1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十二年六月二十二日(木曜日)
午前十時四十七分開会
—————————————
出席者は左のとおり。
委員長 山本伊三郎君
理 事
土屋 義彦君
丸茂 重貞君
佐野 芳雄君
藤田藤太郎君
委 員
川野 三暁君
黒木 利克君
佐藤 芳男君
山本 杉君
大橋 和孝君
杉山善太郎君
藤原 道子君
柳岡 秋夫君
小平 芳平君
高山 恒雄君
国務大臣
労 働 大 臣 早川 崇君
政府委員
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働省職業安定
局長 有馬 元治君
労働省職業訓練
局長 和田 勝美君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
—————————————
本日の会議に付した案件
○雇用促進事業団法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
○労働問題に関する調査
(定年制に関する件)
(職業訓練に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/0
-
001・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより本案に対する質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/1
-
002・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 この事業団の事業内容について御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/2
-
003・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 雇用促進事業団の業務内容につきましては、団法の第一条の目的に従いまして各種の事業を行なっておりますが、その一つは、総合訓練所の設置運営、二番目に、移転就職者用宿舎の設置運営、労働者福祉センターの設置運営、それから、雇用促進融資、こういう業務を行なっておりますほかに、炭鉱離職者援護業務、駐留軍関係離職者の援護業務及び港湾労働者の福祉業務を行なっております。
四十二年度における事業団の予算総額は、総額において二百八十八億八千万円でございます。これは融資に必要な借り入れ金の額もこの中に含まれて計上されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/3
-
004・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 せっかくもらったんですが、これはいま有馬局長が題目だけおっしゃったわけですが、この資料の順にもうちょっと詳しゅうやってもらえぬでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/4
-
005・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) お手元に、事業の内容と予算概要がお配りしてありますので、これで概略御説明申し上げます。
第一に、総合職業訓練所等の設置運営でございますが、六十九カ所となっておりますが、これはすでに設置されたものが六十三カ所、本年度の新規が六カ所でき上がりの計算で六十九カ所と相なっております。予算額が五十億一千百七十二万二千円。それから職業訓練大学校、これは一カ所でございます。それから移転就職者用の宿舎の設置運営、ことし一万戸を新たに設置いたします。この所要経費が百十八億八千九百四十七万円、それから簡泊が二十一棟、予算額が二億一千三百九十二万円、労働福祉館が十八棟、六百二十八万円、それから港湾労働福祉センター八カ所、二億一千六十四万円、出かせぎ相談所二カ所、九千七百四十四万円、それから愛隣地区の労働福祉センター一カ所、三億五百万円、それから雇用相談業務、これは新規でございますが、東京、大阪、名古屋、三カ所で千五百八十九万円、それから就職資金の貸し付け、これが五千百四十四万円、それから身元保証、百五十九万円、それから訓練手当の支給、これが一千三十一万円、移転資金の支給が百六十四万円、それから雇用奨励金が一億五百二十九万円、それから債務保証、これが今度新しく設けられますが、駐留軍関係といたしまして百七十三万円、自営支度金が七百七十八万円、これが一般会計でございますが、炭鉱労務者の援護関係の経費といたしまして、訓練諸手当が二千二百三十四万円、移住資金が一億一千八百五十万円、再就職奨励金、自営支度金の支給が三億三千百四十三万円、雇用奨励金と住宅確保奨励金の支給が五億五千三百十八万円、それから開業資金の借り入れ金の債務保証、これは先ほどの駐留軍の場合と同じでございますが、これが四百四万円、それから、港湾関係といたしまして、調整手当の支給が三億百万円、それから納付金の徴収その他福祉関係業務の経費といたしまして一億四千九百万円。それから、融資の問題でございますが、四十二年度の融資ワクは、総額において百二十億円。財源は、御承知のように、資金運用部の借り入れ金でございます。融資の条件、対象等はその資料に書いてあるとおりでございます。
以上が大体事業団の四十二年度予算を中心として見ました業務内容のおもなものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/5
-
006・高山恒雄
○高山恒雄君 ちょっと関連質問。
この四十二年度の融資のワクですがね、労働者住宅と福祉施設、事業所内訓練施設、通年雇用施設というように例年的な問題が出ておるのですが、この福祉施設というのは、たとえば託児所とか、そういうものも考えておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/6
-
007・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) これは企業が設置する福祉施設でございますので、そういう種類のものも当然含まれます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/7
-
008・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 お尋ねしたいのですが、今度の法改正については、非常に簡単な問題なんであります。これは法律はこれだけじゃということをおっしゃると思うのですが、問題は、雇用促進という大前提のもとにこの事業団が成り立っているわけであります。ですから、そのいまの雇用促進のいろいろの手当て、方策というものは、大きく言えば国の経済政策にあります。雇用促進事業団はいまのような体系の中で引き受けてその事業をおやりになっているわけでありますけれども、実際問題として、一番素朴な質問ですけれども、雇用促進事業団の業務というものは、たとえば雇用促進事業団が予算書を立てて、そして労働省に報告をして承認するということなのか、職安局が一年の運営予算書を立てて、それを事業団にやらすということなのか。そこらあたりと、監督行政は事業団が独自の監督でするのか、労働省の職安局の監督になっておるのか、そこら。いわゆる訓練の問題は訓練局長がおられるだろうし、全般の問題は職安局でおやりになるのか、そこらあたりの運営上の関係にについてひとつ詳しく説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/8
-
009・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 雇用促進事業団は職安局の仕事とうらはらの業務もございますが、訓練関係の仕事もございまして、全体としての監督は、大臣のもとに管理官が設置されまして、そこで総合的に管理監督をいたしておるわけでございますが、その所掌する業務の相当部分が職安行政と表裏一体の関係で行なわれております関係で、業務の実際上の指導は職安局と訓練局が担当をいたしております。もちろん職安行政と表裏一体の関係で運営されますので、この業務の基本につきましては、昨年制定されました雇用対策法に基づき、ことし樹立されました雇用対策基本計画に示された基本的な方向に従って事業団の業務運営をやっていきたいと思っておるわけでございます。細部につきましては、もちろん事業団の自主性を尊重しながら効率的に運用していく、こういうふうな基本的な態度で臨んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/9
-
010・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 少しこまかいことからきょうは質問をしたいと思うのですが、いまここに出てくる総合訓練所というのは六十九カ所、これは大きい府県には数が多くて、小さい府県には数が少ないという人口割りにしておいでになろうと思うのですが、将来この総合訓練所、それから、都道府県がやる公共訓練所といいますか、一般訓練所といいますか、事業内訓練と、いろいろと計画がおありのようでありますけれども、総合訓練所だけはこの雇用促進事業団が監督されて、いまうらはらといわれたのは訓練局だと私は思うのですが、そこらの問題について、将来の技術労働者が足らぬと、こうおっしゃっているわけですけれども、その技術労働者が足らないという問題については、単純に足らないとは言い切れない問題がある。たとえば技術を持った五十五歳の労働者をみな首を切ってしまう、そうしてその技術を無にしてしまうような過去の方策も行政上行なわれているわけです。ここへ力を入れて訓練をやって、これは事業団が具体的におやりになるわけでありますけれども、そこらの関係も、やはり大臣は、最近定年制の延長とか廃止を言っておられるようですけれども、物理的にそれじゃ労働省というものは雇用促進事業団にやらすためにはどうしていくのか、要するに機械化していく、機械化生産で新しい技術導入といいますか、造出の問題もあります。外国から導入ばかりじゃない、国内の造出の問題もある。そういう中で生産を、より合理的に高めていくという問題は、単にフレッシュな学卒労働者だけをさして事は解決する問題じゃないとぼくは思う。
もう一つ、今度は職安行政からいったら、失業保険のところにかかってくるわけでありますけれども、五十五歳でチョンと首を切られたら生活ができない、年金は六十歳までもらえない。だから、並べていえば、五十五歳から六十歳の間は息をせぬでとまっておれというものの考え方にも、露骨な言い方をすればなるわけです。だから、そういう配慮も十分に含めて、いまの労働大臣、職安局長、訓練局長から、技術労働者を造出するという立場から、ひとつ三人の意見を聞きたいと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/10
-
011・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) ただいま藤田先生の御指摘の、技術労働、あるいは技能労働というのが、三十六年以降の私どもの調査によりますと、大体毎年百万以上の不足を来たしておる、こういうことがいわれておるわけでございます。さらに、従来、技能労働者の供給の大宗を占めておりましたのは中学卒業生でございます。進学率の向上と出生率の低下ということがすでにあらわれてまいりまして、中学を卒業して直ちに実社会に出る者の数は目に見えて減ってまいりました。今後その趨勢は一段と強まるであろう、こういうふうにいわれておるわけでございます。そういうことからいたしますと、不足をカバーする新規労働力の根幹であった中学卒業生の状態が、いま申しましたように減ってまいる。今後におきます新しい技能労働者をどうつくっていくかということがきわめて大きな問題でございます。また、一方におきまして、先生のいまお話の中にありましたが、技術革新というのが技能労働者の質にたいへんな影響を与えてきている。それがどういうように技能労働に質的な、量的な変化をもたらしてきているかということも見のがすことのできない大問題でございます。また、一方におきまして、転職者、職業を変える人を見てまいりますと、従来よりもその移動率が高いわけであります。その約半分は前職と全く関係のない職業についている、こういうことでございます。技能労働者の確保ということは、今後は新規労働力によります確保とともに、転職者の中から技能労働者をつくっていかなければならない、こういう問題が出てきているわけでございます。従来、その職業訓練は、戦後当初のころは、どちらかといいますと、失業救済という感覚で職業訓練の問題が論議されておりましたが、最近におきますいま申しましたような情勢の変化は、職業訓練を失業救済という視野からつかむということに対する大きな反省をもたらしまして、人間の能力を開発する、そういう視野でものをつかんでいかなければならないような時点になってきていると思います。それらを反映をいたしまして、私どもといたしましては、従来、所得倍増計画に基づく職業訓練長期計画を立てて現在までやっておりますが、それらのものは、非常に大きな変化によりまして、もう一回洗い直さなければならない、再検討しなければならない、こういうような時点に立っていると思います。供給源からいたしましても、また、その質、量の面からいたしましても、今後の情勢に対応するための新しい視野に立った長期の訓練制度というものを考えたいということでございまして、行政分野の中におきまして、いまそういう角度で職業訓練全体の問題を洗いながら、いま御指摘のありました、今後の経済成長に見合う技能労働者の養成、確保ということに努力をいたしまして、そのことが、ひいては労働者の皆さんの地位の安定にもつながるわけでございます。
もう一つは、私どもがこの問題を考えるときにぜひ考えなければならないと思いますのは、いわゆる技能労働者に対する社会的評価、世間一般の人の評価というものがもっと上がってこなければならないと思います。とかく学歴偏重ということが世上いわれておりますが、そういうことだけでは今後の日本の経済成長をささえることの基礎になります技能労働者というものは出てこないわけでありますから、そのためには、国といたしましても、ぜひ技能労働というものに対する社会的な評価を高めていく施策を講じていかなければならない、かように考えまして、今度の制度改正の再検討は、いまのところ事務的にやっておりますが、それらの内容につきましても十分検討しなければならない、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/11
-
