1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年七月四日(火曜日)
午前十時五十一分開会
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委員の異動
七月四日
辞任 補欠選任
高山 恒雄君 瓜生 清君
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出席者は左のとおり。
委員長 山本伊三郎君
理 事
土屋 義彦君
丸茂 重貞君
佐野 芳雄君
藤田藤太郎君
委 員
川野 三暁君
黒木 利克君
佐藤 芳男君
山下 春江君
山本 杉君
横山 フク君
大橋 和孝君
藤原 道子君
柳岡 秋夫君
小平 芳平君
瓜生 清君
発 議 者 小平 芳平君
国務大臣
厚 生 大 臣 坊 秀男君
政府委員
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生省公衆衛生
局長 中原龍之助君
厚生省医務局長 若松 栄一君
厚生省薬務局長 坂元貞一郎君
厚生省援護局長 実本 博次君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武雄君
説明員
大蔵省主計局給
与課長 津吉 伊定君
大蔵省主計局主
計官 辻 敬一君
農林省畜産局衛
生課長 高村 礼君
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本日の会議に付した案件
○委員派遣承認要求に関する件
○身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案
(小平芳平君外一名発議)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案
(内閣提出、衆議院送付)
○社会保障制度に関する調査
(日本脳炎のワクチンに関する件)
(放射線技師法の立法化に関する件)
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001・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) それでは、ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。本日、高山恒雄君が委員を辞任され、その補欠として瓜生清君が選任されました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/1
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002・山本伊三郎
○山本伊三郎君 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。
炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(閣法第一四二号)及び、炭鉱労働者の一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(参第二号)の審査に資するため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/2
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003・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。
つきましては、派遣委員の人選、派遣地、派遣期間等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/3
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004・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
なお、本院規則第百八十条の二により、議長に提出する委員派遣承認要求書の作成等も、便宜、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/4
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005・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/5
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006・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
発議者、参議院議員小平芳平君から提案理由の説明を聴取いたします。小平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/6
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007・小平芳平
○小平芳平君 ただいま議題となりました身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案の提案の理由について説明申し上げます。
わが国の身体障害者に対する援護対策はきわめて不十分であり、特に最近における経済社会のめざましい発展を見るときに、身体障害者対策などは顧みられないままになってきたかの感さえあるのであります。その援護対策として、身体障害者福祉法が昭和二十四年に制定されましたが、当時は占領下という特殊な事情で、軍人、軍属等の戦争による戦傷病者に対しては、特別に優遇する道はかたく禁じられていたため、同法による身体障害者の援護対策はきわめて不備の点が多かったのであります。その後、数次にわたる法の改正による逐次内容の改善が行なわれたとはいいながら、いずれも部分的なびぼう策にのみ終始し、積極的な抜本対策が行なわれておらず、さらに昭和三十五年には身体障害者雇用促進法の制定をみたのでありますが、雇用促進というのは名のみで、その効果は十分にあがっておらず、身体障害者の援護対策はほとんど放置され今日に至っているのであります。
現在厚生省から手帳の交付を受けている身体障害者の数は百二十万人をこえておりますが、更生援護施設に収容されている人はわずかに九千八百人程度にすぎず、また、職業安定所を通じて就職した者も五万三千人余となっているが、職場においてきわめて劣悪な労働条件のもとに置かれているのであります。しかも、政府においては、これらの就職者の地域、職種、年齢、平均賃金、勤続年数などについて基本的な実態調査は皆無といってよく、厚生省の身体障害者実態調査でさえ、五年ごとに実施されている程度で、的確な把握はなされていない現状であります。
昨年末身体障害者福祉審議会が発表した「身体障害者福祉法の改正その他身体障害者福祉行政推進のための総合的方策」についての答申に基づき、政府は、今国会に身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を提出しておりますが、この改正案は答申と比べて九牛の一毛にすぎない貧弱な内容といわざるを得ないのであります。
ひるがえって、日本の政治の現状を見ると、ややもすれば政治が全国的な組織団体によって左右されがちであり、組織もない、圧力もない身体障害者に対する福祉などは等閑視されているのであります。こうした弱い立場の人たちの声なき声を取り上げてこそ真の政治といえるのであります。したがって、公明党は、これらの立ちおくれを抜本的に改めて、経済の発展、社会の繁栄をそのまま個人の幸福として実現しようとするもので、身体障害者の援護対策については、立党以来鋭意検討を加え、基本方針として次の四項目を掲げております。
第一は、国の責任を明確化するとともに国が予算を確保すること。第二は、福祉に関するものを総合、整備して基本法的なものとすること。第三は、行政機構、援護業務、同施設を体系的に一元化すること。第四は、現行法の援護更生のワクを拡大すること。
以上の基本方針の趣旨に沿ってこれを早急に実現すべく、すでに二回にわたって身体障害者福祉法等の改正を提出してまいりましたが、今回さらに若干の修正を加えて、身体障害者福祉法、身体障害者雇用促進法、厚生省設置法等を改正するためにこの法律案を提出したのであります。なお、そのほかに、改正を機会に、従来から問題のありました点について制度の不備を是正し、その他の制度の合理化をはかるために関係法案の改正をあわせて行なわんとしております。
次に、法律案の大要を申し上げますと、第一は、身体に障害のある者の福祉の増進に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにし、あわせて税制上の特別措置を講ずるようにつとめるべき旨及び障害年金制度の充実につとめるべき旨を明確にしたこと。
第二は、身体障害者の範囲を拡大して内部疾患による機能障害のある者を含め、特に重度身体障害者に対する援護の措置として援護手当月額五千円の支給、家庭奉仕員による世話の委託の制度を設けたこと。
第三は、身体障害者更生援護施設は、収容のみならず、通所利用をも原則とするものに改めたほか、結核後遺症者更生施設、重症者療護施設、コロニー施設、宿所提供施設を加えたこと。
第四は、身体障害者福祉司は、各福祉事務所に必置すべきものとすることに改め、その経費は全額国庫負担とし、その業務の範囲を拡大して身体障害者の職業安定に関する事項を含め、さらに都道府県に身体障害者更生相談員を設置し、その経費は全額国庫負担とし、その業務は、身体障害者の相談に応じて更生指導を行なうこと等としたこと。
第五は、定期診査、装装具の種目の追加、家屋改修費及び交通費の補助、更生に資するための各般の措置について定め、もって身体障害者の更生の援助等の措置の拡充をはかったこと。
第六は、身体障害者の職業の安定に資するための措置として、更生に必要な知識技能の習得を施設における更生訓練で行なうべきものとし、身体障害者職業訓練所における職業訓練と更生訓練とが相互に関連性をもって行なわれるべきものとして一元的な運用を期することとし、職業的能力をつけるための更生訓練を受ける間において、職業訓練の場合と同様の趣旨により、月額一万五千円を限度として社会復帰促進手当を支給することができることとしたこと、生業資金その他の資金の貸し付けを行なうこととするほか、雇用の促進に関して、各公共職業安定所に身体障害者就業指導官を設置して、身体障害者の職業紹介、職業指導等を行なわせることとし、国、地方公共団体、公法人その他の身体障害者の雇用に関する義務を明確にし、また、身体障害者を雇用した者に対しては、身体障害者一人につき月額一万五千円までの範囲内で雇用給付金を支給するものとしたこと。
第七は、身体障害の更生援護に関する施策を一元的に行なうこととするため、厚生省に更生福祉局を新設し、所要の改正規定を設けたほか、関係法律の整備を行なったこと。
なお、本法律案の施行に要する経費は平年度では総額約三百八十億円であります。
以上がこの法律案を提出する理由並びに法律案の要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/7
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008・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 本案に対する自後の審査は、これを後日に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/8
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009・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案の両案を一括して議題とし、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/9
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010・藤原道子
○藤原道子君 私は、まず総括的な点から御質問申し上げたいと思います。
第二次大戦後すでに二十有余年を経過した今日でも、なお遺族援護対策の面では戦後は終わっていないといわれ、いまなお未解決の諸問題が少なくない実情にあります。今後における戦後処理について、その基本的な方針をこの際明確にしておく必要があると思います。つきましては、大臣よりこれに対する明確なる基本方針をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/10
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011・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 戦後処理の問題の中で、厚生省で所管をいたしております問題としましては、戦没者遺族援護、戦傷病者援護、未帰還者留守家族援護等については、今後とも、国民の生活水準の動向、関係制度との均衡等を考えまして、その充実に努力をしてまいる所存でございます。今回の法律改正も、そういったような観点に立ちまして立法いたした次第でございます。これら以外の問題につきましては、政府全体の問題といたしまして、国民世論の動向や、各種のこれに関連する制度等がございますが、そういったものとの均衡なども考え、国の財政力等も考慮いたしまして、慎重な態度でやってまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/11
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012・藤原道子
○藤原道子君 ただいま援護法等によって万全を期しておるようなお話でありますが、この戦傷病者、戦没者の処遇改善に関する事項のうちでも、遺族援護法の適用によっては解決し得ない問題、たとえば原爆被爆者の援護について、その処遇の問題を審議するため、政府は臨時に特別の審議会を設置して、未処理問題について早急に解決し、戦後処理について終止符を打たなければならないと思いますが、この審議会設置についての大臣の御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/12
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013・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 御指摘のように、厚生省所が所管いたしております遺族援護法等の対象としては、それになじまない戦争犠牲者に対する措置を実施するかどうかにつきましては、これも政府全体の問題といたしまして、国民の世論に聞き、各種関係制度間の均衡、さらに、また、国の財政力というものも考えなければならないと思いますが、そういったようなものを考えまして、総合的に検討をいたすべきだと考えておりますが、その具体的な方法として、何か審議会といったようなものをつくってはどうか、こういう御意見でございますが、非常にこれは傾聴すべき重大なる御意見と私は存じます。そこで、このことにつきましては、今後十分私は検討してまいりたい、かように考えております。
なお、原爆被爆者、この問題につきましてはたびたび申し上げておりますが、その実態調査がことしの秋くらいに完了するであろうと期待をいたしておりますので、これを見ました上、これは慎重に考えてまいるべき問題だと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/13
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014・藤原道子
○藤原道子君 私は厚生省の姿勢が後退しているように思うのです。四十一年の十一月十一日に、鈴木前厚生大臣に日本原水爆被爆者団体協議会の皆さんが陳情いたしております。そのときに原爆被害者援護審議会を設置していただきたい、こういう要請をしております。これに対して鈴木大臣は、審議会設置の構想に賛成であり、昭和四十二年度予算で運営できるよう、官房長官、総理府総務長官らと話を進める、そういうような答弁をしていらっしゃるのです。ところが、最近になって、今度引き揚げ者団体の保障等が解決したときに、六月二十七日には、戦後処理は終わった、なお今後問題があれば社会保障のワクで考えるなどといっておられます。さらに塚田総理府総務長官は、原爆被爆者の補償要求には応じられないなどとも答えておるわけです。今度は鈴木さんは、去年の十一月十一日に、審議会には賛成である、前向きでこれを処理し、四十二年度の予算でこれを処置したい、こういうふうな答弁をしているわけです。ところが、いまあなたの答弁によりますと、何やらあやしい。一体どういう考えで原爆被爆者に対処しておいでになるのか、もっと明確にひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/14
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015・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 鈴木前大臣の言明せられたということもいま後退しておるのじゃないか、こういうお話でございますが、鈴木前大臣は、そういったような審議会的なものをつくるにあたっても、実態を把握しなければならない、こういうことで、原爆被爆者の実態というものを、まずそのほんとうの姿を把握いたしまして、そうしてその実態認識の上に審議会をつくる。こういう審議会をつくるためにも、どうしてもやはり実態を把握しなければならない。そういうことで、私は、その後、厚生省におきましては、そのためにいま実態の調査を急いでおるというようなことでございます。これを社会保障でやっていくのか、あるいはどういうその他の手段でやっていくのかといったようなことにつきましては、一にこの実態の認識の上に立ちまして、そうして態度をきめていくべきものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/15
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016・藤原道子
○藤原道子君 一体、厚生省は、この原爆の被爆者に対して基本的にどう考えていらっしゃるのか。戦後二十一年たっている。その間、当委員会でもしばしばこの問題は問題になっている。それをいまさら実態調査をする、一体いつになったらこの問題は解決するのですか。あなたが衆議院で答弁をしている中でも、私はどうしてもふに落ちない点がたくさんあるのです。被爆者が軍人として縛られている、国家権力で縛られていた人たちとは違うのだ、逃げようと思えば逃げられたはずだ、こういうことばも出ているのですね。あの広島の実態はそういうことであったでしょうか。世界で初めてなんです。人類史上初めて殺人凶器をもって一瞬にして都市は破壊され、人命は奪われ、残った人は、まる三十何万という人がその原爆症のために貧困と病苦とにあえいでいるわけです。これを見殺しにしておいて、そうしていまさら実態調査をする、これは一体どういうわけなんですか。あれを国のほんとうの犠牲者とは考えるわけにいかないのでございましょうか。大臣のお考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/16
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017・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) いまの制度において諸般の援護が行なわれておりますが、この援護をしておる背景には、私は、法制上当時のそういったような人たちが国家的の強制あるいは半強制というようなものを受けておったということが一つの尺度になっておるということは、これは私は事実を認めざるを得ない。そんなら、その原爆によって広島、長崎で大ぜいの犠牲者が出た、これらの人人は、これは私は逃げれば逃げられるのだから、これはもうそんなものは何ら必要はない、かような考えは私は持っておりません。事実、あのとき広島、長崎等で原爆の被害を受けられた方々は、なるほど法制上はこれは別に縛られていなかったと思います。しかし、事実上のあの大爆撃、あの惨事からそのとき逃げようなどと思ってもこれは逃げられることではなかった、そういったようなところに私は特殊性がこれは認めざるを得ない。そういうようなことでありますが、規制度は、何にいたしましても、制度上の強制を受けているということが背景にあった。そこで、この問題を、そういったようなところから離れまして、どう考えていくかということを、その考えをまとめていくためにも、私は、実態の調査をまず完了いたしまして、何もこれはあのとき逃げられたから、逃げることはできたからといったような考えでは全然ございません。これは特殊な事態でございまして、その特殊性ということは、これは無視するわけにはいかないと思います。しかし、その措置をどうするかということにつきましては、これはやはり実態認識、実態の把握ということが前提です。それをやった上で的確なる措置を考えていくべきだと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/17
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018・藤原道子
○藤原道子君 見殺しにするつもりはないとおっしゃるけれども、現実には見殺しになっているのですよ。実態調査も、すでに中間報告がある程度集まっているはずです。それは一体どうなんですか。明らかに被爆者の実態はあらわれているじゃありませんか。と同時に、この問題につきましては、サンフランシスコの条約で、日本はこの非人道的なアメリカのやり方に対して、裁判権、請求権を放棄した。国が放棄したのです。国が放棄した以上は、一瞬にしてあの被害を受け、家も財産も人命も損傷されているこれらに対しては、アメリカに対する請求権を放棄した以上は、国がこれに対してあたたかい補償をやるのは当然じゃございませんか。それが二十何年放置されている。したがって、東京地裁の判決文を読みましても、そのことが明らかに書いてあります。長くなりますから、全部読むわけにはいきませんけれども、とにかくサンフランシスコ条約でこれを放棄した以上は、国がやはりこれをみてやるべきではなかろうか。「人類の歴史始って以来の大規模、かつ強力な破壊力をもつ原子爆弾の投下によって損害を被った国民に対して、心から同情の念を抱かない者はないであろう。戦争を全く廃止するか少くとも最小限に制限し、それによる惨禍を最小限にとどめることは、人類共通の希望であり、そのためにわれわれ人類は日夜努力を重ねているのである。けれども、不幸にして戦争が」云々とあって、最後に、「被告がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。」、これは政府ですね。「しかしながら、それはもはや裁判所の職責ではなくて、立法府である国会及び行政府である内閣において果さなければならない職責である。しかも、そういう手続によってこそ、訴訟当事者だけでなく、原爆被害者全般に対する救済策を講ずることができるのであって、そこに立法及び立法に基く行政の存在理由がある。終戦後十数年を経て、高度の経済成長をとげたわが国において、国家財政上これが不可能であるとはとうてい考えられない。われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである。」、これが判決文の結びでございます。はっきり立法府とそれから行政府の責任だと、高度経済成長を遂げた日本においてそれができないはずはない、裁判所がはっきりこう言っておるじゃありませんか。それに対して今日まで放置したことは、われわれも立法府の一人として、まことに心痛むものがある。私は無理なことを言っておるつもりはない。したがって、あれほど被爆者たちが念願しておる審議会をつくって、何とか今日の窮状を救っていただきたい。あなたは生活保護法その他とおっしゃるけれども、生活保護法に当てはまるべき事項か、これは国の責任において当然援護すべきものであるかということは、おのずから明らかじゃないかと私は思うけれども、やっぱり生活保護その他でやっていくべきだ、こういうお考えなんでしょうか。もう一ぺんくどいようでございますが、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/18
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019・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 先ほど申し上げましたとおり、原爆被爆の被害者の特殊性というものは、これは何といっても否定できないと私は考えております。そこで、これをいろいろ裁判所の判決を御引用になりましたけれども、国会でもそういったような強い御意見もございますし、そこで、ただ生活保護法でやっていくということでなしに、すでにこれは、被爆者も委員の方々も、あるいは御満足でないと思いますけれども、医療の公費負担ということをやっておるわけでございますが、どういうふうにこれを拡張、整備していくかというようなことにつきましては、私はいまは中間の報告は受けておりますけれども、実態調査というものが、これが完全なるものをお受けいたしまして、そうしてその上に立って何らか前向きの手段を考えていかなければならない、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/19
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020・藤原道子
○藤原道子君 大臣、理屈だけじゃ済まないのですよね。また、理屈も合わないのです。衆議院の答弁なんかを見ますと、身分身分ということはずいぶん出ておる。
