てきている。そういう意味で、私どもは、この土地収用法の改正、それには反対するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/204
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205・藤田進
○委員長(藤田進君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/205
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206・藤田進
○委員長(藤田進君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。
土地収用法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/206
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207・藤田進
○委員長(藤田進君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
土地収用法の一部を改正する法律施行法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/207
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208・藤田進
○委員長(藤田進君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、討論中に述べられました稲浦君提出の附帯決議案を議題といたします。
稲浦君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/208
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209・藤田進
○委員長(藤田進君) 多数と認めます。よって、稲浦君提出の附帯決議案は、多数をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、西村建設大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許可いたします。西村建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/209
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210・西村英一
○国務大臣(西村英一君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、政府としては十分誠意をもっておこたえするつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/210
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211・藤田進
○委員長(藤田進君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/211
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212・藤田進
○委員長(藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後三時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514149X02319670713/212
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