012・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いま大臣と職安局長の答弁がないわけでありますけれども、それじゃ訓練局長の分野だけ申し上げますと、技能労働者を造出するということは、いま日本ばかりじゃなく、世界じゅうそうだと私は思うんですが、新しい機械化生産の時代に入ってきたのでありますから、たとえば私は鉄道に関係したことが長いんですが、鉄道のヤードマンというふうなものをつくろうと思っても、三年や五年ではできぬわけです、実際に。そうでしょう。そういうものでもいまのシステムでは排除されていくわけですね。そうして新しい技術労働者を五年も八年も十年もかかってその地位にする、技術労働というものが必要な時代に、そんなもったいないことがあるのかどうか、それに能力がなくなったら配置転換その他にやりゃあいいと私は思う。しかし、能力のある人を単に職場から排除をしたりする一般論的な扱いで技術労働者というものが生まれるであろうか。鉄道に百人入って、操車係——ヤードマンをつくろうとしたら、おそらくその中の何分の一も適任者が出てこないというような問題でもある。私はほかの職業でもたくさんあるんじゃないかと思う。いま外国が技術労働者を大事にして、定年制のようなものをこしらえずに、おのずから技術を持っているか持っていないかによって、自然淘汰と申しましょうか、年金で生活をしていくというような筋道もありますし、配置転換もあり得る。私は、いまの人間の技術労働力を一〇〇%社会に貢献するにはどの道がいいかという考え方が非常に優先していると思う。だから、訓練所が幾らできて、これだけ掘り出したからこれでいいんだということには私はならないと思う。だから、そういう具体的な物量的な問題にまで入って、技術労働者をどうつくるかという問題にもっと熱心になってもらわなければ、単に雇用促進事業団は、はいよろしいと、命令が下がってきたものだけを、そのワクだけを引き受けて、ワクの処理——改善とか発展とか進歩とかいう、自分の能力をその中に操作できないような状態にただ置いていくということで雇用促進になるのかどうか。雇用促進事業の一つの方策になるのでありますから、私はそれにけちをつけたりなんかいたしませんけれども、もっともっと新しい技術労働者造出の創造的な面を労働省が受け持つとすれば、私は、先ほど申し上げましたようないろいろな面からこれをつくり上げていかなければいかぬのではないかということを痛切に感じるわけであります。ですから、単に訓練所をふやして、訓練の種目をふやしたらそれでいいというものではない。もちろんこれもやってもらわなければならぬことで、当然のことだと思いますし、その努力は多としておりますけれども、そういう実際の雇用促進が生まれるような方策というものは、単に訓練所をつくって訓練をするだけではない、私はそう思う。だから、そういう見解は、訓練局長ばかりでなしに、私は、職安局長、大臣からも意見を伺いたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/12
-
013・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 藤田先生のお説のとおりでありまして、今後の雇用事情を考えますと、いわゆる人手不足基調に移行する中で、中高年の問題が非常に重要な問題となってくるわけでございます。したがいまして、今度の基本計画の考え方におきましても、この中高年、特に高年者層の雇用問題を重視いたしまして、私どもとしてはいろんな角度から対策を講じていきたい。訓練局が担当いたしておりまする訓練ということも一番大きな柱の一つでございますが、私ども、雇用対策全般からいたしますと、やはり中高年齢者の能力を再認識する、こういうことから出発しなければこの問題は解決しないんではないか。そして大臣が提唱されておりますように、いわゆる五十五歳定年という考え方を再検討し打破していく、これがいままでの中高年の雇用問題を解決する場合に大きな壁になっておったことも事実でございまするので、これをぜひ推進していく必要があるんではないか。こういう一般的な背景の中で、具体的な施策といたしましては、中高年向きの適職の選定、あるいは雇用率の設定、これも、官公庁をまず優先的に実施していきたいと思いますが、雇用対策法に盛られた考え方を具体的に実施をしていくと同時に、この七月一日から発足予定をいたしておりまする、いわゆる人材銀行という考え方でもって、専門職、管理職系統の五十歳前後からの高年齢者について徹底的にその再就職をはかるというような施策を講じていく、こういうことをいろんな角度から中高年雇用問題については対処していかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/13
-
014・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 訓練局長、職安局長からそれぞれの担当分野でお答えいたしましたが、大臣として、技能者の不足という問題、これはたいへんむずかしい問題で、百万内外不足といわれておるわけでございます。で、職業訓練所で年間大体十万内外、公共職業訓練も合わせまして約十一万技能訓練をいたしておるのでございまするが、とてもこれは一割に満たないということでございます。
そこで、この問題は、政治全体の問題としてたいへん大きい問題でございまして、第一、労働省だけでは片づかない部面でございます。これは第一に文部省、教育の面というものにどうしても御協力願わなければならない。そこで、文部省では国立高専というものを設置いたしまして、しかしながら、中学校はいわゆる技能者の給源でございまするが、高校出になりますと、事務系——ホワイトカラーというものを志望するのが六、七割を占めておりまして、高等学校出の世論調査をいたしますと、いわゆる技能者——ブルーカラーになろうという者は非常に少なくなるわけでございます。さらに、大学となりますと、最近は駅弁大学といわれるように、三百六十五に近い公私立の大学ができておりますが、ソビエトとかその他の国に比べますと——ソビエトは例外ですけれども、先進諸国に比べますと、やはり圧倒的に文科系、事務系の定員が多いわけでございまして、そういう人たちはブルーカラーよりもホワイトカラーを望むと、こういう背景がございます。そこで、先般訓練局に命じまして、技能者というものを尊重する、技能者不足を解消する抜本策をひとつ考えなければならない段階にきておるのではないか。たとえば、私は東京の総合職業訓練所を見たのですけれども、定員に満たないのですね。よく調べてみますと、中卒者が東京都にはほとんど一割もないわけでございます。で、中卒者を給源にした職業訓練所というものは、要するに定員にまで満たない。そうなると、高等学校出にまで給源を求めて訓練生をふやさなければならぬ。ですから、こういった教育との連係をどうするかということが第一でございまして、私は、高等学校教育に工作科というものをふやしたらどうかというような提案もいたしておるのでございます。
二番目には、日本の職業訓練の特色は、公共職業訓練が中心になっておるわけでございます。で、ドイツとかヨーロッパ諸国は、あくまでこの事業内訓練を国がやはりサポートし、また、ドイツのように、ゲベーケとかマイスターとかいう資格を与える段階において公共的な職業訓練機関が発達していくという、こういう長い間の伝統、徒弟制度がございます。ところが、日本ではそういう伝統がございませんので、公共職業訓練所がリーダーシップをとりまして今日まで非常に発達してきておることは御承知のとおりですけれども、これだけではとても及ばないので、いまの事業内訓練の補助金制度、いろんなものを総合して、会社関係がほんとうにいい人間社会をつくっていくという、会社を動かす方法を根本的に改善する必要があるのではないか。これもいまの補助金制度では不十分であるから、各会社に、これはまあフランスのように職業訓練税とまでいきますとたいへんでございますが、何らかこの会社関係からも金を出さし、そして優秀な技能者をつくっていくというようなことを第一に考えなければならぬのではないだろうか、これも一つのテーマにいたしておるわけであります。
それから、社会全般に、ブルーカラーというものが、いわゆる何かこうホワイトカラーに比べますと格が低く扱われている。よごれる仕事と、こういう風潮は、明治以来のいわゆる法科系文人、そういう人たちが明治維新革命以来日本を引きずってきて、技能者というものがむしろ低く扱われてまいったその社会風潮を根本的に改める必要があるのではないか。そこで、技能者の表彰制度も今度は設けることにいたしましたし、先般の閣議でも、技能者にもっと勲章をやったらどうだ、県会議員とか、あるいは代議士とか、官吏とか、けっこうですけれども、しかし、物をつくる技能者というものに対する勲章とか、あるいは藍綬褒章とか黄綬褒章とか、非常に少ないのであります。こういう点も改めなければいかぬ。最近、富士鉄で技能者の出身の工員さんを重役にいたしました。こういう芽ばえはありますけれども、工員はあくまで地方の工場採用だとか、本社採用は職員さんだけだとか、ばかな扱いを会社自身がやっておる。給料は若干改善されて、工員のほうがいい場合もありますけれども、いわゆる職員さんにはなれない。こういった風潮を改めなければいかぬ。それから、いま検討いたしておりますのは、芸術院とか、あるいは学士院とかあるので、技能院というものをひとつ設置したらどうか。そうしてほんとうに技能の最高の人たちには年金もあげるというような問題も検討したらどうでしょうか。それから、日本の技能者というのは、もう去年も技能オリンピックで九つも金メダルを取った。旋盤においても電気の修繕においてもテレビの修繕においても、九つも技能オリンピックで金メダルを取る世界で最優秀な技能々持つ国民であるから、オリンピックで金メダルを取った者なんかは、ひとつこれを社会的に、マスコミの面でも政治の面でも、一つの小さな英雄にしたらどうだろうかとか、いろいろ考えておるのでございまするが、その結論は、職業訓練審議会というものがそういった課題を掲げまして、先般、職業訓練の審議会に、もう抜本的にそういうむずかしい問題にメスを入れるべき段階だというので、学識経験者に御審議を願う課題を提供いたしまして、すでに御検討をいただいておるような段階でございます。藤田先生御指摘のように、今日まで雇用促進事業団訓練部を通じまして、非常にたくさんの技能者を造出しておるのですけれども、これでは不十分。しかし、考えれば考えるほど、教育、社会の習慣、全部にわたる大問題でございます。先生の御指摘の線に沿いまして、労働省といたしましては前向きに、しかも、根本的にひとつこの問題と取り組んでまいりたい、かように思っておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/14
-
015・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いずれ徒弟制の問題については柳岡さんが質疑をされることになっておりますから、この問題は深く入りません。ただ、技術労働者を造出するというところで、いずれあらためて雇用問題との関係で議論をしたいと思うのです。
ただ、一言大臣に私は申し上げておきたいことは、いまおっしゃったように、中学、高校というぐあいに常識が発達してくる、そうして世の中の生産構造の仕組みについてわかってくる。労働者をより社会に貢献さすようにどう活用していくか、いまは技術の専門学校、高専というものができて、生産工程に対して貢献をするような仕組みを政府がとっている。これは技術労働者の造出のためだと思うのです。私は、国の政治としてはそういうところに努力をするのは当然だと思います。しかし、おのずからどれだけやれるかどうかというのが将来の課題だと思います。
もう一つは、事業内訓練によって新しい技術を造出していくという考え方があります。そうすれば、私は労働大臣に心がけてもらわなければならぬのは、これは通産省や企画庁も来てもらって議論したいと思うのですけれども、それだけ技術を社会全体の力で、国家がかわってその技術労働者を造出するというところに力を入れるとすれば、その技術労働者を受け入れて生産を高める企業というものは、私は、生産工程は公共的なものだということ、社会公共に奉仕するという考え方を私は労使の労働教育でうんとやってもらわなければならない問題が残されておると思う。今日、昭和三十六年以来の不況、これも生産と消費のアンバランスで不況になっている。物価の値上げで資金を調達して自分よがりの経済が動いております。こういうことでは、経済の企画をやられるところと、社会、国民を保護する企画をやる大きな柱というものがいま必要になりつつあるのではないか、最近私はそういう議論を聞きました。私はまことにけっこうだと思います。だが、そういうものに従うような仕組みは政府が持たなければ、国家全体の負担において技術労働者をこしらえて、それを受けた事業者は自分よがりで事をするということではどうにもならぬのじゃないか。やっぱり生産機構は社会の公器だという立場から、全体の国民生活向上という形に考え方を置くような方式を私は労働省は教育すべきだと、経営者に。そういう問題は、あとは深く入りませんけれども、いまの技術労働者を国家で造出するという観念からいけば、そういうかまえというものがなければ、私はどこでやるのだ、これは雇ってやるのだというかっこうで、自分よがり、自分さえよければいいという考え方で国の生産をになう経営者や資本家というものがあるとしたら、私は主権在民の国家にそぐわない世の中が出てくるのじゃないか、そういうぐあいにこれは思うわけです。ですから、そういう点も、片っ方は年功序列賃金は反対だといいながら、年功序列で十年もかからなければならないようにして積み重ねてきた。技術者の給与の金の多寡だけで処理をして、新しい安い労働者にちょっとした技術を教えれば事が済むというものの考え方が出てくるというかっこうなんです、いまは。だから、そこらの点についても労働大臣としては十分に考えてもらわなければ、十分に教育をしておいてもらわなければいまのような議論が今後どんどん出てくるのじゃないか。まあ定年制の問題その他ついてはきょうは触れませんけれども、その点は心しておいていただきたいということを一言言っておきたいと思います。そうでないと、今後みんなで勉強しなければ、よい世の中をつくるための雇用対策なんというものもなかなか出てこないのじゃないかという考えを私は持つわけであります。まあいろいろ大臣は意見があると思いますけれども、私はそういうものにつながらなければよいものができないのではないかという考えを持つわけでありますから、どうぞひとつそういうことも、いずれあらためて議論するといたしまして、ちょっと技術労働者の造出の問題について一言触れたわけであります。
それから、次は、いま炭鉱離職者、駐留軍離職者の対策を立てていただいているわけでございます。しかし、私は、この雇用促進事業団が、もう一つ雇用対策と技術労働者雇用促進のために、身体障害者の問題が私は次に出てくると思っております。これはだいぶこの前私は議論をいたしましたから、あまり繰り返そうとは思わないわけでありますが、こういう問題も私は非常に雇用問題として議論のあるところだと私は思います。ただ、ここで業務上おやりになっているここの順番からいきますと、住宅があるわけですね。一万戸ことしもお建てになっておるようであります。それから融資の問題があります。事業団等おやりになっていろ直接関係する融資の問題と住宅建設の問題があるわけであります。これは今年一万戸を含んで三万八千戸になるのか、これは別で三万八千戸なのか、ここらあたりも説明がなかったわけでありますから、これもお聞きをしたいのでありますが、この移転就職者用住宅というものは、これが出発したのは炭鉱労働者の離職問題から出発していると私は理解をしております。しかし、いま転職の問題としてだんだんお建てになるのはけっこうですが、私はこの住宅をたずねて一番気になるのは、野っ原を整地して家を建てた、ただそれだけですね。野っ原を整地して住む家を規格において建てる、潤いも何もないわけですね。それは短時間ここで住んでよろしいということであるから潤いもないのかもわかりませんけれども、たとえば百世帯とか百二十世帯分建てた住宅には雑談をするような所も必要でありますょうし、人がたずねてくれば公衆の便所も必要でありましょうし、何か人生に潤いを持たすような、そういう雰囲気というものをあの住宅の中になぜおつくりにならなかったのか。公団住宅が建ちましても、最近はそういうやはり小さいレクリエーションといいましょうか、そういう休息の場所、みんなが人間生活を潤すような場所というものをやはり建てているらしいのですね。ところが、労働者住宅に限っては何もないわけです。これはどういう考えであの労働者の移転住宅を建てておいでになるのか。短時間で出ていってもらうという住宅なのか。しかし、現実はどうかといったら、住宅に入ったらなかなか出られない。出られない人を、それじゃ行くところがないのに荷物を持ってほうり出すわけには私はいかないと思う。これはやっぱりある程度条件がそろうまでめんどうをみてやらなければならぬと私は思うのであります。そこらの点をどうしておいでになるのか、その二つあたりを聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/15