そこで、私がお伺いしたいと思いますのは在外財産の補償でございます。これはもうすでに済んでいたはずなんです。結局昭和三十何年ですか、すでに五官億近い補償で万事終わったということをあのときに発表されていた。ところが、今回千九百二十五億ですか、これの補償をすることになった。これに対してどうですか、理論づけはできやせぬ。与党の中でさえこういうことを言っていらっしゃる。結局理論づけなんてどうしたってできやしないのだ、こういう意見が相当多かったようなことが新聞には出ておる。それから、こんなうしろ向きの政策は早く片づけたいよ、これは西村政調会長の話で、きょうの新聞に出ておる。圧力団体ならば引き揚げ当時一歳以上の者にも再び補償をしている。三十二年に四百六十億の補償をしたのですよ。三十二年の四百六十億は、いまの価値に換算すればどのくらいになるか。これだけの補償をしてあるのですよ。また今度千九百二十五億補償なさる。この引き揚げ者に対しての理論的な裏づけはどういうことになるか、それを伺いたい。大臣に聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/20
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021・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 今度の理論づけということにつきましては、これは私の口からお答えするのはちょっとどうかと思いますが、前の引き揚げ者に対する五百億足らずの金は、とにかく財産を捨てて国へ帰ってこられた、こういった人たちに対して、とにかく立ち上がってもらわなければならない、立ち上がりに要する援護の措置ということでこのお金を出した、こういうことでございまして、今度のとは私は少し性質がこれは違うのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/21
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022・実本博次
○政府委員(実本博次君) 大臣の説明を補足申し上げますと、引き揚げてきた方々のいわゆる立ち上がり資金ということで厚生省がその援護措置といたしまして、所管は厚生省におきまして立法いたしたわけでございます。そのときに、立ち上がり資金ということでございますから、そういう突っかい棒の要らない方には差し上げる必要がないんじゃないかということで、一応資産調査をいたしまして、ある一定の所得以下の人にその援護措置で差し上げるというふうな性格の措置をいたしたわけでございます。で、今回、まあこれは所管が違いますからわかりませんが、新聞その他で承知いたしておりますところでは、そういう援護資金ではなくて、海外で喪失した財産に対する補償と申しますか、そういうことで特別の資金を出そう、こういうような趣旨のようでございまして、その際、したがいまして、ミーンズテストとか資産調査とかといったような種類のものは一切やらぬようなたてまえになっておるというふうに承知いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/22
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023・藤原道子
○藤原道子君 私は、海外から財産を捨てて戦時中引き揚げてこられた人、これらに対する立ち上がり資金としてお出しになる、これにあえて反対するものではないのです。けれども、これらの人にはすでに三十二年にそういう趣旨による補償がなされておるわけです。今度は裁判的にいっても何も根拠はないという、しかも、一歳以上の者、こういうことになっている。一歳の人が海外に財産を持っていたんですか、これがおかしいんです。納得がいかない。国民の中には割り切れない感情を持っている人がたくさんございます。結局政府が圧力団体に負けたんだ。引き揚げ者団体が相当の会費を持って運動を続けてきたことは、もう明らかな事実なんです。その会費はどこへ流れていったか、こういうことも大きな疑惑を呼んでおります。いまとにもかくにも、引き揚げられてから二十年、それぞれ何とか立ち上がっていらっしゃると思うんです。国に余裕があるならどんどん補償することはけっこうでございます。それならば、同じように財産も命も吹っ飛ばして、いまなお病苦にあえいでおいでになる人にあたたかい手が伸べられていないじゃありませんか、それを言うのです。引き揚げ者と被爆者とどう違うんです。私はこの点においては納得できない。厚生省は、命を守り、暮らしを守り、人間の健康を守るということがたてまえの省だと私は考えます。ところが、その厚生省が、こういう被爆者の血の叫び一この間被爆者が東京で援護法制定の要求をされてすわり込んでおる。その中で四人の子供にも影響している。被爆したことを隠して結婚した。四人子供が生まれて二人は死んで、一人は精薄、一人は指がくっついている。本人はいまだに毛細血管から出血がとまらない、こういう人がみずから路上にすわって政府に訴えているんですよ。この人たちだって、その本人だって、軍用の白金の、ある何とやらが足りなくて台湾から広島へ取りにきて、それで被爆した。ひとり熱におかされながら、軍命なるがゆえに、また台湾へ帰って、それで向こうでマラリアということで治療を受けて、それで頭から毛が抜けるやら何やらしながら内地へ帰って、小康を得て、二十七年に被爆者であることを隠して結婚、その長い間の苦しみというものを想像できるでしょうか。しかも、その人がいまなお出血におののきながら、子供から、おとうちゃん、なぜぼくの手はくっついているんだと聞かれて答えに困ると新聞に出ているじゃありませんか。こういう悲惨な人がどれだけ多くいるか、これに対して実能調査しなければわかりません。何年たったら実能調査が終わるんですか。こういう厚生行政では私は納得がいかない。しかも、これらの人の困る原因は、サンフランシスコ条約のときにアメリカに対して賠償権のすべてを放棄したということから、どこへ訴えるのですか、この人たちが訴えるのは日本政府以外にないじゃないですか。地主さんには、適正価格で買い上げたけれども、いまの値段からすればこれは少な過ぎるとか何とか理由をつけて補償いたしております。それから、また今度は引き揚げ者、一度補償したけれども、さらに重ねて補償している。四千億ぐらいになるんじゃないですか、三十二年ごろの約五百億という金は。これだけばく大な補償ができるのに、圧力団体のない、いつ消えるかわからない命のともしびにおびえながら運動を続ける人たちには政府はつれないのです。これは一体どうなんですか大臣、あなたの人間性に立って御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/23
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024・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 御意見は拝聴いたしましたが、私も、非常にこの原爆被爆者が悲惨であるということ、また、ほかの被害者よりはこれは非常に特殊な大きな被害を受けていらっしゃるということはよくわかります。そこで、これに対して私といたしましては何にもしない、そういうようなことを考えておるのではございません。ただ、これに対する措置をやるためには、いまとにかく調査の継続中でございますので、この調査を完了させまして、そうしてこれに対する何らかの適切なる方法を検討してまいりたい、かように申しておるのでございまして、何にもこれはもうほかのと変わりはないのだと、さような考えは全然私は持っておりません。とにかくいまやりかかっておりまするこの調査というものを、これをできるだけすみやかに完了いたしまして、その上で的確なる何らかの前向きの措置をこれは考えていくべきものであると、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/24
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025・藤原道子
○藤原道子君 わかったようなわからないことなんですよ。治療というものは早くすればなおるかもわからないんですよ。けれども、原爆症にかかっていることがわかっていながら、働かなければ食えない人たち、命が細るのを知りながら、なお働かなくちゃならない。働こうとしても、原爆被爆者ということがわかれば就職の機会も思うようには与えられない。病気が貧乏を生み、貧乏がまた病気を悪くする、結婚もできない、子孫に及ぼす影響も考えなきゃならない、どんなに苦しい思いをしているか。しかも、現在広島には原爆スラム街という所がまだ残っている。その人たちの生活の実態をごらんになったことがございますか。しかも、今度わが党から提案いたしております被爆者援護法、それをずっと積算いたしましても、その金額はわずかに八十七億、引き揚げ者に対しては、健康でぴんぴんしていらっしゃるけれども、再度にわたり多額の補償が与えられる。その日の命におびえながら細々暮らしている被爆者たちは、せめて医療をみてほしい、生活をみてほしい、子供の教育をみてほしい、こういう願いが間違っているでしょうか、と同時に、あなたは、引き揚げ者と軍は国家命令で逃げることができなくて働いていた人は身分を縛られているとおっしゃっていらっしゃる、広島、長崎の場合は身分は縛られておりませんよ。けれども、ああいう事態は国家責任で起こったんじゃありませんか。それと同時に、引き揚げ者の身分と被爆者の身分とどう考えたらよろしいでしょうか、それを明らかにしてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/25
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026・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 国家の命令によって法制上縛られておったということと、それから、広島、長崎の場合は、これは法制上はさようなことはないけれども、事実上の問題として、とっさのああいったような爆撃に対して逃げることは、逃げようと思えば逃げられたんだといったような、そういったような身分にあったということは私は考えておりません。これは法制上はそうではないけれども、しかしながら、事実としては広島、長崎に生活その他の関係上いなければならない、また、当然のそういった爆撃に対して逃げ得られる地位にあったとは、これはだれが考えてもそういうことは考えられないことだと思います。それから、また、引き揚げ者というものも、これは法制上どうということはありませんけれども、日本が戦争に負けて、それらの人たちが現地において長い間営々とつくった財産というものをだれしも捨てたくはなかっただろうと思いますけれども、しかし、捨てざるを得ないで帰ってきた、かようなことで、いずれにいたしましても、軍人、軍属も、また、原爆被爆者も引き揚げ者も、そうせざるを得なくて、さような運命のもとに帰ってきたということでございまして、そこに引き揚げ者が現地に踏みとどまる自由というものもなかったでありましょうし、原爆被爆者は逃げるという自由もなかったであろうと思いますし、片方は法制上そういう自由がなかったと、こういうことで、そうせざるを得なかったというような地位にあったということは、私は、性質は違うにいたしましても、やはりその間のその自由は束縛されておった、自由なる地位ではなかったということにつきまして、これは性質の違いがありましても、いずれもそうせざるを得なくてそうしたと、こういう地位にあったと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/26
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027・藤原道子
○藤原道子君 いずれも国が起こした戦争行為そのものによって起こった結果ですね、そうですね大胆。ところが、一方は財産は捨てておいでになったけれども、健康なんですね。こっちはあの悲惨な原爆を投下されて、一瞬にしてあれだけ大きな生命、財産すべてを失って、そして傷ついた人が三十何万、これらの人が生活に現実に困っているんですよ、医療のためにおびえているんですよ、それが放置されているということが私にはわからない。あなたがしきりに説いていらしたのは身分ですね。これは衆議院の速記録を見せていただきましたが、あらゆるところに身分ということが出ている、だけど、引き揚げ者と原爆被爆者とはどう身分の相違をつけるのですか、それを私は伺いたい、何だかんだ理屈はありましょうけれども、その理屈は通らない理屈ですよ。国民感情に訴えてごらんなさい。被爆者の問題を放置しておいて、世界じゅう注目しているのです。それも請求権を国が放棄したんじゃありませんか、どこに持っていってこのことを訴えたらいいのですか、政府以外にない。その政府も金がなくてどうにもならぬというなら、まだそこにもありましょうけれども、今日世界三番目という経済力を持っているその日本が、わずか八十億か九十億の金が出せないはずはない。理論づけが云々というなら、引き揚げ者の問題もあるじゃありませんか。現実に原爆症で治療方法もわからない世界で初めてのこの被爆者の実態を考えると、どんなにあたたかくめんどうをみても、み過ぎるということはないと思うのです。大臣、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/27
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028・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 私が身分ということを申し上げますのは、現行制度は身分というものが背景になっておる。そこで、この原爆被爆者については、実質、実態上の、これは先ほどからも繰り返し申し上げましたとおり、そういったような身分が縛られておるというわけではありませんけれども、そこにいなければならなかったということは、これは否定も何もできないことである。ただし、現行法では身分ということが背景になっておりますから、そこで、この問題をどう扱うか、積極的に前向きに何らの措置をするかということにつきましては、これは現行法から、現行制度から一歩踏み出して、踏み切って考えなければならない問題である。しかし、何ら踏み切る必要も何もないのだ、かようなことを私は申し上げておるのではございません。そのためには、どうしても、いまとりかかっておるのでございますから、実態調査をやった上におきましてこれは前向きに検討すべきものだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/28
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029・藤原道子
○藤原道子君 ところが、内閣のおえらい人は、これで戦後処理は終わったということを言っていらっしゃるが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/29
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030・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 内閣のおえらい……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/30
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031・藤原道子
○藤原道子君 あなたも一人です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/31
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032・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 私はさようなことを申し上げておりませんけれども、その後におきまして私も新聞でちらっとそういったような意見のあることは見ましたけれども、私はそういうようなことを言われた方とまだ話はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/32
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033・藤原道子
○藤原道子君 怠慢ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/33
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034・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) そこで、私は、私からこのことについてお答えを申し上げるのはちょっとお答えしにくい。その方がどういうことでおっしゃられたか、それにつきましては私からちょっとお答え申し上げることはごかんべんを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/34
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035・藤原道子
○藤原道子君 それはあなたからその人の気持ちをここで言うことはできないけれども、そういうことをあなたもちらっと見たとおっしゃる、聞いたとおっしゃる。それならば、そんなばかなことはない、担当大臣としてその人を説得したことがございますか、議論したことがございますか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/35
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036・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) まだ私は議論の過程には入っておりませんけれども、とにかく原爆被爆者に対する調査が今日進行中であるから、そこで、この調査の結果、われわれのほうといたしましては、その調査の結果に基づいて検討をしなければならない問題であると、これは言っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/36
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037・藤原道子
○藤原道子君 その調査はいつごろできるのか、どういう目的で調査を行なっておいでになるのか、それをちょっと明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/37
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038・中原龍之助
○政府委員(中原龍之助君) 実態調査の結果が全部まとまるのが秋でございます。現在集計中のものは、生活面の調査、それから健康の調査、医療面の調査、この二つでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/38
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039・藤原道子
○藤原道子君 その中間報告が出ているはずです。これはどういうところまで中間報告がなされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/39
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040・中原龍之助
○政府委員(中原龍之助君) 中間報告は、いわゆる基本調査でございまして、すでにこの問題につきましては一応報告を申し上げてございますが、その実態調査を受けたところの数、要するにできるだけ全部を調べたいということでやってございます。被爆者の数、それから被爆者の地域の分布、次は性別、年齢構成、被爆の状況、健康診断を被爆者にはやっておりますが、その健康診断の受診の状況、就業状況、それから、就業について何か差別を受けたことがあるかどうかというようなこともございます。できたら配偶関係、結婚について何か差別を受けたことがあるかないか、こういうような基本調査でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/40
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041・藤原道子
○藤原道子君 その点につきましては、私のほうにも調査のあれがありますけれども、きょうはあまり時間を食いますので、被爆者の問題については後日またあらためてもう少しやりたい。ただ、私は、この際言っておきたいのは、現在の法に基づいては云々と言われた。終戦後軍隊は解体したんですよ。ところが、軍人恩給が復活した。そのとき私どもとしては、軍隊が解体したんだから、軍人恩給というものが復活するのはおかしい。したがって、最大の被害を受けておる広島、長崎の原爆の犠牲者も含んで、戦争犠牲者補償法、こういうものを制定すべきだという主張をしたのですけれども、いまのようなことに相なったわけでございます。それが現行法ではこうだというならば、現行法をどんどん変えていらっしゃるんだから変えたらいい。新たなる法を制定したらいい。やるべきかやらざるべきか、被爆者を見殺しにしていいというのか。そうでないならば、それに即した法制定をしたらよろしい。被爆者援護法の制定をしなさい、それをする前には、まず、とりあえず審議会を設けて、その結論を尊重したらどうだということを申し上げているのでございますから、私はわからないことを言っているつもりはないわけでございます。いずれあらためてお伺いをしたいと思いますので、次に進みたいと思います。
遺族年金の額と兵の公務扶助料の均衡について、昭和三十年十月一日の改定では同和になったんですね。最初は兵の公務扶助料の額よりも遺族年金のほうが高かった。それか平等になったが、だんだんこれが変わってきて、いまでは三十三年十月一日以降は公務扶助料の額が上回っておりますが、少なくとも、恩給法における兵の公務扶助料の額と同一歩調にすべきではないか、こう考えますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/41
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042・実本博次
○政府委員(実本博次君) お示しのように、現在遺族年金の額と兵の公務扶助料の額とが一致していないのでございますが、これは先生のいまのお示しのように、恩給法の主たる対象でございます軍人と、それから遺族援護法の主たる対象でございます軍属というものとの間では、それがどちらも死亡原因が公務によるというものでございましても、身分の関係、それはまあ将校、下士官とか、あるいは兵とか軍属とかといった、こういう公務員としての身分の関係、それから勤務の態様、そういう条件に差がございますものですから、この援護法も、それから、もちろんその母体である恩給法も、これは自分が身分関係を持っている、つまり自分の使用人——公務員の国家補償の精神に基づいてやっております仕事でございますので、そこにやはりおのずから差が出てくるということでございます。これにつきましては、しかしながら、従来から、この両者の関係につきましてはこういった差を認めている一方、こういう差を縮めたらどうか、あるいは同額にしたらどうか、少なくとも公務扶助料の兵の額と同額にしたらどうかというふうな考え方もございまして、だんだんとこの差を処遇改善があるごとに詰めてまいっているわけでありまして、特に今回の時点におきまして、こういった軍人とか軍属の勤務の内容、あるいは勤務条件の相違をことさらに重視するのも適当ではございませんので、だんだんと機会あるたびごとに詰めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/42
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043・藤原道子
○藤原道子君 これを見ますと、初めは逆だったのですね、それが三十年で同額になっている。だから、三十二年から逆になってだんだん差は縮まっているが、わずかながらまだ相違がある。この際、やはり時代が逆行しているとかいろいろいわれるときですから、これを同額にすべきだと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/43
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044・実本博次
○政府委員(実本博次君) お示しのように、差がだんだんと縮まってまいってはおりますが、依然としてついているこの差につきましては、できるだけこういう身分によります差というものを縮めてまいりたい、あるいはなくしていきたい、こういうことで、今回の改正におきましても、その差を一番縮めました例をあげますと、六十五歳未満の者につきまして、今回のベースアップによりまして八百十六円という差にまで縮まっております。したがって、いまの考え方でいきますと、これはゼロになるということはございませんで、われわれの考え方としては、少なくとも兵の公務扶助料の額と遺族年金の額と、できれば同額にしてまいりたい、こういう努力目標を掲げて、事あるごとに努力してまいりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/44
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045・藤原道子
○藤原道子君 これは私は当然同額にすべきだということを強く主張しておきます。
それから、本邦内においての傷病による死亡については遺族の一時金の支給はないのですね、これはやはり平等に扱うべきじゃないでしょうか、どうなんでしょうか。今度この改正で、いままでは一年以内の死亡に限るとか、戦地勤務六カ月以上の者で、復員後一年以内に死亡したとか、復員後負傷または疾病で死亡したときには二年、こういう規定でありましたのが、これが少し申びたのですね。これは本邦内における傷病による死亡については遺族の一時金がない、こういうのは、せめてこういう改正があるならば、やはりこれらにつきましても遺族一時金の支給があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/45
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046・実本博次