-
016・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 移転宿舎は御指摘のとおりの性格でございまして、やがて再就職をして社宅に移る、あるいは公営住宅、あるいは自宅に移るというまでのつなぎでございまするけれども、これは生活の本拠をなす住宅でございますので、環境の整備につきましても、漸次私どもも整備のための予算を計上いたしまして、着々整備に努力いたしておるわけでございます。三十六年から始まりまして、四十一年度で三万八千戸、これにさらにことしの一万戸が加わりますので、数も相当の数にのぼっております。これからあがる家賃収入の一部を環境整備に充当していくように指導をいたしております。多少あき室等もございますので、そういう場合には集会その他にも事実上使っておりますし、それから、子供たちの遊園地、自転車置き場、それから浴場、こういったものの整備も着々進めておる段階でございます。また、土地柄、商店街からやや離れておるというふうな場所もございますので、そういう場合には団地内の売店等についても目下整備中でございます。極力環境の整備については努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/16
-
017・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 それから、いま入っておる人の処置はどうするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/17
-
018・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) これは原則といたしましては入居期間は二年というふうになっておりますが、移転先がない場合に無理に転居させるということは絶対にいたしておりません。あくまで公営住宅、あるいは社宅、あるいは自分で住宅を建てた場合に転居するということだけでございまして、二年たったら転居させるということはございません。
なお、まあ入居率の問題がお話に出ると思いますが、三月末現在で九一%という入居率でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/18
-
019・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、この金は失業保険特別会計から出ておると思うのですが、いかがですか。これが一つ。
それから、大臣にお尋ねしたいことは、この一万戸の住宅を建てるということ自身は、住宅不足のおりからですからよろしゅうございますけれども、国の住宅建設計画というものは建設省がやるようになっておりますね。これはいずれ失業保険の審議のときに出てきますけれども、この失業保険の積み立て金から一万戸の住宅を毎年建てていく、あとのほうにも出ていますが、融資していくために百二十億を捻出していくということの考え方をこの際聞いておきたいわけであります。私は、融資をしたらいかぬということになるならともかくといたしまして、その失業保険の積み立て、失業保険というものは、失業したときに困る人の生活をみていこうという、失業保障の概念が私は失業保険の何と言っても立法の趣旨だと思う。だから、労働省が労働者保護の立場から建設省に住宅を建てさせていくというのが本旨だと思う。だから、そういう立場からいって、これはどういうお考えを持っておられるか、私はこの際聞いておきたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/19
-
020・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 移転宿舎の建設に要する経費は失業保険特別会計から出資をいたしております。これは先生御承知のように、失業保険法の目的からいたしまして、福祉施設を設置するという条項がございます。これは失業の予防、就職の促進、それから被保険者の福祉の増進、こういったねらいから福祉施設を設置することに相なっておりますので、その一環として移転宿舎を建設いたしておるわけでございまして、失業保険特別会計から出資をいたしております。ただ、昨年度も先生から御指摘がございましたが、福祉施設費の保険料収入からの充当率は、一昨年あたりから比べますと、若干ずつ率としては下がってまいっておりますので、できるだけその保険料収入からの充当は少なくしてまいりたい、こういうふうな基本線で運営をしてまいりたいと思います。
さらに、建設省の住宅政策との関係でございますが、これは御承知のように、住宅建設計画法に基づきまして昨年五カ年計画が樹立されておりますが、その五カ年計画の中に、移転宿舎並びに事業団が融資をして住宅建設を民間企業がやっておりますが、この両方ともに住宅計画の中に組み入れられております。御承知のことだと思いますが、五カ年間に計画目標といたしましては六百七十万戸を建設することに相なっておりますが、その中で公的資金によるものが二百七十万戸、これがいろいろな内訳になっておりますが、住宅金融公庫の融資による建設住宅がそのうちの一番大きな数字でございまして百八万戸、それから、公団が建設する住宅が三十五万戸、公営住宅が五十二万戸、こういうふうな内訳になっておりますが、その他の住宅として四十八万戸計上されております。その中に、移転宿舎としまして年々一万戸、五カ年で合計五万戸、それから、促進融資に基づく住宅が五年間で六五戸、合計十一万戸で、その他の住宅四十八万戸の中に内訳として計上されておるわけでございます。したがいまして、今日設置をいたしておりまする移転宿舎は、住宅建設計画法に基づく住宅計画の中に組み込まれておるという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/20
-
021・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その建設計画に含まれているということであなたはここでおっしゃる。その建設計画は労働省の了解を得て立てたものでありましょう。私はその根本を言っているわけですよ。計画に入っているからどうのというような問題じゃない失業保険の立法のたてまえというものに沿わなければいかぬということを私は去年も議論しましたから、私は大臣の意見を聞こうとしている。私はこの前も言ったと思いますけれども、たとえば年金の積み立てというものは膨大なものですね。これは労働者が積み立てているんですよ、労働者と使用者と。ことしはその積み立て金が国民年金と合わせて五千億をこえるんですね。その五千億をこえる年金の積み立て金の二割五分の福祉融資ということをわれわれがやかましく言って、それが地方の起債になったり、それから住宅建設になったりしているわけです。この二割五分は来年あたり六千億ぐらいになるでしょうが、このワクの中で住宅建設をしようとしたら膨大な住宅が建設できると私は思います。これは民間の国民年金や厚生年金の積み立てなんです。しかし、私は、これは言いますけれども、たとえば共済年金の金はどう取り扱われているか、自主運営によって不動産投資にも信託投資にもやられているんですよ。私は、労働省が労働者のめんどうをみようとするなら、その九〇%以上を占めて民間の労働者、国民の労働保護行政というものを私はやるべきではないか。年金は厚生省だから、労働省は知らぬと言い切れるものではないと思うんです。住宅の問題、その他みんな労働者に関係があるんですよ。ただ、年金制度は厚生省が受け持っているというだけの話で、その積み立てている労働者は、つらい家計の中から、給料の中から積み立てているわけです。だから、失業して困っているという者を救うということと、将来、長期の間に積み立てておいて、老後の保障や身体障害になったときとか、母子その他のときに保護しようという、これと積み立ての根本的理念が違うと思う。だから、そういうところにおいて、住宅の建設をむしろ労働省が発意をして、そういう中から住宅建設に力を入れる、その計画を建設省の計画に入れさせるというのが私は筋道ではなかろうかと、こう思うわけです。政府管掌の政府関係のものは自由に裁量してよろしいが、民間のほうは資金運用部資金にみな取り立てて流用するのだということでは、これはやはり不公平があると私は思う。国家建設のために、国民生活を上げるためにおやりになることは、われわれもむろん国民幸福のために賛成でありますけれども、そういうことが片方で行なわれているのに、それには目をふさいで、それで労使が集めた金で住宅建設までやるわ、融資もやるわというのでは根源が間違っていやせぬかということを、私は今度お出になった早川大臣は、そういうところの信念をお持ちになって大臣になっていただいたと思っているからこそこういう質問をするわけです。だから、私は、労働の行政というものは、どこで働らいていようと、公平にと申しましょうか、できるだけその労働者がおしなべてみんな幸福になる道というものは、単に働いて給料をもらっているというのでなくて、小さいところまで配慮するのが労働省の行政だと、私はそう思っているからこそこういうところの意見が出てくるわけであります。住宅を建ててそこへ入るのはけっこうだ、入れてもらうのはけっこうだけれども、しかし、本来の姿、立法のたてまえをはずれてやることについては、私は少しやはり考えてもらわなれければいかんのじゃないか。私は去年からこの議論をしております。聞きましたということだけでは私は済まされない問題だと思う。いや、建設省の住宅建設計画に入っていますということだけで済まされていいものだろうか、私はそう思う。これもこの前言ったことでありますけれども、たとえばアメリカが五、六年前に失業が多くなって、二十六州の失業保険を三十九州に大統領命令でした。日本がそういうことをやろうとしたらどこに財源を求めるのですか。失業保険を二十六州から三十九州にした財源というものはどこに求めるのですか。求める道がないからやらぬということで終わってしまう。私は失業保障というものはそういうものではないかと、こう思う。だから、そういうたてまえで、この問題も、これは失業保険の法案のときの議論だと思いますけれども、住宅の問題とか融資の問題というものは、そういうぐあいに、私はやっぱりそのよって立っている立法のためまえ、趣旨をもってできているわけでありますから、そういうことも十分にあんばいをし、配慮をしてやっていくということでなければ私はいかぬのじゃないかと、こう思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/21
-
022・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 先般の委員会でも御質問がございましたが、御承知のように、失業保険特別会計から、まあ理屈から言えば具体的な支出もなされていることは事実でございます。職業訓練所の施設、それから移動労働者アパートなどがそうでございますが、私は、やはりこれが許されるのは、あくまで雇用を望んでおるのだけれども住宅がない、そのためにこの住宅をある程度補完的に建設するということによって失業者をできるだけなくしていこうと、こういう趣旨において許されるのではないだろうか。もう一つは、本来、住宅の建設は建設省が中心でございますが、残念ながら、現状は十分ではございませんので、したがって、単に失業保険特別会計——労働省のアパートのみならず、その他にも、あるいは共済組合とか、あるいは地方自治体とか、持ち出してそれぞれ住宅をつくっておる、いわゆる補完的な意味、補充的な意味で許されるのでございまするから、おのずからそこには限度があると私は思っておるわけでございます。いずれ住宅が、公営、公団、公庫、すべての建設省所管の住宅が潤沢に出回わります時期におきましては、本来のこの移動労働省アパートも削減していくという方向につきましては全く同感でございます。そのお金を、あるいは保険料率の引き下げとか、あるいは前向きの、前向きと言いますか、いわゆる保険料を納めておる人たちの福利施設に回すとか、あるいは職業訓練に回すとか、そういうことも考えられるわけでございますが、ここ当分今日のような住宅事情でございますので、補完的な意味で、雇用を充足させていくという意味からこのアパートをつくっておるというように御理解賜わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/22
-
023・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いま大臣は初めてですから、そういうお話があってということになればそうですけれども、いままでもこの問題は議論のあるところなのに、職安局長は、とにかく建設省の計画に入っているのだというような話になると、国会で議論しても何にもならぬのじゃないかと私は思う。だから、そういうかっこうでおやりになるならおやりになるように、われわれもかまえをもってこの社会労働委員会では議論しなければならぬという感じを持つわけですね。だから、私は、やはりこの失業保険の内容にはいま触れませんが、内容についていくと、いまのような端の議論どころか、根の議論をもっとしなければいかぬことになってくると思うんです。いまは雇用促進事業団のことですから、私はこれだけを申し上げているわけでありますが、それじゃその百二十億の融資の問題でありますけれども、これも融資内容がここに出ております。それで、これは年金福祉事業団とワクを統一しておやりになっているのかどうか、それをまず聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/23
-
024・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 年金住宅——厚年の住宅融資とは別ワクでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/24
-
025・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いや、貸し出し条件その他の問題については、年金福祉事業団の貸し出しと同じ目的で住宅の融資をやっているわけですよ、同じかっこうで。ただ、出るところが違うだけで、住宅でしょう、会社の寮でしょう、福祉事業でしょう。で、こっちのほうから言えば雇用促進になるんだ、こっちのほうから言えば国民の福祉になるんだと、言い方は違っても、目的は同じなんです。その貸し出し条件や返還条件や据え置き条件その他同じなのか、申し合わせておるのかということを聞いておるんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/25
-
026・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 融資の条件は全く同じでございます。ただ、目的が違いまして、私のほうはあくまでも雇用促進という目的のためにこういった融資制度を設けておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/26
-
027・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 結局年金福祉事業団は膨大な資金を持って、まあ膨大とも言えませんけれども、二五%ですから。それでも千億をこえると思うんですね。で、資金を持って住宅融資をやっているので、それと同じ条件でこの融資をしている。こっちは雇用促進だという。向こうは何ですか、やっぱり労働者の住宅不足に対して建てておるわけです。そうしたら目的は同じじゃないですか。言い方が違うだけじゃないですか。あなたに言うておるわけじゃないんですよ。問題はそういう性質のものなんです。そのために住宅が窮迫している窮迫度の問題がここで問題になるわけでしょう。しかし、たとえば年金福祉事業団でも、積み立て金の二割五分しか云々ということでワクを押えられておる。労働者の積み立てた金ですよ、これは。だから、労働省としては、むしろそこら辺に力を入れて、住宅の貸し出し融資というものを、その労働者が積み立てた金でおやりになったらいいんじゃないですか。これは目的は違うんだと、私はそれを言いたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/27
-
028・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 先ほど大臣から御答弁ございましたように、住宅が十分潤沢に整備されれば、新しく採用された従業員に対しましても、採用、即、住宅提供というふうな状態ができるわけでございますが、今日は残念ながらそうなっておりませんので、厚年の住宅融資も、私どものほうの雇用促進融資も、それぞれの目的を持ちながら両立させていかなければ住宅問題は解決しない、こういう事情に相なっております。違う点は、同じ住宅ができても、私のほうの融資による住宅は、新入社員を再就職と同時に住宅に入れる。厚年の場合には、大体まあ順番待ちで、古い方から社宅に入れていく、こういうことに相なりますので、目的の違いがやはりそこに出てくると思います。私どもとしましても、できるだけ一般の住宅が整備されて、私どもの手による促進住宅というものの比率が小さくなることを念願しておりますが、今日ではまだその状態でございませんので、当分続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/28
-
029・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 それは有馬さんね、よその機関にはそういう見方をしたらとんでもないことだと思うよ。いま労働者が、古い人に住宅をという、あなたのほうは独立した自立住宅建設を奨励しているんじゃないですか。厚生省の年金福祉事業団が古い人から順番に入れていくなんという観念で住宅融資は行なわれておりませんよ。新しい労働者、独身のそういう若いフレッシュな労働者を入れるために事業を起こせば、それが中心になって住宅建設がどこでも行なわれていますよ。だから、そういう理屈は言わぬことにして、住宅が不足しているのだから、住宅建設をやるとしたら同じ目的でやっていくわけですから、私はきょうここで即決を云々ということは言いませんけれども、そういうことも、大臣は、ひとつ新しい大臣におなりになったのだから、いろいろの面で交渉をしてもらうために、行政をしてもらうために私は発言をしているわけです。だから、ここで言うのは言いっぱなし、こっちは聞かないで聞きっぱなしということにはならぬようにしてもらいたいということだけを強く私は申し上げているわけであります。まあいろいろ出てくるのでありますけれども、きょうはあとの質問があるようですから、私はこの程度でやめますけれども、地方自治体の関係とか、離職、退職の問題とか、いま雇用促進事業団がやっておられる事業内容についていろいろ問題がまだあるようです。あるようですが、この次にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/29
-
030・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/30
-
031・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記を始めて。
午前の質疑はこの程度にいたし、午後一時まで休憩いたします。
午後零時一分休憩
—————・—————
午後一時十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/31
-
032・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/32
-
033・小平芳平
○小平芳平君 この雇用促進事業団の非常に大きく占める仕事としまして、やはり離職者用の宿舎の問題で先ほど藤田委員からいろいろ御質疑もあり、大臣からの御答弁もありましたが、この点について私も若干御質問したいと思う次第です。
まず、失業保険特別会計からのお金でこういうような宿舎を建てることについての問題点、そのような問題点については先ほどお話がありましたので、これを省きますけれども、ただ、大臣にお伺いしたい点は、結局建設省の住宅が、先ほどの御説明だと五カ年計画で公営住宅が五十二万戸、こちらのほうの移転宿舎は五万戸、さらに、また、融資を受けて会社の建てるのが六万戸、計十一万戸。ですから、そのほか公庫、公団そのほかの住宅はたくさんできますけれども、結局離職してまた今度就職して住宅に入るような場合には、公営住宅ですね、結局県営住宅、市営住宅が一番比較される住宅だと考えるわけですが、そういう場合に、建設省のほうの公営住宅は五十二万戸、労働省のほうのこの同じようなものが十一万戸というふうにできていった場合、将来この住宅政策上どういう結果になるかということですね。国の住宅政策として、まあ自民党さんのほうから公約として一世帯一住宅、住宅難の解消、こういうことを公約していらっしゃるわけですが、その公約の中身がどうかといえば、建設省のほうでは公営住宅として五十二万戸を予定し、また、労働省のほうでは離職者用の宿舎として十一万戸を予定し、一番まあ安くて手っとり早く入れる住宅といえばそういうような公営住宅、あるいは離職者用の宿舎、こういう全く同じようなものが両方できています。それが五年たち、十年たち、一体どこまで離職者用の宿舎をふやしていくのか。この点については、先ほどの御説明で、住宅難が解消したときには、あとはもう建設省一本でいい。そうすると、いつになったら住宅難が解消できるか、あるいは住宅難が解消した段階において、失業保険のほうから融資して建てたその住宅をどう処理していくかという問題が残ると思うのです。ですから、一般会計から出たお金で建てた離職者用の住宅なら、それはまあ県なり市へ移すことも考えられ得ると思うのですけれども、問題は、失業保険特別会計からの出資金を、これから五年たち、十年たち、長い目で見た国の住宅政策の上から見てどういう結果になるか、その点についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/33
-
034・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 先ほどお答えいたしましたとおり、住宅五カ年計画のワクの中で、移転就職者住宅の位置づけが一応なされているわけでございますが、向こう五カ年間につきましては、いままでどおり毎年一万戸ずつ建設を続けていく、そうしますと、かれこれ八万から九万くらいの移転宿舎の戸数になると思います。そこで、移転宿舎の性格上、回転率というのが問題になるわけですが、現状におきましては二割前後の回転が一年間にございます。したがいまして、将来の流動化政策を考えた場合にも、十万戸近い移転就職者用の宿舎があれば、かりに新規に建設しなくても一万五千から二万戸くらいの回転のためのあき住宅ができて、それを利用すれば流動化対策に対処できるじゃないか、こういう計算も成り立つわけでございます。しかし、まあ私ども今後の日本経済の発展と雇用対策と両面から考えまして、それで、その時点になってうまく流動化対策が消化できるのか、あるいはもう少し続けなければならぬのかというようなことをその時点でさらに判断しなければならぬと思います。
それから、また、この五カ年計画全体が必ずしも理想的な計画であるかどうか。何といいますか、もう少しやってみる過程においてこの住宅計画の修正ということもあり得ると思うのです。かれこれ考えますと、いまから五年先の移転宿舎のあり方なり、あるいはその後の見通しなりというのは非常に立てにくいわけでございますけれども、一応今日の時点においてはこのベースでまいりたいと思います。
そこで、五年先の時点において住宅事情が非常に緩和し、雇用対策の面でも、まあまあ新しく建設する必要はないというふうなことに相なりました場合に、八万戸ないし九万戸にのぼる移転宿舎をどういうふうな利用方法をするか、あるいは財産管理の立場からどういうふうな運営をしていくかというふうなことは、これは非常に重要な問題でございますので、私どもとしましては、特別会計から毎年出資してこれだけの財産を設置いたしておるわけでございますから、これを何といいますか、軽々に処分したり、あるいは目的を大幅に変えるというふうなことは、これは慎まなければならぬと思います。ただ、六年前からこの計画を始めまして、漸次規格も改善されておりますが、何せ一世帯の住宅床面積としては非常に窮屈な建て方をいたしておりますので、これを将来は二戸分を一戸に利用さしたらどうだというふうな御意、見もぼちぼち出てきておりますので、利用方法については、これから住宅事情等を勘案しながらそういう点も考えていかなければならぬ。いずれにしても、一応向こう五カ年間については、先ほど申し上げましたような計画目標で進めてまいって、その後の事情を勘案しながらこういう修正を加えていく、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/34
-
035・小平芳平
○小平芳平君 午前中に御答弁なすったことを私は聞いているのじゃないのですよ。ですから、先ほどお答えしましたけれどもというようなことを私は聞いているのじゃなくて、私がお尋ねしていることは、国務大臣として国の住宅政策を考えた場合に、片方では建設省がこれこれの五十二万戸を五カ年で建てる。そうすると、一種公営、二種公営によって多少違いはありますけれども、同じような安い家賃で入れる住宅を労働省が五万建て、既成の分を合わせて九万幾らになる。そういうこと、それと、また、自民党としての住宅難解消という、その一世帯一住宅という政策との関係ですね。ですから、そういう点をどうお考えになるかということをお尋ねしているわけです。それはもう住宅難を解消していかなくちゃならない。また、低家賃の公営住宅へ入りたい、そういう場合ですね、片方は建設省が建てる、片方は労働省が失業保険特別会計という特別の大事なお金をそこへ使って建設をしていく。しかも、これからあとずっとお尋ねしていけば、たとえば家賃の問題についてもいろいろな問題が起きてくるわけです。その両者のアンバランスなどが起きてくるわけです。ですから、これはよほど長期の五年なり十年なりの、あるいは鉄筋コンクリートアパートの耐用年数から、むしろそこからも割り出して将来の計画というものを相当検討していかなくちゃならないじゃなかろうかということをお尋ねしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/35
-
036・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 政府の一世帯一住宅の中には、この住宅アパート、移動労働者アパートというものも繰り入れていることは局長から答えたとおりでございます。問題は、公営住宅、公庫住宅、あるいは公団住宅等と多少違いますのは、これはしぼり方があるわけでして、まず、被雇用者でなければならない、いわゆる勤労者でなければならない。それから、原則として移動してくる労働者、すべてそれでなければならぬとは窮屈には考えておりませんが、こういうしぼりがあること。それから、そういう性質上、これは実際上はできませんけれども、二年間というようなしぼりもあるわけでございます。しかも、公営住宅と比べまして、六畳、四畳半、ふろ場、それからキッチン、水洗便所というように、非常に悪いアパートではございません。ごらんになったらおわかりのように、勤労者のアパートとしては私は中程度のものだと思うわけでございます。したがって、国の住宅政策の中に繰り入れられて当然しかるべき鉄筋のアパートだと思っているわけでございます。
なお、これは一般会計から予算で公営住宅のように出すのと違いまして、失業保険特別会計というものから九割程度ですか、出しておるという点の御指摘でございますけれども、これは雇用促進事業団、失業保険特別会計といたしましても、失業者が住宅のために職を得られないという例がたいへん多いわけでございます。そういう意味で、間接的には失業者をなくしていく、雇用促進をしていくという大義明文で、この失業保険特別会計の余裕がなければ別でございますが、現状では、御承知のように、まだ余裕がございまするので、雇用促進事業団におきまして年一万戸のアパートを建設いたしておるわけでございます。ただ、建設省がやっております住宅政策が非常に進んでまいりまして、もうどこへ労働者が行こうが、自分の住宅にはたいして支障はないのだ、家賃の面でも支障はないのだ、これは三千円でございます。三千円ないし四千円で、一般のアパートと比べまして非常に安い、公営よりは高いようでございますが、こういう事態がまいりましたならば、私は、この移動労働者アパートというものは半減していって、しまいにはもうつくる必要もなくなってくると思っておりますが、いまの建設の速度では、私は、五年以後も、戸数は減るかと思いますけれども、直ちに全部やめるというほど需要がなくなると、かようには考えておらない次第でございます。そういう意味で、あくまでも補完的なものであり、しかも、目的がしぼられたものである、こういう性質のものでございますので、そういう意味でひとつ御理解を賜わればしあわせだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/36
-
037・小平芳平