○政府委員(実本博次君) 遺族一時金の支給をする場合には、これは公務性の立証困難な傷病によって死亡した場合の制度でございまして、たとい本邦内における傷病による死亡でございましても、純然たる公務による場合は、これは一時金ではございませんで、公務死亡として年金なり扶助料の対象にしているわけでありますが、ただ、ここで遺族一時金を差し上げる場合には、こういった公務に起因した傷病によって死亡したかどうかが非常に立証困難な場合につきまして設けました制度でございまして、で、その場合には、やはりこの復員後、戦地勤務が長かった人で、たとえば戦地勤務六カ月以上の者でありまして、こちらに復員してきてから、それはどういう病気であろうと、戦地勤務六カ月を経てこられた方につきましては、それが公務によって出てきた病気でなくても、とにかく全然それとは関係のない病気でございましても、一年以内の間に死亡なさった方には、公務性の立証は困難だけれども、一時金を差し上げる、こういう制度になっておるわけでございまして、したがいまして、そのいろいろ条件はございますが、本土でなくなられた場合につきましては、戦地勤務などと違いまして、やはりそれが純然たる公務であるということがはっきりした人だけを処遇していく、こういう考え方でございますのでそういう差がついておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/46
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047・藤原道子
○藤原道子君 戦後処理が進められて、内地における準軍属の場合、これは適用になったことはたいへんいいと思います。せっかく適用したんですから、やはり純然たる公務であるか純然たる公務でないかというのは、さっきの討論と同じようなものなんです。せっかく引き上げたなら、ここまで対象を広げたならば、やはりわずかなことなんですよ。これだって、遺族の身にとれば、やはりいかがなものでしょう。したがって、私は、これはやはり平等に扱うべきものであると、こう考えますが、もう一回。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/47
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048・実本博次
○政府委員(実本博次君) 準軍属の場合につきまして、先生のお話のように、軍人、軍属の場合は、勤務関連でなくなりました場合には一時金の処遇がありますが、準軍属の場合は、お話のように、勤務関連でなくなられた方には何ら処遇がしてないわけですが、この点につきましては、やはり軍人、軍属と準軍属との待遇の差を詰めていくというふうな観点から、なるべくそういうふうな準軍属の方にも何かの処遇をして差し上げなければならぬのじゃないかというふうな考え方で検討いたしてみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/48
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049・藤原道子
○藤原道子君 私は、毎年の法改正で準軍属の処遇がかなり改善されたけれども、軍人、軍属の処遇との間には、なお相当の格差がありますので、二十年を経た今日だから、国民感情の上から見ても、準軍属の処遇は軍人、軍属と差別しなければならない理由はないと思う。そういう点で御検討を願いたい。
それから、準軍属の対象ですね、それ明確にひとつ知らしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/49
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050・実本博次
○政府委員(実本博次君) 準軍属でございますね。この援護法で準軍属と申しておりますものは、まず第一に、旧国家総動員法の動員命令に、あるいは協力命令によりまして動員された徴用工あるいは動員学徒、こういう者がまず第一にあげられております。それから、その次に、元の陸軍または海軍の要請に基づく戦闘参加者、これは沖繩の島民の方々の戦争の末期におきますケースがこれに当たると思います。それから、昭和二十年三月二十二日の閣議決定によります国民義勇隊組織に関する件に基づいて組織されました国民義勇隊の隊員。それから、第四番目には、昭和十四年の十二月二十二日の閣議決定によります満州開拓民に関する根本方策に関する件に基づいて組織されました満州開拓青年義勇隊員の方々。それから、五番目には、旧特別未帰還者給与法第一条に規定する特別未帰還者。第六番目には、戦地に準ずる地域におきます勤務をいたしておりました元の陸軍または海軍部内の有給の嘱託員、雇員、傭人、工員または鉱員。こういった方々がいまの援護法というもので処遇されます。ただ、この際、内地の勤務の方が多うございますから、内地の勤務の方々につきましては、これは先生が先ほどお示しのように、昭和三十六年の改正で準軍属ということに処遇が相なったわけでございます。それまでは内地の準軍属はこの援護法の中には処遇していなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/50
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051・藤原道子
○藤原道子君 そこで、準軍人というのですか、準軍人というのは、陸軍の見習い士官とか何とか、こういう人は旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律で、それで特例扶助料または特例遺族年金というものが出ているのですね。これは十分の六ですか、遺族年金の。これが支給されているわけですね。ところが、準軍属に対してはこれらの措置はないということになると、昭和三十八年の改正で、非戦地勤務の有給軍属の中の旧令共済組合の適用を受けられない者は準軍属として援護法の対象となり、また、準軍属に対する戦時災害要件は撤廃されたが、これらの者が勤務関連により病気となり死亡した場合にもすべて特例遺族給与金を支給すべきだと思いますが、そうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/51
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052・実本博次
○政府委員(実本博次君) これは結論を申し上げますと、そうなっていないわけでございます。特例年金と申します、あるいは特例扶助料、こういいますものは、これは軍人、準軍人の場合のみに限りましてつくられておりまして、これは内地におきます勤務関連で死亡された方々を処遇した法律でございます。それで、しかも、この内地と申しましても、大東亜戦争になりましてからの内地で勤務関連で死亡された、大体まあ結核とか内科疾患の方が多うございますが、そういうことで兵営勤務中の非常に無理がたたって退職後結核でなくなられた、始めからしまいまで内地のケースですが、そういう方々を処遇するためにつくられた特例の法律でございまして、これは一般の戦地で、あるいはその他はっきりした公務でなくなられた方々の年金なり公務扶助料に対しまして六割、十対六という関係で処遇をしておるわけでございます。この場合は軍人と準軍人にのみ限っておりまして、それ以外の軍属とか準軍属についてはこの法律を適用していないわけでございます。しかも、これは傷害は考えておりませんで、死亡された方々に対する処遇だけでございます。いくいくはこういった内地で勤務関連で死亡された準軍属の人にもこういうことを考えてはどうかという考え方はあるわけでございます。これもやはり軍人と準軍属の処遇の改善をどうするかというふうな一般的な条件の中でおいおいと考えていかなければならぬ問題だと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/52
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053・藤原道子
○藤原道子君 おいおいと考えるといったって、もう二十何年たっておりますから、ここまでワクを広げた以上は、やはり準軍属の遺族にも十分の六というなにがあるのでございますから、当然適用されてしかるべきだと思いますので、一日も早くそういうふうにされることを強く要望いたします。
それから、未帰還者の調査ですね、これは一体どうなっておりますか。もうすでに大戦が終わってから二十年たっております。いまなお海外の地にあってその生死が明らかにされないもの、また、望郷の念にかられながら故国に帰り得ないもの、その実情に置かれておる未帰還者が相当あると思いますが、その家族はもとより、国民一般においてもまことに心痛む問題でございます。これらについての調査はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/53
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054・実本博次
○政府委員(実本博次君) 未帰還者の調査についてでございますが、現在未帰還者のまず現況から申し上げたいと思いますが、昭和四十二年五月一日現在の海外未帰還者は四千八百七十五人というふうな数になっております。で、これを地域別に見てまいりますと、ソ連地域が四百四十六人、それから中共地域が三千九百二十五人、北鮮地域百四十一人、南方その他の地域におきまして三百六十三人というふうなことで、合計四千八百七十五人の方が未帰還者ということで調査の対象にあがっております。右のそういった未帰還者のうちに、過去七年以内に生存している資料のありますものは二千百三十一名でございまして、これにつきましては現に生存しているものという推定がつくわけでございますが、その他の残りの二千七百四十四名の大部分につきましては、諸般の状況から見まして生存の望みの非常に薄いというケースであろうかと思います。こういう未帰還者につきまして、それではどういった方法で調査究明をやっているのかというお尋ねでございますが、国内的には帰還者等の方々から情報を提供していただきまして、未帰還者の消息を行動経過に従って追及してまいります。そこから収集し得ました諸般の資料を総合いたしまして未帰還者に関する最終的な状況を明らかにしてまいりまして、その結果、死亡が確認された方につきましては死亡公報を発行いたします。また、死亡の日時、場所が明らかでないが、消息を断った時期や場所を総合いたしまして、これはどうも死亡じゃないかと判断されるものにつきましては、当該未帰還者の留守家族の方々の同意を得まして、厚生大臣または都道府県知事が家庭裁判所に戦時死亡宣告の申し立てをすることにいたしまして措置をいたしておるわけでございます。こういった方法によりまして状況の不明な未帰還者各人につきまして昭和二十年八月九日以降の足取りを検討いたしまして、これと同一の行動をとった、あるいはとったと思われるなるべく多くの同地域からの帰還者から未帰還者の消息資料を入手することにつとめて、一つ一つのケースを究明いたしておるわけでございます。
それから、対外的には、いろいろ外交機関を通じまして、いろいろな機会を通じまして調査の方法を考えておるわけでございます。一面、いろいろな資料をこちらから提供いたしまして、それについての御返事をいただくというふうなかっこうになっております。それから、国交のない国におきましては外交機関が使えませんので、赤十字その他の機関を通じまして、いろいろ未帰還者の調査の方法を講じておるといった現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/54
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055・藤原道子
○藤原道子君 結局最近、日がたつにつれて、これらの問題についてだんだんいろんな点が薄れてきているような感じがするのです。これらを見ますると、やはり家族の気持ち、それらを勘案いたしますとき、やるせないような気がいたしますので、ぜひこの点は情熱を持って促進をしてほしい。かつ、その他の問題についても、調査もございますが、時間の関係で次に移りたいと思います。
そこで、いま引き揚げ希望者、これに対する措置についてお伺いしたい。結局日本人の引き揚げは、現在では主として共産圏地域にだけ残された問題のように思うので、まだ平和条約が締結されていないこれらの国々からの引き揚げは個別引き揚げ以外にないように思うのですけれども、最近ではソ連と中共地域からの個別引き揚げの現状は、三十八年に百十二人ですが、昭和三十九年二日四人、昭和四十年には二百四十七人になっておりますが、最近における引き揚げ状況及び今後の見通しについてはどういうふうに把握しておいでになり、見通しはどう立てておいでになるか。また、年々共産圏地域にあって帰国を希望する者が多数いることが判明しているといわれておりますが、このようなたくさんの希望者の引き揚げを促進するためのあらゆる援助措置を講ずる必要があると思いますが、どういう方法を考え、現在どういう方法をとっておいでになるか、これを伺わせてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/55
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056・実本博次
○政府委員(実本博次君) 地域別に見てまいりますと、ソ連地域につきましては、現在百余名の帰国希望者のあることが判明いたしておるわけでございますが、本年の五月に川島特使の訪ソにあたりまして、帰国希望者のうち、すでにソ連政府から帰国の許可があった者、それから、ソ連赤十字に帰国を請願しておりました者、合わせまして四十六人の方の帰国の促進について申し入れをいたしましたところ、ソ連側から、これらの方々については帰国をさせる旨の回答がございました。これ以外の未帰還者につきましても、ソ連側は、本人に帰国の意思がありますれば帰国をさせるというふうな態度を表明しておりますので、帰国希望者は逐次手続を経て帰国してまいられるというふうに考えておるわけでございます。
それから、中共地区でございますが、これは約五百名の帰国希望者が判明いたしておりますが、これらの方々につきましては、すでに中共を出ます出境に必要な帰国に関する証明書を、留守家族を通じまして、御本人に送付済みでございますので、中共側の出国許可があり次第、逐次帰国なさることになっているわけでございます。なお、ソ連及び中共側のこういった帰国者の方々に対しましては、居住地から帰国に至りますまでの旅費が負担できないものにつきましては、政府におきましてこれを負担するということにいたしておりまして、その帰国を促進しておるわけでございます。
次に、北鮮地域でございますが、これは少数の帰国希望者がいることが判明いたしておりますけれども、数については明らかでございませんが、日本赤十字社を通じまして、その実現についていま努力しておるところでございます。
それから、韓国につきましては、在外日本公館が設置されておりますので、日本婦女子等の方々の帰国も非常に順調に行なわれているといった現状でございますが、とにかく帰国の希望のある方につきましては、帰国の旅費を負担できない方々について先ほど申し上げましたような援助をして差し上げて、一日も早く希望をかなえさしてあげたいというふうに努力をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/56
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057・藤原道子
○藤原道子君 旅費その他を援助して帰国の便を与える。はだかで帰った人たちの、何といいますか、職業につくまでの生活の援助等はどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/57
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058・実本博次
○政府委員(実本博次君) 引き揚げてこられました方々に対しましては、まず上陸地におきまして応急援護をして差し上げるわけでございますが、その際には、十六カ所の検疫所を一応受け入れ機関にいたしておりますが、その受け入れ機関内におきます給養を行ないますほかに、帰還手当、それから帰郷旅費といったようなものを差し上げております。それから、定着地に帰られました場合については、引き揚げ者に対します更生資金というものを貸しつけて、これを更生のよすがにいたしておるわけでございます。
なお、先ほど先生からお話のございました、三十二年につくりました第一次の「引揚者給付金等支給法」によります引き揚げ給付金を差し上げるとともに、今後在外財産の補償の関係の法律が成立いたしますれば、その要件に該当しておればそれも支給できる、こういうふうな仕組みになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/58
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059・藤原道子
○藤原道子君 あの引き揚げ地で出しておる手当、これの額、それから定着地の更生資金、これらの額は幾らでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/59
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060・実本博次
○政府委員(実本博次君) 帰還手当はいま一万円でございます。それから、更生資金の額は一件につきまして原則として五万円、こういうふうな額になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/60
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061・藤原道子
○藤原道子君 これは更生資金として給与するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/61
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062・実本博次
○政府委員(実本博次君) 貸し付けでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/62
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063・藤原道子
○藤原道子君 わかりました。これは希望者は一日も早く帰られるように、さらにその手当てを進めてほしいと思います。
そこで、最後にお伺いしたいのですが、外地戦没者の遺骨の収集ですね、それから戦没者遺族の戦跡巡拝ですか、墓参などの実施状況、それから今後の計画などを明確にしておきたいと思います。その費用等はどこから出ているのか、これらもあわせ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/63
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064・実本博次
○政府委員(実本博次君) 大体戦没者の遺骨収集につきましては、政府といたしましても、昭和二十八年以来、数次にわたりまして南方の諸地域、あるいはソ連地域等につきまして実施いたしました結果、地域的には、旧満州地域を除きまして、一応終了したものと考えておったわけでございますが、最近特に南方の諸地域、全島あげて玉砕されたというふうな南方の島々、あるいはフィリピンといったようなところにつきましては、先ほど申し上げました遺骨収集は、何ぶんにも広範な地域に対しまして、限られた人員と限られた日数とをもって行ないました関係上、やはり山野にまだ未処理の遺骨が発見されるというふうなことで、そういう情報がもたらされている地点がまだ相当ございますので、このようなものをそのままにして放置しておくということは全く申しわけないことでございますので、こういった地点につきましては、当該国と交渉をいたしました上、さらに遺骨収集を実施することにいたしまして、四十二年度におきましては、フィリピンのうちでルソン島、それからレイテ島及びマリアナ諸島のサイパン、テニヤン並びにカロリン諸島のメレヨンにつきまして遺骨収集の計画を立てているわけでございます。で、何ぶんこういった広い地域におきまする収集作業でございますので、ことし一年限りではとてもこれは無理でございまして、まだあと数年計画でこういった地域につきましての遺骨収集の仕事を続けてまいりたいというふうに考えております。ちなみに、ことしの先ほど申し上げましたような計画につきましては、政府といたしまして遺骨収集費に千三百二十万円ばかりのものを計上いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/64
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065・藤原道子
○藤原道子君 それから、私よくわからないのですけれども、戦犯で処刑された人の遺骨ですが、これはどうなっているのですか。それは戦犯で処刑されたものは現地から持って帰るわけにはいかないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/65
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066・実本博次
○政府委員(実本博次君) これは外地におきます場合でございますね。外国におきます戦争裁判の処刑でなくなられた方々は約一千名の多きにのぼっておられますが、これらの方々の遺骨は大部分持ち帰っておりますが、まだ中国と香港及びベトナムに若干残っております。それ以外のところについては全部収骨を終わって、こちらに持って参っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/66
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067・藤原道子
○藤原道子君 それから、特に第二次大戦で沈められた艦船ですね、これの引き揚げ並びに遺体収集についてはまことに遅々として進まないように聞いておりますが、現状はどうなっておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/67
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068・実本博次
○政府委員(実本博次君) 今次の戦争で沈没いたしました日本の艦船は約三千隻に及んでおりまして、その海上におきます戦没者の数が約三十五万人と見込まれておるわけでございますが、これらの沈没艦船のうち、引き揚げ可能のものにつきましては、いまのサルベージの技術では、大体海の水深五十メートル以内の所のものでないとサルベージの技術として引き揚げがむずかしいのだそうでございますが、そういう引き揚げ可能なものにつきましては、関係業者の——これは御存じのように、日本の領海内に沈んでおりますのは日本の国有財産でございまして、外国の領海に沈んでおりますもの、あるいは公海はちょっと所属不明ということになるのですけれども、外国の領海に沈んでおりますのはその当該外国の国有財産になっておりますものでございますから、これに手をつけようとします場合に、その当該国にその国有財産となっている沈没艦船の払い下げをまず申請して、認められればそれから国有財産を引き揚げる。その引き揚げるときに御遺骨を一緒にあげていただく、こういうようなかっこうで終戦後処理してまいっておりますが、こういった国有財産の払い下げを受けて仕事をします関係業者の計画と責任において引き揚げと解撤が実施されてきておるわけでありますが、いま申し上げましたように、その際にこれらの艦船の船体内に残存しております戦没者の御遺骨につきましては、できる限り丁重かつ完全にこれを収容いたしましてわがほうに引き渡されるよう処置しておるところでございます。収容されました遺体は、当方の責任におきましてこれを荼毘に付しまして関係の御遺族に伝達をするというような措置をとっております。日本のこの沿岸におきます沈没艦船のうちで、引き揚げ可能なものはすでにもうほとんど引き揚げ済みでございまして、これまでに引き揚げられた約五十隻の船体内からは約二千三百六十体の遺体を収容いたしております。
それから、外国の領海内にある沈没艦船は、元日本側の所有にかかるものであっても、先ほど申し上げましたように、現在は当該国の所有に属しておるものでございまして、日本といたしましても、これを直接引き揚げの対象とすることはできませんが、これらのうちにその引き揚げ、解撤を日本の業者が担当するものにありましては、その協力を得て船体内の残存遺体を極力収容するほか、外国側の手によって収容された遺体についても日本側に引き渡されるよう措置しておりまして、これまでに外地において引き揚げられました約五十隻の船体内から約九百六十体の遺体を収容いたしておるところでございます。ちなみに、このフィリピンのマニラ湾及びセブ島周辺の沈没艦船については、日本との賠償協定による役務賠償の一環といたしまして、昭和三十年から四十年にわたりまして日本の業者によって引き揚げ、解撤が行なわれ、引き揚げ可能のものにつきましては引き上げ済みとなっておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/68
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069・藤原道子
○藤原道子君 私は、きょうは概略をお伺いいたしまして、それで、最後に大臣にお願いをしておきます。先ほど来、被爆者の問題をお伺いいたしましたけれども、まことにこの点につきましては納得のいかない点も多々ございますので、日をあらためてお伺いしたいと思いますが、審議会をつくること、それから援護法をつくることを強く私は要望しておきますので、次回に中間報告を伺いますと同時に、そういう方向でもってお考えを進めていただく。次回にまたお伺いさしていただきたいと思います。きょうはこの辺で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/69
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070・土屋義彦