○小平芳平君 そういうしぼりのあるということと、それから、また、現在の段階で宿舎によって非常に炭鉱離職者の方が、たとえば北海道や九州から、御存じのように、就職が現在できている。そういう実態は私もよく承知しているつもりなんですが、いま私が申し上げていることは、国の住宅政策上、やはり大臣もちょっとそういうように言われましたのですが、やはり低家賃の公営住宅がどんどんできなくちゃならない。そちらのほうへ住宅政策としては力を入れていくべきであって、それが住宅政策がおくれているからといって、失業保険のこういう零細な積み立てたお金を、金があるからこっちに使っちゃえというような簡単なものじゃないし、それから、また、藤田委員からも指摘がありましたように、いろいろな問題点があるわけですから、できるだけこういうような意味の宿舎は、いま大臣がおっしゃるように、そうどんどんふやしさえすればいいのだというようなものじゃなくて、政府としては住宅政策本来の住宅に力を入れていくということが肝要だと思うのです。
それから、また、五年たち、十年たった先において、こうした失業保険特別会計から住宅に投資したというそのお金をこれはどうするかということは、五年先のことはどうもあまりよくわからないがというふうに大臣も局長もおっしゃっておられますが、やはりその点もよくいまから検討していかなくちゃならない。こうやって失業保険特別会計のお金を使いましたけれども、これは五年たち、十年たち、二十年たってこういうふうになるのですということができるような、少なくとも研究、検討、見通しというものが必要だと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/37
-
038・早川崇
○国務大臣(早川崇君) これは雇用促進事業団で土地も建物も全部出すわけでございますので、当然出資者である失業保険特別会計の財産として残るわけでございます。これを、もう利用者がないからどう処分するかという時代がくれば、当然これは売り払ってもいいでしょう。あるいは、また、建てかえをして民間に譲ってもよろしゅうございましょう。いずれにいたしましても、失業保険特別会計の資産として残るということを御了解願いたいと思います。ただ、これは減価償却を居住者に課しておりませんので、家賃は、もし減価償却をやろうと思うならば一万円にも二万円にもなろうと思いますけれども、三千円ないし四千円ということで、勤労者の福祉のために使っておる。もし御議論があるとすればそういう点だと思いますけれども、これはあくまで公的な勤労者の福祉のためのものでございますから、減価償却は考えておらない。ただし、それは資産としてそのまま残って、特別会計が別に損をしたということにはなりませんので、その点ははっきりさしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/38
-
039・小平芳平
○小平芳平君 まあ政策についての申し上げたいことはそういうわけですが、それから、次に、この実態として二年は入っておられる。かといって、公営住宅ができれば公営住宅のほうに変わることができますけれども、長くもう入っている人ができてきておると思うのですが、一番長い人でどのくらい入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/39
-
040・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 最高何年くらいかというお尋ねですが、実は調査がございませんで、大体の見当でございますが、三年から四年くらいが一番入居している方々で長い方ではないかと思います。もっとも、最初にできてから勘定しましても六年しかたっておりませんので、大体そういう見当でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/40
-
041・小平芳平
○小平芳平君 そこで三年、四年と入っている人たちが、まあ初めのうちは道路が非常に悪い、また、一番土地の安い所をさがしたせいか、普通だったらあまり人家のないようなところをわざわざ選んで建てているような場所があるわけですよ。したがって、道路整備の問題、それから、また、もう一つ、実際そこに入っている人は三年、四年入っていて、何か生活もそこで住みついたので、かりに電話を引きたいといっても、とんでもない、三年や四年じゃない、離職してやっとここへ就職させてもらってここへ入れてもらっているのじゃないかと、電話を引くなんてもってのほかだというようなことをいわれるのですね。ですから、かり住まいといえばかり住まいに違いないけれども、実態はもう三年、四年になる。また、公営住宅がなければ五年、六年にもなるかもしれませんが、しかし、それが労働省の事業団のアパートなるがゆえに電話はもう引かれないと、こういうような点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/41
-
042・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 電話の件は、現在のところは管理人室に一本入っているだけでございますが、三年でも四年でも、生活の本拠であることには間違いございませんので、先生の御指摘のような方向で電電公社その他とも交渉をしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/42
-
043・小平芳平
○小平芳平君 確かに管理人室にはありますけれども、四階建ての、しかも、相当大きなところですから、ちょっと隣の家に行くような簡単なものじゃないわけですよ。しかし、それは検討していただけばいいと思うのですが、要は電電公社の問題ではなくて、事業団の移転就職者用宿舎ですか、ここに問題があって、電話なんか引くべき性格のもんじゃないということをいわれるわけですよね。しかし、その点を運営の面で検討していただけば幸いだと思うのです。
それから、次に、そこに長くおられないという一つの原因に家賃の問題があるのですね。これはこの実態はどうなっているか、最初に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/43
-
044・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 家賃は、できたときのコスト計算から割り出しておりますので、多少新しいのと古いのと違いますが、三十五年当時に建設した分は二千四、五百円でございます。最近の分は三千五、六百円から四千円見当と、こういう家賃に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/44
-
045・小平芳平
○小平芳平君 それで、大臣の御都合もありますので、簡単に申し上げますが、この家賃が、そこの市営住宅、県営住宅の実際の家賃とこの事業団のほうの家賃と比べた場合、非常に違いがあるわけです。ですから、事業団のほうでは全国一律にきめるわけでしょう。ところが、市営、県営の場合は、東京都と地方の県とは、あるいは地方の市とはずいぶん違うと思うのですね。ですから、そういう点も事業団としては全国一律にきめざるを得ないとは思いますけれども、かといって、いなかに行けば安い家賃の公営住宅があるわけですよ。わざわざ今度事業団のほうに入るのがばからしくなって、市営があけばもちろん市営に移っていく、こういう実態ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/45
-
046・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 家賃の比較は非常にむずかしいのですが、全国平均で申し上げますと、二種公営の全国平均が三千九百六十二円でございます。事業団の場合は平均いたしまして三千七百円でございますので、二種公営よりも若干安くなっておるという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/46
-
047・小平芳平
○小平芳平君 この前新聞に出ていた佐賀県鳥栖の例ですが、これは市営は千八百円、事業団は三千八百円ですか、半分以下で入れるのですね。そこで、第一、こういう鳥栖の例を申し上げますと、事業団が八千六百万もかけて二むねつくった。ところが、がらあきで、でき上がったときは十六戸しか入っていなかった。ところが、そんながらあきのところへまたもう一むね三千七百万円かけてつくっている。そのときの新聞記事では、まるきり普通の一般民間の企業だったらたいへんなことになってしまう、金利だけでもたいへんなことになってしまう。それが政府の事業団のやることだからこんなにがらあきの宿舎が二むねできているので、予算があるから、金があるからもう一むねつくっていく、そういうお役所仕事ということが非常にけしからぬ、こういう内容ですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/47
-
048・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 御指摘の鳥栖の移転宿舎につきましては、完成直後においては入居が非常に悪かったわけですが、さっそく佐賀県の職業安定課長を呼びまして、入居の問題、それから、当時指摘されました道路の問題、これを改善するようにというふうに指示をいたしまして、今日においては入居は六〇%に相なっております。御承知のように、まあ大体完成後半年の間に九割まで持っていこう、一割くらいの回転は考えなければならぬというふうなたてまえで指導しておりますので、現在では六〇%までまいっておりますが、なお、さらに努力いたしまして入居率を上げていきたい。それから、あわせて道路も改善してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/48
-
049・小平芳平
○小平芳平君 普通の民間の経営としまして、六〇%くらいで経営できるものかどうかですね。それでもって、いま局長が言われたように、アパートができたが入る人が少ない。そこでもって何か強力な特別の入居者募集をやる、入居者の開拓をやる。ですから、こうなると、宿舎ができましたが、そこに入る人がないものだから、相当入居者開拓と称するPR運動をやる。とても最初に申し上げた住宅政策との関係でおかしなことになっちゃうんですね、これでは。これは県のだれですか、これは計画の間違いだとはっきり言っているんですね、鳥栖は間違いましたと。事業団の九州支部の支部長さんですか、この鳥栖へ住宅を建てたこと自体が間違っていたと、積極的な企業誘致をやるから住宅困窮者がふえるからという見通しで建てはしたのだけれども、結果としては間違っていた、こういうふうに言っていますね、そういう点。
それから、時間がないからまとめて申し上げますが、会計検査院からも指摘をされているのではありませんか。たとえば愛知県の幸田ほか四カ所、これは一一%から四八%くらいしか入っていない。そういうようなことではいけないといって会計検査院の指摘を受けたというふうに出ておりますが、そういうところはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/49
-
050・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 幸田ほか四件につきまして、御指摘のように、会計検査院からの指摘がございました。自今、私ども、入居率の改善につきましては努力いたしました結果、幸田につきましても、現在六割見当の入居者を見ております。なお、計画的にこれは入居率を上げていくということで現地は努力をいたしております。鳥栖の場合につきましても、あそこへつくったことがそもそも間違っておったというふうな新聞記事も私は読みましたのですが、あそこは県有地で、多少不便な所ではございましたけれども、現在、佐賀県内に就職した者のほかに、福岡県内に就職した者についても入居を認めるというようなことで、入居基準を若干緩和することによって入居率を改善していこう、こういう指導をやっておりますので、十一月一ぱいには八割入居まで達成したいという指導をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/50
-
051・小平芳平
○小平芳平君 これで終わりますけれども、大臣、そういう実情にあるということをよくよく御検討願いたいと思うのですがね。それで、ここでもっていま入居率は幾らですかと質問すれば、おそらく九十何%というお答えがあるのじゃないかと思うのですが、住宅困窮者に対して事業団が手っとり早く宿舎を提供してくださる、非常に国の政策としてはいい政策なんですが、しかし、実態を見れば、会計検査院の指摘のように、四カ所は一一%から四八%、そういうふうな指摘を受けると、今度は労働省が、あるいは事業団、そちらのほうでは、今度はさっき説明したような、入れる人の開拓をやるわけです。そうすると、ちょっと趣旨がはずれてしまうのではないか。就職希望者の中に住宅困窮者がいるので、そのために国の政策として宿舎を建てようという、そういう趣旨だと思うのですが、逆に、今度宿舎ができた、さあ入れる人を開拓しよう、これではもう逆になってしまう。ですから、第一、この場所の選定からして、駅から歩いて三十分とか、あるいは非常に湿地帯でもって、すぐ水がたまってしまうような所へ建てること自体も問題があると思うのですが、いずれにしても、そういうようなことを総合的に検討していかれるようにお願いしたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/51
-
052・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 御趣旨の線を十分尊重して、その立地の条件とかその他も十分考慮いたしてまいりたいと存じます。同時に、これは移動労働者のためということはあくまで原則でございます。保険料を納めておる勤労者でありましても、非常に住宅に困窮しておる、市営住宅、公営住宅ではとてもさばき切れないというところが勤労者の多いところにはたくさんあるわけであります。今後の配慮といたしましては、あくまで移動労働者を最優先いたしますけれども、要は、労働者、特に失業保険金を納めておる勤労者で、非常に住宅にお困りでありましたならば、これはむろん事情に応じまして活用していただくというような指導をいたして、住宅難の解消の補完的な役割りを果たさせるように努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/52
-
053・佐野芳雄
○佐野芳雄君 いまいろいろお尋ねになった中で、有馬さんのほうでは九三%の何か入居率があるようですけれども、いただきました資料によりますと、札幌が八七%、仙台が八〇%、東京は九二%ですが、名古屋は八八%、大阪が八三%ですか、それから、広島が七三%、九州は七五%というふうに、ことし四月現在の入居率の資料ではそうなっておるのですが、それがどうして九三になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/53
-
054・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) この入居率に二通り出しておるのです。私どもは、完成後六カ月経過後の入居率というので九一%という入居率を出しております。完成直後からの入居率を全部平均いたしますと八五%でございますので、若干入居率が下がるということで、大体いまの先生の御指摘になりました入居率は、六カ月経過後の入居率でなくて、完成直後からの入居率をとらえた数字じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/54
-
055・佐野芳雄
○佐野芳雄君 小平さんのいろいろ御質問になっております中で、計画性の問題というのがあったのですが、ことし一万戸という計画を出されておるのですが、現在私の聞いておる範囲では、今年度の建設予定戸数が、現在わかっておるのが八千七百戸余と聞いておるのですが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/55
-
056・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) ことしの分は、一万戸計画に対しまして九千百戸の見通しでございます。これは資材費の値上がりや土地単価の値上がり、こういうようなことで、毎年一万戸計画ではございますが、九割ちょっとの実績にとどまっておる状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/56
-
057・佐野芳雄
○佐野芳雄君 それでは、関連ですから、資料をひとつお願いしたいと思うのですが、ことしの一万戸の予定が九千戸ぐらいになるということですが、これは資材の値上がりとありますから、やむを得ないとも思うのですけれども、この予算要求されております金額は土地費も入っておるはずですね。そこで、土地費も入っておるといたしますと、百十八億ということは、いま一万戸としますると、一戸当たりは百十八万円になる。ですから、これが一万戸の戸数が減るといたしましても、百二十万か百三十万円ぐらいにしか一戸当たりならない、こう思うのですが、鉄筋で一体いま建設単価が幾らになりますか。おそらく十二、三万円か十三、四万円になると思うのですが、そういたしますと、こういうような計画で、一体ことしの計画が、たとい九千戸でも、まともに建つのかどうかという問題が私は出てくるんじゃないかと思う。そこで、今日までお建てになりました土地費並びにその年度の建設戸数、それと予算額との関係を一ぺん資料としてお出し願いたいと思います。各年度ごとの要求されました予算要求に基づきまする建設予定戸数、それが実際には一体幾ら建てられたのか、その建てたものの土地費と建築額をひとつお示しいただきたいと思う。あわせて、この際、小平さんの御質問にありましたように、確かに離職して仕事につく人には、与えられた家は狭くとも、わが家になると思うのですけれども、そういうような状態で今日の住宅政策がいいのかどうかという問題がありますから、この際、労働省のほうでお建てになります住宅の構造を一応お示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/57
-
058・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 資料としてさっそく提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/58
-
059・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/59
-
060・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記を始めてください。
他に御発言がなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/60
-
061・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 引き続いて、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/61
-
062・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 大臣がおられませんので、基本的な問題については、いずれまた質問をしたいと思いますが、きょうは、先ほど藤田委員が若干触れられました定年制の問題について、労働省として今後どういうふうに対処するのか、その辺を質問してまいりたいと思うわけです。
まず、最近労働省は定年制の調査をしておられるようでございますけれども、その中にもありますように、最近における日本人の寿命の延長と申しますか、寿命が長くなった、あるいは、労働力が非常に需給関係において不足を来たしておる、そういうことや、あるいは労働者の生活の問題、そういうところから、定年制の問題というものが、あらゆる企業の中で労使間の問題として非常に出てきているわけです。そこで、この定年制は長い歴史を持っておるのでございますけれども、政府としては、いわゆる労働省としては、定年制というものを設けた意義というものをどのように理解をされているのか。これは大臣にお聞きをすればいいのですけれども、いませんので、ひとつその点を、いずれまたやる機会があるとしても、お聞きをしたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/62
-
063・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 今日のわが国の定年制がどういう経過をたどっていわゆる五十五歳の定年制ができ上がったかということでございますが、これはなかなか歴史的に解明するというのはむずかしいことだと思いますが、とにかく五十五歳の定年制というものがいわゆる定年制の大部分を占めているわけでございます。そこで、これに対して、労働省なり、あるいは雇用政策の面でどういうような考え方をしているかという点でございますが、これは今年の三月に策定されました雇用対策基本計画におきまして定年制についての考え方をはっきり打ち出しているのでございます。すなわち、中高年問題と関連いたしまして、「定年制については、企業の生涯雇用、年功序列賃金制度等と密接につながっているので、これらの制度、慣行の改善とあいまって、適正な労働条件を確保しながら、その延長、定年後の勤務延長、再雇用等により、高年齢者の雇用機会の確保をはかるよう、産業界の自主的な努力を一層促進する」、こういう方針を基本計画の中で打ち出したわけでございます。この基本的な方針に沿って産業界その他に定年制の延長についての呼びかけをいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/63
-
064・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私どもも、歴史的にこの定年制が古いものであり、今日の実情に沿わないということは大かたのやはり常識であろうと思うのですね。それで、問題は、現在やはり労働省の調査によりましても、五十五歳の定年というものが大体七〇%から八〇%あると、こういうことなんですね。したがって、労働省がそういう方針を打ち立てたとしても、単に企業にそれを要請するというような態度では、私はいまのこの定年制の延長というようなことは非常にむずかしいことではないかと思うんですね。しかも、この五十五歳の定年ということが、一面では大企業が若年労働者をより集めてしまって、それで中小企業のほうは若年労働者が採れないで、まあいわゆる労働力不足によって企業の経営が困難になってくると、まあこういう状態を引き起こしておると思うんですね。したがって、そういう中小企業なりの経営を、より政府として考えていく場合にも、私は、この定年制の問題もやはり一つの大きな問題として、そういう労働力確保の面から取り組んでいく必要があるんじゃないかと、まあこういうように思うんですよ。ですから、単にこの大企業に要請をするという、そういう態度ではなしに、何かこうもっと積極的な定年制延長、あるいはそういう定年制というものがなければ一番いいと私は思いますけれども、それまでやらないとすれば、労働省が言っているように、六十歳なら六十歳に大体の基準を置くような、やはり何らかの政府としての行政的な措置というものが必要ではないかと、こういうふうに思うんですけれども、そういう点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/64
-
065・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 定年制の問題は、これはまああくまで労使間の問題でございますので、私どもとしまして、行政的に六十歳にしろというふうなことを直接的に指導するというふうなことはなかなかむずかしい問題だと思います。しかし、雇用の情勢から見ましても、現在の定年制がおかしいということははっきり云えますので、産業界の自主的な努力を一そうさらに促進するという考え方で産業界関係者に呼びかけておるわけでございます。一律に何ぼに延長しろというふうなことは、ちょっとまあ直接的な介入になりますので、いたしかねますけれども、そういう呼びかけによって漸次気運を高めていくというふうな指導を積極的にやってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/65
-
066・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 もちろん、私も、定年制というものが労働契約の一つであるということについては承知をしていますし、それだけにその問題は大きいわけでございますけれども、しかし、たとえば企業に対してそれでは全然政府は、介入していないかというと、介入している面はたくさんあると思うんですよね。それはもう企業に対して税制的な措置を講ずる、あるいは金融的な措置を講ずる、あらゆる面でそういう企業の運営に対しての介入は全然ないとは言えない。したがって、そういうことから考えると、私は、国民全体のこの能力、英知というものが社会の発展なり経済の発展に、より寄与できるような体制にしていくということは、これは政府としては当然考える一つの政治課題じゃないかと思うんですよね。そうすれば、もしその政府が関与できる企業に対しては、少なくとも、もっと労働者のそうした能力を十分活用できるような体制にしていくべきだというような、そうした行政措置をとれる企業もあるんじゃないかと思うんですね。そのとれる企業に対しても、私は、この際、一歩でも前進する意味で、労働者としてそういうような措置をし、そうして一般企業に対してそれにだんだん見ならっていくような方向に向けていくということも考えられると思うのですが、そういうことはできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/66
-
067・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 官公庁の場合においてはそういうことが可能ではないかというお話でございますが、私どもも、民間に呼びかける以上は、官公庁についてはなおさらでございますが、ただ、官公庁については一般的に定年制がない場合が多いわけでございまして、地方公務員について先年問題になりましたが、この場合にも、私どもとしては、定年制について労働省の考え方を自治省にも申し上げておりますし、今後の雇用情勢を考えるならば、かりに定年制を設けるにいたしましても、できるだけ六十歳前後ということで定年制を大幅に延ばしてもらいたい、こういう考え方と、さらに、人件費その他の増高に耐えられないというふうな問題がございますが、これに対しましては、やはり従来の年功序列型の賃金をある程度是正してでも雇用期間を延長してもらいたいというふうな考え方で、自治省当局にも内々にわれわれの意見を申し述べております。そういう手段を通じまして、まあ直接間接、われわれとしては、官公庁の定年制の問題についても、いい意味の影響が出るように内面指導を申し上げておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/67
-
068・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私の言ったことは、官公庁に対してそうした措置をとるべきだということでなしに、私は、きょうはそういう官公庁の問題よりも、特にこの定年制がぴしっとしかれておる民間企業の問題で質問しているわけですけれども、まあ労働省のこの調査によりましても、定年退職した人の再就職の状況、これなど見ると、大体退職したあと七カ月か九カ月で再就職をしているわけですね。あるいは、また、これはまあそういう再就職している人が七二・五%もあると、こういうことで、ほとんど再就職しているわけですよね。で、まあ就職しないという方は、たとえば健康上の理由とか、働く必要がないとか、そういうことで非常に少なくて一九・七%、こういうことで、大かたの労働者はやっぱりまだまだ働く意欲というものもあり、また、一面では働かなければ生活できない、こういうことではないかというふうにこの結果から推測されるわけですけれども、こういう現状を考えますと、さらには、また、日本人の寿命というものが世界の諸外国と比べて大体平均化してきた。しかも、諸外国においての定年制というものを見てみますと、アメリカでは七十歳、イギリスでは六十五歳、あるいはフランスでは六十歳、イタリアでは六十五歳、西ドイツも六十五歳、こういう形で、しかも、これは強制退職という意味ではないようですけれどもね、諸外国の場合は。まあ日本の場合は五十五歳でもう完全に強制退職させられる、こういう非常に違いがあるわけですが、こういう諸外国との比較から見ても、日本でいまもって七〇%から八〇%近い五十五歳定年がそのまま継続されているということについて、私は非常に問題があると思うんです。したがって、もっと労働省は、基本計画の中にそういうようなことが示されているというものの、しからば、たとい労使間の問題であろうとも、もっと大局的な立場から、計画的にでも何でもいいですから、この定年制延長について私はもっと積極的な取り組みをすべきではないか、こういうことが言いたいわけです。大臣にいずれ質問しますから、まあきょうはひとつそういう点も今後十分検討して、どういう形でこの定年制延長の近道があるか、ひとつ検討してもらいたいと思います。で、この六十歳というものを労働省では一応考えられているというのですが、しかし、六十歳ということでは、日本の年金制度、社会保障制度から見ると問題があると思うんですね。厚生年金の場合六十五歳というようなことからいっても、あるいは国民年金からいっても、これはやはり労働省自体、この六十歳ということが頭にもしあるとすれば、これは問題だと思うんですが、その辺どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/68
-