○土屋義彦君 遺骨収集の問題につきまして、関連して二点ほどお伺いさしていただきたいと思います。私は、去る五月の十五日から十九日までの五日間にわたって、第二次大戦の玉砕島であるグアム、サイパン両島を訪ねまして、特にサイパンにおきましては、現地人の案内によって、最近発見されたといいます洞窟に参りましたところが、戦後二十二年を経ました今日、いまなお戦没者の遺骨が風雨にさらされて放置されておりまする状況を見まして、まことに身の引き締まる思いをいたしたのでございます。現地人に会いましても、一日も早く日本国政府の手によってこれが収集を早急にやってもらいたいということも強く訴えられておるような次第でございます。そこで、サイパン島の遺骨収集等はいつごろ予定されておりますか、その点につきましてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/70
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071・実本博次
○政府委員(実本博次君) 四十二年度におきましては、藤原先生の御質問のときに申し上げましたように、主としてフィリピンを予定いたしておりますが、同時に、マリアナ群島のサイパン島とテニアン島も予定いたしております。フィリピンのほうはこの秋十月以降に考えておりまして、サイパン、テニアンは、気候その他の関係もございますので、来年の一月か二月ごろの予定で収集に参る予定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/71
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072・土屋義彦
○土屋義彦君 それから、遺骨収集が行なわれたあとの慰霊碑等の管理ですね、これは現在どういうことになっておりますか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/72
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073・実本博次
○政府委員(実本博次君) これは遺骨の眠っております場所、それから、その場所の所属いたしております国、政府との関係でいろいろな条件の差がございまして、そういう条件と申しますのは、無条件にそういうものを建てるなり土地の提供なりを許してくださるところと、それから、全然もうこれが侵略者の、われわれの平和な土地をひどい目にあわせにきた人たちのなきがらだから、そういうものにそういう場所を提供するとか、自分たちの国のたったネコの額のような所でも、さくのはいやだというような感情がある、そういう両極端の条件があるわけでございますが、いいところにつきましてはそういう慰霊碑なり墓地を得まして、そこで現地慰霊を行ないまして慰めをするということをいたしておりますが、そうでないところにつきましては、そういった碑も建てられないままに、とにかく収集できる可能な限りの遺骨をその地からお迎えして帰ってくると、こういうふうなことになっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/73
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074・土屋義彦
○土屋義彦君 過般参りましたサイパン島のチャランカノワの町に、過ぐる昭和二十七年か八年に政府から派遣の慰霊団が参りまして慰霊塔が建っておりましたが、その周囲は草がぼうぼうとはえておりまして、ほんとうに見るにたえないような状況にございました。どうかひとつ方法をお考えいただきましてこれに善処していただきたいと思います。いろいろ沈没艦船等の問題につきましては、昨年私は当委員会におきましてお尋ねをいたしましたが、きょうは時間もございませんので、後刻にまた日をあらためてお尋ねをさしていただきたいと思いますが、この問題につきましては、先ほど藤原先生からも御発言がございましたとおり、昨年は特に社会党の成田書記長が当時の愛知官房長官をおたずねいたしまして、海外戦没者の遺骨の収集等は国が責任を持ってやるべきだということを佐藤総理大臣に文書をもって提出しております。どうかひとつ政府も勇気をもってこれが収集、また、沈没艦船の引き揚げ等に努力をしていただきたい、このことを心から要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/74
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075・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 御意見の点は非常にごもっともだと思います。何ぶんにも地域が非常に広範なために、早急にこれが完了いたさないことはまことに遺憾でございますけれども、政府といたしましては、御意見に沿いまして、鋭意努力をいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/75
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076・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) では、午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時二十九分休憩
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午後一時五十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/76
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077・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び戦没者の父母等に対する特別給付金支給法案についての質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/77
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078・川野三暁
○川野三暁君 ただいま審議されております援護法に関係した問題で、この機会にひとつぜひ質問をしておきたい問題でございまするが、最近マスコミ等でにわかに取り上げられた問題で、かなり世論も高まりつつあるやに思うのでありまするが、その問題は、広島県の竹原市忠海町に所属しておりまする大久野島という島が所在をいたしておるのでございまするが、この大久野島が、戦時中、あるいは戦前から旧東京陸軍兵器廠の忠海製造所というところに所属しております大久野島毒ガス製造所というものがあった場所でございます。この大久野島の毒ガス製造所に働いておりました従業員が多数毒ガスの障害を受けまして、今日きわめて悲惨なる戦争のつめあとを残しておるのでございまするが、この援護問題について二、三ひとつ質問をいたしたいと思うのであります。
今日までこの援護処置の問題を取り扱っておられました大蔵省の給与課課長にひとつ質問申し上げたいのでありまするが、戦時中、この大久野島の毒ガス製造所の従業員の中でガスの障害を受けた者に対しましては、昭和三十九年以来、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法に基づきまして援護の措置が講ぜられてきたわけでございまするが、この援護処置が、戦傷病者戦没者遺族等援護法や、あるいは原子爆弾被爆者の医療等に関する法律等によって、戦傷病者並びに原子爆弾の被爆者が国から援護を受けておることに比しまして、きわめて不均衡であると思うのであります。昨年八月、当委員会は、この大久野島毒ガス障害者の実態調査を実施いたしたのでありまするが、その報告書によりますと、「毒ガス障害は放射能障害と同一視すべき特殊な障害と思われます。しかるに、その救済措置は、原爆被爆者と比較してやや格差がある」と報告いたしておりますとおり、たとえば援護法では、遺族年金あるいは遺族給与金及び弔慰金等が支給されておるのでありまするが、ガス障害者に対しては支給されていない、こういった不均衡な点があるのでありまするが、こういう点について、ひとつどういうわけでそういう不均衡があるのか、承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/78
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079・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) われわれが現在実施いたしております大久野島の旧陸軍造兵廠忠海製造所従業員の方々に対するガス障害についての処置は、先ほど三十九年来とおっしゃいましたが、実は二十九年でございまして、二十九年からわれわれの国家公務員共済組合連合会におきまして取り扱っておるのでございます。これも先ほどちょっとおっしゃいましたが、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法という法律に基づきましてという措置ではなくて、実質的に、御承知のように、旧陸軍には陸軍共済組合というものがございましたが、終戦によりまして消滅をいたしました。もちろん海軍も別にあるわけでございますが、その年金者の権利義務を引き継ぎまして給付をいたしておるというのが旧令の法律に基づく措置でございます。いわば大久野島のガス障害者の方々につきましては、当時旧共済組合がございましたけれども、先ほど申し上げましたように、消滅をしたあとで、先生お述べのように、漸次症状の悪化、廃疾の高度化、あるいは死亡というような状態が発現をしたわけでございます。これにつきまして実質的に措置といたしまして救済をはかる、これは先ほど申し上げた旧陸軍共済組合の存続しておるものと仮定をした場合に、旧令の年金者を、先ほど申し上げましたが、旧令特別措置法によって連合会が扱っておるという措置の周辺といたしまして、連合会をしてこれを扱わせるということに相なったのでございます。具体的に申し上げますと、二十九年の二月にガス障害者救済のための特別措置要綱、それから、認定審査会要綱というものを定めまして、これは行政措置でございますが、全額負担で措置をとろう。その措置の第一は、旧恩給法で規定しております四項症以上の廃疾につきまして、旧陸軍共済組合規則においてはこれを年金廃疾としておりまして、その障害に該当する人につきましては障害年金を給する。この障害年金は旧令に引き継ぎましたときに一級から六級という障害等級の改定をいたしておりますので、その改定に伴った分類に応じて、該当するものはここに当てはめるという取り扱いをしておるわけであります。
それから、次は、遺族の関係でございますが、障害年金受給権者が死亡いたしました場合に、この遺族には年金の五カ年分と同額相当分を障害年金者遺族一時金として支給するということにいたしておりまして、これは旧陸軍共済組合規則の遺族扶助金に該当するというような類似性をいま申し上げる前提で見まして措置をいたしておるわけでございます。それが年金一時金給付の当初からの発足でございますが、もちろんこの額につきましては、旧令の、御承知の、主として恩給に伴う改定措置に応ずる仮定俸給の引き上げに伴いまして、その引き上げられた仮定俸給による計算をいたしております。
それから、別な面で、療養でございますが、療養を要するガス障害者につきましては、連合会病院でありますところの忠海病院、呉病院で療養給付を実施をしておるわけでございます。当初療養期間は三年ということに二十九年二月発足当時はなっておりましたのでございますが、漸次これを延長いたしまして、数次にわたって延長いたしておりますが、現状では、三十八年以来の改正で、当分の間必要に応じて療養給付をいたしますということで、無期限の措置になっておるのでございます。それから、昭和三十六年の四月以降は、原爆に対する救済措置の例に準じまして、ガス障害者の療養期間中は月額二千円を医療手当として支給いたします。これもその後改定がございまして、昭和四十年度から月額三千円、昭和四十二年度の本年度からは月額三千四百円ということで、原爆措置の例に準じて行なっておるのでございます。
それから、終りに、昭和四十年からは障害程度が、先ほど申しました旧恩給法の四項症以上というもののみならず、それよりも軽度といいますか、廃疾程度の下にある五項症以下四款症以上という人につきましても、障害一時金を旧陸軍共済組合規則の区分によりまして支給をしておるということでございます。
それで、なぜ援護の関係といま申し上げる措置との間に格差があるかという点は、援護法においては援護法の水準がございましょうし、われわれのほうは単純に水準の比較ということではございませんで、いま申し上げるような旧陸軍の共済がありせば、共済組合としてできる限度はこの程度であり、また、補償に努力してその範囲を広げて支給する、あるいは療養給付するという措置を共済関係において取り得る最大限まで行なっている状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/79
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080・川野三暁
○川野三暁君 大体了解いたしますけれども、そこで、医療手当、これはまた四十二年度に改定されることになっておりますが、もし改定をされる場合には、原爆その他の医療手当同様に改定されるお考えですか、医療手当は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/80
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081・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) 先ほど申し述べましたように、四十二年度からは医療手当三千四百円という改定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/81
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082・川野三暁
○川野三暁君 先ほどちょっとお伺いいたしましたように、元来、大久野島ガス障害者の援護措置というものは、昨年当委員会の委員派遣の事後報告にもありますように、大体原爆被爆者と同様の障害であると考えるので、少なくとも、この援護措置は原爆被爆者と同様に、当時の大久野島毒ガス製造所で製造に従事した者はすべて毒ガス障害者であるという前提に立って医療補償の徹底をはかる、しかも、国の責任において、全面的に、毒ガス障害者の健康管理はもとより、補償を行なうべきであるという、私はそういう考えを持っているわけでありまして、後ほど厚生大臣のこの面についての所見も伺いたいと思うのでありますが、したがって、先ほども申しましたように、援護法、あるいはその他原爆被爆者に対するところの医療に関する法律で規定されておりますのと、この大久野島毒ガス障害者の援護措置とにたいへんな格差がある、この点は是正するお考えがあるかどうか、この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/82
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083・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) 先ほど来申し上げておりますように、われわれのとっております措置は、旧令の共済組合の存続を前提とするその範囲内での措置として行なっておりまして、したがいまして、当時の陸軍共済の障害年金、あるいは遺族扶助金、障害一時金というような給付も公務関連の廃疾でございます。したがいまして、われわれのほうは、具体的な手順として申し上げますと、この問題につきまして、すでに御承知の先生に申し上げるのは釈迦に説法でございますけれども、先ほど申し上げました二十九年にこの措置を始めましたときに、いま申し上げた前提において所要の救済を行なうにはどういう手続をとるべきであるか。これは現在もその機関で行なっておりますが、連合会において連合会理事長が行なう給付、療養年金、一時金の給付の前提となる認定を二つの機関で行なっております。
まず、第一は、ガス障害調査委員会というものがありまして、これは当時従業員であったかどうか。それから、年金一時金は申すまでもなく、当時の職種、給料によりまして、その金額は、もちろんいま申し上げました仮定俸給の上昇はございますけれども、まず当初における格づけということがございます。その辺の事情を証拠によりまして認定をするという委員会が一つございます。
それから、第二に、これは先ほど来御指摘をいただいておりますような医学的に非常にむずかしい問題でございます。そういう面から認定審査会というのを設けまして、認定審査会におきましては、原爆研究所長でありますとか、あるいは広島大学、慶応大学というような関係の先生方、それから、病院としまして、連合会病院では、先ほど申し上げましたように、忠海病院と呉病院で療養の給付を行なっておりますので、その病院長というのが入っておるわけでございます。われわれ医学的には詳いことはわかりませんが、そういう認定機関を経まして公正にこれが運営されており、また、医学的にも非常にむずかしい問題であるために、その面の議論はいろいろございましょうけれども、その間の公務関連性及びガス障害の程度が認定のつく限りにおきましては十全の給付を行なうべきであるというたてまえで、当然この給付を行なっておるというたてまえでございます。重々しつこいようでございますけれども、われわれ共済組合における連合会は共済組合の連合体で、連合組織ではございますが、共済のシステムの上に成り立っておるものでありますし、また、旧陸軍の共済組合という観点から、行政措置としてそういう基準、条件で行なっておるという措置でございますので、われわれの救護措置というのが現状の状態にあるという点を御了承いただきたいと思います。これは蛇足で、別に申し上げることもないかと思うのでございますが、そういう面以外からの援護という問題につきましては、われわれ共済組合において直接は対象としがたいというたてまえでやってまいっておる措置でございますので、この点を御了解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/83
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084・川野三暁
○川野三暁君 大久野島の毒ガス障害者のこの実態の問題につきましては、昨年来新聞あるいはラジオ、テレビ等のマスコミでいろいろ報道をされておる内容、その他の資料がみんなまちまちでございまして、たとえて申しますると、従業員が当時どのくらいおったのか、あるいは従業員の中で今日いわゆる毒ガス障害の症状が出ておる者が一体どのくらいおるのか、いま給与課長の言われるのでは、その医療給付を受ける資格の資格審査委員会みたいなものがあるそうでございますが、これはおそらく国家公務員共済組合連合会の会長の諮問機関か何かで、認定委員会でございますか、まあ調査委員会というか、認定委員会という二つの何か委員会が諮問機関のようになってできておるようでありますが、その認定の基準の問題等についてもあとでお聞きしたいのでありますが、その認定委員会で、確かに大久野島の毒ガス障害によるものと認定をするという、その認定を受けた者が今日何人おるか、そうして地元の忠海病院の院長の診断を受けて、確かにこれは毒ガス製造に従事したために受けた障害であると病院長から診断をされて連合会会長に申し出た、申請ですか、申し出た者が一体どれだけおるのか、そういう大久野島毒ガス従業員、あるいは障害者の実態というものをいままで調査をされたことがあるかどうか。その調査をされておりますならば、その実態についてわかりやすく数字でお示し願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/84
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085・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) われわれのほうのシステムは、先生御指摘のように、連合会理事長の諮問機関として二つの機関、がございまして、それぞれ、たとえばガス障害調査委員会でありましたならば、いわば従業員の身分、所属を確認すると、こういうことでございますので、元忠海製造所長でありますとか、あるいは技師長でありますとか、あるいは工員の代表の方であるとかという構成をもって審査をされておるわけでございます。認定審査会のほうは、先ほど申し上げましたように、医学的な見地から、ガス障害であるかどうか、治療、療養を要するかどうかということを認定さするということでございます。ことばじりを拾うようでございますが、先ほどおっしゃいました連合会病院長の確かにガス障害であるという認定を受け、診断を受けて療養の申し立て、あるいは給付の申し立てをされるという点は、実はそのための認定でございまして、認定審査会におきまして当該病院長も参加した上で認定を行なっておるところでございます。それから、前後いたしましたが、そういう機関によりまして申し立てによる審査をしておりますので、広く一般のその地域、あるいは製造所全般につきましてどういう実態であったかということを特に積極的に実態調査をいたした実跡はございません。
それから、もう一つ御指摘の調査委員会におきましては、療養の申し立ては、二十九年設置以来、人間の数にいたしますと四百三十八人でございます。そのうち採択をいたしましたのが三百五十七人、不採択、これは明らかにその所属の証拠がないし、いま申し上げたような構成員が入っておるわけでございますので、採択、不採択はその証明によりまして行なわれるということで、二十七人不採択、差し引き五十四人の方が保留になっておるわけでございますが、これはあるいは決断のしかたによりましては不採択ということで落としてしまうということも可能であるかとも思いますが、一部の証拠がある、さらに補強を要するというような人々につきまして特に保留しておるという人数が五十四人でございます。年金一時金につきましては、申し立て人員五十四人、採択四十二人、不採択九人、保留が三人という計数でございます。
それから、別な機関の認定審査会でございますが、これは療養申し立てがありまして審査対象になりまして人員が三百二十九人、認定されましたものが二百十四人、非該当、これが五十八人、差し引き保留五十七人、これは健康保険の被保険者でありますとか、あるいは病状の推移によりまして、先ほどの調査委員会の保留について申し上げたと同様な、不採択と保留との確たるけじめは一がいには言えないと思いますけれども、できるだけ保留の状態で証明を待つ、あるいはその病状の推移を見るというようなことで五十七人が保留となっております。
それから、年金一時金につきましては、先ほど申し上げました廃疾程度によりまして決定をするわけでございますが、審査人員は五十八人でございます。そのうち、認定のありましたものが五十二人、非該当が六人ということで、この点は障害がはっきりしておりますので、保留はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/85
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086・川野三暁
○川野三暁君 先ほど連合会の会長に大久野島毒ガスの障害者であるという健康の診断を受けて申し入れた者が、それが不採択になるのはどうかという意味の質問をいたしたのでありますが、いまの御返事によりますとそういう事実はないということですが、その事実は実際ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/86
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087・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) 委員会の仕組みといたしまして、あるいは認定審査会の仕組みといたしまして、まずその構成員が予断をしてそれを決定するということは論理的にあり得ないということを申したのでありまして、実態的にそういうことがあったかなかったかという点につきましては、まことに申しわけないんですけれども、存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/87
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088・川野三暁
○川野三暁君 そこで、ガス障害者の資格を決定をする認定委員会の認定の内容といいますか、基準の問題についてちょっとお伺いしたいのでありますが、これは私は全く医学的な知識がございませんので、いささか愚問になるかわかりませんが、広島の原爆被爆者の認定につきましては、これは非常に範囲が広いのでございまして、後遺症が原爆の被爆者にあらわれた場合に、その症状が放射能障害によるものか、それとも他の原因によるものであるかということを医学的に認定するということは、原子爆弾被爆者の場合もまことに解明されていない医学上の重大な問題であろうと思うのであります。したがって、原爆被爆者の場合は、御承知のように、被爆した者は、当時原爆被爆地に入った者、原子爆弾が投下された以後に被爆地に入った者、あるいは被爆地で作業した者等、全部を原爆被爆者とみなして手帳を渡しておるのでございますが、このガス障害者の場合は、障害者であると資格を認定する、それがきわめて厳重にやられておるようでありますが、その学術的と申しますか、そういう専門的な問題について、これは確かにガス障害による症状である、これはガス障害以外の症状であるという、そういう認定の内容を認定委員会から、まあ私の想像で、推定でございまするが、大蔵省ないしは連合会の会長に答申をされてあるのであろうと思いまするが、その答申の内容を、こういう点は該当するが、この点は該当しないという一種の認定のきめ手となるようなものが医学的にあって決定をなさっておいでになるとは思いますけれども、その点が、私は、ガス障害者のその病状というものにつきましては、これは新聞その他で私は常識的にただ理解をしておるだけでございますから、専門家から見ればいささか愚問であるかもしれませんけれども、ガス障害に対する今日研究というものは、ヨーロッパで第一次戦争のあとフランスで若干のデータがある程度でありまして、なかなか容易にその判定がつきかねるものではないだろうかと私は想像するのであります。したがって、該当者と非該当者を決定をして、決定するいわゆる認定基準といいますか、そういうものをどういうふうにお考えになっているのか、もしわかりましたならばひとつ御報告願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/88
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089・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) まことに恐縮でございますけれども、先生以上に、私は法科出身でございまして、医学のことは全然わかりません。したがいまして、医学的に非常にむずかしい、その基準が実質的にはどうなっているかという御質問に対しましては、
〔委員長退席、理事佐野芳雄君着席〕
これは遺憾ながら答弁をいたす能力がないと申し上げざるを得ません。ただ、しかし、先ほど申し上げましたように、大学の先生方、それから病院長、あるいは当時の兵器学校、もと陸軍軍医学校の関係の方、そういう方も入っておりますし、保健所長も入っておられるというふうな構成でございますので、医学的に公正に判定をされておるというふうに承知をいたしております。それから、それをチェックする資料はどこにあるかというお尋ねでございますが、これは先ほど申し上げましたように、連合会において、われわれから見ますと強制措置として行なっていることでございますので、連合会の系統に、東京に本部がございますが、あるいは現物が上がってきておりますか、この点は問題でございますが、あるいはその原始的な証拠、資料というものは現地にとどまっているにいたしましても、それを基礎とする報告は当然出ておりますし、もしその原始的な記録について内容がどうこうということでありましたら、当然それはいずれかの段階において所在しているという答弁をすることができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/89
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090・川野三暁
○川野三暁君 毒ガス障害による後遺症を学術的に研究をいたしておりまする機関が、ガス障害者の多発地帯といわれておりまする竹原市か、あるいは竹原地区のどこかに研究所か研究会みたいなものが設置されておると聞いておるのでありますが、その点御存じでありましたら教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/90
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091・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) まことに不明でございますが、存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/91
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092・川野三暁
○川野三暁君 大久野島毒ガス障害研究会というのが、私が調べました結果では、広島大学の和田博士、それから山田博士、それから竹原の保健所長、それから忠海の病院長、この四名をもって大久野島毒ガス障害研究会というものが現在設置されておりまして、広島大学で和田内科において鋭意真剣に毒ガス障害の医学的な研究が続けられておると聞いておるのであります。これはちょっと的はずれの御質問かもしれませんが、厚生大臣もちょっとお聞きになっておいていただきたいことは、この広島大学の和田内科がやっておりまする毒ガス障害者の医学的な研究、特にその毒ガス障害によって多数出ておりまする肺ガン、その肺ガンの研究助成費として、アメリカの国立衛生研究所でございますか、NIHという機関から三度ばかり助成金が、国立大学である広島大学の和田内科のこの毒ガス研究費、あるいは助成金として出されておるということを聞いておるのでありますが、こういうことは一体お聞きになっておるかどうか、これは的はずれの質問かもしれませんが、これは給与課長、ちょっとやはりあなたはこれに関係しておられるんだから、何か耳にしておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/92
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093・津吉伊定
○説明員(津吉伊定君) 遺憾ながら、その点は存じておりませんですが、御指摘になりましたこれは、われわれのほうの名簿で和田という広島大学の教授も認定審査会の委員に入っておられますし、また、竹原保健所長も参加しておられるということでございまして、その毒ガス研究会というものが別途つくられて、別途といいますと語弊があるかどうかわかりませんが、何かそういうものがあるということは存じておりませんし、その研究費の補助云々も存じておりませんが、その関係に入っておられるといわれましたメンバーはわれわれの認定審査会のほうにも入っておられるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/93
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094・川野三暁
○川野三暁君 この問題につきましては、また後日質問をいたすといたしまして、厚生大臣にちょっと。私は、先ほどから大久野島の毒ガス障害者の援護につきましては、現在、大久野島毒ガス製造所で毒ガスが製造された期間というものが非常にまちまちでございまして、
〔理事佐野芳雄君退席、委員長着席〕
昭和五年につくられ始めたとか、あるいは昭和二年という説もありまするし、それが昭和十二年まで、十二年以後はつくられていないと、あるいは、また、昭和十六年まで製造されておるとか、十八年まで製造されておったとか、いろいろ期間が区々まちまちでございますけれども、いずれにしても、その間にここで従事しておった者が、現在判明いたした従業員が約二千四十六名でございますか、これは広島県議会の中にありまする原爆被爆者特別対策委員会で昭和四十一年の十二月に第一次の調査をしまして、四十二年の三月第二次の調査をやりまして判明いたした数字でございます。これは、少なくとも、原爆のこの被爆者と同様に、大久野島毒ガス製造に従事しておりました者はすべて毒ガスの障害者であるという前提に立って医療保障の徹底をはかって、国の責任において、かつて働いておりましたこれら従業員の健康管理ないしは援護を行なうべきではないか。要すれば特別の立法措置でこれらの気の毒な方々の援護措置をはかるべきではないかと私は考えるのであります。なお、これに従事しておりました従事者が全部内地軍属でございますので、そのたてまえから、むしろ援護法に移して、手厚い、一般戦傷病者、戦没者の援護と同様に援護措置を講ずべきではないかと私は考えておるのでありますが、大臣の所見をこの機会に承っておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/94
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095・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 大久野島の毒ガスによる被害を受けた障害者に対する措置につきましては、先ほど来、津吉給与課長からるる御説明があったとおりでございますが、これに対する措置をどうするかということでありますが、この措置につきましては、二十九年以来、国家公務員共済組合連合会におきまして特別の措置をとっております。そこで、これに対してなお不十分ではないか、何とかしなくてはならぬじゃないかというようなことにつきましては、私は、この特別措置というものを今後どういうふうに整備充実していくかということが、これが一つの問題であろうと思います。
それから、原爆被害者と同じように扱ったらどうだ、こういうお話でございますが、私もお医者さんじゃございませんで、原爆被害者が受けておりまする身体障害と、それから大久野島における毒ガスによって受けた身体障害とはどこが違うかとか、あるいはどこが同じだといったようなことについては、私もこれをつまびらかにいたしませんが、ただ一つ、この原爆被害者とこの毒ガスによる身体障害者との違いを考えてみますと、病気の性質とか、そういったことでなくして、原爆被害者は広島なり長崎の特定の地域において、思いもよらぬ原爆というもので不特定多数の人たちが一挙にして非常な障害を受けたということであり、この大久野島の毒ガス障害者は、陸軍の造兵廠の仕事に従事しておったというような方々でございまして、これはその性質から申しますと、一種の労働災害と申しますか、そういったようなことによって生じた障害であるということで、その病気の性質などについては私つまびらかにいたしませんけれども、原因がそこに一つの違いがあるということと、それから、もう一つ、援護の対象ということでございますが、現在のこの援護法は、大東亜戦争と申しますか、太平洋戦争以後のその人たちに対する援護が措置されておるということでございまするので、私は、大久野島の毒ガス障害を受けられた方々に対しましては、これは今後どういうふうに扱っていくかということについては考えなければならぬ問題だと思いますけれども、目下のところ、原爆被爆者と同じようにその援護法の対象にということになりますと、少しこれは考慮しなければならない余地があるのじゃないか、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/95
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096・川野三暁
○川野三暁君 大臣の御答弁の内容につきまして、若干私もまだ重ねて質問いたしたいのでございまするが、その点につきましてはまた後日に譲るといたしまして、最初から私が申し上げましたように、大久野島毒ガスの障害者の認定をもっと緩和をするということ、それから援護法等で軍人、軍属の遺家族、あるいは傷病者等が国家的保護を受けておると同様、あるいは同様以上に手厚い保護をすべきである。ぼくはそういう医学的な知識はございませんけれども、和田博士とも話した経緯によりますと、原爆被爆者の症状と同様のものであって、これはあくまでも同様に取り扱うべきものであると私は考えるのであります。この問題につきましては後日また質問いたしますから、きょうはこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/96
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097・藤原道子
○藤原道子君 ちょっとお願いがあるのです。本朝来からいろいろ質問が続けられて、いま川野委員が言われておりましたことも、私ほんとうに胸を打たれるものがあるわけでございます。原爆の問題といい、この毒ガス障害の問題といい、事は非常に重大でございます。したがいまして、次の委員会に、大蔵大臣、それから内閣の責任者にぜひ御出席願いまして、とことんまでこの問題は審議を進めたいと思いますので、さようにお取り計らいを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/97
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098・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 藤原委員の申し出につきましては、委員長としてそう計らうよう努力いたします。
他に御発言もなければ、同法案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/98
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099・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 次に、社会保障制度に関する調査を議題とし、これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/99
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100・大橋和孝
○大橋和孝君 私は、いま非常に流行しようといたしております日本脳炎の問題について二、三点をお伺いしたいと思うわけでございます。
今年は、御承知のように、流行の三カ年目に当たるというので、非常に大流行を起こすのではないかということは前々からいわれておるわけでありまして、また、私は京都出身なんでありますが、京都なんかの状態を見てみますと、あそこも非常に多発流行地としての指定を受けておるというので、京都あたりでも非常に大きくこの予防対策について考慮が払われてきておるわけであります。今年はもう愛知県に一名五月の三日に発生をしておるし、六月六日には長崎で蚊から日本脳炎のビールスを発見をして、これも平年に比べると二十日以上も早く出てきておる。こういう観点からいって、前からいわれておるところの本年は大流行期であるということも裏づけをされておるような形であるわけであります。もう七月の一日くらいの厚生省の報告を聞きますと、二十三県くらいにわたって七十一名患者が出ておる。その中で、もう十四名死んでおるわけでございます。これを去年に比べてみると、去年はこれが四十七名であって、その七月一日現在では四名しか死んでいなかった。ことしはもう死亡率では三・五倍、また、発病患者としても一倍半に達しているというのが七月一日現在の報告だと私は聞いたわけであります。こういうことから考えてみますと、多発するというような現状が迫っておるというわけでありますし、特にまた調べを聞いてみますと、もう何と申しますか、広島あたりでは十名も出ておる、鹿児島も八名出ておる、大阪だとか愛知だとか岡山あたりは五名も出ておる、あるいは、また、群馬だとか兵庫あたりにも四名、こういうような形で、もう各県に相当数の数が出ておるわけであります。特にまた南のほうに多いわけです。これは当然あたたかいから、あたたかいほうから起こってくるのだろうと思うんですが、南のほうに非常にたくさん発生しつつある。そういうような関係で、いまワクチンのほうは一体どうなっているか。京都あたりもそういう関心が非常に大きいが、このワクチンが南のほうに回されたり、いろいろなことがありましょう。話によりますと、わが国も相当たくさんワクチンがつくられて、厚生省の話を聞いてみると、二千七百万人分くらいのワクチンが用意されたけれども、だんだん底をついてきておる、こういうような形でありまして、去年から比べて千六百万人くらいで済んだのが、もう二千七百万人分が消費されているという状態で、脅威を来たしておるのだというお話を私は伺ったわけであります。こういうことを考えてみて、多発地の指定を受けて非常に苦慮している京都府あたりも、府も市も薬務課長が厚生省へワクチンが欠乏したことに対していろいろお願いにまいって、ワクチンをいま回してもらいたいんだと要望を一生懸命やっておるという報告を私は京都で聞いたわけであります。こういう取り組みが行なわれており、また、京都あたりでは最近は蚊、コガタアカイエカが問題になるわけでありますが、この蚊の退治のために巨額の費用の要るところの飛行機で薬を撒布して蚊退治しようと計画しておる。これは京都のほうで盛んにやられている方法でありますが、私は、こういうような関係で京都あたりが真剣に取り組んでおって、現在のところ、あまり発病者が出ていないということは幸いだと思うのでありますが、しかし、私は、これはたいへんな問題だと思うわけであります。特に比較をしてみますと、昨年あたりは大体発病の数字ちょっと私は忘れましたが、去年だけでも日本脳炎にかかっている人を考えてみますと、たぶん二千三百一人だったか、こういうような数だったとぼくは記憶しておるのですが、それがことしは流行期で、一倍半か、あるいは二倍になるだろうといわれておる。これは私は相当の数じゃないかと思う。ワクチンも政府は一倍半を計算に入れて準備をされたと聞いておるのでありますが、これが二倍、三倍ともし発生をしてきたとなると、日本脳炎という病気そのものは死亡率が非常に高いし、また、日本脳炎におかされたら、回復しても、脳をおかされるために廃人同様になってしまうというおそろしい病気であります。こういうような観点をいろいろ考慮いたしますと、いまの事態、いま現在ワクチンが欠乏して十分渡らないというような状態になること自身は、私は非常に大問題だと考えるわけであります。そういう意味で、一体このワクチンをどういうふうに考えておられるか。
また、その中でもう一つ問題を提起したいと思うのは、今年度の予防接種は一ccを注射するということです。これは私もいろいろ聞いたわけでありますが、一cc皮下注射をするというし、それが初めての人であれば一週間置いて二回やるわけであります。そしてこれをやれば九九%免疫になるのだ。いままでは〇・一ccの皮内注射も認めるということであったのを、ことしはこれを一ccにした、これは非常に大きな違いです。〇・一ccの皮内注射では七八%くらいの免疫率だということですから、九九%というほとんど完全に近い免疫率のある一ccにされることは非常にけっこうだと思うのでありますが、それであるのに、今度のワクチンの計画の話を聞いてみると、約三倍くらいを用意したのだという話であります。これは〇・一cc使うのが一cc使うことになると十倍の量が要るわけでありますが、どういうような根拠でそれをおおむね三倍の程度で押えられたか、そういうことも私はよくわからないし、この予防ワクチンがなぜそんなに少なくて、いまこの大事な病気に対して、いまごろのごく初期の段階でもうワクチンが欠乏するという事態になっては非常におかしいではないか。そういう点について一ぺんお考えを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/100
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101・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 御指摘のとおり、ことしは日本脳炎が例年に比べまして非常に早い時期に発生いたしまして、しかも、相当の数の人が去年同期に比べまして罹病をしておるということは、まことに憂うべき状態でございます。これに対しましてワクチンの不足を告げておるという御指摘でございますが、これも日本脳炎が過去のごとく蔓延のきざしがあるということにつきましては、そのワクチンの需要がただいま非常に多いものでございまするから、そこに多少の見込み違いといったようなこともあったということは、これは遺憾なことでございますけれども、現在この実情に対処いたしまして、厚生省といたしましては、鋭意ワクチンの生産、ワクチンの配給というようなことにつとめておりますが、現在の日本における日本脳炎の蔓延のきざしのある状況、及び、これに対処するワクチン対策等につきましては、担当局長が参っておりますから、詳しく御説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/101
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102・坂元貞一郎
○政府委員(坂元貞一郎君) 日本脳炎のワクチンの生産、配給の問題でございます。ただいま大橋委員から御指摘のように、昭和四十二年における日本脳炎ワクチンは各都道府県から非常に強い要望がございまして、確かに全国的に見ますると、ワクチンの不足状況というものが各地で問題になっているわけでございます。この点は私ども非常に申しわけないと思っているわけでございます。そこで、本年における日本脳炎ワクチンの生産ないし配給の状況でございますが、昨年までも日脳ワクチンは非常にその需要が年々増加してまいりまして、先ほど大橋先生からも御指摘ございましたように、昨年、昭和四十一年におきましては一万六千六百リットルぐらい、一人一ccとしますると千六百万人ぐらいのワクチンを配給いたしたわけでありますが、ことしになりますと、それの約一・五倍、二千五百万人分ぐらいのワクチンの生産計画というものを立てまして、本年一月から現在まで配給をすでに終了いたしているわけでございます。二千五百万人分といいますると、大体国民の四分の一、四人に一人分ぐらいのワクチンを配給いたしているわけでございますが、これはわが国の予防接種の歴史におきましても全く異常な状態だと、私どもはかように受け取っているわけであります。しかしながら、冒頭に申し上げましたように、なおかつ各地におきましてワクチンの希望が相当ございますので、私どもとしましても、鋭意ワクチンメーカーを指導いたしましてこの製造に全力をあげてやっているわけでございます。ただ、製造技術の点なり、あるいは国家検定等の関係で、なかなかこれは時間がかかるわけでございます。したがいまして、今後の見通しといたしましては、私どもとしまして、現在各メーカーで予防衛生研空所のほうに検定を依頼しておりますので、その検定の結果、合格したものから逐次早急に各都道府県のほうに配給をいたしたいと思っているわけでございますが、ちょうど七月の六日、明後日でございますが、約百六十リットルが合格する見通しでございます。それから、八月の二日か三日ごろに残りの三千六百リットルが、かりに検定に全部合格いたしますならば、この三千六百リットルの分が一般の使用に供される見込みでございます。したがいまして、今後製造されるものを含めますと、本年における八月までのワクチンの総生産量というものは三万リットル、つまり一人一ccとかりに換算をいたしますと、三千万人分というものが八月の二日ごろまでに一般国民の間に使用される、こういうような見通しを持っているわけでございます。先ほども申しましたように、三千万の人たちの日脳ワクチンを使用してもらうということは、いままでかつてないほどの大きな量でございます。私どもとしましても、できるだけ一般国民の方に不安を与えないようにということで、今日まで鋭意ワクチンメーカーを指導督励しまして生産を間に合わせるようにということにしてまいったわけでございますが、結果におきましては、どうも本年における日脳の異常流行ということが非常にあちらこちらで騒がれておりまして、したがいまして、そういうような観点からしまして、この三千万人分というようなものがほんとうに八月の上旬ぐらいの間に生産になったとしても、これで十分かということについては、私どもも今後の流行予測というものを十分的確に把握いたしませんと簡単に申し上げられないわけでございますが、とりあえずの措置としまして、先ほど大橋委員も仰せられましたように、接種量というものを若干調整をいたしますと、希望者の方にできる限りたくさんワクチンの使用ができるようなことも考えられますので、そういう点も現在厚生省として調整をしているわけでございます。
それから、第二の御質問で、昨年まで続けました接種量が一人当たり〇・一ccということであったというお話でございましたが、昨年のちょうど十二月に日本脳炎のワクチンの基準を改定をいたしまして、本年におきましては一人当たり通常一ccというものを接種することになったわけでございますが、もちろん昨年までも一人当たり一ccというのがたてまえでございまして、ただし、例外的に、多発流行地域の六歳以上の者に対しては〇・一ccずつ二回皮内注射をしていいというただし書きで運用していったわけでございます。したがいまして、たてまえは、あくまでも昨年までも一ccというものがたてまえであったわけでございますが、ただし書きの多発流行地域においては、〇・一ccというものを、本年は基準量を拡充したということに相なっているわけでございます。この理由等は、先ほど大橋先生おっしゃいましたように、免疫効果が一ccの場合は九九%、〇・一ccの場合は七八%というような学者なり研究所長の実験の結果がございます。それが根拠になっている、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/102
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103・大橋和孝
○大橋和孝君 いま非常にワクチンが欠乏しておるというわけでありますが、各府県からのワクチンが不足しておるという、その実態の状況をひとつ聞かしてもらいたい。特に京都府では薬務課長が府も市もそろってこちらへ陳情にまいっているようでありますし、同時に、また、厚生省の指令もあって、一体どれくらいが必要であろうかということのアンケートをとれということで、医師会は医師に向かってアンケートをとった。ところが、いままで京都府において千五百本、それで今度やかましくいわれて、あと三百五十本が入っていま予防接種が行なわれておるわけでありますが、医師会でアンケートをとってみますと、何と二千八百本ぐらい必要だというアンケートが出てきたわけです。そのアンケートの状態はいろいろの観点から出しておられるでありましょうから、一がいには言えない。これはちょっと多く見積もられておるかもしれないし、あるいは、また、不確実な点も指摘する点はあるかもしれぬと私は思いますけれども、こういうような実際のアンケートをとって、そうして日本脳炎の流行に対して、特にもうそういう指定地域になっているいままでの苦い経験からこれに対して取り組んでおるわけです。こういうようなことを考えてみますと、いまのお話の中でだいぶ触れられてはおりますけれども、一体どれくらいの県がどれくらい不足を訴えておるかどうか。それから、もう一つ私は考えられるのは、先ほどちょっと、三千万人ぐらいになるわけだからして多いくらいだと、あるいは、また、都合によっては、流行によってはそうでもないかもしれぬと、こういうお話があったのですが、私ちょっと調べてみましたけれども、これは前の例ではございますが、天然痘が何にも流行していないときに、あれは強制で天然痘は予防接種をしなければならぬというふうでやっているわけですね。これはやはり五万人分ぐらいの接種量で済んだところが、一人どこかに出たらしいという、内地へ入ってきそうだとか、船で天然痘患者が出たという話が出ますと、一ぺんに百万人分のいままで予防接種が必要になったという例があったはずです。これは何かに書いてあったから私読んで知っているのです。おそらくそういうことがあったことは厚生省でも御承知だと思いますが、そういうわけで、流行期だとか、あるいは今度はそれに対してこわいぞということになれば、やはり病気が病気であるだけに、天然痘もそうでありましょうが、ことに日本脳炎になればもう死んでしまうか、さもなければ廃人になる。非常に死亡率が高いという病状から考えれば、当然私はそういうような問題が起こってくるだろうと思う。こういう点で、一体どういうふうに把握をされておるのか、厚生省では。あるいは、また、現状として各府県ではどういう訴えを持っているかということ、この二つの問題。もう一つは、厚生省のほうでは今度何か二十日ほど前に豚の中からビールスの発生状況をキャッチしておるわけでありますが、こういうものと患者の発生状況というものに対してはどういうふうに結びつけて考えておられるのか、この三点についてちょっとお聞きしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/103