069・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 定年制の延長の目標を六十歳というふうに私ども明確に割り切って申し上げたことはないのでございますが、私どもの雇用計画の考え方におきましては、年金の受給年齢と、七、八割に及ぶ五十五歳定年の間にギャップがある、この間は積極的な雇用対策を展開してこの高年齢者の能力を有効に活用する必要がある、こういう見地から、一応年金受給開始年齢を目標にいたしてはおりまするけれども、これが即、定年制の目標年齢であるというふうには考えておらないのでございます。特に年金制といいますか、社会保障が十分でないという点もございまして、必ずしも六十歳、あるいは六十五歳の年齢にとらわれないという考え方で指導いたしておりまするが、まあ民間におきまして自主的に考える場合に、一応年金の受給開始年齢というものが参考になるというようなことは考えられると思いますが、私どもが明確に示した目標年齢ではないということをお断わりいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/69
-
070・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 諸外国のこの例なんか見ますと、いま局長の言われたようなことでなしに、やっぱり年金と密接な関連の上に立ってこの定年制というものがつくられていると書いてあるわけですね。しかも、この定年制を設ける意義というものはどういうものかというと、ここに理由、その考え方が二つほど述べられておるわけです。その一つは何かというと、いわゆる「長年の労働の代償として休息の権利が与えられるべきものとする」という考え方が一つある。それから、「労働力の喪失と関連した休息の権利をさらに発展させたもので、高齢者の稼得能力の欠如をなんらかの形で補償し、休息の権利をより実効あらしめようとするものである。」、こういう二つの考え方から定年制というものが考えられていると、こういうふうに書いてあるのでございますけれども、そういう考え方からいけば、当然老後の保障という問題が私はうらはらに出てくると思うのですね。ですから、六十五歳なり七十歳なりというこの諸外国の定年の年齢がきめられているのじゃないか、こういうふうに私は思うのです。日本の場合、いま局長の言われたような、そういう年金との関連がないということであると、これは私は問題があると思うのですけれども、その辺をもう一回ひとつ。政府委員(有馬元治君) 諸外国の場合に、年金受給開始年齢と労働戦線から引退する年齢とが大体一致しておるようでございますが、むしろ諸外国の場合には年金制度のほうが確立いたしておりますので、その受給開始年齢に到達すれば労働戦線から引退しても老後の生活の保障が十分であるという意味で、定年といいますか、その年になったら退職をするということに慣行的になっておるのだろうと思います。日本の場合におけるいわゆる定年制とはずいぶん意味が違うのじゃないかと思います。日本におきましても、年金制度が充実していけば、そういう意味で、年金の受給開始年齢になれば労働戦戦から引退をしていくということに相なろうかと思いますが、事情が異なりますので、むしろ定年制で、それを区切りに退職をしてもらうということのほうに意味がございますので、日本の場合は非常に結びつけにくいという実情がございますことを御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/70
-
071・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 もちろんそういう点もあると思います。しかし、現状の形では、いずれにしても五十五歳から六十五歳、この十年間、先ほど藤田委員がいわれましたように、その間眠ってなくちゃならぬ、そういう状態では、これは労働者の生活の問題のみならず、国民のそうした能力というものを、より社会の発展、経済の発展に寄与させるという意味からも、私は問題が多いと思いますので、ひとつそういう点を十分に、これは労働省としてもそのためにこういう調査をしたと思いますけれども、ただ調査をし、そうしてそういう形の一応の考え方を出しただけではこれは解決にならない。やはりもっと私は、官公庁以外に、具体的にどこの企業、どういう企業ということはいいませんけれども、私は、政府がほんとうにこの定年制の問題に積極的に取り組もうとすれば、各企業に対して、より積極的な何か行政的な措置というものができるような気がするわけですよ。労働契約の一つであるけれども、しかし、私は、もっと労働者の立場に立っての行政措置というものができるのではないか、こういうふうに考えますので、これはいずれまた機会を見て議論していきますけれども、重ねて言うようでございますけれども、もっと積極的な取り組みをお願いしたい。
そこで、もう一つ、生産年齢というのは一体労働省としては何歳を考えているわけですか。何歳から何歳まで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/71
-
072・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 十五歳以上で、上限はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/72
-
073・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 いや、その頭、最高は何歳ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/73
-
074・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 最高はございません。最高はございませんというか、最高の制限はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/74
-
075・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 労働省としてはそういう考え方ですか。総理府の人口調査による資料の中では、生産年齢というのは十五歳から六十四歳と、こういうふうになっておるわけです。それで、十四歳までが幼年齢、六十五歳以上が高年齢、こういう区別をしているわけですが、これは政府の統一した解釈じゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/75
-
076・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) ただいま御指摘の十五歳から六十四歳、この年齢というのは、外国においてそういう年齢の区切りをとっている例がございますので、それとの比較においてそういう区切り方をしているのじゃないかと思います。日本においては十五歳から何歳までというはっきりした年齢区分を雇用政策上明示するといいますか、はっきりとるというようなことは、いまのところいたしておりませんが、おのずから高齢者については限度があり、ただ一律に何歳までというふうな区切り方ができないだけでございます。もちろん、比較その他の場合には、それぞれの年齢区分で区切って国際比較をするということはやっておりますけれども、どこまでが生産年齢で、労働力人口としては六十五歳までだというふうな区切り方はいたしておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/76
-
077・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 その辺ちょっと私納得できないんですがね。それじゃ五十五歳とか六十歳というのは何を基準にきめているんですかね。労働省は六十歳という一応の構想が頭にあるとすれば、それじゃ六十歳にした理由は一体何か、こういうことを聞きたいんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/77
-
078・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 六十歳なり六十五歳なりという上のほうの年齢の区切り方は非常にむずかしいわけでございまして、先ほど話が出ました定年制を延長するというようならばどういうところが参考になる齢であるかという議論が出てまいりますが、それは一つの目安としては、年金の受給開始年齢が六十歳である、あるいは六十五歳であるというところに一つの目安ができるだろうと思いますが、逆に、六十歳でなければならぬというふうな意味はないのでございます。したがいまして、私どもが雇用政策を考える場合にも、中高年といった場合には、一応現段階では三十五歳以上というふうに考えておりますが、これも今後事情が変わってくれば四十歳で年齢の区分を考えてもいいし、政策との関連において相対的に線を引いておるわけでございます。また、先ほども申しました人材銀行等で扱う場合のいわゆる高齢者とは何歳か、これも通俗的に五十歳ぐらいから以上の年齢層だというふうなことをごく常識的にいっておるだけでございまして、厳格な年齢区分を法制上はっきりとるというふうなことは、いまのところ考えていない。特に雇用対策面から考える場合には、なかなか個人差がございますので、上のほうの年齢について一律にきめていくということはちょっとやりにくいんではないかと思いまして、現実にもそういう考え方をとっていないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/78
-
079・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 法制的にそういうふうにぴしっとしたものはないと思います。また、それはなかなか個人的な能力が違いますから、それは一がいに何歳だということはできないと思いますが、しかし、雇用対策、雇用計画等の基本的な計画などを立てる場合に、十五歳以上全部生産年齢だとして労働力の需給関係等についての計画を立てるとなると、これはやはり問題があるんじゃないですか。そういう労働力の需給関係、非常に労働力不足だというようなことの場合に、ある一定の能力というものを考えないと、そういうものは全体的な計画として立たないんじゃないですか。十五歳以上は全部一人前の労働者だというふうに見てやるのかどうか、その辺やはりある程度の線はあるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/79
-
080・有馬元治
○政府委員(有馬元治君) 雇用問題を考えます場合には、人口から始まって、生産年齢人口、さらに労働力人口、こうしぼっていくわけですが、この間におきまして労働力率というものが介在してまいりますので、十五歳以上の生産年齢人口が全部労働力人口として登場してくるわけではないのであります。かりに六十五歳という上限を設けたとしましても、その年齢層には、もちろん半数程度は女性がございますし、女性は労働力率が低うございますので、結局雇用問題として考える場合には、上限よりも、労働力率がどういう傾向になっていくかということを目安にしていろいろな計画を立てておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/80
-
081・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 それは、一応私も常識的に考えた場合に、何歳が大体定年として諸外国が考えているような休息の権利の段階に入るのか、定年制を設けているとすれば。そういう労働者の長年の労働に対する報償としての休息の権利、こういう立場から定年制というものを今後考えるとすれば、しかも、一面においてはできるだけ労働力、能力を経済社会の発展のために有効に使っていくということのかね合いからして、大体私は生産年齢というものも常識的に考えられるんではないか、考えていくべきではないか、こういうふうに私は感じとして持っているわけです。したがって、いまの日本人の体力なり能力なり、あるいは寿命からすれば、この六十歳というものはちょっと早過ぎる、いわゆる六十五歳程度まで延ばしていくことが必要であるし、また、そのことが、いわゆる社会保障の年金との関係においても妥当な線ではないか、こういうふうに思うんです。しかし、それは私の感じですから、なかなか科学的な立証はできませんので議論はできませんけれども、そういうふうに、私は、今後の定年制の取り組みとしては、ひとつ検討の素材として出しておきたいと思うのです。この問題はまたあとでやることにいたしまして、次に、中高年齢層の労働力の活用とも関連がありますけれども、訓練の問題について若干質問をしてまいりたいと思います。
まず、労働省は、この職業訓練長期基本計画ですか、これを一九六〇年につくられております。それが今日どのように実施をされてきたかというのが、きょうお配りをいただいた資料の中にあるのがそうですね。これによりますと、大体公共職業訓練のほうは、実績は訓練基本計画に沿った形で行なわれているようです。ところが、事業内訓練ですね、これを見ますと非常に悪いですね、実績が。一体これはどういうことでこういう結果になっておるのか、それをまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/81
-
082・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) ただいま先生御指摘の長期計画によりますと、公共職業訓練の遂行率は四十一年度までで九七・八%、それに対しまして、御指摘のように、事業内職業訓練は五五・八%ということで、半分強であるということであります。この長期計画をつくります基礎になりましたのは、昭和三十四年にできました国民所得倍増計画の基本構想の中でまとめてまいりまして、その当時から展望した学校教育、それから職業訓練の姿、その中における公共訓練と事業内訓練のバランスというようなことで立案をいたしたものでございますが、事業内職業訓練につきまして、いま申しましたような五六%程度の遂行率であるということにつきましては、ヨーロッパ等の工業先進国と比較して、わが国におきます製造業を中心とする産業において、職業訓練というものの考え方が予定をしたよりも低かったのではないか。諸外国でございますと、職業訓練というものは自分たちでやるものだ、こういう意識が非常に強いのでございまして、公共職業訓練はそれを補完をするような形で行なわれているのが実際でございますが、日本の場合におきましては、明治以来の歴史のそういう意味における浅さもありますが、常に国の施策が先にいきまして、民間の施策がどうもあとにいく、産業政策はどうもそういうふうな姿をとっておるように理解しておりますが、それと同じような姿がこの職業訓練に対してもあるのではないか、かように考えております。それともう一つは、現在私どもでここで予定しました事業内職業訓練は認定職業訓練のことを考えておりますが、認定職業訓練というものにつきましては、御存じのように、中学卒業生を三年間職業訓練をするという形のものであります。この制度自体にも実は産業界の中にはいろいろ意見がございまして、この制度自体ですべてのことを律することについてはいろいろ問題がある。特に最近におきますような技術革新下における技能労働者の質の変化、それから、供給源の変化というようなことを考えると、認定職業訓練が、単に中卒を主体として考えているところに非常に問題があるというようなこと等も、この事業内職業訓練の率が低率である原因の一つになっているのじゃないか、かように思います。私どもも率直にそういう点はあろうと思いますので、この事業内職業訓練の推進ということについては、さらに努力をしていく。ただ、見てみますると、大企業におきましてはいろいろのことでやっております。中小企業による教育訓練にかける費用というものが相当下回っておる、それは中小企業自体の持っておる脆弱性によるものであろうと思いますが、そういうものに対する国の指導援助措置というものが、いまよりもさらに強化されていくこと等も考え合わせていかなければならないだろう、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、先生御指摘のように、事業内訓練が特に低率であることは、いまのような問題点も含めまして、今後行政上の努力をいたしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/82