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104・坂元貞一郎
○政府委員(坂元貞一郎君) すでにいままで各都道府県のほうに配給を完了いたしましたのが先ほど申し上げました数量になっているわけでございますが、いまお尋ねの、今日現在において各都道府県のほうから本省のほうにワクチンの要望がきておる実情を申し上げますと、全国的に見ますると、大体二十七、八の県から要望がまいっております。その総数量は二十三万本でございます。一本は、御存じのように、二〇〇ccということになるわけでございます。二十三万本くらいのものが現在各都道府県から不足しておるという要望が私どものほうに届いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/104
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105・大橋和孝
○大橋和孝君 先ほど申されました七月の六日では百六十リットル、八月三日では三千六百リットルというので、だいぶたくさんできるという、これはいま検定が通ればという前提であるわけですね。私は、今度のワクチンが少なくなったのも、何か話を聞きますと、検定がなかなかむずかしいので、検定を完全にやらなければいけないので不合格が出る、また、それが出たために少なくなったので初めのうちに渡す分が減ったのだという答弁があったということを聞いておるわけでありますが、私は、これはマウスを使ってワクチンをとりますので、いままでのワクチンの製造過程から、当然不合格品が多いということは自明の理だと思います、タッチしている人であれば。いま申されておった三千六百リットル、これがあれば大体予定どおりでいけるということが数字的にいわれるようですけれども、そういう御答弁自身にまやかしがあって、この中で何ぼ不合格品ができるということはわからないわけです。そういうことの考え方のもとに予防注射というものを考えておられるから非常に誤差が出てくるのだが、私は、いま三千六百リットルというこのすばらしい数が来月三日にできると聞いて、このまま三千六百リットルが注射することのできるようなものとはならない、こういうふうに感ずるわけであります。おそらくそういうことは御承知だろうと思うわけでありますが、そういう点から考えると、やはり予防注射をつくる計画というものに対しては、もう少しそういう点まで含めて考えないとこれを満たすことができないのじゃないか。私が特に考えますのは、いままでのこの予防注射に対する取り組み方が、たとえばパラチフスとか腸チフスあたりを見ますと、あれはどうしてもしなければならない、予防接種の中でもしなければならないランクに入っているのです。しかし、現状から見て、パラチフスあたりは死亡率も減少しておるし、そういう状態であるのにかかわらず、こちらのほうで日本脳炎は、先ほど言ったように、ばく大な人がほとんどその中での三分の一くらいの人は死んでしまう、場合によってはもっと多い率で死亡する、なおっても廃人になるというおそろしい病気の予防接種ですから、これは任意でなくて、いまの状態では希望者ということになると思いますが、これなんかも私は少し甘いのじゃないか。もう少し積極的な施策を進めると同時に、もう少し接種は、おそらく私はかかり得るような条件にある人全員にこの予防注射をするくらいのかまえが必要ではないかと、こう思うのでありますが、その点について特にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/105
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106・中原龍之助
○政府委員(中原龍之助君) 先ほどの先生の御質問で、薬務局長のほうから言い残しましたことについて申し上げます。
先生のおっしゃった豚の流行とか蚊のビールスの発見というものと人の流行の問題との関係は一体どうなのかというお話でございますが、私どもいままで承知しておりますところでは、大体豚の流行が出て、それから大体二、三週間のズレで人の流行になるということを私は聞いておりますから、それだけ申しておきます。
それから、この日本脳炎の予防接種を強制にしたらどうかというお尋ねでございます。現在予防接種につきまして、いわゆる定期の接種と、あるいは、また、臨時接種というような形に分けられている次第でありますが、予防接種の本来の目的は、できるだけ受けてもらうというのが大体目的でございます。しかしながら、現在この日本脳炎は任意の接種ということになっておりますが、幸か不幸か、この日本脳炎の予防接種はわりあいに普及をいたしております。したがいまして、これを現在法律で強制をしなくても十分にやっていけるのじゃないだろうかという見方もできるわけです。また、低所得者に対しましては、今年度から接種費の補助をするというような施策をとりました。したがいまして、そういうことになりますと、法律で制定したのとほぼ同じようなかっこうになってまいります。で、この予防接種の法律を全体としてどうするかという問題は、現在私ども伝染病予防調査会あたりでいろいろ論議を重ねて検討しているわけでございますが、現在この日本脳炎の接種はわりあいに順調に行なわれています。したがって、これをすぐに強制のほうに組み入れるかということはちょっと問題かございますので、予防接種が十分にできるような施策を講じていくということで、いまそのほかの根本問題を検討するという状況になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/106
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107・大橋和孝
○大橋和孝君 そういうふうにして自発的に接種ができてきているから非常にいいんだと、だから何とか方法を考えて普及されていくことを考えようと、こういうようなお話でございますが、私は、いまこのワクチンの問題だけを取り上げてみましても、いまのワクチンは、営利会社といってはぐあいが悪いけれども、普通の製薬会社がワクチンをつくっているわけですね。そして御承知のように、ワクチンがもし残れば、ことにこの日脳のワクチンは有効期間が短いわけでございますから、使われなくなる。たとえば私が考えるのに、来月の半ば過ぎてから出てくるワクチンは、実際からいえば予防的な効果は薄くなってくる。今月中にやられることが最も必要であるわけです。そういうようなことで、これをワクチンの製造メーカーにまかしておいて、そしてそれが使用されなくなったら製造メーカーが出血になるわけでありますから、その計算をして、これを控え目控え目に生産していくということになろうと思うわけです。私はこういうようなことから考えて、国でもう少し予算を組んで、こういうような必要なワクチンは国で買い上げてしまうということでもってもっと拡充政策をして、買い上げてから配給をする、そういうふうなことまで進まないと、私はこういうようなことで、非常に普及されているからということで放置するのでは、あまりにも対象となるところの病気の状態は重過ぎるし、また、かかった人はあまりにも深刻な状態に追い込まれる、こういうようなことであるわけですから、私は、そういう点でこれは非常に問題があると考えるわけです。この点について、それならばここしばらくの間に全国民に予防注射が行き渡るようなワクチンの製造をすることのできる体制はあるのかどうか、こういうような問題なんかも含めて、一ぺんお伺いしたいと思うわけです。
それから、特に私は、こうした面で低所得者に対するところの、何と申しますか、相当幅を広げた範囲に無料でやるということにしなければこれがなかなか実施されない。進んで予防注射が受けられる人はそういうふうな恵まれた状態の人であって、ほんとうに毎日の生活に追われておるような人は、なかなかいまのような形で、強制もしないで自然に皆が自覚して受けてきてくれて、パーセントが上がってきたからけっこうだというとらえ方では、ある程度はパーセントは上がるでしょうが、いま言ったように、生活的に毎日の生活の条件が追い込まれておるような状態の人はなかなか予防注射を受けにいきたいと思ってもいけない。ことに私がここで申し上げたいのは、二度目の一回式の人は二百円ですね。初めての人は二回式で四百円、こういう費用をボーダーライン層の人、特に私は京都あたりの実態を見ると、日本脳炎におかされている場所は、そういう階層の人が多く住んでいる所に多い。もちろん郡部と市部との境目は多いわけでありますから、特に私はそういうふうなことで一度病院関係で統計をとったことがありますが、比較的上流家庭、いい家庭の人はかからなくて、そんなに言うては失礼かもしれませんが、非常に生活に追い込まれている階層の人にこの病気が多いということ自身、私は予防注射に関係するでありましょうし、生活環境にも関係するであろうと思う。そういう観点から、いまのような受け取り方は非常にまずいのではないか。むしろ国の予算でこういうワクチンはみんな買い上げて、これを各地方に配付する。それはことにボーダーライン層に対しては無償でできるようなものを含めて配付していくという形をとって、最終責任は国が持つということにならなければ、これは私はできないのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、このワクチンの問題を国民全体に対してもやって、こういう病気が撲滅できるというようなことに対しての考え方はどうでありましょうか。いまのような考え方で、非常に受ける人が高まってきたからこれでけっこうだということでこの病気がほんとうに防げるのかどうか。二千何百人もの人がこういう廃人同様になる現状を見て、ことにことしは非常にその最盛期であって、非常に流行期である。もう金のない地方の自治体においても、この問題に対して相当真剣に取り組んでおるという段階で、厚生省がこれに対してどういうふうな考え方を持つかということは、これは私は基本的な姿勢の問題としても大きい問題であるし、私は、こういう問題に対しては、いわゆる大蔵省も予算の面で、あるいは、また、ことにことしは流行期であるというならば、予備費を使ってでもこういうものに対してはせよというような形がとられてきて初めて私は国民に対してのほんとうに生命を尊重する政治であり、そういう方向にいかなければいけないものではないかということを考えるわけでありますが、これにつきまして大蔵省の、あるいは、また、厚生省のお考えをひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/107
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108・坂元貞一郎
○政府委員(坂元貞一郎君) 日脳ワクチンを含めまして、ワクチンの需給関係の調整ということにつきましての御質問でございますが、確かに御指摘のように、ワクチン類の生産並びに供給等の仕事は、非常に私ども自身、現在たまたま今回のような日脳ワクチンの問題も起こりまして、常日ごろから頭を悩ましている問題の一つでございます。御指摘のように、需給の調整というものが非常に困難なわけでございます。ワクチン類の生産というものは、大体翌年分を当該年度の夏から秋ごろにかけて生産に取りかかるわけでございますが、大体一年間先のことを見越して生産をする。伝染病の発生の状況なり、あるいは流行の予測というようなものを片一方においてきちんとやりながら明年度におけるワクチン類の生産配給態勢を考えるわけでございます。非常にこの点がむずかしいわけであります。過去におきましては何とかこの点は通り抜けてまいりましたけれども、たまたま本年におきまして今回のような日脳ワクチンの不足という事態を惹起いたしたわけでありますが、これは確かに冒頭に大橋先生の仰せられましたように、本年が三周期の年に当たっているというようなことが非常に一般の国民の方に不安感を与えまして希望接種者が非常に激増したというようなこと。それから、また、大体五月から六月以降にかけまして接種時期というものが集中的に行なわれたというような、いろいろな事情がございまして今日のような状態に相なったわけでありますが、私どもとしましては、今後はこのワクチンの需給安定という問題につきましては、ただいま申し上げましたように、流行予測というものをもうちょっと確実にやるべきであるということ。それから、また、運用面におきましても、接種時期等をもう少しうまく円滑に調整をしていくというような、いろいろな手段を講じまして需給安定というものに精一ぱい努力をしていかなければならぬと思うわけでありますが、ただ、基本的な問題としまして、先生も御指摘のように、国家買い上げ等の措置をとるべきじゃなかろうかという御意見でございますが、確かに現在私どものほうで若干のワチン等については国家買い上げの制度をとっているわけでありますが、先ほども申されましたように、日脳ワクチンについて、まあいわゆる強制接種というたてまえをとっておりませんので、なかなか国家買い上げの制度になりにくいというような点も事務的にございまして、この国家買い上げ制度というものを根本的にどういうふうにしてやったほうがいいかという点については、私ども従来から省内でいろいろ研究をいたしているわけであります。たとえば一つの試し案としましては、国がワクチンの需給等について最終的な責任を負うというような形で、たとえば需給安定基金というようなものを国が設けまして需給のバランスをとっていくというような考え方も過去においてとったことがありますが、いろいろな事情がございまして、今日のところ、このワクチン類の需給安定対策というものは、なかなか学問的にも技術的にも事務的にもいろいろむずかしい点がございますので現在のようなやり方を続けているわけでありますが、今後は、私どもも、そういう根本問題も含めまして、十分この件について検討を進めていきたい、かように思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/108
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109・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 日本脳炎は死亡率が高い、また、あるいは後遺症があるという点にかんがみまして、非常にこわい病気でございまして、その対策が重要でございますことは御指摘のとおりでございます。財政当局といたしましても、このような点にかんがみまして、四十二年度におきましては、日本脳炎の予防接種につきまして低所得層に対する公費負担の制度を新たに設けることといたしまして、このための予算として四千七百万円を新規に計上いたしております。また、日本脳炎対策といたしましては、このほか、先ほどお話が出ておりました流行予測の調査費といたしまして、ポリオ、ジフテリア等、他の疾病とあわせて約千八百万円を計上いたしております。そのうち、日本脳炎の分は約九百五十万円程度になろうと思います。また、日本脳炎のワクチンをさらに改良いたしますために、ワクチンの開発費といたしまして約九百万円を計上いたしております。このように、四十二年度予算におきましても、日本脳炎対策につきましては相当配慮しているつもりでございまして、この範囲内で対処できるのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/109
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110・大橋和孝
○大橋和孝君 いまいろいろお聞きしたことでだいぶよく私も理解さしていただきましたが、いまこうした負担でたいていできるというお考えで、それができればたいへん私はけっこうだと思いますが、この流行期を控えてワクチンが少ないという現況から考えて、非常に時によっては、今度は何かひとつ考えなければならないという問題が出てくるのではなかろうかと思うから、特にそういうことを伺ったわけなのであります。
もう一つ私はここで伺っておきたいのは、このコガタアカイエカというのがこれを仲介するのが一番多いわけでありますから、蚊が問題になるわけでありまして、非常に京都府あたり、あるいは、また、京都市あたりは、この問題に対して予防はどうしたらいいかということを非常に真剣に考えておる。だからして飛行機から蚊を退治するための薬をまこうとして計画をしておることを聞いているわけでありますし、いままで私は京都の市会議員をやっておったじぶんにもそれを熱心に計画をして、何回と何回と何回とにまけば蚊というものが完全に駆除できる、これだけのものをまきなさいということで主張したときに、調べてもらったらばく大な費用がかかるわけであります。これをやったら京都府だけでもものすごい金がかかって、金が出ないのだ、こういうことでありますが、私はよく承知しております。しかし、私は、いまの段階でこういうような人命をみすみす何千人という、あるいは、また大流行になったら何万人となるかもしれないが、そういう人が死んでしまうか、さもなければ廃人、もう全然脳をやられてしまうから、これはもう常人ではないわけであります。そういうようなみじめな状態を起こすことならば、その金の問題というものをもう少し考えるべきではないか。全部国が持てということを私は主張するわけではないけれども、そういうことをやろうとするような県があるのに知らぬ顔をして、だいぶ向上してまいりました、非常に予防注射を受ける率がふえてまいりましたというようなことでもって、この病気を、監督官庁である厚生省が、あるいは、また、それを裏づけするところの大蔵省が、この前にこういう処置がしてありますから、その中でできると思います、まあそういうことも、私はなるほどそうかもわかりません。私は経済のことについては至って弱いわけでありますけれども、私は、こういうことに対して、ほんとうに国民の生命というものに関係するような問題については、多少お金がかかっても、ひとつやってみようという姿勢がこの時期にないものであろうか。特にことしは流行期であるという非常に恐怖感を覚えて、少なくとも、きょうあなたの親戚の人でこの日本脳炎の人ができたら、じっと見て、そのなおったあとの患者を見てどういうふうな気持ちを持たれるか。私はそういうような人が世の中にたくさんあると思うのです。そういう観点から考えると、あまりにこの答弁を聞いておって、何か私自身受け取るのには非常にさびしい受け取り方がされるわけであります。ですから、私は、こういう問題に対しては、もっともっと積極的な姿勢を示していただきたい、こういうふうに私は思うわけでありますが、これはまだあとからちょっとお話も申し上げたいと思うのでありますが、まず先に、一体大蔵省も、あるいは、また、予防を担当しておられる側としてもどういうような考えを持っていただけますか、所信のほどをひとつお聞きいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/110
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111・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) ただいま問題になっておりまする日本脳炎はもちろんのこと、こういったような流行病でございますが、それを予防するということは、これは何よりも大事なことだと思います。さような意味におきまして、人間尊重の精神から、病気にかかったこれは薬がないからどうにもならぬというようなことでは私は非常によろしくないと思います。そこで、今後病気の状態、これをでき得る限り予測をして、人間のすることでございますから、万全は期しがたいと思います。しかし、もっときめこまかく予測をしていくということ、それに従って薬の需給状況というものももっとこれを確実につかみたいといったように、大いにこれは研究をしてまいらなければならないということが一つです。いろいろ御指摘になりましたような御意見でございますが、大体そういったようなワクチンをつくり過ぎてもこれはまた困ることでございますし、また、つくり足りなければ、これはもうもっと困ることでございます。さようなことを考えましてこういった流行病に対処していくためには、厚生省といたしましては、これは予算でもってだけ私は片づく問題ではないと思います。しかしながら、予算の面において片がつけられるという部面におきましては、厚生省といたしましても強く財政当局へひとつ御理解を願い、かつ、要望をいたしまして万全の措置をとってまいりたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/111
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112・大橋和孝
○大橋和孝君 ちょっと大蔵省にも答弁していただきたいのですが、次の問題もありますから、それに含めてお尋ねすることにいたします。
私は、今度は農林省にちょっとお尋ねしたいと思うのですが、先ほどから十分御案内のことでございますから、くどくどしくは申し上げたくはないのでありますが、いわゆる豚、そのほか鶏とか、あるいはウサギとか、いろいろのものを介しているといわれておりますけれども、おもに豚が大きい対象になっておるようでありますけれども、豚の中に日本脳炎のビールスが繁殖して、それが強化されるわけでありますけれども、現在農林省で、豚のほうに対しては、いわゆる日本脳炎が感染をしたらおかあさん豚は流産をしやすくて、子供がたくさん流れてしまう、それを防止するために予防接種をしておられるはずでありますこれは予防接種は、まあ大体馬の予防接種と同じように、一回一〇CCやるのが七十円ぐらいにつくのだ、二回やれば百五十円ぐらいになるということなんですが、私は、この人間の日本脳炎を予防するために農林省で百五十円のものを何とかして出して、そうして豚の予防をして、これが日本脳炎の予防に役立つ。この日本脳炎をなくする、撲滅してまいりたいという観点から考えると、私は、やっぱりワクチンを、先ほども申し上げたように、ボーダーラインの人にまで徹底的に使えるような、使いやすい、四百円も出さなければ予防注射が受けられないという状態ではなしに、そういう人たちにもっと幅を広げて、国がお金を負担してあまねくすべての人が予防注射が受けられる、それも一つの予防の方法と思います。それから、もう一つは、その中間であるところの豚なんかの予防注射をもっとしたらどうだろうか、私はこういうふうに思います。同時に、また、その後は三つ重ねて今度蚊の撲滅をしなければいけない。この三つのものをうまく調節しない限り、完全に日本脳炎というものをなくすることはできないんだ、こういうふうに私は思うわけであります。そういうことから考えてみますと、いろいろ厚生省のほうから伺ったり農林省のほうから伺ってみますと、馬には予防注射をしているわけでありますね。ところが、話を聞いてみますと、いままで相当たくさんの日本脳炎の症状を起こした馬がおるけれども、これをやるようになってから、このごろは、四十年だったか四十一年だったかは、三頭とか六頭しかかからなかった。これはもちろん北海道から内地へいい馬だけを連れてくる、北海道ではないけれども、内地へきたために蚊を介して馬が日本脳炎になる。これに予防注射をして、そうして三頭ないし六頭に減ったということになると、馬のほうはこれは数もしれているし、あるいは、また、条件もそろっている。あるいは競走馬なんかも多いわけでありますから、私はそういうことはできやすい条件があると思うのです。馬にはそういうふうな予防注射がなされてうんと成績があがつている。三十三年ごろは三千頭から四千頭に近い馬がこの日本脳炎で倒れておったものが、どんどん予防注射をするようになってから、四十年か四十一年度では三頭とか、あるいは六頭しかかかるのがなくなったということになりますと、私は、人間より馬のほうがうまいことできておる。人間のほうがほっておかれて何千人もが死んでいるのに、馬はそれが六頭ぐらいになってしまった。そういうようなことから、馬のほうはやられているのに、人間のほうがあまりやられていないというのは一体どういうことだ。私は非常に自分自身でも煩悶をするわけです。こういう問題を考えて、今度の日本脳炎の流行期にあたって、私はくどいような言い方をしているけれども、厚生省としては徹底的に考えてもらわなければならぬし、同時に私は、農林省に対して豚の予防接種をできないものか、農林省のほうのことはよく知らないのですが、そういう観点から馬と比較してみると、私は、もう少し真剣に農林省がこうした中間的な補強動物であるところの動物の免疫というものを真剣に取り上げてもらわない限り、やはり完全撲滅ということにはほど遠いのではないか。京都あたりを見てみましても、やはりそういう家畜をたくさん飼っている周辺に非常に多発しております。ですから、十分こういうことが考えられるわけでありますからして、私はいろいろ調査をした結果、この京都あたりもそういうことに対して非常に鋭敏に対処しておるということは、いままでにも世論として取り上げられているせいであると思うが、こういうことに対してやっぱり農林省のほうからも徹底的な指導なり、何かまたその経済的な裏づけなりというものがある程度出されるならば、豚、あるいはそうしたものに対しての予防というものがもう少し取り入れられるのではないかと考えるのでありますが、その観点についてひとつお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/112
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113・高村礼
○説明員(高村礼君) 農林省の、家畜に対します日本脳炎ビールスによるいろいろの障害に対する対策でございますが、ただいま申されました馬につきましては、戦後相当の流行が一ころありまして、当時から日本脳炎ワクチンを応用しまして相当の発生頭数の減少を見たことは事実でございます。最近におきましても、申されましたように、発生頭数が減っておりますが、これはワクチネーションの結果と、馬自体が減ったという両方の要因が重なりまして被害がはなはだ減っておるわけでございます。豚につきましては、先ほど豚に日本脳炎があらわれたということに引き続いて人間の患者が出るというようなお話でございましたが、やや技術的な問題でございますが、こういう伝染病の流行がビールスの発現と感染とその後の発生、さらに免疫の抗体の出現というような時間的な順序を踏むわけでございますので、家畜はもともと屠殺も容易でございますし、採血も容易でございますので、いろいろこういう伝染病の要因を探るもとといたしましては、豚をその衛生のほうからも、家畜のほうからも一つのインディケーターとして見ております。いわゆる流行の初期に対しましては、豚が屠殺される時点、あるいは検査される時点で非常に貢献しておるわけでございます。ただ、先ほど先生が申されましたように、いろいろの動物がすべて関与いたしておりますので、流行の先がけが何になるかということは、これは現在学会の課題になっておるわけでございます。私どもも、流行の先がけになるものが的確にわかりましたときに、そういうものが人であるか、あるいは家畜であるか、あるいは野外動物であるかというような学会の決定を待ちまして有効適切な経済的な防疫をやりたいと思っておるわけでございます。
それで、現在の豚につきましても豚の死流産を予防するために日本脳炎ワクチンを私たちは利用いたしておるわけでございますが、必ずしも学会の報告その他を伺いますと、感染予防に的確と、いわゆるビールスを豚の体内で増殖させることを押え得るかどうかということにつきましては相当の疑義がございますので、私どもが現在の知識で脳炎ワクチンを大量に打ちましても、あるいは豚の死流産を予防することができるかもしれないけれども、人のほうの流行にお役立てできるかどうかにつきましては確信を得ておりませんので、積極的な意味でのワクチネーションは現在実施しておらないわけでございます。厚生省、農林省それぞれの関係の方々とそういう問題につきまして数年来お話を続け、また、共同いたしまして今後感染予防に完全に役に立つ脳炎ワクチンの採取をいたしまして、人畜ともにこの日本脳炎の被害から免かれるように努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/113
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114・大橋和孝
○大橋和孝君 お説のとおり、私もその豚の予防接種が非常にまだ困難である段階であることは承知いたしております。しかし、非常に私は、先ほど薬務局長からもお話があったように、その豚の中でビールスを発見する度合いがずっと出てきたときから二週間ぐらいおくれて次の人間のほうに脳炎が入ってきているという現況がデータでははっきりしているはずです。そういう意味からいいましても、私は、もっと積極的に家畜の予防接種とか予防を徹底することは、どうでも撲滅する、日本脳炎をなくするために避け得られないものと私は考えます。
もう一点農林省のほうで考えてもらいたいと思うことでありますが、この間のうちは血清豚が非常にやかましくなった。あれは全部殺してしまうことになっておったわけであります。それがどこか辺へ流されてたいへんな問題になった。私は医者の立場でそういうことを言っちゃぐあいが悪いけれども、あの血清豚が人間に及ぼす害は、いま言っておるところの血液の中に一ぱい日本脳炎のビールスが繁殖している豚、これを食べた人は、食べるときには焼いたりしてたべるわけでしょう。また、口からとった場合に発病しないことはわかっておるわけでありますけれども、私はまだ研究が足りないという点から言えば、これは生ワクチンというものはたくさん使っているわけです。たとえばポリオの場合でもビールスのなまをとっています。痘苗を植える場合でも、これは生きた菌を体内に接種しているわけです。こういうようなことを考えてみますと、この豚の血液の中に入っている生きた日本脳炎のビールスですね、これを何かの形でもし取り入れたとすると、からだの中には二種類、三種類、四種類というビールスが、たとえば生まれて間なしの者は豚肉を食わぬかもしれませんけれども、一ヶ月半とか、そういうような非常にか弱い子供にそういうビールスが二つ三つ入ったとすれば何か反応が起こるかどうか、まだ研究発表されていない。そういうことから言えば、逆に今度考えてみると、いま現に日本脳炎のビールスが血液の中にたくさん繁殖しているところの豚を何らかの形で、あるいはソーセージなんかの形でその血液がついているものを入れるということになれば、何か危険があると思う。私は起こらないとは考えられない、いまの現況で。そういうことを考えますと、農林省としては、こういうふうな豚に日本脳炎がおるということに対しては、もっと積極的な考え方を持ってもらわなかったならば、私はこの血清豚以上の不安な状態をかもし出すのではないか、こういうふうに考えるわけです。そういう点からいっても、私はいま言うているように、まだまだ研究が足りないという形ではありますけれども、非常に私はこれをもっと前向きにしていただきたい。去年の学会でしたか、京大の井上教授でしたか、M株の生ワクを実験して研究しているということを発表になって話題になったということを聞きました。また、豚コレラに対しても相当の予防注射をしていらっしゃいます。農林省のほうで豚コレラは皆焼き捨てたりしてしまっているわけですね。こういう点かち考えて日本脳炎ビールスに感染した豚に対する処置というものは、もっといろいろ考えてもらわなければいかぬ。あの生ワクができて、それがほんとうに何といいますか、豚なんかに簡単に予防接種ができるということができるならば、早くそういうものを取り入れてもらいたいし、いろいろな意味において、農林省のほうで豚の中にこの日本脳炎の菌が繁殖しておることを見のがさないで、これに対する処置というものを徹底的に考えてもらいたい。それがほんとうに日本脳炎撲滅な一つの大きなファクターであろうとこういうふうに思うわけでありますので、そうしたことについてひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/114
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115・高村礼
○説明員(高村礼君) 人体衛生に関することにつきましては厚生省のほうからお話を伺っていただきたいと思います。農林省の立場として、現在豚におぎます日本脳炎ビールスの存在をどう見ているかと申しますと、私どもの理解しております範囲内では、日本脳炎の伝播は蚊によって媒介されるわけであります。それも、ただ機械的な問題以外に、蚊の中でなお濃厚に増殖された上でそれが次の動物にうつっていく、こういうふうに理解しておりますので、普通の状態におきます豚の体内におきますビールスが、そういういわゆる蚊によって注射されたような形の接種のチャンスはないとわれわれは考えております。また、諸種の学者のお話を伺いましても、日本脳炎の感染は接触感染、いわゆる蚊その他を通じません。同居感染、あるいは食道感染といいますか、経口感染というような形では起こらない、こういうふうに理解しておりますので、その点は、私どもは、豚の日本脳炎が直接公衆衛生上に肉その他で影響することはないということを信じておるわけでございます。なお、人畜等の伝染病でございますので、私どもも厚生街の研究機関、行政機関の方々とともに今後この試験研究を進めてまいることにつきましては、積極的に過去から現在、将来の点までやるつもりでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/115
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116・中原龍之助
○政府委員(中原龍之助君) 豚に対する予防接種の問題、これはただいま先生が井上博士の研究についていろいろ言及をされましたけれども、私も承知しております。そうして生ワクチンを使っていろいろ研究している、私はこれは結果がどう出るかという問題はこれからの実験を待たなければわかりませんけれども、貴重な実験であり、これが成功すれば非常に私は幸いであるというふうに感じておるわけであります。
それから、ただいま、豚が日本脳炎に感染して、その肉を食べてどうというお話がございましたけれども、私ども、先ほど農林省の課長が答えられましたのとほぼ同じ意見を大体持っております。ただ、この日本脳炎の問題も、これは実際は最近発見されたのではなく、おそらく昔からあったのだろうと私は思っております。食べるものについての問題は、他の食べものも同じでありますが、これは大体経験的に食べられるという形になつてきておりますので、したがいまして、大体特別なことがない限りにおいては、私はだいじょうぶであろうというような考え方を持っております。これは自然界の一つの考え方で、しかし、はっきりこれが有害な病毒を持っているということであれば、それが人間にうつるということであれば、それは私は禁止すべきものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/116
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117・大橋和孝
○大橋和孝君 いまの段階では私はそういうような御答弁しかできないだろうと思いますが、いま私が考えておるのは、やはりまだ人間に対してはいまのところでは感染はしないし、食道を介して入ったのでは害がないことも承知しております。いま私が申したように、生ワクを使うようになってまいりましたし、なまでいろいろなものを接種しているわけです。こういうようなものがなまで入った場合には何か起こるとか起こらぬとかということは研究されてないから、将来は、あの豚の血液におった日本脳炎のビールスが食道へでもどこへでも、とにかく舞い込んだために、いまのように蚊の中で増殖して刺されて起こる場合はいまわかってしまっておりますけれども、食道を介してそれが入った場合に、いままでのいろいろなビールスと一緒に競合作用が起こって何か起こすというようなことも起こらぬとも限らないと私は考える。そういう観点から言えば、もう農林省のほうは、いまの観点からどうもないのだというようなことでは撲滅にならない。農林省は農林省の側として、こういう家畜によってのそういうものに対しては、もっと積極的な研究をしてもらいたい。一方でそういうような生ワクでもこういうことがいけるぞという研究もあるから、これひとつ大いにやってもらいたい、こういうふうに考える。同時に、私かねがね申しているこの撲滅、完全になくすためには蚊の退治をしなければならぬ。蚊の退治をするには公衆衛生局長はどうしたら一番いいか、それは環境整備としてボーフラが起こらないようにすればいいということにも、一言で言えばそうかもしれませんが、実際そうなっておらぬわけでありまて、しかも、京都あたりで調査してみますと、少なくとも、京都の金閣寺にはほとんどコガタアカイエカばかりです。ばかりとは言えぬけれども、非常に多いわけです。そうすると、全体の環境を精査してみると、その蚊が一番多いわけです、パーセンテージからいったら。そういうような事実が出ているとすると、そういうところを刺して、蚊に入って、すぐまた増強されてこれが人間を刺すということになるわけでありますから、この状態というものは非常に悪い状態のところに追いやられておるわけです。たとえて言えば、オオカミの腹が減ったときに赤子をほうり出したような状態に国民は置かれておる、こういうことを言っても極言じゃないだろうと思う。これに対して予防する意味において、環境衛生の面で局長のほうはどういうふうに施策をとっておられるか、どうしたら一番いいとお考えになっておるか、ひとつお考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/117
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118・中原龍之助
○政府委員(中原龍之助君) 日本脳炎の人間に対する伝染に、コガタアカイエカが非常に重要な役目を果たしておるということは、いま大体通説になっておりまして、私もそれを信じてやっておるわけであります。ただ、そのコガタアカイエカをいかにして撲滅していくかというような問題が一番大きな問題なのでありまして、その蚊の生態なり、それを撲滅するというやり方につきまして研究はやられておりますけれども、なお不十分であるということも事実でございまして、一挙に有効に撲滅するという方法がないわけであります。したがいまして、これにつきましては、私ども学者の方にもお願いし、これは発生がたんぼにも関係があるというような形でありますので、農林省、厚生省が協同してひとつ研究を進めて有効な手段を見出そうということで、いまいろいろ双方で話し合いをいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/118
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119・大橋和孝
○大橋和孝君 そういう観点で、最もむずかしい問題でありますから、いま相当大蔵省に聞きましても、そういうふうな調査費とか予防費とかいろいろ組んでおやりくださっておることは非常に私も了解をし、非常にけっこうだと思うわけでありますが、私がいまここでこれを問題に取り上げて、ほんとうに関係各省で考えていただきたいということは、こういうのは悲惨な病気でありますので、これを撲滅するための体制としてはこうしておるああしておるという段階でなくて、ことしはまた最流行期に当たるという、そういうこともかねてからいわれておる。また、二十日も平年に比べて早く出てきておる、死亡しておる人は平年に比べて三倍半も七月一日でふえておるというふうないまの段階でもって、国がやるべき仕事というのは、国民の感情からいえば非常なあれがあるだろう。だから、京都あたりでは、非常に金はかかるけれども、飛行機でもってそれをまこう、最盛期の前に、一回でもまずまいてみようということを考えた。あるいは京都の状態を見てみますと、国際会議場ができたわけです。皆さん御承知のように、あの辺はブヨの非常に多い所だった。外人が来てあの、ブヨに刺されたら困るからといって、あの山にブヨ退治の薬剤を飛行機でまいたことが、去年だったかおととしだったか、あるわけです。そういうことがあることを聞いておるので、これは人命に関係する大事なことだから、私はそれを考えてやはりその京都のやったこと自身はお金のかかることではあるけれども、妥当な方法だと考えるわけです。こういう観点からいって、最流行期に当たる一つの特別な方法としてやられることについて私は敬意を表しておるわけでありますが、そういうことをしても、一週間たったら次の蚊が出てくるわけでありますから、非常に問題があると思うのですけれども、一応そういうことをやるということについて高く評価をしておるわけでありますが、先ほどから厚生省においても、あるいは、また、農林省においても、こういう問題に対して特別に私はこの際、積極的な研究、あるいは、また、学術研究、あるいはいろいろな問題に対しての研究というものを早急に関連性をもってやっていただかないことには、これに対して即効があがらない。私は、一面において、そういう研究費、あるいはいま申しておりましたように、予備費から金を出してでも、ボーダーライン層の人たちには、むしろ強制的にでもそれを注射ができるようにしなければそれが妨げないと思う。どういうことかといえば、お金があって余裕がある人には比較的発生率が少ないのですが、困っている階層の人がどんどんそれにかかって死んでいくという現象を考えると、もう一度私は厚生大臣に対してお願いしたいことは、この問題は、先ほどの公衆衛生局長のほうのお話では、もうずっと高まってきたから、別に日本脳炎を予防注射の法の中に入れて強制的なものにしなくても自然によくなってきておりますという答弁だったのですけれども、それでは私はそういうボーダーライン層にまでお金を出すことが出しにくいのではないかと、こう考えますが、そういうかね合いは大蔵省のほうではどうでありますか。別に自然に高まらなくても、自発的にそういう人に対してはどんどんお金を出して、無料で予防注射をできるようにする。それは完全にある程度の生活保護とか、そういう規定ではなくて、もっと上のほうの人まで、あるいはいわゆる生活状態の困った人にまでそういう手がいまのままでも届くかどうか。私は、厚生省に対して、この問題に対してはもっと積極的にそこまで話を進めて、そうして強制的に注射をしなければならぬというところまでこれをやってもらうことのほうが、よりそういう人たちには十分に予防注射が行き渡るであろう、こういうふうに考えますので、そうしたことの配慮を両局長のほうではどういうふうにお考えになるのか。あるいは、また、同時に、学術研究に対しても、もっともっと積極的にやっていただけないものか。
それから、また、これらは全般的な予防の問題でありますが、次の問題点は、この最盛期に対してはどういうことをしてもらいたい、だからして、それに対しては予備費なら予備費からでも最終的にはやるのか、あるいは、また、厚生省のほうとしても、それに対してはかくかくの手段をもって、今年は最流行期といわれているけれども、平年以下に押えることができる、あるいは、また、もっともっと減らすことができるのだ、もっと端的に言えば、馬並みにそれができるくらいにしなければ、人間と馬の命ということになっては、はなはだ問題が比較にならぬと考えるわけでありますので、そういう観点から、最後にそうした将来の考え方、それから、また、現今の流行に対しての考え方に分けてお考えを聞いておきたい。これで、この問題については、私は質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/119
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120・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 御意見は非常にこれは重大なことだと思います。そこで、これをとにかくいろいろの観点から研究をしていかなければならないということが一つの大きな問題でございますが、そういった点につきましては、農林省はじめ、関係各省と連絡協議をいたしまして、そうしてそういう面からの措置をとるということ。それから、もう一つは、いずれにいたしましても、この措置を整備していくためには、これはやはり財政の問題も伴うことでございます。そこで、財務当局にもよく御理解を願いましてこの措置を充実してまいりたい。
それから、いま勧奨してやっているものを強制的にやったらどうかということにつきましては、これは今後のひとつ検討問題といたしましてやってまいりたいと思います。なお、現況に対しましては、遺憾なき措置を、今日の事態において、先ほど来御説明申し上げましたとおり、とってまいっておりますけれども、なおこれで金が足りないのだ、予算に計上いたしました金が足りないのだというようなことでございますれば、これは当然お説のとおり、予算の上に計上した金が足りないからやれないのだといったような場合には、それはもちろん予備費の問題になることは当然のことだと思いますから、とにかく、いずれにいたしましても人命の問題であり、健康の問題でございますから、厚生省といたしましては御意見を尊重いたしまして、大いに今後前向きに検討もいたしますし、できるだけひとつさようなことの蔓延がなきように期してまいりたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/120
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121・大橋和孝
○大橋和孝君 あとから含めて大蔵省から御意見を伺うわけですが、その前に、私一点落としましたので、それを厚生大臣のほうに聞いてみたいと思います。
先ほどから何回も触れましたが、京都府あたりでは飛行機で蚊の撲滅のために薬をまこうということですが、これは非常に高いものにつくわけです。ここで最盛期のときに一回そういうことを計画してやっているわけでありますから、ここで補助を出してもらったらもう一回できる、二回やれば非常に防げるのではないか。蚊を撲滅する場合において、そういう観点から京都に対して、試験的にいま一回を計画しておるのだから、もう一回やらせるという意味で補助をつけてもらって、二回そういう蚊に対しての措置をとったらどういう結果があらわれるかという、その試験的な意味においても、私は、京都府に対しての予備費からでもそういうことに対する費用を出してもらいたい。そして、一回は計画しているらしいですから、もう一回やらす。それで、いまの時期と、もう一週間なり十日おいてもう一回やれば非常に蚊は撲滅できる。そういうふうなことからどういう結果になったかという一つの将来の研究のテーマとして一府県にやらしてみてはどうかと私は考えてこの問題に取り組んでいるわけでございますが、これに対して、先ほど来の長期の研究のものに対して金を出す云々、それから、最盛期といわれることしを切り抜けるための一つの研究としてこれをやるということに対して、厚生大臣の考え方と同時に、大蔵省の考え方について、それを措置するぐらいのことはやってもらったらどうかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/121
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122・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 問題は国が金をかけるということ、これは厚生大臣としては、厚生省の予算といたしましては最初にきめられた予算でもってまかなっておる、こういうことでございます。それで、もう一つ問題は、私は、国全体の予算でございますから、どこかモデル地区をきめてそういうことをやるということでありまするならば、予算編成の過程において計画がなされていなければならないのではなかろうか。そこで、いまの段階におきまして特定の所をモデル地区としてそういうようなことを実施するということにつきましては、これは相当検討を要するのではないか。これは私、財政当局ではございませんから、何ともはっきりしたことを申し上げかねますけれども、そういったような特定の地区をどうするということは、大体予算編成の段階ではなかろうかと思いますが、これははっきりした御答弁をいたしかねることはひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/122
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123・辻敬一
○説明員(辻敬一君) 日本脳炎対策の全般の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、四十二年度予算におきまして相当配慮しているつもりでございますので、本年度におきましてはその範囲内で十分対処し得るのではなかろうか、かように考えております。なお、四十三年度以降、今後の問題といたしましては、実情に即しましてさらに適切な措置を講じてまいるよう検討をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/123
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124・大橋和孝
○大橋和孝君 大蔵省のほうに対しては、私は決算のほうでもいろいろあれしているのでありますが、決算の中で、こういうような最盛期とか何とかということは、前から予測があったとはいうものの、これから起こってきそうなものだということで、考えようによればその年に限った問題になるわけで、今後の問題で厚生大臣もなかなか返答しかねる、それもよくわかるわけでありますけれども、私がいま申し上げておるのは、ほんとうにこういうような急に最盛期であるとかということでワクチンが少なくなって、いままで予想したとおりの予防注射ができなくなっているという、そういう現在事実が出てきているわけです。予想外にワクチンが足りなくて、いま一番しなければならないときにワクチンが足らないから、それを要求している県が二十八県もあるわけです。半分以上要求が出てきている。そういうような急激に変わった状態が出てきたときに、人命に関する問題だから、予備費の問題も含めて今年度の問題に対処できるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますから、特にきょういまそうしてくださいということを答弁していただくのは無理かもしれませんので、私はよく検討していただいて、これは万全な対策をしていただき、そういうことに対しては出し得る範囲の金は十分出して、予防注射も徹底してもらいたい、蚊の撲滅に対しても力を入れていただきたい。こういうものについての金の使い方は、私は人命尊重としても相当使うことに意義があるのだ。京都府か京都市か、よくわかりませんけれども、そこらでは、なけなしの地方財政の苦しい中で、それを一回やろうではないかということを聞きましたならば、私はそれをひとつとらえてモデル地区として、もし少し補助することによってもう一回できるということならば、非常なおもしろい結果が出るかどうかということのテストになると思います。そういうことに対して前向きの姿勢で考えてもらわなければ、貴重な人命に関係する疾病に対して適切な措置をとってもらわないと私は納得できないわけでございまして、ぼくは予算のほうの委員もやらしてもらっている関係でこういうものを見せてもらったときに、そういう気持ちが非常に心の中に打たれて感じますので、この問題については特に配慮していただきたい。これを大蔵省に対しても、あるいは、また、厚生大臣に対しても、私は心からお願いをしておきたい、こういうふうに思うわけであります。これは要望だけにいたします。
そこで、話題を変えまして、放射線技師法の問題について一言厚生省に対してお伺いしたいと思うわけであります。これはいままでもいろいろと法案を出されましていろいろ討議をされた問題であり、その討議の中におきましても、どこに問題点があり、どこをどういうふうにすべきだということは、もうだいぶ議論を尽くされた問題でございますので、私はきょうの質問としては、ごく簡単にお話を申し上げたいと思うわけであります。担当の局長おられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/124