-
083・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 その理由の一つとして、事業内訓練に対する政府の助成措置、あるいは、いわゆる経費の補助とか施設費に対する融資とか、そういうものの不十分さというものはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/83
-
084・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) きわめて率直にお答え申し上げますれば、私どもとしましても、現在やっておりますのは共同職業訓練——中小企業が共同して職業訓練をやりますときに、運営費を、本年度でございますと一人当たり千四百円の補助をする、あるいは市町村が共同職業訓練のために施設をつくります場合には、その四分の一程度を国が負担をするということでございますが、それ以外には、指導員の派遣とか、あるいは教科書の提供というようなことを政府あるいは都道府県及び雇用促進事業団でやっておりますが、この程度ではまだ不足をしておる、もっと考えなければならない面があるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/84
-
085・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そこで、こういうような達成率から考えると、現在の労働力の需給関係からいって、あるいは労働経済の変化からいって、その基本計画を手直しするとか、あるいは再検討するという必要はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/85
-
086・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 先ほど申しましたような趣旨からいたしまして、国民所得倍増計画を基礎にしてつくったものでございますが、その後におきます変化からいたしましても、三十六年以降、常に百万以上の技能労働者が不足をしておるという私どもの調査もございます。そういう点を考え合わせ、及び、今後におきます新規労働力の供給面、あるいは転職者の動き、こういうことを考えますと、この計画はいま申しましたような事情のもとで変更を余儀なくされておる、こういう状態のように思います。ただ、これは長期計画だけを変更するというのは問題でございまして、訓練制度全体の中における長期計画として考えなければならぬということで、先ほど大臣が御答弁申し上げましたが、近く中央職業訓練審議会に対して、訓練制度全般に対しまして再検討の諮問をいたすことにいたしておりますが、その中で、この長期計画につきましても十分ひとつ御議論を願いながら、長期計画の練り直しということを考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/86
-
087・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 その訓練体系なり計画の再検討の際に、先ほどちょっと言われた、たとえば事業内訓練の場合には中卒者が対象となっているところに問題がある。最近新聞の報道によると、非常に高校卒業の者の入所が多い。したがって、それは高校を卒業してそのまま就職するよりも、訓練を受けて就職したほうが労働条件がいいと、こういうことから入所する者が多くなってきておるといわれておるのですが、そういうような訓練生の質の変化というものをこの際十分考えないと、これからの訓練体系というものを立てる場合いけないのではないかと思うのですが、その点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/87
-
088・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) ただいま御指摘をいただきましたとおりの状況でございまして、現在の中卒というのは、おそらく昭和五十年ごろになりますと現在の数の半分以下になるだろうと思います。それに対しまして技能労働の需要というものは非常に多うございますので、それと装置の大型化、それから装置のオートメーション化というようなことが中卒の持っておる学力だけでは足りない、高卒程度の一般基礎学力はどうしても持ってもらわなければ今後の技能労働者というものは不十分なんだ、こういうようなのが産業界一般の風潮の中にもございます。そういうことからいたしますと、高等学校卒業生が新規労働力供給としてはおそらく技能労働者の中の主体をなしてくるのではないか、こういうことが予想されるわけでありますので、職業訓練制度の中におきましては、そういう現実的なものをしっかり踏んまえまして、その上に制度全体のものを考えていく。したがって、高卒者に対してどういう訓練をするか、それから、そういう意味であるとすれば、高等学校における教育自体についても、いろいろ審議の過程においては文部省あたりにお願いすることが出てくるのではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/88
-
089・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 それと、もう一つ、最近訓練の費用が非常に訓練生に過大にかかっているということがいわれているわけです。この訓練法の中で費用の負担についてはどういうとりきめがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/89
-
090・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 訓練法の中では、特に経費の問題については法律自体では触れておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/90
-
091・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 戦後職業補導所という形で発足をしたとき以来、しばらくの間、教科書あるいは手当なども支給されたりして、あるいは、また、作業服等も支給をされる、まあ支給をされるというよりも、ありのままでいい、こういうことからいって、ほとんど費用の負担なしに訓練を受けてきたのですね。ところが、この職業訓練法が制定をされて、その上に地方財政の赤字ということが起きまして、教科書も二分の一を負担するというようなことから、非常に最近訓練生の負担が多くなってきたということが出てきたといわれておるのですけれども、労働省としてどの程度こういう費用の負担について把握をしておられるか、その辺をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/91
-
092・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 戦後早々におきましては、職業補導というのは、主としてまあ新規学校卒業者もそうでございますが、ほとんど就職する道がないということからしまして、いわゆる一般の失業者とほとんど同じような意味合いで、職業補導につきまして金を取らないというようなことでやっておりました。その点につきましては、実は一般訓練所につきましては同じ考え方でございまして、一般訓練所では現在無料の職業訓練をやっております。これは中学卒業生、あるいは高校卒業生については無料でございます。ただ、その無料の中に、教科書負担というのは本人の負担、これは過去におきましても教科書の負担は本人の負担でございまして、そういう手当てはいたしておりません。ただ、例の職業安定法と失業対策法の改正以来、中高年齢者につきましては、無料のほかに、生活費として職業訓練手当及び職業訓練を受ける実費の弁償、あるいは通勤費の費用を訓練手当というかっこうで与えるということで、あの法律が施行されました三十八年以来は、中高年の失業者につきましては非常に手厚い措置がとられておる。しかし、学校を卒業した者につきましては、一般訓練所ではそれまでの手当てはいたしていない、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/92
-
093・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 調査資料によりますと、専門訓練生の場合には実習する負担金が年額六千円、それから、教科書代が平均千七百八十五円、こういう負担がある。しかも、その教科書などを見ますと、わずか十時間か二十時間の授業を受けるだけに一冊の教科書を買わなければならない、こういう問題点もあるといわれている。それから、そのほかにいわゆる副教材費の負担、これはどういうものかと申しますと、たとえば軍手とか、いろいろ訓練を受ける場合に必要な消耗品であると思うのですけれども、こういうものの負担も相当高額になっているようですね。それから、もう一つは父兄会と申しまして、これはPTAでしょうけれども、その会費も負担させられる。これは父兄がいようといまいと取られるということ、あるいは訓練生の自治会費というのを負担させられる、こういうことで非常に訓練生の負担が大きい。しかも、先ほどちょっと触れましたように、就職する場合にここへ入ったほうが有利だということで入所する人もあるかもしれませんけれども、しかし、やっぱり大かたは、こういう訓練所に入る人は、私はそれほど裕福な家庭の人ではないように思うのですね。そこで、ILOの第四十六回総会で、これは一九六二年ですけれども、公共の訓練施設で行なわれた訓練は無料で供与すべきであると、こういう勧告が行なわれていますね。こういうものとの関連で、私は、この際、これらの問題についてもっと実態を把握をして、それでそういう負担がかからないような形での訓練というものができないかどうかですね、その辺をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/93
-
094・和田勝美
○政府委員(和田勝美君) 一般訓練所におきましては、訓練を受けるために訓練所側に納める金というものが無料ということにいたしておりますが、ただ、その教科書等の負担は、先ほど申しましたように、本人がするようになっています。あるいはそのためにときどき使う手袋とか、そういうものは自分たちの負担ということになっておりますが、これは義務教育後のものでございますので、義務教育における無償の問題と必ずしもパラレルにならない。それから、もう一つは、総合訓練所につきましては二年間の訓練をするということもございまして、これは無料でなくて、いわゆる有料で月額五百円をいただいております。これは二年間も訓練をするのに無料であるということは、ほかの制度とのバランスで、たとえば高等学校とか何とかのバランス上いいのかという問題もありまして、そういうようなことをやっておりますILOの職業訓練に関する勧告、いま先生御指摘になりました、公共職業訓練所の訓練は無料とすべきであるという原則を掲げておりますが、ただし、その原則は、その訓練が義務づけられておるようなものについては無料にすべきであると、こういうようなのがその次の二項に、先生御存じだろうと思いますが、あるわけでございまして、これは実はこの勧告は採択される場合におきましても総会でいろいろ議論があったようでございます。議論があって、第一年度につきましては、原案は無料であるということだけであったようですが、二年度に議論が出ましてこの二項が入ったように承知をしております。これもおそらく世界各国におきまして、義務教育以外の訓練とか教育における有料の問題とかね合いがあったのじゃないか、まあかように考えますが、そういう点からいたしますと、日本はちょうど一般訓練所においては無料とし、総合訓練所では有料というようなことでございまして、原則を片一方は踏まえながら、片一方は多少二項にたよっているというような面があるわけでございます。ただ、訓練生の実態は、いま先生が御指摘になりましたように、それほど裕福な家庭の子弟ばかりでもないように思います。だから、私どもといたしましては、全部を無料にするということにつきましては、他の制度との関連でなかなかむずかしいことではございますが、できるだけ訓練のために特に多くの金が必要であるということのないような配慮をしてまいりたいと思います。特に、先ほどもお答え申しましたが、いわゆる中高年の失業者につきましては、むしろ訓練を奨励するような手当を支給するようにしたい、経費がかかるどころか、その手当を国や都道府県のほうで支給したいという考えでございますので、先生の骨子と大体同じ方向ではございますが、ただいま申し上げたのが実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/94
-
095・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 これで終わりますが、いずれにしても、非常に技能労働者の不足というものが伝えられている、それが現実の姿になっているわけですから、やはりもっと政府としてはそういう訓練生の負担をできるだけ少なくして、そうして、より技能労働者の養成が円滑に行なわれ、さらに、また、中高年齢者の再就職が適切に行なわれる、こういうことが私は必要だと思うのですよ。特にこの中高年齢者は、いま局長の言われたように、非常に求職率は高いわけです。高いというのは、たとえば若年労働者の場合は率は低いのですけれども、中高年の場合はなかなか就職できない、こういう実態ですから、やっぱり技能を身につけるということは必要だ、それには負担があまりかかっては、これは受けたくても受けられない、こういうことになりますから、ひとつその点十分検討と申しますか、実情は把握されていると思いますけれども、それ以上に、いま言ったような教科書代、あるいは教材費以外に、副教材費、あるいはPTA会費、あるいは自治会費というような形で相当な負担になっているようですから、その点もひとつ実態を把握して適切な措置を講じてもらいたい、お願いいたします。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/95
-
096・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本調査に関する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十三分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X01719670622/96
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。