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125・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/125
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126・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/126
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127・大橋和孝
○大橋和孝君 この放射線法というのがいままでにも問題にされて、放射線を取り扱う人たちの問題が非常にいろいろ問題になってきておるわけであります。特にいまの法律で申しますと、何と申しますか、エックス線でも、これを取り扱うときには医者が立ち会っていなければならないという法律になっているわけであります。これは患者に対していろいろエックス線なんかを使う場合がありますから、最終的には医者が責任を持ってやるということはもっともだと思うわけでありますが、そういう状態でできておるわけでありますから、極端にいうならば、工場へ行って大ぜいの健康な人の中で、そこに悪い人がないかということを調べていく上に間接撮影をとるわけでありますが、そういうことに対しても医者がタッチしておらなければならないというような法のたてまえであると思います。まして、このごろは、何といいますか、エックス線をやっておられる方、ことにエックス線をやっておられる方の上にもう一つ勉強する年限をふやして、アイソトープとかいろいろな放射線をやる人たちに勉強さしているわけであります。そういうふうな課程が三年課程で勉強さしておられる、そういう人もぼつぼつ出てくるということであります。こういうふうな状態では、これはいままで放射線技師という身分が確保されてないので、やはりそういうような人もまだエックス線技師さんと一緒にレントゲンをやっておる。そこらのところはもうごちゃごちゃになっているわけです。ですから、このごろのようにガン対策や何かで非常に進歩してきているわけでありますから、何と申しますか、非常に取り扱っておられる人たちが、実際はエックス線技師の人たちがその機械をなぶっておられる。ほとんど私はその医療行為をやっておられる人たちの八〇%以上はそういう方々がやられておると思う。同時に、また、そういうことをやるところの事業所は相当ふえておるし、その対象人員はまたふえておるわけですね。そういうようなことがだんだんと積み重なってきて、いまの状態で私たちはそこにやっておられる人たちの実態を見てみますと、いまの状態ば、何と申しますか、非常に心もとない状態に置かれておるのではないか。同時に、また、一方では勉強して、十分アイソトープなり、そういう放射能に対するいろいろな知識を持った人も今度同じようなエックス線をなぶっておるというような、エックス線をなぶっておるような人が、また逆にアイソトープをなぶっておるというようなごちゃごちゃの状態に置かれておる。こういうことでは私は非常に医療が混乱するだろうと思うのです。こういう点は厚生省としても相当考えてもらわなければならない。私は前に厚生省のほうの方々と私的に話したときには、こういうような外側におる人、看護婦さんを含めて、外側におる人とか、あるいはエックス線技師さん、あるいは、また、放射線をやる人、あるいは、また、こちらのほうでは衛生検査をやる人、こういうふうにいろいろあるわけでありますが、特に、また、最近では非常に要望がありまして、たとえば目の悪い人、斜視のような人があって、そして視能を矯正すれば視力が回復する、こういうのがあるわけでございますね。これを視能矯正士とかいわれておるわけでありますが、これも身分の保障もできてないためにそういう人たちがいろいろ待遇をされない、だからして非常にこれは伸びないわけでありますから、全体の統計なんかを見てみますと、やはり斜視なんかの先天的なものは早くそれをなおして、そして訓練すれば非常に視力が回復する。それをやらないために視力が回復しない。実は参議院のある先生のお坊ちゃんあたりも、そういうような話を聞いて眼底を見てもらったら、もう成年期に達するまでそうしたことがやられなかったから、いまからこれをなおしても十分な視力が回復できないだろうと、こういうことで、考えてみますと、それをやっておる方が非常に少ない。やっておる方の話を聞きましたら、やはり景ういう人に対しての身分保障がされてないた猶に、なかなかなり手がないから、結局看護婦さんとか、あるいは、また、そこらの衛生的なことをやはり大学あたりで学んでこられた人をそこで使っておるというような形でありますので、私は、こういう一連の医療に従事をする人たちの身分というものは相当高めていく必要がある。それからして、私は、むしろそのときに厚生省の方々もそういう御意見であったと思うのですが、ひとつこう大きく取り組んで、そうしてその中にいろいろなセクトを続けていくような形ですべての能力をあげていくような根本的な配慮をしてもらわないと、私は、各そういう業態の人々がその道に安んじて、そうして自分の生活、あるいは身分というものが保障されたという条件にならなければ、この医業というものはより前進しないのじゃないかという考え方を持つわけです。難聴の人に聴力を訓練する、耳の遠い人を訓練する、そういうような技能者はいろいろあるわけですね。そういうような方々も含めて、私は非常に考えなければならぬ。そういう観点から、私は、この放射線を扱っておられる人たちに対しても非常に大きく考えてもらわなければならないと思うわけでありまして、むしろ私は、こういう人たちをより高めることができるような法律を早く制定してもらわなければいけないんじゃないか。いままでいろいろそういうことが出されても、いろいろな機会でこれが流れてしまっておるわけでありますが、私は、もう大臣あたりも、こういうことに対しては担当局長ともよく協議を願って、この放射線を取り扱うところの人たちの身分をより高めるための法律を出していただく。そうするためには、やはりそこらの実際を取り扱っているところの、放射線の技術を身につけておられるようなそういう人たちのいろいろな要望もありましょうから、そういう要望をいれながら立法化をしてもらうということが必要であろう。私はこの間も話したのでありますが、そういうふうな身分法をたくさんつくっていただいて、それをひとつ統合してもらって、その統合の中でいろいろまた確立をしていくということがもちろん必要だろうと思うのでありますが、それをするまでほうっておこうという考えでなくて、先ほど申しましたような視能矯正士とか、難聴を訓練する者と同時に、やはりこちらのほうの、いま学校ができてそれを収容しておられる人がたくさんあるのに、それを保障するような法律のささえもないというようなことではいかにもお粗末だ。より向上をしてもらおう、そういう技能者がより向上して、いまの医療に対しての大きな役割りをしてもらうことのできるような身分と地位とを保障しなければならぬ、こういう観点から一ぺん考慮してもらわなければならない、こういうふうに思うのでありますが、その点についてひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/127
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128・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 高度な放射線を扱う技師の身分の確立がまだできていないじゃないかという、この問題につきましては、私も厚生省で聞いております。聞いてはおりますが、そういったような人たちと、それから、既存のエックス線と申しますか、ここよりそこまでいかないという人たちとの間に若干の意見の食い違いといったようなものもあるやに聞いておりますが、ちょっと委員長速記を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/128
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129・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記をちょっととめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/129
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130・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/130
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131・大橋和孝
○大橋和孝君 まことにどうも失礼しまして、局長さん非常にお忙しかったと思いまして、恐縮に存じております。
先ほどもちょっと申し上げたのですが、簡単に要約してお話をしたいと思うのですが御承知のように、いま日本の事業所では、放射線を使う事業所が五百以上になり、非常に多いわけですが、その中でほんとうに放射線の専門の技師がおって、そうしてそういうものが立ち会ってやっているというところも非常にうまくいっていない状態で、医師はおるけれども専門医師というものはいないという状態にあるわけですが、特にその中て私は問題になるのは、先ほどもちょっと話したりですが、間接撮影をしても医者が立ち会わなければならぬという規則になっている。これは私はもっともだという点もあると思うのですが、ところが、一方、逆に考えてみますと、いまそれじゃ実際運営をしているところのその放射線あたりの治療を受ける人たち、あるいは、また、そういうような診断を受ける人たちの数が非常にふえてきておるにもかかわらず、そのうち患者の八〇%以上というのは、やはりエックス線技師とかいう方々に実際やってもらっている人が多い。これは私は厳重に言ったら法律違反であるということが現に行なわれておるんではないかという現状である。そうなってみると、もう一方のほうにおきましては、もう三年間放射線技師というその専門的な教育を受ける課程があるわけで、もう卒業している人があるわけです。したがいまして、今度は一緒にまじって、そういう人の職能区分がないために、普通の一般のエックス線技師の人たちと一緒になっておる。逆に、また、放射線をエックス線技師の人が使っておる。一方では放射線技師としてのいろいろな技術を三カ年間勉強をした人が、それを身につけた人が、逆にまたレントゲンだけをなぶっておるというような間違ったばらばらな状態になっておる。一方で言えば、私は、順法的な精神から言ったら、もういまの実際医療が根本から破壊されてしまって、八〇%以上の人がそういう人たちによって実際上運営されておる状態で、これを順法的な精神でがっちりやったら、もう医療は停止してしまうわけですが、逆に言ってみて、そのまま置こうということであったら、やっぱりそれは厚生省は法律違反を認めていくのだ、こういうことになると思うのですが、そういうことを考えていくならば、私はやはり放射線に対してのいろいろな知識を持った人のそういう人としての待遇のできる身分並びに保障ができるような法律はつくられるべきではないかと思う。そういうものによってそういう人たちを明確にささえるというような方向に持っていかなければならぬのじゃないかと思いますが、そうするためには、やっぱり私は、そういう教育を受けた人たちの希望を入れたところの、いままではいろいろ政府から法律が出ておりましたけれども、そこにはいままでにもどういうところに間違いがあり、どういうところが改良してもらわなければいかぬということは私は申し上げたし、いろいろなところでいままで議論を進められてそのままになっているわけでありますから、私はそういうところをひとつ改良して、もっといい法律として出されたらどうか、こういうふうに私は考えるわけですが、先ほどから申しているそういう話を詰めた上で、まあそういう身分法が幾つかあるから、ひとつ統制して一つのものをつくって、その中にいろんな分科をつくるようにしたいというような形を聞いたこともありますが、私はそれまでにもう一つそういうものを早くつくってもらいたい。一方では、また、免状ももらい、そういう課程の勉強も終わっておる人があります。それをほうっておかないで、早くつくってほしい、つくった上で、また厚生省がいろいろ考えられて、それを統合したりすることはまた別問題であり、そのときに考えたらいいんだから、もっと早くそういう人たちの身分を保障できるように、また、ぴちっと放射線に対してはそういう知識を持った人ができるだけそれに携っていけるような法律にしていただきたい。そういう方向にずっと伸ばしていただきたいと、こういうことを思って私はきょうは実は質問を申し上げたわけです。もういままでにもたくさんその法律は審議されておったし、そうしてそのままいろいろな情勢で流れてしまっているわけですけれども、もう一ぺんそれをやってもらいたいと、こういうふうに思いますが、お考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/131
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132・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 放射線技師の身分を明確にし、現実の実情に合わせていかなければならないという御趣旨は私も全く同感でございまして、現在診療放射線を扱う人間は、現実にはエックス線しかなかった時代に診療エックス線技師法ができまして、現在は診療エックス線技師という資格で働いておるわけでございますが、御指摘のように、近年におきましては診療エックス線も非常に進歩いたしました。一方、各種のハイエネル ギーの放射線器械が続々開発されてまいりましたし、また、各種のラジオアイソトープも診断治療に使用されるようになりまして、現在の放射線技師ではとうてい扱いきれない分野が多々発生してまいりました。したがって、この分野におきましては、現在は医師がそのような医療器械を責任を持って駆使し、診療エックス線の技師をその補助者としてこれを扱っているという実態でございまして、法律的にはエックス線技師が独立といいますか、責任を持って扱うような形にはなっておりません。しかし、この事態の変化に即応いたしまして、当然医師の指示、あるいは監督のもとに技術者が独立して自己の責任の分野を確立しながらこれを実施していくという体制が必要であることはお話のとおりでございまして、実態がすでにそこまできているということも事実でございます。したがいまして、現実には診療エックス線技師の養成機関で、正規の二年課程のほかに、さらに専攻課程の一年間を積み上げまして、そのような高エネルギーの放射線器械、あるいはラジオアイソトープ関係の勉強をし、そうして事実上それを取り扱い得るような知識を習得した卒業生が出ていることもお話のとおりでございます。そういう意味で、私どももできるだけ早くそういうような、現にそれだけの教育を受け、また、それだけの身分を獲得するに足る人々にそれにふさわしい身分を与えたいということから、数年来協議をいたし、関係者、あるいは関係諸団体との間の意見を調整いたしまして、前国会で診療エックス線技師法を改正し、診療エックス線技師並びに放射線技師法という新しい法律を御提案申し上げたわけでございますが、その時点におきましては、おおむね関係団体、あるいは関係者の意見の調整ができ、およその了解を得られたというふうに理解して国会に提案申し上げたわけでございますけれども、残念ながら、その提案後におきまして関係団体との間の意見がまた食い違いが出てまいりまして、そのために、御承知のように、実質審議に入らず、継続審議となり、さらには廃案になったといううき目をみたわけでございます。しかし、この法律の趣旨それ自身には、依然として私ども考え方が変わっていないわけでありまして、できるだけ早い機会に関係諸団体等の意向も調整した上で、あらためて提案、御審議をいただきたいという趣旨でおりまして、本国会におきましても、当初何とかして本国会に御審議をお願いしたいというつもりでおりました。しかし関係者等のお話を聞いております間に、なおなかなか意見の調整が困難であるという事態が出てまいりましたので、今国会の提出はなかなか困難であろうという見通しがだんだん強くなってまいりまして、最近の時点においては、残念ながら今国会は見送らざるを得ないのではないかという大体の結論に到達いたしておるのであります。そういう意味で、今国会は廃案になりました旧法のままでもしも通るようであれば、これは私どもも提案にやぶさかでなかったのでありますが、なかなかそうもいきそうもございませんし、そうかといって、新しい観点でさらに意見調整をして修正した法案を提出するというには、なかなか時間的にも物理的な困難もあろうと思いますので、残念ながら、今国会に御提案申し上げることは見合わせざるを得ない状況にきておると考えております。しかし、できるだけ早い機会に、私どもも努力した上、関係諸団体の意見調整等を待って、再度新しい法案の審議をお願いしたいという所存でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/132
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133・大橋和孝
○大橋和孝君 詳しく御説明を願ってあれでございますが、しかし、私は、先ほどもちょっと申し上げたように、この現在のままでおきますと、非常に医療の面で、一般の市民、国民から非常な要望というものが、このごろガンに対する問題に対して非常に関心が高いために、こうしたものに対しての要望が非常にきつい。患者は急激に増加する一方である。で、こういうようなことでありますから、各医療機関においても、こうした患者が非常にふえるのに対応して、やはりそうしたところでここに携わるところの、いまのその放射能の高性能のものに対して取り組んでおられる方方に対しては、非常にそういう矛盾が出ておるわけです。こういう矛盾をほうっておくということは、いよいよもう私は一方において医療というものを混乱におとしいれるし、また、一方には法的解釈で、非常に心の中では違法をしたような、非常な良心的なかしゃくをもって業務に携わっておられる人もあろうし、あるいは、また、非常にそういうことで、何と申しますか、人権問題として考えても、こういう問題をほうっておくのには非常に私はしのびないという状態がいま出つつあると思うのであります。ですから、私は、いまおっしゃっている気持ちはよくわかりまして、いままでの審議の中でもわれわれはいろいろな御要望もしてまいりましたし、討議もしてまいったわけでありますけれども、なかなか技術の問題として、すぐいろいろな要望を取り入れてまとめたものを出してもらうのも、それは当然ではありましょうけれども、できないとなれば、あるいは、また、いままで考えておられた法律を出して、そうして審議の上でそれを変えていこう、もうこれはいままで審議されておりますから、担当局長あたりは十分その内容については御承知ですから、初めと変えて出してもらったら一番いいし、その手続はいまとなってはできないというならば、あるいはそういうことを変えることを前提に置いて、いろいろ出してからそれを変えていこうということもあり得ると思うのです。ただ、それはできないから送ってしまうということで簡単に片づげるのには、あまりに現況はあれをしておる。このままでは、一面では法律違反を認めていくような形にもなるだろうし、あるいは、また、一面では医療というものは混乱をして、資格を持っておる者がエックス線だけをやっていたり、資格のない者がそれをまたどんどんとそういうものをやっておるというような、非常な混乱をした状態が起こっておる。そういう段階を踏まえてみますと、私は前向きに、不十分であるけれども、法を出して、この国会ではできぬかもしれないけれども、継続審議にして、この次にこそ通してくれという、そういう前向きの姿勢を私は厚生省では示してもらう。私は、これからいいものを出すのだから、しばらくほうって置くのだという行き方なのか。むしろまずくても出しておいて、しかも、出すからには、ほんとうの出し方は、いままでと違って、もっと実情に即したものを入れて、あるいは改正してでもそれを前向きに審議していこうという、そういうかまえでやるのか。私としては、そういうふうなかまえで、まあ拙速をとうとぶということになるかもしれませんけれども、そうしたものに対しての前向きの姿勢をいま私は厚生省に示していただけるならば、これは非常にしあわせじゃないかと、こういうふうに思うわけです。それは私の気持ちなんでありますが、そういったことに対してどうお考えをいただけるか、一応ひとつ考え方を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/133
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134・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) お話のように、法案を従来提出し、御審議を始めていただきましたそのままの形で再度審議をお願いするという方法もございましょうし、また、もとの厚生省原案のままで提出さしていただいて、そうして国会でそれぞれ関係者の御意見を聴取の上で一部修正なり訂正なさるという方法もおありのことと思います。しかし、私どもといたしましては、なるべくならば、そういう当然修正あるいは改定されるものを予見しながら、あえて私どもの原案を出して国会の手をおわずらわしするということも、私どもとしてはまことに申しわけなく、また、不見識なことだと存じております。当然そのような事態が予想されるものであれば、政府当局の手でできるだけ事前に調整をし、そうしてできるだけ御賛同を得られる形で御審議をお願いするということが手順でもあり、また、国会に対する道義でもないかというふうに考えますので、私どもとしては、もうしばらく期間をおかしいただいて、十分調整の上、御満足いただけるような形で御提案を申し上げ御審議をお願いしたい、そういう意味で次の機会まで何とか御猶予いただきたいというのが私どもの考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/134
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135・大橋和孝
○大橋和孝君 その御趣旨はよくわかるのですが、一週間くらいでやってください。まず出してもらったら、私どももいい案だったらすぐ賛成しますから、それをすぐ出してもらうことはできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/135
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136・若松栄一
○政府委員(若松栄一君) 残念ながら、現在の私どもの力では、一週間以内にほぼ大かたの御満足が得られるような調整がどうもいたしかねる見通しでございますので、現在のところ、それだけの勇気が出ないというのが率直なところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/136
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137・大橋和孝
○大橋和孝君 大事なことだから、勇気を持ってやってもらわなかったらこれはできません。一たんそんなことになったら、逆に違法を認めていくということになるわけですからね。その違法を追及されたらどうされますか。それは一週間ぐらいで無理しても勇気を出してやられるほうが厚生省のためだと思うから、一生懸命援護射撃をしているのだから、もう少し真剣にやってくれませんか。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/137
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138・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 非常に実質上ごもっともなる御意見で、私も傾聴いたしたのであります。一週間以内に出せ、こういうおことばでございますが、何にいたしましても、一度国会で廃案になったものでありまして、廃案になったものをそのままというわけにもまいりません。そういたしますと、やはり各方面とも調整をしたというものでないと、ちょっとどうも私どもといたしましては御提出して御審議を願うというわけにはまいらぬ。そういたしますと、御承知のとおり、政党内閣でございまするので、政府や与党の各機関といったようなものの審議の経過というものもございまするので、ちょっと一週間とか十日以内にこれを各方面と調整して、そういったような機関を通してということに相なりますと、なかなかその自信もこれはございませんのですが、しかし、御意見は私も非常にごもっともな御意見だと思っておりまするので、できるだけ近い機会の国会に私は御審議をお願い申し上げたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/138
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139・大橋和孝
○大橋和孝君 じゃ、どうもえらいくどいこと申し上げて恐縮に存じますが、近い機会というのは、もう次の国会と解釈してよろしゅうございますか。次の国会には必ずそういうものを出すという解釈でよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/139
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140・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 先ほど申し上げましたような経過をできるだけこれを経まして、できるだけそういうほうに持ってまいりたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/140
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141・山本伊三郎
○委員長(山本伊三郎君) 他の発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105514410X02019670704/141
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